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1952-06-17 第13回国会 衆議院 本会議 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十七日(火曜日)  議事日程 第五十四号     午後一時開議  第一 特定中小企業の安定に関する臨時措置法案南好雄君外二十二名提出)  第二 南方連絡事務局設置法案内閣提出)  第三 引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案小平久雄君外八名提出)  第四 北太平洋公海漁業に関する国際条約及び北太平洋公海漁業に関する国際条約附属議定書締結について承認を求めるの件  第五 たばこ専売法の一部を改正する法律案井上知治君外百二十八名提出)  第六 義務教育費国庫負担法案竹尾弌君外十四名提出)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  海外胞引揚促進並びに留守家族援護に関する決議案小平久雄君外二十六名提出)  海外地域等における戰沒者遺骨収容及び送還等に関する決議案小平久雄君外二十六名提出)  公益事業令の一部を改正する法律案(本院提出参議院回付)  公益事業令の一部を改正する法律案、本院議決案  国土総合開発法の一部を改正する法律案内閣提出参議院回付)  日程第一 特定中小企業の安定に関する臨時措置法案南好雄君外二十二名提出)  日程第二 南方連絡事務局設置法案内閣提出)  日程第三 引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案小平久雄君外八名提出)  日程第四 北太平洋公海漁業に関する国際条約及び北太平洋公海漁業に関する国際条約附属議定書締結について承認を求めるの件  日程第五 たばこ専売法の一部を改正する法律案井上知治君外百二十八名提出)  日程第六 義務教育費国庫負担法案竹尾弌君外十四名提出)     午後二時十九分開議
  2. 林讓治

    議長林讓治君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 福永健司

    福永健司君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、小平久雄君外二十六名提出海外胞引揚促進並びに留守家族援護に関する決議案は、提出者要求通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  4. 林讓治

    議長林讓治君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  海外胞引揚促進並びに留守家族援護に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。小西英雄君。     〔小西英雄登壇
  6. 小西英雄

    小西英雄君 ただいま上程されました海外胞引揚促進並びに留守家族援護に関する決議案につきまして、提案者を代表してその趣旨弁明いたします。  まず案文を朗読いたします。    海外胞引揚促進並びに留守家族援護に関する決議案   平和條約が発効し、独立を回復した現在、なお三十数万の同胞ソ連及び中共等地域より未だ帰らず、その引揚が未解決のまま中断されている状態はまことに遺憾のきわみである。既に、人道上の問題として国際連合においても探りあげられたこの引揚問題が、かかる現況におかれていることは、残留同胞もとより、苦難に充ちた生活に耐えつつ肉親の帰還を待ちわびる留守家族にとつては真に悲痛、焦慮に堪えないものがあり、国民の心にもぬぐうことのできない深刻な暗影を投じている。よつてわれわれは独立を回復したこのときに当り、世界輿論に訴え、且つ国を挙げての強力なる推進の下に本問題の早急なる解決に邁進し、留守家族に対しては、なお万全の対策を樹立して、援護の実を挙げることを決意するものである。   政府は本問題の一日も速やかなる解決に向つて新たなる構想の下に積極的な対策を樹立し、これが実施については有効、適切なる方途をもつてし、あわせて留守家族援護に対しては実情に即した具体的措置を講ずべきである。   右決議する。     〔拍手〕  海外同胞引揚げは、終戰直後開始せられまして以来、ソ連及び中共地区以外の地域からの引揚げは、今より五年前、すなわち昭和二十二年をもつて戰犯者を除き一応全部完了いたしたのでありますが、ソ連中共地区からの引揚げにつきましては暫時行われたのみで、その後集団引揚げにつきましては、ソ連地区からは米ソ協定に基いて毎月五万名が送還されるべきところ、その数に満たぬ緩漫な引揚げ昭和二十五年四月まで間歇的に行われ、同年四月二十二日のタス通信による、戰犯千四百八十七名及び中国関係戰犯九百七十一名、病気中の者九名を除き送還を完了した旨の発表とともに、まつたく中止されておるのであります。また一方、中共地区かちの引揚げは、昭和二十四年九月より十月にかけて約二千八百名が引揚げて以来、その後集団引揚げは行われず、ときたま少数の留用解除者外国船に便乗して帰国する程度で、朝鮮動乱の進展に伴い、まつたく中絶の状態に陷つているのであります。ソ連及び中共地区等残留同胞の数につきましては、留守家族からの届出、抑留者現地通信及び帰還者のもたらした情報等に基いて得た三十四万余に上る未帰還者が、少くともこれらの地域からまだ帰つて来ないことが明らかであつてわれわれはタス通信発表に多くの疑問を持つとともに、異国の地に故郷を夢み、あるいは異国の土と帰された同胞思いをいたし、まことに痛恨にたえない次第であります。  かかる状況にありますわが同胞引揚げ問題は、国際連合においても、ドイツ及びイタリアにおける引揚げ問題とともに、人道上の問題として取上げられ、国際的、平和的に解決するため、その措置に関する決議に基いて調査されるに至り、先般わが国まりも三名の代表がその会議に出席し、調査に参加したことは御承知通りでありまして本問題の解決に対しましては、多大の世界的同情と共鳴があるのであります。わが国としては、同じ苦悩にあるドイツイタリアと相携えて、この問題解決のために世界輿論に訴え、かつ当該国交渉する方途を講ずることは、世界人道のためにも、はたまた人権擁護のためにも、当然なさねばならぬことと考えるのであります。(拍手)  平和條約が発効し、わが国独立国として国際社会に復帰した今日、この問題が現状のまま放置されることは、まことに遺憾にたえないところでありまして、独立後の本問題に対するわれわれの切なる希望は広く世界輿論に訴え、かつあらゆる方途を講じ、国をあげて本問題解決のために力を注ぐと同時に、留守家族援護に万全の措置をとることであります。政府においては、この際独立後の外交機関等を通じて引揚げ促進の道を開き、新たなる構想もとに、従来の力を倍加して解決に向つて邁進し、国民要望にことうるところがなければならないと信ずるものであります。  また、これら未帰還同胞留守家族援護につきましては、過去すでに七年間、暗澹たる心情のうちに過して来た留守家族実情思いをいだし、現行の未復員者給與法及び特別未帰還者給與法による援護対策についてさらに一歩を進め、国家補償精神により、実情に即した強力な援護措置を行うべき時期に到達していると思うのでありまして、この点、政府は特に考慮の上、一層適切な施策を講じ、その完璧を期すべきであつて、ここに特に要望をいたしておくものであります。  以上がこの決議案提案趣旨でありますが、何とぞ満場一致の御賛同あらんことを切望いたしまして、これで終る次第であります。(拍手
  7. 林讓治

    議長林讓治君) 討論の通告があります。これを許します。苅田アサノ君。     〔苅田アサノ登壇
  8. 苅田アサノ

    苅田アサノ君 日本共産党は、ただいまの海外胞引揚促進並びに留守家族援護に関する決議案に対しまして反対でございます。  私どもがこの決議反対するのは、共産党引揚げ問題の急速な解決を真剣に望んでおるためであります。従つて、感情的な、あるいは党利党略の上に立つ決議案には反対せざるを得ないのであります。(拍手)  その理由を言えば、第一はソビエトからの引揚げの問題であります。一九四九年五月二十日、五〇年四月二十二日、五十一年十月十六日等のソ同盟公式発表によれば、終戰直後、直接戰闘地域で釈放された日本人捕虜七万八百八十人を除き、五十一万四百九名がすでに帰されており、現在ソ同盟にある日本人俘虜は、戰犯一千四百八十七名、病気治療送還されるもの九名、中華人民共和国政府戰犯として引渡されたもの九百七十一名であつて、それ以外の引揚げは全部完了しているのであります。それにもかかわらず、政府はいまなお二十数万の抑留者がシベリアにいると、全く一方的な、無責任放言をしております。これが無責任な、一方的な放言である証拠は数限りなくありますが、今は時間がありませんと、それに、皆さん方自身でも、ほんとうは信用なんかしていない。現に委員会では、與党委員政府発表を信用しない発言をやつているのですから、これ以上言う必要はないと思います。ほんとうだというなら、なぜ国連特別委員会提出したという捕虜名簿日本国民の前に明らかにしないのであるか。日本国民はおろか、委員会にさえ、しかも府県市町村別数字さえ発表できないでいるではありませんか。ソ同盟側には、引揚げの問題で何の秘密もありません。戰犯との文通もできるといつています。  先日、日本から自由党の元大臣も含めて有力者を国賓としてソ同盟に招きたいと言つて来ているのに、最後まで鉄のとびらをおろして、ソ同盟有力者が渡ることをおそれ拒んだのは日本政府だということを忘れてはなりません。こんなでたらめな数字を並べて、返せ返せということが、欺瞞的であり、偽善的であり、引揚げ促進には何の役にも立たないことは明白ではありませんか。(拍手)  次に、政府中国に約七万人の抑留者がいると言つております。かりにこの言を信用するとすれば、その七万人の引揚げがなされなかつたのは、一体中華人民共和国が妨害したからか、それとも日本政府責任がということであります。御承知のように、従来行われた俘虜引揚げは、引揚げに関するジュネーヴ協定や、特にカイロ宣言及びポツダム宣言の第八項、九項の国際協定に基いて、双方の政府間で行われたものであります。ところが、中国政府においては、終戰直後から、カイロ宣言ポツダム宣言、その他連合国間の協定を厳守することを公表しております。たとえば、現在の中国政府主席毛沢東は、一九四三年に発表した有名な「連合政府を論ず」という論文の中場に、戰後の中共対外政策として次のように言つております。「第一原則はポツダム宣言の厳正な実行である。中共戰争終期におけるモスコー、カイロ、クリミア、テヘラン、ヤルタ各会議の決定を重んじ、従つてポツダム宣言の厳正な実行日本に望む」、また終戰直後朱徳将軍が米、英、ソ三国政府にあてた覺書の中にも、この点が明確にしてあるのであります。  ところが、日本政府及び占領軍司令部は、一度でも中共及び中華人民共和国政府に対して、ほんとう引揚げの問題を正式に交渉したことがあるか。まつたくないのであります。それどころか、中華人民共和国を認めないのであります。日本同胞が七万人も残つている相手国を認めないと言つてそつぽを向いておきながら、何の引揚げ促進ができるというのか。中国にいる同胞の中には、「家郷忘じがたく、日本中国との講和條約が成立して、日本に帰る日を待ち望んでいる同胞が少からずあつたに違いありません。ところが、吉田政府アメリカ支配に屈服して、最初から中華人民共和国をおつぽり出したアメリカとの單独講和に調印してしまつた。それでも足らないで、台湾政府との日華條約まで結んでしまつたのであります。皆さん、これでも、中国にある七万の同胞日本とのつながりを断ち切つたの日本政府だ、中国からの引揚げの一番の妨害者吉田政府だということが無理でしようか。(拍手)  ほんとう中国引揚げ促進するのが目的であれば、引揚げのじやまものを取除くのが第一であります。まず日華條約の廃棄であります。さらにアメリカとの單独講和廃棄であります。そして、こうした條約を結んだことを国民に謝罪して、吉田内閣がみずから辞職することであります。そして、真に民主的な国民連合政府をつくり、中国ソ同盟をも含む世界各国友好親善関係を結ぶならば、引揚げの問題など、一ぺんに解決してしまうことは、火を見るよりも明らかであります。  今回の決議文は、政府に新たなる構想もとに積極的な対策を樹立せよと言つていますが、今私の申したような、科学的な合理的な処置をとることを政府要求しておりません。だから、こんな決議文でば、ただ偽善であり、欺瞞であり、引揚げ促進にならないと申すのであります。皆さん国連にたよつて引揚げ促進してもらうと言つておられるが、国連では引揚げについてどんなことをしていますか。一例を示しましよう。  国連総会では捕虜状態調査が行われましたが、一九五一年八月二日付の特別委員会報告を見ると、中国における日本俘虜調査項目はどうかというと、かつて捕虜抑留したことがあるかという問いには、ある。現在抑留のあるなしという問いには、なし。死亡俘虜に関する報告という問いに対して、必要な資料は中央に押えられていると答えているのであります。こんな、一人も現在捕虜がいないような中国相手にして捕虜問題が研究されるような現状国連に対して、私たちは一体何を期待したらいいのか。少くとも、こんなところで日本捕虜の問題が解決されると本気で考える人があれば、私はその人の精神状態をまず疑います。  日本共産党引揚げ促進対策こそが最む現実的だという証拠を一つ示します。今年になりまして、三月末と四月末に、在中国同胞から、日本にいる身寄りのもとへ多額の金が送られて来ていることは、御承知りことと思います。日本では、昨日の朝日新聞にもある通り、大学の学生が生活に困りて、モルモツトがわり赤痢菌を食べるという悲惨なことが行われているのです。中国にだつてその実情は知れますから、中国にいる同胞たちが、日本家族の上を心配するのは当然でおります。それで、中国人民救援会がありせんして、一口三千円で日本に送る金をとりまとめ、ナシヨナル・シテイ・バンクを通じて、日本国民救援会にその配付方を依頼して来たので、国民救援会では金を受取り、日中友好協会にその実際の仕事をまかせ、この友好協会によつて、第一回分五百世帯、第二回分七百世帯、それぞれ二百五十万円前後に上る金が、日本にいる家族に届けられたのであります。これは何を意味するかといえば、引揚げ促進は、相手横面をなぐりつけるやり方でなぐ、心からの親善関係を通じてのみ解決されるという何よりの証拠であります。ところが、第三回目の送金は、通知だけは受けましたが、現金は香港政庁によつて、ナショナル・シテイ・バンクで押えられてしまつております。せつかく民間の団体を通じて明るい見通しが見えていたのに、日本單独講和を結び、アメリカ支配下にあるばかりに、またまた大きなじやまが入つてしまいました。これを見ても、一日も早く單独講和をやめ、日華條約をやめ、吉田政府がやめることが引揚げ促進の何よりの早道だということは明らかであります。(発言する者多し)、時間がなぐなりましたから、留守家族援護の問題を簡單に申します。ほんとうに二つの国に引きさかれた家族が、元の一つに結ばれて、日本であれ、中国であれ、すきなところで住むためには、今申した單独講和をやめることが第一であります。  次に家族生活援護の問題でありますが、これをほんとう実行するためには、遺族援護の燈明料でもわかるように、とうてい現状のような再軍備を強行している政府もとで、ろくなことができる道理がありません。もとはと言えば、この人たちも、遺族同様、戰争政策の第一の犠牲者なのです。この悲惨な状態の原因を明らかにし、これを取除かなくて、どうしてこの人たち援護ができましようか。援護は絶対にしなければなりませんが、これが買弁吉田政府もとでできないことも絶対確実であります。  いずれの点から考えましても、この決議文趣旨を貫徹するためには、吉田内閣の退陣と、講和両條約及びそれに基く諸とりきめの破棄、再軍備反対が強調されねばならぬのに、かかる実体をまつたく国民の目からおおい隠すような今度の決議をすることは、引揚促進援護をするかわりに、引揚げをつまずかせ、援護を遅らせるばかりであります。心から引揚げ促進を願い、留守家族援護を願う日本共産党は、この決議案に、そのために反対するものであります。国会は何回でもむだな決議文をもてあそんでいるがよろしい。国民大衆は、あなた方の指導に反して、だんだん、どうしたらほんとう引揚げ促進ができるかわかつて来ています。日中友好協会のまわりにだんだん結集して行きつつある留守家族が何よりの証拠であります。(「時間だ時間だ」と呼び、その他発言する者あり)今に、もうすぐ、すべての留守家族が、国民大衆とともに、今日の日本共産党決議案反対こそ何よりも大きな引揚げ促進留守家族援護の原動力であることを知ることと確信し、この決議案反対を表明するものであります。(拍手
  9. 林讓治

