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1952-03-20 第13回国会 衆議院 文部委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十日(木曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 竹尾  弌君    理事 岡延右エ門君 理事 若林 義孝君    理事 松本 七郎君 理事 小林 信一君       鹿野 彦吉君    甲木  保君       坂田 道太君    長野 長廣君       水谷  昇君    平島 良一君       井出一太郎君    渡部 義通君       浦口 鉄男君  出席政府委員         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房渉外         ユネスコ課長) 釘本 久春君         専  門  員 石井  最君        専  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 三月十九日  積雪寒冷単作地帯義務設置学校屋内運動場建  設促進臨時措置法制定陳情書  (第九一〇号)  教育財政平衡交付金法案反対に関する陳情書  (第九一一号)  公立学校施設の防災並びに災害復旧に関する法  律制定に関する陳情書  (第九一二号)  同(  第九一三号)  同(第九一四号)  義務教育費全額国庫負担に関する陳情書  (第九一五号)  同  (第九一六号)  教員給与準則案反対に関する陳情書  (第  九一七号)  高等学校職員俸給表制定に関する陳情書  (第九一  八号) を委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  新たに入学する児童に対する教科用図書給与  に関する法律案内閣提出第五〇号)     ―――――――――――――
  2. 竹尾弌

    竹尾委員長 これより会議を開きます。  新たに入学する児童に対する教科用図書給与に関する法律案議題とし、質疑に入ります。質疑のあられる方はこれを許します。
  3. 渡部義通

    渡部委員 児童教科用図書給与するということは、けつこうなことです。もちろん義務教育である限りは、全学年にわたつて給与さるべきものであると考えますが、ただこの場合考えておかなければならぬことは、給与図書は、文部省編集のもののみが給与されるのか。そうだとすれば、それは国定教科書の復活ということになり、従来の検定制度採用した趣旨に反することになりはしないか。この点を文部省はどういうふうに考慮しているのかということについて聞きたい。
  4. 田中義男

    田中政府委員 お話通りに、配付いたします場合に、国定のものに重点を置くというようなことについては、これは適当でございません。現在すでに教科書は、国定または検定によりまして、特に検定制度を育成するというような立場にもなつているわけでございます。現実に今回の教科書配付につきましても、教科書臨時措置法の規定するところによりまして、広く検定または認可を経たもの、そのうちでそれぞれの学校採用あるいは地方庁の教育委員会採用というようなことを経た上で、その希望によつて配付をいたしますので、御説のように、国定配付するというような結果にはなつておりません。
  5. 渡部義通

    渡部委員 そうすると、結局地方教育委員会なり、あるいは学校なりが採用したものについて給与するということになると、現物は、地方教育委員会なり学校なりで入手して、そうしてこれに対する費用を国家からその学校なり教育委員会なりに支出するということになるわけですか。
  6. 田中義男

    田中政府委員 お話通りでございます。
  7. 水谷昇

    水谷(昇)委員 ただいま渡部君から、国定教科書の話が出ておつたのでありますが、この検定教科書の続々出ることは、まことにけつこうだと思います。しかし、検定教科書の方は値段が非常に高くなるので、父兄の側に非常に学資の負担が増大をして参つたので、これは全国的に困つている問題であります。そこで国定教科書というものも一つつくつて、そうしてこの世間の人々に訴える、検定教科書と比較対照して好きなものを使わせるということにすれば、自然値段の方も、全般的に競争をして安くなる、こういつたようなことに考えられるのであります。国定教科書文部省で編纂するというようなお話があつたのでありますが、その後どういうことになりましたかお尋ねしたいと思います。
  8. 田中義男

    田中政府委員 お話のように、教科書価格が少し高いので、一般父兄に対する教育費負担が重いという非難は、非常に耳にいたしているところでございます。従いまして、これらの点については十分調整をいたしますように、教科書検定制度その他全般を通じて、当局といたしましても検討をいたしているわけでございますが、ただいまお答えするほどの具体的な結論は得ておりません。ただ、それに関しましての一つの方法として、国定教科書発行したらどうかという御意見でございますが、これにつきましては、いろいろ発行者その他とのめんどうな関係もございますし、また従来、大体検定制度を主として、これも育成するという方針を立てて参つているのでございまして、これは慎重に考慮する必要がございますので、ただいまそのことを決行するというようなことについては、目下われわれとしても慎重考慮中でございます。
  9. 水谷昇

    水谷(昇)委員 文部省におきましては、国定教科書をつくろうというかたい御決心があつたように聞いているのでありますが、その後一部の反対によりまして、何だかそれが立消えなつたような感があるのであります。このごろ文部省でいろいろ立案して、それが実現できないうちに、一部の反対があると、その計画立消えになるような傾向が非常に多いと思います。これははなはだ遺憾なことでありまして、その計画を、強行するということは、これはおもしろくないのでありますが、一旦計画したことは、やはり実行をして、そうして世の批判を仰いで、よいものを輿論によつてとつてもらう、こういうことにすれば、私はいいことだと思います。いろいろな計画が、一部の反対によつて途中で挫折して、その点について非常な非難をこうむるようなことがあつてはまずいと考えますので、どうぞひとつ計画したことは、なるべく実行していただくように希望をいたします。
  10. 井出一太郎

    井出委員 ただいま水谷委員の御発言に関連いたしまして、検定あるいは国定という問題ですが、あなたが昨日説明をせられた中には「検定または国定教科用図書」云々という言葉をはつきり用いられて、あたかも国定という問題は、今御説明なつたより、もう少し固まつておるような印象を受けたのですが、この点どうですか。
  11. 田中義男

