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1952-03-14 第13回国会 衆議院 文部委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十四日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 竹尾  弌君    理事 若林 義孝君 理事 松本 七郎君    理事 小林 信一君       鹿野 彦吉君    甲木  保君       坂田 道太君    圓谷 光衞君       長野 長廣君    平島 良一君       水谷  昇君    井出一太郎君       渡部 義通君    小林  進君  出席政府委員         文部政務次官  今村 忠助君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君  委員外出席者         文部事務官         (管理局庶務課         長)      福田  繁君         参  考  人         (明治大学法学         部長)     野田 孝明君         参  考  人         (日本医科大学         常務理事)   河野 勝斎君         参  考  人         (日本経済短期         大学教授)   中原  稔君         参  考  人         (芝高等学校教         諭)      松橋 祐蔵君         専  門  員 石井  勗君        専  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 三月十二日  委員加藤充君辞任につき、その補欠として渡部  義通君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十二日  ユネスコ活動に関する法律案内閣提出第六二  号) 三月十四日  書道教育実施に関する請願外一件(水谷昇君紹  介)(第一四四七号)  義務教育費国庫負担法制定に関する請願高木  章君紹介)(第一四四八号)  学校給食継続実施に関する請願高木章君紹  介)(第一四八三号)  寒冷地帯学校屋内運動場建設促進に関する  請願足鹿覺紹介)(第一四八四号)  同(内藤隆紹介)(第一四八五号)  六・三制教育施設費国庫補助継続等に関する請  願(足鹿覺紹介)(第一四八六号)  産業教育振興法の一部改正に関する請願足鹿  覺君紹介)(第一四八九号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  私立学校振興会法案内閣提出第四九号)     ―――――――――――――
  2. 竹尾弌

    竹尾委員長 これより会議を開きます。  まず私立学校振興会法案参考人といたしまして、明治大学法学部長野田孝明君、日本医科大学常務理事河野勝斎君、日本経済短期大学教授中原稔君、芝高等学校教諭松橋祐蔵君の四名を、参考人に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹尾弌

    竹尾委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 竹尾弌

    竹尾委員長 これより私立学校振興会法案を議題といたし、質疑に入ります。松本七郎君。
  5. 松本七郎

    松本(七)委員 一昨日も問題を提起したのでございますが、私学教職員共済事業を、二本建にして、財団法人私学振興会というものができて、資料を御提出願つたわけでございまするが、これの現状、それからそれの特に健康保険などとの比較、そういう点の概略と、将来の見通し等についての文部当局の御意見を伺つておきたいと思います。
  6. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 ただいま考えておりまする共済事業につきましては、財団法人私学振興会におきまして事業経営をいたしておるのでありますが、ただいまのところでは、大体健康保険のやり方とほぼ同じような様式並びに経営規模をもつて考慮いたしておりまするので、大体同じものとお考えくだすつてよろしかろうと思います。将来、これをもつと大規模に発展する考えは持つておりますが、ただいまのところは、加盟する学校の八割の賛成者がある場合に、これを財団法人に加盟させるという行き方をとつております。これらの点につきましても、将来さらに考えたいと思つております。  なお、ただいま御審議いただいております特殊法人私学振興会成立しましたあかつきにおきましては、この振興会の面からも、直接共済事業の面に何らか事業援助ができるようにいたしたいと、ただいまのところは考えておりますが、さしあたつて財団法人私学振興会共済事業を運営して行くという考えを持つております。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 昨日の御答弁でも、何か予算編成上、やむなくこういうふうに二本建にしたというお話でしたが、そこの二本建にしなければならぬ理由を、もう少し詳しく御説明願いたい。
  8. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 当初特殊法人私学振興会一本をもちまして、学校経営助成、あるいは事業援助というようなことと同時に、共済事業の面もこれで経理して行く考えを持つてつたのでありますが、いろいろ各方面と折衝いたしました結果、この共済事業内容に対して補助をするということは、ただいまのところはちよつと困難な事情がありますので、一挙にこの特殊法人私学振興会から共済事業をまかなうということは、ただいまのところでは不可能な事情にあるのでございます。将来――、これは問題でございますが、われわれはこの特殊法人私学振興会一本で、全部共済事業をまかない得るように考えたいと思い、かつまたそういう方向に努力いたしたいと思つておりますが、ただいまのところでは、事業内容に直接国が補助するということは、ちよつとむずかしいことになつておりますので、やむなく財団法人私学振興会が、当分の間共済事業を担当するというふうにいたさざるを得ないのでございます。
  9. 松本七郎

    松本(七)委員 どういう点でこれが一本にしにくいのか、そこのところを少し具体的に伺いたい。現在のところはそれができない事情にあるという、その事情を具体的に伺いたい。
  10. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 ただいまのところでは、直接に特殊法人私学振興会の方から、財団法人私学振興会の方に共済事業に対して助成をするということは、ほかの健康保険の場合と同様に、政府の金でございますので、その点が困難な事情にあるのでございます。将来、この問題につきましては、ほかの職員共済事業の場合と同様に、この問題は同じ歩調で検討しなければならぬと考えておりますが、ただいまのところでは、ちよつと困難な事情にありますので、今急にこれを一本にして、特殊法人私学振興会からこれをまかなうということは、困難な事情にあるのでございます。
  11. 竹尾弌

    竹尾委員長 それでは次に参考人から御意見を聴取いたします。御意見を述べられる時間は、時間の関係上各人約十分以内にお願いいたします。  それでは日本医科大学常務理事河野勝斎君。
  12. 河野勝斎

    河野参考人 私学振興助成につきまして、国会が御熱心に御検討くださいますことを、まず冒頭にお礼を申し上げます。  さきに国会は、私学振興助成につきまして、二回ほど御決議をいただき、その当時から、私学側としましては、戦後の戦災復旧、あるいは制度の改革による施設完備等のために、国から補助をし得られるものというような期待をひそかに持つてつたのでございましたが、さようなことにも立ち至らずしまして、私学自身の手で新しい制度に対する施設充実とか、あるいは戦災復興とかいう問題に当面しておつたのでございます。その後国会の御承認を得まして、戦災復興という問題が取上げられまして、今日までに総額約十七億に上る戦災復興貸付をいただいておるのでございます。それに対して、私学側は、それの二倍あるいは三倍の手元金を才覚いたしまして、戦災復興に今日まで従事して参つたのでございます。しかし、私学の実際の問題としましては、さようなことではなかなか戦災からの復興が困難な事情にございましたので、昭和二十四年になりまして、全国約三千の学校戦災復旧に要する金融を、もし国からしていただけるならばという線に立ちまして、詳細な調査をいたしましたところ、約百十七億の数字が出て参りましたので、それ以来、私学は全部、この戦災復興の百十七億の数字をどういうふうにして得るかという問題に、鋭意われわれが意見を傾倒いたしまして、国会及び政府当局に御了解を求めて、そうして一応私学振興のための金融金庫、ただいま申し上げました百十七億円に対して、約百億円の政府出資をいただきまして、私学に対しての貸付金をいただいて、この非常時を切り抜けようというような運動を展開いたしましたが、それはいろいろな事情成立に至らずして、その運動はやむなくあきらめる状態になりました。ところが、昨年になりまして、最後の戦災復興の三年分をちようだいいたしまして、それをもつて一応戦災復興ということの政府の御援助が打切りということになりました。その結果、われわれはいかにして私学の新しい整備と充実をして行くか、戦災からの立上りをするかという問題で、鋭意この問題について政府及び関係方面等事情を陳情いたして参つたのでございますが、その結果におきまして、ただいま御審議を煩わしておりますところの私学振興会法案というもののまとまりが出たわけでございます。  しかしながら、ただいまお手元で御審議を煩わしておりまするこの法案内容に関しましては、一番大きな問題は、資本金の問題でございます。この資本金は約三億九千万円の現金支出と、それから十七億の戦災復興貸付金一つ債権としての出資と、この二つがその基礎になつておるのでございます。三億九千万円の現金支出は別といたしまして、この十七億の債権は、ただいま申し上げましたような戦災復興貸付金でございまして、これは借り受けましたところの大学、あるいは中学高等学校その他の私立学校が、究極において政府に償還しなければならないものという理論にはなつておりますが、必ずしもその返済が二十年、三十年の後におきましてできるかどうか。私立学校がそのままうまく永続して行けばよろしいのですが、また諸種の事情等によりまして、経営不良化等を来す場合に、返還が必ずしも行われないで、延引するというふうな問題も含まれており、また、あるいはこれはある意味における補助金ではないかというような考え方を持つておる向きもありますし、あるいはまたこの十七億が二十年、三十年にわたつて分割して現金化する内容でございますからして、事実この約二十億になりますところの資本金という種類のものは、一年々々に考えてみると非常に僅少な額でありまして、この私学振興会法案事業内容といたしましては、私学側としては、その数字が過少であるという嘆きを持つておるのでございます。これはわれわれが終戦後長年努力して参り、かつまた、政府当局あるいは国会等各位の御理解と御同情によつて期待しておりましたところの私学振興というものに比しては、相当距離のある問題でございますが、ただいまの場合におきましては、せめてこの程度私学振興会法案でも、ここに確立していただいて、実施されるようになれば、将来これが基礎となつて、何らかそこに各位の御理解等によりまして、発展して行くのではなかろうかという、一つの悲しい期待を持つておるのでございます。われわれは、この法案が一日も早く実施されんことを熱望しております。その理由は、この法案一つの足がかりとなつて、今後私学振興補助等に対する各方面の御理解が得られるのではなかろうかという、一つ期待を持つておるのでございます。  私学は、御承知の通り全国に三千の、大学を初め小、中学幼稚園までございます。戦災後の復旧と、この新しい制度の改変から起つて来た施設拡充あるいは教職員待遇等私学といたしましては非常に過重なる負担を帯びておりまして、あえいでおるわけでございます。今日の段階におきまして、これの一つの財源として、各私学月謝等値上げということは、すでに行詰まりでございまして、私学といえども、あまり高い月謝等をとるならば、われわれがおそれておりますことは、教育機会均等を失しはしないかという一つの危惧を持つのでありまして、月謝等値上げはすでにもう極限に来ておるとわれわれ考えおるのでございます。さような事情でございますので、戦災復旧及び新制度のための施設拡充完備、あるいは教職員待遇等の改善のために、私学は、ここに何らかの一つ方法を得まして、金融をつけて、自主的に立ち上るような形に持つて行きたいという、これは全部の私学としての長い間の念願でございます。そういう建前から考えまして、ただいま御審議を得ておりますこの法案が、もし成立していただけるならば、今後この法案に対しての将来を、われわれはそこにもう一歩前進しまして、ひそかに期待しておる次第でございます。  われわれは、もちろん教育立場に立つおりますのですから、われわれの任務も十分自覚しておるのでございます。しかし、全国教育部門の約半数以上を私学が担任しておりますので、この私学教育内容充実ということは、非常に重大な問題とわれわれは見ておるのでございます。この法案の御審議を願うにあたりまして、この法案が将来どういうふうにして行けば、私学のこの目的あるいは要望に一番かなうことができ得られるか、あるいは教育内容充実せられるかという点をさらにひとつ御検討くださいまして、最も必要であるこの資本金の問題、そのうちの現金支出以外の十七億円が、ただいま申し上げましたような理由でもつて、ただちに運営の上に出て来ないという数字などを、特に御留意、御注目願いまして、そうしてこの法案に何らかひとつ特別のお考えを賜わらんことを、われわれ私学三千のものは、私どもを通じて当委員会に申し述べるように、みな希望しておるわけでございます。  私の申し述べさせていただきました意見は、資本金の問題でございますが、不明の点はまた後ほどお答え申し上げます。
  13. 竹尾弌

