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1952-02-05 第13回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月五日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林山榮吉君    理事 小峯 柳多君 理事 苫米地英俊君    理事 西村 久之君 理事 井出一太郎君    理事 川島 金次君       淺利 三朗君    天野 公義君       遠藤 三郎君    小川原政信君       角田 幸吉君    甲木  保君       栗山長次郎君    志田 義信君       鈴木 正文君    高橋  等君       永井 要造君    中村  清君       宮幡  靖君    川崎 秀二君       藤田 義光君    岡  良一君       林  百郎君    横田甚太郎君       世耕 弘一君    石野 久男君       井手 光治君    江崎 真澄君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       川端 佳夫君    北澤 直吉君       島村 一郎君    庄司 一郎君       田口長治郎君    玉置  實君       中村 幸八君    南  好雄君       中曽根康弘君    早川  崇君       西村 榮一君    風早八十二君       稻村 順三君    成田 知巳君       小林  進君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         運 輸 大 臣 村上 義一君         厚 生 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月五日  委員青木正君、首藤新八君、高橋等君、田中啓  一君、藤枝泉介君及び林百郎君辞任につき、そ  の補欠として遠藤三郎君、井手光治君、鈴木正  文君、小坂善太郎君、江花靜君及び山口武秀君  が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算  昭和二十七年度特別会計予算  昭和二十七年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 会議を開きます。  本予算の各案を議題に供します。昨日に引続きまして、質疑を継続いたします。高橋等君。
  3. 高橋等

    高橋(等)委員 私は政府当局に対しまして、主として遺家族補償の問題につきまして、具体的な点にわたつて質問をいたしたいと存じます。  昨日来いろいろと本委員会で、本問題についての質疑がとりかわされておるのであります。早川さんの論旨に対しましては、いろいろと私は賛成し得ない点もあるのでありまするが、本問題につきまして非常な真摯な態度で論旨を展開されましたことに対しましては、深く敬意を表するのであります。それとともに、政府当局におきましても、本問題について、十分なる理解と関心をお持ちになつておられることをお示しになりましたことに対しましても、私は満足をいたしておるのであります。ただいまから自由党の多数の方々意見を総合し、また全国数百万に上ります遺族人たちが、政府質問をし、また政府に希望いたしたい点は、こういう点であろうということを考えながら、具体的な問題について質問を試みたいと存じます。  まず何よりも、昨日論議になりましたポ政令六十八号の取扱いの問題は、本遺族補償問題の前提條件をなすものでありまして、もしこの政令が、独立回復後におきまして自然に消滅をするということになりますると、何もこうした援護的補償予算を今ここで組むには及ばないので、当然遺族扶助料の復活という線が出るのであります。その点につきまして、政府は本六八政令をどういうようにお取扱いになるのか、どういううお考えであるのかということを、まずもう一度御質問いたしておきたいと存じます。
  4. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お答えを申し上げます。昨日も申し上げましたごとく、講和後になりまして、ほうつておきますると、そういうことになるかも存じませんので、従つて、ただいま提案されておりますポ勅に関する法律が審議されつつあるわけでありまして、このポ勅に関する法律によつて独立後におきましても、一定期間ポ勅に基くところの命令は効力を有することになると思います。従いまして、その間は今日までと同じように、恩給は停止の状態に置かれることと思います。  そこで、それではその一定期間が過ぎたらどうなるかという問題になりますが、その一定期間中に特別の法律的な処置をまた講じなければならないかと思つておりまして、この問題につきましては目下検討中でございます。そこでそういたしておりますと、それではいつまでたつて遺家族の問題はうやむやになるおそれがございますので、私どもとしては独立したあかつきにおいては、少くとも遺家族の問題だけは何らかの形においてこれを取上げざるを得ないということで、今回の予算的措置を講じまして、暫定的に一時金もしくは年金措置を講じたわけであります。
  5. 高橋等

    高橋(等)委員 次に、本問題につきましては、第五国会及び第十国会におきまして、衆議院はそれぞれ決議案を可決をいたしまして、その早急なる解決政府要望いたしております。また昨年の十一月の終りごろ、衆議院厚生委員会におきまして、衆議院厚生委員会内における遺家族関係の小委員会、これが三十数回の会議を重ねまして、その結果に基きまして、政府に対する要望書決議として送付をいたしておるのであります。これらの決議案に一貫して流れております根本的な考え方は、遺家族補償国家が当然なすべきことである。そうして人道問題として解決をされねばならない問題であつて、いろいろな事情解決は遅れておるが、その遅れておること自体は正しいことではないのだという考え方をいたしております。このたび国家独立をいたしまして、この問題の解決の曙光を見るに至りましたことは、まことにわれわれとしまして、長年の間気がかりになつておりました問題が、解決の第一歩を踏み出すことでありまして、非常に喜びにたえませんし、また全国遺族方々も、明るい気持をこの点では抱いておるのであります。そしてこの問題が国家独立前提條件一つといたしまして、現下における最も重大な国策であることは申すまでもないのであります。この問題を取扱いまする上におきまして、先ほど申しました決議案根本思想は、あくまでも国家補償という観念にのつとらねばならないとこういうでございます。その点に対しまして政府はいかなる考えを持つておられるかという点を、昨日と重複いたしますか、もう一度伺つておきたいと思います。もつとも、政府の方で大蔵大臣その他、援護という言葉をよくお使いになつておられまするが、これは補償と矛盾する言葉ではないのであります。この国家補償実行に移しまする場合に、ある場合には援護と呼ぶを適当とするようないろいろな方法考えられるのであります。現に遺族厚生連盟からわれわれに寄せられました書簡の中にも、根本補償を確立してもらいたいというのでありまするが、やはり援護という言葉を随所に使つておるのであります。しかし、これはあくまでも国家補償という線を、はつきりとまず問題の解決の上に打立てておきませんと、将来この問題を扱つて行きます上におきまして、いろいろそこに疑点、意見食い違いというようなことが生ずるおそれがあるのであります。この点に対しまして、大臣の御意見を伺つておきたいと思います。
  6. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ただいまお話になりましたごとく、遺家族の問題は、国家に生命をささげられましたことでありますから、その遺家族に対する措置としては、当然国家として何らかの措置を講ずべきものであると思います。言葉は、これを国家補償と申しまするか、何という言葉を使つたらいいかは別といたしまして、国家として当然なすべきものであると私ども考えております。ただ昨日も申し上げましたごとく、これを根本的にその考えで打立てまするにつきましては、他のいろいろな軍人恩給その他との関係もございまして時間をとりますから、さしあたり援護ということで出発をしております。しかし、ただいま高橋君からもお話がありましたごとく、援護という言葉を使つておりましても、これはやはり遺家族に対する国家としてなすべきことをやらなければならないというところから、出発しているわけでございます。
  7. 高橋等

    高橋(等)委員 御答弁が、どう言つていいか、非常にあいまいであるが、ただいまの来年度の予算的措置といいますか、あるいはお出しになる法律の建前からいつて国家補償という線をはつきりとおつしやれないために、今のようなお言葉があるのではないかと思うのでありますが、根本的考え方国家補償がなければならないと私は考えるのであります。もう一度この点をはつきりお答えを願つておきたいと思います。
  8. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は決して国家補償という言葉を使うことを差控えるわけじやございませんけれども、往々にして、言葉観念からいろいろな食い違いを生じましては、私申訳ないと思つております。昨日法務総裁からも申されましたごとく、国家補償という名前を使つて行くには、実は予算的措置としては不十分である。従つて、さしあたり援護ということで精神的に出発して行く、こう言われた通りでございまして、国家補償と申し上げてもいいかも存じませんが、それを堂々と申し上げるほど実は十分でないものですから、さしあたり援護という言葉を使つておるのであります
  9. 高橋等

    高橋(等)委員 次に、遺族問題を解決いたしまするには、もちろん根本的解決ということはむずかしい、英霊が生きて帰らない限りは、遺族さん方も、十分な解決がされたものとはお考えにならないだろうと思うのであります。それはしかたがないことでありますが、これを解決いたしまするには物質方面のみでなしに、ただいまも厚生大臣お話になりましたように、精神面に十分な力を入れて、同じものを出すにいたしましても、ほんとうに心のこもつたものを出す。またいろいろな遺族さん方の補償援護をなすにつきましても、精神面の点につきまして十分な御考慮をお願いいたさねばならないのであります。とりわけ英霊を国がおまつりをする、英霊に対して国民が尊敬をし、また遺族さん方に対しまして、ほんとうにお気の毒であるということを、行いをもつて国民が接するというようにならなければいけないことであろうと私は考えます。つきましては、合同慰霊祭について、政府の方で一億円の予算を計上いたされておりますことは、まことに当然とは申しながら、機宜の措置があります。私がここで提唱いたしたいことは、日本独立をいたしましたその日に、でき得れば全国一齊の慰霊祭を行うとか、あるいはまた慰霊祭全国一齊に行うのに間に合わないようなことがございますれば、全国民一興に、この独立の日を期して英霊に黙祷をささげ、わが国の独立を報告をする、在天の霊を慰めるということを、ぜひとも実行していただきたい。そして毎年どうせ独立の日を国民は記念するのでありますから、毎年この行事をこの日には行うことを、ぜひ実行じていただきたいと考えます。独立も相当間近に迫つておるように考えまするので、今から政府の方でこうした点について十分な御配慮と御準備をいただきたいと思うのであります。この点厚生大臣の御答辯を承りたいと思います。
  10. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ただいまの高橋さんの御意見は、ごもつともと思います。私ども今回とりました措置も、予算的措置としては不十分だと思いますが、まず何といいましても、ここ七年間、英霊に対して何らなすべきことのできなかつたことを遺憾に存じまして、今回の予算でも、まず英霊をおまつりをしようということで、一億円の予算を計上したわけであります。この英霊を慰めるの措置は、なお具体的にどういうふうにやつて行きまするか、十分検討したいと存じます。ただいま高橋さんのお説なんかも十分考慮に入れて、至急に具体的な措置を講ずるつもりでおります。
  11. 高橋等

    高橋(等)委員 次に、最近新聞紙上あるいは雑誌等で、南海の諸島にいまだに引取手がなく散在しておりまする遺骨に対する報道が、ひんぴんとして行われております。私は先般の新聞紙におきまして、硫黄島における遺骨が雨ざらしになつておりまするその状況を拝見いたしまして、まことに胸が痛む思いがいたしました。全国遺族人々はあの写真を見てどういう感じに打たれたであろうか、おそらく私どもの想像以上のものであつたろうと考えるのであります。一日も早くこれらの遺骨引取りまして、そうして丁重にこれを葬るということは、どうしても急いでやらねばないことであると考えます。政府としまして、従来この遺骨引取りに対しまして、いかなる措置をおとりになつておるか、また今後この問題についていかなる方法を講じて、先ほど申しましたように遺骨を一日も早く内地へ持ち帰りまして、これを丁重に葬つて英霊を慰める、遺族を安心さすということをお考えになつておられまするか、この点厚生大臣にお伺いをいたしたいのであります。
  12. 吉武恵市

    吉武国務大臣 南方の諸島に残されました遺骨に対しましては、今日まで何らの処置のできなかつたことを、はなはだ遺憾に存じておるわけでございます。ようやく関係方面の了解を得まして、先般復員局の職員を硫黄島に派遣いたしまして、英霊を弔うと同時に、その調査を進めておるわけでございまして、近く帰つて参りましたならば、今高橋さんのお話がございましたように、これらの遺骨取扱いについては、十分考慮を描いたいと思つております。
  13. 高橋等

    高橋(等)委員 この遺骨引取り、埋葬という問題は、国民感情の上から行きましても、遺族さん方の立場から行きましても、非常に大切なことであります。ぜひとも早急にこの解決政府がいたされるよう措置されることを強く要望いたします。  次は、靖国神社の問題でありますが、私の手元へ全国遺族さん方から参りまする手紙等によりますと、一体自分らのむすこは、夫は、靖国神社にまつつてあるのだろうかどうだろうか、実際まつつたという知らせも何にも来ない。靖国神社へよく団体で参るが、何だかここにはまつつてないのじやないかというような気がするが、その点はどうなつておるであろうかということを、よく聞き合わされるのであります。政府はこの際、この問題につきまして、どういうような扱いになつておるかということを、詳しく国民の前にお知らせをお願いいたしたいと存ずるのであります。
  14. 吉武恵市

    吉武国務大臣 靖国神社の合祀につきましては、合祀すべきものは、ほとんど合祀されたように聞いております。ただ遺族の方に通知が遅れておるというふうに存じておるのであります。
  15. 高橋等

    高橋(等)委員 遺族に対しまして、どうして通知が遅れておりまするか。承れば、その通知を正式のもので出すだけでも、一億くらいの金がかかるということを、神社側言つているそうであります。これは金銭的な問題だけでなしに、何か遅れている原因があろうかと存じますので、至急お調べくださいまして、一日も早くこれがおまつりしてあるということを、遺族方々に御通知をいただきたい。これは神社の方とよくお話合いになつて御連絡願いたいと思います。  次に、弔慰金と申しますか、臨時年金の問題につきまして、お伺いをいたしたいのであります。遺族厚生連盟本部が、従来九原則と称しまして、こういうことをしてもらいたいという要求決議いたしております。その中に遺族に対しましては月四千円の年金と、そして均衡年金とでもいう家族手当のようなものを、老人及び配偶者、未成年の子に月千円ずつ出してもらいたいという要求が出ておるのであります。この要求根拠は、昨日もここでお話になつてつたかと思うのでありますが、一つ根拠を持つた年金四千円は筋なんであります。しかし現在の国の財政状況を勘案いたしまして、この遺族会要求全部が約千二百億円にも達しますので、こうしたものが政府としまして出しにくい事情も昨日よく承つたのであります。しかし、何といたしましても、いま少し予算増額をいたされまして、遺族補償をできるだけ手厚くするということについて、政府はお考え直しをなさる意思があるかどうか、その点を大蔵大臣に承りたいのであります。
  16. 吉武恵市

    吉武国務大臣 昨日も申しましたごとく、今回の予算措置は、われわれとしても、決して十分ではないと思つておるのでありますが、しかし今日の日本の国の財政状態からいたしまして、まことにやむを得ないと思いますので、将来国力の充実に伴いまして、ただいまお話になりましたごとく、内容の充実改善に努めたいと思つております。
  17. 高橋等

    高橋(等)委員 予算増額をすることは、今の国情でできないということをお話になつておりますが、それでは、この金額少額であるといたしましても、それを支給する方法につきましては、遺族多数の要望に沿うようにいたすことが必要であろうかと思うのであります。新聞紙が発表いたしておりまする政府案等を見ますると、どうも生活扶助的な要素が多くあつて一般誤解を招きやすいようにも感じられます。先月二十日に、日本遺族厚生連盟全国大会を開催いたしております。その大会における地方代表意見を総合してみましても、金額少額であるということと、支給方法が拙劣であるということを指摘いたしておるのであります。少額ではありまするが、遺族の方が満足する、要望に沿い得る方法支給をいたさねばならないと考えます。  そこで、弔慰金についてまずお伺いをいたしたいのでありますが、親が一人おれば幾ら、二人おれば十万円、あるいはまたおじいさん、おばあさんがおる場合は二十万円というようなわけ方自体が、弔慰金としての性格からいいましても、非常におかしいのであります。また英霊が二柱なくなつた、二柱なくなつておるのに対しましても、その場合やはり親が一人の方は五万円程度弔慰金ということでは、はなはだふに落ちないのであります。弔慰金をお出しになる場合におきましては、これを英霊一柱に均一の額をお出しになることが適当であろうと思いますが、政府はその点はどういうふうにお考えになつておられますか、伺わしていただきたいと思います。
  18. 吉武恵市

    吉武国務大臣 予算の範囲におきまして、十分検討をいたしたいと思つております。
  19. 高橋等

    高橋(等)委員 十分御検討をお願いいたします。  次に、年金支給でありますが、これはあくまでも、政府の方の御説明も、今年暫定的に措置をしているということでありまするが、それにいたしましても、この支給が、配偶者子供だけに年金支給なさる、そうして老人に対しましては支給をしないというようなことが、もし行われるといたしますと、日本社会通念国情にも一致いたしませんし、遺族多数の要望にも沿いかねる点があるのでありまして、年金の額は少くなるといたしましても、別途弔慰金支給いたされることでありますから、広く一定年齢以上の老人にもこれを支給されることが、私は遺族多数の要望にかなうやり方であると考えるのであります。この点について、大蔵大臣の御意見を承りたい。
  20. 吉武恵市

    吉武国務大臣 年金の問題につきましては、昨日もお答えをいたしましたごとく、老人にも支給すべきであろうかと思いますが、そうしますると、実は相当の額に達しまするので、今回の予算措置といたしましては、遺族の中でも最も必要としまする未亡人の方及び遺児の方に年金支給したわけであります。これは先ほど申し上げましたごとく、将来国の財政回復をまちまして、できるだけ御希望の線に沿いたいと思つておるような次第であります。
  21. 高橋等

    高橋(等)委員 本問題につきましては、なお政府の再考を求めることといたします。  次に、遺児教育の問題でありますが、戦争未亡人方々が一番心を痛めておりまする問題は、自分らの子供教育の問題であります。この育英資金の問題につきましては、すでに約七千万円近い予算が決定いたしておるのでありまするが、これは別わくとして遺児適用なさるお考えだと思います。なお一般育英資金につきましても、もちろんこれは遺児にも適用なさることと考えますが、その点ちよつと誤解があるといけませんから、承つておきたいと思います。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 従来におきましても、育英資金支給につきましては、軍人遺族の方にもできるだけまわるようにいたしております。しかして今回遺家族方々に対しまして、こういう措置をとります場合に、特に六千八百万円を加算いたしまして、遺児教育に意を用いることにいたしておるのであります。今後におきましても、一般育英資金につきまして、できるだけ遺児の方にまわしたい。また今回特別にやりました六千八百万円も、今後できるだけふやして参りたい、こう考えております。
  23. 高橋等

    高橋(等)委員 遺児教育問題につきまして、大蔵大臣より、将来も考慮する、今も十分考慮するのだというお答えをいただきまして、この点は非常に満足いたします。  次に、生活困窮遺族取扱いについて、御質問をいたしておきたいと思います。第十国会におきまする決議案説明要旨におきましても申し述べてありますように、この遺族方々生活困窮になります原因は、いろいろあるでしようが、その主たる原因は、一家の働き手の中心を戦争でなくしたということが、生活困窮原因になつておる場合が多いのであります。そこで国家としまして、これらの遺族方々生活困窮に対しまする取扱いというものは、これは十分に手厚くお考え願わなければなりません。従つて援護程度を厚くいたしまして、実際から申しますと、一般生活保護法適用というようなことはごく僅少に、きわめてレア・ケースにとどめるというようにいたすのが、私は本筋であろうかと考えるのであります。但し、現段階におきまして、生活保護法適用いたしますことも、これは現在の措置としては当然であろうと考えますが、生活保護法適用にあたりまして、昨日も厚生大臣は、十分なる措置を講ずるというお話でございました。これはあまり深くつつ込んでお尋ねすることの方が、無理であろうかと考えるのでありますが、この保護法適用につきましては、厚生省から通牒なりその他を地方へ流していただきまして——実際末端へあなたの親心というものがなかなかうまくしみわたらないおそれがあるのであります。その点は運用上十分御考慮を願わなければならぬのでありますが、それらの心構えを伺わしていただきたいと思います。
  24. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今回の予算的措置が不十分でございますために、あるいは遺族の中で生活保護法でお世話をしなければならない方がおありになると思います。従いまして、これはあまり厳格にいたしますと、ただいま高橋さんのお話になりましたごとく、お気の毒な面が出るかと思いますので、これが運用の面にあたりましては、私ども十分気をつけて行くつもりでございまして、これは私の気持も、十分末端の実際に取扱う人々に対しましても、その趣旨を流すつもりでございます。
  25. 高橋等

