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1952-04-03 第13回国会 衆議院 本会議 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月三日(木曜日)  議事日程 第二十八号     午後一時開議  第一 十勝沖地震による漁業災害復旧資金融通に関する特別措置法案松田鐵藏君外十一名提出)  第二 警察予備隊令の一部を改正する等の法律案内閣提出)  第三 教職員除去就職禁止等に関する制令を廃止する法律案内閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  日程第一 十勝沖地震による漁業災害復旧資金融通に関する特別措置法松田鐵藏君外十一名提出)  日程第二 警察予備隊令の一部を改正する等の法律案内閣提出)  日程第三 教職員除去就職禁止等に関する政令を廃止する法律案内閣提出)  急傾斜地帶農業振興臨時措置法案坂本實君外四十六名提出)  ユネスコ活動に関する法律案内閣提出)  地方財政法の一部を改正する法律案内閣提出)  戰傷病者戰没者遺族等援護法案内閣提出)     午後三時三十八分開議
  2. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 日程第一、十勝沖地震による漁業災害復旧資金融通に関する特別措置法案議題といたします。委員長報告を求めます。水産委員松田鐵藏君。     〔松田鐵藏登壇
  4. 松田鐵藏

    松田鐵藏君 ただいま議題となりました、十勝沖地震による漁業災害復旧資金融通に関する特別措置法案につきまして、提案理由と、その水産委員会における審議経過及び結果を御報告申し上げます。  去る三月四日、突如として北海道及び東北地方を襲うた十勝沖地震は、その震源地襟裳岬東方七十キロの海底であつた関係から、北海道としては、かつてなかつた大地震であり、この地震津波を惹起し、北海道釧路地方及び東北地方沿岸各地においては、三メートルに及ぶ津波が数度にわたつて来襲し、なおまた北海道においては、時期的に流氷を伴つて来たため、その威力を倍加し、水産関係災害は特に甚大なるものがあつたのであります。しかも、水産業にとつては、雪解けとともに本格的な漁期を控えて、その出漁準備を整えていたやさき、かかる災害に見舞われたのでありますから、これが復旧対策については、まことに緊急を要する次第であります。そこで、水産委員会としては、委員を現地に派遣して調査をするとともに、これが対策について調査を進め、とりあえず、さきのルース台風による災害復旧に関する特別措置法と同様の法的措置をとつて漁民生活の安定と、国民食糧の確保に資したいと存ずる次第であります。すなわち、漁業者または水産業協同組合が所有する漁船、漁具、養殖施設あるいは漁業共同利用施設について受けた損害の復旧を容易にするため、政府は、農林中央金庫等金融機関がこれが復旧のためにした融資については、三割の損失補償及び四分の利子補給を行うことで、融資限度を六億円といたした次第であります。  本案は、三月三十一日、私外十一名の水産委員から提出され、同日水産委員会に付託され、四月一日の委員会において、提案者を代表して私より提案理由説明があり、引続き審議に入りましたところ、別に質疑及び討論もなく、ただちに採決いたしましたところ、全会一致をもつて可決すべきものと決定いたした次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  5. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  7. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 日程第二、警察予備隊令の一部を改正する等の法律案議題といたします。委員長報告を求めます。内閣委員長八木一郎君。     〔八木一郎登壇
  8. 八木一郎

    八木一郎君 ただいま議題となりました警察予備隊令の一部を改正する等の法律案について内閣委員会の審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法案は、平和條約が発効し、わが国独立した後におきましては、治安の問題はいよいよ重大を加えることが予想されますので、警察予備隊機構等を整備するとともに、警察予備隊令は当分の間法律としての効力を存続せしめようとするものであります。  その内容を申し上げますと、まず第一に定員の増加でありまして、警察予備隊は現在警察官七万五千人、警察官以外の職員百人をもつて構成されておりますが、独立後のわが国治安情勢に対処するため、警察官三万五千人及び警察官以外の職員九百七十六人を増員しようとするものであります。  次は機構改正でありまして、警察予備隊建設業務施設管理等事務の激増にかんがみ、本部工務局を新設するとともに、建設工事実施等に当らせるため、警察予備隊建設部を附置しようとするものであります。  次は警察官募集についてでありますが、その趣旨の徹底をはかり、募集事務の円滑を期するため、その事務の一部を都道府県知事及び市町村長に委任し得ることとし、また国家地方警察及び自治体警察に対しても、募集事務の一部について協力を求め得ることとしたのであります。  この法律は、平和條約の最初効力発生の日から施行することになつております。  本法案は、三月二十六日、本委員会に付託され、ただちに政府説明を聞き、質疑を行い、愼重審議を重ねたのでありますが、委員会質疑応答で明らかにされた基本的な重要問題だと思われる三点を指摘し、詳細は速記録に讓りたいと思います。  まず第一点は、三万五千人の増員の必要があるかという点でありますが、政府は、講和の発効によつてわが国占領統治から脱する場合、すなわち占領軍の力が直接間接治安に資していた事実がなくなることによる警察力増強で、この程度の増員は、責任ある政府措置としてきわめて必要であることを明らかにいたしたのであります。  第二点は、警察予備隊基本的性格についてであります。予備隊軍隊ではないか、名を自衛力漸増にかりて、日陰者の軍隊をつくるのではないかという質問に対し、政府の見解は、本改正をもつてその性格をかえてもいないし、またこれをかえる意思もない、決して警察予備隊令一條目的範囲を逸脱するものではないとのことでありました。  第三点は、隊員募集強制割当行つて、再び軍国主義に復帰するのではないかという点であります。これに対し、政府は、募集の宣伝、願書の受理等事務知事市町村長に委任するにすぎないのであつて強制割当をするようなことは絶対にあり得ないことであり、また隊員の退職後、応召義務を課するごときことは全然考えていないことを明らかにいたしました。  かくて、四月一日討論に入り、改進党平川委員日本社会党鈴木委員及び日本共産党今野委員より、それぞれ党を代表して反対意見が述べられ、自由党を代表して青木委員より賛成意見の開陳があり、採決の結果、多数をもつて原案の通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  9. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 討論の通告があります。順次これを許します。平川篤雄君。     〔平川篤雄登壇
  10. 平川篤雄

    平川篤雄君 私は、改進党を代表してただいま上程になりました予備隊増員を非とする理由を述べんとするものでございます。  その第一の理由は、かかる予備隊増強憲法第九條の範囲を越え、従つてこれが改正なくしては断行すべからざるものであると信ずるからであります。前国会以来しばしば繰返された論争でございますから、ここに再びむし返す煩いは避けようと思います。ただ、新たなる問題として提起せられましたのは、改正中心点というべき方面隊性格であります。これは北海道東北の二管区隊をより強化する機構でありまして、独立指揮権を有しておるのであります。この点につきまして、なぜわが国の北辺のみを防備する必要があるか、重点を置く必要があるかという私の質問に対しまして、大橋国務大臣は、他の二、三の理由とともに、地勢北海道は孤立する危險があると述べておられるのであります。北海道が孤立するということは、外敵侵略を受けた場合以外には原因を考えることはできないのであります。さすれば、大橋国務大臣の定義によりますと、防衛目的とするのは軍隊であると言つておられるのであるから、当然方面隊は、外敵侵略を予想しておるところの防衛軍としての性格を持つものであると断ぜざるを得ないのであります。かかる点は、憲法第九條背反疑いがきわめて濃厚であるというべきであります。  次に、今回の増員は、安全保障條約において米国より期待され、さらに吉田総理がおそらく黙約を與えておられると思われるところの自衛力漸増の第一階梯でありまして、さらにこの秋以降、保安隊に飛躍的な切りかえが行われる前程と考えられるものであります。しかるに、この増員計画は、主体性をまつたく喪失しておるというべきであります。その第一は、安全保障諸費五百六十億円の大部分は、予備隊を含むところの自衛力漸増に備えたものであるにもかかわらず、これが内容はいまだに明らかにせられておらない。その第二は、行政協定第二十四條は、緊急事態における日米共同措置を規定しておるのでありますが、その指揮権所在等が明らかにされていないのであります。運営上の自主性がどこにあるか、これも判明していないのであります。その第三は、明年度以降の漸増計画を、政府は故意に国民の耳目から隠匿しておるのでなければ、全然これは持つていないというべきであります。  以上の二点は、すでにわれわれが予算案には反対行政協定に対しては国会の承認を求むべしという決議案を上程して対抗いたしたのでありますが、政府及び與党諸君は、数を頼んで前者を可決し、後者を否決して、愼重な審議を拒否する態度に出たのでありまして、独立最初予算審議一大悪例を残したものというべきであります。もとより、われわれは、内乱と侵略危險が国の内外にきざしつつあるということを重大視していないのではないのであります。従つて、われわれは、自衛力漸増に原則的に反対するものではない。しかして、日本自身の経済的な制約を考慮しつつ、自由国家群との間に自由にして平等な共同防衛態勢を整えることによつて、比較的小規模な、かつ低廉な自衛力限界を発見することは容易であるとわれわれは信ずるのであります。ことに、地勢上多くの陸上戰力を必要としないで、むしろ海空防衛力を重視すべきであると、われわれは考えるものであります。  しかるに、今回の増員は、海上保安庁の増員との均衡において、われわれの納得しがたいものがあるのであります。かかる政策は、駐留米軍の減少を阻害するものではないだろうか。また年々多額の負担を国民にしいながら、日本みずからの自衛力はいつまでも劣弱なものにとどめおいて、独立の実を上げ得ないのではないかと考えるのであります。これは、むしろ国民の尊い税金を浪費するものというべきである。  政府は、しばしば独立国として当然将来再軍備を行うという言明をなしつつ、同時に、現状においてはジエツト機や原爆を持たざる限り軍備とは言えないということを繰返して申しておる。これによつて明らかなるごとく、自由党政府が、わが国の再軍備をかかる厖大な規模において考えておるとすれば、われわれは絶対に承服しがたいのであります。すなわち、そのような厖大軍備は、国の経済、国民生活を破壊する以外の何ものでもない。さらに、さような攻撃的、侵略的戦力は絶対に保持したくない、国際紛争武力をもつて解決したくない、かかる国民の痛切な悲願を踏みにじるものであります。  今や、国民は、憲法、條約に対しまして、政府の解釈が常に変化しておることを知つておる。その上、自衛力増強限界がまつたく明らかにされないことに、救いがたい不安を覚えておるのであります。かくして、反米主義者が不必要に国民反米感情をあおり立てておるが、この際政府は、みずからの態度の中に原因が存することを反省すべきであります。人類の殺戮を憎悪するヒユーマニズムに徹しまして、かつはわが国土を一歩たりとも外敵に蹂躙されず、同胞の流血を見るに忍びないという国民の盛り上る烈々たる気魂の上に真の自衛力というものは築かれるべきである。しかるに、ただいまの政府のやつておるような、憲法違反疑惑に満ち、主体性を欠いた無計画な態度をもつてしては、これはむしろ逆効果というべきであります。(拍手)  以上述べた次第によりまして、国の中外に存する疑惑政府みずから解消せざる限り、今回の改正は、むしろ、しばらく差控えるのが至当であるとわれわれは確信いたしますがゆえに、あえてわが改進党は本案反対せざるを得ないのであります。(拍手
  11. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 鍛冶良作君。     〔鍛冶良作登壇
  12. 鍛冶良作

