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1952-02-06 第13回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月六日(水曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林榮吉君    理事 小峯 柳多君 理事 苫米地英俊君    理事 西村 久之君 理事 井出一太郎君       淺利 三朗君    天野 公義君       井手 光治君    江崎 真澄君       小川原政信君    尾崎 末吉君       角田 幸吉君    甲木  保君       川端 佳夫君    北澤 直吉君       志田 義信君    島村 一郎君       庄司 一郎君    田口長治郎君       玉置  實君    永井 要造君       中村  清君    中村 幸八君       南  好雄君    宮幡  靖君       今井  耕君    中曽根康弘君       平川 篤雄君    岡  良一君       西村 榮一君    風早八十二君       山口 武秀君    横田甚太郎君       成田 知巳君    小平  忠君       世耕 弘一君    石野 久男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣  高橋龍太郎君         運 輸 大 臣 村上 義一君         厚 生 大 臣 吉武 惠市君         建 設 大 臣 野田 卯一君         国 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 岡野 清豪君  出席政府委員         外国為替管理委         員会委員   大久保太三郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豐治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算  昭和二十七年度特別会計予算  昭和二十七年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 塚田十一郎

    塚田委員長 会議を開きます。本予算の各案を議題に供します。これより質疑を継続いたします。上林榮吉君。
  3. 上林山榮吉

    上林山委員 まず建設大臣に一、二の問題について質疑を試みたいのであります。御承知通り、本年度の予算は特に食糧増産費用と、公共事業費用が増大されておることは、国民の期待に沿う大きな問題であると考えまするが、そのうちで一般公共事業費が百億円、災害公共事業費が百二十九億円、合計二百二十九億円の増となつておるのでありまして、私ども一歩前進した政府方針であるという意味において、決してなれ合いでなく、確かに一歩前進したところの政策である、こういうふうに考えておるのであります。しかしここに盲点というのは、公共事業についてどういう点があるかということについては、私は再三本会議上において、あるいは当委員会等において、この問題については政府に強く進言して来たつもりであります。というのは、一体何かと申し上げますと、災害復旧、ことにルース台風災害復旧等について政府がせつかく工事をやり、あるいは補助金を出すのでありますけれども、これが超過工事というか、改良工事というか、そういうものを含めなければ今後の災害等に耐えることができない、こういう意味でこれが法案改正を強く要望して来ましたけれども、心は建設省においても動いた。大蔵省においてもある程度了解はできたと思いますけれども、今国会政府提案としてこれらの法案が提出されておらない。ことに話は小さいように見えるが、その集積の量からいつて、一箇所十五万円の工事費以外は補助の対象にならないという問題、これなども、ことに市町村においては困つておる問題であるので、せめてこれを十万円程度に改めなきやならぬというのも、私初め心ある議員が常に主張して来た問題でありますが、今度の国会に何がゆえにこれだけの大きな予算を出しながら、これに並行して今言つたような立法処置政府としては考えなかつたか。あるいはおそまきながらこれから考える用意を持つておるかどうか。この点についてまず伺つておきたいのであります。
  4. 野田卯一

    野田国務大臣 ただいまのお尋ね超過工事の問題でありますが、これにつきましては、目下政府部内において検討中でありますが、まだ成案が得られませんので、国会提案はできませんが、目下政府部内で検討中であるということを申し上げたいのであります。なお十五万円以下の小さい災害につきまして、これをたとえば十万円に引下げるというような問題がありますか、これもあわせて検討中であります。
  5. 上林山榮吉

    上林山委員 検討中であるということでありますから、信頼を申し上げますが、もしそれが微温的な改正であつた場合においては、われわれ国会の方におきまして実情に沿うた改正案を出そうと考えております。でありますから、それについては、政府におかれても了とされ、あるいは事務当局等におかれてもこれを了とされて、われわれの案が成立することに協力を願いたい。政府が徹底した案をお出しくだされば私どもは引込めるけれども、そうでない場合は議員立法をやりますから、それについては、政府事務当局も積極的な御助成を願いたいということを要望いたしまして、この点はその程度にいたしておきたいと思います。  第二点としてお尋ねをいたしたいことは、政府住宅政策についてであります。終戦後衣食の問題は不満足ながらも安定の線をたどつて参りましたが、ただ一つ住宅問題だけはこれが解決をされておらない。不足の数を調べてみますと、いまだ全国で三百四十万戸の住宅不足をしておる。しかも住宅困窮者ともいうべき非常に困つておる戸数は幾らぐらいであるかといいますと、百八十万戸になんなんとするような状態であります。これを政府が今までやつて来た、たとえば七万五千戸くらいの住宅計画を立てたといたしましても、二十年たたなければ、場合によると、自然減もあるし、あるいは火災等も起るのでありますから、二十五年たたないと、これらの問題を解決することができないという実情にあるわけであります。でありますから、なるほど現政府は、住宅問題に対しては住宅金融公庫拡充強化によりまして、今までよりも徹底をして参つたことは私どもも認めている。あるいはまた公営住宅法をわれわれ議員提案いたしまして、これが通過し、これに準拠して、政府において庶民住宅の問題について相当関心を持つて来たことも認めるところでありますが、ただいま申し上げましたような事情によつて、とうていこれでは日本の住宅政策解決することにはならない。やらぬよりはいいけれども解決する段階にまで至らない。この盲点に対して、政府はたとえば住宅金融公庫拡充強化をさらにはかるとか、あるいは公営住宅法国庫補助の額四十七億を百億に増加して、そして住宅金融公庫の五万戸の目標と同時に、これらの庶民住宅目標をせめては五万戸くらいにして行くというような行き方もあろうが、これらに対してどう考えているか。この二つの点をまず建設大臣に伺つておきたいのであります。
  6. 野田卯一

    野田国務大臣 終戦後ただいまお話がありましたように、食の問題、衣料の問題はある程度解決されて参つたのでありますが、住の問題はまだはなはだ不完全な状態にあるということは私まつた同感であります。建設省といたしましては、できるだけ早く住宅を充実いたしたいと努力して参つておるのであります。現在御審議中の二十七年度予算につきましては、お話程度の数字にとどまつているのでありますが、今後あらゆる機会をとらえてこれを強化して行く方向に進みたいと考えております。  なお住宅の充実は單に政府資金によるもののみによつては果し得ない。今までの実績を見ましても、政府財政資金をもつていろいろと促進して来たもののほかに、それよりずつと多くの民間住宅が建つているのでありまして、なるべく民間の人々が自分の家を建てる、これをいかにして促進できるかを今研究いたしているのであります。できるなれば、住宅建設促進法といつたようなものをつくりまして国会に提出しようと考えて、目下案検討いたしているような次第であります。
  7. 上林山榮吉

    上林山委員 私はまず政府関係でできる問題から質疑を続けて行きたいと思うのであります。その中で公営住宅法に対する建設大臣の今後の考えは、第一種公営住宅重点を置くつもりであるか、第二種公営住宅重点を置いてやられるつもりであるか。同時に私がさきに提唱申し上げました通り、二万三千戸の庶民住宅建設方針では、一般勤労階級というか、その他の困窮者方々というか、これらの人の住宅政策としては不徹底である。だから、年年五万戸ぐらいずつの住宅拡充をやつて行く、この方面への考えはないのかどうか。私は住宅を求めておる最下層の人たち要望政府はどういうふうにこたえられるつもりか、これからお話を承つてから、政府以外の資金による大臣構想なり、われわれの意見を申し上げてみたい。こういうように考えておるのであります。これについての所見を伺いたいのであります。
  8. 野田卯一

    野田国務大臣 公営住宅につきましては、御承知のように一種、二種の両種があるのでありますが、一種公営住宅坪数にいたしますと、一戸の坪数が十坪から十二坪、第二種の方は八坪から十坪というわけで、比較的小さいのであります。われわれの住宅に対する考え方から申しますと、家の規模から言いますと、第二種の八坪から十坪というのは小さ過ぎるのではないか。こういうように考えております。あまりそまつな、いわゆる不自由な家を建てますと、結局大局的に見まして国家に有利ではない。むしろ規模といたしましては、第一種程度住宅を促進しなければならぬのではないかと考えております。問題はこの補助率の問題だと思います。第一種住宅につきましては、御承知のように二分の一の国庫補助になつております。第二種につきましては、三分の二の国庫補助になつておる。この国庫補助が違いますので、地方団体といたしましては第二種の方が財政的には便利だ。しかし家はどうかと思われる。こういうことになつておりますので、この点財政負担の点を考えまして、今後この第二種の小さい家を建てるということよりも、むしろ第一種程度の家をおもに建てる。しかも補助率は二分の一を上げ得るかどうかというような点を、十分財政状況を見まして研究して行きたい。こう思つております。
  9. 上林山榮吉

    上林山委員 第二種公営住宅は三分の二の国庫補助でありまして、地方団体としては非常につくりやすい、またたくさんつくれる。また五年や十年間はこれでもいいというふうに、非常に要望が多いわけでありますが、その坪数を第一種公営住宅程度に引上げて、三分の二に国庫補助をして行くというような方針にさらに一歩前進できれば、私どもも期待するところでありますから、ひとつその規模のもとに、せめて五万戸ぐらい一年間に計画を進めて行くというくらいの考えをお持ちにならなければ、私は庶民住宅解決はできない、こういうように考えるのであります。  次にお伺いいたしたいことは、災害に対する住宅政策の問題であります。今までは災害住宅建設に対しましては、今までの一つのわくの中からとりあえずさいて参りまして、これを災害住宅に充てておつた。そういうようなことでは、既定計画を変更して一般住宅需要者に対して非常に不利益を与える。こういうことにもなるので、われわれ災害地の者ばかりでなく、不測の災害に備えて政府一定災害住宅予算を持つておるべきだ。予備費的な予算を持つておるべきだ。こういうふうに考えるのでありますが、せめて十億円なりあるいは二十億円程度災害住宅予備資金、こういうようなものを設定する意思はないかどうか。きわめて適切な考えであると思いますので、要望したいのであります。
  10. 野田卯一

    野田国務大臣 ただいまのお話災害住宅でありますが、災害がありまして、たとえばルース台風ならルース台風という災害がありまして、その災害のために住宅が破壊をされたという場合、それに対しまして、地方団体がその災害によつて破壊された建物の数の三割、それまでは第二種の公営住宅を建て得る、それに対しては国庫補助金を出さなければならぬ法律の建前になつております。しかしこれに要する経費は、一般公営住宅経費の中に計上はいたしてないのであります。それは災害復旧費の中に入つております。そこでルース台風に例をとつてみますと、ルース台風につきましては、大体八千戸の災害第二種住宅を認めまして、予算的には昭和二十六年度の災害復旧費予算から約二億円、それから二十七年度の災害復旧費予算、これはこぶの部分でありますが、その中から約九億円近くのものを出しまして、八千戸の第二種公営住宅災害公営住宅を建てるということになつております。従つて当初予定しました一般公営住宅計画の中には食い入らないということになつております。
  11. 上林山榮吉

    上林山委員 この際厚生大臣に伺いたいのでありますが、私は住宅政策建設省に一元的に一本にした方が適切である、こういうように考えるのでありますが、あなたの所管の中に災害が起つた場合、災害流失家屋の一割くらいに相当するものを、仮設住宅として建設することになつておるのでありますが、これなども仮設住宅の問題は確かに一応は社会政策的な意味も含んではおりますけれども、緊急な援護というような意味も含んではおりますけれども住宅政策の一環としてこういうものを取上げた方がよろしい。こういうように私は考えておるのでありまするが、これに対してどういうお考えを持つておるかということが一点。  第二点は、大体流失家屋が少い場合はそれでいいのでありますけれども、非常に流失家屋倒壊家屋の多い場合については、今までの基準の一割ではいけないというので、われわれは三割くらいを交渉しましたが、幸いに政府も一歩了解を進められまして、二割程度にこれを実際の運営面では調節をとつてくれた。これは適切な処置であつた、こういうように考えておるのでありまするが、これらについてどういうお考えを持つておるか。その二点についてお伺いいたしたいのであります。
  12. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お答えをいたします。災害のときの仮設住宅でございますが、住宅政策としては一元的にやる方がいいと思いますけれども災害が発生しましたとつさのときは、かりに入る建物を急いで建てなければならない。また衣服等も急に調達をして、暫定的の間に合せというような非常に急ぐ仕事でございますので、省がわかれてやつておりますと間に合わないので、救護的な意味で一元的にやつておるわけであります。従いまして仮設住宅というようなものは、長い間の住宅政策という点よりはやや応急的な面が主でございますので、私の方でやる方がいいんじやないか、こういうふうに思います。それから御指摘になりました約一割程度のものを目標として仮設住宅をいたしておりまするが、過般の災害のときなんかは、相当困つた方々家屋流失等が多い。従つて二割程度出した例もございまして、この点はやはり今度多少弾力性をもちまして、その災害地域状況等によつて、非常に困つた方の多いときには、普通以上に出し得る道は開く必要があろうかと考えておる次第であります。
  13. 上林山榮吉

    上林山委員 最後に私は建設大臣住宅の問題でさらにお伺いいたしたいのは、政府以外の予算処置以外において住宅建設を促進したい。そこでただいま大臣の品から住宅建設促進法というものを用意しておる、あるいは検討中である、こういう説明でありましたが、その構想はどういうものであるか、その構想をまず承りたいのであります。  それから第二点は、どうも政府は私の口をかりて言えば、視野が狭いと思う。というのは、たとえば火災保険会社でありますが、欧米におきましては、火災保険会社自分会社資金によつて住宅を建て、建てた住宅自分保険をかける、こういうような意味住宅拡充をやつておるのであります。私どもそれを見聞したところもあるわけでありますが、こういうようなことについて、民間資金の活用といいますか、何か思い切つた処置を講ずるというような構想を持つておるかどうか。ことに健全な住宅会社——住宅会社にもいろいろあるでしようが、健全な住宅会社等によりまして、住宅建設をやらせるというふうにして行かなければ、私は住宅拡充はできないと思う。それから住宅金融公庫住宅建設計画にいたしましても、これは実際土地に困つておるのであるから、適当な土地のあつせんをできるようにして、そこに小市民的な、小公園的な住宅街一定のところにつくる。個々まちまちに不能率にやらないで、そういう小公園的な、小市民住宅街とも言うべき住宅街をつくるということと、しかもその土地のあつせんというところまで乗り出して行かなければ、今日はもう困つておる段階に至つた。こう私は考えるのでありまするが、これらを一括して建設大臣説明考えを求めたいと思います。
  14. 野田卯一

    野田国務大臣 住宅建設促進法、これは仮称でありますが、この内容につきましては、目下建設省あるいは大蔵省地方財政委員会等検討中でありまして、まだ内容を申し上げるのは早いかと思いまするが、大体の構想といたしましては、個人住宅建設しました場合に、その建設費の一部を所得から控除するという減税の問題で、單に国税のみならず、つくりました住宅につきまして、固定資産税等も減免をするというようなこと、あるいはまた住宅供給を目的とする法人なり個人につきまして、法人税所得税を減免するというような、租税上の措置一つ考えております。また住宅組合を育成して行くというようなことも考えております。詳細はまだ検討中でありますから、この程度にいたしたいと存じます。  なお住宅建設を促進するために、高い、広い、大きな立場から、新しい構想をもつて臨むという上林山委員の御説にはまつた同感でありまして、私個人といたしましては、お話の点ある注それ以上のこともいろいろと計画をしておるのでありますが、財政状況、さらにまた税金の問題もございますが、同時に家賃というものの統制、こういうものもよほど考えて参りませんと、今日のような家賃状況におきましては、なかなか住宅建設を促進するのがむずかしいという点もあります。また御指摘のような宅地の取得という点につきましても、幾多のやつかいな問題がからんでおる、こういう問題も考えなければならない。またある地域——今の小市民的なというのは、おそらく現在イギリスで実行しておるニュー・タウン・システムかと思いますが、こういうものも私どもはこれを研究してできるだけ東京都を中心として実施に移したいと考えておりますが、まだ成案を得て皆様の御審議を願うまでに至つておらない、こういう状態でありますが、お話になりました幾多の点はまつた同感でありまして、極力その措置をとつて参りたいと考えております。
  15. 塚田十一郎

    塚田委員長 先日の上林山委員の御質疑に対し、村上運輸大臣より発言を求められております。この際これを許します。村上運輸大臣
  16. 村上義一

    村上国務大臣 過日、小峯さんの御質問に関連して、上林山さんから、二十六年度において建設費として二十億予定されておつたはずだが、これがどういうふうに使用せられたかという意味の御質問があつたのでありますが、それにお答え申したいと思うのであります。  二十六年度の予算におきまして、建設費として計上せられたものは全然なかつたのであります。おそらく上林山さんのお説は無利息、無期限で二十億円を政府から借り入れた、政府が国鉄に貸し与えたという、この金額を御指摘になつておるのじやないかと思うのであります。これは予算書にも車両費ということに相なつておりまして、当時、もちろん国会において御審議の際に、無利息、無期限貸付金というものは、建設工事費に充当するのに最も適切であるという御議論もありました。しかしながら当時国内の輸送状況が極度に逼迫しておりまして、その原因が特に車両不足、貸車の不足ということにあつたことは御承知通りであります。それで予算関係は、政府提案通り車両費ということで御決定になつた次第でありまして、ただ当時両院の運輸委員長並びに政務次官、この三人の方の間で打合せ事項ができておりました。その内容は、二十六年度予算に計上せられた一般会計よりの無利子の貸付金は、その性質上新線建設費に適するものであることを認める。しかしながら最近における輸送状況逼迫にかんがみ、輸送力の増強は焦眉の急であるから、とりあえず前項の経費予算書通り貨車新造費用に主として充当する。新線建設経費の補充については、目下考究中の建設審議会のその後の状況ともにらみ合せ、予算補正を期する。そういう打合せが二月二十二日付でできておつたのであります。この打合せ事項によりましても、当時の状況はそんたくすることができる次第であります。補正予算におきましても、ますます輸送状況逼迫、また特に物価値上りのために、予定せられた諸施設、工事等すらもなお打切らざるを得ないという実情に置かれたのであります。従つて建設費に充当するという金額は特にできなかつたのでありますが、一般工事費の中から約五億を捻出しまして、そうして窪川線津軽線赤穂線、この三本の工事を遂行した、こういうことになつております。御了承願いたいと思います。
  17. 上林山榮吉

    上林山委員 この問題については、さらに疑義もありますし、また、取扱いも不適当であると考えますので、別の機会質疑を続けることを留保いたしまして、ほかの問題について質疑を続行いたしたいと思います。  まず次に質疑をいたしたいことは、治安対策、特に極左分子テロ化に対しまして、法務総裁に対してこれから質疑をいたしたいと思います。いまや御承知通り共産党員集団的暴力化や、あるいは右翼その他の集団的兇悪犯罪等の問題を無視することができなくなりました。またこれらの問題を論ずることなしに、自衛力問題等を論ずることも、私は片手落ちのうらみがする者の一人でありまするが、私はこの問題は、政府としても、われわれ国会としても、真剣に考える時期に来ておるのじやないか、こういうふうに考えるのであります。御承知のごとく、先には共産党員によるところの福島事件が起つておる。また極左分子によるところの三鷹事件の電車の転覆事件が起つておる。その他多数の事件が起つたが、最近はまた共産党テロ化、あるいは組織化のはげしい北海道地区において、白鳥警部射殺事件のごとき重大な事件が起りまして、世間を非常に騒がせておるし、しかも間もなく長野に五警官に対して集団暴行を加えた事件が起つて、重傷を負わせ、しかもピストルを強奪しておる。こういうような実に恐るべき状態を呈しておるのであります。しかも白鳥事件の直後において、北海道共産党地区委員会は、何と言つておるかといいますと、全国に燃え上りつつある抵抗運動一つのこれが現われだといつて、これを肯定し、はなはだしきは、この事件殺人者愛国者と呼んでほめそやしておる。こういうような状況であります。また共産党秘密指令書によりますと、白鳥事件に関する各地の反響並びにその後の宣伝工作に関する反響を詳細に集めて報告せよというような指令があつたと言つておりますが、はたしてこれは事実であつたかどうか。  また日共党員のそれぞれの秘密指令がいろいろ当局の手に入つておるということが報ぜられておるが、はたしてこの点は事実であるか。私はまずその点を伺つておきたいのであります。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。ただいま上林山君から、北海道白鳥事件及び長野事件、いずれも詳細な報告は参つておるのであります。但し、それがはたして共産党とつながりを持つておるかどうかということは、ただいま判明いたしておりません。これは共産党とつながりを持つておるというならば、事はなはだ重大であると考えておるのであります。その際における頒布書類、そういうものが手に入つておるかどうかというお尋ねでありまするが、それは当局の手に入つておるということを申し上げて、私の答弁といたしたいと思います。
  19. 上林山榮吉

