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田代委員 私は
日本共産党を代表して、
本案に反対するものであります。
理由といたしましては、一応零細な
貯金の
利子を上げる、またわくをふくらますということは、
国民にわかりやすいようでありますけれ
ども、実は本質的に重大なる危険をその中にはらんでおるのでありまして、われわれが反対しなければならない現在の客観
情勢が、どういうところにあるかをまず見る必要があると思うのであります。現在まさに強引に締結されんとしつつある
行政協定の
内容、また安全保障條約、講和條約を見ましても、その中心的なポイントは、再
軍備という点にあろうかと思うのであります。そういう
情勢の中に
本案が
提出されておるというところに、重大なる政治的な問題があるのでありまして、本
委員会における同僚
委員の
質問で
はつきりいたしたことは、簡易保険を含めますと、二千億に余る
厖大な大
資金であるにかかわらず、一人当りの
預金高の平均は、
政府の説明によれば千円余りの零細なるものであります。千円ばかり預けて、かりに
利子が五分にな
つたところで、どれくらいの利益を
国民は得るであろうか、千円か二千円預けて、それによ
つて預金者がいかほど利益を受けるであろうか、ほとんど問題にならないと思う。また実際において、労働者は現在全般的に見て
貯金の余力は持たない、低賃金の中に非常に苦しんでおるのであります。私は炭鉱の事情は特によく知
つておるのでありますが、炭鉱などの労働者諸君は、
貯金するどころではなく、その日が食えない。しかも頼母子講にかか
つて、それに首がまわらないで、給料をもら
つたとたんにもう借金の天引をされるというような形にな
つておるような事態であります。結局このねらうところは何であるかというと、税金の方でとれない部分までも、国家の名において吸収するということになる。しかもそのようにして集めた金は、われわれが過去において苦い経験をしておりますように、これが戦時インフレにな
つた場合にどうなるか。わずかの金は凍結されあるいは封鎖されるということになりまして、使いたい金も使えないという悲惨な
状態にな
つたことは、われわれのいまなおひしひしと感じておる次第あります。しかもまたこれほど
厖大な
資金の使途でございますが、
政府は、これは軍用には使わない、また大金持、独占資本のためにこれを使うようなことはございませんということを口の先では言われますけれ
ども、実際においてはま
つたくその反対であることは
はつきりしております。そうでないならば、こういう
貯金をなさ
つて、なぜ
地方に還元しないのであるか。つまりこれを
地方へ返すという問題につきましては、
大臣自身が、大蔵省に握られておるからこちらに返さなくてはならぬという、その抽象論に対しては賛成いたしておりますけれ
ども、実際上においては還元できない。国会で決議しても、実際にはそういうふうにな
つておらない。大蔵省金融資本がこれを握
つて使う。使い先は明らかに再
軍備の
方向であり、飛行機の生産あるいは戦車の生産ということがもりうすでに始まり、それをめぐ
つての利権が、現在大資本家の中で競争の的にな
つておることは御承知の
通りであります。また先ほど私が
質問いたしましたように、
厖大な繰越
資金を持
つており、これがいざというときに何に使われるか、これは
はつきりしておる。次にこれは明らかに逓信従業員の労働強化になるということであります。
政府といたしましては、昨
年度においては四百億でありましたのが、本
年度六百二十億という
貯金の純増を見越しておるのであります。一方においては、先日の
質問に対する
政府の
答弁によりましても、
貯金関係だけでも四千人の首切りということを言
つておる。人員を整理するのに、
努力目標は五割も六割もふえるということになると、必然的に
強制割当となり、労働強化になることは、火を見るより明らかであります。この法案はその
内容をよく知らない民衆にと
つては、表面は何だか賛成してもいいのじやないかというような印象を受けますけれ
ども、本質的には耐乏生活を強要し、あるいは愛国
貯金運動を展開し、
貯金報国という
方向に持
つて行くことは明確なことであります。結局これは
日本の独自の政策というよりは、むしろ
ウオール街の金融政策の実行の一端を背負
つておるということが
はつきり言えるのであります。われわれはかくのごとき
意味におきまして反対するものであります。