    鍛冶良作君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となつております警察予備隊令の一部を改正する等の法律案について、委員長報告賛成の意を表するものであります。  この法律案の骨子は、独立後のわが国治安情勢に対処するため、警察予備隊警察官三万五千人と、警察官以外の職員九百七十六人を増員せんとするものでありまして、その増員の趣意は、あくまでも警察予備隊令一條に明定されておりまする、「わが国の平和と秩序を維持し、公共福祉を保障するのに必要な限度内」に限られておるものでありますから、今あらためて論議を闘わす余地のないものと信ずるものであります。(拍手)  委員会等における野党各派の御議論を拜聴いたしましても、ただいま改進党代表の御議論を承りましても、共産党と特殊な立場に立つ人々を除いては、その他の諸君もともに、現在国内治安を維持するためには警察力の強化が必要であることを認めておられるのであります。それにもかかわらず本案反対せられる理由を探究いたしまするに、改進党代表の御意見によれば、こんなものでは自主的に自衛できるものでない、のみならず、行政協定において緊急事態が起きたら協議するということをきめて、指揮権所在を不明にしているので、自主的な防衛力を認めがたいという点、第二には、憲法違反疑いがあるという点、さらに防衛分担金安全保障諸費のごとき支出をやめて、この金をもつて自主的自衛力漸増すべきであるという点、さらに第四は、政府予備隊に対する態度が不明確であるために、国民を混乱と疑惑の念に惑わしめているという諸点にあるようであります。  さらに社会党代表の御意見によりますると、第一は、警察予備隊憲法違反である、第二は、領土的侵略奪取危險がない限り、みだりにかようなものは持つべきでない、しかして共産主義陣営資本主義陣営との戰争は起るものとは思わない、従つて予備隊は不要である、さらに、このような予備隊のごときもので、事実上外敵防衛できるものでない、また半呑半吐防衛力はかえつて共産革命を促進するものである、なお募集方法疑義があるという点をあげておられるようであります。  そこで、この御議論のうち、両者の一致している、自主的自衛力としては不足であるという点については、われわれも同感であります。しかし、今日の日本立場上、さらに日本財政力からいたしまして、これ以上のものを持てということは無理であります。これはまことに遺憾なことではありまするが、実情やむを得ないものといわなければなりません。しからばといつて、今改進党の言われるがごとき、これでは不足だから、もつと強力なものを持てと言われても、どのようにして持つのでありますか。御議論によれば、防衛分担金安全保障諸費をやめて、これをもつて漸次自主的の防衛力漸増せよと言つておられるのであります。しかし、これくらいの予算で、わが国領土安全を保障し得る実力を何年たつたら持てると言われるのでありましようか。アメリカに頼らないで、日本みずからが、おいおいに確立して行けという御議論でありまするが、かようなことを確立されぬ前に、わが日本が他国に蹂躙せられたらどういたします。改進党みずから、現在すでに不安が現われておると認めておりながら、このような、のんきな御議論をなさるということは、まことに不可解千万であると申さなければなりません。(拍手)  次に、社会党の御議論によりますると、どうせみずから防衛できないのであれば、集団安全保障に頼ることにして、一切の手出しをせぬがまいという御議論のようであります。ところが、この御議論は、現に領土的侵略奪取危險がない、また共産資本陣営戰争は起らないということを前提としておるものであります。戰争の起る起らないは別といたしましても、領土侵略奪取危險なしとは、どこを見て言われるのでありましよう。(拍手朝鮮侵略という一事を見ましても、北方のおおかみが日本に向つてきばをむいておることは、一目瞭然であります(拍手)これをしも侵略危險なしとは、まことに合点の行かぬ御議論と申さなければなりません。     〔発言する者多し〕
  13. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御静粛に願います。
  14. 鍛冶良作

    鍛冶良作君(続) それとも、力のない者は、手出しをしたからとて、とうていかなうものではないから、手をこまねいて、なすがままに見ておれという御議論でございましようか。われわれは、外敵一たび襲い来らば、われらの及ぶ限りの力をもつて、寸土といえどもこれを侵させない。戰争をやる力はないにいたしましても、これは安全保障軍によつて、これを粉砕してもらうほかはないが、安全保障軍の出て来るまでの防衛、ことに外敵わが国侵略して来たときに起る国内治安の紊乱を未然に防衛する力だけは、何としても保持しなければならぬと確信いたすものであります。  また、半呑半吐の力だからといつて、これをなくしたらどうでありましよう。すでに共産党暴力革命遂行の指令を出しておる。着々これに着手しております。あの「球根栽培法」による中核自衛隊結成方法武器彈薬奪略方法並びにパルチザン攻撃方法等を指令し、これによつて各地にテロ及び暴動が起つている事実は、これを何と見ているのでありますか、これこそ、共産陣営にわが祖国を無條件に呈上する結果を招来するものと断じなければなりません。(拍手)  次に、警察予備隊憲法違反であるとの点であります。社会党鈴木義男君の議論を拜見いたしますと、外敵に対する防衛力であるならば、軍隊を持たないという憲法に違反するものであると断じておられます。しかし、警察予備隊令一條にいうところの「わが国の平和と秩序を維持し、公共福祉を保障するのに必要な限度内」のものであつたならば、断じて憲法に違反するものではありません。ことに憲法第九條には、「国権発動たる戰争と、武力による威嚇又は武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とあります。言いかえれば、国際紛争を解決する手段として、国権発動たる戰争と、武力による威嚇、または武力行使は、永久にこれを放棄すると規定したものであります。さらに同條第二項は、「前項の目的を達するため、」すなわち国際紛争解決目的を達するための戰力はこれを保持しないことを規定しているものでありまして、外敵侵入の際にも、一切の力を否定したものではないのであります。戰争をする力はありません。しかしながら、自分の力の限り敵の侵入を防ぐこと並びにこれによつて国内治安を維持することは、理の当然のことであつて憲法の禁止するところではありません。なお、これによつて事実上外敵を押えることができないではないかという議論になれば、そのためにこそ安全保障條約があるのでありまして、これによつてわが国領土を保全してもらうほかに道のないのが現状であります。  次に、警察予備隊に対する政府態度が不明確であるという議論でありますが、前にも述べました通り、警察予備隊警察予備隊令一條趣旨に基くものであるとすれば、何の疑念もないはずであります。しかるに、予備隊戰争をするためのものであるとかいう独断論前提としてこれを議論し、またはいろいろの考え方をもつてやられるがゆえに疑惑を生ずるものでありまして、国内治安を主たる目的とするものであるという前提に立つならば、何らの疑惑もないものでございます。(拍手)  なお、新たに定められたる募集方法疑義があるという議論もありまするが、募集に関して、予備隊本部で手不足と思われる点を都道府県知事市町村または警察等に手伝わせる、あるいは協力を求めるがらといつて、何のふしぎもあるわけはありません。これは、すすきの穗を見て幽霊と驚くたぐいか、または反対せんがための反対論であると断ぜざるを得ないものであります。  以上いずれの点より見ましても、本案は違法または不当のものではありません。現下の情勢上必要欠くべからざるものでありまするがゆえに、委員長報告賛成の意を表する次第であります。(拍手
  15. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 門司亮君。     〔門司亮登壇
  16. 門司亮

    門司亮君 私は、ただいま上程されておりまする警察予備隊令の一部を改正する等の法律案に対しまして、日本社会党を代表いたしまして反対意思表示をするものであります。  ただいま自由党鍛冶君の賛成の御意見を拜承いたしておりますると、警察予備隊増強は、目下のわが国情勢から見てやむを得ざるものであるかのごとき言辞を弄せられておるのであります。同時に、これの理由といたしまして、外敵あるいは北方における侵略者があるかのごとき言辞を弄せられておりまするが、そもそも警察予備隊令の第一條によれば、警察予備隊国家地方警察並びに自治体警察警察力を補うものであることがその目的であるということは明確になつておるところであります。従いまして、この警察予備隊は、あくまでも警察組織でなければならない。警察組織は、国内治安を維持することが目的であつて、もし外敵その他にこれを備えるとするならば、明らかなる軍隊であると申し上げても決して過言ではないのであります。(拍手)私どもは、この議論を拜聽いたしておりまして、自由党諸君が、どんなにこれを申されましても、明らかなる再軍備への移行であるということは申し上げるまでもないのであります。  なお、警察予備隊増強を必要とするような、国内に万一不穏の行動が起り得る可能性があるとするならば、まず政治家として反省しなければならないのは、国民の生活不安が頂点に達したときが国内の騒動を起す原因であり時期であるということであります。(拍手)われわれは、少くとも国内治安を維持する最大の要素は国民生活の安定にあり、それを基盤に置かなければならないと思うのであります。この基盤を忘れて、いたずらに国民を刺激し、対外的に疑惑を持たれるようなこの警察予備隊三万六千の増強に対しましては、根本的に反対意思を表明するものであります。  次に、本法案内容一つになつておりまする、市町村長に対する、いわゆる行政の執行に対してその権限を委託することによつて、これが非常に大きな疑惑を持つ一つの問題であるということであります。すなわち、この問題は、おそらく政府の意図は、地方自治法の百五十條に規定いたしておりまする、普通地方公共団体の長が国の機関として処理する行政事務につきましては、都道府県においては主務大臣市町村においては都道府県知事及び主務大臣指揮監督を受けるという、この條項をたてにとつて挿入されたものであると私は考えるのであります。問題はここに存しておりまして、自治法の百五十條には、国の機関として処理する行政事務とあります。すなわち、当然市町村長権限に委讓された内部において処理し得るものが、初めてこうした條件に適合するのであります。しかるに、警察予備隊募集は、何ら地方自治体の長がこれを処理し得るものではございません。従つて、この制度は、明らかに地方公共団体の長、いわゆる市町村長並びに都道府県知事選抜徴兵義務を無理に押しつけるものであると断定いたしましても、決して私は過言でないと思うのであります。われわれは、かくのごとき徴兵制度を再び日本にしこうとする前提條件であるがごとき危險性を持つておりまする法案内容に対しましても、反対意思を強く表明しなければならないのであります。  次に問題になりまするのは、かくして募集されて参りましたものが、先ほどから申し上げておりまするように、戰力でないとは、たれも言えないということである。諧謔的に申し上げまするならば、吉田総理大臣は、おたまじやくしは、かえるではない、何に化けるかわからぬと言つておりまするが、おたまじやくしが、かつて、いもりに化けた例はございますまい。われわれは、この戰力への移行としての第一歩が、この選抜徴兵制度の面に強く現われて来ておるということを申し上げても、決して過言ではないと思うのであります。  さらにその次に申し上げておきたいと思いますることは、警察予備隊令を当分の間法律として存置するというこの問題であります。警察予備隊令予備隊令であつて、決して法律ではなかつたということである。しかるに、その予備隊令をそのまま存続しておいて、そうして予備隊令の内容だけは法律によつてかえようとするこの意図であります。もし自由党が、真にこの警察予備隊令法律として必要とするならば、なぜこの予備隊令を堂々と国会に出して、予備隊令自身に対して、公然と討議を行わないかということであります。(拍手)かくのごとき法律の運営におきましても、多大な疑義と欺瞞を持つておりますこの法案に対しましては、私どもは反対をせざるを得ないのであります。  これを要約して申し上げまするならば、今軍隊を持つということが、先ほどから議論されておりまするように、憲法違反であるということが明確になつておりますることのために、この警察予備隊令をことさらに法律にして国会において議論するということを避けて、そうして軍隊組織を既成事実としてつくり上げようとする自由党の、あるいは政府の意図であるということを申し上げてもさしつかえはないかと私は思うのであります。われわれは、こうした意味におきまして、やみの軍隊の創設のごとき本法案に対しましては、社会党といたしましては断固として反対意思表示をするものであります。(拍手
  17. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 今野武雄君。     〔今野武雄君登壇
  18. 今野武雄

