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1952-06-30 第13回国会 衆議院 本会議 第63号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月三十日(月曜日)  議事日程 第六十二号     午後一時開議  第一 国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出)      (委員会審査省略要求事件)  第二 図書館運営委員長国立国会図書館法第十一條第二項による審査の結果報告     ————————————— ●本日の会議に付した事件  議員請暇の件  朝鮮人の騒じよう事件に関する緊急質問中村寅太提出)  消防強化に関する決議案川本末治君外十二名提出)  国有鉄道の新線建設並びに電化促進に関する決議案滿尾君亮君外二百六十八名提出)  日程第一 国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 図書館運営委員長国立国会図書館法第十一條第二項による審査の結果報告  行政監察特別委員長の同委員会における調査報告     午後二時三十九分開議
  2. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) お諮りいたします。議員松本瀧藏君からオリンピツク大会に役員として、出席のため、六月三十日から本会期中、議員松本七郎君から、国際社会主義青年連盟大会出席のため、六月三十日から本会期中、いずれも請暇の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。      ————◇—————
  5. 福永健司

    福永健司君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわちこの際、中村寅太提出朝鮮人の騒じよう事件に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
  6. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  朝鮮人の騒じよう事件に関する緊急質問を許可いたします。中村寅太君。     〔中村寅太登壇
  8. 中村寅太

    中村寅太君 朝鮮動乱二周年を記念して、去る二十五日、全国各地で、朝鮮人を中心とし、一部共産分子を交えて集会デモが行われたのであります。大阪吹田市における前夜祭のごときは、無謀にも人民電車を動かし、あるいは市外の千里山においては、武裝を整え、手に手に火炎びんあるいは竹やりを携え、赤旗を先頭にラツパを吹き鳴らして、警官隊との乱闘に突入したとあるのであります。あるいは東京の新宿においては、国際平和記念大会と称し、交番を焼き、駅に乱入してこれを破壞し、あるいは満員電車火炎びんを投じてこれを焼殺せんとするがごとき、容易ならざる行為をなしておるのであります。(拍手)福岡市においては、居留民事務所に爆彈を投じている。あるいは敦賀市においては、北鮮八百余名が市役所に乱入して、屋上に北鮮旗を掲揚し、金品を強奪するなど、各地において傍若無人のふるまいをなしておるのであります。遂には警察隊との間に乱闘事件を引起して、流血の惨事を繰返すに至つたことに対しては、われらはまことに遺憾にたえないのであります。(拍手)  メーデー当日の騒乱事件以来今日までの情勢を見るに、共産党がとみに暴力主義的運動方針をとつて来たことは明らかであります。(拍手)しかもその暴力行為による騒擾事件の多くの場合に、左傾朝鮮人主役を演じておるということは、われわれが断じて黙視し得ないところであります。(拍手)こうした騒ぎを起す朝鮮人は、ほとんどが北鮮系の、民主民族戰線下における組織された団体員であつて北鮮政府の指令によつて動いておるものと考えられるのであります。ゆえに、彼らの行動はきわめて戰闘的であり、朝鮮の革命を日本に延長せんとしておるものと考えられるのであります。これに対する政府所見をわれわれはただしたいのであります。  独立後、民主的議会政治を確立すべく努力を続けておる日本民族の進路に、ゲリラ戰法を主とする暴力行動が横行することは、真に遺憾きわまりなき事態といわなければなりません。われわれは断固たる決意をもつてこの暴力を排撃しなければならぬと存ずるのであります。朝鮮は地理的にもわが国の隣であり、歴史的にも日本民族と密接な関連を有し、われらが朝鮮動乱を人事と考えず、肉親の受難にもひとしく心からこれに同情し、一日も早く平穏に帰ることを念じておるゆえんも、この因縁によるものであります。かくのごとく両国民が断ちがたい関係にあるにもかかわらず、多数の在日朝鮮人が、わが国政府当局に向つて正面から戰闘をいどみ、治安を撹乱し、民生に不安を感ぜしめつつある現状は、われらの断じて黙視することのできないところであります。  朝鮮人といえども、今日は外国人であります。およそ外国人が他国に在留する以上は、その国の政治法律社会制度等を尊重し、これに服従すべきが当然であります。(拍手)もし朝鮮人にして、わが国制度に不服があるならば、いさぎよく日本を退去すべきであると存じます。(拍手)集団を結び、暴力によつて治安を乱すがごときは、われわれの断じて許し得ないところであります。(拍手)何ゆえ政府は積極的にこれを防止する態度をとらないか、その真意を疑いたいのであります。その真意をわれわれは尋ねたいのであります。  吉田内閣は、警察予備隊は軍隊ではなく、治安のためのものであるということを、口を重ねて申しておるのであります。今日のごとく暴力により治安が撹乱されておるときにあたり、一般警察が手を燒いている際にこれを使わないならば、いかなる際にこれを使うのか、われらは疑問とせざるを得ないのであります。(拍手)すべて独立国家にありましては、在留外国人にしてその国家治安を乱す者、犯罪をなし、あるいは浮浪、放浪的生活をする者を領域外に追放する権利を持つているのであります。日本政府においても、断固としてこの権利を行使し、暴動に参加し、わが国内治安を害する者はことごとく強制送還をすべきであると考えるのであります。われらは、北鮮系左傾分子によりひんぴんとして起る暴動のために、朝鮮人に対する国民感情が悪化し、やがては穏健なる生活を営む、まじめな朝鮮人諸君が、そばづえを食うようなことになることをおそれるのであります。(拍手)われらは、ひんぴんとして起る暴力事件に直面して、左傾朝鮮人の反省を促すとともに、もし今後も引続き暴挙を続けるならば、今後いかなる事態が招来しても、あるいはいかなる不利な立場に立つても、一切の責任は彼らにあるということをここに警告するとともに、その自重と自制を心から望むものであります。(拍手政府は、日韓会談を早急に再開し、破壞分子や犯罪者等強制送還方途をすみやかに講ずべきであると思うが、朝鮮人騒擾事件に対する政府態度を、国民重大関心を持つて見守つておるのであります。私は、この際政府所見を承るとともに、これらの暴動未然に防ぎ、さらに根絶せしめる断固たる対策国民の前に明らかにすることによつて国民の抱く不安の念を一掃せしめ、民生の安定をはかることこそ政府のとるべき喫緊の要務と考えるのであります。(拍手)私は、率直大胆なる政府の所信の表明を望んで、私の質問を終りたいと思います。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎登壇
