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1952-07-29 第13回国会 衆議院 法務委員会 第73号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月二十九日(火曜日)     午後二時二分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 山口 好一君    理事 中村 又一君 理事 田万 廣文君       押谷 富三君    北川 定務君       古島 義英君    松木  弘君       大西 正男君    加藤  充君       梨木作次郎君    佐竹 晴記君  出席政府委員         検     事         (民事法務長官         総務室主幹)  平賀 健太君         中央更生保護委         員会事務局長  齋藤 三郎君         外務政務次官  石原幹市郎君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局第         一課長)    桑原 正憲君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月二十八日  委員加藤充辞任につき、その補欠として柄澤  登志子君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員田中堯平君辞任につき、その補欠として梨  木作次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  田万廣文君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 七月二十三日  戦争犯罪者減刑等に関する請願足鹿覺君紹  介)(第四二三八号)  裁判所構内弁護士控室設備充実に関する請願  (淺沼稻次郎紹介)(第四三五九号) の審査を本委員会に付託された。 同月十一日  住民登録法実施経費全額国庫負担に関する陳情  書(第二五  九〇号)  市区町村役場における戸籍届出用紙等無料頒  布中止に関する陳情書  (第二五九一号)  破壊活動防止法案反対陳情書  (第二  五九二号)  同  (第二五九三号)  同  (第二五九四号)  同  (第二五九五号)  彈圧諸法規撤廃等に関する陳情書  (第二五九六号)  戰犯者釈放に関する陳情書  (第二五九七号)  同(第  二五九八号)  同(  第二五九九号)  同(第二六〇〇  号)  同(第二六〇一  号)  同  (第二六〇二号)  同(第二六〇三号)  同(第二六〇四  号)  同(第二六〇五  号)  戰犯者助命減刑等に関する陳情書  (第二六  〇六号)  同  (第二六〇七号)  同  (第二六〇八号)  同  (第二六〇九号)  同  (第二六一〇号)  同  (第三六一一号)  戰犯者釈放並びに内地送還に関する陳情書  (第二六一一号)  同(第二六一三  号)  同(第二六一四  号)  同(第二六一五号)  同(第二六一六号)  同(第二六一七  号)  同(第二六一八  号)  同(  第二六一九号)  戰犯者助命減刑外地服役者内地送還に関  する陳情書外一件  (第二六二〇号)  戦犯者武良宗平釈放に関する陳情書  (第二六二一  号)  戰犯者浜本次郎釈放に関する陳情書  (第二  六二二号) 同月二十五日  不正印紙使用事件に関する陳情書  (第二七四二  号)  宮之城町に簡易裁判所設置に関する陳情書  (第二  七四三号)  戰犯者釈放に関する陳情書  (第二七四四号)  同(第二七四五  号)  同(第二七四  六号)  同(第二七四七号)  同(第三七四八  号)  同(第二七四九  号)  同外一件  (第二七五〇号)  同(第二七五一  号)  戰犯者助命減刑等に関する陳情書  (第二七五二号)  戰犯者助命減刑外地服役者内地送還に関  する陳情書(第二  七五三号)  同(第  二七五四号)  同(第二七五五  号)  同外一件  (第二七五六号)  同(第三七五七号)  戰犯者宮崎義男等釈放に関する陳情書  (第二七五八  号)  戰犯者花守富造、同川端福次郎釈放に関する陳  情書外一件  (第二七五九号)  戰犯者沢崎郁夫等釈放に関する陳情書  (第二七六〇号)  戰犯者谷口登釈放に関する陳情書  (第二七  六一号)  戰犯者岡本登志夫等釈放に関する陳情書  (第二七六二号)  戰犯者石原一男釈放に関する陳情書  (第  二七六三号)  戰犯者星川森次郎等釈放に関する陳情書  (第二七六四号)  戰犯者大江房夫釈放に関する陳情書  (第二七六五号)  戰者山本金吾釈放に関する陳情書  (第二七六六号)  戰傷病者戦没者遺族等援護法による戸籍謄本等  の手数料免除に関する陳情書  (第二八〇六号) 同月二十六日  戰犯者釈放に関する陳情書  (第二九〇七  号)  同(第二九〇八  号)  戰犯者助命減刑等に関する陳情書外三件  (第二  九〇九号)  同(第二九一〇号)  戰犯者釈放並びに内地送還に関する陳情書  (第二九一一号)  同(第  二九一二号)  同(  第二九一三号)  同(  第二九一四号)  同(  第二九一五号)  同(  第二九一六号)  同(第二九一七  号)  同(第二九一八  号)  戰争受刑者釈放等に関する陳情書  (第二九一九号)  戰犯者助命減刑外地服役者内地送還に  関する陳情書(第二  九二〇号)  刑事控訴審覆審制に復元すること等に関す  る陳情書  (第二九二一号)  同(第二九四七  号)  共産党及び共用主義者排斥に関する陳情書  (第三〇五  三号)  悪質犯罪者の減少に関する陳情書  (第三〇五四号) を 本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  平和条約第十一條による刑の執行及び赦免等に  関する件  恩赦に関する件  請願  一 戰争犯罪者減刑等に関する請願足鹿覺    君紹介)(第四二三八号)  二 裁判所構内弁護士控室設備充実に関する    請願淺沼稻次郎紹介)(第四三五九号    )  陳情書  一 戰犯者釈放に関する陳情書    (第二五九七号    )  二 同    (第二五九八号)  三 同    (第二五九九号)  四 同(第二六〇    〇号)  五 同(第二六    〇一号)  六 同    (第二六〇二号)  七 同(第二六〇三    号)  八 同(第二六〇    四号)  九 同(第二六    〇五号)一〇 戦犯者助命減刑に関す    る陳情書    (第二六〇六号) 一一 同    (第二六〇七号) 一二 同    (第二六〇八号) 一三 同    (第二六〇九号) 一四 同    (第二六一〇号) 一五 同    (第二六一一号) 一六 戰犯者釈放に関する陳情書    (第二七四四号) 一七 同(第二七四    五号) 一八 同(第二    七四六号) 一九 同(第二七四七    号) 二〇 同(第二七四    八号) 二一 同(第二七四    九号) 二二 同外一件    (第二七五〇号) 二三 同(第二七    五一号) 二四 戰犯者助命減刑等に関する陳情書    (第二七五二号) 二五 戰犯者助命減刑外地服役者内地送還    に関する陳情書    (第二七五三号) 二六 同    (第二七五四号) 二七 同(第二七五    五号) 二八 同外一件    (第二七五六号) 二九 同(第二七五七    号) 三〇 戰犯者宮崎義男等釈放に関する陳情書    (第二    七五八号) 三一 戰犯者花守富造、同川端福次郎釈放に関す    る陳情書外一件    (第二七五九号) 三二 戰犯者沢崎郁夫等釈放に関する陳情書    (第二七六〇号) 三三 戰犯者谷口登釈放に関する陳情書    (第二七六一号) 三四 戰犯者岡本登志夫等釈放に関する陳情書    (第二七六二    号) 三五 戰犯者石原一男釈放に関する陳情書    (第二七六三号) 三六 戰犯者星川森次郎等釈放に関する陳情書    (第二七六四号) 三七 戰犯者大江房夫釈放に関する陳情書    (第二七六    五号) 三八 戰犯者山本金吾釈放に関する陳情書    (第二七    六六号) 