    ○今野武雄君 私は、日本共産党を代表いたしまして、この法案に断固反対の意を表明するものであります。  一体、迫撃砲や、バズーカ砲を持つており、そうして戰車訓練を行い、また山の木をどんどん痛めてしまうような、はげしい演習を行つておるこの警察予備隊軍隊でないというようなことは、世界中どこへ行つても通じません。現に、最近北海道警察予備隊を視察いたしましたAP特派員の報ずるところによつても、予備隊員は、初めのうちは自分たちは警察官のつもりで入つて来たが、現在では軍隊の人間だという自覚をはつきり持つておるということを、異口同音に語つておるのであります。またアメリカの政界あるいは一般の人々の間で論ぜられておるところも、全部これが軍隊であるという上に立つて論ぜられておるのであります。このような明白な事実を否定して、これが軍隊でないと言い張る自由党、吉田内閣は、まさに日本人のみならず、世界中の人を瞞着するものでありまして、実に横着な、そしてばかばかしいものである。こういうことは、いやしくも独立した判断力を持つ者にはできないのであつて、奴隷のみがあえてよくすることのできるものであるということができるわけであります。  現に、この警察予備隊は、その出発点からいたしまして、アメリカの極東戰略作戦行動の申し子であつたのであります。と申しますのは、つまりこの予備隊ができたときは、朝鮮戰争のしよつぱなにアメリカが敗走して、いよいよこれはいかぬということになつて、その七月に、当時の最高司令官マツカーサー元帥が、急遽日本政府に対して警察予備隊をつくれ、こういうことを命じたわけであります。  しかしながら、この朝鮮戦争というものは一体何であるか。これは、政府あるいは自由党諸君は、口を開けば、これこそソ連の侵略の証拠であるというようなことを言うけれども、あの当時の新聞をよく見た者は、だれもそんな言葉にはごまかされないわけです。あの当時、ごらんなさい、あの朝鮮に統一の機運がぐつと強くなつて来た。その機会に、北鮮の方から韓国に対して、三名の外交官を派遣した。その外交官を、李承晩は理不盡にも捕えて、そして、これを殺して、道ばたに埋めてしまつた。このような事実に対して、憤激して立たないものが一体あるであろうか。しかも、そればかりじやない。すでに一年前から、李承晩はアメリカに対して武器を要求し、北伐を呼号しておつたわけです。そうして、あの朝鮮戰争が始まる前には、アメリカのダレス氏が前線にでかけて、暫壕などを見まわつて、これならやれるということを大つぴらに言つておるじやありませんか。これはまさにアメリカの——政策の最も露骨な現われであります。その手助けをさせるためにつまり警察予備隊ができた。  この性格は、今日の警察予備隊の内部の組織においてもはつきりしております。すなわち、訓練はすべてアメリカの軍事顧問団によつて行われておる。そればかりではなくして、この間も大橋国務大臣がはつきりと証言したところによれば、武器は全部アメリカから借り、決して日本独自には武器を持つことはできない。全部アメリカから借りて、それをアメリカの将校が保管しておつて演習をするときには、一々かぎをアメリカの将校があけてその武器を渡し、演習が済めば、またその武器を納めて、アメリカの将校がまたかぎをかける。このような、まつたく自主性のない軍隊日本軍隊でないことは明らかであります。これはまさにアメリカの——である。しかも、われわれ国民は、この売国吉田内閣のために、そのような軍隊に対して金を拂わされておる。こんなばかげたことが一体あるであろうか。他にどこの国にも類例のないことであり、歴史にも類例のないことであります。  次に、このような軍隊が何のために今度増強されるか、この点も、われわれとしては見のがすことのできないものであります。今度の行政協定の二十四條にもありますように、日本の安全に対して危急な非常事態が生じた場合には両者で話合いをするといわれておりますが、一体日本の安全にとつて危急の事態とは、いかなる事態であるか。現に極東空軍は、あの横田その他から、毎日々々朝鮮爆撃に出かけている。そうしてまた、朝鮮に細菌をばらまいている。あの極東空軍は、現に日本防衛空軍と名前をかえられておる。すなわち、あの朝鮮の戰争こそ、日本防衛のための戦争であるといわれておるのです。このために両者で話し合う。その話合いによつては、この警察予備隊を朝鮮に使うことができる。そうして、現に朝鮮で使つておるという幾多の確証があげられておるのであります。それゆえに、この軍隊は決して日本国民軍隊ではない。アメリカの——であり、しかもアメリカがアジアを——するための——であるということが、はつきり言えるわけであります。従つて、この警察予備隊の問題、徴兵の問題については、国民反対の声、これはおそらく自由党諸君の心をも打つておるに違いない。諸君のむすこさんだつて兵隊にとられるのがいやに違いない。にもかかわらず、この徴兵反対の運動に対しては、武装警官がただちに出動して、そしてこれを彈圧する。東京でも、名古屋でも、その他全国各地において徴兵反対の運動が起つておりますが、これに対しては、アメリカの命令によつて日本のまつたく自主性のない警察力発動されておる。  このような軍隊を一体どういうふうにして募集しようとするのか。現に、現在の警察予備隊員の中でも、九月以後継続して勤めようとする者は少いということを、政府みずから認めております。それから募集の成績も、初めから見ると、だんだんと落ちて来ている、こういうことを認めております。そこで、どういう原因でこの募集の成績が上らなくなつておるかということを政府に聞きましたところ、それは失業者が少くなつたせいであううか、あるいは農村の過剰人口が少くなつたせいであろうかというような、ばかな答弁を政府委員はして、みずからの意図を暴露している。つまり、政府予備隊をふやすためには、どうしても失業者をたくさんつくらなければならない。パンパンをふやすためにも、それは失業者をふやさなければならない。どちらにせよ、失業者をたくさんふやさなければ、こういうパンパン的な軍隊はできないわけである。そういう政策をまずとつておる。それでも足りないで、今度の法案では、はつきりと強制的な徴兵制の第一歩を踏み出そうとしておるわけであります。  この徴兵制度は、総理大臣が知事市町村長指揮監督してやるようになつております。この指揮監督内容について質問いたしましたところ、大橋国務大臣は、これをぼやかしている。いや、これはポスターを張らせるだけであると言つておる。ところが、事務当局は、地方行政委員会において、はつきりと、もしも、あるところが多く、あるところが足りない場合には、足りないところを督励して、そしてこの人員を出させることを指揮監督というのだということを申しております。そうしてみれば、これは決して自由意思に基く志願などではとうていあり得ないのであります。ちようど、あの所得税、自分々々の所得に基いて申告すべき所得税が、実は上からの割当数字によつて、かつてに更正決定される。ああいう所得税と同じような悲惨な状態——税金をとるのにトラツクが出動しなければならない。こんな徴税があるか。それと同じように、人間狩りをしなければ徴兵ができない。そのような事態が待つておるのであります。そのようなフアツショ的なやり方をやつて、アメリカ帝国主義にサービスする吉田内閣に対しては、われわれは断固として、これこそ国民の敵であると宣言せざるを得ないわけであります。(拍手)  なお、この行政協定によりまして、アメリカ軍とこの警察予備隊協力することになつておるが、その協力した演習なるものは、これは千葉県の習志野においてはどんどん行われて、昨年、アメリカ軍当局と政府、農民の三者立会いの上で開拓地の境界をきめて、この境界を越えて演習しては困るという境界線をちやんとつくつたのに、そしてすでに農民が土地の登記を済ましておるのに、その境界線を侵して、警察予備縁は演習地を拡大しようとしておるのであります。これは一体何であるか。治安を守るたあの警察予備隊と言われるけれども、この治安を守るはずのものが、実は日本国民の財産、人命を侵しておるという事実がどんどん出ておるということであります。(拍手)これこそ、まさにみずから治安を乱すものである。日本を内乱状態に導き入れるための警察予備隊であると言つても、あえてさしつかえないのであります。  しかも、このような反国民的な、売国的な予備隊であればこそ、その内部が腐敗堕落しておるということは、政府みずから発行しておる会計検査院の二十五年度の決算報告によつても、必要のない施設をするために、たくさんの金を使つたり、いろいろなごまかしをやる。あるいは、昨年も新聞をにぎわしましたが、繊維業者との醜関係など、あるいは、くつ屋さんとの醜関係、こういうような腐敗堕落の状態が現われておるのであります。このような軍隊でもつて国防ができるということを言うならば、これはもう笑うにたえたことでございます。これは、ただ金もうけの手段にすぎない。蒋介石の軍隊と同じような、金もうけのための軍隊であるということが、はつきり言えるわけでございます。  多くの論者、自由党も、改進党も、口を開けば自衛ということを言うけれども、自衛ということは、かくのごとき方法によつて行うものでは決してありません。自衛とは一体何であるか。われわれは、われわれのおじいさんたちがやつたことを振り返ればよろしい。あの幕末に、日本が外国の植民地になろうとしたときに、一体日本国民はどうしたか。あの腰抜けの幕府を倒して、ほんとうに国民一つになつて事に当つたために、日本独立を全うすることができた。今われわれ国民がなさなければならないのは、事ごとにアメリカの━になつて、そうして日本国民を食い盡そうとしておるこの売国吉田内閣を、国民の総力をもつて打倒して、ほんとうに国民の生活を守る。そういう政府をつくり上げること、これこそが日本国民の自衛の第一歩である。そのことをわれわれは申しまして、反対討論を終ります。(拍手
  19. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告の通り決するに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  20. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立多数。よつて本案委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  21. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 日程第三、教職員除去就職禁止等に関する政令を廃止する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。文部委員長竹尾弌君。     〔竹尾弌君登壇
  22. 竹尾弌

    ○竹尾弌君 ただいま上程せられました教職員除去就職禁止等に関する政令を廃止する法律案につきまして、その概要並びに委員会における審査の結果を簡單に御報告申し上げます。  本案は、占領下において実施されて来ました、いわゆる教職員パージに関する政令を、平和條約発効の日を期して廃止しようとする、本文一箇條からなる簡單な法律案でございます。  御承知のように、教職員の適格審査の制度は、昭和二十年十月に発せられた連合軍最高司令官の覚書に基いて制定せられました教職員除去就職禁止等に関する政令によりまして、従来実施されて来たものでございます。しかしながら、平和條約発効の際には公職資格審査制度が廃止される関係もあり、独立日本立場よりいたしましても、占領政策に基くこのような制度を廃止することがきわめて妥当であることと考えられるのでございます。本案には、なお附則におきまして、この法律の施行にあたつて、従前の政令の規定によつて恩給、年金その他の利益を受ける権利や資格を失つた者に対し、再びこれらを取得できるように規定しているのでございます。  以上が政府原案の要旨でございまするが、文部委員会といたしましては、去る三月二十五日、本案委員会に付託となつて以来、二回にわたり愼重に審議を重ねました結果、本案趣旨がまことに時宜に適したものであることを認め、討論におきましては特に共産党賛成し、全会一致をもつて原案通り可決いたした次第でございます。  右御報告申し上げます。(拍手
  23. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  25. 福永健司

    ○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、坂本實君外四十六名提出、急傾斜地帶農業振興臨時措置法案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  26. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  急傾斜地帶農業振興臨時措置法案議題といたします。委員長報告を求めます。農林委員会理事遠藤三郎君。     〔遠藤三郎君登壇
  28. 遠藤三郎

    ○遠藤三郎君 ただいま議題となりました、坂本實君外四十六名提出にかかる急傾斜地帶農業振興臨時措置法案に関しまして、農林委員会における審議経過並びに結果の大要を御報告いたします。  わが国の地形の特質上、いわゆる段段畑等急傾斜農地は、全国各所に集団的に分布いたしておりまして、農業を営みまする上において過重な労働を必要とするのみならず、地質上、気象上の悪條件が積み重なりますると、大規模に土壌浸蝕が発生し、表土の流亡によりまして地方の維持を妨げまする等、農民生活に対し著しい困難を課し、ひいては食糧生産の低下を来す状態と相なつておるのでありまするが、これらの地帶に対しまして、一定の計画に基き、相応の資金、資材を投入いたしまするならば、農業生産力の向上、民生の安定に少からず貢献することとなりまするので、かような行政上、財政上の措置をとります上に必要な法律上の根拠を持たしむべきである、こういうことになりまして、この法案提出せられたのであります。  本案の形式を通観いたしますると、地帶の指定、農業振興計画の作成、対策審議会の設置等でありまして、その骨子は、おおむね積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法の例に準拠されておるのであります。  そこで、本案内容に関し、質疑応答等を通じて重要と思われました二、三の点を御報告申し上げますと、まず急傾斜地帶の基準のとり方でありますが、土地の傾斜度はおおむね十五度ないし三十度と予定せられ、土壌の浸蝕度は、地形、地質、台風の頻度等を総合勘案して、今後合理的に定めることと相なつておるようであります。また急傾斜地帶とは、過重な労働を必要とする農地が集団的に存在する地帶ということになつております。過重な労働の判定の方法につきましては、特に具体的な基準によつて判定するものではなく、そういう事実が現にあることに、よつて判定するということであり、集団ということにつきましては、何十町歩というように数字をもつて示すか、あるいは市町村の全耕地に対する一定比率をもつて示すか、今後の研究にまつということになつております。また積雪寒冷單作地帶と急傾斜地帶との二重の指定を受けることができるかどうかということにつきましては、そのことが可能であるということが予想されております。また、この地帶の農業振興計画の内容につきましては、粗製畦畔の改良、農道の開発、排水路、承水溝、土砂だめ、貯水槽の設置、簡易ケーブルの架設等を考慮せられております。国の予算措置は、昭和二十七年度におきまして、土壌保全費として約二千万円が計上されており、さしあたつてこれを使用することになつておりますが、将来その増額の要求を予定しておるのであります。  本案は、三月二十七日、提案者を代表いたしまして坂本實君より提案理由説明が行われました。次いで四月二日より質疑に入つたのでありますが、法案の重要性にかんがみまして、各委員より熱心な質疑が重ねられましたが、詳細に関しましては委員会会議録に讓ることといたします。  本日質疑を全部終了いたしまして、ただちに討論に入ることといたしたのでありますが、まず改進党を代表して吉川久衛君から、法律を有名無実たらしめないため予算を十分に計上すること、小団地の急傾斜地が相当あるから、集団性に彈力を持たせなければならない、審議会の構成について弊害のない人選を行うこと等の希望を付して賛成意見が述べられました。次いで社会党を代表いたしまして井上良二君より、本法の成立は食糧増産、民生の安定の上から申してまことに喜ばしいが、予算上、金融上の措置を十分に行うことが必要であり、また地帶の指定、事業の実施にあたつては、特に急傾斜地帶の多い高知、愛媛、九州、中国地方等より重点的に急速に行わるべきであるとの意見の開陳をせられまして積極的に賛成せられ、次いで日本共産党竹村奈良一君より、本法は五箇年の限時法であるが、調査、研究、立案等はすべてこれから始めるということであれば、立案の目的を完遂し得るやいなや危惧なきにあらざるも、食糧自給上からいつても重要な法律案であるので、予算措置を十分ならしめること、地帶の指定を公正妥当に行うこと、開拓地に対しても積極的に事業を実施すること等の希望をつけて本案の成立を望む旨の賛成意見が述べられたのであります。  かくして、討論終了後、採決を行いましたところが、全会一致をもちまして、本案はこれを可決すべきものと議決した次第であります。  以上をもちまして御報告を終ります。(拍手
  29. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  31. 福永健司

