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1952-03-12 第13回国会 衆議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十二日(水曜日)     午後二時二十四分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君       角田 幸吉君    鍛冶 良作君       高木 松吉君    松木  弘君       山口 好一君    大西 正男君       石井 繁丸君    加藤  充君       田中 堯平君  出席政府委員         法務政務次官  龍野喜一郎君         検     事         (法務検務局         長)      岡原 昌男君         検     事         (法務行政訟         務局長)    小澤 文雄君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月七日  委員上林山榮吉君、石田一松君、平川篤雄君及  び田中堯平君辞任につき、その補欠として高橋  英吉君、中村又一君、吉田安君及び風早八十二  君が議長指名委員選任された。 同月十二日  委員風早八十二君及び加藤充辞任につき、そ  の補欠として田中堯平君及び渡部義通君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員渡部義通辞任につき、その補欠として加  藤充君が議長指名委員選任された。 同日  田嶋好文君及び中村又一君が理事補欠当選し  た。     ————————————— 三月七日  戰争犯罪者減刑等に関する請願志田義信君  紹介)(第一一九三号)  土地家屋調査士法の一部改正に関する請願(降  旗徳弥紹介)(第一二三五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する  件に基く法務関係命令の措置に関する法律  案(内閣提出第一八号)  国の利害関係のある訴訟についての法務総裁  の権限等に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第二八号)(参議院送付)     —————————————
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ただいまより会議を開きます。  本日の日程に入る前に、理事補欠選任についてお諮りいたします。すなわち去る二月二十九日、田嶋好文君が委員辞任せられ、三月一日再び本委員選任せられました。また中村又一君は去る六日委員辞任せられ、翌七日に再び本委員選任せられたのでありますが、田嶋好文君及び中村又一君はいずれも理事でありましたので、理事補欠選任を行わなければならないのであります。理事補欠選任については、先例に従いまして、委員長において御指名いたすに御異議ございませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  3. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なしと認めます。理事従前通り田嶋好文君及び中村又一君を御指名いたします。     —————————————
  4. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次に国の利害関係のある訴訟についての法務総裁権限等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑を行います。質疑の通告がありまするので、順次これを許します。田中堯平君
  5. 田中堯平

    田中(堯)委員 法務総裁質問があるのですが、時間の繰合せがつかないで出席できないそうですから、いずれまたあらためて質問をいたしますが、ちようど次官が見えておるので、とりあえず次官からお聞きをしたいのであります。まず第一に、国の利害関係のある訴訟についての法務総裁権限等に関する法律の一部を改正する法律案、これは弁護士会の方は一応意見を聞いてあるのでありますか。
  6. 龍野喜一郎

    龍野政府委員 ただいまの御質問の点は、弁護士会とも十分連絡をいたし、協議ととのつた上で、提案したような次第であります。
  7. 田中堯平

    田中(堯)委員 その弁護士会というのは、日本弁護士会連合会のことを言うのですか、それともただ東京の一、二の弁護士会をさすのでありますか。私の聞きたいのは、これは東京弁護士会の人々は異議がなかろうと思いますけれども地方の方では仕事をとられるというような関係になりはせぬかと思う。ですから全国弁護士会が一応賛意を表しておるのであるかどうかという点が聞きたいのであります。
  8. 龍野喜一郎

    龍野政府委員 ただいまの御質問は、日本弁護士会連合会協議ととのつたわけであります。
  9. 田中堯平

    田中(堯)委員 それではその問題は、一応それきりにしておきます。  次に昨日の毎日新聞夕刊に、刑事訴訟法行政協定実施等に伴つて大幅に改正をしなければならぬという趣旨のことが載つております。ところでこの点についてでありますが、政府は本国会現行刑事訴訟法改正案を出す意図があるのでありますか。
  10. 龍野喜一郎

    龍野政府委員 刑事訴訟法改正につきましては目下鋭意研究中でありますが、本国会提出の予定をもつて目下立案中でございます。
  11. 田中堯平

    田中(堯)委員 そこで先走つた質問でありますが、大体この刑事訴訟法改正するということになると、改正の要点は、概略どういうふうな構想を持つておられますか。
  12. 岡原昌男

    岡原政府委員 刑事訴訟法改正につきましては、この法律実施以来三年余りを経過いたしておりますけれども、種々不便なところがありまして、従来の訴訟の形を、英米式に急激に変換したために、若干行き過ぎと申しますか、不都合が生じた面がございます。そこでそれらの点を中心としまして、昨年春以来法制審議会において議案を出しまして、法制審議会刑事法部会で、目下検討中でございます。ごく近い機会にその成案が出るだろう、答申になるだろう、そういうふうに予定しております。それに基きまして立案する、かようなことに考えております。
  13. 田中堯平

