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1952-05-09 第13回国会 衆議院 文部委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月九日(金曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 竹尾  弌君    理事 岡延右エ門君 理事 甲木  保君    理事 若林 義孝君 理事 小林 信一君    理事 松本 七郎君       柏原 義則君    鹿野 彦吉君       首藤 新八君    圓谷 光衞君       長野 長廣君    平島 良一君       水谷  昇君    井出一太郎君       笹森 順造君    渡部 義通君       小林  進君    浦口 鉄男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文化財保護委員         会委員長    高橋誠一郎君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 森田  孝君  委員外出席者         文部事務官         (初等中等教育         局庶務課長)  内藤誉三郎君         専  門  員 石井  勗君        専  門  員 横田重左衞門君     ————————————— 本日の会議に付した事件  文化財保護法の一部を改正する法律案内閣提  出第一八八号)  産業教育振興法の一部を改正する法律案若林  義孝君外二十二名提出衆法第三六号)  義務教育費国庫負担法案竹尾弌君他十四名提  出、衆法第四〇号)  学校教育に関する件     —————————————
  2. 竹尾弌

    竹尾委員長 これより会議を開きます。   学校教育に関する件を議題とし、前会の通告の残りだけにつきまして、引続き当局に対する質疑を許します。松本七郎君。
  3. 松本七郎

    松本(七)委員 昨日、主として大学学生運動についての大臣の誤答弁中に、学長との協議なり懇談をさ、れあるいは中央審議会でもつて、今度検討されるというお話があつたのでありますが、これは結局、大学自体が最後的な決定をするほかないと思うのですが、そういう協議をされるにあたつて文部大臣は、何か抱いておられる構想案として、勧告なりあるいは意見というような形で、提出される御意思があるかどうか。かりにそこまでされないとしても、何らか、どのようにあるべきかという具体的な構想をお持ちでしたら、それを明らかにしていただきたいと思います。
  4. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は、こちらからこういうようにというよりも、むしろ学長の御意見をよく聞いて、そうしてきめようということでございます。ただ、そこに問題は、文部省から提出するということはございますが、こちらからこうという要求は少しもいたしません。学長方の御意見をよく聞いて、それによつてきめて行こうという考え方であります。
  5. 松本七郎

    松本(七)委員 学長意見を聞いて、それで文部省態度をきめるという意味ですか。
  6. 天野貞祐

    天野国務大臣 学長の御意見も聞き、こちらの意見も述べて、よく相談して、それで文部省態度をきめる。けれども、大学自体は、学長考えでやられるものだと思います。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、やはり各学校によつて、それぞれの方針が具体的にかわつて来るという建前を根本にされるのですか、その点についてのお考えを伺いたい。
  8. 天野貞祐

    天野国務大臣 ごく基本的なことになると、各大学全部一致するということは、もちろんあります。たとえば、学生政治活動をどういうようにして禁止するとか、政治活動の範囲はどうするとかというようなことは、おそらく全部の大学学長諸君が同じようにおきめになるけれども、それを活用する場合には、学長のお考えで自由になさると思います。     —————————————
  9. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に文化財保護法の一部を改正する法律案議題といたし、提出者より提案理由説明を求めます。天野文部大臣
  10. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいま上程になりました文化財保護法の一部を改正する法律案について、その概要を御説明申し上げます。  文化財保護法は、文化財保護の重要なる使命にかんがみまして、昭和二十五年第七国会において、国会みずからの御発案によつて通過成立したものでありますが、その任務の重要性に照しまして、文化財保護委員会という行政委員会をしてその行政上の責任を負わしめていることは、申し上げるまでもないことであります。  今回の政府全般を通じる行政機構の改革にあたりましても、文化財保護行政特殊性に基きまして、文化財保護委員会は存続することになつたのでありますが、ただ内部的に、この委員会に関し左の諸点について機構簡素化を行うことに相なつた次第であります。  すなわち、第一に、文化財保護委員会委員の数は、現在五人でありますが、これを三人に減少いたしたことであります。  第二には、事務局総務部保存部の二部制を廃止して次長制とし、機構簡素化をはかろうとした次第であります。  第三には、右に伴つて所要の規定の整備を行うことでありますが、特に現在の五人の委員は、この法律施行の日において失職することとし、新委員は、新たに任命することといたしたのであります。  以上が、この法律案の要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださるようお願いいたします。
  11. 竹尾弌

    竹尾委員長 本法案に対しまする質疑次会に譲ることといたします。     —————————————
  12. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に、産業教育振興法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。質疑があればこれを許します。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 議事進行で、ちよつと委員長にお伺いしておきたいのですが、参議院の方では、何か特例法、それから教育委員会法が上つておるということです。こういうのを、議題にはまだ上つておらないようですが、衆議院でこれをどういうふうにされますか。すみやかにする必要がある性質のものじやないかと思うのですが、委員長の御意見をお伺いいたします。
  14. 竹尾弌

    竹尾委員長 すみやかにこちらに上程できるように、とりはからいたいと思つております。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 いつごろになりますか。
  16. 竹尾弌

    竹尾委員長 できるだけ早くいたしたいと思います。  それでは産業教育振興法について質疑を願います。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 産業教育振興法ができてから、今日までの実情を少し知らせていただきたい。
  18. 若林義孝

    若林委員 私、議員として承知いたしておるだけのことを御説明いたしまして、あと文部当局から御説明を聞いていただけばいいと思うのでありますが、御存じの通り産業教育振興法に関しまして、各地方産業教育審議会ができておるのであります。これは非常に急速にできたところもありますし、できないところもあるわけでありまして、大阪のごときは、この間私行つて参りましたが、その人選に悩んでおるようであります。おそらくこの審議会状況と、中央における審議会活動状況が、産業教育振興法実施状況であろうと思うのであります。この点と、その審議会意見に基いて六億六千万円の補助費地方に配分されておると思うのでありますが、その配分状況その他につきましても、文部当局からひとつ詳しく御聽取願いたいと思います。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 それは文部当局から伺うことにいたしまして、提案理由説明のときに、「收益予算を過大に見積られる結果、教育上幾多の弊害を見つつある」と御説明があつたのですが、どういう具体的な弊害例があるか……。
  20. 若林義孝

    若林委員 たとえてみますと、農業関係学校などにおきまして、農産物の処分その他についての点においても、その予算面の過不足が、自然を相手のことでありますので、出て来るわ  けであります。それから工業方面その他におきましても、世の中の産業一般影響を、やはり学校実習においても受けるわけでありますから、そういうことを意味しておるわけであります。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 それが特に教育上の多くの弊害というのは、どういう意味でしようか。
  22. 若林義孝

    若林委員 学校といたしましては、そういう特別の勤労関係のある学生生徒たちが居残りをした場合、相当措置を講ずることが、従来の慣習としてもあるわけであります。そういう事柄が十分行い得ないような実情にある。あるいは設備その他におきまして、予算面が圧縮されるために、十分この設備が行えない。これは畜産関係の科目に関係しております実情を見ました私といたしまして、でき得る限りりつぱな設備をして行かなければならぬ、それがその予算面の圧縮ということによつて行えない、この実情を私たちはつぶさに見て来ておるのであります。
  23. 松本七郎

    松本(七)委員 実習をやつた場合に、その実習の結果これこれの收益が予想されるからこれだけの報酬をやる、そういう行き方をするのですか。その点ちよつと今そういうふうに聞えたのですが……。
  24. 若林義孝

    若林委員 これは地方々々におきまして、県庁その他の公共機関相手のことでありますから、地方々々によつてその成立ちと慣習によつて異つておるようであります。だから、非常に理解のあるところであれば、さほど弊害はないのでありますけれども、しかし本則としては、とにかくあげた收益は全部予算外——学校においては、その支出の中に入れることは絶対できないのでありますから、收益とみなされるために、全部吸い上げられることになつております。しかしその強い弱いの程度は、地方によつて、また理解のあるところとないところで、非常な相違のあることだけは察知できるのであります。
  25. 竹尾弌

