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1952-02-13 第13回国会 衆議院 文部委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十三日(水曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 竹尾  弌君    理事 若林 義孝君 理事 松本 七郎君    理事 小林 信一君       甲木  保君    鹿野 彦吉君       水谷  昇君    長野 長廣君       首藤 新八君    平島 良一君       井出一太郎君    渡部 義通君       坂本 泰良君    浦口 鉄男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         文部政務次官  今村 忠助君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     小林 行雄君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (大学学術局         長) 稻田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君  委員外出席者         議     員 庄司 一郎君         議     員 眞鍋  勝君         專  門  員 石井  勗君        專  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 二月八日  委員首藤新八辞任につき、その補欠として平  島良一君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員根本龍太郎辞任につき、その補欠として  首藤新八君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月九日  寒冷地帶学校屋内運動場建設促進に関する  請願圓谷光衞紹介)(第五五〇号)  同(井出一太郎紹介)(第五五一号)  同(小林運美紹介)(第五五二号)  同(小林進紹介)(第六〇五号)  学校給食継続実施等に関する請願坂本實君紹  介)(第五五三号)  同外四件(三木武夫紹介)(第五五四号)  同外一件(金塚孝紹介)(第五五五号)  同(山本猛夫君外七名紹介)(第五五六号)  同(大石武一紹介)(第五五七号)  公立学校事務職員教育公務員特例法適用の請  願(小林進紹介)(第五九七号)  教育費増額等に関する請願大石ヨシエ君紹  介)(第五九八号)  小学校舎改築費国庫補助に関する請願竹尾  弌君紹介)(第五九九号)  公立学校施設防災及び災害復旧に関する法  律制定請願小林進紹介)(第六〇〇号)  生産学校設置反対に関する請願竹尾弌君紹  介)(第六〇一号)  高等学校定時制夜間部給食実施に関する請願  (竹尾弌君紹介)(第六〇三号)  各都道府県に国立公立夜間大学設置促進に関  する請願竹尾弌君紹介)(第六〇四号)  高等学校定時制分校施設整備費国庫補助に関す  る請願竹尾弌君紹介)(第六二八号)  東洋精神文化振興に関する請願眞鍋勝君外二  名紹介)(第六二九号)  小学校舎建築費国庫補助に関する請願今井耕  君紹介)(第六三〇号)  授業料値上げ反対等に関する請願外二十一件(  風早八十二君紹介)(第六三一号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 同月七日  義務教育及び学校施設整備に関する陳情書  (第三〇七号)  公立学校施設防災並びに災害復旧に関する法  律制定陳情書  (第三〇八号)  積雪寒冷單作地帶義務設置学校屋内運動場建  設促進臨時措置法制定陳情書  (第三〇九号)  産業教育振興に伴う国庫助成に関する陳情書  (第三一〇号) 同月十二日  老朽校舎改築に関する陳情書  (第四〇四号)  寒冷積雪地帯に対する学校屋内運動場建築費の  国庫補助対象地区指定に関する陳情書  (第四〇五号)  積雪寒冷地帶義務設置学校屋内運動場建設促  進臨時措置法制定陳情書  (第四〇六号)  積雪寒冷地の小、中学校屋内運動場に対する  国庫補助並びに起債許可陳情書  (第四〇七号)  公立学校施設防災並びに災害復旧に関する法  律制定に関する陳情書外三件  (第四〇八号)  同(第四〇九号)  同(第四一〇号)  公立学校事務職員の身分に関する陳情書  (第四  一一号)  新潟大学医学部附属病院再建に関する陳情書  (第四一二  号)  学校給食継続に関する陳情書  (第四一三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員長補欠選任  昭和二十七年度文部省関係予算に関する説明聽  取の件  商船大学に関する件  学校教育に関する件  社会教育に関する件     ―――――――――――――
  2. 竹尾弌

    竹尾委員長 ただいまより会議を開きます。  昭和二十七年度文部省関係予算に関する説明聴取の件を議題といたします。前会に引続き、質疑があればこれを許します。
  3. 若林義孝

    若林委員 勤労青年教育について、文部省としての腹構えをひとつ聞いてみたいと思います。御存じの通り中学校教育を終えまして、高等学校に進学いたします者を除いての大半が大体六〇%だと思います。この連中の全国的な統計をながめますと、大体五百万人は高等学校教育を受けずして、そのまま産業界に、社会に出て行くのであります。これについて、勤労青年教育ということに目を注がれまして、文部省として非常に力を入れておる熱意は認めるのでありますが、その予算が五百万円——増額されて五百万円だと思いますが、これではたして文部省が意図しておられます勤労青年教育ができるかどうか、先日もお話があつたのでありますが、生徒一人当りに振り当ててみますと、一円であります。一円当り予算で五百万人の勤労青年教育を施こそうとすることは、どういう方法でおやりになるつもりか、またこれは非常に——私は別にここで文部当局の非難をしようという心組みで申し上げておるのではございませんが、政府としてかくのごとき態度ではならぬという気持が起つておるのであります。この勤労青年教育に関連しまして、通信教育のごとき津々浦浦の山の中まで入る教育費用を、前年度は千二百万円であつたのでありますが、今度は七百万円に満たないものに削減をせられておるのであります。さる十二月二十七日の文部委員会におきまして、社会教育国民教育というものと、国内の防衛費との兼ね合いにつきまして、私からも松本委員からも質疑を試み、文部大臣を鞭達する言葉があつたのでありますが、これも約半減せられておるわけであります。この点ひとつ文部当局——これではできぬというような気持になるのではないかと思いますが、一応所見を聞いてみたいと思います。
  4. 今村忠助

    今村政府委員 勤労青年学級並びに通信教育等補助につきましては、文部省といたしましても、極力増額することに努力いたしたのでありまして、勤労青年学級は、昨年から見れば増額でき得たのでありますが、通信教育の方は減じております。これらのことは若林委員の申される通り、いわゆる中学を終えて高等学校に進むことのできない勤労青年の職業あるいは思想、その他いろいろの問題にも関連することでありまして、文化国日本としては、努めてこれらのものが教育を受けて正しい生活のできるようなことを考えて参らなければならぬと考えております。まことに仰せの通りでありまして、将来できるだけ予算の上にも努力いたし、また教育内容にもいろいろとくふう努力いたして参らなければならぬものがあると考えております。
  5. 若林義孝

    若林委員 局長から、はたしてこういう予算でできるかどうか、ひとつ伺つておきたい。
  6. 寺中作雄

    寺中政府委員 ただいま政務次官からお話がありましたように、私どももこの方面には極力何とかして増額をはかりたいと、年々努力しておるわけであります。はたしてこれでできるかというお話でありますが、現在五百万円の青年学級補助の仕方は、大体五百学級というものを対象にしまして、モデル的な青年学級に対して奨励的補助をするつもりでおるわけであります。現在青年学級として動いておりますのは、九千学級ぐらいございまして、全体には渡らないわけでございますが、しかし一方こういう施設は、やはり直接に県、あるいは市町村が力を入れるべきであるという見方も、ある程度あるのでありまして、そういう意味から、県におきましては県の教育委員会におきまして、相当額、おそらく国費の数倍にわたる青年学級のための補助金を出しておるはずであります。また通信教育に関しましても、今年は下つたのでありますが、やはりこれも主体は府県が中心でその運営費を出すべきであつて、国から出しますのは、いわば奨励的意味における補助金である、そういう意味で昨年度二万七千人の通信学生対象にしておつたのを、来年度は三万七千人ぐらいにふえる、その差の一万人に対する通信教育補助という意味で、昨年の予算の半分になつたわけでございます。要するに、その根幹となる通常的経費の部分は、県においてやるという形になつて、この補助金が減額されたわけであります。できるだけ地方を中心にこういうふうな施設が運営されるべきであるというような意見もあるわけでございまして、われわれは青年活動国家的異議からいえば、必ずしもその意見に承服しておるわけではありませんが、県、国両方で相互に携帯をしまして、ますますこの方面奨励を加えて行きたいというふうに考えておる次第であります。
  7. 若林義孝

