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1952-04-28 第13回国会 衆議院 法務委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十八日(月曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 鍛冶 良作君 理事 山口 好一君    理事 中村 又一君 理事 石川金次郎君       角田 幸吉君    北川 定務君       眞鍋  勝君    大西 正男君       吉田  安君    田中 堯平君       猪俣 浩三君    世耕 弘一君       佐竹 晴記君  出席政府委員         検     事         (法務法制意         見第一局長)  高辻 正巳君         検     事         (法務特別審         査局長)    吉河 光貞君         検     事         (法務特別審         査局次長)   関   之君   委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月二十八日  委員川崎秀二君辞任につき、その補欠として大  西正男君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  破壞活動防止法案内閣提出第一七〇号)  公安調査庁設置法案内閣提出第一七一号)  公安審査委員会設置法案内閣提出第一七二  号)     —————————————
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き破壞活動防止法案公安調査庁設置法案公安審査委員会設置法案、以上三案を一括議題として質疑を継続いたします。吉田安君。
  3. 吉田安

    吉田(安)委員 簡單に二、三点お尋ねいたします。まず第一に法案の第二條によりますと、「思想信教集会結社表現及び学問の自由」と列記しておりますが、ここに言論出版の自由ということを明記していないのは、これは特に理由があるか、その辺のところお尋ねいたしたいと思います。
  4. 関之

    関政府委員 お答えいたします。これは憲法の各條章内容字句をそのままここに採用いたしたものでありまして、憲法には言論出版等を「表現」というふうにありますから、それでここにそれらのことにかえまして「表現」というふうにいたしたのでございます。
  5. 吉田安

    吉田(安)委員 多分そういう御答弁じやないかと思いましたが、「表現」という字句はこれは憲法にあります。ありますが、憲法の第二十一條にもあります通り国民自由権につきましては、「集会結社及び言論出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」というのであり、いわゆる「言論出版」ということが特別に明記してあるのであります。それがこの法案によりますと、思想、これはもちろん法案にあります。信教もある、集会もある、結社ももちろんあるのだが、特に言論出版というわれわれからいうならば、一番これが頭に浮んで来るのであります。言論の自由、出版自由——でありますから憲法第二十一條に明らかにそれを書いてある。第二十一條に「集会結社及び言論出版」そうして「その他一切の表現の自由は、」と書いてあるのでありますが、今関さんの御答弁によりますと、いわゆる「表現」の中に追い込んでしまつているような感じがするのであります。何かさようなお言葉を拜聴いたしまして、なおこの法案を見ると、「言論出版」というのが特に軽く取扱われておるかのごとき感じがしないでもないのでありますから、特にこれはお尋ねするような次第であります。世の中には品物があつて目ざわりになることもあるし、あるべきものがなくて目ざわりになることがある。本條のごときは言論出版ということは、これは特に大事な言葉であり、保護せねばならぬ規定であります。それが集会とか結社ということは本條にうたいながら、言論出版ということが一般の「表現」の中に追い込んでしまつたような感じがすることは、どうしても割切れない感じがするのでありますが、もう一度その点をお尋ねしておきます。
  6. 関之

    関政府委員 お答えいたします。お尋ねの点につきましては、言論出版は「表現」の中に含まれるものである。「表現」というこの表わし方によりましてそれらのことが明瞭である、かように考えまして、この「表現」という一語だけを使つたのであります。そこで言論であるとか出版であるとかを無視したのではないかというお尋ねでありますが、決してさようなことはないのでありまして、「思想信教集会結社」というふうにこう並べまして、「表現」というふうに字句を合せた関係から、「表現」ということにとどめたのであります。言論出版の重要なものであることはよく私ども考えておりまして、さようなことにいたした次第であります。
  7. 吉田安

    吉田(安)委員 あえて無視されたというのではないのです。しかしながらこれだけの「集会結社」と並べておきながら「言論出版」を当然入れていいこと、また入れねばならないことを、「表現」の中に一括してしまわれた、その気持がわからない。全部入れていいわけだ。何もこれを入れたからといつて、特別に立法技術上やつかいなことでも何でもない。憲法自体が第二十一條に明らかにその点を書いてある。「集会結社及び言論出版」と書いてある。だから「言論出版」を書かれても何もさしつかえないと思います。すなわちそれを一切「表現」という中に追い込まれたとするところに、私どもは軽視されたのではないだろうけれども、そういう感じがするということをお尋ねをするのであります。決して無視されたといつてつつかかるわけではない。ただこれは立法的に考えましても憲法第二十一條に、明らかに「言論出版」と書いてあるから、ここに「言論出版」と入れてもいいじやないか。これがないためにこの法案は非常に目ざわりになるということになりますから、これを入れられるということは必要ではないかと思うのでありますか、もう一ぺんお尋ねいたします。
  8. 関之

    関政府委員 お答えいたします。お尋ねの点は憲法字句内容から見ますと、まことにごもつともなことと思うのでありますが、立案に当りますればその他の表現で、「表現」によつて一活されまして、それによつて十分ではなかろうかと考えて、かように掲げた次第であります。
  9. 吉田安

    吉田(安)委員 国家根本法である憲法それ自体にさえも「集会結社及び言論出版」と明らかにしてあるのだ。それをことさらにわざわざこれを一般の一切の「表現」の中に追い込まれぬでもいいじやないか。どうしてこれだけを除かれたかということだ、何もやつかいなことじやない。われわれはしよつちゆう言いつけた句調であつて憲法第二十一條には、「集会結社及び言論出版」ということが当然出て来るのであります。それが「言論出版」だけを除かれて、そうして「表現」の中に追い込んでしまつた。この法案はさなきだに取締られる方ではこれをいわゆる憲法違反であるとか何だと非常にやかましく議論の出て来る法案でありますから、この法案自体を見ると、大分丁寧には取扱つておられるにかかわらず、この点だけが抜けてあることが気に食わない、不満足である、かように考えられるのであります。しかしそれはあとのことといたしまして、さらに先に進みたいと思います。  さらに私はこの第三條の規定でありますが、教唆扇動を並列したところ独立罪として処罰しておるのであります。言うまでもなく、一般刑法には扇動というものは規定しておりません。教唆だけは規定してあるのでありますが、私はこの法律目的教唆だけで達し得るのだ、こう考える。それを独立罪としてまでも罰する必要はないではないか、教唆は結局主犯に従たる犯罪であつて主犯が前提でなくちやならぬ。その主犯をいわゆる造意犯行せしめたことが教唆責任でありますから、この法第三條に列記しておるところのもろもろの犯罪教唆によつて行つたとするならば、その各犯罪本條に照して共犯関係で十分処罰し得ることは申すまでもないことである、こう考えられるわけであります。しかるにそれを扇動と一緒に並べて独立罪とまでもして、これを取締る必要がどこにあるかということであります。この点をお尋ねいたします。
  10. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この第三條におきまして、教唆扇動独立犯罪として規定いたしましたのは、次のようなこ理由からであります。もちろん実害的各刑法條文につきましては、教唆の罪が規定してあるだけであります。しかもこの教唆犯罪教唆して実行せしめた場合のみであるわけであります。しかるにこれらの行為につきまして教唆のほかに扇動独立の罪として規定しましたのは、要するにこのようなそれぞれの行為につきまする教唆扇動が、このような実際の実害を呼び起す危險性がきわめて重大である。そうしてその実害が生ずるまで手をこまねいてここで待つている、殺人なら殺人行為が生ずるまで手をこまねいてここで待つているというようなことに相なりますと、公共の安全の確保ができないから、そこでかような條文を置きまして、これらの行為に対するところ教唆扇動独立犯罪として処分しなければならない、かように考えたわけであります。もとよりその必要は先日特審局長より御紹介いたしましたごとき実態の上に即しまして、ぜひともこの程度の行為をここに規定することが必要であろう、かように考えたから設けた次第であります。
  11. 吉田安

    吉田(安)委員 ただいまの御答弁を聞いておると、この法案では教唆をして、そうしてそれぞれの犯罪実害が生じたことを待つてつては間に合わないから、これを独立罪とされた、こういう御趣旨ですか、その点をお尋ねいたします。
  12. 関之

    関政府委員 お答えいたします。現下の客観的な事態に即しまして、お言葉通り考えているわけであります。
  13. 吉田安

    吉田(安)委員 それはそうでなくて、教唆罪は結局従犯関係であつて、そうして一方では扇動というものを特別につくつて、ここに扇動罪というものを持つて来た。一方は従犯で罰し、他方は独立罪で罰するということでは、法律技術としても、またその権衡上もおかしいのだ、だからこれを独立罪とするというようなお考えのもとにやられたのとは違いますか、上方は従犯なんだ、一方は扇動なんだ、ところ扇動独立罪として罰するのだから、それに似通つた教唆犯は、これを従犯で罰しなければいけないということでは、どうも権衡がよろしくないということで、教唆犯を格上げをして独立罪とするということじやないですか。教唆として犯罪の実行が起つた、犯罪実害が生じたのだ、それから教唆を罰しておつては間に合わないから、ただ教唆をしたときには教唆独立罪として罰せられると言われると、一般刑法教唆というものの解釈と非常にこんがらがつて来るような気がしますが、その点を明らかにしていただきたい。
  14. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この教唆扇動独立の罪として本法に規定し、あるいは団体規制立場上これを独立一つ規制の原因となすように規定いたしましたのは、要するにかようにいたしてこの教唆扇動独立的に取扱わなければ、現在の公共の安全の確保に十全を期し得ない現下事態にかんがみまして、このような各刑法に掲げられる犯罪教唆及び扇動行為は、それ自体きわめて危險のあるものである、これを独立罪対象として取扱わなければ、現下公共の安全の確保に十分なるを期し得ない、これを独立罪として扱うところに十分なる価値ある対象である、かように考えまして、ここに取上げた次第でありまして、教唆の罪を独立とするから扇動を新たに書くというような考え方ではなくて、その教唆扇動自体行為の中にきわめて危險なものがある、今このような処置をとらなければ、公共の安全の確保にきわめて欠くるところがある、実態はかように考えて、このような規定を設けた次第であります。
  15. 吉田安

    吉田(安)委員 大体わかつて来ましたが、そうしますと、結局教唆扇動との区別はつきりしておるわけですが、非常にややこしい場合がたびたび出て来るという感じが起るのであります。この場合における教唆独立罪、それから扇動罪とのその限界をはつきりお示しを願いたい。
  16. 関之

    関政府委員 判例その他によりまして、教唆扇動との区別について申し上げますと、教唆とは、他人をして一定犯罪を実行する決意を新たに生じさせるに量る行為、これが本條にいう教唆に当るわけであります。それはその他人一定犯罪を実行する決意を持つておらなかつた、その者に対しまして、新たにその決意を生じさせるような行為をなすこと、これが本條にいう教唆に当るわけであります。また扇動と申しますものは、不特定または多数人に対しまして中正の判断失つて一定犯罪を実行する決意を創造させ、または既存決意を助長さぜるような勢いを持つ刺激を與える、こういうことをいうのであります。ここで扇動の方は主として不特定または多数ということが、この扇動対象の要点になると考えるのであります。そうして既存決意を助長するような勢いを持つ刺激を與える、こういう点が教唆扇動との大きな差であろう、こう考えるのであります。
  17. 吉田安

    吉田(安)委員 それはもう一般刑法学でもその通りです。それは大体わかつておりますが、それではひとつこういう場合を念のためにお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。いよいよ日本はきようから独立する。そうすると将来必ず條約改正という問題が国民の中に翕然として起つて来ると私は思います。というのは今回の講和條約、安保條約なるものは、講和自体国民は賛成せられておるけれども、その講和内容至つては、決して全部を満足していないのであります。安保條約またまつたくその通りであります。でありますから今何ともいたし方がないから、不孝満々ではあつても、それをがまんして独立を迎えた。これはおそらく吉田総理大臣初めその通りじやないかと思います。ところがいよいよ独立になつて参りますと、今度は国民の間にいろいろ講和内容に対して、不満を抱いておる人たちか出て来ることは明らかなのです。国民もまたこの條約を改正しようとすることは希望するでしよう。そこでまずこれは例でありますが、いわゆる條約改正国民連盟といつたようなものをつくつて、そうして領土の返還というようなことを目的として一つ団体ができるに違いない。そうして今度はそれによつて條約を改正しろといつて政府に迫る。ところがその当時の政府がどういう政府であるかそいつはわかりませんけれども、時の政府がなかなかそれができないというと、いよいよもつてさような人たちは悲憤慷慨して軟弱外交を非難するでしよう。非難した結果は、遂にたまらずして日比谷あたりで、いわゆる條約改正国民大会といつたような名のもとに、大演説会なんかを開くようなことが当然あると思います。今の各新聞は相当民主主義であつて穏やかでありますけれども、かつての黒岩涙香氏あたりの主宰しておつた萬朝報のごとき、ああいう新聞が出ぬとも限らない。そうした場合に、そういう人たちはこれを非常に勢いをつけて書いてもくれるでしよう。そうすると、そこに何千何方という人たちが集まつて、そしてその団体主催者あたりが非常な激越な言葉でもつて、いわゆる内閣打倒演説をやる、これは必ずありますよ。またそのくらいの国民の気概がなくちや相ならぬと思う。そういう場合に、何千何万という者が寄つて来るから必ず気勢は上るに違いない。とうとうそうしたときに、その演説内容なんかによつて国民が非常に激昂、興奮の結果、近くにある日比谷交番を燒き討ちをするというようなことになつた場合に、その主催者はどうなるか、それは扇動となるかならぬかということ、あまりにも漠然たる例を考えお尋ねするのでありますから、おわかりにくいかもわかりませんが、そういう場合のその主催者はどうなるか、その団体はどうなるかということをお尋ねいたします。
  18. 関之

    関政府委員 お答えいたします。お尋ねのお言葉だけでは問題の点がはつきりいたしませんが、問題は、要するにさような演説会においてなされた発言内容が問題になると思うのであります。この法案におきましては、内乱といい、あるいは騒擾といい、これはいずれも刑法規定してあるそれでありまして、そのようなことの教唆及び扇動になるわけであります。そこでおのずから発言内容刑法規定などから見て、明らかに客観的に定まつていることと思うのであります。その法律解釈のもとにおいて、さて具体的にどういう言葉をそこで使われたか、あるいはどういうふうなことがそこで行われたかというようなことが問題になるだろうと思います。お尋ね言葉だけでは判定に苦しむ次第であります。
  19. 吉田安

    吉田(安)委員 それはおつしやる通りかもしれませんが、その主催者演説内閣を攻撃する、打倒しろというようなことで、遂に興奮してしまつた、何も劇を持つて立てというようなわけではないけれども、遂に興奮してしまつた、そのために今のような騒擾事件を惹起したという場合、これはあることでありますが、その点をお尋ねいたします。
  20. 吉河光貞

    吉河政府委員 内閣打倒目的をもつて大会が開催されまして、そこで主催者演説される。非常に政治的に興奮した会場でありますから、言葉は激越に過ぎる場合もあるかもしれません。この場合、群衆がその演説刺激されて、とんでもない交番の燒き討ちのようなことをやつたにしましても、演説そのもの暴行脅迫をやれという刺激を與えるような言辞が現われない限りは、騒擾扇動にはならぬと考えております。ここでは多衆が集まつて交番の焼き討ちをやるということが、暴行内容になつておるものと考えるのでありまして、交番を燒き払えというような演説が行われない限りは、扇動にはならぬと考えておるわけであります。
  21. 吉田安

    吉田(安)委員 さようでなくちやならぬと長享が、われわれ政治家として、そういうことにぶつつかる機会が相当にあるのでありますから、そういう場合に、そうしたことをかつて越権行為で取締られてはたまつたものじやないと考えるから、お尋ねいたしたのであります。  もう一点。また新聞社のことを言うようですが、普通の新聞社でもいいですけれども、その新聞社政治上の主義がある。そうしてどうしてもこれは條約改正政府を鞭撻してやらせなければならないということで、しよつちゆう論説あたりをもつて政府を攻撃する、国民のいくじないことを攻撃する、そうしてかくあるべきだと言うて盛んにおだてた、という言葉では変でありますが、そういうことで遂に今のようなことを惹起した場合の、その新聞社主催者として、それは何ら責任はない、かように解釈してさしつかえありませんか。
  22. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。新聞等におきましては、記事として印刷されて論説などが出るので、いよいよはつきりすると思うのでございますが、ただいま申し上げた通り暴行脅迫をやれというような刺激を與える明瞭な言葉がない限りは、扇動にはならぬと考えております。
  23. 吉田安

    吉田(安)委員 教唆扇動のことはさらに後日お尋ねすることにいたしまして、先の方に進みたいと思います。  第十條からの規定でありますが、こういうことを第十條によつて公安調査庁長官がやる。やる前にはそれぞれの仕事をさせなければならない。その仕事が第四章の「公安調査官調査権」ということで、これに基いて仕事をさせておるのでありますが、第二十六條では「公安調査官は、この法律による規制に関し、必要な調査をすることができる。」これはこの條文によりますと、そうした必要のあるときに、「当該規制関係のある事件に関する書類及び証拠物閲覧を求めることができる。」ところが求められた「検察官又は司法警察員は、事務遂行支障のない限り、前項の求に応ずるものとする。」こういう規定があるのであります。そうしてまた第二十八條には「公安調査庁警察との情報交換」ということで、「相互に、この法律の実施に関し、情報又は資料を交換しなければならない。」とこう規定してあるのでありますが、これは私考えますのに、この第二十七條のようなこと、「検察官又は司法警察員は、事務遂行支障のない限り、前項の求に応ずる」ということでありますが、こういうことがうまく行くかどうかということ、あるいは第二十八條情報交換ということを規定してあるのでありますが、この情報交換ということがうまく行くかどうかということであります。なぜ私はそういうことをお尋ねするかといいますと、これはどこにもあることですが、一つのなわ張り争いということがある。このなわ張り争いというか、何かそういう関係で、証拠閲覧を求めたところで、一方で今少し都合があるからということで、それがすぐにはできないということがある。情報交換なんかをやろうとしても、なかなかできないことがある。今の警察でもすでにやつておる。国家警察自治警察、これがほんとうにうまく行つておるかというと、決してそうでない。そういうことがあることを考えましたときに、この公安調査官というような一つの官職を設けて、そしてこれで調査をさせるということが、迅速円満に行けるかどうかを疑わざるを得ないのでありますが、この点についてのお考えお尋ねいたします。
  24. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。御質問通りこれは非常に好ましくないことでありますが、なわ張り的な気持が全然ないというわけにも参らぬかと存ずるのであります。しかしながら昨年来私どもにおきましては、中央、地方の検察庁並びに国家地方警察及び自治体警察との緊密な協力態勢を打立てるということが総裁の方針として打出されまして、東京は申すまでもなく、各地方におきましても定期的に連絡会議を開き、三者一体となつていろいろと事務の打合せをするというようなことによりまして、また必要な場合には常時連絡いたしまして、互いに協力して進んで行くというような態勢を一歩々々と打立てて参りまして、御質問になりましたようななわ張り的な気持がほとんど解消しつつあるような現状であります。これは絶対にそういう気持がないとは申せませんが、これがためには私どもといたしましては、あくまで謙虚な、へり下つた気持検察官並びに警察官と協力して行かなければならぬというような立場事務を運営して参つたのであります。この第二十七條、第二十八條は、まさに協力を求める協力規定でありますが、現在の実績に徴しましても、必ずや私ども努力によりまして、さらにその実績を高めることができるものと存ずる次第であります。
  25. 吉田安

    吉田(安)委員 この法案を成立させる以上は、よほどその点に御努力をなさらぬと、これはほんとうに空文にすぎなくなつて、その実績は決してあがらないものだ、私はかように推察するのであります。特審局長に言うまでもなく、今の警察の、あの国警自治警との関係なんかは、実際そういう弊害が生じておるのであります。十分これは考慮しなければならぬことだと思います。  さらに第二十九條になりますと、「この法律による規制に関し、調査のため必要があるときは、司法警察員が暴力主義的破壞活動からなる罪に関して行う押收捜索及び検証に立ち会うことができる。」とあるが、独立して押收捜索検証もすることはできない。ただ立ち会うというのだが、立ち会つてどういうことをするのですか、その点をお尋ねいたします。
  26. 関之

