○深澤義守君 ただいま上程されました四案に対しまして、
日本共産党を代表して反対の意見を表明せんとするものであります。
日本開発銀行法の一部を
改正する
法律案を中心といたしまして反対
討論をいたします。
日本開発銀行は、昨年四月、
アメリカ帝国主義の強い要求によ
つて、国会の
審議わずかに十日足らずで
法案を通過させて
設立されたのでありますが、わが党は、このときに、開発銀行は米国による
日本産業の軍事的再編成の推進という役割を負わされているものであるということで、強くこれに反対したのであります。このたびの
法案の
改正によ
つて、このことはいよいよ明確にな
つて参
つたのであります。
見返り
資金と一般会計からの支出によ
つて、
資本金を三百億に増額し、さらに
復興金融金庫から承継した
政府出資金八百五十二億二千万円を
資本金に振りかえまして、合計千五百五十二億二千万円という厖大な銀行になるのであります。その上に、適当な時期に見返り
資金の私企業分を承継し、さらに
政府からの借入れと外資の借入れもできることにしたのであります。かくして、
日本開発銀行は、
日本における最大の銀行として、また最も大きな特権を持つた銀行として再出発することにな
つたのでありますが、このことは、
日本経済を
アメリカの兵器工場に再編成するための
長期資金の供給を行う植民地銀行と
なつたとわれわれは言わざるを得ないのであります。(
拍手)これが反対の第一点であります。
第二点は、一体見返り
資金は、終戰直後の大豆かすや、こうりやんや、大豆粉等の
アメリカのありがたい援助物資に対して
国民が安拂つた代金を積み立てたものであります。
国民が終戰時の栄養失調のからだで働いて支拂つたところの金であります。一般会計からの出資は、
国民の血の出るような税金であります。
従つて、この血と涙のにじむ
国民の金によ
つて開発銀行の
資本は成り立つでおります。それが
国民大衆には返されずに、一握りの
日本独占
資本に利用され、
アメリカの
戰争目的に奉仕するのであります。
昭和二十七年一月十六日現在の開発銀行の
資金の貸付の状態を見ますると、石炭
関係が十九億八千三百万円、鉄鋼二十一億八千二百万円、非鉄金属七億四千五百万円、自家発電十二億七千六百万円でありますが、これはいずれも八幡製鉄、神岡鉱業等九大会社の分であります。さらに化学工業が十六億一千三百万円、機械工業六億一千万円、港湾施設一億円、これは三菱、住友の倉庫であります。電源開発に対しまして五十六億、さらに返済
資金として市中銀行の長期貸付の肩がわりでありますが、これを海運に対して二十五億四千八百万円、以上百六十六億円は、まつたく
日本の有数な独占
資本家に対する貸付であります。
平和産業にも貸し出しておると
言つておりますが、繊維工業に二億円、これは高瀬染工場五千万円、
日本レーヨン一億円で、これも斯界の大
資本家であります。農林水産にも出していると
政府は
言つておる。五億一千万円出してあることは間違いないのでありますが、これは米をつくる百姓や、山に働く炭焼や、漁業者に貸したのではなくて、大洋漁業、
日本水産、極洋捕鯨という三つの大独占
資本家に貸しておるのであります。
国民大衆を貧困と重税と
資金難の苦しみに究き落しておいて、
日本経済の再建復興、開発の美名に隠れて、
日本の独占大
資本家を太らせつつ、
日本再軍備と
日本軍国主義の復活の経済的な基礎をつくり、も
つてアメリカのごきげんを伺わんとするのが、この銀行の本質であります。
自由党の諸君の中にも、総裁小林中のおめがねにかなわなければ借りることができないと非難ている者がありますが、中小企業や平和産業では、まつたく
日本開発銀行の対象にはならないのであります。諸君の絶対多数でつくつた開発銀行は、諸君が利用する銀行ではなくて実は諸君がこの銀行に利用されたのだということを、われわれは言わざるを得ないのであります。
第三の反対の点は、
復興金融金庫の
政府出資金八百五十二億余円を無
批判に承継させることでありますが、再びこれは開発銀行をして第二復金的な役割を果させることになるのであります。
復興金融金庫は、昭和電工
事件の大不正に集中的にその性格が現われておるのであります。全体として、もつと深刻にわれわれは検討すべきものがあるのであります。終戰直後、くつ一足二十円の相場のときに、当時の内務省の