    若林委員 大臣も見えましたから、この問題は一応ここで打切りますが、むろん六・三も大学教育も必要だと思うのでありますが、実際この世の中を背負つて立つものは、この高等学校へも行かずに、通信教育あるいは勤労青年学級、特に定時制高等学校関係しておる青年学徒だと考えまして、——おみこしをかつぐ場合、采配を振るものも、それは指導的に養成に力を入れる必要があると思うのですが、実際それを動かす、かつぐものは、この勤労青年学徒であるという気持をお持ちくださいまして、大臣中心に、われわれも委員といたしまして及ばずながら、この方面に力を盡したいと思います。なお今村政務次官は、特に今までの持論といたされまして、この点に重点を置かれると思うのであります。われわれも極力カを合せることにやぶさかでないことを申し上げまして、一応打切りたいと思います。
  8. 小林信一

    小林(信)委員 今の若林委員の質問に関連してお伺いしたいのですが、その都度大臣からも社会教育の面について、いろいろ考慮されておる点をお聞きしておるのですが、大臣のいろいろの御苦労にもかかわらず、社会の実情というものは、ますます頽廃の一途をたどつておるかのような感がしてならないのです。この際本年度の予算を通しまして、社会教育に対する、文部省としての最も重点的に考えておられる点を、実はお聞きしたいのです。結局さしあたつてはこれに当ります機関の問題、どういう機関を通して、そういう社会教育文部省としては重視して行くか。その機関を利用するとするならば、これに対する財政的な裏づけは、どういうふうにして行くかというようなことをお聞きしたいのです。最も具体的な問題としては、最近二、三の新聞に見えたのですが、若い人たちの性的な面の紊乱しておる点なんです。先日青森県の、これも新聞に出ておつたのですが、十六才から十八才までの女の人で、優生保護法適用を受けて堕胎した者が、四百名あつた。その中で現在高等学校に通つておる者が、その二割五分が該当しておる。これは表面に現われた問題であるけれども、実際をもし想像するならば、そういう性的な行為というものが、相当に多いのじやないか。こういう点から見て、これは青少年犯罪行為の一面のものであつて、やはりこういうところから青少年犯罪というものが、ますますふえて行くのだ。これはただ青少年だけの問題ではなくて、青少年がそういうふうな行為に走るということは、これは社会全般がそういう傾向になつておるからであつて、結局そういうふうなものに影響された青年諸君の行く道というものは、事実の問題としては、そういうところに現われて来ているので、これは單に青少年だけの問題でなく、一般社会全体の問題でもあるわけなんです。こういう一つの例を考えてみても、社会教育という問題は、この際文部省として相当力を入れてもらわなければならないのですが、これに対しまして。最も文部省として考えておる社会教育機関は何であるか、これに対して何か措置されておるかというようなことを、直接大臣から承りたい。
  9. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいま申されたようなことは、現われておるところは、若い青少年において現われていますけれども、しかし、これはやはり社会全般を背景としているものだと思うのです。戦争の後には、どこの社会でもこういうような社会全体の頽廃といいますか、そういうことが起ることは、もう戦争にはつきものです、社会全体にこれが来ている。社会のいろいろな頽廃した現象を、ただそこばかりにとらえて、自分たちはその圏外におつて、向うにだけ頽廃社会があるというようなものでなく、もう社会全体にそういう一つの戦後の気分があると私は思うのです。だからこういう問題も、ただこれは青少年教育というようなことだけとらえたのでは、とうてい解決できない、根本的に言うなら、社会全体が健康にならなければならないのですが、しかしさしあたつて局部的なことを言うならば、文部省といたしては、やはり青年学級とか、また公民館とか、また一般の普通の教育ですね、そういうことに力を入れて行くということより道はないと思いますが、ただ文部省が従来社会教育の面において、非常に力を注ぐことが足らなかつたということは、私どもほんとうにこれは済まなかつたことだと思つております。ことに義務教育を終えて先に進まない五百万以上の人たちに対して、実にわずかなこの青年学級費用とか、公民館費用しかやらなかつたということは、これは私どもの非常に反省せねばならない点だと私は考えて、そのことをこの間も事務当局に申したわけでございます。そういう点は、私どもが非常に至らないところがある。けれども、これがたとえば今あげられた子供の性的ないろいろな間違いというようなことを、ただ性的な現象としてとらえて、そしてここに性教育をやるのだとか、そういうことではこれは足らないのです。社会全般に、実に不潔な出版物が氾濫しているということ、またどういう方面でも賭博的なこと——正しく順当にやるというような精神を鼓舞することがなくて、何でも僥倖を頼むというような、そういう不健公な空気が社会に満ちているという点も、私たち考えて行かなければならないと思つております。しかし部分的に言うならば、私はやはり文部省社会教育という面で、ことに青年学級とか公民館とか、また一般普通教育ですね、そういうことを考えに置いて、たとえば教育でも、ただ性教育だとか、そんなことじやなくして、もつとほんとうに規律を守り、意志を鍛練して、そうして、いろいろな誘惑に打ちかつような人間をつくるということが順序だと思うのです。性教育とかいうことを、重要でないというのじやないのですけれども、そういう直接的なことだけでは、この問題は解決できないというのが私の考えでございます。
  10. 小林信一

    小林(信)委員 これにつきまして、その公民館の問題、あるいは青年学級の問題、相当文部省としてのお考えを聞きたいのです。出版物、それから映画、あるいは劇、こういうふうなものが、單に性的な問題ばかりでなくて、私は相当青年諸君犯罪の動機になつておると思うのです。こういうふうなものに対して、社会一般のそういう面の是正をしなければならないと、こういうように大臣もおつしやつて、私も同感なんですが、それにつきましても、昨年暮れの委員会のときに治安の問題が出たのですが、大臣は、治安があつてしかる後に教育だと、こういうふうなお考えを強調せられたのですが、私はそういう点からすれば、やはり治安という問題と教育という問題は並行すべきもので、治安があつてしかる後に教育であるというふうなことを、文部大臣がお考えになつてはならないと私は思うのです。そういう点につきまして、大臣としての御意見を、この際もう一度お聞きしたいのです。
  11. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は国に治安がなければ、やはり教育もできないから、治安ということを無視するわけには行かない。もちろん、教育重大性ということは痛感していますが、それはもちろん相関的なものです。だから、どれだけの割合でこれをやるかという点に問題があるのであつて治安はどうでもよいというわけには行かぬということを申したのであります。
  12. 小林信一

    小林(信)委員 なお、この際文部大臣からお聞きしたいのは、教育委員会法の問題です。これは相当検討すべきところがたくさんあると思いますが、さしあたつての問題としましては、今年十月から町村教育委員会を置くという現行法律の問題ですが、これに対しまして、最近新聞等で見ますと、委員会法改正は、何か一部を暫定的にやつて、本格的なこれに対する検討は事後において行うのだというようなことを聞いておるのです。その一つの例としまして、教育委員に今年の十月をもつて任期の切れるのが半分あるわけですが、これを一年延期するというふうなことが流布されております。これに対して、文部省としてはどういうお考えを持つておられるか。
  13. 天野貞祐

    天野国務大臣 教育委員についても、またその設置地区につきましても、文部省ではまだはつきりした結論に到達できませんのです。従つてそういうことを外に発表したこともございません。
  14. 小林信一

    小林(信)委員 現在そういう段階とすれば、現行法そのままで行かれる予定で、何ら今国会には、文部省としてはこの法律改正等については出す意向はないということですか。
  15. 天野貞祐

    天野国務大臣 この国会中には、私は結論を得たいと思つております。
  16. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、やはり何か出すというふうに解釈してよろしゆうございますか。
  17. 天野貞祐

    天野国務大臣 できればぜひそこまで行きたいと考えております。
  18. 小林信一

    小林(信)委員 これと関連しまして、職員団体の問題が残つておるわけなんです。町村單位になるという関係から、職員団体の問題も一応五月で現行のものは改められるわけです。これに対する文部省としての御見解を承りたい。
  19. 天野貞祐