    議長林讓治君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  10. 林讓治

    議長林讓治君) 起立多数。よつて本案は可決いたしました。(拍手)  この際厚生大臣から発言を求められております。これを許します。厚生大臣吉武惠市君。     〔国務大臣吉武惠市君登壇
  11. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 平和條約が発効いたしまして、今日なお海外残留を余儀なくされておりまする多数の同胞のおられますることは、まことにお気の毒にたえません。政府といたしましては、今日まであらゆる機会をとらえまして、その促進をはかつて来たのでございますが、平和條発効とともに、国連等に対しまして格段の処置をとり得るようになりましたから、さらに有効なる手段を講じまして、一日も早くその促進をはかるつもりでございます。また留守家族援護につきましては、御決議趣旨に沿いまして、今後一層の努力を拂うつもりでございます。(拍手)      ————◇—————
  12. 福永健司

    福永健司君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、小平久雄君外二十六名提出海外地域等における戰沒者遺骨収容及び送還等に関する決議案は、提出者要求通じ委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  13. 林讓治

    議長林讓治君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  海外地域等における戰沒者遺骨収容及び送還等に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。小平久雄君。     〔小平久雄登壇
  15. 小平久雄

    小平久雄君 ただいま上程せられました海外地域等における戰沒者遺骨収容及び送還等に関する決議案につきまして、提案者を代表し、その趣旨弁明いたしたいと存じます。  まず案文を朗読いたします。    海外地域等における戰沒者遺骨収容及び送還等に関する決議案   苛烈なる戰火終熄してよりここに七年、今や平和條発効により独立を回復した今日、海外地域並びに本邦周辺海域で戰沒した同胞遺骨が未だ収容されないままあるいは埋葬地も荒れはてたまま放置されているものもあることは誠に遺憾なことであるとともに遺家族の心情察するに余りあるものがある。   ここにこれら未だ帰らざる遺霊を早急に故山に迎えることはわれわれの久しく念願していたところであつて現状のまま放置されていることは国民感情上忍び難い問題である。   よつて政府は、これら戰沒同胞遺骨の速やかな収容送還並びに墓地維持のため、万全の対策を樹立するとともにこれが実現を図るべきである。   右決議する。  今次大戰におきまして戰沒いたしました、かつて日本軍将兵の数は、陸海空を合せて百七十万に余るといわれております。これら戰沒者のうち、一片の遺骨すら収容できず、その魂魄がいまなおむなしく海外に迷つておりますものは、南方地域のみをとりましても、その数は約八十万であります。しかして、おもなる関係地域といたしましては、昭和十九年以降における南方の諸戰場、その他ソ連参戰以後における満州地域であります。関係遺族の身にとりまして、実にこれ以上の遺憾なことはないのでありまして、ただいま太平洋地域やアツツ島等からの遺骨送還の要請の声が各地にあげられておりますことも、まことに無理からぬことと存ぜられるのであります。  かように、外地に風雨のさらすところとなつております遺骨をなるべくすみやかに収容し、内地に送還して、できる限りねんごろにこれを弔うことは、国として処すべき当然の責任として、政府において対策を立て、対外交渉を必要とする点は交渉を遂げ、すみやかに実施に移すべきであると考えるのであります。もとより、政府からも、さきに遺骨収容送還準備のために、硫黄島及び沖縄調査団を派遣し、所要の調査実施いたしておるのであります。また、その調査の結果に基いて、南方地域守備部隊が戰沒した島嶼等の一部について遺骨を収容し、それを送還する準備が進められておることも承知をいたしておるのであります。しかしながら、今日の国民感情からいたしますれば、いささかおそきに失するにあらざるかを思わしむるものがあるのであります。御承知通り、ただいま戰沒者遺族に対し、戰傷病者戰沒者遺族等援護法に基き援護実施されんとしております。この援護実施と並行し得るように、未収容遺骨収容送還を行い、遺族の心を慰めることが、遺族対策として最も緊要であり、援護の成果をも完璧ならしめることであろうと考えられる次第であります。  なおこの際つけ加えたいと存じますことは、戰沒者の遺霊は遠く海外の地に残つているのみではないのでありまして、瀬戸内海その他本邦周辺海域に百数十隻を越える旧軍用艦船が沈沒し、その中に眠る遺霊も一万を越えているのであります。これらの遺骨に対しましても、海外遺骨と同様、なるべくすみやかにこれを収容して、ねんごろに弔うべきであるということであります。  かように、なし得る限りの手を盡し、戰沒者遺骨を納めて、遣霊のすべてがその故山に安らかに眠り得るようにいたしますことは、海外残留者引揚げをすみやかに完了いたしますことと相並んで政府の当然の責務であり、かつ、わが国再建の重要なる精神的基盤を築くゆえんであると確信いたしますがゆえに、本決議案提出いたしました次第であります。  ここに諸君の御賛成をお願いして、趣旨弁明を終ります。(拍手
  16. 林讓治

    議長林讓治君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。(拍手)  この際厚生大臣から発言を求められております。これを許します。厚生大臣吉武惠市君。     〔吉武惠市君登壇
  18. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) ただいま海外地域等における戰沒者遺骨収容及び送還等に関する決議をいただいたのでございますが、政府といたしましては、昨年以来これについて努力をいたし、本年三月硫黄島に、また五月には沖縄調査団を派遣いたしまして、これら太平洋地域におきまする遺骨収容送還に関する計画を立てておる次第でございます。何分相手国との折衝がございまするので意にまかせませんが、米国関係地域におきましては、幸い米国側の懇切なる申出もございまして、目下具体的に打合せが進みつつあるところであります。御決議趣旨に従いまして、今後一層の努力を拂うつもりでございます。(拍手)      ————◇—————
  19. 林讓治

    議長林讓治君) 参議院から、本院提出公共事業令の一部を改正する法律案が回付されております。この際議事日程に追加して右回付案議題となすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  公共事業令の一部を改正する法律案参議院回付案を議題といたします。     —————————————
  21. 林讓治

    議長林讓治君) 採決いたします。本案参議院の修正に同意の諸君起立を求めます。     〔起立者なし〕
  22. 林讓治

    議長林讓治君) 起立者はありません。よつて参議院の修正に同意せざることに決しました。      ————◇—————
  23. 福永健司

    福永健司君 憲法第五十九條第二項に基いて再議決のため、公共事業令のー部を改正する法律案の本院議決案議題とせられんことを望みます。
  24. 林讓治

    議長林讓治君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて公共事業令の一部を改正する法律案の本院議決案議題といたします。  ただちに採決いたします。本案はさきに本院において議決の通り可決するに賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  26. 林讓治

    議長林讓治君) 起立総員。よつて本案はさきの議決の通り可決せられました。      ————◇—————
  27. 林讓治

    議長林讓治君) 次に議事日程に追加して国土総合開発法の一部を改正する法律案参議院回付案を議題となすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 林讓治

    議長林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  国土総合開発法の一部を改正する法律案参議院回付案を議題といたします。     —————————————
  29. 林讓治

    議長林讓治君) 採決いたします。本案参議院の修正に同意の諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  30. 林讓治

    議長林讓治君) 起立多数。まつて参議院の修正に同意するに決しました。      ————◇—————
  31. 林讓治

    議長林讓治君) 日程第一、特定中小企業の安定に関する臨時措置法案議題といたします。委員長の報告を求めます。通商産業委員長中村純一君。     〔中村純一君登壇
  32. 中村純一

    ○中村純一君 ただいま議題と相なりました特定中小企業の安定に関する臨時措置法案につきまして、通商産業委員会における審議の経過並び業結果を概要御報告申し上げます。  由来、わが国産業構成の上におきまして中小企業が占ある比重が圧倒的に高いということは、いまさら多言を要しないところでありまして、その企業者数においても、生産数量について見ましても著しく高率を示しておることは周知の通りであります。従いまして、これが盛衰は、ただに産業界のみならず、影響するところは広汎かつ深刻でありまして、その底流には常にひしひしとした社会問題的な性質を包蔵いたしておるのであります。ゆえにこそ、私どもは、この中小企業問題の直面する苦脳打開に全力をあげて、その制度化、組織化に努力するとともに、租税面についても、融資面についても、はたまた協同組合化につきましても格段の助成を講じて参つたのであります。しかるに、朝鮮事変後の異常景気から、逐次平常的とも申すべき今日の事態に立ち至りまして、中小企業固有の脆弱さが漸次露呈せられ、しかもその企業経営の困難は深く世界の政治経済上の複雑な関係に胚胎いたしておるのであります。一方、国内的にも、経済活動の急激な上昇をにわかに期待し得るよふな素因も少く、むしろ全般的な耐乏の上に、しかも良質廉価という産業原則の具現を目標に実力を涵養しなければならない段階に到達したものと見なければならないのであります。このような内外客観情勢が中小企業の諸分野に與える影響のうち、致命的なものも少くはないのでありまして、従いまして、中小企業の特質にかんがみ、企業合理化を妨げない必要最小限度において企業の安定化をはかる措置をとることが、国民経済全般の健全な発展を所期する上において必要であると確信いたした次第であります。  今、この法案の内容を簡單に御説明いたします。まず第ーに、叙上の趣旨に基いて、本法の適用を受ける当該業種の総数の三分の二以上が中小企業者であり、かつ過去一年間の総生産数量のおおむね二分の一以上が中小企業者によつて生産せられている業種であつて、しかもその製品の需給が著しく均衡を失し、ために当該産業及びその関連産業の存立に重大な影響を及ぼすおそれがあるものに限定したことであります。  その第二点は、かかる指定業種を営む者は、組合員の総数がその地区内において指定業種を営む者の総数の二分の一以上であり、かつその組合員の三分の二以上が中小企業者である場合に限り調整組合を組織することができることといたした点であります。  第三点は、アウトサイダーに対する調整規程及び調整計画の適用に関する点であります。すなわち、同一業種を営む組合員以外の者の事業活動が、組合もしくは組合連合会の自主的調整の効果を著しく阻害し、かかる事態を放置しては当該業種にかかわる産業及びその関連産業の存立に重大な悪影響を及ぼすと認められるときは、通商産業大臣は、組合または組合連合会の申出に基き、組合員以外の者を含むすべての者に対し、同一基準の制限に従うよう勧告ができ、さらに要すれば命令を発することができることといたしたのであります。  第四点は、本法案の内容は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律並びに事業者団体法の適用を排除いたしたことであります。  以上が、本法案の提案の理由並びにその大要であります。  本法案は、自由党南好雄君外二十二名より提案せられ、六月四日通商産業委員会に付託せられ、翌五日、提案者を代表し南好雄君より提案理由の説明を聽取したのであります。引続き六日なり質疑に入り、十日、十一日、十三日と四日間にわたり、提案者代表南好雄君、政府委員と本委員会委員との間に熱心な質疑応答が行われたのであります。なお六月十二日には、参考人として日本ゴム工業会常任理事山本米太郎君、全国繊維労働組合連盟地方繊維部会書記長下田喜造君を招いて意見を聽取し、若干の質疑が本委員との間にかわされ、審議の参考といたした次第であります。以上の内容につきましては、会議録を御参照願うことといたします。  続いて十四日、自由党、改進党、日本社会党より修正案が提案せられ、日本社会党加藤鐐造君より趣旨の説明がなさしれたのであります。  その主要な点を申し上げますと、第二條の見出し「(定義)」を「(適用業種の指定及び中小企業者の定義)」に、「指定業種」を「この法律の適用を受ける業種」に修正し、「業種のうち、別表に掲げるもの」を「業種について、左の各号に掲げる事態が生じた場合に、別表において指定するものとする。」に改め、原案の内容を一段と明確にいたしたのであります。すなわち、製品の価絡がその原材料の価格に照らして著しく低いため、当該業種に属する事業の経営において相当の損失が生じていること、及び事業経営の不振か相当長期間にわたるおそれがあり、企業の合理化のみによつては克服が困難であるといつた一定の制約を付して、その濫用を戒めたわけであります。  次は、第十條の調整組合の設立認可の條件の追加であります。  第三点といたしましては、調整組合の事業内容の追加であります。  第四点は、調整規程の実施の予告期間を十五日と定め、離職従業員の優先雇用とともに、従業員の処遇に配慮をいたすこととしたのであります。  第五点は、調整規定の認可等に際しては公正取引委員会と協議しなければならない点を、公正取引委員会の同意を得なければならないことといたしたのであります。  第六点としまして、中小企業安定審議会の委員三十名を五十名とし、従業員の利益を代表する者に発言の機会を與えたのであります。  最後に、指定業種のうちの別表に掲げた品目を若干追加いたした点であります。  以上をもつて討論を省略し、採決に付しましたところ、修正案並びに修正部分を除く原案は多数をもつて可決せられ、よつて本案は修正議決せられた次第であります。  採決後、改進党山手滿男君より本法案について決議案提案せられ、その趣旨弁明がなされたのであります。その要旨は次の通りであります。  まずアウトサイダーに対する調整規程もしくは調整計画の適用にあたつては、アウトサイダーそのものの特質にかんがみ、わが国の輸出振興という至上命令を犠牲に供するというような本末転倒の政策がとられてはならないということであります。  次に、一定規模以下の零細企業につきましては、これは企業体と申すよりは、むしろ生計と申した方が適切なのでありまして、実際問題といたしましては、家族同士の家内工業的性格のものを予想いたしての例外措置であります。  第三には、生産調整によつて生産量及び販売額の減少を来した場合、経営者の事業税あるいは固定資産税については、あとうべくんは、これらに対して有効適切な補償の方法を考慮してやつてもらいたいということであります。  第四として、調整期間中における新規開業及び設備拡充に対する制限であります。  第五に、この企業合理化資金について、五分以上の部分については国費をもつて補助すべきである。  以上が附帯決議の要旨でありまするが、本決議案も多数をもつて可決した次第でありますが、これに対し、高橋通産大臣より、「本法はきわめて重要な法案であるから、これが取扱いについては十分に愼重に行うとともに、附帯決議に対しましては、本法施行後の状況を見て、その趣旨に沿うよう、できるだけの努力をする旨の答弁がありました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  33. 林讓治

