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1952-02-08 第13回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月八日(金曜日)     午前十時二六分開議  出席委員    委員長 塚田 十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林山榮吉君    理事 小峯 柳多君 理事 苫米地英俊君    理事 西村 久之君       淺利 三朗君    天野 公義君       江崎 真澄君    江花  靜君       小川原政信君    尾崎 末吉君       角田 幸吉君    甲木  保君       北澤 直吉君    栗山長次郎君       志田 義信君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    田口長治郎君       玉置  實君    永井 要造君       中村  清君    中村 幸八君       南  好雄君    宮幡  靖君       西村 榮一君    水谷長三郎君       風早八十二君    山口 武秀君       横田甚太郎君    稻村 順三君       成田 知巳君    世耕 弘一君       石野 久男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         厚 生 大 臣 吉武 惠市君         建 設 大 臣 野田 卯一君         国 務 大 臣 大橋 武夫君         国 務 大 臣 山崎  猛君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月八日  委員竹山祐太郎君及び梨木作次郎君辞任につき、  その補欠として藤田義光君及び横田甚太郎君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  公述人選定に関する件  参考人招致の件  昭和二十七年度一般会計予算  昭和二十七年度特別会計予算  昭和二十七年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 塚田十一郎

    塚田委員長 会議を開きます。  本予算の各案を議題に供します、これより質疑を継続いたします。庄司一郎君。
  3. 庄司一郎

    庄司委員 建設大臣にお伺いしたい最初の第一点は、国土総合開発に関する昭和二十七年度の予算措置、並びに運営に関する問題であります。国土総合開発は、あらためて申し上げるまでもなく、国土総合開発法に準拠して開始された、吉田内閣内政上最も大きな、将来の国土の復興、あるいは積極的の開発保全等に関してゆたかな構想のもとに、あるいはアメリカのTVA方式を模倣されたかどうかわかりませんが、荒廃その極に達しているわが国国土を、産業の面においてあるいは道路、交通の面において港湾関係において、あるいは地下資源開発において、大きな構想のもとに、狭い四つの島国となつてしまつたわが国を、内容的には最もゆたかなものにせんがために、また年々膨脹して行く幾何級数な人口の増加に伴うてわが民族により安楽なる生活を與えるためにも構想された計画でありまして、内政の面において国土総合開発が、その所期の目的を達成し得るといなとは、わが民族将来の繁栄のために、最も重大なる関係のある問題であることは、主管大臣であり、直接の関係大臣である建設大臣におかれては、よく御承知のことであると思うのであります。しかるに昭和二十七年度の国土総合開発一環とでも申しましようか、全面的な総合開発調査もまだ十二分とはいえない今日でありますから、せめては国土総合開発一環としての所要予算国土総合開発に投資さるる、あるいは補助助成さるるところの予算面が、ただいまあなたが要請されておるこの公共事業費、これは建設大臣だけの御要請ではむろんございません各省要請合計の一千二百億円でありますか、この公共事業費のうちに、国土総合開発費とでも称すべき経費は一体何パーセントあるか、金額にしてどの程度計上されておるか、それを最初にお伺い申し上げたいと思います。
  4. 野田卯一

    野田国務大臣 国土総合開発重要性につきましては、ただいま庄司委員が御指摘の通りでありまして、その点につきましてはまつた同感であります。しこうして昭和二十七年度予算に、総合開発に関する経費が、どのくらい計上してあるかということでありますが、御承知のように総合開発はその内容が、あるいは水力発電なり、あるいは灌漑用水なり、あるいは水道なり、あるいは洪水調節なり、いろいろなふうに内容的にはわかれて来るのでありまして、それを総合的に勘案して、その開発の推進をはかつて行くというところに、総合開発の真の意味があります。従いまして、計画としては、総合開発といたしまして、まとまつた計画を立てるのでありますが、これを実施に移します場合には、あるいは河川の改修となり、あるいはダムの建設となり、あるいは灌漑用水の問題となり、あるいは水道の問題となるというふうに、各個にわかれて来るのでありまして、現在の予算の編成の形式といたしましては、各河川道路港湾あるいは水力発電水道というふうに、各方面にわかれて入つて来ておる、こういうふうに御了承を願いたいと思います。なおこの総合開発につきましては、昨年十九の特定地域を指定いたしまして、そこには特に力を注ぐことになつておるのでありますが、この十九の特定地域基本的調査をする必要があるのありまして、この基本的調査に要する経費政府から補助する、これは府県が主として調査に当るのでありますが、それに対しまして政府補助する、その金を一千つ青万円計上いたしております。この一千二百万円は多少少額に失するじやないかというきらいがあるのでありますが、その点につきましては、別途に公共事業調査経費が五億三千九百万円あるのでありまして、この分からこの総合開発基礎調査のために、あるいはそれからさらに進んである程度事業計画のためにいる金は出したいというふうに考えておる次第であります。
  5. 庄司一郎

    庄司委員 私のお伺いしたいのは、公共事業費のうちに、広範囲意味じやなく、狭い意味における総合国土開発という意義に徹する予算が、この一つ千二百万円のうち、どのくらい見込まれておるかということであります。それをお尋ねしたいのである。吉田自由党内閣以来、国土総合開発ということに国民は多分に大きな期待をしておるのであります。ところが予算面から見まするならば、どうも掛声だけは大きいけれども予算措置を通して見るときにおいてはなはだどうも期待薄のおそれなきにしもあらずというような感を深うするのであります。私は、一昨年四月、内閣国土総合開発審議会の制定されました時代、約一箇年にわたる審議会の会長として私ども基本的調査をして、ある程度の要綱をつくり、電源の開発はこれこれ、鉄道の電化はこれこれ、地下資源開発はこんなふうにというような基本調査をして、それぞれの基本的な諸計画を立てたのであります。それと同時に国土総合開発法をつくつて、すでに制定されておるのでありまするので、私は国土総合開発に対する最も深い関心を持つており、またある意味において責任を持つておるものと道義的に考えておる。そこでただ掛声だけで都道府県やあるいは今回指定されたところの全国十九箇所の特定地域関係住民諸君のぬか喜びだけに終らしたくない、吉田内閣壽命が、向う百年の大計というが、百年もあるならばいいでありましようが、これはさしあたり当面の問題として、やはり一歩々々予算措置を講じながら、都道府県あるいは二県あるいは三県の、いわゆる特定地域総合開発というものを助成して行かなければならないのである。しかるにこの調査的助成関係費用建設大臣裁量し得る程度のこの調査費といいましようか、調査費補助といいましようか、これがわずかに一千二百万円、まことにこれは寒心にたえないのであるが、あなたは一千二百万円でやり得るとお考えでありましようか、またただいまお示しの五億三千九百万円、これは政府各省関係の総合的な調査費合計がかように相なつておると思うのでありまして、このうち主としてこの国土総合開発行動面において、安本もむろんあなたと五分々々の権利は持つておるけれども、主としてこの工事を担当して施工され、指導され、監督されて行くのはあなたのお役目である。この五億三千九百万円のうちから、乏しいところの一千二百万円に対し、どのくらいあなたの御自由なる裁量をなし得るか、ピック・アツプすることができるか、その御確信のあるところを、これは重大な問題でありまするからお示しを願いたいと思います。
  6. 野田卯一

    野田国務大臣 ただいまの御質問は、五億三千九百万円の公共事業費調査費の中から、主として総合開発関係のためにさき得る金は、どれほどあるかという御質問でありますが、これにつきましては、今検討中でありますが、私の腹づもりでは一億二千万円ぐらい、あるいはできればもう少しふやしたい、こういうふうに考えております。
  7. 庄司一郎

    庄司委員 その程度確保することができ得るならば、相当にあなたの自由裁量において、総合開発調査並びに補助助成が、関係都道府県特定地域全国十九個所に対して均霑することができると思います。どうかその御成功を祈つてやまないのものであります。  第二の問題は住宅問題であります。これは年々本常任予算委員会並び建設委員会等においても問題になるのであるが、昭和二十七年度において、公共住宅公務員住宅、あるいはいわゆる庶民住宅、あるいは住宅公庫として貸し付けて希望者に建築せしむるところの住宅等合計が、戸数において何戸、何棟、あるいは坪数において幾坪の御構想のもとに、予算を要求されておるか、その点をお伺いしたいのであります。
  8. 野田卯一

    野田国務大臣 二十七年度におきまして、住宅建設のために国民金融公庫を使いまして、五万戸予定しております。それから公営住宅、これは第一種、第二種にわかれておりますが、両者を通じまして二万五千戸度を予定しております。それから公務員住宅等につきましても、政府といたしまして計画しておりますが、ちようど私今詳しい資料持つておりませんので、後刻お手元に差上げたいと思います。
  9. 庄司一郎

    庄司委員 住宅公庫関係の五万戸、公営関係の二万五千戸、その他都道府県町村等の経営する住宅に対する補助助成措置もとらるることと思いますが、この際承つておきたいのは、義務教育である小学校並びに中学校教員等住宅の問題であります。これは従来文部省方面において多少御心配をされておるのでありますが、多くは都道府県当該地方議会において決議をして、小学校あるいは中学校教職員住宅建設を、当該町村がやる場合において、あるいは四万円あるいは三万円、これは府県財政によつて違いますが、そういうような乏しい補助を與えておりまするが、ひとしく国家公務員である、いわゆる官公吏公務員諸君には、電通省であろうが、どこであろうが、公務員住宅というものがつくられておる。ところが義務教育小学教員諸君住宅を與えるために町村が行うところの住宅等に対しては、建設省は今までどういう助成をされているか。それは文部省まかせであつて、われわれの方は関係がないとお思いになつておるのかどうかわかりませんが、どういう御構想を持たれておるか承つておきたいのであります。
  10. 野田卯一

    野田国務大臣 私は現下の住宅事情の切迫しておる状況にかんがみまして、公務員住宅等財政の許す範囲でたくさんできることを期待いたしております。地方教員、あるいは教員に限らず、地方団体に勤務している、一般的に申しますと地方公務員住宅問題につきましては、各地方団体でそれぞれこれの充実にいろいろな方法を講じられていることは聞いておるのであります。公営住宅につきましても、その一部がそれに向けられている場合があるのではないか、こういうふうに考えておるのであります。予算的措置といたしまして、特別に建設省としてそれだけに対しまして別扱いに、補助を與えるということは、今のところ考えておらないのであります。
  11. 庄司一郎

    庄司委員 建設大臣は他の委員会に非常にお急ぎのようでありまするから、これで打切りたいと思いますが、希望としては、国家公務員であるから、あるいは小学校中学校教員地方公務員関係であるからというような差別でなく、いやしくも国民教育の任に当つておる全国教職員諸君のために、都道府県あるいは市町村が乏しい財政の中から住宅を立ててやろうという場合においては、国家は当然協力すべきであるという信念を私は持つております。この次の機会まで建設大臣におかれては、よく文部大臣と御相談の上、御研究おきをお願い申し上げ、あなたに対する質問はこれで終ります。  法務総裁に対して二、三のお尋ねをしたいと思います。今回の来るべき講和條約批准後における恩赦の問題は、前国会末期より不肖私もこの委員会において発言いたしました。他の同僚諸君からも発言があり、また三、四日前も、この委員会において他の同僚の方よりお尋ねがあつたそうでございまするが、この恩赦の問題について法務総裁にお伺いしたいのは、今回の講和條約の完全締結後において、当然恩赦が行われるであろうということを、私は信念として考えておる。総裁もお考えでありましようが、今回の恩赦はどういう性格を持つておる恩赦であるか。従来の旧憲法時代は、天皇の大権の発動によつて大赦、特赦あるいは減刑、そういうものが行われて来ましたことは、法曹界の大家であるあなたがよく御承知通りである。民主憲法となつて、しかも特別に皇室の御慶事というような従来の慣行とは違いまして、今回の講和條約、平和條締結後において、恩赦を行いたいというこの国民常識は、これはおそらく八千万同胞において、ことごとく念願しておることであると思います。だが今回の恩赦は、恩赦法という法律が施行されて以来相当大量に行わるる最初恩赦である。私は恩赦法の制定の特別委員長を勤めた人間でありまするがゆえに、特に深い関心をこの問題に持つておるのである。今回の恩赦は、国家的、あるには国民道義的に、あるいは行刑の上において、あるいは刑政上において、どういう意味を持つ恩赦が行われようとしているものであるか。またあなたは内閣総理大臣をして恩赦を施行させる御方針であるか。その根本的な御信念を承りたいのであります。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。申すまでもなく、新憲法下恩赦は、従前の恩赦と異なりまして、恩恵という考え方と全然観念を別にしておるのであります。これは庄司さんもとくと御承知のことと思うのであります。すなわち新憲法下におきまする恩赦は、もつぱら合理的、刑事政策的な性格を持つたものでなければならぬと考えるのであります。すなわち法令の画一性に伴う具体的不妥当の救済を目的とする恩赦、これが一つであります。それから裁判後におきまする社会情勢経済情勢の変化に伴いまする恩赦、これが一つ。それから改善の目的を達したと認められまする受刑者の、社会的復帰を助けるための恩赦等がこれであると考えるのであります。なお国家的慶事に際しまして行われまする恩赦国家喜びをできるだけ多くの国民にわかつとともに、その機会に、国民の過去の不幸をできるだけ忘れ去つて、刑を受けた者はもちろん、その他の国民もともどもに心を新たにいたしまして、将来の希望に燃えて、再出発する契機となるべきまことに有意義なものと存ずるのであります。大赦減刑等によりましてできるだけ国民とともに喜びをわかちたい、こう考えておるのであります。
  13. 庄司一郎

    庄司委員 大体来るべき今回の恩赦関係における総裁根本的理念につきましては、了承いたしました。私も同感であります。さらにこれを道義国家として考える場合、国民八千三百万が同胞のあやまち、過去の罪とがを、きわめて寛容な態度をもつてあとう限り許してあげる。許してあげるところに感奮興起して、更生ざんげ滅罪生活に立ち上る。この信念を同時に付與しなければならぬと私は考えております。そこで法務総裁に対する第二問は、まだ未決定ではございましようが、大体御調査範囲内において来るべき恩赦は相当広範囲にわたる、でき得るだけ範囲を広げてというような意味お答えを、三、四日前私ども同僚に対してお答えになつておるのであるが、大体の数において現在の在監者が約十万人と聞いておる。それからまた刑の執行を停止せられておる者、あるいは刑の執行猶予中の者、あるいは起訴されて公判中の者、いろいろあるでありましようが、大体の人員が何十万程度になるか、御調査の大体の概算がおわかりでございませんでしようか。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その点につきましては、ただいま慎重研究中でありまして、まだ大体の数字も明確になつておらぬことを、まことに遺憾と存じます。速急にこれらの点の外郭でも説明する段階に至ればけつこうかと思つております。しかしながらこれは今あなたのおつしやる通り国民とともに広くその喜びをわかちたいという気持をもちまして、できるだけ広範囲にその喜びをわかつという意味において、調査中であります。これがいずれの範囲まで広げるかということについてあらゆる角度から研究いたさなければならぬのであります。今幾らそれに該当するかということは、申し上げかねる次第であります。
  15. 庄司一郎

    庄司委員 しからば基本的な構想として、昨年三月に行われたるところの地方選挙等選挙違反者等は、来るべき恩赦対象者になるものでございましようか。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これはただいま考慮中であるということより申し上げかねます。
  17. 庄司一郎