    天野国務大臣 この点も今事務当局に研究をさせておつて、非常に遺憾ですけれどもまだ結論に到達しておりませんです。
  20. 小林信一

    小林(信)委員 文部省として、こういう重大な問題がまだ確定されておらぬということは、非常に遺憾だと思います。  なお給食の問題について、お聞きしたいのですが、今度の予算を見ますと、御努力によりまして形は継続されることになつたのですが、従来文部省として教育的に考えておる給食問題というものは、大分影が薄らぐような形になるのです。現在実施されておりまして、父兄あるいは教職員の方たち考えられておる給食の問題は、今度政府考えられたものとは違つたもので、もつと積極的にこれが実施されるように要望しておるのです。二十五億という財政的な裏づけは一応出ておりますが、何か給食に対する一つ法律的な措置文部省としてやつてもらいたい。こういうふうな意向もあるし、文部委員会におきましても、こういう事情下においては、財源はあらゆるところから考えることがいい。しかしやはり文教政策の根本的な問題として、当該の責任者である文部省は、これを文部行政として給食問題に一つの筋金を入れて行かなければいかぬ。それはどんな形でもいいからやつてほしいという委員会の要望もあつたはずだし、文部省としてもこれを強調されておつたのですが、これに対しまして、文部省としてはどういうお考えを持つておられましようか。
  21. 天野貞祐

    天野国務大臣 文部省として強調をしておつたことは、この給食ということの教育的な意義から、これを行うということを述べておつたのです。しかしさまざまの事情から、農林省所管でもつてこれをやつてもらうということになつたのですが、実質的にはかわりがないのですから、所管というようなことに拘泥せず、これが実施できるようにした方がよいという考えでございます。
  22. 小林信一

    小林(信)委員 あの当時のお考えというものは、農林省所管という形になれば、ただ單に食生活改善というようなことになりまして、教育方面考えておるものとは、何かそこに違つた形になるのではないか、やはり教育平等感というようなものを、この給食によつて持つことができるという見解にすべてが達しておつたと思うのです。はたしてそういう点がこれだけでもつて文部省は満足をし得られるかどうか。事実においては大臣のおつしやる通り、これだけの予算があれば、命脈は保つて行くということができると思うのですが、しかし教育的な見地に立つたものは、だんだん薄らいで行くのじやないか。こういう点で、大臣のお考えをお聞きしたいのです。
  23. 天野貞祐

    天野国務大臣 小林委員のおつしやることは、まことにごもつともな点があると私も思つております。けれども食生活といつてやろうと、何でやろうと、やるのは学校でやるのですから、学校の先生の考え方によつて食生活を通じて私ども教育的にねらう点を到達することができるという考えでございます。
  24. 小林信一

    小林(信)委員 まことにえこじかもしれませんが、それほど教育の実際問題として必要であり、しなければならぬことであるという観点に立ちながら、その予算がどこのものでもいいというようなことは、大臣として考えてはならないことだと思うのです。やはりそれが教育的に実際使われるというならば、当然文部省所管として、文教予算として計上さるべきが至当だと考えるのです。それは單なる名目の問題だといえば、それまでですが、しかし、かりにも文化国家として大きな旗じるしを掲げておる現在の日本として、こういうものが他の省に管轄されて、そうして実質的に教育目的を達しておるんだというようなことでもつて、私は満足すべきものじやないと思うのですが、大臣のお考えいかがですか。
  25. 天野貞祐

    天野国務大臣 もちろんこのことは教育上も非常に重要なことですけれども、しかし食生活改善ということも、日本の将来にとつては非常に重大な問題だと思うのです。ただ、これは教育にのみ重点があるのではなくして、食生活の改良ということにも重点はあると思うのです。だから、そういう他に何にも理由がないのに、かつてに他の省に移すというのではなくて、他にも十分な理由があつて、両者協調してやれば目的が到達できるということであるのですから、そういうことにおいてはややもすればセクシヨナリズムに陥りがちなこの社会において、私は虚心担懷に向うに讓つて、そうして実際の効果を上げればよいんだという考えでございます。
  26. 竹尾弌

  27. 浦口鉄男

    浦口委員 国立近代美術館についての質疑をいたしたいと思います。実はこの前の七日の委員会におきまして、寺中社会教育局長から、京橋の日活本館が買収の話になるまでの経過をお伺いしたのですが、その中で局長は、あの日活本館近代美術館として必ずしも理想的なものではない、予算その他の観点から、将来はもつと理想的なものをつくるという希望は捨てない。そうして早くその希望が達成されるという前提において、とりあえずあれを買收した。そうしてこのことについては天野文部大臣も非常に喜んで賛成をされた。こういうことを答弁されておりますが、その点まず大臣にお尋ねをしておきます。
  28. 天野貞祐

    天野国務大臣 これは初め出発が、あるものを買うということだつたのです。けれども、適当なものがないから、それじや建てようということになつたところが建てるというと、そこが見解のわかれるところでもございますけれども美術館をつくるというようなことは、外国に対する影響などにも非常に悪い点がある。賠償も拂えない国が、美術館をつくるというようなことについては、またいろいろ批判を受ける点もあるから、むしろ建てるよりも、あるものを買つた方がよい、こういうようなことになつて来たのであります。また建てるとしても、なかなか適当なところを得ることが困難だ、こういうような事情から、一番初めの予算の成立したときの趣意にもどつて、そうして買收ということになつたわけであります。だから買收しないというと、これは容易に成り立たないものが、とにかくそこへひとつ買收することができたから、私もけつこうだと思つたわけであります。
  29. 浦口鉄男

    浦口委員 大臣の答弁に口を返すようですが、賠償その他対外的に非常に問題だということは、この間局長も言われたのですが、しかし実際問題としては、不要不急のビルデイングが数十建つている、あるいはキヤバレーとかトルコぶろがいつも問題になるわけでありますが、ああしたものが建つている中で、これくらい国際的な、文化国家としての日本の将来に非常に意義ある建物が建つということは、私はむしろ誇りであり、決して対外的に遠慮すべきではない、こう考えるのであります。これは大臣もおそらくそうしたことでは御賛成いただけると思うのですが、現実しかたがないというふうなことで、御答弁があつたように思うわけであります。そこで私は将来の理想的な近代美術館を建築するについての大臣の現在の御構想というふうなものがおありかどうか。ということは、何と申しましても、ここしばらくの間いろいろ防衛費あるいは治安維持費その他との関係において、こうした文化的な費用が非常にとりにくいということを、われわれは考えるのでありますが、おそらく現在暫定的にあの日活本館をこれに充てるならば、将来私はなかなかできないといつたふうなことも考えるのであります。これも見解の相違になるかもしれませんが、近代美術館という性質からいつて、暫定的につくつたことが、むしろ私は将来にそれで終ることになるのではないかというふうなことを考えるのでありますが、その点いかがでございますか。
  30. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は御意見としては傾聽すべきものがあると思つて、御意見としてはごもつともだと思いますが、しかし実際問題としては、やはり今ここで買收できるものが出て来たのですから、それを買收するというのが、実際の措置としてはよいのではないかと考えて、委員会の決定に私が賛成をしたわけでございます。
  31. 浦口鉄男

    浦口委員 実は私七日の委員会では、この買收ついて、いろいろ聞くところによつて質疑をしたのでありますが、そうしたことは文部当局では絶対ない、私が二、三指摘しましたような、これの買收についてのいろいろなスキヤンダルと申しますか、そういう疑惑を抱かれることは絶対ないと、文部当局は現在答弁をされておりますので、私は願わくはそうでありたいと思つております。ただ一つ、聞くところによりますと、これは社会教育局長が個人的に、大臣あるいは日高事務次官の全然知らない間に買收の話ができた、こういうふうに聞いておりますが、その点いかがですか。
  32. 天野貞祐

    天野国務大臣 これはあそこに委員会ができておりまして、その委員会の方で交渉をしたので、社会局長が直接交渉したわけではございません。
  33. 浦口鉄男

    浦口委員 そうすると、委員会の決定に基いて買收の可否を大臣はお聞きになつて、それによつて大臣が最後は決定された、こういうふうに承知してよろしゆうございますか。
  34. 天野貞祐

    天野国務大臣 その通りでございます。
  35. 浦口鉄男

    浦口委員 それではこの際はそれ以上追求しないことにしておきます。そこでこの間の寺中局長の答弁に関連してでありますが、私なぜこういう疑問を持つたかと申しますと、近代美術館の本質に対して、私としてこれを買收することは非常に不満であるということと、それから今年組んであります二十六年度の一億の予算が、もう一月余りで無効になるというふうな段階において、突如として買收されたというふうなことが、一つの疑惑を與えたのであろう、こういうことを考えたわけであります。そこで局長にお聞きしたいのは、買收が、七日の委員会では一両日中に本格的になるというお話でしたが、その経過をちよつとお聞きしておきます。
  36. 寺中作雄

