運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-05-07 第13回国会 衆議院 法務委員会労働委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月七日(水曜日)     午前十一時十三分開議  出席委員   法務委員会    委員長 佐瀬 昌三君    理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君    理事 山口 好一君       押谷 富三君    角田 幸吉君       松木  弘君    眞鍋  勝君       大西 正男君    加藤  充君       田中 堯平君    猪俣 浩三君       世耕 弘一君    佐竹 晴記君   労働委員会    委員長 島田 末信君    理事 倉石 忠雄君 理事 森山 欽司君    理事 前田 種男君       天野 公義君    金原 舜二君       稻葉  修君    熊本 虎三君       柄澤登志子君    中原 健次君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         労 働 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         検     事         (特別審査局         長)      吉河 光貞君         検     事         (特別審査局次         長)      關   之君  委員外出席者         法務委員会専門         員       村  教三君         法務委員会専門         員       小木 貞一君         労働委員会専門         員       横大路俊一君         労働委員会専門         員       濱口金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  破壞活動防止法案内閣提出第一七〇号)  公安調査庁設置法案内閣提出第一七一号)  公安審査委員会設置法案内閣提出第一七二  号)     —————————————
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより法務委員会労働委員会との連合審査会を開会いたします。  前会に引続き破壊活動防止法案公安調査庁設置法案公案審査委員会設置法案、以上三法案について審査を進めます。質疑の継続をいたします。角田幸吉君。
  3. 角田幸吉

    角田委員 私は法務総裁お尋ねを申し上げたいのであります。これは破防法審議の上に重大な関係を持ちますので、特に法律問題について詳しく御回答を求めたいのであります。  御承知のごとく旧憲法時代にありましては、国家緊急権というものを認めておりました。戒厳緊急勅令非常大権制度があつたのでありますが、ただいまの憲法におきましては、このことがないのであります。ただ警察法の六十二條以下におきまして、国家非常の場合におきましては、総理大臣公安委員会勧告によつて国家非常事態の布告をすることができる、こういうことになつておるのにとどまつておるのであります。そこでこの警察法の六十二條以下の規定によりますと、單に総理大臣地域外警察を動員して、そうして地域外職務を執行させる、これだけのほかに何らの権能がないのであります。ところが今度の破防法規定しておりまする犯罪が突如として起つてしまつた、あるいはそればかりではありません、天災地変のために交通が遮断されてしまつた食糧が不足してしまつた、家は火災にかかる。食糧に不足しておる、国民食糧を求めようとしても、持つている者は売らない、あるいは他から入つて来ないために餓死するような状態になつてしまう、あるいはまた家が焼かれてどこかに宿を求めようとすれども、とめる者がない、一方におきましてはその機に乗じてどんどん集会をやるという、いろいろなことが起つ参りました場合に、一体どうなさるつもりであるか、これは破防法関係がないことのようでありますけれども、破防法においては、そういう事態の起りました場合には一体どういうふうに取締考えでおるのであるか、この問題についてひとつ構想を承りたいのであります。なお本破防法を立案するにあたりまして、こういう問題についてどういう審議過程があつたかということをまず承りたいのであります。
  4. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。国家非常の場合にはどういう法律上の手当ができるのであるかという御質問ようでありますが、ただいま御引用になりました警察法第六十二條によりまして、国家非常の際におきましては、特に治安維持上必要のある場合と認められるときに、国家公安委員勧告に基いて総理大臣非常宣言をして、一応の手当はできることとなつておるのであります。また警察予備隊令第三條によりまして、国家治安のため特別の必要がある場合においては、総理大臣警察予備隊に出動の命令をもなすことができるのであります。この二つの面から、国家非常事態においては一応の手当はでき得るものと考えるのであります。しこうしてこの破防法におきましては、国家非常事態ということについての手当はまつたく予想していないのであります。要は暴力によつて破壊活動を行い、また将来行うことの危険のある団体を規制して行こうとするのが主眼でありまして、非常事態の場合とは別個の考え方をもつてこれを立案したわけであります。もつともかよう暴力団体は、国家非常事態において重大なる役割を演ずることと想像されるのでありますから、これらの団体に対してふだんからよくこれを調査し、しこうしてあらゆる面からこれに対して手当をして行こうというのがこの法案のねらいであります。今角田委員仰せになりました非常事態の場合はどうするかということにつきましては、一応警察法六十二條及び予備隊令第三條の規定によりまして手当して行こうという政府考えであります。
  5. 角田幸吉

    角田委員 ただいまの法務総裁お答えによりまして、私は国民の一人として、きわめて不安を感ぜざるを得なくなつてしまつたのであります。およそ破防法で禁止しようとする団体は、天災地変などがあれば、これを巧みに利用すると思うのであります。しかもそれは單に内乱騒擾だけも取締ればいいというだけではなしに、その間におきましては、ただいま私が申し上げましたように、食糧をどうするか、家を焼かれてとまる所がなくなつた者をどうするか、あるいはこれは破防法取締ることのできない者どもまでが、これが扇動者にあらず、あるいは教唆者でないところの者、そういう者までが集会をやる。そうして幾つもの騒擾が起るというようなことは、これは十分想像しなければならぬのであります。ところが、ただいまの総裁お答えによりますと、それは警察法の六十二條以下で何とか処理する、こういうお答えでありまするけれども、その警察法の六十二條以下の警察行為によりましては、これは集会の禁止もできない、あるいは食糧がばかに高くなつて、売惜しみする場合でもこれはどうするわけにも行かない、宿屋がとめなくてもどうするわけにも行かない。いわゆる基本的人権の問題についてはちつとも触れることができない、こういうことになりますると、これはほかの法律で何とかする御構想であつても、少なくとも破防法を提出するにあたりましては、それらの基本法についても何らかの御構想がなければ、これだけでは国民が安心しないと思うことは、私一人ではないと思うのであります。それらのものにつきまして、別に何か法律でもつくつてそれらのものをやろうとする考えがあるのか、それをこの機会において承りたいのであります。
  6. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。角田委員仰せになりました、いわゆる非常事態の場合において手当方法がないじやないかという御議論のようでありますが、私は、警察法警察予備隊令運用において、一応手当はできるものと考えております。しこうして、そういう場合において、あるいは国民食糧に悩み、あるいは住宅に悩むという一時の現象はあり得ることと考えております。そういう場合におきましては、国民がともども、さよう事態も突破すべき一大勇猛心を起して、これに対処し得るものと私は確信するのであります。法律的にいくらさようなことを今から仮想して考えましても、国民がともども、そういうときに対処する不断の心構えがなき限りにおいては円満に行かないのでありますから、そういう事態におきましては、国民が相寄り、相助ける精神を持つて、そういう事態に対処し得られることを私は切望するのであります。大体のそういう事態についての治安の面から考えてみますと、警察法並びに警察予備隊令においてまかない得ると、私はただいまのところ考えておる次第であります。
  7. 角田幸吉

    角田委員 ただいまの法務総裁お答えによつては、私はとうてい納得するわけには行きません。そこでただいま意見長官が見えましたので少しく承りたいのであります。  御承知のごとく、現行刑法におきましては、旧憲法ように、戒厳あるいは緊急勅令非常大権という制度はないのでありまして、ただいまのよう非常事態が起りますと、これは手をこまねいて国家の滅亡を見るよりほかない。そこで意見長官に承りたいのでありますが、御承知のごとく、英国憲法におきましても、アメリカ憲法におきましても、この国家緊急権といつたようなものの内容につきましては、憲法規定しておらないのであります。しかもそれが英国におきましても、アメリカにおきましても、憲法規定のないものを、法律によつて、この非常事態に対処する規定を置きまして、運用いたしておるのであります。ただいま法務総裁の御見解によりますと、警察法の六十二條以下でこれができるというのでありまするが、私は絶対できないと思う。そこが問題なので、われわれは国民として心配なのだ。この間の宮城前のあのできごとを見ましても、国民がみんな心配している。(「宮城なんてあるか」と呼ぶ者あり)旧宮城言つてもいいでしよう。とにかく宮城であります。その前でやつたあれを見ましても、心配しておる。そこでこれらについてどういう法律ができるのか、またどういう御構想があるのか、日本憲法の庇護においてどれだけのことができるのであるか、この機会においてその御構想を承つておきたい。そういたしませんと、われわれが破防法審議する上におきましても、非常な不安を感ずるのでありまして、どういう御用意があるのか。私はこれで質問を打切りますが、なるべく詳細に御回答を願いたいのであります。
  8. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お尋ねの御懸念ごもつともであると存じますが、この憲法ができます際に、御記憶の通りに、昔の憲法には今御指摘のいろいろな非常事態に対処する制度があつた、新しい憲法にはないじやないか、そういうときに一体どうするつもりかという御質問が、新憲法審議国会でもありました。その際に政府といたしましては、新憲法建前からいつて、そういう処置はすべて国会の御審議中心とした方法で、あるいは法律の御制定を仰ぎ、あるいはまた法律委任に基く措置として善処するつもりであるということをお答えしたわけであります。  そこで旧憲法時代のことを申しますと、非常大権というよう制度はございましたが、これは御承知通りに太平洋戦争の最中といえども、非常大権は遂に発動をしなかつた。旧憲法時代においてすら非常大権発動はなかつた。大部分は緊急勅令でまかなわれておつたというわけでございますから、今までの、過去の議会における政府考え方というものは、実際上からもこれは大して不穏当なことはない、むしろ困ることはないというふうに考えておるのであります。  そこで、現在の制度のもとにおいてはどうなるか。これは今の総裁のお言葉にありました通りに、治安を維持する方の機構問題——機構の問題としては警察があり、予備隊があり、おのおの当面の事態に対処する方法ができておるわけであります。それから今度は、国民の側から見ての実体の問題ということがあるわけでありますが、これも現行刑法その他の実体規定、それから今御審議をいただいております破壊防止法案——この破壊防止法案は決して非常事態だけを目ざしての立法でないことは申し上げるまでもないことで、破壊活動を規制するだけの当面の必要からできておるのでありますけれども、しかしこれはまた非常事態の役に立つ一つ実体法になるであろうというような面があるわけであります。それ以外におきましても、食糧の問題とか、あるいはいろいろな国民生活用物資の統制の問題が出て参ります。これは御承知よう食糧管理法で一応広い御委任があるわけでありますが、その他の経済行政の分野におきましても、その必要があれば立法をしていただいて善処する方法を講じようというのが、政府心構えであります。  それから最後に英米法関係お話が出ましたけれども、これはおつしやる通り——私はよく知りませんけれども、たとえばマーシヤル・ローというよう英米系統考え方があるわけであります。ありますけれども、これもマーシヤル法の原理というものは、一体どういう根拠から来ておるかといいますと、実ははつきりしておらないらしいので、今角田委員の御指導通りに、立法方法でやつておる。ただその立法委任の幅を広くして行く。それによつて善処しているのが実際のようでございます。それらのことも、これは事実としてあるわけでありますから、政府としてはそういう非常事態に対処します際には、先ほど来申しました通りに、立法中心としてあくまでも善処して行きたいというのが、今の考えでございます。
  9. 角田幸吉

    角田委員 私に與えられた時間がありませんので、ここで遠慮いたしますが、ただいまの政府答弁では、私は納得いたしません。まだ詳細に承りたいのでありまするから、別の機会にやることにいたしまして、委員長から指定された時間でありますから、この際席を譲ることにいたします。
  10. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次は森山欽司君。
  11. 森山欽司

    森山委員 法務総裁にお伺いしますが、破防法案の第二條第二項にある労働組合の正当な活動とはどういうことを意味するか、御説明願いたいと思います。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。この法案二條第二項の「労働組合その他の団体の正当な活動」これの意味でありまするが、これらの団体憲法その他の法令に違反しない活動をさしたものであります。
  13. 森山欽司

    森山委員 労働組合の正当な活動は、憲法その他の法令に違反しない活動であると、きわめて法律的な御答弁でありますが、もし労働組合が一応共産党と一線を画すると呼号しながら、実はいろいろな問題についてそれと軌を一にする点が非常に多いよう行動があつた場合、たとえば総評が最近では事家全労連系組合共同歩調をとつて、また産別系組合といつて単位組合として参加を許容する広汎な地域スト集団を結集して、春季攻勢集約化をはかる。そして去る一月二十三日の総評幹事会審議決定を見たように、春季闘争の展望と行動計画によると、春季闘争のねらいどころは、再軍備反対闘争に集約することを前提として、強圧法規反対をかざして闘うことにあるとあり、闘争の目的は再軍備反対に集約され、いわゆる弾圧法規反対はその手段として取上げられているにすぎないような場合があるのであります。この線に沿つて過去二回にわたり労闘ストも行われ、また今回のメーデー騒擾事件も起きたのであります。かかる労働組合運動も、これを労働組合の正当なる活動法務総裁はお考えでありますか。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。労働組合そのもの活動の範囲を逸脱いたしました場合には、決して正当な活動とは申すことはできません。しかしながらこの法案趣旨といたしますところは、いわゆる暴力による破壊活動そのものをねらつておるのであります。要するに暴力によつて破壊活動を行い、または行わんとする団体を規制せんとすることが、この法案趣旨であります。さよう労働組合が本来の労働組合運動を逸脱した行為でありましても、この破壊的活動をするに至らない場合におきましては、この法案適用はないものであります。
  15. 森山欽司

    森山委員 それでは、もしその場合に労働組合が非常に政治的偏向の色を濃くいたしたといたします。そうして政治的ストあるいはゼネストをやつたとします。それに対して政府は、かかる行動は健全なる労働組合の行き方ではないとして、これに対して法的保護を加えないのみならず、これに対して何らかの措置があつたといたします。それに対して労働組合側反対行動に出た。その反対行動に出た場合に、検察あるいは警察職務を行う必要が出て参ると思うのであります。その場合に対して、これに反するよう行為をした場合、これは破防法にかかるのかどうか、伺いたい。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。その活動団体意思として、いわゆる団体自体活動として法第三條以下に掲げられてある行為、すなわち内乱だとかあるいは騒擾だとかいうようなことをやつた場合におきましては、この法案対象となるのはもちろんであります。ただ個々組合員がさよう破壊活動行為をしたからといつて、それが団体意思でない限りにおきましては、団体を規制することはできないのであります。ただその個人が法に触れますと、その法規によつて処断するという建前になつておるのであります。
  17. 森山欽司

    森山委員 この問題は非常に起り得る場合を想定して私は御質疑申し上げたのであります。個々人を処罰されるとおつしやるのでありますが、今日労闘ストの第一波、第二波において見られるよう動き、あるいは今回のメーデー事件において見られるよう動き、これらのものは決して個々人動きではありません。少くとも総評労闘基本的指導方針を契機として発生した事件であることは事実であります。もとより先般のメーデー暴動事件が、組織労働者にとつては、きわめて不愉快しごくなものであつたことはもとよりでありますが、少くもこの破防法の第三條における公務執行妨害罪程度事態は、常に私は起り得るのではないかと思う。そういうことになると、少くも現在の労働組合政治的偏向をあまりにも多く露呈する場合において、必ずや破防法対象となるのではないか、これを伺いたい。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えをいたします。そこでこの法案のねらいは二つあるのであります。いわゆる暴力による破壊活動行つた団体を規制することが一つ。もう一つは、団体関係なく、その団体組織員が、この法案規定してあるよう行為をなした者に対する処罰規定、これは刑法の補整であります。この二つであります。そこで今森山委員仰せになりました団体それ自体が、団体意思決定に基きまして、あるいは公務執行妨害罪を犯したような場合があると仮定いたします。そういたしますると、この法案対象になることはもちろんであります。しかし団体自体行動と別に、個々人たちがさよう行為に出たる場合におきましては、団体自体は規制いたさないのであります。その個人に対して処罰規定適用するという建前になつております。
  19. 森山欽司

    森山委員 しかしながら今日の労働運動指導権を握る総評左派人たち考え方というのは、これはきわめてはつきりしておる。昨日の本会議においても私は指摘したのでありますが、四月二十五日の総評機関紙において、メーデー実行委員長であり、総評政治部長であり、かつまた左派社会党中央執行委員である島上善五郎氏が、この統一メーデー労働者の祭典ではない、再軍備反対等闘争の勢ぞろいをする日だと、きわめて戦闘的かつ政治的な言辞を吐いておる。それから事実上左派社会党機関紙と見られている社会タイムスの五月三日の社説は、こういうことを言つております。今回の騒擾事件は、昨年秋の講和以来日本民衆の間に積み重ねられた怒りの火薬の自然発火であるとし、また破防法に対する民衆の正しい憤怒の爆発にあるというような言い方をしておる。要するにああいうような動向についても、これをきわめて弁護しておるのであります。組織として具体的にどういう決議をしたということじやない。こういう行動をするところの物事の考え方は、もうきまつておる。今さら決議する必要はない。そういう場合においても、あなたは形式的な決議がないからというようなことで、それで個々労働組合員だけを罰として、組織はそのまま置いておくというのですか。
  20. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そういう場合には十分調査いたしまして、かよう行動暴力的破壊活動と言い得るかどうかということは、一にその当時の情勢いかんによるのでありまして、ただいま森山委員仰せになりましたこの具体的事象につきましては、何ともただいまのところ決定的の判断はし得ないのであります。あらゆる資料を調査いたしまして、それがもし団体意思として破壊的活動が行われたと仮定いたすならば、この法案適用はむろんあることになるのであります。
  21. 森山欽司