    上林山委員 白鳥事件に対する内容を私はもう少し伺い、捜査中に属しておる事件でありますから、愼重を期さなければならぬという点についても論及したいのでありますが、これは一応さておいて、長野の五警官に対する集団暴行事件は、これも捜査中に属することであるから慎重を期さなければなりませんが、ただいままでの経過によると、共産党とは、あるいは極左分子とは何ら関係がないというような積極的な見通しか、あるいはこれに反して、共産党にやや、あるいは極左分子にやや近い方向に経過が向つておる、こういう状況であるか、捜査中の事件であるから、政府が答弁できなければ、それでよろしい。もし答弁できるとするならば、答弁を私は要求したいのであります。
  20. 木村篤太郎

    木村国務大臣 北海道白鳥事件につきましてはまだ犯人があがつておりません。はたしていかなる背後関係があるかということも、今調査中であります。但し、その際に、共産党地区委員会の名をもちまして、はなはだしく破壊的な言動を記載された文書が頒布されておる、また一部においていろいろな記事を載せたものを貼付された事実は明瞭になつております。  長野事件につきましては、ただいま犯人が一部逮捕されました。その者が共産党員であるかどうかということについては今言明はすることができませんが、おそらく共産党員ではなかろうかということだけは申し上げます。
  21. 上林山榮吉

    上林山委員 私はもう少しこの問題を追求して全貌を明らかにしたいという気持を持つておるのでありますが、それを差控えまして、ここに有力紙に書かれておる一つの意見がありまするが、私はこれを朗読いたしまして法務総裁の最後の意見を聞きたいと思うのであります。その文章というのは「北海道における警部の射殺事件を、国会が取り上げたことにより、いまや地方的ではなく中央の問題として重大視されるようになつた。前後の事情から、どうやら共産党のテロ行為らしいというのである。だが確たる証拠もなく、想像で殺人の罪を共産党になすりつけようとするのは、少くも民主的ではない。」こう前提して、そして「ところが今度北海道地区委員会の声明によると、彼等は党と事件との関係を否定しながら、関係のあるのを自ら白状しているようである。声明はこの事件を、全国に燃え上りつつある抵抗運動一つの現われだと断言した。関係もなく証拠もないのに、どうして共産党は、この事件抵抗運動であると知ることができたか。これ問うに落ちず、語るに落ちたものといわなければならない。」こういうふうに続け、「さらに聞き捨てならないのは、この事件殺人者を「愛国者」として、称めそやしていることだ。およそヒユマニズムの行われる現代において、人殺しを愛国者とする国は、共産主義国家を除けば、世界のどこにもありはしないのだ。これは日本国を愛する者の行為ではない。多分お門違いのよそ国への忠誠なのであろう。よそ国への忠誠のために、日本人が日本人を殺すのを、日本人たる私たちが黙つてみていなければならないとは、私たちのそれこそ「愛国心」が許さないのである。共産党の声明は日本の国に宣戦し、私たちのヒユマニズムに挑戦したものだ。共産党が警部射殺に、関係あろうが、なかろうが、暴力によるテロ行為を是認しこれを以て愛国者なりと礼讃しているのだ。かような暴力政党を公党として認められるかを改めて考える必要のある時がきたようである。共産党の暴力化を外にして、いま国会で論議されている再軍備、自衛力の問題は考えられないことである。」まことに適切な意見である、私はこう思うのでありまするが、事件に関係があつたかなかつたかということは、この次の段階で明瞭になることであります。これはその段階において明瞭になつたときに、それ相当の処置をなし得るのでありますが、この暴力行為を肯定する声明を出すようなところの政党をはたして公党として認めておいてよいかどうか。私は事件に直接間接関係あるなしにかかわらず、ただいま申し上げた通り、こういう暴力行為を礼讃し、愛国者であると言うがごとき政党を公党としておいてよいかどうか。法務総裁の所見を伺い、われわれは国民とともに愼重にこの問題を考えてみなければならない、こう思うのでありまするが、法務総裁の率直な、ひとつかけ引きでなく、お互いやおちようでなく、真剣な御所見を伺つておきたいのであります。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの御議論は私は大いに耳を傾けなければならぬと考えております。一体民主国家において最も愼むべきは暴力の行使であります。われわれは暴力を絶対に否定するのであります。暴力のあるところ国家の治安は乱れるのであります。そこで暴力行使をする者は、その思想の背景が右たると左たるとを問わず、われわれは断固としてこれに戦わなければならぬという確信を持つております。もし共産党が治安を撹乱し、暴力的行為を表に掲げて、堂々とさようなことをやるということが明らかになれば、これは国民が承知しないであろうと考えます、おそらく国民から、これに対して相当の処置をとるべしという声は、おのずから上つて来るだろうと思います。現在共産党が暴力による革命を表に掲げ、実際的に行動に移すということになれば、これは当然非合法化という問題は明らかになると思うのでありますが、ただいまの段階においてはわれわれはまだじつとこれを見送るよりほかいたし方ないのでございまして、目下愼重に考慮中であるということを申し上げておきます。
  23. 上林山榮吉

    上林山委員 私がここで申し上げました北海道地区委員会が出した声明の内容は、政府に入つておる資料も大体これに類似したものか、あるいはこれと同じものであるかどうか。この点を明瞭にせられたいのであります。
  24. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。北海道札幌白鳥警部射殺事件につきまして、事件発生後の本年一月二十三日、札幌市内において、日本共産党札幌委員会名義の同月二十二日付のビラが散布された事実があります。その内容は相当広汎なものでありますが、一部にはかようなことが記載されております。「見よ、天ちゆうついに下る!自由の凶敵!白鳥課長のみにくい末路こそ全フアシスト官憲の落ち行く運命である。全官憲よ第二の白鳥となるような行為をするなかれ。白鳥課長のむごい末路を夢にも他人事と思うなかれ」というような煽情的な記載があるのであります。これ以外にも相当破壊的な記事が載つておることは事実であります。
  25. 上林山榮吉

    上林山委員 これでさらに明瞭になつたわけでありますが、同時に白鳥事件の影響がどういうふうであつたか、あるいは白鳥事件を利用して宣伝した効果がどういうふうであつたかという秘密指令を日本共産党員全国地区に要求しておると言われております。その資料もまた入つておると報ぜられておるのでありますが、白鳥事件反響を調査した日共の秘密指令があつたかどうか、この点をお尋ねしておきたいのであります。
  26. 木村篤太郎

    木村国務大臣 警察当局にはその情報は入つておるようであります。しかしそれがはたして何人の手から出ておるものであるか、それは明瞭になつておりません。
  27. 上林山榮吉

    上林山委員 この問題は、政府としても共産党の集団的テロか、ことに武器を所持して種々の演習を計画しようとしておるような問題、あるいは北海道の解放地区の問題、その他いろいろと組織化されておるところの問題については、いろいろ愼重におやりになつておるとは思うが、もう少しひとつ組織を強化し、これに従事する者ももう少しく注意をして、これが絶滅を、右派によるところの個人的な殺人事件と暴力事件等と同様に、愼重に検察当局、警察当局、特審局、これらが有機的に統一的にもつとしつかりやつてもらわなければ、今までのやり方は、率直に私の口をして言わせていただくならば、だらしがなさ過ぎた、この一語に盡きると私は思う。それぞれ御腐心もわかるし、努力もわかるのであるけれども、結果から見てだらしがなさ過ぎる。これは第一に特審局、警察、検察庁が有機的に統一されておらない、あるいは組織が拡充強化されておらない、あるいは科学的な捜査や情報網が不十分である、あるいははなはだしく疑うならば、私はこれは單なる私の危惧にすぎないと思うけれども、そういう組織の中に秘密を漏洩するものもおるんじやないかということすら私どもは疑わなければならない。この際木村法務総裁は新しい構想、新しい決意のもとに私は大臣に就任されたのだと思う。いわゆる政党員でないあなたがこの重責をかつて出たということは、私はよほどの御決意と構想を持つておられてのことだと実に信頼しておるのでありますが、こういう方面に対してはどういう考えを持つて、どういう用意を持つておるか、この点々就任早々でもありますのでどうかと思いますが、あまりに今のままではだらしがない、これをどうするか、この点をひとつ明瞭にお示し願いたいのであります。また国民灸安心せしめるほどの答弁を願いたいのであります。この議場を通じて国民に納得せしめ得る治安対策上の決意を私は伺いたいのであります。
  28. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まことに適切なお説を承りました。従来の警察機能が不完全である点があつたことは事実と私は考えております。特審局、国警、自警、検察庁、その間の連絡調整というものは不十分な点があつたことは率直に私は認めます。申すまでもなく警察機能の発揮というものは、結局私は人の問題であると思う。いかに機構が整備されておつても、その機構を動かすべき人が真に愛国の精神に満ち、日本の治安をみずからの手によつてみずからを守るという精神がなければ動くものではありません。私は何よりもこの機構を動かすべき人に精神的活を入れなければ相ならぬと信じております。申すまでもなく今後條約発効後における日本をいかにして行くか、平和国家をいかにしてつくつて行くかということについては、まずもつて日本の治安が確保されるということが先決問題であります。治安が乱れれば、一朝にしてその上に乗つかるすべてのものは破壊されるのであります。何よりも治安の確保というものが急務であることは、私は国民諸君も同感であると考えております。不問私はこの重大なる責任を負つて、今後いかにすべきかということに日夜苦慮しておるのであります。そこで今も申し上げました通り警察と検察庁、特審局——警察のうちには国警も自治警も含めてでありますが、これらが完全なる連絡、調整を遂げまして、これを動かすべき人間に精神的活を入れるならば、おそらく不十分ながら日本の治安のある部分は維持して行けるだろうという考えを持つております。そこで目下この調整をいかにすべきかということについて愼重に考慮しておるのであります。しばらくかすに時間をもつてしていただきたいと考えております。
  29. 上林山榮吉

    上林山委員 しばらくかすに時間をもつてしていただくならば、治安の確立は近いうちにできると、こういう御答弁でありますが、かすに時間というのは一体どれくらいです。実にこれはお互い抽象的な言葉で満足しておる時期じやないと思う。今事件が起り、過去にもたくさんの事件が起つた、これより以上の事件がまた起る、必ず起ります。近く起る。だからそういうものに対して近くというのは一体いつごろであるか。これは微妙な問題もありますし、知つておりますが、しかしただ近くということで満足してくれといつても、この議場を通じて国民は法務総裁を信用しません。もう少し私は御決意のほどを明瞭にしてこの問題にピリオドを打ちたいと思うのでありますが、その点を一点だけ明瞭にせられたいのであります。
  30. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。最近私は、実際にいわゆる第一線に活躍されておる人たち、この人たちが非常に熱をもつて、日本の治安を確保する第一線の戰士だという自負を持つてつてくれている努力に対して、絶大なる感謝と敬意を表しておるのであります。最近も私はみずから特審局に参りまして数百の人たちと会つたのであります。私はその人たちに涙を流して感謝いたしました。みなよくやつてくれております。中にはそれは不十分な人もいるでありましようが、最近の大勢といたしましては、何としてもわれわれの手によつて日本の治安を維持しなければならぬのだ。われわれは第一線の戰士であるという気概を持つてつてくれていることに対して、私は敬意と感謝の念おかざるものがあるのであります。しかしながら私はこれをもつて満足いたしません。いたずらに人をふやしたところで何にもならないのでありますが、ほんとうに日本の治安をみずからの手によつて守るのだという精神のこもつた人をわれわれは欲するのであります。その人たちはだんだにふえて来るじやなかろうかとひそかに思つております。そこで私はかすに時間をもつてしていただきたいというのは、この機構の問題であります。機構は十分に整備して、今申し上げまする通り、これらの人たちの調整と連絡をいかにして十分にして行くか。この点について今考え中である。これのまとまりのつくまでしばらく時間をかしていただきたいというのであります。日夜第一線の人たちは働いているということを私は申し上げて、国民とともにこの人たちに感謝をいたしたい、こう考えております。
  31. 塚田十一郎

    塚田委員長 井出君より関連して質問の申出があります。これを許します。井出君。
  32. 井出一太郎

    ○井出委員 ただいま上林山委員から長野事件が問題に相なりました。これは私の郷里にも関係していることでございまして、一、二点法務総裁に伺つておきたいと思います。  事の起りました田口村という村は、千曲川の上流地帯にございまして、あるいは塩尻村などというのと相並んで長野県下の有数な赤い村だ、こういうことに従来相なつてつたのでございます。ことに田口村の隣りにある臼田町という町の佐久病院という病院、これにはかつて高倉輝やあるいは伊藤憲一君などが療養をしておつたことがございまして、例の有力幹部の地下にもぐつた際などは、徳田球一君はこの病院にひそんでおるであろう、こういうようなうわさも立つたほどであります。最近私ども聞いておりましたことは、日共の活動が最近ある特定地区へ非常に重点的になつている。この郡は南佐久という郡でありますが、この郡下一帶にただいま重点がかけられているのだといううわさをかねがね聞いておつたのでございますが、これらはいわゆる電源地帯において武装蜂起をするであろうというようなうわさがとりざたされたことがございます。たとえばかつて利根川上流であるとか、あるいは猪苗代湖一帶であるとか、こんなものが話題に上りましたが、それと同じような意味で、何か千曲川上流の電源地帯というようなものが、従来当局の方で何かの情報として、そういう地帶に重点がかけられておるんだというようなことがおありになつたかどうか、これを一点伺いたい。  さらに、今度検挙された関係者は、実は私も一、二承知しておる人物でございます。けれども今までの彼らの行動からいたしますると、静かなるレジスタンスとでも言いましようか、非常に事が愼重でございまして、おそらくああいうふうな——あるいは白鳥事件の影響があつたかどうか知りませんが、ああいう集団的な、ばかな手は用いないであろう、こう思われるような連中が検挙をせられたのでございます。しかるにその中心人物である者が即日釈放されておる。こういうことからいたしましても、よほど当局の捜査その他は愼重であつていただかないと、あるいは泰山鳴動して何のことだ、日共とはまつたく関係がなかつたのだということに相なりますれば、これは当局の権威のためにも私は重大だと考えるのであります。そういう点は特に愼重を要求するものでありまして、捜査中のことでございますから、あえてその間の消息をお漏らしいただきたいということを切に要求するんじやありませんが、そういう点はぜひ慎重を期していただきたい、こういう御要望を特に申し上げたいと思います。ですから、今申し上げました背景をなすその地方一帶に対して、従来日共が特に重点を注いでおるというようなことに関連して、何かおわかりになつたことがあればお漏らしを願いたいと思います。
  33. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まことに適切な御質問を受けまして、私は感謝いたします。それで私の手元には、そういう情報が入つているということは、来ておりまするが、まだ詳細なことはわかつておりません。さつそく調べて、十分な調査をしてみたいと考えております。今警察に対するお話を承りまして、感謝にたえないのでありまするが、その点につきましても、私は十分その背景を明らかにするように督励いたしたいと考えております。
  34. 上林山榮吉

    上林山委員 この問題はこの程度でおきまして、私は法務総裁に、政府の方において黙秘権を修正するような考えはないか伺いたい。たとえば黙秘権は、自分の利益のために、犯罪があつても、言わなくてもよろしい、自分自分で守らなければならぬ、この思想に対しては、私はもちろん賛成をしておるのであります。しかし黙秘権を濫用することによつて、一人の人権擁護をやるために多数の人権を脅かす、こういう結果になつておるのが今日の状態ではないかと私は考える。だから、人的な証拠あるいは物的な証拠、法医学的な資料その他の科学的な結論によつて、黙秘権を使用した人が有罪の結論を得た場合、私はこれに刑を加重して行く必要があると思う。黙秘権を活用するのはこれは自由である。しかし物的な証拠、科学的な証拠によつて有罪になつた場合は、これはそれだけの手数をかけた償いをすべきである。こういう意味において、刑の加重を考えていいんじやないか、もうその時期に来ておるのではないか、こういうように考えるのであります。われわれ終戰直後のあの混乱せる時代にこの法案改正をやつたのでありましたが、冷静にこれを考え、数年間の経験に徴してみて、さらにここに新たな判断を加える時期であると思いますので、これに対する法務総裁の意見を伺つておきたいのであります。
  35. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。御承知通り憲法第三十八條には、何人といえども自己の不利益の供述を強要されないということが規定されております。自己の不利益になることは問われても答えなくてもよろしいという大原則がきめられておるのであります。しかしこの規定があつたために、捜査について非常に支障を来しておることも、これまた事実であります。そこで現在の段階といたしましては、捜査機関の黙秘権の告知内容については、これは多少の訂正をしても憲法違反にならぬのではないかということまでも言われる人もおるのであります。その点につきましては、ただいま法制審議会においてせつかく審議中であります。その答申を得まして、われわれはこれについて善処したいと考えております。
  36. 上林山榮吉

    上林山委員 法務総裁に最後に一点お尋ねしたいことは、われわれはいよいよ講和を迎えるわけでありますが、講和恩赦の範囲、種類あるいはこれが恩典に浴する員数、これはどの程度になるものかどうか。われわれはこれらの人たちと講和の喜び、独立の喜びをわかちたい、国民はこういうように考えておるのでありますが、その範囲その他についてお示しできる段階にあるならば、ひとつお示しを願いたい。
  37. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。御承知通り従来の恩赦は、皇室の御慶事、御弔事、国の大事のあつた場合、大体この三つの場合でありますが、大赦が行われたのは、主として国家の大事のあつた場合、私の記憶するところでは、皇室に関する限りにおいては、明治天皇が崩御になつたときと考えております。そこで今度の新たな恩赦法によりますと、これは内閣できめることになつております。それで今度の講和條約発効後は、これは新たな日本が出発すべき時期であるから、私は国家の大慶事と考えておるのであります。そこでこの際は、なるたけ広範囲にこの喜びをわかちたい、こういう考えを持つております。できる限りの範囲において大赦、特赦の範囲を広めたいと考えております。その内容につきましては、ただいま検討中でありまして、具体的のことは遺憾ながらまだ申し上げることはできません。
  38. 上林山榮吉

    上林山委員 次にお尋ねいたしたいのは、廣川農林大臣に対してであります。農林大臣が——これも決してやおちようではありませんが、大臣に就任以来、農民の要望にこたえて、食糧増産関係の予算を奮闘して四百三億円計上し、しかも前年度よりも百億円を増加せしめた功績は、私はほめてよいことだと思う。あつさりとほめておきますが、そこでまず伺いたいことは、土地改良、開墾、干拓事業に二百十九億円の予算を計上しておる。そこでわれわれが常に考えておることは、食糧増産の対策としては土地改良が第一である。第二はない土地を広げることで、なかんずく干拓事業を徹底してやらなければならぬ。こういうふうに考えておるのでありますけれども、従来の内閣は、干拓というような方面でなく、開墾というような方面に非常に力を入れておつた。われわれはこれは治山治水の立場から考えて、いけない、再検討しなければならぬというので、一、二年前ころから御検討して来ておるのでありますが、相かわらず相当の予算を要求しておる。私はこれではいけないと思うのだが、二百十九億円は土地改良、干拓に重点を置かれるつもりか、あるいは開墾もこれと同列に考えられる御方針か、この方針について伺いたいのであります。そしてその予算の二百十九億円をこの三つにどういうふうにわけるか。この点の農林大臣構想を伺つておきたいと思います。
  39. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 食糧増産の大事なことは、これは申し上げるまでもございません。食糧増産の第一要素である土地の改良、あるいは干拓、開墾等についてのお尋ねでありますが、私たちはその土地々々に従つて適当な方計を立てて参りたいと思つておるのであります。御指摘のように、九州地方におきましては、今までの農地の発達史を見ますと、おもに干拓によつてなされておることは、現実が示す通りであります。またその他の中央の山脈地帶等は、開墾によつて農地が発達して来ておるのでありまして、あなたの御指摘のように、開墾は治山治水面から等閑に付していいというような考えを私たちは持つていないのであります。しかもまた戰後開墾事業に非常に力を入れましてから、この実績が着々上つてつておりまして、既墾農家よりももつと成績を上げておる方があるのであります。なおまた次男三男対策といたしましては、当然これも考えなければなりませんので、この開墾等も等閑に付する考えはないのであります。土地改良事業、あるいは干拓事業、あるいは開墾事業等、それぞれ重点的に持つて行きたいと思うのでありますが、特にあなたの御指摘の干拓事業については、二十二億の予算を計上してやるつもりでありまして、決してこれを等閑に付しておりません。重点的に取上げてやる考えであります。
  40. 上林山榮吉