三九 戦犯者釈放に関する陳情書    (第    二九〇七号) 四〇 同(第二九〇    八号) 四一 戰犯者助命減刑等に関する陳情書外三    件    (第二九〇九号) 四二 同(第二九一〇    号) 四三 戰犯者釈放並びに内地送還に関する陳情    書    (第二九一一号) 四四 同    (第二九一二号) 四五 同    (第二九一三号) 四六 同    (第二九一四号) 四七 同    (第二九一五号) 四八 同    (第二九一六号) 四九 同(第二九一    七号) 五〇 同(第二九一    八号) 五一 戰争受刑者釈放等に関する陳情書    (第二九一九号) 五二 戰犯者助命減刑外地役服者内地送    還に関する陳情書    (第二九二〇号) 五三 戦犯者釈放並びに内地送還に関する陳情    書(第二六一    二号) 五四 同(第二六    一三号) 五五 同(第二六一    四号) 五六 同(第二六一五号) 五七 同(第二六一六    号) 五八 同(第二六一    七号) 五九 同(第二六    一八号) 六〇 同    (第二六一九号) 六一 戰犯者助命減刑外地服役者内地送還    に関する陳情書外一件    (第二六二〇    号) 六二 戦犯者武良宗平釈放に関する陳情書    (第    二六二一号) 六三 戰犯者浜本次郎釈放に関する陳情書    (第二六二二号) 六四 破壊活動防止法案反対陳情書    (第二五九二号) 六五 同    (第二五九三号) 六六 同    (第二五九四号) 六七 同    (第二五九五号) 六八 彈圧諸法規撤廃等に関する陳情書    (第二五    九六号) 六九 住民登録法実施経費全額国庫負担に関する    陳情書    (第二五九〇号) 七〇 市区町村役場における戸籍届出用紙等の無    料頒布中止に関する陳情書    (第二五九一    号) 七一 不正印紙使用事件に関する陳情書    (第二    七四二号) 七二 宮之城町に簡易裁判所設置に関する陳情書    (第七四三号) 七三 戰傷病者戦没者遺族等援護法による戸籍謄    本等の手数料免除に関する陳情書    (第二八〇六号) 七四 同(第二九四    七号) 七五 刑事控訴審覆審制に復元すること等に    関する陳情書    (第二九二一号)     ―――――――――――――
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。  日程に入る前に理事補欠選任についてお諮りいたします。すなわち理事であつた田万廣文君は、去る六月二十八日に一旦委員辞任せられ、同月三十日に再び本委員に選任せられましたので、理事が一名欠員となつており、理事補欠選任を行わなければならないのでありますが、その理事補欠選任につきましては、先例に従いまして委員長において御指名するにに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なしと認め、理事には従前通り田廣文君を指名いたします。  これより本日の日程に入ります。平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する件について調査を行います。発言の通告がありますので順次これを許します。佐竹晴記君。
  4. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 平和條約十一條に基きますB、C級戰争受刑者に対する一般赦免勧告に関する件について、質疑いたしたいと存じます。  申すまでもなく、戦争は国と国との闘争であつて、これら受刑者は、決して個人としてかつて戦争を遂行したものではありません。あたかも時計の針のそれのごとくに、ぜんまいや歯車など、全体の動きにつれて全機構の命ずるがままに動かされたのにすぎないことは、申し上げるまでもありません。しかるにこれらの受刑者は、個人的責任、しかも間違つた個人的責任として、戰勝国の一方的判決で、残虐者として科刑せられておるのであつて、国家といたしましても、また政府としても、この状態をこのままに放置しておれるよう道理はないと思うのであります。今や和解講和が結ばれて、平和條約十一條によつて赦免減刑及び仮出獄の道が開かれ、日本国としてもその一般的勧告の権利が與えられておるのにかかわりませず、條約発効後九十日を経過せる今日、一人の仮釈放者すらも出しておりません。また当然なすべき赦免勧告もいまだ発せられておらないのは何ということでございましよう。私は昨日巣鴨刑務所に参りまりして、B、C級戦争受刑者代表と面会いたしました際に、九百数十名の受刑者が、すみやかに善処すべき責任のある政府として、その態度があまりにもなまぬるいということに不満を持ちまして、逼迫した空気がみなぎつておることを察知いたしまして、はなはだ遺憾に考えたのであります。この問題はただに受刑者のみの問題ではありません。その家族、縁者はもちろんのこと、一般国民全体の間に、この問題は一日も早く解決されなければならない問題として重視されております。衆議院におきましても、この輿論にこたえるために、すみやかに釈放すべきものとして決議をいたしたのであります。しかるに政府は遅々としていまだその実現を見るに至つていないのであります。この際受刑者はもちろん、一般国民をして納得を得せしむるに足るだけの、政府のとり来つた今日までの態度並びに将来いかにするかについて明確なる御答弁を仰ぎたいと考えます。
  5. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 私から今日までの経過、とつて来た措置についてお答えを申し上げたいと存じます。巣鴨刑務所に在所しておる九百二十三名の人々につきましては、平和條発効の翌日から、各種の勧告に必要な調査について極力努力をいたして参りました。同時に、これらの勧告に必要な手続について関係国の了解を得べく、外務省を通じて申入れをいたして参りました。調査の済み次第、仮出所資格を有する人についてはすみやかに仮出所勧告関係国にいたし、また赦免勧告を相当とする者についてもその赦免勧告をいたして参つております。今日まで仮出所適格性を有する人は二百九十六名でございまして、今日までに勧告を済ました者がそのうち百八十七名でございます。残り人々については、書類の整備次第、今後二週間ぐらいで全部勧告を終る予定で準備を進めております。なお赦免等につきましても、現在いろいろな角度から調査をいたし、最も効果のある方法で、最も効果のある時期を選んで赦免勧告をいたしたい、かように存じておる次第でございます。今日まで赦免勧告した者は六十九名でございまして、その内訳は三十九名を一括フランス政府に対し、フランス裁判を受けた人全部について、フランス革命記念日にこれについて赦免——赦免がどうしてもかなわない人は、できるだけ短期の刑に減刑していただきたい、こういうような勧告をいたして参りました。残りの三十名は平和條発効後の今日では第三国となつた朝鮮、台湾の国籍を有する人全部についてそれぞれ裁判をした関係国に対し、今日の事態においてさような刑の執行は、われわれとして忍びない点があるという理由のもとに、赦免勧告をいたして参つております。  以上今日までとりました平和條約の十一條に基く法律についての、政府とつ措置の概要を申し上げた次第でございます。