    議長林讓治君) 採決いたします。本案委員長の報告は修正であります。本案委員長の報告通り決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  34. 林讓治

    議長林讓治君) 起立多数。よつて本案委員報告通り決しました。(拍手)      ————◇—————
  35. 林讓治

    議長林讓治君) 日程第二、南方連絡事務局設置法案日程第三、引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員会理事江花靜君。     〔江花靜君登壇
  36. 江花靜

    ○江花靜君 ただいま議題となりました南方連絡事務局設置法案及び引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案について、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず南方連絡事務局設置法案について申し上げます。本法案は、北緯二十九度以南の南西諸島及び小笠原群島その他の南方地域に関する事務を行うため、総理府の附属機関として新たに南方連絡事務局を設置しようとするものであります。  法案のおもなる内容を申し上げますと、南方連絡事務局は職員二十七人からなつておりまして、本邦と南方地域間の渡航、南方地域に滞在する日本国民の保護及び本邦と南方地域にわたる公の証明等に関する事務を所掌するとともに、本邦と南方地域との間において解決を要する事項を調査、連絡、あつせん及び処理するほか、本邦と南方地域間の貿易、文化の交流、その他南方地域に関する事務に関し関係行政機関との事務の総合調整及び推進をはかることといたしております。現地機関といたしましては、日本政府南方連絡事務所をさしあたり那覇に一箇所設けることにいたしておりますが、特別の必要ある場合には、政令で定めるところにより、予算の範囲内においてこれを増置できることとしており、またその下部機関として出張所も置くことができることとなつております。なお、現地における事務の円滑なる処理をはかるため、各省大臣はその主管事務に関し内閣総理大臣と協議の上、連絡事務所長を指揮監督することができることといたしておるます。  次に、引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。本法案は、諸種の事情にかんがみ、引揚同胞対策審議会の存続期間をさらに一年延長するとともに、行政機構の改革に伴う所要の改正を行おうとするものであります。  前法案ば六月四日、後法案は五月三十日、それぞれ本委員会に付託され、政府及び提案者より説明を聞き、質疑を重ねましたところ、後法案について、自由党の青木委員より、行政機構の改革に伴い、審議会の委員の中から引揚援護庁長官を削除する旨の修正案が提出され、かくして六月十六日討論採決の結果、いずれも多数をもつて、前法案は原案通り可決すべきものと、後法案は修正案の通り修正議決すべきものと決定した次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  37. 林讓治

    議長林讓治君) 両案を一括して採決いたします。日程第二の委員長の報告は可決でありまして、日程第三の委員長の報告は修正であります。両案を委員長の報告通り決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  38. 林讓治

    議長林讓治君) 起立多数。よつて両案とも委員報告通り決しました。(拍手)      ————◇—————
  39. 林讓治

    議長林讓治君) 日程第四、北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太平洋公海漁業に関する国際條約附属議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長仲内憲治君。     〔仲内憲治君登壇
  40. 仲内憲治

    ○仲内憲治君 ただいま議題となりました北太平洋公海漁業に関する国際条約及び北太平洋公海漁業に関する国際条約附属議定書締結について承認を求めるの件に関し、外務委員会における審議の経過並びに結果について報告申し上げます。  本條約案件は、五月二十七日に本委員会に付託されましたので、本委員会は水産委員会との連合審査会を含めて数回にわたり愼重に審議を重ねました。その審議の内容の詳細につきましてはこれを委員会議事録に譲ることといたし、本件の概要について申し上げたいと存じます。  御承知通り、サンフランシスコ平和條約第九條は、わが国が公海における漁猟の規制または制限並びに漁業の保存及び発展を規定する二国間及び多数国間の協定締結することを定めており、本條約は、その規定に伴つて日本国、カナダ及びアメリカ合衆国三国の間に初めて締結せらるるに至つた條約であります。すなわち、本條約は、日米加三国の共通の関心事である北太平洋の公海における漁業資源の最大の持続的生産性を確保するため、三国の間で有効かつ適切な措置を講ずることを目的としているのであります。換言いたしますれば、各国ともに、いわゆる濫獲漁業を抑制し、漁場の保存を企図いたしたものであります。  従いまして、本條約の内容を検討いたしますると、その特徴として、第一に、この條約の目的を達成するための必要な共同措置について規定しておることであり、第二は、その共同保存措置が締約国の間に平等に適用されるという原則を再確認しておることであります。従いまして、第三に、共同保存措置の具体的方法としては、北太平洋漁業国際委員会を設け、この委員会をして必要とする保存措置の確定に必要な研究を行わせるとともに、その保存措置について締約国に勧告させることに相なつておるのであります。本條約について特に注意すべき点は、公海自由の原則に基いて條約ができ上つている点であり、今後他の諸国と漁業條約を締結する場合、その先例となるということであります。  本條約では、北太平洋におけるさけ類、にしん、ハリバツトについて、各国が平等な立場で保存規定を守るということになつたので、わが国は、さけ、ます、ハリバツト漁業についてだけ、ベーリング海において、西経百七十五度より東に行つて操業することはできなくなりましたが、ほかの魚類は、公海上ならどこででもとつていいことになりますので、かに工船などはアラスカ沿岸まで出漁することができるようになつたわけであります。  本條約は、本年五月九日東京で署名され、批准書の交換が行われた日に効力を生ずるとのことであります。  この三国漁業條約は、前に述べましたように、今後他の国々と條約を結ぶ場合の先例となりますので、日本にとつては非常に大事な第一歩であつたわけでありますが、政府当局の見解によりますと、この條約の妥結を見ましたのは、国際情勢に関する大局的見地から、昨年二月吉田首相がダレス氏に書簡を送り、講和後、漁業條約が結ばれるまでの暫定的な期間にも、日本業者は各国の資源保存対策をそこなわないよう自粛するという方針を内外に明らかにしたことと、また日米加三国間の協調という国際政治の大局的な観点からも本條約の妥結を見たものであるとのことであります。  政府当局に対する質疑終了の後、討論に移り、それぞれの党を代表して自由党の佐々木委員より賛成の意見、改進党の山本委員日本共産党の林委員日本社会党第二十三控室の勝間田委員及び労働者農民党の黒田委員等より反対の意見が述べられて、討論を終結、採決の結果、本委員会賛成者多数をもつて本件を承認することに決定した次第であります。  以上報告申し上げます。(拍手
  41. 林讓治

    議長林讓治君) 討論の通告があります。これを許します。山本利壽君。     〔山本利壽君登壇
  42. 山本利壽

    ○山本利壽君 私は、ただいま議題となりました北太平洋公海漁業に関する国際條約及び同條約附属議定書の締結に対し、改進党を代表して反対の意を表明せんとするものであります。(拍手)  公海の漁業資源を開発したり、それの保存措置の確定に必要な科学的研究を推進したり、その結果に基いて締約国に勧告したりすること及びこれらのことをするために米国、カナダ及び日本の間に北太平洋漁業国際委員会を設置しようとすることは、まことにけつこうなことであります。しかし、本條約の各條項を検討し、かつ水産・外務連合委員会における質疑応答の経過を見るとき、本條約がはたして自由かつ平等の立場においてなされているかどうか及びわが国にとつて利益のある條約であるがどうかは、まことに疑わしいのであります。  まず第一に指摘しなければならない点は、今回の條約に揚げられた趣旨そのものはけつこうでありますが、結論的に言つてアメリカ本国、カナダ及びアラスカの沿岸はもとより、それに接続する広範囲にわたる公海において、少くとも向う五箇年間は、日本は、おひよう、にしん、さけ等、この條約で定められた魚はとりませんという一札をお預けするようなものであるのであります。もし水産資源の保存が必要であるならば、まず漁業国際委員会をつくつて、その活動によつて捕獲禁止の魚の種類及び禁止年限等を定むべきであります。特に五年間は「当該魚種が自発的抑止のための條件を引き続き備えているかどうかについての決定又は勧告をしない」と明記してあることは、日本が漁業を差控えているその間に、ある国に将来動かすことのできない実績を與えることになり、平等互惠の條約とは言えないのであります。(拍手)  指摘しなければならぬ第二点は、本條約の第一條第二項に「この條約のいかなる規定も、領水の範囲又は沿岸の国の漁業管轄権に関する締約国の主張に不利な影響を與えるものとみなしてはならない。」と明記してあることであります。これは、国際的に認められている沿岸三海里の原則を破り、領水の範囲に関して、ある国の不当な主張を容認せしめられる結果ともなりやすいもので、公海自由の原則を侵害するおそれのあるものであります。(拍手)  われわれの納得の行かない第三点は、本條約第四條第一項但書(3)において、漁獲操業の歴史的交錯その他をあげ、アラスカ湾の水域以南のアメリカ及びカナダ各太平洋岸の地先沖合いを指摘して米加の自由な操業を許し、そこが公海であるにもかかわらず、日本は除外されていること、及び日本はベーリング海を除く北太平洋東部の特定水域のさけ、にしん並びにアラスカ、カナダ西海岸沖一帯のハリバツト漁業を自発的にやらないことにし、日本とカナダはべ—リング海東部の特定水域のさけ漁業を自発的にやらないことにするとなつていることであります。これは確かに国際間の漁業自由の原則にそむき、屈従的な態度と言うべきであります。(拍手)ベーリング海及び北太平洋におけるさけの保存措置について、アメリカ及びカナダは今日まで多大の努力をしていると申しますけれども、わが国も、さけ、ます等の保護増殖については年来多大の努力を盡して来たものでありまして、北海道においては、さけ、ます保護増殖協同組合も設けられており、年々二億粒ないし三億粒の卵が放流され、昭和二十二年より二十六年に至る五箇年間の合計は十三億三千万粒に及んでいるのであります。アメリカ、カナダのさけが日本でとれることがあると同様、日本のさけが先方でとれることもまた考えられるのでありますから、その実体は漁業国際委員会の研究調査をまつべきであり、その上で日本船の出漁を禁止するとかどうとかいうことは決定さるべきものであると考えるのであります。  次に指摘すべき第四点は、一九四九年締結された北大西洋漁業国際條約との比較であります。これにはアメリカ、カナダ及び欧州八箇国が加盟しているのでありまして、生物学的適正漁獲を主眼として、明確に国際平等の海洋自由の原則を認めているのであります。すなわち、水産資源保護のために、締約国すべてに平等に適用される操業制限を課しているのであつ、決して今回の漁業條約のごとく海洋の自由を特定の国に限つて制限するようなことはないのであります。  次に第五点として、本條約が今後他国との外交交渉に悪影響を及ぼす懸念のあることを指摘しなければなりません。それは、さけの漁獲に対する暫定的区画線、すなわち西経百七十五度線の問題であります。公海上にかような区画線を定めて、日本船出漁禁止を約束することは、今後フイリピン、韓国、その他日本に近い国々が、かつてに、かかる漁場上の区画線を設けて、自己の漁業水域であると主張し、日本人による漁業に圧迫を加える可能性のあることであります。  昨年二月七日、吉田首相は、米国ダレス大使にあてた書簡の中で、日本政府日本への完全な主権の回復の後、できる限りすみやかに、他の国々と日本及びこのような他の国々の国民が接近できる漁場の発展と保存のため公正なとりきめを作成する目的をもつて交渉を行う用意がありますと約束しているのであります。サンフランシスコ平和條約第九條及びこの書簡によつて、今後次々に各国から漁業條約締結の申入れがあるものと予期しなければなりません。現に、韓国李承晩大統領は、本年二月九日、韓国の海洋主権について再び声明書を発表したのでありますが、その中で、海洋上の画定線を設立した主目的は日韓両国間の平和維持にあり、日本はもちろんこれに応ずることと思うと言い、さらにまた、もしも日本がわれわれの真意を解しなければ、それは日本の野望を暴露するものにほかならぬ、太平洋洛岸各国は、日本の大漁船団に対抗するため、同じような海上画定線をもつて各自の漁業権を救護して来ているのであるとの意味を述べております。  わが国の漁業は、国民食糧源の立場から見でも重要でありまして、米国、カナダ等のごとく、領土広く、食糧豊富な国の一企業としての漁業とは、国民全体に対する重要度が根本的に異なつておるのであります。(拍手)われわれは、この苦しい立場をアメリカ、カナダその他の国々に訴え、十分の了解を得なければなりません。わが国の食糧を脅かし、さらに公海自由の原則までみずから捨てて、今後外交上の悪例となるような條約を、吉田内閣は何ゆえに急いで、占領下という悪條件のもとに、しかも国会の水産委員会に諮ることもなく、あるいは公聽会を開くこともしないで、秘密裡に締結されたのでありましようか。  なお、今回の條約の中で、禁止とか、放棄せしめられたとかいう言葉は用いないで、自発的に抑止するといつているのでありますが、これは單に体裁をつくろう以外の何ものでもなりません。(拍手
  43. 林讓治

    議長林讓治君) 申合せの時間が過ぎておりますから、簡單に結論を願います。
  44. 山本利壽

    ○山本利壽君(続) むしろ、相手責任を軽くしているようなものであります。時間もございませんから簡單にいたしますが、外務・水産連合委員会の席上、與党の議員多数が口をそろえて、秘密外交、軟弱外交と強く非難したことは、まことにもつともなことであると考えるのであります。(拍手)  以上は、水産・外務連合委員会において指摘された、本條約に含まれておる欠陥のおもなるものでありますが、外務委員会として最後にその賛否を決する場合には、いま一つ、この條約と他の條約との関係及びこの條約を否決した場合、他の国に対していかなる反響を與えるかということも考慮に入れなければなりません。言葉をかえていえば、少々この條約に不満があつても、他の條約で得をしておるとか、または現段階におけるわが国の外交としては、この程度でしんぼうせざるを得ない場合もあり得るのであります。しかしながら、本條約審議の過程において、岡崎外務大臣並びに政府委員よりは何らその意味の発言なく、あくまでこの條約が満足すべきものであり、わが国に不利益を與えるものでないとの説明に終始されましたので、わが改進党は、本條約の内容に重点を置き、本月十三日発表されました衆議院水産委員会理事会の意見をも愼重勘案いたしまして、本條約に反対と決定した次第であります。(拍手
  45. 林讓治

