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1952-02-07 第13回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月七日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林山榮吉君    理事 小峯 柳多君 理事 苫米地英俊君    理事 西村 久之君 理事 井出一太郎君    理事 川島 金次君       淺利 三朗君    天野 公義君       井手 光治君    江崎 真澄君       江花  靜君    小川原政信君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       角田 幸吉君    甲木  保君       川端 佳夫君    北澤 直吉君       志田 義信君    島村 一郎君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       玉置  實君    中村  清君       中村 幸八君    南  好雄君       宮幡  靖君    今井  耕君       川崎 秀二君    竹山祐太郎君       中曽根康弘君    早川  崇君       岡  良一君    水谷長三郎君       風早八十二君    梨木作次郎君       山口 武秀君    横田甚太郎君       稻村 順三君    成田 知巳君       世耕 弘一君    石野 久男君       小林  進君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣  高橋龍太郎君         厚 生 大 臣 吉武 惠市君         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         外国為替管理委         員会委員長   木内 信胤君         外国為替管理委         員会委員   大久保太三郎君         宮内庁次長   宇佐美 毅君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 永山 時雄君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商振興局経         理部長)    石井由太郎君         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月七日  委員岡良一君、藤田義光君及び横田甚太郎君辞  任につき、その補欠として水谷長三郎君、竹山  祐太郎君及び梨木作次郎君が議長の指名で委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算  昭和二十七年度特別会計予算  昭和二十七年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 会議を開きます。  本予算の各案を議題に供します。  これより質疑を継続いたします。北澤直吉君。
  3. 北澤直吉

    北澤委員 本日は二十七年度の予算及びこれに関連する財政経済政策につきまして、政府にお尋ねをしたいのであります。特に私は国際的の観点重点を置いてお尋ねしたいと思うのであります。ただいま通産大臣がおいででございますから、まず通産大臣からお尋ねいたします。  御承知のように国民待望平和條約も調印せられ、また日米安全保障條約によりまして、日本講和発効後における安全が保障されたのでありますが、今後に残る問題は、いかにして日本経済自立達成するか、いかにして日本が真の独立国として経済の面においても一本立ちになるかということが、今後の日本に残された最も大きな課題であると私は思うのであります。経済自立の点から申しますと、いろいろの問題はあるのでありますが、何と申しましても日本正常貿易発展ということが、私は日本経済自立達成の上におきまして最も大きな問題であると思うのであります。幸いにしまして、朝鮮動乱以来の世界情勢の結果、いわゆる特需と申しますか、朝鮮動乱関係する国際連合軍作戦行動関係ししまして、日本物資の買上げが相当多量に行われまして、今日まで大体米ドルに換算しまして五億ドル見当の特需収入があつたというふうにいわれておるのでありますが、この特需というものも、朝鮮動乱の今後の推移いかんによりましては、必ずしも従来通り特需というものを期待できないと思うのであります。新聞報道によりますと、朝鮮停戦協定も大体妥結の一歩手前に来ておるのであります。こういう点からいたしますと、朝鮮動乱関係する特需収入というものは、そうたくさんを期待できない状態になつておると思うのであります。従いまして、どうしても日本経済自立達成のためには正常貿易発展、特に日本正常輸出の増加ということが最も大事な点であると思うのであります。そういう点につきまして通産大臣に伺いたいのでありますが、二十七年度の予算を見ますと、どうも貿易発展輸出振興という観点から申しますと、二十六年度の予算に比べまして少し重点が弱められておるというふうに私は感ずるのであります。たとえば外国為替会計に対する一般会計からの繰入れにおきましても、八百億が三百五十億に減つておる。あるいは輸出入銀行に対する政府の出資が、二十六年度は百二十億だつたものが、二十七年度におきましては七十億に減つておる。あるいは二十六年度におきましては国際通貨基金及び国際開発銀行参加のために二百億を計上しておりますが、そういうものもない。あるいはまた緊急物資輸入資金として二十六年度におきましては二十五億円を計上しておりますが、今回はそれもない。それからまた二十六年度におきましては糸価安定のために三十億を計上しておりますが、それもない。こういう点から申しますと、二十六年度の予算と二十七年度の予算の面から見ますと、日本経済の発達に最も大事な貿易振興の面におきまして、この予算面から申しますと、二十七年度は二十六年度よりも少し重点がずれておる、こういうふうな感じを持つのでありますが、まずその点について通産大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  4. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 日本自立経済達成するために、貿易振興が最も重要であるという御説は、私も同感であります。ところでそれに関係する予算が少くはないかという御説でありますが、私としては、これらの費用は多々ますます弁ずるわけでありますが、現在の財政事情としてこの辺でやむを得ず同意した次第であります。
  5. 北澤直吉

    北澤委員 もちろん国家財政のわくとにらみ合せながら貿易振興予算を計上したのでありますが、どうも私は貿易振興に対する熱の入れ方が足りないのではないかというふうに感ずるのであります。御承知のように、イギリスにおきましては、終戦以来いわゆる輸出振興——エキスポート・オア・ダイというふうなスローガンで、すべての国策重点輸出振興に向けて参つたわけであります。ところが最近におきましては、国際情勢の要請から、イギリスにおきましては、すべてを犠牲にして再軍備の達成貿易振興、この二つの大きな国策に向つてつておるわけであります。そういう意味におきまして、イギリスにおきましては、貿易振興について、予算の面において非常な努力をいたしておるのでありますが、そういうふうなイギリス状態考えますと、私は同じような状態にある日本におきまして、この貿易振興に対する政府予算面における熱の入れ方、金の面における熱の入れ方が足らないのじやないかというふうな考えを持つのであります。いろいろ財政関係もあるでありましようが、今後通産大臣におかれましてはこの日本輸出振興ということが日本経済的生命線であるという点から、ひとつ大いに検討せられて貿易振興に対する予算をたくさんとられるように御努力願いたいと思うのであります。  次にお伺いしたいのは貿易見通しでございますが、大蔵省主計局から出ておりまする二十七年度予算の説明の中には、二十七年度の貿易見通しとしまして、輸出が十六億ドル輸入が二十一億ドル、こういうふうな見込みになつております。朝鮮動乱以来の国際情勢の変化によつて日本貿易が予想以上に進展しましたことは、まことに御同慶でございますが、この昭和二十七年度の輸出入見込み輸出が十六億ドル輸入が二十一億ドル、大体こういうふうに考えて間違いないかどうか、まずこの点を伺いたいと思います。
  6. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 その数字は私の方も同意をいたしました数字でございます。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 そこで伺いたいのでありますが、今の国際情勢から申しますと、なかなか日本貿易の前途にはいろいろの問題が横たわつておる、決して楽観を許し得ない状態にあると私は思うのであります。その一つの点を申しますと、御承知のように日本ドル地域から原料買つて、これを日本製品にしてポンド地域に売る、こういうふうな態勢になつておるわけでございますが、アメリカにおきましては来年度の予算を見ましても、終戦以来最も大きな予算を組まんとしておる。大体八百十億ドルかの予算をことしの七月から来年の六月までの予算におきまして計上せんとしておる。こういう状態から申しますと、これはアメリカにおきましてはある程度物価騰貴というものを考えなければならぬ。特にことしはアメリカでは大統領の選挙があるので、結局政府としましては選挙作戦のために景気をよくするという政策をとらなければならぬので、アメリカにおいては少くとも今年の後半期におきましてはある程度物価が上つて来るというふうにわれわれは見るのでありますが、そうなりますと、ますます日本が買い入れる原料が高くなる。こういうことから申しますと、日本輸出貿易というものはコスト高、特にアメリカから入れる原料値段が高くなつて来る結果、なかなか輸出の面において値段が高くなつてやりにくくなるというふうな面も考えられるわけであります。こういう点につきまして大臣はいかにお考えでありますか、伺いたいと思うのであります。
  8. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 この二十七年度の輸出入貿易数字は全体ではまだ幾らか——一億ドルでしたか受取り勘定になる予定なのですが、あなたの御指摘通り、この内容を検討しますると非常に心配なのでありまして、正常貿易では輸入超過になるわけなのであります。ただいま御質問の、日本輸入方面で最も重点を置くドル区域物価騰貴心配はないか、輸入がますます割高になるのではないかという御指摘はその通りで、それは本年の輸出入とも貿易についてはいろいろな難関があると考え、私も心配しておるのですが、ただいま御指摘の点などもその一つであると同感に存じております。
  9. 北澤直吉

    北澤委員 ただいま大臣お話によりましても、原料高ということから日本輸出貿易の点におきましても問題があるというお話でありまして、こういう点につきましては結局日本国内におきまして企業合理化をして、なるべく日本でつくるもののコストを下げるという以外に道はないのでありますが、そういう点につきまして政府の格段の御努力をお願いしたいのであります。  それからもう一つ伺いたいのは、日本輸出市場として非常に大事な東南アジアマーケットでございます。近来東南アジア経済開発というものが声を大にして各方面で叫ばれておるのでありますが、これがなかなか日本国民の期待するように、東南アジアとの経済関係の拡大ということが進んでおらぬというふうにわれわれは思うのであります。特に最近の状況を見ますと、東南アジア市場西ドイツ製品あるいはソ連製品相当出て来ておる。そうしてこれが日本製品との間にはげしい競争をしておるというふうな情報を聞くのであります。特に機械製品のようなものにつきましては、日本製品に比べて西ドイツ製品あるいはソ連製品が割安であるということから、日本製品に対しまして相当はげしい競争が行われておる。特にソ連におきましては日取近東南アジアマーケットに目をつけて参りまして、最近ラングーンで行われましたエカフエの会議におきましてもソ連代表が出まして、ソ連東南アジア諸国との間にバーターで商売をしようということで、盛んにソ連品物東南アジア進出に対しましていろいろ呼びかけをしておる、こういうふうな状態であります。特に御承知のようにソ連国際労働條約に入つておりません。従つて国際的な労働水準に縛られないのであります。非常に安いコストで物をつくる。言葉をかえて申しますと、ソ連世界市場に向つてダンピングできる立場にある。ところが日本その他の国は国際労働條約によつて縛られておる。こういうことからソ連は、たとえば東南アジア市場におきましても、日本なんかに比べて非常に有利な地位にあるというわけであります。従いましてもしソ連が将来におきまして、相当の力をもつて東南アジアに出て来るということになると、日本商品との競争においても、決してこれはゆだんのできない状態になるというふうに私は考えるのであります。こういう点について通産大臣のお考えをお聞きしたいと思うのであります。
  10. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 ソ連商品進出につきましては、まだ詳細なことを承知しておりませんが、御指摘のような心配があると存じます。また西ドイツは非常に復興いたしまして、輸出が非常に伸びておりまして、もう昨年ごろから地域によつて西ドイツ製品日本競争といいますか、せり合いをしなくてはいかぬ立場になつておるのであります。どうしてもこれは御指摘のように企業合理化、低物価政策をとりまして、日本輸出を保護して行くことが非常に差迫つて重要だと私は考えております。
  11. 北澤直吉

    北澤委員 ひとつ政府におかれましても、そういうふうな国際貿易市場におけるよその国との競争が、今後ますますはげしくなるということによく留意せられまして、日本国内企業合理化その他コストの引下げにつきまして、この上とも御努力を願いたいと思うのであります。  この東南アジア貿易に関連しまして伺いたいのは、最近インドネシアにおきまして通貨切下げその他新しい為替措置とつたようであります。御承知のように現在日本インドネシアに対しまして非常な輸出超過でありまして、インドネシア輸入する品物のうち日本は第二位になつている。相当多量の品物日本からインドネシア輸出しているわけでありますが、今回のインドネシア通貨切下げその他為替措置によりまして、日本インドネシアとの貿易にどういう影響があるか、まだ通貨切下げ措置が報道せられたばかりで、これに対しましてはつきりした見通しがつきかねると思いますが、もし政府におかれましてこれに対する見通しあるいは対策というものがありましたら、この機会に伺つておきたいと思うのであります。
  12. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 インドネシアの問題はまだ詳細にわかつておりません。二月の四日でありましたか、ああいう発表をいたしましたが、実際の取扱方がどういうふうになるのか、まだ詳細はわかつておりませんので、確たる意見を申し上げるわけに行きませんが、御指摘のようにインドネシアに対しては非常に輸出超過になつております。代金の決済も一部分は始終延びております。今度のインドネシア措置が、要するに輸入を制限して輸出を奨励するという観点に発しておるのだと思われますので、輸出の方は、つまりわれわれの方からいえば輸入はやりやすくなると存じております。それからインドネシア日本商品市場割合に基礎ができておりまして、競争という意味からいつて日本としては割合にうまく行つている地方でありますから、日本からの輸出も、現在のところまあ大した支障なく今度の変動に応じて行けるのではなかろうかと私ども考えております。
  13. 北澤直吉

    北澤委員 今回のインドネシア為替に関する措置によりますと、ドル地域から入るものとポンド地域から入るものについて差別待遇をしているという新聞報道もあるのであります。日本インドネシアから申しますとドル地域に入つている、こういうふうに考えるのでありますが、そうしますと日本はほかのポンド地域に比べて不利な待遇を受ける、こういうふうに私は思うのであります。先般サンフランシスコにおきまして調印した対日平和條約によりますと、連合国日本に対しまして、義務ではないけれども最恵国待遇を與えるというふうになつておるわけであります。従いましてこういうふうにドル地域ポンド地域というものを輸入の面においてインドネシア差別待遇をするというようなことは、これはまだ講和條約は効力を発生しておりませんが、対日平和條約の趣旨に反するのではないかというふうに私は思うのでありますが、その点について通産大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  14. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 このインドネシア通商協約支払い協定というものが昨年期限が来まして、現在ではオープンアカウントで、ドル決済するということになつておつたのですが、インドネシアの強い主張がこれをポンド決済にするという主張をかたくとつたために、とうとう話合いができませんで今そのままになつております。今のそれに関係なく、あなたの御意見のようになるべく早くほんとうの通商協約というものをこしらえ、最恵国協定をするということは必要だと私も考えております。
  15. 北澤直吉

    北澤委員 最近のインドネシアの新通貨措置に関連しまして、現在行われている日本インドネシアとの賠償交渉について、インドネシア側において多少の不満があるので、こういうふうな日本に対する一種の差別的措置に出たというふうな新聞報道があるのでありますが、その点はどうでございましようか。
  16. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 私はその賠償影響とは感じておりません。御承知のように、せんだつてインドネシアの使節が参りまして、賠償などの問題の協議がありましたのですが、そのときの空気は非常に理解があるように私は感じております。これらの代表も、将来わが国の復興はどうしても日本にたよらなくてはならない、日本にたよりたい。あるいは工場の施設なども日本援助を得て広く工業を興したいというような発言もありまして、それらは賠償と別の問題でありますから、それらに対しましては日本側十分協力をしようというような話合いで、非常に好感を持つて帰りました。
  17. 北澤直吉

    北澤委員 このインドネシアとの賠償に関連して伺いたいのですが、今度の日本インドネシア日本フイリピンとの賠償交渉におきましても、いわゆる役務賠償ということで両国から日本原料を持つて来て、それを日本工場でつくつて物にして渡すという、いわゆる役務賠償であります。こういうふうな形でやりますと、結局日本フイリピンに対する輸出、あるいはインドネシアに対する輸出に食い込みはせぬか。従来正常輸出において出しておつたものが今度は賠償によつて肩がわりされて、従つてインドネシアないしはフイリピンに対する日本正常輸出は減退する、こういうふうな心配はないのでありますかどうか、この点も伺つておきたいと思います。
  18. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 ごもつともの御意見でありますが、役務賠償正常貿易を阻害しない範囲で、役務賠償でやろうという話合いになつております。
  19. 北澤直吉

    北澤委員 それでは次の問題に移りますが、日本といわゆる共産圏、すなわちソ連あるいは中共との貿易でありますが、通産大臣は従来、中共貿易は非常に望ましいのだということを、車中談その他でよくお述べになつておるのでありますが、この点は少し慎重に願いたいと思うのであります。と申しますのは、御承知のように現在の段階におきましては、日本中共、もしくは日本ソ連との貿易というものは、例のアメリカバトル法とあかるいはケム修正法というような関係がありまして、もし日本中共もしくはソ連戦略物資のようなものを輸出する場合には、日本アメリカから援助を受けられない、こういうふうなことになるわけであります。特に中共に対しましては、国際連合におきまして戦略物資輸出禁止の決議をしておる、こういう段階におきましては、中共貿易あるいは対ソ連貿易というものにつきましては、多くを期待できない状態にあると思うのであります。通産大臣は従来、しばしば中共貿易をいかにも心から希望するがごとくに述べられておるのでありますが、この点は米国との間にきわめて機微な関係がありますので、御愼重に願いたいと思うのでありますが、これについて御意見を伺いたいと思うのであります。
  20. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 私は日ソ貿易日中貿易といいますか、そういうものも望ましいのだということは言つたことはありますが、しかしそれだけをとつて御批判くださることは困るので、そういう発言をしますときには、それにつけ加えていつも言つておるのですが、現在のような世界対立情勢が解消して、どことでも大いに貿易ができ得る日が、一日も早く来ることが望ましいのだと申しておるわけなのであります。実際問題として現在のような国際関係でありますし、現在日本は国連に協力しておるのですから、実際にこれらの国々との貿易が盛んになることは望まれない。これは非常に慎重を期さなければいけないということは御同感であります。
  21. 北澤直吉

    北澤委員 最近日ソ貿易につきまして、ソ連の方からいろいろな誘いの手が出ております。従来ソ連日本に対しまして恫喝をもつて、おどかして、何とかして日本ソ連につけよう、こういうふうな政策とつたのでありますが、いよいよサンフランシスコ会議におきまして、そういう手ではとうていいかぬということで、最近においてソ連平和攻勢でいろいろな方法をとつて来る。特に通商方面におきましては、日本との通商関係をえさにして、そうして日本の人心を何とかしてソ連の方に引きつけようというふうな攻勢に出ておると私は思うのであります。最近でも東京にあるソ連通商代表部がいろいろ運動をされて、あるいは樺太石炭とかあるいは沿海州のパルプ、こういうものを日本によこしてもよろしいというようなことで、盛んに日本側の気を引いておるような状態でありますが、こういうものも、その裏にはいかにして日本ソ連に引きつけようかというふうな、大きなねらいがあつてやることであつて、決して純経済的な行動ではないと思うのであります。あるいは樺太石炭日本に入れる場合には、ポンド決済してもよろしい、こういうことを言つておる。そうすると日本は非常にポンドが余つておるから、それならひとつポンド払つて樺太石炭を入れようというふうな空気財界方面にはあると思いますが、私はこういう意味におきまして、ソ連との貿易につきましては、その裏に大きな手が隠されておるということを、常にお考えになつて善処せられることが必要であろうと思うのでありますが、この点について通産大臣の御意見を伺いたいと思います。
  22. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 御意見通り考えます。
  23. 北澤直吉

    北澤委員 もう一、二点伺つて通産大臣に対する質問を終ります。  現在日本貿易に従事しておる会社は、全国で一万以上もあるというふうなことになつておりますが、国際的な経済におきまして日本が他国と競争して行く場合には、どうしても日本商社の実力を強くし、そして国際的な競争に勝ち得るようにしなければいかぬと思うのであります。現在のような弱体の貿易商社では、なかなか国際的に対抗して貿易発展することはできないのであります。政府はこの貿易商社強化等につきましてどういう考えを持つておられるか。何も昔のような、三井物産とか三菱商事というものだけでいいというわけでありませんが、もう少し日本貿易商社が、よその国の貿易商社に対抗して十分に活動できるように、貿易商社整理統合と申しますか、これによつて強力な貿易商社をつくつて国際場裡に十分の活動をせしめる必要があると思うのでありますが、これに対する通産大臣のお考えを承りたいと思います。
  24. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 私ども通産行政の衝に当つておりまして、今一番困るのは、貿易商社の弱体であることで、資金的にも弱体であるし、信用も弱体化しておるので、日本貿易を盛んにするにはどうしても強力な商社ができなければいけないことを痛感いたしておる次第であります。
  25. 北澤直吉

    北澤委員 最近の新聞によりますと、貿易商社を強化する手段として、貿易商社に外貨を貸し付ける。これによつてその貿易商社経済的な力を強めるというようなことが出ておるのでありますが、貿易商社に対する低利による外貨の貸付というふうな考えを持つておられるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  26. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 外貨を商社に貸し付けるという意見を持つておる人もありまして、そういう意見もぼつぼつ出ておりますが、まだ確定した政府の方針としては一向きまつておりません。これはむしろ輸入を促進するために、今たまつておるポンドを利用する一つの方法として考えられるので、商社をどうするという理由ではないのであります。
  27. 北澤直吉