    ○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出ユネスコ活動に関する法律案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  32. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  ユネスコ活動に関する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。文部委員長竹尾弌君。     〔竹尾弌君登壇
  34. 竹尾弌

    ○竹尾弌君 ただいま議題に相なりましたユネスコ活動に関する法律案につきまして、この法案の概要並びに委員会におきまする審査の結果を御報告申し上げます。  本案は、去る三月十二日、内閣から本院に提出され、文部委員会に付託となつたものでありまして、前文及び本文二章十九箇條からなる法案でございます。国際連合教育科学文化機関、すなわちユネスコは、第二次世界大戰の後、平和を望む人類の気持が最高潮に達しましたとき、すなわち一九四六年十一月、人の心の中に平和のとりでを築き、人類の精神的連帶の上に、教育、科学及び文化を通じまして、国際平和と人類共通の福祉を促進しようとする理想のもとに創設された、国際連合の專門機関でありますことは、すでに御承知の通りでございます。しかるに、わが国民年来の宿望でありましたユネスコヘの加盟が、昨年七月正式に承認されまして、これを機会といたしまして、わが国におきまするユネスコ活動の基本を定めまするとともに、ユネスコ憲章第七條の規定の趣旨に従いまして、日本ユネスコの国内委員会を設置して、わが国におきまするユネスコ活動の振興をはかろうといたしまするのが、本案提出理由でございます。  次に、本案内容のおもなる点を申し上げます。まず前文におきましては、ユネスコが世界平和の確立と人類の福祉の増進に貢献しつつあることの意義を高く評価しながら、全国民的な基盤の上に、官民一体となりまして、その事業に積極的に協力する、かたい決意を宣明している点であります。  次に第一章におきましては、ユネスコ活動の目標、その他ユネスコ活動の基本的なあり方を規定いたし、政府国民もともに力を合せ、国の内外にわたり、ユネスコ活動の健全な発展に努力することを期しているのであります。  次いで第二章は、日本ユネスコ国内委員会に関する規定であります。このユネスコ国内委員会は、国際條約でありますユネスコ憲章第七條の規定の趣旨従つて設けられる点、国内の諸機関と異なる特徴を持つております。それは、各ユネスコ加盟国の国内委員会に共通した性格や機能を持つとともに、日本の特殊事情に即応するものでなければならないのであつて本案におきましては、この両方の要求が満たされるように留意されてあります。国内委員会性格は、わが国ユネスコ活動に関する助言、企画、連絡及び調査のため設けられる文部省の機関で、單なる審議ないし諮問機関たるにとどまらず、広く企画、連絡、調査、普及等の機能を持つているものであります。国内委員会の構成につきましては六十名以内の委員をもつてなされ、各選出分野と人員を法律をもつて明記することといたし、またユネスコ活動の特殊性にかんがみ、衆参両院より各一名ずつの国会議員の選出を規定されているものであります。その他国内委員会は、文部大臣が所轄いたしますけれども、対外施策の遂行にあたりましては、外務大臣と緊密に連絡して行う旨の規定や、国内委員会事務局設置の規定が設けられているのでございます。  以上が政府原案の概要でございまするが、文部委員会といたしましては、去る三月十九日、政府より提案理由説明を聽取いたしました後、前後五回にわたり、愼重に審議を重ねたのであります。本日質疑を終了いたしまして討論に入りましたところ、共産党を除く各派共同提案によつて本案に対する修正案が提出されました。まず自由党甲木委員より、修正案の趣旨弁明が行われました。すなわち修正案は、ユネスコ国内委員会委員の構成を変更しようとするものでありまして、教育、科学及び文化の普及並びに地域的なユネスコ活動の諸領域を、わが国の実情に合致せしめるとともに、国民全体の代表者たる国会議員並びに学識経験者の参加を増大して、ユネスコ活動の資質の向上をはかろうとするものであります。この結果、国内委員会の構成において、国会関係におきましては、衆議院議員のうちから衆議院の指名した者四名、参議院議員のうちから参議院の指名した者三名と修正されたのであります。  次いで原案並びに修正案に対する討論に移り、自由党委員より賛成共産党渡部委員より反対の意向が表明せられました。  かくて討論を終りまして、まず修正案について採決いたしましたところ、起立多数をもつて修正案に賛成されたのであります。次いで修正部分を除く原案について採決の結果、これまた修定部分を除き原案通り可決、よつて法案は修正議決することに相なつた次第でございます。  以上御報告申し上げます。(拍手
  35. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 採決いたします。本案委員長報告は修正であります。本案委員長報告の通り決するに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  36. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立多数。よつて本案委員長報告の通り決しました。      ————◇—————
  37. 福永健司

    ○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出地方財政法の一部を改正する法律案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  38. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  地方財政法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。地方行政委員長金光義邦君。     〔金光義邦君登壇
  40. 金光義邦

    ○金光義邦君 ただいた議題となりました地方財政法の一部を改正する法律案に関する地方行政委員会における審議経過並びに結果について、その概要を御報告申し上げます。  まず本案内容について申し上げます。申すまでもなく、地方財政法は、地方公共団体の財政の運営や、国の財政と地方財政との関係等に関する基本原則を定めたものでありますが、政府におきまして、この際地方行政の責任の帰属を明確にするとともに、その自主的な運営を確保するために所要の改正をいたそうとするのであります。  本案改正の第一点は、国費、地方費の負担区分の基準に関するものでありまして、地方公共団体またはその機関が行う事務に要する経費については、その事務が国と地方公共団体のいずれの利害に関係するかによつて、その負担者あるいはその負担割合が定められていた従来の基準を改め、かかる事務に要する経費は、その事務の及ぼす利害のいかんにかかわらず、原則として全額地方公共団体の負担とすることといたすのであります。これは、地方財政平衡交付金法の施行により、このような経費はでき得る限り地方税をもつて充足することとし、爾余の調整は、平衡交付金の機能にまつべき本制度の趣旨に即応するものであります。しかしながら、この原則に対しては、その事務性格や、地方財政の現状にかんがみ、本法案は次の三種の例外を設定いたしております。  その第一は、結核予防に要する経費や、生活保護に要する経費等のごとく、実施後日なお浅く、その円滑な運営をはかるために、国がその全部または一部を負担する法令に基いて実施しなければならない事務に要する経費、その第二は、現行のいわゆる公共事業費や失業対策費等のごとく、国民経済に適合するように、総合的に樹立された計画に従つて実施しなければならないために、国がその全部または一部を負担する建設事業に要する経費、その第三は、災害救助事業に要する経費や、土木災害復旧に要する経費等のごとく、地方税法または地方財政平衡交付金法の適用によつては、その財政需要には適合した財源を得ることが困難なために、国がその一部を負担する災害にかかる事務に要する経費、その第四は、国会議員の選挙に要する経費や、外国人登録に要する経費等のごとく、本法に例示され、もつぱら国の利害に関係のある事務を行うためのもので、地方公共団体がまつたく負担の義務を負わない経費となつでおります。  しかして、以上四種の例外のうち、第一から第三までに該当する経費の種目、算定基準、国と地方公共団体とが負担すべき割合は法律はまたは政令で定めるとともに、地方公共団体の負担すべき分は、地方財政平衡交付金法の定めるところによつて地方公共団体に交付すべき地方財政平衡交付金の額の算定に用いる財政需要額に算入することになつております。  次に改正の第二点は、強制的割当寄付の禁止に関するものであります。すでに現行法におきまして、地方公共団体は、住民に対し、寄附金を割当てて強制的に徴收するようなことをしてはならない旨を規定しておりますが、国の出先機関から、地方公共団体もしくは住民に対し、または国もしくは地方公共団体の外郭団体を通じて、地方公共団体もしくは住民に対し、寄付金等を強制的に割当てて強要する例が少くない現状にかんがみ、これらの道も禁止する趣旨において、規定の整備をはかつたものであります。  本法案は、三月二十六日、本委員会に付託せられ、同二十九日、岡野国務大臣から提案理由説明を聞き、愼重審議いたしましたが、その論議の中心は、これを要するに、地方財政法は地方財政に関する基準法にとどまり、今回の改正は一応妥当であるとしても、よく法の所期する目的を達するためには、ひとり本案改正のみにとどまらず、地方税法の改正、地方財政平衡交付金制度の運用、地方起債と国庫補助金の問題等、広く地方財政に関連する基本的な諸問題の全面的解決をはからねばならないということであり、また本法が地方財政の円滑を期する目的をもつて規定した事項であつても、單に法律に規定せられるだけでは実効を收めがたく、この点について、たとえば義務教育費、住民登録の事務に要する経費、あるいは警察予備隊募集事務に要する経費等について、地方財政に不当の圧迫を加え、地方当局に予期しない迷惑を及ぼすようなことはないか、また警察、消防及び学校教育関係の地方における寄付金は、現在相当多額に上つているが、その多くの部分は、当然公費をもつて支弁すべき経費の財源に充当せられているが、これらの経費は、性質上、当然財政需要費として地方財政計画中の予算に計上せらるべきではないか、今回の改正法の嚴格な励行によつて、赤字状態の地方財政はさらに困難の度を増すものではないか等の質疑がなされたのでありますが、政府当局はこれに対し、税法については、事務再配分とも関連して、近き将来に根本的改正をなす方針であり、起債についても、領金部資金のほか、時期を待つて公募公債によるなど、その他地方財源の充実の実現を考慮しており、また国の負担すべき経費について、事実上地方に負担の転嫁や増加を招来して、地方財政を圧迫することのないよう十分用意すること、さらに強制的にわたる割当寄付の禁止については、本法の規定が罰則を伴わないものであるとはいえ、関係官民の認識の向上と相まつて、漸次その励行と適切な運用を期待したい旨の答弁があつたのであります。  かくて、四月三日質疑を終了、ただちに討論に入りました。河原委員自由党を代表して賛意を表され、改進党の床次委員は、本案趣旨には賛成であるが、政府は地方財源の確保のためにはさらに格段の努力をなすべきことを要望しつつ賛成の意を表されましたが、立花委員日本共産党を代表して反対意見を述べられました。採決の結果、本案賛成多数をもつて可決せられた次第であります。  右御報告申し上げます。(拍手
  41. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これより討論に入るわけでありますが、このまま暫時休憩いたします。     午後五時十分休憩      ————◇—————     午後五時十六分開議
  42. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 休憩前に引続き会議を開きます。  討論の通告があります。これを許します。立花敏男君     〔立花敏男君登壇
  43. 立花敏男

