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1952-06-27 第13回国会 衆議院 農林委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月二十七日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 松浦 東介君    理事 遠藤 三郎君 理事 河野 謙三君    理事 平野 三郎君 理事 小林 運美君    理事 井上 良二君       越智  茂君    小淵 光平君       川西  清君    坂本  實君       千賀 康治君    中馬 辰猪君       原田 雪松君    高倉 定助君       竹村奈良一君    足鹿  覺君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主計局次長) 石原 周夫君         厚生政務次官  松野 頼三君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         農林事務官         (農業改良局         長)      清井  正君         農林事務官         (蚕糸局長)  寺内 祥一君         通商産業事務官         (通商繊維局         長)      記内 角一君  委員外出席者         專  門  員 難波 理平君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君     ————————————— 六月二十六日  農林省統計調査部を局に昇格の請願内藤友明  君紹介)(第三九九二号)  同(橘直治紹介)(第四〇〇九号)  昭和二十六年産米供出完遂奨励金等に関する請  願(大石ヨシエ紹介)(第四〇一二号)  同(大石ヨシエ紹介)(第四〇一四号)  狩猟法施行規則の一部改正に関する請願平野  三郎紹介)(第四〇二四号)  急傾斜地帶農業振興臨時措置法に基く耕地事業  に対する国庫補助増額等に関する請願西村久  之君紹介)(第四〇二五号)     ————————————— 本日の会議に付した事件  駐留軍の用に供する農地使用及び收用に関す  る件  農村生活改善に関する件  蚕糸に関する件  積雪寒冷単作地帯対策に関する件     —————————————
  2. 千賀康治

    ○千賀委員長代理 委員長がしばらく所要がありますので、私がかわつて委員長の職務を行います。  これより農林委員会を開会いたします。まず農村生活改善に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。平野三郎君。
  3. 平野三郎

    平野委員 ただいま議題となりました農村生活改善の件は、きわめて重大な問題でありまするので、この際農林省及び厚生省のそれぞれ関係当局に対しまして二、三の質疑をいたしたいと思います。まず本年度から厚生省におきまして、農漁村簡易水道施設事業を取上げることといたし、これに対して国庫補助をするということになつたように聞くのでありまするが、このことは農山漁村生活改善伝染病予防の上にきわめて重要な問題であり、農林委員会としても深い関心を拂わなければならない問題であるわけでありまするが、このことにつきまして、主管省である厚生省としては、簡易水道現状及び将来についてどういう方針を持つておられるか、まずこれを承りたいと思います。
  4. 楠本正康

    楠本政府委員 お答えを申上げます。ただいま御指摘のように、農村におきましては水に極端な不便をいたしておりますが、これが伝染病の流行のもととなり、また一方農村生活というものをきわめて不自由なものにし、不潔なものにしておる現状であります。従いまして私どもといたしましては、本年度より特に補助金を支出いたしまして、農村簡易水道普及をはかることといたした次第であります。現在なお農村におきまして水に不便をしておりますが、そのうち曲りなりにも給水施設を持つておる場所は、わずかに全農村の六%にすぎないのであります。そこで私どもといたしましては、簡易水道全国町村普及する計画を立てたわけでありますが、しかしながらさしあたりは、伝染病の発生が全国平均以上の数を示しておる町村及びトラホーム、皮膚病その他水に原因いたします疾病が特に多い町村、並びに水に極端な不便をいたしておりまして、ことに家庭の主婦等がきわめて困難をいたしております町村、かようなものを合計四千二百二十八町村を選びまして、これに年次計画をもちまして簡易水道普及することといたしたわけであります。なおこれら四千余り町村簡易水道普及いたすにあたりましては、約八百億の事業費を要する次第でありますが、本年はとりあえず初年度経費といたしまして総額一億二千五百万円の補助金を計上いたしました。事業量といたしましては五億円の事業を実施することに相なつております。つまり補助率は四分の一でございます。
  5. 平野三郎

    平野委員 本年度事業費が五億円で、予算としては四分の一補助で一億二千五百万ということでありますが、これはただいま御説明対象町村四千二百二十八、これに対する事業費八百億から見れば、きわめて貧弱なものであつて、まつたく九牛の一毛にすぎない感じを持つのでありまするが、この本年度の一億二千五百万円の補助において施行し得る町村は、どのくらいの数になるわけですか。     〔千賀委員長代理退席遠藤委員長代理着席
  6. 楠本正康

