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1952-01-25 第13回国会 衆議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年一月二十五日(金曜日)  議事日程 第六号     午後一時開議  一、国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説に対する質疑     午後一時十五分開議
  2. 林讓治

    議長林讓治君) これより会議を開きます。  一、国務大臣演説に対する質疑
  3. 林讓治

    議長林讓治君) 国務大臣演説に対する質疑に入ります。苫米地義三君。     〔苫米地義三君登壇〕
  4. 苫米地義三

    苫米地義三君 私は、国民民主党を代表いたしまして、一昨日行われました吉田総理大臣並びに大蔵、安本大臣施政方針演説に対しまして若干の質問をいたしたいと存じます。  今や全国民の間には民族独立の熱情が湧き立つておるのでありまするが、それにもかかわらず、率直に申しまして、総理演説には何ら国民の心を打つものがなかつたように思います。(拍手)また国民とともに日本運命を切り開いて行こうという雄渾な経論を聞くことのできなかつたことは、まこに遺憾しごくに存じます。  私は、まず外交政策に関しまして、政府の所信を伺いたいと思います。すなわち、独立を控えての日本は、自主的な外交方策基調とする世界政策を打立てなければなりません。昨年九月締結されました平和條約は、本年に入りましてから、各国の批准を得まして、わが国主権回復の緒につくことは、もはや確実であります。この平和條約におきましても、なおかつ私どもの満足することのできない点が相当あることは、これまた事実であります。これが改善に向つては、今後も大いに努力を拂わなければならぬと考えるのであります。政府與党筋は、この講和を名誉ある講和だといわれております。しかし、われわれはさようには考えません。敗戦国として厖大賠償を支拂い、領土を失う講和が、何で名誉ある講和でありましようか。ただ、われわれは、敗戦国として寛大な取扱いを受けたその好意を認めることにはやぶさかではございません。多少の不満がありましても、国民の期待するところの、一日も早い独立への窓を開くということについて、われわれは大乗的にこれに調印したものであります。(拍手)  しからば、われわれの希望を達し得なかつた点は何であるか。第一には領土の問題であります。ここに私が伺いたい点は、琉球小笠原諸島信託統治に関連し、米国国際連合に対する提案の問題であります。カイロ宣言には明らかに、連合国領土拡張の何らの意思を有しておるものではないということを宣言しております。琉球小笠原諸島のごとき、歴史的にも民族的にもわが領土であつたものが、たとい名目は信託統治でありましても、日本領土権を奪われるということは、カイロ宣言精神にも反することであり、これら諸島の住民の熱烈な日本復帰希望を抹殺するものであります。このことに反対する諸君意思が私にはわかりません。よつて平和條約の第三條に規定する北緯二十九度以南の諸島に対しましては、米国に保留されておるところの信託統治提案を、ぜひともこれを見合せてもらうように努めなければならぬと私は希望してやみません。(拍手)これに対する総理見解を伺いたいのであります。もし不幸にして、アメリカがこれを断行するという場合になりますならば、せつかくダレス特使によつてとられました好意は非常に減殺されましよう。将来の日米親善関係にとりましても重大なる障害が起ることを私は憂うるのであります。(拍手)もしも米国軍事基地その他必要な箇所がありまするならば、さようなことについては、両国間の行政協定でこれが解決の道があると信ずるからであります。吉田首相は、これに関してどういうふうに考えておられましようか。またその点に対しまして、條約締結後今日まで何らかの努力を拂われておりましようか。この点を伺いたいと思います。  それとともに、千島列島最後的帰属につきましても、われわれは重大な関心を抱くものであります。スターリン首相は、新年初頭のメッセージで、日本国占領下にあるその苦悩に対して理解同情を持つていると言明されました。この言葉ほんとうに真実であるといたしまするならば、何よりもまず歴史的にわが領土であつた千島列島を返還することこそが千万言を費す以上の理解同情でなければならぬと思うのであります。(拍手)本月二十二日、アメリカ上院におきますところのダレス氏の証言にも、対日條約はヤルタ秘密協定を正式に破棄する最初の措置であると申しております。われわれは、平和條約によつて一旦放棄はいたしましたものでありまするけれども、理論的にもまた歴史的にも正しい領土権回復を主張し、世界に訴えることは一向さしつかえがないと思うからであります。(拍手政府はこれに対してどういうふうに考え、今後いかなる方針のもとにこれを処置されるのでありますか伺いたい。またダレス氏の証言をどういうふうに解釈しておられるか、この点も伺いたいのであります。  次に、わが国外交政策基調は、もとより自由主義国家群の側に立つおりまする以上、それと密接なる関係に立たなければなりませんが、これとともに、われわれは地勢的にも経済的にも共同の運命にありますところのアジア諸国家との間にすみやかなる平和回復、通商の促進を熱願するものであります。これと関連して先ごろ政府行つた国民政府の承認に関するこの言明は、いかにも唐突でありまして、その真意は、一昨日の吉田総理演説によつても十分解明されておりません。中国政府選択の問題は、わが国にとつては実に重大な関係を持つものであることは、国民のひとしぐ注目するところであります。もとより、現在中国本土を支配しておりますところの中共政府は、一昨年来、国際連合により侵略者の烙印を押されておりまするから、わが国がただちにこれを承認するということは困難でありましよう。しかし、それとともに、吉田総理大臣は、去る十月の臨時国会におきまして、この問題に対しては愼重な態度をとつております。すなわち、日本としては列国の関係をよく考慮して決定しなければならないと申して、ここしばらく事態の推移を見るという方針を示されておつたにもかかわらず、今回のこの態度は、日本の與えられたるこの環境に対して、何ゆえにさような態度の急変があつたか。国会休会中にもかかわらずこれを行つたのは、どういう状況の変化があつたのか。政府の自由意思によつてこれをやつたというふうに申しておりますが、われわれは、これに対しましても、いささか疑いを持たなければならない。(拍手吉田総理は、お好みの秘密外交というものがありますから、さようなことによつて行われておることであるかもしれませんが、国民は、このような民族運命を決する重大問題を、いつの間にかきわめて少数の人々によつて決定されて行くことは、国家のためにまことに危険であると思うからであります。政府は、この努力手続を何ゆえに惜しんだのでありましようかまた将来どういう手続国民政府との修交を回復するつもりでございましようか。この点に関しまして総理の誠意ある御答弁を求めたいのであります。  また條約の適用を、国民政府支配下に現にあり、また今後入るべきすべての領域に適用される、ということがございます。これは一体どういうことでありましようか。どつちにしましても、過去十数年間の日本中国との関係は、日本国民にとつては悪夢でありました。それと同じように、中国の大衆にとりましても、すみやかなる正常にして平和な国交の回復最大の願望であると思うのであります。かつて日本軍閥政府、今はまた中共政府態度に妨げられまして、隣邦としてのあたたかい交流の機会を得られないことは、両国民のひとしく遺憾にたえぬところであると私は確信いたします。(拍手)  次に、今日国民が最も不安の念と疑惑とを抱いておる点は、自衛力漸増と再軍備に関する問題であると存じます。吉田総理はしばしば再軍備を否定しておりまするにもかかわらず、実際上再軍備は着々強行されておるのではないでしようか。すなわち、今回の予算に現われました防衛費六百五十億を初めといたしまして安全保障経費その他千六百億以上に上る経費は、明らかに軍隊的性格に供せられるものでありまして、これはまさに仮面をかぶつた軍隊の誕生といわなければならぬと思うのであります。(拍手平和條約の成立安全保障條約の成立に伴いまして、わが党はつとに、植民地的支配を脱し、対等の立場で安全を確保するために自衛軍の必要を主張しておりますから、自国の防衛に費用を計上するということに反対するものではございません。ただ、自衛力漸増というが、本年五百億の増額をもつて予算が計上されておりまするから、この点から申しまするならば、むしろ自衛カの急増であります。(拍手)どこの国にも、国内治安保持だけの任務で、これほどの巨額を計上しておる国はないのであります。これは明らかに軍隊創設であると見られてもやむを得ないのでありましよう。しかも、これだけの厖大経費使つて、何ゆえに日陰者の軍隊にしておくのか。公明正大な軍隊でないために、内には国土防衛精神的気魄を欠き、外には国民海外疑惑とを招いておるのであります。しかも総理が、再軍備財政の余裕がなければできないなどと強弁しておることは、国民をいささか愚弄するものであると私は思うのであります。(拍手)  政府は、二千二百億に上る講和関係諸費予備費として提出しておるのであります。これは、かつての臨時軍事費的な性格を表わしておる。この程度の予算の仕訳では、国民は断じて納得することはできないのであります。(拍手政府安保條約を締結しておきながら、再軍備反対の声におそれまして、これが実施を躊躇し、裏面で事実上の防衛軍創設を実行し、いずれかの機会にこれを切りかえて軍隊と名乗らしめるのではなかろうかといわれるのも、かような頭隠してしり隠さないような態度であるからでありましよう。(拍手)この点に対する政府の信念を伺いたいと思います。  次に伺いたいのは賠償の問題であります。最初ダレス特使が発表されました講和原則というものがございます。その講和原則の第六項に、締約国は一九四五年九月二日以前の戦争行為によつて生じた要求を放棄する、と明示しておるのであります。しかるに、平和條約第十四條では、賠償の支拂い義務を正式に承認しました。そうして、その方法役務提供によることを認めるに至つたのであります。従つて賠償は、今日においては国民負担においてこれを支拂うべき義務を生じたのでありますが、まず伺いたいのは、政府は過般来インドネシア代表との間に賠償について交渉を進めつつあつたはずであります。この條約におきましては、その賠償の期間についても、またその総額についても何ら触れておらないのであります。政府は、役務賠償をするにいたしましても、今後何年間ぐらいこれを履行しなければならぬのであるか。賠償は、換言すれば一種の懲罰であります。和解と信頼に立つ講和が、ここでもくつがえされておる。事ここに至らしめたのは、お気に召さぬかもしれませんが、主として現政府自由経済政策であつたのであります。(拍手)、  一昨日、首相及び蔵相、安本長官は、わが国財政経済復興繁栄を謳歌しております。これが自由党の政権をとつて以来の政策の結果だと自己礼讃をいたしておりますが、国民経済は、決して政府の言うごとき、そういうふうな好転を示しておるのではありません。(拍手)特に中小企業、農民及び勤労者生活内容をごらんなさい。積年の自由放任経済のために疲弊困憊の極に達しておるではありませんか。政府の言う復興とは、はたして一部の階層が多くの人々を踏台にして繁栄をほしいままにすることでありましようか。高級料理店は急速に復興しまして、奢侈放縦の風潮はとうとうとして世に流れ、投機的有閑人種が現に現われましていわゆる公用族とか社用族とかいうような新しい流行語まで生むに至つたのも、自由党政府とつ政策の結果ではありませんか。(拍手吉田総理は、新年の記者会見におきまして、これを認めております。それは基礎のない繁栄だと告白しております。基礎のない繁栄だと吉田総理が言つております。私をして言わしむるならば、政府の言う経済繁栄というものは、虚偽の繁栄でありましよう。この見せかけの繁栄政策をとつたのは、明らかに現内閣でありましよう。  この表面的な繁栄を見て、日本賠償能力ありと誤認されて国外に伝わつたことは、皆さん承知通りであります。(拍手)これは国家のために悲しむべきことであると思うのであります。フイリピン、インドネシアその他の被害国民が、戦後日本に来訪されまして日本のこの姿を見て驚異の目を見張つておる。日本経済力国民生活の実体を過大評価したことは、むしろ当然といわなければならぬ。政府が一部業者の運動に動かされたことは事実である。自由放任経済方式とともに国家の大局を誤つたと私は断言してはばからない。これらの国際的反応が、最初に述べましたところの講和原則中に盛られました無賠償主義、この無賠償主義を漸次賠償主義に転移して来た。いまさら現政府人気取り政策がどんなに大きな影響国民に與えたかを知らなければならぬのであります。すなわち、賠償を通じまして今後長く国民に重い負担を負わせることになつたと思うのでありますが、政府はこれに対して反省したことがあるのか、あるいはまたこの賠償問題に対処してどういうふうに考えるのか、政府の猛省を促すとともに、その対策を聞かんとするものであります。(拍手)  次に経済財政政策について伺いたいと思います。終戦後、日本財政経済は、占領下いわゆる経済安定九原則とドツジ・ラインの指令に基いて運営されたことは、皆さん承知通りであります。しかるに、吉田内閣経済政策は、この基本線を脱して、いたずらに無計画、無準備の自由経済を採用し、統制撤廃を急いだ。その結果、たとえば石炭産業に例をとつてみましても、統制撤廃後は値段が下る、価格の騰貴は絶対にないということを政府が保証しております。その保証にもかかわらず、統制撤廃をいたしました今日においては、すでに値段が五割以上上つております。しかも、その必要なる石炭は、産業の必要なる部面に流れないで、値段の高い方にのみ流れるというような現象を来しておることは事実であります。建築制限撤廃を断行したために、たとえば船舶機械建造等に必要な鉄鋼が不急不要な建築物に流れまして、一方には庶民住宅は建たない、反対に、建つておるのは高級料理飲食店のみというような、この産業復興の破行的状態を現出したのは、今の政府のとつておる政策のしからしめたところであると思うのであります。