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1952-03-06 第13回国会 衆議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月六日(木曜日)     午後一時四十二分開議  出席委員    委員長 佐瀬 昌三君    理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君       安部 俊吾君    角田 幸吉君       鍛冶 良作君    上林榮吉君       田嶋 好文君    花村 四郎君       松木  弘君    眞鍋  勝君       山口 好一君    石田 一松君       大西 正男君    平川 篤雄君       石井 繁丸君    加藤  充君       田中 堯平君    猪俣 浩三君       佐竹 晴記君    世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         文 部 大 臣 天野 貞祐君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         参  考  人         (前文部事務次         官)      剱木 亨弘君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君 三月四日  委員有田二郎君、上林榮吉君、平川篤雄君及  び宮腰喜助辞任につき、その補欠として安部  俊吾君、高橋英吉君、中村又一君及び大西正男  君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員田中堯平君辞任につき、その補欠として田  代文久君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員高橋英吉君、中村又一君、吉田安君、田万  廣文君及び田代文久辞任につき、その補欠と  して上林榮吉君、石田一松君、平川篤雄君、  石井繁丸君及び田中堯平君議長指名委員  に選任された。     ————————————— 三月六日  国の利害に関係のある訴訟についての法務総裁  の権限等に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第二八号)(参議院送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  検察行政及び国内治安に関する件     —————————————
  2. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ただいまより会議を開きます。  検察行政及び国内治安に関する件について調査を進めます。  この際お諮りいたします。いわゆる東大事件について、元文部次官剱木亨弘君を参考人として追加選定し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御異議なければさように決定いたします。  それでは前会に引続き東大事件について、参考人及び政府当局より順次その意見を聴取いたします。  田中警視総監にあらかじめ御注意いたしますが、警視総監の立場から、本件に対して関与された概括的な説明をまずお願いいたしまして、それから各委員から質疑がありまするから、それに対する御答弁をお願いいたすことにいたします。田中榮一君。
  4. 田中榮一

    田中参考人 私から、今回発生いたしました東大事件の概略につきまして、各位すでに御了承のことと存じまするが、一応簡單に経過につきまして、お話を申し上げたいと存じます。  去る二十日の日に、東大校内におきましてポポロ劇というものが、開催される予定になつてつたのであります。このポポロ劇というものは、純然たる劇のようでありまするが、当時この劇は、学校当局におかれましても、いわゆる学生校内活動文化活動一つとして許可せられたものであります。このポポロ劇内容は、福島県下において発生いたしました機関車転覆松川事件取扱つた劇でございます。その劇が始まる前に——その日の昼ごろでありまするか、本富士署警察官が、学校当局厚生部の方へ、この劇はどういうものでございましようかとお伺いいたしましたところ、これは純然たる劇の研究で、何ら政治的な目的を持つておる劇でないので、学校当局許可したのである、これは松川事件を取扱つておる劇のようであります。かようなお話でありましたので、警察官も、学校当局許可された演劇でありますし、何ら支障なきものと一応認定をいたしまして、そのまま引下つたのであります。  その日の午後四時過ぎでありまするか、たまたま本富士署警備係警察官ポポロ劇の前を通りました際に——、ちようど法学部の第二十五番教室の前の道路のところであつたかと思いますが、学生数名が机を置いて、そこで入場券を売つておるのであります。そこで本富士署警察官四人も、入場券を買つて入るのならば何ら支障なかろうというような軽い意味で、入場券を三十円でそれぞれ購入いたしまして中に入つたのであります。この四人の警察官の気持は、私はもちろん警察官でありますから、單に観劇娯楽のために入つたものであろうとは考えません。やはりそこにある程度職務意識があつたものとは考えておりますが、とにかく一応三十円の金を払えば何人も自由に入れるというような関係から、入つたのであります。この点につきまして、去る三日の日でありましたか、本富士警察署長から、單に娯楽のために入つた言つたよう自分は陳述しておつたけれども、よく係の警察官の心境を聞いてみたところが、そうでなかつたから、この点は訂正をしてほしいという申出がありましたから、この機会をかりまして、私の方から訂正をいたします。  そうして中に入りまして開演を待つてつたのでありますが、一人の労働者風の男が立ち上りまして「沖繩から帰りて」という演題で、沖繩におけるところの重労働の関係であるとか、あるいはまた向う状況であるとか、いろいろ詳しく話があつたようであります。しかし当時うしろの方では相当騒音があつたので、しつかりした事は聞き取れないけれども、一応沖繩のいろいろな情勢が話をせられ、そして内地の民主団体活動でありますか、そうしたことについても聞きたいし、向うの方にも十分連絡をとつてほしいというような、そうした運動のことについてもいろいろ話があつたやにも聞いておるのであります。  それが終りましてから、東大学生新聞編集部の部員の人が立ち上りまして、この松川事件今川上演をするについて、自分福島県下に行つて松川事件を現地において十分調査したものである。従つて、その真相についてここで報告する。その内容は、今回の松川事件は、相当死刑囚も出しておるが、これはまつた検察警察がこの事件をでつち上げたものである。従つて、かかる事件というものは、まつたく法を無視したようなものである、かような趣旨のように聞かれたのであります。聴衆の中には、あるいは異様に思つた人もあつたかも存じません。  それからそれが終りますと、まだ開演には至らないで、またその男が立ち上つて、渋谷駅等において東大学生が演説できなかつたのは、当局が弾圧したんだというようことについていろいろ話があつて、それから開演されたのであります。  この松川事件取扱つた劇内容というものは、証人に立つた家族に対して、検察警察か知りませんが、お前は偽証をしなくてはいかぬ、そうしなければこの事件が成り立たぬというので説諭したり、相当そうした場面があつたそうでありますが、とにかく松川事件なるものが、警察検察のでつち上げの事件であるというような感を、一般の観衆に与える劇であつたそうであります。  その劇が一応終りまして電気がついたときに、一人の私服が、ここに私服が入つておるというので、数人の学生から取巻かれ、やがてまた次の私服が取巻かれて、遂に演壇のそばまで連れて行かれて写真をとられた。その際に相当暴行を受けております。それから、さらに別室に連れて行かれまして、そこで手をねじ上げられた。特に茅根巡査は手をねじ上げられまして、今逮捕されました福井という学生から、顔に向つてたんつばを吐きかけられておるのであります。およそ今まで警察官がいかなる集団暴行にあいましても、たんつばを吐きかけられましたことは、いまだそういつた例は一回もないのであります。今回に限つて、この福井という学生のために、茅根巡査がまつこうからたんつばを吐きかけられたということは、おそらく本人といたしましても、生れて初めてでありましようし、われわれ警察官としても、かかることを聞きまして憤慨にたえないのであります。  そうしてから警察手帳を取上げられましたが、ちようどそこへ斯波厚生部長がおいでになりまして、とにかく一応治めたいというので、その場を治めようとしたのであります。そこでとにかく警察手帳を早くもとしてもらいたいと言つたところが、私ごと無断校内に入つたことは申訳ございませんという、学生の書いた書面署名捺印してくれ、そうしたならば返してやろうということでありまして、いろいろ交渉したのでありますが、二人の警察官は、警察手帳ほしさにすぐ署名したのであります。一人の警察官はなかなかがえんじなかつたのでありまするが、明日の午後一時ごろまでには必ず手帳を持つて署にお伺いするから、一応この場を治めるためにこの書面署名捺印してほしい、こういう関係からやむを得ず、いわゆる多数の威力に押されまして、心ならずも、まつたく脅迫されまして署名捺印をいたしたのであります。ところが翌日午後一時になりましても、警察手帳は遂に返つて参りません。  そこで、この状況は、まさしく多数の威力をもつて暴力によつて警察手帳を取上げた行為に該当いたしますので、暴力行為取締りの法令によりまして、ただちに逮捕令状福井並び千田という二名の学生——これは明らかに本人がなぐつたことが認識せられておる。しかも茅根巡査が、あまりなぐりますので、福井、お前なぐらなくても話はわかるじやないかと言つたところが、福井と呼ばれたためにその学生はびつくりして、そこでなぐることをやめたそうでありますが、とにかく福井千田という学生は、殴打の事実がはつきりしておりますので、逮捕令状をもつて逮捕することにいたしたのであります。そこで逮捕令状を持ちまして、一応厚生部の方へお伺いしたのでありますが、厚生部には、もちろん学生がおりませんので、学生逮捕に参りましたということを告げました。それから構内を物色いたしましたところが、たまたま福井という学生がちようどどこかの建物から出て来たところを、顔見知りの私服がおりまして、この福井逮捕したのであります。その際に、福井君は非常に抵抗をいたしまして、あばれまわりまして、とても逮捕ができぬものでありますから、やむを得ず手錠をかけたのであります。ところが、警察官にかみついて来まして、その際に歯が一枚こぼれたそうであります。そして大地へ寝たまま足でもつて近寄る警察官をけりまわすという状況で、どうすることもできませんので、やむを得ず足にも足かせをしまして、これをみんなでかついで自動車に乗せて本署に同行いたしたのであります。これが大体夕刻五時過ぎであつた考えております。  今回のこの行為に対しまして、学校当局としましては、警察官学校内に立ち入つたということは、いわゆる大学学園の自由並びに学問の自由を侵害するものであるというので、非常に憤慨をされておるのでありますが、私の伺いますところによりますと、今まで警察は、大学学園の自由とか学問の自由、そうしたものには全然無関係でありまして、またわれわれの考え方としましても、大学学園の自由を侵害する意思もありません。また学問の自由を侵害する意思もありません。この学園の自由とか学問の自由、これは真理探求の自由でありまして、これは憲法に許されました基本的人権でありまして、これらに対しまして、警察がこれを尊重せねばならぬことは、当然のことと考えております。ただ、この学園の自由その他学問の自由、真理探求の自由ということと、警察取締りということとは、私は全然別個なものであろうと考えておるのであります。学校側の主張されるところによりますと、昭和二十五年七月に、警視庁当局文部省当局との一応の話合いで、公安条例適用に関する制限の意味におきまして、次官通達というものをつくつたのであります。これは時の文部次官からの照会に対しまして、警視総監回答したという形式になつております。この回答形式文部次官通牒をもつて管下の各大学その他の学校通達としてお流しになつたものであります。また警視庁警視庁で、この通達内容管下警察署に流しております。それから国警は同様な通達全国警察隊長に流し、自治体警察全国自警連会長名をもちまして、同様の趣旨全国自治体警察に連絡いたしたのであります。そしてそれぞれ所在の警察署学校とが、お互いにこの通達趣旨を尊重して、この通達をあるいは交換するところもあり、あるいはまた書面をもつて話合い協定をしておるところもあるようであります。かように、現在においては学校当局警察当局との間に、この次官通達内容とまつたく同じものの協定が行われておるのであります。そこで学校側は、この協定によりまして、絶対に学校構内警察が一歩も立ち入られないのだというような御見解もあるように、承つておるのであります。もちろん犯罪の発生したような場合であるとか、あるいはその他当然警察逮捕令状を持つて、あるいは捜査押収令状を持つて学校構内に入るということにつきましては、学校当局もこれはお認めになつておるようであります。またパトロール警察官構内を警邏して学校建物を保護し、一切の刑事事件等の発生を防止し、また発生した場合における措置、そうしたものにつきましては、現在学校当局ももちろんお認めになつてつて、何ら問題はないのであります。  ただ、ここに問題になりまするのは、いわゆる学校構内における警備関係警察官が、ときに出入することについて、これが現在問題になつておるのであります。すなわちポポロ劇の第二十五番教室私服警察官が立ち入つたということが、次官通達内容を逸脱し侵害して、警察官がこの通牒を破つてつたものである、かように考えて、おられるのであります。  私どもの考えとしましては、次官通達の冒頭に「集会集団行進及び集団示威運動に関する条例学校内における解釈適用について」、こういう見出しになつております。その次に、「このたび改正になつた右記条例学校等における解釈適用については、別記のように取扱つてさしつかえないか伺います。」かような文部次官からの照会に対しまして、次官通達内容警視総監名回答いたしております。その回答次官通達になつておることは、先ほど申し上げた通りであります。従つて、この公文書の形式から、またその当時の当事者の意思解釈から申しましても、警察官構内に入る云々の問題は、集会集団行進及び集団示威運動に関する点に限られ、しかも現在問題になつております点はこの一項でございます。「学校構内における集会集団行進集団示威運動等の取締については、当該学校長措置することを建前とし、要請があつた場合警察がこれに協力することとすること。」この条項が、学校側解釈としましては、学校構内における集会等取締りについては、もちろんすべて学校長措置する、警備係警察官一人入るにしても、学校長要請しなければ入ることができないんだ、かように解釈をされておるのであります。われわれのその当時の意思解釈といたしましては、たとえば学校構内無届集会が行われる、学校当局がこれを解散をしようと思つても、なかなか学生が言うことを聞かない、いかに学校当局が制止いたしましても、実力を持つていないために解散ができない。そこでやむを得ず警察当局に、どうか警察当局構内に入つて、この集団示威運動または集団示威行進、または集会等解散してほしいという要請があつたときに、警察側としましては、ある程度多数の制服警察官等が、あるいは部隊行動として構内に立ち入りまして、実力行使によつてこの催しを、集団行進または集団示威運動集会等解散する措置を講ずる、かように解釈しておるのであります。一昨年早稲田大学総長室に数百名の学生がレッド・パージ反対の気勢を上げまして、無届集団示威運動を行つたときにも、早稲田大学総長要請によりまして、多数の制服警察官が出動いたしまして、これを実力によつて解散させ事なきを得たのでありまするが、かような場合をわれわれは想像いたしておるのであります。  現在東大構内におきましては、まことに不穏当と見られるようなビラ等が、再三再四ばらまかれておるのであります。御承知のように東大構内は、何人といえども、またいかなる時間においても、自由に通行し得る道路の形態をなしておるのであります。従つて、かかる場所におきまして、たとえば政令三百二十五号違反ビラがまかれたと、かりにいたしましたならば、ただちに、これはビラをまいた現行犯としてこれを逮捕せねばならない義務を、警察は負つてつておるのであります。これは学校外道路であろうが、また学校構内道路であろうが、それは同じであります。ところが学校当局には、かりに政令三百二十五号違反疑いがあるようなビラをまいておる容疑者がおりましても、逮捕権がないわけであります。従つてそういう場合、警察官がいなければ、その現行犯逮捕することすらできないような状況であります。もちろんこの次官通達によりましてすべて学校長措置することを——許可したり、不許可にしたりすることは、おまかせしてあるのでありますが、しかし、これらの許可になつた集会が行われておるかどうかという状態、また不許可になつた集会が現実に行われておるという状況等も、これは警備上の関係から、視察する程度のことは、当然警察としてもできなければ、これらの取締りが一切できないような状態であります。現に東大構内におきましても、不許可集会等がときどき行われまして、それ学校当局に、こういう不許可の、無許可集会が行われておりますということを、警察から告知いたしまして、それによつて学校当局が、しからばというので解散をさせたような事例もあるのであります。かような点から考えますと、もちろん学校当局に一切をおまかせすることもけつこうでありますが、警察として警備上の必要から、この程度権限を保留しておく必要は十分にあると、私は考えておるのであります。  それで、今回の大学の自由と警察権の介入という問題は、公安条例適用に関する通達解釈について、お互い意思解釈が食い違つておるという点から来ておるのではないか。かような点から、この通達そのものもきわめて大ざつぱであるから、いま少しこれを明定して、将来かかる問題が再び起らぬように、十分に注意したらいいのじやないかと、私としては考えておるのであります。しかしながら、せつかく出たこの次官通達でありまするから、できるならばこの通達の線を十分に尊重して、大学側と、今後の問題について、十分了解した上で措置して行きたいと考えておるわけであります。  なお一言申し上げたいと存じますることは、先ほどのポポロ劇も、なるほど学校側におかれましては、これは純然たる劇であるとお考えになつたのであります。しかしながら、たまたま警察官が中に入つて見たところが、それが純然たる劇でなく、相当濃厚な政治集会であつたことがわかつたのであります。ことに、松川事件警察検察事件をでつち上げたのだというような劇を、学校構内文化事業一つとして学生がやるということ自体が、常識的に考えていろいろ御批判があるだろうと考えるのであります。それと同時に、私ども決して疑うわけではないのですが、学校の御許可になつたいろいろな催しものの中に、これは純然たる学内活動とのみ見られない、文化活動として見られないようなものがあるのであります。中には、あるいは先般東京都知事に立候補いたしました出隆氏の選挙運動集会等も、この中で行われたような疑いもあるのでありまして、しかも学校当局におかれましては、こうした集会があるのに、しからばここまで警察権限学校長におまかせしておりまするから、集会等は必ず臨監され、あるいは教授でも助教授でも行かれまして、集会を指導するとか、あるいはこれを善導するとか、あるいはこれをいろいろと見て、間違いのないように集会を持つて行くように、十分に監督せられておるかと言いますると、ほとんどこれは教授助教授も、またそのほかの人も全然行つていないのであります。ポポロ劇のときには、たつた一人の守衛が入つてつただけであります。これは單なる守衛でありまして、何らその会を支配することのできないような、單なる労働者が一人、監督といいますか、これは場所監督という意味で入つてつたにすぎないのであります。かように学校構内におきまする集会において、学校当局一つも御監督の責任を全うされていない。これを私は非常に遺憾とするのであります。われわれは、十分に学校当局監督をせられるという建前において、かように学校当局に御一任をしておるわけでございます。それからまた、警察官教室に入つて講義メモをとつたというようなことも、言われておるのでありますが、今まで本富士署警察官につきまして調べたところによりますると、警察官には、学校講義なんかは必要ないのであります。従つて教室に入つて学校講義メモをとつたようなことは全然ございません。それからまた、学校の中にはいろいろの掲示板等がありまして、中に入らなくても、掲示板を見れば、どういう会合があるということぐらいわかつておるのでありまして、決して中に入らなくても、外の様子で今どういう会合が行われておるかということは大体推察がつきまするので、わざわざ中に入つてまでこれを見る必要はないのであります。また一応学校当局許可された集会等でありまするから、われわれとしましては、学校当局許可されたそのものを尊重いたしておるのであります。たまたま今回このポポロ事件内容を見て、かように学校当局監督が十分に行われていなかつたという、そのほんの一端がここに現われたと私は考えるのであります。従つて、現在東大構内におきまして警備係警察官行つておることは、ビラをまかれはせぬかという視察、あるいは無許可集会等が行われていないかというような視察、それだけでありまして、それによつて学園の自由が侵害されるとか、あるいは学問の自由が侵害されるとかいうことは、全然私は当らないことと考えておるのであります。  学園内において、現在フラク活動が相当活発に行われておるような様子があるのであります。現にそのビラ等には、すでに解散したはずの東大細胞、あるいは東大再建細胞、あるいは東大教養学部細胞といつた名前入りビラが多数まかれており、また先般教育大学から、夕方突発的に出ましたデモの中には、約二百名の中に、少くも百五十名くらいの東大学生が、無届の不法なるデモの中に参加しておつた事実を現認いたしておるような状況であります。従つて、われわれといたしましては、かかる学園の中で、單なる学術研究文化研究でなくして、いわゆる政治運動というものが、学生の手によつて行われておる。しかもその政治運動団体等規正令によつて認めざる、いわゆる団体活動が行われておるとしたならば、当然事前においてこれを防止し、またもしそうしたことがあるならば、これに対して何らかの措置を講ずるというのが警察官の当然の職責であろうと考えておるのであります。このような情勢のもとにおきまして一歩も警察官が入れないといたしますならば、学校の中で何をやつてもさしつかえない、治外法権的なことになりましたならば、これは私は学内の秩序の上から重大な問題ではないか、かように憂慮いたしておるような次第であります。  なお、盗まれた警察手帳につきましては、学校当局の非常な御努力によつて、返ることは返つたのであります。警察手帳を返していただいた矢内原総長以下尾高教授その他各教授の非常な御苦心、御努力に対しましては、警察当局では深甚の謝意を表する次第でありますが、しかしその警察手帳は、生きたなきがらのようなものでありまして、警察手帳の中に書かれたかんじんの機密事項というものは、学生の手によつて公表されております。私は、このことはまことに遺憾にたえないと考えておる次第であります。一昨日参議院におきまして、矢内原総長の御証言を承つておりますると、この手帳を公表することが、法的に犯罪になるかならぬかということを、法学部の教授の方が全部総がかりで研究なすつたそうであります。ところがその結果、この手帳を発表しても犯罪にならぬ、ならなければ発表しようじやないかということで発表したそうであります。私は、この東大教授ともあろう人が多数集まつてかようなことを研究されるということは、まことに不都合千万ではないか、かように考えております。     〔発言する者あり〕
  5. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 静粛に願います。
  6. 田中榮一

    田中参考人 むしろ国家再建の方向に向つた研究ならば、けつこうでありますが、かようなことを、東大教授研究されるということは、私は東大教授の名誉に対して、非常に遺憾に考えておるのであります。そこで、犯罪にならないから発表することを認めたというお言葉でありました。それからある委員の方から、あなたはかようなことをいいことと思うか、悪いことと思うかという御質問に対して、良心的によくないことと考えるということを、東大総長はお答えになつたのであります。私は、これは公平に申しまして——決して警察であるからかように申すのではないのでありますが、人のものを盗んで、そうしてその機密事項を公表してそのからを返す、このことは、かりに犯罪にならなくとも、この点は、私は道徳的にまことに遺憾ではないか、かように考えておるであります。この点は、私は法的にはいろいろ  問題にしなくても、一般の国民の輿論として、この点について最後に判断が下るであろうと考えておりますので、われわれはこの正しい輿論を待ちたい、かように考える次第であります。  たいへん簡單でございますが、以上概況だけを申し上げて私の説明を終りたいと考えます。
  7. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 委員長として一言田中警視総監に、制度上の意見をお伺いしておきたいのであります。  先ほど文部次官通牒に触れられたようでありますが、このいわゆる次官通牒を白紙に帰すべきかどうか、またこれを維持するならば、たとえば緊急特別の場合には警察官の立入りができるということを明確に一つの条項として規定すればそれでよいのか、この修正をどうお考えになるかといつたような点について、簡單に御意見を御発表願いたいのであります。
  8. 田中榮一