    楠本政府委員 御指摘のようにはなはだおはずかしい予算でありますが、これによりまして目下計画をいたしておりますものは、各府県において厳選いたしまして、厚生省補助を申請いたした町村だけでも三百二十四町村、その事業費総額は二十五億円に達しております。ところがただいま申し上げましたような予算でありますために、現在それらの中からさらに重点的に必要なところを選びまして、百六十八町村簡易水道普及計画いたしております。
  7. 平野三郎

    平野委員 百六十八町村といいますと、府県に割当てればせいぜい三箇所ぐらいでありますが、そういたしますと、当然モデルケースのような形においておやりになるのであるかどうか、その点を承りたい。
  8. 楠本正康

    楠本政府委員 御意見のように、私ども本年度はとりあえずモデルケースとしてこれを実施し、今後その成果によりまして一層これを伸ばして行きたい、かように考えておる次第であります。
  9. 平野三郎

    平野委員 それでは次に農林省ちよつとお尋ねいたしますが、現在農林省で行つておられる生活改善普及事業というものと、厚生省本年度から農山村に対して行わんとする簡易水道との関係は、どういうふうになつておりますか。農業改良局長にお尋ねいたします。
  10. 清井正

    清井政府委員 ただいま御質問がありました農村簡易水道設置の問題でございますが、私ども農村における生活改善普及をいたす場合におきまして、いろいろの観点から研究し、それぞれの指導をさしておりますことは、すでに御承知通りでありますが、それの一斑といたしまして、いわゆる農村における労力合理化あるいは衛生という見地から見まして、簡易水道という問題も取上げておるものの一つであります。しかしながら実際問題といたしまして、今までの実績におきましては、東海方面あるいはその他各府県だけにおきまして、ごく一部簡易水道の実施をいたしておるような状態でありまして、それがまだ普及いたしておるような段階ではありません。と申しますのも、ただいまも厚生省の係官の方よりお話がございましたが、政府としてこれを組織的に指導をしておる段階になつてなかつたのであります。特にある一定地域において、非常に井戸水が濁つてつて飲料にたえないといつたような場合、これを遠隔の地域から引用して来なければならぬとか、あるいは非常に坂道等がありまして労力を要するというような特定の地域において、特にその地域における必要から簡易水道のようなものを施設することを、地域々々に指導しておるというような状況でありまして、いまだ本格的にやつておるような状況ではないのであります。しかしながらその地域々々に実施いたしました簡易水道施設も、実際問題としては経費が不足なために、いろいろ竹筒を使うようにするとか、ごく簡易な消毒施設を使うというような程度で、いまだ思うように行つていないことは、はなはだ残念に思つておる次第であります。今申し上げましたように、簡易水道施設は、生活改善見地から申しましても非常にけつこうなことでありますので、厚生省における施設等があります場合におきましては、その方面施設と相総合いたしまして、緊密な連絡をとりまして、農村における適切な地域に今後簡易水道施設を増加するように指導して参りたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  11. 平野三郎

    平野委員 次に水道行政所管問題でありますが、これは現在厚生省建設省共管になつておるのであります。しかも單に両省共管だけではなしに、この水道のことについては地方からいろいろ陳情もあるのでありますが、水道事業起債等のことについては大蔵省にも行かなければならぬ。またその起債の各地方に対する配分は、地方財政委員会でやるというようなふうに、水道の問題だけで、厚生省建設省大蔵省地財委というように四箇所に行かなければならぬというようなことで、国民の迷惑は実に驚くべきものがあるのでありまして、どうしてもこれらの行政は統一化し、簡素化いたしまして、国民に迷惑をかけないようにしなければならぬと考えておりますが、その点この簡易水道所管はどういうふうになつておりますか、承りたいと思います。
  12. 楠本正康

    楠本政府委員 ただいま御指摘のように、関係各省がはなはだ多いために、各地方に並々ならぬ御迷惑をおかけしていることは、まことに申訳なく存じておりますが、何分にも長いしきたりがございまして、この問題の解決できないのは遺憾でございますが、ただ私ども立場から申すことをお許し願いますならば、水道問題は申すまでもなく公衆衛生の基本的な仕事でありますし、また一面生活衛生的な指導根本事業でもあります。従いましてその事業目的から考えますれば、やはりこれは私どもがいろいろお世話をするべきものと考えております。しかしながらたとえば建設省立場になつて考えますれば、これは工事を伴うからということに相なるわけであります。工事はいかなる施設にも伴うことで、これをもつて行政目的から離れることはどうかとも考えられますが、何分にもこの辺に関しましては、長いしきたりもありまして、御迷惑をおかけいたしておりますことを深くおわびしなければならぬ次第であります。     〔遠藤委員長代理退席委員長着席〕  なお大蔵省あるいは地財委等に関しましても、すでに起債わくが当初折衝の結果協定せられておりますので、私どもといたしましては、その起債わく内においては、厚生省の自由なる意思によつてやることが最も簡素だろうと主張をいたしておるわけであります。これらの点もなかなか困難な問題だろうと存じますが、しかしながら簡易水道に関する限りは補助費もあります。従つてこれは厚生省専管ということに現在建設省との話合いがきまつております。また一方これは補助費でありますために、補助裏づけ起債につきましては、地財委折衝を要しますが、補助がきまればほとんど自動的に決定いたしますので、簡易水道に関する限りは、各地方に御迷惑をおかけしないで済むものと御了解願いたいと存じます。
  13. 平野三郎

