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1952-05-13 第13回国会 衆議院 法務委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十三日(火曜日)     午後零時十四分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君    理事 山口 好一君       安部 俊吾君    押谷 富三君       北川 定務君    高木 松吉君       花村 四郎君    古島 義英君       松木  弘君    眞鍋  勝君       大西 正男君    吉田  安君       田万 廣文君    加藤  充君       田中 堯平君    猪俣 浩三君       世耕 弘一君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君  出席政府委員         法務政務次官  龍野喜一郎君         刑 政 長 官 清原 邦一君         検     事         (特別審査局         長)      吉河 光貞君         検     事         (特別審査次         長)      關   之君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 五月十二日  住民登録法実施経費全額国庫負担に関する陳情  書(第一七三〇  号)  破壊活動防止法案反対陳情書外二件  (第一七三  二号)  同  (第一七三二号)  同  (第一七三三号)  破壊活動防止法案に関する陳情書  (第一七三四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  破壊活動防止法案内閣提出第一七〇号)  公安調査庁設置法案内閣提出第一七一号)  公安審査委員会設置法案内閣提出第一七二  号)     ―――――――――――――
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。  破壊活動防止法案公安調査庁設置法案公安審査委員会設置法案、以上三案を一括議題として質疑を継続いたします。
  3. 鍛冶良作

    鍛冶委員 三十一条に関するいわゆる公安審査委員会審査方法について、政府委員の方で昨日の私に対する答弁に補足したい点があるというお話ですから、まずその点について承つておきます。
  4. 關之

    關政府委員 この法案の建前におきまして、第二十一条におきまして公安審査委員会は決定をなすには「公安調査庁長官が提出した処分請求書証拠及び調書並びに当該団体が提出した意見書につき審査を行い」こういうふうになつているのであります。原則としては書面審理により、審査委員会は新たな証拠調べを行わないことに相なつているわけであります。しかし委員会におきましては請求書証拠調書並びに当該団体が提出した意見書等につきまして十分釈明は求め得るものと考えているわけであります。これらの点は必要があると認めますならば、請求書証拠調書並びに意見書内容につきまして、公安調査庁職員あるいは当該団体審理に立ち会つた者及びその他の者に出頭を求めて十分釈明し、内容意味その他について納得の行くまでこれを聞いて審査を行う、かようなことはもちろんこの二十一条の規定の上から見てできるものであると私どもは考えておりまして、それらの点はルールにおいて詳細に規定いたしたいと考えているわけであります。そういうふうにいたしまして、証拠意見書等内容について当事者の弁解を聞き内容を明らかにして、そうして審査を公正、的確にいたすことができるものである、かように考えているわけであります。
  5. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはまことにけつこうだと思いまするが、その際それじやこれにつけ加えてこのことはどうかというので、それ以外のことをその場合に証言というか参考意見として聞けば、それは違法でありまするか、さようなことも当然のことでありまするか。
  6. 關之

    關政府委員 委員会におきましては、請求書証拠調書及び当該団体が提出した意見書に基きまして釈明を求め得るのでありますから、それに関連することでありまするならば、もちろん釈明を求めることができると思うのであります。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 さらに進んで公安審査委員会についてでありますが、この法案の第十四条を見ますと、「委員会庶務は、法務総裁官房においてつかさどる。」となつております。これは審査委員会としては事務はほとんどないから官房で手のすいた者にやらせるという意味でありまするか、それとも官房のうちにこれに関する特別の事務員を置こうという考えでありますか。
  8. 關之

    關政府委員 審査委員会庶務法務総裁官房においてつかさどるという規定をかような形式において設けましたのは、委員会事務請求がある場合に生ずると考えられるのであります。従いまして日常におきましては業務としてそれほど大きなものはないと判断いたしました結果、法務総裁官房に数名の特別の係員を置いて、それは日常におきましては他の事務を扱い、同時にまたこれも扱い、こちらから請求がありまして委員会事務が繁忙になりましたらもつぱらその事務を扱う、こういうふうに考え職員の公務の執行におきまして適切妥当を期したい、かように考えましてこの規定を置いた次第であります。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その際私の聞きたいのは、現在のままでいいのか、増員の必要はないのかということです。
  10. 關之

    關政府委員 官房職員を増員せずに行いたいと思つておるわけであります。それは官房にも相当人員があるわけでありまするからして、繁閑に応じてこ事務を扱う者を増加し、あるいは減少して、しかるべく扱つて行きたい、かように思つておるわけであります。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次いで、公安調査庁における人員の問題でありますが、これは附則の第四項に入つておるのですか、この人員を現在幾ら置いて、これができれば幾ら置いて、現在より幾らふえる予定になつておりますか、その点を伺いたいと思います。
  12. 關之

    關政府委員 お答え申し上げます。職員の点につきましては、附則の四項に定めてあるわけでございまして、公安調査庁設置法案の第十一ページの4としてあるところに記載してございます。現在特別審査局職員は、総数千百四十五人あるわけであります。それで四項にある通り行政機関職員定員法第二条第一項の表法務府の項中四万二千三百四十二人を四万一千百九十七人に、これは落すわけでありまして、これは千百四十五を引いた数字がこれに当るわけであります。次に今度は外局として、公安調査庁を設置いたして、そこに千百四十五と新たに五百六十七、総計千七百十二人というものが公安調査庁職員に相なるわけであります。そこで第二項の法務府の項中の司法試験管理委員会何人をこういうふうに改めまして、そして公安調査庁のもとに千七百十二人としてありまするが、これがいわゆる千百四十五人と五百六十七人とを加えたものでありまして、そうして法務府の項中こういうふうに四万三千四百八十八人を四万四千五十五人に改める、かような操作をいたしまして、規定を設けた次第であります。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこで突き進んで承りたいことは昨日私が質問しましたように、かりに公安審査委員会において必要がある場合に、必要のある証拠参考等を取調べすることができるということになれば、公安審査委員会に特に人をふやさなければならぬ必要があるとお認めになりまするか、それとも官房なり、または公安調査庁のの人員でこれをまかなうことができるとお思いになりまするか。これは考えておられぬことを問うので、はなはだ無理かもしれませんが、いかがでしよう。
  14. 關之

    關政府委員 お答えいたします。お尋ねの点につきましては、委員長委員が四人で、合計五人になるわけであります。その事務を補佐せしめる意味におきまして、委員補佐三人を置いてあるわけであります。この委員補佐はもつぱら委員をお助けいたしまして、そういう調査事務を専従させるので、相当法律家をこれに当てたいと思つておるわけであります。そこで審査調査関係事務、第一次的な準備的な事務は、この委員補佐の三人がやつていただくことになると思うのであります。その他の、たとえばタイプを打つことであるとか、あるいは事件の、受理をいたすとかいうような事務はごく事務的なものでありまするから、これを官房において、官房の中の人の差繰りによりまして、事務がふえればそこの人員相当増すとかいうような操作で十分にまかなつて行けるのではないか、かように考えておるわけであります。特に今申し上げたように、この委員会委員補佐三人を置きましたのは、もつぱら調査公正完璧を期したい、かような意味で、その前に第一次的な準備的な調べをいなしたい、かように考えまして委員補佐を置いたわけであります。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうでなく、私の聞きたいのは、必要な程度証拠等調べるということになりますと、今の考えでは、やはりそんなことはあつても大したことではないし、この人員で今の通りのことでやつて行けるか、これは無理な質問かもしれませんが、証拠調べをかりに必要な程度でやるとすれば、人がいるんだ、こう思われるか、それともそのくらいなことなら大したことないと思われるか、こういうことなのです。
  16. 關之

    關政府委員 この法案の立て方といたしましては、大体五人の委員委員補佐三人で十分にまかない得るものと思つておるのであります。新たなる証拠調べはしない、しかし釈明は求める、その釈明はその五人の委員の方と三人の委員補佐によつてまかない得ることであろうと考えておるわけであります。
  17. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答え申し上げます。この法案規定していないような特別な証拠調べをこの委員会がおやりになるといたしますれば、委員会としては、若干の職員を必要とするものと考えておるわけであります。
  18. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこでもしそういうことになりますとすれば、この公安調査庁における千七百十二人というものは、これは絶対減らされぬものですか、また少しは繰りまわしてもよいものでしようか。
  19. 吉河光貞

    吉河政府委員 公安調査庁職員は必要最小限度ぎりぎりな線でごさますけれども、なお若干の差繰りは可能かと考えております。
  20. 鍛冶良作

    鍛冶委員 じや方向をかえまして、本法逐条審議に入りたいと思います。第六条でございまするが、解散指定、これはきのうも問題になつたのでありまするが、これを読んでみますると、第六条によつてただちに解散するものではないようであります。第六条によつて起る効力は第七条及び第八条の効力が発生するもので、ほんとうに解散するというのは第九条だろうと思うのであります。しかるにここで解散指定という題目で、しかも本文の中にも「解散指定を行うことができる。」こうなりますると、非常に惑いやすいのですが、私の申すことが間違いであるのか、それともこの文字は不適当であるのか、その点を承つておきたいと思います。
  21. 吉河光貞

    吉河政府委員 御質問通りでございまして、「解散指定」という言葉は、必ずしも六条によつて行われる処分内容とは完全に符号しない点があるのではなかろうか。特に法人解散解散とはまた意味を異にするようになつておる次第でございます。
  22. 鍛冶良作

