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1952-03-06 第13回国会 衆議院 法務委員会 第20号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十七年三月六日(木曜日) 午後一時四十二分
開議
出席委員
委員長
佐瀬
昌三君
理事
押谷 富三君
理事
北川 定務君
安部
俊吾
君 角田 幸吉君 鍛冶 良作君
上林
山
榮吉
君 田嶋 好文君 花村 四郎君 松木 弘君
眞鍋
勝君 山口 好一君
石田
一松
君
大西
正男
君
平川
篤雄
君
石井
繁丸
君 加藤 充君
田中
堯平君
猪俣 浩三君 佐竹
晴記
君
世耕
弘一君
出席国務大臣
法 務 総 裁
木村篤太郎
君 文 部 大 臣 天野 貞祐君
委員外
の
出席者
参 考 人 (
警視総監
)
田中
榮一
君 参 考 人 (前
文部事務次
官) 剱木
亨弘
君 専 門 員 村 教三君 専 門 員 小木 貞一君 三月四日
委員有田二郎
君、
上林
山
榮吉
君、
平川篤雄
君及
び宮腰喜助
君
辞任
につき、その
補欠
として
安部
俊吾
君、
高橋英吉
君、
中村又一
君及び
大西正男
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同月五日
委員田中堯平君辞任
につき、その
補欠
として田 代
文久
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同月六日
委員高橋英吉
君、
中村又一
君、
吉田安
君、田万
廣文
君及び
田代文久
君
辞任
につき、その
補欠
と して
上林
山
榮吉
君、
石田一松
君、
平川篤雄
君、
石井繁丸
君及び
田中堯平君
が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
三月六日 国の利害に
関係
のある訴訟についての
法務総裁
の
権限等
に関する
法律
の一部を改正する
法律案
(
内閣提出
第二八号)(
参議院送付
) の審査を本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した
事件
検察行政
及び
国内治安
に関する件
—————————————
佐瀬昌三
1
○
佐瀬委員長
ただいまより
会議
を開きます。
検察行政
及び
国内治安
に関する件について調査を進めます。 この際お諮りいたします。いわゆる
東大事件
について、元
文部次官剱木亨弘
君を
参考人
として追加選定し、その
意見
を聴取いたしたいと存じますが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
佐瀬昌三
2
○
佐瀬委員長
御
異議
なければさように決定いたします。 それでは前会に引続き
東大事件
について、
参考人
及び
政府当局
より順次その
意見
を聴取いたします。
田中警視総監
にあらかじめ御注意いたしますが、
警視総監
の立場から、本件に対して関与された概括的な説明をまずお願いいたしまして、それから各
委員
から質疑がありまするから、それに対する御答弁をお願いいたすことにいたします。
田中榮一
君。
田中榮一
3
○
田中参考人
私から、今回発生いたしました
東大事件
の概略につきまして、各位すでに御了承のことと存じまするが、一応簡單に経過につきまして、
お話
を申し上げたいと存じます。 去る二十日の日に、
東大校内
におきまして
ポポロ劇
というものが、開催される予定にな
つて
お
つたの
であります。この
ポポロ劇
というものは、
純然
たる劇のようでありまするが、当時この劇は、
学校当局
におかれましても、いわゆる
学生
の
校内活動
、
文化活動
の
一つ
として
許可
せられたものであります。この
ポポロ劇
の
内容
は、
福島
県下において発生いたしました
機関車転覆
の
松川事件
を
取扱つた劇
でございます。その劇が始まる前に
——
その日の昼ごろでありまするか、本
富士署
の
警察官
が、
学校当局
の
厚生部
の方へ、この劇はどういうものでございましようかとお伺いいたしましたところ、これは
純然
たる劇の
研究
で、何ら政治的な目的を持
つて
おる劇でないので、
学校当局
は
許可
したのである、これは
松川事件
を取扱
つて
おる劇のようであります。かような
お話
でありましたので、
警察官
も、
学校当局
が
許可
された演劇でありますし、何ら
支障
なきものと一応認定をいたしまして、そのまま
引下つたの
であります。 その日の午後四時過ぎでありまするか、たまたま本
富士署
の
警備係
の
警察官
が
ポポロ劇
の前を通りました際に
——、ちようど法学部
の第二十五番
教室
の前の
道路
のところであ
つた
かと思いますが、
学生
数名が机を置いて、そこで
入場券
を売
つて
おるのであります。そこで本
富士署
の
警察官
四人も、
入場券
を買
つて
入るのならば何ら
支障
なかろうというような軽い
意味
で、
入場券
を三十円でそれぞれ購入いたしまして中に入
つたの
であります。この四人の
警察官
の気持は、私はもちろん
警察官
でありますから、單に
観劇娯楽
のために入
つた
ものであろうとは
考え
ません。やはりそこにある
程度
の
職務意識
があ
つた
ものとは
考え
ておりますが、とにかく一応三十円の金を払えば何人も自由に入れるというような
関係
から、入
つたの
であります。この点につきまして、去る三日の日でありましたか、本
富士警察署長
から、單に
娯楽
のために入
つた
と
言つたよう
に
自分
は陳述してお
つた
けれども、よく係の
警察官
の心境を聞いてみたところが、そうでなか
つた
から、この点は
訂正
をしてほしいという
申出
がありましたから、この機会をかりまして、私の方から
訂正
をいたします。 そうして中に入りまして
開演
を待
つて
お
つたの
でありますが、一人の
労働者風
の男が立ち上りまして「
沖繩
から帰りて」という演題で、
沖繩
におけるところの重労働の
関係
であるとか、あるいはまた
向う
の
状況
であるとか、いろいろ詳しく話があ
つた
ようであります。しかし当時
うしろ
の方では相当騒音があ
つたの
で、しつかりした事は聞き取れないけれども、一応
沖繩
のいろいろな
情勢
が話をせられ、そして内地の
民主団体
の
活動
でありますか、そうしたことについても聞きたいし、
向う
の方にも
十分連絡
をと
つて
ほしいというような、そうした
運動
のことについても
いろいろ話
があ
つた
やにも聞いておるのであります。 それが終りましてから、
東大学生新聞
の
編集部
の部員の人が立ち上りまして、この
松川事件
を
今川上演
をするについて、
自分
は
福島
県下に
行つて
、
松川事件
を現地において十分調査したものである。
従つて
、その真相についてここで報告する。その
内容
は、今回の
松川事件
は、相当
死刑囚
も出しておるが、これはま
つた
く
検察
、
警察
がこの
事件
をでつち上げたものである。
従つて
、かかる
事件
というものは、ま
つた
く法を無視したようなものである、かような
趣旨
のように聞かれたのであります。聴衆の中には、あるいは異様に
思つた人
もあ
つた
かも存じません。 それからそれが終りますと、まだ
開演
には至らないで、またその男が立ち上
つて
、渋谷駅等において
東大
の
学生
が演説できなか
つたの
は、
当局
が弾圧したんだというようことについて
いろいろ話
があ
つて
、それから
開演
されたのであります。 この
松川事件
を
取扱つた劇
の
内容
というものは、証人に立
つた
家族に対して、
検察
か
警察
か知りませんが、お前は偽証をしなくてはいかぬ、そうしなければこの
事件
が成り立たぬというので説諭したり、相当そうした場面があ
つた
そうでありますが、とにかく
松川事件
なるものが、
警察
、
検察
のでつち上げの
事件
であるというような感を、一般の観衆に与える劇であ
つた
そうであります。 その劇が一応終りまして電気がついたときに、一人の
私服
が、ここに
私服
が入
つて
おるというので、数人の
学生
から取巻かれ、やがてまた次の
私服
が取巻かれて、遂に演壇のそばまで連れて行かれて写真をとられた。その際に
相当暴行
を受けております。それから、さらに別室に連れて行かれまして、そこで手をねじ上げられた。特に
茅根巡査
は手をねじ上げられまして、今
逮捕
されました
福井
という
学生
から、顔に向
つてたんつば
を吐きかけられておるのであります。およそ今まで
警察官
がいかなる
集団暴行
にあいましても、
たんつば
を吐きかけられましたことは、いまだそうい
つた
例は一回もないのであります。今回に
限つて
、この
福井
という
学生
のために、
茅根巡査
がまつこうから
たんつば
を吐きかけられたということは、おそらく
本人
といたしましても、生れて初めてでありましようし、われわれ
警察官
としても、かかることを聞きまして
憤慨
にたえないのであります。 そうしてから
警察手帳
を取上げられましたが、
ちようど
そこへ
斯波厚生部長
がおいでになりまして、とにかく一応治めたいというので、その場を治めようとしたのであります。そこでとにかく
警察手帳
を早くもとしてもらいたいと
言つた
ところが、私
ごと無断
で
校内
に入
つた
ことは申訳ございませんという、
学生
の書いた
書面
に
署名捺印
してくれ、そうしたならば返してやろうということでありまして、いろいろ交渉したのでありますが、二人の
警察官
は、
警察手帳ほしさ
にすぐ署名したのであります。一人の
警察官
はなかなかがえんじなか
つたの
でありまするが、明日の午後一時ごろまでには必ず
手帳
を持
つて
署にお伺いするから、一応この場を治めるためにこの
書面
に
署名捺印
してほしい、こういう
関係
からやむを得ず、いわゆる多数の
威力
に押されまして、心ならずも、ま
つた
く脅迫されまして
署名捺印
をいたしたのであります。ところが翌日午後一時になりましても、
警察手帳
は遂に返
つて
参りません。 そこで、この
状況
は、まさしく多数の
威力
をも
つて
、
暴力
によ
つて警察手帳
を取上げた
行為
に該当いたしますので、
暴力行為取締り
の法令によりまして、ただちに
逮捕令状
を
福井並び
に
千田
という二名の
学生——
これは明らかに
本人
がなぐ
つた
ことが認識せられておる。しかも
茅根巡査
が、あまりなぐりますので、
福井
、お前な
ぐらなくても話
はわかるじやないかと
言つた
ところが、
福井
と呼ばれたためにその
学生
はびつくりして、そこでなぐることをやめたそうでありますが、とにかく
福井
と
千田
という
学生
は、殴打の事実がはつきりしておりますので、
逮捕令状
をも
つて
逮捕
することにいたしたのであります。そこで
逮捕令状
を持ちまして、一応
厚生部
の方へお伺いしたのでありますが、
厚生部
には、もちろん
学生
がおりませんので、
学生
を
逮捕
に参りましたということを告げました。それから
構内
を物色いたしましたところが、たまたま
福井
という
学生がちよう
どどこかの
建物
から出て来たところを、顔見知りの
私服
がおりまして、この
福井
を
逮捕
したのであります。その際に、
福井
君は非常に抵抗をいたしまして、あばれまわりまして、とても
逮捕
ができぬものでありますから、やむを得ず手錠をかけたのであります。ところが、
警察官
にかみついて来まして、その際に歯が一枚こぼれたそうであります。そして大地へ寝たまま足でも
つて
近寄る
警察官
をけりまわすという
状況
で、どうすることもできませんので、やむを得ず足にも足かせをしまして、これをみんなでかついで自動車に乗せて本署に同行いたしたのであります。これが大体夕刻五時過ぎであ
つた
と
考え
ております。 今回のこの
行為
に対しまして、
学校当局
としましては、
警察官
が
学校
内に立ち入
つた
ということは、いわゆる
大学
の
学園
の自由並びに
学問
の自由を侵害するものであるというので、非常に
憤慨
をされておるのでありますが、私の伺いますところによりますと、今まで
警察
は、
大学
の
学園
の自由とか
学問
の自由、そうしたものには全然無
関係
でありまして、またわれわれの
考え
方としましても、
大学
の
学園
の自由を侵害する
意思
もありません。また
学問
の自由を侵害する
意思
もありません。この
学園
の自由とか
学問
の自由、これは
真理探求
の自由でありまして、これは憲法に許されました
基本的人権
でありまして、これらに対しまして、
警察
がこれを尊重せねばならぬことは、当然のことと
考え
ております。ただ、この
学園
の自由その他
学問
の自由、
真理探求
の自由ということと、
警察
の
取締り
ということとは、私は全然別個なものであろうと
考え
ておるのであります。
学校側
の主張されるところによりますと、
昭和
二十五年七月に、
警視庁当局
と
文部省当局
との一応の
話合い
で、
公安条例適用
に関する制限の
意味
におきまして、
次官通達
というものをつく
つたの
であります。これは時の
文部次官
からの
照会
に対しまして、
警視総監
が
回答
したという
形式
にな
つて
おります。この
回答
の
形式
を
文部次官通牒
をも
つて
、
管下
の各
大学
その他の
学校
に
通達
としてお流しにな
つた
ものであります。また
警視庁
は
警視庁
で、この
通達
の
内容
を
管下
の
警察署
に流しております。それから
国警
は同様な
通達
を
全国
の
警察隊長
に流し、
自治体警察
は
全国
の
自警連会長名
をもちまして、同様の
趣旨
を
全国
の
自治体警察
に連絡いたしたのであります。そしてそれぞれ所在の
警察署
と
学校
とが、
お互い
にこの
通達
の
趣旨
を尊重して、この
通達
をあるいは交換するところもあり、あるいはまた
書面
をも
つて
話合い
、
協定
をしておるところもあるようであります。かように、現在においては
学校当局
と
警察当局
との間に、この
次官通達
の
内容
とま
つた
く同じものの
協定
が行われておるのであります。そこで
学校側
は、この
協定
によりまして、絶対に
学校構内
は
警察
が一歩も立ち入られないのだというような御見解もあるように、承
つて
おるのであります。もちろん犯罪の発生したような場合であるとか、あるいはその他当然
警察
が
逮捕令状
を持
つて
、あるいは
捜査押収令状
を持
つて
学校構内
に入るということにつきましては、
学校当局
もこれはお
認め
にな
つて
おるようであります。また
パトロール警察官
が
構内
を警邏して
学校
の
建物
を保護し、一切の
刑事事件等
の発生を防止し、また発生した場合における
措置
、そうしたものにつきましては、現在
学校当局
ももちろんお
認め
にな
つて
お
つて
、何ら問題はないのであります。 ただ、ここに問題になりまするのは、いわゆる
学校構内
における
警備関係
の
警察官
が、ときに出入することについて、これが現在問題にな
つて
おるのであります。すなわち
ポポロ劇
の第二十五番
教室
に
私服
の
警察官
が立ち入
つた
ということが、
次官通達
の
内容
を逸脱し侵害して、
警察官
がこの
通牒
を破
つて
入
つた
ものである、かように
考え
て、おられるのであります。 私どもの
考え
としましては、
次官通達
の冒頭に「
集会
、
集団行進
及び
集団示威運動
に関する
条例
の
学校
内における
解釈適用
について」、こういう見出しにな
つて
おります。その次に、「このたび改正にな
つた
右記条例
の
学校等
における
解釈適用
については、別記のように取扱
つて
さしつかえないか伺います。」かような
文部次官
からの
照会
に対しまして、
次官通達
の
内容
を
警視総監名
で
回答
いたしております。その
回答
が
次官通達
にな
つて
おることは、先ほど申し上げた通りであります。
従つて
、この公文書の
形式
から、またその当時の当事者の
意思解釈
から申しましても、
警察官
が
構内
に入る云々の問題は、
集会
、
集団行進
及び
集団示威運動
に関する点に限られ、しかも現在問題にな
つて
おります点はこの一項でございます。「
学校構内
における
集会
、
集団行進
、
集団示威運動等
の取締については、
当該学校長
が
措置
することを
建前
とし、
要請
があ
つた
場合
警察
がこれに協力することとすること。」この条項が、
学校側
の
解釈
としましては、
学校構内
における
集会等
の
取締り
については、もちろんすべて
学校長
が
措置
する、
警備係
の
警察官
一人入るにしても、
学校長
が
要請
しなければ入ることができないんだ、かように
解釈
をされておるのであります。われわれのその当時の
意思解釈
といたしましては、たとえば
学校構内
に
無届
の
集会
が行われる、
学校当局
がこれを
解散
をしようと
思つて
も、なかなか
学生
が言うことを聞かない、いかに
学校当局
が制止いたしましても、
実力
を持
つて
いないために
解散
ができない。そこでやむを得ず
警察当局
に、どうか
警察当局
が
構内
に入
つて
、この
集団示威運動
または
集団示威行進
、または
集会等
を
解散
してほしいという
要請
があ
つた
ときに、
警察側
としましては、ある
程度
多数の
制服警察官等
が、あるいは
部隊行動
として
構内
に立ち入りまして、
実力行使
によ
つて
この
催し
を、
集団行進
または
集団示威運動
、
集会等
を
解散
する
措置
を講ずる、かように
解釈
しておるのであります。一昨年
早稲田大学
の
総長室
に数百名の
学生
がレッド・
パージ反対
の気勢を上げまして、
無届
の
集団示威運動
を行
つた
ときにも、
早稲田大学総長
の
要請
によりまして、多数の
制服警察官
が出動いたしまして、これを
実力
によ
つて
解散
させ事なきを得たのでありまするが、かような場合をわれわれは想像いたしておるのであります。 現在
東大
の
構内
におきましては、まことに不穏当と見られるような
ビラ等
が、再三再四ばらまかれておるのであります。御承知のように
東大構内
は、何人といえども、またいかなる時間においても、自由に通行し得る
道路
の形態をなしておるのであります。
従つて
、かかる
場所
におきまして、たとえば
政令
三百二十五
号違反
の
ビラ
がまかれたと、かりにいたしましたならば、ただちに、これは
ビラ
をまいた
現行犯
としてこれを
逮捕
せねばならない義務を、
警察
は負
つて
お
つて
おるのであります。これは
学校外
の
道路
であろうが、また
学校構内
の
道路
であろうが、それは同じであります。ところが
学校当局
には、かりに
政令
三百二十五
号違反
の
疑い
があるような
ビラ
をまいておる
容疑者
がおりましても、
逮捕権
がないわけであります。
従つて
そういう場合、
警察官
がいなければ、その
現行犯
を
逮捕
することすらできないような
状況
であります。もちろんこの
次官通達
によりましてすべて
学校長
に
措置
することを
——
許可
したり、不
許可
にしたりすることは、おまかせしてあるのでありますが、しかし、これらの
許可
にな
つた
集会
が行われておるかどうかという
状態
、また不
許可
にな
つた
集会
が現実に行われておるという
状況等
も、これは
警備
上の
関係
から、
視察
する
程度
のことは、当然
警察
としてもできなければ、これらの
取締り
が一切できないような
状態
であります。現に
東大構内
におきましても、不
許可
の
集会等
がときどき行われまして、それ
学校当局
に、こういう不
許可
の、無
許可
の
集会
が行われておりますということを、
警察
から告知いたしまして、それによ
つて学校当局
が、しからばというので
解散
をさせたような事例もあるのであります。かような点から
考え
ますと、もちろん
学校当局
に一切をおまかせすることもけつこうでありますが、
警察
として
警備
上の必要から、この
程度
の
権限
を保留しておく必要は十分にあると、私は
考え
ておるのであります。 それで、今回の
大学
の自由と
警察権
の介入という問題は、
公安条例適用
に関する
通達
の
解釈
について、
お互い
に
意思解釈
が食い違
つて
おるという点から来ておるのではないか。かような点から、この
通達そのもの
もきわめて大ざつぱであるから、いま少しこれを明定して、将来かかる問題が再び起らぬように、十分に注意したらいいのじやないかと、私としては
考え
ておるのであります。しかしながら、せつかく出たこの
次官通達
でありまするから、できるならばこの
通達
の線を十分に尊重して、
大学側
と、今後の問題について、十分了解した上で
措置
して行きたいと
考え
ておるわけであります。 なお一言申し上げたいと存じますることは、先ほどの
ポポロ劇
も、なるほど
学校側
におかれましては、これは
純然
たる劇であるとお
考え
にな
つたの
であります。しかしながら、たまたま
警察官
が中に入
つて
見たところが、それが
純然
たる劇でなく、相当濃厚な
政治集会
であ
つた
ことがわか
つたの
であります。ことに、
松川事件
は
警察
や
検察
が
事件
をでつち上げたのだというような劇を、
学校
の
構内
の
文化事業
の
一つ
として
学生
がやるということ自体が、常識的に
考え
ていろいろ御批判があるだろうと
考え
るのであります。それと同時に、私ども決して疑うわけではないのですが、
学校
の御
許可
にな
つた
いろいろな
催し
ものの中に、これは
純然
たる
学内活動
とのみ見られない、
文化活動
として見られないようなものがあるのであります。中には、あるいは先般
東京都知事
に立候補いたしました
出隆
氏の
選挙運動
の
集会等
も、この中で行われたような
疑い
もあるのでありまして、しかも
学校当局
におかれましては、こうした
集会
があるのに、しからばここまで
警察
が
権限
を
学校長
におまかせしておりまするから、
集会等
は必ず臨監され、あるいは
教授
でも
助教授
でも行かれまして、
集会
を指導するとか、あるいはこれを善導するとか、あるいはこれをいろいろと見て、間違いのないように
集会
を持
つて
行くように、十分に
監督
せられておるかと言いますると、ほとんどこれは
教授
も
助教授
も、またそのほかの人も全然
行つて
いないのであります。
ポポロ劇
のときには、た
つた
一人の
守衛
が入
つて
お
つた
だけであります。これは單なる
守衛
でありまして、何らその会を支配することのできないような、單なる
労働者
が一人、
監督
といいますか、これは
場所
の
監督
という
意味
で入
つて
お
つた
にすぎないのであります。かように
学校構内
におきまする
集会
において、
学校当局
は
一つ
も御
監督
の責任を全うされていない。これを私は非常に遺憾とするのであります。われわれは、十分に
学校当局
が
監督
をせられるという
建前
において、かように
学校当局
に御一任をしておるわけでございます。それからまた、
警察官
が
教室
に入
つて講義
の
メモ
をと
つた
というようなことも、言われておるのでありますが、今まで本
富士署
の
警察官
につきまして調べたところによりますると、
警察官
には、
学校
の
講義
なんかは必要ないのであります。
従つて
、
教室
に入
つて学校
の
講義
の
メモ
をと
つた
ようなことは全然ございません。それからまた、
学校
の中にはいろいろの
掲示板等
がありまして、中に入らなくても、
掲示板
を見れば、どういう
会合
があるということぐらいわか
つて
おるのでありまして、決して中に入らなくても、外の
様子
で今どういう
会合
が行われておるかということは大体推察がつきまするので、わざわざ中に入
つて
までこれを見る必要はないのであります。また一応
学校当局
が
許可
された
集会等
でありまするから、われわれとしましては、
学校当局
の
許可
された
そのもの
を尊重いたしておるのであります。たまたま今回この
ポポロ事件
の
内容
を見て、かように
学校当局
の
監督
が十分に行われていなか
つた
という、そのほんの一端がここに現われたと私は
考え
るのであります。
従つて
、現在
東大構内
におきまして
警備係
の
警察官
の
行つて
おることは、
ビラ
をまかれはせぬかという
視察
、あるいは無
許可
の
集会等
が行われていないかというような
視察
、それだけでありまして、それによ
つて学園
の自由が侵害されるとか、あるいは
学問
の自由が侵害されるとかいうことは、全然私は当らないことと
考え
ておるのであります。
学園
内において、現在
フラク活動
が相当活発に行われておるような
様子
があるのであります。現にその
ビラ等
には、すでに
解散
したはずの
東大細胞
、あるいは
東大再建細胞
、あるいは
東大教養学部
の
細胞
とい
つた
名前入り
の
ビラ
が多数まかれており、また先般
教育大学
から、夕方突発的に出ました
デモ
の中には、約二百名の中に、少くも百五十名くらいの
東大
の
学生
が、
無届
の不法なる
デモ
の中に参加してお
つた
事実を現認いたしておるような
状況
であります。
従つて
、われわれといたしましては、かかる
学園
の中で、單なる
学術研究
、
文化研究
でなくして、いわゆる
政治運動
というものが、
学生
の手によ
つて
行われておる。しかもその
政治運動
が
団体等規正令
によ
つて
認め
ざる、いわゆる
団体
の
活動
が行われておるとしたならば、当然事前においてこれを防止し、またもしそうしたことがあるならば、これに対して何らかの
措置
を講ずるというのが
警察官
の当然の職責であろうと
考え
ておるのであります。このような
情勢
のもとにおきまして一歩も
警察官
が入れないといたしますならば、
学校
の中で何をや
つて
もさしつかえない、治外法権的なことになりましたならば、これは私は
学内
の秩序の上から重大な問題ではないか、かように憂慮いたしておるような次第であります。 なお、盗まれた
警察手帳
につきましては、
学校当局
の非常な御
努力
によ
つて
、返ることは返
つたの
であります。
警察手帳
を返していただいた
矢内原総長
以下
尾高教授
その他各
教授
