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1952-05-29 第13回国会 衆議院 法務委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十九日(木曜日)     午後三時二十二分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君    理事 山口 好一君 理事 田万 廣文君       安部 俊吾君    押谷 富三君       北川 定務君    高木 松吉君       花村 四郎君    古島 義英君       松木  弘君    眞鍋  勝君       大西 正男君    加藤  充君       田中 堯平君  出席政府委員         法務事務官         (矯正保護局         長)      古橋浦四郎君         検     事         (法務法制意         見第四局長)  野木 新一君         中央更生保護委         員会事務局長  齋藤 三郎君         法務事務官         (中央更生保護         委員会事務局         成人部長)   大坪 與一君  委員外出席者         法務事務官         (巣鴨刑務所         所長)     川上  悍君         検     事         (法務総裁官房         秘書課長)   青木 義人君         検     事         (中央更生保護         委員会事務局少         年部長)    池田 浩三君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局長         兼民事局長代         理)      鈴木 忠一君         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      岸  盛一君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一三九号)  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(田嶋好文君外六名提出、衆法第五一号)  平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に  関する件      ————◇—————
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。この際、平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する件について発言の通告がありますので、これを許します。押谷富三君。
  3. 押谷富三

    押谷委員 先月二十八日に講和條約が効力を生じましたのを機会といたしまして、政府は広範囲にわたつて恩赦令を発令して、あるいは大赦、特赦、減刑、復権などの挙に出られまして、この喜びを国民全体にわかつという挙に出られましたことは、私ども時宜に適した処置として賛意を表しているのであります。当時私どもは、国内犯罪者と同じような立場にありながら、さような同じ扱いを受くることのできない巣鴨プリズンにおりますこの戦争犯罪者に対して、できるだけ同時に広範囲に赦免を行いたいと存じまして、今日までたびたび法務当局にそれが善処方お願いをいたして参つたのであります。かつて法務総裁は当委員会においても、これが扱いについては国際的にいろいろ複雑なる関係があるから、そこでアメリカ占領政策の終了の際における最も大きな善時制巣鴨にしくのである——ここで、手続によらずにアメリカ善時制として、巣鴨に収容されている戦犯者に対して寛大な処置があるであろうという説明があつたのでありますが、この関係につきまして、ただいままでどういうような処置になつているか、私どもにも不明な点が多いのでありますから、この点を承るとともに、講和條約第十一條に基きまして、戦争犯罪者赦免は裁判を構成いたしましたそれぞれの関係国に対して、その赦免についての手続をせねばならぬことに相なつているのでありますが、これは最も早い時期に赦免ができるというような手続を遅滞なくとり行わるべきであると存じておりますが、おそらく今日までいろいろな形においてなされていると思いますので、その経緯をあわせて承りたいと思います。
  4. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 ただいま押谷委員の仰せられましたように、私どもにおきましても、国内恩赦があるならば、巣鴨においても同様のことがまず第一に考えられてしかるべき人がたくさんあるだろうと考えて、私ども占領当時において総裁が非常に御盡力なさつたことをいろいろ承つておりました。不幸にして今日までにはその結果は見られておりませんが、私ども総裁のお気持に従いまして、私どものできる範囲においてあらゆる努力払つて参つたのであります。御審議を願い御可決をいただきました平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律でありますが、これを立案いたします際に、実は條約においては、関係国の同意がなければこちらで赦免減刑も仮出所もできませんので、その方式、ことにいろいろな期間計算とか、いろいろな技術的な面もございますので、さような面で、相手国の了解なしにこちらだけで法律をつくつて、その法律従つて勧告しても、向うがそれではだめだというような返事になりますと目的を達しないので、その点十分に総司令部連絡をとつたのでございます。総司令部におきましては、この平和條約第十一條の案は、当然アメリカもこの内容承認するだろうし、また関係国に対しても、日本がこの法律に基いて、いろいろ期間計算やら未決算入の問題やら、そういうことを整えてやつた場合に、関係国もこの勧告を受入れていろいろ審査してくれるように努力をするというお話であつたのでございます。そうして講和発効後すぐ関係国に対しまして、外務省から公文をもつて、さようないきさつでできた法律であるから、この方式日本が勧告したい、それによつて関係国も十分考慮されたい、結局この方式日本が採用することに同意されたいという旨の照会を発してもらつております。まだそれに対する返答はいずれの国からも参つておりませんが、関係国との関係はさようなことにいたしております。また内部的には、條約が発効いたしました二十八日から、私どもの方におきまして、赦免なり減刑なり、あるいは仮出所をいたしますのに、当然つけなければならないいろいろな資料と申しますか、事情調査をいたしております。現在までに係官が当人について調査が済みましたものが二百七件ございます。それから委員が直接本人に面接して、そうしていろいろな事情を聴取された、従つて、ほとんども調査が済んだという関係が百六十五人ございます。実は本日も委員巣鴨に参られて、本人について、いろいろ事情を聴取されております。さような関係で、関係国がどういう方式で持つて来い、自分の方では善時制は認めないが、国内減刑は同じように適用してやる——あるいはオランダの場合ですと、そういうことがあり得るかと存じますが、そういつたふうに、関係国からこういう方式を第十一條でよろしいというところも多数あると存じます。さようなことになりますれば、関係書類をつけて勧告いたすということにいたしたいと存じております。なおまたこれについて、いろいろ複雑ないきさつがございますので、少し煩雑になりますが、事情を御理解賜わるために申し上げます。四月の二十八日、平和條発効の日の午前ですか、午後ですか、数時間前に総司令部から巣鴨プリズン司令官に対しまして——従来司令部はへーゲン氏を委員長とするパロール・ボードを設けまして仮出所のことをして参つたのでありますが、その際に、戦犯者として抑留された期間未決として通算する。それから反則なしに済んだ場合にはそれぞれ善行特典として刑期を減ずる制度をとつて来たのでございます。従いまして、中の人は当然自分たち既得権のように考えられる——無理もないと存じておつたのでありますが、全部今までのことを無効として司令部日本側に引渡す、それらの点はいずれも関係した国と日本国とで交渉した結果によつてやれ、そういうような命令が出されまして、さような状態日本が引継いだのでございます。従いまして、関係国折衝しなければ刑期が幾らたつておるかまつた計算ができない、こういう関係にございますので、これもあわせまして、先ほど申し上げましたように、日本側としては、当時総司令部を通じないでは関係国折衝ができませんでしたので、総司令部十分連絡をとつて、かような善時制も大体認めよう、それから未決刑期に算入しようということで法案をつくつたのだから、それでひとつそれぞれ国に認めてもらいたい、こういうことを折衝しておるのであります。なお国内的には外務省と打合会を開きまして——従来は国際協力局でいたされておつたのでありますが、最近になりまして欧米関係欧米局フランスは第二課とか第三課とかそれぞれの課が受持つておられまして、これでは私どもの方との連絡がスムーズに行かないおそれもあるのではないかということで、特に外務省官房長にこの点を十分申し上げまして、欧米局局長級の人にこの戦争犯罪者責任者となつてそれぞれの課長連絡をしてもらう。なおその下に官房総務課長法務府と連絡係に指定してもらいまして、そして現在外務省と緊密に連絡をとつて、いろいろな事件の処理に万全を期したいとできるだけの努力払つております。  なおまた新たに日本から赴任されます大使、公使の方に一々委員がお目にかかつて事情をよく訴えで、十分この点を念頭に置いて、任地におもむかれた際にこれについて御努力を願いたい旨懇請しております。今日も新木大神に私ども委員長がお目にかかつてよくお話をされているはずであります。さような関係で、現在適格者は三百名ほどございまして、その半数以上ほとんど調査が済んでおる。赦免につきましても全般的に調査をいたしました。赦免相当のものは赦免を勧告する、本人の意思にまたずして赦免相当と考えられるものについては赦免なり、減刑なりをやつて行きたい、こういうふうに考えましてそれぞれ調査を進めておるような事情でございます。なおまた法案の御審議の際にいろいろ御意見を承りました一時出所、これは日本側だけで法律に基きましてできますので、これの正しい運用にも努力をいたしております。かつて占領当時は二月に一人くらいしか許可になつておりませんでしたが、四月二十八日から五月二十八日までに十五人の方が一時出所でそれぞれ家に帰り、あるいはなくなつた人の冥福を祈るというようなこといたしております。私ども微力で御期待に十分沿い得ないと思いますが、できるだけの努力払つて万全を期したいと考えております。
  5. 押谷富三

