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1952-04-26 第13回国会 衆議院 法務委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十六日(土曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君    理事 山口 好一君 理事 石川金次郎君       安部 俊吾君    北川 定務君       高木 松吉君    古島 義英君       眞鍋  勝君    吉田  安君       加藤  充君    田中 堯平君       猪俣 浩三君    世耕 弘一君       佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         法務政務次官  龍野喜一郎君         法制意見長官  佐藤 達夫君         刑 政 長 官 清原 邦一君         検     事         (特別審査局         長)      吉河 光貞君         検     事         (特別審査局次         長)      關   之君         検     事         (特別審査局次         長)      吉橋 敏雄君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月二十五日  委員龍野喜一郎辞任につき、その補欠として  押谷富三君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員鈴木義男辞任につき、その補欠として石  川金次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  理事鈴木義男君の補欠として石川金次郎君が理  事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  破壞活動防止法案内閣提出第一七〇号)  公安調査庁設置法案内閣提出第一七一号)  公安審査委員会設置法案内閣提出第一七二  号)     —————————————
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。  破壞活動防止法案公案調査庁設置法案公安審査委員会設置法案の三案を議題といたします。質疑を継続いたします。田中堯平君
  3. 田中堯平

    田中(堯)委員 法務総裁にお尋ねします。昨日労働大臣答弁の中にゼネストは違法である云々というような意味の発言があつたと思います。まずお尋ねしたいのは、これはほんとうは労働大臣に聞くのが適当かとも思いますが、政府法律的顧問というような立場にある総裁から意見を徴したいのであります。われわれの考えではゼネストは違法ではない、どこにもそういうふうな法的根拠はないと思うのですが、政府はどういう見解をとつておられますか。
  4. 木村篤太郎

    木村国務大臣 田中君にもう一度言つていただきます。
  5. 田中堯平

    田中(堯)委員 昨日労働大臣答弁の中に、ゼネストが違法であるというような意味答弁があつたと思う。政府はやはりゼネストなるものは違法であるという見解を持つておられるかどうか。もしそうであるならば法的根拠を示されたいという質問です。
  6. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。ゼネスト解釈についてはいろいろありましようが、いわゆる労働組合運動労働者生活改善あるいは労働條件向上その他について団体交渉権なりまた団体行動に移る権利を持つておることは申すまでもないことであります。そこでゼネストなるものがいかなる目的をもつてされるかということがここに重大なる意義を持つていると思うのであります。今申し上げまする通り労働組合権利として持つておるその生活向上あるいは労働條件改善という目的をもつて経営者側との間に意見不一致が生じた場合において、いわゆる法律に認められた行動一つとしてストライキをやるということは、これは政府におきましては違法というような見解は持つておりません。むろんこれは正常なる権利であるとわれわれは見ております。しかしながらその労働組合法に認められない事項によつて、いわゆる政治ストなんというようなことでやるストライキが違法であることは間違いないと考えております。
  7. 田中堯平

    田中(堯)委員 労働組合法で認められない政治的なストライキなどは違法であるから、これは禁止しなければならぬという趣旨答弁でありますが、組合法規定も、政府がそのような解釈を持つのは非常に無理があると思うのです。今日の切迫せる社会情勢では、実際いわゆる政治闘争なるものと経済闘争なるものとの区別はほとんどつきかねる。たとえば職業安定所失業労働者が、こんな安い賃金ではとても食えないので、賃金を増してくれというのも明らかに経済闘争のうちに入るでありましよう。ところがそれというのも、元をただせば、どうしても失業対策費なるものの増額をしないことには解決しない。そこで失業対策費を増額すべしというスローガンを一枚加えて立ち上つたとすれば、これはおそらく政府の方では政治ストであるという見解をとられると思う。あるいは青年、学徒が、またぞろ戰争にひつぱり出されて肉彈に供せられるのはかなわぬ、平和憲法建前があるので、どうしてもわれわれは徴兵制度には反対だ、うわさされておる選抜徴兵制のごときことをやつてもらつては困るというので、徴兵反対運動を起す、これをもつて何か政治闘争というような名目で彈圧しようとする。そういうわけで、生活生存ということに直結をした要求を提起しても、今日のような社会ではもうただちに政治的な問題にくつついて来るわけなんです。あるいは税金がこんなに高くてはとうてい食えないというので、民主商工会というようなものが悪税反対という闘争を起す、これまた政治にただちに触れる問題であるわけであります。してみると、どのような微細な経済的要求といえども、これもやがて——ただちにといつていいのですが、政治問題に直結して来る。それゆえに、経済闘争政治闘争を区別して、経済的な要求ならば正常なる争議であるが、そうでないものは政治闘争として彈圧するという政府建前は非常にけしからぬと思いますが、その辺はどういうふうに解釈されておりますか。
  8. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。田中君も法律家でありますから、法文についての解釈はよくおわかりであろうと思います。労働関係調整法第六條に労働争議についての定義がはつきりきめてあるのであります。いわゆる労働関係において、労資双方の間で意見不一致が生じたときに、初めてここに、労資労働争議解決手段として認められた権利として、一方においてはあるいは工場閉鎖、あるいは一方においてはストライキが認められておる。このときに初めて労働組合労働争議権を持つことはきわめて明白なんであります。それ以上に、あるいは生活改善その他の関係でなくして、いわゆる政治ストなるものは法律上認められないところであります。さような政治ストというのは、労働法規において保護されるべきものではないことはさわめて明白であると問います。
  9. 田中堯平

    田中(堯)委員 憲法第二十八條には「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」というふうに明記してあります。しかもこれは一つの基本的な人権であつて、これはいかなる法律以下の制度をもつてするも、原則として制限はできないはずなんです。だから、労働法や労調法というようなものによつてつて団結権争議権を制限するのは、実際これは違法であります。従つてまた政府見解も違法的な見解であると思うのでありますが、しかし論争したところで始まらぬから、その点はそれくらいにしておきます。  次にお尋ねしたいのは、この法案が通過、実施ということになりますと、第三條の二の「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため、左に掲げる行為の一をなすこと。」として、そのイには騒擾罪があげてあります。こういうふうな規定になりますと、およそ今日行われておるような労働争議、あるいはその他の学生運動とか青年運動、市民の運動というようなものは、ことごとくこの二のイにひつかかると思うのですが、そういうことに相なりましようか。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この第三條の二のイはいわゆる刑法第百六條に定めた騒擾の罪であります。いやしくも民主主義国家において、政治上の主義あるいは政策を推進するという場合においては民主的な方法によつてやらなけばならぬのであります。これが民主主義国家建前であります。さような主義を主張し、推進し、あるいは政策を主張し、推進する場合において、かような民主的な方法によらずして、刑法に定めておるかような騒擾の罪を犯すようなことは、私は国家として治安維持上看過することのできないことと確信するのであります。かような規定は当然設けられるべきであろうと考えております。
  11. 田中堯平

    田中(堯)委員 この法律実施のあかつきには、結局ただいまの答弁のように、第三條二のイによつて、およそ今日行われておるような大衆運動は制圧されるという結果になるようであります。  そこでお尋ねしたいのでありますが、われわれの見るところによれば、政府はやつぎばやに講和條約、安保條約あるいは行政協定、さらにまたこれに基いてがんじがらめ国内立法を大急ぎで今なされつつある。その結果は一体どうなつておるかというと、日本経済もあるいは貿易もまつたく萎縮してしまう、また再軍備の強行のために予算は大きな部分をとられてしまう、あるいは中小企業は倒産をする、ことに貿易の四割操短を初め、ゴムあるいは鉄鋼部門にまでも恐慌状態が今巻き起りつつあるのであります。これを要するに、アメリカ世界政策、わけても極東政策の一環を承つて吉田政府はもつぱら向米一辺倒的な政的を今強行しつつあるわけであります。その結果は、今申しますように、まつた産業萎靡沈滞をする困り切つた状態になつて失業者は増加をする、パンパンやあるいはばくちのようなもの、パチンコのようなものが町に氾濫をする。少しもこれは独立平和の国になつておらぬ、少しも繁栄の国になつておらぬ、悲しむべき状態になつておるのであります。そういうふうになつて来ると、自然国民自分の力でもつてどうしても生存維持、擁護しなければならぬ。急迫、不正の侵害に対しては正当防衛権利として刑法で認められており、民法においても緊急避難規定のあることは御承知の通りであります。そういうわけで、今お尋ねしたいのは、いよいよ国民生活に窮して来る、自殺の数は前古未曽有という状態に今なつておる。一家心中、夜逃げというような悲惨な状態が連日連夜巻き起つておる。それにもかかわらず政府向米一辺倒の、われわれから見れば国際政治上もまつたく間違つた方針を打出しておるために、ますますこの悲劇が深刻化して行く。そこで国民政府をたよるわけに行かぬと言つて、正式の方法国会選良を出して、それでもつて政治のやり直しをすればいいじやないかと言う。形式上その通りである。けれどもせつかく国会選良を出してみたところで、たとえば共産党のように、もうすでに半数はいろいろな不合理なるりくつをつけて追放されてしまつておるというような状態であつてみれば、自然自分自分生活生存を推持、擁護するためには、これに最後抵抗をする、いわゆるレジスタンスと言いましようか、そういう権利人間には天賦の権利として與えられておるということを私は考えるのでありますが、総裁はどうお考えでありますか。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まずもつて大衆運動について田中君は非常に誤解があるように思われますから、一言申しておきます。今度の破壞活動防止法案におきましては、決して大衆運動を禁止したり、あるいはこれを阻止しようというような考えは毛頭ありません。正しき大衆運動は決してこの法案の対象となつていないのであります。田中君は大衆運動騒擾をごつちや考えておられるように思う。騒擾罪刑法に嚴として規定してあります。これと大衆運動とごつちやにしておつて、この法案がいやしくも大衆運動を阻止するようなことを言われることは、私ははなはだその当を得ないと考えております。  なおレジスタンスのことについてでありますが、私はこの占領下六年において、曲りなりにも合われわれがかような状態になつておるということは……。     〔「曲りなりとは何だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  13. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 静粛に。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 敗戰国において、これくらいの生活状態の国がどこにありますか。私は田中君が向米一辺倒というようなことを申されて、いかにも今の日本の国情が窮迫に陷つておるように言われるが、私は見解を異にしておる。向米一辺倒という言葉は私はまだ十分解釈がわからないのでありまするが、いわゆる自由主義国家友好関係を結ぶに至つてますます日本経済力発展する、私はこう考えております。しこうして、田中君は生活に困ればレジスタンスになつて何でもやつていいというようなお考えのようでありますが、断じてしからず。法治国家において暴力を用いるということは断じてやらぬ。私は許すべからざることと考えております。いわゆる民主国家においてかりに一つ政府施策が悪いからといえば、これは民主的に議会を通じてやるべきことではないか。いわゆる国民の選ばれた議員をもつて組織する国会において堂々とこれをやるべきではないか。いやしくも暴力をもつてこれを阻止しようというようなことは、法治国家においては許すことができない、こう考えております。
  15. 田中堯平

    田中(堯)委員 今の法務総裁意見の中には重大なるものが含まれておる。向米一辺倒ではない、また今までのアメリカとの友好関係を深くして来た政策の結果、日本敗戰国といえども決して他の国に比べて悲惨なる状態にない、これほどよい国家はないではないかというような意味答弁、これはまつたく事実を無視した答弁であります。ごらんなさい、日本が明日にも独立と言うておるけれども、国民はみな一ぱい食わされたという感じなんです。どこにも独立はありません。行政協定の端から端まで、ごらんなさい、日本には無数の軍事基地が許されることになつておる。その近傍周辺においてはこの基地の設営のための権力、権能というものを米軍が持つことになつておる。治外法権的な裁判権ということになつておる。どこにも日本独立をし、平和な日本になり得るという保証はない。しかも急迫せる国際情勢ではいつなんどき米国戰争を巻き起すかもわからない。そのときには日本は従卒たる立場でこれに従つて行かなければならないように国際條約上また国内立法ちやんとこれが予定をされておる。これほどあわれなる国家がどこにあります。しかもなるほど経済状態が遅れた後進国はたくさんある。たとえばヴエトナムにしてもあるいはイランにしても、これみな外国の搾取、彈圧からのがれて、真の民族独立国家をつくろうというので大いなる闘争を起し、ほとんど成功的にこの闘争は進められておるではありませんか。これに比べた場合に、なるほど生活水準日本の方が先進国であるから幾らか高いに違いない。けれども独立国という点から考えますと、まつた日本フイリピン並であり、あるいはエジプト以下の地位に置かれておる。どこに日本が悲惨な状態にないということが言えますか。そういう考えこそ、まつたくこれは現実を無視した誤れる観念だと思う。しかしそれをここで論争してもしようがない。そこで今総裁は、私の質問に対していかなることがあろうとも、騒擾にわたり、あるいは暴力主義的な行為によつてレジスタンスを行うことは絶対に許すことはできないという御答弁であつた。私の聞いておるのは、それならば刑法民法において自救行為正当防衛という観念制度づけられて認められておる。この法の根本的な観念をどう解釈されるか、正当防衛であれば、たとい人を殺しても許されることになつておる。緊急避難であれば、人の家をこわし、あるいは人を傷つけるということがあつても、これが公認されておる。その法の根本理念を私は聞いておるのである。実は日本刑法民法だけの問題ではありません。たとえば世界人権宣言をごらんになると、その序文の中にはこういうことが書いてある。「専制と圧制とに対して、人間最後手段として反逆に訴えざるを得なくなることを防ぐためには法の規律によつて人権を保護することが肝要である」これを裏から読むと、もしも法律によつて人権を保護しておらぬような状態になつたならば、人間最後手段として反逆に訴えなければならぬようになるということをちやといつておるではありませんか。それだけではない。たとえば占領軍日本に来たその当初、日本の軍閥や、あるいは官僚、財閥、大地主というような封建的な、独裁専制権力がまだおつた。これを打倒することなくしては、これを解消することなくしては、日本を真の近代的な民主国家に再建することができないという見解から、占領軍がどういう政策をとつたか。たとえばアメリカ政府マツカーサー最高司令官に対して、初期の対日方針の訓令を出しております。それによると、長いものだから全部読みませんけれども、一九四五年九月六日付の、降伏後における米国初期の対日方針と銘打つて、長文のまた微に入り細にわたつた根本方針が指示されておるが、その中にはこういうことがある。「右方針最高司令官をして米国目的達成を目途する前進的改革を抑えて天皇または他の日本政府機関を支持せしむるものにあらずすなわち右方針は現在の日本統治形式を利用せんとするものにして」云々として、「封建的または権力主義的傾向を修正せんとする統治形式変更日本政府によると日本国民によるとを問わず許容せられかつ支持せられるべしかかる変更の実現のため日本国民または日本政府がその反対者抑圧のため強力を行使する場合においては最高司令官は麾下の部隊の安全並びに他のすべての占領目的達成を保障するに必要なる限度においてこれに干渉するものとす」云々とあります。重要な点は、封建的な、独裁専制的な、非民主的な、そういう制度を打破するために、国民もこれをやることができる。実力行使をも容認するような、こういう指令が出ておるわけであります。これは米国最高司令官に対する指令であるので、何も日本国民のかかわるところでないといえばそれまでであるが、しかしながらやはりポツダム宣言によつて日本を民主的な国家に再編成しようとする、そういう場合に、専制的独裁的な、そういうふうな政治形態に対しては、断固力を持つてでもやるべしという趣旨が、ここに如実に現われているわけです。ところが今はどうか、おそらく法務総裁考えでは、今は民主国家だ、りつぱな国家になつておるじやないか。だからこそそういうふうな実力的な闘争をやつてはいけないということであろう。事実はそうではない。今日はますますもつて、形こそかわつて来たけれども、独裁専刷的実体を備えた国家になりつつある。占領期間中は、あの通りポ勅なる形で、国会にかけることのできないような無理な立法を、どんどんと強行して来たのであるが、今行政協定なる、これまた国民の意思を完全に然視したものが、いつの間にかこそこそつとできてしまつた。その行政協定によつてがんじがらめにして、独裁的に、専制的に、いやおうなしに、これに基くところの立法国会にかけて来て、多数の暴力とでもいうべき力によつて、これを押し通そうとしている。本件破防法もその一つであります。そういうふうな国会あるいは政府というものは、まつた国民がたよりにすることができないということになればこそ、国会の外で破防法反対のために、三百万という労働者が立ち上つて反対闘争をやらざるを得なくなつた。これが民主国家であるならばそういう必要はない。要するに独裁専制的な実体を備えた政権があつて、それがアメリカ権力をかさに着て、ぐんぐんと国民を押し縮めて来ればこそ、国民最後抵抗によつて自分生存を守る以外に方法はないじやありませんか。そこでお尋ねするのは、私はこれらの人権宣言やあるいはその他の国際文書にも見える、また国内立法にもその理念は展開されておるところの正当防衛、これは個人の場合には、ちやんと正当防衛権利が認められておるが、団体客も同じだ。どうしても独裁専制の無理な力をもつて押えつけようということならば、法律があろうがあるまいが、政府があろうがあるまいが、国民はみずから生きるために立ち上ることは当然ではありませんか。これこそ恐るべき力であり、また反面から見るならば、これがあるからこそ人類社会発展をするのだ。政府やあるいは法律があるから、民族社会発展するのじやない。人間が一歩でも向上した生活をしよう、一歩でもよりよき社会を建設しようとする、押しつぶすことのできない一つの意欲を持つておればこそ、人類社会国家発展して来るわけです。これは大切な一つ人類発展の原動力であります。これが正当防衛の形で現われて来る。これを何でもかでも彈圧してしまおうというのがこの法案であつてみれば、私が最初にもう一ぺんお尋ねしたいのは、一体総裁は、正当防衛という法理念をどのように解釈しておられるか。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま田中君の言われることは、私は非常に意外に感じます。田中君はいかにも国会無視のような議論をされておる。われわれは、民主国家においては、国会を通じて政治を行おうとするのです。田中君は国民があたかもレジスタンスして、暴力をもつてでも政治を行うというように私にはうかがえたが、われわれ民主国家にある一員としては、どこまでも議会政治建前をとつて議会政治を行うべきであると確信して疑わない。むろん刑法には急迫不正の侵害に対して、緊急やむを得ないときは、正当防衛権を行使することができるということになつております。急迫不正とあります。むろん他国が理由なくして不当に侵害せんとするときにおいては、自衛権を行使することは、嚴として疑う余地はないのであります。しかし国内において政治見解を異にしたからといつて、そうしてそれが急迫不正の侵害というような、暴力をもつて政府を倒そうということであつたならば、これはどうなりますか。一体国民は何にたよるのであるか。われわれは法律によつて法律の命ずるところによりて政治を行うのであります。その法律はだれがつくるのでありますか。国会を通じて国民がつくるのです。それで今日のこの法案においても、国会の審議を待つて実施しようとするのであります。いわゆる議会政治建前をとつておる。れこれが法治国の真髄であると私は思います。国民多数の輿論に問うて政治をする。それは自分が気に入らぬからといつて暴力に訴えたら、国家はどうなりますか。さようなことは断じて私はいかぬと思う。
  17. 田中堯平

    田中(堯)委員 暴力に訴える、暴力に訴えるといつて、盛んに何か暴力団に対する制裁のようなことを言われるが、実は本法案の三條の二のイに騒擾があげてあるが、そもそも労働運動その他の大衆行動というものは、これは刑法にいうところの騒擾の罪はつきものであります。だからこそ労働組合法においても、刑法その他の規定をただちに適用しないように、ちやんと除外されておる。だからあなたのお考えのように、何かもう戰時中の産業報国のための労働組合のように、まつた政府から爪を抜かれ、闘争力を抜かれてしまつた労働組合とはいうことのできないような労働組合が、たとえば集団行進をするにおいても、お祭り行事的なあるいは葬式的なことをやつて政府の意のままに動いてくれるということならば、政府言うところの、正常なる労働運動というあつらえ向きなことになるかもしれないけれども、そういうものでは、実は時の支配者に対して、または資本家に対して、何らの圧力にならない。そもそも大衆運動というのは、これはブルジヨア的な法律の外にあつて一つ騒擾的なものが予定されているわけなんだ。それをあなたはどこまでも四角四面にブルジヨア法律的な観念で、そういうものもみんないけないいけない、みな暴力であるというふうな考えが、ここに第三條の二のイに現われておるわけだ、大衆運動には騒擾つきものであります。これをもたたきつぶそうということであれば、今日行われておるところの労働運動は、完全に滅却されるということは明らかであります。ところでその意いつまで迫つてもしようがない、先へ進みます。  次にお尋ねしたいのは、内乱という問題であります。まずお尋ねしたいのは、刑法の言う内乱罪、これは、「政府ヲ顛覆シ又ハ邦土ヲ潜竊シ其他朝憲ヲ紊亂」ということでありますが、邦土を僣窃とか、朝憲を紊乱というようなことは、これは今日あり得ない文句だと思います。これは天皇制の絶対権力下における明治四十年代の立法でありまして、邦土という観念からが、そもそもこれは封建的な観念、何か君主が国土の一部々々を臣下に封じてやるというような意味の邦土でありましよう。普天の下率士の浜、これがすべて君主のものであるという観念から邦土というような、こういう言葉が生れたものと思われる。それを何か平将門みたいに、おれがみかどである、この地域はおれの国であるということをいうのが邦土の僣窃というのでありましようが、そういうことは今日あり得ない。朝憲の紊乱とは何ぞや、昨日の政府答弁では国家の基本組織、国家の基本秩序というような意味答弁をされたが、そこでお尋ねしたいというのは、こういうふうな明治四十年代の、今とは全然事情のかわつておる古い法観念を持つておる内乱罪ということが今日あり得るか。政府の転覆ということに書いてあるが、吉田政府の転覆というようなことをいえば、内乱罪になるのか。順序としては、今の邦土の僣窃とはどういうことか。朝憲紊乱とはどういうことをいうのであるか。政府の転覆とはどういうことをいうのであるか。これをまずお尋ねします。
  18. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お尋ねにお答えします。内乱罪におきます朝憲の紊乱の内容は、前会にもお答えした通り国家存立の基本秩序に対する侵害ということになるのであります。政府の転覆、邦土の僣窃という用語が使われておりますが、ここに政府とは、個々の内閣をいうのではありません。国憲の継続的な組織をいうのであります。内閣制度そのものの不法な廃止というような意味になるかと存じます。邦土の僣窃とはわが国家成立の要素である領土に対する不法な権力の行使をいうのであります。簡單にお答えします。
  19. 田中堯平

    田中(堯)委員 朝憲の紊乱とは、国家統治の基本秩序大本の侵害という意味答弁であつたが、しかし国家というのは、これは国民つて国家であり、国民がりつぱな生活ができることを保障するための目的を有する国家であつて国家つて国民ではないはずだ。だから国民がこのような統治組織では困る、こういう国家の大本であつては、自分たちは生活ができないのだ、だから自分たちの生活を真に幸福にしてくれるような国家をつくろうじやないかという運動を起すことは当然であつて、今やそんなものが内乱罪などとなつて、これが制裁を受けなければならぬ理由はどこにもない。これは昔の天皇制時代であつてみれば、天皇制は万古不易であつて、こういうものに対して云々ということになれば、これは制裁という観念が生れたでありましよう、今はそういうことはないはずだ。それから邦土の僣窃というけれども、これは他人の土地の略奪をやれば、刑法その他によつてちやんと処罰がある。別にそこに政治的な区域を設けて、おれらはここでこういう自治的な政治をやつて行こうじやないかということを言つたところで、内乱罪になるわけはない。それからまた、政府を転覆するということは、時の政府のことではなしに、これはやはり内閣制度というような根本組織を変革しようとすることが内乱だという答弁であるが、しかしよく考えてみると、吉田政府あるいは芦田政府というように、各政府に対して打倒——そのときどきの政府が、これはいかぬから打倒、これがずつと積み重なつて、結局は資本家の、少数の支配階級の利益だけしか代弁しないような政府はつまらぬ、そういうものは打倒しようじやないかという、すなわち特権階級の支配制度そのものをでんぐりがえしてしまおうじやないか、そして全人口の九割五分を占めるような勤労大衆の利益を代表するような政府をつくろうじやないかという運動、これは内乱罪になるわけはないじやないか。一体内乱罪というものはどこにありますか。
  20. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 ただいま申し上げたように、朝憲の紊乱、国家存立の基本秩序を破壞するために暴動をすることが内乱であります。
  21. 田中堯平

    田中(堯)委員 暴動というても広うござんして、大衆が大衆闘争を起すということになれば、騒擾つきものである。それをも暴動と言つておる。してみると、国民は、もはや何にもできぬ、そういう結果になる。まあしかしこれは争つてもしかたがない。先に進みます。  そこで今の民主主義国家では、内乱というものは、これは実際あり得ないことなんだ。民主国家におきましては、もしも暴動が起きるような、そういう政治が腐敗しておるということならば、その政局担当者そのものこそ退場をして、新しい政治の舞台に政権を讓ればよろしい、これが民主主義者であります。民主主義社会においては、暴動を起そうにも起す必要がないはずだ。ところが実際は独裁専制的な無理が行われるので、形式はなるほどりつぱな民主国家であろうとも、実際においては独裁専制的なことが行われるがゆえに、人民は行き場所がない。そこで騒擾手段などに訴えても、どうしても自分たちの生存を、これを安定し、擁護しなければならぬという、せつぱ詰まつた気持が沸いて来るわけなんだ。それが暴動ともなれば、あるいは騒擾ともなろうし、さらに激烈ともなつて、列車転覆となるかもしれない。ところがそれを一切合財あなた方は最高の罪悪としてこれを否認する。否認するけれども、しかしフランス革命やあるいはアメリカ独立戰争、これも一つ民族解放の革命でありまするが、そういうものが近世史上にもしなかつたとする。そうすると、近代のような民主国家や文明というものは、沸いて来ておりますか。封建主義のあの圧制というものの中に、みんな泣かなければならぬ。そうして人類の文化は退嬰しなければならぬ。頽廃しなければならぬ。遂に人類は没落したかもしれない。そのような、あなた方が罪悪と思つておるところの革命があつたればこそ、近世文化も近世の産業も、一切合財が、このようにはつらつとして発展して来ておるではありませんか。だから、内乱などという規定をもつて、それでせつかく人類発展するその芽をさしとめようとすることこそ、まことにこれは罪悪であり、歴史をへし曲げようとする大きな陰謀であると私は考えるのでありますが、もう一点この点について法務総裁の御見解を承りたい。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの田中君の御意見を承つていると、あたかも内乱を起さなければならないような御発言であります。私は意外に思つております。およそ民主国家において、一つ政府を転覆させるために暴動を起すというようなことは、どうなんでありますか。これは民主政治の破壞であるとわれわれは考えております。田中君も国会議員の一人である。政治というものは国会を通じて行うべきものと私は確信をして疑わない。国会議員は国民の輿望をになわれて、国民多数の意見を代表すべきものなんである。その代表された国会議員が国会においてあらゆる論議を盡して政治を行うということが民主政治である。それを一部の者が現在の政府施策が悪いとかなんとか言つて、そうしてある種の人間を扇動してこれを暴動に移すというようなことは、いかがでありましようか。これこそ法治国家において許すべからざることであると私は考える。田中君の今の御発言は議会政治の否認と私は考える。私は国会を尊重するのであります。すべての政治というものは、国会を通じて行わなければならない。さようなことはあり得ないことである。     〔「吉田国会にちつとも出て来ないじやないか。」「自分国会無視はたなに上げやがつて何だ」と呼ぶ者あり〕
  23. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 加藤君、静粛に願います。
  24. 田中堯平