  6. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 御説明によつてうかがうことができるのは、個々審査決定をいたしまして、勧告に必要なる資料をまとめて勧告をするという段取りをいたしておるようであります。これは平和條約十一條から見まして、まず出しやすいものから出して行く。そこでまず仮釈放をして、残つた者減刑し、その後に個々のケースについて調査をして、赦免勧告をして行く、こういつたような方針に基いての調査のようにうかがわれるのであります。しかし私どもは、これは根本から間違つているのではないかと思う。いやしくもここに平和條約の十一條赦免勧告ができる旨規定されておりまする以上、まず赦免一般的勧告をして、できないものは減刑ないしは仮釈放といつたぐあいになるべきではないか。受刑者が非常に不満を訴えておりますのは、この点であります。外務当局戦争の跡始末ができないのに、戰犯のことを先に処理することができないというふうのことをおつしやつておるようでありますが、これはまさに物のかわりに人質を與える方式であつて、たとえばフィリピンにいたしましても、濠州にいたしましても、個人の損害を日本にきせるために戰犯人質といたしているといつたような行き方であつて、もし外務当局がただいま申し上げましたがごとき見解をとつておるとするならば、まさにこの人質を肯定するものであるといわなければなりません。人よりも、物に重きを置くのであつて、ゆゆしき人道問題ではないかと考えます。また外務当局は外国の反感を買う憂いがあるということを懸念しておられるようでありますが、ただいまの斎藤政府委員の御説明によつても明らかな通りフランスに対しましては三十九名というもの全員に対しまして勧告をいたしております。支那戰犯関係でも、蒋政権に強硬に主張をいたしておる。しこうしてその目的を達しようといたしておる。残るは英、米、オランダです。この間にどうして差別を設けるのでありましようか。フランスに対し、支那戰犯に対して、一般的な勧告をするような手順を進めておるのに、英、米、オランダに対しては、そのような手続をしないのか。英、米、オランダだけがことさらに日本を苦しめようとしておるものとは思われません。特に和解講和が成立いたしております以上、率先してこれを提唱した英、米においてこそ、むしろ進んで早く勧告しなさいという御意向があつてしかるべきであつて、何もこれを阻止いたしたり、ないしは日本当局としてこれに懸念をしなければならぬという状態ではないと考えます。現にアメリカの司令部カーペンター法務局長は、もう戦犯釈放すべきだと述ベて、並居る幕僚がこれに同意したと伝えられておる。岡崎外相戰犯代表者と面会いたしましたときに この情報あつたことをお認めになつた。むしろ向うさんこそ勧告を待つているのじやないかと思う。ことに八月十五日は終戦記念日であり、九月八日はサンフランシスコ條約調印の記念日であります。この日を期して一切の、全部の者の一般赦免実現のできるように、今こそ関係各国に対して勧告を発する絶好の機会であると考えるのでありますが、いかがでありましよう。
  7. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 いろいろお話がございました。戰犯気持代表してのお話と思いまして、ごもつともと思うのであります。外務当局といたしましても戦犯者が一日も早く釈放され、また外地に残つておりまする戰犯者が一日も早く少くとも内地に帰つて来る、これをこいねがつておる気持におきましては、人後に落ちないつもりでございます。ただ問題はいかにすればその効果を最も早くあげ得るかということの考え方であろうと思うのでございまして、ただいまやつておりますることは先ほど齋藤政府委員の方からもお話申し上げましたように、一応できるだけ早く仮出所勧告を終えまして、出られる立場になつておる人の出所は早くやろう、平和條約第十一條によりまして、とにかく日本も刑の執行をするということを一応受諾しておるのですから、この際、とりあえず仮出所該当者を出す。そうしてこれと並行いたしまして、適当なチャンスをとらえ、また相手関係国とも種々連絡折衝しておりますから、それらの機会を見まして、相手国の感情、気持等を十分しんしやくいたしまして、全面釈放機会をうかがつておるわけでございます。たまたま七月西目フランス記念日に対しまして、当方の職権による全面釈放申請書をつくりまして、フランス政府へお願いしましたところ、フランス政府よりは、きわめて好意ある回答が参つておることは御承知の通りでございます。国民政府中国法廷のものは、ただいまお話のありました通り日華條約の効力発生と同時に全面的に釈放されることになつておる、かようにだんだん情勢がいい方向に向つておりますので、外務省といたしましても、ただいまいろいろお話がありましたように、いろいろの機会をとらまえまして、この仮出所勧告と同時に、全面釈放機会をつかまえ、またその手続を促進したい、かように考えておるわけであります。仮出所勧告に対しまして、今日までまだ回答の来ておらないことは、まことに残念に思つておるわけでありますが、これは大臣もマーフイー大使その他の会見の都度お話しておるのでありまして近く何らかの回答が出ることと期待しております。回答が来始めますと、これはどんどん参るのではないか考えておる次第であります。
  8. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 先ほど齋藤政府委員答弁によれば、仮出所資格者二百九十六名とあげられております。しかして百八十七名勧告をいたしたと御答弁のようでありました。これはすでに前前より木村法務総裁がしばしば国会において答弁されておりますその気持を表わして余りあると考えますが、その木村法務総裁国会における答弁によりますれば、平和條約十一條個人別審査である。しこうして個人勧告本質である旨を述べられております。しこうして実情調査は進捗しておると言われておるが、その実情より察するに、仮釈放するものは刑期三分の一を経過したものだけであつて刑期二十年未満受刑者だけが目標となつておる。終身刑のごときは含まれていないことが大体において察知されます。ただいまの仮出所資格者としておあげになりましたものも、おそらくこの二十年未満受刑者だけを目標としての数字であろうと考えます。しかし平和條約十一條は決してそのような精神ではなく、一般赦免勧告をなし得ることがむしろ本質であると私どもは解釈をしておる。もし個人別個々審査をなすということでありますなら、二十年たつても三十年たつても、とてもこれは済むまいと考えます。また個々審査というが、現に巣鴨拘置所に来ておるところの書類判決内容写し程度のものであつて、他に関係書類はほとんど何もないというのが実情であります。一体どのような調査をお進めになつておるのか。われわれの聞くところによれば、巣鴨刑務所へ来ている書類というものはほんのわずかのものである。ほんとうに個人審査をやろうと思いますならば、これは徹底的に裁判記録を全部お調べにならなければならぬ。わずかに判決文写し程度のものでとても徹底的の個人審査ができるものではありません。もしそれをやるということになれば、二十年たつても三十年たつても、とてもやり切れるものと思いません。従いまして非常に逼迫感を持つて、おれたちはもう生涯だめなんだといつたような印象をそれらの人々に與えて、何かしらそこに逼迫した感じを看取しなければならぬ状態をつくりだしている。これまつた政府としてとつておる態度そのものからの反映であるといわなければならぬと思います。政府は、一体個人審査をやつて出所資格者を出しておるというならば、その標準はどうか。それからいかなる書類を調べておるか。一体いかなる者をもつて資格者と認めておるか。しこうして無期あるいは終身刑等に処せられた者については相手にしないお考えであるか。従つてそれらの人人については、赦免勧告をする腹がないというお考えであるか、しこうしてそれら終身刑を受けておる者でもそれに対して赦免方法を講ずるということであつたならば、一体その記録を十分取調べて二年や三年やでやりおおせることができるという御確信があるのか、これらの点を詳細承りたいと存じます。
  9. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 仮出所適格性につきましては、本国会において御審議御成立になりました法律によりまして、刑期三分の一、無期あるいは非常に長い人は十五年、しかもその間巣鴨プリズンの規則を守つてつたという人が適格性を有する、こういうことに相なつております。今日まで仮出所勧告をいたす調査といたしましては、さような点ももちろん巣鴨プリズンにおける労務の状況がどうか、あるいはその他の成績がどうか、あるいはさらに関係国の特に留意を煩わして実現をはかりたいというために、いろいろな事情、ことに家庭の事情等も調査をいたして勧告をいたしております。判決につきましては、アメリカ関係だけは一応ありまするが、その他については判決がない、単なる主文しかないというようなものもございます。これらについてはいろいろな事情もございますし、一応調査をいたしておりまするが、これについて徹底的な調査をするということは非常に困難なことであると存じております。従いまして刑期三分の一に達しない、今仰せの通りに二十年以上の人々にはどういうふうに考えておるか、これについては赦免赦免が不可能ならば減刑実現させて、減刑なつた場合には仮出所というような勧告をし、一日も早くかような事態が解消することを切望して努力をいたしておるのでございます。