    高橋(等)委員 なおこの問題は、日本独立をしなければできないという性格のものではないのであります。どうぞただいまから、すぐその措置をお考えおきを願いたいと思います。  それからこの弔慰金をお出しになります場合に、一定償還期限をお考えになつておるように、昨日承つたのでありますが、生活困窮遺族に対しましては、特にこの償還期限前といえども公債を換金するという方法を講じていただきたいのであります。大蔵大臣のお考えを承つておきたいと思います。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 遺族の方で父母、祖父母の方には一時金をお上げすることにしておるのであります。交付公債にいたしたいと考えておりますが、原則といたしまして十年間の償還、五分五厘の利子ということを考えております。しかし、遺族の方の経済状態は、非常に違つておりますので、例外といたしまして、五年償還の点も考えたいと思います。そうすると、五年償還だと、一年に一万円入ることになります。それに利子もつきますので、遺族の方の経済状態によつて、実情に沿うようなやり方をして行きたいと考えております。
  27. 高橋等

    高橋(等)委員 次に、遺族の生業資金並びに就職のあつせんの問題について、お伺いをいたしておきたいのであります。就職のあつせんにつきましては、昨日厚生大臣から、法的措置は講じないが、よく話合いの上、この就職が十分あつせんできるようにいたしたいという御答弁をいただいて満足しておりますが、実情は、父のない子供というものを、このごろは雇いたがらないのであります。従いまして、遺族遺児たちが就職をいたしますことが、非常にむずかしい場合が多いのでございます。そうした実情を十分に考慮に入れていただきまして——これも今すぐやれることでございます。別に日本独立しなければできないことではない。あなたはちようど労働大臣と両方を兼務なさつておられ、きわめていい立場にあるわけであります。今からでもおそくはない、どうぞ至急にこの問題を解決していただきたいと考えます。  それから次に、生業資金につきましては、この遺族の中で、何か仕事を始めたいと考えられるが金がない、こうした場合に、あるいは今度出します交付公債を担保として金を貸し出すとか、その他遺族の生業資金に関します特別の金融のわくを設定していただきまして、生業資金が一般よりも楽に手に入り得るような道をぜひ講じていただきたいと思います。これは一家の働き手がなくなりまして、そのために困つておる人々が、自分のたつきを立てようという資金であります。その点につきまして、大臣の御意見伺います。
  28. 吉武恵市

    吉武国務大臣 遺族及び傷痍者の就職のあつせんにつきましては、十分気をつけましてやるつもりであります。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 生業資金につきましては、ごもつともな御質問でございまして、国民金融公庫への出資が、今回の予算を加えまして大体百億円になります。来年度三十億円程度の出資をいたしますので、その三十億円はもちろんのこと、従来の貸付金の回収という点等も考えまして、無担保で、軍人遺家族の方にはある程度優先的にわくをとつてお貸し申し上げるように指導して行きたいと考えます。
  30. 高橋等

    高橋(等)委員 これもできるだけ早くひとつ御実施をお願いいたします。  次に、母子寮とか養老院というものを、従来いろいろお考えになつておられますが、特にこれらの点は、なお遺族の方たちと非常に密接な関係を持つものでありまして、ぜひ今後増設をしていただきたい。ことに養老院につきまては、いろいろなくふうをしていただきまして、たとえば有料の養老院というものをおつくりになつてもいいのであります。同じ境遇にある年寄りたち、しかも子供をなくして身寄りのない者たちが老後を安んずる場所をつくつて差上げたらどうかということを、常に私は考えております。これは来年度以降、ひとつ十分に力を入れていただきたいと思いますが、厚生大臣のお考えを承りたい。
  31. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ただいまの御意見、母子寮及び養老院等につきましての点は、今後十分気をつけましてやりたいと思つております。
  32. 高橋等

    高橋(等)委員 次に税制上の問題について、遺族に対しましての御考慮をお願いいたしたいのであります。このたびの補償によりまする収入につきましては、これはもちろん免税をいたすのが適当であると考えますが、この点を伺つておきたいと思います。それとともに、遺族に対しまする税につきまして、これを軽減をするという措置をおとりくださつておるように伺うのでありまするが、この点につきましても、承つておきたいと存じます。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 今回の遺族に対しまする年金はもちろんのこと、国債の利子につきましても、課税しないことにきめております。また未亡人の方につきましては、従来特別の考慮をいたしておるのでありまするが、軍人遺家族未亡人に対しましては、今後、従来の控除金額を相当引上げて、特別の措置をとるべく、今検討を続けております。
  34. 高橋等

    高橋(等)委員 次に、全国遺族方面から、遺族記章を制定して、これを交付してもらいたいという要望が強いのであります。これは従来戦時中ありましたものが、今は交付されておらないのであります。何かこうしたものを制定して差上げることがいいのではないかと思うのでありますが、これは厚生大臣いかがお考えになりますか。
  35. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ただいまの高橋さんの御意見は、ごもつともだと思いますので、十分研究をいたしまして、実現に努力いたしたいと思つております。
  36. 高橋等

    高橋(等)委員 なお遺族の公私にわたるところのいろいろな相談をしたり、あるいは世話をするというような制度を、これはぜひ設けておいた方がいいと私は考えておるのであります。これはいろいろな方法があるでありましよう。市町村の厚生主任にこれをやつてもらうとか、あるいは専門の専従者を置くとか、あるいは地方遺族会長を中心にこうしたことをやつていただきまして、これを中央、市町村その他との緊密な連絡の上にやつてもらうということも考えられるでありましようが、どうしてもこうしたことを考えねばならないのでありますが、将来の予算措置の上でもこうしたことのお考えがあるかどうか、承つておきたいと思います。
  37. 吉武恵市

    吉武国務大臣 遺族の方のお世話をすることは、ぜひ必要なことと思います。しかしただちに予算的措置を講ずるということになりますると、もつと研究をいたしてでないと申し上げにくいと思いますが、ぜひこういうふうなことにおいて、何らかの世話をする制度をつくりたいと思います。
  38. 高橋等

    高橋(等)委員 次に、運輸大臣にお伺いをいたしたいのであります。それは全国遺族が、従来団体の特別列車によりまして靖国神社等に参拝をいたしまして、この人々は恵まれない七年間をこの靖国へ出て来て、そうして涙のうちにいろいろな行事をいたしまして、心を清めて帰つてつてつたのであります。ところが会いろいろ輸送上の都合もあつたのでありましようが、昨年の八月に通牒が出まして、団体特別列車の取扱いは宗教団体等に限るというようなことになつておる。いろいろとお話をして、遺族団体は一応九月一ぱいは認めたのでありますが、それから後は普通の列車へ三両とか四両とかを連結をして運ぶという方法がとられておるのであります。しかしこの団体の人々は、どうしてもそういう方法でなしに、非常に年寄りが多いのでありますから、できれば普通の客と一緒でなしに、団体の列車で東京まで出て来たい、こういう要望が非常に強いのであります。もちろん鉄道の最近の輸送の状況等につきましては、十分に了承いたしておりますが、何か考慮が拂えないか。場所によれば、地方の監理局あたりでは、その団体列車を出しちやいかぬというあの規定をゆるめてもらえれば、自分らのところ限りで出し得る余地もあるんだということをお話になる向きもあるのであります。これらについて、何かひとつお考えをお願いいたしたいと思うのであります。  それとともに、割引につきまして、これも将来の問題になるでありましようが、こうした団体の割引については、特にその率を引上げるというようなお考えがおありになるかどうか。私はそれは、でき得ればそうしていただきたいと考えるのでありますが、運輸大臣の御意見を承つておきたいと思います。
  39. 村上義一

    ○村上国務大臣 ただいまお話の団体輸送の件でありまするが、これはお説の通り、団体列車で参拝を願う、特に靖国神社の大祭の際のごとき、最も遺族方に対しては必要なことだと痛感いたしておるのであります。しかしながら、お話のごとく、現在国有鉄道の輸送力は、非常に逼迫いたしておりまして、線によつては、線路容量は、なお余裕はもちろんあります。しかし東海道線のごとく、また東北本線のごとく、非常に逼迫いたしておるところは臨時列車が入らない、入れにくいという実情にあるのであります。で、もちろんこれは御指摘の宗教団体の方面でも、臨時列車ということは非常に困難なのでありまして、靖国神社御参拝の場合、その他遺族の御乗車の場合のように、一方面から二両、一方面から三両というふうにして、いわゆる集結臨時列車というものは、今日でも一部分できる限りの方途を講じておるのでありますが、今後一層この点について輸送力を勘案して最善を盡して行きたいと私も考えまするし、国鉄の総裁も考えておるのであります。  なお運賃割引につきましては、現在一般の一割引という取扱いになつております。ただ身体障害者福祉法によりまして、介護人を要するという方に対しましては、その介護人もともに五割引ということに相なつております。今はそれだけの取扱いしかできておらないのでありますが、今後障害者及び遺家族の方に対して、何らかの方法を講じたいということで、国鉄総裁も検討をいたしておる次第であります。
  40. 高橋等

    高橋(等)委員 次に、傷痍軍人に対しまする援護の問題につきましては、傷痍軍人は戦地におきまして身体に傷害を受けまして、現在生活を営んでおられる方々でありまして、これが補償援護は、急速を要することは申すまでもない。また相当手厚いものでなければいけないということも考えられます。あの白衣を着て街頭に物ごいをしております軍人たち——もちろんこの人々の中には、私たちが考えましてもいかがと思われる人もいろいろあるのでありまするが、元をただせば、戦地におもむきまして国家のために負傷した方々なのであります。こういうような方々を街頭からなくするということを、われわれは熱望いたしておつたのでありますが、それにはどうしてもそれに対しまする補償援護が行われなくては、これらの人々に、お前ら街頭に出ることはやめてくれと言うことはできないのでありまして、今日に至つておるのであります。この傷痍軍人の援護につきましては、本予算におきましても相当手厚い方策が講ぜられております。障害年金におきましてもそうですし、あるいはまた義手義足等に対しましても、あるいは更生に対しましても、いろいろの点が考慮せられておりますが、特にこの際お願いいたしておきたいことは、傷痍軍人の中で、特項症その他非常に傷の程度が重くて、実際の生活において困つておられる人々が相当あるのであります。これらの援護につききしては、特に障害年金等を強化する必要があると考えまするが、政府の方のお考えを承つておきたいのであります。
  41. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お話のごとく、傷痍軍人の方に対しましては、まことにお気の毒と存じております。今度の予算措置も、先ほど申しましたごとくに、遺家族に対すると同様に、不十分だと思うのであります。しかし、何といつても傷痍者の方にはお気の毒でありますので、できるだけの考慮を拂いまして、特項症の方は年金として六万円を支給することにいたしたいと思つております。なお一項症五万四千円から二項症、三項症、四項症、六項症とありますが、六項症でも二万四千円ということにいたしまして、現在恩給支給するよりも、やや上まわつたところではなかろうかという気持でございます。しかし、これとても決して十分でございませんので、将来財政の許す限り改善をはかりたいと思つております。
  42. 高橋等

    高橋(等)委員 大体政府の御答弁を承つたのでありますが、この援護法といいますか、どうせ遺族補償に関します法律を御提出になると考えるのでありますが、この法律はいつごろ御提出願えるか。実は、できるだけ早く出していただきたい。これは全国の民心を安定さす上からいたしましても、また国会の審議を慎重にいたす下からいたしましても、早く御提出をお願いいたしたいと思います。  それと、もう一つ、すでに一億円の調査費を組みまして、遺族あるいは傷痍者の実態についての調査が進んでおりますが、法律ができ予算ができましても、実際にこの年金が交付され、あるいはまた公債を交付するのが遅れては、これはまたおもしろくない。もう七年の長きにわたつてつておるのでありますから、一時も早く遺族さん方にお手渡しをするということでなければならないと私は考えますので、これらについていかなる程度まで進んでおりますか、またどういうようになつておりますか、その点を伺わしていただきます。
  43. 吉武恵市

    吉武国務大臣 遺家族及び傷痍者の援護に対しまする法的措置は、至急に提案するつもりでございます。なほ昨年の補正予算で組みました一億円の調査につきましては、目下着々と進行いたしております。私どもといたしましては、できるだけ早く調査を終り、また予算的措置及び法的措置を講じまして、四月から何とかして実施に移したい、かように考えております。
  44. 高橋等

    高橋(等)委員 四月から実施に移すとおつしやるのは、四月になつたら渡すということでありますかどいですか、その点もう一度承つておきます。
  45. 吉武恵市

    吉武国務大臣 もちろんお渡しするように進めたいと思つております。
  46. 高橋等

    高橋(等)委員 この遺族補償に関しまするいろいろな問題、ことに年金あるいは弔慰金といいますか、そういうようなものの出し方につきましても、これは財政下の理由から非常に暫定的であるという御説明で、まあ今年度はやむを得なかつたのだというお話を承つておるのでありますが、しからば政府は、この遺族補償根本的に検討いたしまして、将来筋道の立つた解決をいたしまするために、審議会その他を設けて今後早急に審議なさるつもりがあるのかどうか、その点を伺わしていただきたいと思います。
  47. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お話のごとく、今回とりました措置は、さしあたつて措置でございまして、根本的には軍人恩給等との関係もございますので、審議会のごときものを設けまして、根本的な検討を加えたいと考えております。
  48. 高橋等

    高橋(等)委員 最後に一言希望を申し上げておきたいのでありまするが、この遺族方々は七年の長きにわたりまして、しかも世の中の道徳は非常に腐敗をしておる、しかもインフレーシヨンで非常に暮しにくい、その間を、とにかく世の荒波を乗り越えて参られた方々であります。ことに最愛の肉親を失われておりますところのこの人々の心情を察しまするときに、まことに断腸の思いがいたすのであります。しかも英霊のお祭りも今までできなかつた、何の補償もできなかつた、こういうようなことでありまするので、この方々が相当はげしい理性を逸脱した方法によつて自分らの主張を通す運動をなされる、そういうことも私たちは起り得るであろうかと考えておつたのでありまするが、それとは逆に、非常に理性のある立場で皆さん方が自分の主張を続けて参られました。現在もそうであります。これもひとえに日本独立をこの方々が思われ、またなくなりました英霊の誇りを傷つけてはいけないということが、その人々人々々の相言葉なつた結果であります。講和條約をこうやつて早急に締結をする、しかもその内容が本日のような内容でありますことにつきましても、この遺族団体のこうした慎重な活動というものは、非常に私は影響があつたろうと考える。また平素この遺族会の皆様方に対しましては、非常な感謝を実はささげて参つております。それとともに、そうであるからこそ、よけいわれわれはこの声のない声を実現をいたしますために、努力をしなければならなかつたのであります。本日は理論的な問題を除いて、具体的な点につきまして、政府にもいろいろの施策についてお伺いをいたし、政府の方でも非常に遺族方の立場というものを十分に考えられて、国の現在置かれた状況においてなし得る最大をなすところの意思の表示をいただきましたことは、まことに私は——年金その他の点では不満の点もありまするが、その他各般の施策におきましては、私は一応全国遺族方々も満足をしてくださることであろうと考えます。どうぞ政府におきましては、本問題が日本独立の門出にあたりまして最も重大な問題であるということをますます認識していただきますとともに従来置かれました遺族の立場も考えていただいて、どうぞただいまお答えになりましたことを、早急に実現されることを希望いたします。それとともに、本問題はまつたく政争の具に供すべきものではないと私は考える。本日も新聞を拝見いたしますと、昨日の本予算委員会における議事につきまして、野党方面から声明書が出されております。政府は非常に冷淡だ、自由党は遺族問題に対して理解がないとこう言う。しかし、無責任な言辞はお互いに慎まねばならない。たとえば、共産党の林君のごときは、昨日この席で橋本前厚生大臣が主張されたことを自分は支持するんだ、こう言いながら、片一方では国家補償がなければいかぬということを主張されている。よく御研究を願いますと、橋本前厚生大臣の主張は、国家補償の主張ではなかつたのであります、これは社会保障を主張されておつたのであります。本問題は影響するところが多いので、お互いに十分慎重な態度で臨みたいと思う。ことにこの問題を党利党略に利用するようなことは、遺族さん方は決して喜ばないのであります。それこそ英霊を冒涜し、遺族さんを侮辱するものと申さねばなりません。どうしても党派を超越して、そうして理性の上に立つて本問題をお互いに検討して、そうして遺族方々が一日も早くそのところを得ていただくよりうにいたしたいものであると考えます。  以上をもちまして、私の質問を終らしていただきます。
  49. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 岡良一君。
  50. 岡良一

    ○岡(良)委員 私は日本社会党の立場から、戦歿者の遺族並びに戰傷病者の国家補償に対する政府の施策について、ただすべきことをただし、あわせて私どもの主張の実現に政府の善処を促したいと思うのであります。  昨日来国民民主党の早川君からも、またきわめて熱心なるわれわれの遺家族援護に関する小委員会委員長であつた高橋等君からも、ただされた問題でありまするが、すでに昨年の十一月二十八日に、衆議院の厚生常任委員会は、国家補償観念に立脚をして、遺族あるいは戦傷病者の補償に遺憾なきを期してもらいたいということとを強く要望し、委員会決議をもつて政府に申し入れたのであります。この国家補償という観念が、このたび御提出の二十七年度一般会計予算書の関係費目においては、すべてが援護という言葉に切りかえられているのであつて、この点は、私ども早川君や高橋君に対する政府の御答弁をもつてしても、納得し得ないのであります。そこで重ねてお尋ねをいたしたいのでありまするが、たとえば生活保護法を一昨年われわれは改正いたしまして、その第一條では、憲法第二十五條の理念に基き、と、明らかな憲法の国民の文化的な最低の生活権というものをわれわれは容認し、その基本的な立場において、生活保護法というものを大きく改正したことは御存じの通りであります。してみれば、戦争中に兵役法や総動員法や、あらゆる国家的強制によつて重大な犠牲を拂つたところの遺族やあるいは戰傷病者に対しつて、国が補償するということを、なぜはつきり政府としては言い切れないのか。生活保護法の対象は、個人的な過失によつて生活が困窮に陥つている者に対しても、その生活権を認めようというところにまで、われわれは生活保護法の改正を通じて、大幅に進んで来ているのであります。にもかかわらず、六年有余にわたつて、路傍の石のごとくに顧みられなかつた、しかも戦争中は、誉の家という門標までを掲げておつたものが、敗戦と同時に、ほとんど弊履のごとく捨てて、顧みられなかつた。しかも全国数百万の遺族が、実に講和とともに国の納得の行く補償を心待ちにしておつたことは、政府もとくと御存じの通りでありまするが、なぜこれに対して、はつきりと国家補償という大きな旗じるしをもつて遺族を抱きかかえようという御決意がないのかという点が、私どものとうてい納得し得ないところであります。この点に関して、重ねて厚生大臣の御所見を承りたいと思います。
  51. 吉武恵市