    田中(堯)委員 私は何も国会制度を否認するというようなことは今一言も言つておらぬ。そういうことを考えているのじやないけれども、形式上民主主義を代表するような国会制度やその他の政治形態がありましようとも、事実において独裁専制のような罪悪的な政治が行われるということになれば、そのあおりを受けて国民がみな泣かなければならぬ。現実そうなつている。そこで国民は自救行為に出ざるを得ないじやないかということを言つておるわけである。何か一部の者がと言つて、共産党でも暗に示したような発言でありましたが、一部の者が、たとえば共産党が、いくらいたけだかになつて、その不都合なる政府転覆のために暴動を起せと言つてみたところで、だれもついて来ません。問題は国民の大多数が、その悪政の結果非常な窮地に追いやられておるという客観情勢が前提になるわけである。そういうふうな前提ということは、そもそも一部の特権階級が独裁専制政治をやるから、形式の上では民主主義であろうとも、そういう独裁専制をやるから、国民全体の心が離れてしまう。窮地に追いやられてしまつておる。そこで共産党であろうが、共産党以外の者であろうが、これはいかぬ、われわれの好むところではないけれども、何とかしなければ、われわれは生活維持できぬぞということを発言するならば、国民は翕然として集まつて、そうだ、それじやひとつやろうということになる。これが歴史上の一つの革命になつているわけである。革命というのは、あなた方がお考えのように、一人のリーダーが現われて来て頭の中の理論を振りまわして、なんじら臣民ついて来いというようなことを言つたみたところで、だれもついて来ません。扇動者の一人や二人、十人や二十人で革命などは起るものではない。そういうものをあなた方が処罰しようというのがきようのこの法案目的であるけれども、そういうものをいくら処罰してみたところで、根本は国民大衆にあるのである。国民大衆の生活の不安ということが取除かれる、言いかえるならば、善政がしかれるような、そういう国でなければ、あなた方のいわゆる内乱の懸念は一向に消えない。指導者の五人や十人制裁してみたところでだめだ。共産党を非合法化してみたところで何にもなりはしません。そこで論争してもしようがない。時間がありませんので先に進みます。  次に憲法では言論の自由を初め、学問の自由、あるいは団結権、団交権その他いろいろ基本人権規定されておる。ところが破防法なるものがこれに対する大きな制限になることは、ここで論ずるまでもない。そこでそういうふうな制限をしてはならぬではないか、そういう憲法違反的な制限をどうして法的に認められるかという質問に対して、昨日来政府答弁は公共の福祉ということが憲法規定されておるので、やはりいかに基本人権といえども、公共の福祉に反するような方法では、すなわち権利の濫用は許されない。だからそこに法的根拠があるという趣旨答弁でありました。ところで、この公共の福祉という言葉ほどあぶない言葉はありません。憲法が公共の福祉をかつぎ出しておるのは意味がわかる。いかなる権利といえども、国民全体、社会が食つて行けないような、これが迷惑をこうむるような方法によつて行使が許されないことはわかり切つた話である。憲法はそのことを言つておる。ところがこの破防法が基本人権を大幅に制限するゆえんのものは、それとまた、その根拠を公共の福祉に求めるゆえんのものは、明らかにドイツのナチがやつた二の舞をやろうとしておる。ドイツのナチもやはりりくつをつけずには、あのような人権彈圧の諸法規はつくることができなかつた。とどのつまりは、公共の福祉のため、団体のためには個人の権利は無意味である。団体のためには個人の権利は抹殺されてもしかたがないというようなどえらい法理念を振りまわして、あの侵略戰争をやり、末路は滅びてしまつた。いつでも何か彈圧法規をつくろうとする場合には、公共の福祉論を振りまわす。そこで公共の福祉ということは、一体どういうふうに解釈されておるか、政府答弁を待ちます。
  25. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 簡單にお答えします。この法案におきましては、法案第一條で公共の安全を守ることを目的とするということがはつきりうたつてあるのでありまして、公共の安全とは、日本憲法のもとにおける国家統治の基本組織並びに基本的な政治方式、言いかえれば国家社会の基本的な秩序が平穏に維持されることを言うのでありまして、これがなければ民主主義の健全なる発達を望むことはできないと存ずるのであります。
  26. 田中堯平

    田中(堯)委員 本法案実施しますと、これはいろいろの方面に基本人権が制限をされるけれども、わけても扇動ということに関連をして、言論の自由が大幅に制限されることになると思う。ところで言論の自由といつても、言論がただ頭の中だけの自由ということではなしに——かつてなことを考えてよろしいという自由ではない。思想の自由、言論の自由というものは、これはみな外部への発表、大衆への意思伝達を前提としておる。憲法ちやんと発表の自由ということを保障しておるわけであります。  そこでお尋ねしたいというのは、昨日の答弁によれば、検閲制度などは復活するつもりはないということであつた。しかし実際問題としてこのような破防法を実施すれば、いつなんどきこの破防法にひつかけられて重い刑を処せられぬともわからぬ。非常にあぶないことになる。一例を引くならば、吉田政府はけしからぬ、あるいはブルジヨア政府はけしからぬ、勤労階級の政府をつくらなければならぬ。今のような悪い政治を積み重ねて行くならば、結局のところは不穏なる手段に訴えてでもわれわれは生活を保護しなければならぬだろうというようなことを書けば、おそらくそういうような言説は本條に触れることになります。そういうふうなことを書いた新聞は解散命令を受けるであろうし、その筆者なり編集者はおそらくは七箇年以下の禁錮というようなことにならざるを得ない。そういうことになつたらたいへんだから、あらかじめ当局に対して、この程度のことは書いてもようございますかということをお伺いを立てざるを得ない。これはなるほど制度としての検閲制度の復活ではないだろうけれども、実際上は検閲制度ができたことになる。あるいは昨日も質問があつたが、調査権に名をかりて、どんどんとあつちこつちこの調査をやつて行くという筋合いから、これまた言論に対する重大なる制限、抑圧が加えられることになる。そこで、そういうことにならぬという保障がありますか、ならぬといろ覚悟がありますか。どういうふうにして言論の自由を保障するつもりでありますか。
  27. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答えいたします。言論が犯罪の方向に利用されている場合は、これはあくまで取締らなければならないのでありまして、絶対の言論の自由というものは許されるものではありません。この法案規定しております扇動でありますが、内乱を扇動するというがごとき言論が許すべからざるものであることは申すまでもないことであります。
  28. 田中堯平

    田中(堯)委員 それでは時間がないから、あとは逐條審議に讓りますが、最後に一問法務総裁にお尋ねしたい。この法案は共産党がねらいではないというふうに、繰返し本委員会において答弁をなさつたけれども、われわれの聞くところによれば、国会の提案以前に、いろいろ労働団体や思想団体、文化団体等には、法務総裁みずから、これは共産党だけを目標にしておるのであるから、諸君には関係のないことであるので、どうかひとつ目をつぶつてつてもらいたいという趣旨の申入れが行われたと聞いておる。そこで、それはそうじやないと言われるならそれまでであるが、これはわれわれが見るだけでなしに、国民の見るところ、どう見ても共産党がいの一番にやり玉にあげられるであろう、この破防法によつて共産党がいじめられるであろうということは、常識になつておる。そこでお尋ねしたいのは、今日法務総裁は共産党をどのように評価されておるか。もちろん御承知の通り、全世界各国に共産党のない国はほとんどない。しかもその共産党が政治を行つている国は、ソ同盟にしても、あるいは中共にしても、その他の国々にしても、人口にして全世界の人口の半分を占めておる半分近いところの人口を組織し、またそこでは経済は隆々として起きつつある。反対に資本主義の国々においては、経済はまつたく混乱状態に陥つて、不景気、恐慌を繰返して、ことに侵略戰争の準備を進めるために尨大なる軍擴経済を打立てて行き、その軍擴経済は資本主義経済自体の矛盾を引起して、につちもさつちも行かぬ状態である。たとえばアメリカにおいては、一九五二年までの軍擴経済を一年繰延べざるを得ない状態になつておる。貿易は逼塞してしまつてさつぱり物を売るわけにも行かない。そこヘモスクワ経済会議が最近開かれたのですが、不当にも日本ではそれに参加することを拒んで、政府は旅券下付をやらなかつた。これは一種の彈圧であるが、まつたく不法にりくつにならないようなことを並べて、とうとう旅券下付をしなかつた。それはともかくとして、モスクワ経済会議が行われた。最初モスクワ経済会議の話が出たときには、資本主義陣営ではあざ笑つてつた。またソ同盟の自家宣伝である、そんなことが何の効果があるかという話であつたが、実際幕を開いてみると、効果がないどころか、中国と英国との間には一千万ポンドというような多額の取引が、たつた一週間のうちにきめられておる。その他、全世界を通じては何億ドルという大きな商売がたつた一週間くらいのうちにきめられておる。かくして、経済の疎通を欠いて、今にも戰争になろうかというような危險なる状態は大いに緩和されて来ておる。今あなたは共産党を何か暴力団か、陰謀団のようにお考えかもしれないけれども、あにはからんや、共産党が政治を行つているところでは、非常な発展ぶりを示している。モスクワ経済会議を通じて、世界に大きな波紋を描いている。そのような政治力を持つた国々があるではありませんか。そういうように、共産党はすでに世界の大半を統治し、りつぱな政治をしいている。それが共産党なんだ。日本においてもやはりそれらと似たり寄つたりの国を日本につくろう、そうして日本国民が真の独立と平和と繁栄とを可能ならしめるような、そういう国にしようという努力をわれわれはしているわけである。ポツダム宣言実施を一番まじめに主張しておつたのは、ほかならぬ共産党ではありませんか。ポツダム宣言の厳正実施という綱領を掲げた政党が他にありますか。ない。徹底した民主主義日本にしようという、ほんとうにポツダム宣言にかなう綱領を持つているのが共産党である。それをあなた方で彈圧しなければならぬのはどうわけであるか。まことにおかしな話である。とうとうたる世界の大勢、人類発展の歴史の過程においては、人類史は、見方によるけれども、われわれの見方によつては、人類の解放の歴史、解放の血の闘争のつづり合せが人類史である。少数の独裁政権というものが次第々々に形をかえて来て、最後立場に追い込まれている。これを除いて、真に全世界の人類がみな広々とした気持で、りつぱな生活が立つような、そういう社会をつくろうというのがわれわれの理想である。しかもそれが実績を示して、人類の半分の人口を組織しておる。現に帝国主義諸国から彈圧されているような被圧迫民族も、次から次へと解放闘争をやつて、解放されつつある。そういうような世界情勢の中において、一体木村法務総裁は、その御老体をひつさげて、そうしてとうとうたるこの世界の大勢を打切ることができるとお考えですか。共産党を彈圧することができると思いますか。大利根のとうとうたる流れを、総裁みずから立ち上つて、一枚の戸板をもつてこれを防ぐなどというような、そういう愚かなることをこの破防法によつて試みてみたところので何の益がありますか。聞けば、あなたは就任のときに、おれは日本共産党をたたきつぶすために命をかけて闘うということを、さる席上で言われたそうだ。あなたの力でそれができますか。その覚悟をひとつ聞かしてください。
  29. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま田中君は、いかにもソビエト・ロシヤが世界で最も発展したようなことを申された。われわれは不幸にしてその実態を知らない。何がゆえに実態を知らないか。いわゆる鉄のカーテンがあつて日本国民も、世界の各国民もソビエトの実態を知らないのであります。願わくばその鉄のカーテンを上げて、自由に世界の人類の前にその実態を示してもらいたい、私はこう考えておる。こうして今田中君の言によりますと、アメリカがだんだん苦しみつつあるというような発言のようであつたが、私はアメリカのあの国民の自由の姿を見て、われわれ日本国民ももつともつと伸び伸びした生活をし得るような状態に早く立ちもどることをこいねがのうであります。しこうして田中君は、日本共産党云々と言われる。先ほど田中君の発言を聞いておりますと、いかにも暴力をもつて政府を転覆することは当然の帰結のように申されたが、私はさようなことは、法治国家においてはなはだ悲しむべきことであろうと思います。どこまでも民主政治建前をとつてこの議会を通じて政治をすることが本来の姿であろうと私どもは考えます。もしもこの政府の施政がよろしきを得なければ、国民の輿論に問うていわゆる選挙を通じてこれを新しい姿に返すべきのが本来の民主主義政治のあり方であると考えます。世界の人類は平和をこいねがつているのである。暴力をもつて政府を転覆し、しこうしてみずからその政局に当るがごときことは断じて許すことができないと私はこう考える。私はどこまでも民主政治建前をとつて平和国家を建設すべく努力したい、こう考えている。
  30. 田中堯平

    田中(堯)委員 まつたく木村法務総裁とわれわれの立場とは平行線上にあるようで、いくら論じてみてもしかたがないが、最後に木村法務総裁のような立場で行けば、結局人類史に大きな貢献をしたフランス革命も、あるいは英国の産業革命、さらにアメリカ独立戰争民族解放の闘争、あるいは日本においての明治維新の革命というようなものさえも一切合財が否定されなければならないことになる。およそ反動主義者といわなければならぬのでありますが、これ以上平行線の上でいくら論じてみてもしかたがない、時間が来ましたので、いずれ各論で法律上の質問をいたします。
  31. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 加藤充君。関連質問の申入れでありますから、一点に限つて簡潔に願います。
  32. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私は政府が声を大きくして、握りこぶしを固めて、断固として、命をかけて守らなければならないという基本的秩序というもの、この実体は何かということについて関連質問をいたします。  時間の関係でごく簡單に申し下げます。昨日關次長であつたかと思うのでありますが、南阿連邦では共産党の取締法があり、また南阿共産党を非合法として解散を命令しているというようなことを言われた。私はそのときにたいへん恐縮でしたが、日本人は八千四百万、日本民族は断じてホツテントツトではないぞ、というやじを飛ばしたのであります。このことについてお尋ねいたします。南阿連邦の反共取締法をお手本にしているが、はてさて南阿連邦というのはどういう国柄であるか、暗黒大陸というが、南阿地方はいまだ開化していないばかりでなく、欧州人の原地人差別と搾取とからいつても、いかにも暗い国である。世界でも一番みじめな貧民窟がアフリカの白人国南阿連邦の希望峰のそばのケープタウンにある。住民の八二%が黒人、インド人、混血人であるが、それに対して二割足らずの白人が公然たる抑圧政策で臨んでいる国である。これは一九四八年にできたマラン首相の現内閣の極右政策の結果で、今どき極右全体主義が支配している国である。これはきようの産経紙の報ずるところであります。世界で最も悲惨な国々が暗黒大陸南阿の状態であり、南阿連邦の実態であります。  そこでお尋ねいたします。政府は口を開けば自由世界である、自由主義だというようなことを言つておりますが、この中身は資本主義の押しつけであります。反共は植民地領有、民族圧迫の暴力なので、武力と政治力でやり続ける以外の何ものでもないと私は思うのであります。とりわけ資本主義の諸国からその帝国主義的な政策のために長い間領有せられ支配を続けられておりました植民地の諸民族は、自由主義あるいは自由国家というようなことを決してその文字通り受取ておらないのでありまして、中身は帝国主義的な圧迫である。それゆえにわれわれ民族は窮乏と無権利状態に突き落されているのだ。こう考えているわけであります。こういうような植民地領有国がこれら民族に押しつけた南阿連邦の反共法というようなものを持つて来てお手本にするという根本の魂膽が、私は困つたものだと思う。こんな根性を日本政府が持つてつては困るという見解をきのうの答弁で強くしたのでありますが、その点を承りたいと思う。
  33. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 簡單にお答えいたします。南阿連邦の立法をお手本にしたわけではございません。外国の立法例を御紹介したにすぎません。
  34. 加藤充

    ○加藤(充)委員 お手本にしたのではない。例を紹介したのだというが、これは言葉のごまかしであります。地球は世界の中心にあらず、また不動にもあらずして運動し、しかも日々運動するとの命題は不條理である。それは哲学的には虚偽にして、神学的に見れば信仰上誤謬なり。これは一六三三年ガレリオに対する調査と起訴と審判の結果である宣告文の一部でありますが、私はさらに血液循環系統の発見者であるセルヴエツスとか、火あぶりにされました地動説のブルーノやガレリオの処刑はもう同様な理由でありまするか、彼らを有罪とする判決理由は、期するところ秩序紊乱及びその害悪を未然に防がんがためということでありました。しからば一体彼らは何を乱したというのか。彼らを火あぶりにし、彼らを死刑にして、彼らを投獄して防衛されようとしたその秩序というものは、一体何ものであつたか。彼らがいかなる害悪をこの文明史に、この人間の歴史に、人間生活の中に流したというのか。何を流したといつて彼らは火あぶりにされ、処刑されたのか。基本的秩序というもの、これについてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  35. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 簡單にお答えいたします。この法案は学問、思想、政治、信念を取締りの対象とするものではありません。
  36. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 加藤君に申し上げますが、約束でありますから、なお質疑は次の機会に願います。猪俣浩三君。
  37. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務総裁にお尋ねいたします。民主主義、自由主義の国におきましては、この基本的人権の擁護と公共の福祉の調整をいかにするかということは、これは大きなる悩みであろう思います。フアツシヨ・ドイツのような、あるいはソ連のような全体主義の国におきましては、この悩みは少いかとも存じますが、民主主義の線で政治を運営せんとする場合においては、この調整についてはわれわれ必死の努力を拂わなければならないと思うのであります。そこで問題はこの二つの社会的利益をいかに評価するか、もし公共の福祉ということを最高度に考えますると、これは福祉国家、警察国家に転化するおそれがあり、さればというてある程度の公共の福祉という見地から人権の規制もしなければならぬということも起る。そこでこの調整の大きな眼目といたしまして、第一にはアメリカの最高裁判所がそのすぐれたる判事によりまして、ほとんど判例として樹立されております言論の自由を中核といたします基本的人権の規制の限度、それは明白にして差迫つた現実的な危險、このときに人権をある程度規制しなければならないというこの限界点を政府が堅持せられて、この立法をされたものであるやいなや。しかしてもししかりといたしますならば、現在明白にして差迫つた具体的な危險が存在しておると法務総裁は御認定になつておるのであるかどうか、これが第一点であります。  第二点といたしましては、この言論の自由を中核といたしましたる基本的人権そのものも、結局においては公共の福祉という大いなる見地からもやはり認められる問題であるがゆえに、民主国家におきましては、どこまでもこの自由を確保しなければならぬ。それにはことにこの法律を施行いたしまするところの行政官が、確固不抜の信念を持つていただかなければならぬと思うのであります。その信念をまず第一次の責任者でありまする法務総裁にお聞きするために、ここに参考として私は申し上げたいと思います。  政府が参考に供したであろうと思いまするアメリカ国内安全保障法、俗にマツカラン法といいますが、この法律は一九五〇年九月二十二日に成立いたしております。しかしこれはモザイク的な法律でありまして、その前からいろいろ提案せられておりました反共立法を集めて大成いたしたものであります。最初にこの内容の一部をなしまする法案として現われましたいわゆるムント・ニクソン法案、これは審議未了になつたのでありますが、これが現われましたのは一九四八年の一月であります。爾来幾多の反共法案が出ましたが、いずれも審議未了で終つたのでありまして、アメリカのサザランド教授の論文を見ますると、三十八も反共法案が出ておつたというのであります。これが集大成されましてただいま申しましたようなマツカラン法が出現したのでありまするがゆえに、この期間およそ二年八箇月を要しております。アメリカ国会ではかような長い年月の間慎重審議をいたされたのであります。この慎重審議の結果成立いたしましたマツカラン法に対して、時の行政庁の長官でありまするトルーマン大統領は、このように慎重審議した法案なるにかかわらず、自由に対する危險な法案なりとして拒否をされました。この教書が公にされておる。この教書の内容を私読んでみたのでありますが、サザランド教授の「自由と国内安全保障」という論文の中に、およそ拒否の内容として七項目があげてあります。このトルーマン大統領の拒否の理由の一項目として、すべての市民が持つ自由に言論を発表する権利を彼らが行使することを困難にするほど強大な権力を当該政府諸官憲に與えるに至ること、これが拒否の理由の一つである。なおたくさん書いてありますけれども、要するに、法案の全条項を総合的に考えると、これらの大きな部分は共産主義者からの真の現実的な危險に対して向けられたものではないことが明らかである。共産主義者に対する打撃を與えるかわりに、これらは、われわれ自身の自由のため働いているわれわれの立場そのものに打撃を與えるのである。なおこの法案実施の結果は、この法案で使用されていることばは非常に漠然としているので、その結果は共産主義者では絶対ない、中正な市民の合法的な活動を処罰する結果となる可能性が多いのである。かような言葉でトールマンは拒否されております。私はこの全文を読んでみましたが、自由を、基本的人権を守らんとするアメリカの行政庁長官の烈々たる気魄が現われておる。この気魄ある行政官が上に立つてこそ、かような法案も危險なしに存在すると考えるのでありますが、このトールマンの拒否教書に現われましたる精神に対しまして、法務総裁はいかなる御感想を持つておるか、これも承りたいと存ずるのであります。なおこの言論の自由を中核体といたしまする基本的人権をそこなわずに公共の福祉と調整せしむる一つ方法として、ただいま申しましたように現実に差迫つた危險の場合にのみ法律をつくる、なおまたこれを施行いたしまする行政官は自由を守らんとする気魄が横溢していなければならない、なお法文自体におきまして、基本的人権を擁護せんとする精神に欠くるものがあつて権利の濫用をいたしましたる行政官に対しましては、断固として制裁を加えるだけの制度がなければならない、なおまた不幸にして権利の濫用にあいまして侵害を受けましたる被害者に対して、十二分なる救済の道が法文自体に示されておらなければならない、この気魄なく、この制度なき場合におきましては、われわれはこういう法案は実に危險な法案として存在すると思う。日本の長い間の官僚組織その気質、ことに第一線に働いております警察官、検察官、こういう人たちの伝統的な態度は、長らく在野法曹としておられた木村法務総裁も御存じであろうと思うが、そういう者たちにこういう法律を與える結果がどうなるか。  そこで私は第一点といたしまして、先ほど申しました明白にして差迫つた危險が現に存在しておるという見地に立つてこの法案を提出されたかどうか。第二点は、行政庁の高官とせられて、この濫用に対してあなたはいかなる態度をもつてこれを戒めんとするか。トールマン大統領のこの気魄に対するあなたの感想を問う。第三点といたしまして権利を濫用したものに対していかなる制裁を持ち、被害者に対していかなる救済をはからんとするものであるか。これに対しまする御答弁をまずお願いいたします。
  38. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。猪俣君の、公共の福祉と個人の基本的人権とをいかに調節すべきか、これはもつともな御議論と私は考えます。これは慎重に考慮すべき問題であるのであります。そこでこの法案目的とするところは、いわゆる国家治安の確保であります。国家の治安が乱れて、国民生活の安全はあり得ないのであります。国民が平穏無事な生活を営まんとするのに、その前提條件として、まず国内の治安を確保しなければならぬのであります。この法案目的とするところは、要するに国内治安の確保であります。これが大きく国家の公共福祉と言えるであろうと確信するのであります。そこでこの言論の自由も、国家の治安の問題に関係いたしまして、内乱、騒擾というような危險な事柄を目的としてこれを行わしめるような扇動的言論に至つては、これは治安の面から見て、規制しなければならぬと私は考えております。しかして現在どのような状態に一体治安がなつておるかということになります。昨日朝お手元へ資料として配付しておきましたこれらの出版物を見ますると、相当激越な、いわゆる内乱、騒擾を主とする部面が各所にあるのであります。いわゆる明白かつ現在的危險があるということは明らかであるのであります。しからばこれを放置するということは、国家の治安上どうか、国民をして平穏無事な生活を営ましめるためには、国家の治安を維持しなければならぬ。その治安の面から見て、かような言論はこれは規制すべきは当然であろうと考えております。従つて通常の言論の自由というものは、われわれはどこまでも尊重するのでありまするが、治安の面から見た危險な言論、これは公共福祉的見地から規制して行かなければならぬ、こう考えております。  トルーマンのことは、しごくごもつともであります。しかしトルーマンの言葉を裏返しても、国家の治安を乱すような言論を許すとは言つていないのであります。われわれはどこまでも国民が各自平穏無事な生活を営むことをこいねがうのです。それがためにこの法案をわれわれは提出した次第であります。しかしてこの法案実施のあかつきにおいて、これを取扱うところの人の問題でおりますが、いやしくもこれらの人に対しては、十分なる訓練、修養を持たせなければならぬ、われわれは深くその点について考慮を拂つておるのであります。昨日も申し上げました通り、調査官につきましては、公安調査庁の所属機関として研修所を設けて、できるだけの教養と訓練を積ませて、その任につかせたいと考えております。また万一にもかような人が不当な行為をしたときには、どうするかというお尋ねでありまするが、それに対して私は、明らかに職権を濫用すれば刑法規定において処罰いたします。また公務員法において、これも相当な処置はでき得ることになつております。従つてそれらの法規に基きまして、万一調査官において不当な行為があれば、十分これを処置して行くことができると考えておる次第であります。
  39. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 ただいま猪俣委員から、明白かつ現在の危險について御質問がありました。特にアメリカの例を引用されて御質問がありましたので、審議の御参考までに申し上げたいと存じます。先般十一人の共産党の幹部が最高裁判所におきまして、スミス法違反として有罪の判決を受けました。この判決に対して合憲の判決が最高裁判所でなされたのでありますが、この判決につきまして最高裁判所の長官であるヴインスン最高裁判所長官が述べておる点があるのであります。御参考までに簡單に申し上げます。明白かつ現在の危險につきまして、こういうことを申しております。「強力及び暴力による政府顛覆は、政府にとつては確かに言論を制限するに足る重大関心事である。実際顛覆に対しての保障は如何なる社会においてもその窮極の価値なのである。何となれば、若し社会が内部からの武力攻撃に対してその機構を防護することが出来ないならば、あらゆる従属的価値もまた護ることが出来ないことになるからである。そこで、上述の利害関係はこれを護ることが出来るものとするならば、ここに提起される問題は、国会に処罰権のあるような害悪を齎らす言論の「明白、現実の危險」という語句を用いたときこの語句はどのような意味であるか、ということなのである。ここに叛乱が行われようとしていると仮定する。この場合政府は、叛乱の計画が整つて決行の合図が待たれている時迄待ち、然る後措置をとらなければならないということが右の語句の意味でないことは明らかである。若し政府が、その顛覆を狙つている一団がその構成員を教育し、その指導者が状況よしと感じた時出撃する策謀に彼等を用いようと企てていることを知つたならば、政府が措置をとる必要があるのである。  政府は強力で、叛乱鎮圧に充分な力を持つて居り、容易に革命を敗退させることが出来るであろうから政府は懸念する必要はないというような論には返答無用である。何故なら、斯かる論は問題でないからである。  暴力による政府顛覆企図は、その参加者が数的に不適当であり、また力量不適のためたとえ最初から失敗の運命にあるものであつても、それは優に国会が防止すべき害悪なのである。斯かる企図は国家に有形的及び政治的損害を及ぼすものであるため、その成功の確率とか又は近直性などを基準としてその合法性を判断することは出来ないのである。」かように述べております。御参考までに申し上げておきます。
  40. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 なおその点は、あとで参考資料として各委員に配付してください。
  41. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私が法務総裁にお尋ねいたしました第一点は、破壞活動防止法は、破壞活動をなさんとする団体に向けるということが中心になつておるようでありますが、しからば明白にして、差迫つた具体的危險ということを頭の中に置いて考えた場合に、さような明白にして、差迫つた危險を実現するような団体が、現在存在しておるという認定のもとに、この法案を提案せられたものであるか。なお第四條に関連いたしまして、第四條は破壞活動を行つた団体を規制するようになつておりまするが、現在ただいまの状態におきまして、かような破壞行動を行つた団体があるという御認定で、この法案を出されたものであるかどうか。その点をいま少しく具体的に御説明を願いたい。なお念を押しておきます。明白にして差迫つた危險の存在を基準としてこの法案を出したとするならば、少くとも第四條にありまする、この破壞活動を行つた団体というものが現に存在しているという意識のもとに出されたものであろうと推定するのであるが、さようであるかどうか、その点についてお答え願いたい。
  42. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 御質問にお答えします。昨日御説明しました資料によつて、この点は、立案の基礎になつている現下の事態につきましては、政府といたしまして十分御説明を盡したものを信じております。簡單に申し上げれば、本法案の対象となるような団体が存在することを疑うに足る事態が現存しておるというふうに考えております。
  43. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 昨日の特審局長の説明によると、たとえば税務署へ火焔びんを投げ込んだ、あるいは交番を襲撃して、ピストルを奪取した、これは何か背後に集団があつての計画的犯罪と認められるが、そうであるということもまだ確認がないという御答弁であつたが、これが確認せられたとしますならば、その団体はすなわち本法の対象となる団体であるかどうか、そうしてその団体はいかなる団体と今あなたはお考えになつておるのであるかどうか。相当明白な疑いの事実が存するような御答弁でありますがゆえに、具体的にいかなる団体がさような団体と考えられておるのであるか、御答弁願いたい。
  44. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 政府におきましては、目下調査中であります。
  45. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたのさつきの答弁と矛盾しておるではないか。本法案を適用するに十二分な疑いを持つものがある、そういう事情のもとに本法を提出したのだ、すなわち明白にして差迫つた危險の存在する団体があるという想定のもとに本法を立案したと言われるから、しからばその団体はいかなる団体であるか、こういう私の質問になつたわけです。法務総裁はどうお考えになつておりますか、私の質問は、明白にして差迫つた具体的な危險が存在する場合に、この言論の自由を規制するのはほんとうであるかという質問に対して、法務総裁はしかりとお答えになつた。しからばこの法案を提案するに至りましたる理由として、明白にして差迫つた危險のある団体が現存しておることにならなければならない。今特審局長の説明によつても、相当疑うに足る団体が存在しておるという答弁であるから、あなたもそのお考えでこの法案を出されたのであるかどうか、その点を法務総裁として御答弁願いたい。
  46. 木村篤太郎

