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1952-03-26 第13回国会 衆議院 文部委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十六日(水曜日)     午前十一時十四分開議  出席委員    委員長 竹尾  弌君    理事 岡延右エ門君 理事 若林 義孝君    理事 小林 信一君 理事 松本 七郎君       鹿野 彦吉君    甲木  保君       坂田 道太君    平島 良一君       井出一太郎君    坂本 泰良君       渡部 義通君    浦口 鉄男君  出席政府委員         文部政務次官  今村 忠助君         文部事務官         (大臣官房渉外         ユネスコ課長) 釘本 久春君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君  委員外出席者         外務事務官         (情報文化局第         四課長)    戸田 盛国君         專  門  員 石井  勗君        專  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 三月二十五日  教職員の除去、就職禁止等に関する政令を廃止  する法律案内閣提出第一一〇号) 同月二十六日  筑紫丘高等学校校舎存置に関する請願池見茂  隆君紹介)(第一六五二号)  学校給食継続実施等に関する請願中村清君紹  介)(第一六五三号)  学校給食継続実施に関する請願中村清君紹  介)(第一六五四号)  松葉川村小中学校校舎建築費国庫補助に関する  請願長野長廣紹介)(第一六五五号)  高等学校教職員俸給表制定に関する請願(玉  置實君紹介)(第一六八五号)  学校給食法制定に関する請願飛嶋繁紹介)  (第一七二三号) の審査を本委員会に付託された。 同日  世界平和に関する陳情書  (第九  六八号)  義務教育費全額国庫負担に関する陳情書  (第九九五号)  同(第九九六  号)  義務教育費国庫負担法案反対に関する陳情書  (第九九七号)  公立学校事務職員の身分に関する陳情書  (第九九八号)  公立学校施設の防災並びに災害復旧に関する法  律制定に関する陳情書  (第九九九号)  高等学校職員俸給表制定に関する陳情書外一  件(  第一〇〇〇号)  視覚教育推進に関する陳情書  (第一〇〇一号)  大学に対する干渉排除等に関する陳情書  (第一〇  〇二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  新たに入学する児童に対する教科用図書給與  に関する法律案内閣提出第五〇号)  ユネスコ活動に関する法律案内閣提出第六二  号)     ―――――――――――――
  2. 竹尾弌

    竹尾委員長 これより会議を開きます。新たに入学する児童に対する教科用図書給與に関する法律案議題といたします。  本案に対する質疑はすでに終了いたしております。これより討論に入ります。本案に対する討論の通告があります。これを許します。若林義孝君。
  3. 若林義孝

    若林委員 自由党を代表いたしましてただいま議題となつております法案に対し、賛成意見を申し述べたいと思うのであります。  そもそも義務教育と申しますものは、憲法無償ということを保障いたしておるのでありまして、地方において、それを保障するか、あるいは中央の政府において保障するかの議論もあるようでありますけれども憲法で保障されております以上、終局的の責任保障というものは、国家にあると思うのであります。前年の半額国庫負担の勧奨の法律と比べてみまするときに、本法案は数段の進歩をなし、義務教育費国庫負担原則が、この点相当強く踏み出ざれたものではないかと考えるのであります。前年の半額国庫負担ということは、事務的にも地方財政その他にも、非常に迷惑を及ぼしたというような非難の声があつたのでありますが、今年度は、全額国庫負担という意味において、これが提案されておるのでありまして、おそらく地方団体におきましても、これは歓迎される法案ではないかと考えるのであります。世論国定教科書云々などの問題があるのでありますが、あくまでも検定の制度というものを押し出しておるのであります。現在の関係からいたしまして、これとは無関係教科書無償原則をまず一歩踏み出したということを、私たちは非常に喜ぶものであります。  なおこの原則に基きまして、少くとも中学校の三年まで全課程教科書についても、この点この法案財政的に拡充して参りたい念願であるのでありますが、その一歩としてこれが提案された、こう承知いたしておるのであります。文部当局におきましても、将来全義務教育課程における、まず教科書無償ということに最大の努力を拂われるよう希望いたすのでありまして、将来この義務教育に関する課程教科書を、財政上から考えますと、他の費目に比べて、少くとも非常に少額で効果のあるところのもであろうと思うのであります。  なおこの原則からいたしまして、当面の急を要しますものは、産業教育その他に関する特異の教科書などについても、一層の考慮を拂われるべきだと思うのでありますが、将来教科書政策というものについても、文部省としては、この法案を出される教科書に非常に関心を持つて重要視せられます点をも、ひとつ漸進的に産業教育その他特殊の教科書などにも一般の考慮を拂われることを希望するのであります。  将来教科書政策というものについて、国家としても格段の関心を持つて教科書政策というものを進める必要のある現段階におきまして、本法案はその第一歩を踏み出したものなりと考えまして、本法案に対して賛意を表するところのものでございます。
  4. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に松本七郎君。
  5. 松本七郎

    松本(七)委員 私は日本社会党代表いたしまして、本案賛成するものであります。  ただ今回のこの法案によりますと、第一学年に入学する自動児童に対するのみになつておりますので、なるべくすみやかに義務教育学年無償配付が実現できるように要望いたします。  それから本法律運営につきましては、国がこういう無償配付をするために、各学校自由選択権が侵されるようなことのないように十分留意していただきたいと思います。  それからこういつた無償配付を行うと、どうしても必要な報告等管理機関に要求されることになろうと思うのでありますが、そういう報告事項というものはなるべく必要最小限度にとどめるよう、煩雑にわたらないよう留意されることを希望いたしまして、本案賛成いたします。
  6. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に渡部義通君。
  7. 渡部義通