    吉武国務大臣 先ほど高橋君の御質問に対してもお答えをいたしましたごとく、今回の予算的措置をもつてこれが国家補償でございますと言うのには、あまりに十分でない。従いまして、さしあたりは援護ということで進めている、こういうことでございます。将来、財政に余裕ができまして、改善ができるようになりますれば、御趣旨のような線に沿うて行きたいと考えております。
  52. 岡良一

    ○岡(良)委員 それでは政府の構想せらるるところでは、将来は国家補償を実施する、しかし現在は国力が、あるいは財政の収支なり財政の規模が許さないから、従つてあまり報ゆるところが少い。であるから、援護という言葉でもつて一応済ませて行こう、こういうお考えでありますか。要するに、将来は国家補償という建前を名実ともに実施するという御決意を持つての、またそれを前提としての措置でありますか。
  53. 吉武恵市

    吉武国務大臣 将来は十分考えて行くつもりでおります。
  54. 岡良一

    ○岡(良)委員 われわれは援護という文字が、文字の通念から受ける考え方からいたしましても、政府に、真に将来国家において補償するという大きな決意があるとするならば、きわめて不適当な文字と思いますが、表現の巧拙については問いますまい。  それでは昨日、また今日、それぞれの同僚委員の諸君との応答、応酬の間において、いわゆ恩給法に関してポ勅の問題が出ておりまして、政府の御答弁によると、ポ勅によつて恩給法中、特に軍人、準軍人あるいは軍属に対する一部の扶助年金その他が停止されておる。ところで講和がいよいよ発効するということになれば、自動的にこれらは復活し得る條件を備えるので、その機会に何らかの法律措置をもつてこれが復活を考慮したい。なおかつその條件としては、国の予算というものを十分に考えたい、こういうふうな御趣旨日の御答弁があつたと思いますが、さように解釈してようございますか。
  55. 吉武恵市

    吉武国務大臣 講和発効と同時に、自動的に効力を失うとは申しておりませんが、独立後になりましては、ポ勅取扱いについて、特別の措置を講ずる必要があろうと思います。従いましてただいま国会に提案になつておりますポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案を御審議中であると思いますが、これによりましてポ勅が廃止され、従つてそれに基く命令が一定期間存続されることになると思います。従つてその一定期間内に特別な措置が講ぜられませんと、恩給は復活して来ることになりますので、その間に特別の措置を講じまして、先般来申し上げますように、根本の問題は審議会等において審議をしていただくつもりでおります。その間遺家族の御題をほうつて置くわけには参りませんから、今回のような予算的措置を講じまして、援護の形をもつて進めておるわけであります。
  56. 岡良一

    ○岡(良)委員 それでは、ポツダム宣言の受諾に伴います諸命令が今度廃止になるという案件が、われわれ国会に提出されておりますが、これが通過いたしまして、その結果としていよいよ自動的に恩給法の一部停止になつておる部分も復活するということになります場合、その前に政府としては、何らか適当なる法制的な措置を講じたいというお話でありますが、その改正の構想について承りたいのであります。と申しますのは、もしあの恩給法がそのまま復活するということになりますならば、かつて職場にあり、陣頭に立つて兵を駆使した高級軍人が、非常に手厚く報いられることになる。そして自分の生業を捨て、家族を捨てて戦野に辛苦いたしました一般兵の報いられるところは、非常に薄くなるのでありますが、そういう点について政府といたしましては、その改正の際においてかかることのないように、十分なる考慮を拂われる御用意があるかどうか、この点を承りたいと思います。
  57. 吉武恵市

    吉武国務大臣 先ほど申し上げました点に、まだ誤解があるようでありますが、現在恩給ポ勅に基きます勅令によつて停止されているのであります。従いまして、今回ポ勅の廃止の法律出しますると同時に、そのポ勅に基きまして出されている命令は、一定期間存続する措置がとられているのであります。従いまして、その一定期間は現状のままで進むわけであります。そこでその一定期間にさらに特別の措置を講じませんと、恩給がそのまま復活して来ることになりますので、その特別措置はまた重ねて検討いたしつつあるわけであります。しかし先ほど御指摘になりましたように、恩給をそのまま復活するということは、財政の面から行きましても、現状ではなかなか困難でありまするし、また内容につきましてもさらに検討すべきものが多々あろうと思います。従つて、先ほど申しましたように審議会を設けまして、これによつてそれらの点も十分検討していただくということの考えを持つているわけであります。
  58. 岡良一

    ○岡(良)委員 私は別に誤解をいたしておるとは思いません。ただ問題は、恩給法の復活に伴つて、またその復活以前に何らかの法制的措置を講ぜられるという政府の御用意に対して、しからばその際、もしそのまま恩給法が復活をするということになつてしまえば、同級軍人は厚く報いられ、一般兵はきわめて薄く報いられる結果になるが、こういうことのないように、いわば軍隊内における階級差を撤廃した姿において報いるものは報いるという方針を、政府として持つておられるかどうかということをお尋ねしているわけであります。
  59. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これらの点は、先ほど申しましたように、審議会のようなものを設けまして、十分検討して行くつもりでございます。その際に今御希望になりました点も、十分考盧するつもりでおります。
  60. 岡良一

    ○岡(良)委員 審議会という言葉を、しばしばお聞きいたしますが、何のために審議会を設けられるのでありますか。すでに国会が存し、国会遺族援護等についても重大なる意思決定をし、また各派共同の提案をもつて政府にその実現を迫つておるのであつて、これらの問題に対して、国会はこれまで十二分の活動を営みつつあつたことは、政府もよく御存じの通りであります。にもかかわらず、なぜ国会とは別個に、政府の法制的、立法的措置の裏づけを営むがごとき審議会を設けられなくては、この問題の解決がつかないとおつしやるのですか。
  61. 吉武恵市

    吉武国務大臣 いずれ法律案になりますれば、国会に提案をいたしまして、皆様方の御審議を煩わすことは当然であります。しかしながらその前に、いろいろ立案いたしますにつきましては、各方面の意見を聞いてやりますことが、私は民主的であろうと考えます。
  62. 岡良一

    ○岡(良)委員 木村法務総裁の御出席を願つて、昨日のお言葉に対していろいろお尋ねをしたい点がありまするが、これは午後に讓らしていただきまして、次に移ります。  遺族の構成を見ますると、そのうち母子家庭は大体四十四万世帶というふうに伝えられておりまするが、それに比べて、父母あるいは祖父母の家庭は非常に多いのであります。ところが今度私どもの聞いておるところでは、たとえば基本年金支給範囲というものは、母子家庭にのみ限られている。これでは父母あるいは祖父母——これはその心情、その生活、あるいは気持に入つて考えをいただけば、十分おわかりを願えると思いますが、当然これもやはり基本年金支給範囲に含むべきものではないかと私ども考えておりまするし、また遺族の父母、祖父母も、それを強く要望しているのでありますが、いかなる理由によつて父母、祖父母等は交付公債等の一時金名義のものに切りかえられて、基本年金支給範囲から漏れたのでございましようか、その点の理由を承りたいと思います。
  63. 吉武恵市

    吉武国務大臣 その点は、昨日早川さんの御質問に対してもお答え申し上げました通り、もし財政が許せば、御趣旨のようにいたしたいのであります。しかしながら、御指摘のごとく父母、祖父母の世帯は、非常に数が多いのでございまして、これらにもすべて年金ということになりますると、厖大な予算を要するのであります。それは今日の財政ではとうていできにくい。そうかといつて遺族のうちで最もお気の毒なのは、やはり未亡人であり、遺児であろうかと思うのであります。従いまして、この最もお気の毒な未亡人遺児方々に対しては、何とかして年金支給したいということで、今回の措置をとつたわけであります。将来財政が許すに至りますれば、もちろん御趣旨に沿いたいと思つております。現状においては、今のようなところであります。
  64. 岡良一

    ○岡(良)委員 財政が許さないと申しまするので、その点はまた後刻申し上げたいと思いまするが、なお遺族の範囲といたしまして、戦争犠牲者という考え方からいたしますれば、たとえば国家総動員法によつて強制的に職場に動員せしめられた動員学徒、あるいは徴用工、その他軍の命令によつて輸送業務に従つて、船と運命を共にした船員というふうな者も、当然やはり遺族の範囲に含まれていいのではないかというふうに私どもは信じておるのでありますが、こういう方々が除外されたというのは、これまたやはり財政事情によるのでありまするか。
  65. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御指摘になりました徴用工でありまするとか、学徒動員等に出られました方で犠牲になられました方については、まことに私どももお気の毒に思います。しかしながら、これらの数は相当多数に上りまして、これらを一々考慮いたしますると、今日のところでは軍人及び軍属の遺家族に対しまする処置というものが、非常に少くなるのであります。そうかといつて、この遺族をこれ以上放置することは、私どもといたしましてもできませんので、さしあたりどうしてもほうつておけないと思いましたこの軍人及び軍属の遺家族に対する処置に限つたわけでございます。将来はまたその他につきましても、十分考えて行かなけれぱならぬかと思つております。
  66. 岡良一

    ○岡(良)委員 ただいまのお言葉によりますると、遺族あるいは戦場病者等に対する援護費というものも、予算のわくが一応きまつておる。その範囲内で善処しようということで、対象の範囲を広げて行けば、結局軍人や準軍人という方々遺族に対する給與面が少くなる、こういうことからこれを除外した、そういうふうに御説明なつた、さように解釈してようございますか。
  67. 吉武恵市

    吉武国務大臣 きようではございませんで、予算的措置を講ずるときにいろいろ考えましたが、それらのすべてのものを網羅いたしますると、とうてい予算処置ができませんので、軍人及び軍属の遺家族に限つたわけであります。
  68. 岡良一

    ○岡(良)委員 徴用工、動員学徒あるいは軍の命令による輸送業務に従つて、船と運命を共にした者、これらは政府の御調査ではどれだけの数に上つておると把握しておられますか。
  69. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今ちよつと数字を持ち合せておりませんので、至急に取調べましてお答えをいたします。
  70. 岡良一

    ○岡(良)委員 この数字は、決して政府が御心配なように多数ではないと私は考えるのであります。私どもの手元の資料では、決してそんなに大きなものではありません。従いまして、ひとしく遺族というならば、こういう諸君の遺族についても、報いるべきものは当然報いらるべきが至当と考えまするので、資料等を十分に御調査の上、でき得べくんばその支給の対象範囲に、これらの遺族ないしは事故によつて生業能力を失つた方々に対しても、十分なる年金等の措置を講じていただきたいと思います。  それから、先ほど来の御答弁あるいはまたきのうの早川君への御答弁等に徴しますると、いろいろな財政的な事情もあるので、このたびはきわめて手薄いことでやむを得ないのであるが、しかし政府としては精一ぱいなところである。そこでもつて、特に母子家庭あるいは遺児の育英等について十分注意をしたい。この線で十分足らざるところを補つて行きたい、こういうふうな御説明でありました。ところでこの遺族年金あるいはその世帶員のうち妻、親、子等に対する家族手当的な支給というもののほかに、なおかつ生活保護法によるものもあわせ給付しようというようなお考でありますが、このたびの予算書を拝見いたしますると、たとえば、生活保護費が、昨年度分に比べて約四億三千万円の減額になつております。これは厚生省からわれわれの手元にいただいた「遺家族援護を要する経費」の中で、本制度施行に伴う減少額ということになつておりますが、これはいかなる関係にあるのでございましようか。
  71. 吉武恵市

    吉武国務大臣 従来生活保護法でお世話しておりまする方々で、今回の収入がありましたために、それだけ差引かれる部面が法律上は出て参ります。しかしそれを厳格に差引きますと、お気毒な方が多かろうと思うのでありまして、それにつきましては、私どもは昨日来申上げておりますように、運用の面においては十分考えながらやつて行くということでございます。しかし法がございます以上、全然差引かないで生活保護法の金は生活保護法の金で出すということは、今日の事情ではそうも行きかねると思います。そこで若干の予算を見積つて、今御指摘になりました四億何がしか、それくらい生活保護法の方から差引くという建前になつておるわけであります。しかし、要は実際に遺族の方がほんとうにお困りにならないようにすることが要点であろうかと思います。その点は、先ほど来申し上げましたごとく、私は末端の線にまで十分言い含めまして、特別の取扱いをいたすつもりであります。
  72. 岡良一

    ○岡(良)委員 この問題に関して、まだお尋ね申し上げたいのでありますが、定刻も参りましたので、午後に譲りましてこれで一応終ります。
  73. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後一時三十分より委員会を再会して、質疑を継続することといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後一時五十七分開議
  74. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。岡良一君。
  75. 岡良一

    ○岡(良)委員 先ほど中途で休憩になりになりましたが、厚生大臣にお尋ねいたします。むし返しのようでありますが、今度は財政的にもいろいろと許さない事情があるので、きわめて乏しい、いわば援護という形にとどめたのであるが、しかしなお実際に生活の困窮者には、生活保護法をもつて補完をしたい、こういうふうな政府の御方針でありますが、生活保護法適用を受けるということは、遺族気持から見てはきわめて適切ではないし、やはりある種のプライドを持つておりますから、潔しとしない向きも多々あることは、すでに御存じの通りと思います。それはそれといたしまして、そこで生活保護費の中で、今年の予算では四億三千余万円が減少ということになつておるのでありますが、現在これは私ども考え方からすると、予算の額はわずかではありますけれども、あくまでも国家補償という立場において、戦争犠牲者の生活の保障に当つてもらいたいという考え方からは、国家の強制的な命令によつてとうとい命を投げ出した者と、個人の過失によつて生活困窮に陥つた者との間には、取扱い上当然に大きな隔たりと申しましようか、国の責任ある裏づけが必要だと思いますが、さしあたりそれができないということで、この生活保護費の四億三千余円というものは、数字はわずかのようでありますが、私にはどうしても納得ができないのであります。厚生大臣の御説明によれば、これは年金等の給付を受けるために、それから一応技術的に予算として落されるのであるというような御説明があるかと思えば、一方ではそうした給付を受けても、なおかつそれとは別途に、生活保護法適用は、これを特別な所得とみなさないで、生活扶助をやろうと、いう方針をも言つておられますので、そういたしますると、この四億三千余万円というものを落された理由がどうしても納得ができないので、重ねてこの点について明確な御方針を承りたいと思います。
  76. 吉武恵市

    吉武国務大臣 午前中もお話申し上げましたごとく、生活保護法の建前から申しますれば、他から収入があればそれだけ差引くという建前になつております。従いましてこれを厳格に執行いたしますればその通りであり、そうすれば遺家族の方にはお気の毒な方がおありになる。そこで私どもはそれを厳格に執行するということでなしに、運用の面につきましてはできるだけ考慮を拂いながらやつて行く、こういうことで、予算的措置といたしましては四億余りのものを出しておりますけれども、これはほんとう遺家族援護を受けておる者を差引きますと、予算としてはもつと実はたくさん差引く予算を計上しなければならぬかと思うのであります。しかしそれは決してわれわれの本意ではございませんから、一応まあ四億程度出したわけであります。しかしこれも運用の面におきましては十分考慮を拂いながら運用して行く、かように御了承をお願いいたします。
  77. 岡良一

    ○岡(良)委員 それでは具体的な数字等についてお尋ねしたいのであります。たとえばここに未亡人がおつて、十八才未満の子供が二人あり、お年寄りが一人あつた。この場合に遺族年金と、増加年金と申しましようか、扶養家族への手当を含めまして、その三千円が一箇月の収入になります。そこでこの家庭が東京都内に居住しておるという場合には、大体本年の四月からは七千円に引上げられることになりますが、そういたしますると、七千円プラス三千円の一万円というものがこの遺族家庭に対して給與されるのでありますか。
  78. 吉武恵市

    吉武国務大臣 先ほど申しましたごとく、生活保護法の建前から申しますれば、従来生活保護法を受けた額から今度の援護支給しますものがそれだけ差引かれることになりましよう。しかしそうしますと個々の家庭において実情を把握いたしませんと、そう一律に形式的には申しがたい。私は家庭の事情によつてお気の毒な方が相当おありだろうと思います。そこで差引くにいたしましても、その点を十分考慮しながらやつて行く。こういうつもりでございますから、その点はひとつ御了承願えるのではないかと思います。個々の具体的な例をお示しになりますけれども、これは実際の家庭の事情について見ませんと、そうことで一律に申し上げかねるのではないか、かように存じます。
  79. 岡良一

    ○岡(良)委員 実は私がこういうことを執拗に繰返しお尋ねいたしますのも、おそらく遺族年金も期待よりははるかに少い、そこで生活保護法によつてこれを補完しようということが、政府の方針として遺族やあるいは戰傷病者の諸君にも広く行き渡りまする場合には、おそらくたまりかねたこれらの諸君の中には、やはり生活保護法適用を希望する向きが、非常に強く起つて来はしないかと思います。そういう場合に、一々具体的な実情に即してと言われますけれども、なかなかそういうケース・ワークを一々分類をして、具体的に調査するということは、現実の実情としては困難だと思いますので、はつきりと遺族年金なり障害年金なり、またこれに伴う扶養家族への手当を支給されておるものは所得とみなさない。そうして生活保護法にうたわれておる生活扶助はそれとして、またこれを支給するのであるというようなはつきりした線を出していただきませんと、なかなかこの問題の処理は将来において非常に大きな混乱を来すと思いますので、繰返しただすのでありますが、一々具体的なケースについてということは、実態として厚生大臣は可能であると思われましようか。私はどうしてもそういうことはできないと思うのであります。そういう点から明確な御方針を承りたい。
  80. 吉武恵市

    吉武国務大臣 生活保護法適用にあたりましては、一々につきまして実情を調査した上で支給しておりまするから、その点はわれわれの手で十分できるものと思います。その際に遺家族の方は特にお気の毒でありまするから、十分考慮を拂いながらやつて行く、こういうつもりでおります。
  81. 岡良一