    木村国務大臣 現在的に差迫つた危險のあることは、きのうお手元に出した資料によつて、きわめて明白であります。しこうしてさようなことを行うべき団体のあることの疑いは十分にあるのであります。
  47. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その団体の名前は出せないのか、出せるのか。
  48. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答えいたします。本法案を立案する根拠といたしました現下の事態につきましては、昨日の御説明で、政府といたしましては十分であると考えております。具体的に団体の存在、その内容、活動一切を立証する必要はないものと考えております。
  49. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたの答弁ははなはだ国会を侮辱しておる。政府がそういう団体があると認定しておつたならば、委員質問に対して答弁しなければならない。答弁する必要はないとはどういうわけだ。何か答弁するについてはさしさわりがあるから、いましばらく待つていただきたいということならわかるが、答弁する必要がないということがどこにある。そういう態度だからいかぬ。
  50. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 昨日来御説明いたしました通り、疑いを深めておるのでありまして、その疑いに基いて調査をしておるのでありますから、まだ結論には達しておりません。
  51. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 猪俣君に申し上げますが、時間が迫つておりますから、結論的な質疑を急いで願います。
  52. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それでは法務総裁に、質問の順序を飛ばしまして、民主主義政治の行われておりまする国家に、政治活動というものは有害であると考えられるかどうか、御答弁願いたい。
  53. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。民主政治国家において、政治活動の行われることは、私は希望いたします。
  54. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、この法案について私ども疑問を持たざるを得ないと思うことは、この法案の第三條第二項にある「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため、」以下書かれる行動をやると、これは重く処罰せられておる。すなわち本法の第三十八條によりまして、五年以下の懲役または禁錮ということになつておる。ところがこの目的を持たない、たとえば刑法の百八條の予備、陰謀をいたしましたものは、刑法の百十三條に規定されておりますが、これを見ると、二年以下の懲役、場合によつては刑の免除をするということに相なつておる。騒擾罪の予備、陰謀につきましては、百十三條に書いてあつて、二年以下の懲役であります。そうして刑の免除の規定も書いてある。しかるに政治活動として同じ行為をやると、いきなり五年以下の懲役または禁錮ということに相なつておる。そうすると本法の第三十八條の規定から刑法の百十三條の規定を差引きますと、三年以下の加重になり、しかも刑の免除というものは與えられる場合がないことに相なつておる。同じ騒擾でも、政治活動となると重罰するということに相なる。そうするとこの差引三年の加重ということは、政治活動をしたからということに相なるならば、われわれは政治活動をするということに対して疑問を持たざるを得ない。單純な騒擾罪の場合には二年以下であるにかかわらず、政治下の目的を持つた政府が認定すると、たちまち五年以下にはね上る。かようなことは、これが反対党彈圧の道具に使われるという疑惑を持たれるようになります。ほんとうの騒擾その他のことについて、われわれは賛成するものではありませんけれども、政治上の目的を持つたということだけで刑の均衡を失しておる。ただいま法務総裁と共産党の田中君との論争を見ましても、その人生観、世界観のまつたく異なれるものが存在しており、また民主主義はいろいろの主義、いろいろの世界観を持つておる者が存在することを否定するものではないはずである。そういう人たちが政治活動をやつたということだけで特に加重するということ、これは現在の支配階級を温存し、その支配力を強化するというふうな、反対党から見ると疑いを持たれる理由がここにある。何ゆえに政治活動をしたということだけで刑法の原則を破りまして、かような加重をしたのであるか、その趣旨を承りたい。
  55. 木村篤太郎

    木村国務大臣 民主政治国家において、政治活動の活発なることをこいねがうことは先ほど申した通りであります。その政治活動はいわゆる民主的建前において行われるべきものと私は確信しております。いわゆる国民の多数の意見に基いて議会を通じて行われる、これが民主政治建前であります。そのもとにおいて政治活動の活発なることを私はこいねがつておるのであります。しかるに政治上の目的のために政治活動をするのに騒擾したり、あるいは汽車を転覆させたり、放火をしたりするということは、これは民主国家において断じて排撃しなければならぬと私は考えております。かるがゆえに、かような犯罪は治安の面から見て、特に考慮すべきのみならず、政治上の見地からも、これは普通の犯罪よりも特に取扱うべきものであろうと私は考えております。
  56. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それだからこの法案は一般言論を抑圧するのみならず、反対党彈圧のために使われるという疑いが持たれるのであります。あなた方は真なりとした政治上の意見と、共産党が真なりとした政治上の意見は、どちらが真であるか神様が審判するよりわからない場合もある。もちろん破壞行動をやるということに対しては賛成いたしませんけれども、直接に火をつけたり、直接に騒擾をしたりする者だけを罰するのじやない、この予備、陰謀、教唆、扇動、あらゆるナチスの擴張正犯論に類したような理論から、かような立案をされておることは明らかである。そこでその扇動とか教唆とかいうようなことを認定するものは、政治機関であるがゆえに、反対党彈圧のためにいかようにもこれを取上げられる場合においては、非常に反対党の彈圧に使われるおそれがあるのであります。かような疑をい持たれるところの條項を置いておく、そうしてそれは政治上の主義または施策を推進するというような言葉で表現されておるということは、私はそういう扇動とか教唆とかいうようなことまで処罰する趣旨から考えて、はなはだこれは反対党の彈圧に使われるおそれが十二分にあると考える。その意味において私はなお最後にお尋ねします。  そうすると、この政治活動の「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため、」というのを加重するということは、今あなたの説明だけでははつきりわからぬが、反対党彈圧に濫用せられるおそれありとあなたは考えるか、考えないか、それを伺いたい。
  57. 木村篤太郎

    木村国務大臣 反対党を彈圧するようなことは断じてないと私は確信します。
  58. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 猪俣君の質疑は、申合せの時間が経過しておりますから、各論の際になお継続願うことにします。世耕弘一君。
  59. 世耕弘一

    世耕委員 簡單に数点お尋ねいたします。まず最初にお尋ねいたしたいのは、労働者経済ストから政治ストに転入して、さらにそれが暴動化する危險性が各国にあるのでありますが、さような場合の見解並びに取締り方針に対して、どういうところに基本を置くか、どういうところに根拠を置くかということの、ごく基本的なお考えを承つておきたいと思います。
  60. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 まことに御質問通りだと思います。しかしこの法案で規制せんとする対象は、かような行為を団体活動として行つた団体の意思決定に基いて、その意思を実現するために行つた場合に、その団体が規制されるのでありまして、偶発的に個々の人々が騒擾を起したような場合に、よしんばその中に構成員が入つておりましても、これは団体を規制するものではないのでありまして、一般刑法その他の刑罰法令をもつて個々の個人を取締るのであります。
  61. 世耕弘一

    世耕委員 昨日来吉河局長から、最近における破壞活動は、きわめて巧妙な作戰と行動に移つておるということを御説明があつたように私は記憶いたしております。必ず今後の作戰は、こういう機会をとらえて来ることは、火を見るよりも明らかであります。ことにこの法案の内容を見まして、今のような例を申しますと、むしろ結果よりも防止ということが大切ではないか、発生の原因を衝くことが大切ではないか、かように私は考えるのであります。もしその暴動の内容が成功したとするならば、取締ろうと思つていた人が逆に取締られるような結果になるということも想像できるのであります。この点に対してはよほど考慮を拂つていただきたいという希望をつけ加えておきます。  次にお尋ねいたしたいのは、これは先ほど共産党の田中君からも質問があつたと思いますが、ある意味において私は同感の意を表したいことがあります。それはなぜかと申しますと、共産革命なりあるいは暴力革命を誘発する原因というものがいつもなくてはならぬと思うのです。ただ扇動あるいは教唆だけでは大きな暴動は起り得ない。教唆に乗り得る、扇動に乗り得る何かそこに客観的情勢がなければならない。一例を申しますならば、政治的の貧困、あるいは国民が知ろうとすることも知らさずに、秘密主義に行われておる、かようなことが扇動家の手段に乗り得る、大衆は多くの場合無知だから、こういうことが考えられるのであります。それで先ほど来御説明がありましたが、たとえば税務署の襲撃がある、なぜ税務署を襲撃するのだろう、ずいぶんおかしな話ですけれども、今朝ほども私の手元に届いた資料を申し上げますと、ずいぶん税務署は苛酷な税金の取立てをいたしております。しかもその取立ての方法が、きわめて無慈悲な処置をとつておるということがうかがわれる。これは一例ですから、長いこと申し上げるのは差控えますが、これは京都市の事件であります。わずか四百円の税金でありますが、取立てられる本人は戰争未亡人であります。その取立てにあたつて、もし税務官吏が来て、本人がいない場合には警察官が立会いの上で差押えするから、さよう心得ろという通知を出しておる。これは一つの例なんです。もう一つの例は、東京都下において、けさ私の手元に集まつた資料でありますが、税務官吏が宿屋にとまつて丹前がけで、芸者をかかえて酒を飲んだ。そこへ納税者を呼びつけて、おれの言う通り額を納めなかつたらすぐ差押えをするぞと言つておどしつけて、問題が大きくなつております。あるいは非常に困窮の結果、納税の義務が果せないという実情にあるにもかかわらず、無慈悲にその家庭の家具まで強制執行を行うというような、この無慈悲なやり方がやがて暴力革命の原因となるということは、われわれ察しなくちやならぬ。今日税務署を襲撃する者は必ずしも共産主義思想あるいは過激思想を持つた者はかりじやないのです。善良な民衆の欝憤がそこに現われて来たものとわれわれは一応見なければならないのじやないかと思う。(「その通り」)税務官吏に言わせると代議士がこういうような苛酷な税を取立てるような方針をきめたんで、おれらの責任じやない、かように言うのが普通であります。しかしながらわれわれ議会人といたしましては、税率については公平な算定を割出すようには指示、決定をいたしますけれども、税額については税務官吏がその現場において調査するのだから、むしろ大きな役割は現場に当る税務官吏の責任が大きな原因をなすものと思うのであります。かような点の欠陥をよく是正しなければ、いかに破壞活動防止法案が通過いたしましても効果がないんじやないか、だから暴動あるいは破壞活動を結果から見るよりも、むしろ原因を十分追究しろ、そうして善処されたいということを私は申し上げたい。これは適当な言葉でないかもしれませんが、女房がヒステリーを起す、そうして不逞の亭主に危害を加えた、かような場合を想像してみますと女のくせにけしからぬ、亭主に危害を加えるなんということは不逞きわまるものだ、こう往々にして結論をする。ところがおとなしい女房がヒステリーを起して、犯すべからざる亭主に危害を加えるといつた場合に、その原因はだれにあるかということになれば、亭主が悪いということになる。さような場合に往々にしてこれは亭主じやなくて、むしろ女房のヒステリーに責任を負わせるという行き方が、このわれわれの政治の上でもあるのではないか、われわれは大いに反省しなければならないのじやないか。私は共産主義者——しいて日本の共産党とは言いませんが、共産主義者は社会における一種の下剤のようなもので、ある場合においては共産主義思想の存在は必要な場合がある。それは不健康な場合で、健康な場合には下剤を飲む必要はなかろうと思う。かような観点から見まして、特に税務署はなぜ放火されたか、なぜ襲撃を受けたか、なぜ民衆の保護者であり、味方である警察が攻撃を受けるのかというその原因をよくきわめて、結果を結論づけるということを考えていただきたいということを特にここに主張しておきたいのであります。特に税関係におきましては、最近はこういう実例が京都の方からも出ておりますが、いわゆる地方の公吏がかなり各方面で市民税を濫用しておる、こういうことが陳情に出ております。あるいは交際費と称しあるいはその他の社交費と称して数百万濫費して、それが告訴ざたになつていることが私の手元に届いております。一方においては戰争未亡人がわずかに四百円の納税の義務を果せないからというので、警察が立ち会つて差押えするぞという、かような手紙をくつつけて出すというような、まことに無情きわまる、むしろ冷酷な政治が現に行われておるということなんです。これを是正しなければ私は破壞活動防止のほんとうの効果はあげ得られないのであろうということをここに特に強調して、政府当局の反省を促したいと思うのであります。  それともう一つ次にお伺いいたしたいことは、思想対策あるいは扇動、教唆等に対する問題でありますが、これも処罰する前輿論の喚起が必要である、輿論の善導が必要ではないか、こういうことに対して本案に対する付随事項として御計画があるかどうか。どうも再軍備がいいのか悪いのか、またやつておるのかやつてないのか、国民は一向にわからぬ。あるいはまた共産主義がいいのか悪いのか、ソビエトと手を握つてやるのがいいのか、それとも今後アメリカと緊密な連絡をしていいのかどうか。先ほどの田中君の話によると、世界はもう共産主義の思想あるいは同盟国に半分なつておる、そつちの方がよいようにも説かれておつたのであります。国民もそういうことを言われるとそういうふうに思う。権威ある共産党の諸君が言われるのだから、ついそれにつり込まれて来る。ところが政府はこれについて何にも言わぬ。ラジオ、文書あるいは講演等において国民はかくあるべきだということの指導をする必要はないにしても、世界の動き、国内の状況等を親切丁寧に内容を発表するだけの義務があるのじやないかと私は思う。この点についてのお心構えはいかがでありますか。
  62. 木村篤太郎

    木村国務大臣 世耕君の仰せのことはまことにごもつともであります。政府においてもう少し世界情勢を言論によつて明らかにしたらよかろうということでありますが、これから政府も大いに国民国内の一般情勢なり国際情勢なりを周知せしめるように努力いたします。
  63. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 世耕君、なお国警長官も出席されておりますから、質疑を続行願います。
  64. 世耕弘一

    世耕委員 この法案知よつてそれぞれ組織体が明示されておりますが、予算関係はどれくらい使われるか、またそれに対する人的方面の関係はどうか、またその人数について伺いたい。結局かような重大な法律を施行するについてはその主任者の人格ということが非常に大切なことと思います。おそらくもう人選が整つておるものと思いますが、どういう方面から人選をなさるつもりか。きのうの説明書の中には学識経験者をもつてこれに充てるということを言うておりますが、従来の学識経験者というものは古者ばかりのような感じがしていけなかつたのですが、ほんとうに時局を認識し、世界の大勢を知り、そうして政治的見識と学識とを備えた人を選ぶことはなかなか容易なことではなかろうと思いますが、一応その辺についての抱負を承ればけつこうだと思います。
  65. 木村篤太郎

    木村国務大臣 委員長の人選につきましては、先日来申し述べておるのでありまするが、これは最も有能達識者を選任いたしたいと考えております。その方面は言論界、労働関係界、宗教関係、法曹関係、実業関係、これらから選びたい、こう考えております。現在国家公安委員の五人の方は、それぞれ今申し上げたような方面から選任しておるのでありますが、いずれもりつぱな方で、世間の信用はもちろんのこと、実際の事務においても堪能な方で、私らは実に感謝しておる次第であります。待遇は認証官をもつて充てたい、こう考えております。
  66. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 公安調査庁の人員につきましては、現在の行政機構簡素化の線に沿いまして、必要最小限度の増員にとどめたい、約五百名程度の増員にとどめたいと考えております。まだ予算の金額その他は決定されておりませんが、大体その程度にとどめたいと思つております。
  67. 世耕弘一

    世耕委員 予算がまだはつきりしないというんだが、予算ががはつきりしないでこういうことを御計画になつても、どうも空論に終るようなきらいがあるのです。これはよほどしつかりしていただかなければならない。もう一つこれまでにも例がよくあるんですが、各委員会あるいは組織等について、活動の敏活さを欠いておるじやないかとつつ込むと、予算が足りませんので仕事ができないと言う。これではいかにりつぱな法律ができましても予算がなかつたら動かないということになつたら、むしろこんな問題になる法案を出さないでおいて、国警方面の御協力を得て既存の組織を活用した方がいいだろう、国警の方にでも、金をまわして、その方でやらしたらいいじやないかということもできる。なお特審局は今度いらなくなるのですか——特審局は相当働いたはずなんですが、いらなくなるとすれば、これをどこかへ持つて行かなければならぬことになる。この点について、こういうものを新たにこしらえなければならないゆえんはまだ聞いておりませんが、国警当局といたしまして、こういうことはぜひ必要なのか、あつた方がいいのか、かえつて屋上屋を重ねて捜査活動について不便が起きやしないかということは杞憂になるのですか、この点について国警長官の御意見を承りたい。
  68. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 本法案が成立いたしました場合には、これを執行いたしまする事務部局として、ただいま提案になつておりまする公安調査庁といつたようなものが必要であるかどうかというお尋ねだと承りまするが、本法案の犯罪にかかる面の捜査は、それぞれ犯罪の捜査機関において行うのでありまするが、本法案のうちで団体規制等行政措置にまつものがあるわけであります。この分につきましては捜査関係の機関では処理することが必ずしも適当ではないかと考えますので、行政措置をいたしまするに必要な調査をし、またその措置をする公安審査委員会という機関は、この法案を施行する上に私は必要であろうと考えておるのであります。しかしこれらの機関と捜査機関とは絶えず密接なる連絡をとらなければならないことはもちろんでございます。これは運営によりましてその万全を期したい、また期し得るであろうと考えておる次第であります。
  69. 世耕弘一

    世耕委員 非常に敏速を要することであり、しかも機密を要することが、今度のこの法案の活動上必要だと思うのであります。それには今長官のおつしやつたように、双方の緊密な連絡が必要だと思いますが、たとえばどじようすくいの例を見ますと、今まさにどじようをすくおうとするときに近所でばたばたいつたら、すくおうとしたどじようは逃げてしまう。権限を持たないものがそばで騒ぐために、せつかくつかまる犯人が逃げてしまうという例がある。こういう点について心配ないか——私はあると思う。まだ国警長官は他の省との関係上遠慮をして、腹の中で思うてないようなことをば説明しているんじやないかと思います。もしそういうことがあればはなはだ遺憾です。もつとあつさりそういう点については絶対に憂いないとあなたが言い切るかどうか、言い切ることができれば私の申し上げることは杞憂だということで私はひつ込んでおきますが、そのかわりあとでそういう問題ができたら私は承知しません。(笑声)なお先ほど申しました特審局はまだ存在するのか、それともなくするのかということは法務総裁から承つておきます。
  70. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 犯罪の捜査あるいは防止がすみやかに行われなければならないことはおつしやる通りであります。行政措置が若干遅れましても、現実の犯罪を未然に防止する、あるいはこれを鎮圧するということが、最も急務を要しますことはもちろんでございます。今度できまする公安調査庁とわれわれとの関係におきましては、その点において齟齬を来さないように、完全に一体の運営を私はなし得るものだと考えておるのであります。
  71. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 この法案規定しております公安調査庁は、現在の特審局を発展的に解消してつくるのであります。この法案の「調査」にも書いてあります通り、公安調査庁は自警、国警とも緊察な協力のもとに、この所要の調査活動を遂行することになるのであります。
  72. 世耕弘一

    世耕委員 大事なことだから重ねてお尋ねしておきます。緊密な連絡をとるということはごもつともだと思いますが、緊密な連絡をとるという言葉だけでなしに、何か連絡機関でもおきますか。
  73. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 すでに総裁の御方針によりまして、国警、自警、特審の協力関係は中央から地方に打ち立てられておりまして、だんだんその能率を向上しておるような状況であります。
  74. 世耕弘一

    世耕委員 ちよつと私のお尋ねしたのと違うのです。私の言うのは自警、国警それから今度できるこういう組織との間に係官の交流をするか、なおまた常に連絡機関を置くかというのです。
  75. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 ごもつともな御質問であります。特別な係官はおきませんが、常時密接な連絡をしております。また公安調査庁においてもしなければならないと考えております。
  76. 世耕弘一

    世耕委員 簡單にあと数点だけお尋ねいたします。これは名称の問題ですが、破壞活動防止法案なんというのは、何だかどつかの焼直しのような感じがするのですが、こういうことは立案するときに御研究になりましたか。私の案としてはむしろ公安維持とか、あるいは公安保持とか、公安強化とかいう名前の方が上品で深みがあつていいのではないか、どうも破壞活動防止というのは、ちようど砂防工事のような感じで、はなはだ用語が文面から見て上品でないと思うのです。もしもつと強い感じを與えるというのならば、むしろ暴力革命防止法案とでも言うなら、非常に通りがいいのではないか。どうも破壞活動防止というのは、ちようど砂防工事と同じようだ。もつともこれによく似ているのですが、治山、治水は山から始めて元をたださなければならぬ。元が治まつて初めて末が安全になる。ところが下の方の砂ばかり気をつけて、堤防ばかり築いても、山がくずれてくればどうにもならぬ。その山くずれをどう防ぐかということが非常に常識的なんです。その点で私は時間を省略する意味においてお尋ねしておきますが、今日の破壞活動と申しますか、過激思想の温床は大学なんです。近ごろは高等学校もそこに入つております。今火つけの手先になつているのは、高等学校の生徒です。それは皆様御承知の通りだと思います。そうするとそのいわゆる治山、治水の元である山元をどうするか、これが取締りの対象の非常に重点ではないか、大学自治とか何とかかんとが近ごろ騒いでおりますが、この山に、この活動の本家本元の震源地帶に、どの手をあなた方が施すかということを、ひとつ急所だけ聞かせていただきたい。
  77. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 この法案の名称につきましての御質問、まことにごもつともの点もあるのでありますが、この法案は、その法案の内容をはつきり名称に打出したいというので、政府といたしましては、破壞活動防止法という名称をつけた次第であります。
  78. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま世耕君から学生の問題が出たようでありますが、まことに私は残念でかつ遺憾と考えております。何がゆえに学生がさような不穏な行動に出るか種々な原因がありましようが、これはしかし一部の者にすぎないのであります。私は全国の高等学校、大学の学生の多数の者は、孜々として学業にいそしんでおることを確信して疑いません。ただ一部過激の者がありまして、それらの者による扇動が、さような結果になつておるものと信じております。私は矢内原総長ともよく懇談いたしまして、将来さようなことのないように十分な措置をして行きたい、かように考えております。
  79. 世耕弘一

    世耕委員 賢明な法務総裁としては少しもの足りないような感じがする。それは法務総裁は衛生学というのを御存じない。今赤痢がはやつている、が一部分じやないか、大したことはない、あなたはそう言いたいのだと思います。ペストがはやる、大したことはない、その少数な分子が多数に毒を分布するということのいわゆる予防衛生学をあなたがお考えになつたら、この少数がきわめて危險である。また少数のうちにこそ防止対策ができるのではないか、かように私は考えて、実は重大視している。もしこれが全国に多数おつたら、あるいはあなたは一番先にやられてしまうかわからない。むしろ私は今日の暴力革命が下地をつくりつつあるというときに、あなた方の身辺、あるいはあなた方の近辺、あるいはあなた方の家族の上に非常に御苦労が多かろうと思つて同情にたえぬのです。これは国民として大いに責任を感じなければならぬ。こういう大きな仕事を遂行する場合においては、危險が伴うのはあたりまえであります。その少数のときになぜ防止してくれなかつたか。この破壞活動防止法案のごときも、実は三年前に私は前の法務総裁のときにこういうことも来るぞと言つたら、いや大丈夫だ、まだ一部分だから……。その一部分が近ごろ見てごらんなさい。近ごろ毎日のようにやつて来る、この点をよく研究してもらいたい。この点の研究、対策について、もつとはつきりしたお考えを述べていただきたい。腹の中で思つておられるなら、それでよろしゆうございますが、しかし言つてさしつかえない範囲でおつしやつていただければ、国民は満足するだろうと思います。なぜそういうことを申すかといいますと、共産主義者のいわゆる隠れ家といつたら、もう大学か高等学校よりほかない。大学の地下室、講堂そういうふうになつておる。(発言する者あり)私の手元にその材料が幾らでもあるからそれを申し上げるのだ。これをほうつておいてどうするか。これは最後の拠点です。最後の拠点、地下をほうつて置いて、少数だといつてつたら、今度はえらいことになる。この点についてもつと腹構えをなさつておく必要があるのではないか。時間がないから、私は詳しいことはお尋ねいたしませんが、たとえば講義にしてもそうです。大学の中で扇動的講義はできます。教唆するような講義はできます。みなほかの人を締め出せば学生だけだ。その学生が聞いて、今度は飛び歩いた場合に、それはどうなるか、そこまでやると大学の自治がこわれるから、あるいはびくびくなさるかもわからないが、もう危險でもしようがない、ここまで手を入れなければ、きれいに衛生手当が徹底できぬという観点において私はお尋ねするのですが、その決意のほどを伺いたい。必ずしも私は強圧しろというのではありません。先ほど例としては適当じやなかつたかもわかりませんが、砂防の場合でも同じで、どうもこの次の雨になつたらこの山はくずれそうだ。その下の家屋は押しつぶされるかもわからないというときに、砂防工事は効果があるので、押しつぶされて、死人を出したときにあわてても何もならぬ、私は実はその点を考えて、法務総裁の御意見を承つておるのですが、簡單でもいいですから御所信のほどを伺つておく程度でけつこうだと思います。
  80. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの世耕君の御意見によりますと、東大は赤の拠点である、早く手入れをしたらいいのではないかというふうに承われるのでありますが、これは参議院の文部委員会でも衆議院の文部委員会でも取上げられた問題であります。いわゆる学校の自治とにらみ合せての問題であります。私はどこまでも学校の自治、学問の自由というものは尊重して行かなければならぬという考えを持つております。ただ一部の破壞分子によつて、その大学の自治が破壞されるということになりますると、大学がみずからその自治権を放棄するものである。大学の当局者といたしましては、これについて十分対処をしてもらわなければならぬ。これが対処できぬということであれば、いわゆる大学みずからが自治権を放棄するのであるから、これはもう自治権をもつて主張することは大学としてはできないのであるから、何としても相当の手入れをしなければならぬということになるのでありますが、最近矢内原学長は相当の決意をもつて、これらの事柄に善処いたしておられるようであります。おそらく私は相当の効果を上げるということを期待しております。全部の学校につきましても、各学校当局が相当の決意をもつてこのような問題に対処しておられるようでありますから、われわれはしばらくそれを静観して参りたい、こう考えております。
  81. 世耕弘一