    渡部委員 われわれも、本案に結論的には賛成なんでありますが、その賛成趣旨はつきりさせておかなければならない点があると思います。  問題は、この一年生に対する教科書無償配付ということが、小林進委員等からも先日強調されたように、お祝い的な意味をもつてなされるというような提案説明があつた。しかし、それはそのようなことであつてはならないのであつて、本来、国民は、義務教育国家によつて保障されるところの権利を持つておるのであり、これが憲法精神なのであるから、当然義務教育に対しては、国家がこれを責任をもつて保障する、すべての人が不自由なく義務教育を受ける権利を持つているんだという、はつきりした確認の上に立つてこの法案提出されるときに、この法案の将来の目標と意図はつきりするのだとわれわれは考えておるわけです。それが憲法精神であります。それで、現在一冊の教科書を買うこともできず、あるいは買うことに非常に困難している国民大衆があるわけでありまして、このこと自体もまた、国の政治責任であるとわれわれは考えるわけです。しかも、今ただ一年生にだけ教科書無償配付されるというような形でお茶を濁すようなことであつてはならないので、それは財政上の問題を云々されますけれども予算案を見ると、日本国民の心からの要望であり、期待であるところの民主的な文化国家の建設という見地からして、現在の政府が立てておるところの予算は、これに反するものである。言いかえれば、軍事費その他によつて教育費文化費というものが極度に圧迫を受けているということは、事実としていかなる人も認めなければならないし、また認めているところたのでありますから、ほんとうに教育を発展させ、その基礎としての義務教育を確立するためには、このような再軍備に狂奔するような政治的な傾向を、断固として国家国民要望に基いて排除してこそ、将来義務教育費国庫負担、あるいは憲法に保障された義務教育を受くる国民的な権利というものが確立されるわけでありますので、極力日本を不幸にさせるところの再軍備あるいは軍事費の増額ということを排除することによつて、この義務教育の最後的な国庫負担を急速に確立させなければならない。こういう見地に立つて、われはこの法案に一応賛成の意を表するわけであります。  しかし、同時に、考えておかなければならぬのは、松本委員からも簡單に意見がありましたように、このことを通じて、やがて教科書の国定的なものの配付あるいは国定教科書的なものの配付という形が実現されてはならないということ。そのようなことになれば、学問の自由な発展、あるいは学童の自由な教育というものを阻害して、学校教育に対する国家的な統制あるいは官庁的な統制というものが将来復活する危険性がある。現在の文部省としては、そういう意味ではなくて、自由選択に基く経費の補償という趣旨であるというのでありますから、その趣旨には、われわれは賛成でありますが、将来くれぐれも国定教科書の頒布という形における教育国家的な統制の道をたどることのないということ、あるべきでないということを強調しておかなければならぬと思います。こういう見地から、現在提出されておる法案について強く確認しておくべき点を述べて、賛成の意を表するものであります。
  8. 竹尾弌

    竹尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。原案賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立
  9. 竹尾弌

    竹尾委員長 起立総員。よつて本案原案の通り可決いたじました。なお報告書等提出につきましては、委員長に御一任願います。
  10. 竹尾弌

    竹尾委員長 次にユネスコ活動に関する法律案議題といたします。前会の文部当局提案理由説明に対しまして、質疑がありますれば、これを許します。
  11. 松本七郎

    松本(七)委員 前会の説明のときにも触れられておりましたが、国内委員会に関する規定を設ける場合に、ユネスコ憲章七條を引用して御説明があつて政府教育科学及び文化関係のおもな国内団体代表者をもつて組織することが考慮されておるのですが、この教育科学文化関係のおもな国内団体として、どういうものを対象にされておるのか伺いたい。
  12. 釘本久春

    釘本政府委員 ただいまの御質問に対して、お答え申し上げます。教育科学文化に関します団体といたしましては、純然たる民間団体、また政府機関団体等いろいろございまして、たとえば、一例をあげますと、教育につきましては教育刷新審議会とか、また科学につきましては日本学術会議とか、文化につきましては、たとえばペン・クラブとか著作権組合とか、そ弔いつた団体を考えておるわけでございます。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 そうしますと、ユネスコ国内委員会設置準備会出席されておる方が代表される団体以外にも、相当ありますか。例の設置準備会出席された団体以外に、まだ広範囲に及ぶ予定ですか。
  14. 釘本久春

    釘本政府委員 設置準備会に御出席なつ委員が、何らかの形で属しておられます団体以外の団体等も考えております。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、第一條にもうたつてありますが「国際連合精神則つて」という字句を挿入するについて、設置準備会あたりでも、相当論議がされたということです。特にここに御説明の文書によりますと、ユネスコ運動国連個々政治の場に支配されないよう、縛られないようにしたいという熱望があつたということでありますが、それと国際連合精神ということをうたつた理由と、何らかそこに関係があるか。特に、ここに「国際連合精神則つて」ということをうたつた理由を、少し説明していただきたい。
  16. 釘本久春

    釘本政府委員 御承知のように、ユネスコ活動は、教育科学文化を通じまして、基本的人権尊重、また人人間の基本的自由の尊重、法の支配、正義の尊重、そうした世界人権宣言にうたわれました基本的な民主主義の原理を実現しまして、世界の平和と人類の福祉に寄與するという活動でございますが、ユネスコは申すまでもなく国際連合専門機関でございまして、国際連合條文の中にうたわれました精神関連のない分野で行われる文化活動ないしは平和活動とは、類を異にするわけでございます。そのユネスコの基本的なあり方をはつきりさせますために「国際連合精神則つて」という句を挿入したわけでございます。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 そうしますと、この前の御説明のときにも、国際連合憲章という言葉で御説明しておられたようでしたが、このユネスコ憲章の第一條を見ましても、その目的及び任務のところで「国際連合憲章」ということをはつきりうたつておるのですから「国際連合精神」というよりは「国際連合憲章」ということをはつきりうたつた方が、その意図に合うのではないかと思うのですが、いかがでしよう。
  18. 釘本久春

    釘本政府委員 国際連合憲章の中に表現されました精神を申しますことは、もちろんでございますが、この不幸な戦争のあと、戦争防止という観点から国際連合設立するに至りました、その国際連合設立しております基礎なつ精神、また国際連合を粗に運営し、推進しております原動力になつている精神も含めまして、国際連合憲章のうちに成文化されたもの以外に、国際連合設立し、かつそれを運営しているその推進力となつている健神を含めた意味で「国際連合精神と、こういうふうにうたつたわけでございます。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 国際連合設立した精神から言えば、当然これは国際連合憲章が、根本精神にならなければならぬと思います。運営推進力になつておるということを言われたのですが、そうすると、現在の国際連合の現状から考えて、このユネスコ運動が、国連個々政治の場に支配されるというような危険が生ずるのではないでしようか。
  20. 釘本久春