    田中(堯)委員 英米式過ぎて、いろいろぐあいが悪い点があるから、これを改正するという御説明ですが、ところでその改正する大きな点はどういうところであるか、具体的に説明することはできませんか。大きな問題だけでよろしいのです。
  14. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいま考えております改正の点は、事務当局といたしましては、いろいろございますけれども法制審議会答申において取上げられており、現に答申が予定されるものは、たとえば非常に簡易な事件公判手続について、証拠法の特例を認めるとか、あるいは控訴審における特殊な事実審理範囲を拡張するとか、あるいは逮捕状の執行、あるいは保釈等の点について、どうしても従来の法規でまかなえない不便な点とか、あるいは押収、捜索等について何か問題があるのではないか、そういうようなことを拾つております。その詳細につきましては、近く答申がありまして、答申がどのような方向になるかを決定した上で、いずれなるべく早く当委員会の方に出して国会の御審議を仰ぎたい、かように考えております。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先回質問したが、きよう局長おいでになつたのでさらに伺いたいのです。私の一番承りたいのは、国の利害関係のある訴訟についての法務総裁権限等に関する法律の第六条ですが、法務総裁はこれを指揮監督するということになつておりまするが、事実上において監督できておるかどうか。私はなかなかそうできぬと思う。そこで必要のあるものだけを指揮監督するのか、それとも全部を指揮監督しなければならぬという意味か。これはこの間の答弁では明確になつておらぬのでありまするが、必要なものだけをやればいいのか、それともことごとくやるという建前から来ておるのか、この点であります。
  16. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 法務総裁としましては、この規定によりまして、建前としては、国の利害関係のある訴訟は、全部法務総裁が管理するという建前になつておりますけれども、前回も申しましたように、現在の事件数に比べて、人員の数その他が非常に不足でありますために、実際問題としましては、今御指摘になりましたように、全部の事件について、今すぐ全部を指揮して行き得るという実情ではございません。ただ理想といたしましては、すべてを指揮するというのが建前であろうと思つております。実際の実情といたしましては、そのうちで法務総裁報告のあつた事件、あるいは中には報告漏れ事件もありますが、法務総裁の気がついた事件のうちで、特に法務総裁当該行政庁にその訴訟実施させるだけでは不十分だと認めた事件について、指揮をしあるいは進んで職員を指定して、訴訟を行わせるという実情でございます。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこがどうもはなはだ明瞭を欠くのです。第六条を読んでみますと、「前条第一項の訴訟については、行政庁は、法務総裁指揮を受けるものとする」こうある。これを読んでみると、指揮を受けなければならぬ。ところが今あなたの説明を聞くと、向うから報告があつて、必要があるとすれば指揮をする。それから報告があつても、必要がなければ指揮しないというならば、それは指揮するということにならない。むしろこの条文を、指揮することができる、こうした方が、あなたの説明と合うように思うのです。私の聞くのは、指揮を受けるものとするということになると、報告しなかつたら、報告しないものは違法である。しかしてそういうことが実際においてどこまでやれるか、やれるような手続その他人員等がそろつておるかどうか、これを聞きたいのですが、その点はいかがですか。
  18. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 私の方といたしましては、理想としては、やはり全部の事件について指揮ができなければならない、そういうふうに考えております。これはあくまで理想でございまして、実情から申しますと、先ほど申しました通りでございます。ですから運用の実際からいいますと、法務総裁指揮をすることができるというような規定と、正直に申しますと大差がないと言えるかもしれないのでございますけれども、しかしそれは本来の理想じやございませんで、私どもの方としましては、人員その他が非常に不十分ではございますけれども、しかし現在全力をあげて、その理想方向に進むように努力をしている次第でございます。それで今までの経験からいたしまして、訴訟は、すでにお手元に差上げてあります資料にもあるように、行政訴訟だけで四千件を越えているわけでございますけれども、しかしその中で、特に重要だと考えますものについては、今まで指揮あるいは実施を全部行つて来ておりますので、その点については、現在の人員その他の状況と比べて、できるだけのことはいたしているつもりでございます。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 裏から聞きますが、どの事件でも、理想と言われるが、指揮しなければならぬものですか。特に重要と認めたものを向うから報告をし、それをさらに見て、それでも重要でなかつたら、黙つておるのじやないですか。
  20. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 結果は今おつしやつた通りでございます。実際報告を受けまして、その訴訟進行状況、その状況は記録の写し、そのほかのものを送つてもらいまして、なおそのほかに係官に来てもらいまして、実情をいろいろ聞きまして、しかもなおかつその訴訟進行行政庁で行われている場合に、それについてこちらからは何も言うことはないといつたような事件が、現在までの経験では、むしろその方が多いというか、大部分になつております。ですから進んでこちらがどうしてもほうつておけないで、こちらが指揮をし、あるいは実施をすというようなことは、今おつしやいましたように、そうたくさんはない実情でございます。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もう一つそれに関連して伺いますが、実際は指揮をしなければならぬのだが、人が足らぬとか、予算が足らぬので、指揮できない場合があるのじやないですか。今までと正反対の質問ですが……。
  22. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 それはあり得るのではないかと思います。報告漏れ、あるいはこちらの方で一応事件経過などを聞きまして、その程度では発見できないけれども、もしほんとうに人員が十分でございまして、その訴訟の背後にあるいろいろな実情とか、あるいは各期日における調書に現われないいろいろな訴訟実情ども、もし知ることができましたならば、あるいはその場合にもつと何かしなければならぬ事項があるかもしれないと思いますけれども、しかし現状で私どもが知つている範囲では、その割合は少いように思います。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはこの法律のできるときらいろいろ議論になつておる問題でありまして、さようなときには法務総裁というものは、官庁の法律顧問のようなもので、向うから言うて来たときに意見を述べればいいではないか、何もかも訴訟指揮をするという考え方ははなはだおもしろくないということで、進んで行つたのですが、これは結局ああいうふうになつてしまつた。それは法律ができた以上やむを得ませんが、しかしはなはだ明瞭を欠くものであることは、間違いないと思います。今までやつたところで、あなたの方の部員でやつてつたのではぐあいが悪い、やはり弁護士を頼まなければぐあいが悪いというようなことは、実際問題として相当ありますか。