    田中政府委員 ただいま国定教科書もあるわけでございます。そこで、各学校等において、自由な立場で適当なものを選択する。そうしてその選択したものについての費用国庫負担をする、こういうことなのでございます。別に特に国定に力を入れておるわけではございません。
  12. 井出一太郎

    井出委員 国語または算数教科書限つて、これを国庫負担をするとこういうことですか。教科書の選択によつては、かかる費用発行所によつて相当異同があるのではないか、これは別に一律に一定額を交付するのではなくて、その二つの科目に限つては、かかつただけのものは交付するのだ、こう理解をしていいのですか。
  13. 田中義男

    田中政府委員 かかつたものと申しますか、大体国語算数が、児童にとりましては最も普遍的に使うものでありまして、しかも大体その冊数、種類というのは、予算関係もありまして一種類ずつ、そうして前期、後期に使いますものが、これはお話のように、学校によりまして二冊になることもございましようし、三冊になることもあり得るわけであります。従いまして、それだけのものについては負担をすると、こういう建前でございます。
  14. 井出一太郎

    井出委員 私の伺つているのは、教科書の単価が発行所によつて異同があるのではないか、こういうことを前提として伺つておるのですが、そこはどうです。
  15. 田中義男

    田中政府委員 それは価格は差異があると思いますけれども、それについては国で負担をいたします。
  16. 井出一太郎

    井出委員 わかりました。もう一点……。算数国語だけを国庫負担されますと、新入学児童教科書代のおよそ何割といいますか、何%といいますか、そういう見当はつきませんか。
  17. 田中義男

    田中政府委員 お答え申し上げます。ただいまの私ども予算によりますと、大体全教科を全部負担をするといたしますと、六億四千百五十余万円ぐらいになるのであります。ところが国語算数だけにいたしますと、三億六千四百五十何万でございます。そうしまずと約五割弱でありますけれども、その程度負担することになります。
  18. 井出一太郎

    井出委員 昨日の御説明を伺つておりますと、この国語ないし算数教科書だけを、一種のはなむけといいますか、新入学のお祝いのようなつもりで贈られるという感覚もあるようですが、そういう感覚でなしに、憲法によつて義務教育無償で行うというような観点から、これをさらにもつと拡大する。単なる贈りものだという感覚では私は困ると思うのです。少くとも一学年のものは全部、あるいは続いては二学年、三学年に及ぼす、こういう強い決意で当つていらつしやるかどうか。単なるのしをつけたという感じでは、私は物足らないのですが、その点どうですか。
  19. 田中義男

    田中政府委員 お話まことにごもつともでございまして、私どもの気持といたしましては、義務教育無償原則にのつとりまして、将来文字通り無償になるように、教科書等についても全教科にわたるようにいたしたいと考えております。ただ先般御説明申し上げました趣旨は、きわめて遠慮いたしまして、この程度のものを負担いたしますのに、あまり無償理想を掲げますのも、少しどうかと思いましたので、きわめて内輪に表現したわけでございます。
  20. 井出一太郎

    井出委員 この議題とは、少し問題ははずれているかもしれませんが、教科書代父兄にとつて大きな負担であるということから、少くともある一つ府県ぐらいは限度をして、その府県教育委員会というようなものが、何らかの標準教科書というふうなものを編纂する。ある程度大量にまとまるから、今の各個別の発行所から出ておるものよりは、安くも行くであろうし、またそういうものを採用することによつて、次の学年の者が使える、いわばおさがりも使用できる、こういうような計画が、ある府県においては進められておるように聞くのですが、こういうことは一種独占禁止のようなものに触ればしないか。文部省はそういうような場合、これに対して許容するというような態度でいらつしやるか、これを伺つておきます。
  21. 田中義男

    田中政府委員 実はその話等については、まだ私ども詳細承知いたしておらないのでございますが、具体的に出て参りました場合に、よく検討いたしたいと思います。
  22. 井出一太郎

    井出委員 それが具体的に出る前に、私の今懸念しているような、そういうことは、自由なあるいは公正な教科書の編纂というものからすると、いけないのかどうか。そういう点、前もつて、問題が発生せずとも、局長の御見解というものがあると思うのですが、それをお漏らし願いたい。
  23. 田中義男

    田中政府委員 あまり義務教育について、各府県ばらばらなことになるのも、一利一害だと思われます。そこで現在の建前を基本にして考えました場合には、よほど慎重を要するのではないかと思うのでございますが、その程度でひとつ許し願つておきます。
  24. 浦口鉄男

    浦口委員 今、井出委員に対する局長のお答えで、大体わかりましたが、義務教育無償原則に照して、この法相案では、新入学生に対する国語及び算数教科用図書に限ることになつておりますが、将来はこれをその他の教科書に及ぼす、なお二年、三年、進んで全体に及ぼす、こういう心構えで、第一段階としてこの法律ができた。こう了承していいと思うのでありますが、それを達するためには、現在予算が足りないので、その理想が一挙には行かないのだ、こういうふうに考えておいてよろしゆうございますか。
  25. 浦口鉄男