    ○岡(良)委員 とにかくただいま弁明せられたように生活保護法適用も、ある意味から見れば国民の生活権を守ろうとする政府の責任を明確にしておりまする関係上、この法の適用は特に遺族において、現在の生活保護法による生活扶助というものがまつたくきわめて低い給付しかしていない場合において、どうか障害年金なりあるいは遺族年金なりは、所得とみなさないというくらいの気持で十分生活を考えてやつていただくことを、この際衷心からお願いをいたしておきます。  なお大蔵大臣質問をというお話がありましたが、私は特に大蔵大臣の御郷里の広島県の諸君からも二、三回陳情を受けましたが、いわゆる原爆孤児と申しましようか、原子爆弾によつて扶養者を失つた子供たちが非常に多いのであります。広島市だけでも約五千人の原爆孤児があつたのが、現在は千五百名ばかりが広島市内に残存し、しかもそれが適当なる収容施設等において生活を見てもらつておる者が約三百ほどであるということでありますが、何しろ日本民族がこの地球上において唯一かつ最初の原子爆弾の犠牲者であります関係上、われわれが平和国家という建前を強く打ち出して行くためにも、原子爆弾による犠牲者に対するいろいろな比較的な顧慮というものは重要な施策と思いまするが、これについて厚生大臣なり大蔵大臣は今日までいかなる手を盡しておられましたか、その点を伺いたいと思います。
  82. 吉武恵市

    吉武国務大臣 広島の原爆による孤児につきましては、気の毒な方々については仰せのごとく生活保護をやつております。この点につきましては十分私どもも気をつけまして、欠くることなきを期したいと思います。
  83. 岡良一

    ○岡(良)委員 先ほど高橋委員からも強い要望がありましたが、重ねて要望いたしたいことは、この障害年金遺族年金に対する支出というものについての裏づけとなる法律は、いまだ国会の審議にも上つておらないのであります。聞くところによれば、総司令部への折衝もいまだ行つておられないようでありまするが、これは当然財政法上からも重大な疑義がある問題だろうと思いまするが、それはさておきまして、予算化のための基本的な立法であるところの遺族あるいは戰傷病者に対する法制的な措置というものは、できるだけこれを急いでいただきたいことを心から強く要望いたします。あわせて今度の予算においては未復員者給與法あるいは特別未帰還者給與法等が一応終止符を打つという形になつておりまするが、今後留守家族の方々などに対するところのいろいろな援護措置については、いかなる法律によつてこれを実施されるのか、その御構想を承りたいと思います。
  84. 吉武恵市

    吉武国務大臣 未復員者の給與法は今日の通り存続させまして、現状通りやつて行きくつもりでございます。ただ予算の組み方につきましては、一括援護の方にとりまとめただけであります。
  85. 岡良一

    ○岡(良)委員 それから基本年金の点は、これも早川君等から繰返し申されたのでありまするが、しかし何と申しましても、またいかに国の財政事情が許さないといわれましても、われわれとしては、一箇月千円という基本年金では、あまりにも遺族の諸君を裏切ることが多いのであつて、われわれも議員としてまことに遺憾にたえないのであります。現に西ドイツのごときは、子供二人持つておる未亡人家庭に対しては、九十マルクの基本年金並びに均衡年金を加えて給與をやつておりまするが、それが日本の場合はわずかに二千六百円にとどまつておるというようなことでは、あまりにも格段の相違を感ずるのであります。現に警察予備隊に二箇年間勤めた者は、今年の十月になれば六万円をもらえるというようなことでありまするが、みずから志願もせず、生業を捨てて職場にはせ向つて、しかも不幸にしてとうとい一命を失つたその兵隊の遺族が、このような取扱いを受けるということは、いかに国の財政が許さないとはいえ、政府としても十分に考えていただかねばならないと思います。障害年金にいたしましても、特項症がわずかに年六万円である。これも西ドイツの例をとりますれば、盲人に対しては補導犬を與えておる。補導犬に対する一箇月の飼料が二十五マルクでありますから、二千円を上まわつておる。犬に対してもそれくらいな補償をもつて、国のために身体に致命身な傷害を受けた障害者をかばつておるときに、わずかに六万円の年金ということではあまりにも少な過ぎる。こういう点について財政事情が許したならばと申されまするが、少くとも年金の給與あるいは障害年金は、特項症等についてはいま少しくこれは引上ぐべきが至当ではないかと思いまするが、この点についての政府の所見を伺いたいと思います。
  86. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この点は、昨日から申し上げました通り、今回の予算的措置は決して十分だとは考えておりません。ただ今日の日本財政の実情よりやむを得ないところでございまして、将来国力の充実をもちまして、漸次改善をして行きたいと思つております。
  87. 岡良一

    ○岡(良)委員 それから障害年金の証書、あるいは交付される公債の換金措置について、大蔵大臣から早川君にも高橋君にも御答弁があつたのでありまするが、政府の御方針は、交付公債は一箇年間すえ置きの十箇年間の年賦償還で、利子は六分である。しかしながら特に生活の困窮者に対しては、五箇年間でこれを償還する措置を講じてもいい。あるいはまた、この公債を担保といたしまして特別な生業資金等の貸付の道を講じてもいいし、場合によれば交付公債担保というような條件は抜きとして、生業資金の貸付について考慮するという御答弁でありましたが、さように承知していいのでありましようか
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 今お話の点で私の考えておるところと違つているのは、利子は五分五厘の予定でおります。それから交付公債を担保にするかどうかという問題は今考慮中でございまして、生業資金の場合におきましては、それを担保とせずに——国民金融公庫が一体原則として担保をとりませんから、担保とせずに、国民金融公庫へ別わくで遺家族の生業資金をお出しするように考慮しよう、こう答えたのであります。
  89. 岡良一

    ○岡(良)委員 別わくというのは、具体的に国民金融公庫への政府出資を増額して、そうしてわくを設定されるという御意思であるのか。  重ねてなお、遺族の基本年金の、いわば年金証書のようなものが交付されると思いますが、この受給資格を証明する年金証書等のものが、何らか特に遺族の生業資金獲得、換金への重要な役割を演ずるような、そういう意味の金融的な措置をお考えになつておられるかどうか。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 第一の点は、けさほども申の上げましたように、来年度におきましては三十億円の出資を国民金融公庫に計画しております。そのうちでまかなおうとしております。なお国民金融公庫におきましては、ただいま七十億程度の融資があるのであります。それから元本利子がかえつて来ますと、そこにもまた運用資金ができるのであります。そういう中から特に遺家族に対しましてある一定の額をとつて遺家族優先ということでやりたいと考えております。  なお交付公債の融通性ということにつきましては、條件その他の問題でただいま考慮中であります。
  91. 岡良一

    ○岡(良)委員 国民金融公庫の窓口の第一線は、大臣も御存じの通り、相当借金の申入が殺到しておつて、それぞれの支所の割当のわくをもつてしては、とうてい応じ切れなというような状況にあるやに私どもは感じておるのであります。そこで今お話の三十億なり七十億なりというものが、ほんとう遺族や、あるいは身体障害者の諸君のために、優先的な生業資金として融資の道に活用できるということについては、いまの御答弁だけでは、私どももなかなか納得しがたいのであります。確かにそういうふうに優先的に生業資金として活用し得る道を講ずるための何らか具体的な措置について、大蔵大臣として御構想があるかどうかを重ねて承りたいと思います。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の通り、国民金融公庫に対する貸付の要求は相当多いのであります。そういう中からもある程度のわくをこしらえて、たとえば三十億のうちで、その五%あるいは六%——これは国民金融公庫の今までの貸付の状況、今後の方針等にも関係がありますので、私といたしましては、国民金融公庫の当局者と相談の上特別の考慮を拂いたい。三十億を優先的に遺族の方にのみ貸すというわけではありません。一定のわくを設けて遺家族分として考慮しよう、こういうことであるのであります。
  93. 岡良一

    ○岡(良)委員 先ほど高橋君からの御質問に対して、厚生大臣も御答弁がありましたが、遺族の対策としては、基本年金あるいは扶養家族への手当とともに、当然施設をもつてその生活を守らねばならないと思います。そこで四十四万の母子家庭に対して、現在日本では母子寮が四百足らずあるようであります。保育所も四千ばかりあるようでありますが、その福祉比率はきわめて低いのであります。要するにまだまだこれらの施設が足らない。ところで今度厚生省の予算を見ますと、児童局の予算は二億円余を減じているようでありますが、このように、母子福祉の措置について、わずかな児童局の予算がさらに二億余も大幅に減額される、この問題が特に母子家庭に対する大きな福音であり、また戰争未亡人に対する大きな期待の的ともなつている施設に対して、これらを所管する予算が、こんなに大幅に減少されるということでは、あなたの誠意をわれわれは了承できないのでありまするが、その点について厚生大臣の御所見を承りたい。
  94. 吉武恵市

    吉武国務大臣 母子寮、保育施設等の予算が来年度減つておるというのでありますが、これは増設費であります。現在やつておりまする予算を減額したのじやございませんで、毎年々々相当増設をしておる、そこで一応増設が成りましたので、来年度からの増設を若干減らしておるという程度でございまして、これは毎年予算の許す限り若干の増設はして行くわけでありますが、初めごろやりましたような増設を続けるわけには参りませんので、来年度からはその増設が若干減るというように御了承願いたいと思います。
  95. 岡良一

    ○岡(良)委員 私が申し上げましたのは、こういう点について実際の未亡人家庭等が非常な要求を持つておるのであつて、いわば政府の方に対してその増設を非常に要求しておるのであるが、それが打ちどめになるというような取扱い方を予算上でしておられることに対して、非常に遺憾の意を表したのであります。関連いたしまして大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、実際問題といたしましては、現在ある児童の保育所等も閉鎖の運命にあるものがたくさんあります。なぜかと申しますと、いわゆる児童福祉に関する保護費等が一括平衡交付金の中で地方に流れますために、これがその趣旨のもとに活用されないのであります。そういうことからいたしまして、われわれ厚生常任委員会でも、これはやはりひもをつけて出してもらいたい、補助金として出してもらいたいということを強く申入れをしておるのでありますが、今日までまだ実現をしておりません。いかなる理由によつてこれが実現しないのでありましようか、大蔵大臣としては何とかひとつしようというお気持がないのかということを、関連してお尋ねしておきたいと思います。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は、生活保護費につきましては、厚生省の予算で組んであります。児童保護費につきましては平衡交付金に入つておるのであります。で、ちぐはぐになつておるということはお話の通りであります。これと同じような問題で、義務教育費の問題があるのであります。こういう問題を一括して御検討願いたいということは、私から申出ておりますが、厚生省の意見地方財政委員会あるいは地方自治庁の意見とがまだ決定いたさないのであります。従いましてお話の通りに、義務教育費として平衡交付金へ入れているのが、教育関係の人から、それが十分教育費の方にまわつていない、また児童保護費の方として一応組んだ予算が、ほかの方へ使われがちだという議論は聞いております。大蔵当局といたしましては、両者の話合いがつき、議会の協賛が得られれば、私はどちらでもいいと考えております。
  97. 岡良一

    ○岡(良)委員 最後にお尋ねをしたいのでありますが、朝から、またきのうらかのわれわれの質疑に対して、結局障害年金なり遺族年金なりの引上げ不可能なる理由、その他その対象範囲を広め得ない理由等は、要は国力の充実がまだそこまで行つておらない、国力の充実と見合せて援護の完璧を期しもい、また国家補償の線を打ち出したいというふうな御意見であります。そこでこれはまことに襌問答のようでありますが、一体国力の充実とおつしやいますが、それはかつて戦争中ならば、日本の国力の充実は、軍事力をたくわえることにあつたのであります。ところで今本年の予算の費目を見ましても、あるいは安全保障とか、あるいは防衛支出費とか、警察予備隊とか、海上保安庁等の強化充実に対して相当な予算をさいておられる、一千八百余億をさいておられます。しかしながらもしこういうことが国力の充実であるということに相なりますならば、この国力の充実と見合つて遺家族や戰病値者の援護あるいは国家補償ができるどころか、これらの国力の充実の道を急げば急ぐほど、国家補償への道はとざされて行くということになるという懸念を持つのでありますが、厚生大臣は、国力の充実とは一体何を意味されるのか、そういう点についてのあなたの基本的な所信を承りたいと思います。
  98. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私の申します国力の充実とは経済力でございます。現在だんだんに生産が復興しつつありますが、まだ国民生活水準も戰前に比べて七〇%程度というような状況でございまするので、経済力の復旧にうんと力を注がなければならぬと思います。
  99. 岡良一

    ○岡(良)委員 結論といたしまして、私の御希望を申し上げ、またお尋ねいたしました点についての政府の御答弁は、われわれとしては納得いたしかねるのであります。第一の点は、繰返し申しまするが、やはり遺族あるいは戰傷病者に対しては、これは国の強制的な、義務的な命令に駆使されて、そうしてとうとい生命をささげたり、あるいはまた自己の貴重な生業能力を失つておるのであつて、こういう人々に対し、国は国の責任としてその補償を明らかにする、これは法律的にも、予算的にも当然国の重要な責任であろうと私ども考えるものでございまするが、その点については、きわめて不分明であり、きわめて御答弁が低調であつたことは遺憾であります。われわれとすれば、やはり軍隊内における階級差というものは無視いたしまして、伍長任官当時における月額給與がかりに六円であれば、ベース・アツプいたしまして、恩給法に基く遺族扶助料考えた場合に、一応三千円程度の線が出るのでございまするが、少くともこの程度の線を基準といたしまして遺族に報いる基本年金を考うべきが至当と考えるのであります。身体障害者にいたしましても、両手両足がなくなり、両眼が失明をしておる、こういう人々に対して、六万円というようなことは、彼らが生きておる限り当然介添者が必要であり、場合によれば一名が二名も必要かもしれないような者に対して、月額にすれば五千円程度の障害年金をもつてしては、とうていこの諸君を満足せしめ得ないと思うのであります。国の財政が許さないと言われまするけれども、先ほども申しましたように、あるいは安全保障諸費として五百六十億、防衛支出費として六百五十億、その他警察予備隊も、五百四十億という巨額をもつてその充実をはかろうとしておられまするが、これらの費目を見まするときに、もはや、かつて警察予備隊の予算を計上されたときに政府がうたわれましたような間接的な侵略に対する防衛措置ではない。安全保障條約の前文に掲げられておる、間接並びに直接の侵略に対する防衛措置という案をはつきりとわれわれは見てとることができるのであつて、賢明なある新聞紙が書いておるように、衣の下に刀のこじりを見せておるのでなく、よろいを着ながら、それを衣であると言い張つておるというような、こういうやみの再軍備が進行しつつあるときにおいて、われわれはやみの再軍備よりも、戰争犠牲者の国家補償という点を強調したいのであります。もちろんその法制的な基準は、やはり恩給法の復活ではありまするが、恩給法の復活は、るる先ほど来申しましたように、決して一部高級の軍人が恵まれて、そうして一般兵大衆とその遺族が恵まれないというような不均衡なものでなく、先ほど申しましたような基準において軍隊内における階級差というものは撤廃した姿において、しかも恩給法復活の精神とその取扱いを十分に考慮せられたところの、納得し得る基本年金あるいは障害年金等の実施を、この機会に強く要求したいのであります。厚生大臣の御答弁もありましたが、審議会等を通じていろいろ立法措置についての用意をなさるということについては、われわれも一応了承はいたしまするけれども、しかしながら国会が今日まで数年の間われわれ少数ではあるが委員会があげてこの問題ととつ組んで来たのでありまして、われわれはわれわれ並に一応の方針もまた具体的な案についても用意しているのでありまするから、審議会等に一時便宜的に逃避されることなく、あくまでも国会の意思を尊重し、国会を中心といたしまして、国家補償の実現のために御努力くだされることを最後に心から念願をいたしまして、私の質問を終えるものであります。
  100. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 風早八十二君。
  101. 風早八十二

    ○風早委員 第一にこの援護費の総額について政府の所信をただしたいと思います。この援護費はもちろんその範囲が非常に限られているために、きわめて少額になつておりますが、それにしてもすでにきめられたこの対象について、つまり恩給法の適用を受ける旧軍人軍属の家族そのものに対してもあまりにも問題にならない額である。この点についてはすでに昨日来相当の質疑応答もあつたのでありまして、これが問題にならないということは、政府においてもすでに認めざるを得なくなつているのでありますから、私はこの点を今日これ以上追究しようとは思わない。しかしながらそれならば今きめられているこの額、特に一時金の場合におきまして、その交付公債が実際にいつ一体金になるのか。この点についてはいろいろ大蔵大臣説明があつたようでありますが、結局はつきりしない。このわずかな交付公債そのものが実は現金にもならない。たつた五十三億の利子が組まれているだけである。十年間あるいは五年間の償還と言われるが、この償還についてどういう予算的もしくは法律上の措置が講じてあるか、この点についてはつきり答えていただきたい。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 予算上の措置といたしましては、国債費の方に五十数億円を計上しているのが予算上の措置であります。しこうして償還期限あるいは利子あるいはその交付公債の融通性という問題につきましては、先ほど来お話申し上げた通りであります。
  103. 風早八十二

    ○風早委員 先ほど来と言われますが、実際にこの公債がいつ現金になるのかということについては、何らの保証がないわけであります。いつになつたらこれはなるのか。そのうちに情勢がかわつて、結局たんすの中にたなざらしになつてしまうという危険が多分にあるのでありまして、これに対してはつきりいつになつたら一体これが金になり、それでもつて仕事ができるのか。そういう点について大蔵大臣の答弁を要求したい。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 昨日並びに午前中、また午後におきましてもお答えいたしております。厚則として一年すえ置き、十箇年年賦償還でございます。しかして事情によりましては五箇年に縮める場合もあるのであります。
  105. 風早八十二

    ○風早委員 五箇年、十箇年の年賦償還ということでは、実際に間に合わないことは百も政府は御承知だろうと思います。こういう五年十年先だと言つて、しかもその実際五年十年先にどう償還されるかという措置をまだ何らわれわれ聞いておらない。どこにもそういう措置が出ておりますか。ただ大蔵大臣が一片の……(「公債費があるじやないか」と呼ぶ者あり)いや、公債費は問題ではない。公債費は年々の利子であるから問題でない。利子ではない。その元本がいつ現金になるのかということについてただ償還と言われるが、その償還についてさえ実際に何らの措置が出ておらない。これは当然この今度の予算案と同時にこの措置が講ぜられて、立法化なりなるいはまたその他はつきりしたものが出ている必要があるのでありますが、出しておらない。きわめてインチキではないか。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 これも昨日来申し上げていることでございまして、予算的措置をとりまして、そうして近いうちに予算に伴う法律案を提出すると言つているのであります。しかして予算的措置すなわち一年すえ置き、十箇年あるいは五箇年年賦の場合の分は、これは予算上は昭和二十八年度の予算に出て来る問題であります。
  107. 風早八十二