    関政府委員 お答えいたします。公安調査官はただ立ち会うだけなのであります。実際に押收捜索及び検証のこの行為には全然手を出すことができないのはもとよりであります。そこでなぜ立ち会うだけの規定を設けたかと申しますと、公安調査官は本来団体規制のための証拠收集しなければならないのであります。しかしてその証拠收集あたりましては、それが現実押收捜索、または検証現場におきまして、どういうふうになつていたか、あるいはどういうふうな所でもつて押收されたかという、その現実感を伴うことが、証拠価値判断上きわめて重要なことに相なると思うのであります。そこでかような規定を設けましてそこに立ち会わせ、その現場現実感公安調査官に與えまして、証拠価値判断に資する、かような理由をもつて本條を設けたのであります。
  27. 吉田安

    吉田(安)委員 そうすると結局、検察官、司法警察官がそういうことをやるのをながめておるにすぎないということになるのであります。関さんの言葉からいえば、立ち会つて現実感を深めて、それが結局証拠收集に非常に意義あることだ、かようにおつしやるのでありますが、これは私はほとんど空文にすぎはしないかと考える。押收もすることができない、捜索もできない。もつともせぬ方がいいけれども、この法案目的を達する建前から行くならば、そのくらいのことではたして完全なことができるかどうかということを心配するのであります。そこで私言いたいことは、総括質問のときもちよつと触れたのでありますが、こういうことで捜索押收もできない、検証にも立ち会うだけといつたようなかつこうのことであつたならば、むしろこれを検察あるいは司法警察の方の職務にゆだねて、これを一本にしてしまつたらどうかということであります。さきに審理官も出て来ますし、それから公安審査委員会も出て来るのでありますが、ただそれに立ち会うにすぎないとか、あるいは情報交換をするにすぎないとか、あるいは閲覧を求めることができるくらいのことで、しかもそのときいやだと言えばその閲覧さえも拒まれるといつた、そのくらいのことで、こういうふうにお急ぎになる仕事、その証拠收集をするのに、こんななまぬるいことではたしていいかどうか。でありますからこういうことを行政官にまかせずして、これを司法警察一本で公平な取調べをやる。こんなことをして屋上屋を重ねるようなことはさせる必要はないのではないかと考えるのであります。その点について、当然いろいろ御研究の結果こうなつたのだろうと思いますので、これを司法警察の方にまかせることのできないという根本の原因を、ひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  28. 関之

    関政府委員 お答えいたします。その点につきましては次のような考え方から、かような調査の権限をきわめて縮小した規定を設けるにとどめたのであります。第一点といたしまして、基本的なものといたしましては、この団体規制国家の権力権限などから申しますと、行政上の処分として行われるのであります。しかるに司法警察官の方は、一方におきまして刑事訴訟法によります強固な司法警察の権限を持つているわけであります。そこで従来の例から見まして、この団体規制に伴うごとき行政上の各種の権限と司法警察の権限とは、これはまつたくわけてしまうのが国家の全体の上から見て、民主主義の原則から見て妥当なことである。かような第一の立論に立つたのであります。そうして行政処分として、司法警察の権限以外の新たな一つの官庁組織をここに考察しなければならないのであります。次の問題として、しからばこの暴力主義的破壞活動と申しますのは、先日も御説明いたしたごとく、一方におきましてはこれが個人にとつて犯罪なのであります。従つてそれにつきましてはすでに司法警察上の行政権限によりまして、強制力ある押收捜索検証等の各種の措置がとれるわけであります。そこでこの点と本法の団体規制の上におきましても、理論上といたしましては、お説のごとくに、確かに強い権限を持ちまして証拠收集に万遺憾なきを期する必要があるわけであります。そこで問題は、一つ行為につきまして、すでに刑事訴訟法上によるところの強制権限が動くことになつております。それとの調整をいかにするかという問題が、結局問題の最後のポイントになつたわけであります。さようの点につきましては、すでに刑事訴訟法によりまして強制捜査の対象となつているものにつきまして、さらにこの法案によつていま一つの強制的な調査権をここに設定することは、一般国民に與うる危惧の念も慎重に考慮しなければならない問題と考えまして、結局この法案規定するごとくに範囲をとどめまして、刑事訴訟法による強制調査権との調整をはかつた次第であります。
  29. 吉田安

    吉田(安)委員 行政的面から見れば、さような結論になることだと存じますが、さらに進んでお尋ねいたします。公安調査庁長官がその処分の請求をする、処分の請求がありますと、これが公安審査委員会で——公安調査庁の職員たる調査官がいろいろ証拠收集する、それに基いて今度は審理官が当事者の関係人の申立てあるいは証拠の提出なんかをさせて、立会人までも立てて、そうしてそこで一切のまとめをしてしまう。言いかえるならば司法部で言うならばこれが検察庁の仕事、そうして起訴というかつこうになつて来るのであります。その場合に起訴を受けた、いわゆる請求を受けたところは審査委員会だ、そうすると審査委員会はそれを処分する、こういうことになるのであります。そこで前々から議論になつておりますこの審査委員会の構成でありますが、前会どなたかの質問に対しましても、法務総裁はいわゆる請求する側と、そうして受けて立つてこれを判断する、決定する側とは、全然別個の独立したる官庁であるのだから、何ら心配はないという御答弁を聞いておるのであります。またそうなくてはこれはたいへんなことなのですが、しかしそれが結局、外局ではありますけれども法務総裁の指揮下にあるということを考えましたときに、そこに一種の危惧の念が生じないとは、だれも言うことはできないと思うのであります。そのときに、これは行政処分のことでありますから、これを悪く悪用しようというならば、これはもうかりに公安審査委員会が独立不覊の立場に立つてやろうといたしましても、やはりそれに対する何らかの指導が上の方からありはしないかということが考えられるのであります。今日の木村さんのごときは、人格識見ともにりつぱな人であつて、さような行き過ぎのことは行われないことは、われわれひとしく信頼して認めておるのでありますけれども、ときに政党者流から出た法務総裁には——今度司法大臣となるのですか、そういう人たちが出て来て何をやり出すかわからないというようなことも憂慮されるのであります。それでその公安審査委員会の構成を、これはよほど愼重にやらねばならぬのでありますが、この公安審査委員会というものを、どうしてもやはり法務総裁下に、法務府のわく内に置かねばならないものであるかどうか。これを全然法務府と別に切り離した独立な存在とするということが一番適切であると思いますが、そうでなくして、やはり外局として法務府に置かれたということのその理由お尋ねいたしたいのであります。
  30. 関之

    関政府委員 お答えいたします。お尋ねの御趣旨は法務府に公安審査委員会を置いた理由、それ以外に置くことが妥当ではないかというような御趣旨と拜承いたしたのでありますが、私どもは公安審査委員会は、この原案のごとくに、法務府に法務総裁の所轄として置くのが最も妥当であると考えたのであります。審査委員会の内容事務が公正に運営されるよう保障されている点につきましては、委員会設置法をごらんいただけば十分にわかると思うのであります。第三條によつて委員会は独立してその職権を行う。ということに相なります。そうして各委員はそれぞれ第七條によつて身分を保障されて、準裁判官的な身分を得て、独立にその事務を行うわけであります。そうしてこのような委員会を法務府に設けましたのは、法務府は国家の行政機関の中で法をつかさどる嚴正な官庁であるわけであります。およそこの団体規制のごとき事務は、やはり法のもとに嚴正に行う、すべて法にのつとつて行うということが、この役所を性格づける一つの特色であろうと私は思うのであります。従いまして、国家法務の機関である法務府にこれを置くのが、その適正なる運営上最も当を得ているものである、かように考えまして、委員会は法務府の外局として設置することにいたしたのであります。
  31. 吉田安

    吉田(安)委員 さらにお尋ねいたしますが、第二十四條であります。今のようなことで第四條から第六條のいわゆる規制、これをやつて、たとえばその団体一定の間行動を禁止される、六箇月を越えない範囲において禁止されるという場合もある、さらに悪質だということになると、団体の解散、こういうことが簡單に行政処分でできるということです。団体の解散というがごときことは、これは人にとるならば、非常に大きな刑罰に値するものであると、かように考えるのでありますが、この解散をやる、一方では仕事が停止されてしまう。団体行動ができなくなるから、そのままではひどいから、今度この決定に対して不服があつた場合において、その救済の方法として、第二十四條の第二項に規定した。それはいわゆる訴願の方法でやらなければならぬ。あるいは審査の請求であるとか、あるいは異議の申立てであるとかいうようなことは、訴願の形でまずこれをやらねばならぬことになつております。しかるにこの行政事件訴訟特例法によりますと、御承知の通り、その訴えを起しましても、一方行政処分を受けておる団体行動の活動の停止であるとか、解散であるとかいうことの停止ができない。そうしておいて裁判所に一定の訴訟が起りまして、一定理由があるときには、その行政処分を取消すことができる、こうなつております。ところがこれを取消しをしようと裁判所がするときに、また一つの制限がついておる。それは申すまでもなく総理大臣の拒否権であります。こういうことをされると、遂にその執行の停止が行われなくなつて、そのまま処分は進行して行く、そうして訴訟もそのまま進行して行く、その訴訟がいつ済むかわからない。そのためにはここに、百日以内においてこれをやるようにしなければならないということが規定してありますが、はたして今日、訴訟が複雑多岐になつて一つの判決でもなかなかできないというような場合に、その言う通りに百日以内にできるかできないかわからない。そうすると一方は仕事が停止されておる。その損害というものははかるべからざる損害を生ずる。こういうことになるのでありますが、この点に関する当局の御意見を承つてみたいと思うのであります。
  32. 関之

    関政府委員 お答えいたします。お尋ねのような処分が、後になつてから違法の問題であるとか、いろいろな問題が出た場合の結果の重大性にかんがみまして、その前の手続をきわめて大事に、愼重にいたしたわけであります。第十條以下におきまして、詳細な審議手続を経まして、さらにその請求する機関と決定する機関とを分離いたしまして、決定する機関はこれを独立立場に置いて自由にこれを決定する、かようなことにいたしたのも、その事柄の重要性にかんがみて愼重を期したからでございます。  次にただいまお話の行政事件訴訟特例法の第十條の規定の問題であります。これとこの団体規制の処分に関する訴訟でありますが、お尋ねのごとくその結果の重大性にかんがみまして、特に第二十四條の二項にお尋ねのような規定を設けたのであります。近時裁判所におきましても、訴訟の促進については非常なる努力をいたしておるのでありまして、この規定を新たにここに加えますならば、この種の事件につきましても、相当迅速に事件が処理されることと思うのであります。その他行政事件訴訟特例法第十條の規定の問題につきましては、この団体規制事件につきましても、その原則に従つて行うことが、国家の司法、行政の両権限の対立の上から見ますと、それがやはり相当であると考えまして、何らの異例を設けず、そのまま適用することといたした次第であります。
  33. 吉田安

    吉田(安)委員 行政事件訴訟特例法を読みますまでもなく、第十條には「第二條の訴の提起は、処分の執行を停止しない。」と明らかであります。そうして「第二條の訴の提起があつた場合において、処分の執行に因り生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、裁判所は、申立に因り又は職権で、決定を以て、処分の執行を停止すべきことを命ずることができる。」こうなつておるのであります。いわゆるここにあるような償うことのできないような損害が生ずる、それを避けるために、かつ緊急である場合に認めているのであつて、さようなことを裁判所が認めた場合に、これに対する執行の停止の命令をしようとしてよろしい。けれども但書があつて、その「執行の停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼす虞のあるとき及び内閣総理大臣が異議を述べたときは、この限りでない。」こうなつておるのであります。だからそういうことの執行停止の命令を出そうとしても、総理大臣が異議を言つたときはできない、こうなつておる。そうしてそのまま裁判が進行して後に、総理大臣が反対までもなした事件が、今度無罪になる、いわゆる何でもなかつたということになつた場合には、それこそもう償うことのできない損害を生じておるという、非常にこれは処分される方に立つてみると、たまつたことではない規定のように考える、これは何とかほかにいい方法がないかということをわれわれは考るのです。一体これほどの條件でもつて、償うことのできない損害が生ずる事情がある、だから裁判所としてはぜひこれは避けてやりたい、しかもそれは緊急でなければならぬ、こういうことに思いをいたして、またその通りの場合に、職権をもつてこれの停止の命令を出そうとすると、総理大臣がこれに反対した場合——そういうばかな総理大臣は出て来ぬと思いますが、これからだつてわかりやしません。そういうときに、相ならぬと一本やられた場合は、それができないということになると、そうして裁判の結果、やはりその処分が適当であつたというときならば、また何をか言わんやでありますが、その処分が不適当であつたというような判決が出た場合は、それは実際処分を受けた方では目も当てられない、救済の方法がない。国家賠償とかなんとかいうこともありましようけれども、これはひとつ処分される方の身になつて考える必要がありはしないかと思いますが、この点の御意見を承つておきたい。
  34. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 行政事件訴訟特例法についての一般的な問題についての御質問でございますので、法制当局として一応お答え申し上げます。  お話のように、行政事件訴訟特例法には、第十條の規定がありますが、行政処分につきまして、みだりに裁判所による執行停止が行われますと、行政庁の行政が不当に制限されたり、あるいは麻痺されたりすることがあり得るわけでございます。こういうことになりますと、いわゆる行政権、司法権、立法権というものを分立している三権分立の原則を乱すおそれがあるという懸念で、行政事件訴訟特例法におきましては、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあると認められる場合と、それから御指摘のように、行政府の代表者である内閣総理大臣が異議を述べたときには、裁判所は執行停止を行い得ないということに相なつておるわけでございます。すなわち執行停止に対する異議の申立権を内閣総理大臣に與えました趣意は、ただいま申し上げましたように、むしろ裁判所によつて、行政府が国会に対して責任を負つておる。その行政への侵犯を防止する、そうして三権分立の制度を維持しようとするところにあるのでございます。この破壞活動防止法におきましても、この一般原則を特に排除する理由はなかろうというようなところから、もつぱら行政事件訴訟特例法によつてそうなるという結果に相なるわけでございます。一応行政事件訴訟特例法についての御説明を申し上げます。
  35. 吉田安

    吉田(安)委員 御答弁でありますが、じようだんじやありませんよ。みだりに停止が行われたり何かすると、その機構を麻痺されたりして困るというような言葉でありますが、決してこれは言葉じりをとつて申し上げるわけではありません。みだりにはこういうことはなされない。決してみだりじやない、この條文から見てもさつきも読み上げたけれども、読まぬでもわかることであるが、「処分の執行に因り生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると認めるとき」と、これほど非常にやつかいなわくを裁判所にかけてある。だからこれを裁判所が訴訟が起つたからといつて、みだりにこの行政処分の執行を停止するというような、そんなことは絶対ないはずです。何べん読んでも同じことであります。そういう特別の場合でありますから、その場合に、もう一度言いかえるならば、それを裁判所がやろうとするときに、総理大臣がそれはやつてはいけないということになれば、総理大臣が司法裁判権に関與することになる。こういうことも考えられぬことはない。これは重大な問題じやないかと私は考える。いわんやみだりに執行を停止するというようなことは、これは答弁者の少し言い過ぎた言葉であつたかもしれませんが、そんなにみだりに停止するものではない、これほどのやむを得ない場合に、裁判所がしようとする、しかも緊急やむを得ないからしようとするそのときに、申立てによつて、あるいは職権をもつてやろうとするだけで、それを公共の福祉云々ということもあるからといつて、それは裁判所でもそういうことはわかり切つていることだ、これをやれば公共の福祉にどうなるであろうかということも、裁判所では当然十分勘案してのことです。そうして勘案の結果さしつかえがない、やはり緊急やむを得ないから、これはやらないということに思いがいたされなかつたならばやれる問題ではない。それをこの特例法の第十條によつてそういう場合でも、但しそうすることが公共の福祉に重大なる影響を及ぼすおそれがあるときとか、総理大臣がこれに異議を言うたときとかいうことで、これを逃げようとすることは、私は非常にこれは被害者のことを思わざるもはなはだしい、行政事件特例法自体が悪法だと私は考える。もう一ぺん強く言うならば、総理大臣が司法権に立ち入ることになるということにも考えられる。この点に対する御答弁を伺いたい。
  36. 吉河光貞

    吉河政府委員 御質問にお答えします。まことにごもつともな御質問でもるとは思うのでありますが、政府の見解をお答えとして申し上げたい。  行政事件訴訟特例法第十條第二項には、確かに御質問のように、処分の執行により生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、申立てまたは職権で、決定をもつて、処分の執行を停止することができるということを規定してあります。これは処分を受けた当該団体が、団体立場でこういうような処分の執行によつて生ずべき償うことのできない損害を避けるために緊急の必要があるという理由であると考えるのでありますが、ただいま御質問にもありました通り、その但書にはこういう理由がある場合でも、裁判所は公共の福祉にそれが重大な影響を及ぼすおそれのある場合、国家社会全般の立場から見て、いかにその団体が償うことのできない損害が生ずるおそれがあつて、しかも緊急の場合であつたにしても、これをひるがえつて国家社会全般の立場から見て、裁判所としても制限しなければならない。また行政官庁といたしましても、内閣総理大臣は国家社会治安の全般についてどうしてもそれが公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある場合におきましては、そういう命令を出すことを、最高の責任者でございまして、この立場からこの異議権が認められているというふうに解釈いたしております。ここで、御承知のこととも思いますが、行政行為内閣総理大臣に責任がある国家行政権の運用と、司法——特定の具体的な事件につきましての争訟を解決する司法との調和をはかつているのではないじやなかろうか。こういう趣旨は、またこの第十一條にも規定いたしておりまして、その処分は違法であるが、一切の事情をしんしやくして処分を取消し、または変更することが公共の福祉に適合しないものであると認めるときは、裁判所は、国家社会全般の立場から、請求を棄却することができるというようにもまた規定しておりますし、行政事件の特例法自体の当否は別といたしましても、そういう建前になつているものであります。政府はこの建前は、やはりとるべきものと考えている次第であります。
  37. 吉田安

    吉田(安)委員 局長の言われることも、よくわかります。わかりますが、この内閣総理大臣が異議を言う、だからその異議を言うときには、その理由を明示してこれを述べなければならないのだけれども、一方では裁判をしようとする。その場合にそれに対して、それはやつちやいけないということになると、ここは私不敏にしてどうもその関係が——内閣総理大臣はやはり裁判権にまでも立ち入つてつて来る、それで裁判権が非常に拘束される、こういう感じがするのですが、その点についてひとつ蒙を開いていただきたいと思います。
  38. 吉河光貞

    吉河政府委員 御質問にお答えいたします。たいへんなまいきなようなことを申し上げるわけでございますが、私の政府委員として考えておるところを、率直りに御答弁申し上げます。行政につきましては終戰後の日本憲法の制定によりまして、法治国主義がとられたのでありまして、一切の行政行為は、嚴格に法律に基いて、法律規定に従つて行われなければならない。行政官庁が法律によらない相当なわくをもらいまして、そのわくの中で自由に行政行為ができるというような建前は、絶対にとつていけないのでありまして、行政行為につきましては法治国主義が確立されまして、すべての行政行為は嚴格に法律に基いて行われなければならないということになつておるのであります。さてこの行政行為が、国家社会全般に相当な重大な影響を及ぼす行政行為国家によつて行われます場合には、その行為は一応法律に基いて、それが行われた以上は、それが適法なものとしてこれは認められなければ、国家は行政を行うことができないような次第でございます。従いましてその行為につきましては、訴願、訴訟その他の手続によつてこれを争う、そうしてこれを取消し、変更するということが認められているのでありまして、新憲法のもとにおきましては、すべて一切の行政行為は、裁判所に違法を主張することができる道が開かれておりまして、終戰前の立て方とは非常に違つた立て方をとつておるのであります。あらゆる行政行為につきまして、その行為が違法に行われたということを理由として、取消し、変更を求める建前になつて、法治国主義か徹底しておるわけであります。さてその間の、そういう立て方になりまして、当面刻々に生起する所要に応じて国家として打つて行く行政行為と、訴訟による救済との間には一つのラインを引いて調和をはからなければ、法治国の体制が確立することができないというような建前になるのではなかろうかと考えておるわけであります。かような立場から、行政事件特例法というものが認められまして、内閣の行う、国家の行う行政行為についての救済と、その行政行為遂行の間との一つのラインを引いたものではなかろうかと考えておるわけであります。
  39. 吉田安