    釘本政府委員 これは、もとより国際連合ユネスコとの関係は、申すまでもなく、ユネスコ国際連合專門機関でございまして、教育科学文化分野における活動をいたします機関でありまして、高い自主性を持つものでございます。従いまして、ユネスコの行います活動が、一々、全部国際連合のいたします仕事と、まつたく同一でなければならぬということはないわけでございます。しかしながら、主として経済社会理事会におきまして、国際連合ユネスコとの間に協定をし、調整をして、国際連合決定に対してユネスコがこれに協力するという、はつきりした態度をとりましたことに関しましては、国際連合を援助し、また国際連合の線に沿うて行動するということになるわけでございます。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 今のお言葉によれば、むしろ根本原則は、国際連合精神にのつとつてやる、そしていろいろな面で現実の国際連合協力して運営して行くということになるわけですか。そういう意味にこれを解釈してよろしゆうございますか。
  22. 釘本久春

    釘本政府委員 ユネスコ国際連合との間に、主として先ほど申し上げました経済社会理事会を通ずるわけでございますが、その間ではつきりと話合いがつきましたことで、国際連合について協力するという決定をいたしましたことについては、ユネスコは仰せの通りそれぞれ国際連合国内仕事協力して行くということになるわけでこぎいます。その間に専門機関調整機関であります経済社会理事を通して、そういう話合いが進められ、その上でいたすわけでございます。
  23. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、第一條の「国際連合精神則つて」というのは、やほりおかしくなるのではないかと思う。根本国際連合憲章にのつとつてやるということでなければならぬと思う。わざわざ「国際連合精神」とうたつた理由が、はつきりしないわけです。
  24. 釘本久春

    釘本政府委員 国際連合憲章の中に、成文としてうたつてありますことにのつとりますことはもちろん、国際連合が、かりに憲章の中にこまかくうたわれてありませんでも、教育科学文化の面における国際協力という観点からユネスコに助力を求め、あるいはユネスコ協力を求めるというふうな仕事も生れて来るわけであります。そういう場合には、ユネスコ国際連合の間で話合いをつけまして、国際連合の平和への努力に対して協力する、こういうことになるわけであります。従いまして「国際連合精神則つて」という方が、包括的な表現になりまして、適切と考えてそうしたわけでございます。
  25. 松本七郎

    松本(七)委員 どうもわれわれ考えると、逆のように考えます、ユネスコ憲章にも、第一條はつきり「国際連合憲章」ということをうたつておるわけです。そのユネスコ憲章に基いてこの国内委員会をつくるというのですから、当然第一條では「国際連合憲章」ということが明らかにされなければならぬと思います。「国際連合教育科学文化機関憲章の定めるところに従い、国際連合精神則つて」と、わざわざここに入れる意味は、どうしても今の御説明ではわからぬのです。文部省から配付された資料によるとユネスコ的でない偽装平和運動潜入を防がねばならぬ必要性とが明らにかされたこの「国際連合精神則つて」という字句を挿入するについては、そういう議論があつたように思えるような報告がここにされておるのですが、何かそういう点と関係があるのですか。そこらをもう少しはつきりお伺いしたい。
  26. 釘本久春

    釘本政府委員 お言葉でございますが、これを「国際連合憲章則つて」という表現にいたしますと、国連が国際的政治経済的ないろいろな問題を処理して行きます場合に、いろいろな政策を立てられるわけでありますが、その一々の政策決定に従うようなことになるという誤解を生じやすいかと思います。また国連憲章には必ずしもありませんけれども国連精神から言いまして、ユネスコ協力すべき仕事、たとえば、世界人権宣言などについての普及活動を、ユネスコがやつておりますけれども、これは国際連合設立なり運営精神にのつとれば、国連憲章にはありませんけれども世界人権宣言普及活動というものはできるわけでございまして、そういう意味から、私どもは「国際連合精神則つて」といたします方が、ユネスコの自主的な專門機関としての活動をやつて行く上に、都合がいいと考えたのでございます。
  27. 松本七郎

    松本(七)委員 挿入したという理由当局意図はわかりましたが、しかし、この、ユネスコ・ニュース・レターに載つている、今私が御質問した「国際連合精神則つて」という字句を挿入しようという修正案をめぐつては、次のようないろいろな意見があつたように書いてあるのです。その中に「ユネスコ的でない偽装平和運動潜入を防がねばならぬ必要性とが明らかにされた」。それと、この「国際連合精神則つて」という字句を挿入したことについての関連性を、ひとつ御説明願いたいと思います。
  28. 釘本久春

    釘本政府委員 先ほども申し述べまして、繰返すのは恐縮でございますが、ユネスコの行いますこの平和への文化的な運動は、国際連合專門機関である国際連合教育科学文化機関という基本的な性格範囲外に出るべきではないと考えております。準備会で出ました意見につきまして、今お話が、ございましたが、それは、ただいま私が申し述べました国際連合教育科学文化機関であるユネスコ文化活動は、国際連合專門機関であるという性格から離れた文化活動であり、平和運動であるべきでないという議論に統一されたのでございまして、そのように御了解願いたいと思います。
  29. 松本七郎

    松本(七)委員 それからユネスコ国際連合協会との関係は、どういうふうになつておりますか。
  30. 釘本久春

    釘本政府委員 ユネスコは、申し上げるまでもなく、世界各国で、加盟国が昨年末現在で六十四箇国、そのろち国内委員会をつくつておりますのが五十八筒国でありますが、そういう各加盟国が組織する国際的な教育科学文化機関であります。各国政府代表を送つておる機関でございます。国連協会と申しますのは、国連憲章あるいは世界人権宣言等精神を普及するために設けられております民間団体でございまして、これは各国にございますし、日本にも現在存在しております。また各国におきまするユネスコ国内委員会国連協会との関係につきましては、今申し上げましたように、ユネスコに関するものは政府機関であり、国連協会の方は純然たる民間団体でございます。
  31. 松本七郎

    松本(七)委員 ユネスコ国内委員会を設置するについて、所管が以前からいろいろ問題になつたのですが、先日のお話でも、法文によりましても、大体文部大臣が中心になつてやるようになつておる。第六條にも「関係大臣文部大臣以外の者であるときは、文部大臣を通じて行うものとする。」という規定がありますが、第七條においては、国内委員会は、その対外事務を処理するにあたつては、「外務大臣と緊密に連絡して行う」となつております。その場合、これもやはり文部大臣を通じて外務大臣と連絡するということになりますか。
  32. 釘本久春