  9. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。  去る二十五日の全国各地における朝鮮人騒擾事件は、まことに遺憾に存じます。ことに大阪吹田、伊丹における暴動事件におきましては、まことに国民とともに憤懣の情にたえないのであります。(拍手)いやしくも日本に在住する者は、外国人といえども日本法規に服従すべきが当然であります。しかるにかかわらず、日本法規を無視し、しかして日本治安を害するに至つては、これはもとよりわれわれは相当の断固たる処置をとらなければならないと考えております。(拍手)この事件において、北鮮系がいかに活躍しておるかということにつきましては、ただいま調査中であります。私は、ただちに国警長官を派遣いたしましたが、明日その報告を持つて帰るはずであります。これに対しまして、われわれは国民とともに十分なる処置をとりたいと思つております。もとより、朝鮮人のうちにも、きわめて穏健なる人がおるのであります。これらの朝鮮人に対しては、われわれは十分なる保護を加えて行かなくちやならぬと考えておりまするが、日本治安を乱すような不逞分子に至りましては、これは容赦なく、断固として、私は将来処置をとりたいと考えております。強制送還の問題でありますが、これは早急に日韓会談を開催いたしまして、その措置をとりたいと考えておる次第であります。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男登壇
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ただいま法務総裁が答弁されました通り朝鮮人の大部分は温良な人々でありまするが、その一部に暴力や破壞行動をなす者がおるわけであります。かかる者に対しては、法に基いて厳重に処分するのは当然でありまするが、なおかかる者がわが国内に在留する権利のないこともまた当然であります。朝鮮人は、現在、平和條約の成立とともに日本国籍失つたのでありまするが、ただ基本條約がまだ日韓間にでぎておりませんので、正式には朝鮮国籍をとつておりません。しかしながら、事実上、在留朝鮮人韓国籍を有すべきは、これまた当然であります。従いまして、政府としては、従来も強制送還の話をして来たのでありまするが、今後も引続き、強く韓国側と協議いたしまして、送還を実現するつもりでおります。(拍手)      ————◇—————
  11. 福永健司

    福永健司君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち川本末治君外十二名提出消防強化に関する決議案は、提出者要求通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  12. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  消防強化に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。大野伴睦君。     〔大野伴睦登壇〕     —————————————
  14. 大野伴睦

    大野伴睦君 ただいま議題となりました消防強化に関する決議案につき、提案理由を説明いたします、  まず決議案文を朗読いたします。   消防強化に関する決議案   最近の火災事情にかんがみ、極力その発生を防止し、その被害を局限するため、左記事項に関し、政府並びに自治体は、積極的にこれが対策を講ずべきである。  一 火災予防思想普及に努め、特に東京その他の各都市には、予防指導徹底を期するため必要な手段を講ずること。  二 速やかに水利消防機械器具等消防施設整備を図るため、高率の補助並びに大幅の起債を確保すること。  三 各都市建造物不燃化促進を図ること。   右決議する。  次に、決議案の概要を説明いたします。平和日本の再建にあたりまして、これを阻害するものの一つ火災があることは申すまでもないところでありまして、最近、鳥取市を初め、大小幾多都市にひんぴんとして大火が発生し、その人命並びに財産を脅かす損害は数百億円に及ぶ莫大なものであることは、御承知の通りであります。しかし、火災は、ある程度は人為的にこれを防止することができるものであり、なかんずく、火災予防思想普及に努め、東京その他の大都市では、予防指導徹底を期するため、予防部の機能を拡大したり、その他必要な措置を講じなければなりません。また、水利消防機械器具等消防施設に対しては相当の金額を要するにもかかわらず、従来国庫の補助起債額が少額であつたため遺憾の点が多かつたので、これらを思い切つて増額するよう努力したいものであります。  さらにまた、以上申し述べました手段を講ずるほか、その前提として必要なことは、各都市建造物不燃化促進をはかることが肝要と存ずるのであります。政府自治体も、この際以上の趣旨にかんがみまして、積極的にこれが対策を講ずるようにいたしたく存じます。  今、全国消防団使用のポンプのごときは、その半数に近いものが老朽にして、性能もきわめて悪いものばかりであり、また官公庁の消防施設の不備なることは、まことに驚くべきものであります。火災のときだけの消防であつてはなりません。災害未然に防ぐ予防消防にいま少しく力が注がれていたら、全国災害の何割かは防げるのであります。最近の国鉄日暮里駅の惨事もまた起らなかつたでありましよう。消防予算の僅少が、いかに国家災害を多く招くかを銘記すべきであります。  なお、私どもは、消防関係の職員が、一朝事ある際には、身命を賭し、犠牲的精神をもつて水火の難におもむく崇高な態度に対し満腔の敬意を表するものでありまして、特に義勇的に出動する消防団員に対しては感謝の念を禁じ得ないのであります。私は、これらの人々に対しては、すみやかに何らかの微意を表すべきであると信じます。  以上の理由をもちまして、本決議案提出した次第であります。何とぞ満場の御賛成をもつて決議あらんことを望みます。(拍手