    吉田(安)委員 局長のお話はよくわかるのでありますが、この第十一條を見ましても、やはり裁判所にこれだけの権限があるのですから、それで総理大臣がかようなことをするということはどうかと、私はさように考えるのであります。  ところでこれは別になるかもしれませんが、この第十條によつてこういうことをやるときに、今までの例としてこの特例法ができましてから、総理大臣が拒否したようなことがありますか。その例をひとつ、あればどのくらいあるか。
  40. 吉河光貞

    吉河政府委員 ただいま具体的に正確な資料を持ちませんので、さつそく調べまして、とりそろえて御報告したい、かように思つております。
  41. 吉田安

    吉田(安)委員 それでは適当な時期にひとつ御提出を願います。
  42. 佐瀬昌三

  43. 石川金次郎

    ○石川委員 初めに、ただいま吉田委員から御質問になりました第二十四條の二項に関しても、もう少しお聞きしておきたいのであります。第二十四條第二項は、行政事件訴訟特例法によつて救済を求めることができるという規定でありますが、その規定の末項であります。「その処分の執行の停止の申立をすることができる。」と書かなくとも、行政事件訴訟特例法において救済し得べき條件があれば、救済を求むべきものじやないかと思うがどうですか。
  44. 関之

    関政府委員 お答えいたします。第二十四條第二項の規定は書かなくても、行政事件訴訟特例法があります限りは、かような措置はできるのでありまして、これを特にここに書きました次第は、一般の人々にこの規定のあることをはつきりわかつていただくために、つまりこの法案の救済手続の方法をはつきりわかつていただくという意味においてここに特に掲げた次第でありまして、その他の立法例もありまして、かような措置をとつたのであります。
  45. 石川金次郎

    ○石川委員 そうであれば、その処分の執行の停止を申し立てることができると特に書きましたのは、行政事件訴訟特例法第十條の、何らかの緩和の措置をここに予想されなければならぬと思うのでありますが、そういうことはちつともお考えにならなかつたのでありますか。
  46. 関之

    関政府委員 お答えいたします。処分の執行の停止を申し立てることができると特にここに書きましたのは、行政事件訴訟特例法の第十條にさようなことが書いてあるということを、ここに明らかにする意味で書いたものでありまして、それ以外に何ら他意はないのであります。
  47. 石川金次郎

    ○石川委員 その点は、そういうお考えであるならばそういうふうにしておきまして、私の質問に入つて参ります。  まず第一番に、本法案の性格とでも申しましようか、一体本法案は、法律的な区分をやつて参りますときに、行政法規的な刑罰法規なのか、それとも固有の刑罰法規に類別されるものかという性格についてお伺いしたいのであります。本法案団体活動の規制ということと、現行刑法規定の拡張——これは犯罪の拡張となつておりますが——より成り立つておるのでありまして、私の考えますのに、団体活動に対する規制であるならば、必要であるならばその規制を別の法律で制定する。刑法規定の拡張、これは罪の拡張になるのでありますが、どうして刑法改正の手段をとらなかつたか、これをふしぎに思つておるのであります。政府の説明されたところによりますと、団体活動の規制ということは、その法律的な性格は保安処分である。行政機関によつて行うべきことは当然であつて、暴力主義的破壞活動は行政上の観念である、刑事上の観念ではない、こう言われておる。一方第六章の罰則というのは、現行刑罰法規の補整である、純粋に刑法上の規定の拡充である、こう言われておる。一つ法律案の中に、一半は純粋に行政法規の観念を用い、行政機関によつてこれを執行し運営して行く。また同一法規内の一半は、純粋に刑事上の観念と刑事上の機関によつてこれに対処する。そこには観念の混淆が出たり、この執行にあたつての重大な影響を受けて来ると思うのであります。現にあとで指摘いたしますが、そういうような関係が必ず出て来るのであります。法律は、申すまでもなく簡明でなければなりませんし、一般国民にわかりよいものでなければなりません。そうしてその執行にあたりましては、できるだけ煩雑を避けなければならない、そうして公平妥当である、こういうように行かなければならぬのであります。立法者は立案にあたつて、法の複雑をできるだけ避けなければならぬ。複雑化ということは、これは一般の理解が非常に困難だということばかりではございませんで、ここから人権が侵されるというようなことがしばしば現われて来るのであります。今般立案にあたりまして、団体活動の規制は行政上の保安措置である。それならば、それを一つの法体系として整える。そうして本法によつて罰則である條文が刑罰法規の拡張であるならば——あなた方は拡充とおつしやつているが、そうであるならば、刑法改正という方法をとつてこれを整備して行く。これが法体系であり、親切な法律立案の態度であろうと思うのでありますが、これを回避されたのはどういうわけであるかということをお聞きしておきたい。
  48. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この法律案の中に、暴力主義的破壞活動を行つた団体に対する必要な規制措置という行政的な條文と、若干の現行刑罰法規の補整との二つが含まれているのでありますが、立案の根本といたしまして、前日お示しいたしました実態的な破壞的な各種の様相に対しまして、当然何らかの立法をしなければならないというのが、この法案立案のスタートになるわけであります。そうして一方におきまして刑法等の恒久的基本法はこれを軽々に改むべきでないというのが、次に出て来る立場になるわけであります。この二つの要素を考慮いたしまして、かような立法の形式をとることになつたのであります。お尋ねのようなことも考慮される点ではありますが、今申し上げたような二つの大きなポイントから申しまして、この法案におきましては、かような二つのことを規定いたしたものでありまして、右申し上げた事情におきまして、これも国家の立法政策としてやむを得ないところであると思うのであります。
  49. 石川金次郎

    ○石川委員 ただいま御説明によりますと、刑法は恒久法なんだ、固有の刑罰法なんだという意味でありましよう。従つてその改正は容易にやるべきでない、こういう趣旨から、緊急今日の事態に対処されるためにこれをとつた、こういうのでありますが、しかし実質は、私どもの不安に思いますことは、現在までなかつた刑法の罪の大きな拡張であります。あなた方は政治的という意味を用いておりますけれども、何といつても実質的には刑法改正に違いないのであります。それを緊急事態というこのことに目をくらまさして、そうして大きな刑法改正をやろうとしたその点が、私はふに落ちないのであります。もう一度お伺いしたいのでありますが、一体政府のお考えは、本法にいう扇動であるとか、教唆であるとか、陰謀であるとか、予備であるというものを、このような特別法規とでも申しましようか、刑罰法と保安取締法とチヤンポンにしたような法律でどんどんこれからおやりになつて行くお考えでありましようか。政治上の云々といいますけれども、一国にとつては、政治も大切であるけれども、道徳というものを維持しなければなりません。その次には、道義上の目的をもつて何々の行為扇動したものは、こういうように出て参りますと、一体刑法はどこへ行つてしまうかわからなくなるのであります。そういうお考えのもとになされているのか、お聞きしておきたい。
  50. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この法案におきましては、さきに申し上げたように、まず暴力主義的破壞活動という団体規制の基本観念を明定しているわけであります。これは内容をごらんいただけばわかるように、当面の客観的事態に対しまして、必要最小限度の範囲をここに取上げておるわけでありまして、第二号のごときは、明らかに刑法だけの規定の上に「政治上の主義若しくは施策を推進し」というふうにしぼり方を加えているわけであります。かような規定をここに設けまして、同時にかかる行為に当る行為について刑法上の規定にないものにつきましては、これを必要最小限度において処罰規定を設けるということが、公共の安全の保持上絶対に必要と相なつて来るわけであります。さような意味合いにおきまして、この法案の中にこれに関する現行刑法の補整的規定を設けるのは、立法の形態、立法の形式といたしまして、必ずしも当を得ないというふうには考えていないのであります。右のような事情によりまして、この中に今の二つの行政的な規定と刑罰的な規定を取入れたのも、立法的な、法律を作成する上からいいましても、必ずしも当を得ないものではないと考えまして、かような形式をとつた次第であります。
  51. 石川金次郎

    ○石川委員 ひとつ例をもつて聞いてみますが、多数の人間が集合した、そこに一つ殺人行為が起つた、こういう場合、そういたしますと刑法と本法と並んであるのでありますから、殺人の現象は、まず破壞活動防止法による嫌疑があるかどうかということを調べなければならなくなると思うのであります。おそらくはそうとつて行くでありましよう。そうとつて参りますと、今度は捜査の上に混乱を来すのみでございませんで、今度はこの審理の裁判にあたりましても、破壞活動における殺人であるかどうかということをまた取調べて行かなければなりません。従来のような刑法一本では行けなくなつてしまう。これは罪が破壞活動につながるものかどうかということを搜査の側からも、審判の側から行きましても、見定めて行かなければならぬ。そこには調査官が介入して行くという手続上紛淆、混雑を来す憂いはないのでありましようか。それからあなた方は、そういつた調査官はいつでも調査に立ち会うことができる。証拠資料收集にも携わつている。しよつちゆう情報交換するというのですが、いろいろの混雑をしないか、それを憂えるのであります。それはないのですか。
  52. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答え申し上げます。ごもつともな御質問であろうと思われます。しかしこの法案を立案するにあたりましては、現実の捜査機関との連絡協力によりましてこの混乱は是正できる、防止できるという確信のもとに立案されたのでございます。
  53. 石川金次郎

    ○石川委員 局長の御説明によりますと、本法の第三條に書いてあります刑法規定した犯罪、これは暴力破壞行為というように名づける、これは同じ殺人の中であつても、本法の殺人行為が非常に危險であり、悪性だという御説明に承つたのであります。そういたしますと、本法に出て来た殺人というものは、裁判の上においてもこれは悪性として取扱つてもらいたいということを予期せられて、この法案をお書きになつたのであろうか、それをお聞きしておきたい。
  54. 関之

    関政府委員 お答えいたします。その点につきましてはこの刑法各條で、第三條に掲げてあるがごとき各條文におきましては、すでにそれぞれ相当重い刑をもつてここに定められておるのでありますからして、特にそれらの分につきましては、それ以上重く処分することも必要ではない。大体現行法のままでその規定の分についてはその分に相当であろう、かように考えまして特にこの点は考慮しなかつたのであります。
  55. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 午前中の審議はこの程度にとどめ、暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時十二分開議
  56. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。石川金次郎君。
  57. 石川金次郎

    ○石川委員 午前中伺いましたところによりますと、本法の第三條に記載してある刑事上の犯罪が実現したとしても、その評価が従来と何らかわりがないのだ。これを特に悪性があると見なすことでもなければ、特に重い処罰を望むことでもない。これを例をとつて申し上げますと、政治上の主義のために殺人行為をやつたとしても、従来の評価の方法とかわりない。従来以上の悪性というものを見るということを期待しておらない、こういうように承つたのでありますが、さようでありましようか。
  58. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。先ほど関政府委員からお答えしたときには、ここに列挙されている騒擾、放火、殺人等の行為については、刑法規定されている以上の罰則の加重をしていないという意味でありまして、ここで暴力主義的な破壞活動の中に内乱を始め騒擾、放火、殺人等の行為規定して、それに政治目的をかぶせております。これは保安上の立場から、これらの行為がきわめて危險行為であるという点が第一であります。第二に、これらの行為につきましては、予備、陰謀、教唆扇動のごとき行為規定しております。このような意味におきましても、刑事上の立場からも政治目的がある場合には、きわめて犯情の悪い行為であると考えておるわけでありまして、しかしながらこれをそれだからと申しまして放火や殺人等の、政治目的をもつて行われる行為を、刑罰を加重してまでその罪質を高めるということは必要ではない。何となれば刑法においては相当に重い刑が盛られている。具体的な個々の事件の犯情につきましては、裁判所は当該事件を審査されて、十分にこれを判断される。それで十分であるというふうな立て方をしているわけであります。
  59. 石川金次郎

    ○石川委員 考え方がわかつて参りましたが、しかしそうなると、お考えのうちにはやはり政治上の主義をもつてなされたる殺人——ここに言うところの暴力的破壞活動でありますが、その一環として現われた殺人が悪いんだ。しかしながらそれ以上刑法に対する処罰の嚴重を望まないんだ、こういうことであれば、時代の転変によつて、今日の時代はそれを悪性だと見なければならぬにかかわらず、現在の悪性のままにこれを満足するということは、どういうりくつになりましようか。
  60. 吉河光貞

    吉河政府委員 殺人罪、放火等の行為につきましては、刑法において相当重い刑が盛られておりまして、これで十分なりというように考えているわけであります。
  61. 石川金次郎

    ○石川委員 なるほど刑法のたとえば百九十九條は「人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役」という、かなりの幅の広い刑をやつておる。私のお聞きしたいのは、おのずと従来は量刑の標準というものが立つておつたんだ。これは三年から、無期、死刑まで行くのでありますから、広い、これで満足するとおつしやいますが、私が例をあげますならば、実質的に悪性があるというので、従来は執行猶予になり得べきような事件であつても、政治上の主義のためにこの事件が起つたとするならば、その執行猶予のあることを、立法者としてあなた方が不安に思うか、不満に思うか、そういうものは、従来の量刑の標準を高めてもらわなければならぬかどうかということを聞いておるのであります。おわかりになりませんでしようか。
  62. 関之

    関政府委員 お答えいたします。従来の標準をかえて、新たにそれを高めたものを検察として要求することを望むという意味ではないのでありまして、考え方といたしましては、かような行為刑法上におきましてすでに相当重い刑をもつて処罰されてある。そのことはとりもなおざず、きわめて危險行為である。そのきわめて危險行為を引起すような教唆扇動行為は、今日の時代においてきわめて危險であるから、公共の安全の保持上危險であるから、新たにその部分だけ補整をした、こういうことに相なるのであります。
  63. 石川金次郎

    ○石川委員 もうちよつとその点をお聞きしなければならぬ。私のお問い申し上げておりますのは、一体政治上の目的、いわゆる暴力的破壞活動でなされた第三條の例示犯が、これは悪性が今日の時代に強まつて刑法に言う危險が深まつたのであるから、嚴重に処罰することを望むのか。これはどの犯罪につきましても嚴重に処罰するのを望むかもしれません。私の考えておりますのは、そういうものより、もつと嚴格にしてきびしい一つの刑を望んでいるのか、これを期待しておるのかというのであります。それが従来のままで、裁判上従来の慣例に全部まかせておくんだ、その評価が従来と異ならなくてもいいというのか、その評価の仕方をもつと悪性を高めて、この所定内の刑において制裁すべきだとおつしやるのか、どちらをどう期待しているのかということを聞きたいのであります。
  64. 関之

    関政府委員 その点につきましては、法定刑については変更をいたしませんのでありますから、裁判上の量刑において特に従来以上にこれを重く処罰するというような点は、特に法律の上においては期待していないのであります。
  65. 石川金次郎

    ○石川委員 法律の点において期待しておりませんことはわかります。三年から無期、死刑まであるのでありますから、これはわかります。私の申しますのは、法律の期待ではなくして、この法を出したあなた方の立案の場合に、正犯も——これはつまり教唆とか扇動とか予備、陰謀というものまで拡張したのだから、正犯ももつと悪性と評価せられて、嚴重な処罰を受けなければならぬのか、こういうのです。
  66. 関之

    関政府委員 お答えいたします。お尋ねの点につきましては、この法律におきましては、第三條第一項の一号二号の各既遂類型につきましては、この法律によつて団体規制の條件という新たなる行政的措置の理由といたしたのであります。これはこの種の行為が、今日の事態におきまして、国家公共の安全の上にきわめて危險が多いと考えているわけであります。しかして、これらの点についての法定刑は、別に拡張してはおらないのであります。しかしながら、それらの行為危險性その他の点につきましては、おそらく裁判所において御判断になります場合、この法案の趣旨とするところも解されて、適切妥当なる御解釈がそこにあつて、量刑上適当なるものが反映されるのであろうと考えておるのであります。
  67. 石川金次郎

    ○石川委員 そこで裁判所の量刑は、この法が施行されれば、この法も考えながら量刑せられるであろうということでありますが、それはそうなりましよう。しかし、あなた方が御期待なさるのに、この法をもしんしやくしながら、従来の刑法とあわせて、刑がか科せられるものという御期待を持つたのか、これをお聞きいたします。
  68. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。この法案が国会の協賛を得まして、国家意思として、法律として出された場合におきましては、裁判所はこの法律についても当然御考慮を払われるべきものと信じております。必要最小限度の立法といたしまして、この程度の規定をいたしました。
  69. 石川金次郎

    ○石川委員 その点は局長さん、こう了解してよろしいですか。この法の制定になつたあかつきには、従来の刑法もあわせながら量刑せられるであろうということを信ずるというのでありますから、この法によつて、悪性なるものはやはり従来刑法一本で来たよりも増加せられ、それに対する刑が来る、これが適当だと信じ、かつこれを予期しておるものだ、こう了承してよろしゆうございましようか。
  70. 関之

    関政府委員 お答えいたします。法案が発効いたしますれば、一般的にはそういうことに相なると思うのでありまして、さようなふうに考えていただいてさしつかえないと存じます。
  71. 石川金次郎

    ○石川委員 それでは殺人の例をとりましよう。百九十九條であります。「人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役ニ処ス」これは單純殺人の場合であつて、このほかに破壞活動による殺人の場合においては、かくかく刑を重く見なければならないという法が、この裏に、文字には見えませんけれども、現われて来たものと観念してよろしゆうございますか。
  72. 関之

    関政府委員 お答えいたします。そのような意味合いのものではないと思うのであります。要するに、現下事態にかんがみまして、破壞的活動を防止する、それにつきましては、刑事法の面は、本法における三十七條以下の手当だけにしておく、同時に行政的な措置をこの法律規定いたす、それらのことが相関連しまして、裁判所として重く見られるであろうと思われるのでありますが、必ずしも法律的にそこまで、この法律が刑の全面的な引上げというようなことを意味しているものではないと、私は思うのであります。
  73. 石川金次郎

    ○石川委員 もしそういうようなことを期待しないというならば、期待もしないし、やるかやらぬかわからぬということでありますならば、従来、扇動も、そうしてこの破防法にいうところ教唆も、あるいは、ある場合には陰謀も予備も、犯罪としてこれを見なかつたのであります。従来通りで刑量定は満足する、それもあつてもしかるべきだとあなた方がおつしやるならば、本法の悪性の評価を従来の通りにしておいて、なおかつそれにわずかに影響のある、今言つたものを処罰しなければならぬという理論は、どこから出て参りましようか。刑法一つの理論として、理論の構成が正しくなつておらなければ、国民はこれを承服しないのでありますから、これをお伺いいたします。
  74. 関之

    関政府委員 お答えいたします。考えの基本といたしまして、第三條第一項各号に掲げてある行為は、それ自体刑法中において、きわめて危險中の危險行為であるわけであります。その危險中の危險行為の予備、陰謀、教唆扇動という、行為の外郭に拡張した部分でありますが、これはなるほど今までにおきまして、犯罪として規定されていないのであります。しかしながら、その刑法危險中の危險行為を、これらの教唆扇動という行為が呼び起す危險性が、多分にあるわけであります。そこでその危險実害行為を呼び起す行為、これを国家社会として防止する必要があるかいなかという問題が、私ども考えの重点になるわけであります。しこうして現下事態にかんがみまして、このようなことに対する教唆扇動をそのまま放置しておくことは、公共の安全を保持する上において忍び得るところでない、かように考えまして、この規定を設けた次第であります。
  75. 石川金次郎