    世耕委員 一部分だから心配はない、そして自治的にこれをしたい。これはごもつともな話です。自治的にできればけつこうです。自治的にできればけつこうだが、近来の大学の組織から言うと、自治がかえつて下部組織によつて自由にされております。神聖な自治ということが確立できません。この点は法務総裁よくお気にとめておいていただきたい。私は必ずしも東大の大学の一つや二つ赤で騒いだからといつても大したことはないと思つております。そう眼中にも置いておりませんが、全国的な今日の活動が開始されておるという現状から特にやかましく言うのです。  もう一つそれじやお尋ねいたします。もし自治が破壞され、そうして大学全体が赤の温床とかりに化した場合、それでも総裁はやはり大学は自治だから今に自治は回復するだろうといつて、自治が回復するのをお待ちになりますか、さような場合には出動して取締りをいたしますか、この点を決意だけ伺つておきましよう。
  82. 木村篤太郎

    木村国務大臣 大学がみずから自治権を放棄するようなことがありますれば、政府といたしましても相当考えなくちやならぬと考えております。
  83. 世耕弘一

    世耕委員 破壞活動をもし外人が指導していた場合にどう処置します。この点。
  84. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 この法案におきましては団体を規制の対象としております。さような団体が国内にありまする場合には、やはり適用せざるを得ないと考えております。
  85. 世耕弘一

    世耕委員 この法律の中に、もしそういう暴力革命をやろうとすれば抜け穴はいくらでもある。その抜け穴をどういうふうに防ぎますか。また次に足りないところを追加して法律を出すつもりですか。抜け穴がある場合に防止方法はどういうふうにして対策を立てるかということは考えておいていいと思うのですが、いかがですか。またそれを外国から、あるいは外地から盛んに革命扇動をやるような、電波通信を用いるような場合は、それをどうするか。
  86. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 この法案は第一條でも規定してあります通り、この法案のみによつて国家社会の基本秩序を破壞するような破壞活動の危險を防止しようと考えているのではございません。その防止に寄與貢献することを目的に、この法案を立案したのでございまして、あらゆる国家施策及び治安関係機関その他の諸機関との協力のもとに、破壞活動の防止についてはでき得る限りの措置を講じて行きたいと考えております。
  87. 世耕弘一

    世耕委員 今のような例の場合はどういうふうに連絡します。たとえば外国から電波をもつて大いに国内撹乱の作戰を立てる、デマ放送をやる、あるいは第三国人が、あるいは外国人が潜入してこの法律にひつかからないような活動を開始して大きな原因をつくつたという場合は、どういう対策を立てるか、これは決して私はよけいな質問じやないと思います。
  88. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 国外の団体につきましては、この法案では規制することができません。これは破壞活動防止のためにはひとりこの法案の運用だけではなくして、政府の他の施策と相まつて実施しなければならないと考えております。
  89. 世耕弘一

    世耕委員 吉河局長じやなくして法務総裁からひとつお聞きしたい。法務総裁法律家だからこういう点をどういうふうに活用して行くかということです。
  90. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今吉河局長から答弁した通りです。この法案のみによつて、さようなものはすべて防止することはできないのであります。これは一端であります。いわゆる内地治安確保に寄與するためであります。この法案一本でもつてすべてのものがやれるとは毛頭考えておりません。今世耕委員の仰せになつたようなことは、これは法案で取締ることはできないのであります。これは国民と相まつて私は別個の方法でもつてこれに対処して行くよりほかに方法はないと思います。これはどうぞ世耕委員も十分に御考慮を願いたいと考えます。
  91. 世耕弘一

    世耕委員 私は議会人でありますから、その点をよく考慮いたしましたからお尋ねいたしたのですが、この法律案はそういう点から実は穴だらけです。これはもつと巧妙な作戰が行われるであろうということは想像できます。その巧妙な作戰が行われるとすれば、こんなものはむしろこけおどしになるのではないか、何も骨折つてやる必要はないじやないかということになるのです。吉河さんからきのうも御説明がありましたように、作戰が、その計画が非常に巧妙になつて来た。巧妙なら巧妙のようにやはりこちらには法律をつくつて行かなければ穴だらけではしかたがない。小さい魚をとるときはやはり小さい魚の網が必要だ。大きな魚をとるときは大きな網が必要であろうと私は思う。これでは抜け穴だらけだ。共産主義思想を持つ連中はなかなか有能な士が多くて巧妙に裏をかいて来る。その裏をどうして防止するかということの考慮の余地がなければならぬ。ことにそういう場合に、ただちに論じられるのは憲法の問題を持ち出して来る。そういう連中は人権蹂躙の問題を持ち出してあなた方にたてついて来るでしよう。さような場合に、一切合財さような議論や難点を突破してなお憲法を擁護しながら人権をりつぱに確立して行くという行き方が、この法案の中にでも現われて来なければならぬ。それはいかなる法律と兼ね合つてここに完璧を期すかということをあなたにお尋ねしたのです。それはいずれ適当な方法によつてとか、あるいは私にも協力しろというふうなお話もありましたけれども、私は日本人として協力することにはやぶさかでないのでありますが、当局がこの点について特に考慮を拂つてなお善処していただきたいということをお願いして最後の一点だけで終ります。  昨日も法務総裁のお話に対して一言つけ加えておいたのでありますが、人権蹂躙の問題が世上やかましいのだが、実は人権蹂躙は民間人同士の人権蹂躙じやなくして、官憲が民間人を圧迫し、あるいは人権を蹂躙するということが日本の普通の常識であります。かような点から見て、特に今後はかようなことのないように文化国家建設の前提として特にこの人権を尊重していただきたいということ、なおそれに加味いたしまして、いわゆる納税という建前から法律をたてにとつて経済秩序や各個人々々の経済生活を無視して、一様に税務官吏が徴税法に基かざるほかの方法をもつて横暴に人権を蹂躙している傾向が非常に多いのです。枚挙にいとまがないというていいのであります。私はこの機会にこういう点も特に根絶するように協力していただきたいこと、もう一つはさような方面が結局原因をなして、暴力革命の一つの温床になるということを特に力説して私の総括質問を終らしていただきます。
  92. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 佐竹晴記君。
  93. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 第一に、破壞活動防止法を提出いたします根拠について承りたいと思います。この点はすでに前の委員から論ぜられたのでありますけれども、満足をすることができませんので、さらにお尋ねをいたしておきたいと存じます。  本法案を提出するについては、政府としては明白にして危險な事態が現在存在すること、また現行法規では、これを取締ることが絶対に不可能であること、これを立証する義務があると考えます。米国においても、スミス法、マツカラン法等の審議にあたつて、真剣にこの点の討議が行われております。  まず第一に、明白にして危險な事態が現在存在するかどうかという点でありますが、吉河特審局長は、昨日資料に基いて、破壞活動の大要、事件数、破壞行為手段、用具、攻撃目標、闘争の状況等を説明なさいましたが、これは抽象的な説明であつて、明白にして危險な事態が現在存在することを証明されたものとはいうことはできません。次いで政治的、組織的な軍事行動、武裝蜂起等、暴力革命の企図を明らかにいたしました不穏文書の存在を提示されましたが、これはいかなる団体の組織活動に関するものであるかを、明らかにせられなかつたのであります。さらにまた個々の暴力的活動の事例をあげられたが、これもまたいかなる団体の行動であるかを明らかにいたしませず、かつ継続的に反復して将来さらに団体活動として暴力的破壞活動を行う明らかなおそれのあることを認むるに足る根拠は、何らこれを示されなかつたのであります。特審局長の説明は、全体として何々と伝えるとか、何々が結成されたと思われるとか、何々と疑われるというふうに、主観的推断をほしいままにいたしまして、かつ、「こうした破壞活動は共産党の活動と見るか」との問いに対し、「極力調査研究中であるが、まだ結論に達していない」旨をお答えになりました。よつてその責任の帰着点を明確にされなかつたのであります。この程度では、私どもはとうてい満足するわけには参りません。米国におけるマツカラン法の審議等においては、具体的にしかも明白に現在危險の存在いたしておりますことを、明確にする質疑応答が行われておるのであります。よつて局長の説明では満足いたしがたいのでありますから、この際法務総裁よりこの法案を提出せざるを得なかつた明白にして危險な事態が現に存することを、端的に明示されたいと思います。
  94. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは逐條審議の際に申し上げたいと思いますが、佐竹委員も御承知の通り、全国各所において、あるいは税務署の燒打ち、警察署に対する襲撃、その他不祥事件がしばしば起つておることは、明白なる事実であります。しこうしてその行いつつある人間、また行つた人間が、どういう党派に属しておる人間であるかということも、明白であるのであります。また昨朝お示ししました各文書によりましても、相当治安の面から見て明白かつ現実的な面が現われておると私は考えております。しこうして、さきに局長が、これは日本共産党の関係があるかどうかという問いに対して、いまだ確証は得ていない、こういうことも、これも私は事実であると考えます。しかしこの法案目的とするところは、いかなる団体にしろ、さような暴力的破壞活動を行わんとするものを規制するものでありまするから、的確にこの団体がということが明らかにならずとも、某団体、疑うべき団体が、明白かつ危險な行動に出る危險があるんだということを明らかにすれば、私は御了承を得られるものだと考えておるのであります。前もつて申し上げました通りに、現在各地におけるところの不穏な行動と、昨日提示いたしました各種の不穏文書とを綜合考覈いたしますれば、およそ現実的な危險が差迫つておるということは、御了承になるものと、私はこう考えております。
  95. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 病源をつくことなしに、病気をなほすことはできません。どういうことかわからぬが、皮膚にぶつぶつできものが出たという、その現われた現象のみを見て、それに薬を塗つただけで病源を断つわけには参りません。私どもはその根源をなす団体がいかなるものであるかということについては、政府ははつきりこれを握つておると考えます。しかしおつしやらなければ何か理由があるでございましようから、後日これをただすことにいたしまして、さらにこの現実の危險ということは、これのみではないと思います。一昨日法務総裁は、鍛冶委員質問に対して、暴力的破壞活動は国民生活の安定を欠くことから来るもののあることは認めるが、それ以外にも外部から来る原因のあることを認めなければならぬ旨をお答えになりました。これは、本問題は重なる国内問題にとどまらず、自由、共産の二大陣営の対立という逼迫せる世界情勢と一連の関係にある国際的侵略の素質を有する破壞活動のあることを肯定されたものと思われます。日米安全保障條約について見ても、「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため」という規定がございまして、外部よりの影響で内乱騒擾の起ることが、すでに政府提案の法律によつて想定されております。日本政府といたしましても、日米安全保障條約の国内版をつくろうとする意図のもとに、一生懸命御検討なさつておりましたこともよくわかります。かように考えて参りますときに、日本の治定に対する国際的侵略から来る不安は、本案審議に当つてまことに重要なる関係であると存じます。よつてこの外部から来るところの明白にして危險な事態がどういつたものであるか、これを具体的に明白にされたいと考えます。
  96. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 詳細な点につきましては、後日さらに資料をまとめて御報告いたしたいと思いまするが、外国からの各種の影響がありまして、わが国内におきまして、現実にかような破壞的な団体が動くという場合におきまして、この破壞的団体に視制を加えるというのが、本法案建前になつておるわけであります。
  97. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 国際的侵略から来る不安については、後日とおつしやいますから、他日を期して承ることにいたしましよう。  この法案の提案理由には「平和條約の効力の発生後の事態にかんがみ、」とございますが、條約の効力発生前と発生後との間に、治安の実情にいかなる変化を生じ、またその取締り法規にどのような相違を来すものであるか。この問題を明らかにされたいと思います。そのうち、まず平和條約発効の前とあととで、治安の現状にいかなる変化を来すものであるか。しかもそれは予測でなしに、現に存する明白なる危險事態について、一点の疑いを入るる余地のないまでにここに明白にされんことを望みます。
  98. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 御質問にお答えします。講和條約が効力を発生したあかつきにおきましては、国内の治安はむろんわれわれ国民の力によつて守られなければならないと考えるわけであります。従いまして、これに必要な所要の法的措置を講じなければならないと考える次第でありまして、これがこの法案を提出した理由であります。
  99. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 問いに対して何のお答えもありませんことは、まことに残念であります。講和條約の効力の発生前と発生後とにおいて、治安の状態にいかなる相違を来すものというお見通しであるか。これはお答えになれなければ後日承りますが、それだけのことはお答えになれぬことはなかろうと思います。
  100. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 昨日も御説明申し上げました通り、現下の治安事態、特に暴力主義的破壞活動はますます激化する徴候を持つというふうに考えて、これに対処したいと考えておるわけでございます。
  101. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 お尋ねしようとするのは、講和條約を中心にしての問題であります。提案理由の説明書に、「講和條約の効力発生後の事態にかんがみ、」とあるから、講和條約発生後においていかなる事態が生ずるか。その効力発生前は一体どのような状態であつたのか。発生後にはどうなるのか。この提案理由の説明の内容を承りたいのである。
  102. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答え申し上げます。講和條約の効力発生前におきましては、わが国は占領軍の管理下に置かれておるわけでありまして、占領軍日本管理の必要から各種の指令を出され、また要求をされて、各種の法令が整備されておるのでありますが、これらの法令のうち、日本国内の治安確保に役立つている各種の法令があるのでございますが、これが條約の効力発生と同時に早晩失効されなければならないという事態に立ち至るのであります。その後におきましては、あくまで国内法をもつてこの治安に当らなければならない。特に日本の現在の国内法をもつてしましては、暴力主義的破壞活動を行う破壞的団体の危險に対しましては、何らの規制を加えることもできないという事態であります。これがこの法案を提出した理由であります。
  103. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 現在、しからばいかなる取締り法規があつて、それから占領政策のためにいかなる政令その他のものが出ていて、この状態においては治安を押えられておるが、発効後においてはどれどれの法規がはずされて、いかなる危險が出るかということを明らかにしなければ、これにとつてかわる破壞活動防止法の必要というものがどのように生れて来るかということを判断することができません。よつて講和発効後における取締り法規の状態と、その以前との関係の比較をここに承りたいと考えます。
  104. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 御質問にお答えします。この法案は、占領軍の管理法令をそのまま移そうという建前で立案されたものではありません。あくまで日本憲法のもとにおきまして必要最小限度の治安立法をしたわけでございますが、占領軍の管理法令といたしましては、団体等規正令、並びに公職追放令、占領目的阻害行為処罰令、それから占領軍指令といたしましては「アカハタ、」後継紙、同類紙の無期限発行停止の指令というものが主なるものであります。
  105. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 次いで第二に承りたいのは、これは法務総裁に承りたいと存じますが、現行法では絶対に取締ることが不可能であるかどうか。現行法では絶対に不可能であるというためには、現在の司法及び警察の機能と運営とを刷新し、刑法及びその他の現行法規を百パーセント活用いたしましても取締りができないということでなければなりません。はたしてそうであるかどうか。私どもの考えるところによれば、先ほどこの点世耕君も言つておりましたが、私どもは、建設的意見といたしまして、こうすれば、別にこういつた法案を出さぬでも、講和後の治安を確保するに十分ではないかと考える点は、まず治安撹乱行為の実情を一般に知らしめる。破壞行為を非難する世論を喚起する。次いで労組、青年団、婦人団体その他による民間自警の意識を高揚して、部落、学校、職場等におけるところの防衛組織を促進する。刑法、刑訴法等の改正でこれを補う。司法官憲の志気を刷新して、あくまでも手続法の民主的運営を維持しつつ、警察機構及び活動を有効かつ能率的なものにならしめる。この方法を講ずれば、われわれの考えるところでは、治安を確保するには決して不可能ではないと存じますが、これでも絶対に不可能であると言われるのかどうか、これを法務総裁から承りたいと存じます。
  106. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。刑法をもつてこれを押えることができないのかどうかという点でありまするが、御承知の通り刑法は個人に対する犯罪の処罰規定であります。本法案目的とするところは、いわゆる暴力的破壞活動を行い、行わんとするところの団体を規制して行こうとするものであります。いわゆる行政措置によつてこれらの団体を規制して行く。なお一面において刑法ではまかない得ない点を補整したのであります。それは主たる点は扇動であります。あるいは内乱を扇動し、あるいは騒擾を扇動し、放火を扇動し、殺人を扇動するというような、ごく危險中の危險な行為を補整いたした次第であります。刑法では特に団体の規制ということはまかない得ない、その点をわれわれはこの法案によつて補わんとする次第であります。  なおただいまこれを扱うについていろいろ御意見があつたのであります。治安の確保の点についての御注意などがあつたのでありますが、私はごもつともだと思います。私思うのに、日本の治安の確保は、日本人がみずからの手によつて守るという意識が一番必要であろうと考えております。それについては、各労組の中においても、各部落の中においても、各学校の中においても、いずれも自分らの手によつて日本の治安を守ろうという意識の高揚に努めたいと考えております。ことに今自警団の組織ということを仰せになりましたが、私はしごく賛成であります。今後の日本の治安は外国の手によるべきものではない。日本人は日本人みずからの手によつてつて行くのだ、この精神と態勢とをぜひとも整えて行きたいと考えるのであります。佐竹君の仰せになりましたそれらの点については、私は双手をあげて賛成いたします。どうか佐竹君もその点について大いに御盡力をこの機会にお願いたしたいと考えます。
  107. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 刑法における扇動の問題については、逐條審議の際に私は掘り下げて伺いたいと存じますが、かくのごとき扇動行為等は、ただいま私の申し上げました建設意見を十分活用することによつて自然に押えることができる。たとえば共産党なら共産党が扇動行為による政治運動をするならば、政治運動には政治運動をもつて対抗すればいい。向うが中核自衛隊をつくるならば、こちらにもまた防衛自衛隊をつくればいいのだ。何も政府が、はなはだ怪しげな扇動などという文字を用いて、権力をもつて押えようなどとしなくてもよいではないかと私は思つておるのであります。しかしこれはあとでまたゆつくり承ることにいたしまして、ともかく今回の破防法をつくることによつて、講和後における治安態勢が確立されるのだというお見通しのもとにこの法案をお出しになつておるようであります。それなら、今回の法案が成立いたしましたならば、一体どれだけのことが期待できるでありましよう。占領政策中は、日本の治安対策の上に米軍が控えていてその全きを得ましたことは、先ほどお尋ねいたしまして、占領政策中における法規関係を明らかにしていただきましたことでわかります。昭和二十二年の二月一日のストに際しては、そのゼネスと禁止に関するマツカーサー元帥の指令、二十五年には「アカハタ」発刊停止に関するマツカーサー書簡、同年、集会デモ制限に関するウイロビー氏の書簡等でやつて参りましたが、今後はそれは一切なくなつてしまいましよう。そういつたなくなるものを補うのに今回の破防法が十分であると考えられましようか、この点を承りたい。
  108. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答えいたします。講和後の治安確保に寄與貢献するために立案されたものでありまして、この法案のみをもつて治安確保ができるとは考えておりません。
  109. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それはまつたく言いのがれであります。本法案は、後でも申し上げますごとく、団規法からだんだん改正されてここに至つている。これが講和後における治安を維持する根幹法であることは間違いない。よつて私は、この法律をつくることによつていかなるものをもたらすかということをわれわれに懇切丁寧に示されません限り、私どもはこれに賛成するに由がない。一体政府当局のねらつているものは、一言にして言えば、おそらく地下日共でしよう。しかし地下へもぐつている日共をこの破壞活動防止法によつて取締ることができましようか。おそらくこの法律ができましても、地下日共の人々をただ一人でもここに連れて来ることはできぬでしよう。この法律の目標とするところの地下日共を何ら取締ることができないで、かえつて先ほど言うところの扇動などという怪しげな文字を用いて、善良なる一般国民を苦しめるといつたような結果になることを一般は憂えておる。この法律をつくることによつて一体どれだけの効果をもたらし、そうして目標とするところの目的をどれだけ達することができるか。これは必ず当局といたしましてこの委員会に明確になされなければならぬ事項であると私は存じます。いま一応この点を承りたい。
  110. 木村篤太郎

    木村国務大臣 佐竹委員の御質問の要旨は、この法案をもつてしては、地下にもぐつた日共を捕捉することができないであろうということであります。われわれの方は、もちろん、地下の日共を完全に捕捉できるかできないかということは、この法案実施をまたなければわからぬと考えております。要はこの法案趣旨であります。繰返して申し述べたごとく、いやしくも暴力をもつて日本の基本的秩序を乱さんとするいかなる団体をもこれにおいて捕捉しようとするのであります。従つてわれわれの目的とすることは、この法案によつて日本の治安を維持しようとするのでありまして、一日共を対象とするものではないのであります。しかし今日暴力的破壞活動を一番行いつつあるのは何人であるかということを申し上げれば、日本共産党に属する人たちであります。今日われわれのところに集まつた資料によりまして、破壞活動を行われている事実、これは何人によつて行わているかということは、大よそ想像がつくのであります。そこでこの法案によつてそういうものを取締られるかどうかいうことは、われわれは確信をもつて取締り得るものと考えているのであります。しかしこれは後日のことでありますから、実施のあかつきをみなければわかりませんが、われわれはそういう確信を持つている。さように考えておるのであります。しこうしてこの法案によつて善良なる者がややともすると迷惑をこうむるじやないかという佐竹委員の仰せでありますが、この法案趣旨とするところは、今申し上げましたような点にほかならないのでありまして、いやしくも善良な国民の活動においてはいささかもさような憂いのないように私は処置をして行く考えであります。御懸念の点については、十分にあなたの御意見を伺つて逐條審議の際に申し上げたい、こう考えております。
  111. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 本案で最も問題となるのは、一部少数の団体の暴力主義的破壞活動を取締ろうとするために、一般的な言論の自由や組合の活動を抑圧するような結果になるのではないかという点であります。政府は昔の彈圧法とは違うんだ、今回の法案では全然そのような心配がない、かように語をきわめて説明をなさつておりますけれども、依然としてその危惧の念を解消し得ないのは何ゆえでありましようか。政府当局の主観はどうありましようとも、本案の條文そのものの客観的な内容がいかようにでも擴張解釈のできる余地があつて憲法の保障する基本的人権侵害するおそれが十分に現われておるからであります。今ここに一、二の例をもつてお尋ねを申し上げてみましよう。  まず本案の第三條第一項一号の内乱罪についてこれを見まするのに、内乱罪には朝憲紊乱となつておる。そうして先ほどの特審局長のお答えによると、朝憲紊乱とは国家統治の基本的組織を破壞することにある。従つて單に政府打倒とかいつたようなことは含まれておらず、制度そのものの廃止をいうのであるということを御説明になりました。それなら天皇制廃止を叫び、国会の二院制度廃止を叫んで演説会をやるといたします。時たまたまこれに反対する者があつて乱闘を生じたといたします。しこうして暴動となつたといたします。本案第三條に該当しないでありましようか。
  112. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お尋ねにお答えいたします。御質問のように、偶発的な事態として騒擾が起きたというような場合におきましては、団体の活動とは認められませんので、該当しないと存じます。
  113. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 本案を見てみますのに、偶然に起つたことを処罰しないという明確な文字は一字も使つておりません。偶発することであろうが、あらかじめ計画したことであろうが、いやしくも内乱なり朝憲紊乱に相当する事項について破壞的活動、すなわち暴力行動が起つたときはこれに該当すると書いてある。特審局議長がいかにおつしやいましようとも、検事がこれを起訴いたしましたならば、おそらく裁判所はあなたの今日御説明になつた独自の見解に反して判決を下すでありましよう。従つて裁判にかけられるおそれがないとどうしていわれましようか。かようなおそれがあるがごときかような法案を出すことによつて国民一般的な言論と正常なる組合運動が押えられるというその不安を国民は除去されたいと叫んでおる。内乱罪についてはこの程度にいたしまして、それなら第三條第一項二号の「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため、左に掲げる行為の一をなすこと。イ、刑法第百六條(騒擾)に規定する行為」リ、警察官に対する公務執行妨害に関する行為、又、右行為の「予備、陰謀、教唆、又はせん動をなすこと。」とありますが、市民が電気料値上げ反対の市民大会を開きます。ところが警官が不当にこれを押えようといたします。よつて市民は断固これと抗争いたしました。よつて警察官に反抗したというので、第三條一項二号に書いてある公務執行妨害と見られたといたします。また新聞その他の言論機関が値上げ絶対反対を強調したといたします。そうすると騒擾ないし扇動行為といたしまして、破壞活動と見られるおそれはないでありましようか。すなわち第三條一項二号の「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又は反対するため、」に堂々と演説会を開いておる。そうしていけないというものに対してこちらが対抗した。そうしたら騒擾を起した。この会合は偶発的なものでありません。みずから計画したものです。たとえば私どもの政党が主催のもとに、電気料値上げ絶対反対の旗を掲げてやつておる。警官がこれにやつて来て解散を命じようとした。何をするか不都合なということで小ぜり合いになつた。そして暴動となりあるいは騒擾となつた。こういつたような問題がことごとく破壞活動防止法に触れる事案といたしまして、重く罰せられるような結果になるおそれはないでありましようか。
  114. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 御説明の場合につきまして一々詳細にお答えできませんので、各條の際にあらためていろいろお答えいたしたいと存じますが、第三條の第一項二の立て方は、御承知の通り刑法規定する騒擾、暴行、殺人その他の行為政治上の目的として行うこと並びに政治上の目的をもつてこれらの行為を予備、陰謀、教唆、扇動する行為というものを規定しておるわけであります。これが団体の活動として行われる場合にその団体を規制するという建前になつておりまして、団体の活動として行われるためには、役職員なり構成員なりが団体の意思決定に基いて、その意思の実現としてかような行為をするという場合に限られると考えておるわけであります。
  115. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 御答弁によりましても、ただいま私のあげました例は何も問題が起らないという御答弁であつたとは、私は承ることができません。一層危惧の念を深めたのであります。こういつたようなことがもし一般的に破壞活動防止といつたようなことになると、今度は新聞なんかにうつかり電気料金値上げ反対などということも書けなくなるし、政党なんかにおいても、そういつたような演説会などは一切開かれないということになる。私はさらに進んでいま一つつておきたいのは、ストライキにいたしましても、また通常やつておりますメーデー等におきましても、時にこれは暴行化するおそれのありますことは、これは普通皆さんがわかつております。従つてストライキを指導する者、メーデーを指導する者が、時にはある程度騒擾化することあることもこれは予見いたしております。刑法の故意が問題となるといたしますならば、はつきりした故意すなわち認識があるといわなければなりません。暴行がある程度伴うことを承知でストライキを敢行し、メーデーを断行した、そうして政治上の主義政策推進に向つてつたとする、その時起つた暴行も破壞行為だ、こういつたことになると、これではストライキの禁圧となり、メーデーも禁圧されることになるのではないでありましようか、この点も承つておきたいと存じます。
  116. 關之

