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1952-06-27 第13回国会 衆議院 法務委員会 第71号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月二十七日(金曜日)     午後二時六分開議  出席委員    委員長 佐瀬昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 山口 好一君    理事 田万 廣文君       安部 俊吾君    押谷 富三君       角田 幸吉君    北川 定務君       高橋 英吉君    松木  弘君       眞鍋  勝君    吉田  安君       猪俣 浩三君  出席政府委員         検     事         (検務局長)  岡原 昌男君         中央更生保護委         員会事務局長  斎藤 三郎君         外務事務官         (條約局長)  下田 武三君         参  事  官         (外務大臣官房         審議室勤務)  三宅喜二郎君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局第         一課長)    桑原 正憲君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 六月二十六日  戦争宣伝等禁止法案大山郁夫君外五名提出、  参法第一五号)(予) 同日  戦争犯罪者減刑等に関する請願岡西明貞君  紹介)(第三九五九号)  同(佐久間徹紹介)(第三九六〇号)  人権擁護局存置等に関する請願佐竹晴記君紹  介)(第三九八九号)  旭川地方裁判所名寄支部庁舎新築請願玉置  信一紹介)(第四〇三四号)  旭川地方検察庁名寄支部庁舎新築請願玉置  信一紹介)(第四〇三六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(田  嶋好文君外二名提出衆法第六九号)  人権擁護に関する件  平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に  関する件  請願  一 戦争犯罪者減刑等に関する請願岡西明    貞君紹介)(第三九五九号)  二 同(佐久間徹紹介)(第三九六〇号)  三 人権擁護局存置等に関する請願佐竹晴記    君紹介)(第三九八九号)  四 旭川地方裁判所名寄支部庁舎新築請願(    玉置信一紹介)(第四〇三四号)  五 旭川地方検察庁名寄支部庁舎新築請願(    玉置信一紹介)(第四〇三六号)     —————————————
  2. 山口好一

    山口(好)委員長代理 これより会議を開きます。委員長所用ため理事である私が暫時委員長の職務を行います。土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を議題といたします。提案理由の説明を聴取いたします。田嶋好文君。     —————————————
  3. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 土地家屋調査士法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。御承知のように、土地家屋調査士法は、一昨年の第八回国会におきまして、全会一致をもつて委員会提出法律案として決定され次いでこれが制定を見たのでありまして、その内容を簡単に申し上げますと、従来税務署で取扱つておりました土地家屋台帳事務昭和二十五年八月以降法務局または地方法務局に移管し、台帳事務登記事務との間の手続上の簡素化をはかることとなりましたので、これら台帳の記載は不動産登記の目的たる諸権利の基礎となる事実関係を示すものとして、その正確性が特に要請されることとなつたのであります。従いまして、土地台帳及び家屋台帳登録につき必要な土地または家屋に対する調査測量並びに申告手続が的確に行われるかいなかは、軍に国民権益のみならず、国家経済にもきわめて重大な関係を有するのであります。よつて、従来申請者の依頼を受けて提出書類の作成に必要な土地家屋調査測量を行い、申告手続の代行を業としていた者を法的に認めて、その資格を明確にするとともに、新たにその業務範囲資格試験業務執行方法、懲戒、罰則等を定めたものであります。ところで、本法の附則第二項は経過的措置規定しておるのでありまして、すなわち「この法律施行の際現に土地台帳又は家屋台帳登録につき必要な土地又は家屋に関する調査測量又は申告手続をすることを業としていた者は、昭和二十七年九月三十日までは、この法律適用については、調査士とみなす。」とありますが、この期間昭和三十年九月三十日まで三年間延期しようとするのが本法案提出趣旨であります。その理由といたしましては、現在この臨時措置適用を受けて土地家屋調査士業務執行している者が全国で約一万余名ありますが、これらは現行法によりますと本年九月末でその業務執行ができなくなることになります。このことは、土地家屋に対する台帳事務に多大の支障を来し、国民権益を阻害する結果ともなりますので、この際かかる者の資格を三年間延期して、これらの不便、不都合の起らないよう処置する必要があるのであります。以上が本法案提出理由であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに本委員会において御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 山口好一

    山口(好)委員長代理 なお本案に対する質疑は後日に譲ることにいたしますから、さよう御了承願います。     —————————————
  5. 山口好一

    山口(好)委員長代理 次に人権擁護に関する件について調査を行います。発言の通告があります。これを許します。猪俣浩三君。
  6. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは先般私が法務委員会において法務総裁に対して質問をいたしておりました事案であります。それは東京中央銀座西二丁目一番地に事務所がありまする株式会社中央機器製作所専務取締役をやつておりまする那須栄という者が、警視庁管内池上警察署によりまして人権蹂躙をせられた事実についてであります。池上警察署におきましては、矢口巡査派出所において巡査田中善蔵をなぐりつけた事件が発生したに対しまして、これを今申し上げました那須栄の所為なりといたしまして、公務執行妨害並びに強盗傷人被疑事件として那須栄の自宅を捜査し、なおその旨が全国新聞に報道せられ、ラジオにも報道せられたのであります。ところがその警察で逮捕いたしましたる者はまつたく別人でありまして、那須栄とは似ても似てない人物である。那須はこの会社専務という重要な立場にある人物でありまするが、かような公務執行妨害強盗傷人というような、実に凶悪なる犯罪被疑者として新聞ラジオに報道せられましたために、この会社取引先銀行その他に対しまして非常な信用を失墜いたしました。これが信用を回復するため相当の金銭を使い、時間を使いまして努力しなければならないはめに陥つたのであります。これが本年の四月十七日の話でありまするので、ただちに会社から、それはまつたくの人違いであつて那須栄なる者は当社の専務会社にちやんと勤務しているのであるから、今池上に留置せられている人物は違う人物であることを申し入れたにかかわらず、どういうわけでありますか、警察はそれを坂上げない。再三言つても取上げないで今日に至つているのであります。そこで本件につきまして人権擁護議員連盟の発動と相なりまして、会長及び理事長及び委員の三人で池上警察署に交渉いたしましたところが池上警察署は、何がゆえに那須栄なる者でないことがはつきりしているにかかわらずこれを取消ししないのであるかということに対して、那須栄を呼び出しても当署へ来ないから、本人を見ないから取消しができないと言うのであります。そこで、本人が来ないならばみずから出かけて行つてよく人物を見て、そうして取消すべきことが人権擁護趣旨ではないかという質問をいたしましたところが、いや、どうも会社本人に会いに行つて自分生命保障ができない、というようなことをその池上署捜査主任が言うのであります。これはどういう意味かと申しますると、どうも自分行つてもどういう目にあうかわからぬから、私はこわくて行けない、皆さん生命保障をしてくれれば会つてもいいというようなことを言うたのでありまするから、それはまるで逆だ、われわれこそ警察に身体の安全を保障してもらうべき筋合いなのに、警察官に対してわれわれが補償するという道理があるかというようなことでありますが、今ほんとうの犯人はどうしているかと申しましたらば、まだ警察に留置しているということでありますが、これはもう事件が、逮捕されましてから相当の日数がたつているので、それでは刑事訴訟勾留期間を過ぎているじやないかという質問に対しましては、私はよくわからない、警視庁のさしずでやつておりますので警視庁の方で聞いてくれというような答弁でありました。かような次第で本日までこれが取消しもされず、かような間違いがそのままになつているのでありますが、ただそのときに聞きましたことによりますと、現在勾留されている人間が那須栄であるやいなやは、大森警察署部長刑事がこれが那須栄であると証明をした、その大森警察署部長刑事証明書を添付して捜査令状あるいは逮捕令状をもらつたということでありますが、何がゆえに大森警察署のその部長がさような断定を下したのであるか。ここにも私ども不可解な点があると存ずるのであります。会社は朝日新聞その他の十数の新聞に全然これは人違いであることの新聞広告をするとともに、那須栄自身が自動車に乗りまして幾日も各得意先及び銀行へその誤りであることを知らせて参つた、それがために十数万円の金を使つたというまことに珍しい事件でありますが、警察は現在に至るまでその人違いであること、間違つたさような新聞発表をしたそのことについて何らこれを正そうとしないのであります。それがために現在名誉毀損営業妨害をもつて東京都及び国を相手にして民事訴訟が行われているというような状態であります。かようなことがどういう事情で起つたものであるか、その全般の警察権の行動、人権蹂躙についての監督権のあります法務府の所見を承りたいと存ずるのであります。
  7. 岡原昌男