    北澤委員 最後にもう一点伺いたいと思いますが、御承知のように日本におきましてはポンド相当つており、ポンドの消化には苦労しておるということでございます。従いましてこの過剰ポンドの処理につきましては、なるべくドル地域に対する輸出を増加する。ポンド地域からの輸入を増加するということはもちろんでございます。そういう点でドル地域に対する輸出の増加でございますが、あるいは米国、あるいは中南米という方面に対する日本輸出の増加がこの際最も望ましいと思うのであります。ところが最近アメリカの方では、日本のまぐろカン詰に対する関税を上げようとしておる。もちろんそれはアメリカ国内の産業を保護するというふうなことがあるのでありますが、こういうふうに、日本からの輸入品に対しまして関税の手によつて、これを抑制するというふうな空気が出ておるのであります。こういうことは日本の米国に対する輸出の増進ということにつきまして、相当の障害になると思うのであります。二、三日前からまぐろカン詰の関税の問題につきまして、アメリカの議会で公聴会が開かれ、国務省におきましては何か妥協案を出しておるようでございますが、ひとつ政府におかれましても、こういうふうに、日本品のアメリカ輸入につきまして、関税障壁によつてこれを抑圧するようなことのないように、ぜひ今後とも御交渉願いたいのであります。御承知のようにアメリカにおきましては互恵関税政策をとりまして、お互いに関税を下げるという政策をとつておりますので、今後日本アメリカと通商條約を結び、あるいはさらに進んでアメリカとの間に日米互恵関税協定というふうなものを結んで、日本からの対米輸出に対しましても、関税その他の面において差別待遇とか、あるいはそういう日本に不利な待遇をしないようにやつていただきたいものでありますが、この点に対する通産大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  28. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 ごもつともで、もちろん関税の上ることは、現在輸出貿易を増進する場合には、極力争うて行かなければいけないことは、よく心得ております。まぐろのカン詰につきましても、われわれも極力いろいろな方面を通して阻止の手段をとつております。まだあの問題は、私は必ずしも悲観をしていないのであります。
  29. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 北澤君の残余の質疑はしばらく保留いたしまして、この際農林当局に対する質疑に入ることといたします。庄司一郎君。
  30. 庄司一郎

    ○庄司委員 廣川農林大臣に対して、二、三点簡単なるお尋ねを申し上げ、かつ熱望のあるところを開陳して、御回答を得たいと思います。  ただいま農林大臣が要求されておる農林予算の中には、あるいは土地改良に関して百七億五千万円、その他耕地の根本的な改良、灌漑、用排水あるいは暗渠排水、客土、その他食糧増産の対策上基本的なる農業土木、土地改良関係の総予算は二百億円を越えておるようでありまするが、土地の改良は、もとより農村にとつて食糧増産の対策の上において根本的な問題であることは、あらためて申し上げるまでもないのであります。ところが現内閣—あなたの時代であられたか、根本君の時代であられたか忘れましたが、昨春町村における三百町歩以下の土地改良に関しては、補助はびた一銭出さない、かようなことを御市会になつたのでありますが、全国一万一千の町村の平均からいいまするならば、大体一町村、平均が三百町歩程度であると、水田に関しては私は推定しております。ゆえに国営の土地改良、ただいま農林省が経営されておるのは約三十四箇所でありますか、そういうものを除いたほかに、各土地改良区において、あるいは二千町歩に及ぶ町村関係の土地改良区もありましようし、あるいは一千町歩のものもありましようが、町村單位に三百町歩以下の土地改良の場合は、びた一銭農林省の土地改良に関する補助金が出なくなつたのであります。これは全国の町村長大会において、あるいは全国の農協関係の役員の大会等において、農林大臣がかような御方針をとられておる誤りを是正してもらつて、一町村単位三百町歩以下の土地改良の計画に対しても、適当なる補助助成額を交付してもらいたい、あるいは土地改良を遂行する上において必要なる町村自体の起債のわくを頂戴したいものである。かような熱望であります。これらの決議要望は、まことにごもつともなことであると本員は考えまして、ぜひ農林大臣におかれては、昨年一旦三百町歩以下のものには補助をやらぬという御方針であられたのを今度やるということになれば、朝令暮改のようであるが、そういう朝令暮改であるならば、これはたいへんけつこうなことである、そこでぜひ二十七年度よりは、三百町歩以下の土地改良に対しても、でき得る限り補助を與うること、並びに起債のわくを適当に配分されることができ得るよう、おはからいを願いたいと思うのであります。第二は、食糧増産の上から、農民諸君は非常な熱意に燃えられて、裏作、二毛作をやつておられます。わが国で裏作、二毛作の最も遅れておるのは、東北地方でございますが、その東北地方が五、六年前より非常な熱意をもつて裏作を通して食糧増産をはかつておられます。そういう町村は国の補助は頂戴しない、県の補助はむろん頂戴しないで、農民の涙ぐましい独力をもつて土地を改良して二毛作をやつておる。二毛作、裏作をやるには、御承知のごとく土地を改良して排水が合理化されなければ、二毛作はできないのである。津田が乾田化しなければ二毛作はできない。そこでそういう熱意に燃えて、国のお世話にもならず、県のお世話にもならず、農村独自の力をもつて土地を改良して二毛作をやつておる町村は、今や水田から反当り大麦十俵平均をとつておる。私の町のごときは十俵以上とつておる。そういう町村に対し、あるいは農協に対し、何らか小学校の制度でいえばごほうびの制度はないものでしようか。奨励金であるとか、交付金であるとか、あるいは運動会でいえば優勝旗のような農林大臣の旗をやる、総理大臣の旗をやる、あるいは賞品のかわりに硫安を三俵づつ農林大臣が買い込んで配給なされば、農民は感奮興起して、一層翌年度において増産をはかることは必至であります。こういう意味において裏作、二毛作を政府や県の助力を待たずして自発的にやつておる町村等に対し、何らかの方法で——奨励金制度、ごほうび制度あるいは旗でもいいし、肥料でもよろしい、何らかの方法で彼らを励まし得るような方途を講じてほしい。またかような涙ぐましい努力によつて増産をした増産の幅に対しては、大蔵大臣もおられますが、何とかそこは団十郎の腹芸で、税の点においては全国の税務署長の会議等に指示されて税を特免をする、これを黙認してやる。そういうことはぜひ農林大臣をして、大蔵大臣をしてやらしめたいという念願の上に立つてこの質問をするのであります。  次には二毛作によつて反当り十俵なら十俵の大麦、これは大麦だけではない。そのほかいろんなものを生産しておるが、たとえば大麦の場合において、水田から二毛作によつて十俵以上をとつておる、かような大増産をして模範をたれておる町村は、政府は二毛作の指定町村とし、裏作増産のモデル指定地として指示して、まだ二毛作に着手しておりません農民のよき手本として、一層保護助長するような御方針をとられてはどうであるか。かような意味において、農林大臣の、ひとつ発言を願いたいのである。  それから終りに、大蔵大臣はこれは前国会の末期において、私がお伺いをして、意のあるところはわかりましたけれども、例の麦飯の問題であります。御承知のごとく、ただいま全国において麦の配給の辞退が続出しておる、辞退しているのが三五%、東京都内は七五%麦を食わない連中がある。これは麦の搗清、つき方が悪いためかどうかわからない。また少年の時代から麦飯を食べた経験がないために、成年になつてこれを食べる嗜好がない。食べたかどうかわかりませんが、やや国民は戦時中の食糧不足の時代を忘れてぜいたくになつておる。これは麦食をひとつ全面的に奨励してもらいたい。都内において七五%も麦を辞退しておる。全国において三五%も辞退しておる。それは食いたくないから食わないのであるかどうかわかりませんけれども、年々三百何十万トンの高い外国の食糧を買うて食べておるというお話を聞くにつけても、麦飯は健康の上においてまことによろしい。わがはいは体重十九貫、少年時代から麦食の結果であると私は考えておるのであります。こういう点からいたしまして全面的に農林大臣はこの麦食奨励に向つて何らかの施策を講じてほしい。あわせて合計四点でありますが、農林大臣の御回答があれば、まことに幸甚であります。
  31. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 小団地に対する助成は、来年度予算に三十三億円計上いたしまして、町村長会の決議に沿うように努力いたしております。  それから裏作奨励の問題でありますが、すでに盛岡から北の線における限界線の間近における土地において、自力でやつた裏作の農家に対して奨励する意思はないかという話でありまするが、これは十分考えて奨励いたしたいと思つております。  それから麦食率を高めろということでありますが、これはわれわれ好んで、進んで食べてもらいたいと念願いたしておるのであります。配給辞退のあつたところの、單作地帯の米のみとれる方面にも、あるいはまた一般の都会地においても、これを進んで食べるように奨励いたしたいために、子供の時代から食生活の改善をいたすように、文部省等をして、児童からこれを仕立てて行きたいと考えて、さようにいたしておる次第であります。
  32. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 竹山祐太郎君。
  33. 竹山祐太郎

    竹山委員 ちようどきようは農林大臣と大蔵大臣とおそろいでありますから、お二人おられるときでないと伺えない問題を緊急に伺いたいと思いましたところが、委員長のおとりはからい非常に感謝いたします。  簡單に伺いたいのは、新聞で見ますと、農林大臣が非常に御熱心に超過供出の問題について行脚をされておられる。お人柄からいつて、必ず農村もその熱意に感激をして、この窮迫した食糧情勢に対する農村の協力もさこそと私は想像し、国家のために喜びにたえません。ただこの際これに関連して心配になる重大な問題は、超過供出に税金をかけるかかけぬかという問題について、農林大臣御苦心のようでありますが、事務当局の間で話がつかないというようなことが新聞に漏れております。政治は、いつも申すように信頼の問題でありまして、りくつの問題じやない。これはかつて農林省が前に打つた手であつて、それが結果において大蔵省は税金をとつた。これが農民を憤激せしめた根本問題であります。こういう政治をやることが、一番心配の点でありまして、ここまで行くと、税金の多寡の問題じやない。従つて廣川農林大臣は、まさかそういうようなことをやるとは考えませんけれども、これはわれわれ国会の立場から行きましても、もつと良識のある政治を私は望む意味において、農林大臣と大蔵大臣とのお話合いは十分についておるものと想像をいたします。従つてどうか、何も税金の額の問題や、税金をとらないから出してくれという取引関係は、はなはだ好ましいことじやありませんけれども、しかし一旦言い出した以上は、これはあくまでおやりになるつもりと私は考えますが、ひとつ一応両大臣のこれに対する御見解を伺つておきたい。
  34. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 最も農村に理解のある竹山さんからの(「あまりおだてるな」と呼ぶ者あり)お尋ねでありますが、これはあなたの心配通りでありまして、二十三年にこの制度をやつたのでありますが、あとから税務署がほじくつてさつぱり効果が上らなかつた事実があるのでありますが、今度は、非常に政治的に成長をいたしておる池田君が、われわれの考えを了としておられまして、特に池田君から聞きますというと、所得税の対象に超過供出という文字はないそうであります。われわれといたしましては、池田君とまつたく一体になつてこの日本の米食率を引下げないように、また農村が飯米をさいて日本のこの食生活に貢献しようという熱意に対して、政府はまつたく一致してそれに報いたいという気分でおるのでありますが、これを事務的にもつと簡潔にできますように、両省の事務の間で折衝いたしております。あなたの御心配は杞憂に終ることであると考えます。
  35. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。所得のあるところに所得税を課するのでございまして、所得のあるところには税法の命ずるところによつて課税しなければならないことは、これはもう遵法精神からいつて当然のことでございます。しかし片一方で非常に国のために増産に励み、そうしてまた食糧需給をよりよくするために、農民の方が進んでお出しになる場合におきましては、課税上手心を加えるということも一つの政治であるのであります。従いまして今超過供出と言つておりますが、実際上は予算面では集荷委託費で出しておるのであります。今後いわゆる超過供出というものに、どういうふうな方法で金を出すかという問題につきましても、農林省と話合いをしておるのであります。私はこういう趣旨から申しまして、農民の方が自分の食べるものをさいてお出しになつた場合におきましては、課税上十分の手心をいたしたいと考えております。でこれはやはりどのくらいの量が出るか、こういうふうな問題から考えなければならぬのでございまして、どうせこれは二十七年分、いわゆる来年度の所得になるのでございます。手心で行ける場合は手心でいたします。手心で行けないという場合には、適当な措置をとらなければならぬ。方針といたしましては、国策に特に協力なすつた方々につきましては、課税上の手心をいたす所存でございます。
  36. 竹山祐太郎

    竹山委員 政治論議としては、一応関連があるように思いますが、農林大臣の言われる言葉の中に、超過供出というのは大蔵大臣考えていない、こう言うし、大蔵大臣の答弁によりますと、所得のあるところには税金をかける、こう言う。これが今伺うまでもなく、農民は決してばかじやないのですから、そういう雲をつかむような話で、一体納得させ得る農林大臣の御自信があるかどうか、私は端的に申す、もちろん所得のあるところに税金をとらぬという手心をすることが、はたして国民の良識で了解つくかどうかということが非常に問題です。だからこの問題は、私はごまかして行つちやいかぬと思うのです。それを政治だというようなことでやつて行くところに、農民はいつもごまかされて来た。今度の問題についても、今の両大臣の御答弁を伺えば、決して問題は解決をしていない。そういうことで農林大臣おまわりになつても、下の者が非常に迷惑をする。ですから、今大蔵大臣お話なつたように、立法処置をされるか、手心で完全に国税庁はそれをやられるのか。その辺をもう一度両大臣から伺つておきたいと思います。
  37. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 池田君は非常にはつきり言つておると私は解釈いたすのですが、故意にそこは別な考えを加えない方がよろしいと思うのであります。立法措置が必要であれば、立法措置をする。また手心でほんとうに行ける場合には、それによる。こういうのでありますから、どつちへ行つても税の対象にしないように努力をする、こういうことで、はつきりいたしておるのでありまして、私はその考えで参りたいと思つております。
  38. 池田勇人

    ○池田国務大臣 所得税というものは竹山君御承知通りに、自分のつくつた米を食べたから所得税をかけないというわけでもございません。またそれが事前割当の額だから課税する、またそれ以上だから特別の課税をするとかなんとかいう問題ではないので、一反からこの人はどれだけ所得があつたということで課税する。自分の食べる米もあるのであります。しこうして超過供出で自分の食べる米をお出しになつた場合には、すでに課税の対象になつている。これは食うか、あるいは出したというだけである。そこで私は自分の食べるものを節約されて出したという場合、これはもう当然今までも食べるものは税の対象になつているのですから、一反からどれだけお米がとれた、それからいろいろな必要経費はどれだけいつたかということで所得を見るのでございます。その場合におきまして、昔われわれが第一線におりましたときには、誠実な申告をなすつた方につきましては、相当割引いておつたのであります。いわゆる申告容認範囲というものがございまして、今でもある程度ある。たとえば青色申告などにおきましては、経費の見方その他について相当手心を加えている。また昔でも報奨金とかいろいろなものについて経費の見方で相当なかげんをしておつた場合もあるのです。従いまして私は今のようなときに進んでうんと供出なすつた方につきましては、私は税法をまげない範囲内において、ある程度の伸縮を加える。しかし度を越しますと、これはまた不公平になりますから、どのくらいの供出があつて、どういうふうな方法で行くかという問題につきましては、行政上の措置で行く場合には行政上の措置で行く。それでも行けない場合には立法措置をしてもいいわけであります。
  39. 竹山祐太郎

    竹山委員 前段の事務的な御説明は大臣に伺うまでもない。後段の手心で行く場合は手心でやる。立法処置が必要ならば立法処置をするということでありますが、そこが大事な点で、われわれ国会として見れば、立法処置をするならば、早くお出しにならなければいけない。これは農林大臣はまわつてから、来年だから次の国会ででもやればいいとお考えになつているとすれば、いくらそういうことを説明してまわつても、がんこな農民は決して承知しつこないことは御承知通りなんです。だから問題は、供出をよくさせようという熱意、政府に協力をするという考え方で申しているのだから、その場のがれの言葉でお片づけになつても、問題は解決しません。だから立法処置をおとりになるというおつもりがおありになれば、はつきりおつしやつたらどうですか。そうでないと、この問題を国会で論議しても、この結論がついたとはおそらくここで聞いておられる諸君だれ一人了解がつくまい。有田さん自身が、與党からそういう声すら出ておるのであります。これを農林大臣はいかにお考えになりますか。
  40. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 私、元来人がよろしいものですから(笑声)だまされるのじやないかというのですが、私をだましても、農民をだますことはできませんので、これは今池田君がおつしやつたように適宜の処置を講じて農民が満足するならば、そのようにもするし、また立法措置を講じなければならぬものは立法措置を講ずるとはつきり言つておるのでありまして、今事務の折衝最中であります。ここで私たちは英国があの食糧輸入を制限してまで復興に專念いたしておる、こういうような考えからして農村にほんとうに訴えておるのでありまして、農村をだますという気持は絶対にないのであります。もし立法する場合があつたならば、なるべく早い機会に立法をし、またそれをしなくて済むような場合があれば、早くこれを発表するようにいたしたいと思います。
  41. 竹山祐太郎

    竹山委員 大蔵大臣にこれ以上伺つても悪いかと思いますが、事務当局がおられたら、そういう立法処置の準備はどういう段階まで進んでおられるのか、一応伺つておきたい。
  42. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これはどの程度の超過供出があるかによりまして、いろいろな考え方があるのでございます。従いまして、ただいま事務当局でどういう立法をするかということは、まだ検討していないと思います。
  43. 竹山祐太郎

    竹山委員 私はきようの段階においては、これ以上は追求をいたしません。農林大臣の熱意に比べて、政府全体の閣僚の協力態勢というものは私ははなはだ遺憾だと思います。また新聞の伝うるところによれば、農林大臣との話合いを大蔵大臣は事務当局に下していないという今のお言葉をもつてしても、事務当局が答弁ができないということは、何もしていない証拠だと思います。そういうことで一体農林大臣これ以上おまわりになつたところで、はなはだ何ですけれども、農民を説く力にならぬ。小さな問題ではないので、どうかそこは政治的に閣内がもつと重点的に一つやられることを望んでおいて、次の機会にまたその経過を伺いたい。  税金の問題に関連してもう一点伺いたいのは、水あめの物品税の問題であります。これも両大臣の関連のある問題で、農林大臣には申し上げるまでもなく、今日非常にやかましい問題になつておりますのが、今年度のさつまいもがどうなるかということであります。これは自由党の方針であつて、砂糖の統制撤廃をやるのだということで進んで来たために、今澱粉はまさに危機以上の状態にある。数十億の欠損を背負つてどうにもならない。これは戦時中から一番の増産をしたかんしよの量に応じて、外国の砂糖にかわる国内の水あめ等によつてこれを自給する態勢というものができて来ておる。それを手放しの統制撤廃、自由経済の原則に基いて外国の砂糖を無制限に入れるということになれば、弱い国内のこれが代替を持つておつたところのいもというものが圧迫を受けるのは当然の話である。その総合した農林行政といいますか、食糧政策というものが、私に言わせれば、はなはだ不完全である。これは前大臣の責任でありますが、そういう結果、今日いもが非常な危機になつておる。おそらくこのままで行くならば、ことしのいもは一貫目十円以下に暴落をするでありましよう。それで政府はいいとお考えになつておるかどうか。このことについては長いことは申しません。いろいろな対策があり、農林委員会が当然論議をしている問題でありますが、これの対策としてわれわれがやかましく申しておるのは、水あめの物品税をとにかくとりなさい。ところが大蔵大臣はこれに対してはまことに皮肉というのか、やめる方の物品税は顧みないで、砂糖消費税だけを上げてしまつた。これは消費者に負担がかかるだけであつて、これによつていもは決して守られるものではありません。税金をとる方だけはかつてにとつておいて、これの最も反射的な重点であるところの物品税をやめないということは、農林大臣はこの予算案の終結の際にいかなるお考えをもつてこれに御賛成になられたか。
  44. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 米の超過供出の問題について熱意が足りないという話ですが、それはうそであります。非常に熱意を持つております。しかも池田大蔵大臣が事務の方におろしていないというが、それもうそであります。私国税庁長官のところへ行つてよく話を聞いたのでありますが、池田君の気持がちやんと下におりております。ただこれを事務的にどうするかということで一生懸命検討いたしておるようでありまして、そういううそは言わないようにお気をつけ願います。  それからあとのいもの問題でありますが、この物品税の問題も池田君と一生懸命折衝いたしておる最中でありまして、わが党の政調会でも真劔にこれを練つております。総合的な食生活の上において非常に重大な問題であります。そこでこれに対する対策でありますが、物品税の問題も、私はこれをどうしてもとつてもらうように今事務的に話をしておる最中でありますが、それと関連いたしまして澱粉の価格が低落することについての処置も今考えております。大きなメーカー等は協同組合等の価格よりも非常に値を低くして現在売払いしかかつておるのでありますが、これに対する金融措置等についても今事務的に当つておるのであります。そうしてなるべく下げないようにして、いもづくりの農家に迷惑をかけないようにいたすと同時に、またこのいもの利用面について注意を喚起いたしておるのでありますが、昨年は酒造家がいもを買いつける場合に非常に競争がはげしくて、買いつけられなかつた実情等もありますし、なおまたこの前もここで申し上げたと思いますが、いもを主体として酒をつくる場合に、米から発する酵母菌と同様な菌が発見されたということも大きな問題でありまして、それから日本酒をつくるパテントもすでにとつておるようなわけであります。それからまたこれを飼料に転換する方法も考えなければなりませんし、あらゆる点に手を打ちまして、いもつくりの方々に迷惑をかけないようにいたしたいと考えております。あなたの推測の十円説は、これは暴論じやないかと思いますが、私たちの今考えておるところでは、決してそんなことは考えられないと私は思つております。
  45. 竹山祐太郎