    押谷委員 ただいまいろいろ詳しい事情を承つたのでありますが、今巣鴨刑務所の内外を問わず、国民感情といたしましては、あそこにいる戦犯者に早く赦免を受けさしたいという気持で一ぱいであつて、それがために講和條約第十一條内容に非常に期待をかけておるという実情でありますが、基本法律はまだ各関係国折衝中で、これからつくつてぼつぼつと一人々々の赦免についてそれぞれの関係国折衝する順序になるというように承つたのであります。そうなれば、今後相当長い期間を経過しなければ目的を達することができないように思うのでありますが、政府としてこの基本法律をつくるのは大体いつごろになるお見込みか。そうしてその法律ができたならば、その法律に基いておそらく個人個人について関係国折衝を遂げられると思うのでありますが、さような手続をして、結局講和條約によつて赦免を受けられる手続が完了するのは一体いつごろになるかという見通しを承りたいと思います。
  6. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 国内的の手続として、在所者について仮出所赦免減刑等勧告する基本法といたしましては、本国会で成立を見ましたこれを関係国に認めてもらいまして、それによつてつて行きたい、かように存じております。ただ期間計算であるとかそういう点について、この法律の附則によりまして、関係国が特別の意向を加えるときにはその意向によるのだ、こういう規定がございます。その点も今確めている。従つて、新たに立法手続をしてそれに基いてやるというようなことはおそらくないだろう、かように存じております。この問題が解決する時はいつごろという見通しかという仰せでございます。これにつきましては、私どもできるだけの努力払つて、一日も早く問題を解決いたしたいと思つておりますが、関係国の決定の関係もございますので、いつということは私として申し上げかねます。
  7. 押谷富三

    押谷委員 私はつい先日、巣鴨刑務所に参りまして、大阪の関係者多数に会つて来たのでありますが、その際収容者言葉といたしまして、今局長から御説明がありました善時制度といいますか、あれによつてもうすでに今月の二十日に出られることに日にちの計算が満了しているという人が、講和條約ができたからわれわれは出られなくなつたのだ、講和條約は巣鴨収容者には非常に不利益をもたらしたものである、こういうようなことを言つて非常に悲観をし不満の意を表しておつたのであります。これは相当重要な事柄でありまして、アメリカ占領中に行われておりました善時制度が今日においてはなくなつたために手続上やむを得ないのでありましようけれども、その間の関係——ちよつと触れられたようでありますが、もう一度御説明を願いたいと思います。
  8. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 ただいま御質問のあつた点ですが、善行特典制度計算いたしまして、今月二十日が釈放日に当つておる者が一名ございます。それが今日なお巣鴨にとどまつておることはその通りでございまして、私どもまことに残念に思つておるのでございます。この問題を解決いたしまするために、私どもアメリカ大使館に数次お伺いいたしまして、そうして、これを全体の法律善行特典制度そのものの認定と一応切離して、個別的に二十日の日に出していただくようにいろいろ御相談申し上げたのでありますが、何しろ制度がかわりましたために、大使館におきましては国務省に無断でそのとりはからいをすることができないので、これは特別のケースとして、個人的にこの問題だけを取上げて、さつそく電報をもつて国務省に問い合せて早くこれを解決するというお約束があつたのであります。その後外務省を通じてお願いをしておつたのでありますが、なお解決いたしませんので、至急に解決いたしたいと思つております。この善行特典制度未決拘禁日数通算の二点につきましては、この法案に定められましたように、関係国承認のあつた場合にその法律が動くという建前になつておるのであります。私どもは準備当時におきましては、司令部でこの案について御承認のあつたものでありまするから、おそらく米国については異議がないと考えましたし、またその点もずいぶん御質問も申し上げて来たのでありまするが、講和條約の発効と同時に先方の担任者がかわられましたために思わざる手違いが生じたわけでございまして、まことにこの点は遺憾であり、私どもも御本人に対して申訳ないと思つておる次第であります。これも至急に解決いたしたいと思つております。なお、こういうふうな問題は各関係国について起るのでございまするが、私どもは一面その法律につきましての全面的な承認を求むる建前をとるとともに、個々ケースにつきましてはそれぞれの手続をいたしております。この数日前でございましたが、フランス関係につきましてやはり同じ問題がございましたが、これはフランス大使館の御好意によりまして——これは善行特典ではありません。フランスの方では善行特典を全面的に認めない建前になつておるのでありまして、未決拘禁拘禁日数通算の問題でございましたが、その通算につきましては快く御承諾くださいましたので、これは問題なく解決をいたしておるのでございます。かように、実際におきまする未決日数通算善行特典のことにつきましては、個々ケースにつきましては特別なとりはからいをしていただこうと思つておるのでありまして、そのほか仮釈放等期待のあるものにつきましても、一応この法律承認せられたものとして、その手続の上で当方の手続は進めて行きたい、かようなつもりでやつてお錢のであります。
  9. 押谷富三

    押谷委員 関係諸国制度在り事情がいろいろ違つてありますから、折衝にもたいへん御苦労でありますが、とにかくなるべく早く出してやりたい、早く出たいというのが念願でありますから、この上とも御努力願つて、その手続はできるだけ早くお願いをいたしたいと思います。先ほど齋藤局長のお言葉の中にちよつとありましたが、一時出所といいますか、臨時的に出してもらえるという制度について、講和発効後一箇月の間に約十五名の者が一時出所をいたしておることは今承りましてまことにけつこうであると存じておるのでありますが、その一時出所制度の具体的な内容、また、どういう手続によつていかなる願出をしたときにはそれを許してもらえるかというような、その内容を、わかつておりましたならばお聞かせ願えたらたいへんけつこうだと思います。
  10. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 今までに一時出所委員会から許されて出所された事件は、大体父母あるいは配偶者がなくなられたというような理由でございます。なくなられた場合が多いのでございますが、危篤という場合に許された場合もございます。なお、その手続でありますが、危篤の場合には医者診断書、なくなつた場合には検案書あるいは死亡証書、こういうものを出すことに法律上はなつておりますが、一時出所が緊急の場合に出すという制度でございますから、この活用についても正しい適正な活用をいたしたいと存じまして、医者責任を持つて電報危篤であると言つて来たような場合には医者診断書は若干遅れても後日補完される、こういうふうに考えて、さような緊急の場合にできるだけこの制度のほんとうの精神が生かされるようにいたしております。
  11. 押谷富三

    押谷委員 配偶者とか両親が危篤である。病が重いというようなことで仮出所をしたいという申入れがあつた際には、その原因の有無、出所を許していいか悪いかをどこが決定せられるのでありますか。
  12. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 法律にありまするように、中央更生保護委員会調査をいたしましてそれを決定する、こういうふうに相なつております。
  13. 押谷富三

    押谷委員 かような制度もでき得る限り御活用を願いまして、彼らにそういう恩典を十分に生かしてやつていただくようにお願いをいたしたいと思います。幸い巣鴨刑務所から所長おいでになつているようでありますが、現在収容されている人たち処遇でありますが、アメリカ占領中における戦犯者処遇と、占領が解除されて日本政府の所管になりましてから後における処遇との間には、いろいろの制度関係からそれぞれ相違はあると存じますけれども、どの程度までにかわつて来ておるかということをまず承りたいと思います。
  14. 川上悍

    川上説明員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。巣鴨プリズンにおります人たち処遇は、アメリカが管理しておつたときに比べますと大分違つております。私はこの人たちは非常にお気の毒な人たちであるということを考えまして、でき得る限りの処遇緩和をはかつておるわけでありますが、第一に考えたことは、面会おいでなつたとき、私が行つた当時はあそこへ三枚の金網張つてつて家族の方が見えても顔もよく見えないというような状態で、はるばる鹿兒島から見えだとか北海道から見えたとかいう方々にあまりにお気の毒に思いまして、條約発効の翌々日の三十日に全部金網をとつてしまつて、できるだけ気持よい面会をしていただくようにしております。なお時間の点などにつきましても、そうした遠方の方々の見えたときには特別面会、特別時間延長を認めております。なお面会につきましては、アメリカ管理当時にはなかつた集団面会ということも考えまして、あるいは各県の知事さんが見えるとか、各県出身の衆議院や参議院の議員さんが見えたというようなときには、家族の援護の面とか、そうした実情を知つていただくために、なるべくその県出身人たちみんなに会つていただく、こんなようなことで面会緩和と申しますか、できる便宜をはかつて行きたいと考えております。  それから書信手紙の出し合いでありますが、アメリカ管理当時は全面的に検閲制度がありまして、中の人から出す手紙外部から来た手紙も、全部検閲されておつたのでありますが、これは日本の憲法その他の法律関係からとるべきでないということで、検閲制度を廃止しております。ただ希望として中の人に申しておるのでありますが、全般的に在所者不利益になるようなことは書いてもらいたくない、なお謄写版ずり外部に出すものがありますが、そういうものは一応私に見せてもらいたい、こういう一部の條件をつけまして、あと書信の方は全然検閲はやつておりません。  次に病院でありますが、現在巣鴨プリズンにおる病人は五十数名であります。それから病気があそこの病院では治療できないというので、外部病院お願いして治療していただいておる人が現在十三名あります。この病院の問題は、巣鴨プリズンにおいて治療ができない、こういう人たちに対しては、ただいまは東大病院慶大病院慈恵医大病院それから国立中野診療所松沢病院、こういうところへできるだけお願いして治療していただいておるわけであります。なおこれはアメリカ管理当時に、私が先月の十五日からやつたことでありますが、病院におる人たちに対して看護婦を使うことをやつたのであります。当時アメリカが管理しておりましたので、これは重大問題ということでありましたが、重大問題と言いますから悪いのかと聞いたら悪いとは言わない、しかしいいとも言わない、問題であると言われましたが、これは患者の方々が非常に喜んでおりますし、また治療いたします上において看護婦を使うことは非常にいいことであると思つて、現在やつておるような次第であります。  それからもう一つ大きな問題といたしましては、食糧の問題であります。食糧の問題は、アメリカ管理当時は額面は百六十円とか聞いております。しかしながら、これを請負とかそういうことでやつておりますので、実質はそれほど行つていないと聞いております。日本管理になりまして、大体一日百二十円でやることになつておりますが、実際は金高はともかくとして内容をよくしようというので、職員を魚河岸まで買出しにやつているような状態であります。ああいうところにおりますと食糧が一番問題でありますから、内容をできるだけよくするように最善の努力をいたしておるようなわけであります。大きな処遇の違いなどはそういつた点であります。
  15. 押谷富三

