○田中織之進君 私は、
日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、去る六月一日北京で調印せられました
中日貿易協定を中心といたしまして、現下の貿易政策につきまして若干の
質問をいたさんとするものであります。
まず第一にお伺いいたしたいのは、独立後の経済自立についての具体的な方策であります。講和條約が発効いたしまして、日本が独立したといわれておるのでありますが、一体どこに独立の実態があるかと問いたいのであります。外国軍隊が依然として日本に駐留し、外交、経済政策等あらゆる問題につきまして、占領下と同じようにアメリカの顔色をうかが
つておる
政府の
やり方は、占領下と少しもかわらないとわれわれは考えるのであります。(
拍手)しかも、独立後の現
内閣の抱負経綸につきましては、いまだこの
国会を通じても
国民に明らかにされておりません。さらに独立の実質的な裏づけでありますところの経済自立の問題は、むしろ逆コースを歩んでいるのが現実であると、われわれは見ておるのであります。最近における経済界全般の不振は、従いまして、一時的なものではなく、実に深い根を持
つておるものとわれわれは思うのであります。(
拍手)
アメリカの対日援助がなくな
つたことはとも
かくといたしまして、最近の世界各国の輸入関税障壁と、原料高によるところのわが国の貿易不振は、ま
つたく極点に達しておる感じがあるのであります。
政府が経済自立の萬能薬のように宣伝をいたしました
外資導入は、いつのことやらわからず、東南アジアの開発問題も前途遼遠であり、さらに頼みの綱といたしておりましたところの新特需は、一月以来の推移を見て参りましても、一月三千四百万ドル、二月千七百万ドル、三月千百万ドル、四月八百七十七万ドルと極月減少いたしまして、講和條約が発効いたしました四月二十八日から五月四日までの一週間の契約高はわずかに百六十六万一千ドルという最小の数字を示しておるのであります。
かくのごとき悲観的な材料の累積のもとにおいて、日本の産業は最後のどたんばに来ておるのであります。ことに繊維産業の機械、あるいは車両工業等の機械器具産業におきましては、まさに不振は極点に達しまして、設備転換等を行おうといたしましても、日銀はその資金を出さない。まさに機械器具産業においては、全滅の一歩手前にある現状であります。
私がまず第一に伺いたいのは、かような情勢のもとにおいて、
政府が独立後の経済自立の根本をどこに求めようとしているか、さらには、産業界全般の不振に対しまして、いかなる対策をも
つて臨もうとするかということであります。
第二にお伺いしたい点は、六月一日、改進党の宮腰議員、緑風会の高良議員、わが党の前議員の帆足計君の三君の努力によりまして北京で締結されましたところの
中日貿易協定に対しまして、
政府はいかなる態度をも
つてこれが実現のために努力するかということについて、
政府の所信を問いたいのでございます。澁沢外務次官は、ある新聞に対しまして、この協定は
政府を拘束しないものであるということの談話を発表しております。なるほど、
政府みずから行
つた協定ではありませんから、直接
政府を拘束するものだとはわれわれも考えておりません。しかしながら、この協定によりまして、具体的なとりきめは正式代表を派遣してやるということが規定せられておるのでありまして、またこの協定によりまして、三千万ポンドという中日貿易の道が開かれる礎石が築かれたわけでありまするから、これを実現させるためには、
政府は現下の貿易不振の状況からいたしまして、私は積極的な努力をしなければならないと思うのでありますが、その点、
政府に用意があるかどうかということを伺いたいと思うのであります。(
拍手)
先般、根本前農林大臣が、ビルマ米の輸入交渉のためにビルマへ行かれて成功せられたと聞いておりまするが、この問題につきましても、たまたま根本君よりも前にビルマへ参りましたわが党の勝間田議員の下交渉によりまして、ほぼ話ができて参りましたことに対して、正式に
政府関係から根本前農林大臣がビルマへ参られて、これの仕上をしたということをわれわれ
承知いたしておるのでありまするが、こうした観点に立ちまして、民間人の努力ではありまするけれ
ども、日本の経済に寄與するところの大きなとりきめができた今日の段階におきましては、これを実現させるために、
政府としては全面的な努力を拂うべきであるとわれわれは考えますから、これに対する
政府の
見解を聞かんとするものでございます。(
拍手)
第三の問題は、この中日貿易促進の見地から、バトル法と貿易管理令についてお伺いをいたしたいと思うのであります。対日援助が打切られました今日、わが国はいわゆるバトル法の適用の制約を受けているものではないと、われわれは考えているのであります。しかるに、