    鍛冶委員 さらにこの規定で、「且つ、第四条第一項の処分によつては、そのおそれを有効に除去することができないと認められる場合に限る。」こうなつておる。ここで疑問に思いまするのは、まず第六条の指定をするには、第四条第一項の処分をやつた後でなければやれないという御趣旨なのか、それとも何か疎明とか証明によつて四条第一項の処分ではいかぬのだから、一足飛びに第六条をやるのだ、こういうお考えなのか。これは非常に大事なところでありまして、これでは不明確でありまするから、明確にしておいてもらいたいと思います。
  23. 關之

    關政府委員 お答えいたします。第六条の一号と二号との破壊活動に関する限りは、両方いずれでもできるということに相なるわけであります。但しいずれでもできるわけでありまするが、まず第四条第一項の制限的規制をやる、それをまず考える、それでどうしてもこの団体に対してはこの制限規制では破壊的活動をやる可能性を十分に除去することができない、かように資料によつて認められますならば、第六条でもできろ、かような立て方になつておるわけであります。次に第六条の第三号でありまするが、これはこの破壊活動の中から一号と二号を差引いた残りの活動であります。この活動はたとえて申し上げますならば、第二号に掲げてある行為予備陰謀、それから教唆、ただそれだけにとどまるような破壊的活動をなしたというような団体につきましては、いきなり解散はしない。まず第四条第一項の処分をいたしまして、さらにその団体団体活動として、暴力主義的破壊活動をやつた、その場合に六条の解散処分をいたす、かように考えておるわけであります。それはこれらの破壊活動内容に、やはり軽重があるわけでありまするからして、軽いものについては、いきなりは解散はしないという考え方をとつているわけであります。
  24. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この第六条第一号の、これが一足飛びにでもできるのだ、証明さえあればいいのだという今のお言葉のようであります。そうしてみると、第三号の「第四条第一項の処分を受け、さらに団体活動として暴力主義的破壊活動行つた団体」これはいらぬことになりはしないか、こういうことがなくてもやれるのだから。これで疑問が起つて来たのです。第四条第一項の処分を受けて、それでも聞かぬのでやる、こういうことが第三号に出て来るわけです。ところが前の方では、そんなことはなくてもやれるということになつて、両立しないように思いますが、この点を明瞭にしておきたい。
  25. 關之

    關政府委員 お答えいたします。この法案規定しております暴力主義的破壊活動の中には、第三条第一項に掲げるように、いろいろの種類があるわけでありまして、その中には現実の実害行為行つたもの、あるいはその予備陰謀教唆扇動というような行為まで規定しているわけであります、そこでこの中で第六条の一号と三号にあげた破壊活動は、ここに書いてあるように、一号の方は、第三条第一項第一号に掲げるすべての行為をあげているわけであります。第二号の方は、第三条第一項第二号のイからリまでの実害的な行為――暴力主義的破壊活動を行い、もしくはその実行に着手したもの、こういうような実害行為に準ずるような危險な団体行為を取上げているのでありまして、それ以外のたとえば、予備陰謀教唆扇動にとどまる――二号の関係においてとどまるようなものは、そのこと自体にいきなり解散まで行くのは、少し酷に失するから、そのような行為については第四条第一項の処分を一応しなければいけない。そうしてそれにもかかわらず、なおかつやつたという場合に六条の解散処分をする、かような立て方にいたしてあるわけでありまして、三号にいきなり第四条第一項の処分を受けたというふうに書いてある点は、やや御理解がしにくいように思いますが、それは要するに第四条第一項の処分を受けるというのは、一号と二号とを差引いたあとの破壊活動についてというふうにお読みいただけばわかるのであります。
  26. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも私には納得行きません。「第四条第一項の処分によつては、そのおそれを有効に除去することができないと認められる場合に限る。」これはよろしいのですが、そう言いながら、第三号を読んでみますると、「第四条第一項の処分を受け、さらに団体活動として暴力主義的破壊活動行つた団体」こうありまするから、第四条の第一項の処分を受けたものであればやれるということはわかります。これだけでできるわけです。だからこれだけ読んでみると、第四条第一項の処分をしなかつたならこつちへ行かれないのだ、こう解釈せざるを得ない。ところがこつちへ来てどうだというと、これはなくてもやれるのだということになりますと、どうも両立しないことになるように思います。これは大事なところですから詳しく御説明願いたい。
  27. 關之

    關政府委員 いま一度説明を補足して申し上げたいと思います。第六条の一号と二号との暴力主義的破壊活動がここにあるわけであります。これは第三条の第二号の單に予備陰謀教唆扇動にとどまる行為は除いた行為でありまして、そうしてこれらの行為につきましては、第四条処分で行きますれば、また第六条の処分請求原因にもなるわけであります。これは一号、二号に掲げてありますから、四条と六条との両方の要件に該当するわけであります。該当はいたしますが、その運用といたしましては、まず第四条で行くように考えなければならない。四条でどうもこの制限処分では十分団体危険性は除去できないという場合には初めて六条を使え、こういうのが四条と六条との関係であります。ところが今六条の一号、二号以外の、これは大体のところは第三条の一項の二号二に当る行為になるわけであります。ただ予備または教唆扇動だけにとどまつたというような行為につきましては、いきなり解散まで行くのは、その行為危険性から見て、少し団体に対して酷な待遇になるから、それだけの行為については、まず六条処分は絶対にできない。まず四条処分をして、さらにその後その団体暴力主義的破壊活動行つた場合にできる。これは文章の上から見ますと、仰せの通りあるいはもう少し説明を加えた方がいいかと思うのでありまするが、四条の各号の行為、そうして六条の一、二、三の各号の行為を解釈いたしますと、さようなことに相なります。またさようなつもりで、ここへ書いたものでございます。
  28. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それでは一号、二号の行為を除いたものについてはということですね。
  29. 關之

    關政府委員 そういうことになります。
  30. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次に第七条でありまするが、これはこの間もだれか問題にしておつたと思いますが、「前条の処分効力を生じた後は当該処分原因なつ暴力主義的破壊活動が行われた日以後、当該団体役職員又は構成員であつた者は、当該団体のためにするいかなる行為もしてはならない。」これですが、当該団体のためにする行為は一切禁止されまするが、当該団体以外の行為はやつてもよろしいのですか。もつと突き進んで申しますと、当該団体にあらざる破壊活動団体へ入つてもよろしいように聞えるのですが、それでは本法目的は達せられぬと思うのですが、その点は明瞭にしておかなければならぬ点だと思います。
  31. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。この法案規定しておりまする破壊的団体に対する規制処分は具体的な、個別的な団体を特定いたしまして、その団体に対しまして、必要量限度規制をかけるという立て方になつております。たとえば、ただいま御質問のように当該団体役職員構成員は、直接その団体のためにする行為はすることができない。しかし処分を受けた、規制を受けた団体とは関係のない他の団体に入りまして、独立して別個活動をすることは、規制の効果が及ばないという立て方になつておるのであります。
  32. 鍛冶良作

    鍛冶委員 たとえば地方地区委員会指定されました。その職員地方地区委員会行為はできません。そうすると、今度は中央本部の中へ入つて、もつと大きい仕事をしてもいいというように聞えまするが、それらはどういうことになりますか。
  33. 吉河光貞

    吉河政府委員 まことに御質問通りでございます。でただいま御質問になりましたのは、一つ団体下部組織だけが取上げられて、破壊団体と認定されまして、これに規制が加えられた場合、それ以外の他の本部または他の下部組織に参加するということは、団体破壊性が及んでおりませんのでさしつかえない。これを言葉をかえて申しますれば、一つ団体だけではなくして、ほかの団体に入つて活動する場合も同様でございます。
  34. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはおそらく破壊活動を行うとすれば、刑事訴追が伴うであろうからまだ何ですが、どうもそうなると、はなはだ目的を達せられぬようでもあるし、何もそんな破壊活動をするというたら、当該団体指定せぬでも一切破壊活動行為はこれをしてはならないとしてもよさそうなものですが、何かそこに都合の悪いことがあつたのですか。
  35. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答え申し上げます。破壊活動一切をしてはならぬということは、刑罰をもつて禁止されまして、これを犯したものは、処罰を受けるという立て方になつております。ここで問題になつておりまする規制は、一つ団体が破壊的な団体と具体的に認定されました場合に、その団体活動に対して、制限ないしは全面的にその活動を禁止するということによりまして、破壊活動団体組織によつて行われる基盤を規制するという立て方になつておるのでございます。
  36. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もう一つその裏からまた考えられるのですが、指定されたる団体役職員当該団体のいかなる行為もしていかぬ、こうなつておりますが、では指定せられない団体役職員もしくは樺成員がそれにかわつて来て、その団体活動を復活させることもよろしいのですか。
  37. 關之