    浦口委員 その次に、実は昨年の、昭和二十六年度に入学する児童に対する教科用図書給与に関する法律案を審議する際にも、問題になつたのでありますが、現在の検定制度と関連をいたしまして、出版会社が非常に多い。あるいは出版図書の数が多過ぎるとか、会社そのもの弱体性とか、その他から、年度の初めに教科書がきちんと配られないというふうな事故が非常にたくさん出ていたことは、御承知のことと思うのであります。それで昨年一年間に限り、臨時立法によつて入学児童算数国語だけを、半分国庫負担で半分市町村負担して配付したわけでありますが、そういう形態で配付した結果、その以前に起きたような配付に非常に齟齬を来したとか、思うように行かなつた、そういう遺憾な点が昨年度は是正されたかどうか、そのことをちよつとお聞きしておきたいと思います。
  26. 田中義男

    田中政府委員 昨年度と申しますか、二十六年度は、従来に比しまして大体成績はよかつた承知いたしておるのであります。ことに二十七年度になりますと、全額国が持ちまして、しかも金融等関係で、会社が困りますので、昨日御説明申し上げましたように、あらかじめ九割程度概算払いをしてやろうということになつておりまので、よほど楽に円滑に行くと予想いたしております。
  27. 浦口鉄男

    浦口委員 この種の法律案ができたことは、われわれも一歩前進で、期待しておるわけでありますが、提案理由の中にも御説明通りに、これを全額国庫負担にしたという理由の中には昨年度試みた結果、市町村財政負担を加えたという点、その結果から配付その他が非常に円滑に行かなつた。それから代金の支払いが、それと関連して円滑に行かなつた。そのために全額国庫負担にした、こういうことも非常に大きな原因だと思うのであります。それで今局長お話では、一昨年よりは一歩前進して、非常に円滑に行つたと思う、改善されたと思う、こういう抽象的なお話でありますが、この提案理由からいつても、昨年度はやはり相当にそこに齟齬があつたと思うのでありますが、もう少し具体的に、どの程度進展し、しかしどの程度まだ瑕疵があつたか、それをお聞きしたいと思います。
  28. 田中義男

    田中政府委員 先般来、各地方からの本年度の集計、その他結果を集めておるところでございまして、私の説明がたいへん抽象的になつて済まぬのでございますが、私が承知いたしておりますところでは、ただいま申し上げましたような程度に聞いておるのであります。なお具体的なことにつきましては、必要に応じて、また的確なところを調べてから申し上げたいと思います。
  29. 浦口鉄男

    浦口委員 今年は全額国庫負担でやられるというので、より円滑に行くと思いますが、具体的な問題として、各管理機関を通じて、各学校で必要とする教科舌種類とか、あるいは発行会社の名前とか、あるいはその金額とか、そういうものを今お集めになつていると思うのです。もう四月一日まで十日ぐらいのことでありますが、現在のところでは四月一日からの配付に全然支障がないというはつきりした見通しがありますかどうか、それを伺つておきたいと思います。
  30. 田中義男

    田中政府委員 大よそ提案いたしましたような案に基いて進むつもりで、事前の手配等いたしましたので、円滑に行くのではないかと考えております。
  31. 小林信一

    小林(信)委員 教科書の問題で一番地方から聞く声は、非常に教科書が高くなつて困るという、父兄財政的負担の問題なんですが、それにつきましても、教科書が年々新しくなるということが、これが父兄たちの最も関心を持つところなんです。従来は二年間、三年間ぐらいは古い教科書が使えたために、経済的負担が割合軽く済んだ、そういう過去の事実があるわけです。そういうことを思い起して、一般父兄方たちは、どうしてこんなに教科書が年々新しくなるかということで、疑問を持つているわけです。これにつきまして、文部省として考えていることをお伺いしたいのですが、その原因とすれば、私たちの想像するところでは、やはりこういう時代ですから、どんどん新しいものを作成して、そうして適切な教科書をつくるという、これも一つあると思います。しかし、もう一つは、検定制度になりまして、営利的な面から教科書を新しくするということもあると思いますが、やはり業者が問題になつていると思うのです。文部省のこの点に対する見解を、この際承りたい。
  32. 田中義男

    田中政府委員 お話のような点につきましては、私どももよく耳にいたしますし、同時に、そういうふうな点もあるだろうと想像いたしております。ただお話のように、非常に新しい時代に、それぞれ新たな教科書をつくつて参りますのに、なるべくそれを押えるというようなことも、非常にむずかしい問題でありますし、同時に、そのために年々新しい教科書採用するので、生徒あるいは父兄負担が非常にかさむ。それらの点については、特に教師の自覚といいますか、認識と申しますか、そういうふうな点についての自覚を促す必要もあるのではないかと考えておりますが、ともかく教科書価格は非常に高いので、父兄負担が重いという点については、何とか教科書全般制度を、検定制度その他の問題と関連いたしまして、何らかの措置考えたいと、私ども関係者協議中でございますので、その点御了承いただきたいと思います。
  33. 小林信一

    小林(信)委員 その何らかという問題が、結局は今回の法律にも重大な問題になつて来るわけです。先ほど井出委員から御質問がありましたように、単に一年生に二冊、入学祝いにやるというようなことで済むのかどうかという問題になるわけですが、さらに教科書が高くて困るという問題でお聞きしたい点は、紙の需給状況もこれもまた問題だと思うのですが、この点につきましての現在の状況がわかつておりましたら、お話願いたい。
  34. 田中義男

    田中政府委員 私の方の所管でないからと申しますのは、たいへん失礼でございますが、紙の需給状況等については、ただいま私詳しく承知いたしておりませんので、はつきりしたことをさらに調べました上で、お答え申し上げたいと思います。
  35. 小林信一