    ○風早委員 昭和二十八年度であろうが、今年度の計画においてこの予算を五十四億組むについて、すでにこの五箇年になり十箇年なりの償還計画というものはあるはずなんだ。それは何ら出ておらぬ。われわれが追究したためにこれから法案をつくるのだ。そういうのが政府の現在の立場であるということは明らかであります。これは政府が実際にはこの公債について、その現金化の何らの責任を感じておらないということを示す以外の何ものでもない。私はこういうインチキな、償還の規定も何も伴つておらないところのインチキな償還ということに対しては、絶対に政府のやり方に反対せざるを得ない。  さらに政府の具体的な所信をただしたいことは、等二には援護費の範囲の問題であります。もちろんこれは恩給法の適用を受ける旧軍人軍属の遺家族だけであると言われておりますが、その遺家族の中でも、特にこれは妻並びにその子供に限られているのでありまして、実際におじいさん、おばあさん——自分のむすこを当てにしておつたところのおじいさん、おばあさん、こういう人たちに対しては何らの措置が講ぜられておらない。これが第一です。さらに戦争犠牲者というものは、これは直接、間接、また実際直接と言える戦争犠牲者が実にたくさん数千万にわたつてあると思うのでありますが、特にその中でもたとえば広島の原爆の犠牲者、これらはまつたく義勇軍のような形であの任務を仰せつけられて、実際に警報が鳴つても逃げることもできない、こういう状態であの悲惨な犠牲にあつているわけであります。これは遺族大会等におきましても、るる述べられている。その死亡者だけでも二十四万人ある。たくさんのみなし子がある。こういう人たちが全然この対象からはずされているということは、これは政府の意図が一体どこにあるかを疑わせる。さらに勤労動員の学徒の問題にいたしましても、あるいは徴用工にいたしましても、また輸送員にしても、こういつたような人たちが無数にあつて、それぞれみんな犠牲を受けておる、死傷しておる、これは明らかに同じ戰死傷であり、戦争犠牲者の尤たるものであるのであるけれども、これに対しては何らの措置が講ぜられておらない。こういう無数の戦争犠牲者に対して、一体政府はどういう措置をとろうとしておるのか、この点について厚生大臣の答弁を要求します。
  108. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この点につきましては先日来何べんも申し上げましたごとく、戦争の犠牲者は実に多きに及んでおります。一度に全部解決することは、今日の財政上とうていできかたいところであります。しかもこの軍人遺家族の問題は、何と申しましても七年間放置されておつたのでありまして、これ以上長引かすわけには参りません。そこで、そのうち最もわれわれが早急に取上げなければならないと思いました軍人遺家族の問題を今度取上げたわけでございます。
  109. 風早八十二

    ○風早委員 しからば、いつこれらの戦争犠牲者全般に対する措置を、どういう方法で講ずるつもりであるか、この点をはつきり言つてもらいたい。
  110. 吉武恵市

    吉武国務大臣 その他の問題は、今後の問題として十分検討したいと思います。
  111. 風早八十二

    ○風早委員 そういう逃げ口上では、これは済まされない。戦争犠牲者は一ぱいいる。これらがみんな一体どういう要求出し、請願を出しておるか、百も御承知だろうと思う。これに対して今後の措置——これがすなわちわれわれがインチキだと言うことなんだ。われわれは、政府戦争犠牲者全般に対して何らの措置を講じる意図がないと断定せざるを得ないのもそれなんだ。口ではいろいろ言われます。こうやつて、とにかく国民から突き上げられて、しかたがないから今その場のがれに言つておる。しかしながら、実際にどういう措置を講じようとしておるのか、何らそれが示されておらない。将来のことを言つたところで何にもならない。これと同時にどういう措置を講じる、ということが政府の政策にはつきり出ておらない。これが一時のがれである、とわれわれが断定せざるを得ないゆえんなのであります。この問題が、特に恩給法の適用を受ける旧軍人、軍属だけに限つて今回やる、ようやくやれるようになつたと言われるが、実は三年間何をしておつた。自由党内閣は、今のように再軍備費が猛烈に出て来る前に、幾らでもやる機会はあつたはずだ。真に遺家族のことを考えておるならば、戦争犠牲者のことを考えておるならば、当然今まで幾らかでもこれに対して出す、またその措置を講じたはずでありますが、何ら講じておらない。再軍備をやらなければならない、軍事費をうんと計上しなければならない、そういう際になつてこれを出すということは、これはほかならぬ軍事費の計上とこの援護ということとが、何か切り離し得ない関係で出されたとしか考えられない。こういう点について、今まで政府は何らその所信を披瀝することができない——これはできないはずであります。実はこれはまた戦争をやらなければならない、そして日本日本人の負担で再軍備をやらなければならない、これではあまり不平不満が国民の間に沸き起つてつたのではやりにくいから、とにかくここでちよつと押ししずめて置こう——こういうしみつたれた金で、とうてい国民の不満憤激を押ししずめることはできない。政府はまんまと失敗しておる。こういう援護費の範囲問題につきまして、われわれは前から戦争犠牲者対策委員会その他において、その範囲は少くも実質上の戦争犠牲者全般に及ばなければならないということは、るる強調して来たところであるにかかわらず……(「うそをつけ」と呼ぶ者あり)うそではない。われわれは政府のこの実に不誠意きわまる、遺族のことなんかは何も考えておらないその正体を暴露したものであるとしか考えられないのであります。第三にわれわれはこの軍事費との関係について、これは特に池田大蔵大臣にただしたいのでありますが、池田大蔵大臣は今回の予算において、御承知のような莫大なる軍事予算を組んでおります。この軍事予算のほんの一部をさいただけでも、戦争犠牲者全体の今日の要求を全部満足させて余りあるのであるけれども、これに対して池田大蔵大臣予算措置を何ら講じ得なかつたことはもう周知の事実であります。この点に関してわれわれはこの軍事費の一部をこちらへ切りかえさえすれば、この援護費は十分にまかなつて余りあると思うのですが、池田大蔵大臣はこれをどう考えるか。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の第一点の援護を差向ける対象の問題でございます。すなわち戰争犠牲者はただいまのところは厚生大臣が言われておりますように軍人軍属に限つております。しかし範囲を広げることになりますると、徴用工の問題、学徒動員の問題あるいは原子爆弾の犠牲者も言われましたが、これを広めて行きますと、焼夷弾でなくなられた同胞も数十万おるのであります。そういうことになつて来ますと、ちつぽけな金ではできません。また財政的に見ますと、十万円、三十万円、百万円の保険をかけておつた者も、五万円で切られてしまつております。営々辛苦して貯金した者も金融機関再建整備法で預金を切られておる。これも戦争犠牲者であります。また在外同胞の引揚げのことを考えてみますと、なかなかこれもお気の毒な点が多い。政府はこういう戰争犠牲者のうちでも、特に軍人遺家族の方に対しては、早く援護の手を差延べたいと終戦後努力して来たのであります。この努力は毎国会で吉田総理から言つておることは、風早君よく御存じのはずであります。しかるところ独立が近くなりまして、われわれの熱望がかなえられたのであります。そこで数多い戦争犠牲者のうちで、特に軍人遺家族の方にまず手を延ばしたわけであります。在外財産の問題、引揚者の問題あるいはいろんな先ほど申しましたような戦争犠牲者に対して、どういう手を打つかということは、非常にむずかしい問題でございまして、そういうものに対する根本対策を講ずるまで遺家族の方については待てない。それでまず遺家族を取上げたことは、数日前からたびたび申し上げておるところであります。また軍人遺家族にしましても、ソ連その他に抑留されておる同胞を早くお帰しくだされば、われわれはもつと適当な措置も講じ得られる。こういうことをお考えになりましたならば、今言つたように、インチキとかなんとかいう問題は起らぬと思います。われわれ誠意をもつて施策に当つておるのであります。また厖大なる軍事費を計上しておるといいますが、軍事費を計上しておりません。たびたび言つておる。憲法をあなたは御存じでしよう。憲法には軍力は持つていかぬということがある。われわれは、軍備ではございません、国内の治安確保のため、必要な最小限度の費用であると見ておるのであります。われわれは、暴力革命を企図するような人がいなければ、こういう治安経費を組まなくても済むかもしれぬのでありますが、今の情勢では、どうしても最小限度この程度のものは組まなければならない。一方では遺家族の方にできるだけのことをやり、また将来これを擴大して行こうと思つておるのであります。
  113. 風早八十二

    ○風早委員 池田大蔵大臣は、引揚者や焼夷弾などでやられた人たちもまだほかにはあるのだと言われるが、まことにその通りだ。われわれはそれらを全部戦争犠牲者としてこれに対して援護要求しているわけです。ところがこれはなかなか調査がむずかしい、いろいろその程度もある、だからやれない、それがやれない理由になりますか。逃げ口上でしかないじやないか。二十六年度一億円の調査費を組んだというのは、何のための調査費だ。これらを調査するためではなかつたか。これはまことに聞き捨てならないことでありますから、大蔵大臣の答弁を要求したい。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 風早君は補正予算につきましては反対された方でございまするが、予算の内容につきましては御存じと思います。一億円の調査費は、煙夷弾あるいは爆撃でやられた国内の人を言つておるのではございません。軍人遺家族の調査費として、はつきり対象を予算言つておるのであります。一般戦争犠牲者の調査費ではありません。これは予算書をごらんになればおわかりと思います。
  115. 風早八十二

    ○風早委員 そこで池田大蔵大臣は、その戦争犠牲者に対する措置を講ずる誠意の何らないことを、みずから暴露している。なぜなれば、昨年この一億円を組んで、これは実は狭い意味の恩給法の適用を受ける軍人、軍属、遺家族だけの調査であると言われる。しからばもし池田大蔵大臣にして、この広汎な、非常にむずかしい、その他の戦争犠牲者、これらを全部調査するための費用を一体組んでおるか。もしほんとうにやるつもりなら、少くともこれに引続いて調費査を組まなければならぬのに、調査費一つ組んでいないじやないか。一体調査費を組んで、それからというような問題ではないはずだ。今まででも少くも実際にその援護はやれなくとも、調査くらいはやれたはずだ。それをばたばたと昨年一億円組んで調査をやると言うが、その調査はきわめて限られた範囲であつたと言う。しかしながらもしもほんとうに誠意があるならば、今度の予算に当然少くも調査費くらいは組んでしかるべきだ。しかるに何ら組んでおらない。結局すべてが逃げ口上であつて、今大衆の憤激をただちよつとしずめるための逃げ口上でしかないと思う。われわれがインチキと言うのは、それなんだ。どうです、これはその通りじやないか。まつたくインチキではないか。この点はいくら大蔵大臣がそういう強弁をしても、実際調査費一つ組んでないじやないか。さらにもう一つは、独立がいよいよ近づいたと言われるけれども、大衆は国民は、戦争がいよいよ近づいた、再軍備がいよいよ実際問題になつた、これしか考えておらない。そう受取つておるのだ。言葉が何であろうと、軍事費とつけようがつけまいが、事実軍事費なんだからしようがない。こういう実際の国民のじかの感覚というものを、まつたくただ一片の言葉でごまかそうとしたつて、ごまかせるものではない。十月の十八日、十九日の靖国神社の例祭で集まつた遺族大会がありますが、あのときの遺族の声、これはいろいろ方々にもはつきりそのままなまなましく出ておりますけれども、飯春美という十五才の娘さん、そのお父さんが坊さんであつたけれども、結局フィリピンにひつぱり出されて戦死しておる。この娘さんが言つておる。お母さんが、お父さんの写真を持つて行きなさいと言いました。拝むとき、お父さんの写真を出して、それを見ながら拝んだら、涙が出て、お父さんの顔が見えなくなりました。もう会えないのですもの、お母さんがかわいそうだと思います。お父さんの顔はよく覚えています。頭を坊主にして、たすきをかけて、……の娘さんはそう言つている。横浜市の中区の太田文治さん、これは六十九才、これも今度の遺家族の中に全然入つておりません。この人はやつぱりむすこを持つてつたのであります。商売をしていたけれども、三人のむすこはみんなよく働いておつた。長男の嫁と孫のおもりをして、私は非常に幸福は父親でありました。それもつかの間だ。三人のむすこは相次いで戦地にひつぱり出されて、商売はできなくなつた。そのうち長男はトラツクで、次男はテニヤンで戦死してしまいました。残つた嫁と孫と、私はこの哀れな一家の幸福を考えました。そして考え抜いた末に、負傷した三男を説き伏せて、長男の嫁と一緒にすることにしました。今はとにもかくにも幸福です。おちついた生活にもどつて来た。私は最後につかんだこの幸福だけは、もうまたと取逃がしたくないと思つている。それにつけても長男と次男は不幸なやつだつた。これがこの老人の声であります。兵庫県神戸市の村田てつさん、これもやはり六十四才のおばあさん。ガダルカナルでむすこに戦死されました。嫁と孫をどうしようかと思いました。嫁に行つている娘が私ともども引取ると言つてくれましたので、嫁は身軽にして再縁させました。娘のところですから、遠慮もあります。孫が娘の子供と同じ組ですので、事情を知らない子供たちから、お前のところはきようだいであるのに、何で苗字が違うのかとからかわれて、泣いて帰りました。こんなときには死んだむすこがいてくれたらと、年寄りのぐちが出るのでございます。私ももう年でございますから、どうなるかわかりませんが、孫のために長生きしたいと思つております。これがこの戦争犠牲者の偽らざる声なんです。こういう遺家族の声を聞いて、再軍備などということが一体どこから出て来るか、私どもは徹底的に再軍備に反対しているのです。それはこの遺家族の声に通じている。こういう遺家族は実は金の問題もありますが、金の問題だけじやない。むしろそれ以上に、もう一ぺんまた戦争になる、もう一ぺん再軍備をやられる、もう一ぺん自分の家族が兵隊に出される、これが一番心配なのです。しかも一方でこういう軍事予算を組んであきながら、いやわれわれは遺家族考えなければならない、何というインチキ、われわれはこういう政府のインチキに対しては、徹底的にこれを暴露し、そしてこの軍事費をやめさして、遺家族のために、また全戦争犠牲者のために、われわれはこの貴重なる国民の血税というものを、その方面へまわさなければならないと考えるのでありますが、政府はこういう戦争犠牲者全体に対する態度を考えておらないという一番確かな証拠は、彼らが軍事予算を組んでおるという、このことに現われておるということを申したいのであります。この点で池田大蔵大臣は、独立が近くなつたからということを言つておるけれども、これはまつたくインチキだということを、私は強く暴露しておきたいのであります。     〔発言する者あり〕
  116. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 成田知巳君。
  117. 成田知巳

    ○成田委員 昨日来の質疑に関連しまして、率直に、まじめな質問をしたいと思いますから、政府当局も、懇切な御答弁を願いたいと思います。なおけさの理事会で、あまり挑発的なやじはやらないということにきまつておるのですから、どうか自由党の方も静かに願いたいと思います。  最初に厚生大臣にお尋ねしますが……。     〔発言する者あり〕
  118. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 静粛に願います。
  119. 成田知巳

    ○成田委員 軍人及び軍人遺家族恩給の問題と、講和條約効力発生後のポ政令関係について、昨日来種々質疑応答があつたのですが、政府は盛んに、ポ政令廃止に伴う法律制定いかんによつて軍人恩給の効力が発生するかしないかということがきまるのであるという答弁をしていらつしやいますが、その答弁に何か一つ観念の混同があると思います。と申しますのは、いかにもポ政令によつて軍人の恩給というものが消滅してしまつておる、それを復活さすのである、こういうような考え方で答弁していらつしやると思いますが、ポ政令を見ましても、第一條に、軍人及びその他軍人に準ずる公務員の恩給は、これを給せずと書いてあります。すなわち請求権はある。しかしながら、これを支給しないのだということになつておるのでありまして、決して消滅したとは考えられないのですが、その点についてどうお考えになりますか。
  120. 吉武恵市

    吉武国務大臣 その点は昨日も申しましたように、勅令が出ておりまして、支給しないと停止されております。停止されておりましたならば、請求権の発生する余地はございません。このことは何度言つても間違いのないところであります。
  121. 成田知巳

    ○成田委員 どうもおかしいのであります。たとえば停止されておるというのは、一種のモラトリアムと思つております。従つて権利はあるのだ。請求権はあるのだ。ただその具体的な請求権ということになるか、あるいは基本的な請求権となるか、これは別問題でありますが、請求権はある。ただ停止されておるというだけで、権利そのものは消滅していない、こう考えなければならぬと思いますが、どうですか。
  122. 吉武恵市

    吉武国務大臣 勅令の中にははつきりと支給せずと書いてあります。支給せずと書いてあれば、請求権の発生する余地はございません。
  123. 成田知巳

    ○成田委員 消滅しているかどうかということを聞いておるのです。
  124. 吉武恵市

    吉武国務大臣 恩給につきましては、消滅したとは言つておりません。停止をされておるとたびたび申し上げておるわけであります。
  125. 成田知巳

    ○成田委員 そこで、消滅していない、権利はあるということをお認めになつたと思いますが、そういたしますと、講和條約の効力が発生して、ポ政令が失効したその後の軍人恩給については、新しい諸法律でこれを支給するかしないかということを決定されると思いますが、講和條約効力発生前の、昭和二十一年以来の、発生前の停止された権利というものは、新しい法律でこれを制限したり、あるいはこれを支給しないというような処置を講ずることは、いわゆる、昨日から問題になつている既得権の侵害になると、こう解釈しなければいかぬと思いますが、どうですか。
  126. 吉武恵市

    吉武国務大臣 勅令の問題につきましては、けさほどもたびたび申し上げて、成田さんお聞きにならなかつたのか存じませんが、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案というものが、今提案されております。この恩給の停止に関する勅令は、このポ勅に基いて出ておるのであります。従つてとのポツダム宣言の受諾に伴うポ勅が廃止になりまするについて、その二項において、「勅令第五百四十二号に基く命令は、別に法律で廃止又は存続に関する措置がなされない場合においては、この法律施行の日から起算して百八十日間に限り、法律としての効力を有するものとする。」とあります。この規定に基きまして、もしこれが通過いたしますれば、この期間内は現在通り支給されないことになるのであります。
  127. 成田知巳

    ○成田委員 午前中から聞いておりましても、あえて質問したのは、そこなんでありますが、今用意されております法律案というのは、講和條約効力発生後ポ政令失効後の措置なのでありまして、失効前の問題について、これを否定することはできないという、そこを私はお尋ねしているのです。
  128. 吉武恵市

    吉武国務大臣 現在までは、勅令において支給せずとなつておりますから、権利は発生しておりません。なおこの法律が通りますれば、この法律に定めた期間内は同様であります。その後の問題をどうするかということにつきましては、この期間中にまた別途の処置を講じたいと思つております。
  129. 成田知巳

    ○成田委員 ポ政で支給停止されておるから、権利は発生していないというのですが、ポ政令の第一條には給せずと書いてある。第八條に、たとえば戦犯なんかで裁判に付して罪が確定した場合には、権利を失うと書いてあります。この解釈から行きましても、当然一般軍人恩給というものは権利を失つていない、権利はある、こう解釈するのがほんとうだろうと思います。いかようにお考えでしようか。
  130. 吉武恵市

    吉武国務大臣 権利とは、これらの法律に基いて給與を受くるの権利であります。この給與を支給せずと明文にうたつてありまする以上は、権利が発生するはずはございません。
  131. 成田知巳