    竹山委員 私がうそを言つたということで、はなはだこれは国会議員を侮辱しておると思う。私が言つているんじやない、新聞が書いているんですから、そういうふうに書かせたところには何か煙がなければならぬ。私は決して独断のうそを言つたんじやないですから、御返上申し上げておきます。  それからいもの問題について、私はきようはほかの議員との関係がありますから長く論議をしようとしません。ただ今の答弁の中で目下急速にその対策を練りつつあるということでありますから、これは本予算委員会の審議に重大な影響がありますので、この物品税をはずした値段政府がやられるということであるならば——というよりも、むしろ私は今の御答弁ではそれを考えておられると思いますから、従つて衆議院で終結するまでにその問題をお片づけにならなければ、衆議院は予算の議決をすることが意味をなしません。これは重大問題ですから、どうか衆議院で予算の審議中にこの問題の解決を望んでおきますから、その前に私はまたいずれこの問題を伺います。このことについてひとつ段階における大蔵大臣のお考えを伺つておきたいと思います。
  46. 池田勇人

    ○池田国務大臣 このあめに対します物品税の撤廃という問題は、一応検討いたしたのでありますが、ただいまのところは撤廃しないというので予算をつくつて出しております。しかしこの問題はお話のように重要な問題でありますので、今後も検討を続けて行きたいと思います。
  47. 竹山祐太郎

    竹山委員 もうこれで終ります。これは私は率直に申して、政府が非常に予算編成のときに楽観しておつたということの問題をここに暴露して来た。これは前大臣の問題でありますから、農林大臣かわられて必ずこれは修正をさるべきものだと私は思います。どうか大蔵大臣もその意味において、これを軽々しくやつたら米や麦の問題以上の問題が発生をいたしますから、どうか厳重にひとつこの問題をお考え願いたい。一応私は今日の段階はこれで終ります。
  48. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 北澤君の質疑を継続いたします。北澤直吉君。
  49. 北澤直吉

    北澤委員 それでは私は大蔵大臣に伺います。いよいよ講和條約も効力を発生する一歩手前になつたわけでありますが、これによつて日本独立国となる誇りを持つと同時に、やはり独立国としての責任を果さなければならぬという重大な場面になつたのであります。すなわち国際的には條約で規定されました賠償あるいは外債を支払う、あるいは援助費を支払うという義務があると同時に、国内的には防衛力を漸増して、日本の国を日本人自身の力で守るという義務ができたわけであります。来年度の米国の予算を見ますと、先ほども申し上げたのでありますが、総額で八百五十四億ドル、そのうち七六%が国防費及び対外援助に充てられておる、こういうことであります。またイギリスにおきましても、四十何億ポンドを使いまして、三年計画で再軍備の計画を進めておる、こういう状態であります。二十七年度の日本予算によりますと、防衛力の増加に関する経費は予算の二一%、国民所得の割合から申しますと三・六%ということになつております。ところが世界各国の例を申しましても、これは三十六年度予算でありますが、国防のために使つておる費用が国民所得の、ベルギーが三%、デンマークが二%、スエーデンが三%であります。ところがフランスは七%、イギリスは八%、アメリカは二二%、こういうことであります。従いまして防衛力の漸増、防衛力の強化というためには世界各国とも非常も努力をいたしておるわけであります。従いましてこれが今後の日本経済あるいは財政の面に大きな影響を持つて参りますことは申し上げるまでもないのであります。  そこで申し上げたいのでありますが、従来大蔵大臣日本財政経済について少し楽観に過ぎるような言明をたびたびされるのでありますが、本国会におきます大臣財政演説を見ますと、従来の態度をかえまして、日本経済の弱点を率直に披瀝しまして国民の奮起を促しておる。国民に向つてある程度生活の苦労をしても独立後の日本再建のために努力してほしい、こういうふうに言われておるのでありまして、私この点まことに同感であります。結局講和独立後の日本を再建するためには、国民がある程度の耐乏生活をするのでなければできないと思うのであります。現にイギリスにおきましても、チャーチルの保守党内閣ができましてから、破産の一歩手前にあるイギリスの再建のために非常な努力をしておる。あるいは輸入にしても五億ポンドの制限をしておる。イギリス輸入を制限する場合は、結局これは食糧の輸入の削減であります。現在でもイギリスにおきましては、一週間一人で肉は半斤かあるいは二きれというような状態でありますが、これをさらに一年に五億ポンド輸入を削減するというところまで、イギリス政府におきましては、一大決意をもつてイギリスの再建のために努力しているわけであります。こういうわけでありますので、私は政府におかれましても従来のような楽観にすぎるような態度を改めまして、ほんとうに日本経済財政の実情を国民に披瀝して、国民の奮起を促すようにされたいと思うのでありますが、この点について大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  50. 池田勇人

    ○池田国務大臣 池田は非常に楽観主義だつたが、今度の財政演説は率直に経済の脆弱なところを現わして国民の奮起を促している、こういうのであります。私は実は楽観、悲観とかいうようなことはあまりないのでございまして、今までは占領治下でまあ何と言いますか乗つかつていた経済で、いよいよ独立して一人立ちになるのですから、一ぺん自分のからだを見直したわけであります。私が大蔵大臣になりましたときには、私はほかの場合でも申し上げましたように、チブス患者のようなものである、まず重湯からずつとやつて行かなければならぬ、だんだんおまじりからやわらかい御飯へ、そして今はかたい御飯が食えるようになつたのであります。これで一人前になつたのですが、振り返つてみますと、まだ病気がすつかり直つているわけではない。消化はよくできません。無理のできないまだ弱いからだだ。こういうことをはつきり独立を機会にして国民に訴えたわけであります。お話通りイギリスは耐乏生活をし、なおその上の耐乏を国民に要望しているのであります。われわれもやはり他山の石として、これからこの弱いからだをりつぱな健康体にするためには、相当努力と注意が必要であると考えます。
  51. 北澤直吉

    北澤委員 次に伺いたいのは自衛力の漸増の問題でございます。今回の二十七年度の予算におきましては、日本の防衛力増加及び安全保障のために千八百二十三億を計上しておられます。そこで大臣にお尋ねしたいのでありますが、こういうふうに二十七年度の予算に防衛力増加のための経費を計上する以上は、一体日本の防衛力というものをどのへんまで増加するのか。あるいは三年計画あるいは五年計画というようなもので、一体どのへんまで日本の防衛力は増加するのか。それに伴つて日本財政計画があるいは三年計画、五年計画、この防衛力の漸増の計画がきまつて、そのうらはらの関係において日本の今後数年間の財政計画というものがあるのではないかと私は思うのであります。ただその日暮しの、ことしはこれだけ、明年はよくわからぬということでなくて、一体どのへんまで防衛力を強化するか。従つて今後数年間日本財政計画はどういうふうになるか。その中で防衛の金がどのくらい出るか。こういうふうな大体の見通し政府にあると思うのであります。われわれがこの予算を審議する場合におきましても、この日本の防衛計画の全貌、これに対する日本財政計画の全貌、その輪郭だけでも知つておくことが非常に私は参考になると思うのでありますが、その点についてもし大臣から言明がありまするならばお伺いしたいと思います。
  52. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今北澤さんは国民所得に対します防衛費の割合を言つておられましたが、あの数字は二年くらい前の数字だと思います。最近のイギリスの方は国民所得の八・八%程度からやはり一一%くらいに上つている。フランスも大体国民所得の一二%余り、これはアメリカの慫慂によりまして防衛費を上げて行つたのであります。それでもし日本が防衛力を強化する、こう言いますと、国民所得の一〇%といえば五千億円でございます。しかし防衛費と申しましても、ずつと前からの防衛力があればこれから注ぎ込むものは割合少いのでありますが、日本は無から始めるのでございますから、防衛力の強化というものはなかなか急速にはできません。それで私の見るところでは、千八百二十億と申しましても安全保障諸費というものは——あとで機会がありましたら申し上げますが、兵舎とかあるいは今の進駐軍の移転に伴う経費が主でございます。従いまして来年度からどうなるかという問題になりますと、進駐軍の移転の費用がなくなつた場合、少くなつて来ると思うのでありますが、そうしてまた一方防衛支出金というものは、これ以上に私は来年度もふえないと思います。従つて私の見るところでは、経済が今のままならば千八百二十億という内訳はある程度かわるかもわかりませんが、これが最大限度でないか。そう国民生活を一々引下げたり何かして防衛力の強化はできない。私は日本経済がよほどよくなれば、また国際情勢が非常にかわつて来れば別でございますが、大体千八百億円程度が今の最大限度のものではないかと考えております。
  53. 北澤直吉

    北澤委員 次に防衛関係の経費の各項についてお尋ねしたいのですが、第一に防衛衞出金でございますが、この問題は本会議におきましても、また当委員会におきましても、いろいろ論議があつたのでありますが、この内容は、結局はただいま交渉中の日米間の行政協定によつてきまるというふうに御説明でございますが、この防衛支出金というものは大体年々同額、従つて今後も大体六百五十億円程度、こういうふうに了解していいのでありますか。あるいはそのときの情勢によつて日本に駐留する軍隊の兵力が増加するに伴つてふえる、こういうふうになるのでありますか。その点をお伺いしたいと思う。
  54. 池田勇人

    ○池田国務大臣 安全保障條約に基きます行政協定できまりますが、私は大体六百五十億程度が最高でないかと考えております。この上にふえないであろう、こう思つております。
  55. 北澤直吉

    北澤委員 安全保障條約の附属の協定によるというと、大体朝鮮動乱の続く間はアメリカ以外の国際連合の軍隊も日本に駐留することができる、こうなつておりますが、この六百五十億円というものは米軍ばかりでなく、そういうような米国以外の国際連合国の軍隊の費用を含むものであるかどうか。この点もお伺いしたい。
  56. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは米軍の駐留費用のための支出金でございまして、国際連合軍たとえば英濠軍なんかおりましても、その費用はわれわれの関知せざるところであります。
  57. 北澤直吉

    北澤委員 ところが安全保障條約の附属の協定、吉田総理とアチソン長官とのあれによると、そういうふうな米国以外の国際連合軍隊の日本の駐留あるいはそれに関しての施設を提供するとか費用の分担というものは、日本国際連合国との間にきめる、こういうふうになつているのであります。そうしますと、大臣の今のお話では、日本アメリカ軍だけに対して払うのであつて、そのほかの国には払わぬということでありますと、あの附属協定の趣旨と違うのでありますが、この点念のためにもう一ぺん伺つておきたい。
  58. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国際連合軍の駐留に対しましては便宜を與えるということは、吉田さんの交換文書に載つておりまするが、費用負担をするとは載つていないと思います。従いまして六百五十億円は日米安全保障條約に基きまする米軍の駐留費用であります。
  59. 北澤直吉

    北澤委員 例のアチソン長官と総理との間の交換公文によると、国際連合軍に対する「日本の施設及び役務の使用に伴う費用が現在どおりに又は日本国と当該国際連合加盟国との間で別に合意されるとおりに負担されることを」云々、それを日本が確認しておるわけです。そうすると、やはりその費用を日本が負担するようになると思いますが、これはそうすると防衛支出金でなくて、別の項目から出るのでありますか。
  60. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今合意をしておりませんので、この費用は見込んでおりません。従いまして六百五十億というのは、安全保障條約に基きまする駐留米軍の費用に充てるためであります。
  61. 北澤直吉

    北澤委員 この防衛支出金でございますが、従来あれは大体アメリカ側と日本側で折半する、大体両方で半分を負担するというふうに了解しておつたのでありますが、この駐留軍の費用で、アメリカの方で負担するのは一億五千五百万ドル、こうしますと今の六百五十億円は、少しそれよりも日本が負担するのが多い、こういうふうになるのでありますが、その点について伺いたいと思います。
  62. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アメリカの相互安全保障法によりまして、アメリカが他の国に駐留いたします場合において、土地の賃借料及び租税についてはアメリカは負担しないという法律を制定しておることは御承知通りでございます。従いましてお話通りに、私はこの安全保障條約に基きますものは、大体半額を日本で負担することと考えておるのであります。その場合において、相互安全保障法によりましてアメリカ日本の施設を、土地、建物を使う場合に、その経費を負担しないということになりますと、それが大体九十億程度だと思いますが、これは日本で負担することになります。その他のものをアメリカ日本で負担することになるのでありますが、巷間伝えるところによりますと、一億五千五百万ドルということになると、六百五十億円でなしに五百数十億である、そうすると日本が多くなるのじやないか、こういうお話でございますが、一億五千五百万ドルというのは、アメリカ予算で一九五二年から五三年の会計年度で日本とは会計年度がかわつておりますので、昭和二十七年四月から二十八年三月までにアメリカが一億五千五百万ドルしか負担しないということはまだきまつておらないのであります。原則といたしまして、年度のずれがございますが、私はアメリカは少くとも日本と同じ負担になる、あるいはことによつたらそれ以上になるのじやないかということを考えております。これは行政協定できまることでございます。
  63. 北澤直吉

    北澤委員 この間もこの委員会におきまして、そういう駐留する外国の軍隊の費用を、駐留される国が負担される例があるかないかということが盛んに問題になつたのでありますが、大臣はその場合にイギリス、フランスの例をとられたのであります。これは日本と事情が違うのであります。イギリス、フランスのはアメリカの空軍が駐留しておるだけで、日本のように陸上軍の大軍が駐留しておるのは西ドイツばかりであります。従つてそういう場合には、私は日本西ドイツを見るのがいいのじやないかと思いますが、パリ発のUP電報によりますと、西ドイツが西ヨーロツパの防衛態勢に参加する分担金として西ドイツの方は今二十五億ドル、ドイツのマルクにして百五億マルク、ドイツの国民所得に比較しますと、大体八・二%、そのぐらいな費用を主張しておる。ところが英米仏三国の方では、それでは足りぬ、あと二〇%ふやせということで、現に西ドイツと英米仏三国の間に話が進んでおるということでありますが、これによりますと、ドイツの主張によりましても、二十五億ドル負担する。これは防衛分担金ばかりではないでしよう再軍備の費用も入つておると思いますが、西ドイツは二十五億ドルならよろしいと言つておるのでありますが、こういうことに関して詳しい資料があればお聞かせいただきたい。英米仏三国軍隊の分担金と申しますか、そういうふうなものについて資料がありましたら、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  64. 池田勇人

    ○池田国務大臣 速記をとめてください。
  65. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  66. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 速記を始めて。
  67. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ところでドイツの負担ということでありましたが、これは昨日の通信で私は二十七億ドルと聞いておりましたが、(北澤委員「二十五億です」と呼ぶ)まだ正確なあれは参りません。今お話のようにもう二割をふやせ、ふやさぬ、こういうことで議論しているようでありますが、西ドイツ相当の防衛費を支出することになると思います。正確な情報は私のところへ参つておりません。
  68. 北澤直吉

    北澤委員 次に伺いたいのは安全保障諸費ですが、これが五百六十億であります。これは二十七年度でなくなる、二十七年度だけで、二十八年度以降はこういう費用はいらない、こういうふうに了解していいのでありますか。
  69. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは二十八年度はいらぬともはつきり申し上げられません。大体私これを組みましたのは、施設費が四百億円、器具類が百五十億円、その他十億円が庁費とかあるいは補償費、こういうふうになつておるのであります。この施設費の四百億円のうちで、兵舎の築造あるいは米軍の住宅、こういうものに対しまして三百億円程度見込んでおります。それから道路の改装その他引込線とかいろいろのもので百億見込んでおります。それから百五十億の器具費というのは、移転いたしますと、通信関係相当の費用、百二十億ばかり——たとえばケーブル線をつけるのでどうだとかですが、いずれまたはつきりしましたら申し上げたいと思います。そういう施設でございます。アメリカ軍が六大都市、福岡を含めまして大体七大都市からどの程度、どの期間に立ちのいていなかの方に行くか、こういうことによつてきまるのであります。公益施設関係が主でございますので、二十八年度はいらぬということも言われませんが、よほど少くなると思います。
  70. 北澤直吉

    北澤委員 次に伺いたいのは平和回復善後処理費ですが、この中には賠償の支払い、あるいは外債の支払い、対日援助費の支払い、こういうものが含まれております。これが去年からの繰越の分を入れて二百千億ということになるのでありますが、この中で、賠償の問題はこれは現在交渉中であるし、また外債の整理につきましては、先日小峯委員からの質問に対しまして、大臣のお答えがあつたのでありまして、私の伺いたいのは対日援助費の支払いの問題でございます。  西ドイツの場合には、大体西ドイツに対するアメリカ援助費の問題につきましては、西ドイツアメリカの間に話ができまして、全額の三割七分五厘ですか、大体三割七分程度払う。これが三十五年賦で払うということになつております。それからイタリアの場合におきましては、全額免除しておる、こういうふうなことになつておりますが、日本の場合におきましても、せめて西ドイツ程度に減額をして支払うということになり得るものかどうか、その見通しを伺いたいと思います。
  71. 池田勇人

    ○池田国務大臣 はつきりきまつておりません。私は債務と心得ておると答弁しておるわけでありますが、まだ心得ておるだけで、債務と確定したわけではありません。確定すれば適当の方法をとらなければならないと思います。それでは十九億ドルの対日援助費をどれだけ払えばいいか、どういうふうになるだろうか、こういう見通しでありますが、私はドイツの三割七分五厘に切下げられたということ以上に切下げてもらえればこれに越したことはない、それ以上に切下げてもらいたい気持を持つておりますしかし相手のあることでありますので、幾ら幾らというわけには参りません。
  72. 北澤直吉

    北澤委員 この防衛関係費の費用に関するお尋ねは以上をもつて終りまして、次に伺いたいのは、一体講和條約発効後、アメリカ日本に対して経済的の援助をするかしないかという問題について伺いたいのであります。先日アメリカの上院の外交委員会におきまして、ダレス顧問が証言をしておりますが、それによるとアメリカはほかのアメリカと共同防衛の関係に立つている国々と同じように、日本経済についてもこれを援助する道徳的の義務があるのだ、こういうことをはつきりダレス顧問はアメリカの上院において言明されておるのであります。現在アメリカ世界の各国に対しまして、あるいは軍事援助あるいは経済援助あるいは技術援助をやつておる。ことしの七月からのアメリカ予算におきましては、大体百五億ドルの対外援助をしようということを大統領が要請しておるわけであります。この百五億ドルの中で、まずイギリス、フランス等には軍事援助のほかに経済援助もする。アジア諸国に対しましては、経済援助もする、技術援助もする、こういうことになつておるのであります。最近でもチヤーチルがアメリカへ参りまして話合いの結果、さしあたり軍事援助費のうちから三億ドルをさいて、イギリス経済援助に対してその金をまわすということになつておるわけであります。私は日本講和條約を結び、安全保障條約を結び、アメリカ日本が実質的には同盟のような関係になつておる、運託生の関係になつて、ほんとうに相互安全保障計画によつて日米が協力する、こういうことであれば、私はアメリカはほかの国と同じように、日本に対しましても、そういう方面援助をしてくれるだろう、そう期待してよいのじやないかと、こう思うのでありますが、この点に対する大蔵大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。
  73. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ダレス氏が上院でそういうことを言われたということは、在外事務所から報告が来ております。アシスタンスではない、エードではない、ヘルプだと、こう言つております。今までのようにくれてやるのでなしに、経済上のヘルプだ。私はよく言つておられると思うのであります。やはりこれはいつかの機会に申しましたように、ヘルプでございますから、やはり日本が助けられる程度のものにならなければならぬ。経済の向上発展を期して、ヘルプを受ける程度にまでならなければならぬ。しこうしてまたヘルプを受ける程度にまでなるには、相当のヘルプがなければ日本は立つて行かない、こういうふうになるのでありますが、私の見通しでは、日米関係は日に日にその度をよくしておりますので、持つて行きようによつては、相当にヘルプが期待できるのではないかと思つております。
  74. 北澤直吉

    北澤委員 今のようにエードではなくてヘルプであるということでありますが、そうしますとアメリカ政府のヘルプのほかに、アメリカの民間の日本に対するヘルプすなわち外資導入でございます。外資の導入については先般総理ははつきりは申しませんが、外資の導入については確信のあるような答弁をされたのでございますが、一体この外資の導入について、日米の間に何かまとまつた話があるのであるかどうか、あるいは何かサゼスチヨンでもあるのであるかどうか、この点をひとつ念のために伺つておきたいと思うのであります。
  75. 池田勇人

    ○池田国務大臣 民間の外資導入につきましては一、二回ここで申し上げましたように、今の外資法を改正すれば相当つて来ると思います。私のところへも四つ、五つの向うの相当有力な会社が外資法を改正してくれれば外資を入れようというようなことを申し出ております。民間の取引ばかりでなしに、私は開発銀行等からの投資も国際通貨基金に加入すれば相当期待できるのではないか、それからまた向うの輸出入銀行が御承知通り綿花借款として四千万ドル貸してくれております。向うの政府関係機関からの投資も相当期待できるのではないか、また現に四千万ドルが来ております。  それから向うの政府日本の民間あるいは日本政府にヘルプするということは、ダレス氏の話によつてわかりますように、相当向うの政府の方では考えてくれているのではないか、それじや日本政府はそれについてどういう具体的な処置をとつたかということになりますと、これはただいまのところは何とも申し上げられません。
  76. 北澤直吉