    押谷委員 外の病院を利用しておるというお話がありましたが、それは通院で治療を受けておるのですか、あるいは外の病院へ入院させていらつしやるのですか。
  16. 川上悍

    川上説明員 先ほど申しました十三名というのは入院しておるのでありまして、東大病院九名、慶応病院一名慈恵医六一名、国立中野診療所一名、松沢病院一名、こういうふうに入院しております。そのほかに私の方にも医者はおりますけれども病気により外部大学病院あたりに行つて治療してもらうわなければならないというのが、これは大体東大病院ですが、毎日五名くらいずつおります。
  17. 押谷富三

    押谷委員 収容者の中には平沼さんであるとか南元大将であるとかいつたたいへん老齢者がいらつしやるわけですが、こういう老齢者に対しては、特に老齢者なるがゆえにということで何かの特典でも行われておるのであるかどうか、その点を伺います。
  18. 川上悍

    川上説明員 老齢者につきましては、大体六十歳以上は作業免除ということで仕事についておらないのであります。そのうち特に老齢者の万、これは平沼さんと南さんでありまして、平沼さんは八十六歳、南さんは七十九歳ですが、このお二人は病院の方におつて治療とはいわないのですが、病院の方でごめんどうを見ておるようなわけであります。なお平沼さんは近ごろ弱られた様子もありますので、どこか外部病院で手当をしていただけばと思つて、近いうちにその手続をしたいと思つております。
  19. 大西正男

    ○大西(正)委員 簡単にお伺いいたします。それは今の戦犯の方の問題に関連をしまして、中国関係の戦犯に対する処置についてでございます。その一つは、きのうかおとついの衆議院の外務委員会におきまして、某議員の質疑に対して何かすでに中国関係の戦犯は釈放されたかのような外務当局の御答弁があつたそうであります。私どもまだ釈放になつてないのではないかと思うのですが、なつてないとすれば現在何名くらい中国関係の戦犯が収容されておるか、と申しますのは、今申しました外務委員会の質疑に対する答弁では、八十何名という御答弁であつたそうですが、われわれが本委員会で戰犯に関する法案審議いたしました当時には、たしか九十何名と承つたのでありまして、その後に数字の相違ができたのであるかどうか、できていないとすれば外務委員会における答弁が間違つておるのかどうか、まずこれから伺いたいと思います。
  20. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 中国関係の戰犯受刑者は、全部で九十一名でございまして、ただいま巣鴨に在籍中でございます。なおこの人たちの問題につきましては、過日調印せられました日華條約によりまして、サンフランシスコ平和條約の十一條を適用しないという協約ができておりますので、日華條約の発効とともに釈放されることになるだろうと考えております。
  21. 大西正男

    ○大西(正)委員 そうすると、外務委員会の御答弁は何かの間違いだと思いますが、御答弁のごとく、日華平和條約によつて、これが批准をされたあかつきには釈放されるであろう、こういうことでございますが、御答弁のごとく、日華條約にはサンフランシスコ條約の第十一條をネグレクトするようなことになつております。そこでこの日華條約の文面だけでは、中国関係戦犯者が釈放されるものかどうか、それだけでは一向私には根拠がわからぬのでありますが、その点について、どういう根拠でそういう釈放の御処置をとつていただけるものか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  22. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 お答えいたします。日華平和條約の第十一條だと思いまするが、その中に、先ほど申し上げました、サンフランシスコの平和條約の十一條は適用しないという趣旨の規定がありますることと、なお公式の議事録の中に、その趣旨のことが盛られているというぐあいに承知いたしております。
  23. 大西正男

    ○大西(正)委員 言葉じりを争うわけではありませんが、私もここに日華條約を持つて来たのでありますが、十一條によりますと、これに規定していないものは、サンフランシスコ條約の規定によつて解決する。そのことが日華條約の十一條にそれが書いてあるのです。従つてこの十一條によれば、サンフランシスコ條約の十一條が適用されるわけですが、議定書の方で今度それをネグレクトしておりますから、結局御説の通りになると思います。そこで結局サンフランシスコ條約の十一條が適用されない、適用を除外するというだけのことでありますが、それから先、一体釈放していいか悪いか、どうなるのか、その点をもつと明確にできましたら伺いたい。もしここで公表できないというなら、適当な方法で詳細の御説明を願いたいと思います。
  24. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 お答えいたします。公式議事録の中に、その十一條に関する趣旨を解釈したことが記載してあるのでございます。その全文につきましては、私の所管外になりますのでちよつと申し上げかねます。
  25. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 それでは速記をとめて。     〔速記中止〕
  26. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記を始めて。
  27. 大西正男

