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1952-04-12 第13回国会 衆議院 法務委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月十二日(土曜日)     午前十一時四十五分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 中村 又一君    理事 田万 廣文君       角田 幸吉君    鍛冶 良作君       松木  弘君    眞鍋  勝君       大西 正男君    加藤  充君       田中 堯平君    猪俣 浩三君       佐竹 晴記君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         刑 政 長 官 清原 邦一君         法務事務官         (矯正保護局         長)      古橋浦四郎君         検     事         (民事局長)  村上 朝一君         中央更生保護委         員会事務局長  齋藤 三郎君  委員外出席者         総理府事務官         (特別調達庁財         務部次長)   曽田  忠君         外務事務官         (條約局第三課         長)      重光  晶君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に  関する法律案内閣提出第一一九号)  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約  第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案(内  閣提出第一四〇号)     —————————————
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案を議題といたしまして質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから順次これを許します。なお本日は法務関係政府委員以外に、外務省並び特別調達庁当局者も見えておりますから、念のために申し上げておきます。田嶋好文君。
  3. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 昨日私第一條損害日本国政府負担する、この負担関係につきまして、どういうような形において負担をきめるかの交渉が行われておるか、また交渉が終つておるとすれば、どういうような負担関係になつておるかということをお尋ねいたしたのでございますが、そのお答え法務府の方で留保されてきように至つております。つきましては、この管轄はやはり特別調達庁関係になると思いますので、その点を特別調達庁お答えをお願いいたしたいと思います。第一條に基きまして、違法行為によつて発生した損害を国が負担する場合、その負担分につきましては、アメリカ日本国の間において話し合つてきめる、こういうことになつております。現在この話合いはいかような段階に達しておりましようか、まずそれからお伺いいたします。
  4. 曽田忠

    曽田説明員 ただいまの御質問に対しまして御答弁申し上げます。日米負担の割合につきましては、合同委員会、その以前にできております予備作業班において、決定されるべき問題でありまして、現在のところその結論はいまだ出ていないように聞いております。
  5. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 政府としては、どういう方針でお進みになるおつもりでございましようか。これは北大西洋條約におきましては、たしか七五%対二五%だつたか、六五%対三五%だつたか、ちよつとそこのところ記憶いたしておりませんが、そういう比率になつてつたと思いますが、どういうような方針で、日本政府としては進むおつもりですか。
  6. 曽田忠

    曽田説明員 政府方針という問題の御質問でありますが、この点につきましては、まだ具体的に決定するまでに至つていない状況であります。
  7. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 調達庁政府委員ではございますが、これはちよつと今の政府委員にお聞きするのは御無理だと思いますから、いずれ機会があつたら、次の機会質問さしていただきます。  それでは次に移りまして、昨日お尋ねをいたしておきました第二條アメリカ所有の場合、日本所有の場合、おのおの起ることでございましようが、私たちが一番心配しますのは、この双方、アメリカ日本において均等して経費負担して行く、その経費がどういうように支出され、その経費によつて建てられたものを、どちらが所有するか、これは一応問題になると思いますので、この点をお尋ねいたしておきましたが、きようお答えが願えますなれば、その点についてお答えを願いたいと思います。私たちの承るところによりますと、また法規の関係から申しますと、双方出資いたしました六百五十億、日本負担六百五十億、アメリカ負担六百五十億といたしまして、その負担金は、わずかなものを残して、アメリカが全部アメリカ軍経理においてこれを処理する、こういうようなことになると思います。その場合経理アメリカに属するといたしますれば、合同委員会その他によつて話合いが進みましても、その経費支出アメリカである以上、所有は全部アメリカに属するのじやないかというような懸念もある、その点きようお答えが願えますればお答え願います。
  8. 曽田忠

    曽田説明員 防衛支出金の問題でありますが、これは御存じのように、従前終戰処理費事業といたしまして計上されておつたものでありますが、この終戰処理費事業につきましては、特調所管支出といたしまして、予算に計上されております。しかしながら防衛支出金につきましては、予算面特別調達庁予算ではなくて、大蔵省所管に計上されております。従いまして調達庁といたしましては、防衛支出金状況につきましては、御答弁いたしかねる状況であります。
  9. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 わかりました。それではその点をお聞きするのは無理だと思いますから、現在まで終戰処理費によつて買われ、終戰処理費によつて建てられておりました建物、こうしたものは所有権はどちらに属しておるのでございましようか。
  10. 曽田忠

    曽田説明員 国有財産となつております。
  11. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 わかりました。  それから第二條に「管理する土地」という記載がございます。今まで占有以外に、管理する土地というものが、要するに日本占領軍において管理する土地があつたでございましようか、あつたといたしますと、どういうものが管理する土地になつてつたのでありましようか、これをひとつ調達庁から……。
  12. 曽田忠

    曽田説明員 この法文の字句でありますけれども、「占有し、所有し、又は管理する」、占有ということと管理するということとは、そう厳格に区別できないのじやないかと思つております。占有と申しますと、いわゆる飛行場土地とかそういう方面にたくさんございます。
  13. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 そうすると現在までは、これは占領軍隊土地工作物等を使う場合には、占有管理だけで所有はなかつた、こういうようにとつていいのでしようか。所有物もございましたでしようか。動産以外ですね、動産はもちろん所有物でございましようが、動産以外で日本国内において使用しておつたものは、すべて占有管理で、所有はなかつた……。
  14. 曽田忠

    曽田説明員 軍の施設につきましては、終戰処理事業費支弁でまかなつておるものもありますけれども、軍自体におきまして、いわゆる特需によりまして、ドルによつて直接建造しておる建物もあります。そういうものはアメリカ合衆国所有となります。
  15. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 ドルによつて建設した建物というものはどんなものがございましようか。具体的に一つでよろしゆうございますが……。
  16. 曽田忠

    曽田説明員 飛行場の一部の施設につきましては、そういうものがあります。
  17. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでは調達庁に対する質問はこれで終ります。  続いて外務省関係についてお尋ねをいたします。現在この法案の審議にあたりまして一番委員会におきまして問題になつておりますのは、朝鮮動乱が引続き行われて片づかない。また日本アメリカその他の連合国との間に講和條約が締結いたしましても、朝鮮動乱現状というものは早急にかわるという形跡が見られない、こういうような状態が続くのではないか、こういうような見通しがつくのであります。ついた場合に、この安全保障條約に基きますところの行政協定に伴いまして、日本合衆国軍隊がとどまることになるのでありますが、現在のアメリカ占領軍が即国連軍になつておりますと同様に、合衆国軍隊日本にとどまつた場合、朝鮮動乱現状のままにおいて行くといたしますれば、国連軍といたしましてこれに活動する場合が予想される。この場合にこの民事特別法国連軍に対してどういうような働きをするのか、これが一つの疑点になつておるのであります。従いまして昨日からいろいろ委員会でこの間答がとりかわされておるのでありますが、結果的に申しまして、結局私が今申し上げましたように、合衆国軍隊日本にとどまつてつて朝鮮動乱が続く限り、合衆国軍隊朝鮮動乱に出動する、この場合は国連軍と見らるべきではないかというようなことになつたと思います。してみますと、この国連軍が、違法という言葉がございますので、非常に起ることは珍しくなると思いますが、国連軍が違法を働いた場合、この場合にはどういう民事的な取扱いがなされて行くのか、またこれに対しまして当然これは考えておかなければならぬ問題でありますが、政府国連当局との間に折衝を続けているのか、いるとすればその状態、また続けてないといたしますれば、続けて行こうとする意思があるのか、これらの点を承りたいというのが本日特に外務省からの説明員出席を求めたことになつておるのであります。どうかこの点についてお答えを願いたい。
  18. 重光晶

    重光説明員 ただいまお尋ねの点は、行政協定及びこの法案国連軍行動との関係ということになると思いますが、まず順序として逆になるかもしれませんが、お尋ねの一番最後の点、すなわち国連当局日本における国連軍行動に関する協定をやる意思があるのか、あるいはどういうふうに進行しておるのか、この点についてまずお答え申し上げます。この点はもちろん国連当局と一定の協定を結びまして、国連軍日本で行う行動に関する問題を規定いたしたい、こういうふうに考えております。その段階ということになりますと、実はこの程度まで発展しておるというところまで行つていないわけであります。すなわち元来国連軍日本に来て、日本でいろいろな行動をするということでありまするから、交渉の都合上どうしても国連側からこういうようなことでという案をいただいて、それをこちらで日本政府として検討いたす、こういう順序になるわけでありますが、そういう順序交渉をしようという話はついております。しかし国連当局の方から、ではこういう内容のという案はまだ出て来てない状態でございます。でありますから、進行しておると申し上げることもできないような状態でございまして、ただ協定を結ぶことにきまつておる、こういうことが申し上げられるだけでございます。  それから前の方の御質問の、アメリカ軍日本に駐屯いたし、将来も駐屯軍としてとどまるわけでございますが、アメリカ軍には国連軍としての資格と、それからアメリカ軍としての資格と両方あるというお話でございますが、論理的にはまことにその通りでございます。従つて国連軍当局との協定によつて、新たなアメリカ軍についても全然行政協定とは関係のない別個の規定が設けられれば、アメリカ軍についても行政協定によるのではなくして、新しい国連との協定によつて規定されるというようになりますが、今のところは、すなわち講和発効後、近くに予想されますが、それから国連との協定がいつできるかという問題につきましては、今申し上げましたように相当まだ最初の案もいただいておりませんから、その間に講和発効国連との協定の妥結までギヤツプができるだろうということは、当然と考えております。そういう点につきましては、行政協定は元来安全保障條約の実施のための協定でございまして、安全保障條約の第一條ごらんになりますとわかるのでございますが、この一條アメリカ軍日本に駐留する目的規定してあるのでございます。それをそのまま読みますと、「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄與し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて與えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄與するために」。すなわち簡單に申しますと、極東における国際安全の維持に寄與することと、それから日本国の内外の安全に寄與するため、この二つ目的があるわけでございます。でありますから、国連との協定の成立する前に、もしお話のようなアメリカ軍行動について、これは朝鮮で行つておる国連行動であるかどうかという問題が起る場合がもしありましたとしたならば、国連としてのアメリカ軍行動極東における国際平和の安全に寄與しておる軍隊であるかどうか——これは実質でございます。ですから国連軍ではないということになるわけでございますが、実質的にはこの規定から考えまして処理して行けるのではないか、こういうふうに考えております。
  19. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 一応わかりました。結局現在のような状態をもつていたしますれば、米国占領軍国連軍というような形になつておるのだが、行政協定締結後は、国連軍日本にはいないのであつて合衆国軍隊がおるのだ、この合衆国軍隊朝鮮に出動する場合、これは安全保障條約に基くところの極東の平和を維持するための行動と見られるのであり、私たちもそういうように解釈したいのであります。従いまして一応これは国連軍と見ないで、合衆国軍隊として、国連軍の現在とつておる行動でも、この法律によつて規律されて行くのではないか、こういうように解釈すべきが私たちもやはり至当だと思います。そういうように解釈して政府は進む御方針でございましようか。またもしそうでなくして、国連軍との間に国連軍としてどうしても認めなければならぬような問題が起る。これは国連軍合衆国軍隊だけではございません。その他の国の軍隊も加わつて国連軍を構成するわけでありますから、その他の軍隊日本にとどまることは許されない。その他の国の軍隊日本にとどまるような状況が起れば、国連との間に当然日本はこうした日米安全保障條約、それから行政協定と同様な協定が結ばれるものだ、こういうように解してよろしゆうございますね。
  20. 重光晶

    重光説明員 ただいまおつしやいました線で、大体その通りであろうと存じております。
  21. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでは私は外務当局に対する質問は終ります。  次に法務当局に対しまして、この第一條の「職務を行うについて日本国内において違法に他人損害を加えた」この「違法」でございますが、昨日のお答えによりまして、戰闘行為の場合は一応私たち理解いたしました。が演習行動、これは一体「その職務を行うについて日本国内において違法に他人損害を加えた」——この解釈の場合にどういうようになりましようか、戰闘行為は当然違法にならない、だからこの法分から除外される、こういうお答えでありましたが、演習中の行動、これは一体どういうように解釈しておられるのでございますか。
  22. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 この違法という観念国家賠償法一條にいつております違法という観念と全然同一でありまして、演習中の行動によつて損害を與えた場合に、一般的に申しますと、違法性がないという場合が多いかと存じますが、個々の具体的な場合によりまして、あるいは違法性を持つ場合も出て来るかと考えます。
  23. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 そうすると、演習中の行動戰闘行為ははつきりと区別して進まなければならない、こういうことになるわけですね。
  24. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 さようであります。
  25. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでは私の質問はこれで終ります。
  26. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 田万廣文君。
  27. 田万廣文

    ○田万委員 村上さんにお尋ねいたします。今田嶋君が質問なさつたことに関連してでありますが、国の賠償責任を第一條できめておるのは、「その職務を行うについて日本国内において違法に他人損害を加えたとき」とあるのでありまして、これは違法でないという場合においては無賠償でよろしいということになるのでございますか。
  28. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 昨日も申し上げました通り、この法律案行政協定のり第十八條第三項の裏づけをなす立法措置でありまして、この行政協定八條の第三項によりますと、「日本国被用者行動から生ずる請求に関する日本国法令従つて」とありますので、日本国被用者行動から生ずる損害についての日本国法令、すなわち国家賠償法なり民法不法行為規定故意過失違法性要件としております場合には、同様この法案におきましても、これを要件とするわけであります。すなわち日本民法不法行為なり国家賠償法によつて賠償責任の認められないような場合には、この法律案によりましても賠償責任がないということになるわけであります。
  29. 田万廣文

    ○田万委員 これを反対の立場から考えて、日本の国民がこれらの施設に対して違法性なくして損害を加えたという場合においては、どうなるのですか。裁判所の問題として、具体的に起きて来るかもわからないのですが……。
  30. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 その場合は、民法七百九條の適用があるわけでありまして、故意または過失によつて、しかも違法性のある行為によつて、これらの施設損害を加えたときに、民法による賠償責任があるわけでありますが、故意過失がない、あるいは違法性がないという場合には、賠償責任はないわけであります。
  31. 田万廣文