    岡原政府委員 お尋ね中央機器製作所那須栄氏に対する間違いの起きました事情は、私どもといたしましても事重大と思いましてさつそくいろいろな記録を取寄せて、かつ関係人たちにも当りまして調査いたしました結果、大体次のような事実であることが判明いたしました。すなわち去る四月十七日の朝七時半ごろ池上署管内矢口巡査派出所で、先ほど猪俣さんからお話がありました通り田中巡査が数名の暴漢に襲われまして、拳銃を強奪され全治四週間の傷を負うたという事件が発生いたしました。被害者田中巡査がその負傷に屈せず追跡いたしまして、附近の目蒲線の武蔵新田と申します駅の構内で挙動不審の者を見つけまして、これを逮捕しようとしたところが、公務執行を妨害して逃走した。これを追跡している途中、折から出動しようと思つてつて参りましたほかの巡査とぶつかつたわけでありますが、向うに行くのをつかまえてくれというようなことで、その別の巡査がその男を逮捕した。ところが逮捕された人が附近交番で聞いても、あるいは署にもどつてから聞いても、全然何も言わない。それで一体だれだろうか。氏名等も全然言わないので、だれか知つている者はいないかというふうなことを、全署員並びにその場に居合せた検察官等に聞いたそうでございます。ところがその中で、先ほどお尋ね巡査部長が、自分中央機器那須栄という人と二、三度顔を合せたことがあるが、何か似ているようだ、と申しますのは、この男がつかまる際に、手錠をかけられたのを振りちぎろうといたしまして、たいへんあばれたそうでございまして、その際自分眼鏡を飛ばし、それから目の辺を少し打つて、顔面の形が少しかわつていたということで、素顔がよくわからなかつたので、警察では念を入れまして、それではその事件の当時、その付近に居合せた近所の人に一応当つて見ようというので、四、五名の近所の人を呼びまして、調べたそうでございます。ところがその人たちは、交番の襲撃のありましたその現場に、ちようど居合したか、通りかかつた人たちでございますが、交番の外側で見張りをしておつた男が、確かにこの男に間違いがない。それで、それじやその当時の素顔はどうなのかということで、ちようどだまたま署に参考にございました、中央機器会社皆さんが四十数名とか写つておる写真を見せましたところが、この人であるというのが那須栄氏に該当したわけであります。そこで巡査部長の話と合うので、これは氏名は黙否しておるが、那須栄氏であろうということになりまして、その日のうちに裁判所手続をして、押收捜索令状を得て先ほど御指摘のように、家宅捜索が行われた、かような順序だそうでございます。そこで実際に、その那須栄氏と、それからその氏名を全然熟否しておる者との顔形年齢その他はどうなのかということを、私の方で調べてみましたところが、年が一つ違いで、それから那須栄氏の、見せられた写真と、その後この氏名不詳者素顔にもどつてからとつた写真とは、割合よく似ておるそうであります。やや那須氏の方が色男かという程度で、眼鏡もかけておるし、しろうと目に見たところあまり違わないというので、私どもといたしましても、さような事情がわかりましたので、被疑者の判明を急いだ関係上、さようなこともあつたのかということの結論を得たのでございます。しかしながら、これはいやしくも事、人権に関する事項でございまして、さような間違いがあつたということだけでは済まされないのであろうかと私ども考えまするので、今後かような事件が再び起らぬように、私どもとしては、検察庁を介し、警察官教養訓練に力をいたしたいと考えます。なおこの氏名を全然言わなかつた男は、後に野島茂登一であるということが、いろいろ状況からわかつて参りました。四月十九日に検察庁に送るときには、まだ氏名不詳者になつておりまして、そのときは、池上警察署留置番号第四号、年齢三十歳くらい、たけ五尺二寸、細面の男というようなことで検察庁に送致されておりますが、五月九日に強盗傷人公務執行妨害で起訴されました。それからだんだん調べて参りますうちに、右の野島という者は、二月二十一日の蒲田事件関係者であることがわかりました。その関係捜査を続けまして、六月九日に公務執行妨害等で起訴されておるわけでございます。さような事情でございますので、御了承願いたいと存じます。
  8. 猪俣浩三

    猪俣委員 こういう人違いが、四月十七日ですが、十八日にはほとんどはつきりわかつておるのであります。それに対しまして警察は、これはまつた間違いであつて那須に対しては気の毒であつたというような新聞発表をするなり何なり、この無実な嫌疑であることに対する警察側意見を発表して、本人の傷つけられた名誉を保護するという態度に出るのが、ほんとうじやないかと思うのであります。これは各新聞に出たのみならず、ラジオで二回も放送ざれたそうでございまして、本人の生家はもちろんのこと、遠く九州あたり取引先からも、相当の手紙が来るようになつて会社としては非常に困つた。これは消火器をつくつている会社であります。そこでこのような場合に、一体新聞にそれが発表せられ、まつた人違いであつたというような場合には、これは何らかの、機宜に適した、そういう名誉の回復する方法を、法務府としてはお考えになつておるものかおらぬものか、どうすることが適当であるとお考えになりますか、御意見を承りたいと思います。     〔山口(好)委員長代理退席佐瀬  委員長着席
  9. 岡原昌男

    岡原政府委員 すでにして、本件につきましては、人違いであるということが確定いたしましたが、御本人に対する迷惑さこそと存ずるのでございます。そこでさような場合として、従来いろいろ、たとえば新聞紙に対しまして、正式の正誤の申込みをする、あるいは進んでラジオその他に放送するというふうなこともあつたと存ずるのでございますが、本件につきましても、私の方として直接できますことは、法務府としては、人権擁護局その他を介しまして、適当な措置を行うというのが本筋だと思うのでございますが、また検察庁上級官庁といたしましても、私どもとしては検察庁を介し、適当な措置警察側に勧告するのがいいのではないだろうか、これは至急に手配をいたすつもりでございます。
  10. 猪俣浩三

    猪俣委員 公務執行妨害強盗傷人というような罪名を付されて名前が出たのでありますから、これはただ事ではないのでありまして、国家といたしましても、その国家の機関の間違いに対しましては、個人の人権を尊重いたしまする民主政治のもとにおいては、何らか至急なる救済方法を講ずべきことが当然でありまして、本人でないことが明確になつておるにもかかわらず、今日までその取消しの声明すら出していない、まるで切捨てごめんのようなやり方に対しましては、私どもいたく不満に思う次第でありまして、どうぞ人権擁護監督官庁でありまする法務府におかれましては、かようなことがしばしば起らないように、十二分なる御注意を願いたい。なおまた、五月一日のメーデー事件などに関しましても、ただもう、デマや聞込みや何かで全部逮捕して、これをぶち込むというようなことが、相当やられている。ああいう事件に対しましての検挙の方法につきましては、もちろん私ども検察当局の御苦心のあるところは同情できるのでありまするが、どうも実に薄弱なる根拠で、一網打盡に全部ぶち込むでおいて、ゆるゆると調べるというやり方というものは、これは私は近代式検察やり方じやないと考えるのでありまして、疑いが十二分ならざる者をまずぶち込んでおいて逃がさぬようにしておいてから調べる。今度の五月一日のメーデー騒擾事件につきましては、裁判所職員組合を初めといたしまして、何ら事件に関知せざるところの多くの良民が、相当長い間ぶち込まれて、何らの事実がないために釈放された者が実にたくさんあるのであります。かような切捨てごめん的な行為に対しまして、何らそれに対して警察が人の名誉を回復することすらもやらないということ、さようなことがルーズになつているがために、捜査の煩雑を防ぐためにまずぶち込んでおく、ぶち込んでおいて、間違つたらそのとき釈放すればよろしい、こういう実に人権を軽視する風潮が警察官に近ごろ非常に出て来た。私どもはこれに対しまして法務府が嚴重なる態度で臨んでいただきたい。何らかそういうことに対しまする矯正の方法をくふうしていただきたい。縛ることばかりをくふうなさるのは能じやないと思うのであります。それはみな、みそもくそも一緒にぶちこんでおいて、ゆるゆると調べれば、調べる方では便利でございましようけれども、そのたびに日本の憲法の全趣旨が一つ一つ破壊されて行くのである。これが積み重なるならば、いつかは知らず警察国家、また昔の特高国家に転化するのでありまして、なしくずしに今転化しつつあるのじやないか。この際法務府が一大勇猛心をもつてかような弊害の起らぬように十二分なる御監督を願いたいということを希望しておきます。次にこれは駐留軍に勤めておりまする労務者の問題であります。これは法律上いろいろのどうも疑念があるのでありますが、事実は、朝鮮の釜山ではしけの業務に服しておりましたる日本の船員が、まつたく身に覚えのない窃盗をしたという嫌疑かけられ、韓国の憲兵、及び駐留軍憲兵に逮捕監禁せられ、そうして大きな負傷を與えられるくらい拷問を受けました。もちろん身に覚えのないことでありまするから、罪は晴れたのでありますが、ただまつたく関知せざる事実のため拷問を受けるのみならず、即時罷免をされまして、長い間苦労をして働いておりましたものが、何らの手当もなく首を切られて内地へ追い帰された、これに対しましてこの駐留軍労働組合本部、及び全日本外国船舶員労働組合本部から正式なるこれに対しまする救済方法につきましての陳情が参つておるのであります。この日本労務者について、駐留軍に働いておりまする日本労務者は、行政協定第十二條によりまして、やはり日本労働法規適用になるはずでありまするが、さような場合に何ら理由のないのに罷免せられる、これは日本労働法規からしても違法だと思うのであります。のみならずかような拷問を受けるというようなことに対しまして、こういう駐留軍に働いておりまする多数の労働者の地位の安固のために、人権保障ために、日本政府はいかなる方法と手段を盡されるつもりであるか、実はかような事件が今相当つて来ておる。今までは被征服の国、管理の国といたしまして泣寝入りしておつたような場合もありましようけれども、今日いやしくも独立国として出発しておりまする以上は、かような不当なる侵害を受けました際に、日本政府は何らかこれに対する処置を講ずる必要があるのじやないかと考えられまするが、かような問題につきましてはいかなる方針で臨みなさるつもりでありまするか、御意見を承りたいと存じます。
  11. 下田武三