の非常な御苦心、御
努力
に対しましては、
警察当局
では深甚の謝意を表する次第でありますが、しかしその
警察手帳
は、生きたなきがらのようなものでありまして、
警察手帳
の中に書かれたかんじんの
機密事
項というものは、
学生
の手によ
つて
公表されております。私は、このことはまことに遺憾にたえないと
考え
ておる次第であります。一昨日参議院におきまして、
矢内原総長
の御証言を承
つて
おりますると、この
手帳
を公表することが、法的に犯罪になるかならぬかということを、法学部の
教授
の方が全部総がかりで
研究
なす
つた
そうであります。ところがその結果、この
手帳
を発表しても犯罪にならぬ、ならなければ発表しようじやないかということで発表したそうであります。私は、この
東大
の
教授
ともあろう人が多数集ま
つて
かようなことを
研究
されるということは、まことに不都合千万ではないか、かように
考え
ております。 〔発言する者あり〕
佐瀬昌三
4
○
佐瀬委員長
静粛に願います。
田中榮一
5
○
田中参考人
むしろ国家再建の方向に向
つた
研究
ならば、けつこうでありますが、かようなことを、
東大
の
教授
が
研究
されるということは、私は
東大
教授
の名誉に対して、非常に遺憾に
考え
ておるのであります。そこで、犯罪にならないから発表することを
認め
たというお言葉でありました。それからある
委員
の方から、あなたはかようなことをいいことと思うか、悪いことと思うかという御質問に対して、良心的によくないことと
考え
るということを、
東大
総長はお答えにな
つたの
であります。私は、これは公平に申しまして
——
決して
警察
であるからかように申すのではないのでありますが、人のものを盗んで、そうしてその
機密事
項を公表してそのからを返す、このことは、かりに犯罪にならなくとも、この点は、私は道徳的にまことに遺憾ではないか、かように
考え
ておるであります。この点は、私は法的にはいろいろ 問題にしなくても、一般の国民の輿論として、この点について最後に判断が下るであろうと
考え
ておりますので、われわれはこの正しい輿論を待ちたい、かように
考え
る次第であります。 たいへん簡單でございますが、以上概況だけを申し上げて私の説明を終りたいと
考え
ます。
佐瀬昌三
6
○
佐瀬委員長
委員長
として一言
田中警視総監
に、制度上の
意見
をお伺いしておきたいのであります。 先ほど
文部次官
の
通牒
に触れられたようでありますが、このいわゆる次官
通牒
を白紙に帰すべきかどうか、またこれを維持するならば、たとえば緊急特別の場合には
警察官
の立入りができるということを明確に
一つ
の条項として規定すればそれでよいのか、この修正をどうお
考え
になるかとい
つた
ような点について、簡單に御
意見
を御発表願いたいのであります。
田中榮一
7
○
田中参考人
きわめて重要なことにつきまして、御質問にな
つたの
でありますが、私は、
次官通達
の
形式
をかえる、かえないということは、これは大した問題ではないと思います。私どもは、この制定当時の
意思解釈
といたしましては、当然
警備
上必要なる限度の
警察
活動
は、治安維持のためには
学校構内
においても
警察権
の行使ができるものだというかたい確心を持
つて
おるのであります。この点が、
学校側
としましては、この
通達
の精神からして、
学校長
の了解なくしては、かくのごとき
警備
上の必要限度における
活動
でも介入できないのだ、かような
解釈
でありますので、私どもとしましては、この
通達
をさらに詳しく書くか、あるいはまた、もしこの現状の線で行くとしたならば、これらの点について、
学校当局
の理解ある御協力によ
つて
、何らか
話合い
と申しまするか、行政
協定
とでも申しまするか、そうしたものをひ
とつ
話合い
の上で、今後の
警察
活動
に
支障
なからしめるような方法を講じていただければ非常によい、かように
考え
ております。
佐瀬昌三
8
○
佐瀬委員長
以上をも
つて
警視総監
田中榮一
君の参考供述は一応終了いたしました。これに対する質疑の通告がありますので、順次これを許します。各
委員
は十分間の範囲内において、簡潔に御質疑を願いたいと思います。なお木村
法務総裁
、天野文部大臣に対する関連質疑は、
田中警視総監
に対する質疑の終了後に、別個の扱いとして質疑をお願いすることにいたします。田嶋好文君。
田嶋好文
9
○田嶋(好)
委員
時間の制限がございますので、簡單に要点だけをお尋ねいたしたいと思います。 その前に、この
事件
は一昨々日、各
関係
人によ
つて
ある
程度
詳細に述べられておるのであります。申し上げるまでもなく、先ほど
警視総監
のお言葉にもございました通り、私たち国民といたしまして、どうしても
考え
なければならない問題は、日本の文化向上による国のよりよき発達、再建のために、
学園
の、特に
大学
におけるところの
学問
の自由、
学園
の自治ということは、偽りなくして尊重しなければならないところの大原則に立
つて
おる。こう
考え
ておるのであります。これは総監においても、同じような
意見
を持
つて
おるんじやないかということを、先ほどの御
意見
で私十分知ることができました。しかし、その反面におきまして、私たちが心配いたしますことは、日本だけでなくして、各世界の国々の歴史がはつきりと証明をいたしております、その国の治安の盲点となるのは、これはその国の
大学
、
大学
におきましても特に国立
大学
、官立
大学
というようなものが治安の盲点にな
つて
おる。そしてこれが世界の治安撹乱の拠点にな
つて
、たいへんな問題が起きたことは、はつきりと歴史が示しておるのであります。日本の国も、世界の国の
一つ
であります以上は、この点だけを例外として日本の
大学
を見ることはできないと思います。そこでわれわれは
学問
の自由と
大学
の自治は、絶対的な原則でありながら、やはり国を愛するがゆえに、国家の秩序を守らんがためには、この歴史が示すところの
大学
の治安撹乱の盲点に対して、常に注意を怠
つて
はならないということも、これまた私は国の大原則の
一つ
とならなければならぬと
考え
ておるものであります。そこで私は、この点もあとで承ろうと思いますが、私は今回の問題になりました
松川事件
——
これをあまり具体的に申し上げることははばかりますが、とにかく今度の調査にあたりまして、きようの
警視総監
のお言葉もそうでございますが、この間参りました本
富士署
の
警察署
長のお言葉によりますると、何だか
松川事件
を主題とした
ポポロ劇
団が
開演
されておる、これに対して、入ることが何らか
警察当局
として遠慮しなければならぬようなお気持をも
つて
お答えにな
つた
ような気持がいたしてならないのであります。幸いきようは
警視総監
から、この間入場したことに対しては、
娯楽
の
意味
で入場したのではない、やはり
警察官
の職務をも
つて
入場したということに
訂正
されましたので、多少納得はいたしましたが、まだこれは多少の納得でございまして、私はこうした問題に対しては、
警察官
の
考え
というものも、相当突き進んで
考え
てもらわなければならないのじやないか。
松川事件
というのは、これは申し上げるまでもなく、日本の共産党の起した
事件
らしいというので、国内問題ばかりでなくして、世界的な、国際的な問題にな
つて
来ておる。そこで
松川事件
に対しましては、この間法務
委員会
で取上げましたように、各国の共産党から、最高裁判所に対しまして、また現地の裁判所に対しまして、いろいろな脅迫文書が舞い込む。また各地区におきましても、共産党の分子が、
松川事件
は政府のでつち上げた
事件
である、
警察
、
検察
当局
がでつち上げた
事件
であると、血まなこにな
つて
、ほんとうに死にもの狂いにな
つて
宣伝これ努めた。しかも最近に至
つて
は、各
学園
にまで乗り出した。十六、十七くらいの青年をとらえて、青年の知識の足らないところに食い込んで、
松川事件
に対しては、絶対共産党に対する政府の弾圧だということを盛んに吹き込んでおる。そうしてまた
全国
的にこれが治安
関係
に大きな影響を及ぼしておることは、これは国民公知の事実なんです。その公知の事実が重大問題化している。共産党はこの問題と必死にな
つて
取組んでいる。そうして
一つ
の治安撹乱をやろうとしておる。このはつきりいたしました
事件
に関連した劇が開催される、しかもその劇に対しまして、
大学
当局
に伺いましたところ、当時御証言のように、伺いを立てておるのでございますが、
大学
は積極的に来てはいけないとは言わないが、これは
学校
で許している、文化
関係
であるから許しているとい
つて
、開催することを遠慮するという気分が見えない。これは結局あなたたちの協力に対して、消極的な拒絶だ。
大学
が消極的な拒絶をし、しかもこれは重大なる治安に
関係
した問題というか、公知の事実であります以上は、観客として
私服
警察官
がその中に入
つて
、その
状況
を知ろうとしたことは、これは別に恥ずべきことではない、むしろやるべき
行為
であり、当然職務の範囲内の行動である、私はこれはや
つて
もらわなければならぬくらいに
考え
ているのですが、この点は、どうも御答弁が積極的に伺えませんので、私は
警察当局
の気持、行動いたしました
警察官
の気持自体を疑わざるを得なくなる。もう少し明確にお答え願いたい。
田中榮一
10
○
田中参考人
ただいま
ポポロ劇
団に入
つた
警察官
の心境でございますが、
警察官
が
学校当局
にお尋ねしたときには、これは
純然
たる
一つ
の劇
研究
会の催す
文化事業
であ
つて
、何ら政治的、思想的の問題でもなんでもないのだ、いずれ
学校
でもこれはあとで見に行くからということであ
つた
そうであります。大体
警察官
も
学校
ではさようなことを言
つて
おるのでありますが、題材が
松川事件
であるということで、ピンと来たのであります。そこで
学校当局
の言は一応は信頼するけれども、とにかくはたしてどういうものであるか
行つて
来たらどうかという気持も手伝
つた
と思います。そうして前を通りかか
つた
ところが、入場料を払えばだれでも入れる、それじや入
つて
見ようという気持にな
つて
私は入
つた
と思います。また入
つた
形式
においては、さような
形式
になりますが、おそらく入場料を払わなか
つた
ならば、あるいはその当時の
状況
としては、大丈夫ですかと、ただちに
警察官
が
学校当局
に
行つて
、そして
学校当局
の
助教授
なり
教授
を連れて
行つて
見させるという手もあ
つた
ろうと思うのであります。しかしながら、当時たまたま、入場料を払えばだれでも入れるという
状況
であ
つた
から、まことにこれは都合のいいことでありますので、そのまま軽い気持で入
つたの
であろう、私はかように推察いたすのであります。また入
つた
警察官
の気持を聞きましたところが、
内容
はどうも少し政治的なものではないかという予感がしておりました、そして入れましたから入りました、こういうことであります。そして私もそのとき、もし
警察官
自体が入
つて
都合の悪い場合には、必ず
学校当局
を連れ出して、
学校当局
の了解を得て入
つた
らいいじやないかということを、強く指示をいたしてお
つた
ような次第であります。
田嶋好文
11
○田嶋(好)
委員
私は、この
警察官
の行動は、まことに時宜に適したものであり、むしろほめこそすれ、くさすべき行動ではないと思う。そして、もしこのことが問題になりまして、
警察官
の退職というような問題が起きぬとも限らぬ、こうしたことに対しては、われわれは反対せざるを得ない。むしろこうしたことによ
つて
、
警察官
がその職務の執行を消極的に行うようになり、今後の治安に対して影響を及ぼすことを、非常におそれるのであります。この
警察官
に対して、
警視総監
はいかように取扱うお
考え
でございますか。
田中榮一
12
○
田中参考人
私は、この
警察官
と個個に面接をいたしまして、その当時の
状況
を聞きまして、なお一層治安確保のために十分に
努力
するように
——
なお今後いろいろな問題が発生するから、かかる場合におきましては周密、細心の注意をも
つて
やるようにということを、私は注意をしておきました。私はその問題につきましては、何らとがめようとはいたしませんでした。
田嶋好文
13
○田嶋(好)
委員
私はまことにけつこうな処置だと思います。 次に、
手帳
の点でありますが、取上げられました
手帳
が問題にな
つて
、そうして
大学
の監視をしておるとか、あるいは特高
警察
の復活とかいうことを、盛んに攻撃の材料にいたしておるようでありますが、私は、この
警察手帳
というものに
大学
の
内容
が書かれ、また
教授
のある行動が書かれてお
つた
ところで、これは別に問題じやないと思います。たとえば、一例を引きますが、私が何か悪いことをしておるということを、
警察官
がたまたま第三者から耳にする、その耳にした私のことを
警察官
が
手帳
に書く。これは、私としてはとがめることはできないし、むしろ私が悪いことをしておるということを
警察手帳
に書くことは、当然
警察
のやるべきことだ。それを
警察手帳
に書いておるからということで、一々取上げて、特高
警察
の復活だ、やれ何だとか攻撃することは、ちよつと現在の
警察
機構を理解しないのじやないか、かように
考え
ます。書くことは当然の
行為
だと
考え
るのでありますが、この点に対して、
警視総監
はいかような御見解でありますか。
田中榮一
14
○
田中参考人
この
警察手帳
の
内容
が、ああや
つて
まことに不法な方法で奪取されて公表されたのでありますから、私は
内容
につきまして一々お答えしたくないのでありますが、ただ概括的にお答えいたしますと、現在
警察
におきましては、いろいろな身元調査書をや
つて
おります。現在
警視庁
だけでも、毎日数百通の身元調査が参
つて
おります。あるいは村役場から来たり、あるいはまた他の官庁から来たり、いろいろな身元調査が公文で参
つて
おります。こうしたことの中には、住所、年齢、職業、それから
本人
の資力、信用の
程度
であるとか、あるいは前科の有無であるとか、あるいはまた
本人
の思想、動向というものがよく書かれてあります。私はこの
大学
の
教授
のことが
内容
に書かれてあ
つた
からとい
つて
、必ずしもこれが思想を調査するという
意味
ではないと思うのでありまして、住所、年齢、家族
関係
、いろいろなものがあるのであります。思想といいましても、ものの
考え
方、それからものの見方、その
本人
の理想なんか、これを書くことは何ら特高
警察
に
関係
ないことと、私は
考え
ておる次第であります。
従つて
教授
身元やいろいろなことが書かれたとしても、何ら
支障
がない、かように
考え
ております。
田嶋好文
15
○田嶋(好)
委員
もう
一つ
——
これは本
富士警察署長
に、この間私の質問に対して御答弁願
つた
点であります。その答弁は、総監お聞きの通りだと思いますが、
学校当局
と十分協力しておる、
学校当局
の承諾なくして入
つた
ことはない。しかし、緊急やむを得ない事態が起る。これに対しては、
自分
の方では
学校当局
の了解を得ずして入
つて
おるし、また入らなければならぬものである、こういうように述べてお
つた
ようでありますが、緊急の
内容
をはつきりさすことができませんでした。こういう緊急ということは、総監も各署長と御連絡の上、そのわくなんかをおきめにな
つて
おるものでしようか、本
富士署
長の
言つた
緊急という
意味
は、どういうものでしようか。あわせて
東大
内における共産党の
フラク活動
について、わか
つて
おる点をお答え願いたい。
田中榮一
16
○
田中参考人
お答えいたします。緊急の場合において
構内
に立ち入るということは、これは私はいろいろな場合が想定されますので、その場合によ
つて
みないと、なかなかわからぬのでありますが、一応緊急の場合というのは、常識で
考え
まして、これを
学校当局
に
お話
をしてお
つた
ならば時間的余裕がない、あるいはそれによ
つて
犯人を逃がしてしまうか、あるいは証拠物件が隠滅されるおそれがあるとか、あるいはまた時期を失することによ
つて
一層犯人
逮捕
等がむずかしくなるとか、あるいは
視察
がむずかしくなる。たとえば
無届
の
集会
が行われておるような事態になると、それを一々
学校当局
にお断りしてお
つた
ならば、その
無届
の
集会
が
解散
してしまうかもしれない。かような場合におきましては、緊急の場合でありますので、やむを得ず
学校当局
に了解なくして、
警察権
の行使として
構内
に入
つて
取締り
するということは、これは
警察官
として当然持
つて
いなくてはならぬ
権限
であろう、かように私は
考え
ておるのであります。 それから
学内
における
フラク活動
の
状況
であります。これはむしろ私からお答えするのではなくて、特審局長からお答えした方が妥当ではないかと
考え
ておりますが、私どもの知り得る限りにおきましては、先ほど申し述べましたごとくに、
構内
におきまして、
東大再建細胞
あるいは
東大細胞
名の
政令
第三百二十五
号違反
の
疑い
のある
ビラ
がまかれたり、あるいはその他まことに不穏当と
認め
られるような
ビラ
が再三再四まかれるということ、それからまた
構内
の
集会
には、もちろんこれは
警察官
も中に立ち入りませんので、いかなる
集会
が行われておるかわかりませんが、しかしいろいろな情報等によ
つて
知り得た範囲におきましては、先ほど申し述べましたように、
学生
としては不穏当ではないかと
認め
られるような政治
活動
的ないろいろな
集会
が行われておるのであります。あるいはまた不法なるストライキに対する、あるいは不法なる
集団示威運動
に対する事前の謀議が行われておるような
疑い
が見受けられるのであります。その他いろいろな祕密文書等が、あるいは中で作成されておるのではないかと思われるような節もあるのであります。従いまして、かような
フラク活動
の行われておるところに、
警察官
が全然立ち入ることもできない、監視もできない、
視察
もできない、
取締り
もできないというようでは、
警備
の責任の上からしまして、私はまことに遺憾にたえないのであります。
従つて
、かかる場合におきましては、当然
警察権
の行使が、たとい
学校
御
当局
の了承のあるなしを問わず、できる、かように信じておる次第であります。
佐瀬昌三
17
○
佐瀬委員長
時間がありませんから、最後的な質疑を願います。
田嶋好文
18
○田嶋(好)
委員
そういたしますと、緊急ということは、結局総監が各
警察署
にわくを示しておるのでなくして、各
警察署
長が自己の判断によ
つて
きめられる、こう
解釈
していいものでしようか。これをお答え願うことと、それから今緊急の例をお示しになりましたが、不穏な
ビラ
をまく、共産党
東大細胞
再建というような
意味
における
ビラ
をまかれる、これも緊急の中に入るのか、これが第二。それから先ほどのお答えによりますと、共産党の
フラク活動
が行われておる、これに対しては緊急と
解釈
して行かなくてはならぬ
——
お答えもそうじやなか
つた
かと
考え
ますが、こうした場合緊急として行くのか。この三つをお伺いいたします。
田中榮一
19
○
田中参考人
総監が、いかなる場合において緊急であるかというわくは示しておりません。これは各署長が、その場における客観的
状況
並びにその他各種の
情勢
、条件を判断しまして、その署長の適切妥当なる認定にまかせておる次第であります。それから不穏な
ビラ
まきは、当然緊急なものと
考え
ております。何となれば、現在大ぴらに人のいる前で、私はただいまから
ビラ
をまきます、とい
つた
ようなかつこうで
ビラ
をまく者は、一人もありません。あるいは衆人の中にまぎれ込んで
ビラ
を落すとか、あるいはあるところに
ビラ
をそつと置くとか、あるいは全然人の見ていないところで、方々に
ビラ
をまいて置くというようなまき方をいたしておるのでありまして、人のいる前で堂々と
ビラ
をまくようなものはないのであります。かような場合におきまして、これを現認することはきわめて困難であります。これを現認、
逮捕
するために、一々その都度
学校長
の了解を得て入場するということは、非常に困難であります。従いまして、かかる
ビラ
まきの
視察
、
取締り
ということは、当然緊急の中に入
つて
さしつかえないのじやないかと私は
思つて
おります。 それから、
フラク活動
との仰せでありますが、これもはつきり判断はいたしかねるのであります。中には、その時期を失したならば、当然
フラク活動
が解消してしまうというような
情勢
もあり得ると思いますから、これは、必要によ
つて
は緊急にもなるでありましようし、またそうでない場合もあると思うのでございますが、やはりこうしたものは、あるいは緊急になろうかと私は
考え
ております。この点は、具体的な事象についてこれを見ませんと、はつきりわからぬと思います。
田嶋好文
20
○田嶋(好)
委員
私の質問はこれで終ります、
佐瀬昌三
21
○
佐瀬委員長
押谷富三君。
押谷富三
22
○押谷
委員
簡單に二、三の点をお尋ねいたしたいと思います。 この
東大事件
は、その非がどこにあるかは、しばらくおいて、かような問題か引起
つた
ことは、まことに遺憾千万なことであります。こういう一方は
学園
の自由、
大学
の自治を主張しており、また一方は首都の治安を守る重責に任じている、この両者の衝突でありますが、将来かようなことのないように、この問題に対処するためには、
大学
の総長、また一方
警視総監
、こういうような最高責任者が
話合い
をせられるのが、私は至当ではないかと思うのですが、さようなことをなされたことがあるかどうかをお伺いいたします。
田中榮一
23
○
田中参考人
大学
の総長と私とは、非公式に一応お会いいたしまして、両者の
意見
を話し合
つて
みたのでありますが、総長は総長の立場を強く主張せられまするし、私は私としまして、
警備
上の責任から、現在の
警察権
行使に対しまして強く主張いたしておりますので、両者
話合い
はつきませんでした。
押谷富三
24
○押谷
委員
話合い
がつかなか
つた
ことは、たいへん遺憾に存ずるのでありますが、その際の話の模様で、今総監が言われました、当日
ポポロ劇
団のやりました劇の筋書なるもの、前後の報告等から
考え
て、これは政治的な性格を持
つて
いる
催し
であり、
集会
であり、これは左翼
活動
の一環とも見るべきものであるというこの
考え
方について、
大学
の
当局
はどういうような
考え
方を持
つて
お
つた
ようでありますか。
田中榮一
25
○
田中参考人
たまたまこの
ポポロ劇
の性格につきましても、きわめて簡單ではありましたが触れたのであります。しかしながら、
大学
の総長の御
意見
としましては、これはあくまで
学校構内
における
学生
の
学内活動
である。いわゆる
文化事業
としての
一つ
の
学生
の
活動
であ
つて
、あくまでこれは劇の
研究
である。この
ポポロ劇
というものは、左がか
つた
思想を持
つた
者が集ま
つて
おるものであるが、左がか
つた
方でも、右の方の人たちがや
つて
おる劇であるからして、われわれは決して政治的なものではないと信じておる。あくまでこれは
学生
として劇
研究
、いわゆる芸術的な気持から催された演劇であると
自分
はそう信じておる。私は、そうではない、これはあくまで政治的な意図のある
催し
であると主張いたしまして、この点におきましても、両者
意見
が一致いたしておりません。
押谷富三
26
○押谷
委員
この重大な
集会
一つ
の
解釈
でも、さように大きな
意見
の相違があるのでありますが、その際に行われました、
学生
から強要した謝罪文の署名、あるいは
警察手帳
の奪取ということについて、
大学
当局
は、総監に遺憾の意を表しておられましたかどうかを、ついでに伺います。
田中榮一
27
○
田中参考人
私は、直接この問題につきまして、
大学
の総長並びに他の
教授
の方々にお目にかか
つた
ことはありませんが、少くとも
大学
当局
のおつしや
つた
言葉並びに態度から、
警察手帳
が奪取されたという事実につきましては、遺憾の態度をとられてお
つた
と私は信じております。
押谷富三
28
○押谷
委員
別にあいさつがあ
つた
わけじやありませんか。
田中榮一
29
○
田中参考人
特にあいさつはなか
つた
と、私は記憶しておりますが、その点、はつきりお答えができないのであります。
押谷富三
30
○押谷
委員
どうも私どもの
考え
方からも、
大学
当局
は、非常に
学生
の方に味方をするというような方向に見えるのでありますが、これはたいへん遺憾なことである。それがために、
学生
はそれに甘えて、かような行動を平気でやるというような事態になるのではないかと思いますが、この点も、
大学
は相当注意をしなければならぬことだと
考え
ます。特に
大学
の
構内
で入手をせられたというこの不穏
ビラ
でありますが、その不穏な
ビラ
の中には、非常に危険な文句が並べられております。(「どこが危険なんだ」と呼ぶ者あり)
——
聞きなさい。
労働者
はドスをとぎ始めた、こういうようなことを言
つて
いるのです。日本の解放は平和な手段ではもうだめだ、これからは
暴力
行為
によ
つて
日本の解放を行わなければならぬというような非常に危険な
ビラ
をまいているのです。加藤君は、これは危険でないと言われるかもわからないが、たいへんに危険な、かような類似のものをたくさんまいて、しかも、
警視総監
の方では、これを相当多く入手されていると思うのであります。かような文書が
大学
の
構内
にまかれているが、このことについて、総監は
大学
当局
と交渉をせられたことがありますか。あれば、そのてんまつを伺いたいと思います。
田中榮一
31
○
田中参考人
もちろんかかる
ビラ
を発見いたしましたときには、
学校当局
に、その
ビラ
を持参いたしまして
——
このような
ビラ
があちらこちらにばらまかれておるということは、いろいろの点において、
学校
としても非常に
取締り
上遺憾の点があるので、どうか今後かかる点のないように、一層御注意を願いたいということは、再三申し上げております。なおかかる
ビラ
のばらまかれないようないろいろな
措置
は、
学校当局