    議長林讓治君) 佐々木盛雄君。     〔佐々木盛雄君登壇
  46. 佐々木盛雄

    ○佐々木盛雄君 私は、自由党を代表いたしまして、北太平洋公海漁業に関する国際條約及びその附属議定書の締結について承認を與えることに賛成をいたすものであります。(拍手)  今回の日米加三国間の漁業條約の内容とその特質は、まず一つには、締約各国は、平等の主権国家として、あくまでも公海自由の根本原則を確認いたしておることであり、そして二つには、しかしながら、常時漁族資源の満限状態を維持するために、特定魚類の保存措置、漁獲の自発的抑止及び広汎なる科学的研究等を規定いたしておることでございます。この條約の締結によつて日本はカナダ及びアメリカ合衆国の地先沖合いの北太平洋水域における、おひよう、にしん及びさけの漁獲を自発的に抑止し、また日本及びカナダは、ともに西経百七十五度の暫定線以東のべーリング海におけるさけの漁獲を自発的に抑止する義務を負うものであります。しかしながら、これらの水域以外の海洋におきましては、公海自由の原則に基き、竹本が自由に漁業に従事することが認められておることは言うまでもないのであります。しかして、海洋資源保護の立場から、カナダ及びアメリカ合衆国は、北太平洋水域において、またアメリカ合衆国は西経百七十五度以東のベーリング海において、それぞれただいま申し述べました魚類について必要なる保存措置実施すべき義務を負うものでありまするから、本條約に対する一部反対論者の強調するがごとく、日本側に対してのみ一方的措置を強制するものではないのでありまして、まつたく双務主義の原則に立つものであります。しかも、これらの水域における、おひよう及びにしんについては、過去においても日本漁業の実績がなく、また、さけ漁業についても、日本が、かつてこれらの水域にまで進出したことはないのでありまして、従つて本條約の締結は、日本側にとつて、従来との比較におきましては何らの実質的損失をもたらすものではないのであります。さらにまた、本條約によつて構成されまする国際委員会は、いかなる決定や勧告をなす場合にも、締約各国は平等の主権国家として全会一致の同意が必要とされておるのでありまするから、日本の意見が十分尊重されることは言うまでもないのであります。  サンフランシスコ平和條約の第九條におきまして、日本は、公海における漁獲の規制または制限並びに漁業の保存及び発展を規定する二国間及び多数国間の協定締結する義務を課せられております。従つて、われわれは、今回の漁業條約を締結することにより、サンフランシスコ平和條約所定の義務を、アメリカ合衆国及びカナダとの関係において完全に果し得ますることは、まことに同慶にたえないところであります。  さらにまた、一部には、今回の漁業條約締結の結果は日本漁業に対する片務的制限を課するものであるとの反対論もありますが、漁獲の自発的抑止は、もつぱら魚族の保存及び科学的研究を前提條件とするものでありまするから、今後日本がアジア諸国との漁業條約を締結する場合に、日本側の立場を不利に導くごときことは、とうてい考え得られないのであります。しかしながら、日本漁業の持つ重大性にかんがみ、今後の條約締結にあたつては、政府は国会の水産委員会初め、専門家の意見を事前に十分聽取し、遺憾なきを期すべきものであることを、今回の経験にかんがみ、強く政府に要請しておくものであります。  以上申し述べましたごとき理由により、今回の日米加三国漁業條約並びにその議定書はまことに公正なるものであり、侵略漁業防止の立場からも、魚族保存の見地からも、平和條約によつて国際社会に復帰した日本外交の進路としてはきわめて妥当なる措置であると確信し、ここに賛成の意を表明する次第であります。(拍手
  47. 林讓治

    議長林讓治君) 前田榮之助君。     〔前田榮之助君登壇
  48. 前田榮之助

    ○前田榮之助君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程になつております北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太平洋公海漁業に関する国際條約附属議定書の締結について承認を求めるの件について反対するものであります。(拍手)  今回、政府が、党内における水産委員反対を押し切つて国会を通過させんと試みている本條約は、アメリカ、カナダの議会においてはいまだ批准されず、審議中であります。しかるに、日本政府のみ急いでこれを批准せんとするところに、国民は依然として、わが国外交は海外からの押しつけ外交であろうかとの印象を與えられたのであります。  さらに、聞くところによると、審議の過程において、専門家である水産委員の意見を十分聞こうとせず、政府の独断で事を運んで行つたとのことでありますが、これでは、口に輿論政治を唱えながら、実行は独断政治であるとの手本を政府みずから示したといわざるを得ないのであります。(拍手国民の中には、今回の政府與党内のごたごたは、大水産業者をバツクとした水産委員政府との間り鋭い意見の対立からであるともいわれておりますが、もしこれが事実であるとするならば、この迷惑をかけられるものは国民であります。このような重大な問題に対しては、自己の利益を捨てて、何が国民のためになるかを十分に審議した上で、政府與党との間に一致点を見出した上、国会においての審議をなすべきであります。しかるに、いまだ水産委員の諸氏は心から納得せず、政府は、まあまあこの際はというような態度であつては、民主主義政治を冒涜するものであり、現内閣並びに自由党に対する国民の不信はますます高まると思うのであります。  次に、私は、この條約中反対せざるを得ない数点を申し述べんとするものであります。  まず條約前文に、漁業資源の持続的生産性、すなわち資源満限とありますが、アメリカ、カナダの業者は、この状態を実際に当つて調査したり、計算しているにかかわらず、日本側では、いまだ現地における調査をしたことなく、單に机上においての調査をのみ基礎として交渉したのであります。これでは、いかに條約を平等の立場で締結するといつても、あるいはまた公海自由の原則にのつとつたと説明されても、とうていわれわれの納得の行かぬところであります。十分なる現地調査の基礎資料なくして、どうして対等な立場に立つての主張が述べられるでありましようか。一方的な調査に立つて交渉が公平を欠くものであることは、何人も認めるところであります。  第二に、議定書においてわが国が自発的に、さけ、ます、にしん、ハリバツトの魚族については五箇年間抑止しているが、この点は手落ちであり、何ゆえこれほどの卑屈な態度に出なければならないか、了解に苦しむものであります。これすなわち、政府に科学的調査資料が欠如しているという一大欠点を暴露したものと申さねばなりません。(拍手)  さらに重要なことは、この條約は将来アジア隣邦と締結せらるべき漁業條約の先例となるものであります。この條約に対する日本の基本原則が十分に研究調査されていなかつたり、政府與党の中においてすら意見の一致を見ないようなものでありますならば、将来妥結されるべき漁業條約は絶えず波乱を生じ、日本にとつて決して有利なものでなく、そのことは、條約の精神である相互の有利になるようにとの原則にももとるものであります。また公海の自由も平等の立場も有名無実のものとなるのであります。  今回、この條約をめぐつて種々問題となつたのは、実はこの漁業の問題は、日本国民の生存と切つても切れない関係にあるからであります。この小さな島に住む八千万に余る人々の蛋白あるいは脂肪の根源となるべき魚族収獲が増加するものであるとするならば、われわれもさほど不平は申さないでありましよう。しかるに、いまだ政府ソ連中共との外交調整にも熱意を欠き、その方面の公海における日本漁業の保護と安全に向つて努力をも欠いているときに、どうして今回の政府のこの処置に安心していられるでありましようか。日本経済にとつて、生糸に次いで収入の多かつたと言われているまぐろの関税の引上げがアメリカで取上げられ、かつまた日本におけるかに工船の出漁を見合せるようにとの意見が出るなど、日本にとつての死活問題が、とかくアメリカにおいて軽々しく取扱われんとしているときに、われわれの最もおそれることは、日本における外交が腰抜けにならないかということであります。この意味において、今回の問題が、單に西経百七十五度以東云々というような問題だけでなく、この條約が基本となつて、さらに軟弱外交が展開されることをおそれるものである。(拍手)  よつて日本社会党は、かかる自主性のない、非民主的な秘密外交、軟弱外交に断固反対するものであることを、ここに申し上げる次第であります。(拍手
  49. 林讓治

    議長林讓治君) 木村榮君。     〔木村榮君登壇
  50. 木村榮

    ○木村榮君 日本共産党を代表いたしまして、北太平洋公海漁業に関する国際條約に反対の意見を申し述べます。     〔議長退席、副議長着席〕  そもそもこの漁業條約なるものは、原則といたしまして、講和発効後、同等な立場に立つて交渉されるべきであるという点は、あの売国的な平和條約においてさえも明らかに認めておるところでございます。ところが、内外からの情報によれば、講和條交渉のときに、すでにダレス・吉田間においては、この漁業問題をめぐつて了解が得られ、しかも、米国の一方的な利益のために、今度のこの條約の草案がすでにでき上つておつた、そして、そのようなことをやつておいてから、昨年の二月になつて、吉田・ダレス間の、あの有名な書簡が交換され、その書簡によつて、形式的に米加二国が日本にやつて来て、そこで相当長期の時間をかけて、双万納得の行くような漁業條約を結んだと、盛んに国会方面並びに業界方面にも宣伝をいたしましたが、しかし、その後の状態を見ますと、自由党の諸君でさえも、岡崎外交が腰抜けだというので、たいへんな騒ぎになつてしまつた。このことは、大体私が今まで申し上げましたような背景を雄弁に物語つておると考えております。  そこで考えてみますと、この條約は、公海漁業の原則を無視して、日本に対して一方的な制限を加え、今後アジア諸国との漁業條約を締結する場合において、日本の立場を不利にするんだという議論がだんだんと発展をいたしまして、御承知のように、この間の水産委員会におきましては、自由党の諸君を含む全員によつて、このような條約は承認できないという決議案にまで発展したわけでございます。  そこで、このような事情を私は一応申し述べておきまして、この條約が持つ目的そのものがいかに不合理なものであつて、問題にならないかという点を指摘してみたいと考えます。  吉田・ダレス書簡の中では、日本が一九四〇年当時操業していた海域のほかには出漁しない、こういうふうに述べておりますが、大体この一九四〇年とはどんな時期であつたかという点を考えてみますと、一九三九年の三月、日本政府は米国に一札を入れまして、今回の三国條約とまつたく同じように、北太平洋のさけ、ます、ハリバット漁業をみずから中止するという、まつたく腰抜けの声明を発表いたしております。このことは、皆様方の先輩も御承知のはずでございます。当時の日本政府は、中国に対して侵略戰争を強行いたしておりましたために、米国の方に対して事を構えるのを恐れて、かくのごとき腰抜けの申入れをしたのであります。  今日、日本の平和産業や農業、漁業がすべてアメリカ帝国主義と日本の自由党吉田内閣によつて戰争政策によつて破壊されつつあるということは、何人も否定のできないところの現実の問題となつております。ことに漁業に至つては、まぐろ関税の引上げ問題や、また米軍の日本駐屯によつて、全国四十二箇所にわたる日本の沿岸は演習地となつて接収されまして、沿岸漁業はまつたくひどい目にあわされております。九十九里浜をごらんなさい。朝から晩まで、どかすどかすと大砲を撃ち込む大演習で、漁民は祖先伝来の家も何も捨てて夜逃げをしなければならないような状態に追い込まれている。こういうような状態に追い込んでおきながら、補償金は二箇年間に一億七千万出した。こういうことでごまかしております。また、昭和二十一年以来、アメリカ海軍が日本海上において演習を行つたために、漁場を奪われたというところは、北海道、青森、山形、茨城、千葉、東京、神奈川、静岡、大阪、兵庫、鳥取、島根、山口、福岡、佐賀、長崎、鹿児島等、全国十七府県に及んでおります。この被害だけでも四億円以上、これはすべて私たちの税金から取上げた終戰処理費で拂つている。こういう状態でございます。ほんとうに平和と独立を望むところの日本国民は、こういつた現実に向つて憤激している。このさ中に、またこのような売国條約をこしらえるのだから、まつたくお話にならないわけである。  政府が、ほんとう日本の漁業を、平和な安定した漁業に発展させようと考えるならば、まず戰争のための侵略漁業をやめなければならない。今、日本政府は、この侵略漁業をまた再開いたしまして政府自体が言つておりますように、東支那海や北洋においては、海上警備隊をもつて武装させ、これに掩護させまして、中共ソ同盟の領海へどんどんと侵略させて、そして戰争挑発をやつて拿捕させて、反共反ソ宣伝の材料にこれを使つている。だからこそ、過去においては、平和的な漁業を営んだ経験のある漁民、特に北海道の漁民の方たちは、ソ連代表部と協定をしてもらいたいということを、国会のわれわれ常任委員会あたりにもどんどんと陳情して来ております。  大体、常識的に見ましても、太平洋のまん中の西経百七十五度に一線を引いて、アメリカ港岸から六百海里の先まで、ここまでおれの領海だということを平気で言うアメリカに至つては、彼らがいかに和解と信頼だとか、やれ公海漁業の原則だと言つたつて、これはまつたくお話にならない。太平洋日本列島も、ほんとうは自分たちのものだと考えているアメリカ側の考えが、今度の條約には具体的に現われている。そういう意味においてこそ、私たちはこの條約に反対するわけであります。  そこで、單にこの條約というものは、漁業問題とのみ理解してはどうしても解決がつかない。これはどうしても、戰争か平和かという大きな政治的な問題とも関連をいたしております。自由党の諸君は、中共やソビエト同盟の平和政策というものがほんとうに理解できませんから、漁業協定承認には反対であつても、結果的にはこれを承認するという、まつたく不合理なことをやつてしまう。こういうことを私たちは指摘いたしたい。われわれは、どうしても中共やソビエト同盟と友好関係を結んで、ほんとうに平和的な漁業條約を結んで、この平和的な漁業を発展させないと日本漁業の将来はあり得ないと考えております。そのためには、どうしても今のような封建的な漁業制度というものを根本的に改革いたしまして、大資本漁業による武装侵略漁業をやめさせ、中小漁民に資金と資材を與えて平和漁業の発展をはからなければなりません。  以上の理由によつて本條約に反対をいたします。  次に申し上げたい点は、水産委員会においては、あれだけの決議をして、かんばつていたのに、まつたく今日では、盛んに諸君は——水産委員に特に申し上げたいことは、やれ岡崎腰抜け外交だと言つて非難しておつたが、今日の状態は、岡崎さん以上の腰抜け状態ではないか。きようの小委員会状態を見ると、自由党の増田幹事長がやつて来て、三分間ほど了解を得るような話をいたしましたら、強硬派も含めて屈服したということは、まつたく岡崎さん以上の腰抜けで、岡崎さんを腰抜けと非難する値打のない、このような連中が寄つてたかつてこしらえ上げた漁業條約というものは、まつたくこれは問題にならぬ。こういう点を指摘いたしまして、私はこの案に反対をいたします。  最後に、ほんとうは水産委員会で決定いたしました反対意見の決議案を読み上げたいわけでございますが、おそらく、このことは、自由党の水産委員の中でも、せめてこれくらいのものはここで読みたいという考えの方があるかと思いますが、時間がありませんので簡略にいたしまして、この辺で終らしていただきます。(拍手
  51. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 黒田寿男君。     〔黒田寿男君登壇
  52. 黒田寿男