    上林山委員 一般的な御答弁としては、私はそれでいいと考えますけれども、あなたも御承知通りに、自由党内閣以外の内閣の時代に、治山治水の立場から開墾をあまりやつてはいけない、水を治め山を治めることができない民族は滅びるということがいわれておるほどに、治山治水というものがいかに大事であるかということをお互い認識した関係上、開墾に対しては相当研究した上で、よほどいい場所でないと開墾はやらない、開墾の方針は限定する、こういうような方針が自由党によつて打立てられたのでありますから、大臣としては、ところによつてよく検討されているとは思いますが、土地改良の予算が何といつても第一です。第二にはやはり土地を広げる問題で、これは開墾であり干拓である。これは最初の経費を入れる場合は、干拓の方が単価は高いのでありますが、でき上つたときの収穫量から考えれば、大体において干拓地の方が収穫がいいことは、農林大臣も御研究のことだと思いますので、私はこれを要望しておきますが、土地改良及び干拓方面に日本全国としては重点を置いてやるべきである、その方針でお進みを願いたい、こういうふうに要望いたしまして、答弁は求めません。  そこで第二点として伺いたいことは、食糧増産の建前からいつて、あるいはまた食改善の立場から考えて、農林省が最も力を入れなければならぬのは酪農の拡充、強化という点であろうと私は考えます。それで農林省の三箇年計画によるところの酪農の二十七年度分の仕事を見てみますと、わずかに一万頭の乳牛の買付をしようとする予算を組んでおる。この点に着眼されたことは、確かに一歩前進した農政であると思いますけれども、この程度では徹底した考え方ではないと思うのであります。私アメリカに参りまして驚いたのは、小学校を出るまではほとんど牛乳だけが主になつて、栄養をとつておる。日本では病人とか乳のない子供だけがこれを飲むんだということになつておりまするが、向うでは小学校に行くまでは、ほとんど乳によつてこれを育つて行くというやり方をとつてつて、しかも健康な子供ができておる。こういう点から考えまして、私は日本においては少くとも小学校の生徒くらいまでには牛乳を飲ませる必要があると思う。そうするにはどれくらいの乳牛がいるかといいますと、百万頭いるのであります。今日本にいる乳牛はわずかに二十二万頭ですから、農林省が奮発してこれに一万頭加えても、わずかに二十三万頭にすぎない。でありますから、私を農林大臣にしてもらえば、私は百万頭くらいの乳牛を飼つて見せる。私は廣川農林大臣着眼はいいが、どうも腹が小さいと思いますので、あなたが主食一割の増産を考えることもけつこうでありまするが、それを考えるよりも、百万頭の乳牛を日本に養うことが食糧増産の根本的な解決になる。私はそういうような意味から、わずか一万頭くらいずつの乳牛ではだめだから、これを百万頭にして、五、六年計画でこれを実施するというくらいの意気込みで行きますと、主食の一割増産の運動も並行してやらなければならぬが、それよりもこちらの方が効果がある。早いのです。そこでこういうようなことに対しましてどういう考えを持つておるか。この点をまず伺つて、それからもう少し教えてあげたいと思います。
  41. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 食糧増産の上において総合的に考えた場合に、乳牛から生れるところの食糧の位置が大きいというようなお話でありますが、その通りであります。私たちはこの点に着目いたしまして、今まで振わなかつた畜産関係を振い興させる考えで、来年度の予算いろいろな御計上いたしておるのでありますが、これはあなたの着想の百万頭以上の乳牛を飼おうとする着想をわれわれは持つておるのであります。現在大動物は三百五十万頭近く日本におると思いますが、ぜいたくなアメリカ式の牛ではなく、働けて、しかも乳が出るという牛をわれわれはほしいのであります。それに一番適しているのは、ジアージーという牛が一番よろしいそうでございまして、これを現在折衝いたしておりますが、岩手県の開拓者の農民の協同組合で一千頭買いたいということで、しかもこれは基金を持ち、長い間雄の牛を飼つて育てて、それを売却して資金を積み立てて参つて来ておるのでありまするが、これに政府が援助をいたしまして、一千頭入れたい。そしてわれわれの望んでいるような、しかも貴族の牛でなく、われわれと同じような平民で、しかも貴族趣味を持つておる牛を養いたい、こういうふうに考えて、今やつておるのであります。あなたの構想よりも、農林省の持つておる構想の方が大きいと私は考えます。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕
  42. 上林山榮吉

    上林山委員 農林大臣が、私の百万頭の計画よりももつと大きい計画を持つておるということでありますから、私はその方に席を譲りたいと思いますが、具体的な内容においては、二十七年度にわずか一万頭の乳牛をふやすということで、はたして私の言つておる百万頭をどれくらい上まわる計画であるか。私はその点は答弁はいりませんが、申し上げたいことは、その一万頭の牛を入れるについて、政府は幾らくらいの貸付金を一頭について出す考えでありますか。この点をまず伺いたい。  第二点は、ホルスタイン種に比べて、役牛兼乳牛として最も適切な品種は、どこの国の何という牛であるか、この点をお示し願いたいのであります。
  43. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 これは、きのうも実は全国の経済部長の会議を畜産局が主体でやつたのでありますが、あなたのおつしやるようなことを、現在各府県を通じて計画をなされておるのでありまして、県の資金あるいは協同組合の自己資金、こういつたようなものを集めて、そうしわれわれの望んでおる三百万頭の、いわゆる私の先ほど申し上げたような牛を飼えるような基準の準備を進めておるのでありますが、来年度、いわゆる無家畜農家を解消するための第一段階としてやつております二十四億万円の貸付金の利子補給等がこれに当つておるのであります。また一頭どのくらいというのは、ちよつと私覚えておりませんが、今までいろいろな人を頼んで調査いたしてもらつたところによりますと、やはりデンマークあたりでよく使つておるジアージー種が一番よろしいということをわれわれは聞いております。
  44. 上林山榮吉

    上林山委員 農林大臣お話もだんだんあやしくなつて来るようであります。一頭について政府の方では六万円くらい貸付しよう、こういう考えのようでありまするが、それでは事実牛が買えるか買えないかという問題です。現在乳牛で相当とれる牛はかりに一日に一斗ないしは一斗五升搾乳できる乳牛にしますと、これは十二、三万円するのであります。あるいはもつと高いのでありますが、あなたの輸入して来る牛は——事務当局でもいいが、幾らくらいするのか。そしてそれに六万円くらい貸し付けて、足らないものはどういう方法で金融をするのであるか、また三百万頭の計画はよろしいが、一体現在日本内で今売り買いできるのは、乳牛として一万頭せいぜいでありますが、持つて来る数が二十七年度は乳牛としては一万頭であるのか。あるいはもつとたくさん持つて来るのかどうか。現在乳牛だけで全国要望されているのは、ただちに売れる牛が五万頭なのです。五万頭はただちに引受ける態勢が整つておる。この五万頭の需要を満たすだけのせめて腹がなければ、三百万頭の牛は、五十年かかつてもちよつとむずかしい、こう考えるのでありますが、これはじようだんでなく、ほんとうに真剣に考えている問題ですが、事務当局でもよろしい、ひとつまじめなお答えが願いたいのであります。
  45. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 いたずらに資金を出して市場価格を上げることは、かえつて逆作用になることは、われわれもよく承知いたしております。それで海外の牛を買いつける上においても、いろいろな注意をしなければなりませんが、この間デンマークの公使と会つて話したときの話では、大体市場において売買されるものは、一頭三万円程度であるというように私は聞いておるのでありますが、日本の内地での優良な牛は、あなたのおつしやるように非常に高いのでありますが、その高いものについて農林省の予算が非常に少いじやないかということは、こまかいことは私よくわかりませんから、事務当局から答弁させます。
  46. 西村久之

    西村(久)委員長代理 上林山君にお諮りいたしますが、今事務当局を呼んでいるそうですから、方面をかえて農林大臣質疑を願いたいと思います。
  47. 上林山榮吉

    上林山委員 その問題は後刻でけつこうでありますから、正確な答弁を要求したいと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、北海道地区に対しまして——農林省はほかの方面でいろいろなを計画を持つておるが、これもけつこうであります。しかし私はそういう方面よりも、むしろ北海道のごとく半年しか耕作のできないようなところに対しましては、酪農というものを組織的に思い切つてつて行く。これはわずかの時間の私の研究でありますから、足らないかもしれませんが、向うにビートができる。このビートのかすは、これを加工しますと、りつぱな飼料になるのであります。でありますから、このかすを飼料にして——これは国費を投ずる必要はないと私は思う。国費を投じないで、むしろこんな集団的な酪農を経営するならば、これは建設公債のごときものによつて一定の、十年なら十年という程度期限を付して、私は資金をこの方面に、政府の直接の資金じやなしに、これを目標にしたその方面の公債、社債なりで行わしめて、大農的にこれをやらせる、こうしたような組織が必要だ、そうするとあなたのおつしやる三百万頭というような牛の消化ができるのであります。今日一番困つておるのは飼料がないからです。これは内地地区においても酪農を農林省の計画以上にうんとやらなければならぬのでありますが、これは一番困つておるのは何かというと、飼料の解決なんです。ところが北海道等においてはこの飼料の解決が一部できる、だから私は大局的屋地に立つて北海道の酪農というものを、ひとつ大きなケースとして考える必要があるんだと思うが、これに対する見解はどうかという点が一点と、第二点は、一番困つておる盲点は、飼料の購入であるが、この飼料の購入対策というようなことについて、どういう考えを持つておられるか、この二点をまず伺いたいのであります。
  48. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 北海道が牛を買うのに適することは、今まで北海道に優良な牛がたくさん生れることで証明されると思います。また土地の広いこともこれまた御存じの通りであります。農林省はこの北海道の酪農奨励に力を盡したいと思います。  御指摘の甜菜糖の問題でありますが、これは現在のところ約二万町歩くらい栽培しておりますが、しかしこの甜菜糖は今まで外国の発達の例を見ますると、政府資金をもつてよほどこれを助成いたしませんと、南方諸地域のあの甘蔗からとれる砂糖にはかなわないのであります。そこで一番今問題になつておるのは、砂糖が自由販売になりまして、外国からどしどし入りますると、ビート糖が非常に打撃を受けるのでありますが、これをどうして救うかということが今問題になつておるのであります。甜菜糖から砂糖がとれる分どまりを見て免税点を設けるか、あるいは甜菜糖栽培の作付面積について助成するか、どつちかにしなければならぬと思つておるのですが、非常にこれは葉もあるいはまたかすも家畜の飼料としては優良なのであります。この点については今大蔵省と交渉中でありますが、なるべくこの甜菜糖の作付を増して、しかも内地で砂糖がとれるのでありまするから、この方面に大いに力を注ぎたいと思つておるのです。それから牛を飼う、馬を飼う上において飼料の重要さの非常にあることは御存じの通りでありますが、それについては農林省では牧野の改良費であるとか、あるいはまた自分でいろいろな飼料をつくる方面についての採種圃あるいは原種圃等についても、大いに力をいたしておるのでありますが、いかんせん、まだ非常に足りませんので、飼料の点はわれわれ非常に心配いたしておるところであります。
  49. 上林山榮吉

    上林山委員 飼料の点に対しましては農林省としてはもう少し積極的に対策を講じていただかないと、今のようなふうでは三百万頭はおろか、一万頭も二十七年度に乳牛を増すということだけでもこれは大事業であります。でありますから、どうしても飼料の問題について斬新的急速な対策を講じなければならぬと思うのでありますが、そこで私はそのサンプルとして一例を北海道地区にとつたわけであります。  北海道地区以外に内地の問題として申し上げますならば、いろいろ資料はありますが、第一点は、今まで反当、畑の収入で、麦と豆を植えただけで、一年間に、豆におきまして約七斗といたしまして、四千二百円くらいしか収入がない。麦でありますと、一石でちようど四千円、合計いたしまして、これは肥料代は別にしても、わずか八千円くらいの反当収入しか農作物ではとれないのであります。ですから私は場合によつては、この中から牛を一頭飼つてどれくらいの収入があるかといいますと、よく出る牛は別です、平均いたしまして乳量が十三石とれる。これを金に換算いたしますと、濃度の関係もございますが、約六万五千円くらいの乳の収入があります。こういう点等から考えまして、私は飼料の問題の解決ははかり得るのではないか。このために主食がうんと減るというようなことはなくて、主食はこの乳の量によつて補える、しかも今日は海の動物性蛋白質は、御承知通り戦前には十億万貫ぐらいであつたが、現在は八億万貫ぐらいしか上らない。漁撈の改良を加えても大したことはない、こういうふうに海の動物性蛋白質は行き詰まつておる。こういうときでありますから、私は主食の対策から考えても、また海の動物性蛋白給源という点から考えてみても、食改善の点から考えてみても、少しくらいは飼料を自分がつくつて、そうして牛を飼うということによつて、そのマイナス、プラスは、むしろプラスが多いのだ、こういうようなことを考えるのでありますが、何か抜本的な対策がないとするならば、こういうことに対してどう考えるかという点が第一点と、第二点は、これはわれわれは統制はもちろんやらない方がいいと考えておる。しかしこういうような、かりに現在飼料は乳牛だけを考えてみましても、わずかしか飼料を配給されておらぬ。しかも飼料代は非常に高くて、現在では五割あるいは七割は飼料代で食つておる。こういうような状況のときでありますから、私は統制に準じたような方法を、再統制というのは少し行き過ぎかと思うが、何かそれに準じたような方法を考えておるか。この点であります。
  50. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 現在牛から産する乳の価格が畑の作物より非常に高く売れるということは、これは御指摘通りであります。また一回畑につくつたものを牛の腹を通してこれを食糧にして行くという考え一つであります。でありますから現在食生活改善の上においても、農林省の本年度の予算には、食生活改善で乳を使用するように進めて参る方針で、予算の上に食生活改善費が載つております。飼料の解決方法については、何か調整機関のようなものを考えないかということでございますが、これはあなたの政党の政調会等と一生懸命折衝して検討中であります。
  51. 上林山榮吉

    上林山委員 飼料の問題、乳牛の酪農政策において一番盲点になつておるのは、第一は牛を輸入するという問題、これが一番の盲点、これはあなたのおつしやるようにはなかなか行かぬと思いますから、よほどひとつこの点に対して、力を入れてもらいたい。第二は飼料の問題、この飼料の問題は、拔本的にひとつほんとうにお考えにならなければ、三百万頭はとても将来むずかしい。私は、今の牛を養うだけでもむずかしい状態であるから、この点に特に今ひとつ農林大臣は力を入れて、酪農の拡充強化をうんとはかつてもらいたい。その他の畜産の問題については、たとえば肉牛、役牛あるいは馬、羊、やぎというような問題について、いろいろと積極的な案を組まれておる点は、私ども了といたしておりますが、私はその中からこの酪農の一点を重点的に伺つたのであります。今後こういう方面の問題に、一段とひとつ御奮闘を願いたいと思つております。  次に私は附加価値税の延期の問題について、岡野国務大臣お尋ねをいたしたいのでありますが。御承知通りに、附加価値税は、これはシヤウプ勧告案の主眼をなすものでございまして、独立の財源という点から考えますと、相当長所もあるかに考えられるのでありますが、しかし所得税の附加税でもないし、収入に関係なく課税されるという点から考えまして、事業税と異なり、非常に明確を欠いておる。こういうような意味で、もし延期をしたのであれば、われわれは大賛成であります。御承知通りに、税金はこれは納税者によくりくつがわかるものでなければならぬ。こういう点から考えまして、私はむしろ事業税の基礎控除その他の点を改正いたしまして、事業税をおくなら事業税をおくと、こういうふうにした方がよいと考えておるのですが、大臣は将来この事業税の改正によつて、そして附加価値税は二十八年度にはもうやらないと、こういうところまで考えておるのか。これを二十八年度になつてまた一年延期する。こういうようなことになれば、政治というものが一体どこにあるんだ、こういうことになるのですが、もうこの辺でこの問題もピリオドを打つ時期が来た、だから当該大臣といたしましては、この問題について、二十八年度には附加価値税はやめるのか、あるいはやめないとするならば、どの程度修正を加えて存置するのか、この点をはつきり伺つておきたいのであります。
  52. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。附加価値税は、御承知通りに、またお説の通りに、長所もあれば短所もございます。そしてあれを実施しますにつきましては、いろいろな理由もございますが、結局あの内容につきまして、一般の理解がまだ十分得られていない。またこれを納める側の財界が、ただいま、混乱とは申しませんけれども、まだ十分安定をしていない、こう考えておりますので、この際根本的に事業税を附加価値税にかえて、そしてあなたのおつしやつたように、赤字の会社でもこれをかける。しかしこれは地方税といたしましては、応益税でありますから、そういうことを言うべき筋合いじやなく、ある一つ地方団体会社なり工場があれば、それに対して従業員とかいろいろな施設その他のことにつきまして、その地方団体の益を受けておりますから、やはり赤字があるとかないとかいうことは別問題として、応益税として税を納めなければならぬ、そういうことによつて附加価値税ができているわけでありますけれども、しかしあまりにも財界に対して、不均衡と申しますか、また今やりますと、混乱を起しはせぬかというようなこともございますし、もう一つの理由は、新しい税でございますから、一般の納税者も理解しておりませんし、また徴収する方でも十分なる検討もできておりません。そこで私は、もし附加価値税を実行しますならば、やはりそういう点を、徴収の面からまた納税の面からもう少し考えなければならぬ点がたくさんあるのじやないかと考えて、研究をいたさせておる次第であります。明年の一月一日からこれを実行するかやめるかという腹が、お前のところにきまつておるかどうかというおぼしめしでございますが、シヤウプ勧告といたしましては、あれはいい税だと思つて取入れておるわけでございますから、できるならばやはり来年度から実行して行きたいと思います。しかし案行に移す点におきましては、内容をよく検討しまして、徴収、納税の面において、もう少し一般のよく理解できるように、またあまり負担を国民にかけないという点でやつて行きたいと思います。  それから事業税を今後一年は残しますが、これにつきましては、ちようど昨晩大体内諾を得ましたので、基礎控除を三万八千円ほどつくりまして、そしてその三万八千円以下の面は免税して行く。こういうふうにして、事業税の今まで中小企業に少し重過ぎたという点を是正して行きたい、こう考えておる次第であります。
  53. 上林山榮吉

    上林山委員 結局ただいまのところでは、研究中であつて、二十八年度から廃止するかあるいは修正してこれを提案するか、その段階に至つておらない。しかし大体において存置する意向をもつてこれをやつて行こうという底意のように見られましたが、そういうふうに了解してさしつかえございませんかどうか。
  54. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 御質問通りでございます。
  55. 上林山榮吉

    上林山委員 私は岡崎国務大臣に対しまして、重要な問題について質疑をいたしたいと思つて呼んでおるのでありますけれども、一向に参りません。でありますから、午後の劈頭にこの点だけを許すということで留保願いたいと思います。
  56. 西村久之

    西村(久)委員長代理 午前中の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半より委員会を再開して質疑を継続することといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時八分休憩      ————◇—————     午後一時四十一分開議
  57. 塚田十一郎

    塚田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。井出一太郎君。
  58. 井出一太郎

    ○井出委員 私の質問の論旨は、安本長官、大蔵大臣から始めて、以下順次産業政策に及びたいと思つておるのでございますが、ただいまのところ廣川農林大臣のみの御出席しかありませんので、少し順序は不同いたしまするが、廣川さんへの質問から入りたいと思います。  まず第一点でありまするが、昨年現内閣が多年の公約として掲げて来られたところの主食の統制撤廃、総理みずからがなるべくすみやかなる機会にこれを撤廃するとはつきり本会議で言明せられましたものが、いつの間にやらこれを引込めるという、まことに不手際な醜態を暴露しましたことは申すまでもない点でございます。これに関連をいたしてお尋ねを申し上げたい。それは過般山添農林次官が、多分旅行中の発表であつたと思いますが、主食の統制は昭和二十八年度もこれをなお継続しなければなるまい、諸般の情勢がどうも整つておらぬ、こういう見解を表明せられております。主管大臣の廣川さんは、しばしば放言をせられるをもつてつておられますが、この山添次官も、勇将のもとに弱卒なく、これまた放言をせられたもののように私どもは思うのでございます。つきましては、この点についてあなたもやはり、事務当局である山添さんと同じようなお考えであるのか、これをまずお伺いをいたしたい。
  59. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 総理が施政演説で、近い将来に主食の統制をはずしたいと言つたことは、その通りだろうと思います。近い将来にはずしたいと思うのでありますが、ただこの主食をはずすにおきましては、いろいろ準備もありまするので、その準備を整えておるようなわけでありますが、麦に関しましては、今国会中に案を具して、御協議を願うことにいたしております。また山添氏がどう言つたか覚えておりませんが、多分という言葉であろうと思うのでありまして、準備ができ次第ということが裏にあるんじやないかと思つております。
  60. 井出一太郎

    ○井出委員 山添次官のただいまの立場というものは、農政の専門家として、廣川農林大臣を補佐して行かれる。廣川農政というものがあるやいなやは存じませんが、現実面においては、山添氏に負うところが多くなければならぬはずであります。この人がさような放言をしたとするならば、あなたとしては事重大でございます。あなたもふだん放言をしつけていらつしやるからこれを看過するというのであつては相ならぬと思います。二十八年度というように、私は新聞紙上で見たのでありますが、そうなりますと、昭和二十八年の十月までが、米穀年度から申しますと限界に相なります。そうすると、これは総理の言われた近い将来という言葉のニュアンスとはなはだしく径庭があるのでございまして、諸般の準備が整わなければ統制の撤廃はできない、こうあなたも認識せられておりますが——どうやらその辺まではどうも、これは自由党内閣も持つはずはないと思つておりますが、準備の整いますのは、二十八年の十月ごろになるのかどうか、この点をもう一ぺん明確にせられたいのであります。
  61. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 お答えいたします。主食と申しましても、米のみに限つておるわけではありませんで、主食には麦も入つておるのでありまして、近い将来に麦をはずす考えでおるのであります。また山添君の言つたことは、先ほども申し上げた通り、事務というものは非常にかたいものでありますから、準備が整わなければなかなかうんと言いませんが、ただ二十八年度一ぱいということは、私は言うてない——あの用心深い男でありますから、そこまでは言つていないと思つております。
  62. 井出一太郎