    庄司委員 恩赦の施行と同時に、相当大量の受刑者社会に復帰するのであります。その場合において、これらの国民的恩恵を受けて、その罪とがの一部の刑期が許されて、社会に象算復帰した同胞は、ほんとうに改過遷善の人になつてもらわなければなりません。それについては法務総裁も、あるいは中央更生保護審査議会も、地方保護審議会も、全力をあげてそうせねば恩赦意義が完了せられないのです。ただ刑務所から出してやるだけであつてはならないということは総裁もよく御承知通りである。しからばそれらの釈放者に対し、あるいは郷里までの旅費を與え、あるいはまた職業を與え、あるいはまた結婚のあつせんまでする、いわゆる社会福祉的な意味における保護司諸君の活動に、われわれは期待せなければなりません。そこで恩赦によつて釈放されたそれらの方々をよくお世話して、万遺憾なからしめるがための予算措置がそれに伴わなければならないのである。しかるにただいまあなたが本国会要請されている予算を見ますと、中央更生保護審議会の諸経費が二千二百七十九万円ですか、地方都道府県更生保護会補助が二千六十八万円という程度になつておるわけであります。恩赦釈放後において、その釈放された諸君を改過遷善の道にこれを導いてあげる、あたたかい愛の手を伸ばしてあげるための費用を、どの程度あなたは大蔵大臣に御要請され、またこの国会に御要請をされておりますか。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの御質問まことにごもつともと考えます。恩赦によりまして刑務所から出て来た諸君、これをそのまま放置するということは、その人のためにもまた国家のためにも捨てておけないことであります。できるだけその人たちに職を與え、更生の道を開いてやらなければならぬことは当然のことであります。そこで今幾らの金を政府が支出する考えを持つているか、こういうお尋ねでありますが、これは恩赦によつて刑務所から出て来る方々の数、その他境遇、状況あらゆる観点から総合いたしまして、そこに一つ結論を出して初めて幾らの金がいるかということになるのでありましてせつかくただいま調査中であります。従つてその結論が出ますれば、大蔵当局十分話をつけましてできるだけの措置をいたしたい。なおこの機会に私は全国五万の保護司諸君が、きわめて熱心に従来からとの刑余者の厚生保護ついていろいろ苦心されて、また実際にそれがために刑余者更生の道につけるということになつておりますので、深甚の敬意と謝意を表したいと思つております。
  19. 庄司一郎

    庄司委員 まだお尋ねを申し上げたような関係費用は、大蔵省にも要求する時期に到達していないというお話でありますが、更生緊急保護法なる法律のもとに、遠慮なく必要なるところの所要経費は御要求をされることを、私は念願してやまないのです。  なお恩赦を受けた者が再犯、累犯を重ねるようなことがありましたならば、まことにこれは好ましからざることでありまするがゆえに、一層の予算措置をとり、徹底的にお世話をされて、再び三たび犯罪者に陥らざるよう、御指導御援助を賜りたいものであります。さらにもう一つお伺いしたい。来るべき恩赦においては裁判が確定し、すでに死刑囚として拘置所におる者はあなたの判一つで飛ぶ首が全国に七十余名おると聞いている。私の郷里の仙台の刑務所だけで三十六名おるそうでありますが、従来の恩赦令によれば、死刑囚は兇悪なる犯罪者としてこれは恩赦対象にならなかつたことは御承知通りであります。またさようなる残虐行為の者は許し得なかつたのであります。しかるに今回の講和により新日本がここに誕生して行くのである。そうして一人も社会的落伍者なく、みんな手に手をとつて新しい日本建設に邁進して行かなければならぬ。こういう場合に、従来の例を破つて、もしそれ死刑囚といえどもほんとうに改過遷善の緒に入つておると認められる者、あるいは年齢十八、九の少年も今やはり同様な運命にあります。また女囚もあると聞いておる。それでそういう死刑囚の中でも死一等を減じて、ちようどフィリピン等においてわが国の戰犯が、キリノ大統領の恩恵によつて死一等を減じられたように、死一等を減じて無期、有期刑にこれを救済してもよいというようなもののお調べはただいまなされておるでありましようか。また死刑囚はこれは全然従来の恩赦令通り、だめなんだということの建前になつているものでありましようか。念のためにお伺いしたいのであります。
  20. 木村篤太郎

    木村国務大臣 先刻申し上げました通り、このたびの恩赦講和條約が発効いたしまして、日本が再出発すべき国家の大慶事と私は考えております。この機会にあらゆる国民とともにこの喜びをわかちたい。従つて死刑囚といえども、できる限りの範囲内においてこの恩恵に浴さしてやりたい、こう考えております。
  21. 庄司一郎

    庄司委員 まことにヒユーマニテイーの名答弁でございます。まことに私は感激にたえない。その御答弁がほしかつたのであります。そこで今回はわが国古来の例を破り、明治御一新の場合には牢拂いというものをやつて佃島、伝馬町の監獄は全部これを釈放した。そういうわけには今回は行かないとしても、ただいま死刑囚といえども考慮の余地があるという意味お答えがあつたようでありますが、これはまことに欣快にたえない。そこでたとえば、ただいま読売新聞がかなり力こぶを入れておるようであるが、山本廣子という一女囚、きのうの新聞を見ると四人の子供をかかえ夫が病床に神吟しておつた、それが終戦直後の昭和二十一年の犯罪である。非常に人心が動揺し、あるいは荒廃しておつた時代犯罪である。いわゆる妻は病床に臥し子は飢えに泣くという維新の志士の詩があるが、さような生活苦の中に犯罪をやつた。それに対して全国女性方面より非常な同情の雨が降つておるというようなことであるが、こういう問題については周到なる調査を進められ、あるいは少年囚等についても、十分な調査の歩を進められて、救済しあとうものはでき得るだけ救済し得るような措置を講じてほしいと思うのでありまするが、いま一回念のため法務総裁お答えをお願い申し上げたいと思うのであります。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 山本廣子の件につきましては、御承知通りすでに死刑の言い渡しがあるのでありますが、ただいまのところではその死刑執行は一時さしとめている次第であります。
  23. 庄司一郎

    庄司委員 法務総裁に対する私の質問はこれで終ります。
  24. 塚田十一郎

  25. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は大蔵大臣岡崎国務大臣大橋国務大臣の出席を求めておつたのですが、大蔵大臣以外の両相は出席できますか。
  26. 塚田十一郎

    塚田委員長 大橋国務大臣は出席があるようでありますが、岡崎国務大臣は午前午後にわたつて非公式及び公式会談がラスク氏とあるそうで、出席いたしかねる、こういうように申し出て参りました。
  27. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは岡崎国務大臣に対する質問はあとにいたしますが、安本長官もきようお見えになるのですか。
  28. 塚田十一郎

    塚田委員長 きようは出ておられるそうですから、それではさつそく呼びます。
  29. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは安本長官からお答えつても、大蔵大臣からお答えつてもいいのですが、来年度の国民所得の算定について、大体本年度より一二%これが増されておるのですが、この一二%国民所得が増された根拠を、ひとつお示し願いたいと思います。
  30. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国民所得の算定につきましては、安定本部の方でいたしておるのでありますが、その方の資料によりますと、五兆三百億程度見込んでおります。昭和二十六年度の当初見込みが四兆五千数百億円でございましたが、最近の調べによりますと、四兆六千数百億円になつておるようであります。しこうしてこまかい点につきましてはただいま記憶しておりませんが、生産もある程度ふえ、雇用賃金等も大体一〇%程度ふえる計算であります。物価は大体横ばいで、少しくらい上る程度であつたかと思います。詳しくは資料でまた安定本部の方から御説明いたすことにいたします。
  31. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、安本、岡崎国務大臣大橋国務大臣と大蔵大臣に関連して質問があるのですが、その関連事項はあとにまわしてよろしゆうございますか。
  32. 塚田十一郎

    塚田委員長 どうぞ。
  33. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは大蔵大臣にお伺いしたいのですが、賃金が若干上昇して物価が横ばいになる、そういうふうな観点から国民所得が一二%昭和二十六年度の予算よりふやしたのだという御説明であるのですが、最近の政府の統計を見ますと、生産は十一月には五月を頂点といたしまして、すでに三・二%下まわつておるのであります。輸出入は二二%下まわつております。私はこういうふうな国家内外の経済状況考えまして、二十七年度の予算編成の当時並びに今日においては国民所得が二十七年度において一二%ふえるという根拠を発見しがたいのでありますが、これは大蔵大臣主管大臣ではないのであるから、こまかい数字は天才的頭脳をお持ちになつてつても、他省のことだから記憶がないかもしれませんが、私はどうもその点がふに落ちないのですが、どうでしよう。もう一ぺん言いますと、生産は三・二%落ちておるし、輸出入計画は二二%下まつている。こういうふうな中に、あなたが言われるように、賃金が上昇して、物価が横ばいになつて、雇用量が増大するということは、今のところでは私はどうも了解ができないのですが、何かはかに一二%国民所得をふやした、またふえ得るというような要素が他にあれば漏らしてもらいたいと思います。
  34. 池田勇人

    ○池田国務大臣 生産につきましても、戦前の基準に比べまして、大体昭和二十六年度平均を一三八くらいに見ておつたかと思います。御承知通り一四一、二まで参りましたが、その後お話の通り当時電力の不足その他の関係である程度後半期に落ちて来ておりますが、来年度におきましては、この二十六年度平均一三七、八に対して一四三くらいに見込んでおつたと思います。それから賃金雇用率は大体九%ないし一〇%と記憶いたしております。物価も横ばいか、あるいはある程度の上昇を見ておつたかと思いますが、上昇も四、五パーセント程度見込んだんじやないかと思います。こういう関係で、二十六年度の最も生産の上つた月から比較いたしますと、後半期は落ちておりますが、二十七年度全体を見ますと、その程度の増加を見込んでいるのであります。それから輸出入の点でございますが、御承知通り輸入におきましては、四月、五月は相当ふえておりまして、その後ある程度落ちておりますが、十二月には御承知通り相当上つておりますので、私は昭和二十七年度におきまする輸出入は、昭和二十六年度に比べまして相当ふえるように考えております。外貨の収支の関係も、受取りが二十四億ドル、支拂いが二十三億ドル、九千七百万ドルの受取り超過になる。これは二十六年度のそれに比べますと、相当ふえることを見込んでおります。
  35. 西村榮一

    西村(榮)委員 雇用量は二十六年度の十月に比しまして、大体五月の頂点から四・四%落ちております。それから賃金指数もそう上つてはおりません。こういうふうに日本経済の将来の展望と、現在の物価と、それから雇用量と生産量と賃金の諸点を考察してみますと、私は今大蔵大臣が御説明になつ昭和二十七年度は大体において一二%国民所得がふえるのだという根拠を発見しがたいのでありまして、私は重ねてただいまの御説明以外に、何か来年度一二%国民所得がふえるというこの考え方、政府の立案の基礎というものが、何か日米経済協力あるいは国際情勢の変化から来て、大体こう行けるのだというふうな、現下の経済の諸情勢の原則的観点から離れて、政治的要素においてこれが可能なんだというふうな御説明があれば、それは来年度の予算の基礎になる国民所得の一二%増しというものは理解できるでしよう。けれども今の状況から行くと、それは理解できないのですが、もう少しざつくばらんの御説明を願えぬでしようか。
  36. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私の考えておるところをざつくばらんにお答えしたつもりでございまするが、所管でないので十分御納得行きかねるかとも思います。しかし私は日本の今までの経済の動きを見まして、昭和二十四年よりも二十五年、二十五年よりも二十六年、しこうして二十六年よりも二十七年と、相当発展して行く見通しでありますし、また発展させなければいけないと思つております。できればそれ以上の国民所得にいたしたいと、あらゆる施策を講じておると考えております。従つて政治的にどうこうというので見積りをしたとは、私は考えておりません。いずれ詳しいことは安本長官から御説明申し上げるごとと思います。
  37. 西村榮一

    西村(榮)委員 二十五年度より二十六年度の方が産業は発展する。二十七年の方がなお発展せしめなければならぬという大蔵大臣の御希望は、私も最も念願するところなのでありますが、しかし経済は各人の希望とは違つて、これは具体的な根拠がなければいかぬので、二十五年度よりも二十六年度の方が景気がよくなつた、従つて二十七年度の方がよくなるのだというだけでは、これはあたかも太平洋戦争の初期において、日本軍部が神風を待望したようなもので、これは財政計画としては一つのナンセンスではないか、こう思うのですが、大蔵大臣の所管ではありませんから、これはいずれまた安本長官に詳しくお伺いすることにいたしまして、この際お願いしておきたいことは、この国民所得五兆三百億円を算出された基礎について、ひとつ資料を出していただきたい、こう思つております。その基礎資料を拜見した上で、いずれまたお伺いして行きいと思つております。  次に大蔵大臣にお伺いしたいことは、財政の規模です。大体において国民所得の五兆三百億円という見積りは、いろいろ疑義が生じて来ておりますが、これは所管大臣がおいでにならぬからあとにまわすとして、一応この基礎の上に立つて、将来の財政の規模が一体どうなるか。これは独立した予算を編成いたしまする本年度にとりまして、将来日本財政の規模というものがどうなつて行くのかということが、きわめて重要であるのでありまして、財政計画についてひとつ一応の御説明を承りたいと思います。
  38. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今の国民所得の問題について、詳しくは安本長官からお答えになると思いまするが、生産は御承知通り十二月には一四二・八、こうなりまして、昨年の五月ころの最高の一四一を上まわつておるのであります。戰後最高の生産に相なつております。昨年の一月ころは一一〇くらいであつたのでございます。私はこういう数字から見まして、今後国民各位の御努力によりまして相当生産が伸びて行くのではないか。こういうふうに期待いたしております。  次に財政の規模でございまするが、私は国民所得に対しまする財政の規模は、できるだけ少いことを望んでおります。逐年国民所得の上昇する程度には、財政の規模を上昇させないということでやつて来ております。昭和二十八年度につきましては、これは昭和二十七年度の経済界の状況を見てでないと、今急速にどうこうという見通しをつけるわけには行きませんが、国民所得に対しましての一般会計の規模は、できるだけ少くして行こうという方針で行つております。
  39. 西村榮一

    西村(榮)委員 財政の規模を縮小して行く、もつて健全財政を堅持して行きたいという大蔵大臣希望と御方針は、私は是とするものでありますが、しかし一面考えてみると、総理大臣並びにその他の内閣の意向として伝えられる、また公式に声明されたのは自衛力の漸増計画であります。この自衛力の漸増計画というものは著しく財政を膨張させる要素を含んでおるのでありますが、将来内閣がもつて日本防衛の基本的方針とされておる自衛力の漸増計画と将来の財政との間においては、どういうふうな均衡をとつて行かれるか、それを承つておきたい。
  40. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この問題は以前にも触れたことがあるのでございますが、昭和二十七年度におきましては、安全保障諸費を加えまして千八百二十億、これが最大限と私は考えておるのであります。こうして昭和二十八年度におきまして、国民所得が増加し、財政の規模も割合に大きくなりますが、全額的に多くなつた場合におきましては、まず第一に国民生活水準の向上発展ということを考え、その次に防衛力の強化ということを考えたい。重点はやはり国民生活の安定ということに重点を置きたいと考えております。しかし防衛力の問題にいたしましても、国際情勢あるいは国内情勢にもよることでございますので、千八百二十億円をある程度ふやさなければならぬかもわかりませんが、割合につきましてはこちらの方を低くいたしたい、こういうふうに思つております。
  41. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、ただいまの御説明によると、国民生活は安定せしめて行きたいと思うが、防衛費は将来ふえることがあり得るかもしれぬという御答弁があつたのですが、そう考えてよろしいですか。
  42. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ふえることがあり得るかもしれませんが、ふえる場合におきましても、とにかく国民生活の安定、経済力の発展の方に主力を置いて行きたいと思います。また減ることもあるかもわかりません。
  43. 西村榮一

    西村(榮)委員 減ることがあればたいへんけつこうですが、万一それがふえるということになれば、あなたの主張せられる防衛費の漸増と同時に、国民生活の安定という二つの矛盾した問題の解決点は、一体どこで求められるのですか。
  44. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは今の国民所得がふえる、そのふえた分をどちらに割振るか、主力を置くか、こういう問題になると思います。
  45. 西村榮一