    森山委員 破防法が健全な労働運動発達言論の自由を抑制しないかという危惧は、大体輿論であります。この公聴会においても、参考人の多くはこの破防法案に率直に賛成した者はなかつた。ただいま法務総裁お話を伺うと、片々たる行政官吏認定によつてどうにでもとられるような、そういう解釈ができるよう法律やり方というのは、おかしくないですか。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。決してさようではないのであります。その認定は決して独断でやるわけではありません。十分な手当はしておるのであります。あらゆる証拠を取調べ、しこうして団体の役員あるいは構成員の聴聞をいたしまして、そうしてあらゆる角度から資料を集めて、それを一応の認定をいたして、さらにその資料を提出して、審査委員会決定を仰ぐのであります。しこうしてその審査委員会においての決定に対して不服があれば、また別に行政訴訟を提起し得るという三段構えになつておるのでありますから、決してこの法案運用については、今仰せになるよう危惧の念は抱く余地はないと私は考えておるのであります。
  23. 森山欽司

    森山委員 法務総裁はそういうことをおつしやいますけれども、治安維持法等の従来の日本国民の経験というものは、そう簡単にあなたのおつしやるよう言葉をもつて国民は納得しない。しかもこれが裁判所行つてもどういうことになるか、総理大臣がいやだと言えば、これは裁判もしないでいいことになる。そういうようやり方でどうでも認定できる。要するに終局的には、行政官庁考え方でどうにでも行けるというよう考え方は、人権の擁護、言論の自由、あるいは健全な労働組合発達のために、いささかここに再考すべきものがあるのじやないか。
  24. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま森山委員仰せは、私は全然誤解なさつておると考えるのであります。治安維持法におきましては、かような詳細な手続規定はないのであります。つまり行政官がみずからの認定によつて事を処理できたのであります。ところがこの法案におきましては、決してさようではありません。今申し上げました通り調査庁におきまして本人を喚問して、そうしてそれに対しては立会人までこれを付するごとになつておるのであります。しかも委員会においても相当な詳細な手続をとつておるのであります。そして裁判になつてから、今森山委員総理大臣によつて裁判をさしとめることができるのじやないかというお言葉でありましたが、これは全然間違いであります。これは一審から三審まで闘い得るのであります。裁判所において詳細に自分の主張を述べ得る機会を與えられておるのであります。手続といたしましては、昔の治安維持法とまつたく隔世の観があるのであります。きわめて民主的にできております。
  25. 森山欽司

    森山委員 破防法のこまかい内容のことについては、わが党の法務委員の方から相当詳細な御質問もあり、検討中でありますから、この際この問題について法務総裁と論戦しても始まりませんから、この問題は一応打切ることにいたします。  この機会法務総裁に伺つておきたい。私は昨日の本会議において木村法務総裁質問をしたのでありますが、去る三月二十七日本会議において、わが党の小川半次君より、京都騒擾事件に関する緊急質問において質疑をして、メーデーの今回のよう事件が起る危惧に対して、これを指摘しました。法務総裁はその際、「特審局国警、自警、検察庁が互いに緊密な連絡をとりまして、あらかじめかようなことの起らないように、情報を十分に収集いたしまして、万一過激なことが起つたときには、断固としてこれを取締るという方針を持つておるのであります。」と自信満々たるお答えをしておる。そうしてああいう事件が起きておるのであります。法務総裁はとにかくあれだけの自信あるお答えをしておきながら、あなたは責任を感じないのか。本会議においても、また他の機会においても、まことに遺憾である、政治的責任は少くも法務総裁であるあなたにあるということを、一体言われたことがあるのかどうか、この際はつきりあなたの政治的良心を述べてもらいたい。
  26. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。去る本会議において、小川半次議員から質問のあつた際に、私がさよう答弁をしたことは事実であります。しこうしてこの五月一日のメーデーに対しましては、特審局においてあらゆる情報を集めまして、相当な資料を得ておるのであります。しこうしてこれを警視総監のもとに流しておることも事実であります。警視総監が相当な処置をしておるとこういうもこれまた事実であります。いかんせん警視総監のとられた能度は、きわめて民主的に平穏裡にこれを処置しようとして、昨日も申し上げた通り、丸の内警察署の巡査に対しては拳銃を持たせなかつた。なるべく事を穏便に運ばせようとしたことが一つの事実であります。さような暴動が起つたことの責任については、むろん私もその責任を感じておるのであります。しかしながら、御承知通り法規建前においては私は何らの指示権を持つていない。これは都の警察の指揮権にまかせられておるのであります。政府といたしましては、これに対して御承知通り何らの指揮監督の権限がないのであります。ただ情報を流して、それに対処すべきわれわれの責任があることは事実であります。しこうして今申し上げました通り、当時の処置といたしましては、あの群集が各方面から流れ出して暴動を起したことについては、私はむしろ警視総監としては相当な処置をとつたものと考えておるのであります。私は警視総監の監督もできません、また指揮も何もできませんが、私の考えといたしましては、当時群集に不安の念を與えたことは事実でありまするが、あの場合の処置としては、あれ以上のことはおそらく望めなかつたのじやないかと考えておるのであります。幸いにして一般の人たちについては何らの損害も與えず、ただ暴徒に対しては、数名の負傷者が出たことはあるのでありまするが、一般人に対して何らの損傷を與えなかつたということについては、むしろ私は警視総監の処置としては責むべきところはないと考えておる次第であります。
  27. 森山欽司

    森山委員 あなたのお話を伺うと、法律上自警の地位にあるところの警視庁に対して法律上の権限がないから、自分は何にもできなかつたというようお話を言う。しかし去る三月二十三日に小川半次君に答えられたときにおいても、自警に対する権限がなかつたことはわかつておる。それなら満々たる自信を持つたようお答えをしない方がいい。ああいう答えをしておきながら、こういう結果を出しておるじやないか。それであなたは今になつて警察法の不備等に籍口して責任のがれをしようとしている、こういう態度は、あなたは議員ではありませんが、国務大臣です。政治的責任というものがある。弁護士木村篤太郎君に私は話しているのじやない。国務大臣木村篤太郎君に話をしているのです。従つて法律論議を私は言つているのじやない。政治論議を言つているのであります。政治的責任をあなたはいかにお考えになつておられるか。日本は講和が発効していよいよ曲りなりにも独立しております。もう進駐軍は上にないのです。国会が国権の最高機関であります。政府が行政権をつかさどるその政府の最高首脳部であられるあなたが、一向政治的責任を痛感したような御言明がない。ちよつと遺憾だと今も一言言つただけでもつて、一体どういう責任をとろうとしているのか。警察法を直せば、あとこれから何とかなるというのですか、伺いたい。
  28. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はこの点について遺憾の意を表明しております。しこうしてこの事態にかんがみまして、警察法の改正については相当考慮すべき余地があるのじやなかろうかと考えて、ただいまその成案を得て、おそらく近日中に国会に提出する運びになることと考えております。
  29. 森山欽司

    森山委員 大体四月二十五日の行政監察委員会でもこのことを非常に心配して論議されておる。木村法務総裁は、講和発効後における法の空白期間に対して応急対策は十分持つていると重ねて答弁されておる。そうしてこういう事件を起した。ただこの連合審査会の席上で私は責任を感じておるという一言では政治家は済まない。そうして自分の非をおおい隠すために警察法を改正するということだけでは、政治家としての責件は相済みません。あなたは辞任する意思がないかどうか。この際はつきり言明していただきたい。
  30. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は辞任する意思はありません。この国家非常時に対処いたしまして、十分自分の責任をさらに果したいと考えております。
  31. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 森山君に申し上げますが、なお残りの質問は後刻に願つて、この際他の委員が本議案について簡単に質疑を希望しておりますが……。
  32. 森山欽司

    森山委員 いま二、三点だけ、別問にします。
  33. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 後刻に願いたいと思いますが、簡単ですか。
  34. 森山欽司

    森山委員 簡單です。
  35. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 それでは一、二点……。
  36. 森山欽司

    森山委員 新聞紙上に見られるところによると、警察法の改正とか、ゼネスト禁止法の提案をするのではないかというような新聞報道がございますが、それについて、もし提出されるとすれば、本国会に提出される予定であるかどうか、伺いたい。
  37. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。警察法の一部改正は、この国会において提出いたします。
  38. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 森山君、簡潔に願います。
  39. 森山欽司

    森山委員 破壊活動防止法案は、最近の労働組合の傾向にかんがみまして、非常に疑義が多いのであります。そこでこういう疑義が多い法案よりも、共産党を端的に禁止するよう法案を別途考慮する御意向がないかどうか、伺いたい。
  40. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さよう法案を今考えておりません。破防法はぜひ無修正で通過することを希望しております。
  41. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 前田種男君。
  42. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は、この法案の第一條は、暴力的破壊活動をやる団体という書きおろしの條文になつておりますが、これは悪質な行為をやる暴力行為をやる暴力行為だと言われておりますが、一体、今日、日本の国内にさよう団体があるかどうかという点を法務総裁に承つておきたいと思います。
  43. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さよう暴力破壊活動を行う団体ありやいなやという点は、あるということも申し上げがたいのであります。この法案のねらいは、将来あることを予定してやつておるのであります。
  44. 前田種男

    ○前田(種)委員 おそらく今のお言葉の裏を返しますと、共産党がそれに該当すると法務総裁は言うだろうと思います。しかし共産党といえども、表面に、暴力行為をやりますとは一言半句言つていない。ここに問題があると思います。そこでこの法律のねらいは、いわゆる共産党の今日の実際的な行動を指さすというのが一つと、それから一つは、戦前にありました凶悪な右翼団体もこの法の適用を受けるというように解釈していいかどうかという点を重ねて承つておきたいと思います。
  45. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。それは極左たると極右たるとをまたないのであります。今仰せになりました戦前の極右団体、これらの団体といえども、いやしくも暴力的破壊行為を目的としてさよう行動に出た場合には、この法案対象となることはもちろんであります。
  46. 前田種男

    ○前田(種)委員 今の大臣の答弁から行きますと、結局共産党は表向き暴力行為をやりますとは言つていないはずです。しかし実際にそういうものだという認定を押し進めて行きますと、結局共産党を非合法化しようとするねらいがこの法規に盛られておると私は見ております。そうなつて参りますと、私の見解から参りますと、今日の日本の現状において、共産党を非合法化することが国家的にいいか悪いかという基本的な問題になつて来ると思います。吉田内閣としては、あるいは非合法にしなければやむを得ない、あるいはした方がいいという結論を持つておられるかわかりませんが、日本の長い今後の再建の途上からいつて、基本的に共産党を非合法化するということは、私の意見から申し上げましたら一番拙策だと思います。むしろ共産党はりつぱな合法政党として、そうして日本国民が共産党の行動を十分監視し、批判し、そうしてそういうことができるようにする方が、地下にもぐらしてしまつたあとのいろいろの不安あるいはそれから起きますところのいろいろな半信半疑等から来ますところの治安の維持等を考えてみました場合に、やつぱり合法政党として残すべきだ、そうして合法政党として国民の前でその活動が十分認識できるような状態にする方が賢明な策ではないかと考えられますが、法務総裁の基本的な考え方をこの際承つておきたいと思います。
  47. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この法案によつて共産党を非合法化するのじやないかという御質問でございますが、この法案自体は共産党の非合法化のみを目的としておるわけではありません。いやしくも日本共産党にして暴力的破壊活動をすることを目的にある行動をすれば、むろんこの法案対象になることは当然であります。しかしこの法案のねらいは、先刻も申し上げました通り、いかなる団体といえども破壊的暴力行為を目的として活動したことをねらつておるのでありまして、単に共産党の非合法化を目的としておるものでないということを申し上げるのであります。
  48. 前田種男

    ○前田(種)委員 今のお言葉から行きますと、いかなる団体も第一條に抵触するよう行為をやれば、本法の適用を受けるというお答えでございますが、そこから参りますと一番心配になりますのは共産党だけでなくして、その他の多くの民主的な団体、労働団体あるいは文化人あるいは言論機関等が、ややともするとこの法の適用を受けるという心配が多分に出て参ります。この点に対して繰返し答弁をしておられますが、もう一度いわゆる正常な国民大衆が非常に不安に思つておりますその他の団体という点に対するところの法務総裁の見解をただしておきたいと思います。
  49. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。いかなる団体でも破壊的暴力行為を目的とする団体は、この法案対象となることは、先刻から申した通りであります。普通の労働組合とか、その他文化団体におきましては、暴力をもつて破壊活動をすることを目的とするというようなことは、およそ想像できないのであります。労働組合にいたしましても、いやしくもかよう行為に出ずることを目的とするということでありますと、それはもはや労働組合ではないのであります。労働組合がかよう破壊的活動をすることはわれわれも想像いたしておりません。また普通の文化団体においてもさよう行動に出ずるものとわれわれは考えておりません。従いましてこの法案につきましては、さよう労働組合とか、文化団体については何ら対象になるものでない、また前田委員の仰せになりましたような心配の点はごうもないことを申し上げたいのであります。
  50. 前田種男

    ○前田(種)委員 この点が労働団体が一番心配している問題でございまして、第二條の二項の正当な活動という解釈認定が重要になつて参ります。労働大臣もまた、この点についてはあくまでも労働団体の正常な活動は確保するということを繰返し言つておられますが、今また法務総裁もそういうお言葉でございますが、実は戰前の治安維持法の前例を引くまでもなく、吉田内閣が当初において判定いたしました国鉄の公企法の審議をやつたときには、その当時の労働大臣は増田現幹事長です。あの公企法を審議したときはあくまでもあの法規には従いますということを繰返し答弁しながら、しかも労政局長名で法案の解説まで国民に配布しておきながら、あの法規適用になり、しかも仲裁委員会の裁定が下つた場合に、一番先に違反行為を起したのは政府です。国鉄の仲裁案というものは一年がかりでもみにもんで難航を続けましたが、あの法律には明確にあの法規に従いますということを法案審議のときには繰返し政府当局が説明をし、解説を出しながら、その法規の違反を犯したのは政府が一番先であるという近い前例があるわけです。今日破防法審議するにあたりまして、つとめて正常な組合あるいは一般労働団体言論界、文化人、民主団体等には適用しない、あくまでも悪質なもののみにこれを適用するということを言葉を盡して申しておられますが、現に現内閣の初頭においてそうした前例が明確にあるのでございますから、そこに不安が起きて来るわけです。だから私はその点で法務総裁と労働大臣と双方から一体当時の増田労働大臣が繰返し言つたようなことを、再びこの法案の施行にあたつてそういう前例をふむことはない、絶対にしないという確言ができるかどうか、この点を承つておきたいと思います。
  51. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。前田委員がこの法案を十分御熟読くださいますれば、決して政府が濫用し得るというような杞憂は一掃せられると考えます。この法案は、この目的もはつきりいたしております。またこの法案についての取扱いについても万全の処置をここにとろうとしておるのであります。さようなこれを濫用するような一点の機会も與えておりません。昔の治安維持法なんかの建前と、今度の法案建前とは、ことごとくその性質を異にいたしております。この法案においてはきわめて民主的に、いやしくも濫用のおそれのないように仕向けておるのであります。どうかこの法案の逐條につきまして十分御討を願いたい、私はこう考えます。
  52. 前田種男

    ○前田(種)委員 労働大臣の答弁はあとで願うことにいたしますが、私は内容言つていないのです。問題は現実の問題として、労働争議あるいは労働組合活動その他の集会等におきまして、多数の行動でございますから、多数の行動の中には雑多なものが包含されることは言うまでもないのです。そこにはいろいろな目的を持つた人々も入つて来ることはやむを得ない。そういうような現実の社会の動きあるいは複雑な情勢下において、一々これを判断する場合に、ここで法を審議するというような正常な立場に立つて論議しておるというものでなくして、全国の末端の組織あるいは機関等においては、いろいろな想像できないようなできごとがたくさん起きて参ります。その場合に一体そういうできごとに対して、これはこの法律適用すべきか適用してはならぬかというような基本の線が明確になされておらなければ、やつた行為それ自体がこの法規適用されるということになりますと、結局この法規がそういう方面にだんだん擴充されて圧迫を受けるということになる心配がありますから、私はこの法の内容を一々言わずに、そういう現実の問題に即して一体大臣はどうお考えになるかということを聞いておりますから、その点はそのおつもりでお答えを願いたいと思います。
  53. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この法案第四條におきまして、「団体活動として暴力主義的破壊活動行つた団体に対して、」云々と書いてある。いわゆる団体活動として、かよう暴力的破壊活動を行つたことを前提としておるのであります。これがこの法案趣旨であります。団体活動と申しますと、いわゆる団体構成員が、団体として決議して、その団体意思のもとに活動することを言うのでありますから、さよう決議があるは意思暴力をやる、いわゆる暴力をもつて破壊活動をやる、内乱をやる、あるいは騒擾をやるというようなことは、私はおそらく労働組合にはなかろうと考えております。しこうして個々組合員行動につきましては、あるいは行き過ぎなことがありましよう。これはもつともなことであります。しかしその個々組合員行動によつて団体が規制されるという理由は毛頭もないのであります。個々組合員がいかなる行動に移ろうといたしましても、団体それ自体の規制は別問題であります。個々組合員法規に違反すれば、その法規に基いて処断するのは当然でありまして、団体とは別個の問題であるのでありますから、さような御心配は毛頭もないのであります。
  54. 前田種男

