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1952-02-02 第13回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二日(土曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 上林山榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 西村 久之君 理事 井出一太郎君    理事 川島 金次君       淺利 三朗君    天野 公義君      小野瀬忠兵衞君    角田 幸吉君       栗山長次郎君    小坂善太郎君       庄司 一郎君    玉置  實君       川崎 秀二君    中曽根康弘君       西村 榮一君    山口 武秀君       成田 知巳君    世耕 弘一君       江花  靜君    尾崎 末吉君       甲木  保君    北澤 直吉君       志田 義信君    島村 一郎君       中村 幸八君    今井  耕君       早川  崇君    藤田 義光君       横田甚太郎君    稻村 順三君       石野 久男君    小林  進君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         運 輸 大 臣 村上 義一君         厚 生 大 臣 吉武 惠市君         建 設 大 臣 野田 卯一君         国 務 大 臣 岡野 清豪君         国 務 大 臣 周東 英雄君         国 務 大 臣 山崎  猛君  出席政府委員         大蔵政務次官  西村 直己君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算  昭和二十七年度特別会計予算  昭和二十七年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 会議を開きます。本予算の各案を議題に供します。昨日に引続きまして、これより質疑を継続いたします。小峯柳多君。
  3. 小峯柳多

    小峯委員 経済一般の問題に関して、安定本部長官や、大蔵大臣や、通産大臣農林大臣等質問をいたしたいのでありますが、まだ全部おそろいのようでありません。そこで建設大臣がお見えになつておりますから、建設大臣に少しお話を承ります。災害復旧の問題なんでありますが、二十六年度以前の全災害の約三割を、二十七年度中に復旧するというふうに言われておりますが、この三割というのは、二十六年度発生災害の三割までを二十七度にやるという意味で、従つて二十五年度、二十四年度等の災害進捗率まで含めるともつと多くなるという意味かどうか、その辺のことを伺つておきたいと思います。
  4. 野田卯一

    野田国務大臣 お答えいたします。二十六年度災害につきましては、二十六年度におきまして、あるものは一割七分、ルース台風につきましては二割二分程度復旧いたしまして、その残つているものにつきまして三割、二十七伸度でやるということでありますから、二十六年度災害につきましては、二十六年度分と二十七年度分を両方合せると五割程度復旧ができる予定であります。
  5. 小峯柳多

    小峯委員 大分災害復旧進捗率がよくなつて来ておるようですが、まだ予算説明書によりますと過年度災害残工事が二千二百億くらいあるというふうに説明されておりますが、二十七年度に四百二十億国費を出して、それを事業量にしますともつとふえるのでありますが、それを考慮しても残工事相当大きいのであります。建設大臣は大蔵省にもおられて、計数のことは明るい大臣でありますが、これだけ大きな残工事を控えて、何かここで少し目新しい方法考えないと、いつでもこの災害復旧に追われて、なかなか新規事業に手が出せない、こういうふうになると思うのでありますが、この残工事の処理の仕方について何かお考えを持つておられるかどうか、伺つておきたい。
  6. 野田卯一

    野田国務大臣 残工事につきましては、ただいま数字をお示しになりましたが、相当巨額に上つております。そこで残工事の全部を復旧するかどうかということにつきましては、目下考慮中でありまして、残工事の一部はこれをたな上げした方がいいじやないかとも思つております。そのかわりに別に今後ダムをつくるとか、あるいは河川の改修をするとか、今後災害が起きない方にその力を用いるというふうにいたしまして、全体として金を最も有数に使う方向に進みたい、こういうふうに考えておるのであります。
  7. 小峯柳多

    小峯委員 残工事を適当なところで端折つて新規工事改良事業に直して行くということは、事務当局者がもう相次いで考えて来たところでありますが、なかなか実行ができておらぬように思います。どうか残工事を十分やられて、新規工事への切りかえをひとつ本腰を入れてやつていただきたいと考えます。災害復旧に追われてなかなか新規事業がやりかねておりますときに、二十七年度事業で私どもが非常に快心に考えておりますのは、特定道路整備事業特別会計運用の問題であります。平たく言えば賃取り道路や、賃取り橋をつくろうというお考えのようでありますが、そのために特別会計を設けて十五億の金を用意しておるようであります。——まあこの金が多いという意味でありません。最初の一石としましては、なかなかいい手が打てたと考えておるのであります。この十五億をどういうふうに運用するか、またその運用する中には地方団体に対する貸付金等もあるようでありますから、その貸付條件等を伺つておきたいと思います。
  8. 野田卯一

    野田国務大臣 道路整備橋梁整備が急を要しまするので、ただいまのお話のような有料道路あるいは橋梁制度を設けまして、二十七年度から相当規模に実施いたしたいと思つております。ただいま予定をしておりますのは、十七箇所でありまして、その一つは、御承知関門トンネルが一番大きい工事であります。これは国が直轄でやる。そのほかに国道箇所、これも国が直轄でやる。そのほかの分は地方団体にまかせまして、国がその必要資金を貸し付けるということを考えておるのでありまして、橋梁が八箇所道路が六箇所というふうになつております。  貸付條件でありますが、これは大体特別会計におきまして、資金運用部特別会計から六歩の利息で借りる。年限は三年すえ置きで二十箇年年賦くらいになるかと思います。まだ決定しておりません。その程度相当長い期間にわたつて考えております。これを今度特別会計地方団体に貸し付ける場合でありますが、今のところ六歩三厘の利息で貸し付ける予定であります。償還期限につきましては、その金を使つてつくつた橋なりあるいは道路収益性というものと見合せまして、原則として建設期間はすえ置き、建設が終りまして、あとから償還を始める、こういうことになりまして、この償還期限をあるいは十年にするか、あるいは十五年にするか、あるいは二十五年にするかということは、その橋なり道路収益性によつてきめたい、こういうふうに考えております。
  9. 小峯柳多

    小峯委員 この特別会計による実施工事場所でありますが、これは今のお話ですと、必ずしも収益性の高いものだけをやるのではなくて、もつとほかの観点も加えて適当に選ぶ。そうしてその収益性に応じて資金返還條件等考えて行くのだというように受取れますが、さように承知してよろしゆうございますか。
  10. 野田卯一

    野田国務大臣 この箇所の選択でありますが、これはただ収益性ばかり考えておるわけではありません。もちろん収益性の多いということは、経済効果が多いということであります。経済効果が多いもの、あるいは地方経済発展上その他国全体の経済発展上必要なものを順を追つて行きたい、こういうふうに考えております。
  11. 小峯柳多

    小峯委員 大体どのくらいで元本の返還ができるという、何か償還の基準でもあつて考えるおつもりですか。
  12. 野田卯一

    野田国務大臣 場所によりましてはごく短期間に返し得る所があります。これはまだ資産の程度におきまして、確実なことは申し上げられませんが、たとえばその金を三年ぐらいで償還のできる所もあるのではないか、そうかと思いますと二十五年ぐらいかかる所もあるのではないか、こういうふうに考えております。
  13. 小峯柳多

    小峯委員 工事場所について、今大臣は関門海峡をあげられましたが、その他予算説明書に一部分は載つております。しかし今内定しております箇所を一応御内示願いたいと思いますが、いかがですか。
  14. 野田卯一

    野田国務大臣 ちよつと私予算書類は持つておりません。予算書うしろの方に箇所が全部ついておつたかと思いますが……。
  15. 小峯柳多

    小峯委員 予算書に載つておるのは一部分だと私は申し上げたのでありますから、資料がありましたら一応お答え願いたいと思います。
  16. 野田卯一

    野田国務大臣 国が直轄してやるものにつきましては、関門トンネル、それから戸塚国道、新京浜国道、この三箇所であります。それから貸し付けて地方団体でやらせるものにつきましては、濃尾大橋衣浦橋大川橋住江橋、伊ノ浦橋、それから道路でありますが愛岐道路、それから鳥飼大橋、上江橋、江北橋それから道路がその他神奈川県、静岡県等の箇所に五箇所、こういうことでございます。
  17. 小峯柳多

    小峯委員 新規事業に新しく金をふやして行くということは、なかなか骨が折れるだろうと思いますので、どうかこの制度をますます充実するようにお考え願いたいと思います。  それから最後にいま一つ、昨日もいろいろ問題になりました予算の中の安全保障諸費の中で、道路に関するもの等相当あるのではないかと考えます。こういうものはやはり建設大臣が主管してその道路工事をやられるのか、この予算のうち道路に関するものは建設省に移管してやるようにするのか、その辺の扱いを伺つておきたいのであります。
  18. 野田卯一