(拍手)  さらにドツジ・ラインのインフレ抑制政策は、産業界に異常なる金融難を招来いたしまして、中小企業といわず、今や大企業にまでその金融破綻が現われつつあるのであります。不渡手形の激増、滞貨増大等産業界全般は不測の深刻なる事態に発展する危険が濃厚であります。従来常に手放しの楽観論に終始しておりました吉田総理も、今回の演説においては、初めてわが国経済基礎のいまだ脆弱なることを認めましてかかる脆弱なる経済財政においては、自立経済達成は困難である、と憂えられておるのであります。しかして総理は、自立経済達成をひたすら外資導入に求めております。私は、今日のような経済政策をそのまま継続いたしまして、ただ外資導入すれば復興するというような考えは、これはとんでもない方角違いだと思う。(拍手)あたかも木によつて魚を求むるような政策であると私は考えるのであります。そこで、政府がどんなにしても、諸君がどんなに言われましても、従来の経済政策をそのまま実行することはできません。必ず転換はもはや避けがたい。しかも、その転換をしなければ日本の国の再建はできないということを私は断言してはばからない。(拍手)  その次に、貿易政策について簡単に質問いたします。日本経済貿易に依存しなければならぬということは、これまたいまさら申し上げるまでもない。朝鮮事変影響を受けまして、特需の増大等によつて俄然好景気を招来したわが国は、ドル資金が一時蓄積いたしまして、ドル資金が少し多くなつた。そこで政府はあわてて、このドル資金が少し余つたために、これを活用して、民間に対して盛んに備蓄資材輸入を奨励した。この備蓄資材輸入ということに対しては、政府は責任を免れることはできないと思う。ところが、ここにこういう現象が起りました。この日本輸入方針が決定したということが海外にわかりましたら、すぐ現地値段上つた。そこで、それでも政府勧誘でありますから、業者はわれもわれもと輸入を競つた。そうして、満腹的な輸入を契約してしまつたときには、もうすでに現地値段が下つた。この差額がおよそ三割以上といわれております。今日、財界の不況は、この政府勧誘による輸入方針のもたらしたところだといわざるを得ない。(拍手)しかも、かように政府備蓄輸入を奨励しておきながら、物がついた、そのついた物に対しての金融を訴えるのに、政府はこれをちつともかまわない。銀行はこれを滞貨と見て、ただ金融を引締める。こういう二重の苦しみで、今産業界は進退両難に苦しんでおるという実情であります。おそらくこの中には、たくさんその関係を持つておられる方があると思う。政府は、この事態、しかも政府勧誘によつてつたこの事態に対して、一体どういうふうな方針をとつて行かれるのか、この点について伺いたいのであります。(拍手)  また香港貿易、それは由来、御承知のように自由市場として各国に開放されております。それでありますから、自然の流れに従つて為替も決せられ、物価もそこに調整されるのでありますが、この為替決済は従来清算勘定地域でありましたのが、昨年の八月、イギリスとの間に新たに支拂協定なるものが成立いたしました。そうして、この香港ポンド地域に編入した。それで、自由市場であるにもかかわらず、在来のドル條項を廃止しまして、そしてポンド貨ドルに振りかえるという自由なやり方が塞がれたのであります。そのために、香港市場では、日本の商人は一割五分内外の不利な立場に置かれました。どういうわけで従来のあの自由市場ポンド地域と認めるに至つたかという点に対して政府見解を伺いたいとともに、現在日本はポンド過剰、ドル不足、こういう現実でありますが、この態勢に対してどういう方策を持つておられるか伺いたいのであります。(拍手)  その次に、電気事業再編成の問題について簡単に伺いたい。全産業国民生活に対する電力重要性は申し上げるまでもないのであります。ところが、このわが国基礎産業中最も不足しておるのはもとより電力であり、しかも最もわが国に恵まれた資源はやはり電源であります。このような重要な電源開発に対しまして、いまだかつて国家の力をこれに貸したということはなかつたのであります。そうして、この方針として、先般日本発送電会社を解体いたしまして、全国地域を九分割して、それによつて日本電力政策を解決しようとした。そのおもなる問題は、そういうふうにいたしますと外資導入されるということだつた。ところが、今日まで約一年、そのことは一体どうなつておるか。九分割会社が九つになつた。重役がふえた。経費がかさまつた。そこで引合わないから電力料金を上げた。しかも、全体に渇水時代になつて電力が不足したときに、この九分割なつたために、電力融通が円滑を欠いたという事案も確かであります。かように九分割案が現に失敗しつつあるということを認めなければならぬ。(拍手)  これを打開するために、今政府は何を考えておるか。このごろ新聞で拝見いたしますと、全国を一つとする公社をつくつて、それによつて電源開発をしようというのである。それならば、日本発送電を何ゆえに解体したか。日本発送電そのもの公共企業体に直せば、そのことが実行できる。しかも電気融通が円滑にできるのです。それを、しろうとの人を各会社重役にしたり、いろいろなまわりくどいことをして、国民電気負担をかけておるというこの現状は、私ども理解に苦しむところであります。(拍手)  そこで、どうしてもこの電気事業に対しては、国家ほんとうに力を加えてやらなければならないことは確かであります。私企業では、有利なところは開発されますけれども、不利なところは開発されません。そこで国家的な見地に立つて国の力をこれに貸すということは当然であります。また外資導入をいたすにしましても、国家補償するのでなければ外資導入はないと私は思う。そういう観点に立ちますならば、今まであつた日発公共企業体に直して、はるかに能率的な——しかも電気料を上げるにしても、こんなに高い電気料にするということはなかつたのでありまして、喜んだのはおそらく重役ばかりであろうと思う。そこで私の伺いたい点は、電気は非常に重要なものでありますから、今までのあやまちはあやまちとして認めて、そうして電気について再検討する意思があるかどうか、こういう点であります。(拍手)  その次に、戦争犠牲者補償の問題について簡単に伺います。終戰以来占領という特殊な條件下に制約されておりましたために、戦争犠牲者に対してはまことにお気の毒な状態にあつたのでありますが、政府といたしましては、政局担当以来もう三年以上、これは今までにも、やろうと思えばできなかつたわけはないのです。そこで、この戦争犠牲者援護について、もつと積極的に、もつと誠意を持つてこれをやつていただきたい。一体、過ぐる太平洋戦争というものは、戦争を指導した者にこそ罪はあれ、当時国家至上要請に強制されて参りました数百万の英霊には少しも罪はないのだ。(発言する者多し)この援護反対する人はおそらくないと思う。やじる人でも、これに反対する者はないと思う。(発言する者多し)それならば一言申し上げたい。この間、お燈明料的なものならば出す、こういう言う。一体そういうことが、この国家のために犠牲なつた方方に対して言わるべき言葉でありますか。(拍手)そういう考えを拂拭して、年金制度であるとか、あるいは生活国家保障方法であるとか、本問題に関する補償の問題は、もはや今では決して遠慮はいらないのです。だから、これを国家財政に重く取入れて、そうしてこのことを断行すべきであると思うのであります。現に橋本厚生大臣が言つているじやないですか。あれが声明に出しております。私は橋本厚生大臣声明に共鳴するものであります。あの声明は、たとい動機は何であつても、とにかく国民感情をそのまま表わしたものです。これを度外視することはできないと私は思う。そういう点に対しまして、吉田総理はどういうふうにこれを持つて行こうとなさるのか、その点を伺いたいと思います。(拍手)  そこで最後に、私は国民精神力高揚という問題について伺いたい。国家民族独立を全うする最大の要素は何であるかと申しますと、第一には、政治の自主性でございましよう。第二には、国民生活安定確保ということでありましよう。第三には、治安防衛力の充実でありましよう。しかし、最後のものは何かと申しますと、国民精神力高揚、そうしてその気魂に富む努力精神でなければならないと思うのであります。しかるに、現代の社会相に現われておりますものは、戦後の通弊ではございましようが、国家基盤の根底である道徳観念は薄らいでおります。また信義は軽んぜられております。不正行為は横行しております。公務員にはひんぴんたる汚職事件があります。(「もつともらしいことを言うな」と呼び、その他発言する者あり)何もうそじやない。これをうそと考えるのは、考える方が間違つております。新聞をごらんなさい。町には公然たる風紀の紊乱事件暴行事件等が、これまた毎日、新聞をにぎわしているではありませんか。権力者は利欲と結んで恥を知らず、無徳者繁栄いたしまして、正直者生活にも窮するというばかを見ているではありませんか。(拍手)まことに末世的な社会相といわなければならない。政府当局者は、今や粛然としてみずから天を恐れ、その徳の足らないことを反省すべきであると私は思う。(拍手)もしもこのような社会情勢でもつてこの祖国再建を推進するならば、私は日本の前途に対して非常な心配をするから、この点は特に申し上げる次第であります。吉田総理は、これに対してどういう所見と、どういう対策を持つておられるか、伺いたい。  なお、今や国内には、独立を契機といたしまして、現在政治の再出発を要望するの声がほうはいとして起つていることも事実です。この政治形態を独立達成とともに新たに出発させようという国民のこの気持は、政府の当事者といえどもこれを認めるところであろうと思う。そこで私は、この際政府が虚心坦懐に世論に聞いて重大なる決意をいたすべきであろうとお勧めする。私は、この政府の心情につきましてお伺いする次第であります。  長い間の御清聽を感謝いたします。(指手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  5. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  過日のサンフランシスコ講和会議が名誉のない講和会議ということでございますが、名誉のない講和会議に全権委員として御賛同をいただいたということは、はなはだお気の毒に存じます。何がゆえに名誉のない講和会議であるかというその理由はすなわち領土の割譲を規定いたしたことであるようでありますが、領土の割譲、すなわち日本が四つの島及びその附属した島に領土を限られるということは、これはポツダム宣言の無條件受諾の結果であります。サンフランシスコにおける講和会議の結果ではないのであります。(拍手)むしろ日本としては、すでに受諾いたした條約上の義務を完全に履行することがすなわち日本としては名誉であると考えるのであります。(拍手)しかるに、行政協定等において琉球、千島の処分をくつがえすようなことは、これはできないのであります。また千島列島についてソビエト政府声明がもしありとするならば、その声明については、お話の通り声明よりは実行せられてこそ、実効があがつてこそ、すなわち千島列島日本に還付してこそ真にわれわれはこれを喜ぶのであります。しかしながら、この列島の処分についても、同じくポツダム宣言の受諾によつて生じた効力であります。今後これをどうするか。平和條約もいまだ発効せざる以前において、こうこうかくかくするというようなことは、ここでもつて断言はいたしがたいのであります。(拍手)  また国民政府中国政府をどうするか。その中国政府との関係は、われわれ日本政府としても、また国民としても、まことに親密な関係がある。それは歴史的にも地理的にも当然のことであります。ゆえに、この中国政府との間の関係を復旧するためにば愼重に考慮する、これは当然であります。しかしながら中国政府は今日分割——わかれております。分裂いたしております。すなわち、台湾政府なるものがあり、また北京政府なるものがある。北京政府はイデオロギーにおいて違うのみならず、日本の治安は常に北京政府によつて脅かされておるのであります。日本の共産党は、使嗾いたして日本の治安を乱しておるのであります。また一九五〇年の、モスクワにおいて調印せられた中ソ友好同盟條約によつて見ても、日本に対する一種の軍事同盟であります。(拍手)この北京政府がその態度を改めざる限りは、日本政府としてはこれと平和関係、條約関係に入るということはできないのであります。(拍手日本の治安を脅かし、日本を破壊しようとする諸君がありますが、日本政府としては——日本の治安を維持し、日本国民の福祉を考え日本政府としては、ただちに中共政府平和條約、平和関係に入ることはできがたいのであります。(拍手)しかしながら、台湾政府は、すでにある中国の一部の領土を現実に支配し、これが統治権を実行いたしておるのであります。交戦団体といえども、ときに條約の関係に入るということがあり得るのであります。いわんや台湾政府は、すでにある領土の統治を現実においていたしておるのであります。これとある関係に入るのが、どこがいけないのであるか。日本の善隣外交の主義から申してみても、日本に隣接いたしておる国との間に善隣関係を打立てて、経済、政治の面において交通を開始する、これが日本国民の利益であります。(拍手)私は台湾政府とある関係に入つても一向さしつかえないと考えるのであります。これが日本の利益であると考えるのであります。その行為の一々を国会に諮り、もしくは輿論に問う、無論異存はないことでありますが、行政の責任は政府にあるのであります。そのいたした政府の行為がいいか悪いかは、国会においてまた国民が自由に批判せられればいいのであります。その批判の結果、政府に非があれば、政府はここにおいて責任をとるべきである。(「とれ」と呼び、その他発言する者多し)とる必要はない。(拍手)  また再軍備々々々ということを言われるが、條約発効後、日本の治安維持のために政府が自衛の手段を講ずる、これまた当然のことであります。すなわち、日本の国力の回復とともに自衛力を増強する、これは当然の処置であります。これは再軍備ではないのであります。これを再軍備なりとしいられるのは、すなわち国民を苫米地君みずからが愚弄するものであると私は考えるのであります。