    ○成田委員 どうも水かけ論になりますので、次の問題に移りたいと思います。それは先ほど来問題になつておりました、生活保護法適用と今度の援護関係でございますが、援護を受けた範囲内において生活保護法を減額する、これに対してはできるだけ無理のないように措置するのだ、こいいう厚相の御答弁だつたのでありますが、これに対して、昨日民主党の委員からの質問に対しで、特別な措置というものをお考えになつていないようでありますが、ただ無理のないようにするという厚相のお気持だけでは、この問題は片づかないのであります。たとえば指令を出すとか、示達を出すとか、こういうような具体的な措置をおとりになる方針があるかどうか承りたい。
  132. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この点につきましても、昨日来、今朝来たびたび申し上げたところでございます。厳格におつしるならば、差引かなければならないのでありましよう。しかしながら厳格に差引きましては、遺家族の方の中には、お困りの方もあろうから、その点は十分考慮しながら運用する、かように言つておるわけであります。昨日も御質問がございまして、その運用の面については、別に法律に出すかというお尋ねがございましたから、それは法律とかあるいは省令とかいうものを出す考えはない、運用の上において考える、かように申し上げております。
  133. 成田知巳

    ○成田委員 運用の面で考えるということは、何らかの行政措置をおとりになると、こう解釈していいと思いますが、たとえば通達を出すとか、示達を出す、こう解釈してよろしゆうございますか。
  134. 吉武恵市

    吉武国務大臣 その運用の面につきましては、ただ私がそう思うだけではいかないから、実際の面にわたる人々を呼んで、それに十分指示をするということを重ね重ね申し上げているわけであります。
  135. 成田知巳

    ○成田委員 重ね重ねと申しますが、初めて聞いたのですが、ただ関係者を呼んでそういう指示をされましても、これは末端に徹底しないと思うのです。その一例でございますが、今度の予算案を見ますと、未復員者給與法の関係は、生活保護法と同じように減額されている。約三億減額されている。これを事実として認めてよろしゆうございますか。
  136. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 今回の生活保護法を見ますと、未復員者給與法に乗りかえるという方針でございました。これの減額のことについては、先ほど厚生大臣が御答弁した通りであります。従つてその内容はかわつておりません。ただ例年より減つておりますのは、復員してお帰りになつた方がありますから、当然のことであります。
  137. 成田知巳

    ○成田委員 未復員者で約三億円減りまして、生活保護法関係でけさ岡議員が質問しましたときに、約四億円の減額だ、こういう御答弁がありましたが、予算説明書を見ますると、この制度に伴つて、未復員者給與費、生活保護費等、二十五億八千幾らの減少になる、こう書いてあります。今河野主計局長は、未復員者の数が少くなつたから減少したと言われましたが、予算説明書では、この制度に伴つて、すなわち援護費という援護制度というものに伴つて三億円減少しているというその点は河野主計局長の御答弁でよろしゆうございますが、四億円という数字がはたして正しいのか。あるいは約二十一億円になりますか、生活保護の減額を来した。どちらの数字が正しいか。ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  138. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これもけさほど申し上げましたように、生活保護法から減額いたしました額は四億なにがしでございます。これも厳格に生活保護法の方から差引きますと、まだ相当額になるわけであります。しかしその点は私がたびたび申し上げまするように、厳格にやるべきではないから十分に運用の上に考慮するということで、一応四億といたしております。しかしながらこれにつきましては、実際の面にあたりまして四億減額になりますかどうかはやつてみなければわかりませんが、運用の面においては、先ほど来申すように十分気をつけながら運用いたす、こういうことであります。
  139. 成田知巳

    ○成田委員 予算説明書で約二十五億円未復員者給與費、生活保護費の減額になつています。これだけ減額されましてなお運用の面で十分心得てやる、また関係者を呼び寄せて指示すると言われましたが、今までの未復員者の給與につきましても、この点は非常に機械的な取扱いを受けて、未復員者給與法の当然適用を受けるべき者が受けないで、戦争犠牲に苦んでいるという人がたくさんあるのです。これは厚相は下情を御存じないからそういう御答弁になる。單に係員を呼び出して、一応の訓示をすれば間違いなくやれというような官僚的なお考えを持つていると思う。私たち社会党に参りました二、三の例を——一つの障情書が参つておりますから、ひとつ読んでぜひ参考に供したいと思います。  これは末復員者給與法の適用を受ける際に、公務に基因した負傷は、これは官費で療養の給付をするということになつておる。ところが一片の紙上の調査で公務と見ない。従軍中に負傷しまして、それからリユーマチスが発生した。これは公務じやない。こういうことで現在両足が動かないで呻吟している人の訴えて来た悲壮な手紙ですが、これについて厚相の御所見を承りたいと思います。読み上げてみます。名前は略します。  私は昭和十九年五月五日三十八歳の身で海軍水兵に召集入団して鹿児島県大島防備隊にいてしごく元気で勤務中、昭和十九年九月二十九日隊長海軍大尉の命により荷揚げ作業中、高角砲の台輪のロープ切断のため身の振り場のないために、左足関節部に落ちかかり歩行不能となり、防備隊医務室にて受診の結果、左足関節部骨折挫創傷と診せられ、入室し休業を受け療養に専念中、十六日目膝関節が急に痛み出し、当係り軍医長の診察を乞うと、診断もしないで、次のように言つた。貴様の関節の痛みはそもそも漫性の横着炎というやつかいな病気だ、左足の傷も全快しておるからすぐ本日より全治出勤しろという惨酷きわまる診断を受ました。患者の療養の経過は、入室、休業、軽業、治療出勤、全治出勤という順序になつておりましたのに、私の場合は入室から一挙全治出勤という診断でございました。私は心の中で泣いた。このからだで便所へ行くにも杖なくしては歩行もできないので、何で出勤ができるはずがありましよう。この病む足がなぜ軍医長にわからないのか、しかし上官の命は朕の命のと心得、絶対服従しなければなりません。泣く泣く診療室を出ると、待つてたかのように、衛生兵が目を丸くして私を呼びとめ、貴様におれが気合薬を入れてやる、軍医長の命令だ、文句なかろう、この軍医長の処方箋を見よと差出された紙切れには次のように書いてあつた。この者は慢性横着炎発病につき、この病気には気合薬より他に良法はないからよろしく頼む、こう書いてある。海軍の気合薬とは、大東亜戦争完遂、精神鍛錬と書いてある大きな角のある棒でありまして、この棒で腰を殴打することであります。彼が私に対する気合薬というものは、それはそれは筆にも口にも書き表わすことができぬ殴打でありました。健康体のときでもなかなか悲痛きわまるものでございますのに、ましてや患者の身の私には殺されたがましかと思うくらいでございました。医学上患者が関節の痛みの診察を乞うと、医者は診断もしないで慢性横着炎だのという病名がつけられるのでしようか。患者をバットでなぐれば、関節の痛みがとまり、良薬と医学上認めておるのでありましようか。社会党より立つて十分お聞きください。私を一生取返しのつかない不具者に至らしめた重大原因はここにあると申し上げなければなりません。それから身を引きずりながらも兵舎に帰り、伍長室に行き、退室屈の報告をしますと、ここにも先記軍医長の処方箋がまわされてありました。また私は驚きました。病舎でさんざん気合薬をちようだいいたしているのに、今また隊の事務係兵になぐられることを覚悟いたしておりますと、係兵筒井水兵長はしごく温厚にして私の報告した全治出勤の言葉にむしろ疑念を抱き、君のそのからだでしよせん出勤ができるはずがない、軍医も軍医だ、なぜ全快するまで治療しないのだろうかと軍医の医療の怠慢を恨んでくれました。このときばかりは私は思わず熱い涙を流して感謝せずにはおられませんでした。しかしいくら兵舎内の休業を受けたといたしましても、いつまでも続きません。軍医長の休業証明書がない限りは、衛生兵下士官や当直将校にしかられます。貴様はどこが悪いか、悪ければ軍医の証明があるはずだ横着休業だ、こうしかられました。私は心の中で決心しました。どんなことがあろうとも二度とかの軍医長なんかのやぶ診断を受けるものか、倒れて死んでも出勤してやろうと決心して熱のある足を海水でひたしたタオルで巻き、足の関節の動かないのをがまんして、びつこを引きながら悲壮な思いで陣地構築に作業すること二日、遂に行き倒れの身となり、意識不明となり……あと長いので省略いたしますが、その後転々と内地の海軍の療養所で療養しておつた。とうとうこの関節炎は慢性化しまして、両足が立たなくなつた。これに対しまして厚生省当局は、これは公務に基因するものじやないということを、一片の書類の上の審査で決定しておるのであります。厚生省の医者に聞きますと、この関節リユーマチスというものが、打撲傷から発生するか、しないかということは、現在の医学じやわからない。だから公務であるとも、あるいは公務でないとも言えない。しかし予算が足りないから、こういうものを公務と認めるわけには行かない、こう言つておる。また今度三億も減額された場合に、はたしてこういう人々が救済されるかどうか。厚相が單に係官を東京に呼び集めて一片の訓示をやりましても、予算関係考えましたならば、こういうかわいそうな戦争犠牲者というものは救済されないと思いますが、こういうことのないように厚相はおやりになる自信があるかどうか、承りたいのであります。
  140. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ただいまの件は、取調べませんければ何とも申し上げることはできませんが、公務であるということがはつきりいたしますれば、その取扱いをすべきものであり、またいたすつもりであります。  なお先ほどお尋ねになりました点に誤解の点があつたようでございますから、申し上げておきますが、未復員者給與の滅が十八億三千九百万円余と書かれておりますが、これだけは減額になつたのじやなくて、別に一まとめにいたしまして、遺家族援護に関する経費の中に、留守家族援護費として、同じ額十八億三千九百万円余が掲げられておりますので、これはただ形式上でございまして、実質的減額になつておりません。前年度と比較して三億余り減額になつておるのは、先ほど主計局長が申し上げました通り、実際の数が減つておるからであります。
  141. 成田知巳

    ○成田委員 次に大蔵大臣にお尋ねします。交付公債の融通性の問題についてきようも質問がありましたが、担保に供することは今のところ認めてない、研究中だ、こういうお話でありました。たとえば国民金融公庫の問題は御考慮中ということですが、一般の金融機関あるいは私人、こういうものに対して質権を設定し、担保に供することもお認めにならない方針でございましようか。
  142. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまこの問題は検討いたしておるのであります。融通性の国債にするか、あるいは非融通性にするか、これは金融関係との関係もありますので、これは事の性質上、十年というのを五年に縮めておる。実際お困りの方には生活保護費で行く場合もあります。そうしてこの償還につきましても特例を設けたい。融通性の問題は検討いたしております。
  143. 成田知巳

    ○成田委員 融通性の問題は今御検討中というのですが、従来の恩給証書を見ましても、これはいわゆる脱法行為だとは思いますが、白紙委任状をつけまして、その恩給の受給権利を渡して行く、いわゆる質権の設定を脱法的にやつているわけです。これが世上通例として行われていることは御承知と思うのですが、たとい法律で禁止しておりましても、社会の必要というものはこれを押えることはできないのでありまして、こういう点から考えましたならば、特に戦争遺家族援護でございますから、そういう暗い方法をとらないで、正面から融通できるような措置をおとりになることがよいのではないかと思うのでありますが、それに対する御方針を承りたい。
  144. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見は承つておきます。結論は申し上げかねます。
  145. 成田知巳

    ○成田委員 昨日木村法務総裁は、今度の関係予算金額があまりに僅少だから、国家補償とは言えない、従つて援護だ、こういうことをお言いになつたのでありますが、しかしながら、援護にいたしましても、昨日来問題になつております生活保護法関係、未復員者給與法の関係考えましたならば、援護とも言えないと私どもは思います。戦争犠牲者並びに戰死者の救済が当面かつ緊急の課題であるということは、申すまでもないのでありまして、その救済には私どもはあくまでも社会保障でこれを救済しなければいけない、こう主張しているにもかかわらず、政府は社会保障はできない、国家補償はできない、援護だと言われる。その援護も、すずめの涙程度少額金額でありまして、援護どころか、お燈明料にもならないという感じを私ども受けるのであります。にもかかわらず、盛んに援護だ、援護だと政府言つていらつしやる。明快な頭を持つていらつしやる大蔵大臣厚生大臣が、これだけの金額援護ができるとはお考えになつていないと思います。にもかかわらず、なおかつ援護だ、援護だと言われるところには、何かためにする意図があるということを私どもは推察せざるを得ないのであります。と申しますのは、この援護費を計上する閣議の経過を見ましても、自由党では比較的進歩的だといわれている橋本さん、さすがに今回の予算国家補償じやない、こういうことを言つて、遂に厚生大臣を辞職されたのでありますが、しかしながら、この橋本厚生大臣の声明にも私どもはまだ納得できない点がある。進歩的と申しましても、自由党の進歩的には限度があると思います。と申しますのは、橋本厚生大臣はその声明にこう言つている。援護費をお燈明料程度でごまかしては、これではたして祖国防衛ができるか、こう言つているのです。ここに今度の援護費の性格というものを私どもはうかがい知ることができると思う。またこの予算編成の過程におきましても、当初政府原案では、これを内政費から切り離して、防衛支出金とか、安全保障費とか、あるいは警察予備隊費、これらのものといつしよくたにして、予備費としてこれを計上しようとしておる。こういう経過から見ましても、今回の遺家族援護費二百三十一億というのは、実は社会保障でも何でもなく、また援護にも値しない。すなわち援護と申しましても、実は軍事援護費の性質を帶びた、再軍備、傭兵への伏線であると私どもは言いたいのであります。すなわち今回の援護費は、戦争犠牲者にあめをねぶらして、国民輿論を傭兵、再軍備の方向へ導くところの伏線でありまして、旧軍人の最近盛んに行われている追放解除と軌を一にしている再軍備への道である、こう私ども考えるのであります。そのためにこんな予算になつている。これにつきまして、はたしてこの予算援護ができるかどうか、明確に御答弁願いたいのであります。
  146. 吉武恵市

    吉武国務大臣 援護ということにつきましては、昨日木村法務総裁から言われた通りでありまして、国家補償というほどの予算でないから、援護ということでさしあたり出発する。援護でこれが十分かというお尋ねでございますが、私どもはこの点につきましても、援護としても十分だとは思われない。しかしながら今日の日本財政上ではやむを得ないからということをしばしば申し上げておるところであります。これが再軍備への道であるかないか、そういうことはわれわれは毛頭考えておりません。橋本前厚生大臣がどういうことを言われましたか、それは橋本君自身のことでございます。政府は関知いたしません。
  147. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 世耕弘一君。
  148. 世耕弘一

    世耕委員 私は與えられた時間が二十分でありますから、その範囲内において簡單にお尋ねいたしますから、どうぞ関係閣僚も簡單に御答弁をお願いいたしたいと思います。  まず第一にお尋ねいたしたいのは、昨日の新聞にも出ておつて御承知かと思いますが、日本の国内において原爆の防空演習が行われることが発表されております。しかもその中に細菌戦に対する防空訓練もやるということになつております。過般アメリカではニューヨークその他において原爆に対する防空演習が行われておることは、ニュース映画で日本にも輸入されてよく承知されておるのであります。さような場合に司令部は別といたしまして、厚生省並びに関係閣僚は何か対策がなければならないのではないか、なぜそういうことを言うかというと、皆さん御承知のようにこの間横浜にB二九が落ちた。その前には立川に落ちているのです。もし敵機が侵入して来るというと、日本の上空で空中戰がないということはだれが断言できるか。しかも世間では多く原子爆弾のことを気にしているようだが、私は細菌戦の方がもつとこわいと思う。一例を申しますならば、専門家の説を聞くまでもなく、常識的に判断いたしましても、東京都民を一週間以内に全滅する方法は細菌戦術にあるでしよう。大きく判断いたしますとさような場合にどういう対策があるか、細菌爆弾が投げられてからさて対策を立てるのでは、私は手遅れではないかと思う。そんなことはよけいなことじやないか、絶対にそんなことはないと言えばそれまでです。ところが御承知のようにB二九がすでにわれわれの近くで爆破しておる。しかもそれが今日数回に及んでいるではないか。かようなことを考えてみますと、再軍備がいいとか悪いとかいうどころの騒ぎではない。そういう場合にはどう対策を立てるかということを今考えておいても早過ぎはしないと思う。この点について厚生大臣は何かお考えがあるかどうか。はなはだとつぴなような議論でありますが、現実の問題であります。御用意がなければ研究をしていただき、また何かお考えがあればこの際お話を願いたい。遺家族の問題を御心配願うことも非常にけつこうですが、もつと健康な、生きた人間がどういうふうになるかという問題が先の問題として出て来ているのであります。非常に重要であります。この点について御所信のほどを伺つておきたい。大蔵大臣もかような場合の対策についてはあまりそろばんをはじかない。ひとつ御援助願いたいということをお願いするのです。
  149. 吉武恵市

    吉武国務大臣 細菌戦に対する防空演習が行われるということは、私まだ実は聞いておりませんでしたが、この問題は十分研究をいたします。
  150. 世耕弘一

    世耕委員 それは少し無責任です。ゆうべの新聞をごらんなさい。一つの新聞ではございません。私の見たのは読売新聞だが、朝日新聞にも出ておる。ほかの新聞にも出ておるはずです。新聞が報道するだけではない。新聞の先に厚生大臣は頭をひねつてくれなければならぬ問題であると思う。現にアメリカのごときはもう真剣に訓練させておりますよ。これはなぜそこまで頭が働かなかつたかということをあなたに追究する意味ではないが、御考慮を願いたい、こういうことをもう一度お願いいたします。新聞をもしこらんにならなかつたら、もう一ぺんゆうべの新聞をごらんください。(笑声)(「笑いごとではない」と呼ぶ者あり)おそらく新聞はこういう重大な発表を無責任でやりはしないと思う。それはどうかというと、「東京地区米軍属に実施、米極東軍総司令部は四日、東京地区の米軍属とその全家族に対して原爆と細菌戦に対する防衛手段の講習会に出席するよう命令を発した。講習会は二月と四月に開かれ、極東軍将兵にも同様訓練が行われる。総司令部スポークスマンは、これらの講習会は化学兵器、細菌戦術及び原子力攻撃の際の損害を最小限に食いとめるための様準的訓練が目的であると述べている。」とUP・共同で発表しているから、まんざらいいかげんの記事ではないと思う。  次にお尋ねいたしたいのは、この間この席でも少しお聞きしたのでありますが、最近大蔵大臣交付公債の問題でいろいろ御心配くださつておるそうです。この点については私も要望したいことがありますが、時間がございませんから、他の機会に譲ることといたします。ただ援護関係のことで医療手当が十分まわつていないのじやないかと思いますが、これについてどういろ方法で心を砕いておられるか、この点はいかがでありますか。
  151. 吉武恵市

    吉武国務大臣 遺族の方の医療につきましては、別に医療として予算的措置を講じておりません。これは年金その他でまかなうという建前になつておるのであります。それから傷病者の分で現にまだ療養中の者につきましては、これはもちろん療養所等におきましてできるだけの処置を講じておる次第であります。
  152. 世耕弘一