    下田政府委員 ただいまの朝鮮におきます日本人労務者の点、私実はまだうかつでございますが、その事件に関しまして何らの報告に接しておりません。もちろんただいま御指摘のように、行政協定によりまして日本労務者に対しては労働基準法を初め、労働條件につきまして、でたらめなことをされないような保障をとりつけておりますので、よく調べまして関係の向きに交渉いたしまして善処いたしたいと思います。
  12. 猪俣浩三

    猪俣委員 具体的事件に対しまして、もちろん御善処願いたいと思うのでありますが、法律的な意味におきまして、かような日本駐留軍に勤めております労務者人権を蹂躪せられたという場合、及びまつたく不法に馘首、罷免せられたというような場合、一体これはどういう方法に基き、いかなる救済があるか、そういう抽象的な法律論として政府用意を承りたいと存ずるのであります。事実はもちろん調査していただきたいのですが、それに対する処置として、その前提たる法的根拠と申しますか、方法——外交方法と申しますか、そういう根拠をひとつお教え願いたいと思うのであります。
  13. 下田武三

    下田政府委員 私実はこの事件主管ではございませんのですが、法律的の部面だけの解釈論として申し上げたいと思うのでありますが、行政協定の十八條第三項に、第三者に負傷、死亡または損害を與えたものから生ずる請求につきまして処理規定がございますので、この規定に基きましてその労務者を雇つておる当局とまず交渉いたしまして、何らかの解決方策を講ずることができるのではないかと存じます。
  14. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうしますと、結局におきまして日本労務者駐留軍の官憲によりまして人権侵害を受けたという場合におきましては、結局外交交渉ということに相なるのでありますか、あるいは行政協定に基いて、そこに何らかの道があるのでありますか、それを承りたい。
  15. 下田武三

    下田政府委員 ただいまの点につきましては、日米合同委員会というのが設置せられておりまして、その合同委員会の席上、ただいま御指摘になりましたような事件処理につきましても、もちろん話し合うことができますので、比較的容易に先方と接触し交渉する道が開けている次第でございます。
  16. 猪俣浩三

    猪俣委員 政府に要望いたしますことは、今後もこういうことが頻繁に起つて来ると思うのであります。それでありますから、そういうことに対しまして善処するところの方法を今から——どうも今の御答弁では用意なさつておらぬように見受けますが、過去においてもあつたことであり、今後も独立したならばなお労務者としては正々堂々と処置するように相なるかと存じますがゆえに、そういう人権保障の道につきまして、十二分なる用意をしていただきたいと存じます。今の御答弁だけでは、何らそういうことに対する具体的の取扱いを考慮なさつておらぬように見えるのでありますが、至急その対策をお立て願いたい。なお事案そのものにつきましては、これは外務省のどういうところへ一体持つて行けばよろしいのでございますか。
  17. 下田武三

    下田政府委員 私法律関係主管者といたしまして、法律解釈論のみを申し上げましたために、あるいは熱意が足らないようにおとりになりましたかもしれませんが、外務省の担当者は国際協力局長でございまして、国際協力局におきましては、この種事例は遺憾ながらなかなか少くない事例なのでございますが、こういう事件の頻発は大きく言いますと、国交上もおもしろくないので、これらの事件の防止、またもし起りました場合には、これが円満迅速な解決について非常な熱意をもつてつております。その点は私主管者でございませんので、私の方針としては述べる立場にございませんが、主管者は非常な熱意をもつてつておりますことを申し上げまして、御了承を願う次第でございます。
  18. 猪俣浩三

    猪俣委員 次に、これは検務局にお尋ねいたしますが、きよう私は詳しい事実を調べたのを忘れて参りましたが、警察官の発砲によりまして、近来相当の死者が出て来ております。もちろんそこに至りました原因につきましては、われわれ必ずしも同調できないのでありまするけれども、ただ警察官等職務執行法第七條の規定の解釈上、一体ピストルを発射して人を殺傷するという場合につきまして、はなはだ疑問のあるような事例が見受けられるのであります。五月一日のメーデーにおきましても、あの死にました人物は、うしろの方からたまが胸に抜けておつた。そうすると背後から撃つたということに相なる。刑法の正当防衛でも背後から撃つた者は正当防衛にならない。これはずつと古い話でありますが、高尾平兵衛という無政府主義者があつて、これが米村嘉一郎という赤化防止団長と当時称しておつた人のところに朝なぐり込みに行つた。ところが米村の方が力が強かつたので、彼は逃げ出した、それを背後からピストルで撃ち殺した事件がございました。これは検務局長なんかはまだお若い時分のことでお知りにならないかもしれませんが、これは裁判になりまして、米村君は正当防衛で争つたのでありますが、正当防衛は成立しませんでした。しかるに近ごろ警察官の発砲によりまして死傷した者が、背後から撃たれたような者があることを聞き及びますが、一体刑法の正当防衛にならざるような場合でも、警察官等職務執行法では正しいことになるのでありますか。私どもの理解するところによれば、刑法の正当防衛以上に、警察官等職務執行法の第七條は厳重なわくがはめられておると存じますが、警察官等職務執行法第七條によつて、ピストルを発射し人を殺傷してよい場合に、背後から撃つてもそれがこれに当てはまるという御解釈であるかどうか。またかような実際ピストルによつて死傷しました人たちの状態について、本年に入つてからの人数が一体何人くらいで、一体どういうことが致命傷になつて倒れたか、さような調査がおありであろうかどうか、それとこの警察官等職務執行法の第七條と照し合せて、それが合法的であると断定できるような立場であるかどうか、そういう御調査がなされておりましたらお伺いしたい、またなされておりませんでしたら後日でも御報告願いたいと思うのであります。ことに新宿か何かで学生がビラ張りをしておつたのをピストルで撃つて、これはたしか重傷だけれども死ななかつたと思うのでありますが、そのお母様が朝のラジオで切々と訴えておるのを聞きまして私は非常に乱暴だと考えた。一体ピストルの発射が激増いたしましたのは私は二月の末だと思いますが、法務総裁に対しまして、近ごろ検事総長がピストルは勇敢に発射せいという訓示を出したと聞くが、さようなことがあるのかという質問をしておりましたら、断じてさようなことはないという答弁がありましたが、今から考えますと、どうもそういううわさが新聞なんかに出ました以後、この警察官のピストルの発射が非常に激増したが、一体あの際には法務総裁は否認なされたのであるが、あるいは検察庁なりあるいは警察におきまして、ピストルの発射について、何か警察官の志気を鼓舞するような一体通牒をなさつたのではないかと考えられるのでありますが、さような事情がおありであるかどうか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  19. 岡原昌男

    岡原政府委員 警察官の武器使用につきましては、先ほど御質疑の中にありましたように、警察官等職務執行法の第七條が根拠規定であります。そこで実際の問題といたしまして、従来かような事例が全国的にどれくらいあつたかという点を、私どもの方は発射の事故のあつたたびごとに報告を徴しておりますので、これを集計いたしますれば、本年当初からでも、ちよつと前からでも大体わかるわけであります。手元にただいまその統計がございませんが、全国的に若干ございまして、そのうち御指摘のように被害者が結局死んだという事例も散見いたしております。警察官がさような武器を発射するのは、いよいよせつぱ詰まつた場合に限るのではないか、あるいは正当防衛のみの場合ではないか。この点は職務執行法の第七條の関係で、いろいろ解釈されておりまするが、その明文にありまする通り、若干正当防衛の観念よりは広くなつておるわけであります。ただ実際の運用といたしまして正当防衛よりやや広いから、いかなる場合でもさように信じて、さように撃てば違法性を阻却するのかということになりすと、これはやはり具体的な事案に応じまして、相当制約を受くべきは事の性質上当然だろうと思います。そこでただいま御指摘のような、たとえば背後からこれを撃つというような場合は、少くとも一対一で警察官とその被害者とが相向い合つてつておるというような状況においては、おおむね違法の場合が多いのではないだろうか。ただ先ほどお話のございましたメーデーの騒擾におけるがごとく、多数の人間が入り乱れてやつておりますような場合におきましては、たとえば一人の人間は向つて来る、他の人間は逃げて行くという間に、向つている者に対して発射したそれだまが、逃げている者に当るということはあり得るわけでありまして、本件におきましても、検察庁におきましては被害者の高橋正夫君という人でありますが、その人のその当時の状況その他をできるだけ詳細に調査いたしました。なお警察官の発射したピストルのたまは、たしか七十二発ぐらいだつたと思いますが、その発射した各警察官につきましても、発射した状況等を詳細に調査いたしました。本件の責任がどこにあるのか、どういう状況においてこれが発射されたかということについても、捜査をいたしておる次第でございます。目下捜査中でいまだ結論を得ておらないのでありますが、確定的な結論が出ましたら、しかるべき機会にまた御報告申し上げたいと存じます。なお本年当初からでも全国的にかような発射事件のありました統計等もとりまとめました上で、後日御報告いたしたいと存じます。
  20. 猪俣浩三

