○林百郎君 私は、ただいま
議題とな
つておる外務公務員法に対し、
日本共産党を代表して
反対するものであります。
反対の第一点は、本
法案によりますと、大使、公使の任免はもちろん、選考による外務職員の任命制等によりまして、外務職員の任命の実権はま
つたく
外務大臣に握られるばかりでなく、その官職の格付、身分の保障についても、すべて生殺與奪の権が完全に
外務大臣の掌中に握られるという点であります、これは
吉田——をも
つて天皇制を外務省に設けるものでありまして、これは明らかに天皇制官僚機構の復活であります。このことは、やがて国家機構の軍事的再編成と相ま
つて、
日本の全官僚制度にまでこの天皇制的官吏機構を拡張せんとする先鞭をなすものでありまして、まことにワン・マン
吉田総理の望むフアツシヨ態勢を法制化した以外の何ものでもないのであります。(
拍手)
たとえば第十六條査察制度の法制化のごときでありますけれ
ども、これは最もいい例であります。すなわち
外務大臣は、在外公館の
事務が適正に行われているかどうかを査察させるために、密使としてみずから選任した査察使を海外に派潰し、
外務大臣はその査察使の
報告に基いて、必要な
措置をとるという制度であります。これは
外務大臣独裁権の強化のスパイ制度以外の何ものでもないのであります。ことに
吉田外相のごとく側近政治をたくらむ人物が
外務大臣となるときには、査察使には自己の側近者を用いることは、これは当然予想されるのであります。自己の側近者を査察使に用いることによ
つて在外公館に圧力を加えるならば、外交はま
つたく
吉田一家の私物となり、良心的な、硬骨漢的な外交官はしりぞけられて、ひたすら
吉田外務大臣の意を迎え、鼻息をうかがうことにこれ努める茶坊主的な外交官のみが用いられるこのことは、ひいては
日本の外交をあやまたしめ、国威をはずかしめる結果となるのであります。このような、外交を一
外務大臣の独裁にまかせ、その私物と化す道を法制化し、今日再び新たな天皇制的官僚機構の復活を意図する本
法案に対しては、わが党はまず第一にこの点について
反対するものであります。
反対の第二の点は、本
法案によりますと、従来の
吉田秘密外交をま
つたく
法律的に合法化しておるのであります。たとえば第二十七條によりますと、秘密を漏洩した外務公務員は一年以下の懲役、三万円以下の罰金に付するとあるのでありますが、さらに第十九條によりますれば、秘密を漏洩することによ
つて国家の重大な利益を毀損したときには懲戒に付する。それに不服な者は人事院には提訴することができない。
外務大臣に
審査の請求をしろとある。当該懲戒処分をした
外務大臣に請求しろという。そして、この請求を受けた
外務大臣は、これを外務人事審議会の調査と判定にまかせるとあるのであります。ところが、この懲戒処分を受けた外務公務員の救済機関であるところの外務人事審議会の委員は五名でありますけれ
ども、その過半数である三名は、懲戒処分に付した当該本人たる
外務大臣が任命した人であります。これであ
つては、いかに人事審議会があろうとも、これはま
つたく形式的なものであ
つて、
外務大臣の思うままに懲戒処分に付することができるのでありまして、しかも驚くことには、この審議会の審議は、ま
つたく弁護人も付することもできなければ、非公開で秘密裡に審理をするというのであります。これではま
つたく封建時代の切捨てごめんの大名と家臣の
関係であ
つて、民主主義も何もないのであります。かくして、良心的、民主的な外務公務員は、秘密漏洩の名のもとに、何らの救済の道もなく追放されてしまうことは明らかであります。
しかも、われわれがここで最も重視したいことは、一体現在の
吉田外交のもとにおける外交の機密というのは何でありましようか。
吉田外務大臣は、
国民と
国会の
意思を無視して、ま
つたく秘密のうちに売国的な行政協定を締結して、
日本をアメリカの植民地と化したのみでなく、さらに
日本を
中国とソ同盟を仮想敵とするアメリカ帝国主義者のアジア
——の軍事基地として、さらには最近の動向を見ますと、アメリカのしり押しによ
つて、李承晩だとか、蒋介石だとか、ま
つたく幽霊的な亡命
政権と太平洋同盟を締結して、
日本の国土と
国民をあげて反共
——戰争のえじきに提供しようとし、内外の帝国主義者
どもの利益を守ろうとしているのであります。これが
吉田外交における外交の機密であります。このためにこそ、
日本の