    關政府委員 お答えいたします。七条におきましては、団体のためにする行為をしてはいけない者は、当該処分原因なつ暴力主義的破壊活動が行われた日以後当該団体役職員または構成員であつた者に限定されております。かように限定いたしましたのは、お尋ねのごとくそれでは目的々達することが不十分ではないかというような点でありますが、この措置につきまてはいろいろの方法も考られるかと思うのでありますが憲法における人権の保障を、かような解散措置によつて制限するのは必要の最小限度にしぼろうという考え方から、破壊活動をやつたりその機関のものだけに、その団体活動を禁止させるというのが、農もその趣旨に合致した線である、かように思つて巖格にその間に限定したわけであります。そこで今お尋ねのごとくに、全然別個の他の団体の者が、その団体に入つて来る、これは加入は処罰しておりませんから、もちろん入つて来ることは自由であります。次にしからば団体活動はどうかということになりますれば、もし新しく入つて来たものが、全然別個に、元入つていた当該団体役職員または構成員活動を禁止された者、その者と全然無関係にやるものならば、これは自由であると思うのであります。ところが多くの場合は、当該団体役職員または構成員とおそらく意思を通じ、共犯的関係に立つてやるのであろうと思いますから、その場合は、刑法第六十五条の身分なきものが身分あるものに加功したときという規定運用によりまして、そこに犯罪が成立することに相なると思うのであります。その問題はさよう考えまして、かような巖格な禁止の範囲にとどめた次第であります。
  38. 鍛冶良作

    鍛冶委員 人権尊重意味からおやりになつたとすれば、まことにけつこうなことのようですが、遠慮し過ぎるようにも心得ますが、ほかから入つて来れば、また再建し直してやりますよ、そういうものは必ず。それ以上は議論になりますが……。次は第九条ですが、「法人について、第六条の処分訴訟手続によつてその取消又は変更を求めることのできないことが確定したときは、」こうなつておる。訴訟手続をやらなんだら、いつまでも解散せずにあるわけですか。これはおそらく異議の申立をやつて訴訟するものという、前提じやないかと思うのです。やらぬという場合も考えられますが、その点はどうです。
  39. 關之

    關政府委員 この第九条は、要するにその処分が確定したときだということに相なるわけであります。それで処分の確定は出訴期間を経過いたして確定いたす場合もあり得るわけであります。また訴訟を提起いたして三審級の段階におきまして確定する場合も考えられるわけであります。そういうような両方意味を含めましてこの六条の処分が、訴訟手続によつて、結局訴訟手続をなすことができるという前提のもとにかように書いておるわけであります。要するに処分が確定した上におきまして法人解散する、かように解釈できるものと考えておるわけでおります。
  40. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の聞きますのは、第六条では、これは第七条、八条の効力が生ずるだけで、人格は死なないのですから、そこで法人の場合が第九条に書いてありますが、「訴訟手続によつてその取消又は変更を求めることのできないことが確定したときは」と書いてある。指定されて、訴訟せずにおつたら、いつまでたつても人格は死なないことになる……。
  41. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答え申し上げます。訴訟は行政処分取消変更を求める訴訟になりますので、行政事件訴訟特例法の適用がありまして、その第五条でございますかに出訴期間に制限がついております。これの適用があるものと考えております。
  42. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、その訴訟をやらないなら、第九条の第二項で行くのですか。
  43. 關之

    關政府委員 お答えいたします。ただいまお答えしたごとく、この委員会の決定につきましては、行政事件訴訟特例法によつてその取消しまたは変更を求めることができるわけであります。これは行政事件訴訟特例法第五条によりまして出訴期間は第五条第一項によりまして第二条の訴え、すなわち行政処分取消し、または変更々求める訴えを裁判所に提起し得るのは「処分のあつたことを知つた日から六箇月以内に、これを提起しなければならない。」のが第一項の規定であります。そしてまた第三項には「処分の日から一年経過したときには、第二条の訴を提起することができない。」こう書いてあります。こうしますと、もしこの期間内にこの処置をとらないことになりますと、第九条の第一項によりまして「第六条の処分訴訟手続によつてその取消又は変更を求めることのできないことが確定した」ということに相なるわけであります。そうしましてその処分は確定いたしますから、おのずから法人解散するということに相なるわけであります。
  44. 鍛冶良作

    鍛冶委員 第十二条には事件につき弁護士その他の者を代理人に選任することができる。第十三条には五人以内に限つて出頭してこれこれのことをやることができる。こうなつておりますが、この十二条の弁護士はわかりましたが、弁護士その他の者というのは、これは何人が出てもよろしいのか。資格その他の制限があるのか。十三条も同様でありますが、制限があるのでございますか。さらについでに聞きたいのは、調査官の認可なり何なりが必要ではないのか、早い者勝ちで、五人なら五人というのを全部許さなければならないのですか。
  45. 關之

    關政府委員 お尋ねの十二条、十三条の代理人につきましては、資格は全然制限がないのでありまして、その団体におきまして最も適任であると思う者を選任することができるのであります。またその選任は委員会に対する、公安調査庁審理官に対する届出その他のことも必要ないと思うのであります。但し第十三条の場合におきまして、代理人がそこに出頭いたしまして各種の弁明をなし、有利な証拠を提出するのでありますが、その場合には審理官におきまして、その者が当該団体の申請の代理人であるということを証明し、確認を求めなければならないと思うのであります。と申しますのは、もし偽りの代理人でありますならば、訴訟手続審理の手続が進行しないのでありますから、審理官といたしましては代理人の方がほんとうの代理人であるかどうかということで、必要なる証明を求めるということは、審理官の手続を進めて行く法律上の義務であると私は思うのでおります。さような手続をとりまして、これがほんとうの代理人であると審理官が認めて、そうしてそこで手続を進めて行く。かようなことに相なると思うのであります。
  46. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは代理人という以上は、当然委任状か何か持つて行かなければならぬだろうと思うのでありますが、十三条で見ますると、当該団体役職員構成員及び代理人は、五人以内に限り出頭する、こうなつております。これは一つで五人に限る意味ですか。代理人だけが五人なんですか。これがよくわかりませんが……。
  47. 關之

    關政府委員 お答えいたします。これはその当該団体役職員構成員及び代理人を通じて五人以内というふうに考えているわけであります。
  48. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると役職員構成員十人おる場合はどういうことになるのですか。分離してやらなければならぬことになりますか。
  49. 關之

    關政府委員 役職員がそれだけおりますれば、そのうちの五人が出て参つて弁解をなすことができる、かように考えております。要するにこの五人は、その団体を代表いたしまして、審理官の前に来て意見を述べ、証拠を提出するものである。かように考えております。
  50. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると代理人、構成員を通じて五人、こういうことになるわけですな。その次十四条も同様でありますが、これも人間に制限というか、数は制限してありまするが、資格その他に制限がありません。ただ届け出なければならぬ……。
  51. 關之

    關政府委員 お答えいたします。資格には何ら制限はありません。団体側において最も適当と思う者を選任することができるわけであります。
  52. 鍛冶良作

    鍛冶委員 第三項では、「新聞、通信文は放逸事業の取材業務に従事する者は、」これは数に制限はないようでありまするが、これは業に制限があるわけですな。数には絶対制限がないのか。それから業に制限がある場合には、どういう方法で、確かにその業者であるということをお認めになるおつもりであるか。この点を明らかにしておいてもらいたい。
  53. 關之

    關政府委員 お尋ね通り、業には「取材業務に従事する者」という制限があるわけでありまして、それらの証明は、傍聴せんとする者が審理官にみずから立証して承認を求めなければならないと思うのであります。数につきましては、制限はいたしておりません。但し部屋の広狭等によりまして、傍聴券というようなことは考えざるを得ない場合が生ずるかと思うのであります。
  54. 鍛冶良作

    鍛冶委員 別に今のところ証明方法などと、いうものはお考えになつておりませんか。これはたいてい適宜にやれると思うのでありますが……。
  55. 關之

    關政府委員 お答えいたします。特段に今考えていないのでありますが、一応の予定といたしましては、各その所属している社の証明書を持参願うとかいうような方法によつて取扱つて行きたいと考えておるわけであります。
  56. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほど第四条規制と第六条の規制についていろいろ質問いたしましたが、さらに二十一条へ参つて、この疑問が出て来るのであります。この第二項では六条の処分請求があつた場合に、六条にはかからぬけれども、四条ならば至当と思えば四条でやれる、こういうことになつております。四条請求が至当だと思つてつたときに、審査の結果六条が至当だと思つたらそういうことはできるのですか、できないのですか。
  57. 關之

    關政府委員 この法律の立て方といたしましては、そのお尋ねのあとの場合はできないというふうに考えておるわけであります。調査庁長官において四条相当と思料して請求した場合に、委員会としては逆に六条が相当ではないかと思いましても、それはできないと思うのであります。さようにいたしましたのは、やはりこれが一種の不告不理的な、調査庁長官が請求しなければ、委員会の方では決定をしないという建前をとつておるわけでありますから、請求した以上に団体に対して不利益な決定をなすことは、団体に対して酷にも考えられますから、団体の権利を尊重するという趣旨と、審査委員会の権限の独立性の調和とをその点に求めまして規定いたした次第であります。
  58. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうしますと、いわゆる請求の範囲に限るということに解釈するのだろうと思います。もつといえば刑事訴訟法では刑事訴追の範囲に限るのだろうと思いますが、後段の規定があるから、六条の請求があつて四条はできるのだが、かりにこの第二項の後段の規定がなかつたら、六条の請求があつたときに四条に該当すると思つてもできない。これは論理の話ですが、論理的にはそう御解釈になりますか。
  59. 吉河光貞

    吉河政府委員 お尋ね通りでありまして、第十九条には、公安調査庁長官処分請求をする方式としまして、四条処分をするか、六条の処分請求するか明記して出すことになつておる次第でございます。
  60. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この点も先日来ずいぶん問題になつたところでありますが、第二十四条の第三項は、これはまつたくの注意規定なのか。これはやはり一種の裁判所に対する義務を負わせられるものか。それともあなた方の方から――こういう趣旨だから拘束するわけには行きませんが、できるだけ百日以内にやつてもらいたいということを要求でもしよう、こういうお考えでありますか。
  61. 關之