    竹尾委員長 ほかにどなたかございませんか。
  26. 浦口鉄男

    浦口委員 大臣ちよつとお尋ねいたしておきます。この産業教育振興法に関連したことであります。私の聞くところでは、産業技術教育振興をはかるために、大臣諮問機関として各界の学識経験者を集めた技術教育協議会というものができて、これによつて産業技術技術者を指導養成する機関を強化する、こういう答申案がまとまつて文部大臣あて意見が具申されたことを聞いております。大体その構想は、いわゆるサンドウイッチ・システムと申しますか、従来もあるのでありますが、一定理論を勉強した後に大学から実務について、また元の学部に帰つて来ていろいろ理論をきわめる、これがいわゆるサンドウイッチ・システムといわれておるわけであります。それを答申案によつて大臣は御研究せられたと思うのですが、それについての御意見を承つておきたいと思います。
  27. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は、元来そういうようなやり方に、非常に賛成なんでございます。大学を出た者が一定実務について、そうしてその実務によつて生きた問題をとらえて再び学校帰つて研究をするというような、広い意味の再教育といつてもいいでしようが、そういうことを日本教育界においてもつと大いに盛んにしなければいけない。そうすれば、あるところはもつと学年の短縮というようなことをしてもいい。たとえば、ジュニア・コース——短期大学を出た者などが、一ぺん実務についてまた帰つてやる。そうでありませんと、実際のことと理論というものが離れてしまつて、うまく続かないのです。それで、もし一ぺん実務についた者がやるということになれば、非常にいいと思つております。一例をあげれば、銀行なんかでも、銀行実務知つた者が、また帰つて経済学の勉強をするということになりますと、非常に違つて来るというように考えて、その趣旨には非常に賛成でございます。
  28. 浦口鉄男

    浦口委員 この間教職員養成課長とも、そのことで話をしたのですが、玖村課長アメリカ行つて来られて、たいへんアメリカのそういうシステムを研究されておりますが、日本においても一部にはこれが実施されておることを、われわれ承知しておるのです。産業教育振興法が、いわゆる画期的な單行法として、われわれも立法の一部に参加したわけでありますが、その実をあげるについても、こうしたサンドウイッチ・システムをいわゆる恒久化、正常化するということが、非常に急速を要するのではないか、こういうことが考えられるのでありますが、これを恒久化するという方向文部省として強く推進されるお気持が現在具体的にあるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  29. 天野貞祐

    天野国務大臣 私はただいま申したように、その趣意には非常に賛成なんですけれども、これを実際にやるにはどうしてやるかという点は、もつとよく研究しなければならぬと思つております。
  30. 浦口鉄男

    浦口委員 ただいまの質問に、いま一つ続いてお尋ねしておきます。関連いたしておりますからお尋ねするわけであります。われわれ専門的知識は詳しく持つていないわけでありますが、御承知デンマーク畜産農業振興についての高等国民学校といいますか、あの組織については、大臣も御承知と思いますが、今農業、とりわけ畜産農業が、日本経済的再建に非常に重要であるということは、これは申し上げるまでもないと思います。終戰後日本農業政策は、ともすると食糧の面は、具体的にいえば、アメリカのような非常に豊富なところから輸入をして、日本工業国に生くべきでないかというような論が大分盛んであつたのでありますが、一昨年の朝鮮事変以来の国際情勢により、どうしても食糧の自給ということが非常に大事になつてつております。それは申し上げるまでもないことでありますが、根本問題は——農地の問題とかいろいろ出て参りますが、何と申しましても、現在ある耕地を極度に効率化すということで、私は教育の面が非常に大事だと思います。農村が今新らし一つ試みをするという場合におきましても、従来の大体の農民の考え方は、非常に姑息な考えが多いということも、これは農業そのものが、一年に一回の勝負と申しますか、もしこれがしくじると、人生の盛りを二十年なら二十年と見ると、二十分の一失敗するというふうなことから、非常に農村が新しい試みに臆病なことはわかるのでありますが、これは教育の面で相当打開できると思います。狭い耕地から多くの收益を上げるということが大事だということと、いま一つは、終戰後大臣もあらゆる機会にお話になつておりますように、青少年の前途に対する希望が非常に薄い、あるいは職業そのものに対して、将来に希望が持つてないというふうな面からも、道義の頽廃の大きな原因になつておるのでありますから、どうしても学説と実地を密接に生かして行くという面から、デンマーク式の、いわゆる普通の中学を出ましたあと、三年間実地した者でなければ高等学校入学資格を得られない、こういうふうな措置が講ぜられることによつて、この産業教育振興法は、農業の面だけを見ても非常に大きな効果があると思います。こういう点について、文部当局として今後具体的な施策の両面で、積極的に研究を実際にお進めいただきたいと思うわけでありますが、その点に対して大臣のお考えを承りたい。
  31. 天野貞祐

    天野国務大臣 そういう考え方については、私は非常に賛成であることは従来しばしば述べて来ておることですが、ただ日本の今の学校体系から申しますと、中学を出て三年なら三年実務に従事した者でなければ高等学校には入れぬということには、できないと思うのであります。そうでなくして、高等学校をもつと考える必要がある。それを農業学校などでも、従来地方にあつた学校をみな大学にしてしまつた。これは私は一つ方針としてどうかという疑問を持つております。一ぺんした大学を下げる考えはございませんけれども、大学を出ますと技師になるとか、あるいは大学の教授になるとかいつて、要するに手をよごさない職業にみなつくのですが、そうじやなくて、学校で得た知識をもつて実地にやるという人を、もつとたくさん養成しなければならぬ。それには農業高等学校というふうなもの——現在高等学校は三年ですが、これは四年でもいいし、場合によれば五年でもいいが、そこを出たら、郷里で自分で実際に百姓をする人間、そういう者をもつとつくることが非常に必要だというふうに自分も思つております。そういう点には、文部省としてもつと力を注ぎたいと思いますが、デンマークのようなことは、今の日本学校体系と合わないところがありますから、少くも私はそれをただちにやろうという考えはございません。けれども、一般にいつて、もつと実際に働くことに一般の人が興味を持つて——いわゆる出世主義でもつて、どういう位置にいても満足しない、上に上に行かなければいけないというような考え教育をやつて行つてはいけない。従来の教育にはそういう傾向があつた自分のどういう位置にでも満足しない。たとえばイギリスなどでは、書記であつても、その書記位置にプライドを持つて自分がやるからこういうふうにりつぱにできるという考え方があると思うのです。そういう思想をもつと日本義つて地方にとどまつて自分農業をやる。しかしその農業は、学問とか教養とかを持つた人がやるというようなことによつて、今お話のような点に進んで行けるのではないか、そういう考え方であります。
  32. 浦口鉄男

    浦口委員 この問題は、最近頻発しております各大学学生の一部に起きた非常に寒心すべき事件などにも、影響があると思う。今までの学問体系から見まして、大臣もおつしやるように、これは官吏一つ組織にも影響して来るわけですが、いわゆる上の学校を出なければいい位置につけない。また高い位置につかなければ給料が上らぬ。こういうことから、その職に確信を持ち、自信を持ち、安定していることが必要だと大臣が言われましても、やはりそこに裏づけになる待遇が伴つて行かなければならないということで、これは官吏任用組織そのものにも非常に影響があるわけでありますが、やはり根本教育の内容によると思います。法文学系などが盛んになることは、非常にけつこうなことでありますが、今おつしやるように、実際の仕事から非常に遊離して、抽象論をもてあそぶというような結果が出て参りまして、その結果が学生の健全なる思想一つの暗影を投ずることになると思うのです。デンマークなどの農業の例を引きましても、非常に学理的に、非常に深い理論をしつかり身に体しながら、しかもプラウを使つて畑を起させればその学理通り仕事ができる、こういうところに行つてこそ、大学教育ほんとうに実り、また学生の動向というものも非常におちつきを示すのではないか、こう考えられるわけです。産業教育振興法のより実効をあげるという意味合いにおいても、これは強力に、すみやかにそうした研究文部省としてお進めいただきたいとお願いしておく次第であります。
  33. 渡部義通