    西村(榮)委員 しつこくお尋ねするようですが、またさつきの問題をむし返すようですが、それでは一体国民所得はどうしてふえるのですか。
  46. 池田勇人

    ○池田国務大臣 生産の増強、貿易の増強等によりまして、国民所得をふやして行きたいと思います。
  47. 西村榮一

    西村(榮)委員 その生産増強に対しては、どういう御計画を持つておられるのですか。
  48. 池田勇人

    ○池田国務大臣 生産の増強につきましては、国内的に考える問題と、国際的に考える問題があります。国内的の問題は今労働力もありますし、施設もある程度ある。そこで原材料を輸入し、これに動力を加え、今足りないのは、電気が足りないのでありますから、できるだけ早急に電気の予算供給をはかつて行く、こういうことになれば、相当生産が増強できると思います。しこうして国際的に申しますと、日米経済協力の問題、東南アジアの開発の問題等、国内生産増強が即国際的の貿易の増強になつて、そして国民所得がふえる、こういう観点であります。
  49. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、ただいまの大蔵大臣の御説明に対して、私はあげ足をとるわけじやないから、誤解のないように願いたいのですが、外国から注文をとつて日本の遊休施設と労力を活用する、そして生産をふやすんだ、これはまことにけつこうな話です。しからば外国の注文あるいは国内の市場の需要というものを、どうして起されて行くのであるか、その点を御説明願いたい。あなたのおつしやるように、生産をふやして国民所得を増すんだ、これは議論の余地はありません。では生産をどうしてふやすんだということであれば、外国からの注文によつて日本の遊休施設と労力とを活用して生産をふやして行くんだ、これはけつこうなんです。しからばどうして外国の注文を受けて行くのであるか、あるいは国内の市場の需要をどう喚起して行くのであるか、御計画があればひとつそれを承りたい。
  50. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御質問の点がはつきりわかりませんが、これは国民生活の安定向上の上におきましても、国内の生産をふやして行つて、需要供給のバランスを高めて行く、こういうことであります。それから日本の生産がふえ、しかも外国との競争力があれば、——これは外国市場にもよることでございますが、相当の注文も来、あるいは輸出もふえると考えておるのであります。これは現に先ほども申し上げましたように、年々ふえて行つているのであります。
  51. 西村榮一

    西村(榮)委員 私のお伺いしたいのは、どうして生産を増強されるか、生産を増強するという希望はわかるのですが、どうしたら生産を増強するのかという、具体的な御説明をひとつ願いたいのです。私がそれをお伺いすることは、ほかではありませんが、この予算書を拜見いたしましても、あるいは過般来の政府の答弁をお伺いいたしましても、日本の生産をどうして行くんだ、日本の生産はこの程度まで伸ばして行くんだ、同時にその伸びた結果が、賃金がこうなつて、それに対する物価がこうなつて、そして海外における対外競争力というものは、こういうふうに日本産業は力をつけて行くんだという計画性というものが一つもなしに、国民所得を見積られ、かつまた、私はきようの大蔵大臣の先ほどの御答弁というものは、きわめて重要だと思うのです。今までは防衛費は絶対にこれが最高だ、こうおつしやつたが、きようは、場合によつてはふえ得る場合もあるかもしれない、減り得る場合もあるかもしれないと、こういうようなことの御説明があつたのでありますが、ふえ得るのか減るのかということは、各人の観点によつて違いますが、万一ふえるとすれば、そのふえる財源をどこに求められるか。生産増強に求められる。それじや一体生産増強はどうしてするんだという具体的な説明が、従来の政府の答弁の中になかつたのですから、将来の総理大臣をもつて任ぜられておる池田勇人君は、この点ひとつあなたの豊富なる識見をここにごひろう願いたい。
  52. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほどのお答えで盡きておると思ひますが、今生産増強のネックになつておるものは、動力が主でございます。原材料もありますが、原材料は相当入つて参りまして、動力がネックでございますので、これに対しましてできるだけ供給力をふやして行く、こうすれば生産はふえて来ると思いまするそれにはやはり資金がいります。従つて資金計画におきましても、最もネックであるところの電力の開発には一千億円あまりを出そう、石炭方面への融資も設備資金で考える、造船も考える、こういう施策をとつて行きたいと思つております。
  53. 西村榮一

    西村(榮)委員 考えるだけじや困る。政府の施策としては、具体的に生産増強に対する資材と資金との計画を一体どうするか。私は率直に申しますと、その点なぜ心配するかというと、たとえば日本の海外における競争力を培養するものは、仕入れる原料を安く仕入れて来なければならぬ。同時に仕入れて来るときの船賃を安くして来なければならぬ。輸出するものを運ぶ船賃も、これを安くせねばならぬと思うのであります。これは現在ほとんど外国の船によつている。従つて日本も対外競争力というものは、その面から削減されて行く。今あなたは動力に対して、電源開発において一千億、造船計画並びに石炭の設備資金に対しては考えておる、こうおつしやるのですが、考えておるだけでは困るので、具体的なひとつ資金計画、並びにそれらの基礎的産業に対してどう援助して行くかという、国策としてのそれらの育成政策について、ひとつ明確なプランをお示し願いたい。
  54. 池田勇人

    ○池田国務大臣 資金計画も一応は持つております。しかし西村さん御承知通りに、なかなか資金計画通りに行かない場合が多い。それを上まわる場合もあるのであります。そこでこれは各産業について考えなければなりませんが、今お話になりました、電力と造船についてお話申し上げましよう。電力で大体一千億あまりの資金を供給する見込みでおりますが、その内容は、まず第一、今の九電力会社の強化であります。これには、大体われわれの見込みでは、九電力会社におきましては、五百四十億円程度の自己資金の増加、これは増資とか、社債とか、あるいは償却、積立て等を見まして、しこうしてなおこの五百四十億円に対して、見返り資金の方から三百億円を計画いたしております。それで八百四十億。それから今でもやつておりますが、事業会社の自己発電、これに対しましては、主見して開発銀行からの融資でございまするが、八、九十億円を計画いたしております。それから地方債その他でやります公営の電力建設事業これを六十五億円程度見込んでおります。しこうして第四番目に大きい地点、たとえば只見川等の非常に大きい、たくさんの発電力を持つておるところの分は、公社をつくりまして、その公社で外資導入を考えながら開発に当つて行こう。この分は大体百十億円を計画いたしております。その百十億円は、予算書の中にあります開発銀行に対しまする百三十億円のうち五十億円を見込み、資金運用部の方で出します貯蓄債券六十億円を充てておる状況であります。これを従来に比べますと、倍以上であります。御承知通り、今年度は見返り資金からは二百五十億を水力に出しておるだけで、また九電力会社におきましても、自分の自己資本で資金の増による電力開発計画はわずかであり、開発銀行の自己発電におきましても、三十億円程度でございますが、本年度の倍以上、三倍近くに相なるかと思います。なお貯蓄増強によりまして、資金運用郷の資金がふえたならば、私はそれによつて金融債の引受けも計画いたします。その金融債の引受けも、主として電力、造船とこういうふうに持つて行きたいと思います。  それから次に造船の問題でありますが、造船資金は、御承知通り今年度は二百億ばかりを見返り資金から出しまして、そうして一般市中銀行からは、三百五、六十億の造船資金が出ております。合計五百億余りの造船資金が出ております。しかし来年度におきましては、見返り資金からは百四十億円を出しまするが、市中銀行からの造船資金を極力出すようにしますと同時に、先ほど申し上げました、貯蓄増強によります結果を見まして、これに向つて出す。大体三十万トン程度の新造船をやつて行きたい、こういうふうな計画でおるのであります。  鉄鋼あるいは石炭の方につきましても、これは個々の会社が主になつて今までやつておりまして、造船とか、電気とかは企業形態がかわつておりますから、今石炭にどれだけ、あるいは鉄鋼にどれだけというはつきりした数字は申し上げられませんが、大体昨年の秋ごろからとりました重点産業以外の設備資金の抑制がかなりききまして、これによつて資金の蓄積を強力に進めて行けば、運転資金の補給と、重点産業べの設備資金が、かなりまかなえるのではないかという気持でおります。
  55. 西村榮一

    西村(榮)委員 電源開発については、政府は明確な資金計画を持つておられるようでありますが、この造船に対しては、来年度は見返り資金から四百十億円を出すということでありますが、あとは市中銀行からというのですが、政府は市中銀行から融資せしめるということに対して、何か具体的な市中銀行との話合いがついておりますか。
  56. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今までの造船計画は、見返り資金と市中銀行と半々でございます。しかしこれはどうも見返り資金と一般資金でまるがかえで船をつくらすということは、あまり感心したものではない、船会社が自分で金を集めて来て、そうしてつくる計画を立ててもらいたい、こういうことで指導いたしております。従いまして私は船会社が自己資金の蓄積にもつと熱心になつてもらいたいと勧奨はいたしておるのであります。最近におきましては、見返り資金と民間資金との割合は、フイフテイ・フイフテイでなくて、市中銀行の金が相当多くなつ行来ております。先ほど申し上げました設備資金の抑制から、重点産業へ向つて行く設備資金もかなりふえて来ると考えておりますので、見返り資金からの分は減つてつておりまするが、市中銀行からの融資は、相当ふえることを私は期待できるのではないかと思つております。今の状態では、船会社の収益状況は、かなりいいのであります。従いまして、今後の自己資本もかなりふえて参ります。市中銀行の融資もふえると期待しております。また市中銀行がほかへの設備資金の貸出しを極力切り詰めて、造船資金の方に出していただくように進めて行きたいと思います。水力の方は私はあまり市中銀行に期待いたしておりません。
  57. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は今の大蔵大臣の資金計画をひとつひつくり返されたらどうか、こう思うのです。ということは電力開発もたいへんけつこうですけれども何といつたつて新しき日本の御建のためには、財政の規模は防衛費によつて膨張するのか、あるいは産業の再建再編整備のために、産業の擴大輪化のために膨脹するのか、いずれにしても、私は日本の現下の財政計画並びに金融資金計画というものは、膨脹するものと見ておる、従つてこの点においてインフレーシヨンを食いとめて行くというものは、出した資金がどう能率的に生産に働き出すかという点だと思う、これはもうりくつじやない、あなたと私とはよくやり合うのですが、きようはしんみりお話合いをしてみたいと思うのです。そこで電力の開発ということになりますと、なかなかこれは時間もかかる、今御説明のように電力第一主義に行くよりも、むしろ日本の生産増強の基礎は、海陸の輸送力の増強という点に重点がある、とりあえず造船計画に見返り資金から百四十億円というよりも、むしろ政府が思い切つて造船計画に対する資金面をひとつ援助する、各国の例もあなたは御存じの通り、造船というものはなかなか引合わぬものでありまして、これは各一流国家も造船計画に対しては、相当国家が国策上援助しておる、日本補助金を出したり何かすることは困難でありますから、私はせめて資金の面において、それは政府が造船の設備の保有と発展の傾向を、日本の造船業においてとらしむることにおいて、日本は海運において貿易外の收益を増して行く、こういうことになる。あなたが、船会社が自己資本を蓄積して、それによつて船会社も出さなければならぬというのは、これはごもつともで、船会社も出さねばならぬと思います。しかし何というても、今の船会社の悩みというものは、増資をせねばいかぬ。増資をするためには、これはもうりくつじやなしに、配当をよくしなければいけな。配当をよくしなければ増資ができない。自己資本が集まらないというところに、高配当の一つの悩みを持つのではないか。同時に社内留保金をたくさん持つことは、税務署の目が光つて来て、これはなかなか容易じやない。これはあなたの所管に属するのですが、こういうふうな悩みも一面あるのであつて、私は船会社だけに責任をおつかぶせるわけに行かぬと思う。しかし船会社が高配当をしながら、なお政府の援助をのみ頼るという今日の甘やかされた態勢に対しては、あなたのおつしやる通り、是正せねばならぬ、こう思います。けれども目前において一番犠牲になるのは、これは造船業です。しかもこの造船業は、日本の基礎産業として、将来日本が独立後の重要なる産業の基幹部隊として、政府はどうしてもこれを育成せねばならぬ。従つて私が申し上げることは、電力の問題もさることながら、電力は若干家庭その他の消費統制をやれば、ある程度まで補えるのです。しかしながら船は、私はしろうとだからよくわかりませんけれども、一万トンの船を一ぱいつくれば、一年に百万ドルかせげるのです。船は六箇月か八箇月ででき上ります。従つてこういうことを考えると、電力に注ぐよりも、船に金を注いで、うんと海運でかせがせる方が、日本の経済にプラスになる面が多いのじやないか。しかも資金の放出のもうけ高というものは、その方が多いのじやないか、だからあなたの今の計画を、電力より船にというように、一と二の順位を変更されたらどうか。そうするとあなたが希望されるように、国民所得がうんとふえて、五兆三百億円という国民所得は、あるいは大兆億円七兆億円になるかもしれぬ。どうです、それをやつてみたら。ひとつ順位を転換してみたらどうですか。
  58. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はそうは考えません。御承知通り停電騒ぎ、あるいは電力のないために工場が休むということは、非常に経済的にも社会的にもよくないことであります。しこうして消費規正と申しましても、電燈に使います電力というものは割に少い、やはり工場用の電力なんです。これが少いために非常に生産力に影響を及ぼしている。だから私はほかのところでも言つたのですが、お金を一億円出すのなら、三千万円は電力会社の方に出せ、こういうふうなやり方で行かないと、健全な日本の発達はできません。しかも水力には三年も四年もかかる、そんなものは死金じやないかというふうなことはおつしやらないが、ある程度そういうお気持があるようでありますけれども、電力の需用量も相当ふえて来ておるので、今の間にやることが必要だと思います。私は船も必要でありますが、何といつても、生産のもとは動力でありますから、これに金をできるだけ早く、たくさん持つて行くのがほんとうだと思います。そうして船ならば、お話の通り原価は三年ぐらいで拂えるだけもうけております。もうけておりますが、戦前におきましても、世界の第三番目の海運国であつた日本は、六十年の長きにわたつてつて来たのです。それを、ない金をそう一度に船にばかりというわけにも行きません。戦前におきましても、日本の船で運んだのは、日本の輸出入貨物の六割余りであつたのであります。今は二割五分程度になつておりまするが、今つくつております昭和二十六年度のいわゆる七次船後の造船で、三十七万トンばかりふえる。これが動き出すようになれば、私は三、四年のうちには戦前の程度にまで回復できる、こう考えておるのであります。今まで造船資金を出しますのは、ドックがあいておるということが主だつたのでありまするが、最近の状況では、外国船の注文も相当ありまして、まあ繁忙とまでは行きませんが、ドックもかなり動いておる。中には動かぬドックもありまするので、この問題については早急に片づけようといたしておりまするが、私は日本の経済の確実な歩みといたしましては、電力を一番にすべきものと考えております。
  59. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は金を電力に注ぐのは死金だとは思つていない。これは誤解のないように。きわめて必要だと私は思つておりますけれども、船は消費規正ができません。しかし電力は、重油によつても一時がまんしてもらえる、あるいは石炭によつても燃料の問題は調節のつく方法がある。同時に今野放しにしておるけれども、夜野球をやる電気を使つたり——どうも夜野球をやる習慣は日本にはないようですけれども、そういうこともやめてもらい、カフエーその他の享楽機関に流れる電力も一時やめて、同時に各家庭も、五個使つておるところは二個くらいでがまんしてもらつて、すべてを生産方面にまわすというところまで腹を締めて行けば、一時の不便はしのげるのではないか。ところがきようの新聞を見てもそうですが、外国から造船の注文はたくさん来ておる。イギリスなんかは四年、五年も先まで注文を受けて弱つておるので、これではというので日本の造船業に注文が殺到して来ておる。しかも日本は船が足らなくて、外国の船によつて日本の食糧、鋼材あるいは輸出品というものを送り迎えしておるということにおいて、日本の製品が非常に高くつく、国際競争にたえられぬというふうな現状を見ると、私はやはり船に重点を置くべきではないかと思う。あなたが言われるような、今はドックがあいておらぬというふうな理由等を考えてみても、船に重点を置くべきではないか。決して私は電力は死金とは思つていないのです。電力も必要です。しかし電力を第一にして三年後よりも、船を第一にして本年の秋ごろからかせぎ出させる方がよくはないか。しかも船は日本の産業に非常な重大な影響を持つ。片一方の電力は、ひとつそういうふうにして、進駐軍のお使いになつておる夜の野球の電力は、ほんのわずかなものですが、国民感情上おもしろくないので、そういうことは池田君の蠻勇をもつてやめてもらつて、ひとつ船の方にまわしてもらつたらどうでしようか。これはりくつではないのです。
  60. 池田勇人