  15. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 採決いたします。本案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  16. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立多数。よつて本案は可決いたしました。(拍手)この際山崎国務大臣から発言を求められております。これを許します。国務大臣山崎猛君     〔国務大臣山崎猛登壇
  17. 山崎猛

    国務大臣山崎猛君) ただいま御決議に相なりました消防強化に関する決議案に対しましては、三つの項目にわかつて、きわめて時宜に適したる御趣意決議と考えるのであります。政府におきましては、これを実現する上において、予算的にも十分なる考慮を拂つて、御決議趣意に沿うようにいたしたいと考えます。(拍手)  国有鉄道の新線建設並びに電化促  進に関する決議案(滿君亮君外  二百六十八人名提出)      (委員会審査省略要求事件
  18. 福永健司

    福永健司君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、滿尾君亮君外二百六十八名提出国有鉄道の新線建設並びに電化促進に関する決議案は、提出者要求通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  19. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  国有鉄道の新線建設並びに電化促進に関する決議案議題といたします提出者趣旨弁明を許します。滿尾君亮君。     〔滿尾君亮君登壇
  21. 滿尾君亮

    滿尾君亮君 ただいま上程になりました国有鉄道の新線建設並びに電化促進に関する決議案につき、提案者を代表して趣旨弁明をいたしたいと存じます。  まず案文を朗読いたします。   国有鉄道の新線建設並びに電化促進に関する決議案   今回政府において鉄道新線十一線を本年度予算をもつて建設に着手することを決定したのは、国有鉄道の本義にかんがみ正に当を得たものであるが、更に鉄道建設審議会補正予算をもつて建設すべきものと建議した新線十六線及び営業休止線三線も又、国土有効利用資源開発等より見て速やかにこれを建設する必要がある。   なお又、鉄道電化についても石炭の節約、輸送力増強等をはかるために、これを更に促進する必要があると認める。   よつて政府は、これらの財源につき機宜の措置を講じ、右新線の速やかなる建設及び電化拡充を期すべきである。   右決議する。 案文は以上の通りでございまするが、その趣旨について申し上げます  顧みれば、終戰後すでに七年、国民待望の講和を克復いたしました今日、われわれに課せられた最も大きな責務の一つ経済自立であります。無謀な戰争により国土の半ばを失つたわが国が、経済自立を達成するために残された最大の希望は、未開発資源開発と、国土の高度の利用とであります。しかして、関係地域総合開発の先駆をなし、基盤をなすものは、交通機関整備拡充、特に鉄道新線建設であります。これに関連する自動車輸送もありますが、地理的立地條件から見て、資源開発の角度からすれば、その主役を演ずるもりは実に鉄道であります。かくして、未開発地方鉄道建設することは、ひとりその地方開発国土有効利用に貢献するところ大なるのみならず、政治経済文化等のあらゆる面において国民生活に直結するものであることに思いをいたすときは、新線建設重要性ははかり知れぬものがあります。ここにおいてか、関係地方国民大衆の新線建設に対する要望は実に熾烈なるものがあり、まことに涙ぐましいものがあるのであります。  一方、わが国鉄新線建設の概況を顧みますると、戰前には約五千万円見当の建設公債支弁をもつて、毎年約三百キロずつの新線建設を見て来たのでありまするが、今日なお鉄道敷設法の別表に掲げられておるいわゆる予定路線は約一万余キロ、かつて予算措置をいたしました線、いわゆる未成線が千六百余キロ、昨年度工事の完成いたしましたものは四十六キロとなつております。この状況をもつてすれば、まことに日暮れて道遠しの感が深いのでありまするが、政府もようやく前述の国民的要望にこたえて、二十七年度国鉄予算には、資金運用部よりの借入金二十億円を計上し、鉄道建設審議会の答申に基き、未成線のうち最も緊要度の高い新線十一線、二百七十キロの建設の決定を見るに至りましたことは、まことに御同慶にたえないところであります。しかしながら、この程度の新線建設をもつてしては、なお国民大衆要望の一部をも充足し得ないのみか、長期にわたる国土開発大局的見地からもきわめて不満足でありまするから、さきに鉄道建設審議会補正予算をもつて建設すべきであると建議いたしました新線二十六線、五百五十キロの建設及び営業休止路線、八十五キロの復活をはかることを今年度より引続き実施するよう、ここに私ども提案者一同は強く政府要望いたす次第であります。  元来、鉄道新線は、確固たる年次計画を立てて、年々平均した工程をもつて建設することがきわめて望ましいのでありまするが、これには巨額な資金を要し、これが調達方法はすこぶる問題なのであります。世の中の一部には、すでに独立採算を標傍しある国鉄に、おそらくは採算のとれない見込みの新線建設をしいることを不可とする説もあります。なるほど、国鉄の現況は、戰後復興の跡著しいものありとはいえ、なお施設車両等の復元、改良、拡充を要するものが多々あり、経営的にはきわめて多難な状況にあります。国鉄といたしましても、よろしくさらに層一層の経営合理化をはかり、可及的すみやかに赤字経営を克服して自己資金の捻出に努め、新線建設をはかるべきであります。しかしながら、国鉄の右様の努力にもかかわらず、国鉄現状が今ただちに巨額なる建設費を負担し得ない事実は、何人もこれを認めざるを得ないのであります。それゆえに、私どもは、鉄道新線重要性にかんがみ、この際政府政府資金の増額、鉄道債券発行について特段の措置を講ずべきことを主張するものであります。  そもそも鉄道は、近代文明国の一切の活動の枢軸をなすもので、ことにこれが国有国営経営形態をとる場合においては、その公共的性格において、国有鉄道は改良せられた高能率、有料の道路であるとも言い得るのであります。今日の国有鉄道公共企業体組織となり、運営上独立採算制をとつていますが、かつて国営当時とかわらない国家の厳重なる監督に服するとともに、幾多の特典を国家より付與せられており、またきわめてしばしば国家公共的負担において援助せられております。従つて国家国民に対して、国有鉄道利用し得る便宜をなるべく広く供與する義務があり、各辺境に居住する国民もまた、なるべくすみやかに国家の経営する交通機関利用し得る機会均等を主張する権利があると考えます。  この意味で、わが国有鉄道は、国内全般にわたり、その鉄道交通網拡充普及せしめ、完全な交通系路を完成するまでは、時のよろしきに従い、若干の緩急消長はあつても、新線建設努力をたゆむことなく継続することをその本質的要請とするものであります。