としてもおやりにな
つて
おるということを、一昨々日の
矢内原総長
の証言によ
つて
、私は知
つたの
でありますが、さてどの
程度
に
学校
がこうした
取締り
をや
つて
おるかという具体的なことにつきましては、私は不幸にしてまだ知
つて
おりません。
押谷富三
32
○押谷
委員
大学
内においてこういう左翼
活動
が行われていることは、
ビラ
であるとか、あるいは
集会
の性格であるとかから見まして大体明らかにな
つて
おるのでありますが、これは次の問題といたしまして、この
集会
デモ
のほかに、
大学
の
構内
において相当たくさんな犯罪がある。これは本冨士署長の
意見
によりましても、本
富士署
管内における犯罪の半分ぐらいは、
大学
構内
であると言われておるのであります。こういうような事態にかんがみて、
警察
がパトロールをやるということは、当然必要なことだと思われますが、過去におけるパトロールの
状況
並びに将来このパトロールはどうしようと
考え
ておられるかを伺いたいと思います。
田中榮一
33
○
田中参考人
大学
の
構内
におきまする犯罪は、先般野口本
富士署
長から数字をも
つて
申し上げましたごとくに、大体本
富士署
の管内の犯罪件数の二割七分強というものが
構内
の犯罪でございまして、大体三百二十件ほどにな
つて
おります。これらは大体すり、窃盗あるいは万引き、ノビ、それからいろいろなそうした一般刑法犯が盛んに行われております。これらはいずれも
学校当局
からの被害届のあ
つた
ものだけを、一応統計に載せたものでありまして、もし被害届のないものを、かりに計上するといたしましたならば、あるいはこの二倍以上あるのではないかということも、一応
考え
られるのであります。そこで現在、これらの犯罪の予防並びに検挙といいますか、そういう
意味
におきまして、
学校構内
を二つの警邏区に
——
これをビートと称しますが、二つのビートにわけまして、昼間は二人の
警察官
、夜は四人の
警察官
がこのビートを警邏いたしております。それからまた、
学校構内
には
警察
電話も架設されております。この警邏地区の設定並びに街頭電話の設置につきましては、もちろん
学校当局
と十分協議の上で、
学校当局
の御了解の上で、そして現在もこの警邏を実施いたしております。なお将来もこの警邏は実施いたしたい、またせねばならぬものと
考え
ております。
押谷富三
34
○押谷
委員
大学
当局
との
話合い
でパトロールをしているという
お話
でありますが、このパトロールについて、二十二日に駒場の
構内
で
学生
が
警察官
二名をつるし上げをした事実があ
つた
。そのときも、やはり謝罪文に署名をさせておるようでありますが、こういうことについて、難視総監は御存じですか。
田中榮一
35
○
田中参考人
私はその事実を知
つて
おります。この駒場の
東大教養学部
の
構内
におきましても、やはり
学校当局
と協議了解のもとにビートを設けまして、警邏
警察官
が現在警邏をや
つて
おります。たまたま二月二十二日の日に、このパトロール員である
制服警察官
が
掲示板
を見てお
つた
ところが、
視察
といいまするか、何か
取締り
に入
つたの
ではないかというようなことから、
大学
の
学生
が非常に憤激いたしまして、これにわび状を書かせたというのでありますが、この点につきましては、私はまことに遺憾に
考え
ております。現在、
学生
の中には、警邏制度も反対をしている者があるという
状況
でありますが、しかし、
学校当局
並びにほとんど大部分の
学生
は、この警邏
警察官
については、何ら問題がないのではないかと、これは私の
考え
でありますが、さように了承いたしておるのであります。
押谷富三
36
○押谷
委員
今回の問題の原因でもあり、また将来の解決の道でもあるものは、結局
文部次官
の
通達
にあると思うのでありますが、この点で
一つ
お伺いしたいのです。この
通達
は、性格は非常にむずかしいものだと
考え
ますが、これは、都
条例
の執行をする
警察
方面か、かような手心をしようという
一つ
の申合せだと
考え
ます。
従つて
、これは
法律
でもなければ、規則でもなければ、
条例
でもない。こういうような場合に、この申合せをし、かような
通達
を出された当時の事情と今日とは、事態が非常にかわ
つて
来ているという場合においては、首都の治安を守る重責にある
警視総監
は、この
通達
についても、特別な
考え
方をも
つて
臨み得ると理論上
考え
られるのですが、そういう場合において、
大学
の同意がなくても、これを変更することができるというお
考え
があるかどうかを伺いたいと思います。
田中榮一
37
○
田中参考人
先ほども申し上げましたごとくに、現在の
次官通達
は、条文の明文上からしますると、きわめて大ざつぱなものでありまして、いろいろ誤解を受けやすいので、いま少し具体化する必要があるのではないかということも、実は
考え
ております。しかしながら、せつかくできた
次官通達
でありまするので、こうした問題があ
つた
からただちにこれを押し返すということも、いろいろ
考え
てみますると、また問題を将来に残すおそれがありますので、この点につきましては、文部
当局
とも今後十分に折衝いたしまして、将来再びこうした問題が起らぬように、何らかの方法を講ずる必要があろうと私は
考え
ております。
従つて
、これを文部
当局
に了解なくして、私の方だけでか
つて
にや
つて
しまうということは、官庁同士の事務の上から申しましても、これはいささか穏当を欠くという
考え
もございますので、十分両者協議の上で、また文部
当局
もこうした方面に十分御理解を持
つて
御協力願わなくてはならぬ、かように
考え
て、今後
話合い
を進めてみたい、かように
考え
ております。
押谷富三
38
○押谷
委員
この
通達
の性格は、どんなものですか。結局これを改めたい、これに対して、もう少しこまかくいろいろな場合を想定して、規定をいたしたいというような場合に、文部
当局
がこれに同意をしないとか、あるいは
大学
の方から
異議
が出るとかいうこと で、この
通達
があなたの思うような調子にならない場合があるかもわからぬが、そういうような場合に、一体どう
考え
ておられるのですか。
田中榮一
39
○
田中参考人
この
通達
は、
警察当局
の
考え
ているような
解釈
でお進め願い得るものとするならば、私はこの
通達
に、今手を入れて、いろいろ直すとかいうことはしなくとも、あるいは済むのではないかと
思つて
おります。但し、最初申し上げましたごとくに、この
通達
というものが、
学校構内
に必要な
警備
のために立ち入ることも、一々
学校当局
の了解と申しますか、
要請
があ
つた
場合においてのみ出動し得るのだというような
解釈
では、これは
警察当局
と
通達
解釈
の根本精神において、そこに大きな食い違いが起
つて
来るのであります。そこで、こうした
学校構内
における
警備
の最後の責任は、やはり
警察
にあるということを、先般京大
事件
の際にも、この法務
委員会
におきまして、最終の結論としてお出しにな
つて
おることから
考え
ましても、この
通達
の精神というものは、これは
警備
上、
取締り
上必要がある場合においては、いついかなるときにおいても
警察
が入れるのだ、かような点をはつきり御認識をしていただくならば、私はこの
通達
がこのままでありましても、これは何ら
支障
はないと思いますが、それは根本的に
大学
御
当局
のお
認め
にならぬような点ではないか、かように
考え
るので、この
通達
をいじくらなければ、将来問題を起すのじやないか、かように私心配しておるわけであります。
押谷富三
40
○押谷
委員
最後に、結論的に一点だけ決意のほどを伺
つて
おきたいのですが、
大学
は自治を叫んでおります。もちろん、これは
認め
なければなりません。
学問
の自由も
認め
なければならぬ。しかし、
大学
の自治あるいは
学問
の自由の名に隠れまして、
大学
の
構内
が治安の盲点であ
つて
はならないことは、申すまでもございません。
従つて
、
大学
の
構内
といえども、その治安の最後の責任は、これは
警察官
にあるのであ
つて
、
大学
当局
には、治安の最後の責任は負わすべきではないと
考え
ているのですが、この点に対する最後的な
警視総監
の御
意見
を伺
つて
おきたいと思います。
田中榮一
41
○
田中参考人
お説のごとくに、私は
大学
構内
におきましていかなる問題が発生いたしましても、最後の責任というものは、結局これはその
警察
が最後の責任を負わねばならぬというような
考え
を持
つて
おる次第であります。
佐瀬昌三
42
○
佐瀬委員長
花村四郎君。
花村四郎
43
○花村
委員
簡單に
警視総監
にお尋ねしたいと思います。治安維持に関する問題は、すこぶる広汎にわたるのでありますが、本
委員会
の調査の中心をなしておりまするものは、要するに
大学
の
学園
内における
集会
、結社、出版物並びに言論等に関するものでありまするので、これを中心として
警視総監
の御所見を伺いたいと思います。 そこで、この問題に関しましては、御承知のごとく憲法二十一条におきまして、
集会
、結社並に出版、言論の自由が保障をいたされております。旧憲法におきましては、この種自由に対しまして、
法律
をも
つて
制限し得ることにな
つて
お
つたの
でございますけれども、新憲法は、旧憲法とその趣を異にし、たとい
法律
をも
つて
しても、この種自由は制限ができない。制限し得るものは、要するに権利の濫用に基くものであるとか、あるいはそれが公序良俗に反するというような場合に
限つて
、その自由を制限し得るということに相な
つて
おりまして、自由保障の範囲が広められておりますることは、周知の事実でございます。そこでわれわれがこの憲法の自由に対する保障の上に立
つて
、
東大
問題を
考え
てみまする場合において、いかに
大学
の
当局
者といえども、この憲法で保障された自由は、みだりに制限するわけには参りません。がしかしただ
一つ
注意すべきは、この自由は、制限はできないのではございまするけれども、
学問
の府として、そして
学問
の府を管理して参りまするところの
権限
を持
つて
おりまする
大学
当局
といたしては、その結社なり
集会
なり出版物なりを、その
学園
内において行うことが、教育の見地から見て不適当と認むる場合において、その営造物を使用せしめないということは、これは
権限
の上から当然できることでありまするので、
従つて
、たとえば
集会
にいたしましても、その
学園
内の営造物を使わしめないという
意味
において、
集会
をやることができぬという場合に逢着することのあり得ることは当然であります。がしかし、そういう場合と、この憲法上与えられた自由を制限するという
意味
とは、これはおのずからその
考え
方が違うと申し上げていいと思います。そこで、もし
学生
が
集会
なりをいたしまして、その
集会
が不穏当であ
つて
、治安に大きな影響を与えるという場合でありましても、
学校当局
は、少くともその
集会
をさしとめる
権限
は持たない。
学園
の営造物を使用せしめないということはできるのでありまするが、その
集会
をとめるところの権能は持たない。ただこの種自由を制限し得るところのものは、要するに
法律
で定められた事由によ
つて
その
法律
を執行する
権限
を持
つた
者、すなわち例を申し上げまするならば、
警察官
あるいは
検察
官とい
つた
ような、
法律
上その
取締り
の
権限
を与えられたる者に
限つて
できる、こういうことにならなければならないと、こう思うのでありまするが、
警視総監
は以上の観点についてどうお
考え
になりますか、それをお尋ねいたしたい。
田中榮一
44
○
田中参考人
現在の
学校構内
におきまする
取締り
の
関係
は、御承知のように憲法十三条の、いかなる自由の権利といえども、公共の福祉に反せざる限り最大の尊敬を受けるというあの条項からいたしまして、地方自治法の規定の根拠に基きまして、現存東京都
条例
として公安
条例
が公布されておるのであります。そうして、この公安
条例
の第一条並びに第三条の規定によりまして、
道路
または公共の
場所
における
集会
、その他
集団行進
、またいかなる
場所
といえども
集団示威運動
は、必ず公安
委員会
の
許可
を受けねばならない、かようにな
つて
おるのであります。この公安
条例
の
許可
権と申しまするか、公安
委員会
の
許可
する
権限
を、これは一部でありまするが、当然
学校構内
におきましても、いわゆる一般の多数の不特定の者が来会する
集会
におきましては、これは公共
条例
の公共の
場所
における
集会
ということにいたしまして、現在
学校長
を経由して東京都特別区公安
委員会
に
許可
申請をさせまして、これに
許可
を与えておるのであります。しかしながら、
学校構内
におきまする、いわゆる
学校当局
が主催者とな
つて
、
学生
、生徒、児童または特定人を対象とするような
集会
、たとえば
学内
講演会、学芸会、映画会、展覧会、それからこうい
つた
ような
研究
会等、それからまた、もう
一つ
は、
学校当局
以外の者が主催する場合でありましても、これは当該
学校
の教職員、
学生
、生徒その他
学校長
の承認した特定の人または
団体
が、その
学校
の管理者または
学校長
の定める手続による
許可
を得て特定の者を対象として行うような
集会
、たとえば
学生
大会、生徒会、講演会、PTAの会、父兄会、卒業生懇談会、学会、
研究
集会
、これらのことは、
純然
たる
学校構内
の特定の者の
集会
という
意味
におきまして、これは
学校長
にその
許可
といいまするか、
学校長
の当然の
学内
の管理権に基きまして、
構内
の
集会
の
許可
権といいまするか、そうしたものを一任したような
形式
になりまして、
学校長
が
措置
するを
建前
とすると、かように
通達
の中にうたいましておまかせしてあるようなわけであります。従いまして、一応
集会
の
許可
等はおまかせしてあるのでありますが、かりに
学校長
の
許可
せざる
集会
が
学校構内
において行われてお
つた
という場合におきましては、当然
学校長
もこれを制止する
権限
もございましようし、また同時に、その場合におきましては、公安
条例
の規定から言いまして、当然
警察官
等がこれに対して適切なる
措置
を講じ得る。あるいは制止するとか、あるいはまた当然これを
解散
させるという
権限
はあるものと
考え
ております。しかしながら、この
通達
の精神からいい、また
学校
自治の精神から申しまして、そういう場合におきましては、直接
警察官
が、ただちにこれに対して
解散
を命ずるというのでなくして、一応
学校当局
に注意を与えて、
学校当局
の手によ
つて
解散
をさせる、現在かような方法を用いておる次第であります。
花村四郎
45
○花村
委員
そうすると、結局公安
条例
違反の問題に対しては、
警察権
を持
つて
おる者でなければ取締れないということだけは、はつきりしておるわけでしようね、それはいかがです。
田中榮一
46
○
田中参考人
もちろん、すべて公安
条例
に根拠を置いておりますので、最後におきましては、私はやはり
警察当局
がこの
権限
を行使し得る立場にあり、また行使されねばならないものと
考え
ております。
花村四郎
47
○花村
委員
その治安維持に関する問題について、
学園
においては、最後にという言葉を、さつきも押谷
委員
からも言われ、今も
警視総監
から、最後の
権限
は
警察
にあるのだ、こういうのですが、そうすると、その最後まで行かない前の構限は、
学校
にあるやに
考え
られるが、それは最後にあらざるその前のものは
学校
にあるのですか、それはいかがです。
田中榮一
48
○
田中参考人
学校構内
の
集会
でも、一般の多数不特定の者が
集会
する
集会
におきましては、これは当然公安
委員会
が
許可
いたしまするので、これに対する取締権は、これは当然
警察官
にあると
考え
ております。それから、そうでない、いわゆる一応
学内
集会
のゆえをもちまして
学校長
におまかせしてある
集会
につきましては、
通達
の精神からいたしまして、また従来の慣習からいたしまして、
警察官
自体がこれを取締るというよりも、むしろ
許可
をした
学校
をして取締らせる、また
許可
、不
許可
の
権限
を持
つて
おる
学校当局
者をして
措置
させるということを
建前
といたしております。しかしながら、またそうでない場合に、
学校当局
が
措置
しようとしましても、聞かざる場合におきましては、これは
警察
が
取締り
の
警察権
を行使することは当然であります。
佐瀬昌三
49
○
佐瀬委員長
時間がありませんから、質疑はなるべく簡潔に願います。
花村四郎
50
○花村
委員
最後にしておきますが、
文部次官
の
通牒
なるものも、どうもわれわれにはふに落ちないのみならず、今の
警視総監
の御答弁も疑問があるのです、そうすると、最後の取締権は
警察
にあるのだが、その最後でない前の部分、すなわち文部
当局
が扱う部分については、
警察権
の一部を委任でもしてあると、こういうのですか、その前の部分に対する文部
当局
の持
つて
おる
取締り
の
権限
というものは、
警察権
の一部を委任されたとこういうことになるのですか。
田中榮一
51
○
田中参考人
お答えいたします。この最後の前の
取締り
権というものは、これは委任と言いましても、実際問題としまして、公安
委員会
の
許可
権を、
警視総監
がこれを一任するということは、法理上からも、また実際上からも、いろいろ理論的に申しますると、不適当であるのであります。ただ実際問題として、
学校
校内
におけるいろいろ
学校当局
に自治を
認め
るという精神を根拠に置きまして、
警察権
が行うもの、
警察
がやる仕事を
学校
がかわ
つて
や
つて
行く、一任というのでなくて、
警察
にかわ
つて
や
つて
いただいておる、かように
解釈
したらどうかと
考え
ております。少し私の議論が、あるいは法理的にどうかと思うのですけれども。
花村四郎
52
○花村
委員
もう私の質問は終りますが、今
警視総監
が触れられた問題が、要するに本件の焦点になろうと思います。どうも
警視総監
の答弁では、その辺がはつきりしないのだ。少くとも治安維持に関する
取締り
の
権限
は、
警察
以外にはないはずなんだ。
警察
がや
つて
行かなければならぬことは、
法律
上からこれはきわめて明瞭であ
つて
、これに慣習など加え得るはずのものではない。そういう見地から
考え
てみると、その一部を文部
当局
にゆだねるという
意味
がどういう
意味
であるか。そこがいまだ
研究
の余地があると思いますので、御
研究
してもらいたい。
佐瀬昌三
53
○
佐瀬委員長
花村君の御指摘の点は、なお文部大臣等にただしたいと思います。
押谷富三
54
○押谷
委員
一言釈明をいたします。先ほど私が、最後の責任という言葉を使
つたの
で、多少誤解があ
つて
、最後のという言葉は、最初と最後と、こういう二つにわかれて責任を問うているようにお聞きにな
つて
いるようでありますが、私が申し上げたのは、この最終的な全部の治安の責任は
警察
にあるのではないか、こういう質問をいたしたので、最終的責任の帰趨をお尋ねしてお
つたの
でありますから、そういう
意味
でお聞きおき願いたいと思います。
田中榮一
55
○
田中参考人
私の説明がへたで、どうも恐縮でありまするが、
警視総監
が、公安
委員会
の
許可
権を
学校長
に委任するということは、これは当然
権限
上、できないことであります。
従つて
、やはり
許可
権というものは、公安
委員会
が保留しておくものじやないかと
考え
ております。ただ実際上の問題としましては、その
許可
をせずに、
学校長
が、
校内
の
集会
については管理上の責任もありまするし、また
学生
指導の精神からしまして、一応
警察
にかわ
つて
集会
を
取締り
する、かようにな
つて
おりますので、一任をしておるわけではないと私は存じております。実際の問題として
警視総監
が公安
委員会
と
話合い
の上で、
許可
権を
警視総監
が一任するということは、法理上からもできぬ
建前
にな
つて
おります。
佐瀬昌三
56
○
佐瀬委員長
猪俣浩三君。
猪俣浩三
57
○猪俣
委員
私どもは、
警察
の任務が重大であり、かつその心労の多いことも、よく察知しております。その本来の任務を尊敬しないわけではございません。しかし、
警察
はその本来の任務を十分に果すことが望ましいのでありまして、私どもの心配するところは、近ごろ
警察
がいわゆる思想
警察
的な
活動
をなされ始めたのじやないかと思われることであります。今回公表せられましたる
警察手帳
の
内容
を点検いたしますならば、これは
警視総監
がるる説明なさるけれども、とうてい納得はできない。私は十分間の時間でありまするがゆえに、これに対して、あなたと徹底的な議論をしたいのであるが、これは許されないが、これはいかにあなたが強弁をたくましゆうしても、この全体の記事を見るならば、これは特高であります。一体今回
学生
が
警察官
に反発を感じまする中心の課題はどこにあるか、これはスパイ的態度である。いつとは知らず
教室
の中の
集会
に入り込む、尾行をやる、身元調査をやる、こういう不明朗なるスパイ
活動
に対する反感であります。そこでこれは思想、
警察
に転化する際には、かような
警察
が隠険なスパイ的行動をやるようになることは、必然のことであります。終戰前における幾多の例が、これを証明いたしておる。私はこの
警察
が思想
取締り
方面に乗り出して来ることに対しましては、日本の民主主義完成の上から、実にゆゆしき大問題だ。これは
ポポロ劇
団がどうだの、公安
条例
の
取締り
がどうだのという問題じやない、
警察
全体の性格、あり方、これがやがて民主国家としての日本の性格をかえることになる。今あなた方が
警察
吏員をして行わしめたような、この
警察手帳
に書かれておりまするような行動を四、五年前におやりになり、今日あなたがここで証言するようなことを、四、五年前にあなたが言明したとするならば、あなたはさつそく首が飛んだであろうと思う。時代がはなはだ右旋回したがために、そうして多数党諸君の声援に送られて、あなたは得意にな
つて
おられるようであるが、これはとんでもない
考え
間違いだ、日本の運命を破壊することになります。私はこれを衷心から心配する。あなたは、一体終戰前どういう任務をやられてお
つた
か、よくわかりませんけれども、日本の特高
警察
なるものが、いかなる運命を日本に与えたか。これはマッカーサー元帥が
昭和
二十二年九月十六日、
警察
の理念に関する書簡を、時の総理大臣に送りました文章の中に、はつきりしておる。「戰前十箇年間における日本の軍閥の最も強大なる武器は、中央政府が都道府県庁を含めて行使した思想
警察
及び憲兵隊に対する絶対的な権力である。これらの手段を通じて、軍は政治的スパイ網を張り、言論、
集会
の自由、さらに思想の自由まで弾圧し、しかして非道の圧制によ
つて
個人の尊厳を失墜せしめるに至
つた
ものである。日本はかくてま
つた
く
警察
国家であ
つた
。」と、マッカーサー元帥が指摘しておる。この精神にのつとりまして、
警察
法なるものができたのであ
つて
、
警察
法第一条を知らぬじやないかと、私は本
富士警察署長
に言いましたのは、この
警察
法の立法精神、これは議会における
委員会
の審議によ
つて
も明らかだ。思想
取締り
のごときことを想定して、この
警察
法ができておるのじやない、ま
つた
く思想
取締り
のごときことは、
警察
は触れてならぬということで、この
警察
法の第一条ができておる。
警察
法は、個人の権利と自由を保護するためにできておるということが、この
警察
法に横溢した一大思想であります。これに対しまして、あなた方がや
つて
おることは、何であるか。
政令
第三百二十五
号違反
であるとか、公安
条例
違反であるとか、その
取締り
のために当然やるべきであると称しまして、
私服
の警官をひそかに変装して
——
「
学内
各部屋の出入りについて服装等の変装について」ということも、ここに書いてある。そしてなおまたそれについて見ますると、十二月の二十三日、二十七日、こういうところには、
東大
内密行と書いてある。何で密行というのか。(笑声)なおそのほかに、進歩的
教授
と思われる人たちの身元調査をみなやらしておる。あるいはまた中央
委員会
の
委員
四名を尾行しておる。しかもこの身元調査によれば、山之内一郎
教授
のごときは、これは「大塚署より」と書いてあるから、きつと大塚署より調査を頼まれたのではないかと思われる。なお、あなたはそんな思想動向なんというものじやないと言われるけれども、ここには「コグチイイチ」と書いてあるが、これは「オグチイイチ」の間違いだろうと思う。東洋
文化研究
の世界的権威の学者であります。この小口偉一氏に対して、経歴、思想動向、背後
関係
、交友
状況
その他を調べておる。思想動向を調べておる。かようなことをや
つて
お
つて
、だんだん思想
警察
的特徴を発揮して来ておる。かようなことに対しまする
学生
の反発であろうと思う。 そこであなたに私はお尋ねするが、先般来のあなたの答弁を聞いておると、今回のこの不幸なる
東大事件
なるものに対して、すべて非は
学校
ないし
学生
にあり、
警察官
には何らの落度もないような御答弁であるが、はたしてしかるか、これを第一にお聞きする。
田中榮一
58
○
田中参考人
今回の
事件
は、要するに
ポポロ劇
団に四人の
警察官
が
入場券
を買
つて
入り、そしておとなしく見てお
つた
ものを、いきなり
学生
がこれに暴行いたしまして、それに端を発して今回の
事件
が起
つたの
であります。
従つて
私は、今回のこの
事件
は、非は
学生
側にありと、かように
考え
ております。
猪俣浩三
59
○猪俣
委員
いかに無謀なる
学生
といえども、何らの動機、原因なしにさような行動をとるものであるかどうか。あなたは長い間
警察官
として、それがわかりませんか。なぜそういうふうな
警察官
が入
つて
おることに対して……(「
暴力
を
認め
ることになるじやないか」と呼び、その他発言する者あり)黙れ。
警察官
の番犬みたいなことをやるのじやない。
佐瀬昌三
60
○
佐瀬委員長