    ○黒田寿男君 私は、労働者農民党を代表いたしまして、ただいま議題となつております條約の承認反対いたします。  以下、その理由を申し述べます。  反対理由の第一。政府は、この條約を締結することによつてわが国として義務のない行為を行い、それによつてわが国に損害を與えるものであります。これが私の反対の第一点であります。今回の漁業條約はサンフランシスコ條約に基くものでありますが、サンフランシスコ條約の漁業協定條項によれば、わが国は漁猟の規制または制限並びに漁業の保存及び発展のために公正な協定締結する目的をもつて連合国交渉を開始すべきものとはされておりますけども、漁区制限を内容とする條約を締結しなければならぬというような、そのような義務は課せられていないのであります。この点は、賠償の支拂いが義務づけられておることと、はつきりとわれわれは区別して考えなければならないのであります。  しかるに、今回締結せられた漁業條約は、わが国の公海における漁業の制限を、漁区の制限という形で定めておるのでありまして最初、米国及びカナダは、條文の上にはつきりと、日本が漁業の権利を放棄するという文句を入れようとしたのでありますけれども、交渉の結果、わが国は一定の海域において自発的に漁業を抑止するという表現にかえられたと伝えられております。しかし、文字の上の表現がどのようでありましようとも、実質上は公海における漁業の権利を放棄したことは明らかでありまして、このことは、わが国といたしまして、国際法上何ら義務のないことをあえてなして、これによつてわが国に損害を與えることになるのであります。国民の利益のために、私どもは、このような條約を承認することは断じてできないのであります。(拍手)  反対理由の第二は、この條約は平等の原則に反しております。過去の国際裁判の判決の趣旨にも反しております。近年において海洋自由の原則を宣言いたしました大西洋憲章にも反しております。また世界人権宣言にも反しておりまして、海洋自由の大原則を蹂躪しておるものであります。これが私の反対の第二の理由として申し述べたいと思うところであります。  この條約締結の結果、御承知のごとく、ベーリング海の中におきまして、西経百七十五度付近で、東北から西南方に向つて一線を引き、アトカ島に到達するまでの海域を、日本漁船の事実上の立入り禁止区域として決定しましたこと、わが国がこれを承認させられましたことは、本来自由に開放されてあるべき海洋を、米国の利益のために、とざされたる海に変更することになるのであります。このようなことは、ある国の一方的宣言だけでは断じてなし得られることではないのであります。このような線を、領海の限度である三海里以上の海域に引きまして、この海域の中の不特定な魚の群に対しまして独占権を主張するというようなことは、それが一方的な主張であります限り、国際法上肯定することのできない思想として、従来も考えられて来ておるのであります。その一例を申しますれば、たとえばオツトセイの捕獲に関連いたしまして、この同じベーリング海において起つた事件につきましてかつてバリで開かれました特別国際仲裁裁判所は、このような権利をはつきりと否定しておるのであります。政府は、今回の漁業條約におきまして、この判決と矛盾するようなことをあえて協定させられておるのであります。  また、この條約は、トルーマンの先任者でありますルーズヴエルトが参加して作成いたしました大西洋憲章の精神にも反しております。大西洋憲章は、戰後処理の方針の一つといたしまして、新しい平和は、一切の人をして妨害を受けることなく、公の海洋を航行することを得せしめるというております。これは單に航行の自由を認めただけではないのでありまして、海運業者、あるいは漁業者、あるいは通信業者、あるいはまた間接的には貿易業者、また最終的には消費者に対しまして、海洋の経済的利用の自由の保障を宣言したものであります。この條約は、このような宣言の大方針に反しておると私は考えます。また、このような條約によりまして、わが国が国家といたしまして一定の制限を受けるということになつて参りますと、それは自然日本人たる個人も自由を制限せられるということになるのでありまして、人権保護の世界的要請に基きまして、世界各国によりまして採択せられておりますところの世界人権宣言の趣旨にも反すると私は思うのであります。このような、国際的裁判例や国際的宣言に反し、公海自由の原則を蹂躙するような條約に対して、どうして賛成することができましよう。(拍手)  反対理由の第三は、この條約は、自由な環境と公正な條件のもと締結せられたものではないのでありましで、従つて私は、こういう條約は承認できないと申したいのであります。アメリカは、安全保障條約や行政協定のごとき、本来ならばわが国が完全に独立した後において、自由な意思に基いて締結さるべき性質の條約を、何ゆえにアメリカのいわゆる平和條発効前に日本締結さしたのでありましよう。アメリカは、何ゆえに平和條約のアメリカ上院の批准前に、あえて吉田書簡をダレス氏に送らせて、蒋政権との国交回復、中共否認の意思表示をさせたのでありますか。日本人はみなこれをよく知つておりますから、私はここではあえて説明する必要はないと思います。今回の漁業條約もまた、正式には去る五月九日に調印せられたものではありますけれども、実質的には、昨年の十二月十四日に仮調印されまして、ここで事はすでにきまつてしまつたのであります。  われわれは、かつて一九四九年四月に、マッカーサー元帥の招請に応じて来朝いたしました、アメリカの漁業使節団のリーダーの一人が、日本が戰前のように地国の沿岸においていつまでも自由に漁携ができると思うておるようなことでは、講和條約などはあり得ないのだぞ、こう申しまして、恫喝的な言葉を吐いてわが国を去つた事実、その事実をまだ忘れてはいないのであります。アメリカには、日本の漁業を東北太平洋の一角から不当に締め出そうとする伝統的政策炉あるのであります。私は、このアメリカの伝統的な政策を、わが国がまだ完全に独立していない時期において具体化する目的でおれの言うことを聞かないと、お前のためにならぬぞというような、そういう言葉を吐きながら、日本からいえば、そういう言葉を聞かされながら調印をさせられた條約の一つでこの漁業條約はあると考えざるを得ないのであります。(拍手)  わが国民は、先般李承晩が宣言いたしました李承晩ラインというものを排斥しておりますけれども、この李承晩宣言と同じ思想のもとに、一九四五年、トルーマンは、大洋漁業政策に関する宣言を発表いたしましたが、これはまつたくわれわれから見まして、アメリカの一方的利益のみを主張した、国際法上容認することのできない思想を盛つたところの李承晩的宣言でありまして、しかも、この宣言の趣旨を、日本が占領下にある間に具体化して行こうというのが、今回の漁業條約の締結であつたと考えるのであります。私どもは、このような條件のもとで、すなわち、日本人が自由にものを言うことのできないような條件のもとで、日本人の利益に重大な関係を持つ條約をきめさせられるという、そのようなやり方に反対である。そういう條件のもとで、環境のもとでできたこの漁業條約に賛成することはできないのであります。  最後に、私はあえて政府責任問いたいと思います。私は、先ほど、政府はこの條約を締約することによつてわが国として義務のない行為を行い、それによつてわが国に損害を與えるものであると言いました。一体、これはどういうことになるのでありましようか。政府は、わが国のために外交事務を処理する責任を持つものであります。その政府が、アメリカの利益になるということはよくわかつてつて、その反対に、わが国には不利益になるということも十分に認識しながら、わが国として義務のない行為をあえて行いまして、それによつてわが国に物質上の損害を與える、そういうことにこれはなる。そのようなことを、この條約の締結によつてしたことになるのであります。それは、政府の国家と国民に対する背任行為ではないかと私は考えるのであります。私は、確かにこれは一種の背任行為であると考えます。個人であつたならば、今ごろは検察庁で調べられておる時期ではないかと私は思う。けれども、今政府は政権の地位にありますから、権力者の地位にありますから、鉄面皮にも、ほおかむりで押し通しておるのであると私は思います。一片の良心と責任があるならば、私は、このような條約を締結したということ一つだけでも、吉田内閣は十分に国民の前に罪を謝して辞職するだけの価値があると思います。(拍手)私どもは、国民にかわつて、国家と国民に不当なる損害を與えるこのような背任行為を行つた官爵内閣を心から弾劾したいと思います。  これをもちまして、私は私の反対理由の説明を終えます。(拍手
  53. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本件は委員報告通り承認するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  54. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本件は委員報告通り承認するに決しました。(拍手)      ————◇—————
  55. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 日程第五、たばこ専売法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長佐藤重遠君。     〔佐藤重遠君登壇
  56. 佐藤重遠

    ○佐藤重遠君 ただいま議題となりました、たばこ専売法の一部を改正する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  この法律案は、井上知治君外百二十八名の提出にかかるものでありまして、タバコの耕作は一般農作物に比して多額の生産資金を要するのみならず、苗床、本圃より乾燥、調理等、生産に要する期間も著しく長期にわたりますので、耕作農民は肥料代等の耕作資金にはなはだ困窮しておる現状にかんがみまして、耕作農民の資金上の不安を緩和するため、專売公社が葉タバコ収納代金の一部を前渡しすることができることといたし、もつて葉タバコの品質向上と生産確保に資することといたそうとするものであります。本案につきましては、昨十六日、提案者井上知治君より提案理由の説明を聽取し、審議の結果、同日質疑を打切り、討論を省略の上、ただちに採決いたしましたところ、起立総員をもつて原案の通り可決いたしました。  右御報告申し上げます。
  57. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案委員報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案委員報告通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  59. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 日程第六、義務教育費国庫負担法案議題といたします。委員長の報告を求めます。文部委員長竹尾弌君。     〔竹尾弌君登壇
  60. 竹尾弌

    ○竹尾弌君 ただいま議題となりました義務教育費国庫負担法案につきまして、その提案の理由及び内容の概略につきまして申し上げまするとともに、その審議の経過を御報告申し上げます。  この法案は、竹尾弌外十四名による議員提出法案でございますが、まず初めに提案趣旨につきまして申し上げます。  教育がいかなる規模と内容とを備えて行われ、その実現に対しましていかほどの努力が注がれておるかということによりまして、その国が、その民族の運命が左右されるものでありますることは、歴史の上に明らかなことでございまして、あらためて申し上げるまでもございません。従いまして、教育、その中でも一般国民を対象として普遍的に施しまする義務教育は特に重視されるところでありまして、いずれの国を問わず、競うて努力を傾倒しでおる次第でございます。わが国におきましても、明治維新の学制頒布以来七十余年、その間全力をあげて努力して参りましたため、その方針なり内容がはたしてよかつたか悪かつたかは別といたしまして、明治以後の近代国家としての躍進と発展とはこの教育の力によつたものであることは、まことに明らかな事実でございます。このことは、敗戰のため一大蹉跌を来したとはいえ、深い国民的反省を根底とした正しい方針と適切な方法とによつて、教育に対する努力を、過去にも増して一層強化いたしましたならば、わが国の再建は期して待つべきものがあることを示しておるものでございます。  ここに顧み、ここに期するところがありまして、新憲法におきましては、義務教育費無償の原則を明確にし、これが規模と内容とについて、妥当な範囲と限度とをもつて国民のすべてに対し平等に保障することとなつたのであります。従いまして、国におきましては、義務教育の機会均等と、その水準の維持向上とをはかるに足る確実な財政的裏づけをしなければならない責任があるのでございます。  従来の義務教育に対する財政上の国の保障につきましては、昭和十五年度から実施せられました義務教育費国庫負担法がございまして、義務教育に従事する職員の給與を都道府県の負担とし、国庫がその半額を負担するという制度で、しばらく安定した保障が與えられておつたのであります。  しかるに、昭和二十五年度から地方財政平衡交付金制度が創設されるに及びまして、義務教育費に対する国の明確な保障が得られなくなつたのであります。そのため、特に都道府県間の教職員の待遇及び定数の不均衡がはなはだしくなりました上に、全般的な低下傾向を強めて参つておるのであります。一方、学校の維持運営費につきましても、その三分の一は父兄の寄付金によらざるを得ない実情となりまして、無償の原則どころか、シヤウプ使節の勧告に基く寄付金解消のための大幅な市町村税の増税も、その意味をなさなくなつたのでございます。その財政上の裏づけの制度は、いわゆる六・三制建築補助及び若干の補助起債を除きますと、不安定な平衡交付金制度があるにとどまるのでございます。  本来、この平衡交付金制度は、アメリカにおきまして、教育費だけを対象として成功しているものを、わが国では、あらゆる行政費に拡大しておりまするために、幅の大きな義務教育費は、勢い他の行政費に圧迫せられざるを得ないはめに陥つているのであります。かかる欠陥を防ぎ、義務教育費を確立するためには、平衡交付金制度とは別個にこれが保障の制度を立て、あわせて地方財政の安定をはかる必要が生ずるのでございます。これが本法案の提出を見るに至りました理由でございます。  次に、本法案の骨子について大要を申し上げます。この法案は、昭和二十八年度から、義務教育に従事する教職員の給與費についてはその総額の二分の一を、さらに教材費について教職員給與費の十分の一をそれぞれ国庫負担とし、義務教育諸学校の校舎の建設事業費につきましては、地方財政法の規定にかかわらず、地方債をもつてこれに充て、かつ戰災復旧及び災害復旧に要しまする経費につきましては、いずれもその二分の一を国庫負担とするものであります。昭和二十七年度においては、すでに予算が成立しておりまするので、平衡交付金の中で、妥当な算定基準による教職員給與費等を操作するというのでございます。  以上が原案の要点でありまするが、次に審議の経過を御報告申し上げます。この法案は五月七日に付託せられたのでございまするが、何分にも義務教育費に関しましては、国及び地方の財政問題と広汎な関連を持つておりまするので、党派の別なく、各委員をあげて熱心な検討を重ね、十数回にわたつて審査を加え、さらに二回に及ぶ地方行政委員会との連合審査会をも開きまして、非常な努力を続けて参つたのでございます。昨十六日に至りまして質疑を終了いたしましたところ、改進党の小林信一君外七名よりの提案になる、次の内容の修正案が提出されました。  すなわち、学校教育につきまして、その妥当な規模と内容とを保障し、かつ、義務教育無償の実現をはかるため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等と、その水準の維持向上を目的とし、公立の高等学校以下幼稚園に至るまでの各学校の教職員の給與費、教材費及び校舎建築事業費について、それぞれその総額の五分の四を下らない額並びに教科用図書費、学校給食費の全額を国庫負担とするというのでございます。  次いで、自由党の若林義孝君からも次の修正案が提出せられました。その概略を申し上げますると、まずその第一点として、目下地方税制度の改正について関係者機関において研究中でありまするので、ここには、義務教育費確保の大前提といたしまして、各都道府県ごとに、教職員給與費につきましては、実際に支出せられる額の二分の一を国庫負担とする。その各都道府県ごとの国庫負担の最高限度は政令で定める。  次に第二点といたしまして、教材費につきましては、従来の国庫負担制度にはなかつた新しい構想に属するので、国の財政との調整をはかる必要があり、その一部を負担する原則を定め、その内容に関しては政令に護る。  次に第三点といたしまして学校の校舎建設事業費並びに戰災及び災害復旧費に関しては別途に措置を講ずる。  最後に、この法案の施行期日は、税制度の成案を勘案して、別に政令をもつて定めることとするが、大体昭和二十八年度当初を目標とする。  なお、昭和二十七年度の義務教育に関する平衡交付金法の特例は削除するというのであります。  この修正案につきましても愼重な審議が行われました上、質疑を終了いたし、原案を含めて両修正案を一括討論に付しましたところ、改進党を代表いたしまして小林信一君は若林義孝君提案の修正案に反対、小林信一君代表提出の修正案及び小林信一君提出の修正部分を除く原案に賛成の意見を述べられ、自由党を代表して坂田道太君より、若林義孝君提案の修正案及びその修正部分を除く原案に対して賛成、小林信一君提案の修正案には反対の意見を明らかにせられました。次いで社会党を代表せられて松本七郎君、社会党第二十三控室を代表しで坂本泰良君、共産党代表渡部義通君、第三倶楽部を代表せられて浦口鉄男君より、それぞれ小林信一君を代表とする修正案及び小林信一君提出の修正部分を除く原案に賛成、若林義孝君提案の修正案及びその修正部分を除く原案に対してはそれぞれ反対せられました。  かくて、三案を一括上程、採決いたしましたところ、小林信一君外七名よりなる修正案は起立少数をもつて否決、若林義孝君提出の修正案は起立多数をもつて可決、次に若林義孝君提案の修正部分を除く原案については起立多数をもつて可決せられました。  次に、可決になりました法案につきまして、自由党の水谷昇君より、次の附帶決議案上程の動議提案せられました。すなわち   教職員給與費の国庫負担額の最高限度を政令で定める場合には、その限度の基礎は、原案の趣旨を尊重し、各都道府県のその年度の実績を下らないようにするとともに、老朽危険校舎の起債については、地方財政法を改正して原案の趣旨の実現をはかり、本法案の施行期日は昭和二十八年度から実施すること。 以上でございますが、採決の結果、起立多数をもつて可決せられました。  さきにも申し上げましたように、この法律案は、教職員の給與費を確保することによりまして、教職員の生活を安定させ、教職に専念せしめるとともに、教材費の確保によりまして、校舎はできたが中身の整わない学校に教材を整備し、百億に上るPTAの寄付金の軽減をはかり、千三百万人に上ります父兄の要望にこたえんとするものでございます。すなわち、独立日本の門出に当り、政治における教育優先の原則を確立し、憲法に保障いたします義務教育費が国策の根幹であることを明らかにし、わが国が教育分化を尊重するゆえんを中外に鮮明するものでありまして、その意義はきわめて大なるものがございます。(拍手)占領下においては、とうてい実現の見込みのなかつた義務教育費国庫負担制度が確立せられ、教育財政確立への第一歩を築くことのできますことは、わが国文政史上画期的意義を有するものでございます。  以上御報告申し上げます。(拍手
  61. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 本案に対しては、小林信一君外七名から成規により修正案が提出されております。この際修正案の趣旨弁明を許します。小林信一君。     〔小林信一君登壇
  62. 小林信一