    渡部委員 産業教育振興法改正案で私非常に疑問に思う点は、産業教育振興法がきめられるときに、それの財政的な裏づけをどうするかということが、非常に問題になつたのでありますが、これは大体十分にやつて行けるのだという見通しのもとに論議が進められたのであります。ところがこの改正案を見ますと、経費が非常に不足なので、実習から生ずる收益予算外にそれだけ増額する形のものにかえて行く、これによつて必要な経費等をまかなうことにしようという点にあるようでありますが、この方式こそ、最近一般にとられている、また一般にそうせざるを得ない状態にまで押し込められている、教育費の当然国庫ないし公共団体が負担すべきものを、父兄なり学童なりに負わせてしまうところのやり方が含まれていると思うのです。ちようど義務教育費が、当然全額国家が負担すべきであるのに、義務教育費の三分の一がその父兄によつて実質上負担せしめられている。税金を出した上に、さらに憲法の保障しているところの義務教育さえも、父兄自分経費によつて主として又やらなければならぬようなところにまで落されているわけでありますが、そういう形がここに私は出ていると思う。この点について、立案者はどういうふうに考えたのか、あるいは学校当局の方ではこれをどういうふうに見ているか、両方から意見を聞きたいと思います。
  34. 若林義孝

    若林委員 これはただいま渡部委員から御質問になりましたような意味改正したのではないのであります。大体設備その他については、根本的に国家が三分の一補助を與えますところの産業教育補助でまかない、また地方におきましてはその二倍の額をもつてこれに充てるという、この原則はかわりはないのであります。この第三條の二を設けました理由のものは、実験実習意欲を阻害しないようにということに主点があるのでありまして、他の予算その他については、根幹は、本則としては国家補助または地方団体の当然の支出でまかなうものでありまして、今度の改正主眼点は、全然そこにはないのであります。それから教育全般のことに関しては、渡部委員の仰せられますことはある。全体として、いま少し国家が、予算が許すならば、十分にこれをまかなつて行くという、この趣旨には異論はないのでありますけれども、今度改正したのは決してそれだけを目的にねらうのではなくして、実験実習意欲また熱意を、よりこれに集中し得るようにという、ここに主点があると御説明いたしたのであります。
  35. 渡部義通

    渡部委員 しかし、実験実習により生ずる收益を、実験実習に要する経費あるいは厚生費に用いるというのでありますが、産業教育ほんとう意味でなされるためには、義務教育及びそれ以上にわたる時期までは、基本的な科学というものを、もつと体系的に深めて行かなければならぬ。それが基礎的なもので、そこから新しい技術に応ずるような学生が養成される。しかし産業教育振興法のあり方を見ると、地方産業と結びついて云々というようなこともうたわれておる。そういうことの結果、これは結局学生勤労奉仕的な役割を、将来持たせられるに違いないというような憂いを当時も述べておつたわけでありますが、実習実験工場等との関連で行われるようなことになりますと、これは明らかに学徒動員的なもので、学徒の搾取によつて資本家は非常にもうかるけれども、学生はその犠牲を背負わされなければならないということになるのであつて従つて青少年に対する收奪が無制限に行われる憂いがあるわけであります。この点どういうふうに考えられますか。
  36. 若林義孝

    若林委員 渡部委員の御懸念になることは、もしそういうような目的で使えば、あるいは御心配になるような結果が起ると思うのでありますけれども、現在の基本的人権を認められ、また何者にも拘束せられない校長文部大臣の監督をさえも受けることのない地位に置かれております校長を中心として教育が行われておるのであります。また、教育委員会支配を受けるではないかと言われるかもしれませんが、それは俸給その他については、相当支配を受けるかもしれませんけれども、絶対と思われるような校長の庇護のもとに教育せられておりますので、現在の組織におきましては、そういうような御懸念はないと思います。
  37. 渡部義通

    渡部委員 そうではなくて、現在重大なことは、実習実験をする場合の施設、設備というものが、至るところで崩壊し、あるいは初めからないというような学校が非常に多いのです。これは去年東北の視察においても、はつきり示されたように、県立の高等実業学校が、大きなそろばん一つタイプライター一つしかないというような状態さえもあるような、こういうような状態のもとにおいて実習実験が行われなければならぬとすれば、当然これらは他の工場に出かけて行つて、そこでこの実習実験を行うという結果にならざるを得ない、現になつておる。その場合に、この実習收益を、そこの学校あるいは学校と関連する工場との関係において使用するということになれば、学生たちはここで單なる学徒的な勤労者になり、しかも非常に低賃金で收奪される勤労者にならざるを得ない、こういう危險性がある。現に東北で行われているのです。こういう点を一体どうするのか。
  38. 若林義孝

    若林委員 そういうような懸念を防止するために、この法案改正をもくろんでおるわけでありますから、私はそういうような弊害は起らないような方向に、今進んでおると思つております。それがやりやすいように、防止しやすいように、この法案を立案しておるのでありますから、ほかの方の御質問に対しては、あまり賛成はしかねるのでありますけれども、ただいまのあなたの御発言に対しては、全幅的に賛成方向でこれは立案されております。
  39. 渡部義通

    渡部委員 現に東京都内においても、学校経費が非常に少いために、生徒たちが砲弾の包装をやつておるというようなところさえもあるわけです。こういうようなところがあり、しかも今申し上げたように、至るところで資材、資料というものが学習実験のためにないものだから、それで工場に行かなければならぬ危険性があるわけであります。だから、当然これは実際問題として、工場との関係考えられて来るわけであります。そこに生徒たちの收奪という問題が起きるのだ。その根本産業教育というようなことを強調しながらも、実際の全体の方向としては、そつちに行かざるを得ないような情勢に置かれており、また再軍備等が強化されて、戰時的な態勢が進行して来るに従つて、学徒動員的な空気が私は必ず出て来ると思う。ここにやはり教育上の根本的な問題としての財政問題が出て来るのであり、その財政の根本を立て直す方法としての政治全体の問題が出て来る。そういう政治全体の問題が解決されることなくして、この枝葉末節な方法をとるところに、先ほど申し上げましたように、義務教育費の三分の一を父兄が負担しなければならないような状態が起きているのと同じ線を歩いている法案だと、私は考えざるを得ないのであります。これは立案者以外に、当局としてこういう危険性についてどういうふうに考えられるか、お聞きしたい。
  40. 田中義男

    ○田中政府委員 お話の点は、まことに私どももさような、いろいろ実際に工場等に出て働いて、それが搾取されるようなことのありますことは、まことに遺憾でありまして、さようなことのないように、十分留意したいと考えております。
  41. 渡部義通

    渡部委員 どういうふうにするのですか。
  42. 田中義男

    ○田中政府委員 それらの收益、成果等については、学生等をそれぞれ作業をさせますための、十分それらの適切な待遇のできるような、あるいは働くことができるような方面に使用いたしますとか、あるいはその厚生のためにその費用を使いますとか、いろいろ方法はあると考えて、さようにしたいと思つております。
  43. 渡部義通

    渡部委員 私の言つているのは、地方の実業家、つまり工場との関係で、学徒たちが学習実験をそこにおいて行うという場合を考慮して言つているわけです。こういう場合に、資本家の方としますと、これは学生として学習実験に来ているものだから、賃金ともいえないような——もちろん賃金とはいえないのですが、きわめて少額な、手当的なものでいいと考えて、そうなりますと、生徒自身が資本家に極度に收奪されることになるわけで、この点をどういうふうに防ぐかという問題、一方学校としましては、学校内の学習設備を整えるために、生徒の勤労の結果の一部を必要とするということになりますと、生徒の立場はますます收奪を強化されるという位置に置かれるわけで、これをどういうふうにして具体的に防ぐかということが、問題になつて来ると思うのであります。
  44. 田中義男

    ○田中政府委員 それらは、実験実習等のためにやつておるのですから、その実験実習が、最も教育的にその目的を達するような方面に向けてもらいたい、こういうことでよく指導もし、見て行きたいと思つております。
  45. 渡部義通

    渡部委員 生産物は資本家の手に入るのですよ、そうでしよう。
  46. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 実は渡部君がそういうことをおつしやいますけれども、これはもちろん国家なり、あるいは学校を設立しているところの地方自治団体が、その費用の全部を持つて機械設備等を完備し得るならば、何らわれわれは苦労はいらない。しかし、それがなかなかできない現段階なんです。そこで、学校当局工場にお願いしているのですよ。じやまになる場合が多いのです。実験実習ができ得るそういう工場の近辺にある学校は恵まれておる、そう考えなくてはならぬ。全然逆なんです。共産党はどうも少し考え方がおかしい。そういう点当局はどう思いますか。私はよく聞いております。かえつてある場合にはじやまになる、これがりつぱな製品をつくり出し得るわけではないのです。またその設備を借りて勉強しているのですから、全然これは話は逆である。そうでなければ、今後非常に運営に困る。そんなことを国会で言うようなら、これは渡部君であつて——共産党であつても国会議員ですから、国会議員がそういうことをいうのならわれわれはじやまになるから貸してやらぬぞということになつては困る。これはちようどわれわれの考えておることと逆になる。当局はどう考えておられますか。
  47. 竹尾弌