    釘本政府委員 外務大臣に連絡いたします場合にも、法制上は文部大臣を通じて行うことになつております。
  33. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、国内委員会委員を六十人以内ときめた基礎について……。
  34. 釘本久春

    釘本政府委員 御承知のように、ユネスコ国際條約でありまして、かつ国内委員会設立については、先ほど御指摘のように、ユネスコ憲章七条に、かくあるべきであるという基本的な線が指示されておるわけでございますが、同時に、各国特殊事情にも即応することを考えなければならぬという点もございます。そういたしまして、国内教育科学文化に関するいろいろな領域の方に、また新聞報道等大衆通報関係領域方々、また日本ユネスコ活動特殊性として、加盟以前から民間で自主的に各地方ユネスコ活動をしておられた、そういう地域代表方等を考え合せまして、さらに日本の特性からして、国会議員方々ももちろん参加を願う、そういう建前からいろいろ検討いたしますと、一応の数字も得られるわけでございますが、なお各国の例とも比べ合せまして、大体六十人が至当であるという結論に達したわけでございます。  なお、あわせて多少各国の例を申し上げてみますと、多きは二百人を越えるところもあり、少きは十人ないし十五人というようなところもございます。五十人ないし六十人というところが、かなり多いようでございます。そういうふうに、委員の数につきましては、各国国内委員会によつて、非常に少いところ、非常に多いところがございますが、日本としては六十人くらいが至当であると考えたのであります。
  35. 松本七郎

    松本(七)委員 この委員の中の任期のところですが、衆議院議員参議院議員は、議員でなくなればもちろん任期がなくなると思うのですが、国会両院から一名ずつというようなことになりますと、どうしてもその時の與党議員が入るという可能性が多くなると思うのです、しかし、こういうユネスコ運動のようなものは、やはりもう少し国会議員なんかも多くして、野党協力も得るというか、野党意見なんかも反映する道を開いた方が順調に行くのではないかと思うのですが、どうでしようか。
  36. 釘本久春

    釘本政府委員 わが国に設立さるべきユネスコ国内委員会の特別な性格といたしまして、各国には必ずしも例が乏しいと思いますが、昭和二十二年の国会両院の決議によつてユネスコ活動が展開されて来たことにもかんがみまして、国会議員ユネスコ活動に非常に関心の深い方々に、ぜひ御参加願いたいという筋で、特に行政長官である文部大臣の諮問ないし建議機関であるユネスコ国内委員会にも、立法府からも御参加願いたいという趣旨でありまして、国会議員から御参加を願いたいということを熱心に希望するだけでありまして、その他の点については、私ども国権最高機関であります国会に対しまして、考えておる点は、ございません。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 それから政府職員の委員任期は、どうなんでしようか。
  38. 釘本久春

    釘本政府委員 政府職員は、その職及び官においてなりますので、そのポストから離れましたならば、当然かわるわけであります。
  39. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、そのポストにいる間は、何年でも続くということになりますか。
  40. 釘本久春

    釘本政府委員 さようであります。
  41. 松本七郎

    松本(七)委員 それから委員の選考基準は、政令で定めることになつておるのですが、大体どういうふうな基準が予定されておりますか。
  42. 釘本久春

    釘本政府委員 たとえば、九條の第一項の一号から三号までに書いてありますような分野方々について、大体の目安をもう少し詳しく、たとえば第一号には「教育活動科学活動及び文化活動の各領域代表する者十入人」とございますが、それぞれについて、教育活動としては、たとえば学校教育と社会教育を網羅するとか、科学活動につきましては、漠然とただ科学者ということでなく、人文科学、社会科学、自然科学というものを網羅しますとか、ユネスコ憲章の定めるところに従いまして、できるだけ各專門分野を漏れなくここにあげられますように、そうした点を選考の基準の中にうたいたいと存じております。
  43. 松本七郎

    松本(七)委員 それから事務局職員の任免は、文部大臣が行うことになるわけですが、事務総長の任免だけは、あらかじめ国内委員会の会長の意見を聞かなければならない。――これは会長の意見であつて国内委員会意見ではない。国内委員会意見を聞くということの方が妥当ではないかと思うのですが、その点どうでしようか。
  44. 釘本久春

    釘本政府委員 第十八條の六項の「事務総長の任免については、あらかじめ会長の意見を聞かなければならない。」という点についての御指摘でございますが、この精神は、ただいま仰せられましたように、事務総長というものの地位の重大性にかんがみまして、ただ機械的に文部大臣が任免することでなく、国内委員会意見を聞いて行うという気持でございますが、ただ国内委員会というものは、総会は年二回しか開催できませんし、なお会長は、互選によつて会長になられるのでありますから、会長の意見を聞くことによつて国内委員会意見文部大臣が十分聞くことができるようになる、かように考えまして、こう規定したわけであります。
  45. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、事務局の内部組織は、文部省令で定めることになるのでありますが、これは特に対外施策との関係などで、非常に複雑な問題が出て来て、国内委員会の成果をあげるためには、相当充実した專門的な事務機構が必要だと思うのですが、その内部組織についての方針等、おわかりでしたら御説明願いたい。
  46. 釘本久春

    釘本政府委員 現在のところでは、大体三課ないし四課の組織を考えております。なお、今仰せのように、国際関係の事務を処理するにつきまして、非常に專門的、特殊的な事務もございますので、三課ないし四課につきましては、文部省のみならず、外務省とも、十分協議して、いろいろ案を練つておるところでございますが、その部門は、第一にユネスコ国内委員会の事務を主として管掌します課1この委員会には、御存じのように総会もございますし、それからそれぞれ專門事項について、教育科学文化の各分野にわたる專門小委員会がずいぶんできますので、それに対する議案の準備とか、議事に対する協力とかいう点で、相当に事務が考えられます。そういう委員会に関する事務で一課を構成する。次に、ユネスコ関係のあります各般の調査をいたします調査課とも申すべき課を一課設け、さらにユネスコ憲章世界人権宣言精神を普及いたしますためのパンフレツトをつくりますとか、講演会をいたしますとか、展覧会をいたしますとか、そういつたいろいろな普及活動をいたしますために一課を設けます。その他連絡上――これは対内的並びに対外的な連絡事務が相当ございますので、その点で一課を設ける。三課ないし四課で構成したいと考えておりますが、ユネスコ仕事が相当複雑でありますにかかわりまぜず、予算上認められております定員がわずかでございますので、その点は、課の構成いろいろ苦心をさせられておるところでございます。
  47. 松本七郎