    野田国務大臣 あの中に相当道路に関する観測の部分も入つておるのだろうと考えておりますが、その部分につきましては、建設省でやるのが適当であるというふうに考えております。
  19. 小峯柳多

    小峯委員 今の建設大臣の答弁に関する件でありますが、予算建設省に移管しておやりになるようなお考えでありますが、大蔵大臣、どういうふうにお考えになつておりますか。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題につきましては、行政協定内容、またその他のこともございますので、そのことが起りましたときに検討いたしたいと思います。
  21. 小峯柳多

    小峯委員 建設大臣質問はこれで終りまして、これから安定本部長官大蔵大臣のお二人に、少し経済の基本的な問題でお話を伺いたいと思います。  最初周東長官お話を伺いたいのでありますが、独立後の経済運営目標をどこに置くべきか、こういう問題であります。予算説明書の中に、この間のことを上手に書いておりますが、「平和條約の発効に伴い、わが国が六年有余にわたる占領下の状態を脱して、再び独立国となる日が近づいた。しかし、独立は、同時に、わが国経済的にもみずからの力と責任とにおいて生き、国際的な義務を果し、さらに積極的に国際社会に貢献すべき使命をになうことを意味する。」というふうに書いております。経済運営は、従来自立経済というものをお考えになつて経済自立をはかりたいのだ、講和発効したからといつて特にその目標はかわるはずがないのでありますが、ただこの説明書にもありますように、従来の生きるということに加えて、独立伴つて新しい費用の負担がふえて参ります。ですからそういうものまで考慮して、今までお考えになつておりました経済運営目標というものが、やはり少し次元が高くなるのではないか、当然のことのように思いますが、最初に、経済運営目標というものに対してどうお考えになつておられるか伺つておきたいと思います。
  22. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えいたします。講和発効後における日本経済は、あくまでも自立経済目標として行くことについての考え方かわりはございません。ただ従来と異なりまして、御指摘のように講和後に伴う賠償、外債の支拂いあるいはその他各般の負担増加がありますので、それを克服しつつ、自立経済の目的を速成するということにつきましては、相当の努力と困難が伴うとは考えますけれども、しかし根本の目標については、あくまでもそれらの困難を克服しつつ、自立経済に向つて進めるということの基本方針かわりはございません。
  23. 小峯柳多

    小峯委員 そこでひとつお尋ねいたしたいと思いますのは、こういうときにこそ自立経済計画というものを先に立てられたものを改めて、広くこれを国民の皆さんに知らして、あすの希望のためにきようの苦しみに耐える、こういう意味合い自立経済計画を改訂して、それをわかりやすく国民に知らせるというふうなことをお考えになる必要があると思いますが、そういう御準備等考えでございましようか。
  24. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えをいたしますが、ただいま申しましたように相当負担増加を克服しつつ、自立経済を達成するという目標から行きますと、従来の生産目標あるいは輸出入貿易関係規模等は、相当従来の考え方よりも増さなければならぬのであります。幸いにして日本におきましては、御承知のように未稼働工場、豊富な労働力を持つておりますので、これを活動せしむる方途を講じまして、一つ目標を立てて行きたいと思います。このことは当然電力開発等動力供給源の擴大とからみまして、ただいまお話のような意味において電源の開発を目途として、四箇年計画を組んでおります。その線に沿うて自立目標を立てたいと思つております。
  25. 小峯柳多

    小峯委員 御趣旨は了解するのでありますが、ただそれを前に立てました自立経済計画というものの改定版にして、こういうふうになつているのである、こういうふうに今日苦労に耐えていただくと、明るい将来があるのだという形でもつて経済運営して行く目標というものを国民に知らせることが適当ではないかと思うのでありますが、その前の経済計画を改訂して、何かこれを一般に知らせるというような方法をお考えになつているのでしようか。
  26. 周東英雄

    周東国務大臣 御趣旨の点はごもつともであります。私も機会を得ますれば、明るくわかりやすく一つ目標を示すことについては考慮いたして行きたいと思います。
  27. 小峯柳多

    小峯委員 長官は二十三日の経済演説の中で「経済運営にあたり、自由経済の基礎の上に、重要物資需給適合資金調整輸出入調整等について、総合的かつ計画的な施策を講ずる」というふうにおつしやつております。私ども自由経済というものを基調として、経済運営をやり、また最も勇敢に今までの統制経済でよごれてゆがめられた経済というものを自然にほどいて来ておるのでありますが、統制経済に反対するということは経済計画に反対することにはなるまいと思うのであります。むしろ自由経済を正しく運営するためには、その背景をなすところの経済計画というものが、非常に必要なんだし、先ほど来お話のありますように、講和條約が発効して、独立に伴う諸費用負担まで合せて、日本経済力を思い切つて引上げて行くためには、どうしても経済計画というものが必要だと痛感するのであります。その点につきまして、長官財政演説の中でおつしやつておられまするのはまつた同感なのでありますが、少しそのお話をつつ込んで、たとえば重要物資需給適合というようなことを、どんな方法でお考えになられるか。一つ考え一端をお漏し願つて自由経済自由放任経済だというふうに、あしざまに言う、その言い方に対して、むしろ政府側から修正するような意味で、お考え一端を漏らしていただければ、非常に都合がいいと思うのであります。
  28. 周東英雄

    周東国務大臣 御指摘のように経済の運行にあたつて、あくまでも原則は各個人の企業意思というものを尊重しつつ自由経済基盤に立つということについてはまつた同感であります。しかしながらお話のように、やはり今日の日本復興途上にある産業の進め方に対して、国家として総合的に重要資材、たとえば鉄鍋石炭、セメント、繊維というようなものを、どのくらいの目標に、何年計画において増産を進めて行くかという、国家的の見地に立つて計画は立つて行くべきであると考えております。そういう意味合いにおきまして、当然にこれと先ほど申しましたように、たとえば鉄鋼を昭和三十年度において五百九十万トンでありましたが、石炭を幾らという目標をひとつ立てておいて、同時にそれを達成するがために、電力をどういうふうにそれに応ずるようにふやして行くかという計画を立てておりまして、そういう意味合いにおきましては、御指摘通り計画を立てて進むことが妥当であり、従つてまたその計画に沿うて資金資材というものが重要な産業に対して調整されて行く、こういうことを考えておるわけであります。一端を申し上げる次第であります。
  29. 小峯柳多

    小峯委員 ただいまのお話は、生産計画を立てるというふうなお話が中心だつたと思いますが、私はもう少し段階が進んで、もつと問題が出て来はせぬかという感じが実はするのであります。そこでなるほど、生産計画を何年にどうするというような計画を立てると同時に、消費の面においても使用制限あるいは使用の禁止あるいはまた輸出制限等、もちろんこれを常時やるわけではありませんが、そういう意味の安全弁を場合によつては考慮する必要があると思いますし、またこれは後ほど大蔵大臣にも伺いたいと思いますが、国家信用というものを、短期なものでいいのでありますから、そういうものを使つて物資需給調節をする場合に、政府が買上げをするということまで考えておく必要があるのじやないか、これは決して私は自由経済にもとるものじやないと思う。そういう場合における考え方をそろそろ御準備なさつておくことが、経済計画が高度化されて行く場合には、どうしても必要になるというふうに考えますが、御意見はいかがでありましようか。
  30. 周東英雄

    周東国務大臣 御意見はごもつともでありまして、政府におきましても、現在の国際情勢のもとにおいて、世界的に稀少な物資、またはアメリカ等における輸出制限物資等につきまして、日本産業推進に必要なる物資についての割当を獲得する立場から行きましても、その有効需要を確保するために、同時にまたそういうものが不急不要の用途に流れることによつて価格をいたずらに引上げるというようなことのないように、消費制限なり、用途の指定ということについては実行して行くつもりであります。しかしこれは必要なものについて最小限度に進めて行くつもりであります。今日すでにコバルトあるいはニッケルというようなものについて出ておりますが、最近タングステン、モリブデンあるいは亜鉛、銅についても同様に進めて参る考えでございます。
  31. 小峯柳多

    小峯委員 やはり同じ演説の中で資金調整のことを言つておるのでありますが、これは安本長官でしようか、あるいは大蔵大臣でしようか、資金調整に関して何か新しい一つ構想、お考えでもあるのでしようか、伺つておきたいと思います。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 資金調整につきましては、これは財政資金民間資金、こういう問題につきましては、大体資金計画を立てまして、今年度、来年度はどういうふうな財政資金の使い方をする、それから民間資金におきましても、社債あるいは株式の発行、また銀行の貸出しにつきましては、大蔵大臣といたしまして常に意を用いているのであります。今後どういうような方向で行くかという問題になりますと、今最も大きい問題のオーバーローンの問題であります。こういうものにつきましても、今急速に改めるというようなことはできないことでございますが、徐々にオーバーローンの弊をなくするような方法考えたらどうかという点を検討いたしておるのであります。
  33. 小峯柳多