このような国有鉄道公共的性格にかんがみ、国鉄経済状況に応じ、国策的見地に立つ新線建設費に国が資金を投入することは、形式的な見方は別として、その本質においては、道路その他の公共事業の場合と同様に見られるもので、ここに生きた政治が存すると考えます。  次に鉄道債券発行についてでありますが、日本国有鉄道法に定めてあるにもかかわらず、何ゆえにか、所要事項を規定する政令が公布せられなかつたため、有名無実のままに放置されていたのでありまするが、昨年十月、ようやく政令の公布を見るに至つたのであります。終戰後わが国財政経済政策は、占領軍当局の強力な指導により、超均衡予算を目途とする緊縮方針を堅持して参つたのでありますが、過去七年にわたる耐乏忍苦努力により、わが国民生活の水準と経済の実態とは大いに改善せられ、待望の講和成つた今日、新しい国家建設への第一歩を踏み出すにあたつて積極方針への転換の機はまさに熟していることと考えられるのであります。ことに、国鉄線建設のごとく、現在並びに将来の国民生活基盤となるべき生産的事業に対する投資は、最も明らかな資本の蓄積であり、かつ、これらの新線建設効果は、現在よりもむしろ将来の国民が長くその恩惠に浴することを思えば、この際建設費の全部もしくは一部を鉄道債券の公募に仰ぐことは最も時宜に適した方策であると信ずるものであります。かつて国有鉄道が、長年にわたつて新線建設費公債支弁としてまかなつて参つた歴史に徴しましても、この間の事情は明らかであります。  また最近、新線建設に直接関係を持つ地方においては、あるいは県議会の決議をもつて、あるいは市町村議会決議をもつて、もし鉄道債券発行せられるならば、進んでこれの一部を引受け、資金の面において協力することを惜しまない旨を表明しているのであります。ゆえに、われわれは、政府に対し、この際鉄道債券発行について特段の措置を講ずるように強く要望いたしたいのであります。  次に、国鉄電化について申し上げます。元来、この鉄道電化たるや、わが国の乏しい石炭資源を節約し、天惠降雨量を活用する水力電気動力源として石炭と置きかえんとするもので、最もわが国情に適合した施策であると言い得るのであります。すなわち、わが国における石炭最大消費者国有鉄道でありまして、年間約五百三十万トン、全国出炭量の約一三%を消費しておるのでありますが、国鉄電化することにより、良質かつ高品位の石炭を、しかも大量に節約することができ、その節約せられた石炭が他の産業において有効に使用せられるのでありますから、その意義たるや非常に大きいといわねばならないのであります。さらにまた、この電化により、列車回数の増加、運転時分の短縮、牽引力増大等輸送力増強並びに旅行の快適を期し得るのでありまして、この面からする輸送質的改善によつて公共の福祉に寄與するところ少くないのであります。  最近、国民国鉄電化に対する要望はきわめて熾烈であるにもかかわらず、政府が本年度着手しようとするのは浜松、姫路間でありますが、さしあたり浜松、名古屋、稻沢間の工事完成のため必要とする予算補正方途を講ずるとともに、東北、両毛、常磐、信越、中央、北陸、山陽、鹿児島等各本線の電化計画実施を急がねばならぬと考えます。  なお、幹線電化実施が遅々として進まぬ現段階において、これが実質的な実現をはかる方策を提言いたしたいと存じます。すなわち、最近米国において急速に普及発達を見つつあるデイーゼル電気機関車幹線旅客輸送に使用するならば、莫大なる固定的施設を投ぜずして、ただ機関車のみの交換により、ただちにほとんど百パーセントの電化効果を発揮し得ると考えます。しかしながら、右電気機関車は、その幾多の長所があるにかかわらず、究極において燃料を海外の供給にまたねばならぬのでありますから、国家百年の大局に立てば、これによつて国鉄電化の基本計画を何ら変更するものではなく、幹線の電化の進行の速度はこれをゆるめることなく、ますます促進継続すべきものと考えます。このようにして、わが国鉄各幹線の電化が竣成するに従い、当該区間に使用せられていたデイーゼル電気機関車を、漸次各支線、ことに山間の勾配線区等に転用して行くならば、わが国鉄電化計画の進捗を最もなめらかに、かつ最も能率的に実現し得ると考える次第であります。運輸大臣のこの点についての深甚なる考慮を煩わしたいと思います。  なお戰前、国鉄各支線区等において活躍していた、いわゆるガソリン・カーは、戰後デイーゼル機関の動力車に改造の由でありますが、右デイーゼル車の軽快高性能に基く特質に対する各方面よりの要望が強いのであります。しかるに、この車種の国鉄の現有車両はわずか百八十余両で、戰前の約半数であります。よつて政府は、都市周辺の電車輸送に対する代替機関として、また交通量の比較的少い各地方線区及び支線区に対し、交通頻度の向上と輸送能率の改善をはかる方策として、この際少くとも三百両程度のデイーゼル動車を増備し、もつて国民大衆要望にこたえられんことを切望いたします。  以上、決議案趣旨について申し上げました。何とぞ鉄道新線建設並びに電化重要性を御了察の上、御賛成あらんことを切に希望する次第であります。(拍手
  22. 岩本信行

    議長岩本信行君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。この際村上運輸大臣から発言を求められております。これを許します。運輸大臣村上義一君。     〔国務大臣村上義一君登壇
  24. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) ただいま御決議になりました国有鉄道の新線建設並びに鉄道電化の促進につきましてはもちろんのこと、さらに御説明中に伺いましたデイーゼル・カーの増備普及の件につきましては、資源開発国土有効利用の観点から申しましても、また石炭資源の保存、国鉄自身の運営の合理化という点から見ましても、さらにまたサービスの向上、輸送力増強という観点から見ましても、きわめて緊要なことであります。全国の国民要望がきわめて熾烈なるゆえんもここにあると信ずるのでありまして、もとより工事能力の問題、また財源の問題等もありまするが、政府といたしましては、最善を盡して機宜の処置を講じて、一日もすみやかに御決議趣旨を実現したいと念願いたしておる次第であります。  なお、デイーゼル電気機関車を蒸気機関車と置きかえるという問題につきましては、現在デイーゼル電気機関車三両を試作中でありまして、これが竣工次第に、その性能その他の点につきまして実地に検討いたしまして、いわゆる架線なき電化実施方策を確立いたしたいと考えておる次第であります。あわせて御守承をお願い申し上げます。(拍手
  25. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 日程第一は内閣より委員会審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。  日程第一、国家行政組織法の一部を改正する法律案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。国務大臣野田卯一君。     〔国務大臣野田卯一君登壇