  24. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 数は非常に少いように思います。現在行政庁弁護士選任してやることができる建前になつておりますので、少しむずかしい事件は、各行政庁でそれぞれ弁護士をお頼みになつてつておられます。それからそうでない事件で、その行政庁職員を指定して実施している事件につきましても、その経過を見ますと、特にこちらが手を出さなければならないということを感ずるような事件は比較的少いのであります。ただ前会にも申し上げましたように、訴訟というものが時間に制約されますために、弁護士選任が遅れるといつたようなときには、こちらで適当な手続をして勧告をして、さらに選任手続をとらせるということでは、訴訟には間に合わないということが、まれにはあるわけでございます。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、今のこの改正は、もしそういうことがあると困るからというつつかい棒ですね。ぜひなければならないという意味のものではありませんですね。
  26. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 決してそういうものではございませんので、たとい一件でもそういう事件がございますと、それはあとになつてからでは取返しがつきませんし、現実にそういう必要を感ずる事件がございますので、つつかい棒的な意味でなくて、やはり必要があるように思います。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員 さつき田中君からもちよつと言われましたが、その次に感じられますのは、法務総裁がやることになりますと、これは中央であなた方がやることになる。そして地方における事件地方法務局長選任することになりますが、弁護士連合会などで一番心配しておりますのは、せつかく地方事件地方弁護士がやつておることを、法務総裁指揮だといつて行政庁がやる。そうすると地方弁護士を排斥して、中央弁護士に集中するという傾向が現われて来ませんか。これに対してはどうですか。
  28. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 訴訟事件は、それぞれ行政庁所在地の各地にも起るわけでございます。そうして法務総裁弁護士選任する場合に、費用その他から考えまして、その大部分事件は、その裁判所所在地弁護士に委任せざるを得ないと思います。それを東京の人にもし委任するといたしますと、第一乏しい予算範囲でとうてい毎会計ごとの旅費の支弁もできないことになります。それでございますから、私どもとして地方に起きている事件については、わざわざ東京弁護士を頼んで、それで毎会計ごとにそちらに出て行つてつていただくということは、何か特殊な事件で、その事件については東京弁護士にお願いしなければほかの人ではやれないというような特別な事情でありますればともかく、さもないときには、地方弁護士にお願いするということになりますので、その点は法務総裁選任することができるとしても、あるいは行政庁選任することができるとしても、同じことのように考えております。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、実際にはこれは地方法務局長選任させるのですか、それとも本庁から指定するつもりですか。
  30. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 手続になるかと思いますけれども地方法務局長が適当な弁護士を選定して、そうしてその弁護士について法務総裁選任手続中央に依頼して来て、それに応じて法務総裁選任書地方の各方面に送付して、そうしてそちらの方から裁判所に出していただくということになるわけであります。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今までは法務総裁が直接弁護士を指定するということはないわけですね。これから初めてですね。行政庁において弁護士を頼んでおるその実際については、あなたの方ではおわかりにならないのでしようか。相当数あるものかどうか……。
  32. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 私の方で今までに知り得ました程度数字では、大体地方行政庁当事者とする訴訟で、弁護士選任してやつておる事件が、六、七割ぐらいかと思つております。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そのほか国を相手にするものは、これはたいていあなたの方で弁護士を依頼しておいでになりますか。
  34. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 国を当事者とする事件でも、実は農地改革に関連いたしまして、各地方裁判所に起きておる事件が非常に多うございまして、そういうものを全部含めて大体の数を検討してみますと、国を当事者とする訴訟で、約四割ぐらいが弁護士に委任しておるのではないかというように推定いたしております。
  35. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今あなたは農地事件が非常にふえておるということをちよつとおつしやつたが、これは大体農地改革があつたからだと思いますが、これらに対しましては相当うまく行つておりますか。普通の民事事件や何かとは大分違つておりますが、この点に対する実績はどういうことになつておりますか。
  36. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 農地訴訟につきましては、大体各県でそれぞれ農林省所管補助金を受けまして、その範囲弁護士選任し、あるいは行政庁職員代理人に指定しておるというのが実情でございます。それでその事件が非常に多いわけでございますから、特殊の例外を除きましては、法務府として一々の事件について、各訴訟内容について指揮あるいは実施をするということはとうていできないのであります。それで私どもの方では、各農地事務局單位に年に何回か訴訟会議を開いております。そうしてそのときに法務府からも職員が参りまして、それぞれの管内の訴訟を担当しておられます弁護士の方、それから訴訟を担当する行政庁職員の方、こういう人たちにお集まり願いまして、そうしてその各訴訟についての共通のいろいろな法律問題、あるいは将来起りそうな法律問題についてお互いに検討する、そうしてその結果は、出席されない方にも、すぐ当該事務局の人あるいは県の人から連絡していただく、そういうようなことを勧告するといつたような形で、法務総裁としてやつておるわけであります……。     〔委員長退席押谷委員長代理着席〕 その結果によると、私の考えとしては、それによつて相当むずかしい問題、あるいは議論のある問題で、最高裁の判例が最近出たとかあるいは高等裁判所判例が最近出たというような問題は、非常に早く全国に行き渡りまして、訴訟については大体全国統一するような作業が現在相当に行われておるように私どもは考えております。
  37. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはどうですか。国を相手にする訴訟行政庁相手にする訴訟、それから行政庁相手にする訴訟の中で、法務府が指揮されておる、こういうようなものを、相当われわれ関心を持つて調べてみたいのですが、今ここで聞いてすぐわかりますか。