かような赦免についてどういう調査をするかというようなことについては、いろいろなケースがございます。たとえば先般新聞紙上にも出ましたが、これは特殊のはつきりした事案でございまして、証人になつた者が今日内地におりまして、自分の証言したことが結局有罪の原因になつたが、その証言は虚偽であつた、まことに申訳なかつたというて、しばしば平和條発効司令部の関係官にそのことを申し出て、そうしてほぼその了承を得ておつて、こういうような事案につきまして、それらの事情を詳細に調査いたしまして、勧告をいたす準備をほぼ完了いたしております。これらにつきましては、書類等も非常に厖大な——厖大なといつては少し語弊があるかもしれませんが、相当大部な書類になつております。それからさようなことをしておつたならば、九百二十何名のうち仮出所資格のなかなか来ない六百幾らの人についてはいつ仕事が終るかわからぬではないかというふうな御懸念もございますが、私どもは一般勧告というようなことを十分に活用いたしたい、かように存じております。もちろん平和條約十一條で刑の執行日本国は受諾いたしたのでございまするから、何ら理由なしに全部を赦免してくれというようなことは、この條約によつて申すことは可能でありましようが、勧告をしてもその効果をあげることはできないのではないか。あるいはそのことのために、せつかくパロールの申請をしておつた者をたな上げにして、さような強度の赦免といいますか、審査をする、そのために事務的に比較的簡単に済むパロールの勧告が返事を見ないというようなことがありはしないか、あつた場合にはまことに申訳ないことになるという点もございますし、フランスに対して一般的に勧告をし、その他の国に対して勧告をしないのでは何らかはばかるのではないかというような御懸念もございましたが、これはそのチャンスが早く来たというふうに私ども考えております。今後さような一般的な勧告をやるべきであり、また効果もできるという場合には、十分一般的勧告をやりたい、その機会の一日もすみやかならんことを私どもは希望し、そのときの準備を今日から進めておるような実情でございます。
  10. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 だんだん政府当局のお話を承つておりますと、戦犯の実態に対してたいへん認識が薄いではないかと疑わざるを得ないのであります。政府当局に対してはおのおの受刑者代表者よりも相当多くの資料を提供いたしておるはずです。しかるにこれを十分御理解になつていないとしか思われませんの。戦犯といえばただもう概念的に、残虐行為をしたのだから、それは戦犯者自身の個人責任であつて、それぞれその責任を負わなくてはならぬことはしかたがないではないか、こういう考えのもとに、すでに判決を受けてしまつて、そのことが講和條約十一條によつて認められておる以上、これはまずいかんともすることはできないではないかといつたような気持が腹の底にあるようにしか思われません。しかし戦犯についてはいま少しく徹底的掘り下げて、認識を正しく持つてやる必要があると存じます。私はここに二、三の点に触れてみたい。  まず第一、彼らが戦犯として扱われておりますもののうちで、職務行為がある。これは国家の権力に基く職権の発動によるものであります。戦時中軍人軍属に対する軍法会議がございましたが、そのほかに軍の統帥権に根拠を持ちます軍律裁判というものがありましたことは申し上げるまでもありません。たとえばB二九の搭乗員が大阪、神戸その他軍事施設でないところの一般民家を爆撃をいたしました。そのときにその飛行機が墜落等をいたしまして、その搭乗員をとつつかまえた。そこで日本では、それは俘虜ではないと解釈し、戦時重罪犯人としてこの軍律裁判にかけたのであります。そこでその軍律裁判に関與いたしました裁判官は、民家を爆撃したのであつて軍事施設をやつたのではないので、起訴のごとくそれが有罪だと認めて、これに対してそれ相当の刑を盛つた。ところが終戦後になりまして、その裁判をしたところの裁判官、検察官等は、当然国権の発動によつて職務を執行したのにかかわりませず、これを戦犯者とし、殺人罪なりとして死刑の宣告をいたしておる。現に私はこの受刑者に会つて参りました。彼らは言つている。日本の機構のもとにおいて、私は裁判官に任命されました。私は検察官に任命されました。そうして裁判が開かれて、法廷において私は審理をした。これは国権の発動によるところの当然の私の職務行為をした。ところが国家の命ずるところの当然の職務行為をとつた私が、残虐行為をやつたところの殺人犯人であるとして、死刑の宣告を受けた。一体こういうことが認められるでしようかと彼は言つている。この起訴状によれば、虚偽かつ無効なる訴訟手続において、虚偽かつ不法の証拠に基いて裁判をしたというぐあいに書いてある。政府当局といたしまして、特に法務当局といたしまして、何と考えるでしよう。もし戦犯の言うことは無理だというのであれば、赦免勧告を向うに申入れるなぞできるものではないというような感じが起るでしよう。けれども、私ども法律家としてこれを考えるときに、軍律裁判というものがあつて、ちやんと政府から任命されて、おのおのその役について、検察官が起訴をする。裁判官が裁判をする。書記はそれを文書につくる。しかるに検察官、裁判官から記録をつくつた書記に至るまで、殺人共謀犯なり、残虐行為者なりとして処罰されるということが、はたして肯定のできることでありましようか。このケースの者があの巣鴨刑務所に現に三十名以上おります。齋藤政府委員のただいま述べておりますところの仮出獄資格者の中にはこれが入つておらぬ。先ほど二百九十六人とおつしやつておられる有資格者にそれが加えられておらぬ。これらの人は死刑の宣告を受けて、減刑されて今やつと終身刑にあります。しかして齋藤政府委員は、これを資格なきものとして、別にこれに対して相当の手続をしようとはなさつておりませんことははつきりしております。だがしかしわれわれ法律家といたしまして、こんなことが黙つておられましようか。少くともここに和解によるところの講和條約が結ばれたとするならば、この際こういつたような当然の職務行為を行つた者に対して——これは悪意も何もあるのではない、残虐でも何でもないのだと、向うさんを理解せしめ、向うさんを説得して、彼らを赦免するだけの国家及び政府としての責任がある。彼らは決して個人的に人を殺したのではないのです。国家の命に基いて国家の職務を行つただけである。しからば国家が何知らぬ顔をし、政府が何知らぬ顔をいたしまして、これらの人を終身刑のままにほうつておくことができましようか。     〔委員長退席、田嶋(好)委員長代理着席〕  次いで第二に考えられるのは命令行為であります。戦犯者と言われる者のうち、命令によらないでかつてにした者はほとんどございません。ことにひどいのは、戦闘地域で裁判によつて俘虜に死刑の言渡しがあつたときに、その裁判執行をした部隊長は戦犯としてこれまた死刑の宣告を受けておる。しかしてその下された判決を電話によつて伝達した者、しかしてその刑を執行するに際して見張りをした兵隊、これがことごとく戦犯者として無期すなわち終身の言渡しを受けておる。裁判は当然のことである。判決を執行することこれまた当然のことである。しかしてその命を受けて執行した者、これに立ち会つたところの一兵卒に至りますまでが終身懲役を受ける。はたしてこういつたことがお互いの常識において肯定することができることでありましようか。日本政府として、日本国民としてこれを救わずにおられましようか。  次に第三に考えなければならぬことは、職場におけるところの正当防衛ないし緊急避難の行為であります。これは主として対住民関係でありますが、戦争地域の住民が武装して敵対行為に出て来て、電線を切つたり食糧弾薬を奪取した。そこでそれらの日本の軍隊の行動に敵対行為をして食糧弾薬を奪つた者に対して、これはじつとしておられぬから、それをとつつかまえて処罰した。するとそれを処罰いたしました者を戦犯だと称しまして、これまた残虐行為者ととなえて、もつてそれを死刑ないし終身刑に処した。戦争それ自体のよしあしは別であります。だれが戦争を起し、だれが善良なる国民をかり立てて戦争に持つてつたか、その責任は別であります。少くともそこに戦闘行為の行われております以上は、日本の軍隊の持つております食糧、弾薬を奪われ、電線を切られたならば、それをとつつかまえて罰することはあたりまえである。