    田中参考人 きわめて重要なことにつきまして、御質問になつたのでありますが、私は、次官通達形式をかえる、かえないということは、これは大した問題ではないと思います。私どもは、この制定当時の意思解釈といたしましては、当然警備上必要なる限度の警察活動は、治安維持のためには学校構内においても警察権の行使ができるものだというかたい確心を持つておるのであります。この点が、学校側としましては、この通達の精神からして、学校長の了解なくしては、かくのごとき警備上の必要限度における活動でも介入できないのだ、かような解釈でありますので、私どもとしましては、この通達をさらに詳しく書くか、あるいはまた、もしこの現状の線で行くとしたならば、これらの点について、学校当局の理解ある御協力によつて、何らか話合いと申しまするか、行政協定とでも申しまするか、そうしたものをひとつ話合いの上で、今後の警察活動支障なからしめるような方法を講じていただければ非常によい、かように考えております。
  9. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 以上をもつて警視総監田中榮一君の参考供述は一応終了いたしました。これに対する質疑の通告がありますので、順次これを許します。各委員は十分間の範囲内において、簡潔に御質疑を願いたいと思います。なお木村法務総裁、天野文部大臣に対する関連質疑は、田中警視総監に対する質疑の終了後に、別個の扱いとして質疑をお願いすることにいたします。田嶋好文君。
  10. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 時間の制限がございますので、簡單に要点だけをお尋ねいたしたいと思います。  その前に、この事件は一昨々日、各関係人によつてある程度詳細に述べられておるのであります。申し上げるまでもなく、先ほど警視総監のお言葉にもございました通り、私たち国民といたしまして、どうしても考えなければならない問題は、日本の文化向上による国のよりよき発達、再建のために、学園の、特に大学におけるところの学問の自由、学園の自治ということは、偽りなくして尊重しなければならないところの大原則に立つておる。こう考えておるのであります。これは総監においても、同じような意見を持つておるんじやないかということを、先ほどの御意見で私十分知ることができました。しかし、その反面におきまして、私たちが心配いたしますことは、日本だけでなくして、各世界の国々の歴史がはつきりと証明をいたしております、その国の治安の盲点となるのは、これはその国の大学大学におきましても特に国立大学、官立大学というようなものが治安の盲点になつておる。そしてこれが世界の治安撹乱の拠点になつて、たいへんな問題が起きたことは、はつきりと歴史が示しておるのであります。日本の国も、世界の国の一つであります以上は、この点だけを例外として日本の大学を見ることはできないと思います。そこでわれわれは学問の自由と大学の自治は、絶対的な原則でありながら、やはり国を愛するがゆえに、国家の秩序を守らんがためには、この歴史が示すところの大学の治安撹乱の盲点に対して、常に注意を怠つてはならないということも、これまた私は国の大原則の一つとならなければならぬと考えておるものであります。そこで私は、この点もあとで承ろうと思いますが、私は今回の問題になりました松川事件——これをあまり具体的に申し上げることははばかりますが、とにかく今度の調査にあたりまして、きようの警視総監のお言葉もそうでございますが、この間参りました本富士署警察署長のお言葉によりますると、何だか松川事件を主題としたポポロ劇団が開演されておる、これに対して、入ることが何らか警察当局として遠慮しなければならぬようなお気持をもつてお答えになつたような気持がいたしてならないのであります。幸いきようは警視総監から、この間入場したことに対しては、娯楽意味で入場したのではない、やはり警察官の職務をもつて入場したということに訂正されましたので、多少納得はいたしましたが、まだこれは多少の納得でございまして、私はこうした問題に対しては、警察官考えというものも、相当突き進んで考えてもらわなければならないのじやないか。松川事件というのは、これは申し上げるまでもなく、日本の共産党の起した事件らしいというので、国内問題ばかりでなくして、世界的な、国際的な問題になつて来ておる。そこで松川事件に対しましては、この間法務委員会で取上げましたように、各国の共産党から、最高裁判所に対しまして、また現地の裁判所に対しまして、いろいろな脅迫文書が舞い込む。また各地区におきましても、共産党の分子が、松川事件は政府のでつち上げた事件である、警察検察当局がでつち上げた事件であると、血まなこになつて、ほんとうに死にもの狂いになつて宣伝これ努めた。しかも最近に至つては、各学園にまで乗り出した。十六、十七くらいの青年をとらえて、青年の知識の足らないところに食い込んで、松川事件に対しては、絶対共産党に対する政府の弾圧だということを盛んに吹き込んでおる。そうしてまた全国的にこれが治安関係に大きな影響を及ぼしておることは、これは国民公知の事実なんです。その公知の事実が重大問題化している。共産党はこの問題と必死になつて取組んでいる。そうして一つの治安撹乱をやろうとしておる。このはつきりいたしました事件に関連した劇が開催される、しかもその劇に対しまして、大学当局に伺いましたところ、当時御証言のように、伺いを立てておるのでございますが、大学は積極的に来てはいけないとは言わないが、これは学校で許している、文化関係であるから許しているといつて、開催することを遠慮するという気分が見えない。これは結局あなたたちの協力に対して、消極的な拒絶だ。大学が消極的な拒絶をし、しかもこれは重大なる治安に関係した問題というか、公知の事実であります以上は、観客として私服警察官がその中に入つて、その状況を知ろうとしたことは、これは別に恥ずべきことではない、むしろやるべき行為であり、当然職務の範囲内の行動である、私はこれはやつてもらわなければならぬくらいに考えているのですが、この点は、どうも御答弁が積極的に伺えませんので、私は警察当局の気持、行動いたしました警察官の気持自体を疑わざるを得なくなる。もう少し明確にお答え願いたい。
  11. 田中榮一

    田中参考人 ただいまポポロ劇団に入つた警察官の心境でございますが、警察官学校当局にお尋ねしたときには、これは純然たる一つの劇研究会の催す文化事業であつて、何ら政治的、思想的の問題でもなんでもないのだ、いずれ学校でもこれはあとで見に行くからということであつたそうであります。大体警察官学校ではさようなことを言つておるのでありますが、題材が松川事件であるということで、ピンと来たのであります。そこで学校当局の言は一応は信頼するけれども、とにかくはたしてどういうものであるか行つて来たらどうかという気持も手伝つたと思います。そうして前を通りかかつたところが、入場料を払えばだれでも入れる、それじや入つて見ようという気持になつて私は入つたと思います。また入つた形式においては、さような形式になりますが、おそらく入場料を払わなかつたならば、あるいはその当時の状況としては、大丈夫ですかと、ただちに警察官学校当局行つて、そして学校当局助教授なり教授を連れて行つて見させるという手もあつたろうと思うのであります。しかしながら、当時たまたま、入場料を払えばだれでも入れるという状況であつたから、まことにこれは都合のいいことでありますので、そのまま軽い気持で入つたのであろう、私はかように推察いたすのであります。また入つた警察官の気持を聞きましたところが、内容はどうも少し政治的なものではないかという予感がしておりました、そして入れましたから入りました、こういうことであります。そして私もそのとき、もし警察官自体が入つて都合の悪い場合には、必ず学校当局を連れ出して、学校当局の了解を得て入つたらいいじやないかということを、強く指示をいたしておつたような次第であります。
  12. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私は、この警察官の行動は、まことに時宜に適したものであり、むしろほめこそすれ、くさすべき行動ではないと思う。そして、もしこのことが問題になりまして、警察官の退職というような問題が起きぬとも限らぬ、こうしたことに対しては、われわれは反対せざるを得ない。むしろこうしたことによつて警察官がその職務の執行を消極的に行うようになり、今後の治安に対して影響を及ぼすことを、非常におそれるのであります。この警察官に対して、警視総監はいかように取扱うお考えでございますか。
  13. 田中榮一

    田中参考人 私は、この警察官と個個に面接をいたしまして、その当時の状況を聞きまして、なお一層治安確保のために十分に努力するように——なお今後いろいろな問題が発生するから、かかる場合におきましては周密、細心の注意をもつてやるようにということを、私は注意をしておきました。私はその問題につきましては、何らとがめようとはいたしませんでした。
  14. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私はまことにけつこうな処置だと思います。  次に、手帳の点でありますが、取上げられました手帳が問題になつて、そうして大学の監視をしておるとか、あるいは特高警察の復活とかいうことを、盛んに攻撃の材料にいたしておるようでありますが、私は、この警察手帳というものに大学内容が書かれ、また教授のある行動が書かれておつたところで、これは別に問題じやないと思います。たとえば、一例を引きますが、私が何か悪いことをしておるということを、警察官がたまたま第三者から耳にする、その耳にした私のことを警察官手帳に書く。これは、私としてはとがめることはできないし、むしろ私が悪いことをしておるということを警察手帳に書くことは、当然警察のやるべきことだ。それを警察手帳に書いておるからということで、一々取上げて、特高警察の復活だ、やれ何だとか攻撃することは、ちよつと現在の警察機構を理解しないのじやないか、かように考えます。書くことは当然の行為だと考えるのでありますが、この点に対して、警視総監はいかような御見解でありますか。
  15. 田中榮一

    田中参考人 この警察手帳内容が、ああやつてまことに不法な方法で奪取されて公表されたのでありますから、私は内容につきまして一々お答えしたくないのでありますが、ただ概括的にお答えいたしますと、現在警察におきましては、いろいろな身元調査書をやつております。現在警視庁だけでも、毎日数百通の身元調査が参つております。あるいは村役場から来たり、あるいはまた他の官庁から来たり、いろいろな身元調査が公文で参つております。こうしたことの中には、住所、年齢、職業、それから本人の資力、信用の程度であるとか、あるいは前科の有無であるとか、あるいはまた本人の思想、動向というものがよく書かれてあります。私はこの大学教授のことが内容に書かれてあつたからといつて、必ずしもこれが思想を調査するという意味ではないと思うのでありまして、住所、年齢、家族関係、いろいろなものがあるのであります。思想といいましても、ものの考え方、それからものの見方、その本人の理想なんか、これを書くことは何ら特高警察関係ないことと、私は考えておる次第であります。従つて教授身元やいろいろなことが書かれたとしても、何ら支障がない、かように考えております。
  16. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 もう一つ——これは本富士警察署長に、この間私の質問に対して御答弁願つた点であります。その答弁は、総監お聞きの通りだと思いますが、学校当局と十分協力しておる、学校当局の承諾なくして入つたことはない。しかし、緊急やむを得ない事態が起る。これに対しては、自分の方では学校当局の了解を得ずして入つておるし、また入らなければならぬものである、こういうように述べておつたようでありますが、緊急の内容をはつきりさすことができませんでした。こういう緊急ということは、総監も各署長と御連絡の上、そのわくなんかをおきめになつておるものでしようか、本富士署長の言つた緊急という意味は、どういうものでしようか。あわせて東大内における共産党のフラク活動について、わかつておる点をお答え願いたい。
  17. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。緊急の場合において構内に立ち入るということは、これは私はいろいろな場合が想定されますので、その場合によつてみないと、なかなかわからぬのでありますが、一応緊急の場合というのは、常識で考えまして、これを学校当局お話をしておつたならば時間的余裕がない、あるいはそれによつて犯人を逃がしてしまうか、あるいは証拠物件が隠滅されるおそれがあるとか、あるいはまた時期を失することによつて一層犯人逮捕等がむずかしくなるとか、あるいは視察がむずかしくなる。たとえば無届集会が行われておるような事態になると、それを一々学校当局にお断りしておつたならば、その無届集会解散してしまうかもしれない。かような場合におきましては、緊急の場合でありますので、やむを得ず学校当局に了解なくして、警察権の行使として構内に入つて取締りするということは、これは警察官として当然持つていなくてはならぬ権限であろう、かように私は考えておるのであります。  それから学内におけるフラク活動状況であります。これはむしろ私からお答えするのではなくて、特審局長からお答えした方が妥当ではないかと考えておりますが、私どもの知り得る限りにおきましては、先ほど申し述べましたごとくに、構内におきまして、東大再建細胞あるいは東大細胞名の政令第三百二十五号違反疑いのあるビラがまかれたり、あるいはその他まことに不穏当と認められるようなビラが再三再四まかれるということ、それからまた構内集会には、もちろんこれは警察官も中に立ち入りませんので、いかなる集会が行われておるかわかりませんが、しかしいろいろな情報等によつて知り得た範囲におきましては、先ほど申し述べましたように、学生としては不穏当ではないかと認められるような政治活動的ないろいろな集会が行われておるのであります。あるいはまた不法なるストライキに対する、あるいは不法なる集団示威運動に対する事前の謀議が行われておるような疑いが見受けられるのであります。その他いろいろな祕密文書等が、あるいは中で作成されておるのではないかと思われるような節もあるのであります。従いまして、かようなフラク活動の行われておるところに、警察官が全然立ち入ることもできない、監視もできない、視察もできない、取締りもできないというようでは、警備の責任の上からしまして、私はまことに遺憾にたえないのであります。従つて、かかる場合におきましては、当然警察権の行使が、たとい学校当局の了承のあるなしを問わず、できる、かように信じておる次第であります。
  18. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 時間がありませんから、最後的な質疑を願います。
  19. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 そういたしますと、緊急ということは、結局総監が各警察署にわくを示しておるのでなくして、各警察署長が自己の判断によつてきめられる、こう解釈していいものでしようか。これをお答え願うことと、それから今緊急の例をお示しになりましたが、不穏なビラをまく、共産党東大細胞再建というような意味におけるビラをまかれる、これも緊急の中に入るのか、これが第二。それから先ほどのお答えによりますと、共産党のフラク活動が行われておる、これに対しては緊急と解釈して行かなくてはならぬ——お答えもそうじやなかつたかと考えますが、こうした場合緊急として行くのか。この三つをお伺いいたします。
  20. 田中榮一

    田中参考人 総監が、いかなる場合において緊急であるかというわくは示しておりません。これは各署長が、その場における客観的状況並びにその他各種の情勢、条件を判断しまして、その署長の適切妥当なる認定にまかせておる次第であります。それから不穏なビラまきは、当然緊急なものと考えております。何となれば、現在大ぴらに人のいる前で、私はただいまからビラをまきます、といつたようなかつこうでビラをまく者は、一人もありません。あるいは衆人の中にまぎれ込んでビラを落すとか、あるいはあるところにビラをそつと置くとか、あるいは全然人の見ていないところで、方々にビラをまいて置くというようなまき方をいたしておるのでありまして、人のいる前で堂々とビラをまくようなものはないのであります。かような場合におきまして、これを現認することはきわめて困難であります。これを現認、逮捕するために、一々その都度学校長の了解を得て入場するということは、非常に困難であります。従いまして、かかるビラまきの視察取締りということは、当然緊急の中に入つてさしつかえないのじやないかと私は思つております。  それから、フラク活動との仰せでありますが、これもはつきり判断はいたしかねるのであります。中には、その時期を失したならば、当然フラク活動が解消してしまうというような情勢もあり得ると思いますから、これは、必要によつては緊急にもなるでありましようし、またそうでない場合もあると思うのでございますが、やはりこうしたものは、あるいは緊急になろうかと私は考えております。この点は、具体的な事象についてこれを見ませんと、はつきりわからぬと思います。
  21. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 私の質問はこれで終ります、
  22. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 押谷富三君。
  23. 押谷富三

    ○押谷委員 簡單に二、三の点をお尋ねいたしたいと思います。  この東大事件は、その非がどこにあるかは、しばらくおいて、かような問題か引起つたことは、まことに遺憾千万なことであります。こういう一方は学園の自由、大学の自治を主張しており、また一方は首都の治安を守る重責に任じている、この両者の衝突でありますが、将来かようなことのないように、この問題に対処するためには、大学の総長、また一方警視総監、こういうような最高責任者が話合いをせられるのが、私は至当ではないかと思うのですが、さようなことをなされたことがあるかどうかをお伺いいたします。
  24. 田中榮一

    田中参考人 大学の総長と私とは、非公式に一応お会いいたしまして、両者の意見を話し合つてみたのでありますが、総長は総長の立場を強く主張せられまするし、私は私としまして、警備上の責任から、現在の警察権行使に対しまして強く主張いたしておりますので、両者話合いはつきませんでした。
  25. 押谷富三

    ○押谷委員 話合いがつかなかつたことは、たいへん遺憾に存ずるのでありますが、その際の話の模様で、今総監が言われました、当日ポポロ劇団のやりました劇の筋書なるもの、前後の報告等から考えて、これは政治的な性格を持つている催しであり、集会であり、これは左翼活動の一環とも見るべきものであるというこの考え方について、大学当局はどういうような考え方を持つてつたようでありますか。
  26. 田中榮一

    田中参考人 たまたまこのポポロ劇の性格につきましても、きわめて簡單ではありましたが触れたのであります。しかしながら、大学の総長の御意見としましては、これはあくまで学校構内における学生学内活動である。いわゆる文化事業としての一つ学生活動であつて、あくまでこれは劇の研究である。このポポロ劇というものは、左がかつた思想を持つた者が集まつておるものであるが、左がかつた方でも、右の方の人たちがやつておる劇であるからして、われわれは決して政治的なものではないと信じておる。あくまでこれは学生として劇研究、いわゆる芸術的な気持から催された演劇であると自分はそう信じておる。私は、そうではない、これはあくまで政治的な意図のある催しであると主張いたしまして、この点におきましても、両者意見が一致いたしておりません。
  27. 押谷富三

    ○押谷委員 この重大な集会一つ解釈でも、さように大きな意見の相違があるのでありますが、その際に行われました、学生から強要した謝罪文の署名、あるいは警察手帳の奪取ということについて、大学当局は、総監に遺憾の意を表しておられましたかどうかを、ついでに伺います。
  28. 田中榮一

    田中参考人 私は、直接この問題につきまして、大学の総長並びに他の教授の方々にお目にかかつたことはありませんが、少くとも大学当局のおつしやつた言葉並びに態度から、警察手帳が奪取されたという事実につきましては、遺憾の態度をとられておつたと私は信じております。
  29. 押谷富三

    ○押谷委員 別にあいさつがあつたわけじやありませんか。
  30. 田中榮一

    田中参考人 特にあいさつはなかつたと、私は記憶しておりますが、その点、はつきりお答えができないのであります。
  31. 押谷富三

    ○押谷委員 どうも私どもの考え方からも、大学当局は、非常に学生の方に味方をするというような方向に見えるのでありますが、これはたいへん遺憾なことである。それがために、学生はそれに甘えて、かような行動を平気でやるというような事態になるのではないかと思いますが、この点も、大学は相当注意をしなければならぬことだと考えます。特に大学構内で入手をせられたというこの不穏ビラでありますが、その不穏なビラの中には、非常に危険な文句が並べられております。(「どこが危険なんだ」と呼ぶ者あり)——聞きなさい。労働者はドスをとぎ始めた、こういうようなことを言つているのです。日本の解放は平和な手段ではもうだめだ、これからは暴力行為によつて日本の解放を行わなければならぬというような非常に危険なビラをまいているのです。加藤君は、これは危険でないと言われるかもわからないが、たいへんに危険な、かような類似のものをたくさんまいて、しかも、警視総監の方では、これを相当多く入手されていると思うのであります。かような文書が大学構内にまかれているが、このことについて、総監は大学当局と交渉をせられたことがありますか。あれば、そのてんまつを伺いたいと思います。
  32. 田中榮一

    田中参考人 もちろんかかるビラを発見いたしましたときには、学校当局に、そのビラを持参いたしまして——このようなビラがあちらこちらにばらまかれておるということは、いろいろの点において、学校としても非常に取締り上遺憾の点があるので、どうか今後かかる点のないように、一層御注意を願いたいということは、再三申し上げております。なおかかるビラのばらまかれないようないろいろな措置は、学校当局としてもおやりになつておるということを、一昨々日の矢内原総長の証言によつて、私は知つたのでありますが、さてどの程度学校がこうした取締りをやつておるかという具体的なことにつきましては、私は不幸にしてまだ知つておりません。
  33. 押谷富三

    ○押谷委員 大学内においてこういう左翼活動が行われていることは、ビラであるとか、あるいは集会の性格であるとかから見まして大体明らかになつておるのでありますが、これは次の問題といたしまして、この集会デモのほかに、大学構内において相当たくさんな犯罪がある。これは本冨士署長の意見によりましても、本富士署管内における犯罪の半分ぐらいは、大学構内であると言われておるのであります。こういうような事態にかんがみて、警察がパトロールをやるということは、当然必要なことだと思われますが、過去におけるパトロールの状況並びに将来このパトロールはどうしようと考えておられるかを伺いたいと思います。
  34. 田中榮一

    田中参考人 大学構内におきまする犯罪は、先般野口本富士署長から数字をもつて申し上げましたごとくに、大体本富士署の管内の犯罪件数の二割七分強というものが構内の犯罪でございまして、大体三百二十件ほどになつております。これらは大体すり、窃盗あるいは万引き、ノビ、それからいろいろなそうした一般刑法犯が盛んに行われております。これらはいずれも学校当局からの被害届のあつたものだけを、一応統計に載せたものでありまして、もし被害届のないものを、かりに計上するといたしましたならば、あるいはこの二倍以上あるのではないかということも、一応考えられるのであります。そこで現在、これらの犯罪の予防並びに検挙といいますか、そういう意味におきまして、学校構内を二つの警邏区に——これをビートと称しますが、二つのビートにわけまして、昼間は二人の警察官、夜は四人の警察官がこのビートを警邏いたしております。それからまた、学校構内には警察電話も架設されております。この警邏地区の設定並びに街頭電話の設置につきましては、もちろん学校当局と十分協議の上で、学校当局の御了解の上で、そして現在もこの警邏を実施いたしております。なお将来もこの警邏は実施いたしたい、またせねばならぬものと考えております。
  35. 押谷富三