  14. 中原稔

    中原参考人 私ども私立学校関係者といたしまして、今度の振興会法案が、一日も早く成立することを最も要望するものでございます。それについて、私は将来こうしてもらいたいというような希望を、二つばかり申し述べてみたいと思います。  その第一番目は、この振興会の中において、各学校に対する長期貸付金を許してもらいたい、認めてもらいたい。もう一つの問題は、財団法人私学振興会というものができておりまして、これは健康保険に類似した業務をやるわけでございますけれども、将来この振興会におきまして長期給付、すなわち恩給制度というようなことを織り込んでもらいたいという二つ希望でございます。  第一番目の長期貸付をできるようにしてもらいたいという希望理由といたしましては、この振興会の二十七年度資本金三億九千万円でございますが、このわずかな金に対して、全国私立学校三千五百がそれぞれ貸付希望して行く場合には、平均いたしまして一つ学校が十万円そこそこの金になつてしまう。勢いこの振興会を運営して行くためには、短期給付にしなければ、この振興会は運営できないというようなことになつてしまうわけであります。でありますから、私立学校といたしましては、貸付は受けたけれども、三箇月や半年でただちに利子をつけて返還しなければならないということは、非常に学校の運営上苦しい場合が多いわけでございます。これは今日市中の金融機関におきましても、私立学校に対しては金融の道をとざしております。勢い学校施設その他を充実するためには、あるいは苦しまぎれに高利の金を借りなければならない。そういうことになつて来ますると、これは私学の滅亡になつて参ります。どうしても、長期金融の方途を講じなければならない。すなわち振興会においても、長期貸付をしてもらわなければならないという結論になつて参ります。しかし、この三億九千万円というものは、短期貸付にならざるを得ない。けれども予算措置によつて本年度はしかたがないといたしましても、本年度としても追加予算のこともありますし、また来年度再来年度と年年十億ぐらいずつ増して、総額百億以上に資本金を増してもらつて長期貸付措置まで講じてもらいたいというのが第一番目の希望でございます。  第二番目の希望といたしましては、学校教職員に対して、老後あるいは退職した場合の恩給措置長期給付希望するものであります。その理由といたしましては、学校教育の健全なる発達の基盤として、第一に、直接学徒の教育を担当する教職員が、安んじてこの職に専念することが、最も大切なわけでございます。しかるに、私立学校教職員については、上は大学から下は幼稚園まで、その教職員退職後、あるいは老後の安定ということについては、何らの考慮を払われていないわけでございます。ただ従来私立中等学校恩給財団というものがありますが、これには政府はわずか二百万円程度事務費補助をしているにすぎないのであります。これは中等学校教員が、十五年勤務した者がわずか年額六千円ぐらいの恩給しか受けない。しかもそれは毎月薄給の中から四十円を貯金をしなければならない。これを国公立学校教員と比べてみますと、国公立の平均の恩給年額六万三千円というような数字が出ているわけでありまして、私立は非常にわずかなものでございます。このままでは全国七万近い学校教職員というものは、安心をして教壇に立てないのじやないか。なお。この七万の教職員においては、家族を持つておりまして、家族三人おるといたしましても二十八万人というものの将来の生活に対しては、不安を持たざるを得ないわけであります。教育基本法を見てみますると、教育基本法の第六条には、「法律に定める学校教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない」と、はつきり書いてあるわけであります。これは公立教職員私立教職員の区別はないはずであります。しかるに、先ほど申し上げました通り私立学校においては、老後のことは何にも措置がないといつても過言でないわけです。でありますから、全国私立学校の三千五百校、職員の数において七万の教職員が熱望してやまない希望であります。でありますから、これを解決するためには、将来の問題でありますが、勢い資本金というような問題になつて参ります。先ほどの私の第一の希望でありました長期貸付にいたしましても、教職員老後恩給制度ということにいたしましても、この政府出資金というものが増加されますれば、おのずから解決つく問題であろうかと思います。私立学校教員は、その学校の伝統、その創立者の精神に共鳴をして教鞭をとつておるものであります。ほかからいくらよい条件で転職の勧めがあつても、なかなか移つて行かないのが、私立学校の特色であります。その私立学校教員が、みんな薄給に甘んじて、そうして老後保障もせられない。このままでは置けないということは、学校理事者も当然考えていることでありますし、また教職員の一致した要望でありますから、これは何らかの救済策を講じなければならないわけでございます。この点も、将来十分に措置されますように、振興会の方で将来の問題といたしまして、御解決願いたいというように希望するものであります。  以上でございます。
  15. 竹尾弌

  16. 松橋祐蔵

    松橋参考人 それでは私立学校振興会法案について、教員側の代表として意見を述べさせていただきたいと存じます。  今般政府より提案されましたところの私立学校振興会法案というものは、これは長年にわたつて全国私立学校教職員要望でありまして、また昨年以来文部省当局とは、経営者ばかりでなく、われわれ中等学校教員としてもこれに加わりまして、たびたび協議して、十分われわれの意見文部省当局に申し上げておる法案でございます。従つて原則としては、私は非常な賛成をもつてこの法案成立希望する次第であります。特に文部当局におかせられましては、非常にわれわれ教員のことに対して熱心に御援助を願いまして、こういう法案ができたわけでございます。ただ教員立場として、この法案成立の後でも、なおいろいろな点において、将来こうしてもらいたいという点を一言申し上げて御参考にしたいと思います。  この私立学校教職員は、どれくらいいるかといいますと、大体大学としては約二万人の教員がおりまして、これは大学の全教員の四五%に当るような次第であります。それから高等学校の方としましては二万一千人教員がおりまして、これは公立私立を問わない全体の教員の二〇%ぐらいに当るようなわけでございます。その他中学校、小学校幼稚園、合計いたしますと、教職員、これに事務員といつたようなものを加えまして、およそ八万人ぐらいの教職員がおるのでございます。この私学教員に対しては、公立教職員のような給与基準もなく、またベース・アツプというようなものもない、また公立学校教職員のような共済制度の適用もむろん現在ではないのであります。一般の勤労者に適用される健康保険厚生年金あるいは失業保険というようなものからも除外されるよう現状でります。たまたまある県において、県当局の温情によつて、いろいろ奔走してもらいまして加わるということになりましても、その俸給の高が非常に少いものでありますから、従つて入ることが許されないというような現状でございます。従いまして、私立学校教職員に対しても、公立学校教職員と同様な程度健康保険とか、あるいは退職資金老後年金制度というものを、教員としては非常に希望しているような次第であります。これは教員ばかりでなく、先般各地方に参りまして地方事情を伺いましたところが、経営者側の方においても、どうも地方にはよい教員が来ない、それは財政の上において非常に困窮しているために、十分な俸給が支払えない、さらにそういう制度がないために、地方私学には教員のよいのが来ない、そういうことから私立学校はいよいよ内容的にも窮地に追い込まれておるような次第であります。そこで昭和二十七年度予算にあたりまして、こういうようなところから、文部省あるいは大蔵省、国会等に対して、私立学校共済制度実施に要する経費の一部を何とか補助してもらいたい。そこで一億五千七百万円の助成金を含む振興会成立というようなことをお願いしたところが、結局この一億五千七百万円の中から二百万円が――これは私立中等学校恩給財団というものがありまして、先ほどの参考人が申し上げたように、十五年勤務しまして年額たつた六千円というような――これも任意加入でありますから、中等学校でもいろいろな事情によつてこの恩給財団に入ることもできないような先生方もおるようなわけでありますが、その方に二百万円の事務費、それからなお五百万円というものは共済制度事務費として支出していただく、合計一億五千七百万円のうち七百万円だけいただくというようなことであるのであります。そこでやむなく従来からの私立中学校恩給財団内容拡充して、教職員及び学校法人掛金を増加して行こうというような、やむを得ないところから、先般もわれわれ教員が集まりまして、その方法考えたのであります。一方また財団法人私学振興会の中に共済部を設けて、同様に掛金を増加して行くというようなことを考えたのでありますけれども、この点においては、なかなか経営困難な私立学校としては、掛金を十分にかけて自力でやつて行くということは、とうてい不可能な現状であるわけでございます。そういうところから、全体の教員福利厚生というものは、容易に実現できないというような次第でありますけれども、この振興会事業の中に私立学校福利厚生事業も加えるようにしていただいて、全国私立学校教職員の全部が、生活保障老後の安定ができるような方法をとつていただきたい。繰返して申し上げますけれども、この私学振興会法案の中に、教職員福利厚生事業も含めてやつていただきたい。これは財団法人とか、中等学校恩給財団とかいうものでなくして、これをあわせて一本にして、私学振興会をもつて教職員並びに全私学のために御援助願いたい、こういうふうに私ども考えております。  以上申し上げます。
  17. 竹尾弌

