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1952-04-18 第13回国会 衆議院 法務委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月十八日(金曜日)     午前十一時四十分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君    理事 田万 廣文君       安部 俊吾君    角田 幸吉君       松木  弘君    眞鍋  勝君       山口 好一君    大西 正男君       加藤  充君    田中 堯平君       世耕 弘一君  出席政府委員         刑 政 長 官 清原 邦一君         検     事         (検務局長)  岡原 昌男君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月十七日  破壞活動防止法案内閣提出第一七〇号)  公安調査庁設置法案内閣提出第一七一号)  公安審査委員会設置法案内閣提出第一七二  号)  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一二〇号)  (参議院送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約  第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案(内  閣提出第一四一号)     —————————————
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案を議題といたします。  質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。大西正男君。
  3. 大西正男

    大西(正)委員 この法律案の第一條合衆国軍隊」の意味でありますが、この意味関連をいたしまして、まず二、三お尋ねをいたしますが、アメリカ軍軍警察といいますか、そういうものの種類をお示し願いたいと思います。
  4. 岡原昌男

    岡原政府委員 アメリカ軍におきまして警察権を持つておりますのは、いわゆるMP、ミリタリー・ポリス、それからAP、エア・ポリスSP、シヨア・ポリスCID、これはたしかクリミナル・インヴエステイゲーシヨン・デイヴイジヨンだと思います。MP陸軍関係軍警察AP空軍関係軍警察SP海軍関係軍警察CIDはそれら全部を通じまして犯罪捜査を担当する部局でございます。
  5. 大西正男

    大西(正)委員 そうしますとCIDというのは、陸海空軍のどれに属するものですか。
  6. 岡原昌男

    岡原政府委員 詳しいことはわかりませんが、プロヴオスト・マーシヤルの下にMPと並んである機関のようであります。
  7. 大西正男

    大西(正)委員 すべて日本語で話していただきたいと思います。そのCIDというのはやはり軍隊なんですか、どういうことなんですか。
  8. 岡原昌男

    岡原政府委員 ここに言う軍当局ということになろうと思います。
  9. 大西正男

    大西(正)委員 軍当局というのはどこにあるのですか。
  10. 岡原昌男

    岡原政府委員 行政協定の中に、軍当局という文字が使つてございます。
  11. 大西正男

    大西(正)委員 このどこにございますか。
  12. 岡原昌男

    岡原政府委員 たとえば、行政協定第十七條第二項の「合衆国軍事裁判所及び当局」というふうな文字で表わされております。
  13. 大西正男

    大西(正)委員 そうするとCID構成員は、軍隊構成員ということになるのでしようか。
  14. 岡原昌男

    岡原政府委員 さようなことになると思います。
  15. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 今の点について、刑事特別法一條の第二項にいう「合衆国軍隊」とは「アメリカ合衆国陸軍空軍及び海軍であつて云々としてありますが、これに当てはめて説明されて明らかにしていただきたいと思います。
  16. 岡原昌男

    岡原政府委員 ここで申します合衆国陸軍に入ることになります。
  17. 大西正男

    大西(正)委員 そうすると最初の御説明はそれでは足りなかつたわけですか、どういう根拠に基いてそれをやるのですか。
  18. 岡原昌男

    岡原政府委員 あちら側の現在の建前が、MPCIDが並びましてプロヴオスト・マーシヤル憲兵司令官と申しますか、その下に立つておりまするけれども、現在の権限はCIDがすべての軍の要員に対する警察権を行使しておるようでございますので、それがおそらくそのままここにつながつて行くのじやないか、かようなことから最初申し上げた次第であります。
  19. 大西正男

    大西(正)委員 それでは次に法律一條の第四項軍属関連してでございますが、「随伴するもの」、という言葉がございます。この随伴するものにつきましては、政府説明書によりますと、「戰時における従軍新聞記者赤十字職員等を指す。」こういうことになつておりますが、そうしますと戰時でありますから、普通の場合こういうものはないわけでありますか。
  20. 岡原昌男

    岡原政府委員 この点は実は戰時国際公法の本の中からとつて参りました関係上、こういうふうな表現なつておりますけれども、実際問題としてかようなものが軍属資格でこちらに入るかどうかという問題は、個々具体的な問題になりますので、今後具体的な事件といいますか、人ごとにきめられることに相なると存じます。
  21. 大西正男

    大西(正)委員 そういたしますと、随伴しておるものというものに想像され得るものは、この説明書にありますものを含めて、ほかにどういうものがございましようか。
  22. 岡原昌男

    岡原政府委員 大体において軍人に非常に近い任務を持つて、その資格を與えられてこちらに入つて来るものになつて来ると思います。具体的には実は向う側と協議中のところでございますが、私どもの方といたしましては、なるべく何でもかんでも軍属だということで入つて来ないように何とか防戰しようかと考えております。
  23. 大西正男

    大西(正)委員 そうしますと、それは政府との間で具体的に交渉して、今後きめられるということになるわけでありますか。
  24. 岡原昌男

    岡原政府委員 全般的な資格をどの程度まで與えるかという問題は、外務当局におきましていろいろ心配しておるようでございますが、いまだ最終的な結論に達したというふうにはまだ承つておりません。
  25. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 この四項に「アメリカ合衆国の国籍を有する文民」と書いてありますが、この文民意味日本国憲法で言う文民と同じ意味に使用されておるのですか。
  26. 岡原昌男

    岡原政府委員 いわゆるシヴイリアンという言葉でございますが、軍人にあらざる者というふうな意義に解釈しております。
  27. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 それはいつを基準にして……。
  28. 岡原昌男

    岡原政府委員 問題が起きましたときを基準にいたしまして判定するわけであります。
  29. 大西正男

    大西(正)委員 次に第二條関係でありますが、本條とそれから刑法あるいは軽犯罪法、そういつたものとの関係はどうなるでございましようか。一応この但書によりますと、「刑法に正條がある場合には、同法による。一こうなつてはおりますが、その関係を詳しくお聞きしたいと思います。
  30. 岡原昌男

    岡原政府委員 刑法におきましては、御承知通りその第百三十條におきまして、「故ナク人住居ハ人看守スル邸宅建造物クハ艦船ニ侵入シ云々ということになつております。この「人ノ住居ハ人看守スル邸宅建造物クハ艦船」というのが一つの重要な構成要件なつておりまして、こちらの本法案の第二條におきましては、その他全般的に「合衆国軍隊が使用する施設又は区域」その中にあつて「入ることを禁じた場所」というのが要件なつております。すなわち客体が違つておりまして、たとえばこの施設区域内におきましても、その中にまた住居あるいは看守する建造物があるという場合がございますので、さような場合には刑法の百三十條の方が優先的に適用されるということでございます。  なおこれを軽犯罪法との関係でございますが、軽犯罪法一條第三十二号、この中に「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」という文字を使つてございますが、この田畑はともかくといたしまして、「入ることを禁じた場所」という点で、本法案とダブつて参ります。この点は本法案の方が特別法というふうに解釈いたします。いわゆる法條競合特別関係というふうに了解しております。
  31. 大西正男