    小峯委員 輸出入調整ということを、どういう方法でおやりになろうとお考えになりますか、長官にひとつ伺つておきたい。
  34. 周東英雄

    周東国務大臣 この点につきましては、主としてポンド地域ドル地域における輸出入調整ということを考えておるわけであります。御承知のように今日のポンド安というような関係からいたしまして、ポンド地域における価格の高いということによつて、ともするとその方面への輸出の方が流れて行く。ポンド地域においては受取り超過になりますが、ドル地域においてはやや支拂い超過ということも将来生じて来ることであります。従つて日本の将来における原料の獲得、国内における物資需給関係から見ましても、価格関係から見ましても、その方面における調整をすることが第一じやないか。従つて今日、演説でも申しましたように、一面におきましては、東南アジア地区等開発に協力しつつ、その方面の資源の開発に協力するとともに、原材料食糧等の輸入を、ドル地域からこの方面へ転換して、受取り勘定といいますか、その調整をはかるとともに、ドルの方への輸出の方をむしろふやして行く、これを日米経済協力等の線を通じて、この方に対する必要な物資輸出する、こういうことによつてドルポンド調整並びに原材料の近距離からの獲得というような、全面的な立場から考慮して調整をいたしたい、かように考えております。
  35. 小峯柳多

    小峯委員 いろいろお話を承りましたが、私がいろいろお話を承ります趣旨は、自由経済基盤にして経済計画をやるのだという御演説がありましたので、その中を通すような線をひとつ御教示いただきたい、こういう意味でお伺いしたのであります。新しい自由経済といいますか、近代的な自由経済というものを、何とかしてこれはわれわれ自由党政府において確立する必要がありはしないかという意味合い伺つたのであります。私見として申し上げますと、自由経済基盤として経済計画はあり得るので、そのやり方というものは、大体特定部面に対する奨励あるいは特定部面に対する制限、そうしてまた国家信用というふうなものを使つて物資需給調整をやる。むろん基本的計画としては、大きい意味国家財政計画がある。その国家財政計画を大きく背後に控えて、こういうことを考えて行くと、自由経済基盤とする経済計画が成り立つのだ、こういうふうに私は考えておるのであります。どうかそういう線に沿つて、よく自由党は古い自由経済というような話が、ときどき気まぐれに出るものでありますから、そういう点においても時の閣僚諸君から、はつきりとした御見解を伺つておきたいと思つて伺つたわけであります。  それから安本長官になお続けて伺いたいのでありますが、経済協力の問題を長官は熱心に言われておりますし、また演説の中でもお話がありました。その経済協力の問題が、本日の日本経済新聞を見てみますと、大分話が進んでいるようにも受取れるのであります。経済協力最高会議というようなものの存在とともに、新聞の報道がありましたが、この経済協力最高会議というものは官制でやつておられるのか、あるいは総理大臣諮問機関というような形でやつておられるのか、またその会議お話のありました、すなわち事務当局構想というようなものをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  36. 周東英雄

    周東国務大臣 新聞に何か最高会議のことが出ておりますが、別にそういう名称があるわけでございませんので、今日の場合に処する経済の全般の動かし方、またその中における経済協力仕方等に関しまして、あらゆる方面から、大所高所から意見を聞きまして、あやまちなきを期したいということの一つ方法として、政府立場において、数人の方を選んでお話を進めよう、こういうことになつているので、内容につきましては、新聞に何か出ているようでありますが、まだ具体的に、こういうようにして政府は行くんだというようなことがきまつているわけではないのであります。新聞に出ておりますことについては、責任を持ちません。しかしあくまでも、この前演説で申しましたように、今日における日本経済推進に対して、御承知のように、未稼働工場がたくさんある、これを動かすことと、労力を活用するという面について、不足のものはあくまでも原材料動力、この原材料及び動力の確保をはかる上において、アメリカその他の国の援助協力を受ける。また同時に東南アジア開発等についての具体的話合いを進めて行くという基本方針については、はつきりきまつておりまして今日だんだんと具体的に話を進めているわけであります。しかし何をどうということについて、今日ただちにお話申し上げる段階ではありません。さように御承知を願います。
  37. 小峯柳多

    小峯委員 日米経済協力の話は、ずいぶん前から新聞、ラジオ、あるいは議会の質問等で承つておるのでありますが、少し具体化するのに陣痛の時期が長過ぎるような気がいたします。私は今まではそうあつてもいいと考えておりましたが、日米安全保障條約というものまで結んでいる今日、もう少し積極的にこの構想というものをお互いに練り上げて、むしろそのプログラムを進めるような形を政府としても進めなくてはいかぬのじやないかというように考えるのであります。新聞に出た話等、なかなか話しにくいようありますから、これ以上は伺いませんが、どうかそういう意味で、せつかく一つの機会なのであります、もうすでに川を渡つているのでありますから、日米経済協力というものをもう少し大膽率直に、少くとも日本の、さつきお話のありました経済計画の中に、これをどう生かすかというふうに考えて行く必要があるのだということを、特に申し上げておきたいと思います。そのほか参この国際経済協力の中で東南アジアの開発協力、あるいは国際割当物資協力というような言葉を長官は使つておられますが、その二つの問題に関して、これも何か少し具体的に進んだような面でもありましたら、具体的なことをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  38. 周東英雄

    周東国務大臣 東南アジア開発の問題につきましては、個別的に話が出ております。これに対しましても、私はもう少し機会を延ばしていただきまして、適当な時機に全体のことを議員の方にお話する方がいいと私も思つております。むしろ皆様にいろいろな点を御協力いただくにも、国会に私はお話する機会を得たいと思つておりますが少しくまだはつきりしない点がありますので、それまで詳しい具体的なことはお許しを願いたい。しかし今の東南アジア開発についても、鉄鉱石とかボーキサイト、あるいは油脂の原料の問題、あるいは漁業関係、こういうような関係において、すでに各関係地方の個人や商社との間に開発計画について具体的に進み、また今進まんとしておるものもあります。結局それらの進め方について、裏づけになるべき資金なりあるいは技術なり、機械器具というものを、どういうふうな形に持つて行くかということがこれからきまります。いずれ機会を見て申し上げたいと考えております。  それから稀少物資等に対する協力の問題でありますが、これについては先ほどちよつと触れましたが、コバルトとか、ニツケルとか、亜鉛とか、銅とか、タングステンとか、今稀少物資に関する割当会議というもののあるものについては、これはむしろその割当を受けるよりも、少いものを有効に使うという方面に協力する、すなわち一部日本において相当増産され、多量に持つており、しかも世界的に稀少な硫黄というようなものについては、日本は積極的にこれを増産して、世界の関係国へ出すという方面で、協力するというような形に今考えて、進めでおります。
  39. 小峯柳多

    小峯委員 今硫黄についてお話がありましたように、ひとつ積極的にこういうもので協力するのだというような態勢を、こちらも考えて行かなくてはならぬだろうと思う。なおまた東南アジア開発の問題でありますけれども、これは大東亜共栄方式というものが私どもは失敗いたしております。あの押しつけがましいやり方をやると、これはまた事志と違うのであります。御如才もないとは思いますが、これをやります場合には、どうか地元とほんとうに手を握つて共存共栄の形でやるように、特に安定本部長官としてはお考え願わなければならぬと思います。  それから同じ演説の中で、電源開発のために政府資金を重点的に投資するとおつしやつております。この問題について伺いたいのでありますが、電気の問題も非常に焦眉の問題でありながらもつとも予算関係もありましようが、割合に具体化する時間が長いように思うのであります。特定の会社をつくるというようなお話もありますが、政府として一体どういう案でまとめて、どういう程度のものをどういう構想で動かすというふうに御思案がきまつたのか。新しい受入態勢というふうなことを長官はおつしやつておられますが、その新しい特別な会社の内容構想等について伺いたいと思います。
  40. 周東英雄