政府は、占領中貿易管理令においてこのバトル法で禁止しておる品目より以上の広汎なる中共向けの輸出禁止を行
つているのであります。われわれは、一応占領が解かれた今日の段階におきまして、占領中の政令によ
つて特定の国に対する貿易を禁止するということは非立憲であり、また不当きわまるものであると考えるのであります。
政府に聞くと、この点は今折衝中であると言
つております。もちろんアメリカとであろうと思うのでありますけれ
ども、一体アメリカとの間には、さらに貿易管理令よりも一段と
範囲の拡張された秘密のリストがありまして、一々アメリカ大使館との間に具体的な許可、不許可の問題を折衝しているということが伝えられておるのであります。私は、占領
状態が解けた今日において、貿易の自主性を回復するという
意味において、こうした卑屈な態度はやめてもらいたいと思うのでありまするが、その点に対する岡崎外務大臣の所見を伺いたいのであります。(
拍手)
さらに、岡崎外務大臣は、
参議院で、中共向けの輸出禁止については、米英のいわゆるバトル法の線まで緩和するのではなくて、逆に日本の全面的禁止の線に米英を近づけるのだというような暴言を吐いておるようでありまするが、われわれは、日本の経済自立の見地から中日貿易を考えなければならないという観点から、はたして岡崎外務大臣はこの点について
参議院で
答弁したと同じ
見解を今日もなお持
つておるかどうかということを伺いたいと同時に、百歩譲
つて、バトル法の
範囲まで輸出禁止を行うといたしましても、われわれは、まず貿易管理令によ
つて禁止いたしておりますところの紡績機械、鉄道車両、小型機械、農業用の薬剤、タイプライターあるいは農機具、自転車、計算器、人絹、綿糸布、カリ石灰、石灰窒素、海産物等の輸出はこれを解除すべきだと考えるのであります。この点につきましては、六月一日の
中日貿易協定において、中国側が非常に
希望して来ておる品目であります。さらにこの協定において、われわれが
希望しておるところの大豆を、中国側といたしましては、亜鉛引鉄板とバーターしようということを
希望して来ておるのでありまするが、ジエツト戰闘機すら戰力でないと答える
政府が、ブリキ鉄板を戰力物資だと貿易管理令において規定しておることは、私は逆行もはなはだしいと思うのであります。われわれは、こういう観点からいたしまして、バトル法の線まで中国向けの輸出を緩和するところの
処置を急速にとることを
政府に要求いたしたいのでありますが、
政府はこの点についての準備があるかどうか、これをお伺いいたしたいのでございます。
第四の問題といたしましては、重要物資のストツクの確保の問題であります。わが国の重要物資の海外依存度は、綿花、ゴム、燐鉱石、ボーキサイト、これがいずれも一〇〇%外国に依存しており、羊毛九八%、原油八八%、鉄鉱石八〇%、大豆六二%が海外に依存いたしております。しかも、これを従来はアメリカから、中国より輸入する場合の三倍も四倍も高い価格で輸入しておるところに、今日のわが国の大きな経済不振があると思うのであります。しかも、通産省の
調査によりますと、こうした重要物資のほとんど大部分は、九月一ぱい国内ストツクを確保することがむづかしい状況にある。三月末の契約高を中心といたしましてこれからできまする若干の期待量を合計いたしましても、九月で底をつくものが相当あることを通産省自体が示しておるのでありますが、貿易振興の見地からいたしまして、
通産大臣並びに安本長官は、これらの重要物資の確保のためにいかなる対策をとるかということをお伺いいたしたいのであります。
最後に、私はアメリカの輸入関税引上げの問題についてお伺いをいたしたいと思うのであります。アメリカにおいては、日本から輸出するミシン、これを現行より一〇%引上げ、陶磁器を二五%から五〇%に、捺染絹スカーフを三二・五%から六〇%に、また冷凍まぐろ及びまぐろカン詰の関税の現行より四五%への引上げを、国内産業保護の見地から
決定しておると伝えられるのでございますが、これは今後の対米貿易の上に重大なる
関係を持ちますので、この点については、マーフイー米大使は、おそらくトルーマン大統領はこの関税引上げに対してはサインをしないであろうということを申しておるようであります。われわれは、こうした
希望的観測にたよるわけには行かないと思うのでありますが、
政府は、これらのアメリカを先頭といたしますところの輸入関税障壁の問題に対し、今後どういう
処置を講じて行こうとするものであるか、この点についてお伺いをいたしたいと思うのであります。
要するに、中日貿易の再開の問題は、今や日本の産業界全般の強い要望にな
つており、
政府並びに
與党としても、この点について深甚なる考慮を拂わなければならない段階に来ておると思いますので、この際
政府の明確なる
答弁を煩わすものであります。(
拍手)