  18. 野田孝明

    野田参考人 まず最初に、この私学振興会法案国会において慎重審議されますことに対して、私ども厚くお礼を申し上げます。同時に、この法案がここまで参りますについての文部当局の非常な御努力と、また大蔵省の非常な御理解に対して、あわせて感謝いたしたいと思います。この法案ができます当時におきましては、数回にわたりまして文部省の前管理局長、現在の近藤局長並びに福田課長と、しばしば折衝をいたしたのでございます。いろいろ問題がございましたが、当局におかれましても、われわれの希望をいれて、相当修正をしていただきました。しかし、それにもかかわらず、なおまだ十分でない点がございますので、これは将来の問題として、ぜひともかようにありたいというので、先ほど来参考人からの御意見があつたわけでございます。  ただいま二、三の点について問題になりました点を申し上げますと、資本金の問題でございます。中にも戦災復興貸付金、これを私学振興会の方に譲渡すべきか、それとも現在のままにしておいて、それから取立てた金を私学振興会に繰入れるべきかというような点について、数回にわたつて折衝をいたしたのであります。それから現在の三億九千万円では、先ほど参考人が申しましたように、少額で運営上ほとんど実績をあげ得ないのではないかというので、何とかこの増額ができないだろうかということも、数回にわたつて折衝いたしたのでございます。  次に役員の問題、評議員の問題についても、数回にわたつて折衝をいたしました。役員の問題といたしましては、まず数の問題、これは私学側としては、なるべくよけい出していただきたいという要望が強かつたのでございます。しかし予算面から見まして、あまり多いと経費倒れになるからというので、この程度ということで一応は納得いたしましたが、ただ、私学関係者が、はたしてその中に加えていただけるかどうかということついて、最後までこれが折衝を続けられましたが、明確な点にまで到達いたしておりません。考え方によりましては、利益代表者は入れるべからずというような考えも起るのでありますしようが、貸付の場合についての利益側は法人でありまして、私学関係の個人としてはそういう代表関係はございません。かりに、会長に選ばれた人が大学の総長であるといたしますれば、法案の十四条にもありまするように、その範囲においては代表権がないというようなふうになりまするので、一向さしつかえないと思うのであります。要は大学から幼稚園と申しまするが、それぞれ非常な複雑な機構を持つておりますので、これを十分に理解する者でなければこの運営はやつて行けないのではないか、こういうふうに私ども考えるのであります。のみならず、私ども大学関係者といたしまして、短大あるいは高等、中等学校の問題になりますると、いかに自分が認識不足であるかを、つくづく考えさせられるのであります。こういうような状態を考えてみますると、相当数数の私学関係者の役員が加わつていませんと、実態に即した運営ができないのではないか、こういうことを痛切に感ずるのであります。また評議員についても、同様のことが言われるわけでございまして、この点についても、私ども、もし役員の方で私学関係者をあまりお入れにならぬというような御構想であるならば、評議員会というのは議決機関にしていただきたい。しかもその評議員の多数は、私学関係者から出していただきたいということまで要望いたしたのであります。しかしながら、これは法案を提案される際に、評議員の方には多数私学関係者を出すというような御意向であつたのであります。しかしながら、何名出すかというようなことは、条文に表わせないから、これはひとつ話合いできめようじやないかというような、ぎりぎりのところまで参つたのであります。こういうようなわけで、かなり私ども文部当局と胸襟を開いてとことんまでやり合つて、ここまで参つたような次第であります。  なお、問題になりまするのは、設立委員を多数やはり私学関係者から出していただかぬと、定款の作成等においても、非常に不満足なものができる、ぜひともこれは実現するようにしていただきたいということを要望してあるような次第でございます。  これを要約いたしますると、二点に帰着いたしまして、一つは先ほど来から参考人がいろいろと御説明を申し上げました資本金を毎年増額するようにしていただきたい。ちようど育英会と同じような方法でやつていただくならば非常によくはないか。いな、さらに一歩を進めますると、教育の国家的性格という面から見ますれば、これは当然に助成さるべきでなければならぬと思う。かような、出資して、それを私学の方に貸し付けて云々というのでなくして、当然助成さるべきものではないか、育英会と同じような性格を持たなければならぬのではないかとさえ考えるのであります。しかしこれは、今日は議論でありまして、実際面といたしましては、ぜひとも年々この資本金を増額するようにひとつ御配慮を願いたいということでございます。  次に第二点といたしましては、役員、評議員並びに設立委員については、少くとも私学関係者は半数以上出すように御配慮を願いたいということでございます。これをその条文に表わすことの当否は、技術問題でありまして、相当問題になると思いまするが、もし法案に表わすことができないとするならば、国会におきまして、委員の皆様方の特別な御配慮によつて、ぜひ私学関係者が半数以上入れるように、ひとつ御配慮をお願いいたしたいのであります。  以上、私は二点について申しましたが、それ以外は全部満足しておるかというと、決して満足しておるのではございません。この法案全体を見ますると、非常に官制的な性格が強いということでございます。事々に文部大臣が認可、許可あるいは承認ということになつておる。これだけおやりになつていても、文部大臣は相当な激務だろうと思います。そういうようなことが法案に出ておる。また法人自体の性格から言いますると、貸付あるいは助成をやるだけですから、公益法人かつ私法人――公法人でありませんで私法人であつて、公益法人の性格が非常に強いのであります。こういう面から見ましても、役員の構成等は、よほど今申し上げましたように御配慮を願うことが適当ではないか、かように考えるのであります。  以上、私の陳述を終ります。
  19. 竹尾弌

    竹尾委員長 以上の参考人に対する質疑を許します。質疑はできるだけひとつ簡単にお願いいたします。
  20. 小林信一

    小林(信)委員 どの方の御意見を伺いましても、ないよりはある方がいいのだというようなお考えのようであります。とにかくこの法律を通して、将来もつとこれに対して積極的に政府で考慮してほしいというような御意見があつたわけですが、しかし、どの方のお話の中にも、当然国家として私学のめんどうを見るべきである、貸付というようなことでなくて、助成であるべきだというふうな、そういう見地に立たれておるわけです。私立学校法が通りましたときに、日本の憲法の精神にのつとつて、当然私学に対しての援助はあるべきだという基本的なものが確立しておるのですから、やはりこういう法律が生れる場合にも、もつと公共的な立場を堅持されまして、私学の方たちも、こういうものに対しては、単に恩恵を受けるというふうなものでなくて、日本の教育のために、当然政府はかかる態度をとるべきであるというような御主張をなされることが、私は必要だと思うのであります。それを、ないよりはましだというような見地に立たれておるということは、非常に私学の今までのあり方からして、遺憾な点だと思うのであります。それにつきましても、どなたかの御発表の中に、悲しい期待を持つというふうなお言葉があつたのですが、日本の教育の使命を考えますときに、まことに情ない言葉のような感がいたすのであります。私はもつと積極的に、この問題は、ここに学ぶ生徒のことを考えて、真劔に考えるべきだと思うのでありますが、それにつきまして、学校復旧して行くとか、施設充実して行くというふうなそういう立場と、もう一つは、ここに働いておられる先生方生活の安定、あるいは老後の安定というふうな二つの面からしてお話があつたわけでありまして、先生のお立場からいろいろ承りました。恩給等につきましても、官公立の方たちと比べて雲泥の差がある、こういうお話があつたのですが、さらに給与の問題につきましても、その基準というふうなものがはつきりしておらない、共済制度というふうなものも確立しておらないというふうなお話があつたわけです。この給与の問題で、地域給とか寒冷地給とかいうものが、官公立教職員にはあるわけでありますが、こういうものは私立学校では考慮されておりますかどうか、特に御説明のありました松橋先生にお伺いしたいのです。
  21. 松橋祐蔵

    松橋参考人 それではその点にお答えいたします。私学経営者としては、とにかく十分な給与を与えて、そうしてりつぱな教員を雇つて、りつぱな教育をしようという念願に燃えていることは、われわれも想像しております。しかし、先ほど申上げたように、現在の私立学校のほとんど全部というものは、経営が非常に困難でありまするから、理想には燃えておつても、まだ現在においては、そういうふうな方法一つもとつていないわけなのであります。いな、そういう方法よりも、とにかく教員に対して俸給を払うということさえも、一部の学校では、欠配というような情勢に立ち至つている学校もあるように伺つておるような次第であります。従いまして、そういうことは全然考慮されておりません。
  22. 小林信一

    小林(信)委員 お話をお聞きすると、ますますもつて私学振興会法というものが、どういう使命を持つておるかということを痛感するわけであります。おそらくそういう場合であれば、学校経営する方たちにおいて、先生方としては、一般官公立学校の先生と同じように、給与水準を上げてくれとか、そういう特別な地域給、あるいは寒冷地給というふうなものを御請求なされるだろうと思うのです。しかしそれは私学現状を見て、そういうことが教職員の方たちには言えないという状態だろうと私は推測するわけでありますが、大体平均給は、官公立先生方と比較してどれくらいの差があるか、おわかりになりますか。
  23. 松橋祐蔵

    松橋参考人 お答えいたします。全国の方は、私まだよく調査しませんからわかりませんが、東京の都立の高等学校教員と比較をしてみますと――これも学校によりまして、はつきりした点はよくわかりません。東京全体の都立の高等学校の平均給というものは、調べる方法が今のところちよつとないので、ある一部の都立の高等学校を調査いたしたのでありますが、そのときに大体都立の高等学校の平均は一万四、五千円かと私は記憶しております。私立学校教員は、これは一万円ぐらいと私は記憶しております。それもはつきりしたことは言えませんけれども、大体それぐらいの程度だと思つております。
  24. 小林信一

    小林(信)委員 ありがとうございました。こういうことをお聞きしますと、やはり私立学校では、なるべくいい先生を得ようと御努力なさるのでしようが、なかなかいい先生はそういうところへ集まつて来ない。  中原先生にお伺いしますが、教職員を得るということに、学校経営者として――経営者はおいでにならないようですが、どんな御苦労をなされるか、また得られないなら、その現状等を、もう少し詳しくお話願いたいのです。
  25. 中原稔

    中原参考人 私立学校といたしましても、学校教育内容を上げ、学校の成果を上げるということについては、一にいい教員を得られるかどうかということにかかつているのじやないかと思います。各私立学校とも、いい教員を物色して、その学校に引入れるということに、懸命な努力を払つております。しかし、その私立学校には、おのおの建学の精神といいますか、特色があるわけであります。その伝統的な精神に共鳴してくれる先生を、有資格者なり、りつぱな人を呼ぶわけでありますが、御承知の通り私立学校は、いずこの学校経営困難でありまして、呼ぶことに、はなはだ困難を感じている。しかし、幸い今まで得た先生というものは、薄給であつても、その学校はわれわれの一つの家庭なんだ、家なんだというふうな気持で、どちらかといえば、耐乏生活に甘んじて、その教育の天職に邁進しているというふうな教員が非常に多いわけでございます。一に耐乏によつて学校を維持して行く、教育を続けて行くというふうな現状でございます。それで学校の先生は、私立学校においては、やはりある程度の給与の基準というものがありまして――いい学校もありますし、給与の基準が悪い学校もありますけれども、その基準によつて、どうか来てくれないかといつて懇願をいたします。なかなか来にくいけれども、中にはそういうようなりつぱな精神で私立学校をやつているのか、それじや無料奉仕でもいいのだといつて、やつて来てくださる先生もなきにしもあらず、あるいは安い給料でも来てくださる先生もなきにしもあらずという現状でありまして、そういう先生方をぜひと言つてお願いして、耐乏の上に熱心にやつてもらつているというのが現状であるのではないかと思います。
  26. 小林信一