    ○立花敏男君 私は、日本共産党を代表いたしまして、ただいま上程されております地方財政法の一部を改正する法律案反対討論を行わんとするものであります。  日本憲法を無視いたしまして、日本国民に押しつけられました行政協定は、その條文に明らかなことく、日本全土にわたりましてアメリカの軍事基地をつくり、全日本国民戰争の犠牲を強制せんとしているものであります。従つて日本全国至るところの地方自治体とその住民に対しまして、従来の地方自治の行き方とは全然別に、まつたく中央集権的、フアツシヨ的な行政が行われようとしており、財政の面におきましても、再軍備費が地方に押しつけられようとしておることは明白であります。その意味におきまして、今回の第十三国会は、地方自治にとりましては、まさに画期的な——地方の行政、財政、税制の全分野にわたつて、重大な根本的変革が行われようとしておるのであります。すなわち、地方行政委員会におきましても、地方自治法改正、地方税法の改正、地方財政平衡交付金法の改正、地方公営企業法案、あるいは地方公務員法の改正等々、一連の法案審議されており、しかもこれらの相関連する各法案を一貫して貫いておりますものは、前に述べたところの戰争のための行政及び財政のしわ寄せを、地方自治体に対し、あるいは地方住民に対して転嫁せんとするものであります。  ただいま上程されておるところの、この地方財政法改正法案も、これらの戰争準備法案一つであることは疑う余地がないのであります。すなわち、この改正案の根本のねらいは、その第九條におきまして、地方の機関事務に要する費用は地方がすべてこれを負担することを嚴格に規定している点であります。これによつて今後内外反動勢力が地方自治体に押しつけるところの一切の行政の費用をすべて地方の責任において負担せしめようと企てておるのであります。現在でも、地方の行います事務は、そのうち七〇%が中央より地方に委任した事務でありますが、今後は、行政協定の線によりまして、再軍備事務が増大することは必至であります。たとえば、徴兵、徴用の事務、あるいは防衛、防空関係事務、あるいは軍事物資調達関係事務等々の事務が急激に増大することは、もはや必至でありますが、それらの事務の費用の一部特定のものを除きましては、全部地方が負担せねばならないことが、この法案で規定されようとしておるのであります。  この法案と同時に審議されておりますところの地方財政平衡交付金法の一部改正法案によりますと、明らかに、国が一定の規格を定めた行政を地方に押しつけまして、地方はこの国が一方的にきめました規格の行政を行わなければならないことを規定されております。しかも、この規格に合致しない場合は、国が地方に交付いたしました平衡交付金の一部またはその全部を返還せしめることができると規定しておるのであります。しかも、この一方的な中央の決定による行政事務の執行に関しまして、従来の地方自治の観念を無視いたしまして、総理大臣が地方の長に勧告権を持つ形において重大なる自治の干渉をやろうとしておる点であります。かくて、国が一方的に地方に押しつけました再軍備のための費用は、特定のものを除きましてすべて地方の負担となり、政府は、そのために、それらの事務遂行のための一般財源として平衡交付金を交付すると言つておるのでありますが、この平衡交付金がまつたく不十分である二とは、もはや天下周知の事実であります。  元来、地方行政を遂行するために、必要にして、かつ十分なる財源を保障するためのものがこの平衡交付金であるにかかわらず、過去二箇年の実績に徴しましても、これはまつたく空文でありまして、事実は国の軍事予算の犠牲となつていることは、政府みずからも認めておるところであります。従つて、與えるものは與えないでおいて、しかも仕事だけは一方的に地方に押しつけておいて、その上、その費用は一切地方の負担であるという規定を、今度の改正法案では決定しようとしておるのであります。従つて、これは地方に重大なる経済的負担を転嫁し、地方財政を破壊し、地方住民の税負担を増大せしめる結果になることは疑う余地がないのであります。いな、むしろ、膨脹する軍事費を地方税に転嫁するための改正法案であると断言してもはばからないと思うのであります。  何となれば、この法案と同時に地方行政委員会審議されておりますところの地方税の改正法案によりますと、従来は免税されておりましたところの、六十歳以上の、しかも年收十万円以下の老人に対しまして、今回の地方税法の改正によりまして、来年度からは新しく税金をとろうとしておる点であります。これはまさに非人間的な、まつたく殺人的な地方税法の改悪といわなければならないと存ずるのでありますが、かかる結果を具体的に招来いたしますものが、この地方財政法改正法案であります。これを集積いたしまして、実に驚くなかれ、来年度におきますところの地方税の増收は四百十四億を予定しておるのでありまして、この法案が通過いたしますと、現在でも地方民の生活を破壊しておりますところの地方税が、一層苛酷な、まつたく殺人的な收奪を地方の上に加えることは申し上げるまでもないと思うのであります。  これによつて明らかなことく、この法案は、行政協定強行のための仕事を地方に押しつけて、しかもその費用を地方税によつてまかなわしめんとするところの、まつたく反動的な、軍事的な法案であります。全国の地方自治体も、またすべての地方住民も、決してかかる無謀なる政策を容認するものでは断じてないのであります。全国至るところで——地方税反対、平衡交付金を増額せよという闘争が、全国至るところの自治体あるいは住民によつて闘われつつあることは、自由党諸君自身も、先刻御承知の通りであります。政府は、この情勢に狼狽いたしまして、再軍備を強行するために、地方制度をフアツシヨ的、中央集権的に変革せんとしておるのでありますが、現在東京都で大問題となつておりますところの区長任命制の問題は、その最も典型的な現われであります。しかも、この反動的なやり方は、自由党内部にすら重大な反対を惹起し、自由党の中に重大なる混乱と動揺が起つておるのであります。東京都の自由党の人たちが、自由党本部の前で大会をもちまして、自由党本部反対決議案をつきつけている。これこそ、反動政策、売国政策を強行せんとするところの自由党の内部に、この強行にあたつて重大な混乱が起つているということは明白だと思うのであります。  かくて、外国の言うままになつて戰争政策を強行し、その財政的な、あるいは行政的なしわ寄せを地方に転嫁する吉田内閣の政策は明らかに破綻し、全国民の重大な反対を呼び起しているのでありますが、日本共産党は、この日本の全自治体の、あるいは全国民の正しい地方自治への要求、平和と独立の要求の線に沿いまして、この法案に対しましては断固反対するものであります。(拍手
  44. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これにて討論は終局いたました。  採決いたします。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告の通り決するに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  45. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立多数。よつて本案委員長報告の通り可決いたしました      ————◇—————
  46. 福永健司

    ○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出戰傷病者戰没者遺族等援護法案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  47. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。戰傷病者戰没者遺族等援護法案議題といたします。委員長報告を求めます。厚生委員長大石武一君。     〔大石武一君登壇
  49. 大石武一

    ○大石武一君 ただいま議題となりました戰傷病者戰没者遺族等援護法案について、厚生委員会における審議経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。  最高の愛国心を発揮して国に殉じた戰没者の遺族及び戦傷病者等に対しましては、戰いの勝敗を問わず、手厚き処遇をいたすのが、国家として当然の責務であります、しかるに、今次大戰の敗戦による、やむを得ざる事情に基きまして、この国家当然の責務を今日まで果し得なかつたことは、日本国民として、まことに遺憾のきわみであります。戰傷病者並びに戰没者遺族等のこうむつた精神的、物質的の困窮の実情には、真に国民の黙し得ぬものがあり、第一国会以来、これらの人々の援護に関する請願、陳情は山積している現状であります。  本委員会におきましては、問題の緊要性にかんがみ、さきに第五国会において、遺族援護に関する小委員会を設置して、鋭意これが対策審議いたしたのでありますが、その結果として、遺族援護に関する決議が二十四年五月本院を通過し、遺族に対する年金、弔慰金、遺児の育英、生業資金、母子福祉施設、免税等の諸問題について政府のすみやかなる善処を要望いたしたのであります。次いで、昭和二十六年三月、第十国会において、遺族、戰傷病者及び留守家族対策に関する決議が本院を通過いたしまして、本問題につき再び政府措置を督励いたしました。本委員会においては、その後さらに遺家族、傷痍軍人の援護に関する小委員会を設置し、爾来、第十二国会末に至るまでに、実に二十余回にわたり、きわめて熱心なる討議、研究を遂げたのであります。その結果得ました成果は、それぞれ戰傷病者の援護に関する要望書、遺族援護に関する要望書として政府に送付いたしておるのであります。  翻つて、戰傷病者、戰没者遺族等に対する国家の処遇の現状を見ますると、終戰まで支給せられておりました増加恩給、傷病年金、扶助料等は、昭和二十年に発せられた連合国軍最高司令官の指令たる恩給並びに扶助の支給の件に基く二十一年のポツダム勅令第六十八号によりまして、その支給が停止せられ、わずかに戰傷病者等に対して少額の増加恩給のみが残されているにすぎないのであります。さらに陸海軍部内の雇用人たる軍属の戦時災害による公務上の負傷または疾病につきましては、内地勤務の者に限り、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法により年金が支給されておりますが、戰地勤務の者につきましては、少額の一時金を支給したほか、今に至るまで何ら適当な処遇が與えられておらないのであります。本院の両回にわたる決議にもかかわらず、戰傷病者、戰没者遺族等に関する特別の国家の施策が今日まで講ぜられなかつたことは、真に遺憾と申すほかは、ざいません。すでに昨年九月平和條約が締結せられ、その効力発生の時期は目睫の間に迫つておるのであります。この講和独立の機会に際しまして、これらの戰没者遺族、戰傷病者等に対して、国家補償の観念に立脚して援護の措置を講ずることは、平和国家建設の途上にあるわが国として最も喫緊の要務と申さねばならぬのであります。今回政府が本法案提出した理由も、またこれにほかならぬのであります。  次に、本法案の大要について申し上げます。まず対象でありますが、その一は、昭和二十一年勅令第六十八号により恩給権を停止または制限された旧軍人等及びその遺族であり、その二は、戰地勤務の有給の嘱託員、雇員、用人、工員または鉱員たる軍属及びその遺族であります。後者は、内地勤務者との間に存する処遇の不均衡を是正しようとの目的によるものであります。  次に、援護の内容について申し上げます。戰傷病者等に対しましては、最高六万六千円から最低二万四千円までの障害年金を支給し、さらに一定の症状の者に対して、その職業能力を回復させ、その更生をはかるために、更正医療の給付を行い、また補装具を支給し、加えて重度の身体障害については、国立保養所を設置し、これに收容する方途を講じ、その援護の万全を期そうとしているのであります。また遺族に対しましては、遺族年金及び遺族一時金を支給するのでありますが、不具廃疾の夫、十八歳未満または不倶廃疾の子、六十歳以上または不倶廃疾の父母、扶養する直系血族のない十八歳未満または不倶廃疾の孫、扶養する直系血族のない六十歳以上または不倶廃疾の祖父、祖母の範囲の遺族に対し、配偶者については一万円、その他遺族については一人につき五千円の年金を支給し、その生活の援護の一助といたしておるのであります。また昭和十六年十二月八日以後戰没した者の遺族に対しましては、遺族一時金として、妻、不具廃疾の夫、十八歳未満または不倶廃疾の子、父母、扶養する直系血族のない十八歳未満または不具廃疾の孫、祖父母の範囲及び順位により、遺族に対し、戰没者一人につき五万円の記名国債を交付することといたしておるのであります。これら各措置の施行に要する経費は、全額国庫負担でありまして、障害年金の所要経費約十八億円、遺族年金の所要経費約百五十六億円、遺族一時金として交付される公債利子の所要経費約五十三億円、更生医療等に要する経費約七億円、その他事務費として約三億円、計約二百三十七億円を計上いたしております。  以上が本法案の大要でありますが本法案に定められている以外にも、さらに援護措置として、遺家族子弟の育英の充実、戰没者の合同慰霊祭に要する経費の補助、身体障害者の雇用あつせん等を行うこととして、これがため約二億円の予算が計上されておるのであります。  本法案は、三月十二日、本委員会付託せられ、十三日、厚生大臣より提案理由説明を聽取、十八日より連日委員会戰争犠牲者補償に関する小委員会並びに海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会との連合審査会等を開いて、きわめて熱心なる審議を行つたのであります。その詳細会議録について御承知願いたいと存じます。  なお、本法案の重要性にかんがみ広く一般の世論を聽取するため、三月二十五、二十六の両日にわたり公聽会を開き、早稻田大学教授末高信氏外十六名の公述人から、広い角度よりの意見を聽取して、愼重審議を重ねたのであります。  かくて、本月二日質疑を終了したのでありますが、本日の委員会において、自由党より修正案が提出され、高橋委員より同案の趣旨説明がありました。その要旨は、第一、補償のための援護という文字を入れること、第二、遺族一時金については、弔慰のため遺族一時金を支拂うという文字にかえること、兄弟姉妹にも支拂うこと、子及び孫に年齢制限を付せぬこと、夫に不具廃疾等の條件を付せぬこと、第三、遺族年金は昭和二十七年度に限り全額を一時に支拂うこと、第四、障害年金及び遺族年金について、三年以上の懲役等に処せられた場合を受給権の消滅條件としておるのを停止條件とすること、第五、障害年金受給者が死亡した場合の遺族年金の限度を二万四千円としておるのを、生前受けていた額の範囲内とすること等でございます。  次いで、以上の修正案と原案とを一括して討論に付しましたところ、自由党を代表して丸山委員より、船員、徴用工、学徒等への軍属の範囲の拡大を強く希望いたしまして賛成意見の開陳があり、改進党を代表して金子委員より、日本社会党を代表して岡委員より、日本共産党を代表して苅田委員より、日本社会党第二十三控室を代表して青野委員より、農民協同党を代表して寺崎委員よりそれぞれ反対意見が述べられたのであります。  次いで、討論を終結し、まず修正案の部分について採決に入りましたところ、修正案は多数をもつて可決すべきものと決せられ、次いで修正部分を除く原案について採決いたしましたところ、多数をもつて原案通り可決すべきものと決せられた次第であります。  次いで、高橋委員より、次の附帶決議を付すべきであるとの動議が提出せられたのであります。これを朗読いたします。   戰傷病者戰没者遺族等援護法附帶決議案  戰傷病者戰没者遺族等の援護法案は暫定的措置である。よつて政府は速かに恩給法特例制度審議会を開き、戰没者遺族、戰傷病者等に対する国家補償的制度を急速に確立すべきである。  これに対しまして、社会党委員より反対意見の開陳があつた後、採決に入りましたところ、多数をもつて動議のごとく決議いたしました。  すでに皆様も御認識のごとく、本法律案は決して完全なものではなく、むしろ不満の点の多いものであります。しかし、委員会があえてこれを議決せしめたゆえんのものは、今まで七年の長きにわたつて果し得なかつた戰傷病者、戰没者遺族等に対する弔慰金、年金等を差上げ得る機会、すなわち日本国民の責務の一端を果し得る機会を得たことと、並びに国家の現状を認識したことにあるのであります。本委員会は、この法律案が礎石となつて、国家補償の真の実績を発揮し得る時期が一日も早からんことを念願いたしております。さらに遺族のみならず、すべての戰争犠牲者が、全国民義務において、明るい、あたたかい生活を営み得るような社会保障制度の確立いたされることを熱望いたす次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  50. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 討論の通告があります。順次これ許します。金子與重郎君。     〔金子與重郎君登壇
  51. 金子與重郎