    寺中政府委員 近代美術館の買收の契約はまだ取結んでおりません。これの手続は、大蔵大臣に協議をいたしまして、大蔵大臣の了解を得て契約を結ぶことになつておりますので、まだ締結の運びには至つておりません。
  37. 浦口鉄男

    浦口委員 いつごろ決定のお見込みですか。
  38. 寺中作雄

    寺中政府委員 いつごろという日にちは、ちよつと今はつきりいたしませんが、文部省としましては態度を決定いたしまして、大蔵大臣に協議の書類を出すばかりになつておる段階でございますので、大蔵省においてその協議に了解をすぐつけてくれれば、ただちに締結できる運びになつております。
  39. 浦口鉄男

    浦口委員 念を押すようですが、きまるものと考えてよろしゆうございますか。
  40. 寺中作雄

    寺中政府委員 きまるものと、私どもは確信しております。
  41. 浦口鉄男

    浦口委員 そうなりますと、一億の予算がありますが、大体私の聞くところでは八千三百万円で買收される予定と聞いております。それでその運営費について、この間御質問申し上げたときに、実は局長から非常に重大な御答弁がありまして、それが各委員の非常な問題になつているようでありますので、もう一度この際確かめておきたいと思うのであります。それは買收が確定するという前提に立つての質問になるわけでありますが、局長はこの間、二十六年度一億円がとつてあるが、二十七年度の予算編成期においては、あるいは適当な建物が買收不可能かもしれない。それを見越して、不可能であるならばこの一億円の予算が無効になるので、二十七年度にも一億円——私は言葉はちよつと忘れたのでありますが、多分予備費というふうな表現でなかつたかと思いますが、そうしたことで一億円近代美術館買收費として予算に計上してある、こういうお話があつたのであります。私に言わせれば、幸か不幸か八千三百万円で予定の建物が買收されたわけでありますが、そうなりますと、二十七年度に計上されております一億円は一体どういうふうになりますか。
  42. 寺中作雄

    寺中政府委員 今年二十六年度の一億でもつて買收するという予定で入れたのでありますから、できるだけこの今年の一億を使うというのが筋でありますので、今そういう運びになつておるわけでありますが、来年度、もし今年の金が使われなかつた場合に、近代美術館を建てるためにという意味で一億入つておるのであります。その使い方でありますが、建物ができましても、これに補修費がいる、模様がえのいろいろな施設費を必要とするのでありますし、その関係は、この八千三百万円の残りの金である程度まかないますが、一方近代美術館運営費として、職員の経費あるいはその他の設備費、あるいは絵画の買入れ費等相当のものが必要になつて来ると思います。で来年度一億のうちから、そういうものを出してもらう約束を今しておるところであります。
  43. 浦口鉄男

    浦口委員 どうもちよつと苦しい答弁のように聞えるのですが、この一億は、買えない場合、明年度に買收費として組んだ、こういうふうにお話になつておるのです。それでは今年買收が大体できそうだとすると、それを運営費にお使いになる、それが私納得行かないのです。予算の面でどういうふうな項目ではつきり出ておるのですか、それをちよつとお知らせ願いたい。
  44. 寺中作雄

    寺中政府委員 予算の面では、近代美術館設置費ということになつておりまして、その中の科目は、ある程度融通がつくようになつておるのであります。これを設備費に入れるか、あるいは職員費にある程度使うか、そういうことはその具体的な近代美術館ができた場合のいろいろな條件によりまして、大蔵省と打合せた上で使うことになつております。
  45. 浦口鉄男

    浦口委員 議論になりますから、その程度にしておきます。そこでいろいろ問題になるのは、この間からの神戸商船大学の明年度からの開校にからんで来るわけでありますが、今までの御説明では、近代美術館建設費としての一億の使い道がどうもまだ納得できないのですが、そうした経費をかりに神戸商船大学というふうな非常にせつぱ詰まつた問題に対してこれを流用することはできないのですか。私は神戸商船大学の現在までに至つた経過については、いろいろ考えも持つておりますが、——私、小委員の一人で来たわけでありますし、結論として一日も早く実現すべきであると考えておりますので、それを申し上げるわけでありますが、その点局長の御意見をちよつとお聞きしておきたいと思います。
  46. 寺中作雄

    寺中政府委員 一億は、近代美術館設置費ということで予算的にきめられておるわけでございますので、これをそれ以外の全然それと関係のないことに使うことは、予算目的からいいまして、できないことだと思うのであります。
  47. 浦口鉄男

    浦口委員 それではその問題はそれで打切つておきます。  一つ大臣にお尋ねしておきたいと思います。老朽校舎の再建築の問題でありますが、これはこの委員会でも何回も取上げられた問題であります。去る一月二十九日の参議院の本会議で、池田大蔵大臣が、高良議員に対して答弁をしておられるのでありますが、それによりますと「老朽校舎の再建築につきましては、私は老朽校舎の再建築費は国の予算で見ないという考えで進んで行きたいと思います。ただ地方公共団体におきまして、そういう場合におきましては、地方債の引受等によりまして助成して行きたい。こういう考えでおります。」こう答弁されておりますが、これはおそらく文部省との話合いとも考えられるのであります。これは大蔵大臣に聞くべきかとも思いますが、大蔵省の決定的なお考えと思われるのです。文部大臣はこれに対してどういうふうにお考えになつておられるか、なお今後どういうふうに大蔵省と話合いを進められるお考えであるか、その点を承つておきたいと思います。
  48. 天野貞祐

    天野国務大臣 これは、やはり大蔵大臣がそういうお考えでございますから、起債によつてやるよりしかたがないので、起債のわくを広げるように今努めております。
  49. 浦口鉄男

    浦口委員 それからやはりこのときの答弁において、大蔵大臣は、六・三制の問題は、二十四年度に大蔵省が査定をしました〇・七坪の基準で大体二十七年度で完成する。ただその後兒童数などが増加したために幾分の未完成の分が出て来た、それは二十八年度において考える、という御答弁をしているのであります。これは兒童数の増加だけによつて違算が来たのか、あるいは全体の予算的ずれがここに来たのか、この点文部省としてはどういうふうにお考えになりますか。
  50. 天野貞祐

    天野国務大臣 それはもつぱら兒童数の増加から来ております。しかし他の要素も加わつております。そうして、大体二十三億くらいが足りないのですが、これは明年度において予算に計上してもらいたいと考えております。
  51. 浦口鉄男

    浦口委員 その額は二十三億と承知してよろしゆうございますか。
  52. 天野貞祐

    天野国務大臣 ええ。
  53. 若林義孝

    若林委員 前回の委員会で、東洋文化の振興に関する一環として、漢文を高等学校の科目の中へ入れるという関連事項の質問が行われまして、大臣の御所見も伺つたのでありますが、今日これに関心を持つております各委員が集まつておりますので、ひとつ掘り下げて御所見を伺いたいと考えるのであります。おそらく、この四月を中心といたしまして、日本は独立国家として世界の連合諸国に参加をして行くのでありまして、まことに御同慶にたえないのでありますが、終戰以来——というよりも、在来日本教育というものは、いろいろな面においてあやまちを犯しておりました。その結果が終戦というような今回の日本の破滅的な事柄に出くわしたのでありますが、そこでわれわれは、真に世界の独立国家として、堂々と世界平和に寄與する日本国として、しかも文化国、産業国として、あらゆる面において日本の持つております長所を伸ばして、世界平和に寄與すべき立場にあるわけでありますので、ここでわれわれは謙虚な気持をもつて反省をし、また将来への進路をきめて行くべきだと思うのであります。いたずらに復古主義に陷つてもなりませんし、またいたずらに急進的に無謀な進路にわれわれの目を注ぐべきでもないと思うのでありまして、ここにきわめて謙虚な気持から、われわれがいかなる道を選べば、真に世界の各国に歓迎をせられ、喜ばれる民族として立ち上れるかということを、真に研究をしてみなければならぬ問題だと思うのであります。こういう精神からいたしまして、この東洋文化というものの中に日本文化というものを樹立して、また、古来の日本文化に東洋文化を十分咀嚼して取入れて行くべきでありまして、あくまでも日本人は日本文化の中に生きて世界文化に寄與すべきものだ、ここに初めて欧米文化をも取入れられる資格が生れて来るものと考えるのであります。この日本精神と申しますか、日本文化と申しますか、このことと東洋文化との関連について、東洋文化というものは無視すべきものであつてはならぬ、東洋全体の文化をも理解をして行かなければならぬものだという決意を私たちは持つているのでありますが、東洋精神文化というものの重要性に対する大臣の御所見を伺つてみたいと思います。
  54. 天野貞祐