  27. 野田卯一

    国務大臣(野田卯一君) ただいま議題となりました国家行政組織法の一部を改正する法律案提案理由について御説明申し上げます。  国家行政組織法によれば、府及び省には内部組織として局及び課を、委員会及び庁には同じく部及び課を置くことを原則としております。しかしながら、例外的に、別表に掲げるものに限り、本年六月三十日まで府、省または本部の官房及び局中に部を置き、また庁に局を置くことが認められております。政府は、今般の行政機構改革に関連し、このように例外的に設置されている部や局はこれを廃止し、国家行政組織法の原則に返ることとし、各府省設置法等の改正法律案を国会に提出し、御審議を願つているのでありますが、国会における御審議状況にかんがみ、六月三十日までにこれらの法律案を成立することは困難と考えられますので、これら臨時的に設けられている部及び局の設置期間を本年七月三十一日まで一箇月間延長することが必要であります。  これが本改正法案を提出する理由であります。何とぞすみやかに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手
  28. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 採決いたします。本案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  29. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立多数。よつて本案は可決いたしました。(拍手
  30. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 日程第二、図書館運営委員長国立国会図書館法第十一條第二項による審査の結果報告を求めます。図書館運営委員長菊池義郎君。     〔菊池義郎君登壇
  31. 菊池義郎

    ○菊池義郎君 至つて重要な問題であり、しかも興味しんしんたる報告でございまするから、漏れなく御清聽をお願い申し上げます。(「ヒヤヒヤ」)  国立国会図書館法の規定によつて、図書館運営委員会における審査の結果を御報告申し上げます。  本委員会は、本国会におきまして、昭和二十七年度の図書館の予算、組織規程の改正案、図書館長の経過報告等を審査いたしたのであります。  まず本年度の図書館の予算において注目されまするのは、国会図書館庁舎敷地買收費が計上されたことであります。これは、開館以来の懸案であります本館建築に向つて第一歩を踏み出したものでございまして、まことに意義深いものがございまするが、来年度からはさらに建築費が計上されなければなりませんし、しかして、この議事堂の近くに面目を一新いたしました国会図書館が新築されなければならないと存じます。  申すまでもなく、国会図書館は、図書及びその他の資料を收集いたしまして、国会議員各位の職務の遂行に資するとともに、行政及び司法の各部門に対し、さらに日本国民に対し、法の規定するところに従つて図書館奉仕をいたすことを目的としております。この目的を完全に遂行し、図書館の使命を達成するためには、さらに多くの図書館資料を收集して、職員を増加し、完璧を期する必要がございます。現在は、あまり能率的でないところの建物でありまする旧赤坂離宮の一部と三宅坂の分室において、五百数十名の職員が図書館の目的遂行に向つて懸命の努カを続けておりますが、現在の図書館には、図書館資料の全部を收容する不燃燒の書庫がございません。全国の出版物の納本は、図書館奉仕に活用する一方、国家将来のために文化財としてこれを蓄積しているのでありまするが、一旦火災をこうむりまして、これを烏有に帰せしめるようなことがあれば、まことにもつたいない次第でございます。  さらに、今後の立法に関しましては、議員みずからが立案して法律の制定に当らなければならないのでありまするから、議員各位は資料の豊富な場所において研究をする必要があり、このためには、議事堂近くの建物内に研究室を持たなければならないのであります。また、図書館の職員をして調査研究させるためにも、議事堂近接の地を選ぶ必要があるのでございます。米国の議会図書館、すなわち国会図書館は、百五十六万平方フイートの床面積と、二百五十マイルに及ぶ鋼鉄の本だなを持つております。議事堂の約三倍以上の大きさになつておるのでございます。しかして一千万以上の図書館資料を持ち、職員は二千名を越えております。敗れたわが日本が、今ただちにこの米国図書館のような巨大な図書館を建てる必要はありませんが、わが国におきましても、唯一の国会図書館として、国会議事堂にマツチするところの図書館を建設することは、決してぜいたくではないと申さなければならない。  なお、本委員会におきまして、本予算審査の結果、外国図書を要求する声が高い今日、書籍購入費が過少であると認めまして、その増額方を議長に勧告いたしました。次に図書館業務の面におきましては、各分野ともそれぞれ順調な発展ぶりを示しております。中でも、昨年度から増員拡充されました調査及び立法考査局におきましては、下半期における国会に対する主要な考査件数が八百余件、行政及び司法の各部門並びに一般に対する考査を加えますると、簡單なものをも含めまして、一箇月平均約三千件の多きに達しております。しかして、図書館を利用する者の総数は、月平均実に六万名を越えるに至つたのでございます。  最後に申し上げたいことは——これが興味ある問題でございまするが、いわゆるP・B・リポートの購入に関してでございます。P・B・リポートと申しますると、元の言葉でリポート・オヴ・パブリケーシヨン・ボードでございます。これを日本語に訳しますと、公表委員会報告とでも言つた方が一番適当ではないかと存じます。今次大戰の末期に、旧枢軸国を占領いたました連合国は、いち早く組織されました米英の技術調査団によつて、ドイツその他の主要敵国の技術書類を手に入れたのでございます。これらの資料は、ドイツのIG会社だけでも数十万ページに上つたのであります。手に入れました調査報告書は、ただちに本国に送られまして、それぞれ專門委員によつて検討された上、目ぼしいものからP・B・何番と銘打つて公刊されたのであります。これがいわゆるP・Bリポートでございまして、つまり米国商務省出版委員会報告でございます。このリポートは、すでに刊行されただけでも十二万件、五百万ページに上り、さらに未刊の分が三万件残つているとのことでありますが、これを日本に入れますると、三十年の立遅れを一挙にとりもどすことができるといわれております。ほらでも何でもございません。