(拍手)  その他の問題については所管大臣からお答えします。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  6. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。私に関する御質問は四点であると思います。  その第一は賠償問題でございます。賠償は当初の無賠償から賠償式にかわつたというお話でございますが、條約第十四條に示しております通りに、初めからきまつておるのであります。すなわち、今の状態といたしましては役務賠償程度しかできない、こういうことに相なつておるのであります。従いまして、條約第十四條の精神にのつとりまして、われわれは誠意をもつて、ただいま交渉を開始いたしておるのであります。善隣友邦の関係を維持しながらまた東亜民族の幸福を考えながら、誠意をもつて賠償問題を解決する考えでございます。  第二の点は、吉田内閣経済政策につきまして失敗であり、これであつたならば外資は来ないというお話でございます。われわれの経済政策が失敗であつたがなかつたかは国民が批判いたしまするが、私の見るところは、一昨日の財政演説で答弁といたしたいと思います。なおまた、今の状態では外資が来ないというお話でございますが、今まで外資が十分に来なかつたの占領治下であつたからであります。従いまして、今後は相当来ると思います。ここに数字を並べて恐縮でございますが、今までに入つて来ました外資は、株式投資が千五百数十万ドル、貸付金が二百数十万ドル、合せて千八百万ドル余り来ておりますし、また技術援助といたしまして、技術料の支拂い金額が年に六百万ドル余りございますので、この点で五千万ドル程度の技術援助が来ておると考えておるのであります。今後日本経済の建直りと、また外資導入に関しまする諸政策を実施いたしまするならば、今までに数倍して外資が来ることは明らかでございます。これはここに断言してはばかりません。  第三の質問は、昨年の一—三月におきまする緊急輸入についての跡始末ができたか、こういう問題でございます。お話の通りに、一昨年輸入の不足に悩みました関係上、外貨予算日本政府の手に入りました機会を利用いたしまして、極力輸入をいたしたのであります。当時、世界の物価高の影響を受けまして、かなり輸入した物資の値上りがありましたために、相当の金を使つたのでありまするが、昨年の五、六月ごろから物価が下落傾向にかわつて参りました。従いまして、商社におきましての、ある程度の損失は見たのでありますが、これは政府、銀行並びに商社が外国貿易に十分なれなかつた結果でございまして、その跡始末につきましては、金融関係方面、政府方面で極力波瀾を少くするように努力いたしまして、大体最近は跡始末がついたと考えておるのであります。  第四の点は、日英貿易協定のうちに香港ポンド地域に入れた理由いかんというお話でございます。これは御承知通りに、香港はイギリス領土であります。しかして、今まではドルのオープン・アカウントで行つておりました。しかしてイギリス政府といたしましては、インド、濠州等と同様に、香港をポンド圏に入れるよう強い要求があつたのであります。われわれは、その際におきまして、今まで通りにした方がいいということを主張したのでありまするが、こういうようにいたしましても、ポンドはあまりふえないようにするからというので、暫定的に一応ポンド地域に入れておるのであります。しかして、これは永久的の問題ではございません。年限が一年間でございますので、日英間の貿易の状況によりまして、いつでも変更を申し述べる権利を留保しておるのであります。今後の情勢を見まして、ポンドのたまり過ぎないようにして、香港地域ポンド地域へ入れてもさしつかえないような貿易政策をとつて行きたいと考えておるのであります。(拍手)     〔国務大臣周東英雄君登壇〕
  7. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。  まず備蓄輸入に関する問題につきましては、ただいま大蔵大臣からお話をいたしましたように、大体の跡始末はできておりますが、私が一つ苫米地さんに申し上げたいことは、他を責むることだけでなくて、この備蓄輸入の奨励につきましては民間の要望もあり、当時の事情として、従来の輸入に関する許可制度に非常にきゆうくつな面があるので、大きく先物契約を認め、金額についても相当大きいことを望むという立場において自動許可制を認めたことは、御承知通りであります。その間におきましては、おのずから輸入業者の間におきましても、輸入をいたすについては、日本における需要の限度を見通して輸入することが日本の行くべき道であります。苫米地さんは油脂について例をあげられました。油脂については、よく御承知でございましようが、当時の事情におきまして、日本における需要の約倍額近くのものを入れた。その底には、全部がとは申しませんが、相当に将来に対する思惑的輸入をやつた跡がないとは考えられないのでありましてそういう面については、われわれは健全なる貿易関係を奨励するために、将来は嚴に戒むべきであると考えるのであります。  第二のお尋ねでありますが、電源開発について、るるお示しがありました。あなたは、現在の電源開発について九つの会社にわけたことが困るということの御質問のようでありました。しかし、あなたの方の考えはやはり五つに分割するということであつて、大体これは五十歩、百歩であります。しかし問題は、電力のごとき開発につきましては急速を要するのでありまするから、政府の新しい案といたしましては、九つの電力会社、また公営並びに自家発電を認め、それの能力をフルに動かすと同時に、今お話のあつた場合のように、重要なところ、ことにその点が経済的にあまり不利なような場合においては、国の経費を投じて積極的に開発に従事する国策的な会社をつくることにいたしたのでありまして、決して私ども電源開発について遅れておるのではなく、推進いたす考えでありますから、御了知を願います。(拍手)     〔国務大臣吉武惠市君登壇〕
  8. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 苫米地さんの、戦争犠牲者に対する援護に関する質問にお答えを申し上げます。  第一点は、今までなぜ戰争犠牲者に対策を講じなかつたかという御質問でございましたが、これのできなかつたことは、私どもも真に遺憾に存じます。しかしながら、これのできない事情につきましては、苫米地さんも十分御了知のことと存じます。(拍手)  第二に、今回とりましたる予算措置は不満であるということでございまするが、私どもも決して十分だとは存じません、しがしながら、一時金として公債八百八十億、なお年金その他二百三十一億は、今日の日本財政事情としてやむを得ないところでございます。将来国力の充実と相まつて根本的に改善をいたす考えでございます。(拍手
  9. 林讓治

    議長林讓治君) 水谷長三郎君。     〔水谷長三郎君登壇〕
  10. 水谷長三郎

    ○水谷長三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、一昨日行われました総理施政方針演説並びに大蔵大臣経済安定本部長官の財政経済演説に対し、若干の質疑を試みんとするものであります。  まず総理にお尋ねいたしたい点は、総理の施政演説は、相もかわらない、従来国民新聞やラジオを通して断片的に知り得たところを羅列されたのみでございまして、そこに独立を迎える日本の外交、内政の基本についての確固たる方針も経綸も見られず、単なるおざなりのものにすぎないことは、まことに遺憾千万であるといわなくてはなりません。(拍手)この際国民の聞かんとするところのものは、まず第一には、外国の占領管理から解放されて、一応形式的に独立の第一歩を踏み出した日本が、いかにしてこの不完全な講和を完全なものとし、不完全な独立を完全なものにするかという点であろうと思います。第二には、日米安全保障條約という変態的かつ暫定的な安全保障ではなくして、いかにして日本の真の独立と抵触しない方法をもつて日本の安全を保障し、かつ平和を確保するかという点であろうかと思います。(拍手)さらに第三におきましては、日本経済自立のため、いかにして世界との自由通商、なかんずくアジア諸国との経済的緊密関係を樹立するかの点であります。これらの重要点につきまして、前述の通り総理演説はまつたく何らの確たる方針を示しておられないのは、遺憾千万であると思うのであります。(拍手)よつて、以下若干の点につきまして総理の意見を聞きたいと思います。  まず中国政府の選択につきましては、去る一月九日、政府は、昨年十二月二十四日付総理ダレス氏あて書簡を発表されました。これによりますれば、総理は、究極においては中国政府との間に全面的な政治的及び経済的な関係を律する條約を結びたいという原則を示しながら、台湾の国民政府との間にサンフランシスコ條約の趣旨に沿った一種の修交條約を締結することとし、これによつて国民政府を、現に中国の一部に権力を及ぼし、かつ将来他の部分にも権力を及ぼすであろうところの政権として、一種の限定的承認を與えることを明らかにされたのであります。同時に、この書簡のうちで、首相は、中ソ同盟條約を非難し、中共政府の対日内部擾乱の意図を断定し、共産主義政府とは條約を締結する意思がない旨を断言されました。  そこで、まず第一に聞きたいのは、このダレス氏に対する書簡を譲られた動機と、これをあの時期に何ゆえ公表されたかという理由をお尋ねしたいと思うのであります。(拍手)一体日本は、サンフランシスコ條約によりまして、一定の批准條件が整えば、内政においてもまた外交においても独立国となるはずではないか。それとも、依然としてアメリカの保護国的地位に甘んぜなければならないのであるか。また同じ條約によつて日本中共政府もしくは国民政府のいずれと講和を結ぶかについて完全なる自主性が與えられているのであるかどうか。しかして、この点は、総理の第十二回国会における答弁に照らし、また米英各国政府当局の発表を通して一点の疑いがないところと私は信ずるのであります。はたしてしかりとすれば、かかる日本の外交の処理につきましては、当然に日本独立達成のあかつきにおいて、日本のみの自主的判断によつて決定すべきものではないかと私は信ずるのであります。(拍手)しかして、この日本方針の決定は、日本の政治的安全や経済的自立という基本條件を念頭におきながら、朝鮮動乱の状況等の国際情勢ともにらみ合せて、最も慎重な考慮の上になされねばならないことは、言をまたないと私は思うのでございます。(拍手総理は、かかる輿論の動向を無視されまして、日本の外交の基本にかかる重要事項について、民主主義の原則を蹂躙し、得意の秘密外交、独善主義によつて今度の決定を行つたことは、まことに遺憾であるといわなくてはならぬのであります。(拍手)率直に申しまして、総理ダレス氏に対するクリスマス・プレゼントは、自発的のものではなく、強要されたものとしか思えないのであります。(拍手)そうしてそれは、ダレス氏のごとき練達なる世界的外交官の手によつては当然に直接強要したはずはなく、対日平和條約の米国の上院における批准を獲得するための道具として不可欠であるという間接の圧力が加わつた結果であることは、ごうも疑う余地はございません。(拍手)このことは、さらにこの書簡が二つの條約の上院上程にあたつて公表されたという事実、すなわちタイミングから見ましても証明されると私は思うのであります。われわれは、この吉田内閣の決定が、はたして時あたかも行われたトルーマン・チャーチル会談において取上げられ、英国当局の同意を得たかの、外交の裏面史については何も知りません。しかし、英国の輿論は、保守的新聞の論調を見ましても、決して芳ばしいものでないことは、総理も御存じであろうと思うのであります。(拍手)以上についての総理の明確なる御答弁を求めたいと思う次第でございます。  次に吉田総理大臣にお尋ねしたいのは、同じ書簡で示した、共産政府とつき合わないという態度についてでありますが、この書簡と、それより先に総理新聞会見における断言は、中共政府の現状が台湾その他のいわゆる未解放地区を残した現状についてのことであるのか、それともより一般的な見解であつて中共政府がかりに中国の唯一の政府の実態を備えたときでも同様であるのかどうか、もし同様であるとするなれば、他の共産政府、たとえば連邦にも適用されるものであるかどうか、この点を明確にされたいと思うのであります。(拍手)われわれは、スターリン首相日本国民に対する年頭のメッセージ、大山郁夫氏に対する平和賞の授與、その他来る四月のモスクワにおける世界経済会議に対する招請等の一連の平和攻勢の実体を認識しつつも、他面、共産主義には反対である、反共だからといつて、隣邦との正常な外交や通商関係をも毛ぎらいいたしまして、不必要な刺戟を試みる総理の外交の非常識にあきれる次第でございます。(拍手)この点に関する総理の所見いかん。  第三に、日本経済自立と世界の平和確保の二つの点から見まして、日本とアジア、なかんずく、遺憾ながら目下のところでは、東南アジア諸国との通商、経済の緊密化と、これら地域経済開発が必要であることは、論をまたないところであると信じます。そこで問題となるのは、サンフランシスコ條約に基く賠償問題でありまするが、この條約に示された不特定な債務のきめ方というものが、関係諸国に対して過大な期待を抱かしめ、他面日本国民に対して深刻なる不安を與えておることは、遺憾千万でございます。(拍手政府は、この問題の打開について、いかなる対策を持つておるのか。例のごとく、新聞の断片的な報道を除いて、国民は国会を通じて明確に聞かんと欲しておる次第でございます。  もちろん、この問題に関しまして、ただいま苫米地氏の質問に対して池田大蔵大臣は、誠意をもつてつておるという御答弁でございましたが、單に抽象的な、誠意をもつてつておるというようなことでは、国民は断じて安心ができないと思うのでございます。(拍手)わが党は、賠償條項の改訂を要求するものではございますが、他面、日本経済自立と、アジアの解放援助の見地から、日本世界の相互扶助計画の一環として、みずからその能力に応じた範囲において貢献をなすことが妥当と信ずる次第であります。