    ○石川委員 この規定、いわゆる扇動教唆、予備、陰謀というものを規定いたしましたのは、これ自体が非常に危險なのだから、独立犯としなければ保安を維持できない、こういう御趣旨に承りました。そういう意味であると、この法は刑罰規定ではなく、あなた方のおつしやつた刑法補充の規定ではなくして、刑事保安処分である、保安制度の確立ということを目的としたのでありますか。そのような危險なことが発生する、これは危險だからこれを予防しなければならない。なるほど刑罰法規は、かくかくの行為があつたならば、この刑が行くぞという一つの威嚇を與えて、社会保安にすることもあります。同時に、そうでなくして、一定の将来起るであろうということを予測する危險の場合にあつては、分化いたしました今日では、刑事保安処分としてこれを取扱つて行くということが、法そのものの任務ではないか、政治そのものの任務ではないかと思う。御趣旨によると、刑事保安処分であるのか、行政処分であるのか、刑法実体の、固有刑法改正であるのか、この法案に幾多のものが盛られまして、理解に苦しむのであります。と言いますことは、おのおの制度には、その固有の目的があり、固有の原理があり、そうしてそれが支配するのでありますから、このように同一法案にいろいろな原理、いろいろな目的を盛りますことは、実際の実施におきまして困難を生ずると思うので、お聞きしたいと思うのであります。
  76. 関之

    関政府委員 現下事態に対処いたします必要上、処政処分によつて団体規制の処置をなすに必要な法律が、この法律であります。この点については御了承を得ていることと存ずるのであります。先ほど私どもにおいてお答えいたしました点において教唆扇動というような点についての、この法案の処罰規定が、刑事保安処分的なものであるというように御理解いただいたと了承する次第でありまするが、この点につきましては、刑事保安処分という意味合でなくして、私どもといたしましては、新たなる犯罪類型をこの法案においてつくつた、かように考えておるわけであります。これはたとえて申しまするならば、国税犯則の取締法におきまして、税金の不納についての扇動罪を処罰しておるわけでございます。これはその扇動行為自体公共の安全を確保する上において、これを犯罪として処罰する価値ある行為であると考えて、そういたしたものと私ども考えるのであります。それと同じわけでありまして、この法案におきましても、予備、陰謀、教唆扇動等の行為につきましては、これを刑法上新たに犯罪として処分する。そして、そうすることによつて初めて公共の安全は確保できるのである、かように考えて、新たな犯罪類型をそこにつくつたのであります。そしてこの二つの新たな刑罰規定を立法の政策の上からこれを一つ法案にまとめたのであります。諸般の点を考覈して、これらの措置は最も適当な措置であると考えるわけであります。
  77. 石川金次郎

    ○石川委員 今税法を例に引かれましたが、先ほども申し上げております通り、税法は純粋の行政刑罰法規でありまして、この場合に当つて来るかどうか疑問であります。なおその点につきましてはよく考えてみて、また御質問申し上げます。ただ一つこれを独立犯として拡張した、つまり刑罰規定から言えば罪の拡張であります。罪の拡張を本法に言う教唆、陰謀、予備、それと扇動、これらを悪性大きいと見たなら、なぜ本犯の悪性の評価を従来と同一に取扱わなければならないかということは疑問です。ただ教唆であるとか、陰謀であるとか——予備では実害が発生しません。非常に危險実害を発生せしめる原因を與えるからいかぬ、こういうのが従来の刑法規定であると私は了承しております。ゆえにこそ刑法の重要な犯罪に対して、あいるは予備を罰しあるいは陰謀まで罰する。教唆は見逃しておく。本法に言う教唆であります。刑法に言う教唆は、正犯実現を要件としております。本法に言う教唆及び扇動ということは見逃しております。ところがこの予備、陰謀、教唆扇動とこう拡張して来たならば、これらによつて起るところの本犯が非常にいかぬ。従来より倍にも増して悪性を評価しなければならぬ。その危險を評価しなければならぬ、社会における危險、国における危險——犯罪危險でありますから、その危險というものはもつと評価しなければならぬという理論を持つて来なければ、みんなが承服しないではないでしようか。
  78. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 石川委員の質疑の要旨は、予備、陰謀及び本法に言う教唆扇動独立犯罪としたけれども、その基本犯罪である刑法の内乱その他の犯罪について刑罰を加重するとか、そういう立法措置をせずに、それをもととして起る本法の新しい犯罪類型の設定、あるいは刑罰拡張をしたというところに何か理由があるか、政府は本法案に対する立案過程において、その点をいかに考えられたかというその理論的説明を求められておるようでありますから、それに対する政府側の御答弁を願いたいと思います。
  79. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。刑法の立て方でいろいろ学説上の議論もございましよう。客観説をとる者、あるいは主観説をとる者、いろいろ学説上の議論をとる者もあるのでありますが、ここではさておきまして、この予備、陰謀、教唆扇動等を独立犯として規定した理由は、これらの行為について、現実事態にかんがみまして、これらの行為につきまして一つの社会的な違法性を認めたからでございます。そこでその違法性は、ただいま仰せのごとく予備、陰謀、教唆によつて実行される本犯と申しますか、殺人、放火等の行為そのものから流れ出るだけではなくて、こういう行為を準備する、あるいは推進するような行為にも、社会的、道義的に一つの違法性を認めたということに相なるわけであります。刑法の罰則を殺人、放火等によつて改正して、その刑を上げるとか、いろいろな手当をなぜしなかつたかというお話でございますが、刑法等におきましては、御説のように相当幅の広い規定で重い刑罰を規定しております。本法の立案にあたりましては、なるべく必要最小限度の立案をして行きたい。いじらぬで済むものはなるべくいじらぬで済ませて行きたい。先ほども申しました通り、そういう趣旨でありまして、刑法を別に法律によらず裏から実質的に刑罰規定改正して行こうというような気持があつたわけではございません。裁判所が量刑をされる上におきましては、これらの法案法律として成立しました場合には、当然しんしやくされるものであろうというような見解として申し上げたわけでございます。
  80. 石川金次郎

    ○石川委員 今局長のおつしやいましたように、しんしやくされるということならば、例を卑近にとりましよう。従来七年の懲役であつた者が本法ができましたために十年になるかもしれません。おそらくそのようにしんしやくされるであろうと局長がおつしやる意味だろうと思います。そうなりますと、先ほども申しましたように、九百九十九條の裏に、破壞活動による殺人は、実質的には嚴重に処罰されるのだということを含むことになるかもしれませんが、率直に考えてみてそういう理論にはなりませんか。
  81. 関之

    関政府委員 お答えいたします。それらの点につきましては、この法が発効後におきましては、この法案などを考覈しての裁判所の御判断に帰せらるべき点と私は思うのであります。法律の刑事規定の上からみますならば、先ほど局長から申し上げたように必要最小限度のもの、既存のものでまかなえるものは、それでまかなう、こういう建前で必要最小限度に規定したものでありますから、裁判所においてこの法案の発効後において、この法案の意味を御理解になるならば、それも量刑の上の判断の形成に資せられることになるかとも存ずるのであります。
  82. 石川金次郎

    ○石川委員 それであるから、私は本法に言う予備、陰謀のある場合並びに教唆扇動という刑罰を、罪を拡充したのみではなく、実質的には破壞活動による殺人というものは浮き上つて来て、刑法というものは動き出して行くのだから、何と言われましても第三條に規定しておるところ刑法規定は、内乱罪その他の罪が実質修正を受けた、改正を受けたことになると思われますが、そうは思いませんか。
  83. 関之

    関政府委員 お答えいたします。それは実質的にそういうふうに改正をいたしたことになるとは考えないのであります。この法案によりまして破壞活動を防止しなければならないということが、国家一つの意思として提出されることは疑いないところであります。しかしこれがただちに刑法その他の上においていかに影響するかということは、一に裁判所の御判断にまつべきものでありまして、この法律がただちに刑法解釈その他量刑問題について、法律的に義務づけるということはないものと思うのであります。一にそれは裁判所の裁判官の判断によつて行われるべきものと思うのであります。
  84. 石川金次郎

    ○石川委員 私の質問が要領を得なかつたために、答弁もどうも私の期待するところをお伺いすることができないのは残念であります。しかしこの点についてはこれで打切りますが、私のお聞きしたいという趣旨はこうであります。もしも現在の社会において不安が生ずるがゆえに、その不安を除去せんがためにそれに対する防衛としてこの法を制定するのだ、こうなりまするならば、刑事保安という制度にまたなければならぬのじやないかと考えます。もしまたさつき言つたように、実質的に刑の量定が普通よりもきびしくなる。悪性が過大に評価されるのだということになりますと、刑法が実質上あなた方がおつしやいましたわずかの事犯の方ばかりでなくして、全部の法條までも改正せられたことになるではないか。ここに非常に不安がある。私はこの法律を——どうしてもあなた方の言うことを聞こう聞こうとして聞き得ないものがある。どうして刑法改正するというまつ正面からこれを持つて来られなかつたか。必要ならば団体規制はまた強制処分としてこれを立案せられなかつたか。これはどうしても遺憾であります。しかし関さんも学者でおいでになるから、こういう体系を日本刑罰法規に立ててよいでしようか。それをお考え願いたい。法はもつとみんなにわかりいいようにしなければならないときに、こうした混淆のものを持つて来て日本の刑罰法規を乱すことになりはしないかと私は考える。この点はこれで終りましよう。
  85. 関之

    関政府委員 お答えいたします。その点につきましてはこの法案の立案のスタートの問題でありまして、従来しばしばお答えいたした点でありますが、刑法は申すまでもなく、刑事法の基本恒久法でありまして、軽々にこれを改正すべからざるものであると考えるのであります。この法案は、何と申しましても、現下事態に対処する特別的な、公共の安全を保持するための措置を規定するということが立法の最初のスタートでありまして、さような意味合いから、このような立法の形式と相なつたのであります。
  86. 石川金次郎

    ○石川委員 第一條以下各條文に現われておりますところの意義概念をお伺いしたいと存じます。しかしきよう全部終るのではございませんで、あとでまた、割当てられました時間もございますので、そのとき私かあるいは同一政党に属しておる他の委員によつてお聞きすることと存じます。  まずこの第一條に現われて参ります「公共の安全」という点であります。非常に愚問とお考えになるでありましよう。ところ本條の「公共の安全」ということは、国民の権利を拘束する一つの概念として現われて来たのであります。従来公共の福祉という観念をもちまして、国民の自由の制限の伝家の宝刀となされておつたかに見られるのであります。法案には「公共の安全」という言葉で現われて参りました。あるいは将来さらに社会の安全とか、公序良俗とか、かつてありましたような公益優先とか、基本的秩序、これは大臣が言つておつた。そういうような名前で国民憲法に保障されました自由ないしその他の権利が拘束制限されることなしといたしません。そこで私は、一体公共の安全ということはどういうことを意味しておるのか、そうしてこの意味は憲法に言う公共の福祉とどういう差があるのかということをお聞きしておきたい。
  87. 関之

    関政府委員 この法案におきまする「公共の安全」とは、次のように考えておるわけであります。すなわち日本国憲法のもとにおける国家統治の基本組織並びに基本的な政治方式、さらに国家社会の基本秩序が平穏に維持されておる状態を公共の安全と考えておるのであります。この公共の安全という観念は、公共の福祉よりも狭い観念であります。たとえば公衆の衛生状態の改善等は、明らかに公共の福祉という概念の中に含まれるのでありますが、公共の安全に関するものではないのであります。
  88. 石川金次郎

    ○石川委員 それではこれはまず公共の福祉の範囲内のある方面を現わすものであつて公共福祉という観念から離れた別の観念でないとお伺いしてよろしゆうございますか。
  89. 関之

    関政府委員 お尋ね通りであります。
  90. 石川金次郎

    ○石川委員 そこで二條に入つて参ります。二條の末項に「不当に制限するようなことがあつてはならない。」もう少し先から読んで参りますと、「その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあつてはならない。」とこう表現されてあります。第一條公共の安全という意味は、公共の福祉より狭いが、それに包含せられるところの観念であるといたしましたならば、第二條の「不当に制限するようなことがあつてはならない。」という文句もまた憲法第十三條の末項を受けて、「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」この概念の一つの現われだと見なければならぬと思います。そういう御趣旨かをお伺いしておきたい。
  91. 関之

    関政府委員 お答えいたします。第二條の趣旨は、お尋ね通り憲法の人権を尊重するという点を特にここに書いたものであります。
  92. 石川金次郎

    ○石川委員 これは少し議論にわたるかもしれませんが、ただ憲法十三條に「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」という意義と、「不当に制限するようなことがあつてはならない。」ということも同一の観念と了承してよいということになりますならば、憲法の十三條に言う「最大の尊重を必要とする。」ということは、立法によつて国民の権利、自由を制限してよいということではない。公共福祉の名においてそういう趣旨ではないのだ、でき得るだけ制限しないで立法の上においてこの国民の権利、自由というものを尊重する、育成する、政治上において国民の自由と権利とを育成して行く、これが国家の任務であるという一つ規定であると私たちは解している。しかしここに現われた文字は「不当に制限するようなことがあつてはならない。」といつて、あたかも不当という言葉を持つて来てはおるけれども公共の福祉の概念というものは常に国民の権利、自由というものを制限する一つの概念として使つているかのごとく了承されることは不満でありますが、もししからずして憲法十三條に言う意味であるならば、この「不当に制限するようなことがあつてはならない。」ということを、憲法十三條末項と限られる御意思があられるかどうか。同一の趣旨であるならば……。
  93. 関之

    関政府委員 お答えいたします。お尋ねの点につきましては、憲法規定してある御指摘の第十三條の條章に掲げてある公共の福祉、それと自由、人権の制限の問題に関するのでありますが、私どもといたしましては、もとより自由、人権は最大の尊重をしなければならないのでありますが、それも絶対のものではなくして、公共の福祉との関係において調整されなければならないものと考えているのであります。この法案もすなわちその観点から公共の安全の確保に寄與するためこの程度の制限はまことにやむを得ないところとして、最小限度のものとして規定しているわけであります。特にこの第二條も、結局におきましては、憲法第十三條の精神にのつとるものではありますが、この法案規定いたしまして、各條章において規制の手続ないしは規制の條件その他を詳細に規定しておるのでありまして、それらの法律の運用に当つてもこのような方針においてなさなければならない。さようにこの第二條は規制の基準を定めているものであります。
  94. 石川金次郎

    ○石川委員 そうしますと、この二條を読むにあたつては、第二條、この法律による規制及び規制のための調査をするためには、前條に規定する目的を達成するために必要かつ相当な限度においてのみ行うべきであつて思想信教集会結社表現及び学問の自由並びに勤労者の団結及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利は最大の尊重をするものとする、こういうふうに同一であると了承してかまわないようになりますが、そうなりますか。
  95. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この第二條は、この法律の他の條章におきまして、規制並びに規制のための調査が定められているわけであります。これらの運用にあたつては、憲法が保障する日本国民の自由と権利をその実際の実施の運用において不当に制限するようなことがあつてはならない。言葉をかえて言いますならば、これはもとより最大の尊重をしなければならないということになろうと思うのでありますが、何と申しましても、規制及び規制のための調査は、この法案規定するごとき制限のために行うことになるのでありますから、法律の定める規制及び規則の実体にかんがみまして、不当に制限するようなことがあつてはならない、かように書いたのであります。
  96. 石川金次郎

    ○石川委員 私は同一の意義を持つものならば、法律が一回使用しております言葉をそのまま持つて来た方が、かえつて簡潔であろうと思うから、念を押した次第であります。  次は第二項であります。第二條第二項に「労働組合その他の団体の正当な活動を制限し、又はこれに介入するようなことがあつてはならない。」、こういうふうに表現しておるのであります。ここでまた組合の正当という言葉を用いられたのであります。労働組合は本来法によつてできた組合でありまして、あるいはその中の一部の人は不法なことをやつたかもしれないが、労働組合自身が一体いつ不法な行為をやつたことがあるか、いつ正当ならざる行為を組合としてやつたことがあるだろうか、おそらく組合員が聞いたらびつくりするだろうと思う。労働組合としてどこかにそういうことがありましたかどうか、お聞きしたい。
  97. 関之

    関政府委員 お答えいたします。今日までの調査によりますと、お尋ねのような組合はないものと思つております。
  98. 石川金次郎

    ○石川委員 そうすると、これもまた将来あるやもしれぬという御不安のもとに出されたものと思うのでありますが、御不安はその人の主観によることでございますから、将来、あすあるいは十年の後にあるかもしれないということになります。そういう意味で、ここに労働団体の正当なる活動を制限する云々と書かれますと、労働組合の方から見ますと、いかにも不愉快である。組合を信じない、組合人格を無視した、こういうふうに考えられないこともないと思う。そこで労働組合の反対もいろいろな点からありましようが、そういう点から反対しておることもまたあるかもしれない。そこで法律の一番根本の危險なことは、労働組合の活動を不当に抑制、制限するということにありはしないかと思う。だから、むしろ簡單明瞭に、組合の活動は制限しないのだ、こうお書きになつてはどうか。不当な組合活動は本法によらずともぴたつと取締る法規がございます。
  99. 関之

    関政府委員 第二條の第二項は私どもといたしましては、書かなくても当然のことと考えているわけであります。しかしながらこの法案団体規制という点を表面に打出しているわけであります。従いまして、団体である限りにおきましては、各種の団体がやはり危惧を抱くというふうに考えられるわけであります。そこでその危惧を、かような法律の成文に掲げまして払拭することが立法政策上必要かと考えまして、この規定を置いたものでありまして、それ以外に何らの意図はないわけであります。
  100. 石川金次郎

    ○石川委員 御趣旨わかりました。組合の方にその危惧があつてはならぬ、それを除くためだ、こういうわけでありますから、組合を信じて、「労働組合その他の団体の活動を制限し」とか、もしくは「労働組合の活動を制限し」、こうお表わしになつた方が、さらに危惧を払拭する御意思が明瞭に法案に現われると思うが、そう御訂正になつたらどうですか。
  101. 関之

    関政府委員 お答えいたします。御意見の点につきましては、この第二項を私どもが書きました趣旨がそこにあるのでございまして、要するに労働組合その他の団体の危惧を払拭するという点が、この第二項のねらいであるわけであります。御意見のような表現の仕方もありますが、またこのような表現におきましても、目的は達成し得るものと私ども考えるのであります。
  102. 吉河光貞

    吉河政府委員 関政府委員の御説明に補足して、無用ではありますが、簡單にお答えいたします。  先ほども申しました通り、第二條の一項は個人の人権の面、第二條の二項は団体活動の面から規制並びに規制のための調査の基準を引きました。実はこの法案は必要最小限度の立法としてきわめて嚴格なしぼりをかけて規定しているのでありますが、これが実際の運用においても、立法の精神通りに運用されることが眼目でありまして、最も重要な点であると考えるのであります。従いまして、その基準は法文の上に明確にこれを出して、いやしくもこの基準を逸脱したようなものは違法な措置と考えられなければならぬという点を打出しているわけであります。特に第二項につきましては、団体平等という立場から、労働組合を例示として掲げました。特に労働組合だけを特別扱いして保護する立場ではございません。憲法のもとにおきまして、すべての団体活動につきまして規定しておるわけであります。
  103. 石川金次郎

    ○石川委員 今局長がおつしやつたように、労働組合という文字をいろいろな点からここに現わしたということはよく了承できます。しかし「労働組合その他の団体の正当な」とありますが、労働組合は御説のように、どうしても団体交渉などやらなければならぬのでありますから、労働組合の活動は制限しないのだと言つた方が、直截明瞭でかえつていいのではないでしようか。そうして御提案の趣旨にもすつかり沿う。これでは御提案の気持をそこなう。「正当」書いたばかりで私たちに疑われる。あなた方も非常につまらないと思う。御真意をわれわれに誤解されることはつまらないことだと思いますが、その点御一考されてはいかがですか。
  104. 関之

    関政府委員 お答えいたします。御意見は、労働組合の活動を制限し、というふうに書いてはどうかというふうな御意見と拜承いたしますが、この第二項は、すでに御説明いたしたような、次第で、団体一般に與うる不要な危惧を払拭するということがねらいであるわけであります。そこでただいま吉河局長からお答えいたしたように、ひとり労働組合のみならず、すべての団体憲法のもとにおいてそれぞれ自由にその立場を保障し得るのでありまして、憲法立場におきましては、労働組合のみならずすべての団体は平等に取扱うべきものであります。従いましてそのすべての団体に対しまして、その「団体の正当な活動を制限し、」とそのように書いたものでありまして、私どもの、無用の危惧を払拭するという立場から見ますると、かような表現が最も適当なものではないかと考えておる次第であります。
  105. 石川金次郎