    ○押谷委員 大学当局との話合いでパトロールをしているというお話でありますが、このパトロールについて、二十二日に駒場の構内学生警察官二名をつるし上げをした事実があつた。そのときも、やはり謝罪文に署名をさせておるようでありますが、こういうことについて、難視総監は御存じですか。
  36. 田中榮一

    田中参考人 私はその事実を知つております。この駒場の東大教養学部構内におきましても、やはり学校当局と協議了解のもとにビートを設けまして、警邏警察官が現在警邏をやつております。たまたま二月二十二日の日に、このパトロール員である制服警察官掲示板を見ておつたところが、視察といいまするか、何か取締りに入つたのではないかというようなことから、大学学生が非常に憤激いたしまして、これにわび状を書かせたというのでありますが、この点につきましては、私はまことに遺憾に考えております。現在、学生の中には、警邏制度も反対をしている者があるという状況でありますが、しかし、学校当局並びにほとんど大部分の学生は、この警邏警察官については、何ら問題がないのではないかと、これは私の考えでありますが、さように了承いたしておるのであります。
  37. 押谷富三

    ○押谷委員 今回の問題の原因でもあり、また将来の解決の道でもあるものは、結局文部次官通達にあると思うのでありますが、この点で一つお伺いしたいのです。この通達は、性格は非常にむずかしいものだと考えますが、これは、都条例の執行をする警察方面か、かような手心をしようという一つの申合せだと考えます。従つて、これは法律でもなければ、規則でもなければ、条例でもない。こういうような場合に、この申合せをし、かような通達を出された当時の事情と今日とは、事態が非常にかわつて来ているという場合においては、首都の治安を守る重責にある警視総監は、この通達についても、特別な考え方をもつて臨み得ると理論上考えられるのですが、そういう場合において、大学の同意がなくても、これを変更することができるというお考えがあるかどうかを伺いたいと思います。
  38. 田中榮一

    田中参考人 先ほども申し上げましたごとくに、現在の次官通達は、条文の明文上からしますると、きわめて大ざつぱなものでありまして、いろいろ誤解を受けやすいので、いま少し具体化する必要があるのではないかということも、実は考えております。しかしながら、せつかくできた次官通達でありまするので、こうした問題があつたからただちにこれを押し返すということも、いろいろ考えてみますると、また問題を将来に残すおそれがありますので、この点につきましては、文部当局とも今後十分に折衝いたしまして、将来再びこうした問題が起らぬように、何らかの方法を講ずる必要があろうと私は考えております。従つて、これを文部当局に了解なくして、私の方だけでかつてにやつてしまうということは、官庁同士の事務の上から申しましても、これはいささか穏当を欠くという考えもございますので、十分両者協議の上で、また文部当局もこうした方面に十分御理解を持つて御協力願わなくてはならぬ、かように考えて、今後話合いを進めてみたい、かように考えております。
  39. 押谷富三

    ○押谷委員 この通達の性格は、どんなものですか。結局これを改めたい、これに対して、もう少しこまかくいろいろな場合を想定して、規定をいたしたいというような場合に、文部当局がこれに同意をしないとか、あるいは大学の方から異議が出るとかいうこと  で、この通達があなたの思うような調子にならない場合があるかもわからぬが、そういうような場合に、一体どう考えておられるのですか。
  40. 田中榮一

    田中参考人 この通達は、警察当局考えているような解釈でお進め願い得るものとするならば、私はこの通達に、今手を入れて、いろいろ直すとかいうことはしなくとも、あるいは済むのではないかと思つております。但し、最初申し上げましたごとくに、この通達というものが、学校構内に必要な警備のために立ち入ることも、一々学校当局の了解と申しますか、要請があつた場合においてのみ出動し得るのだというような解釈では、これは警察当局通達解釈の根本精神において、そこに大きな食い違いが起つて来るのであります。そこで、こうした学校構内における警備の最後の責任は、やはり警察にあるということを、先般京大事件の際にも、この法務委員会におきまして、最終の結論としてお出しになつておることから考えましても、この通達の精神というものは、これは警備上、取締り上必要がある場合においては、いついかなるときにおいても警察が入れるのだ、かような点をはつきり御認識をしていただくならば、私はこの通達がこのままでありましても、これは何ら支障はないと思いますが、それは根本的に大学当局のお認めにならぬような点ではないか、かように考えるので、この通達をいじくらなければ、将来問題を起すのじやないか、かように私心配しておるわけであります。
  41. 押谷富三

    ○押谷委員 最後に、結論的に一点だけ決意のほどを伺つておきたいのですが、大学は自治を叫んでおります。もちろん、これは認めなければなりません。学問の自由も認めなければならぬ。しかし、大学の自治あるいは学問の自由の名に隠れまして、大学構内が治安の盲点であつてはならないことは、申すまでもございません。従つて大学構内といえども、その治安の最後の責任は、これは警察官にあるのであつて大学当局には、治安の最後の責任は負わすべきではないと考えているのですが、この点に対する最後的な警視総監の御意見を伺つておきたいと思います。
  42. 田中榮一

    田中参考人 お説のごとくに、私は大学構内におきましていかなる問題が発生いたしましても、最後の責任というものは、結局これはその警察が最後の責任を負わねばならぬというような考えを持つておる次第であります。
  43. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 花村四郎君。
  44. 花村四郎

    ○花村委員 簡單に警視総監にお尋ねしたいと思います。治安維持に関する問題は、すこぶる広汎にわたるのでありますが、本委員会の調査の中心をなしておりまするものは、要するに大学学園内における集会、結社、出版物並びに言論等に関するものでありまするので、これを中心として警視総監の御所見を伺いたいと思います。  そこで、この問題に関しましては、御承知のごとく憲法二十一条におきまして、集会、結社並に出版、言論の自由が保障をいたされております。旧憲法におきましては、この種自由に対しまして、法律をもつて制限し得ることになつてつたのでございますけれども、新憲法は、旧憲法とその趣を異にし、たとい法律をもつてしても、この種自由は制限ができない。制限し得るものは、要するに権利の濫用に基くものであるとか、あるいはそれが公序良俗に反するというような場合に限つて、その自由を制限し得るということに相なつておりまして、自由保障の範囲が広められておりますることは、周知の事実でございます。そこでわれわれがこの憲法の自由に対する保障の上に立つて東大問題を考えてみまする場合において、いかに大学当局者といえども、この憲法で保障された自由は、みだりに制限するわけには参りません。がしかしただ一つ注意すべきは、この自由は、制限はできないのではございまするけれども、学問の府として、そして学問の府を管理して参りまするところの権限を持つておりまする大学当局といたしては、その結社なり集会なり出版物なりを、その学園内において行うことが、教育の見地から見て不適当と認むる場合において、その営造物を使用せしめないということは、これは権限の上から当然できることでありまするので、従つて、たとえば集会にいたしましても、その学園内の営造物を使わしめないという意味において、集会をやることができぬという場合に逢着することのあり得ることは当然であります。がしかし、そういう場合と、この憲法上与えられた自由を制限するという意味とは、これはおのずからその考え方が違うと申し上げていいと思います。そこで、もし学生集会なりをいたしまして、その集会が不穏当であつて、治安に大きな影響を与えるという場合でありましても、学校当局は、少くともその集会をさしとめる権限は持たない。学園の営造物を使用せしめないということはできるのでありまするが、その集会をとめるところの権能は持たない。ただこの種自由を制限し得るところのものは、要するに法律で定められた事由によつてその法律を執行する権限を持つた者、すなわち例を申し上げまするならば、警察官あるいは検察官といつたような、法律上その取締り権限を与えられたる者に限つてできる、こういうことにならなければならないと、こう思うのでありまするが、警視総監は以上の観点についてどうお考えになりますか、それをお尋ねいたしたい。
  45. 田中榮一

    田中参考人 現在の学校構内におきまする取締り関係は、御承知のように憲法十三条の、いかなる自由の権利といえども、公共の福祉に反せざる限り最大の尊敬を受けるというあの条項からいたしまして、地方自治法の規定の根拠に基きまして、現存東京都条例として公安条例が公布されておるのであります。そうして、この公安条例の第一条並びに第三条の規定によりまして、道路または公共の場所における集会、その他集団行進、またいかなる場所といえども集団示威運動は、必ず公安委員会許可を受けねばならない、かようになつておるのであります。この公安条例許可権と申しまするか、公安委員会許可する権限を、これは一部でありまするが、当然学校構内におきましても、いわゆる一般の多数の不特定の者が来会する集会におきましては、これは公共条例の公共の場所における集会ということにいたしまして、現在学校長を経由して東京都特別区公安委員会許可申請をさせまして、これに許可を与えておるのであります。しかしながら、学校構内におきまする、いわゆる学校当局が主催者となつて学生、生徒、児童または特定人を対象とするような集会、たとえば学内講演会、学芸会、映画会、展覧会、それからこういつたような研究会等、それからまた、もう一つは、学校当局以外の者が主催する場合でありましても、これは当該学校の教職員、学生、生徒その他学校長の承認した特定の人または団体が、その学校の管理者または学校長の定める手続による許可を得て特定の者を対象として行うような集会、たとえば学生大会、生徒会、講演会、PTAの会、父兄会、卒業生懇談会、学会、研究集会、これらのことは、純然たる学校構内の特定の者の集会という意味におきまして、これは学校長にその許可といいまするか、学校長の当然の学内の管理権に基きまして、構内集会許可権といいまするか、そうしたものを一任したような形式になりまして、学校長措置するを建前とすると、かように通達の中にうたいましておまかせしてあるようなわけであります。従いまして、一応集会許可等はおまかせしてあるのでありますが、かりに学校長許可せざる集会学校構内において行われておつたという場合におきましては、当然学校長もこれを制止する権限もございましようし、また同時に、その場合におきましては、公安条例の規定から言いまして、当然警察官等がこれに対して適切なる措置を講じ得る。あるいは制止するとか、あるいはまた当然これを解散させるという権限はあるものと考えております。しかしながら、この通達の精神からいい、また学校自治の精神から申しまして、そういう場合におきましては、直接警察官が、ただちにこれに対して解散を命ずるというのでなくして、一応学校当局に注意を与えて、学校当局の手によつて解散をさせる、現在かような方法を用いておる次第であります。
  46. 花村四郎

    ○花村委員 そうすると、結局公安条例違反の問題に対しては、警察権を持つておる者でなければ取締れないということだけは、はつきりしておるわけでしようね、それはいかがです。
  47. 田中榮一

    田中参考人 もちろん、すべて公安条例に根拠を置いておりますので、最後におきましては、私はやはり警察当局がこの権限を行使し得る立場にあり、また行使されねばならないものと考えております。
  48. 花村四郎

    ○花村委員 その治安維持に関する問題について、学園においては、最後にという言葉を、さつきも押谷委員からも言われ、今も警視総監から、最後の権限警察にあるのだ、こういうのですが、そうすると、その最後まで行かない前の構限は、学校にあるやに考えられるが、それは最後にあらざるその前のものは学校にあるのですか、それはいかがです。
  49. 田中榮一

    田中参考人 学校構内集会でも、一般の多数不特定の者が集会する集会におきましては、これは当然公安委員会許可いたしまするので、これに対する取締権は、これは当然警察官にあると考えております。それから、そうでない、いわゆる一応学内集会のゆえをもちまして学校長におまかせしてある集会につきましては、通達の精神からいたしまして、また従来の慣習からいたしまして、警察官自体がこれを取締るというよりも、むしろ許可をした学校をして取締らせる、また許可、不許可権限を持つておる学校当局者をして措置させるということを建前といたしております。しかしながら、またそうでない場合に、学校当局措置しようとしましても、聞かざる場合におきましては、これは警察取締り警察権を行使することは当然であります。
  50. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 時間がありませんから、質疑はなるべく簡潔に願います。
  51. 花村四郎

    ○花村委員 最後にしておきますが、文部次官通牒なるものも、どうもわれわれにはふに落ちないのみならず、今の警視総監の御答弁も疑問があるのです、そうすると、最後の取締権は警察にあるのだが、その最後でない前の部分、すなわち文部当局が扱う部分については、警察権の一部を委任でもしてあると、こういうのですか、その前の部分に対する文部当局の持つておる取締り権限というものは、警察権の一部を委任されたとこういうことになるのですか。
  52. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。この最後の前の取締り権というものは、これは委任と言いましても、実際問題としまして、公安委員会許可権を、警視総監がこれを一任するということは、法理上からも、また実際上からも、いろいろ理論的に申しますると、不適当であるのであります。ただ実際問題として、学校校内におけるいろいろ学校当局に自治を認めるという精神を根拠に置きまして、警察権が行うもの、警察がやる仕事を学校がかわつてつて行く、一任というのでなくて、警察にかわつてつていただいておる、かように解釈したらどうかと考えております。少し私の議論が、あるいは法理的にどうかと思うのですけれども。
  53. 花村四郎

    ○花村委員 もう私の質問は終りますが、今警視総監が触れられた問題が、要するに本件の焦点になろうと思います。どうも警視総監の答弁では、その辺がはつきりしないのだ。少くとも治安維持に関する取締り権限は、警察以外にはないはずなんだ。警察がやつて行かなければならぬことは、法律上からこれはきわめて明瞭であつて、これに慣習など加え得るはずのものではない。そういう見地から考えてみると、その一部を文部当局にゆだねるという意味がどういう意味であるか。そこがいまだ研究の余地があると思いますので、御研究してもらいたい。
  54. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 花村君の御指摘の点は、なお文部大臣等にただしたいと思います。
  55. 押谷富三

    ○押谷委員 一言釈明をいたします。先ほど私が、最後の責任という言葉を使つたので、多少誤解があつて、最後のという言葉は、最初と最後と、こういう二つにわかれて責任を問うているようにお聞きになつているようでありますが、私が申し上げたのは、この最終的な全部の治安の責任は警察にあるのではないか、こういう質問をいたしたので、最終的責任の帰趨をお尋ねしておつたのでありますから、そういう意味でお聞きおき願いたいと思います。
  56. 田中榮一

    田中参考人 私の説明がへたで、どうも恐縮でありまするが、警視総監が、公安委員会許可権を学校長に委任するということは、これは当然権限上、できないことであります。従つて、やはり許可権というものは、公安委員会が保留しておくものじやないかと考えております。ただ実際上の問題としましては、その許可をせずに、学校長が、校内集会については管理上の責任もありまするし、また学生指導の精神からしまして、一応警察にかわつて集会取締りする、かようになつておりますので、一任をしておるわけではないと私は存じております。実際の問題として警視総監が公安委員会話合いの上で、許可権を警視総監が一任するということは、法理上からもできぬ建前になつております。
  57. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 猪俣浩三君。
  58. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私どもは、警察の任務が重大であり、かつその心労の多いことも、よく察知しております。その本来の任務を尊敬しないわけではございません。しかし、警察はその本来の任務を十分に果すことが望ましいのでありまして、私どもの心配するところは、近ごろ警察がいわゆる思想警察的な活動をなされ始めたのじやないかと思われることであります。今回公表せられましたる警察手帳内容を点検いたしますならば、これは警視総監がるる説明なさるけれども、とうてい納得はできない。私は十分間の時間でありまするがゆえに、これに対して、あなたと徹底的な議論をしたいのであるが、これは許されないが、これはいかにあなたが強弁をたくましゆうしても、この全体の記事を見るならば、これは特高であります。一体今回学生警察官に反発を感じまする中心の課題はどこにあるか、これはスパイ的態度である。いつとは知らず教室の中の集会に入り込む、尾行をやる、身元調査をやる、こういう不明朗なるスパイ活動に対する反感であります。そこでこれは思想、警察に転化する際には、かような警察が隠険なスパイ的行動をやるようになることは、必然のことであります。終戰前における幾多の例が、これを証明いたしておる。私はこの警察が思想取締り方面に乗り出して来ることに対しましては、日本の民主主義完成の上から、実にゆゆしき大問題だ。これはポポロ劇団がどうだの、公安条例取締りがどうだのという問題じやない、警察全体の性格、あり方、これがやがて民主国家としての日本の性格をかえることになる。今あなた方が警察吏員をして行わしめたような、この警察手帳に書かれておりまするような行動を四、五年前におやりになり、今日あなたがここで証言するようなことを、四、五年前にあなたが言明したとするならば、あなたはさつそく首が飛んだであろうと思う。時代がはなはだ右旋回したがために、そうして多数党諸君の声援に送られて、あなたは得意になつておられるようであるが、これはとんでもない考え間違いだ、日本の運命を破壊することになります。私はこれを衷心から心配する。あなたは、一体終戰前どういう任務をやられておつたか、よくわかりませんけれども、日本の特高警察なるものが、いかなる運命を日本に与えたか。これはマッカーサー元帥が昭和二十二年九月十六日、警察の理念に関する書簡を、時の総理大臣に送りました文章の中に、はつきりしておる。「戰前十箇年間における日本の軍閥の最も強大なる武器は、中央政府が都道府県庁を含めて行使した思想警察及び憲兵隊に対する絶対的な権力である。これらの手段を通じて、軍は政治的スパイ網を張り、言論、集会の自由、さらに思想の自由まで弾圧し、しかして非道の圧制によつて個人の尊厳を失墜せしめるに至つたものである。日本はかくてまつた警察国家であつた。」と、マッカーサー元帥が指摘しておる。この精神にのつとりまして、警察法なるものができたのであつて警察法第一条を知らぬじやないかと、私は本富士警察署長に言いましたのは、この警察法の立法精神、これは議会における委員会の審議によつても明らかだ。思想取締りのごときことを想定して、この警察法ができておるのじやない、まつたく思想取締りのごときことは、警察は触れてならぬということで、この警察法の第一条ができておる。警察法は、個人の権利と自由を保護するためにできておるということが、この警察法に横溢した一大思想であります。これに対しまして、あなた方がやつておることは、何であるか。政令第三百二十五号違反であるとか、公安条例違反であるとか、その取締りのために当然やるべきであると称しまして、私服の警官をひそかに変装して——学内各部屋の出入りについて服装等の変装について」ということも、ここに書いてある。そしてなおまたそれについて見ますると、十二月の二十三日、二十七日、こういうところには、東大内密行と書いてある。何で密行というのか。(笑声)なおそのほかに、進歩的教授と思われる人たちの身元調査をみなやらしておる。あるいはまた中央委員会委員四名を尾行しておる。しかもこの身元調査によれば、山之内一郎教授のごときは、これは「大塚署より」と書いてあるから、きつと大塚署より調査を頼まれたのではないかと思われる。なお、あなたはそんな思想動向なんというものじやないと言われるけれども、ここには「コグチイイチ」と書いてあるが、これは「オグチイイチ」の間違いだろうと思う。東洋文化研究の世界的権威の学者であります。この小口偉一氏に対して、経歴、思想動向、背後関係、交友状況その他を調べておる。思想動向を調べておる。かようなことをやつてつて、だんだん思想警察的特徴を発揮して来ておる。かようなことに対しまする学生の反発であろうと思う。  そこであなたに私はお尋ねするが、先般来のあなたの答弁を聞いておると、今回のこの不幸なる東大事件なるものに対して、すべて非は学校ないし学生にあり、警察官には何らの落度もないような御答弁であるが、はたしてしかるか、これを第一にお聞きする。
  59. 田中榮一

    田中参考人 今回の事件は、要するにポポロ劇団に四人の警察官入場券を買つて入り、そしておとなしく見ておつたものを、いきなり学生がこれに暴行いたしまして、それに端を発して今回の事件が起つたのであります。従つて私は、今回のこの事件は、非は学生側にありと、かように考えております。
  60. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 いかに無謀なる学生といえども、何らの動機、原因なしにさような行動をとるものであるかどうか。あなたは長い間警察官として、それがわかりませんか。なぜそういうふうな警察官が入つておることに対して……(「暴力認めることになるじやないか」と呼び、その他発言する者あり)黙れ。警察官の番犬みたいなことをやるのじやない。
  61. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 静粛に願います。
  62. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は警視総監に質問しておる、君らに質問しておるのじやない。それが言論の暴力だぞ。  そこで、そういう静かに見ておつた警察官に対して、学生がもしかりにさように憤激したならば、それは一体どういう原因から来ておると、あなたは見ますか。
  63. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。話を聞きますと、従来も学内におきまして、映画会があつたそうであります。その際には一般の観衆も全部入場料をとつて入れておるそうであります。その際に、警察官も入つて、静かに観覧をさせてもらつてつたのであります。ところが、今回はなぜこうなつたかということにつきましては、これは私らの想像でありまするが、学生警察官に見られては困るものを見られたから、そこで警察官私服だと言つて、大きな声でどなり、暴行を働いたのではないか。これは私の想像でありますから、あるいは実際そうでないかもしれませんけれども、見られてはならぬものを見られてしまつたということが、学生の憤激といいますか、興奮した一つの原因ではないか、私はかように考えております。その当時、学生は、劇が終りましてから資金カンパをやろうということを言い出した。ところが、私服がおつたから、それつというので騒ぎ立つたということも、私は聞いておるのであります。これは私の推量でありますから、間違いであれば訂正いたします。
  64. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 しからばあなたにお尋ねする。私服で静かに入つてつたものに対して、これが警察官だということが、どうしてわかつたか、それをお尋ねします。
  65. 田中榮一