    ○田万委員 戰闘行為が行われた際における損害というものについては、これはまあ別な問題でありましようけれども、その他の、たとえば今御答弁がありました演習なんかの場合においての損害というものは、別個に考えなければならぬ問題だというふうにもおつしやつたのですが、これを根本的に考えた際に、一応こういうふうな抽象的な「職務を行うについて日本国内において違法に他人損害を加えた」という「違法」という文字を残しておらずに、全然とつてしまつて、この場合においては国家賠償責任がある、その場合には責任がないというように、大きな特別なものだけ、責任のないものだけを書いて、その他の問題については責任があるというふうにせられた方が非常にはつきりするのではないか、こういう点について、この法案を練られた際にいろいろ御研究なさつたことがあるかもわかりませんが、もしあつたとすれば、なぜこういうことになつたかという結論をひとつ聞かしてもらいたい。
  32. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 第一條、第二條とも、この條文ごらんになつていただきますとおわかりになりますように、いかなる場合に責任を負うかということは「国の公務員又は被用者がその職務を行うについて違法に他人損害を加えた場合の例により、」ということにいたしておるのであります。損害賠償の責めに任ずべき場合、その他損害賠償に関する国家賠償法なり民法規定の例によつて責任を負うおけでありますから、御指摘になりましたように前段の「違法に」という字がなくとも、同様の結果にはなるかと思うのでありますけれども、この第一條はいわゆる不法行為による損害賠償責任規定した條文でございますので、その趣旨を表わす意味におきまして、「違法に」という字を入れた方がわかりやすいのではないかというつもりで入れたわけであります。
  33. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 田万委員質疑の御趣旨は、不法行為に基いた損害賠償はもちろん違法を條件とする。しかしなお違法を必要とせずに国家補償の制度が別途に考えられるかという趣旨も含んでおるのじやないかと思うのでありますが、その点に対する政府委員説明をこの際一応伝えておいた方がよろしいのではないかと考えます。
  34. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 先ほど申し上げましたように、この法案行政協定の十八條第三項を国内的に立法化したわけであります。この第三項によりますと、日本国被用者行動から生ずる請求日本国法令に従うことになつております。日本国の現在の法令不法行為につきましてはすべて違法なる行為である場合だけに賠償責任があることになつておりますので、適法なる行為について損失補償するかどうかということは、この行政協定とは別の問題と考えまして、この法案におきましては不法行為の場合だけをかように規定いたしたのであります。
  35. 田万廣文

    ○田万委員 大分はつきりいたしましたが、なおさらに一点お尋ねいたしたいのは、不法行為観念については、私どもはいささか心得のあるものでありますけれども、違法なりや違法でないかという点について、この解釈の問題が具体的に起きた際に、非常にむずかしい問題が起きるのではないか。ある者はそれは違法性があると言い、ある者はないと言いますが、そういうことが起きた場合に、その最高解釈権といいますか、——絶対にだれが見ても違法であるということがはつきりしている場合はともかくも、違法性があるかあるいは違法性がないか非常にけじめのつかないような場合があり得る。そのけじめのつかないような場合における最高解釈権というものはどこが持つのでございますか。
  36. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 具体的の事案にあたりまして、違法性があるかないか判断に苦しむような事例がございますことは、現在の民法不法行為に関する規定あるいは国家賠償法規定を適用する際におきましても、起る問題であります。この法案における違法性有無が問題になりました場合も、同様に日本裁判所が最終的な判断をするわけでありまして、この第一條の国の賠償責任については、日本裁判所管轄権を持つておるわけでございます。裁判所におきまして法律問題としてこれを解釈するわけでございます。
  37. 田万廣文

    ○田万委員 合同委員会というものが裏づけで、いろいろ要請があるとかないとかいうような、サゼスチヨンといいますか、そういうような意見がましいことは述べられる危險性はないのですか。
  38. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 違法性有無について合同委員会から勧告を受けるというような根拠は、この行政協定にはないようであります。
  39. 佐瀬昌三

  40. 猪俣浩三

    猪俣委員 特別調達庁の方にちよつとお伺いいたします。これはこの法案と関連のないことになるかもしれませんが、今個人の住宅などが接收されまして、それが返されるのが出て来るが、その際に、私の知つておる人の話によると、ほとんど住めないような状態になつておる。床の間シヤワーをつけてしまつたような設備になつておる。そういうのは、その改造に要する費用などはどういうことになりつておりますか。ちよつとお聞かせ願いたいと思います。
  41. 曽田忠

    曽田説明員 接收解除の場合の補償の問題でございますが、これは従前も例がある問題でありますけれども、大体接收当時の価値に比べまして、接收解除当時の価値が減少しておる場合におきましては、その減少しておる分だけの補償をするわけであります。
  42. 猪俣浩三

    猪俣委員 価値は向うの造作によつて全体としては増してるかもしれぬけれども、日本人西洋人との生活様式が異なるわけです。床の間シヤワー設備をした。その方が非常に金がかかつておるのかもしれません。アメリカの人はぜいたくですから、相当価値が上つておるのかもしれぬが、日本人生活様式には適さぬという場合に全体から見て価値が上つておれば補償せぬと言いうことになるのですか。私のお尋ねするのは、要するに民法原形に復するというような場合において、その原形に復するために相当費用がかかるという場合はどういうことになるのか、それをお尋ねしておるのです。
  43. 曽田忠

    曽田説明員 損失補償の問題につきましては、ただいまお指摘のありましたように原状回復を認めるか、あるいは価値の増減を比較してその差をとるかという二つの問題があるわけでありますが、接收住宅につきましては、終戰処理費から相当費用をつぎ込んでおるわけであります。従いましてアメリカ式に見れば相当価値増でありますけれども、反面日本人としましては価値が増加しておりません。それをすべて昔の状態通りに回復するということは、先ほど申し上げましたように、その以前に相当国費をもつていろいろ工作をやつておりますので、費用がダブつて来るのではないかというような観点に立ちまして、今までのやり方は、大体価値の増減を比較してやつておりますけれども、具体的の場合におきまして客観的にその価値の増減を判断するという建前でやつております。
  44. 猪俣浩三

    猪俣委員 価値の増減がどうであるとかいうようなことについて争いがある場合は、どういう手続になりますか。
  45. 曽田忠

    曽田説明員 政府側におきまして、一応どの程度の価値減があるかということを査定いたしまして、それを所有者に示しまして所有者の承諾を求めるわけであります。所有者が不服でありますれば、その補償の問題の解決ができません関係上、その間相当折衝を要するわけであります。ただ一方的にこちらから最終的な決定を下すということはできない状況であります。
  46. 猪俣浩三

    猪俣委員 話合いがついておる場合は御説明なさらないでもわかるのですが、私の聞くのは話合いのつかぬ場合、価値が減じておると思う人が、その権利を一体いかなる手続で主張できるのかということをお尋ねしておるのです。
  47. 曽田忠

    曽田説明員 現在までの補償状況の事例を申し上げますと、大体最終的におきましては、所有者側と了解点に達しまして補償しておるわけでありますが、御質問のごとく、所有者側が絶対に納得できないという場合につきましては、私といたしまして今ここで御答弁申し上げる資料を持ち合せておりません。
  48. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務府側にお尋ねいたします。一つは、今のような接收家屋を返還するというような場合に、それを使用しておつた人が——今審議しておりまするこの民事特別法一條の人たちがこの條件に当てはまつた行動をした、その場合家屋が非常に損壊しておるというような場合においては、やはりこの法律が適用になるのですか。それとも別途の問題と相なるのですか。
  49. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 従来の接收建物の原状を変更されました場合に、それを返還する際には民法の賃貸借の規定によつて原状に回復する義務があるのでありまして、もし任意に義務を履行せず、また別に話がつかない場合には、裁判所に訴えて原状回復請求することになるわけであります。ただいまお尋ねのこの法案の第一條に該当するような行為があつて所有者に損害を加えたという場合には、この法律による請求権もあるわけであります。両者競合することになる、かようなことになつております。
  50. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお確かめておきますが、ただいま特別調達庁の方がお答えにならなかつたような問題について、法務府の御見解が明らかになつたのですが、そうすると、価値が増したか減つたかということで争いがある場合には、民法趣旨に基いて、民事訴訟法の手続に従つて裁判所に出訴することができる、そういう権利と、それからなおこの民事特別法の第一條に該当することがあるならば、請求権の競合があるというふうに理解してよろしゆうございますか。
  51. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 大体ただいまおつしやつた通りでありますが、現在までに建物接收して使用しておりますのは、いわゆるポツダム政令でありますところの土地工作物使用令を発動せずに、民法上の賃貸借の形で特別調達庁が借り受けて使用に供しているというふうに聞いております。その場合には、先ほど申し上げましたように民法の賃貸借の規定によりまして、原状回復請求ができるわけであります。将来講和発効後駐留軍としまして、この第一條の適用を受けるような行為がありました場合に、この法律によつて賠償責任を生ずることはむろんでありますが、使用関係の基礎が任意の賃貸借契約であります場合は、先ほど申し上げたのと同様なことになると思います。もし特別な法令ができまして、それによりまして行政的な使用権が設定されたというような場合におきましては、その法律の定めるところによるかと考えております。
  52. 猪俣浩三

    猪俣委員 この損害賠償の構成要件としての違法性の問題ですが、これは国家賠償法にそういうふうになつておるから、行政協定趣旨従つて、やはり違法性をこの第一條にうたつてあるんだという御答弁でありますが、そうすると、その国家賠償法條件がかわれば、この民事特別法の第一條違法性もまたかわつてよろしいもんだ、こういう御解釈になりますか。
  53. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 行政協定の十八條の第三項は、昨日も御質問がありましたように、日本国法令従つて賠償するということになつておりますので、日本国法令が将来かわりますれば、そのかわつた内容の日本国法令に従うという建前であります。従いまして国家賠償法で現在違法性要件としておりますのが、将来改正になりまして違法性要件としないということにもしなつたといたしますと、行政協定の方はそのままでいいわけでありますが、この法律案の第一條については修正を必要とすることになるかと思います。
  54. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは当然のことのようでありますが、念のため確かめておきたいのでありますが、アメリカ合衆国の陸軍、海軍、または空軍、その構成員、または被用者、この側からは違法性がないのだ、正当な行為であるということを力説せられる。被害者側からは違法性があるのだといつてつた場合には、そのアメリカ側の主張と日本側の主張のどちらをとるかは日本裁判所が自由の裁量に基いて決定してよろしい、こういうように解釈してよろしゆうございますか。
  55. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 その通りであります。
  56. 猪俣浩三

    猪俣委員 よろしゆうございます。
  57. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私この間行政協定のときに質問しておいたので、さらに特調の方々に質問したいと思うのでありますが、この際関連して行政協定に関して特調と法務府に対してお聞きしてもよろしゆうございますか。
  58. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 よろしゆうございます。
  59. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今たれかから御質問がありましたが、現在進駐軍に接收されている、将来合衆国軍に接收されるもの、これらは民有のものであるならば賃貸借をもつて本則とするといわれるならば、どこまでも現状回復の義務あることが民法の本則からして当然だと思うのであますが、そのときに特調からの答弁では、価値あるものは価値を差引くというのか。価値も何もないのは、現状回復するのはあたりまえである。今言われたような話がつくならばよろしいが、幾ら価値があるかどうか知らぬがこんなものは固るのだ、こちらは元の通りにしてくれればいいのだ、かような場合には元の通りにする義務があるのに、持調は利益があるからそれを差引いてやるのだとこう思つておられるのか、これをもう少し明確にしてもらいたい。
  60. 曽田忠