    ○金子與重郎君 私は、改進党を代表いたしまして、ただいま議題になつております戰傷病者戦没者遺族等援護法案に対しまして反対の意を表明するものであります。提案されました本法案には、政府原案に反対するとともに、自由党の修正案に対しましても、これは末梢的な部分修正にとどまるものでありまして、とうていわが党の容認するところではありませんので、同じく反対するものであります。  私は、もちろん本法律目的そのものに対して反対するのではないのでありまして、その内容であります。その内容が、改進党が年来主張しているものと非常な隔たりを持つておるという点から、とうてい賛成し得ないのであります。(拍手)  その具体的な内容のうち、二、三の重要な点を申し上げてみますると、まず第一に法律性格でございます。戰争に参加して、そうして傷病者となり、あるいは戰死をした人々は、自分の意志でこれをなしたのではなく、まつたく国家の至上命令として動員されたものでありまして、従つて国家は、これらの人に対しては当然補償をすべきであるという見解に立つておるのであります。この点は、ただいま強引に法案を通過いたしましたところの厚生委員会、その賛成されておるところの自由党諸君さえも、これと同じ決議案をこれに付しておるのを見ても明らかであります。そこで、本法の表題は、決議案にするくらいならば、なぜこれを法案に直さないかということであります。また今国会において議決された軍人恩給の特例法も、昭和二十八年四月までの期限なのであります。でありますから、これは当然一箇年の臨時措置であり、その間において、政府は特例法の審議会等におきまして抜本的な補償法を確立すべきであるというのが、わが党の意見であります。この点は、遺家族厚生連盟や、あるいは過日開きましたところの厚生委員会における公聽会の公述人も、全部がそういう意見を持つておるのであります。  次は、年金の支給の金額であります。戰傷病者の障害年金の政府案は、特別項症年六万六千円であります。以下一項症五万五千円というような基準になつておるのでありますが、これをかりに、戰争中、あの当時において陸軍の伍長であつた者を、現行の恩給法の規定を当てはめてみますると、その受給者は、年額、普通恩給、増加恩給、扶養加給二人といたしましても、合計九万円以上の支給を受けるのであります。そこで、次に遺家族の年金問題を考えてみましても、現行の恩給法で、月一万円の公務員が公務で死亡した場合には幾らになるか。この扶養手当は、本人の分が六万六千円、子供一人に対して四千八百円、こういうふうな多額なものを支給されるのに比べて、この戰争行つて、赤紙一枚で死んだ人たちの遺家族は、妻に対して一万円ということは、あまりに懸隔がはなはだし過ぎる。  次に本法案において、船員、学徒、徴用工というものを除外しておるのでありまするが、船員の場合は、一部、直接軍から給與を受けておる者だけが入つておりまするけれども、あの当時の戰争の状態を考えるならば、正式の船員であろうと、その他の船員であろうと、ひとしく戰闘に入つたのであります。同じように戰つたのであります、それに対して差別をつけるという理由は、私は納得できないのであります。  その次に、生活保護法との関連であります。この生活保護法におきまして、現在東京都における戰争未亡人が、かりに一人に対して二人の子供と二人の父母を持つておるといたしますと、この生活保護法によつて支給される金額は六千六百円以上なのであります。この場合に、これが遺族であつて、今度の法律が施行されると、これらの人が受ける金額は月二千五百円なのであります。そういたしますと、これらのものを差引くならば、この最低の線におつて生活にあえいでいるところの未亡人たちは、今度の立法によりますところの恩惠というものは、まつたく経済的にはないということであります。何のためにそういうふうなことをやるかということであります。そこで野党は、この問題は收入から除外すべきだということを強く要望したのでありまするけれども、これの修正もいれられなかつたのであります。それが証拠には、政府は、この法律を施行すれば生活保護費が四億三千万円浮いて来るということを説明しておるのであります。こんな人をばかにした話は、おそらく私は通らぬと思うのであります。  以上、二、三の、その最もおもなる点だけを申し上げたのでありまするが、厚生委員会は、戰争犠牲者の補償問題について、過去一箇年有余にわたつて、厚生委員会内にこれらの犠牲者補償あるいは援護のための小委員会を置きまして、三十数回の会議を重ねて、まつたく與党、野党一致の立場において熱心に協議が行われまして、その結論を、厚生委員会の決議として政府に申入れしたのであります。以上、私が述べました点につきましても、この決議の中に含まれておるのであります。従つて與党諸君も、ただいま私が申し述べた矛盾に対しては、重々承知しておることなのであります。  しかるに、政府は、当時厚生委員会の決議した案に近い案をもつてこれを主張した前厚生大臣を、橋本個人案だということを言つて、これを葬つて、その橋本大臣の首をすげかえて、兼任大臣を持つて参りまして、法案を何ら示さない間に、二百三十七億という予算を強引に通過さしたのであります。そうして、こういうふうに予算を強引に通過させました後に法律案を提示いたしまして、これを審議するといつてみたところで、この法律は非常に複雑でありまするし、また必ず多額の予算が裏付けられることはわかり切つておる。しかも、一箇年以上前から、厚生委員会において、これを熱心に取上げるように要求しておるにもかかわらず、政府予算を通して後に案を出すということは、まつたく審議権を無視しておるということが言えるのであります。(拍手)でありまするから、われわれがいかに合法的にこれをやろうとしましても、まるでおけの中に入つた動物のように、あらゆるところへ首をつつ込んでしまう。そういうことで、結局は二百三十七億の範囲だからやむを得ない、こういうことで、政府は常に答弁をしておるのであります。しかしながら、その二百三十七億というものを、だれがきめたか。それは法案から出たものでなくして、頭からそうきめて出たということなのであります。  最後に一言いたすのでありますが、自由党諸君は、そういうふうな、私の今申し上げることに対して、いろいろのご意見を持つだろうが、私は、こういうことに対し、決して野党なるがゆえに、反対せんがために反対しておるのではない。国の財政に予算があることはよく承知しておる。国の予算に対して、おのずから限度のあることはわかつておる。しかしながら、戰争犠牲者は、まつたく国家のために赤紙一枚で動員されておるのであります。国家存立のために一命をささげたものでありまして、これらの戰没者二百万のうち、はたしてどれだけのものが軍国主義者であつたのだ。みな、かり立てられて行つたのではないか。  一方、戰争中に、その軍閥とともに国民戰争にかり立てるのに大きな役目を果したのは役人であり、官僚であるのであります。その官僚たちは、追放解除者も恩給、扶助料、障害年金の復活を受けている。そうして、職業を選択したでもなく、まつたく国家のために動員されて、手を失い両足を失つて、松葉杖にすがつておる人たちや、あるいは唯一の働く柱を失つて生活にあえでおる人たち、これらに対して——一方においては、過去の国家の法律あるいは約束づけだといつて、戰後においても支給しておきながら、それらの者に対しては、戰争に負けたんだからしかたがない、金がないからしかたがないと言う。金がないのなら、なぜ金のないような方法をとらないか。戰争犠牲者に対して何とかすると言つておきながら、現実の内容がこういうことであるとするならば、そういうふうな考え方は、われわれはとうてい容認できないのであります。  政治の要諦は、国民の信頼であります。信頼は、信義を守ることであります。敗戰国として、国費に限りがあるといたしましても、同じような立場にある人たちに、国家は同じような機会均等の政策をとることによつてこそ、よし金額がこの半分であつても、国民は納得すると思うのであります。(拍手)私は決して、いやがらせに膨大な予算を要求して反対するんじやないのだ。なぜこの意味がわからないか。  私は、そういう意味におきまして、この法律を今ここで審議するよりも、数旬にいたしまして、われわれはわれわれの力によつて自主的にこの法律を正しく審議する時期が来るのであります。それまでこの法案をおきまして、しかる後に、まつたく国民のために正しい法律をつくることを主張いたしまして、反対意見とする次第であります。(拍手
  52. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 高橋等君。     〔高橋等君登壇
  53. 高橋等