    田中参考人 四人の警察官は、相当長く学校構内にも出入させております。また学校当局に、学生課の方にも、あるいは厚生部の方にも、いろいろ連絡で参つております。従つてあるいは自治会の幹部、あるいは緑会その他各種団体学生の幹部は、この警察官が本冨士署の警察官であるというくらいは、大体みな知つておるはずです。
  66. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それは結局において、始終この人たちが学校の内に出入りして、そうしてあらゆる集会に顔を出しておる。さようなことをやつておるから、学生に顔を見知られたのであるし、それだから、いつも、だれかと言うと、すつと帰つてしまう。きようこそしつぽをつかまえなければならぬとというので、警察手帳を預かる問題が起つたのが真相だろうと思う。一体さような学生の自治的精神を汚して、そうして政令三百二十五号、あるいは公安条例と何らの関係のないようなことを、あるいは張込みだの、見張りだの、尾行だの、密行だのと、昔の特高警察がやつたと同じ言葉さえ使つてつておる、これに対する学生の憤激なんです。あなた方が、それをよくお考えなさらぬで、なおこれを強化するようなことになれば、不祥事は続くのです。一体学校学生と、所轄警察署がかような反目をし、そうして紛攪を起しておることを、あなたはよいと思つているか、悪いと思つているか。
  67. 田中榮一

    田中参考人 もちろん、学生警察当局がかくのごとく対立する状態は、私は好ましからぬ状態考えております。  それから、先ほど特高警察云々の御発言があつたのでありますが、現在の警察は、今猪俣議員の御朗読になりました、一九四七年九月十六日付でありましたか、マッカーサー元帥の、時の社会党の総理大臣に出しました書簡を根拠にしまして、現在の警察制度が昭和二十三年三月七日に新しく樹立されたのであります。従つて今日の警察は、猪俣議員の御指摘のような特高警察は、全然やつておりません。何となれば、猪俣議員の方がお詳しいと思いますが、特高警察なるものは、大体思想そのものを犯罪として取扱い、あるいはまた、思想そのものを国家の政策に一方に統制しようとするような、権力をもつてこれを強制するのが特高警察ではないかと私は思つております。従つて、現在の警察は、さような思想を犯罪として取扱つたり、あるいは思想を一方に統制するようなことは、絶対にできないことになつております。また憲法においても、当然これは認めざるところであります。いわんや、警察は、かかることは、いかなる場合においてもできぬことになつております。従つて、現在は特高警察はないと、私は思つております。
  68. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 しからば、東洋文化研究所員の小口偉一氏の思想動向というものを警察が調べているのは、どうなんだ。
  69. 田中榮一

    田中参考人 これは身元調査は……(「思想動向だ」と呼ぶ者あり)身元調査の中には、従来よくそういうのが入つておりますが、あらゆる官庁から参ります身元調査、これは先ほど申しましたように毎日数百通のものが参つております。それにはいろいろ思想動向というようなものもあります。私は思想動向というものは、何もむずかしく考えないで、その人のものに対する見方、考え方、その人の理想、希望、そうしたものを見るのが、これが思想動向でないかと思います。
  70. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 猪俣君、時間が迫つておりますから、簡潔に願います。
  71. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたの言は、ますます奇怪です。奇怪なんだが、時間が迫つているから、これはこれでいいとして、他日またやります。  しからば、あなた方は職権に基いて人を逮捕することができるであろうが、二月二十一日に福井某なるものを逮捕されたときに、相当乱暴を働いておる。これに対して、食らいついたから歯が欠けたという、はなはだ人をばかにしたことを、本富士署長は言つているが、これはそれを見た無数な人が言つている。手かせ足かせをしてトラックのところまで引きずつて行つて、顔面血だらけになつてそうして前歯を打折られている。これは明らかである。これは刑事問題として出ましようが、一体こういう権限警視総監は与えておるのかどうか、それをお尋ねしておきます。  なおついでにお尋ねする。渋谷の駅頭におきまして、やはり二十一日、東京大学の教養学部の学生が、自分らの同僚が六名ばかり拘禁せられておりますのを、釈放してくれといつたとき、これは警察官がいきなり襲いかかりまして、西川正二という学生の後頭部を、逃げるやつを頭から警棒でなぐつて、そうしてこういう重大な傷を負わせている。これは一体刑事訟訴法の第何条、警察官執行法第何条に基いてやつたのか、これを説明願いたい。診断書がちやんとここにあります。
  72. 田中榮一

    田中参考人 私は犯罪容疑者逮捕は、私が命ずるまでもなく、これは当然法の命ずるところに従つて警察官逮捕せなければならぬのであります。また警察官は、当然この容疑者に対して、もし容疑者が反抗した場合においては、警察官といえども、これを防ぐだけの権利は持つておると思つております。従つて、かかる容疑者に対しまして暴行をするというようなことは、絶対に私はそういうことは言つておりません。ただ御承知のように、犯罪容疑者逮捕の場合、あるいは大衆運動を取締る場合におきましては、双方いろいろ興奮しております。従つて逮捕あるいはそうした騒擾取締り、しずめの際に、双方が興奮しておりますので、お互いにたたき合いをするとか、あるいは乱闘になるということは、しばしばあつた事件であります。これは必ずしも警察官が故意でやつたとか、悪意でやつたということはなかろうと思います。多数のものが混乱の中に、そういうことは往々あるのであります。私はそういうふうに考えております。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、混乱の中ならば、何でも手に持つておらない学生を警棒でもつてなぐつて負傷させても、それはさしつかえないということが警察官執行法のどこに書いてある。これは後頭部ですぞ。それはピストルかあるいは刀を持つてつて来たならば、正当防衛ということもあり得ましよう。後頭部になぐりつけておるのですぞ。警察官執行法のどこにうしろを向いておるものをたたきつけろということが書いてあるか。ここにその診断書がちやんとある。後頭部をなぐつている。後頭部という点で、あなたは答弁しなさい。ちやんと法律によつて警察権を行使することは、あたりまえのことでしようが、警察官執行法の第何条に、このうしろ向きになつているものの、後頭部をたたいてよろしいということが書いてあるか。
  74. 田中榮一

    田中参考人 混乱の中にあつたならば、けがさせていいというようなことを言つた覚えはないのでありまして、混乱の中にあつたならば、両者興奮しておるので、お互いに知らざる間において、そういうことが往々あり得るということを申したのであります。その点につきましては、私はまだ事実を存じておりません。署長から学生が負傷したという報告を受けたことはないのであります。
  75. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 猪俣君、最後の質問に願います。
  76. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは、私はずつと前に警視総監に質問した、人名まであげて、その負傷がどの程度であるかを質問したときに、そんなことはない、報告に接しておらぬといつて、今日聞いてみてもまだ報告に接しておらぬと言う。一体こういうやり方がいいことかどうか。私はあなたの態度に対してはなはだ不満なのだ。警察官がやつたことはみな正しいことで、そうして学生がやつたことがみな不法なことであるという印象を与えるごとき、自由党の諸君の拍手喝采裏に堂々とあなたはやつている。その陰にこういうことが起つている。人権蹂躙、職権濫用が起つている。私は十日以前に質問しているのに、なぜ調査してないか。やつてもいいということになるのか。ちやんと私は委員会において質問している。
  77. 田中榮一

    田中参考人 せんだつて猪俣委員からそういうお申出がありましたので、さつそく渋谷警察署長に命じました。渋谷警察署長が、該当の名前を調べまして、本人に対し数回にわたつて、その点について一応お聞きしたい点があるから、本署に御出頭願いたいということを言いましたけれども、その人は、とうとういまだ本署に出頭がないのであります。われわれといたしましては、まだ取調べの方法ができないのであります。
  78. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それは、あなたも深く考えてみなさい。私はそれを聞いている。どうして警察に出て来ないか、警察に行つたら、そのまま豚箱に入れられてしまうかも上れない。全然身体の自由について保全感がない。警察に行くと何をやられるかわからないと、非常に恐怖心を持つている。それをよく反省しないといけない。終戰前の特高警察の方向を、もはや現わしている。それをよく反省していただきたい。  私はこれで終る。
  79. 佐瀬昌三

  80. 平川篤雄

    平川委員 私は先ほど警視総監お話を聞いておりまして、結論的にははなはだごもつともなお話だと思つたのであります。大体いろいろ複雑している問題である。一体今度の東大事件の原因がどこにあるかということになつたら、これは総長と警察当局の申しておりますことが齟齬しておりますように、やはり問題はあろうと思う。あろうと思いますが、ただいま猪俣さんの質問の中に出ておつた警察手帳の問題であります。警察手帳をとつたことが非常な暴力行為であるから、中のものは問題にしないでもいいというやじでございますが、そういうやじというものは、私は話にならないと思う。やはりだれが見ましても、この警察手帳内容というものは、思想警察的なものであるということは、私は事実だと思う。これはいわゆる次官通達の線を逸脱したものであるかないかということについて、ひとつはつきりあなたの御見解を聞かせていただきたい。
  81. 田中榮一

    田中参考人 あるいは私が言つた言葉ではありませんで、他の人が言つたお言葉でありますか、私がさつき申し上げましたのは、警察手帳が多数の暴力で不法に奪取されております。しかもこの警察手帳に書いてある内容というのは、いずれもいろいろ機密な事項になつております。従つて警察手帳というものは、直属の上司以外には見せぬことになつております。直属の上司に、あるいは手帳を見せろと言われたときに、初めてその巡査がその手帳を見せるということになつている。従つて、私がいきなりその巡査の手帳を黙つて見ることもいたしておりません。警察手帳を見るときには、当然その巡査の承諾を得て見ております。かようなきわめて機密のものでございます。それを、しかも不法に暴力をもつて奪取して、それを法学部の教授が発表しても支障がないと言つたからといつて、発表することは、まことに不穏当であります。従つてその不穏当な内容については、私はお答えすることはできません。お答えする必要はないと思う、かように答えたのであります。もう一つは、その内容につきましては、先ほど猪俣議員から、特高警察をやつているというお話でありますが、私どもでは、特高警察は今ありません。現在の警察制度におきましては、特高警察のようなものは、全然ありません。
  82. 平川篤雄

    平川委員 私の質問をそらしてしまつてお答えになつておるのですが、それ以上のことは言われないでしよう。そこでお聞きしたいのでありますが、ポポロ劇団がやりました今回の劇全体を、政治集会と認定せられ、政治的の意図を持つておるというふうに、しきりに声を大にして言われるのでありますが、その点について、私は、二、三質問をしてみたいのであります。  まず第一番に「沖繩より帰りて」ということが、総長とあなた及び本富士署長の陳述が違うのです。総長が言われるのには、観客席の中から立ち上つて演説を始めた、そこでたくさんな者がそれを制止しようとしておつたということです。ところがその点を総監も、それから署長も、どちらもはつきりはさせられていないのでありますが、総監のお言葉の中では、臨席しておつた警官は、騒音があつたので中身は聞き取れなかつたという。これは重大なことで、もし、舞台の上に上つて沖繩より帰りて」という演題を掲げてやつたといえば、これは確かに主催者の中に政治的な意図があつたと思われるだろう。ところが、中におつた労働者風の男が立ち上つて、観客はそれを阻止したという事実があつたとすれば、これは政治集会と断定することはできないだろうと思う。そこを明らかにしてもらいたい。  もう一つは、ただいま資金カンパをしようとしておつた事実があるらしいということを言われたのでありますが、私が聞いておるのでは、この会は前に一ぺんやつておる、——これは夜の部の事件であります。ところが前の部では資金カンパをやつたという事実は聞いていない。だから、もし資金カンパをやるようなことを初めから計画しておるならば、なぜ昼の部からやらないのか。あなたはどういう確信をもつてそれを言つておられるのか、それをひとつはつきりしておきたいと思います。
  83. 田中榮一

    田中参考人 私がさつき政治集会であると申し上げたのは、「沖繩より帰りて」といつた話の内容がもつとよく聞き取れたならば、私はもつと問題になつたのではないかと思います。ところが、幸か不幸か、いろいろがたがたして——もつと強い意味政治集会であつたかもしれませんが、しかしながら、その内容がまだ十分に聞き取れなかつたために、私は政治的な意図のある集会ではないかと考えておるのでありまして、私が政治集会といつたとすれば、これは政治的意図のある集会ではないかということです。  それからいま一つは、これもちようどカンパを始めるようなかつこうをしたときに突然その問題が起つたために、それがはつきりカンパにならなかつた。もしあのまま静かにしておつたならば、資金カンパが始まつたかもしれぬけれども、始まつた瞬間に騒動が起つてしまつたので、あとのことはわからない、こういうように私は聞いております。
  84. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 時間のことを申し上げますが、慣例に従つて質問の時間は十分間であります。答弁の時間は含みません。さよう御了承願います。なお全体として時間がないので、質疑も答弁もなるべく簡潔に願います。
  85. 平川篤雄

    平川委員 私が聞きました点で、形式的な点をみなそうしておいでになる。私は、これは時間がないので、あらためて聞きませんが、はつきりと私の申し上げたような形での確証をつかんでおられないものと考えます。  次に、政治的な意図を持つてつたということは、一体どういうことなんでしようか。もし松川事件を扱う劇を主催するということになつたときに、あなたは脚本を検閲して禁止する権限がございますか。しきりに政治的な意図があるとかどうとか言われて、そこを声を大にせられるのでありますが、政治的な意図を持つたものを許さないというのは、それは学校内の秩序として教育的に考えらるべきことであつて、そのこと自体はちつとも悪いことではない。私はその点ははつきりさせておいていただかなければならぬことだと思う。
  86. 田中榮一

    田中参考人 文部当局はどうかしりませんけれども、少くも私どもの考えでは、大体学問研究であるとか、学生自体の自治の会合であるとか、あるいは父兄会であるとか、学校運営の会合であるとか、あるいは教授会、教授研究会であるとか、そうした少くとも直接、間接に学校関係のある、政治的意図とは全然関係のない集会が、学校長におまかせされているわけなんです。従つて学校内においてのいわゆる政治集会というものは、私どもとしては学校長措置する建前としてはおまかせしてない、また学校内においては政治集会が行わるべきでない建前であるのではないかと考えております。
  87. 平川篤雄

    平川委員 そこで一番重大なところになつて来るのであつて、さつきお話のあつたように、この松川事件は、まつたく政府がでつち上げたようなことになつておる、これについてはいろいろ批判があるだろうということを言われました。私も、実はそれは同感です。そういう批判も、大学というようなところで行われるこうした集会だからこそ、認めてあるのであつて、これが一般の大衆の中で、はなはだ害悪を及ぼすようなことがやられたら、これは考えなければならぬでしよう。しかし、その分でさえも、ただいまでは禁止されていないのであるから、あなたにそういう点を特に強く取上げられて理由にされるかのような意図が見えるのは、私は非常に不穏当だと思うのであります。  その問題はそれでおきまして、次に、先ほど、大学というものがあらゆる治安が混乱した原因になつておると、田嶋委員から言われたのでありますが、私は寡聞にして、さようなことがたくさんあるとは知らないのであります。しきりに治安の盲点ということを言われますが、実際に大学構内というものが治安の盲点であるという具体的な数字的な事実がどこにあるかということを、もう少し明らかにしてみなければいかぬと思う。私は一昨日署長に聞いたのでありますが、すりとか窃盗とかノビとかいうものが行われて、それが三百何件、二割七分何厘かあるというが、これは大学構内という一つの地域の中に行われる犯罪である。二班にわけて警邏が始終あるというのに、これが犯罪をなくすることができないというのは、明らかに警察署長の怠慢であつて学校はパトロールなんかというものを禁止しておるわけでも何でもない。さようなものを取上げて、これが大学の秩序を乱す、あるいは盲点であるというようなことを言うのだつたら、あのとき申し上げましたように、東京都内にある売笑婦がいる十七箇所の赤線区域、これこそほんとうの盲点です。学生自体の良識に訴え、あるいは教育の効果に訴えて、そうしてなるべく警察権なしに秩序を守つて行こうということであるならば、これは当然教師と学生の間にある秩序に関係したものである。私はそういう点で、はたしてどれだけ治安の盲点だといえるような事実があるかどうか。ここが焦点でありますから、ここを明らかにしなければいけない。  その次に、ビラのこともしきりに言われるのでありますが、大学構内は、御承知でありましようが、山があつたり谷があつたり、そうして教室もそれぞれわかれており、階段も普通の大きなビルディングのようなわけにはなつていないのであります。そういうところで、ビラまきが非常にたくさん行われておると言うが、あなた方がパトロールをふやして、それを十分の一なり、五分の一にする御確信がおありになるかどうか。実際ビラまきというものが、きのうから何度も言われており、あなたもそういう点をしきりに強調しておいでになるようでありますが、私は、それは学生以外の組織の使命を帯びた者がやつて来ておるのであつて、これは総長にしつかり処分なさいということを一昨々日も申し上げた。そのように、これは外から出て来る秩序の撹乱者であります。あなたは大学の中で、どのくらいパトロールをふやせばそういうものを絶滅することができる御確信がおありになるか。私は、むしろそれよりも、かように次官通達内容をいじくつたりなんかして、默つて勉強しておるいわゆる自由主義的な多くの学生警察の敵にまわすということの方が、よほど秩序を混乱させるもとだ、こう思うから、これをお聞きしておきたいのであります。
  88. 田中榮一

    田中参考人 一昨々日署長が申し上げましたのは、学校構内において犯罪がどの程度に行われているということを申し上げたのでありまして、われわれが治安の盲点があるというのは、一般犯罪、すり、どろぼうが行われている、それが防げないから治安の盲点になるという意味ではないのであります。むしろそれよりも、国家の前途に大いに憂うべきいろいろなフラク活動であるとか、または不穏なビラがまかれるとか、そういつた不穏な計画が学校構内に行われるのが取締りできないことが治安の盲点になる、かように署長も申し上げたと思いますし、私もさように思つております。  それから、将来パトロールをふやしてビラを防止できるかということでありますが、パトロールは、ビラとかなんとかいうことよりも、一般犯罪の方でありまして、現在学校構内のパトロール員をふやすことは、現在の定員の配置から見まして、全然できぬと考えております。
  89. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 平川君、時間がありませんから最後の質問を願います。
  90. 平川篤雄

    平川委員 最初に総監の言われた次官通達についてのお考えには、私は全般的には結論的に賛成だと申したのは、そこであります。私の申し上げたいのは、この事件そのものは、率直に考えてみて、警察側にも学校側にも手落ちがあつたと思います。どうしても教育の効果というものにある程度たよつての一種の紳士協約でありますから、その方法をもつてつて行くことが、学園の秩序を守る上に一番いいことである。角をためんとして牛を殺すようなことがあつてはならないと思つて、発言しておるわけであります。どうか慎重な態度でお臨みくださるように私は希望する次第であります。
  91. 田中榮一

    田中参考人 先ほど一言申し落しましたので……。私は何回も申し上げる通り、現在東大であろうが、どこの大学でありましようが、学生の大部分というものは、それぞれアルバイトまでして、苦労して学問研究をやつている人ばかりでありまして、ほとんど全部善良な学生だと考えております。ただ、中に、ごくほんの一部分、学生の身分を忘れた、少し軌道をはずれた行動、政治活動をする者がありますので、その点について注意をした方がいい、かような意味でありますから誤解のないようにお願いいたします。
  92. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  93. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記を始めて。加藤充君。
  94. 加藤充

    ○加藤(充)委員 時間が制限されておりますから、簡單に要点だけ質疑したいと思います。  先ほど警視総監は矛盾したことを言つている。それは、思想調査をやつている、いろいろやつている、だから思想調査をやるのはあたりまえだと言うが、思想調査をやつているという事実は、やつていることのあたりまえだということを決して正当づけていないという点が一点。それから思想調査をやつておらないと言つたこともあるようでありますが、はからずも明らかにされた警察手帳の記載の内容から見て、思想調査をやつていないということはうそであつて、明らかに思想調査をやつているのであります。今度の事件手帳がとられた、あるいは手帳内容が発表されたことではからずも明らかにされた事実は、警察官が不法を働いているということであります。第一は、警察当局学内学生自治会、職員組合さらにキリスト教の平和の会、仏教青年会、セツルメント、音楽合唱団、バスの値上げ反対協議会などに至るまで、余すところなく長期間にわたつて調査しているということ、第二には、全面講和を唱えたり、あるいは戰争反対を唱えて、強く日本を平和で守ろうとする教授たちの身辺をうるさく内偵し、思想調査をやつてつたという事実であります。山之内一郎教授、仁井田陞教授、飯塚浩二教授というような人たちを、何の必要があつて思想調査やつたのか、思想調査をたくさんやつているというが、そのやつた目的を明らかにしてもらいたいと思う。
  95. 田中榮一

    田中参考人 警察手帳内容のことについては、先ほど申し述べましたごとくに、発表さるべからざるものが発表された、機密事項をかつてに発表されたものでありますから、その内容について一々お答えする責任は持つていないと思います。
  96. 加藤充

    ○加藤(充)委員 非常に危険だと思う。今まではそういうことは当然だからやらしておつたんだ、思想調査というものはやつてもかまわない、やつているんだと言つて、たまたま思想調査というものがここに明らかになつて来れば、その内容は私は言いたくない、こういうようなばかなことでは、責任の地位にあるあなたの答弁とは思われないがどうなんです。——それじや言葉がないのは問答に詰まつて弁解の言葉がないと承知して次の質問をするが、あなたはパトロールを大学構内に二地域にAとかBとかにわけたというが、ここにあなたに聞かなければならないことがある。それは茅根という巡査の十二月二日の手帳内容である。「都学連大会AM一〇・〇〇中委より約五名、里村、柴が尾行、つづいて二名赤門より徒歩、三丁目公衆電話で約十分話し徒歩お茶の水、省線三タカ下車、二・〇〇より東大はり込み、四・三〇伝外から帰つてくる。五・三〇安仁二食にて食事してからお茶の水より帰る」というのですが、三鷹の駅の方まで尾行したりするようなこと、あるいは里村、柴という両巡査が尾行したというのであるが、これは二つにわかれた東大学内のいわゆるパトロールに属するのかどうか。
  97. 田中榮一