静粛に願います。
猪俣浩三
61
○猪俣
委員
私は
警視総監
に質問しておる、君らに質問しておるのじやない。それが言論の
暴力
だぞ。 そこで、そういう静かに見てお
つた
警察官
に対して、
学生
がもしかりにさように憤激したならば、それは一体どういう原因から来ておると、あなたは見ますか。
田中榮一
62
○
田中参考人
お答えいたします。話を聞きますと、従来も
学内
におきまして、映画会があ
つた
そうであります。その際には一般の観衆も全部入場料をと
つて
入れておるそうであります。その際に、
警察官
も入
つて
、静かに観覧をさせてもら
つて
お
つたの
であります。ところが、今回はなぜこうな
つた
かということにつきましては、これは私らの想像でありまするが、
学生
が
警察官
に見られては困るものを見られたから、そこで
警察官
の
私服
だと言
つて
、大きな声でどなり、暴行を働いたのではないか。これは私の想像でありますから、あるいは実際そうでないかもしれませんけれども、見られてはならぬものを見られてしま
つた
ということが、
学生
の憤激といいますか、興奮した
一つ
の原因ではないか、私はかように
考え
ております。その当時、
学生
は、劇が終りましてから資金カンパをやろうということを言い出した。ところが、
私服
がお
つた
から、それつというので騒ぎ立
つた
ということも、私は聞いておるのであります。これは私の推量でありますから、間違いであれば
訂正
いたします。
猪俣浩三
63
○猪俣
委員
しからばあなたにお尋ねする。
私服
で静かに入
つて
お
つた
ものに対して、これが
警察官
だということが、どうしてわか
つた
か、それをお尋ねします。
田中榮一
64
○
田中参考人
四人の
警察官
は、相当長く
学校構内
にも出入させております。また
学校当局
に、
学生
課の方にも、あるいは
厚生部
の方にも、いろいろ連絡で参
つて
おります。
従つて
あるいは自治会の幹部、あるいは緑会その他各種
団体
の
学生
の幹部は、この
警察官
が本冨士署の
警察官
であるというくらいは、大体みな知
つて
おるはずです。
猪俣浩三
65
○猪俣
委員
それは結局において、始終この人たちが
学校
の内に出入りして、そうしてあらゆる
集会
に顔を出しておる。さようなことをや
つて
おるから、
学生
に顔を見知られたのであるし、それだから、いつも、だれかと言うと、すつと帰
つて
しまう。きようこそしつぽをつかまえなければならぬとというので、
警察手帳
を預かる問題が起
つたの
が真相だろうと思う。一体さような
学生
の自治的精神を汚して、そうして
政令
三百二十五号、あるいは公安
条例
と何らの
関係
のないようなことを、あるいは張込みだの、見張りだの、尾行だの、密行だのと、昔の特高
警察
がや
つた
と同じ言葉さえ使
つて
や
つて
おる、これに対する
学生
の憤激なんです。あなた方が、それをよくお
考え
なさらぬで、なおこれを強化するようなことになれば、不祥事は続くのです。一体
学校
と
学生
と、所轄
警察署
がかような反目をし、そうして紛攪を起しておることを、あなたはよいと
思つて
いるか、悪いと
思つて
いるか。
田中榮一
66
○
田中参考人
もちろん、
学生
と
警察当局
がかくのごとく対立する
状態
は、私は好ましからぬ
状態
と
考え
ております。 それから、先ほど特高
警察
云々の御発言があ
つたの
でありますが、現在の
警察
は、今猪俣議員の御朗読になりました、一九四七年九月十六日付でありましたか、マッカーサー元帥の、時の社会党の総理大臣に出しました書簡を根拠にしまして、現在の
警察
制度が
昭和
二十三年三月七日に新しく樹立されたのであります。
従つて
今日の
警察
は、猪俣議員の御指摘のような特高
警察
は、全然や
つて
おりません。何となれば、猪俣議員の方がお詳しいと思いますが、特高
警察
なるものは、大体思想
そのもの
を犯罪として取扱い、あるいはまた、思想
そのもの
を国家の政策に一方に統制しようとするような、権力をも
つて
これを強制するのが特高
警察
ではないかと私は
思つて
おります。
従つて
、現在の
警察
は、さような思想を犯罪として取扱
つた
り、あるいは思想を一方に統制するようなことは、絶対にできないことにな
つて
おります。また憲法においても、当然これは
認め
ざるところであります。いわんや、
警察
は、かかることは、いかなる場合においてもできぬことにな
つて
おります。
従つて
、現在は特高
警察
はないと、私は
思つて
おります。
猪俣浩三
67
○猪俣
委員
しからば、東洋
文化研究
所員の小口偉一氏の思想動向というものを
警察
が調べているのは、どうなんだ。
田中榮一
68
○
田中参考人
これは身元調査は……(「思想動向だ」と呼ぶ者あり)身元調査の中には、従来よくそういうのが入
つて
おりますが、あらゆる官庁から参ります身元調査、これは先ほど申しましたように毎日数百通のものが参
つて
おります。それにはいろいろ思想動向というようなものもあります。私は思想動向というものは、何もむずかしく
考え
ないで、その人のものに対する見方、
考え
方、その人の理想、希望、そうしたものを見るのが、これが思想動向でないかと思います。
佐瀬昌三
69
○
佐瀬委員長
猪俣君、時間が迫
つて
おりますから、簡潔に願います。
猪俣浩三
70
○猪俣
委員
あなたの言は、ますます奇怪です。奇怪なんだが、時間が迫
つて
いるから、これはこれでいいとして、他日またやります。 しからば、あなた方は職権に基いて人を
逮捕
することができるであろうが、二月二十一日に
福井
某なるものを
逮捕
されたときに、相当乱暴を働いておる。これに対して、食らいついたから歯が欠けたという、はなはだ人をばかにしたことを、本
富士署
長は言
つて
いるが、これはそれを見た無数な人が言
つて
いる。手かせ足かせをしてトラックのところまで引きず
つて
行つて
、顔面血だらけにな
つて
そうして前歯を打折られている。これは明らかである。これは刑事問題として出ましようが、一体こういう
権限
を
警視総監
は与えておるのかどうか、それをお尋ねしておきます。 なおついでにお尋ねする。渋谷の駅頭におきまして、やはり二十一日、東京
大学
の教養学部の
学生
が、
自分
らの同僚が六名ばかり拘禁せられておりますのを、釈放してくれとい
つた
とき、これは
警察官
がいきなり襲いかかりまして、西川正二という
学生
の後頭部を、逃げるやつを頭から警棒でなぐ
つて
、そうしてこういう重大な傷を負わせている。これは一体刑事訟訴法の第何条、
警察官
執行法第何条に基いてや
つたの
か、これを説明願いたい。診断書がちやんとここにあります。
田中榮一
71
○
田中参考人
私は犯罪
容疑者
の
逮捕
は、私が命ずるまでもなく、これは当然法の命ずるところに
従つて
、
警察官
が
逮捕
せなければならぬのであります。また
警察官
は、当然この
容疑者
に対して、もし
容疑者
が反抗した場合においては、
警察官
といえども、これを防ぐだけの権利は持
つて
おると
思つて
おります。
従つて
、かかる
容疑者
に対しまして暴行をするというようなことは、絶対に私はそういうことは言
つて
おりません。ただ御承知のように、犯罪
容疑者
逮捕
の場合、あるいは大衆
運動
を取締る場合におきましては、双方いろいろ興奮しております。
従つて
逮捕
あるいはそうした騒擾
取締り
、しずめの際に、双方が興奮しておりますので、
お互い
にたたき合いをするとか、あるいは乱闘になるということは、しばしばあ
つた
事件
であります。これは必ずしも
警察官
が故意でや
つた
とか、悪意でや
つた
ということはなかろうと思います。多数のものが混乱の中に、そういうことは往々あるのであります。私はそういうふうに
考え
ております。
猪俣浩三
72
○猪俣
委員
そうすると、混乱の中ならば、何でも手に持
つて
おらない
学生
を警棒でも
つて
なぐ
つて
負傷させても、それはさしつかえないということが
警察官
執行法のどこに書いてある。これは後頭部ですぞ。それはピストルかあるいは刀を持
つて
向
つて
来たならば、正当防衛ということもあり得ましよう。後頭部になぐりつけておるのですぞ。
警察官
執行法のどこに
うしろ
を向いておるものをたたきつけろということが書いてあるか。ここにその診断書がちやんとある。後頭部をなぐ
つて
いる。後頭部という点で、あなたは答弁しなさい。ちやんと
法律
によ
つて
警察権
を行使することは、あたりまえのことでしようが、
警察官
執行法の第何条に、この
うしろ
向きにな
つて
いるものの、後頭部をたたいてよろしいということが書いてあるか。
田中榮一
73
○
田中参考人
混乱の中にあ
つた
ならば、けがさせていいというようなことを
言つた
覚えはないのでありまして、混乱の中にあ
つた
ならば、両者興奮しておるので、
お互い
に知らざる間において、そういうことが往々あり得るということを申したのであります。その点につきましては、私はまだ事実を存じておりません。署長から
学生
が負傷したという報告を受けたことはないのであります。
佐瀬昌三
74
○
佐瀬委員長
猪俣君、最後の質問に願います。
猪俣浩三
75
○猪俣
委員
これは、私はずつと前に
警視総監
に質問した、人名まであげて、その負傷がどの
程度
であるかを質問したときに、そんなことはない、報告に接しておらぬとい
つて
、今日聞いてみてもまだ報告に接しておらぬと言う。一体こういうやり方がいいことかどうか。私はあなたの態度に対してはなはだ不満なのだ。
警察官
がや
つた
ことはみな正しいことで、そうして
学生
がや
つた
ことがみな不法なことであるという印象を与えるごとき、自由党の諸君の拍手喝采裏に堂々とあなたはや
つて
いる。その陰にこういうことが起
つて
いる。人権蹂躙、職権濫用が起
つて
いる。私は十日以前に質問しているのに、なぜ調査してないか。や
つて
もいいということになるのか。ちやんと私は
委員会
において質問している。
田中榮一
76
○
田中参考人
せんだ
つて
猪俣
委員
からそういうお
申出
がありましたので、さつそく渋谷
警察署
長に命じました。渋谷
警察署
長が、該当の名前を調べまして、
本人
に対し数回にわた
つて
、その点について一応お聞きしたい点があるから、本署に御出頭願いたいということを言いましたけれども、その人は、とうとういまだ本署に出頭がないのであります。われわれといたしましては、まだ取調べの方法ができないのであります。
猪俣浩三
77
○猪俣
委員
それは、あなたも深く
考え
てみなさい。私はそれを聞いている。どうして
警察
に出て来ないか、
警察
に行
つた
ら、そのまま豚箱に入れられてしまうかも上れない。全然身体の自由について保全感がない。
警察
に行くと何をやられるかわからないと、非常に恐怖心を持
つて
いる。それをよく反省しないといけない。終戰前の特高
警察
の方向を、もはや現わしている。それをよく反省していただきたい。 私はこれで終る。
佐瀬昌三
78
○
佐瀬委員長
平川篤雄
君。
平川篤雄
79
○
平川
委員
私は先ほど
警視総監
の
お話
を聞いておりまして、結論的にははなはだごもつともな
お話
だと思
つたの
であります。大体いろいろ複雑している問題である。一体今度の
東大事件
の原因がどこにあるかということにな
つた
ら、これは総長と
警察当局
の申しておりますことが齟齬しておりますように、やはり問題はあろうと思う。あろうと思いますが、ただいま猪俣さんの質問の中に出てお
つた
警察手帳
の問題であります。
警察手帳
をと
つた
ことが非常な
暴力
行為
であるから、中のものは問題にしないでもいいというやじでございますが、そういうやじというものは、私は話にならないと思う。やはりだれが見ましても、この
警察手帳
の
内容
というものは、思想
警察
的なものであるということは、私は事実だと思う。これはいわゆる
次官通達
の線を逸脱したものであるかないかということについて、ひ
とつ
はつきりあなたの御見解を聞かせていただきたい。
田中榮一
80
○
田中参考人
あるいは私が
言つた
言葉ではありませんで、他の人が
言つた
お言葉でありますか、私がさつき申し上げましたのは、
警察手帳
が多数の
暴力
で不法に奪取されております。しかもこの
警察手帳
に書いてある
内容
というのは、いずれもいろいろ機密な事項にな
つて
おります。
従つて
、
警察手帳
というものは、直属の上司以外には見せぬことにな
つて
おります。直属の上司に、あるいは
手帳
を見せろと言われたときに、初めてその巡査がその
手帳
を見せるということにな
つて
いる。
従つて
、私がいきなりその巡査の
手帳
を黙
つて
見ることもいたしておりません。
警察手帳
を見るときには、当然その巡査の承諾を得て見ております。かようなきわめて機密のものでございます。それを、しかも不法に
暴力
をも
つて
奪取して、それを法学部の
教授
が発表しても
支障
がないと
言つた
からとい
つて
、発表することは、まことに不穏当であります。
従つて
その不穏当な
内容
については、私はお答えすることはできません。お答えする必要はないと思う、かように答えたのであります。もう
一つ
は、その
内容
につきましては、先ほど猪俣議員から、特高
警察
をや
つて
いるという
お話
でありますが、私どもでは、特高
警察
は今ありません。現在の
警察
制度におきましては、特高
警察
のようなものは、全然ありません。
平川篤雄
81
○
平川
委員
私の質問をそらしてしま
つて
お答えにな
つて
おるのですが、それ以上のことは言われないでしよう。そこでお聞きしたいのでありますが、
ポポロ劇
団がやりました今回の劇全体を、
政治集会
と認定せられ、政治的の意図を持
つて
おるというふうに、しきりに声を大にして言われるのでありますが、その点について、私は、二、三質問をしてみたいのであります。 まず第一番に「
沖繩
より帰りて」ということが、総長とあなた及び本
富士署
長の陳述が違うのです。総長が言われるのには、観客席の中から立ち上
つて
演説を始めた、そこでたくさんな者がそれを制止しようとしてお
つた
ということです。ところがその点を総監も、それから署長も、どちらもはつきりはさせられていないのでありますが、総監のお言葉の中では、臨席してお
つた
警官は、騒音があ
つたの
で中身は聞き取れなか
つた
という。これは重大なことで、もし、舞台の上に上
つて
「
沖繩
より帰りて」という演題を掲げてや
つた
といえば、これは確かに主催者の中に政治的な意図があ
つた
と思われるだろう。ところが、中にお
つた
労働者風
の男が立ち上
つて
、観客はそれを阻止したという事実があ
つた
とすれば、これは
政治集会
と断定することはできないだろうと思う。そこを明らかにしてもらいたい。 もう
一つ
は、ただいま資金カンパをしようとしてお
つた
事実があるらしいということを言われたのでありますが、私が聞いておるのでは、この会は前に一ぺんや
つて
おる、
——
これは夜の部の
事件
であります。ところが前の部では資金カンパをや
つた
という事実は聞いていない。だから、もし資金カンパをやるようなことを初めから計画しておるならば、なぜ昼の部からやらないのか。あなたはどういう確信をも
つて
それを言
つて
おられるのか、それをひ
とつ
はつきりしておきたいと思います。
田中榮一
82
○
田中参考人
私がさつき
政治集会
であると申し上げたのは、「
沖繩
より帰りて」とい
つた
話の
内容
がもつとよく聞き取れたならば、私はもつと問題にな
つたの
ではないかと思います。ところが、幸か不幸か、いろいろがたがたして
——
もつと強い
意味
の
政治集会
であ
つた
かもしれませんが、しかしながら、その
内容
がまだ十分に聞き取れなか
つた
ために、私は政治的な意図のある
集会
ではないかと
考え
ておるのでありまして、私が
政治集会
とい
つた
とすれば、これは政治的意図のある
集会
ではないかということです。 それからいま
一つ
は、これも
ちようど
カンパを始めるようなかつこうをしたときに突然その問題が起
つた
ために、それがはつきりカンパにならなか
つた
。もしあのまま静かにしてお
つた
ならば、資金カンパが始ま
つた
かもしれぬけれども、始ま
つた
瞬間に騒動が起
つて
しま
つたの
で、あとのことはわからない、こういうように私は聞いております。
佐瀬昌三
83
○
佐瀬委員長
時間のことを申し上げますが、慣例に
従つて
質問の時間は十分間であります。答弁の時間は含みません。さよう御了承願います。なお全体として時間がないので、質疑も答弁もなるべく簡潔に願います。
平川篤雄
84
○
平川
委員
私が聞きました点で、
形式
的な点をみなそうしておいでになる。私は、これは時間がないので、あらためて聞きませんが、はつきりと私の申し上げたような形での確証をつかんでおられないものと
考え
ます。 次に、政治的な意図を持
つて
お
つた
ということは、一体どういうことなんでしようか。もし
松川事件
を扱う劇を主催するということにな
つた
ときに、あなたは脚本を検閲して禁止する
権限
がございますか。しきりに政治的な意図があるとかどうとか言われて、そこを声を大にせられるのでありますが、政治的な意図を持
つた
ものを許さないというのは、それは
学校
内の秩序として教育的に
考え
らるべきことであ
つて
、そのこと自体はちつとも悪いことではない。私はその点ははつきりさせておいていただかなければならぬことだと思う。
田中榮一
85
○
田中参考人
文部
当局
はどうかしりませんけれども、少くも私どもの
考え
では、大体
学問
の
研究
であるとか、
学生
自体の自治の
会合
であるとか、あるいは父兄会であるとか、
学校
運営の
会合
であるとか、あるいは
教授
会、
教授
の
研究
会であるとか、そうした少くとも直接、間接に
学校
に
関係
のある、政治的意図とは全然
関係
のない
集会
が、
学校長
におまかせされているわけなんです。従
つて学校
内においてのいわゆる
政治集会
というものは、私どもとしては
学校長
の
措置
する
建前
としてはおまかせしてない、また
学校
内においては
政治集会
が行わるべきでない
建前
であるのではないかと
考え
ております。
平川篤雄
86
○
平川
委員
そこで一番重大なところにな
つて
来るのであ
つて
、さつき
お話
のあ
つた
ように、この
松川事件
は、ま
つた
く政府がでつち上げたようなことにな
つて
おる、これについてはいろいろ批判があるだろうということを言われました。私も、実はそれは同感です。そういう批判も、
大学
というようなところで行われるこうした
集会
だからこそ、
認め
てあるのであ
つて
、これが一般の大衆の中で、はなはだ害悪を及ぼすようなことがやられたら、これは
考え
なければならぬでしよう。しかし、その分でさえも、ただいまでは禁止されていないのであるから、あなたにそういう点を特に強く取上げられて理由にされるかのような意図が見えるのは、私は非常に不穏当だと思うのであります。 その問題はそれでおきまして、次に、先ほど、
大学
というものがあらゆる治安が混乱した原因にな
つて
おると、田嶋
委員
から言われたのでありますが、私は寡聞にして、さようなことがたくさんあるとは知らないのであります。しきりに治安の盲点ということを言われますが、実際に
大学
の
構内
というものが治安の盲点であるという具体的な数字的な事実がどこにあるかということを、もう少し明らかにしてみなければいかぬと思う。私は一昨日署長に聞いたのでありますが、すりとか窃盗とかノビとかいうものが行われて、それが三百何件、二割七分何厘かあるというが、これは
大学
の
構内
という
一つ
の地域の中に行われる犯罪である。二班にわけて警邏が始終あるというのに、これが犯罪をなくすることができないというのは、明らかに
警察署
長の怠慢であ
つて
、
学校
はパトロールなんかというものを禁止しておるわけでも何でもない。さようなものを取上げて、これが
大学
の秩序を乱す、あるいは盲点であるというようなことを言うのだ
つた
ら、あのとき申し上げましたように、東京都内にある売笑婦がいる十七箇所の赤線区域、これこそほんとうの盲点です。
学生
自体の良識に訴え、あるいは教育の効果に訴えて、そうしてなるべく
警察権
なしに秩序を守
つて
行こうということであるならば、これは当然教師と
学生
の間にある秩序に
関係
したものである。私はそういう点で、はたしてどれだけ治安の盲点だといえるような事実があるかどうか。ここが焦点でありますから、ここを明らかにしなければいけない。 その次に、
ビラ
のこともしきりに言われるのでありますが、
大学
の
構内
は、御承知でありましようが、山があ
つた
り谷があ
つた
り、そうして
教室
もそれぞれわかれており、階段も普通の大きなビルディングのようなわけにはな
つて
いないのであります。そういうところで、
ビラ
まきが非常にたくさん行われておると言うが、あなた方がパトロールをふやして、それを十分の一なり、五分の一にする御確信がおありになるかどうか。実際
ビラ
まきというものが、きのうから何度も言われており、あなたもそういう点をしきりに強調しておいでになるようでありますが、私は、それは
学生
以外の組織の使命を帯びた者がや
つて
来ておるのであ
つて
、これは総長にしつかり処分なさいということを一昨々日も申し上げた。そのように、これは外から出て来る秩序の撹乱者であります。あなたは
大学
の中で、どのくらいパトロールをふやせばそういうものを絶滅することができる御確信がおありになるか。私は、むしろそれよりも、かように
次官通達
の
内容
をいじく
つた
りなんかして、默
つて
勉強しておるいわゆる自由主義的な多くの
学生
を
警察
の敵にまわすということの方が、よほど秩序を混乱させるもとだ、こう思うから、これをお聞きしておきたいのであります。
田中榮一
87
○
田中参考人
一昨々日署長が申し上げましたのは、
学校構内
において犯罪がどの
程度
に行われているということを申し上げたのでありまして、われわれが治安の盲点があるというのは、一般犯罪、すり、どろぼうが行われている、それが防げないから治安の盲点になるという
意味
ではないのであります。むしろそれよりも、国家の前途に大いに憂うべきいろいろな
フラク活動
であるとか、または不穏な
ビラ
がまかれるとか、そうい
つた
不穏な計画が
学校構内
に行われるのが
取締り
できないことが治安の盲点になる、かように署長も申し上げたと思いますし、私もさように
思つて
おります。 それから、将来パトロールをふやして
ビラ
を防止できるかということでありますが、パトロールは、
ビラ
とかなんとかいうことよりも、一般犯罪の方でありまして、現在
学校構内
のパトロール員をふやすことは、現在の定員の配置から見まして、全然できぬと
考え
ております。
佐瀬昌三
88
○
佐瀬委員長
平川
君、時間がありませんから最後の質問を願います。
平川篤雄
89
○
平川
委員
最初に総監の言われた
次官通達
についてのお
考え
には、私は全般的には結論的に賛成だと申したのは、そこであります。私の申し上げたいのは、この
事件
そのもの
は、率直に
考え
てみて、
警察側
にも
学校側
にも手落ちがあ
つた
と思います。どうしても教育の効果というものにある
程度
たよ
つて
の一種の紳士協約でありますから、その方法をも
つて
や
つて
行くことが、
学園
の秩序を守る上に一番いいことである。角をためんとして牛を殺すようなことがあ
つて
はならないと
思つて
、発言しておるわけであります。どうか慎重な態度でお臨みくださるように私は希望する次第であります。
田中榮一
90
○
田中参考人
先ほど一言申し落しましたので……。私は何回も申し上げる通り、現在
東大
であろうが、どこの
大学
でありましようが、
学生
の大部分というものは、それぞれアルバイトまでして、苦労して
学問
の
研究
をや
つて
いる人ばかりでありまして、ほとんど全部善良な
学生
だと
考え
ております。ただ、中に、ごくほんの一部分、
学生
の身分を忘れた、少し軌道をはずれた行動、政治
活動
をする者がありますので、その点について注意をした方がいい、かような
意味
でありますから誤解のないようにお願いいたします。
佐瀬昌三
91
○
佐瀬委員長
速記をとめて。 〔速記中止〕
佐瀬昌三
92
○
佐瀬委員長
速記を始めて。加藤充君。
加藤充
93
○加藤(充)
委員
時間が制限されておりますから、簡單に要点だけ質疑したいと思います。 先ほど
警視総監
は矛盾したことを言
つて
いる。それは、思想調査をや
つて
いる、いろいろや
つて
いる、だから思想調査をやるのはあたりまえだと言うが、思想調査をや
つて
いるという事実は、や
つて
いることのあたりまえだということを決して正当づけていないという点が一点。それから思想調査をや
つて
おらないと
言つた
こともあるようでありますが、はからずも明らかにされた
警察手帳
の記載の
内容
から見て、思想調査をや
つて
いないということはうそであ
つて
、明らかに思想調査をや
つて
いるのであります。今度の
事件
で
手帳
がとられた、あるいは
手帳
の
内容
が発表されたことではからずも明らかにされた事実は、
警察官
が不法を働いているということであります。第一は、
警察当局
が
学内
の
学生
自治会、職員組合さらにキリスト教の平和の会、仏教青年会、セツルメント、音楽合唱団、バスの値上げ反対協議会などに至るまで、余すところなく長期間にわた
つて
調査しているということ、第二には、全面講和を唱えたり、あるいは戰争反対を唱えて、強く日本を平和で守ろうとする
教授
たちの身辺をうるさく内偵し、思想調査をや
つて
お
つた
という事実であります。山之内一郎
教授
、仁井田陞
教授
、飯塚浩二
教授
というような人たちを、何の必要があ
つて
思想調査や
つたの
か、思想調査をたくさんや
つて
いるというが、そのや
つた
目的を明らかにしてもらいたいと思う。
田中榮一
94
○
田中参考人
警察手帳
の
内容
のことについては、先ほど申し述べましたごとくに、発表さるべからざるものが発表された、
機密事
項をか
つて
に発表されたものでありますから、その
内容
について一々お答えする責任は持
つて
いないと思います。
加藤充
95
○加藤(充)
委員
非常に危険だと思う。今まではそういうことは当然だからやらしてお
つた
んだ、思想調査というものはや