    大西(正)委員 この法案でいわゆる出入を禁止された場所というものは、われわれ、国民にとりまして、そういう場所認識の点で非常に重大な問題を生ずるのでありますが、そういう場所に対しての出入を禁止されておるということを明示される方法については何かアメリカ当局との話合いがありますか。そうしてまたどういう方法によることになつておりますか。
  32. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点はあちら側といろいろ協議をいたしまして、日本国民が知らざる間にさような違反なつては困るというので、立入り禁止場所につきましては、この境界に日米両国語をもつて大体左記の趣旨のような標識を立てる。それは合衆国軍隊の使用する施設または区域であるということを書きまして、そのほかに日本国刑法あるいは刑事特別法によつて許可なくして入ることを禁止するという明文をそれに添える、そうしてその施設及び区域を明らかならしめる、かような打合せになつております。
  33. 大西正男

    大西(正)委員 不幸にしてそれを知らずして、あるいはまた気づかずして、そういう明認方法が全体としてありましても、部分的に気がつかなくて入つた場合、禁止されるということを知らないでその場所に入つた場合はどうなるか。
  34. 岡原昌男

    岡原政府委員 それはいわゆる犯意なしとしてもちろん事件には相なりません。
  35. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 旧軍事塞地帶法に関する日本判例は、国民にそういう禁止区域を調査識別すべき義務があるから、その懈怠による過失は処罰すべきものであるという趣旨判例があるように聞いておりますが、この場合にはその判例適用なきものと政府行政解釈をなさつているのかどうか、御意見を承りたいと思います。
  36. 岡原昌男

    岡原政府委員 旧要塞地帶法におきましてさような判例がございまして、これをもつていわゆる違法の、法律不知である、かような解釈有罪とした事案があることは承知いたしております。但しかくのごときは要塞地帶内容が深く広く国民の間に浸透した場合において、自然犯的になつた場合に初めて有罪でありまして、本件のごとくいわば行政取締り的なものにつきましてはさような判例適用がない。つまり一般刑法の原則に従いまして、法律不知でなくして事実の不知認識なしということで、事件にならない。
  37. 佐瀬昌三

  38. 岡原昌男

    岡原政府委員 従いまして過失犯は処罰されるということはございません。
  39. 大西正男

    大西(正)委員 そうしますと、法律のでき上る当時においては、そういうことは一般国民が急に認識しないであろうから処罰されない。しかし一般的に次第に時がたつて来て、そういう認識ができて来れば、処罰する場合があり得るのですか。
  40. 岡原昌男

    岡原政府委員 この点はいわゆる行政犯並びに刑事犯についての、あるいは自然犯とかそういうふうなものとの区別の問題でございまして、学説上非常に争いのあるところでございますけれども、実際問題として処理する場合におきましては、さような区域施設というものが、国民の間にいかに膾炙しているかということが問題になろうかと存じます。それによつてそれが自然犯であるかあるいは取締り犯であるか、つまり行政犯であるかという区別が出て来るのでございまして、それはその当時の情勢によつて違うのでございますけれども、現在少くとも当分の間におきましては、さような議論は起きないものと私は解釈いたしましたので、先ほど申し上げた通りの御返事を申し上げた次第でございます。
  41. 大西正男

    大西(正)委員 おつしやいます通り、その点には相当異論があると存じますが、この程度にとどめておきます。  次は行政協定の第十七條第四項によりますと、日本法令についてアメリカ側有罪の判決をしたときは、処罰する意思と能力を有することを約束しているのでありますが、これに関してアメリカ方側根拠法令といいますか、そういうものを具体的に説明願いたいと思います。
  42. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点につきましては、実体法規として、資料にお配りいたしました一九五〇年五月十日付の米国統一軍法、その百三十四條に一般的な規定がございます。これによりまして、「本法つまり統一軍法でありますが、「本法に特別の規定がない場合においても、本法適用を受ける者が軍隊における善良な秩序及び紀律をみだすすべての行為若しくは不作為、軍隊威信を害すべき性質のすべての行為又は死刑にあたらない犯罪を犯すときは、その罪の性質及び軽重に従い、一般軍法会議特別軍法会議又は簡易軍法会議の審理に付し、その自由裁量権により罰するものとする。」という條文がございまして、その説明といたしまして、米国軍法会議提要二百十三項に「米国の州法や外国法違反となる行為は「善良な秩序及び紀律をみだす行為若しくは不作為又は軍隊威信を害すべき性質行為」に該当し、右第百三十四條の第一又は第二のクローズの下に処罰し得る」と書いてございます。従いまして日本法令は、この外国法令でございますから、百三十四條の解釈米国軍人もこれを遵守しなければいかぬ、かように相なると存じます。
  43. 大西正男

    大西(正)委員 なおこの点につきましてはあらためて質疑いたしたいと思います。  次にこの法律案の第五條ですが「その他の物」というのはどういうものを意味するのでございましようか。
  44. 岡原昌男

    岡原政府委員 この第五條にいいまする「その他の物」と申しまするものは、合衆国軍隊に属しかつその軍用に供し、その重要度におきまして兵器彈薬糧食被服等に対比すべき程度物件を申します。これをさらにこまかく書くことも考えてみたのでございまするが、はたしてこの程度のものでほかにいかなるものがあるかということについて、はつきりわかりませんでしたので、一応「その他の物」という表現をもちまして、この條文をつくつたのであります。大体、たとえば車両といつたようなもの等がその主たるものであろうと存じます。
  45. 大西正男

    大西(正)委員 適当の機会に明確にしていただきたいと思います。この車両その他そういう物件は、アメリカ軍隊アメリカから持つて来れば問題はないでしようが、日本でそれをつくつてアメリカ軍が使うという場合が予想されます。そういう場合に、日本工場にその品物を注文してそれができ上る過程があるわけであります。そしてまたアメリカ軍に引渡す過程もありましようが、そういう場合いかなる時点においてこのその他の物件に入るわけですか。
  46. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 なおあわせてこの際、「軍隊に属し」という意味は、法律的な所有権、あるいは占有権の有無によつて決定するのか、あるいは事実上の関係で決定するのかをも、関連して御説明願いたいと思います。
  47. 岡原昌男