    ○前田(種)委員 労働団体の一例をとりましても、大臣がお考えになつておられるような正常なる労働組合だけであれば問題はないのです。労働組合の中にも右の端から左の端まであります。たくさんの幅の広い労働団体の中には、いろいろな内容を持つておるものもあるわけです。これを厳格にいえば、労働組合法の保護を受けない労働団体といわれる節のある労働団体もあるかもわかりません。しかしここが一番問題になつて来るわけですが、あくまで労働組合として労働組合法の保護を受ける立場に立ちながら、しかも労働組合自身が成長の過程においていろいろの問題に遭遇する場合もあり得るわけですが、この点で、全然労働団体に適しないということで線が引けるのか、しかしその中でもこの法の適用されると思われるものはびしびしやるという方針かという点が、現実問題として一番大事な問題であるし、またここが労働団体が非常に不安に思つておる焦点だと考えます。この焦点と目される点に対して、政府がもつと明確な方針を打出さなければ、この法案に対するところの国民一般の不審は決して消えるものではない。私はここを一番心配するのです。どこに線を引くかという線の引き方が必ずあると思う。第一條に書いてありますような悪質な行為をやるものには、違慮なく線を引くと言われるかもわかりませんが、この正当の認定等が実際問題としてめんどうな問題になつて参りますから、この点に十分の注意をせなければならぬし、また注意だけでなくして、この法がこの法がこのまま適用されると、ややともすれば非常な危険性が起きて来ることは心然の結果だということが予測できますので、その点もう一度重ねてお尋ねしておきたいと思います。
  55. 木村篤太郎

    木村国務大臣 普通の労働組合労働組合として破壊活動をやるというようなことは、およそ想像できないのであります。労働組合内乱を起したり、騒擾を起したり、あるいは殺人をしたりというようなことは、想像し得ないと考えております。ただ今仰せになりました労働組合の名をかりてやる団体はあるかもわかりません。労働組合と申しましても、その種類いかんによりましては、この法案規定いたしておりまする内乱を企図したり、あるいは騒擾を企図したりするよう団体があるかもわかりません。そういう場合においては、もちろんこの法案適用を受けるのは当然であります。しかしさよう団体は、労働組合と申しても、普通の労働組合ではないと考えております。ただ仮面をかぶつているにすぎない。普通の労働組合に、さよう暴力をもつて内乱を企図したりするようなことは、あり得ないと考えております。
  56. 前田種男

    ○前田(種)委員 結局私が冒頭に申し上げましたように、今の政府のものの考え方は、共産党を非合法化して地下にもぐらせるということがこの法律のねらいだと思います。共産党は地下にもぐるところの余地があります。また現に地下にもぐつて活動をやつております。しかし共産党以外の国民大衆は地下にもぐるところの余地がないので、どうしても地上にあつて法の適用を受けなければならぬということになりますから、結局この法律をどんなに施行されようといたしましても、地下にもぐつた共産党には適用されずに、かんじんな国民大衆がそばづえを食つて、この法規適用を受ける結果におそらくなるであろうということが一番心配されるのです。この点に対して、はたして法務総裁は地下にもぐる者に対していかなる責任をもつてどう対処されようとするのか、また地下にもぐれない国民大衆がそばづえを食う心配がないかどうかという点を、もう一度だめを押しておきたいと思います。
  57. 木村篤太郎

    木村国務大臣 地下にもぐつた者をどうするのかということでありますが、いやしくも破壊活動を目的としてさようなことをやつた団体は、これは地下にもぐろうと何いたそうと対象になるのであります。共産党以外の団体において、あるいは地下にもぐることができない者云々というお言葉がありましたが、さよう団体におきましても、地下にもぐろうが、地上にあろうが、いやしくも破壊活動をしようという違法な団体は、この法案対象となることはもちろんであります。しかしこの法案適用につきましては、十分慎重に事を運ぶべきでありまして、その活動実体につきましては、十分な調査の上において適当にこれを処置すべきことは、この法案自体において明瞭になつておる次第であります。
  58. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は時間がありませんから、最後にもう一つ法務総裁に国内治安の確保につきましてお尋ねしておきたい点は、昨日も申し上げましたよに、国内治安の確保はあくまでも国民の協力を得なければ不可能だと私は考えます。どうして国民の協力を得るか。国民全体がおのおのの部落を自分らの責任において守るということにならなければなりませんが、もちろん政府の失政がありますならば、おのずから政府の失政によつて治安が乱れて来るということは、これはもう議論の余地がないわけです。そういう関係から考えて参りますと、こうした法律をこしらえたり、また先ほども答弁されておりましたような、いろいろな強化された法規をこしらえることが、治安対策の唯一の道でいないと私は考えます。むしろそれよりも、やはり国民の協力を得られるような状態に政府が責任をもつて推し進めて行くという大方針が確立されなければならぬと思います。この点はあるいは今の吉田内閣にそういうことを望むことが無理かもわかりませんが、今日日本がほんとうに世界の仲間入りをして民主国家として再建される途上においては、独立した日本の行政あるいは立法機関がどういう政治をやつて行くかということは、各国の監視のもとに試験台に載せられていると私は見ます。そういう長い将来から考えてみまするならば、この治安の確保の問題、あるいはその他これに伴うところの諸政策が一番大事な問題であろうと考えます。この点に欠けるところがございますならば、百の法律をこしらえたところで、日本治安は悪くはなれ、決してよくなる結果にはならぬと考えますから、この点に対する法務総裁というよりも国務大臣としての木村さんの意見を承つておきたいと思います。
  59. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの前田委員のお言葉きわめて同感であります。治安を維持するにあたりましては、国民の協力を求めなければならぬことはもちろんであります。国民の協力なくして日本治安というものは維持できません。政府におきましても、国民の協力を求めるべく、これから施策の点について十分の考慮を拂いたいと考えております。
  60. 前田種男

    ○前田(種)委員 約束の時間になりましたので、これ以上質問をいたしません。先ほどの私の質問に対する労働大臣の答弁はあとで願えばけつこうです。それから法務総裁でなくても局長でいいですから御答弁願いたいのは、この法の第二十四條三項にありますところのいろいろな裁判問題は百日以内という期限が限られておりますが、百日以内で処理されなかつた場合に一体どうされるつもりかという点をお尋ねしておきたいと思います。その他の点についても一、二お聞きしたい点がありますが、私は時間を守りまして一応これでおきまして、もしあとで時間がありますならば、他の委員の間にでも簡単に質問を許していただきたいと思います。
  61. 佐瀬昌三

  62. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 法務総裁お尋ねしたいと思います。五月一日に二十三回メーデーが行われた際、今までにない流血の惨事が起つたのでありますが、これは日本の歴史にかつてない、旧憲法時代にもなかつた事件だということは世界周知の事実でございます。これに対しまして私どもといたしましては、破壊活動防止法案に関連し、破壊活動防止法案が実施されます以前に、すでに政府の手によつてわれわれ日本国民のすべての生活のすみずみまで支配が行き渡つて来ている、かような見地に立つておるものでございます。新聞紙上でも伝えておりますように、また各党の代表がひとえに木村法務総裁の責任を追求しやみませんのは、やはりあなたがその当事者の、最も責任のある地位においでになるし、また団規法——名前はかえましたけれども、とにかくこの法律案の最も熱心なる内閣におけるところの提案者として、命を投げ出しても共産党に対する弾圧をやるということを世間にも宣伝され、御自分でも明言されたという立場に立つておられるということをよく知つておるからであります。その点で、今日は十二時半ということでございますが、十二時半ということではなしに御答弁をいただきたい、かように思つております。  第一にお聞きしたいのは、法務総裁は当日の人民広場に集まりました大衆を暴徒と呼んでおられますが、その暴徒と呼んでおられますところの根拠についてお伺いしたいと思います。
  63. 木村篤太郎

    木村国務大臣 暴徒と申しましたのは、暴動を起した者どもということであります。
  64. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 暴動を起した者というお言葉でございますけれども、それでは暴動というものがどういう状態で起されたか。暴動はどちらから起きたか。なぜ暴動を起したのが大衆であつたという見解に立たれるのかという根拠について御説明願いたいと思うのであります。
  65. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は一般の大衆とは考えておりません。あれはあらかじめ計画的にやつたものと考えておるのであります。
  66. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 「あれは」というような抽象的なお言葉でございますけれども、「あれは」という言葉内容は、警察官の発砲によりまして死亡者やけが人ができた、このような流血の惨事が起きた、こういうことを計画的にあの組織労働者宮城前、人民広場でやろうとしていた、これが彼らの目的であつて、計画的に行われたという御答弁でございますか。
  67. 木村篤太郎

    木村国務大臣 組織労働者は加わつておりませんと考えております。あれは都学連、並びに一部朝鮮人、一部日雇い労働者と見ておるのであります。
  68. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 木村法務総裁は、とかく総評の五十万のメーデーに参加した大衆と切り離して、共産党が、学生が、日雇いが、一部の過激分子がこれを行つたんだという印象を国民に與えよう、世界にも與えようとしておられるようであります。しかし現に死亡している、射殺されております、虐殺されております労働者は、決して日雇い労働者でもございませんし、学生でもございません。現に都の民生局に働いている職員であつたという例、さらに今警察病院に収容されておりますところの重傷患者、あるいは射殺されて死体がどこへ陰匿されているかわからないといわれている大衆、それらの人々が一体どこの職場の何という人で、それが日雇いであるのかないのかというようなことについて、どうして法務総裁が責任を持つてただいまのような御発言をなさることができるのです。射殺された、虐殺された都職の高橋君は、あれは都職に籍を置いておるけれども産別の労働者だというのですか。あるいは日雇いの労働者だと言われるのですか。どこにその根拠がおありになるのですか。国気を瞞着するもあまりはなはだしいのではないかと思うのでございます。どこに総評組織労働者ではない、学生と日雇いであつたという根拠がおありになるのですか。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  69. 木村篤太郎

    木村国務大臣 高橋君のことが出ましたが、それは組織労働者のうちの一部の者が参加しておつたかもわかりません。しかし大多数の者は組織労働者でないということを申し上げるのであります。
  70. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 ただいまのお言葉でも現に一名の死亡者として政府が発表されておりますところの労働者が、総評傘下の労働者である。この事実から見ましても、政府の表現というものは、まつた国民を欺瞞するものだということは周知の事実になつているわけでございます。(「ノーノー」)さらに木村法務総裁にお伺いしたいのでございますが、他でメーデーが全国に行われているわけでございます。東京ばかりに共産党があるわけでもございません。東京ばかりに総評傘下以外の労働組合があるわけでもないのでございます。山梨でも一万人からの労働者が参加し、神戸でも五万からの労働者が参加し、また北海道でも、札幌市は二万、夕張は一万、美唄は二千、山元では七千というように、多くの総評傘下あるいは産別系も参加いたしまして、メーデーを国際的な労働者の闘いの日として闘つておりますのに、何らここでは騒擾事件が起きておらないのでございます。その点について木村法務総裁労働者階級を、しかも人民広場に集まりました労働者大衆を暴徒として、意識的にこれが計画されておつたと言われております根拠、これにつきましては、非常に私どもといたしましては納得できないし、いかに欺瞞されましても、国民もこれを承服するものではないと思うのでございます。その点でむしろ私どもお聞きしたいのは、前もつて改進党の森山君あたりから質疑されておりましたときの大臣の御答弁の中に、万全の策をもつてメーデーに対しての備えをしているということを、政府は御言明になつておられます。その万全の策というのはどういうものであつたか、それをひとつ詳細に御説明願いたいと思うのでございます。
  71. 木村篤太郎

    木村国務大臣 組織労働者がこの行事を意義あるものとして、平穏裡に各地でやつたということは、事実でございます。東京においても、総評主催のメーデーは無事に終了しておるのであります。この事件は、その無事終了した行事のあとに行われたものであります。しかもその参加した者は、あらかじめ計画的にやつたものと、われわれは見ております。(「資料を見てから言え」。)その資料も、ただいま検察庁において収集中であるのであります。しこうして私は、この事件の事前におきまして、さよう行動が行われるということの情報を得ておつたのであります。従いまして、その情報は警視総監のもとに通達して、警視総監がこれに対して対処すべく相当の処置をとつたものであるのであります。
  72. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 メーデーの大会においてもそうでございますし、それからまたその以前に、炭労の大会においても決定されておるのは、統一メーデーを人民広場で闘いとろう、こういうことがいわれておつたと聞いております。これは一部の労働者の、決して押しつけの考えではなしに、独立した日本労働者の、たといこれが政府の言う名ばかりの独立でありましても、労働者階級としては、真の独立を自分たちが中心となつて闘い抜く階級であるという誇りを持つているわけでございます。だからこそ、四月二十八日の屈辱的な講和発効後の第一回のメーデーは、どうしても昨年のリツジウエーの指令によるところの分散メーデーとは違つて、是が非でも人民広場でやりたい、これが要求であつたと私どもは承つております。その神宮外苑前の会場でも、人民広場へという要求が決議されたというふうに、これは参議院でも重盛議員、これらの議員の質問中にすら、これがうたわれておつたと私どもは了承いたしております。その大衆の決議、この決議が明治神宮の外苑で行われました後において、人民広場へというあの行動に移つたということは、これは明らかな事実だと思うのでございます。この組織労働者行動に対して、田中警視総監の五月二日の法務委員会における発言——人民広場へ、人民広場へと向う大衆に対して、阻止しようとする警察官の行動、多分これが法務総裁の言われるところの万全の策であつたのであろうと、私ども了承するのでございますが、この際に日比谷公園その他で阻止すると、いろいろ商店その他に迷惑をかける、あるいはいろいろな騒擾事件が起きる、だから人民広場へ誘導するということを発言しておつたということでございます。もしそうであるとするならば、その当日に大衆が、通行人までが認めておりましたように、日比谷公園の前から宮城広場へ誘導して、入つてつた大衆のやや集まつたころ合いを見て発砲しているとこういうは、明らかに武器をもつて弾圧しよう、これが万全の策であるというふうにお考えになつていたと言われましても、これは総裁としては答弁の余地がなかろうと思うのであります。そういう事実があつた。このことは天下周知の事実なのでございます。しかも警察官が、狙撃兵といわれている警察官が、十六発のたまを渡されておつたという事実すら承つております。これは非常に重大な問題だと思うのでございます。その事実については木村総裁はどういう答弁をなされるか、御答弁願いたいと思います。
  73. 木村篤太郎

    木村国務大臣 繰返して申し上げます。この事件の勃発したのは、いわゆるメーデーの行事が無事に終了した後に起つたものであります。しかして警察官が発砲したのは、二重橋まで追い詰められて、やむを得ず、あそこで進退きわまつて発砲したものであると、報告を受けておるのであります。その際におきましての警察官に対する暴虐は、実にひどかつたという報告を受けております。これはいわゆるやむを得ない緊急防衛と考えておるのであります。しかして警視総監がこれらを広場に誘導する考えを持つてつたということは、きわめて私は当然のことであろうと思います。その場合において、多数の民衆に迷惑をかけるということは当然でありますから、広場に誘導して、そこで解散させようとしたのは、これに警視総監の処置としては当然であろうと考えます。
  74. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 柄澤君に申し上げますが、この問題については、当法務委員会においても先般取扱い、なお昨日は本会議においても論議された問題であります。従つて委員会においては、議案に関係ある質疑を、定められた時間においてなるべく遂行されんことを望みます。  それでは、なお午後から続行することにいたしまして、午前中はこの程度にとどめ、暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後一時四十六分開議
  75. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。森山欽司君。
  76. 森山欽司