    ○關政府委員 ただいま具体的な問題に入りましたが、詳細の御説明は逐條のときに申し上げることといたします。まず結論的に電気料金の値上げの問題でございますが、これは法案解釈といたしましては、第三條第二号の「政治上の主義若しくは施策を推進し、」云々とあつて、現在の制度のもとにおける電気料金の値上げはこれに入らないものであると私どもは考えております。  次にお尋ねのような組合その他の問題につきましても、詳細なところは逐条のときに御説明いたしたいと思います。
  117. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 各條審議のときにゆつくり承ることにいたしましよう。  第三に承りたいのは、この法案は、治安維持法的彈圧立法への足がかりとなりはしないか。治安維持法的危險のある立法ではないかという質疑応答は、昨日盛んに行われましたが、私の尋ねたいのはそうでなくして、治安維持法的彈圧立法への足がかりとなりはしないかという点であります。政府は断じてそういうおそれのないことをほめのかしております。ことに今回の法律案では民主的に処理する方法を講じておるから、そのような心配は断じてない旨を答えておりますので、私のこの問いにもおのずから答えたことになりましよう。しかしそれでは満足いたしません。まず歴史的教訓についてわれわれはこれを考察しなければなりません。周知の通り治安維持法の前身は、大正十四年に制定された国体変革または私有財産制度の否認を目的とする結社組織を禁止するもので、共産主義や無政府主義団体の結成を禁止することに重点が置かれておりました。そうしてその刑罰も最高が十年の懲役または禁錮となつてつたのであります。ところがその後昭和三年及び十六年の二回にわたつて改正されまして、刑罰の対象であるところの行為の範囲も極端に擴大されて、今回の法案で心配されておりますところの扇動、宣伝などということをも含めて罰することになりました。しこうして刑罰も新たに死刑と無期懲役が加えられ、そうして治安維持法違反事件の公訴は二審制度となり、弁護人も制限され、予防拘禁制度を設けられたのであります。で、今回の破防法を見てみますのに、その立案当時において治安維持法への復活が意図されたことはきわめて歴然たるものであります。事実書き直されること二十数回、名称も、最初は国家公安保障法、次いで、団体等規正法、次いで特別保安法、次いで今回の破防法と、四回もかわつております。しこうしてその内容を見るのに、当初の構想では、憲法の保障する言論、集会、結社、居住の自由等、基本的人権を不当に侵害し、三権分立における行政権の優位、裁判における採証を制限するばかりでなく、罪刑法主義を破壞して、封建的連坐制にまで及んで、きわめて峻烈なものであつたことは、これは否定ができません。しこうしてこの構想を練つたと同じ政党、同じ政府がこの法案を提出し、この立法化をはかつておるのでありますから、破防法はその第一段階であり、情勢次第ではさらに改悪をいたしまして、第二段階に進まないとたれが保障いたしましよう。現に政府部内のある有力者は、このような法律案はどのような讓歩をしても最小限度において一度これを成立せしめなければならぬ。一旦橋頭堡を確保すれば、次の改正は楽なんだとおつしやつておるではありませんか。木村総裁御在任中は心配はないでありましよう。しかし木村総裁がいつまでも総裁の御職務についておられるとは考えられません。心配はその後のことであります。ところがその後のことであるけれども、総裁がここに種をまかれた。他日これが芽を出し、だんだん横に広がつて行かぬとたれが保障いたしましよう。その保障を総裁によつてここに與えられません限り、私どもは安心をいたしましてこの法案に同意をいたすことができない。木村総裁が、自分考えておるから間違いがないといかにおつしやつても、また間違つたら両鬢をそるとおつしやつても、間違つたら割腹するとおつしやつても、それは何の足しにもなりません。少くとも総裁の單なる口の先の言明だけでは何ともなりません。法案の上にその保障、担保が與えられておることが絶対に必要であります。木村総裁は、われわれに対して法を通じていかなる保障を與えられるか、これを承りたい。
  118. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。実はこの法案作成に至るまで、今佐竹委員の仰せになりましたように幾たびか案を練り返しました。その練り返した理由は、私といたしましては、憲法に保障された基本的人権をどこまでも尊重して行くべきであると同時に、危險なる破壞的暴力団体を規制しなければならぬ、このジレンマに陥つておるのであります。そこでわれわれといたしましては、できる限りにおいて基本的人権を尊重しつつ破壞的暴力団体を規制して行く線に沿うて、考慮に考慮を重ねて本法案を作成した次第であります。そこで、佐竹委員のこの法案によつて、あるいは昔の治安維持法の再現を来すものじやないかという御心配の点でありますが、この法案全体の構想といたしましては、全然昔の治安維持法と構想を異にしておるのであります。しかもこの法案運用に対しまして、われわれ最も留意いたしましたのは、佐竹委員の仰せになりましたこの保障の点であります。何によつて保障するか、そこで考えたのはこの調査と、そうしてこれの請求の機関、これを決定すべき機関を全然分離した点であります。いわゆる権力の集中を避けたのであります。もつとも公安調査庁は法務府の外局であり、また決定すべき委員会も法務府の外局でありまするが、この委員会というものは委員会設置法第三條によりましてまつた独立の意思をもつて決定することになつております。何人の制肘も受けず何人にも影響せられずに、自由の立場において自由な見地のもとにおいてこれを決定させることにしております。これがこの法案の最も強いねらいであると私は思います。しかも前もつて申し上げました通り、この決定機関でありまする委員会を構成すべき委員は、国会において承語を受けてこれを選任する、しかもその委員たちに対しては各層からりつばな人材を求める、この点において十分の考慮を拂つたのであります。これから見ましても、この法案がいかに民主的に構想されておるかということが、佐竹委員においても十分御了解願えるものだと私は考えます。
  119. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 了解いたしかねます。但しあとでまたゆつくり承ることにいたしまして、時間がありませんから、第四に、一体本法案は何を目標としたものであるか。政府は本法案暴力的破壞活動を取締つて、思想取締りを目的とするものでも何でもない、また一般的言論や組合活動を抑圧する考えは毛頭ない、かように言明されました。しかし今日までの政府の説明や、提出なされました資料を総合すれば、共産党活動を目標としておることはまことに明白であります。もしそうならば解釈いかんによつて運営に手心の余地を残すような漠然たる一般的立法を廃しまして、日共の地下組織を対象とする情報捜査機関の強化等を中心とする非日活動排除の取締法をつくればいいのだ。そうすればはつきりいたしまして、一般言論界や労働組合等が正常な言論や組合運動を彈圧されるおそれがあるなどという懸念は一掃されてしまうでありましよう。ところが政府はその態度に出ずに、あえて曖昧模糊たる文字を用い、また取締り目標を明示しないために無用の危惧をここに巻き起しておるというのは遺憾であります。政府は近時重要なる問題についてはいろいろとぼやかし、何かしらごまかそうといたしておりますことを否定できないと思う。たとえば日陰者の軍隊であるところの警察予備隊をつくつておいて、そうしてこれが保安隊に強化して行こうとしているのにそれは戰力ではないと言う。また、原子爆彈に対抗するようなものでなければ戰力ではないと弁疏し、総理大臣のごときは、参議院において、自衛のための再軍備は憲法にいう戰力ではないなどど言つて、ひどく逆襲をされて遂に取消すなど、時代の移りかわりに従つていろいろと言いまわして糊塗しようとする状態がまことによく現われております。今回の法案でもこれと同様のきらいがあります。共産党対策であるならば共産党対策であるとし、何がゆえに真正面から堂々と取組んで来られないか、これを総裁より承りたい。
  120. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。この破壞活動防止法案なるものは、むろん共産党それ自体を目的としておるものではないのであります。共産党自体が破壞活動を行つており、また行わんとする確証がありますれば、むろんこの法案の対象となることは言うをまたないのであります。しかしこれは單に共産党だけの問題ではありません。いずれの団体といえどもかような国家治安を乱す団体におきましては、この法案の対象となるのであります。そこで、ただいま佐竹委員から、何がゆえに日本共産党を非合法化しないかというお尋ねでますありるが、(「違う違う」と呼ぶ者あり)政府におきましても、日本共産党の非合法化につきましては、従来から十分慎重に研究を続けておつた次第であります。これを早く非合法化しないか、すればいいじやないとかいう民間の声もしばしば聞くのでありました。しかしながら、終戰後公党として認められた政治団体を解散するというようなことは、国家内外にも重大な影響をもたらす問題でありまするから、政府といたしましては、まだその結論に到達いたしておらないのであります。従いましてかような立法をなすことはただいまのところは考えておりません。政府といたしましては、もつぱら、破壞活動防止法によりましてすべての治安問題を一応処理して行きたいと考えております。
  121. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 総裁が退席されましたので、私があとから追つかけて言うがごとく見られるのははなはだ好ましくありませんけれども、ただいま法務総裁は私の言葉をたいへん誤解なさつております。私は、共産党について、非合法化することはやぼの骨頂であると思つております。先ほど私が申し上げたのは、地下日共に対する情報捜査機関等の強化を中心とする、非日活動排除のため何か適当な対策を講ずべきであるということをいつたのである。合法政党として動いているものを押える道は何もありませんし、また合法政党として置いておくところに、地下にもぐらないところの民主主義的な政治の運営というものがあり得るのであります。むしろ私どもはこれをこいねがうている。私の言わんと欲するところのものは、政府は、再軍備を着々とやりながら、おれはやつておらぬなどとへんなごまかしを言うてみたり、この法案が共産党対策であるのにかかわらず、共産党は何ら対象とするものでないかのごとき凉しい顔をして、実はその規制をしようとしている。この法律ができてごらんなさい、おそらく共産党解散と出る腹が政府にありはしないかと見ざるを得ない。従つて、もしそうだとするならば、それを正々堂々と打つて出して来るがいい。私どもといたしましても、それならばそれで、正面から堂々と論ずることができる。美名に隠れて共産党対策でないとおつしやいますので、攻撃目標がはずれて、こちらが攻撃いたしましても、すぐ別のことを答えて逃げまわつているという実情では、ほんとうのこの法案の審議ができないという点をついたのであります。私は法務総裁が退席されましたので、なおあと三点ばかりお聞きしたいと思つておりましたが、項目だけをあげまして、もし事務当局からお答えできますならば、これを承つておいて、あと法務総裁の御出席のときに、適当にお尋ねをすることにいたします。  第五点として聞きたい点は、行政措置による団体の規則、これは権利の濫用になるおそれがあるのみならず、裁判所にやらせるべきであり、行政府の専権としてこれをふるまうことは、不当であるという点、この救済に担保のないという点を、別途の角度より私は聞いてみたいと存じておりましたが、この点は省略し、第六には、治安確保のためには、ただに本法案だけではとても目的を達し得られないことは、これは事務当局御説明の通りであります。しかしこの破防法が根幹の法律であることは間違いない。これと一連の関係にありますのは、集団示威取締法、ゼネスト禁止法、プレスコードの立法化等であろうと存じます。一体これは政府といたしましては、どうなさるお考えでありましようか。
  122. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答えします。ただいま御質問になりましたうち、事務当局としてお答えのできる点についてだけ、簡單にお答えしまして、その余の問題につきましては、総裁に申し上げて後日の機会に讓りたいと考えております。  この法案におきましては、破壞的な団体に対する規制は、行政権の作用をもつて行われる保安的な措置であつて、あくまでそれは行政作用をもつて行われるのを妥当とするという建前になつております。ただ行政措置として行われる場合におきましても、その手続はあくまで適正妥当なものでなければならない、あくまで人権を十分に尊重した手続、機関によつて運営されなければならないという立場をとつております。治安の問題は、行政府がその責任を負担する立場にありますので、この規制は行政府によつて行われる、ただいま申したような手続によつて行われることが妥当である、この処分につきまして、裁判所がその違法の有無を審査するということが、行政権と裁判権との妥当な組合せではなかろうかと考える次第であります。治安立法のその他の点につきましては、私お答えする立場ではございませんので、法務総裁にお伝えいたしまして、後日御答弁申し上げたいと考えております。
  123. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 第七点として最後に、治安確保のための行政機構改革の問題を承りたいと思います。  おそらくこれは総裁がおいでにならぬと、質問をいたしましても目的を達し得ないかと存じますので、時間も来ましたから、私は治安関係の行政機構改革の問題をお尋ねいたしたいという点だけを総裁にお伝えを願いまして、質問を打切ります。
  124. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 適当な機会に法務総裁より答弁を願います。  これをもつて暫時休憩し、午後二時半より再開いたします。     午後一時四十四分休憩      ————◇—————     午後二時五十六分開議
  125. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  まずこの際、政府委員より破壞活動防止法案の逐條の説明を聴取いたします。  なお時間の都合上、各紊文は省略して、その紊文に対する注釈をしていただきたい、かように考えます。關政府委。
  126. 關之

    ○關政府委員 本法案の逐條について御説明いたしたいと思います。  まず第一章から申し上げます。第一章は総則の規定でありまして、この法案目的、運用、暴力主義的破壞活動等の基本の観念について定義を與えたものであります。  第一條は、この法律目的を掲げたのであります。この法律目的は、究極するところは、公共の安全の確保に寄與することであります。そのために、団体の活動として暴力主義的破壞活動を行つた団体に対し必要な規制措置を定めるとともに、かような破壞活動に対する刑罰規定を補整することにあるのであります。従つてこの法案規定はこれを二つにわけることができるのであります。すなわち一つは、暴力主義的破壞活動を行つた団体、すなわち破壞的団体に対する必要な規制措置に関する規定であつて、これは行政の処分として行われるものでありまして、その法的の性格は 一つの保安処分であると考えるのであります。法案の第一章から第五章までがこれに関する規定であります。二つは、かかる暴力主義的破壞活動に関する現行刑罰規定を補整した規定であります。これは第六章罰則の一部がこれに当るのであります。  もとより公共の安全は、この法案だけで確保されるものではありません。さような意味合いにおいて、この法案では「公共の安全の確保に寄與する」と規定しておるわけであります。第一條では以上の御説明にとどめることといたします。  次には第二條であります。第二條は、この法案の規制の基準を定めたものであります。基準は、破壞的団体の規制及び規制のための調査についてであります。第一項は、個々の国民の観点から、第二項は団体の観点から、規制及び規制のための調査の基準を定め、その本来の目的の範囲を逸脱しないように規定いたしたものであります。  次は第三條に移ります。第三條は、第一項にこの法案暴力主義的破壞活動、第二項にこの法案の団体の定義を規定いたしたものであります。この暴力主義的破壞活動と団体の観念は、この法案の基礎観念でありまして、これによつてこの法案の性格が決定されるのであります。すなわち法案は、団体が暴力主義的破壞活動をし、将来さらにこれを行うおそれのある場合に、その団体に対する必要の規制措置をなすとともに、かかる破壞活動に関する現行刑罰法令を補整するものでありますから、暴力主義的破壞活動を行つた団体及び暴力主義的破壞活動は、実にこの法案の取締りの対象にほかならないのであります、  まず暴力主義的破壞活動の観念でありますが、注意すべきは、これは純然たる行政上の観念でありまして、刑事法上の観念ではありません。すなわちそれは、破壞的団体の規制という行政処分の原因となる事実であります。さて、この暴力主義的破壞活動の観念を定めるに当りましては、次のような諸点に考慮を拂つたのであります、一つは、まず今日行われ、かつ将来行われることを予想される暴力手段とする破壞活動を取締るに足るものでなければならないことであります。前述のごとく国内には、今日団体組織によつて暴力手段として、国家社会の基本秩序を破壞し去ろうとする疑いのある恐るべき危險な活動が、広汎かつ秘密に行われておりますが、この種の活動は、おのずから広い意味において政治上の目的を持つものであります。そこで暴力主義的破壞活動の観念の焦点は、もつぱらかような危險中の危險な政治的破壞活動のみに集中することといたしたのであります。第二には、すべての政治的信條が法の前に平等であることは、憲法によつて保障されているところでありまするから、特定の主義、信條等を特別に扱うというがごときこととならないように注意し、もつぱら具体的な外面的行動をのみ基準とすることに意を拂つたわけであります。第三には、観念の明確を期し、擴張濫用される危險を避けるため、この法案において新たな用語を用いることを避け、原則として現行刑法等の規定を援用するとともに、法令慣用語を用いることにいたしたのであります。第四には、暴力主義的破壞活動の中に危險な言論、出版等の活動を取入れることとなるのでありますが、嚴に必要最少限度のものにとどめるように注意いたしたことであります。かような諸点に考慮を拂い、暴力主義的破壞活動の観念は、本條第一項に掲げられるごとく定めたのであります。これによつて明らかなごとく、暴力主義的破壞活動の内容はすべて政治上の目的を持つた活動であつて、しかも刑法等の中において最も悪質なる罪として規定されているものを基本といたしまして、これに所要の補整を加えたものであつて、その補整した部分は、一号のロ及び二号のヌの中に規定されておるのであります。  かようにして、破壞的団体の規制という行政処分の原因たる事実となる暴力主義的破壞活動の観念を定めたのでありますが、かかる活動は、もとより現実には団体の役職員または構成員である個人によつて行われるのでありまして、その行為の危險性から見て、その個人の刑事責任を問う必要のあることはいうまでもないところであります。しかして前述の如く暴力主義的破壞活動の観念の基本には、刑法等の規定を援用してありますから、その部分については、行為者は当然に犯罪として処断されることになるのであります。しかしてこの基本規定を補整した分については、現行刑罰法令に処罰規定が設けられてありませんから、新たにこの法案において、所要の処罰規定を補整することといたしたのであります。  本條の第二項は、この法案の団体の定義を規定したのであります。ここで注意すべきは、この規定に該当する限り、この法案においては団体としてこれを取扱うものでありまして、法人格の有無や、名称のいかん等にはかかわらないことであります。  次に、第二章の説明に入ります。  第二章は、破壞的団体の規制の内容、種類、條件及び効果等を規定しているのであります。  第四條は、破壞的団体の規制のうち、団体活動の制限処分について規定しているのであります。この法案において、破壞的団体の規制という行政処分を定めたのは、現下の破壞活動が団体組織を基礎として展開されている疑いが深いが、この危險を防止するには、單に個人に刑罰を科することのみをもつては有効適切でないから、ここにこの法案によつて、行政処分により破壞的団体を規制することを定めたのであります。この法案においての破壞的団体の規制には、団体の活動の制限と団体の解散の指定との二つがあつて、前者が第四條に掲げられ、後者は第六條に掲げられているのであります。  本條第一項は、団体活動の制限処分の内容と條件を定めているのであります。條件は、団体の活動として暴力主義的破壞活動を行つた団体がここに存在しまして、その当該団体が継続または反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壞活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるということであります。もとよりその処分は、そのおそれを除去するに必要かつ相当な限度を越えてはならないことになつております。ここで注意すべきは、明らかなおそれとは、明らかにそのような破壞活動をする可能性があるということであります。かように規制の條件は、ある団体が過去において暴力主義的破壞活動をなし、継続または反覆して将来さらに同様な活動をなす明らかな可能性があるということであります。  第一項の各号は、団体活動の制限処分の内容を定めているのであります。これは、基本的な考え方といたしまして、暴力主義的破壞活動の行われる基盤を除去して、このような活動が行われないようにするということでありまして、その範囲は、各号に明確に定められてあります。また暴力主義的破壞活動のそれぞれの内容は、第三條第一項のいずれの行為であつてもさしつかえないものであります。  この処分は、あとで申し上げるごとく、公安審査委員会の決定によつて行われるものでありまして、それは当該団体に対して命令されるのであります。すなわち命令を受ける主体は、役職員等ではなく、当該団体であるわけであります。  本條第二項は、第一項の処分の履行を確保するために設けた規定であります。前述のごとく、規制処分の命令は、団体に対して行われるものであつて、直接その処分が当該団体の役職員または構成員を拘束するものであるかいなかについては、法理上必ずしも結論が一定していないのでありますから、特に第二項を設け、第一項の処分が効力を生じた後は、何人も、当該団体の役職員または構成員として、その処分の趣旨に反する行為はしてはならないと明確に規定して、処分の履行を確保したのであります。但し、第二項但書にあるような行為は、当然になし得るところであります。なお、ここで注意すべきは、本條第一項の処分を受けても、団体は、その活動の範囲を縮小して依然として存在を持続していることであります。  第五條は脱法行為を禁止いたしたものであります。本條は、前條の処分の履行を確保するために、脱法行為を禁止したものであります。禁止を受ける主体は、当該団体の役職員または構成員でありまして、その主体を団体とせず、その役職員または構成員としたのは、団体の理論が必ずしもいまだ一定されなかつたことを考慮したのであります。  次に第六條について説明いたします。第六條は、当該団体の規制処分のうちの解散の指定を規定したものであります。解散の指定をなし得る條件は、第四條の団体活動の制限処分の條件に加えて、その制限処分によつては、そのおそれを有効に除去することができないと認められる場合に限るということであります。解散は団体に対する最後的処分でありますから、かような慎重な條件を定めたのであります。なおここで注意いたすべきは、本條第一号及び第二号に掲げる以外の暴力主義的破壞活動は、ただそれだけではたとい将来暴力主義的な活動をなす可能性があつても、ただちに解散の指定をなすことはできなく、さらにその団体が団体の活動として暴力主義的破壞活動を行つて第四條第一項の処分を受け、その上さらにこれを行う可能性がある場合にのみ解散の指定をなすことができるとしたのであります。  次に解散の指定という行政処分の性質は、一種の確認的な行為であると考えるのであります。通俗に考えますれば、解散の指定は、解散という表示を当該団体に貼布するだけのことであります。従つてそれからはいかなる効果も発生いたしません。処分の名称は解散とあつて、あたかも団体が解散してしまうようなふうに考えられまするが、そうではないのでありまして、団体が解散して解消するやいなやということは、この法律の問うところではないのであります。  次に第七條について説明いたします。第七條は、団体のためにする行為を禁止したものであります。これは解散の指定があつた場合において、当財団体の役職員または構成員の職務を禁止し、義務を規定したものであります。要するに本條は、団体が解散を指定され、処分の効力を生じた後に当該団体の役職員等は、当該団体のためにするいかなる行為をもしてはならないことを規定したのであります。これは解散の指定の処分のうちに含まれている効力ではなく、本條によつて新たに設定された禁止であるわけであります。解散が団体に対して指定されると、この條文が適用されまして、その役職員等は当該団体のためにはいかなる行為をもしてはならないことになるのであります。しかしてこの当該団体の役職員等の範囲については、当該処分の原因となつた暴力主義的破壞活動が行われた日以後、当該団体の役職員または構成員であつたすべての者に当るわけであります。この構成員、役職員以外の者は本條の直接の受命の主体ではありません。禁止されている行為は当該団体のためにするすべての行為であるが、但書によつて処分の効力に関する訴訟または当該団体の財産もしくは事務の整理に通常されている行為は除外されているわけであります。  解散の指定が効力を生じますと、本條の規定によつて構成員等の行為の禁止が行われますが、それ以外は団体自体が解散し、または解消するやいなやは本條の問うところではないのであります。本條により役職員等の行為の禁止を受けた団体がそこに存在している、かように考えているわけであります。  第八條は、脱法行為を禁止いたしたものであります。  次に第九條について説明いたします。第九條は、解散の指定の処分が訴訟手続によつてその取消しまたは変更を求めることのできないことが確定いたしましたときの団体に関する規定であります。まず第一項は、かかる場合その解散の指定を受けた団体が法人でありますときは、その法人は解散するのであります。これはそれぞれその法人に関する各法令に規定する解散の事由のほかに、新たに一つの解散の事由がつけ加えられたものであります。法人の解散はそれぞれの法令が定めるところによつて行われるわけであります。この法人の解散と第六條の解散とは概念が違つているのでありますから、この点は御注意をしていただきたいのであります。次に解散の指定が確定いたしました場合には、その団体はすみやかに財産の整理をして、これが終了したときはそのてんまつを公安調査庁官に届け出なければならないとしたのであります。この法案においては、財産は国家に没收する等の措置はとらず、当該団体の自主的な処分に一切まかせたのであります。  次には第三章について説明いたします。この第三章は、第二章に規定する破壞的団体の規制についての手続を規定いたしたものであります。  第十條について御説明します、本條は、破壞的団体の規制の処分は、公安調査庁長官から請求があつた場合にのみ行うことを規定したものでありまして、刑事訴訟法上の訴追と同じく、不告不理の原則を明らかにしたものであります。これは規制処分を行う権限を二つにわかち、調査及び処分の請求権を公安調査庁長官に、処分の決定権を公安審査委員会に與えて、これを分離することが権限集中の弊を除去し、民主主義の原則に合致すると考えたからであります。  第十一條について御説明します。本條は、公安調査庁長官が処分の請求をしようとするときは、あらかじめ当該団体の意見弁解を聞き、有利な証拠の提出を求めなければならないのでありますが、その弁明の期日を相手方に通知する手続等を定めたものであります。通知は官報によつて行いまして、公示した日から七日を経過したときに通知があつたものとされるのであります。第三項は、通知書送付の訓示的規定であつて、これを行わなければ通知が行われなかつたとなるものではないのであります。しかし住所または居所が知れておりますときには、第三項によりまして通知をここに届けなければならないわけであります。  第十二條について説明いたします。本條は、前條第一項の通知を受けた団体が、事件について代理人を選任することができるのであります。その代理人は弁護士を初め何人であつてもよろしいのであります。代理人の選任は、公安調査庁長官に届け出ることは要件ではありません。  第十三條について御説明します。本條は、第十一條第一項の通知を受けた団体において公安調査庁の審理官に事実及び証拠につき意見を述べ、有利な証拠を提出できる規定であります。団体側でこれをなし得る者は、その役職員、構成員及び代理人を通じて五人以内といたしました。五人以内といたしましたのは、この程度において十分弁解を盡し得るものと考えたからであります。なおそれらの者の身分については、それぞれそれが真実であることを審理官に立証して確認されなければならないのであります。何となれば、真実であることが適法な審理手続の要件であるからであります。  審理官は、公安調査庁長官によつて公安調査庁の職員の中から指定されるのであります。数については法案は制限しておりませんが、審理について必要な人員を指定することができます。  第十四條について説明いたします。本條は、審理の傍聴に関する規定であります。審理官の審理は完全な公開にするかまたは制限的な公開にするか議論のわかれるところでありましたが、審理の対象となる事柄にかんがみ、本條に規定する程度の傍聴を認めるにとどめることが妥当であると考えたのであります。  本條により審理を傍聴し得る者は、当該団体により選任せられた当該団体の立会人五人と一般の新聞記者等であります。これらの者はもちろん身分を証明することを要するのであります。また新聞記者等については、必要によつては傍聴券等によつて制限することもさしつかえないと考えるのであります。  本條第四項は、退去を命令することができる規定であります。これは実力による退去の強制ではなくて、退去の命令をすることに関する規定であります。  次には第十五條について説明いたします。本條は、証拠の取調べについての基準を定めたものであります。立法例としては民事訴訟法第二百五十九條があり、しかもこの事件が裁判所に提訴された場合には、原則として民事訴訟法により審判されるのでありますから、この規定を置いたのであります。しかしもとよりその不必要と認めることにはすべて合理性がなければならなく、審理官はこの規定によつて相手方の権利を不当に制限するようなことがあつてはならないのでありまして、このことは本條但書に規定いたした次第であります。  次には第十六條について御説明いたします。十六條は、弁明の期日における調書に関する規定でありまして、審理官は必ず調書を作成して、相手方の意見、弁明をそれに記載しなければならないのであります。  次には第十七條について説明いたします。本條は、審理官は当該団体から請求があつたときは、調書及び取調べた証拠書類の謄本各一通をこれに交付しなければならないことといたしました。かかる規定を設けましたのは、当該団体の弁解、意見の陳述に十分な保障を與えるためであります。当該団体は、すべて公安調査庁に收集された証拠について單に提示を受けるのみならず、その謄本交付を受けて検討し、弁解をすることができるのであります。これらの交付は一通にとどめ、無料といたしました。  次には第十八條について御説明します。本條は審理官による取調べが当該団体に影響するところが多いから、もし審理の結果規制処分の請求をしないと決定しましたときは、その旨を当該団体に通知するとともに、官報に公示することとしたのであります。官報に公示することとしたのは、第十一條の審理の通知がさきに官報で行われたからであります。次に第十九條について御説明します。本條は規制処分の請求の方式を規定したものであります。第一項の請求の原因たる事実とは、第四條第一項及び第六條の規定するごとく、当該団体が過去において行つた暴力主義的破壞活動と、将来行う可能性がある暴力主義的破壞活動の両者を含んでいるわけであります。請求は第四條第一項または第六條の処分を請求することを明記するのであります。第六條は解散の指定のただ一つだから明瞭でありますが、第四條第一項の処分は三つの種類があります。しかしそのいずれの処分を請求するのであるかを具体的に記載することは、この法案は要件としておりません。ただ第四條第一項の処分を求めるだけであります。規則においては公安調査庁長官は、処分請求書にいかなる具体的処分をなすを相当と思料するかを記載することといたしたいと存じておりますが、公安審査委員会は、この公安調査庁長官の意見に拘束されず、自由独立の判断によつて各号の処分を選択し得るのであります。これは委員会の判断の独立性を保障したものであります。本條において重要な規定は、その第三項であります。これによつて公安調査庁長官が、請求の原因たる事実を証すべき証拠として委員会に提出し得るものは、すべて当該団体に意見を述べる機会が與えられたものでなければならないのであります。人権の擁護上かかる規定を設けたのであります。  第二十條は、処分の請求の通知及び意見書等に関する規定であります。本條は、当該団体の権利を擁護する上において、慎重な考慮を拂つた規定であります。すなわち公安調査庁長官は当該団体の規制処分を委員会に請求いたしますときは、その請求の内容を当該団体に通知しなければならないのであります。刑事訴訟法第二百七十一條にも起訴状の謄本を被告人に送付する規定がありますが、これにならつたのであります。当該団体はこの通知を見てさらに自己に対する処分の請求の内容について検討をなし、十四日以内に意見書を独自に公安審査委員会に提出することができるのであります。かようにして審理の手続上当該団体の権利の擁護に遺憾なきを期した次第であります。  次は第二十一條につき説明いたします。本條は公安審査委員会の決定について規定いたしたものであります。この規定によつて明らかなように、委員会の決定は直接の聽問によらず、もつぱら書面の審理によつて行われるのであります。かような建前といたしましたのは、次のような理由からであります。すなわちすでに前に申し上げたごとく、公安調査庁において十分の審理を盡すのほか、当該団体の権利の擁護については慎重な措置がとられておりますから、この上重ねて公安審査委員会のごとき小規模の委員会において審理を直接行うのは、人権擁護の上からもそれまでのことを重ねる要がないと考えられるのみならず、かつまた不適当でもあり、また事案は迅速に処理しなければならないというようなことから見て、このような措置が妥当と考えたからであります。委員会は直接の聴聞の権限はございませんが、もとより処分請求書、意見書等について、公安調査庁長官または当該団体の釈明を求めるものと考えております。本條の第二項は注意すべき規定でありまして、すなわちこの規定により公安審査委員会は公安調査庁長官から、第六第の処分の請求を受けた場合に、第四條第一項の処分を相当と思料するときは、この処分をする権限がありますが、その反対に第四條第一項の処分の請求を受けた場合は、第六條の処分はすることができないのであります。これは委員会の決定の独立性と、団体の権利の擁護との調和をはかつた規定であります。要するに請求以上に不利益には処分しないということであります。  第二十二條は、決定の方式を規定したものであります。  第二十三條は、委員会の通知及び公示のことを規定したものであります。  第二十四條は決定の効力の発生時期等について規定いたしたものであります。本條の第一項は決定の効力の発生の時期を定めているのであります。処分の決定は前條により官報で公示されたときに効力を生ずるのであります。結局官報に公示された日から効力が生じたものと解するのであります。第二項及び第三項はこの決定に対する行政訴訟に関する規定であります。第二項はまつたく念のための規定であります。第三項は行事件訴訟特例法の例外的規定であります。これはこの種の事件に関する訴訟の促進をはかつたものであります。この第三項の裁判所とは、それぞれ審級の裁判所を意味しているのであります。全部の裁判所を通じての百日という意味ではありません。この種の規定は公職選挙法第二百十三條にもあるのであります。第二十五條は、公安審査委員会の手続の細則に関する規定であります。  次は第四章について説明します。本章は公安調査官の調査について規定いたしたものであります。公安調査庁の職員についかなる調査権限を認めるかは、理論と実際の二つの面から重要な問題として提起されて来たのであります。結局この法案においては、公安調査庁の職員には強制調査権を認めないことといたしました。従つて公安調査官はすべて任意の方法によつて調査をするのであります。かようなことといたしましたのは、次の理由からであります。すなわち理論的には団体規制のため十分な証拠を收集する必要上、公安調査庁の職員に強制調査権を與えなければならないとすることも考えられますが、暴力主義的破壞活動は、一面においてこれを行つた者の犯罪行為として、刑事訴訟法の強制捜査の対象となるわけであります。刑事訴訟法のほかにさらにいま一つこのような強制調査権を設定するといたしますれば、一般に著しい危惧を與えることが考えられるとともに、またこの法案が強制調査権を持つために不必要のおそれを與えることを避けたわけでございます。  二十六條について説明いたします。本條は公安調査官の任意の調査権について一般的に規定したものであります。公安調査官は公安調査庁長官によつて公安調査庁の職員の中から任命され、この法案の定める調査等の事務に従事するものであります。  第二十七條は公安調査官が証拠を收集する必要上関係機関の持つ書類及び証拠物の閲覧を求めることを規定したのであります。この範囲を検察官と司法警察員とにとどめたのであります。  第二十八條は警察と公安調査廳との情報または資料の交換を規定したものであります。この交換は双方の義務として規定されているのであります。  第二十九條は公安調査官の捜査などにおける立会いについて規定したのであります。公安調査官は、司法警察員が暴力主義的破壞活動からなる罪に関して行う押收、捜索、検証に立ち会に得ると規定したのであります。この規定趣旨は、公安調査官は破壞的団体の規制に必要なる証拠を收集いたさなければなりません。これについては証拠收集の現場の実見をなすことは証拠の価値判断上きわめて必要なことであります。そのため強制調査権のない公安調査官にこの規定を設けたもので、立ち会い得るのは司法警察員がなす押收、捜索、検証だけでありまして、またそれは文字通り立ち会い得るということだけでありまして、押收、捜索等の実施をなし得ないものであります。  次は第三十條であります。本條は公安調査官のなす物件の領置に関する規定であります。  第三十一條は、公安調査官のなす物件の保管に関する規定であります。  第三十二條は、領置した物件の還付に関する規定であります。  第三十三條は、公安調査官の証票の呈示に関するつ規定であります。  第五章、第三十四條について説明します。本條を設けた理由は次の通りであります。すでに述べた通り、公安審査委員会の処分の決定は官報で公示されるのであります。この公示に対応し、委員会の決定が裁判所で取消されましたときは、そのことを官報で公示することは、団体の名誉保持上当然のことであるからであります。  第三十五條は、団体規制の状況は、毎年一回国会へ報告することを規定したものであります。事柄の重要性にかんがみ、国権の最高機関たる国会に報告し、必要ある場合に行う国会の国政の調査に資するものであつて、事後ではありますが、かかる措置によつて公正な運用をはかるのであります。  第三十六條は、公安調査庁に関するこの法案実施の細則に関する規定であります。  次は第六章、罰則について御説明します。本章の罰則の中には、二つの種類があるのであります。一つは、暴力主義的破壞活動に関する刑罰規定を補整したものであつて、第三十七條から第四十條までがこれは当ります。他は、この法律に基く処分または命令の履行を確保するために、その違反に対し所要の罰則を設けたものであつて、第四十一條から第四十三條までがこれに当るのであります。  第三十七條から第四十條までの規定は、刑法等の現行刑事法令との重複を避ける方針のものとに、必要最小限度の罰則を設けたものであります。その意味において、これらの現定、現行法等の刑事法令の特別法たる性格を持つておるものであります。  第三十七條は、第三條第一項第一号ロの規定暴力主義的破壞活動にかかわる行為であつて、特別の構成要件はなく、純粋に刑法規定の擴充になるわけであります。  第三十八條は第三條第一項第二号ヌの規定の一部の暴力主義的破壞活動にかかる行為であつて刑法等の規定に「政治上の目的のため」という特別な要件を加えたのであります。放火、激発物破裂、殺人、強盗等の罪には、刑法においてすでにその予備の罪が二年以下の懲役によつて処罰されておりますが、本條においてはこれらを五年以下としたのであります。政治上の目的を持つこれらの行為に刑を加重したのであります。それは公共の安全に危險性が多いと考えられるからであります。  第三十九條は、第三條第一項第二号ヌの規定の一部の暴力主義的破壞活動にかかる行為であつて、刑罰は他の各條と比較し、この程度をもつて相当と考えたのであります。  第四十條は、この法案においては教唆を独立罪としておりますから、刑法の教唆の規定との調整をはかつたものであります。すなわちこの法案の教唆と刑法総則の教唆の規定が適用される場合には、重い刑をもつて処断されることといたしたのであります。  第四十一條から第四十三條までは、この法案規定による命令または処分の義務違反に関する罰則を定めたものであります。  附則は、この法律の施行期日、関係法令の整理等を規定いたしたものであります。  以上で逐條の御説明を終ることにします。
  127. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 なおあわせて公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案の二法案についても、その骨子を簡明に御説明願いたいと思います。
  128. 關之