    曽田説明員 ただいまの価値の増減の判断でありますが、一般的に考えましても、たとえば日本床の間に洋式の便所をつくつたということは、常識的に見ましてもこれは価値等はないと思いますが、この価値増減の問題は客観的に解釈しつつ行くのであります。
  61. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 もし特調でいけなければ法務府で答えていただきたい。私の言うのは違う。価値も何もない、原状に回復することが本則だ。価値も何もない、そちらで価値あるというてもこちらではそう思わない。それはもつともだから元の通りにもどしてやると解釈していいのか。これは重大なことである。
  62. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 委員長より申し上げますが、かなり重大な点が含まれていると思うのです。もし法理的根拠が民法にいう契約解除によるのか、あるいは行政法上の特殊契約による解約ということで行くのか、その点をも法理的に村上政府委員より説明つた方が明快になると思います。
  63. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 民有の建物を借り上げます形が賃貸借でありますならば、民法の賃貸借の規定が全面的に適用になるわけです。従いまして、賃貸借に援用されております民法の五百九十八條が適用されて、原状に回復して返還することになると思いますが、民法の賃貸借でない別の形——と申しますのは、将来強制的に土地建物を收用する法令ができたといたしましても、その法令の中に特別の規定が置かれない限りは、この民法の原則がやはり適用されるのではないかと思います。その特別の法令の内容については、私は存じませんのでお答えいたしません。
  64. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今出でおります法律との関連から言うと、賃貸借の民法の原則がそのまま適用になるものとしますれば、賃借物に対する原状の変更は賃貸借契約を逸脱したる行為となる。そうすると、今言われるように、床の間に便所をつけたり、せつかくの白木の柱にペンキを塗られたりするがごときは、これは原状変更の大きなものだと思うが、それは第一條のこの規定によつて違法の処置として主張できますか、いかがですか。
  65. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 賃貸借契約の場合に、契約当事者以外の者がその目的物に対して変更を加える場合は、賃貸人の同意がない限りは不法行為である。従いまして、第一條に該当することになると思います。
  66. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これはしばしば起る問題だと思うから、これだけは明瞭にしておきたい。ところが行政協定の第四條は、合衆国軍隊に対して原状の回復の義務を負わさぬと書いてある。これは賃貸借の原則ともつばら反したものである。この点に対してこの間ずいぶん議論をしたのでありますが、これは合衆国軍隊日本国政府との間にこういう特例を設けたのであつて、これに対して日本政府原状回復をする義務を負うという返答のようでありましたが、この点は間違いございませんか。
  67. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 先ほどお答え申し上げましたのは、日本政府所有者との間に賃貸借契約を結んで駐留軍の用に供した場合であります。なお先ほど私が申し上げました点は不十分の点があつたのでございますが、第一條の適用があると申しましたのは、間違いであつたかもしれません。(「民法の適用なんかありはしない。無責任きわまる。」と呼ぶ者あり)公務の執行と関係がないことであれば第一條の適用がない、職務の執行上やつた不法行為であれば第一條の適用がある。こういうように御訂正願います。
  68. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 当然のようですが、もう一ぺん念を押しておきます。簡單に言えば日本国政府が、今のところで申しますと特調が、日本人から借りて合衆国軍隊に使用させます。その使用したるときに、先ほど言つたように、床の間に便所をつけたり、白木の柱にペンキを塗られたりすれば、この規定以外で賠償請求できるのですか。できるとすれば、どういう手続をして一だれを相手にしてやるべきものであるか。これをひとつ明確にしていただきたい。
  69. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 日本国政府建物を借り受けて駐留軍の用に供した場合には、日本国政府が賃借人として損害賠償責任を負うのであります。
  70. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 行政協第四條第一項、これは民間のものを使用する場合も入ると思いますが、かような場合には、これは直接でなくて、日本国政府が一旦民間のものを——買い取つてしまえば問題はありませんが、使用させるときに賃貸借をするということになれば、やはり日本国政府が一旦借りて、これを合衆国軍隊に使用させる、こういうことだろうと思いますが、どういうお考えですか。これは特調の方でもどちらでもけつこうです。
  71. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 日本国政府が賃貸借契約によつて借り受けまして、これを合衆国軍隊の用に供した場合におきましては、合衆国日本国との間は行政協定第四條第一項によつて規定せられるが、日十国政府と賃貸人たる建物所持者との関係は、民法の賃貸借によつて規定せられるのであります。
  72. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これはあなた方もお聞きになつたと思いますが、この間條約局長に質問したときに、これで見ると原状回復の義務はないことが原則のように見えるから、民法とたいへんな違いがある。それについてはこれを明確にする方法を何か考えておられるかと言つたら、それはさように言われるならば何か考えなければならぬということであつたが、さような疑惑を国民に與えないように、きちつとわかるような手続をせられる考えがありますか。またありませんか。これで見ると原状回復の義務のないことが本則のように見えます。それがために私は原状回復の義務があるだろうということを先ほどから言うた。これはこう書いてあるけれども、原状回復規定はあるのだ、これは民法規定によつてやる、こう言つてもらいませんと、はなはだ迷いますよ。その点はいかがですか。
  73. 曽田忠

    曽田説明員 先ほど来問題になつておりますのは、原状回復か、あるいは価値の増減の問題か、この二つにわかれておりますが価値の増減によつて補償するという方針は、閣議決定になつておる問題でありまして、過去の問題でありますから、一応特調で決定した問題だけで申し上げます。今後どうなるかという問題でありますが、事務当局として何らか考えられますことは、将来強制的に接收するという場合におきましては、当然原状回復の原則があろうと思つております。
  74. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 間接の場合はわかりましたが、直接の場合はどうなるのですか。
  75. 曽田忠

    曽田説明員 不動産につきましては、直接調達庁の問題はないと思います。
  76. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ただいまの質疑応答の点はきわめて重大な問題でありますから、なお次会に政府当局者出席した上で質疑を続行したいと思います。  他の点について御質疑はございませんか。
  77. 田万廣文

    ○田万委員 くどいようですが、なおもう一点お尋ねしたいと思います。第一條條文を見ますと、どうも私納得がいかぬのです。違法性の問題ですが、なるほど「合衆国の陸軍、海軍又は空軍の構成員又は被用者が、その職務を行うについて」という條件はついておりますけれども、違法でなければ云々というようなことはないのであつて、これはその上に違法性という條件が加わらなければいけないということですね。私が思うのは、行政協定の結果こういうものができて来るのかもしれませんが、違法性のある行為をかりにその職務を行うことの最中において行つたとしても、違法はどこまでも違法だから、向うさんの方で賠償してもらつた方がいいんじやないですか。違法性がないときにおいて日本国が初めて国民に対して賠償責任を負つてつてもいいけれども、違法性が特にある場合において、向うさんが当然負担しなければいけないと思うものを、日本国賠償しなければならぬというのはどうなんですか。これはくどいようですが、(「書いてある」と呼ぶ者あり)行政協定に書いてあると言うかもしれぬが、それは解釈の仕方だと思う。アメリカが権能を振つておるか知らないけれども、りくつに二つあるはずがない。向うが間違つた違法性ある行為をやつておりながら、貧弱な財政しか持つておらない日本に対して賠償をさすということは絶対にないと思う。これは日本政府の腰が弱いと思う。とにかく違法性がある場合には、当然向うは賠償しなければならぬ。これに対してあなたは日本人としてどういう感じを持つておられるか。
  78. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 行政協定の問題かと思いますが、被害者の立場からいたしますと、アメリカ合衆国を相手取つて損害賠償請求をするということは、事実上きわめて困難であります。日本政府賠償をして、アメリカ政府から分担金をとるという形になつている理由の一つではないかと思います。違法性のない行為につきましては、一般の場合にも被害者は損害賠償請求権がないのでありますから、この場合に限つて損害賠償の権利を認めるという必要もないと考えております。
  79. 田万廣文

    ○田万委員 今局長の話では、アメリカに対する請求が非常に困難ではないかという御心配のような話ですけれども、それは別個に、また條約なら條約によつて結べば結び得る可能性があると思いますが、この点法務府の考えはどうですか。
  80. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 この行政協定八條ができました理由については、私詳細には存じませんけれども、かような規定になつておりますことは、被害者にとつて必ずしも不利な規定ではないように考えるのであります
  81. 田万廣文

    ○田万委員 特別調達庁の方に一、二点お尋ねしたいと思います。先ほど田島君からちよつと質問があつたように思いますが、なおはつきりしないのでお尋ねします。米軍の所有する土地というものが具体的にございますか、あればそれを明示してもらいたい
  82. 曽田忠

    曽田説明員 私の知つている範囲ではありません
  83. 田万廣文

    ○田万委員 将来あり得るという考えですか。
  84. 曽田忠

    曽田説明員 あり得ないと思います。と申しますのは、将来、たとえば日本政府が賃借しておりますものにつきまして、特に買收を要する事例が起きて参りますれば、それは日本政府が買收するのでありまして、当然国有財産になります。従いまして、アメリカ側の所有する土地という問題は起り得ないと思います
  85. 田万廣文

    ○田万委員 第二條をどういうふうに読んだらよいのですか。「合衆国軍隊占有し、所有し、又は管理する土地の工作物」というのですが、今お尋ねすると、米軍の所有する土地は現在ない、将来もないというような御意見ですが、そうするとこの「所有し」という言葉もいらないわけですか
  86. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 これは「土地の工作物その他の物件」にかかるのです。
  87. 田万廣文

    ○田万委員 次にお尋ねしたいのは、米軍管理の工作物によつて起きた損害に対する予算的な措置は、どういうふうになつておりましようか。
  88. 曽田忠

    曽田説明員 この問題につきましては、大蔵省の方で研究中でありまして、まだ具体的にはつきりしたことは決定しておりません。あるいは防衛支出金から佛うのではないかというような説もあるようでありますが、その程度の状況であります
  89. 田万廣文

    ○田万委員 特別調達庁で取扱つておる施設であつて、その施設からの瑕疵から損害が発生したというような事件が、今までございますか
  90. 曽田忠

    曽田説明員 現在までの事故の大きな原因は、交通事故とかあるいは航空機の墜落、そういう事故が多いのでありまして、工作物の瑕疵による損害というようなことはあまりないようであります。
  91. 田万廣文

    ○田万委員 航空機というお話が出ましたが、そういう場合には、具体的に今までどういうふうな取扱いをなさつているか。見舞金といいますか、慰藉料といいますか……。
  92. 曽田忠

    曽田説明員 これは交通事故その他一般の損害の場合と同じように措置しております。
  93. 田万廣文

    ○田万委員 わかりません。それは具体的にどういうふうな金額でやつているのですか。
  94. 曽田忠

    曽田説明員 昨年の九月八日に基準が改訂されましたので、その基準に従つて申し上げます。おもな項目だけ申し上げますと、死亡見舞金は五十方円以下になつております。それから住宅見舞金は、損害額四万円までは全額、四万円を越す部分につきましては半額拂うということになつております。
  95. 田万廣文

    ○田万委員 今死亡見舞金は五十万円以下とおつしやつていますね。五十万円以下といつてもピンからキリまであると思いますが、どういう死に方をした場合にどれだけ佛つているかということを具体的に聞かしてもらいたいと思います。
  96. 曽田忠

    曽田説明員 五十万円の算出基準は、平均賃金の最高を一日五百円と押えまして、一般の労働基準法などは千日分佛うことになつておりますが、千日分としますと、最高五十万円になると思います。従いまして平均賃金の千日分ということであります。事故の内容によつて異なるという問題はありません。
  97. 加藤充

    ○加藤(充)委員 所管の大臣が来ないのですから、それに対する質問は留保したします。  一点お尋ねしたいのですが、やはり損害賠償要件として違法性が問題になつています。それでお尋ねいたすのですが、演習場の設定、これは陸海空軍によつて行われます。特にお尋ねしたいのは、漁場——海の上に演習場が設定される場合のことですけれども、そういう場合には幾多の損害が予想されるのでありまするが、借受け——借受けというか、演習場指定の際にそれらの損害までも実質的に込めた補償額が支拂われるのか、そういう方法で一般的に損害補償ということがなされるのか。あるいはまた損害が具体的に発生した適当な時期に、発生した分について損害補償して行くという方法をとられるのか。特調関係の方に聞きたいと思います。
  98. 曽田忠

    曽田説明員 漁業補償の問題ですが、これはむしろ農林省の所管でありますが、私の知つておる範囲を申し上げますと、大体演習期間の間出漁できなかつた額について損害補償する。今までは大体前年度の魚価を基準にいたしまして、その魚価に対して、平年度の平均漁獲高と、それから演習がありました当該年度の漁獲高、その差額に対しまして貫当りの魚価をかけたものにつきまして若干の修正を加えた額を補償しておるのであります。
  99. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それを支出する法的な根拠というものはどういうものになりますか。
  100. 曽田忠

    曽田説明員 これは一昨年でしたか、閣議決定で決定しております。
  101. 加藤充

    ○加藤(充)委員 閣議決定というだけで、そのほかには何ら法的な制度的な裏づけはないのですか
  102. 曽田忠

    曽田説明員 従来は閣議決定のみでやつてつております
  103. 加藤充

    ○加藤(充)委員 そうすると、それはいわゆる見舞金というような巷間俗称されている性格の金であつて、出さぬといえば出さぬでもよろしいものなのでしようか。
  104. 曽田忠

    曽田説明員 見舞金といいましても一応の基準がありまして、その基準に合致するものは全部出しておるしわけでありまして、ものによつて出さぬということは今までにありません。
  105. 加藤充

    ○加藤(充)委員 計算の基準があつて、出す気になれば出せるというだけの話であつて損害を受けたから漁民の方々がそれだけをどうしても賠償してもらわなければならないというときに、たとえば裁判所に問題を持ち出すというようなときに、それの法的な根拠というものはないでしようか。
  106. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 きのう角田さんにもちよつとお答えしたのをおそらくお聞きになつてつたと思いますが、この違法その他云々の條件に当つて、国内法にりつぱに当てはまる場合は、これはあるいは裁判の問題になるかもしれませんが、今お話の場合はおそらくそれに当らないのがむしろ通常の状態であろうと思います。従いまして、  一種の見舞金的の、補償という形で運用されておると思います。ただ今後の問題については、きのうもたしかお答えしたと思いますが、農林省あたりで相当真剣に考えておるということを私承知しております。
  107. 加藤充

    ○加藤(充)委員 占領軍の行為で違法という問題が法的に問題になつた場合に、その賠償の基礎づけになるような根拠はどういうところですか。
  108. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 占領軍関係のことは、ちよつと今の言葉に含まれておるような形になつたかも存じませんけれども、これは御承知のように特殊の事態でありますから、むしろ一般の問題として考えた場合に、私の今申し上げたことが当てはまるというふうに御了承願いたいと思います。占領軍の場合だけを特に取出して申し上げたのではありません。
  109. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私は、占領軍の漁場における演習地の設定、また設定に伴つた占領軍のいろいろな行動に基いた損害の場合についてお尋ねいたしたのであります。それについてのお答えだから、違法のあつた場合はそれぞれ賠償すべきものだというふうな趣旨にお聞きしたのですが、そこに私の質問があつたわけであります。その点はいかがですか。
  110. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それでは私の方が少しこんとんとしたお答えをしたことになります。おそらくそうかもしれませんが、今までのお話の行きがかりから見まして——たとえば占領軍の飛行機が落ちた場合のお話がありましたが、その場合も、今曽田君が申しましたように、閣議決定で、見舞金の形、その関係と今の漁業の関係も私は同じりくつだろうと思います。ですからむしろ問題は、今後占領軍がなくなつて駐留軍になつたその後の一般的な問題として考えることが実益のあることでもありますし、実はそのつもりでお答えしたつもりであつたのですけれども、表現が悪かつたと思います。
  111. 加藤充