つて
もかまわない、や
つて
いるんだと言
つて
、たまたま思想調査というものがここに明らかにな
つて
来れば、その
内容
は私は言いたくない、こういうようなばかなことでは、責任の地位にあるあなたの答弁とは思われないがどうなんです。
——
それじや言葉がないのは問答に詰ま
つて
弁解の言葉がないと承知して次の質問をするが、あなたはパトロールを
大学
構内
に二地域にAとかBとかにわけたというが、ここにあなたに聞かなければならないことがある。それは茅根という巡査の十二月二日の
手帳
の
内容
である。「都学連大会AM一〇・〇〇中委より約五名、里村、柴が尾行、つづいて二名赤門より徒歩、三丁目公衆電話で約十分話し徒歩お茶の水、省線三タカ下車、二・〇〇より
東大
はり込み、四・三〇伝外から帰
つて
くる。五・三〇安仁二食にて食事してからお茶の水より帰る」というのですが、三鷹の駅の方まで尾行したりするようなこと、あるいは里村、柴という両巡査が尾行したというのであるが、これは二つにわかれた
東大
の
学内
のいわゆるパトロールに属するのかどうか。
田中榮一
96
○
田中参考人
里村、柴両巡査は、パトロール巡査ではありません。本
富士署
の
警備係
の
警察官
であります。
加藤充
97
○加藤(充)
委員
そうすると、パトロールのほかに四名の巡査が始終長期間にわた
つて
スパイを働いてお
つた
ということになる。先ほどのあなたの答弁では、二月二十日の
ポポロ劇
団の上演に入場した四名の巡査は楽しみに入
つた
、ところがどうも四名も束にな
つて
通りがかりの劇団や芝居小屋に入るというのは、職務の形態は明らかである。そんなことが正当化されてたまるものかという攻撃でも来ては困ると
思つて
、そこは職掌柄入
つた
というのであるが、四名もの警官が、映画館だから入
つた
、劇団の上演だから入
つた
というのではなくして、
手帳
の
内容
と比べてみれば、明らかにこれはスパイ
警察
をや
つて
いた、特高
警察
をや
つて
いたということがわかると思います。あなたがどんなことを言
つて
お
つて
も、尾行、張込み、内偵、密行、身元調査、思想
関係
調査、こういうような手口は、明らかに特高
警察
ではないか。そういうやり方は明らかに禁止されておる。巡査が脱法、違法の不届きな
行為
をやらされてお
つた
ことを明らかにしていると思うのであるが、その点はどうです。
田中榮一
98
○
田中参考人
先ほどお答えしましたごとくに、現在の日本においては、ある一定の思想を持つことは犯罪であるからいかんとか、甲の思想に国民を集中せねばならないというような法規もなければ、またそうい
つた
思想
そのもの
を取締る必要もないわけであります。憲法によ
つて
いかなる思想でもみんな許されておる。
従つて
警察
が思想を中心にして
取締り
をする必要は毛頭ないわけであります。尾行とか張込みとかがあ
つた
からとい
つて
、今の
警察
が特高
警察
だということは、これは非常に論理が飛躍しておるのではないか現在でもいろいろの場合において
警察
は尾行、張込みをや
つて
おります。必要があれば尾行、張込み、密行、何でもや
つて
おります。
加藤充
99
○加藤(充)
委員
あなたは部分的に言われる。気負い立
つて
答弁するから、それではもう一回聞くが、さつきの問題だ。山之内一郎、仁井田陞、渡辺一夫、飯塚浩二とい
つた
ような
教授
の思想調査をなぜや
つた
。
田中榮一
100
○
田中参考人
ひ
とつ
さつきの答えをも
つて
答えにしていただきたいと思います。
加藤充
101
○加藤(充)
委員
都合の悪いことは答えない、答えるすべを知らないのだと思うから押問答はいたしません。あなたは先ほど
次官通達
に誤解を受けやすい箇所があると言われたが、誤解を受けやすい箇所というのはどういうところであるか。
田中榮一
102
○
田中参考人
誤解を受けやすいと申し上げましたのは、
学校構内
の
集会
、示威
運動
、示威行進の
取締り
は
学校長
の
措置
にまかせるのを
建前
とする、また
学校長
の
要請
ある場合においてのみ
警察
がこれに協力する、こういう文面に今な
つて
おる。そこで
学校当局
の御主張としては、この条項からしていかなる
警察官
——
パトロールとかそういうものは別として、
警備
上の必要によ
つて学校
に入る
警察官
も、一々これによ
つて
要請
がなければ入れないのだ、こういうように誤解をされているので、私はこの点が文面上誤解を招きやすいのではないか、だからこれを明らかにした方がいいのではないかと
言つた
わけであります。
加藤充
103
○加藤(充)
委員
誤解を受けやすいと言われたから、文面上明確を欠く文字でも使
つて
あ
つたの
かと思
つた
ら、文面上はまことに明確である。ただそれをその通りやると
警察官
としてのあなたの方では都合が悪いということが、誤解を受けやすい箇所があるということだとはつきり了解をされました。それでお尋ねするのですが、そうするとあなたの言うことは、当時の
次官通達
の
内容
は明確にされてお
つて
、
解釈
上わかれる余地のないものであるが、
警察
取締り
の上から見て都合が悪くな
つた
から、それがじやまだからということにな
つて
、それでそれをそのままにしておいてもあなたの都合のいいようにやれれば、
次官通達
はそのままにしてよろしいというような論理を正直に聞きますと、結局あなたの方は次官
通達そのもの
の文章や何かをほつぽりつぱなしにしておいて、あなたの都合のよい、一方的な
警察
の処置に
大学
当局
は屈服しろというようなことにしたいというのが、あなたの
次官通達
をどうするかという
措置
についての見解だと了解するが、それでいいですか。
田中榮一
104
○
田中参考人
お答えしますが、都合が悪いから直すとか、そういう問題ではないのであります。将来両者の間に再びこのような問題が起ると、こうや
つて
皆さんの方にも非常に御迷惑をかけることになるのですから、なるべくそういうようなことのないように、この条文をはつきりした方が、双方のためにいいのじやないか、かように
考え
ているのです。
加藤充
105
○加藤(充)
委員
あなたの
考え
方はあなたの
考え
ですが、それでは
次官通達
というものが死文に帰してしまうと思う。それでそういうふうなあなたの
考え
はよくわかりましたが、結局そうすると、二月二十日に二十五番
教室
で行われた
ポポロ劇
団に、いわゆる四人ものパトロール以外の巡査が入
つた
。そしてその連中がや
つて
いることは、明らかに従来の特高思想
警察
、こういうようなことをやり、そして今答弁はないけれども、数名のいわゆる進歩的あるいは平和的な
教授
というものの思想調査をや
つて
いる。こういうのが結局
事件
の発端でありまして、明瞭でなか
つたの
は、
次官通達
ではなくて、あなたがそういうことに便乗して、そうして結局
大学
の自治権を侵して、
警察官
が
次官通達
に反して入
つた
ということが、問題の発端だと私は理解せざるを得ない。 〔
委員長
退席、押谷
委員長
代理着席〕 大体において、あなたはいろいろなことを言いますが、
大学
の自治、こういうようなものは、日本においても世界においても、歴史的な沿革と背景を持
つて
いるものなのであります。それは教育の重要な本質であ
つて
、單に治安とかなんとかいう
警察
措置
の対象だけの問題ではないのです。それをしいて
警察
の範囲にとどめよう、あるいはそこで強行的に優越的な地位をとろうと
警察
がやることが、非常に問題だと思うのです。それでしかもあなた方は袋たたきにな
つた
と言うが、悪い者が入
つて
袋たたきになるというのは、あたりまえな話であります。しかもそれに籍口して、
次官通達
があいまいだ
つた
からと言うが、聞けばまことに文面は明確である。それを無にしてしま
つて
、さらに最近の新聞論調や言説を聞きますと、自由党あたりでは
大学
の学長を任免制にしてしまわなければいけないというようなやり方をして行くという、まことにこれは盗人たけだけしいにもほどがあるとわれわれは
考え
る。たとえてみれば、スパイが入り込んで、見つか
つて
、
手帳
が証拠にとられた、こういうようなことにな
つた
。それはしかたがない。身から出たさびである。それを取返すのに、翌朝武装警官を差向け、武力で押しかけるというのは、
ちようど
昔の仁義の言葉で言うならば、古めかしい言葉で言うならば、荒神山の血煙の博徒かならず者のむし返しを、
暴力
にかけて、ピストルと鉄かぶとで押しかけたというようなものでしかない。
大学
事件
の本質というものはそうだと思うのであります。その点はどうですか。
田中榮一
106
○
田中参考人
警察官
が
警備
上必要な場合において
学校構内
に入ることは、私は
次官通達
を破
つた
こととも何とも
考え
ておりません。また
ポポロ劇
団にちやんと三十円の金を払
つて
お客さんとして入
つたの
であります。これは私は何にも悪いことをしたのではないと思う。何も悪いことをしない者をぶんなぐ
つて
、顔につばをひつかけるなんて、これはどつちが悪いか、だれに聞いた
つて
、
学生
側に責任がある、私はこう
考え
ます。
押谷富三
107
○押谷
委員長
代理 加藤君に申し上げますが、お約束の時間が迫
つて
おりますので、お急ぎを願います。
加藤充
108
○加藤(充)
委員
田中
総監の答弁は、いかにも袋だたきにあい、包囲されて、もう抵抗の余地がなくな
つた
状態
に乱暴を働かれたと、再三今まで言
つて
来たが、きようはピストルをぶら下げている
警察官
、
警察手帳
を持
つて
いる
警察官
の面子上、面と向
つて
たんを吐きかけられるというようなことで黙
つて
おられるかというように、
警察官
の根性の問題、だからああいう
事件
が起きた、だからそれを取返しに行くのはあたりまえの話だ、というふうに持
つて
来たと思う。ところがあなたは今の答弁で矛盾している。
次官通達
の文面はまことに明確である。あなたは誤解を受けるような箇所があるから、これを
訂正
したいと言うのである。ところがあなたの答弁は、その誤解を受けやすい箇所というのは、それなりに受取
つて
も、それは客観的な事実であ
つて
、
解釈
が両方に立
つて
いるのである。しかもかりにあなたの立場で、たとえば今まで本
富士署
がや
つて
いたように、
大学
の
学園
の自治、
学問
の自由という沿革、背景にのつと
つた
取扱いをしておれば、ああいう不祥
事件
は起さなくとも済んだと思う。あなたは
次官通達
が誤解を招きやすいということを言いながら、しかも
大学
の自由、
学園
の自由という中には、沿革と背景があることを無視して、一方的に権力で押し入
つた
ということ、これ自体が問題である。すなわち
警察
自体が問題を起してしま
つたの
だということを、明らかにあなたの答弁が物語
つて
いると思う。こういうやり方は、
大学
の自由という問題は、私はお説教をしたり、なまいきなことを言うつもりはないが……。
押谷富三
109
○押谷
委員長
代理 加藤君、約束の時間が参りました。
加藤充
110
○加藤(充)
委員
これは歴史的な文化史上の意義を持
つた
ものである。これは決して
大学
だけの問題ではないのである。これは古い
大学
の自由をひもどけば、あの明治の二十五年かに、天皇の神聖をおろそかにしたというようなことで、追放された
教授
が
大学
にお
つた
。また滝川
教授
が
昭和
八年に
大学
から追放された……。
押谷富三
111
○押谷
委員長
代理 加藤君に申し上げます。質問の要旨を言
つて
ください。時間がありません。
加藤充
112
○加藤(充)
委員
問題は、これは決して
大学
の自由、あるいは
学生
だけの問題ではたく、
教授
だけの問題ではなく、
研究
、
学問
だけの問題ではなくして、これは全日本の民主主義と平和を守る人々の共通の問題である。現に朝日なんかの新聞記事を見ても、国が
大学
を創設してから八十年、学長の任免に文部大臣が干渉した例は、京大の滝川
事件
での鳩山、
東大
長与又郎総長当時の荒木両文相だけで、いずれも
大学
の自由を破ろうとして破りきれなか
つた
。これからの第三次世界大戰のますます苛烈な、情ない肉弾にかり立てられる戦争をやるとき、荒木文相すらもやりきれなか
つた
、あのファッシヨのやり方、しかもそれに失敗をしながら……。
押谷富三
113
○押谷
委員長
代理 加藤君、君の宣伝演説をやめなさい。質問の要旨を言
つて
ください。
加藤充
114
○加藤(充)
委員
大学
の自由を打破
つて
、日本を全部戦争にかり立てる思想の現われだとわれわれは理解するが、あなたはそういうふうな歴史的
意味
というものをこの
事件
の中に見てと
つて
、先ほど来の答弁をや
つて
いるのかどうか、その点を最後にあなたの責任として聞いておきたい。
押谷富三
115
○押谷
委員長
代理 加藤君、時間を四分経過しておりますから、やめていただきます。
田中榮一
116
○
田中参考人
いろいろ仰せになりましたが、結論として申し上げますと、加藤
委員
と私の見解とはま
つた
く相違しておると
思つて
おります。
押谷富三
117
○押谷
委員長
代理 質問の通告順によりまして、
石田一松
君。
石田一松
118
○
石田
(一)
委員
私はこの際今調査の対象にな
つて
いる今回の
東大事件
の範囲をあまり越えないで、事実問題としてひ
とつ
聞いてみたい、こう思うのであります。そこでこの問題にな
つた
いわゆる直接の原因といいますか、四名の本
富士署
の警官が
私服
で
東大
の
ポポロ劇
をや
つて
いる会場に三十円の入場料を払
つて
入
つた
。この入
つた
ことが職務上入
つたの
であるか、それとも單に
娯楽
を求めるために入
つたの
か。それともただいま総監の述べられたように
娯楽
ばかりで入
つた
とは私も思わぬ、がしかしだれでも入れるように
入場券
を売
つて
いたので入
つたの
だ、こういう御答弁だ
つた
と思うのですが、私はその御答弁の中に、先般のこの
委員会
で本
富士署
の署長が
娯楽
の目的で入
つた
と言
つたの
は間違いであ
つて
、よく調べてみたら、入
つた
警官自身もそうでないと言
つて
いたから、あれは間違いであ
つた
から、総監を通じて
訂正
してもらいたい、こういうことです。そこでそれがそのままに
委員会
でもとられたのか、
訂正
が
認め
られたのか、それを議題として今その問題から発展して質疑応答が繰返されているのですが、私はこの際この
委員会
で、他の
参考人
が述べた参考
意見
というものが、直属の長官か何か知りませんが、かわ
つた
立場の人が出て、こういうことを言
つて
来られたから、あれは間違いであ
つた
から
訂正
しますとい
つた
ことで、それが議論の根拠にな
つて
、ここで論じられるということについては、いささか割切れないと思うのですが、この点は
委員長
にも聞きたいのです。しかも四人の警官がはたしてどういう目的で入
つた
か、このことが最も大きな問題で、これさえ解決すれば、この問題はそれほど大きな問題じやないと思うのですが、もう一ぺんはつきり本
富士署
の署長がこう言
つたの
は間違いであ
つた
とかなんとかいうのではなくして、
警視総監
としてのあなたは、直接四人の警官にお会いにな
つた
そうですから、その事情を聞いた上で、あなたが知
つて
いらつしやるところをひ
とつ
お聞きしたいと思うのです。
田中榮一
119
○
田中参考人
お答えいたします。この四人でありますか三人でありますか、私は詳しく確かめてないのでありますが、その日の午後ですか、
大学
の
厚生部
の方へ出頭いたしまして、本日開催される
ポポロ劇
というものは一体どういうものでありますかという
内容
を聞いたところが、いやこれは
松川事件
をまねした
——
松川事件
とは言いませんけれども、
松川事件
をまねしたある
事件
を脚色したものだ。そこでその行
つた
警察官
はぴんと来たわけですね。これは普通の戯曲とかそういうものでなくして、やはりこうした
松川事件
というような思想的背景を持
つた
事件
でありますから、当然これは思想的背景を持
つた
劇であるということは、もう巡査としてもピンと来た。そこでその後どうだろうかということをいろいろ心配してお
つたの
ですが、たまたまその前を通
つた
ところが、
入場券
が売られてだれでも入れるというので、それじやひ
とつ
見てみよう。ただ
学校
では
純然
たる劇であるという話であるから、あるいは劇であるかもしれぬ、あるいは思想的背景を持
つた
劇であるかもしれぬ、見てみようというような気持で入
つた
と思います。そこで私は率直に申しますが、これは
警備係
の巡査ですから、やはりそうしたピンと来た
事件
については、職務執行上からも入
つて
みたいという気持は当然あると思う。だからこれは劇も見たかろう、同時に
自分
の職責上多少疑
つて
いるから入
つて
見てやろう、こういう気持があ
つた
ろうと思う。その点が職務上入
つた
と言えば当然職務上入
つた
と言えると思います。
石田一松
120
○
石田
(一)
委員
私もただいまの答弁で、多分そんなものだろうと思うのですが、ただ私がちよつと不審に思いましたのは、この四人の警官が、一応
厚生部
で聞いて、
松川事件
を劇化したものだということを知り、ピンと来たということは、ああこれは政治問題だなと、こう来たのでしよう。それで入
つた
。その入
つた
こと自体は、先ほどお述べになりました文部
次官通達
のいうところの、この四人の警官が入ろうとするときに、
学校当局
に対して、ただ單なる文化的な劇だということであるけれども、聞けば
松川事件
が劇化されておるという話なので、一応
警察側
としても参考に見ておきたいから、ぜひ入ることを一応了承してくれとお述べにな
つて
——
許可
を得るというのではありませんが、そうした
話合い
の上でこの四人の方がお入りになる方が正しいので、職務上であるのに、
私服
でそつと入
つた
ということが、どうも私には割切れないのですが、この際そういう場合に
学校当局
と了解ずくで入るというようなことは、ただいまの文部
次官通達
からは想像できないものでございましようか。
田中榮一
121
○
田中参考人
今
石田
議員のお述べにな
つた
ように、
警察官
が
厚生部
へ
行つて
、じやあ私も入らしていただきますと言
つて
も、
学生
が主
催し
ておるものですから、
厚生部
がよろしいと
言つた
から入
つて
よいということは私は言えぬと思います。そこでこれははつきりした話ではないのですけれども、巡査から聞いた話によりますと、じや先に
行つて
ください、われわれもあとから参りますと、
厚生部
の人がこう
言つた
というのです。従来も映画などはしよつちゆう新しい映画や芸術的な映画が
学校
でも催されておるのです。そういう際に割合に安いものですから、
警察官
なんかも、教養の
意味
もありましようし、新しい映画はやはり見たいという気持でも
つて
、ときには入場料を払
つて
入
つて
おるわけです。
従つて
そういうような例がありましたから、四人の
警察官
も従来と同じような軽い
意味
で私は入
つた
ろうと思います。ですからその際に入らしていただきますと、
厚生部
の方に断
つて
、
厚生部
がよろしいと言えば、一応
形式
的には
学校
の了解を得たと言えますけれども、従来の慣例から言いまして、そういうことはないようでございます。
石田一松
122
○
石田
(一)
委員
ただ私はこの四人の警官が、一般に切符を三十円で売
つて
いたから、この
入場券
を買
つて
入
つた
ところに、何かこの四人の警官の作為がある、こう思うのです。むしろこれは切符を買わないで、四人の警官が警官であるということの身分を明らかにして、
厚生部
なりあるいは
学校当局
なりに話して、入
つて
もいいか悪いかということを話して、いろいろな議論も出るでしようけれども
——
ただただいまの総監の答弁では芸術映画等については、今まででも
警察官
として割合にいい映画で安く見られるので、教養の点からも入るようなことがあるとおつしやるのですが、しかしこの問題は
松川事件
だからピンと来たという言葉があるからには、これは教養になるからという
意味
で入
つたの
ではないでしよう。そうでなければ、この三十円の切符を買
つた
ところに、何か祕密に一般人にまぎれ込んで入ろうというところの気持があ
つたの
ではないか。私はそこに誤解が生れる大きな原因があると思うのです。 〔押谷
委員長
代理退席、
委員長
着席〕 さてそこで私は直接警官に会
つて
、そのときの心情を聞かなければわかりません。総監の問題じやないからこの質問は切上げます。 ただここでちよつとお聞きしたいのでございますが、先ほど総監は、
ポポロ劇
なるものは
純然
たる演劇
研究
とか、または演劇
活動
ということには
考え
られぬ、少くともこれは
政治集会
である、こう言われたのです。しかもこれをもう一言総監は
文化活動
ではないとおつしや
つたの
ですが、この際私はそういう方面にも
関係
を持
つて
おりますので、一ぺん
取締り
当局
の御
意見
も聞いておきたいと思いますが、
純然
たる演劇
研究
まだは演劇
活動
と、そうでない演劇の形を持
つた
、今総監がおつしや
つた
政治集会
というものとの区別、しかもこうした
松川事件
とかなんとか、実際にあ
つた
社会事象をシナリオあるいは脚本にして、これを演劇に組んだ場合、これが思想の背景を持つというようなことで、
純然
たる演劇でない、あるいは演劇
活動
としてはみなされないとおつしやるのか。この判然たる区別というものは、この際聞いておかないと大きな問題だと思うのです。この点についての総監の所見をひ
とつ
……。
田中榮一
123
○
田中参考人
先にちよつと一言申し述べたいと思いますが、
警察官
は今の
ポポロ劇
に別に教養とか、そういう
意味
で入
つたの
ではないと思います。これはやはり一応そういうものを聞いたときに、もう一ぺんに思想的な背景があるとピンと来たものですから、それでひ
とつ
入
つて
みよう、こういうふうに私は見ておるのです。それから今の
純然
たる演劇とそうでないものとの区別というものは、これはなかなかむずかしいと思うのです。今ここで問題にな
つて
おりますのは、政治的意図のある
集会
ではないかと
認め
るのは、もちろん
松川事件
を取扱
つた
演劇
そのもの
もあるいはそうではないかと思うのですが、むしろわれわれが言
つて
おりますのは、その前にいろいろな演説をや
つて
おるのです。それが政治的意図を持
つた
宣伝をした
一つ
の
集会
ではないか、こういう
意味
なのであります。われわれは演劇
そのもの
を言
つて
おるのではない。しかしこれも
考え
ようによ
つて
は、私は政治的意図のある演劇とみなされるおそれもある、こういう
意味
でございます。
石田一松
124
○
石田
(一)
委員
そこで私がお聞きしたいのは、この
東大
の
教室
あるいは講堂でそうした、今総監の言われるような政治的意図を含んだような、いわゆる
純然
たる演劇
活動
、演劇
研究
でないものをや
つて
はいけないのでありますか。聞くところによりますと、
学校当局
の
許可
を得て、ちやんと手続をふんでや
つて
いるのですが、それをや
つて
いけないのか、いいのか。や
つて
いいものだから許されて
学生
がや
つて
いたものだが、そのや
つて
いいものに対しで、これはちよつとおかしいというので中に人
つて
みなければならぬということになると、何だかどうにも了解できないことも生れて来ると思うのですが、この点はどうでしようか、
学内
でや
つて
いいのか悪いのか。
田中榮一
125
○
田中参考人
ちよつとお尋ねしますが、今の御質問は、政治的意図のある演劇をや
つて
はいけないか、こういう御質問でありますか。
石田一松
126
○
石田
(一)
委員
それをや
つて
いけないか……。
田中榮一
127
○
田中参考人
私は政治的意図のある演劇にしたところで、これは
学校長
の
許可
を得たということになれば、これは
警察
としては一応
学校長
にまかしておりますから、一応
学校長
の責任においてや
つて
おるのではないかと思います。ただこういう観点から、一般にそうしたものに公衆が入り得るということになりますと、これはむしろ
政治集会
といいますか、
政治集会
になるか、あるいは一般公共の
場所
における
集会
ということになりますから、当然公安
委員会
の
許可
を受けねばならぬ、こういうことにな
つて
います。そういう
意味
において、これは当然
警察官
は
取締り
をせねばならぬ、こういうことになります。
石田一松
128
○
石田
(一)
委員
そういたしますと、今総監ももちろん御存じでございましようが、たとえば古い映画ではイタリアの映画で「無防備都市」、オープン・シティというものがございましたし、また「ヨーロッパの何処かで」というのもありましたし、また最近ちよつと日本の問題にな
つて
いるのでは、何とかいうお医者さんが非常に正義感を持
つて
や
つて
いる映画が出ております。これは宣伝になるかもしれませんが、これらの今日本の映画館、劇場で行われている映画演劇で、国民の思想に影響しない政治的な、要するに知識の進歩と発達とか、あるいはまたその行き過ぎを是正しようとかいう、そういう政治的あるいは国民の思想的に影響を与えない映画とか演劇とか、またわれわれのや
つて
いる演芸というものがあり得るかどうかということが大きな問題なんですが、あなたのお
考え
だと、今の一般の演劇、演芸、興行も政治的な意図を持
つた
ものとしてこれが何か
取締り
の対象になるように聞えますが、これはいかがですか。
田中榮一
129
○
田中参考人
私は「無防備都市」でありますか、
お話
のようなものを見たことが一回ございますが、やはりあれは映画の芸術的作品といいますか、文化的作品だと思います。それでそういうものはわれわれの方としては別に
取締り
の対象にならないのでありますから、今言われた映画にしましても、演劇にしましても、これは自由に一般公衆が見てもさしつかえないと
考え
ております。今の御質問は、
ポポロ劇
が政治的意図があるから
警察
はけしからぬ、と
思つて
いるようにおとりにな
つて
いるが、そうではないのでありまして、その前のいろいろの演説その他が政治的意図がある、こういうのでや
つて
おるのでありますから、この点ひ
とつ
誤解がないように……。
佐瀬昌三
130
○
佐瀬委員長
時間が迫りましたから、簡単に願います。
石田一松
131
○
石田
(一)
委員