    北澤委員 では次の問題に移りまして、私はひとつインフレに対する対策の問題について伺いたいと思うのであります。二十七年度の予算を見ますと、二十六年度予算に比べて、財政の規模が大体五百九十億ですか、ふえておるわけであります。しこうして收支のバランスがとられておるわけでありますが、内容を見ますと、先ほども申しましたように、防衛関係の費用、あるいは賠償、そういうもののために相当の金が出ている。二十六年度に比べれば、大体四百五十七億ふえておる、こういうことであります。しこうして一面におきましては、政府から出資あるいは投資しているものを大分削つておる。従いまして、大ざつぱに申しますと、二十六年度予算の中で出資、投資して出ておるものを創つて、それを防衛力の増強、そういう方にまわしておるというふうに言えるのでありますが、そうしますと、予算としては收支のバランスをとつておりますが、その内容から申しますと、生産的な支出を削つて、非生産的な、消費的な費用の方にそれをまわしたというふうに見えるのであります。それからまたあるいは外国為替資金に対する繰入れにおきましても、二十六年度におきましては八百億のものを、二十七年度は三百五十億にしておるというふうなことで、結局私はどうもインフレになりはせぬか。今度の二十七年度予算を見ると、どうもインフレになるような心配がするのであります。ところが政府におかれましては、あるいは大蔵大臣財政演説を見ましても、あるいは安本長官の経済演説を見ましても、インフレの抑制については、あまり触れておらないのでありますが、私はどうしてもこの予算面を見て、またアメリカその他の状況を見ましても、私は今年はどうもある程度インフレになりはせぬかというふうに思うのでありますが、その点に対しまして、ひとつ大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  77. 池田勇人

    ○池田国務大臣 インフレの原因は多多あります。金の面から申しますと、財政の方が赤字財政であつてはインフレになりやすい。財政は均衡しておりましても、金融面で。すなわち日本銀行あるいは一般市中銀行が信用の喪失をするならば、これはインフレになります。財政面から私はインフレが起ることは、万々ないと思います。それは絶対收支均衡しておる。しかしその收支均衡が内容においてはどうかという御質問でございますが、これは防衛費その他平和関係処理費がふえたということは、片一方で、税收がそれだけ多くなつて来ておるのであります。内政費の方は昨年と今年と比べますと、内政費の方もふえておるのであります。しこうしてお話の外国為替特別会計繰入れ八百億円が、三百五十億円になりましたのは、輸出入の調整及び外貨の受払いが、大体昨年よりも差が少くなつて来た。しかもまたユーザンス関係で、非常に今年度多かつたのでありますが、来年度はそういう特別の措置もいたしません。財政面では絶対均衡しておりますので、インフレの懸念はないと確信しております。
  78. 北澤直吉

    北澤委員 大臣はインフレにはならぬという確信でありまして、もしそういうことであればけつこうと思いますが、どうもわれわれの見るところでは、インフレになるような気がするのであります。  そこで、このインフレの問題でございますが、今国会におきまする周東安本長官の演説によりますと、金融面、資金画からする調整ばかりでなく、ある場合には、物の面からも調整を加えてインフレ対策をする、こういうふうに言つておられますが、大蔵大臣は、昨年の秋の国会におきましては、主として資金面だけで、ほかの物の面における統制は極力避けたい、こういうふうなことを申しておりまして、安本長官と大蔵大臣との間に多少意見の食い違いがあろように私は思うのでありますが、このインフレ抑制に対する政府の統一した御意見を伺つておきたいと思います。
  79. 池田勇人

    ○池田国務大臣 安本長官も私も同じ意見でありまして、極力物の直接統制はやめて行こう、こういうのでございます。ただ安本長官の言つておられるのは、世界的に稀少な物資で、しかも国際割当会議によつて割当てられるような物につきましては、たとえばコバルトとか、ニツケルとか、こういうものにつきましては、ある程度の消費の規則はやむを得ない。最近におきましても、モリブデン、タングステン、あるいは銅につきまして、一部、ごく限られた範囲内において、ある程度考えなければならぬのじやないか、こういうことはありますが、全体の考え方としては、原則的には、物資の直接統制は極力やらないということには、意見の違いはございません。
  80. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点伺いまして、午前の質問を打切りますが、最近政府は、設備資金の抑制ということによつて、金融面からするインフレ対策をやつておるのでありますが、従来設備資金が、ある場合には不要の方に相当流れる。建つて設備に要するいろいろな資材に対して、購買力が非常にふえて、そのためにセメントであるとか、あるいは鋼材というようなものの値段が非常に上つて来るというふうなことが、日本ににおきまする一つ物価高の原因をなしたと思うのでありますが、この設備資金の抑制によつて、そういう方面に対する購買力が減退して、こういうものの値段が、たとえば鉄鋼なども大分下つて来ておる、こういうふうに私は思うのでありますが、この設備資金抑制政策をとられてから、今日までの大体の実績は一体どうなつておりますか。この点を伺つて、私は午前の質問を打切ります。
  81. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昨年の十月ごろから、現状を考えまして、設備資金の原則的抑制、たとえば重点産業であります鉄鋼とか、石炭とか、あるいは水力、造船、これは例外であります。また農林、水産方面の食糧増産の分は、これは除外いたしております。また今までやりかかつておる分は、一応やつておりますが、この設備資金の抑制ということによりまして、大分お困りの方々もおられるようでございますが、これをずつと、もう少し続けて行けば、いわゆる流動資金の方にまわつて行きますので、今よりもよほど楽になつて来ると思います。しこうしてどれだけ要請があつたのを拒んだか、こういう数字は持つておりません。
  82. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半より委員会を再開して質疑を継続することといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後二時十一分開議
  83. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。庄司一郎君。
  84. 庄司一郎

    ○庄司委員 宮内庁関係の、換言するならば皇室関係の、ただいま議題と相なつておりまする予算問題に関して、宮内庁の宇佐美次長にお答え願つておきたいと思うのであります。前国会の末期に、本院は国民大多数の輿論として、ただいまのような荒廃その極に達しておる、空襲のために荒廃の極にあるただいまの皇居及び天皇お住居の皇居に関連するところの宮内庁内の官庁機構の造営物等々の再建に対するところの大多数国民の熱意は、皇室を敬愛するところの愛慕心の上に出発して、各都道府県あるいは町村等において、なかんずく皇居の奉仕作業のために、全国の婦人会あるいは青年団体その他のもろもろの団体の諸君が、奉仕作業を勤められた各位が、おのおのの村に、部落に帰られて、ただいまの皇居を現在の状態に放置することはいけない。何とか再建してあげたいという心からなる愛情のもとにそれぞれそれらの諸君は、純な心で催しをされておることは、宮内庁の政府委員も御承知通りであろうと思うのであります。これらに対して、過般官房長官の名のもとに、積極的に募金なんかやるということは、かえつて陛下の御心に沿わない、あるいは対外関係もあるというような意味でございましようか、募金禁止の談話を発表されたのでございますが、もとよりわれわれは、また私は積極的に募金を計画的に集めて、皇居の再建ということを願つておるのじやありません。ただ皇室に一片耿々の愛慕の志をもつて建ててあげたいという、その心持がとうといのであります。従いまして、政府が、宮内庁が適当な予算措置をとられて、国民全体の負担において、いわゆる皇居を再建する、新しく再建することがあたわない状態にあるならば、せめては、ただいまの各建物を補修、修理して、何とか講和の直後においては、諸外国の大宮、要人等も来朝さるることと思うのでありまするが、そういう方と謁見あるいは午餐で晩餐をともにさるるところの陛下において、滞りなくさような行事を行わせらるることができ得るような程度に、せめて補修なり修理なりして上げたいものである。これはわれわれ国民としての義務であつて、決して天皇を神様扱いにするゆえんじやない、かようなる信念の上より本常任予算委員会は、過般皇居内の参観見学を許していただいたような次第でございます。ただいま議題と相なつておりまするこの予算のうち、われわれの念願しておりまする点において、約七千万円ほどの予算を御提出のようでございますが、それらの経費をどういう方面に、またどういう構想で、どういう設計で御使用なさる考えであるか、その点を最初にお伺い申し上げたいと思います。
  85. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 皇居再建に関しましては、前国会におきましても、庄司委員から御熱心な御発言がありまして、その際にもお答え申し上げました通りに、いずれの日かには皇居の再建というものがあることと予想せられるのでございますが、現下の情勢、ことに財政の状況、国際情勢からいたしまして、まだその時期ではないという考え方におきましては、おそらくは大御心もそうであろうと思いますし、政府といたしましても、先に官房長官談をもつて発表せられた通りでございます。しかしながらただいまるるお述べございました通りに、国民の各方面からの熱心な再建の御要望もございまして、いずれこれを国が坂上げるときには、その熱望を入れる時期があると考えておるのでございます。それまでの間現在はきわめて手狭でございまして、外国使臣等が参りました際にも、これをとりまわしに苦労をいたす次第でございます。明年度の予算に七千万円を計上いたしまして、現在の宮内庁庁舎の三階を宮殿風に改造いたしたいと考えておるのでございます。事務室に建ちましたものでございますし、こういう時局柄でございまして、質素にいたすつもりでございますが、外国使臣の謁見その他の儀式等に必要なる程度にこれを装飾をいたす程度に考えておるのでございます。御審議をいただきました上は、すややかに着手をいたしまして、来るべき講和発効の日に備えたい、かように考えておる次第でございます。
  86. 庄司一郎

    ○庄司委員 ただいまのお答えでもつて一応了承いたしました。  次にお伺いしたいのは、終戦直後この方、ただいま申し上げたような婦人会あるいは青少年の団体、その他の諸君が陸続として皇居奉仕のために上京されておるようでありますが、ただいままでの合計の統計において、その団体数いかん、あるいは団体の合計の延人員においてどの程度の国民が奉仕をなされたか、この際御発表を願いたいと思います。
  87. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 皇居の勤労奉仕の状況でございますが、昭和二十一年から毎年現在に至つておるのでございまして、団体数は昭和二十六年末までで三千七十五団体、実人員が十三万五千百名ということに相なつております。二十六年度の状況を申し上げますと、二十六年度だけで八百三十一団体、三万九千五百七十九名という実人員でございまして、その方々の純真な熱心な御奉仕につきましては、当局といたしましても、心から感謝いたしておる次第でございます。
  88. 庄司一郎

    ○庄司委員 ただいまお答えのような大多数の団体あるいは人員等に対し、宮内庁といたされましては、もとより予算の面において乏しいのでありますから、あらためて記念品とか、そういうような感謝の方法はあられないとは思いますが、何らかの方法で、さような清らかな心で奉仕された方々に、何か表彰のような方途を講ぜられておるかどうか、念のために伺つておきたいと思います。
  89. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 ただいま勤労奉仕に見えます方は、その奉仕の期間中に両陛下に拜謁がございまして、感謝の意と御激励の言葉をいただいておるのでございますが、帰ります際には、おぼしめしによりまして、おタバコを賜わつておるのであります。何分数も多いことでありまして、現在の内廷の御経費の状況からいたしましては、気持はございましても、なかなかそれ以上できかねておる次第でございます。
  90. 庄司一郎

    ○庄司委員 了承いたしました。次にお伺いしたいのは、かつて明治神宮の造営に際し、全国各町村部落等の青年団等においては、自発的にいろいろな各地の樹木あるいは苗木を御寄進申し上げて、神宮の内外境内に植込みをいたしたことがありますが、今回おいおい皇居を——通りには財政上なりませんでも、せめてわれわれ委員会が拝見をしたあの荒涼たるオルドスの沙漠のような状態にあつてはならない。あの皇居内の適当なところに、適当なる木を、各地青年団あるいは婦人会等で、清らかなうるわしい自発的精神で御寄進がありました場合には、宮内庁はどういう御処置をなさるのでありましようか。念のために伺つておきたいと思います。
  91. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 皇居の整理につきましては、焼け跡につきましては、さきに予算の御審議をいただきまして、宮殿の焼け跡は整理ができました。ただ先ほどの御質問にもございました通りに、将来の御造営というようなことが予想せられますと、あの皇居をどういうふうに今後配置し、整備するかということを検討いたさなければならないのでございまして、ここで将来のことをお約束することは困難でございまするが、そういうような計画ができまして、そういう熱心なお申出がありますれば、将来のことといたしまして検討いたしたいと存じます。
  92. 庄司一郎

    ○庄司委員 最後にもう一点お伺い申し上げたいと思います。けさの新聞あるいはラジオの報道によれば、英国のキング・ジヨージ六世におかれては逝去されたそうでございまするが、天皇陛下及び宮内庁としては、それらの訃報に対し、どういう御処置をとられたか、お伺いを申し上げておきたいと思います。
  93. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 英国皇帝の突然の崩御につきましては、国民一同の深く心から哀悼の意を表するところでございます。皇室におかれましても、特に御親交のありました関係上、この報に接せられまして、深く弔意を表せられておるのでございます。具体的にどういう扱いにいたしますかにつきましては、私ここに来るまでいろいろ検討しておりましたが、最後の決定に至つておりませんでしたので、ただいまここで申し上げかねる次第でございます。
  94. 庄司一郎

    ○庄司委員 最後にもう一点だけ。ただいま議題となつておりまする一般会計歳入出予算の中には、戰争犠牲者であるところの戰歿軍人、軍属関係等の合同慰靈祭を国家が祭祀する、その予算が要求されております。そのお催しの場合においては、当然むろん天皇陛下が親しく参拜あられ、戰歿軍人、軍属の英靈に対し陛下は敬弔の誠を盡さるるものと私は信じておりますが、宮内庁から、当予算と関連をいたしまして、さような場合において、陛下の出御があるかどうか、これを念のために伺つておきたいと思います。
  95. 宇佐美毅

    ○宇佐美政府委員 戰歿軍人、軍属遺家族その他戰争犠牲者に対しまして、陛下は深く御心痛になつておりますることは、われわれとしても拜察いたしておるのでございます。しかしながら今後どういう機会にお出ましをいただくかということにつきましては、具体的問題でございませんと、私からここで申し上げかねますが、陛下におかれましては、その点につきましては、十分御心をまわしておられることと存じまして、われわれといたしましても、御意見の点は十分に拜聽して帰りたいと思います。
  96. 庄司一郎

    ○庄司委員 皇室関係だけはこれで終ります。
  97. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 宮幡靖君。
  98. 宮幡靖

    宮幡委員 大分予算委員会の審議も進んで参りまして、大方の委員からそれぞれの御質問もございました。しかしながらまだ予算の核心とも申すべき点を伺わなければならないことが相当数あるわけでございます。従いまして私は予算の本質的な問題について、最初大蔵大臣に御解明願いまして、あるいは私ども考え違いしておるのではないかと思うような点があるので、こういうことをまず明らかにしていただきまして、これに伴います財政金融諸施策等につきましてお話を承りたい。それと関連しまして当然通商産業政策面にも、関連的な質問をいたさなければならないことになりますし、ことに国際経済へ足を踏み入れて行きます独立国家としての日本の産業政策等については、外国為替管理の問題というようなこともまた十分検討してかからなければなりません。そういう意味で幸いにお尋ねの機会を與えていただくといたしますならば、大蔵大臣に先に伺つて、順次関係大臣の御所見を伺いたいのでありますが、委員会の進行上特に通産大臣及び外為の委員長さんに二、三お伺いいたしまして、大蔵大臣の出席を待つことにいたしたい、かように考えるわけであります。従いましてまず通産大臣に伺いますが、これは前との関連がないと大臣に対しても御迷惑だと思います。突然出て参り、とつぴな質問になりまして、ちよつと簡單な言葉で申せば、面くらうというような意味になるかもしれませんが、私の質問が簡潔でありまして、要旨を盡さない、こういうことについてはどうか大臣の方からお尋ねをいただきまして、私ども考えを申し上げまして、そうしてお答えをいただく、こういうことにいたしたいと思います。  日本の今回の予算を通じてみますと、大蔵大臣財政演説及び周東安本長官の経済演説というものをまず原則的に見ますと、三つの原則が貫かれております。それは生活水準を維持するということが根本であります。それから防衛力を漸増して行く、防衛力漸増主義とでも申しましようか、もう一つは増税をしない、こういうことが三原則となつております。このうちの生活水準を維持するという問題は、まず通商産業政策をもつて解決して行かなければならない問題である。生活水準をどこに置くかということになりますと、これはしばらく論議を要するところでありますが、かりに昭和二十五年度の線あるいは昭和七年から十一年の生活水準の九〇%程度、こういうものを標準といたし、そうしてその標準のもとにおいて日本経済の正常な循環をはかろうといたしますならば、まずその第一番は国際收支の均衡であります。国際收支の均衡がなければ経済自立達成もできません。経済自立達成がなければ昭和二十七年度の予算のごときは、まつたくお題目にしかすぎないことになるのでありますから、こういう観点からいたしまして、貿易政策全般につきまして大臣のお考えを承りたいわけであります。  近ごろ日本の自由主義経済に対しましても相当の反省を要する時期になつたことは確かであります。だから自由主義経済が悪かつた、こういう批判があるといたしますれば、これまたとんでもない誤謬であります。日本の壊滅的に破壊せられました産業経済の復興をはかつて参りますのには、自由主義経済以外になかつたのであります。しかしこれが復興から発展へという段階に進んで参りますならば、との何でも復興へと持つて参りました諸政策に対しまして、一つの反省と検討が必要になります。すなわち自由主義経済の中にも相当の計画性——切符をもつて物をわけるというような、悪い言葉になるかもしれませんが、悪平等の分配主義などという統制の意味ではございません。しかしながら必要な資材は必要な方面へ必ず流れて、よき再生産のルートをたどつて日本の正常なる経済循環ができる、こういう方向に導くということは、統制という言葉はむしろ当らぬといたしまして、経済復興の当然の施策であると私ども考えておるわけであります。これと関連いたしますと、貿易政策にやはり再検討を加えなければなりません。すなわち今までは外貨予算の面におきましても、あるいは貿易管理の面におきましても、輸出重点主義でやつて参りましたことは、大臣も御承知通りであります。しかしこれをどうしたらよいか、通産省自身といたしましても、巷間伝うるところによりますれば、自由主義経済に計画性を持たせなければならない。従来の輸出入の均衡主義というものにも、修正を加えて参らなければならないではないか、あるいは貿易管理——先ほど北澤委員からも中共貿易ソ連圏の貿易につきまして、ケム修正法バトル法等についての御発言等があつたようでありますが、これらの極端なものは別といたしましても、貿易管理の強化というものがむしろ日本の正常なる貿易を促進するものではないか、こういうことも考えられるわけであります。さらには輸出優先ということはよいことであるか、あるいは国内の均衡ということが重点であるか、これらの問題をも考えて参らなければなりません。御承知通り、従来までは確かに輸出最優先でありまして、輸出のためには国内の若干の犠牲も忍ばなければならないであろう。われわれはあえて満腹輸出という言葉を使いまして、飢餓輸出を非難し、われわれの政策のよさを大いに誇つて参つたわけでありますけれども、その中においてもやはり輸出優先主義が貫かれておりまして、国内の若干の消費はこれを押えて行かなければならない。しかし現段階において、たとえばポンド過剰に対します問題に関連いたしまして、スターリング地域輸出をもし押えまして、ポンド貨の増大等を防ぐ等の跛行的な措置を講じますならば、やがて日本の産業は縮小再生産という過程に入らなければなりません。ここで一つ貿易政策としての転換が必要になつて参りますが、これらの点につきまして大臣としてのお考え、通産省が持たれております御構想につきまして、なるべく懇切丁寧に、御自由な気持で御答弁をいただきたいと思います。
  99. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 お答えを申し上げます。日本自立経済のためには、どうしても輸出優先主義——輸出を伸ばさなくてはいけない、その方針にはかわりがないのであります。ところでただいまのお言葉の中にもありましたように、国際物資などが非常に欠乏して来ております面もありますし、そういう点を考えますと、ある物資の使用、消費についてはある程度の抑制といいますか、管理をすることは免れないだろうと私は考えております。ただ以前やりました切符制度などの統制配給は非常に弊害もありましたし、当局としてもそういう点も認めておりますので、こういう行き方は避けたいと私は存じております。
  100. 宮幡靖

    宮幡委員 全体の貿易政策についてお尋ねしたのでありますが、これは質問の方が悪いのでありまして、大臣の御了解が得にくかつたわけでありますが、通産省として貿易政策について何かもつと具体的な御構想がありましたならば、これは事務当局でけつこうであります、通商局長でもあるいはその下の通商政策課長でもけつこうでありますから、こういうことを考えておるのだということを、どうか当予算委員会の記録にとどめられまして、それにつきまして若干検討を加えてみたいと思う。あえて大臣の御答弁でなくてけつこうであります。
  101. 永山時雄

    ○永山政府委員 ただいまの宮幡委員の御質問に対しまして、事務当局として考えております考え方を一応ごひろうさせていただきます。  われわれの省といたしましては、申すまでもなく輸出振興の問題は、引続き日本経済政策の一番基本をなすものだ、かように考え輸出全般について、従来の振興方策というものを一般的には継続をして行く考え方で、予算その他も組んでいる状況であります。ただ御承知のように、現在の状況は輸出の内容を分析をいたしますと、スターリングあるいはオフ・アカウント地域への輸出が非常に伸びておりまして、ドル圏への輸出は必ずしも当初予定した通りに伸張していない。一方日本輸入の現状からいたしますと、むしろドル圏からより多く原材料なり食糧その他を入れなければならぬ状況にありまして、しかもこれが單に当面の一時的な現象ではございませんで、戰前からの、ある意味において日本経済の置かれている経常的な状態であります。従つて一方においてドルが不足し、しこうして御承知のようなポンドがだんだんと累積をして行く傾向をたどつているのであります。そこで当面の貿易政策といたしましては、できるだけ輸入をスターリング地域あるいはオープン・アカウント地域に切りかえ、そうして輸出政策としましてはいわゆるダラー、ドライヴの方策を推進するという方向にいろいろ考えているのでございます。  それでたとえば従来から一考しております優先外貨制度というようなものも、ドル圏への輸出につきまして特に優先的な待遇を與える。あるいはまた輸出信用保険制度を拡充いたしまして、前貸金その他の制度をだんだん実行して行きたい。かように考えているのでございますが、これらの問題につきましても、その立案、構想あるいは実行にあたりましては、できるだやダラー・ドライヴ——ドルでの輸出を尊重するというような方向へ案の企画をいたしたいと、かように考えているのであります。その他毎期の四半期に組みます外貨予算制度等におきましても、できるだけそういうような方針を実行して参るというようなことで、輸出問題といたしましては、できるだけこのダラー地域への輸出を推進するというよう方策を、いろいろな面において考えているのであります。  それからそのダラー・ドライヴの方策以外に、特に顯著な輸出政策の問題といたしましては、御質問の中にもありましたような輸出管理の制度でございます。これはお話の中に触れておりましたソ連圏あるいは中共その他への輸出を、戦略物資あるいはそれに準ずるものの輸出を制限するということが当初の何であつたのでございますが、その後経済情勢の変化につれまして、ダンピングを防止する、あるいは他国の貿易圏を侵害するというようなものにつきましても、日本商品の国際信用を維持するという立場から、逐次輸出承認制度を適用して参ろうというような方向をたどつております。大体特に顯著な問題を申し上げますと、以上の通りであります。
  102. 宮幡靖