    森山委員 労働大臣にお伺いいたします。労働大臣は、三月二十七日本院において、わが党の小川半次君から京都騒擾事件に関する緊急質問をいたした際、「このメーデーにおいて左翼分子の蠢動なからしむるべく協議を進めておる次第であります。」ということを言われました。なおまた四月二十六日の労働委員会において、法の空白期間を生じたことについて政府の責任を追究した際、吉武労働大臣は、「法律の空白といつても、法律があれば事が解決するとは思つていませんから、空白がかりにありましても、空白の間法律がなければ何も手が出せないというふうには私は考えておりません。」「それがためにただちに責任を感ずるとは私は考えておりません。」というような、きわめて楽観的な答弁をされておるのであります。しかるに五月一日のメーデーにおいてあのよう騒擾事件が起きたのであります。労働大臣は、国会における発言について、どういう心構えお答えになつておられるか、国会における発言にほんとうに責任を持つてお答えになつておられるかどうか、あの事件についてどういう責任をお感じになつておられるか、念のために伺つておきたいと思います。
  77. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は、国会において発言をいたしましたことにつきましては、誠心誠意考えておるつもりでございます。御指摘になりました京都円山公園における事件は、小川君から指摘されまして、私も非常に警戒をしておつた次第であります。従いまして、今回の五月一日のメーデーにつきましても、私はこのよう事件の起らないようにということは、十分実は警戒をいたしました。総評が主催をいしております——主催の島上君にもこの点は、私個人的にも存じておりまするし、十分注意をいたして、島上君もこれらの問題につきましては、相当努力を拂つてくれたこととは思つておりますが、しかし相手は御承知ような非常に暴力的な分子でございまして、遂にあのよう事件が起りましたことは、非常に残念に思つておる次第であります。従いまして、今後かような問題につきましては、なお一層警戒を厳重にいたして、これが予防に努力をいたしたいと思います。なお法の空白という問題でございますが、先般の五月一日の事件につきまして、別に法の空白から出て来たとは私は思いません。あるいは今回のよう破防法があつたならばという意味のことでございましたならば、あるいは法の空白ということも言えるかもしれません。しかしあの事件を起したのは御承知ように共産主義的な、暴力的な極左分子であります。こういう分子はいかなる場合におきましても、法を無視してやる分子でございます。こういうものにつきましては徹底的にこれが排除に努めなければならぬ、私はかように存ずる次第でございます。
  78. 森山欽司

    森山委員 労働運動に関連して起つたところの暴動事件であります。それについて労働大臣は、十分盡すべきを盡し、何ら責任がないとおつしやるのですか。
  79. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は責任がないと申しませんが、労働運動に関連して起つたといつて、それではどういう労働法の制定をすれば、あの暴力的な行為をなくすることができるというおつもりでございましようか。私にはちよつと御質問趣旨がわからないのであります。
  80. 森山欽司

    森山委員 こういうような問題が起きないようにというので、本院においても各方面から、法務総裁、労働大臣に事前の十分なる措置を要望しておる。しかもなおあのような問題が起きたということについて、現に政権を持つている政府の一員として責任を感じないか。すべて何でもかんでも労働者が悪いのだ、おれの方は何ら責任がないのだとおつしやるのかどうか。
  81. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は責任を感じております。しかし今お尋ねの点は、法の空白を指摘したにもかかわらず、それをほつておいたためにこういう事件が起つたのじやないかというお尋ねでございますから、労働問題としての法の不備のために、どうしてああいう問題が起つたというふうにお考えになつているかということを、私はお尋ねしているわけであります。ああいうふうな暴力的な活動というものは、これは労働運動の面ではございません。労働運動に便乗をして、そしていかにも労働運動一つの発露であるかのような形をとつておるだけであります。これは労働運動ではなくして、一に共産主義的な、暴力的な、一つの計画的な行動であると私は存じております。
  82. 森山欽司

    森山委員 労働大臣は法の不備の問題について、どういう点が不備であつたからという御反問でございましたが、先ほど法務総裁の説明によれば、少くとも首都治安において命令系統がないために、自分の思うように行かなかつたんだということであつた。これは少くも今の政府の立場からいえば、警察法の不備ではないかと思うのであります。もとより労働大臣は労働問題を主管しておられます。しかし同時に閣僚の一員であります。国務大臣であります。私が労働委員会において聞いたのは、労働法規におけるところの空白あるいは不備をついているのではない。メーデーとかあるいはゼネストとかいうような、そういう治安関係する広い問題として、私は法の空白の問題を聞いたのであります。それに対して御心配に及ばない、そういうような空白があつても責任を感じないということをあの当時おつしやつた。しかもなおああいう問題が起きたから、あなたは責任を感じておるかということを聞いた。二回目、三回目の御答弁において、初めて責任を感じていますということのあなたの御返事があつたわけであります。しかし、あなたが責任を感ずるとすれば、ただ感じつぱなしじや話になりません。今日何をやつても税金をとられるのだが、頭を下げるのだけは税金をとられないからといつて、ただ国会委員会において、まことに遺憾に存じます、責任を感じますと、口だけでは話になりません。あとに関連をいたしますが、皇居前広場の使用の問題もあるのであります。これは明らかに第一審において負けておる。とにかく裁判所政府やり方は悪いということをはつきり言つておる。あなたがどんな行政的な解釈をしようと、裁判所政府の負けだと言つておる。あなたは——厚生大臣としての吉武さんですが——こういう諸般の事情からあなたの責任はまことに重大だ。だから責任を感じておられるなら、政治家らしい責任を負つてもらいたい。おやめになる意思はないか、これを伺いたい。
  83. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は責任を感じておりますが、やめるつもりはございません。御指摘になりました法の空白の問題は、過日労働委員会において御指摘になつたのであります。そのときのあなたの御質問は、労働法において空白の状態が出て来はしないかという御質問でございましたから、私は法の不備だけによつて労働運動を律せられるものでないということをお答えしたのであります。ただいまは警察法の不備ということを御指摘になりました。これは現在空白とは思いませんが、法の制度の上においては私も不備の点があるということは同感であります。従つて政府といたしましては、これについてはもう少し整備をするつもりでございます。  なお皇居前広場の使用の点は、御承知よう裁判所の第一審においては負けました。しかし私は自分の信念においては、皇居前広場はああいうふうに政治的な、宗教的な行事に使わせるべきものでないというかたい信念を持つております。第一審においては敗れましたが、私は控訴して必ず勝つつもりを持つております。
  84. 森山欽司

    森山委員 第二審で、あるいは第三審でお負けになつたら、一体どうするつもりかということを、私はこの際聞きたいのであります。  なお先ほどあなたがおつしやつた労働委員会だから、労働法規の問題だと考えたということが大体おかしい。ひとつこの点についてよく速記録をお調べ願いたいと思うのであります。  最後にゼネスト禁止法は提出をされるのかどうか。新聞紙上におきますと、労働法規の中には、いわば一種のゼネスト禁止規定を設けるというようなうわさも伝えられておる。またこれにかわつて、あるいはこれに重複して、ゼネスト禁止法を治安法規として設けられるというようなうわさも伝えられております。今日、労働大臣はこの問題についてどうお考えになつておられるか。率直な現段階についての御説明をお願いいたします。
  85. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 本日の閣議において、労働法の中にこれを挿入することはいたさないことにいたしました。将来ゼネスト禁止という問題になるかどうか私は存じませんが、国家非常の場合における処置を講ずべき治安立法につきましては、別途考慮するつもりでございます。
  86. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 中原健次君。
  87. 中原健次

    ○中原委員 労働大臣にお尋ねします。破壊活動防止法案がいろいろ論議されているまつ最中でありますが、もし不幸にして誤つてこの法律案が成立するようなことがあつた場合に、この法律日本の労働階級を初めとする一般国民との非常に切実な緊切な関係が、そこから発生するとわれわれは思うのであります。まずこの破防法案のねらつておるものと、今現実に起つておる問題との関連について、特にさきの五月一日におけるメーデーに際し、あのよう事件が勃発したのでありますが、これに対する政府の見解、労働大臣の見解も大体一致しているかのように見ることができるのでありますが、それは、あの事件は一部の過激分子、あるいは他の言葉で、ときには共産党がこのようなたくらみをやつたのであるというふうに、説明をしておいでになるようでありますが、あの場合の実情を見、かつその後のいろいろな調査等から総合して考えますると、これは政府一つの独断的な見方であつて、あの場合の問題はもう少し擴大されておるのではないか。端的にいえば、全国民的な形であのよう事件が起きたのではないか。われわれはまずそのように見ることのできる材料を持つておるわけであります。従つてまず最初にこれに対する労働大臣の見解を承つておきたい。
  88. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 全国民的な形において行われたということでありますが、私どもはさように存じておりません。御承知ように、当日行われましたメーデーは、明治神宮外苑において、総評を主体としてメーデーの行事が行われた。しかも総評は予定通りの行事を済まして、予定の地点で散会をしているのであります。あとに残つたのが全学連と朝連、それと共産系といわれておる産別系統の若干の労働者と自由労働者、これが全国民の形において行われたということは、どういう点を御指摘になつておつしやるのか、私どもはわからない。ただ共産党の方の話を聞きますと、過日風早氏も議場で、当日皇居前広場には十万人の労働者が入つていると言う。しかし決してあのときに十万の総評労働者は入つておりません。これはみんな見ていたところでありまして、全学連の者と朝連の者で、総評組織労働者というものはおとなしく帰つている。ごく一部の者が計画的にあれだけの暴動をやつておる。しかも皇居前広場を使わせないから入つたんだと言われておりますが、皇居前広場ばかりでやつた乱暴ではありません。日比谷の電車通りにある自動車に対して乱暴を加えている。これらは明らかに計画的と見ずして、何と言うことができるだろうか。私どもは、かくのごとき一部の分子が、こういう計画的な、暴力的な破壊活動をすることは、民主政治において断じて許すことができないから、今度のよう破防法を制定するわけであります。
  89. 中原健次

    ○中原委員 労働大臣は同じことを繰返しておいでになるようです。ところがあの場合の事件に関連して——ひとりこれは日本だけではありません。全世界をあげて非常な注目を寄せております。ことに世界的な形で批判をされておる。その批判の一部を拾い上げてみますと、当日のメーデーの、いわゆる人民広場内におけるできごとについては、そのメーデーのデモンストレーシヨンに対する見物人、あるいはたまたまい合せました通行人その他の一般の、メーデー参加の構成員以外の大衆が、おのずからあの空気の中に同調せざるを得ないような、そういう事情が起つておる。ことに人数の点から考えても、政府は究極的に六千くらいと踏んでおるようでありますが、アメリカ方面の報道によつても、一万を越えておると言われておるわけです。従つて、数の点も政府の見方は大分違うておるようでありますが、あの場合の構成員は、ひとり政府が指摘しておりまするような一部に局限されたものではなしに、いわゆる一般の国民大衆もこれに参加せざるを得ない條件がそこに起つて来た、こういうふうに見ることができるわけです。ことに、あの場合の事件のいきさつから見れば、政府がこれを取締ろうとするための取締り態勢、ここに大きな禍根があることを見のがすことができません。ことに国民の命をはなはだそまつに扱いました警察官の行動について見ますると、いろいろな新聞がその事実について報道し、指摘をしておるごとくに、はなはだ了解のできないものがたくさんあるわけであります。たとえば産業経済新聞の五月二日号を見ますると、「都民生局員乱射に倒る」という見出しで、痛ましくも倒れました高橋君のそれに対しまして、このような記事を報道しておる。すなわち目撃者の談によれば、高橋君はメーデーのデモに参加して一旦役所に帰つたが、また広場に出かけたところ、群衆と警官の乱闘が始まり、催涙弾がもうもうと上つたので、みんなは逃げ出した云々と書きまして、高橋君はピストルをもつて背後から心臓を撃たれて、そうして楠公の銅像前の芝生の上で倒れておつた、こういうふうに指摘をいたしております。これから考えますると、高橋君が撃たれましたのは、高橋君が何か乱暴をやつたから撃たれたのではなくて、たまたまそこに来合せました高橋君に対しまして、警官隊がピストルを乱射して、しかもそれは背後から乱射しておる。こういう事実がはつきり報道されておるわけです。しかも催涙弾をわざわざ風上に備えて、聞けば、何でも警官はすでにマスクを用意しておつたということでありまして、いわば初めから計画的にこれらのメーデーのデモの一隊を、警察が待ち構えて、襲撃をしたというような形が、逆に予想される面が出て参るのであります。しかもその場の実情を新聞紙が写真を通じて報道、紹介をいたしております。その写真について見ても、警察官のピストルの撃ち方は、正当防衛どころか、とんでもない姿勢になつておると私は思う。このような事実がありながら、そのような事実を注目することをしないで、あるいは知つておりながら知らざるを装うのか、とにかくそういう事実を無視してこのよう答弁をなさるということは、政府の一方的な、ある種の政治的な意図のもとに、われわれに独断を投げかけておるということが言えると私は思う。労働大臣は一体この現実をどのように御認識になるのか、それとも違つたデータをお持ちになるのか、この点をさらにお尋ねしたい。
  90. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は、中原さんがどういう意図であの事態を認識されているか、非常に疑問に思うものでありますが、当日の皇居前広場のあの暴動事件が、一般の大衆であるかのごとき口吻をお漏らしたなることには、私は、あなたに別の意図があるように思われてならないのです。この点は先ほども申しましたように、共産党の風早君が同じことを言つておられる。昨日本会議において、当日皇居前広場に集まつたのは十万、しかもその十万は一般の組織労働者で、ことに誇大にこれを報道し、しかもそれが一部共産分子ではなくて、一般の労働者であるかのごとき口吻を漏らしておる。そうしてそれが一般の国民行動であるかのごとき様相を呈しようというところに、私は別の意図があるのじやないかと思う。共産党がそういう意図のもとに宣伝されることは、これは日ごろからのことでありますから、別に私はどうとも思いませんが、中原さんまでがそういうことを言われるということになりますと、これは事実を曲げてお話になるような感じが私はいたします。それから次に、あのときの暴動に対して警察官のとつた態度でありますが、これは警察官は実は自重に自重をしておる。馬場先門から入つたのが、一旦二重橋の橋のもとまで暴徒が押しかけておるのであります。これを警察官がやつと食いとめて、あれをだんだん中央まで下らしておるのであります。そのために催涙弾を使つたりなんかしておる。これは当然のことであります。治安の責任にある警察官が、ただ手をこまねいておつたのでは、どうして警察官の責任を果すことができましようか。それを警察官が故意に襲撃するなどということをかりそめにもおつしやるところに、私はあなたがどういう意図でもつて言われるかということを非常に疑う。われわれはそういえふうな暴力によつて乱暴をすることは、今日の民主政治下においては、これは断固排撃しなければ、日本の民主政治というものは育ちません。
  91. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 なおこの問題は、他の機会にもしばしば究明されておりますから、本委員会においては、議題に関係のある問題について質疑を願います。
  92. 中原健次