    竹尾委員長 渡辺委員に対する答弁を先にして、あとに岡委員に対する答弁をお願いいたします。
  48. 田中義男

    ○田中政府委員 大体いろいろ御心配の点もありますけれども、ともかく実験実習のために参つて、そしてその結果は、それは生産物は会社に入るかもしれませんけれども、しかしその価格等については、費用としてこれを金にかえて支出することはできるわけでありますから、その目的に合致するように、できるだけ教育の効果を上げるように使用してもらうことはできると思います。  それから、ただいま岡委員からのお話でありますが、確かに学校の都合によつて、しかも会社方面で、この産業教育の上に理解を持つて、協力をするというような立場でやつてくださるのでありまして、たまたま実際問題としては相当御迷惑をかけることもありましようし、またいろいろな点で、不自由を忍んでもやつてくださるという協力的なことも相当ありますし、またそれだけの気持で協力をしていただくことによつてほんとうにこの教育目的を達することができると考えております。
  49. 浦口鉄男

    浦口委員 今実験実習の問題が出ましたので、これに関連してひとつ文部省の意向を聞いておきたい。それは工場などに実地指導をしてもらいに学校から学生をやる場合に、これはいろいろな場合があります。たとえば、休暇中にアルバイトというふうな形で実験実習工場に委託する、こういう場合があります。あるいは学業の途中において、実習時間として炭坑の坑道の中に入つて研究をするとか、あるいは工場へその時間一日とか三時間とかというわけで、授業の中の一環として工場へ行くとか、こういうふうな二つの場合が出て参ります。その場合、事故が起きたときに、その事故に対する責任というものが非常に不明確です。それで学校といたしまして、実習した場合に、炭坑の坑道へ行つた場合に、万一のことがあつたらどうする、けが人が出たような場合に一体どちらが責任を持つて具体的にどういうふうに補償するかということが、非常に不明確なために、実習上非常に支障を来しておる、こういう面があるのでありますが、その面について、文部省としては具体的にどういうふうにお考えになつておるか。
  50. 田中義男

    ○田中政府委員 それらの場合には、ことに長期になりますと、労務災害補償の問題にも関連をいたして参るのであります。それで、労働省方面とも実は折衝いたしておりますけれども、まだはつきりした結論は出ておりません。しかし、そういうふうな場合においては、ことに学校の直接の授業の延長としてやつておるような場合には、なおさら学校としても相当関係が深いわけでありますから、それらの責任等については、十分私は考えなければならぬのじやないかと思つております。
  51. 浦口鉄男

    浦口委員 今までにそういう事実があつて、何か学校当局から、文部省の方にその処置について指示を受けるとか、意見を聞いて来たというふうな例はございませんか。
  52. 田中義男

    ○田中政府委員 まだ、そういう場合は承知しておらぬようでございます。
  53. 松本七郎

    松本(七)委員 先ほど、局長がお見えになる前に質問しておつたのですが、この法律ができてから、今日までいろいろ実施した経験から、行政府としてこういう点をこういうふうにした方がいいという御意見がありましたら、お答えを願いたいと思います。
  54. 田中義男

    ○田中政府委員 産業教育振興法が施行になりましてから、御承知のように中央地方審議会をつくることになつております。それで地方におきましては、数県を除きますほか、ただいますでにできております。地方におきましては、地方審議会をつくりまして、ただいままで総会を開きますこと、この数日前で十一回に及んでおります。なお、中央審議会には、三つの部会をつくりまして——基準部会、学校については中学校の部会、なお教員養成に関しまして教育養成に関する部会等をつくりまして、それぞれ審議をいたしておるのでありますが、すでに基準部会においては、設置基準について一応の成案を得ました。中学校部会におきましても、ただいまかなり具体的な各教科等にわたつて審査をいたしておりまして、これも遠からず成案を得て答申があることと考えております。なお将来の問題として、教育養成に関する検討をいたすことになつております。  それから、なお本年度から初めて交付いたします補助金等につきましては、かねがね私どもの方において配分基準についていろいろ検討を加えまして、すでにその方針を各府県に内示をいたしまして、四月三十日までに、地方から申請をしてもらうごとになつております。すでに大分期日も締切りより経過いたしておりますが、相当各府県からの申請が遅れておりますので、ただいま督促をいたしまして、出そろつた上で、それぞれの府県への配分等もきめ、あらかじめ用意した方針にのつとつて、効率的に使用してもらうように処置いたしたいと、ただいませつかく準備中でございます。
  55. 浦口鉄男

    浦口委員 いま一つだけお尋ねしておきます。実はこれは産業教育振興法ができる前から、私この委員会でも文部大臣にお尋ねしたわけでありますが、学区制の問題であります。これは産業教育振興法の実際の効果を上げる意味においても、ますますこの学区制の片寄りと申しますか、いわゆる総合制の行過ぎというものをこの際是正するように、文部省として、そうした片寄りのある地方教育委員会に対して、積極的な御指示をされるお気持があるかどうか、その点お尋ねいたしたいと思います。実はせつかく商業なら商業の、従来のいわゆる旧制商業学校としての完全な設備を持つているものが、いわゆる総合制ということが一部に強行されました結果、これがやはり普通の高校になりまして、せつかくの設備の中に、わずか二学級か三学級しか專門の学級が入れられないということから、その設備、それから專任の教職員などが非常にむだをしている。また今まで普通の旧制中学校であつた、あるいは女学校であつたものが総合制になつて、そこに商業科、工業科というものが、わずか一クラスか二クラス入るために、全然設備のないところでその專門課程というものをやらなければいかぬ。また專任教職員も非常にむだが全国的に出ているわけです。これをどうしても是正しなければならぬということを、私は年来主張していたのでありますが、産業教育振興の実をあげるについても、この際特にこの矛盾を、文部省としては積極的にひとつ是正されるようにしていただきたいと思いますが、現在そういう積極的のお気持でお進みになつておられるか、また今後されるつもりか、その点を承りたいと思います。
  56. 田中義男

    ○田中政府委員 最初の学区制の問題につきましては、特に産業教育振興の点から、しばしば現状が非常に支障があつて困る、こういうことを伺つておるのでございます。いろいろ調べてみますと、普通の高等学校の場合におきます学区と大分違いまして、産業方面の学校については、非常に学区が広うございます。なお府県によりますと、全然持たない県もあるようでございまして、普通課程の高等学校におけるがごとく、それほどさように産業教育振興の上においても、きゆうくつではないではないかと思うのでございますけれども、しかしいろいろ実情等さらによく調査いたしまして、適切な処置をいたしたいと考えておるのでございます。さしあたり今回の補助につきましては、実は特例を設けておりまして、戰災を受けた場合、あるいは災害を受けた場合等の学校、また急速に整備を必要とするような特別の事情があるものについては、私どもで指示しました基準によらないでもいい、こういう一項を設けておりますので、それらの実際の場合にあたつての運用によつて、適当な処置をいたしたい、かように考えて、いろいろお話の向きには、またその処置をいたしておるわけでございます。それから総合制の高等学校については、当時確かに少し行き過ぎがあつたことは、これはもうみんな認めておるようでございます。今後一般教育課程その他の点についてこの検討をいたします場合に、この問題を取上げて、そうして適切な改善措置等をとりたいと考えております。
  57. 浦口鉄男

    浦口委員 それで補助金の配分については、もう具体的な問題になりますので、お考えを願いたいと思いますが、たとえばある市を例にとりましても、これは学区制によるといたしますと、端から端まで通学いたしましても、一里ぐらいしかないわけです。そこに従来の旧制中学が五つある。そのうちに商業專門の学校一つある。これを全部五つとも総合にしてしまつて、学区制を割つてしまつたわけです。でありますから、五つのどの学校にも実業課程が一クラスか二クラスある。かつての商業專門であつたところも、やはり三クラスしかないというふうなことになつて、これに補助金を配分されるときに、現状のままで、この少い補助金を配分されても、おそらく意味ないと思います。でありますから、こうした従来全然実業教育設備のないところで、一年か二年しかまだやつていない、わずか一クラスか二クラスしかない実業課程のものは、積極的にこれを元へ返して、やめさせるというふうな方向に行かなければ、少い予算を効果あらしめるようにはできないと思います。そういう点について積極的に、これは具体的な配分問題になつて来ておりますから、御説明願いたいと思いますが、その点いかがですか。
  58. 田中義男