    猪俣委員 近ごろの暴力の行為に対しましては、私どもまことに遺憾にたえないのでございまして、たとえばきのうかおととい起きました新宿の騒動というものに対しましては、実に私どもも名状すべらざる感慨を抱かせられるのでありまして、これで民主主義の国が成り立つであろうか、暴力横行のような感じを受けまして遺憾であります。警察官相当緊張なさることも無理もないと思うのでありますが、五月一日の宮城前広場のメーデーにおきまして、警察官がピストルを発射しておる写真を見ますると、相当群衆は後方に下つておる。それを折敷の姿勢でもつてピストルを撃つておるのであります。これは検務局長もごらんになつたと思うのでありますが、ああいうことが一体警察官等職務執行法第七條で合法とされるものでありましようか。私は疑問なんです。写真を見ますと、相当の距離を置いております。そこに折敷の姿勢で撃つている。あれが一体七條で許されるべきであるかどうか、あなたの御感想を承りたい。
  21. 岡原昌男

    岡原政府委員 その当時の写真の若干のものを拝見いたしまして、なお警視庁あるいは検察庁の報告等も見まして、ただいま申し上げました通り、七十数発のピストルが発射されたということも調査いたしました。ただ発射の形その他から見ますると、その多くはいわゆる威嚇射撃というものであるようであります。ある者は非常に室高く頭の上を越すような方向に撃つており、ある者は地面の方を撃つというふうなことで、実際の発射数に比べて被害者が少かつたのは、結局そういうところではなかろうかと存ずるのであります。ただ抽象的に申し上げますと、いずれにいたしましても、警察官の武器使用につきましては、いやしくも軽々しくやるべきものではないのでありまして、先ほど御指摘の、検察庁から全国警察官に対して、遠慮なくぶつ放せというふうな指令が出たのではないかというふうなことでございますが、それは私は全然聞いておりませんし、さようなことはないだろうと思います。新聞——たしか東京新聞つたと思いますが、射殺やむなしというふうな大きな見出しで検事総長の話が出ましたために、その当時非常に私ども自身もいろいろ調べましたのですが、さようなことはないようでございます。今後とも警察官の指導監督につきましては、十分力を注ぎたいと思つております。
  22. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお私は一点お願いしておきたいことは、これは法務総裁がおいでになつたら、なおよく法務総裁意見を聞きたいと思つておるのですが、人権擁護局が縮小されるということに対しましては、法務総裁は、これは日本弁護士協会にやらせるのだという御答弁でありました。ところが日本弁護士協会の役員会議におきましては、これに対しまして猛烈に反対をいたしました。自分たちはやれない、これはやはり擁護局を縮小してもらつては困るということを私どもに陳情して参つておるのであります。こういういろいろな治安立法ができます際に、そうしてまた世上騒然たる際に、やはり取締りを厳重にするとともに、この人権は極力擁護するという一面を国家が持たないと、昔の特高国家になるのでありますから、私はこういう時勢においてこそなお人権擁護局というものは拡大強化されて、一面において取締りを厳重にすることともに、一面人権の保護を十二分にやるということによりまして特高警察化することを防ぐということが必要だと考えておるものでありますのに、法務府はこれを縮小しようと考えておられるようであるが、これは法務府の部内におきましても十二分に御検討くださいまして、その時期が非常に悪い時期である。こういう時期に人権擁護局を縮小する提案なんか出すということは、これは自由党の諸君もよく政府に話をしてぼくはこれは取下げさしていただきたいと思う。実に時期が悪いです。それでなくてさえいろいろなことを言われるときに、こういう人権擁護局を縮小するというような提案を今やるということはまことに下手なやり方だと考えるものであります。  なおこれは検察庁の方々であつて警察ではございませんが、検察庁警察のある程度の指導的任務をお持ちになつておりまして、局長どもやはり警察官に対していろいろまたお話なさる機会があると思うのでありますが、私は警察と軍隊との違いを明らかにしましたアメリカのある州の警察長官の言葉というものを極力警察官に御説明を願いたい。それはグルムという大佐でありまして、陸軍出身の人でありますが、後に警察官に転じて十五年間ヴアージニア州かなんかの警察長官をつとめた人でありますが、これは軍隊と警察との違いを明らかにいたしまして——国会への証言であります。治安の維持は警察でなければならぬ。警察官教養訓練というものは、かわら何枚投げつけられてもどの程度がまんできるか、どんな罵詈雑言を言われてもどの程度忍耐できるか、それが警察官のほんとうの訓練だ、兵隊にはその訓練ができない。兵隊は敵を撃退するのであるから、敵腐心を盛んにして、全部これを撃滅すればよろしいが、警察官は治安の維持、民衆の保護にあたるべきものであるから、とにかくがまんをするということが第一の任務で、その意味において警察訓練を受けた者と軍隊訓練を受けた者は違うのであつて、治安の維持は警察訓練を受けた者でなければならないということをグルムという大佐が詳細にアメリカの国会に報告いたしておりますし、今忘れましたがアメリカのある州のやはり警察委員会におきましても、同様なる意見を国会に報告しておるのであります。近ごろの警察官は、早稻田大学のあの騒擾事件を見てもわかるように、どうもはやり過ぎて、若い学生や何かの言葉にすぐかつとして、そうしてはやりにはやるというような傾向があるのではないかと思うのであります。これは警察官として非常に心得違いである。それをもつて士気旺盛なりと指揮官が考えるといたしますと、これはとんでもない指揮官であつて警察官の任務というものはそういうものではないのであります。そういうことに対しまする訓練をしていただきたい。私は先般警察大学校に頼まれまして講演に参りましたが、警察大学に来ております署長級だそうでありますが、極力それを頼んで参りました。どうぞ検察当局におかれましても、そういう警察大学あたりにお臨みになる際には、われわれが言うことよりも皆さんが言う方が警察官が聞くと思いますので、よくその点を説明していただいて——そうしませんと、一部の矯激なる暴力主義者の誘発に乗りまして、ことさらに事件を拡大して、そうして民衆と警察官のますます反目を助長し、これから国家の秩序の一角がくずれて行く。まつたくわれわれの排撃しまする暴力主義者たちの計略に、近ごろの警察官は乗つておるのじやないかという心配を私は十二分にしておる。それをよほど注意をしてかかつていただかないと、民衆と警察の融和が阻害せられまして、それこそいわゆる民主国家の秩序というものが、警察官と民衆の協力によつてやるということが根本でございますので、それを破壊するようなことになるのを私はおそれるのであります。どうぞ検察の御当局の方々もその点を御留意いただいて、警察官及び検察官の態度というものにつきまして、訓練を誤らぬようにお願いしたいと存ずるのであります。これをもつて終ります。     —————————————
  23. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する件について調査を行います。発言の通告がありますので、順次これを許します。押谷富三君。
  24. 押谷富三