    ○中原委員 ただいまの労働大臣の御答弁は、いまさら耳を傾けるものはないのです。ことに私の質問の要旨は、何もあの場合集まつた人たちが、労働組合員ではない、あるいは共産党員は一人もおらない、あるいはいわゆる進歩的な分子、そういうものも一人もいないと言うのではない。いろんな人がたくさんおつた。たくさんおりましたが、その構成員の中に、あなたが言われる人とはまつたく違つた者もたくさんおつたということ、ここに重大な点があると思うのです。従つて、あなたが指摘されるのとはまつたく違つたような要素も、あの大衆を構成しておつた。ここを見のがされては間違いなのであります。そうであるならば、その集まつた人たちは、最初から何か企図してそのようなことをしたように宣伝されておりますが、まつたくそうではない。あの広場を使いたいと思う熱意は、あるいはそういう要望は、労働者に共通した要望でありましたし、その労働者の要望を支持する国民の多数の考え方も、またそこに一致しておつたわけです。ことに裁判所があのような判決を下して、使わせないということは違法であると明確いにいたしております場合に、なおかつそれを執拗に使うことが間違いであるように、どこまでも食い下つて行こうという態度は、一体どこから出て来るのか。私はむしろそのことをあなたに聞きたいくらいだ。そういうところに、問題の最初の動機がはらんでおるわけであります。だからあの場合、大衆を恐るべき状況へ追い込んだというのは、大衆のそういう正当な要請を無視して、あくまで押えつけて行こうとする政府の方針に、その原因がある。これはだれもが認めておるところなのであります。これに対してはあなたが無反省であることは、はなはだ遺憾です。ことに労働行政は、事を起させないように、そのような根を拂うために努力することでなければ、よき解決はできないと思うのです。しかるにあらかじめ一つの意図を持たれて、このようなことを強引になさるようなそういう政府当局、ひとりそれは労働大臣という立場ではなくて、国務大臣としてのあなたの立場から考えても、そういうよう心構えのもとに、破防法ようなものが運営されて行くための一助となるならば、これは恐るべきことにならざるを得ないのです。さきの労働委員会の席上で、あなたはいろいろ字句修正等に努力したことを喋々とお述べになられたが、その字句の末梢の修正が、とうていこのような大きな問題を妥当適列に解決するに役立たないということを、遺憾ながら証明することになるのです。だから問題は、この法律案を提出された意図そのものにあるわけでありまするが、その問題は木村法務総裁に譲るといたしまして、とにかくこのような見解のもとにあなた方が立たれて、国民に立向うとすれば、とんでもない。ことに先ほども暴力ということをしきりに繰返された。私もあなたに負けないほどに、いやむしろ私はあなたどころではない。決定的に暴力はきらいです。私は暴力反対する。しかしながら、暴力ということについても考えてもらいたいことがある。今回のこの広場におけるできごとについて、警察側として暴力を行使しなかつたかどうか。私はここに一つの問題があると思うのです。警察官がピストルを持ち、こん棒を持つ、そういう姿それ自身が、純粋な立場からいえば、これも一つ暴力の構えです。ただたまたま時の権力の、いわゆる法的の立場の上に立つてそれを行使するというところに、暴力ではないかのような幻想を国民に與えておるにすぎない。いわば国民はあきらめさせられておるにすぎないのです。だからこそ、そのような武器が誤つて行使されるならば、当然その法のわくを越えるのであるから、あなた方の立場に立つて解釈しても、これは暴力であるということに私はなると思う。でありますから、この警察官が持つておる武器というものは、よほど慎重に取扱われない限り、事目的とかわつて来ることになることは申すまでもありません。従いまして、一応表面上の理由は、治安を守るために、そのようないわば暴力武器を必要として携行させられておると思いまするが、それだけにこれは非常に危険である。危険であるだけに、その行使についてはよほど慎重を要することは申すまでもございません。先ほど御紹介申しましたように、すでに当日の写真版も示しておるごとくに、これはとんでもない姿が写つておる。ピストルの向け方、その姿勢、その周囲の状況から見ると、これは追い詰められてやむを得ず撃つた正当防衛どころか、労働階級並びに日本国民をまさに敵として扱おうとする態度であることを、否定することはできない。その写真版をお目にかけます。私どもははなはだ残念しごくであります。こういうことが国の中央で、しかも白晝公然行われ、それを政府が寄つてたかつて弁解し、合理化して、国民を納得せしめようとするがごときは、ほんとうに民主主義国家政府のあるべき態度かどうか。われわれははなはだその点を疑わざるを得ない。従いまして、そのような見解のもとに法を行使するような、そういうきわめて独断的な態度を持つその政府に対して、この破壊活動防止法というような武器を與えるならば、何をやるかわからない。われわれはそのように憂える。そのことは、いわば一種の恐怖政治への方向じやないか。一つのフアツシヨ的な政治の方向をすでに政府は歩みつつあるのではないか、かように私は憂えざるを得ない。ことにまたこのような諸問題が、このよう事件が起るために、たとえばメーデーが講和、安保両條約の破棄あるいは行政協定の反対、破棄を決議し、声明し、これに対してメーデーは全国民にそのための共同闘争を呼びかけた。このような諸問題は、やはり今度の事件に無関係だと私は思わない。これは政府のとつておりまする政策が、国民の意図をまつたく無視して、しやにむに一方的な見解で押し切ろうとしておるところに、このよう事件もまた起つたのではないか。それについて、私はここに外国の論調の一、二を拾うて指摘しておきます。たとえば、これはインドの新聞の論調の指摘でありますが、ここではこう書いておる。今度のメーデーに対する乱闘事件の大きな原因について、こう書いておる。すなわち、アメリカ日本政府が、国民意思を無視して、講和條約並びに安全保障條約を押しつけることに存する国民の反発によるもので、もし政府がこうした動きに弾圧を加えるならば、日本政府にとつても、アメリカの極東政策にとつても、大きなマイナスになるであろう。こういうふうに指摘しております。さらにもう一つ、これはアメリカの報道です。アメリカの方でもこう言うておるのです。今度のメーデー乱闘事件について、こういう論評が載つておる。これはアメリカのカンパスという新聞の主筆サツカレー氏の談話、その中の一部を読みます。米国の政策に反対している者は、共産主義者だけではない。工業家、水産業者、労働者、また農民ですら、米国のさしずで日本政府がとつた政策に対し、ひそかに重大な疑問を投げかけておる。この現われが云々というふうに書いてある。こういうふうな外国紙等の報道から考えましても、政府が一本調子で強弁しておいでになるような実態とは違うのじやないか。だから問題の起る場合には、むしろ、一体国民がここまで興奮するのは何のためであろうか。かりにこれを警視庁側の非常に行き届いた、何と申しますか、あのメーデー・デモンストレーシヨンに対する気づかいの態度を持つてつたといたしましても、問題はこのよう事件の起るためには、おのずからそこに原因がある。原因のない結果は生れて来ない、こういうことが言えるわけであります。従つて政府は、これはひとり労働大臣の立場だけじやなくて、国務大臣としてのあなたも、もう少し今度のできごとの原因、真相、従つてそのよつて起る源を究明するという態度に立たれるべきじやなかろうか。私はそれについて一応あなたの御所見を聞いておきたい。
  93. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お答えをいたしますが、第一の点は、皇居前広場における暴動の際に、一般の人も入つた。これは一般の見物人があつたことは事実であります。しかしそれは見物をしておつたのであつて、その人が暴動を一緒にやつているのじやないのであります。それをいかにも暴動をやつたかのごとく報道しているのは、共産党の連中だ。それをあなたもまた同じようなことをおつしやる。暴動をほんとうにあの中に入つてつているのと、それから外で見ている人とは、違うのであります。なおあの暴徒の連中は皇居前広場を使用させないからと、こういうお話であります。しかしあのときの暴徒の連中は、あらかじめ計画的であることは、過日法務総裁からも話して、いるし、一般の認めるところであります。これは先ほどどなたかからもお話がありましたことく、かつて円山公園における総評の蹶起大会のときでも同様であります。あのときでも総評の蹶起大会の中へまぎれ込んで、一部の極左分子が乱暴をやつておる。今度もあの極左分子は、もし皇居前の広場を使わせたとしたならば、あの前に三十万の組織労働者メーデーを行う。そのときに便乗をして、おそらく同じような乱暴を働いたでありましよう。そうすると、いかにも組織労働者三十万が、同じに行動したかのごとく報道するに違いない。これは共産党の連中のやり方であります。幸いにして当日は明治神宮の外苑においてメーデーが行われたために、総評組織労働者は載然と区別されて散会をしたから、ただ一部の共産主義的な破壊分子のみがあの中へ入つて乱暴をした。それは一つの口実です。それをあなたが同じようなことをおつしやるとするならば、それこそ暴力的な破壊的な活動を、あなたが弁護されているにすぎないと私は信じます。また過日の警察官の行動は、これは一応自重に自重を重ねて、そうして再三散会を要求しておる。それにもかかわらず、いろいろな木にくぎを打つたりあるいは金棒を持つたり、いろいろなそういうものを持つて、そうして盛んに抵抗しておる。これを防ぐために、やむを得ず催涙弾その他を使用することは、これは当然である。また今回のこの事件は、一つは両條約等の反対という一つの問題もあるというお話でありますが、それは国民の中でいろいろな政治について見解を異にされる方はあるでありましよう。しかし両條約については、国民の大多数は賛成をしておる。一部の者は反対するでありましよう。しかしおよそ世の中で政治的な見解を異にするからといつて、それだから暴力を使つていいということこそ、これがいわゆる共産主義的な暴力是認のやり方であります。それはわれわれ民主政治としては、排撃しなければならない。真に民主的な自由な立場において、政治的な見解を異にするならば、お互いにそれを論争して、そうして国民の意見によつてきめるというのが民主政治のやり方であります。意見が違うから、それを通すために暴力を使うということは、断じて民主政治下においては許されることではありません。
  94. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 中原君、時間が経過しておりますから……。
  95. 中原健次

    ○中原委員 もう一点だけ……。
  96. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 それでは中原君、簡単に願います。
  97. 中原健次

    ○中原委員 それでは労働大臣にもう一つつておきます。これはある新聞の発表しました当日の状況についての座談会の記事でありますが、ここにはこう書いてあるのです。デモンストレーシヨンの列の中におつた指揮者は、側から見物しておる見物人の方からいろいろな——こう書いてある。原文を読みましよう。やじうまが盛んに石を投げていたようであつた。だがデモ隊が、挑発だから、そのようなことはやめろ、そうしてどうしてもやめられないなら、とにかく石を投げている人は、デモにまず加わつてもらいたい。こういうふうに呼びかけている。従つてあなたのいわゆる暴力的な行動に対して、非常に警戒これ努めて、むしろ暴力どころか、整然としたデモを敢行しようという意図を、デモンストレーシヨンの指導者の中に、はつきりうかがうことができるのであります。そういう事実は無視なさるのかどうか。これは非常に重要なことだと思うのです。一体暴力はどつちがけしかけたか。だれが暴力をしたのか。私は信ずる。労働者は決して暴力を喜ぶものではありません。労働者はむしろ国民の支持を受けたい。国民に支持されたいと願うがゆえに、あのようなデモンストレーシヨンの場合には、あくまで秩序と責任をもつてこれを行おうとしていることは、全国的に当然見られたところでありまして、いささかも疑問の余地はないのであります。これをあなたがメーデー・デモンストレーシヨンの性質を、やはり十分理解しておいでにならないところから、そういう暴力というよう言葉がしきりに投げかけられる原因をなすであろうと私は思うのです。決してそんなものではない。ことに私は、政治上の意見の相違、あるいは主義、政策、施策等について意見の対立する場合もあるということを、あなたも仰せられましたが、もとよりそうなんです。従つてこの政治上の主義もしくは施策等による対立を、あくまで強く持ち込んで行こうとする労働者の熱意が、デモンストレーシヨンを敢行するという結果になることは、言うまでもないわけなんです。従つてそのよう方法によつて、労働階級を初めとする大衆が、政府に対して政治的な意思表示をする、あるいは政治的な抗議をする、そのことを整然行わしめるような施策がなぜ持たれないのか。むしろ警察官憲があごひもをつけて、いわゆる武装をして、これに立ち向うというものものしさが心要なのか心要でないのか。私はむしろ心要でないと思う。そういうことをするところに、一つの挑発が起るのでありまして、これは私どもの長い経験から考えまして、デモンストレーシヨンが混乱に陷れられる場合には、取締り当局がこれを誘発する、これを誘うという原因によつて、デモンストレーシヨンが混乱を来すのであります。この点デモンストレーシヨンに対する認識の是正を私はあなたに願いたい。そのことを強く要望します。われわれは決して労働者のデモンストレーシヨーンが警察の御迷惑をかけ、ごやつかいになるような心要は、寸毫も持つておらぬことを宣言しておきます。われわれはわれわれの責任において、日本の労働階級を初めとする大衆を整然と行動させてお目にかける。従つてその点に対する認識が違うのであります。そうなつて参りますと、たとえばこの破壊活動防止法案をしさいに点検して参りますれば、非常にあぶない点がたくさん見つかつて参るわけです。私は時間が許せば、この破壊活動防止法案の意見をしさいにわたつてあなたに聞き、私の言いたいことも言つてみたいと思いまするが、お約束によりまして、時間がないそうでありますから、そのことはあとの機会に譲るといたしまして、ただ一点だけここに伺つておきたいのは、第三十九條に「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため、左の各号の罪の予備、陰謀、教唆又はせん動をなした者は、三年以下の懲役又は禁こに処する。」と書いてある。このような第三十九條の適用の場合にも、非常に恐るべき危険が伴つて来るのです。この三十九條が今の政府の、あなた方のような見解のもとに解釈され、そうしてこれによつて動員されるであろう各種の機関が、そういう見解の上に立つて一方的に判断をして、この法律を行使なされば、善良な国民がひどい目にあうことは、いまさら申すまでもありません。だから労働委員会におけるあなたの説明のように、この法律案がどのように修正のために熱意を傾けられたといたしましても、その熱意は、このような本質的な問題には触れるようにできておらないと思うし、またかりにそれがそうであつたといたしましても、ただいま申しますような意味において、この三十九條の適用範囲においても非常な危險が伴つて参ると思います。従つて政府自身、たとえば吉田内閣が、吉田内閣の意図する政策を推進しようとするそれに対して、政治的に見解を異にする反対派、あるいは国民反対的な意思表示が実際の行動に移りました場合に、ちようどこのメーデーで経験しましたようなそういう解釈論が、この第三十九條に擴大適用されて行くという危険性が多分にあることを、私どもは指摘しなければなりません。これに対して、三十九條についてのあなたの御確信のある見解を承りたい。
  98. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は今発言されました中に、非常に誤解を生ずるようなお言葉がございましたから、訂正をいたしたいと思います。デモは整然と行つておる、やじうまから石を投げられて、むしろデモはこれを制止したくらいである。われわれにおまかせいただければ、りつぱにやつて行きますというお言葉でございましたが、明治神宮においてメーデーを主催いたしましたその幹部及び総評組織労働者は、整然とやつていたと私は認めます。また整然とやろうという努力と誠意を持たれたことも私は認めます。しかしながらあの明治神宮外苑における行事においても、ほとんど終りかけますと、全学連の連中があの台の上に上つて、占拠して、委員長であつた島上君は相当乱暴を受けておる。遂にこれを制止できなくて、行進に入つて散会をしておる。過日京都の円山公園におけるときの大会でも同様であります。総評人たちは、あの乱暴はおれたちがやつたのではない、おれたちがおとなしくやつているところへ、極左分子が入り込んで乱暴したのだと言つておる。これが今日の実情であります。ところがいくらあなたがみえを切られて、おれたちにまかせればやれるといつても、こういう一部極左分子は、あらかじめ計画的に、そういう乱暴をすることを目的としてやつておるのでありますから、われわれはこうい分子は何とかして防止しなければならぬというのが、今度の法律趣旨であります。またメーデーというものは政策に対する一つの意見をもつて行われている、こういうものをなぜ認めないかというお話でございますが、私どもはメーデーを禁止した覚えはございません。皇居前広場は清楚な場所として、そういう政治的な宗教的な行事をする場所ではない、だからお貸しできない、しかしメーデーは私どもは抑圧する意思はないから、明治神宮外苑はむしろ私どもがあつせんをして、あそこを使用するようにしております。これは総評の幹部もみんな知つておる事実であります。われわれはそんなものを決して抑圧するなどという考えは毛頭持つておりません。  また最後にお尋ねの第三十九條における予備、陰謀、教唆、扇動等のお言葉がございましたが、今のお話を聞きますと、いかにも吉田内閣の政策に反対をすれば、これにひつかかるようなことを言われますが、そういうところはどこに條文がございますか。明らかに條文に書いてありますことは、内乱の教唆、扇動あるいは騒擾あるいは殺人、放火、こういうものの教唆、扇動をしてはならぬということが書いてあるのであります。これは明らかに認めるわけには行きません。人を殺す扇動をしてもいいということにはならないのであります。火をつける扇動をしてよろしいということにはならないのであります。これを防止することは、当然のことだと私は考えております。
  99. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 熊本虎三君。
  100. 熊本虎三

    ○熊本委員 法務総裁がおられませんことは、はなはだ残念でございますが、前もつてお断りをいたてしおきます。それは私の質問内容は、当然労働行政と本法の関連性を重点として、お尋ねするわけでございます。しかしながら何といいましても、立法の方針やあるいは運用について論究しなければ、関連性が明確にならぬわけでございまして、これを労働大臣の専門的な立場からだけ質問をすることは、非常に困難でございます。従いまして吉武労働大臣は、その専門的な大臣としての立場と、国務大臣としての政府を代表する立場と、両方の意味において御答弁を願いたい。もし専門的な法務総裁でなければ答弁のできざるものは、法務総裁がお見えになつてから、あらためてその分だけを質問することにいたしたいと存じます。  冒頭に私が伺いたいことは、いろいろ長い開議論をかわされて来ております本法が、繰返し言われておりますように、内乱騒擾、放火、殺人等の極悪なる犯罪が、しかも団体行動として計画的に行われるものを規制するものであると、こう言われております。しかしながら今日までのいろいろの質疑応答の中から私考えまして、どうしてもそれはこの法律をもつてしては、その目的が達成できないと考えます。逆にこの法を制定することによつて、そうでない発作的なもの、あるいは無意識的に行われる一般善良なる大衆が、これによつて圧迫されることの方が、より国家的に重大であると考えるのであります。従つてその意味において、まず政府はこの法案を一たび撤回するという御意思があるかないかを、冒頭にお尋ねしておきたいと存じます。
  101. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私どもはこの法律を撤回するつもりはございません。今御指摘になりましたように、この法律が無意識的な一般の国民を抑圧するおそれはないかということでございますが、この点は返す返すも申しておりまするように、労働運動にいたしましても、正常なる労働運動を抑圧するつもりは毛頭ございません。この点は念には念を入れてはつきりいたしておきますと同時に、中をごらんになりますれば、ただいま御指摘になりましたように、はつきりした内乱とか騒擾とか殺人、放火のごとき極悪なる行為をすることを、暴力といつておるのであります。こういう問題を一般の無意識的な国民がなさるはずはないのでありまするから、その点の御心配は私なさらないでけつこうだ、かように思います。
  102. 熊本虎三