    小林(信)委員 この程度のもので出発して行つてもいい、しかしどうか教職員待遇も満足にしてやるように、また学校も、月謝もとれるところまでとつてしまつて、これ以上月謝等を上げることができないというふうなお話があつたのですが、そういうふうに収入の道はない、学校の設備復旧というようなことは、まだまだ容易ならぬものがある。こういう二つの面に対して、この法律が何とか将来考えてくれなければ、私学は滅亡してしまうのだという御意見も、先ほどあつたのでありますが、この程度のものから出発してもいいが、この程度には、必ず将来してくれという御意見があると思うのです。不幸にして、そういう最低限度の、この法律の達しなければならぬところのお考え方が、先ほど述べられなかつたのですが、もし具体的にありましたならば、お話願いたいと思います。
  27. 河野勝斎

    河野参考人 その点の説明が足りなかつたようでありますが、昭和二十四年に、先ほどお答え申し上げたように、大学から幼稚園、小学校のすべてにわたりまして、詳細なるところの調査をいたしました。そのときに出ました数字が、先ほど申し上げました通りに百十七億余、これだけの金はどうしても入用だという、ぎりぎりの数字がそういうものでございました。従いまして、われわれはせめてこの私学復興のための金融とか、あるいは振興会というものの資本金は、それから後やや完成した部分もございますので、一応百億の線というものを今日まで堅持して、当局及び各方面へ陳情あるいは理解を求めて参つたわけでございます。この百億という数字は、われわれの調査に基いた根拠でございまして、これは今も捨てた数字ではございません。
  28. 小林信一

    小林(信)委員 それはよくわかるわけですが、しかし政府の現在の教育に対する財政的な考え方というものは、そう簡単には参らぬと思うのです。従いまして、百億要望をされることはわかりますが、それをすぐここでもつて年度実施しろとか、あるいはこの年限ぐらいには目的を達してもらいたいというふうなことは、やはり皆さんとしても考えておられるだろうと思うのです。先ほども、どなたかからお話がありましたように、おそらくこれだけの金額では、短期の融資になつてしまう、できるだけ長期にしてほしい。とすると、この法律の中で、何かそういう点も考慮されなければならぬわけでありますが、おそらく毎年々々政府の方から今後出資されるとしましても、それがすぐ還元されるものではないのですから、そういう点も考慮されまして、どれくらいの年限内に達してもらいたい、こういうふうなお考えがありましたら、ひとつお聞かせ願いたい。
  29. 河野勝斎

    河野参考人 それは、当初考えましたときは、五箇年計画でございましたので、われわれとしましては、現在せめて五箇年内に百億の資金がほしい。従いまして、年に二十億の現金支出をお認め願えれば最も理想的である、かような数字を今でも持つておるのでございます。
  30. 小林信一

    小林(信)委員 もう一つ野田先生にお伺いいたしますが、この法律は、わずかな金を政府が出しながら、非常に何か私学のあり方を拘束するような感じがしてならないのは、私も同感でございます。やはり私学には特殊な立場がありますので、これが官公立学校と同じような形で、その指揮監督のもとに入るというようなことは、その特性を殺すというようなことに私はなると思います。そういう意味で、先生も、文部大臣の監督権というものが非常に目ざわりだというふうにおつしやつたのですが、定款を変更した場合には文部大臣の認可を受けなければならぬ、これに対しましては先生はどんなお考えを持つておられますか。これは私学振興会の定款の問題でございますが……。
  31. 野田孝明

    野田参考人 私の考えておりまする点は、会計面と、それから定款の初めての作成、変更、その程度で監督をしていただければ、けつこうだと思うのです。従つて、定款変更の場合も、やはり文部大臣の認可、そこまではしていただいた方がよかろうと、私どもつております。
  32. 小林信一

    小林(信)委員 もう一つ、「振興会は、必要があるときは、文部大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる」とあるのですが、やはりこの認可が、私は目ざわりなんですが、これはどうですか。
  33. 野田孝明

    野田参考人 この点は、予算の技術面がございまして、育英会のように、予算面に育英会資金として、ちやんと款項でございましたか、それがありますれば、そこへ毎年予算として当然に入つて来ることになりますが、現在ではそういう予算になつていないように聞いております。従つて私学振興費として、かりに五億を国会でお認めくだすつた場合に、そのうちの四億なら四億をこちらへまわす、それについては文部大臣の認可を要するというような御構想のように伺つておるのです。また私もそう推察いたしております。しかし、これは予算の面で、もし私学振興会費というような費目ができますれば、こういう条文は不必要であると、私ども考えております。そういう点についても、私どもまだ申し上げたいこともいろいろあるのでございますが、何としても一日も早くこの法案を通していただいて、ひとつ発足をしなければ問題にならぬというような立場から、これをのんだような次第でございます
  34. 渡部義通

    渡部委員 ただいまの参考人たちのお話を聞いて、私学側としては、振興会の基本金として、現金百億円がぜひとも必要であると言われたのですが、この法案では、現金はわずか四億足らずであり、その他十七億五千万円という金は、これは過去の私学に対する貸付金の回収に結局よらなければならぬわけでありますが、その回収がこげつきになつてつて、事実上回収が不可能だというような見通しがあるのか、あるいは回収ができて、それが基金として、振興会の運転上にすぐ役立ち得るものだというふうな見通しを持つておられるのかどうか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  35. 河野勝斎

    河野参考人 先ほど申し上げました十七億の金は、いまだ私学戦災復興も完全に行われておりませんし、施設もまだその過程にあるわけでございます。従いまして、今貸し付けましたものを、これからただちに全額が回収されるということは、われわれとしましても、あまり期待はできないというふうに考えております。それから、中には、先ほど申し上げました通り学校経営が不良化して来たために、返せないという状況になる不幸な学校もなきにしもあらず、こういうことも考えております。それからこの十七億円は二十五年の間の年賦によつての償還金でございますから、十七億を完全に回収しましても、現金に化することがきわめて少いというふうに考えますので、この十七億円を資本として考えた場合に、この振興会の仕事は非常に規模が狭まるのじやなかいということを、前々から心配しておるわけでございます。
  36. 渡部義通

    渡部委員 現実の問題としまして、現在そのものが学校経営を不可能にしている、あるいは施設の存続さえも不可能にしているという段階であればこそ、この振興会をつくつて復興発展のために資するということが、目的及び希望である場合に、一方回収金はそのような状態であり、他方私学を維持して来た授業料は、もはや限界に来ておる。この事実はわれわれははつきり認められるわけなんです。従つて、非常な少額のものにさえもすがらなければならないというようなことで、この法案をのまれるとしますと、私はここで、やはり私学の側にも考えてもらわなければならない問題が起きるのじやないか。つまり、これはほとんど百億以上も現実的に必要だという計算が出ている場合に、わずか四億足らずの現金しか支出されないで、しかも形式的には二十何億というようなものを出しているというが、これは実際上一つのからくりであつて、現実的には役に立たぬ。そういう点をわれわれ委員会としても、はつきり認めなければならないと思うのです。従つて、これはどうしても、私学をほんとうに、現状の破壊されており、瓦解されつつある状態に基礎を置いて復興させるには、要望される金額というものは、委員会として一致して促進しなければ、私学振興の意味をなさないとわれわれは考えておるわけでございます。その点からしまして、わずかそれだけの金のために先ほど明大の先生が言われたように、いろいろな点で文部大臣の監督権が発動されて来ることになり、従つて私学の歴史的な特色であり、同時に使命であつたところのもの、かつての封建的、官僚的な統制を受けずに、自由にそれぞれの私学の特色をもつて発展して来たそういう面さえも、削らられる憂いがある。こういうところに追い込まれなければならないような法案までも、今わずか四億円欲しいばかりにのむことによつて学校側がその自由を犠牲にされるということになるのじやないか。われわれはこれを非常に憂えておりまして、この点について修正案を用意しつつあつたわけでありますけれども学校当局としましては、文部大臣の監督権というものの内容が、一体どういうものなのかということを、文部当局について、その限度あるいは限界というものを明確にされたのかどうか、その点をひとつお聞きしたい。
  37. 野田孝明

    野田参考人 お答えいたします。これは私ども、当局といろいろ検討をいたしました際、それも十分考えたのでございます。ただこれは、監督といいますると、特殊法人に対する監督になつておりまして、各学校に対する直接監督はないのでございます。そういうような点で私も納得して、まあこの程度でぜひひとつお願いしたいと、そういうふうになつたわけでございます。
  38. 渡部義通

    渡部委員 学校施設あるいは発展に関する業務を取扱うことになるわけでありますが、そういう物質的な面は、当然文部大臣の学校行政に対する監督に結びついて来ざるを得ないのじやないかという懸念を、われわれは非常に強く持つておるわけなんです。なぜなれば、学校教育の方向というものは、やはりその教育に伴うところ、あるいはその教育の物質的な基礎をなしている施設の方向というものに、御存じのように非常に深く関連しておるから、そういう心配をわれわれはいたしておるわけなんです。同時に、役員及び評議員、ことに役員は、単に文部大臣が学識経験者から任命する、評議員の方は私学関係その他からとられるといつても、どれだけとられるかということが明示をされていない。これはやはり学校当局としては、非常に考えていただかなければならぬことであつて、法文の上にそういうことが明示されていない、現実の当局に対する打合せ、あるいは了解というような事項は、情勢と当局の意向によつて、自由に変更され得る危険があるということを、やはり考えていただかなければならぬのじやないか。その点に関連して、学校当局が、学校全体として私学の発展を推進されるという立場から言いますと、やはり学校教職員間の意思の統一、あるいは意見の反映というものが、十分に考えられなければならぬわけですし、これが十分に行つてこそ、全学一致して、私学の発展のために、いろいろな困難を背負つても立つて行くという教職員たちの力強い精神力、また協力というものが生れて来ると思うのです。そういう場合に、教職員の発言権というようなものが、やはりこの法案の中に含まるべきじやないかとさえ私たちは考えて、なるたけ私学が一致協力して、その発展のために、困難を突破して行けるような態勢をつくるような法案が生れることを期待して、修正案を作成しつつあるわけでありましたけれども、その点についてのお考えはどうでしようか。役員及び評議員の問題ですが、私学関係者の発言権あるいは意思を強力に反映し得るようにすること、むしろこの問題は私学の発展という点にあるのだから、従来の歴史的な伝統からいつても、私学関係者こそが、やはりこの振興会の中心的な発言者であり、計画者であり、推進者でなければならない。そのためには、法案の中にその点を明記する必要があるという点についてのお考えが第一。それから各私立大学の全学的な協力と統一的な発展のために、教職員よりの発言権もやはりここに認める必要があるのではないかというふうに考えておるのですが、この二点についての御意見をひとつお聞きしたいと思います。
  39. 野田孝明