    ○井出委員 事務はまことにかたい、あなたはやわらかい、こういう感じに受取りましたが、先ほど主食の範囲は何も米にのみ限らない、麦もまた主食の一部分である。これはまつたく一部分であつて、いやしくも主食といいます以上は、われわれは米を中核に考えたいのでございまして、麦の統制は近く撤廃するかもしれぬが、一番中心である米については、何らお触れにならない。こういうところにも、いかに不用意な統制の撤廃問題であつたかということを、はしなくも大臣みずから語るに落ちていらつしやる、こう考えまして、次に進めたいと思います。  今回の予算案を拝見しておりますと、食糧増産対策費というものが特に大きく取上げられまして、これは先ほどの上林山委員の言をかりるならば、まさしく廣川農林大臣の政治力のしからしめたところであるようにも承りました。約四百億円余りの金がこれに投じられておるが、中身を調べてみますと、この中には、農業災害保険の費目が百億余り含まれております。ですから、純粋な土地改良、開拓、干拓等は二百数十億円でございましようが、この巨額な国費をぶち込んで、一体どのくらいの増産目標をお考えになつておられるか。あなたはこの前の農林大臣をおやりになつた際に、一割増産ということを声高らかにお叫びになつた。けれどもその案はどうも上らなかつたのでございますが、今度の食糧増産対策費を比較的大幅におとりになつた労は認めるといたしましても、この基盤をなすべき食糧増産計画は一体どれくらいに見込んでいらつしやるか、これをひとつ伺いたい。
  63. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 食糧増産の必要なことは、あなたは特に専門でおられるから私よりよく御存じだろうと思うのでありますが、今、日本の置かれておる食生活においては、何といつても増産を第一にいたさなければならぬのであります。この前に一割増産を申し上げたときも、かたく一割といつて目標を置いてやつたようなわけであります。今度の予算で多少ふやしておるのは、農地の拡張並びに改良、それから種子の改良、こういう方面に主力を注  いでおるのでありますが、農地の拡張、改良等において約百五十万、品種の改良等によつて約二百五十万、こういうふうに考えてやつております。
  64. 井出一太郎

    ○井出委員 ただいまの御答弁によりまする耕地の改良、拡張等町で百五十万、品種の改良その他で二百五十万、これを合せますると、四百万石という数字になります。これは土地改良その他のために、本年度約三百億近い国家資本を投入する、そのことによつて、本年度内に期待せられまする経済効果が今の四百万石、こういう数字に理解をしてよろしゆうございますか。
  65. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 期待はいたしておりますが、なかなかそのように参るまいと思つております。
  66. 井出一太郎

    ○井出委員 私の伺いたいのは、期待でなくて、科学的な根拠に基いて——これだけの巨大な国費、これはまさしく国民の血税によつてあがなわれたものでございますが、これが単なるあなたの大まかな宣伝のみに終つたのでは、たいへんなことでございまするので、天候その他の事情はしばらくネグレクトしてお考え願いたいのですが、本年度内においてこれだけの国費を投入することによつて、期待でなくて、科学的、合理的にどれだけの収量の増加を現実に示し得るか、その数字を伺いたい。
  67. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 天候その他のことがあり、特に日本には異常災害がありまするから期待すると言つたのでありますが、やはり科学的根拠に基いて、これだけの数量を二十七年度においてとりたいということにはかわりないのであります。
  68. 井出一太郎

    ○井出委員 これは私が以下伺わんとする中心課題になりまするが、三百億円足らずの経費をかけることによつて、四百万石の増産がもしできるといたしまするならば——おそらく米に換算してお考えになつていらつしやると思いますが、これを米と見まするときに、一石の単価はおよそ七千五百円に相なるのではないかと思います。これは事務当局もいらつしやるから、すぐ計算はできると思いますが、一石七千五百円の米ということになると、昭和二十六年度の産米に少しく上まわつた価格程度である。ところが一方大蔵省計画によりますと、約百万トンの外米を輸入しようとしておる。その価格はCIFで百七十二ドルと承つておるのでございまするが、これを石当りに換算いたしますると、大体九千何百円、一万円が少し切れる価格に相なります。今農林大臣が企図せられておる一石当り七千五百円ぐらいの経費でその増産ができるといたしまするならば、こういう高い外米を買う必要はちつともない。むしろこれは極力国内における自給度を高めるという方向へ農業政策全般を持つて行くべきではないか、このように考えるのですが、この点大臣はいかようにお考えですか。
  69. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 まつたくその通りであります。国内の自給度を高めまして、輸入に払つておる外貨を、どうにかして少くしたいというのが、われわれの考えであります。
  70. 井出一太郎

    ○井出委員 もちろん土地に立脚した農業というような産業には、特に収穫逓減の法則が働きまするので、倍額投資をしたからといつて倍の収量がすぐ期待されるというものではありませんけれども、今あなたが御答弁せられましたように、もつと巨額な食糧増産費を計上した方が、その金はそつくり国内へ落ちて、何らかの形で国内経済循環の上に大きくプラスする金でございますから、正味外国へとられる外貨と比べますると、より大きな貢献が国内産業の上にあるわけであります。従つて自給度を高める意味において、もう少し大きな目標、一割増産けつこうだと思いまするが、今伺つた程度よりももつと大きな計画を立てるべきだと考えまするが、この点はいかがでございましようか。
  71. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 あなたのおつしやる通り、日本にはまだ耕地として可能な土地が十分あります。事務の計算によりますと、三千万石増産でき得る余裕の土地があるということであります。最初計画を立てた千八百万石よりももう少し大きく計画を立てたらどうかというお話でありますが、われわれもまつたくそのように考えております。年間を通じて四億ドル以上の外貨を払うようなぐあいになつておりますので、どうしてもあなたのおつしやるように内地の自給度を高めて、その金を内地の農地の改良なりその他の方面に使う方が、最も適切であると私は考えております。
  72. 井出一太郎

    ○井出委員 これだけ巨額な土地改良費あるいは開拓開墾等の費用が投入せられるのでございますが、その際開拓政策というものについて何か一つの限界点がすでにありはしないか。かつて一つの国策という意味において、緊急開拓百五十万町歩というような線のもとに大きく取上けられたものが、今日では一応行き詰りを来しておる。せつかく開拓地へ入つたけれども、営農條件が非常に悪いために山を下る者が逐次ふえておる、あるいは農業だけでは食つて行けないので、やむを得ずやみ屋に転落するというような向きもある。ないしは開拓の補助金だけもらえば、もうあとは山を捨てて里へ下る、こういう手合いも非常に多かつたのでありまして、開拓の限界というものが、もはやこの際再吟味をせられなければならないときであると考えまするが、大臣はいかに思われるか。ことにいわゆる治山治水という問題とからみまして、山間僻地において寸土を得たがために、その下流の美田を失つた、寸土を得てかえつて尺土を失うというような結果が随所に見られたのでございます。従つてこれはもはや再検討段階にあると思いますが、この点についての御見解を承りたい。
  73. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 これは戦後非常に急ぎまして案をつくり、適地に適当な人を入れるという準備がなかつたために、あなたの御指摘のような点が大分あつたようであります。しかし、もはやかなりの時間がたちまするので、その土地にほんとうに根が生えた者もあり、しかも成績が上がつておるので、農林省といたしましては、今後その場所等を十分選択いたしまして、また科学的なメスを入れて、今まで不毛の地であつたものを、りつぱな開拓地にするように努力をいたしておる。一例でございますが、農林省の非常に優秀な課長が、身をもつてあなたの長野県の八ヶ岳のふもとに行つて現在真剣に開拓に取組んでおる例があります。農林省は一課長が現地で官職をなげうつて開拓に取組んでやるくらいにまで真劍にやつておるのでありまして、これはただ治山治水の関係からいたしまして、この事業がないがしろにされてはいけないと私は思います。もちろん治山治水の方は十分考えて、適地に適材を入れるということが大事でありまするが、これを別な方向へ持つて行くというような考えでなく、これはこれとしてやはり今後推進しなければならないものであろうと思つております。
  74. 井出一太郎

    ○井出委員 開拓に関連いたしまして、今御指摘なつたような、ある時期においては、土地を持たざる民が、いわゆる開拓更生というような名のもとに、土地になわ張りさえすればいいのだ、山林を開放せよ、こういう声からいたしまして、全然開拓に不適地であるというようなところが大分開墾をせられた例がございます。あるいはなわ張りさえしてしまえばそれで能事終れり、そこに立つたところの林木を自己の所有にして恬然としておる。こういうような適地不適地の区分を明確にしなければならぬのでございますが、この際こういうような不適地までなわ張りをして、農地法に藉口して土地を獲得したのだが、あとが全然本来の目的のために使われておらないという箇所が全国非常に多いので、これらは農地調整法なりを改正することによつて、この土地を元の所有者なりに返還をして——多年営々として美林を育成して来たというよう人が、むざむざ木と地所をとられてしまつたという例が多いのであるが、これを元の人に返して、本来の土地の生産性が山をつくるために最も適しておる場所ならば、それに切りかえる方が、国としても大きなプラスではないか、かように思いまするが、法の改正の意図ありや、こういう点をいかにお考えになるか承りたい。
  75. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 ああいうふうなときでありましたので、そういう例が多々ありまして、目に余つた例等もあつたことは事実であります。私ども近く案を見せてお諮りいたしたいと思いますが、あの当時不要な土地を買い入れあるいは不適地を買い入れたものに対しましては、元の価格で地主に返すような方法を講じたいと思つております。
  76. 井出一太郎

    ○井出委員 元の価格で地主に返す、その法制化を取急いでおる、こういう御言明を得ましたから、これ以上は申し上げません。  そこで午前中上林山君が畜産の問題をいろいろ論議せられましたが、特に私はえさの問題をもう少し手を打つていただきたいと思います。大臣は有名な養鶏家であられまして、その鶏の数は千羽に余ると承つております。しかるに最近のえさの高騰ぶりから見ますと、ふすまのごときは八貫匁一俵が八百円あるいはそれ以上もしておる現状である。朝鮮動乱以来諸物価いずれも高騰しましたけれども、えさの値上りというものは大体一昨年の六月から見ますと約十割方高騰をいたしております。これではおそらく廣川養鶏場の独立採算制はできておらぬと私はにらんでおる。大臣は身をもつてこのえさの問題は体験をお持ちだろうと思いますが、飼料政策をいかになされるか、この点を伺いたいのであります。
  77. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 食糧の総合的な見地から、畜産の重大なことはよくわかるのでありますが、それとそのもとをなすえさの問題でありますが、これまた御指摘通りであります。私たちはこの統制解除になる場合にも、系統団体を通じて非常にスムースに流れるようにいたしたのでありますが、なかなか道がうねつておるようでありまして、うまく行つておりません。これはこのままに放置しておきますと、有畜の奨励の障害にもなりますので、また総合的な生活の上にも悪影響を及ぼしますので、何か調整機関をつくつたらどうかというようなことで、今省内においてせつかく検討いたしておりまして、この飼料政策と申しましようか、これについてはひとつメスを入れて十分検討して、なるべく早い機会にうまく流れるような方途を講じたい、こう考えております。
  78. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいまの質疑に関連して、平川委員より質疑をいたしたいとの申出があります。これを許します。平川篤雄君。
  79. 平川篤雄

    ○平川委員 農林大臣に畜産の問題に関連をいたしまして、一項目だけお伺いしたいことがあります。それは畜産の振興に重大な関係を持つ例の獣医の問題でありますが、政府は敗戰後たくさんの引揚者を日本に収容しなければならない。その際にあたりましては、社会保障的な考え方をもつて、ずいぶん温情的におやりになつておると、私は敬意を表しておる部面もあるのであります。大臣の所管内に、この問題について私ちよつと明らかにしておきたい問題があるのであります。それは主として朝鮮の農学校を卒業いたしました獣医の問題でありますが、これはいろいろな事情がございまして、内地の獣医とは異なつた扱いを受けて来ておるのであります。しかしながら私は大臣が詳しいことを御承知ないと思いますので、本日はごく原則的な点だけお考えを確かめておきたいと思います。もし朝鮮の学校に学んで獣医の免許状を受けております、いわゆる朝鮮獣医師でありますが、それが学力その他の点においてまつたく内地と同じものであると考えられました場合には、これは平等に取扱うという点で御異存はなかろうと思うのでありますが、その点をひとつお請いただきたい。
  80. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 不敏にして省内の獣医師の差別の問題について、まだ聞いておりませんでした。しかし私、党におつた場合に南方引揚げの歯科医師等について十分折衝いたしまして、目的を達したことがありますので、多分それと同様だろうと思いますが、よく検討いたします。
  81. 平川篤雄

    ○平川委員 実は日本内地の農学校の卒業生のうち、昭和十四年三月以前に卒業いたしました者は、さきに出ました獣医師法によりましてこれは試験なしに獣医の資格を得ておるのであります。これは日本では高等小学校を卒業いたしまして、四年制度のものと三年制度のものがございました。この三年制度のものは専門課程に転換する過渡期の学制として当時は考えられておつたことは事実なのであります。しかし昭和十四年三月までに卒業いたしております三年制度の者は、無條件で獣医師の免許状をもらつておることは確実なのであります。しかるに朝鮮において小学校を卒業いたしまして、五年の課程、しかも三、四、五の三箇年を獣医科の学生として勉強いたしました者は、全然無資格になつておるのであります。私はこれの組織でありますとか、あるいは教員の素質でありますとか、ないしは課程というものにつきまして、いろいろ研究をいたしました結果、原則的に内地の三年制度の学校と何らかわりのないものである、こういうふうに考えております。大臣にもう一度同じことを言つてもらうのは、はなはだ相済まぬのでありますが、御調査の結果これが同等であるとお考えくださつたら、ひとつ善処をお約束願いたいのであります。
  82. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 先ほども申し上げましたように、同じ政府において、歯科医師の待遇につき、さようなことがあつたようでありまして、目的を達したようであります。私の方もよく調査いたしまして、あなたの御指摘のようでありましたならば、善処いたしたいと思います。
  83. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいまの質疑に関連して、岡委員より質疑をしたいとの申出があります。これを許します。岡君。
  84. 岡良一

    ○岡(良)委員 午前中に上林山さんのお尋ねに対して、まことに意気昂然たる三百五十万頭の大動物導入という構想を拝聴いたしまして、意を強うしたのであります。しかしながら現在日本の農家が大動物を導入いたします場合に、先ほど来論議の種となつております飼料問題も一つではありますが、御存じのように都会における消費生活そのものが、まだ十分に合理的な食生活を営むような建前になつておらないことは、大臣も御存じの通りと思います。そこで先ほど食生活の改善についての費目を計上しておられるとのことでありますが、いかなる方向に食生活の改善を持つて行かれんとするのか、その基本的なお気持を承りたいと思います。
  85. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 私先ほど少し説明があるいは足りなかつたかもしれませんが、現在牛馬を通じて大約三百万頭くらいのものがおるわけであります。これの品種の改良ということを私言いのがしたのかもしれません。全部を導入という言葉では間違つておるようですから訂正いたしますが、現在役牛に使い、あるいは役馬に使つておるものを半役牛、半乳牛に改良することが大事であるということであつたのであります。それをあるいは私が言いそこなつたかもしれませんから、その点訂正いたしておきます。  それから食生活改善の問題でありますが、これは今まで民族の伝統で米麦にたより過ぎておることは、あなたの御存じの通りであります。これをいわゆる外国並に、外国の食生活のように、油料を主として、これにその他の粉食を混入した場合には、非常に食生活がかわつて参ると思うのであります。現在のカロリーはどの程度でしたかちよつと忘れましたが、学者がいろいろ発表いたしておるところを見ましても、非常に違うようでありますので、私たちは海のもの、山のもの、あるいはまた動物、こういうものを総合的に食糧に供することによつて、食生活の充実をはかりたいと考えます。
  86. 岡良一

    ○岡(良)委員 厚生省の予算にも国民栄養の調査費目といたしまして三千余万円が訂上されております。年来国民栄養の改善については歴代の政府も関心は示しておられまするが、今までのところは単なる調査を一歩も出ておらないのであります。ところで政府の方で酪農等を中心に役牛、乳牛の広い農家への普及をおはかりになる場合には、その受入れ態勢が十分にできておりませんと、せつかくたとえば子豚を六千円で買つて、一年間養つて、やはり六千円でしか売れないということが地方にはあるのであります。そういう意味からいたしましても、食生活の改善は急務ではありますけれども、何しろ何百年の伝統を持つ食生活でありまして、容易にこれが改善は困難ですが、少くとも満腹することによつて、食べたという快感を満足せしめるというふうな、澱粉偏重の栄養から、脂肪なり、あるいは蛋白なりを十分に攝取して、カロリー全体としてこれを高めるというふうな栄養政策がとられなければならない。しかしながらこれは繰返し申しまするが、なかなか容易なことではないのでありまして、積極的にいかなる栄養を攝取することが、日本のいろいろ食糧の立地條件からして適当であるかということをよく調査されたならば、これらの諸條件に適当するような食生活の内容に現在の食生活を適合して行く。こういう意味においては、やはり小学校であるとか、あるいは大工場であるとかいう集団的なところにおいて、小さいときからすでに十分に合理的なカロリーを中心とする栄養を攝取せしめるような習慣を馴致して行く必要があると思います。そういう意味で食生活の改善については、政府として、あるいは国民栄養法とでもいうような法律をもつて、こうした集団的な給食、共同給食について、合理的な給食を実施せしめるような意図がおありであるかどうか、こういう点について農林大臣の御所見を伺いたいと思います。
  87. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 大動物を導入して、乳製品なりその他のものをたくさん生産させても、その受入れ態勢がなければだめじやないかというお話でありますが、まつたくその通りであります。そういうような考え方からいたしまして、今までの学校給食というあのいやな名をかえて、食生活の改善の費用として計上いたしまして、文部省と協力いたしまして、小さいうちから粉食、乳等が嗜好に合うように進めて参つておるのであります。なおまた農林省内においては、もう調査の時期でありませんので、生活改善課を設けて、全国に手数百名の者を派遣いたしまして、生活改善に実際に当つて取組んでおるのであります。長い伝統でありまするから、よほど根気を詰めてやりませんと、改善はできないのでありますが、農林省は各部落々々をまわりまして、生活の改善に懸命に打ち込んでおるようなわけでありまして、あなたの期待するような方向に向つて参りたいと思うのであります。なおまた後段で申し述べられた食生活に関する一つの法律というか、そういうものを考える意思がないかというお話でありますが、戦時中、戰後を通じての食生活が非常に困難な場合に、あれだけ粉食をやつておるのでありまして、私たちといたしましては、狭い日本であり、海外のいろいろな事情等に制約される現在の食生活においては、当然そういうような考えを持たなければならぬと思つております。
  88. 井出一太郎

    ○井出委員 ただいま岡君から食生活の問題が出ましたが、これに関連して申し上げたいことは、池田大蔵大臣は米と麦とを比較いたしまして、米が富裕階級の食糧であつて、貧乏人は麦を食うべし、こう言われました。しかしつぶさに検討しますと、米というのは粒食で、きわめて簡単に食える食糧でございますが、粉食になりますると、どうしてもこれは副食物をよけい要する。バターが必要である、ジャムが必要である。貧困なる階層の家計におきましては、どうしてもこれは米の方がむしろ経済である。それは配給辞退なんかの問題からしてもそう思われますし、何せ米の方が便利で簡単で経済的な食糧である。私はむしろ米こそ貧乏人の食糧であつて、麦の方が富裕階級の食糧だと思いますが、大臣この点どうお考えでしよう。
  89. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 そこで私ひとつお願いがあるのです。うちの池田君を盛んにみな責めますが、あれは何かあのときの感じで言葉の形容詞を取違えたんじやないかと私は思うのです。あなたのおつしやる通り、カロリーの点からいえばどつちか知りませんが、満腹感を与えるのは米の方であります。これは單にあれのみを生活に困難なものが食べることが安いということは、これは万人が承知いたしております。粉食をしたり何かしたりいたしますと、非常におかずがよけいいる。バターその他のものがいることもよくわかつておりますゆえに、あなたのおつしやるようにいわゆる富裕階級が麦を食うという形に実際問題として私はなるのではないかと思つております。
  90. 井出一太郎