ところが罰したからといつて、戰争が済んだら罰したものを残虐行為だからといつてそれを処罰しようとする、これがまた大勢おります。ところが齋藤政府委員の先ほどの御説明によりましても、こんなものは眼中においておられぬことは明らかである。われわれにはおよそまわつて来ないであろう、われわれが生きている間にはおそらく何の恩典も與えられないだろう、刑期三分の二なんて言つておるが、私たちはとてもそんなものがまわつて来る身分ではない、と彼らは考えておる。逼迫した気持を持つてものを考えざるを得ない状態にだれが追い込んでおるか。戦争受刑者の実態をよく理解し、あなた方はそういつたような状態でたたき込まれておるのですかということの事実をよく調べてやつて、そしてそれらのことを向うさんにも理解させ、これを赦免するだけの方法を講じておつたならばそれらの人は納得するでありましよう。しかし先ほどの御説明によつても、むしろその逆を行つておることが明らかである。問題にしておらぬことが明らかになつておる。それではそれらの戦犯人々はとうてい満足することはできないでありましよう。  次に第四に考えられることは、状況上やむを得ない行為をしたものを、やはり残虐行為といたしまして扱われておる。たとえば衛生兵のごときが捕虜を介抱いたしております途上において医薬、食糧等を十分に與えずに虐待したというようなことが例にあげられておるのでありますが、日本軍自身が食糧に窮し、へびを食い、木の根、草の葉をかじつておるときに、與える食糧もない、與える医薬もないにもかかわらず、医薬を與えなかつた、食糧を與えなかつたといつてそれらの衛生兵をことごとく残虐行為といたしまして、あるいは終身刑その他に処断されている。内地でも俘虜に対し医療、食糧等についてはずいぶん苦心したようであります。できるだけのものを支給いたしまして、日本のお互いがみずから節約いたしまして、向うさんの者に多くの物を與えた、これがために付近の日本人から反感を受けまして、何回となく、日本の衛生兵、その他はけしからぬといつて誹謗され、糾断を受けておる。それほどまでに向うの俘虜をかばつておるにかかわらず、向うさんの方は生活程度が高いのですから、彼が自由になつて向うへ帰りますと、日本に俘虜となつておるうちはろくなものも食わせず、医療も與えられなかつたと報告をしている。するとそれだけをとつて日本の衛生兵はことごとくこれ残虐者なりといつてこれを処断しておる。  さらに第五に、証拠の不正不当による誤判については枚挙にいとまがありません。私はここにその詳細を申し上げることを省略いたしますが、うその証人で人を罰した例がずいぶん多い。ちやんと証人に立つものをこしらえておいて、現にその場所にいないにかかわらず、あの人はここにおつた、こういうときに確かにあの人はおりました、というその証言をさせ、また一人の証人が十も二十もの事件に立ち合つて証言をいたしておる。そのため間違つた裁判を受けて、今日ほとんど身の置きどころのないようにもだえております連中があの巣鴨刑務所にたくさんおります。以上のように、私がここにあげましたわずかに四つ五つの項目的な例にいたしましても、これらの人々は、決して自分は戦犯ではないと考えている。みずからは決して残虚行為をいたしたとは考えておりません。従つて日本政府といたしましても十分これらのことに調査を加えてこの内容を明らかにし、つぶさに向うに訴えて折衝する責任がある。そうすれば向うさんが理解しないわけがない。一体政府当局といたしましては、そういつたものについてどれだけの調査をし、またそういうことに対して向うさんの理解を得るだけの努力を拂つておられるか、熱意ある実践行動をなさつているか、これを承りたいと考えます。
  11. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 ただいま佐竹委員の仰せの通りに、B、C級の事件というものは職務としてやつた行為、あるいは上官の命令によつてつた行為、あるいは戦場における正当防衛ないしは緊急避難的な行為、あるいはさらに、当時の戦争苛烈なる、しかも物資不足の際に、当時の状況としては当然であつた行為、それが生活程度の差によつて不当に見えたというようなことのために戦争犯罪人として問われ、しかも相当以上に重い刑を受けているという人のあることを私ども承知いたしております。そして、これをこのままにしておいてよいというようなことは毛頭考えておりませんで、これは何らか適正なる結果をすみやかにもたらす必要がある、かように存ずればこそ私どもはできるだけの努力をいたし、許されたるあらゆる方法によつてその実現をはかりたい、かように存じておる次第でございます。この巣鴨の在所者について、全面的にかような点について本人からの申立てを調査書として書いてもらつております。また残されている、われわれの手中にある判決についてこれを翻訳しそれを検討しよう、かように存じております。さようなつもりで、一日も早くこれらの気の毒な事情についてはできるだけすみやかにこれを救済したい、かように存じてできるだけの努力を拂つておるつもりでございます。今後もさようにいたしたい、かように考えている次第でございます。
  12. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 この際私は、外務当局に特に要望をいたしたいと存じます。まことに歯がゆい、なまぬるい態度、この問題についてはこれを一擲するの要があると考えます。外務当局がおつしやつておるように、こうもしたらああもしたら向うさんの気をそこなうではないかといつて懸念をしているようですが、それは問題ではありません。向うさんがかりにきげんをそこのうてやつてくれないでも、彼らは終身あそこに入つているのです。それ以上失うべき何ものもないわけです。あなた方が少々向うへ強い要求をなさつてごきげんをそこなつても、終身刑から死刑に逆もどりするおそれはないのです。あなた方にもう少し有力にやつてもらいまするならば、しかして先ほどの齋藤政府委員のような説明では満足いたしません。もつと徹底的に内容をお調べになつて向うを理解せしめ説得するならば、向うさんが理解せぬわけはございません。私がわずか十分、二十分ここでお話を申し上げましただけでも、少くともこれは無理だということは、だれもがお考えいただいただろうと思います。それくらいのことさえもおそらくやつていないのではないかと私どもは思います。だからこの際外務当局あたりが、ただに慈悲をいただくなどといつたような態度は、この際一擲なさるがよろしい。戦争犯罪の本質並びに和解による講和の理念にかんがみまして、戦争犯罪受刑者は、講和條約発効と同時に釈放すべきものであつたという見地に立つて、條約十一條に認められておる当然の権利として、一般的赦免勧告を堂々と行う。向うさんにおいてこれをけるならば、さらにまた根強くやる。十回やつてもけつこうでしよう、百回やつてもけつこうでしよう。政府が熱意を持つてつてくれておるということならば、受刑者各位も、おれたちはじつとしておろうということになりましよう。政府がやらぬからおれたちが何か考えなければならぬといつたような、切迫したるところの空気を生んでいるではありませんか。これは政府責任である。政府はこれを納得せしむるために、政府みずから行動すべし。慈悲でもつて物をちようだいするような考えを捨てろ。堂々と講和條約十一條によつて一般勧告をまずなすべし。一回けられたら二回やるべし、二回けられたら三回やるべし。どこまでも熱意を披瀝するならば、戦犯各位もじつとしてその命を待つでしよう。私はこの際しつかりした態度外務当局が向うさんに折衝せられることをここに切望いたしまして、私の質問を打切ります。     〔田嶋(好)委員長代理退席、委員   長着席〕
  13. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 まことに熱烈なるお話を承りまして、感銘深く覚えたのでございます。われわれも巣鴨へもときどき参るのでありますが、非常にあせつておられるのは、一つは仮出所に対する何らの回答が来ていないこと、それから終身刑といいますか、この恩典に浴せない人々が非常にあせつておられるわけであります。最初申し上げましたように、とりあえずわれわれは仮出所に全力を注いでおります。かといつて全面釈放考えないのではないのでありまして、フランス当局もやつたことでありまするし、なるべく近い機会をとらまえまして、全面釈放の方へも今後一層の努力をいたしたい。さらに法務府と連繋を密にいたしまして、戦犯人々が一日もすみやかに釈放されるように、今後とも渾身の努力をいたしたいということを、外務当局といたしましても考えておるような次第であります。