    周東国務大臣 お話のように、電力開発というものについては重要であるということで、今日までずいぶん延びておることに対しては、私どもまことに遺憾に思つております。今度政府といたしましては、積極的に資金計画を整え、かつ開発の担当者となるべき企業体の問題も考え、そして水利権の早期確定をなすべき機関というものも考えつつ、推進いたす考えであります。構想といたしましては、ただいま大体資金につきましては、四箇年計画昭和三十年度までに、第一期計画として、四百六十億キロワット・アワーという電源の開発を持ち得るように進める。それに関しまして資金計画としては、大体七千二百億円余り、初年度計画として大体千二百億円程度資金計画を立てております。しこうしてこの開発の行き方といたしましては、あくまでも従来ある九つの開発会社と申しますか、電力会社を活用することはもとよりのこと、自治体あるいは企業体の自家発電というようなことも助成して、極力これが開発を促進せしめる。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理   着席〕 一方今日の場合、非常に関係の地域の広いこと、あるいは相当資金を要すること、また治山治水等の利水の関係から、公共土木事業等で国家が多目的ダムをつくつておるものの活用、そういう場所につきましては、ここに新しい国家的色彩を持つたダムをつくりまして、これにその特殊な場面を担当せしめて行く。こういう行き方の方が資金両等の関係からもよろしい。こういう考え方のもとに企業主体を考えております。これに対しまして資金計画といたしましても、初年度の千二百億円の中に、大体政府関係資金が六百億近くあると思いますが、その中の百十億円を初年度は特殊機関に対しての出資に考えておりまして、あとの金は他の企業体にまわす。この特殊な法人につきましては、大体全国一社ということを考え、大体政府出資を主体とし、公共団体等も出し得る形に考えております。こういう考え方でもつて並行して、すべての企業体といいますか、開発主体が敏速にこれに当つて行く、こういう考え方を持つております。今の資金計画としては、その特別な国家的な色彩を持つ機関というものに対しては、年度的に大体四年間に多少の変化は起ると思いますが、約九百億円程度資金考えております。
  41. 小峯柳多

    小峯委員 全国一社案を政府は内定しておるようなお話でありますが、これは特殊の法人にでもなさるおつもりですか、一般商法によらない、特別な單行法でもつつて、特別な会社をつくるというお考えでしようか。
  42. 周東英雄

    周東国務大臣 さようでございます。
  43. 小峯柳多

    小峯委員 資本金はどのくらいに予定いたしておりますか。
  44. 周東英雄

    周東国務大臣 大体資本の総額としては、九百億円ないし一千億程度考えております。
  45. 小峯柳多

    小峯委員 それは会社にいろいろ集まる資金のことで、会社の資本金としてはもつと小さいものではないかというふうに聞いておりますが、そうじやないのでしようか。
  46. 周東英雄

    周東国務大臣 新しい法規に基いて、最近の会社法的な考えで、公称的な資本と実際に出資される額と、区別されて行つてさしつかえないかと考えております。
  47. 小峯柳多

    小峯委員 これは大蔵大臣に伺いたいのでありますが、何か一般会計から五十億ほど出して、国民貯蓄債券の金でこの資金を充実するというふうな話も漏れ聞いておるのですが、どういうことでございますか。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 この電力開発公社と申しますか、会社と申しますか、まだ法案が出ておりませんので、一般会計から出す予定の五十億円は、開発銀行の出費の百三十億円に含ませております。従いまして、新公社あるいは会社ができましたら、一応開発銀行の方から出資するか、あるいは振りかえて直接出資するかにいたしたいと思います。しこうして、今計画しております貯蓄債券の発行は、原則として電力開発の方に使いたい。予定は六十億円を見込んでおります。
  49. 小峯柳多

    小峯委員 そうすると、その六十億も資本金に繰入れるというふうなお考えでございますか。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 これは借入金というので、出資金にはいたさない予定でおります。
  51. 小峯柳多

    小峯委員 長官は、今の新しい機関が電源開発を担当する地域を、およそどんなところに目鼻をつけておりますか、御構想の中にありましたら、伺つておきたいと思います。
  52. 周東英雄

    周東国務大臣 箇所的には考究中でありますが、法案の確定とともに、特定の場所をきめたいと今研究中であります。はつきりただいま申し上げることは——先ほど申しました公共事業等でやる多目的ダム、これを発電に利用し得る箇所、その他大体大きな場所、今場所的には研究中でありますから、そのときにお話を申し上げたいと思います。
  53. 小峯柳多

    小峯委員 新しい会社あるいは機関が、そういう多目的ダムを中心としてやるとしますと、当然水利権の調整の問題が出て来るのでありますが、建設省ではその水利機の調整の問題で何か御用意をなさつておりますか、承つておきます。
  54. 周東英雄

    周東国務大臣 水利権の問題については、一番これが開発箇所の決定に対して遅れる問題でありますので、今度予定いたしております法案等におきまして、どこの場所はどこの主体にやらせるというようなことの決定を、法規的にバツクを持つ機関をつくることを予定しております。それを決定しました上、水利権の許可というものは、従来通り建設省が担当することになるかと思います。
  55. 小峯柳多

    小峯委員 水利権の許可は地方長官がかなり重い発言権を持つと思いますが、そういう意味で、地方の問題とからみ合つて、なかなか水利権の調整というものは簡単じやありません。何か別な法律でも用意してその調整をおやりになるお考えをお持ちになつておりますか。これは建設大臣の所管でしよう。
  56. 野田卯一

    野田国務大臣 お尋ねの水利権の問題でありますが、これにつきましては、ただいま河川法の改正案を考慮しております。この中におきまして、建設大臣が結局本元の権限を持つておるわけであります。第一次には府県知事が持つておりますが、本元は建設大臣にありますので、必要な場合には建設大臣から指令が出てやれるようにしたいと考えております。
  57. 小峯柳多

    小峯委員 長官に最後にもう一つ物価政策の問題についてお尋ねいたします。これはいろいろの経済計画をやる場合、総合した集中的な表現が物価だというように考えますと、特に物価に関して手を入れる必要もないのでありますが、なかなか物価というやつはむずかしい環境になつて来ておると思うのであります。そこで先ほど来申し上げますように、新しい独立に伴う経済態勢として、物価に対する新しい構想といいますか、何か足がかり、手がかりになるようなことを考えて行く必要があるのではないか。これは私見でありますが、補給金のような問題も、もちろんオーソドックスの財政からいいますと、出しにくいことではありますし、今まで骨を折つてつて来たあとではありますが、少くとも輸入物資、特に鉄鋼や何かに補給金をやる、やらぬよりも、新しい角度からもう一ぺん検討をやり直す必要があるのではないか。そのことは物価政策に対する一つの足がかり、手がかりになるというように私は考えておりますが、長官の物価政策に関するお考えを承つておきたいと思います。
  58. 周東英雄

    周東国務大臣 物価に関する御意見はごもつともでありますが、これは小峯さんも同感ではあろうと思います。国策の行き方として、喜び公定価格制をとるというような意思はありません。私は物価というものは経済界における一つの寒暖計みたようなものだと思います。寒暖計は財界、経済界の動きによつてつたり下つたりする。従つてこれだけ上り過ぎるから、どこに原因があるかということを押えまして、対策を講ずるものであります。あたかも人間が体温をはかるときに、いろいろな原因が起つて寒暖計が上つたり下つたりするのであります。それを従来のように、水銀が上らないようにぎゆつと締めておいて、そうして人間のからだの故障を判断しようとしても無理であろうと思います。同様に、物価という寒暖計を締めつけておいて、そして経済界のどこに欠陷があるかということを見出すことは困難であります。こういう意味において、私は物価というものに対する公定価格制度は、はつきり言つて、これは悪い行き方である、かように考えます。ただしかし御指摘のように、今後における問題は、でき得る限りめちやくちやな形にならぬように、今日日本講和発効後において国際経済に復帰をした後に貿易を増加し、生産増加する上におきまして、あくまでも国際的な競争に耐え得るように、よい品を国際価格に適応するようにいたさなければならぬというのが一つの問題であり、同時に価格の上り下りは国民経済というか、国民生活に影響が非常にありますので、その意味から言つて、どういうふうにするかということであります。これについて、私はあくまでも生産を増強して行つて、物の供給をふやすということに眼点を置き、しかも生産を増強する上において、コストの上らぬように、あるいは生産設備、機械の合理化をはかるとか、あるいはできる限りコストの安いところから原料を入れろというふうなことが一つの行き方であろうと思います。しかし一番最後に申し上げますのは御指摘の点でありますが、日本は今過渡期にあり、非生産的な、非能率的な機械を持つてつて、これを直すのには多少の時間的なずれがあります。その間において徹底的に各企業の実態を調べつつ、合理化もさせつつ、しかもこれが特殊な事情で国際価格より高いというときにおいて、今の補給金というようなものを総合的な立場においてどうであるかということの検討が行わるべきであろうと思いますが、私どもは過去における補給金制度の弊害のことがあまりに多くして、企業の実態が補給金になれ、合理化をはからぬでやつたということを考えますと、今ただちに補給金制度をもう一ぺんすぐとるかとらぬかということについては、慎重に考慮を要すべきものと考えております。
  59. 小峯柳多