    岡原政府委員 たとえば民間の軍需工場等発注したような場合におきましては、それが完成いたしましても、軍隊に引渡される前は、いまだ軍隊に属するとは言い得ないものと思います。また現に軍用に供するというふうに考えておりません。なおただいまの所有権占有権の問題でございますが、この属すると申しますのは、その所有に属する場合はもちろん入りますし、それから軍隊において借用しているものも包含する趣旨でございますけれども、それは事実関係を見まして、現にさような物件が軍において使用しておるというふうなものが先立つのでございまして、たとえばアメリカ軍において所有いたしましても、日本予備隊において借用しておるというふうなものはこれに入らぬ、かような趣旨解釈いたしております。
  48. 大西正男

    大西(正)委員 きようはこの程度にいたします。
  49. 佐瀬昌三

  50. 加藤充

    加藤(充)委員 今大西委員の方から質問がありました点に関連して、まずお尋ねいたします。これは第六條の問題にも関連があり、第五條にも関連がありますが、軍需品発注が直接調達方式をとる場合と、間接調達方式をとる場合と、その受注工場機械器具設備あるいはその工場生産品というようなものについては、いろいろ関係が異なつた点が出て来るのではないかと思います。とりわけ軍管理工場というようなところの機械器具設備並びに製品というようなものと、第五條ないし第六條の軍隊に属する、あるいは軍用に供する物件というような点で法律関係はどうなりますか。
  51. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいま御質問発注物件が、直接調達方法によつて納まると、あるいは間接調達方法によつて納まるとを問わず、受注工場現実にその物件を軍に引渡す以前におきましては、刑法第二百六十一條一般器物毀棄の例によつて処断することになりまして、この條文適用はないと存じます。なお第六條との関連におきましては、ちよつと御質問趣旨がわからないのでございますが、さような物件発注過程に関する情報をとつたらどうなるかという御質問かと存じますが、さような場合におきましては、それが公になつていないという條件並びに本法別表に該当する事項であるという場合には、六條違反の問題が生じまするけれども、その他の場合につきましては、さような問題は生じないのでございます。
  52. 加藤充

    加藤(充)委員 私は管理工場の例についてお尋ねしたのであります。管理ということには、いろいろ段階があり程度がございまするけれども、実際上赤羽日鋼工場などを視察した参議院方面の報告の一部を聞きますると、これはもう管理ということが事実上の占有というような程度にまで達する、占有してさらに日本人あるいは日本の経営、施設というようなものの運営について、さらに管理が加えられているというような場合になつて来ますと、引渡しというような問題が非常にデリケートになつて参ると思うのであります。それでそういう工場製品の問題はましてのこと、そういう工場機械器具設備というようなものまで、結局ここにいう軍用に供する物件という取扱いを受けるのではないか。
  53. 岡原昌男

    岡原政府委員 御質問赤羽におきまする軍管工場が、いかなる態度をとつたか、私詳しくは存じておりませんけれども、おそらく、お話によりますと、それは現に占領下であつて、軍において軍工場としてその内部を見られることを拒絶したのじやないかと想像いたされます。この点ははつきり責任をもつて申し上げかねますけれども講和発効後におきましては、その点は性質を一変いたしまして、さようなことはなくなるものと私は存じます。従いましてその発注物件が、その工場から出て現実に軍に納まる以前におきましては、この法案が働くという余地がなくなるものと私は解釈しております。
  54. 加藤充

    加藤(充)委員 その点に関する行政協定規定の仕方に、米軍の掌握した力というものは、それを権利権力権能というような表現で表わされております。ただいま占領下でという言葉がありましたけれども、これは行政協定によつて講和発効後も——今申し上げたような表現を持つた具体的な力を持ちました米軍は、講和発効後におきましても、行政協定占領下と同じ具体的な、同時に法律上の力、すなわち表現すれば権利権力権能をもつてすることがきる。われわれはこの点で、占領下においてはそうだつたが、講和発効後においてはそういうことはあり得ないと思われるというようなことでは、それは一応の希望的な観測にすぎないのであつて権利権力権能の実行ということは、占領下とまつたく異ならないことに相なるはずだと思うのであります。従いましてただいま赤羽日鋼の例を引いたのでありまするが、それは占領下の一特例にすぎないということでは、われわれは満足できないのでありまして、われわれが抱いている危惧、恐怖というものは、払拭されないのであります。その点についていま少しくはつきり願いたいと思います。
  55. 岡原昌男

    岡原政府委員 たとえば行政協定の第三條におきまして、御指摘通り権利権力及び権能」というふうな言葉を使つておりますが、これは施設区域あるいはその隣接の付近の問題でありまして、しかもそれは本法案五條とは直接の関係はないことになるのでございます。本法案五條は、兵器彈薬糧食被服等客体に対しまして、損壊あるいは傷害の行為があつた場合でございまして、その施設内にありましたような場合には、あるいはさようなものが軍用に供しておられる場合もあるかもしれませんけれども、それとこれとは観念的には別問題でございます。なお本法案五條適用を除外されましても、刑法の二百六十一條一般規定としてかぶることは、これまた御承知通りでございます。
  56. 加藤充

    加藤(充)委員 向う権利権力権能の問題の内容でありますが、一定の区域内になくても、一つ工場施設、あるいは一つ工場施設関連のある、それを中心にした数個の工場施設というようなものが、文字通り向う軍施設というような指定を受ける、あるいはそういう取扱いを受けるということになりますれば、結局それらの工場は、軍の区域内になくても、一つの軍の施設として、今申し上げたような問題が具体的に発生するのではないか、しかも区域施設設置の問題については、何ら米軍についての制限がないのでありますから、こういうことになりますると、赤羽日鋼の一、二の事例にとどまらず、全日本の目ぼしい軍需産業、しかも総力戰というようなことになつて行きますれば、直接軍需品生産工場にあらざる施設あるいは工場におきましても、何らかの軍の用に供する物をつくる、あるいは物をつくるための施設として制約を受けて来る、手も足も出ないのではないか、こういうことになる危險が多いと思うのですが、その点どうなんですか。
  57. 岡原昌男

    岡原政府委員 この行政協定に基きまして、いかなるところが軍の施設または区域として指定されるかは、目下私どもには知らされておりませんけれども、着々作業班において準備中のことと存じます。もしもこの施設内に一つ工場があつた場合におきましては、その工場内における物件は、本法案五條に該当する場合が多くなるのではないか、かように解釈しております。
  58. 加藤充