    ○小林信一君 私は、ただいま上程になりました義務教育費国庫負担法案に対しまして、共産党を除く野党各派の共同提案になります修正案について提案の理由を申し上げて、全員の御賛同を得ようとするものであります。(拍手)  われわれの修正の根本理念は、地方教育費の大部分を現行平衡交付金制度から除外して、義務教育の無償を実現するために、大幅な国庫負担を確立し、教育費の確保をはからんとするものでありまして、教育制度の改革がなされましても、実際においては父兄大衆の犠牲によつてのみ実現が可能である現実に対し、その財政的に過重な負担にたえられなくなる地方の将来を憂慮するとともに、憲法の精神と新制度の目的にかんがみまして、以下述べるような規模と内容とをもつて原案を修正せんとするものであります。(拍手)  第一に、適用範囲について原案と異なります点は、公立の幼稚園、高等学校を対象の中に入れた点であります。児童福祉と地方産業の進展の上から、幼稚園設置の必要は一般に要望されながらも、経費の点で行き悩んでいる現状を見ますとき、この際適用範囲にぜひ入れるべきであると確信する次第であります。さらに高等学校は、新制度実施以来、その存在がまことに軽視されまして、その卒業生の六割が実社会に出て中堅的存在となるのに対しまして、適切な教育がなされておらないと、とかくの非難があります。これは、地方財政の窮乏から非常に冷酷に取扱われまして、十分な施設がない結果でありますので、この際国庫の費用によつて維持運営をはかられたいと考えたのであります。特に定時制高等学校は、働く青年諸君のために設けられた制度であります。その要望また切なるものがあるのでありますが、遺憾ながら実際には無視されておるような状態で、一面、青少年の不良化が強く叫ばれながらも、これを放置することは、機会均等の原則からも許されない点でありまして、過去において半額国庫負担の対象になつた事実から考えましても、当然これもこの中に入れるべきである、こう確信して入れたわけであります。(拍手)  さらに負担の種類といたしまして、第二の問題を申し上げますが、原案におきましては、給與費と建築費、教材費、災害復旧費と出ておりますが、私たちは、これに加えて教科書と学校給食の費用をどうしても入れていただきたい、こういう念願で修正したのであります。教科書につきましては、昨年、政府提案によつて、義務教育無償の原則を促進する第一歩として実施するという趣旨もとに立法されて、一年生に、わずか二冊の本ではありますが、支給されたのであります。ところが、本年これが訂正されまして、入学のお祝いとして国家が贈呈するというような、憲法の精神を徹底する重大な責任を持つております文部省が、その精神に逆行し、小さな国民に理解に苦しむような措置をあえてしておることは、遺憾のきわみであります。しかも、教科書を何とかして安くしてくれと、子を持つ親はひとしく悲鳴をあげておるのが現状であります。これを考えますときに、この法案にやはり教科書も含めて行かなければ非常に無意味なものになる、かく考えまして、これを入れたわけであります。  さらに学校給食におきましては、昨年、現政府の方針といたしまして、これに対するところの補助打切りが宣告されたのでありますが、給食は教育の一環として、その重要性はすでに父兄の各位に確認されておるのであります。設備に対しまして父兄が支出した金は、全国通算いたしますと百億を越える状態であります。政府の理解のない、しかも一貫しない教育行政に対して、この政府の方針に対して怨嗟の声が高まつたことは、皆さんの御承知のことであります。(拍手)これに対しまして、政府は、ところもあろうに、農林省から、この費用二十四億を本年度予算に計上して、この国民の抗議を避けたのでありますが、かえつて国民からその無知無能を暴露される結果になつているのであります。国民からとる税金であります。それが児童のために使う金ならば、なぜ文部省から出さないか、何かこの補助金を確保するところに利権がつきまとうのではないかというような疑いを持ち、教育のことにまで官庁の権限争ういを介入させるのか、どうしてこんなに文部省は弱いのかと、いろいろな疑惑と不信を招いておる現状から思考いたしましても、この際大英断をもつて、負担法の中に入れて処置すべきであると私たちは考える次第であります。(拍手)  第三につきましては簡單に申し上げますが、その一つとして、負担額を二分の一としてありますのは、かつて半額国庫負担をしたことがありますた、これに返るならば無慮味であります。やはり、われわれは、この際教育の重大性を認識するとともに、真に文化国家として行こうとするならば、国家の財源をこれに割愛すべきである、こういう観点からいたしまして、われわれは五分の四を要求しておるのであります。  さらに二点といたしましては、職員数についてであります。原案でも、産休の補助教員とか、あるいは病気で休む先生、あるいは事故で休む先生等がありますが、この先生たちの休まれる場合に、子供がとかく放任されまして、非常に悪影響がある点から、原案におきましても、病欠、事故欠等の補助教員をつくりたい、さらに養護教諭の問題、事務職員等の問題をうたつてはありますけれども、これらは一切含めまして一・五とか一・八とかいうような漠然たるもので、はたして実際の数が確保されるかどうかわからない法案になつておりますので、私たちは、法文にこの数をしつかり明記して、その数が適切に確保されるようにしたのであります。  第三番におきましては、この法律によりまして教職員の給與が現状より下ることがないよう、地方の実情を尊重しようとする点であります。  四番といたしまして、老朽校舎の建築費でありますが、その起債を認めるだけでなく、半額国庫負担をしなければ、今日地方の経済事情から考えますときに、老朽校舎はその危険の状態を持続する以外にない状態からして、どうしても半額国庫負担をお願したい、こう私たちは考えたのであります。(拍手)  さらに五番といたしまして、災害復旧費は、原案には二分の一の補助金が書かれてあるのでございますが、やはりこれは、一般災害と同様に三分の二が補助されなければならぬという見地から、これを修正したのでございます。  以上、修正の要点だけを説明したのでありますが、その比較対照をしたものは、自由党の議員提出によります原案でありまして、昨日文部委員会を通過しましたものは、原案と似ておよそ非なる修正案で、自由党の原案を自由党で修正し、野党全部の反対の中に通過したものであります。これだけで、その内容は皆さんに御了解がつくと用いますが、各條項とも、その数字、金額等はすべて政令でこれを定めるとして、一つとして完全にその実施内容が明確にされておらないのでありまして、これでは、国民が一体何がどの程度負担されるのか、おそらく了解に苦しむと私は思うのであります。(拍手)しかも、その実施期日は政令で定めるとあるに至りましては、いよいよもつてたちはこの修正案を信ずることができないのでありまして、かかる修正案をもつて真に教育を愛するというような政党がもしあるならば、おそらく国民からその信をただちに失うものと私は確信する次第であります。  こういう状態でありますので、提案者側からは附帯決議が出されております。これは確信のない法律であることをみずから裏書きしたというべく、そのほかに何ものもないのであります。(拍手)しかし、私は、同じ文部委員といたしまして、自由党の委員が、委員長初め、いかにしてこの法案の実現を期するかに専心努力されたことにつきましては敬意を表しております。原案を提出しながら、党内が紛糾して意見の一致がなされず、廃案のやむなきに至るかとまで憂慮されながら約一箇月、全員重大な決意をして臨まれたことは私は承知しておるのでありますが、しかし、かく自由党の諸君がなぜ決意をしなければならなかつたか、この事実は、結局教育無視の政府並びに與党の真意を如実に証明するものでありまして、新制中学校はできたが、一方、小学校は腐朽して、その使用に危険さえ感ぜられながらも修理改築ができない。建物があつても、現在の教育が要求するような施設、内容、教材は依然として整備されない、戰災復旧はいまだ終了しない、教育委員会は財政的権限が付與されないために、その機能を発揮するに至つていない、この地方教育の事実を無視して、文部委員諸君の熱意も報いられず、本法案が、かくも無残に、満身創痍の姿になつてここに現われるところを見ると、現政府の文教政策の根拠を疑わなければならないのであります。(拍手政府は、最近いろいろな取締り法案を濫発しております。これは文化国家への道を忘れて、警察国家への転換でも考えられておるのではないかと、私は非常に疑つておるのでございますが、こういう点からにらみ合せてみますと、この教育立法から考えまして、これは当然のことのようにうかがわれまして、まことに遺憾千万というべきであります。  現在委員会に上程されております教育委員会法等の一部改正法律案も、かかる教育無視、警察国家への強化、党利党略に目的を置く政府與党の策謀によつて、同じような運命をたどりつつあるのであります。各新聞とも、社説によつて、この事実を指摘し、その政略的意図を暴露しておる。自由党文部委員諸君でさえも、これに対して非難攻撃しておりながら、何ら反省することなく、参議院を通過して一箇月もたな上げして、ようやく委員会に上程し、今これの握りつぶしを計画しておると、本日朝日新聞にも堂々とすつぽ抜いてあるのであります。(拍手)かかるふまじめな、悪辣な教育行政をあえてして、施設の不十分な、内容の整わないような学校で日本の教育を……。
  63. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 小林君に申し上げます。趣旨弁明の域を逸脱せぬように願います。
  64. 小林信一

    ○小林信一君(続) 再建するのは、教師の熱意にまつほかはない現在であります。はたして教師の誠意と努力が、かかる態度で要望できるかどうか。学生諸君の行動について、この壇上からいろいろな意見や批判が出るのでございますが、かかる態度におきまして、批判はできようはずがない。ほんとうに教育行政だけについても、せめて心魂を打込んでからのことであると私は信じておるのでございます。  教育公務員特例法で認められた職員団体の県單位の構成は、この悪辣な策謀によつて、町村單位の結成を余儀なくされておるのであるが、町村には條例がつくられておらず、受入れ態勢がないという理由でこれを断る。府県の議会では、教育委員会、人事委員会等でその見解が一致せずに混乱しておるのであります。教科書の検定権は、法律の指示するところでは、文部省からすでに府県教育委員会に移つておるのに、全然これも放置の形で置きまして、すでに展示会の開始されておる段階にありながら、その実施は全然見通しがつかない状態であります。地方教育委員会の選挙をするかしないか、これらに要する費用も予算に計上されないまま。人心を動揺させ、行政機構を混乱させておる。その責任を反省することなく、握りつぶしの行為を持続するとは、血迷つた症状としか考えられないのであります。(拍手)  本法案が党内紛糾の結果、大風の総理に御裁可を仰ぎに行つたときに、選挙対策であつてはいけないと、御裁可を躊躇されたということを私は聞いておりますが、さもあらんとうなずけるものがあるのであります。卵であることは事実だが、すでに黄味もなくなり、白味も残つていない、からだけの卵である。これは、自由党の議員の率直な、この修正案に対する告白であります。(拍手)  地方財政の実情を知る人には決して賛成できないものと私は確信いたしまして、自由党提案の修正案には反対、野党提案の修正案に御賛成くださることを期待いたしまして、提案の理由の説明を終ります。(拍手
  65. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これより討論に入ります。岡延右エ門君。     〔岡延右エ門君登壇
  66. 岡延右エ門