  38. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 お手元資科を差上げてございますが、この参考資科のうちに当事者別行政事件受理件数表というのがございます。これによりますと、二十三年度ないし二十六年度までの各行政事件のうちで、国を当事者とするものと、行政庁当事者とするものとの内訳が出ておりまして、最後の二十六年度におきましては、大体総数の八割は行政庁当事者または参加入とし、二割が国を当事者または参加入とする訴訟であります。そういう計算に大体なるかと思います。それから今お尋ねのございました法務府が指揮をしている事件と、指揮をしていない事件との割合、これは実は数字を出すことが非常にむずかしいのでございまして、私どもの方でも数字は持つておりません。ただ指揮と申しましても、ただいま御説明しましたような間接的な指揮をもし指揮と考えれば、それはほとんどすべての事件にわたるわけでございます。それから何か判例を特定の事件についての参考資料として送つたということを理由といたしますれば、その件数は調べた数字はございませんけれども、そうたくさんはないはずだと思います。それは一一般的な通知でもつて目的を達するわけでありますから、その割にないわけであります。それから法務府の職員自身指定代理人にしてその訴訟に関與さしたという事件は。非常に数が少ないわけであります。その件数延べにいたしまして、二十六年度で大体二、三百件かと存じますけれども、しかしこれは一件に何人も指定する場合もございますし、ある期日だけ指定して法廷に立ち会わして、あとは全部弁護人の方あるいは行政庁職員の方にやつてもらうこともございます。ですから正確な数字は申し上げられないのですけれども、とにかく延べにして二百人ないし三百人を二十六年度に指定しております。
  39. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この表を見ますと未済事件が年々非常にふえておるようでありますが、これはあなたの関係だけじやないかもしれませんが、国を相手にしてやる原告側から見ると、はなはだ迷惑千万なことだと思います。これは事件めんどうだからなんですか。それとも最高裁判所審理が遅れるからなんですか。これは、私は重大問題だと思うのです。
  40. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 行政事件事件が非常にめんどうになりがちでございまして、そのために訴訟事件全体の平均審理期間に比べれば、行政事件審理期間相当長くなるのじやないかと思います。現にこのごろ判決があります一審でも、昭和二十四年度の事件あるいは二十五年度の事件がたくさんございます。おそらく行政事件というものは、訴訟が起きておる以上欠席判決等で終ることはなくて、全部内容審理に入つております。内容審理に入りますと、一年や二年ではちよつと片づかない事件か多いのではないかと思います。その結果累年新件がふえて来ますと、前年度の新件はそれぞれ翌年度に持ち越されて来まして、手持ち件数はふえるということになるのでございますけれども、おそらく新件の出る模様などから考えまして、もしこの状態がこのまま続きますれば、行政事件手持ち件数はこの辺で大体横ばいになるのではないかと考えております。但しそれは全部のことについてでございまして、たとえば最高裁判所手持ち行政事件を考えますと、これは今後もどんどんふえて来るのではないかと思います。これはちよつと奇妙な現象でございますけれども行政事件司法裁判所がやるようになりました初年度におきましては、最高裁判所行政事件上告事件はまずないと言つてもいいと思います。それは一審、二審を経て行きますから、それで一つ事件について一審で何年、二審で何年というふうに考えて行きますと、大体事件最高裁判所にかかつて来たのはむしろ最近のことではないかと思います。ですから最高裁判所上告事件未済件数というものは今後もどんどんふえて来るのではないかというふうに考えます。
  41. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはわれわれも経験のあることですが原告は個人です。被告は国なんです。しかもただで働いてくれる法務府の法律家行政庁専門家が出て争われる。無理な訴訟であるならばこれはどこまでも争われるのもいいが私が一番痛感したのは特許侵害事件なんか、侵害しておることは間違いない。しかるにどうも国の権力をもつて争われるということになると、私ははなはだおもしろくない現象が起ると思う。そうかといつて原告の言うことを何でも認めなさいというのではありません。理由のないものもあるだろうが、とかく訴訟をやると、訴訟心理で何でもかんでも負かしてやる、負けそうだつたひつぱつてやろうということですから、これは国民から恨まれることはなはだしい。のみならず社会に対する影響もすこぶる重大であると思われますので、私はこの機会に言つておくのですが、さようないわゆる訴訟心理でもつてやるものではない。どこまでも国の公務員としての立場で十分やつてもらわなければ困ると思いますが、おそらくあなたも御同感だろうと思いますので、これは将来のために明確にしておいてもらいたい。
  42. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 私どもが日ごろ非常に関心を持つておる点をまさに今御指摘になつたのでございますが、私どもその点を特に痛感しておるわけでございます。もちろん法務府といたしましては、もしその行政処分が間違つておる場合には、間違つておる行政処分を法律の上でもつて弁護して黒を白と言いくるめるというようなことは全然考えておりませんので、もし行政庁に事情を聞いて調べた結果これは訴訟を許しがたい、これは処分が違法であるといつたような場合には、その都度それに対する善後措置を進めまして、それをカバーしてしまおうといつたようなことは考えていないのでございます。ことに考え方はそうでございますけれども、あるいは訴訟代理人となつております立場から、万一無意識にも当事者心理にかられて違法な行政処分を不当に弁護するというようなことになつてはいけないので、そういうことは非常に警戒しておりまして、その点についてはできる限りかようなことは断じてないように心がけておるつもりであります。
  43. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは今後十分ひとつ間違いのないように指導してもらいたいものだと思います。  それからこれを改正しますると、相当弁護士を頼む事件があるとお考えでありまするか、もしそうだとすれば予算措置等にどんなことをやつておられるか、参考にひとつ聞いておきたいと思います。
  44. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 先ほどちよつと申し上げたかと思いますが、法務総裁行政庁事件について弁護士選任してやらせるということは、現状ではむしろ例外的な措置でございまして、原則としては、それぞれの行政庁が自分で弁護士選任しておやりになるということが原則かと思います。それでございますから、当面の問題としては、法務府が行政庁事件について弁護士選任する数は、それほど多くはないだろうと思います。それで予算措置といたしましては、二十七年度の予算としまして、国を当事者とする事件で、法務総裁が本来現行法の上でも弁護士選任できる場合と、それから今度の改正案で新たに弁護士選任できる場合と、全部を通じまして五百万円ほどの予算をお願いしてございます。その範囲でやつてみるつもりでおります。もちろん事件数が特に多くなれば、あるいはさらに何か方法を考えなければならないと思いますけれども、一応の目標はそこにあります。
  45. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今までよりかふえる点はどのくらいなのですか。
  46. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 来年度にお願いしております予算数字は、前年度よりはふえております。二十六年度におきましては三百八十万円余り、それから来年度は五百万円ということになつて相当ふえておりますから、その範囲事件数について特に異常な増加がない限りは一応やれるんじやないかと考えます。
  47. 押谷富三