    ○大西(正)委員 それで私大体了解いたしました。  次にオランダ関係の戦犯が、やはりあそこにおるわけでございますが、私の現在承知しているところでは、オランダはサンフランシスコ條約に署名をしておりますが、批准は終つていないやに承知しておるのであります。従つてオランダの関係ではまだ効力を生じていないと思うのです。そうしますと、中に入つている人たちも実は心配しているのですが、一体勧告するといつたところで、まだ効力を生じていないので、勧告の方法もないじやないか、その点を心配されておるようであります。オランダの批准といいますか、オランダに対するサンフランシスコ條約の効力が発生することについての、オランダ国における批准の経過とか、あるいはその見通しにつきまして、これは外務当局にお伺いするのが本筋でありますが、法務御当局でその点について知るところがありましたならば、この際述べていただきたい、かように考えます。
  28. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 私は詳細なことは存じておりません。ごく最近外務省に問い合せました際には、六月中には批准になる見込みを持つておるということを申されておりました。その程度のお答えしかできないのであります。
  29. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大西さんの質問に関連してお伺いしたいのですが、この間通りました法律に基きまして、国外に収容されておる戦犯者は全部もどりましたか。まだもどらないとすれば、どこが残つておりますか。
  30. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 まだその後一人ももどつておりません。フィリピンに百十一名、濠洲のマヌス島に百二十名残つておると承知いたしております。
  31. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはいつもどるものか、またどういう手続、このままではいかぬとか、その点の手続その他について、よく納得の行くように御説明願いたい。
  32. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 国外におりまする戰争犯罪人の送還を受けることは、この法案審議当時にも皆様方からのお話がございまして、私どももそのために外務省を通じていろいろお願いして参つたのでございます。この法律も、外地から引揚げる戰犯受刑者を受入れ得る態勢をつくり、そうして一日も早く送還されることを期待しておつたのでございまするが、私が外務当局から承つておりまする程度では、従来日本から正式にそのことに対して、先方に送還の申入れをすることを受付けることも非常に困難であつたのが、本年の初めごろからそれが可能になつた。その手続を正式にいたした。そして機会あるごとにいろいろお願いしておるのだということを伺つておるのでありまして、その後私ども外務省へ参りまして、外交折衝によりまして一刻も早くその手続が進むように御依頼して参つておる次第でございます。
  33. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると、そういう申請をし、書類をつくるのはあなた方で、それに基いて外務省の方と折衝するのでしようか、それとも外務省が主体になつてつておるのでしようか。
  34. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 所管から申しますると、あるいは外務省の本来の所管になるのではないかと思うのでございまして、私どもお願いする以前に、いろいろな手段を講じておられまして、そのことも承つたのであります。ただ私どもとしては、それをさらに一層促進していただきたいと思うところから、特にいろいろと先方に対してお願い申し上げておるというように考えておりますので、法務府といたしましては、その点につきましては第一の所管ではないと考えております。
  35. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この間私が面会に行きましたら、その点を非常に中の者が憂えておる。おそらく私はあなた方を通じて行けばよかつたのだろうと思うが、遺族の者は心配のあまり外務省行つたらしい。そうするとこちらの所管でない、係の者から書類が出ればこちらは取次ぎするだけだ、あまりうるさいことを言つて来てくれるなと押えつけられたということを聞いた。もつとえらいことを言つたらしい。向うへ行けば外務省の係だと言われ、あなたのところへ行けばそういうことを言われるし、一体どこが係なんですと言つたら、そんなことわかるかと言われた。あなた方一体助ける意思があるのかないかと聞いたら、刑期の通り入つているほかしかたがないじやないかと言つた。これは事実のようです。遺族の方が涙を出してわれわれに言つた。この間も会つていろいろ話を聞きますと、たいへんな不平が出ます。これは不平なんだが、しかし入つている者の身から見れば、こうもすれば出られるのだろう、まず第一番に平和條約が効力を発生すれば、国内犯罪者でさえ赦免になるのを、われわれは犯罪者でないのだから、当然赦免になるべきものを、それがない。一体だれがどういうことをしておるのか、この不安が出るのはもつとものことだと思いますので、この点はあなた方として盡されるだけのことを盡していただくと同時に、外務省との連絡を密にして、ならぬならならぬで、ひとつ誠意だけでも示していただくことを、この機会に特にお願い申し上げます。  それからもう一つ聞きたいのは、先ほど裁判を受けた国々にあなた方の方から申請なさるのにいろいろ調査されたという中で、委員という言葉を先ほどから聞きますが、その委員とはどういうものを指すのでありますか。
  36. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 法務府の外局にございます中央更生保護委員会という会議体の官庁がございます。その委員会を構成しておられる委員は国会の承認を受けて法務総裁が任命しておられまして現在では四人おられます。その委員方々であります。
  37. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 何でもその人が二人だけ来られるのだが、そのうち来たり来なかつたりせられて調べが非常に遅れる、これもやるだけやつてつても、中の者から見れば、それだけを望みにして生きているのですから、そう言うのだろうと思いますが、そういうことを言つております。それともう一つは、委員が調べても翻訳する手がないために外務省手続が遅れる、こう聞いておるが、一体日本国にこれくらいの翻訳する者がおらぬのですかという訴えがありましたが、この実情はどうですか。
  38. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 中央委員会委員は非常に熱心にほんとうにいろいろな事案に対して心から同情して何とかしなければならぬという熱意を持つて仕事に当つておられます。ただ中央委員会は全国の地方委員会なり保護観察なりを監督する官庁でもございますし、また恩赦についての仕事もございますし、いろいろ事案がございますから、全部そのことだけに当るというわけにも参りませんし、またいろいろこの巣鴨の問題にしろ、ただ面接するだけが仕事でもございませんし、会議いたしたり、外務省といろいろ連絡をとつたり、従つて中には委員が来たり来なかつたりというふうにお考えになる人がないとは申されませんが、この仕事について非常に熱意を持つてお働きになつておられます。  それから翻訳につきましては、現在巣鴨刑務所に若干の人がおりますし、また現在大蔵省の予備金で翻訳官をもらうべく、いろいろ折衝いたしております。結局関係国とこの方式についての話合いができますれば、すぐに事案を検討いたしまして、勧告できるものを勧告する、こういう運びにいたしたい、かように存じております。
  39. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは委員が忙しければ補助機関でも何でも置いて、できるだけ早くやつた方がいい。それができたところが話合いした国の手続ができなければしようがない。これはすべてできる限りのことをお願いしたい。  もう一つ、先ほどの中国の問題ですが、九十一名というのは、中国における戦犯者全部なんですか。それとも一部で、日本に預かつている者だけを指すのですか。
  40. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 これは一部で、日本に預かつた者だけでございます。その余の者はすでに向うで処刑され、あるいは釈放されております。そのほかには残つておりません。ですから現在中国の戦犯受刑者は、巣鴨におる九十一名だけでございます。
  41. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると向うに戰犯者は一人も残つておらぬと解釈してよろしゆうございますか。——ところが九十一名でないように聞いております。このたび釈放されるであろうところの者は七十何名とか言つておりますが、この差はどういう関係なんですか。
  42. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 法務府の調査したところによりますと、九十一名ということになつております。七十何名という数字はどこから出たかわかりませんが、よく調査してみます。
  43. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 九十一名でもよろしゆうございますが、九十一名なら九十一名全部釈放されるであろうという予想がつくのか、そのうち残るのではないかと思つて、ぼくは心配して聞くのですが、そういうことはありませんか。
  44. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 ただいまのところ中国裁判の関係につきましては、問題がないと思つております。
  45. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 今までの委員質問に関連した点ですが、平和條約第十一條審議の際に、巣鴨プリズン減刑赦免及び在外戰犯者の内地送還を促進するために手続機関として外務省法務府との合同の委員会を組織することがよいではないかという私の質問に対して、政府委員から、その方針で進むということを答弁されておるのでありますが、ただいままでの本委員会における法務府の政府委員の御説明によると、まださようなものができていないようでありますが、それを急遽組織立てるという計画は、現在おありであるかどうか、この点を明らかにしておきたいと思います。
  46. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 中央委員会と古橋局長の方と外務省の次官以下局長関係課長をお招きいたしまして、これについてとくと御相談いたしまして、外務省の各課、各局にわかれる戦犯者の事務を、局長級の人が一応責任を持つてもらうという責任者をきめていただき、また法務府との常時連絡に当る課長をきめ、こちらからも連絡する課長をきめ、現在連絡をとつております。また人的構成におきましても、さような点を考慮いたしまして、今度国会で御同意を願いました委員外務省の方でございまして、現在連絡上支障はないかと存じておりますが、なお今後も必要について十分検討いたしまして、御意見のあるところを十分に研究いたしたい、かように存じております。
  47. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 至急善処せられんことを希望いたします。     —————————————
  48. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案に対し質疑の通告がありますのでこれを許します。押谷富三君。
  49. 押谷富三

    押谷委員 幸い両局長がお見えになつていますから、この関係についてお尋ねをいたしたいと思います。  先般私どもの手元へちようだいをいたしました資料によりますと、今日まで仮出獄申請事件を、どういう処理をせられたかということについて、この表によりますれば、一箇月にずいぶん多数の仮出獄申請を委員会においては受理いたしておられるようであります。その数字は、まず関東のごときにおいては、かりに六人の委員でこれを処理せられるということになりますと、一箇月に一人当り少くとも二百人以上三百人程度の人に会わなければならぬことになつているようであります。また近畿の場合におきましても、三人の委員でこれだけの受理をした人たちに面接をするということになれば、これも三百人あるいは百五十人くらいはどうしても会わなければならない数字になるのではないかと思うのであります。それが、施設が一箇所であれば一ところに集まつているのでありますから、よほど助かる点もありますけれども、施設もずいぶん数が多いのであります。そこをかけずりまわつて、そうして一日に十人以上の人に会うということになれば、その面接はいきおい形式に流れることを免れないと思うのでありますが、今日までの面接の状況について、面接をしなければその処分ができない、決定ができないという形から面接をせられるでありましようが、それがつい形式に流れるというような心配はなかつたかどうか、あるいはまた手不足のために、申請はあつたけれども面接ができないから、いきおい決定が延びて行く、出してやる手続が延びて行くというような心配、あるいはそういうような事実があつたかなかつたかをお尋ねいたしたいと思います。
  50. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 仮釈放を決定いたしますのに、所内の本人の成績、あるいは本人の心境等につきましては、刑務所からの報告をいただき、また本人の受入側につきましても、事前に十分に調査をいたし、さらに直接委員が手わけをして本人に面接をいたして、本人が自発的に更正しようという意思があるかどうか、またどういう計画を持つておるかということを委員において、面接は相当重大な役割を果しておるものと存じております。非常に多数の事例でございますので、一部に形式的にわたつたというものが絶対なかつたということを私は断言はできないと存じまするが、できるだけかような面接の趣旨を理解して、ほんとうに本人が更生するかしないか、また本人を出すことが社会のためにもよいかどうか、本人のためにも非常によいかどうかということを、実質的に審査して決定せられるように、各委員会に望んで来た次第でございます。数が非常に多いのでございまして、あるいは現在の委員の数をふやすということも考えられますが、この仕事に適する人がはたして得られるかどうかという点もございますし、また国家財政の関係もございますし、従いまして今回の改正におきまして、重点的にやつて行くならばどうであろうか、特に、一見比較的明瞭といいますか、そういうものについては、あるいは代理官をして一応面接をする役目を果させる、ほんとうに重要な事案について、委員が重点を置くというようなやり方をとつて行くのがよろしいのではないかというような点で、今回の改正案を提案いたしたような次第でございます。なおまた、この委員が手不足といいますか、面接が遅れるために仮釈放の時期が遅れたというようなことが、当初においては若干施設側から、そういうような注意といいますか、注文を聞きましたが、漸次制度になれるといいますか、軌道に乗るに従つて現在ではさような不満は聞いておりません。しかしその反面において、形式的に流れておるようなことがありはしないか、そういう点に留意したい。こういうつもりで現在まで参つた次第であります。
  51. 押谷富三