    世耕委員 たとえば年令について差等をつけることはどうかと思いますが、生活能力のない者、年齢からいつて七十以上の者、しかも世話する者がだれもいない。そうして生活の保障が十分與えられない者に対して、何か特別なそういう事情の者をば総合して、養老院とか何か特殊な施設を当然やつてやるという思いやりがあると思いますが、そういう点について何か予算的措置について考慮を携われておるかどうか、お伺いいたしたい。
  153. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今のところそのために特別の予算措置は講じておりませんが、けさほども高橋委員から御意見の点等もございましたし、十分に考うべきものだろうと存じます。
  154. 世耕弘一

    世耕委員 これは大蔵大臣にちよつと簡單に触れてお尋ねいたしますが、たとえば年齢の上からもう八十になつて余命幾ばくもない、ところが交付公債をもらつたが、実際の事情からいつて、どうもその交付公債が効果を現わすまで生きるかどうかわからないというような人もある。そういうふうな場合に、何か情のある例外的な処置が講じられないものであるかどうか、おそらく大蔵大臣はそういうところまで神経をお使いくださつておると私はかように信じております。よけいなことですけれども大蔵大臣説明はときどきつけんどんであつて、あつちこつち誤解を生じていますが、しかしながらあなたの行動なり、これまでの方法を見ますと、むしろあなたの立場としては相当行き届いた処置をしてくれておることと私は好感を持つて迎えております。またある意味においてそんなことを言つたら悪いかもしれませんけれども大臣の中には変なうわさがあるにかかわらず、あなただけはそういう悪いうわさを私は聞かない。そういう点から見まして、どうぞ年いつた老先のない人に対しては、何か情のある処置をとつてつていただきたい。ところが大臣はきめても、末端において狂つて来ることがあるのだから、そういう点をひとつこの機会に明らかに発表していただいたらけつこうだと思います。
  155. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点はもつともな点があるのでありますが、八十になるお方の生活程度、その他できまるべき問題だと思います。相当の資産家でございまして、他に財産があつて相続税のかかるような方に、特にこれを早く償還するというようなこともいかがなことかと思う。しかし非常に楽でない生活をなさつている方につきましては考える余地があるとしても、十年償還のものを、あなたは八十で老先短かいからというので、金持の方に五年のうちに返したら、人をばかにしていると言われるかもしれませんから、実情に沿つて措置したいと思います。
  156. 世耕弘一

    世耕委員 おそらく金持の人にそういう特別な扱いをしたら、返上して来るかもしれません。私の言うのはほんとうに困つている人です。老先短かくて生きる楽しみのない人には情ある処置をとつていただきたい。これは法律一点ばりではない御処置を願いたいということをお願い申し上げておきます。  次にもう二点ばかり簡單にお尋ねいたします。この議場においても経済問題についていろいろ論議されたようであります。ごもつともな、論議だと思いますが、精神的方面にもう少し政府として遺家族を優遇する道はないか。ある遺家族のごときは、むしろ精神的な優遇が非常に欠けている、私たちは金銭問題じやないということを痛切に訴えています。私はこれはもつともだと思う。こういう点について私は時間がないからつけ加えて申します。総理は今日来てないからはなはだ残念ですが、総理にも一ぺん聞いていただきたいと思つていた。この間大磯の総理の私邸の前で一晩野宿しております。そしてその説明を聞きますと、私邸だから、しかも日曜は会わぬというので、百人足らずの者があの私邸の寒空の下で野宿しておるということが新聞に出ておつたが、まさかうそではなかろうと思う。ところが翌日官邸で会つている。もし翌日官邸で会うというならば、なぜ明日会うから引揚げてくれという親切さを一言づけ加えてやらなかつたか。あの中にもずいぶん老齢な人がいる。かぜ引いていた人もあるはずだ。そういうような思いやりというのが政治の一番大切なものじやないか。なぐつてお金をやるよりも、さすつてわずかなお金でも包んで持たすところに情があるじやないか。こういう点が欠けていやしませんか。潤いのある政治がそこから生れて来なければならない。遺家族といえども日本人である以上、同家の困るということはよく承知しておる。けれども扱いのいかんによつては不満も出て来るのであります。総理自身がそういう薄情な取扱いをしたのか、周囲の者が忠義ぶつてさようなことをしたのか、私は警告を発してやりたい。これは今度ばかりではない。去年の夏千鳥ヶ渕で一週間ハンンガー・ストライキをやつたでしよう。あのときも総理が一言、君らの言うことはまことにごもつともで同情に値するけれども、国際関係もあるからそう簡單には行かぬ、しかし君たちの要求はよく腹にしみ込ませて、その目的の達成するように努力するから、一応まかしてくれという情のある言葉をなぜかけてやらなかつたのか、吉田内閣にこの情が足りないのです。ここなんです。これが一つ。  もう一つは、時間がありませんから言つておきますが、精神問題に触れますが、陛は各地方にお出かけになつておられます。宮中で私が拝見いたしました陛下のお歌の中で、陛下が地方巡幸になる目的がどこにあつたかということが知られるお歌を二、三拝見して、私は感を深くしたのでありますが、もう一つ私がこの際希望を述べたいのは、各地で県なりあるいは各県が連合して慰霊祭でも行う場合は、できれば陛下の行幸を仰ぎたい。これはおそらく遺家族ひとしく希望するところではないか。そらでこういうような点について、あなたは陛下に御進言という言葉は適当でないかもしれぬが、何か言上する御意思はないか。そういう必要はないとお思いになるか。この点がもう一つ聞いておきたい点なのであります。
  157. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今日まで遺家族の方に対し精神的に何らの処置のできなかつたことは、私どももはなはだ遺憾に存じておるわけでございます。この点は特に軍人なるがゆえにといつて特別の取扱いをすることのできなかつた事情を御了察いただきたいと思つております。独立のあかつきにおきましては、この点は最も注意すべき点でございますので、御指摘の点につきましては十分考慮いたしたいと考えております。
  158. 世耕弘一

    世耕委員 では最後にもう一点だけお尋ねして私の時間を終ることにいたしますが、衛生思想普及について何か新しい対策がございますか。今日は金が足りないのです。そうして物資も豊富とはいいながらなお足りない。この際病気にかからぬ方法国民に教えてやらなければならぬ。予防ということが必要なんです。厚生大臣はその道のくろうとですから、何か新しい構想がなくてはならぬと思うので、もしさしつかえなかつたらお聞かせを願いたいと思います。それからもう一つつけ加えてお尋ねしておきたいのは、これは農林大臣が来られたらついでに質問しようと思つたのだけれども、やめますが、鶏の食えないような米を配給しています。最近はややよくなつたが、配給された米を一升よりわけてこらんなさい。食えないのが相当残ります。これが寿命を縮めるもとであり、がんのもとであり、腎臓がん、肝臓がんを起す原因になる。(笑声)これは笑いごとじやないですよ。日本人くらい原始的な食糧生活をしているものはありませんよ。私は時間がないから申し上げませんが、こういう点について厚生省の所管でぜひとももつと詳しく研究しておいていただかなければならぬ。そういう予算をいただきましたか。そうでなかつたら、ひとつ大蔵大臣と相談してそういう予算を十分とつておいてもらわなけれどならぬ。お互い国民の文化の基本、生命の基本、日本の今後の国力増殖の根本であり、あらゆる基礎が食糧対策から出発する。しかもそれが総合的な食糧問題から端を発するということを私は極言いたします。そういう点について何かお考えがあればこの際承つて引下ります。
  159. 吉武恵市

    吉武国務大臣 予防衛生の必要な点はごもつともでございまして、戦後におきましては特に注意してやつておるつもりでございます。何か新しい点と言わましてもちよつと持合せありませんが、この点は戰前に比較いたしますれば、十分注意をしてやつているつもりでございます。今後ともあとう限りの施策を講じたいと思います。
  160. 世耕弘一

    世耕委員 何か構想を聞かしていただけると思つたのだが、少しばかり失望いたしました。けれどもそれは私の質問が少し早過ぎたかもしれぬ。幸いに賢明な大蔵大臣がそこで聞いておいてくれたのですから、どうぞよく御協力くださいまして、これは笑いごとでも何でもございませんから、真剣に考えていただかなければならぬ。  最後の言葉として私が注意を喚起したいことは、お互いの着たこの洋服は空気と石炭で製造されている。この議事堂はりつぱな建築であるが、衣食住のうちの衣と住だけは文化的な進歩を遂げています。ところが食糧は神武天皇と同じものを食つている。ここに食糧対策の誤りがあるのです。私はこの機会に、科学的な分析をしてほんとうに御共鳴願いたいと思うのでありますが與えられた時間で他の方に御迷惑がかかるから申し上げません。どうぞ研究費をしつかりとつていただいて、新しい総会食糧対策を確立していただきたい。ドイツ人はじやがいもが主で今日の体力を維持している。御承知でございましようが、最近日本で輸入した米はおそらくイタリアの米だ。そのイタリア人はマカロニを食つている。そして日本へ米を輸出している。われわれはかすを食つている。イタリア人に聞いてごらんなさい。米を食つた方が太るか、栄養的価値があるか、マカロニの方が栄養的価値があるか、ということを自由党の諸君の中にもまじめに研究されている方があります。私はもう少し食糧問題について科学的な分析を熱意をもつてしていただきたいということをお願いしてやまないのです。ただ土地を開くとか、どこの土地を掘つて何を植えるとか、そんなことはもう原始的な考え方です。それはちようど原子爆弾が製造されるときは竹やりを削つていたと同じようなことで、そういうことでは私は日本文化の確立はできない、かように考えております。どうぞ賢明な閣僚諸君の特別な御配慮と、日本文化発達のために御考慮あらんことを希望しておきます。
  161. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 石野君。
  162. 石野久男

    ○石野委員 今回の予算で旧軍人、遺家族等に対する援護費が出まして、それが昨日来特に本委員会で問題になつておるのでありますが、援護費の問題については、大きく戦争による災害者に対する援護という意味ではなく、ただ旧軍人ということについての問題がいろいろと論議されています。それに対して大蔵大臣あるいは厚生大臣から、それとも考えるけれども、現状はやむを得ないのだというお話をしばしば聞いておるのでございますが、ただいま厚生大臣からも世耕さんに対する答弁の中に、特に旧軍人に対して手当をするということが今までできなかつたのだが、独立後においては考慮したいというようなお話がありました。そこで私お尋ねいたしますが、独立後においてただ軍人だけでなく、全体としての戦争災害者に対して政府は何らかこの援護に類するようなことを特に考える御意思がおありかどうか、お伺いいたします。
  163. 池田勇人

    池田国務大臣 戦争犠牲者ということにつきましては、先ほどから成田君の御質問の際に申し上げた通りでありまして、相当広範囲にわたつておるのであります。われわれ軍人遺家族、あるいは傷痍軍人の方々について措置をとりまして、しかる後に軍人恩給法に基くものについて審議を始めよう、こういうのであります。そのほかの戦争犠牲者に対してどうするか、たとえば在外財産の問題とかいろいろ出て来るのであります。これにつきましては、さきに国会で、今の財政上問題があり、憲法論も闘わされたのでありますが、ただいまのところ在外財産について国が補償するかどうかという結論には参いておりません。私が今具体的に策をとらなければならぬと思うのは、戦争犠牲者のうち、軍人関係のものを考えておるのであります。
  164. 石野久男

    ○石野委員 厚生大臣のお考えは。
  165. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ただいま大蔵大臣お答えいたした通りであります。
  166. 石野久男

    ○石野委員 現状ではまだ考えるところまで至つていないというお話でありますが、この問題はやはり全体としての社会保障制度の建前に立つて考えていただくのが、国の政治の立場からして妥当であろうと思うのでございます。従つて今後は、今後だけでなく、今回の予算案の中にもそういう考え方が強く盛り込まれなければならぬというふうに私ども考えております。そこでたまたま取上げられておりまするこの百七十四億の旧軍人遺家族に対する援護費の使い方についても、もう同僚議員から質問がありましていろいろの点で明白になつておりまするが、具体的にこれが実施されました場合に、はたして政府が意図しておるように、それらの旧軍人遺家族に対する真の援護になり得るかどうかということが問題になつて来ると思うのであります。先ほど成田委員からもいろいろ同じような質問がございましたが、たとえばこのような措置がとられますと、特に傷害を受けて現に入院をしている方々などについては、思わざる生活困窮状態の出て来る場合がしばしばあるのであります。卑近な例で申し上げますと、箱根の国立療養所等において療養している諸君などは、これはもう厚生大臣御承知と思いますが、脊髄神経をやられている方々なのであります。これらの諸君は、この年金制度等が出て参りまする結果として、むしろ毎月毎月の生活に約三千円くらいずつの赤字が出て来るではないかという心配があります。そのために、先般国会に対しても陳情が参り、そこの医務課長あるいは医療課長等もつき添つてその実情を訴えておりました。そこで私はこの問題に対して、先ほど厚生大臣は、これらの問題をはつきりするために法律上の手段は今考えないが、その当路者に対して生活保護等の問題についての指示をするつもりだというお話でございました。この指示するということは、これらの人々にとつて非常に不安であり、また実質上それらの人々の生活を安定させることになるかどうかわれわれ疑問に思うのでございますが、指示することによつて、はたしてそういう人々生活困窮といいますか、実質的な援護が確保される方法等もうすでに構想としては持たれているかどうか、御所見を伺いたいと思います。
  167. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この点につきましては、先ほども申し上げましたように、運用の面において十分気をつけて行くつもりでございます。私過日箱根の療養所にも参りまして、実際の患者の人あたりにも会いまして申し上げまして、ある程度安心をされておるわけであります。これは一人々々につきまして、やはりほんとうに真実な気持でもつて当らなければならない問題であります。ただ法律で一律にどうするこうするという問題でなくして、これに当る人々の心構えが大事だと思いますから、その面につきましては、私からも十分注意を與えて、運用の面に遺憾なきを期するつもりであります。
  168. 石野久男

    ○石野委員 これはただ箱根の療養所だけではないので、全般的な問題になるのですが、たまたま箱根の療養所を引例しているのでありますけれども、今厚生大臣お話のように、それに当る人々についてだけ注意を與えるというだけでは、実際的にはその人々の生活を守つてやるということができないのであります。具体的にどういう面で予算を確保されようとしておられるのでありますか、不幸にして私どもこの予算書のそれぞれの目を調べてみましても、わからないのであります。どういうふうに御処置なさいますか。
  169. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この点も、たびたび申し上げましたように、法の命ずるままに厳格に差引くということになりますと、まだ相当額減額しなければならないのですが、その点を考慮いたしましてわずか四億余りしか減類してございません。従いまして、私の見込みとしてはやり得るものと思うのでありますが、実際にやつてみて足りなければ、またそのときの処置は当然講ずべきものだと考えております。
  170. 石野久男

    ○石野委員 重ねてお伺いしますが、ただいまの答弁からこういうふうに受取つてよろしいのでありましようか。たとえば、そういうふうな該当者は、実質的にはその月々の赤字が出ないように考慮してやる、こういうふうに政府考えておると受取つてよろしいのでありますか。
  171. 吉武恵市

    吉武国務大臣 それはその人々の生活にもよるのでありまするが、結論的には、お話のように実際に赤字が出るようなやり方はさせたくないと考えております。
  172. 石野久男

    ○石野委員 援護の目的はいろいろな点にあろうと思いまするが、特に援護が実質的に効果を現わして来るのには、ここで限られておりまする旧軍人遺家族だけについてみましても、具体的にそれらの人々の生活が確保されなければならぬことだと思うのであります。そこで、先ほど来生業費の問題が出ておりまして、岡委員に対する大蔵大臣の答弁によりますると、その生業費については特に国民金融公庫の操作によつて何とか考えて行きたいというお話がございました。この点について、大蔵大臣のそういう考え方が、他面また国民金融公庫に依存しておりまする中小の商工業者等の資金の融通の面に大きな圧迫が来ることを非常におそれるのであります。特に本年度の国民金融公庫の関連する予算といたしましては、厚生資金貸付金が、昨年三億円ありましたものが今年は削られております。更生資金の含みというものは、大体生業資金の内容としているものだつたと思うのでありまするが、むしろ、大蔵大臣がそういう援護の目的で生業的資金の方向へ国民金融公庫の金を使うのだということは、まつたく相反する現象がこの予算の中に出ておるのであります。これはどういうものなのでありますか。
  173. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の通りに、引揚者に対しまする更生資金を国民金融公庫が取扱つてつたのでありますが、その後大分時間的にも経過いたしましたし、また国民金融公庫の融資は相当ふえて参りましたので、特別にそういうものを取扱わなくてもいいので、更生資金の方はとつたと記憶しております。しかし新しく軍人遺家族の問題が出て来ておりますから、軍人遺家族の問題につきましてはある一つの操作を考えよう、こう言つておるのであります。
  174. 石野久男

    ○石野委員 軍人遺家族に対するものについては、新しく国民金融公庫に対する資金の中の操作を考えるということは、予算に含まれておりまする三十億と、それから国民金融公庫自体が操作して還元されて来るもの以外に考慮するということなのであるかどうか。その点先ほど岡君に対する答弁が私ははつきりわからなかつたのでありますが、そこを承りたい。
  175. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまのところ前に申し上げたこと以外には考えておりません。将来はまた問題であります。
  176. 石野久男

    ○石野委員 その点については、私は大蔵大臣になおいろいろと中小企業に対する対策の問題で、質問しなければならない問題があるのでございますが、私に與えられた時間が短かいので、これは他日に譲ります。しかしいずれにいたしましても、そのことは結局旧軍人遺家族に対する援護に引当てるということによつて、中小企業に対しては非常に大きな資金的な制約を加えて来るし、また期待をはずすものになつて来ると思いますので、これはむしろ全体としての経済的な効果から見ますと、かえつてその弊害の方が大きく出て来るであろうというふうに私は考えております。従つてこういうう形は援護処置としては、やはりどうも思いつきの答弁ではないだろうか。大蔵大臣はここで問い詰められたから、しかたがないから、その生業資金としての出し方は国民金融公庫から出すのであるという、思いつきの答弁をしているのじやないかというふうに思われるのであるが、そういうことはないのですか。
  177. 池田勇人

    池田国務大臣 思いつきという言葉の意味がちよつとはつきりいたしませんが、そういう考え方もあるというので答えておるのであります。
  178. 石野久男

    ○石野委員 そういう考え方もあるということと、そうするということとは非常に違うのでありまして、従つてやはりわれわれが予算を見る上においても、国民金融公庫に引当てられる三十億の金というものは、援護費の生業資金に引当てられるということと、それがほんとうに中小企業の資金に引当てられるということでは、非常に相違が出て来るのでありますが、この点についてもう一度はつきり大蔵大臣の御意見を聞きたい。
  179. 池田勇人

    池田国務大臣 生業資金も中小企業の資金の中に入るのでありまして、従つて三十億の生業資金の中で、ここで議論したり質問したりする間において、その御質問なり御希望が適当であるというときにはここで決心して答えるのも一つの手でございます。何も、ここへ来るまで考えていなかつたことは、いかにいいことであつてもしないというわけのものではございません。ここでそういう質問があつて、それも遺家族に対する一つ措置として適当であると思えばそれをやるべきである。こういうふうに考えるのであつて、それが普通であると思います。
  180. 石野久男