    野田参考人 お答え申し上げます。ただいま仰せになりました通りでございまして、私どもそのつもりで一生懸命にやつてつたのでございます。しかし、今日のまだ講和条約発効前の現状といたしまして、これを云々しておりますると、これがまたむずかしくなりますので、この点はひとつ委員の方々の賢明な御善処をお願いいたしたい、こういうふうに私ども考えます。
  40. 松本七郎

    松本(七)委員 参考人の御意見に関連して、文部当局に伺つておきたいのであります。一昨日の御答弁のときに、振興会の役員は、原則として私学関係者を入れないというはつきりした御意見が出たのです。先ほど野田さんの御意見にもありましたように、代表権の制限規定もあるし、それから振興会の性質なり、その事業内容からいつても、むしろ私学関係者が当然入れられるべきだという御意見がはつきり述べられたのですが、この点に対する文部当局の御意見を伺いたいと思います。
  41. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 前回もお答え申しましたように、一応評議員の中に、私学関係者に御参加願いまして、私学方面の意思を十分に御反映願うという考えで、役員の方に対しましては、特殊法人私学振興会の性格から申しましては、これは原則として私学の方の御参加を願わない。しかしながら、真に私学振興会の運営にふさわしい方がいらつしやるならば、その場合は文部大臣の認可を得まして、兼務の形式をもちまして役員に御参加願うこともあり得るというふうに考えております。なお、さような場合におきましては、その役員の個々の人の問題でございますので、やはり私学団体の御推薦ということでなしに、その人個人の問題といたしまして考慮したいと考えております。しかしながら、さような場合におきましても、なお必要のある場合には、その団体の方とお話申し上げるということは、事実上あり得ると考えております。
  42. 松本七郎

    松本(七)委員 ただいまのお答弁によりますと、私学関係者から、適任者で兼務をお願いできるような者を積極的に求めるというのでなしに、そういう方があれば、まあ兼務をお願いすることもあり得るというような、至つて消極的なように聞えたのですが、そういうふうに解してよろしゆうございましようか。
  43. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 先ほど申しましたように、この特殊法人私学振興会の性格と申しますか、本質は、やはりどちらかと申しますと、金融機関的な性格が強いのではないかと考えます。かつて考えられました私学金融金庫でありますれば、完全に金融機関でございますが、この特殊法人私学振興会は、そういう金融機関的性格のほかに、なお助成とかそういういろいろな事業もいたしますので、多少その点は性格がぼけております。しかしながら、その大部分の性格は何かと申しますと、やはり金融機関的なものではないかとわれわれは考えております。従いまして、その役員の人選にあたりましては、やはり原則として、私学関係者よりも、むしろそうでない方が適当ではないかという考えから、先ほど来申し上げましたようなわけであります。しかしながら繰返して申し上げますが、真にりつぱな方が得られますれば、たとい私学関係者でございましても、兼務のような関係をもちまして御参加願うということを考えております。
  44. 長野長廣

    ○長野委員 だんだんお話を承つた結果に基いて、文部当局に少しお尋ねをしたいと思います。どうも金額が非常に少いということでありますが、まつたく何人も、この数字を見たならば、さように感ずるだろうと思います。しかるに、現在の国庫の実情から見ましても、この種の重要な教育には、五箇年間に百億や百五十億の金は容易であると思います。ということは、産業教育振興法の場合に、私は二百億を提案しました。これは七箇年間の二百億でしたけれども、一円も削減なしにその予定で現に進んでおります。まあ、いわば採用されました。関係方面までも、これは双手をあげて賛成し、協力をせられたのであります。大蔵大臣も、何回にもわたつて、私に本責任ある言明をいたしております。つきましては、今後年度計画的に、各私学の側において計画を立てていただきまして、文部当局は、それに基いて大増額をせられる必要がありはせぬか。またそれは、学校当局も非常に喜ばれるというようなお話も今ありましたで、ぜひこれはすぐに調査にとりかかつていただきたいと思いますが、それはいかがでありますか。  それからいま一つは、地方の方には、大分高等学校程度私学が多いのでありますが、また大学の方にも、やはり農林業というような側の産業的な学科もあるようであります。この地方の各種の高等学校ないし大学及び中央の特に産業的な学校、これらに対しまして、国は、たとえば植林ですね、山を与えてこれに植林をせしめるというようなことについてお考えなつたことがあるか、また今後いかがであるか。これも数年前に、北海道の山林が、特に御料林が、何らかの処分をしなければならぬという場合におきまして、ほとんど九分九厘まで、これを私立学校の一種の基本財産的な意味における形において、私立学校団体にまかせるような計画を実は立てておつたことがあります。これは種々の事情で遂に時機を逸しまして遺憾に思いますけれども、少くとも部分林式に、七分を学校側に、三分の官の方にという七、三ぐらいの部分林式の方法もありますから、できれば、はげ山をできるだけ私立学校に提供するというようなことに努力される御意思はないかどうか、これもあわせて文部当局の御意見を承りたい。
  45. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 第一問の、資本金の増額の問題でございますが、この点につきましては、前回申し上げました通り、われわれといたしましても、その額がはなはだ少いということを自覚いたしておるのでありまして、今後この点につきましては、機会あるごとに努力いたしまして、増額に努めたいと考えております。なおどういう方法でいたしまするか、あるいは追加予算の機会とか、いろいろございましようが、そういつた場合にどうするかということにつきましては、御意見もございますので、なお十分考えたいと思つております。  それから第二は、私立学校で植林事業をやつておる場合に、これに対して振興会から助成ができるかという御意見だと思いますが……。
  46. 長野長廣

    ○長野委員 それは国有の林野に植林をさせるわけです。それから農林等の学校が大分あるようでありますから、そういうものに土地を与えて植林をさせて、そうしてそれを部分林式にやるか、あるいは全然大学あるいは私立学校側に渡すか、こういう問題です。
  47. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 お話を伺いますと、その問題は振興会とはあまり関係がないように考えるのでございます。農林省の関係ではないかと思うのでございますが、もし先ほど申し上げましたように、植林事業振興会から助成をするということになりますと、その植林事業が、もし営利事業である場合は、この振興会事業としては適当ではない、こう考えておりますが、そうでない場合には、なお研究いたしたいと思つております。
  48. 長野長廣

    ○長野委員 ちよつとそこを残念ながらどうも理解していただけないようですが、この金をどうこうという問題ではありません。これに関連して、そういつたことは、私立大学私立学校をして、一層基礎を強固ならしめるゆえんではないか。同時にまた、学校の実際の研究を十分ならしめる上において、官立大学と同様に、そういう機会を農林関係私立大学に与える必要はないかという関連しての話です。
  49. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 ただいまのお話は、学校の基本財産として植林事業をやることが適当じやないかという御意見ですか。
  50. 長野長廣

    ○長野委員 そういう意味もあります。同時に、それが現に農林の学部を持つておる学校もありますから、そういうところへは、文部省が中へ入つて農林省との関係を調節してやる必要はないか、こういう意味です。
  51. 近藤直人

    近藤(直)政府委員 そういう点につきましては、なおよく主管部局と協議いたしましてお答えいたしたいと思います。研究いたしたいと思います。
  52. 松橋祐蔵

    松橋参考人 いろいろ文部委員各位の御同情のあるお言葉をいただきまして、教員代表としては、非常に感謝いたしております。われわれ教員としましては、こういう貨幣経済の極度に発達したところへたたき込まれておりまして、そうして、その中で教育家というような美名のもとに、仙人のような生活をしなければならない、そうして人材をつくり上げなければならないというはめに追い込まれておるような次第でありますが、それにしても、とにかくわれわれは、かゆを食べて国家のために努力するつもりであります。ただ将来老後において、長期給付というような面を何とか私学振興会法の条文に入れてもらいたい。将来でも、これをつけ加えてもらつて、そうして長期給付を行つていただくということでありましたならば、とにかく現在は、先ほど申し上げたような生活をしておつても、将来を楽しみとして教育に努力し、人材を養成しようという覚悟を持つておりますから、その点は何とぞお含みを願つて、御同情ある御処置をしていただきたいと思います。
  53. 小林進

    小林(進)委員 私は遅れて参りまして、参考人の方々の御意見をお聞きすることができませんでしたので、どなたでもけつこうでございますが、お答え願いたいと思います。この振興会法案を通じて、一番われわれの懸念せられることは、先ほどからもずいぶん質問がございましたが、わずかな金で縛られて、文部当局の監督がはげしくなり過ぎるのではないかということの一点と、いま一つは、この私学振興会なるものは、結局官僚の姥捨山になつて、いよいよ役人の私学に対する一つの圧迫を強めると同時に、自分の将来の失業のこもり場所にするのではないか、こういう二つの懸念を持つておるわけでありますが、その観点から参考人の方にお聞きしたいと思います。これは文部当局にはお聞きしたのでありますが、今日官学におきましては、一人の学生を養うのに八万円ないし九万円の国費を出しておる。公立においても一人の学生に対して八、九万円の金を税金から出しており、学生の負担は必要経費の五分である。九割五分は国民の税金でまかなつておるのでありますが、官学の当局は、そういうことに対する国民ないしはその血税に対する恩義を感ずるような気持は言わずに、当然の権利とし、なおかつ国家予算の増額を権利のごとくに要求しておる。私は、これもけつこうと思いますが、それに引きかえて、同じく人材の養成と学問の研究を希求する立場にありながら、私学という名にこだわつて、今度はこうした四億か五億の――十七億五千万という、将来出るか出ないかわからない金を見積りましても二十一億そこそこの金に縛られて、一方私学はさらに哀願、懇願をしで非常に卑屈になつて、官学の立場私学立場はだんだんかけ離れて来るのではないかと考えるのであります。官学が当然のごとく国家の費用を要求する、それくらいの矜持をあなたたちは一体この法案の中から持ち得られるかどうか、この点を私はお尋ねしたいと思うのであります。  いま少し申し上げますならば、私も実は間接ではありますが私立大学関係いたしております。私の関係しておる学校も、十七億五千万円の貸付金の一部を借りております。その借りるときにおける理事者の卑屈な態度、哀願、懇願を私は目の前に見て、実に悲憤の涙にくれたのであります。なぜこれほど卑屈にならなければならないのか、なぜこれほど哀願、懇願をしなければならないのかということを、痛切に感じたのでありますが、この法案によつて、さらにそういう空気が助長せられるのではないか。まさに、ふぐは食いたし命は惜しい。この三億数千万円は、最初から見れば非常に進歩した法案であると思いますけれども、これがほしいために、そうまで卑屈になつてもらつては困るという気持があるのでありますが、この点を一体どう調整して行かれるお考えであるか、これをお尋ねしたいと思うのであります。
  54. 野田孝明