ほんとうの話です。  P・Bリポートの内容が、しからばどんなものかと言いますと、化学、機械、金属冶金、電気工学、兵器、農林、水産、繊維紡績、木材パルプ、光学、土建、ゴム、医薬、鉱業、皮革、運輸等、ほとんど産業の全分野にわたつておりまして、米英両国がこれを入手いたしました技術から得た有形無形の利益はまことに莫大なものでありまして、いかなる賠償金といえども、これにまさるものはないといわれておる事実からいたしましても、その価値がいかに大きいかが推察されるのであります。その絶大なる価値は、すでに世界的に認められて、米、英、仏がおのおのその国会図書館、国立中央図書館に一括してこれを備えつけて公開しておりまするし、さらに米国では国内百箇所の図書館に備えつけて公開しておるほどであります。わが国のごときもこれが手に入りますることによつて、容易に世界的水準に達し得るのはもちろんでありまするが、これによりまして生産コストの大幅引下げをすることができる、また日本品の国際市場への進出がたやすくできる、さらに国民生活費を低下せしむる結果からして、民生の安定に貢献するなど、両々相まつて国の再建に資するところがすこぶる大きいのでありまして、その効果はまつたくはかり知ることのできないものがあるのであります。  このように価値の高いリポートでありますので、情勢の変化によつては、いつ何どきこれを外国に持ち出すことを禁じられるかもしれないというおそれがあるのでございます。従つて国家が至急一括入手する必要があります。日本がこれを入手いたしました上は、これを整理保管いたしまして、閲覧、複写等により、あるいはレフアレンスにより、広くこれを活用することができますので、これを国立国会図書館に備えつけることがきわめて緊要であると思われるのでございます。従いまして、本委員会におきましては、去る十八日、P・Bリポート購入に関する件につき決議を行い、国会図書館に対し目的達成に努力するよう鞭撻するとともに、早急にその予算上の措置を講ずるよう、強く政府要望いたした次第でございます。  何とぞ議員各位におかれましては、これらの事情を御賢察くださいまして、大局的見地から本決議に絶大の御支援を賜わりますようお願い申し上げまして、私の報告を終る次第でございます。
  32. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 行政監察特別委員長から、同委員会における調査報告をしたいとの申出があります。この際これを許します。行政監察特別委員長内藤隆君。     〔内藤隆君登壇
  33. 内藤隆

    ○内藤隆君 行政監察特別委員会は、御承知のごとく、昭和二十六年二月六日に、衆議院本会議決議によつて創設されたものでありまするが、第十三国会におきましても継続して設置すべきことが決議されたのであります。本国会の会期は延長されましたが、本日ここに本委員会において調査を行いました諸事件につきまして御報告を申し上げたいと思うのであります。  まず前国会時代において調査いたしましたものは、不正出入国事件、桜木町駅電車事故に関する件、公共事業をめぐる不正事件日本專売公社関係事件等でありましたが、本国会会期中、第一に取上げました問題は、大蔵省の所管である国有財産の管理処分に関する行政監察であります。  その第一は、関門港にあつた扛力五十トン起重機船にからまるところの不正事件であります。この事件は、大蔵省の出先機関たる北九州財務局、運輸省の第四港湾建設部、福岡特別調達局等が関係を持つ複雑な事件であります。まず北九州財務局が、預託という形式で、日本サルベージ会社門司支店に右起重機船を無償で保管を依頼し、同社に不当の利得をさせていたことが、本委員会調査の結果判明いたしまして、あらためて四十数万円の使用料を徴收させるに至つたのであります。次に、第四港湾建設部が右財務局からその起重機船の貸付を受けたのでありますが、何ら使用することなく、数箇月間繋船したまま放置いたしておいたのであります。ところが、たまたま朝鮮事変が突発するに及び、連合軍から徴用されることとなつたのでありますが、そのときはすでに貸付期間が経過していたのにかかわらず、第四港湾建設部は、財務局に何ら相談するところなく、民営会社に一時貸付の契約を結んでしまつたのであります。貸付を受けた業者は、あたかも自己の所有船のごとくに仕立てまして、福岡特別調達局と契約を結び、巨額の使用料をとりました。第四港湾建設部へは、定期的修理分担金としてその一部分を支拂つたのみで、しかもこの修理分担金は国庫に納入せず、首脳部が個人的に保管していたという奇怪なる事実まで判明したのであります。  本委員会でこのことが摘発されまするや、運輸当局は急いでこの金を銀行に別段預金として、その後業者から未納の分も徴収して、合計百四万七千五百円を正式に国庫に納入したのであります。さらに驚くべきことは、連合軍の用務が終つた後、貸付を受けていた枡谷組は、その過失によつてこの船を沈没せしめてしまつたのでありますが、第四港湾建設部は、本省に対して引揚費一千万円の予算を要求していることであります。幸いにも、本省はこの予算を承認いたしませんでしたが、いまなお右起重機船は沈没したままになつておるのが実情であります。これら幾多の不可解な行政措置の裏には、贈收賄や横領背任等の疑いが濃厚になつておるのは当然でありますが、確証をつかむに至つておりません。  国有財産管理処分の不正事件の第二として調査しましたものは、財団法人聖十字学園の事件であります。これは、同学園長磯川義隆及び同理事長渡辺敬吉が首謀者となつて、社会事業に名をかり、厚生省東京衛生試験所の焼け跡の土地、建物の拂下げを受けたのでありますが、十箇年間は公益事業に供用するという條件を無視して、その一部を売却したり、また磯川園長と渡辺理事長との間で土地や建物を分配したのであります。かような不正事実が判明したのは昭和二十五年二月でありますが、会計検査院の手でこれが発見されたのであります。これにより、国有産管理の主管省たる大蔵省は、翌二十六年二月に至つてようやく契約の一部を解除し、学園が社会事業に供用しておると認めた部分だけを残して契約の更改を行つたのであります。しかるに、学園はこの処置を無視し、その後も残存いたしておりまする土地を売却したり、あるいはまた抵当権を設定するなど、国との契約違反をあえて繰返していたことが、本委員会調査によつて判明したので、関東財務局は、本年四月、学園に対する売買契約を全面的に解除することとしたのであります  本委員会は、この学園の経営する社会事業の実態の実地調査もいたしましたが、社会事業として認められるものは、ただ家出人収容所だけであつて、簡易宿泊所、母子寮、太陽の湯等は、名称のみが社会事業のごとく、その実は営利事業であつて、とうてい社会事業とは認めがたいものであつたのであります。