    ○石川委員 次にこれをお伺いしておきます。三條の一項一号のロでありますが、ここに、「その実現の正当性若しくは必要性を主張した文書」と、こうあります。お聞きしたいことは、必然であるということを主張したときはどうなりましようか。たとえば、例が適切になるかどうかは申し上げられませんが、資本主義という制度はブルジヨアジーという少数の利益のために存在する制度である。資本主義社会におけるあらゆる国家機関というものは、ブルジヨアジーのために働いておる。ひつきようこれはプロレタリア搾取の機関だ。しかしこのような形で世の中はいつまでもおらぬ、必然に進化して行く、それはこれを否定した社会主義社会に進化して行くことは必然であるのだ、その必然の内容には搾取されておるところのプロレタリアがみずからの力、暴力をもつてしてもこの制度を改造して行くということは、これは必然なのだ、正当か不当かは別だ、必要かどうかは別だ、かく行くことは必然であるのだという言論はもちろんこれに入らないでありましようね、こういう主張は……。
  106. 関之

    関政府委員 お答えいたします。お尋ねのような意味における必然性とこの実現の正当性とは異なるものであると考えております。
  107. 石川金次郎

    ○石川委員 そこで必然を信ずることは人間の必然であり、それは正当だといわなければならぬという議論が必然に進んで来る、これはどうなりますか。
  108. 吉河光貞

    吉河政府委員 もう一度お願いします。
  109. 石川金次郎

    ○石川委員 どうも表現が悪いかもしれませんが、必然である。ある現象、ある社会現象、社会制度が一定の変動をとることは必然である、必然であるのだから、必然ということを信ずることが正当でなければならぬ、これもまた必然なのだ、こういう議論は……。
  110. 吉河光貞

    吉河政府委員 たいへんむずかしい御議論でありますが、必然であることを信ずることが正当であるというのは入らないと考えております。
  111. 石川金次郎

    ○石川委員 これで大分わかつて参りまして、御意図もわかつて来た。ほんとう言論を尊重せられるという御意思もわかつて参りました。そうすればこれはこうではないでしようか、たとえば今暴動を起した方がいいぞと言つた人があつたといたします。それを聞いてこれは不当だ、このような暴力によつては人間社会の幸福は来ないのだということは、その言動があつたがゆえに理解する、こういう現象はいかがなのでしよう。だからあなた方が非常におきらいになつて禁止せられんとするこの言動が、かえつて社会正義というか、あなた方の言う正当な政治をせしむることがある。だから言論というものを最大に尊重するならば、このロの規定があまり国民を信じなさ過ぎる。国民がばかだぞ、一定扇動者に乗ぜられるぞ、それであつて国家秩序は乱れるぞ、こういう根底のお考えからこれが出ておるのではありますまいか。いやそうではございますまい。あなた方は決してそういう御人格の人とは信じませんが、そういう非難も受けなければならぬではないですか。
  112. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。ただいまの御質問言論には言論というので事が行われるのではないか、日本において現実に革命、内乱が行われ、あるいは行うことが正しいことや正当なことを主張として打出して来るような言論に対しても、これはこれを批判してその不当なことを主張するような言論が現われるではないか、まことに御説の通りであります。しかし立場をかえまして、これを治安の面から円考えるときに、こういう主張が、現実事態にかんがみましてきわめて悪質な行為であると考えて、この規定を設けたわけであります。
  113. 石川金次郎

    ○石川委員 これはただ要するに社会観であるとか、人生観であるとかの見方の争いになりましようから、これはやめましよう。かつまた私も人間がはたしてそこまで成長しておるかどうかということに疑問を持つておりますから。ただしかし條文の読み方として今私が質問しておるのであります。  次にお伺いしたいのでありますが、ここに「政治上の主義」という言葉を使つておられる。これはずいぶんお考えになつて、本法に言うこの「政治上の主義」、これは刑罰とかかわるのでありますから、ずいぶん厳格にその概念をおきめになつたことと思う。政治上の主義であるとか、経済上の主義であるとか、社交上の主義であるとか、ずいぶん人間生活の態様は種々あるのでありますから、何上の主義であるかということは、かなりその類別がめんどうであると思う。ことに昨日税務署に税金が高いから考えてくれ、何とか引いてくれ、こういうことを多数が行つて運動したのも、ここに言う政治上の主義の争いになるのだ。反対か支持か示唆かはわかりませんが、これに入るのだという御答弁があつた。税金をまけてもらいたいという側から考えてみますと、政治上の運動と思えません。経済上苦しいから、経済生活の打開のためにやる運動なのであります。それをどうして政治上の運動と見るのか。この政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する」という、この政治上とはいかなるものであるか、教えていただきたい。
  114. 関之

    関政府委員 第三條第一項第二号の政治上云々の表現でありまするが、これにつきましては政治資金規正法に、この用語例がございまして、これをかりてここに規定したわけであります。それでこの意味につきましては、「政治上の主義」と申しますのは、資本主義、社会主義、共産主義、議会主義、独裁主義、無政府主義、国際主義、民族自決主義というように、政治によつて実現しようとする、比較的、基本的、恒常的、一般的原則なのであります。ただここに政治と申しますのは、社会通念上の政治国家政治機構の運用の問題に解するのが適当であろうと考えるのであります。教育や宗教上の活動や、一般文化の向上普及や、倫理、道徳や経済活動や、私的な組織によつて実現をはかろうとするものは、ここにいう政治上の主義には含まれないのであります。平等、博愛というような主義、主張も、政治によつて実現されることを当面の目的としないときには、ここにいう政治上の主義とはならないのであります。基本的という意味は、政治上の施策が具体的な歴史的、社会的、経済的、文化的なことを前提として、これに即応しつつ対応するものであるのに対応しまして、個々の具体的な場合に応じて個々の施策を生み出す基礎になる、比較的に抽象的、大綱的な原則であるのであります。恒常的という意味は、刹那的、臨時的なものでなく、相当期間にわたりまして、各種の條件の変化にたえて、なおその生命を維持しようとする原則であることを示しているのであります。また次に政治上の「施策」という意味でありますが、これにつきましては、炭鉱の国家管理でありますとか、物価体系の改訂、軍事公債の利払いの停止であるとか、農地の再配分、金本位の停止、幣価の切下げというように、政治によつて実現しようとする、比較的に具体的、臨時的、特殊的な方策を申すのであります。また「推進」と申しますことは、みずから策定して、その実現を企図するということに考えているわけであります。また「支持」と申しますのは、すでに存する主義または施策について、その実現を希望し、またその実現に協力することを意味しておるのであります。また「反対」と申しますのは、すでに存する主義または施策について、その実現を希望せず、またその実現を拒否することをいうのであります。お尋ねの中に、税金の問題があつたのでありますが、これも少数の者が自己の税金の問題につきまして、税務署に掛合いに参りますのは、政治上の政策の反対にも、推進にもならないものと思うのであります。それが一般的な意味におきまして、国家の課税の方針がいけないというような問題を取上げまして、政府に対し反対する場合には、ここに政治上の施策の推進または反対という問題が考えられて来るものと思うのであります。
  115. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 今の御説明では、政治上の施策と行政上の施策というものの限界の御説明がはつきりしないのであります。抽象的であります。その点について政府の御説明をこの際願つておきたいと思います。
  116. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。政治とは何かということは、私ども学問上のいろいろな議論につきまして、ここで御紹介申し上げるような必要もないだろうと考えておりますが、大体政治とは、国家の統治活動の全般にわたるものである。国家意思の決定とその行使に直接関連する諸行動というようなものが政治である。要するに政治国家意思の決定、その遂行の指導というような問題が政治になるので、行政はかような政治を前提として、その国家意思の具体的な実現行為、かような政治を前提としまして、そのもとに立つて、かような国家意思の具体な実現行為というものが行政であり、従いまして行政は、この意味では政治ときわめて密接な関連を持つものであると考えておりますが、決して行政は政治にかわつてはならないと考えております。
  117. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 関連して……。これはよほど明確にしておいてもらわぬと困ります。今ここへ道路をつくる、これは間違いない行政である。ところがここへ道路をつけられては困る、こう言つて団体的に反対運動をやつた。こうすれば、行政上の反対であるがゆえに、本法にはまらぬといわれますか。
  118. 吉河光貞

    吉河政府委員 大体それは政治上の問題とはならないと考えております。
  119. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはもう少し考えてもらはないと困る。今のお話ではそういうように聞こえるが、これはよほど考えるべきことと思います。
  120. 石川金次郎

    ○石川委員 今鍛冶委員から、例を聞きましたが、私も一つ聞いておきたい。委員会に電燈料が値上げされては困るというので、委員会に上げないようにしてくれというのを、多数によつて陳情や運動をした、これはどうなりましようか。政治運動ですか。さつき言われた行政云々ということですか。
  121. 関之

    関政府委員 お尋ねいたしますが、どういう委員会に……。
  122. 石川金次郎

    ○石川委員 私ははつきりした名前を忘れましたが、公益事業委員会だろうと思います。それは行政機関になつております。
  123. 関之

    関政府委員 お尋ねの場合は、公益事業委員会が政府機関でありまして、もしその政府機関が、電力料金の決定に対して、行政上一般的に問題を処理する権限があるといたしますならば、この点につきましては、私はまだ詳細に存じておりませんが、全体的に、一般的に料金の基準その他根本の方針などを決定する権限がありといたしますならば、それはやはり政治上の問題と相なるのじやないかと考えております。
  124. 石川金次郎

    ○石川委員 そうなるとまた困つて参ります。今言つた公益事業委員会は、最後決定権がないようでありますから、ない場合はないわけですが、もし決定権がある場合は、政治上の問題となるのですか。
  125. 関之

    関政府委員 お答えいたします。もし單に最後的な決定権がない。ただ役所として陳情するという程度のものでありますならば、電力料金の値上げその他は、全部会社との交渉において、最後的に決定さるべきものであるように私は思つておりますから、そういう問題は、政治上の問題とならないと考えております。昨日もそういう趣旨に理解して、そのような答弁をいたしたのであります。
  126. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 政治と行政の問題は、理論的に、また実際的にかなり重要な区別上の問題があるようでありますから、なお政府委員において十分検討の上、本委員会において御答弁あらんことを望みます。
  127. 石川金次郎

    ○石川委員 今委員長の求められたことは、非常に適切と思いますが、そのとき政府の方ではいろいろな具体的な例を想像されることができると思いますが、われわれ国民にわからせるためには、こういう場合はよし、こういう場合はよしということを、ひとつ参考のために例示をしていただきたいと希望しておきます。  ところで進みまして、第三條の二項であります。団体が定義されてあります。了解いたしました。これも例によつてちよつと聞きたいのでありますが、ここに言う団体にはこういう場合は入りましようか。     〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕 私の家族は十三人であります。何とかして生きて行きたいという共同の目的をもつて、なるたけよく生きたいという共同の目的をもつて、世帶を構成しております。本法に言う団体でありましようか。
  128. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この法案の趣旨、精神から申しまして、そのような血族的な自然的な団体は入らないものと考えます。
  129. 石川金次郎

    ○石川委員 そういたしますと、この団体には、特定共同目的を達成するため多数人の継続的結合体であつても、入らないものがある、こういうわけですね。入らざる結合体はどれどれですか。
  130. 関之

    関政府委員 この法律の本来の立法の趣旨、目的から申しまして、ただいまお尋ねのごとき本来の血族的、自然的な結合体のごときは、この中に入らないものと考えておるのであります。もとよりこの中には、当然といたしまして、国または地方公共団体のごときは、これに入らないものと思うのであります。
  131. 石川金次郎

    ○石川委員 市町村は入らないというが、それであつたら、もう一つ、入らなかつたならば、何ゆえにこの第二項のきめ方を、かくかくの結合体は、本法において団体とは言わないということを明示してくれなかつたのか。これは全部本法においてはと言つているのでありますから、全部一定目的が——ここでは特定と言つていますが、特定共同目的があるところの継続的結合体は、全都団体と見る、こういうことですね。除外すべきものが、血族団体あり、町村団体あり、あとはどうなるのですか、あとの公共団体は。そこでやつぱり私はこう思う。この法をこしらえても、ずいぶん除外する団体が出て来る。除外して行つて、最後に残るものは一つか二つなんです。ちよつとお伺いいたしますが、ここで何ゆえにこういうふうにやつたか。逆なきめ方をすればよかつたと思う。
  132. 関之

    関政府委員 お答えいたします。ここには団体として「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体または連合体」というふうに書きつ放しに書いてあるわけでありますが、法案全体の趣旨、目的等の上から申しまして、国家地方公共団体、並びにこれらに準ずる団体は、この法案のうちの団体というものには入らないものと思うのであります。
  133. 石川金次郎

    ○石川委員 準ずる団体というのはどういうことになるのでありましようか。
  134. 関之

    関政府委員 お答えいたします。たとえて申しますと、市町村長の全国的な協議会であるとかいうごときは、これに準ずるものと考うべきものと思つております。
  135. 石川金次郎

    ○石川委員 もう一度念を押しておきます。そうすると何ですか、国家権力の作用に関係ある団体は、全部除外ということになりますか。
  136. 吉河光貞

    吉河政府委員 御質問の御趣旨がはつきりいたしませんですが、国家権力の作用に関係ある団体と申しますと、政治団体もみな国家権力の作用に影響を與える活動をしておるのでございますが、どういう御趣旨でございましようか。
  137. 石川金次郎

    ○石川委員 国家権力の作用をつかさどつて行くことに幾らかでも関係のある団体——わかりますまいか。
  138. 関之

    関政府委員 国家並びに地方公共団体のごときは、これに入らないものと思うのであります。その意味におきまして国家権力の行使をいたす機関並びにこれに準ずると認むべきものは入らないと思うのであります。
  139. 石川金次郎

    ○石川委員 そうなりますと、元こういう組合がありました。産婆組合というものがありましたね。そういう法人があつた。それは公法上の一つの法人であつたのです。こういうものは入つて来ますね。
  140. 関之

    関政府委員 地方公共団体を離れまして、そういうようないろいろのこまかいデリケートな問題が生ずるのでありますが、それつきましては、すべてにわたりまして、全部まだ調査してありませんが、いずれ明確に検討いたしまして御返事いたしたいと思つております。
  141. 石川金次郎

    ○石川委員 そこで今度第四條の団体活動の概念を明らかにしておきたい、お聞きしたいと存じます。御説明によりますと、団体の意思決定に基いて役職員、構成員が活動するときだという御説明を受けておるのであります。そこで意思決定に基く、この場合民法上の法人が、その法に定むるところによつて、その法人の意思決定がなされると思いますが、それはその意思決定が、その場合にのみ意思決定ありとせられるものでありますか。
  142. 関之

    関政府委員 お答えいたします。団体の意思決定につきましては、その団体の構成において、必ずしも一様ではなかろうと思うのであります。民法上の法人におきましては、法人の、その民法に規定された組織によりまして、それぞれ意思が決定されることと思うのでありますが、その場合にはその意思がすなわち団体の意思となると思うのであります。
  143. 石川金次郎

    ○石川委員 で、法人の場合は、これは問題はなくなつて来ます。きつと意思決定機関がきまつておりますから、法律的にもしくは法から生れて参りました定款によつて意思決定機関が決定しておるのでありますから、それによつて決定せられなければ、法人意思決定があるとも思われない、こういうことになるからわかります。今度は非法人の場合であります。この場合には、たとえば組合というものが予定されます。組合はこの場合は組合規約の定めるところによつて決定されるものと見てよろしゆうございますか。
  144. 関之

    関政府委員 お答えいたします。第四條におきましては「団体の活動として暴力主義的破壞活動を行つた団体」と相なつておるのであります。問題となりますのはその暴力主義的な破壞活動を行うことが団体の活動として行われる、そしてその考え方の基本には、その団体団体の意思として暴力主義的破壞活動を行うことをきめて、そうしてこれを行う、こういうことに相なるのであります。従いましてそうでなくしてやるときには、この団体の活動として暴力主義的破壞活動を行つた団体という條件が成立いたさないと考えるのであります。これ以外にこの意思の決定は法人の場合ならばあるいは通常の意思決定機関を通じて行われる場合もありましようし、あるいはその他の団体におきましては、その他の方法によつて決定されることもあると思うのでありますが、要するにこの団体の構成として暴力主義的破壞活動を行つた団体、この問題につきましてはさように考えておるわけであります。
  145. 石川金次郎

    ○石川委員 法人の場合は意思決定とみなすべきものが法律的にきまつておるのですから、問題ないと思うのです。
  146. 吉河光貞

    吉河政府委員 ちよつとお答えいたします。この法人のことでございますが、大体近時法人に刑法上の自然的な判罪能力ありや、行政罰につきましては一応判罪能力があるような各種の規定が設けられているのであります。刑法立場で法人に犯罪能力ありやという問題もあります。ここで法人というようなものは大体私法上の人格構成として構成されて来ている理論として発達して来て、私法上法人が取扱われております。ここでは団体の活動、団体というものは自然的な人と人との結合によつて生れ、その自然的な可能性と限界が、団体の意思の決定や団体の活動というものの可能性と限界になるという建て方を大体考えておるわけであります。ですから団体が法人ならば、法人の意思決定機関による意思決定がなければ法人の行為でないというのではありません。その法人を構成する全員が会合して、犯罪を行うということを決議した場合におきましても、やはりそれは法人たる団体の活動になるのである、かように考えております。
  147. 石川金次郎

    ○石川委員 その点法人の場合は本案には遠くなりますから、法人が破壞活動を暴力に訴えるという決議なんかは大体あり得ないからいいとしても、この場合はどうなりますか、人数が集まつて組合みたいなものがあり、いろいろな団体が入つて来る、これを決定がなされたと本法で見られる場合、構成員が集まつてこれを決定したという場合であります。
  148. 吉河光貞

    吉河政府委員 それは団体の立て方によりましていろいろな場合が考えられる。一人の指導者の意思を団体の意思として全員が動くという場合におきましては、その指導者の意思決定が全員の団体の意思決定にもなるし、いろいろな具体的な場合に、団体の構成に即しまして考えてみなければならない問題だろうと考えます。これを要するに、団体の活動とは、団体としての意思決定がなされなければならない、それに基いて役職員、構成員がこれを実現するために行う行為団体活動であつて、この団体と離れた個人の意思決定で役職員、構成員が動いた場合には団体の活動とは認められないという立場をとつております。
  149. 石川金次郎

    ○石川委員 これは犯罪の構成に関連するのでありますから、もう少し念を入れたいと思うのです。ある人の、どういう団体でも、結合体があつたといたします。十人であるといたします。そこには独裁者がなかつた。一切の行動は会議によつてきめて行こうという申合せないし慣行があつた。規約がなくても慣行があつた。その場合十人集まらずして四人集まつて決定した場合いかん。六人集まつた場合いかん。それに参加せざる人の責任はいかん。
  150. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。当該団体は、さような場合におきましてもこれを団体の意思決定と認められぬような建前をしておれば、それは団体意思決定にならないと考えております。
  151. 石川金次郎

    ○石川委員 先ほど申しましたように、会合によつて、集合によつて決定しようということになつております。その場合多数決でやるという申合せがあれば、四人の場合はきまらないが、六人の場合は意思決定を見る、こう見るわけですね。
  152. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。ある団体がありまして、団体の意思決定は全員の参加でやろう、しかし少くとも全員召集をかけて会合の催された以上は、一人、二人欠席しても、何人欠席しても、集まつた者の決定で団体の決定にしようという建前をとつておる団体がありましたなら、それはその団体の意思決定と認められる。
  153. 石川金次郎

    ○石川委員 結局その結合体の意思決定機関がどうかという定めに従う。こう聞いておればよいわけですね。
  154. 関之

    関政府委員 お答えいたします。第四條におきましては、要するに暴力主義的破壞活動を行うことを団体意思として決定する。こういうことが第四條の一番問題になる点であろうと思うのであります。従いましで、その活動を行うことを団体において決定したということは、客観的に見まして、そのやろうというたその決定が団体の決定として見られるという條件がある場合においては、その団体としての意思の決定に基くものである。かように解すべきものだと考えるのであります。
  155. 石川金次郎