    加藤(充)委員 そうなつて来ると、てんでこれはもう問題にならないほどばかげた、しかも苛烈な要請を、日本国民アメリカ軍のために押しつけられて来るということになつて参ると思うのであります。私はこれはとんでもない法律だと、こう言わざるを得ない。それで大西委員質問関連してもう一つお尋ねいたしますが、先ほど行政協定條文を引用されて、アメリカ軍要員日本法律を犯して犯罪をやつて日本人が被害を受けた、あるいは日本人所有その他の権利を有する物件がそのために損害を受けたというような場合に、アメリカ加害者犯罪人アメリカにおいても処罰し得るのだという話になつたようであります。なるほど配付されました資料関係法令集の二について見れば、御指摘のような條文があります。しかし残念なことには、ここに処罰し得るということになつているだけの話であつて、その刑罰というものは具体的にどういうものになるのかが明瞭に示されておりません。俗に百両の返済に編みがさ一つというような言葉がありまして、処罰し得るというだけでは日本人の法的な満足心ですか、感情としての満足は得られないと思うのでありまするが、その点についてひとつ御答弁を願いたい。
  59. 岡原昌男

    岡原政府委員 アメリカ統一軍法におきましては、大体日本の刑事罰的の違反規定はほとんど全部網羅されてございます。すなわち逆から申しますと、たとえば簡單な例を申しますと、人を殺したという場合には、日本法令にも違反しますが、同時にアメリカ法令にも違反する。かようなことでここで特に問題を提起しましたのは、アメリカ法律で手のつけられないもので、日本法律にはかかるといつたようなものはどうするかという問題になろうかと思います。さような場合におきまして、アメリカ統一軍法を補充するものとしてただいまの百三十四條があるのでございまして、さような場合には、日本法令趣旨に従つて処分する、かように相なると存じます。
  60. 加藤充

    加藤(充)委員 アメリカ軍要員日本において政治活動をしてはならないということが、行政協定には規定されておるのであります。そこでお尋ねしますが、政治活動をやつたアメリカ軍要員というようなものに対する犯罪條文、あるいは刑罰というようなものはどういうようになつていますか。
  61. 岡原昌男

    岡原政府委員 それはアメリカ側軍内部のいわゆる紀律違反という問題が出て参ります。直接わが国の国家公務員法がかぶるというような性質のものではないと存じます。
  62. 加藤充

    加藤(充)委員 今のお話は、私が尋ねたことに対する返答にはなつていないと思います。そういう点で、行政協定に特別に政治活動の禁止というようなことがありますので、その分についてのアメリカ軍要員向う刑罰規定をぜひ資料として出してほしいと思います。それからアメリカ軍人ばかりでなく、アメリカにおいてはいわゆるマツカラン法というような類の悪法がありまして、反共ということで貫かれて、共産主義が一般に罪悪視されておる。そういうふうなときに、日本におけるアメリカ軍要員の反共活動というようなものは、それが無制限に内外の取扱いあるいは実際の処置において放任されるならば、これは軍の背景をもつてした日本における著しい内政干渉であり、日本人の思想に対する干渉に相なると思うのであります。こういう点と関連して、処罰し得るというだけでなくて、どういう処罰があるのかないのか、その点をひとつ具体的に資料として出してほしいと思います。大西委員質疑関連した質疑は、これで私は一応きようのところは終りたいと思うのですが、それにもまして、私は総括的な質疑をまずしなければならないと思うのであります。  ここに配付された刑事特別法案解読書の第三章刑事手続、それを見ますと、その序説の文の「立案の建前」というところに、「行政協定規定上どうしても特別規定を設けなければならないものについての必要最小限度の立法措置を講じたのである。従つてこの特別法規定のない事項はすべて刑事訴訟に関する既存の法令適用があるものと解すべきである。」これを裏から見ますと、刑事訴訟法に関する既存の法令行政協定に基く刑事特別法というようなもので変更を加えている。その点につきましては逐次質疑の中で明確にしたいと思いますが、刑事訴訟法に盛られておる眼目は、憲法の保障する基本人権の保障、こういうことがいやしくも捜査というようなことで犯罪に対抗するという目的のために無視されてはならない、これを裏から保障するというところが眼目だと思います。しかるに行政協定規定上、どうしても刑事訴訟法に関する既存の法令適用を除外したり、あるいは刑事訴訟法に既存の法律があつても、それを適用することができないようなものが行政協定、同時にこの刑事特別法の中に盛られていることを、この解読書は自己暴露していると私は思う。これは重大な点であると思うのでありまして、この点についてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  63. 岡原昌男

    岡原政府委員 行政協定内容を御検討願えば順次おわかりになると存じますけれども、ここに「施設又は区域内」ということが出て参ります。その中で犯罪が犯された場合に、その施設または区域管理するところの軍において、これをいかに取扱つたらよいだろうか、これは現在までのいわゆる刑事手続法規は、まつたく考えていなかつたところでございます。従いまして、これをいかに円滑に事態を進展させて行くかという問題ができたのでございまして、御指摘の点を法律的に見ますと、まさしく刑事訴訟法並びにそれと運の関係を持つておるところの、刑事手続法規の例外でございます。その例外は、ただいま申したような観点から、つまり日本の刑事訴訟法あるいは刑事訴訟に関する手続法規が、どうしてもまかない得ないもの、これが出て参るのでございます。その点のつなぎをいかにスムーズにやるかという方針で、立案した次第でございます。抽象的に申しますと、ただいまのようなことになりますので、いずれ具体的な御質疑に応じまして、その点はお答えいたしたいと存じます。
  64. 加藤充

    加藤(充)委員 日本の刑事手続法にはまつたくないものだというものが、行政協定のとりきめ実施に応じて、ないものを日本に新しく立法して行かなければならないのだ、こういう御説明でありましたけれども、これはきわめて重大な御答弁であつたと思うのであります。刑事手続法にないということは、結局日本国憲法にそういう必要性がないから、また憲法第九條との関連などからいいますれば、そういう手続などを必要とするようなことがあつてはならないという大要請に基いて、刑事手続法等には、その立法規定がなかつたわけなのであります。大体において外国軍隊の駐留を無期限に許す。日本工場等々が、あるいは軍の直接、間接の調達の目的になつ軍事工場になる。日本の国土が外国の軍事施設、要塞、基地というようなものになるということは、日本国憲法第九條が、厳禁しているところであると私は思うのであります。そういうものをかつてにやつて来て、その協定があつたから、国内法を当然変更しなければならないというような考え方は、最も私は不届きな考え方であると思う。われわれはこの行政協定に基いて、この国内立法をいたす段取りになりましても、こういうような不法、不当な、憲法に違反するような国内立法を、行政協定に結ばれているからこれを通過させ、あるいは立案しなければならないと考えているような考え方は、私はこの際捨てらるべきであると思うのであります。その点で、私は行政協定にあるから、刑事手続法等にはないことを、あたかも当然立法しなければならない、あるいはあなた方が立法した法案を、われわれ国会はこれを通過させなければならないのだというような考え方が、常識のごとく横行いたしますれば、これは占領下のマツカーサーの命令とやら、あるいはGHQの命令とやら、字句の修正まで、一々オーケーをもらわなければならなかつたような、あの実質的な被支配、こういうものが講和発効後においても、日本の国内法として継続すること、固定化せしめられているということ、こういうことに相なるので、日本人の人のよさもほどがあると嘆かなければならないし、そういうことを当然に考えている人の、非日本人的な考え方をわれわれは指摘し、糾彈しなければならなくなると思うのであります。その点について、いま少し明確な御答弁を願いたいと思います。
  65. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 加藤君に申し上げますが、それは重大な点でもあり、いずれ逐條ごとに具体的な問題を検討する際、十分趣旨を徹底することができると思いますから、その際に政府委員から十分御答弁願うことにして、なるべく審議の進行を顧慮して、具体的な問題にお入りを願いたいと思います。
  66. 加藤充