聖十字学園という、いかにももつともらしい美名を用いて、かかる詐欺的社会事業が公々然と行われていることはまことに奇々怪々でありまして、東京都や厚生省が、かかる実態の調査もせず、軽々しく法人の認可を與えたり、社会事業として認めたり、大蔵省もまた十分な調査もしないで国有財産を低額に拂い下げたということは、何といつてもその責任を問われなければならないところであります。前に申したごとく、大蔵省もその拂下げの非を認めまして契約を解除し、厚生省も近く法人名義を取消す処分を行うと本委員会報告がありましたから、本件は、本委員会調査の結果、不正不当の事実が是正されるに至つたわけであります。  国有財産管理処分に関する事件の第三に、山口県岩国市の沖になぞの爆沈を遂げた軍艦陸奥のはぎとり事件と称せられるものであります。これは、西日本海事工業株式会社が、山口県知事の許可を得て、搭載物資たる燃料、食料品、繊維品、非鉄金属類の引揚げを企てたことに端を発するものでありますが、当時陸奥は、連合軍からわが国に返還されていなかつたので、極東海軍司令部から抗議が来たために、一時この計画は中止されたのであります。そり後、建設省が主体となり、あらためて搭載物件の引揚げ及び処分をその責任において実施することの許可を得たので、建設省にその実施監督を山口県知事に委任し、引揚げた物件は一般の返還軍需物資、すなわち特殊物件の処分方法により、政府の指示に従つて売却するということになつたのであります。ここにおいて、山口県知事は、あらためて前述西日本海事工業と契約を結び、引揚げ作業が再開されたのでありますが、この作業継続中、朝鮮事変が勃発して、金属類の価格が暴騰し、また陸奥の艦体有体が連合軍からわが国に返還されるに至つたのであります。今までは引揚げ許可を受けた物件だけが特殊物件として返還されたのでありますが、今度は艦体そのものも返還されたのでありますから、建設省の所管においての引揚げ物件の範囲、すなわち搭載物件は何ぞやということが問題となつて来たのであります。大蔵省、建設省、山口県当局の見解は、艦と一体をなす機械類、裝備品は搭載物件ではないとしているのでありますが、会社側はこれをきわめて広義に解し、艦体をどんどん破壞して、重要機械類、裝備品を引揚げ、またこれを無断で処分してしまつたのであります。  しかるにかかわらず、山口県の監督の任に当つている係員は、県が搭載物件でないとしている物件の引揚げを黙認記し、また無條件に契約量を超過する引揚げを認め、火薬に対しても申請通りの数量の使用を許可しているのであります。これは、県と会社とが共謀して、特殊物件の名のもとに国有財産を窃取横領したのではないかとの疑いも起りますので、本委員会はこの点を追究しましたところ、結局搭載物件に関する見解の相違と、県がこの仕事を一係長にまかせ切りであり、この係長がまつたく傀儡的存在となつて会社側に翻弄されていたことが判明したのであります。なおこれに加うるに、建設省が三回目の期間延長に際し、何ら実情を調査しなかつたことが、不正行為にさらに拍車をかけた結果となつたことも否定しがたく、中国財務局もまたその所管となりた後、單に一片の書類による警告を発しただけで、全然現地調査をしていないというように、行政官公署の事務懈怠が禍因をなしていることも否定できないのであります。山口地方検察庁は、本年四月十五日、西日本海事工業社長武岡賢に対し、業務上の横領罪で起訴しておりますが、大蔵省、建設省、山口県当局は、損害の共同調査を遂げ、西日本海事工業に対し求償すべき責任があるというのが、本委員会の結論の一つであります。  なお、本件調査中、陸奥艦内には約一千柱と推定される多数の英霊と殉職者の尊き遺体が眠つていることが判明いたしましたので、関係官庁を証人として喚問し、英霊に対する事後の行政措置につき、その善処方を要求したのであります。遺家族多数より、委員会に対し、激励と感謝のり書状が参つております。  以上三つの国有財産に関する事件を通じ、いかにもその取扱いが粗雑であつて、官公吏の国有財産に対する認識の程度が低く、無責任であることが判明したことは、まことに遺憾であります。ことに聖十字学園に関連して判明したことでありまするが、関東財務局では五十数件、金額にして五千万円に上る国庫收入金が、收入と同時に正しく国庫に收入されず、相当の期間、個人保管または銀行預金等の方法で保管されているという事実も発見されたのでありまして、これまた官公吏の国庫金取扱いに関する認識の低下を物語るものと言わなければなりません。かかる事実が官公吏の不正事件の温床となることは、火を見るよりも明らかなことであります。  さらに本委員会で取上げたのは、女子及び年少者の人身売買に関する件でありますが、これがきわめて世の視聽を引きまして、新聞の社説及び記事または雑誌等でも大々的に取扱われましたことは、あらためて申し上げるまでもありません。本問題は、その根本に、わが国民の経済生活の安定、道徳生活の向上、封建思想の拂拭、人権尊重の徹底等、一朝一夕では実効をあげがたき大問題が存在しているのでありまするが、本委員会でこの問題を調査した結果、人身売買取締りに関し、人身売買の仲介者の取締り処罰のほかに、買主の所罰規定、売主の責任所罰の規定等を含めた特別法の制定が必要であること、現在の職業安定所の非能率性を打破するとともに、従来閑却されていた農山漁村兒童の恒久的な就職あつせんにも積極的に力を注ぎ、義務教育終了兒童の職業補導の拡充強化が必要であること、また学校教育においては、社会科に人身売買問題を取入れ、兒童間に人身売買の悪習を自覚させ、人権尊重の思想を植えつけることが必要であること等が認識され、結論となつているのであります。  本委員会でこの問題を取上げて以来、新聞、放送、雑誌等で、人身売買の防止、人権尊重の世論が全国的に高まつたことは前に一言いたしましたが、なお行政機構及び法の盲点を明確に指摘して、これが改正の資料を提供し、本委員会調査の対象となつた諸事件につき、厚生省及び地元県庁関係当局が、これまで閑却していた現地調査を実行し、全国民生部長会議が特に本問題を取上げてその対策を協議し、中央青少年問題協議会が本委員会調査報告書を複製して、その下部機関及び関係諸機関並びに全国市町村に配布して対策の資料としたこと等は、本委員会の活動が世間に與えた好影響として特に御報告申し上げる次第であります。  最後に本委員会調査しました問題は、今日のわが国の大問題である治安警備状況に関する件であります。  本年一月二十一日、北海道札幌市において、市警の白鳥警部が射殺された事件が起り、事件の前後、日本共産党がこの事件に直接間接関係のあるビラの貼示やデモ行動等に出ているという情報を聞知しましたので、委員会は時を移さず委員の実地調査を決定し、篠田、高木、椎熊、田淵の四委員は飛行機で現地に急行して調査を行い、また京都騒擾事件が突発するや、折からの自然休会を利用して、委員会は田淵、野村、押谷、井上、高倉の五委員を現地に派遣して実地調査を行つたのであります。