    ○井出委員 あいにく池田さんがおいでになりませんので、はなはだ残念でありますが、私はさすが廣川さんの方が農林大臣たるに値する、どうか池田大蔵大臣にあなたからぜひ蒙を開いていただきたいと存じます。  そこで話題をかえまして、最近政府が意図する行政機構の改革という問題の中に、農林省に従来属しておりました林野行政の部門を建設省の方へ移して、いわゆる国土総合計画とでも申しましようか、こういう観点から扱われようとする意図があるやに仄聞をいたすのでございます。これはなかなかゆゆしき問題であつて、われわれ農林あるいは水産というような原始産業部門は、これが一体になつて初めて産業行政というものが成り立ち得ると考える、これはおそらく廣川さんあなたの面目にかけてもこのようなことはなさるまいと思いますが、われわれの立場としてはこれには絶対反対でございます。その点大臣の所見をこの際明確に承つておいた方がいいと思いますが、その点をどうぞ。
  91. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 いわゆる山を離れて農業が存在するという考え自体がおかしいと私は思つております。その山自体が農業と切り離すべからざるものであるということを十分私は承知いたしております。それからまた河川と山との関係から、いろいろな話をするようでありますが、今までの考えのように、川の水をそのまま海に流すという考えは、もうおそらくどこの国でもないと私は思う。川をできるだけ利用し、発電に利用し、また畑地灌漑に利用しあるいはたんぼに利用しいたしまして、川の水の中に含まれておるあらゆる微生物、微粒子、これを全部利用して、畑の肥しにし、たんぼの肥しにしいたしまして、余つた水を分散して海に入れて行く、こういうのがほんとうの建前ではないかと私は思つておる次第です。
  92. 井出一太郎

    ○井出委員 雄大なる廣川構想を伺つたのでありますが、まあ私の質問のつぼにはまつた御答弁と理解をいたします。大臣はこの前農林行政を担当せられましたときに比べますと、非常に勉強の効がございまして、一段とまた私は輝きを増したと、こう讃辞を呈しておく次第であります。  そこでもう一、二点。今度の予算を拜見いたしますと、四百五十万円という金額をもつてして農村の青年を海外へ派遣する、こういう構想があるようでございます。これは四百五十万円はまことにしみつたれた数字だと思いますが、その意図するところはすこぶるよろしい。しからばこれは一体どの方面へ、どういう人間を、どの程度つてみるのか。昨年カリフォルニアを通りました際に、あの地帯における季節労働の問題が取上げられまして、折からトマトの収穫期でございまして、メキシコの移民をキャンプの中に収容して、大勢使つてつたのを目撃いたしました。聞いてみるとこれは労働者の素質があまりよろしくない。この際もし日本の農家の二、三男というような、ほんとうに思想の健全な、しかも農業の技術については、これはもう世界のどこに出したつてひけをとらない、こういうものは若干移民法に抵触するといえばするが、ごく季節労働でいいから日本からよこしてみたいがどうかという話をしてみたことがあるのであります。向うの労働局あたりも、そいつはおもしろい、ひとつ考えてみようというような話題に相なつたことがございます。今度のこの計画というものも、何かそういうふうな観点から立案されたものかどうか、こういう点とあわせて具体的な内容を承つておきたいのであります。
  93. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 あなたの御質疑になりました季節移民を送つたらどうかというお話は、これはアメリカに行つておいでになつた同僚諸君からたびたび聞かされておるのでありますが、これは講和のあとの、独立したあとになつて考えたいと思いますが、現在予算の上に載つておりまするのは、純粋の農家のまじめな子弟を二十五名でありましたか、そのくらいの数でありますが、これをカリフォルニア等に送りまして、向うの農業をほんとうに実地に身をもつて体験してもらう、こういうことなのでありまして、單に口先だけの農民だけでなく、からだでほんとうに味わつて来る農家のまじめな子弟を二十五名前後カリフォルニアに送つて、そうして向うの農業の技術を取入れて、日本の農業に貢献したい、こういう考えでやつております。
  94. 井出一太郎

    ○井出委員 それでは農林大臣お急ぎですから、もう一点だけお尋ねをしたいのでございます。それは森林法という法律が第十国会で発足をいたしまして、ようやく本年一月一日から具体的な実施を見るわけに相なるのでございます。これは日本の民有林行政から申しますると、まさしく画期的な立法でございまして、この国土の狭くなつた森林資源の非常に制約された日本といたしまして、林木の需給のバランスを成長量の限度においてはかつて参らなければならぬ、こういう意図から出ており、そのためには国の責任において森林計画なるものを実施して行く、こういうのが骨子に相なつておるわけでございます。それに関連いたしまして、政府は森林計画のための予算というものを相当程度、これはあなたの御努力によつて、おとりになつておいでになります。しかし実際この国土の大部分を占めておる山林、これに対して精密な計画を立てるということが、なかなか容易ならぬものであることは、これはおわかりでありましようが、現在これがために経営指導員というような公務員の立場における者が当つておるのでございますけれども、しかし最末端におきましてはどうしても森林組合という、これは林業の基本団体でございますが、この援助を待たなければできがたいと思うのであります。それですでに実施計画に入るにあたつて、二十六年度のただいまの第四・四半期、あるいは二十七年度に入つての第一・四半期等は、おそらく森林組合に依存をしなければ、これらの活動というものは全然始まらないのが現状だと思います。しかしながら森林組合というものは、今度は一種の協同組合の組織に切りかえられましたがために、国家の助成というものはまことに稀薄である。宣伝の費用等がわずかに林野庁予算に幾らか組んである程度でありますが、これではほんとうに末端の意欲を喚起するわけにも参りませんので、実態をまずよくお見詰めになつて、森林組合の助成あるいは森林組合の技術員に対する何らかの措置をお講じにならないと、この計画はなかなか物にならぬと思う。この点ひとつ御答弁を煩わしたい。
  95. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 あの大森林組合法をつくつてくださいました皆様方に敬意を表するのであります。この森林組合法が画期的な大法典であるということは御指摘通りであります。あの法典を実際に行う上において、末端の森林組合をどう使つて行くか、また森林組合等に技術指導員をどう配置して、どういうふうにやつて行くかというお話でありますが、まだ発足早々なのでありまして、あなたの触れる点まで行つておりませんが、今後十分考えたいと思う次第であります。ちようど蚕糸の指導員やその他農事改良員等、ほかにもそういう例がありますので、日本の森林を育成して行く上におきましては、やはりそういう機関が私は必要だと思います。
  96. 塚田十一郎

    塚田委員長 この際午前中の会議において保留されました、上林山委員の岡崎国務大臣に対する質疑を許します。上林榮吉君。
  97. 上林山榮吉

    上林山委員 まず第一点は、善隣外交の基本線を打立てるという点から考え、かつまた日本を非常に理解しておるという立場から考えまして、日本とインドとの平和條約の問題はどういうふうになつておるか、私はこのことを尋ねたいのであります。聞くところによりますと、すでにインドと日本は講和條約を結ぶ段階に至つておる、しかも具体的に折衝が始まつておる、こういうことを言われておるのでありますけれども、その具体的な内容については、われわれは寡聞にして十分にこれを知らない。そこで私は、今申し上げたことが、はたしてその段階に至つておるかという点が第一点、これを尋ねたいのであります。  次に第二点は、インドから日本に示された草案の内容はどういう程度のものであるか、また日本からそれに回答を与えたとも言われておりまするが、その回答の内容は一体どういう程度のものであるか、これをまず承知したいのであります。
  98. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 インド政府は、昨年の九月十日でありましたか、ここの代表を通じまして、サンフランシスコの平和條約が効力を発生すると同時に、日本に対して戰争状態終了の告示をして、独立国家となつた日本とすみやかに平和條約を締結したいという意向を述べられておるのであります。そこでわれわれもインドの好意に大いに感謝しておるわけであります。なおインド政府からは、そのときにつくらるべき講和條約の内容等についても話がありまして、われわれの方からも意見を出しております。が、これはただいま話合いの最中でありますので、これを公表することはインド政府側の立場もありますので、ここでは差控えたいと思いますが、大体においてサンフランシスコの講和條約の中で、特にインド政府との二国間では必要のないような條項もありますので、これを除いたものであるとお考えになれば大体間違いないと思います。つまりサンフランシスコ講和條約の内容と、おもなる点では変化のないものである。ただしインド政府が必要と認めないものは除外しておる、こういうような趣旨のものと御了解願いたいと思います。
  99. 上林山榮吉

    上林山委員 ただいま交渉の段階であるから公表できないという点は了承するのでありますが、ただいまの御答弁によりまして、インドと日本との間の具体的な條約の内容は平和会議と同等のものである、ただし両国に必要なものだけにとどめるのである、こういうふうに了解するのでありますが、そうなりますと、比較的戦禍を免れたところのインドといたしましては、賠償等の問題は放棄するのではなかろうか、こういうふうに伝えられておるのでありますが、この問題も交渉の段階であるからという理由で、御発言を御遠慮になることは自由でありますが、もし答弁ができるならばそういう問題についても伺つておきたいと思いますが、賠償は全然放棄しておるものと了解していいかどうか。
  100. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは今お話のように交渉の最中でありますから、私からここで発言することは差控えたいと思いますが、大体そういうような考えで進んで来られておると了承しております。
  101. 上林山榮吉

    上林山委員 その点が明確になつたようでありますので幸いであります。  さらに日本が台湾の国民政府と修好條約を結ぶという段階に至つておりますが、この修好條約を結んでも、目印間の平和條約には何ら支障を来さざる国際情勢にあるのかどうか、この点は将来のアジア政策から申し上げまして重大なポイントになろうと思いますので、この一点をつけ加えて伺つておきたいのであります。
  102. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 インドは御承知のように中共政府を承認しております。しかしながら同時に講和條約後には、あるいは講和條約自体において、日本の主権をできるだけ強く認めるような主張を従来しておつたのであります。従いまして日本が独自の考えから、できるだけ近所の国と通常の関係を設定したいということについては、了解されておるものと信じております。それは私の想像でありますが、インドとの話合いにおいては別段この問題が支障になつたというような傾向は認められないのであります。
  103. 上林山榮吉

    上林山委員 その問題が現在の具体的な交渉においても支障がないし、将来の外交政策にも何ら支障がないというようなことであれば幸いであると思いますので、この問題はこれ以上お尋ねを申し上げません。  第二点として伺いたいことは、戰犯の問題でありますが、戰犯の問題は人道上私はきわめて重要な問題であるとこういうふうに考えておるものであります。ことにわれわれといたしましては、異国の獄窓において、祖国日本のことを考え、あるいは肉親たちの上に思いをはせつつ、ひたすら反省の日を送つておるところの戰犯同胞とともに、せめて独立の日の喜びをわかちたい、こういうふうに念じておるものでありますが、現在フィリピンほか各国にどれくらいの戦犯者が服役をしておるのか、このおもなることについてお答えを願いたいのであります。
  104. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 御質問の点については、実は今資料を持合せておりませんので、正確なお答えはできませんから、あとから資料で申し上げますが、ただいま戦犯として外地に服役をいたしておりますのは、フィリピンと濠洲のマヌス島であると考えております。マヌス島の方は比較的少数であろうと思います。そこでお話のように、戦犯として服役されている人、それにはそれだけの理由があるかもしれませんが、また何らかの誤解でそういうことになつたかもしれないのでありまして、いずれにしても非常に同情にたえないことは、まことに御同感であります。ことに先般の新聞記事によりますと、フィリピン戦犯収容所で、われわれを助けるために賠償交渉等で手かげんをすることは国のためにならぬから、というようなことを戦犯者の一人が言われたと伝えられておりまして、まことに私ども感激したような次第であります。政府としては、でき得る限りこれらの人々を内地に送還して、内地で服役してもらう、そういう場合には、親族等の面会もできるでありましようし、また将来平和條約第十一條の規定の減刑等の可能性もあり得ると考えておりますので、ただいままだ具体的にそういう方法に進んでおるとは申しがたいのでありますが、でき得る限りさような措置をとりたいと思つて、苦心をいたしておるような次第であります。
  105. 上林山榮吉

    上林山委員 御承知通りに、フィリピンで服役中の日本の戦犯者の数は、百六名であると言われております。その中に六十名の死刑囚が入つておることも、政府は御承知かと思うのでありますが、われわれといたしましてはもちろんのこと、家族にいたしましてはなおさらのこと、これらの減刑ないしは釈放に対しまして、血のにじむような陳情をいたしております。われわれといたしましても、フィリピンの代表部、最高司令部あるいはキリノ大統領等に対しまして、これらの運動を熱心にやつて来ておるのでありまするが、政府はただいまの御答弁によりますと、いろいろとこの問題について御心配になつておることは十分にわかりますけれども、具体的にこれらの問題に対して、どういう御交渉をしたものであるかどうか、この点について私は尋ねてみたいのであります。
  106. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府の方にも、家族なりあるいは友人なり、その他各方面から各種の陳情といいますか、請願といいますか、そういう種類のものも来ております。これもそれぞれ関係の方面に伝達いたしておりまするし、またフィリピン等に何らかの用事で出かける人には、向うに行つて、できればその実情も見て来てもらいたいというようなこともいたしておりまして、それらに基いて代表部とも非公式的にはいろいろ話を進めておりますが、先ほど申しましたように、まだ具体的にこうなつておるということを申し上げる段階には、ただいまでは来ておりません。将来もでき得る限り御趣旨に沿つて努力をいたすつもりでおります。
  107. 上林山榮吉

    上林山委員 私はこの問題は人道上からもきわめて重大な問題であると思いますので、とりあえず政府に対して要望したい点は、まず死刑囚に対しまして刑の執行を相当長い期間これを延期するというようなこと、あるいは死刑囚を有期刑にしてもらうような交渉をすること、さらに第三には、ただいま岡崎国務大臣も答弁ざれた通り、日本内地にこれらの死刑囚あるいは有期刑の戰犯者を一日も早く移すことができるように、私は日本政府の名において、あるいは吉田総理の名において、キリノ大統領に対して、かりに政府機関という公的な意味でなくても、ただちにこれらの要請をすべきものである。また近く段階が来れば政府として当然公的にこういうような御交渉をすべきものである、こういうふうに考えておるのでありまするが、現段階においては、單にキリノ大統領初め比島政府の寛大な処置を願う以外には、具体的には何ら交渉の道はないのかどうか、もう少し私は一歩進んだ御答弁がほしいのでありますが、この点について伺いたいのであります。
  108. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 御心配の点はまことに私も同感でありますが、政府としてはいろいろの情勢を考えまして、最善にして、最も効果のある方法をとりたいと思いますので、たとえばやり方につきましては、だれからだれに手紙を出すとか申入れをするとか、そういうことはどうぞ政府の方におまかせ願いまして、ただわれわれはできる限りの方法を盡して行く、こういうことで御了承願いたいと思います。
  109. 上林山榮吉

    上林山委員 ただいまのすこぶる熱意ある岡崎国務大臣の言葉を信頼し、この問題について積極的な御努力をお願いするということにいたしまして、これ以上申し上げないことにいたしますが、次に巣鴨におりますところの戦犯者は、成績のいい者は、と言うと語弊がありますが、規則などをよく守つたりしておる者に対しましては、だんだんと仮釈放が行われておるようでございますが、講和会議を中心といたしまして、これらの者に対する取扱いはもう少し緩和できないものか、もう少し大量に緩和して仮釈放をすべきではなかろうか、またその見通しは現地におる戰犯者の問題と比べてやりやすい段階に来ておると思いますので、これらの見通しについてもあわせてお尋ねをいたしておきたいと思います。
  110. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 内地に服役しております戰犯者につきましては、平和條約の第十一條の規定にその取扱いが書いてありまして、今後平和條約が効力を発生しますれば、第十一條の趣旨によ  つて政府としても適当の処置をとる考えでございます。その結果につきましては、むろんこれは連合国との交渉によりまするから、今から予断はできないのでありますが、相当程度御満足  の行くようなふうになるであろうと予期はいたしております。
  111. 上林山榮吉

    上林山委員 あと一点だけお尋ねいたします。しかもこの問題は財政問題でありますので、大蔵大臣が適当かとも思いますから、大蔵大臣があとでお答えになるならばそれでいいし、しかし外交にも関係があるから、ことに現段階においては外交的感覚も十分に織り込み得る問題である、こう考えますので、基礎的なことを一点伺いますが、それは総理の施政方針演説、あるいは財政、安本等の演説を伺つても、われわれは判断に迷つております。というのは何であるかといいますと、対日援助資金の返済の問題であります。この問題は国際信義の上からは、借りたものであるから、できるだけ早く返さなければならぬということは十分に承知しております。けれども承知通りに、日本の経済力はまことに脆弱であつて、しかも独立して行く日本の将来を考えますと、この点については掘り下げて十分に考えておかなければならぬ点であります。そこでこの問題は対日援助資金を借してくれといつたのでもないし、あるいは返すという約束をしたものでもなかろう、こういうふうに考えております。また国民感情から行きますと、国民感情では、これはアメリカの援助を非常に感謝して、そうしてこれはもらつたものであるというふうに実際問題としては考えておる。そこでそういうものと考えあわせてみますと、私は賠償が優先すべきものであるか、あるいは対日援助資金の返済が優先すべきものであるか、この点について非常に疑いを持つと同時に、しかも対日援助資金は返さなければならぬという基礎に立つとするならば、日本の最低経済力を破壊しない範囲内において、何年くらいでこれが返還をし得る見通しであるか。今後の経済問題、財政の問題、予算編成の上から見て、われわれはもう少し一皮むいてこれを認識しておかなければ、いいかげんな結果に終るのではなかろうかと思いますので、あわせてこれを質問申し上げます。そこで先ほど申し上げた通り、これは外交的感覚も十分に取入れて判断すべき問題であると思いますので、岡崎国務大臣からお答えできる範囲のことをお答えしてもらい、さらに大蔵大臣からそういう基礎的な計画について、あとで御答弁を求めたいと私は思います。
  112. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは非常にデリケートな御質問でありまして、私からもそう御満足の行くような御答弁もできかねるかと思いますが、第一に、対日援助費は確かにこれは借りたものでありまして、私どもの感覚からいえば、借りたものはもらつたものというわけにはなかなか行かぬと思います。すなわち、かりに対日援助費を返すべきものであるとしましても、あの困窮した際に、ほかのどの国も金を貸して、日本の食糧等を輸入する世話をしてくれないときに、とにかくあの急場を乗り切つたというだけで、この対日援助費は非常に日本の国民生活には役に立つておるものでありますから、返したら、借りたものを返したので、何でもないというようにはとれないと思います。とにかくあの急場に金を出して食糧をくれたということは、返す返さないは別として、日本としては非常に感謝すべきであると考えます。ただ一体賠償が優先すべきものであるか、対日援助費が優先すべきものであるかということになりますと、これはなかなかむずかしいのでございます。おのおの性格が違いますので、はつきりしたことはなかなか言えないと思いますが、平和條約の第十四條によりましても、賠償の支払いによつて、他の債務の履行を妨げることがないようにと書いてありますので、これはいずれも履行すべき債務であり、その履行すべき範囲は、日本の国民生活に支障を及ぼさないという程度のところでとめおかるべきものと考えております。それ以外の何年計画とか、将来の財政計画ということになりますと、これは大蔵大臣にひとつ答弁をしてもらいたい、こう考えます。
  113. 上林山榮吉

    上林山委員 現段階においては複雑微妙な問題であつて、お答えできない点も十分にあるわけであります。しかし先ほど私が申し上げた通り、この問題は日本経済の将来の問題として重要な点でありますから、経済閣僚と外交担当の閣僚とがよく考えて、この問題について善処せらるるように私は希望して、これ以上この問題に触れることを本日は遠慮したいと思います。
  114. 塚田十一郎

    塚田委員長 平川篤雄君。
  115. 平川篤雄

    ○平川委員 この際上林山委員がインドとの講和の問題で御質問がありましたので、関連いたして国府との問題をお伺いいたしたいのであります。  本日の毎日新聞は、国府との講和草案成る、という題目で、実に重大なことを伝えているのであります。吉田さんの書簡に、国民政府の支配下に現にあり、または今後入るべきすべての領域に適用されるという言葉に対しまして、国府では非常にこれを憤慨いたしまして、そのようなことを言うのならいやである。また河田氏が全権として出て来られることに対しましても、もつと国府の体面を重んじて、大物が出て来るべきであるというような、非常な不満を巻き起したようなことが伝えられておるのであります。さような関係で、この問題につきまして、非常に難関が出て来たような事実があるのではありませんか、ちよつとお伺いしたいのであります。
  116. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 御記憶かと思いまするが、吉田総理の書簡が発表されたときは、国府側では非常にこれを歓迎した報道が伝わつております。私の考えるところでは、條約の内容につきましては、今後の話合いによることでありますから、新聞等に出ておりますものがどういう径路で、どういうところの材料であるか私は知りませんが、将来、それもそう遠くなく、国民政府との間に話合いをいたせば円満に話合いがつくものと信じております。また河田全権につきましても、そういうような報道があるかもしれませんが、私としては国民政府はこれを歓迎することと信ずべき理由を持つております。
  117. 平川篤雄