    小峯委員 物価は寒暖計だという御説はまつた同感であります。これは自由経済考える基本的な考え方におきまして、何といいましても、後段で長官が触れましたように、日本経済の弱さというものがある。また政治的な要因から原料獲得地域などもかわつておる。こういうふうに、日本経済の本来の弱さというものをそのままにさらけ出して、それでは自由経済でいいかというと、やはりそれには問題があると思うのであります。なかなか微妙な問題で、お答えをこの上お願いするのも恐縮ですから打切りますが、とにかく物価政策というものは、今の日本経済の段階の中で大きな役割を持つて来ておつて、寒暖計には違いないが、この寒暖計をしつかり見て、場合によつては攝氏と華氏を使いわけるくらいのことをいたさなければならぬのじやないか、かように考えますので、どうぞこの上ともひとつ御賢断願いたいと思います。  引続き大蔵大臣質問いたしたいと思います。大蔵大臣にりくつのようになつて恐縮ですが、経済政策と財政政策の兼ね合いの問題であります。経済政策が優先すべきか、財政政策が優先すべきか、これは時と場合によつて違いましよう。りくつから言えば、財政政策も経済政策の中の一環でなければなりませんから、経済政策が優先すべきもののようにも思いますが、また今まであなたが御担当なさつて来ておつたような非常にインフレが悪性化して、これをどうしても押えなくちやなりませんときには、また財政が最優先して扱われなければならぬことも了解できるのであります。こういう意味合いで、基本的な考え方でありますが、経済政策と財政政策とのからみ合いをどういうふうにお考えになつておられますか、伺つておきたいと思います。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の通りからみ合いでございまして、私は一体をなすべきものであると考えます。財政政策が経済を支配するようなことはいい経済じやない。財政政策というものは経済政策の一部でございます。戦争とかその他国が非常な力を持つてやるときには、財政政策が経済政策を左右する場合もございます。これは本筋じやないと思う。私はやはり日本経済の一環としての財政の役割を勤める、こういうことになると思います。
  61. 小峯柳多

    小峯委員 どうもすつぱり答弁されてしまつて、結論が出て来たような気がするのでありますが、それじや今二十七年度の財政をごらんになつて経済政策と財政政策とのからみ合いでは、やはり財政が非常に優先していると思うのでありますが、そういう御認定になりますか。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 財政政策が経済政策に及ぼす影響は、私は年とともに少くなつて来ていると思います。昭和二十四年ごろか考えますと、だんだん少くなつて来ている。今後におきましても、この傾向はいい傾向でありますから、財政政策が日本経済を左右するのだというふうなことの力が、だんだん薄らいで行くような方向に持つて行きたいと思います。
  63. 小峯柳多

    小峯委員 財政政策が経済政策を支配するその度合いを低めたい、また低まつて来ているという御答弁でありますが、どういう点でそういう根拠をお立てなさいますか、伺つておきたいと思います。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 これは経済力が伸びて行きまして、そして財政のスケールが伸びない、こういうことでわかると思います。
  65. 小峯柳多

    小峯委員 今までの大蔵大臣の財政政策を見ておりますと、とにかく財政の優位というものが非常に強いのであります。私ども考え方から言いましても、こういうことが経済政策の上で必要だ、それに応じて財政の切盛りをするのが一応オーソドックスというか、平時の考え方であると思いますし、また一日も早くそういう形にしなければならぬと思うのでありますが、今まであまりにあなたが財政優先で——もちろん段階、必要に応じてやられたことでありますが、この印象が強いのでありますから、一般国民の間には、大蔵大臣は財政だけやればいいので、あとのことはどうもお留守になつたような批評もあるのであります。皮肉な言い方でなしに、そういう感じもいたすのでありますが、今の御答弁で私どもも実は大いに安堵するわけであります。  そこでこういうふうに財政が経済を支配しない、むしろ逆に経済が財政を支配するというふうな時期は、私は場合によつては国債まで考えていい時期ではないかと思うのであります。均衡予算というのは、ただ数字の上でバランスがとれるという意味合いでなしに、生産力を伸ばし、民生の安定が確保できるまで、進み方が適正な歩度で進そ、むういうことをにらんで、大きく国民経済的な意味で、均衡予算というものを考えるのが、新しい意味の財政ではないかというふうに考えるのでありますが、大臣はそういう意味合いで、必要とあらば国債等も、もちろん建設的なものに限りますが、考えるような時期が近くあるとお考えになつておりますか、この辺の御見解を伺つておきたいと思います。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 日本経済は、お話のようにかなり脆弱でございます。政府が積極的に借金をして、そしてただちに効果が上らないようなものに持つて行くということは、私は危険なやり方だと思います。もちろん今世界の状況を見ますと、ほとんど全部が赤字財政であります。アメリカにしましても、イギリスにしましても、フランスにしましても、イタリアにいたしましても、借金々々でやつておる。私はこういうやり方はよくないと思うので、まだここ一、二年の間は、やはり健全財政で行つて相当借金をしても大丈夫だというくらいな財政にいたしたい。からだにたとえると、今病気がちようどなおつたころでございます。あまり食い過ぎたり、飲み過ぎたら元も子もなくなつてしまう。それで借金ということは、私は健康体であつて、ある程度食べ過ぎてもいいのだというからだにならなければ、赤字財政は組むべきじやないと思います。
  67. 小峯柳多

    小峯委員 ただいまのお話は、健康体に対する診断の度合いで、お考えもかわつて来るのでありまして、私は逆に、少しよけい食べさしてもいいのではないか。少し大事をとり過ぎはせぬか。大蔵大臣は名医だから、どうも大事をとり過ぎる。少しくらいは栄養物を食べさしてもいいのではないかという感じがいたします。そこでそういうお尋ねをしたのでありますが、それに関連いたしまして、私は講和の実現するのを機会に、何か記念的な事業を、それももちろん建設的なものに限らなければいけませんが、ひとつ考えてもいいのではないか。本年度は予算も組んでおりますが、たとえば琵琶湖の電源開発講和の記念でやるのだというふうな意味の、講和の記念事業的なものを、これを建設公債でまかなつてもいいのではないかと思いますが、そういうお考えまでには至りませんか。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、今の赤字財政では組まぬと申しましたが、先ほど御質問のありました貯蓄債券、これは財政的にいえば公債なのです。政府で発行して、政府で借金をしているのです。それを電力に持つて行く。こういうことで、今の民間から借入れて、そしてそれを生産設備にするということは、これは私は考えております。赤字財政ということは、日本銀行に公債を引受けさせてやるということが赤字だ、こう考えております。従いまして、貯蓄債券が六十億という予定が二百億になれば、これは政府はそれだけ民間から借上げてやるので、こういうやり方につきましては、今私も考えておる次第でございます。
  69. 小峯柳多

    小峯委員 そういう程度の債券は、もちろん特別なもので扱う必要がないほど健全なものだと思いますが、私の申し上げましたのは、資材條件、たとえばセメントだとか、あるいは労務者とか、電源開発に必要な財材が、比較的国内にある。そういうものに対しては——何から何までではありませんが、特定なものを限つて、あなたの言う赤字公債、建設的な赤字公債というものを考える時期というものは来ないとお考えになつておりますか。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 赤字公債、すなわち日本銀行が引受けて、そして日本銀行の負担において通貨を増発し、事業をするというようなことは、私は差控えたいと思います。それでなくとも、今はオーバーローンだというので、相当これについて皆様御心配になつている状態でありますので、日本銀行の引受けによる国債の発行によつて事業は、差控えたいと思つております。
  71. 小峯柳多

    小峯委員 オーバーローンの話が出ましたが、一体オーバーローン大臣はどういうふうに見ておられますか。今のオーバーローンは、これは資本蓄積の少い日本経済の、当然の現われであるが、このことをもつて神経質に考えることはないというふうな言い方もあります。そしてまた、オーバーローンというふうなものを通してまかなわれた金融というものは、非常にナーヴアスだ。そのために始終金融の上でおつかけられて、企業というものは金融の上で不安定だ、だからオーバーローンを解決しなければならないというような意見もあります。このオーバーローンの問題が、このごろ町でも議論の対象としてやかましいのでありますが、大臣はこれをどういうふうにごらんになつているか、伺つておきたいと思います。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 オーバーローンは、そのことを自体はいいことじやありません。改めなければならない。しかしこれは今の現状としてやむを得ない。やむを得ないから徐々にこれを改めて行こうというのが、これからの金融策であるべきだと思います。
  73. 小峯柳多