    關政府委員 この規定は、裁判の独立ということに対しては、何ら触れる考えを持つていないわけでありまして、要するに、独立の範囲内におきましてできるだけこの規定でこの範囲内にやつていただきたいという、いわばまつたくの訓示規定に相なるかと思うのであります。しかしこの規定がある限りにおきましては、裁判所におきましても、他の訴訟事件の順序にかかわらず、迅速にこの事件に精力を集中していただいて処理願えるように大体考えていただくであろう、かように考えておるわけであります。私の方から特段に請求のようなことはいたしません。
  62. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もちろん裁判所に対することですから、それはわかつておりますが、またこの規定がないよりあつた方がいいだろう、そういうことはわかりますが、もつと逆に考えてみますと、こういうものがあるから、片方で急ぐ人は、裁判所に、百日以内でやれと書いてあるのに、なぜやらぬかといつて、盛んにさかねじを食わせて裁判所が困るようなことはありませんか。われわれはそういうことを考えるのであります。これは御答弁の限りではないかもしれませんが……。
  63. 關之

    關政府委員 関係者におきまして、この規定があることを裁判所に申し出て、訴訟審理の促進を申し出るというようなこともあるかと思うのでありますが、すべて裁判の独立の範囲内において、関係人がさようなことをお願いするのももとより法律上は違法とすべきではないと思いますが、あるいはさようなことによつてまた訴訟の促進に資することがあるかもしれないと考えた次第であります。
  64. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはきのうもちよつと問うてみたのですが、おそくなつてつて詳しく聞かなかつたのですが、二十七条の二項に「検察官又は司法警察官は、事務の遂行に支障のない限り、前項の求に応ずるものとする。」こう書いてありますが、裁判所は求めに応ずる必要はないのですか、裁判所へ行つて記録へ行つてしまつたら、きのうは検察官の要求を通じてということでしたが、もし裁判所において、それでも困るといわれたら、どうしようもないのですか、証拠を見せてもらうだけならさしつかえないように思うが、その点御不自由はございませんか。
  65. 關之

    關政府委員 第二十七条には裁判所掲げてないのでありまして、かりには裁判所の方の記録についてぜひ見たいというようなものがありますならば、方法としましては、検察庁の方にお願いいたしまして、処理いたしたい、かように考えておるわけであります。つきまして、そのような考え方をとりましたのは、裁判所行く行くはこれが事件なつたときに、裁判所の方に係属するわけでありまして、一種の第三者的な立場に立たれるわけであります。それで事前にあるいは裁判所の方にかようなことを申し出るのは不公正というような、全般の上から見まして当を得ないものであるからとも思いまして、特に裁判所を入れないで、かような規定にいたした次第であります。
  66. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それから二十九条ですが、これもきのう触れておきましたが、もうちよつと聞きたいのは、これは公安調査官は「調査のため必要があるときは」、必要の有無は、おそらく公安調査官が必要ありといつて要求すると思いますが、もし相手方において必要はないのだ、こういうた場合には、この規定で、いや、わしの方には権利があるのだといつて乗り込めるのですか、どういうのですか。
  67. 關之

    關政府委員 これは公安調査官のかような捜査に立ち会うことができるという、法律的にさような権限といいましようか、できる権能を一応認めておりまするから、立ち会うことがたとい拒絶されても、立ち会うことができることに相なると思うのであります。しかし実際問題といたしましては、さようなことは私どもとる考えは毛頭ないのであります。すべて警察官との協力によりまして、向うの十分なる了承を得た上で相互いに協力していただいて立ち会うなら立ち会いたい。かようなふうにいたしたいと思つております。
  68. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 猪俣浩三君。
  69. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 念のために確かめておきたいわけでありますが、これは別にあるいは明らかになつたかもしれませんが、第三条であります。破壊活動防止法、本案に反対する行動は政治上の施策に反対することになるのでありますかどうか。
  70. 吉河光貞

    吉河政府委員 御質問通り考えております。
  71. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 労働組合法の改正について、労働組合が反対することもやはり政治上の施策に反対することになりますか。
  72. 吉河光貞

    吉河政府委員 御質問通り考えております。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから三十九条でありますが、これも確かめることでありますが、刑法百六条の罪を扇動した者は独立罪として処罰される、そうしますと、これの刑法通則との関係上、刑法百六条々扇動した者を教唆した者、及び教唆した者をまた教唆した者、そこまで犯罪が及ぶのでありますかどうか。
  74. 吉河光貞

    吉河政府委員 刑法一般原則の適用がございまして、共犯例の適用もあるものと考えております。
  75. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 いま一点は、これは一種の観念論みたいなものでありますが、第三条の三項、団体の定義でございますが、「特定の共同目的を達成するための多人数の継続的結合体」こうなつておりますので、これは財団法人は含まないことになるのですか。
  76. 吉河光貞

    吉河政府委員 財産それ自体はここにいう団体ではございませんが、この財産をめぐりまして、そこに多数人の結合体が生れ、共同の目的を達成する継続的な結合体が現実に認められる場合におきましては、その団体が該当するものと考えております。
  77. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると登記してある財団法人というものはならないが、その財団法人を維持する何か現実の団体があれば、それがこの団体になる、こういう御答弁ですか。
  78. 吉河光貞

    吉河政府委員 さようでございます。
  79. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから第二十一条、この点について先般御質問したのですが、吉河局長の答弁と關政府委員の答弁とは私は何かはつきりしないような気がするのでありますが、この「証拠及び調書並びに当該団体が提出した意見書」、この意見書の中に、公安調査官に提出しなかつた新たなる証拠をつけて、全体が意見書として提出せられるのであるかどうかということについて、もう少しはつきりと御説明願いたいと思います。
  80. 關之

    關政府委員 お答えいたします。その証拠で新たなる証拠調べ、あるいは証人調べを求めるというようなことはできないのでありまするが、できないとしましても、かりにそういう請求をいたしましても、委員会としましては、新たに証拠調べはしない。しかし公安調査庁審理官に提出しなかつた文書その他は意見書内容に添付いたしまして提出することはできると思うのであります。そうしてそれらの証拠能力の判断は、一に委員会の自由心証にまつのであります。
  81. 吉河光貞

    吉河政府委員 闘政府委員と答弁の食い違いはないのございますが、なお補足いたしますが、意見書内容として、さような証拠を援用するということはできると考えておりますが、意見書として委員会の判断を受ける新たなる証拠調べ請求求することはできない、かように考えております。
  82. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 眞鍋勝君。
  83. 眞鍋勝