    加藤(充)委員 私の質疑が、今委員長の話のようなことで、次の適当な機会に讓れ、そのときにも機会があろうというお話でありましたから、私は一応これで打切りますが、これは根本的に言うと、行政協定というようなものが、日本取扱いにおいては、たといそれがアメリカでは議会の承認を要しないものであつても、内容がきわめて重要なものであつて、これは当然條約としての実質を持つものであり、條約以外の何ものでもない。それが行政協定というような名称を持たされたというだけで、国会の承認を要しないというような取扱い方が、まさに驚くべき憲法違反の暴挙であるということに関連をして参ると思うのであります。そういうふうなむちやをやつたために、今のような説明をしなければ、国内措置が講ぜられないというようなことに相なつたのだと思います。  その点に関連して、さらに今度は裁判管轄の問題について質疑をいたします。この刑事特別法内容を見ますと、私は全部が問題であると思いますし、そのことは逐次質疑によつて明瞭に相なると思うのであります。しかし第三章の刑事手続、こういうようなところに、実は先ほど申し上げましたような点から考えて、重要なものがある。これは單に手続というだけではなくして、日本の憲法が日本人に保障している基本人権に対する重大なる侵害、侵犯に相なるものと言えると私は思うのであります。第一は、先ほど申し上げましたように、裁判管轄の問題と同時に、この刑事手続のところに規定されております日本の裁判に属すること、あるいはアメリカの軍裁判に属すること、いずれにしても、日本の検察庁あるいは警察というようなものを通じて、それをあたかもアメリカ軍の機関に組み入れられた下級機関として、自由に捜査し、指揮して行くということになつている。その過程において、日本人がだれからも侵されることがあつてはならないという憲法で保障されている基本人権というようなものが、刑事訴訟の手続をはずされる形で侵害されて行く、こう思うのであります。それでそういうふうな事柄に相なりました根本の理由というのは、やはり基本的には日本の裁判管轄権の問題、とりわけ刑事裁判権の問題というものが、行政協定によつて広汎な、いわゆる広い意味での治外法権というものを認めてしまつたということになるのであります。  そこでお尋ねしますが、日本の憲法に保障された日本人権利というものを侵害しないで済むような刑事特別法内容というものが、どうしてもできないのか。どうしてもできないとなつ法案が出された場合に、国会はこれを審議して、日本の憲法に合うようなものにこれを直して行く、こういうようなことが可能なのか不可能なのか。これについてあなたの考え方を聞かしてもらいたいと思う。
  67. 岡原昌男

    岡原政府委員 行政協定の本質論並びにこれと憲法の條約批准権との問題等につきましては、先ほど委員長からもお話のありました通り、重大問題でございますので、今私から答弁するのは御遠慮申し上げます。ただ御指摘の、現に刑事訴訟法において、あるいは刑事手続法規におきましてとられた主義、あるいは方針あるいは行き方といつたようなものが、憲法の精神にのつとつたものである、つまり憲法を訴訟法の形に直したのが現刑事訴訟法であり、あるいはこれに関連を持つ手続法規である、そこまでは御同意申し上げますけれども、それからあとの、それであるからして刑事訴訟法に特例を設けるようなことは憲法違反であるという議論は、ちよつと承服いたしかねるのでございます。すなわち憲法はすべてその内容を刑事訴訟法によつて全部現わしておるのでもありませんし、刑事訴訟法は憲法の精神を体して、その線内において一つの刑事手続を規定した法規でございます。従いまして同じ憲法のわく内におきまして、別の行政協定というものができた場合に、その行政協定と刑事訴訟法との間に若干手続的に乗り移らぬものがあるという場合の調節規定本法でございます。さよう御了承願います。
  68. 加藤充

    加藤(充)委員 どうも憲法の論議に終始するようで恐れ入りますが、日本の憲法というものは日本の主権を明確にし、明確にされた主権を日本国民はこぞつて守り立てて行くということが、やはり日本の独立後の問題として憲法の大眼目であると思うのであります。日本の主権によつて日本国民権利が守られて行かないというようなことになる、これは憲法の死滅を意味するし、憲法の死滅ということは、同時に日本の国家がその主権を失い、独立を失うということであると思うのであります。ですから憲法があつて刑事訴訟法、刑事手続の一部を改めるというような問題、これは逆に憲法違反にはならないというようなことでは、ごまかしだと私は思う。なぜならば、日本の主権の代表的なものはいろいろあると思いますけれども、ここで問題になつておる問題に関連して言えば、やはり裁判権の問題であります。裁判権の中でも、刑事裁判権の問題というものは重大な主権の内容をなしておるものである。この刑事裁判権についての国家主権というものを大幅にゆがめてしまつて、こういうようなことをやることは、憲法の部分的な違反じやなくて、本質的に憲法を無視したものであり、国家主権というものすらを侵したものに相なると思う。ここで、大体においてこの刑事特別法によりますれば、日本人に対するいろいろな捜査というようなものが、アメリカ軍の要請に基いて無條件的になされなければならない、その場合は例外の場合であるという抜け道、抜け口上は抜け目なく書かれておりますけれども、刑事訴訟法等の規定を除外してでもなされなければならないというような條文が出て参ります。しかもこの反面に、アメリカ軍軍要員に対しましては、まつたくその軍人軍属の家族というようなものまで、日本の司法権といいますか、大きく言えば憲法、あるいは刑事裁判権が及ばないどころじやなしに、捜査、逮捕というようなこともできないようなことをやつておる。こういうような行政協定、しかも国会の承認を得ることなしに押しつけられました行政協定、この行政協定によつて日本の主権が侵犯されたり、あるいはまた無視されたり、同時に先ほど言いましたような意味におきまして、主権によつて守られる、主権あつてこそ具体的に守られて行かなければならないはずの日本人のもろもろの基本人権というものが、この立法によつて侵されて行く。こういうようなことになつて参つておるのでありまして、私どもは総論的な意味合いにおいて、刑事特別法というようなもの、これが日本の主権を侵犯し、同時に日本人の基本人権というようなものを侵す場合におきましては、これはすでに提案自体が憲法違反であり、同時にまた憲法違反の條項を含む内容を国会にして来、国会で審議するということ自体が不見識きわまるものであり、国会としてやつてはならないものでないか、私はこう考えるのでありますが、その点についての御見解を聞きたい。
  69. 岡原昌男