    小林(信)委員 これは統制を解いたような形になりまして、自由販売というのか、そういう形がとられておることが影響しておるかどうかということを、私は疑問にしているわけですが、最近大きな製本会社では、もう原木から用意してかからなければ、自分のところの営業が成り立たないというようなことで、大きな資本家十分紙の供給ができるけれども、小さい製本会社はなかなか紙が入手困難だ。従つて、その時に至つて買うというようなことができないから、これを常時において買う。従つてその買つた金の利息というようなものも本の中に加えられるというようなことで、教科書が年々高くなつて行く状態だというのですが、やはりそういう点にも文部省としては当然考慮がなさるべきで、ただいまのように調査をしてからということでは、この教科書問題を父兄がいかに苦しんでおるかという点に対して、冷淡だということになるわけです。さらにもう一つの問題は、指導要領があまりにかわるために、教科書が年々新しくなる。そのために今の古い教科書で間に合うというような、父兄があこがれておる過去の事実、こういうふうなものを葬り去ることになるのじやないかと思うのですが、指導要領に対しての見解は、文部省としては、この本の問題と関連してどういうふうにお考えになつておられますか。
  36. 田中義男

    田中政府委員 御承知のように、現在では学校教育において最もその指針となりますものが学習指導要領でございまして、その完成のために従来非常な努力を払つて来ておるわけでございますけれども、その制度が始まりましてから、しかも新教育になりまして以来、まだ年数が新しいものですから、非常に不完全な点、不十分な点があるわけでございます。そこで、必要に応じましてそれぞれ改善を加えておりますけれども、しかし学習指導要領そのものの性質上、またそれを編集いたします手続の上からいたしまして、非常な日数を食うわけでありまして、多分初めからでき上りますまでに、手続等からいたしまして少くも一年以上は要するような現状でございますので、お話のように教科書をしばしばかえなければならないその原因が、指導要領の改正にあるということではないのじやないかと思うのでございます。しかし、それぞれの多少の箇所においての修正ということは、昨年十月にもやつてお、りますので、それに基く教科書もまた出て来るわけでございますが、しかし昨年の十月にかえましても、それが教科書になつて現われますのは二十八年度ぐらいになりますので、お話のような程度教科書改訂原因を、指導要領に求めるということではないのではないかと考えておるのでございます。
  37. 小林信一

    小林(信)委員 教科書の問題と指導要領という問題、これはやはり文部省が確固たる信念を持つておいでになれば、大した問題ではないと思うのです。最近よく聞く言葉ですが、アメリカから船が着くたびに学習指導要領がかわる、そういう点からして、文部省方針というようなものに非常に不安を持つておるわけなんです。従つて、そういう態度からして、その方針がかわれば自然に教科書がかわるんだ、これに便乗してかわることが当然だというので、今年の三年か四年の国語教科書ですが、前にかなのところが二字漢字にかわつただけで、本屋の方では、本がかわりましたといつて一般先生たちに売らせておるのですが、先生たちがそれを調べると、ただかな二字が漢字一字になつただけである。そういうことまでして、新しくなつたから買わなければならぬということで、父兄に買わせておる、そういうような点もあるのです。それが、指導要領はもつと確固たるもので、相当恒久性のあるものをつくるべきだというふうな声にまでなつておるわけです。  ここで、ちよつと問題ははずれるかもしれませんが、学習指導要領に望むところは、小・中・高、これが一貫していなければならない。だが文部省学習指導要領は、一貫していない傾向があるというふうな意向があるのですが、この点文部省としてはどういう考えを持つておられますか。
  38. 田中義男

    田中政府委員 学習指導要領制定につきましては、それぞれの委員会、特にまた教科課程については教育課程審議会等のそれぞれの機関がありまして、しかもそれを総合的に文部省において運営するようにいたしておりますので、御心配のようにばらばらであるということは、ないのじやないかと思うのでありますけれども、しかしそれぞれの部門があります場合には、部門部門での立場から、ともすれば全体としての総合的な立場において、遺憾な点があるということもあり得ることでございますから、それらの点については、私ども特によく留意いたしまして、御心配等の点のないようにいたしたいと思つております。
  39. 小林信一

    小林(信)委員 今の問題は、とかく学力の低下だとか、あるいは社会科というようなものが、青少年の不良化を防止することができない。何かこれにかわるべき新しい科を設けなければならないというふうないろいろ意向文部省内部にもあるのですが、これらはやはり大事な方針である。学習指導要領というものに文部省としての不動の方針がない、信念がない。それからもう一つ、小中高一貫したものがないから――あるいはないじやなくて、そういうふうなものに欠けておるから、何かまた新しく特別な科を設けて、そうして今の小・中・高におけるところの教育の欠陥を補わなければならないというようなことになるのじやないか、それが原因になるのじやないかというふうなところで、いろいろ意見があると思うのですが、やはりこの独立の機会に、文部省としては、ほんとうにそういううらみのないような指導要領をしつかり明示していただきたい、こういうことをお願いするものであります。  それから教科書の問題に返りまして、いつの年も聞くのですが、遅配欠配が多いのです。これはやはり全体的ではない、部分的にそういうことが聞かれるのですが、これらはどういうところに原因しておるのか、文部省として考えておるところがありましたら、お伺いいたします。
  40. 田中義男

    田中政府委員 教科書配付遅配欠配というような点については、いろいろ原因があるだろうと思うのであります。あるいは資材の問題なり、また金融の問題なり、あるいは運搬の問題なり、いろいろある思うのでございますけれども、しかし、昨年度も問題になりましたように、特に会社等における教科書の準備、あるいはそれに対する金融措置等についても、一つの障害になつてつたと思うのでございますが、それらを今回は特に全額負担をし、しかも九割程度をあらかじめ概算払いをするというようなことにおきまして、一層円滑にこれが配給できるものと期待をいたしておるわけであります。
  41. 小林信一