    眞鍋委員 私は法務総裁にちよつと御答弁をお聞きしようと思つてつたのですが、このごろ目をわずらつておるので、ほんの一、二だけあなたに御相談をしようと思つております。一、二質疑もそこにありますが、熱心というか、毎日ここに出席して、委員なり政府当局の応対を聞いておつたが、みなこの法案を非常に重視せられまして、委員諸君の熱心なる質疑、または政府の熱心なる御答弁に私は実は感心をしておる。けれども、この質疑も本日をもつて打切られるというようなことでありますので、私はこの質疑の観点をかえまして、総裁に一つ聞いてみようと思うことは、第一に、この名前は、世耕委員からこの委員会に付託されたその当初において質疑があつたのでありますが、私もこの名前にあまり感心しない、これはすなわち外国語の直訳としてはいいかもしらぬけれども、こういう名前ではもう少し考慮を要すると思いますが、しかしこの名前は破壊活動防止法でありますから、物事を破壊するのを防止するのだからして、よくわかつておる。わかつておるにもかかわらず、公聴会なり野党の委員諸君の質問を聞いておると、大体反対でおりまして、公聴会でも、賛成はあるけれども、条件付賛成であつて、多くの人がこれに対して反対を唱えておるのを聞きまして、私はいささかどういうわけであるかと思つておるが、しかしながら、この前の治安維持法という法律とよく似ておつて、これにひつかけられた者はよく記憶をしておりますから、政府は親切にそういうふうに言つておるけれども、いよいよそれを運用するときになつたら、言論の自由を圧迫するとかいろいろこれに伴つて有害な面があるということを心配されるのであろうと思うが、要するに、運用は人にあると思う。この法律が世の中に出ていかなる結果を生むだろうか、もうかれこれ二年もになりますが、警察当局でありますか、共産党が地下にもぐつた人をよう捕えない。昔ならばこれを捕えたであろうが、今日はなかなかつかまらぬ。すなわち昔から、呑舟の魚を逸して小魚を網する、舟をのむくらいの魚は抜けてしまつて、そうして小さい魚が網にかかるといいますが、この法律においてもその通りじやないかと思う。これだけ警戒しておるのを見ると、あるいはせつかくこの法律ができても、ほんとうにつかまる人間は正直な人間でありまして、諸君がほんとうにつかまえんとする魚が逃げてしまわないかと私は思うのであります。歴史は繰返すのでありますが、千何百年前に――十八史略や史記においても有名なことでありますが、秦の始皇帝は、天下をとつた以上はこれを万代に続けようと思つて、北狄が来るのを防ぐために万里の長城を築き、土木が非常に盛んであつたがために、その結果というものは租税が非常にかかつた。そこで世論は沸騰したのでありますが、詩人はこれを笑うて、たしか汪遵であつたか、「奏築長城比鉄牢。蕃戎不敢迫臨桃。焉知万里連雲勢。不及堯階三尺高。」と歌つた。秦は万里の長城を築いて鉄のかたきに比したけれども、堯階三尺の高さに及ばなかつた。堯舜時代は、支那の歴史上において、非常に徳を積んだ世の中でありまして、万里の長城とか、城は築かなかつた。平野で、わずかに階段三尺の高さの宮殿において、徳をもつて世の中を治めたから、この時代は非常に静謐であつたということで、詩人ばかりではなくて、当時の歴史を回顧するのでありますが、われわれはこの法律にはどうしても賛成しなければならぬ。しかるに野党諸君は反対を唱える。しかも反対を聞いておると、ねこがねずみをとつたように、ようとつたと言わんばかりに、あのメーデーの当日においても――與党諸君は、はなはだけしからぬと言つておるが、これに反対をする諸君、特に共産党の諸君は、成功したと新聞に書いてあるような調子で、見方によりますが、総裁はいかに感じますか。一体この法律によりまして、ほんとうにひつかかるものが、共産党であるか、あるいは善良な人であるかを私は疑うのでありますが、この法律が通過したならば必ず目的を達するという総裁の御意見でありますか、まずこの意見と、この名前の点と両方を聞かしていただきたい。
  84. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの御意見ごもつともであります。私の考えといたしましてはこの日本が、講和條約が発効いたしまして、真の平和、文化的国家を建設しなくちやならぬのでありますが、その途上におきまして、いやしくも国家の治安、ことに破壊活動をして自分の目的を達するというような団体、これは一日も捨て置くことはできないのであります。従いまして、治安の確保の面からいたしまして、さような団体は早急に規制して行かなければならぬ。またこの規制と同時に、さような凶悪なる行動に出たるものは、これを処罰して行かなければならぬ。日本の治安確保の上において欠くべからざるところであろうと確信しておるのであります。従いまして、この法案趣旨としておるところは、今眞鍋委員の仰せになりましたように、国家治安の面から見まして、まつたく緊急欠くべからざるものと政府は確信しております。そこでこの法案運用におきましては、この民主国家においてできるだけ個人の基本的人権を害さないように、そうしてその手続においてもきわめて民主的にこれを行うことが当然なことでありますから、その方におきまして、政府といたしましてはできるだけの手当をしたのであります。しこうして、この法案におきまして呑舟の魚を逸するおそれはないかという御質問でありますが、この法案運用におきまして、できる限りさようなことのないように、しこうして、この法案に基きまして、われわれのねらうところの国家治安の対策というものを立て得るのであります。しかしこの法案それ自体でもつてすべてのものが解決するかということは、私はそうはいかぬと考えております。あらゆる施策とあらゆる面から考慮いたしまして、この法案を基盤として、そうして国家の治安を守つて行きたい、こ考えております。治安の面につきましては、ただいまの仰せのように、できる限りこれを活用いたしまして、呑舟の魚を逸しないようにとりはからいたい、こう考えておる次第であります。
  85. 眞鍋勝

    眞鍋委員 私はもう二点ばかりお尋ねをいたしますが、このメーデーに関しまして、議員の中にも実際これを見た人もある。私は見なかつたけれども、新聞や雑誌において承知をしたのでありますが、罪のない巡査をほりに投げ込んで、出て来ようとするのを、石を投げたりして妨げたということであるが、もし今日の世の中に、司法の警察官がなかつたら、この世の中はどうなるであろうかと私は疑わざるを得ないのでありますが、その巡査をほりに投げ込んで、そうして快とするのは、われわれははなはだ疑わざるを得ないのであります。由来、共産党に多く見るが、無宗教者である。無宗教も一つの理論は立ちますけれども、眼中に宗教がない人はえてして――仏教であれば慈悲であり、キリスト教であれば愛であり、儒教であれば仁義道徳、日本流に解釈すれば、義理人情といいますか、この義理人情なく、道徳なく、愛なく、慈悲がないのが共産党の特色であります。ことにその総帥であるスターリンは、火事どろぼうするような調子で、昭和二十年でありましたか、満洲に出動しているわが兵を捕えて酷使をしたり、あるいは諸施設まで持つて行くというような火事どろぼうをした。もし志天下にあるならば、道徳とか宗教なくしては、長い目で見るときに、天下を云々することはできまいと思う。いわんや、彼の眼中に道徳なく、無宗教である。スターリンのためにわれわれは非常に惜しむのでありますが、この点より見ましても、メーデーの日何ら罪のない警官をしてかくのごとくならしめたということは、はなはだ遺憾でありますから、私はこの点において野党にひとつ考えてもられなければいかぬと思うのであります。しばしば奏の始皇帝のことを言うて相済まぬが、秦の始皇帝のころと今日の時節と同じことであると思う。すなわち世の中の人は侃々諤々の論議をし、奏の時代も同様で、始皇帝は李斯の言を用いて、非常に儒生を坑殺した。「竹帛煙消帝業虚。関河空鎖祖龍居。坑灰未冷山東乱。劉項元来不読書。」という詩がありますが、すなわち秦の始皇帝は、儒生があまりに時勢を痛論するというので、たしか三百人か――その時分のことでありますからわからぬが、これを捕えて、穴を掘つて燒き殺し、そうしてこれを埋めたということでありますが、「竹帛煙消帝業虚。」万代の長きに伝えんと思つたところの秦朝は、二世にして滅び、そうしてこれにとつてかわつた劉邦は、われ馬上において天下をとる、何ぞ書を必要とせんと言い、項羽は、書は姓名を記すれば足ると言つたが、しかしながら項羽は無学ではない。あの最期のときに、妾の虞氏をして舞わしめたときのあの五言の詩がある。無学であつたならばあの詩を読むことはできぬから、相当の学問があつたと私は思う。これらの人の時代を見ると、今日とよほど似ておりはせぬか。法律家は、法律を制定したならば世の中は太平であるとするが、もし嚴刑酷罰でもつて世の中が治まるならば政治はたやすいが、嚴刑酷罰ばかりでは世の中は治まらない。前にも言つた通り、秦は万里の長城を築いたけれども、堯舜のときの宮殿三尺の階段の高さにも及ばなかつたという。ここにおいて章碣の詩のごとく、学者を焼き殺した灰がまだ消えぬうちに山東乱れて、天下は結局劉邦の手に帰したが、劉邦が天下をとるときに、父老に約したのに、法三章があります。法三章とは、このときに始まつた言葉であります。すなわち劉邦がもし天下をとつたならばこれまでの複雑な法律をやめて、法は三章でよろしいといつた。この時代を大いに考えなければならぬと思うが、今日この世の中を見ると、今言つたごとく、罪のない巡査をほりにたたき込んで、上から石を投げたりするのは、仁義道徳に欠け、義理人情をわきまえぬ世の中であると思う。だからこの点に対しても、総裁初め、法律制定をする人はよく考えなければならぬと私は思う。いかに嚴刑酷罰をもつて臨んでも世の中は治まらない。これにとつてかわつた人間は劉邦、項羽であつて、あまり学問を尊重しなかつた。しかしここに考えなければならぬことは、この前の東大事件のことで、矢内原東大学長、これが絶対平和論というものを、一月号の、「世界」という雑誌に書いておる。この絶対平和論を読んでみると、われわれと同じこともないではない。はなはだ少いが、そういう点もあるが、しかし社会を知らぬ。社会を知らざる人間が学長になつているから、この学長の下にこの学生ありで、東大事件が起り、あるいは早大事件が起る。投票によつて学長はきめるのであるから、こういう絶対平和論を唱える人に共鳴する人もあるに違いない。これらの大学で書を講ずるいろいろの学者たちの投票によつて今日学長を決するのでありますから、かくのごとき論議をするところの矢内原学長に似通つたものもたくさんある。してみると、これらの先生も相当考えなければならぬ。のみならず、この「各大学並びに諸学校関係日本共産党細胞に関する資料」というのを拝見してみると、どこの大学でもほとんど細胞がある。これに出ておるのはこれだけでありますが、このほかにどれだけの危険思想を有する人間があるかもわからぬ。この絶対平和論に共鳴する学者が多いから、この矢内原君のような学長が出て来るし、前の学長は、所もあろうに、アメリカへ行つて、全面講和論を唱えたりした。もつとも前学長は演説もうまいそうだが、ソビエトへ行つて全面講和論を説くならいいけれども、アメリカへ行つて説くというような調子である。歴代の学長がかくのごとき人間である。これによりまして東大の性格もうかがうことができる。きよう総裁に聞かなければならぬのは、かくのごとくできた人間を罰するところの破壊活動防止法をやつたところが、ほんとうには効果は少い。いかにすればこれら破壊分子を出さぬようにするか、根本的の対策というものが、ここにお尋ねしなければならぬ問題である。今申し上げたごとく、矢内原学長の絶対平和論をお読みにならぬ方は、一月号を読んでみたらすぐわかる。これは世の中を知らぬ人の論議である。すなわち世の中を知らざる人間が学長になつているのがはなはだ多いし、また学長を助けて講釈をしておる先生たちの多くは、つまりわれわれと考えが違う。学問は相当あるであろうけれども、世の中の実際を知らざる人間が、学長になり、教授となつておる。今日の過誤がここにあると思うのでありますが、要するに、学生とか婦女子、これをくみしやすしとなし、共産党が働きかけておる。これらの学生なり、あるいは婦女子は、よほど考えなければならぬ。これまでの歴史を調べてみると、学生のいわゆる暴動といいますか、これらのものから世の中の革命というものが発足しておるのでありますから、この学生の言動というものはよく考えなければならぬ。ことに東大のごときは、一人前八万ないし十万円かかる。八万、九万の国家の費用を投じておるところの人が、学問をせずして労働問題に没頭し、巡査をこづいりたりするようなことではいけないと思いますから、これに関する総裁の御意見もひとつ聞いてみたいと思う。
  86. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答いたします。われわれも平和を愛好するものであります。おそらく平和を愛好しない者はなかろうかと考えております。ある一部の者は平和を愛好しないかもわかりませんが、大多数は平和を愛好するものと私は確信して疑いません。それで矢内原総長の平和論、これは議論の余地はありましよう。しかし平和を愛するということについては、私は同感であります。その根本の理念においては異なるところありといたしましても、その平和を愛好するということについては同感であります。そこで矢内原総長の、その平和論の根拠とする思想が何であろうとも、これは御承知の通り憲法に認められた思想の自由でありまするから、これについて干渉は毛頭もできないのであります。事は、その理念に基いていかなる行動が表面に現われるかということであります。口で平和を唱えながら、裏面に立つて国家の基本的秩序を破壊するというようなことであれば、これは国家治安の面から見て一日も許すことのできないことであります。そこでこの法案趣旨とするところは、その根底における思想の何ものたるとを問わず、いやしくも国家の治安を乱すような、この第三条にあげておりまする内乱を企図したり、あるいは騒擾を現実に扇動したりするような恐るべき暴虐行為に対しては、これは一日も許すことはできないのであります。この法案において、これらのことを企図するような団体規制しまたはこれを刑罰法規によつて処罰しようとするのが主眼であります。さような意味合いをもつて、この法案趣旨とするところは、人の思想を取締るという点は毛頭もないのでありまして現われた現象を対象といたすのであります。
  87. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 時間の関係もありますから、なるべく要点的にお願いいたします。
  88. 眞鍋勝