    岡原政府委員 御質問趣旨は、先ほどお答えいたしたので盡きると思いますが、繰返して申し上げますると、一つの法規というものが合憲的であるかどうかという問題は、その法規と憲法との間の関係でこれを律すればいいのでございます。刑事訴訟法を例にたとえて申し上げますと、刑事訴訟法は憲法の大きな原則といいますか、わくといいますか、憲法の精神を刑事手続に関して具現化いたしたものでございます。そしてそれが現行法規として存在するのでございますが、同じ憲法のもとにおいて、たとえばほかの特別法規、あえてこの行政協定に伴う刑事特別法とは申し上げませんが、ほかの特別法規との間に若干の抵触といいますか、そういう問題が起ることがございます。さような場合におきましても、刑事訴訟法の適用の一部は、その法律の働く限りにおいて若干特例を設けるというのが、現行法規内でもあるのでございます。同じようなりくつでございまして、行政協定が同じ憲法のわく内において成立したものといたしますれば、この点を——たいへん問題になつておる点でございますけれども、私どもは一応さような前提のもとにおいてこの立案をいたしたのでございます。そういたしますと、同じ憲法のわく内において二つのものが成立し、その間に橋渡しをかけなければスムーズに行かないという面がありますれば、やはりどうしてもこれが円滑に行く橋をかけておく必要がある、さようなことがこの法案を提出した理由になるわけでございます。
  70. 加藤充

    加藤(充)委員 この法案は大体刑事特別法などという名称をもつて出されて来た法案であります。従つて世間の注意をきわめて引きにくい名称を持つております。しかしながら、これはきようあたりもストライキをもつて悪法として通過させてはならないというような意気込みで、労働組合を中心にした日本国民が立ち上つております。あの破壞活動防止法、これと一体において理解されなければならないし、それと一体になつて理解して初めてこの法案意味づけが出て来るというほど重要な法律であり、私どもの結論を出す前に申し上げるのはどうかと思いますけれども、これは驚くべき悪法である。日本の主権を侵犯し、日本人の人権を蹂躙する、たといそれが行政協定によつたというようなものであつたといたしましても、行政協定というものが大体において違法、不当であるということになれば、その不当なもの、違法なもの、憲法違反のものに足づけてできて来たこの刑事特別法というものの国内法的な根拠を何ら権威づけるものではない、こう思うのであります。まつたくこれはアメリカ軍の認定一つ日本人の言論、日本人の行動を破壞活動防止法とともに一体となつて抑圧して行くものだと思うのであります。かりに憲法九條の問題は除外いたしましても、今、朝鮮あるいは満州で細菌戰が行われておるといわれておる。そうしてそのことについては世界各国の大きな輿論になつておる。しかもその輿論のやかましい中に、先般の新聞を見ますと、アメリカにおいては細菌戰を遂行して行くための軍事予算が要求されておるというような新聞記事も明らかに報道せられております。またそれと関連して日本に原子爆彈の基地ができるかできないかというような問題、これは日本人が世界の一員としてこういうような大量殺戮をはかる兵器の使用禁止については、世界各国の大きな要望になつており、すでにそのことについては国際協定等も結ばれておるのであります。こういうようなことになつておりますときに、世界各国民からその禁止が要望されておりますような原子兵器あるいは細菌兵器の基地や工場、生産施設日本にでき、あるいは日本人がそれに加担しておるというようなことは、世界の文化史的な意味合いにおきましても、私どもはどうしても反対し、そういうことを押しとどめるだけの義務づけを——單に抽象的な理論だけではなしに、国際連合憲章あるいは世界人権宣言等々の実施をみずからやつて行くということの中からも、私どもは義務づけられると思うのであります。これを軍の機密だというようなことでこれを押えつけ、あるいはいわゆる聖なる人間としての、人類としての行動まで抑圧して行く。とりわけ先ほど申し上げましたように、日本人が国際的な環境の中においてその義務づけを強く受けておりますような、広い、深い、長い日本人の活動をこれで押えつけてしまうというようなことは、何の法的な根拠もない、人間の大きな歴史的な働きから見れば、行政協定というような問題は何ら権威のない、重い比重を持たないものですらある。戰争のために平和の言論を抑圧する破壞活動防止法あるいはまた刑事特別法というような運の立法は、明らかに私は日本人に人間らしい活動、人間らしい生活すらを圧殺してしまうものではないか。明らかにそうであると思いますが、その点について御返答願いたいと思います。
  71. 岡原昌男

    岡原政府委員 先ほど申し上げました通り行政協定の本質論につきましては、また別にしかるべき方からお答え願うことにいたしたいと存じまするが、先ほど一つの具体的な例といたしまして、細菌戰術の有無ということ、並びにそれを新聞等において書いた場合にどうなるかという問題でございますが、これは法律的に見ますると、結局軍隊の機密なるものが客観的に存在しておるということが第一の要件に相なります。従いまして單なるうわさと申しますか、根も葉もないというようなことは機密には入つて参りません。もしも客観的な事実がありまする場合におきましても、それが何らかの方法で一旦公にされたものは、これまた機密としてその探知、收集または漏洩という問題が出て参りませんので、御心配のような事態は絶対に発生しないものと私は考えます。
  72. 加藤充

    加藤(充)委員 私は大量的な残忍な殺戮武器としての原爆あるいは細菌兵器というようなもの、これを何とかしてやめなければいけない、こういうような言動というものを軍機の秘密というようなことで押しつぶすというほどむちやなことがあるか、こういうものは法律というような権威で強行するわけに行かないものではないのか、また行かないものであるべきである、こういうことをあなたに聞きただして、そうして軍の機密ということでこういうふうなものまで取締るのはけしからぬのじやないかと言うのです。
  73. 岡原昌男