    ○石川委員 客観的にという見方をもつて来ると、常に非常に範囲が広くなるのでありますが、私の言うのは、その団体が意思決定の方法を決定しておるならば、その方法によらないものは意思決定と見ないのか。あり得ないではないか。
  156. 関之

    関政府委員 通例の考えと申しますれば、団体の通常の意思決定の方法がそこに決定されますならば、その方法によつて決定されたものが団体の意思というふうになると解すべきでもございます。しかしながら第四條において問題になりますのは、暴力主義的な破壞を行うことなのであります。それを団体の意思として決定するのであります、通常におきましては、その団体の通常の意思決定機関を通じて行われるのが例でありましようけれども、その他の場合があることもまた考えなければならないと思うのであります。
  157. 石川金次郎

    ○石川委員 その他の場合というのは、どういう場合を予想されますか。
  158. 吉河光貞

    吉河政府委員 先ほど御質問にあつたような場合でございます。通常いろいろな機関構成や何かしておりましても、その機関構成の手続によらず全員が集まつて相談したというような場合は、これはもう当然団体の意思決定と認められる。やはり団体の構成員の意思に基いてそういう意思決定がなされているわけであります。
  159. 石川金次郎

    ○石川委員 結局その団体が、こうしなければ団体意思が決定されたものと見ない、いわゆる団体の意思決定の方法が決定されてあるならば、それにのつとらなければその団体の意思決定があつたと見られないではないか、こう見るべきではないか、本法もこう見てしかるべきではないかということをお聞きしたい。
  160. 関之

    関政府委員 お答えいたします。その点は私どもはその場合だけに限定されるべきものでないと考えているのであります。民法上の法律行為でありますならば、そういうふうに考うべきものと思うのでありますが、この第四條は暴力主義的な破壞活動を行うということであるわけであります。従つてそれはお尋ねの場合だけに限定せず、他の場合もまたあることが考えられると存ずるのであります。
  161. 石川金次郎

    ○石川委員 どうも広く広くこれを拡張なさろうとするようにばかり聞えるのでありますか、こうなりませんか。団体活動、これは何を目的としてもよい、破壞活動でもよければ、もうけ方でもよろしい。何を目的としてもよい。とにかくその団体の活動の意思の決定があつたということで、その団体がこの方法によつて意思決定をやるのだという方法によらなければならないのであります。構成員が知らないのであります、その団体が、その意思決定の方法によらなければ意思が決定されないのであるから、その団体が決定しておつた意思決定の方法によつて決定しなければ——少しくどくなりますが、団体意思が決定されたと見られない、ではないか。その通りではありませんか。
  162. 吉河光貞

    吉河政府委員 意思決定の方法は団体がみずから決定すべきものでありまして、明示または黙示の方法によりまして、この意思決定の方法を定めなければならぬと思うのであります。
  163. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この第四條の暴力主義的破壞活動は、事実上の活動になるわけであります。法律上の、民法あるいは商法上の法律行為を伴わない事実上の活動になるわけであります。従いまして意思決定のこれこれの機関をやるといようなことは、おおむねの場合は法律上の効果の問題に関連して考えられていることであります。しかし団体においてすべてのことはこれこれの機関においてやるということがきまつておりますれば、おおむねの例は、やはりこの暴力主義的破壞活動の場合におきましても、その機関を通じて団体の意思が構成されることはその通りであろうと思うのであります。しかし暴力主義的破壞活動というのが、いわゆる法律的な行為でなくして、事実上の行為になりますからして、その通常の機関のほかの方法によつて団体的のこういうことをやろう暴力主義的破壞活動をやろうという意思が決定される場合があり得るだろうと考えるのであります。
  164. 石川金次郎

    ○石川委員 そこでこの法律危險だと思われるのであります。ほかの方法で決定されるというのは、どういうことでしようか。そういうことはどうも現われて来ません。
  165. 吉河光貞

    吉河政府委員 これは先ほど御質問通りでございまして、この他の方法による場合は、他の方法によることが構成員の意思に基いて他の方法によつたのでございます。御質問通りでございます。
  166. 石川金次郎

    ○石川委員 それではもう一度念を押します。結局本法にいう団体の意思決定ありと見るためには、その団体規定してあるところの慣行でも文書でもよろしい、定めてあるところの方法によつた場合のみ、ここに意思決定ありと見る、こういう趣旨でしようね。
  167. 吉河光貞

    吉河政府委員 そこが違うのでございます。あらかじめ、かねてから意思決定の方法を定めてある場合も多かろうと思います。ここに全員が集まつてそれ以外の方法で意思決定をするという場合も団体の意思決定と認めるわけです。
  168. 石川金次郎

    ○石川委員 こう聞けばいいわけですね。さらに全体が集まつて、そうしてこれをわれわれの意思決定としようという決議をあげて、さらに決定をすれば、そのときにある、こう見るというわけですね。
  169. 吉河光貞

    吉河政府委員 答弁の趣旨はそういうところにあります。
  170. 石川金次郎

    ○石川委員 それでまた聞き直しますが、その団体規定してあるところの意思決定の方法によるか、あるいは当該団体がこの方法によつて意思決定をするのだという方法か、その決定に基いた場合をここに意思決定ありとするのだ、こう了承してよろしゆうございますね。
  171. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この問題はきわめてデリケートな問題でありまして、団体がありまする限りにおいては、通常の法律効果が発生する団体の問題の活動と、ここに申しますのは、暴力主義的破壞活動という事実行為であるわけであります。それが決して法律上の、いわゆる民法、商法上の法律効果を発生しない事実上の行為であります。そこでその事実上の行為は、必ずしも団体既存にこしらえておりました意思決定の機関を通ぜずも、私は団体としては決定し得るものと思うのであります。その点が問題の重点でございまして、その意味におきまして、その団体が総会の決議をもつて意思を決定するとか、あるいは特定委員会を通じて団体行動を決定するとか、いろいろ規定はありましようが、それらはおおむね法律上の効果を発生するというような意味合いにおいて考えているのが多かろうと思うのであります。しかしこの四條で問題になりますのは、要するに暴力主義的破壞活動という事実行為なのであります。それは決して法律上の効果を生ずる民法、商法上の行為ではありません。要するに、こういう事実活動であります。従つてその事実活動を団体の活動としてやろうと客観的に思われるような団体の意思決定でありますれば、それはすべて団体の意思決定になる、かように私ども考えておるのであります。
  172. 石川金次郎

    ○石川委員 客観的事実ありというのは、どういうところをつかまえるのですか。
  173. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えします。それはつまり意思決定があつたかなかつたかという認定の問題でございますから、客観的にそういうことを認定される団体の構成員が集まつて、事実上団体の意思を決定したという事実が客観的に認められなければならない。それは認定上の問題と思います。
  174. 石川金次郎

    ○石川委員 もう一度例をあげてお聞きいたしましよう。十人の団体があつた。そうしてそれはただ社交ということを共同の目的として団体を結合しておつた。ところが六人集まつて壞活動をやろうじやないかと決定した。そういう場合はどうなりますか。
  175. 関之

    関政府委員 お答えいたします。お尋ねの点だけでは、はたして十人の本来の団体といかなる関係があるかはつきりいたさないのであります。それでどういう趣旨目的において六人が集まつたものであるか、本来の団体との関係においてはどうなつておるか。あるいは団体全体としての意思の決定は従来どうなつておるかというような点が明らかにならざる限りは、暴力主義的破壞活動をしようというのは六人だけの者であるか、それとも十人の本来の団体関係があるものかどうかはやや不明でありますから、ちよつとお答えしかねるのであります。
  176. 石川金次郎

    ○石川委員 この場合は、ここにいう団体の意思決定じやないと見るべきじやないですか。こういう場合を見る危險があるから、私がお聞きしておるのであります。十人が社交目的をもつて団体を構成した。六人が集まつて壞活動をやろうということを決定した。六人の共犯だけで、四人は何の関係もない。こういう場合は明らかにここにいう団体活動にはならないと思うのですが、どうですか。
  177. 吉河光貞

    吉河政府委員 御質問のようにならない場合も多いと考えます。
  178. 石川金次郎

    ○石川委員 それではなる場合は何でしようか。これが非常に危險でしよう。友だちをとられないことになりますからね。
  179. 吉河光貞

    吉河政府委員 六人の者がどういう事情で集つたのか、団体とは全然関係がなく、団体活動とも関係なく六人の者が集つて、悪いことをしようと相談して意思決定をした、これは普通の共犯の問題であろうと考えるのであります。従つてこの六人の相談が団体の意思決定と認められるには、まだ御質問だけでは認められない、諸般の要件が必要だと考えております。
  180. 石川金次郎

    ○石川委員 そこは認められない。そこでその会合が、その会、組合、団体の会合をやるからいつそれまでに出て来てくれ、こういう招集があつたとする……。
  181. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 十人の団体で、十人に招集状を出して、六人だけ出た場合、そう言われれば大分わかつて来るでしよう。
  182. 石川金次郎

    ○石川委員 だんだん例をとつて進んで参りましよう。
  183. 吉河光貞

    吉河政府委員 団体が前からそういう方法によつて意思決定をするというとりきめをしておるとか、あるいはその場合において、特にそういう方法によつて意思決定をするということについて団体構成委員会に意思の合致がある場合には、それは団体の意思決定になります。
  184. 石川金次郎

    ○石川委員 そこで私はこう言つておるのです。それが社交的な目的を持つた結合体なんだと申し上げておるのです。この場合はどうです。初めから破壞行動の目的をもつて結合するものはないのですから……。大体においてないと見るべきです。
  185. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この法案の破壞的団体という中にも、おそらく当初からそれだけの目的をもつて結成された団体もあり得るかもしれませんが、おおむねは他の目的をもつて結合された団体が、さような行為に出るというような例も多かろうと思うのであります。従いまして結局この法案は、その団体を基盤としてさような活動をするということが、問題の重点になると思うのであります。従いましてこの六人が、お尋ねの点だけでははつきりいたしませんが、要するに既存の社交的な団体、それにはあるいは相当な財産もありましようし、あるいは各種のいろいろな地盤もありましようし、いろいろなものがありまするが、そういう団体を基盤といたしまして、さような活動に出ようというような意思が明瞭に認められますならば、まだそれだけでは足りませんが、そういうことも基礎といたしまして、その他諸般の事情から見て、団体既存の十人を、この団体の基盤として、そのような活動に出るということになりますれば、その団体は破壞的な団体というふうなものに相なるかと思うのであります。しかしこの六人が全然この既存の十人の団体を基盤とせず、別個に六人だけでやるということになりますると、全然既存団体とは関係のない活動になるものと思うのであります。
  186. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 今石川君の質問は、社交団体であつたということを前提にして聞いておられるのですから、社交団体であれば、活動についてはそうであるかしらぬが、団体は三條の二項の団体にはまらないのではないのですか。それでもそのときに、そういうことをやつたらはまるのですか。
  187. 石川金次郎

    ○石川委員 はまるというのです、二項に……。
  188. 関之

    関政府委員 お答えいたします。はまるのであります。
  189. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 はまるのだ……。そうすると、先ほど問題になつたように、ここでいうこの特定の共同目的ということがはつきりせないとわかつて来ないことになる。われわれは社交団体であるとか、先ほど例に言われた産婆組合とか医師組合なんというものは入らないのじやないかと思うのだが、そういうものが入るということになりますると——そこで先ほど聞けば地方公共団体のごときは入らぬという、これは要するに特定の共同目的とは何を指すかということが明瞭にならぬと、始終動くと思いますから、私もこれは聞いてみようと思つておつたところで、次会までにひとつ明瞭にお答え願うことにしたらどうでしよう。先ほどの行政行為政治行為区別、これを明瞭にひとつあらためて御答弁願います。
  190. 石川金次郎

    ○石川委員 委員長から今問題になつ政治活動と、今いう三條の二の団体の意味と、それから団体意思決定の問題と、こういうことについては、なおわれわれも考えますから、お考えの上で、あとでもう一度これを明らかにするために質問する、こういうことにいたしたいと思います。
  191. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 ではよろしゆうございますな。  それでは、石川さん、答弁はそういうことで、この次に質問を始めますときに、先に政府から答弁してもらうことにいたします。
  192. 石川金次郎

    ○石川委員 これは今のところ、この條文の読み方で参りますと、法人であつても、私法人であつても、結合体に破壞活動があれば、これを解散する、こういうことになつておるのであります。法人にはそれぞれ、御承知のように民法には民法の解散の命令ができる、商法も解散の命令ができる、その他の法人は全部解散できるのであります。本法のような不法行為をやつたものに対して、解散しなくてもいいことはない、むしろ解散すると書いてあるのじやないでしようか。それをとらないで、なおかつ本法をとつて来たのはどういうわけですか。解散できるのでありますから……。できないものを解散するという法律をこさえるのならまだわかる。すでにできるものをさらに解散するというものをこさえておいてどうするか。法律があるものを活用しないで、ここにまた新しくこさえ上げるということは、私にはわからない。ある法律で済むものは、ある法律で済ましたらいい。それはどういうわけですか。どういう不備があつたのか。
  193. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この暴力主義的破壞活動を行つた団体が法人である場合におきましては、第九條の規定によりまして、その法人は解散するというふうに書いてあるわけであります。これはお尋ねのごとく、今日各法人については解散の制度がそれぞれの法律によつて規定されておるわけであります。そこでこのような活動をなした法人は、これは本法の建前から見ますと、まず法人として解散する、さらに本法の解散の効果を受けるわけになりますから、それぞれの規定に新たに解散の事由を一つつけ加えるかという問題が出て来るわけであります。一々各法の改正その他の問題になりますと、立法技術的に見て、非常に困難を来すわけでありますから、この法律に一本だけ、その法人は解散するというふうに、解散事由を新たにつけ加えるのが、最も立法経済上の目的に合するものであると考えて、かようにいたした次第であります。
  194. 石川金次郎

    ○石川委員 七條と九條との関連においてお伺いいたします。六條において公安審査委員会の解散の指定を受けた団体があつたとする。今度は九條に参りまして、法人であつたといたしまして、解散が始まつて参りますときには、訴訟手続によつて取消しまたは変更を求めることができないことが確定したときであります。そういたしますと、その確定、いわゆる法律上の解散になる前と、すでに公安審査委員会から解散の指定を受けて、そうすると七條によつて何の仕事もできなくなるのでありますから、もし法人であつたとすれば、その場合これはどんなかつこうの法人になつて行くのですか。普通解散すれば、解散法人になりまして、残務終了まで、財産処分とか規定されてある、その間は、これはどういうかつこうの法人になるのですか。法人であるのか。法人でないとは言えないと思うのでありますが、どういうかつこうの団体になるのか。
  195. 関之

    関政府委員 お答えいたします。本法全体といたしまして、法人が第四條または第六條の規制対象となるというようなことは、おそらくケースは少かろうと実は思うのでありますが、お尋ねの点は、法律問題としては確かに一つの問題であると存ずるのであります。法人が、各法律によりまして法上の人格の主体として存立し、あらゆる法律行為をいたすことができる建前になつているといたしまして、それによりまして第六條の解散の指定がありましたときには、第七條がかぶさつて来るのであります。そういたしますと、七條の制限を受けた法人団体がそこにあると思うのであります。要するに、ゴムまりがこの七條の処分によつてずつと縮小されまして、そして七條の制限を受けた法人がそこに存在する、こういうふうに考えるのであります。
  196. 石川金次郎

    ○石川委員 そこでまず七條の但書だけの事務になるということになるのでありますが、これだけやれる法人の性格はどういう意味でしようか、どういう性格の法人となるのか。
  197. 関之

    関政府委員 お答えいたします。第七條の規定によりまして、その団体のためにする行為が禁止されるわけであります。それで結局法人の行為能力、活動能力が、この七條の規定によりまして、ぐつと縮みまして、但書の範囲に限定されるわけであります。要するに、そういうことのできる法人が、第九條によりまして、訴訟手続によつてその取消しまたは変更を求めることができないことの確定するまで、そういうものが存在すると思うのであります。
  198. 石川金次郎

    ○石川委員 しかし今度は確定して解散になる。そうすると普通の法律通り行くのであります。それよりもこれは狭まるのですか。この規定だとわかりませんが、これは狭まつて来ますね。従来解散によつて法人格を失つて清算法人となりました場合は、民法で規定してある三つの行為以外に、法人として存在し、なお存在し得る範囲において行為能力は認められておる。たとえば営業であつても、解散のためにする営業であれば、それに関連ある営業であれば、これは認められるということになつて来る。ところが、第七條を受けて参りますと、これができなくなつてしまう。そうなると、これは法律のこしらえ方においてどうも正当を欠く。事は小さいようでありますが、正当を欠く法律というものの存在は困難になりはしませんか。
  199. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この破壞的団体に対し解散の指定をいたしますことは、まつたくこれ最後的な措置でありまして、団体活動をそのまま放任いたしますことは、公共の安全を保持する上において忍び得ないことから、万やむを得ずとる措置であります。従いまして、その団体に対しまして、第七條の規定を設けまして、団体のためにする行為は禁止する、このような措置をとらざるを得なくなるのであります。その場合におきまして、なるほど民法の一般の清算法人その他との関連はありますが、要するに公共の安全を保持するために団体活動を停止するという意味合いにおきまして、第七條を置いたのであります。その場合におきまして、一切の活動を停止することは、もとより不可能でありまして、まずこの法律による不服の申立ての道は、法律によつて與えられた権限でありますから、それは認めなければならないのであります。そのほかに、当該団体の財産もしくは事務の整理に通常必要とされる行為も認めなければならないのでありまして、この二つを但書において認めて、その活動をなし得る法人がそこに存在し、そうして処分が確定いたしましたときには、その法人は解散となつて、通常の解散手続に入る、かように相なるのであります。
  200. 石川金次郎

    ○石川委員 それはそうお聞きしておきまして、第七條には、当該団体の役職員または構成員であつたものは、当該団体のためにできないというのでありますが、なかつたものはできるのですか。法人の場合、たとえば株式会社を予定しましよう。法律上の解散、いわゆる商法の上の解散が来ないうちは取締役を選べるのです。この場合は、この規定で解散の指定をやりましても、従来の商法の規定の上においては残つて行くのです。そうすると、取締役という制度はまだある。他人がかわつてやる場合はやれるんじやないですか、まずそれをお伺いしておきます。
  201. 吉河光貞

    吉河政府委員 御質問の趣旨を実ははつきり理解いたさないのでありますが、私の方から申し上げますが、ここで活動の禁止を受けるものは、従来構成員または役職員であつたものが、活動の禁止を受ける団体のためにする行為をしてはならない。ただ許されるのは、この処分の効力に関する訴訟の行為、それから財産もしくは事務の整理に通常必要とされる行為は、これらのものであつても許される。しかしこれ以外のものが入つて来たら、新しくというお話でございますか。
  202. 石川金次郎

    ○石川委員 そうなんです。
  203. 吉河光貞

    吉河政府委員 できるわけでございます。
  204. 石川金次郎

    ○石川委員 そこで今度は法律によりますと、会社の解散の場合でありますから、当然法人というものをこの対象にしておあげになつたものでありましようから、その例をとつて聞いて参りましよう。解散の指定を受けた団体の役職員や構成員はその活動はできないけれども、新しく選任せられた重役はできる。できるならば、たとえばその法人が銀行なら、銀行業務をやらせもいていし、やつてもいいじやないですか、御承知のようにこの規定には法人としての行為は禁止しておりませんね。
  205. 関之

    関政府委員 お尋ねの点は、この規制処置によりまして団体が解散の指定を受け、それから処分が確定するわけです。それからあとに入つて来た者は行為はできるではないか、こういうお尋ねでありますが、建前としてはできることに相なると思います。
  206. 石川金次郎

    ○石川委員 私がこれを質問いたしますのは、法律体系が完全にできているかどうか見たいために、この法の目的とするところとは遠いかもしれぬけれどもお聞きしておかなければならぬ。解散の指定を受けましても、受けた団体はその行動を禁止されてありません。ある株式会社が解散指定を受けた、それは銀行業であつたとする。その銀行の破壞活動のあつたときまでの役職員及び構成員は、七條の項によつて範囲以内の行動は禁止されているが、団体は銀行業を営むところの行動  は禁止されていない、重役をかえて営業できるじやないか、こういう趣旨に理解していいわけですね。
  207. 吉河光貞