しかして、この貢献は、これらの諸国に対する友愛と親善の見地から自発的に行うものでありまして、債務の履行という性格を脱却したものでなければなりません。(拍手)かかる見地からするならば、日本の開発援助の方式は必ずしも技術、労務の提供に限定する要はなく、企業の開発やプラント輸出の方式も採用することができ、またこれをアメリカのポイント・フオア計画、イギリスのコロンボ計画などと総合いたしました国連の計画に組み入れられることも、われわれは考えることができるのであります。以上の点に関する政府の所見を聞きたいと思います。(拍手)  第四は、独立日本の安全保障につきましては、政府は対米依存主義と、国会の権威を無視した秘密外交によりまして、不平等な立場における変態的な日米安全保障條約を締結いたしました。われわれは、国連を現存する唯一の世界的平和機構としてこれを支持し、その肯定の上に立ちまして、その不完全性を是正し、特にその国際安全保障機能を強化いたしまして、究極的には各国軍備の廃止を主張するものであるとともに、世界の現状におきましては、各国の自由、独立と秩序維持の見地からいたしまして、国連憲章第五十一條の集団的自衛権と地域的安全保障制度を、憲法の許す範囲において是認するものであります。しかし、この変態的な日米安全保障條約には反対でございまして、これはよろしく改訂せねばならないと思うのであります。  さしあたつて、まず問題となるのは、第三條、行政協定の問題でありますが、政府の秘密独善外交のもとに、いかなる国権喪失的な協定が仕組まれるのであるか、またいかほど国民の権利義務が制限されるのか、かいもく示されておらないのであります。しかも一方におきましては、政府行政協定によつて国会の白紙委任状を強要し、今般さらに予算面において臨時軍事費的な白紙委任状を要求しておる次第でございます。(拍手)  そこで、とりあえず次の諸点をわれわれはただしたいと思います。第一は、行政協定はいつまでにつくり、これを公表するのか、また秘密協定はあるのかないのかということを聞きたいと思います。第二は、裁判管轄権と治外法権とはいかになるかという点を聞きたいと思います。第三は、防衛分担金は英国、フランス等においても負担するものであるか。われわれは、共同防衛の建前からいたしますれば、アメリカ駐留軍の費用はアメリカ負担とするのが当然であると思つておるが、その点はどうであるか。さらに第四は、日米合同委員会の組織と権限はどうなつておるか。さらに第五には、再軍備に関する約束の有無と、予備隊の性格、その指揮命令権等を聞きたいと思う次第でございます。(拍手)  次に問題になるのは明年度予算でございまして、これは池田大蔵大臣から御答弁を願いたいと思います。明年度予算は、新しい独立の第一歩を踏み出そうとするわが国の進路を、ここ一年にわたつて明確に規定するものであります。従つて、それは何よりもまず、底の浅いわが国経済力の根幹を倍養し、国民生活を安定させる役割をになつているといわねばならないのであります。ところで、今われわれの目の前に提出された昭和二十七年度予算は、はたしてこの役割を忠実に履行しておるといえるであろうかどうか、残念ながら、われわれは、断じていないといわざるを得ないのであります。(拍手)  その理由の第一は、厖大なる講和関係費の内容でございます。防衛分担金、予備隊等の強化費及び安全保障費として計上されたものを合計すれば、驚くなかれ千八百二十億円に上り、総支出額八千五百二十七億円の実に二一%に当るのでございます。この数字がいかに過大なものであるかは、政府原案がこれをば五百億円も下まわる千三百億円であつたことによつても明らかであるのでございます。しかも、その内容たるや、空々漠々として、かつての臨時軍事費をほうふつたらしむる底のものであります。たまたま新聞に報ぜられるところによりますれば、あるいは陸にあつては、警察予備隊を二十八年度中に三十一万人に増強するといい、あるいは海にあつては、海上予備隊なるものを創設し、米軍貸與分を考慮外といたしましても、重装備の二千トン級大型監視船十余隻、一千トンないし五百トン級二十数隻を新たに建造するといい、さらにまた空にあつては、戰闘と哨戒とに当る総数二千機の航空隊を設置するという、かかる種々の報道を読みまして、率然としてこの厖大な軍事関係費に直面するとき、現内閣が平和憲法のわくをかつてに飛び越えて、いわゆる再軍備を実行しようとしておる事実は、これを隠すことは断じてできないと思うのであります。(拍手)  吉田総理は、口を開けば再軍備は行わないと言われておるが、この予算は、かかる総理国民を惑わす声明の欺瞞性を、無味乾燥なる数字の羅列の中に徹底的に暴露したものといわざるを得ないのであります。(拍手)大蔵大臣もまた、そのいわゆる三原則の第一に、防衛力は漸増することを明らかにしておられるのである。われわれは、この予算をもつて、いわゆる再軍備への第一歩とみなすのであるが、大蔵大臣の所見ははたしていかんということを聞きたいのである。(拍手)  理由の第二は、この予算国民生活の安定との関係についてであります。さきに述べた厖大なる講和関係費は、みな非生産的な支出でありましてそれ自体としては有力なるインフレ要因でございます。しかも、それは内政費を削つてしぼり出したものでありまして、内政費のみを比較するならば、明年度は今年度に比して相当額減少しておるといわざるを得ないのであります。従つて、それはすでに国民生活を圧迫する巨大な圧力を内に蔵しておる。政府の統計数字によつても、一昨年の朝鮮事変前まで一路上昇の道をたどつて、戦前の七五%まで回復いたしました国民の消費水準は、事変勃発とともに急激に下降カーブを描きまして、昨年八月には六五%まで落ち込んでおるのであります。この数字は、その後若干回復いたしましたが、今日またこの予算を契機といたしまして、この上昇カーブは逆転して下向きになる危険にさらされておるのであります。かかる切迫した情勢のもとにありながら、政府が社会保障関係費、失業対策費に計上した金額は、国民生活安定のためには不可欠の支出であるにかかわらず、総支出のわずか九%にすぎないのであります。(拍手独立の好機に喜び勇んでパンを求めた国民に対して、無情なる吉田内閣は石を與えるということしか知らないのであります。(拍手)  アメリカ並びに西ヨーロッパにおきましても、「大砲かバターか」の問題は、それらの国々の政治家の頭痛の種となつておることは、諸君御存じの通りであろうと思います。しかしながら、敗戦によつて大打撃をこうむつたわが国経済が直面しておる問題は、こんな、なまやさしいものではございません。わが国におきましては、「大砲かバター」でなくして、「ピストルか梅ぼしか」が問題であろうと思うのであります。(拍手国民が水を飲み、梅ぼしをかじつてつくつた軍隊に、祖国防衛精神が充満するわけは断じてございません。(拍手)  わが党は、「再軍備よりも生活安定」のスローガンを掲げまして自衛の第一歩として、まず国民をして安んじて日々の生活を送り得る最低生活を保障することを主張するものであります。(拍手)そして、そのためには、まず何よりも講和インフレを抑圧し、講和関係費をできる限り緊縮することを強くわれわれは要求するのであります。しかるに、この予算は、講和関係費においては、さきに述べたように政府原案を五百億円も上まわり、防衛分担金はアメリカ側の負担分より百億も多く、さらにまた賠償に至つては、海のものとも山のものともわからないのでございます。大蔵大臣は、かかる予算をもつて、その三原則の一つにいう国民生活の水準はこれを切下げないということが、はたして実現できるかどうか、この点をはつきりと御答弁願いたいと思うのであります。(拍手)  この際特に大蔵大臣に念を押しておきたいことがございます。賠償、外債の支佛い、対日援助返済、連合国人財産返還などの経費を、前年度分の繰越し百億円を加えて三百億円のわくに納めておられるのでございますが、はたしてこのわくの中にとどまり得るかどうかは、大きな疑問であるといわなくてはなりません。また安全保障費五百六十億円は、その臨時軍事費的な性格にかんがみまして、どこまで膨脹するかわからないのであります。さらにまた講和関係費のために削減された内政費は、総選挙を前にして、自由党としては何とかしたいところであろうと思うのであります。しかも、大蔵大臣演説において、租税收入の見積りが過大にあらずやという議論を聞くと告白しておられる通りに、来年度の国民所得五兆三百億は、きわめて甘い水増しといわざるを得ないのであります。(拍手)この上補正予算を組んで、国民からこれ以上租税を取立てることは、勤労大衆の生活にとつては、まさに大きな脅威であるといわなくてはならぬのであります。(拍手日本独立の年に編成された初めての予算といたしまして、あとからまた増額をはかるような補正予算は絶対に愼むべきであります。大蔵大臣は、補正予算なしにこの予算で一年間を乗り切つて行ける自信があるかどうか、この点をはつきりさせていただきたいと思います。(拍手)  第三の問題は、安本長官に対しての御質問でございます。それは国民経済予算との関係についてであります。この点につきましては種々の問題がありますが、ここでは、ただ一つだけを取上げて、周東安本長官の御答弁を煩わしたいのであります。  ドツジ超均衡予算後、一時は急激に收つてつたインフレーシヨンも、最近に至りまして、再びその頭を持ち上げて来ております。財政面における画期的な黒字は、金融面における赤字、すなわち日銀貸出しの増加によつてカバーされて今日に至つていることは、識者のひとしく認めるところでございます。赤字公債発行のあるなしにかかわらず、依然として日銀の窓口からは、紙とインキで刷つたお札があとからあとから流れ出て帰つて来ないという点は、少しもかわりはないのであります。このような状況のもとにおいて健全財政を誇ることは、まさに頭隠してしり隠さずというほかはございません。(拍手)  しかも、われわれの眼前にある光景は、札を抱いて餓死するこじきの姿ではございません。われわれが見るのは、オーバー・ローンに悩む銀行であり、輸入金融のやり繰りに詰つて倒産する貿易商社であり、重税にあえいで一家心中する中小企業であり、また低賃金と首切りに悩む労働者であり、さらにまた低米価と肥料高に悩む農民の姿であります。一方また東京のまん中には、トルコぶろが現われ、大臣寄贈の花輪を飾つたキャバレーが国民を驚かしておるのであります。(拍手)かかる、あさましい光景は、決して偶然の産物ではございません。それは、現内閣が現在までとり来つた行き当りばつたりの自由放任政策の最も端的な表現でございます。(拍手)  この病的な現象を抜本的に退治する道は、わが党が年来主張するごとく、電力石炭、鉄鋼、造船並びに食糧を中心にした計画経済をば、思切つた金融統制とともに断行いたしまして、特需景気以後特にいびつとなつわが国経済の構造を正常なる状態に立ちもどらせ、その根幹を培養する以外にはないのであります。(拍手)しかるに、現内閣は、深刻化する世界的な軍拡経済のもとにありながら、かびのはえた、旧態依然たる自由放任政策にしがみつきまして、国際経済の大勢に逆行する孤児となろうとしておるのであります。(拍手)  かかる状況を眼前にいたしまして、しかも、かかるインフレ要素をかかえ込む分不相応な予算をもつて、昭和二十七年度のわが国経済は、はたしてインフレの大波をしずめて、難破することなく、無事に安定の港にたどり着くことができるであろうか。一昨日の安本長官の長々とした演説のうちには、インフレのイの字も述べられず、確固たるインフレ対策を聞くことができなかつたのは、きわめて残念でございます。安本長官は、はたしていかなるインフレ対策をお持ちであるか、率直にお聞きしたいと思う次第であります。(拍手)  なおこれに関連いたしまして、安本長官は、昭和二十七年度の貿易及び重要物資の生産並びに国民所得につきまして、一昨日の長い演説のあとに、ちよつぴりと若干の見通しを述べてはおられるのでございますが、われわれの知りたいのは、そういうことではなしに、政府のいう自衛力の漸増計画に対処するところの長期の経済政策であります。この漸増計画は、さきに述べたように、ほとんど際限なく膨脹する危険をはらんでおるのでございまして、明年度予算においては、わずかにその頭だけが現われたにすぎないのであります。この計画が着々と実行に移されますと、わが国経済の前途に、はかり知れぬほどの影響を與えると思うのでございますが、安本長官はこれに対処するいかなる長期的施策を持つておられるか、どうか率直にお答えを願いたいと思う次第でございます。(拍手)  以上、私は、吉田内閣政策がとうてい国民生活に安定と希望をもたらすことができないゆえんを説明して参りました。しかしながら、実はこのことは、私はよりも、ほかのだれよりも、ここに並んでおられる吉田総理以下の閣僚諸君及び與党たる自由党諸君が最もよく知つておられる点でございます。何とならば、諸君は、その施策が必ずや勤労大衆から巨大な反撃を食らうことを知つておるがゆえに、ここにその反撃をば前もつて封ずるために、憲法に定める基本的人権にはほおかむりをして、治安立法を制定し、労働三法を改悪して、弾圧の大だんびらをとぎすまそうとしているからであります。(拍手)  治安立法中、本国会に提出予定の団体等規正法案は、稀代の悪法とうたわれ、われわれ無産運動に従事した者には、残酷きわまりなき弾圧の魔手を振つた、かの治安維持法にまさるものと言われておるのでありまして、(拍手)これに対しては、労働組合その他の民主団体は言うまでもなく、弁護士会からも猛烈な反対の声が上つておるほどであります。これは民主主義の最後のとりでである基本的人権を守ろうとする良心を持つものとして当然の行動であろうと思うのであります。(拍手)何となれば、同法によれば、官僚の一片の通牒によつて、時の政府を批判する一切の言動はことごとく圧殺され、さらに進んで警察法を改正して国警と特審局とを統合し、全世界の不信を買つた戦前の特高警察の復活をたくらんでいるからてあります。(拍手)さらにその他ゼネスト禁止法案、集団示威行為取締法案、労働法改悪などによつて、労働組合は、そのただ一つの武器であるストライキ権はもちろんのこと、基本的労働権は実質的に奪われまして民主団体の一切の大衆行動は日の目を見ることができなくなろうとしているのであります。しかも、そのきざしは、去年の暮れ行われました京都の市電・市バスストに対する弾圧となつて現われたのであります。