    小林(信)委員 今の局長さんのおつしやることも、一つの面だと思うのです。しかし、私がその方を調べましたときに、やはりこれは営利会社ですから、なかなか精密な調査もし対策も講じまして、本屋さんが考えておるところでは、そういう遅配欠配は起らない形になつておる。それではどうして遅配欠配が起るかというと、本屋のあり方なんです。本を配給する商店のあり方です。従来の戦前に構成されておりました一連の組合というふうなものが、独占的にこれを握つておりまして、それが地域的に適応しておらなくてもなんでも、既得権ということで、新しい本屋にそういう権利を与えない。そういうものの侵害を、自分たちがかきねを結つて入れないようにするということが、依然として行われておるために、山間僻地等の学校には遅配欠配が起きるのが多いのです。今どういうふうに配給されておるかというと、本屋は自分の権利をもつて相当広い範囲に学校を担当しておりますが、全部に自分が行つて売るというふうなことはやらない。一地域の中心となるような学校に本をどさつと置いておいて、そして必要があつたらとりに来いという形で、ある一定の時間が来ますと、もうとりに来ないからいらないということで送り返してしまう。だから、製本会社では、実際におきましては本が余るわけです。ところが地方では、手に入らない学校がたくさんある。この既得権を侵害されないように、地域に適応するような商店のあり方を考えないところに、不幸にして一年中大事な本が手に入らない子供が生れるということができておるのじやないかと思うのですが、こういう点につきまして、お考えなつたことはありませんか。
  42. 田中義男

    田中政府委員 いろいろ具体的な御示唆をいただいておるのでございますけれども関係部局ともよく連絡をしまして、そして円滑に行き渡つて遅配欠配等のないよう措置するように努めたいと思います。
  43. 小林信一

    小林(信)委員 これは局長は御存じないようですが、刊行課に参りますと、よく知つておるのです。そしてこれに対して、どういうふうに文部省が指導したら、うまく行くか。これを指導しない限りは、この遅配欠配は依然として続くわけなんです。それでは製本会社がいかに計画を立てても、その計画通りに本が配給されないという形、になると思うのです。この教科書の問題ではいろいろ問題があるのですが、安くすること、つくつたものが必ずあらゆる児童一人残らずに渡るようにするということ、これが非常に重大な問題だと思うのです。  それから次にお聞きしたいのは、局長は先ほどの同僚委員の質問に対して、今回はこの程度法律であるが、無償方針をこれからできるだけ実現するように努力するのだという御意見のようですが、昨年度法律と今年の法律と比べた場合に、すでにそれが後退しているのではないか。昨年は無償であるべきだという建前からこういう制度をつくるのだということを、法律の目頭に掲げてあつたのが、今回はお祝いにやるのだという法律なんです。しかしそれでは局長のおつしやることと法律とが、相反するように考えられるのですが、いかがですか。
  44. 田中義男

    田中政府委員 標題なり第一条等については、あるいはお話のような点も感ずるのでありますけれども、内容においては一歩も退いてはおりません。今回は一応先ほど申しましたようにいたしましたけれども、しかし義務教育無償原則に向つて十分努力邁進するつもりでございますから、御了承いただきたいと思います。
  45. 小林信一

    小林(信)委員 まことにお話が納得できないのです。内容においてはそういう精神をしつかり持つているというが、内容を持つておられたら、去年の条文よりも、より以上強固に、もつと積極的に無償であるという方針を明示すべきだと思うのです。この法律になつてしまえば、今後教科書無償配付を二年、三年というようにあとの学年にも及ぼすというようなことはなくなるし、まして全学年に及ぼすというようなことは、とうてい望み薄になるのではないか。昨年の法律の方が、この一年が、来年はこれよりももつと進歩するのだという希望が持てるのですが、これでは相当期間の間、お祝い形式で一年に入学する者に二、三冊程度のものが配給されるだけではないかという、非常に力の弱い法律にうかがわれるのです。しかし文部省を信頼いたしまして、逐次これが無償に向つて行かれるようにお願いするものであります。  そこで、この法律から見ますと、お祝い的なものであつて義務教育無償であるべきだという国の方針とも合致しないように思うのですが、現下の生徒の状況から考えて、本の買えない者がある、そして教科書が非常に高くなるために、二人、三人という子供を持つた親は、教科書を買つてやるためにどれくらい苦労するかわからぬ、本が手に入らない子供も出て来るかもしれぬという不安に対しては、文部省としてはどこまでも救いの手を差延べなければならぬと思うのです。この法律では、貧乏人も金持も、小学校に入学すれば一様に二冊の本をもらうわけです。それ以外の学年におきまして教科書の買えないような子供に対しては、これを今後どうして救うか、文部省として何かお考えがありますか。
  46. 田中義男

    田中政府委員 文部省といたしましては、お話のような点について、なお十分とは考えませんが、現状では御承知の生活保護法の中における教育扶助として、それらの点については、救助といいますか、救援といいますか、措置が講ぜられるはずでございます。しかし、それで十分とは考えませんで、さらに文部省としても措置する具体案ができましたら何とかしたいという考え方は、私どもつておるわけであります。
  47. 小林信一