    岡原政府委員 さようでございますから、先ほど申し上げました通り、客観的にその機密の存することを前提といたしまするので、何らかの事実に関する單なる意見といつたような純然たるものはこれに入らぬものと解釈いたします。
  74. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 その辺は政府委員の答弁はなはだはつきりしておるようだけれどもはつきりしていないのです。たとえば日本に原子爆彈基地が設けられたとします。これは客観的な事実とします。それに対してどこそこに原子爆彈基地が設けられた、そうするとこれは戰争ともなればいの一番に相手方から空襲を受けるであろう、さあ危いぞ、この近所は逃げようじやないかということをだれかが意見発表いたしたといたします。事実は客観的にある。しかもまだこれを流布されておらぬという場合、これはひつかかりましよう。
  75. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいま御質問の前段と後段とはまつたく別な要素でございまして、その後段に関する限りは問題がないと存じます。但しその前段が先ほど申し上げましたような要件が充足されている場合、その場合におきましてはひつかかる可能性があろう、理論的にはさようになると思います。
  76. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 私は関連で、ただ一問だけにとどめておきます。第六條のいろいろな條件、軍の機密を漏らしてはいけないとか、探知してはいけない云々ということですが、この條件が、軍の機密というものは公になつていないものをいう、それからまた第二項では「通常不当な方法によらなければ探知し、」云々、こういうようなまことに抽象的な規定が設けられており、しかも軍の機密とは何ぞやということになると、別表に掲げる事項というものがありまして、その別表というのを見ましても、至つてこれは空々漠々たるもので、何でもひつかかるようにできておる。そこで政府委員のご説明では公になつていないものをいうというのは、何でもいいから公になつておるものならば、これはひつかからぬのだというふうにおつしやるが、しかしそれは公言できますか。たとえば平壤放送なんというのがある、あるいは北京放送なんというものがある。これは毎日何回も繰返して放送しております。その中にはまつたく普通日本人に驚くべき事実が暴露されております。もうすでに公にされておる事実であるからといつてこれを伝えた場合には本條にひつかかりませんか。
  77. 岡原昌男

    岡原政府委員 理論的にはさように相なりまして、なおこの具体的な事件によりまして証拠の問題がからむ、かようなことに理解いたしております。
  78. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 私は証拠の問題はもう問題外にしておるのです。事実そういう証拠はありますから、何月何日何時何分にこういう放送があつたということをまた伝えすることはかかりますか、かかりませんか、しかもその立証が伴つた場合……。
  79. 岡原昌男

    岡原政府委員 消極的に解しております。
  80. 田中堯平

    ○田中(堯)委員 かからないのですね。
  81. 岡原昌男

    岡原政府委員 さようでございます。
  82. 大西正男

    大西(正)委員 先ほどお尋ねいたしました第二條関連しまして、この二條の冒頭にあります正当の理由についてでありますが、許可を得て行けば当然正当でありましようし、それから緊急避難などで少し入る場合も正当だと思います。そのほか刑法の三十五條適用などの場合もあると思います。それらの場合は正当の理由になると思うのですが、この正当の理由ということは広く解釈し得る余地があるとともに、人によつては非常に狭く解釈し得る余地もあるわけでありますが、政府当局の御見解としてはどの程度の考えを持つておられますか。
  83. 岡原昌男

    岡原政府委員 この点は刑法第百二十條の「故ナク」の解釈にも関連を持つて参ります。刑法中にこの「故ナク」という文字を使つたところが数箇所あり、それぞれ別な意味を持つておるのか、あるいはそれぞれ同じ内容を持つておるのかということにつきましては、御承知のごとく学説区々にわかれているところでございます。ある者はこれを構成要件といたし、ある者はこれを違法性阻却の原因といたしております。この点につきまして私どもが考えておりますのは、大体においてただいま御指摘のような違法性阻却といつたような面を考えております。具体的に申しますと、緊急避難であるとかあるいは職務遂行のために入つてつた、いわゆる刑法三十五條の場合であるとか、あるいは向う側の許可があつたので入つたといつたような、さようなことを予定いたしております。
  84. 大西正男

    大西(正)委員 そこで第二條全体に関してでありますが、この第二條の出て来る根拠は、配付されました資料の一によりますと、行政協定の第二十三條が基礎になつておるようでございますが、この行政協定に基いてアメリカ側から特別なこういう立法を求められたのでしようか。何らそういうことはなかつたのでしようか。
  85. 岡原昌男

    岡原政府委員 こちらの独自の立場で立案いたしたものでございます。
  86. 大西正男

    大西(正)委員 独自の立場で立案されたということでございますが、そういたしますと、国内法としまして刑法におきましてすでに住居侵入の規定があり、それからまた軽犯罪法によりまして、禁止された場所に対する出入についての規定があるわけでありますから、その禁止された場所へ特別な犯罪行為をやる目的をもつて入れば、当然その該当の処罰規定によつて処罰されるわけでありますが、特別に政府はこういうものが必要だということをどういう点からお考えになつたのでありますか。
  87. 岡原昌男

    岡原政府委員 行政協定第二十三條は「合衆国軍隊合衆国軍隊構成員及び軍属並びにそれらの家族並びにこれらのものの財産の安全を確保するため」云々なつております。そこでさような地域にみだりに入つて行くということは、場合によりましては、さような軍隊あるいはその家族、財産といつたようなものの安全を全うするゆえんじやない。またこの二十三條に「情報の充分な安全及び保護」という言葉がございますが、中に入りますと、とかく知らぬうちにと申しますか、そう悪意がなくとも情報が耳に入り目に触れる、さようなことでは後々困るという趣旨で、この程度規定は必要だろう、かように解釈いたしました。なお軽犯罪法との関係でございまするが、軽犯罪法におきましては、立入り禁止の場所及び他人の田畑といつたような、非常に程度の軽いものを予定しておるごとく予想されるのでございます。従いまして、それと施設区域内の特に立入り禁止をされた場所というのは性質上おのずから異つて来る、さような観点からこの條文を置いた次第でございます。
  88. 大西正男

    大西(正)委員 はたして二十三條に基いて特別にこういう立法が必要であるかどうかについては、きわめて議論のあるところと思います。ただ政府の見解を一応伺つた次第でありまして、これで終ります。
  89. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 北川定務君。
  90. 北川定務

    ○北川委員 本法につきまして、この際二、三の点を政府委員にお伺いいたしまして明確にしておきたいと思うのであります。まず第一條第二項に「日本国内及びその附近に配備された」云云と規定されておりまするが、この「日本国内」というのはいかなる地点をさしておるか、問題になりますのは沖縄であると思います。将来沖縄がアメリカの信託統治になりました場合に、日本の主権が制限されると思うのでありまするが、この法律関係を伺いたいと思います。さらに「その附近」という文句がありまするが、この「その附近」というのはいかなる地点をさしておるかを伺いたいと思います。
  91. 岡原昌男