    田中参考人 里村、柴両巡査は、パトロール巡査ではありません。本富士署警備係警察官であります。
  98. 加藤充

    ○加藤(充)委員 そうすると、パトロールのほかに四名の巡査が始終長期間にわたつてスパイを働いておつたということになる。先ほどのあなたの答弁では、二月二十日のポポロ劇団の上演に入場した四名の巡査は楽しみに入つた、ところがどうも四名も束になつて通りがかりの劇団や芝居小屋に入るというのは、職務の形態は明らかである。そんなことが正当化されてたまるものかという攻撃でも来ては困ると思つて、そこは職掌柄入つたというのであるが、四名もの警官が、映画館だから入つた、劇団の上演だから入つたというのではなくして、手帳内容と比べてみれば、明らかにこれはスパイ警察をやつていた、特高警察をやつていたということがわかると思います。あなたがどんなことを言つてつても、尾行、張込み、内偵、密行、身元調査、思想関係調査、こういうような手口は、明らかに特高警察ではないか。そういうやり方は明らかに禁止されておる。巡査が脱法、違法の不届きな行為をやらされておつたことを明らかにしていると思うのであるが、その点はどうです。
  99. 田中榮一

    田中参考人 先ほどお答えしましたごとくに、現在の日本においては、ある一定の思想を持つことは犯罪であるからいかんとか、甲の思想に国民を集中せねばならないというような法規もなければ、またそういつた思想そのものを取締る必要もないわけであります。憲法によつていかなる思想でもみんな許されておる。従つて警察が思想を中心にして取締りをする必要は毛頭ないわけであります。尾行とか張込みとかがあつたからといつて、今の警察が特高警察だということは、これは非常に論理が飛躍しておるのではないか現在でもいろいろの場合において警察は尾行、張込みをやつております。必要があれば尾行、張込み、密行、何でもやつております。
  100. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたは部分的に言われる。気負い立つて答弁するから、それではもう一回聞くが、さつきの問題だ。山之内一郎、仁井田陞、渡辺一夫、飯塚浩二といつたような教授の思想調査をなぜやつた
  101. 田中榮一

    田中参考人 ひとつさつきの答えをもつて答えにしていただきたいと思います。
  102. 加藤充

    ○加藤(充)委員 都合の悪いことは答えない、答えるすべを知らないのだと思うから押問答はいたしません。あなたは先ほど次官通達に誤解を受けやすい箇所があると言われたが、誤解を受けやすい箇所というのはどういうところであるか。
  103. 田中榮一

    田中参考人 誤解を受けやすいと申し上げましたのは、学校構内集会、示威運動、示威行進の取締り学校長措置にまかせるのを建前とする、また学校長要請ある場合においてのみ警察がこれに協力する、こういう文面に今なつておる。そこで学校当局の御主張としては、この条項からしていかなる警察官——パトロールとかそういうものは別として、警備上の必要によつて学校に入る警察官も、一々これによつて要請がなければ入れないのだ、こういうように誤解をされているので、私はこの点が文面上誤解を招きやすいのではないか、だからこれを明らかにした方がいいのではないかと言つたわけであります。
  104. 加藤充

    ○加藤(充)委員 誤解を受けやすいと言われたから、文面上明確を欠く文字でも使つてつたのかと思つたら、文面上はまことに明確である。ただそれをその通りやると警察官としてのあなたの方では都合が悪いということが、誤解を受けやすい箇所があるということだとはつきり了解をされました。それでお尋ねするのですが、そうするとあなたの言うことは、当時の次官通達内容は明確にされておつて解釈上わかれる余地のないものであるが、警察取締りの上から見て都合が悪くなつたから、それがじやまだからということになつて、それでそれをそのままにしておいてもあなたの都合のいいようにやれれば、次官通達はそのままにしてよろしいというような論理を正直に聞きますと、結局あなたの方は次官通達そのものの文章や何かをほつぽりつぱなしにしておいて、あなたの都合のよい、一方的な警察の処置に大学当局は屈服しろというようなことにしたいというのが、あなたの次官通達をどうするかという措置についての見解だと了解するが、それでいいですか。
  105. 田中榮一

    田中参考人 お答えしますが、都合が悪いから直すとか、そういう問題ではないのであります。将来両者の間に再びこのような問題が起ると、こうやつて皆さんの方にも非常に御迷惑をかけることになるのですから、なるべくそういうようなことのないように、この条文をはつきりした方が、双方のためにいいのじやないか、かように考えているのです。
  106. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたの考え方はあなたの考えですが、それでは次官通達というものが死文に帰してしまうと思う。それでそういうふうなあなたの考えはよくわかりましたが、結局そうすると、二月二十日に二十五番教室で行われたポポロ劇団に、いわゆる四人ものパトロール以外の巡査が入つた。そしてその連中がやつていることは、明らかに従来の特高思想警察、こういうようなことをやり、そして今答弁はないけれども、数名のいわゆる進歩的あるいは平和的な教授というものの思想調査をやつている。こういうのが結局事件の発端でありまして、明瞭でなかつたのは、次官通達ではなくて、あなたがそういうことに便乗して、そうして結局大学の自治権を侵して、警察官次官通達に反して入つたということが、問題の発端だと私は理解せざるを得ない。     〔委員長退席、押谷委員長代理着席〕 大体において、あなたはいろいろなことを言いますが、大学の自治、こういうようなものは、日本においても世界においても、歴史的な沿革と背景を持つているものなのであります。それは教育の重要な本質であつて、單に治安とかなんとかいう警察措置の対象だけの問題ではないのです。それをしいて警察の範囲にとどめよう、あるいはそこで強行的に優越的な地位をとろうと警察がやることが、非常に問題だと思うのです。それでしかもあなた方は袋たたきになつたと言うが、悪い者が入つて袋たたきになるというのは、あたりまえな話であります。しかもそれに籍口して、次官通達があいまいだつたからと言うが、聞けばまことに文面は明確である。それを無にしてしまつて、さらに最近の新聞論調や言説を聞きますと、自由党あたりでは大学の学長を任免制にしてしまわなければいけないというようなやり方をして行くという、まことにこれは盗人たけだけしいにもほどがあるとわれわれは考える。たとえてみれば、スパイが入り込んで、見つかつて手帳が証拠にとられた、こういうようなことになつた。それはしかたがない。身から出たさびである。それを取返すのに、翌朝武装警官を差向け、武力で押しかけるというのは、ちようど昔の仁義の言葉で言うならば、古めかしい言葉で言うならば、荒神山の血煙の博徒かならず者のむし返しを、暴力にかけて、ピストルと鉄かぶとで押しかけたというようなものでしかない。大学事件の本質というものはそうだと思うのであります。その点はどうですか。
  107. 田中榮一

    田中参考人 警察官警備上必要な場合において学校構内に入ることは、私は次官通達を破つたこととも何とも考えておりません。またポポロ劇団にちやんと三十円の金を払つてお客さんとして入つたのであります。これは私は何にも悪いことをしたのではないと思う。何も悪いことをしない者をぶんなぐつて、顔につばをひつかけるなんて、これはどつちが悪いか、だれに聞いたつて学生側に責任がある、私はこう考えます。
  108. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 加藤君に申し上げますが、お約束の時間が迫つておりますので、お急ぎを願います。
  109. 加藤充

    ○加藤(充)委員 田中総監の答弁は、いかにも袋だたきにあい、包囲されて、もう抵抗の余地がなくなつた状態に乱暴を働かれたと、再三今まで言つて来たが、きようはピストルをぶら下げている警察官警察手帳を持つている警察官の面子上、面と向つてたんを吐きかけられるというようなことで黙つておられるかというように、警察官の根性の問題、だからああいう事件が起きた、だからそれを取返しに行くのはあたりまえの話だ、というふうに持つて来たと思う。ところがあなたは今の答弁で矛盾している。次官通達の文面はまことに明確である。あなたは誤解を受けるような箇所があるから、これを訂正したいと言うのである。ところがあなたの答弁は、その誤解を受けやすい箇所というのは、それなりに受取つても、それは客観的な事実であつて解釈が両方に立つているのである。しかもかりにあなたの立場で、たとえば今まで本富士署がやつていたように、大学学園の自治、学問の自由という沿革、背景にのつとつた取扱いをしておれば、ああいう不祥事件は起さなくとも済んだと思う。あなたは次官通達が誤解を招きやすいということを言いながら、しかも大学の自由、学園の自由という中には、沿革と背景があることを無視して、一方的に権力で押し入つたということ、これ自体が問題である。すなわち警察自体が問題を起してしまつたのだということを、明らかにあなたの答弁が物語つていると思う。こういうやり方は、大学の自由という問題は、私はお説教をしたり、なまいきなことを言うつもりはないが……。
  110. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 加藤君、約束の時間が参りました。
  111. 加藤充

    ○加藤(充)委員 これは歴史的な文化史上の意義を持つたものである。これは決して大学だけの問題ではないのである。これは古い大学の自由をひもどけば、あの明治の二十五年かに、天皇の神聖をおろそかにしたというようなことで、追放された教授大学におつた。また滝川教授昭和八年に大学から追放された……。
  112. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 加藤君に申し上げます。質問の要旨を言つてください。時間がありません。
  113. 加藤充

    ○加藤(充)委員 問題は、これは決して大学の自由、あるいは学生だけの問題ではたく、教授だけの問題ではなく、研究学問だけの問題ではなくして、これは全日本の民主主義と平和を守る人々の共通の問題である。現に朝日なんかの新聞記事を見ても、国が大学を創設してから八十年、学長の任免に文部大臣が干渉した例は、京大の滝川事件での鳩山、東大長与又郎総長当時の荒木両文相だけで、いずれも大学の自由を破ろうとして破りきれなかつた。これからの第三次世界大戰のますます苛烈な、情ない肉弾にかり立てられる戦争をやるとき、荒木文相すらもやりきれなかつた、あのファッシヨのやり方、しかもそれに失敗をしながら……。
  114. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 加藤君、君の宣伝演説をやめなさい。質問の要旨を言つてください。
  115. 加藤充

    ○加藤(充)委員 大学の自由を打破つて、日本を全部戦争にかり立てる思想の現われだとわれわれは理解するが、あなたはそういうふうな歴史的意味というものをこの事件の中に見てとつて、先ほど来の答弁をやつているのかどうか、その点を最後にあなたの責任として聞いておきたい。
  116. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 加藤君、時間を四分経過しておりますから、やめていただきます。
  117. 田中榮一

    田中参考人 いろいろ仰せになりましたが、結論として申し上げますと、加藤委員と私の見解とはまつたく相違しておると思つております。
  118. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 質問の通告順によりまして、石田一松君。
  119. 石田一松

    石田(一)委員 私はこの際今調査の対象になつている今回の東大事件の範囲をあまり越えないで、事実問題としてひとつ聞いてみたい、こう思うのであります。そこでこの問題になつたいわゆる直接の原因といいますか、四名の本富士署の警官が私服東大ポポロ劇をやつている会場に三十円の入場料を払つてつた。この入つたことが職務上入つたのであるか、それとも單に娯楽を求めるために入つたのか。それともただいま総監の述べられたように娯楽ばかりで入つたとは私も思わぬ、がしかしだれでも入れるように入場券を売つていたので入つたのだ、こういう御答弁だつたと思うのですが、私はその御答弁の中に、先般のこの委員会で本富士署の署長が娯楽の目的で入つたと言つたのは間違いであつて、よく調べてみたら、入つた警官自身もそうでないと言つていたから、あれは間違いであつたから、総監を通じて訂正してもらいたい、こういうことです。そこでそれがそのままに委員会でもとられたのか、訂正認められたのか、それを議題として今その問題から発展して質疑応答が繰返されているのですが、私はこの際この委員会で、他の参考人が述べた参考意見というものが、直属の長官か何か知りませんが、かわつた立場の人が出て、こういうことを言つて来られたから、あれは間違いであつたから訂正しますといつたことで、それが議論の根拠になつて、ここで論じられるということについては、いささか割切れないと思うのですが、この点は委員長にも聞きたいのです。しかも四人の警官がはたしてどういう目的で入つたか、このことが最も大きな問題で、これさえ解決すれば、この問題はそれほど大きな問題じやないと思うのですが、もう一ぺんはつきり本富士署の署長がこう言つたのは間違いであつたとかなんとかいうのではなくして、警視総監としてのあなたは、直接四人の警官にお会いになつたそうですから、その事情を聞いた上で、あなたが知つていらつしやるところをひとつお聞きしたいと思うのです。
  120. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。この四人でありますか三人でありますか、私は詳しく確かめてないのでありますが、その日の午後ですか、大学厚生部の方へ出頭いたしまして、本日開催されるポポロ劇というものは一体どういうものでありますかという内容を聞いたところが、いやこれは松川事件をまねした——松川事件とは言いませんけれども、松川事件をまねしたある事件を脚色したものだ。そこでその行つた警察官はぴんと来たわけですね。これは普通の戯曲とかそういうものでなくして、やはりこうした松川事件というような思想的背景を持つた事件でありますから、当然これは思想的背景を持つた劇であるということは、もう巡査としてもピンと来た。そこでその後どうだろうかということをいろいろ心配しておつたのですが、たまたまその前を通つたところが、入場券が売られてだれでも入れるというので、それじやひとつ見てみよう。ただ学校では純然たる劇であるという話であるから、あるいは劇であるかもしれぬ、あるいは思想的背景を持つた劇であるかもしれぬ、見てみようというような気持で入つたと思います。そこで私は率直に申しますが、これは警備係の巡査ですから、やはりそうしたピンと来た事件については、職務執行上からも入つてみたいという気持は当然あると思う。だからこれは劇も見たかろう、同時に自分の職責上多少疑つているから入つて見てやろう、こういう気持があつたろうと思う。その点が職務上入つたと言えば当然職務上入つたと言えると思います。
  121. 石田一松

    石田(一)委員 私もただいまの答弁で、多分そんなものだろうと思うのですが、ただ私がちよつと不審に思いましたのは、この四人の警官が、一応厚生部で聞いて、松川事件を劇化したものだということを知り、ピンと来たということは、ああこれは政治問題だなと、こう来たのでしよう。それで入つた。その入つたこと自体は、先ほどお述べになりました文部次官通達のいうところの、この四人の警官が入ろうとするときに、学校当局に対して、ただ單なる文化的な劇だということであるけれども、聞けば松川事件が劇化されておるという話なので、一応警察側としても参考に見ておきたいから、ぜひ入ることを一応了承してくれとお述べになつて——許可を得るというのではありませんが、そうした話合いの上でこの四人の方がお入りになる方が正しいので、職務上であるのに、私服でそつと入つたということが、どうも私には割切れないのですが、この際そういう場合に学校当局と了解ずくで入るというようなことは、ただいまの文部次官通達からは想像できないものでございましようか。
  122. 田中榮一

    田中参考人 今石田議員のお述べになつたように、警察官厚生部行つて、じやあ私も入らしていただきますと言つても、学生が主催しておるものですから、厚生部がよろしいと言つたから入つてよいということは私は言えぬと思います。そこでこれははつきりした話ではないのですけれども、巡査から聞いた話によりますと、じや先に行つてください、われわれもあとから参りますと、厚生部の人がこう言つたというのです。従来も映画などはしよつちゆう新しい映画や芸術的な映画が学校でも催されておるのです。そういう際に割合に安いものですから、警察官なんかも、教養の意味もありましようし、新しい映画はやはり見たいという気持でもつて、ときには入場料を払つてつておるわけです。従つてそういうような例がありましたから、四人の警察官も従来と同じような軽い意味で私は入つたろうと思います。ですからその際に入らしていただきますと、厚生部の方に断つて厚生部がよろしいと言えば、一応形式的には学校の了解を得たと言えますけれども、従来の慣例から言いまして、そういうことはないようでございます。
  123. 石田一松

    石田(一)委員 ただ私はこの四人の警官が、一般に切符を三十円で売つていたから、この入場券を買つてつたところに、何かこの四人の警官の作為がある、こう思うのです。むしろこれは切符を買わないで、四人の警官が警官であるということの身分を明らかにして、厚生部なりあるいは学校当局なりに話して、入つてもいいか悪いかということを話して、いろいろな議論も出るでしようけれども——ただただいまの総監の答弁では芸術映画等については、今まででも警察官として割合にいい映画で安く見られるので、教養の点からも入るようなことがあるとおつしやるのですが、しかしこの問題は松川事件だからピンと来たという言葉があるからには、これは教養になるからという意味で入つたのではないでしよう。そうでなければ、この三十円の切符を買つたところに、何か祕密に一般人にまぎれ込んで入ろうというところの気持があつたのではないか。私はそこに誤解が生れる大きな原因があると思うのです。     〔押谷委員長代理退席、委員長着席〕 さてそこで私は直接警官に会つて、そのときの心情を聞かなければわかりません。総監の問題じやないからこの質問は切上げます。  ただここでちよつとお聞きしたいのでございますが、先ほど総監は、ポポロ劇なるものは純然たる演劇研究とか、または演劇活動ということには考えられぬ、少くともこれは政治集会である、こう言われたのです。しかもこれをもう一言総監は文化活動ではないとおつしやつたのですが、この際私はそういう方面にも関係を持つておりますので、一ぺん取締り当局の御意見も聞いておきたいと思いますが、純然たる演劇研究まだは演劇活動と、そうでない演劇の形を持つた、今総監がおつしやつた政治集会というものとの区別、しかもこうした松川事件とかなんとか、実際にあつた社会事象をシナリオあるいは脚本にして、これを演劇に組んだ場合、これが思想の背景を持つというようなことで、純然たる演劇でない、あるいは演劇活動としてはみなされないとおつしやるのか。この判然たる区別というものは、この際聞いておかないと大きな問題だと思うのです。この点についての総監の所見をひとつ……。
  124. 田中榮一

    田中参考人 先にちよつと一言申し述べたいと思いますが、警察官は今のポポロ劇に別に教養とか、そういう意味で入つたのではないと思います。これはやはり一応そういうものを聞いたときに、もう一ぺんに思想的な背景があるとピンと来たものですから、それでひとつつてみよう、こういうふうに私は見ておるのです。それから今の純然たる演劇とそうでないものとの区別というものは、これはなかなかむずかしいと思うのです。今ここで問題になつておりますのは、政治的意図のある集会ではないかと認めるのは、もちろん松川事件を取扱つた演劇そのものもあるいはそうではないかと思うのですが、むしろわれわれが言つておりますのは、その前にいろいろな演説をやつておるのです。それが政治的意図を持つた宣伝をした一つ集会ではないか、こういう意味なのであります。われわれは演劇そのものを言つておるのではない。しかしこれも考えようによつては、私は政治的意図のある演劇とみなされるおそれもある、こういう意味でございます。
  125. 石田一松

    石田(一)委員 そこで私がお聞きしたいのは、この東大教室あるいは講堂でそうした、今総監の言われるような政治的意図を含んだような、いわゆる純然たる演劇活動、演劇研究でないものをやつてはいけないのでありますか。聞くところによりますと、学校当局許可を得て、ちやんと手続をふんでやつているのですが、それをやつていけないのか、いいのか。やつていいものだから許されて学生がやつていたものだが、そのやつていいものに対しで、これはちよつとおかしいというので中に人つてみなければならぬということになると、何だかどうにも了解できないことも生れて来ると思うのですが、この点はどうでしようか、学内でやつていいのか悪いのか。
  126. 田中榮一

    田中参考人 ちよつとお尋ねしますが、今の御質問は、政治的意図のある演劇をやつてはいけないか、こういう御質問でありますか。
  127. 石田一松

    石田(一)委員 それをやつていけないか……。
  128. 田中榮一

    田中参考人 私は政治的意図のある演劇にしたところで、これは学校長許可を得たということになれば、これは警察としては一応学校長にまかしておりますから、一応学校長の責任においてやつておるのではないかと思います。ただこういう観点から、一般にそうしたものに公衆が入り得るということになりますと、これはむしろ政治集会といいますか、政治集会になるか、あるいは一般公共の場所における集会ということになりますから、当然公安委員会許可を受けねばならぬ、こういうことになつています。そういう意味において、これは当然警察官取締りをせねばならぬ、こういうことになります。
  129. 石田一松

    石田(一)委員 そういたしますと、今総監ももちろん御存じでございましようが、たとえば古い映画ではイタリアの映画で「無防備都市」、オープン・シティというものがございましたし、また「ヨーロッパの何処かで」というのもありましたし、また最近ちよつと日本の問題になつているのでは、何とかいうお医者さんが非常に正義感を持つてつている映画が出ております。これは宣伝になるかもしれませんが、これらの今日本の映画館、劇場で行われている映画演劇で、国民の思想に影響しない政治的な、要するに知識の進歩と発達とか、あるいはまたその行き過ぎを是正しようとかいう、そういう政治的あるいは国民の思想的に影響を与えない映画とか演劇とか、またわれわれのやつている演芸というものがあり得るかどうかということが大きな問題なんですが、あなたのお考えだと、今の一般の演劇、演芸、興行も政治的な意図を持つたものとしてこれが何か取締りの対象になるように聞えますが、これはいかがですか。
  130. 田中榮一

    田中参考人 私は「無防備都市」でありますか、お話のようなものを見たことが一回ございますが、やはりあれは映画の芸術的作品といいますか、文化的作品だと思います。それでそういうものはわれわれの方としては別に取締りの対象にならないのでありますから、今言われた映画にしましても、演劇にしましても、これは自由に一般公衆が見てもさしつかえないと考えております。今の御質問は、ポポロ劇が政治的意図があるから警察はけしからぬ、と思つているようにおとりになつているが、そうではないのでありまして、その前のいろいろの演説その他が政治的意図がある、こういうのでやつておるのでありますから、この点ひとつ誤解がないように……。
  131. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 時間が迫りましたから、簡単に願います。
  132. 石田一松