    小峯委員 このオーバーローンを徐々に改めないで、急激に早急に改めたいという意見も、試案等が出ている。これは御承知でしようが、前の大蔵大臣の石橋氏などは、この言い方をいたしております。あなたの御意見ですと、徐々にといいますが、徐々にくずして行く。そのくずし方の筋道、またその徐々という時間の御検討を、どんなふうにお考えになつておりますか。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 オーバーローンを解消するいろいろな試案が出おるようであります。私も雑誌で読んだことがあるのでありますが、これは本質的にオーバーローンを解決する道じやありません。これは金融家の立場からいえば、日本銀行からせつつかれるので、政府に肩がわりしてもらえれば、せつつかれようが少いから楽になる。こういうわけで、オーバーローン自体は何も解消しない、それで私は、政府が肩がわりするような方法はとるべきじやないと考えております。しこうして第二段に、どういうふうにしたらオーバーローンが解決されるかということは、第一は何といつて資金の蓄積であります。国民ができるだけ節約してくださつて、その節約されたものを、正常なルート乗つけて、銀行預金するなり、郵便貯金するなり、あるいは社債、株式の発行に応募するなり、こういうことで行くよりほかにないと思います。そこで私は財政演説で申し上げましたように、何をおいても、資金の蓄積が第一だと思います。資金の蓄積がふえれば、それだけ銀行の手持ちが楽になつて日本銀行に返せるわけでありますから、極力資本の蓄積をやつて行く。資本の蓄積ができた場合において、その資本の使いようを考える。今オーバーローンなつたということは、最近の経済界が好況になつたために、設備資金に出過ぎて、物価が上り、生産がふえる。従つて当然資金がなければならぬ。その資金が足りない。昔は国民所得に対しまして、預金は大体倍額から七、八割増しくらいであつた。今五兆億円の国民所得とすれば、銀行預金などが八、九兆億あるべきであるが、国民所得としては五兆億円でありながら、預金は一兆二、三千億しかない。こういうのでは、どうしてもオーバーローンにならざるを得ない。かてて加えて生産の増強と、物価の高騰があるのであります。ここでどうしてもいろいろな方法を講じて、資本を蓄積して、徐々に銀行、その他の手元預金をふやして、日本銀行に返す。その集まつた金は、できるだけ運転資金の方に持つて行くべきだと考えております。
  75. 小峯柳多

    小峯委員 まことにごもつともな話を伺つたのでありますが、私は逆に、その資本蓄積を妨げておるのが、今のオーバーローンを実現しておるような状態も、実は手伝つておると思うのであります。先ほど国民所得と貯蓄の割合のお話がありましたが、その割合が、昔とかわつて非常に小さいというところに、やはり日本経済の弱さがあるのであります。その弱さに実はオーバーローンというものが由来していやしないか。今のオーバーローンは單にこれが普通の貸出しでふえているというばかりでなしに、内容的に調べれば、これは当然設備資金でまかなわなければなりませんものが、普通の運転資金で出ておる。その運転資金がこげついている。従つてオーバーローンオーバーローンだが、正常な意味オーバーローンよりも、中身において相当いろいろなものがからんでいる。しかしこうしなければならぬほど実は長期金融というものが逼迫いたしております。それからまた何といつて日本の一番の弱さは自己資金の僅少にありましよう。あなたの演説の中でも日本経済の弱さというものは、結局蓄積が少いためだ。それぞれの企業が生産高や販売高に比べて、資本が小さいところから来ておるのだという話があつたと記憶しておりますが、私はそれから由来しているオーバーローンだと思います。しかしただいまお話のように貯蓄をふやせばいいのだという話よりも、もう少しオーバーローンというものは逆に蓄積を妨げているというようなことも考えて、何かこれに考え方を少し直して行かなければならぬのじやないかと思うのであります。すなわちオーバーローンのつくつております原因の中の設備に固まつている資金などは、これは本来ならば長期資金でまかなうべきものでありますから、これを一応たな上げして、もう少し金融というものを安定させるということまで考えてやらないと、あなたのおつしやるように、蓄積は逆になかなか伸びないということもあるのではないかと思うのであります。どうか重ねてひとつオーバーローンの問題を承つておきたいと思います。     〔西村(久)委員長代理退席、委員   長着席〕
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどのお答えで盡きておると思いますが、とにかく貸出しが預金よりも上まわつておる。これがオーバーローンであります。預金がふえて来れば貸出しが今の状態であつてオーバーローンにならない。そこで預金をふやすということも第一でありますが、先ほど触れましたように、自己資本というのが少な過ぎる。これはいわゆる節約してためられたものを社債なり株式の方へ投資していただく、こういうことで盡きると思うのであります。従いましてオーバ・ローンの原因は、設備資金が急激にふえた。それでこげついた。こういうことになるのでありますから、株式の投資をするとか、あるいは借入金を社債に振りかえる、こういうこともオーバーローン解消の有力な手段だということは前から考えておるのであります。そこで今の金融制度で、それが今のオーバーローンを急速に解消できるかというと、なかなか困難であります。私は金融制度についても開発銀行、輸出銀行を設けた趣旨を広げまして、日本興業銀行的な投資銀行というものを設けたらどうか。それは債券発行によつて長期資金をまかなう、こういう考え方をなすべきではないか、こう思つております。この点は今設けております金融懇談会に付議いたしまして意見を聞いてみよう、こう思つておりますが、金融制度につきましても、ある程度改めなければいけません。また金融家自体についても、長期資金であるべきものを短期資金のようなものにして、それを二箇月、三箇月でぐるぐるまわすということはよくないので、昔はたとえば手形の場合にしましても、自発的に利子だけ二、三箇月持つて来れば、元本についてはとやかく言わなかつたのでありますが、このごろは二、三箇月で元本も回放する。こういうような金融のやり方は普通のやり方ではないと考えております。
  77. 小峯柳多

    小峯委員 長期金融機関が非常に不備になつておることが、オーバーローン一つの原因だというふうに申しましたが、その解決策の一つでもありましよう。今特殊銀行のお話が出たのでありますが、今までのように、たとえば興業銀行とか、勧業銀行というものを移行してそういうふうにお考えになるのか、あるいはもしやるとすれば新しくつくつてやるというようになるのか、その構想はどちらですか。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 今の日本興行は、いわゆる投資銀行でございまして、一般の預金を受入れおりません。貸出しの方だけであります。今度できる分は日本興業銀行型にいたしたいと思います。従いまして日本勧業銀行のように商業銀行の建前で長期金融をやつておるというものにつきましては、これはどういうふうな措置をとるかということは今検討しております。たとえば日本勧業銀行の長期部門は別にして、新たに投資銀行をこさえるか、あるいは商業銀行として立つならば、債券発行をやめるか、こういう点について今検討しておりますが、私の構想としては、原則として新投資銀行を設ける、こういう考え方であります。
  79. 小峯柳多

    小峯委員 今興業銀行は預金を扱つてないというお話ですが、興業銀行は預金を扱つております。まあこれはけつこうでございますが、そこでひとつ聞きたい問題があるのでありますが、オーバ・ローンを解消するためには預金がふえる必要があるというお話、ごもつともでございます。逆に貸出しが減つても実はよいのでありまして、そのためには各企業の自己資本をどうして留保するかという問題が出て来るのであります。そこで各企業の資本蓄積、自己資本充実のため、特別な税制上あるいはその他の方法で考慮すべき問題があり、またそれに対する何か準備でもおありになりますか、伺つておきたいと思います。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 日本興業銀行は預金をとつておるということは承知しております。多分二百億余りでありましよう。原則として取引先の預金ということを主にしております。一般預金を集めるという商業銀行的営業でない方法であります。こういう意味であります。従いまして新たに計画しようとしておる投資銀行も、そういうやり方で行きたい、こういう意味でございます。  次に自己資本の増加でございますが、これにつきましてはまず第一が収益を蓄積すること、すなわち積立金をふやし、償却金をふやすということが第一でございます。これはさきにも申しましたように、大体三千四、五百億の法人の蓄積がふえたと考えております。それは二十六年度中でありますが、二十七年度におきましても相当の蓄積があると思いますが、これを伸ばすということと、もう一つは増資でございます。増資につきましても、一昨年の暮れから昨年の春ごろにかけてはなかなか株価も下つおりまして、増資は非常に困難でありました。しかし昨年の五、六月ごろから株価は非常に上昇いたしまして、最低のときに比べまして七割くらいの増加になつております。今は計算の仕方はいろいろありますが、昨年の最低のときにおいては七十五円のところが、今は倍近くの百三十円余りの額になつておると思います。こういう際を利用して私は会社ができるだけ増資をやつたらどうか、こういう気持を持つております。前から七十円以下では増資はできないということは考えておりましたが、七、八十円、百円を越えておるという場合においては、相当増資をやるべきではないか、また増資をすると同時に、この金融界の情勢より社債の発行という方面についても、証券会社あるいは銀行の方が相当力を入れて行くべきではないか、こういう考えを持つております。税法上におきましても証券の進出を阻害するという條件につきましては、本国会にある程度緩和した方策をとります。また称務執行の上から考えましても、できるだけ緩和方策を講じて行きたいという気持を持つております。
  81. 小峯柳多