これは明らかに、敗戦の苦悩という莫大な犠牲を拂つてかち得ましたととろの民主化のコースを逆行して、再び戦前の暗黒政治に舞いもどろうとするものであります。(拍手)一体政府が、かかる反動的諸法案を本国会に提出する所存はどこ、にあるのか、木村法務総裁並びに吉武労働大臣の所見をわれわれは伺いたいと思います。(拍手)  なおこの際ついでにお伺いしたいのは、あの京都市電従業員の全員休暇戦術は、スト権を奪われた地方公務員としてはやむなき行為とわれわれは認めるものでございますが、木村法務総裁は、この行為は地方公務員のスト行為を禁止した政令二百一号に違反するものと考えるやいなや。われわれは、かかる検挙は明らかに憲法違反と考えられるのでありますが、法務総裁の見解いかんということを聞きたいのであります。(拍手)さらにまた、この検挙に便乗いたしまして、被疑者八名を首切つた京都市当局の行為は、明らかに不当労働行為と考えるのでありますが、労働大臣の所見はいかん、これを承りたいと思うのであります。  私は、今を去る二十三年前、昭和四年の第五十六回帝国議会におきまして、治安維持法の改悪に反対して、無産政党議員を代表いたしまして、日比谷の旧議事堂の壇上におきまして、時の田中議一内閣に対決したことがございます。     〔議長退席、副議長着席〕 そのとき、私は、働く者のパンと自由とを求める声は、いかなる狂暴なる弾圧をもつてしてもこれを圧殺することはできないこと、歴史に逆行する近藤勇の蛮勇は、先見の明ある勝海舟の江戸城明渡しに及ばないゆえんを説いたことがあります。田中内閣のときから露骨となつた、無謀なる大陸侵略のさんたんたる末路は、すなわち現在のわれわれが、みずから身をもつて痛切に体験しつつあるところであります。私は、今日再び歴史の一大転機に立ちまして勤労大衆の生活を守り、その基本的人権を擁護せんがために、当時と同じ警告をば、田中内閣の外務次官たりし吉田総理に発ぜざるを得ないことは、日本のためにまことに悲しむべきことであろうと思うのであります。(拍手吉田総理は、近藤勇の道を選んで、新撰組ならぬ自由党諸君と心中をするか、あるいは勝海舟の道を選んで、あつぱれ賢宰相の名を後世に残すか、いずれの道を歩もうとされるのか、総理の所見を私は聞きたいと思う次第であります。  最後総理にお聞きしたい点は、高知県知事選挙にも明らかなように、失政相次ぐ吉田内閣に対しては、民心すでに遠く去つたものと言わなくてはならぬのであります。(拍手)しかも日本は、来るべき講和條約発効を機といたしまして、ポツダム政治から独立政治へ移行せんとしておるにもかかわらず、総理は任期一ぱい政権を担当すると豪語されて、解散を要求する世論をまつたく無視されておるのであります。しかしながら、内閣の命数を決定する最後のものは、これは吉田ワン・マンのカでは断じてなく、輿論以外の何ものでもないと私は考えておるのであります。(拍手)民の声は神の声と言われております。総理は真に謙虚な気持になつて、この神の声を聞き、国会を解散して、世論のさし示すところに従うべき用意ありやいなやということを聞きまして、私の演説を終ろうとするものであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  11. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  水谷君は、サンフランシスコにおける講和をもつて不完全の講和となし、その條約による独立は不完全なる独立ということの御意見でありますが、政府は不幸にして全然これと見解を異にいたします。講和條約は完全なる條約であり、講和條約発効後の日本は完全なる独立国と私は確信いたします。(拍手)また安全保障條約は暫定的であり、変態的であり、また不完全であるという断言でありますが、不幸にして今日はその通りでないのである。今日は集団攻撃に対して集団防衛をなすのがこれが常態であり、完全なる條約であり、正則的條約であるのであります。この條約を結んでどこが悪いかと私は言いたいのであります。共産党は別である。(拍手)  中国問題については、この前私が説明いたしましたが、私のダレス大使にあてての書簡は、米国における上院の講和條約審議に利益ありと考えて私が起草をいたし、しかしてその発表についても同意いたしたのであります。現にこの書簡は上院の審議を有効に促進しておることを確信いたします。(拍手)英国において、この書簡に対して不満な意向でありますが、日本政府は、いまだイギリス政府から何らの抗議を受けておりません。  また国連関係についてお尋ねでありましたが、イデオロギーの違いはとにかくといたして、現に未帰還者が三十余万あるということ、また中ソ友好條約が存在する限り、また日本の共産党をして日本の国内の治安を乱す限り、また歯舞、色丹等の諸島占領して返さざる限りは、日本政府としてはソ連との間に平和條約に入ることは断じていたしません。(拍手)  行政協定は、これからいたすのであります。これから協議に入るのであります。ゆえに、その内容を示せと言われても、示しようがないから、示すわけに行かない。この行政協定は、むろん日本政府の責任においてこれを協定して、しかしてその結果を議会に協賛を求める、これが代議政体あるいは民主政体の常道であります。秘密外交でも何でもないのであります。  次に、解散するかしないかという、依然としてのお話でありますが、民心いまだ去らず、輿論はますますわが内閣を支援いたすものとして、これが聞えざる声であると考えます。ゆえに解散はいたしません。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  12. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 永谷君から賠償についていろいろ御意見がありましたが、政府としては、御承知のようにインドネシアとはすでに予備的話合いを了しておりまするし、またフイリピンとは、ただいま話合いを始めんといたしております。いずれも誠意をもつてこれに当るつもりでおります。またわれわれの誠意は、相手国にも十分認識されておると信じております。  なお水谷君のいろいろ経済協力に対する御意見がありましたが、これは御意見として承つておきます。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  13. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。御質問の点に関しましては、一昨日の財政演説に申し述べたところで、繰返す必要はないと思うのでありますが、それ以外の問題について申し上げます。  大体予算のわくにつきましての御質問はなくて、その八千五百二十七億円のわけ方についての問題が多いようであります。しかして私は、八千五百二十七億円について、内政費と国際関係あるいは治安関係の費用をどの程度にするかというのが一番の問題であつたのであります。しかして、来年度におきましては国際関係並びに治安関係費が増しまするが、内政費を極力増額しようととて努力したのであります。  そこで、今内政費の問題について申し上げまするが、大体内政費は、昨年六千三百四十億円であつたのが、本年度は六千四百九十四億円となります。しかして、最も関心のありまする社会保障関係、労働関係の方は九百五十一億円と、昨年に比べまして二百四十六億円の増加をいたしております。(拍手)また食糧増産その他日本経済再建に必要でありますところの農林水産関係におきましては七百九十二億円と、昨年に比べまして百四十億円の増加をいたしているのであります。(拍手)またわれわれの最も熱望しております災害復旧、治山治水につきましては六百十七億円と、昨年度に比べまして百十一億円の増加でございます。また多年熱望しておりました軍人遺家族に対しましても二百三十一億円を計上しておることは御承知通りであります。かくいたしましたことは、租税収入も相当ふえましたし、また問題の外国為替特別会計への繰入れ八百億円が三百五十億円で済んだことも、そのおもなる原因であるのであります。従いまして、内政費としまして昨年度よりも相当大幅にふやしておりまして、国民生活安定と経済復興を企図いたしているのであります。  次に治安関係並びに国際講和関係の費用でございますが、治安関係の方あるいは国際関係の方では、昨年度国際通貨基金加入を入れまして千五百九十六億、大体千六百億円であつたのが、二千三十億円になつたのであります。これは五百億円余りふえましたが、賠償その他治安等でこのくらいで済んだことは、まあまあといわざるを得ないと思います。内容について申し上げますが、防衛支出金につきましては、水谷さんは、米国軍の駐留であるから、これを米国軍が見るべきではないかというお話でありますが、各国の例をごらんになつたらおわかりになりましよう。米国の駐留軍の費用の分担につきましては、各国別々であります。フィリピンのように、全額アメリカのもありましよう。またイギリスのごとく、地代その他不動産の賃借料だけのもありましよう。またフランスのように……。     〔発言する者多し〕
  14. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 静粛に願います。
  15. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君)(続) フランスのように、米国軍の費用を相当負担している国もありまして、まちまちでございます。ただ、これはその国の経済事情、その国の防衛力に対しまする支出の金額の兼ね合いできまる問題であります。しかして、私は財政演説で申しあげましたように、自衛権を行使するに有効な手段を持たないわが国といたしましては、防衛のための暫定措置として米軍の駐留を希望したのであります。その経費の一部をわれわれが負担することは当然であります。ただ問題は……(「売国奴だ」と呼び、その他発言する者あり)ただ問題は、米国軍のための、米国軍の装備あるいは被服食糧給與は全部アメリカ負担になつているのであります。ただ、アメリカ日本で使います金の半分程度を負担するのは、日本の現状から申しまして、私はやむを得ないところと考えているのであります。  安全保障諸費の問題につきましては、財政演説で申し上げましたように、一応は施設費あるいは物件費その他を予定いたしておりますが、行政協定の内容がはつきりいたしましたら、そのときにはつきりいたします。  なお賠償の問題について、水谷さんは経済援助とごつちやにしておられるようでありまするが、日本政府としましては、賠償賠償、東南アジア開発のための援助は援助と、はつきり区別しなければならぬという方針で進んでおりますから、御了承願いたいと思います。  なお再軍備についての御質問でございますが、私は再軍備とはいかなるものを言うのか、まず聞きたいのであります。ただいまのお話に、飛行機二千機とか、三十一万の軍隊とかいう話でございまするが、御承知通り、飛行機二千機をこしらえましたら、どのくらいお金がいるとお考えになりますか。二千億円以上飛行機だけでいるのであります。     〔発言する者あり〕
  16. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
  17. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君)(続) また三十一万の人に鉄砲から大砲まで持たしたら、どれだけ金がいるとお思いになりますか。日本経済状態は、国民所得から申しまして、再軍備を云々するのはまだ早過ぎます。——まだ早過ぎます。(拍手)私は大蔵大臣として、再軍備はまだ早過ぎる、こう申し上げておきたいと思うのであります。  また税収入について水増しとおつしやいますが、税収入を水増しをした場合は、いまだかつてこの大蔵大臣にはありません。いつも税收入は見込みが少な過ぎたというので補正予算をしておるのが例ではございませんか。私は、税政入の水増しは絶対に増税と同じようにきらいでございますから、いたしません。  なお補正予算を組むか組まないか、こういう御質問でありますが、今のところは組みません。補正予算を組まないつもりであります。しかし情勢によつては、政治は生きものでありますから、情勢によつては組みます。今のところは、一応組まぬとお答え申し上げます。(拍手)     〔国務大臣周東英雄君登壇〕