    宮幡委員 通産省としてもいろいろ御苦労をなさつている面がありますが、その程度であるいは行き詰まりになるかもしれない。正常なる日本貿易というものに対しまして遠慮ない批評をいたしますと、はなはだ不安であります。さらに今官房長からお話のあつたそれらのことをしばしば通産省から発表にはなつている。たとえば輸出入の総合リンク制をやる。それも個別にもひとつリンク制をやつてみよう、單に総合だけではない、あるいは地域別に品目別に、こういうように考えたような案がありますが、いつもこれが産声だけ上げまして少しも成長しておらぬ。この点につきましては、もし本年度の予算等の執行を考えてみますというと、あとで外為の委員長さんにも順次お伺いするのでありますけれども、インヴエントリー・ファイナンスをきわめて縮小された際に、巷間伝うるところによりますれば外貨をスワツプいたしまして円資金を獲得することにつきましては、一つのインフレの要素ともなるというようなことから、日銀としては——まあこれは一万田さんがローマ法皇だなどという有田君一流の言葉を使わなかなかても、そういう気持かどうか知りませんけれども、これと違つたような感じも出ているわけであります。いろいろなことがどうも盛り上つて参りますが、いずれもこれが具体化しておらない。特に今触れました輸出信用保険の問題のごときは、従来の保険のリスクではもちろんこれを救済することはできません。埠頭に起きます争議もやはり保険のリスクに加うる等の問題では間に合いません。輸出金融保険をやらなければならない。これもわかりきつたことであります。またさらには広告宣伝費等に対します保險もいたすべきであります。なぜかと申せば、たまたま私の質問以外に御構想としてお話があつたのでありますが、優先外貨制度なども停止されております。従つて輸出促進のために優先に外貨を使うということ、そうして輸出代金によつてこれを返済するという制度は一応ないわけであります。ポンド地域におきますポンド貨の外貨の直接貸付制度、こういうようなものを考えてみますが、これも実行に移されていないものであります。ただ並べてみればいわゆる商品の陳列棚、こういうことになつてしまうではないかと思います。また予算書の内容を拜見いたしましても、優先外貨制度も停止されているにかかわらず、たとえばジエトロの制度と申しますか、海外の事情を調査いたします。あるいは宣伝等を担当いたします海外調査費と申しますか、調査会もあるようでありますが、それに補助いたします費用は、数字は今予算書を持つておりませんが、頭に覚えておりまするところでは、昨年度も三千万円、ことしも三千万円。これで一体何が新市場の開拓ができると思われますか。一体通商産業大臣としては、かような補助費に、たとい国家の予算の方針は財政資金を一般私企業と申しますか、企業に流すことは違法であるという原則がありまして、やがて財政資金を充溢さすべきところの支出であるならば、強くこれを要請し、しかも優先外貨制度が停止されるような事態におきましては、これに多額の予算を盛りまして、大いに宣伝助長をする、こういうことにしなければならぬのでありますが、その跡はありません。残念ながら努力の跡もないとまで私は申し上げたい。しかる上におきましては、輸出信用保險の範囲を拡大いたしまして、ぜひとも広告宣伝費等に対しまする保險も実行すべきであると思いますが、幸いに官房長がそれに触れましたので、担当の方でもどなたでもけつこうでありますが、ただいまの輸出信用保險の改正に対しまする通産省の構想を明細にお示しを願いたいと思います。
  103. 石井由太郎

    ○石井説明員 ただいま御質問がございました輸出信用保險の問題につきましては、現在の貿易資本が非常に脆弱でございまして、海外における十分な活動、宣伝、広告、市場調査等はもとよりのこと、国内においてあるいは契約と同時に輸出の前払いをし、ないしは見込み生産を行うというような資本的な力がございませんので、これを政府資金をもつてバツク・アツプしてやる必要があると考えまして、従来行われておりました甲乙両極の信用保險、すなわち輸出に伴います戰争あるいは内乱、為替取引の制限といつたような諸種の危險並びにプラント輸出の場合における代金代払い、輸出品に対する代金が、船積み後回收できないような場合の保險制度、この両種の保險のほかに新たに輸出金融保險を創設しまして、輸出業者を対象として金融機関が輸出資金の前貸しを行いました場合に、当該貸付金が、船積み後予定期日に何らかの事由によつて回收できない。この場合には政府が保險金として貸付金額の七五%程度を支払いまして、金融機関の貸付先からの回收を一時延期してやる。そうして一方には金融機関が金を貸しやすくするようにいたしますとともに、他方では輸出業者等が金策に狂奔するあまり、あるいはダンピングの挙に出で、ないしは非常に不当な條件で海外で買いたたかれるというようなことのないようにいたそうと、目下法案の改正を関係方面と協議中でございまして、これは実現し得る見込みでございます。また御指摘のございました海外の市場調査等の費用といたしましては、政府財政支出をもつてします予算支出の面では、御指摘のごとくほぼ前年と同一の金額が計上されたのにとどまつたのでございますが、この間当局といたしましては、もちろん財政当局等とも十分な折衝を真剣に行つたのでございますけれども、結果的には財政上の種々の要請もございまして、御指摘のごとくほぼ前年と同じ金額にとどまつた次第であります。しかしながらこれは保險といたしまして、今後主としてドル地域における輸出を伸張させることを目途として、海外に対する宣伝あるいは市場の調査、あるいは見本輸出と申しますか、見本の作成というような諸費用で、爾後一年ないし二年、三年等の期間の売上げによりましてカバーできない危險のありますものにつきましては、政府との保險契約によりまして、若干の保險金の御負担を願いまして、もし一部の売上げでカバーできない場合には、政府からその差損の半額を支弁するという構想をもちまして、これまた法案化を急いでおる次第でございます。なお予算措置といたしましては、この両種の事業を行いまする必要上、通商産業省の一般会計におきまして十億の繰入れを輸出信用保險特別会計に行うことに相なつております。
  104. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいま伺いますと、輸出信用保險が大分拡張されるという意図があり、ある程度事務当局としてはこれが実施に移す見通しがあるということで、これは非常によいことであります。ぜひ一つ々々具体化していただくようにお骨折をいただかないと、どうも通産大臣を前に置いて失礼になりますが、たとえば北陸あたりにおいでになる長野の車中談において、今後もポンド圏の輸出を抑制するようなことはないというような発言をせられております。しかしポンドの増高をどうするのか、どうも裏づけがないように、私は、後輩でありますが、思うのであります。こういうことが民間に伝わりまと、大臣の言葉はなかなか大事でありまして、一言そういうと、大丈夫だから、国の政策に反しても、ポンド圏、スターリング圏の輸出へと力を注ぐ。しかも輸出の承認制というものが、貿易管理の上ではつきりしておりません。特に価格承認制——チエツク・プライスすることもない、フロア・プライスもないのであります。従いまして、自由価格で貿易勘定のわくからはずれて行きますと、これは大臣考え方とは違つた方向に外貨の関係が行く。大臣にはいわゆる深き腹芸とも申すべき御構想がおりまして、その一端を申されたに違いないが、それが民間に響きますと、なかなかそうでないのであります。これならまだまだスターリングに物を売つても大丈夫だという安易感になつてしまうおそれがあります。そこでさらに、これは大臣からでもあるいはその関係の事務当局からでもけつこうでありますが、先般英国の内閣がかわりまして、今までのアトリー内閣と違つた意味経済自立の方向が立てられた。大藏大臣もしばしば日本の国民にがまんしろという言葉で英国の耐乏生活のことを言いますが、いくら耐乏生活を振りまわされましても、国民は納得せぬでありましようから、こういうことは耳たぶをかすめておるわけでありますが、その中でやりましたことは、ポンド為替管理をゆるめました。いわゆる自由にいたしました。そこで、これに対しまして、日本の外為委員会においては、ポンド貨の買付の相場を若干引下げたわけであります。これに対しまして英国の日本代表部から、これは日英支払協定第二條の違反であるという申入れがせられておるのであります。これに対してはまだ決定的な解決がされておらないものと私は思いますが、通産大臣はこれをどういうふうに解決されたかということをお答え願うと同時に、外為の委員長からもひとつこの点について、でき得る限り詳細に御説明を承りたいのであります。
  105. 木内信胤

    ○木内政府委員 ただいまのポンドの相場の問題、私、その手紙のやりとりを担当いたしておりますから、私の方から申し上げます。われわれが為替政策を若干変更しまして、今までの固定した公定相場から若干の幅をつけて、その幅の中にありまして為替銀行が自由に取引をしてもいいということにしたのであります。それに対応いたしまして、御指摘のように輸出の場合の相場だけを少し下げました。これは実は確定的な意図をもつてしたのではない。英国がやりました意味というものは、あれはもちろん拔打的の措置でありますから、こちらにいてはどつちへ行くかわからないから、多少警戒の意味をもつてやつた措置であります。それに対して先方から、それは協定違反であるという抗議が提出されたのも事実であります。協定第二條というものから見ますと、一見違反であるかのごとく文字的に言えることも事実であります。しかしながら、あの協定を締結いたしました場合、これは法律的文書ではないのだ。すべてこれは法律文書として書いたのではない。これはビジネスライクに、ビジネスとして解釈すべき協定であるということは、当然のこととして、たしか文書にも残つておると思います。よしんば文字として違反していても、精神が違反していなければいいわけでありまして、この点実は逆に質問をしておる段階にあります。その質問の要旨は、今度の英国政府の意図はよくわからないが、まだわれわれは正式の説明を伺わないが、新聞の伝えるところによると、ポンドというものにその自然なレベル、自然の水準というものを発見させるためのフアースト・ステツプだというようなことが新聞にあります。そうなりますと、あの二セントの上下の差というものは、ポンドが弱気で下にくつついた場合に、自然の相場を発見させる。もう二セント開くかもしれない、もう四セント開くかもしれないとなりますと、ずるずるに行くわけであります。その場合公定相場は二ドル八十セントですえ置いて、市場相場だけ下つて行くと事実上ポンド切下げでありますが、そういう事態が起るかもしれないとあのとき見えたのであります。従つて一応下に付けてみたのであります。その抗議を申し込んで来たところを見ますと、新聞の伝うるところは事実ではないかと思います。これはどういう意図なのか、われわれは協定に違反する意図はちつともない。ただあのときは、そういう一種の警戒的措置が必要だと思つたからやつたのであります。今逆質問をいたしておりますので、そのうちには判明すると思います。
  106. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの外為委員長の御説明できわめてはつきりいたしました。そこで木内委員長は大分長い間滞英せられまして、為替制度の御研究をなさつて来られたので、これは非常に愚問になると思うのでありますが、ひとつ参考にお伺いいたしたいのは、今のポンド貨がハード・カレンシーとして登場する時期が近い時期にあるのかどうか、これは木内委員長の私見でもけつこうでありますが、ちよつと聞かせていただきでたい。
  107. 木内信胤

    ○木内政府委員 愚問であるかもしれぬとおつしやいましたが、非常に大事な御質問なので、私この席で、たとい私見であつても、私見という断り付きであつても、お答えすべき性質の問題でないと思います。お答えを遠慮させていただきでたいと思います。
  108. 宮幡靖

    宮幡委員 しかくさように重要な問題でありますので、愚問は撤回いたしますが、しからば私ただいまお伺いいたしました日英支払協定第二條によりますイングランド銀行を通ずる行政振替という制度を当分の間使つて行かなければならない、そうでなければポンドの過剰を防止いたしまする一つの施策が行えないだろう、特にオープン・アカウント地域に対しましては、この手を打たなければなるまいと思う。日英支払協定の違反であるという攻撃に対して文書を出し、回答を待つておると言うが、決して英国は好感情でなかろうと思う。どういう言い方をしましても、おれの方で手を打つたら日本でやつたなというような、これは速記録にとどめて悪かつたら委員長においてよろしくお願いいたしますが、とにかくそういう気持がある場合に、イングランド銀行のとりはからいによつて行政振替はできる、支払協定違反でないという決定になつた場合、行政振替に手心をされるというおそれがあるかないか。     〔小峯委員長代理退席、上林山委員長代理着席〕 それには一体スターリング貨というものは将来——近い将来でも遠い将来でもいいが、やはりハード・カレンシーとして登場する可能性があるかないかということを十分やはり見合つて行かなければならないと思います。そこで行政振替に必ず支障がないかどうかということを、まずひとつお話をいただきたいと思います。
  109. 木内信胤

    ○木内政府委員 今の行政振替というものを使うということと、先方がやりました為替相場上の新措置、これに対して、わが方が打つた手というものと関連があるかのごとき御質問と承つたのですが、相場の問題は、私ども反対質問しておりますが、別段そうこれは感情のもつれになつたり、向うが何か特に日本を目ざしてやつた措置でも何でもないのであつて、それに対して日本が、あるいは警戒が過ぎて、オーバーコーシヤスにやり過ぎた、そういつたことではなかつたのであると了解して、あるいは元通りするかもしれません。相場の問題は決して感情のもつれになるような、何かをした仕返しというようなことでないと、私どもは真底から、心から思つております。これは純技術上の問題であつて、話がわかればさらつとする、こつちのことを向うが了解してくれると思います。あるいはこつちがやつたことがよけいな警戒的措置であつたら、もどすにはやぶさかではなかろうと思うのであります。感情のもつれではないと思います。ですから為替相場の問題と今の行政振替とは、別ものと御承知つていいと思うのであります。そこで行政振替でありますが、ポンドの状況が、御承知通り、思つたよりも早くかわります。この辺まではいいと思つたころにすでに越してしまう。これは大問題でありますから、行政振替というものを使つて行くべき時期であります。ことにこの行政振替に関して、今相場の問題で関連ないと申しましたが、もう一つそれに関連して申しますが、行政振替というものは、これこれの国に対して日本が振替を希望するなら、英蘭銀行の方は文句を言わないということを約束しているのでありまして、その点は一々の場合の手心ということはないのであります。制度がそういうふうにできていますから、今感情のもつれはないと申しましたが、たといあつたとしても、あの措置を実行するにさしつかえないのであります。ところがさらにもう一つつけ加えて申しておきますが、行政振替というものは、遺憾ながらあまり使えない状態にあるというのは事実であります。これは見込みではなく、事実でありますから、私申し上げていいと思います。英国は一般に今国際收支は難局でありまして、多くの国に債務超過です。債務超過であるということは、英国が債権国を持つておるということでありまして、相手国が受取つてくれなければ、行政振替はできないのであります。あの制度は、相手国が受取るであろうということを約束しておるものでない。ところが現在は英国の国際收支が、單にドルに対してのみならず、全般的に悪いという関係からいたしまして、これを受取ることを欲する国が、遺憾ながら少い。その関係であの制度は期待したほどの効果は出し得ないというのが、遺憾ながら事実であります。
  110. 宮幡靖

    宮幡委員 昨年も補正予算を審議するにあたりましてお尋ねいたしました。行政振替の実績はどうだ、まだ知つているのは一つだけだ——速記録に残つておると思いますが、こうお尋ねしたら、一つや二つじやないということを、通産大臣からお答えをいただいた。ところが私のそのとき質問した気持というものは、いわゆるスターリング貨の国際信用というものが低落しておる以上は、なかなかこれは行くものじやない。結局は日英支払協定というものの改訂版をつくらなければうまく行かないじやないか。木内委員長が英国へ行つてつて来るから、来たならば私はお尋ねしまして、何とか新しい知識を拜借しようとさえ考えておつたのでありますが、それらの点につきまして、こういう席上でありますから、個人的な意見の交換は許されませんので差換えますが、おおむね了解ができたわけであります。それで單なるこれは行政振替ができるとかできないとかという問題ではなかなか、全面的にポンドが増大して行くという貿易状況というものは、やはり何らか手を打つ必要があるということも一つの言い方であろうと思う。そうして国際收支といいますと、やがてこれをドル換算にして、今年だと九千七百万ドルが受取り超過になるのだ。だからインヴエントリー・ファイナンスの三百五十億あたりでよろしいなどという議論が出て来ますが、これはポンド貨もドル貨もひつくるめての勘定でありまして、決して日本経済の正常なる循環をするために適切な対象じやないと私は思うのであります。そこでこれはごく事務的なことで、大久保政府委員からでもお答え願えればけつこうでありますが、ポンド貨の増高を防ぐために、輸入信用状の期限を無期限にする、担保の比率を引下げる等の問題を、通産省あるいは三人委員会等で発表しておりますが、それは実施されましたかどうか。実施されての効果、これだけをお答えいただきたいと思います。     〔上林山委員長代理退席、小峯委員長代理着席〕
  111. 木内信胤

    ○木内政府委員 輸入信用状の期限を無期限にするということはいたしておりません。多分保証金の積立金を免除するというこの事実を御指摘だと思いますが、従来信用状を申し込みますときに、保証金を要求した。これは確かにその信用状はいいかげんなものでない、ほんとうのものだということを証明させるためのものでありますが、それを現金でとらしてしかも日銀へ持ち込ますということをやつておりましたが、これはやめました。現在ポンド、オープン両方でやめたと思いますが、これはドルについてもやめてもいいと思いますから、あるいはもう手続済みかもしれませんが、おつつけやめるつもりでございます。つまり銀行の保証でよろしい。ただ信用上ポンド輸入をしなければ保証金がめし上げになるわけでありますが、そういう罰則を科する、たしかそういう一種の商業上の罰でありますが、その罰を科するということは、銀行が引受けさえすれば、何も現金を積んでまで、しかもその現金を日銀にまで預託させてやる必要はないというように改正しようと思います。
  112. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの質問、私の言葉が悪かつただろうと思いますから、事務的なことをもう一ぺん伺います。ポンド地域からの輸入信用状開設期限を無期限にするのだということを、これは通産省の方で、ポンド過剰対策として発表したのでありますが、これは何らかの形で期限を延長するとか、無期限という言葉は行過ぎでありましようが、そういうことができたのか、信用状開設についての輸入担保の比率を、五のものを二にするとか三にするというようなことが伝わつておるのですが、これは実行されたかどうか、こういう質問であります。
  113. 木内信胤

    ○木内政府委員 ただいま申しました通り実行されておりません。
  114. 宮幡靖

    宮幡委員 そういたしますと、ポンド過剰という問題に対しましては何も手が打たれていない、こういうことが外面的には言われるのですが、これで今の輸出ポンドに片寄り、そうして重要資材の輸入資金であるドルの獲得が困難だという事情を解消するか、あるいはこのポンド増高というようなものは一時的現象であつて、憂うるに足らない。あらかじめ二月危機というようなことは、危機などというときには危機はない。経済のパニツクはそういう言葉のないうちに現われて来る。だから、心配はいりませんなどという言葉で片づけられる状況か。これは通商産業大臣にひとつ見通しとしてお聞きしておきます。
  115. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 先刻のお言葉に、私が北陸に行きましたときの何か発言で、新聞記事の御質問がありましたが、あの記事には少し誤解があるように思うのです。まずポンド蓄積の問題ですが、これはなかなかむずかしい問題で、要するにポンドの信用が世界的に低下して来た。それが根本の問題だと思う。それをわれわれの施策だけで解消することはなかなかむずかしい、望めないことだと思うのです。現在の状態では、われわれとしては先刻永山君から説明しましたように、できるだけ小さな問題の上にみな積み立てて行つて、この蓄積を少くするということに努めるよりほかしようがないと思うのです。それから今新聞記事の問題ですが、私はこういうことを言つたのです。現在もそういう考えを持つておるのですが、日本自立経済はどうしても輸出貿易を今よりももつとふやして行かなければいけない。それで二十六年には相当輸出の増進を見たわけなのです。けれどもこういう程度で満足することはできない。現在のところでは幸いにようやく各方面日本商品の足だまりができたわけです。これは何とかして保つて行き、強化しなければいけないので、商売からいえば、ある区域に現在輸出をすることが、赤字になつても、それはしんぼうして、その地盤、足だまりを強化することが必要であるが、原則として輸出を制限することは私は反対である。実際問題として、個々の問題として、ある商品ポンド区域に輸出することを押えることは、これからたびたび起つて来るだろうと思う。ことに原材料がドル区域から主として入つておる。それを日本の生産品をポンド区域に輸出するということは、これは確かに問題だと思う。私は一般的に先刻申しましたような意見を発表したのでありますから、どうか御了承願います。
  116. 宮幡靖