    ○平川委員 ただいまのような御答弁であろうと大体予想はしたのでありますが、新聞の伝えるところによると、賠償は付属書に規定し、将来国府が本土を回復した際には、日本はサンフランシスコ平和條約第十四條と同じ賠償を支払うべくあらためて協議するということが入つておると伝えておるのであります。もしこのような、本土を回復した際というようなことが含みになつておるといたしますと、この前答弁にありました通りに、今後入るべきすべての領域に適用せられるというのは、ただ外交文書の慣用文句だといつて見のがすことができないという問題が出て来ると思う。すなわちこれは明らかに日本が中共というものと国府との関係、いわゆる占領地を回復するという意味か、あるいは両国政府がそれぞれ戦うということを予想しての文書であるというふうにとられまして、そうなりますと非常にわが国の立場というものは微妙なものが——微妙どころではありません。もつといえば非常に危險をはらんでおるものになると考えられるのでありますが、かようなことが明らかになるような文句が、はたして入る可能性があるのでありましようか、そこをお伺いしておきたい。
  118. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今のお話はどの報道を材料にしておられますか、私もはつきり知りませんが、まだ国民政府でもその草案を発表したということは聞いておりません。われわれの方も腹案はありますが、これは交渉をいたすための材料でありますから、むろん外部に発表しておりません。そういう報道を基とされましても、それはあまり正確なものではないかもしれないということをお考え願いたいのであります。そういう材料できまつたように議論をいたすことは、この際避けたいと思います。いずれこれは調印をいたしますれば、そのときに條約案として国会に提出してその承認を求めるのでありますから、そのときまでひとつお待ちを願いたいと思います。
  119. 平川篤雄

    ○平川委員 これは毎日新聞の報道でございます。ところでこういうものが出ました以上は、国民が非常に不安を感ずると考えますので、私はその問題を明らかにしておけばいいと思います。本日はそれに食い下つてどうこうという気持は全然持つておりません。明らかにしておいていただきたいのであります。すなわちこの記事によりますと、「安全保障措置としては、将来日本が防衛力を増大して太平洋安全保障機構に参加し協力する。」ということがございます。この問題は例の中ソ同盟及び相互援助條約等の問題にも相当からんで参りまして、めんどうな問題になると思うのでありますが、基本的に私がお伺いしたいのは、政府は中共と国府との間の騒乱の中に巻き込まれない態度をもつて進まれるか、あるいはそれもやむなしと考えられるか。この点だけを私は御言明に相なれば、それで満足をするのであります。
  120. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはむずかしいお尋ねですが、中共と国民政府との間の騒乱に巻き込まれるということは、われわれの方では全然考えておりません。しかしながらもしこの際国民政府と條約を結ぶということがそういうことになるんだという御意見でありますれば、これは御意見であるから、どうもいたし方ありませんけれども、そういう気持で少くとも條約を結ぼうというのではなくて、できるだけ可能な範囲で近隣の人たちと平和の関係に入りたい、友好の関係に入りたいという意味で、さしあたり台湾及び澎湖島等を統治しておりまする国民政府治下の国民たちとはそういう関係に入れるなら入つて行きたい。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕 こういうだけの趣旨で、いわば非常に單純な趣旨ですからそういうむずかしいことを考えての方法ではありませんが、将来そういう場合にどうするかということになりますると、これはできるだけそういうことにならないように注意をいたす。こう申し上げるよりほかしかたがないのであります。
  121. 平川篤雄

    ○平川委員 ちよつとはつきりしない点を、今度は裏の方からお伺いしてみたいと思うのであります。そういたしますと、総理が本会議の答弁におきまして、台湾政府ということを特に強く発言せられたことがある。またこういう書簡の文句ははなはだあいまいでありますが、考えようによると、現実には台湾政府というものがある、同時に中共の政府というものがある。ただいまは中共はお話にならないから、とりあえず台湾にある国民政府と講和を結ぶのである。しかし中共とも結ぶのである。こういう考え地域をわけられる心持があつたと理解してよろしゆうございますか。すなわち台湾だけに限つて、中共とはもう永遠に結ばない、そういうお考えなのか、あるいは両方とも現実の情勢を考えて、善隣友好の精神から、やはりこれは対等に結ぶ意図があるというふうに理解してよろしゆうございますか、その点をその面から明らかにしてもらいたい。
  122. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは総理も言われたと思いますが、われわれは中華民国の国民に対してはできるだけ友好関係を維持したい。こう考えておるわけであります。ところがそれを統治しでおります政府が国連からある種の措置をとられておる現状であり、また中ソ同盟その他の関係もあるものでありますから、その政府とこの際友好関係に入るととが困難であるという趣旨でありまして、また総理も、もしそういうようなあらゆる点において、中国本土におる政府が態度を全然改めて来れば、これは別問題ということになると言われておりますから、さよう御承知を願います。
  123. 平川篤雄

    ○平川委員 その程度の御答弁しか得られないと考えますので、いずれ日を改めまして安全保障関係全体の問題についてまた関連してお伺いして、この問題を明らかにしたいと思うのであります。ただいまの御答弁必ずしも満足したとは言えないのでありますが、関連質問でありますから、この程度で打切つておきたいと思います。
  124. 井出一太郎

    ○井出委員 ひとつ大蔵大臣を至急お呼びを願いたいのであります。その間お二方大臣いらつしやいますが、高橋さんにお尋ねしたいことは、大蔵大臣質問が逐次展開せられて、その後になりますので、たいへん御迷惑ですが、時間がおよろしければお待ちをいただくし、あるいはもし何ならばこれは時を改めることになるかもしれませんが、天野文部大臣にひとつ……。  まず第一点は六・三制の校舎の問題でございます。これは大蔵大臣もおいでをいただくとまことに好都合でございますが、〇・七坪を二十七年度において完成をする。こういう御方針のもとに予算が組まれて参つたようであります。その数字は三十七億、大体そのように記憶をいたしますが、文部省のお立場ではこれをもつてして当初の計画が可能でありまするかどうか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  125. 天野公義

    天野国務大臣 〇・七坪を完成するためには、まだ二十三億くらいの金が余分にいると思いますが、しかしそれが国家財政の都合上できないということでありましたら、本年度をもつて〇・七坪を完成することはできませんでしよう。その残りは来年度においてやりたいと思つております。元来私は〇・七坪をもつて満足するものではございません。できるなら〇・九坪くらいやりたいのですが、現在の国家財政の立場ではそういうことを言つても無理でありますから、〇・七坪はぜひとも完成したい。それも今年できないから来年度においてその残りをやりたいという考えであります。
  126. 井出一太郎

    ○井出委員 本予算書に計上をせられておる数字だけでは、二十三億くらい不足をする。これは大蔵大臣がここにいらつしやれば二十七年度で打切るかいなかを私が伺つて、文部大臣と対決をしていただけば一番問題ははつきりいたしますが、文部大臣のお立場では、二十八年度にわたつて残るところを国家支出をしてこれを完成せしめたい、かように了解いたしてよろしゆうございますね。  それはその程度にいたしまして、今年度ようやく六・三・三・四という制度が系統的に完備をするということに相なるわけでございましようが、それがために学年数が一つふえたというような関係から、育英費というものが、従来から見ますと絶対数字はふえておりましても、その均需せられる部面はむしろ少くなる。こういう懸念があるのでありますが、これを文部当局はどのように措置されていらつしやいますか、伺いたいのであります。
  127. 天野公義

    天野国務大臣 育英資金は逐年増加して参りまして、今年度はこれでは不十分でございますけれども、しかし他との関連上よんどころなくこの程度にとどめたわけでございます。しかし軍人遺家族の子弟のためにはまたあらためて相当額の金額を計上することになつておりますから、それでもつて今年は満足するよりいたし方ないというように考えております。
  128. 井出一太郎

    ○井出委員 この点われわれも文部大臣同様非常に不満でございますが、これ以上は申し上げないことにいたします。  国立学校の授業料値上げという問題が出ておりますが、大体現在年額三千六百円程度のものが六千円になる、このように承知をしておりますが、これが国家財政の面におきますると総額授業料収入ではどれくらいの増加に相なりましようか。
  129. 天野公義

    天野国務大臣 今年新しく入るもの、一年だけでありましたら一億一千万円でございます。
  130. 井出一太郎

    ○井出委員 このことは当然国立学校だけにとどまらず、私学方面へも相当の影響を及ぼすものと考えられます。これは物価指数その他から申しますと、現在の授業料は決して高いものじやない、こうは思いますが、その波及するところは、今申し上げたように私立学校方面にも相当に問題をかもし出す條件になるでありましよう。しかも学生方面からは、すでに陳情その他国会への要請も来ておるのでございまして、今の学生生活の現状というものが、大部分の学生がアルバイトをせずにはやつて行けない。こういうふうな状況下に、他の費目をもう少し節限したならば、わずか一億一千万円程度のものであるならば、文教振興のために文部省としては親心をもつてこれをもう少し現状に押えて置こうとする努力をなぜなさらなかつたのであるか、文部省は経済條件その他から見てこうすることは当然だ、こういうようにお考えになつてこの措置をなされたのかどうか、そのあたりを伺いたいのであります。
  131. 天野公義

    天野国務大臣 私の考えでは、国立大学の学生には全然月謝をとらないというのも一つ考え方だと思うのです。けれども、すでにそれをとる以上、あまりに私立学校などとのつり合いのとれない、また社会一般の学校の月謝などとのつり合いがまるでとれない、たとえば東京都の高等学校でもすでに三千円くらいはとつておると考えておりますが、そういう場合には、その利益を受ける人がある程度の負担を受持つということが、かえつてよいのではなかろうか。それをしなくても済むならよいのですけれども、いろいろ学生のための施設というようなことにも金がなくて困つておるのですから、その際には私は現在のさまざまの関連からいえば、六千円程度のことはよんどころないのではなかろうか、そういう考えでございます。これが私立学校に影響するというよりは、むしろ私立学校が非常に高くなつているから、それのつり合いのためにこういう措置をするというわけでございます。
  132. 井出一太郎

    ○井出委員 この点はいずれが鶏、いずれが卵ともつかない問題でございまして、この値上げが打ち返して行つて、私立学校がさらに値上げをする口実になるというようなことをおそれるあまりに申し上げるわけでありまして、私もとる以上はこのくらいは当然であり、しかも非常に安いものだという感じは大臣同感でございますが、願わくは私立方面に大きな波及のないようにひとつ措置を願いたいと思います。  それから最近教科書問題について、文部省が編纂した国定教科書のようなものが復活するのではないか、こういうことを漏れ聞くことがございます。これは近ごろ逆コースとか復古調とかいう言葉がはやりますように、どうも少し元へもどる状況が出て参つております。これは聞くところによると、文部当局も世論にかんがみまして、こういう構想は引込められたというようにも聞いておりますが、この点はいかに相なつておりますか。
  133. 天野公義

    天野国務大臣 教科書につきましては、私は現在の教科書の状態には非常に不満足でございます。もつと値段の安い、もつと簡素なしつかりしたものがつくられていいと思うのです。非常に不満足に思つておりますから、このままに打ち捨てておいてはいけない、何かここに業者に対しても警告を発する必要があるのではないかという考えから、教科書をもつと十分に文部省では研究しよう、いつ何どきでも文部省がこれを編纂することができるような準備をしよう、そういうことであつて、今ただちに教科書をつくるとか、まして国定教科書をつくるとか、そういう考えではなくて、検定制度というものは依然として置いて、文部省がなお十分な研究をして、このままに推移するなら、いつ何どきでも自分たちもやるのだという態勢を整えておきたいという考えなのでございます。決して私はせつかく出発した自由な制度を、少しやつてみていけないからすぐ元へもどすという考えは、全然持つておらないということを御了承いただきたい。
  134. 井出一太郎

    ○井出委員 大蔵大臣が見えましたので、あと一、二問で切り上げたいと思います。本予算書を拝見しますと、オリンピツクに派遣をする選手の費用補助が千五百万円、デヴイス・カップの方へ二百万円、こういう計上がございますが、おそらく来るべきオリンピックというものは日本国民が非常な期待を寄せております。もちろん貧乏国の日本が身分不相応な人員を派遣することは、一応考えなければなりますまいが、しかし何もかも敗れ去つた後の国民的な気魄を失つておるこの際に、スポーツというものを通して——これはまつ裸の実力がものを言う世界でございまして、ここにおいてフェア・プレイの精神が火花を散らすというような意義を考えますと、これは国民的な壯挙という意味において、なるべく大勢の入を送りたいと思うのでございますが、この費用ではおそらく九牛の一毛であり、あまりにも貧弱ではないかと思います。これはおそらく体育協会等においてさような選手派遣その他の仕事はいたしておるとは思いますけれども、文部省も体育というものに関連を持たれる以上、そういう点については私と違つた御意見ではなかろうと思います。そこで今文部省で承知をせられておりまするオリンピック選手派遣の内容とか、あるいはその費用に対してこれがどの程度補助に相なるか、その基準はどこにあつたか、こういうふうな点をお漏らし願いたいと思います。
  135. 天野公義

    天野国務大臣 私もスポーツの意義についてはまつた同感でございます。スポーツがただの遊戯ではなくして、これが国際的に非常に大きな意義を持つており、でき得るなら、もつと多額な費用政府から出すということがよろしいのですけれども、いろいろな事情から千五百万円くらいのものでありますが、しかし民間からも金を募集することでございますから、それによつてある程度のことはやつて行けるという考えでございます。しかしもつと詳しいことを申し上げる方がよければ、事務当局から申し上げます。
  136. 井出一太郎

    ○井出委員 何か具体的な内容がわかつておりますか。
  137. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 オリンピック派遣の予算内容でございますが、これは千五百万円でございまして、五十人分の予算でございます。一人が五十六万円の派遣費の半額を国庫で負担するという関係になつております。実際派遣を希望しております人員は七十九名ということになつておりますが、なおいろいろ体育協会等と相談の結果、あるいはもう少しふえるかもしれないというような事情でございます。それからデヴィス・カップの方は一人分が百万円で四人の経費、これも半額の補助で二百万円でございます。
  138. 井出一太郎

    ○井出委員 現在スキーやスケートに相当の人員が行つておりますが、これに対してはどうなつておりますか。
  139. 寺中作雄

    ○寺中政府委員 スキー、スケートの関係は二十六年度の補正予算によりまして、十五人分の派遣費をいただきまして、これによつて現在行つておる次第でございます。
  140. 井出一太郎

    ○井出委員 教育委員会法の改正というようなことが伝えられております。これによりますと、従来の公選制が任命制に切りかえられる、かように聞き及ぶのでございますが、これは今までの公選制に相当な弊害のあつたことは承知をいたしております。しかしいやしくも事教育の問題でございましてデモクラシーの範をまずこのあたりから示さなければならぬ事柄だと考えます。従いましてこの公選制にもし欠陷がございましたならば、これはどこまでも是正するということにして公選制を持続すべきである、かように考えまするが、文部大臣の御所見はどうでありますか。
  141. 天野公義

    天野国務大臣 私もこの教育委員会というものによつて、国民が教育は自分らの事柄だと、いうようなことを認識、自覚するようになつたという点には、非常に功績が多いと思うのであります。しかし今の通りでよいかというと、井出さんも御承知のようにいろいろな弊害がある。けれども原理的に言うならば、今おつしやるようにどこまでも公選でなければいけないと思うのです。せつかく公選で出発したものをすぐここで改めるというようなことは、これはよほど注意し、考えなければいけない。そこで公選という原理を守つて、しかもこれに今あるような弊害が出ないようにするには、どうしたらいいかということを非常に苦慮いたしておる、またいろいろ研究をいたしておるわけで、ただちにこれを推薦制にするというような考えは持つておりません。
  142. 井出一太郎

    ○井出委員 もう一点、先ほど岡委員から給食の問題が出ましたが、今回は文部省予算の方ではこれは出ておりません。食管の特別会計の方へそれが現われておるようでございますが、具体的な内容はいかがなことに相なりますか、従来と同じ程度の人員あるいは給食の程度を、この仕組みによつて来年度も存続できまするかどうか、これをお伺いいたしたい。
  143. 天野公義

    天野国務大臣 前のお答えを補足いたしますが、ただちに推薦制にするというような考えはないと申したのは、これは十分研究を要するという趣意で申し上げたので御了承を願います。  それから今の給食の問題でございますが、これは先ほどもお話の出ておりましたように、食糧の買入れということにも関係を持ちますので、今度は農林省の食管の方でこれを取扱つていただくことにいたしました。その内容はほぼ同じに行くと私は考えております。
  144. 井出一太郎

    ○井出委員 今特に教育委員会問題について。わざわざ愼重に研究を要する意味の御追加の御発言がありましたが、これは次回の教育委員の選挙というときまでには当然結論が出る、こう見てよろしゆうございますか。
  145. 天野公義

    天野国務大臣 この国会中に間に合せるように法律を出すつもりであります。
  146. 井出一太郎

    ○井出委員 願わくは公選制の大原則を、たといその弊害を認めても、できる限りの改善を加えることによつて貫いていただきたい、こういう御要望を申し上げておきます。  それから大蔵大臣が見えておりますので、ついででございますから文教問題について伺います。六・三制校舎の〇・七坪を完成すべく三十七億の予算措置が講ぜられておりますが、これで完成がむずかしいという場合には、さらに翌年度において継続して完成されますことをお考えでございますか。
  147. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お尋ねの六・三制完成の問題でございますが、昭和二十四年に一応測定いたしました〇・七坪による分の完成は来年度でできることになつておるのであります。文部省といたされましては、その後の学童数の増加、移動等によりまして、二十四年に測定いたしました分以外の予算の要求があつたのでありますが、私といたしましては、一応昭和二十七年度には二十四年度の計画を完遂しようということで、学童数の増加に伴う分は昭和二十八年度に為いて考慮してはどうか。どの程度考慮するかということはまだきまつておりませんが、二十八年度に讓つて行こうということで話合いをいたしたのであります。
  148. 井出一太郎

    ○井出委員 この六・三制の校舎も出発当初はまつたくそまつなバラツタ建でできたようなものも多々ございました。ところが今日非常に損傷をしておりますし、あわせて小学校なんかの老朽校舎という問題もあろうかと思います。そこで大蔵大臣は生徒数のふえた分だけは二十八年度において考慮せられるというふうにおつしやつておられますが、文部大臣は大体これで行けるというお見込みでございますか。
  149. 天野公義

    天野国務大臣 生徒数のふえたといいましようか、大蔵省でなさつたのと文部省でしたのと計算が違つております。生徒数のふえた分に対する〇・七件がすべてなされれば、私はそれで一応〇・七坪の完成ができるのではないかと思つております。しかし今おつしやつたような老朽校舎とかいうことはまた別の問題であります。
  150. 井出一太郎

    ○井出委員 天野先生をあまり追究申し上げてもいかがかと思いますし、同じ内閣で考えが違うはずもございますまいと信じ、大蔵大臣の善処方を切にお願いして、この辺で文部大臣に対する質問は切り上げます。  大蔵大臣がお見えになりませんでしたので、むしろ派生的な問題を今まではやつておりました。そこで振出しにもどつて申し上げるわけでございますが、本予算案というものをながめて見ましたときに、内容的にはわれわれの側ですでに指摘をいたしたような、たとえば財政法違反の疑いがあるとかあるいは防衛支出金、安全保障費等はまつたく空白のままで、これでは審議にならぬじやないかとか、いろいろな批評が出て参ると思います。形式論から申しますと、税収入の面において昨年の改正税法の点をそのまま踏襲をされ、しかも歳出の面において、内政費というものを六千五百億くらいの線に大体押えて、一方平和回復に伴う諸費用というものを二千億余りという二つの区分において組み立てられて、あなたが昨年来言われて来た八千億台にこれを押えるという公約をとにもかくにも果されておる。こういう点を認めるのでございますが、しかしこれにはもちろん前提があるのでありまして、問題は二十七年度というこれから一年余りの先を見通してこれだけで納まるかどうか。去年もそうであつたように、補正予算というものがあとから出て参つた。これがために一年間を通計してものを言うことが非常に困難であつたということと同じ事態がまた出て来はせぬか、こういう懸念があるわけであります。それで本年は最初は六千五百七十四億で出発して補正が千五百九十二億でございますから、約二四%というものが予算規模においてふえて参つた。本年はもしそのテンポでふえたならば、一兆億を越えるというようなたいへんなことにもなるのでございます。それであなたはせんだつて補正予算は組まないとおつ上やつておられる。またそうあることを国民大衆いずれも期待をしておるのでございますけれども、この点に関する限りは、公約は常に破られて来たように記憶をするのでありますが、まず最初にこの点をお伺いしておきたいと思います。
  151. 池田勇人

    ○池田国務大臣 本予算を御審議願うときに補正予算を組みますということは、どこの大蔵大臣でも言わぬと思います。しかし昭和二十四年塚来の状況は御案内の通りでございまして、翌年度の予算を組みます場合は、前年の八、九月ごろということを基準としてやつておりますので、経済の動きが非常にかわつて参りますと、今まではそういうふうなことであつたのであります。ただいまのところでは、昭和二十七年度におきましては、今までのような変化はないと思います。私は大体今の予算でまかない得ると考えております。しかし経済は生きものでございますから、いかなる事情が起つて補正予算は組まぬとは、なかなか言いにくいのであります。そういうことを言いますとまた公約不履行になりますから、一応今の建前で行くつもりであります。
  152. 井出一太郎