  18. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 水谷君にお答えをいたしますが、現在のインフレをどうして克服するかというお尋ねであります。現在の状態がインフレ的かどうか、これには疑問がありますが、しかしインフレに対する考えといたしましても、社会党が内閣をやられておりました二十二、三年の状態と今日の状態とは、おのずから対策が違つて参ることを御承知願いたい。前に片山内閣がおやりになつたときには——社会党内閣の責任のみとは申しませんが、生産が戦前の七、八十パーセントしか伸びず、供給が需要に伴わずして、物価と賃金の悪循環をしておつた時代と今日は、わが党内閣の過去三年における努力によつて、生産指数が戦前の一四%にまで伸びておつて、未稼働設備と豊富なる労働力を活用するならば、なお戦前の二倍まで生産を上げ得る状態において、インフレをどうして克服するかということについては、おのずから処置は違つて参ると思うのであります。(拍手)水谷君は、統制をすればというお言葉がじきに出ますが今日の状態におきましては、単に統制することによつてのみインフレが済むものとは思いません。私どもは、わが党の政策にのつとつて、積極的に現在の未稼働設備を稼働させて生産を増大することこそ第一義のインフレ対策であります。ただその場合に、世界経済と協力する立場において、世界的な稀少な物資等に対する適正需要をはかるために使用制限等をやる部面があるかもしれませんが、今日はあくまでも自由経済にのつとつて生産を増強することがインフレ対策であると考えます。(拍手)水谷君が非常に御苦労なさつておつくりになりました石炭国管をまだ夢見ていらつしやつて、今日わが党はあくまで鉄、石炭等の国営とおつしやいましたが、あなたが御苦労なさいました石炭国管当時、石炭の生産量は一人当り五トン足らずでした。今日わが党が石炭国管をはずして、現在自由主義経済において一人当り十二トン以上を越える生産量になつていることは、明らかに統制経済のみによつてはいかぬということを示して余りあるものであります。  国としての生産計画についてのお話がありましたが、五年、十年先の経済ということは、見通しは別として、困難であります。しかし、一昨日の施政方針演説において、二十七年度における生産計画といたしましては、産業指数一四六、鉱工業生産一四〇、農業生産一〇二%を目途としております。電源の開発をこれに即応させておりますが、一昨日も申しましたように、今日の未稼働設備を完全に動かすためには、電力の増強さえあれば倍まで行くということを一つの目標に考えております。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  19. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 水谷君にお答えをいたします。  政府は、正常なる団体活動をごうも規制する意思はありません。憲法に規定されました基本的人権は、十分にこれを尊重するものであります。平和民主国におきましては、治安の確保と社会秩序の維持はこれは先決問題であります。しかるに、近時往々にして暴力をもつて治安を撹乱し、社会秩序を乱さんとする団体あるいは組織が地下に行われておるのであります。現に札幌におきまして警察官が射殺されたような事件が起つております。この平和日本において、かような行為が行われるということは、まことに悲しむべきことであると私は考えておるのであります。かような団体あるいは組織に対しては、われわれは国民とともに徹底的にこれを防遏しなければならぬと考えております。(拍手)これは思想背景が右たると左であるとを、ごうも問わないのであります。政府は、ここにかんがみるところがありまして、これらのいわゆる暴力的秘密団体組織に対して対処する法案を、今考慮中であります。近く成案ができますれば、各位の御審議を願わんとしておる次第であります。  なおゼネストについて一言申し上げます。政府は、正常なる争議行為に対しては、その種のいかなるものといえども、これを規制する意思は断じてありません。しかしながら、いかなる権利といえども、憲法によつて明文に示されてあるごとく、公共の福祉に服さなければならぬのであります。公共の福祉が先決の前提であります。公共の福祉を害するようなものに対しては、これまた政府は規制せざるを得ないのであるということを御了承願いたいのであります。  最後に、京都の市電の問題を申し上げます。公営企業体につきましての従業員は、地方公務員規則によりまして、政令第二百一号の規定が適用されるのであります。従つて、かような罷業は禁止されていることを御承知おき願いたいのであります。(拍手)     〔国務大臣吉武惠市君登壇〕
  20. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 水谷さんの御質問にお答えをいたします。  第一は、基本的人権を蹂躪するというお尋ねでございますが、私どもは、正常なる労働運動に対しましては、決してこれを弾圧する意思はございません。われわれは、憲法に規定されましたる基本的人権については十分尊重をして行くつもりでございます。  第二に、労働三法の改悪についての御質問でございますが、私どもは、これまた決して改悪をするつもりはございません。しかし、日本は近く独立をいたします。独立後の日本経済の自立は容易ではございません。従いまして、これがためには労使ともに御協力を願わなければならぬと思います。つきましては、いたずらなる争議はこれをできるだけ避け、合理的なる機関によつて、合理的にこれが解決をはかりたいと思つているわけであります。(拍手)なお労働條件につきましては、私ども、できるだけ国際水準はこれを保持して行くつもりでございまして、これらの問題は目下法制審議会において審議中でございます。この答申を得まして、適当なる処置を考えたいと思つているわけであります。(拍手)     〔水谷長三郎君登壇〕
  21. 水谷長三郎

    ○水谷長三郎君 簡単に再質問いたします。  私が明年度の予算は実質的には再軍備第一歩の予算ではないかということを言つたに対して、池田大蔵大臣は、再軍備とは何ぞやということを聞きたいといつて開き直られました。その心臓の強いことはまさに驚くべきでありまするが、それでは私は池田大蔵大臣にお尋ねします。古今東西、三千世界金のわらじをはいて探しても、警察は警察であつて、バズーカ砲を撃つたり、大きな大砲を撃つたり、また、でかい練兵場を必要とする警察が一体どこにあるかということを、私は大臣に聞きたいのであります。  さらにまた補正予算の問題でございますが、私は、ただいまのところやらない、そんなことを聞いておるのじやありません。何ぼ自信のない予算でも、すぐ、直後に補正予算を組む、そういうことはありません。私がさきに申しましたように、大体予想される総選挙の直前に、いろいろな点で補正予算を組むのではないか。それは、本年度の、いわゆる水増し国民所得の上からいつても、さらに国民生活に大きな脅威である。できることならば、それをやらないようにしなければならぬということを、私は聞いておるのであります。これは見解の相違であるということでは逃げられません。月日が来れば、すぐに補正予算が出るか出ぬか、これは事実が証明いたしますから、私はもう少し具体的な、はつきりした答弁を得たいと思うのであります。(拍手)  さらに周東君でございますが、これはいつもの周東君の例でありますが、片山内閣と、三年間の自由党内閣政策を比較して、もうこれだけ生産カーブが上つたじやないかということを言われます。これはまことにタイムを無視した、幼稚な議論であろうと思うのです。すなわち、三年間たつて、これだけ生産カーブが上るということは、たとえて言うならば、京都駅で切符を買うて急行に乗れば、九時間たてば東京へ着くというのと同じであろうと思うのであります。(拍手)私が聞きたいのは、この三年の間において、日本のいわゆる生産カーブというものは、あるいは西ドイツ、あるいはベルギーのそれらに比べてどうか。そういう点を、われわれはあなたから聞きたいと思うのです。  さらにまた総選挙の問題につきまして、総理から、人心いまだ去らずという、実に明快な御答弁をいただきました。総理の地元において、総理のかわりに衆議院議長が、あれほど長く応援演説をされたにかかわらず敗れたということは、これはもう人心すでに去つたと、われわれはいわざるを得ないのであります。(拍手)それにもかかわらず、人心いまだわれにありということであるならば、私は、あなたの心臓に敬意を表するとともに、なお今後の御健闘を祈つておきたいと思う次第であります。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  22. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいまの御質問でございまするが、警察予備隊は名の示すごとく警察予備隊でありまして、軍備ではございません。しかして、警察予備隊がいかなる訓練をしているかということは、日本の置かれた現状から来るものでありまして、軍備とは別でございます。  次に、総選挙を目当にして予算を組むようなことはいたしません。総選挙を目当にして予算を組むようなことを、この大蔵大臣はいたしません。(拍手)     〔国務大臣周東英雄君登壇〕
  23. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えします。水谷君は何が誤解しておるようだと思いますが、私は時間的に少しもずれを感じておりません。インフレをどうして防止するかと言うから、わが党はあくまで生活増強が第一義だ、しかして生産増強について、あなたは統制経済でなければいかぬとおつしやるから、かつてあなた方が内閣をとつていたとき統制経済をおやりになつたかしらぬが、われわれはその後において、自由経済の基盤の上に立つて今日の生産の増強を見ておるということを申し上げたのであります。(拍手
  24. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 梨木作次郎君。     〔梨木作次郎君登壇〕
  25. 梨木作次郎

    ○梨木作次郎君 私は、日本共産党を代表して吉田総理関係大臣に質問せんとするものであります。  吉田政府とその同調者は、昨年秋、平和と独立を願う国民反対を押し切つて、単独講和と日米安全保障條約を承認し、批准したのである。この結果、われわれがあらかじめ警告した通り日本国民は再軍備、米軍の駐屯、軍事基地の提供、戦争協力、中日貿易の禁止を━━されている。一体われわれは、だれのために再軍備するのか、だれのために戦争するのか、何のために中国貿易してはならないのか、日本国民のあらゆる苦しみは、この二つの條約を結んだことから生れている。(拍手)われわれは、このことを考えるとき、民族的な怒りを込めて、吉田総理とその一味の政治的責任を国民の前に明らかにし、これを追究せずにはおられないのである。  第一に、戦争と再軍備について質問する。吉田総理は、しばしば再軍備はしないと公言した。しかし、これはまつた国民を愚弄し、瞞着するものである。━━━━と政府との間では、すでに十五箇師団、三十一万の陸軍と、五万の海軍創設案が━━━━政府はその第一着手として、昭和二十七年度から警察予備隊三万五千人の増員、海上予備隊六千人の増員を決定している。これはまさしく日本陸軍、日本海軍の復活ではないか。(拍手)  かかる再軍備が、祖国日本運命国民生活に何をもたらすか。平和と独立を與えるという二つの條約の締結が進められつつある陰で、日本全土にわたる軍事基地の急速な増強、建物の接收が実行されている。たとえば北海道では、一九五一年中に、新しく六千五百万坪の土地と、八万八千坪の建物が接収されたといわれる。しかも土地は、坪当りわずか七銭で取上げられているという。また全国の海岸十一箇所に新たに立入り禁止区域を指定しているではないか。このため漁民は出漁不能となり、さんたんたる状態である。また産業の軍事的再編、そのための平和産業の崩壊、失業、低賃金、奴隷労働が強制されている。すでに平和産業や商社の倒産は、昨年末現在、全国で三百社を数えている。失業者の増大は、今年中に一千八百万を突破するでありましよう。軍需工場では、━━━監視下に、戦時的、━━的労働が押しつけられている。徴兵令の復活、青年の肉弾化が必然である。再軍備のため、民生安定費、教育費が大幅に削減され、文部省が要求した義務教育国庫負担額五百八十億円のごときは全額削られ、教育の恐るべき破壊と低下が起つている。戦争犠牲者、遺家族に対する援護費は、お燈明代で打切られたではないか。(拍手)地方財政平衡交付金の削減により、地方財政の破綻は収拾しがたいものとなつている。  かくして、増税と物価高騰による耐えがたい国民生活の低下と貧困化が、今や日本国民運命を支配せんとしている。一体われわれは、かかる悲惨と屈辱を何ゆえ忍ばなければならないか。政府は、アメリカ軍が共産主義の侵略から日本の安全を守つてくれることに対する当然の義務だという。しかし諸君国民の大多数を殺人、強盗、戦争の恐怖にさらし、こじき、ルンペン、一家心中の悲惨に陷れておいて、どこに国の安全があるというのか。(拍手国民のすべてが安定した生活、平和でゆたかな生活が保障されてこそ国が安全だといえるのではないか。(拍手)共産主義であろうと何であろうと、ほんとう生活を安定させ、幸福を保障するなら、赤旗大いに歓迎だというのが、日本国民の偽らない、ちまたの声ではないか。(拍手)共産主義の侵略云々は口実にすぎません。  二つの條約と再軍備の真のねらいは、アメリカ政府世界政策の一環として日本を━━せんがためではないか。(拍手アメリカ政府は一九四七年。いわゆるソ同盟━━━━政策を宣明したことは、世界周知の事実である。すなわち、北大西洋條約の締結、欧州統一軍の創設、西独の再軍備、中東防衛態勢の確立、東南アジア統一軍司令部設置の計画がそれである。またツ同盟━━のため、西は大西洋のアイスランドから、地中海、インド洋に至る、また東はフィリピンから台湾、沖繩、日本を経てアリューシャン、アラスカに至る、自国、他国の領土を問わず、世界各国に多数の軍事基地を設置したのもこのためである。またみずからは、予算の七割から八割に及ぶ大軍拡予算を決定して軍備拡張に狂奔するとともに、相互防衛援助法により、英仏その他の諸国に対し武器の貸與、軍事援助を実行し、大量の軍備拡張を要求し、強引に━━━━にかり立てようとしている。  特に注目すべきことは、アメリカが最近欧州において、西独の再軍備や欧州統一軍が思うにまかせず、加うるに、フランス、イタリアなど西欧における力強い革命運動の進展に直面するや、重点をアジアに向けて来た事実である。朝鮮の休戦会談を━━━━━かせて、いつでも━━━━━━に利用せんとしていることや、東南アジアに対し中共軍の侵略を云々して━━━━としていることが、その端的な現われである。(拍手)さらに中国問題に関し、台湾の国民党反動残存群一味と講和する態度を明らかにしたダレス・吉田書簡のごときも、この現実を反映するものである。  周知の通り、今や日本産業は、吉田政府アメリカ一辺倒の再軍備政策のため壊滅的打撃を受けている。彼らはいずれも、この窮境を打開する道は中国貿易以外にないと、悲痛な叫びをあげている。中国貿易を阻害するものは非国民だとさえ絶叫している。しかるに吉田政府は、人口わずかに数百万のこの台湾に孤立し、島民からさえ支持を失つている傀儡的存在を相手に選ぶことによつて、人口四億七千五百万の中国国民との友好親善の道をとざし、両国民の通商貿易の道をふさぎ、日本産業の活路を遮断するの暴挙に出たのである。(拍手)政治、経済、文化、あらゆる面から見て、日本国民にとつて、台湾の国民党反動残存グループを相手にすることに、いかなる利益があるのか。一銭の得にもならぬことは、三歳の童子にも明白ではないか。しかも、あえてこの不可解な態度に出たゆえんのものは何か。だれでも知つているように、台湾は、アメリカ政府がその第七艦隊と莫大な財政的援助により支えている軍事基地ではないか。