    ○岡延右エ門君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま上程されました、竹尾弌君外十四名提出にかかる義務教育費国庫負担法案委員会の修正並びに委員会の修正を除く原案に賛成、小林信一君外七名提出の修正案に反対の意を表せんとするものであります。  まず本案賛成する理由の第一点といたしまして、義務教育費国庫負担法案は、御承知のように、義務教育について財政上の最終責任を国が負担するという、わが国教育史上における画期的な法案でありまして、これはすなわち、憲法にうたわれているところの義務教育無償の原則の実施をはかる第一歩であります。  次に賛成理由の第二点といたしましては、この法案の成立によつて地方財政の安定を期し得るとともに、父兄の負担を著しく軽減し得るということであります。御承知通り、地方自治体にとつて最も負担の大きい教育費につきまして、これを地方のみにまかせることなく、国が財政的責任の最終を負担するということは、地方財政の安定を期する上におきまして最も有効な道と考えられるのであります。また、元来当然公の費用をもつてまかなうべきところの教材費の約半額は、PTAが経常的に、これを寄付金の名称のもとに負担いたしておるのでありまして、この父兄の負担を本法案により軽減いたしまして設備の不完全な小、中学校の現状を打開し、教育内容の向上をはかるため国庫負担の道を講ずることは、まことに時宜を得た処置といわなければならないのであります。  次に第三点といたしましては、本案わが国財政の実情に即したものでありまして、ことに税制の将来とにらみ合せた堅実性を持つているということであります。敗戰の苦盃をなめたわが国の財政の現実を無視して、架空の厖大な法案をつくり上げることはきわめて容易なことでありまするが、もしかかる立案をあえていたしましてまで国民大衆の安価な喝采を獲得せんとするがごとき態度をとるものがありとすれば、それはまさに国民を毒するものであり、良識を持つものの断じてとらざるところの態度である。(拍手)本法案は、義務教育無償という大理想を目ざしつつ、しかも敗戰の現実という大地にしつかと足をおろして立案した最大限のものであり、また独立日本としての新生面に第一歩を印した現在、中央、地方の両税制にも当然相当の改訂が予想せられまするので、その点をも十分考慮に入れた点などを見るとき、本法案は財政的にもきわめて堅実性に富むものと申すべきであります。  こういうように幾多重要な美点があるのでありまして、これは義務教育関係の六十万の教職員を初め、一千数百万の生徒、児童、それから数千万人の父兄がともに渇望しておるところの大法案であります。これに反対する諸君は、何のかんばせあつて八千万国民にまみえんとするのであるか。(拍手)  次に、小林信一君外七名提出の修正案に対する反対理由を申し述べます。第一、この修正案は、国の負担を義務教育のらち外にまで拡大して、幼稚園、高等学校にまで及ぼしたごとき、これはまつたく修正案に名をかりた独立の法案とも見るべきものでありまして、決して修正案の実を具備していないことを痛感するものであります。さらに第二点といたしまして、この修正案の裏づけとなるべき予算面についても、わが国財政の現状には沿わない、まつたく無責任きわまるものと断ぜざるを得ないのでありまして、義務教育並びに国家全体の健全な発展を考えるとき、責任あるわが党としましては、かくのごとき提案にはまつたく反対せざるを得ないのであります。(拍手)  実は、昨日委員会討論が終結せんとするにあたりまして、私は各野党の意向をただすべく野党席を一巡したのでありますが、そのとき、若林義孝君の修正案を除く原案にはことごとく賛成すると言つたのである。そこで、私はちよつとおかしいと思いまして、実は若林君の修正案がもし可決されたならば、残る原案はこれこれであるということを念を押しましたところ、それでは反対でございますと、五分間にして、君子はすなわち豹変したのであります。まつたく野党というのは君子ぞろいであると私は感心いたしました。  さて、かくのごとく野党の諸君は、不勉強と不誠意の中にこの修正案をつくり上げた。要するに、かかる架空の空中楼閣的な修正案をひけらかして、国民の安価な拍手喝采を買おうとした野党諸君の心情を思いまするときに、私はうたた憐憫の情にたえない。この意味におきまして、私はこの竹尾弌君外十四名の提出にかかるところの国庫負担法の委員会修正並びに委員会の修正部分を除く原案に賛成、小林信一君外七名提出の修正案に絶対反対の意を表する次第であります。(拍手
  67. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 井出一太郎君。     〔井出一太郎君登壇
  68. 井出一太郎

    ○井出一太郎君 ただいま上程中の義務教育費国庫負担法案に対しまして、改進党を代表して討論を行います。私どもの立場は、原案並びに與党提出修正案に対して反対、小林信一君によるところの野党提出修正案に賛成でございます。(拍手)  文部委員会において、この国庫負担法案が難航に次ぐ難航をもつてしましたことは、諸君承知通りであります。昨日の最終の段階におきましては、委員長に対する不信任案まで出ましたことも、これまた諸君承知通りであります。われわれは、この経過をたどつてみまするときに、本法案の本質あるいは内容というものに対しまして、いろいろ問題点があつたことを知るのであります。この法案は、もともと與党の文部委員十五名の連名になるところの議員提出法案として出されました。従来、文部委員会審議というものは、超党派的に教育の問題を考えよう、こういうような非常に和気あいあいとした形でなされて参りましたが、この法案に関しまする限りは、まつたく何ら事前に相談なくして、法案ができ上つてから、何とか同調してくれという事後承諾を求められたのでございます。われわれは、これを見まして、少くとも現状よりは一歩前進である、とするならば、異常を鞭撻して協力をあえて惜しまない、こういうような立場をとろうといたしたのでございますが、その後、ふかしぎにも、自由党内部においていろいろな紛糾が出て参つた。  一体、議員提出法案として出て来る以上は、党内がすつかり固まつておるべきはずであります。(拍手)少くとも政務調査会を通つてつていいはずである。ところが、その手続がなされておらないのみならず、同じ政府部内においても、あるいは地方財政委員会の方から横やりが入つて来る、あるいは大蔵省も財源関係から反対である、このような形でもりて、まつたく満身創痍になつてつたのでございます。(拍手)議員提出法案が、こういう形で骨抜きにされるということは、国会の権威にも大きくかかわるのでございまして、何ゆえ一体このような不用意な形でこの法案が出されたか。何ゆえ、かように功をあせつたのか。どうも、私どもは、この間の消息を、選挙対策以外にはない、かように断定をしたいのであります。(拍手)  最近、こういうような問題が各委員会に起つて参りまして、奇々怪々というか、百鬼夜行の状態でありますことは、たとえば、さきごろ農林省設置法に対しまして、農林委員会がとつた措置に徴してみましても明らかでございます。まことに、これは、党内事情のいかんは知りませんけれども、自由党が長期政権を担当して、もはや倦怠の時期に入つて来ておる、そこに生じたところの末期的現象であると私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手)そのようなことから、われわれは、昨日竹尾委員長に対しまして、涙をのんで不信任案を提出いたした。竹尾氏は、聞くところによると、自由党内まれに見る人格者であるそうでございます。(拍手)この不信任案の討論の際に、若林委員は何と言うたか。若林君自体が、野党が不信任案を出したことに対し敬意を表すると申しておられる。(拍手)つまり、この意味は、野党が不信任案を出さざるを得ない、それほどこの問題が奇々怪々であるということを若林君自身が認めたものだと私は解釈いたしておる。さらにまた同君は言葉を継いで、與党の中のだれ一人もこの法案に満足しておらぬ、こういうことを、あなたは言われておる。われわれは、最近の自由党が、文部行政を非常に軽視しておるということを遺憾に考えております。これは、今小林君が指摘をした通りである。  ここにおられる天野文部大臣は、最近黒星続きである。今小林君が指摘たところの教育委員会法の一部改正は、天野文部大臣責任を持つて内閣提出案として文部委員会にかかつて来た。これがどのような結果になるであろうかは、今小林君が指摘をした通りだと私は思う。天野文部大臣が、颯爽として大臣として登場されたときには、天野さんの額からは叡知の光が出ておつたと私は思う。(拍手)ところが、このごろの天野先生はすこぶる憂欝でありまして、天野さんの額には、八の字のしわが深刻に寄つて来ておる。(拍手)私は、天野文部大臣がその晩節を全うされる上からいうて、この教育軽視の自由党内閣に訣別されんことをお勧めしたいのであります。(「本論に移れ。」と呼ぶ者あり)  本論に移つて申し上げるならば、新憲法第二十六條に「義務教育は、これを無償とする。」と書いてあることは、福井君も御承知でありましよう。この義務教育費無償の原則からいたしまするならば、先ほど小林君の提出した、あの修正案が正しいことは、もう明らかである。(拍手)  私は、ここでこまごましく法案の内容を申し上げようとは思いません。けれども、先ほど討論に立つた岡君のごときは、文部委員会において、自由党中最大の闘士であつた。岡君は、この原案に物足らないで、こんな程度の法案ではだめだというような意向さえも漏らしておられた。その岡君が、きようは何と言われたか。君子豹変という言葉を用いられたが、これは私は岡君自体に返上申し上げたい。(拍手)  これ以上私はくどくどしく申し上げませんが、小林信一君その他によつて提案せられた修正案に心から賛成をいたし、しかして原案並びに與党修正案に対しで反対をいたすものでございます。(拍手
  69. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 松本七郎君。     〔松本七郎君登壇
  70. 松本七郎

    ○松本七郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になつております義務教育費国庫負担法に関する小林信一君外七名提出の修正案に賛成し、若林君提出の修正案並びにその修正部分を除く原案に反対の意思を表明いたすものであります。(拍手)  以下、ごく簡單にその理由を明らかにいたしてみたいと思います。  私どもは、この原案が出て参りました当初、長年研究いたしておりましたように、義務教育の無償と教育の機会均等をいかにして財政的な裏づけをもつて実現するかという、その長年の文部委員会の苦労の結果、何らかの形でこの趣旨が実現されるということであるならば、多少の不満はあつても、できるだけ協力しようという態度に出て参つたのでございます。もちろん、原案そのものにもたくさんの不満がございました。しかし、ほんとうにこれが実のあるものとして実行されるならば、現在の段階においては、この程度でもがまんできるのではなかろうか。問題は、この法律を実行するところの現内閣の意向が那辺にあるかということが、われわれの最も関心を抱いた点でございました。(拍手)  審議の過程におきまして地方財政委員会当局の答弁、あるいは岡野国務大臣の答弁等を聞いておりますと、元来、平衡交付金の現在のわくの中でやれることだ、やれるはずだ、何もこんな法律をわざわざつくる必要はない、こういうことを終始主張されておつたのであります。この地財委の考え方は、やろうと思えばやれるはずだということに終始しておるのであります。私どもが、こういう法律の必要なことを強調いたしますのは、やれるはずが現在やれておらないからこそ、こういう法律の必要を主張しておるわけでございます。(拍手)そうして、岡野国務大臣のごときは、全額国庫負担ならばよろしい、半額だからいけないのだ、こういうことを言つておられるのであります。しからば、全額国庫負担を実行する意思ありやと言えば——全額国庫負担を実行いたしますかと、こう追究いたしますと、全額国庫負担は原則として絶対反対だという結論になつておる。こんなばかな話はないのである。こういうふうに意見の食い違いがある。  この審議の過程で明らかになりましたのは、閣僚の中にも、文部大臣と岡野国務大臣と対立がある。大蔵大臣とも意見が違う。そうして、結局は自由党の考えと閣僚の一部に非常に大きな意見の相違があることが、だんだんと審議中に明らかになつて来たわけでございます。(拍手)こうして非常に難航を続けておりますときに、委員長初め自由党の文部委員諸君が大いに努力をされておつたことは、われわれも認めるのでございます。しかし、その結果調整されて出て参りましたのが、先ほど委員長の報告にありました、若林議員提出にかかるところの修正案なのでございます。ここに問題があるのでございます。非常に大きな問題があるのでございます。  先ほど小林議員も指摘されておりましたように、重要な項目はすべてこれを政令にゆだねておるのであります。私どもは、これほど大切な内容を持ち、しかもほんとう実行する意思があるならば、明確に法律案に規定したらいいと思うのであります。(拍手)これが、大切な部分は全部政令にゆだねてある。たとえば、原案にははつきりと、財政法第五條の規定にかかわらず、こうこうするというようなことが明記してありまするが、そういうことも、地財委から文句が出て、これを削らなければならない。施行期日は、原案では二十八年からやるということを明確に規定してありますのを、いつからこれをやるかわからないような修正案になつておるのでございます。これについて修正案提出者に意見を求めましたところが、政府では地方税法の改正を今研究しておる、それが二十八年度までには間に合うように完了するはずであるから、おそらく二十八年度からは実施できるであろうと言つておる。それほど確信があるならば、法律の中に、二十八年度から施行することを明記したらいいはずであります。(拍手)ここに大きなごまかしがあるのであります。  しかも、そういつた非常に漠然とした法律をなおカムフラージュするために附帯決議を付されたのであります。これは実に奇妙なことでございます。自分から出した修正案に附帯決議を付するなど、これは前代未聞のことといわなければなりません。(拍手)たとえば、私どもが附帯決議を見ますると、これはまつたく重要な問題を含んでおるように思います。若林議員が提出されました修正案につきましては、若林議員、與党の議員みずからが、これは卵の中のきみとしろみを吸つてしまつて、からだけになつた、こう言つて嘆いておられるのであります。私に言わせますならば、この卵のきみとしろみは、みな大蔵官僚が吸つてしまつて、からだけをこの国会にたたきつけた結果になつておるのであります、(拍手)もちろん、このような自由党の中で、必死になつてこの法律の趣旨を生かそうとしておりながら、なお少数の官僚によつて、がんじがらめにされてしまつておる。これに対しては、絶対多数を擁する與党でさえも遂に屈服した事実、ここに大きな問題があると思うのでございます。(拍手)  今いろいろ巷間に伝えられておるところによりますと、将来憲法を改正いたしまして、予算を伴う議員立法に対しては行政府の拒否権を認めようというような主張があるということでございます。私は、その真偽のほどは存じませんけれども、そういつた説まで伝えられておるときに、現在のこの義務教育費国庫負担法の成行きを静かに見守つておりますると、必ずしもこのおそれが杞憂ではないのではなかろうかと心配せざる得ないのでございます。(拍手)こういう点から、私どもは、原案よりもさらに進んだ、義務教育費の確保についてはどんな方向で行くべきであるかという明確なる線を打出した案を明示いたしますことによつて、官僚の行き過ぎと独善的な行為に、国会の名において鉄槌を加えるべきであるという結論に到達したわけでございます。(拍手)これこそ、議員立法と国会の権成を保ち、民主政治を守るための緊急の任務ではなかろうかと存ずるのであります。(拍手)  こういう点を御考慮くださいますならば、おそらく自由党の議員といえども、われわれとともに決然として、この官僚を押えるために、民主政治を守るために、われわれに同調していただけることを信じ、かつ強く要望いたしまして、私の討論といたす次第でございます。(拍手
  71. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 渡部義通君。     〔渡部義通君登壇
  72. 渡部義通