    野田参考人 私もほんとうにはえ抜きの私学人でありますために、今仰せになりましたことと、まつたく同じ考えを持つております。従いまして、この法案ができます際にも、多分に私学人の立場で、いろいろと私の御意見を申し上げたのでございます。ただ、特殊法人である、しかも全額が国庫から提供される、これだけでこれほどまでにしなければならぬかということを、私は痛切に感じたのです。しかし、日時が非常に切迫しておりまするし、私立学校が非常に窮乏状態に追い込まれておるという状態で、皆さんの御要求が、ぜひともひとつ通してもらいたいという御意見が、ほとんど一致しておるという状態でございます。そこで、私どもいろいろと協議しまして考えた結果、どうしても役員構成においては、私学人から半数以上を出すようにしていただきたいということを、最後の切札として折衝したような次第で、先ほど近藤局長のお話を聞きますると、原則としては出さぬというお考えでありますが、これは官民転倒であると私は考える。私の立場は、原則として私学人を出していただきたい。ただ専門的なもの、たとえば運営面、金融面についての専門的な方面は、われわれ私学人にはよくわかりませんので、そういう方はぜひ選んでいただきたい、こういう立場でおるのであります。もしそうであるとするならば、ただいま御杞憂くださいましたような事柄は、少くとも緩和されるのではないか、こういうような気持で、私どもこの要望を申し上げておる次第でございます。
  55. 小林進

    小林(進)委員 今おつしやいましたのは、理事者でございますか評議員でございますか。
  56. 野田孝明

    野田参考人 理事者、それから監事でございます。
  57. 小林進

    小林(進)委員 理事、評議員の半数を私学で占めたいとおつしやる要望は私は実に正しいと思うのであります。官学の理事者は、みずから国会に対して自分の必要に応じて要求いたしております。私学にも、当然私学立場からその理事者ないし役員を選んで、その人の意見が国費を出す方面へ率直に流れて来る、そういう考え方は、官学とのバランス上も、私は正しいと思います。この点、私どもは重大な御意見として承つておきたい。  次にお伺いいたしたいのは、これも先ほどお答えがありましたが、私はふに落ちなかつた。それは、いわゆる、ために文部省の監督が非常にはげしくなるのではないかという質問に対しまして、それは振興会に対しては、いわゆる監督、命令あるいは監査、検査というものがあるけれども私学それ自身に対しては、文部省の圧力は及ばないというようなお答えであつたと思うのでありますが、私はこの法案をながめて、これは間接統制だ。いわばこの前申し上げたように、アメリカ軍が進駐していて、連合国みずからは日本国民に対して何らの命令あるいは監督もしないけれども、日本の政府を通じてアメリカ政府は自分の意のままに日本国民を動かしておる、監督、指導しておる、占領政策を遂行しておる、こういう形が私はこの法案にも現われておるのではないかと思う。いわゆる振興会理事、役員を通じて、私学に対する圧迫なり監督なりが、文部省の意図のままになされて来るのではないかという懸念を、私は持つておるのでありますが、この点いま一度私は皆さん方の率直な御意見を承りたいと思うのであります。
  58. 野田孝明

    野田参考人 私立学校法を見ますと国家から援助を得た場合においては、かなり強大な監督を受けるようになつております。これに対しても、私ども非常に反対でありまして、これは財政面、つまり会計面で監督を受けることはやむを得ないが、それ以外については、自主性をどこまでも尊重していただきたいと、私立学校法の場合においても、そういう考えを持つておるのでございます。今度の場合は、特殊法人で、これは形式論を申し上げてまことに申訳ないのでありますが、特殊法人それ自体と、そこから借入れをする学校とは別であつて、しかも、監督は特殊法人に対してなされるのであるから、こういう形式的な理由を申し上げたのでございまするが、ただいま仰せになりますように、実質面になつて参りますと、その点非常に杞憂される点がございます。しかし、私先ほど来申し上げておりますように、もし役員の面において、多数の私立学校関係者が出ておりますれば、この点は十分カバーできるのではないか、こういうふうに考えておるのでございます。
  59. 小林進

    小林(進)委員 それについて、私はこういう意見を持つておりますが、ひとつそれにお答えを願いたいと思います。それは、振興会理事、役員には、文部省退職官吏は、退職後五年ないし十年は振興会の役員たることを得ずという条文を一箇条入れたらどうか、こういうことを考えているのでありますが、これに対する参考人の率直なる御意見を承りたいと思います。
  60. 野田孝明

    野田参考人 これは、そこまで厳格に、またきゆうくつに解していただくよりも、私どもは、今の文部当局の方は、私立学校に十分な御理解をお持ちになつておると思いますので、そういう中からも、一人ぜひ入れたら入つていただきたいくらいに思つております。そういうふうに厳格にされますと、かえつてども困るのであります。
  61. 小林進

    小林(進)委員 よほど金がほしいとお見えになりまして、なかなか巧みな御答弁をなさるので恐縮いたします。次に私は条文をおつくりになるときに、皆さん方のどなたか御関係なつたかどうか、それをお聞きしたいのであります。というのは、私はこの私立学校振興会法案なるものの法文は、非常にまずいと思う。こんなまずい法律をよくもつくつたものだど私は思う。実に文部省は頭が悪い。というのは、先ほどもちよつと質問がありましたが、これは法文の体裁でございましようけれども、第五条の四号の文部大臣は必要に応じてその経費の増額を認可する。必要なんて、こんなことは、今から必要だ、三億九千万円でどうするのだ、こんなことではやつて行けないということは、明らかになつておるにもかかわらず、必要に応じて認可するということは、おそらく実情に即しない条文だと思う。こんな第五条四号は当然削除すべきだ、こういう意見を私は持つております。それから第二十三条であります。この二十三条も、私はこの前もお尋ねしたのでございますけれども、こういう宣言、綱領、抽象論的な条文を持つて来て「公平且つ確実な」と書いてありますけれども、こういう無用な条文――もしこれを入れるとするならば、これは総則でありますから、二条か三条の一番前のところに持つて来ればよろしい。業務のところに持つて来て、公平、確実などというような、何も内容の伴わない空々莫々たる条文を入れておるのであります。私は頭が悪いのに、実に驚いておるのであります。法律などというものは、なるべく無用な条文は少きをもつてよしとするのであります。何も体裁に並べてやる必要はないのであります。もしあなた方がこの条文の作成にお携わりになつたとするならば、皆さん方の頭脳も私は疑いたいのであります。こういうことも、私よく御意見を述べて、文部省の頭の悪いところは是正するようにお考え願いたいと思う。今の問題が一つでありますが、この御意見を承りたい。  それから第二十五条の「貸付又は助成を受けようとする者の備えている条件について」云々という規定がございますが、この「条件」を、皆さんの方は一体どんなぐあいにお考えになつているか、これを私はお尋ねいたしたいと思うのでございます。
  62. 野田孝明

    野田参考人 この条文をつくりまする技術面は、文部省にお願いいたしましたので、中身について重要な箇所の御意見を伺い、かつわれわれの意見を十分述べさせていただいたような次第でございます。私も法律をやつておりまして、そういう面で云々されますと、何だか申訳ないような気がするのですが、こういう技術面は、私どもには十分申し上げられない。  それから二十五条の「条件」の点でございますが、これは一番しまいに「審査」ということが書いてありまして、われわれの立場では、審査員を設けて、そこで十分返すべき能力があるか、またどういう必要があるかという詳細を調べていただいたらよくはないか、こういうふうに考えておるのであります。単に事務当局にまかせるとか、そういうことをしないで、やはり関係者が審査に当つたならば、一番事情がよくわかるのではないか、こういうふうに考えております。
  63. 竹尾弌

    竹尾委員長 他に御質疑がございませんでしたら、参考人に対する質疑はこれにて終了したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 竹尾弌

    竹尾委員長 御異議なしと認めます。  なお、本案に対する質疑も、これにて終了したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 竹尾弌

    竹尾委員長 御異議なしと認めます。これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許しますが、時間の都合上できるだけ簡単にお願い申し上げます。若林義孝君。
  66. 若林義孝

    ○若林委員 私は自由党を代表いたしまして、本法案に附帯条件を付しまして、賛成の意を表せんとするものであります。  わが国の教育活動面を見ますとき、私立学校の果しております役割というものは、きわめて偉大なものがございまして、明治維新以後におけるわが国文化の発達は、その大半を私立学校の貢献に負うていると申すことができるのであります。このことは、すでにアメリカ教育使節団も、明確に指摘しているところであります。試みに、これを現存における数字の上から概観いたしましても、大学及び短期大学は二百九十余校、学生数二十四万でありまして、全体の約七〇%を占めております。高等学校は八百七十余校、生徒数三十六万余、全体の約二〇%、義務教育小、中学校が約八百余、二十五万余の児童を擁しております。これを総ずるに、学生生徒数は大体百万に及んでおります。今日のかくのごとき私立学校の発展は、まことに喜ぶべき事実でございまして、かつては官学尊重の傾向によつて、その十分なる成長を阻害せられておつた傾きがあつたのでありますが、今日におきましては、私立学校当事者の理想実現に対する非常な熱意と努力とによりまして、公立私立の差別観が消滅しつつあると申し得るのであります。  元来、わが国は、欧米諸国とはその歴史的過程や経済事情等を異にしておりますので、私立学校経営は非常に困難であります。しかるに、国家に貢献しておる努力の割合に、国家による援助は必ずしも十分であつたとは申し得なかつたのであります。さきに第六国会におきまして、この点にかんがみまして私立学校法が制定せられ、ようやく私立学校の飛躍的な発達の礎石が置かれることとなつたのであります。しかるにこの法律は、私立学校の独自性と特殊性とを保つ性格のものでありまして、あまりにもはなはだしかつた戦災と、戦後の経済的打撃の重圧を押しのけるには、なお不十分でありますので、何としても、国家の財政価から根本的な援助を施さなければならない事情に置かれておるのであります。  今回政府から待望久しかつた私立学校振興会法案が提出せられまして、ようやく愁眉を開くことができますことは、まことに時宜を得たものと思うのであります。すなわち、私立学校教育の振興をはかることにより、わが国教育の発展と、私学の公共性を高めることを目的としまして、特別法人をつくり、私立学校経営に関し必要な資金の貸付私立学校教育振興の助成、あるいは私立学校教職員福利厚生、その他に対する資金の貸付助成とを行おうといたしますことは、私学のためはもちろんのこと、国家のため適切な施策であると信ずるのであります。またこの法案は、民主的な協議に基きまして私学側要望が十分に取入れられておりますとともに、官僚による独善の弊害を取除き、一方私立学校の自主性を阻害しないように配慮せられておりまして、その経営に必要な資金は、単に助成あるいは貸付にとどまらず、私立学校教職員の研修とか福利厚生等に対しても、貸付助成の道が講せられ、その運営は政府学校側との協力によつて行われることとなりますなど、その用意と苦心のほどが十分にうかがわれるのであります。従いまして、本法案成立によつて、わが国教育の上に重要なる地位を占めておる私立学校充実と振興とに対し、十分とは申しかねますものの、なお公正でかつ有力な基礎措置が講せられたものであると思うのであります。  しかしながら、全国三千五百有余の私立学校現状を見まするに、およそその三分の一は戦災による復興の途上にありまして、なお相当の財政的援助を必要としております上に、学制改革、物価の騰貴、人件費の増大、あるいは設備の充実等、前途多難でございます。ところが、この法案に伴う政府出資金は、わずかに三億九千万円でありまして、しいて申しますならば、焼け石に水の感がないでもありません。国、公立大学が、一人の学生に対し平均約八万ないし九万円の費用を投じておりますが、全私学の生徒百万に対して三億九千万円は、一人当りにいたしますと四百円でありまして、教育機会均等の精神から申しますならば、相当の開きがあると申さなければなりません。また一面には戦災及び災害等による私学救済復興を目的とする貸付金をこの基金に充当いたしますことは、振興会の健全なる発達上、一沫の不安を抱かせられるのであります。さらにその資格において、国、公立と同等の立場にありまする約八万に及ぶ私立学校教職員に対しまして、政府はわずかに数百万円の補助金を計上しておるにすぎませんが、教育基本法第六条の精神に照しまして、その福利厚生施設及び共済制度等は、なお不均衡ではあるまいかと思われるのであります。  これらの点から、私は各位の御賛成をいただき、次の三項の附帯条件を付しまして本案に賛成いたしたいと思うのであります。すなわち  一、わが国の教育上における私立学校の地位の重要性にかんがみ、政府は、私立学校振興会法の成立後、なるべく速やかなる機会に、私立学校振興会に対し、相当大幅な資金の増額を行うこと。  二、第五条二項の、災害私立学校復旧貸付金等の取扱いについては、災害私立学校復興に支障を来さないように配慮すること。  三、私立学校教職員福利厚生対策については、教育基本法第六条の趣旨に基いて、国公立教職員と均衡を保てるような別途の施策を考慮すること。 以上でございますが、もし御異議がございませんければこれをもつて附帯条件といたしまして賛成をするものであります。
  67. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に笹森順造君。
  68. 笹森順造