    ○田中政府委員 文部省で指示いたします方針等は、全国的に参りますので、個々の府県の実情等については、地方において適切な処置をしてもらうことを、期待をいたしておるのでございまして、それらの具体的な問題について、特別な事情等がございますれば、なお私どももよく伺つて、そうして地方庁ともほんとうに相談をしたいと思つております。
  59. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に長野君。
  60. 長野長廣

    ○長野委員 大学当局にひとつお伺いしたいと思います。同時に、田中政府委員の方からもひとつお願いいたしたいと思います。それは農・工・水産等の大学の現在の設備を見てみますと、非常に貧弱であります。今もし全国に今回の計画による産業教育を充実いたしたとしますと、まつたく逆になりまして、つまり地方大学卒業生が教員として就職する側の学校が、かえつてりつぱなものができて、大学そのものはきわめて貧弱なものになる、こういう事実をわれわれは否定することができないのであります。ことに農業教育を見てみますと、肥料その他の人夫賃などというものが、非常に貧弱なために——それは具体的にここでその実例を申し上げることをはばかる次第でありますが、さらに昨日は各大学の農場長が参りまして、私の見た以外の学校実情を承つてみますと、ますます私は残念に思うわけであります。つきましては、この際文部省として、何らかこの点について、御調査になつておられるのですか、また将来これをいかに充実するお考えであるか、この点を第一にお伺いしたいと思います。  時間の関係上、続けて申し上げますが、第二に、わが国の国土の開発という点から考えてみますと、今まで非常に閑却されておるのは、高台地の土地利用であると思います。高台地は、最近よく開墾も行われておりますが、ここで種物、苗物を育成して、これを平地の暖かい地面へ配布すること、及びわが国の種苗を海外に輸出する——これはすでに相当希望の筋も現われておりますが、この二つの面を考えるときに、高台地は種苗育成及び種苗輸出の根源地である、こういうことになるのであります。すでに宇都宮高等農林、今の宇都宮大学において、日光に相当の地面を持ちまして、これが開発を志しておりますけれども、経費きわめて貧弱なために、事実先般視察をしましたけれども、遺憾な状態にございます。私は全国の農業関係大学におきまして、高台地利用、開発の設備をおやりになつて、ただいま申し上げたような意味における目標のもとに活動してもらいますと、これは農業教育という意味だけでなく、わが国の産業開発の上に、非常な効果をもたらすものではないか、かように考える次第であります。この点について、当局はいかなるお考えを持たれておるか、まずこの二つをお伺いいたします。
  61. 稻田清助

    ○稻田政府委員 御指摘の第一の、大学産業教育関係の施設の現状及びこれに対する対策の点でございますが、御指摘の通り、今日の各大学技術教育関係の施設が、決して十分でないのでございます。われわれといたしましても、この点を痛感いたしておりますが、新しい大学ができましてから、設備等につきましては、まず第一に従来の專門学校等の施設を利用いたしましたために、一般にこの一般教育関係の施設が充実していなかつたので、その辺に重点を置いて参つたのでございますが、大学の性質及び今後の産業に寄與するというような観点から、御指摘のような農場、牧場あるいは練習船、あるいは工場等については、今後十分力をいたしたいと考えております。それについて予算を要求いたします資料といたしまして、やはり科学的に教育的に必要な資料を得たいと思いまして、いろいろ農場関係者、あるいは牧場関係者、それぞれの施設の関係者に、先般来時折りお集りいただきまして、それからの基準というものをまず第一作成に努めております。これらの科学的な資料ができますれば、それを根拠といたしまして、今後予算編成の場合に、十分考慮して参りたいと考えております。  第二の高台地利用の点につきましては、まことにけつこうな御教示を得ましたわけで、これらを学校教育に利用し、また同時に産業に寄與するという点につきましては、十分に研究いたしたいと考えております。
  62. 長野長廣

    ○長野委員 それからもう一つは、わが国の南部地帶、たとえば四国、九州あるいは伊豆半島、こういうような、比較的太陽熱に恵まれておる、そしてまた地帶によつては温泉もわき出ておる。こういう自然の温熱を利用いたしまして、これによつて熱帯、亜熱帯作物あるいは植物を育成いたしますことは、最近の科学の進歩から見ますと、相当可能性があるように考えられます。これをひとつ大学において、今回の産業教育振興と関連をいたしまして、特別施設として、あるいは共同実習地等として、ガラス・ハウスをこしらえまして——夏はいいのですが、春、秋及び冬の不足する温熱を、適当な方法を加えまして、もつて熱帶、亜熱帶の、ほんとうに生々たる農産物を出すということは、今後非常に重視すべきではあるまいか、かように考えるのであります。これをひとつ産業教育及び大学の施設の中に、この際至急に施設をせられるように御努力、願いたいと思います。  もう一つは、すでに柑橘、トマト、メロンのごときは、どんどんつくつておるのでありますが、これらも大いに改善を加えて行く上において、大学及び産業教育指導の面におきまして、特に文部省においてこの点を重視いたしまして、遺憾なき発展を遂げられるようにしていただきたいと思います。いかがでございますか。
  63. 稻田清助

    ○稻田政府委員 御指摘のごとく、全国に配置いたしております各大学の学部につきましては、それぞれの教育及び研究の特色を生かすこと、及びまた地方の要請に即することが、共本方針であると考えております。これらについては、従来とも学長、学部長の方々とも、それぞれの学部の特色はどちらに指向して伸ばして行くかというような点について、お話合いをいたしておりますが、将来とも総合的にこれを計画いたしまして、御指摘のような点についても、よく学校当局とお打合せをいたしまして、われわれといたしましても、万全を期したいと考えております。
  64. 竹尾弌

    竹尾委員長 小林進君。
  65. 小林進

    小林(進)委員 提案者に御質問いたしたいと思うのであります。(「提案者ではないか」と呼ぶ者あり)私は産業教育振興法の提案者の一人に加わつておるのでありますけれども、一部改正案に対する提案者ではございません。この内容を拝見いたしまして、実はこの点教育の将来に根本的に重大な影響があろうと思いますので、いささか時間を拝借して、特にお伺いいたしたいと思うのであります。提案者の説明の中に「現在これに対する予算は、一般にきわめて不十分であるばかりでなく」云々の言葉があります。そのために、ともかくこれを收益をあげて、学校の自由にまかせて、そして生徒の労働意慾をそそるというようなことが趣旨になつておるようでありますが、この問題に関連いたしまして、まず私は、一体こうしたことが現在の職業教育の経験からながめて、学校当局理事者の方では、どういうようなお考えを持つておられるか。私も産業教育は、できるだけその実績を見てまわつたつもりでありますけれども、提案された理事者側には、一体輿論としてどのように伝わつておるか。  それからいま一つは、今度は学生生徒の側で、こうした処置をとられることを、一体どういうぐあいに考えておるか。生徒の側、学校の経営者、教職員の側の意向、そういうものをひとつお伺いいたしたいと思うのであります。
  66. 若林義孝

    若林委員 本改正案に対しての提出者ではないからと、小林委員はおつしやいますが、この改正案は、前十国会におきまして提出されました産業教育振興法を、そのまま持つて来たのでありまして、そのときには、小林委員も御賛成になつておるばかりではなく、提出者であります。そのときの御提案の理由はどういう気持であつたか、それを私の方から承ることによつて、答弁にかえたいと思います。
  67. 小林進

    小林(進)委員 その提案のときと、かすに時間と、歳月がございます。この歴史の経過をながめまして、経験を積んだ今日の、いわゆる学校の空気を、今提案者に承つておるのであります。どうかひとつ御説明を願いたいと思うのであります。
  68. 若林義孝

    若林委員 その当時の学校側の要求並びに生徒側の気持をますます強化されたのみでありまして、その意味において、改正案を早急に出すべきだという気持で、これはむしろ小林委員の御気持が含まれておつた前の原案を復活いたしたのでありまして、謝辞を述べていただく以外、かくのごとき質問があるとは思わなかつたのであります。
  69. 小林進