    押谷委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止〕     〔押谷委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記を始めて。加藤充君。
  49. 加藤充

    加藤(充)委員 私は特にただいま審議中の法案について法務総裁質疑をいたすべき点を数点持つのでありますけれども、本日は法務総裁の出席が不可能だということであります。私は不可能だという理由だけでそのまま承服はいたしかねるのでありまするし、このことは單に個人の面子とか何とかいう問題じやなしに、当法務委員会の法案の審議並びに当法務委員会の今後の運営の質の問題として重要なものを含むものだと信じます。しかし本日は御出席ないということについては事実上やむを得ませんから、私の法務総裁に対する質疑は、いたさないことにいたします。
  50. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 では他に御質疑がなければこれにて本案に対する質疑を終局し、引続き本案を討論に付すべきでありますが、討論はこれを省略し、ただちに採決に入りたいと存じます。本案に讃成し諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  51. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 起立総員。よつて本案は可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。ただいま議決いたしました議案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なしと認め、ようとりはからいいたします。     —————————————
  53. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 次にポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令の措置に関する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑を行います。質疑の通告がありますのでこれを許します。鍛冶良作君。
  54. 鍛冶良作

    鍛冶委員 前会私の方から質問をしまして答弁をまだ受けておりませんのは、きようできますか。できるならばもう一ぺんあらためてやりましよう。将来存続すべき命令第一条の第二号であります。私は現在の社会情勢、実際面から見まして、この命令をどこまでも実施しようとすると社会の実情に合わないように思うのです。しかし政府でこれを存続させようとすると言われるならば、実際に合わない法律を出されるわけはないと思いますから、どこまでも実際に合うという信念のほどを承りたい。
  55. 岡原昌男