    押谷委員 その意味においては今回の改正は相当理由があると思うのでありますが、今面接ということが、相当本人の個性を知り、すべての関係調査するのに必要な條件であるということはお説のようでありますが、そういうことのために、手不足であるということもお考えになつておるようであります。ところが今回の法務府の機構の改革によりますれば、この地方成人委員会あるいは少年委員会が一つになつて、人員もたいへん減らされるように承つておるのですが、あるいは三名ないし、九名ですかになつておる。いきおい人の数も減つて行くのではないかと思われるのです。仕事がたいへんふえて、そうしてこれに当る委員の数が減つて来るということになれば、機構と法律との間がしつくりマッチして来ないのではないかとも考えられますが、この点についていかがお考えになつていらつしやいますか。
  52. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 地方委員会のこの大切な仮釈放の決定に当りまする委員の人数は統合いたしましても、全体的には減らないようになつております。ただ三人ないし九人というふうにいたしてありまするが、九人というのは関東でございまして、これは現在十人でいたしております。これを九人にする。そうして三人、五人、場合によつては七人というところができるのではないか、この点を検討いたしておりまして、まだ決定はいたしておりませんが、総体のわくは減らないことになつております。
  53. 押谷富三

    押谷委員 私らの手元に配付されましたこの統計によりますと、受理をせられまして、そうしてその処理の結果に棄却というものが相当数現われているのでありますが、施設からは仮出獄申請をせられ、委員会でこれを棄却するという決定をしていることになつておりますが、この棄却は、今日までは、委員が面接をせられた結果、許すべきものではないという判断から棄却をせられた、こういうのですか、あるいは施設から期間が来たから申請はするけれども、これはまだ許すべき事情にないのだ、こういうような施設からの報告等を参考にせられたのでありますか、その点を承りたいと思います。
  54. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 差上げてございます資料のうちで、却下及び申請の撤回というのは、これは期間が来ないのに申請されたというような場合でございまして、事前の却下でございます。棄却は、これは委員が面接もし、あるいは審査の係が十分調査をいたします。その結果施設側と意見を異にしたというような場合でございまするが、実体的には期間がもう少し待つた方がいいのではないか、施設側はどうしても施設の性格からいいまして、本人の家庭の事情が十分わかりかねるという点で、これは委員会の系統におきまして、全国の多数の保護司の方々の御協力を得まして、十分調査をいたして、それで今は困る。今家庭のごたごたを解決しておるところだから、これが済んでから出してほしいというふうな意見もございます。さような場合に、施設との意見が食い違うという場合が、ときたまございます。そういう場合が一番多いと私どもは了解いたしております。
  55. 押谷富三

    押谷委員 今の棄却の理由で、施設との意見が違つている、そういうものが棄却になるというお話でありますが、施設から仮出獄申請をする場合におきましては、それは全部條件が整えば出してくれという申請であつて、三分の一の期間は来たけれども、まだこの男はだめだというような意見を付した申請というものがあり得るのでありますか、その点を伺いたいと思います。
  56. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 施設から参りまする申請は、刑務所の長が、期間が三分の一以上経過しておる、しかも本人も見たところ仮釈放してもよかろう、こういうところで出されるわけでございます。ただ先ほども申し上げましたように、施設においては、本人だけのことについて一番詳しい。しかし本人を巻く環境ということについて、勢いどうしても不十分な点がございます。さような関係で、仮釈放の時期等において、頻繁ではございませんので、きわめてまれな場合でございますが、意見の相違がございます。それがこの棄却の数字に相なつておる、かような状況でございます。
  57. 押谷富三

    押谷委員 棄却の場合に、本人を取巻く周囲の事情、環境あるいは本人の仮出所の場合における受入れの態勢がいかになつておるかというような点が重要されて、そうしていましばらくこれは許すべきでないというので棄却をするというような処置をせられておるようなただいまのお答えでありましたが、そういうことになりますと、犯罪者予防更生法、今議題にかかつておりますこれにはそういうふうな関係は、どこにその規定が重要なこととて現われておりますか。私ちよつと今見落したのですが……。
  58. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 この犯罪者予防更正法の第三十一條によりまして、地方少年委員会、地方成人委員会は、「審理の結果にもとずき、仮出獄、仮出場又は仮退院を不相当と認めるときは、決定をもつて、同項の申請を棄却しなければならない。」第二項におきまして、全部は略しますが、「相当と認めるときは、決定をもつて、これを許さなければならない。」かような規定がございまして、これによつて運用いたしておる次第でございます。
  59. 押谷富三

    押谷委員 今御説明の、三十一條の審理はわかつたのでありますが、その審理の内容に、家庭の環境を調べる機関であるとか、調べるべき方法、あるいはそれの処理、その効果というようなことが、法律的には何の定めもない。ただ審理の資料をそこに求められる、こういう程度であると承つていいのでありますか。
  60. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 現行法におきましては、審理についての基本方針を法律で明確にいたしておりまして、仮出獄の決定をする前の審理は、「本人の人格、在監在院中の行状、職業の知識、入監入院前の生活方法、家族関係その他の関係事項を調査して、行うものとする。」そうして三十條におきまして、みずから委員本人に面接をするのだ、こういう規定がございまして、これに基いて、本人側の事情と、それから本人を取巻く環境の事情とを十分調査して決定をする、こういうふうに運用いたしております。
  61. 押谷富三

    押谷委員 大体わかつたように思いますが、しかしまだ少し不明確な点もあります。しかしいずれにいたしましても、本人出所後の受入れ態勢等を御調査になることは、私は賛成なのです。従つてそういう調査資料に基いて審理をせられ、棄却せられることがあり得るとも思いますが、この今日までの、地方成人委員が施設へ行つて、それぞれの犯罪者に面接をするという場合におきまして、どういうことを調べるのであるかというような、面接に際しての取調べの内容等の基準でも授けられているか、あるいは漫然その人のかつてな主観からいろいろ調べて来ることになつているのでありますか。今日までの委員に対する面接の指導の方針につきまして伺いたいと思います。
  62. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 司法大臣が仮出獄を決定するという時代から、仮出獄につきましての審査規程がございまして、これにこれらの本人側の事情、あるいは環境、あるいは社会環境、あるいはその被害者の感情であるとか、詳細に規定されておりまして、それが直接規則となつてはいませんが、さような基準がございますので、それらに基いてこの委員が面接するように扱つております。なおこの審査規程も相当以前のものでございますので、いろいろ検討いたしまして現在何らか理想に近いものができれば、これを実施したいかように存じておる次第であります。
  63. 押谷富三

    押谷委員 これは私の聞いた話でありますし、私の多少の主観もまじつておりますから、御参考のために申し上げるのでありますが、この面接をする委員は大体五名でなつておりますから、五名が面接をする。その委員の面接の状況を施設の人から聞いてみますと、委員の性格なり、あるいは委員の経歴なりから来たその人の主観から尋ねられるために、非常に異なつた調べがあると言つておるのであります。たとえば警察官から上つて来た委員であれば、犯罪の内容を中心に聞くとか、あるいは刑務所関係、行刑関係の役人から出て来られた委員の人であれど、本人の刑務所内における受刑作業の状況であるとか行状であるとか、改悛の状であるとか、また社会事業から出て来た人は受入れ態勢、家族関係を中心に聞くとかいうようなぐあいで、それぞれの人がそれぞれの聞き方をするから、出て来るその結果は必ずしも一つでありません。三人が共同で聞かれるのでないから、甲という人が聞いて来た結果と乙という人が聞いた結果がたいへん違つて現われて来ておるということを聞かされておるのであります。私はそういうことはあり得ると思います。これはないことをこいねがつているのでありますけれども、実際問題としては委員個人々々が自分の主観で尋ねて行くのでありますし、しかもそれにはほとんど基準のないいろいろな立場からどういうことを聞いてもいいのでありますから、そこで現われて来る結果が必ずしも平等でない。少くとも同じような率によつて、同じレベルで答えが出て来ないということを遺憾に思うのでありますが、これにつきまして、中央保護委員会局長としてはどうお考えになつておりますか。
  64. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 委員の人選については特に愼重を期さなければならないと存じております。ただ当初非常に急な、やむを得ない事情で発足した関係で、現在いろいろ考えさせられる向きもございます。これは逐次時の経過に従つてりつぱな委員を全部おそろえしたいと思つております。なおただいま御意見もございましたように、三人の委員会議をして決定する、しかし現在の事情においては三人全部が一緒に面接をするということでは非常に時間を要しまして、御心配のように、そのために仮釈放の時期が遅れるというようなことがございますので、現在では理想と現実の妥協と申しますか、委員の一人が施設をまわつて、その施設におる一箇月、二箇月内に仮釈放の審理を受けるような人を全部まとめて、そこで面接をするというようなことをいたしております。そうしてその委員が帰つて、一週のうち二日とか三日とか委員会議を開きまして、そこで報告をし、ちよど裁判官の会議のように、そこで三人で決定をする。そしてその構成につきましては、法律家あるいは社会事業的な経験のある方、あるいは精神医学であるとかいうような方など、本人の更生に関係のあるようないろいろな角度の方が入られていいと私は考えております。ただその場合に面接のやり方について、どうしても委員として自分の主観が映るということはあると存じます。それでその結果若干遺憾なことがあるやに私も承りまして、現在会議につきましての方法を研究いたしまして、面接した委員は最後に意見を述べる、その意見だけで決定しない、というふうな裁判官の会議のときに加えられている配慮、ああいつたものを取入れるような規則を立案いたしております。どうしても現状においては全部の委員が面接するということが不可能でございますので、その弊害をできるだけ除去して、合理的な決定が出るように、その会議の際のやり力について研究いたしたい、こういうふうにして現在検討中でございます。
  65. 押谷富三