    ○押谷委員 過般本委員会におきまして、先般の赦免の問題について政府お尋ねをいたしたのでありますが、本日重ねてこの問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。  御承知のように講和條約が効力を生じましてすでに二箇月を経過いたしております。この講和條約の十一條によつて戦争犯罪者が赦免を受けられるという機会が與えられることについて非常に大きな期待を持つてつたのは、巣鴨に收容されている戦争犯罪者だけではございません。全国民がこの條約十一條に大きな期待を持ち、一日も早く大勢の戦犯者が釈放、赦免されることを期待いたしているのでありまするが、この国民感情が今国民運動として展開されているのが現状でございます。政府はこの二箇月の間において、講和條約十一條に基いて戦争犯罪者の赦免、減刑、仮出所等についていかなる処置をとられましたか。今日までの政府のとられました経過について御報告を承りたいと存じます。
  25. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 平和條約の発効後今日までに巣鴨に在所しておる人々の赦免、減刑並びに仮出所につきまして法務府としてとりました経過を申し上げます。  実は講和條約の発効前、占領当時におきましては、昭和二十五年の三月でございましたか、最高司令官の回章第五号というのによりまして、戦争犯罪者の容疑者として抑留された期間を含む未決の勾留日数を服役の期間に算入して、刑期三分の一以上に達した者に対しまして、調査の土適当という人に対して仮出所を実施し、かつ善行特典の制度を採用して参つたのでございますが、講和発効の当日、司令部は右の回章を廃止いたしまして、この特典は日本国と関係国の個々の折衝によつて決すべきことといたして私どもは引継ぎをいたしたのであります。政府は條約第十一條によりまして、戦犯者の赦免、減刑、仮出所は、平和條約発効後は日本国の勧告と関係国の決定の一致により実施されるということに相なつておりましたので、その勧告の手続等に関する法律用意いたしまして、本国会で御審議を願つたのでございますが、その法律の内容といたしまして、巣鴨におる人々の深く期待をいたしておりまする抑留期間、未決勾留の日数を服役期間に算入する、それから善行特典の制度も採用するような法案を御審議をいただきまして、條約発効の日にこの法律を公布施行いたしたのでございます。しかしながらこの未決勾留の期間を算入するとか、善行特典を認めるとかいうことは、相手国の同意がなければ、これに基いて勧告をいたしましてもその効果が期待できませんので、法務府といたしましては、條約発効後ただちにこの法案を英訳いたしまして、外務省の手によりまして、関係国に対し、この内容に同意されるようにそれぞれ申入れを行つたのでございます。しかしながらその後その回答がまだ来ておらないという現状でございます。一方法務府におきましてはこの赦免、減刑、仮出所等の事務は法務府の外局でございまする中央更生保護委員会においてこれを調査いたし、そうしてその委員会においてそれぞれの勧告をなすことを相当とするという決定をいたしますと、それを法務総裁を経由いたしまして、外務省に勧告の措置をとつていただくように法律が相なつておりまするので、講和発効翌日から巣鴨の在所者について調査を進めて参つたのでございます。占領当時総司令部の方に仮出所の申請を出して未済になつてつた人々が二百数十名ございました。これをまず第一に調査をいたし、それぞれ適切な勧告をいたしたい、かように考えまして、條約発効の翌日から調査をいたして、その仮出所に関しましては一応大部分の調査を完了いたしております。そうして今月に入りまして、関係国からさような勧告の手続についての回答がまだ参つておりませんが、漫然と待つておるわけにも参りませんので、調査のできたうち適当と思われるものについて勧告を実施いたして参つてございます。その数は今日まで外務省に書類を送つております。そうして勧告になつておりまするものが四十二件ございまして、近日中に数十件さらに勧告をいたすことにいたしております。さらに今後は仮出所、刑期三分の一あるいは無期の人は十五年ということになつておりますので、この仮出所の資格のない人についてもそれぞれ適切な赦免あるいは減刑、こういうような手数を行いたいと存じまして、全面的に調査をすることにいたしまして、今月の十六日それぞれの書式を巣鴨プリズンに送りまして調査を開始いたしております。以上が法務府といたしましての今日までの経過の概要でございます。
  26. 押谷富三

    ○押谷委員 今承りますれば、講和條約十一條に基いて個人的に勧告の手続を了せられたのは四十二件、四十二人という意味だと存じますが、現在巣鴨におる九百何十名、南方各地のものを合せれば千二百数十名にも達しているのでありますが、さような大勢の戦犯者の赦免、減刑、仮釈放等の勧告が二箇月に四十二件ということになれば、これは相当国民の期待から見て大きな失望だと考えます。今この四十二件の内容、また続いてなされる事件の内容を承れば、すでに法制化されております過去における仮釈の條件、あるいは善行特典の條件を法制化して、これに基いてやろうという御計画のごとく拝承するのでありますが、こうなればこれは仮出所の一本でありま号。従来やつて来たことを、講和後もやろうということにあたると思うのでありますが、講和條約十一條による赦免というのは、私はもつと大きな意味を持つているのじやないかと考えます。少くとも日本国民全体は、また巣鴨にいる戦犯者は、これにもつと大きな期待を持ち、大きな考えを、大きな意味を持つているものと考えていると思うのであります。講和條約がもう和解と信頼を基調とするものであれば、この講和條約が成立をし、平和になつた今日、戦争に関連をするすべてのものを平和の姿に切りかえる、この大精神を私は生かさなければならぬのがこの赦免だと考えているのであります。従来やつて来た仮釈放をそのままやろうとするのであれば、別にここにあらためて赦免という言葉を使い、減刑、仮出所というような項目をあげて来る必要がなくなるのであります。多くの期待をかけておりまするのは、この和解と信頼の講和條約で、戦争に関連を持つているすべてのものを平和な形に切りかえさすのだから、大幅に赦免をしてやるのである、講和の喜びをこれらにわかつのであるというごの趣旨を生かす、私はそういう趣旨の赦免がなければならぬと思う。これは日本政府が勇敢に全部の戦犯者、A級はまた別に考えられるでありましようが、少くともBやCの者は全体的にこれを赦免してもらいたいという勧告を関係国に出して、そうして関係国の出方を見てさしつかえないのじやないか、そんなことには決して逡巡し、遠慮する必要は私はないと考えております。大いにやる、べきだ、こういうような私は方針を持つて臨まれるべきだと思うのでありますが、この講和條約の十一條に基いて赦免をし、あるいは減刑あるいは仮釈の今後の方針として、政府はどういう方針で臨まれるかという大方針を承りたいと思います。
  27. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 二月間かかりまして四十二件、まことに申訳ありませんが、これは当初に調査をいたしまするために日時を要したのと、関係国の公式の了解をとる、こういうことでございましたが、調査も一応進行いたしておりまするので、今後はかような数字でなく御期待に沿うようにやつて行きたいと存じております。  なお赦免、減刑等についてどう考えているか、これはもちろん一般的な赦免、減刑もあるものと考えて、それぞれそれらについての調査あるいは時期等について外務省と緊密な連絡をとつて、最も有効適切に、しかも迅速な機会にこれを実施いたしたい、かように存じております。
  28. 押谷富三

    ○押谷委員 適当な機会にというお話でありますが、その適当な機会は講和條約発効の直後である今日であると私は確信をいたしますから、もう躊躇せられずに、大幅な個人々々の調査をしたり、犯罪内容を研究したりせられずに、全般のものを赦免したいという勧告をそれぞれの関係国になさるべきである。そうして、もしそれが拒否されれば、それはもちろん悲しむべきことでありますが、しかしもともとなのです。日本の今日置かれた国際的の地位から見て、私はそういうことはやつてもいいものだと確信をしておりますからぜひそう願いたいと思います。  今四十二件について、少いが、これは調査をしたという話でありますが、その調査はいかなることを御調査に相なつたか。調査内容を承りたいと思います。
  29. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 その前に、平和條約第十一條に基く赦免というのは、関係国の国家的行事、慶弔に際して、日本にある戦犯者に対する恩赦的赦免というのが予定されるように思うのでありますが、たとえばフランスの革命記念日とか、そういうものを対象にして政府はこの赦免の規定を生かすように一段努力を賜わつてしかるべきだと思うのでありますが、この点に対する政府の御所見をこの機会にただしておきたいと思います。
  30. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 ただいま仰せの通りに、七月十四日はフランスの革命記念日に当りますので、フランス関係、たしか三十九名在所している人があると思いますが、これについて赦免——赦免できなければ減刑を勧告するという方針で現在手続を進めております。
  31. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 先ほど押谷富三君の御質疑に対してなお御答弁を願いたいと思います。
  32. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 調査につきましては、本人からの仮出所についての申請書が出、それにつきまして予備調査、それから委員の個々面接、この二段階、その中間において本人の家族の状況がどうであろうか、あるいは施設内での成績がどうであろうか、あるいは作業についてどういう成績を示しておるかというようなこと、ことに家族の事情等につきまして、必要な場合には地元の保護観察所に照会を発しまして、そうしてさような書類をとりまして、それに基いて委員会で決定をいたし、その決定書に基いて案件の書類を外務省と経由して関係国に提出する、こういうことであります。
  33. 押谷富三

    ○押谷委員 犯罪の内容を御調査になりますか。
  34. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 犯罪の内容につきましては、十分な書類がございませんし、またそれをあまり問題にいたしたくない、こう思つております。犯罪といいましても、いろいろ事情がそこに伏在いたしておりまして、これをあまり形式的に扱うということは、かえつて避けなければならぬような事犯も相当ございますので、一応どういうかどで現在巣鴨刑務所に在所しておるかということは、一応あげますが、それについてことさらに調査をするというようなことはいたしておりません。但し委員が面接する際には、本人から十分それに関連して事情を聴取はいたしております。しかしそれを関係の書類には添付いたしておりません。
  35. 押谷富三