簡単に言います。これは私の見解なんですが、
警察手帳
の
内容
というものは署長でも、あるいは
警視総監
でも、直接にこれを調べることができぬ、
本人
の了解がなければ見られぬという秘密事項であるものを公表されたのは遺憾である、こうさつきおつしやられたのでありますが、なるほどそれほど重要なものであれば公表されたことは遺憾であると思うのです。しかし私の
考え
では、あの
内容
が公表されていて、それでさえ現在この
状態
であるということを
考え
たときに、あの
内容
が発表されなか
つた
ら、それこそこれは
学生
、
学校側
はま
つた
く完全の敗北にな
つて
いた。要するにちよつとそれは遺憾ではございましようけれども、これが発表されていて、この
程度
であ
つた
ということを
考え
ましたときに、私はこういう問題についてひ
とつ
総監の御
意見
を聞いておきたいと思います。それは先ほど総監が
福井
とかいう
学生
が警官にその当日
たんつば
を吐いたとか、なぐ
つた
とか、そういうことを聞いて、
警視総監
は憤懣やる方ない、こういうことをおつしや
つたの
です。私はこんなことをしたことが事実ならば不都合千万ですが、要するにこれらの警官あるいは
警察署
長というものの一番上に立
つて
これを
監督
指揮なさる
警視総監
が、この
委員会
において
たんつば
事件
をおつしやるときに、憤懣やる方ないと言
つて
、痛憤の極を現わす最高限の表現をして、憤激してこれを弾圧しなければならぬというような表現を用いられることは、これはいささか軽卒ではないか、こう思うのです。ちよつと冷静を欠いていると思うのです。 それともう
一つ
、そのとき総監がおつしや
つたの
は、一人の警官は
手帳
を返してくれと強引に言
つて
わび証文にも署名しなか
つた
。しかも
学生
側があす返すからこれに一応あとの事情もあるから署名してくれと
言つた
ら、そのとき署名した、そういうことが
一つ
あ
つた
。そうすると三人のことはどうか知りませんが、少くとも一人だけは
学生
側との了承の上に、あす返すからとにかく一応わび証文を書いてくれ、そしてあす返すというので了承して帰
つた
が、約束の日のあすの十二時にな
つて
も返しに来ないから、多数の
威力
、
暴力
をも
つて警察手帳
を強奪したものであるというので
逮捕
に向
つた
というのでありますから、これはいくらここで抗弁してみたところで、聞いてみたところで、先ほどの答弁以上には出ないと思いますが、もう
一つ
、そこへ警官が入
つた
ことが原因したというのに、四人の警官は
警視総監
に呼ばれて、しかも今後を督励されて、それで大いに職務をやれとい
つて
、さながら警視総官から金一封でももらいそうな、表彰をされるような形でありながら、その対象とな
つた
学生
は新聞なんかの報ずるところによると、足をしばられたり、手錠をはめられたり、前歯が折れたり、顔は血だらけにな
つた
りして、トラツクで
警察
へぶち込まれて、お医者さんも呼んでもらえない人が、この
手帳
の問題で、強盗か何かのような刑法上の罪で、これを
検察
庁に送ろうとしていらつしやるような空気が見られるのですが、両者をこういうふうに扱うことについて、総監としては、これは不公平である、こういうふうにお
考え
になりませんか。
田中榮一
132
○
田中参考人
いろいろ御
意見
がございましたが、この際誤解を解きたいと思うのです。
警察手帳
が一時までに返
つて
来なか
つた
から
逮捕
したということは全然ないのでございます。
逮捕
状は、その翌日早朝から
検察
庁の方へ行きまして
逮捕令状
をと
つて
おります。これはなぐ
つた
という事実だけでも
つて
当然
逮捕
できるのです。それで
警察手帳
がかりに一時に返りましても、当然令状でも
つて
福井
君と
千田
君は
逮捕
せねばならぬのです。これは
警察手帳
が返る、返らぬは別問題として、当然
逮捕
しなければならぬと
思つて
おります。 それから私も実は
東大
出で、せんだ
つて
も
学生
諸君四、五人と会
つた
ときも、先輩と後輩とであまりおかしいじやないか、こう
言つた
ところが、一人の
学生
が、総監は高等
学校
はどこですか。私は八高だ。ぼくも八高ですよ。こういうことなんです。われわれとしては、
学生
の気持というものは十分いろいろ
考え
ております。われわれは無用に
学生
を刺激するとか、あるいは感情的にやるとか、そういうことは絶対にしたくない。また部下にもそれだけは十分言いまして、冷静にそのことを
考え
なければならぬ、かように
考え
ております。
石田一松
133
○
石田
(一)
委員
最後に私は……。
佐瀬昌三
134
○
佐瀬委員長
時間がありませんから、これより文部大臣の御
意見
を伺います。大野文部大臣は五時二十分までしか時間が許されませんから、その範囲内において質疑応答を願いたいと思います。 天野文部大臣には、教育基本法第八条に、政治的
活動
の制限が、
学校
においてはされておりますが、この
学校
の中に、教職員のほかに
学生
生徒を含むかどうかが第一点。第二点には、
大学
の自治の限界と治安との
関係
について御
意見
をお伺いしたい、かように
考え
ております。なお簡單に御説明願
つた
上で、各
委員
からこれに対する質疑があるはずでありますから、これに対する御答弁を煩わしたいと思います。
天野貞祐
135
○天野国務大臣 教育基本法は、精神的にいえば、やはり
学生
をも含むものと
解釈
しております。 それから
大学
の自治ということは、もつぱら
学問
の
研究
、
教授
ということにありますけれども、その
学問
及び
研究
の自由ということが成り立
つた
めには、その基盤としてやはり
学校
教育の自主性ということがなければなりませんから、そういう
意味
の
大学
の自治ということは確保されなければならないというふうに
考え
ております。
佐瀬昌三
136
○
佐瀬委員長
委員
より質疑の通告がありますから、これを順次許します。
眞鍋
勝君。
眞鍋勝
137
○
眞鍋
委員
大臣は時間がないらしいし、私も実は病後で遠慮してお
つたの
でありますが、私の教育に対する質疑は、昨年原稿をつく
つて
、深く筺底にある。さきに大臣の手元まで渡した東洋精神文化の再建論をお読みくださ
つた
ら、大体わかるだろうと思うのですが、この前と二日にわた
つて
参考人
を呼び、あるいは他の
委員
から
意見
の開陳がありまして、私は静かに聞いてお
つた
が、私は
大学
は三たびや
つた
。
従つて
学問
の自由とか、あるいは
学園
の自治については、これらの人と同じく、尊重しなければならぬことはもとよりであります。私も
大学
出で、すなわち最初英文料を出、政治科に学び、法科を卒業し、東西両方の
大学
に籍を持
つて
いるという
関係
上、
従つて
、この問題に対して公平率直に申し上げますが、いずれ結論を出さなければならぬと思う。この
東大
の問題についても、大臣は必ずやお
考え
があると思う。私はこの間総長のお活も聞き、
学生
の話も聞いて、静かに判断をしました。およそ日本に生を受けた者としては、
大学
が悪く行けば……という者はおよそ一人もあるまいと思う。私は
自分
の母校として、
大学
を出たその感想を言
つて
みるならば、知事と同じで、総長はまだまだ公選はだめだと思う。どうしても官選でなければならぬ。私の尊敬する大塚博士のごときも、決して公選にならなか
つた
。公選あるために、知事と同じことで、つまり知事もその通り、官選であ
つた
ならば知事にならない人が公選なるがゆえに知事とな
つて
、そうして毒を流しておる。この前総長の話を聞いて、私は
学園
のために非常に嘆いた。かくのごとき人間が総長なるがゆえに、こんなことが起るのだ。
東大
を初めとして、京大でも、多くの膏血をしぼ
つた
国民の犠牲によ
つて
成り立
つて
おる。国民の税金によ
つて
成り立
つて
おるところの
東大
、京大を初めとして、官立
大学
がかくのごとく思想的に堕落してしまうのは遺憾である。しこうして矢内原氏の話を聞いて、先刻申し上げた通りに感慨無量である。
従つて
文部大臣としては、
大学
をいかに経営して行くか、この総長をいかにして行くか。これは御参考に供したい。私は今日の教育を一言にして言えば、社会問題と称しながら、あるいは歴史も断片、地理も断片であ
つて
、
学生
に聞いてみたならば、徳川時代やら、鎌倉時代やら、奈良時代やら、わかりません。要するに地理も歴史も断片的であ
つて
、ほんとうに系統立
つた
教育をしていないからだと
考え
る。
従つて
これらの地理、歴史に系統を立てて
——
私は英文科である。政治科も英語でやるし、法科も英法である。英語は十何年や
つた
が、一年か二年、いわゆる東洋の文化、子曰くでありますが、それをや
つた
経験からして、六年の間に日本が喪失したところのバツクボーンというものは、東洋精神と申しますか、日本の精神文化、これを再建しなければだめだと思う。この日本文化再建の上から、すでに衆議院は、東洋の精神文化の再建ということについて決議案が通りました。請願は参議院を通るし、衆議院も通
つた
が、いまだ実行しないから、ここに初めて決議案なるものがせんだ
つて
通
つた
。先刻廊下において学術局長に会
つて
どうかと
言つた
なれば、学術局長は私の罰するところではない。関するところは中等教育の局長であるから、決して
自分
には
関係
がないと
言つた
が、これではだめだ。学術局長はどうしてもこの東洋の精神文化の再建に心を用いなければならぬ、いわゆるバツクボーンのなくな
つた
日本をいかにするかということでありまして、すでにせんだ
つて
決議案としてわが議会を通
つた
以上は、参議院でかれこれ言
つて
も大臣たるものは考慮しなければならぬと思うのでありますが、この点に対する大臣のお
考え
を聞いてみたいと思うのが一点である。
佐瀬昌三
138
○
佐瀬委員長
時間がありませんから、第二点の質問の
趣旨
を簡単にそこでお述べ願いたいと思います。一括して質問、答弁を願いたいと思います。
眞鍋勝
139
○
眞鍋
委員
どうぞひ
とつ
お願い申し上げます。
天野貞祐
140
○天野国務大臣 東洋文化をおろそかにしてはいけないという御
趣旨
は、私も賛成でございます。
眞鍋勝
141
○
眞鍋
委員
はなはだ簡単だから、私も簡單に言いますが、それはわか
つて
おる。大臣はすでにせんだ
つて
の文部
委員会
において
委員
の質問に対して、四書を知
つて
おられるか、四書を知らぬ人がいる。また政治とは何ぞやとい
つて
も、私は先年王道と覇道について質問したことがある。王道、覇道があるが、知らない人がこの議員の中にもあるいはあるかと思いますが、とにかく政治とは何ぞやといえば、ちよつと困るだろうと思う。それは見方によ
つて
違う。大臣は今簡単でありますが、重んずるなれば、重んずるように決議案に対するところの決意を促しておいて、私は学術局長にバツクボーンがあるとないとによ
つて
大学
の……(「本問題と
関係
がないじやないか」と呼ぶ者あり)
関係
があると思う。バツクボーンがないところの東京
大学
、かくのごとき
大学
がかくのごとき演劇をする。この決議案に対する文部大臣のお答えは簡單明瞭であるけれども、私は尊重する。
従つて
どうかその簡單であるこのあなたの御答弁を実行に移していただきたい、これだけ私は申し上げて、私は病気であるか。して質問は遠慮しているのだが、どうかひ
とつ
よろしくお願いいたします。
佐瀬昌三
142
○
佐瀬委員長
世耕
弘一君。
世耕弘一
143
○
世耕
委員
時間がありませんから簡單にやります。先ほど来
警視総監
並びうに
委員
の方で質疑応答があ
つた
ようで、文部大臣もお聞きの通りだと思いますが、私は結局今度の
事件
は
学生
を対象にして議論すべきじやないと思う。これは
学校当局
、文部省、
警視総監
、この間で論議すべきものだ。根本をきめて行かなければならぬ。まだこの子供は未完成なんだ。乱暴を働くこともありがちだ。また
警察
のあり方も
警視総監
の
意思
に反したことが往々にして現場で行われることもあるのです。その末節をとらえて論議するということは、あるいは必要かもしれぬけれども、今日一番大切なことは、自治の根本、治安の根本をどこでどう処理するかということが一番大切なことじやないかと思う。そこでこの際私は
大学
当局
の代表者すなわち学長、文部大臣と
警視総監
が十分御懇談して今後の憂いのないような処置をとることを私は要求したいと思う。この点について大臣のお答えが願いたい。 それから時間を節約する
意味
において要約して行きますが、火事と消防はつきものだ。火事があるから消防が出て来る。どろぼうがあるから
警察
がでて来るわけである。それで資本主義の
関係
から共産党というものが出て来るということは、これは確実に申し上げることができる。ところが残念なことには
大学
と
警察
というのは縁の遠いことだ。この縁の遠い
大学
と
警察
との
関係
が今日この議場で問題になるということは、これははなはだ遺憾千万であるといわなければならぬ。ここなんです。この間私はこの問題が起ると同時に、
大学
当局
は責任を感じて
警視総監
とも十分御懇談されたかということを聞いたところ、一向に正式に懇談がない。これははなはだ不都合な話だ。そうして子供が新聞に出したから
手帳
を取上げたの、どうのこうのとい
つて
いるが、これなどほんとうを言うと末節の問題であ
つて
、そういう不行儀な
学生
を育てた責任者をまず明らかにしなければならない。ここに私は重点があるじやないかと思う。
佐瀬昌三
144
○
佐瀬委員長
天野文部大臣から御答弁願います。
天野貞祐
145
○天野国務大臣
大学
総長と
警視総監
と私と三人でよく懇談をするということは、私も非常にいいと
思つて
、すでに総長ともそのことを話し合
つて
おりますから、近いうちにそういたしたいと
思つて
おります。 第二番目の責任ということは、これは責任があるとすればもう一言もございませんが、社会の問題にもなりましたので、今後よくそういう点を三者において協議をして、万全の道をと
つて
行きたいという
考え
方であります。
世耕弘一
146
○
世耕
委員
私はいつでも申し上げるのだが、赤い卵を産むのは赤い鶏がいるからで、卵ばかり責めてもしようがない。至るところに鶏は産みつぱなしにする。その赤い鶏をどう処置するかということが、すべて文部大臣として重大なることであると思う。かように
考え
ますからこの点を御考慮を願
つて
おきたい。
佐瀬昌三
147
○
佐瀬委員長
なるべく簡潔にお願いいたします。
世耕弘一
148
○
世耕
委員
それからまたこれは
学園
の中に
警察
が入
つて
けしからぬ、と大きに騒いでおるようでありますが、
学園
の中に
警察
が入るように
学園
をこしらえたということもこれは責任問題が出て来る。おそらく
警察
の方も近ごろ忙しいので
学園
まで手が届かない。ところが必要があるから
学園
まで入るじやないか。
講義
の
内容
を調べたからこれは特高
警察
だと気にしておるようだが、特高
警察
けつこうじやないか。それに対してなぜ言いたいかというと、ソビエトを見てみなさい。ゲー・ぺー・ウーという実にもつと気のきいた
警察
制度があります。むしろ治安の確保を完全にしようと思えば、ゲー・ぺー・ウー式の
警察
の活躍をどしどし要求する。それを、いや特高
警察
がどうだとか、そういうことを言う人自体が、私は少し思想的に変じやないかと思う。しかもその思想
取締り
ということは、文部大臣がお望みならば
——
もちろん私もそういうことは申し上げたくないが、この間申し上げたように思想の酔つぱらいがある。この酔つぱらいは取締らなければなるまい。それが
大学
の中にあるかもわからない。しからばその点を明確にしなければ、今度の問題は私は片づかぬとかように
考え
ております。 それから最後に一点お伺いいたしますが、学長の官選論が出ておるようであります。私は官選、民選必ずしもここで文部大臣から御返事を伺おうとは存じませんけれども、
一つ
の
学園
内で学長を選挙しなくちやならぬという狭い
考え
で選挙をしないで、広く学長の人材を天下に求めるという方法があるじやないか。この
東大
なら
東大
だけの
学園
内で学長を選定し、あるいは選挙するという形でなく、
東大
にふさわしい人材を広く天下に求めるということは、私は
学問
の向上の上に必要じやないか、かように私は
考え
る。この点だけ一点御所信を伺
つて
おきたい。
天野貞祐
149
○天野国務大臣 御
意見
はまことにもつともと思います。私は実は京都
大学
の
教授
をいたしてお
つて
、そういうことを主張したこともございますけれども成り立ちませんでしたが、現にそういたしておる
大学
もございます。
佐瀬昌三
150
○
佐瀬委員長
上林
山
榮吉
君。
上林山榮吉
151
○
上林
山
委員
文部大臣に二、三お伺いいたします。昨日から
警察当局
、
学生
側、それから
大学
当局
からいろいろと話があ
つたの
であります。そこでただいま文部大臣をお呼びしてわれわれは質疑を試みるわけでありますが、まず第一に伺いたいことは、
ポポロ劇
団の
内容
が政治色を帯びておるということについてお
考え
にな
つた
ことがあるかどうか。 第二点は共産党の
細胞
が
東大
内にあるということを知
つて
おるかどうか。さらにまた
団体等規正令
の違反になるような公認でない
団体
が、
東大
内にあるということを御承知にな
つて
おるかどうか。しかもこの共産党の
細胞
があ
つて
、不穏な
ビラ
が毎日のように無秩序に
東大
学園
内その他にまかれておるというこの事実、こうしたような政治色の
運動
が
東大
内に相当はびこ
つて
おるという具体的事実を、責任大臣として御調査にな
つて
おるかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
天野貞祐
152
○天野国務大臣 たくさん一度におつしやいましたので、しつかり覚えませんから、だんだん聞いていただきたいと思います。一番初めは、政治色があの
会合
にあ
つた
かどうかということでございますが、あれは政治的のものではないというふうに総長がお
考え
にな
つて
御
許可
にな
つたの
ですから、私も政治的ではないと
思つて
おります。
上林山榮吉
153
○
上林
山
委員
ポポロ劇
団の届をする場合は、政治色のないものとして
学校当局
は詳しく調べずにこれを
許可
したのであると、総長自身ここの席上で答弁しておられるのでありますが、聞くところによりますと、
松川事件
を取扱
つた
だけでも、やりようによ
つて
は政治色があるわけであります。しかも
松川事件
の報告の演説会があ
つた
。しかもその中に「沖縄より帰りて」という政治色を多分に持
つた
演説も行われた。こういうような事実があるわけでありますが、この点であります。 第二点は、聞き取れなか
つた
というから申し上げますが、
東大
学園
内に共産党の再建
細胞
、並びに
東大細胞
があるという事実を知
つて
おられるかどうか。さらにまた
東大
内に政治色を持
つた
、しかも
無届
の
団体
もあるといわれておりまして、
団体等規正令
に反する
団体
もあるといわれておるが、この
東大
の無秩序ぶりを実際に責任大臣として御調査にな
つた
か。單にあいまいなところの答弁をされる
矢内原総長
の言のみを信用されての御答弁であ
つて
は困るのであるが、あなたの責任においてしつかりとした御答弁を願いたいと思います。
天野貞祐
154
○天野国務大臣 第一の政治色という点ですが、政治的とは少し違
つて
政治色というように広く言われますと、その材料が必ずしも適当でなか
つた
ということは言えるのではないかと
考え
ます。 第二の
細胞
は、
矢内原総長
が私に現にもう
解散
してしま
つて
おるという話をしました。けれども
学生
などの間にも、いくらか少数の
学生
としては不適当な行動などをする者があるけれども、そういう人たちをば厳重に取締
つて
お
つて
、現にその
取締り
がよくなりつつあり、私も、
矢内原総長
が非常に熱心にやり、現によくなりつつある、またよくな
つて
来ているという事実は、これを信ずるものでございます。それから政治色を持
つた
無届
のものがあるということは、私は存じません。
佐瀬昌三
155
○
佐瀬委員長
簡單に願います。
上林山榮吉
156
○
上林
山
委員
時間がないので残念でありますが、どうも文部大臣はお人がいいので、
矢内原総長
の言葉だけを御信用にな
つて
おられるようでありますが、もう少し具体的に責任を持
つて
御調査になる必要があると私は思う。というのは
矢内原総長
も、共産党の
細胞
は一応
解散
したが、そういうものがあるかもしれない。しかも不穏な
ビラ
がまかれておることも知
つて
おる。ある
程度
戒告も与えておるが、
大学
の力だけでは十分にこれをなすことはできない、こういうふうに言
つて
おられる。あるいはまたこれは共産党系の
学生
だと思いますが、本議場で陳述をした中にも、共産党の
細胞
は
解散
したのであるけれども、あるかもしれない。こういうようなことを
大学
の
学生
もあるいは総長もこの席上で言
つて
いる。しかもこの不穏な
ビラ
をごらんになりましたか。まことに革命前夜を思わせるような、しかも
暴力
革命的準備をさせるところの問題を提供しておるのです。あなたはこの議場にあまりおられなか
つた
から、繰返して申し上げますが、
労働者
はドスをみがき始めた。日本の解放と民主的変革を平和的な手段によ
つて
達成しようと
考え
るのは間違いであるとい
つて
、武装革命の準備をせよという
ビラ
が
東大
内にまかれておる。こういう事実は明らかに
政治運動
なんです。
大学
当局
を信用されることもいいのでありますけれども、もう少し責任の府としてこういう具体的な事実をお
考え
にならないと、往々にして世間に誤り伝えられるのであります。この点をあなたにお尋ねしたいのであります。 第二点は、
次官通達
というものは言うまでもなく
法律
ではない、紳士
協定
であるというふうに
考え
るが、この点はどうか。 さらにお尋ねいたしたいことは、
学生
の処分もわれわれは十分に行われておるかどうかはよくわかりませんが、
学生
の処分は処分として、
大学
当局
の責任をどうするのか。私どもは
矢内原総長
の言を信用するわけには行かぬ。あの人はこの議場で虚心坦懐でなか
つた
。そういうような
意味
から、彼は
大学
の非をかばうあまり、何と
言つた
かといいますと、社会もこういう
状態
じやないか、だから
大学
がこうあ
つて
もやむを得ないじやないか。しかし
自分
は
努力
をしておるけれども、
大学
自身の力のみでは、この
大学
の秩序というものは保つことはできないというように言
つて
いる。こういう点から
考え
まして、どういう見解を持
つて
おるか。ことにこうしたような
大学
が、
自分
の責任において
自分
の能力において、十分に自治をや
つて
行けないということは明らかであると思う。こういう点からいいまして、文部
当局
ができるだけ平和的にやろうとする心がけはわかるとしても、もう少しけじめをばはつきりした上での調整をとる必要があると思いますが、これに対する大臣の御答弁を求めたいと思います。
天野貞祐
157
○天野国務大臣 第一の点は
ビラ
のことでありますが、私は
ビラ
のことも総長から直接伺いました。それから
次官通達
は
法律
を執行するための
協定
でございます。それから処分のことは、そういう点について先ほども申しますように、よく
警視総監
のお
考え
も伺い、
大学
当局
ともよく相談して、公平に中正に善処したいと
考え
ておる次第でございます。それから最後に
大学
自治ということは、
矢内原総長
がどう言われたか知りませんが、
大学
を社会から切り離して
大学
だけで
考え
るというわけには行かない、この社会全体というものを背景に置いて
大学
をも
考え
なければならぬという趣意で申されたと私は思います。もしそういう
趣旨
であればごもつともなことではないかと思います。
上林山榮吉
158
○
上林
山
委員
どうも大臣の答弁は抽象的で理解に苦しむのであります。結論として申し上げますが、
大学
総長の責任はこのままでいいのか。
学生
は法を破
つたの
であるから、法の命令に
従つて
解決をしなければならぬと思うけれども、
大学
当局
には責任はないのか。生徒だけに責任を負わせて、総長みずからあるいは
教授
みずからは責任を負わないのか、負うとすればどういう責任をとらせるのか。それから第二点として申し上げたいことは、治安の最終的な責任者は文部大臣としてはだれだと
思つて
いるのか。この二点について明確に答弁願いたい。
天野貞祐
159
○天野国務大臣
学生
のしたことについては、当然私は学長及び
教授
は責任があると思いますけれども、その責任という概念が広い概念ですから、その責任をどういうように解するかということは簡単に述べられないと
思つて
おります。 それから治安の責任は
警察
の方にあると思います。
佐瀬昌三
160
○
佐瀬委員長
田中堯平君
。
田中堯平
161
○
田中
(堯)
委員
学者であり、またか
つて
は教育者であ
つた
文部大臣に、これはし良心的にぜひともひ
とつ
答えていただきたいのであります。 私がここで言うまでもなく、
学問
の自由、
大学
の自治というようなものは、これは近世史始ま
つて
以来、人類の総力をあげての闘いの結果、人類の
一つ
の財産として今でき上
つて
いるわけであります。それというのも人知が進み、社会が発展するその先端に立
つて
真理を把握するというそのためには、どうしても、もう絶対的なる自由が確保されなければならぬということでありますが、この点について文部大臣はどういう見解を持
つて
おられるのでありますか、まず第一にこれをお尋ねします。
天野貞祐
162
○天野国務大臣
大学
の自由というのは、先ほども申しましたように、これはドイツなどの古い伝統から来ていることですけれども、ドイツの
大学
などではこの
教授
の自由ですね、学ぶことの自由、そういうことをもつぱら言
つて
いるのであります。日本の言葉で言うならば、
学問
の自由ということが主にな
つて
いるのであります。ただそれを守る基盤として
大学
の自治というようなことが言えるわけだと私は
解釈
しております。ただ自治も先ほども申しますように、自治である以上は
大学
に責任があるということは当然のことで、自治だから無制限というわけでないということも申すまでもないことかと
思つて
おります。
田中堯平