    小林(進)委員 私も、その後の研究並びに調査に基きますと、大学実習は別にいたしましても、高等学校などの実情を見て歩きますと、これは第三者の立場でありますが、どうも少し労働が強化されているのではないかというような感じを、しばしば受けて来ておるのでありまして、実は提案当時の気持と、実情をながめて、私は非常に考えるところが多かつたのであります。ここへ持つて来て、やはりその收益がその学校に帰属して、その利益によつて設備を強化するというような形ができ上ると、今私の懸念している労働の強化というものが、さらに一段はげしくなるのではないかということを、非常におそれているのであります。あるいは若干重複をしておるかと思いますが、この点を、私は提案者からいま一応明確に承りたいと思います。
  70. 若林義孝

    若林委員 ただいまの小林委員の御発言は、非常に同感を表する箇所があるのでございますが、私たち実情を見て参りまして、この労働の強化その他は、少額といえども、その実験実習から上ります收益を、その実験実習設備その他に充当することによつてこれが補われて行く。なお説明の中にも書いてありましたように、衣服、食糧その他についても、不十分なものを補つて行つて、そうして実験実習に心から熱意を持たせ得るようにして行く、これがその目的なのでございまして、先ほど小林委員は、まだおいでになつておりませんのでしたが、渡部委員から、この方向勤労奉仕的の、前の学徒動員のようなことに使われるおそれがあるのではないかというような御質問も出たのでありますが、それとやや勤労の過度というようなことを御懸念になつておると思うのでありますけれども、これは先ほどやはり渡部委員にお答えをしたのでありますが、文部大臣の監督も及ばぬくらいの強力な権限を持つた校長が、これに自分の魂をぶち込んで行く。この校長の庇護下にある生徒のことでございますから、われわれ国会議員が懸念するようなことはまずないのではないかというような気持がするのであります。なおこの校長は、十分勤労と学習、あるいは実験実習のいわゆる限度というものは、守つて行かなければならぬものだと思うのであります。收益のみを目的とするような、実験実習の名のもとにおいて、学校経費を補つて行くために生徒を従事せしむるということは、教育という面に重点を置いております学校としては、とるべき態度ではないと思います。これはこの産業教育振興法とは別な観点に立つて教育基本法というようなものによつて校長が良心的に行くべきものではないか、こう思うのでありまして、その校長が良心的に教育意欲に燃えて行くのに行きやすいために、この改正案を再び持ち出したわけでありますから、その点は小林委員が前に非常な熱意を持つてこの産業教育振興法を御提出になりましたときの気持を、私たち体しておるのでございます。
  71. 小林進

    小林(進)委員 政治は現実でございますから、やはりかすに年月をもつてすれば、現実に基いて思想もかわりますし、また別な思想も生れて来るのでありますから、あまり提案当時の気持を言われぬことをお願いいたします。  とにかく私は、教育といたしましては、こういう勤労研究と相重なつて行く一つの進み方、これは確かにあつていいと思います。またこれは世界の教育に見られることでございますから、けつこうでございます。もちろん、こういう働くことを前提としてでき上る学校は、これは私学であつて、最初からそういうことを予定した学校はよろしいけれども、そういうシステムを、産業関係学校ということで、全般的にこれをやることに、相当考える余地があるのじやないか。一つのモデル・スクールとしてやつてみる、こういう段階ではないかという気持がするのです。そういうことで、われわれはやはりその利益の点のみならず、よつて生ずる弊害の点もこの際十分考慮して、大事をとる必要があるということを痛感するのでありますが、今の御説明によれば、もつぱら校長の良心に基いてやる、そうしてその根底をなすものには教育基本法があるではないか、こうおつしやるのであります。しかし、その校長の良心なるものを、実は私は非常に全幅的にまだ信頼ができないという感じがする。これをつづめて言えば、やはり実施をした場合には、よその学校よりぬきんでて、自分学校産業設備を優秀にしたいという競争心が、まず校長に出て参りましよう。なるべくよその学校よりは自分学校が特別に利益を上げたいという一つの競争心がわいて参りましよう。そういう他校にすぐれたいという校長の競争心なり名誉心なり、そういうことが、ひいては生徒に労働を強化したり、あるいはさつき渡部君が何を言つたか知りませんが、産報だの、労働の收奪だのというような言葉で表現するのではありませんが、実施した現実の場合に、校長の良心が一つの競争心なり、他校よりもすぐれたいというようないろいろの形から、どうしても無理な利益を上げ、無理な労働を強制するような弊害が出て来るのではないかということを私はおそれるのでありまして、願わくばこれをいま少し研究材料としてモデル・スクールの範囲にとどめておく。そして結果良好と見て、全般的に産業教育に及ぼして行くというような方法はどうだろうかということが、考えられるのでありますが、これに対する提案者の考え方を承りたいと思います。
  72. 若林義孝

    若林委員 私たち提案者の気持といたしましては、これを別に強制しているのではないのであります。使わなければならぬというのではないのであります。使うことができるということなんです。返そうと思えば、お返しになつていいのです。  それから競争意欲といいますけれども、学校長は会社の社長、工場長ではない、教育ということを完全に行うところに初めて校長の競争意欲は出て来る。ただ收益にのみ重点を置くというのは、これは校長にあらずして、工場長だろうと私たちは思うのであります。そういう意味において、良識ある校長を信頼するにあらざれば、これは、このことばかりではありますまい、学校教育全体をまかすわけには行かない。こう思うのでありまして、この法律は別に強制的のものではございませんから、いわゆる校長の権限に基いて、いかようにでもできる自由を與えてある。今までのように、上つた收益は全部県なりあるいは設置者である市なりがこれを吸い上げてしまうということは、実験実習に対する熱意を喪失せしめるというような事柄も考慮されるのでありますから、その自由なる立場を與える、こういう意味でこの法案を設けた次第であります。
  73. 小林進

    小林(進)委員 校長工場長ではないということは、抽象的には言い得るのでありますが、私は実施した実際の面で、そういう形が出て来るのではないかということを非常に懸念しているので、今お伺いしたわけでありますが、具体的なそれに対する御説明のないのをはなはだ遺憾に思います。  いま一つ私の疑問といたしますのは、やはり官立、公立の学校で、予算が不足して経営が非常に苦しいということは、これは一般学校産業教育学校と、それほどの懸融があるわけではないのであります、みんな同じく困つておる。そうすると、将来産業教育に関する学校だけは、そうした自分の收入によつて設備をまかなつて行くが、一般学校にはそういう特別の收入がないから並行して進み得ない。同じく官立ないし公立の学校で、そうした一つの矛盾が出て来るのではないか。その不均衡を一体どういうふうにして是正せられる御意向であるか、そういうこともあわせてお伺いしたい。
  74. 若林義孝

    若林委員 これは特別の課程でありますから、特別のいわゆる労力というものがいるわけであります。普通課程においては、普通の弁当だけでいいかもしれない。それから夏、夜おそくまで、もし田畑などすき、くわを持つて耕したならば、より以上おなかのすくことは認められると考えるのであります。それを普通のものからパンその他を補うというわけには行かぬから、職業課程によつて受くるところのものからパンなどを出してやるというようなことは、当然考えられるべきものだ、こう思うのであります。  それから設備その他一般については、これは普通の、国家補助の対象といたしておりますので、設備は行われると考えるのでありまして、ただ、実験実習など特殊性のあるものから得るところのものでありますから、それを充実して行く意味において、それの收益をこれに充てる。より以上上つたからといつて、そのものに特別に不必要な配給物といいますか、ものを與える必要はないけれども、もしできれば、よごれる仕事をやるのならば、そのよごれる実験実習に従事する作業衣その他は学校として補給してやるというようなことはやる。そういうものを設置したから、それでは商業課程のものにも、そろばんをやるときによごれるから、何か手のところにこれもこしらえたらいいじやないかというような説が出て来るかもしれませんけれども、それはその方の課程で、またその收益が上るようになれば、それでやつてもいいですけれども、一般的に普通のリベラル・コースのものと違つて、特殊の職業課程には、実験実習から上る收益の中からこれに充当して行くということは、決して不均衡なものではない。余分のものを與えて行くというようなことは、これは愼むべきことだと思うし、またそういうようなことはなかろう。またそれほどの收益は、学生実験実習からは上るまい、こう私たちは思つております。
  75. 圓谷光衞