    天野国務大臣 私も、いたずらに復古的ではない、またむやみに急進的でもない。日本は世界の中の日本である。いつも世界ということを離れないで日本というものを考えて行くという全体のお考えには私も同感でございます。それについては東洋的なものも十分勉強して行くべきだと私も考えております。
  55. 若林義孝

    若林委員 その点を伺つて、またこの前の庄司議員、佐藤議員から特別発言に対しての大臣の所見を伺つて、意を強うしたのでありますが、この意味において現在の青年学徒教育面を考えましたときに、われわれの目から見ますと、東洋古典に対する理解力というものが、きわめて低下いたしておるということを気づくのであります。また盲目であるという気持をもするのでございます。また人間を形成する上におきましても——私は決してアメリカ文化をけなすわけではありませんが、欧米文化というものに目を注ぐのを急進的な、真に人間らしい行き方だというような考えを持つ傾向があるわけであります。人間の形成上、特にどこの国の人間かというように、われわれ自身ふしぎな驚きの眼を持つて見るようなものも、青年の中にふえて来ております。それから先ほど小林委員からの発言もありましたように、あらゆる面において、また大臣も言われましたように、道義の頽廃ということについて、相当われわれとしても目をおおわなければならぬような気持で見る現象が起つておるということ、あるいは日本在来の文化がこのままで参りますと、絶滅に瀕するのではないか。現代の言葉は人と人と意思を通ずるくらいのことはできるかもしれませんけれども、われわれの先祖代々からのほんとうにたつとい文化として、悪い面もあるかもしれませんけれども、このよい日本文化というものを忘れかけておつて、このまま行くならば、絶滅に瀕するのではないかというような懸念をも持つのでございます。いわゆる東洋文化の古典に関するところの理解力を欠いておつて、人間をつくり上げる上において、東洋精神というものを忘れがちな人間形成がせられつつあるのではないか。道義の頽廃が、これによつて極に達して来ておるのではないか。日本在来の文化というものが失われるのではないかという点につきまして、大臣はどういうようにお考えになつておりますか伺いたいと思います。
  56. 天野貞祐

    天野国務大臣 要するに極端がいけない、東洋文化がよいからといつて、東洋文化に拘泥し、また世界的でなければいかぬからといつて日本人をコスモポリタンにしてしまうというような極端な考えがいけないので、ほんとうに東洋文化を理解するためには、ほんとう日本的教養を持つていなければならぬということは、事実がこれを証明しておると思うのです。ほんとうに西洋文化を日本で理解して働いた人は、みなすぐれた日本的な教養を持つておる人です。両極端はいけない、中正な立場に立つてやることが必要である。そういう立場からいつて、私の私見を申せば、今のところはやはり東洋的なものをもう少しやる方がよいのではないかという考え方でございます。
  57. 若林義孝

    若林委員 大体大臣も私の気持も同感であるということに意を強うするのでありますが、そういう意味において、いわゆる西洋文化を取入れ、真に世界のために役立つものとするためには、やはり日本人なら東洋文化というものを大いに理解しなければならぬという御見解があることには間違いないのでありますが、そういう意味において特に中学校、あるいは高等学校の教科課程の実情は、今大臣のお考えになつております気持が盛られておるかどうか、その実情についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  58. 天野貞祐

    天野国務大臣 私の私見によりますと、やはりそういう点がまだ不十分なところもありはしないか。任意に学ぶことはできても、必修的になつていないとか、そういう点もまだ不十分なところもあろうかと思います。たまたまこのたび中央教育審議会ができることでございますから、それに付議して新しい教科課程、新しい学習要領というものをつくりたいと考えております。
  59. 若林義孝

    若林委員 現在の高等学校などの教科書に、どれほど東洋文化というものに関してのものが含まれておるかということは、大臣直接御存じでいらつしやいましようか。
  60. 天野貞祐

    天野国務大臣 詳しくは知つておりません。
  61. 若林義孝

    若林委員 われわれはしろうと考えだと言われるかもしれませんが、現在使われております高等学校の国語の教科書をながめてみましても、劇や映画、あるいは新聞、雑誌、電話、放送等、日常生活に必要な言語能力というものを養うのが主要なる目標とせられておりまして、東洋や日本の古典は、少いというよりも、むしろ何もないというように思われるのでありますが、大臣はどういうようにお考えになつておりますか。
  62. 天野貞祐

    天野国務大臣 これは随意科になつてつて、教科書だけでは判定できません。随意科はどういうことをやつてもいいのですから、教科書だけからは言えないのですが、しかし私もそういう点が稀薄だと思つております。
  63. 若林義孝

    若林委員 随意にやれば非常によい、ゆとりはあるのだというように解釈されるのでありますが、現在の段階でながめますと、東洋文化軽視という面の方が強く出ておるのであります。これをひとつこの機会に、しかも陛下のお言葉を引用するのは恐れ多いのでありますけれども、別にこれは陛下の言葉だからという気持はないのでありまして、卑屈な隸属的な気持を持つた独立国家の日本を、世界は歓迎しておりません。真に東洋文化に根ざした日本国民としての日本を、連合国は歓迎をするであろうと考えるのであります。その点社会科の課目を一般にながめましても、日本史、世界史、人文地理、時事問題等の五教科にわかれておるのでありまして、ごく一部の選択した者のみが、東洋文化というものの片鱗に触れるだけであります。私はここに世界に喜ばれる日本というもののためには、どうしても東洋文化というものを各個人が理解するように、積極的に文部省として取入れて行つていただきたいと思うのでありますが、この取入れて行こうとするお気持があるかないか、これをひとつ伺いたいと思います。
  64. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいま申して参りましたように、私はどこまでも中正の道を進みたいという考えで、そういう意味において取入れたいと思つております。
  65. 若林義孝

    若林委員 これを取入れる意味におきまして、どういう措置を講じようとなさるか。審議会というのが、どういう人たちで何しておられるかわかりませんが、その気持を強くその審議会に要望せられるお気持があるかないか、私はそのお気持の程度によりまして、当文部委員会も、一審議会にそういうことをまかせておくべきでない、国会を通じて、その意思を反映をした審議会の結論が出るようにと希望するものでありますが、これについてその審議会にまかせ切りにするのか、あるいは文部大臣としてのただいまの御意向を強く——私、むろん賛成なんですよ。極端に東洋文化だけに依存するということも、これは私自身もとりません。また欧米文化だけに向わすという行き方をもとらない、この中庸を行かなければならぬのでありますから、その審議会というものが、どういう構成を持つておる委員会でありますかを、私たちは不敏にして知らないので、伺つておきたいと思います。
  66. 天野貞祐

    天野国務大臣 まだ審議会は成立しておりませんから、今ここで申し上げる段階になつておりませんが、その審議会の下には専門委員会もつくつて、十分検討して、私は中正な道を行きたい。私の私見によれば、私はやはりもつと東洋的なものを学ぶことが必要だと考えるのでございます。
  67. 若林義孝