    松本(七)委員 今までの文部省及び外務省内のユネスコ関係の事務に、何か変化が予想されますか。
  48. 釘本久春

    釘本政府委員 国内に対しまするユネスコ活動に関する事務は、文部省の大臣官房にございます渉外ユネスコ課が、現在は所掌してやつておるわけでございますが、ユネスコ国内委員会が設置されましたあかつきは、主として法人の許可とか認可とか、もし必要が生じましたら、補助金の問題とかいつた点についての、ごく純然たる、ある種の権限を伴います行政事務は文部省に残りますけれどもユネスコ活動に関しまする大部分の仕事国内委員会の方に移る、かように考えております。
  49. 松本七郎

    松本(七)委員 外務省の方はどうしようか。
  50. 戸田盛国

    ○戸田説明員 ただいまユネスコ国内委員会が存在しませんので、ユネスコ日本政府との連絡事務は、すべて外務省を通じて行つております。ところが、ユネスコ国内委員会ができましあかつきには、ユネスコ国内委員会いうものの特殊の地位にかんがみまして、ユネスコ本部とユネスコ国内委員会との間にも、連絡の関係が生ずる二とになるものと思つております。その関係調整いたしますために、ここに特別な條項を設けてありますことは、提案理由によつて文部省側から御説明申し上げた通りであります。
  51. 松本七郎

    松本(七)委員 予算の確保については、どういうような方針でおられるのですか、見通しを伺いたい。
  52. 釘本久春

    釘本政府委員 昭和二十七年度の予算につきましては、国会の審議が終れば、すでに大蔵省としては認めてくれておりますので、二十七年度は確保されると考えております。
  53. 松本七郎

    松本(七)委員 二十八年度から、どの程度ふやして行く計画か。これは相当十分な予算を確保しなければ、とてもこれだけの活動はできないと思いますが……。
  54. 釘本久春

    釘本政府委員 二十七年度において確保される見込みの予算額では、特に事業費につきましては、私ども決して十分だと考えておりませんので、仰せの通り、二十八年度には、さらに多くの予算を獲得いたしまして、内にはわれわれ日本同胞のために、世界の事情を鮮明するというような仕事を十分やりたいと同時に、ユネスコ総会に対して、日本としてりつぱな教育科学文化に関する報告書の提出とか、事業の協力とかいたしまして、国際的にも十分な貢献をいたしたいと考えております。
  55. 松本七郎

    松本(七)委員 ヨーロッパなんかのウネスコでは、いろいろな青年組織とか、そういうものに援助の費用を與えて、世界各国をまわらせるとか、そういうことに相当金を與えておるようですが、日本でもそういうことが予定されるでしようか。
  56. 釘本久春

    釘本政府委員 まことに日本におきましても、仰せのようなことをぜひやりたいのでございますが、来年度は、まだ予算的にはそこまでの仕事をやれるようにはならないと思います。しかしながら、極力その方向で努力いたしたいと考えております。
  57. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、国内委員会委員及び調査委員の手当は、どのくらいに予定されておりますか。
  58. 釘本久春

    釘本政府委員 この委員は、勤務いたしました日一日につきまして、二千二百円以下の範囲内で、総理大臣が大蔵大臣と協議して定める額の手当を受けることになるわけでございます。
  59. 松本七郎

    松本(七)委員 まだございますが、他は保留しておきます。
  60. 竹尾弌

  61. 若林義孝

    若林委員 あるいはほかからも質疑があつた問題かもしれませんが、私はこの法案は、ユネスコ活動として、精神的また思想的に、日本の将来の方向を決する重要な法案だと考えるのでありますが、この法案の第一條などを考えてみますと、国際文化活動の重要性、従つてこのユネスコ活動の意義は十分に理解しなければならぬ、またこの法案でできるのでございますけれども、第一條の文言の示すところは、第一あまりに抽象的であると考えます。それから第二に、従つて具体性を欠いておるように思うのであります。それから第三番目には、迫力に乏しい感を持つておるのでありまして、外国から押しつけられた、またつき合い上やらなければならぬというような気持のためではないかと思うのでありまして、国際運動と申しながら、各国がそれぞれ各国の個性をもつて参加するところに、真の国際運動の迫力が発揮せられるものと思うのであります。ことに、かつての知的協力国際委員会と異なつておりまして、国民大衆の間に、広く根を張つた、成長をせしめるということを希望する案であると思うのでありますが、そのためには、第一條の文言は、あまりに気の抜けたようで、具体性に乏しいと思うのでございます。この点ひとつ具体的に、どういうようなことをなさろうとしておるかを承りたいと思います。
  62. 釘本久春