    押谷委員 いろいろこの点に御配慮をいただいておるようでありまして、けつこうでありますが、各委員が別々に調べられるのであるから、そこでその委員の調べた結果が現われるのは、同じようなレベルで答えが出て来る方がいいと思いますから、拘束することはいかぬと思いますけれども、ある程度まで同一の基準を示してこれが調べの答えに現われて来るようにするということが、比較的うまく行くのではないかと思いますが、この点について御考慮をお願いすることにいたします。  それから條文に入つてお尋ねするのでありますが、面接の関係につきましては、手続上もまた人の数と、面接をしなければならぬ相手の数との関係からたいへんアンバランスにありますから、勢い三十條の二項でこういう規定が必要でもあり、これがまた私はけつこうだと思うのですが、この場合「その他中央委員会の規則で定める場合」こういう規定があるのです。そこで本人病気であるとか、その他本人が重病または重傷である場合、「その他中央委員の規則で定める場合であつて、仮出獄又は仮退院を許すことを相当と認めるときは、」こういうように規定されておりますが、この「中央委員会の規則で定める場合」というその規則はどういう場合をお考えになつていらつしやるか、その点をお伺いいたします。
  66. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 まだ決定にまで至つておりませんので、考え方を申し上げたいと思いますが、一番先に、許円しないという場合は省略できない、許可する場合に省略するという考え方でございます。それで非常に重病、重湯で、すぐに出す必要があるというような場合には、この省略するということを認めていいのではないか。それから前回にすでに委員が面接しており、それからあまり日が経つていない、しかも今度は出してもいいというような事情が加わつた場合、あるいはこの前だめだつたが、その條件が備わつたことがはつきりしているような場合は、省略していいのではないかと考えております。
  67. 押谷富三

    押谷委員 これはまた適当な機会に明らかにしていただくことにしまして、四十一條の五項でありますが、この引致状を出して引致することになつております。この引致状は、逮捕状や勾留状とは性質が異なつていることはもちろんでありますが、この引致を警察官あるいは警察吏員がやる。もちろん保護観察官もやるということになつておりますが、これは犯罪そのものに関係があつて引致状が出されるのではございませんから、従つてこの性質からいつて、保護観察官がこれを行うのであるということを原則にするのがいいのじやないかと思うのですが、この條文の解釈から行きますと、警察官、警察官吏あるいは保護観察官、これらがだれがやつてもいいのだというようにとれるのですが、それは私の理想と少し距離があると思いますけれども、お考えを承りたい。
  68. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 仰せの通り、事柄から申しまして、保護観察官が主体になる。一応責任者になる。それで足らない場合に、警察官に応援を頼むというのが、現在の実情でもございまするし、今後のあり方でもあると存じておるのであります。ただ、従来の現行法がこういうふうに書いておりましたのを、きわめて不用意と申しまするか、十分考慮しないでそのまま踏襲したという関係でございまして、ただいま仰せの通りと考えてよかつたのであります。
  69. 押谷富三

    押谷委員 最後にもう一点だけですが、この四十二條の二ですが、保護観察の停止という字句が使われており、また保護観察の停止という制度がここにあるわけですが、保護観察の停止ということ自体が実ははつきりいたさないのです。保護観察の停止の効力、停止そのものの実体というものを承りたいと思います。
  70. 大坪與一

    ○大坪政府委員 お答え申し上げます。保護観察の停止という言葉は新しく使いましたのでございますが、これは従来現行法にございますところの仮出獄の停止とまつたく同様の観念として考えたわけでございます。ただ現行法の仮出獄の停止は名前が何か誤解を生ずるような、たとえば仮出獄中であるという身分を全面的に停止するかのような印象を与えまするので、実質的に幾らか効力を適切に表わすようにとして保護観察の停止の方がよかろうという考え方からこの言葉を使つたわけでございます。そのお尋ねの実質的な効力についてはこのように考えております。一つは仮出獄中のものは仮出獄中であります限り、法律によりまして保護観察に付されているのでございます。従いまして地方委員会といたしましては保護観察をいたさなければならないのでございます。けれども四十二條の二の第一項に掲げましたような事由があります場合には、これは不可能でございますので、保護観察の方をしばらくやめるということが一つの効力でございます。もう一つは第四項にその点に触れて書いておりまするが、仮出獄中であるその者の刑期の進行が、その決定のときから——保護観察の停止の決定が効力を発しますときから刑期の進行は停止する、こういう効力でございます。この二つの効力を持つているものでございまして、この点は実は従来の現行法の仮出獄の停止も同様でございますが、従いまして言葉の変更として実は考えておる次第でございます。
  71. 押谷富三

    押谷委員 今の停止期間中は刑期の進行が停止されるのであるというこのことはわかりますが、保護観察の停止をするのであるというよりは、これは保護観察ができない、不能な状態にあるのですから、結局はこの決定があつて停止するのではなくて、もうできない状況にあるのだということで、ただいまの前段の実質的な効果というものは、決定があつて出て来るのではなくて、決定前にもう保護観察はできない状況にあるのだ、こう承つてよろしゆうございますか。それからそういう場合に仮出獄の取消しとの関係ですが、もちろんこれはかまわぬわけだと思いますけれども、おおむね取消すということになると承つていいか、その点を明らかにしておきたいと思います。
  72. 大坪與一

    ○大坪政府委員 お答え申し上げます。仮出獄の取消しとの関係でございますが、この保護観察の停止をいたされましたものは、実際上の見通しとしましては、多くの場合、やがて仮出獄の取消しをされる方が多いだろうというふうに考えております。と申しまするのは、保護観察の停止の事由が、一定の指定された居住すべき住所に居住しないという遵守事項違友でございますので、これも保護観察のできない状況に、いわば逃げ隠れたという状態でございますので、同時にこの点は仮出獄取消しの事由に実はなるわけでございます。でございますから、実体的に実際上の場合を考えますと、むろんこの保護観察の停止をされましたものでも、あとで仮出獄の取消しをされないという場合もあり得ますし、あるいはどの程度あるか申し上げかねるのでございますが、かなりあるかもしれませんが、数から申せばやはり取消しをされる方が多いかと考えております。     —————————————
  73. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題といたしまして質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。加藤充君。
  74. 加藤充

    ○加藤(充)委員 簡単に一、二お尋ねしておきたいと思います。刑事訴訟関係で昨年の数字に比べて、この改正法が通過いたしますれば、被告人負担の訴訟費用というようなものは大体どういう変化を受けますか。
  75. 野木新一

    ○野木政府委員 金額が具体的にどういうぐあいに増減するかという点につきましては、数字は手元にございませんが、ただ一つの推定的のことを申し上げますと、たとえばこの案におきましては証人、鑑定人の旅費、宿泊料等が——大体証人の日当旅費、宿泊料等をとつてみますと、たとえば日当におきましては、百二十円が百六十円になるというように、大体三三%程度上るわけでありますから、それから推論いたしますと、大体三割程度負担が多くなるだろうという推定はつくのではないかと存ずる次第であります。
  76. 加藤充

    ○加藤(充)委員 昨年度数字でけつこうですが、被告人の負担すべき訴訟費用というようなもので、いわゆる差押え、競売等の取立てを受けた事例があるかないか、あるとすればその数字はどのくらいで、数額はどのくらいのものであるか。
  77. 野木新一