    平野委員 簡易水道厚生省所管であるというお話でありますが、そうすれば当然一般水道厚生省主管してやるべきものであると考えざるを得ませんが、これは政府としてぜひその方向に努力するよう要望いたします。  次にこの根本問題でありますところの農村生活改善衛生との関連性におきまして糞尿処理の問題について二、三伺いたいと思うのであります。現在日本の各市町村の大部分というものは、程度の差はありますけれども糞尿処分に行き詰まりを来しているのでありまして、これらは全国的に見れば、なお九五%はそのまま肥料として農村還元する方法が採用せられて、昔から少しもこの状態改善されていない。従つて都市といわず農村といわず、非常に不衛生状態になると同時に、この問題が農村肥料問題についても非常な重点を占めているのでありますが、これについて農林省とせられては、日本農村生活改善の問題と、これら衛生改善という点において、基本的にどういう考え方を持つておられますか、まずこれを農業改良局長にお尋ねいたします。
  14. 清井正

    清井政府委員 ただいま農村において肥料として使用いたします屎尿衛生関係等中心にしての御質問でありましたが、なるほど御指摘通り、現在の農村ことに大都会付近野菜生産をしておる農村中心といたしまして、相当程度屎尿肥料として使用いたしておるのでありますが、実はそれが手近に入手し得る、あるいは相当低廉にこれを入手し得る、また肥料分にしても、窒素を主として燐酸カリをたくさん含んでおりましてそういう関係がありまして農村としてそれを容易に利用し得る立場にありますために、県の統計数字によりましても、相当数字が利用されておるようであります。大体二十五年度におきましては、ただいま手元にあります資料によりますと、三千万トンくらいは使つておるのじやないか、こういう数字があるわけであります。しかしながらそれを衛生的に見ますと、非常に寒心すべき問題でありまして、いわゆる病原菌あるいは寄生虫の悪循環という言葉も用いられておるようであります。われわれといたしましては、現実の問題といたしまして、農村人糞尿肥料として使うことを禁止することは、実際問題としてできないわけでありますが、同時にまた人糞尿肥料として使用します場合には、その使用方法につきまして、極力衛生的の見地においてこれを改善するということを、あわせて指導しなければならぬと思うのであります。今までにおきましても、もちろん人糞尿肥料として使用、たしまする場合は、これを衛生的に無害になるようにいろいろの指導をいたして参つておるのであります。申し上げるまでもなく、これを相当長期に、少くとも一月以上は貯蔵して、病原菌あるいは寄生虫の撲滅をはかる、あるいはこれを使用します場合に、それを水で薄めてやりますとか、あるいは使用した場合には土をかぶせてやるとか、いろいろな方法を講じまして、極力衛生的の見地からそういうことを指導して参つておるのであります。農家においては指導によりましてやつているところもありますけれども、なかなか実際問題として徹底いたさない場合もあるわけでありまして、そういう場合におきましては、衛生相当地域においては問題を起していることもあるのではないかと考えております。しかしながら実際問題として、人糞尿使用を認めないわけに行かないのでありますから、その場合におきましては、衛生的にこれを取扱う指導を徹底いたしまして、今後やつて参らなければならぬと考えております。
  15. 平野三郎

    平野委員 肥料として使用する糞尿が三千万トンに及ぶというお話でありますが、日本化学肥料を含めました全体のうちで、糞尿肥料の占める割合はどのくらいになりますか。
  16. 清井正

    清井政府委員 全体の割合はただいまちよつと申し上げられませんが、三千万トンの数字肥料分に直してみますと、大体こういう数字が出ているのであります。これを窒素分に直しますと十六万三千トン、硫安に換算いたします場合には八十一万トンになります。燐酸に換算いたしまして十万トン、過燐酸石灰に見ますと二十万トンそれからカリ分に換算して七万三千トン、カリ塩に換算して十四万トンというような数字になりますので、あるいは堆肥、厩肥等自給肥料等も全部合せますと、相当割合になるのではないかと考えているわけであります。
  17. 平野三郎