  14. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に本委員会の運営につきまして発言の通告がありますので、これを許します。古島義英君。
  15. 古島義英

    ○古島委員 ただいま佐竹君の御質問でありまして、私は発言を差控えておつたのであります。私は佐竹君の御質問に対して、少し関連して申し上げてみたいこともあるのであります。すなわち齋藤政府委員なり石原政府委員の言うことは、おそらくは法律を誤解しておるのではないか、すなわち刑の執行をいたしておりますのは、日本が委託されてやつておるのであります。ところが、日本法律で罰したものならば、委託されて日本法律で刑の執行ができるのでありますが、まつた日本法律がない——こんな法律はありません。それで処罰されたものが日本法律執行を受けているのでありますから、むしろ一歩進んで、政令三百二十五号が失効いたしておるにかかわらず、なお三百二十五号違反の人たちを日本法律で調べ直す、こういうことをやつておりますが、それと同様に、戦犯の連中も、一ぺん釈放してもらいたい、釈放すれば日本はこれを調べてみたいからというので、その意味で釈放を願つて釈放されるならば日本法律でこれをまた調べ直すというので調べまして、全部に無罪の言渡しをすればいい。そうすれば、ただ国際法規によつて、ああいう連合国の法規でこれを処罰して、その執行だけは日本の方で委託されて執行するというような矛盾したことが起らないで、日本法律で調べ直して全部の無罪を言い渡して、そのまま釈放するのが一番いいと思うのですが、こんなことはできませんか。
  16. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、平和條約十一條がなければさような結果になるし、またむしろその前に、日本巣鴨に拘禁を続けるということがおそらく不可能じやないかと思つておりますが、條約によつて連合国の戦争犯罪法廷の判決を受諾する、そうして日本国内で拘禁されておる日本国民を引続いてその刑を執行する、こういう條約がございますので、初めてさような結果になつておる。しかしそれについては、日本国勧告関係国の決定によつて赦免なり減刑なり、仮出所が可能である、こういう條約になつておりますので、許されたる可能な方法によつて、かような事態を一日も早く解消したい、こういうつもりで努力しているような次第でございます。
  17. 古島義英

    ○古島委員 われわれは今の戦犯受刑者、あの人によつて損害を受けるよりは、むしろ大政翼賛会の中連だとか、もしくは翼賛政治会の連中によつて直接大被害を受けておるのであります。この大政翼賛会に関係をいたしたり、もしくは翼賛政治会に関係をいたしたこの連中こそは、日本法律においてさらにこれから訴追いたし、さらに調べて、そうして処罰する必要があると私は思つております。しかしながらあなた方の方でそういうことをやる必要がないというならば、これはいたし方ありませんが、戦争をほんとうにやつた者は、あるいは英米の連中である、あるいはオランダの連中である、これを向うにまわして戦つたのである。大政翼賛会の連中は善良なる国民を相手にして戦つてつた。実にこれこそは残虐であつた。この残虐がそのまま見のがされて、ほんとうに敵国を相手にして戦つた連中だけが、処罰を受けているということは、そのうしろにおつて綱を引いた連中だけがのがれて、佐竹君のいわれる時計の針のごとく、ほかの機械によつて動いた連中だけが処罰されるという矛盾を来しておる。これを考えたときには、ほんとうに日本が独立国になつたならば、むしろうしろを振り向いてみて、このほんとうに戦争をやつた連中がわれわれを害したのではない、これの機械になつて、歯車になり、あるいはゼンマイになつた連中がわれわれを害したのだというので、これを処罰する必要があるのではないか、現在その連中が追放を解除されたというので、至るところで事前運動をやつて、今度はまた政治を私せんとしておる。こういうことになれば日本はまつたく滅びてしまう。この連中をそのままでおくのであれば、日本の政治というものはますますまずくなつて来ると私は思うのであります。政治的にもこれを処罰する必要があると思うのであります。しかしそれはさておいて、御返事があつてもなくてもよろしいのでありますが、私の発言を許されたのは、この委員会の運営及びやり方についての発言を許されたのでありますから、本題に向つて申し上げたいと思います。実は私の申し上げることは、日本の治安であります。日本の治安ということは、何といたしましても現在の情勢から推して見るならば何より重大であります。この際治安問題については、ほんとうに真剣に考えねばならぬときであります。ところがその重大なる治安の問題について近来参議院の方面でもあるいは衆議院議運営委員会におきましても問題になつておるのでありますが、法務委員会をさておいて、そうして治安委員会というものをこしらえるという考えがあるそうであります。しかも私が申し上げるまでもなく法務府が法務省になるならば、法務省がこの治安関係の所管省になるわけであります。その法務省の関係のすべての問題をこの法務委員会審査するというのであれば、治安問題はもちろん言わぬでもわかつておるのでありますが、この法務委員会審査せねばならぬ筋合いであります。しかるに治安委員会というものを別にとつて、法務委員会から治安問題だけはその方で抜き取つて審査をしようという構想になつておるそうであります。こうなりますとこの法務委員会の六、七分というものはことごとく治安委員会に移つてしまうのであります。先般大いに議論をいたしました破防法の問題のごとき、広く言うならば刑事訴訟の問題のごとき、ことごとくが治安に関係があるのでありまするから、治安委員会審査をするということになる。しからば法務委員会はほとんどあつてもないようなものである。判事であるとか検事であるとかいうものの給與に対する法律ぐらいのもので、何も調査するところも審査するところもなくなつてしまうという状況になる。ここにおいてかこの法務委員会は、相当な覚悟を持つて、治安委員会をつくるならば、法務委員会をどうする。法務委員会ではこういうふうな意見であるというので、法務委員会の名において一本くぎを打つておく必要があるのではなかろうかと思うのであります。どういうふうな方法でやるかこれをどういう文書を彼らに渡すか、また交渉をするかということはすべて委員長に一任をいたしたいと思いますが、治安委員会というものができて、その後における法務委員会の立場はどうなる、法務委員会が治安委員会というものを吸収して、あるいは治安委員会なり法務委員会なりと合併したものでやるかというような構想をひとつつていただきたい。その方法及び交渉のやり方、一切委員長に一任いたしますが、治安委員会ができるということを承つて心配のあまりこの発言をいたすのであります。どうか善処されんことをお願いいたします。
  18. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ただいまの古島議員の御発言は、国会の運営及び政府機構並びに国家治安の対策上きわめて重要な御意見であると存じますので、今後御趣旨に沿うて当委員会において適当な処置をとりたいと存じます。  なお古島委員の発言の通り、さしあたつてその問題を当委員長に御一任を賜わりたいことをこの機会に申し上げたいと存じます。御異議ありませんか     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なければさようにとりはからいます。     —————————————
  20. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に恩赦に関する件について発言の通告がありますからこれを許します。押谷富三君。
  21. 押谷富三