    石田(一)委員 簡単に言います。これは私の見解なんですが、警察手帳内容というものは署長でも、あるいは警視総監でも、直接にこれを調べることができぬ、本人の了解がなければ見られぬという秘密事項であるものを公表されたのは遺憾である、こうさつきおつしやられたのでありますが、なるほどそれほど重要なものであれば公表されたことは遺憾であると思うのです。しかし私の考えでは、あの内容が公表されていて、それでさえ現在この状態であるということを考えたときに、あの内容が発表されなかつたら、それこそこれは学生学校側はまつたく完全の敗北になつていた。要するにちよつとそれは遺憾ではございましようけれども、これが発表されていて、この程度であつたということを考えましたときに、私はこういう問題についてひとつ総監の御意見を聞いておきたいと思います。それは先ほど総監が福井とかいう学生が警官にその当日たんつばを吐いたとか、なぐつたとか、そういうことを聞いて、警視総監は憤懣やる方ない、こういうことをおつしやつたのです。私はこんなことをしたことが事実ならば不都合千万ですが、要するにこれらの警官あるいは警察署長というものの一番上に立つてこれを監督指揮なさる警視総監が、この委員会においてたんつば事件をおつしやるときに、憤懣やる方ないと言つて、痛憤の極を現わす最高限の表現をして、憤激してこれを弾圧しなければならぬというような表現を用いられることは、これはいささか軽卒ではないか、こう思うのです。ちよつと冷静を欠いていると思うのです。  それともう一つ、そのとき総監がおつしやつたのは、一人の警官は手帳を返してくれと強引に言つてわび証文にも署名しなかつた。しかも学生側があす返すからこれに一応あとの事情もあるから署名してくれと言つたら、そのとき署名した、そういうことが一つつた。そうすると三人のことはどうか知りませんが、少くとも一人だけは学生側との了承の上に、あす返すからとにかく一応わび証文を書いてくれ、そしてあす返すというので了承して帰つたが、約束の日のあすの十二時になつても返しに来ないから、多数の威力暴力をもつて警察手帳を強奪したものであるというので逮捕に向つたというのでありますから、これはいくらここで抗弁してみたところで、聞いてみたところで、先ほどの答弁以上には出ないと思いますが、もう一つ、そこへ警官が入つたことが原因したというのに、四人の警官は警視総監に呼ばれて、しかも今後を督励されて、それで大いに職務をやれといつて、さながら警視総官から金一封でももらいそうな、表彰をされるような形でありながら、その対象となつた学生は新聞なんかの報ずるところによると、足をしばられたり、手錠をはめられたり、前歯が折れたり、顔は血だらけになつたりして、トラツクで警察へぶち込まれて、お医者さんも呼んでもらえない人が、この手帳の問題で、強盗か何かのような刑法上の罪で、これを検察庁に送ろうとしていらつしやるような空気が見られるのですが、両者をこういうふうに扱うことについて、総監としては、これは不公平である、こういうふうにお考えになりませんか。
  133. 田中榮一

    田中参考人 いろいろ御意見がございましたが、この際誤解を解きたいと思うのです。警察手帳が一時までに返つて来なかつたから逮捕したということは全然ないのでございます。逮捕状は、その翌日早朝から検察庁の方へ行きまして逮捕令状をとつております。これはなぐつたという事実だけでもつて当然逮捕できるのです。それで警察手帳がかりに一時に返りましても、当然令状でもつて福井君と千田君は逮捕せねばならぬのです。これは警察手帳が返る、返らぬは別問題として、当然逮捕しなければならぬと思つております。  それから私も実は東大出で、せんだつて学生諸君四、五人と会つたときも、先輩と後輩とであまりおかしいじやないか、こう言つたところが、一人の学生が、総監は高等学校はどこですか。私は八高だ。ぼくも八高ですよ。こういうことなんです。われわれとしては、学生の気持というものは十分いろいろ考えております。われわれは無用に学生を刺激するとか、あるいは感情的にやるとか、そういうことは絶対にしたくない。また部下にもそれだけは十分言いまして、冷静にそのことを考えなければならぬ、かように考えております。
  134. 石田一松

    石田(一)委員 最後に私は……。
  135. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 時間がありませんから、これより文部大臣の御意見を伺います。大野文部大臣は五時二十分までしか時間が許されませんから、その範囲内において質疑応答を願いたいと思います。  天野文部大臣には、教育基本法第八条に、政治的活動の制限が、学校においてはされておりますが、この学校の中に、教職員のほかに学生生徒を含むかどうかが第一点。第二点には、大学の自治の限界と治安との関係について御意見をお伺いしたい、かように考えております。なお簡單に御説明願つた上で、各委員からこれに対する質疑があるはずでありますから、これに対する御答弁を煩わしたいと思います。
  136. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 教育基本法は、精神的にいえば、やはり学生をも含むものと解釈しております。  それから大学の自治ということは、もつぱら学問研究教授ということにありますけれども、その学問及び研究の自由ということが成り立つためには、その基盤としてやはり学校教育の自主性ということがなければなりませんから、そういう意味大学の自治ということは確保されなければならないというふうに考えております。
  137. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 委員より質疑の通告がありますから、これを順次許します。眞鍋勝君。
  138. 眞鍋勝

    眞鍋委員 大臣は時間がないらしいし、私も実は病後で遠慮しておつたのでありますが、私の教育に対する質疑は、昨年原稿をつくつて、深く筺底にある。さきに大臣の手元まで渡した東洋精神文化の再建論をお読みくださつたら、大体わかるだろうと思うのですが、この前と二日にわたつて参考人を呼び、あるいは他の委員から意見の開陳がありまして、私は静かに聞いておつたが、私は大学は三たびやつた従つて学問の自由とか、あるいは学園の自治については、これらの人と同じく、尊重しなければならぬことはもとよりであります。私も大学出で、すなわち最初英文料を出、政治科に学び、法科を卒業し、東西両方の大学に籍を持つているという関係上、従つて、この問題に対して公平率直に申し上げますが、いずれ結論を出さなければならぬと思う。この東大の問題についても、大臣は必ずやお考えがあると思う。私はこの間総長のお活も聞き、学生の話も聞いて、静かに判断をしました。およそ日本に生を受けた者としては、大学が悪く行けば……という者はおよそ一人もあるまいと思う。私は自分の母校として、大学を出たその感想を言つてみるならば、知事と同じで、総長はまだまだ公選はだめだと思う。どうしても官選でなければならぬ。私の尊敬する大塚博士のごときも、決して公選にならなかつた。公選あるために、知事と同じことで、つまり知事もその通り、官選であつたならば知事にならない人が公選なるがゆえに知事となつて、そうして毒を流しておる。この前総長の話を聞いて、私は学園のために非常に嘆いた。かくのごとき人間が総長なるがゆえに、こんなことが起るのだ。東大を初めとして、京大でも、多くの膏血をしぼつた国民の犠牲によつて成り立つておる。国民の税金によつて成り立つておるところの東大、京大を初めとして、官立大学がかくのごとく思想的に堕落してしまうのは遺憾である。しこうして矢内原氏の話を聞いて、先刻申し上げた通りに感慨無量である。従つて文部大臣としては、大学をいかに経営して行くか、この総長をいかにして行くか。これは御参考に供したい。私は今日の教育を一言にして言えば、社会問題と称しながら、あるいは歴史も断片、地理も断片であつて学生に聞いてみたならば、徳川時代やら、鎌倉時代やら、奈良時代やら、わかりません。要するに地理も歴史も断片的であつて、ほんとうに系統立つた教育をしていないからだと考える。従つてこれらの地理、歴史に系統を立てて——私は英文科である。政治科も英語でやるし、法科も英法である。英語は十何年やつたが、一年か二年、いわゆる東洋の文化、子曰くでありますが、それをやつた経験からして、六年の間に日本が喪失したところのバツクボーンというものは、東洋精神と申しますか、日本の精神文化、これを再建しなければだめだと思う。この日本文化再建の上から、すでに衆議院は、東洋の精神文化の再建ということについて決議案が通りました。請願は参議院を通るし、衆議院も通つたが、いまだ実行しないから、ここに初めて決議案なるものがせんだつてつた。先刻廊下において学術局長に会つてどうかと言つたなれば、学術局長は私の罰するところではない。関するところは中等教育の局長であるから、決して自分には関係がないと言つたが、これではだめだ。学術局長はどうしてもこの東洋の精神文化の再建に心を用いなければならぬ、いわゆるバツクボーンのなくなつた日本をいかにするかということでありまして、すでにせんだつて決議案としてわが議会を通つた以上は、参議院でかれこれ言つても大臣たるものは考慮しなければならぬと思うのでありますが、この点に対する大臣のお考えを聞いてみたいと思うのが一点である。
  139. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 時間がありませんから、第二点の質問の趣旨を簡単にそこでお述べ願いたいと思います。一括して質問、答弁を願いたいと思います。
  140. 眞鍋勝

    眞鍋委員 どうぞひとつお願い申し上げます。
  141. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 東洋文化をおろそかにしてはいけないという御趣旨は、私も賛成でございます。
  142. 眞鍋勝

    眞鍋委員 はなはだ簡単だから、私も簡單に言いますが、それはわかつておる。大臣はすでにせんだつての文部委員会において委員の質問に対して、四書を知つておられるか、四書を知らぬ人がいる。また政治とは何ぞやといつても、私は先年王道と覇道について質問したことがある。王道、覇道があるが、知らない人がこの議員の中にもあるいはあるかと思いますが、とにかく政治とは何ぞやといえば、ちよつと困るだろうと思う。それは見方によつて違う。大臣は今簡単でありますが、重んずるなれば、重んずるように決議案に対するところの決意を促しておいて、私は学術局長にバツクボーンがあるとないとによつて大学の……(「本問題と関係がないじやないか」と呼ぶ者あり)関係があると思う。バツクボーンがないところの東京大学、かくのごとき大学がかくのごとき演劇をする。この決議案に対する文部大臣のお答えは簡單明瞭であるけれども、私は尊重する。従つてどうかその簡單であるこのあなたの御答弁を実行に移していただきたい、これだけ私は申し上げて、私は病気であるか。して質問は遠慮しているのだが、どうかひとつよろしくお願いいたします。
  143. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 世耕弘一君。
  144. 世耕弘一

    世耕委員 時間がありませんから簡單にやります。先ほど来警視総監並びうに委員の方で質疑応答があつたようで、文部大臣もお聞きの通りだと思いますが、私は結局今度の事件学生を対象にして議論すべきじやないと思う。これは学校当局、文部省、警視総監、この間で論議すべきものだ。根本をきめて行かなければならぬ。まだこの子供は未完成なんだ。乱暴を働くこともありがちだ。また警察のあり方も警視総監意思に反したことが往々にして現場で行われることもあるのです。その末節をとらえて論議するということは、あるいは必要かもしれぬけれども、今日一番大切なことは、自治の根本、治安の根本をどこでどう処理するかということが一番大切なことじやないかと思う。そこでこの際私は大学当局の代表者すなわち学長、文部大臣と警視総監が十分御懇談して今後の憂いのないような処置をとることを私は要求したいと思う。この点について大臣のお答えが願いたい。  それから時間を節約する意味において要約して行きますが、火事と消防はつきものだ。火事があるから消防が出て来る。どろぼうがあるから警察がでて来るわけである。それで資本主義の関係から共産党というものが出て来るということは、これは確実に申し上げることができる。ところが残念なことには大学警察というのは縁の遠いことだ。この縁の遠い大学警察との関係が今日この議場で問題になるということは、これははなはだ遺憾千万であるといわなければならぬ。ここなんです。この間私はこの問題が起ると同時に、大学当局は責任を感じて警視総監とも十分御懇談されたかということを聞いたところ、一向に正式に懇談がない。これははなはだ不都合な話だ。そうして子供が新聞に出したから手帳を取上げたの、どうのこうのといつているが、これなどほんとうを言うと末節の問題であつて、そういう不行儀な学生を育てた責任者をまず明らかにしなければならない。ここに私は重点があるじやないかと思う。
  145. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 天野文部大臣から御答弁願います。
  146. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 大学総長と警視総監と私と三人でよく懇談をするということは、私も非常にいいと思つて、すでに総長ともそのことを話し合つておりますから、近いうちにそういたしたいと思つております。  第二番目の責任ということは、これは責任があるとすればもう一言もございませんが、社会の問題にもなりましたので、今後よくそういう点を三者において協議をして、万全の道をとつて行きたいという考え方であります。
  147. 世耕弘一

    世耕委員 私はいつでも申し上げるのだが、赤い卵を産むのは赤い鶏がいるからで、卵ばかり責めてもしようがない。至るところに鶏は産みつぱなしにする。その赤い鶏をどう処置するかということが、すべて文部大臣として重大なることであると思う。かように考えますからこの点を御考慮を願つておきたい。
  148. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 なるべく簡潔にお願いいたします。
  149. 世耕弘一

    世耕委員 それからまたこれは学園の中に警察が入つてけしからぬ、と大きに騒いでおるようでありますが、学園の中に警察が入るように学園をこしらえたということもこれは責任問題が出て来る。おそらく警察の方も近ごろ忙しいので学園まで手が届かない。ところが必要があるから学園まで入るじやないか。講義内容を調べたからこれは特高警察だと気にしておるようだが、特高警察けつこうじやないか。それに対してなぜ言いたいかというと、ソビエトを見てみなさい。ゲー・ぺー・ウーという実にもつと気のきいた警察制度があります。むしろ治安の確保を完全にしようと思えば、ゲー・ぺー・ウー式の警察の活躍をどしどし要求する。それを、いや特高警察がどうだとか、そういうことを言う人自体が、私は少し思想的に変じやないかと思う。しかもその思想取締りということは、文部大臣がお望みならば——もちろん私もそういうことは申し上げたくないが、この間申し上げたように思想の酔つぱらいがある。この酔つぱらいは取締らなければなるまい。それが大学の中にあるかもわからない。しからばその点を明確にしなければ、今度の問題は私は片づかぬとかように考えております。  それから最後に一点お伺いいたしますが、学長の官選論が出ておるようであります。私は官選、民選必ずしもここで文部大臣から御返事を伺おうとは存じませんけれども、一つ学園内で学長を選挙しなくちやならぬという狭い考えで選挙をしないで、広く学長の人材を天下に求めるという方法があるじやないか。この東大なら東大だけの学園内で学長を選定し、あるいは選挙するという形でなく、東大にふさわしい人材を広く天下に求めるということは、私は学問の向上の上に必要じやないか、かように私は考える。この点だけ一点御所信を伺つておきたい。
  150. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 御意見はまことにもつともと思います。私は実は京都大学教授をいたしておつて、そういうことを主張したこともございますけれども成り立ちませんでしたが、現にそういたしておる大学もございます。
  151. 佐瀬昌三

  152. 上林山榮吉

    上林委員 文部大臣に二、三お伺いいたします。昨日から警察当局学生側、それから大学当局からいろいろと話があつたのであります。そこでただいま文部大臣をお呼びしてわれわれは質疑を試みるわけでありますが、まず第一に伺いたいことは、ポポロ劇団の内容が政治色を帯びておるということについてお考えになつたことがあるかどうか。  第二点は共産党の細胞東大内にあるということを知つておるかどうか。さらにまた団体等規正令の違反になるような公認でない団体が、東大内にあるということを御承知になつておるかどうか。しかもこの共産党の細胞があつて、不穏なビラが毎日のように無秩序に東大学園内その他にまかれておるというこの事実、こうしたような政治色の運動東大内に相当はびこつておるという具体的事実を、責任大臣として御調査になつておるかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  153. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 たくさん一度におつしやいましたので、しつかり覚えませんから、だんだん聞いていただきたいと思います。一番初めは、政治色があの会合にあつたかどうかということでございますが、あれは政治的のものではないというふうに総長がお考えになつて許可になつたのですから、私も政治的ではないと思つております。
  154. 上林山榮吉

    上林委員 ポポロ劇団の届をする場合は、政治色のないものとして学校当局は詳しく調べずにこれを許可したのであると、総長自身ここの席上で答弁しておられるのでありますが、聞くところによりますと、松川事件を取扱つただけでも、やりようによつては政治色があるわけであります。しかも松川事件の報告の演説会があつた。しかもその中に「沖縄より帰りて」という政治色を多分に持つた演説も行われた。こういうような事実があるわけでありますが、この点であります。  第二点は、聞き取れなかつたというから申し上げますが、東大学園内に共産党の再建細胞、並びに東大細胞があるという事実を知つておられるかどうか。さらにまた東大内に政治色を持つた、しかも無届団体もあるといわれておりまして、団体等規正令に反する団体もあるといわれておるが、この東大の無秩序ぶりを実際に責任大臣として御調査になつたか。單にあいまいなところの答弁をされる矢内原総長の言のみを信用されての御答弁であつては困るのであるが、あなたの責任においてしつかりとした御答弁を願いたいと思います。
  155. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 第一の政治色という点ですが、政治的とは少し違つて政治色というように広く言われますと、その材料が必ずしも適当でなかつたということは言えるのではないかと考えます。  第二の細胞は、矢内原総長が私に現にもう解散してしまつておるという話をしました。けれども学生などの間にも、いくらか少数の学生としては不適当な行動などをする者があるけれども、そういう人たちをば厳重に取締つてつて、現にその取締りがよくなりつつあり、私も、矢内原総長が非常に熱心にやり、現によくなりつつある、またよくなつて来ているという事実は、これを信ずるものでございます。それから政治色を持つた無届のものがあるということは、私は存じません。
  156. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 簡單に願います。
  157. 上林山榮吉

    上林委員 時間がないので残念でありますが、どうも文部大臣はお人がいいので、矢内原総長の言葉だけを御信用になつておられるようでありますが、もう少し具体的に責任を持つて御調査になる必要があると私は思う。というのは矢内原総長も、共産党の細胞は一応解散したが、そういうものがあるかもしれない。しかも不穏なビラがまかれておることも知つておる。ある程度戒告も与えておるが、大学の力だけでは十分にこれをなすことはできない、こういうふうに言つておられる。あるいはまたこれは共産党系の学生だと思いますが、本議場で陳述をした中にも、共産党の細胞解散したのであるけれども、あるかもしれない。こういうようなことを大学学生もあるいは総長もこの席上で言つている。しかもこの不穏なビラをごらんになりましたか。まことに革命前夜を思わせるような、しかも暴力革命的準備をさせるところの問題を提供しておるのです。あなたはこの議場にあまりおられなかつたから、繰返して申し上げますが、労働者はドスをみがき始めた。日本の解放と民主的変革を平和的な手段によつて達成しようと考えるのは間違いであるといつて、武装革命の準備をせよというビラ東大内にまかれておる。こういう事実は明らかに政治運動なんです。大学当局を信用されることもいいのでありますけれども、もう少し責任の府としてこういう具体的な事実をお考えにならないと、往々にして世間に誤り伝えられるのであります。この点をあなたにお尋ねしたいのであります。  第二点は、次官通達というものは言うまでもなく法律ではない、紳士協定であるというふうに考えるが、この点はどうか。  さらにお尋ねいたしたいことは、学生の処分もわれわれは十分に行われておるかどうかはよくわかりませんが、学生の処分は処分として、大学当局の責任をどうするのか。私どもは矢内原総長の言を信用するわけには行かぬ。あの人はこの議場で虚心坦懐でなかつた。そういうような意味から、彼は大学の非をかばうあまり、何と言つたかといいますと、社会もこういう状態じやないか、だから大学がこうあつてもやむを得ないじやないか。しかし自分努力をしておるけれども、大学自身の力のみでは、この大学の秩序というものは保つことはできないというように言つている。こういう点から考えまして、どういう見解を持つておるか。ことにこうしたような大学が、自分の責任において自分の能力において、十分に自治をやつて行けないということは明らかであると思う。こういう点からいいまして、文部当局ができるだけ平和的にやろうとする心がけはわかるとしても、もう少しけじめをばはつきりした上での調整をとる必要があると思いますが、これに対する大臣の御答弁を求めたいと思います。
  158. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 第一の点はビラのことでありますが、私はビラのことも総長から直接伺いました。それから次官通達法律を執行するための協定でございます。それから処分のことは、そういう点について先ほども申しますように、よく警視総監のお考えも伺い、大学当局ともよく相談して、公平に中正に善処したいと考えておる次第でございます。それから最後に大学自治ということは、矢内原総長がどう言われたか知りませんが、大学を社会から切り離して大学だけで考えるというわけには行かない、この社会全体というものを背景に置いて大学をも考えなければならぬという趣意で申されたと私は思います。もしそういう趣旨であればごもつともなことではないかと思います。
  159. 上林山榮吉

    上林委員 どうも大臣の答弁は抽象的で理解に苦しむのであります。結論として申し上げますが、大学総長の責任はこのままでいいのか。学生は法を破つたのであるから、法の命令に従つて解決をしなければならぬと思うけれども、大学当局には責任はないのか。生徒だけに責任を負わせて、総長みずからあるいは教授みずからは責任を負わないのか、負うとすればどういう責任をとらせるのか。それから第二点として申し上げたいことは、治安の最終的な責任者は文部大臣としてはだれだと思つているのか。この二点について明確に答弁願いたい。
  160. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 学生のしたことについては、当然私は学長及び教授は責任があると思いますけれども、その責任という概念が広い概念ですから、その責任をどういうように解するかということは簡単に述べられないと思つております。  それから治安の責任は警察の方にあると思います。
  161. 佐瀬昌三

  162. 田中堯平

    田中(堯)委員 学者であり、またかつては教育者であつた文部大臣に、これはし良心的にぜひともひとつ答えていただきたいのであります。  私がここで言うまでもなく、学問の自由、大学の自治というようなものは、これは近世史始まつて以来、人類の総力をあげての闘いの結果、人類の一つの財産として今でき上つているわけであります。それというのも人知が進み、社会が発展するその先端に立つて真理を把握するというそのためには、どうしても、もう絶対的なる自由が確保されなければならぬということでありますが、この点について文部大臣はどういう見解を持つておられるのでありますか、まず第一にこれをお尋ねします。
  163. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 大学の自由というのは、先ほども申しましたように、これはドイツなどの古い伝統から来ていることですけれども、ドイツの大学などではこの教授の自由ですね、学ぶことの自由、そういうことをもつぱら言つているのであります。日本の言葉で言うならば、学問の自由ということが主になつているのであります。ただそれを守る基盤として大学の自治というようなことが言えるわけだと私は解釈しております。ただ自治も先ほども申しますように、自治である以上は大学に責任があるということは当然のことで、自治だから無制限というわけでないということも申すまでもないことかと思つております。
  164. 田中堯平