    ○高橋等君 本日、戰傷病者戰没者遺族等援護法案が本会議に上程せられましたことは、まことに感慨無量であります。私は、自由党を代表いたしまして、修正案及び修正案を除く政府原案に対し、希望意見を付して賛成討論を試みるものであります。  ポツダム政令六十八号以来、七箇年の長きにわたりまして、傷痍者の補償は薄きに失し、遺族の処遇は何ら見るべきものなく、また戰没者に対しまして、国家として慰霊の行事をも行つておらないのであります。占領下であり、ことに西ドイツなどと国際環境を異にせるわが国の現実といたしまして、真にやむを得なかつたとは申しながら、犠牲者の方々に対し申訳のないところでありまして、われわれはその補償の一日もすみやかならんことに努力をいたして参つたのでありますが、遺族、戰傷者の方々は、物価の高騰と、道義の廃頽の中に苦しみながら、しかも理性のある立場をとつて運動を継続されて来たのであります。これひとえに、各自の名誉を守り、わが国独立を思われた結果でありまして、この機会に衷心より敬意を表する次第であります。  国家の命令によつて戰争行為を強制せられ、ために犠牲をこうむつた方々に対しましては、国家がこれを補償する責務を有することは当然と申さねばなりません。本法第一條は、国家補償の精神に基き援護をなすことを目的とするということは、提案理由によるも明確であります。援護も補償の一手段であります。本法の内容を検討いたしますと、援護的要素を多分に包含しているのでありまして、将来完全なる補償を実施するまで、本法の目的を定むる第一條の修正にとどめまして、法律の名称を援護法といたしておるのであります。  戰争犠牲者に対しまする国家補償は、物心両面にわたつてこれを行う必要があることは、申すまでもないところであります。物的補償につきましては、主として障害年金、遺族年金及び遺族一時金の支給を本法は規定しておりますが、いずれも、戰争のため最大の犠牲を拂つた人々に対する補償としましては、金額においても、受取人の範囲においても満足すべきものではありません。ことに、文官恩給と、これらの年金とを比較いたしまするときには、思い半ばに過ぎるものがあるのであります。  申すまでもなく、独立の年二十七年度は、多事多難な年であります。複雑なる国際環境下、独立防衛治安確保、講和処理と国民生活水準の維持向上、産業及び貿易の振興に伴う国力の発展等、財政的にも未曽有の多難な年であります。しかし、いかに財政的に苦しくとも、七年間捨てて顧みられなかつた遺族、戰傷者の方々に完全な補償ができないから、いましばらく待つてくれということが、どうして皆さん方言い得るでありましよう。(拍手)與野党がその立場をかえましても、それはできないはずであります。多難なる財政下におきまして、八百八十三億円の公債と、二百三十一億円の予算とを確保いたしまして、独立第一年の補償を実施せんとすることは、多大の努力を要したところでありまして、不満足ではありまするが、またやむを得ないところであります。本年度の措置は暫定的なものであること及び国力の回復に伴いまして完全な補償を実施することは、政府のしばしば言明いたしたところであります。私は、すみやかに恩給特例制度審議会を開きまして、戰争犠牲者に対し、文官恩給と均衡のとれた補償を早急に実施することを強く要望するものであります。  遺族一時金は、弔慰金の性格を持つものであります。従つて、これが支給範囲を兄弟姉妹まで拡大し、また受取人に対しまする年齢制限その他各種條件を撤廃すること及び常時戰死者の葬祭をなすと推定せられます者に優先して支給する等の修正がなされたことは、機宜に適するものであります。戰傷病者は、不自由な体で生活を営んでおられる人々であります。特に障害のはなはだしい者につきましては、できるだけ早期に手厚い補償をなすことを要望いたします。その他遺兒の育英、公債の換金、生業資金の貸付及び就業のあつせんにつき深甚なる考慮を拂うこと及び生活保護法については運用上考慮することを政府は言明いたしておりますが、これが万全の実行を要望いたすものであります。  本法は、船員の大部分、徴用者及び勤労学徒等を補償の対象より除外いたしておりますが、これらの者は、国家総動員法の定めるところによつて徴用あるいは動員せられ、死没した者であります。政府はでき得る限りすみやかなる機会に適当なる措置を講ずることを強く要望いたします。  戰争犠牲者の補償は、超党派の問題といたしまして、長年月の間、厚生委員会において取扱つております。これを党利党略の具に供しますることは、戰死者を冒涜し、遺族、戰傷者を侮辱するにほかならないのであります。(拍手)この種の補償に関しましては、金額は多いほどよく、範囲は広いほどよい。日本人である以上、これに反対する者は、だれもいないのであります。しかし、国家の財政には限度があることを、国民も、また犠牲者もよく知つておるのであります。いたずらに大言壮語をなし、甘言媚態を装いましても、犠牲者は喜ばないし、国民は顰蹙するのであります。(拍手)国家の存立のないところに、補償も何もなり得ないのであります。在天の魂が生存しておるならば、このたびの措置につきまして、わが国現状においてはやむを得ないものとして理解を與えるであろうことを私は信じて疑わないのであります。(拍手)  私は、討論を終るにあたりまして在天の霊の安らかなることを祈念いたしますとともに、遺族、戰傷者の方々の健康を祈り、あわせて祖国再建のため勇往邁進せられることを希望いたす次第でございます。(拍手
  54. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 堤ツルヨ君。     〔堤ツルヨ君登壇
  55. 堤ツルヨ

    ○堤ツルヨ君 私は、ただいま上程になりました戰傷病者戰没者遺族等援護法案に対し、日本社会党を代表して、本法案並びに自由党の修正案を返上、反対するものであります。(拍手)  講和発効を旬日に控えております今日、政府は、まことに評判の悪いこの法案を潔く撤回し、より遺族に対して誠意ある補償が完全に行われる法律を今国会提出するのが常識でありましよう。以下、当然修正を要すると思われる数点を指摘いたしまして、政府の猛省を促したいと存じます。  その第一点は、本法が戰傷病者並びに戰没者遺族等補償に関する臨時措置法と、その名称が変更されなければならないことであり、その性格についても申し上げたいのであります。およそ国家公務に殉じて身命を失つた者や、障害者またはその遺族に対しては、援護にあらずして、国家が補償すべき義務があります。戰死者、戰傷者並びに遺族を援護するという精神こそ、まことに時代錯誤であります。またこれら遺族には、国家補償の理念に立脚して生活補償の具体策が講じられなければならぬことを強調いたします。あくまで本年度限りの暫定措置であるべきで、二十八年度は恩給制度をしんしやくして善処する考えであると、厚生大臣みずからも、その不満な点を指摘しておられるし、また去る三月二十五、六の両日にわたつて行われた公聽会でも、十七万人の公述人が、一人漏れなく、この点を強く要望しました。援護という名目で、二十八年度以降もこの程度でお茶を濁そうという意思があるやに見受けられますが、そうでないのならば、はつきりとわれわれの意見従つて、遺族の誤解を解くためにも、名称を変更されるべきと考えます。(拍手)  その第二点は、遺族年金の支給と適用範囲についてであります。一時金の公債五万円、十年還付、利子六分については、もちろん今日の災害手当などと比較してみれば非常に不満でありまするが、わが国の財政をも考慮し、百歩を政府に讓つたとしましても、年金の支給額、妻一万円、その他五千円は、まことに僅少で、こればかりは、どうしても讓れないのであります。(拍手)一体、算定の基準をどこに置かれたか、了解に苦しむものであります。はたせるかな、政府委員会における答弁さえできません。確固たる信念も、算定基礎も明示されず、ただひたすら二百三十一億に合致させたもので、貧弱さはこの上もございません。(拍手)野党は、ここに年金、妻二万円、他は一万円に修正しようと主張したのでございます。すなわち、算定の基準を戰時中の伍長に置きますれば、ただいまの改進党の金子委員説明のごとくなるのでございまして、年額四万円を年金として支給されますと、大体戰時中の伍長の遺族扶助料に匹敵するものでございまして、一応うなずけるのであります。生活保護法と比較しましても問題にならなぬこの原案の支給額は、まつたく遺族の要求を無視し、予算のみに縛られて、今日の生計費を全然考慮に入れぬ、冷淡きわまる処置と申すべきでありましよう。(拍手)  なお年金の適用者の範囲について、三つばかり指摘、修正したいのは、一に年齢制限で、子、孫については十八歳未満を限度としておりますが、実情にかんがみ、小学校卒業後引続き就学中の者には、その学業を終えるまで支給されるが当然で、有能なる遺族のために、子女の育英を考慮すべきであります。また父母、祖父母については、一切年齢制限をはずすべきで、今ここに、昭和十九年四十五歳で、二十五歳と二十二歳の二人のむすこを戰死させた母親一人の場合を例にとつて考えてみますと、本年この母は五十三歳、その適用を受けないことになります。五十五歳未満と五十五歳以上とは、その数が相半ばすると政府は答えておりますが、その数が多ければ多いほど、この矛盾を是正しなければなりますまい。また昭和十六年十二月八日以降に限り、と線を引いておるのでありますが、昭和十二年七月七日の支那事変にさかのぼるべきであります。十九万人の支那事変戰没者には、本法案の一時金と比較すれば、問題にならない手当しか渡してないのでございまして、太平洋戦争による戰死傷者は、おおむね支那大陸から転戰して行つた人々——支那事変から太平洋戰争への当時の移行の状態は、皆様御存じの通りで、当然この年金支給の対象に入れられなければ公平を欠くのでございます。(拍手)  次には、学徒、船員、徴用者に、軍人、軍属と同額の年金支給がなされるべきであります。これら、当時の国家総動員法に基き、みずからの意志によらずして国に強制され、好むと好まざるとにかかわらず、犠牲者となつて死に、傷ついた人々を、本法案は除外しております。船員五万五千人、学徒三万一千人、徴用者一万五千人と推定される人々を軍属として扱つても、大して予算の膨張とはなりません。おのおのが血の出るような請願陳情を続けて、政府にあたたかい手を要望しておるにもかかわらず、依然として除外され、顧みられないのであります。独立も名実ともに近く、国家再建の希望に燃えて、双肩に重責をになう若き人材学徒に、かくも冷たく、日本経済の自立を貿易にまつ日本政府が、海運業者の前途、お先まつ暗なしうちをなし、強制徴用により国家の犠牲となつた人々を捨てるとするならば、愛国心はおろか、生産への協力も、思想の穏健も、道義の高揚もとうてい期し得られないところであり、民生安定は根底からくつがえされざるを得ません。(拍手)吉田内閣が一番きらいな日本共産党の温床は、政府みずからの政治の貧困によつてつくられつつあることを認識すべきでございます。  次に第三点、障害年金で、特項症六万六千円を九万円に、一項症五万四千円を六万六千円に、二項症四万八千円を五万四千円にそれぞれ増額要求をいたしました。昭和二十六年十月のCPSによる六大都市五人世帶平均額は一万六千余円でございまして、一人月額三千五百円であります。特項症は、介添えを常時必要といたしますので、二人分を算定して七千円となり、門外不出、社会と没交渉のこの人々に、ラジオ聽取、新聞講読料など、最低の文化費を見積つて月七千五百円、年額にして、九万円、以下これに準じたものであります。学徒、船員、徴用者等も、軍属と同様取扱われるべきはもちろんであります。  さらに第四に指摘したいのは、生活保護法との関係でございます。本年四月一日より支給される生活保護法の扶助額は、六大都市五人世帶月額七千円でありますが、一般生計費水準に比較して四五%で、まさに驚くべき低額であるといわなければなりません。この公的扶助を受ける遺族は十万世帶と推定されるのでありますが、遺族一時金、年金より生ずる收入を所得とみなされて差引かれるとなりますれば、痛しかゆしで、ますます生活は窮乏します。生活保護法適用者には、これが收入を所得とみなさないことを一條挿入すべきであります。  第五点は、遺兒の育英であります。戰死した人たちが、その前途を案じ、最も心にかけたものは、その子供であろうと思います。永久に帰ることなき主人の面影をしのび、封建的な家族のうち、おのが半生を捨てて、ひたすら働き続ける戰争未亡人の、たつた一つの望みが遺兒である。しかも、この子供ゆえに苦しむのでありまして、遺族の保障は、遺兒の育英を除外しては考えられぬとさえ申したいのであります。(拍手)遺兒の育英が、本法を通して具体的に示されなかつたことは、致命傷だとさえ存じます。義務教育中の兒童の教科書支給、給食費の免除はもちろん、高等学校、大学の授業料は国家が負担し、特に遺兒育英金庫を設置して、遺兒にして英才は、つとめて多く育英資金を受け得る道が議せられるべきで、政府の見積る六万八千円、七千六百人分の育英費では、半数もその恩典に浴し得ないのであります。
  56. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 堤君に申し上げますが、申合せの時間が過ぎましたから、簡潔に願います。
  57. 堤ツルヨ