    ○石野委員 どうも奇な御答弁を承るものです。これだけの大きな予算を組んでおつて、しかも国民金融公庫の基金の使い方というものは、国民金融公庫の運用上の規定によつてはつきりきめられておるものだと思うのであります。それを大蔵大臣は、それを所管しているからということで、思いつきといいますか、ここへ来てからよくなつたからというので、そういう答弁をするということはおかしい。私はむしろ、そういうものがありましたならば、別にそういう援護費の中の生業資金としてのものを組む意思を持たれる方がよかろうと思うのでございますが、その点はいかがですか。
  181. 池田勇人

    池田国務大臣 余裕の金は一つもございませんので、先ほどからお答えした通りであります。しかも答えますときに、国民金融公庫の当局と打合せていたしたいと答えておるのであります。
  182. 石野久男

    ○石野委員 厚生大臣にお尋ねいたしまするが、更生資金の貸付金三億円を減らしたということは、これは直接は援護費の問題とは関係ないかもしれませんけれども、大きい立場からすれば、戦争による犠牲者に対するいろいろの手当の金をここに減らして来ていることには間違いないのであります。このことはいわゆる旧軍人に対する援護費を持つことと、矛盾しはしないかどうかという点について、厚生大臣の立場からお答えを願います。
  183. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ことしの予算に更生資金がなくなつておりまするのは、今まで貸付けました資金の回収が大体四億五千万円程度は見込まれるのであります。従いまして、これを運用するという考えで新たなるものを計上しなかつたわけであります。
  184. 石野久男

    ○石野委員 国民金融公庫が新しく回収するところの四億数千万円の金を、更生資金に引当てるためにこれを使わないのだという御意見はわかりました。いずれにいたしましても、これらの例からいいまして、四億五千万円の金が回収されてもそれだけで足りるとは私は思つていないのであります。むしろ更生資金に対する需要は非常に強く出ておりまして、国民金融公庫等は資金難で非常に困つている。大蔵大臣は先ほど国民金融公庫の操作の問題を言つておりましたが、実質的に国民金融公庫に集まつている要求の三分の一程度しか出ていないのが実情なんで、そういうところから新たにこの援護資金を出して行くというようなことは、とてもわれわれとしては考えられないことなのです。むしろこのことは、われわれにとつて何かしら援護費における目的の所在というものが、別なものにあるのではなかろうかというふうにさえ考えられるのであります。先ほど来何べんも同僚諸君が尋ねておりますように、この援護費の目的というものが、ほんとう戦争によつて起きた犠牲者に対して、それを救うという意味をもつてする広義な立場に立つておるのであるか、それともこれがいわゆる再軍備といわれるものへの意図を含んでおるものであるかということについては、なお疑問を持たざるを得ない。のみならず私たちは、そういう目的でこれが使われておるんだというふうに思うのであります。  あらためて私はお聞きしますが、今日のこの予算の中で、防衛分担金だとか、その他日米安全保障協定に伴う諸経費が約二千億から三千億近いものを使つているにもかかわらず、戦争による犠牲者のごく小部分の軍人遺家族等だけを取上げて、その他の者に対する援護の形を取上げなかつたという政府考え方について、いま一度大蔵大臣からお聞きいたしたいと思います。
  185. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは再軍備というためにこういう措置をとつておるのではございません。戦争の犠牲者として最もお気の毒な方々に対しまして、まずできるだけの援護方法を講じようという考えで行つておるのであります。しこうして援護の資金の問題につきましては、財政演説で申し上げましたように、財政の現状あるいは将来の国民負担などを考えますると、この程度が、ただいまのところは精一ぱいだと私は考えるのであります。
  186. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 石野君、大体お時間ですから、結論をお急ぎください。
  187. 石野久男

    ○石野委員 この予算の中で特に戦争犠牲者に対する考え方を、予算的措置としてはもうこれ以上幅がないから、まず第一番目に軍人だけに対してとつたんだということについて、特に交付公債の融通性の問題が先ほど成田氏から出ておりました。これは融通性を持たせるか、あるいは非融通的なものにするかは考慮中であるという話も聞いたのでありまするが、やはり與えるものならば、融通性を持たして、それが具体的にそれらの人々の生活に役立つようにするのがいいのではないかと思うのであります。大蔵大臣は、その点についてはまだ考慮中なのでありますか、
  188. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどのお答え以上に発展いたしておりません。これは金融関係その他いろいろな関係がございますので、十分考慮しなければならぬ問題と思つております。
  189. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 小林進君。
  190. 小林進

    小林(進)委員 若干質問が重複するかもしれませんが、あらかじめお許しを願つておきたいと思うのであります。  先ほどから、この費用は援護費であるとしばしば言われたのでありまするが、援護費ということは救済費と同じ意味であるかどうか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  191. 吉武恵市

    吉武国務大臣 救済費というつもりではございません。
  192. 小林進

    小林(進)委員 私は寡聞にして、援護費と救済費との意味が違うということは、どうもこの解釈に苦しむのであります。われわれは普通援護費といえば、救済費と同様に考えざるを得ないのであります。ところがこれにつきましては遺家族未亡人遺児は、われわれは何も国家の情を受けて援護費だの、救済費だのというものを頂載する考えはない、政府の情におすがりして涙金のような救済金を頂載するような立場ではない、われわれは国家は対して当然補償費を要求する権利があるのだ、このたびの政府のこの援護費が、言うところの救済費であるならばお断り申し上げたい、こういうすずめの涙のような救済費はお断り申し上げたいという声が強いのでありますが、これを断りました場合は一体どうなるのでしようか、厚生大臣にお伺いいたしたいのであります。
  193. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この点はしばしば申し上げましたように、国家として何とかしなければならない、これを国家補償と言つたらどうかという意見もございましたけれども国家補償するというにはあまりにも額が不十分である。従つてさしあたり援護ということで、今まで放置されました遺家族の方に、国家として何がしかの援護をいたそう、こういうことでございます。
  194. 小林進

    小林(進)委員 時間がありませんので、これはまずこの程度にしておきますが、ともかく救済費と社会保障あるいは国家補償とでは、大きな精神上の違いがありまするので、どうも情をかけてくれてやるのだというような気持のする費用は、これは政府としても十分お考え願いたいと思うのであります。  次は、援護費と生活保護法との問題であります。これもしばしば繰返されたようでありまするが、まず具体的な例でいえば、親子三人の場合、この援護費で参りますと二千六百円、これは東京都の場合でありますが、生活保護法で行きますと、最高の個人の支給額が一千七百二十五円、子供二人がつきますと大体三千円余になるのであります。生活保護法で三千余円を頂戴しておるものが、年金で行きますと二千六百円、差引き五百円近くの差が出て来るわけであります。先ほどの厚生大臣の御説明によりますと、この差額の五百円何がしだけを何とかする、こういう御説明のように承りましたが、さように了承してよろしいかどうか、いま一度お伺いいたしたい。
  195. 吉武恵市

    吉武国務大臣 小林さんのようなお説の通りにすることは、法律を厳格に施行した場合であります。でありますから、私はそういう厳格な施行をいたしますると、お気の毒な方があるであろうから、これに対しては十分なる考慮を拂いながらやりたい、かように御了承願いたいと思います。
  196. 小林進

    小林(進)委員 私もその問題をお聞きしたいのでありまして、確かに生活保護法の第四條の第二項というものがある限り、どうも今のような具体的な場合になりますと、この五百有余円の支給が困難なのであります。そこで、そういう善処したいなどという政府一流のごまかしの手はこれをおやめになりまして、ひとつ第四條の第二項を改正するべく最善の努力を拂うというふう御答弁が願えないかどうか、いま一度お伺いいたしたいのであります。
  197. 吉武恵市

    吉武国務大臣 別に法的な措置を講ずる考えはございません。
  198. 小林進

    小林(進)委員 この点についても私は政府のただいまのやり方に、とうてい賛意を表することができないということを申し上げておきたいのであります。  次にお伺いいたしたいのは、この遺家族援護費は軍人の遺族のみに限ると限定せられておるようでありますが、この援護費で支給される軍人の遺家族法律上の身分関係を、私はお伺いいたしたいと思うのであります。いやしくも国家が金を支給するというのでありますから、どういう身分と解釈してこの援護支給ぜられるのか、その法律上の身分関係をお伺いいたしたいと思います。
  199. 吉武恵市

    吉武国務大臣 軍として召集されました方々でございます。
  200. 小林進

    小林(進)委員 軍として召集された方を一般の民間人あるいは公務員と解釈せられるかどうか。われわれはこれを当然公務員と解釈すべきではないかと思うのであります。公務員ならば、当然公務員に支給すべき退職金の規約も、恩給の規約も、あるいは遺家族扶養の規約もあるわけでありまして、これは身分関係は当然公務員と私は解釈いたします。公務員なら公務員に支給すべき法律がちやんとあるのでありまして、当然それが適用されるべきではないかと思うのでありまするが、これに対する厚生大臣の御見解を承りたいと思うのであります。
  201. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この点は本来ならば、旧恩給によつてそれぞれ処置されるはずのものであります。それが実は勅令によつて支給が停止された。これを復活するかどうかという問題は相当考究を要する問題でございますから、審議会等において審議を経た結果を見て考える。ところがその間遺家族を待たすわけに参りませんから、この間の暫定処置として今度の処置をとる、かように御了承願いたいと思います。
  202. 小林進

    小林(進)委員 次にお伺いいたしたいのでありまするが、少しこまかくなりまするが、一時金についてお伺いしたいのは、額面五万百の公債支給するというのでありまするが、何かこの額面の五万円が、両親のある場合は、両親に五万円ずつで、十万円支給するというふうに承つておりまするが、この解釈はそれでよろしゆうございまししようか。
  203. 吉武恵市

    吉武国務大臣 一応予算的な措置といたしましてはそういうふうに考えておりまするが、これが支給につきましては法律を提出するまでに十分研究をするつもりでございます。
  204. 小林進

    小林(進)委員 この五万円という少額につきましては、私どもはまつこうから反対であります。反対でありまするが、その反対とは別個にいたしまして、同じく子を失つた人で、両親のある者がその十万円を頂戴する。母親だけあるいは父親だけという者が五万円、こういうことになりまするというと、同じ遺家族間においても非常に感情上の差が出て来るのであります。もしこれを生活保護法の立場からいうならば、両親ある者の方よりも、むしろ片親の方が一般的には生活に困つておる。生活扶助の立場からいうならば、片親に十万円、両親ある者に五万円というのがむしろ順当であります。といつて同じく戦死者の中で、生活問題を別にするならば、同じ村、同じ部落の中でも、両親ある者が十万円の公債をもらつて、一人の親しかない者は五万円しかもらわぬということは、どうも国民感情上、人情上、これは私は不公平であると思う。この点はひとつまだ固まつていないそうでありまするから、十分ひとつ法律をおつくりになるときに御考慮願いたいと思うのであります。  次にもう一つ私は疑問とする点をお伺いいたしたいのは、同じ両親あるいは片親の場合でもけつこうでございまするが、一家族で三人あるいは二人と子供を戦死せしめた場合の、この一時金がどんなぐあいになるのか、これもお伺いしておきたいと思うのであります。
  205. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この点も、先ほど申しましたように、本来ならば年とつた方にも年金支給するのがいいかとも思いましたけれども、この点は非常に数が多いし、とうていできがたいので、年金は妻子に限つたわけであります。従つて両親でありますとか、あるいは子供とかいうものにつきまして、一人五万円の一時金という予算的措置考えたわけであります。これの実際の支給等につきましては、先ほど申しましたように法律を出すまでに十分検討いたすつもりであります。
  206. 小林進

    小林(進)委員 この場合は私はどうしても一柱五万円、こういうふうに持つてつていただきたいという希望だけを申し上げておきます。  次にこの一時金の公債でありますが、先ほどからもずいぶん質問がありましたので、くどい話はやめたいと思いますけれども、大体今の遺家族などというものは生活の困窮に階つておるのでありますから、もらつた公債はただちにこれを処分することを考える、政府が流通を許そうと許すまいと必ずやるのです。その場合に悪質のブローカーが跳梁するということが十分考えられるのであります。こういうブローカーの手に渡るようなことに対する防止策といいますか、これに対する蔵相の御意見をいま一度お伺いしておきたいと思うのであります。
  207. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来どなたかの質問にもそういうふうな話がございまして、たとえば恩給権のごときものを例にとつておられましたが、私も実情は存じておるのでございます。そういう点もございますし、また片方金融関係の方もございますので、今検討をいたしておる次第であります。
  208. 小林進

    小林(進)委員 一月の二十日でありますか、遺家族大会がありまして、そこには厚生大臣も出席せられて、諸君らの決議を大いに尊重するという力強い言明を與えて来られたようでありますが、あの大会において、九項目の決議がなされておるのであります。その九原則決議の中には、二十七年度にまず暫定的として一柱十万円の公債をやれ、遺家族代表を含めた審議機関を設けて、抜本的対策を講じて、二十八年四月よりこれを実施するようにする、あるいはまだ二十七年度より慰霊祭を行うべく、国家費用の支出を頼む、あるいは二十七年度より遺児の育英、就職または遺族の生活扶助に関し、具体的な策を講ずる、このような要求は、私は非常に妥当適切なるところの要求であると確信するのでありまするが、これに対して遺家族の前で言明をせられました厚生大臣が、その後これをいかように取上げられましたかをお伺いいたしたいと思うのであります。
  209. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は遺家族大会に臨みまして、今回政府のとりました予算的措置は不十分である、しかしながら現下の日本事情としてはやむを得なかつたので、これでしばらく御了承を願いたい、かように申したのであります。
  210. 小林進

    小林(進)委員 それでは遺家族要求に対しては、しばらく延期を頼むということで、事実上拒否せられた、こういうふうに解釈を私はいたしたいと思います。  それではこの問題はまず厚相の拒否にあつたということにいたしまして、次に移りたいと思うのでありまするが、今度は遺家族の生活の保護と生業の保持について、実ははなはだ憂えておるのでありまするが、この問題についてお伺いいたしたいと思うのであります。これは東京都の一例でありまするが、二十六年の七月現在の調査に基いて、生活保護法適用を受けておる遺家族が八万三千五百四十世帯、それから同じ遺家族でありながら、生活保護を受ける同じ状態にあつて生活困窮に投げ出されておる遺家族の世帯が十六万七千四十一世帯あるのであります。従いまして遺家族で、東京都で生活保護の適用を受けなければならない人が二十四万世帯あるという勘定になるのであります。その中の十六万世帯は、手続やその他の不備の問題もありましようが、しかし根本にはやはり遺家族というつまらない——つまらないといえばつまらないが、一つの誇りがありまして、こうした遺家族生活保護法にたよらないで、何とか石にかじりついてもという気持で、細々と生き長らえているのでありますが、こういう形が私は全国では非常に多いと思うのであります。こういうものは、このたび政府が設けられました生活援護費の問題には何らの恩典に浴しない。むしろ生活保護法があるために、生活が苦しくなつて行くものがあつても、こういう連中に少しも救いの手が伸びないという形が現われておりますので、一体厚生大臣はこれをどんなぐあいにお考えになつておりますか。この救済をどういうふうに処置せられるか、具体的に私はお伺いいたしたいと思うのであります。
  211. 吉武恵市

    吉武国務大臣 軍人遺家族の中には、事実生活にお困りになつておりながら、生活保護法の給與を受けたくないという方もおありになるだろうと思います。それらの方々に対しましては、われわれは目下調査をしておりまして、調査の上で、ほんとうにお気の毒の方々には、もちろん今回の年金その他の処置で十分だとは考えませんから、その裏づけとして生活保護法の裏づけをいたしたいと思つております。
  212. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 小林君大体お時間でございます。結論を……。
  213. 小林進

    小林(進)委員 この問題なんかも、私は相当政府が積極的に、願わくば別箇な法律でもつくつて、こういう軍人遺家族生活困窮者を救うというような積極的な意欲がほしいと私は思うのでありますが、時間がありませんので、これもひとつそのままにしておきまして、次に最後の一問として私はお伺いいたしたいのは、この遺家族援護につきましては、まずこの最後の案が出る前に、厚生省案というものができておる。この厚生省の案によれば、妻子については、妻子の一人については二千円、次の一人については千円、次の一人については千円、以下一人につき四百円、父母、祖父母につき四百円、その他父母世帶の場合とか、祖父母世帶の場合というふうに実に的確な案ができておるのでありまするが、この厚生省の案について、一体吉武厚生大臣はいかようにお考えになつておりまするか、これを私はお伺いしたいのが一つであります。  それからいま一つは、そのほかに自由党の案というのが、これまた世間に流布せられておるのであります。その自由党の遺家族援護の案によりますと、まず十万円の公債を一律にやる、受給者は妻子の世帶、父、祖父母六十才以上の世帶、母、祖父母五十五才、但し年額一万円以上の所得税額の者を除く。なかなか妥当であります。妻と弟一子に各千円の年金支給し、その他の者については五百円、妻子のない場合は第一順位に二千円、その他については五百円。あるいはまた案というものも自由党が発表せられまして、十万円公債は案に同じ、基本的に一千円、妻と第一子に六百円、その他については四百円というふうに、具体的な案を示されておる。この厚生省の案について吉武厚生大臣はいかように考えておられるかということが一つ。これは責任問題であります。第二の自由党の案でありますが、この案が発表せられたとき、吉武厚生大臣は自由党の政務調査会長であつた。自由党の政調会長としてこれを発表せられた。みずから立案せられたかどうかは知りませんけれども、自由党案として出るからには、責任を持つて発表せられたものと私は思うのであります。その厚生大臣がみずからの案を持ち、自由党の政務調査会長としてみずからの案を持つておられながら、この場合まことに不満足であるけれどもというようなことでもつて満足しておるということは、私どもは政治家の責任というものをはなはだ疑わざるを得ないのであります。どこに一体厚生大臣ほんとう気持があるのか、どの案に一体一番信頼を置かれておるのか、あるいはまたそうした三転、四転して来たこの案に対して、いかなるところの責任を痛感していられるのか、この点を私は政治家の一員として確信ある御返答を承りたいと思うのであります。
  214. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御指摘になりました厚生省案というのは、もし日本財政が許せば漸次やりたいと思います。しかしながら、今日の状態ではそれができないことをはなはだ遺憾に思つているわけであります。自由党の案につきましては、私が政調会長時代に、昨年の春以来、これは極秘に研究し続けておりましたが、いまだ発表いたしたことはございません。最近いろいろ案が出ておるように新聞では見ておりますが、これはまだ自由党内においてもいろいろ検討中でございます。
  215. 小林進

    小林(進)委員 まだ私は非常に不満足ではありまするが、時間がないので、これで終ります。
  216. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 先刻の風早委員の発言中、もし不穏当の言辞がありますれば、速記録を取調べました上、適当の措置をとることといたします。本日の会議はこの程度にとどめまして、明六日は午前十時より委員会を開会して、質疑を継続することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十五分散会