    小林(信)委員 やはり一様に国として本を提供するということよりも、私は生活保護法の中で、教育のための経済に困つておる者を、何らかの形でもつてつてつておるのだということで満足せずに、かえつてこういうものよりも、そういうところに文部省としてはつきり救済の道を講じ、文部省がじかにこれを管轄するというふうなものを、はつきり国民に知らせなければ意味がないと思うのです。そういう制度がありましても、依然として一様に配付するということは、意味ないことだと思う。もつと困つておる家庭に重点的にその金を使つて、生徒に無償で配給されるようにすべきだという意向があるのですが、文部省は、もつとそういう点も文部省の管轄に入れて、適切な措置をとる必要があると思うのです。  それから、次にお伺いしたいのは、損害の賠償の問題でございます。せつかく制度として生れたことは、児童にとつてはありがたいことだと思うのですが、この条項から考えますと、おそらくたくさん問題が出て来るのじやないかと思います。それはいろいろな点でもつて、最初の計画通り要求したものと、いわゆる文部省に報告した数と、実際配給した場合の数とが違つて来るときが多いと思うのですが、そういうことが、作為的なものでなくても、たびたび起つて来る。それが誤解のもとになつて来て、そして賠償だとかなんとかというようなことで、先生というような立場教育委員会というような立場、そういう世間から人格的に尊敬されなければ教育が成り立たない立場にある人たちが、こんなことで迷惑を受けるようなことになると、かえつて教科書を配る、無償で提供するということで、いろいろ無い影響があるのじやないかと思いますが、ここら辺をどの程度考え文部省は取扱うつもりか。一冊でも二冊でも誤差があつた場合には、すぐこの賠償の適用があるのか、お伺いしたいと思います。
  48. 田中義男

    田中政府委員 お話通りに、私どもも一体教育界の中でそういうふうなことのあることを予想することも、まことにいやなことでございます。ことにこういうふうな教育法令の中に虚偽の記載とか作為によつて云々というようなことの出て来ることそれ自身に、実にいやな感じを持つてつて、何とかこんなことを法律の中に規定することがなくて済まぬかということすら、私ども討議したのでございます。しかし実際問題とすると、戦後こういうふうな点が、まことに遺憾ながらございますので、こういう規定も設けなければ、実際問題としては運営できない、一応必要だというやむを得ざる結果で、他の例あるいは先例等によつてこういう規定を置きました。しかしお話のように、相手の方々は、それぞれ教育者でありまして、そういうふうな方方の個人的な立場のみならず、また一般の影響等もよく考えて、その処置については、また扱いについては、よほど慎重にいたしませんといけないことになると思いますので、十分全般的な影響その他を考慮いたしました上で、適当なる、また穏当なる処置をいたしたいと考えております。
  49. 小林信一

    小林(信)委員 ただいま、この点につきましては、できるだけ制度としてはない方がいいんだ、しかし先例もあるし、またそういう措置をしておかないと、かえつて問題を起しやすいというような、非常に思いやりのあるところでこの法律をお考えになつておるという点は、私はいいと思います。しかしこの前の教科書の問題の実際を、私は地方で知つておるのですが、今本屋さんは、子供にじかに本を売つておるのじやないのです。大体学校へどさつと荷物を着けまして、そして何冊送りました、その中で何冊おとりになりました、幾ら幾ら金をいただきますでもつて、すべて先生が生徒に本を渡して、生徒から金を受取つて、そうして本屋さんに金を渡す、本屋さんは中央の会社とただ文書だけの取引をやつて、何割か知りませんが、利潤を得ておる。実際の働きは先生がやつておる。こういう点でもつて、先生は、そういうふうな搾取的なものは必要がない、こういうことなら、おれたち製本会社から本を受取つて、そうして小売商人の利益はそれだけ本を安くして、父兄が困つておるのだから、安い本を提供するようにしたらどうかというところまで、実情は来ておるのです。それはとにかくとしまして、その先生方が、今度は金銭をとつたり、渡したりする間、どういうふうなことが行われるかというと、生徒からよけいとるということは絶対にできない。しかしその間の計算の誤差とか、あるいは不用意に自分がその金をなくしたとかいうようなことで、全国でおそらくこの教科書の問題で先生たちの受けておる迷惑というものは、非常なものだと思うのです。そういうところから考えましても、先生が本を食うというようなことは、私は決してあるべきものではないと思うのです。そういう誤解を招くようなこういう法律の運営にあたりましては、相当慎重にしなければならぬと私は思うのですが、ただいまの局長さんのお話を聞いて安心するものです。  そこで、最後にお伺いしたいのは、全国では相当数の子供というものが、親の生活問題からして転学をする場合があると思います。たとえば、勤務地がかわつたために転学する。そうすると今度は学校が自由に選択する教科書なんですから、一学期この学校におりまして、次は他府県学校に行く、他部の学校に行く、そこは別の教科書を使つておる、そういう場合、教科書を新しく買わなければならないのですが、重ねて無償にするのですか、どうですか。
  50. 田中義男

    田中政府委員 提案理由の補足説明のときに申し上げたのでございますけれども、この移動の実態が、なかなかあらかじめつかめませんので、一応途中で転学した者には、もう前にもらつているのだから、転学の事由によつては、新たには配付しないという建前予算を組んだわけです。しかし、そういうふうなことがはつきり、しかも多数出て来るような場合には、これは将来の問題として研究したいと思います。
  51. 小林信一

    小林(信)委員 その場合に、そういうものも、全国的な調査が当然文部省として統計的になされると思うのですが、そういう余裕も持ちますか、持ちませんか。そういう点は全然考慮に入れないで、あろうがなかろうが、それはかまわぬという態度ですか、どうですか。研究中というと、まことにそういう点が不安なんです。
  52. 田中義男