このほか、事務局に命じて、広島県、長野県、東京都、愛知県において頻発した警察官に対する殺人傷害事件または集団暴行事件等の下調査を行わしめていたのでありますが、下調査の完了した京都市及び広島県の集団暴行事件をまず取上げて委員会を開会し、証人尋問を行つたのであります。  この調査中、たまたま五月一日のメーデーが間近に迫つたので、特に京都市騒擾事件のごときが起る可能性も看取されたので、本員、委員長として、特にメーデーに不祥事件の繰返されないよう警告を発するため、一文を草して、談話の形式でこれを公表し、写しを各関係取締り官庁、各新聞社及びメーデー主催者側たる総評等へ送付しておいたのであります。しかるに、不幸にも本員の杞憂は杞憂で終らなく、まつたく京都市騒擾事件と鬪争性格を一にし、しかも、より暴力的、破壞的の一大不祥事件が皇居前広場に展開され、流血の惨事を惹起し、講和発効の新生独立日本に歴史的汚辱の刻印を押し、諸外国に異常の聳動を與えたことは、きわめて痛恨事といわなければなりません。  本委員会は、早急にメーデー騒擾事件の真相の調査に従い、これを中心議題とするほか、蒲田事件、長野事件その他もあわせて監察を行う委員会を開催しましたが、その結果は  一、前記各種事件は、いずれも日本共産党の新綱領と軍事方針に基くいわゆる軍事活動の一環として計画されたものであること。  二、日本共産党は、最近の国際情勢の変化に対応し、民族解放、民主統一戰線を当面のスローガンに掲げ、平和運動の名のもとに反米抗争を展開し、特に学生、婦人層に働きかけつつあること。  三、労働者、農民、特に自由労務者の経済要求あるいは日常生活の不平不満を取上げて、たえずいわゆる大衆の自衛抵抗鬪争の展開を広汎に企図していること。  四、右自衛抵抗鬪争を強力ならしめるために、職場、学校、部落等にいわゆる中核自衛隊を結成し、さらにこれを人民軍パルチザンに発展せしめるため、府県、地区等に軍事委員会組織しつつあること。  五、警察官、駐留軍の武器奪取を指令するとともに、栄養分析表等の秘密出版物により、広汎にわたつて催涙ガス、火炎彈等の製造法、使用法が指示され、すでに相当量が準備使用されていること。  六、陽動作戰並びに遊撃作戰の訓練が施され、かつその技術が巧妙になりつつあること。  七、民主的労働組合、国体等を内部から切りくずし、その指導権を握ろうとし、また集会、行進等の機会を利用して暴動化をはからんとしていること。 等でありますが、特に最近の事実として注目されるものは、北鮮系在日朝鮮人との間に日鮮共同鬪争の態勢が確立し、在日朝鮮人日本共産党の最も有力な尖兵となりつつあり、幾多の恐怖戰慄すべき事態を引起したことであります。(拍手)すなわち、北鮮系在日朝鮮人の間に祖国防衛隊並びに祖国防衛委員会組織が急速に伸びつつあること、在日朝鮮人に対し、強制送還を歪曲して宣伝、煽動することによつて北鮮系朝鮮人勢力の拡大と日共勢力の浸透を企図していること等の事実が指摘され、在日朝鮮人の問題は、新生日本治安の警備の上の重大な問題として、その対策を講ずることが焦眉の急務であると痛感されたのであります。  以上のような事態に対しまして、治安担当の各機関の状況はどうかと申しますと、第一に、治安機関は一般に自己の権力を過信しやすく、日本共産党の非合法活動を過小に評価して楽観的観察をなす傾向があります。第二に、日共、中共その他の文献に現われた戰略戰術等の研究が不十分なため、ややともすると彼等の遊撃作戰、陽動作戰に乗せられる弱点を示したのであります。第三に、治安当局の機動力の充実その他裝備の点に一段の改善の余地があることが認められたのであります。  次に制度上の問題としては、第一に、集会、行進等に関する公安條例をすみやかに全国一律に法律化する必要があること、第二に、刑事訴訟法の勾留理由開示、黙秘権の行使等につき急速に改正を行う必要のあることが認められたのでありますが、特に現在における治安取締上の重大な欠陥は、自治体警察のあり方並びに国警、自警二本建制度に起因するものが多大であるという点が認識されて、警察一本化が、治安取締りの能率の点と、国民負担軽減の点とより、すみやかに実施さるべきであるとの結論に達したのであります。  日本共産党が、昨年十月、第五回全国協議会で武力革命に関する戰略戰術を決定しましてから、同党の行動は白晝公然と暴力化の方向をたどり、ソ連圏共産主義国家群の一環としての人民政府樹立を目標に、あえて手段の何たるを選ばない地下活動を開始して参つたのでありまして、広汎な国民戰線の結成のためには、その合法面を利用してあらゆる宣伝、扇動を行うのはもちろん、各種の陳情抗議運動を行うことによつてその推進の激化をはかつているのであります。かかる日本共産党の暴力的攻撃態勢に対して、政府は、自由主義を守り、民主政治を確立するため、一日も早く日共の地下活動の究明と、その壞滅とにあらゆる努力を傾倒するとともに、日本共産党による独裁的暴力化の実相とその目的とを国民の前に暴露して、国民各層の間に反共理念の確立をはかり、さらに治安活動が国民の協力のもとに力強く推進されるよう、対共政策の確立を期すべきであると結論された次第であります。(拍手)  さらに、前述の騒擾事件に関連して起つた各大学の学生と警察官との紛争事件も、本委員会において引続き問題として取止げましたが、その詳細は別に書類をもつて報告してあります。大学が暴力革命の拠点となり、学生が革命の有力な一翼となることは、最近の中共、フランス、イタリア、東独等の共産革命運動においても顯著な事実であることを思うならば、最近におけるわが国の学生運動の風潮に革命の前夜たる様相があるというのも、決して本員の誣言ではないと信じます。  以上は、本国会会期中において、本委員会調査を完了しましたものの大要であり、諸事件調査の完結次第、その都度報告書を作成して議長あてに報告しておきました。  なお、関門の起重機船に関する件及び治安警備状況に関する件の結論に対しましては、共産党側委員より修正の少数意見がありましたことをつけ加えておきます。  次に、目下事務局に下調査を命じているものは、最近新聞紙をにぎわしているダイヤモンド及び金、白金の紛失事件を初め、電気通信省関係事件、四日市旧海軍燃料廠拂下げ事件、特別調達庁業務関係事件国鉄関係事件鉄道公安官関係事件、職安闘争その他自由労務者関係事件、江東地区並びに新宿区角筈地区、宇都宮市土地区画整理関係事件、農林行政関係事件、商工組合中央金庫融資関係事件、税務行政運営に関する事件、高崎丸事件、国有財産中物納財産不当処理事件、人権擁護に関する件、印紙変造事件等、実に十数件の多きに及んでおるのであります。  これらはいずれ委員会を開催して調査に従うはずでありますが、今日は以上をもつて第十三国会における行政監察特別委員会の活動状況の御報告を終りたいと思います。(拍手
  34. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 本日はこれにて散会いたします。     午後四時一分散会