    ○關政府委員 公安調査庁設置法案の骨子を御説明します。  公安調査庁設置法案は五章十七條からできておりまして、公安調査庁の設置に関する諸般の規定を設けたものであります。  まず公安調査庁は、これを法務府の外局として設置することにいたしております。その権限といたしましては、一般の国家行政組織法上の権限のほかに破壞的団体の規制に関する調査と、これに対する処分の請求の権限を行使させることにいたしておるのであります。これはこの法案の第四條に規定してあるわけであります。  調査庁における内部部局は、法案の第五條、第六條、第七條、第八條、第九條に規定しておりまして、総務部、調査第一部、調査第二部の三部を設けまして、そのもとに所要の課を置き、それぞれ所掌事務を分掌させることといたしたのであります。公安調査庁には長官一名を置きまして、特別な職として長官を助ける次長を置くことになるのであります。長官と次長のもとに、これらの三部が所掌事務を分掌いたして遂行することに相なるのであります。総務部の所掌事務は一般の国家行政組織法上の総務的な事務と、この法案によるところの審理、及び公安調査委員会への請求の事務等を所掌することに相なるのであります。調査第一部、第二部におきましては、この法案規定する調査の事務を分掌いたすことに相なるのであります。  なお公安調査庁には附属機関といたしまして、公安調査庁研修所を設けることといたしました。これはこの法案の持つ性格の重要性にかんがみまして、職員に十分なる訓練と教養を與え、あやまちなきを期するという考えからでございます。  公安調査庁は全国に支分部局を設置することといたしました。まず支分部局には公安調査局と、地方調査局の二種類があるのでありますが、公安調査局は全国に八箇所、大体高等検察庁所在地制度にならいまして、その所在地に置くことにいたしたのであります。その他の県及び北海道には四十二地方公安局というものを置くことにいたしました。かようにいたしまして、各地方における事務を遂行いたしたいと考えるのであります。  職員につきましては、先ほど申しましたごとくに、長官、次長のほかに、所要の職員を置くことになつておるのであります。この法案におきましては、現在特別審査局の職員が千百四十五名ありますのを、そのままこれに引継ぎまして、そのほか新たに五百名ほどの増員をこれに加えたい、かようなふうに立案されておるわけであります。また公安調査庁の職員は、その事務の性格上、必ずしも特定の一箇所にのみ勤務することは適当でありませんから、公安調査庁長官に勤務を命じ、あるいは事務の必要上、その管轄区域外においても自由に職務を行うことができるというふうに規定いたしたのであります。  以上によりまして、公安調査庁設置法案の骨子を御説明申し上げました。  次は公安審査委員会設置法案について、その骨子を説明いたします。  公安審査委員会は、これは破壞活動防止法案に基く団体規制の決定を分記する国家行政機関であるわけであります。これは法務府の外局として設けられるのであります。公安審査委員会の組織につきましては、委員長一人、委員四人を置くことになりまして、その下に委員補佐三人を置くのであります。そして委員は第三條によつて独立してその職権を行うわけであります。その任命につきましては、人格が高潔で、団体の規制に関し公正な判断をすることができ、かつ法律または社会に対する学識経験を有する者の中から、両議院の同意を得て法務総裁が任命することとなつておるのであります。そしてこの身分につきましては、第七條によりまして「禁こ以上の刑に処せられた」とかいうような特別な場合のほかは、その意に反して罷免されることがないのであります。これは職務の重要性にかんがみまして、委員に準司法的な身分を與えることになります。この身分の保障のもとに第三條で独立して職権を行うことになりますから、法務総裁といたしましては、ただ任命についての権限だけで、その事務の内容に立ち至つては指揮、命令は全然できないようなシステムになつておるわけであります。かようにして、団体規制の決定の事務を自由、独立、身分保障のもとに公正に行うというふうに規定いたしたわけであります。  この委員会に三人の委員補佐を置きましたのは、委員五人をもつていたしましては、調査の下調べ、その他において欠くるところがあるかもしれませんから、その十分を期するために、下調べ補佐の意味におきまして委員補佐三人を置いてその事務の完全を期したい、かように考えてこの規定を設けたわけであります。  次に、これらの委員及び委員補佐をいずれも非常勤といたしましたのは、事務の分量、その他を考覈いたしまして、また国家行政機構簡素化の趣旨にのつとりまして、当分この程度において委員会を構成いたしたのであります。委員会の事務は法務府官房においてこれを扱う、かようなことにいたしたのであります。このほかに、委員会の所要の職員は、行政機構簡素化の趣旨にのつとりまして置いてはいないのであります。  以上によりまして公安審査委員会設置法案の骨子を御説明いたしました。
  129. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 それではこれより質疑に入ります。山口好一君。
  130. 山口好一

    ○山口(好)委員 ただいま政府当局から逐條大体の説明がありましたが、この法案の作成にあたりまして、国民の自由人権、これを害さないように、しかも治安の維持のために現下最も必要なりとする団体の規制を行つて行きたい、こういうようなことからいろいろと苦心をされた跡が見られるのであります。まず第一條におきまして、この法律目的規定いたされ、第二條におきまして本法の規制の基準を規定されておるのであります。この第二條を見ますと、その第一項におきまして、国民各個人について思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由、その他国民の自由と権利を不当に制限するようなことがあつてはならない、こう宣言をしております。また第二項におきましては、この法律による規制及び規制のための調査については、いやしくもこれを濫用するがごときことがあつてはならぬ。また労働組合その他の団体の正当な活動を制限し、あるいはこれに介入するようなことがあつてはならないと規定してありまして、この第二條の基準が真に正しく、実際にこの法を運用いたします末端まで徹底したしますれば、この法案の弊害は少なしと考えるのでありますが、ただここで、この第二條の基準が置かれ、しかしてその基準のもとに、いろいろな暴力的破壞活動というものがどういうものであるか、またこれに関係を持つ団体に対する規制というものはいかにしてなされるか、こういうことをはつきりとその範疇をきめようといたしましたのでありまするが、不幸にして暴力主義的破壞活動というものの中に言論及び出版を加えなければならなかつたということは、これは言論なり出版なり——言論そのもの、出版そのものというものは、これは断じて暴力的破壞行為ではないと思うのでありまして、暴力的破壞活動の範疇の中に危險性を持つ言論、出版というものも加えらるるに至つたということは、いまだ事理一貫せざるものがあると考えられるのであります。この点について少しく御質問をいたしたいと思います。  旧治安維持法が悪法であつたというのは、結局この法律のためにわれわれの思想が取締りを受けなければならなかつた人間としてどういうふうに考えて行くか、われわれの思惟をどう行つて行くか、これを制限されるということは人間として耐えがたいことであります。どういうことを考えましても、また胸のうちに、頭のうちにいかように考えましても、これは束縛を受けないということが、人間として最も希求するところの自由であろうと思います。この自由を制限せんとしましたから、旧治安維持法は悪法であつたのであります。しかしわれわれのデンケン、思惟と密接な関係を持つております表現、すなわち言論、これを文書に表わしましたところの出版、この自由は最も尊重せられなければならないと思うのでありまして、われわれの生活上、こういうことを言つたら処罰されやしないか、また新聞紙上に、あるいは文書の上にかようなことを書いたならば、ひよつとすると刑罰を科せられる原因になりやしないかというような恐れを抱きまして、いわゆる言わんと欲することも言い得ない、書かんと欲すること書けないということでは、われわれ国民生活は非常に暗くなるのであります。いじけたものに相なるのでありまして、かくては真の社会の進化、向上というものは望み得ないのであります。本法案におきましては、その目ざすところは暴力主義的破壞活動を規制せんとするものであります。先ほども申し上げましたように、單なる言論や出版をこの範疇に入れようとすることは、なおそれが一部危險なる事柄につながるといたしましても再考を要するのではないか、かように考えられるのであります。言論、出版のこの問題までをここに入れましたことによつて生ずる害が、これを入れたことによつて生ずるところの利益よりも大であるとも考えられまするし、また実際の結果といたしましても、憲法上擁護せられておりまする検閲制度などの禁止の疑いもそこに惹起せられるのでありますから、この言論、出版に関する行為、ことに第三條の第一項ロの行為はこれを再考いたしまして、もし取除き得る余地ありとすれば、これを何らか他の方法によつて表現をいたす、あるいはもう少しこれをしぼつて行くというようなお考えはありませんかどうですか。ことにこれは公刊せられております新聞の問題などにつきましても、今後問題を起すにあらずやと思われますので、この点を伺いたいと思います。
  131. 關之

    ○關政府委員 お尋ねの御趣旨は、第三條一項の暴力主義的破壞活動の規定のところの言論、出版等に関する事項をより少くしぼるようなことは考えないかどうかということと拜承いたしますが、すでに昨朝局長から申し上げたような、そういう危險なるところの事態が現在の事態であるわけであります。この規定をこの第三條の中に織り込むにあたりましては、ただいま山口委員のお話にもありました通り、各種の事実を慎重に考慮いたしまして、国家の、公共の安全を確保するためには万やむを得ない措置であると考えて、この規定を設けたのであります。この規定を設けました根本の考え方といたしましては、言葉あるいは出版は人間の自由におきましてきわめて重要なものであり、それがゆえに憲法において十分に保障されているわけであります。従つてその最も基本的な重要な自由権を制限するには、制限するだけのそこに合理的な理由がなければならないわけであります。そこで考え方といたしましては、もし昨朝局長から説明しましたような危險な言動特にこの三條各項にあげてあるような刑法各項に定める実害行為を教唆、扇動するような言動をそのまま放任いたしますとすると、危險は雪だるま式に加速度的に回転して大きくなるのであります。そうして現実にかかる実害行為が発生するまでそれを待たなければならないということは、国家の、公共の安全を確保する意味においてとうてい耐え得ないところであるわけであります。従いまして公共の安全を確保して公共の福祉を維持する、その観点からこのような程度において言論、出版の制限をなすこともまことやむを得ないことと考えまして、この規定を設けた次第であります。  なおこの教唆、扇動の規定でありまするが、すでに現行法におきましても多くの法律にこの規定が設けられてあるのであります。御参考までに申し上げますると、教唆につきましては、新しい用語例ではそそのかすということになつておりますが、国家公務員法、地方公務員法、爆発物取締罰則、公共企業体労働関係法等にこの規定があるのであります。また扇動は新しい用語例ではあおるとなつておるのでありますが、公職選挙法、国家公務員法、地方公務員法、爆発物取締罰則、公共企業体労働関係法、国税犯則取締法等に実際の法令として今日すでに制定されておるのであります。かような立法例も参酌いたしまして、この法案の第三條に掲げてあるような実害ある行為をあおり、そそのかす行為は、公共の安全を保持する上におきまして、その実害が発生するまで手をこまねいてこれを見ておることは、とうてい耐え得られないところであると考えまして、かような規定を設けた次第であります。以上のような理由から設けましたこの規定は、当局といたしましてはこの表現をかえる、あるいはこの範囲を縮小することは安全の保持上当を得ないことではないかと考えておるわけであります。ぜひこの通りの案において御審議をお願いいたしたいと考えております。
  132. 山口好一

    ○山口(好)委員 政府はこの言論、出版そのものは、暴力主義的破壞活動ではないとお考えになりますか、それともやはり暴力主義的破壞活動の中に理論的にも含まれるものと考えますか。
  133. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 暴力主義的破壞活動の中に含まれると考えております。先般も御質問がありました通り、なるほど扇動は放火の扇動にいたしましても、殺人の扇動にいたしましても、実害行為を直接発生する実行行為ではございません。しかしながら実害行為を発生せしめる行為でございまして、暴力主義的な破壞活動の中に含まれると考えております。特に団体活動によつてこれらの行為が行われるときには、団体はこの扇動行為によりまして多くの人々をかり立て、実際に殺人なり放火なりが行われるのは団体よりもむしろそれにかり立てられた方々でありまして、その背後にあつて団体として宣伝、扇動するというこの危險な行為は、言論の方法によりましても、それは暴力主義的破壞活動のうちでも危險中の最も危險な行為ではなかろうかと考えております。
  134. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ただいまの扇動の点ですが、用語の概念の問題として、従来の法令の中にあるいは判例によつて若干明らかにされたり規定されたものがありますが、なお本法案の立案にあたつて政府においては扇動以外に何らかの用語概念をもつてこれに当てようとされたことがあつたかどうか、参考までに伺つておきたいと思います。
  135. 關之

    ○關政府委員 ありませんでした。
  136. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 扇動と教唆の区別の場合において、特定の多数人を対象とした以外に、不特定の少数人を対象にした場合もあり得ると思うのでありますが、これと扇動との関係を、政府は原案の立案にあたつていかに解釈されておつたか、その点も一応説明を願つておきたいと思います。
  137. 關之

    ○關政府委員 この法案に申します教唆とは、他人をして一定の犯罪を実行する決意を新たに生じさせる行為をなすことを意味しているのであります。すなわちその相手方が犯罪をなす意思が全然ない場合におきまして、一定の犯罪を実行させる決意を新たに生じさせるということが、教唆の意味の要点になるわけであります。そこでこの教唆は、独立罪として規定してある関係上、必ずしも相手方が犯罪実行の決意をなしまたは犯罪の実行に着手するということは、要件としていないのであります。これに対しまして扇動とは、不特定または多数人に対しまして、中正の判断を失つて一定の犯罪を実行する決意を創造させ、またはその既存の決意を助長するような勢いをもつて刺激を與えることであります。これも必ずしも相手方においてその結果を惹起することを要しないのであります。以上の点が、この法案において規定してある教唆及び扇動の意味であります。
  138. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ただいまの説明によると、その対象の点から見て、教唆も不特定の人を含むことになるわけであるかどうか、犯意の有無という点以外に、一つの基準として、対象の面から教唆と扇動あるいは第三の概念の区別ができるかどうかその点を承つておきたいのであります。
  139. 關之

    ○關政府委員 お尋ねの点は、教唆はおおむねの場合、特定した相手方に対して行われるのが、通常であろうと思うのであります。
  140. 山口好一

    ○山口(好)委員 それでは他の面から御質問をいたします。この法案においては、団体の行動を規制することを主たる目的にする、そうしてその規制は一つの保安処分である、こういうふうな御説明であります。そうしますと、ただいまの第三條の第一項のロの点につきましてのこの行為は、やはり団体の構成員あるいは役職員としての行動である、こういうふうにお聞きしてよろしいですか。
  141. 關之

    ○關政府委員 団体規制の條件は、団体の活動として暴力主義的破壞活動が行われることが要件であるわけであります。その活動は従つて、嚴格に団体としての活動でなければならないのであります。しからば、その団体としての活動とは何かということでありますが、この法案における団体としての活動は、要するに団体としての意思決定に基いて、その実行としてなした活動ということになるのであります。団体の意思決定に基きまして、その役職員または構成員が、その意思の実現としてなした活動、これが団体としての活動になるものということになると考えております。
  142. 山口好一

    ○山口(好)委員 そうしますと、こういう行動のあつた団体については、行政処分で、あるいはその行動の制限、あるいはときに解散の指定を受ける、こういうような結論が出て来るわけです。それから、その構成員である行為者自身については、三十七條以下の罰則規定、あるいは刑法の罰則規定が適用される、こういうことになりますか。
  143. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。お尋ねの通りであります、破壞活動を団体の活動として行つた団体に対しては、この法案の規制に関する規定によりまして、規制処分を行い、行つた役職員または構成員の個人につきましては、刑法及びこの法律の刑事規定によりまして、所要の刑事処分を受ける、かようなことに相なるのであります。
  144. 山口好一

    ○山口(好)委員 そうしますと、この団体に所属していない、構成員にあらざる個人にして、その団体のこうした破壞的な行動と関連を持つと見られた他の外部の個人については、どういう取扱いになるか。
  145. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。お尋ねの点につきましては、この法案の建物が、その団体の役職員、構成員というものが主体になつているわけであります。従いまして、各種の罰則はそれに行くのが原則になつております。今お尋ねの、それ以外の者につきましては、これは刑法の総則の共犯の規定によりまして、所要の刑事訴追が行われる場合があり得ると考えるのであります。それは——いま一度御質問の要点をお伺いいたしたいと思います。
  146. 山口好一

    ○山口(好)委員 ではもう一ぺん御質問いたします。団体の構成員でない、外部の者が、破壞活動に関連して教唆、扇動をした形になつた場合、これはどういう取扱いを受けるか。
  147. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答えいたします。暴力的な破壞活動は、団体行動を前提として罰則を規定しておりません。個人として、団体とは関係なくこの行為を行つた場合にも、当然処罰を受けるわけであります。
  148. 山口好一

    ○山口(好)委員 そうしますと、先ほどの關政府委員からのお答えは、少しく狭かつたように思いますが、いずれが正しいのですか、もう一度伺います。
  149. 關之

    ○關政府委員 お尋ねの点は、ちよつと誤解していたのであります。団体の役職員または構成員以外の者がかような活動をいたしますと、そのいたした者は、それぞれ刑法及びこの法律の三十七條以下の所要の刑罰規定によりまして、刑事上の処分を受けることに相なつておるのであります。
  150. 山口好一