    若林委員 時間もありませんし、また他の方からの御発言もあると思うのでありますが、現在の国語必修時間は三時間であつて、その中で漢文がやられるようなことになつておるように思うのであります。少くとも国語の時間を五時間として、そのうちの二時間を漢文に振り当てるというような請願が出ておるのでありますが、われわれもこれを妥当なものだと考えておるのであります。またこの請願は、たびたび本委員会になされておりまして、前々回の請願に対しては、その時期でないという御解釈で、文部省から国会へ帰つて来ておるのでありますが、第二回目の請願採択に対しては、何らの返答なしに終つておるわけでありまして、いわば默殺を文部省がせられておるのでありますが、少くとも今日の段階におきましては、輿論というものから考えましても、強くこの東洋文化に関連する国語を必修にするという機運が動いて来ているのでありまして、この点、五時間に増しまして、そのうちの二時間を漢文の必修とするというような請願、要望に対して大臣はいかなるお考えを持つておられますかを伺いたい。
  68. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は、端的に申せば、自分自身は漢文の知識をもつと日本人が持つことがよいと思う。漢文を中国のことのように考えるのは、間違つておると思います。われわれの習つておる漢文というのは、日本の古典なんですから、そういうものは十分習うことが必要なんだという自分は考えでございますが、そういう何時間でどうするとかそういうことを私がここではつきりと申し上げることは差控えたいと思います。ただ趣意は十分御了承いただけることと思つております。
  69. 若林義孝

    若林委員 これは誤解がないように、くれぐれも繰返しておきたいと思うのでありますが、私がこの発言をいたしますことは、決して敢行的な、東洋だけに片寄る気持ではないのでありまして、真に世界から喜ばれる日本民族という立場から、ほんとうに東西文化を融合するところの民族は日本民族だと思つておるのです。このごろしきりにアメリカあたりへおいでになりまして帰られた方があるのでありますが、そのアメリカの態度をほめる一面として、東洋文化を取入れるのに非常に力を盡しておることを述べておるのであります。おそらくわれわれは欧米文化というものを取入れるのにも、足を運んで向うへ行くのでありますから、この点利点を持つておるのであります。アメリカ自身が今しきりに研究をしようとしておるこの東洋文化というものを、日本自体がこれを理解しないようなことであつては、これは世界の日本に対する期待を裏切る民族になる、こう私は考えるのでありまして、東洋文化というものを理解する日本人でこそ、世界に喜ばれる、歓迎を受ける民族になるという強い気持を持つております。他にまだ先輩もこれに関して今日は大臣の御所見を伺うことになつておりますがこれに関連してひとつ委員長にお願いがあるのであります。委員諸君の御発言を許可せられまして、その許可せられた最後に、私たちこの委員会として一つ結論を出して、文部当局に要望を試みたい、こう考えますので、最後の結論的の発言を留保いたしまして、一応私は他の委員に讓りたいと思います。
  70. 竹尾弌

    竹尾委員長 ちよつと速記をやめて……。     〔速記中止〕
  71. 竹尾弌

    竹尾委員長 速記を始めて。松本七郎君。
  72. 松本七郎

    松本(七)委員 私はただいま若林委員が問題にせられました漢文に関連した質問もございますが、その前に一、二文部大臣の御意見を伺つておきたいと思います。  第一は、先ほど小林委員から御指摘になりました教育委員会の問題でございます。これは教育委員会法ができます当時から、私どもは従来の中央集権的な教育を改めて、教育の民主化といつた建前から、この制度を生かして行くべきだ、但しそれを生かして行くためには、ただ形式的に地方分権をし、行政委員会教育行政をゆだねるというだけではだめだ、これをほんとうに生かして行くためには、どうしても財政的な裏づけというものがこれになければならない。従つて、当時の教育委員会法案には財政権というものがその裏づけにないから、これを至急に確立するということを附帶的な條件として、この法律案は通過しておるのであります。それにもかかわらず、今日までこの問題が根本的に解決されておらない、そしてやれ教育委員会の活動が宙に浮いて来たとか、いろいろな世評を受けながら今日のままになつております。占領行政も打切られようというときに、あらゆる点に、日本の実情に沿つた改革を文部大臣考えておられるように聞いておるのですが、この教育委員会制度をはたして積極的に財政の裏づけを持つて、これを改革されようとするのか、これは義務教育費の問題とも関連する問題でして、ぜひ文部大臣の今後の方針を伺つておきたいと思うのです。
  73. 天野貞祐

    天野国務大臣 今松本委員から述べられましたことは、私も非常にごもつともだと思います。それで自分たちは、できれば今国会に提出したいと思つておるのですが、義務教育費を国庫補償という一つの案を考えておるわけでございます。義務教育費が国で補償されるということになれば、義務教育費が確立して来ますから、その限りにおいて教育委員会が財政に対して、従来とは違つた立場を持つて来る、こういう考えでございます。
  74. 松本七郎

    松本(七)委員 それならば、教育費の確保を通じながら、教育委員の公選制をあくまで守つて行きたいという御意見ですか。
  75. 天野貞祐

    天野国務大臣 公選ということが、どうしても原理的には必要だと私は思つております。けれども、現在のままではいろいろの弊害が出て来ておることは、松本委員も御承知ではないか。だから、公選を守つて、しかもそこに弊害をなくすということは、どういうようにしたらいいかということが、私の目下苦慮いたしておるところでございます。
  76. 松本七郎

    松本(七)委員 それからもう一つ給食費の問題でさつき御答弁があつたのですが、今後再び文部省所管にこれを移す御希望なり、あるいは御意見なりをお持ちですか。
  77. 天野貞祐

    天野国務大臣 これは将来のことで、私がすぐここでどうということはできませんが、文部省として百二十万円の指導費を予算に要求しておりまして、その材料は農林省所管でございますけれども教育的には文部省が指導をして行くのですから、それはひどく問題にしなくてもよいのではないかという考えでございます。
  78. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、先ほど若林さんが指摘された漢文の問題ですが、これはこの前もたしか若林さんが言われたが、請願が通つた、採択されて、それを一体文部省はどう扱われたか。御承知のように今日の請願——この前庄司委員から特別請願というようなお話が出たのですが、特別請願でなくとも、これを形式的に扱うこと自体がすでに間違つておるので、今日の国会法から言うならば、請願が通つたら、当然これは実行されなければならないはずなんです。どういう処置をされたか。私が聞いたところでは、漢文をやつてもやらなくてもいいようなあいまいな通牒を出したために、そのために実行しておるところもあるし、実行しておらないところもある、ということを聞いておるのであります。どういう措置をされたか、また今後どういう措置をされるのか、伺つておきたい。
  79. 天野貞祐

    天野国務大臣 文部省としては、專門的に教科課程を研究する必要があると思つております。そのために、一時的な処置はしましたけれども、根本的な処置は保留してあるわけでございます。それをどういうようにしてするかということは、ただいま申し述べた通りでございます。
  80. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで中央の審議会で研究されるというお話ですが、これも結局委員の構成にかかつて来ると思うのであります。漢文を軽視する人ばかりおれば、軽視される結果が出て来るし、そういう点も世間で心配されておるようですから、そういう点十分御考慮の上で、審議会の構成も御配慮願いたいと思います。
  81. 渡部義通