    ○熊本委員 それでは次にお尋ねいたしますが、今問題になつております五月一日のメーデーに関連するあの問題は、もし本法案ができておりましたならば、本法によつて処置される、これに該当するものとお考えであるかどうか、その点お尋ねしたいと思います。
  103. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答え申します。五月一日の騒擾事件につきましては、目下東京地方検察庁並びに警視庁におきまして捜査中でありまして、近くその事実が確定するものと考えております。現在政府といたしましては、この騒擾が背後の団体によつて扇動されたのではないかという疑いを持つものであります。もしこの疑いにして事実といたしますれば、かよう騒擾を政治目的のもとに扇動したという事実が明らかになりますれば、その団体に対しまして所要の規制をなすことと相なるわけであります。
  104. 熊本虎三

    ○熊本委員 次にお尋ねいたします。先ほどから何回もメーデー事件につきましては質疑応答がありまして、一方の方では一般組織労働者あるいは大衆をも含んでおつたと言うし、政府側からはそうでない特定のものだと、こう言われております。なるほどその主流をなすものは全学連あるいは旧朝鮮連、あるいは日雇い労働者というふうに主体はあつたようでございます。しかしながらその六千名といわれ、あるいは何万といわれておりまするその騒擾対象となるべき人数ことごとくが、はたして暴力的な破壊的な意図をもつて参加しておつたかどうかということは、はなはだ疑問だと考えます。今検察庁で手を入れております。そうして報道されております約三百になんなんとする被疑者を、取調べ中だということを言われておりまするが、これからどの程度に発展するかは別であります。ともかくも全学連といいましても、あるいは旧朝連といいましても、われわれはメーデーの参加者として、はたして適切なる団体であるかどうかにつきまして、いろいろ議論をした方でございまして、この点は私どもも最初から危惧を持つてつたのでありますが、しかしそれだからといつてこれらの全学連をあげてみましても、これらの連中がことごとくその意図を持つて、計画的にあるいは意識的にやつたものばかりではないはずだ。要するに非合法的な運動をやつて、いわゆる兇悪なる破壊行為をやろうとする団体は、おおむねそのことを表に出しません。ことごとくは陰の仕事としてこれを行い、これらの行うところはできるだけさにあらざる合法的な組織の中に持ち込んで、そのチヤンスを得てこれを巻き込もうとすることが、これらの指導者の常である。従つてこの破防法案というものをもつて、これをうかつに適用いたしますると、しかもその首魁者と見られるものがいまだにあがつておらないと同じように、ほんとうに計画的で意識的でないこれらの発作的に、あるいは機械的に巻き込まれたものが、多くこの対象となつて極端な圧迫をこうむるといふ事実は、以前からあるいは今度のメーデーの問題に関しても、断じて見のがしてはならないと私は考えているのであるが、今度のメーデー問題等を通じ、特に吉武労働大臣は将来の労働運動に対してこれが災いしない、法がそうなつていないから、さようなことはないということが保障できるかどうか。私は断じて危険しごくであると考えますが、お答えを願いたいと思います。
  105. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 この間のメーデーによつて暴動をいたしました連中は——それを扇動、指導した首魁者はうしろに控えておつたかもしれない。しかしながらあれに参加いたしました連中は、知らないでやつたとは考えられない。これはうしろに指導者がいたかどうかは存じませんが、意識しておつたことは、あらかじめ計画的であることは認められるのであります。これは明治神宮外苑におけるあの台の上を占拠し、そうしてメーデーの際にほかのものは整然として行進をしようとしたのに、あとから追い越して乱暴をしながら行進をしている等の事実から見ましても明らかであります。ただ御指摘になりましたように、往々にしてそういう暴力的な極左分子というものは、こういう組織労働者を利用し、そうしてそれに便乗して引込もうとしているということは私も率直に認めます。でありますから私は今日の組織労働者に対しましては、総同盟にいたしましても、総評の人々にいたしましても、こういう人々の巻添えにならないように、はつきりしなければならない。ぼやけたことをするからそこに入り込まれるということを、私は常に指摘しているのであります。この点は私どももまた労働組合におきましても、今後とも十分注意して行くべき点であると私も存じております。
  106. 熊本虎三

    ○熊本委員 ただいまの答弁を聞くと、ますます不安になるわけでございます。私の所属する総同盟は、労働大臣御承知通りでございまして、幾多の問題に関しましても、私どもはあくまでも合法的な運動を推進したいと考えて、その方向へ進んで来ております。しかしながら今大臣がおつしやるように、そういう合法的なものはこれらに巻き込まれざるごとくに注意しろというよう言葉自体が、逆に言うならばそれが弾圧の対象になるおそれがある。そういうおつしやるようなことを労働組合がやつておりますると、憲法で認められたわれわれの団結権、団体交渉権まで、いわゆる当然の権利を活用することができないおそれが多分にあるわけでございまして、私どものおそれるゆえんはその点にあるのでございます。しかしいつも概論的なことばかり質疑いたしておりましては先に進みませんから、二、三私は具体的なものについて御説明を願つてみたいと存じます。  次の問題も何回か法務委員会においても論議され、また本委員会においても論議された問題でございまするけれども、本法の第二條は言うまでもなく訓示規定であつて罰則はない。そうしますると、これに携わるところの係官はえて行き過ぎを生ずる。そうしていろいろ次にも聞きたいと思いまするが、たとえて言いますると具体的にそうであるかないかを調査する、あるいはそうであると断定する、しこうして正規の機関によつてその判定をするまでに、その間における多くの行き過ぎ、圧迫の行為が行われるのであつて、かくのごとき重要な法案を直接執行しようとする係官の行き過ぎに対しましては、具体的な罰則を設けて、これらの行き過ぎを押えなければならないと考えているにもかかわらず、その問題が本法のいずれにもうたつてない。かようなことでは必ず執行者は行き過ぎて、そうして合法的な善良なる国民のそしりを受ける対象となろうと思うのでございまして、これに対する何らかの罰則規定を設ける意思があるかないか。この点をお伺いいたしたいと存じます。
  107. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答えいたします。この法案二條規定は単なる訓示規定ではございません。規制並びに規制のための調査の基準を示したものでありまして、この基準に違反すれば違法なるものとなり、裁判上争われるわけであります。また第二條の違反が濫用の場合におきましては、国家公務員の職権濫用といたしまして懲戒の制度もあり、刑法第百九十三條に規定する職権濫用罪の適用があるわけであります。また濫用がただいま申した通り違法と認められる場合におきましては、国家賠償法による賠償の問題を生じ、また当該処分が訴訟において取消されることとなるわけでありまして、政府におきましてはこれをもつて十分なるものと思料いたしております。
  108. 熊本虎三

    ○熊本委員 おざさりの答弁でございまして承服はできません。特別法をつくるとするならば当然その特別法にこれを、同じ程度のものであるかどうかは別といたして、記載すべきものであると私は考えております。  次に移ります。第三條の一のロ号、これには御承知通り「教唆」「せん動」という漠然たる言葉をもつて表示されておりまするが、この「教唆」「せん動」という言葉の擴大は、はなはだもつて危険千万であります。たとえば合法的な労働団体が、非合法と目するあるいは暴力的な傾向があると考えるいろいろの動向に対して、これらの決議これらの行動あるいはその他の見通し等について、われわれが下部その他の機関に対して、情勢の報告及びわれわれの方針の徹底、かようなことをやる場合におきましても、一たびそういうような文書が現われて後に、これに対するわれわれの態度というものが現わされて行くのが順序でございます。従いましてこういうような單に漠然たる言葉をもつて、すべてを律するというがごときことは至つて危険であります。かつて治安維持法によつて現われましごとくに、われわれが演説をやりましても「社会」と言えば「注意」である。「革命」と言えばただちに「検束」である。こういうふうに出先官憲においては、心ず行き過ぎといわゆる弾圧を意味するものでございまして、これらははなはだもつて危険千万であつて、これにはもう少し具体的な事例をあげて、これに対するところの国民の不安を一掃しなければならない、かよう考えるわけでございますが、この点はいかん。  さらに特にこの項の末尾におきましては、「頒布し若しくは公然掲示する目的をもつて所持すること。」と書いてありまするが、これらは意識的に積極的にやろうとして所持する者ばかりでないはずである。時と場合によりましては、かつてもあつた、われわれも体験がありまするが、場合によつてはみずからが持つて行くことに危険を感じて、そうしてこれを他人にことずけることがある。あるいは自分の身の危険を感じて、他人にこれを託してみずからは潜むというよう行動すらありまして、そのことのためにわれわれの同志は、かつては二箇月間も留置場にほうり込まれた実例がある。こういうような非常に危険千万な字句を、單にそういう「目的をもつて所持すること。」というがごとき曖昧模糊たる條文をもつて一般国民大衆に向うがごときは、はなはだもつてこれは悪法であると言わなければなりません。これらについて一体当局者はどうお考えになつているかを、お尋ねいたしたいと存じます。
  109. 關之

    ○關政府委員 お答えいたしまま。御質問の第一点は、「教唆」「せん動」という言葉が、きわめて漠然としてはいないかというお尋ねでありますが、この点につきましては、私どは漠然としてはいないものであると考えているわけであります。と申しますのは「教唆」はすでに刑法総則におきまして、法律用語として確定したる概念を持つているわけでございます。また扇動と申しますのは、今日すでに数個の法律に明瞭に使われてる言葉であり、しかもその内容たるや、判例によつて大体確定しているところの内容を持つているわけであります。従いましてこの教唆または扇動という概念は、法律用語として漠然としたものではないというふうに考えているわけであります。  次にこの「公然掲示する目的をもつて」、これはロに規定するがごとく内乱の「行為の実現を容易ならしめるため、その実現の正当性若しくは必要性を主張した文書若しくは図画」これを公然掲示もしくは頒布し、もしくは掲示する目的、この目的のない限りはこれに該当しないわけであります。これを掲示しようとし、もしくは頒布しようとする意思がそこにあるわけであります。かかる場合でない限りは、本法に該当しないことに相なつておるのであります。
  110. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 時間がありませんから、もし法務府に対する御質疑がなお残つておれば後刻に願いまして、他の委員がこの際労働大臣に質疑したいという希望がありますので、その方を先にして、あとでなお法務府に対する御質疑を願いたいと思います。
  111. 熊本虎三

    ○熊本委員 ただいまの答弁も……。
  112. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 熊本君。簡単ですか、労働大臣に対する質疑ですか。
  113. 熊本虎三

    ○熊本委員 これはことごとく労働大臣が、私に言わせると、答弁すべきなんですよ。簡単にやります。
  114. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 簡潔に願います。
  115. 熊本虎三

    ○熊本委員 まだ数点ございますが……。
  116. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 なるべく御意見の発表でなく、質疑を簡潔にお願いするようにしたいと思います。
  117. 熊本虎三

    ○熊本委員 意見を述べなければ質問の要旨がわかりません。意見は質問の要旨を説明する意味で申し上げておりますから、御了承願つておきます。ただいまの御答弁につきましても、これは特に労働関係に必要があり、吉武労働大臣は労働行政の直接の大臣でございますから、私は大臣のためにも十分これは好意的な質問と御了解を願つておきたいと思います。  次の公務執行妨害、いわゆる第三條の二のリでございます。これがまたはなはだ危険千万でございまして、たとえば悪質資本家に対して労働争議が起る。そうすると悪質な資本家はあえて不当労働行為をやつて、そうして必要ありと考えればロツク・アウトを食わすこともある。労働争議団といたしましては、あくまでもこれは不当労働行為であるとして入場しようとする。そこにいささかのいさかいが生ずることは当然である。それが取締官たる警察官その他の出先のいわゆる末輩の官憲の裁量をもつて、そのときの処置をするのであります。従つてこういう場合における公務執行妨害などをもこれらに加えて、もつて処置をするというがごときことになり、さらにこれが一回になり二回になり三回になつて、だんだん争議の激化とともに、かようないきさつは深刻になつて来ると思うのでございますが、こういうときにおきまするところの公務執行妨害等に対する判断は、これは十分労働大臣としてはお考えにならなければ、出先官憲の裁量は予期せざる不始末を生ずることが多い、かよう考えまするが、こういう点について労働大臣として何かお考えになつたことがあるかどうか、これをお尋ねいたしまして御答弁を願つて、いずれも了承ができませんが、委員長のせつかくのお言葉でございますから、一応中止することにいたします。
  118. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ごもつともでございまして、私どもはこれにつきましては、正常な組合運動の抑圧にならぬようにと十分気をつけております。御指摘になりましたような公務執行妨害が、単なる公務執行妨害となりますると往々にしてありがちであります。しかし法文をよくごらんになりまするとわかるように、これは凶器または毒劇物を使つて公務執行妨害をするやつだけを指摘しておるのであります。こういうことは私はやはり防止すべきものである、かように存じております。
  119. 熊本虎三

    ○熊本委員 私はやめますが、それは私も條文を見ております。しかし凶器とは何ぞや、その程度が出先官憲の判定によるのである。ここに危険性が多分にあることを忘れてはなりません。一時中止いたします。
  120. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 先刻前田種男君より政府に対して質疑をされ、これに対する答弁が留保されておりますので、この機会に許します。
  121. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。お尋ねの点は、この法案の第二十四條の第三項の規定について、すみやかに裁判所は審理を開始し、事件を受理した日から百日以内にその裁判をするように努めなければならないというこの規定は、どういう意味かという点でありますが、これは裁判所裁判を進めるにあたつての、一応の目標を規定いたしたものであります。もとより裁判所は御承知のごとくに裁判の独立という原則がございまして、この規定に定められた百日以内にその裁判をしなかつた場合には、しからばどうなるかというような点は、裁判の独立という大原則のもとに規制されまして、裁判が無効になるとか、あるいは後には事件が係属しなかつたことになるとかいうようなことは、考慮していないのであります。要するに裁判所としてできるだけ実際の手続を盡して、この期間内に裁判をするように努力していただく、かような意味合いのものになるわけであります。
  122. 前田種男

    ○前田(種)委員 今の政府委員答弁はあとでよろしいが、私はかんじんなことで労働大臣に質問しておきますから、この際労働大臣から御答弁願いたいと思います。簡潔に申し上げますが、労働大臣も、法務総裁も、この法律は正常な労働団体あるいはその他の文化団体あるいは言論機関等に対して、適用しないということを繰返して言つておられますが、現吉田内閣の成立しました当初に制定されました国鉄の公企法の制度のときには、当日の増田労働大臣は努めてあの法規を守りますということを繰返し言つております。賀来労政局長はわざわざあの法律の解説まで書いて、全国民内容を徹底せしめた。しかしこの法律適用されて半期もたたないうちに裁定仲裁が下りまするや、一番先にこの法律の違反行為をやつたものは政府であつたわけです。その裁定の解決のために一年近く国会でいろいろ苦心さんたんして審議したことは、なまなましい最近の事例でございます。そのときにも速記録に明確に言つておりますように、繰返し最後の仲裁裁定には従うということを明記しておりながら、従わなかつたという前例があると同様に、今法親を審議されるときには、この法律は労働団体その他には適用しないということを努めて言つておられるが、実際この法律適用された後には、また再びそういうことが繰返されるのではないかということを、一般大衆は一番不安を持つているわけです。この点に対して政府を代表して吉武労働大臣から、明確にこの際御答弁を願つておきたいと思います。
  123. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 公労法の解釈についての御質問でございますが、増田大臣のときにどういう答弁をいたしましたか、私は存じません。しかし今日公労法の解釈につきましては、私は正しい解釈をとつておるとかたく信じております。このことは法文をごらんになればきわめて明瞭であります。従いまして今回提出しておりまするこの法案につきましても、私どもは繰返し申しますように、正常なる組合活動をこうも抑圧または制限するつもりはございません。これは法にはつきりと出ておるのでありますから、かりに私がかわりましても、この法律の明文を曲否することはできない、かように私は存じております。
  124. 佐瀬昌三