    ○笹森委員 ただいま本委員会の議に付されておりますこの私立学校振興会法案に対しまして、私は改進党を代表して、附帯三条項を提唱せる若林委員の発言に同意しつつ賛成の意を表したいと思います。  私立学校のわが国教育における従来の公的貢献と将来の使命の重大性にかんがみ、しかもまた、その維持経宮の苦心に照し、特に近来国家が法律の制定によつて私立学校が整備すべき諸条件を要求する結果とし、加うるに国家経済の特殊現象たる物価の騰貴と、また給与基準の上昇等によつて私立学校が巨額の負担をしなければならない実情を思いますときに、本法案がその要望にこたえんとする意図においては、当を得たものだと考えます。すなわち、私立学校の振興をはかるために、私立学校経営に関して必要な資金の貸付私立学校教育助成その他私立教育に対する援助に必要な業務を行う私立学校振興会を設立して、その資本金、組織、業務監督等について必要な条項を規定せんとする本法案成立は、必要であると考えます。  しかるに、この目的を達するために、本法案の第五条、資本金の点については、当初昭和二十七年度においてはまことに僅少にすぎないものでありまして、政府当局は第五条第四項の適用を努力して、資本金の増加をはかつて、まず三十億円を第一段階の目標とし、遠からず百億円を醸成するに努力すべきであると考えます。また同条第三項の災害復旧貸付金債権の取立ては、私学振興の精神と事実上矛盾するきらいがありますので、その償還金取立て強行は期待簿でありまするから、この償還不能分の填補については、政府は次年度における資本金増加をはかる際に特に策定すべきであると考えます。また振興会の役員の選定につきましては、私立学校関係者の適当なる人物をできるだけ多数に任命するように配意すべきであると思います。また第二十二条、業務の第三項におきましては、将来はぜひとも、教職員が一般に待望しておりまする共済問題をも十分に取上げるように推進して行くべきだと考えます。それとともに政府当局は、本法の成立によりまして振興会の上に行う監督権を通じて、直接にも間接にも私立学校の自主、自立権を脅かすようなことのないように十分戒節して、むしろ同情を持つて、その私立学校のよい特殊性を推奨する態度に出ずべきであると考えます。  以上の諸点を勘考いたしまして、本法の目的が、わが国の財政力の涵養に伴いまして、すみやかにその資本力を増加して、理想的な状態に達するよう、政府当局の努力を要望しながら、本法案賛成の意を表するものであります。
  69. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に、松本七郎君。
  70. 松本七郎

    松本(七)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、私立学校振興会法に対して、若林さんから出されました附帯条件に賛成しながら賛成するものでございまするが、なおそのほかに、二、三の希望条項を申し上げたいと思います。  元来私立学校の任務の重要性と公共性にかんがみて、特に変則的な状態であつた戦後において、すみやかにこれをこうしなければならぬというのが、国会でも一致した意見でございまして、また政府もその方向に向つて努力しておつたのでありまするが、御承知のように憲法の規定の解釈をめぐつて、総司令部と国会の中にも、若干の意見の食い違いがあつたりいろいろして、思うような私学振興ができずに今日まで参りました。この問題については、文部当局の御説明にも、御答弁にもありましたように、すでに解決済みであつて私学に対しては国庫の補助助成ができるというはつきりした決定がなされております。従いまして、私どもとしては、こういう貸付というような形でなしに、もつと積極的な私学振興助成がなさるべきであるというのが、私どもの根本的な考え方でございます。こういう考えから考えて参りますると、今回のこの法律内容その他についても、不満がたくさんございます。しかし、なきにまさるという考えから、先ほど申しましたようないろいろな附帯条件並びに希望条項を付して賛成するということになるのでございまするが、そういう点から、資本の増額については、格段の努力を政府当局要望したい。  それから役員の問題でありますが、どうも私学関係の方の御意見文部当局とは、根本的な食い違いがあるようであります。この振興会という特殊法人の性質から、文部当局はそのように考えておられるようでありますが、私どもは、やはりこれはできるだけ積極的に私学関係者を入れて、そうして代表権の制限規定等もせつかくあるのですから、そういうものによつて弊害をなくするということにして行きたいと考えております。従つて、これの運営について、役員等の選出にあたつては、できるだけ私学関係者を多数入れていただくことを要望するものであります。  さらにこの共済事業を二本建にして、共済事業をこれから分離したということについては、いろいろ質問応答の経過から見ても、政府当局も、今後これを私学振興会の中に統合する御意思があるようでありますから、なるべく早い機会にこれを実現するような格段の努力を、政府当局要望したいと思うのであります。  それから、大臣の監督権の問題であります。なるほど法文の上から申しますならば、特殊法人である私学振興会に対してだけ監督するということになつておりますが、だんだん私学校私学振興会貸付に依存する度が強くなればなるほど、監督というものが実質的に私学に及んで来る危険性を、私どもは認めなければならないと思います。しかし、これも完全に法文の上でこれを排除するということは、国庫で補助あるいは助成貸付等をする以上は、むずかしいと思いますが、要はこの運営にあると思います。それですから、政府当局でもあくまで私学の自主性というものを尊重して、これをやるということと同時に、私立学校の方でもまた、金を借りておるから、もらつておるからということで、文部当局にひけ目を感じるというような、自主性をなくする危険を極力排除して、この私立学校の公共性並びに任務の重大性を認識して、これが運営を全うされることを希望いたしまして、賛成するものでございます。
  71. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に渡部義通君。
  72. 渡部義通

    渡部委員 私学は、日本の学校教育、諸科学の発展の上に、非常に重大な歴史的役割を果し、この歴史的な役割は今後ますます私学を通じて発展的に果さなければならないわけであります。官学や公立学校に吸収され得ない厖大な学生が、ここに吸収されておる。そして私学は、官学の封建的な官僚的な支配に対立したものとして、歴史的に生れ、また今日その精神をもつてつておるものであつて、その役割と精神とを徹底させ、発展させるためには、どのようなことがあつても、私学振興ということを、全国民の立場から、また国家的立場から考えなければならないと、私は確信しておるものであります。そういう見地から、私たちは、私学の精神と私学側からの陳情書等における要望基礎にいたしまして、修正案を作成中なのでありますが、遺憾ながら、その修正案を提出し得る機会をわれわれは妨げられておるわけであります。私学が、今日非常に苦しい危機的な状態になつておる、崩壊的な危機にさえ直面しておるという事実を、われわれは何よりも見なければならない。何にその原因があるかということを考えてみなければならぬ。これは言うまでもなく、戦争と戦争に続く日本の財政経済の崩壊的な状態、ここに根本的な私学危機の原因があるのでありまして、ことに私学の立つて行く物質的基礎である授業料を支払う家庭、言いかえれば、国民の非常な窮乏ということが、私学振興にとつて最もがん的な段階にまで来ているということ、ここに私学の危機の根底があると考えられるわけであります。単に私学だけではないのでありまして、国民の苦しい中から、厖大なる血税がとられておりますけれども、この大部分は、今日再軍備等の方向に向けられて、そうして文教費というものが極度にそのために圧迫されておるのであります。六・三制の実現は非常に遠いのでありますし、老朽校舎はそのままになつておりますし、破壊された校舎は復旧ができませんし、おまけに接収された相当の校舎までがまだ接収中で、文部委員会の相当強力な動きにもかかわらず、これが返されないというような状態のもとに今日置かれておるのであります。  ここに私学が崩壊しなければならないほどの危機に直面しておる物質的な面があるのでありますが、同時に、単に物質的な面だけではなしに、今日ほんとうに私学として考えていただかなければならぬことは、従来の私学の精神であつた自由な学問の発展というものが、今日やはり戦中あるいは戦前の方向に逆転されようとしつつある事実であります。これは私たち非常に深刻に考えてみなければならぬ問題であつて、この傾向は阻止しなければならぬ。たとえば、学校からは進歩的な教授が追放されますし、また教職員や学生たちの運動も弾圧されますし、さらにまた今日では、御存じのように、学園の中に警官が侵入して行つたり、また学校の中に行つて特高的な視察が行われたり、さらにまた自由党の一部などから、官立大学の学長までも官選しようというような意見が出ておる。こういう学校行政の側における、あるいは学校教育方面における逆転という傾向、これに対して私学の従来の建学の精神としては、重大な関心を払つていただかなければならぬわけであります。  私たちは、こういう見地から本法案を検討したのでありますけれども、本法案におきましては、われわれは非常に多くの点で、今申し上げた危険性が十分にあるのと同時に、私学振興のための現実的な考慮というものが、非常に稀薄である点を、遺憾に思つたわけであります。この私学振興会は、私学を振興させる――私学の伝統的な精神、しかも個々の学校のそれぞれの特殊性を生かしながら、その精神を発展させて、日本の科学と日本の文化の発展のために協力していただくという見地がらするならば、この振興会の運営は、当然私学が主体となつてなされなければならないわけであります。その点は、私学の側からも今日十分強調されたのでわれわれは意を強うしておりますけれども、この場合に、われわれは、私学理事や評議員において、原則的に中心的主体でなければならないと同時に、私学の内部における経営者だけでなく、教職員をも含めたような、民主的な運営によつて、この私学学校としての全一体的な発展が、われわれとして希  望されておるわけでありますが、この点文部当局考えは全然反対でありますし、私学の最低の要求であるところ  の構成員の二分の一さえも明白でないという点に、根本的な欠陥があるわけでありまして、この点はぜひ修正しなければ、私学の将来のために禍根を残すものと信ずるわけであります。しかもその業務は資金の貸付事業助成教員の研修、福利厚生という重大な内容を持つものでありまして、私学側要望としまして、現実に百億円がいるんだというところに、わずか四億足らずの金しか与えられない。先ほどから希望的な附帯条件ということを述べられておりますけれども、今日のような日本の状況のもとにおいては、希望的な附帯条件というものは、実際上実現しません。まずもつて財政面における教育の危機が来ざるを得ない状態にあるのでありますから、附帯条件というような、単にそういうことによりなされるのではなしに、現実に百億円なら百億円出すというところにまで、われわれは持つて行くべきものである。委員がほんとうに真剣にこれを考えるならば、そこまで真剣に協力して運動しなければならぬ、実現しなければならぬということを確信するものであります。
  73. 竹尾弌