    ○渡部義通君 日本共産党は、小林君提出の修正案に賛成、若林君外提出の修正案に反対並びにその修正部分を除く原案に反対であります。委員長の報告や岡君の賛成演説を聞かれた諸君であるならば、そうして少しでも物事を考える力を持つておる諸君であるならば、自由党提出の修正案なるものが、一貫してごまかしであり、また言い訳的なものであるということが、はつきりおわかりでしたろう。(拍手)われわれは、国民大衆が義務教育費の国庫負担をなぜ強く望んでおるかということを考えてみなければならない。戰災と戰争によつて、あまりにもみじめに学校の校舎や施設はぶちこわされ、また崩壊してしまつておる。政府は、占領政策や再軍備費に血税の大部分を投げ込んでおるがために、文教費はこれを大部分地方財政、さなきだに費弱きわまるところの地方財政、特に強制寄付やPTAの負担に転嫁して来たのである。憲法第二十六條に規定しておる義務教育の無償という事柄を、政府はまつたく無視して来たのである。その結果、今でも、学校は至るところ建つていない部分が多いのであつて、小学校では百五十万坪、中学校においては二百五十万坪もまだ不足しておるのである。東京について言うならば、約二十万の学童というものが、いまだに二部制から解放されておらない。しかも、老朽危険校舎が四十万坪にも達しておるのである。その上に、接収校舎は返つて来ていない。さらに、かえつて取上げられようとするような場合も多いのである。  教員の数は非常に不足しておる。これは、第一に定員法によつて切り詰められておるばかりでなくて、年々少くなつており、その上に首切りさえも行われている状態である。こういう教員たちは、非常に安い賃金で、しかも職制の圧迫のもとで、強制的に労働を強化されておるという実情でありますし、他面、国民は非常に窮乏しておつて、満足に学校にも出られないのである。この国民は、たとえば、私は昨年東北地方を視察して来たが、青森県の某中学校のごときは、長期欠席者、すなわち三十日以上の連続欠席児童が約半分も占めておるのである。このような状態で、教育は全面的な危機に際会しておるのである。この全面的な教育の危機をどうしで打開するかということが、国民大衆にとつての問題なのである。国民は、これを全額国庫負担によつて当然解決しなければならぬという強い要求を持つておるのであり、それが大衆運動となつて、今日全国に広まりて来ておるのである。このような情勢に直面して、選挙間近にでもなりますと、自由党でさえもが、この問題に目をつむることができなくなつた。ここに自由党がまやかしの法案を提出した理由があるのである。(拍手)  しかも、この法案というものは、先ほども松本君等から暴露されたように、インチキきわまるものである。第一に、この法案は教員給與費の二分の一、それから教材費のわずかに一分、しかもこの二分の一とか一分とかいうものは、政令によつて文部官僚がきめるというような、不確定きわまるものなのである。このような法案の中には、さらに建築費とか改修費とかいうものが全然含まれていない「地方財政委員会さえも指摘して、このような法案が通つたならば、さなきだに困難な地方の財政の破綻というものが一層加わるだろうと言つておる。それだけではない。決してPTAの負担等から解放されるわけでは断じてありません。われわれは、もしも真に国民の義務教育の無償、言いかえるならば、義務教育における国民の全機会均等というものが確保されなければならないとするならば、学用品から交通費に至るまで、すべての教育に要するところの費用が全部国家の負担でなければならぬということを主張しておるものである。  諸君は、日本の財政の現在がこれで精一ぱいなんだ、自由党の修正案で精一ぱいなんだということを言つておるが、これこそごまかしなんだ。米軍駐留費や、再軍備費や警察の弾圧費のためには、どんなにでも諸君は予算を組んでいるじやないか。(拍手)二千億の直接軍事予算を諸君は組んでいるじやないか。さらにまた、警察の学校とか、刑務所とか、あるいは予備隊の屯所とか学校とかいうものはどんどん建つておる。また、この連中の武装はどんどん強化されておる。いくらでも金は出るのだ。ところが、国民はそうは考えてない。国民は、こういうものにこそ金を出しちやいかぬのだ。国民は米軍の駐留に断固として反対しておるのであり、再軍備反対しておるのであり、警察による国民弾圧に反対しておるのであるから、このようなものには断じて経費を出しちやいかぬ、このような経費があるならば、これを文教費にまわせというのが国民要求であり、これが国民の主張するところの義務教育費国庫負担というものの本質なのである。  それだけではない。諸君はもつと大きなごまかしをやつておる。諸君のごまかしはさらに大きい。諸君は、このインチキ法案を出しておいて、自由党も幾らかは教育を尊重しておるのだというふうな見せかけをやつてつて、その教育が、たれのために、どのような教育をやつておるかということを隠そうとしておる。諸君がやつておるところの教育というのは、日本民族の自覺と誇りというものを奪い去つてしまい、国民の間の政治的な、階級的な自覺というものを眠り込ませて、日本国民を愚民化してしまい、アメリカ崇拝思想を宣伝育成し、反ソ反共宣伝をそこにおいて行い、そうして戰争の準備教育を諸君はやろうとしておるのだ。天野式の君が代教育から、国連軍の慰問というようなこと、あるいは天皇や皇太子の出迎え行列だとか、さらにまた予備隊の歓迎に至るまで、すべてこのような目的のために諸君はやつておるのである。  これだけではない。諸君は直接に軍事科学を奨励し、かつ軍に協力する科学を積極的にやつておる。日本学術会議は、圧倒的な多数をもつて、良心ある日本の科学者は一切科学をもつて戰争に協力しないということを決議しておる。それにもかかわらず、諸君政府は、軍事科学のためにはどんどん研究費を出し、たとえば東京工業大学のように、いろいろの軍需品の性能検査をやつたり、東大のように、飛行機のコンクリートの試験をやつたり、諸君はやらせておる。さらに、学校が今日軍事動員のために利用され始めておる。その準備をされておるのである。また、諸君、荒川某中学校では、産業教育—これも諸君提出したのだが、この産業教育の名によつて、砲弾包装作業を生徒にやらせておる。さらに、仙台の高等学校では、体育という名によつて強制的な体格調査をやらせておる。また、全国の至るところの学校では……。
  73. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 渡部君に申し上げます。申合せの時間が参りましたから簡潔に願います。
  74. 渡部義通

    ○渡部義通君(続) このような教育を諸君はやつておるのであります。しかも諸君は、学問の自由、学園の自治、あるいは平和と独立のための学生運動を弾圧し、学校の中にスパイを入れ、学生や先生の言動を一々監視して弾圧に備えておる。そうして、早稲田大学や、東京大学や、北海道大学、こういうところにおけるように、諸君は弾口を学生に対して繰返しておる。このような教育を諸君はやろうとしておる。  しかしながら、国民はこのような教育のために金を使おうとしておるのではないのである。国民が考えておるのは、国民自身のための教育、平和な文化的な教育、日本の復興と日本独立世界の平和のための教育をやれと国民は望んでおる。このために全額負担をせよ、当然国民の税金を——このために全額負担をせよということを国民は主張しておるのである。これが、国民の主張しておるところの、全国民的な要求となつておるところの、義務教育に対する国庫負担というものの真実の意義なのである。われわれは……。
  75. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 渡部君一一渡部君、結論を願います。
  76. 渡部義通

    ○渡部義通君(続) 従つて、われわれは、国民を解放するところの民主的な教育のために、日本独立世界の平和を守るような民主的な教育のために、われわれの血税をもつて全額国庫負担すべきであるという立場をとるのであり、そうして、これが憲法で規定しておるところの義務教育に対する真実の精神なのであり、全国民的な要求なのであります。  諸君、この意味で、われわれは自由党の諸君提案したところの修正案のばからしさに徹底的に反対するのであり、この意味において、またわれわれは小林君外提出の修正案に対しても多くの不満を持つており、さらにまた批判的であるのであります。しかしながら、この小林君外提出の修正案については、日教組等の強い要望があるのでありますからして、われわれは、大衆的な要望に基礎を置いて、今日の段階において、この小林君外提出の修正案に賛成するものであります。(拍手
  77. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 坂本泰良君。     〔坂本泰良君登壇
  78. 坂本泰良

    ○坂本泰良君 私は、社会党第二十三控室を代表いたしまして、ただいま議題となつておりまするわれわれ野党修正案に賛意を表し、自由党提出の原案並びに修正案に対して反対をいたすものであります。(拍手)  以下、二、三その理由を明らかにしたいと思うのであります。  第一に明らかにいたしたいのは、これは若林君一人の提出者になつておりまするが、この修正案と、先ほど委員長が読み上げました決議案との関係であるのであります。それは、この負担法案が、若林君の修正案によりますると、まつたくの骨抜きになつたのであります。ただ、その実質は二分の一を負担するという、これだけのことであります。原案におきましては、この二分の一負担を明らかにすると同時に、その給與額におきまして、その教材費におきまして、その負担の額の算定の基礎を明らかにいたしまして、そうしてその二分の一を国庫が負担する、こういうことになつていたのであります。ところが、この修正案は、大事なところは「実支出額」と四つの字に収縮をいたしたのであります。すなわち、原案の第二條の第二項が五項目ありまするが、これを全部削除する。それから三條を残しまして、四條、五條を全部削除する。そこで、その削除した最も重要な部分を実支出額とするという、四つの文字に収縮をいたしまして、その二分の一を負担する、これが修正案の骨子であるのであります。そうして、その実支出額につきましては、各都道府県ごとの国庫負担額の最高限度を政令で定める、こういう不明確な條文になつたのであります。  法律を作成する場合におきましては、その理想とともに、その実行の方面におきましては永遠のものでなければならないのであります。しかしてまた、その法律の実行にあたりましては、客観的にこれを解釈いたしまして、そうして国民の利益になる解釈を與うべき法律をつくるべきであります。しかるに何ぞや。この法律は、まつたく地方財政のいかんによつては、国家がこれを負担し、補助するどころか、かえつてこれを収縮するような解釈もできて実行し得るという改正案であるのであります。そこで、この不当な骨抜きの修正案に対する申訳が決議案であるのであります。  その決議案の第一は、各都道府県の実績を下らないように定める。下らないように定めるというのは、下るということを予想しておるのであります。こういうばかなことはないのであります。  それから第二は、老朽危険校舎の起債については、これは先ほど松本君が申しましたように、地方財政法の第五條において、起債によつてこれをやるということをはつきりいたしておる。それを削除してしまつた。だから、第五條を改正して原案の趣旨の実現を期するなんて、こういうばかなことはあり得ないのであります。これは、要するに、地方財政委員会から強力なる反対がありまして、その反対に自由党の諸君が負けてしまつて削除をしたから、申訳にこういうことを出しておる。まことに笑止千万の至りであるのであります。(拍手)  その第三は、施行期日を政令で定めるとしてある。およそ法律を定めるのには、その法案の内容におきまして、その実施時期が予定される場合は、その法律をもつて定むべきが当然であるのであります。従つて、原案におきましては、二十七年四月一日から実行する、但し、予算措置の部分を除いては二十八年の四月一日から実施するということを明瞭にしておきながら、それを削除して、そうして政令で定める、こういうことになつておる。これは、おそらく予算の関係におきまして、大蔵関係から果敢な反対を受けまして、これに自由党が屈服した証拠だ、かように断ぜざるを得ないのであります。  従つて、かような骨抜きの修正をいたしたというのは、われわれがこの審議の過程におきまして、地方財政委員会からは委員長の反対意見が提出された。それを読み上げに来たところの奥野謀長は、私は、私はと言つて、自己の私見を加えてそれを発表しておる。これは、われわれは国家公務員法の職務違反であるといつて追究しなければならぬのであります。(拍手)そしてまた、大蔵の方から予算関係で圧迫を受けまして、かような骨抜きの修正案になつたというのは、自由党の諸君が二百八十名を誇つても、地財委の官僚と大蔵官僚の弾圧にあつて、それに屈服した証拠だといわなければならない。もしもそれに対して、自由党の諸君がそうでないと言うならば、日本の教育対策に対して、自由党の諸君の意見がまちまちであることになる。まちまちであるということは、日本の教育、文教政策に対しての確信を持たない証拠であるといわざるを得ないのであります。(発言する者あり、拍手)  義務教育の問題は憲法第二十六條に規定してあり、義務教育費を無償とするということも憲法に規定をしてあるのであります。従つて、かような義務教育費国庫負担法案のごとき重要なる法律案は、われわれはその局に当る文部大臣責任を持つて当らなければならないと思うのであります。しかしながら、文部省においてりつぱな原案をつくりながら、これを提出できないというのは、文部大臣の政治力がないからだ。だから、骨抜きの自由党案の十五名の法案を出している。そうして、内部のごしやごしやと、外部の官僚からの圧迫によつて、骨抜きの法律案にしておる。これを国民に示して、はたして国会は、義務教育費の国庫負担という文化的な日本の大目的に対して忠実にやつていると言えるかどうか、われわれは疑問に思う。  しかして、文部大臣は、かような法律案提出すると、ころの政治力がない。また、日本の文教対策の問題は、教育行政の問題と、今問題になつている教育財政の問題であるが、教育行政の問題においては、教育委員会法等の一部を改正する法律案は閣議の決定した法案であり、参議院においては自由党も賛成した法律案であるが、今またここに文部委員会で、自由党諸君のもやもやによつて、ごしやごしやになつておる。文部大臣は、閣議で決定するときは全部一致した、現在の閣僚の諸君はその通りであるということを言明しておる。それを大臣の政治力で解決しなかつたならば、これこそ大臣が辞表をたたきつけて、国民の前にその誠意を披瀝するのが、文教の大臣としての責任であると思うのであります。(拍手)  われわれは、かような見地におきまして、その内容は諸君たちに講義してあげたいくらいであるけれども、時間がないから、以上四点をもつて、われわれの修正案に賛成、自由党の諸君の原案並びに若林君の修正案に対して反対を表明するものであります。(拍手
  79. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず本案に対する小林信一君外七名提出の修正案につき採決いたします。小林信一君外七名提出の修正案に賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  80. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 起立少数。よつて修正案は否決されました。  次に、本案委員長の報告は修正であります。本案委員長の報告通り決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  81. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案委員報告通り決しました。  明十八日は定刻より特に本会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十四分散会