    ○押谷委員 本日の委員会齋藤局長がお見えなつておりますから、この機会に恩赦関係につきまして一、二お尋ねいたしたいと思います。  御承知のように先般平和條約の効力を生じたその日を期しまして、独立回復の喜びを国民にわかつというような大精神から恩赦の発令があつたのでありますが、それから大分期間も経過いたしておりますし、そこで私がお尋ねをいたしたいと思いますのは、その恩赦の発令によりまして、恩恵に浴した数字を伺いたいと思うのでありますが、大赦関係は大体当時からもたびたび承つたのでありますからわかつておりますが、個別的になされました特赦の関係、減刑あるいは刑の免除、復権、こういうものについて恩典に浴した人たちの数字がお手元にわかつていればお知らせを願いたいと思うのであります。
  22. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 個別恩赦は、大体恩赦政令が出た直後には、一般恩赦の方は検察庁なりあるいは刑務所なりでまずやりまして、それから個別恩赦に入るというような関係で、五月、六月ごろから来出して参りまして、現在どのくらいになつておるかということはちよつと数字を持ち合せておりません。おそらくこれは期間ぎりぎりの辺が一番多く来るのではないか、かように存じておりまして、現在ちよつとお答え申し上げる数字を持つておりませんので、調査の上お答え申し上げます。
  23. 押谷富三

    ○押谷委員 突然の質問でありますから、お手元に数字の御準備のないのはいたし方ないと思いますから、適当の機会にお知らせを願いたいと思うのでありますが、それについて、一般に特赦をされる場合に、検察庁がそれを扱うということに承知をいたしております。また個人が申請をする場合があるかにも承つておりますが、それの、どういうものを検察庁が扱い、またどういうものが個人の申請になるかということのその基準が——私はたびたび説明を承つたのでありますが、ただいま承知しておりませんから、伺いたいと思います。
  24. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 恩赦につきましては、二つの道がございます。本人からの出願の道と、それから刑務所に入つておる人については刑務所長、それから保護観察中の者については地方公安委員会、それからその他の者についてはその刑を言い渡した裁判所に対応する検察庁の検察官、具体的には検事正であろうと思いますが、その人から職権によつてこれは相当である、こういうことで申請をする、こういう二つの道がございます。職権による申請については、期間等について何ら規則上制限はございません。  本人からの出願については、現在の恩赦法の施行規則では期間の制限がございます。大体こういうことに相なつております。拘留、科料については、刑が確定した後六箇月間の期間がたたなければならない。罰金については一年でしたか、それから有期の懲役、禁錮につきましては、刑期の三分の一、三分の一が一年に満たないときは一年、但しその期間は拘禁された日数は三十日以内、こういうふうに期間の制限がございます。しかし事案によつてはさような制限を設けることは不当であるというようなこともございますので、さような場合の救済方法として、中央更生保護委員会に期間短縮の願いをお出しになつて、中央委員会が期間短縮を許可する、こういうことになりますと、その許可書を添えて、その期限を経過しないでも刑を言い渡した裁判所の検事正にお申出になる、そうするとその場合には検事正は不当であると考えても、必ず中央委員会に取次ぐ、もちろん相当であるときは当然でありますが、不当であると思つても中央委員会に意見をつけて申し出る、かような方法になつておりまして、現在それが参つておるような状況であります。
  25. 押谷富三

    ○押谷委員 個人の出願の関係はよくわかりましたが、検察庁からやる場合においては、ほとんど制限がないようにも今承つたのでありますが、この検察庁からやる場合におきまして、それぞれの事件を扱わなければならぬ管轄の検察庁は、どうも何だが恩赦の手続をすることを出し惜しみをいたしているような批評が世間に相当多いのです。これをやつてくれと言つても、どうもやらないというような形になつて、相当たくさんの非難がそういうところに起つているようでありますが、これは保護委員会としてはそういうことは御承知あるかどうかわかりませんけれども、私どもが承つているのでは、検察庁は何だか自分の持つているものを施すお感じを持つて、この恩赦の恩典に浴させることを非常に出し惜しみをしている、けちな考えを持つているというような非難をされている向きがありますが、それについてどうお考えになつておりますか。
  26. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 先ほどお答え申し上げましたうちで、ちよつと誤解を受けるような、申し足りない点がありますので、補足してお答え申し上げます。検事正なり、その他職権上申の際に制限がないと申し上げましたのは、期間についての制限がないということであります。しかし申請をするかしないかにつきましては、個々の検察官の恣意に流れては困るという考えをもつて、一応の考え方という基準は示してございます。中央委員会といたしましては、その基準に該当するものについては、決してこれを惜しむことなく、また漏れなくやつていただきたい、かように考えております。もしさような実例が考えられますならば、検事局の方に注意いたしまして、適正な処分をさせるようにいたしたいと思います。
  27. 押谷富三

    ○押谷委員 具体的な問題にわたつて恐縮なんですが、当時新聞にもその基準として発表されておりました事件で、刑が確定をして、本人がその刑の執行に耐え得るような健康状態になつておらない、言いかえれば、病気を続けておつて、刑の執行が長期にわたつて延期されているようなものは、刑の執行免除はその恩赦の関係においてなされるというようなことが書かれておりましたが、そういうふうな場合においても、やはり検察庁の手続によつて恩赦されるようなことになるのでありますか。
  28. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 ただいま申された点は、刑の執行免除の基準の一つであるかと存じております。従来相当長い期間執行に耐えないという状況であつて、しかも今後執行するならば、回復できないような不測の損害を與えるというような場合は考慮してよろしいじやないかという考えが一つございます。その点参考に申し上げておきます。
  29. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 この際申し上げておきます。接収不動産の返還に伴う賃借権に関する件につきましては、要綱案としてお手元に配付してあるような一応の成案を得ましたので、各自御研究の上、意見のある方は当委員長、及び専門員に後刻お申出願いたいと存じます。なお散会後村専門員より、御希望によりましては懇談会を開いて、簡単に成案の骨子について御説明と懇談をいたしてもけつこうだと存じます。それではさようとりはからうことにお願いいたします。     —————————————
  30. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に請願審査を行います。  日程第一、戦争犯罪者減刑等に関する請願は、すでに本委員会において審査いたしました請願とまつたく同趣旨のものでありますので、本請願につきましては、その審査を略し、ただちにこれを採択すべきものと決し、議院において採択の上、内閣に送付するを適当と認めるものと議決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  32. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 日程第二、裁判所構内弁護士控室設備充実に関する請願について関係当局の意見を求めます。
  33. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判説明員 請願の御趣旨は十分了承いたしました。この点につきましては、最高裁判所におきましても、予算の許す限り請願の御趣旨に沿うような方向に向つて進みたいと考えております。なお、庁舎を新しく建築いたします際の設計におきましては、弁護士控室のほかに、弁護士が事件関係人と面接のできるような相談室といいますか、面接応接室といいますか、そういつたものも新たに建築する方向で進んでおるわけでございます。