    小峯委員 証券市場の問題と関連して増資を容易にするというようなお話がありましたが、その前に最近よく会社筋で社内保留をしにくいような税法にされている。もちろん今でも三割五分から四割二分に上つておりますが、もう少し社内保留のしやすい方法にやつてもらわないと、この間の大蔵大臣の本会議演説でも、企業は大いに締まれというお話でありますが、なかなか締まりにくいのだというふうなお話を伺うのであります。そこで私案でありますが、何か資金蓄積をやる臨時措置法みたいなものを考えて、会社の社内保留に対して免税をするとか、あるいは償却を短縮するとか、あるいは場合によつては一定の期間配当に対する制限等考えてもいいのではないかと思いますが、何か会社の自己資本蓄積を急激に増強するような臨時措置が考えられないかどうか、そんなお考えはございませんか。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 第一の償却の問題でございまするが、償却も相当短縮いたしたつもりでございます。またことに産業合理化法が制定せられましたにつきまして、特殊の産業につきましては特別の償却を認めて行きたい、こういうふうに考えているのであります。  なお税制につきましても、資産の評価益を認めるとか、あるいは退職積立金につきましての免税をなすとか、あの手この手ではやつているのであります。しかし片一方では財政上の問題もございますので、まあこの程度なら私は相当蓄積ができるのではないか、またしてもらいたい、こう考えているのであります。
  83. 小峯柳多

    小峯委員 これは前にも何か質問なつたと思うのですが、三月の金融危機ということを町で言つております。そこでこの問題はあなたからも答弁がありましたが、この一月——三月の——もう二月に入りましたが、その間の総合資金需給推算といいますか、このいうものも何かお持ちでしようが、どんなふう三月まで推移するか。政府資金との関係もありますが、お漏らし願いたいと思います。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 三月危機と言つておりますが、これは今までも経験のあることで、危機があると言つているときに危機の来るものではないということは、これはもうわかつていることであります。資金の総合需給に関する問題でありますが、御承知の通り三月危機ということが一昨年言われたころは、主として納税が高まつて来て納税資金に困るであろう、こういうのが一つの原因でございました。しかし幸いに本年度におきましては、——三月の納税は大体四分の一でございまして、従来よりはよほど緩和しまして平均的にとれるように相なつております。まあ金融の情勢も今非常に平穏でありまして、昨年の末が五千五百三十八億円程度でありましたが、非常な回収ぶりで、ただいまでは四千六百七、八十億に相なつております。九百億はかり回収ができました。これを昨年の例で申しますと、昨年は六百億くらいしか回収ができていない。しかし絶対額が減つているから……。金融の事情は今のところ円滑に行つているようでございます。日本銀行の貸出しも一時はユーザンスを加えまして、四千億円近かつたのでありますが、今は貸出しが二千百億円から二百億、ユーザンスの方が千三百億から二千六百億程度であります。それほど常態に復している。金融財政の方面から私は三月危機が来るというようなことは考えておりません。また経済は生きものですから、どういう問題が起るかもしれませんから、そういう場合には万全の措置をとりたいと考えております。
  85. 小峯柳多

    小峯委員 今お話のように通貨の膨脹の数字が年末にかけてきわめて急で、またその收縮が順調なのでありますが、この数字から見るならば、金融状況はなかなか正常に行つているように見えます。しかし一般に聞きますこと、あるいは具体的に訴えられますことは必ずしもそうでない。そういうふうに通貨が急に膨脹し、急に収縮し、いかにも正常なような動きをしましたその原因というものはどこにあるのでありますか。おそらく金融が正常になつた、経済が正常になつたとはおつしやるまいと思いますが、どういう関係で非常に収縮しているか。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 これは年末にずつと通貨が出まして一月にずつと収縮する、それから二、三月にかけて徐々に上まわつて来る、これが普通の状態でありまして、いわゆる三月に危機が来るという異例のことを想像されますから、税の方でも非常に順調で、金融も順調に行つている、こういうことを申し上げたのであります。昨年の回収状況は悪くない。どちらかと言えば少し急激に返つている。こういう状態で行つているということを言つているのであります。
  87. 小峯柳多

    小峯委員 そうしますと、年度末の貸出しや通貨の発行高をどのくらいに押えてお考えになつておられるか。もし正常であれば正常な数字が出るし、そうでなければ三月に相当ふくらみはしないかと思いますが……。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 私は三月の年度末の通貨なんかはあまり気にとめておりません。これは適当のところにおさまるのだと思う。四千六百億程度の通貨はどちらかと言えば私は少な過ぎるくらいに考えているのであります。もつとふえてもいいくらいに思つております。こういう考えでございますから、三月の年度末の通貨がどうなろうということにつきましては、私はそう今関心を持つておりません。ただその日その日の通貨の動きはずつと見ております。通例一月に締まりまして、それから徐々にふえて行くのが普通の姿であるわけであります。
  89. 小峯柳多

    小峯委員 三月危機の理由づけとして、十二月の手形決済を延ばしているということ。私今伺いましたのは、そういうふうに十二月を延ばして来た手形決済の期限が三月に来るとすれば、相当ふえるのじやないかという見方でお尋ねをしたのでありますが、大臣そう御心配なさつてないようであります。金融は割合順調に行つているという御認識のようであります。しかしなかなか底流としましていろいろ問題があるようであります。弱いものはどんどん整理されてもしかたがないのだというようなお考えになりますと、またそういう考え方ができるのじやないかと思いますが、事実はこれは相当むずかしい問題を内に包蔵していると思うのであります。そういう意味で三月のお話を承つたのでありますが、まあ御説の通りだとすれば安心していられるわけであります。  それから先ほどお話の中で有価証券のお話が出まして、讓渡所得のお話にも触れたようでありますし、先般御説明のときに、譲渡所得を減すんだ、そうしてできればなくしたいという話がありましたが、できればなくしたいというお話まで入れてどういう考えお話なつたのか承りたい。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 譲渡所得のお話がありましたが、キャピタル・ゲインという問題は、シヤウプの税制改革の根本をなしておるのであります。一挙にこれをやめることはなかなかむずかしいので、ただいまのように、株式の讓渡所得でありましたときには、五年間に按分してやるということをやめて、簡素化の意味から申しましても、やり方をかえる。全廃は今意図しておりませんが、一応緩和しよう。その緩和の案は、譲渡所得のうち十万円まではひとつ免税にしよう。それから十万円を越えた場合におきましては、越えた部分について五十万円までの小額の場合においては五分五乗の方法で行こう。五十万円もうけた人は四十万円の所得としてやる。そうして五分しまして八万円をその年の所得の上積みにする。そうして税率をかける。しかして算出された平均税率をもとの四十万円の税率としてとろう、こういう昔の山林所得のような方法で行きたい。五十万円を越えた場合におきましては、十万円を控除して今の制度で行く。こういうふうにいたしております。こういうことをかえたのは、譲渡所得を緩和する意味から、十万円以下の人は全然かからないということで、施行上につきましてもよほど緩和して行きたい。私はその様子を見まして、できれば近い将来において全廃のところまで行つてもいいのではないか、ただその経過的な措置として、ただいま申し上げましたような緩和手段をとろう、こういたしておるのであります。
  91. 小峯柳多

    小峯委員 大臣の先ほどのお話の中で、金融懇談会のお話が出ましたが、ああいうものをつくられて、金融の政策に何か新くふうをされたいというようなことをお考えになつておると思うのでありますが、一体銀行法の改正をどういうふうにお考えになつておられるか、承つておきたいと思います。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 銀行法の改正は、日本の金融機構に重大な問題がありますので、産業界、金融界、また衆参両院の一部の方においでを願いまして、検討を願つておるのであります。その結論によりまして、今国会に出すか出さぬかをきめたいと思つております。私はただいまのところ全然白紙でおります。
  93. 小峯柳多