    ○押谷委員 今承りますと、この四十二名は結局本人から申請をいたしたもの、その申請に基いて調査を始めたというお話でありまして、これは日本内地における受刑者の仮釈と何ら異なるところのないものであつて、これでは平和條約十一條の赦免に該当いたさないということも重ねて申し上げたいと思います。  なお、この調査につきまして、新聞の報道でありますから、あやまちがあるかもわかりませんが、政府では赦免、仮出所をすべきものについて、一々犯罪内容を調査をされたということが載つております。各個人の犯罪内容について調査をし、それぞれの事情に基いて関係国に勧告をするのだというようなことが新聞に書かれたために、そういう内容を調べるということになれば、今局長からお話になつたように、いかなる資料であるのであろうか、まつたく資料がないことは関係者も承知をしております。その資料のない犯罪内容に調査政府がやる、そんなことではわれわれはさつぱりこれ期待を持つことができないというので非常に失望をし、そうして今の状況では、その失望はある意味における憤懣にかわつておるというのが実際の状況であります。この調査にあたつてあまり長く時間をとり過ぎると、せつかく平和條約十一條が設けられ、この行使のいかんによつて助かるべきものが、調査に手間をとるために、大精神が死んでしまうようなことになつてはたいへんでありますから、政府はこの点についても、特に深甚の御配慮をいただきたいと思うのであります。ぜひこの調査につきましても犯罪内容の調査等はせられないで、なるべく早く大勢の者に対して勧告をせられるようにお願いをしたいと思います。幸い條約局長もお見えになつておりますから、すでになされた四十二件の勧告についてそれぞれの関係国の了承はいかなる状況になつておるか。またこれからなされるのでありましようが、平和條約十一條に基く赦免についての関係国の見通しについて、もしおわかりであるならばお聞かせを願いたいと思います。
  36. 下田武三

    下田政府委員 最初に、法務府の方から外務省に回付せられました四十二件の取扱いにつきましてお答えをいたしたいと思います。私ども、実は法務府のお仕事はまことに並たいていならぬお仕事だと、その御苦心を拜察しておるのでありますが、先ほどお話のように、戦犯に関しては、軍事裁判でありますから、書類その他実に不完全きわまるものであります。従つて法務府におかれます調査の困難さは私どもよくわかつております。従いまして、その困難な調査を終えられまして外務省に参りまして、外務省の手元で遅れるようなことがありましては、気の毒な戦犯御本人に対しましても、また法務府の御努力に対しましても、まことに申訳ないと存じまして、あらかじめ法務府と密接な打合せをいたしまして、最初はなれませんために、関係国に出すまでに二、三日を要したこともありますが、今日では法務府から参りましたら遅くもその翌日にはすべて関係国にまわすというふうに迅速にとりはからつております。ただ、まことに遺憾でありますことは、関係国側からの返答が、今日まで一件も得られないということであります。これは外務省といたしましても関係大使館、公使館に頻繁に督促しておりますが、関係国の出先だけでやはり処理し得る事項でないのでございまして、それぞれ本国政府に回付する。本国政府の何分の指示を待つてわが方に回答して来る段取りになつておる次第であります。そのために、本日までに実効を上げたケースがまだ現われないということは、私どもまことに遺憾に存じますとともに、今後とも一層努力いたしまして、早く実効を上げるようにいたしたいと念願しております。  次に赦免のことでありますが、ただいま委員長のサゼスチヨンなさいました、国祭日を利用して赦免をする、まことによい御着眼でございまして、私どもそういう種類の機会を得まして折衝するということは、非常に効果があるのではないかと思います。ただ私どもの方といたしましては、いかなるものが赦免申請に値いするかということは、一に法務府の御意向に従つておるわけでありまして、ただいまのところは、先ほど法務府の政府委員からお述べになりましたように、赦免の申請ということはまだ出ておりません。近くフランスの国祭日を目当てにお出しになるということで、まことにけつこうなことだと存じますので、私どものところに参りましたら、さつそくしかるべく手続をいたしましたいと思つております。
  37. 押谷富三

    ○押谷委員 この際條約局長もお見えになつておりますから、お伺いいたしておきたいと思うのでありますが、戦争犯罪者で外地で服役中のものでありますが、マヌスに二百六名、モンテンルパに百十一名などがいるようであります。これにつきまして内地へ帰してもらいたいというような要望は、国民感情としてすでに現われているわけでありますが、政府において、それに対してはどういう処置をとつておられるか。またそういう処置をとる場合において、関係国はこれに応ずるであろうかどうか。外務省としての見通し等も伺いたいと思います。
  38. 下田武三

    下田政府委員 本件につきましては、外務省の三宅政府委員が直接関係しておられますので、三宅政府委員から御説明いたします。
  39. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 ただいまお話のように、外地に服役いたしておりますのは、濠州とフィリピンでございます。この両国政府当局に対しましては、従来からも公式、非公式、その他民間の方々の、日濠協会の協会長とか、そういつた方々の協力も得まして、相ともに強く政府並びに国民の切なる希望を申し伝えてございます。ところが、フィリピンからはまだ何らの回答がございません。濠州からは非公式に回答がございまして、それによりますれば、濠州の対日感情はこちらで想像している以上にまだ悪いものがある。そこで日本の大使が濠州に赴任しまして、日濠関係がその努力によつてもつとよくなつた後において考慮する。現在日本にいる濠州の大使館ではさばき切れない問題であるから、それまでもうしばらく待つてもらいたい、こういう返事がございました。私ども外務省におりますものは、日本におりますフイリピンあるいは濠州の大使館の外交官とも個人的にも話をしておりまして、あらゆる機会に、現在われわれ両国の間の問題で重要なものは、この戦犯の内地帰還の問題であるということにつきましては強く申しておりまして、先方としても日本国民の希望ないし政府の立場は了解しているのでありますが、先方の国内事情、ことに対日輿論においてなお釈然たらざるものがありまして、早急には望み得ないと思いますが、いずれはわれわれの要望がかなえられる日が来ることは私どもも期待している次第であります。
  40. 押谷富三

    ○押谷委員 いろいろ御努力を感謝いたします。  なおこの際お伺いしておきたいと思いますのは、フィリピンに現在政客されております死刑囚でありますが、これの死刑の執行はされないであろうという政府のお話が、いろいろな機会に国会で現われているのでありますが、これにつきまして、フィリピンの方では必ずしもそれを認めているようではございません。この機会に重ねて、フィリピンにいる死刑囚については執行をされないというお見通しはかわらないか、またそういう見通しであれば、それはいかなる根拠に基くのであるかを伺いたいと思います。
  41. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ちよつ速記を止めて……。     〔速記中止〕
  42. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記を始めて。
  43. 押谷富三

    ○押谷委員 二の点は非常に国際的にデリケートな関係にありますから、これ以上お尋ねをしないことにいたします。  最後に一点お尋ねをいたしたいと思いますることは、ただいまお尋ねをいたしましたような赦免であるとか減刑あるいは仮釈あるいは外地におる受刑者の内地送還とかその他ただいまお尋ねをいたしたような諸般の関係について、それぞれの関係国に勧告をせられる、あるいは調査を遂げられるというようなむずかしい事務を迅速にかつ適切にやつて行かれるために、何らかの機関を持たなければならぬというので、戦犯処理連絡委員会、これは仮の名前だそうですが、そういうようなものを法務府と外務省との間に持たれるというようなことを承つているのでありますが、もしそういうものをお考えであるならば、この戦犯処理連絡委員会の構想あるいはそれの予算措置などについて一応承りたいと思います。
  44. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 この点につきまして外務省といろいろ御連絡いたしまして現在外務省の大江官房長、欧米局長、アジア局長それから私ども法務府といたしましては矯正保護局長中央更生保護委員会の事務局長、これで一つの連絡機関を設けて、そうしてそれでいろいろ連絡、情報の交換やらいろいろなことをいたしまして、またそれに不十分な場合にこれの拡大を考えたい、そういうことで早急に進めるようにいたしたいと考えております。また予算ということにつきましてはそれぞれの予算でまかなつておりまして、格別に新しい役所というものをつくるというのではなくて、お互いに事務が緊密に連絡がとられ、そうして強力に実行されるということをねらつて、さような連絡機関を設けることにいたしたいと思つております。
  45. 押谷富三

    ○押谷委員 もうお尋ねすることはないのでありますが、私の尋ねている間に、お答えの中には早急にとか適切なるときにとかいう言葉がずいぶん出ておりますが、早急というのはすでに二箇月も経過した今日、承るところは国民も受刑者もこれに失望いたすのでありまして、こういうような連絡委員会等をお設けになるのもきわめてけつこうですからなるたけ早くやつてもらう、それの所要の費用等は国会においても協賛することは決して躊躇いたしませんから、最も早いときに、これ以上躊躇逡巡せられるならば、これは非常な大きな不満となつて、どういうような形で現われて来るか考えがつかないくらいな問題になると思うのであります。ぜひ成功はさしたいと思いますが、その成功の結果をねらうよりはとにかく勧告はやつてもらう、とにかく手を打つてもらう、これによつて大勢のものが非常に満足をし、それで慰められる面が非常に多いのですから、今収容されておる受刑者自身の立場なり家族の立場なりもお考え賜わりまして、最も早いところで大幅どんどん出してもらう、勧告をしてもらう。あるいは結果が保証できないかもしれませんが、大事をとられるのもいいがまず手を打つてもらう、これが私は必要なことじやないかと考えますので、これは戦犯者なりその家族、あるいは国民感情等を私が考えまして、これらの人にかわつてここにお願いする次第でありますから、どうか最も早いところで大幅な処置をしていただきたいことを切にお願いをいたしまして私の質問を打切ります。
  46. 山口好一