  34. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、本請願に対する本委員会態度を決定いたします。  本請願を採決すべきものと決し、議院において採決の上、内閣にこれを送付するを適当と認めるに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、ただいま審査いたしました各請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なしと認め、御一任願うことに決しました。     —————————————
  37. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に陳情書審査を行います。本日の陳情書日程中、第一ないし第六三は、いずれも戦犯関係の陳情書であります。日程第六四ないし第六八は、いずれも破壊活動防止法案反対等の陳情書であります。また日程第六九は、住民登録法実施経費全額国庫負担に関する陳情書であり、日程第七 ○は、市区町村役場における戸籍届出用紙等の無料頒布中止に関する陳情書であります。  これらの各陳情はいずれも先日の委員会において審査いたしました陳情書とその内容または趣旨におきまして同一のものでありますので、その審査はこれを省略いたし、日程七一ないし第七五につきまして、順次政府の意見をただすことにいたします。日程第七一、不正印紙使用事件に関する陳情書
  38. 平賀健太

    ○平賀政府委員 本件陳情の趣旨は、司法書士となるについて裁判所書記官等に特権を認めることなく、試験制度により定めることにされたいというのでありますが、司法書士法は、司法書士の資格について裁判所書記官等の職にあつた者と、一般の人との間に差別を認めていないものと考えます。また法務局長、地方法務局長が、司法書士の認可を與えるについても、裁判所書記官等の職にあつた者を特別に取扱つておりませんから、今ただちに試験制度をとる必要はないものと考えます。     —————————————
  39. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に日程第七二、宮之城町に簡易裁判所設置に関する陳情書
  40. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 鹿児島県宮之城町に簡易裁判所設置陳情の御趣旨は了解いたしました。  本件は初めての陳情でありまして、また現地の事情もよくわかつておりませんので、さつそく関係庁に紹介いたしまして、諸般の状況を調査中であります。委員調査の完了をまつて何分の考慮をいたしたいと存じますからさようお願いいたします。
  41. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判説明員 宮之城町に簡易裁判所設置につきましては、実はこの陳情によつて初めて現地に御希望があることが判明いたしましたので、最高裁判所といたしましても、現地の実情を十分調査した上で慎重に検討いたしたいと考えております。     —————————————
  42. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に日程第七三及び第七四、戦傷病者戦没者遺族等援護法による戸籍謄本等手数料免除に関する陳情書を議題といたします。
  43. 平賀健太

    ○平賀政府委員 本陳情に述べられておりますような法律案の提案につきましては、国においてその予算措置を講じた上でなされるのが適当であると考えます。     —————————————
  44. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に日程第七五、刑事控訴審覆審制に復元すること等に関する陳情書を議題といたします。
  45. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 この陳情のうちの第一点の、刑事控訴審覆審制に復元するように法規を改正することにつきましては、さきに法制審議会において慎重に検討いたしましたところでは、控訴審を旧刑事訴訟法におけるような覆審制に改めることは、まだその時期でないという意見が多数ございました。しかし審級制度全般に関する問題として、今後も研究を重ねて行きたいと考えております。  第二に、刑事訴訟法の改正を要望することについての点でございますが、上告申立理由の擴張、刑事訴訟法第三百四十三條の改正は、いずれも今ただちにこれを行う必要はないものと考えております。しかしこれも審級制度に関する問題として、広い見地から今後十分研究を重ねて行きたいと存じております。  次に青森地方裁判所新庁舎建設促進についてでございますが、この点は最高裁判所に御趣旨を伝達いたしたいと存じます。  次に簡易裁判所の刑事事件控訴審は、地方裁判所とするような改正されたいという点でございますが、控訴審法律審である建前から、法令の解釈の統一を期するため、高等裁判所において慎重にこれを行うことが適当でございまして、地方裁判所において、これを行うように改正することは、妥当でないと存じます。しかも訴訟法の全般的改正、特に審級制度の改正の案を研究いたします際に、あわせて取上げたいと存じます。  次に被疑者として逮捕勾留せられたが、公訴の提起のなかつた者に対しても、申立に基き裁判所の審査決定により、これが補償並びに名誉回復等の方法ができるように、刑事補償法中に規定するよう要望される点でございますが、不起訴事件について刑事補償を行うためには、裁判所が不起訴事件について実体審理を行う必要が生じて参りまして、制度として適当でないと考えます。不起訴事件については、故意過失のある者について、国家補償法によつて救済を受けることにするのが相当であると考えます。  次に少年保護の抗告は、執行を停止する効力を有しないという点を改めるようにとの陳情でございますが、これは保護処分の上におきまして非常に問題がございますので、今後十分研究いたしたいと存じております。
  46. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判説明員 本件の陳情のうちで、裁判所の関係の部分だけについてお答えいたします。まず第一は、裁判所における民事、刑事書類を立書きに統一することについてでございますが、実は事件記録書類に関しては、根本的な問題としてただいま一般的な研究をいたしておりますので、その研究の際に考慮いたしたいと考えております。  それから第二番目は、青森地方裁判所の庁舎の新築の件でございますが、この点についても、予算の許す限り、でき得る限り御趣旨に沿いたいと研究をいたしておる次第でございます。  その次は裁判所構内の弁護士控室の問題でございますが、これは先ほどの請願の際にお答え申上げましたところを、そのまま援用させていただきたいと思います。
  47. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 ただいまの陳情の中で、法務府人権擁護局の権限と機構の一切をあげて、日本弁護士連合会に委譲して、弁護士本来の使命と責任である人権擁護の実を、遺憾なく果し得るようという陳情でございますが、現在人権擁護局において実施している事務は、人権擁護に関する法制の計画、立案及び人権擁護に関する政府各機関及び地方自治団体との連絡調整、並びに国際連合との連絡、人権侵犯の予防と排除等、政府機関として実施して初めてその実効をあげ得る事務が大部分でございますので、これをあげて民間団体である日本弁護士連合会に移すことは、適当ではないと考えたのであります。
  48. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 以上政府委員並びに説明員の意見に対し、御質疑ございませんか。——質疑がなければ、これより陳情書に対する態度を決定いたします。  本日の陳情書日程中第一ないし第六三、第七一ないし第七五の各陳情書は、いずれも委員会において了承することとし、その他についてはその決定を延期することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  本日はこの程度にとどめ、明日は午後一時より委員会を開きます。  これをもつて散会いたします。     午後三時三十六分散会      ————◇—————