    田中(堯)委員 そこで最近の傾向はまつたくこの学問の自由、大学の自治という点について恐るべき状態になつて来ていると思うのであります。ちようど昭和の初期ごろ起きた学問に対する思想統制、教学刷新とかあるいは国体明徴とかいうようなことで、鳩山文部大臣のときにも学園に対する弾圧が行われたし、それからまた荒木陸軍大将が文部大臣になつても盛んに大学の自治を破壊したのでありました。そういうふうにしてとどの詰まりはあの愚かなる大きな戦争をおつ始めたわけでありましたが、ところが今、今日の様相を見るとやはり学内に、これはもうだれが何と言つても明らかに特高警察的な手を伸ばして、教授の身元を洗つてみたり、学生の思想傾向、教授の思想傾向というようなことをみな探つている。こういうことに一体文部大臣としてどういう関心を持つておられますか。これはよろしいのですか、悪いのですか。
  165. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 先ほども申しましたように、大学といえども社会の外にあるわけじやなくて、社会の中にある。社会に非常にいろいろな不安なことがあれば、警察の方でそれに対して注意を払われるということも警察としては  ごもつともなことかと思いますが、しかしそういうときにはよく大学当局の了解を求めてからしでいただきたいという考えでございます。私自身は学問の自由を圧迫しようなんという考えは毛頭持つておりません。
  166. 田中堯平

    田中(堯)委員 去る二十日二十五番教室ポポロ劇団の芝居があつたときに事件が起きたわけでありますが、これは先ほどの御答弁によれば、政治色を帯びた集会とは言えないというふうに言われた。ところがそういうふうな集会に対してさえも私服が四名も入つて来るというような——しかも一般の人が入れるように入場券を売つてつたというのはこれはうそであります。これは入場券じやない、ただ家族や学生や……。     〔発言する者あり〕
  167. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 御静粛に願います。
  168. 田中堯平

    田中(堯)委員 この学生、職員、その家族ということがやつぱりこれは了解事項として入つているので、家族が招待されて入つてつた事実はあるが、その家族のような様子をしてひそかに、これは明らかにもう秘密警察が中に入つて来る。これが発端になつてあの事件が起きているのであります。お聞きしたいのは、こういうようなポポロ劇団の二十日の催しなどにも、かような私服警備係の刑事が入つているということ、こういうことは是認されますか。
  169. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 先ほども申しますように、大学といえども社会の一部分なんですから、社会全体の動きから、警察の方でそういうことが必要とお考えになるなら、それも一理あるかもしれません。ただその際に大学当局の了解を得てもらいたい、こう申すわけであります。
  170. 田中堯平

    田中(堯)委員 さらにそれではその翌日二十一日には、前日の犯人を逮捕するということで学生一名逮捕されておりますが、数十名の私服と約二個小隊の武装警官が動員をされて学内に押し入つております。これは大学当局にあらかじめの打合せも何もなしに突如入つて来ておりますが、これはもう終戰以後こういう例は全然なかつたと思います。それだけにまた将来の傾向に一つの大きな示唆を与えると思いますが、こういうことは文部大臣としてどういうふうにお考えでありますか。
  171. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 そういうことについても大学当局警視庁の方とよく相談をされれば円満に行くと思うのです。だから今後は、先ほども申すように田中警視総監学問のことにはずいぶん御理解のある方ですから、よく私どもが話し合えば適当にできるという考えであります。
  172. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 田中君時間が迫つていますから、簡潔に願います。
  173. 田中堯平

    田中(堯)委員 ひとつ私はおべつかなしに申し上げるのですが、今の閣僚中で文部大臣ほど良心的な方はないと思います。ぜひともこれは、大学の自治ということ、学問の自由ということが危機に瀕しておりますから、満身の勇をもつてこのことに当られんことをお願いする次第であります。
  174. 佐瀬昌三

  175. 平川篤雄

    平川委員 簡單にお尋ねいたしますが、大臣が御就任以来、この問題は小さな問題であるようであつて、実は非常に大きな問題になりかけていると思います。私はいろいろな方面からの陳述を聞いておりまして、非常にわき道の問題が入つて来てこの問題を複雑にしているような気がする。実際はきわめて私は簡單な問題だと思う。こういう問題が政治的になりまして、そうしていわゆる次官通達がくつがえされあるいはよく伝えられているばからしい話でありますが、学長官選論であるとか法学部廃止論であるとか、かようなものが多少でも出て来るようなことになつたら、これは天野文部大臣はたいへんな目にあわれると私は思います。  そこで二、三お尋ねをしておきたいのでありますが、しきりにさつきもお聞きになるように、ビラがまかれるとか、あるいはいろいろなことがあると言われるのであるが、そういうようなことならこの国会でも暴力ざたはときどきありますし、窃盗なんかしよつちゆうある。そういうことが起つたときに、全部が議長の責任かといつたつて決してそうではない。これはまさに外部からさようなものがまぎれ込んで来たり、あるいはたまにある暴力ざたなんかは内部の問題でありますが……。     〔発言する者あり〕
  176. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 私語を禁じます。
  177. 平川篤雄

    平川委員 私にはそういうような点が混同されておるということが、間違いのもとであるように思われる。先ほど警視総監もはつきりと言われておるのでありますが、松川事件を扱つた劇、そのものは何らこれは政治的なものではないが、ただ「沖繩より帰りて」という演説やらあるいはカンパなんかが行われかけたということは政治的だと言われる。入る前にそういうことは予想していなかつた学校自体もそれは知らなかつたでありましよう。要するに観衆の中から立ち上つて演説をした問題にすぎない。早く言えば国会内で窃盗が行われたのと同じことだ。そこで私は、文部大臣が次官通達の問題として取上げられるようなものではないと思う。ただその際に警察手帳をとつたり、暴力を振つたりしたというようなことはあるまじきことでありますから、一方的に処罰せらるべき問題だ、こういうふうにわけて考えるべきだと思うのです。それからもう一つわけて考えなければならぬと思いますことは、学問の自由という問題が中心なのでありますが——これは政治的なものであるというので、刑事がビラを見てピンと来たというのです。ピンと来て、そうして警備係の職掌柄中へ入つた、こう言つておるのです。さつきからしばしば文部大臣は、学校といえども社会の中であるから、こうおつしやいますが、これは違うと思うのです。というのは、現にその中に何かの犯罪が行われそうであつたり、少くとも思想の内容を調べるという問題ではなくて、ある捜査であるとかなんとかいうような問題があつて入るならこれは当然でありましよう。ところが單に政治的だというのでピンと来たから中へ入つたということは、これがもうすでに学問の自由というものを侵害するもとになる行動であると思うのです。文部大臣はそれをどういうふうにお考えになりますか。
  178. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 その点につきましては、先ほども申しましたように、そこに入るということも、警視庁の立場とすれば理由があるかもしれませんが、その際には、まず大学当局に御連絡をいただきたい、こういう考えなのでございます。
  179. 平川篤雄

    平川委員 先日の新聞を見ますと、学長官選論というものが自由党の内部に起つて、大臣も究極にはその官選論へ傾いておられるという記事があつて、実に私は意外であつたのですが、実際に文部大臣はさような気持をお持ちになつておりますか、この際お聞きしておきます。
  180. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 大学の総長を選ぶということは日本の長い伝統でありますし、法律的にも現在根拠がありますから、私は現状のままがよいという考え方でございます。
  181. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これより木村法務総裁の本件に対する御意見の発表を願います。特に法務総裁には、大学の自治と治安との関係についての御意見と、大学におけるいわゆる文部次官通達を白紙にもどして、東京都公安条例を適用するのがよいかどうかという点に対する御意見と、この二点についてお伺いいたしたいと思います。
  182. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの委員長の御質問に対して私の意見を申し上げます。  私はもとより学問の自由ということは尊重しなければならぬという考えを持つておるのであります。すなわち学問の自由とは、外部の勢力に影響せられずに、自由に真理を探求し、また事物を学習することが学問の自由と申すべきものである、私はこう信じます。この自由はどこまでも尊重すべきであるという確信を持つております。しこうして学校は、この学問の自由と教育の場であります。ことにこの学問の自由と、教育の場というものは中正なものでなければならぬという確信を持つております。教育基本法第八条を見ますと、学校は特定の政党を支持し、またこれを支持せざるための政治活動、教育並びに政治活動はこれをしてはならぬということになつております。もとより当然のことであろうと思うのであります。つまり学校は何らの政治的勢力に支配されずに、学問、教育をして行くべき場でなければならぬ、万一ある党派のための支持運動をしたり、またはこれに反対するようなことを実際に教育したり、または政治活動をするようなことがあつては、学校の自治というものは許すべからざるものであると私は考えておるのであります。  そこで現在の東大はどういうことをやつているか、これが問題であります。私の知る限りにおいては、東大におきましては、日本共産党の細胞があつたのであります。またこれは解散いたしましても、秘密細胞があるということは明白な事実であります。これをどうするか。学校当局がこれを放置しておく。これを知つて放置すると、学校当局がみずから自治を放棄したものといわざるを得ない。これを知らずして看過するということになれば、学校当局の怠慢はなはだしいものであると私は信ずるのであります。そこで問題は、学校当局がはたしてかような政治活動を看過しておつたかどうかということに帰着すべきものであろう、こう考えるのであります。万一さようなことでありますと、たとえばある学生はある党派を支持し、ある学生はある派を支持し、収拾つかなくなるのであります。こういうことであれば、学校はほんとうに学問の自由というものが失われ、また自治というものがそれによつて乱されるということは、当然言うをまたないのでありますから、学校当局といたしましては、はたしてこの点に対してどういう考えを持つておるか、私はこれを学長に聞きたいのであります。矢内原君は私の畏敬せる学者としておりましたが、この点について率直に矢内原君に聞きたいのであります。そこで問題は、はたして大学においてほんとうの意味における自治が、実際に行われておるかどうかということに帰着するのであります。これは学校当局の責任が重大であろうと思います。もしもかようなことであつて、ある党派の細胞活動を許すことになりますと、事ははなはだ責任重大であつて、学長の罪や軽からざるものと考えております。問題は結局ここにあると信じて疑いません。今後はたしてさような政治活動学校構内において許すやいなや、またはこれを取締るだけの能力ありやいなやということが問題であろうと思います。学校においてその能力なく、またその意思がないとするならば、ここに大きな問題があるのであります。そこで帰着するところは学校当局にはたしてこの自治の能力ありやいなやということであろうと私は考えております。ただいま申し上げました通り、現在におきましても共産党細胞が活躍するということの事実があるのでありますから、この点に対して学校当局がどういう処置をするか。もしもこれの処置をすることができないということであれば、学校みずからがその自治を放棄しておるのでありますから、これは問題であります。  そこで学校構内において公安条例を適用することが適当であるかどうか、この問題でありますが、学校当局の今後の態度いかんによるだろうと思います。はたして学校当局が今後かような分派的政治活動を十分に取締つて、ほんとうの自治を行つて行く能力があるとするならば、またその意思ありとするならば、何も好んで公安条例を強行するの必要はないと私は考えております。結局問題はほんとうに自治をやつて行く能力ありやという問題に帰着する、私はこう考えている次第であります。
  183. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 法務総裁の一般的な説明は終りました。時間がないので各委員の質疑は簡潔にお願いすることにいたしまして、順次これを許します。押谷富三君。
  184. 押谷富三

    ○押谷委員 簡單に箇条書にして質問をいたします。まず第一に、先月の二十日の本郷果大の二十五番教室においてポポロ劇団がやりました劇の研究発表というあの事柄は、学生運動あるいは事の研究とかいうような範囲のものでありますか。それともその範囲を逸脱して、一つの政治的性格を帯びており、政治運動とも見られるような行動であるということが、前後の事情からも考えられるのでありますが、当日の催し学生運動の範囲内にあるか、あるいは政治活動の範囲内にあるかということについて、法務総裁の御意見を伺いたいと思います。
  185. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はポポロ劇団の当日のことは、みずからそれに臨んだわけでありませんから詳細なことはわかりません。しかし報告を受けておるところによると、これは單純なる学生の芸術的、あるいは研究集会とは認められない、こう考えております。
  186. 押谷富三

    ○押谷委員 次にその会場におきまする学生警察官の紛議の結果、学生警察官に対して暴行を加え、あるいは謝罪文に署名さすとか、警察手帳を取上げるというような暴挙に出まして、しかもその警察手帳内容を外部に抜萃書にして発表をいたしたのでありますが、聞けばこの警察手帳内容を発表するにあたつて大学教授はそれぞれの立場から研究をして、このことは犯罪にならないからかまわないというこの意見から、遂に発表することに決したと聞いておるのであります。これは学生がやつたのではなくて、大学教授の一部がこれに加担をしておるという事実があるのであります。かようなことは職務の秘密を暴力によつて漏洩をするという重大な結果を来すのであり、また野党の諸君はこういう暴力によつてつて来た取材をこの席上で堂々と読み上げて、鬼の首でもとつたような態度でありますが、まことに醜い事柄だと思うが、法務総裁におかれてはかような学生の行動、あるいは学校のとつた態度は、たいへんな行き過ぎであるということをお認めになりますかどうかを伺いたいと思います。
  187. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私も東大において学生生活を送つて来た一人でありますが、学生がかような暴力を用いるということは実に悲しむべきことである。われわれの時代は断じてそういうことはいたしません。もしも警官に不当なことがあれば、堂々とみずから進んで警察に交渉すべきでありましよう。この民主主義平和国家を建設する途上において、学生暴力を用いてやるということは許すべからざることである、学生は大いに反省してよろしい、私は卑怯だと思います。そして教授会において警察官手帳発表云々ということは、これは私は大学教授教授会の権威を失うものと考えております。これは大学教授、よろしく反省すべし、こういうふうに考えております。
  188. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 時間が迫つておりますから簡潔に願います。
  189. 押谷富三

    ○押谷委員 この東大の内部におきましては、再建細胞であるとか、東大細胞といつたようないろいろ秘密組織があると聞いておるのであります。また現にいろいろな政治活動も行われ、また危険な文書が頒布されているという状況でありますが、法務総裁として、東大内においては現在治安が保たれていると考えられておるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  190. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は先刻申し上げました通り、大学構内において一党の分派的政治活動というものは許すべからざるものであると考えております。これは大学の自治を乱すものであると考えております。しかし治安の上においてこれはどうかと申しますと、これは私は学生も相当将来反省すべきものであろうと考えております。そこで私は学生諸君に対して将来大いに反省して、真に学生の教育の場であることを期待してやまないものであります。治安の面から申しますと、必ずしも治安が乱れたとは私は考えておりません。かようなことでもつて日本の治安が乱れるものでないと考えております。ただ大学における自治がこれによつて乱れたということは、十分に申し上げてよかろうというふうに考えております。
  191. 押谷富三

    ○押谷委員 現に大学の自治の力は非常に衰えており、そしてそこには相当危険な活動もあり、ある種の温床にもなつていると言われているのでありますが、かような事態を前にいたしまして、学問の自由、大学の自治というものの限界と、警察権の調和、調整というものが最も必要なのであります。この立場に立つて、さきになされておる次官通達について、再検討をする必要があるのではないかと考えますが、法務総裁におかれては、その点いかがなお考えをお持ちでありますか。
  192. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はおそらく今度の事件でもつて大学当局学生諸君も反省するだろうと思いますから、この反省の経過を私は見て行きたいと考えております。もしも反省するなれば、前の次官通達で十分に大学の自治を守り得るし、また治安の面からもこれでさしつかえないと考えておりますが、私は今後の大学当局並びに学生運動の経過をまつて、その点についての裁断を下したいと考えております。
  193. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 加藤充君。
  194. 加藤充

    ○加藤(充)委員 このたびのいわゆる東大事件で問題の中心になつておる警察手帳の全貌を、文字通り全部発表されておるのでありますが、これを見ると、里村巡査の警察手帳なるものは六月の二日が最初の日付であり、それから柴並びに茅根両巡査の手帳を見ると、十二月の二十七日あるいはことしの二月十二日ころまでのことが全部書いてあるのであります。詳細はやめますが、その記事の中には尾行それから張込み、内偵密行、思想問題関係の調査、それから身元調査というようなことが記載されておるのであります。しかも尾行の事例は、はるかに三鷹方面まで一学生を尾行し、あるいはまた明らかに数名の教授に対しては思想調査、身元調査等をやつているのであります。こういうふうなやり方並びにこの内容は、私どもは、明らかに過去の治安維持法下の思想特高警察のやり方だと思うのであります。こういう今御紹介しましたような記事内容から見て、これを特高警察の再現であるというわれわれの見解でありますが、その点についてまず総裁の意見を聞いておきたいと思います。
  195. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はそういうことのみをもつて特高警察の再現とは考えておりません。この手帳内容は私は見たことはありませんが、おそらく警察官において相当の理由あつてつたことと私は考えております。
  196. 加藤充

    ○加藤(充)委員 これほど大きくなつた問題の中心に浮び上つた手帳内容を見ておらないでこの事件意見を述べに出て来られた法務総裁は、はなはだ欠くるところが多いと思います。しかもこの点に関しましては、田中警視総監も、手帳内容については触れたくないということで、一切の意見の開陳を拒否しております。しかし田中警視総監あるいは木村法務総裁がいかに答弁を拒否しても、輿論の常識としましては、これは明らかに特高秘密思想警察の再現以外の何ものでもないのであります。しかもこういうことをやつた問題の警察官の責任をそらして、そうしてそれから派生して出て来たところの学校のいろいろの騒ぎの責任を追究するというやり方は、これはきわめて卑怯下劣なやり方だと私は思う。  第二点にお伺いしたいのは、公安条例の問題についてですが、大阪にもちようどこれと類似の事件が、新聞では警察のわび状事件として起きました。一九四七年の夏ごろだつたと記憶いたしますが、中之島の公会堂に、数名の巡査が警察署長並びに警視総監——最高責任者の命令を受けて大衆の集会の中に入つて参りまして、発見されましたが身分を明さなかつたのであります。それでとうとう皆の前に引きずり出されて——暴行は加えられませんでしたが、皆が、不都合じやないかということになつて、とうとう許可なしに  スパイに入つて申訳なかつたという一札を入れた。ところがそれが強要罪あるいは脅迫罪ということで、気の毒にも、不法にも、一人の労働者が起訴されましたが、裁判の結果その労働者は明らかに無罪だということになつて判決が確定いたしました。時節は違いますけれども、このポポロ劇団の東大の二十五番教室に入り込んだスパイ、そうしてその数名の者からわび状をとつたという事件は、問題の本質はとつた方が悪いのじやなくて、とられるような所為をあえてした警察官の責任が重大であると思うのであります。しかもそれについて公安条例を云々いたしますが、昨年福岡の高裁においても、あるいは京都の地裁においても、全面的に集会の自由を禁圧するような内容を持ち、こういうような運営を持つ公安条例は憲法に反する、無効なものであるという判定が判決においておりておりますけれども、こういうことについての総裁の見解を聞きたい。
  197. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 公安条例の問題について福岡で云々と言われておりますが、私の最近聞くのは——これはあるいは間違いであるかもわかりませんから、はつきり申すことはできませんが、最高裁判所では、公安条例は憲法違反でないという判決をしたということに聞き及んでおります。
  198. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それはいつですか。     〔「そんなことを知らないのか、それで弁護士が勤まるか」と呼ぶ者あり〕
  199. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 最近です。
  200. 加藤充

    ○加藤(充)委員 弁護士が勤まるか勤まらないかということより、法務総裁が勤まるか勤まらぬかの問題が、ここで問題になつているのでありまして、どうも今の答弁も、はなはだ責任があるような、ないようなことであります。が……。
  201. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 時間が迫つておりますから簡潔に願います。
  202. 加藤充

    ○加藤(充)委員 これははつきりした資料を出してほしいと思う。  それから人権の蹂躪の問題だという意味合いにおいて、このたびの東大事件は関連があり重要だと思うから、最後に一点お尋ねします。いわゆる特高警察と深い関連のある特審というものは、法律上は警察でも何でもないはずであります。しかし彼らのやつていることは、どんなひどいやり方でも、家宅捜索でも何でも、警察と同じようなことをやつております。たとえてみれば、日本共産党機関紙、その承継紙、同類紙一切の発行を無期限に停止することを命ぜられて、本職は内閣総理大臣より右措置の執行を委任せられた。よつて右の趣旨を伝達の上、この趣旨を執行するという書付を持つて参りました。そうしてこの書付は、何ら家宅捜索というような権限を特審局員に与えているものでないことは、文言上も明らかであります。しかるに、その不法なやり方に対してこれを拒否する、この不当を抗議いたしますれば、傲然として彼らは公務の執行を妨害したるものとして、輩下に連れて来た警察実力をもつてしよつ引いて行く実情でありますが、この特審局にこういう権限はどういう法的な根拠によつて与えられておるものなのか、またそれが間違いであるとするならば、こういう処置をとつた特審局の責任を法務総裁はどうするお考えであるのか、責任のある回答を承りたい。
  203. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは進駐軍の最高司令官の命令によつてつたものであります。
  204. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 加藤充君、最後の質問にしていただきたい。時間がありません。
  205. 加藤充