    岡原政府委員 この法案一條第二項におきまして「日本国内」とあります文字は、日本国の現在の行政権の及んでいる範囲内、さように解釈しております。その理由は、われわれの方でこの法律を実際動かしまして問題が起き得るのは、現に行政権の及ぶ範囲のみにとどまりまして、その外にはまあ手がつかぬといいますか、主権がかりに潜在的にございましても手が及ばない、また従いましてアメリカ軍当局あるいは軍裁判所との交渉関係も生じないというふうな関係から、この「国内」と申しますのは、行政権の及ぶ範囲、かように解釈いたしております。なお「その附近に配備された」と申しますのは、日本国内——もちろん領水も含めまして、その日本国内のすぐそば、なぜこういう文字を使いましたかと申しますと、軍隊はやはり時に応じて若干移動いたします。その若干移動するその移動で領水を出たその瞬間からその性格がかわるということになつても困りますので、一応軍隊の性格といたしましては「その附近に配備された」というところまで入れました。但しこの最後の文面で「日本国内にある間におけるものをいう。」というところで縛つてあるわけであります。
  92. 北川定務

    ○北川委員 さらに第二條につきましては、大西委員並びに委員長質問で大体明確になつたのでありまするが、かつては要塞地帶法違反などで、汽車の中でその付近を通過中に撮影したというのが問題になりまして、過失によるというような理由で、あるいは軍機保護法に触れるという理由で処罰されたことを知つておるのであります。米軍の使用している地域もしくは区域で、立入り禁止をはつきりさせてあるところは問題はないのでありまするが、いずれこれから多くの問題が起ることだろうと思うのであります。さような場合に、先ほど政府委員がお答えになりましたように、過失の場合、もしくは禁止区域であることを全然知らなかつた場合、かような場合には処罰の対象にならないということをいま一度はつきりお答えを願いたいと存じます。
  93. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点は私どもといたしまして、十分この法案をつくりますときに研究いたしました問題でございまするが、ただいま御質問通りどもは理解しておりまして、これによつて知らなかつたことに過失があるからということで、刑法の一般原則が廃業されるというようなことはないものと理解してでおります。
  94. 北川定務

    ○北川委員 次に第三條の二項に、「犯人の親族が犯人の利益のために前項の罪を犯したときは、その刑を免除する」という規定がございます。これはアメリカの裁判権を行使しておる間に、その犯人の利益のために親族がこれを犯した場合をさしていると思うのでありますが、アメリカ人と日本人の親族関係でございますが、この親族関係を具体的な場合を示していただきたいと思います。またその親族の範囲は、民法による親族の範囲をさしておるかということをお答え願いたいと存じます。
  95. 岡原昌男

    岡原政府委員 その点御承知の国際私法の関係規定しております法例の第二十三條に規定がございまして、その本国法によりましてその親族関係を律することに相なつております。従いましてアメリカ軍人向うの軍裁にかかつております場合に、そのどこまで親族関係が及ぶかという問題は、アメリカの本国法によつてこれを律する、さようなことに相なると思います。
  96. 北川定務

    ○北川委員 次に第五條は「合衆国軍隊に属し」という規定なつておりますが、この「属し」というのは、先ほど御説明なつたのでありますが、所有権のような場合、あるいは賃借権のような場合ばかりでなく、広く占有しておるような場合をもさすように伺いましたが、たとえば不法に占有しておるというような場合にも、「合衆国軍隊に属し」という中に含むものでありましようか。
  97. 岡原昌男

    岡原政府委員 この点は法律的には、日本の裁判所において、不法に占拠しておる場合の邸宅侵入があり得るか、あるいは不法に持つてつた物に対する窃盗が成り立つかというようなにことと、似たような法律関係になると思いますが、大体今までの判例の傾向といたしましては、さような場合においても、一応その占有関係が成立する間におきましては、その占有を保護するという趣旨だというふうに解釈いたしまして、ただいまのような例をいずれも積極に解しております。しかしながらこれは理論的の問題でありまして、実際問題といたしましては、たとえばその原由において不法なるものがあつた場合においては、正当防衛とか緊急避難とか、いわゆる違法性阻却という性格の問題を生ずる場合が多々あろうかと存じますので、それは具体的な事案について妥当なる処理をいたしたいと存じております。
  98. 北川定務

    ○北川委員 第五條に「軍用に供する兵器彈薬糧食、被服その他の物」という規定がございます。これは兵器とか彈薬に匹敵するようなものをさしておると思うのでありますが、さように解釈してさしつかえないのかどうか。
  99. 岡原昌男

    岡原政府委員 先ほどもちよつとお答えいたしておきましたが、兵器彈薬糧食または被服に準ずる程度の重要なものというので、車両を述べておきましたが、その後、どんなものがあろうかと考えましたところ、軍用文書あるいは軍馬といつたようなものも入ろうかと存じます。
  100. 北川定務

    ○北川委員 第六條の二項は「合衆国軍隊の機密で、通常不当な方法によらなければ探知し、」云々という規定なつております。この適当なりや不当なりやというのは、普通一般人の認識、一般人の観点から決定せらるべきものと了解しておりますが、その上にさらに「通常」という意味を付加されましたのは、いかなる理由に基くのか、その点の御説明を願いたいと思います。
  101. 岡原昌男

    岡原政府委員 これを單に不当な方法というふうに規定いたしますると、ともすると本人の主観的な要件のみで判断するおそれがありまするので、客観的に不当な——いわば主観というものを一般化したということに相なるのでございますが、その点を言葉の上で明白にいたした趣旨でございます。
  102. 加藤充

    加藤(充)委員 先ほど総論的に質問したのですが、少しごたごたしておりましたから、各論的なものに入る前に少し明確にしておかなければならないと思いますので、最後に一点だけお尋ねしておきたいと思います。  日本には平和憲法がある。そして外国軍隊を駐留させるというようなこと自体明らかに憲法違反だと思う。ですから外国の駐留軍の便宜をはかることもまた憲法違反になると思う。従つてそれらの行為が処罰されるのだつたら、まことに憲法通りでありまするが、これの便宜をはかり、その戰力を増強させ、あるいは戰闘行為に有利な加担行為をやらない、すなわち軍機の秘密を侵すというようなことが、国内法の最高のものは憲法でありましようが、その国内法的な基礎づけによつて、違法性あるいは有責性を持たなければならないとされる根拠は、どこにあるのか。このことに関連して、国会の承認を経なかつた行政協定ということだけで、憲法の規定いかんにかかわらず、日本人がこれに服さなければならないとするならば、行政協定というものは超憲的な効力を日本に押しつけたものになりはしないか、この点だけを一点聞いておきます。
  103. 岡原昌男

    岡原政府委員 御質問の点は、先ほどから申し上げました通り重大なる点でございまして、私ども末輩からお答えいたすのもいかがかと存じますので、いずれ法制長官なりだれかに、ただいまの御質問趣旨を伝えまして、一括してお答えいたすことにいたしますから、御了承願います。
  104. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 本日はこの程度にとどめ、明十九日は午前十時半より会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十九分散会