    ○渡部委員 今日は大臣にいろいろお尋ねしたいわけなんだが、漢文の問題が、若林君の発言によると、何か今日の委員会結論的な方向を出したいというようなことでありますので、まずこの問題から入つて行きたいと思います、私は漢文がある意味で、またある領域で重要性があるものだということは認めます。しかしながら、文部大臣考え方の中に、東洋文化を取入れられる上で非常に重要性があることを認めるというふうに言われたのでありますが、元来日本歴史を考えてみますと、確かに漢文というものは、ある時代に非常に積極的な意義があつたわけです。これは日本が遅れた古代国家であつた時代に、隋とか唐とかの先進文化を急速に取入れることによつて日本の文化を発展させたわけでありますが、それに伴つて漢文というものが日本の文化の上にかなり積極的な役割を果して来たわけです。しかしながら、これは特に封建社会になりまして、封建的な秩序と道徳を維持する封建イデオロギーとして、積極的な役割を果して来て、そうして日本が封建的な社会として発展して来る中で、漢文あるいは中国古典の思想が国民の一部の層の中に入つて来た。しかもそれは明治後の天皇制の時代におきましても、この封建的な専制的な秩序と、いわば道徳といつたようなものを根幹とする中国古典思想というものが、日本の天皇制を維持する上に非常に役立つた関係から、これが従来のままほとんど日本の国漢文、いわば現代語の面で非常に大きな役割を持つて来たわけです。しかしながら、その結果は、決して国民全体の文化を近代文化として高めるには、何の役にも立ちませんでした。これはもし事実を言うとなれば、歴史的な問題でありますので、大臣なり、また漢文教育を主張される諸君から、はつきりその歴史的な進歩的な意義というものについては、討論されることを私は希望するものです。私はそれに対して、私の見解を幾らでも展開することができます。もし今日東洋文化というものが取入れられなければならないということであるならば、何が一体東洋文化なのか、このことを考えてみる必要がある。東洋文化というのは、決して漢代や唐代に起つたあの古代的な、あるいは封建的なそういう文化を、東洋文化と今日われわれは言うのではないのであつて、われわれが東洋文化を取入れんとするならば、また東洋文化を発展させようとするならば、日本社会をさらに前進させ、全世界の文化がそれによつて高まるような先進文化こそが取入れられなければならないのは当然のことであります。ところが、今日先進文化——東洋に先進文化があるとすれば、それはどういう文化が一体先進文化か、それは決して古代や中世におけるあの封建的な專制的な文化が東洋の先進文化なのではないのであつて、この東洋の先進文化というものは、東洋の民族の中に今日起きている先進的な、自分自身を解放して新しい社会を築いて行こうとする、こういう大きな動きの中にこそ、未来の社会を導くところの文化が芽ばえつつあり、成長しつつあり、確立されつつあるわけであります。もしそれが新しい東洋文化であるとするならば、私たちは漢文をやるのではなくて、むしろ中国ならば、中国の現代語こそ、よく日本国民が文化を交流せしめる意味で、それが取入れられ、考えられるべきであつて、古い言葉、古い文字、それから古い秩序や道徳を堅持するような、そういうようなものを取入れることは、今日の日本の発展の上に意義のないものである、むしろ反動的な意味さえも持つものであると、私たち考えざるを得ません。もちろん私たちは古代中国、中世中国文化を研究し、それが日本の文化の発展に及ぼした影響というものを検討し、それによつて今日建設されてある日本文化をさらに高めるという見地からこれを見るならば、それは当然研究されなくちやならぬ。しかし、その研究というものは、これはむしろ專門的な部分に属するものであつて、国民一般の教養のためのものであつてはならないと思うのです。今日この漢文に対するかなり大きな数の請願書があるようでありますけれども、しかし、もしこれをほんとうに国民全体の、あるいは進歩的な学者たち、こういう人たちの批判に訴えるならば、この署名こそそれを幾十倍する署名となつて現われることは確実であります。従つて、私はそういう形で漢文が取入れらるべきではなくて、漢文はむしろ私は專門的な過去を研究するような面においてこそ、重要な意味を持つのであるが、今日ではむしろ学生たちの学習能力ということも考えて見なければならない。われわれが漢文を習つたことは、確かにいろいろ古いことを研究する上では役立ちました。しかしながら、学習能力において、そのためにどれほど日本の国民が苦労をし、また損をしておるかはわかりません。そういう点も考えてみなければなりませんし、もし日本の用語というものをゆたかにし、また優麗なるものにしようとすれば、私たちは今日民間に使われておるようなわかりやすい言葉、そうしてむずかしくない文字、それを用いて、日本人として文化を高めて行き、日本人として文化を世界に発揚して行くところの言葉あるいは思想というものを、そういう見地からこそ広めらるべきものでなければならぬと思うし、現に日本語は御存じのようにそのような形で進んでおります。そのような形で進むことによつて、今日日本の文化というものは高められておるのであります。漢字主張論者の方々の気持は、もちろんわかるのでありますけれども、しかしながら、より広汎な人々が、現にその方向に動いておるのであり、日本の文化の進行が、その方向をさし示している。これをわれわれは重大視して行かなければならないと考えるわけです。私はきよう文部委員会でこの問題について結論を出すと言われたので、私の意見を述べたのでありますが、私の意見につきまして、こういう考え方につきまして、大臣はどう考えられるか。言いかえれば、私の言つたことに、歴史的な事実として、あるいは漢文の日本文化における歴史的な意義として、間違つた点があるか。今日持つところの漢文の意義として、私の言つたところに間違つたところがあるのか、あるいは日本の言葉、日本の用語、それから日本の文化を高めるための日本の言葉の発展という、あるいは思想の発展という面から見ての私の意見に、間違つたところがあるか。間違つたところがあるとすれば、それを指摘してもらいたいし、それについての文相の見解を伺いたいと思う。
  82. 天野貞祐

    天野国務大臣 今ここで問題になつているのは、中学校高等学校なんですから、おもに四書とかそういうものですね。そういうものが今問題になつているのです。私は歴史家でなくて、あなたのような該博な知識を持つておる方に伺いたいのですが、四書のどこに天皇制を支持するようなところがありますか。
  83. 渡部義通

    ○渡部委員 それははなはだ文部大臣としては、見通しのきかない立場をとられているのじやないかと思う。私は古代的な、あるいは中世的な思想、中世的な秩序と道徳を維持するところの中世的なイデオロギーの中で、漢文というものが生きて来たし、また漢文というものは存在して来たということを述べ、そうして漢文が日本の中世文化の封建的な文化の発展の中に、それを固定させて行く意味を持つた、東洋支配階級にとつて必要な意味を持つたということを述べたわけです。  次に天皇制との関係でありますけれども、明らかに天皇制というものは、日本の封建的な関係の上に立つておるものであります。これは歴史的な問題でありまして、もしその基礎はどこにあるかということをおつしやるならば、私は何時間でも説明はいたします。しかしながら、これは封建的な関係の上に天皇制というものが立ち、そしてそれが日本の神ながらの道、言いかえるならば、古代天皇制的なイデオロギーとの結びつきによつて、これができているのであります。従つてこういう封建的な秩序と、社会的な秩序というものを維持する上において、あの四書といつたふうな、あの孔孟といつたふうな倫理が、重要なイデオロギー的な支柱の役割を持つたということを、私は申し上げるのであります。
  84. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいま孔孟とおつしやいましたが、そうすると孟子の思想などは、天皇制というものを支持する思想でございますか。
  85. 渡部義通

    ○渡部委員 それは一般的に言つて、孟子の思想がただちに日本の天皇制を支持するということを言つたのではなくて、ああいうふうな封建的な秩序と封建的な道徳というものを維持する上に、またそういう基盤の中から生れて来た、それは思想なんです。従つてその思想というものは、現代日本の中に広汎に残つて来ておるところの封建的な関係従つて封建的なイデオロギーというものを支持する重要な根本的な役割を、積極的に果して来たということになるわけであります。
  86. 天野貞祐

    天野国務大臣 非常に失礼ですが、四書というと何と何ですか。
  87. 渡部義通

    ○渡部委員 四書ということは……(笑声)いや、その問題は、私ははつきり申し上げますけれども、そういうことが根本的な問題ではありません。四書が何であるかということが根本的な問題であるのではなくて、その中に盛り込まれておるところの、その中に発現するところのものこそが、根本的な問題になつておるわけであります。
  88. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は国会議員でも四書が何だか知らないというようなことは非常に残念だ。そういう点からも、漢文はもつとやらせなければいかぬと思います。
  89. 竹尾弌

    竹尾委員長 渡部君に御注意申し上げますが、きようは一時から通産委員会がございまするので、この辺でひとつごかんべん願いたいと思います。皆さんにお諮りいたします。議員庄司一郎君より、委員外の発言を求められております。これを許すに御異議ございませんか。     〔「異議なし」「簡單々々」と呼ぶ者あり〕
  90. 竹尾弌