    吉河政府委員 大体御質問のように解釈しております。なおこの点につきましては、さらに検討を加えまして、次会にはつきり答弁申し上げます。
  208. 石川金次郎

    ○石川委員 それであればなおあわせてお考え願いたい。解散指定というものはそれだけ意味ありますか、個人を対象とする行為の禁止を目的としているので、重要な団体規制を見落したということになりはしないかということ。もう一つ、銀行が破壞活動をやることはないのだという前提でお答えになつては困ります。そういうお答えではなく、法律上どうなるかということをお考え願いたい。  次に第十一條第三項について伺います。この当事者へ通知しなければならぬと書いてありますが、第二項では官報をもつて効力を発生せしめるというふうに書いてある。官報で公示したことにおいてこの法の企図する法律効果が発生するということになるのか、三項による当事者に通知するということは、審理の開始の條件、民事訴訟法でいうところの訴訟條件になるかどうかということになつて来るのであります。
  209. 関之

    関政府委員 お尋ねの点は、第二項によりまして審理の開始の條件は完成するものと考えておるのであります。しかし第三項につきましては「主幹者の住所又は居所が知れているときは、」となつております。そのときにはこれに通知を送付しなければならないのであります。法律的の問題といたしますれば、第二項だけでよろしいのでありますが、住所の知れているときには、ぜひ確実に到達するように送付する、かようなことに相なるのであります。
  210. 石川金次郎

    ○石川委員 そうなりますと、この第三項は訓示規定ということになりますね。
  211. 関之

    関政府委員 審理開始の條件は二項によつて完成するわけであります。三項はそれにつけ加えて、本来住所が知れておりますならば、そこへ通知するということを規定いたしたものであります。
  212. 吉河光貞

    吉河政府委員 補足して御説明いたします。この官報の告示は絶対に必要でありまして、告示のないときは無効であります。しかし相手方に弁解の機会を與えるということは絶対にこれまた必要でありまして、適法條件であります。これをやらなければ不適法なことになります。住所が知れておれば、必ず相手方に通知しなければならない。これを侵せば不適法なことに相なります。
  213. 石川金次郎

    ○石川委員 それで明らかになつて参りました。私もこの三項をただ訓示的な規定だと見て参りますと、これは非常に危險だと思つたのであります。
  214. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ちよつと関連して。この破壞活動防止法案逐條解説という中には、「第三項は、通知書送付の訓示的規定であつて、これを行わなければ、通知が行われなかつたとなるものではない。」こういうふうになつておりますが、そうすると今の局長答弁と違うことになる。
  215. 吉河光貞

    吉河政府委員 書き方が非常に悪かつたので御訂正申し上げておきます。官報で通知しなければ法律行為は当然無効であります。しかし機会を與えて、住所が知れておるのに通知しなければ不適法であります。訂正しておきます。
  216. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、法務府特審局のこの解説書というのは間違つているわけですか。
  217. 吉河光貞

    吉河政府委員 その点意味のあいまいな説明でございまして、訂正しておきます。
  218. 石川金次郎

    ○石川委員 それでは不適法だという以上は、住所が明らかであります場合には、当事者に通知が行かなければ審理は開始することはできないんだ、このように承つておいてよろしゆうございますね。
  219. 吉河光貞

    吉河政府委員 不適法に解しております。
  220. 石川金次郎

    ○石川委員 第十六條、これは軽いような、つまらないようなことに思われましようけれども、審理にあたつて重要な問題であるのです。あとで裁判を受けますときにも大事な問題になりますから聞いておきます。この調書の記載要件を二項できめておるのでありますが、これだけで間に合いますか。そこで聞いておきますのは、一体この審理官による取扱いはどういう手続にのつとつてやろうとするのですか。新たに創設せんとするのか、刑事訴訟法を持つて来ようとするのか、それとも民事訴訟法的手続をとろうとするのか、これをお聞きしておきます。
  221. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この審理の手続はまつたく行政目的を達成するための行政上の審理の手続でありまして、調書については十六條の規定に基きまして、さらに詳細の点についてはこれを施行する規則によつて記載し、どういうふうにいたすかというふうにいたそうということを考えておる次第であります。
  222. 石川金次郎

    ○石川委員 その規則の制定の件についてはこの本に書いてありましたね。この規則をやることができる。しかしその規則とは委員会の方じやなかつたですか。
  223. 関之

    関政府委員 三十六條には施行について必要な細則は、法務府令で定めることと相なつております。さようなことは詳細に法務府令できめたいと思つております。
  224. 石川金次郎

    ○石川委員 そうすると法務府令によつて、さらに本法十六條に示された記載事項よりも必要であれは拡張するわけでありますか。
  225. 関之

    関政府委員 十六條に基きましてこの法律のさらに具体的内容につきまして詳細に規定いたそうと思うのであります。
  226. 石川金次郎

    ○石川委員 ところがそうなりますと、審査委員会にまわして参りますのに少し足らないのじやないでしようか。ここで單に「出頭した者に意見を述べる機会を與え、意見の有無及び意見があるときはその要旨をこれに附記しなければならない。」しかしここに現われて参りますのは民事訴訟によらないとか刑事訴訟によらないとかいいましても、これは一つの攻撃、防禦となつて現われて参るでありましよう。そうなると証拠というものが現われて来る。その証拠そのものはどうなるか。提出された証拠というものは全部記載して行かなければ、やはり委員会の方で公正判断が欠けるのではないか、この点はどうなりますか。
  227. 関之

    関政府委員 調書につきましては、第十六條の第一項に経過について調書を作成させると相なつております。従いまして審理官が審理をいたしますその経過全部をこれに記載されるわけであります。その経過について調書を作成し、その調書をさらに第二項によりまして、記載についてこういうふうに記載したが、御意見があるかどうかということを相手方に見せて、さらにその意見の有無及び意見があるときはその要旨を調書につけて、そうしてそれはすべて傍聽者のおります公開の席においていたすのであります。
  228. 石川金次郎

    ○石川委員 それでわかりました。十六條を理解いたしますために攻撃、防禦、少くとも証拠、人証であろうと物証であろうとこれは全部記録に残る、そういう制度でありますね。
  229. 関之

    関政府委員 そうです。
  230. 石川金次郎

    ○石川委員 そうしてそれは、今度は委員会に参りますとその記録は全部まわりますか。それはどうですか。
  231. 関之

    関政府委員 第二十一條によりまして公安審査委員会は「処分請求書、証拠及び調書」というふうになつております。調書につきましては十六條に基いて作成された調書は、寸分たがわずそのまま委員会に送付するのであります。委員会はそこでいかなる審理が行われ、いかなる証拠が提出され、いかなる陳述が述べられたかということが一切明瞭になると思うのであります。
  232. 石川金次郎

    ○石川委員 わかりました。その点はその通りで進みましよう。  二十條でありますが、これもまた問題になつて来るのです。通知ですが、同條の二項に「前項の通知は、官報で公示して行う。この場合においては、公示した日から七日を経過した時に、通知があつたものとする。」こうなつております。やはり二十條も、団体に対する通知というのは、公安審査委員会の決定の要件になつて来るのですか。
  233. 関之

    関政府委員 二十條の二項によりまして通知は官報で行つて、このときは公示した日から七日を経過したときは通知があつたものとなつております。三項によりまして、知れているときには前項規定による公示のほか、これに処分の請求書の謄本を送付しなければならない。これはただいま十一條において説明したと同じように、三項も主幹者の住所または居所が知れているときに、これに送付いたさなかつたならば決定の効力の問題、適法なるところの通知がなかつたものとなると、かように解釈していいものと思うのであります。
  234. 石川金次郎

    ○石川委員 これは事務のことでありますが、調査官と審理官が出て参りますが、これは兼任するようなことはございますまいね。
  235. 関之

    関政府委員 お答えいたします。審理官は、この法律で申しますと、公安調査庁長官の指定する公安調査庁職員ということになつておりますが、公安調査官は、公安調査庁の職員の中から公安調査庁長官が任命する一つの職になるわけであります。そこでお尋ねの点は、調査したものが同時にすぐ審理官になるというようなことがあるかないかということだろうと思いますが、それは運用上の問題に相なるのでありまして、ただいまのところではまつたく別個なものに審理官を充てて、別個の角度からこの審理に当らしたい、かように考えております。
  236. 石川金次郎

    ○石川委員 信用を得るために別個のものが当るということを明記することはできなかつたのでありますか。
  237. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この点にそういうふうに明記するまでの必要はなかろうと思つて省略したのであります。
  238. 石川金次郎

    ○石川委員 それでは公安調査庁の職員数については、この前御答弁がありましたからわかりました。幾らの経費が予定されているのかということは次会にというように承りましたが、幾らの経費が予定されているのでありますか。
  239. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。経費の点につきましては、次会に御答弁するというお答えはしておりません。大体この法案が通過する場合におきましては、それに所要の予算はめんどうみるという話になつておりまして、人員は約五百人、これも申し上げれば、従来都道府県に六百人程度の定員を予算として流して、追放者の観察、団体等登録の受付事務をしていただいておつたのでありますが、今度これは全部廃止されることになるわけであります。予算の切りかえというのも語弊がございますが、その中から経理上の面で五百人というものを切りかえる、最小限度のラインでまかなつて行きたい、かように考えているわけでございます。
  240. 石川金次郎

    ○石川委員 これはお尋ねすることが無理であるかもしれませんが、補正手算に組んでおるのでしようか、その点はおわかりになりませんか。
  241. 関之

    関政府委員 法案作成とともに、法務府といたしましては予算の原案を大蔵省にお願いしておるのでありますか、大蔵省はどういうふうな予算を組むのか、まだ私どもは存じないのであります。
  242. 石川金次郎

    ○石川委員 これは無理にお聞きしなくてもいいのでありますが、予算原案を提出したその金額は幾らでしようか。
  243. 関之

    関政府委員 二十七年度といたしましては、約十億前後の予算を計上いたしたかと思つておりますが、それは施設費その他が入つておりますから、実際の経常費のが幾らになるかはまだ詳細にわからないのであります。
  244. 石川金次郎

    ○石川委員 今度は第六章の罰則に入ります。六章罰則と書いてありますが、罰則という表現についてお聞きしたいのです。本来罰則という表現法律の上に使われておりますときには、行政法規、行政取締り法規、行政刑罰法規にはかくかくの行為は禁ずる、こうしてございます。そうして罰則といたしましては、第何條の行為をなしたる者は懲役何年、罰金幾らというように称する。罰則はそういうときに大体用いられて来た用語ではないかと思うのであります。ところが本法を開いてみて罰則という欄を見ますと、なるほど四十一條以下には本法の規定に違反いたしましたがために処罰をされるものはありますけれども、三十七條から四十條までは刑法改正を記載している。破壞活動防止法案というこの法案がもし名が体を現わしたということになれば、この六章罰則ということはきわめて不適当な表現であると思う。こういう用語はどこにあつたか、刑法を変更するときにあつたか、どうしてまたこういうような言葉を持つて来たかということをお聞きしておきたい。
  245. 関之

    関政府委員 お答えいたします。この罰則の中に二つの種類の刑罰則規定が含まれておりますことはお尋ね通りであります。この三十七條から四十條までの規定と他の規定とをここに一つの「第六章罰則」として規定いたしましたのは、冒頭のお尋ねのときにお答えいたしましたように、この法案として暴力主義的破壞活動の防止のために行政的な処分の規定を設けるとともに、必要最小限度において特別的な刑罰規定を設ける、かような建前をとつたのであります。従いましてさような特別的な刑罰規定、この法律規定に基く命令ないしは処分の命令違反の罪との二つがここに出て来るわけであります。そこで法文の体裁上「第六章罰則」といたしまして両方をここに一括して羅列いたした次第であります。
  246. 石川金次郎

    ○石川委員 そこでまた先にもどりまして、一体法律分類ということ、これは必要であるかないかは別として、必要がないからそんなことはいらぬと言われればそれまででありますが、この法規を一体行政的刑罰法規と見るのか、固有の刑罰法規と見るべきか、それをちやんぽんとしたというならば、一体どういう性格の法規であるのかということをお伺いしたいのであります。
  247. 吉河光貞

    吉河政府委員 本法案が、各種の規定が組み合されまして非常に複雑な構造になつておることは、お尋ね通りであります。第一條にも明記してあります通り、破壞活動に関する刑罰規定を補正するということをうたつておりまして、確かに刑事上の刑罰規定を補整する刑事規定が入つておるのでありまして、條章の編成上これを罰則として最後に一まとめにしたのは、きわめて簡潔な條章を編成したいという気持からでありまして、普通一般に罰則が行政罰の規定として規定されるということも御質問通りでありますが、本法案におきましては冒頭にまず刑罰規定が含まつて、おるということをうたいまして、最後に一応行政罰と一緒に一括規定した次第であります。
  248. 石川金次郎

    ○石川委員 私の憂えますのは、両方を合体した、つまり刑罰法規、行政罰法規と合体したその結果、本法の解釈と実施、運用にあたつて、その原理とまたその目的とする考え方が違つて来るのでありますから、どうしても混淆を来すことがあると思う。それに対して先ほど局長はそういうことはあり得ないというのでありますが、こういう点についてなおあらためてこの点はこう混淆して来たじやないか、この点はこういう運営の心配があるということは申し上げたいと思いますけれども、こういう法律の定め方に対していかに緊急やむを得なかつたものがあるといたしましても、私は遺憾に思うということを重ねて表明いたします。
  249. 吉河光貞

    吉河政府委員 御答弁いたします。ごもつともな御質問であると思いますが、政府立場といたしましては、この罰則の運営に当る機関は司法警察機関、検事局、裁判所でございまして、調査庁の公安調査官は刑事訴訟法に基く犯罪の搜査はいたしません。ここにかれこれ相関渉して紛淆が起きないかという御心配でございますが、この点につきましては実際の運用の面におきましても、りつぱな矛盾なく解決できるというような確信を持つているわけでございます。
  250. 石川金次郎

    ○石川委員 三十九條についてちよつとお伺いしたい。政治上の主義のための騷擾罪が構成した場合であります。こういう例の場合はどうなりましようか、一定の人がいた、それは法律のいう多数人としましよう、一つ政治運動が起るのだそうだ、みな行こうじやないか、行つてみた方がよい、こういうことを言い出す、その人たちは参加した、ところがその団体が騷擾を起した、こういうような場合に教唆が成り立つかどうか。もう一つ、その騷擾の起つた場所にすでに行こうと思つておつた人に、行くべきだ、行つて勢いを助くべきだというようなことをやつたために、非常に固まつて行つた、いわゆる扇動の場合、こういう場合犯罪が成り立つていますか。実際はあり得ることでしようが……。
  251. 関之

    関政府委員 たいへん恐縮でありまするが、説明がはつきり理解いたしかねましたから、いま一つ度御説明願います。
  252. 石川金次郎

    ○石川委員 こういう場合ですね。あらかじめ一つの集団運動が、一つ政治上の目的を持つて、いうところの破壞活動に当るような騷擾の起ることを予定しておつた人があつたとします。いつどこで騷擾が起るから行こうじやないか、行つてみろ、こう言つたとします。それからただ行こうと思つておつた人にぜひ行つてみた方がいいという、いわゆる扇動をやつたのは、扇動行為教唆罪が成立するか。
  253. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。学説上いろいろ理論も立ち得るかとも思いますが、ここでは騷擾の扇動というのは、騷擾自体扇動であつて、多衆が集合して暴行脅迫をなす、その結果といたしまして一地方の静謐を害する、これが政治目的のもとに行われる、そういう行為扇動するということでありまして、明日どこそこで騷動が行われるからお前行つたらどうかという附和随行の扇動とかいうような行為扇動は、ここでは考えておりません。
  254. 石川金次郎

    ○石川委員 騒動が現に始まつておつた。人間は好奇心があるから行こうといつて行つた、そういう場合に騒動に参加した場合はどうですか。
  255. 関之

    関政府委員 お尋ねの点は、刑法上の騷擾の罪があつたのであります。そこへ附和随行した、さように解釈してよろしゆうございますか。
  256. 石川金次郎

    ○石川委員 そうです。
  257. 関之

    関政府委員 そこに行こうじやないかといつて行つた、それが教唆になるか……。
  258. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 行こうじやないかと言つた者の責任だろう。
  259. 関之

    関政府委員 それは刑法上の騷擾の罪の附和随行に当るかいなか、あるいは当らないか当るかというような問題だろうと思うのであります。
  260. 石川金次郎

    ○石川委員 一体附和随行というものに扇動教唆が成り立つのですか。
  261. 吉河光貞

    吉河政府委員 さように踏み切つております。附和随行とか首魁とか率先助勢とかいうのは、現実に騷動が起きたときに、その騷動の中に現われる態様でありまして、事前に附和随行を扇動するとかいうようなことは、この法案では考えておりません。ここで言う扇動は、騷擾自体扇動ということを考えておるわけであります。
  262. 石川金次郎

    ○石川委員 その点はわかりました。そうでなければこの法案がおかしな解釈になつてしまいますから、それでお聞きしたのでありますが、よく明確になりました。そこでお聞きしたいのは附則でありますが、施行期日はいつごろでしようか。
  263. 関之

    関政府委員 「この法律は、日本国との平和條約の最初の効力発生の日から施行する。」と附則にありますが、今日までの御審議の経過を見ますと、とうてい間に合いかねるのでありまして、いずれに御審議を経てこれが公布されたその日からというようなことに相なるだろうと思います。
  264. 石川金次郎

    ○石川委員 これは政府として御訂正なさるわけですか。提案者として御訂正なさる御予定でありますか。
  265. 吉河光貞

    吉河政府委員 さようであります。これは御審議の経過によつて法律案として成立する場合におきましては、当然訂正さるべきところであろうと考えております。
  266. 石川金次郎

    ○石川委員 もうすでに訂正の必要があるかもしれませんが、一体いつごろ施行期の訂正案を御提出になりますか。
  267. 吉河光貞

    吉河政府委員 法案内容にかんがみまして、できるだけ早いことを望んでおるのでありますが、国会の審議というものもございますので、まだいつごろとも考えておりません。早ければ早いほどけつこうだと思います。
  268. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 世耕弘一君。
  269. 世耕弘一

    世耕委員 急所々々だけお尋ねいたしたいと思うのでありますが、破壞活動防止法案という名称に基いてまずお尋ねいたしますが、破壞の内容についてはどういう見解をお持ちですか。
  270. 関之

    関政府委員 お答えいたします。破壞と申しますのは、国家社会の基本秩序を破ること、さようなことを言葉で破壞というふうに考え表現いたしたわけであります。
  271. 世耕弘一

    世耕委員 具体的な場合を例示していただきたいと思います。
  272. 関之

    関政府委員 具体的に申し上げますと、この法律案第三條の第一項に掲げてあるような活動を破壞的な活動と考えているわけであります。
  273. 世耕弘一

    世耕委員 第三條に掲げておる破壞行為、いわゆる破壞活動を防止するというのだから、活動に入らない前に防止する、こういうふうに解釈していいですか。
  274. 関之

    関政府委員 お答えいたします。団体規制という面におきましては、団体の活動として、暴力主義的破壞活動を行つた団体に対して、当該団体が継続または反復して将来同様の活動をするという場合には、その将来の可能性に対しまして必要なる規制を行うということに相なるのであります。
  275. 世耕弘一

    世耕委員 社会不安を醸成する、いわゆる革命の前奏曲として、たとえば病毒菌を散布したというような場合は、破壞活動になりませんか。
  276. 関之

    関政府委員 お尋ねのようなことは、広い意味におきましては、社会の基本秩序を破壞する活動の一つであろうと思うのでありますが、この法案においてはそれを取上げていないのであります。当面の必要の最小限度の意味合いでしぼりまして、第三條各号に列記した行為だけを破壞活動としたのであります。
  277. 世耕弘一

    世耕委員 そうしますると、暴力革命をやる意図を持つて教壇で学生に継続して講義をしておる、その内容たるや、扇動に値する、教唆に該当する、さような場合は第三條に適合いたしませんか。
  278. 関之