    ○井出委員 おそらくそういう御答弁であろうと存じます。要するにこれから先昭和二十七年度内の経済の動きというものがどうか、こういう問題にかかつて参りますが、朝鮮動乱以来非常に大幅な物価の騰貴、その他経済のいろいろな部面が変化をして参りましたが、最近は一種の横ばい状態であるというふうにも言われております。しかしたとえばアメリカの大きな軍拡予算といいましようか、昨年は七百八億ドルというような規模のものが本年は八百五十四億ドルにも相なつておる。しかもその内容を構成する直接、間接の軍事費の比率に至りましては、昨年の七〇%程度のものが本年は七六%になつておる。こういうようなことを見ましても、今後日米経済協力その他アメリカとの関連がますます深くなつて行きます場合、この波を受けまして、さなきだに底の浅い日本の経済というものが、相当根底をゆすぶられるという心配もあると思うのでございますが、こういう点はどのようなお見通しをつけていらつしやいますか。
  153. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アメリカの軍事予算お話通りに八百五十四億ドルと言つております。これがどういうふうにおちつくかわかりませんが、しかしこの予算に基きまして、日米経済協力の点で、直接予算に影響するようなことはあまりないのではないか。経済界にはかなりの影響があると思います。但し日米経済協力によつて日本の経済をゆすぶらすというようなことであつてはならない。たとえばアメリカにアルミがほしいと言われても、原料は南方から持つて来ましようが、電力を要しますから、アメリカの要求するアルミをうんと増産するために電力をその方に使つて、他の産業に影響を及ぼしてはならぬ。民生の安定に影響を及ぼすようなことであつては、いかに日米経済協力が必要であつても、これは限度を越したものであります。日本の経済をゆすぶつて不安定ならしめるような日米経済協力というものは私はまつぴらだと考えます。
  154. 井出一太郎

    ○井出委員 この予算が性格づけておりますものは、すなわち日本経済がこの予算によつてインフレの方向をたどるか、それともデフレの方向をたどるか、こういう問題は非常に注目される点であると思うのであります。大蔵大臣は、一般会計においては引揚超になつておるけれども、特別会計ないしは政府機関を通しては支払超になつておる。このバランスが維持せられるときには、この予算はインフレにはならぬのだ、こういうふうに一言われておるのであります。しかしこの中で、たとえば防衛関係の安全保障諸費は、一種の再生産外の消耗であつて、これは資本の形成にもさつぱり役立つはずのものでもなければ、あるいは国民生活の面でいえば、その消費に食い込んで行くというような性質のものでありまして、この運用いかんによつて、やはりインフレの方向をたどることになりはせぬか、こういう懸念を持つものでございますが、この点どうお考えですか。
  155. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国の予算のうち、ある程度再生産に向わない金が出ることは、これはどこの国でもあり、たとえば軍備なんかにつきましては、各国ともそういう議論をしております。ただ問題は、インフレになるかならぬかということは、政府が信用を喪失するかどうか、こういう問題でございます。その意味におきまして、一般会計、特別会計並びに政府関係機関の予算は完全にバランスいたしておるのであります。こういう意味からのインフレというものは私は起らない、こう思います。ただ予算の使い方に時がございまして、たとえば安全保障諸費におきましては、道路の建設とか、あるいは兵舎の新築、あるいは設備機関、通信施設等を予定いたしておりますが、こういうものの使い方につきましては、よほど原材料の問題、時期の問題を考慮して行かなければならぬと傭うのであります。
  156. 井出一太郎

    ○井出委員 時のずれという問題は、この予算の場合にも私は非常に重要だと思います。ことに安全保障條約による行政協定がなかなかはつきりしない。そうすると、税金で吸い上げるだけは吸い上げたが、これを使わないで政府のふところにだけ金がだぶついておるというようなことが経済界へどう波及して行くかは、おそらくこの予算を運営する上において非常に重要な問題だ、こう考えるものでございます。  そこでもう一点、防衛関係諸費はその程度としても、内政費の面において、本年度はインヴエントリーが相当巨額になつたのでございます。来年度はそれがずんと減つてしまつた。四百五十億円、食管で百億円、これだけ減つているのですが、これの幅を縮めて公共事業費をふやしたり、あるいは遺家族の援護に充てたり、地方財政やその他を幾らかふやしたというような操作がなされておるのですが、それだけ財政上のクッシヨンがなくなつて来た。そういうようなことから、本年度の予算と大体方向を異にしやせぬかという感じを持つのですが……。
  157. 池田勇人

    ○池田国務大臣 財政にクツシヨンがあるというのはよくないことと存じます。予算にクツシヨンがあることは絶対に避けなければなりません。御質問のインヴエントリー・ファイナンス、外為会計の八百億円、食管への百億円、この食管のなくなつたのはその必要がなくなつたからであります。それから八百億円の外為への繰入れは、御承知通り昨年は外貨の増加を一億七千四百万ドルと見込みまして、しかもそのうち直接政府の分を四千七百万ドルと見込みました。その金額に相当します一億数千万ドルの繰入額と、昨年の四月に改めましたユーザンス会計の改訂に伴いまする繰入れ必要額大体四百億近く、これがありましたのでやむを得ず八百億繰入れたのであります。しかしてまだそれだけで足りませんので、日銀からの借入れ限度を増加して七百億円、こういうふうにいたしました。しかるところ、昭和二十七年度におきまする外貨収支の状況は九千七百万ドルで済む見込みであるのであります。従いまして、本年度のようにユーザンスの改訂に伴う分がいりませんので九千七百万ドル、大体三百五十億円の繰入れでけつこうだと思います。しかしてまた貿易の状況その他につきましては、この繰入額で過不足を生ずる場合も考えられますので、日銀からの借入れ限度も増額しておる状況であるのであります。
  158. 井出一太郎

    ○井出委員 財政にクツシヨンを置くべきでないという主張は、昨年来われわれもいたしたところで、これは明年度は少くなつている。このことは、貿易じりというものが大よそこれくらいで押えられるというお見込みなんですか。この年度は経済界の波の動きがかなりはげしいのではないかという予想からいたしまして、これは九千七百万ドルだつたと思いますが、一、二箇月も先の決済のしりを今この程度に押えるということは、少し危險じやないかという感じがいたしますが、これはどうですか。
  159. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外資の収支の状況につきましては、お話通りなかなか困難な問題があるのであります。国内での操作とは違いましてむずかしいところがあるのであります、しかし私といたしましては、実は九千七百万ドル以下くらいにしたいという気持があるのであります。それはできるだけ輸入をすること、輸入をいたしますれば物価の上昇を押え、日本の脆弱な経済をより強くし得ると思うのであります。極力輸入をはかつて九千七百万ドル以下くらいにしたいという希望はありますが、しかし、これはやはり今までの経験からいたしまして、いろいろな角度から検討を加えて、この程度の外貨の増収、受取り超過があるのではないかと思つております。これを調節いたしますために、たとえば輸出入につきまして特段の努力を払い、またこれは所管外でございますが、ドル地域、ポンド地域の調整をするとか、いろいろな方法を講じて行つて予算に過不足のない、できれば輸入を促進して、九千七百万ドル以下ぐらいにしたいという希望を持ちながらやつて行きたいと思つております。
  160. 井出一太郎

    ○井出委員 もう一つ、この問題はいかがでしようか。四月の一日から二十七年度の会計が始まる。ところが條約発効の時期は、必ずしも四月一日とマッチしない場合を考えておかなければいけない。そういうような場合に、この予算が、その期日がずれることによつて、たとえば一方においては占領が続くとなれば、終戦処理費のようなものがやはりいるのではないか、このずれの調整はどう考えていらつしやいますか。
  161. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体四月の一日前、三月三十一日までには講和條約が成立することと考えておるのであります。しこうしてそれまでに、三月三十一日以前に成立いたしました場合におきましては、九十日間の問題がございますが、それは終戦処理費あるいは今年度組んでおりまする平和関係処理費いずれからか支出でき得ると考えておるのであります。ただいまのところ四月一日以後に平和條約が成るということは予想していないのであります。
  162. 井出一太郎

    ○井出委員 安本長官がいらつしやれば、いろいろな関連した問題をお聞きしたいのでありますが、これをあとにまわしまして、あと若干金融の問題をお尋ねしたいと思うのであります。  昨年十一月末にドツジ氏がクリーヴランド号で日本を去られましたが、その際に池田財政をいろいろな角度から批判をされたことがございます。その際、財政の面においては大体うまく行つておるようであるが、金融の面に非常な憂慮にたえない部分が多い。特にオーバー・ローンその他の問題をも指摘をされまして、池田財政というものは、財政の均衡は保ち得たが、金融の方面に一切のしわが寄せられておる。われわれも従来そういう批判をしたのですが、はしなくもドツジ氏も同様な意見を述べて帰られたと思うのです。まずこういう批判に対して池田さんはどう考えておられるか、承りたいと思います。
  163. 池田勇人

    ○池田国務大臣 財政の面ではよく行つておるが、金融の面ではあまりよくない、こういうことはドツジ氏自身も直接私に言つておりました。これは占領治下におりまして進駐軍の方々のいわゆるいろいろな示唆があつたのでありますが、進駐軍の方々につきましても、私はある程度責任があるのではないか、私は銀行、金融機構その他につきまして、今まで終戦後の政策は、あまりよくなかつたと、こう考えるのであります。ドツジ氏自身もみずから認めておる。いろいろな制度について思つたように行かなかつた、あるいはよくなかつた、こういうことを言つておるのであります。これはドツジ氏が私を批判しておるのではなしに、自己批判だと私は考えております。私もそう思つている。金融制度にもう少し熱心であり、注意深くやるべきだつたと思うのであります。そこで私は先ほど来から申し上げておりますように、今まで行き過ぎたいわゆるオーバー・ローンの問題も、一挙に改めたり、いろいろな手品なんかをやつても行かないので、徐々にかえて行かなければならないと考えておるのであります。その方法といたしまして、投資銀行等を考慮するとか、あるいは銀行法全体につきまして皆さんの意見を聞いて、いい案をつくるように今努力をいたしておる次第であります。
  164. 井出一太郎

    ○井出委員 ドツジ氏にも責任があると言われる。しかし池田財政というものは、いわばドツジ氏の処方箋に従つて薬の調合をしたのだ、こういうことは、これはもう今日常識に相なつておりますが、あなたが財政面において収支のバランスを合せることに努力を傾注されたということは、われわれも認めるのでありまして、そのことは要するに、徴税強化という形になりまして、これはまあ財政需要があるのだから、何とか吸い上げて来なければならぬということではあつたのでしようが、そのために金融面などにおいては、納税融資というような現象を惹起いたしまして、財政の面からする金融へのしわ寄せ、こういうものはやはりあなた自身のイニシアチーヴにおいて行われたのではないか。こういう意味においては、あえてドツジ氏の責任のみではなくして、池田財政自体の責任だというように考えるのであります。この点はいかがでありますか。
  165. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はだれの責任、かれの責任と言つているのではありません。財政金融についてのいろいろの批判はありますが、これは私も認めるし、ドツジ氏自身も認めているところであります。それから財政のしわが金融に寄つた、こういう話でございますが、これは私はそう言われることはよくわからない。財政が均衡だ、従つて金融も健全でなければならぬ。財政が均衡して健全だ、従つてそれのしわが金融に寄るのだと言われることがよくわからないので、財政が健全であり均衡しておれば、金融も健全であらねばならぬ。それを今までのように、財政が放漫で、日本銀行の信用を造出するような財政政策をとつて、そうしてやつてつたときには、金融に何も関係なく、しわが寄らぬでしよう。しかしながら現在は財政が金融の方へ影響しないようにやつている。だから金融も健全であるべきだ。しかし物価高、生産増強等によりまして、その当座をしのぐためにある程度のオーバー・ローンが出て来た。これは私は経過的にやむを得ないと思う。徐々に直して行く。これを財政のしわが金融に寄つたというのは、遺憾ながら賛成ができないと思います。  もう一つ、徴税強化というお話でございますが、私は徴税強化ではない、財政の必要だけをとりまして、できるだけ減税をして、数回にわたつて減税をいたしたわけで、減税の方針を私の一番の方針としてやつたわけであります。ドツジ氏なんかは、減税はいらぬとかなんとか、ちよいちよい言つておりましたが、私はどうしても減税しなければならぬというので、こういう点ではドツジ氏とは意見が違つてつたのであります。まあ結果から見ますと、財政は大体うまく行つたのではないかと考えております。しかし金融面につきましては、先ほど来申し上げましたように、今後直して行きたい。その方法は場当り的、手品的なものではいかぬ、徐々に確実にやつて行きたいと考えます。
  166. 井出一太郎

    ○井出委員 財政というものは、これは背後に権力がある。そういう意味から、あなたが均衡財政、健全財政を貫こう。ということは、背御にある国家権力というものににらみをきかせて、それゆえに財政を健全化させることができたのだ、こう思うのです。今減税の方針を常に貫いて年々減税をして来たとおつしやいますが、これは日本経済全体の回復というものが、ともかく財政需要をまかなうだけの力が漸次培養されて来たんだ。その意味において池田さんに非常に好運な時期に蔵相のいすをお占めになつたんだ、こういうふうに思うのでございます。それで財政は大体けつこうだ。金融の方がうまく行かぬということは、何か伺つておりますと、金融の方が人ごとのように響きがいたすのであります。この間の蔵相の御答弁を伺つておりました際も、大蔵大臣の権限というものは、金融にはきわめてわずかしか及ばないんだ、こういうふうな弁明をされたようでございますが、いやしくも一国の財政、経済、金融、こういうものの一番中心に地位を占めていらつしやるあなたが、金融の面に対しては何か人ごとのような表現をせられるというのは、少しふに落ちぬのですが、この点はどうですか。
  167. 池田勇人

    ○池田国務大臣 財政も金融も私の所管でございますが、財政は政府機関でこれをつかさどつておる、金融は民間機関のつかさどつておるものであります。しこうしてその中心は日本銀行であります。大体の大筋につきましてはいろいろな協議をいたしますが、日本銀行からどれだけ市中銀行に貸すかというときに、それは貸し過ぎるとか、その銀行はよせというようなことは、大蔵大臣としては権限がないのであります。そこで全体の問題としては握りますが、個々の問題として、財政における大蔵大臣の地位と、金融における大蔵大臣の地位というものはよほど違う。しかし所管大臣たることにはかわりはございません。責任は負います。だから具体的の問題につきますと、関与する度合いがまるつきり違う。たとえば預金などにつきましても、われわれがどうこう言うわけには行きませんが、税になりますと、ある程度の調整ができる。こういうことでございまして、その関与の程度が違う。決して人ごととは考えておりません。
  168. 井出一太郎

    ○井出委員 大蔵大臣の感覚とされましては、おそらく財政は抱いた子である、金融は背負つた子であるという程度のどうも違いがあるように受取れるのでございます。これは何としても戰争で困憊の極に達したあのさんたんたる日本経済を今日まで持ち上げて来まするためには、これはもう底の浅いという日本経済からしても、資本の蓄積がまつたくできがたかつたというような事情は十分了察をしなければいけませんが、今日の金融の状況を見ますと、銀行預金なんかを調べてみましても、これは戦前の基準から見ますと、非常に低位に置かれてある。あるいはまたその中でも運転資金と設備資金の差であるとか、定期性の預金としからざるものとの比率であるとか、戦前と比べますると、まことに不安でたまらない。こういう状況に現下置かれておるわけであります。そこでおそらく資本蓄積の方法をいろいろ講じていらつしやると思いますが、その一、二としてこの間来問題になつておりまするたとえば無記名定期をここで創設するとか、あるいは一般的に利子の引上げをするとか、あるいは貯蓄組合に対していろいろな援助を与えるとか、いろいろな手を打つておられるようでありますが、無記名定期というようなものをつくりました場合に、ほかの従来の定期預金がこれに乗りかえられて、その面から当初見込んだ効果が現われないおそれがありはせぬか、あるいはこういう面から税金がどの程度免れてマイナス面がそこに生じて来はせぬか、こんなふうな問題はどうお考えですか。
  169. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話のような点がありますので、今まで非常に問題がありまして、ただちに無記名定期を実施する運びに至らなかつたのであります。しかし関係者と申しますか、金融機関その他の方から意見を聞き、また徴税につきましても、できるだけ帳簿を備えてもらつて、実額調査をすれば大体適当に行くのではないかという見通しがつきましたので、貯蓄増強の一端として認めることにいたしたのであります。ただ定期預金から無記名預金にかわるというふうなことがあるのではないかという御懸念もあります。しかし一方ではたんす預金が相当出て来るという意見も強いのであります。一説には一千億円ぐらいは無記名定期ができるのではないかということを言つております。それは無記名定期預金をやめたときに、それに近い金があつたのを論拠にしておるようであります。私はそうはふえないと思つております。実質上ふえるのはそれの半分くらいじやないか。定期預金がかわるところを除きまして、実質上の増加は四、五百億くらいじやないかと思つております。何と申しましても、たんす預金その他のところはわかりませんが、いずれにしてもふえるということはけつこうでございますので、税の方面である程度のむずかしい点がありましても、この際やつた方がよい、こう決心したのであります。
  170. 井出一太郎

    ○井出委員 金利の引上げという問題はどうお考えですか。たとえば日銀の公定歩合で、一銭六厘というものはずいぶん安いものだ、そうかといつてこれにもそういう金利政策の限界というものも確かに考えなくてはならぬと思います。大蔵大臣としてどういうお考えですか。
  171. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この前も触れておきましたように、日本銀行の公定割引歩合が一般銀行の貸付歩合に対して低いということは、どこの国にも、いずれの世にもないと思う。私は金利の引上げということを公定歩合の引上げということにとれば、大いに上げるべきだ、しかし一般貸付金利を引上げるということにはあまり賛成はいたしたくない。ところで公定歩合の引上げも、これも金融界に及ぼす影響が大きいので、公定歩合の引上げよりも、高率適用のやり方について考える点もありましよう。しかし将来の問題といたしましては、ざつと五年先十年先のことを考えますと、今の公定歩合が市中金利の割引歩合よりも著しく低いということはよいことではない、改むべきことである、改むべきことを徐々に情勢をながめながらやらなければならぬ問題だと思います。
  172. 井出一太郎

    ○井出委員 金利の問題に関連しまして、郵便貯金の利子の引上げ、そういうふうな声も出ておりますが、これは郵政省との関連もございましよう。これに関してはどうお考えになつておりますか、あるいは簡易保険の限度の拡大というようなことも同様に要望されますが、この点を伺いたい。
  173. 池田勇人

    ○池田国務大臣 郵便貯金の利子の引上げにつきましては、私はたびたび議会で言つて関係方面と折衝しておつたのでありますが、最近まで聞きませんでした。実は今聞いたところでございますが、貯蓄組合の免税限度は十万円でオーケーが出ました。ただいま出ました。郵便貯金の分も十万円に相なるわけでございます。今の三万円が十万円に相なる、金利の点につきましては、今聞き漏らしたのですが、私は上げて行くべきだと思います。簡易保險の限度の引上げは、五万円を今八万円というので、法案国会に出して御審議を願つておる状態であります。
  174. 井出一太郎

    ○井出委員 それに関連しまして、簡易保険並びに郵便年金の吸収した資金の中で、ある限度のものを地方へまかせまして、今までは郵政局関係から郵便局あたりがこれに関与をしておつたと思いますが、地方の資金を地方へ流す、こういう建前でおりましたものが、戦後大蔵省でこれを一括して運用せられるように相なつたわけであります。これに関しては、国会でも幾度か決議案を可決して、その運用が郵政省の面においてもでき得るように、こういうふうな要望が、現在においてもなお強いようでありますが、これはどうお考えになつておりましようか。
  175. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは衆議院、参議院、両院で決議のあつたことでございまして、その際にも答えておきましたが、私は理論的には疑問の点がございますけれども、実際問題として、国会がこういうふうに決議せられたならば、その線に沿つて処理をして行くべきじやないかと考えております。
  176. 井出一太郎