    小峯委員 日銀の政策委員会に対して、これはどういうふうにお考えになりますか。機構の改革等とからみ合せて、委員会がいろいろな意味でそれぞれ問題になつております。おそらく日銀の政策委員会に対しましても、大臣一つのお考えを持つておられると思いますが、どういうふうにお考えになつておりますか、承つておきたい。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は、金利の問題から来ることでありまして、機構の問題といたしましては私は大したものとは思つておりません。それでは政策委員会がたとえば万が一なくなつたといたしましても、やはり参與制度とか、いろいろなもので日銀に設けられることと思います。従いまして政策委員会をどうするかということは、金利その他の問題とも兼ね合せて研究すべきものであるのでありまして、これも金融懇談会の方で取上げてもらいたい、こういう考えを持つております。私が今これをどうこうするということは、銀行法と同じように、自分の方から言わぬ方がいい結論が出ると思いますので、差控えたいと思います。
  95. 小峯柳多

    小峯委員 金利の関係というようなお話がありましたが、一体大臣としてはどういうふうに金利をつかんで行きたいのですか、金利に対するお考えを承つておきたいと思います。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまのところでは、金利に対して大蔵大臣は発言権は実はないのです。これはアメリカでもそうでありますが、アメリカにおきましては、一般金利の調整は、二千七、八百億ドルの国債の利子で操作しております。しかし日本におきましては国債を発行いたしておりません。しこうしてまた、ある国債も、国民所得から申しますればごく微々たるもので、国民所得の二十分の一くらいの国債でありますから、国債の利子によつて大蔵大臣が金融界の利子を左右することはできない。金利に対して全然権限を持たずにおいて金融政策、財政政策ができるかという問題があるのであります。しかし大蔵大臣が金利をどんどんかえるという権限を持つても、またこれはたいへんなことになりますので、その点をいかにするかというのが問題でありますから、これも兼ね合せて、銀行法の審議が済んだならば、金融懇談会で取上げてもらわなければならぬ重要な問題だと思つております。
  97. 小峯柳多

    小峯委員 今いろいろお話のあつたような問題は、今国会に上程を目途としてお考えになりますか、それともただ一つのアイデアとしてお考えになつておられるのですか。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 重要な問題でございますので、私は急ぐ必要はないと思つております。一に専門家の結論を見ましてきめたいと思つております。
  99. 小峯柳多

    小峯委員 私は実は金利という問題で少し意見があるのでありますが、御承知のように、金利というものはほとんど今作用いたしておりません。利回りというものがほとんど有名無実になつております。そういう意味で、どうしても金利というものを、少くともこういう資本主義的な経済運営する限り、私はこの問題はもつと重要に考えなければならぬことだと思います。そこで今あなたが大蔵大臣として金利をつかんでいないのは別問題といたしましても、金利の方向というものを上へ持つてつたらいいか、下へ持つてつたらいいか、上へ持つて行くということは、産業資本からいえばいろいろ異議のある問題がありましよう。しかし今のように、名目上は低くても、やみ金利に相当依存しなければやれないというときには、むしろ金利というものを少し考え直して、正常金融圏とやみ金融圏というものを一本にすることも、一つ考えなければならぬ問題ではないかと思うのであります。そういう意味合いも含めまして、一体金利というものを大蔵大臣としてはどういうふうに持つて行きたいのか、そのお考えを伺つておきたいと思います。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 金利は低いに越したことはありませんが、無理して低くするわけに行きません。日本の今の金融界の問題はオーバーローンでございますが、オーバーローンというのはどこから来たかと申しますと、やはり日本銀行の公定割引歩合と市中銀行の割合が逆になつておる。一銭四厘が今一銭六厘になつておりますが、普通銀行の方は二銭大厘である。どこの国、どこの時代にこんなばかなことがあつたか、こういうことであります。銀行の方から言うと、一銭六厘で借り、二銭六厘から二銭八厘で貸すのですから、当然もうかるようにできている。これは日本銀行の金利というものはなくなつてしまう。だから日本銀行の公定歩合は大いに上ぐべきだ。しかしなかなか一ぺんにそうは行きません。今の脆弱な日本経済状態でありますから、そう荒手術はできないと思う。公定歩合と一般の金利とは今の逆になるのが正常な姿です。こういうことからいいまして、私は将来公定歩合はだんだん上つて行く、こうなつて来ると思います。今これを緩和するために、高率適用制度を徐々強化して行つて、その弊害はある程度ためているのでありますが、日本の金利体系といたしましては、やはり日本銀行の公定割引歩合が市中銀行よりも高くあるのがほんとうでございます。そういうことは徐々に直して行かなければならぬ。しかし全般の金利がどうあるべきかということは、お話の通り二銭六厘、二銭八厘がそのまま励行されている場合は少いと思います。貸出しのときに、歩積みという名目で定期預金をさすとか、あるいはいろいろなことで実際の金利負担相当高くなつていると思います。しかしやはりこういうことを改めには、オーバーローンを改めると同様に、徐々にやつて行かなければならぬ。それはやはり資金の蓄積、資金の効率運用ということで改めて行かなければならぬ。産業界から申しますれば、原則は金利は安いのがほんとうなんです。しかしそういう原則、理想は、今のところはなかなか行われませんので、実は定期預金利子と同様に、徐々に上げて行さたい、こういうことであります。
  101. 小峯柳多

    小峯委員 金利が安いほどいいというのは、お伺いするまでもないのでありまして、これは問題外でありますが、ただ今の段階でどうするか。それから今のように資本蓄積の少いときに、安かろうはずはない。そこでさつきのあなたの答弁がもう一つ問題になつて来ると思うが、オーバーローンの問題も、一つは日銀の割引歩合にある、金利にあるというようなお話でしたが、その日銀の割引の金利に対して、大蔵大臣はさしずしたり、あるいはかえさせるような力はないわけでありますか。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 公定歩合の改訂のときには、相談は受けます。しかし私からかえろという権限はございません。
  103. 小峯柳多

    小峯委員 そういうふうになつておりましても、一国の財政金融政策を担当しておつて矛盾を感じませんか。金利の問題は案外大きな問題になつている。その問題を金融懇談会の方で時間がかかつてもよいのだというお説ですが、もう少し早くやつて、これを大蔵大臣として、責任者としてつかむ必要があるように思いますが、重ねて御意見を伺いたいと思います。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 大蔵大臣が独断で金利をやりかえるということにつきましては、またある程度の弊害も起ります。そこの兼ね合いがむずかしいのであります。今は相談を受けて、協議の上きめることになつておりますが、今私がこれだけ上げたいということになりましても、これは政策委員会の方で上げません。今は独断はできぬのであります。
  105. 小峯柳多

    小峯委員 私はオーバーローンをいろいろ問題にしている金融界で、そういう不合理があるのをほつておくということは、どうしてもわからぬのですが、どういうわけで放置されているのでありましようか。あるいはそれは徐々に直せばいいとやはり大臣はお考えになりますか。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 こういうものは一応みんなが納得行くような案ができて、そうしてあなた方国会で十分審議していただきたい。そうしてみんなの納得の行くような案を出していただきたい。
  107. 小峯柳多

    小峯委員 私は邪推すると市中銀中はその間にあつて非常にもうかつている。もうかつている仕事をみずから好んで直すと言い出す人はないと思いますが、そんなことはありませんか。
  108. 池田勇人

    池田国務大臣 なかなかただいまのところ金詰まりでございますので、金融界の力が相当強いようでございます。私はこの懇談会には一回も出ておりませんが、情報は聞いておます。とにかく納得の行くように十分審議を願つて、そうしていい案をつくつてもらうようにひとつお願いしております。
  109. 小峯柳多

    小峯委員 私は非常に強気の大蔵大臣にしましてはいかにも慎重なので、お話を聞いてびつくりしたのです。どうかもう少しこの問題に関しては、あなたの強いところを大いに容認するつもりでございますから、お考え直しをいただきたいと思います。  時間が来ておるようでありますから、一応これでやめたいと思います。
  110. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 本日はこの程度にとめまして、午後は去る一月二十八日逝去されました中島代議士の葬儀もありますので、弔意を表するため、会議を開かないことといたします。なお明後四日は午前十時より委員会を開会して、質疑を継続することといたします。  これにて散会いたします。     午前零時二十二分散会