    ○池田国務大臣 電力に対する金は死金とはおつしやいませんがと、こう言つたので、誤解はしておりやせん。あなたも電力の必要性は十分認められておるということは承知しております。しかし生産の増強によりまして、電力の需用は毎年々々ふえて来るのであります。御承知通り異常渇水だつたときには、造船所も実は休まなければならない、こういう状況であるのであります。私は再度の御質問でございますが、電力第一主義ということはかえたくないと思います。
  61. 西村榮一

    西村(榮)委員 まあ大蔵大臣の立場もあるでしようから、今かえるとは言えぬだろうけれども、諸般の事情を考慮して、造船業を育成するという上において、その資金面において、電力会社と相並行して行くように、ひとつ考慮していただきたいと希望しておきます。  次に私があなたにお尋ねしておきたいことは、あなたは過般来、三月、四月の危機はない、日本の経済は、きわめて将来は楽観していいのだという御説明であつたのでありますが、そこで私は、危機はない、楽観していいという根拠をひとつ具体的に承つておきたい。
  62. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は日本の経済は楽観していいとは言つていないのであります。財政演説で申しましたように、何と申しましても日本の基盤というものは脆弱だから、これを強くして行かなければならぬ、こう申しておるのであります。しこうして三月危機という問題は雑誌、新聞で見ますが、私は危機というのはどういうことを言うのかよくわからない。経済全体の動きは、私は何も危機と言つて騒ぎ立てるような心配はないと思います。一昨年もこういう御題が起つて、結果は町村さんの御存じの通りでございます。今年におきましては、昨年の見越し輸入等のしわがある程度つております。しかうしてまた商社の力の弱いところが、かなり苦んでおるということも知つております。しかしこれはできるだけの善後措置を談じて、経済全体に波紋を起さないような努力いたしておるのであります。私は三月危機というものの実体をよく知りませんが、今お話したようなことであれば、私は三月も乗り切れると思います。税金の方につきましても、従来は一三月に固まつておりましたが、幸いに二十六年度におきましては、一—三月は全体の四分の一で、常態に復しておるのでおります。しこうして最近の申告納税につきまして、かなりふえる傾向がありますので、徴税上ある程度の手心を加えるように指令いたしております。
  63. 西村榮一

    西村(榮)委員 世に言う三月危機というものは、指摘されている点の一つ財政の吸い上げ、これは常識上わかります。第二には金融難です。第三には昨年の三、四月ごろ輸入した代価が非常に値下りをして、その決算期が迫つているという三点に三月、四月ごろの赤信号が出ているのです。この三つの決算期が重なつて三月危機、四月危機といわれている。従つて私は財政当局として三月、四月ごろに危機がない、心配ないと言われるならば、税金の問題はさておきまして、第一の問題は、資金難の問題です。日本の産業の陷つておる資金難をどう解決して行くのであろうか。これは後ほどオーバー・ローンの問題にも関係しておるのでおりますが、去年の十二月危機と言われたのは、これはあなた御承知通り、手形の濫発によつて辛うじて切り抜けました。ところがその決算期が来ておる。依然として日本の産業資金難というものは解消しておらない。同時に輸入代価の値下りという問題の決算の時期に来ている。従つてこの二つをどう解決するのだ。財政当局の立場として、これはずるずる自然にまかしておかないで、同時に日本の経済が持つておる弱点をそのままにしておかないで、この二つの問題は、財政の吸上げの問題は別といたしまして、資金難と輸入代価の決済の方法というものを、どう処理するかということをひとつ御説明を願いたい。
  64. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昨日もお答えいたしましたように、昨年の見越し輸入の問題、そうして値下りの問題、商社の力の弱い問題、この問題は昨年の七月ごろから出て参りまして、九月の決算にある程度の片をつけておるのであります。しかしそれが年末という一つ機会に相当しわが出まして、市中銀行あるいは日本銀行が共同でできるだけの善後処置を講じたのであります。しかしまだ十二月に徹底的な善後措置の講じ得ないものが二月に残つて参りまするが、これにつきましても市中銀行、日本銀行に話をいたしまして適当な措置を講じつつある状態であります。
  65. 西村榮一

    西村(榮)委員 資金難の問題はあとでオーバー・ローンの問題についてお伺いしたいと思いますが、そこで第二の資金難の問題は、輸入代価の値下りによつて受けておる商社の損失、これを銀行が抱え込んでいる。これを決済する時期が来ている。そこで問題はあなたが楽観していいという御説明の裏には、この決済を急に取立てなくてもいい、これを急に取り立てれば各商社はばたばた参つてしまう。だから三、四月ごろはあぶなくないんだというあなたの説明の裏には、この取立てはそうきびしくやらなくてもいいんだというふうな、何か裏の含みがあるものとして解釈していいのですか。
  66. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今までの赤字そのほかが銀行の背負つて来ておる分はなくなる、銀行まで来ていないものがある。それが心配なので銀行に抱き込まれるように早く商社その他を調査して仕訳すべきだというところが問題なんです。銀行が背負つてしまえば、銀行は個々の商社の経済状況を見ながら、適当な措置をするのであります。私の心配しているのは、銀行が抱き込むようにすべく各商社の赤字その他を洗い、将来の見通しをつけてやれ、こういうふうに言つておるのであります。銀行に入つて来れば、これは銀行の方で金融界の情勢を見ながら適当な処置をすると思います。
  67. 西村榮一

    西村(榮)委員 これが銀行に入つて来ればというのですが、これはほんとんど銀行に入つているので、こまかい数字をやりとりして、また不愉快な言葉をお互いに費したくないから、あなたのあげ足をとらぬのでありますが、問題は、どれだけ損失があるかということは、なかなか判定が困難でありますが、私は大体四百億円から六百億円、こう見ております。計算の立て方によつても違いますけれども、最高のユーザンスと現在の値下り率とを比較してみて、四百億円ないし六百億円、これは兆戦事変勃発の後において、それとなしに連合国からのサゼスチヨンによつて、かつまた政府希望によつて日本の商社が原材料を仕入れたのでありますから、問題は日本の貿易業者だけの責任とも言えない。従つてこれをどう処理してやるかということが問題になるのでありますが、私はその問題はかなりデリケートだと思いますから、これ以上申しません。しかしその問題を上手にこなしてやらなければ、三月、四月ごろには倒れるものもたくさん出て来る、このこなし方は金融面と同時に、政府が輸入を奨励した政治的責任を思い出して、これをやはり処理してやらなければならぬのじやないか、こう思うのですが、今委員長から御注意がございまして、午後に引続きというのですが、いつでもけつこうです。それでは簡單に事務的の問題だけをもう一問。午前中私は事務的な質問に終始したい、午後からはあなたの御意見を本格的に承りたい、こう思つております。  そこで事務的な問題としてお伺いしておきたいことは、総理大臣並びにあなたは本会議並びに予算委員会において、外資導入の問題について、非常に自信ありげに力説された。外資が入つて来るから日本の経済は大丈夫だと言わんばかりのお話なんですが、願わくはその外資の問題について、具体的な構想を承りたい。本会議では、私のところは水谷長老が、それを質問したのでありますが、遺憾ながら本会議の討論でありましたから、これはお互いに質問し、かつ答弁しつぱなしでありましたが、きようはひとつ願わくは具体的にあなたが施設演説に述べられ、重ねて総理大臣が——本格的な総理大臣と、未来の総理大臣を自任しておられる池田君と二人がやられたのですから、これは定めし自信があることだろうと思う。そこでその外資導入の問題については、單に抽象的な本会議国民に対する喜ばせではなくて、一体具体的にどういうふうにするのか。御説明を承ると、日本の政治が安定し、経済が安定すれば、外資が入つて来るのだという抽象論ではなしに、一体どういうふうな経過をたどり、どういうふうな折衝の過程にあるか。先ほど私が深く追究しなかつたのは、国民所得五億三百億円という、この所得を見積る裏の根拠もまたそこらへんにあつたのじやないかというので、第一問は結末をつけておらない。従つて事務的な質問の締めくくりとして外資の問題について御高見を承りたい。
  68. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外資の導入につきましては、大体四つの方法があると思います。これは一つ政府政府の借款の問題でございます。第二の問題は国際通貨基金に加入いたしまして、国際開発銀行からの借入れの問題でございます。第三の問題は、アメリカの輸出入銀行からアメリカの物資を持つて来て借り入れる問題であります。第四は民間同士の話合いによりまする導入の問題であります。第一の政府借款の問題につきましては、ただいまのところ具体的問題はございません。第二の国際通貨基金加入の問題につきましては、ただいま折衝中でございまして、加入のあかつきには、相当借り得られるのじやないかと思います。これは物で入つて来てもいいし、金で入つて来てもいいかつこうでございます。それから第三の輸出入銀行からの外資導入は、御承知通り四千万ドルの綿花借款をいたして、十五箇月借りることになつております。第四の民間投資の問題につきましては、これは本会議でも触れたと思いまするが、ただいまのところあまり大しては来ておりませんが、株式投資が千五百七、八十万ドル、貸付金が二百数十万ドル、合せて千八百万ドル余りでございます。別に技術の導入、これも外資の一つの形態であります。技術の導入では、昨年拂いました技術料が大体換価すれば五、六千万ドルになるのではないか。そうすると七、八千万ドルの外資が今まで入つて来た、こう私は言い得ると思います。しこうしてあれほど騒いだ民間外資導入がなぜ来ないかと申しますると、今外資法によりまして、入つて来た外資の配当とか利子の支拂いは、原則をきめて、一応認めておりまするが、元本の帰つて行く分につきましては、一々外資委員会の許可がなければ出て行かない。こういうことになつておるのであります。そこで日本政府の許可がなければ、一旦日本へ入れた金は帰らぬのだ。こういうことになりますと、入りにくい。そこで私は今国会におきまして、外資法を改正いたしまして、入つて来た金も一定の條件のもとならば自由に出て行ける。こういうふうなことをやつて行けば、相当入つて来るのじやないか。この問題につきましては、日本の商社と向うの会社とで話合いが相当ついておるのですが、外資法の改正がないために、日本に入つたら、もう一々日本の役人の許可を得なければ出せないということが非常に弊害になつておりますので、それを改めれば相当私は入つて来るのじやないか、こういうふうに考えて、外資法を改正しようといたしております。綿花借款のは十五箇月でございますが、事情によつたらほかの分につきましても、私は輸出入銀行からできる。要は結局日本の経済がよくなり、日本の信用が高まつて来れば、水の低きに流るるがごとく来るのではないか。そこにあまりくどくどしく制限を置かない方がいいのじやないか、こういう考えを持つております。
  69. 西村榮一

    西村(榮)委員 今の御説明の、外資が入つて来て、それが海外に出て行くということについての一定の條件というものは、具体的にはどういうものが、一、二の例を示していただきたい。
  70. 池田勇人

    ○池田国務大臣 たとえば株式投資の場合に、一定額の配当は無條件で出て行く。非常な配当があつた場合に、その配当を全部許可するというわけにも行きますまい。ただそこで、今言うように、六割配当とか五割配当とかいうことがありますので、普通の配当のものでしたら、一割とか一割五分でございますが、五割配当、六割配当なら、一割五分でとめるかと申しましても、六割配当ができるというようなことは、相当株価が高うございますので、そういうことは投資額の何パーセントというようなことで行くべきじやないかと思います。それから元本が帰る場合ですが、二年あるいは三年すえ置きにしまして、五年なり十年なり動かして行く。この範囲の分だつたら許可がいらない、こういうふうな方法で行くべきじやないか。社債につきましても、そういう方法を講じたいと思います。
  71. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、今は国際金融機関からのクレジット並びに、外資の法律、特定法律を制定して来るならば、民間投資は入るという見込はついておるが、政府政府の借款という外資は全然不可能だ、あるいは不可能でなくても、現在は何らの対策がない、こう結論として拝承しておいてよろしいですか。
  72. 池田勇人

    ○池田国務大臣 せんだつてアメリカの上院でダレス氏が言われた——きのうも北澤委員から話が出ましたが、ダレス氏は米国上院で、日本にエイドは出さぬけれども、ヘルプはすべきだ、こう言つておりますが、これは政府というつもりでありまするか、あるいは民間の実業家に言つたことかわかりませんが、私は情勢によれば、政府政府の借款も望ましいまのだ、こう考えております。しからば、望ましければ、どういう措置をとつておるかというお尋ねにつきましては、ただいま御返事申し上げる段階に至つておりません。
  73. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、かねてアメリカが盛んにかねやたいこで、はやし立てておる東南アジア開発に対して、一旦日本にアメリカの金が入つて来て、その金を東南アジア開発資金に、また日本から投資するというふうなことについての、政治的ら外資の導入というふうなことも、まだ具体的に日程に上つておらないですか。
  74. 池田勇人

    ○池田国務大臣 具体的に日程に上つておるか上つていないかは、ただいまお答えできませんと申し上げた通りでございます。ただ問題は、東南アジア開発、向うではポイント・フォアと言つておりますが、これは私が参りまして、一昨年の四月ころから相当向うでは言つておられたが、平和條約ができておりません関係とか、外交的になりますもので、大分古くはなつたのですが、なかなかスタートがむずかしい。スタートすればこれはスムーズに行くのじやないかと思う。この問題につきましては、ただいまどつちともこの返答をせずにおきたいと思います。
  75. 西村榮一

    西村(榮)委員 あなたがサンフランシスコ講和会議に吉田総理大臣に随行して行かれたのは、さだめし何か帰りに外資という大きなおみやげをもらつてつて来てくれるじやないかというので、少し早目のサンターロースが帰つて来るようにというので、日本国民は待つてつたのですが、そのときに、出発の前には外資の問題で渡米するのだというようなことが、しばしば伝えられておつたのですが、あなたの外遊中において、政治的借款の問題について何も話はなかつたですか。
  76. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私がサンフランシスコに参りますのに、外資を持つて来るのだなどと言つた覚えははありません。講和全権として参つたのであります。しこうしてせつかくアメリカへ参りましたので、できればワシントンの方にも行つて見ようかという気持はあつたのでございますが、御承知通りあのころ国際通貨基金の会議がありまして、スナイダー財務長官も非常に多忙をきわきておりますし、また行つていろいろ話をしたいと思つたドツジ氏あるいは国務省のヘンメンリンガー氏がわざわざサンフランシスコに来てくれましたので、向うの政府も忙しいし、また各国の財務当局もたくさん集つておりまして、多忙をきわめておつたので、初め行つて見ようかというのが、そういう事情で、国務省あるいは陸軍省の人とも話をする機会がございまして、向うの財務省が非常に忙しいというので、講和全権としてだけ行つて来た、こういうわけであります。
  77. 西村榮一