    岡原政府委員 たいへんむずかしい御質問でございますが、この勅令がそもそも最初に出されました経過は、婦女の売淫をさせることによりましてその人身を拘束し、たいへん悪い結果を及ぼす一方、また病気を予防するという面からもいろいろと支障ができるということから、この勅令がポツダム勅令の形で出されたものでございます。その後この勅令は昭和二十六年の秋までの間に全国で約六千三百件ほどの事件の検挙というような形で施行されて参りました。実際の末端の取締りの面につきましてはいろいろ各地で問題にされ、また国会におきましても今会期においていろいろ他の委員会で取上げられておりますように、必ずしもこの勅令が一から十まであるいは完全な形で実施されている、強行されているということではないということは、よく存じております。従いましてこれを今後この形で存続させるについて、やはり法律として今度は強行するのかというふうな御質問がございますと、私どもとしてちよつと真正面からお答えしにくいような立場に立つのでございますけれども、少くともこの勅令が今回のポツダム政令の整理の際に廃止されるということに相なりますと、その副作用といたしまして、いわゆる公娼制度の復活というふうな印象を世間に與えることになりまして、それが單に公娼制度の持つ従来のいろいろな弊害をまた再現させるということのみならず、この勅令が設けられました当時の国際情勢と現在の国際情勢と、この点につきましては必ずしも違う面はないと考えますし、のみならず最近各国の間におきまして、人身売買とか婦女誘拐とかあるいはこの種売春等の行為についての嚴重なる取締りを要望されて、その条約が締結されるというような事情にもございますので、この際これを生かしておくということがやはり必要ではなかろうか。そこでこれを生かすことにつきまして、いろいろ私の方でも研究いたしましたけれども、とりあえずこれにかわるべき名案もすぐに思い及ばなかつたので、ともかく一応生かしておいて、そうしてまた研究を続けよう、かようなことでこの存続の中にこの勅令を入れた次第でございます。
  56. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私もこの法律のあることを希望するのです。これはあつて悪いものではありません。国際情勢のみならず、今日から将来にわたつて、かような法律があればいいことはわかつております。けれども、いやしくも法律となりまする以上は、出てもそれが実施せられぬということになつたら、これは法律の価値がない。われわれが法治国として一番情ないと感ずるのは、実施のできない法律があることなんです。これほど法律の権威を汚すものはありません。それを私は憂えるのです。この間の行政監察委員会へ人身売買の問題で出て来た厚生次官つたかも、特飲街というものは実際問題としてどうしてもやめるわけに行かぬ。やめられるならこれはいいのです。やめてそうしてどこまでもこの法律実施する。こういうところへ行かれるのは、これは一つの理論ですが、実際面としてはやめられない実情なんです。やめたらまたたいへんな弊害が起ります。そうすると、警察では、あの特飲街というものは特飲街として公認しておるのですが、公認しておるのは何を公認しておるかというたら、売淫取引場の公認である。売淫取引場の公認ということは、まつこうからこの第二号に牴触する行為である。牴触する行為を公認しているということになる。法律を出しながら、一方で国家の公の機関において公認するということは、相いれないものがあると思う。私はあながち反対するのではないが、あなたたちが出される以上は、これをどうして解決するか、これを明白にしておかなければ困る。あとまだ申し上げたいが、まずそれだけお答え願いたい。
  57. 岡原昌男

    岡原政府委員 たいへん痛い御質問でございまして、この勅令が法律の形で出ました以上は、やはり法律として強行すべきである。あるいは逆からいいまして、強行できないような法律は出すのが疑問であるというふうな御意見、ごもつともでございます。この売春取締りにつきましては、実は各国の法制等も一応調査いたしましたところが、相当きつい取締り法規のある国がたくさんあるようでございます。さりながらさようなきつい形を、今すぐ日本に取入れるということはどんなものであろうかということで、われわれとしてもたいへん遠慮した、最小限度の、現在の勅令の形のままで法律に乗り移らせようというふうな考えになつたのでございますけれども、今御指摘のように、今後これをまつ正面からどうしても押して行くのかということになりますと、これは各地の自治体あるいは国警の取締りが、はたしてどの点までこれと真剣になつて取組むか。他方においてかような婦女の売淫というものは、その根ざすところが必ずしも近いところにあるのではなくて、いろいろな厚生施設その他の社会的な手当の面が完全に行かなければ、どうしてもこういうものは残らざるを得ないというふうな性質のものであろうかと存じまするので、その調和をどこに求めるかということで、おそらく取締りの第一線の警察官その他も実際に苦労していることだと存じます。そこでこの勅令第九号の実施の統計などを見ますると、特定のところに事件が瀕発いたしまして、ほかのところは割合に少いというふうなことが現われておりますけれども、これは要するにさような一種の勅令違反というものとどの程度まで真剣に取組むかということが、各地の警察の長その他の方針あるいは検察庁からの具体的な事件に対する指揮その他によりまして、大分違つて来るのではないかと想像いたしております。そこで今後、現在各地におきまして、ある意味においては公認と言われておりますこれらの制度、あるいは施設をどうするかという問題でありますが、現在各地の警察その他がとつております法律解釈といたしましては、ある一つの施設の中でそういう行為があるかないかということは自分たちは關與していない、ないものと思つておるということで、わずかに良心を麻痺させておるということだろうと私は推察いたします。そこでもしこれと正式に正面から取組んで参りますと、ことにこれを強行しろというようなことにいたしますと、全国各地に相当多数の犯罪、被検挙者も出すことでありましようし、それらにつきましていかに政策を立てるべきかということにつきまして、相当われわれも苦慮しておるところでございます。従いましてこれらの問題につきましては、いずれ十分研究の上お答えいたすべきものだろうと思うのでありまして、きようはその辺でごかんべん願いたいと思うのであります。
  58. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは伝家の宝刀としてこういうものを置くのだ、そうしてこれを持つておることにおいて、でき得る限りあまり目立つようなことをなくして行くという方法になる、こういう説明もわれわれは承つておりますがその通りならまことにけつこうです。ところが今のように、あるところでは多く違反者をあげており、あるところではあがつておらない。これは警察官の手心一つだ。これではたいへんなことです。もつと露骨に申しますと、お気に入ればあがらない、お気に入らぬことがあるとどんどんあがる。あげれば切りなしだ。これはいかに国家のために害毒を流すものであるか。あまり速記をとつて言いたくないのですが、お気に入ればあがつて来ない、お気に入らぬことがあればどんどんあがる。お手かげんだ。これがあれば必ずそうなります。これらのすべてのことをもつと調和することを何かの方法でお考えにならぬと、反対だとは申しませんが、重大な問題であることを私は申し上げておきます。何か方法がありますか。
  59. 岡原昌男