    ○山口(好)委員 そういうふうに私も読んでおつたのですが、そうしますると、この法律は構成上から見ますると、団体に対する規制という行政処分を主眼点にして規定をいたし、それと同時に、あとの方三十七條以下におきまして、個人も処罰するところの刑罰規定を盛り込んでいる、こういうことになりますな。
  151. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。その通りでございます。
  152. 山口好一

    ○山口(好)委員 そうしますと、この保安処分——暴力主義的破壞活動をなした、あるいは今後なすおそれがあるというようなことで、これに適当な規制を行う行政処分、それと同時に、刑法などの刑罰法規に乗せるべき刑罰というものがここで規定されているというので、法の構成上からは不穏当のように思いますが、政府の御所見はいかかでありますか。
  153. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。この法案と、刑法その他等の刑事罰規定等もあわせて考察いたしますと、ここに暴力主義的破壞活動という活動があるのであります。それは一方において団体規制の原因となるわけであります。同時にそれは各個人から見ますると、個人が刑事責任を負う犯罪行為となるわけであります。さように一つ行為から二つの効果が一応ここに出るようにことに相なつているわけであります。お尋ねの点は、さように、一つ行為によつて二つの効果が出ることは、二重処罰的な意味において不当ではないかというような意味と理解いたしますが、憲法に申します二重処罰の規定は、同一の事実に対して二重の刑罰は科せないという規定であると、私どもは考えているわけであります。従いまして、この規定は、一方においては個人は犯罪として処分されるわけであります。同時にその活動をなした団体は、この規定によりまして保安処分を受けるのでありますが、それは団体に対しては二重の刑罰を科したということにはならないと考えるのであります。かようなある一つ行為につきまして、通常の刑事罰、同時に各種の行政処分がとられることは、すでに多くの立法例があるところであります。たとえて申しますれば、ある公務員が犯罪を犯しましたときに、涜職罪で訴追を受け、同時に行政上の処分を受ける。あるいはある免許営業におきまして、免許営業の内容に違反して、犯罪として処分される、同時に営業免許の取消しを受ける。これはこの法案の場合にはびつたりとは該当いたしませんが、すでにそのような立法例が多々あるわけでありまして、個人に対して刑事処分、団体に対して団体規制、この保安処分は、それらの立法例に照しまして、決して不当のものではないと考えているわけであります。
  154. 山口好一

    ○山口(好)委員 その点はいいとしまして、ここにやはり、そういうところから一つの、われわれが矛盾したものがあるように考えられる規定が出て来ているのですが、それは第四十一條、第四十二條、第四十三條というような、団体の方が規制せられて、その後にその構成員の行動が禁止され、それに違反したというような罪、これは行政処分としまして一定の行動が禁止された、あるいはさらに進んで解散の指定を受けた、こういうような場合、これはこの法律によりましても、行政訴訟をもつて司法裁判所に訴えを起し、その黒白をわかつことができるわけでありますが、この行政処分として一旦行為の禁止あるいは解散を命ぜられて、そうして官報に公示せられたその後におきまして、この禁止違反あるいは制限処分違反の行動があつて、この司法的な処罰を受けることに相なりますが、その後において裁判によつてその行政処分が取消されたというような場合には、この罪はいかに相なりますか。
  155. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。そのような場合には、裁判所におきましては公訴を棄却することに相なると思うのであります。行政の処分は官報公示とともに効力を発生するのであります。そうしてその処分に対しまして、通常の行政訴訟をもつて争うのであります。そうしてここに処分の効力の生じた後に、その処分に違反する行為がありますると、本條の犯罪が成立するわけであります。犯罪が成立いたしまして、それが裁判所にかりに係属いたしたと仮定いたしまして、両方の事件が裁判所に係属するわけであります。その場合におきまして、もし元の決定が違法であるとして裁判所によつて取消されましたならば、その刑事事犯は裁判所から公訴棄却の判決を受けると考えるのであります。この種の事例は現行の立法例の行政訴訟を伴う多くの場合に考えられるケースでありまして、全部そのように解釈すべきものと考えているわけであります。
  156. 山口好一

    ○山口(好)委員 その点はそれではそれだけにしまして、次に本法案につきまして最も問題になり、また先ほど委員長からもお尋ねがありました扇動の意義につきまして、これをある程度はつきりいたさなければ、本法案を通すべきかいなかということも、これは問題であると思います。これをいま少しく具体的の場合に徴しまして説明を願いたいと思うのでありますが、先ほど教唆との違いを述べ、なお扇動は不特定多数人に対してある行動について勢いを助け、これをあおるような行動、こういうような御説明があつたように思うのであります。そうしますと、この扇動というのは、そういう状況下にありまするその場所において行われた場合に限るのでありまするか。
  157. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。扇動は先ほど御説明いたしましたように、不特定または多数の人に対して要するに中正の判断を失つて、一定の犯罪を実行する決意をそこにつくらせる、あるいはすでにある犯罪を犯そうというふうに考えておる者があつたといたしました場合に、その者のその犯意を助長させる、そういうような勢いを持ち、刺激を與える、その刺激を與えるような言動をなすことが扇動に当るわけであります。しからば個々のいかなる言動がこれに当るかというような具体的な事例につきましては、個々の具体的な場合でなければわからないのでありますが、ここに参考までにすでに過去におきましてどういうことが扇動罪として処罰されたかということについて、判例に基きまして御説明いたしたいと思うのであります。  一つは大正三年六月九日、大審院の判例にあるのでありますが、「内閣彈劾政談演説会ニ於テ一般聴衆ニ対シ代議士ハ現内閣ニ対スル死刑ヲ執行スルタメ議会ニ於テ総理大臣ニ接近シ敏捷ニ或仕事ヲ為シテ名声ヲ博スルヲ得ヘキモ此覚悟ヲ代議士ニ期待シ難キニ因リ国民的制裁ヲ以テ死刑ヲ執行スル外ナク聴衆中一人賤ケ嶽ニ於ケル秀吉ノ如キ者アラハ此目的ヲ達スル易々タリトノ主旨ヲ述ヘタルトキハ其ノ行為ハ單ニ当時ノ内閣ヲ攻撃シテ其更迭ヲ促サンカ為ニ痛烈ナル論鋒ヲ用ヒタルニハ止マラスシテ当局者ノ身体生命ニ対シ危害ヲ加フル者ノ出テンコトヲ勧奨シ即チ治安警察法第九條第二項ニ所謂集会ニ於テ犯罪を煽動シタルモノニ外ナラス」というようになつておるのであります。  最近の判例におきましては、昭和二十四年最高裁判所におきまして、大法廷をもつて、米の不供出に対する扇動罪を処罰しておるのであります。これにつきましての内容の事実はかようになつておるわけであります。被告人は「昭和二十一年十一月十五日日本農民組合加盟の比布農民連盟主催で北海道上川郡比布村比布国民学校に農民大会が催されるや、これに出席して同日午前十時頃から午後一時三十分頃迄の間右大会参会者とともに当日の議題である供米出荷問題等について討議した際主として比布村在住の農民からなる参会者約二百五十名乃至三百五十名集合の席上で「大体供出割当の字句さえ不合理である。俺達百姓が自分で作つて取れた米を政府が一方的行為によつて価格を決定し、それを供出せよなどとは蟲がよい。今までのようなおとなしい気持ではだめだ。百姓は今まで騙されてきたのだから供出の必要も糞もない」。又は、「今の政府資本家や財閥にはいかなることをしても強権発動をしたことがない。それに反してわれわれ百姓には取締に名を籍りて、あらゆる彈圧をしているではないか。供出米も月割供出にして政府が再生産必需物資をよこさぬかぎり米は出さぬことに決議しようではないか。今頃陳情とか請願とかいうようではだめだ」。この趣旨を申し述べて右参会者等に対しその生産にかかる米穀につき食糧管理法の規定に基く命令による政府に対する売渡しをなさざることを扇動したものである。」かようになつておりまして、これが昭和二十四年新憲法後、最高裁判所におきまして大法廷を開いて、この事実を扇動と認めて有罪といたした例があるのであります。
  158. 山口好一

    ○山口(好)委員 そういたしますと、先ほど私がお尋ねいたしましたのは、勢いを助けてあおるようなことを現場においてやつた場合に限るのか、それともその現場でなしに、前かあとか、そのときと場所を離れまして、あるいはラジオ放送でそういうことを言つた場合も入るかというようなことについて承りたいと思います。
  159. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 本法案における扇動は、現場にあることを要件といたしておりません。文書によつて広汎にまかれるというような場合も当然含まれるというふうに考えております。立法例としては、特定の場合、現場における扇動を要件としておる向きもあるように考えますが、ここで規定しておる扇動は、文書による場合も含まれると思います。
  160. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 ちよつと関連して伺いますが、吉河特審局長が先ほど発言せられた中にちよつとおかしい点があると思いますので、質問しておきますが、先ほど山口委員質問に対しまして、局長は扇動が実行行為でない。しかしこれは実害を発生させる行為だから、危險性を持つから処罰しなければならぬ、こういうように承りましたが、これはどうなんですか。
  161. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 直接に殺人とか放火とか、実害を発生する実行行為ではないという意味でありまして、扇動罪を独立罪として規定する以上は、扇動行為はそれ自体実行行為になるわけであります。
  162. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そうすると、やはり扇動の未遂ということも刑法の総則が適用されるわけですね。
  163. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 未遂罪につきましては、特別に規定がある場合にだけ適用されるわけでございます。ここでは扇動の未遂は処罰する必要がないと考えまして、未遂罪は規定しなかつたのであります。刑法の総則としては未遂罪は一般的には適用されません。
  164. 山口好一

    ○山口(好)委員 先ほど読まれました判例によれば、その現場において勢いをつけた、こういう場合に限るように思いますが、これをあまり広く解釈することはどうかと思うのですが、政府におかれましては、従来の判例に従つてその場所において行われた場合に限る、こういうような解釈はできないでしようか。
  165. 關之

    ○關政府委員 扇動が、ただいま読みました判例の中の事実のごとき事例は、言葉を用いまして多数の参会者に言われますから、その現場で行われることが、通常の例と思います。しかしながら文書によりまして、そのような記事を書きまして、多方面に送るということになりますと、印刷物となつて各方面に配布されるわけであります。そのような場合には、その現場ということは、この判例が示すがごとき事例は考えられないのでありまして、その多数の参会する現場に限定することは、扇動罪を処罰する所期の目的を達し得ないと考えます。
  166. 山口好一

    ○山口(好)委員 なおその点は、政府委員の御再考を願つておきたいと思つております。今言われたような、文書によつて、その場所でなしにやつたというような場合は、「その実現の正当性若しくは必要性を主張した文書若しくは図画を印刷し、頒布し、」こういうようなところにあたるのではないか。ですから扇動に対しまして、またこうした別な行為規定しておりまするがゆえに、扇動は狭く解釈——狭くというよりも、この場合においてはさように解釈することが正しいのではないか、こういうふうにも思われまするが、この点はなおそういう御回答に聞いておきまするが、なお御再考を願いたいと思つています。  それから第三條一項のロに「この号イに規定する行為の教唆若しくはせんを動なし、」こうありまするがゆえに、これは前の内乱の予備、陰謀、幇助についても、その実行行為のみならず、教唆、扇動も含まれるのでありますか、どうでしよう。
  167. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。含まれるのであります。
  168. 山口好一

    ○山口(好)委員 もとよりこの條文を立案なさるときにも、やはりそういうこともしつかり了解されてこれが規定をされたのでありましようが、さようになりますると予備、陰謀、幇助についての教唆、扇動ということになるのでありますが、この点はさよう考えてさしつかえてありませんですか。
  169. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。その通りでございます。
  170. 山口好一

    ○山口(好)委員 なお第二條にもどりまして、第二條の第二項に、「いやしくもこれを濫用し、労働組合その他の団体の正当な活動を制限し、又はこれに介入するようなことがあつてはならない。」と書いてありますが、今度この法案が出ますにつきまして、各種の労働組合でこれに反対をいたし、中にはストを行つたところもあるようですし、行わんとしたところもあつたようであります。こういう行動に対しましては、やはりこれはここに言う、これらの団体の正当な活動、こういうふうに政府は見まするかいなか、それをお答え願いたい。
  171. 關之

    ○關政府委員 お尋ねの趣旨を明確にいま一度伺いたいのであります。
  172. 山口好一

    ○山口(好)委員 第二條の第二項「この法律による規制及び規制のための調査については、いやしくもこれを濫用し、労働組合その他の団体の正当な活動を制限し、又はこれに介入するようなことがあつてはならない。」こう書いてありますが、たとえば今度のこの法案が出るにつきまして、これに反対であるというので、各種労働組合で、これに対する抗議を申し込み、さらにストに及ばんとした、あるいは及んだ、あるいはその他さらに進んだ行為にわたる、こういうようなことも考えられまするが、今度反対をされてストを行つたというような行動については、この団体の正当な活動というふうに見るかいなや、こういうのです。
  173. 關之

    ○關政府委員 第二條第二項の正当な活動と申しますのは、これはもとより法律のもとにおける正当な活動でありまして、数日来行われました労働組合のこの法案反対運動は、政府におきましては、法の保護を受けない違法な活動であるというような認定をしておるのでありまして、この正当な活動は、もとよりさような不法な活動を意味しておるわけではありません。しかしながらこの法案におきましては、軍にそのような、この法案反対のストをいたしましても、法案としての第三條の各号に該当するような事項が全然ございませんから、この法案の関するところではないわけであります。第二條の第二項などは、さような意味解釈をいたしておるわけでおります。
  174. 山口好一

    ○山口(好)委員 それはそれでよろしいでしようが、第二條を設けました以上、第二條の規制の基準としてここにうたつておりまする以上は、これに基いて本法の解釈も規制されなければならないと思うのであります、扇動あるいは文書、図画の頒布、公示の点、こういうような点につきましても、やはり第二條とにらみ合せまして、その解釈を定めなければならない。狭く解釈すべきものは狭く解釈する。たとえば言論あるいは文書によりまする行動につきましては、その行為が一般国民の自由を制限して、処罰まで受けることに相なるというようなことでありますがゆえに、これはなるべく最小限度の必要性に基きまして解釈をいたさなければならないのではないかと思いますので、これは全般的に本法の解釈の根本としまして、第二條を置きまする以上は、さようなしつかりした基準に基いて解釈をされなければならないものだと思いまするので、この点の御所見を承りたい。
  175. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 ただいま他の政府委員から御説明申し上げました通り、第二條は、この法案による規制及び規制のための調査についての基準を定めたものであります。法律によつてこの基準を定めました以上、この基準に違反したものは違法なことと相なる、この法案におきましては違法なものとして争われることと相なると考えております。従いまして基準を逸脱したような規制をかけたような場合におきましては、委員会によつて審査され、あるいは棄却される場合もある。あるいは裁判所においても、この訴訟の対象になつて審判を受けなければならないと考えております。  先ほど御質問がありました問題につきまして、扇動でありますが、私どもといたしましては、現場において大勢の人々に演説その他をもつて扇動する行為と、広汎に文書を頒布することによつて扇動する行為と、その危險性におきましては、むしろ文書による場合が非常に危險な場合も多かろうというふうに大体考えておるわけであります。つけ加えまして……。
  176. 山口好一

    ○山口(好)委員 さらに最後に一点伺いますが、第四條の規制処置であります。この規制の対象となりまするものは、すでに暴力主義的破壞活動をなしたものを対象としておるようでありますが、そうしますと、本法施行後においてなした場合はもちろん入るでありましようが、本法施行前になしたものについてもこれが適用があるかと思いまするが、そうしますと、どこまでこれがさかのぼつて行くか、いつごろ暴力主義的な破壞活動があつた、そういうものに適用するのだという時期の点を伺いたいと思います。  なお今までにかかる暴力行動を行つたことのある団体、これは大体数においてどれくらい存在いたしますか。これを行つたからといつて、この法律によつて今後規制するということには限らないのでありましようが、警告を與える意味におきましても、こういうものははつきりいたしておく必要があると思いますので、大体どれくらいの団体がありまするか、この点を伺いたいと思います。
  177. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。第四條について暴力主義的破壞活動を行つた団体、その団体の行つた暴力主義的破壞活動が、過去のいつまでさかのぼるかというお尋ねの御趣旨のように拜承いたしますが、これにつきましては、次のようにこの法案規定解釈さるべきものであると思うのであります。この四條から申しますと、ある団体がありまして、そうしてそれが暴力主義的な破壞活動をなした、それがこの法案の施行前に行つた行為であるといたしましても、そのいたした暴力主義的破壞活動は、この第四條による規制の第一次の原因となり得るものと考えられるのであります。この法案の措置は刑罰ではありませんから、一般行政法令にありまする遡及的なことが可能であると考えるのであります。しかし無制限に過去のいつまでもさかのぼるということは考えられないのであります。それは過去において一回暴力主義的破壞活動をなした団体があつて、これをこの法律の施行によつて規制いたします場合においては、その将来において行うことの可能性でありますから、それは当然この法律の施行後の問題になるわけであります。そこでこの法律におきましては、その間を「継続文は反覆して」ということで結んであるわけであります。従つて前の行為とあとの行為とが「継続文は反覆して」というふうに結ばれていますから、無制限にさかのぼるということはないのであります。継続してとは、同一の意思を持続してやることであるのであります。「反覆して」とは、意思の持続は必要ありませんが要するに繰返してやるということに相なるのであります。その関係から将来暴力主義的破壞活動をなすおそれのあるという、そのおそれと、過去において継続しまたは反覆したと認められる、そういうものに限られるのであります。従つておのずからそこにさかのぼる限度はきわめて限られているものである、かようなふうに考えているわけであります。  お尋ねの第二の点でございますが、この点につきましては、昨日現下の破壞活動の実体的な資料を差上げましたが、これに当るやいなやという疑いがあることは、その実体資料の範囲だけでありまして、それ以外に過去におきまして、かようなことに当る団体があるとは、今までの調査においては現われていないのであります。
  178. 山口好一

    ○山口(好)委員 それから最後に本法における調査の実際について伺いたいのであります。本法成立後におきまして、現在の特審局などでやつておりまする調査のやり方とどういうふうに違つて来るか。また現行の刑事訴訟法のもとにおきまする捜査のやり方、あるいは本法におきまして検察庁あるいは国警、自治警と連絡を保つて調査をやる、こういうふうになつておりますが、現在やつております、今までやつて来ました調査の実際と、本法が成立したことによつてどういうふうに違いまするか、違うところがあればそれをお示し願いたい。
  179. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答えいたします。現在特審局におきまして取扱つている法令は団体等規正令でございまして、これは御承知でもございましようが、出頭命令、いろいろな強制調査権か間接強制調査権が與えられておるのでございますが、この公安調査庁におきましては、そういうような強制的調査権は一切持つておりませんので、任意のり調査によることになるわけであります。現在特別審査局におきましては、そういう間接強制権を使つた場合はきわめて少いので、原則として任意の調査を行つた考えております。公安調査庁におきましても、任意の調査をもつて所要の証拠資料を收集して行きたい、かように考えております。
  180. 山口好一

    ○山口(好)委員 あとでまた残りの分を行いたいと思いますので、きようはこれだけにしておきます。
  181. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 北川定務君。
  182. 北川定務

    ○北川委員 前委員質問に引続きまして、なるべく重複を避けて質問をいたしたいと存じます。  破壞活動防止法のきわめて必要でありますゆえんは、昨日吉河特審局長の資料に基いての詳細なる説明によりまして、十分了解することができたのであります。そのうちに朝鮮人の問題が取上げられたのでありますが、在日朝鮮人六十万、そのうち四十五万が北鮮系と言われておりまして、これらは中共からソ連につながつているものと言われておるのであります。ことに出入国管理令の改正等によりまして、北鮮系の朝鮮人の動向につきましては、非常な重大なことだと思うのであります。これらの朝鮮人の最近の動向につきまして、いま一応政府委員の御説明を願いたいと思います。
  183. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答えいたします。資料をとりまとめまして的確にお答えしたいと考えております。しばらく時間をお許し願いまして、後刻資料を取寄せましてお答えいたしたいと考えております。
  184. 北川定務

    ○北川委員 角田委員の質疑に対しまして、本法は臨時法的性格を持つものだという御答弁があつたのであります。臨時法的なものであるならば、わが国がいかなる状態になりましたときにこの法律の効力を失わしめるお考えであるかを伺いたいと存じます。
  185. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。角田委員のお尋ねにあたりまして、臨時的という言葉をもつて御説明いたしました。その意味につきましては、ここで少し説明を要するわけであります。この法案の立案にあたりましては、刑法等の恒久立法の改正はせず、当面のこの破壞的活動の防止に必要な限度において所要の特別な立法を設ける。その意味において「刑法等の恒久立法に比較いたしまして「臨時的」という言葉を使つたのでありまして、言葉はあるいは適当でなかつたかもしれません。要するに刑法等の恒久立法の改正を行わず、当面の事態に対処する必要最少限度の特別な立法を行うということに御了解を願いたいと思うのであります。この法案の将来の問題につきましては、結局において、事態の必要性、事態の進展の仕方いかんが問題解決のポイントになるものであると考えております。
  186. 北川定務

    ○北川委員 第三條につきまして山口委員から詳細な質問があつたのでありまするが、私もこの点につきまして伺いたいと思います。第三條中の政治上の主義を推進するための破壞活動のうちで、予備と陰謀の区別、ことに予備の中に予備であるところの陰謀もあるのでありまするが、この二つの概念につきまして御説明願いたいと思います。
  187. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。予備とは、特定の犯罪行為の準備行為であるわけであります。陰謀とは二人以上の間において特定の犯罪を行うことの謀議をすることであります。
  188. 北川定務

    ○北川委員 第三條中の破壞活動の、実現の正当性もしくは心要性を主張するところの文書並びにこれらの講義などについて問題にされているようでありまするから、この点について伺いたいと思います。たとえて申しますと、政治思想史やあるいは政治史を説明するにあたりまして、革命や内乱を解説しまして、進んで民衆のための反抗権というものなどを説明しまして、これらがわが国の場合にも正当性を持つておる場合があるというような講義なり、あるいは著述なりをいたした場合に、これがこの第三條に該当するかどうかを御説明願いたいと思います。
  189. 關之

    ○關政府委員 第三條第一項第一号ロの「実現の正当性若しくは必要性を主張した文書」の頒布、印刷等の行為でありますが、これは二つのことを要件といたすのであります。それはまずその行為をするその文書自体の中にそのことが正しいことである、そのことは必要なことである、どうしてもそうしなければならないということが明らかに主張されていなければならないのであります。その筆者がだれであるかは問わないのであります。そうしてその文書がここにありまして、それを持つて頒布する者ないしは公然掲示する者に、これに規定する内乱または予備、陰謀、そういう行為の実現を容易ならしめる意図、そういう目的、そういうためにするというそこに主観的な意思を要するわけであります。そういう主観的な意思をもつて、そのように主張しておるところの文書を持つてこれを頒布し、公然掲示する、ここにこの行為が成立するのであります。お尋ねの点は、その行為者の主観的の意思の点が明確にせられなかつたのでありますが、要するにその行為者において内乱の行為の実現を容易ならしめる意思があつたかという点が一つの問題になると同時に、その実現の正当性もしくは必要性をそこにおいて主張してあるかいなかという点が、次の問題となるのであります。もしその行為者に、日本における内乱、朝憲紊乱する目的をもつて暴動を起す、その行為の実現を容易ならしめるその意図があつたかいなか、ありますならば、そしてまたその内容が必要性を主張したものでありますならば、これにあたるかと思いますが、そうでない限りにおきましてはこの項にあたらないものと思うのであります。
  190. 北川定務

    ○北川委員 第三條の行為解釈でありますが、「その実現の正当性若しくは必要性を主張した文書若しくは図画を印刷し、」とありますが、印刷の中に編集を含み、十頒布し、」とありますが、頒布の中には発売を含み、「公然掲示」というような場合には回覧するような場合を含むものと解されるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  191. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。この印刷の中には編集は含んでいないのであります。印刷するだけの行為でありまして、それ以前の印刷の準備あるいは印刷のための編集等の行為、原稿を書くというような行為は一切含んでいないのであります。印刷の行為だけであります。「公然掲示」の文字は明らかにそこに掲示することが要件でありまして、この公然掲示の中には回覧する行為は含んでいないのであります。またお尋ねの発売の行為と頒布との関係でありますが、発売する、売るという行為はもとより、この頒布の行為は無償であると有償であるとを問いませんから、発売して多数の者に頒布いたしますと頒布の行為がここに成立するものと考えられるのであります。
  192. 北川定務

    ○北川委員 さらに第三條の二項の「政治上の主義若しくは施策を推進し、」とありますが、この施策とは一体どんなものをさしておるか、減税もしくは免税の運動をするために税務署に大勢の者が押しかけて行つた場合に、騒擾等の行為に及んだ場合に、本條に該当するやいなや、御回答を願いたいと思います。
  193. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。この政治上の施策を「推進し、支持し、」という、この主義の点は別問題にいたしまして、施策の問題でありますが、この政治上の施策という言葉は、一般的な問題を把握して表現しているものであると解するのであります。そこでお尋ねのような問題におきまして、百分の税金、個人的な立場において、その税金の減税を税務署に交渉に行つたというようなことは、毛頭これには入らないのであります。ところが一般的な立場に立ちまして、政府に対して、これこれの税金は非常に高いから、これを減税せよというようなことになりますと、政治上の施策を支持し、これに反対すみためというようなことにあたることになると思うのであります。
  194. 北川定務

    ○北川委員 次に第四條について伺いたいと思います。第四條の公安審査委員会は、法務府の外局でありまして、独立して職務を行うということに相なつておりますが、これは公安調査官が收集しました書類によつて、書面審理をなすことに相なつております。そういたしますと、公安審査委員委員は、これらの書面に拘束されるわけでありまして、積極的にたとい証拠を集めようとしても、集めることができないのであります。その結果、結局は調査官の收集した証拠のみによらなければならないことになつて、結局はロボツト化するおそれがあるのではないかと思います。証拠の收集を公安審査委員もなさせるという考え方の方が、妥当な判断ができるのではないかと思うのでありますが、御所見を伺いたいと思います。
  195. 關之