    西村(榮)委員 あなたは正式に声明して行かれたわけではないが、なかなか出発ときには、色気たつぷりなかつこうで出かけられたので、国民期待しておつたのですが、失望することははなはだしく、今日に至つてなお政府の借款の問題についての具体的な構想を承れないということは、はなはだ遺憾であります。  そこで一番問題になりますのは、あなたは民間の外資が入らぬために、一つの法令を制定せねばならぬという御説でありますが、私は日本の国に入つて来た金を出さないで置くというような、現在の変則的な立場はよくないと思います。たとえば民間の外資が入るときには、日本の産業のいわゆる民族資本の擁護の立場において、政治的に考慮して行かなければならぬ。たとえば過去七年の間において、日本が外資の導入々々といつて非常に待望し、期待したが、これが入つて来なかつた。しかも期待し、待望した根拠というものは、單に日本国民だけのから頼みではありませんでした。誘う水あらば、あるいは魚心あらばというようないろいろなゼスチュアも彼我両国の間にあつて、外資の問題というものは出て来たり消えたりした。しかも過去六年間に入つた外資というものは、政府のこの間お示しくださつた統計を見ても、株式投資が千五百七十三万ドル、技術援助費が五千百九十三万ドル、技術援助費は、金は何も入つて来ておりません。もちろん日本は技術の援助もきわめて必要でありますが、日本の産業が待望しておるのは資金なのです。しかも資金を求めておる日本の産業界に、技術援助というのは、戰前の権利を継承したのが大部分なのです。これが外資導入と騒がれた鳴りもの入りの中に三倍半を占めておる。しかもあなたが今指摘された二百数十万ドルという投資が入つたというのでありますが、この二百数十万ドルの投資の中をお考えになつても、私は将来民間外資の導入について注意しておかなければならぬものがたくさんあると思う。一例を東亜燃料という会社に——私は何も関係がありませんから公正に言えるのですが、私がさつき電力の問題を心配してお尋ねしたのはここなのです。日本の産業の食糧ともいうべき電力と石油と石炭の問題を考えてみますると、東亜燃料への資金の入り方を見ましても、資本金額の六割入つた。入つた後における決算期には四割五分の配当をさせられた。そうすれば大体二年半で、入つた資金が回収できる。同時にもう一つ見のがすことのできないのは、東亜燃料で精製した油は、全部スタンダード会社が販売権を掌握いたしまして、製造元は一滴の油も販売することはできません。従来東亜燃料から受けておつた販売店は、一割の手数料をとつていた。ところがスタンダード会社が販売権を握るや、それを五分の一に切り下げて、大体二分の手数料ということになつた。そのことは一体何を意味するか。一割の手数料を拂つて東亜燃料が引き合つていたものが、手数料が八分減額されたということは、一体日本の経済の中に入つて来たのがスタンダード会社の中に入つて来たのかということを考えてみると、外資の導入というものも、外から資金の援助によつて日本の産業を再建して行かなければならぬということは、議論の余地はありませんが、その導入の條件は、私は将来財務当局として考えておいていただかなければならぬ、こう思うのです。私はその一例を申すと、あなたが政府的借款というものはまだ具体的に日程に上つていないと説明された中において、参考になるのは、明治三十年——古いことを申し上げますけれども日本の興業銀行が設立されたときの歴史を、この外資導入と関連して思い出していただきたい。興業銀行は主として外国から資金の供給を仰いで、日露戦争後における疲弊した日本の産業を立て直すために外資を導入した、そのときにおける條件というものは、外国から入つて来る資本は一括して興業銀行が借り受けました。これに対して政府は元利支拂いの保証をいたしました。同時にその興業銀行が各個別の産業に投資する條件は、興業銀行の自主的な判断にまかされた。私はこれを考えてみると、金は借りたが、屋台骨まで持つて行かれたというような結果を生じ、すなわち日本の産業をそつくり持つて行かれてしまう。政治的には独立したが、経済ののど首はよその国に締めつけられておるというような外資の導入の仕方というものは困ると思うのであります。この点外資の導入を私どもは大いに歓迎しなければならぬし、同時にその外資を優遇する條件も、元利の支拂いの保証に対しては、われわれはその資金を持つて来た人に安心の行くような法律をつくらなければならぬのでありますが、日本の産業の屋台骨を持つて行かれるような外資の導入の仕方は困る。特にあなたが今政府政府の借款というものは具体的になつていないという御説明を承つて、以上の点を外資導入について考えておいていただきたい。  最後にあなたに御質問しますが、それならば問題は総理大臣が本会議で、あるいはあなた自身も、外資導入によつて日本の産業は立ち直つて行くのだというがごとき演説をされた。あれは国民に対して一つのうれしがらせだと考えていいのですか。
  78. 池田勇人

    ○池田国務大臣 株式会社に対します外資の導入につきましては、あなたのお考えまことにごもつともでございまして、今外資法につきまして、株式投資の分に制限を受けているのはそういう意味もあり、また財界の方面でもお話のような議論が強いのであります。これはやはり経済の独立と申しますか、日本人の支配する会社という建前から、この導入の條件の問題につきましては、慎重な注意を拂わなければならぬことは同感であります。その方向で行つております。  それから外資の導入について総理大臣並びに私が演説で言つたのは、国民を喜ばせるつもりで言つたのかということでございますが、そうではございません。日本の経済はこういうふうにして行くのだ、外資の導入も建直しの一助にする、こういうのであります。従つて外資の導入のことにつきましては、外資法の改正とか、あるいは輸出入銀行からの四千万ドルの借入金とか、こういうことで、今後はまたふえて行く見通しであるのであります。政府借款はどうかということにつきましては、私はやつているとも、やつていないとも申し上げない。今御返事する段階にないということを申し上げたのであります。
  79. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、外資の導入は少し話が違つて来たのですが、私は総理大臣やあなたの演説というものは、きわめて根拠のあるものであると思つて善意に解釈しておつたのですが、そうすると外資導入法という法律ができれば、民間外資が入つて来るであろうという期待だけで、あの演説をなさつたのですか。
  80. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今でも外資に関する法律は、御承知通りあるのであります。非常にきゆうくつになつているからそれを直そう。しこうして私の見るところでは、四、五の会社は、あの法律の改正によつて入りよいようになり、出よいようになれば、相当な金額を投資するというのもあるのであります。私は外資の導入は相当の見込みを持つておるのであります。
  81. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、四、五の会社が入るというのだが、その外資によつて日本の産業は、どういう影響を受けるのか。同時にそれを具体的に、いつごろになつたら御説明のできる段階になるのか、承つておきたい。
  82. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外資の問題は、私のところに来た分だけが全部ではございません。相当にあると聞いておるのであります。二、三の人が、いつ外資法の改正を出すかというので、通常国会で出すつもりでおります。四月には多分発効すると思う。それじやそれからにいたしましよう。——それは国会の審議の都合によりまして、四月とはきまりませんが、とにかく本国会で通過すれば、ただちに施行するようになろう。それじやそのときに話をきめましよう。こういうふうなのがたくさんあるのであります。
  83. 西村榮一

    西村(榮)委員 それはどのくらいの金額が、どんな條件で入つて来るのですか。
  84. 池田勇人

    ○池田国務大臣 個々の会社で、私はそれを申したくないのでありますが、ある繊維関係におきましては、一つでやはり四、五百万ドルくらいのものもございます。また二、三百万ドルくらいのものもございます。こういうふうに入り出すと、ずつと入つて来るのでございます。入り出さないとなかなか入らない。それは来年の今ごろ実例が示すようになると思います。
  85. 西村榮一

    西村(榮)委員 どうも今実態を聞いてみると、総理大臣並びに大蔵大臣が鳴りもの入りで宣伝された外資導入は、まあ四月で法律がかわつたら、四、五百万ドルくらいは、しかも日本の高率配当をしておる繊維、そういうふうなものに入つて来るのだ、あとは続々入つて来るだろうという期待なんです。これは結局何ですな池田さん。あの本会議並びに予算委員会において、総理大臣とあなたが説明されたのは、あれはまあ昔よくやつた三合配給というふうな政治演説ですな。それ以外にはありませんな。具体的に承つてみると……。
  86. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういうふうにおとりになつてはいけないのでございまして、私は実例でこういうような例もあるのだというふうに——それは鉄鋼の面にもります。いろいろなところにある。しかし大蔵大臣がどこの契約がどういうふうになるというようなことは、申し上げにくいので言わないのです。だから来年の今ごろになつたらわかる。また今の綿花借款四千万ドルも御承知通りであります。それから国際通貨基金に入るとすれば、これまた借りられる可能性も相当あると思う。あの手この手で、もう一年お待ちになればわかると思います。
  87. 西村榮一

    西村(榮)委員 大体それでわかりました。来年の今時分になると選挙も終りますからな。これは一種の選挙演説として拝承いたしまして、それ以上追究いたしません。しかしながらこれだけは記憶しておいていただきたい。国民は、あの外資導入を本年度の本会議で総理大臣が力説された裏には、こういう点があつたのではないか、たとえば本年度は防衛協定によつて生ずる、あるいは日本の自衛力の漸増計画によつて生ずる防衛費が、二十七年度は予算総額に占める比率が二四%であります。二十六年度予算の防衛費は一六%でありました。けれどもこれは実際において一・六%程度でありますけれども、その中にはアメリカの対日援助というものが昨年までは一億八千二百万ドルあつたのでありまして、これは二十七年度からは見込まれません。結局昭和二十五、六年度までの防衛費というものは、六%ないし八%が実質的には日本財政上に占めるところの防衛費であつた。ところが防衛費は本年は二四%になる。私は、これらの点を照し合せて考えて、総理大臣が外資導入という問題を力説されたのだ、こう考えておつたのですけれども、今大体来年の今時分になればわかるということでありますから、これは自由党の選挙演説の一種と承つておきましよう。時間がございませんから、午前中は一応事務的にいろいろのことを承りまして、午後からは大蔵大臣の御所見を承りたい。午前中はこれでひとつ休憩していただいていかがでしようか。     —————————————
  88. 塚田十一郎

    塚田委員長 先般委員長に御一任願いました公聽会の公述人は、次の通り選定いたしたいと存じますから御了承を願います。一橋大学学長、中労委会長、中山伊知郎君、第一通商社長岡本忠君、山一証券社長小池厚之助君、帝国銀行社長佐藤善一郎君、全国指導農業連合会専務理事武正総一郎君、経済団体連合会理事、興国人絹パルプ社長金井滋直君、評論家神近市子君、日本企業連盟専務理事杉山慈郎君、近畿地区遺家族代表吉信英二君、日本労働組合総同盟総主事菊川忠雄君、武蔵大学教授芹澤彪衛君、全国銀行従業員組合連合会副委員長田部健君。以上十二名であります。  なお公聽会は、二月十一日、十二日の二日間、もし終らなければ十三日まで、いずれも午前十時より開会いたしますから、御了承願います。  午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半から会議を再開して質疑を継続することといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  89. 塚田十一郎

    塚田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。西村榮一君。
  90. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは時間がございませんから、私は所要の時間内に大蔵大臣に要点だけお伺いしておきます。  本予算案で、きわめて少額でありますが問題になつてきておるのは、平和回復善後処理費であります。この平和回復善後処理費の中に、政府の御説明によりますると、対日援助費の返済という項目があるのですが、これはいかなる性質のものであるのですか、一応承つておきたい。
  91. 池田勇人

    ○池田国務大臣 対日援助費は、御承知通り、終戰後アメリカが終戦に伴つて日本に援助してくれておつた金を、今債務として確定はいたしておりませんが、将来債務として確定した場合におきましては、これの支拂いに要する経費もある程度見込んでおかなければならないので、一応予定はいたしておるのでありますが、これは賠償と同じように、はつきり今幾ら幾らときまつておりませんので、賠償、外債の支拂い、対日援助費等を見込んで予算を計上しておるわけでございます。
  92. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうするとこの費用は債務として確定したときに、初めて支拂いの義務が生ずる、こういうことになるわけですね。
  93. 池田勇人

    ○池田国務大臣 さようでございます。
  94. 西村榮一

    西村(榮)委員 しからば、債務として確定する基礎はどこにありますか。
  95. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アメリカの援助でございまして、二年くらい前にマツカーサー元帥もこれは支拂わるべきものであるというふうに言つておられますので、私も一応債務と心得ておるのであります。
  96. 西村榮一

    西村(榮)委員 債務として確認する法律的基礎はどこにありますか。
  97. 池田勇人

    ○池田国務大臣 まだそれは発生しておりません。ただ援助でございまするから、そういうこともあろうかと私は想像しておるのであります。
  98. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、まだ法律的にこの債務は確認されていないわけですね。
  99. 池田勇人

    ○池田国務大臣 両国間におきましての話合いがついておりません。
  100. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、債務として国が確認しておらない事項を、どうしてこの予算の中に計上されたのですか。
  101. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういうことがあることを予定いたしまして、一応組んでおるのであります。
  102. 西村榮一

    西村(榮)委員 そういうことを予定されるということは、一体どこに根拠があのですか。ぐるぐるまわつているようですが、あなたが予定して予算を計上された、その予定される基礎というものは、一体どこにありますか。
  103. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アメリカから二十億ドル近い援助を受けておるのでありまするし、その援助の支拂いが返せることが予定されますので一応組んでおるのであります。
  104. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、援助を受けたときに、日本政府はそれを債務として承認をして援助を受けたのですか。
  105. 池田勇人

    ○池田国務大臣 まだ両国の話合いがきまつておりませんので、一応日本政府としては債務と心得ておりますが、どれだけの債務になるかは、ドイツの例等を見ましても、はつきりしたことは言えません。
  106. 西村榮一

    西村(榮)委員 債務として未確定なものであり、しかも債務の金額が未確定であると言われるこの中に、何がゆえに国民の税金からの返済の費用というものを見積らねばならなかつたか、その点国民はどうしても納得が行かない。納得の行くような御説明を承りたい。
  107. 池田勇人

    ○池田国務大臣 終戦後アメリカの援助を受けておりますので、その援助はできるだけお返しするのが、ほんとうだと考えております。
  108. 西村榮一

    西村(榮)委員 大蔵大臣にお聞きしたいのですが、援助と債務と法律的にどう違いますか。
  109. 池田勇人

    ○池田国務大臣 援助を受けておるものは債務と似たものでございます。そして債務というものが確定するのは、両国間の話合いできることであります。
  110. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうするとあなたは援助と債務というものは同一である、こうおつしやるのですか。
  111. 池田勇人

    ○池田国務大臣 援助を受けたものは返すべきだと考えておるのであります。
  112. 西村榮一

    西村(榮)委員 援助と債務が同一であるという大蔵大臣の学説は、これは将来ノーベル賞をもらえるほどの珍学説であります。援助はこれは贈與であります、恵與であります。援助を受けたればこそ、日本国民国会を通じて数度にわたり、この援助に対しまして感謝、感激の決議文を可決いたしております。これは当然日本国民が今までもらつてつたものであります。しかし私はあなたの珍学説に対して別に水かけ論をしようと思いません。しかしながらその援助がかりに債務であるということにいたしましても、日本の憲法第八十五條、その他財政法から申しまして、国が債務を負う場合においては、これは当然国会の議決を得ておかなければならぬのです。いつ一体その議決をあなたは得られましたか。
  113. 池田勇人

    ○池田国務大臣 憲法八十五條によりまして、国が債務を負担するときには、国会の議決を経なければならぬということは、私も承知しております。しかしまだ議決を得るまでに至つていないのであります。アメリカとの話が済みまして、いよいよ債務を確定いたします場合においては、国会の承認を経るごとにいたします。
  114. 西村榮一

    西村(榮)委員 それならはこれはひとつその問題が法律的な効力の発生するまで、お取消しになつたらどうですか。この中に将来の補正予算をも含む多くの問題を含んでおります。平和回復善後処理費、連合国に対する賠償、対日援助費の返済、この中に文字としては対日援助費の返済という文字を、この原文から削除されたらいかがですか。
  115. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はただいまのところ削除するつもりはございません。
  116. 西村榮一

    西村(榮)委員 何がゆえに削除する意思はないのです。おかしいじやないですか。かりに観点をかえて、総理大臣並びに大蔵大臣がかつてによそに借金して来た。国会の議決を経ずしてそれを借金して来た。将来何年かたつて、それは国の債務だから弁償する。しかも国会が承認してないのに、その予算を計上するというのは、あなたは財政家として矛盾を感じませんか。しかもそういうふうな財政のとり方というものが、きわめて将来悪例を残し、かつまた日本財政上危険なものである、民主主義の原則に反するということをお気づきになりませんか。
  117. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これはアメリカとの話合いがきまれば、来年度中に拂わなければならぬようになるかもわかりませんので、一応私は組んでおくことが適当であると考えます。
  118. 風早八十二

    ○風早委員 関連して。この今までの米国の援助資金が債務であるか贈與であるかという問題については、もうかねがね第五国会以来問題になつて来たことでありますが、いまだにこの点は明確にはなつておらないと、われわれは考えております。池田大蔵大臣は、これをかつてに債務と言われますが、アメリカにおいてもいまだかつて対日援助資金が債務であるということを言つたためしはないと思います。にもかかわらず、池田大蔵大臣はなぜこれを債務であるとかつてに予想するのであるか、その根拠を聞かしてもらいたい。
  119. 池田勇人

    ○池田国務大臣 風早君はアメリカにおいてそういう議論がないとおつしやいますが、私はあると考えております。(風早委員「議論ではない、アメリカ政府が……。」と呼ぶ。)しかしてマッカーサーも言つておりますし、私はアメリカ政府の代表者からも聞いておりますし、また吉田、シーボルト、あの協定の中にも載つておると考えます。
  120. 風早八十二