    岡原政府委員 御指摘のように、かような、抜けばたいへんこわいようなことになりますし、抜かなければまた動かないという法規でございますので、動かし方一つでいろいろあるということは、先ほど私も申した通りでございます。そこで先ほど御指摘のように、末端の取締りの面が、お気に入る、入らぬで取締りを左右にするというふうなことも多々あろうかと存じます。なお悪いことには、さようなことがあつた場合に、被害者といいますかが、たかられるといいますか、もしそういうことがありましても、そういうようなことを荒立てて表ざたにするということが、業者の悩みでできないという弱みがある。そこで私どもといたしましては、もしさような事態が発生いたしますれば、これはこの法律の適用と別個の問題にもなりますので、それはそれとして、場合によりましては涜職なり職権濫用で処罰するということも一つの方法でありましよう。また他面において、そういう末端の一つ一つを扱つておることによつてこの事態が全体として改善するわけでもございませんので、これらにつきましては、実は目下人身売買等について全般的な法制の研究並びに立案の調査をいたしております。そこでそれらについて、その御趣旨の点も研究した上で取入れたい、かように存じておる次第であります。
  60. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これ以上追究もしたくないが、あなたが今おつしやる職権濫用でやるとういことは、それはだめです。法律を守つて来たのです。職権濫用になりはしない。法律を守ることが困るのです。職権濫用でなんかあがりはしません。法律を嚴格に守つて来ただけの話だ、これは非常にめんどうなので、もう少し研究をして……。
  61. 加藤充

    加藤(充)委員 関連して……。これは今鍛冶委員質疑政府委員の応答が期せずして笑いのうちに終つてしまつたようなことになつたが、しかしこれは笑いごとじやない。それでこれの存続は困るし、さりとて廃止もまた困る。そうなると、結局この法律は無用の飾り物になる。しかも鍛冶委員が指摘したように、無用の飾り物だけで終ればまだいいのですが、無用の飾り物を伝家の宝刀にして、抜けば玉散るというようなことになつて、ここに警察やあるいは役人の腐敗が出て来る、こういう形になると思う。これについては、なかなか対象になる現象が根絶するわけには行かないのだということが指摘されました。もちろんその通りでありまするし、その現象の根源たるや深く広いものがあると思うのであります。しかし私は、ただ問題がしかく簡單でないというだけで、お茶を濁して行くというようなやり方では、卑怯だと思うのです。今日本に、いわゆるパンパンが跋扈している根本の理由は占領軍の敗戰後の駐屯と、それから同時にまた講和条約締結後の行政協定等々によりまして、占領軍が駐留軍に名をかえて、今後無期限に駐留を続けるということ、ここに大きな時代的な、歴史的なパンパンの発生の根本の原因があると思うのであります。ごく俗な言葉で言えば、占領軍人ないしは駐留軍人の生理的必要を充足させなければならないという、日本の国家、民族が置かれたまことに屈辱的な立場が、このネセサリー・イーヴルというようなことに解消されて、この売笑、売淫の問題が存続されてしまうということは、まことに遺憾だと思うのです。もう一つその反面の原因といたしましては、根本的に言いますれば、低賃金低米価ということに質的に表現されるような日本の大衆の生活安定の施策が怠られておるというよりも、それを無視して行かなければならない強制を受けており、その強制に甘んじて日本の政府が迎合しておる、これが大きな原因だと思う。低賃金で生理年齢に達しましても妻帯をすることができない、こういうような政治が強行されており、させられておる。しかも反面には先ほど申し上げました原因で村の子女あるいは大部分の日本の子女は、経済的な理由もあつて結局人身御供にささげられたような形でパンパンにかり出されて行く。私はこの問題が原因なのだと思うのでありまして、再軍備をやめて占領軍の撤退をやつて行く、その基礎になる行政協定の廃棄というような政治の方向が打出さなければ、これは依然として飾り物である。あるいはそれは痛しかゆしな問題であるというだけで根本的な解決を先に延ばすという卑怯な態度が出て来る。笑いごとではないと思うのであります。私はここで一例を申し上げたいのですが、これは決して笑いごとじやございません。ことしの三月ころのある新聞に次のような記中が出ていたのです。その前書きに、中国のことをほめて話をすると喜ばれないのだが、実情か話すことになれば当然そういうことになるのです。だから名前は出さないでほしいというようなことがあつて、次のような記事が続けられております。私は昨年の暮れに上海から帰りました。これがあの上海の話ですよ。信じられますか。ところがまつだくほんとうなのです。何しろ晝間の外出でも夜寝るときでも戸締りなどはいらないのです。それから一昨年はかやをつりましたが、昨年の夏はかやをつらなくても蚊は一匹もいませんでした。そんDDT——なものじやない。町が清潔になつたからですよ。こういう話があつたのであります。それで私は今申し上げたような前提に立つて、なかなかやめられないその原因は深く広いものがあるというだけでは、あなたの方の答弁は私の見るところでは無責任な答弁だと思います。それで今少しどういうところに最近のいわゆる売笑婦の問題の根本的な歴史的な社会的な原因があるか。このパンパン問題の歴史的、社会的な当面の意義づけというものはどこにあると考えて、その対策をお考えになつておるのか、この点を少し明確に具体的にお示しを願いたいと思うのであります。
  62. 岡原昌男