    眞鍋委員 もう一点でありますが、きようは文部大臣も来てもらつて、私は教育的観点からひとつこの法を論じてみたいと思つて、原稿をこの通りつて来ているけれども、きようは文部大臣が来ておらぬから、教育論はやめますが、思想の点については論議をせぬと言われたが、根源はこれである。いかに法律を出したところで、法律にひつかかるのはわずかしかない。病気もその通りでしよう。病気にかかつて後お医者にかかるよりも、病気にかからぬ方がいいのですから、この破壊活動防止の法律にかからぬうちにこの国をりつぱにすることが必要である。私はきよう総裁に相談しようと思つたのは、この根本対策としていかにお考えになつておるか。これは学校教育あたりも論じなければならぬが、この間のメーデーにおいては、あるいは世田谷あたりの実情に徴してみると、十七、八歳の女にして、学校の先生に連れられて、あるいはメーデーに参加したために貫通銃創を負うた学生がたくさんあつて、父兄は驚いて、その女生徒を連れて警察へ行くというものもあつたらしいのでありますが、世の識者は非常にこれを憂えている。私は今日のこの議会においてはあまり期待を持つておらぬ。この次の選挙でいかなる判断を下すかということについて私は非常に楽しみにしている。というて私は落ちるかもしれないが、それはしかたがない。衆議院の玄関を調べてみればあの札がかかつておるものはわずかしかない。三分の一くらいだ。あとの三分の二は国へ帰つて選挙運運動をしておる。ここへ来ておる人は熱心にやつておる。しかしいなかへ帰ると、議会で献身している人の行為よりか、いなかをぐるぐるまわつておる人の方がすきかもしれぬ。でありますからこれらの点をいかにするかということも一つの問題でありますが、しかしこれは進んで来ると選良を選出した人が知つてくれるだろうと思います。とにかくほんとうに国家のためを憂えて言論機関としての議会の運営に参画しておる人は少いのでありますから、この点あたりも考慮していただかなければならぬ。問題は今の根本対策についていかに考えておるかということなのです。この法律を通過せんがために、あるいは法務総裁であるとか最高裁判所の長官は、われわれ法務委員を招待されて一夕歓談するが、さて根本の対策となつてみるとやつたことがない。皆様が心配してこの破壊活動防止法案の審議をすることもよろしいが、これにかからぬために、予防するために根本対策を研究されんことを私は望む。ほんとうに総裁にお願いするのはここにあると思う。医者にかからぬように、病気にかからぬようにするのは常に用心しなければならぬ。国家においても常に用心すれば、学生あるいは婦女子が日本国の将来をほんとうに考えるようになる。実際おつしやるような学者は、これはあつてもしかたがないが、やはり学者は学問と世の中のことを知らなければならぬ。ところが今日の学校、ことに大学に教鞭をとるところの人にして、世の中の実際を知らぬ人があるから今日私はこの論争をするのである。私はこのころ目をわずらつて、病気のために言いたいことも言えぬから遠慮しておる。しかしながら毎日ここに来て諸君の論議を聞いておるから、諸君の意のあるところはわかつておる。第何条第何項というてみんなが質問するけれども、私のような質問はおそらくないだろう。ないけれども私は諸君とともに国家の前途を憂うるためにこの質問をしたのでありますから、どうか根本の対策について総裁がお考えあらんことをひとえにお願いしまして私の質疑を打切ります。
  89. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 先般世耕委員より委員長に対しまして、文書をもつて法務総裁に質疑の申出がありますから、その要旨をお伝えして御答弁を願いたいと思います。  日本の治安確保のために本法案の完な遂行のためには、特に調査機関の全拡充強化が必要ではないか。またそのためには政府は現にいかなる予算措置をなされておるか、また将来いかなる予算措置がなされようとされておるかということが質問の要旨であります。御答弁を願いたいと思います。
  90. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。この法案運用につきましては十分遺憾なきを期したいと考えております。それにつきましては調査庁の拡充強化をはかりたいことはもちろんのことであります。予算措置につきましては、ただいまのところでははつきりした案は持つておりません。いずれ法案が通過いたしますればその点についての十分なる手配をいたしたい、こう考えております。
  91. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 政府委員より、従来の質疑に対する答弁の留保があり、これに対して発言を求めておりますからこの機会に許します。
  92. 清原邦一

    ○清原政府委員 先日の委員会においてお尋ねのありました、国家権力の行使に対して正当防衛があり得るかという問題、及び国家的法益を防衛するために正当防衛が成立する場合があるか、この二点につきましてお答え申し上げます。  まず第一点、国家権力の行使に対して正当防衛が成立する場合があるかという問題でございますが、国家権力の行使は国家公務員の職務行為として行われるものであります。しこうし国家公務員の職務行為は、明白にして重大なる違法行為でない限りは――その行為の有効、無効あるいは適法、不適法の問題につきましては、法律上許されたる手続と手段によつてのみこれを争うことができるのであります。換言いたしますれば、一般的の見解において国家公道員の職務上の行為と認められるものに対しましては、裁判によるか、あるいは訴願の方法によつてのみこれを争うことができるのであります。次にかりに国家公務員が行つた行為が、その権限を濫用したものであり、明白にして重大なる違法行為行つた場合でありますれば、その違法行為は一般的の見解において職務行為とみなし得ることができないのでありますから、この場合においては刑法三十六条の所定の要件を具備する場合には、正当防衛を認め得る場合もあろうかと存じます。但しこの一般的の見解とは、あくまでも社会通念に照しまして厳格かつ合理的に判断すべき見解でありまして、当事者一方の独断的な見解を基本とすべきものにあらざることは申すまでもないところであります。  次に国家的法益を防衛するために正当防衛権を行使することがあるかどうか、この問題につきましてはいろいろ学説もあるのでありますが、たとい国家的法益について正当防衛が許される場合があるといたしましても、元来国家的法益の保全あるいは防衛は、国家の公共機関本来の任務に属しておるものでございますから、たやすくこれを私人あるいは私的団体の行動にゆだねることはかえつて秩序を乱り、あるいは事態を悪化せしめるゆえんであります。従いましてかりに国家的法益を防衛するために正当防衛を主張し得る場合があるといたしましても、それは国家公共の機関の有効なる法的の活動がまつたく期待しがたく、かつ署しく緊迫した場合のみであり、かつ刑法所定の正当防衛の条件を具備した場合に限定せらるべきものであろうと考えます。従いましてその他の場合におきましては、国家的法益のための正当防衛は許されないものであろうと解しております。
  93. 關之