    圓谷委員 文部大臣か稻田局長のどちらでもようございますが、産業教育法案のわれわれ提案者の一人ですが、産業教育振興費の分配について、われわれの提案したときの意思とたいへんかわつた分配の仕方をしているのであります。当時これは二分の一以上補給するということを明記してあつたのですが、二分の一補給というわくをはつきりきめれば、つまり施設の悪い貧弱な学校に対しては困る。わくをきめない方がいいじやないかということで、このわくをきめなかつたのです。ところが三分の一を補給するということを文部省で通牒をしたというが、これは一体文部省の意思でやつたのか、大蔵省の圧迫を受けてやつたのか、どちらかということをお聞きしたいのが一点。  第二は、大体十億を今年とるということは、これは党議でもきまつた問題です。ところが、御承知通り六億六千万円だかきり出なかつたのです。そこで四億近くまだ残つておると思うのですが、この問題は一応自由党の党議できめたものです。これが本予算に出なかつたことは、いまさら返らぬことでありますが、今度の補正予算にこれを計上するお見込みでありますかというのが第二点。  第三番には、聞くところによれば、この産業教育振興費の各学校への分配ですが、一定水準以下の施設しか持たない学校に対しては配給しないという方針を、文部省がとつておるということであるが、これははたして事実であるか。こうなると、先ほど私が申し上げたように、教育の機会均等が失われる。施設の悪いところには、この分配が行かないということになりますれば、これはわれわれの立法したところの意思に反することになるのですが、この三点について御答弁を願いたいと思います。
  76. 田中義男

    ○田中政府委員 ただいま御質問の一点と三点とは、私からお答えするのが適当だと思います。御承知のように、従来大蔵省の動かない方針としては、義務教育については、大体二分の一補助ということを言つております。その他については三分の一というほとんど鉄則のように従来大蔵省が守つて来ている方針がございまして、この産業教育補助につきましても、文部省としては二分の一を何とかしたいということで種々折衝をいたしましたが、結果において大蔵省の方針に従つたということになつたわけでございます。  それから第三点につきましては、確かにお話のように一定水準を基準として今回補助をいたすことに準備をいたしました。それは教育効果の早急に上げ得るもの——限られた予算をもつて、しかも当面産業教育をなるべく有効に早くその効果を上げよう、重点的にやろうということで、一定のそこから割出した標準をもつて今回配分基準といたしておるのでございます。しかしこの点については、先ほどもお答え  をいたしたのでございますが、一応私どもとしては、全国的に各地方一般方針としてこれを示しておりますの  で、大体その根本方針がかわらない範囲においては、個々具体の場合において、地方において相当考えて決定をしてしかるべく、私どもも考えておるのでございまして、特にしばしば聞きますように、設備を二分の一以上持つたものにはやらないというようなことはけしからぬということを、学区の問題とあわせてよく陳情を受けておりますが、しかしこれについても、大体特別な事情のあるものについては、しんしやくする余地を知事においても一項目設けておりますので、それらの運用によつて地方実情に真に即するように、そうして産業教育振興ほんとうにはかられるように考えてもらうことを、実は期待いたしておるわけでございます。
  77. 圓谷光衞

    圓谷委員 いま一点、予算の問題……。
  78. 田中義男

    ○田中政府委員 なお補正予算の問題につきましては、他にもいろいろ事項がございますので、それら全般の問題とあわせて、将来検討いたしたいと考えております。
  79. 圓谷光衞

    圓谷委員 私の聞いたのは、一般でないのです。この十億円を出すということは、大蔵大臣は聞かなかつたのですが、党の三役は了承したのです。ところがあの通りになつたのです。しかし今度の九月ごろ開かれる臨時国会には、補正として残額だけはあくまで産業教育の方にとりたいのですが、文部省でそれを提案するかどうかということを聞いたのです。それを出しますか、補正予算に計上して……。
  80. 田中義男

    ○田中政府委員 私どもとしては、御趣旨を体してできるだけ努めたいと思つております。
  81. 圓谷光衞

    圓谷委員 文部委員と連絡して出してください。それからさつきの三分の一では実際困るというのですが、産業教育を担当している方々から、それなら三分の一の起債を認めて出していただきたいということで来ているのですが、文部省の方では、それを何とか三分の一国、三分の一地方、三分の一起債——起債といえばやはり地方財政になりますが、その三分の一の起債の方はどうなりますか、それを伺いたい。
  82. 田中義男

    ○田中政府委員 大体当初考えておりました線に近い起債の額の通達を、地方財政委員会から得ておりますので、御期待に沿い得るのではないかと思つておるのであります。
  83. 圓谷光衞

    圓谷委員 それは間違いありませんか。地財委というところは、なかなかやつかいなところですから、よほど注意しないと、あなたは大体期待できるだろうというのですが、私の方も大分地財委には申し入れておりますが、大体間違いございませんなら、私はこれで了承いたします。
  84. 田中義男

    ○田中政府委員 いろいろ国庫負担法その他の問題とも関連しておりましたものか、おかげさまで非常にいい結果の通達を、確かに私の目に見たのでございまして、公文書で参りましたから、間違いございません。
  85. 竹尾弌

    竹尾委員長 本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたしておきます。     —————————————
  86. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に、義務教育費国庫負担法案議題といたし、質疑を行います。小林信一君。
  87. 小林信一

    小林(信)委員 委員長にあらかじめお伺いいたしますが、いろいろ法律がこうたくさん出て来て、どれだけどういうふうに審議するのか、どれが先に上るのか、ちよつとわからないのでありますが、義務教育費国庫負担法の方も急がれておるようだし、今の産業教育振興法改正も急がれておるようですが、大体委員長としては、今のところどの法律を最も急がれておるのか、ちよつとお伺いしたい。
  88. 竹尾弌

    竹尾委員長 どの法律も、実は急いでおるのですけれども、大体きようはこういうような上程の順序をそろえているようですが、いろいろその日の政府委員の出席の関係や、その他によりまして、日程の順序を変更する場合のあることは、御承知通りでありまして、義務教育費国庫負担法案を初め、どの法律も一様に早く委員会を通したい、こういう気持であります。
  89. 小林信一

    小林(信)委員 委員長とすれば、そういう点は非常に御心配になつておられると思うのですが、やはり委員長も人間である以上、御自分の提案している国庫負担法に頭が向いておるのじやないかと思うのです。これは委員長は非常に御苦労されておつて、私たち相当感謝しておりますし、また何とかして、私たちもぜひとも協力して、この法律は内容を充実して通したいと考えておるのですが、またそちらにすわつておられる若林委員からすれば、この産業教育振興法は、前から非常な御努力なんで——自由党の内部の実情を推しはかつて、まことに済まぬわけですが、それぞれの立場から非常にお急ぎになつておられるのですが、また私たちの立場からすると、ここに政府提案になつております教育委員会法等の一部を改正する法律案、これも急いでいるのじやないかとも思われておるのです。そういう点、委員長は御承知になつておられますか。
  90. 竹尾弌

    竹尾委員長 十分承知しております。承知し過ぎるほど承知しておるつもりでございます。ただ国庫負担法に私が非常に熱心であるというお言葉でございましたけれども、私は委員諸君その他関係者の気持を、私自身が体してやるという結果になりますので、特にこの法案に対して私自身だけが熱心であるというようなことはございませんので、どの法案に対しても、私は自分の責任を十分果したい、こういう気持でやつておるのでございまして、この点はどうぞ誤解のないようにお願いしたいと思います。
  91. 小林信一

    小林(信)委員 承知いたしました。ところがこの教育委員会法等の一部改正法律案は、内容を見ますと、最初の方はそんなに急ぐこともないようですが、一番最後の「教育公務員特例法の一部を改正する法律の一部を次のように改正する。」という條項があるのです。これはたしかこの十日をもつて期限が切れることになるのです。それがやはり附則第四項から第六項までの規定中のところで一年を延期するというような形になるんです。これは明日に控えているのですが、委員長の方では、これはどういうふうに御処置なさいますか。
  92. 竹尾弌