    釘本政府委員 第一條の、目標として掲げました点に、具体性が欠けていはしないかという御質問でございます。なお具体的にはどういうことをやろうと考えておるかという仕事についても御質疑があつたかと存じます。この「国際連合教育科学文化機関憲章の定めるところに従い」と、こう簡單にそこを表現しましたので、そういう印象をお持ちかと存じますが、このユネスコ憲章そのものの中には、かなり具体的なことがるる書いてありますので、そこに譲つたわけでございます。  なお、仕事としてどういうことを考えておるかと申しますと少し長くなりまして恐縮でありますが、たとえば、教育につきましては、各国の個性的な教育のあり方というものを、お互いに十分に情報を交換し合うとか、どの国民も、みな自主的なりつぱな価値を持つた国民であるということ、つまり国際理解の教育と申しておりますが、そういう教育の仕方をお互いに協力し合つて行く。また自然科学分野につきましては、科学の応用面におきまして、人類の生活の改善向上に役立つような学問の方にユネスコが刺激し合うというようなこと、科学の民衆化、啓蒙というような点、また社会科学の面では、戦争の原因となりそうな社会的ないろいろな緊張を突き詰めまして、その緊張をほどいて行くための調査研究を各国協力してやる。特にその点などにおきましては、日本ユネスコ活動に期待するところが、本部も非常に多いのでありまして、ボルドー大学の教授であるとか、またレイデン大学の若き学徒であるとかいう方々が、ユネスコ本部から特に日本に参りまして、日本の学者に協力して、日本の社会状態の調査研究とか、日本における活動の状態を調査して、各国の参考に資しようというような活動をやつております。その他、文化活動につきましては、すでに若林委員などはユネスコ運動に非常に御熱心で、十分御承知と思いますが、第一流の文化人、その他第一流の人物の交換とか、あるいは新聞ラジオ等を通じて国際理解の教育を普及啓蒙するというようなこと。なおつけ加えて申し上げることを許されますならば、ユネスコ活動は、当然に自主的でなければならないのでありまして、一色の文化活動で塗りつぶして行くというようなことは、間違いであるかと愚考いたします。ユネスコ憲章の中にも、各国の個性的な自主的な文化活動を高く評価して、そうなければならぬ、それが世界を幸福にするのだというふうな意味言葉もございます。  なおあわせてつけ加えますと、歴史的には、東洋文化を摂取し具現いたしました日本、地理的には、ユネスコが最もカを入れております東洋の未開発地域に対する技術援助という面で、きわめて地理的にも近い関係にあります日本に対して、日本の自主的な精力的なユネスコ活動を期待する点が、非常に多いのでございます。まだ独立しておりませんうちに、すでに加盟になりまして、日本の青少年活動に対しては、ユネスコ本部から相当の予算的な補助もしてくれて、日本人に対する期待を具体的に現わしている点なども、その一例でございます。
  63. 竹尾弌

    竹尾委員長 どなたか今村政務次官に対する御質問がありますか。
  64. 松本七郎

    松本(七)委員 政務次官がおいでですから、伺つておきたいのですが、ユネスコ運動で私ども関心を持つのは、せつかくユネスコができても、現在の国際情勢から、ソ連が入つていない。今後ユネスコ運動に、ソ連がどのような態度で臨むか。それから、あの当時のソ連が入らなかつた理由、そういう点と、政務次官として、今後日本国内ユネスコ運動をするについて、その障害になると思うのですが、その障害をどのようにして除いて行くへきかというような方針について、ひとつ承つておきたい。
  65. 今村忠助

    ○今村政府委員 ユネスコ運動とソ連との関係という御質問のようでありますが、なかなか重要かつ重大な問題だと思うのであります。御承知のように、日本とソ連との国交は、現状では回復見込みがないと思うのであります。そういたしますと、ユネスコ活動にソ連が加わつて来ないということも、当分考えられるのではないかと思います。これらのことは、今後やはり国際的に、日本とソ連との調整といいますか、国交の回復という問題と、にらみ合せて考えなければならぬことでありまして、ただいま予測をもつてお答えすることは、できかねるのであります。
  66. 松本七郎

    松本(七)委員 ちよつと、それに関連して、外務省の政府委員の方にお伺いしておきたいのですが、ユネスコができた当時に、ソ連が入らなかつたときの理由書だとか、何かその意思表示したものがありますか。もしありましたら、御説明願いたいと思います。
  67. 戸田盛国

    ○戸田説明員 第二次大戦中に、連合国の文部大臣会議がロンドンに設けられました際、ソ連の方もこれに関心を示しまして、一九四三年に、同会議にオブザーヴアーを送つたこともございます。ところが、このユネスコ設立に際しましては、教育文化の事項は、国連経済社会理事会自体がその衝に当るべきを主張して、協力を拒んだのであります。爾来ユネスコ側は、力を盡してソ連の参加を求めて参つたのでありますが、いかなる理由でか、ソ連はこれに参加を拒否して来たのでこぎいます。ところが、今度のユネスコに反対する根本的な見解は、第一回のユネスコ総会のときに、ユーゴースラビアのオブザーヴアーが、ソ連圏諸国の代弁者といたしまして、ユネスコ憲章はマルクスの弁証法的唯物論を勘定に入れていない、この失態はソ連邦と西欧諸国間の知的協力を阻害した、こう述べているのでありますが、こ、れもソ連の一つの反対理由のようにもとれるのであります。  以上は、イデオロギーの面から来る器もだつた反対理由でありますが、そのほかの理由は、どういうところにあるか、よくわかりません。大体ソ連は、国連そのものには、協力しておりますというか、加盟しておりますが、その他の専門機関に対しては、概してすべて冷淡でありまして、ほとんど加入しておらないというのが実情でありますから、あるいはこれはソ連の国策に出るものでないかと思われるのであります。
  68. 若林義孝

    若林委員 先ほどの質疑関連してお伺いするのでありますが、実質的に迫力を持つて真にこの運動を押し進めて行きますのには、私はこれは相当精神的な強いもの、これに関與する者が熱意を持つてやらなければならぬものだと考えるのであります。とにかく国際ユネスコ憲章にも、教育科学文化を通じていう言葉が使われているのでありますが、西欧諸国、特にアメリカなどの観念から行きますと、すべてこの教育なり文化にも、宗教というものの裏づけを持つた意味教育科学文化という気持が現われていると思うのでありまして、何事によらず、宗教的な信念に基くにあらざれば、真の教育も、またその科学も、人類の幸福に寄與するものにはならぬと考えるのでありますが、わが国の観念から参りますと、宗教というものと教育あるいは科学文化というものを切り離す観念があると思うのであります。そういう意味において、政府は、またこれに関與せられる方たちは、宗教と教育あるいは宗教と科学、宗教と文化というようなものについて、どういう観念を持つておられますか。私は、おそらくこれを提唱されましたイギリス、あるいはこれに同調されている各国の宗教状況からながめまして、非常に宗教的な裏づけがなければならぬと思うのであります。しかも、大体においてこの主要国は、キリスト教というものの裏づけのもとに置かれておりますから、うたわれていないと思うのでありますが、日本のごとく種々雑多な宗教が入り乱れている国には、この文字がうたわれておらないために、全然宗教と切り離されたものであるがごとき感じを、国民が受けるように思うのであります。その点の御所見を伺いたい。
  69. 釘本久春