    ○野木政府委員 御質問の点につきましては、ただいま手元に資料がございませんから、さつそく調査できるだけ調査いたして、お答えいたしたいと思います。
  78. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私は大した額でもなさそうだとは大体見当もつくのですが、しかし改正前の大した額でない、その数額すらが負担できずに、徹底的に明らかにさるべき人権の保障の方法に遺憾な点が出て来るというような事例があるのでありまして、そういう事例が、この改正のために、そしてこの負担が被告並びに関係当事者の気の毒な人の負担になるということのために、それが強められるということを懸念するから、今のような御質問をしたわけであります。数字が具体的でないからいたし方ありません。次にお尋ねをしたいと思うのですが、大体執行制度というものはどういうものなんですか。具体的にいうと、九万一千円とやらを国庫が補償するというのですが、この九万一千円というのは俸給なのであるかどうか、こういう点をこの際確かめておきたいと思います。
  79. 野木新一

    ○野木政府委員 ただいまの御質問の前の方でちよつと触れられた点でございますが、訴訟費用で執行の段階まで行つているのは非常に少いのではないかと存ずる次第であります。なお刑事訴訟法におきましては現在におきましても、「訴訟費用の負担を命ぜられた者は、貧困のためこれを完納することができないときは、訴訟費用の負担を命ずる裁判を言い渡した裁判所に、訴訟費用の全部又は一部について、その裁判の執行の免除の申立をすることができる。」「前項の申立ては、訴訟費用の負担を命ずる裁判が確定した後十日以内にこれをしなければならない。」というような規定がございますし、また現に提案になつております刑事訴訟法改正案におきましても、ただいま申し上げた趣旨よりも一層進んで、言渡しの際に、貧困な者については考慮できるというような規定も入つておりまするから、それらを考えますると、決して苛酷に陷ることはないのではないかと存ずる次第であります。  それから執行吏の点でございますが、執行吏は、大体手数料をもつて生活をまかなつておりまして、国家の役人のように俸給という制度をとつておりません。それで国家といたしましては、大体執行吏の収入が、一年にあるランクの公務員、五級四号というところにリンクしてありましてこれまでに収入が満たないという場合には、そこまでは国家がめんどうを見てやろうという考えで今までずつと来ておるわけであります。その五級四号に相当する金額がただいまでは九万一千円ということになつておりまして、これがこの臨時措置法のもとにおいてとられておる骨組みになつておる次第であります。
  80. 加藤充

    ○加藤(充)委員 執行吏というのは公務員ですか。     〔「もつと勉強して来い」と呼ぶ者あり〕
  81. 野木新一

    ○野木政府委員 執行吏はもちろん刑法等にいう公務員には当りまして、執行吏の職務執行を妨害すれば、公務執行妨害罪が成立するのであります。但し国庫からは俸給は給付しておりませんので、私どもと同様な公務員ではないと存じます。
  82. 加藤充

    ○加藤(充)委員 国家から生存給——生存給というとむずかしくなりますが、給料を与えないで、公務員の仕事をさせておくというようなことが、公務員制度の中にありますか。
  83. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 執行吏の身分は、ただいま野木政府委員から説明がありましたように国家公務員法上の公務員でありまして、そして各地方裁判所に置かれておるわけで、地方裁判所の職員であるわけです。このことは裁判所法の大十二條にも規定があるわけであります。公務員たることについては争いがないものと存ずるわけです。
  84. 加藤充

    ○加藤(充)委員 この訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案の提案理由の説明書を見ますと、九万一千円が俸給なのか、俸給でないのか、どうもはつきりいたしません。ですから私があえて尋ねましたのは、執行吏が公務員であるというのは、一応條文上明確ですが、国家がその生活に責任を負わない公務員というものがあつていいのかどうか。実は執行吏の費用などについてこういう改正が意図されたり、あるいは改正の根拠づけについて、われわれがこの案を受取りがたいのは、そういうところにあるわけなので、少し勉強して来いという声もかかつたようですが、なおその点を明確にしておきたいと思います。
  85. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 執行吏が公務員でありながら、国家が俸給を払わない、そうしておいてその手数料の収入が少い場合には、一定の額だけの範囲内において補助するというような建前について御疑問を持たれているかと思われるわけです。それは確かに一般公務員の給与制度に比べますと、疑問を持たれるのももつともだと存ずるわけでございます。ただ執行吏の制度というのは、結局執行吏の手数料の収入によつてその執行吏はまかなう。しかもその手数料というのは自由競争にまかせないで、国家が手数料の額というものは法律できめてかかつておるわけです。従つて執行吏としましては、場所により、あるいは年によつてその手数料の収入に過不足が当然あるのですが、過不足が生じた場合に、執行吏はともかくも国家の機関として執行権を付与しておるわけですから、その過不足が生じた場合には、国家が足りない分はめんどうを見よう、しかもその足りない部分も無制限ではなくて、これだけの額の範囲内でめんどうを見よう、こういうわけなんです。ですから、それはただいまの法律建前で、やむを得ずそういうふうな、ちよつと常識には相反するような制度をとつておるわけなんですけれども、今の法律がそういう制度をとつておるので、これが一番の理想的な形だと思えないわけです。従つていろいろ論議をすれば、今のような手数料制度などやめて、一般の職員のように執行吏も国家の通常の職員として月給を支払う、そういう制度も考えられるわけです。とにかく今はそういう制度になつておらないのですから、執行吏の手数料の少い場合を国家がめんどうを見てやるという意味で、こういう仕組みになつておるわけです。
  86. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私どもは国家公務員を含めての一般の勤労者の生活の問題、これには及ばずながら人一倍関心を払い、努力している政党だとうぬぼれております。私がかように執行吏の生活費に関係のある本改正法案にとやこうの質問をいたし、疑問を持ちますのは、大体言つて、今明らかにされたような根本的なところにわれわれは問題点を見つけているからなのであります。なるほど地域によつていろいろ差がある。あるいは忙しいところ、あるいはひまなところ、いろいろ執行状況にも違いが出て来る。しかしそういうところに必要な制度として執行吏を配置しておるのでありまするから、やはりそこには基本給というようなもの、今の給与の建前が私どもはすべて完全だとは言いませんけれども、しかし基本給その他動務手当、あるいは地域給というようないろいろな複雑な給与体系のもとにそれがカバーされておるわけであります。しかしそれで問題はまだ解決されておりませんが、そういうふうないやしくも国家権力の執行というような、裁判所の判決の執行というような場面において、この執行吏が片方では商売人であるというような建前で生活をして行くというやり方の中に実はとんでもない腐敗と不正が行われておるのであります。今申し上げたような質疑で一般の人は知りませんけれども執行吏のやり方、生活の仕方から、非常にいいかげんなことをやつておる。金で無理なこともするし、金でどうにもなるというようなことすらがいわれております。大阪の事例を申しますが、実をいいますと、執行のための費用を莫大に、言葉が妥当ではありませんが、やみ費用の予納をさせられておるのであります。その予納金の精算を受けた依頼者というものはあまり私は聞きません。それで大阪の弁護士会では裁判所と相談の上である一二、三の執行吏を集めて来まして別に役場をつくつた。それはちようどあの裁判所の東側にある調停裁判所ですか、簡易裁判所の中にあるのでありますが、私はこれで便利になつた、弊害が除去される一歩を踏み出したと思つていましたが、わずか数箇月の経験の中に、それはべらぼうなことをやらないどころじやなしに、むしろ依頼者に頼まれればどんな無理なことでもやつてのける。執行停止の命令を持つてその執行吏に見せても、どんどん競売して持つてつてしまうというような事例がある。それで商売仲間と言つちや言葉がおかしいのですが、ほかの執行更の役場ではあんなものをつくつたところで初めは便利に思うけれども、どうせまた弊害が出て来るよと言つてあざ笑つているような状態なんであります。そういう新しい執行吏の役場をつくりましても、依然として前から大阪の地方裁判所の管下に起きておりますが、執行吏の弊害というものは除去されておらぬ実情です。これはお調べになつていただけば私は事態がはつきりいたすと思いまするし、私は全然無責任な発言をいたすわけではございません。それで実をいいますと、国家は今言つたような複雑な給与制度といいますか、給与に準ずるような制度のもとにおいてそれを養つておらぬのです。従つて執行吏をしてもつぱら執行依頼者の費用の中で生活させている。従つてそこにはやみ費用を予納させて精算をしないというインチキなやり方になつてつています。しかし半面それでは執行費用、執行の債権総額の中に加えて行きましてびしびし取立てて行きまして、そうして預かつたものはどこかに消えて行つてしまう。そうするとこういうようなやり方をやつておりましても、これだけでは要するに御指摘のように不十分でありまするから、これでは執行吏はかかあや子供を養つて行くという自信はありません。また地域で比べますと大阪あたりはよそのいなかよりはいいのかもしれませんけれども、人間というものはしかく簡単に行きませんので、こういういい加減の費用をあげても、これは今私が指摘したような根本的な問題、弊害除去にはならぬ。しかもそれが一面においては執行吏の依頼者の費用の増額を口実にし、あるいは執行を受けたものはさらに競売等の中から多額の執行費に充当するものを天引きを受けて行くというような始末になつてしまうと思うのであります。こういうふうないいかげんなことじやなしに、執行吏が公務員であるならば、国家がこれに対して万全の給与を出して、それで実費等のものでだれもが了解つくような明白な費用の増額はいたし方がないにいたしましても、そういうところで執行制度の問題を片づけて行かなければ、これは問題が一つも片づかない。ちようど昔の公定が上つてもやみ値がさらに上るというような腐敗と混雑を強めるばかりでないかということを強く危惧するものであります。従つてこういうふうなやり方の中には、私は民事、刑事、またその執行までひつくるめまして人権の保障というような点、これを万般の点から検討しまするならば、こういうやり方ではだめだ。なぜかというと、簡単に言うと執行吏の生活を、完全に不正をやらなくても食つて行けるだけの生活給の裏づけをこれではしていないということになると思うのであります。私はいろいろ申し上げたいことはあるのでありますが、私がきよう発言したことは大阪の事例ですが、執行吏の費用の問題については、当委員会において委員をなされている方々で、弁護士の職業をされている方々があればみな胸に思い当るところがある問題なのであります。むしろこれは国家が全面的に俸給を支給して、あとはほんとうの実費でやる、ひまな執行吏については、国家が、先ほど来一部お話に出ましたような方法で、最低の生活は不正をやらなくてもやつて行けるというやり方をしなければならないし、また同時にこういうふうな依頼者に負担を増額させるというようなこと、物価が上つたから手数料が上るというようなやり方では、私は民事、刑事万般の人権の保障という実質の上から行つてむしろ弊害が出て来やしないか、これをおそれるからなのであります。こういう点について幸いに御意見でもあつたら聞かしていだだいて、私の質疑は終りたいと思います。
  87. 野木新一