    宮幡委員 その問題につきまして、大臣のお心持は私にはよくわかるのであります。それ以上別に何事も申し上げるつもりはありません。また私が新聞で見たことも、これは活字の上では確かにそう出ておるのであります。しかしこれも間違いであつたということならば、お二階の方におります記者の皆さんの御立腹を買わない程度において、私はそれは間違いだということを了承するに少しもやぶさかでありません。しかし私の主要な点はそれではなくて、この状態におきまして、ポンドの増高して行く状態を何かで押えて行く。これは一時的にただポンドがふえて行くもので、将来心配するものがないかどうかということをお尋ねしたのであります。その点についてお考えを率直に承ればよろしいわけであります。
  117. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 今の新聞記事が間違いであつたと私は言つたわけではないので、私の言葉がそういうことを申し添えて話したのですけれども、その一部分が記事になつたのだろうと思うのです。ポンド蓄積の問題はこれは非常に大きな問題で、私非常に憂慮いたしております。
  118. 宮幡靖

    宮幡委員 ポンド増嵩の対策につきましては、私は通商産業委員ではありませんが、單独の委員会においてでもゆつくりお伺いすることにいたしまして、予算委員会の総括質問としてあまりこまかいことはやめた方がいいと思いますから差控えます。その他の点につきましては、一切他意あつて申し上げたのではない。大臣の腹の中の知惠を少しお借りしたい、こういう意味でありますから、どうか御了解をいただきたいと思います。  そこで貿易もやはりある程度の計画性を持たなければならない。しかもドル地域からどうしても必要な物資輸入しなければならないという事態です。そこで大臣も御承知でありましようが、いわゆる稀少物資というと大体十四品目でありますが、これらに対しまして、ある一つの使用制限とか、あるいはそのうちのある物については再輸出をしろとかいうような、一つの日米経済協力の形から現われて来ました、それぞれの強い意味でない、関係方面からの要請もあるわけでありますが、いわゆるこれを国際割当物資、IMCと申しますが、これらに対しまする措置といたしましては、国内的にはどういうことをただいまお考えになつておりますか。もしこれが大臣がお答えが何でしたら、事務当局でけつこうですから、IMCの国際割当物資を中心といたしました稀少物資国内使用制限、その他の操作、そういうことにつきまして、どういうふうにお考えになつておりますか。
  119. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 稀少物資で国際割当を受けておりますものは、これは当然使用制限の方に向いて行かなくちやいけないのだと考えます。現在その問題について司令部の方から意見が出ております。今せつかくどの程度にやるべきか折衝をしておる段階であります。
  120. 宮幡靖

    宮幡委員 そのIMC物資を中心としましたいわゆる日本で申します緊要物資、これに対します緊要物資輸入基金特別会計というものがあるのですが、これをひとつ大幅に拡張する。そうして民間では価格の関係等で買い付けられないものは、政府がかりに買つておく、必要とあればそれを必要な方へとひとつ流してやる、流してやるけれども、それはまた必ず輸出に振り向けなければならない、こういうような点を、その場合多少価格差ができても、損失を国家が負担してまでもやろうじやないか、同時に国際市場価格が下落しまして、輸出品が国内価格によつては出合わないというような時期には一応買い取る。これをひとつこの会計の中でやつてほしい。世間ではこれを資材銀行という名前をつけておりまして、これができるであろうかと期待しておる。しかしこれを強くやりますと、かつて貿易公団、価格調整公団というようなものの再現になりますので、必ずしも私どもは全面的には賛成でありません。しかしながら緊要物資につきましては、かような手も打たなければならないことがどうもうかがい知ることができるように思うのでありますが、このいわゆる緊要物資の特別会計を操作いたしまして、稀少物資輸入及びその使用等の問題につきまして御操作なさいます御構想をひとつお話していただきたいと思います。
  121. 永山時雄

    ○永山政府委員 お答えをいたします。お話のごとく稀少物資につきましては、必ずしも現在のやり方そのままで、国際的に非常に不足しておる割当物資を確保するということについての措置が十分でないという点もありますので、ただいま通産省当局におきましては、緊要物資輸入基金特別会計法を改正いたしまして、特に民間輸入方式では取得困難なものにつきましては、例外的に緊特会計を運用して、これが買付けをする、こういう方法を考究中でありまして、いずれ御審議を受けたい、かように存じておるものであります。
  122. 宮幡靖

    宮幡委員 それではとにかく今の永山官房長の御答弁によりますと、まず緊特会計を利用いたしまして稀少物資の入手あるいは流通等について特別考慮を払おうという構想、これは聞く必要もありませんが、今国会に法案となつて出る見込みでありますか。
  123. 永山時雄

    ○永山政府委員 本国会に提案いたしたいと、かように希望いたしております。
  124. 宮幡靖

    宮幡委員 それではそれに関連いたしまして日米経済協力の態勢につきまして、緊要物資特別会計の操作等もあわせまして二、三お尋ねしてみたい。と申しますのは、日米経済協力といえば、いろいろの言い方もあり、その前提をなす議論もいろいろありましようが、そういうことは一切やめまして、ただちに事務的にお尋ねするのですが、第一点は、自由世界の諸国家が防衛生産のために狂奔しておる。その防衛生産に直接協力いたすことが第一点、第二点として、自由世界の諸国家が防衛生産に狂奔しておるために、消費生活物資の生産に事欠いておる。その不足を補充するいわゆる新特需の生産、第三点は、東南アジア開発のための協力、こういうふうになるであろうと私は考えておるのであります。いわゆる新特需のためにただいま賠償施設から取除かれました、やがて何らか日本の産業経済力をふやします方面に転換されます諸施設、これらが稼働されますにはそのままでは動かぬわけであります。相当の手入れ及びそれの資金というものが当然いるわけでありますが、これらの新特需の注文というものが一体何年続くか、操業の継続性、経営の持続性ということには何ら見通しはありません。こういうものを今日稼働いたさなかつたら、日米経済協力の第二点である民需生産によつて協力を果すということはできないことになる。もちろん価格の点においてはコマーシヤル・べースによることも必要でありましよう。それよりも当面動かす機械が何年この仕事をやれるかという見通しがあるか。必要がなくなればぽつと注文が切れてしまう。少くとも金を入れて改造したり、原料を調達したり、IMCの割当を受けましても、そうしてやる仕事はたちまちにして終つてしまう。いまだ投下資金の回收等もできない場合におきましては、これは政府が損失を補償するという観念が生れて参りますが、これらの点につきまして大臣はどうお考えになつておりますか。こういう場合におきまして、今は構想でありますから、具体化しておらないでもよろしいが、損失補償してまでも新特需の生産に邁進するか。こういうお考えをひとつお聞きしたいと思います。
  125. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 賠償施設の遊休機械と申しますか、そういうものを早く活用することが必要じやないかという御意見は私も同感であります。なるべく早くそういうふうに持つて行きたいと存じます。そうしてこれらの機械をどういう方面で動かすかということにつきましては、私は中小企業合理化促進に重点を置いて考えたいと存じております。また最後の御発言の新特需で損害を受けたときに国が補償するかどうかということは、これはまだ結論を得ておりません。
  126. 宮幡靖

    宮幡委員 前の方の大臣のお答えは私の質問とは実は違つておるのでありますが、それでも要旨は同じことだと思つて了承をいたします。  そこで現在やつております新特需というものの契約を通産省では御承知だと思う。その契約の主体をなしますのがタイム・アンド・マテリアル・システムと申すものでありまして、これを一年間通じての契約をいたします。これはどうも私はそういう思想を持つた男ではありませんけれども企業の経営権を預けたような形、もつと言葉をかえれば、経営の自主性を失うような制度である。タイム・アンド・マテリアル・システムというものは、どうもそういうふうに見えてしようがないのでありますが、将来遊休の産業施設を活用いたしまして、かような生産に邁進いたしますときに、どういう制度がよいか、通商産業省としてお考えのことがありましたならば、その構想をお話いただきたいのであります。
  127. 高橋龍太郎

    高橋国務大臣 お答えをいたします。今のタイム・アンド・マテリアル・システムということですが、これについてはあなたの御意見のような心配はあると私も存じております。今せつかく考慮中であります。
  128. 宮幡靖

    宮幡委員 御考慮中でありましてまことにけつこうでありますが、これは非常に日本の産業経済自立という面におきまして重要なことであると同時に、日本人の思想に及ぼす影響が非常に大きいのであります。ことに残念なことでありますが、若干われわれと志を異にする方々もある。しかも御意見は自由である現在の世の中におきまして、こういうところにおいて、どうもアメリカ経済属国になつておるじやないかということで、転化されて宣伝されますときわめて迷惑である。これはむしろ政府の方がかわつて申すべきことでありますが、われわれも国会議員の一員として大いにその思いをするのであります。協力することはもちろん協力する、そうして適当にもうけることはもうけさせてもらう。あくまでも金業の自主性を持つて行くということに、ひとつ練達なる通商産業大臣が中心となりましてお考えを今からしていただきたい。この問題がなだれ込んで参りました場合には、はなはだよくない批評を受けるではないかという、どうも私ども後輩としてはなはだ心配いたしておりますので、よろしくひとつ御配慮と切々の御研究をお願いいたしておく次第であります。  次に木内委員長にお尋ねいたします。但しお尋ねは大蔵大臣が見えますれば方向をかえますから、途中で切れましても御立腹なさらないようにお願いいたします。オーバー・ローンの早期解決策として木内構想ありと発表せられておりますが、昨日どの委員か知りませんが、大蔵大臣に伺いましたところが、そういう木内構想というものは聞いたことがないという答弁であります。どつちがほんとうか、私はここで検察官的な気持をもつてただすのではありませんが、伝えられる木内構想につきましてひとつ考えを伺いたい。石橋構想も池田構想も一万田構想も出盡しておるわけでありまして、新しい構想は木内構想あり、こういうことでありますからお伺いしたいと思います。
  129. 木内信胤

    ○木内政府委員 あの問題は私の公に担当しております任務の範囲を相当逸脱しております。実は私が口を出す問題ではないのです。しかしながらあえてあの問題に触れましたのは、公式の立場においても若干関係があるからであります。その一つは、とりわけ今度欧米をまわつて参りまして触れた感想でありますが、今までの日本の復興状態が、アメリカを初め全部で非常に評判がいいのであります。日本は驚くべき復興をした、非常によろしいということで評判がいいのであります。ようやく先方も注目がだんだんこまかいところに及んで来て、復興したから金を貸そうと思つたが、向う側においては、日本の銀行のバランス・シートはとんでもない状態であるということに気がついて来ている状態であります。従つてこの問題は早期解決と今おつしやいましたが、私の判断は、決して早期解決ではない、長期解決策であります。決して早期に解決できるものとは思いません。また早期に解決しようとあせつてはならぬ問題だと思います。いかにしてこの問題をさばくかという手だてはなるべく早く打つた方が、日本の国際信用面から見ていいのだ。こう考えますのは、私は公式の立場においてこの問題にいささか関係を持つからであります。かねて現状におきましては、いろいろ目前商売がうまく行かなかつたためか、困難であるためか、いろいろな問題がありますが、これは輸出入金融の関係であります。私どもも職掌柄多少の関心を持つておりますが、その面から見ましても、どうもあのオーバー・ローンというものがひつかかつて、金融機関は融通性を一応欠いていやしないかと考えられますので、これは私公の立場から大いに関心を深めておる点であります。従つてこの問題に対して何か早く手を打つてほしいという強き念願を持つておりますので、そのことを公の立場において申し上げておるわけであります。しかしそういうことを申しますと、おのずから手はないかということを聞かれますので、構想自体というものは、まつたく私一個の個人の資格で言つておるだけであります。従つてこれは私個人の私見でありますので、この席で申し上げるのに不適当な題目であると思います。新聞にもありましたし、雑談にも書いておりますし、東洋経済にも出ましたから、どうぞそれで御了承願いたいと思います。この席では遠慮させていただきます。
  130. 宮幡靖

    宮幡委員 構想ならばそれを参考にいたしまして、私見ならばそれを参考にいたしまして、大いにひとつオーバー・ローンを研究する材料にいたしたいと思います。  そこで、次にもう一点だけ……。これはほんとうは大蔵大臣がいなければお尋ねしてもかいなきことでありますが、今の外為委員会の制度というものは、昨年の五、六月ごろから、あるいは木内委員長お留守のときも、大蔵省、安本、通産省というようなところで、セクシヨナリズムから出たものではありますまいけれども、権限争いとまでは行かないけれども、特に外為委員会の御意向などは、もし為替管理の上に政治性でも持たせられたならば、これは一大事になるから、公正を保つために中間機関が必要だというようなことを力説されておることがしばしばあつたわけであります。     〔小峯委員長代理退席、西村(久)委員長代理着席〕 しかしながら最後の大蔵大臣の決定及び一般の輿論といいますか、政府の方針といいますか、これは外為委員会を存続せしむべしということになつて、ただいまそのまま存続しておるわけでありますが、しかしこれは永久の機関でないことは御承知のことだと思います。外貨の管理権もおおむね日本に委讓されました。オープン・アカウントも、少数を除きますならば、外貨の管理権も日本に移つておる。たとい占領下におきましてもそういうことになつておる。もし占領政策が解かれましたならば、当然外貨の管理権は日本政府に専属すべきであります。その場合におきまして、やはり現在十二か十五かありますが、外国為替銀行を活用して参らなければならないと思う。今の外国為替銀行の業務というものは、どうも採算上の点から相当遺憾の点もありましようし、あるいは外国為替銀行としての本来の業務より、副業的な業務に重点が置かれておるきらいがありますが、そこで進んでただいま外為委員会に集中されております外貨を分散いたしまして、外国為替銀行に保有せしめるという改正をなさろうとしておるかどうか、これに対してもし御反対があるとすれば、そのお考えをひとつお知らせを願いたい。
  131. 木内信胤

    ○木内政府委員 御質問の最後の部分であります外為の機構でありますが、これは新しい機関ができましたので、占領下のことでもありますし、いろいろそこに円滑を欠く運営があつたことは事実であります。しかしながら、これも御指摘がありましたように、次第に運営になれて参りましてますます円滑になりつつあるわけで、現在の機構そのものが絶対に永久にいい機構だとは思いませんが、しばらく前に感じられましたような不便というものはなくなつております。私どもはこの機構問題というものはなかなか関係するところが多いので、一時の單純な理論で解決するものではないと思います。その点常に注意を怠らず考えを練つております。今度幸いにして欧州に参りましてそれらの点を聞いておりますので、いろいろ御参考になると思いますが、そう急ぐことでもないと思いますので、ゆつくり愼重にいい考えを練つております。いずれは聞いていただきたいと思うときがあると思います。御質問の第一点はそのように思います。  第二の為替銀行に外貨を持たせるという問題は、これは外為の機構と外貨の集中というものとは必ずしも関係がないのでありまして、為替銀行というものは自立するものなのであります。今は日銀から資金を借りて外為の保証のもとに仕事をしているという二重の庇護のもとにありますが、これはいつか除いて行きたいということは当初からの方針であります。随時今度提出されたような問題を提出して、為替銀行としての意見を確かめながら行きたいと考えるわけであります。また回答をもらいましたが、この回答はまだ十分研究しておりませんので、その回答を研究しました上で、あるいは何か新しい一歩を踏み出せるかもしれません。これも愼重に考えて行きたいと思います。
  132. 宮幡靖

    宮幡委員 その問題につきまして今の為替銀行の  まあただいま議事進行の発言があるそうでありますからちよつと席を讓りますが、これだけを結論にしておきたいのであります。今の為替銀行の自立の態勢というお話もありましたが、これはまあ採算はとれないだろうと私は考えておる。そこで外貨を持たせるにいたしましても、これに見合います円資金の供給ということにつきまして、どういうふうにお考えになつておりますか。ただ外貨を持てということを許してみたところで、すぐには為替銀行の活動というものは開始されないだろう、海外へ支店を設けたり、あるいは正常なる為替銀行としての活動などもできない、コルレス契約なども拡大強化して行くということも困難だろうと思いますが、この手持ち外貨に見合いますところの円資金の供給という面については、どういうことを考えておりますか。
  133. 木内信胤

    ○木内政府委員 御質問の点でありますが、今度の為替銀行に対しまして意見を求めましたことは、円資金を別途供給するという前提でなく、円資金の別途供給のないものとして、諸君はどうお思いになるかということを聞いております。
  134. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 それでは風早委員より議事進行について発言を求められておりますので、この際これを許します。
  135. 風早八十二

    ○風早委員 きようはこの予算の重要な審議にあたりまして大臣の出席が非常に悪いわけです。私はきよう午後参りまして、さつそく大橋国務大臣並びに木村法務総裁の出席を要求してあつたわけです。それははつきり委員長も了承されておつたわけでであります。現在に至るまで来られない。私どもはずつとその出席を今まで待つておつた。ところが総司令部に行かなければならぬとか、あるいは行くとかいうようなことでありましたが、事実は廊下に大橋国務大臣はうろうろしておつたのです。私は廊下までおつかけて行つて実際に腕までつかんだのだもけれども、これ以上やるとまた共産党の暴力だなどと言われますから私は遠慮したわけであります。  ほかでもない。今政府は両條約を通し、さらに今回再軍備、増税のこの大予算をどうでもこうでも通そうというために、しかもそれに対しては国民がこぞつて非常な疑惑とさらに憤激を今高めつつあるわけです。従つてこれを押しつぶすために団規法というものを用意しておる。しかもこの団規法が一たび出ると、これはおそらく今までの占領制度というものをさらに維持し、さらに強化して日本国民の言論、集会、結社の自由を根本的に踏みにじる、こういうフアツシヨ的の法律であるということがすでに国民の中から憤激の声となつて出ているわけであります。これに対しては労働者だけでなく、農民だけでなく、一般の市民だけでなく、各新聞社自身もこぞつて団規法には反対である。従つてこの団規法をどうでもこうでも通すためには、政府はあらゆる謀略を今やりつつあるのであります。政府はこの謀略にあたつてまたしてもあらゆる反共宣伝、これを盛んに強化しつつある。あの松阪の放火事件はどうか……。
  136. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 風早君に御注意いたします。討論ではないのであります。議事の進行についてあなたの言わんとする要旨を、簡單にお述べ願いとうございます。
  137. 風早八十二

    ○風早委員 松阪の放火事件だけでなく、練馬の巡査殺し事件、あるいは最近の白鳥警部の事件、こういつたような事件のたびに、これは單なる刑事事件であるにかかわらず、これをあたかも共産党がやつたかのごときデマを政府自身が飛ばしている。松阪の放火事件のごときは、もうその事件が発生したらすぐ名古屋の高等検察庁は何を言つているか。これに対して、いやこれは共産党だ、共産党がやつたという趣旨でその捜査をやれ、検挙をやれとこう言つている。そういう事例が出ている。(「議事進行に関係ないじやないか」と呼び、その他発言する者多し)こういう実に不都合きわまる謀略を政府は続けて来ておつたのでありますが、さらに今日われわれが問題にしようとするのは、最近わが党に対しても盛んに各地方から問合せが来ているが……。
  138. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 風早君に御注意いたします。議事の進行の要点をお述べください。あなたのは質疑になつているのでありまして、法務総裁の出席の際にお述べになつてもよろしい問題であります。議事の進行だというからお許しをしておるのでありますから、それで大臣の出席が悪いから出席をよくせいという意の議事の進行だと聞いたのでありますが、脱線されてほかの問題に移つておるようでありますから、従いまして議事の進行の要点をお述べくださいませんと、あなたの発言を中止いたします。あなたのは議事の進行にならない、議事の進行の要点をお述べくださつたらよろしい。
  139. 風早八十二

    ○風早委員 地方から盛んに問合せが来ている、その間合せによれば、今政府は系統的に来る二月の十日に共産党が暴動をやる、こういうまことにこつけい千万なるデマを盛んに系統的に振りまいておるというようなことがわかつて来ている。従つてわれわれはこの政府の意図に対してその責任を徹底的に追究せんとするものであります。政府はこのデマを飛ばすことによつて、どうでもこうでも団規法を通そうとするその口実をでつち上げようとしておる。またこの十日前後に大検挙でもやつて、さあ共産党の暴動だなんということをでつち上げて、団規法をどうでもこうでも通すためにこれを使おうとしておるのであります。われわれはこの政府の重大なる責任、しかも合法的なる一党の存立に対して、重大な影響を及ぼすところの政府の重大な責任を追究したいと思う。その大臣がここへさつぱり出て来ない。委員長がこの問題に対していろいろあつせんしてくれたにかかわらず、事実政府が出て来ない。また與党の一部の議員諸君が、大橋国務大臣が出て来ないということに対して協力しておるような事実もあるわけであります。私どもはこういう議事の進行の仕方に対しては、はなはだ遺憾の意を表せざるを得ない。きわめて公正なる委員長としては、この点は政府に対しても巖重にその出席を要求し、また出て来ないときには誠意をもつてこれに対して出席を求めてもらいたい、このことを私はお願いしたいわけであります。
  140. 西村久之

    ○西村(久)委員長代理 ただいまの議事進行は政府もお聞き及びの通りであります。この際政府において何か発言がありましたらこれを承ります。——発言もないようですからさよう御了承願います。  宮幡君の質疑の継続をお願いいたします。     〔西村(久)委員長代理退席、委員   長着席〕
  141. 宮幡靖