    ○風早委員 いつどこでそういうことが行われたか、その向うの公式の言明をひとつ聞かしてもらいたい。対日援助資金は債務であるということが明確になつておる、そういう証拠を出してもらいたい。
  121. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私が向うの代表者からこの耳で聞きました。(笑声)
  122. 風早八十二

    ○風早委員 そういう無責任なことを言つて国民には通用しない。また国会にも通用しない。そういうお互いの会談の内容というものはわからない。でありますから、いつどこでどういう意味でこれが債務であると言われたか。これは公式のものであると思いますから、それを根拠にしておられるのだと思いますが、その公式の言明の場所や、シーボルトならシーボルトがいつ言つたか、そういうことを言つてもらいたい。
  123. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 阿波丸の請求権放棄に関する協定がございますが、あれの附属協定の中に吉田、シーボルト両者の覚書で、対日援助は米国政府によつてのみ減額し得る有効なる債務であるということを確認すると、はつきり書いてございます。
  124. 風早八十二

    ○風早委員 阿波丸の問題はわれわれも最も熱心にこれに反対したのでよく覚えておりますが、あの中では何も対日援助ということではない。日本に対する債務というものはこのために帳消しになるんではないぞということを書いてあるけれども、援助資金ということは書いてないはずです。これはわれわれよく承知している。援助資金とは書いてない。これは通説です。だから今までアメリカの側で対日援助資金が債務であると言つたためしはない。これはイギリスが、たとえば西独に対する関係において、その援助資金について債務という表現を使つておりますが、アメリカは一つも使つておらない。西欧に対しても使つておらない。日本に対しても使つておらない。なぜそれをわざわざ日本政府が債務に役立てて予算に計上するのか、これははなはだふに落ちない。大体この問題については、終戦処理費とこれとを比べてみたら、終戦処理費の方が倍以上の大きな負担をわれわれが背負つて来ている。もつとも終戦処理費とこの援助資金とは性質が違うから相殺はできないという議論を政府はしておられます。ですからそれは今ここであずかつておきます。いずれにしてもこれは問題になる。何もこの債務をわれわれが拂わなければならないということではないわけでありまして、われわれは出すべきものは出し過ぎるくらい出しているのであつて、この援助資金を政府がかつてに債務と言われる根拠ははなはだ薄弱である。またかりにアメリカが——どこかの席上でシーボルトが池田大蔵大臣の耳にささやいたとしても、そのことでこの一国の重大なる負担を負うべき債務をかつてに認められるということはあり得ないと思うのであります。そういう意味で今の大臣並びに局長のその根拠と言われるのは、まつたく根拠じやないと言わざるを得ない。そこでこの点についてはそれ以上は答弁を得られないと思います。われわれはこの援助資金がかりに債務と認められた場合において、この国が債務を負担するその根拠を今政府国会に向つて承認を得るわけでありますが、その形式は單に予算の歳出面でこれを計上している、これをのませるかのませないかという形でのみ、この債務の承認問題が出ているわけであります。それに間違いないと思いますが、どうですか。
  125. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは賠償につきましても時間的な問題は同様だと考えております。今賠償もこれだけにきまつているわけではございません。また外貨債の支拂いにつきましても、今きまつているわけではないので、しこうして私どもといたしましては、昭和二十七年度中にこういうものにつきまして支拂いが開始されることあるべきを予定いたしまして、予算に計上いたしたのであります。
  126. 風早八十二

    ○風早委員 それはわかつてるのだが、この歳出予算にこれを計上されてとつてみたところで、実際にこれを使おうと思えば、この実行のためには、やはり国がこの債務負担を負うべきその法的根拠がなければならない。それなくしては、かりに予算が通つてもこれは使うべき筋合いのものではない、使えない。(「それでよいじやないか」と呼ぶ者あり)どうして使うためにとるのじやないか。そういうはなはだ法的にもまつたく根拠のない措置がとられておるのではないか、この点については、明確な答弁を要求したい。
  127. 池田勇人

    ○池田国務大臣 支拂いを開始いたしますときには、国の負担になるものでありますから、別送の法的措置を講じます。
  128. 風早八十二

    ○風早委員 その別途の…。
  129. 塚田十一郎

    塚田委員長 西村君に発言を許可いたします。風早君には発言を許しません。——それではあらためて西村君の了解を得ましたから風早君に発言を許します。
  130. 風早八十二

    ○風早委員 賢明なる委員長のはからいに感謝いたします。とにかく債務であるかどうかということがわからない。しかもアメリカが、これをどこでもはつきりは言つておらない。にもかかわらず日本が進んでこの莫大なる二十数億ドルの債務を背負い込むという、こんなばかな話はないわけです。しかも百歩讓つて、債務をどういう形で承認を得るのかと言えば、これは單に歳出予算の中にごまかしたような形で入れてあるだけの話、内容はない。債務を負担するためには、どうしても金額やその目的というものが、はつきり確定しておらなければやり得ない。(「その通り」)その通りであるがやつていない。     〔発言する者あり〕
  131. 塚田十一郎

    塚田委員長 私語を禁じます。
  132. 風早八十二

    ○風早委員 自由党でもその通りにやつてない。そうしてこれがかりに予算通りましても、法的措置がやつぱりいるわけでありますが、何らこの予算と並行してそういう法的措置は講ぜられておらないのだから、これはまつたく根拠がないと言わざるを得ない。
  133. 西村榮一

    西村(榮)委員 今大蔵大臣が自分の耳で聞いたから確かであるという御説明がありました。私は今この予算委員会において、個人的な話のやりとりをしておるのじやありません。あなたの耳で聞いたから確かだということではない。少くとも法治国家と法治国家の折衝というもの、法律に基かなければいかぬ。従つて私は具体的にいつ何日に対日援助費が日本の債務であるということを、アメリカから通告を受けたかというその点、局長から阿波丸の覚書のときにと、こうおつしやつたのでありますが、私はもう少し明確に対日援助費が日本の債務であるということを、アメリカが公式に意思表示をしたその年月と、そのときの状況を御説明願いたい。
  134. 池田勇人

    ○池田国務大臣 公式、非公式と申しますると、はつきり区別がつきませんが、アメリカの政府を代表しておる人とこの問題について話をしたことはございます。これは数回話をした、あるいは数十回になるかもわかりません。何月何日という記憶はございませんが、私は今までにおきましても、第五国会以来この対日援助は債務と心得ておる。しかしこれが法律的に確定はいたしておりません。これはやはり確定いたしますると、国の負担になりますから、国会の議決を経なければならぬことは憲法に規定してある通りであります。それじや何も苦しんで早くやる必要はないじやないか、こういう議論になりますが、御承知通り先般一箇月くらい前でございましたか、西ドイツに対する対独援助を英、米、仏できめたのであります。私はこれがいつきまるかということの見通しはつきませんが、もし早くきまつたとすれば、やはり日本大蔵大臣としては、昭和二十七年度にそういうものも入れて、全体を組んだ方が適当だろうと考えたのであります。
  135. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは別な観点からお伺いしたいのですが、国が債務を承認する場合においてはそれはその債務の事項が発生したときに、あらかじめ国会の承認を受けておかなければならぬ。債務を生じた後において事後承諾を受くるのか、憲法八十五條、財政法第十五條、この解釈は事前に国会の承認を得ておくべきものであるか、事後において承認を得てもさしつかえないのかどうか、憲法八十五條の解釈をひとつ承りたい。
  136. 池田勇人

    ○池田国務大臣 平和回復善後処理費として予算を組みましてその中に昭和二十五年度中に立法手続をしてやる場合も、私は違憲ではないと考えております。
  137. 西村榮一

    西村(榮)委員 私の問わんとするところはその点ではありません。国の債務が生ずる事項が発生したときに国会の承認を受くる、あるいは数年後に事後承諾を受けても、この憲法八十五條はさしつかえないものであるかどうか、その点を承りたい。
  138. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 憲法八十五條の……。
  139. 西村榮一

    西村(榮)委員 局長に質問しているのではない。大蔵大臣質問しておる。
  140. 池田勇人

    ○池田国務大臣 主計局長をして答弁いたさせます。
  141. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 憲法八十五條の規定によりますと、国が債務を負担するのには、国会の議決を要することになつておりますので、国会の議決がなければ有効な債務の負担はできません。その以前において内閣があるいは債務を負担するような行動をいたしましても、これは憲法上は有効ではないのであつて後日においてそういう議決があることを前提として有効になる、それまでは停止條件つきである。これは確定した解釈だと私は考えております。
  142. 西村榮一

    西村(榮)委員 わかりました、なかなか局長としての答弁は名答弁であります。そうするとこれは事後承諾ではないということを御答弁になつた。しからば問題になるのは援助費が債務であるかどうかという珍説は別といたしましてこれが発生した時期は一体いつですか。
  143. 池田勇人

    ○池田国務大臣 確定的の債務になるのはこれからでございます。
  144. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると確定的な債務になるのはこれからだというと、事項が発生した事実はいつですか。
  145. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昭和二十一年からの対日援助が毎年心々来ております。これが問題になりました。それを私は一応経済的には債務と心得ているわけです。
  146. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると二十一年から発生した債務を、今日において国会の承認を得るということは事後承認になる。借務の事項が起きてしまつてからの事後承認になる。さつきの答弁と食い違つて来るじやないですか。
  147. 池田勇人

    ○池田国務大臣 食い違つていないと思います。終戰後この方受けました援助を私は債務と心得ておるのであります。しこうして債務が確定いたしますのは、先ほど申し上げておりますように、両国によつてきめらるべき問題だと考えております。
  148. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は政治的な答弁を求めておるのではない。憲法八十五條の国の債務の生じたとき云々というこの事項は、先ほど局長から明答弁があつたように、これは事後承諾ではないということであれば、昭和二十一年債務が発生し、しかも二十七年度の予算にそれを債務として確認して支拂いの方法を予算において計上するということであれば、これは事後承諾じやないですか。問題は昭和二十七年度以後において発生する債務、あるいは今日それが債権として新しく問題が出て来たとき、国債とかあるいは国が請負い工事において業者から契約を結ぶとかいうときにおいて初めてそれが出て来るのじやないですか。二十七年以後になつたら、これは事後承諾だと見るよりほかしかたがないのですが、大蔵大臣は一体どうお考えになりますか。
  149. 池田勇人

    ○池田国務大臣 事後承諾とは考えておりません。これは法律的には今後きまる問題であります。しこうしてそのきまつたときに支拂うべく予算で一応計上いたしておるのであります。
  150. 西村榮一

    西村(榮)委員 これはアメリカの予算で対日援助費として予算に計上されておる。アメリカは日本に対する債権として政府的借款として二十一年以後アメリカの予算には計上しておりません。これは援助費としてアメリカの予算では切捨てられている。それがなぜ追い打ちをかけて日本政府が債務として確認しなければならないのか。
  151. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はアメリカの予算でこれを切捨てておるかどうかわかりませんが、私は切捨てていないと思います。これは今のように、吉田・シーボルトの交換文書におきましても、またマッカーサーが二、三年前に声明されたことからも、また最近のドイツの例から見ましても、私は切捨てておるとは考えておりません。
  152. 西村榮一

    西村(榮)委員 ドイツの例とあなたはおつしやるが、それではアメリカがこれを切捨てていないという根拠はどこにありますか。私ほどの国にしても、予算編成上二十一年度、二十二年度、三十三年度、二十四年度というように、過去六年間継続したこの対日援助費が債権としてアメリカに残るならば、当然アメリカは予算の上において、それは債権として取扱つて行かなければならぬ。少くとも二十一年度、二十二年度はこれは援助費としてあの終戰後の混乱期においてとりあえず出したというならば、当然二十三年、二十四年あるいは対日援助費が見返り資金として積み立てられた後においては、アメリカの勘定項目は償権として積み立てていなければならぬ。債権として積み立てられておるかどうか、私はその根拠をひとつお示し願いたい。
  153. 池田勇人

    ○池田国務大臣 向うの予算で債権とし積み立てていない場合におきましては、これをあなたのように、ただちに放棄したと見るべきではないと思います。これは日本から確定して拂うようになれば、向うの雑收入に入るべきものと思います。しこうして私の聞くところによりますれば、これを棒引にするという場合におきましては、財務長長から上院にその旨の通知がなければならぬと聞いているのでございます。
  154. 西村榮一

    西村(榮)委員 このことはアメリカが今度日本から返済された分が雑収入の中に入るということは、なおさら向うが切り捨ててしまつておることになる。新しく収入になつて来る債権であるならば、当然向うの資産勘定に残つておる。切捨てられて、日本から援助費が返済された場合には、それが雑收入に残つておるというあなたの答弁であつたならば、新しく日本からの債務は向うの収入なつてふえて行く。アメリカ債権としてはどこにも残つていません。あなたの今の雑収入として新しく向うの年度の収入になるということは、従来の答弁と食い違つておるじやないですか。雑収入という答弁それ自身が、もはや二十一年度以降は打切つておるという証拠になるのじやないですか。違いますか。
  155. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はそうは考えません。債権として記帳していない限りにおいては、放棄したのだと見ることは行き過ぎだと思います。     〔「認識の相違」と呼ぶ者あり〕
  156. 西村榮一

    西村(榮)委員 認識の相違じやありません。重要な問題だ。資産項目の中には過年度収入というものがあります。それは前年度の収入を指しておる。二十一年から七年間継続して切捨てられて、予算が再びもどつて来て、雑収入にそれが収納されるということは、これはアメリカの予算に切り捨てられておる証拠です。水かけ論ではありません。明らかだ。このことは私は時間節約上あなたに追究しようとは思いません。いずれ事実が証明するでしようけれども、ここに問題になるのは、現行日本の憲法はアメリカのさしずによつてでき上つた憲法なんです。この憲法には国が債務を生じたときには、当然国会の承認を得なければならぬということが八十五條に書いてあるが、日本は向うから非常な援助と、さしずと、場合によつては干渉がましいほどの憲法をつくつた。これはアメリカの憲法だ。日本語で翻訳しただけなんです。これから見ると、アメリカ自身が今日この対日援助費という問題を債権なりとして取立てることが、日本の憲法それ自身をアメリカが蹂躪したことなんだが、大蔵大臣の感想はどうなんですか。
  157. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アメリカ政府における金の使い方は、法律でこれに出す、そうして出しまして、一般会社の貸借対照表のような仕組みになつていないのであります。従いまして、出すときに法律できめて出しまして、それがあとどうなるかということは予算できめていないのであります。こういうやり方でございます。従いまして、ドイツの例を見ましても、アメリカは西ドイツに対する援助を相当切り捨ててはおりますが、結果においては十二億ドルの援助費を丙ドイツの債務として最近確定したようでございます。  憲法におきまして八十五條で言つていることは当然のことでありまして、国がいよいよ確定債務をきめますときには、あの手続をとらなければならぬことは、占領治下において、アメリカの指示等もあつてできた憲法ではありますが、でき上つたらわれわれの憲法でございますから、それに従うべきだと思います。
  158. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは水かけ論になるから、先へ進みましよう。  ただ最後に申し上げておきたいことは、終戦條約によつて日本が占領軍費を負担するその総額は本年まで四十七億ドルです。それからポツダム宣言に従つて日本国民の最低生活を保障してやる、同時に政治的には日本の経済を封鎖している、そして自由なる活動を制限している。この事実に基いて対日援助費というものが二十一億ドルありますが、この二つは相関連して来ている。従つてこの相対照される二つの項目から日本財政を見ますと、差引日本は二十六億ドルよけい負担している。しかも考えておかなければならぬことは、この二十一億ドルの対日援助費の中から、これが朝鮮に行つております。沖繩に行つております。しかもこの使い道は、日本政府の意見では行かなかつた。連合国司令官が自分の判定によつてこれが二十四年度まで使われて来た。この終戦條約とポツダム宣言と相対照して、どちらがたくさん負担しているかという点を考えてみると、私はこれは政治的に言つても、債務とは言えない。日本は終戦條約によつて、当然四十八億ドルの占領軍費を負担した。條約を履行して同時に二十一億ドルというものは、対日援助費、これは当時の政治上の情勢から、日本国民が当然受くるべき権利を持つている。当時日本が貿易が封鎖されないで自由に貿易活動ができ、自由に食糧を輸入することができて行きまするならば、この援助はいりません。この点を考えてみなければいけない。これらの事情があつたからこそ、今日までこれがアメリカに対する債務なりやいなやということが不明確になつて来た。今日七年たつて、それが債務である、しかもそれを返済されたものが、アメリカの雑收入になるということは、私は池田大蔵大臣が、日本財政家としてお考えを願いたい。同時にあなたが、今しばしばドイツの例をとられましたけれども、なるほどドイツは昨年はそれだけの債務の確認をいたしました。確認の裏に何を含んでおるかということを、大蔵大臣はお調べになつていますか。十二億ドルの未確定な債務というものを一応確認した。けれどもドイツの予算の中には、支出の予算はまだ組んでおりません。同時にこの債務を確認した背後に、いかなる協定が結ばれてるのか。ドイツはなかなかこれを承認しなかつた。債務ではない、援助費だという点において、なかなか頑強に拒否したのでありまするが、ドイツはこの問題を処理するにあたつて、西ドイツの財政的見地に立つて、政治的に解決した。私は大蔵大臣に午前中事務的な質問を申し上げたときに、あなたは外資導入については、アメリカと政治的に何らの折衝はない。その他援助の問題については、何らの見通しがつかぬとおつしやる。ドイツはちやんとその見通しをつけている。あなたはドイツの例を言われたけれども、この債務にあらざるものを、ドイツが債務として、後において形式上承認した。一体何が含まれているのか、あなたはお調べになつたことがあるかどうか。承りたい。
  159. 池田勇人