それが大陸進撃の拠点となつていることは、今では公然たる事実ではありませんか。その台湾と日本を結びつけんとする意図は明白である。それは明らかに中国国民に対する宣戦布告ではないか。  かくして、アメリカ政府占領以来日本に対してとつ政策を見よ。まさにソ同盟封じ込め政策の一環として、日本を━━━━━の前進基地、兵器廠、補給基地たらしめることにあつたことが、今や明白ではないか。さらにアメリカの議会では、行政協定と対日講和が同時に効力を生じない場合は朝鮮の作戦行動が阻害されるとの見解並びに行政協定成立しなければ対日講和は批准しないとの方針を明示している。これは、アメリカ政府の対日講和安保條約がいかに朝鮮戦争と密接に結びついているかを示している。日本の再軍備行政協定、出兵、戦争、これがすべて日本国民のためではなく、国連の旗のもとに、アメリカ億万長者の安全と、━━━━のための犠牲であることは明らかではないか。  国連は、現在朝鮮において軍事行動をとつている。また近く中国本土、東南アジアに対しても軍事行動をとる危險の切迫していることは、新聞の報道によつて明らかである。しかるに、講和條約第五條によれば、国連がとるいかなる行動についても、あらゆる援助を與えることを義務づけている。また吉田総理は、施政方針演説において、今後とも国連の行う措置に対し全幅の協力をするとの趣旨を明らかにしている。従つて講和が発効すれば、とたんに警察予備隊を朝鮮、中国、東南アジアに出動させるべき法的義務が生ずるのである。それゆえ警察予備隊を担当する大橋国務大臣は、憲法改正の時期は予備隊の海外出動の場合に行われるであろうと語り、警察予備隊の海外出動を示唆している。現に日韓会談では、武力援助が日程に上つたといわれている。いな、外国電報によれば、すでに朝鮮戰線へ日本人部隊が出動しているではないか。吉田総理は、警察予備隊を朝鮮へは派遣しないと言明した。しかし、私は開きたい。それで一体ダレス君が承知しますか。それは単独講和安保條約を廃棄しない限りできない相談であると思うがどうか。(拍手吉田総理は、国民の不安と疑問を一掃するため、国会のこの壇上から、日本人部隊を現在並びに将来にわたつて朝鮮、中国、東南アジアに絶対に派遣しないと保証する確信ありや、明確に答弁されたい。(拍手)  政府は、アメリカ政府だけにたよることにより日本の安全が保障されると宣伝している。だがしかし、アメリカ億万長者の企てている武力をもつて共産主義と対決し、これを征服せんとする軍備拡張、戰争政策の強制は、世界至るところで解決しがたい矛盾と反対を巻き起し、アメリカの孤立化をもたらしているではないか。(拍手)すでに欧州では、占領中の西ドイツにおいてさえ猛烈な反対に出くわしている。英仏では、軍備拡張費のため国民生活の破綻が深刻化し、このためイギリスのアトリー政府も、フランスのプレヴアン政府もつぶれ去つたではないか。さらに、おひざ元の本国では、失業の増大、インフレの高進、重税と低賃金は人民の窮乏と革命化を激化させている。加うるに朝鮮戦争の失敗は、朝鮮から手を引け——戦争政策をやめよの要求となつて発展し、ウォール街の紳士たちをあわてさしている。今や、アメリカ億万長者の戦争政策は内外から破綻し、難破せんとしている。吉田政府の安全保障とは、かかる破れ船に日本国民運命を託するにもひとしい冒険ではないか。(拍手)  戦争陣営のこのさんたんたる現実に反し、ソ同盟では、徹底した平和政策のもとに、厖大な平和建設計画を実現している。ヴォルガ、ドン、ドニエプル、アム、ダリヤの岸辺では、世界最大の大運河、大水力発電所が建設され、ヨーロツパ全土に匹敵する旱魃地帶の大植林、砂漠地帶の緑化が進められている。また戦後四回にわたる物価の引下げと、三回にわたる賃金引上げにより、勤労者生活水準の飛躍的なる向上が実現している。  さらに平和陣営は、東欧諸国並びに中国を含め世界八億の人口に発展し、今や不抜の勢力となつている。それゆえ、われわれが真に平和を欲するならば、━━陣営と断固手を切り、この強大なる平和勢力と提携する以外に道はないのである。(拍手世界平和評議会の提唱する米、英、仏、ソ同盟、中国の五大国による平和條約の締結こそが世界平和と国際安全を保障する基礎である。單独講和安保條約を廃棄し、ソ中両国を含めた全面講和を結ぶことが、日本にとつてのただ一つの安全保障であり、日本独立と自由とをもたらすゆえんである。年頭のスターリン首相のメッセージは、まさに日本国民に対する全面講和への呼びかけである。しかるに、吉田総理は、共産主義国とはおつき合いはしないという態度を表明した。これは平和の陣営に背を向け、ひたすら日本国民を外国のための戦争にかり立てる所存と断ぜざるを得ないが、総理の所信を明らかにせられたい。  第二に、侵害されつつある国民の自由と人権について質問する。政府は、昨年九月、わが党の国会議員四名に逮捕状を出し、公職追放処分に付し、議席を奪うの暴挙をあえてした。主権者たる国民の選んだ国会議員を、政府が何の法的根拠もなくその地位を奪うがごときは、政府みずから日本国憲法を暴力的に破壊するものと断ぜざるを得ない。(拍手)さらに昨年来、あるいはわが党幹部の捜査に名をかり、あるいは占領目的違反に名をかりて、盲めつぽう、かつてほうだいの家宅捜索、押収、逮捕を行つているではないか。たとえば昨年十月九日のごとき、全国八百六十一箇所にわたり、家宅捜索、一齊検挙を行つている。これはもはや犯罪の捜査ではない、明らかに政治的弾圧である。(拍手)  さらに、昨年十一月東京で逮捕された飯田七三君外六名は、スパイの嫌疑で外国人に引渡され、軍事裁判にかけられている。戦争を放棄したはずの日本であり、日本の非軍事化と平和国家の建設を助長し監視するはずの占領軍である。軍事スパイの存在の余地がどこにあるのか。(拍手)ポツダム宣言により撤廃さるべき日本国内の軍事施設に関心を持つことが、どうして犯罪となるのか。しかるに、日本独立と自由と平和のために闘う愛国者にスパイの汚名を着せんとすることは、いかに民族独立と平和擁護の運動に弾圧が迫つているかを示すものではないか。(拍手)  またポツダム宣言によつて廃止されたはずの思想検事、特高警察は、衣をかえて特審局、特捜警察として復活し、工場、農村へ官庁、学校の中に侵入して思想調査を行い、国会議員にまで尾行するなど、秘密警察、スパイ政治を再現している。言論、報道に対する圧迫も、またきわめて深刻である。今日良心を持つた言論報道人で、言論報道の統制、圧迫に脅かされない者が一人でも存在するだろうか。国民は、戦時中の陰惨な言論、思想弾圧を、はだ寒く思い起している。  それだけではない。すでに東條時代さながらの拷問が復活している。昨年十一月名古屋の警察では、逮捕した労働者に対し、気絶するまで暴行を加えた事実がある。また昨年十二月、滋賀県では、朝鮮人の集会に武装警官が出動し、正当防衛と称し、うしろからピストルを発射して重傷を負わしている。さらに政府は、出入国管理令をつくり、国際慣例と人道を無視し、自由と人権を蹂躙した韓国への強制送還を企てている。  次に政府は、講和條約発効後の治安に備えるためと称し、団体等規正法、ゼネスト禁止法、集会デモ取締法等の制定、刑事訴訟法、労働三法の改悪を計画している。そもそも団体等規正法は、占領下の特殊法規である。いわゆる団規令の実体を講和後も存続させようとするものである。団規令は、占領軍が日本国民の政治活動を監視するためにつくられたものである。しからば、占領が終つた後において、一体政府はだれのために日本国民を監視せんとするのか。もしも団体等規正法が制定されるならば、憲法で保障された言論、出版、集会、結社、思想、良心の自由は一片の空文と化し、抹殺されるであろう。平和憲法が保障する自由と人権を蹂躙しなければ維持できない秩序、かかる秩序とはいかなるものか。それは言うまでもなく、戦争と奴隷の秩序ではないか。  政府は、かくのごとく日本国民から自由を取上げておきながら、広汎な自由を、治外法権の名のもとに、アメリカ人に與えようとしておる。一体政府は、アメリカ人にいかなる治外法権を與えるつもりか、その内容を明らかにされたい。吉田政府が、もし日本国民政府であるならば、労働者、農民のみならず、弁護士会、日本新聞協会等、大多数の国民反対しておる団体等規正法を初め一切の弾圧法の制定を撤回すべきであると思うが、総理の所信を聞きたい。  昨年暮れの三越百貨店の争議において、大部分がかよわい婦人店員であるにもかかわらず、武装警官延べ約五千名を動員し、ぶつ、けるの暴行を加え、負傷者まで出しておる。今や日本の労働者は、いかにささいな要求でも、これを貫徹するためには、武装した日本の支配者の暴力と闘わねばならないことを知つた。どうすれば自分たちの自由を守れるかをさとつたのである。自由は、みずからの手、団結した力で守るよりほかないことを自覚したのである。されば、エジプトの国民が、外国人に協力する者を処罰する法律をつくつて独立と平和のために一致団結して闘つておるとの報道は、日本国民の大きな関心を呼んでおる。  一九四八年十二月、国際連合で決定された世界人権宣言の前文は、専制と圧迫に対して人間が最後の手段として反逆に訴えざるを得なくなることを防ぐためには、法の規律によつて人権を擁護することが肝要である、とうたつておる。すなわち、自由と人権が国法のもとに保障されない場合、国民は生きる最後の手段として反逆する権利のあることを認めておる。日本国民は、占領制度と吉田政府のもとに、窒息せんばかり圧迫と専制に苦しんでいる。それゆえ国民が反逆の権利を行使せざるを得ないのは、あげて吉田政府の責任である。戰争に協力し、生活を破壊し、日本国民から自由を奪つた吉田政府の責任は重大である。  今や、腐敗し切つた戦争と売国の吉田政府打倒、国会解散の要求は、国民の輿論となつている。私は、この国民の声を代表して、国会解散と吉田政府の即時退陣を要求して質問を終ります。(拍手
  26. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) ただいまの梨木君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当の処置を講ずることにいたします。     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  27. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 私の答弁は、これまでの答弁に盡きておりますから、再び繰返しません。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  28. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  犯罪の嫌疑があれば、これを捜査し、犯罪事実が明瞭になれば、これを法規によつて処罰することは当然であります。その間に、もし人権侵害の事実があれば、これは各地の弁護士会において人権擁護委員があるから、それに申し出ればいいと思います。  次に、政府においては、決して人権を無規するような法案の作成の意思は毛頭ないということを申し上げます。(拍手
  29. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 猪俣浩三君。     〔猪俣浩三君登壇〕
  30. 猪俣浩三

    ○猪俣浩三君 私は、日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、吉田総理大臣、池田大蔵大臣、木村法務総裁に質問いたします。  国民が切に知らんと欲するものは、独立後の日本が戰争に巻き込まれることがないかということであります。これに対する吉田総理大臣の施政演説は、世界情勢の分析を欠き、朝鮮事変の終結に対する要望もなく、世界平和、アジアの安定確保の熱意も示されていない。かえつて国防力の増強、再軍備への移行と、国民政権承認により中共政権から敵視されるに至つたことが明らかにされたのであります。(拍手)そこで、これらのことにつきまして、まずお尋ねしたいと存じます。  第一、日本の現状においては、平和を希求し、戦争に巻き込まれないようにすることが絶対の真理であり、これ以上の価値ある政治原理はない。東條英機も平和を希望し、戦争を避けたいと言つていた。しかし彼は、平和よりも英米を打倒し、八紘一宇の皇道を世界にしくことがより高い価値ある政治理念だと思つてつたのであります。戦争をしたがる人間は、いろいろなりくつをつけて民衆を欺瞞するのである。  近時「原爆の子」という書物が出ております。これは広島で原爆に遭遇したが、九死に一生を得た少年少女たちの体験記であります。その当時小学二年生で、ただいま中学二年生の渡辺澄子の文章の一節に、「まだ一日も忘れたことのない、二十年八月六日の、原子爆弾、それは私にとつてつた一人の大切な父を奪いとつたのです。今思い出してもぞつとするあの戦争」と書き出しまして、結びが「何のために戦争したのだろう、東洋平和のためならば何で命が借しかろうと歌つた私たちだつた。多くの人間を殺しながら、平和のために戦争すると言いながら、どこが平和になつたのだろう。お父さん、どんなにか苦しかつたでしよう。どんなにかつらかつたでしよう。二十年八月六日午前八時十五分行方不明になつたお父さん、この私たちをお守りください、さようなら。」と結んでおるのであります。(拍手)私は、この「原爆の子」という書物を、吉田総理大臣初め世界の支配階級の人たちに読んでいただきたいと思います。(拍手)純真な子供の心情があふれております。  そこで吉田総理は、いかなることよりも、日本を、アジアを戦争に巻き込ませないということが最高の政策だという考えをお持ちであるかどうか、反共政策のためには戦争もやむを得ないという、そういうお考えを持つているかどうか、戦争を避けるということが最高の政治原理であるかどうか、その点についての御答弁をいただきたい。  第二に、警察はその基本法であるところの警察法に準拠すべきものであり、その警察法は中央集権化を排し、民主化を徹底せしめておるのであります。しかるに、警察予備隊はこの法律に準拠しておりません。ポ勅令である警察予備隊令に準拠しておる。これは警察法とはまつたく違う法律である。