    ○野木政府委員 執行吏の制度につきましては、現在いろいろ研究すべき点があるということは私ども感じている次第であります。御意見のような点も一つの有力な意見としてあり得るわけでありまして、執行吏の制度を将来研究して行く際に、御意見のところは十分一つの研究問題として考えてみたいと思います。
  88. 田万廣文

    ○田万委員 加藤君から悪い面のお話があつたのですが、私はいなかで弁護士をやつていますが、三つ、四つの裁判所をかけ持ちして食えぬ執行吏がございます。悪いことをしなければ食えぬのならやめようという反対の現象もあるということを私は知つているのですが、とにかく加藤さんが本案に賛成するか反対するかわかりませんけれども、少くとも勤労者代表としてという、うぬぼれでなく実際共産党やつているように私ども考えますが、とにかく先ほどのお話は一応そういう悪い面があるということを指摘なさつた。これは聞きますと、自由党の押谷君も大阪でやはり弁護士をなさつておる関係で、その実態があるということは私は承つておるのでございます。悪い面は悪いとして大いに粛正しなければならぬ。少くともこの法案は、加藤君から他の公務員との比例でぺース・アップして行こうということであつたが、これは結論としては社会党は賛成ですが、とにかく現在の状態からいつて、地方的には非常に執行吏が苦しい生活をしておることを私はよく知つております。その意味で、この法案なんかいろいろ疑問もあろうけれども、私は結論としては賛成したいと思いますが、ただいま共産党の加藤君から指摘せられました程度で花村先輩も同感と言われたが、悪い面は確かに悪い。これを粛正する意味において、法務府で十分監督していただきたいということを——意見みたいになりましたが、いなかの方では非常に苦しんでおる。この実態を裁判所の方ではどういうふうにお認めになりますか。
  89. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 ただいま加藤委員及び田万委員から御発言がありました通り、ところによりまして執行吏の執務ぶりがおもしろくない面があることは、私どもも耳にいたしております。そして現在の執行吏の素質等から申しましても、私ども決して現状をもつて満足いたしておるわけではございません。それでこのことは、今日問題になりました補助金の額の値上げというようなことによつて執行吏のそういう欠点が矯正されるものとも考えておりません。これはやはりただいま御発言がありましたように、執行吏の制度というものをもう一度根本的に検討して改めて行かなければならないと思うわけであります。ただそれにいたしましても、欧洲でも、あるいは英米等におきましても、執行吏の制度については、固定給でなくして日本のように手数料制度であるとか、収入に対する歩合を与えるとかいうようなことが行われておるところが多いわけであります。これは仕事の性質上、そういうことをしなければ、収入が少しくらい多くとも、執行吏というのは、商売柄、あまり名誉と申しますか、好ましい商売でありませんから、収入の面で多少緩和しようという考えが全面的に行われているんじやないかと思うのです。しかし日本のように収入が足りないところがあるという点から考えますと、そういう点よりもむしろ一般官吏と同様に固定給の制度にした方がいいのではないかというようにも考えられるわけであります。いろいろな点からして考えなければならないと思いますが、とにかく現在の状態執行吏を現在の制度で、そうしてしかも優秀な成績を上げろということは、経済の面からいいましても非常に無理があろうかと存ずるわけであります。それで最高裁判所におきましても、そういう点を考えまして、昨年以来日本弁護士連合会の代表者二名、それから東京の高裁、地裁の裁判官各一名ずつ、それから東京の執行吏役場の代表者二名、それに事務局の方から民事局長などが加わりまして、執行吏の制度について南議会というようなものを設けて研究しておりますが。この結果は、法案というようなことになりますか、その前にどういう形になりますか、いずれ制度の形になつて現われて来るということをわれわれも期待しております。ただいま御忠告になりました点は、私どもも十分認識をいたしておりますから、現在の状態におきましても、執行吏に対する監督は十分に将来も念を入れて実行いたすつもりでございます。
  90. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 他に御質疑はございませんか。——なければ本案に対する質疑はこれをもつて終局いたします。  この際本案に対して山口好一君より修正案が提出されておりますので、その趣旨説明を聴取いたします。山口好一君。
  91. 山口好一

    ○山口(好)委員 ただいま議題となりました修正案に対しまする案文並びにその提案の理由を御説明申し上げます。  まず案文を朗読いたします。   訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第一條の一部を次のように修正する。   第三條の改正規定中「百六十円」を「百八十円」に『「四百八十円」に』を  『「五百四十円」に』に、「八百円」を「九百四十円」に、『「六百四十円」に改める。』を『「七百五十円」に、「一十四円」を「三十二円」に改める。』に改める。   第四條第四項の改正規定中「八十円」を「九十円」に、「百九十円」を「二百十円」に、『「六百円」を「八百円」に、「四百八十円」を「六百四十円」に、』を『「一十四円」を「三十二円」に、「六百円」を「九百四十円」に、「四百八十円」を「七百五十円」に、』改める。   附則第一項を次のように改める。  1 この法律中第二條の規定は、公布の日から、その他の規定は、公布の日から起算して十五日を経過した日から施行する。  以上が案文であります。  提案理由を説明申し上げますと、この修正点は、本案第一條のうち、訴訟費用等臨時措置法第三條及び第四條第四項に規定されておりまする当事者、証人、鑑定人、執行吏などの日当、止宿料、宿泊料、旅費についてであります。原案はこれらの額を昭和二十五年四月一日以降実施されておりましたところの国家公務員等の旅費に関する法律の七級職の者を基準として増額しようとするのでありますが、この法律は本年さらに改正せられまして、去る四月一日以降一般公務員の旅費等は一割二分ないし三割くらいの増額がなされたのであります。本法規定の支給額と申しますのは、昭和二十三年の十二月以来一回の改正もなく、諸物価高騰の実情から考えまして、非常に不均衡でありまして、今回の増額改正はむしろおそきに失するものといわなければならないのであります。従いまして一般公務員の支給額を基準とする以上、この四月にすでに改訂いたされておるのでありますから、すでに実施されておりまする支給額にスライド・アップして増額するのが最も妥当なことと思いますので、この修正案を提出した次第でございます。よろしく御審議の上御賛成を願いたいと存じます。
  92. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これにて修正案の趣旨説明は終りました。  次に本案を討論に付すべきでありますが、その通告がありませんので討論はこれを省略し、ただちに採決を行うことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 異議なしと認め、討論はこれを省略いたします。  ただちに訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案及び本案に対する修正案の採決を行います。  まず山口好一君提出の修正案を表決に付します。本修正案に賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  94. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 起立多数。よつて山口好一君提出の修正案は可決されました。  次にただいま可決されました修正部分を除いた原案を表決に付します。修正部分を除いた原案に賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  95. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 起立多数。よつて修正部分を除いた原案は可決されました。よつて訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案は修正議決すべきものと決しました。  この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なしと認め、さようにとりはからいます。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後五時三十二分散会