    田中政府委員 はつきりした数字が出ましたら、救済措置を講じたいと思います。
  53. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に若林義孝君。
  54. 若林義孝

    ○若林委員 前年の法律と比較されました論議、また教科書の根本に関しての議論も出ておるのでありますが、どうも所管がお違いになりますので、明確な御答弁がなかつたことを、私たちとしては不満に思いつつ拝聴いたしたのであります。将来、教科書の問題に関しては、私たちとしては、発行者並びに今小林委員からも出ております、特殊の契約を結んでおります取扱い君たち意見をも徴しまして、教科書政策というものを根本的に解決をする時期に迫られておるのじやないかと考えるのであります。また国家としても、食糧政策に相当負担をすると同じように、あるいはまた教育という面においては、建物と先生と同時に、教科書というものは三者一体に考慮されなければならぬのでありますが、今までは先生の待遇あるいは六・三の校舎というようなことに重点を置かれておりまして、教科書に対して関心を寄せる余裕がなかつたのではないかというようにも思われるのであります。これは田中局長におきましても、教科書という面に深く思いをいたされて、ひとつ早急に案を立てるために協力を願つてやまないのであります。ただ一点お伺いをいたしたいのでありますが、その前に、去年の支払い状況といいますものは、局長御存じでございましようが、去年の十月ごろだつたと思うのでありますが、国庫が半分を負担し、また地方が二分の一を負担しました、これの決済状況というものは一体どういう状況になつておるか。九、十月ごろには、平均しまして六〇%ぐらいより業者から金が入つていないということですが、それをお調べになつておりますかどうか。
  55. 田中義男

    田中政府委員 一時あまりよくなかつた時代もありまして、その後のことは、最近まだはつきりした集計をとつておらないようでございますから、ちよつと私ただいまお答えいたしかねます。
  56. 若林義孝

    ○若林委員 それから、過般このことが問題になりましたときに、私は日を覚えておらないのでございますが、去年やりました二分の一国庫負担に対する世論は一体どういうものであるか、大臣の手で集計を願いたいということをお願いいたしておつたのであります。内閣に依頼をして、去年の教科書無償配付に関しての輿論を調査さすということを言うておられたのでありますが、いまだこれに関する報告を承つていないのでありますが、それはおやりになつたのですか。
  57. 田中義男

    田中政府委員 大体その世論調査は結果を得まして、調べました結論は、制度そのものには賛成である、しかし提案理由の補足説明として申し上げましたような、あの二点につきまして、やはり問題があり、不安がある、こういう結果になつております。
  58. 若林義孝

    ○若林委員 次に、教科書発行者に対しまして、文部省が告別にその数を示して、それだけの用意をさすということになつておると思うのでありますが、そうでございますか。
  59. 田中義男

    田中政府委員 さようでございます。
  60. 若林義孝

    ○若林委員 それでは本年度入学児童に対する数について、どういう数を指示せられておりますか、承りたいと思います。
  61. 田中義男

    田中政府委員 冊数で申し上げますと、国語について四百六十六万九千余冊となつております。それから算数において百九十三万一千余冊、こういうふうに統計をいたしますと出ておりまして、算数合計いたしますと六百六十万一千幾冊になつておりまして、それを大よそ十三社で引受けることになつておるようであります。
  62. 若林義孝

    ○若林委員 私たち巻間聞くところによりますと、人数で申せば百八十万を予想いたしておつたそうでありますが、それに相違ないですか。
  63. 田中義男

    田中政府委員 百八十万と申しますのは、実は二十六年度であります。来年度は少し減りまして、百五十何万の児童数になつております。
  64. 若林義孝

    ○若林委員 この児工数は私承知しておつたのですが、指示を与えられた、いわゆる指令で出された数と、実数との開きが二十幾万というように聞いておるのですが、それを伺いたいと思います。
  65. 田中義男

    田中政府委員 大体昨年の学校からの報告等によりましたので、それによつて百八十万の予想で指示したようでございます。
  66. 若林義孝

    ○若林委員 指示と実際との間の差についての責任は、一体だれが持つのでございましようか。これは内閣あたりの人口調査の方に尋ねると、立ちどころにわかる問題だと思いますが、二十幾万という差がそこにある場合、これに対して――私たちは別に発行業者じやございませんから、わからないのでございますけれども、これはたいへんな開きであつて、今一冊、二冊をやかましく言うようにいろいろ監督規定が設けられておるようでありますが、文部省自体が二十何万という誤りをしておられるようであります。これの責任は、一体だれが持つのか。国家が持つのか、業者が負担するのか。また業者の負担教科書価格の中に加えられておるのか、これはたいへんな問題だと思う。これはおそらく局長にはおわかりにならぬと思う。久保田局長でなければいかぬと思う。私は事前に久保田局長の出席を求めておつたのでありますけれども、久保田局長は内閣委員会へ出席せられて、まだ来られない。しかし田中局長においてもこれをどうお考えになるか、お聞きしておきたいと思います。
  67. 田中義男

    田中政府委員 文部省措置によつてさような錯誤ができ、そして迷惑を及ぼしたという結果になれば、文部省は責任がないとは言えないと思うのです。しかし実際問題として、はたして二十万の開きができますものか、実際配付して、それらがもつと減りますものか、もう少し実績によつてはつきりいたしたいと私は考えます。
  68. 若林義孝