    竹尾委員長 庄司一郎君。
  91. 庄司一郎

    ○庄司一郎君 簡單々々のお声もあるようですが、ごく簡單に五、六分だけの御寛容をいただきたいと思います。  ただいま東洋文化論、あるいは四書論とまことにけつこうな御議論に花が咲いたようでありまするが、特に日本共産党のごときは、平易な、漢文口調じやない文字でも用いておるかといえば、さにあらず、北京語である打倒であるとか、鬪争であるとか、好んでお用いになつておるほど、現代の日本国民の生活とやはり直結をしておるのであります。打倒あるいは鬪争などといういわゆる漢文漢語は、現在の北京語です。それを平気でお用いになつてつて、漢文は封建的であるとか、国民にタッチしない、民主的でないという御議論は、まことにこつけいきわまる噴飯に値するものであります。  さて時間がありませんので、簡潔に申し上げますが、不肖私が第十国会において、その際主として東北地方の諸君よりの請願でございますが、漢文教育の振興に関する請願を本委員会においては非常な御理解をもつて御採択をいただいたのであります。しかる上は、衆議院議長より送付された採択報告書によつて文部省におかれても、その他内閣各省の次官会議等においても、請願の熱意のために、この請願を成就する意味において、国会の本会議において満場一致の賛成を得た請願でありますがゆえに、該請願の趣旨にのつとつて、何らかの処置をとらなければならないはずである。しかるに文部大臣は、中央教育審議会をつくつて、これから何とかゆつくり漫々的にその対策を練られるというようなお答えでありまして、本員はまことに遺憾にたえないのであります。詳細なことは、すでに若林委員よりお述べになられた通りでありますので、重複を避けて簡單に率直に申し上げておきたいと思います。  文部省社会教育局より発行された單行本の中に、青年時における人格形成の云々という單行本があります。これはまことにけつこうな著書であるが、そういう中にも、この東洋精神といいましようか、東洋文化といいましようか、そういう面の取入れが一向ない。これはむろん国定教科書ではありませんけれども、ただいま拜見すると、高等学校の新しい国語、これが教科書の採用は各学校の自由でありますが、この一巻、二巻、三巻を通して、かなり厖大なページ数になりますが、漢文関係においては、ただ詩人等の関係が、全体を通じて三ページあるだけであります。これでは、まことに軽視されておることは明瞭であると思うのであります。これは再三この本委員会におかれては採択済みである。すなわち国民を代表する国会のその文教関係を審議されておる本委員会において二度、三度も採択済みでありますので、ひとつ具体的に、若林委員の述べられた通りに、一週三時間の国語を五時間にし、そのうち漢学の教育時間を現在の一時間を二時間に必修科目として採用する、そういう教科課程に、文部省におかれては、審議会でもなんでもけつこうでございますから、ぜひ御決定の上に、その御方針をとつていただきたい。東洋文化を高等学校あるいはその下の中学校生徒に教えることは、決して封建教育でもなければ、天皇制の護持とも相ならぬのであります。すなわち「大学」の冒頭においては、大学の道は明徳を明らかにするのであり、その最後は至善であり、アイデアである。しかして易経の中には、御承知のごとく——易などというと八卦と考えておる人もあるが、街頭に立つておる八卦などではありません、これは結局は東洋のバイブルである。生成化育であります。生成化育とは森羅万象、天地三才の生成化育である。ベルグソンの創造的進化、クリエーシヨナル・イヴオリユーシヨンである。雄大なる東洋文化的な哲理を含んでおるのでありまして、ベルグソンを去ること何千年も前において、すでに生成化育の言葉がある。キリスト教のバイブルの中にも「神は汝らとともに今もなおその創造に苦しみ給う」とあります。これと同じである。かような森嚴なる哲理、あるいは倫理道徳を説いておる。これは決して共産党さんのおつしやるような社会の階層や、殿様、貴族、そういう階級だけのものではない。衆生あまねくこれを読む、まことに民をもつて重しとなすところの民本主義者吉野作造先生の言われた民主主義的イデオロギーは、至るところにほうはいとして発散しておる。曲学阿世の徒はときに漢、魯、宋のような殿様の便宜のためにその学説を説いたことがあるかもしれません。しかし四書五経、その他の東洋のバイブルの中に横溢しておるものは、すでに民主的なけつこうなる万人向きの道義であります。根本的の原理原則を説いておる。私は決していたずらなる復古主義を説くのではありません。明治天皇の御製などというと笑われるかもしれませんが、明治天皇の御製の中に「よきをとりあしきをすててとつくににおとらぬ国となすよしもがな」とあります。菅原道真の述べた和魂漢才——今日は和魂漢洋才という時代になるかと思うのでありますが、戦争中も、教育委員であられたところの長野先生も御承知の通り、何となく英語、外国語教育というものを文部省は圧縮した。東條内閣の重圧によつて圧縮したのであります。私は戰争中にも、やはり英語は必要である。ソ連でさえも日本学校をハバロフスク、その他に経営しておる。アメリカももちろんのことである。戰争をやつておるから英語教育をやめるということは、まことに非文化きわまるところの暴挙であるということを述べたことがありますが、終戰後何となく漢文教育というものがノツク・アウトされまして、オミツト同様の状態に陥りまして、何もかも英米、英米——そうであつてはならない。文部大臣の、中庸を得たところの——子思が書いたところの中庸の原理原則に従い、公正妥当なる対策をとられるという御意見、まことに敬服に値するものであります。どうかこの漢文漢学を片すみの方に片づけないで、できるだけ教授の時間をとつていただきたい。そうして青年諸君がパチンコだとか、ジヤズであるとか、あるいはダンスという面——必ずしも悪いとは思いませんけれども、そういうところのみに娯楽や快楽を求めるよりは、朗々と青年諸君が漢詩を朗詠するというような、意気軒昂たる、そういう面が私は社会教育の面からも必要であると思うのであります。  どうか、この請願は別にまた趣旨のあるところを申し上げる機会もあろうと思いますけれども、これは一万何千人という請願でありまして、もし日時があれば何百万人もの署名捺印がもらえる請願であります。そういう意味において、どうか文部省は今回は優柔不断な態度はとられずに、敏速に昭和二十七年四月一日の新学期より教科課程の一端を改革されまして、国語五時間、うち漢文漢学二時間、最小限度このラインをひとつ確立していただきたい。かような信念を申し上げまして、はなはだ恐縮でありますが、大臣の御信念を参考のためにお伺い申し上げたいのであります。
  92. 竹尾弌

    竹尾委員長 お諮りいたします。議員眞鍋勝君より委員外の発言を求められておりますが、これを許してよろしゆうございましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 竹尾弌

  94. 眞鍋勝

    眞鍋勝君 かぜを引いておりますので、諸君にはパンフレツトがありますから、これを折りますが、私は東京大学では英文科をやり、京都大学では法科をやりました。漢文、東洋文化は、わずかに子供のとき二、三年小学校の先生についてやつたけれども、今の大学に行つたときは不幸にして漢文をやる勇気がなかつた。それで英文科をやつたのですが、それ以来自分も不便をした。それで支那文学を説く勇気をたくさん持つておるので、きよう来ておつて音頭を取つてつたのですが、きようはかぜを引いて熱が高いから、言いたいことも言いません。すでに若林君なり庄司君なりから言つた言葉に、私はつけ加える言葉もありません。ないけれども、とにかく今日日本国民を精神的に非常に救つたのは、支那文化、日本の文化です。日本文化を明治維新にやつたときを研究して行くとわかる。日本のいわゆる精神的なものは何によつてつくられたかというと、私は日本文化によつてつくられたとかたく信じて疑わぬ。これは私が七十年の間体験して来ておる。すなわち文科もやりましたし、法学も三年やつた。しかし後に英文科を東京大学で三年やつたけれども日本文化の方はやる値打がないと思うからやらなかつた。しかし小学校のとき二、三年やつた経験よりして、私はこの若林君なり庄司君の説に賛同するゆえんを明らかにし、私の書いたパンフレツトを諸君にお配りしますから、ごらん願いたいのであります。
  95. 天野貞祐

    天野国務大臣 御趣旨に沿うように、できるだけ考えたいと思います。     —————————————
  96. 竹尾弌

    竹尾委員長 商船大学に関する小委員会委員長補欠選挙を行います。平島良一君が去る二月七日委員辞任されましたので、小委員長が欠員となりましたが、同君が再び委員になられましたので、小委員長の選挙はその手続を省略いたしまして、先例により私より指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 竹尾弌

    竹尾委員長 御異議なしと認めます。それでは平島良一君を小委員長指名いたします。     —————————————
  98. 竹尾弌

    竹尾委員長 前回の委員会で承認を得ました月島第三小学校の視察は、来る二月十五日、午後一時に決定いたしました。おいでくださる方は專門員室に御連絡願いたいと思います。  本日は時間がございません。これにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時三分散会