    竹尾委員長 その点につきましては、私自身も実は非常に頭を悩ましておりまして、せつかく小林委員の御期待に沿うようにとりはからいたいと思つてはおる次第であります。十分わきまえております。  ちよつと小林君にお願いいたしますが、あなたが一番先に発言をされるその理由は、文部大臣が非常に急いでおられるから、そういうことで一審最初にお願いしたわけですから、文部大臣に対する質疑を先にお願いいたしたいと思います。
  93. 小林信一

    小林(信)委員 ただいまのお話はよく了解いたしまして、委員の一人として委員長を信じて、その問題はそれでおきますが、とにかく明白のことでありますから、明日この委員会は必ずお開きになると思いますが、そういう意味で、文部大臣がお急ぎになつておられるので、ひとつお伺いいたします。  この義務教育費国庫負担法の問題については、私お聞きしたいことがたくさんあるのですが、特に大臣にこの際お伺いしたいのは、今こちらへ全国の——全国のといつても、非常に弱い力を持つておられる方たちでありまして、この中にも書いてございます養護教諭の方たちなんですが、昨日実は文部委員長をおたずねになつたのですが、おるすだつた。きようここに来ていただいているので、ちようどこの問題が上つたのですから、大臣にも、提案者にもお伺いしたいと思つてつたわけであります。  私たちは、この法律案を検討いたしますにつきましては、いろいろ資料がほしくなるのです。ことに今の養護教諭等の問題につきましては、ただ教員数に含まれているというようなことで漠然としておりますが、どれくらい含まれているのか、また今後この養護教員に対しては、提案される方たちはどういう考えでおられるか、そういう点も実はお伺いしたいと思つておりますが、さしあたつて、提案者ではないか、非常に関係を持つておられる大臣にお聞きしたいのです。皆さんとすれば、各学校に養護教諭を置くことは必然的なものであつて、欠くべからざるものであるが、学校教育法の内容からして、必ずしも置かなくてもいいというような意味があるので、財政的な面から、これが必ず設置されるということになつていない。しかし、現状からすれば、どうでも置いていただきたい。そうしないと、この人たちが十分にその機能を発揮することができないというふうなところもあるのです。従来、私たちもそういう経験があるのですが、この養護教諭の人たちは、自分たちはりつぱに教育の一環として働いているにもかかわらず、前からの慣習で、生徒からは学校看護婦さんというふうな気持でもつて扱われて、その教育的な目的が達せられない、こういう点にも非常に遺憾な点があるのですが、しかし現在の実情からいえば、学校の中では一般の教員と同じような使命を持つておるのです。これに対して、大臣はどういうふうにお考えになつておられるかをお伺いしたいと思います。要は、私たち希望するところは、あの学校教育法が修正されて、そうして必ず学校に一名置くというようなことが要望されるかどうか。また提案者の方は、どういう考えでおられるか、あわせてお答え願いたいと思います。
  94. 天野貞祐

    天野国務大臣 この養護教員の方々の責務というふうなものは、戰前とは非常に考え方がかわつて来て、教育者として、教諭という職責を持つておられるのですから、ただいま御心配のようなことは、だんだん解消して行く、現に改まつて来ておると私は思つております。ただ、一校に一人必ず置けるかといいますと、これは今度の義務教育費国庫負担法が通れば、その基礎の計算において千人に一人ということになつておりますから、普通の小学校なら千人の生徒はあると思うので、一校に一人は必ず置くようになるのではないかと考えております。
  95. 小林信一

    小林(信)委員 千人に一人で大体一校に一人というお話ですが、地方には千人以上という学校はあまりないのです。ことに中学校と小学校にわけましたから、私どもの県あたりでは、大方千人以下です。もちろんこれが割振られますから、千人以下でも設置されるような学校もあると思いますが、しかしそういう程度でこの問題をお考えになつておられると、せつかくこういう数をとられるような法律をつくりましても、それに漏れる学校があつてもやむを得ないというようなことで、不遇な学校はそのまま放置されるわけなんです。だから私は、もう一息のことですから、積極的に大臣も御努力を願いたい、こうお願いしてこの程度でおきたいと思います。よろしくお願いいたします。  提案者の方は、先ほど申しました点でお答え願いたいと思います。
  96. 若林義孝

    若林委員 御趣旨は同感でございます。本義務教育費国庫負担法は、提案理由説明にもありましたように、大体現在のすべての教育費算定基準を中心といたしまして立案いたしたのであります。これでいわゆる橋頭堡を築きまして、将来、今御発言になりましたような趣旨に向つて進んで行くべきだ、こういうように思つておるのであります。
  97. 小林信一

    小林(信)委員 この法律が日の目を見るということは、提案者ばかりではなくして、教育関係する者すべてが、期待しておつたところであります。かつて標準義務教育費確保に関する法律というようなものが出かかつて、これが流産に終つたような悲しい思いをした過去を考えてみますしても、これが出たことは非常な喜びなんですが、しかし……。     〔発言する者あり〕
  98. 竹尾弌

    竹尾委員長 御静粛に願います。
  99. 小林信一

    小林(信)委員 現状を維持するというようなことでなくして、今まで困難であつたものをこの際解決してやる。ただ養護教員に限らず、産前、産後の教員、これは名目はうたつてありますけれども、なかなか地方では、これがうたわれておる通りに実施されておらないために、非常な不満があるのです。各県の教育委員会は、この補充教員を確保するのに、どれくらい苦労しておるかわからないのです。これもやはりこの機会に考えてもらわなければ、この問題を解決することはむずかしいと思いますから、そういう点もはつきりしていただきたいと思うのです。この研修あるいは事故、病気というふうなものまで網羅しておられることは、非常にいいのですが、單に表現だけであつて、こういう内容があるということだけでは、どつちかというと、誠意のないものになつてしまうのですから、提案者におきましてはもう少し……。     〔発言する者あり〕
  100. 竹尾弌

    竹尾委員長 御静粛に願います。
  101. 小林信一

    小林(信)委員 数字等を明白にしていただきたい。  もう一つお聞きしておきたいことは、小学校一・一坪、中学校一・四六坪という基準が出ておるのですが、これは私と小林委員東北地方等で非常に要請されておつた問題ですけれども、従来雨天体操場は補助対象から除外されておつて、積雪避難所というふうなことで、辛うじて多少の恩恵を受けていたのですが、こういう問題がこの中に含められておるかどうか、お伺いいたします。
  102. 若林義孝

    若林委員 前段の方の御質疑に対しましては、われわれも同感でりまして、その実現に努力をいたしておるのでありますが、先ほども申し上げましたように、まず今年度においては、最低というところのねらいで、現在の算定基準を中心にいたしたのでありますけれども、しかしながら、この法案によります算定で行きますと、一万四千の増員が見込まれておる計算になるのでありますから、一歩半か二歩くらいの前進にはなるだろうと思うのであります。  それから坪数のことに関しましては、御要望のものは、この中に含めて計算を出しておるのであります。御承知おき願います。
  103. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、これは従来のものよりも一歩も前進しないということになるわけです。結局その内容は〇・二坪ふえただけのことになるわけですが、これではたして現在の一般の要望にこたえられるかどうか。こういう点は問題が非常に大きくなるので、こまかい数字を詳しく出していただいた上で私は検討いたしたいと思うのですが、きようはこの程度で終ります。
  104. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 それでは私から御説明申します。一・一と一・四六の中には、先ほどの雨天体操場、中学校の場合の特別教室が含まれておりますので、いずれ数字をもちまして御説明申し上げます。
  105. 小林信一

    小林(信)委員 今課長さんの方から話があつたのですが、できるだけ数字を詳しく説明していただきたいと思うのです。委員諸君も、反対の人は一人もないのですから、できるだけその内容等をお知らせ願つて、納得の行くような協力をさせていただきたいと思います。  それから委員長にお願いいたしますが、どうか明日も委員会を開いていただきたいと思います。そうしないと、私は委員の責任としてこの法律の問題が心配なんです。この法律をどうするか、さもなければ、私はこの際委員長にお考えを願いたい。この法律を明日可決できなかつたら、あとどうするのか、こういうことになるわけなんです。もしこれがなくなつたら、文部省ではどうするのですか、この法律が明日までにできなかつた場合にはどうするのですか。(「文部省はどうもできない。」と呼ぶ者あり)どうもできないといつても、五月十日までの期限があつて、初めて今日一つの制度が実行されておる。ところが九月十日までというなら、十一日からは何によるのか、そういう問題があるわけです。
  106. 竹尾弌

    竹尾委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。     午後一時一分散会