警察の幹部は警察大学において教育されるものであるが、予備隊は別に士官学校をつくつて教育するとのことである。実地の訓練も見ましたが、これは追撃砲の練習、バズーカ砲の練習、鉄かぶとに木の枝をくつつけて、じりじりはいずつて突貫する白兵戦の練習、さようなことばかりやつております。その装備もまつた軍隊である。追撃砲や、バズーカ砲や、戦車、また聞くところによれば飛行機も持とうとしているそうでありますが、一体こんな警察がどこにあるか。この警察予備隊を増強するために五百数十億円の予算をとつておる。これはまさに日本国憲法第九條の脱法行為ではありませんか。(拍手)  日本国憲法制定当時の質疑応答、皆さん忘れているかもしれませんから、私読んでみる。これはどういうことを一体言つているか。時の総理大臣は、吉田総理大臣であります。このときは、野坂參三君が質問している。戰争には二つの性質のものがある、一つは、正しくない、不正の侵略戦争である、同時に、侵略された国が自国を守るための戦争は正しい戦争といつてさしつかえないと思う、一体、この憲法草案に、戦争一般放棄という形でなしに、これを侵略戦争の放棄とするのがもつと正確ではないか、こういう点に対しまして、時の総理大臣吉田氏は、私は国家正当防衛権による戰争は正当なりとせらるることを認むることが有害であると思うのであります、近年の戦争は、多くは国家防衛権の名において行われたることは顯著な事実であります、ゆえに、正当防衛権を認めることが、たまたま戰争を誘発するゆえんであると思うのであります、そういうふうな——これは速記録でありますが、答弁をやつておる。  なおまた貴族院におきまして、高柳賢三氏が、日本がある国から侵略を受けた場合でも、改正案の原則というものは、これに対して武力抗争をしないということ、すなわち少くも一時は侵略にまかせるということになると思うが、という質問に対し、時の国務大臣、憲法係の金森氏は、場合によりましてそういうことになることは避け得られぬということに考えております、かような答弁をしておる。  なおまた第七国会の法務委員会におきまして、私が時の法務総裁に対しまして、日本の内地において飛行機その他の武器をつくることは、憲法九條の関係においてどういうことになるか、これに対しまして、法務総裁は明白に、日本内地において飛行機その他の兵器をつくることは、日本人であろうが外国人であろうが憲法の違反であることを答弁した。(拍手)さような憲法の解釈になつておるのであります。  しかるに、今日この警察予備隊をもつて軍隊にあらずと称し、およそ経済統制法令その他におきまして、形だけは三百代言的の知恵によつて合法を装つても、その実質が法の禁ずる内容であるならば、いずれも脱法行為として処断されておるのである。政府が法律以上の国家の根本法たる憲法の脱法的行為をするとは何事であるか。(拍手)これは憲法を軽視することになりはしないか。一体、かりに国防上必要なりとしても、二十万や三十万の軍隊で足りるのか。百万や二百万の軍隊や、それに相応する戦車や飛行機の用意ができるか。できないとすれば、いつまでも外国の保護国となつていなければならない。世界唯一の、最も完全な戦争放棄の憲法を死守することによつて世界文化の向上に寄與する覚悟はないのであろうか。これが最上の保身の術であると思わないであろうか。政府方針のごとくアメリカ一辺倒の態度を強化することによつてわが国は安全たり得るか。原子爆弾は落ちないと保証できるか。  以上の理由によりまして、私が木村法務総裁にお聞きいたしたいことは、この警察予備隊が軍隊でないという法律上の根拠を明らかにしてもらいたい。その理由を説明してもらいたい。しからざれば納得ができません。軍隊をつくりながら、軍隊じやないと押し進めて行くということは、国民に憲法を軽視せしめ、脱法行為を認める原因になります。この点についての御答弁が願いたい。  第三は、仮装敵国を持ち、国防に力を入れ、準戦時態勢に突入するに際しましては、言論、集会の圧迫が始まることは、過去の日本の歴史が証明しておりまして治安維持法が強化せられ、あるいは不穏文書取締法が制定せられてから満洲事変、日支事変に突入し、最後に国防保安法が制定せられましたところが、昭和十六年十二月八日には太平洋戦争に突入した。今政府においては、団体等規正法その他の法律、ことに労働三法を改悪いたしまして、こういう用意がされておるやに聞くのでありまするが、これに対して、決して憲法に保障せられたところの基本的権利を害するものでないという答弁である。しかし、この公共の福祉なる名において、いたずらに取締法規をつくりますることは、基本的人権擁護の立場ではありません。ヨーロッパにおきまして、十八世紀ごろ、この公共の福祉なる名において国民の自由が束縛せられ、これを福祉国家と称せられたことは歴史の証明するところであり、なおまたナチス政権におきまして、滅私奉公あるいは公益優先——これは東條内閣においても使われた言葉である。これが盛んに使われるようになると、少し怪しくなるのである。こういう公共の福祉なる言葉を濫用いたしまして、むぞうさにこの基本的人権を弾圧することは、憲法第二十一條、二十八條の規定を空文化せしめまして、憲法軽視の観念を生ぜしめると思いまするが、これに対する政府見解をお聞きいたします。(拍手)  第四に、国民政府の承認問題についてお尋ねいたします。吉田総理大臣は、昨年末、秘密裏にダレス氏に書簡を送りまして、そして国民政府の承認をする意思を表示した。これに対しまして、ただいま水谷氏の質問に対してこれはアメリカ上院で行われておる、この條約の批准を早からしめるためであるという答弁である。私は、これに対して、はなはだ不可解である。  一体、安全保障條約のごときは、どこの国があせつてつくつたものであるか。(拍手)これは日本人ばかりがよそ事を言うておりますけれども、たとえば海外におきましても、オーストラリアの有名な解説評論家であるピーター・ルッソー氏の論文を読んでも、あるいはまたアメリカにおける世界的軍事評論家でありまするハンソン・ボールドウイン氏のニューヨーク・タイムスに出した論文を読んでも、これはほとんど同じことを言つている。日本との講和は、平和のための條約というよりは、むしろ他の国民に対する戦争のための條約である、(拍手)しかのみならず、ボールドウイン氏の説明を聞けば、アメリカ世界至るところで局地戦争をしなければならぬが、それには人間の数が足りないから、どうしてもこの足りない数を日本とドイツによつて占めてもらわなければならぬ、そのためにこういう條約が必要であるという論文を書いておる。この人的資源のためにこの條約が使われるということは、もう世界的の輿論になつておる。かような條約でありまするのに、台湾政府を承認するというがごとき、日本運命にとりまして重大な問題とこれを交換いたしまして、彼らのきげをとつて、そうしてこの條約を批准してもらわなければならないその理由が、一体どこにあるか、われわれ不可解千万に存ずる。黙つてつたつて、向うの方は急ぐにきまつています。私がなお総理大臣にお聞きいたしたいことは、吉田総理の、国民政府を承認し、中共政府を相手にしないとの意思表示が、英国及び東南アジア諸国に一体どういう影響を與えたか、その説明を聞きたい。イギリスのスポークスマンは、吉田書簡は米国政府の圧力を反映しており、昨夏英国政府に與えられた保障と相反するものであると、憤激の声明をしております。また中立国筋の意見によれば、中共への絶縁状は、中共をますますソ連一辺倒に追い込むことになり、中共との妥協によつて和平維持をたよつている東南アジア諸国を失望させるであろうと言つておるのである。英国は日本貿易の南進を憂慮していると聞きます。中共との絶縁と英国との利害関係はどうなるのであるか。吉田総理は、これらの問題をいかに考え、いかに処理するつもりであるか、お聞きしたいのであります。  なお、この吉田総理大臣の書簡は、何にも肩書きがついておらぬ。あて名もダレスという人であります。これは一体公文書であるか、私の文書であるか、あるいは怪文書であるか、これを明らかにしてほしい。(拍手)国際條約上、この書簡はいかなる性格を持つておるものであるか、それを明らかにしていただきたい。  なお経済自立上、中共貿易が必要であると思うが、これが必要でないという論拠がどこにあろうか。中共貿易禁止後、鉄製品の値上りによつても、中共貿易がいかに日本貿易に大切であるかが証明されている。昨年三月、タイ国において車両の入札があつたが、日本品の単価は四千ドル、スエーデン品は二千八百ドル、英国品は三千八百八十ドル、ベルギー品は二千五百四ドル、ドイツ品は三千百三十一ドルであつた日本品が一等高い。これは鉄製品の値上りのためであり、その原因は中共貿易が禁止せられたためであります。かように一等高い製品をつくつてつて、どうして貿易が進展できるか。  蒋介石を相手にせずとの近衛声明から、日支事変の終末をつけることができないで、遂に太平洋戦争に突入するに至つた過去の歴史をわれわれは思い出す。われわれは、蒋介石政権を相手にすることによつて今度戦争への不安におののくに至つたことは、運命の悲劇と申さなければなりません。(拍手)かかる国家運命にかかわる重大問題は、憲法の精神から見ても国会に諮るべきものである。これは吉田独善外交の端的な現われであるけれども、まことに憲法及び国会を軽視する態度と申さなければならぬのであるが、これに対してどういうお考えを持つか、これもお尋ねをいたしたい。  次に国民の切に要望することは、生活水準の向上であり、生活の安定であります。人口がやがて九千万人に為ろうとするこの国土に、いかにしてわれらの暮しを立てるか。これに対する総理大臣その他閣僚の演説は、見るべき計画性のないことを暴露し、財政方針も、無理に均衡を保とうとした、こじつけ予算である。繊維及び貿易部門を中心に、油脂、皮革、出版、輸出向け雑貨工業等に波及する半ば恐慌状態は、きわめて深刻である。昨年十一月までに商社の倒産整理を行つたもの二百件以上に達しておる。農村の生活苦を示しまするところの土地の移動は、昨年中に一昨年の二・六倍も増加し、件数だけを平均してみると、農家百戸について三戸が土地を売り拂つておるのである。東北地方における娘の人身売買が激増したと新聞は報じておる。東京都の生活水準は、昨年は戦前の七三%であつたが、本年は七〇%見当に下つておる。親子心中、夫婦心中の記事が新聞から絶えない。庶民住宅の拂底は同居家族数を多からしめ、衛生風紀の面においても憂うべき状態を呈しておる。結核の増加、中学女生徒の妊娠というようなことが報ぜられておる。  かかる実情におきまして千八百億円に達する軍備費を予算に組んでおるのである。この分だけ産業振興、民生安定、社会保障費に振り向けたら、生活の窮乏から国民は立ち上るでありましよう。憲法第二十五條には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と書いてある。われわれは、この営むことのできない一般大衆のために、権利として、かような厖大な軍事予算を組むことに絶対反対するものであります。(拍手)バターか大砲かは、世界的な大問題である。これがいとも簡単に両立できるかのごとき大蔵大臣演説は首肯しかねる。私の知つている税務署員は、新年早々、署長から、今年こそ徹底的に徴税せよという訓辞をされたと言つておる。自然増収を税源の大きな部分に持つことは、実際は大衆に対する大きな収奪ではないか。  結論といたしまして、現内閣は、独立日本世界の国際場裡に活躍すべき抱負なく、戦争を避けて国民の生命財産を守るべき熱意を欠き、国民生活安定、産業振興の計画も立つていない。日本国憲法を死守せんとする気魄なく、安全に日本国民を彼岸に進めるところの実力を失つています。われらはその退陣を要求するものでありまするが、これをもちまして私の質問演説を終ります。(拍手
  31. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 内閣総理大臣は、渉外事務のため、やむなく退席されましたから、総理大臣の答弁は保留いたしまして、適当な機会に願うことといたします。     〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  32. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  ただいまの猪俣君の質問要旨は、要するに憲法第九條に定められた、陸海空軍その他の戰力を保持しない、この戦力に相当するかどうかということであるのであります。いわゆる戦力と申しますのは、これは戦争目的の手段として有効なる軍事力であります。この判定は、要するに国際社会通念によつて、はたして近代戰において戰争目的に利用し得られる軍力であるかどうかということであります。飜つて、予備隊の装備はどうであるか。予備隊の装備は、御承知通り、わずかに機関銃やその他の軽砲にすぎないのでありまして近代戰において、かようなものは決して戦争遂行の力を持たないのであります。(拍手)ジエツト機が発達し、あるいは原子力が発達した近代戰において、予備隊の装備のごときは、これは実に微々たるものであつて戦争遂行の能力はないのでありますから、絶対にこれは軍力と申すことはできないと解するのであります。  次に、政府はゼネスト禁止等の法案を提出するかということでありますが、政府といたしましては、基本的人権を無視するような法案は断じて提出しないということを申し上げておきます。     〔国務大臣池田勇人君登壇〕
  33. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御質問の点は、本日、本席上で水谷君に答えた通りであります。(拍手
  34. 福永健司

    ○福永健司君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明二十六日定刻より本会議を開きこれを継続するこことし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  35. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 岩本信行

    ○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十三分散会