    ○池田国務大臣 午前中の質疑応答の中で、政府借款につきましては、何も初めやつていないとは言つておりません。この問題については言えませんと言つておるのであります。それからドイツの今の十二億ドルにきまつたことでありますが、異論があつたと言われますけれども、私の聞くところでは、ドイツにおきましてはいち早くこれは債務であると、国内的に定めておつたと聞いております。
  160. 西村榮一

    西村(榮)委員 最後にもう一ぺんお尋ねしておきたいと思います。これは国が承認した債務ではありません。従つて本二十七年度の予算に組むことは、これは違法であります。私はこれは債務であるか援助であるかということは、あなたの珍学説では承認しない。なかなか大蔵大臣もお苦しいだろうと思うから、私は追究しないのですけれども、しかし問題の処理の仕方としては、これは債務確定した後において、予算に計上される、そうしないと悪い例を残します。私はどうしても国がこれを支拂わなければならぬというものであるならば、外債とともに、こういうふうな債務は、やはり日本の信用上きれいにしなければいかぬと、こう思う。それは国会の承認を得られて——、大体どれだけの額が何年間にどれだけ支拂えばいいのだ、この支拂いに日本の経済がたえられるかという大体の見通しがついた後に、その債務の承認を、国会の議決を経た後において、追加予算なり、あるいは——私はこれは政治的折衝だと思う。二十八年度、二十九年度から支拂いの実行に移るということであれば、今あわててここに予算を組まなければならぬという理由は、どこにもありません。従つて日本大蔵大臣としては、そういうふうな違法にまぎらわしいような、しかも悪例を残すような、しかも日本の自主性を失うような財政のとり方というものを、この平和処理費と申しますか、この中から削られて、そして新しくひとつ——これは日本財政に関することですから、朝野両党ひとつ胸襟を開いて、ゆつくり話をしたらどうですか。とりあえずこの項目から不確定な債務を削られたらどうか、こう思うのですが、どうですか。
  161. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はあなたの御質問は御意見として承つておきます。しかし今回平和回復善後処理費に対日援助見返り資金を含めて説明したということは、あらゆる観点から熟慮の結果でございます。ただいまのところこれを説明から除く気持はございません。
  162. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、これは形によつては事後承認であり、未確定な予算を組んだという悪例をあなたは承認なさる、そういうことでありますね。
  163. 池田勇人

    ○池田国務大臣 来年度中には、確定することを予定いたしまして組みましたのでございます。
  164. 西村榮一

    西村(榮)委員 議論になりますから省きましよう。予定して予算をこれからぽこぽこ組まれたら、国はたまりません。国民は千上つてしまいます。そういう悪例は、将来ある池田君のために慎まれたがよかろう、私はそう思います。  次に私は、これは岡崎国務大臣がおられれば、相関連して質問したいと思うのであります。しかし財政と経済に関することだけを、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。私は先般中国問題について、総理大臣の御見解を承りました。そのときに、こまかい話はしなかつたのでありますが、けさの新聞にも出ております。この国民政府承認の結果、中国共産党地域との貿易がまつたく杜絶するということは、常識上判断できるのであります。で、私はそのことのよしあしということについてはあとで議論いたしますが、ただここに大蔵当局にお伺いしておきたいことは、中共貿易を日本経済の起死回生の策なりと考える人もどうかと思いますが、少くとも日本の今日の状態において、アジア大陸との貿易を無視して、これはわずかに四%しかないのだ、問題は簡単だ、そんなに重要視する必要はないと軽く見ることもできません。日本とアジア大陸との関係は、イデオロギーは別といたしまして、これはきわめて重要視しなければなりません。そこでとりあえず私はあなたにお聞きしたいと思いますことは、中国から鉄鉱石を輸入いたしますれば、大体トン当り十三ドル、アメリカから輸入いたしますと、二十四ドルないし二十七ドルかかります。また強粘結炭は中国から入れれば十七どル、アメリカから入れれば約二十五ドルから二十九ドルかかります。これは非常に日本の基礎産業の生産コストを高めまして、あなたがけさの答弁で言はわれた日本の生産の増強と産業の発展を阻害するということは、ほかにも理由がありますが、ここに大きな基礎的原材料のコスト高というものが、日本産業を圧迫し、国際競争力を削減しておる、従つてこのアジア大陸との貿易を禁止された結果——私はいいとか悪いとか言うのじやない、財政当局としては、政府としては、この国際政治の観点から中共貿易を禁止せざるを得なくなつた今日の状況において、この補いを一体どこでつけるかということを、具体的に考えておかなければならぬ。私の言うことは、中共から買うよりも、アメリカから買う方が倍もかかるこの補いを日本の産業のために、どうつけてやるかということを、財政当局としてひとつ御説明を承つておきたい。
  165. 池田勇人

    ○池田国務大臣 中共との貿易が再開されれば日本の経済にとつて、よりよいということは、何人も否定できないと思います。ただ今のお話のように、強粘結炭にしましても、これはアメリカの方が運賃、その他高くなりますし、品質の点もある程度あるのであります。しかしいずれにしても、先ほど申し上げましたように、再開されればベターであるということは私も認めます。しからばベターであるところがやれぬために、日本の経済にある程度の悪影響を及ぼすのをどうやつてカバーして行くかという問題、これにつきましては、われわれ実はいろいろな点を考えておるのでありまするが、具体的に申し上げかねます。
  166. 西村榮一

    西村(榮)委員 具体的に申し上げかねますと言われると、私はどうもそれ以上気が弱くて、あなたを追究することはできないのですけれども、しかし日本の経済というものは現実に生きている。あなたはいつも経済は生きものだ、こう言われる。今ぴちぴち生きている。しかも今のような苦悶の中に日本の産業が参つている。これを補う方法をつけてやらなければ政府は親切と言えません。しかも政府の国策は、アメリカの国策に従つて中共貿易を禁止している。従つて当然それは何とか方法を講じてやらなければならぬ。けさほどの質問によつて明らかにされたところは、今までの対日援助費は債務として確認すべしという主張を受けておる。政治的借款はまだ海のものとも山のものともわからない。高い材料はこつちから持つてつてやる。しかもドツジさんの仰せに従えば、日本の製品は国際価格よりきわめて高い。こういうふうなことは、これは日本の産業家並びに労働者がなまけておるし、産業家は頭が悪いのだというふうな御官許なんだ。ところがあにはからんや、これは原材料を高くアメリカから仕入れることにその根本的な原因がある。これを解決してやらなければ、どうして日本の産業が立つて行けるのですか。あなたが今説明することができないというのは、説明する時期ではないのか、説明する具体策がないのか、どつちなんです。
  167. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは対外関係の問題でございますので、私から説明しない方がいいと思いますし、またその術に当つている人も、こういう問題を具体的に申し上げるということは遠慮すべきだと思います。従いましてわれわれは中共貿易の杜絶しておることによりまする損害をできるだけカバーして行く、今鉄鉱石の問題でも、最近はアメリカのものを入れましても、大体国際価格と同じところくらいで、実は買注文も来ておるような状況であるのであります。
  168. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はあなたがそのことが説明できないのは、説明する段階に入つてないのか、説明する材料を持つていないのか、まあどつちかでありますが、私は追究しようとは思いません。ただ問題になるのは、アメリカの国策上、日本が中共貿易を禁止されて、それだけマイナス面が生じて来ておる。このマイナス面の補正の方法、補い方を今政府はアメリカと折衝されているかどうか、折衝されている事実があるかどうか承りたい。
  169. 池田勇人

    ○池田国務大臣 中共貿易が、経済的にはやりたいのでございまするが、政治的にいろいろな点があるから、日本政府としましても、国連協力の立場から、軍需物資と申しまするか、そういうものをとめておるのであります。やつて悪いと——軍需物資以外のものにつきましては、何も絶対的に禁止しておるわけではないと思います。しこうして次に、中共貿易ができないから、これに対しての補償を、アメリカその他に向つて交渉しておるかどうかという問題につきましては、お答えできません。
  170. 西村榮一

    西村(榮)委員 国連に協力する結果、国連が、あるいはアメリカが、中共に対して輸出を禁止しておる品目が三十二種類ございます。従つてわれわれは国連に加盟を希望し、国連協力によつて、自由と民主主義を守ろうとするならば、その国連の決議を尊重せねばならぬと思います。けれども日本が今回台湾政府を承認することによつて、国連の規定された以外の貿易も停止されて来るという結果が政治的に生ずる。だから私は中共問題、中国国民政府の問題については、後に岡崎国務大臣にお伺いしたいと思うのですが、経済の問題からいえば、国連の協力事項以外、並びにアメリカの禁止事項以外の貿易も、台湾政府承認によつて、これが禁止されざるを得ない現実にぶつつかつてしまつた。だから私がその補い方、その補正の方法をどうするか、これを先ほど御質問申し上げたのは、そういうふうな立場に立つておるのであるから、現実は現実としてこれを見て、その日本の産業のマイナス一面、ひいては日本国民生活の問題日本国民経済の問題、この補い方を、アメリカと折衝されておる事実があるかどうか。また折衝されておれば、その具体的な事実を可能な限り示していただきたい。そうしないと、日本国民は非常な不安と疑惑と、そして日本の産業界も得心が行かない。この疑惑を解いてやることが政府の責任ではないかと、私はこう思う。
  171. 池田勇人

    ○池田国務大臣 具体的の折衝を始めておるか始めていないかという問題につきましては、私から答えられませんと、こう言つておるのであります。しこうして私は、日本経済の復興のために、外資導入がぜひ必要だということで、その線に向つて努力はいたしております。
  172. 西村榮一

    西村(榮)委員 あなたがお答えができぬということであれば、私は深くそのことはお伺いしません。別の機会に所管大臣に承りたい。ただ私が国務大臣としてあなたにそれと関連してお伺いしたいことは、ゆうべの夕刊ですか、きのうの朝刊にも出ておりました。国民政府との間においては、講和草案の起草ができて、すでに河田全権が十四、五日ごろそれを携行して台湾におもむかれる。今朝の新聞で見ると、台湾政府の外交部長が、大体においてそれは承認できるものである。いわゆる一定地域の限定承認として、それはできるものであるというような報道がされておるのでありますが、これは過般の説明とは大分違つてつて、案外早く吉田書簡が不幸にも実を結ぼうとしておる。私は不幸にもと申し上げたのですが、不幸にも実を結ぼうとしておる。この事情について、所管大臣ではないが、一半内閣ですか、ワン・ツー内閣ですか、とにかく総理の次におれはえらいのだと任じておられる池田君は、ひとつ国務大臣として、その事情を明らかにしてもらいたい。
  173. 池田勇人

    ○池田国務大臣 河田さんが行かれること、並びにある程度の書類を持つて行かれることは聞いておりますが、国務大臣としてよりも、その衝に当つておる人がお答えした方が正確だと思いますので、私からは保留いたしたいと思います。
  174. 西村榮一

    西村(榮)委員 しからばその問題は私は深く追究いたしません。そこで私は国務大臣としてのあなたにお聞きしたいと思いますが、五日付のロイター特電によると、イーデン外相はイギリスの議会において、日本の国府承認については米英の意見は一致せず、こう述べておる。同時に言葉を次いで、私は日本が被占領状態にある間に、ある政策に対して確たる約束をしてしまつて、その後になつてその政策が不利益になつた場合に、占領国を恨むようなことのないことが大切だと思つている、こうイーデン外相がイギリスの議会で声明された。あなたの御感想はいかがですか。
  175. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私の感想は申し上げない方がいいと思います。
  176. 西村榮一

    西村(榮)委員 国務大臣としての御感想を承りたい。
  177. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう新聞に載つた英国の責任者の言を、国務大臣として批評がましい感想は申し述べたくないと思います。
  178. 西村榮一

    西村(榮)委員 しからば新聞の記事はやめておきましよう。私は国務大臣としてのあなたにお伺いしたいことは、大西洋憲章第二項に、将来戰争が終つて領土が変更する場合においては、その住民の自由なる意思によつて決定されるというのがあるか、この大西洋憲章第二項をあなたはどう解釈されますか。
  179. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大西洋憲章を十分読んでおりませんので、その條項だけでとやかく言うことは差控えたいと思います。
  180. 西村榮一

    西村(榮)委員 それならば別な観点からお伺いしてみたいと思うのですが、従来の例からいつて、ある国が合法的な手段によつてその政権の異動が行われずして、暴力あるいは革命、戦争によつてその政権の変更が行われたときに、その政府は前政府締結した外交上の約束というものを継承する権利があるとお考えになつておりますか、あなたは財政家でありますから、特に財政上の品問題について、ないとお考えになつておりますか。
  181. 池田勇人

    ○池田国務大臣 よく御質問の点がわかりませんので、お答えは遠慮したいと思います。
  182. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは私は国務大臣にお尋ねしておるのでありますが、先ほど来のあれは一つお答えにならない。案外池田君も副総理をもつて任じておられるにかかわらず、どうも度胸がないと私は思つて感心しているのですが、しかしながら私は中国問題については財政の問題だけに局限して質問していたのですが、今度はその財政も含めて中国問題あるいは経済問題から発生する財政その他をひつくるめて、岡崎国務大臣質問いたします。外交問題についての質問は、私は岡崎国務大臣にいたしますから、留保させていただきます。
  183. 塚田十一郎

    塚田委員長 けつこうであります。
  184. 西村榮一

    西村(榮)委員 次に私は大蔵大臣に御質問申し上げたいのですが、本年度予算に提出されておる防衛支出金並びに安全保障諸費の審議に際しまして、必要なる資料として次の参考資料を提示していただきたい。これは国会の審議の基礎となるのであるなら、提示してもらいたいということの要求をいたしておつたのでありますが、まだその参考資料を提示されてない。私が要求いたしました参考資料は、一、防衛支出金並びに安全保障諸費の支出対象となるべきアメリカ駐留軍の兵力規模並びに両国の負担すべき比率、二、アメリカが相互援助條約を締結せるヨーロツパ並びにその他の諸国がアメリカ軍駐留に際して分担せる各国の予算上の金額、三、ヨーロツパ並びにその他の諸国と相互援助條約を締結せる諸国に対して、アメリカから與えている各国別の軍事援助費の金額並びにその援助を受ける諸国の軍事予算における比率、この三点の資料の提出を私は数日前から要求しておるのですが、なぜ予算審議に際してこの三つの資料を御提出にならないか。
  185. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 一応取調べますが、なかなかむずかしい書類であるいは困難ではないかと思います。
  186. 西村榮一