    關政府委員 さきに佐竹委員より、公職選挙法の罰則と本法案の罰則との関係についてお尋ねがありましたのでこれに対しまして調査いたしました結果をお答えいたしたいと思います。ここで公職選挙法と本法案との関係において問題になりますのは、公職選挙法には第二百三十条に多衆による選挙妨害罪が規定してあるのでありますが、これが刑法の騒擾罪、従つて本法破壊活動の騒擾に関する行為、これと関連を持つて来るのであります。これにつきましては立法当時の過程などを調べまして、ただいまにおきましては政府といたしましては、この公職選挙法の二百三十条の多衆の選挙妨害罪は刑法の騒擾の段階に至らない程度のものを規定したものである、もしこの多衆による選挙妨害の事案が、刑法の騒擾の程度に至るならば、その騒擾の罪として処分する。従つて両者がダブるような場合を法律としては考え規定したものではない、かようなことに相なつているのでおります。立法の経過をたどつてみますと、このようなことに相なつておりますから、御了承願いたいと思うのであります。従いまして、公職選挙法におきます扇動というようなものも、そういうような騒擾の罪に至らない程度の、多衆による選挙の妨害を扇動する行為に相なるのでありまして、本法案規定いたします扇動とは、おのずから違つて来るのであります。次は田嶋委員よりの御質問でありまして、本法案の第三条第一項の二号のとの関係におきましての御質疑でありました。リは「検察若しくは警察の職務を行い、若しくはこれを補助する者、法令により拘禁された者を看守し、若しくは護送する者又はこの法律の規定により調査に従事する者に対し、凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなす刑法第九十五条に規定する行為」、この問題におきまして「凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなす」という規定につきまして、整理して答えるようにという御希望がありましたので、事態を区別いたしまして、ここで御説明申し上げたいと思うのであります。まずこの項につきまして、問題を二つにわけて考えてみる必要があると思うのであります。第一は、これが団体規制の面として働く面と、そしてかかる行為が個人的に犯罪として処断される面と、二つの面にわけて考える必要があるわけであります。そこでまず、団体規制の面としてかような活動がおつた場合に「凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなす」という事項はどういうふうに考えるべきものかという問題でありますが、これについては、すでに政府におきましての従来の答弁通りでおりまして、要するに団体の意思として、多衆共同して凶器または毒劇物を携えて行く、こういうことが要件でありまして、かような「凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなす」、こういうことを団体の意思として決定し、そうしてこれを実行、すれば、その多衆の中のただ一人が凶器または毒劇物を携えていたにすぎない場合でありましても、当然本法案第三条第一項第二号のリに該当するものとして、規制を受ける一つの条件と相なるわけであります。またこの第二号のヌに、「この号イからリまでに規定する行為の一の予備陰謀教唆又は、せん動をなすこと」というふうに規定してありますが、これも団体規制という面から見ますならば、今御説明申し上げたところとまつたく同じでありまして、そういうことを団体が行うというふうに、団体自体として決定いたしまして、そうしてその予備陰謀教唆扇動を行いますと、この規制一つの条件を満たすおけであります。次にこの条項と個人的な刑罰の面において動く場合において考えてみますに、それは次のようになるのであります。まずリの「凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなす」運動に対し、刑法第九十五条の公務執行の妨害罪を現実に犯した、その既遂行為の場合でありますが、この場合はこの法案として特別の犯罪類型を規定しておりません。それですべて刑法の第九十五条の適用の問題となるのであります。従つて一人が携えていたとかいないとか、特にそういう犯罪類型をつくつておりませんから、もつぱら刑法の第九十五条の解釈適用の問題に帰するのであります。次にはこの「凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなす」、刑法第九十五条に関するその行為予備陰謀に関しましては、この法案の第三十九条第三号に犯罪として規定してあるのでおりまして、そのような予備陰謀でおります限り、その多衆の中のただ一人が凶器等を携えることにいたしました場合におきましても、本法案第三十九条が適用されて来るのであります。もちろんそれは凶器または毒劇物を携えて大勢で行つてやろうという、その行為予備陰謀でありますから、お互いの間にそういうことを相談して、そういう行為をしようというところの意思の通謀であるとか、いうことが要件でありまして、要するにそういうものとして、この法案の三十九条の罰則の適用を受けるわけであります。また教唆扇動につきましても、ある人が他の者に対しまして、大勢一緒になつて警察官にひとつ公務執行妨害をやつてやろう、その場合お前だけが分担して凶器と毒劇物を携えて行けというような場合にも、もとより本法案の第三十九条の適用があるのであります。以上の通り、場合をわけまして従来の説明を補足いたした次第であります。
  94. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 法務総裁お尋ねをいたしまして留保になつておりまする二点について、この際お答えを願いたいと存じます。第一点点、治安確保のための法律は、ただにこの法案だけでは目的を達することができないものであるということは、常におつしやつておられるところであります。そこでこれと運の関係のある集団示威取締法、ゼネスト禁止法、プレス・コードの立法化及び警察法規改正等については、私が過般質問をいたしました後多少、かわつておるようであります。一部すでにその実行に着手されたものもあるようでありますが、この中にはまだ何とも政府がその意向々表明しておらぬ分もあります。従いまして、これに対します政府の根本的な考え方、これを明らかに願いたい。第二点は、治安関係の行政機構改革について、法務総裁はどのような構想をお持ちになつておるか、この二点をこの際明らかにしておきたいと思います。
  95. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。プレス・コードの立法化については、ただいまのところ考えておりません。集団示威運動に対しましては、御承知の通り、府県、市町村の条例でみな各別に定められておるのであります。また定めない所が多数あるのであります。しかして定まつた所も、その内容においてはきわめて区々でおります。従いまして、これらの運動等につきまして法律をもつてこれを明確化したい、こう考えております。そうしてその秩序のための必要な最小限度において、独立後の民主主義国家にふさわしいものとしたい考えをもつて立案しておるのであります。次にこのゼネスト禁止についてであります。いわゆるこのゼネストが広汎かつ深刻に行れわまして、国民生活や国民経済を危うくするようなことになつては、ゆゆしい問題であります。これを避けるためには、政府といたしまして、全力をあげて努力しなければならぬのは当然であります。しこうしてこのゼネストと申しましても、いわゆる経済ストの場合におきましては、これはいわゆる純労働問題でありまして、極力労働関係調整法等によつてこの問題を解決すべきは当然であります。しこうして政府があらゆる行政上の処置によつても、なおかつこの問題が解決せず、国民生活や国民経済を危殆に瀕せしめ、治安を乱すような事態に立至つた場合も考え得るわけでありまするが、かかる場合には治安の保持の面からいたしまして、その措置を講ずる必要があるのであります。これに反しまして、いわゆる政治ストの場合におきまては、これは当初かち労働法の保護を受けるに値しない性質のものであります。このような重大な事態に立ち至つた場合においては、もとより治安保持の面からしてこれに対処する必要があることは当然であります。現在右のような事態に対処し得る適切な法規の処置というものは、できていないのでありますから、このような場合には対処する方法については、これ政府としては考えざるを得ない。従いまして、今いかにしてこういう面についてのことに対処するかということについて、せつかく研究中であります。まだ成案はできておりません。それから治安機構の問題であります。治安機構の全面的の改革については、まだ結論は出ていないのであります。さしあたりの問題といたしまして、警察法の改正をいたしたい、こう考えております。御承知の通り、東京いわゆる特別区の警察につきましては、まつたく政府はこれに介入するととはできないのであります。特別区の公安委員がその管理運営の任に当つておるのであります。御承知の通り、過般五月一日の暴動につきましても、政府としては何ら手の打ちようがないのであります。まつたく東京特別区の公安委員がこれの運営管理の任に当つておる次第で走ります。御承知の通り、この東京都というのは、政治の中心であり経済の中心であり、文化の中心である。しかも外国の使節がここに駐在するというような、この重要な都市に関して、政府が何ら警察に関與しないということは、政府の責任上これは許すことのできないことと考えております。従いまして、ある程度この特別区に対する警察介入ということは、当然考えなければならぬことであります。しかしながら、これをきわめて民主的に運営して行かなければならぬということは、民主主義国家として当然の事理でありますから、特別区の公安委員に対して政府が指示をするについても、十分な考慮を払つてその処置をして行きたい、こう考えておりまして、警察法の一部改正においてとりあえず治安の面からこれを維持して行きたい、こう考えておる次第であります。
  96. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほど世耕委員からの質問に対する御答弁にもありましたように、公安調査庁においては非常に調査が必要なわけであります。その際に往々問題になりまするのは、かつての特高の復活になりはしないかという問題であります。これはこの前総裁から概略のことを聞いたのでありますが、はたして復活しないか、しないとすれば、どの程度にこの調査庁と特高との差異があるか、これをこの際明白にしていただきたいと思います。これは他の政府委員からでもよろしゆうございます。
  97. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答え申し上げます。公安調査庁は、あくまで具体的に現われた、暴力主義的な破壊活動という行為団体によつて行われ、または将来行われる、現実の危険に関する具体的な調査証拠の收集を目的としておるのでおりまして、特定の個人または特定の団体の思想的な立場というようなものを、調査取締りの対象としておるのではございません。またその権限につきましても、個人を逮捕し、あるいはこれを拘束するというような権限を持たない、かような面からいたしましても、往時の特高のごとき態勢に逆もどりするおそれは、絶対にない本のと考えておる次第であります。