    ○加藤(充)委員 閣議決定はあなたにお聞きしてもわからないのかもしれませんが、結局この法案によりましても、軍が演習場を設定し、そこで演習するという範囲内においては、これは違法な行為ではないと思うのですが、そういう場合に損害賠償しなければならない実情が出て参る。ぜひ損害補償しなければなるまいと私どもは思うのですが、そういう場合に違法がなければ、それだまが飛び出したとか、あるいは区域外にどういう行動があつたとかいうような問題があつて、初めて損害が発生されるというのであるならば、演習地内において正当な——正当、不正当の区別はわかりませんが、演習をどんどんやつて出て来る損害は遂に補償されない。閣議でも占領軍の行為については、違法だとか適法行為だとか判断の余地がなくても賠償しなければならぬということで、見舞金という情ない名目で出しておるのですが、これをこの際制度化する場合において、適法な行為においても、あえて違法がなくても損害がたくさん発生する場合がある。しかも占領軍あるいはこれが駐留軍の継続駐留ということになつて参りますと、全国にはその事例がたくさん続きます。それが除外されることはたいへん問題だと思いますので、その点を救済する方法が当然なければならないと思うのです。しかも、その被害者たるや一日海に出て一日の生活をのりして行く連中なので、これは大きな社会問題であります。これを強圧するだけでは、とうてい能事足れりとするわけには参らないのであります。その点についてお尋ねするのですが、こういう法律ができまして、違法がなければ損害賠償の義務なしということになつて参りますと、そこで見殺しにされる幾多の漁民あるいは演習場地区周辺あるいは演習場その他の関係のある日本人損害を受けると思う。もつとも地区の中に入つてなくても、それだまが当らなくても、よく乳千が乳が出ないとか、鶏の産卵の率が落ちるとかいうようなことがいわれておつて、これはあながち共産党のデマ宣伝でもなさそうですから、この点はやはり見舞というようなものを制度化して続けて行く配慮を持つのかどうか。見舞というようなもので——私はごまかすというわけじやございませんが、そういうことで糊塗するよりも、むしろそれはさらに進んで無過失損害賠償というような形に法理的な体系は裏づけされるべきものではないかと思うのですが、その点の見通しはどうですか。
  112. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 おつしやる通りの問題があると思います。およそ違法な行為によつて権利の侵害を受けた場合に、1これを補償しなければならぬということは、古今東西を通じてあやまらざる原則で、そういう立法は現在もありますし、これは当然なことだと思います。さらにそれに一歩を進めて、無過失損害賠償の制度まで組み込むかという問題、さらにもう一歩進めますと、今の本来見舞金に相当するような性格のものを立法化して立法上確保するというように、段階がいろいろあると思います。従いまして最初に申し上げました古今東西を通じて誤らざる分は問題ありませんが、それを踏み出してどの程度立法するかという問題は立法政策の問題で、あるいはまた唯一の立法機関としての国会で十分お考え願うべきことかと思います。確かにその点は問題があると存じます。従つて先ほど漁業のお話がありましたように、その点も勘案して、農林省では立法を要するかどうかということまで触れて研究しておることを私は承知しております。
  113. 加藤充

    ○加藤(充)委員 違法なるものに対しては損害賠償しなければならぬ、適法な行為に対しての損害賠償まで——というよりも違法性のない損害賠償までのことは、将来考えるべきだということを言われた。それ自体は確かに当然のように思うのです。しかしながら日本の国民は日本の憲法秩序、憲法制度のもとに生きているわけであります。従つて、こういうような外国の軍隊がどんどん演習地を設定して、日本の国民に被害を與えるというようなこと自体が、日本人の法的生活からいえば、これはあからさまに合法的でない。従つて違法なるものであるとわれわれは立論できると思う。こういうものが行政協定によつて事実化されたとしましても、それは擬制による押しつけ的なものにすぎないといつても過言でないと思う。従つて実質的にはこれは違法なんであります。日本人の憲法生活、憲法下の制度からいえば、これはあからさまに違法である。その意味で不法なる行為も、国民は、憲法下においては政府のやり方で屈従しなければならないところに落されているのであります。私は屈従する必要も日本人としてはないと思いまするが、根本的にはこれは違法なるものであり、不適法なものだという日本人としての憲法解釈従つて不適法なる行為による損害を受けているのである、こういうふうな立論はりつぱにできるのであつて、私はその点で見舞金で済ましているということは、不十分きわまる不人情な話だと思うのであります。違法論あるいは損害賠償の構成要件論あるいは憲法から見て、占領軍がどんどんやつて来て魚場で演習をやり出すというようなこと自体、日本人的立場に立てば、憲法の立場に立てば違法なるものであります。正当なるものじやないのであるから、その意味で損害賠償は十分に国家、政府責任をとらなければならないと私は思うのですが、その点はいかがなものですか。
  114. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 おつしやることは十分わかりますし、それに対する私の考えは先ほど申し述べた通りでありまして、そういう点も含めて研究いたしておるわけであります。
  115. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ただいまの点については意見長官の御意見もあり、なお昨日は木村法務総裁からも御意見の発表があつたようでありますが、なお一段と政府当局において御研究を願いたいと思います。  他に質疑がなければ、午前中はこの程度にとどめ、午後二時から再開いたします。暫時休憩いたします。     午後一時十六分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  116. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案を議題といたします。  この際お諮りいたします。本案審議のために昨日の本委員会において要求しておきました巣鴨プリズン在所者調が法務府より資料として提出されたのでありますが、これを会議録にとどめておきたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なければさようにとりはからいます。  それでは前会に引続き質疑を続行いたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。大西正男君。
  118. 大西正男

    ○大西(正)委員 法務総裁がお見えになりませんので、冒頭に一般的な問題につきましてお伺いいたしたいのでありますが、これは次の機会に割愛をいたしまして、その他の点について伺つておきたいと思います。  まず現在いわゆる戰犯といたしまして、巣鴨のプリズンに服役いたしておりまする戰犯者の最近の状況につきまして、御説明願いたいと思います。その御説明の内容は、いただきました資料に出ておりますことに沿つて説明をいただければいいと思いますが、概況をお伺いしたいのです。
  119. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 ただいま巣鴨プリズンに在所いたしておりまする在所者の総数は、今日現在千七名でございます。この級別つまり戰争裁判のときのA、B、Cの級別で申し上げますると、それが2として表に掲げました通り、A級が十三名、B、C級が九百九十四名となつておりまして、B、C級の区別はただいま調査できませんので、一緒に計上いたしてございます。それらの人たちの階級につきましては、3項に書いてありますように、大体民間人百八十八名を除きまして、残りは軍人ということになつておりまするが、その階級も元帥一名、大将三名、中将三十五名、少将十二名以下佐官、尉官、下士官、兵となつておりまするが、下士官の数が相当多いのでございます。年齢別にこれを申し上げますると、それは5となつております。ちよつとお断り申し上げますが、この4項を飛ばしましたのは、実は4項につきまして各国の裁判別の計上をいたしたのでございますが、その点に誤りがございましたので、それだけ後日提出いたすことにいたしまして、ただちに5になるわけでございます。年齢別で申し上げますると、三十年未満の者が四十三名、三十年から三十五年未満の者が二百八十一名、三十五年から四十年までの者が二百七十四名、四十年から四十五年までの者が百二十九名、それから五十年までの者が百五名、五十五年までの者が五十八名、六十年までの者が四十九名、六十五年までの者が四十九名、七十年までの者が十四名、さらに高齢の七十五年までの者が二名、八十年までの者が二名、八十五年に達する者が一名という年齢になつておるのでございます。  それから各国で裁判せられた者の刑名を6に書いたのでございますが、これはただいま向うから引渡されました身分帳簿を大至急整理いたしてやつておるのでございまするが、中にはそれについても記載がないものがございまして、まだはつきりしたものが出ないのでございますが、ここに書いてありますように、中国のは徒刑と推測されるのでございますが、これが期間を定めて何年、無期というようなぐあいにただ表示せられておるのでございます。実際の刑は普通の懲役刑と同じものを今まで報行もせられて来たのでございます。アランス関係のは、英語に翻訳せられましてピーナル・サーヴイチユードというぐあいに記載せられまして、これが日本の懲役刑と同じような取扱いを受けて来ておるのでございます。オランダにつきましても、これも刑期がしるされておるのみでございまして、刑名がまだはつきりいたさないのが多いのでありすす。英国はインプリズンメントと書いてございまして、これはハード・レーバーのついておるものとそうでないものとございます。米国はインプリズント、それにハード・レーバーのついておりますもの、それからコンフアインメントと、それにハード・レーバーのついておるものと二種類でおりますが、内容におきましては日本の懲役刑に類する取扱いを受けているのでございます。  次にこれらの人たちの刑期別の表を7として掲げてございまするが、これは上からごらんくださいますると大体おわかりになると思うのでございます。終身刑が三百三十五名ございます。そのほか五十年あるいは四十六年、四十五年、こういうような刑期以下ここに記載した通りでございます。  大体中におりまする在所者の人たちに関する状況は、ただいま申し上げました通りでございます。巣鴨プリズンは今月の一日から、連合軍の監督のもとではございまするが、一応日本側の責任におきまして管理する運びになつております。日本側の刑務官が、そこにおきまして一切の世話をいたしておる次第でございます。
  120. 大西正男

    ○大西(正)委員 それでは中国関係の戰犯として巣鴨に收容されておる人々は何人くらいおられましようか。それと朝鮮人、台湾人にして戰犯として收容されておる者……。
  121. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 中国法廷で裁判せられました人たちは、現在九十六名と記憶いたしております。なお朝鮮人として在所しておる戰争犯罪受刑者は、三十三名でございまして、台湾人は二名でございます。
  122. 大西正男

    ○大西(正)委員 そういたしますと、平和條約に署名をしなかつた連合国の裁判を受けて巣鴨に服役をしております者は、中国関係だけでありましようか、そのほかにございましようか。
  123. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 中国関係だけでございます。
  124. 大西正男

    ○大西(正)委員 そういたしますと、平和條約の第十一條によりますと、日本国は戰犯法廷の裁判を受諾し、かつ日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が科した刑を執行するものとする、こういう規定になつておるのでございますが、これに関連をいたしまして、まず第一には、戰争犯罪の法廷で裁判を受け、そしてその執行を日本国外において現に受けつつある人は大体どのくらいあるか、その状況と、それから現に巣鴨刑務所に在所いたしておりまする、平和條約に署名をしなかつた中国の法廷の裁判を受けた在り所者は、講和條約の発効によつてどういうふうに処置されるか、さるべきであるか、その点を伺いたい。
  125. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 外地におりまする戰争犯罪受刑者は、フィリピンのモンテンルパ島のニュービリビツド刑務所というところに百十一名在所いたしております。そのうち五十九名が死刑の判決を受けておる人でございます。濠州のマヌス島の刑務所におりまする濠州関係の人たちは、総数二百十名でございます。  次に中国法廷で処罰されました人たちに対する刑の執行その他につきまする関係は、ただいま中国との間に外交折衝が重ねられておるということを承つておるのでございますが、この戰争犯罪者に対する問題も、その中で討議せられておる由でございまして、私どもはその協議の結果によりまして、最もよい結果が得られることを期待しておりますので、今日巣鴨におりまする人たちの処置につきましても、しばらくそのままで結果を待つておるという方針でおるわけであります。
  126. 大西正男

    ○大西(正)委員 第一の点については、フィリピンと濠洲関係以外は、今わかりませんでしようか。
  127. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 ソ連のことはわかりませんですが、そのほかにつきましては、これですべて完結しておると思います。
  128. 大西正男

    ○大西(正)委員 今中国法廷の関係につきましては、台湾の政府と折衝中であるとの御答弁でありますが、サンフランシスコにおいて調印をされました平和條約が、中国関係よりも先に効力を発生するであろうと考えられるのでありまするが、その効力が発生をしました場合に、一体日本国はその中国関係の在所者に対して、いかなる権利義務を持つのでありましようか。
  129. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 平和條約十一條によりまして、米国、英国その他の国との間におきまして、戰争犯罪人に対する裁判を受諾し、刑の執行も日本がいたすということを認めておりますので、中国に対する関係でなく、またそれらの平和條約の相手国に対しても義務がある、かように考えておるのでございます。
  130. 大西正男

    ○大西(正)委員 中国関係については平和條約に中国が参加をしなかつたにもかかわらず、もとの連合国の一員としてこの第十一條の「連合国戰争犯罪法廷」云々のその連合国に入る。そうして入るがゆえに中国と日本との平和回復に関する交渉の成立いかんにかかわらず、この第十一條によつて中国関係の戰犯者も同じように処置するという御趣旨でございますか。
  131. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 これらの中国以外の国に対しても、そういうような義務があるので、同じように処理するという意味でございます。
  132. 大西正男

    ○大西(正)委員 その点はその程度にいたしまして、かつて戰争中に日本の国民として戰争に従事をしまして、そうして戰犯者となつておる、現在においては朝鮮人、台湾人となつておられる人々につきましては、字句の上でこの條約に含まれないように思うのでありますが、それはどうなるのでありましようか。
  133. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 その点は條約十一條解釈ということに相なるかと思うのでございます。十一條日本人と定めました者は、その犯罪当時におきまして、日本人として日本の戰争に関與しまして犯罪を犯した、そうして裁判当時にも日本人であつた者、それらの者に対しまして、日本が今回さらにその刑の執行をするという建前でございますから、結局その裁判当時に日本人であつた者は、刑の執行を負担することになるというぐあいに解釈すべきであると思うのでございます。従いまして朝鮮、台湾人もここで十一條に言う日本人解釈するのでございます。また講和條約発効までは、これらの人たち日本人でございまして、発効いたしましてから後には、朝鮮人になり、あるいはその他の国籍になると思うのでございまするが、それまでは日本人としての義務を持つておるのでございます。たださように條約が効力を発生いたしましてから、朝鮮、大韓民国なり、あるいは中国なりの国籍を取得する者に対しまして、日本において刑を執行するということが事情の上から申して、はたして忍び得るかどうかというようなことは、これはまた特別に考える必要があると思うのでございまして、そういうものにつきましては、別の方法を考えることが必要だと思うのでございます。
  134. 大西正男

    ○大西(正)委員 今のその第十一條日本国民の解釈につきまして、外務省当局の方の御意見を伺いたいと思うのでありますが、いかがでしよう。
  135. 重光晶

    重光説明員 平和條約十一條の「日本国で拘禁されている日本国民」の範囲についての外務省の見解も、ただいま法務府の方から答弁されたこととまつたく同一でございます。
  136. 大西正男