    関政府委員 第三條の要件は、たとえていいますならば、刑法第七十七條の内乱の罪に規定する行為教唆または扇動をなすということに相なるのであります。従いまして、理論といたしましては、場所、方法のいかんを問わず、もし内乱を扇動いたしますれば、第三條一号のロにあたる行為になるわけであります。それがお尋ねように、教場においてというようなことになりますと、個人的な問題でありまするからして、第三十七條の個人的な刑罰の問題が考慮せられることがあるかと思うのであります。
  279. 世耕弘一

    世耕委員 そういうふうな刑罰に値するような講義をしているということを発見する方法は、どういう方法で調査なさいますか。
  280. 関之

    関政府委員 この法律規定いたしました調査の方法は、調査の章に規定してあるごとく、原則として任意の調査によりまして、またはそれらの書類につきまして、警察が強制処分その他の処分による捜査をいたしまして、書類がございますれば、第二十七條によりまして、これを閲覧すること、また第二十八條によりまして、警察との情報及び資料の交換によつてやること、及び第二十九條によりまして、さようなときに、もし警察官におきまして、強制の搜査をなす場合には、その押收捜索検証等に立ち会う、かような方法によつて公安調査官はその証拠收集することに相なると思います。
  281. 世耕弘一

    世耕委員 私の今お尋ねしたのは、さような教唆、宣伝をやる目的で教壇で学生を使嗾するような講義をなしている者の調査をどういう方法でするか、どういうふうにして発見するかということです。これはなぜかというと、お尋ねいたしたいのは、大学の自治とか学問の自由とかいう問題に触れて、ややもすれば問題が起るから、その限界を明らかにしておく必要があるのではないかと思つてお尋ねするのであります。なおこれから逐次お尋ねいたしますることは、この法案運用の上に、そういうトラブルをなるべく未然に防ぐという建前で、一応見解を明らかにしたいというつもりでお尋ねするのですから、さよう御返答願いたいと思います。なお私はこの破壞活動防止法案その他の案に対しては賛成なんです。むしろ今では出し遅れの感があるというくらいに感じておるというような見地からお尋ねするのですから、そういうふうな心構えで御返答が願いたいと思う。
  282. 吉河光貞

    吉河政府委員 この法案における公安調査官調査の発動でありますが、これは刑事訴訟法におきまする司法警察官の捜査の発動にいたしましても、やはりそこに刑事訴訟法百八十九條でございますか、「犯罪があると思料するときは」ということで、疑うべき合理的理由というものがありまして、そこから捜査が出発するわけであります。疑うべき理由のないのに人を疑いまして、捜査で押し歩くこともできません。調査につきましても、もとより調査をする必要がなければなりません。疑う理由があつたときに調査を行いますが、それは任意の調査であります。ただいかにしてそういう疑うに足る理由、端緒を発見するかということにつきましては、やはり学校当局との緊密なる御連絡が必要である。あるいは学生の申告も必要である。あるいは同僚教授の申告も必要である。要するに国民公安調査庁を使うのだという建前で運営していただかなければ、これはとてもりつぱな運営はできない。私どもも、皆さんに使つていただくのだという建前で、公安調査庁の運営に参加したいと考えております。この点につきましては、私どもといたしまして、すでに各学校当局ともいろいろ緊密に御連絡して、こちらからいろいろなことを申し上げたりしておるようなわけでございます。この端緒をつかむために、端緒が事実ないのに無理につかもうとして押し歩くということも、これも問題があるところだと考えておるのであります。
  283. 世耕弘一

    世耕委員 理想としてそうありたいと思いますが、はたして局長のおつしやるような理想が実現できるかどうかという現在の世相なんです。それでこまかくお尋ねするのです。この間もお尋ねいたしたと思いますが、たとえば大学自体が全部赤くなつてしまつているということも想像できるのです。そうしてその大学内の状況は外部から探ることができぬというようなことを想定した場合に、どういうふうにするかということくらい考えてみなければならぬと思います。それについて実例をあげろというなら、あげられないこともありませんが、そういうことも想像してみなければならぬのです。  それからもう一つ、先ほど他の委員質問にお答えになつておりますが、自治体が危險な行動を開始したときにはどうするかという質問に対して、さようなことはこの條文に触れないというような返答があつたように私聞いたのですが、もしその自治体が全村こぞつて同一の破壞思想を持つた場合に、それをどういうふうに取扱うか。これは極端な場合でありますけれども、想像できるのです。これは絶対にありませんということは断言できないと私は思うが、さような場合もお考えになつておられるかどうか、さような場合は別の規定を適用するのかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  284. 関之

    関政府委員 この法案におきましては、国家地方公共団体はこの団体のうちに入らないと考えておるわけであります。それはこの法案のみならず、特段のある種の命令ないし処分が国家地方公共団体は当然に除外しているという一般の立法例にならつて、当然さようなことに相なると考えておるのであります。従いまして、もし御設例のような場合が参りますならば、公共の安全を保持する上において、何らかの措置をとらなければならないというようなことを考えますならば、別個の何らかの立法ないしは法律改正というような方法をもつて処置しなければならないではないかと考えるのであります。
  285. 世耕弘一

    世耕委員 次にお尋ねいたしたいのは、先ほど破壞という場合に触れてお尋ねいたしましたが、今度は暴力の内容なんです。たとえば多衆集合して威喝行為をやる、あるいは破壞までしないけれども、破壞の態勢にある、かような場合にその威力を示している限度、取締りの対象になる限度を、どのところに目安を置かれるか。暴力という言葉を使つておりますから、暴力の定義をひとつお示し願いたいと思います。
  286. 関之

    関政府委員 この中でお尋ねがの点問題になりますのは、刑法第百六條の騷擾と、公務執行妨害並びに職務強要の場合のことであろうと思うのであります。この場合は暴行または脅迫をなすということが要件になつているのでございます。そこで公務執行妨害の場合は、これは人に向つて暴行または脅迫をなすということが要件なのであります。その暴行または脅迫は、これも刑法にすでにある暴行罪または脅迫罪、それと同じものと考えるのであります。  次に刑法内乱罪における暴動の実体をなす暴行または脅迫等の行為は、人のみならず物に対する一切の暴力的行為というものを全部含まれての広範囲なものと解するのであります。
  287. 世耕弘一

    世耕委員 続いてお尋ねいたしますが、日本における共産思想というものに対する見解はどうです。
  288. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。御質問の御趣旨がどういう点にございますかよくわかりませんが、法律的な立場からの御質問でございますか。
  289. 世耕弘一

    世耕委員 共産思想に対する批判。もちろん法律的並びに社会的面から断定を下してもらえばけつこうだと思います。さらにつけ加えて申します。この破防法を制定するにあたつて対象となるのかならないのか。
  290. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。日本国憲法立場からは、思想の自由はこれを保障しております。共産主義思想としての共産主義自体はこれを取締りの対象としていないわけであります。しかしながら先般御審議の材料にお手元に差上げました実態資料の説明並びにこれ基く資料には、共産主義者がそういう活動をやつているというような資料が出ているのであります。こういうふうなところから考えれば本案の取締りの対象が、かような主義者による極端な暴力主義的破壞活動にも一環として向けられるということは、はつきりと申し上げられると考えております。
  291. 世耕弘一

    世耕委員 一昨年でございましたか、野坂君が新聞並びにその他の方法で声明を発したことは御承知だと思いますが、それによりますと、われわれは従来平和の手段に基いて革命を実行しようと思つた、しかしながらそれは理想であつて、実際はさようなことは空論である、革命には武力はつきものである、暴力革命こそ真の革命の実行が可能であるということを声明し、新聞にも出ておつたのでありますが、さような思想が日本の現在のこの破防法に受入れられるものであるかどうか、そのことをお尋ねいたしたいのです。ことにさようなことが正当性を帶びるということになれば、そこに大きな問題が投げかけられて来る。それがこの破防法で取締れないのだとかりにするならば、何かそこに限界をつけておかなければならぬ。国民は迷うのじやないか、こう私は思うのですが、御見解はいかがでしよう。
  292. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。コミンフオルムの日本共産党に対する批判がありまして、後に日本共産党の理論的機関誌「前衛」に登載されているのでございまして、その趣旨は必ずしも明確な文書として打出されてはいないのであります。これらの点につきましては、私どもといたしましても、この言説のみにとどまらず、諸般の言説につきまして鋭意調査を進めているのであります。かりにこの言葉を離れまして、日本において現実に武裝反乱が行われることが必要なんだということを説くことは、本法案第三條第一号のイ、ロに該当する行為であると考えております。
  293. 世耕弘一

    世耕委員 それでさらにお尋ねいたしますが、言論の自由というのが問題になつて来ますが、たまたまさような暴力革命でなければ真の革命は遂行できないのだという所論をなす言論を、公開の席上においてあるいは文書等になす場合、特に演説会場等においてなす場合に問題になつて来ると思いますが、さような場合の処置はどういう方法をとりますか。結果をもつて論じますか。一応注意を喚起してなお中止しない場合に法の適用を受けるようになりますか。一例を申しますれば、私たちが東條内閣のときに東條内閣を攻撃するというと、きわどいところで弁士注意こうなつて注意する、その次はさらに中止となつてすぐばらばらと来てひつぱつて行くというやり方をしたのですが、かようなことを想定できるのですが、そういう処置はどうなさるか。
  294. 関之

    関政府委員 第三條第一項の第一号のロでありますが、これは扇動はその方法の口頭によるからと文書によるからとを問わないのでありますが、正当性または必要性の主張は文書に限定されてあるのであります。従いましてお尋ねの場合は言葉で言うように伺いましたが、言葉で正当性を主張する場合はこの法案対象とならないものと考える次第であります。そうしてまたかつて演説会上に臨検し、注意、中止と言うようなことは、この法案においてはさようなことをなすとか、あるいはそういうような方法によつて取締るということは全然考えないのでありまして、すべて運用におきましては、まつたくの任意の方法によりまして調査を進めて行きたい、かように考えているわけであります。
  295. 世耕弘一

    世耕委員 文書を出してはいかぬというようなことがここに出ていたと思うのですが、宣伝文書は持つていてもいけない。しかしながら、演説会場で、あるいは街頭で破壞活動の宣伝をやるのは、この法律に当てはまらないのだというと、ちよつと矛盾があるように思うのです。私聞き間違いかもしれませんが、そうお聞きしてよろしいですか。
  296. 関之

    関政府委員 お尋ねの点は、扇動ということと、そして実現の正当性もしくは必要性を主張した文書ということの差異になるのでありますが、内乱の扇動になりますと、その扇動内容は文書たると口頭たるといずれでも該当いたすのでありますし、街頭において内乱の扇動をいたしますれば、第三條の一号のロに該当いたし、個人的には三十七條の違反規定に該当する場合が考えられると思うのであります。
  297. 世耕弘一

    世耕委員 街頭で演説している場合、あるいは会場で大衆を集めて扇動演説をして、そして暴力革命が正当である、あるいは今日のわれわれの生活の最終目標は暴力革命をやつて、一挙に政府を転覆して行くことが最も必要であるという教唆、宣伝の演説をした者をその場合で注意も中止もされずに放置するのですか、それともただちに逮捕しますか。その手続の方法なんです。
  298. 関之

    関政府委員 かりにある人が、ある演説会場におきまして内乱の扇動をいたしたといたします。そういたしますと、その人は第三十七條によりまして、犯罪を犯しているわけであります。そして犯罪がその場において発覚いたしましたといたしますれば、それは現行犯でありまして、刑事訴訟法によりまして現行犯としての手続がとられて、所要の手続が進められて行くものと思うのであります。
  299. 世耕弘一

    世耕委員 こういうことは、実際の取扱い上非常に重大な問題が起つて来るし、かようなことが言論の圧迫になり、あるいは人権の蹂躙になり、いろいろな手違いを生じて来ますから、かような場合の臨検、あるいは調査等に対しては愼重を期すべきであると、かようにつけ加えておきます。次にお尋ねいたしたいのは、いわゆる破壞思想の原因というものをわれわれ吟味してみなくてはならぬ。この破壞思想の原因は、すなわちある主義を持つてつて、その主義実行のために破壞活動に入る。その主義目的を達成するために破壞活動をやるというのと、もう一つは、政治的な貧困から不平不満が爆発して、それが破壞活動に合流する、この二点があるのだが、こういう場合の見解をどこにあなた方はお置きになられるか。それを一様に赤化思想なりとして取扱うことは、かえつて暴動を誘発するきらいがあるのではないか、私はかように考えるのですが、その点についての御見解を承つておきます。
  300. 吉河光貞

    吉河政府委員 一つ政治的な信條、信念に基きまして破壞活動——暴力主義的な破壞活動をやるという場合におきましては、これこそ団体組織の態勢をとりましてそういう行動を推進して行くような面でなかろうかと考えるのであります。偶発的な騷擾が団体行動として行われるということは、ほとんど想像し得ないことと考えております。規例の面ではそういう点でわかれると思います。また刑事上の犯罪といたしましては、そこにおのずから情状の差異が生れて来なければならないと考えておるのであります。
  301. 世耕弘一

    世耕委員 私の憂えるのは、政治主義をもつて、不平不満を持ち、政治的貧困から発生した不平不満に便乗して破壞活動に大きく持つて行く、こういうことが今日の社会現象に取上げられるではないかと思うのです。これの扱いを愼重にしなければかえつてこの立法の目的が達せられないではないか。ここに私は愼重を期していただきたいと申し上げるのです。その理由といたしまして、最近左傾と申しますか、赤と申しますかの活動が非常に敏捷になると同時に、いろいろな意味において形がかわつて来た。昔は共産主義者といえばまず髪の毛を長くする。そうして黒いめがねをかけ、あかのついた洋服を着て、一見してあれは共産主義者だ、あるいは過激思想だということがすぐわかつた。ところが近ごろは、共産主義者といえどもなかなかスマートなかつこうをしている。ちよつと見ただけではわからぬ。さように形がかわつて来ている。むろん思想的にも微妙な変化を持つて、微妙な策戰をこらして、いわゆる暴力革命をきわめて合理的に進めるというように戰術が進んでいることは御承知だろうと思うのです。だからこの戰術にひつかからないようにこの法律を活用することが、私は一番大切ではないかと思う。この点についてどういうふうに考えておらるるか。昔なら、徳田君やあるいはその他の諸君がもぐつてもすぐ見つかつた。近ごろはそういうふうにスマートなかつこうで上品になつているだけになかなか見つからぬ。そこに今日のいわゆる取締りと申しますか、その面が非常に困難になつて来ているということを言いたいのであります。こういう点に対して何か御意見があるか、御見解があれば承つておきたい。
  302. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。暴力主義的な破壞活動を、人権を十分擁護しながら、しかも有効的確に取締つて行くというためには、これを行う公安調査官の訓練、教養ということが非常に大事な面になります。同時に、正確な資料の検討ということもまた必要になつて来ると思うのであります。こういう面につきましても、建設的に努力をして行きたいと考えております。
  303. 世耕弘一

    世耕委員 私は、最近の日本の現状を憂うる一つといたしまして、暴力革命に賛成する人が多くなつて来た傾向を心配する。それは暴力革命でもやつてもらわなければわれわれはとてもやつて行けぬ、こういうような気で、單純ではあるが非常に感情的に燃え上つて来ているということを警戒しなくちやならぬではないか。先般の選挙に共産党の諸君が非常に多数の有権者の同情を得、驚異的な数十名の議員を議会に送ることができた。その共産党を支持した階級をこまかく分析してみると、單なる筋肉労働者ではなかつた。中産階級の、あの人がと思うような人が相当熱心に運動して、そうして投票しているのです。私静かに歴史をひもといて考えるとき、たとえばアメリカにおけるところのワシントンのごときも、革命、ある場合は暴力を用いた。武力を用いた。ヨーロツパにおいて革命も武力を用いた。けれども、その武力を用いてやつた革命が成功すると、それが正しかつたと言う。それがりつぱな政治家であり、偉大な偉人として尊敬されるに至つておる。私は暴力革命が最も必要であり、それが道徳的に容認されるような傾向の次第にふえつつあることを遺憾に思う。われわれはそれを何とかして是正して行かなくちやならぬと思うのであります。卑近な例を日本にとりますれば、西南戰争の例を見ましても、西郷隆盛は国賊として討伐された。その後西郷さんは上野の公園に銅像が建てられている。皮肉な例ではあるかもしらぬけれども、これをわれわれは考えてみなくちやならぬのじやないか。破防法の制定を御熱心になさるその真意はわれわれはよくわかるけれども、破防法をしかなければならなくなつた日本の国情のどこにそのがんがあるか、どこに暴力革命を唱道する原因のたまりがあるかということを十分つくのでなかつたら、私はこの法案目的は達成しないのじやないかと思う。この意味においてまず考えなくちやならぬことは、引揚者、それから以前戰争に参加して生き残つている軍人並びに戰災者、遺家族、そうして最も現実的な問題として中産以下の階級に属する納税者であります。一昨日も申し上げたと思いますが、税務署を襲撃する、これはきわめて非常識な話だ。その非常識なことが賢明な日本人によつて行われておるという事実がある。こういうことを考えてみると、日本人はある程度常識を失つているのじやないか、やけを起しているのじやないか。どこに一家心中をしなくちやならぬ原因があるのか、ここをほんとうについて行かなければ革命を誘発する根元が打破できないのじやないか。この破防法をもつと嚴格に規定してもそれは効果のないものになる、こう私は考える。その意味におきまして、この破防法を徹底させる半面において、この不平不満を起す階級に対する何か対策がなくちやならぬ。これがすなわちこの防止という法案の精神に触れて来るのではないか、かように考えるのですが、こういう点について何か御計画があるかどうか。先ほど政府側の御説明にも、予算を十億ばかり割当てるような御説明がありましたが、その予算の中に、この国情を理解して、協力して日本を再建しなければならぬお互いの義務があるということと、苦しい中にもなお希望を見出して祖国再建に乗り出して行く、その気合いをかける何か試みがなくちやならぬと思うのでありますが、この点についてどういうような計画があるか。これはあるいは政治問題であるとおつしやられればそれまででありますが、調査研究機関を持つ以上、ここまで調査が行き届いて行かなければほんとう調査活動ができないものである。それでなければただ犯罪を搜捜査するという程度である。先ほど吉河局長の仰せられたように、国民の味方でなくちやならぬ。国民協力を求め、国民とともに国事を論ずる、そうして悪いところは切つて捨てるというふうに持つて行かなければならぬのではないかと思います。この点についての御見解を承つておきたいと思います。
  304. 吉河光貞

    吉河政府委員 お答えいたします。御質問通り政府の重大な政策にも関連する問題でありますので、法務総裁に私からも申し上げることにいたします。公安調査庁の所管事務として、許される範囲内におきましては、御趣旨に沿うことが必要であるという気持を持つております。
  305. 世耕弘一

    世耕委員 あと一点で終りにいたします。実は私が調査いたしました内外のいろいろな記録、歴史を中心にして考察いたしてみますと、一番革命の誘発する時期というものは、中産階級がその革命指導者に同意したときであります。このときが一番革命の実行し成功するときであります。ところが最近の日本の国情は單なる筋肉労働者あるいは日雇い労働者、学生だけの問題でなくて、実を言うと中産階級がむしろこの革命に興味を持ち、あるいは知らず知らずのうちにさようなところへ不満を爆発させようと動きつつあることは、ゆゆしき問題だと思うのであります。今局長がおつしやつたように、調査内容はかなり広範囲にわたつてその原因を追究するにあらざれば、ほんとう目的は達せられないであろうということを申し上げて、特に愼重を期せられることをお願いして終りといたします。     —————————————
  306. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 この際ただいま審理中の三法案についての連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。去る二十六日労働委員長より同委員会の決議によりまして、連合審査会開会の申入れがありましたが、これは当委員会の理事会の申合せもありますので、来る五月六日午前十時より一日間を限つて開会いたしたいと思いますが、そのようにとりはからうに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  307. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 御異議なしと認め、そのように決します。  なおこの際御報告いたします。公聴会の公述人の選定は委員長に一任されておりますので、理事諸君と協議の上お手元に配付の名簿の通りとりきめました。御了承を願います。  本日はこの程度にとどめ、次会は明後三十日午前十時より当委員会の公聽会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十七分散会