  125. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 議事進行についてでございますが、法務総裁は三時からおいでになるということでございましたが、法務総裁と労働大臣と両方おいでになるところで質疑がやりたいというのが、当委員会の各位の希望であつたのでございます。大体御了承になつていたようでございましたが、その点はどうなつておりますか。
  126. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 法務総裁は都合によつてまだ見えておりません。吉武労働大臣その他法務府の政府委員がおられますから、質疑をおやりになるなら、これらに対して御質疑を続行していただきたいと思います。
  127. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 議事進行につきまして……。それでは法務総裁がおいでになりましたならば、なお質疑が続行できるという條件で、吉武労働大臣に質疑をさせていただきたいと思います。
  128. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 労働大臣は参議院にも午後三時から呼ばれておりますから、ごく簡潔に御質疑を願いたいと思います。
  129. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 労働大臣に御質問したいと思います。労働大臣は一日のメーデー以来暴徒々々という言葉をお使いになりまして、騒擾事件として騒擾罪に今適用されようという、虐殺あるいは傷害を受けました人民大衆に対して、何らの責任を感じておらないようでございます。吉武労働大臣はかねて正常なる労働運動、正常なる労働組合ということをおつしやつてつたのでございますが、今回の事件でも総評はこれに参加しておらないということをおつしやつておられまして、総評決定であります人民広場でメーデーを闘いとろう、炭労の大会の決定でございますところの、人民広場で統一メーデーを闘いとろうという全労働者の要求というものを、まつたく無視しておいでになるようでございます。正常なる労働組合というものの御見解につきまして、伺つておきたいと思います。
  130. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 正常なる労働組合とは、合法的手段によつて組合活動を行う組合を申します。
  131. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 そういたしますと、統一メーデーを人民広場で闘いとろうということで、秩序整然と、官憲の妨害をけりまして人民広場へ入ろうとした大衆は、これは合法的ではないというふうな御見解をお持ちになるのでございますか。
  132. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 皇居前広場はそういうメーデーの行事には使用させておりません。従つてそれを無理に使用しようとすれば、合法とは認められません。
  133. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それでは炭労大会や総評大会、並びにメーデーの大会におきまするところの、組織労働者決議というものは、労働大臣の御見解では、これは非合法だという御見解でございますか。
  134. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 労働組合が皇居前広場でメーデーをやりたいという意思を持たれることは、一向さしつかえございません。でありますから裁判に訴えられたのであります。しかしこれは許可なくして実力によつてこれを使おうとすれば、その意味合いにおいては非合法でございます。従つて総評はそういうことをいたしませんで、明治神宮外苑においてメーデーを行い、しかも予定通りの場所で散会をしておる。それを一部の極左分子が実力をもつてこれを使おうということで入つた。それは非合法であります。
  135. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 ただ単なる見解の相違ではなく、これは労農党の中原議員もおつしやつておられますし、また国際的にもアメリカの当局の見解ですらも、これは反米的な、人民広場を使わせないということに対する国民大衆の運動である。インドでも、共産主義者だけの運動ではない。ちようど革命前に、ツアー万歳と言つて、皇帝は自分たちの味方であるといつて押しかけたあの貧困に陷つたロシヤの人民大衆が皇帝の軍隊から発砲されて、初めて権力というものが、自分たちにどんな状態で圧迫を加えているかということを知つたと同じように、日本の人民大衆が、人民広場というものは人民のものだ、講和発効によつて独立したというならば、当然裁判所までわれわれの見解に立つて処理しておる今日、人民広場を組織的に堂々と行進して使うなり、あるいは任意に各労働者がこの広場へ行つて、ここでメーデーを喜んで行つて散会するということについて、何の弾圧があるわけはない、こういう見解に立つてつた者に対して、あなた方は暴徒だと言い、警察官が弾圧したことに対して、正当防衛だと言つておられるのでございます。その点に対して、一体騒擾とはどういうことであるか。警察官の正当防衛とは何を根拠にしておられるのか。どちらから発砲したのか、田中警視総監は、明らかに自分の方から誘導したと言つておられる。これを見ていた傍聴者は何と言つているか。人民大衆は広場へ入り込んだのに、警察官がわきから飛び出して来て、そうしてこれを防止すべく警察官の方から発砲した、しかもMPが先に発砲した、こういうことをさえ言つておるのでございます。そうだとするならば、皇居前広場を使うことが違法であるという吉武労働大臣の見解というものは、今度の事件のまつたくもう焦点ともいうべき全責任がかかつておると思うのでございます。その点について、一体皇居前広場に——人民広場に、なぜ労働者行つてはいけないのか。どうしてあそこへ入ることがいけないのか。なぜ十六発のたまを込めて警察官がこれを待つていたのか。一体どうして総評系の労働者がうしろから撃ち抜かれて死んでいるのか。残つた死体はどこへやつたのか。あなたはこの席上でそれを明らかにする最も重大なる責任があると思うのです。どうして労働者が皇居前広場へ行つたことがいけないのですか。どこに非合法な根拠があるのですか。はつきりここで答弁していただきたいと思います。
  136. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 皇居前広場は、これは一般の国民が散策する地でございまして、清楚な場所とすべきものである。公園といつても、一般の行事をする公園もございましよう、しかし皇居前広場はそんないろいろな行事、政治的な宗教的ないろいろな団体が行事すべきところではないのであります。従つてこれを私は許さないのであります。これを使わせないからああいう問題を起すのだと言われますが、それはごく一部の人々がそれを口実にして、初めから計画的にやつた暴動であります。でありますから、皇居前広場の中だけじやございません。先ほども言いましたように、外の電車通りでもずいぶん乱暴をやつている。これはあらかじめ計画的である。しかもそれは先ほどのお言葉によりますと、一般大衆の運動だということをおつしやる。これは決して一般の国民ではない。組織労働者は、先ほど申しましたように、明治神宮外苑でメーデーをして、そして所定の場所で帰つている。一部残つたのが全学連、朝連、自由労働者、みんな共産主義分子ばかりであります。これはただあそこの皇居前広場の事件ばかりではない。先ほど指摘されたように、かつて京都の円山公園でやつたときにも、これら共産主義分子が便乗して暴動を起しておる。もしあのときにかりにあそこを使用さしたとしたならば、きつと三十万の組織労働者があそこでメーデーをして、その中へまじつて一部の人が暴動をやる。そうすると、いかにも三十万の大衆が同じことをやつたようなことを宣伝しようというのが、共産党の人々のやり口であります。私どもはああいう皇居前広場は、そんな乱暴をするところに使用させようとは思つておりません。
  137. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 吉武さんは先ほどからそういうことを繰返しておいでになるのでございます。しかし私の質問しておりますなぜ使つていけないかという御答弁にはなつておらないと思います。どうして皇居前を使つていけないかという御答弁にはなつておらない。三日には天皇が中心になつて警察官が数千人もあそこで分列行進かなんかやつておる。さらにアメリカの兵隊さんはしよつちゆう分列行進をしておられる。散策の地と申しますけれども、皇居前広場で散策しておりますのはアメリカ人で、それがパンパンをつれてあの清らかな松の木の下を汚しているということが日本中の常識であり、世界の常識になつているのです。どこが清楚な土地ですか。労働者の、民族の独立と両條約、行政協定破棄のための闘いこそがほんとうに清浄な、日本を清めるところの闘いではありませんか。しかも京都でも起つたと申しますが、全部政府の会場を貸さないとかなんとかいう、労働者の正当な要求に対する挑発に対してだけ起つております。五月一日のメーデーには共産主義者も参加している。全国のどこでも妨害しないところで騒乱の起きたことがございますか。警察官が発砲したり、妨害したり、弾圧したりしないところは、全部共産党の非合法化反対であるとか、ソビエトの平和の呼びかけに対するあいさつであるとか、実に国際的な式典として労働者が正々堂々と、どこのメーデーつて一つも騒乱なんか起きてやしません。その点一体どの法律をたてにして、皇居前の広場を使わせなかつたのか。もう一ぺんはつきりと御答弁願いたいと思います。  さらに警察官が発砲したのはどういうところに根拠があるのか。一体騒擾が起きる根拠はどこにあつたのか。二重橋までメーデーのデモ隊が行つたということで、宮城の中へでも押しかけるとでも思つたのですか。警察官の生命の危険でもあると思つたのですか。どこに警察官が発砲する根拠があつたのですか。
  138. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 皇居前広場を貸さないのは、これは公園管理規則に基くものであります。公園はだれでもかつてにいろいろな行事をやつていいということにはなつておりません。歩くことは自由でありましよう。しかしあそこでいろいろな催しをするということは、管理官の許可を受けないでかつてにやられては困ります。管理規則では明らかに政治的、宗教的なそういう行事は許さない、こういうふうになつております。私は先ほども申しましたように、あそごは清楚な場所にしたい。かつてはいろいろの行事をやつたこともございます。そのためにずいぶんあそこを乱暴に乱された。そこで今後は真に国家的な行事以外は使用させない、かような方針をとつている次第であります。
  139. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 特審局長は、先ほどこの事件の全貌を明らかにするために、捜査を進めておるということを報告しておられます。現にそのように非常に重傷を負つた入院患者が、生命の危険があるというにもかかわらず、医師の注意にもかかわらず取調べが強行されて、そして今朝あたり一名の学生が命を落したというよう人権蹂躙が、現実に行われておるのでございますが、これは騒擾罪の嫌疑者として取調べを行い、また身柄を拘束しておられるのかどうか。なお聞くところによりますと、本人には知らせておらないけれども、逮捕状がすでに出ていて、病院に入院している患者にも逮捕状が出ているというようなことが聞かれるのでありますが、こういう事実があるかどうか。さらにデモにも全然参加しておらなかつた通行人として、当時の状況を見ておつた婦人が、その後指にけがをした。そしてほうたいをして病院から帰つて来た。そうしたところが、すぐそれが尾行されて逮捕されようとしている。メーデーの日に何かやつたんだろうということで、多くの東京都民が戦々きようようとしている。そして特審の手合いによつて騒擾罪の嫌疑者として今取調べが進められている、こういうふうに聞いておりますが、そういう事実があるかどうか。  それからもう一つ確かめておきたいことは、背後から銃殺され、あるいは背後から頭をぶち割られている。警察官の手によつてこういう傷害を受け、虐殺されている者に対して、先ほど法務総裁は正当防衛であると言われました。もつともつとこれを強化しなければいけないということを、本会議でも本委員会でも答弁しておいでになります。そうだとすれば、警察官が背後から頭をぶち割つたり、あるいは銃殺したりするようなことが、もつともつと今後強化されるということになりまして、むしろ破壊活動というものは警察官がやつている。吉田内閣がやつている。それを強化しようとしている。ちよう治安維持法通ります前あるいはあとにおきまして、フアツシヨ的な政府の政策に対して、国民が何らこれに対して抵抗する手段のなかつたような状態が、今すでに起きていると思うのでございますが、それでも木村法務総裁は、それは警察官の正当防衛であつたとおつしやるのかどうか。昨日はまだ調べてありませんという、非常に無責任な御答弁であつたようでございますが、きようはその事実に対しての責任ある答弁を、ここでしていただきたいと思います。
  140. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 政府委員として御答弁申し上げます。今回の騒擾事件につきましては、東京地方検察庁並びに東京警視庁におきまして、すべて刑事訴訟法に基きまして、適法の捜査をいたしているものと信じております。
  141. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 柄澤君、時間の申合せから経過しておりますから、簡單に最後の質疑を続行していただきたいと思います。
  142. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 法務総裁の御答弁をいただきたいと思います。
  143. 木村篤太郎

    木村国務大臣 発砲事件は、警察官が二番橋まで追い詰められまして、そして非常な圧迫をこうむつてやむを得ず発砲したのであります。従つてこれは故意に、進んで撃つたのではない。やむを得ず防禦のために撃つたものと思つております。私はもう少し警察官が積極的にやつてよかつたのじやないか、こういうことを言つたのでありますが、あの当時の警察官はきわめて消極的なものがあつたのであります。先刻も申し上げました通り、丸の内警察署においては警察官に拳銃を持たせなかつた。これは一に警察官は積極的にそういうことをやつてはいかぬ。これは消極的の態度をとるためであつたのであります。写真によつても明白なるごとく、一人の警察官に対して、多数の者がこん棒その他を持つて襲撃している事実があるのであります。警察官は当時におきましては、まつたくやむを得ざる行為に出たものとわれわれは認定しております。
  144. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 ここに資料として写真があるのでございますが、これは追い詰められてはいないのです。明らかに非常に幅の広い、石を投げても届かないような距離を置きましたところで、警察官が折敷で発砲しているのです。混乱して、警察官がなぐられているというのは、警察官の折敷の銃殺におびえました大衆が引いた、引いたのを追つて来て、そうして混乱したわけです。それはいつ銃殺されるかわからないというような恐ろしい状態に対してすら、人民はひるまなかつたという、断圧に対しますところの実に勇敢な労働大衆の押えつけられたことに対する憤懣の現われだと、私どもは思つております。だから、証拠とする写真は実に無数にあるのでございまして、いかに法務総裁が言われましても、人権蹂躙や殺人や傷害というものが、国民の予算で、あなた方の指揮下にあるところの警察官の手によつてやられているという、まことに歴然たる事実があるのであります。その点はどうなさるかということでございます。これをぜひ見てもらいたいと思います。これは追い詰められた警察官じやありません。一体警察官はどこからどこまで追い詰められたのか。宮城前の広場に行つて、あそこで一ぱいになつた大衆は、おそらく気勢をあげて解散するというのが計画であつたかもしれない。どこに暴動や騒擾を起すという根拠がおありになるのか。警察官が発砲したからこそ、大衆が激昂したということは明らかな事実じやありませんか。この点について木村法務総裁が、もしもつともつと警察官を強化して、このようなことをさせるというような御見解で臨むというのであるならば、われわれとしては承服できないのであります。一体だれのためにやるのか。インドは、政府に対する反対とは言つていない。明らかに日本アメリカによる軍事占領、植民地的な両條約に対する国民反対だと言つている。一体あなたはその手先なのですか。だれのために米国政府の手先になつて警察官に武装させて、人民を虐殺させるというのですか。その点をひとつはつきりさせていただきたいと思います。     〔「ヒステリーを起しているのだから、答弁はいらない。」と呼ぶ者あり〕
  145. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれは決してアメリカの手先でも何でもないのであります。つまり日本治安の維持をいかにして守ろうかということに専念しておるのであります。当時の模様は、あなたが新聞を今差出されましたが、われわれの手元にも無数の写真がとつてあります。しかもその当時についての証言もたくさんあるのであります。当時は二重橋の橋上まで登ろうとした者もあるのであります。あそこで警察官が圧迫されて、やむを得ず発砲したとわれわれは考えております。もしもあなたが警察官に虐殺されたというようなことがあれば、成規の手続でもつて検察庁に告発なされば、検察庁は当然取調べることと思います。
  146. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 もう一点明らかにしておきたいと思います。御答弁が不足なのでございますが、昨日調査はまだ不十分だ、自分は聞いておらないということで、何名虐殺者があつたというような御答弁はございませんでした。そのことにつきまして、きよう答弁がないのでございます。今與党の方からヒステリーを起しているというようお話がございましたが、アメリカの長い滞在者でございました石垣綾子さんという方が新聞紙上で、アメリカの国情について、共産主義というものについてはアメリカは知らない。共産主義の学問を講義している大学の先生でも、日本へ来たならば、日本の学生たちには笑われるような常識しか持つておらない。全世界の反米的な感情に対して、アメリカが非常にヒステリーになつている。十六、七歳くらいの考えでもつて今世界の共産主義についての見解を持つている。日本が十二歳であるならば十六、七歳のアメリカ考えのひもがついて、十二歳の文化的に幼稚な日本が、このような政策をとつたならばどうなるか、自分としては心配だということを、長くアメリカにおられて帰つて来られた石垣綾子さんは言つておられます。政府は米当局から、日本政府のやつたことは非常にりつぱであるというふうに賞讃を受けているけれども、あるいは自信を非常に強めておられるかもしれませんが、世界の輿論は、日本国民の独立に対する非常な根強い闘いとして、政府の政策に対する明らかな批判をもつて、この事件をながめていると思うのであります。ただ弾圧法規を強化して、労働組合に対して正常でない労働組合というような暴言を吐かれ、暴徒として労働組合員を虐殺されている。そしてむしろ政府のやつたことを援護するような態度で臨まれるということであるならば、私どもとしてはおそらく国民が次々とこういうことを繰返し、このようなことがますます擴大することになる。その責任はあくまでもあなた方にあるのだということを、はつきりと肝に銘じていただきたいと思います。法務総裁としては、強圧法を強化する以外に対策はないと、お考えになつているかどうか。その点と、八名の死亡者の実態についての御報告、この二つお答え願いまして、私の質問を打切りたいと思います。
  147. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれは決して国民、ことに健全なる労働者を弾圧するというような気持は毛頭ありません。今度提出して今御審議つている破壊活動防止法案は、ひたすら暴力をもつて破壊活動を行わんとする団体を規制するというのみでありまして、決して国民を弾圧する意思は毛頭ありません。また七名の死亡とかいうことはわれわれは聞いていないのであります。
  148. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 熊本虎三君。
  149. 熊本虎三