    ○大西(正)委員 なるほどその裁判を受けました時分は日本国民であつたかもわかりませんが、講和條約の発効と同時にそれらの人は論理的には日本国民でなくなるというふうに私思うのでありますが、かりにそういたしますと、一体そういう人々に対して、日本の国がいわゆる刑を執行する権能がはたしてあるのでありましようか。今の御答弁ではあるということになるのでしようけれども、はなはだ私は疑問があると思うのであります。この疑問を持ちつつ一応その点は打切りたいと思うのであります。  次に先ほど局長の申されました日本国外において服役をされておる人々を日本の国へ引取ることについての現在の交渉状況並びに将来の見通し、そうしてまたそれらの人を引取つた場合の処置はどういうことになるか、その点について……。
  137. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 外地におりまする人たちを内地服役をすること、あるいはさらにそれ以上に恩典が與えられるというような点につきましては、私どもとしましては、私どもの関係部局には一応の交渉はいたしておるのでございますが、その問題は主として外務省におかれまして、いろいろな面から御盡力くださつておるのでございます。その詳細につきましては、私存じておりません。なお外地におりまする人たちが帰つて来てから後どうするかということにつきましては、この法案におきまして一応引取ることができるような條文をお願いすることになつておりまして、それは三十九條におきましてこれを規定してあるのでございます。
  138. 大西正男

    ○大西(正)委員 外務省の方でわかつておる点がありますれば……。
  139. 重光晶

    重光説明員 外地服役者を内地に帰してもらいたいということは、ただ平和條約発効というようなこととは関係なく、今まででも関係の国に総司令部を通じまして交渉して来たわけでございます。現在どことどういう話があるかということは、実は私資料を持ち合せておりませんので、具体的に申し上げられないのでございますが、フィリピン等に関しましても、最近そういうようなチヤネルを通じて話があつたことは存じております。
  140. 大西正男

    ○大西(正)委員 外地で服役されておる人々につきましては、ここで詳しいことを申し上げる必要はないと思うのでありますが、政府におかれましては、なるべくすみやかに国内に引取ることができるような処置を十二分にとられんことを希望いたします。  それから次にお尋ねいたしますのは、この法律案の第二條の二号に出ております刑について、並びにそれは平和條約第十一條の「これらの法廷が課した刑を執行する」というその刑に関してでございますが、一体この刑というものはどういう性質のものでございましようか。つまり日本国内の諸刑事規定規定されておる刑と同じものでありましようか、あるいはまた違つたものでありましようか、その性質についてお尋ねいたします。
  141. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 ここで刑と規定いたしました趣旨のものは、特にこれが刑法のいわゆる刑でないということを明らかにしたものでございます。極東国際軍事裁判所及びその他の連合国戰争犯罪法廷で科しました刑、かように言うので、従いまして、刑法で申します刑に関するいろいろな身分上の影響その他はこれには適用のない性質のものでございます。
  142. 大西正男

    ○大西(正)委員 そういたしますと、この平和條約並びにこの法律案規定されておるものは、国内法の刑とは違つたものであるという御答弁でございます。従つてこれらの人がいわゆる刑期を済ませて出所いたしましたならば、選挙権、被選挙権あるいはまたその他の身分関係あるいは前科関係、そういつたものは全然関係ないということになるのでございましようか。
  143. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 大体御質問通りだと思いますが、ただ追放関係につきましては問題が残ることがあります。
  144. 大西正男

    ○大西(正)委員 それはいわゆる国内法に規定されておる刑とは違うのだ、こういう御説明であります。われわれもその点は多くのいわゆる戰犯服役者のために、御当局の御答弁を多とするものでございます。すなわち戰犯者というものは、私申し上げるまでもございませんが、いわゆる自然犯に対しての刑ではなくて、どちらかというと、責任罰のような性質を多分に持つておる面があると思うのであります。そういう意味におきまして、国内法のいわゆる犯罪を犯し、そして刑を受けておる刑余者とは全然違うのだということになると思うのであります。  しからば第二條第四号にございます刑務所というのは、日本国内の一般の刑務所と同じように考えてよろしいのでありましようか。
  145. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 ここで刑務所と申しますのは、便宜上この名前を持つたものでございますが、日本の刑法の刑の執行の場所である監獄というものとは違う意味で、ここに名前があげられております。
  146. 大西正男

    ○大西(正)委員 そうすると、いわゆる監獄法に規定されている刑務所とは違うものでございますね。
  147. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 その通りでございます。
  148. 大西正男

    ○大西(正)委員 しからば、監獄法に規定をしている刑務所というものとまたく同じ名称の刑務所という名前を、便宜しかもわかりませんが、使われることは、そこで服役している人々に対して心理的に非常な悪影響を及ぼすものではないかと私は思うのであります。この刑務所という名前を便宜上使われたのだという御答弁ならば、私はもつと別な適当な名前に修正されるのがしかるべきではないかと思いますが、これについてはどういうお考えでありましようか、御意見を伺いたいと思います。
  149. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 その点司令部との何か折衝でもあれば、それをもつけ加えてお述べになつていただきたいと思います。なお速記をとることがさしつかえるならば、その点も顧慮して聞いてもよいと思います。——ではちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  150. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記を始めてください
  151. 大西正男

    ○大西(正)委員 経過を伺いましたが、刑務所という名前を変更してはいけないのですか。何かいけない理由があるのでございましようか。さしつかえがあるのでございましようか。
  152. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 巣鴨刑務所の名前を変更することがいけないという理由は特にございません。
  153. 大西正男

    ○大西(正)委員 「刑務所」と原案に書かれておる名称は、変更するのに別にさしつかえがない、こういうふうに拜聴いたしておきます。  次にいわゆる戰犯法廷において判決されました、法廷の宣告した各刑、その刑の種類は先ほど御説明いただきました資料に基きまして、いろいろあるようでございますが、これらの諸外国の法廷の定めた刑というものは、これは現在いろいろありますが、日本の国内の刑とどういう関係になるのでございましようか。つまりそれを執行するについて、日本の国内の類似の刑と同じ所遇をしておるのか、あるいは法廷のきめたそれらの刑を、各国の状況を調べて、それに基いてやつておるのか。現在どうやつておるのか、そしてまた将来どういうふうにされるのか、この点を伺いたいと思います。
  154. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 現在やつておりまするのは、大体アメリカのやり方だと聞いておりますが、それに一定してやつております。そのやり方は、中におりまする人たちの本人の希望なり、あるいは性質なりその他いろいろな條件に従いまして労働につかせる、あるいは労働につかずに事務につく、あるいは全然さような仕事につかぬというようないいろいろな処遇のもとに、一定の規律を守つて生活しておるということにいたしておるのでございます。将来日本でその処遇を実施いたしまするにつきましても、主として本人その人の條件を十分調べまして、その意思なり、あるいはその人格なり、体格なり等をしんしやくいたしまして、適宜な処遇をそれぞれの人に対してあてるようにいたしたいと思つております。
  155. 大西正男

    ○大西(正)委員 その適宜の処置というのはどういう機関で、どういう根拠に基き——その適宜の内容でありますが、大体お考えになつているところを伺いたい。
  156. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 刑の執行につきましては、監獄法のある部分を準用することにこの法案で定めてあることに相なつておるのでございますが、それによりまして監獄法の一部の作業とか、あるいはその他の生活の基準等の規定をするところを準用いたしまして、中におきまする職員によつて本人についていろいろ分類をいたしまして、その分類に基いて処遇をきめて行きたい、かように考えておるのでございます。
  157. 大西正男

    ○大西(正)委員 次にお伺いいたしますのは、提案理由の御説明によりますと、かりに在所者が逃走をいたしましたときにも刑法の逃走罪は成立しない、こういう御説明でございましたが、その根拠を伺いたいと思います。
  158. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 刑法の逃走罪の規定によりますと、既決、未決の囚人が逃走した場合ということになりまして、刑法その他の法規の違反として監獄に留置せられ、未決、既決の者が逃走した場合を言うのでございますが、この戰争犯罪受刑者につきましては、さような国内犯の既決、未決の囚人に該当いたしませんので、逃走した場合には逃走罪として律することがその條文ではできない、かように思うのでございます。もつとも法令により拘禁せられた者を奪取する罪、あるいはその逃走を器具を供して援助したり、あるいはその收容者を看守いたします者が逃走させたりいたします罪につきましては、法令解釈上犯罪が成立すると考えられるのでございます。従来巣鴨プリズンにおきまして、連合軍のやつて参りました諸規則並びに慣例としましては、その逃走罪ということを定めていないのでございます。また逃走をした例もございません。従いまして特に逃走罪を規定するという必要もない、かように考えておるのでございます。
  159. 大西正男

    ○大西(正)委員 次にお伺いいたしますのは、前後いたしますが、法律案の第二十四條第一項本文であります。本文の但書におきまして、「一時出所を許された者の、その後六月以内における同一人の死亡又は危篤を理由とする一時出所は、この限りでない。」こういう條文がございますが、「この限りでない。」というのは、もう二回あるいは三回の者は、六箇月以内においては絶対に許さないという意味でございましようか。別にそれだけという意味ではないのでございましようか。
  160. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 この但書は「同一人の死亡又は危篤を理由とする一時出所」こういうふうに書いてございます。父が危篤であるというので一時出所を許した。それがまた帰つて来て、また同じく危篤状態が続いているから出してほしいというのでは、あまりに濫用に陷つて、一時出所という制度の本来の趣旨に反する、こういう意味合いでございます。しかし父の危篤で出た、その後母がなくなりそうだという場合に、親の死に目に会いたいというのは、これは解釈上可能である。また家が風水害にあつて本人がいなければ困るという場合、そういうように六箇月以内に数箇の事由があれば、そういうことが数度ある、こういうふうに解釈しております。
  161. 大西正男

    ○大西(正)委員 もちろん何回も死亡するわけでもなく、死亡するのは一回でございますから、死亡の点は問題ありません。それからまた危篤状態が続いておるということも考えられますが、一ぺん危篤状態に陷つて、そうして病気が案外よくなつて快方に向つた。六箇月以内に同一人が同じ病気、あるいはまた別個の疾病によつて危篤状態に陥らないとも限らない。これはきわめてまれなことでございましようけれども、そういう場合も許さない、こういうことになるのでしようか。ただこれはその限りでないのであつて、そういう特別な場合にはその事由が明らかであれば、また適当であれば、二回目であつても許さないとは限らない、こういうことに解釈してもよろしいのでありましようか、その点をお伺いします。
  162. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 この点もいろいろ研究してみたのでございますが、立案の際の考え方としては、やはり濫用に陥るというようなことになつては、戰犯者の処理が適正を欠くというふうに見られることもありますので、一時出所を許すことができる、その限りでない、こういうことでございますので、やはりそれはできない、こういうふうに解釈いたしております。
  163. 大西正男

    ○大西(正)委員 絶対できないということになると、これはあまりに気の毒だからして、その死に目に間に合うように出所さすというのが、これが人情並びに人道に基いておる規定だと思うのであります。そこで先ほども申し上げましたように、病気が快方に向つてつた、しかるに今度また危篤状態に陥つた、その危篤のために今度は遂に死亡されるという場合があり得ると思うのであります。そういう場合までも許さないというのは、これはあまりに酷ではないか、私かように考えるものでありますが、法文の解釈上「この限りでない。」というのは、これは逆に書いておるわけでありますから、「この限りでない。」ということを、今度またこれを逆に解釈をして、許さないのではないという、そういつた解釈はできないものでございましようか。御当局の処置なさるお考えは第二段といたしまして、法律上そんなに強い意味が含まれておるというふうに解釈をしなければならぬものでしようか、どうなのでしようか。
  164. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 巣鴨拘置所の現在までの慣行等もありまして、そういうふうな彈力性を持たせるということも、十分研究いたしたのでございますが、それはやはり濫用に陥るというおそれがあるというふうな理由から、立案の趣旨といたしましては許すことができない、こういう意味合いで書いておるのでございます。
  165. 大西正男

    ○大西(正)委員 そういたしますと、非常に残酷なことになると思うのでありまして、こういうことを濫用という必要はないじやないか、こういう事由があれば何回許してもいいのではないかと私は思うのであります。従つてそういう処置が、この法律の修正なんという大げさなことでなしに、取扱い上、内規とかあるいはこの法律に基く他の法律の諸親定によつて、そういう取扱いができぬものでしようか。また現在そういうふうに取扱わないというお気持ならば、そのお気持を変更なさつていただきたい。変更するにやぶさかであつてはならないと思うのでありますが、どうでしようか。
  166. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 私も気の毒なそういう在所者の方にできるだけ有利にとりはからうということを欲する点では、同じ考えでございます。ただ立案の趣旨は、いろいろ研究の結果かようなことになつておるということを申し上げた次第であります。
  167. 大西正男

    ○大西(正)委員 ですから、従来の御研究の結果を変更なさる御意思はないか、考える余地がないかということを伺つておるわけであります。  それから私はこういうことで政府がだまされたというのじやないが、極端にいえば結果においてだまされたようなこともあるのではないかと思うが、実際に危篤であるかどうかということは、どういうことで認定されますか。
  168. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 危篤であるかどうかということは、この次の條文の第二項にございますように、書類で医師の診断書、こういうものを出されたものをよく検討する、こういうことでございます。またこの事由について非常に御心配のそのお気持は私も十分わかるのでございますが、この事由には父母、配偶者、子供、こういつた非常に多くの関係者も入つておりまするし、いろいろな点もございますので、その運用については十分考慮したいと考えております。ただ同じ人について一度危篤であつて、また続いて危篤であるということを主張しても、これはとうてい応ぜられないということでございます。立案の趣旨としてはそういう意味でございます。
  169. 大西正男