    釘本政府委員 お答え申し上げます。ユネスコ活動のような、深い人間性の根本に触れるような活動については、いわば一種の宗教的な信念を持つて、この活動関係者が努力しなければならないという若林委員の御趣旨には、私もまつたく同感であります。ただ、ユネスコ活動と宗教との関係につきましては、ユネスコは、宗教についてはまつたく中立的な立場をとつているのでございます。と申しますのは、若林委員の述べられました、人道の根本関連します宗教的信念というものとは別に、現実の宗教は、いろいろな宗教と宗派がございますので、そういう現実の宗教に対しましては、ユネスコはまつたく中立の立場をとつているのでございます。しかしながら、ユネスコ憲章にもうたわれておりますように、人種、言語、性別、宗教の差別なく、人間としての正義というものは一貫したものがあるという考え方からいたしまして、多分に人道主義的な思想を根本といたしておりますので、仰せのごとく、この活動基礎には、人道主義的な、いわば宗教的信念に通ずるものを持つている、その意味においては欠けてないということは、御指摘の通りだと存じております。
  70. 若林義孝

    若林委員 明快なこれに関する御答弁を得ましたので、満足するものであります。どうぞ宗教宗派を超越して、どの宗教といたしましても、これに反対をする教義を持つておるものはないと考えますので、この教育科学文化を通じて、国際的に理解を広めて行くというこの信念は、底の限り知られぬ強い宗教的信仰心に根ざしておるものであるという気持を失わないようにして行きたいものだと、われわれはユネスコ活動について、特にわが国におけるユネスコ活動について、強い関心を持つてみておるわけなのであります。  次に、先ほどの御答弁にありました具体性を具現するものは、予算であると思うのであります。この予算が二億八千万以上も計上されておるのでありますが、事業的活動面には、どういう面にどういうようにお使いになるのか。また今までも、相当われわれの手元へ、文部省ユネスコ課を通じて、御出版になりました印刷物を得まして、常に啓発をされておるのでありますが、そういう部面も、相当これは計上されるだろうと思うのでありますが、私の懸念いたしますのは、社会教育面には、この委員会においても指摘されましたように、きわめて予算が乏しいのでありまして、これで文化国家と言えるかと思うような社会教育面の予算でございます。かつて小林信一委員からも、浦口委員からも御指摘があつた通りでございます。それと対比いたしまして、この二億八千万円という予算は、他の予算から比べますと少額でありますけれども文部省が持つております社会教育面の予算から見ますと、それと相匹敵するような予算になつておるのでありまして、美術館に関する費用なんかを除きますと、この予算は倍額に近いところの予算になります。そういう意味において、この社会教育というユネスコ活動活動を通じて、社会教育とも大いに連絡があると思うのであります。今これに特に関心を持つております今村政務次官が退席せられたのは、非常に残念に思うのでありますが、この観点において有効にこれを使つていただきたいという気持から、お伺いするのでありますが、今まで具体的に成案ができておりましたならば、承りたいと思います。
  71. 釘本久春

    釘本政府委員 お答えをいたします。ただいま若林委員は、相当の額の予算があるというふうにおつしやつていただきましたが、実は事業をやつて参ります場合には、若林委員が御懸念遊ばされますように、社会教育と同じように、はなはだこの活動も貧困になるおそれがあるのであります。と申しますのは、御調査の結果、二億八千万円という巨額の数字があると御指摘になりましたが、これは御承知のように、ユネスコ加盟国としての当然の義務であります分担金、それが相当巨額にございます。それからユネスコ関係の国際会議出席いたします多くの方々の旅費も、それに計上されておるわけで、ございまして、この旅費等については、まだはつきりいたしておりませんが、そういうものを除きまして、このユネスコ活動の事業のために使われる予埠額は、おおむね二千二百万円ぐらいでございます。ですから、その点は御認識を新たにしていただきたいと思います。そういたしまして、その事業費の予算は、大体三つに区分して私どもは考えておりまして、第一はユネスコ国内委員会運営に関する費用でございます。六十人の国内委員方々を擁し、かつ多くの專門委員会を開催しなければなりません。この委員会の運用費といたしましては、約六百九十七万円でございますが、これは相当苦しいわけでございます。なお、その次には、各国が協議して総会において、その年度のユネスコ活動の事業を相談し合つて決議いたすわけでありますが、その決議に従つて日本国としても当然に教育科学文化の各分野につきまして研究調査をし、あるいは青少年運動をし、その結果を報告いたさなければなりません。そうして各国の参考に供するわけです。そういうユネスコ総会の決議に基く各国の義務として行うべき事業、これに関する費用、及び先ほども申されました、国内に対して講演会、講習会、あるいは多くのハンフレツト、著書その他の普及活動に必要な費用、それらの部分と大体三つにわかれますが、それらをひつくるめまして、わずか二千二百万円でありますので、この点は財務当局にも、十分国会の御協議を得まして、御認識を新たにしていただきたいと思うわけでございます。
  72. 若林義孝

    若林委員 御説明を伺つて初めてわかるのでありまして、この点社会教育費が非常にしわ寄せをせられておると同様に、かんじんの事業の方面の費用のないのを、御答弁にあられましたと同じような心持で、将来これはより以上の費用を求めて、われわれも努力しなければならぬと考える次第であります。  なお、先ほどあるいは松本委員からも御質疑があつたかと思うのでありますが、私ちよつと退席いたしておりましたので、重複するかもしれぬと思うのでありますが、第九條の委員の構成について、この六十人は、一から七までの項目にわけられて配分せられておるのであります。この配分率は、どういうようなことに目安を置かれて配分をせられたか。なお、衆参両院からは、おのおの一名ずつということなつておるのでありますが、これは私考えますのに、ユネスコ活動本来の目的というものが教育科学文化を通じてのものであり、そこにははつきりとした一つの国際連合精神目標というものがなければならぬのでありまして、そういうことから考えると、軍なる文化人のみを主体とするというような配分の仕方のように思うのであります。大きく国民運営というような面からこれを考慮いたしますときには、いま少しこの国会などのこれに対する参画がウエートを持つてもいいのじやないかという気持がするのでありますが、その点をお答え願いたいと思います。
  73. 釘本久春