    ○熊本委員 時間がないということでございますので、まだたくさんございますが、簡単にまとめて質問いたします。第三章によりますと、十二條、十三條、十四條によりまして、いろいろ弁護士等の代理人の選任もできますし、主宰者その他五名以内の弁明もできる、あるいは新聞、通信等の業務的取材もできるというふうになつておりますが、しかしこれはあくまでも公安調査庁の審理官の審理に対してでありまして、そうなつて参りますと、これは結論的にいえば、検察庁が被告を尋問するという体のものでございまして、これが決裁は至つて非民主的であります。少くともこうした公開の席上で、公安審査委員会において——あるいは公安調査庁を原告とし、あるいは該当団体を被告としてもいいのでございますが、公安審査委員会において、これをなすべきであろうと私は考えますが、そうなつておらないと考えます。もし私の考え通りといたしますならば、公安審査委員会は単なる書類審査による以外にはない。従つてその決裁たるやまことに機械的な、単なる気休めにすぎないという考え方を持つのでございますが、これに対しての御答弁。  それから第六章の罰則でございますが、この罰則につきましては、いろいろとあげてございまして、そうしてこれには体刑等もございます。従つてこの審査委員会という一つの行政機関によりまして、これが体刑等の処置を決定されるとするならば、これは憲法違反の疑い多分にありと考えますが、その点いかん。  それから最後に申し上げたいことは——時間がありませんから大急ぎで申し上げて、あるいは法務総裁はよくおわかりにならないかもしれませんが、私が冒頭申し上げましたように、この法案はせつかくの日本再建のためへの健全なる秩序を維持しようという御趣旨ではあるけれども、法案が通過して執行されるにあたつては、心ず大事な鯨は逃がして小ものをつかまえる、いわゆる行き過ぎの悪法になるという気がしてならない。従つて私どもは、その点について一般大衆の不安を感ずる法案を、無理に通過せしめて執行するということは、はなはがいかがかと考えるわけでございまして、たとえばかつて治安維持法におきまして、立法の当初においては、さようなことではなかつたのであります。しかしながら、昭和十五年、すなわち戰争たけなわとなつて参りますと、私ども総同盟のごとき、あくまで合法的な労働組合をすらこれを解散せしめ、安部磯雄先生が中心となりましたあの勤労国民党の結社禁止をして来たのである。かようなことは、あげて数限りがありません。そうして完全なる資本家の御用機関たる産報を強制して、そうして労働階級を骨抜きにしたのである。要するに法の運用は、いかなる精神に基くいかなる法であろうとも、執行者のいかんによつて違うのであります。この憂いなしと一体何人が保証するか。法務総裁は断々固とその危険なしと言われるのでありますが、私どもはかつての体験を通して、再びこのことなしとは保証できないゆえんであり、この点についてのさらに御一考を願いたいと思うのでありますが、総裁の所感いかん。  さらに最後に申し上げておきたいことは、いかなるよき法案であろうとも、これを少数者の意見をもつて強引に押し通そうとするならば、民主政治の確立はあり得ない。いかに善であろうとも独善であつてはならない。そこから再び日本の民主主義は破壊されるものと考えざるを得ないのであつて、せつかくの法務総裁のお考え方と、方向を異にすることありとするならば、ゆゆしき大問題であろうと考えまして、これらの点に関する所感をあらためて承りたい、かよう考えます。
  150. 關之

    ○關政府委員 お尋ねの中のこの法案の解釈に関する問題につきまして、私からお答えいたしたいと思います。  まず第一のお尋ねは、第三章の団体規制におきまして、公安審査委員会はまつたくのかかしではないかというようお尋ねでありますが、私どもはこの原案が最も妥当なものであると信じておるわけであります。と申しますのは、すでに今まで何回も法務総裁より申し上げたように、破壊的団体の規制という事務は、直接国家治安の根本に関係する問題でありまして、政府がその全責任において行うべき行政事務であると思うわけであります。かくのごとく規制措置は純然たる行政上のものでありますから、これを行うにあたつては、法律裁判所の訴訟におけるがごとき構造と手続とを、要件といたさないと考うるのであります。この事務の実態に対応いたしまして、適切かつ迅速に事を決定するよう構成することが要請されるのであります。政府におきましては、かような基本的な考え方に基きまして、団体規制事務の重要性にかんがみまして、まず調査する機関と決定する機関とを分離することといたしたのであります。公安調査庁は前者に当り、公安審査委員会は後者に当るのであります。一般の行政処分は、一つの官庁がみずから調査し、その結果に基いてみずからが処分をなすことが今日の原則となつているのであります。これに比較いたしまして、この法案は、調査機関と決定機関とを分離いたしたのでありまして、人権の保障の点において、従来の行政処分中でもきわめて慎重な考慮を拂つた民主的構造であると、私どもは確信しておるわけであります。特にこの公安審査委員会は、独立してその職務を行うのであります。しこうして政府におきましては、先般来行政機構の簡素化をはかつて参りましたが、この公安調査庁及び公安審査委員会機構もこの趣旨に沿いまして、できる限りこれを簡素化することが要請せられるのであります。この簡素化した機関によつて、迅速かつ適正に処分を決定しなければならないのでありまして、このために、処分請求前に公安調査庁において、この法案第十條以下の規定に基きまして十分慎重に審理をなさしめ、当該団体に十分な意見弁解をなさしめ、かつ有利な証拠を提出する道を開いたのでありまして、この手続は今日の法制上一般に認みられるところであります。その内容においてまた当該団体の権利の擁護に欠くるところは、こうもないと考えるのであります。従つて小規模の公安審査委員会において同様な手続を繰返すことは、その必要がないのみでなく、かつ当を得ないものと信じているのであります。かような次第でありまして、政府としては、団体規制の行政処分を行う機関の構成と手続については、この原案が最も妥当なものであると確信しているわけであります。  次に第二点として罰則の点についてのお尋ねでありましたが、これはお尋ね趣旨がこの法案を誤解されているのではないかと思うのであります。決して行政機関であるところの公安審査委員会が、この罰則をみずから裁判所にかわつて科するとかいうようなことは、全然ないのであります。すべてこの罰則は成規の刑事訴訟の線に沿いまして、警察、検察庁、裁判所の機関の線に沿つて処分されるのでありまして、この罰則の運用適用等に至つては、行政機関たるところの公安審査委員会は、何らの関係するところがないのであります。  第三点として濫用の点につきまして、かつての例を引用されましてお尋ねでありまするが、すでにこの法案の各種の点において御説明のごとくに、この法案の最初のスタートが、さような過去の苦い経験の反省という点がスタートになつておるわけでありまして、この反省を十分にくみ入れまして、過去の治安立法の持つた法的欠陷をいかにして是正するかという点に、十分な考慮を拂つたわけであります。この考慮は、この法案の全各條々につきまして十分に取入れてあるのでありまして、私どもはこれをかつて治安立法と比較いたしまして、さような濫用の余地はまつたくないものであると確信しているわけであります。
  151. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま關君からお答えしたことく、本法案の施行につきましては万全の措置をして、いやしくも濫用のおそれなからしむるようにしたのであります。ことに今お尋ね治安維持法との関係につきましては、御承知通り治安維持法は、団体の変革または私有財産制度の否認を目的として、結社組織することを犯罪としたのであります。その目的の要件は明らかに内心の思想に関連しておるものであるので、これが問題になつたのであります。しかるに、この法案におきましては、さような点は毛頭もない。つまり破壊的暴力活動をする団体そのものを規制するのであつて、内心の思想自体にはごうも関與しないのであります。かような点からいたしまして、本法案は、いわゆるかつて治安維持法とはまつたくその構想を異にしているのでありまして、内心の思想やなんかには毛頭も立ち入らないことは明白であります。
  152. 熊本虎三

    ○熊本委員 もう質問ではございません。先ほど作文を読んでいただきまして、はなはだありがたいわけでございますが、ああいう作文を読んでいただかなくても、私も読んで質問しているのでございます。せつかく民主的にものを行うならば、裁判所において被告の論告を聞かずして、最後の結審をするということはないはずであります。だから簡素化々々々ということによつて、ものを処理するところに欠点があり、不安があり、われわれの心配するゆえんである。  それからなお第六章の罰則の点、大方そうでなければ憲法違反であろうと考えておりました。そういうことで、つまり罰則の方は刑法その他によつてこれをなし得るならば、あえて特別にかくのごとき反対のある場合において、まげてこれをなすべき必要はない。たとえばメーデーのときに起りました問題でも、十分なる処置をつけつつあるという今日の言明からいたしましても、私はその必要が了解できません。従つて私どもの体験した苦き苦き体験を、現在の法務総裁はないとおつしやる。神様であればどうか知りませんが、私どもは不安いまだ去らず、残念ながらかよう答弁では了解ができません。次のの機会にお譲りをいたします。
  153. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 中原健次君。——時間の点を考えて要点的に御質疑を願います。
  154. 中原健次

    ○中原委員 法務総裁お尋ねいたします。第二條に「不当に制限するようなことがあつてはならない。」このように書いてありますが、これを裏返して考えますと、正当には制限するという意味になると思いますが、その点はいかがですか。
  155. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまはなはだ失礼ですが、ちよつと聞きとれなかつたのでありますが……。この法案趣旨とするところは、破壊的暴力行為をやることを目的としてそれを執行し、かつ将来さようなことを繰返す団体を規制することを目的としたのでありまして、正常な労働組合運動とか、あるいはその他団体活動においては、いささかもこの法案対象となるべきものでないということを申し上げるのであります。
  156. 中原健次

    ○中原委員 それでは二條を読んでみます。「この法律による規制及び規制のための調査は、前條に規定する目的を達成するために必要且つ相当な限度においてのみ行うべきであつて、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあつてはならない。」とこう書いてあります。それでこの第二條の裏側には何があるのか、こういうことなんです。何もありませんか。
  157. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 政府委員としてお答えを申し上げます。第二條に定められました規制の基準につきましては、必かつ相当な限度において、規制並びに規制のための調査が行われることを規定しております。必要かつ相当な限度とは、合理的に判断して必要やむを得ない限度をいうのでありまして、この限度を逸脱して、不当に基本的人権を制限してはならぬという基準を明記したものであります。
  158. 中原健次

    ○中原委員 総裁の御答弁を願います。
  159. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま吉河局長から答弁した通りでありまして、この趣旨とするところは、不当に制限するようなことがあつてはならぬ。いわゆる濫用を防止するために設けた規定であります。
  160. 中原健次

    ○中原委員 それではやはりこの不当な制限ということの裏には、今局長も申しましたように、適当なという、あるいはそういう判断によつて、何らかの制約を加えることがあるということは予想されると思うのです。そこでわざわざここに思想、信教、集会、結社等のことを指摘し、かつ労働者の労働権等についても指摘されておるのでありまするが、このことはしばしばその裏側の解釈によつて、いわゆる擴大された解釈によつて、せつかく憲法によつて規定いたしました国民の基本的な権利が、この辺から侵害されて来る、いや蹂躙されて来る、そういうようなことになることが気づかわれるわけであります。いや気づかわれるというよりは、むしろそのようになるであろうことが明言できるわけでありまして、ここに政府がこの法律案を提出しておきながら、その法律案の裏側にひそむであろう諸問題、ことにそういう恐るべき憲法違反の問題をひた隠しに隠して、これを押しつけようとしておる意図がわかると思います。従つて私どもはここで基本権というものは一体何のために必要であるのか、そうしてその基本権を保障するために、新憲法がなぜ生れなければならなかつたか、あの間の消息を考えてみなければならぬと思います。これは日本だけではなくて、全世界的に見てもわかりますように、いわゆるフランス革命の発生以来、これは新しい時代の社会における民主主義の一つの基本的な法則として、基本的な人権は絶対にこれを保障する、従つてそれはどのよう法律においても、これを否定することは許されないということが、一番根本になつておると思うのであります。しかるにそれをこのよう法律規定によつて、実際の運用の面ではくつがえして行くということが、この中にひそめられていることを喝破しなければならぬことを、はなはだ遺憾に思います。これについて政府はどのようにお考えになつておいでになるか、毛頭そういう気づかいはないとおつしやるのか、このことをお伺いいたします。
  161. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。この法案の各條章は、その規定の中におきまして、毛頭も日本国憲本に違反する箇條はないものと確信しているわけであります。すでに御存じのごとく、昭和二十五年五月、最高裁判所におきましては、憲法規定するところの各種の自由権を、公共の福祉によつて調整されなければならないという大法廷を開いての判決を下しているわけであります。私どもはこの判決の趣旨とするところは、すべての自由権は公共の福祉によつて調整されるものである、かように解釈することができるものと考えるのであります。従いましてこの公共の福祉による自由権の制限の度合い、その程度がいずこの点まで可能であるかというような問題が、次の問題となるのでありまするが、この條章の暴力主義的破壊活動の概念及びこの破壊的団体の規制の手続、これらはいずれも憲法の各條章の規定するところの、必要最小限度の公共の安全を確保するために、万やむを得ざるところの措置でありまして、いずれも日本憲法上認めれるところのものであると、考えているわけでございます。
  162. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 中原君、時間が参りましたから簡単に結語を願います。
  163. 中原健次

    ○中原委員 それでは「不当に制限するようなことがあつてはならない。」というのは、正当には制限するという意味ではないということが言い切れるかどうかということが一つと、それからもう一つは、ただいまの解釈では公共の福祉云々ということで、その正当に制限するということの意味を裏書きしようとされたように思いますが、しかしこれは基本的な人権を正当に制限することの見解を積み重ねて行くことによつて、実は不当な干渉になるわけであります。不当な制限に発展するわけであります。それゆえにこそ憲法は、すべての法律に優先して最高の権威を持たされているわけだと、私どもは考えております。だからそのときそのときの政府の解釈によつて、このことが正当であつたり不当であつたりするということは、はなはだ遺憾でありまして、しかもそれははなはだ危険であります。だからこそそのときそのときの政府のいわゆる権力的な立場かとするかつてな解釈によつてこれを規定し、そうしてそのような作用によつて国民の基本的な権利が蹂躙されて行くということになる危険性は、もはやいまさら論議をまつまでもなく、当然この法律の中に内包しているわけであります。これについては今私が一人そのように申しているのではないのです。先日の公聽会においても、公述人がすでにはつきりとこのことを指摘いたしておりまするし、またひとり公述人だけではなくて、この破壊活動防止法案に対しましては、少くとも日本の国内の治安を考慮し、あるいは国民の基本的な権利を気づかい、あるいは国の正常なる発展をこいねがつているほとんどすべての者が、この法律案の危険性を指摘いたしているのであります。ことにまた公述人十八名におきましても、たとえばその中にいわゆる政府と意図を同じくするような公述人も、数名加わつてつたと思いまするが、その人ですらが必ずしも無條件に承認しておらないし、その人一、二名を除くその他のすべての人は、この法律案の危険性を強く指摘いたしましてこれに反対している。ことにこの法律案に対しましては、たとえば新聞協会あるいは弁護士協会あるいは学術会議、もとより労働組合、農民組合その他進歩的な諸団体、こういうような広い範囲の国民の多数の反対が、ここに集中されているわけであります。しかるにその国民の多数の反対の声を押し切つて政府はあくまでこれを強硬に通過させようとする意図を持つていることは、はなはだ遺憾であります。ここに政府の態度が私はあると思うのです。いわゆる支配者的な立場に立つ政府が、政府の一方的な独断によつて判断したその判断をもつて、われわれ国民多数者の自由な行動を規制しようとする、そこにほんとうの目的がある。ただ言葉は放火とか殺人とかだれが聞いてもいやがるような、だれが聞いても反対すると思われる問題を表面に出しておりまするけれども、ほんとうのねらいは政府の政治権力が都合よく行使されるために、この法律案を提出して、国民の自由なる批判、自由なる行動を押えようとする意図が、その間にひそめられていることを、見のがすわけに参らぬのであります。従つて私はこのような許すべからざる弾圧法、すなわち抑制しようとするこの法律、こういうものをもつて政府がわれわれに押しつけようということは、思うてみれば今から数箇年前に韓国の李承晩がとりました、韓国民抑圧の法律に通じていると思うのであります。
  164. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 中原君、時間がありませんから結論を願います。
  165. 中原健次

    ○中原委員 従つてそういうような危險性はないかどうか。李承晩のあとを踏むつもりなのか。そうさえ言いたくなるようなそういう法律案であることを私は指摘しておく。最後に政府がこの法律案を、国民のそういう輿論にこたえてひつ込める考え方はないかどうか。このことを承つて私の質疑を終ります。
  166. 木村篤太郎

    木村国務大臣 たびたび申し上げました通り、この法案日本の治案維持上絶対に心要と確信しているのであります。要するに暴力をもつて内乱を企図したり、あるいは騒擾を企図したり、あるいは殺人を企図したり、汽車を転覆したりする団体を規制し、これにまた個人がかよう行為を行うことに対しての罰則規定を設けたのでありまして、われわれは日本治安維持の上において、必要欠くべからざるものと考えているのであります。
  167. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これをもつて連合審査会の議事を終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時七分散会