    ○大西(正)委員 どうもその点納得しがたいのでありまして、議論を何べん繰返しても同じでありますが、とにかく提案者である政府の御趣旨通り、「この限りでない。」というのは一回以上は六箇月以内には絶対に許さない、法文上の解釈はそうだといたしました際に、何かそこに法文を別に修正せずして処置をとり得る余地はあるかどうか、政府にそうしようというお考えがありやなきやは別問題といたしまして、虚心坦懐に考えまして、この法文はこのまま置いておいて、なおかつ六箇月以内に数回許し得る処置をとり得る余地があり得るかどうか、それだけを伺いたいと思います。
  170. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 立案の趣旨は数回申し上げた通りでございますが、実際問題として、父が危篤で一時出所した、その後すぐ続いて父が死亡し、同時にそれを心配して母が危篤になつたというような場合には、この法律の適用としても一時出所を許すことは可能である、かように考えております。
  171. 大西正男

    ○大西(正)委員 それは私のお尋ねしのたのとは別個の問題でありますが、そういうただいまの御答弁で一応とどめておきます。  次に同じ條文の第一項第三号所定の「近親の」とありますが、「近親」というのはどの程度の者を言うのでございましようか。
  172. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 この「近親」の意味でございますが、結局これは常識をもつて解釈すべきものと考えております。そしてどういう範囲かと申し上げますと、やはり家族であるとか親戚とかいうものが典型的のものである、かように思つております。
  173. 大西正男

    ○大西(正)委員 そうしますと、別に「近親」というものの固定した定義はないわけでございますね。その場合に最大限一体どの線まで行かれるのですか。
  174. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 本人と相当関係があつて、こういつた災害によつて家財あるいは家屋敷を失う、そして本人がいなければ、この拘禁されておることについて全然責任のない人が跡始末ができない、こういうような窮状に陥るという場合が、結局この事由に該当するのでありまして、結局は常識をもつて解釈する以外にはない、かように考えております。
  175. 大西正男

    ○大西(正)委員 そうしますと、大体その常識で縁故者というところにまで考えてよろしゆうございますか。
  176. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 その縁故の程度が、本人がいないために跡始末に困るというような場合に、入るものと考えております。結局常識上もつともだというようなことになるのではないかと考えます。
  177. 大西正男

    ○大西(正)委員 この一時出所の決定をするのは委員会になるわけですね。
  178. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 さようでございます。
  179. 大西正男

    ○大西(正)委員 そうしてただいまの御答弁によれば「近親」というものの確固たる定義はないように拜聴いたしましたが、なるべくこれはひとつ広義に解釈するとともに、そういうお取扱いをしていただくように、この際特にお願いをいたしておきたいと思うのであります。  次に第二十六條でありますが、第二十六條によりますと、一時出所を許しました際に、保護観察官及び法務事務官のうちから、その者の監督に適当な者を選んで同伴させるという規定になつております。そうしますと、一体この同伴をさせるについての費用負担は、だれが負うのか、その点を伺いたいと思います。
  180. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 観察官、事務官の旅費は国費で支給する、こういうことにいたすつもりでございます。
  181. 大西正男

    ○大西(正)委員 次にこの法律案を通覧してみますと、国内法におきましていわゆる刑の執行停止に当るものが発見できないのでありますが、どこかにそういうものがあるのでございましようか。またそれがないといたしたならば、特に意識的にそういうものをはずされたのでございましようか、伺いたいと思います。
  182. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 執行停止につきましても、いろいろと研究いたしたのでございますけれども、ただ執行停止というような制度が各国にございません関係で、いろいろと研究の結果、一時出所、しかも一時出所につきましては、先ほど仰せのような事由を嚴格にするといいますか、はつきりさせるというふうな点もございますが、やはり刑期に算人されるというような点で、この一時出所もやはり執行停止の研究の結果の一部でございます。それから病院への移送の場合も同じく刑期に算入する、こいうふういろいろ研究の結果、この案におちついたような次第でございます。
  183. 大西正男

    ○大西(正)委員 御研究の結果、意識的にそういうふうに取扱われたということでございますが、そこで伺いたいのは、各旧連合国の国内法におきましては、いわゆる刑の執行停止に相当するところのどういう制度がありますか、この点につきまして、御調査ができておりましたならば、この際伺つておきたいと思います。
  184. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 現在その国でなされております最も手取り早い例でございますが、これとこの案はまつたく同様でございます。しかも実際の運用においては、時間の関係等も、この案よりももう少しきゆうくつな案になつている。実際はそういうふうに行われておる。こういうことであります。
  185. 大西正男

    ○大西(正)委員 一時出所のことではなくて、日本の刑訴法上の刑の執行停止に相当するような制度が、各連合国に国内法としてあるのか。またあればどういうふうな制度なのか。その点を伺いたい
  186. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 私ども研究が不十分なためであつたのかもしれませんが、アメリカ等に同様な制度があることを知らないのでございます。結局この案に執行停止の制度がとられるならば、私どもとしてはそれをとりたいと考えて、いろいろと研究いたしたのでございますが、さような結論にはならないで、結局は現在巣鴨で行つておるものを、日本の実情に合うように、またできるだけそれが適切に行われるように、結局研究の結果こういうふうになつたわけでございます。
  187. 大西正男

    ○大西(正)委員 諸外国の立法例をお調べになつておらないようでありますが、この点ひとつお調べ願つて日本の刑訴にありますところのいわゆる殺人とかその他の窃盗、どろぼうとかをやつた連中に対しまして日本の国内法が規定しておるような刑の執行停止があるのでありますか。そういつたものが一体この戰犯者として在所しておる人に対して適用がないといううことは、どうも人道的な見地からいたしまして私はおかしいと思う。どうも容認できないことだと思うのであります。でありまするから、諸外国の立法例をほんとうにお調べになればすぐわかることだと思いますので、御調査の上御報告願いたいと思います。同時に一時出所は、もちろんこれはいろいろな條件があつて、これに該当しないでありましようが、そういう国内法の刑事訴訟法において刑の執行停止として規定されておるものと同じ内容のようなものを本法律案の仮出所の中に含ませる、そういう方法を講ずることはできないでしようか。
  188. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 仮出所、一時出所とは、平和條約の第十一條から来るのでございますが、日本国の勧告及び関係国の決定を得なければできない。しかも刑期の三分の一、四十五年以上の人は十五年、そういつた制限がございますので、必ずしも仮出所でこの緊急の場合掲げることができるかどうか、できないことが多いのではないか、かように存じております。
  189. 大西正男

    ○大西(正)委員 私の申し上げますのは、この條文にはもちろんそういうことは規定しておりませから、できませんが、しかし刑期の三分の一を済ました者とか、何とかいうことはこの法律によつて初めて仮出所の條件が備わるのであつて、別に平和條約十一條にはそういうこまかい規定があるわけではないのであります。今申し上げます刑の執行停止に、日本の国内法である刑事訴訟法に規定しておる刑の執行停止に相当するものをこの仮出所の中へ、原案には含まれておりませんが、別に修正その他の方法によつて入れる御意思はないか、またそういう研究をなさつたか、その点を伺いたいと思うのであります。
  190. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 執行停止の問題についてはいろいろと研究を重ねまして、法案の提出もそのために遅れたような事情であつたのでありますが、その際日本の執行停止の制度、関係方面で理解できないような制度であるという点もございましたし、七十歳以上の者に執行停止ができるという日本国内法の原案を持つてつた際のいろいろな問題が一番問題でありまして、これを仮出所に取入れるというようなこと、仮出所と執行停止とは大分理由も違いますし、仮出所はまあ出しても一定の期間保護監督を続ける、もう出しても大体間違いなかろう、こういう人に対して取消しがなければそのまま自由になつてしまう、こういうことを前提として出す制度なのでございます。執行停止は一定の原因、あるいは家族が病気であるとか、あるいは老齢であるとか、こういうために執行にブランクをつくるということ、建前も大分違いますので、どういうふうに取入れることができるのか、いろいろ執行停止については相当研究いたしたのでございますが、仮出所の中に入れるということはちよつとなじまない制度ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  191. 大西正男

    ○大西(正)委員 この法律は従来の国内法とは全然別個の法律であつて、刑の性質も全然違うのだ、こういうわけでまつたく新しい考え方に立つ法律であると思うのであります。従つて法律の理論は別といたしまして、仮出所というものの定義、これも別に立法としては論理的に貫く必要もないのではないかと思うのであります。仮出所の中に、刑期のある一定の期間を終了した者で、そうして将来仮出所中にこれの取消しがなければ自然に解消するとかなんとか、そういうものもあるのでありましようが、また別な観点に立つものをも含めて仮出所の中に入れたところで別にさしつかえないのではないかと思うのであります。理論は学者がつくればよいのでありまして、立法者としてはそこまで考える必要はないのではないかと考えるのでありますが、その点お伺いいたします。
  192. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 私の説明が不十分でございましたので、申し添えますが、もちろんこの法律は運用の際のことにつきましては、家族が病気である、しかも本人が三分の一以上の期間の量刑を満たしたというような場合、まあ日本でいえば執行停止にもなるけれども、この制度でいえば仮出所の勧告もできるという場合も重複してあり得るわけであります。またそういう場合には仮出所の活用をはかるべきである。かように考えております。
  193. 大西正男

    ○大西(正)委員 いただきました資料に基けば、七十歳以上の高齢者も相当数ございます。そうしてまた、よく知りませんけれども、相当高齢になれば、いわゆる老衰現象に降るということも、世間にはありがちのことでございます。それらの人に対して、いわゆる従来の国内法で言えば、刑の執行停止に当るようなものを勘案をしていただきたい、してやるべきであるということを、私は特に申し上げたいのであります。まあ委員会の態度がどうなるか、それは知りませんが、そういつた面も将来考えをしていただきたい、これを希望しておきます。  それから次に、平和條約の第十一條によりますると、「これらの拘禁されている者を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した一又は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。」こういうふうになつておりますが、決定と勧告の関係といいますか、それはどういうふうになるのでしようか。といいますのは、第十一條によりますと、そういう場合があり得るかどうか知りませんけれども、関係法廷を構成した政府が、釈放するという決定を日本の勧告いかんにかかわらずした場合、そういう場合にはそのままで釈放ができる、こういうことになるのでしようか。
  194. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 十一條解釈といたしましては、日本国の勧告と関係国の決定とが合致した場合に、日本が仮出所なり、赦免なり、減刑の決定をすることができる、こういうふうに解釈いたしております。もちろん通常の場合、日本側で本人が赦免に値する、しかし国際情勢等の観測から、仮出所の方がより確実じやないか、また赦免としてはぐあいが悪いのじやないかというふうな関係から、仮出所の勧告をしたところ、相手国が赦免でよろしいと言つた場合に、日本側であらためて赦免が相当であると考えるならば、その際に赦免の勧告をして、両者の勧告、決定が一致するという状況にすることが可能であると考えております。
  195. 大西正男

    ○大西(正)委員 それでは次に伺いますが、勧告の手続はどういうふうにいたすのでございましようか。
  196. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 法案の三十五條によりまして、その手続は政令で定めることになつておりますので、その政令案のいろいろ立案を計画しておりますが、大体委員会におきまして勧告を相当とするという決定をした場合には、法務総裁を経由して、所要の書類なりお知らせを外務大臣にいたして、勧告をお願いする。外務大臣が関係国に対して勧告をし、その返答が外務大臣から法務総裁を経由して、委員会の方にまわる。こういう手順になるだろうと考えて、今立案をいたしております。
  197. 大西正男

    ○大西(正)委員 そういう場合に、閣議決定によらねばならぬとか、そこまでは予想しておりませんか。
  198. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 ときに非常に重大だと思うものは、閣議にお出しになることがあるかもしれませんが、通常の場合はそういうことはないのであります。
  199. 大西正男

    ○大西(正)委員 次に、最後でありますが、最初に政府から配付されました元の案といいますか、それの附則中に、巣鴨プリズンの日本国アメリカとの引継ぎに関する規定があつたのでありますが、それが後の案には削られておるのであります。その関係はどのように処理されたのか、それを伺いたいと思います。
  200. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 講和條約の発効までの間、巣鴨プリズンの経営に対しまして、労務その他を供給するためのポツダム政令が四月一日から実施せられまして、まかなつておるのでございます。
  201. 大西正男

    ○大西(正)委員 もう実施しておるわけですか。
  202. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 実施いたしております。
  203. 大西正男