  98. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は本法の審議の最初の総括質問のときに申しておいたのでありますが、国民の集団的な破壊活動規制し処罰するその反面、権利の濫用を非常におそれる国民の気持を察知して、この権利の濫用をやつた者に対する処罰規定がない、こう申したのに対して政府委員は、いやそれは刑法の規定あるいは懲戒等の規定があるという御答弁でありました。しかし私どもが刑法の規定で騒擾罪その他は処罰できるじやないか、そういうことで、別にこういう刑事規定をここに置かないでいいじやないかという質問に対しては、刑法の規定は、あれは個別的な個人に対する処罰であつて、集団的な規定じやないのであるからという御答弁であつたのであります。ところが私が心配したことが、どうも早稲田大学の例の事件に順次現われて来たと思うのでありまして、これは法務総裁もお調べになつておると存ずるのでありますが、まことに意外な行動でありました。私どもが警察官なるものを信用できない見本みたいなものが出現した。まだ破壊活動防止法ができないうちに、ああいうものが現われて来たのであります。そこで一体日本の、これは政府のみならず国民もそうでありますが、官尊民卑の思想が今日まで彌漫いたしておりまして、役人のやることは正しく、国民のやることはけしからぬという、そういう基準から、役人の越権行為に対する制裁というものは、まことに少い。ところが早稲田事件のようなものを見ますと、これは実に言語道断であります。そこであの事件に対しましては、法務府は毅然たる態度でもつて、その処罰すべきものは処罰してもらわぬと、私ども枕を高うして眠ることができない。そこでこれは当委員会においても調査をされることでありますから、事実関係につきましてはその際明らかにすることにいたしまして、この警察の行動、これに対して、どこまで責任が及ぶのであるか。刑法の職権濫用罪は、事案ある警察官個人がある職権濫用をやつた場合を想定して規定して偏るのでありますが、警察組織といたしまして、ある長官の命令によりまして、ああいう行動を起した場合、これは破壊活動防止法によりまするならば、扇動教唆予備陰謀までみな処罰せられているのでありますが、ああいう職権濫用の警官の団体行動に対しましては、どの範囲まで、この責任が及ぶのでありますか。これはかりにあの早稲田大学の事件の当時の警察官が、職権濫用いたしたといたしまして、彼らのつつ込んで行つたというのは、長官の命令でつつ込んで行つたのだ、そういう場合にはどこまでがこの範囲になりますか、この破壊活動防止法には広くある事件に関しまする教唆扇動、あらゆるものを処罰いたしておりますが、ああいう職権濫用罪というものは、いかなる範囲が処罰されるのか、その命令系統のどの辺までが、責任を負うのでありますか。それをひとつ明らかにしていただきたいことと、ついでに申しまするが、職権灘用の基準であります。警察官等職務執行法の第七条には、われわれ国会において審議したのでありますが、これは嚴重なる審査のもとに職権濫用をしないこと、武器の使用については、最大限の注意をすることでこの法案ができておることは、御承知の通りであります。そこで一体その警察官等職務執行法第七条身基準にして、あの早稲田事件の責任身追究されるのであるかどうか。その点をお答え願いたい。これは法務総裁お尋ねいたします。
  99. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま刑事上の問題につきまして、御質疑がありました。具体的な事実の調査をまつて、はたして刑事上の責任がありやいなやを解決すべき問題と考えております。
  100. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 具体的な事実は、当委員会審査をもつて言うのでありますが、もう新聞にもあらゆる機関に報道されておるのです。されておるのがそうあつたということは、私は断定しません。ただ法理論として、この破壊活動防止法を今審議している際でおりますから、私は劈頭からその点を憂慮しておる。この点にかんがみまして、あれが職権濫用であると、かりにしたならば、どういう範囲まで責任が及ぶのであるか、及び職権濫用の認定は、警察官等職務執行法第七条でやるのであるかどうか、その点を私は法務総裁お尋ねしているのであります。
  101. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 この事案につきましては、ただいま検察庁においてせつかく調査中であります。そうしてただいまお尋ねのような行為がありますれば、もちろん法規によつてこれを処置することは当然であります。そこで指揮官の問題でありますが、これは指揮のもとに警官がここに働いて、これが現実に行われたということになれば、むろん共犯の規定の適用があることは当然であろうと、こう考えます。
  102. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 しからばなお確めておきますが、その指揮系統は共犯の規定によつて、事実のああいう職権濫用が行われたならば、処罰する。そうするとあの指揮系統となりますと、警視総監は、それに入りますか入りませんか。
  103. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 具体的の事実はわかりません。今調査中であります。
  104. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからいま一つの私の質問の点、人権蹂躙、不法なる侵害があつたという基準は、警察官等職務執行法第七条の精神から、これを観察すべきものであるかどうかということを、法務総裁の責任として御答弁願いたい。
  105. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。まさにその通りであります。
  106. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 いま一点。この破壊活動防止法は、政府におかれても十分御理解のように、非常に輿論の反撃がありまして、学術団体、文化団体からみな反対されておる、労働組合がまつ先になつて反対しておる。それは人権蹂躙事件が起るんじやないかという心配からであろうと思うのであります。そこで聞くところによりますると、法務府にありまする人権擁護局を何か改組し、あるいは縮小し、あるいは廃止するというような説が巷間あるのであります。これはまつたく逆のコースじやないか。こういう法案を一方で用意されるならば、そうして政府が答えるがごとく、正当な行為、正当な労働運動を弾圧するものじやないということが真意でありまするならば、これを救済することについての万般の法案考えなければならぬ。今法務府にありまする微弱なる人権擁護局のごときを、何層倍か特審局の拡張よりもなおよけいに、これを拡張して充実するという――ほんとうに政府の答弁のごとき精神であるならば、その方向に向かなければならぬと思う。しかるに答弁だけは、決して人権蹂躙はしない、決して正当な行動を弾圧するのじやないと言いながら、ただ一つ政府機関として存在しておりまして相当の成績をあげております人権擁護局を、逆に廃止してしまうということは、われわれの疑いをますます強める、これはどういう趣旨でこういう際にかようなことを起されたのか、ことに早稻田事件のような――われわれから見るならば、あれは暴徒であります。警察官というただ官服を着た暴徒である。ああいう事件がある際に、この人権擁護局を縮小するがごときことに至りましては、理解に苦しむのでありますが、さような意図があるのかないのか、それをお答え願うとともに、この人権擁護局をなお拡張して、これをほんとうの政府が公正なる取締りをするための用意といたしまして、これを拡張する意思がないか、これをお尋ねいたします。
  107. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私の考えでは、人権擁護というような機関は、むしろ民間でやるべきものと考えております。御承知の通り、私も多年在野法曹として人権擁護のためには邁進して来たつもりであります。従いまして私の構想といたしましては、せつかく日本弁護士連合会というような大きな組織体ができておるのであります。今後この団体がますます発展向上して行くものと確信して疑いません。従いまして日本弁護士連合会において人権擁護委員会をつくつて、そうして十分の活躍をいたすことが、私は最も望ましいことと考えております。私も第一東京弁護士会において、人権擁護委員会をつくりまして、この委員会が非常に効果的に成績をあげておるということは、現実の事実であります。従いまして現在の法務府にある人権擁護局、これを決して人員的に縮小するということを考えておりません。ただ局を課に直しまして、現実的にそれを十分の効果あらしめるように処置し、その他質的方面において十分な機能を発揮するようにして行きたい、こう考えております。従いまして日本弁護士連合会は、独自の立場において、何ら官庁の指示を受けることなく公正にこれを取上げて、そうして法務府の人権擁護の係の者と相連繋して行けば、十分にその目的を達し得るものと私は考えておる次第であります。
  108. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 民間の団体におきまして、さような人権擁護の機関の存在の必要は申すまでもありません。自由人権協会もありますし、これは民間じやないかしれませんが、院内におきましても人権擁護議員連盟もできておるのであります。しかしそれとおのおの活動の範囲、あるいは目的、あるいはやり方というものが違つておる国家機関というものも、必要だと思うのでありまして、今あなたは縮小する意思はないが、局を課に直すんだ、こういうようなことは私は常識上縮小だと考える。局を課に直して、それが縮小じやないというような御説明は受取れぬのであります。それから実際問題といしまして、私ども弁護士会に所属いたしまして、人権擁護問題では活動して来たのでありますが、一体困るのは予算であります。この予算が十分なければ、こういう問題は調査できないことは明らかである、今弁護士会が相当の成績をあげておることは認めますけれども、これはまだまだ人権擁護のためにもつと活動しなければならぬのでおりますが、予算関係に縛られておつでいろいろ弁護士会に実情を聞いてみましても、予算がない。それはあなたがよく御存じだろうと思うのであります。そういうのに、これにまかせるからと申しまして、そうしてこの国家の予算で活動しております局を課にするいうことは、どうも人権擁の機構がそれだけ縮小すると私どもは心配する。しからばもし日本弁護士連合会にまかせるという御趣旨であるならば、国家予算を一体それに支給する方途があるかどうか承りたい。
  109. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 局を課に直しても、人員その他の点においては少しもかわりはないのであります。それだけははつきり申し上げておきます。しこうして弁護士会においての活動の点、金の問題、もとより私も、同感であります。金の不足しておることは事実でおります。しかしながら私は、今後これを大きく取上げて行きますれば、民間から相当の金は集まるものと考えております。政府から予算をもらつて、そうして政府の機関というような考え方ではこれは行くまい。民間が民間自体として民間の手においてこれを取上げて、そうして政府の役人において不届きなことあらば大いに鼓を鳴らしてこれを問うということが理想的であると考えております。
  110. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 質疑終局の動議を提出いたします。ただいま議題となつておりますところの破壊活動防止法案外二案につきましては、去る四月の二十四日以来蓮田愼重審議を重ねて参りました。その間それぞれ二日間にわたりまして公聴会、労働委員会との連合審査会を開催いたしまして審議に全力を期したのでありますが、見渡すところ、質疑もおおむね盡きたようでありますから、これをもちまして質疑を終局せられんことを望みます。
  111. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ただいま田嶋好文君より提出されました質疑終局の動議に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  112. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 起立多数。よつて破壊活動防止法案外二案に対する質疑は終局することに決しました。本日の議事はこれにて終了いたし、次会は明後十五日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。午後二時二十三分散会