    宮幡委員 大臣は各方面へ出られましてさだめしお疲れであろうと思います。私も二時ごろから大臣の出席を待つために、二時間近くいろいろなことを言つておりましたので、大分疲れましたから、要点だけお伺いいたしておきたいと思います。すでに各位が総括的な質問をなさいましくどくど申し上げますれば、いずれも重複いたすことになりますので、なるべく重複を避けてお伺いいたします。  まず今回の予算につきまして、財政演説も伺い、また提案理由の御説明もしていただきまして、それから一貫して流れる原則的なものを考えますると、何と申しても生活水準を下げない、生活水準を維持するのだ、防衛力漸増の主義をとつて行くのだ、増税はしないのだ、こういう三つの原則が貫かれておるように思うのでありまして、予算そのものの建前は引続き健全財政、超均衡予算の編成でありまして、これに対しましてはいまさら賛辞を呈する必要もなし、それによつて日本の復興ができて来る、こういうふうにさえ考えておるのでありますが、ただ昭和二十七年度の予算の特質についての説明が、少し、何と申しますか、安易感に満ちておりますところの日本人の気持に迎合するという気持が何かある。新聞を見ましてもそうであります。この予算は講和後最初の独立予算だ、こういう字を使つております。ところが私はこの予算の特質は講和後最初の独立予算の性格は持つておらない。もつと具体的に申せば、昭和二十六年度の予算は講和会議に臨む予算であつて、二十七年度の予算というものは講和発効による、この講和條約を受入れまして、日本独立国家となつて経営いたして参りますのに対応いたしますところの一つの準備的な予算である、ほんとうの独立予算というものは昭和二十八年度から始まるものである。かりに平和條約が三月あたりに発効いたしましても、なお相当期間占領政策が続くのでありまして、自主独立の予算の執行というものはそれからであるべきであります。従いまして昭和二十七年度の予算の性格というものは、これは独立に臨みます、独立に移りかわります準備態勢の予算であつて、そのもの自身が最初の独立予算ではないと考えるのであります。この点につきましては、大蔵大臣の御説明等において、あまりはつきりいたしておりませんが、大蔵大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  142. 池田勇人

    ○池田国務大臣 予算の性格につきましてはいろいろ見方がございましよう。しかし今までの予算と違いますところは、特に講和関係経費を相当見込んでおることであり、また防衛費も相当見込んでおる、こういうところが違つておると思います。独立予算かあるいは独立準備予算かということは見方でございまして、どちらでもいいじやないかと私は思う。ただ終戰処理費というものは一応組んでおりません。そうすると占領がなくなるということでありますが、ただ平和條約によつて九十日間は占領軍がおることになります。これは占領軍がおりましても、米軍に対しましてはこれは進駐軍でなしに、安全保障條約に基く米国の駐留軍である、こうなつて来ますので、独立の準備予算と言つてもあるいは独立予算と言つてもあまり大して違いはないと考えております。
  143. 宮幡靖

    宮幡委員 大蔵大臣が言われる大した違いはないという意味は解釈のしようでありまして、まことにこれは失礼な言葉でありますが、名答弁であります。しかし私は真の独立の予算と、独立に向う準備予算との間に違いがあると思う。真の独立予算でありましたならば、当然日本の長い間の予算の建前からいたしまして、継続費も設けなければなりません、繰越明許費も置かなければならない。それが財政法違反だなどということの考えが出ることは、まだ完全独立の予算でないからだと思うのであります。かように財政法の審議が参議院で遅れましても、もし独立国家でありましたならば、かような問題は国民の一人でも疑点をはさむ者はない。従いまして、あるいは予算の各項目を見ましても、大蔵大臣の説明を聞けばある程度その内容がわかるけれども、りくつを申すのではありませんけれども、未確定経費とか、あるいはこういうものにいるかもしれないというようなものがあるということは、これは独立への準備態勢の予算であるからであります。もしこの予算が準備態勢の予算でなくて、独立国家最初の予算であつたとするならば、かような、私の言葉が過ぎるかもしれませんけれども、むしろ予備費的な性格を持つた予算の計上の方法は、たといわれわれの畏敬いたします大蔵大臣であつても、宮幡、必ずしも賛成できないのであります。けれども、この予算というものが、独立へと向う準備態勢であるという上においては、しかももつと言葉を言いかえますれば、占領政策の最終末期の予算であるという意味におきましては、必然的にかような方途が構想せられることは当然であると考えておるわけでありますが、これは私の間違いでありましようか。池田大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  144. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これまた見方の問題でありまして、それは行政協定がまだきまりませんので、安全保障諸費の内容を各費目別にはつきりと申し上げるわけにいかないのでありますが、行政協定がきまりますれば、大蔵大臣の職権によりまして費目をはつきりできると思います。独立してしまつておればそういうことははつきりきめられるのでありますが、独立いたしましても行政協定できまります防衛支出金の問題、これは大体半々ということにいたしておりますが、半々は金額的な半々か、あるいは初めは費目別でわけて全体を半半にするか、こういうようなことは行政協定できまることでございますが、まあこういう点から、しいて言えば、独立直前の予算というあなたの見方も一つの見方でありましようが、しかし今度四月から、いよいよ條約の効力が発効いたしまして、そうして昭和二十七年度は独立したときに使う、そうするとその予算は独立予算である、こういう見方もあると思います。しかしながら独立予算ということは私が言つたわけでもございません。また独立への準備予算でないと言つたわけでもございません。その点は適当にひとつ考えを願いたいと思います。
  145. 宮幡靖

    宮幡委員 大蔵大臣の答弁は、おおむね私の意図に合つているものと思いますが、この予算を見まして、私が自由党を代表して賛成討論をいたしたり、反対討論をいたしたりすることは、ただいまの場合申し上げるべき筋合いでありませんが、もし自由党としての賛成討論であつたとするならば、これが完全独立をいたしての第一年度の予算であるならば、もちろんなかなかむずかしい言い方になる、あるいはむりな言い方になるかもしれない。しかしこれが準備態勢の予算であるといたしますならば、当然こういう予算が組まれるべきであり、特に答弁の中に触れられました行政協定がいまだ明確になつておらない、しかもその行政協定自身も安全保障條約締結も、日本がもし望むならばということで、日本が頼んでやつたことなんです。手前みそではできないのだ、向うと相談の上でできるというのが当然であつてみれば、そこにたとえば未確定なもの及び予備費的な性格を持つた予算でありましても、大蔵大臣の細目配分に信頼いたしまして、この予算を万全なものと認めるという議論になるだろうと思う。しかしこれは私の私見でありますので、あえてそうは申し上げませんが、私はあくまでもこの予算は準備態勢の予算である、こういうことを考えてこの予算を見て参りますと、全体としては万全な予算であるということに、あえて與党であるから私讃辞を呈するわけじやないが、よくもこれだけの予算が組めた、こういう気持が湧き出るとともに、しいてその難点を二、三指摘してみますと、大蔵大臣の御所見を伺いますと、今度の予算の中におきまして、占領下長く実施して参りましたわが党の非常なるすぐれた政策一つとしてやつて参りました減税主義、大幅減税主義とでも申せば誇張した言葉になりましようが、減税主義が消極化したというきらいがあります。この点につきまして、私は二、三お尋ねいたしてみたいのでありますが、大幅減税主義が消極化して、しかも大蔵大臣はその三原則として、大蔵大臣考えました増税せずの言葉を——前後いろいろ言いまわしがありますが、端的にその言葉をとりますと、たとえば容易に増税しないぞ、たとえ防衛費が膨脹して来ても増税しないぞというかたい決意を示された点に対しても、われわれは頭が下るほどありがたい言葉である。しかし財政経済というものは生きて動いております。必要なときに必要な財政資金を調達することも当然であり、企業によればやはり経営資金を調達することも当然である。必要があつて必要な事態にも増税しないのだというような、これが永続的な性質を持つておつたとしますれば、残念ながら大蔵大臣の増税せずという端的な言葉には、私どもは必ずしも賛成できない。むしろ独立国家の予算といたしましては、必要に応じ財政收支というものは膨脹もするし縮小もする、財政規模も膨脹もし縮小もするのだ、それはそのときと場合によつて動くものであるということを説明せられて、またそういう方針で編成せられた予算であることが妥当である。そういう意味から行くと、これはただ増税しない、そのかわり減税もできないのだという大幅減税主義の消極化ということをてらう意味といいますか、それをカバーするような意味におきまして、増税せずという言葉が置かれたような感じがいたします。これは宮幡の性格が悪くて、そういうふうにまげて考えるのかもしれませんが、この点につきまして大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  146. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は大幅減税主義を放棄したというわけではないのでありまして、先般の臨時国会で申し上げましたのは、臨時的の今年度内での減税——つておきますと、昭知二十七年度には普通にもどりまして相当の税收入になる。それを所得税におきましては、大体千億円程度の減税を恒久化した、こういうことで大幅減税主義を放棄したというのじやなく、大幅減税主義を昨年の十一月の臨時国会に早くやつた、こういうことであるのであります。将来の問題としまして、いろいろな関係で治安費がかさむし、内政費もかさむから増税するのではないかというふうな質問がありますので、私は増税はいたしません、総理も財政演説で増税どころか減税に努力するのだ、こういうふうに言つておられる。私は総理のように減税に努力するというところまで行つておりませんが、腹は増税はいたしません。しかし腹は増税はしないということはもちろん、実はできれば減税をしたいのだ、こういう気持を持つておるのであります。そこで私は国民経済発展拡大によりましての收入をかせぐ、それで国の経費はまかなう、増税によつて今後の経費を見込もうという気持はさらさら持つておりません。そういうことを確言いたします。
  147. 宮幡靖

    宮幡委員 しからば一言伺いますが、先般本会議におきまして、これは減税と称するが、減税でなくて増税だ、実質的な増税であるというようなことが野党の一部から言われましたときに、大蔵大臣の御答弁ははつきりと速記に残つておりますが、たしか河口君の御質問であつたと思うのですが、それは北海道に帰つて農民に聞けばよいということがあつた。私はそのときには、売言葉と買言葉で、まことに行き過ぎな質問でありますから、もし私がかりに大蔵大臣であつてもそう言いたいのは当然の感情であります。けれどもそんなことを言つて説明しなければならないほどまずいものじやない。昨年度の補正予算の減税措置を平常化したことによつて、巖然として七百数十億の減税が達成されておる。そういう売言葉と買言葉式のことを言わなければ、こんなにわかつてもらえないような貧弱なる減税措置でないのだと思うとき、私は残念ながらときと場合でやむを得ない言葉でありましようが、ああいう言葉はどうかと思う。それを聞きますと、何だか大幅減税主義の後退というものに対しましても、さらに思いをめぐらしてみるようになりますが、ただいま大蔵大臣の御答弁を聞いてみますと、確固たるものだ、増税せずということも、單に減税ができないから増税しないのだという意味でないことがいろいろ明確になつて参りまして、まことに私どもは與党の一員といたしまして慶賀にたえないのであります。さらには進んで今度の税制につきましては、私は大蔵委員会においても事務当局に質問したのでありますが、いろいろな発表から見ますと、こういうことが書いてある。制度的な改正をたびたび行うことは納税者と税務当局とを混乱をさせる、今までやつて来た改正が実施後まだ日が浅いから、今後の実績を見きわめた上でどういうふうに改正するか考慮しなければならないということを理由にあげて、ただ資本の蓄積、課税の簡素化について現行制度について若干の改正をするにとどめた、こういう趣旨の説明をしておる。これは一々もつともであります。事務的にはもつともでありますが、そういうわけでなく、もつと拔本的な理由といたしまして伺つて参りますものは、将来国際事情に見合いました場合において、やはり大幅な歳入減となるような減税措置は講じないのだというのが真の理由にあるのではないか、と同時に例のシヤウプ勧告当時、日本が戰後の混乱の時代におきまして、いまだ企業の復興もなければ、国民生活の水準もきわめて低かつた、そういう時期におきまして、シヤウプ博士の編成されました勧告案は、私は当時の状況における至法であり、至典であると思うのでありますけれども、生きて動いております経済というものは、必ずしも永久に、あるいは長きにわたつて、これがさような効果のあるものではない。最近問題になりました附加価値税のごときものにつきまして、当時の状況は、事業量課税という方向に持つて行く方が、当時の地方税の負担の均衡を得られた。しかし今は逆に、これは收益課税のむしろ事業税の方がまさつておるという状況にかわつております。たとえば富裕税の問題にいたしましても、所得税の最高率を引上げまして、富裕税を撤廃する。資本蓄積の一環としては、株式の讓渡所得を全部撤廃して行く。無記名定期預金等の実施はすでに御着手されておるのであります。あるいは賠償機械返還取得者に対しますところの課税が四二%では高過ぎるから、これに対する適当の措置を講ずる等のことがあげられておる。大蔵大臣関係方面との御折衝の過程におきましても、かようなことがしばしば公式か非公式かは存じませんけれども、発表されておるところでありますが、今回の税制の改革を見ますと、先ほど申しました事務当局の理由が二点と、内容におきましては、退職所得の半額分離課税等もこれは置去りとなつておりまして、やはりシヤウプ勧告というものは、時勢がかわつて今は必ずしも合わないものでありましても、何とかこの期間だけはどうしても守つて行かなければならないような感じがにじみ出ておる。すなわち独立に備うるところの準備予算というような感覚が、ここにもまた出ておりますが、これらの点につきまして、大蔵大臣の率直な御感想を承りたい。と同時に、もしシヤウプ勧告等につきまして、おさしつかえがあるなら、委員長のおとりはからいで速記はなくてけつこうであります。
  148. 池田勇人

    ○池田国務大臣 税制の問題でございますが、実は昭和二十六年度の補正予算でいたしました減税は、臨時的のものでございまして、源泉課税を受けまする俸給所得者につきましては、減税が月々で区切つて行きますから、フルに出ておりますが、農民とかあるいは営業者の方々のごとく、一年分で行く場合におきましては、五万円の控除も、実は三万八千円にしかならない。昭和二十七年からは今度は五万円フルの控除になるのでございます。相当影響があると考えるのであります。それからせんだつての本会議で申しました点は、これはもう農民の方々に対しとましても、昭和二十四年度は四百億円余り農民の方々から所得税をとつておる。二十五年度、二十六年度は非常に少くなりまして、今はその半分以下の税金になつている。米価も上り、いろいろなものが上りましたが、所得税も安くなつている。今後の税制の問題として、今シヤウプ勧告の話が出ましたが、やはりお説の通り、あの時代にはあの感覚も適切であつたと思いますが、税制もやはりそのときどきの経済の状況によつて考え直さなければならぬのであります。シヤウプ税制の根本をなしております。キヤピタル・ゲインと申しますか、讓渡所得、こういうものにつきましては、これは資金蓄積の方面から、その時代に合つたような改正をして行かなければならぬ。しかし何分にも税制は一ぺんにぱつとやるということも考えなければいかぬので、昨年の臨時国会でやつたもの、あるいは今回の減税の状況を見まして、昭和二十八年度におきましてはある程度の改正をしなければならぬのじやないかと思います。しかしこれは全体の收入には大した影響はない。それじや全体の收入に対して影響のあるような減税をするかということになりますと、日本経済の動き、すなわち生産の増強あるいは物価の状況等から考えなければならぬと思います。私は政策は、余裕があれば減税する。減税をまず考えて、しかる後に内政費の増加とか、あるいは防衛費を考えて行く。それじや百億円余る余裕があれば、すぐ百億円減税するかと申しますと、そうは行かないので、内政費とか防衛費を考えながら、百億やそこらの減税では、これは知れたものでございます。やはり日本経済発展を見ながら、国民の負担の軽減に極力努力したい、こう考えております。
  149. 宮幡靖

    宮幡委員 次の質問者の時間の関係もありますので、あと一、二点お尋ねいたします。そこで少し飛びますが、今度の国会に予算審議にあたりまして現われて参りました言葉の中に、国家補償という観念が非常に強く浮かんで来ております。これは国家が補償するのだという通念でわかることでありますが、お気の毒な戰争犠牲者と称しまする遺家族、未亡人の方々には、いろいろな予算を全部ひつくるめて二百三十一億、それと八百八十三億程度の交付公債、こういうような措置が講ぜられて、これが足りるとか足りないとかいう議論が相当ある。しかもこれは十分であつてほしいという気持はだれも同じでありますけれども、しかしながら国家補償としてやるのだという理念の上から考えますと、この問題に血道をあげて騒ぎまわる方々には、私は若干の反省を促したいと思う。およそ生命、財産と申しますから、生命が先で、財産があとであることは当然であるけれども、敗戰というものはあらゆる面において犠牲をしいております。現に第一次吉田内閣でやりましたところの財産税をごらんくださいまし。あれは税という名目ではありまするけれども、戰争中からほんとうに血と汗とあぶらの結晶として蓄積して参り、しかも戰力増強のために協力して参りました蓄積資本というものは、打切られ、奪われてしまつたではありませんか。外地に活動せられまして、日本の真の繁栄と発展のために努力をして、しかも在外に残しました財産はどうなりましたか。ビタ一文もないじやありませんか。これらのものは国家補償の観念の上においてどうして浮かんで来ないのでありましようか。もちろん財産権よりも生命の方が上であることには私は異論はありませんが、これらのことに対して一言も思い及ばずいたしまして、そうして單に一方の方は足りない。しかもこれに納得できないで、中には、もつとたくさんやれ、たくさんやらないから、ぐずぐず言うのだなどという、まことに半アジ的な議論まであるにおきましては、私はもつとこの予算委員会において、国家補償という観念を一般的にしてほしい、国民的国家補償の観念に持つてつてもらいたいということをぜひ強調したいのであります。従いまして戰争犠牲者に対しまする慰謝方法は、今後とも継続的に財政事情が許す限りいたしますことは、異論もなければ、当然やるべきことでありますが、その他の国家補償という観念のもとにおいて、在外資産の補償、あるいは財産税で打切られました預貯金の返還、あるいは不動産のまだ大蔵省の管理のもとにあるものを返してやる、こういうような一般的な国家補償の問題について、大蔵大臣は思いを及ぼしておるかどうか、もしありといたしますならば、その構想をお話していただきたいのであります。
  150. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先般の委員会におきまして、遺家族問題について答弁いたしましたときにも、宮幡委員と同じようなことを申し上げたのであります。われわれは二百三十一億円あるいは八百八十三億円というものでは、国家補償という部に入らない。そこでとにかく弔慰金として、生命をなくなされたお気の毒な方にまずやる。その後においてまた軍人恩給なんかの問題もある。しかしそういうことをやつて行きますと、お話通りに、在外資産の問題もありますし、保険にかけて焼き払われてしまつた、こういうものも出て参ります。預貯金の問題もありますし、また財産税も、実はあんなひどい財産税というものは世界始まつてない。ことに財産税でおも屋をとられて、運転手小屋に入つておられる方もあります。いろいろな問題を考えますと、とにかく個々の問題だけで解決しようとしてもなかなかむずかしい。戰争犠牲者全体を頭に置いて、徐々に適当な方法をとつて行くよりほかにはないじやないか。私非常に出し澁るように考えられますけれども、これは結局国民の皆さんから出るお金でやつておるのでございます。出す方にばかりに大蔵大臣は熱心になると、納めていただく、納税者に非常にしかられますので、その間に立つて実は苦慮しておる状態であります。
  151. 宮幡靖

    宮幡委員 たまたま話が国家補償の問題に触れましたので、それに関連して一つ伺いまして、あと庄司委員の御質問がありますから、本日はそれで保留させていただきますが、先ほどもちよつと申しました賠償指定設備の返還については何かお考えになつておるか、そのことが一点。これは企業再建整備法によりまして、特別損失として消されておるのであります。これがそのまま元の企業体に返つたといたしますと、その帳簿価格は復活いたし、あまつさえ再評価あるいは再々評価などの措置を講じますと、さらに簿価は上る。とにかく元の帳簿価格に対しましても、今の税制から行けば、四二%の課税は、会社であるならば免れない。こういうことになりますが、これに対して何らかの措置を講ぜられるお考えがあるかどうか。
  152. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お説の通りでございます。賠償指定財産は解除になりますと、元の所有者に返り、それが帳簿に載ると四二%、地方税を入れますと、五一、二パーセントになるのであります。今までの税法で行きますとそうなるのでありますが、しかし指定を受けておる間に会社が維持補修をして、相当の金を使つておる場合もあります。ある程度補償をしたものもあります。そういう問題もありますし、またそれが資産化して行つても、すぐ担税力があるわけでもございません。しこうしてそれを資産化した場合に、金融機関再建整備法、こういうものとの関係とかいろいろな点がございますので、問題を今掘り下げまして、検討しておる次第でございます。私はある程度の課税はやむを得ないじやないか、こういうふうな気持で進んでおります。
  153. 宮幡靖