    ○大西(正)委員 けつこうです。
  204. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 関連して……。どうも疑問に思いますのは、この刑の執行は日本国が執行するのでありますか。それとも向うから執行を委任されたという考えなのか。これは犯罪は日本の犯罪ではないが、日本でこれを執行するのである、日本の犯罪でないものを日本で執行するというのならば、向うから執行を委任されたという頭なのか、それともこういうものは特別に日本で執行するのか、これがきまらないと、先ほどからの疑問が片づかないと思いますが、これはどういうお考えでしようか。
  205. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 平和條約十一條によりまして、日本が執行することになつたと思います。
  206. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると、十一條によつて日本国に與えられた権限に基いて日本国が執行する、こういうことですか。それとも向うの命令だからやむを得ずやるというのか。
  207. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 日本国に與えられた権利並びに義務によつて、やつて行くと思うのでございます。
  208. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると、執行方法は日本の執行方法でいいものと思う。向うのさしずを受ける必要はないと思うが、これはどうですか。特別にこれをきめてあれば、これは別ですよ。日本で執行するというのだから、日本法律によつて日本のやり方で執行するのがあたりまえだと思う。
  209. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 その意味におきまして、この法律日本でつくつたのでございます。ただ国際性のある犯罪の執行でありまするし、なお釈放その他につきまする関連もございますので、その点についての関連性も考えられますし、またすでに行われて来ました国際慣例ということも尊重しなければならぬと思います。そういうような点を勘案いたしよして、この法案をつくつた次第でございます。
  210. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それではたとえば懲役ですね、これは日本でいわゆる日本式の労務を科してさしつかえないと思います。これは別に規定はないようですが、これもやはり向う様の言うことを聞かなければいけないわけですか。今までと違う。日本でやる以上は日本の刑務所においてやらしている労役、その他拘禁等は日本独特のものでさしつかえはないと思いますが、これはどうなんですか。
  211. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 この刑は先ほどどなたかに申し上げましたように、日本の刑法の懲役その他とは違うものでございますので、その違つたものとして規定いたしておる次第でございます。
  212. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 懲役刑なり、労務を科しますその労務の内容は、今までの日本の刑務所でやつていると同じ労務をさしてよかろうと思う。それともこれはまた別だから向うの何かさしずによつてやるような労務を科する、こういうのですか。
  213. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 御質問通りでございまして、日本にございますもの、普通の作業ならば日本式の作業でさしつかえないと思います。別に向うからの注文に従つた労務をさせなければならないというようなことは考えていないのでございます。
  214. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうなると先ほどから出て来る執行停止、これは日本のいわゆる監獄法その他の規定で執行停止制度があるのだから、日本でやる以上は日本で罰する刑には執行停止をやるのはあたりまえ、こういう疑問が出るのだろと思う。そこで私はこの疑問を出して来たのです。
  215. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 日本の刑事訴訟法によつて定められました刑でありまするならば、日本の刑事訴訟法の執行停止の規定がそのまま行くわけでございますが、これは日本の刑罰の執行ではない。條約によつて特別に日本が引受けた権利であり、義務である、その独得の刑であるということをはつきりと申しておるわけでございまして、従つてつて執行停止の規定が適用されるとは解釈できないと考えております。
  216. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 議論がからまわりして……。なるほど日本の犯罪ではないのだから、この法律がなかつたら拘禁できません。これはわかつた。委任を受けたのではない、日本の独特の権限と義務とに基いてやる。これもわかつた。執行方法でありますが、日本政府にまかされたら、日本政府はこの法律でやるが、その執行方法は日本の刑を科すると同じやり方でやるのだろと思う。それともこれは別だから向うから何して来てやるのですか。こういうふうに日本政府でやるのなら、日本政府で労務の科し方も日本式の労務る科せ、拘禁の仕方も日本式の拘禁をせい、私はこう言うのです。そうしてみると、日本から見たら、かようなものを執行してはいかぬという場合には、日本ではこういうものは執行しないと、こう言うてさしつかえないと思う。これは日本では執行停止、こういうことは日本ではさまつている、とこう言うていいと思う。
  217. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 日本の刑でありませんので、当然に日本の刑の執行に関する法令の適用はないわけでございまして、結局十一條関係から来るのでございますけれども、十一條趣旨によつて日本の執行体系のその特別の戰争犯罪の刑の城行の根拠法規をつくつて、それによつて日本が執行する、こういうことになるわけでございます。それでこの十一條にははつきりは出ておりませんが、赦免、減刑または仮出獄させる権限は云々、こういうようなことが書いてございます。その精神と言いますかそういう点もございますし、またこの執行停止の問題についていろいろ研究した際にも、現在外地にいる服役者を、日本の執行方法が外国から見て非常に不当であるというような印象を受けますれば、引受けることも不可能になるというようなおそれもありますし、いろいろ研究いたしましてやはり執行停止という日本そのままのものを持つて来ないで、仮出所の制度であるとかあるいは一時出所の制度とか、こういうものの活用によつて、そういつた非常に不当な事態はなく適用できるのではないか、こういう結論に達して法案ができ上つたようなわけであります。
  218. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうも私の言うことがまだあなた方に徹底せぬようだ。日本で執行せいということは、これは條約でできたんでしよう。執行方法に関しては、日本にまかしてあるのだろう、私はこう言うのです。仮出所だとか赦免はこれは別です。私は刑の執行方法を言うのです。どういう労務に服さねばいかぬ、どういう着物、夜具を着せねばならぬ、どんな仕事をさせなければいかぬとか、そんなことまで言わぬと思う。これは日本日本できめられるだろうと思う、執行方法は。それを私は言うのです。だから大前提としてそれを聞いている。執行方法については別に規定がないようですから、日本にまかされているのであるか、それとも向うの委任を受けたのか。まずもう一ぺんそれを明らかにしましよう。執行の方法です。
  219. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 執行の態様については、お説の通りであると思います。
  220. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこでこの執行停止を見ますと、執行できないんですよ。こういうものに執行できないから停止するというのです。仮出獄と違います。仮出獄はもう出してもいいだろう、日本の国からながめたときにはこういう心身耗弱になつた者とか、もう身体消耗して老衰している者とか、これは執行できぬとなつているのです。日本で執行方法をきめるなら、執行できないものにまで、この犯罪なるがゆえに特にやらなければならないということはなかろうと私は思う。執行方法まできめているのでない。日本ではこういうものは執行できないのだということを言つている。その執行できないものまでなぜやらなければならぬのかわからぬ、こう言うのです。
  221. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 在所者が病気になつた、そのために執行できないという場合には、病院に移送することができるようになつております。それから本人の家族等に不幸があつた、あるいは不慮の災害にあつたとかいうような場合には、一時出所で行く。それからさらに刑の期間を経過すれば、本人の成績がよければ仮出所をやる、こういうことになつておりますので、そう極端に不都合なことはないように私は思つております。
  222. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それならここに書いてある心神喪失の状態なつたら、これはどうですか。
  223. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 おそらく精神の疾患でございますから、第十條によつて病院に移送することもできるだろうと思いまするし、さようなその精神の欠陥状態相当長期にわたるというような場合には、私は仮出所なり、あるいは赦免なりを考えてもよろしいのではないか、こういうふうに考えております。
  224. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それでは四百八十二條の第一号の場合はどうなんですか。
  225. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 四百八十二條の一号の「刑の執行によつて、著しく健康を害するとき、または生命を保つことのできない虞があるとき」これはおそらく病気の場合であろうと思います。従いまして、この條文によりまして病院に移送することが可能でございますから、さような手当ができると思います。しかも日本の執行停止よりももつと有利に刑期に算入されるという有利な点もございます。  第二に「年齢七十年以上」こういうことがございますが、この場合、本人が特異の健康体質で、壮者をしのぐというような場合は、実質的に見て執行停止をしなくても必ずしも不当であるとは考えられない。ただ通常の場合、老衰してまさに執行にたえないというような事情は、やはりこれもかぜをひけばすぐに危險になるような人でありますから、軽微の疾患状態でも病院に移送することができる、こういうことになると思います。この点が一番研究の際に問題になつた。ただ年齢さえ多いならばこの執行停止で出せるということでは、非常に不当であるという研究の結果でございます。そういう法令でこの執行停止をしなければならないという場合は、やはり心身に故障があるという場合でございますから、病院移送もできましようし、あるいは赦免なり、仮出所の活用をはかるということをやりたいと存じております。  第三、第四は婦人の場合でございますから、これは必要ございません。  第五の「刑の執行によつて回復することのできない不利益を生ずる虞があるとき。」という場合は、本人には何ら心身の故障はない、しかしその家族に病気とか、あるいは不慮の災害を生じたという場合には、やはりその一時出所の活用がはかり得ると存じております。またその仮出所につきましては、私どもは事案によつては十分これを活用しなければならないと考えておりますので、先ほど大西委員に対するお答えの際に、私不十分な答弁を申し上げましたが、実際上はこの仮出所の活用、しかも巣鴨プリズン、あるいはアメリカ本国、あるいはイギリスでもパロールということが非常に活用されておりますので、これは私ども一生懸命でやりますならば、この仮出所の活用によりまして、さらに進んで赦免の活用によつて、こういつた一定の條件に達した場合、あるいは事案によつて赦免あるいは仮出所の活用ということによりまして、場合によつて、それがかなわぬときは一時出所の活用ということによつて、四百八十二條の場合も大体まかなうことができるのではないかと存じております。七十歳以上をここに持つて来ますことが研究に非常にぐあいが悪かつたのでございまして、こういつた各種の形にかわつておりますが、これによつて日本の刑事訴訟法の考えておることは、この法案によつても可能である、かように考えておる次第であります。
  226. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 満足はいたしませんが、一時出所や仮出所と、執行停止とは根本的に違うように存じますが、よくわれわれ考えておきます。あなた方の方もお考えを願つておきましよう。
  227. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 田万廣文君。
  228. 田万廣文

    ○田万委員 私は一点だけ、というのは大きな問題で、あるいは法務総裁にお尋ねした方がいいと思うのですが、この委員会に、平和條約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律案というのが出ておりますが、これと関連して、今問題になつている平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等泊関する法律案というのを考えてみたい。われわれは戰争に負けたことははつきりしていますが、負けた当時においてずいぶん無理な判決をしているということが予見され、その意味でその間違つた判決を是正する機会連合国人に與えるという意味で、今申し上げた平和條約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律案が出て来ておる。それと対照して、勝つた国ではあろうけれども、巣鴨プリズンに入つておる、戰犯者と一概にいつておるが、そのうちに無実の罪に泣いている人が一人もおらないということが保証できるかどうかということを私ども考える際に、これは人間が裁判するのであつて、神様でないから、勝つた国、負けた国という差こそあれ、そこに間違いがあるかもしれぬ。もしその間違いがありた場合において、これを根本的に救済してやる方法が——赦免とか、仮出所ということも問題でしようけれども、根本的にその問題を解決するということが、人間的に必要でないか、これに対して政府は、進駐軍と今までいかなる交渉をなさつたことがあるか、また全然したことがないかという点についてお尋ねしたいと思います。
  229. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 その点につきまして係官との間にいろいろ交渉いたしたのでございますが、そういうような判決はないというような向うのお話でございまして、従いまして、條文におきましても特にその他の條文を設けなかつたのでございます。なお條約十一條によりまして裁判を受諾しておりますので、その点をあらためて審理し直すというようなことはできないのではないかと考えておるのでございます。
  230. 田万廣文

    ○田万委員 私はあまり法律のことはよくわかりませんが、向うさんの方で絶対に間違つた裁判をしておらないという非常に信念を持つたお話であるそうです。それをうのみにしておらなければならない立場かどうかは知りませんけれども、しかしわれわれも調査したわけではありませんが、いろいろ聞くところによると、中には無実の人間がいるのではないかというような懸念を持たれる事案もなきにしもあらずであつて、これは独立国に近くなる日本としては、卑屈な根性を持たずに、やはり言うべきことは言つて、人道上の問題としてこれは大きく世界の国に叫んでけつこうではないか。その意味におきましただいまの政府の御答弁ではありますけれども、さらに勇気を出し手続上の問題については——私は国際関係のことは何も知りませんけれども、何と言いますか、国連の方でも、再審査をしてもらいたいという人間があるならば、その実態を調査する、しかも調査してその実態が出て来無罪の事実が明らかになれば、これを釈放するというような国際法上のといいますか、あるいは世界人道上の問題といいますか、そういう点から再検討してしかるべき問題があるのではないかと思います。向うさんが絶対に間違つた判決をしておらないと言われたから、それはそうでございましよう、そういう卑屈なことでなくもう一歩、二歩前進して勇敢にやつてもらいたい。その意思を皆さんはお持ちであるかどうか。その熱意があるかどうかということを聞いて、私の質問を終りたいと思います。
  231. 清原邦一

    ○清原政府委員 本件につきましては、平和條約十一條で裁判を受諾しておりますから、現役段階におきまして実質的の審判はできないと思いますが、運用の面におきましもしそういう事案があるといたしますれば、赦免の勧告その他においてできる限り努力したい、かように考えております。御了承を得たいと思います。
  232. 加藤充

    ○加藤(充)委員 本法案で問題になつております仮出所、一時出所、赦免、刑の軽減という問題ですが、これは仮釈放という手続ができないので、これの組合せの運営でやらざるを得ない、こういうことであります。今田万委員質疑お答えになつて、赦免、刑の軽減等で穴埋めをするという話であります。それでお尋ねいたしますが、連合国政府に右申し上げましたような刑の執行に関する勧告をする場合のいわゆる適格性というような問題について配慮すべき諸点でもあれば、その基準、條件というようなものを聞かしていただきたいと思います。
  233. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 ただいまの加藤委員の御質問は、仮出所なり赦免なり刑の軽減なりについどういつた基準で勧告をするのかという御質問であつたと存じますが、これは刑法では改俊の状ある者について仮出獄をさせることができる、こういう規定がございます。普通の、弁護人がついて一審、二審、三審と十分慎重にやつた、そういつた事案については、改俊の状ということを重んじますこともよかろうと存じますが、ただいま田万委員の御説のようなことを申しておる人も相当あるのでございます。また事実は間違いないにしても、單なる監督の立場にあつたというために新しくこれが処罰された形態でございますので、改俊の状ということを入れるのを私どもははばかつたのでございます。従いましそういつた表現が当る事案については、そういうことを考えなければならないと存じまするし、またほんとうに責任の重い人が責任の軽い人に先立つてそういつた恩典を受けるということも不当であると考えましこれはその事案々たに即して最も妥当なる判定のもとに行うというのがよかろう、かように存じております。
  234. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私は国内法規に基いて仮釈放審査規程というものを今読んでみます。これによると二條、三條、四條、五條と順次規定がございまし「身上関係」、「犯罪関係」、「保護関係」、「再犯ノ虞ナシ」というようなことが書いてあるわけであります。全体の刑の執行の運営は刑務所長一本に一元的にまとめられずに、そのほかに委員会というようなものをつくつておる。これは今申し上げたように、国内法規にも委員会というようなものがございますけれども、この法案は必ずしもそれに従う必要はなかつたのではないか。ただ刑務所長一人一存の職権にいたしますれば、審査が十分でないという手続上の価値評価をされるおそれがあるというような配慮もあつたと思うのですが、何かこれを一本にしなかつたこと、しない方がよろしいと考えた理由があればお聞かせを願いたい。なぜ私がそのことを質問するかといえば、これは今読み上げました仮釈放審査規程の第五條には明らかに「再犯ノ虞ナシ」ということなのであります。職業軍人の追放解除がずつと計画的に行われましそうして戰犯につながれて服役しておる人たちが出して参るのでありますが、所長がほんとうに行刑的な立場で、政治的な配慮などを入れずにやれば、釈放というようなものが処遇等の措置として比較的純粋な形で行われる。ところがこれを委員会というようなものにまかせますと、その半面にきわめて複雑な審査の要件なり政治的なものすらがその中に介入して来る、こういうふうなおそれがあるからなのであります。その点が一つと、もう一つ私が——この法案に関してではございませんが、何か審査委員会というようなものを設けてそこで取上げれば慎重になつて誤りがないというような考え方の基礎に、行刑制度の根本に私は問題がありはしないかと思うのであります。というのは刑務所長というものは現場の担当責任者にすぎない。そういうふうなものが刑の執行、しかも釈放、仮釈放というような問題に一元的な職権をとるというのはこれは何か身分にそぐわない、地位にそぐわない、こういうような重大なことは所長にまかさぬという考えがあつたのでは困るということであります。たとえて言えば教育刑というようなことが言われておりますが、私は現行行刑制度の中で真に教育というようなものは行われておらぬと思います。しかしそのことはここでは論外にいたしましても、実地にあたつて重い責任と立場を持つた刑務所長が、やはり教育というようなものを実施する立場と責任と権利とを與えられておりますれば、むしろ委員会というようなものが横から出て来て何だかんだと言うよりも、実質的にそういう点でも進むことが考えられるのではないか、こういうようなことを考えますので、最初の御質問を申し上げたわけであります。
  235. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 ただいまの御質問は、委員会というような制度をつくつて、仮出所なり赦免なり減刑をさせる理由がどこにあるかというような点について、非常な御配慮と御意見があつたように承つたのであります。もちろんこの赦免なり仮出所なり減刑というものは政治的な——政治的という言葉は語弊がございまするが、何らかの指針といいまするか、そういうものによつて動くことはまことに悪いことであると存じております。しかしこの委員会制度をとつたのは何かこの刑務所という一つの純粋といいますか、何かそこにそういつた配慮があつたのではないかという点についても御意見がございましたが、そういつた意味ではないのでございましやはり仮出所させる、あるいは赦免をするということは、その後本人が出た後において、社会においてりつぱに更生して行く、りつぱに生活して行くということが続かなければ意味をなさないのでありまし刑務所は所内での刑についてはまつたく自分の権限としてあらゆる面について配慮をめぐらしてやつておりまするが、外へ本人が出た後のめんどうまでは見ることはできない。そういう意味で現在国内の犯罪につきましては刑務所に入りますると、外の委員会系統の機関にすぐにその書類がまわつて来まして、委員会系統の機関が本人の家庭を十分に調査し、またその再犯の原因となるような事情がございますれば、その事情の排除に努める、そうして内と外との成績によつて委員会が決定をする、こういう立場をとつておりますので、それと同様の意味合いでこの委員会ができておるわけでございます。従いましてその他の勢力の支配を受けることのないようにするために、委員会は現在外局として独立的な立場においてこの仕事に当ることになつておるわけでございます。
  236. 加藤充

