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高田富之君 私は、ただいま上程されました四
法律案につきまして、
日本共産党を代表しく、
反対の
理由をそれぞれきわめて簡略に申し述べたいと思うのであります。
まず第一に、
関税法の一部を
改正する
法律案でありますが、これは先般本院を通過いたしました
行政協定締結に伴いまする
関税法の
特殊法案と関連いたしまして、看過することのできない
重要性を持
つておると考えるのであります。すなわち、今回
駐留軍並びにこれに関連する
軍属、
家族、
請負業者等につきまして、大幅に
関税上の
特権を付與したのであります。その結果、
占領下とほとんどかわりのない
税関行政上の困難な問題が今後いろいろ生起することが予想されるのであります。
密貿易でありますとか、いろいろな
やみ取引でありますとか、これらの問題が相当困難であるにもかかわらず、今回のこの
関税法の
改正によりますと、むしろ
税関手続をきわめて簡略化するということを一つの
目的といたしておりますと同時に、この
保税地域を特に拡大いたしまして、従来の
保税倉庫や
保税工場のほかに、
指定保税地域あるいは
特許上屋というようなものを新たに設けまして、相当広汎に
保税地域を認め、また
税関手続に対する
規則の
違反等につきましても、苛酷な
罰則を
適用しないように、これを緩和するようにいたしておるのであります。
こういうふうに、むしろ一層この際
嚴格にしなければならない
税関行政を緩和し、この
保税地域を拡大するということになりますれば、
占領下におきまして、ほとんど
わが国の
税関行政が、その手の届かない
状態に置かれまして混乱しておりました
状態を——そのまま今後にこの実績を継続するという結果になることは明らかであります。ればやはり
税関行政上の
自主性の喪失しておる
状態を明らかに示すものでありまして、
関税自主権の事実上の放棄と相伴いまして、われわれのとうてい承服すること切できない
法案であるのであります。
第二は、
補助貨幣損傷等取締法臨時特例案であります。これは、はなはだ奇怪な
法案でございまして、
参議院の
議員提出にな
つておりますが、二円
未満の
貨幣の
鑄つぶし等を自由にやらせるというのであります。現在までに一円
未満の
貨幣で発行されておりまする総額は、
名目にいたしまして十億円、これを時価に見積りますと、
摩滅等は度外視いたしまして、五十七億円であるという
政府の
説明であります。従いまして、
摩滅等を除外いたしましても、これを鋳つぶしますれば、
計算土は四十七億円の利益が上るということになるわけであります。
一体、こういうことをいたしましても、積極的には何ら
貨幣制度の上におきまして
意味がないのみならず、むしろ
貨幣制度の一角をこれによ
つてくずすようなものでありまして、何ら
意味がない。要するに、これによ
つて鑄つぶすものがどういう形になるかは別といたしまして、ともかくも不当な利得をする
可能性が生れて来る。これを鑄つぶしまして、また彈丸等に使うということになるのでありましようが、こういうような奇怪な
法案が
議員提出で出ましたということにつきまして、われわれは、これにはまことに
同意いたしかねるものがあるのであります。
それから第三番目は、
特別調達資金設置令の一部
改正であります。これはもう申し上げるまでもなくわれわれは、
講和條約の成立によりまして、従来
占領軍のためにや
つてお
つた労務の提供、あるいは
物資の
調達、かような業務は一切いらなくなることを期待してお
つたのでありましたが、こういうふうな形でこれを
駐留軍にも
適用心て行ということにつきましては、もと二より根本的に
反対せざるを得ないのであります。この問題につきましては、直接にすべての
物資の
調達をやるのが原則であるという
行政協定の
締結に伴いまして、現在業界からも、また
労働階級の間からも非常な
反対運動が起
つておる。しかるに、
政府はこれに対しまして何らの誠意ある努力をすることなく、結局原則的に直接
調達ということが認められたという現状にありますので、おそらくこれは、
占領下におけるよりもさらにはなはだしい
調達関係をめぐりましでの
経済の混乱、あるいは最も不利な、みじめな
わが国産業の
アメリカ軍需産業に対する
下請工場化ということが行われることになるのでありまして、かかる
調達方法の全体につきまして、われわれは根本的に
反対せざるを得ないのであります。
それから
最後の、
たばこ專売法等の
臨時特例に関する、
法律案でありますが、これは先般通過い、たしました
関税、
物品税等の
特例法案と関連いたしまして、特に
国民の最も日常の
嗜好品であります
関係上、かようなものにまで治外法権的な
特権を與えるということは、
国民感情の上から行きましても非常に重大なものであ
つて、きわめて、卑屈な観念を與えるということを考えなければなりません。
元来、
わが国のダバコの
製造並びに販売につきましては、
專売法によりまして、
嚴格にこれを管理統制しております。これに対する
違反につきましては、
葉タバコの
製造から
取引等に至りまするまで、三年以下の懲役、三十万再以下の罰金というような嚴重な
罰則をも
つて管理いたしておるのでありまして、そういう中に、今後この
駐留軍並びにその
家族、
軍属並びにその
家族、さらにはまた
アメリカにおいて契約した
請負業者等に至るまで、広汎な
タバコの
輸入または相互間における
売買等に
特権を與えまして、
専売公社の許可なしに、これらの行動が一切自由にやれるという
特権を與えましたことは、何としても不必要に大きな
特権を與えるものである。このようなものは、完全に
わが国の
專売公社の
統制下に置いて、いささかもさしつかえのないものであります。またやらなければならぬもめでありますが、こういろ広汎な
特権を與えておる。
なおこの
條文を見ましても、向うから
輸入する
タバコにつきましては、事実上制限がないにひとしいおうな
規定にな
つておるのであります。権限ある官憲の証明さえあれば、事実上無制限に入れられるという
規定にな
つておるのでありまして、このようなことになりますれば、将来入
つて来る
外国の
タバコが安くなり、相当数量が入
つて来るということになりまずれば、いよいよますますこれが
やみに流れる
可能性は増大するわけであります。しかるに、これが
やみで
日本人に売られた場合には
罰則の
適用がある。ところが、この
適用につきましては、
裁判管轄権が
わが国にはありませんので、事実上処罰を受けるのは
日本人だけということになるのはきわめて明らかであります。
最近におきましては、
やみの
外国タバコを不当に所持しでおつだというようなかどで検挙されている者も年々増大いたしまして、二十六年には被
検挙者が二万人を越えているという
政府の
説明でありますが、いかに
検挙者を多くいたしましても、実際の
やみ流れはそれ以上にますます多くな
つて行く
可能性が、今度この
法律によ
つて生れて来るわけであります。われわれは、かくのごとき、きわめて卑屈な、かつ、へんぱなとりきめに対しましては、またこれに基くこの
法案に対しましては、断固として
反対せざるを得ないのであります。
以上、
簡單でありますが、四
法案につきましてそれぞれ
反対の
理由を申し述べだ次第であります。(
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