    竹尾委員長 渡部君、結論をお急ぎください。
  74. 渡部義通

    渡部委員 はい、やつております。――また特殊法人に関するもので、学校行政に対する文部大臣の監督すらできぬではないかというふうにお考えでありますけれども、これは現実の問題としては、私はそうは考えないのであつて、むしろ危険はそこにあると考えられる。ちようど銀行が会社の業務内容や、生産品までも検査するように、この資金面における施設等々の面での支配というものが、当然学校行政の方向や、方針にまで関連を持つて来ることは、目に見えておるのでありまして、われわれはこういう点も、文部大臣の干渉や監督というものを排除しなければならぬ。こういう面から排除して行かなければならぬという点で、この点もはつきり修正しなければならぬと考えておるわけであります。  さらにまた、文部大臣が罷免権を持つということさえも記されているという点においては、なおもつて文部大臣の統制というものを強化することになる。さらにまた四十条には罰則があつて、罰金ということもありますけれども、この罰金なんというものは、罰則的なものは振興会の内規によつてきめらるべきものであつて、この法案内容にきめるべきものではありません。  以上の点から考えてみますと、この法案によつて私学が現実に受くるところの物質的な援助というものは、先ほど若林君も白状せざるを得ないように、まさに焼け石に水でありまして、当然われわれは、私学が十分発展し得るだけのものを持たなければならぬということが第一。しかもそれを削つておいて、見込みのないものを見込みのあるように見せかけて、附帯条件をつけるだけでは、承認できないのである。このような形で、先ほどから申しましたようないろいろな面から見て、私学の精神と私学の伝統と私学の特色ある発展というものを押えてしまつてちようど官学に対する国家的な官僚的な統制が最近行われているような線が、私学の中にまで入り得る危険を十分に持つというようなこのままの法案は、われわれはどうしても賛成できないわけであります。われわれはその意味で修正案を用意中でありますので、委員長においてできますならば、一両日これを延期されることを提案していただきたいということ。もしもわれわれの提案がいれられなかつたならば、われわれは私学の精神と本来の発展の立場から、あくまで私学に対する官僚統制を拝しなければならぬという意味で遺憾ながら反対し、同時に、強力に私学の精神と私学側の今日までの要望内容を盛つたものをむしろ新しくつくり出す。そうでなかつたら、一旦できたものはそう簡単にかえられないのでありますから、新しくつくり出すための全努力を委員会としては払わるべきものであると私は確信しておるものであります。
  75. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に小林進君。
  76. 小林進

    小林(進)委員 簡単に討論をしたいと思うのでありますが、先ほども若林委員の言われました三つの条件を含めまして、なきよりはよかろうという意味において賛意を表したいと思うのであります。  ただ最低の希望といたしまして、どうも国費あるいは国民の血税で育て上げられた学生が、今度は役人となり官僚となつて国民の上に君臨する、同じ教育の道を歩みながら、私学の連中が涙の道を歩いている、この差がだんだん大きくなるということを、私は心から憂えているのでありまして、このたびの条文でもまた、わずか三億九千万円の金が、この国民の税金で育て上げられた役人の手にゆだねられて、その役人から私学の連中が哀願懇請してこれをわけてもらうというような形ができ上るのではないかと、はなはだ憂えておるのであります。その意味から、何といつてもこの振興会の役員は、私学の半数をもつてこれを埋める。同時に、今一方の半数もこの官学で育て上げられた官僚でなくて、ほんとうの国民の側から有識者を出して、願わくは私学を自由の立場で育て上げられるという一つ理事会ができ上るということを、実は唯一の希望といたしたいのでありまして、この点は強く要望したい。同時に、その意味においても、どうか官僚の方々は、退職官僚を問わず、この役員の中には入らないという条件を私は再度繰返しておきたい、これが条件であります。  それからいま一つとしましては、先ほども申し上げておりますように、いかにもどうも条文の体裁が悪い。これはわれわれが国会においてこういう不体裁な条文を認めて永久に残すということは、耐えられないのであります。各個の条文に対して、私はどうも賛成できない。願わくはこれを修正していただきたいということを附帯条件として賛意を表したいと思います。
  77. 竹尾弌

    竹尾委員長 次に小林信一君。
  78. 小林信一

    小林(信)委員 私はせつかく出ました私学振興会法が、私学現状を何ら救うことができないということは、十分わかつておるのでございますが、しかし、今後これを橋堡として、政府当局でもできるだけ予算措置をして、私学要望するものを考慮するという意思を文部省からも承つたところで、先ほど若林委員から附帯されましたあの条項にも賛成しながら賛成するものであります。  文部省といたしましては、私学に対して考えておるものは、私立学校法が制定されましたときに、これは憲法上国庫の援助をしても可能であるという点を、一歩前進したかのような感があつたのであります。しかし、その当時の私学に対する国会意見というものを今反省いたしましても、もう今日に至つては、相当私学に対する積極的なな援助がなければならぬ段階でありますのに、かかるほんとうに消極的なものであることは遺憾であります。現に入学試験が行われておるのでありますが、私立学校に入学しようとして、これから振い落される者がどのくらいあるか。その現状をながめただけでも、私立学校の存在というものを、もつと国家的に考慮されなければならぬことがわかるのであります。これは私立学校の収容力だけの問題でありますが、私立学校が持つております歴史的な伝統的な特殊性というものを考えましたときに、もつとこれが深く考慮されなければならない。  さらに最近、これは文部行政のしからしむるところでありましようが、非常に国民の向学心が旺盛になつて来た。ところが、経済的な事情からして、働きつつ勉強しなければならないという学生が多分にあるのでありますが、この働きながら勉強する、これに対して国家は重大な関心を持たなければならない。ところが、これは主として昼間働きまして、夜間勉学するのでありますが、これが官学によつてはたして救われているかどうか、全部が私立学校にゆだねられる現状であります。こういう点からしても、働きながら勉強するという者に対して、もつと積極的に政府がもし考慮するならば、私立学校に対するところの経済的な援助というものは、もつと勇敢になされるべきものである、わずか三億九千万円というような少額をもつて、この人たちのためにも考えておるというようなことを、もし政府が言うならば、これはまことに形式的なもので、国民をごまかそうとしておる。もつと零細な生活の中で勉学しようとする者を十分取上げるとするならば、この私立学校に対する援助というものは多額でなければならない。先ほど私立学校の方だちが言われる百億というものは、そういう点から考えまして、私は当然何らか今後すみやかに措置されなければならぬものと考えるのでございまして、そういう私立学校の最近の使命からしても、もつとこれに対しては政府は積極的であるべきだ。  そこで私は、私立学校の問題を考える場合には、単に以上のような問題だけではなくて、もつと官学と私立との両者を一緒にしたところで、検討されなければならぬ問題がたくさんあると思う。外国の例を見ましても、金のかかる理科系統の問題というものは、すべて官学の方にゆだねられておる。法科とか文科とかいう文科系統のものは、私立学校が担当するというような傾向さえあるのであります。こういうことがもし経済的に許されるならば、おのずから考えられるのでありまして、こういう世界の現状から考えましても、日本の学校のあり方というものをほんとうに考慮していただきたい。(「もうわかつた」「結論を早く言え」と呼ぶ者あり)大分雑音が出て参りましたが、これはもう教育に対して熱心な余りだと思います。  私は、最後に一つだけ希望を申し上げます。この三億九千万円は、わずかでありましても、単に私立学校経営する人たちだけのために支払われるものではなくて、ここに働いておられます、いわゆる私学の第一線で働く教職員の人たちに対しても、十分考慮がなされておると思うのであります。そういう意味からするならば、先ほどいろいろ参考人の方からお話がありました、官学の先生と比べて非常に冷遇されておる点からしまして、評議員のようなこれを運営される組織の中に、単に教授の幹部というふうな者が学校側から選ばれるのではなくて、ほんとうに生活に苦しんでおられる先生方の代表も入れるように考慮さるべきであるということを希望いたしまして、私の賛成意見を終ります。
  79. 竹尾弌

    竹尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  80. 竹尾弌

    竹尾委員長 起立多数。よつて原案の通り可決いたしました。  なお報告書等の提出につきましては、委員長に御一任願います。  この際文部当局より発言を求められております。これを許します。今村政務次官。
  81. 今村忠助

    ○今村政府委員 私立学校振興会法案に関しまして、熱心なる御審議の末、多数をもつて可決くださいましたことを、この際厚くお礼を申し上げます。特に附帯条件、また希望事項等につきましては、十分当局といたしましても今後研究をし、これが実施にあたつては努力いたしたい、こう考えております。
  82. 竹尾弌

    竹尾委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十五分散会