    西村(榮)委員 この三つの資料が防衛支出金、安全保障諸費の審議に際して必要であるとは大蔵大臣お認めになりませんか。
  187. 池田勇人

    ○池田国務大臣 あればいいと思います、それで極力探しております。しかしこれはアメリカと関係国との間のことでございますから、アメリカその他の関係国が発表しないとわかりません。しかし予算上の防衛費の金額、こういうようなものは至急取調べたいと思います。
  188. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうするといまだにこれらの資料がないということを考えてみますと、一体六百五十億円あるいは五百六十億円という莫大な防衛費を政府予算計上された、そろばんをはじかれた基礎は一体どこにあつたか。私の言わんとすることは、アメリカの駐留軍の兵力規模、それらも不明である、各国の例も不明である。あるいは第三番目においてアメリカが援助を與えておる軍事援助費も各国の例はなお不明である。数字に明るい大蔵大臣が頭に記憶がないといわれる。あなたはもう一銭一厘でも記憶されて、あたかも議員を教えるがごとく、威喝するがごとく今まで答弁なすつてつた。そのあなたの数字的答弁というものは世界各国定評になつておる。この数字に明るい大蔵大臣がこの莫大なる防衛費の問題を審議するにあたつて、頭に一つも数字の記憶がないということであつたら、どれを基礎にしてあなたはこの防衛費というものをはじき出されたのか。
  189. 池田勇人

    ○池田国務大臣 防衛支出金というのは、これは米国軍が日本に駐留した場合におきまするこちらの支出金でございます。それは大体どういうふうな方法で負担し合うかということは、行政協定できまる問題であります。これはたとえば終戦処理費とは性質は違うのですが、大体実際は今までの米国軍が駐留するのでございますから、負担につきましても今までのような費目になると思います。内訳は二十数万人の労務者の費用あるいは鉄道運賃、通信料、備品費、需品費、光熱費、こういうものであります。そこで日本の負担する分の鉄道運賃あるいは電信料金、電話料金、需品費、備品費にして、光熱費、あるいは労務者の費用をアメリカにするか、あるいは総体を半々くらいに出すかというのは、まだきまつておりませんので、支出の費目は大体今申し上げたような米国駐留費が日本において支拂う費用の大体半分というところで見ているのであります。  それから安全保障條約による諸費の分は、これは六大都市に福岡を加えまして、主として七大都市に今駐留しておりまする米軍が、その大都市を離れるにつきましての必要な経費、これは兵舎の建築とか住宅とか道路とかあるいは電信、通信の施設費とか、こういうものが主たるものでございます。別に保障費五億程度を見込んでおります。治安確保のための機構に要する費用を見ているのであります。この安全保障諸費というものは特殊のものでございまして、外国にはあまり例がないのであります。これは大都市に駐留しているのを郊外に移らすための費用が主なるものであります。
  190. 西村榮一

    西村(榮)委員 行政協定はいつごろ成立いたしますか。
  191. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは岡崎国務大臣にお聞き願いたいと思いまするが、私の見るところでは、行政協定自体は相当早くきまるのではないかと思います。しかしそれに基くまたいろいろな点があると思いまするが、これには相当の時間を要するのではないか。なるべく早くきめるように岡崎国務大臣は努力しているようであります。
  192. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、行政協定が成立しなければその細目がわからぬのでありますから、行政協定が成立するまで、この予算的処置も残されたらどうですか。そうしないと、大体財政の見通しがわかないのじやないですか。
  193. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は防衛支出金につきましは、大体この程度の分は、私と向うとの話合いが——そのどの費目をどつちが持つかということはきまりませんが、輪廓的には大体きまつている、話がついていると思います。
  194. 西村榮一

    西村(榮)委員 行政協定の内容がわからないで、あなたが予算上の折衝で、大体の見当がつくという根拠は、私にはちよつとわからないのです。もちろん行政協定という基礎的なものができ上らないのに予算を組んだということについては、私はこれは違法だと思います。けれどもそれは別な観点から論ずるにしても、この基礎的なものが成立しないのに、先ほどの対日援助費の返済費と同じように、これまた腰だめ的にあなたが予算に組まれたという根拠は、一体どこにあるか。これを私は国政の審議の上において憂えるから、三点の前例と、駐留軍の規模と、そして大体これで行くのか、足らないのか、あるいはもつとふやさなければならぬのかというふうな——国際の情勢によつてはふやさなければならぬ場合があるのでしよう、場合によつては、行政協定の内容によつては、これは半減してしかるべきものがあるでしよう。私はこの間総理大臣にも申し上げたように、これは日本が負担すべき義務はどこにもない、こう思つているのです。しかしそのことは別問題として、仮りにそのことは負担する義務があるとしても、その内容の規模がわからぬのにどうして予算が組めますか。私はあなたの御説明がわからない。
  195. 池田勇人

    ○池田国務大臣 防衛支出金につきましては、ただいま申し上げたような内容のもので積算して六百五十億円になると私は予定いたして、御審議願つているのであります。しこうして行政協定の内容にきまりますのは、今申し上げました各種目のうちに、不動産の賃貸料が出ておりましたが、不動産の賃貸料は日本で負担することは、大体そういうふうになると思います。これはアメリカには相互安全保障法がありますから。その他の費目につきましては、どういうふうな負担のしかたにするかという問題でございますが、金額は大体半々にまとまるものと私は考えております。
  196. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はこの前申し上げましたように、この防衛分担金はまず第一にアメリカが、日本を防衛するという法文上の義務規定がない。これはアメリカの国防上から来るところの、日本への駐兵権の要求であるから、わが国は防衛金の負担をする義務はない、私はこう今でも確信しております。同時に先般ここでごらんなさいと池田さんに申し上げたけれども資料をごらんになりませんでしたが、その資料においても日本の防衛金のような分担の仕方というものは各国にはありません。今あなたは不動産と言われたけれども、これは基地の提供は無償ではいたすが、個人に対する補償はアメリカ軍自身がなしている。私はここにあなたに重ねてお尋ねしておきたいと思うことは、ひとつ日本財政家として考えてもらわなければならぬことは、この行政協定というものが成立した後において、私は初めてひとつ明確な予算を組んでもらいたい。私は防衛支出金は反対でありますが、かりにこれを承認するとしても、その防衛支出金と内閣がしばしば言われた日本の自衛力の漸増計画と相にらみ合せて、国民の負担がどの程度まで耐えられるか、相関連して日本の自衛力の問題として考えてみなければならぬのでありますから、私は行政協定が成立するまで、この費目はたな上げにしておく方が日本財政と将来の悪例を残さないためにいいと思いますが、大蔵大臣どうでしよう。
  197. 池田勇人

    ○池田国務大臣 いろいろな考え方があると思いますが、八千五百二十七億円の歳入が見込まれる。内政費の方で六千四百九十億円が見込まれる。そこで警察予備隊、海上保安庁あるいは防衛支出金あるいは安全保障諸費、こういうものの内訳を出さずにひとまとめに組んで、歳入の方の御審議を願うと同時に内政費の方の御審議を願い、そうしてその他のものは歳入超過金として御審議を願うというやり方もあると思いますが、私はそういうやり方をやらずに、一応見通しのつくものは見通しをつけて御審議願つた方が適当であるという考えのもとに、行政協定の内容になるものを、一応頭に全部ではございませんが入れまして、そうして財政面から関係方面との折衝をして、今の警察予備隊、海上保安庁あるいは防衛支出金あるいは安全保障諸費とごう組んで、そうしてそのものの内訳はこういうものでございますが、これをどつちの負担にするかということは、今でも終戦処理費のうちで、昨年の八月から向うがある程度負担し、こつちが同額程度負担している、そういうようなやり方で早く大体の防衛支出金とか、警察予備隊とか安全保障諸費とわけて御審議願つた方が適当だ、こう考えて出したわけであります。
  198. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうしますと、ただいまの御答弁によりますと、大体行政協定の内容も輪郭がわかつている、だからこの予算を組んだのだという御答弁でありますが、それなら可能な限り行政協定の内容が財政面に影響を及ぼす点だけは——行政協定の全般は岡崎国務大臣から御説明を承りますが、大体はあなたが予算を組まれたんだから、これはあなたの自主的な考え方で、予算を組んだとするならば、行政協定が財政に及ぼす影響、その片鱗だけでもひとつ御説明願えませんか。
  199. 池田勇人

    ○池田国務大臣 それは先ほど申し上げましたように、不動産の賃貸料は一応こつちが出す。その他の分については大体半々、こうなりますと、不動産の賃貸料だけこつちが多くなりまするが、私はそれを多くしないように、向うからある程度出すことを期待いたしておるのであります。大体原則は半々ということにきまると思います。
  200. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると原則論以外にはわからぬのですね。
  201. 池田勇人

    ○池田国務大臣 原則論と、金額の六百五十億円というのは、大体ここではつきり申し上げられると思います。
  202. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は委員長との約束が三時でありますし、大蔵大臣も少し勉強したいというお話でありますから、これ以上しつこくねばることは省略いたしまして、なお外交上の問題が残つておりまするから、私は外交上の問題については、ひとつ岡崎国務大臣質問したい、こう思つております。ただ先ほど来の質疑応答において明確になつたことは、この防衛費といい、対日援助費の債務確認の問題といい、平素の大蔵大臣の答弁に似合わない自信の喪失であります。この自信の喪失というものはどこから来ているか。私は六百五十億円、五百六十億円という、二つの千二百十億円という予算を組む上からは、当然それに伴う基礎的な資料と確信とがなければならぬのにかかわらず、それが欠けている。私はここで言いたくはないのでありますが、その資料の提出を求めたのはどこにあるか。私は日本政府を援助するためにこの資料の提出を求めた。過日日本大蔵大臣が、アメリカの某大佐に向つて、この防衛費の予算を組み、安全保障諸費の予算を組むに必要なる資料を出してくれぬかということを要請したのでありますけれども、いずれそれをまとめて渡してやるということの口約束を軽くして、その後いよいよ本格的なこの二つの予算を組まなければならぬというときにおいて、国会の論議も出るというので、その資料の要求に行つたときには、それは軍事上の機密として、渡すわけにはいかぬということで断られたとも聞いている。私はそれは日本政府の名誉のために言いたくはないのでありますが、それを考えてみると、この六百五十億円ないし五百六十億円という、二つの千二百十億円というものは、きわめて不安定な、不確定な上に編成された予算であり、それは後に憲法上の大きな疑義が生ずるところの対日援助費の債務の確認の問題と相関連いたしまして、私は日本の政治の自主性ないしは日本財政当局の自主性のために、かようなうわさの出るということを、はなはだ遺憾に思うのであります。  そこで私は最後に重ねて大蔵大臣にお伺いしておきたいことは、解釈のあいまいなるものは、アメリカ側に立つて有利に解釈しないで、太平洋戦争、第二次世界戦争などというものは、歴史上そんなに前例はないのであります。この前例のない中から一つの戦後の処理をしたのでありますから、前例を破るものが多くある。しかも解釈の不確定のものがたくさんある。国際法上において割切れないものがたくさんある。そういうときには日本の側に立つて有利にこれを解釈して、国家百年の大計を悔いなき状態において、予算を編成することが、日本の現下の財務当局として、当然考えなければならぬ国家に対する忠誠なる行動だと思うのであります。そういうことから考えてみますならば、この行政諸費並びに債務の問題、これことごとく不確定の問題であります。腰だめ的なものであります。何らの資料がない。だから私はここに大蔵大臣に重ねて申し上げておきたいことは、かような不確定な財政支出というものが、厖大な比重を占めている本年度の予算は、これは講和後における独立財政とは言い得ません。これは自主的な財政ではありません。従つて私は、これはやはり占領治下においてやむなく組まされた財政であるというので、一時暫定予算を組まれて、そして講和條約が発効した後において、真に日本の自主的な判断において組み得る状態のもとに、政治的、国際的に日本が独立したときに本予算を組むべきものである、こう考えるのでありますが、大蔵大臣の御感想はいかがですか。
  203. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アメリカと各国の間の防衛分担金と申しますか、こういうものにつきまして関係方面の方が、資料を渡そうと言われたことはございません。初めから向うは軍事機密で資料はない、こう言つておるのであります。  次に本予算は自主性がない、あるいは暫定予算のようなものだとおつしやいますが、私は私の信ずるところで、自分の気持にぴつたりする案としてこしらえておるのであります。それは総額八千五百二十七億円というのは、今回私の考え通りであります。内容におきまして、平和関係処理費あるいは安全保障諸費との間にいじくりはありましたが、防衛支出金の六百五十億円は、初めからぴたつときまつておる。警察予備隊並びに海上保安庁の六百十億円、これも初めからぴたつときまつておりまして、折衝中に何ら異動はなかつたのであります。六百五十億円の防衛支出金については、初めから確信があつたのであります。警察予備隊につきましても、一切動いておりません。ただ平和回復善後処理費の問題と、今の安全保障諸費の分に少しのいじくりがあつただけであります。それは進駐軍が都市外に出て行くこと等を考えまして、少し程度のいじくりがあつたのでありますが、自分の信ずるところで私の思う通り予算ができたと、私は確信しておるのであります。
  204. 西村榮一

    西村(榮)委員 時間がありませんからこれで質問を終ります。外交問題については質問を留保いたします。ただ最後に申し上げたいことは、今確信のある予算であると言われたが、確信があるかないかということは、後世わかるのでありまして、財政法の違反を犯し、かつまた予算を組むにあたつて、各国の資料の実情をも見きわめずして、他国の言いなり次第に編成された予算である。あなたが豪語するほどぴたりと行つておる予算とは思つておりません。これは議論になりますからこれにて打切つておきます。
  205. 塚田十一郎

    塚田委員長 有田委員より議事進行について発言を求められております。この際これを許します。有田二郎君。
  206. 有田二郎

    ○有田(二)委員 先般の総理大臣に対する質疑の際、本委員会における社会党の権威者である西村委員から、大蔵大臣に対する質疑の中に、ただいまお話になつてつた件に関する資料の問題について応答があつたのであります。速記によりますと、その際に西村委員大蔵大臣に、「あなたはどこでお調べになつたか、私の調べたのは政府の調べたものです。これを上げましよう。」かように西村委員はおつしやつたのであります。さらにまたその後において、「私はここに資料がある。上げましよう。政府の資料だ。上げましよう。どこにもない。受取りなさい。これを見て答弁なさい。どこにあるか。」かように言われて、「しかも、これは政府の資料だ。上げまよう。受取りなさい。これで答弁なさい。」かように重ねて西村委員はおつしやつたのであります。それに対して大蔵大臣は、「私はあなたの資料があればあとで拜見いたします……。」かように答弁されておるのでありまするが、さらに西村委員は、「私は大蔵大臣ははなはだ御多忙であろうと思つたから、ここに政府のお調べになつた資料があるから、政府の資料によつて答えなさい。これをわざわざ私は差上げると言つておる。しかるに資料は当てにならぬとおつしやる。何が当てにならぬですか。」かように西村委員はおつしやつておられるのであります。従つてこの問題は、本委員会の権威に関しても、片や社会党の大蔵大臣といわれる西村委員、片や自由党の池田大蔵大臣、この両巨頭の質疑応答によるところの問題の資料が、本委員会の権威にかけても必要であるし、われわれ予算書としても、ぜひ参考にいたしたいと考えまするので、この点委員長にしかるべきおとりはからいを願いたいと思います。
  207. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいまの議事進行につきまして、委員長よりお答え申し上げます。委員長は、いずれ理事会にお諮りいたしまして、適当の措置を講ずることといたします。     —————————————
  208. 塚田十一郎

    塚田委員長 お諮りいたします。本委員会の審査上の参考に資するため、日本銀行政策委員会委員長日本銀行総裁一萬田尚登君を参考人として出席を願いまして、意見を聽取いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 塚田十一郎

    塚田委員長 御異議がなければその通り決します。  本日の会議はこの程度にとどめまして、明九日は午前十時より委員会を開会して、質疑を継続することといたしますから、これにて散会いたします。     午後三時二十三分散会