    宮幡委員 ついでにこれに関連しまして、在外資産と在外負債を相殺しまして、差額だけを旧勘定に計上されておることは御承知通りでありますが、この場合において、在外資産が復活した場合はどうするか、こういうことが考えられます。その金が返つて参りまして、かりに金としても財産権がもどつて、一応名目的に通貨で表示ができるといたしまして、それは旧債権者においては、特に金融機関においてはそうである。現に適例といたしましては、あるいは少し下火のような気持になつておりますが、昨年あたり盛んに言われましたフランスの国際決済銀行の出資金の返還、それに対します六分の配当をつけて返す。こういうことが理事会で決定しておることは、これは公のニユースであります。この金額は大体四百十一万ドルくらいの程度でありますが、これだけのものが返つて来る。これが日本の、おおむね今の十一大銀行が持主になるでありましようが、これらが返つて参りますと、いわゆる相殺いたしました勘定の在外債権として現金的收入がある。旧債権者に返さなければならない。切り捨てた預金者に返さなければならないが、あるいは返す方法はどうか、あるいはこれを銀行に返さずいたしまして、国家がこれをとるという手があるのか。あるいはもしこういう在外資産が復活して来た場合に、それに対応しております在外負債が生きて参るという観念になりました場合には、その整理はどうなるか。こういうような問題が、この賠償問題と相関連しまして、頭の中を往来いたしまして、必ずしも政府財政措置のみにまつことではありませんが、ひとつ大きな方針を大蔵大臣に立てていただきたいと思う。これらの問題につきまして、現在までのお考えの点はどんなふうでありましようか、おさしつかえない程度で御明示願います。
  154. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国際決済銀行の出資の問題もありますし、またブラジル方面にも、ブラジル政府日本財産を沒收することはしないと言つておりまして、ブラジルにも財産がございます。それからまた朝鮮におきましては、平和條約に示します通りに、あの財産につきましては、今度折衝することになつておるのであります。従いまして今の国際決済銀行のものが返つて来る場合に、出資銀行の金融機関再建整備法の関係、ブラジルの方の正金銀行の関係、こういう問題はやはり先ほどのお話賠償指定財産とうらはらになるものでございまして、十分検討いたしたいと思いますが、今結論は出ておりません。
  155. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 庄司一郎君。
  156. 庄司一郎

    ○庄司委員 大蔵大臣にお伺いを申し上げたい二、三の問題がございますが、実はわれわれの常任予算委員会が、元のように各専門部門の分科会が存置されておりますと、非常に便利な質問となり、応答となるのでございますが、元の、古い言葉でいえば予算総会で、分科会にあらざるこの委員会においてお伺いするには、あまりに実はこまかいことなのでありますけれども、分科会がございませんので、勢い分科会的なこまかい問題を二、三お伺いして納得しておきたい、こう思うのであります。  お伺いしたい第一点は、政府は、ただいま議題となつておりまする明年度の一般会計予算等の中には、財政金融の面において、あるいは開発銀行あるいは輸入輸出関係の銀行、その他これからの産業開発の投資の銀行等、いろいろ御構想もあり、御計画もあるようでございます。金融関係において、合計約一千百八十五億ほどを予算化されておるようでございますが、私のお伺いしたいのは、いわゆる中小企業という言葉が、きわめて簡單に用いられておるが、私の最も関心を持つておるのは、中小というような社会通念、あるいは概念の問題でなく、零細なる金融を絶対的に必要とするところのこまかい商工業者の問題であります。具体的に申し上げるならば、あるいは五万、あるいは十万、あるいはそれ以上三十方、五十万という金融を必要とする部分もありましようが、こまかいところの面においてもとより信用組合、あるいは地方の無盡会社、このごろでは相互銀行とかなつておるようでございますが、そういう面の金融機関が力がございますならば問題はないのでありますが、まだ資本の蓄積が十分ではない。そういう関係上五万、十万のこまかい金というものは、まつたく国家の金融面よりオミツトされておるのであります。そこでそういう諸君の需要を満たさんがために、ここに生れておるところの、きわめて奇々怪々なる金融機関があるわけでございます。私は最近わが国における庶民金融関係の問題を、明大の学生五、六人をアルバイトに使いまして調査しております。大分材料が集まりましたが、たとえばこういう具体的な問題を申し上げておきたい。東京都内のあるAという金融会社、これは五万円ほしいというものには五万円を貸すのであります。きわめて簡單に貸す。但し当初において七千円の金利、及び手数料というものを差引き、四万三千円渡すのであります。しこうして一日一千円ずつの割合で向う五十日間にその貸付を回收するのであります。この金利は年計算において七割五分であります。そういう不当に、不法に、高利貸しといいましようか、そういう高い金融機関が都内だけでも私どもの調査では二百五十何社を越えておるのであります。また個人のさような営業もある。新聞を見ると、大蔵大臣公認、あるいは大蔵省公認などというようなアーテイクルをつけて新聞に三行広告をやつておる。でありますから、かりにそういう会社がここに百万円の金があり、その百万円の金を五万円計算で二十人に貸し付ける。毎日金が入つて来る。貸したそのせつなにおいて七千円入つて来る。この計算は百万円を資本金として、それがまんべんなく毎日金融された場合を推定すると、七十日に驚くなかれ一千六百五十万円となるのであります。まことにこれはピラミツド的計算であります。かような金融が現実にこの都内において跋扈跳梁しておる。彼らはかようなとにかく金融ぶりであります。借りる人は当初七千円を控除されるけれども、一日千円ずつかけて完納するというそのことが営業者等においては比較的容易である。だからきわめて簡單に借ります。貸付をする者は保証人二人をつけさせることは、むろんである。こういうのは大蔵省に対して届出だけでやつておるのであるか、あるいは大蔵大臣の許可認可であるか、私は金融法というものをはなはだはずかしいのですが詳細に知りませんが、とにかく新聞広告には大蔵大臣公認、大蔵省公認というような美辞麗句を並べて、そうして少額の資金のほしい者に貸し付ける。今申し上げたような計算であります。かようなことは政府に零細なるところの企業家、零細なる商工業者に対して、金融を簡單に容易になしあたうところの機構、設備がない。そういう御計画がないという悲哀がもたらしたところの副産物である、かように私は考えます。これについてはまとまつた大論文を書くつもりでありますが、わが国においてもアメリカのモリス・プラン的な庶民金融、あるいはごく零細な諸君に対するところの金融をひとつ考えてみたい。私はただいま御提案になつておる国民金融公庫に、政府はことしもまた七十億ですか、増額をされるという点において、多分にこれは高度な社会政策意味してたいへんけつこうなることを大蔵大臣はおやりになつておる、こう考えるのでございますが、とにかく中小企業というような社会通念にとらわれて、零細な五万、十万のこまかい金——一昨日も同僚の高橋議員より遺家族等に対する金融をどうするか。大蔵大臣は国民金融公庫をして優先的に貸付をさせる方途を講ずる、まことにけつこうな御方針でございますが、ただいま申し上げたような私の資料を御参考にされ、大蔵省としては何らかこの庶民金融の方途をよりゆたかに円滑化するような方途の御研究はないものでございましようか。ぜひこれは国家のために零細なる企業家諸君のために、ほしいものであるということを私は念願をしてやまないと同時に、一方において今申し上げたような高金利の金融機関、これに対して金融業法では年二割を越えてはならぬとうたわれておるように拜承しておるのでありますが、かような会社等に対してどういう御措置をとらるる御方針であるか。中には参議院議員何がしが顧問だとか、相談役、あるいは衆議院においても顧問とか相談役に御承諾をなされたかどうかはわかりませんけれども、名前が羅列されておる会社なんかもたくさんある。ところがその金利は、今申し上げたように高金利である。われわれ国会議員としては顧問にも相談役にもなつてはいけない程度の高金利の会社に名前が羅列されておる。まことに寒心にたえないのであります。往年といいますと、今から十二、三年前に、全国に無蓋というものがはやりました。その結果非常に被害者が出た。ただいま申し上げたある会社のごときは、払込みの金に対して最低三分、最高五分の配当を毎月やる、こういう好餌をもつて投資者を求めておる。こういうような問題に対して、新たに大蔵大臣は何らかの措置をとられる必要に迫られておるのではないか、かように考えますが、大蔵大臣の御所見はいかがでございますか。
  157. 池田勇人

    ○池田国務大臣 中小企業の方々あるいは零細な生業資金を要せられる方々に対しましては、できる限りの措置をとつております。ただいまのところ、商工中央金庫が主になつてつておりますが、これもこの二、三年に比べますと、貸付が大体十倍程度にふえております。昭和二十四年ごろの二十四、五億円が二百数十億円になつておりまして、相当伸びております。それからお話の無盡会社も御承知通り相互銀行、こういうふうに衣がえをいたしまして、これの中小企業における地位というものは、非常に拡大されておるのであります。原資と申しますか、元の資金でございますが、運用し得る金が一千億円を越えたという状況であります。信用組合にいたしましても、信用金庫と改称いたしまして、これも相当目ざましい活躍をしておりますが、何分にもこのごろは国民金融公庫が一番クローズ・アツプされております。ただいま政府の出資が七十億円、今度御承認をいただければ、これは百億円になり、新たに三十億円を加え、今までの資金がほとんど回收になりますので、貸し付け得る金は五十億円程度に相なるのではないかと、こう見ております。こういう方法でやる一方、普通銀行につきしましては、中小企業専門店を設けるように勧奨いたしておりまして、できるだけの措置はいたしております。今後におきましても、こういう中小企業に対しましては、極力力を入れて行きたい。最近におきましても、政府の指定預金を二月一ぱいで引揚げるつもりであつたのでありますが、今の状況から考えまして、農林中金等における政府の預託金はしばらく引揚げることを延期しよう、こういうふうな措置もとつております。今のお話の五万円貸し付けて七千円を先取りしてあと千円ずつとる、こういうのは單なる金貸業でございまして、大蔵大臣としてそんなものを認可した覚えはございませんが、これは銀行法で取締られるか、あるいは單なる貸金業か。銀行法というものは、つまり預金を受け貸付をするというのが原則でありまして、今のは自分の金を高利に貸すという形式になつて、銀行法の適用を受けぬのじやないかと思います。実体をよく調べまして、適当な措置を講じたいと思います。
  158. 庄司一郎

    ○庄司委員 たとい民間の一金融業者でありましても、ただいま申し上げたような金利はあまりにも極端な高金利であり、零細な企業者に対して苛斂誅求を試みておるものである。そういうものに対しましては、すみやかに何らかの法的措置をとられて善処あられんことを要望してやまないのであります。  お伺いしたい第二点は、一昨日同僚高橋議員よりの質問に対し、遺家族等の公債五万円ですか、そういう所有者に対して国民金融公庫をして優先的に善処させる、けつこうな御方針でありますが、日露戰争の直後において公債をもらつた兵隊さん方は、ほとんど高利貸のために巻き上げられたのであります。この事実は御承知のことであると思うのであります。そこで国民金融公庫の中に恩給あるいは公債部というような一部門を設けさせまして、再び日露戰争直後に起きたような不祥事が起らないように、さような御親切な措置をとられることが望ましいことであると私は考えておるのであります。不幸にして国民金融公庫の支店といいましようか、支所といいましようか、そういうものは都道府県、たとえば私の宮城県でいえば仙台市にしかない。郡部、農村方面にはありませんので、勢いただいま申し上げましたようなA、B、C、Dの高利貸等に、生命保險に入つて保險の受取りの委任状まで差上げて、高利の金を公債担保に借りるような不幸な同胞が遺家族等に現われましたならば、まことにお気の毒千万である。そこでどうか大蔵大臣におかれましては、戰争犠牲者の公債等を一時担保にして金融を受けるもの等は絶対に国民金融公庫より借りる、それは最も低利にしてできるだけ長期のものであつてほしいことは言うまでもございません。ぜひそういう親切な措置をとつてほしいことは、これはひとり高橋君のみならず、私も切にあなたにお願いを申し上げておきたいと思うのであります。  なお前年度までの予算の中には、引揚者あるいは戰争犠牲者、いまだ帰りたくても帰ることのあたわない異国の空に泣いておる抑留同胞等の留守家族、こういう方々が更生資金という名前のもとに少額なる金融を受けておつたのであります。少額なりといえどもたいへんありがたい低利資金であつたのであります。終戰後合計三十一億ほど政府はそれぞれの機関を通して貸付をされて、約千億ほど回收がついたと聞いておるのでありますが、しかるにただいま議題と相なつております本一般会計予算面には、その更生資金というのが根本的にオミツトされておるようでございます。私は老眼兼近眼ですから、あるいは見落してはなはだしい失礼があつてはと思い、よく見たのですが、どこを探してもない。もしないとすれば、引揚者や留守家族の諸君は非常な失望をされることであろうと思うのでありますが、生活保護法に準拠するところのあの生業資金の貸付とは違います、ただいま申し上げたような留守家族、引揚者、戰争犠牲者、未亡人等々の不幸な境遇にあられる立場の者のみが借り得る更生資金というものがオミツトされていることに、私は非常な悲哀を感ずるものであります。しかるに高橋同僚に対しては、国民金融公庫をして優先的に貸付させるのだということを大胆率直にかなりの確信を持つて大臣は述べられておりますが、抹消されておる更生資金が、いかなる方途によつて更生資金と同じ性格の金融を円滑になされんとするものであるか、それをお伺いたしいのであります。
  159. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御質問の第一点の、遺家族に交付いたしまする公債の換価の問題でございますが、御承知通り年金で参りまする未亡人の方、遺児の方につきましての振り合いもありますので、五万円になり十万円なりのものを一時に換価するということは、なかなかむずかしい問題だと思います。従いまして先般お答え申し上げましたように、生活にお困りの方につきましては、これを五年の均等償還をより短かくいたしたい、少くとも一年に一万円と利子が行くような方法を考えたい。これをすぐ流通証券にいたしまして、八百八十億円をすぐ換価されるということになりますと、インフレの点も考えなければなりません。その点は今愼重に検討をいたしておるのであります。  御質問の第二点の、引揚者の更生資金につきましては、今まで年々予算に計上いたしておりましたが、予算に計上いたしました金額は積り積つて相当に相なつて参りまして、その利子並びに回收金が大体四億五千万円程度見込み得るのであります。引揚者ももう帰つておいでになる方が少うございます。今までの元本、利子で四億五千万円新たに貸し付け得る程度になりましたので、新規の一般会計からの繰入れは中止しました。利子と元本を回收してまたお貸ししよう、こういうことに相なつたのであります。
  160. 庄司一郎

    ○庄司委員 大蔵大臣関係はこの程度で終りまして、文部大臣に移ります。  文部大臣天野君に対して二、三の質問をしたいと思います。あなたの所管されている文教政策のうち、義務教育でございます中学校、小学校等の校舎に対し、六・三制の補助を交付されていることはたいへんけつこうでございますが、これらの小学校、中学校の義務教育校舎は今から三十年、中には五十年も前に建設をしたために、暴風雨に耐え得ません程度に老朽し、あるいは腐敗しておる校舎も相当ございます。現に昨年の台風等によつて倒壊した学校は全国に五十余校あつたそうであります。関係町村の財政も非常に窮迫しておる。従いまして新校舎をじやんじやん建設するということははなはだ困難な状態にありますので、かような老朽腐敗しておる義務教育校舎に対して、これを何とか法文化し、あるいは制度化して補助助成を與えることを文部大臣はお考えになつておられないのでしようか、願わくはそれを実施してほしいという意味から、このことをお伺いするのであります。  第二の質問は、積雪寒冷地帯における土地改良、農業振興等に対しては政府相当予算を計上されておるのでありますが、積雪寒冷地帯におけるところのやはり義務教育の小学校、中学校等の校舎において必要欠くべからざるものは、積雪丈余に及ぶ場所等における屋内の体操場であります。これらの建設に対して六・三制のような割合をもつて、何らかこれまた法文制度化して補助助成を與えるお考えがないでありましようか、お考えがあられても予算措置がなかなか困難であるという実情にあらるるものでございましようか、最初この二点をお伺いしたいと思います。
  161. 天野貞祐

    天野国務大臣 お答えいたします。老朽校舎のことは私も非常に心配いたしておつて、大蔵省の方にもお願いをしてあるのですが、これは予算に計上されませんので、何かここに新しい方法を講じて、老朽校舎に対する措置をいたしたいというので、いろいろくふうをいたしております。  それから屋内体操場はこれも非常に必要なものでございますので、二十七年度には七千七百坪、九千九百万円の予算でつくることにいたしましたが、ただこれでもつて満足するというわけでございませんので、これもどういう方法かを講じて、今後ますますこの坪数をふやして行きたいという考えでございます。
  162. 庄司一郎

    ○庄司委員 予算措置の第一歩的な御処置については敬意を表します。ぜひこれを恒久化し、制度化し、法文化して関係町村等が救わるるように、しこうして一層文教の盛んになることを念願してやまないものであります。  次にお伺い申し上げたいのは、これは昨年の通常国会においてもあなたにお尋ねをし、かつ私は悲願を立てておつた問題でありますが、それは青年教育の問題でございます。わが国において義務教育の小学校、中学校を終えて、その上の高等学校とか、専門、大学、短期大学等に進学しあたわない青年の数は、大体五百六十万人あると聞いております。この五百六十万人の青少年は、義務教育だけで、あとは学校教育を受けあたわない青年諸君である。いろいろな理由もございましようが、大体各家庭が貧しい、あるいは職業の関係上、その他の事情もありましよう。しかし義務教育だけで教育は事足りるものでないことは、文部大臣のよく御了承のことであると思うのであります。従いまして昔は各町村に農業補習学校、あるいは都会においては工業、商業の補習学校等々の夜学の設備があつたのであります。ところがただいまはそういう学校はない。そこで社会教育法という法律に準拠して、公民館の一つの文化教養上の事業として青年学級というものを御承知通りおやりになつておる。昭和二十六年度におけるところの青年学級関係の公民館を通しての補助金は、百三十六万円であつたと本員は記憶しております。あまり少額である。これは青年一人当り三十銭であります。むろん義務教育でございませんので、單なる社会教育の一環であるがゆえに、文部省はそういう予算を多くとり得ない状態にあるかもしれない。けれどもこの平和国家、講和後において多事多端なるわが国の将来を双肩ににのうてやつてくれるのは今の青少年諸君である。国立の大学には、それも最小限度ではございましようが、二百五億の金をお出しになつておる。国立の大学はおろか、高等学校にさえも進学しあたわない境遇にある全国五百六十万の青年に、せめても一箇月の間に三日なり、それもせめて農閑の季節における夜学なりで教えておる社会教育——成人教育といいましようか、青年教育、そういう教育のために前年度は百三十六万円であつたのである。本年度は、ただいまあなたが要請されておる御予算を見ると、社会教育助成金として八千百二十万円、公民館関係の運営の補助金として一千八百六十一万円、これをあなたは国会に要求されておる。多少上向いては来たようでありますが、ただいま申し上げました青年学級、恵まれざる学級、向学上の機会均等を得ておりませんところの青少年のために、青年学校教育のために、本年度はこの予算のうちよりどの程度配分される御方針でこの予算を要求されておるか、これをお伺いしたいのであります。
  163. 天野貞祐

    天野国務大臣 義務教育を終えまして、高等学校に行けない人というのは、私も非常にこれは考えなければならない、この年齢が一番むずかしいときであるのに、これを放置するというようなことがあつてはならないので、まず高等学校へ行けるために奨学資金をできるだけふやそうと考えておりますけれども、その方はまだ全体の三%にすぎないので、ぜひ五%くらいまで高等学校の方にこの奨学資金をふやしたいと考えております。青年学級についてももつとほんとうによくやらなければいかぬと思いますけれども、今のところ不十分ではございますが、しかし本年度においては五百万円をこの青年学級の方に用いて、そうして各都道府県に五百学級を開設して、地方の実情に応じて百姓のひまなときとか、あるいは夜間を利用して、一学級年間百時間以上を開設することにいたしております。それから第二には、全国八会場一箇所三日間の青年学級研究協議会というものを開くことにしております。それから三番目には青年学級主事の養成講習を開設する。それで一箇所十四日間、二箇所開くことにするとか、とにかくこういうことを考えまして、ぜひ義務教育を絶えた者を教育しなければいけない、この教育が非常に重要だということは、私も庄司さんとほんとうに考えを一にするものでございます。ただまだ非常に不十分であるという点については、まことに済まないと思つております。
  164. 庄司一郎

    ○庄司委員 百三十六万円を五百万円に格上げされた御努力には感謝いたします。しかしながら全国青年一人当り一円弱であります。資金に恵まれて父兄より送金を受け、あるいはアルバイトもやつておるのでございましようが、とにかく大体その国立の大学には二百五億円をお出しになつておる。文相は哲学者であつて、ことにカント哲学の大家だそうでありますが、私は孔孟の研究をしております。孟子いわく、物平らかならざればすなわち鳴ると言われておる。格上げされても五百万円、青年学級の生徒一人当りどのくらいにつくでありましようか、まことにこれは僅少な金である。鉛筆一本買えない。格安な鉛筆で、一本ただいま七円でございましよう。気のきいた鉛筆は十円とる。これは何とか文部大臣考えください。五百五、六十万の人口を擁しておるところのわが国の青少年は、日本の農業に、工業に、あるいは魚取りに、鉱山に働いておる勤労青少年諸君である。これらの諸君のためにせめて一億円くらいの予算はとれないでしようか。私は池田君が立たれたからここで申し上げても効果はないが、この問題に関する限りは、私は極力大蔵大臣に啓蒙教育を施してみたい。すでにきまつたことはしかたありませんけれども、もしそれ文部省予算昭和二十七年度等において、あるいは六年度等において剰余金が幸いに出ましたならば、大蔵省の御了解を得られて、ひとつ何とか予算の範囲内においてただいま申しました青年教育のための何らかの方法を講じてもらいたい。私はあなたにお伺い申し上げたい点はたくさんございますけれども、ここは文教の常任委員会でございませんので、予算委員としては本日はこの程度であなたとおわかれ申し上げるのであるが、結論は、私は重点的にほんとうに思い込んだことだけ申し上げます。あに弁を好まんやであります。どうかひとつ青年教育のために敢然として文相は立つていただきたい。学習院の問題等、いろいろ聞きたいのですけれども、きようはひとつ謙讓の美徳を発揮して、この程度で本日は終ります。
  165. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 本日の会議はこの程度にとどめまして、明八日は午前十時より委員会を開会して質疑を継続することといたします。  これにて散会いたします。     午後四時五十九分散会