    ○加藤(充)委員 先ほどの御答弁の中に比較的——というよりも地位の重い、責任の重い者が釈放を受けたりするようなことがあつてはならない、不公平な処置があつてはならないというお言葉がありました。先般法務委員会にフィリピン軍司令官としての黒田重徳という元中将が呼ばれたのであります。一説にフイリピンの戰犯釈放、減刑については比較的高級な職業的軍人に多かつた、しかもその理由が、あそこの民族独立運動といいますか、フィリピン人の運動に対してこれを戰力に訴えていわゆる鎮圧せんとした。これにいろいろな意味で直接間接に協力、加担したというようなことで、これが高く買われて釈放、減刑を受けたんだということが、流説でございましよう、臆測もあるかもしれませんが、いろいろ言われております。その半面には、これは黒田さんの言葉にもあつたのですが、ほんとうに無辜の罪なき学徒動員の諸君あるいはまた職業軍人外の召集者というようなものがやはりたくさんおつて、これは何とかしなければならないという話でありました。黒田さんを個人的に責めてもいたし方ありませんが、私は最高責任者、これは單にその指揮命令を與える地位にあつたというものは、形式的なもので軽いとするのでは断じてなくて、こういうものの命令指揮のために今申し上げた人たちが、実に泣くにも泣けない異郷の戰犯收容所、刑務所で服役をしている。これはやはり私はまつ先に釈放されなければならないと思う。そうしなければ戰犯の責任追究ということ自体も徹底しない。何のために服役を仰せつけたのか私はわからぬと思う。戰犯裁判そのものの本質の効果の問題だと思うのでありまして、こういう点については、先ほど来重々各委員から要望の点が強かつたと思うのですが、答弁の中に、軍に監督にあつた者が軽いのだというような考え方は私は排除して行つていただきたい、そうしなければ無事の気の毒な人は救われない。上に行くほど形式的な指揮監督、命令というような責任はぼやかされてしまうおそれがある。それが問題じやないか、その半面に末端の命令に動かされて現場の仕事をやつた人々の責任が重くとられるようなことがあつてはならないと思うのであります。  それでこれは本法案に直接関係がございませんが、わずかの時間で関連のある行刑制度のことについてお尋ねしておきますが、仮釈放審査規程というようなものが、そのままというようなことにはなりますまいが、第五條には、これは変なもので再犯のおそれのないものというような條件が強くうたわれているのであります。こういう点は十分にしんしやくさるべきである。再軍備の方向に合せて、役に立つ者は釈放するというようなことが断じてあつてはならないと思うのであります。それでお尋ねいたしますが、監獄法というものの適用で刑の執行を事実上やることなのでありましようが、いかんせんこれはかびくさいしろものでありますが、監獄法の改正というような問題についての方針というか、それを承つておきたい。というのは先般の巣鴨プリズンにおける処遇、これが特別なるものにもせよ、決して優遇されたものではございません。国際的水準からいいまして、これをむしろ一般の服役者の水準を高めて行くという方向に私どもは努力しなければならないのではないか。  もう一つはこの独居拘禁の問題でございまするが、これはきわめて非人間的な、生物としての人間の本質にもとるものである。しかもこの国内法規について申し上げても、監獄法の処罰の点を見ましても、行刑累進処遇令ですか、そういうようなものの拘禁及び戒護の段から勘案いたしましても、特別戒護的な処遇であり、あるいは進んでは懲罰的な処遇であるのであります。しかもこれらの拘禁の期間というものは、短期間でなければ独居拘禁は許さないという制約つきのものであると信じます。しかるにいわゆる思想犯というものは、無期限に長期的にこの独居拘禁をさせられている。これは明らかに憲法十四條、こまかく言う必要もないほど、明らかにこれは差別的なものであつて、不当な二重の刑罰を科しているということになり、これは基本的人権を刑務所まで貫かれて、行刑制度、監獄法の改正というもの、あるいは実地の運営が徹しられないからであると思うのであります。先般私は、私どもの党の者で引例するのは多少あつかましいと思いますけれども、春日正一君に最後の面会をいたしました。そのときに彼が多年の独居拘禁の経験から訴えるところを御紹介してみたいと思うのでありますが、独居拘禁になりますと冬は寒くてとてもたまらぬという。実際上人間として、その他刑務所の物理的ないろいろな構造も勘案されて、その上に加わる処遇と一体になりまして、苦痛というものは雑居服役の二倍に相当するということを訴えておりました。そしてその監獄法が新憲法下の行刑制度の中に大きく貫かれて改正されないということの結果は、警察の留置場の処遇にも反映いたしまして、先般の空襲警報下におきましても、監獄法のそれなりに適用運営されております刑務所や拘置所におきましては、直接の被害を受けたところは別でありますけれども、大体において待避、避難というような処遇も行われたが、うやむやの中に、何の法規にも準拠することができずに、ただ取扱いというような形で留置処遇されておりました者は、待避できるときに待避できず、避難できるときに避難する機会を與えられずして、非常な非人道的な、残虐な被害を警察の留置場で受けたという事実は、私今時間がありませんからここで申し上げませんが、これは顯著なる事実であります。いろいろ申し上げたいこともお尋ねしたいこともあるのですが、それらの諸点についてこの際関連のある質疑といたしまして、監獄法の改正等に関する方針を承つておきたいと思います。
  237. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 監獄法の改正につきましては、二、三年前からその改正すべき部分の有無等につきまして調査をいたしております。相当古く制定せられたものでありまして、非常にりつぱな法典ではありますけれども、今日においては多少修正を要する点があると考えられますので、将来におきましてはある程度の改正をいたしたいと考えております。なお独居拘禁につきましての御注意があつたのでございますが、春日正一氏の場合はおそらく未決の場合であつたろうと思うのでございます。最近の話でございますが、刑事訴訟……。
  238. 加藤充

    ○加藤(充)委員 既決を前にしてそのことが心配だと言つていたんです。
  239. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 刑事訴訟の建前から申し上げますと、未決が最もよろしいのでございますが、その場合に寒気がきびしいというようなことにつきましては、被服の事情その他の関係かと思われるのでございまして、そういうような処遇の点につきましては、今後も一層注意をいたして行きたいと思つておるのであります。なお一般の刑の執行におきまする独居拘禁につきましては、いろいろな立場から雑居あるいは独居にすることが本人のためあるいはその他必要とされるのでありますが、その運用につきましては十分注意をいたすよう将来も努めて行きたいと思います。
  240. 加藤充

    ○加藤(充)委員 春日君の言葉でいえば、そういう現実の事態が起きたときに、独居拘禁に移さるべきである。そのことについては今援用した監獄法の中にも懲罰のくんだりのところにはいろいろな形で出でおります。従つて一般予防の形が刑務所の中まで通りまして、刑務所の中でもお前は共産党員だというような、共党主義的な思想を抱懐するものだというようなことで、予防的に、一般的に独居拘禁をさせられる。しかもそれが無期限に長期に、全期間にわたるということはひどいことだ。これは明らかに古い、かびのはえた監獄法でありますけれども、その監獄法自体も踏みにじつておるものであり、ましてや監獄法が古くさいものであれば新憲法の処遇、基本的人権の保障というものが、監獄などというところにおいてまで徹底的に貫かれなければ、ともすればあそこでは身寄りの少い、保護のきつかけの光を見ることも失われやすい刑務所においては、特にそういうことがいわれると思うのであります。これは明らかに監獄法にも反しておりますますし、ましてや新憲法のどこに行つたつて共産主義者であるから独居拘禁しなければならないという差別をしてもよろしいという規定はないと思うのであります。現実に不都合があつたときにはそれぞれ所定の処罰をやつて、処遇をかえて行つたらよろしいのであつて、こういうことは断じてやめるべきであつて、やめなければならないと私は思うのであります。将来改正が云々の問題とは関係がございませんので、その点の決意のほどを聞いておきたいと思います。
  241. 古橋浦四郎

    ○古橋政府委員 その点につきましては、実際の運営の上におきまして十分注意いたして参るつもりであります。
  242. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 質疑もこれをもつて終るようでございますから、私は最後に政府委員に対してお願いなり希望なりを申し上げて、そして意見を承つておきたいと思います。実はこの平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律で国民が非常に注目をし期待しておる点があることを忘れてもらつては困る。結局先ほど来の政府の答弁によりましても、戰犯者は一般の犯罪者と区別して取扱いたい、こういうようなお気持のあることも承りました。また政府当局におきまして、当委員会におきまして戰犯問題に触れます都度、最高責任者よりそれぞれ一日も早くこの問題の処理をするように善処したいと考えております、早く家庭に帰させてやりたいと考えておることを今まで答弁して参つておるわけであります。これらを総合いたしますと、国民の感情からいたしまして、今度の平和條約によつて施行されるこの法律によつて戰犯者が特別の取扱いを受け、今までの巣鴨刑務所の処遇よりも処遇をよくしてもらえるのじやないか、そうして一日も早く家庭に帰れるのじやないか、こういう大きな期待をかけておると思います。従つてこの法律制定には私はそうしたものがこの法律の精神として盛らなければならぬと思う。もしも盛られないので單なる既決者に対する今までの取扱い、監獄法の実施であつてみればこの法律制定の意味はなさない、むしろ監獄法をそのまま適用してもらうことがいい、こういうように考えておるものであります。これに対しまして政府は十分御注意を願いたいことをここに御希望を申し上げておきます。と同時にこの趣旨に沿うてこれが執行せられることを希望申し上げておきます。なおお願いできますれば、この法律制定の中にそうした意味が多少でも盛られておるかどうか、御説明願えますればまことに幸いであります。
  243. 清原邦一

    ○清原政府委員 いわゆる戰犯者が国内法上の刑罰を犯した犯罪者とその性質を異にしておることは十分心得た上立案したのでございますが、立案に際して周囲の事情であるいは御期待に沿い得ない形式のものが残つておるかもしれませんが、処遇につきましては予算その他の点におきまして可能なる限り特別の扱いをいたしたいと考えております。たとえば食糧の点につきましては、大蔵省に折衝の上十分まかない得ると思われる程度の予算をいただくことにいたしております。また自治委員会と申しまするか、中に入つておる人たちが自治的に各種の委員会等をつくつていろいろ問題を考究する、あるいはまた教育面におきまして、職業教育あるいは出所後の実生活に即応し得るように、教養と申しまするか指導して行く、そういつた点につきましてはでき得る限り心づかいをいたして行くつもりでございます。
  244. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 最後にもう一つ尋ねなくちやならぬことになつて来たのですが、そういたしますと現在アメリカ占領軍の手によりまして巣鴨の運営が行われている。この運営というものは、われわれ見学いたしましたところ、相当経費相当な処遇、というよりむしろ待遇等が見られるのであります。日本の刑務所と比べましてまことに私たちむしろ感謝し、感激して見てまわらなければならぬ点が多々あつたのであります。この標準と比べて、今後日本の手に移りましてから後の標準はよくなるものでありましようか、その標準が維持されるものでありましようか。現在の立場から考えますと、日本の監獄法等を考えますときに、非常に戰犯者に気の毒な結果を生むんじやないかというようなことが懸念されるのであります。どうかこの点についてお答え願いたい。
  245. 清原邦一

    ○清原政府委員 この問題につきましては、国際慣行その他を参照いたしまして、従来連合国側が巣鴨プリズンで処遇している程度をもつて妥当と考えておりますからして、その基準を下らないように努力いたしております。
  246. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 本日はこの程度にとどめ、明後十四日午前十一時より本日議題になつた二法案についての審議を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三分散会