    ○加藤(充)委員 これはもつてのほかであります。進駐軍の命令だというようなことで、この責任を進駐軍の最高司令官に転嫁するというのは卑劣きわまるものであり、これはとらの威をかるきつねという俗言がそのまま当てはまると思います。大体特審局というのは警察でも何でもない。家宅捜索や押収、あるいはそういうことをやるについてこれを強要するということは、これは公務の執行ではあり得ないはずであります。要するに、このたびのこの警察の三、四名の者が二十五番教室に入つてスパイをした——特高思想警察、秘密警察というものは、私が一々申し上げるまでもなく、厳に禁止されており、その機構は破砕されており、復元は許されないものなのであります。これは明らかに公務の執行ではないのであります。不法行為をやつていたものであります。それに対して学生が怒つてわび状を書かせたのであつて、こういう不法が——先ほど御紹介申し上げました大阪の中之島公会堂における警察のわび状事件でもそうですが、これが今度の混乱を招き起した根本であるということを考え、こういう根本の、しかも重大なる問題を引起した警察官——巡査並びにそれに対して命令を与えた最高の警察官の責任こそが、大学側の責任の問題よりもまずまつ先に追究され、処置されなければならない問題であると思うが、この点について最後にあなたの明確な答弁をお願いしたい。
  206. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 東大における事件は、いわゆる共産党の細胞活動が根本になつておるのであります。これなくして私はこの問題が起るはずはないと思います。これが今度の問題の発端であろうと私は考える。
  207. 佐瀬昌三

  208. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私は……。
  209. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  210. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 速記を始めてください。平川篤雄——平川篤雄君、質疑をお始め願います。
  211. 平川篤雄

    平川委員 法務総裁の最初の御意見を聞いておりますときに、ちよつといやな言葉もあつたのでありますが、たくさんの陳述人の中で、私は法務総裁が言われた言葉の中で一つ、一番うれしい言葉があつた。それは、学生はおそらく自重するだろう、その反省を待つて考えると言われた。私はその言葉を総長からも聞きたかつたが、実は聞くことはできなかつたのですが、法務総裁からそれを聞いて、実はその考え方で行つていただくなら、たいへんありがたいと思つているのであります。そこで一つお尋ねしておきたいのは、警察権の介入がいいとか悪いとか、あるいは共産党細胞の存在がいいとか悪いとか、政治活動がいいとか悪いとかいうことは、すべてこれは教育の場であり、学問の場であるという意味でいけないのであつて、一般の社会としては現にこれは認められていることなんです。そこで、治安維持の問題だといつてやかましくいわれておるのですが、いわゆる特高的な行動ではないと言われておりますけれども、さような思想動向などの調査をいたしますことは、まず思想自体を非合法化せられるならせられてあとのことだと私は思つておるのです。そういうようなことがすでに学問の自由というものを乱すのであります。教育の自由を侵害するのである、私はそう考えるのであります。そこで先ほども、共産党細胞が、学内におるということを学長が知らずにほつておいたら、それも学長がいかぬ、あるのを見のがしておればなおいかぬ、こういうのはどこまでも教育的な立場においていけないのでありまして、そこのところははつきりしなければならぬところだと思います。そこの点だけを総裁のお考えを聞かしていただきたい。     〔発言する者多し〕
  212. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 静粛にお聞き願います。
  213. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの御議論は、私はごもつともだと思います。教育というものは、先刻申し上げましたように、教育基本法の第八条に明確にうたわれておつて、これは中正なのであります。また思想の自由ということは、憲法に認められた基本的人権であります。何人もどういう思想を持とうとかまいませんが、一たびその思想が政治活動になつて社会の治安を乱すということになると、取締らざるを得なくなる。学校はどこまでも中正な立場に立つて学生に対しては批判的能力を与えることが根本であろうと思います。そこでいろいろの思想についても教育するでありましよう。しかし教育者の態度としては、一つの党派あるいは一派をとらえて、それを支持するような教育のあり方であつては、教育基本法第八条に違反するのであります。どこまでも中正な態度に立つて学生の批判する能力を養うということに主力を注がなければいかぬと私は考えております。そこで学校内における教育はいろいろありましようが、その教育の方針たるや、どこまでも中正な態度で行くべきであるが、一たびそれがある党派、ある一派にとらわれて、その指導のもとに学生校内において政治活動をするということであれば、学校当局は十分取締るべきである。取締ることができないと言われれば、みずから大学の自治を放棄するものではないかと考えております。それが根本であろうと思います。従つて本件においては、東大当局者がこういう政治活動を黙認しておるのであるかどうか、また知らないのであるかどうか、ここに私は問題があると考えておるのであります。
  214. 平川篤雄

    平川委員 これ一つでやめます。大体今の御答弁を聞きまして、法務総裁の御意見はよくわかつたと思う。  そこで、これは仮定の問題であつて、しかも起り得べからざる仮定の問題だと思うので、ばからしい質問になるかもしれないが、かりに不幸な結果になりまして、学生が反省をしないという場合が起つたとする。そういうときに学内から今の細胞活動法務総裁の職権によつて一掃することができるとお考えになるかどうか、これをお聞きしたい。
  215. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 いかにしてそういう学生の政治活動をやめさせることができるか、これはいろいろ問題があるだろうと思います。私は一番注意を要するのは教育者の態度であると思う。教育者にまかすよりほかに方法がない。われわれが警察力をもつてこれを何しようとすることは、とうてい不可能だと考える。りつぱな教育者をもつて、ほんとうの民主主義、平和主義に徹した学生をつくつていただきたい、これは私の念願であります。
  216. 平川篤雄

    平川委員 よくわかりました。
  217. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 これをもつて木村法務総裁意見の発表を終ります。  次に、剱木亨弘君に参考供述をお願いいたします。  剱木亨弘君には、前文部次官としていわゆる文部次官通牒、すなわち集会集団行進及び集団示威運動に関する都条例の適用に関する解釈通達されたそのいきさつを述べていただきたいのであります。なお、その通達学生学校許可を得ない集会などに適用しないものであるかどうか。また天皇、外国の元首等の来学のごとき特別の場合にこれを適用しないものかどうか。これらの点を中心に御意見の発表をお願いいたします。
  218. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 昭和二十五年の七月であつたと記憶しておりますが、今申されました都条例が実施になる際におきまして、その都条例は、たとえば集会あるいは示威行進というような問題につきまして、大学内部におきまして普通の状態において行われる場合に、一一その許可を得なければならないのかというような疑義が生ずるおそれがございました。そこで警視庁お話をいたしまして、その間に疑義が起らないように一応のとりきめをいたしまして、そのとりきめをいたしましたことを各大学に通知いたした次第でございます。そのとりきめの際におきましては、私、文部次官といたしまして、文部大臣の指揮によりまして、なお省内の関係者と十分相談をいたしまして、適当なものと考えまして通達をいたしたわけであります。  なおこの条例につきましての見解と申しますか、外国の元首等が大学に行かれるような場合はどうかという御質問がございましたが、そういつた際におきまして警察当局が警戒をし、警備をすることはもちろん必要があると思いますが、先ほども文部大臣からお話がございましたように、私はこういつた問題は、できるだけ大学当局警察当局と十分なるお話合いの上で、円満に遂行されて行かれることが望しいことだと今も考えておる次第であります。
  219. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 質疑の通告がありますのでこれを許します。世耕弘一君。
  220. 世耕弘一

    世耕委員 簡単に二、三点お尋ねいたします。大学の自治と治安の問題は、私ははつきりと区別すべきものだと思うのです。治安はいかなる場所といえども警察が持つべきものだ、大学の自治はただ学問上の自治であつて、治安の上から見た自治ということはあり得ないと思うのですが、その点はどういうふうにお考えになつておられるか。  それからもう一つは、何ゆえに次官通達を出さなくちやならなかつたか、その前にはどういう状況であつたか、その次官通達を出すに至つた動機等をこの際承われればけつこうだと思います。
  221. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 第一の点でございますが、大学は国立でございましたら一つの営造物でありますし、かりに私立大学考えますと、その構内大学の管理者の管理権の範囲にあると考えるのでございます。従いまして通常の状態におきましては、その管理者が一応の責任をもつて、その営造物なり学校内の秩序を守つて行く責任があると考えております。しかしながら、これはすべて通常の状態におけるものでございまして、一般の社会その他の状況で治安全般の根本問題になりますれば、また大学の治安維持の能力の範囲を越えます場合には、当然警察の力を借りなければならないことが生ずると思います。ただ私どもといたしましては、そういう際におきましてもできるだけ大学話合いをして、円満な形におきましてこの治安の問題を警察と協力してやつて行くことが望しいと考えております。  なお第二点は、都条例ができますと、都条例をごらんいただけばわかりますが、集会といつたようなものが全部許可を得なければなりません。ところがかりに学校が招集してPTAをやるとか、いろいろな研究集会をやるといつたようなことまでは、当然にはその通達取締りの範囲外と考えられますけれども、そこにどうしても疑義があつて、いざこざが起つてはいけないというので、私どもは当然と思われるようなことでもはつきりしておつた方がいいというふうに考えまして、ああいうとりきめをいたしたのでございます。
  222. 世耕弘一

    世耕委員 学生の自治並びに大学の自治というような問題は、要するに学問の府として活動するのだから、それに警察の干渉等はあり得ることはないのです。それが警察が関心を持つというところに、もう大学の自治と学問の自由がこわれて来ておる。あなたも御承知でございましようが、教育基本法等を検討いたしましても、警察大学が衝突するというようなことはあり得ない。ところがそれが次官通達まで出して、そのまま次官通達が今日問題の焦点になるということは、私ははなはだ大学教育として遺憾千万だと思うが、あなたはこの点についてどういうふうにお考えになるか。はたして今日のあなたがお出しになつた次官通達をもつて、今後の大学の自治が確立して行けるか、学問の自由が確立して行けるかどうかということが、非常に問題しになつて来ると思うのです。その当時の担当者としてどういうお考えがあるか、この際お聞かせ願いたい。
  223. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 先ほども申し上げましたように、都条例に関連しまして、この当然のことが疑いが生ずるというような問題について、きめたのでございまして、あれは積極的に大学の自治についてこの線でやれば必ず守れるというような、そういう意図があつてつたのではございません。
  224. 世耕弘一

    世耕委員 それではもう一つあとへもどつてお尋ねいたしますが、今度の東大事件というものは、とにかくポポロ劇団において開催した、その会場というのは三百有余の観衆がいた。その三百有余の観衆の中にスパイがいたというので、警察官をひつぱり出して、しかもそれを舞台にひつぱり上げて、大勢の前で尋問をするというような出来事は、もうすでに大学自体の秩序が維持できたと言われないだろうと私は思うのです。なおまたその上に警察手帳を取上げて、その取上げただけならまだしも、それをさらに世間に公表している。かようなことは、大学の自治、学問の自由という見解からいつて、決して妥当ではないと言えるのです。これが一つ。  時間を省略する意味においてさらに申し上げますが、大体どこの大学で同じようであるが、学生は未熟なんです。いかなる研究あるいは講演においても、必ず指導者というのが立たなくちやならない。大学の中において、過去二、三日のここでの報告等を一々聞いてみましても、指導者が立ち会つていない。学生をもう自由かつてに放任しておるというようなありさまなんです。そうすると、もうこれは大学じやない。かような状態において、なお先ほど警視総監が行政協定ということを言いましたが、このあなたのお出しになつた次官通達では間に合わぬということが言えるのです。ここがほんとうを言うと実際問題なんです。いまさら私は大学の自由とか、学問の自由とかいうことを繰返して申し上げるわけじやないのだが、東京大学それ自体が、すでに学園の自治も、学問の自由も破壊しておるじやないか。これは常識です。弁明の余地はないと私は思う。かくのごとく新聞、ラジオに、議会に、こういう問題を投げかけたこと自体が、もうすでに国家に対し、社会に対し、何事かこの結末をつけなければならぬだろうと私は思う。そういう場合に、あなたがこの次官通達を出されたいきさつ並びに見解から見て、これでなお押して行けるかどうかということについて、重ねて私は聞いて、おきたい。これは実は教育上の重大な問題であります。それだけひとつつておきたい。
  225. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 東大内の今般起りました事件内容について、私は詳しく存しておりませんけれども、しかしいかなることがございましても、学内暴力的な行為が行われたということは、きわめて遺憾だと思います。なおあの通達におきましては、私は先ほども申し上げましたように、通常の場合における大学——いわば平和な時代における大学警察との関係でございまして、大学学内における治安を守つて行きまする能力については限度があると思います。もしその限度を越えた秩序紊乱の状態が起りましたときに、大学当局が進んで警察当局と協力して参りまして、その治安を保つために、警察官を招請しまして、大学の治安を守りましても、大学の自治が侵害されたとは私どもは考えないのでございます。従いましてその警察との協力のやり方の問題でございまして、警察官の力によらなければならないというような状況が生ずれば、これはまたやむを得ないのではないかと考えております。
  226. 世耕弘一

    世耕委員 なおざらにお伺いいたしますが、これもあなたは文部省に関係された当時の責任者の一人としてお聞き取りを願いたいと思いますことは、いかに東大学生を指導する方針が誤つてつたかということを教育面から考えてみますと、警察手帳を取上げ、その場面において警察が不法に侵入したということで始末書をとつておる。その始末書をとるのに学校厚生部長が立ち会つておる。なるほど一歩譲つて警察が不法侵入したものなりと断定して、始末書をとることはいいとかりに仮定いたします。しかしながら他面において警察官から手帳を奪取し、あるいは大勢の前にひつぱり出して尋問等をやるということは、りつぱな人権蹂躙なんです。しからば警官から不法侵入の始末書を書かせるとするならば、なぜその場において学生からこの不法な処置に対して責任を追究し、その始末書を書かせなかつたか。もしそれを書いておつたとするならば、私はこの一事をもつて東大の教育指導は一応納得できる。片手落ちじやないか。かような教育は私はあり得ないと思う。こういう点についてあなたに今こういうことを御返答を願いますことは筋違いかもわからぬけれども、あなたが通達をお出しになつた当時の精神から考えて、どういうふうに判断なさるか、はたして社会がそういう行動を適当な行動であると考えるとお思いになるかどうか。  なお最後にもう一点、時間を節約する意味において申しますが、東京大学といえば国立大学であります。そうして国民が全部税金を払つてあの国立大学を維持していることは、皆さん御承知の通りであります。ことしの予算も十七億何千万円ある。国民の税金によつて経営している大学じやありませんか。何人でも、講堂に入つて講義を聞くことは、私はかまわぬ、また教育基本法からいつても、この機会均等を得られる権利は、私はあるんじやないかと思う。相手が警察であろうが何であろうが、自由に入れて聞かせる便宜を与えるこそ、国立大学の本来の使命じやないか。それをたまたま警察が入つたから、あれはスパイだからといつて、大騒ぎをすること自体に、すでに思想的に堅実な学徒としての態度を失つているということを私は指摘したい。だから結論として申し上げますならば、大学のあり方がなつておらぬ、同時に学生のあり方もなつておらぬ、こういうことを実は申し上げたいのだが、あなたはどうお思いになるか。
  227. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 現在の事態に対しまするいろいろな考え方は、文部大臣から申し上げるのが適当だと思いますが、私もまた大学は直接に国民に責任を負いまして、十分学生生徒の教育、訓育には全力を尽してやるべきだと、その点は深く考えておる次第であります。
  228. 世耕弘一

    世耕委員 もう一点で終らしていただきます。私先ほど申しましたように、学問は自由なんです。研究も自由なんです。同時に学問は世界共通です。そこに秘密がないはずなんです。私は学問の秘密というものがあるということは聞いたことがない。講義を盗み聞きしたからどうこうということはないはずだと私は思う。どうぞこの点は、あなたは直接責任者じやないが、次官通達を出された当時のいきさつと、今日のこの次官通達の後に起つた事件との間の取扱い方についてお尋ねしたのでありますが、よくこの点は御説明を得ましたから、満足いたします。  委員長、吉河特審局長にただ一点だけ聞きたいのですが、よろしゆうございますか。
  229. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 特審局長は退席されておりますから……。
  230. 世耕弘一

    世耕委員 では、委員長からお尋ねしていただきたいと思いますが、文部大臣並びに東大の学長は、東京大学には、細胞があつたけれども解散した。しかし現在はあるかないかはつきりしないというようなことを言うておるのです。ところがこの点について特審局長は十分な調査があるだろうと思うから、あるものかないものか、全然それが霧散してしまつたのかということだけを聞いておいていただきたい。
  231. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 後ほど特審局長に連絡して、調査の結果は資料として提出させることにいたします。鍛冶良作君。
  232. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ちよつと一点だけ伺いたい。問題はあなたのお答えになつた、あの通達は通常の場合だ、特別の場合は考えておらぬのだ。ここまでは私はそうだろうと思う。ところがそういう特別の場合でも、なるべく警察当局話合いの上でやることが望ましい、こう言われる。そこで問題は、話合いができなんだらどうするか、この点をお聞きしたい。もつと言うと、大学そのものにみずから治める能力がないと警察認める。それにもかかわらず、おれのところは能力があるからお前の方は入るな、こう言つたときに、あなたのところに能力がありませんから、私は責任上ここで何らかの手を打たなければならぬといつて手を打つたら、次官通達に違反したるものとして、不法なものとあなたはお考えになるか、この点です。
  233. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 先ほど申し上げましたように、あの次官通達は、警視庁当局話合いいたしました結果を通達いたしたのでありまして、普通の通牒のような、いわゆる法的な力を持つておるものではございません。従いましてその点、警察権なりその他の関係の法的規則をいたすものではないと考えております。
  234. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 よろしゆうございます。
  235. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 田中発李君。
  236. 田中堯平

    田中(堯)委員 質疑に入る前に緊急動議があります。委員長、新聞を見ると……。
  237. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  238. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 それでは速記を始めて。
  239. 田中堯平

    田中(堯)委員 委員長に質問します。きようの東京新聞の夕刊には、本日の衆議院法務委員会において、いわゆる東大事件の問題について、すでに申合せが出た、結論が出た、すなわち文部次官通達の補足をすべく勧告するという申合せができたという記事が載つております。そこで質問したいのは、こういうことが委員長なりあるいはその他責任ある者から、新聞記者に漏れたのであるかどうかということであります。
  240. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 申合せの事実のないことは、各位の御承知の通りであります。おそらく新聞の想像記事であろうと、委員長としてはお答えするよりほかありません。
  241. 田中堯平

    田中(堯)委員 それでは剱木元文部次官にお尋ねしますが、この次官通達なるものは、法律ではないから、法的拘束力はないということを先ほどから繰返し答弁されておる。ところが学問の自由というものは、單に言論、出版あるいは集会、結社の自由とか、あるいは良心の自由とか、いろいろの自由が憲法に規定されておるほかに、別条を設けて、憲法第二十三条でしたか、学問の自由というものがちやんと保障されておるわけです。だから本来ならば、この趣旨を実現すべく立法手段がとられてしかるべきであるけれども、それにかえて、長年の人類の奮闘努力の結果得られた学問の自由、従つて大学の自治という、こういう大きな問題を、立法にかえて、大学側と政府側との紳士的な協約という形でもつてなされたものと思う。だから剱木氏が言うように、これは單に紳士的な協約であつて、何も法的な拘束力はないのであるから、こんなものは吹つ飛ばしてかまわぬ、警察がかつてにこれを吹つ飛ばして、そうして大学の中に自由に延びて行くこともできるというような解釈はとんでもない話だと思いますが、そのことについての御意見はどうですか。
  242. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 大学学問の自由等につきましては、憲法にもはつきり明確に書いておるところでございまして、ただあの都条例につきましては、通常の場合におきましては、まつたく大部分の点につきましては、当然のことであると考えられる点が多々ございますが、それを一応とりきめの形で明確にしておくという意味にすぎないのでおりまして、あれをもつて新たなる拘束力を持つものをつくつたというわけではないのでありますから、さよう御了承願います。
  243. 田中堯平

    田中(堯)委員 そうするとこの次官通達なるものは、あつてもなくてもいいものであるという解釈ですか。
  244. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 あの都条例解釈上疑義を生ずる点があつてはいけないからという意味通達でございます。
  245. 田中堯平

    田中(堯)委員 しからば大学には、第一、講義を毎日行つておるから、何百人が一堂に集まつて教授講義をするという集会が連日行われておる。これも都条例をしやくし定規に解釈するならば、これはやはり一つ集会であるから、そこへ警察力が延びてもいいという結論になる。ことに政令三百二十五号違反の嫌疑があるというような口実のもとに、どんどんと教室の中へも入つて行く、こういう結論になる、これはどうですか、そういうことになりますか。
  246. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 そういうような意見が出るおそれのありませんように、はつきりそこでとりきめしたのでございます。
  247. 田中堯平

    田中(堯)委員 しからば講義の中に警官が入つてつたりしてはいけないということ、そうすると今度は講義そのものではないけれども、やはり学問研究の自由を妨げない意味で、これに付属しておるいろいろな研究会あるいは劇団とか、宗教の団体とか、宗教研究の会とかいうものがいろいろたくさんある。そういうものに対してもこれは警察がかつてに入つていかぬという趣旨でありますか。
  248. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 学校の授業として、また学校許可をいたしました正当に行われている学校内の集会につきましては、その許可を要しないということを規定いたしたのでございます。
  249. 田中堯平

    田中(堯)委員 あなたは当時文部次官通達なるものの当面の責任者だつたのでしようが、そうすると、あなたの意見をひとつ聞きたいのは、過ぐる二十日の日に東大の二十五番教室ポポロ劇団なるものがお芝居をやつた。これに本富士の警備係の刑事四名が私服のままそこへ入つて行つて、そうして一つの大きなことが起きたわけです。大体こういうようなポポロ劇団のその日の催しというものは、ポポロ劇団自身学内公認の団体であると同時に、また二十日の催しそのもの許可を得て合法的にやつておる。こういうような一つ研究会に私服が四名も潜入して行くということは、これは正しいと思いますかどうですか、その当時の責任者としてあなたの意見を聞きたい。
  250. 剱木亨弘

    ○剱木参考人 事件内容につきましては先ほど申しますように、詳しいことは存じません。私服で入つていいかどうか、入場料を支払つてつたのが違法であるかどうかということは、具体的なる事例につきまして調べなければならぬので、私そのいい悪いについての意見を申し上げる筋合いでないと思つております。
  251. 田中堯平

    田中(堯)委員 終ります。
  252. 佐瀬昌三

    佐瀬委員長 本日はこれにて散会いたします。参考人には長い間にわたつてまことにありがとうございました。     午後六時四十五分散会