163
○
田中
(堯)
委員
そこで最近の傾向はま
つた
くこの
学問
の自由、
大学
の自治という点について恐るべき
状態
にな
つて
来ていると思うのであります。
ちようど
昭和
の初期ごろ起きた
学問
に対する思想統制、教学刷新とかあるいは国体明徴とかいうようなことで、鳩山文部大臣のときにも
学園
に対する弾圧が行われたし、それからまた荒木陸軍大将が文部大臣にな
つて
も盛んに
大学
の自治を破壊したのでありました。そういうふうにしてとどの詰まりはあの愚かなる大きな戦争をおつ始めたわけでありましたが、ところが今、今日の様相を見るとやはり
学内
に、これはもうだれが何と言
つて
も明らかに特高
警察
的な手を伸ばして、
教授
の身元を洗
つて
みたり、
学生
の思想傾向、
教授
の思想傾向というようなことをみな探
つて
いる。こういうことに一体文部大臣としてどういう関心を持
つて
おられますか。これはよろしいのですか、悪いのですか。
天野貞祐
164
○天野国務大臣 先ほども申しましたように、
大学
といえども社会の外にあるわけじやなくて、社会の中にある。社会に非常にいろいろな不安なことがあれば、
警察
の方でそれに対して注意を払われるということも
警察
としては ごもつともなことかと思いますが、しかしそういうときにはよく
大学
当局
の了解を求めてからしでいただきたいという
考え
でございます。私自身は
学問
の自由を圧迫しようなんという
考え
は毛頭持
つて
おりません。
田中堯平
165
○
田中
(堯)
委員
去る二十日二十五番
教室
で
ポポロ劇
団の芝居があ
つた
ときに
事件
が起きたわけでありますが、これは先ほどの御答弁によれば、政治色を帯びた
集会
とは言えないというふうに言われた。ところがそういうふうな
集会
に対してさえも
私服
が四名も入
つて
来るというような
——
しかも一般の人が入れるように
入場券
を売
つて
お
つた
というのはこれはうそであります。これは
入場券
じやない、ただ家族や
学生
や……。 〔発言する者あり〕
佐瀬昌三
166
○
佐瀬委員長
御静粛に願います。
田中堯平
167
○
田中
(堯)
委員
この
学生
、職員、その家族ということがやつぱりこれは了解事項として入
つて
いるので、家族が招待されて入
つて
お
つた
事実はあるが、その家族のような
様子
をしてひそかに、これは明らかにもう秘密
警察
が中に入
つて
来る。これが発端にな
つて
あの
事件
が起きているのであります。お聞きしたいのは、こういうような
ポポロ劇
団の二十日の
催し
などにも、かような
私服
、
警備係
の刑事が入
つて
いるということ、こういうことは是認されますか。
天野貞祐
168
○天野国務大臣 先ほども申しますように、
大学
といえども社会の一部分なんですから、社会全体の動きから、
警察
の方でそういうことが必要とお
考え
になるなら、それも一理あるかもしれません。ただその際に
大学
当局
の了解を得てもらいたい、こう申すわけであります。
田中堯平
169
○
田中
(堯)
委員
さらにそれではその翌日二十一日には、前日の犯人を
逮捕
するということで
学生
一名
逮捕
されておりますが、数十名の
私服
と約二個小隊の武装警官が動員をされて
学内
に押し入
つて
おります。これは
大学
当局
にあらかじめの打合せも何もなしに突如入
つて
来ておりますが、これはもう終戰以後こういう例は全然なか
つた
と思います。それだけにまた将来の傾向に
一つ
の大きな示唆を与えると思いますが、こういうことは文部大臣としてどういうふうにお
考え
でありますか。
天野貞祐
170
○天野国務大臣 そういうことについても
大学
当局
と
警視庁
の方とよく相談をされれば円満に行くと思うのです。だから今後は、先ほども申すように
田中警視総監
も
学問
のことにはずいぶん御理解のある方ですから、よく私どもが話し合えば適当にできるという
考え
であります。
佐瀬昌三
171
○
佐瀬委員長
田中
君時間が迫
つて
いますから、簡潔に願います。
田中堯平
172
○
田中
(堯)
委員
ひ
とつ
私はおべつかなしに申し上げるのですが、今の閣僚中で文部大臣ほど良心的な方はないと思います。ぜひともこれは、
大学
の自治ということ、
学問
の自由ということが危機に瀕しておりますから、満身の勇をも
つて
このことに当られんことをお願いする次第であります。
佐瀬昌三
173
○
佐瀬委員長
平川篤雄
君。
平川篤雄
174
○
平川
委員
簡單にお尋ねいたしますが、大臣が御就任以来、この問題は小さな問題であるようであ
つて
、実は非常に大きな問題になりかけていると思います。私はいろいろな方面からの陳述を聞いておりまして、非常にわき道の問題が入
つて
来てこの問題を複雑にしているような気がする。実際はきわめて私は簡單な問題だと思う。こういう問題が政治的になりまして、そうしていわゆる
次官通達
がくつがえされあるいはよく伝えられているばからしい話でありますが、学長官選論であるとか法学部廃止論であるとか、かようなものが多少でも出て来るようなことにな
つた
ら、これは天野文部大臣はたいへんな目にあわれると私は思います。 そこで二、三お尋ねをしておきたいのでありますが、しきりにさつきもお聞きになるように、
ビラ
がまかれるとか、あるいはいろいろなことがあると言われるのであるが、そういうようなことならこの国会でも
暴力
ざたはときどきありますし、窃盗なんかしよつちゆうある。そういうことが起
つた
ときに、全部が
議長
の責任かとい
つた
つて
決してそうではない。これはまさに外部からさようなものがまぎれ込んで来たり、あるいはたまにある
暴力
ざたなんかは内部の問題でありますが……。 〔発言する者あり〕
佐瀬昌三
175
○
佐瀬委員長
私語を禁じます。
平川篤雄
176
○
平川
委員
私にはそういうような点が混同されておるということが、間違いのもとであるように思われる。先ほど
警視総監
もはつきりと言われておるのでありますが、
松川事件
を扱
つた
劇、
そのもの
は何らこれは政治的なものではないが、ただ「
沖繩
より帰りて」という演説やらあるいはカンパなんかが行われかけたということは政治的だと言われる。入る前にそういうことは予想していなか
つた
、
学校
自体もそれは知らなか
つた
でありましよう。要するに観衆の中から立ち上
つて
演説をした問題にすぎない。早く言えば国会内で窃盗が行われたのと同じことだ。そこで私は、文部大臣が
次官通達
の問題として取上げられるようなものではないと思う。ただその際に
警察手帳
をと
つた
り、
暴力
を振
つた
りしたというようなことはあるまじきことでありますから、一方的に処罰せらるべき問題だ、こういうふうにわけて
考え
るべきだと思うのです。それからもう
一つ
わけて
考え
なければならぬと思いますことは、
学問
の自由という問題が中心なのでありますが
——
これは政治的なものであるというので、刑事が
ビラ
を見てピンと来たというのです。ピンと来て、そうして
警備係
の職掌柄中へ入
つた
、こう言
つて
おるのです。さつきからしばしば文部大臣は、
学校
といえども社会の中であるから、こうおつしやいますが、これは違うと思うのです。というのは、現にその中に何かの犯罪が行われそうであ
つた
り、少くとも思想の
内容
を調べるという問題ではなくて、ある捜査であるとかなんとかいうような問題があ
つて
入るならこれは当然でありましよう。ところが單に政治的だというのでピンと来たから中へ入
つた
ということは、これがもうすでに
学問
の自由というものを侵害するもとになる行動であると思うのです。文部大臣はそれをどういうふうにお
考え
になりますか。
天野貞祐
177
○天野国務大臣 その点につきましては、先ほども申しましたように、そこに入るということも、
警視庁
の立場とすれば理由があるかもしれませんが、その際には、まず
大学
当局
に御連絡をいただきたい、こういう
考え
なのでございます。
平川篤雄
178
○
平川
委員
先日の新聞を見ますと、学長官選論というものが自由党の内部に起
つて
、大臣も究極にはその官選論へ傾いておられるという記事があ
つて
、実に私は意外であ
つたの
ですが、実際に文部大臣はさような気持をお持ちにな
つて
おりますか、この際お聞きしておきます。
天野貞祐
179
○天野国務大臣
大学
の総長を選ぶということは日本の長い伝統でありますし、
法律
的にも現在根拠がありますから、私は現状のままがよいという
考え
方でございます。
佐瀬昌三
180
○
佐瀬委員長
これより木村
法務総裁
の本件に対する御
意見
の発表を願います。特に
法務総裁
には、
大学
の自治と治安との
関係
についての御
意見
と、
大学
におけるいわゆる文部
次官通達
を白紙にもどして、東京都公安
条例
を適用するのがよいかどうかという点に対する御
意見
と、この二点についてお伺いいたしたいと思います。
木村篤太郎
181
○木村国務大臣 ただいまの
委員長
の御質問に対して私の
意見
を申し上げます。 私はもとより
学問
の自由ということは尊重しなければならぬという
考え
を持
つて
おるのであります。すなわち
学問
の自由とは、外部の勢力に影響せられずに、自由に真理を探求し、また事物を学習することが
学問
の自由と申すべきものである、私はこう信じます。この自由はどこまでも尊重すべきであるという確信を持
つて
おります。しこうして
学校
は、この
学問
の自由と教育の場であります。ことにこの
学問
の自由と、教育の場というものは中正なものでなければならぬという確信を持
つて
おります。教育基本法第八条を見ますと、
学校
は特定の政党を支持し、またこれを支持せざるための政治
活動
、教育並びに政治
活動
はこれをしてはならぬということにな
つて
おります。もとより当然のことであろうと思うのであります。つまり
学校
は何らの政治的勢力に支配されずに、
学問
、教育をして行くべき場でなければならぬ、万一ある党派のための支持
運動
をしたり、またはこれに反対するようなことを実際に教育したり、または政治
活動
をするようなことがあ
つて
は、
学校
の自治というものは許すべからざるものであると私は
考え
ておるのであります。 そこで現在の
東大
はどういうことをや
つて
いるか、これが問題であります。私の知る限りにおいては、
東大
におきましては、日本共産党の
細胞
があ
つたの
であります。またこれは
解散
いたしましても、秘密
細胞
があるということは明白な事実であります。これをどうするか。
学校当局
がこれを放置しておく。これを知
つて
放置すると、
学校当局
がみずから自治を放棄したものといわざるを得ない。これを知らずして看過するということになれば、
学校当局
の怠慢はなはだしいものであると私は信ずるのであります。そこで問題は、
学校当局
がはたしてかような政治
活動
を看過してお
つた
かどうかということに帰着すべきものであろう、こう
考え
るのであります。万一さようなことでありますと、たとえばある
学生
はある党派を支持し、ある
学生
はある派を支持し、収拾つかなくなるのであります。こういうことであれば、
学校
はほんとうに
学問
の自由というものが失われ、また自治というものがそれによ
つて
乱されるということは、当然言うをまたないのでありますから、
学校当局
といたしましては、はたしてこの点に対してどういう
考え
を持
つて
おるか、私はこれを学長に聞きたいのであります。矢内原君は私の畏敬せる学者としておりましたが、この点について率直に矢内原君に聞きたいのであります。そこで問題は、はたして
大学
においてほんとうの
意味
における自治が、実際に行われておるかどうかということに帰着するのであります。これは
学校当局
の責任が重大であろうと思います。もしもかようなことであ
つて
、ある党派の
細胞
活動
を許すことになりますと、事ははなはだ責任重大であ
つて
、学長の罪や軽からざるものと
考え
ております。問題は結局ここにあると信じて
疑い
ません。今後はたしてさような政治
活動
を
学校構内
において許すやいなや、またはこれを取締るだけの能力ありやいなやということが問題であろうと思います。
学校
においてその能力なく、またその
意思
がないとするならば、ここに大きな問題があるのであります。そこで帰着するところは
学校当局
にはたしてこの自治の能力ありやいなやということであろうと私は
考え
ております。ただいま申し上げました通り、現在におきましても共産党
細胞
が活躍するということの事実があるのでありますから、この点に対して
学校当局
がどういう処置をするか。もしもこれの処置をすることができないということであれば、
学校
みずからがその自治を放棄しておるのでありますから、これは問題であります。 そこで
学校構内
において公安
条例
を適用することが適当であるかどうか、この問題でありますが、
学校当局
の今後の態度いかんによるだろうと思います。はたして
学校当局
が今後かような分派的政治
活動
を十分に取締
つて
、ほんとうの自治を
行つて
行く能力があるとするならば、またその
意思
ありとするならば、何も好んで公安
条例
を強行するの必要はないと私は
考え
ております。結局問題はほんとうに自治をや
つて
行く能力ありやという問題に帰着する、私はこう
考え
ている次第であります。
佐瀬昌三
182
○
佐瀬委員長
法務総裁
の一般的な説明は終りました。時間がないので各
委員
の質疑は簡潔にお願いすることにいたしまして、順次これを許します。押谷富三君。
押谷富三
183
○押谷
委員
簡單に箇条書にして質問をいたします。まず第一に、先月の二十日の本郷果大の二十五番
教室
において
ポポロ劇
団がやりました劇の
研究
発表というあの事柄は、
学生
運動
あるいは事の
研究
とかいうような範囲のものでありますか。それともその範囲を逸脱して、
一つ
の政治的性格を帯びており、
政治運動
とも見られるような行動であるということが、前後の事情からも
考え
られるのでありますが、当日の
催し
は
学生
運動
の範囲内にあるか、あるいは政治
活動
の範囲内にあるかということについて、
法務総裁
の御
意見
を伺いたいと思います。
木村篤太郎
184
○木村国務大臣 私は
ポポロ劇
団の当日のことは、みずからそれに臨んだわけでありませんから詳細なことはわかりません。しかし報告を受けておるところによると、これは單純なる
学生
の芸術的、あるいは
研究
的
集会
とは
認め
られない、こう
考え
ております。
押谷富三
185
○押谷
委員
次にその会場におきまする
学生
と
警察官
の紛議の結果、
学生
が
警察官
に対して暴行を加え、あるいは謝罪文に署名さすとか、
警察手帳
を取上げるというような暴挙に出まして、しかもその
警察手帳
の
内容
を外部に抜萃書にして発表をいたしたのでありますが、聞けばこの
警察手帳
の
内容
を発表するにあた
つて
、
大学
の
教授
はそれぞれの立場から
研究
をして、このことは犯罪にならないからかまわないというこの
意見
から、遂に発表することに決したと聞いておるのであります。これは
学生
がや
つたの
ではなくて、
大学
の
教授
の一部がこれに加担をしておるという事実があるのであります。かようなことは職務の秘密を
暴力
によ
つて
漏洩をするという重大な結果を来すのであり、また野党の諸君はこういう
暴力
によ
つて
と
つて
来た取材をこの席上で堂々と読み上げて、鬼の首でもと
つた
ような態度でありますが、まことに醜い事柄だと思うが、
法務総裁
におかれてはかような
学生
の行動、あるいは
学校
のと
つた
態度は、たいへんな行き過ぎであるということをお
認め
になりますかどうかを伺いたいと思います。
木村篤太郎
186
○木村国務大臣 お答えいたします。私も
東大
において
学生
生活を送
つて
来た一人でありますが、
学生
がかような
暴力
を用いるということは実に悲しむべきことである。われわれの時代は断じてそういうことはいたしません。もしも警官に不当なことがあれば、堂々とみずから進んで
警察
に交渉すべきでありましよう。この民主主義平和国家を建設する途上において、
学生
が
暴力
を用いてやるということは許すべからざることである、
学生
は大いに反省してよろしい、私は卑怯だと思います。そして
教授
会において
警察官
の
手帳
発表云々ということは、これは私は
大学
教授
の
教授
会の権威を失うものと
考え
ております。これは
大学
の
教授
、よろしく反省すべし、こういうふうに
考え
ております。
佐瀬昌三
187
○
佐瀬委員長
時間が迫
つて
おりますから簡潔に願います。
押谷富三
188
○押谷
委員
この
東大
の内部におきましては、再建
細胞
であるとか、
東大細胞
とい
つた
ようないろいろ秘密組織があると聞いておるのであります。また現にいろいろな政治
活動
も行われ、また危険な文書が頒布されているという
状況
でありますが、
法務総裁
として、
東大
内においては現在治安が保たれていると
考え
られておるかどうか、この点を伺いたいと思います。
木村篤太郎
189
○木村国務大臣 私は先刻申し上げました通り、
大学
構内
において一党の分派的政治
活動
というものは許すべからざるものであると
考え
ております。これは
大学
の自治を乱すものであると
考え
ております。しかし治安の上においてこれはどうかと申しますと、これは私は
学生
も相当将来反省すべきものであろうと
考え
ております。そこで私は
学生
諸君に対して将来大いに反省して、真に
学生
の教育の場であることを期待してやまないものであります。治安の面から申しますと、必ずしも治安が乱れたとは私は
考え
ておりません。かようなことでも
つて
日本の治安が乱れるものでないと
考え
ております。ただ
大学
における自治がこれによ
つて
乱れたということは、十分に申し上げてよかろうというふうに
考え
ております。
押谷富三
190
○押谷
委員
現に
大学
の自治の力は非常に衰えており、そしてそこには相当危険な
活動
もあり、ある種の温床にもな
つて
いると言われているのでありますが、かような事態を前にいたしまして、
学問
の自由、
大学
の自治というものの限界と、
警察権
の調和、調整というものが最も必要なのであります。この立場に立
つて
、さきになされておる
次官通達
について、再検討をする必要があるのではないかと
考え
ますが、
法務総裁
におかれては、その点いかがなお
考え
をお持ちでありますか。
木村篤太郎
191
○木村国務大臣 私はおそらく今度の
事件
でも
つて
大学
の
当局
も
学生
諸君も反省するだろうと思いますから、この反省の経過を私は見て行きたいと
考え
ております。もしも反省するなれば、前の
次官通達
で十分に
大学
の自治を守り得るし、また治安の面からもこれでさしつかえないと
考え
ておりますが、私は今後の
大学
の
当局
並びに
学生
運動
の経過をま
つて
、その点についての裁断を下したいと
考え
ております。
佐瀬昌三
192
○
佐瀬委員長
加藤充君。
加藤充
193
○加藤(充)
委員
このたびのいわゆる
東大事件
で問題の中心にな
つて
おる
警察手帳
の全貌を、文字通り全部発表されておるのでありますが、これを見ると、里村巡査の
警察手帳
なるものは六月の二日が最初の日付であり、それから柴並びに茅根両巡査の
手帳
を見ると、十二月の二十七日あるいはことしの二月十二日ころまでのことが全部書いてあるのであります。詳細はやめますが、その記事の中には尾行それから張込み、内偵密行、思想問題
関係
の調査、それから身元調査というようなことが記載されておるのであります。しかも尾行の事例は、はるかに三鷹方面まで一
学生
を尾行し、あるいはまた明らかに数名の
教授
に対しては思想調査、身元調査等をや
つて
いるのであります。こういうふうなやり方並びにこの
内容
は、私どもは、明らかに過去の治安維持法下の思想特高
警察
のやり方だと思うのであります。こういう今御紹介しましたような記事
内容
から見て、これを特高
警察
の再現であるというわれわれの見解でありますが、その点についてまず総裁の
意見
を聞いておきたいと思います。
木村篤太郎
194
○木村国務大臣 私はそういうことのみをも
つて
特高
警察
の再現とは
考え
ておりません。この
手帳
の
内容
は私は見たことはありませんが、おそらく
警察官
において相当の理由あ
つて
や
つた
ことと私は
考え
ております。
加藤充
195
○加藤(充)
委員
これほど大きくな
つた
問題の中心に浮び上
つた
手帳
の
内容
を見ておらないでこの
事件
の
意見
を述べに出て来られた
法務総裁
は、はなはだ欠くるところが多いと思います。しかもこの点に関しましては、
田中警視総監
も、
手帳
の
内容
については触れたくないということで、一切の
意見
の開陳を拒否しております。しかし
田中警視総監
あるいは木村
法務総裁
がいかに答弁を拒否しても、輿論の常識としましては、これは明らかに特高秘密思想
警察
の再現以外の何ものでもないのであります。しかもこういうことをや
つた
問題の
警察官
の責任をそらして、そうしてそれから派生して出て来たところの
学校
のいろいろの騒ぎの責任を追究するというやり方は、これはきわめて卑怯下劣なやり方だと私は思う。 第二点にお伺いしたいのは、公安
条例
の問題についてですが、大阪にも
ちようど
これと類似の
事件
が、新聞では
警察
のわび状
事件
として起きました。一九四七年の夏ごろだ
つた
と記憶いたしますが、中之島の公会堂に、数名の巡査が
警察署
長並びに
警視総監
——
最高責任者の命令を受けて大衆の
集会
の中に入
つて
参りまして、発見されましたが身分を明さなか
つたの
であります。それでとうとう皆の前に引きずり出されて
——
暴行は加えられませんでしたが、皆が、不都合じやないかということにな
つて
、とうとう
許可
なしに スパイに入
つて
申訳なか
つた
という一札を入れた。ところがそれが強要罪あるいは脅迫罪ということで、気の毒にも、不法にも、一人の
労働者
が起訴されましたが、裁判の結果その
労働者
は明らかに無罪だということにな
つて
判決が確定いたしました。時節は違いますけれども、この
ポポロ劇
団の
東大
の二十五番
教室
に入り込んだスパイ、そうしてその数名の者からわび状をと
つた
という
事件
は、問題の本質はと
つた
方が悪いのじやなくて、とられるような所為をあえてした
警察官
の責任が重大であると思うのであります。しかもそれについて公安
条例
を云々いたしますが、昨年福岡の高裁においても、あるいは京都の地裁においても、全面的に
集会
の自由を禁圧するような
内容
を持ち、こういうような運営を持つ公安
条例
は憲法に反する、無効なものであるという判定が判決においておりておりますけれども、こういうことについての総裁の見解を聞きたい。
木村篤太郎
196
○木村国務大臣 公安
条例
の問題について福岡で云々と言われておりますが、私の最近聞くのは
——
これはあるいは間違いであるかもわかりませんから、はつきり申すことはできませんが、最高裁判所では、公安
条例
は憲法違反でないという判決をしたということに聞き及んでおります。
加藤充
197
○加藤(充)
委員
それはいつですか。 〔「そんなことを知らないのか、それで弁護士が勤まるか」と呼ぶ者あり〕
木村篤太郎
198
○木村国務大臣 最近です。
加藤充
199
○加藤(充)
委員
弁護士が勤まるか勤まらないかということより、
法務総裁
が勤まるか勤まらぬかの問題が、ここで問題にな
つて
いるのでありまして、どうも今の答弁も、はなはだ責任があるような、ないようなことであります。が……。
佐瀬昌三
200
○
佐瀬委員長
時間が迫
つて
おりますから簡潔に願います。
加藤充
201
○加藤(充)
委員
これははつきりした資料を出してほしいと思う。 それから人権の蹂躪の問題だという
意味
合いにおいて、このたびの
東大
の
事件
は関連があり重要だと思うから、最後に一点お尋ねします。いわゆる特高
警察
と深い関連のある特審というものは、
法律
上は
警察
でも何でもないはずであります。しかし彼らのや
つて
いることは、どんなひどいやり方でも、家宅捜索でも何でも、
警察
と同じようなことをや
つて
おります。たとえてみれば、日本共産党機関紙、その承継紙、同類紙一切の発行を無期限に停止することを命ぜられて、本職は内閣総理大臣より右
措置
の執行を委任せられた。よ
つて
右の
趣旨
を伝達の上、この
趣旨
を執行するという書付を持
つて
参りました。そうしてこの書付は、何ら家宅捜索というような
権限
を特審局員に与えているものでないことは、文言上も明らかであります。しかるに、その不法なやり方に対してこれを拒否する、この不当を抗議いたしますれば、傲然として彼らは公務の執行を妨害したるものとして、輩下に連れて来た
警察
の
実力
をも
つて
しよつ引いて行く実情でありますが、この特審局にこういう
権限
はどういう法的な根拠によ
つて
与えられておるものなのか、またそれが間違いであるとするならば、こういう処置をと
つた
特審局の責任を
法務総裁
はどうするお
考え
であるのか、責任のある
回答
を承りたい。
木村篤太郎
202
○木村国務大臣 これは進駐軍の最高司令官の命令によ
つて
や
つた
ものであります。
佐瀬昌三
203
○
佐瀬委員長
加藤充君、最後の質問にしていただきたい。時間がありません。
加藤充
204
○加藤(充)
委員
これはも
つて
のほかであります。進駐軍の命令だというようなことで、この責任を進駐軍の最高司令官に転嫁するというのは卑劣きわまるものであり、これはとらの威をかるきつねという俗言がそのまま当てはまると思います。大体特審局というのは
警察
でも何でもない。家宅捜索や押収、あるいはそういうことをやるについてこれを強要するということは、これは公務の執行ではあり得ないはずであります。要するに、このたびのこの
警察
の三、四名の者が二十五番
教室
に入
つて
スパイをした
——
特高思想
警察
、秘密
警察
というものは、私が一々申し上げるまでもなく、厳に禁止されており、その機構は破砕されており、復元は許されないものなのであります。これは明らかに公務の執行ではないのであります。不法
行為
をや
つて
いたものであります。それに対して
学生
が怒
つて
わび状を書かせたのであ
つて
、こういう不法が
——