    ○井出委員 ただいまの御言明は、地方の要望にこたえる意味において、非常にけつこうだと思います。  貯蓄の奨励に対して、大蔵省は非常な御努力を傾注されておる、これは当然そうあらねばならぬのでございますが、本年度の予算を見ますと、銀行局の会計の中に、貯蓄奨励報償費であるとか、あるいは貯蓄奨励旅費、貯蓄宣伝費、貯蓄奨励会議費、貯蓄増強調査委託費等々、何項目かにわたつて非常に厖大なる貯蓄奨励の費目が計上せられておるようであります。しかもこれらは、本年度はほとんど顏を見せなかつたものが、二十七年度において突如として出ておる。このトータルはまだいたしてみませんが、おそらく相当の額に相なるようでございます。何かちよつと、前年に比べて非常に大きい額でありますから、奇異の感を覚えるのでありますが、これはいかような費目に相なつておりましようか。
  177. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話通り、貯蓄増強のために、特に今年は大蔵省所管の銀行局の部類に、相当な金額を計上いたしたのであります。これは予算編成方針の閣議決定の場合におきましても、貯蓄の増強ということを、非常に強くやつておりますので、政府といたしましては、この程度金額を計上することを適当と認めまして出したのであります。御承知通りこの三年くらい前までは、数千万円、実は見込んでおつたのであります。国会の方にもお願いいたしまして、各議員方々にも御協力を願つたりしてやつてつたのであります。これを一昨年から、経費の節約と申しますか、やむなく削つてつたのでありますが、今年の政府の施策の最も重要なものでございますので、特に計上いたしまして、貯蓄増強宣伝をやりたいと、こう考えております。
  178. 井出一太郎

    ○井出委員 この費目について、私はさようには信じませんけれども、巷間においては何か大蔵省の機密費的なにおいがないでもない、そんなふうな声もあるようでございまして、これ以上は申し上げませんけれども、どうかさようなことのないように、この費目が、もとよりそのねらいとする、貯蓄の増強に、大きなてこの役をなすようにということを、特に要望をいたすものでございます。  この間小峯委員が、金融の問題でいろいろ質問されて、若干重複する部分もあるかと思いますが、今後貿易が正常化し、ここで独立第一年とも相なりますれば、どうしてもかつての横浜正金銀行とでもいつたような為替銀行ができなければならぬと思うのでございます。この専門の外国為替銀行をつくろうとする御意思があるか、その育成方法はどうかという点を伺いたいと思います。
  179. 池田勇人

    ○池田国務大臣 貯蓄奨励費を機密費というふうに誤解されてはいけないので、これは、はつきり申し上げておきますが、私はよほどの注意をいたしまして、使用する考えでございます。もう一つ誤解があつてはいけないのは、先ほどの質問で、簡易保険あるいは厚生年金を地方の方で使わしてはどうかと、こういうお話でございます。これは誤解があるといけませんが、私の考えるのは、郵政省の方でおやりになるので、地方の郵便局とか、あるいは郵政局がおやりになるということは、これは国会の決議にもありませんし、実際問題として、金融が二途でなしに、ばらばらになつてしまううということで、そういうことについての賛成はいたしていないのであります。よく陳情の場合にそういうふうに考えられる向きがありますので、誤解のないようにしておきたいと思います。  次に外国為替銀行の問題でございますが、私は昔のような、横浜正金銀行というふうな特殊の銀行をこしらえて、それと日本銀行とをつなぎ合すというふうなことは考えておりません。やはり民間の銀行で、数行、あるいは十行になつてもよろしいが、力のあるところがどんどんやつてもらいたい。そういうことを助成するために、ある程度ドル外貨資金を今の為替銀行に持つてもらうように導いて行きたい、こう考えております。
  180. 井出一太郎

    ○井出委員 先ほどの簡易保険あるいは厚生年金の利用は郵政省でやられる、もちろんそうでございましようが、その内容としては、従来のようにたとえば地方の公共施設、学校とか水道とか、そういうふうなものに、それらの資金地方団体等が期待できるのだと、この考えてよろしいかどうか。
  181. 池田勇人

    ○池田国務大臣 さようでございます。従いまして、資金によりまして、たとえば郵政省でやるということになりますれば、水道をこしらえる場合におきまして、実際は郵政省、大蔵省、地方自治体、こういうふうになつております。
  182. 井出一太郎

    ○井出委員 現在の銀行のあり方でありますが、先ほど来オーバー・ローンという問題も出ておりますけれども、以前の銀行というものは、頭取みずから陣頭に立つて行員を督励して資金の増強に努力をしたものだとわれわれは記憶をするのであります。ところが現在の状況はさあというときには、日銀にかけ込みさえすれば、何とかなるという、非常に安易な風潮になずんでおつて、経営のあり方に相当問題があろうと思う。しかも銀行そのものが、行員の給与なんかを見ますと、他の企業に飛び離れて優遇を受けておる。こういうふうな点などからいたしましても、現在の銀行のあり方は、よほど引締めて行かなければならぬと思うのでございます。それで今日あらゆる企業家が、銀行の平行員に頭を下げなければ事業をやつて行けないという現象は、これはまさに不健全なものでございまして、これが打開の道をやはり監督官庁である大蔵省としては、十分にお考えを願わなければいかぬのですが、その中でも、たとえば中央の六大銀行といわれるようなものと地方銀行と比べてみますと、まだ地方の方が非常に健全じやないかと考えるのであります。しかしそうかというて、地方銀行は一県一行というようなかつての金融統制がそのまま持続されておりまして、日銀のローマ法王はいざしらず、地方銀行自体がそれぞれ非常な権力を今日持つておるような状況であります。これに対して新しい地方銀行というようなもの、たとえば大阪とか埼玉とか、一、二例は聞いておりますが、現在はそういうものがどれくらいできつつあるか。これに対しては大蔵省は、むしろそういうふうな銀行をこしらえることによつて、お互いにサービス競争をさせるというような意図のもとから、その設立を奨励し、援助して行くというような御方針に出ていらつしやるかどうか、これを承りたいと思います。
  183. 池田勇人

    ○池田国務大臣 銀行の経営につきましては、お話のような点がなきにしもあらずでございまして、大蔵大臣としても注意はいたしておるのでございます。しかし今の場合、大蔵大臣の銀行に対する監督権というものがはつきりいたしておりません。何でもかでもできるようでございますが、また何もかにもできないというような状況でございます。そこで御指摘になりました給与の問題ですが、これは銀行局長からの通牒によりまして、限度を置きまして守らしており、向うの組合、全銀連の要求通りにはさせないように、大蔵省で監督をいたしております。  次に新銀行の設立でございますが、ただいま私の記憶いたしておりますのは、北海道に一行、岩手に一行、それから東京に最近一行できました。ほとんど眠つてつたような銀行が活動を始めたのと加えて二行あります。大阪に一行、また大阪府に一行、私の記憶に残つておるのはそれくらいでございますが、最近内認可を与えましたのは千葉、茨城あるいは埼玉。それから申請の出て来ておるのは十行ばかりごしざいます。考え方といたしましては、できるだけ堅実な銀行がたくさんできることを——たくさんといつても、昔のように千四、五百もあつては困りますが、一県に一行でなしに、二行ぐらいできることを私は望んでおるのであります。しかしそれはあくまで見通しのついた、りつぱな銀行となることが予想できるようなものでないとよくありませんので、増設は考えておりますが、できるだけ精選しよう、こういう方針で行つております。
  184. 井出一太郎

    ○井出委員 この新銀行でありますが、従来の基盤のありまする相手方の銀行に対して、経営を維持して行くというのには、容易ならざる問題だと思います。おそらく行員一人当り預金が何百万円というのが今日の銀行経営の大体の目安になるというようなことも聞いておりますので、せつかくそういう意図のもとに立てられた銀行が、競争にたえられないで、むなしく店を締めなければならぬというような事態が起りましては、ゆゆしい問題でありますから、ぜひそういう点御注意になつて、しかるべき援助をお願いをしたい、こう考えます。  この間来オーバー・ローンの問題が出て、石橋構想というものに対する大蔵大臣の見解を承りました。ああいうふうなドラスティックなやり方でなくして、大蔵省も日銀も、当該銀行ないしは貸出先、これらが歩み寄つた上において、できるだけの協調をしつつ、日本経済自体を健全化する、その方向においてオーバー・ローンの問題は気長に解決をしなければならぬ、こういう御所論のようであつたと思います。これは石橋さんの御意見のようにまあ日銀の貸出金を政府が肩がわりをするということであるならば、やはり大してかわりがないという感じもいたすのでありますが、また別にたとえばせんだつての新聞に外為委員長の木内氏が、いわゆる木内構想というようなものを発表せられております。これは借入金の一半を長期資金とでもいいますか、そういうものと、しからざる運転資金とにわけて、そうして片一方の長期にわたるものを、特融というような形で年賦返済のような方法によつて解決をして行きたいということのようであります。これは大蔵大臣と石橋さんとの中間を行く方法でもあるようでありますが、この木内構想なるものに対してはどう考えておりますか。
  185. 池田勇人

    ○池田国務大臣 新聞に出ておつたようでありますが、私は見ませんでした。石橋さんのお話の、オーバー・ローン解決策として、政府が国債を発行し、ある程度のものを肩がわりをするということにつきましては、私はにわかに賛成できない。しかしもう一つの社債あるいは株式を持つという石橋さんの説は同感であります。それは前からそういう考え方で行つております。
  186. 井出一太郎

    ○井出委員 せんだつての銀行局長の説明の中にもあつたように思いますが、金融機関の機能を区分して、それぞれ筋を通して行こうという考え方がおありのようであります。たとえば従来債券発行銀行として、長期資金を受持つてつた勧銀や興銀のようなものが、今日はまつたく普通銀行とかわりがない。こういうふうな混乱が金融界全体の上に何かマイナスを来しておるのではないか。こういうことから、ひとつ銀行の機能の区分をいたして、たとえば政府の開発銀行、輸出銀行、それからこの間また新しく投資銀行というようなものもあなたの構想の中から飛び出して来ましたが、こういうものを一本化して行く、一本化すということは合併するということではありませんで、これはこれで処理する。それからいわゆる特銀といわれた勧銀や興銀ないしは北海道拓殖銀行、こういうようなものを一本に合せて、これは商工中金、農林中金なんかと合せた発券銀行というものに筋を通して行く。従つてつて問題になつた東京銀行の金融債というようなことも、そういう筋の通らない混乱から来たのでございまして、しからざるものは普通銀行の形に持つて行く。こういうふうな区分をしなければならぬということに対しては、大臣はどうお考えになりますか。
  187. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほども触れましたが、終戦後、過去数十年間にわたつて行われておりました日本の銀行制度を御破算にしてしまつて、そうしてあと何もなし得ない、しようと言つてもなかなかできなかつた、これを私申したのであります。その後関係方面の方も徐々にわれわれの言うことを認めてくれまして、輸出銀行、開発銀行ができたのであります。私の考えといたしましては、やはり債券発行銀行と普通の商業銀行とはわけて行くのがほんとうじやないか、オーバー・ローン解決策の一つでもあるのじやないか。普通の銀行は構成的には全部債券が発行できるような構成になつてつて、それを指導でどうこう言うのは無理で、法律の建前としてはできることになつておる。こういうふうなことを改めて、すつきりした筋の通つた金融制度にいたしたいという気持であるのであります。従いましてそれは一昨年の暮れから輸出銀行の出発、開発銀行の出発、こういうふうにわれわれの言うことは徐々に通つて来ておるのであります。私は過去五、六年間金融制度につきましては無為無策のようなかつこう——これはまあむろん私にも責任がありますけれども、なかなかできなかつた。これを改めて行きたい。こういう問題につきましては、将来のいわゆる経済機構その他に重大な影響がありますので、皆さん方、関係専門家の意見を今聞きつつあるところであります。筋といたしましてはやはり発券銀行と商業銀行とにわけて行くのがほんとうじやないかと思います。
  188. 井出一太郎

    ○井出委員 大蔵大臣は金融の問題に関してはまあ従来思うように行かなかつた、ある方面に対してむしろ一種の憤りさえ持つておるというふうに受取つたのでありますが、今言われる金融の機能の区分をして筋を通すということは、いわゆる銀行法の改正といいましようか、あるいは新金融法とでもいうようなものが従来ちらほらと隠見したのでありますが、何かそういうものをきわめて近い機会にお考えになつておられますか。
  189. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいま臨時金融制度懇談会の方に一応事務当局案といたしまして、銀行法の改正、それから金利調整といいますか、これは今出しておるかどうかわかりませんが、そういうことも将来御審議をお願いしよう。それから投資銀行、この分も——毎日開いておるわけではございませんが、この次の金融制度懇談会の方に多分御審議願うような段取りになるのではないかと思います。
  190. 井出一太郎

    ○井出委員 日銀の政策委員会ですが、これがたとえばその中の委員の一人である宮島委員などは、最近まあこの委員会が意味をなさぬといいますか、ポリシイ・ボードにあいそうを盡かして、あまり出ていられぬというようなことも聞いております。また日銀の総裁である一万田氏が議長をするというようなことも機構の上から少しおかしいと思うのですが、これは今日どうなんですか。十分機能を果しておるのですか。また大蔵大臣はこういう機構をどのようにお考えになつておられますか。
  191. 池田勇人

    ○池田国務大臣 日本銀行のポリシイ・ボードの問題でございますが、これはいろいろ議論のあるところでございます。これは新たに設けた制度でありまして、なかなか制度自体の問題、人の問題、いろいろな点がございましよう。こういう点につきましても、私は虚心坦懐にひとつ金融懇談会で御審議願いたい、こういう気持を持つておるのであります。銀行法につきましても、あるいは今の金利調整法から来る金利の問題、あるいは日本銀行の政策委員会等の問題につきましても、私が今どうこうという意見は述べない方がいいのじやないか。私は銀行法の改正につきましても、実はあまり詳しく知つておりませんが、いろいろな点は私自身として考えておりますから、まず皆さんの御意見を聞いてからということにいたしたいと思います。
  192. 井出一太郎

    ○井出委員 大蔵大臣は金融のことはあまり詳しく知らない、これは陰の声もございましたように、非常に率直に言われたようでありますが、あと一、二問にしてこれは切上げたいと思います。  本予算を見ますると、本年度とは違つて——本年度は約三百億に上る資金運用部の資金が金融債を引受けておつたのが二十六年度の状況でございます。この予算によりますると、それがゼロになつておる。ということは、金融債の引受をほかの市場へ持つて行くとなりますれば、その面から非常に狭いものになつて参るのであつて、これは中小企業や何かに対しては相当大きな影響を与えばせぬかという感じを持ちますが、この点はいかがでありますか。
  193. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この問題は見返り資金の使い方と関連するのでございまして、昭和二十六年度におきましても、預金部の金融債の引受は見返り資金の万と兼ね合いで考えております。四百億当初予定しておりましたが、多分見返り資金から百億余り出ますので、実際の金融債の発行は二百八十五億になつたと記憶いたします。来年度におきましては見返り資金は御承知通り元本と利子の回収で百三十五億しかございません。しかるところ均衡財政の建前から申しますと、見返り資金は百三十五億しか出せないのを六百億円出した。それだけ資金散布超過になります。そこでその差額の四百六十五億というものは資金運用部で金を押えなければならぬ。しかも見返り資金は今五百億足らずの国債を持つておりますが、その国債を売つて金を出すのでありますから、その引受どころを預金部にしたわけであります。従つて四百六十五億円のうち百六十五億円は政府資金を預金部で出すことにいたしまして、差額の三百億円はそれだけ預金部を押えなければならぬ。これが均衡財政のつらいところであります。そこで私の考えといたしましては、先ほども申しましたように、極力貯蓄を増加いたす。予定以上の郵便貯金が入り、あるいは簡易保険、厚生年金が入りますれば、その限度において金融債を引受けよう。こういうことでございます。また金融的に申しますと、日本銀行の貸出しは今二千三百億円余りでございます。ユーザンスの方が千三百七十億円ばかりでございます。これをこの貸出しに合せますと三千五百億円余りでございます。日本銀行の貸出しが減つて来れば、それだけ引揚げ超過になりますから、そういうことになりますれば預金部の方の金を出して金融債を引受ける。こういうわけでございます一私は三百億あるいはそれ以上出したいと思うのでありますが、これは均衡財政として一応均衡をとる。その以上をこれから貯蓄の増強によりまして金融債引受資金をかせごう、こういうわけでございます。
  194. 井出一太郎

    ○井出委員 予算面には数字が出ておらないが、今後の貯蓄増強でプールの中に水がたまればそこから十分出して行きたい。こういうふうに了承いたしました。それから今度の遺家族援護について八百八十三億という公債をお出しになる。これはちようど明治初年の秩禄公債に似たような意味も私はあると思うのでありますが、これについてはせんだつて来の質問に答えられて、この融通性をどうするかというような問題については、まだ必ずしも明確にきまつておらない、こういう御答弁であつたと思います。今日わが国の国庫が負うておる公債、これは内債、外債合せて三千億内外だと思いますが、かつての公債が財政に対して非常に電圧を加えておつた時代とは違つて、インフレが公債の問題をすでに解決してしまつた、こういう事態であろうかと思いますが、しかしここで八百八十何億というものが新たに出されますることは、現に出されておる公債に対して、これは影響なしにはおられないと思うのであります。しからばこの影響を大蔵当局はどの程度考えておられるか。これはおそらく融通性を持たせないといつても、実際はこれは恩給証書なんかと同じように、ある程度の移動もあるだろうし、そこには公債価額というようなものをむしろ低める一つのフアクターになるのではないか、こういう懸念がございますが、これについて伺いたい。
  195. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいま日本の内債、外債合せますと四千数百億になる見込みであります。借入金も入れますと。各国に比べますと、よほど少いので、喜ばしい現象であると思いますが、この国債に対しまして今度八百八十三億円出す交付公債がいかに影響があるかということにつきまして、これは国債の市価というものが今実はありませんので、どういう影響があるかという御質問に対しまして、私は大した影響はない。それはどういう方面の影響があるかという御質問として申し上げた方がいいと思うのでありますが、金利につきましては、おおむね四分の金利が一番多い、五分利は少い。今度の発行は、大体五分五厘としており、しかも限度として十年ということになつておりますが、大した影響はないのじやないか。しかも私はただいまのところ公債不発行主義で行つておりますものですから、ずつと先のことは申し上げられませんが、そういうことで行つておりますので、大した影響はないという結論でございます。
  196. 井出一太郎

    ○井出委員 公債の話が出たついでに伺つておきたいのですが、現在出しておる国債は、大まかに区分をしますと、戦争前の国債、たとえば第一回四分利、第二回四分利というようなもの、その他ございましたろうが、こういうものと、それから戦争中に出されたものと、それから戦争後に出されたもの、こう区分をしてよろしいかと思いますが、この間における貨幣価値の非常に著しい変動が背景としてあるわけでありまして、しかるにこれらの公債は一緒くたにその価値の差というものはないというふうに常識としては考えられるのです。この戰争前の国債に対しては、償還の際あたりに何か優遇の措置ができるぬのかどうか、この点はいかがでしようか。
  197. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この問題につきましては私は考えたことはございません。そういう事実は認めますが、今まで一度も考えたことはございません。私は考えもなくても済む問題ではないかと考えます。
  198. 井出一太郎

    ○井出委員 どうもそれは少し冷酷無情な御答弁のように思います。それはそれとして、まだ私、たとえば外貨の問題とか、あるいは賠償その他貿易、いろいろ大蔵大臣に伺いたいのですが、これはまた日を改めまして、きようは国内金融という程度にとどめておきたいのでして、最後に一点、いわゆる二月危機、三月危機というふうなかけ声がございまして、それは年末通貨がたしか前年に比べて八百億ぐらいふえまして、これによつて年末の梗塞した金融を救済した。けれども、そこで書かれた、あるいは取引された手形というようなものは二月、三月のころに期限が来る。そこらへ行つて何か手形を決済する際の危機というようなものが予想されはしないか。すでに不渡り手形というようなものは漸次ふえて参つておりまして、私はこの不渡り手形のふえて参つた経過について一実は事務当局からも何か資料なり数字なりをお示し願いたいと思つておりますが、こういうふうな面からいわゆる危機というものが予想をせられて、これをどう乗り切られようとするか、その危機に対する大蔵大臣の認識と、もしこれを重大なりと受取るならば、これに対処する対策を承りたいのであります。
  199. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話のような点もあるやに聞いております。すなわち年末の手形が二月に期限が来る。それをどうするかという問題、これは一昨年もこういう問題があつたのでございます。私は大体切り抜けられると思います。ただ昨年の上期におきまして、非常に輸入が盛んで、ある程度まで値下りがした。これが昨年の七、八月ごろからずつとしわが寄つて参りまして、年末におきましても、商社その他の問題につきましては、かなり適切な措置をとつて来ております。全部についてはとれなかつたのであります。その残りがまだ残つております。それで、これにつきましては、日本銀行を督励し、各関係銀行で個々の問題につきまして十分協議をし、適当な措置をとつておると考えております。そういうことを私は要求いたしております、大蔵大臣で今すぐどうこうという措置をとる、こういうふうなことは考えておりません。大体行くのじやないか。また税のことも、従来は一—三月にずつと税が固まつて入るのでございますが、本年におきましては、そう固まつて入ることはございません。四分の一程度を見込んでおります。ただ今の申告納税の調査の状況はかなり良好でありますので、これが一緒に入つて参りますと、また金詰まり等を激化させますので、徴税上手心を加えるように指示いたしておるのであります。
  200. 小峯柳多

    小峯委員長代理 本日の会議はこの程度にとどめ、明七日は午前十時から委員会を開会して質疑を継続することにいたします。  これにて散会いたします。     午後四時四十九分散会