    山口(好)委員 ただいま押谷委員よりいろいろと御質問がありましたが、重複を避けまして簡単に質問をいたしたいと思います。まことに戦犯につきましてはこれか通常の犯罪にあらざることはもちろんでありまして、その戦犯という性質から申しまして平和が回復し講和條約の成立を見た以上は、むしろこれは戦犯というものは解消せらるべきものであると考えておる次第であります。これにつきましては巣鴨刑務所その他になおこの刑の執行を受けておりまする人々も、一日千秋の思いで出所を待つている次第であります。この気持を了として各関係当局におかれましては、いろいろと手を打つてこの要望にこたえようとしている点を認めることができるのでありますから、今日までこの中央更生保護委員会におきまして調査を了し、外務省に回付しました件が四十二件、近目数十件をまたまわす、こういうことに相なり、またさらに六月十六日には必要な書式を巣鴨拘置所にも送つているということをお聞きしておるのでありますが、これは中におりまする人々はもとよりのこと、またそれに接しましてまたその人々から絶えずいろいろと手紙を受け、この陳情を受けておりまするわれわれとしましては、まことに歯がゆい思いがいたすのであります。これをどんどんとひとつ促進していただきたいと思います。この全般にわたりまする調査を十六日までに書式を全部送つたというお話でありますが、これはまだ完了いたしておりませんでしようか、その点伺いたい。
  47. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 先ほど申し上げましたように仮出所の資格を有している人々については一応の調査は完了いたしましたので、今度は仮出所にはならない刑期の長い人々について全面的調査をいたし、これは所要の適切な赦免なり減刑なりの勧告をいたしたい、かような意味で今月十六日に調査項目を定め、印刷物を巣鴨プリズンに持つて行きまして、在所者にそれに記入していただいておりますが、これが当方へもどつておりませんが、これがもどつて参りますと、これについての調査をどんどん進めて、また一方今日までの調査の結果に基いて勧告の手続も同時にあわせてして行きたい、かように存じております。先般の国会の御決議もございまするし、在所者の気持、また家族、関係者国民全部のお気持も考えまして十分努力を拂つて、不幸なこの事態を一日も、一刻も早く解決いたしたいと、私どもはまことに及ばずではございまするが、懸命の努力を拂つて今後それを続けて行くつもりであります。
  48. 山口好一

    山口(好)委員 今まで外務省から関係国にまわしておりますものは四十二件、その他にもあることと思いますが、なお回答が一つも来ていない、こういうのでありますが、その原因につきまして御研究になられましたかどうですか、おわかりでありましたならば回答願いたいと思います。それから回答がないについてこういう処置を講じておるというようなこともあわせてお答えを願いたいと思います。これは外務省当局の方にお願いをします。
  49. 下田武三

    下田政府委員 関係国からの回答が遅れております原因について心当りがあるかという御質問でございましたが、第一の原因は戰犯のおります国の大使館でありますとか公使館のような出先のものでは心理し得ないで、一々本国政府に問い合せなければならないことが大きな原因だと思います。もう一つは、これは推察でございますが、本国政府におきましても、法務府が御苦心なさつておられると同じ事情にあるのではないか。先方の裁判記録その他の文書、これがおそらくふぞろいであつて調査に手間取つておるのではないかということが一つの原因として推察なれるのであります。目下のところは督促を重ねておるわけでございますが、これは私の個人的の見解でまだ外務大臣の御意向はわかりませんけれども、もし荏苒日を経過するような場合には、もしもと不完全な書類を差出して態度をきめるという方法じやなしに、何らかの政治的考慮を促すという手があるのではないか。しかしながら、遺憾ながら戦犯を処理しました相手国は、最も対日感情の悪い国が当事国でありまして、この点につきまして政治的考慮を促すといたしましても、相当の困難を予想されるのではないか、そうひそかに考えておる次第でございます。
  50. 山口好一

    山口(好)委員 なお先ほど委員長からも御質問がありましたが、この七月十四日でありますか、フランスの革命記念日、こういう国祭的な親日を契機としまして、さらに一層この実現に努めたいというお話でありました。これまたたいへんけつこうなことだと思いますが、まずある一国につきましてわれわれの庶機しておりまする事態をひとつ実現させてもらう。さらにそれにならいまして、他の諸国に漸次これをこいねがうというのが最も効果的であると思いますので、このフランス革命記念日を目ざしまするわれわれの願望はぜひ達成させてもらわなければならない、かく考えます。この点につきまして萬遺漏のないような処置がとられることと存じまするが、なお中央厚生保護委員会及び外務省におきまして、萬遺漏のない処置をとるべくどういうことをお考えになられておりますか、具体的に伺いたいと思います。
  51. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 フランス関係の在所者が三十九名あつたと存じますが、それらの人々について現在勧告に必要な事項につきまして、私どもの事務当局におきましては時期の遅れることのないように、できるだけ調査を進めております。それについては私もきつとやりたい、またやれると考えておるのであります。
  52. 下田武三

    下田政府委員 七月十四日のフランスの国祭日を目ざしての第一回の赦免申請の試みはまことにけつこうで、私ども大いに努力いたしたいと思いますが、実は半月の期限しかございませんので、法務府から書類をいただきましたら、この事務を最大迅速に処理することが何よりの先決だと思います。また書類でございますので、フランスの出先がこれを高い電報料を拂つて本国政府まで取次ぐという労をとつてくれることは、通常の外国の在日機関の仕事のしぶりから見まして、それを期待することは無理かと存じますので、そのような場合には外務省の方から出先に電報で訓令をいたしまして、この短期間に手落ちのないよう万全の措置をとりたいと存じております。
  53. 山口好一

    山口(好)委員 私も日がございませんからこの点については実は非常に心配をいたしております。何とぞ万遺漏のないように、できればこちらから本国へ出かけて行つて手続の遅滞によつて不結果に終つたということのないように要望いたしたいと存じます。  次に今回の平和條約十一條に基きまして、巣鴨刑務所の刑の執行の管理は日本側に移管せられたわけでございますが、聞くところによりますれば、なお若干のアメリカの係の兵隊が巣鴨の刑務所に残留しておるということでありますが、これは事実でありますかどうでありますか。また残つておりましても、さような人々は本の管理に容喙干渉するということは許されないと思うのでありますが、事実においてさような煩いが幾分でもあるか。かようなことは平和條約が成立して、その移管が確立した以上は断じてないことと存じますが、この点も明らかにしていただきたいと思います。
  54. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 私当該の所管でございませんが、聞くところによりますと若干駐留軍と申しますか、軍隊が残つておるようでありますが、これは従来巣鴨拘置所を管理しておつた残務並びに自分たちの転任の準備ということでございまして、私の聞いておるところでは、これについて何らかこちらに対して申入れをするというようなことは全然ないように聞いております。また私自身の関係においてはさようなことは一つもありません。
  55. 山口好一

    山口(好)委員 次に一時出所の点についてお尋ねをいたします。平和條約の十一條に基きまする赦免などに関する今回成立した法律によりまして、日本側が自分の手によつて行い得る一種の恩典は一時出所にとどまるようであります。ゆえにわれわれといたしましては、この一時出所の條件に当てはまる者につきましては、できるだけこれを活用いたしまして、鉄窓のもとに長らく坤吟いたしております人々を幾分でも慰め、また家族をも慰めてやりたいという気分で一ぱいであります。実際の取扱いを聞いてみまするのに、この條件が当てはまりましても、調査に名をかりて日数が延ばされたり、とうとうこれが許可せられなかつたり、その間に近親らもなくなつてしまつたというような哀れなことも聞いておるのであります。これに対しましてはなろべくさようなことのないように、すみやかにこれがとりはからいをしまして、厳重な調査というよりも適切にして迅速なる処置を講ずべきものと考えるのであります。本日は巣鴨の刑務所長が参つておりませんが、少くともこの法律趣旨はさようであると考えますが、実際の取扱いについてなお遺憾の点が多いということを、実情の調査によつてわれわれは聞知するのであります。この点についての御所見を伺いたいと思います。
  56. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 一時出所は、恩典というよりは、むしろ人道上の問題で、在所者の国の親あるいは子供、配偶者が危篤である、あるいは自分の未成年の子供を養育しておる人が危篤である、あるいは天災地変によつて自分が帰らなければ罪のない家族が路頭に迷うという場合に一時出所を許す、こういうことでございまして、それぞれ法律手続及び要件が定めてございます。それで現在中央委員会では日曜でも当直を置きまして自宅で待機して、さような場合には該当する者についてはそれを許可する、こういうことにしておりまして、この制度の適正な運用に努めておるつもりでございます。数あるうちには事務の手落ちで不十分な点があるかも知れませんが、これらについては極力今後改善してこの制度の適正なる運用をはかつて参りたいと考えております。
  57. 山口好一