    ○若林委員 はなはだ申しにくいのでありますけれども、そういう場合には考慮せられますか。
  69. 田中義男

    田中政府委員 それはよく実績を確かめました上で、また結果ができて来ました上で、しかるべき措置にいたすべきものだと私は思います。
  70. 若林義孝

    ○若林委員 これは将来予算関係あることでありますので、あまり明確に詰め寄らぬことにいたします。しかしながら、そういうような、しろうとが考えましても非常に奇異に感じますような事柄がありますのを、指摘だけ申し上げておきたいと思うのであります。なお、このことに関しましては、全体的に、将来一つ教科書というものについての事務は、刊行に関係いたします方と、それから特に田中局長の初中局におきましては、お互いにひとつ協力せられまして、教科書政策というものの樹立ということについての御勘考を願いたいということをお願いするのと、それから発行者を相手にいたしております法案のことでございますので、十分発行者の納得の行くような御審議が、この法案についてお打合せできておつたかどうか、これだけを承つて私の質問を終りたいと思います。
  71. 田中義男

    田中政府委員 教科書行政の円滑な運営、力強い運行につきましては、これは私ども教科書は非常に重要な問題だと思つておりますので、十分よく注意の上に、お考えに沿うようにいたしたいと思います。それからこの法案についての業者等との話合いにつきましては、それぞれの方法によつて意を尽しているようでございますので、御了承願いたいと思います。
  72. 松本七郎

    ○松本(七)委員 教科用図書給与について、従来国が半額持つてつたのを、今回は国が全責任を持つということは、たいへんけつこうなことだと思いますが、さらにこれからは新入児童ばかりでなしに、ずつと全学年に及ぼすように、無償給与原則を貫くという御答弁で、私どもは賛成なんですが、ただその場合に、これから先この原則を貫いて行く場合に、費用はやはり国が全責任を持つて行く方針であるかどうか、その点を伺つておきたいと思います。
  73. 田中義男

    田中政府委員 方針といたしましては、義務教育無償原則によりまして拡張いたします場合にも、国が全責任を負うという方針で進みたいと思つております。
  74. 松本七郎

    ○松本(七)委員 これは教科書の問題ばかりでなしに、義務教育一般費用をどこで持つかということと関連して来ると思います。現在義務教育国庫負担というようなことが、地方自治庁と文部省との間に意見の食い違いがあるし、過去においてもまだ解決しなければならない大きな問題として残つておりますので、地方自治の建前と、それから実際の地方自治体における財政の窮乏、これをどう打開するかということが今後の大きな義務教育の問題だと思うのですが、そういう点を考慮しながら、あくまで教科書に関する限りは国庫で全責任を持つというお考えなのかどうか、この点をもう一度はつきりしておきたいと思います。
  75. 田中義男

    田中政府委員 お話のように国庫負担等の問題におきまして、国と地方との関係については、非常に問題がございます。私どもも当然の前提として地方の自治は尊重しなければならないと考えておりますが、ただ、この義務教育に関する限りは、すべてこれが地方の事務であつて費用その他も全部地方で持つべきものである、こういう考え方には、少し異論がございますので、義務教育費については、国も同時に責任を持ち、最終的には国が補償すべきものだ、こういう立場にあるわけでございます。それからいたしまして、それでは教科書がどういう地位にあるかということになりますが、これは何も地方負担すべきものでなくて、国が負担すべきものということではございませんけれども、しかし、幾分でも国自身が持つということが、また地方教育財政の負担を軽くするゆえんでもありますので、私どもはでき得る限り国で持つて行くという方針で進みたい。地方の自治のことも考えながら、あわせて進んで行きたい、こういう考え方でございます。
  76. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、地方の財政の窮乏の間は国も見るが、地方の財政が確立されて、ゆとりができれば、全額地方で持つというような考えじやなしに、かりに地方がゆたかになつても、ある程度の責任は国でどこまでも持つて行くという御方針ですか。
  77. 田中義男

    田中政府委員 ただいまお話のように考えております。
  78. 竹尾弌

    竹尾委員長 お諮りいたします。本案に対する質疑はこの程度で終了いたしたいと存じますが、いかがでございましようか。
  79. 浦口鉄男

    浦口委員 終了するに際し、一点だけお聞きしたい。ただいまの松本委員の御発言に関連して、一つお聞きしておきますが、局長のお考えは、どうも原則論が少しあやふやじやないかと思うのです。私は義務教育国庫負担法を中心として考えた場合に、義務教育国庫負担をすべきのが原則であると考えておる。ただ地方自治の独立とか、あるいは地方の財政の現状とか、それに対する財源の問題とかいうこととからんで、ときに地方負担することがあるべし、こういうふうに考えておるのですが、今の局長お話ですと、どうも逆のように考えるのです。天野文部大臣は、義務教育国庫負担法については、全額国家が持つということは、地方教育に対する意欲を阻害する、そこでパーセンテージは別として、国家と地方自治体が半々ずつぐらい持つことが、教育の意欲を国家と地方自治体と両方が高める意味において必要だ、こういうことをおつしやつておるのですが、どうもそれとちよつと食い違うようですが、どうですか。
  80. 田中義男

    田中政府委員 ただいま御引例になりました大臣の御意見通り、私も考えておるつもりでありまして、逆のことではなかつたと思うのでございます。
  81. 竹尾弌

    竹尾委員長 それでは重ねてお諮りいたします。本案に対する質疑はこの程度で終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 竹尾弌

    竹尾委員長 御異議なしと認めます。本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。  本案に対する討論採決等は次会に譲ることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後零時十九分散会