先ほど御紹介申し上げました大阪の中之島公会堂における
警察
のわび状
事件
でもそうですが、これが今度の混乱を招き起した根本であるということを
考え
、こういう根本の、しかも重大なる問題を引起した
警察官
——
巡査並びにそれに対して命令を与えた最高の
警察官
の責任こそが、
大学側
の責任の問題よりもまずまつ先に追究され、処置されなければならない問題であると思うが、この点について最後にあなたの明確な答弁をお願いしたい。
木村篤太郎
205
○木村国務大臣
東大
における
事件
は、いわゆる共産党の
細胞
活動
が根本にな
つて
おるのであります。これなくして私はこの問題が起るはずはないと思います。これが今度の問題の発端であろうと私は
考え
る。
佐瀬昌三
206
○
佐瀬委員長
平川篤雄
君。
加藤充
207
○加藤(充)
委員
私は……。
佐瀬昌三
208
○
佐瀬委員長
速記をとめてください。 〔速記中止〕
佐瀬昌三
209
○
佐瀬委員長
速記を始めてください。
平川篤雄
君
——
平川篤雄
君、質疑をお始め願います。
平川篤雄
210
○
平川
委員
法務総裁
の最初の御
意見
を聞いておりますときに、ちよつといやな言葉もあ
つたの
でありますが、たくさんの陳述人の中で、私は
法務総裁
が言われた言葉の中で
一つ
、一番うれしい言葉があ
つた
。それは、
学生
はおそらく自重するだろう、その反省を待
つて
考え
ると言われた。私はその言葉を総長からも聞きたか
つた
が、実は聞くことはできなか
つたの
ですが、
法務総裁
からそれを聞いて、実はその
考え
方で
行つて
いただくなら、たいへんありがたいと
思つて
いるのであります。そこで
一つ
お尋ねしておきたいのは、
警察権
の介入がいいとか悪いとか、あるいは共産党
細胞
の存在がいいとか悪いとか、政治
活動
がいいとか悪いとかいうことは、すべてこれは教育の場であり、
学問
の場であるという
意味
でいけないのであ
つて
、一般の社会としては現にこれは
認め
られていることなんです。そこで、治安維持の問題だとい
つて
やかましくいわれておるのですが、いわゆる特高的な行動ではないと言われておりますけれども、さような思想動向などの調査をいたしますことは、まず思想自体を非合法化せられるならせられてあとのことだと私は
思つて
おるのです。そういうようなことがすでに
学問
の自由というものを乱すのであります。教育の自由を侵害するのである、私はそう
考え
るのであります。そこで先ほども、共産党
細胞
が、
学内
におるということを学長が知らずにほ
つて
おいたら、それも学長がいかぬ、あるのを見のがしておればなおいかぬ、こういうのはどこまでも教育的な立場においていけないのでありまして、そこのところははつきりしなければならぬところだと思います。そこの点だけを総裁のお
考え
を聞かしていただきたい。 〔発言する者多し〕
佐瀬昌三
211
○
佐瀬委員長
静粛にお聞き願います。
木村篤太郎
212
○木村国務大臣 ただいまの御議論は、私はごもつともだと思います。教育というものは、先刻申し上げましたように、教育基本法の第八条に明確にうたわれてお
つて
、これは中正なのであります。また思想の自由ということは、憲法に
認め
られた
基本的人権
であります。何人もどういう思想を持とうとかまいませんが、一たびその思想が政治
活動
にな
つて
社会の治安を乱すということになると、取締らざるを得なくなる。
学校
はどこまでも中正な立場に立
つて
、
学生
に対しては批判的能力を与えることが根本であろうと思います。そこでいろいろの思想についても教育するでありましよう。しかし教育者の態度としては、
一つ
の党派あるいは一派をとらえて、それを支持するような教育のあり方であ
つて
は、教育基本法第八条に違反するのであります。どこまでも中正な態度に立
つて
、
学生
の批判する能力を養うということに主力を注がなければいかぬと私は
考え
ております。そこで
学校
内における教育はいろいろありましようが、その教育の方針たるや、どこまでも中正な態度で行くべきであるが、一たびそれがある党派、ある一派にとらわれて、その指導のもとに
学生
が
校内
において政治
活動
をするということであれば、
学校当局
は十分取締るべきである。取締ることができないと言われれば、みずから
大学
の自治を放棄するものではないかと
考え
ております。それが根本であろうと思います。
従つて
本件においては、
東大
の
当局
者がこういう政治
活動
を黙認しておるのであるかどうか、また知らないのであるかどうか、ここに私は問題があると
考え
ておるのであります。
平川篤雄
213
○
平川
委員
これ
一つ
でやめます。大体今の御答弁を聞きまして、
法務総裁
の御
意見
はよくわか
つた
と思う。 そこで、これは仮定の問題であ
つて
、しかも起り得べからざる仮定の問題だと思うので、ばからしい質問になるかもしれないが、かりに不幸な結果になりまして、
学生
が反省をしないという場合が起
つた
とする。そういうときに
学内
から今の
細胞
の
活動
を
法務総裁
の職権によ
つて
一掃することができるとお
考え
になるかどうか、これをお聞きしたい。
木村篤太郎
214
○木村国務大臣 いかにしてそういう
学生
の政治
活動
をやめさせることができるか、これはいろいろ問題があるだろうと思います。私は一番注意を要するのは教育者の態度であると思う。教育者にまかすよりほかに方法がない。われわれが
警察
力をも
つて
これを何しようとすることは、とうてい不可能だと
考え
る。りつぱな教育者をも
つて
、ほんとうの民主主義、平和主義に徹した
学生
をつく
つて
いただきたい、これは私の念願であります。
平川篤雄
215
○
平川
委員
よくわかりました。
佐瀬昌三
216
○
佐瀬委員長
これをも
つて
木村
法務総裁
の
意見
の発表を終ります。 次に、剱木
亨弘
君に参考供述をお願いいたします。 剱木
亨弘
君には、前
文部次官
としていわゆる
文部次官通牒
、すなわち
集会
、
集団行進
及び
集団示威運動
に関する都
条例
の適用に関する
解釈
を
通達
されたそのいきさつを述べていただきたいのであります。なお、その
通達
は
学生
の
学校
の
許可
を得ない
集会
などに適用しないものであるかどうか。また天皇、外国の元首等の来学のごとき特別の場合にこれを適用しないものかどうか。これらの点を中心に御
意見
の発表をお願いいたします。
剱木亨弘
217
○剱木
参考人
昭和
二十五年の七月であ
つた
と記憶しておりますが、今申されました都
条例
が実施になる際におきまして、その都
条例
は、たとえば
集会
あるいは示威行進というような問題につきまして、
大学
内部におきまして普通の
状態
において行われる場合に、一一その
許可
を得なければならないのかというような疑義が生ずるおそれがございました。そこで
警視庁
と
お話
をいたしまして、その間に疑義が起らないように一応のとりきめをいたしまして、そのとりきめをいたしましたことを各
大学
に通知いたした次第でございます。そのとりきめの際におきましては、私、
文部次官
といたしまして、文部大臣の指揮によりまして、なお省内の
関係
者と十分相談をいたしまして、適当なものと
考え
まして
通達
をいたしたわけであります。 なおこの
条例
につきましての見解と申しますか、外国の元首等が
大学
に行かれるような場合はどうかという御質問がございましたが、そうい
つた
際におきまして
警察当局
が警戒をし、
警備
をすることはもちろん必要があると思いますが、先ほども文部大臣から
お話
がございましたように、私はこうい
つた
問題は、できるだけ
大学
当局
と
警察当局
と十分なるお
話合い
の上で、円満に遂行されて行かれることが望しいことだと今も
考え
ておる次第であります。
佐瀬昌三
218
○
佐瀬委員長
質疑の通告がありますのでこれを許します。
世耕
弘一君。
世耕弘一
219
○
世耕
委員
簡単に二、三点お尋ねいたします。
大学
の自治と治安の問題は、私ははつきりと区別すべきものだと思うのです。治安はいかなる
場所
といえども
警察
が持つべきものだ、
大学
の自治はただ
学問
上の自治であ
つて
、治安の上から見た自治ということはあり得ないと思うのですが、その点はどういうふうにお
考え
にな
つて
おられるか。 それからもう
一つ
は、何ゆえに
次官通達
を出さなくちやならなか
つた
か、その前にはどういう
状況
であ
つた
か、その
次官通達
を出すに至
つた
動機等をこの際承われればけつこうだと思います。
剱木亨弘
220
○剱木
参考人
第一の点でございますが、
大学
は国立でございましたら
一つ
の営造物でありますし、かりに私立
大学
を
考え
ますと、その
構内
は
大学
の管理者の管理権の範囲にあると
考え
るのでございます。従いまして通常の
状態
におきましては、その管理者が一応の責任をも
つて
、その営造物なり
学校
内の秩序を守
つて
行く責任があると
考え
ております。しかしながら、これはすべて通常の
状態
におけるものでございまして、一般の社会その他の
状況
で治安全般の根本問題になりますれば、また
大学
の治安維持の能力の範囲を越えます場合には、当然
警察
の力を借りなければならないことが生ずると思います。ただ私どもといたしましては、そういう際におきましてもできるだけ
大学
と
話合い
をして、円満な形におきましてこの治安の問題を
警察
と協力してや
つて
行くことが望しいと
考え
ております。 なお第二点は、都
条例
ができますと、都
条例
をごらんいただけばわかりますが、
集会
とい
つた
ようなものが全部
許可
を得なければなりません。ところがかりに
学校
が招集してPTAをやるとか、いろいろな
研究
集会
をやるとい
つた
ようなことまでは、当然にはその
通達
の
取締り
の範囲外と
考え
られますけれども、そこにどうしても疑義があ
つて
、いざこざが起
つて
はいけないというので、私どもは当然と思われるようなことでもはつきりしてお
つた
方がいいというふうに
考え
まして、ああいうとりきめをいたしたのでございます。
世耕弘一
221
○
世耕
委員
学生
の自治並びに
大学
の自治というような問題は、要するに
学問
の府として
活動
するのだから、それに
警察
の干渉等はあり得ることはないのです。それが
警察
が関心を持つというところに、もう
大学
の自治と
学問
の自由がこわれて来ておる。あなたも御承知でございましようが、教育基本法等を検討いたしましても、
警察
と
大学
が衝突するというようなことはあり得ない。ところがそれが
次官通達
まで出して、そのまま
次官通達
が今日問題の焦点になるということは、私ははなはだ
大学
教育として遺憾千万だと思うが、あなたはこの点についてどういうふうにお
考え
になるか。はたして今日のあなたがお出しにな
つた
次官通達
をも
つて
、今後の
大学
の自治が確立して行けるか、
学問
の自由が確立して行けるかどうかということが、非常に問題しにな
つて
来ると思うのです。その当時の担当者としてどういうお
考え
があるか、この際お聞かせ願いたい。
剱木亨弘
222
○剱木
参考人
先ほども申し上げましたように、都
条例
に関連しまして、この当然のことが
疑い
が生ずるというような問題について、きめたのでございまして、あれは積極的に
大学
の自治についてこの線でやれば必ず守れるというような、そういう意図があ
つて
や
つたの
ではございません。
世耕弘一
223
○
世耕
委員
それではもう
一つ
あとへもど
つて
お尋ねいたしますが、今度の
東大事件
というものは、とにかく
ポポロ劇
団において開
催し
た、その会場というのは三百有余の観衆がいた。その三百有余の観衆の中にスパイがいたというので、
警察官
をひつぱり出して、しかもそれを舞台にひつぱり上げて、大勢の前で尋問をするというような出来事は、もうすでに
大学
自体の秩序が維持できたと言われないだろうと私は思うのです。なおまたその上に
警察手帳
を取上げて、その取上げただけならまだしも、それをさらに世間に公表している。かようなことは、
大学
の自治、
学問
の自由という見解からい
つて
、決して妥当ではないと言えるのです。これが
一つ
。 時間を省略する
意味
においてさらに申し上げますが、大体どこの
大学
で同じようであるが、
学生
は未熟なんです。いかなる
研究
あるいは講演においても、必ず指導者というのが立たなくちやならない。
大学
の中において、過去二、三日のここでの報告等を一々聞いてみましても、指導者が立ち会
つて
いない。
学生
をもう自由か
つて
に放任しておるというようなありさまなんです。そうすると、もうこれは
大学
じやない。かような
状態
において、なお先ほど
警視総監
が行政
協定
ということを言いましたが、このあなたのお出しにな
つた
次官通達
では間に合わぬということが言えるのです。ここがほんとうを言うと実際問題なんです。いまさら私は
大学
の自由とか、
学問
の自由とかいうことを繰返して申し上げるわけじやないのだが、東京
大学
それ自体が、すでに
学園
の自治も、
学問
の自由も破壊しておるじやないか。これは常識です。弁明の余地はないと私は思う。かくのごとく新聞、ラジオに、議会に、こういう問題を投げかけたこと自体が、もうすでに国家に対し、社会に対し、何事かこの結末をつけなければならぬだろうと私は思う。そういう場合に、あなたがこの
次官通達
を出されたいきさつ並びに見解から見て、これでなお押して行けるかどうかということについて、重ねて私は聞いて、おきたい。これは実は教育上の重大な問題であります。それだけひ
とつ
承
つて
おきたい。
剱木亨弘
224
○剱木
参考人
東大
内の今般起りました
事件
の
内容
について、私は詳しく存しておりませんけれども、しかしいかなることがございましても、
学内
で
暴力
的な
行為
が行われたということは、きわめて遺憾だと思います。なおあの
通達
におきましては、私は先ほども申し上げましたように、通常の場合における
大学
の
——
いわば平和な時代における
大学
と
警察
との
関係
でございまして、
大学
の
学内
における治安を守
つて
行きまする能力については限度があると思います。もしその限度を越えた秩序紊乱の
状態
が起りましたときに、
大学
当局
が進んで
警察当局
と協力して参りまして、その治安を保
つた
めに、
警察官
を招請しまして、
大学
の治安を守りましても、
大学
の自治が侵害されたとは私どもは
考え
ないのでございます。従いましてその
警察
との協力のやり方の問題でございまして、
警察官
の力によらなければならないというような
状況
が生ずれば、これはまたやむを得ないのではないかと
考え
ております。
世耕弘一
225
○
世耕
委員
なおざらにお伺いいたしますが、これもあなたは文部省に
関係
された当時の責任者の一人としてお聞き取りを願いたいと思いますことは、いかに
東大
の
学生
を指導する方針が誤
つて
お
つた
かということを教育面から
考え
てみますと、
警察手帳
を取上げ、その場面において
警察
が不法に侵入したということで始末書をと
つて
おる。その始末書をとるのに
学校
の
厚生部
長が立ち会
つて
おる。なるほど一歩譲
つて
、
警察
が不法侵入したものなりと断定して、始末書をとることはいいとかりに仮定いたします。しかしながら他面において
警察官
から
手帳
を奪取し、あるいは大勢の前にひつぱり出して尋問等をやるということは、りつぱな人権蹂躙なんです。しからば警官から不法侵入の始末書を書かせるとするならば、なぜその場において
学生
からこの不法な処置に対して責任を追究し、その始末書を書かせなか
つた
か。もしそれを書いてお
つた
とするならば、私はこの一事をも
つて
東大
の教育指導は一応納得できる。片手落ちじやないか。かような教育は私はあり得ないと思う。こういう点についてあなたに今こういうことを御返答を願いますことは筋違いかもわからぬけれども、あなたが
通達
をお出しにな
つた
当時の精神から
考え
て、どういうふうに判断なさるか、はたして社会がそういう行動を適当な行動であると
考え
るとお思いになるかどうか。 なお最後にもう一点、時間を節約する
意味
において申しますが、東京
大学
といえば国立
大学
であります。そうして国民が全部税金を払
つて
あの国立
大学
を維持していることは、皆さん御承知の通りであります。ことしの予算も十七億何千万円ある。国民の税金によ
つて
経営している
大学
じやありませんか。何人でも、講堂に入
つて講義
を聞くことは、私はかまわぬ、また教育基本法からい
つて
も、この機会均等を得られる権利は、私はあるんじやないかと思う。相手が
警察
であろうが何であろうが、自由に入れて聞かせる便宜を与えるこそ、国立
大学
の本来の使命じやないか。それをたまたま
警察
が入
つた
から、あれはスパイだからとい
つて
、大騒ぎをすること自体に、すでに思想的に堅実な学徒としての態度を失
つて
いるということを私は指摘したい。だから結論として申し上げますならば、
大学
のあり方がな
つて
おらぬ、同時に
学生
のあり方もな
つて
おらぬ、こういうことを実は申し上げたいのだが、あなたはどうお思いになるか。
剱木亨弘
226
○剱木
参考人
現在の事態に対しまするいろいろな
考え
方は、文部大臣から申し上げるのが適当だと思いますが、私もまた
大学
は直接に国民に責任を負いまして、十分
学生
生徒の教育、訓育には全力を尽してやるべきだと、その点は深く
考え
ておる次第であります。
世耕弘一
227
○
世耕
委員
もう一点で終らしていただきます。私先ほど申しましたように、
学問
は自由なんです。
研究
も自由なんです。同時に
学問
は世界共通です。そこに秘密がないはずなんです。私は
学問
の秘密というものがあるということは聞いたことがない。
講義
を盗み聞きしたからどうこうということはないはずだと私は思う。どうぞこの点は、あなたは直接責任者じやないが、
次官通達
を出された当時のいきさつと、今日のこの
次官通達
の後に起
つた
事件
との間の取扱い方についてお尋ねしたのでありますが、よくこの点は御説明を得ましたから、満足いたします。
委員長
、吉河特審局長にただ一点だけ聞きたいのですが、よろしゆうございますか。
佐瀬昌三
228
○
佐瀬委員長
特審局長は退席されておりますから……。
世耕弘一
229
○
世耕
委員
では、
委員長
からお尋ねしていただきたいと思いますが、文部大臣並びに
東大
の学長は、東京
大学
には、
細胞
があ
つた
けれども
解散
した。しかし現在はあるかないかはつきりしないというようなことを言うておるのです。ところがこの点について特審局長は十分な調査があるだろうと思うから、あるものかないものか、全然それが霧散してしま
つたの
かということだけを聞いておいていただきたい。
佐瀬昌三
230
○
佐瀬委員長
後ほど特審局長に連絡して、調査の結果は資料として提出させることにいたします。鍛冶良作君。
鍛冶良作
231
○鍛冶
委員
ちよつと一点だけ伺いたい。問題はあなたのお答えにな
つた
、あの
通達
は通常の場合だ、特別の場合は
考え
ておらぬのだ。ここまでは私はそうだろうと思う。ところがそういう特別の場合でも、なるべく
警察当局
と
話合い
の上でやることが望ましい、こう言われる。そこで問題は、
話合い
ができなんだらどうするか、この点をお聞きしたい。もつと言うと、
大学
そのもの
にみずから治める能力がないと
警察
が
認め
る。それにもかかわらず、おれのところは能力があるからお前の方は入るな、こう
言つた
ときに、あなたのところに能力がありませんから、私は責任上ここで何らかの手を打たなければならぬとい
つて
手を打
つた
ら、
次官通達
に違反したるものとして、不法なものとあなたはお
考え
になるか、この点です。
剱木亨弘
232
○剱木
参考人
先ほど申し上げましたように、あの
次官通達
は、
警視庁当局
と
話合い
いたしました結果を
通達
いたしたのでありまして、普通の
通牒
のような、いわゆる法的な力を持
つて
おるものではございません。従いましてその点、
警察権
なりその他の
関係
の法的規則をいたすものではないと
考え
ております。
鍛冶良作
233
○鍛冶
委員
よろしゆうございます。
佐瀬昌三
234
○
佐瀬委員長
田中
発李君。
田中堯平
235
○
田中
(堯)
委員
質疑に入る前に緊急動議があります。
委員長
、新聞を見ると……。
佐瀬昌三
236
○
佐瀬委員長
ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕
佐瀬昌三
237
○
佐瀬委員長
それでは速記を始めて。
田中堯平
238
○
田中
(堯)
委員
委員長
に質問します。きようの東京新聞の夕刊には、本日の衆議院法務
委員会
において、いわゆる
東大事件
の問題について、すでに申合せが出た、結論が出た、すなわち文部
次官通達
の補足をすべく勧告するという申合せができたという記事が載
つて
おります。そこで質問したいのは、こういうことが
委員長
なりあるいはその他責任ある者から、新聞記者に漏れたのであるかどうかということであります。
佐瀬昌三
239
○
佐瀬委員長
申合せの事実のないことは、各位の御承知の通りであります。おそらく新聞の想像記事であろうと、
委員長
としてはお答えするよりほかありません。
田中堯平
240
○
田中
(堯)
委員
それでは剱木元
文部次官
にお尋ねしますが、この
次官通達
なるものは、
法律
ではないから、法的拘束力はないということを先ほどから繰返し答弁されておる。ところが
学問
の自由というものは、單に言論、出版あるいは
集会
、結社の自由とか、あるいは良心の自由とか、いろいろの自由が憲法に規定されておるほかに、別条を設けて、憲法第二十三条でしたか、
学問
の自由というものがちやんと保障されておるわけです。だから本来ならば、この
趣旨
を実現すべく立法手段がとられてしかるべきであるけれども、それにかえて、長年の人類の奮闘
努力
の結果得られた
学問
の自由、
従つて
大学
の自治という、こういう大きな問題を、立法にかえて、
大学側
と政府側との紳士的な協約という形でも
つて
なされたものと思う。だから剱木氏が言うように、これは單に紳士的な協約であ
つて
、何も法的な拘束力はないのであるから、こんなものは吹つ飛ばしてかまわぬ、
警察
がか
つて
にこれを吹つ飛ばして、そうして
大学
の中に自由に延びて行くこともできるというような
解釈
はとんでもない話だと思いますが、そのことについての御
意見
はどうですか。
剱木亨弘
241
○剱木
参考人
大学
の
学問
の自由等につきましては、憲法にもはつきり明確に書いておるところでございまして、ただあの都
条例
につきましては、通常の場合におきましては、ま
つた
く大部分の点につきましては、当然のことであると
考え
られる点が多々ございますが、それを一応とりきめの形で明確にしておくという
意味
にすぎないのでおりまして、あれをも
つて
新たなる拘束力を持つものをつく
つた
というわけではないのでありますから、さよう御了承願います。
田中堯平
242
○
田中
(堯)
委員
そうするとこの
次官通達
なるものは、あ
つて
もなくてもいいものであるという
解釈
ですか。
剱木亨弘
243
○剱木
参考人
あの都
条例
の
解釈
上疑義を生ずる点があ
つて
はいけないからという
意味
の
通達
でございます。
田中堯平
244
○
田中
(堯)
委員
しからば
大学
には、第一、
講義
を毎日
行つて
おるから、何百人が一堂に集ま
つて
教授
が
講義
をするという
集会
が連日行われておる。これも都
条例
をしやくし定規に
解釈
するならば、これはやはり
一つ
の
集会
であるから、そこへ
警察
力が延びてもいいという結論になる。ことに
政令
三百二十五
号違反
の嫌疑があるというような口実のもとに、どんどんと
教室
の中へも入
つて
行く、こういう結論になる、これはどうですか、そういうことになりますか。
剱木亨弘
245
○剱木
参考人
そういうような
意見
が出るおそれのありませんように、はつきりそこでとりきめしたのでございます。
田中堯平
246
○
田中
(堯)
委員
しからば
講義
の中に警官が入
つて
行
つた
りしてはいけないということ、そうすると今度は
講義
そのもの
ではないけれども、やはり
学問
の
研究
の自由を妨げない
意味
で、これに付属しておるいろいろな
研究
会あるいは劇団とか、宗教の
団体
とか、宗教
研究
の会とかいうものがいろいろたくさんある。そういうものに対してもこれは
警察
がか
つて
に入
つて
いかぬという
趣旨
でありますか。
剱木亨弘
247
○剱木
参考人
学校
の授業として、また
学校
の
許可
をいたしました正当に行われている
学校
内の
集会
につきましては、その
許可
を要しないということを規定いたしたのでございます。
田中堯平
248
○
田中
(堯)
委員
あなたは当時文部
次官通達
なるものの当面の責任者だ
つたの
でしようが、そうすると、あなたの
意見
をひ
とつ
聞きたいのは、過ぐる二十日の日に
東大
の二十五番
教室
で
ポポロ劇
団なるものがお芝居をや
つた
。これに本富士の
警備係
の刑事四名が
私服
のままそこへ入
つて
行つて
、そうして
一つ
の大きなことが起きたわけです。大体こういうような
ポポロ劇
団のその日の
催し
というものは、
ポポロ劇
団自身
学内
公認の
団体
であると同時に、また二十日の
催し
そのもの
も
許可
を得て合法的にや
つて
おる。こういうような
一つ
の
研究
会に
私服
が四名も潜入して行くということは、これは正しいと思いますかどうですか、その当時の責任者としてあなたの
意見
を聞きたい。
剱木亨弘
249
○剱木
参考人
事件
の
内容
につきましては先ほど申しますように、詳しいことは存じません。
私服
で入
つて
いいかどうか、入場料を支払
つて
入
つたの
が違法であるかどうかということは、具体的なる事例につきまして調べなければならぬので、私そのいい悪いについての
意見
を申し上げる筋合いでないと
思つて
おります。
田中堯平
250
○
田中
(堯)
委員
終ります。
佐瀬昌三
251
○
佐瀬委員長
本日はこれにて散会いたします。
参考人
には長い間にわた
つて
まことにありがとうございました。 午後六時四十五分散会