    ○堤ツルヨ君(続) 障害年金を受ける一項症以上子弟も、もちろんこれに準ずべきであります。  以上の、野党共同提案による修正は、まだまだささやかなもので、不十分でありますが、この程度の修正がなされなければ、自由党の修正案では問題になりますまい。しかし、これが修正に要する百二十億前後の費用は、政府にその誠意さえあれば、すでに二十六年度剰余金二百億より支出することは可能であります。また、当初にも申した通り、日本政府のフリーな立場において名実ともに独立のあかつきは、国会審議権を尊重し、予算に縛られぬ、遺族の要望に沿つたものが当然でき得るのでありまして、すでに十日先にこの自由を與えられる政府が、その日を待たず、ただいたずらに、つたない法案の通過をのみ、なぜ急がんとするのか。関係筋の袖の陰に隠れてどうしてもこの案を遺族に押しつけようとする意図が、はつきりわかるのであります。(拍手)  また、防衛予算を意図する政府が、内政費を最大限に圧縮し、その結果、二百三十一億という既定予算を、本年二月二十七日議決先行させて、根拠になる本法案を三月十二日に提案し、このわくの中に縛つてしまつた審議経過は、民主政治を冒涜するもはなはだしいのであります。(拍手)これはまた財政法違反でもあります。自由党の、本問題ととつ組まれた熱心な委員も、この政府国会無視の態度と、遺族の中にはさまつて、ほとほとお困りのようであります。問題が問題であるだけに、超党派的な結束と協調のもと、過去三箇年、数十回近くも検討を進めて参りました国会のわれわれを踏みにじつた政府態度は、国民一般の鋭い批判を受けないで済みましようか。  委員会における政府の答弁は、さようにいたしたいとは存じますが、何分予算の都合で、の連発であります。国家公務による戰死傷者への補償は、独立後の第一任務でありますが、これが、かくも冷たく、誠意を欠くのは、おそらく世界にその例を見ないのでありましよう。ちなみに、イタリア、西ドイツにおいては、一昨年十月、総予算の二〇・七%を投入して、至れり盡せりの手が打たれております。ドイツでは、肢体不自由者につけられた補導犬の飼育料が、日本金にして月額二千百円支給されておりますのと比較してみましても、いかに日本政府の思いやりがないかがうかがわれます。一たび諸外国に足も入れて来られた議員は、必ずや、都市の郊外の一等地に設けられた、夢のように美しい国立墓地と、最新式を誇る高層建築物の中に、国費で守られる傷痍軍人の様子を見られたでありましよう。日曜に、花束を供え、慰問に出かける市民、官民をあげての先進国の実例を見るとき、まことにおはずかしき限りで、民度のバロメーターとして、国際的に恥をさらすものであると存じます。  数に物をいわせて、本院を強引に乘り切らんとする政府も、参議院では、こうは参りますまい。わが党は、衆議院での主張を、そのまま参議院で闘うことを宣言しておきます。  およそ議会政治では、民衆の声そのままが法律となり、予算とならねばなりません。輿論を無視し、野党の正論を乗り越えて、あえて民意をまげんとする吉田内閣に反省を促し、決して今からでもおそくはない、さつそく本日よりわれわれの主張を盛り込んで法案を練り直し、講和発効直後の近き日に、今十三国会に再提出されんことを切に望むものでございます。(拍手)  最後に附帶決議が出されましたが、この附帶決議は、国会の実力のないことを国民の前に隠蔽せんがための、一つのゼスチユアでございます。立法の府にある国会議員みずからが、自分の責任をみずから否定するようなこの決議案は、まことに、こつけいきわまるものでございまして、自由党の議員自体も痛感なさつておることと存ずるのでございます。(拍手
  58. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 苅田アサノ君。     〔苅田アサノ君登壇
  59. 苅田アサノ

    ○苅田アサノ君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となつている戰傷病者戰没者遺族等援護法案に対して、自由党修正案をも含めて反対意見を表するものでございます。  元来、全国四百万の遺族、十五万の戰傷病者は、終戰後、戰犯に類するものとして、約束された国の補償を何一つ受けることなく、一家の支柱を奪われたまま、外国の占領下において、かつ占領下の自主性なき日本政府、特に最も長期にわたり、最も破廉恥に外国政権に屈服した吉田政府のもとにおきまして、日本人としての苦しみの最も深刻な苦しみを、精神的にも、経済的にも苦しんで来た人々であります。(拍手)今回、政府は、いわゆる講和條約発効を期して、厖大な国防費、安全保障費、警察予備隊費等を組んで、公然と再軍備の計画に乘り出すと同時に、七年の間遺族の訴えに対しまして耳をふさいで来た政府が、にわかに、これらの人々に対して援護対策を進め始めたのであります。この二つの組合せは、決して偶然ではなく、明らかに再軍備のための足固めであります。(拍手)それにもかかわらず、私たちはこれら占領制度と吉田政府の二重の重圧のもとに苦しんで来た戰争犠牲者に対しまして、国としての責任を果し、生活を保障することは当然であるという見地から、これらの人々の要求を支持し、その実現を可能ならしめるためには、あらゆる努力と協力を私心なく盡して来たのでありまして、このわが党の態度につきましては、今日立場を異にするところの自由党諸君といえども認めなければならないのであります。(拍手)  しかるに、今回政府によつて立案されましたところの援護法は、一日千秋の思いで同法の制定を望んでいた全国数百万の関係者のみならず、心ある国民の間に、ひとしく大きな失望と憤激さえも呼び起しているのであります。論より証拠、三月二十五日、二十六日の両日にわたつて、各界代表の十七人の公述人が、ほとんど異口同音に、この法案が未熟であり、不十分であり、支離滅裂であり、不合理であることを指摘しているのであります。中でも、青森県の遺族厚生連盟の役員である一未亡人が、これは補償でも援護でもなく、こんな法案は返上したいというのが遺族らの本心であるけれども、また一方、わらにもすがりたいような弱い身の上を思つて、これをいただき、意見を述べるのだと発言されたのを、政府及び與党諸君は何と聞かれたのでありますか。これこそ、率直な国民の批判ではありませんか。  遺族が返上したいと叫ぶような対策しかできなかつたことは何ゆえであるか。第一に、二百三十七億の援護費なるものは、対象となる戰傷者、遺族等の当時の実情から今日に至る正確な調査の上に立ち、従来国が行つて来たところの国家補償の処遇や、現行社会保障の諸制度を科学的に検討した上に立つて導き出されたものでなくて、主管大臣や担当政府委員の弁解しておる通り、單に国の財政上の都合によつて、一方的に割当てられたものにすぎないのであります。財政上の都合ということは、言いかえれば、防衛費や、安全保障費や、警察予備隊費や、海上保安隊費や、彈圧費や、そういう再軍備のための予算をつかみとつた、あとの残りかすが、この戰争犠牲者たちへ振り当てられたということにほかならないのであります。この前の戰争で特別大きな犠牲を拂わせられた国民に対して国が報いなければならないはずの予算を、新しい戰争準備の予算が食いつぶしてしまつたわけであります。なぜこんなに不当に低い年金額をきめたか、なぜこんなに不当に狭く対象の範囲を限つたのかということの説明も、これ以外につけようがないのであります。  実例をあげれば、よくわかります。今度の法案では、夫を戰争で失つた妻には年一万円の年金が出ます。月額にして八百三十三円という金高は、一体どういう援護のつもりか。またどういう国としての責任の現われか。また子や父、母などの場合、年五千円の年金、月額にしてわずか四百十六円というのは、どこからはじき出したのかといえば、財政上の都合でという返答しかないのであります。つまり、行政協定によつて軍備しなければならず、民主勢力を彈圧しなければならぬという財政上の都合で、こんな無残なありさまになつたのであります。戰争のため両眼失明、両手のない者、両足のない者で、寝たきり、一生付添いの人の看護を受けなければならないといつた、生ける屍のような人々に対してさえも、年六万六千円、月額五千五百円にすぎないのであります。普通年金と障害手当を併給される一般文官の場合に比して著しく低額であることの理由も、七項症以下の不具廃疾に対して何ら援護の処置も設けず、五体屈強な者がなお生活に窮して死んでいるような世の中にほおり出した、まつたく非人道なやり方も、これ以外に理由はないのであります。  さらに、援護の対象をなぜ軍人軍属に限つて戰争犠牲者すべてに拡大しないのか。特に、国家総動員令によつて強制的に徴用され、実質的に軍人軍属とかわりない軍務につき、その公務のために傷つき、死亡した船員、徴用工、動員学徒、女子挺身隊、また広島、長崎の原爆の子らに対しまして、一切これを除外してしまつたのはなぜか。政府は、その中のほんの一部の人に当時一時金が出ていることや、船員保險の給付があることをもつて理由としておりますが、これが今回の国家補償の措置とはまつたく別個のものであることは、だれでもわかることであり、あれも、これも、せんじつめれば、財政上の理由、つまり行政協定による再軍備と、民主勢力彈圧のための予算の膨張が、この気の毒な犠牲者の費用を奪い取つてしまつたというよりほかに、理由は見出せないのであります。  その上、年齢が多過ぎるとか、あるいは少な過ぎるからとかで制限し、また結婚すればだめだとか、当時は日本人として戰争にかり出されても、今法律がかわつて日本人でなくなつたからいけないとか、同じ日本人でも、戸籍法が適用されねばだめだとか、敗戰と植民地化の責任を犠牲者になすりつけ、夫と子を死なせた人は、幾分でも高い夫の方の身のしろ金だけを受取るとか、更正医療は見るが、内部疾患は見ないとか、はては公務で死んだ人の死亡原因が本人の過失かどうか、死に方の詮議立てまでし、恩給法で行く方が安いときには恩給法をひつぱり出し、他の社会保障の方が安上りのときはこれを引用し、あるときは援護といい、あるときは補償だといい、少しでも出す金を惜しんで、値切つて値切つて買いたたくような商売人根性そのままの、実に血も涙もないやり方で、従順な遺族をして返上したいとまで叫ばしめるに至つたのであります。現に、自由党の前主管大臣さえ、單に金額だけの問題でなく、根本精神の相違だといつて、職にとどまり得なかつたではありませんか。(拍手)  こんな、むちやな内容を明らかにしては、いかな政府といえども、與党といえども、はずかしくて、予算審議に出せなかつたに違いない。国会審議権をまつたく無視して、内容不明のまま、関係法案を作成しないで、二百三十七億という予算だけをほおり出して、しやにむに金額のわくをきめてしまつたのであります。これは二重の罪悪といわなければなりません。  しかも、屈辱的單独講和を結び、行政協定で、いやおうなしに植民地国家としての義務を負わされた政府とその與党は、この外からの圧力と、憤激した犠牲者国民大衆の強い要求の間に板ばさみとなつて、につちもさつちも行かなくなり、現に昨日、質問の打切りのまぎわまで與党の足並はそろわず、互いに非を鳴らし、あるいは参議院に走り、あるいは野党に交渉するなど、見るにたえない狼狽ぶりを示したのでありますが、これも考えてみれば、與党が、デマ宣伝や、秘密外交や、国会無視や、憲法蹂躙まであえてして單独講和や行政協定を結んだ結果であり、自業自得といわざるを得ないのであります。  公聽会で公述された大多数の公述人は、金額が少な過ぎること、対象の範囲を、国家権力によつてひつぱり出されたすべての犠牲者に拡大すること、生活保護法と併給すること、遺兒の育英に国が責任を持つこと、生業資金を得させること、公債を一時に現金化する方法を講じること等を指摘されたのでありますが、これはもとより当然の、最低限の処置であります。しかるに、自由党は、修正の前提として、予算範囲を出ないというわくをきめているので、その八項目の修正というものは、本質的に言つて、何らこれらの’基本的な要求を満たすものではないのであります。  政府は、これを暫定的な処置だといつてごまかしていますが、半年先、一年先において、今日より以上の対策を立て得る何らの証拠も持つていないのであります。むしろ、産業の破壊の状態、国民の窮乏の深刻化、警察予備隊の大増員などを考えますとき、常識でもつてする見通しは完全に逆なのであります。一年先を待つまでもなく、今日八千五百億の厖大予算で、二百三十七億の援護費しか出せないという、ばかげたことは絶対にないのであります。戰争準備と民主勢力彈圧のための予算を排して、戰争犠牲者のために国としての十分な処置を講ずべきであります。これは要するに、政府がかつてに結んだ行政協定と再軍備のために押しつぶされた、支離滅裂な残骸であつて、このようなものを通過させるのは、日本人としての恥辱であります。  わが日本共産党は、再軍備に対しあくまで平和をこいねがう全国の遺族、戰傷病者並びに国民大衆とともに、このような再軍備前提とした植民地的法案を返上し、即時名実ともに備わる補償の措置を国の責任において即刻作成することを主張し、この法案反対するものであります。(拍手
  60. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本案委員長報告は修正であります。本案委員長報告の通り決するに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  61. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 起立多数。よつて本案委員長報告の通り決定しました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十二分散会