    山口(好)委員 ただいまの御回答まことにけつこうなことと思うのでありますが、実際の扱いはなかなかさように円滑に参つていないように伺つておりますので、なお実際の局に当ります刑務所長に対しましては、あなたの方から十分にこの点を御指令を願いたいと存ずる次第であります。  さらに最後に先ほどお話のあつた善行特典の制度でありますが、これも法律によりますと一箇月に何日というようにきちつとした規定がありまして、アメリカの管理のもとにおきましては、これがまたきちつきちつと行われていたと聞くのでありますが、日本の管理に移されましてからこれが行われていないということははなはだ遺憾であるとわれわれも考え、また中におる人も非常に遺憾に考えておる次第であります。この点につきましても関係国との交渉を促進せられまして、一日も早く実現のできまするように希望いたしまして私の質問を終ります。
  58. 北川定務

    ○北川委員 私も二、三の点について政府委員にお伺いいたしたいと存じます。ただいま山口委員や押谷委員から申されましたように、戦争犯罪者に対しまする個々の刑の減免だけではなく、包括的に赦免せられる方法を講じていただきたいということを私も心から望んでおるものであります。政府委員の御説明によりますと、現在四十二件について裁判をした相手国に勧告をせられたが、その回答はなかなかなされないということでありました。おそらくこれは書面で勧告がなされていると思うのでありますが、書面で勧告をなしてその回答を待つておるというのでは、赦免をするとか保釈をするとかいうことはなかなか困難なのではないか。むしろ外務省の役人なり民間の使節団なりを出して、その都度相手国に折衝される方が一番簡単に迅速に赦免ができるのではないかと思つておるのであります。この点に対しまして政府の御意見を伺いたいと存じます。
  59. 下田武三

    下田政府委員 ただいまは書面だけでなく、面と向い合つて交渉するようにというお話でありましたが、外務省といたしましては、書類を渡すのは一回限りでございますけれども、面と向つての交渉は数多くやつております。書面で徹底し得ない点を直接参りまして交渉するということは、決して労をいといませんで、やつておりますから、さよう御承知願いたいと思います。
  60. 北川定務

    ○北川委員 ただいまのお言葉を承りまして、まことにけつこうだと思います。この点につきましては全力をあげて一日も早く釈放せられますようにおとりはからいを願いたいと思います。  次に外地において戦犯によつて死刑に処せられた者の御調査は、おそらく完全にできておると思うのであります。もしお手元ではつきりしておりますならば、これらの人数を伺いたいと思います。とともに外地において死刑に処せられた者の中には、いわゆる冤罪によつて死刑に処せられた者も数多くあると聞いておるのであります。これらの方々に対しましては、犯罪の内容等について、日本政府においても御調査に相なつておると思うのでありまするが、その点につきましても伺いたいと思います。
  61. 下田武三

    下田政府委員 外地におきます死刑に処せられた者の調査は、実は外務省ではいたしておりませんで、復員局でやつておると了承しております。
  62. 北川定務

    ○北川委員 私は死刑に処せられた人々が、もし冤罪で死刑に処せられているような場合には、その事実を、遺族なりあるいはその人の住所地の役場なりに通知してやつて、それらの人の冤罪を晴らしてやる国は義務があるのではないかと思うのであります。  最後に一点だけ伺つておきたい点は、先日私巣鴨の刑務所に参りましたところが、彼らの一番不平に思つておる点は、占領中は容易に仮釈放ができおつた、とこがわれわれが期待しておつた講和の発効によつては、何らの恩典にも浴されないのみならず、むしろ相手国の承認を必要とすることになつて、その手続が非常にむずかしい、そのために仮釈放になる時期に達しておる者で、釈放されない人がたくさんおる、われわれはむしろ講和発効で、非常な不利益をこうむつておるというようなことを申しておつたのであります。そこで先ほどからも政府委員は、非常に努力しておると申しておられましたが、すみやかにこれらの人には、少くとも講和以前のような釈放をせられることはもとよりでありますが、さらに全面的な釈放の手続を願いたいものと思います。もう一つ、彼らが不平を言つておりました点は、戦争犯罪者などというために、その遺族に対してまつたく冷淡である、未引揚者の軍人などの遺族には、相当の国の援護がなされておるが、戦犯者のみは全然顧みられないと言つておるのであります。これらに対する双方の相違の点がおわかりでありましたら、御説明を伺いたいと思います。
  63. 斎藤三郎

    ○斎藤(三)政府委員 占領中に司令部の手によつて、仮出所が相当なされておりまして、それが平和條約発効後二月間、一人も仮出所なつていないということは、私まことに申訳ない、遺憾千万に思つております。ただこれにつきましては、條約十二條によりまして、関係国の決定と日本国の勧告によつてなし得る、條約でそう定められておりますので、私どもこの事務に当る者としましては、この勧告を早く、しかも適切な書類等をつけて、そして関係国の決定を得るように努力して参りたいと思うのでございますが、種々な事情ために、かえつて占領当時の方が有利だつたというようなふうに観測されることは、まことにもつともでございまして、私どもとしても、実に何と申し上げていいかわからぬような感じでございます。今後できるだけの努力を拂つて、事態を好転さして、そして不幸な事態の解消を一日も早く、一刻も早く実施して行きいた、かように存じております。なお未復員者の点につきましては、むろん私どもの方では、さような区別をつける理由は全然ないと存じております。昨日もさような法案がほかの委員会にかかつたときにおきまして、私どもとしましては、戦犯として在所しておる人々についても、同様な取扱いをすることをむしろ私どもは希望するという立場から、希望を申し上げておいた次第であります。
  64. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 平和條約第十一條に基く勧告の促進のために、法務府及び外務省の連絡合同委員会といつたようなものが近くできるということは、たいへんけつこうでありますが、同時に、同條約に基く関係国の決定を促進するために、出先機関に委任してもらうとか、あるいは関係国が多数の場合には、合同委員会を早急に設置してもらうとかいうことも、一つの案であろうと思いますが、しかしこれは相手国の内政に干渉することはできないし、もつぱら外務当局の外交折衝によつて要望するよりほかないと思うのであります。この点について、外務当局の御意見なりあるいはお考えなりありましたら、この際伺つておきたいと思います。
  65. 下田武三

    下田政府委員 ただいま委員長のお話になりましたお考え、まことに御同感でございまして、実は私どもも、委員長のお考えとまつたく同じ考えを持つておりまして、相手国の内政干渉にわたらない範囲で、わが方の希望は十分徹底させて、今後ともこの不愉快な戦争の一つの名ごりを、一刻も早く、全面的に解消する日を迎えるということを衷心希望いたしておりまして、そのために全力をあげて今後善処して参りたいと存じております。
  66. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 それではこの上とも、その点に対する関係当局者の善処を望みまして、本件に対する調査は、この程度をもつて終了いたします。     —————————————
  67. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に請願の審査を行います。本日の請願日程中、第一及び第二は、いずれも戦争犯罪者減刑等に関する請願であり、第三は人権擁護局存置等に関する請願でありまして、これらはいずれも、去る二十五日に審査いたしました請願と同一趣旨でありますので、政府よりの意見聽取は省略いたします。  日程第四、旭川地方裁判所名寄支部庁舎新築請願及び日程第五、旭川地方検察庁名寄支部庁舎新築請願を一括して、当局より意見を求めます。岡原政府委員
  68. 岡原昌男

    岡原政府委員 旭川地方検察庁名寄支部庁舎の新営に関しましては、本年度新営予算が認められまして、目下新営の計画を進めております。近く実施の運びとなる見込みでございますので、御了承願いたいと存じます。
  69. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所説明員 旭川地方裁判所名寄支部庁舎新営の件でありますが、ただいまのところいろいろ検討を加えておるわけでございますけれども、まだ名寄支部庁舎を新築するかどうかということは、確定はいたしておりませんが、ただいまのところといたしましては、名寄支部庁舎新築の件は、本年度には実現はむずかしいのではないかと考えております。
  70. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御質疑はございませんか。——なければ本日の請願日程についての一応の審査は終了いたしました。  これより本委員会態度を決定いたします。本日の請願日程第一、第二、第四及び第五の各請願は、いずれもこれを採決し、議院において採択の上、これを内閣に送付するを適当と認めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。なお本日審査いたしました請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時十二分散会