    ○關政府委員 その点につきましては、いろいろの條件を考慮いたしまして、このような制度にいたしますことが妥当であると考えて、このような立案をいたしたのであります。お尋ねの通り、公安審査委員会は書面の審理によりまして、決定をなす建前になつておるのであります。しかし問題は、要するに公安審査委員会に十分に当該団体の意見、弁解が公正に現われるかどうか、そこに当該団体の人権擁護に遺憾なきを期するために、その弁解、一切の証拠がそこに提出され得るように組み立てることが、一番の問題の要点であろうと私どもは考えたのであります。そのためにこの法案におきましては、その委員会の決定の前におきまして、公安調査庁の審理官が、十分なる証拠の收集につきまして、慎重なる手続をとることになつているのであります。これは第十條以下にそのことが規定してあるのでありますが、当該団体におきましては、構成員及び代理人を通じて五人のものが参りまして、審理官の前におきまして、一切の弁解をなし、一切の有利な証拠を提出することができるのであります。またこれにつきましては、当該団体は傍聴人をそこに立ち合せることもできるのであります。そこで審理官におきましては、一切の弁解、その他を調書に攻めまして、これを明確に記録しなければならないのであります。そしてまた審理官は、もし当該団体から要求がありますならば、一切の手持ちの証拠を全部、写し一通をつくりまして、これに交付しなければならないのであります。当該団体は、その証挺の交付を受けまして、十分に意見、弁解をなし、またこれを審理官に提出することができるわけであります。かようにして審理官が十分に審理を盡しまして、相手方の一切の証拠、こちらの証拠も一切そこに出し合いまして、そして十分なるところの意見、弁解を盡さしめることになつているわけであります。そしてかようにしてつくりました上、さらに当該団体につきまして処分の請求をいたしましたときには、その請求書の謄本をつくりまして、団体に送るのであります。団体はそれによりまして意見書をつくりまして、そして委員会に提出することができるのであります。かようにしてすべての証拠は全部委員会に集中されるのでありますが、ここで最も考慮いたしましたのは、この当該団体につきまして処分の請求書と同時に、公安調査庁長官は証拠を添付するのでありますが、その証拠はすべて当該団体に意見を述べる機会を與えたものでなければならないというふうに、構成してあるわけであります。かような審理官の慎重な手続を経て、すべての証拠がそこに出るのでありますから、さらにあらためて、この委員会のごとき小規模の機関におきまして、審理を重ねる必要もないじやないかというふうに考えまして、このようなシステムにしたのであります。委員会は行政機構の簡素化の趣旨に沿いまして、できるだけ手続を簡素にいたしたのであります。かようなことによりまして、当該団体の意見、弁解が、委員会に十分に表現できると考えまして、このようなシステムが妥当であると考えるのであります。
  196. 北川定務

    ○北川委員 第十二條によりますと、公安調査庁長官が処分の請求をしたときには、代理人として弁護士を選任することができるという規定に相なつております。しかしながら弁護士の活動し得る範囲については、少しも規定がないのであります。この場合調査官は、書類、証拠品の閲覧権がありますが、弁護人はさような権限がありやいなや、その他この手続において、弁護人が活動し得る範囲を示していただきたいと存じます。
  197. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。弁護人につきましては、第十三條に当該団体の役職員、構成員及び代理人は、五人以内に限り、この当該団体の意見、弁解を述べるものとして、審理官の前に出ることができる者の中に、弁護人は入るわけになるのであります。従いまして弁護人は、構成員、役職員と同じ立場におきまして、団体のために一切の弁解をなし、意見を盡し、証拠の提出をなすことができるのであります。記録の閲覧の問題でありますが、これについては、閲覧の程度においては、団体の方でも意見ないし弁解を立てる必要上困ることと思いまして、一歩進めまして、第十七條の規定を設けたのであります。これは請求があつたときには、調書及び取調べた証拠書類の謄本各一通を無料でこれに交付する。これは單なる閲覧以上に進んで、すべて原本の写しを当該団体に交付して、十分に検討を願つて意見、弁解を盡していただく、かようなシステムになつておるわけであります。人権の擁護に遺憾なきを期した考えでございます。
  198. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これは強制調査権を認めない建前上、かような規定になるわけなのですか。その関連はどうなのですか。強制調査権をこれは認めない建前になつておりますね。その建前からこういう弁護人のあたかも刑事訴訟における権限を制限するような感じを受ける規定になつておるが、その関係から、来ているわけなのですか。それとは別箇の問題……。
  199. 關之

    ○關政府委員 別にそこの点は考えておりません。
  200. 北川定務

    ○北川委員 弁護人の行い得る範囲につきましては、規則などによつて明らかにせられることが必要ではないかと思うのであります。ただいま政府委員の御説明になりましたのは、本人の場合を申しておられるようでありまして、特に代理人としてなし得る権限としては、ほとんど認められておるような規定はないように思うのであります。  次に調査官の調査権の範囲でありますが、これは司法職員の捜査権とは全然違つて、任意の調査に相なつておるのであります。任意の調査ではありますが、刑事訴訟等のような詳細な規定がないので、その範囲については、かなり問題になると思うのであります。たとえば任意の録取書をつくるというような場合、あるいは承諾を得て物件を捜索するような場合、かような場合なども想像することができると思うのでありまするが、これらの範囲について御説明を願いたいと思います。また司法警察官のなす任意の捜査との区別について御説明を願いたいと思います。
  201. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。公安調査官の調査は、すべて任意によるものであります。任意の調査の基準その他につきましては、この法案におきましては特別なる規定は設けておきませんでしたが、法案の性格にかんがみまして、実施の基準は、庁の規則その他において明確に定めまして、この準則に従つて施行させる予定でおるのであります。この任意の調査と刑事訴訟法上における任意の捜索との異同でありますが、根本的におきましては、両者は任意という意味におきましては同一の程度、内容を持つものであろうと考えておるわけであります。もちろんこの準則を明確に定めまして、範囲を逸脱しないよう、第二條の規定の精神におきまして、この調査を運用して遺憾なきを期したいと、かように考えておるのであります。
  202. 北川定務

    ○北川委員 最後に一点伺いたいのは、三十二條に領置物の処分に関する規定がなされております。四項には価値のない物件は廃棄すると規定されております。刑事訴訟では危險な物件については廃棄するという規定に相なつておるのでありまするが、本法においては価値のない物件は廃棄するというように規定されております。しかし価値があるかないかを決定するのは、調査官が決定するのでありまして、所有者等にとりましては、かなり価値のないものと見られても、重要な物件があると思いのであります。場合によつては所有権の侵害ともなるのでありまするから、この点については特に細心の留意が必要であると思うのであります。刑事訴訟と異なつた規定をせられた趣旨を伺いたいと思います。
  203. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。第三十二條の第四項の規定でございますが、規定の類似といたしましては、新らしい刑事訴訟法の第四百九十九條の第三項にならつたものでありまして、この中にも価値のないものはというふうに規定してありまするから、これをとつてここに持つて来たものであります。もちろんこの価値のないという認定は、公安調査官がいたすことに相なりまして、所有権の尊嚴に対しまする無視をしないよう、十分な考慮のもとにこの規定は運用しなければならないと存じておるわけであります。これらにつきましても嚴重な準則をつくりまして、あやまちのないことを期したいと考えております。
  204. 北川定務

    ○北川委員 終りました。
  205. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 古島義英君。
  206. 古島義英

    ○古島委員 私は、昨日も問題になつたそうでありますが、この法案の名前についてひとつ承りたい。こういう名前をつけておきますと、内容をあまり知らないものでも、どうも破壞活動の防止法だというようなことでは、何だか乱暴じみておる、しかも団体だけでなく、個人も一切含むかのごとく解される心配がある、これがためには内容をあまり知らずして反対をした組もあるらしく思う、労働団体が全部反対をする、文化団体が全部反対をする、あるいはその他の団体でも反対をする。しかもわずか二、三日前、二十四日でありますが、日本の学術会議が、こういう法案が出るならば、これは学問の独立と思想の自由を侵害するおそれがあるというので、反対の決議をいたしたのであります。中には正解しておる人もあるであろうが、まつたく名前に恐れて反対をする人もなきにしもあらずであります。名は体を表わすのでありますから、法案の内容がその法律の名前になるようにこれをしなくんばならぬと思うのですが、かような名前をつけたのはどういうふうな理由でありますか。
  207. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 お答えいたします。法案の名称につきましては、立案段階でいろいろな名称がつけられまして、これが外部に出まして、御承知の通りのような状態になつておるわけでありますが、最後の名前、破壞活動防止法案という名前は、本法案実体に即したものを名称として打出したというような考えから、こういう名称をつけたわけであります。
  208. 古島義英

    ○古島委員 破壞活動防止法ということにいたせば、破壞活動をする者はすべてこの対象にならねばならぬのであります。破壞活動をする団体が対象になるならば、暴力団体の防止法であるとか、あるいは破壞団体の防止法もしくは今までの団体等規正法というような名前でも一向さしつかえないのであるが、個人まで含むと見えるように出したのはどういうわけですか。
  209. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。さきに吉河局長からお答えいたしたような経過で、破壞活動防止法といたしたのでありますが、個人を含まないのに個人が含まれるように見えるような名前を規定したのはどういうわけであるかというお尋ねだと思いますが、この法案暴力主義的破壞活動を行つた団体を規制することと、暴力主義的破壞活動に関する刑罰法令の一部の補整になるわけであります。この団体の規制と刑罰と刑罰法令の一部の補整、すなわち三十七條から四十條までの規定でありますが、これを通じて両方の意味があるのでありまして、団体の規制と刑罰法令の補整、しかもそのいずれにも通ずるものが暴力主義的破壞活動となるわけであります。さような意味合いから、暴力主義的と入れますと、あまり長くなりますから、最後の字だけ持つて来まして、破壞活動防止法といたしたのであります。
  210. 古島義英

    ○古島委員 もしそういうことであるならば、なぜ罰則以下に個人のことを書いたのか、罰則以下に書かずに、その初めの方に書いてよかろうと思うのでありますが、刑罰法規を擴張いたすのであるから、こういうふうに書いたというが、刑罰法規の擴張は、むしろ罰則以下で、ほかの方にこれにつけ加えてやつてある。本法のこれに入れるというならばわかるのですが、罰則以下に入れるということはどういうわけですか。
  211. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。三十七條から四十條までの破壞活動に対する刑罰法令の補整の部分をここに入れましたのは、おおむね一般の立法の各條章の並べ方の例になつたのであります。すべて一般の法律におきまして、実体規定、手続規定などを並べまして、そのあとに罰則を設けることが例となつております。そこで本法におきましても、処罰規定最後に置きまして、第六章として、その中に二種類の罰則規定を置いたのであります。
  212. 古島義英

    ○古島委員 きようは政府委員の方だけで、法務総裁がおられませんから、私の質問は後日に讓りますが、調査官が調査をするのは、これは捜査の範囲だと思うのですが、捜査の範囲であるということになれば、証拠調べをいたします、もしくは証拠に価値がないというので取上げない、それから証人調べ等もできるはずであります。そういうことであると、むしろ調査官が実際は審査をいたして、その審査をしたものを審査委員会に形式的にかけて、公安審査委員会が決定するようなことに見えますが、調査官の調査は捜査の範囲を出ないのだと思う、この点はどうでございますか。
  213. 關之

    ○關政府委員 この章に規定してあります調査官の調査は、刑事訴訟法にならいますと、捜査の範囲だろうと思うのであります。しかしながら審理の手続は、公安審査委員会において決定をなすその一切の材料を整備し、そして相手方の意見、弁解を十分に聞き、一切の有利な証拠を全部整理いたしまして、調書を作成して、それを委員会に送付するのであります。その点は、單なる刑事訴訟法における捜査とはやや違う点があると考えるのであります。
  214. 古島義英

    ○古島委員 調査官が捜査の範囲で審査をするというのでありますが、これは調書までつくらねばならぬということになつておる。この調書をつくつて、その調書を添付して、公安審査委員長ですか、これに請求をする、こうなりますと、まるで処分の請求をする者と、その下僚、つまり長官の下におる連中であり、しかも長官の指名によつてやる連中、それが調べて、その調書がただちに今度は公安審査委員会の審査の材料になる、こういうことであつては、まるで公安審査委員会が調査をするのではなくて、調査官が審査をする、その結果をまつて、判断だけを公安審査委員会がやるように見えますが、その点はどうでございますか。
  215. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。お尋ねの趣旨は、公安審査委員会は公安調査庁から送られた書面に基いてだけで審査決定をする、自分は直接取調べはしない、こういう点はどういうものであるかという御趣旨と拜承いたすのであります。その点につきましては、お尋ねの通り公安審査委員会におきましては、公安調査庁から送付された証拠書類、調書及び当該団体から提出された意見書、これらに基きまして、その書面の審理によりまして審査決定をするのであります。直接の取り調べはいたさないのであります。このような構成を立てましたのは、結局公安審査委員会に十分に当該団体の意見、弁解が反映するようになすことが最も重要な点と考えて、公安調査庁の審理官が請求をする前に、第十條以下の規定によりまして、十分に当該団体の意見、弁解を聞く措置をとつておるのであります。すなわち当該団体に対しまして規制の請求をしようと思いますならば、あらためてその団体に対しまして審理の期日を通知しまして、団体の代表者五人に出頭を願つて、いろいろの弁解、証拠、各般のものの一切の提出を願い、同時にこちらのものの証拠も全部交付して、これを先方に渡して、検討の上、意見、弁解を述べていただく、かような一切の手続をいたしまして、十分に当該団体の意見と弁解とが盡されてこれを公安審査委員会に送り込みまして、審査委員会においてはそれに基いて決定をするのであります。かような事前の審理の手続が十分に盡されておりますから、それ以上この小規模な公安審査委員会において直接の調査、審理をいたすということは当を得ないものである。同時に事件の迅速なる処理という面から見ましても、このような措置でするのが妥当であると考えまして、かようにいたしたのであります。
  216. 古島義英

    ○古島委員 そこでますます疑いが起つて来るのであります。公安調査庁長官が処分の請求をしようという考えを持つたときに、自分の下僚であるこの審理官に調査させて、そうして調査官が一切の書類を整えるというのでありますが、いずれにいたしましても、処分請求前であります。処分請求前であるからいわば刑事訴訟でいうと起訴の前である。起訴の前に証人調べまでして調書をこしらえて、そうしてその調書なり、証拠調べなり、その結果が公安審査委員会にかかる。公安審査委員会はその調書及び証拠に基いて決定をするというのであるから、判断をするのは公安審査委員会であるが、審理をするのは調査官だということになつて来る。そういたしますと、捜査の範囲において一切の証拠調べをする、しかも立会人、弁護人を置く、こういうことになるのですが、これではいわゆる審理官がむしろ捜査をして、捜査の結果を告げるというだけになつて、判断だけは公安審査委員でやつてくれ、私の方で調べたのはこれだというだけで、それでは正確なことはできないと思いますが、これで正確なことができますか。
  217. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。この法案規定の第十條以下に規定するような公安調査庁の審理官が相手方団体に対する調べをいたしまして、意見、弁解、各種の証拠一切の書類の提出を願う、そうしてそれを委員会に処分の請求書と同時にこれに添付して送り込むわけであります。そこで委員会といたしましては、その出た書類をもとにいたしまして、それを十分に調べまして、そうしてはたして調査庁の請求が理由ありやいなやを審査して、理由ありとすれば理由ありの処分の決定をする、こういう段階になるわけでございます。そこで私どもといたしましては、すでに公安調査庁の審理官において十分なる証拠を集めたのでありますし、それらの取調べました証拠、当該団体の弁解、意見書、それらがそろいますれば、これらを委員会におきまして審査いたしますならば、十分に事実の真相の認定には足るものであると考えます。
  218. 古島義英

    ○古島委員 そこであなた方の立法者の考え方がまつたく今の時代に逆行しておるのであります。御承知の通り刑事訴訟では判断をする者には予断を抱かせないということの規定があり、しかも予断を抱くような書面を添えても悪いということしなつておる。これはその判断をして誤らせないというつもりなんです。ところが捜査をする範囲の人たちが、いわば起訴前であるから起訴の材料をつくる、その起訴の材料をつくつて起訴をいたす。その材料だけで判断をするということになれば、あたかも形は違うのであるが、検事が警察で調べたもの、検事が調べたものをもつて判事にこれだけの範囲で判断をしろということと同様であります。そうすれば意見、弁解等があると言つても、意見、弁解の調書をつくるのはだれかというと、審理官がつくる。審理官がつくつたその調書というものは今これに向つて処分をしてやろうという考えを持つた公安調査庁の長官が命じ得る。いわゆる指名して下僚にこれを命ずる。そうすればその請求をしようという者と調査をする者とは同一人である。判断をする者だけは別におつて、その審査をしようという人の心持が必ずこの調書には映ることと思う。そうすれば公平な判断というものができないと私は思う。しかも刑事訴訟で特に予断を抱くような書類を添えてはいけない、こう禁止をしたのは、まつたく人民が自分の自由の発言ができ、また自由の弁明もできる、こういうふうな意味からやつたのであります。捜査官がただちにこれをこしらえてその調書に基いて、その証拠に基いてやれというようなことは、誤つた観念だと思う。そこで審理官は審理官で捜査の範囲においてやる。そしてその範囲においてでなく、今後はそれを材料とし、あるいはまたこの被嫌疑団体の方でも弁明をして、再び今度は公安審査委員会がこれを審査する。こういうことにしなくんば公平な判断はできない。公安審査委員会に再び審査させるというようなことにこれはできぬものかどうか。
  219. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。この審査決定のことを進めるにあたりまして、お尋ねのような構成をとることももちろん考えられる一つの案と思うのであります。ところが一つにおきましては、この審査決定のことが、そうしてまた行政機構簡素化という線もございまして、公安審査委員会の構成はできるだけ簡素にしなければならない、かようなことが第一の要請と相なつてつたのであります。そこでもし公安審査委員会におきまして完全なる直接のヒアリングをいたしますとするならば、第十條以下の事前の審理は、これはほとんどその要を見ないのであります。そこで公安審査委員会の簡素化、行政機構簡素化の線に沿いましての要請にこたえまして、それはできるだけ簡素化して、新しき職員の増員はしない。かような観点からしまして、その要請を満たす意味におきまして、第十條以下の公安調査庁の審査官が十分な審理のできるように規定いたしたのであります。なお調査書につきましては第十六條の二項の規定によりまして、決して審理官が独断の意思ではつくれないようになつておるのであります。それは「調書については、第十三條の規定により出頭した者に意見を述べる機会を與え、意見の有無及び意見があるときはその要旨をこれに附記しなければならない。」ということになつておるわけであります。調書は必ず長官が聞いた通りに記載いたしまして、なおこれに相手方の意見、弁解の機会を與え、意見があるときは付記しなければならないということにしてございますから、十分に調書の公正は確保されておると思うのであります。かような規定によりまして、公安調査庁の審理官の審理によりまして、十分なる意見、弁解、証拠の提出が可能でありまして、かような手続は最も適法な手続であります。かような手続によつて集められた証拠書類による判断によつて審査委員会は事を決定する。かような点で憲法規定する人権の擁護、尊重という精神に合致するものであると考えております。
  220. 古島義英

    ○古島委員 あなた方は高級官吏でありますから、あまり事情は知らないかもわかりませんが、意見、弁明等を聞いて調書をつくるから、その調書が正確なものであるというような前提でお話があるようであります。ところが警察で聞取書を書きます。これは必ず後に読み聞けたりということを書く。読め聞けたが、それを承諾したからというので調書をしまいます。ところが私らも折節警察に参り、そうして普選運動当時においては六十何回警察にひつぱられておつたのですが、この当時から——今は大分進んでおりますが、今でさえもさばを読むとか勧進帳を読むという調書がはなはだ多い。その被疑者なり何なりが言うことをそのまま書きません。言わぬことを書いて、読み聞けるときには形式的に読み聞けて、書いてないことを読む。もしくは書いてあつても調べる方に不利な方は読まない。いわゆる調べる人に不利益な部分は読まない。そうして読み聞けたということで調書をこしらえる。こういうふうに、審理官が調書をつくるにいたしましても、とにかくこれを処分しようという考えを持つておる調査庁長官が指名した人である。いわゆる処分しようという人が指名をした審理官であり、その審理官はいわゆる上長官に言われるのです。これで正当なる審理ができると思いますか。正当なる調書ができると思いますか。私は調書が折節歪曲されるような心配があるように思うのです。こうなりますと、審理官は調査をするのではないのであります。ただ請求する前提として請求の材料を集めるだけだから、この人たちはかえつて捜査の範囲で、そうしてこういう審理、証拠調べ等はしないことにして、証拠調べ等はむしろ公安審査委員会をして調べさせるということにせねば公平を失すると思うから、この質問をするのですが、それはどうでございますか。
  221. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。ただいま申し上げました調書は、すべて第十四條に規定いたします傍聽人の面前において行うことと相なるのであります。当該団体の五人以内の立会人、そうして第三項の新聞、通信または放送事業の取材業務に従事する者は、手続を傍聴させる。かような公開の取調べの場所におきまして調書をとりまして、そうしてその調書を当該団体の代表者に示しまして意見があれば意見を述べる。そうしてこのことの有無及びその意見の要旨をこれに付記する。かようなシステムに相なつているわけであります。従いまして私はこの傍聴者の面前におきまして、公安調査庁の審理官が調書を見せ、そうして意見があればそれをとる。これは十分にその公正が保障されるものでありまして、ことさらないことをここに書くとかということは、おそらくかような傍聴公開というような面前におきますれば、考えることはできないことであると思うのであります。
  222. 古島義英

    ○古島委員 これはまだ留保いたしておきましよう。そこで傍聴人の面前というが、傍聴人をあなた方はどう思つておるのですか。傍聴人を制限いたしまして、立会人、新聞、通信または放送事業の取材業務に従事するものだけを傍聴させる、こういうわずかの範囲に傍聴人を限つておいて、しかもこれが傍聴人の面前だと言えるのですか。立会人は傍聴を許されぬでも、これは立会人である。当然これは傍聴ができるわけです。そばにおる。しかも立会人までも、ことさらに傍聴人の中に入れる、いわゆる傍聴を立会人に許すというような規定をいたしておりますが、どういうわけでありますか。これはいろいろな人に聞かせるのだ、いろいろな人に傍聴させるのだということのごまかしの規定です。どうして立会人を傍聴人の中に入れたのですか。
  223. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。第十四條の規定におきまして、審理の場合においての傍聴をこの程度に限りましたのは、この破壞活動の審理の事務の内容に照しまして、公正迅速に事を処理いたしまするのには、この程度に傍聴を制限いたしまして、しかもこれで十分にその公正が担保されると考えたのでございます。
  224. 古島義英

    ○古島委員 私の聞くのは、そこではなくて、立会人というものは審理に立ち会う。審理に立ち会うものを傍聴人と特にここに入れた、立会人に傍聴を許すとやつたのは、どういう意味かというのです。立会人であるから、出て行けと言われても、審理の立会人だから、出て処くわけに行かない。その審理の立会人を傍聴人の中に入れたのは、傍聴人が新聞記者である、あるいは通信員である、もしくは放送業務に従事しておる人であるとかいうことに制限してしまうと、いかにも狭いように見えるから、それをごまかして、立会人というものまでここに加えたのではないか、そこに別に意味があるか。
  225. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。この十四條におきまして、当該団体は五人以内の立会人を選任することができる。かように、立会人というふうに規定いたしたのは特段の意味はないのであります、要するに、当該団体の側におきまして、選任した五人の者が、団体の側におきましてその事件の審理の傍聴ができる、こういう意味におきまして規定したものでありまして、立会人という意味に深い意味はないのであります。
  226. 古島義英

    ○古島委員 あなた方の法文の書き方は、たいがいそういうふうになつておるようです。十二條でございますか、「前條第一項の通知を受けた団体は、事件につき弁護士その他の者を代理人に選任することができる。」こうなつておる。これは「弁護士その他の者」ということになれば、何人でも代理人にできるわけです。言葉をかえて言えば、「事件につき代理人を選任することができる」と書けるわけです。ところが「弁護士」というようなものを書き、「その他の者」というふうに文章を飾つたことは、弁護士がつけられるのだということをことさらにてらわんがために、こういうようなよけいな文字を使つたので、前條第一項の通知を受けた団体は、代理人を選任することができる、と書けば、文字も少くなつて同じ意味である。ところがことさらにこういうふうな「弁護士その他の者」とやつたのは何か別に意味がありますか。
  227. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。「弁護士その他の者」とここに表現いたしましたのは、別に深い考えをもつていたしたものではありません。あるいは弁護士ができるかどうかというような問題が出て来ると困ると思いまして、弁護士のごとき法律家がまず代理人になることを明らかにいたしまして、その他一切の方々がこの代理人になることができるということを明らかにする意味におきまして、第十二條にかような表現を用いたのであります。
  228. 古島義英

    ○古島委員 くどく言い返すことはめんどうですが、代理人を選任することを得ということになれば、まず大体において成年以上の男女子、これはすべて代理人になれる、制限がないのであります。ところがことさらに「弁護士その他の者」などと入れた——弁護士というものを入れればいかにも公平らしいというのでこういう文字を使つたので、実際は「代理人を選任することができる。」とやつてよろしいやつを、ことさらにこう書いたのだから、これは当然まず修正のときには削られる文句だと思いますが、あなたの方で入れるときに何か別に考えがあるならば、これを考慮する余地があると思つたから承つたのです。何も意味はありませんか。
  229. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。ここに「弁護士その他の者」と表現いたしましたのは、前回申し上げたような意味におきまして書いたものでございます。そのほかの意味はございません。
  230. 古島義英

    ○古島委員 そこで私は言葉をかえて申すのですが、そういう意味合いで書いたというならば、まつたく無用な文字であり、それから十四條のこの立会人もまつたく無用な文字だと思いますが、根本において捜査範囲の人たちには捜査だけをさせる。この処分の決定をする人には処分の決定をすべくみずから親しく取調べをする必要がある、これを入れかえるためには相当の時間がかかると思うのでありますが、一切合法的な審理をさせるために、公安審査委員会をして一切の審理をさせる。捜査する審理官は捜査の範囲だけにする。証拠調べ等は一切公安審査委員会でやるというようなことに組みかえる必要があると思うのですが、組みかえをして出すために、この法案全体を一ぺん撤回をするお考えがありませりんか、法務総裁でなくんば、このことはちよつとお答えできないと思いますが、一応これを撤回して組みかえて出したらばよかろうと思いますが、御相談をする考えはありませんか。
  231. 關之

    ○關政府委員 お答えいたします。お尋ねの御趣旨は、法務総裁にお取次いたしまして、御趣旨のあるところをよくお伝えしたいと思います。いずれ大臣の方からこの点につきまして御回答があることと思います。
  232. 古島義英

    ○古島委員 それでは私は六日以後に……。
  233. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 関連して……。今古島委員の説明の中で重大なことで関連事項がありますから、お聞きいたしておきたいと思います。実はこの点がはつきりしないのでそういうような問答になつたのじやないかとも考えられます。この二十六條に基きまして、公安調査官は「必要な調査をすることができる。」、この「調査」というのはどの程度のものですか、これが明確にならぬと古島委員意見がわかつて来ないと思うのであります。古島さんのさつきのお言葉を聞いておりますと、この調査の中に、調査官が第三者からの調書をとる、その調書が証拠となつて出やしないか。そうするとそこに危險性があるのです。そういうような内容も含まれておつたのじやないかと私は推測いたしたい。だから特にお聞きしておくのでありますが、この「調査」の中には調査官が第三者から情報を聞く、聞いた情報を書類にしておく、その書類を証拠として出すようなことまでやれるのかどうか、ここをひとつお聞きしたいのであります。
  234. 關之

    ○關政府委員 第二十六條のこの「必要な調査」という中には、それが任意である限りにおきまして、お尋ねのように第三者から聞きましたことを調書にとる場合もあることと存ずるのであります。そうしまして、調書にとりましたものはすべてそれをもし証拠にいたそうと思いますならば、第十條以下の審理の手続に従いまして、相手方団体にも示し、第十七條によりましてもし請求がありますならば、その調書の写しを団体に交付して、十分相手方の意見、弁解を聞いた、そういうふうにしてやつた証拠を委員会に処分請求書とともに送付する、かような手続に相なるのであります。
  235. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 本日の審議はこの程度にとどめます。     —————————————
  236. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 この際理事補欠選任についてお諮りいたしたいと思います。  本日、理事の鈴木義男君が本委員辞任せられましたため、理事が一名欠員となりました。つきましてはこの際その補欠選任を行いたいと思いますが、これは先例によりまして委員長において指名するに御異議りませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なしと認めます。  よつて石川金次郎君を理事指名いたします。  次会は明後二十八日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十七分散会