    釘本政府委員 第九條にあります委員の選ばれる基準並びにその配分について、どういうふうに考えておるかという御質問が第一点、第二点は、国会の委員方々について、一人ずつというのは少な過ぎるではないかというふうな、もつと国会議員方々参加を願う方が、ユネスコ活動のためにいいのではないかというような御意見のように拝聽いたしましたが、第一点につきましては、申すまでもなく、ユネスコ憲章の第七條に述べてありますところに基きまして、国内教育科学文化関係する主要な団体を、できるだけ多くこのユネスコ活動参加さぜるようにする。そして広く政府及び民間を通じまして、これらの団体がみな入るように、できるだけ努めるというふうななしゆしがうたつてございますが、それをもとといたしまして、教育科学文化の面でのそれぞれの專門家、またはそれに関連するいわゆる大衆通報と申しますか、新聞、ラジオ等に関係のある分野、それから日本国内委員会は、日本ユネスコ活動の実に特別な点でありますが、民間で、加盟前から全国ほとんど各地域でユネスコ協力運動が展開されましたが、その地域的活動をしておられる方々、これらを網羅し、かつ他の国には比較的例が乏しいのでございますが、日本ユネスコ活動は、昭和二十二年の衆参両院のユネスコ参加するようにという決議が強い線になりまして、日本ユネスコ議員連盟が国会内議員の間に結成されて、非常に啓蒙の役割を強く果されました経緯にかんがみまして、ユネスコ憲章には、広く政府及び教育科学文化関係ある団体というふうにうたつてございますし、各国にはその例は割合少いのでございますけれども、この行政長官のもとの諮問機関である国内委員会に衆参両院の方々にも御参加を願うよ一うにいたしたいという日本ユネスコ活動の特異性からして、特にこの一項の三号に対する衆参両院の参加という点が入つたわけでございます。  なお各活動分野を申し上げますと、おおむね予定しておりますのは――これは非常にこまかいことになりますが、できるだけユネスコ憲章趣旨からいたしまして、各專門領域を網羅するように、たとえば教育活動につきましては、少くとも学校教育における初等教育、中等教育あるいは高等教育、また学校教育のみならず、社会教育の面、あるいは職業技術教育の面、それぞれ専門家の代表が入るようにしたい。また科学活動につきましても、人文科学、社会科学、自然科学のそれぞれの分野代表する方々を六名ぐらい。文化活動と申しましても、御承知のように非常に多岐にわたりますが、それぞれの面に有力な団体ができておりまして、文学、演劇、技術、音楽建築等、そういつたそれぞれの分野代表者も入るようにしたい。そういうふうにこまかく漏れなく網羅するようにという趣旨から、こういう構成をいたして、民主的な構成を完全にいたしたいと考えておる次第であります。
  74. 若林義孝

    若林委員 松本委員から、どういう御発言があつたか知りませんけれども、これに関して、おそらく私は、衆参両院の一名ずつということは、少いのじやないかという御意見があるいは出たのではないかと思いますが、もし出たとするならば、それと同じような感じを持つものであります。しかし、ここでちよつと伺つておきたいのは、衆参両院の指名した者ということになつております。指名した者でない者でも、この第一、第二、第三に、おそらく参議院議員の中には該当する議員が相当おられるのではないかと思うのでありますが、こういう一、二、三、四のうちに該当する方で、両院の議員である者については、抵触はしないわけですか。
  75. 釘本久春

    釘本政府委員 九條第一項の第五号、六号は、明らかに衆参両院の、代表者というと失礼でございますが、衆参両院の指名された方に、その資格で入つていただくという意味でありまして、あるいは仰せの、ことく、国会議員の方で、たとえば教育者あるいは第二号の報道関係の人とか、そういう立場からお入りになる方が出て来るかもしれませんけれども、それは国会議員という立場からではないわけでございます。  なおただいま、少くはないかというお話が、ございましたが、この点につきましては、国会議員代表して特にこの点は、選考委員会で云々ということではなく、国会議員代表して入られることをうたつておるわけでございますが、なお慎重にお説の点は考えたいと思つております。
  76. 松本七郎

    松本(七)委員 外務省の政府委員の方に伺いたいのですが、先ほどソ連のユネスコに入つていない理由として、イデオロギーの問題と、それから国策上の理由だろうということでしたが、イデオロギーということになると、なおさら私ども聞いておきたいのですが、国内委員会を設置しておる国におけるユネスコ運動と共産党の関係を、何か事情がおわかりでしたら、伺つておきたいと思います。
  77. 戸田盛国

    ○戸田説明員 国内委員会を設置しておる国と共産党の関係という御質問でありますが、国際委員会そのものよりも、ユネスコ加盟しておる国家について申し上げますと、ソ連はいかなる理由であるか存じませんけれどもユネスコ加盟しておらないのでありユすが、いわゆるソ連系統の共産党的政治の行われております国の中でも、ポーランド、ハンガリー、チエコ・スロヴアキア、ユーゴスラビアというような国々は、ユネスコ加盟しております。そういう意味で、共産党が存在し、かつ共産党が支配権を持つておる国々も、ユネスコ協力しており、従つてその意向もユネスコ総会には反映する機会があるということになります。
  78. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、そういう国におけるユネスコ国内委員会にも、その国の共産党は協力して運動しておりますか。
  79. 戸田盛国

    ○戸田説明員 国内委員会は、その趣旨といたしまして、政治問題を取扱うところでは、ございませんし、また政党の代表が出るというのではなくして、広く教育科学文化の各領域並びにその普及に関する領域代表する者が出ておるわけであります、従つて、そのような分野における人々が、国内委員会協力するというような形になつております。
  80. 松本七郎

    松本(七)委員 私のお伺いしたいのは、チエコその他がユネスコ参加しており、そして国内委員会を設置しているわけですが、そのときにこの国内委員会設置について、ちようど日本におけるように、文化団体ばかりではなく、広くその政府もこれに協力することが建前になつているのですが、同じような行き方をしておるかどうかということです。
  81. 戸田盛国

    ○戸田説明員 大体同じような行き方をしているものと認められます。
  82. 竹尾弌

    竹尾委員長 本法案に対します本日の質疑は、この程度で終了いたしたいと存じます。  次会は明後二十八日午前十時よりの予定でございますが、公報をもつて御通知申し上げます。  なおお願い申し上げたいのは、本日の委員会、まことに出席の数が少いのでありまして、重要法案山積の折からでございますから、どうぞできるだけ多数御出席くださるようお願い申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十九分散会