調査によりまして、六千億円の旧軍
関係の物資があ
つたのであります。この物資がやみからやみに流れた一方、
国民の血税で
復興金融金庫が創設されて、それが各大財閥に貸し出されているのであります。
例をと
つてみますれば、二十四年三月末の調べでは、三井鉱山が八十八億、三菱鉱業六十四億、北海道炭礦汽船四十四億、井華鉱業二十二億、明治鉱業十八億五千万、宇部興産十三億、東芝十億五千万、九つの電力会社合計九十一億、
日本水産十億三千万、麻生鉱業六億三千万、昭和電工二十六億一千万、こうして各界の大
資本家に貸し付けた五千万円以上の貸付総額は実に七百十八億四千万円であります。しかも、利率は年九分五厘で、期限は十箇年のものが多いのであります。なお現在、七百五十八億円がその貸付残額とな
つておるのであります。その上に、開発銀行からの二重融資を受けておるのであります。麻生鉱業に例をとれば、二十四年三月末の貸付が六億三千万円、復金の解散のときに、二十七年一月十六日現在で、なお三億五千一百万円残額があります。それにもかかわらず、開発銀行からさらに一億三千万円を貸し付けているのであります。
戰災によ
つて打撃を受けた
日本の財閥、大
資本は、前に言つた、当時六千億もの厖大な物資の運用と、この復金の特権的な金融によ
つて、何らの恐慌、倒産も味わうことなく、今日大きく太
つておるのであります。
国民の困苦欠乏をよそに、また、さんたんたる
戰争の犠牲をしり目に、彼ら財閥、独占
資本は、まさに完全に復活したのであります。このために、
復興金融金庫の役割はまことに大きなものがあ
つたのであります。当時と今日とでは、貨幣価値は十数倍低下しておるのであります。
従つて、われわれは、復金の
貸付金を繰上げ返済させてこれを
資金に苦しむところの中小企業や農林漁業、平和産業にまわすべきであるということを主張するのであります。(
拍手)
第四の反対点は、
講和の発効によ
つて、占領中の
アメリカの援助
資金約七千億余円が
債務とな
つて、その返済の方針がまだ確定しておらない。池田
大蔵大臣は、見返り
資金は
日本政府の独自の方針によ
つて運用すると明言したが、返済の方針がきまらない援助
資金に見合うところの見返り
資金に、
国民の目に見えないひもがついておることは、想像にかたくないのであります。この見返り
資金の私企業分を開発銀行に承継する今度の
改正は、開発銀行に
アメリカの非常に強いところのワイヤー・ロープを結びつけて、植民地銀行としての役割を果させることになることは必然であります。
自分の国の完全な
独立を願い、悲惨な
戰争に反対して平和な国を再建したい念願は、
日本人のすべてが、観念として、だれ一人として考えない者はないのであります。ところが、経営や事業が、兵器や軍需品をつくらねば金融がつかない、金繰りができないとすれば、観念や意思に反して、兵器や軍需品の発注を希望し、軍備の拡張を主張することになるのであります。経済が軍事的に再編成され始めますると、坂道にころがされた車のごとく、加速度的に再軍備
戰争挑発にまで発展するところの危険があるのであります。
日本開発銀行の果す役割は、この
戰争の破滅のものをつくるものであるということを指摘いたしまして、われわれは断じてこの銀行法の一部
改正案に対して反対するものであります。
さらに
貸付信託法案は、一般産業投資家の便益に供するという偽装をも
つて、厖大なる
電源開発資金をかき集めるところの
政府の金融政策の一環であります。善良なる
国民大衆の貯蓄によ
つてアメリカの
戰争準備に投資するというのがこの
法案の
内容でありまして、わが党はこれに対して反対いたします。
なお
地方公共団体職員の
給與改善のための
地方公共団体に対する国の
貸付金に係る
債務の
免除等に関する
法律案は、一見まことにけつこうではありまするが、その裏に、昭和二十七年度の平衡交付金の算定にあた
つて、これを免除されたところで、調整差引を平衡交付金の中でされるという危険があるのでありまして、思わざる平衡交付金の減額と、いうものが行われる公共団体が出て来るのであります。こういうような
法案の
内容に対しましては、一見非常にけつこうな
法案でありまするが、われわれは
賛成できないのあります。
以上、共産党を代表して反対
討論を行つた次第であります。(
拍手)