    岡原政府委員 売淫が特別な占領下の事態に応じて成立したものであるというふうな御議論のようでありますが、われわれ知つたところによりますと、徳川時代にもすでに相当ありましたし、古くは万葉の中にも売淫の歌が出ておるようであります。そこでおそらくその当時には今御指摘のような社会情勢もなかつたろうと思いますので、おそらく人間性に根ざす何かのものがあるのじやないかというようなことを申したのであります。またその根ざすところが広く深いということはその通りでございまして、それは私どもとしても單に罰則をもつてこれに臨めば全部解決するというものでないことも、もちろんわかつておりますが、パンパンになる原因その他をその女の面から考えると同時に、やはりその他の面からも考えて行かなければならぬ。こういうふうなことについての結論が結局われわれとしては法規をつくるときの資料になつて来るというふうに考えておりますので、それらの点については、いろいろと資料集めて、先ほどから申した通り研究しておる次第でございます。
  63. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ちよつと速記をやめて……。     〔速記中止〕
  64. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記を始めて。本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめておきます。  この際本委員会の議事運営について発言の通告がありますから、これを許します。田中堯平君
  65. 田中堯平

    田中(堯)委員 去る三月六日の当法務委員会におきまして、いわゆる東大事件なるものの審議をやつてつたのであります。当日の午後一時から、おしまいはたしか六時四十分ごろまでやつてつたと思います。ところが、私が劔木参考人に今から質問をしようというそのときに、おそらくは午後六時ごろだつたと思いますが、ふしぎなことには、当日の東京新聞の夕刊に、すでに衆議院の法務委員会では、東大事件審議の結果一つの結論が出ておるというような意味の記事が掲車されて、その内容も発表されておつたわけであります。そこで私は驚いて、劔木参考人への質疑をする前に委員長質問をしたのであります。すでに結論じみたものが夕刊に出ておるが、これはどうしたことか。委員長あるいはその他の責任者からこのような記事が新聞社の手に渡されたのかという意味質問をしましたところ、いやそんなことは全然ない。私はこれは関知しないというような意味の答弁があつたのであります。ところが、さらに驚いたことは、私が劔木参考人に質問を終つて、それから新聞記者のところへ行つてみますと、すでに衆議院法務委員会委員長佐瀬昌三なる名をもつて、東大事件に関する談話発表として、ちやんとりつぱな刷りものが新聞記者の手に渡されておる。御承知でもありましようが、東京新聞が今記事の締切りをやるのは、大体お書ごろ、早ければ十一時には締め切るといいます。おそらくこれは午前中に、あるいは遅くとも午後三時ころまでにはすでにこういうふうな刷りものが、新聞社の手に渡つていたのじやないかと推測されるのであります。ところが、この東大事件に関する談話製表の文書のガリ版の内容を見ますと、これまたまつたく驚いたことには、長いから読み上げませんが、かんじんなところだけを拾い読みいたしますと、衆議院法務委員会は云々、調査の結果左の諸点を指摘し、特にこれを留意すべきものと信ずる。そして結局この文書の内容と申しますのは、政府はすみやかに文部次官通達と、都公安条例との関係を再検討すべきことを勧告するというのが文書の結論であります。これは見たところ、すでに東大事件審議が終了をして、法務委員会として一定の結論が出たというふうな仕組みに書かれた意見発表であります。そこでこのようなやり方は、これまで慣例があつたということでありますけれども、それは一つ事件審議の途中に委員長が見解、意見を述べるということは慣例はありましようけれども、その事件審理が結了をして、そして委員会として何かまとまつた意見が出たかのような発表は、これまで慣例はなかつたはずであります。私ははなはだこれは遺憾である。将来ともこのようなことがあつたのでは、まつた国会審議権は無視されることになりますので、とうていこれは黙過し得ない重大な事件であるというふうに解しておるのであります。私が今委員長質問いたしたいのは、三月六日に談話発表なる文書を公表された事実があるかどうか。それからまたそういう点について、将来ともこのような不始末なことが起らないように希望するのでありますが、それに関してどういうお考えを持つておられるか、この点をお伺いしたいのであります。
  66. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 委員長としてお答えいたします。去る六日委員長談話を発表いたしましたが、これは従来の慣例によるものであります。しかし発表の方法その他について遺憾な点があつたとすれば、今後は注意いたしたいと思います。もちろんこの談話は、委員会を拘束するものではなく、委員諸君及び委員会の意向を尊重することは従来ともかわりはありません。これを念のために申し添えておきます。
  67. 田中堯平

    田中(堯)委員 遺憾な点があるとするならというふうな仮定の御答弁でありますが、これはもう遺憾であるにきまつているのでありまして、将来こういうことが繰返されないように、私はあえて今ここでこの問題を拡大しようという意思はありません。ただ将来に向つて再びこのような不見識なことがなされないように御注意なさるよう希望するものであります。
  68. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 では本日はこの程度にとどめまして、次の会議日は追つて公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十八分散会      ————◇—————