国民は再び戰争の危機におびえ、戰争と再軍備の重圧によ
つて、労働者、農民はもちろんのこと、資本家までもが前途の見通しを失
つて、日々の生活に塗炭の苦しみをなめているのであります。
吉田外交の機密とは、この内外の侵略主義者
どもの利益のために国土と
国民を犠牲にすることから
国民の目を欺瞞し、これをおおわんとすること以外の何ものでもないのであります。かかる外交の機密は、むしろ一日も早く天下にあばくことこそが公僕たる外務公務員の
国民に奉仕する道であります。(
拍手)かかる
秘密外交を行う
吉田外務大臣こそが
国民の名において懲戒処分に付せられるものだと思うのであります。
これに加うるに、外務省が行政協定の合同
委員会の
事務を担当するということも、これは既定の事実であります。そうなりますと、
本案にいう外交の機密とは実にアメリカの軍事機密、作戰機密をさすことになり、外務省に対しては特に嚴重に行政協定第二十三條による米軍の軍機保護のための必要な
措置が講じられることは、これは明らかであります。こうな
つて来ますと、
日本の外務省はま
つたくアメリカの国防省の秘密下請機関となり、アジアにおける反ソ反共の陰謀の伏魔殿となるのであります。たとえば、このたび行われましたモスクワ行き旅券問題のごときはその顕著な例でありますけれ
ども、さらには外務省が
日本とアジアにおける民族解放独立運動を彈圧する秘密特務機関の役割を果すことになるのであります。わが党は、このような、外務省をしてアメリカ国防省の特務機関になり下らせるような、この
秘密外交を法制化すこの
法律に対しては断固として
反対するものであります。
ところが、
最後にもつと重要な点は、本
法案によりますと、先ほどの
委員長の説明にもありました通りに、
外務大臣は外務省本省並びに在外公館に外国人を採用することができるということであります。しかも、この外国人に対しては、秘密を漏洩して国家の重大な利益を毀損されても、それを理由にしては刑罰を科することができないという点であります。ここでいう、
外務大臣が採用する外国人とは、現在の
吉田外交の推進している、ま
つたく—
————な、向米一辺倒の外交方針からすれば、そのほとんどがアメリカ人であ
つて、しかもそれが指導的な、重要な任務につくことは想像にかたくないのであります。だからこそ、このアメリカ人が、
日本の外交の機密を漏洩し、国家の重大な利益を害しても、これを理由として刑罰を科すことができないような
方法をこの
法律によ
つて講じてあるのであります。
政府は、外交の機密は
日本の
国民には漏らすことを禁じておりながら、アメリカ人がアメリカに漏らしてもいいというのでありますか。それとも、
日本の外交の機密の判断権はアメリカが有するのであるから、アメリカ人が漏洩したときには、これは機密でないから処罰しなくてもよいというのでありましようか。このようになりますと、ま
つたくこの機密の漏洩というものは、これはアメリカのための機密の漏洩であ
つて、これに違反するアメリカ人には、
日本政府としては何ら一指をつけることができないという
状態になるのであります。だからこそ、
吉田外相が外交の秘密だ、秘密だとい
つて、
日本の役人を懲戒と刑罰で脅迫して、みずからもまた失言だとか何とか騒いでおるときに、アメリカ側では、
日本を含む太平洋軍事同盟の既定方針がすつぱ抜かれたり、再軍備のための憲法改正の既定方針がアメリカ側から放送されたり、行政協定における非常
事態の判定権はアメリカ側にあるとか、この場合、駐留米軍は基地その他の
制限は一切解かれて、
日本の戰力は米軍司令官の指揮下に入るというようなことがすつぱ抜かれたり、あるいは戰場にもひとしい
日本にどうして外資を導入することができるかというような、外資導入拒絶の
吉田外交の裏話がアメリカ側からすつぱ抜かれても、何の
文句も言えない
状態ではありませんか。
この外国人の採用問題と、機密漏洩の刑罰権のないという点は、ま
つたく行政協定中の治外法権の規定、あるいはいかなる反国家的なスパイ行為をなすアメリカ人でも、それがアメリカの駐留軍と直接間接
関係を持つと称する限り、
日本政府はこれを国外へ追放する処置すら絶対不可能であるというような行政協定の諸とりきめと相ま
つて、この
法律はま
つたく植民地的、屈辱的な
法律なのであります。一体どこに国家の安全にかかわる重大な犯罪を犯した外国人に対して刑罰の権利を放棄する国がありましようか。