    平野委員 厚生省に伺いますが、もしこれらの糞尿肥料を利用しないで、全部化学肥料によるようにした場合には、わが国においてはこれによるところの伝染病とかあるいは寄生虫というものは発生しないのであるかどうか。アメリカのごときは全然糞尿を利用していないわけでありますが、その衛生状態はどういうふうに違うのであるか、硫安に換算して八十一万トンというお話でありますが、これは相当厖大な数字であつて、これを全部化学肥料に切りかえるということになるならば、またそこに新しい非常な負担を生ずるわけでありますが、その負担と、それからこれらを全部使用しないということによつて衛生的見地から生ずる利益と、いずれに重点を置くかということは、これは国家として考えなければならない問題であります。糞尿使用しない場合においては伝染病寄生虫等が発生しなくなつて、それによるところの国の利益はどういうふうになるか、それを比較した上での御意見を承りたいと思います。
  18. 楠本正康

    楠本政府委員 お答え申し上げます。かりに人糞をまつたく使わない、しかもそれが最も衛生的に処理せられて廃棄せられるということがかりにできたといたしますれば、少くとも消化器伝染病あるいは寄生虫その他は絶滅いたします。従つて現在これらの疾病に要します経費は、国の補助あるいは個人の負担あるいは地方公共団体負担等を考えますと、赤痢だけにつきましても四十億余りに相なつております。従いましてもしもかようなことがかりにもできたといたしますれば、これによつて受ける有形、無形の利益はきわめて大きなものがあろうと存じます。しかしながら実際におきましては、かようなことは私しろうとでよく存じませんが、おそらく不可能ということで私ども対策を立てているわけであります。従いまして、できるだけ肥料として農村にも還元する、しかしその場合には安全な処理を盡して危険のないようにして、たとえば乾燥肥料のような形にして農村に渡す、あるいは一方余つたものと申しますか、農村還元できない部分に関しましては、これを衛生的に処理をいたしまして、適当な処分をする。しかしながら衛生的に処理を完全にいたしますれば、これはすべて農村還元できるのでありまして、現在農村還元できないのは、主として輸送の関係で、遠距離で運べないから還元できない。ところが完全なる衛生処理をいたして、たとえば乾燥肥料のような形にいたしますれば、これはどこへでも運べますので、そのような問題も片づくのではなかろうか、かように考えておる次第であります。
  19. 平野三郎

    平野委員 今乾燥肥料というお話がありましたが、大都市において発生するところの糞尿というものは、乾燥肥料としてこれを農村使用することは非常にいいと思うのでありますが、しからば大都市現状はどういうふうに処理されておりますか。
  20. 楠本正康

    楠本政府委員 大都市におきましては、何分にも農村還元受入れ態勢におのずから限度がありますために、たとえば東京都を例にとりましても、約三分の二が農村還元されるわけでありまして、三分の一はやむを得ず他に転化をいたしておるわけであります。そこで現在は東京都は——東京都に限らず各都市は、海洋投棄あるいは單に沈澱しやすい砂地等に投棄いたしまして処分する方法、あるいはまた下水処理能力を越えて、あるいは能力のない下水に放置いたしまして、それは結局川に、海にそのまま流れるというようなきわめて不衛生なことをいたしておる次第であります。従いまして東京湾のごときものは糞便の汚染がはなはだしく、特に東京湾産の貝類等を科学的に調べてみますと、すべて大腸菌が発見できるのでありまして、これをもちましても、いかにこれらが屎尿によつて汚染せられるかわかるのであります。これらの問題は何としても解決しなければならぬ問題でありますが、私どもは先ほども申しましたように、これは衛生処理をして農村還元の形とることが、日本現状に即した考え方ではなかろうかと考える次第であります。
  21. 平野三郎

    平野委員 大体事務当局からの御説明でわかりましたが、政務次官がお見えになりましたので、最後に要約してお尋ねを申し上げ、かつ御抱負をこの際拝聽いたしておきたいと思います。  それはまず第一に、水道行政各省にまたがつてつて国民が非常に迷惑をしておる。これはすみやかに簡素化し、かつ統一する必要があるのでありますが、承れば今回農山村に対して行うところの簡易水道については、厚生省専管であるということでありますが、さすれば一般水道行政も当然厚生省において主管すべきものであるというふうに考えるものであります。  次に、今回農山村に対して、特に厚生省簡易水道を行うということは非常にけつこうでありますけれども、その予算本年度わずかに一億二千五百万であつて、現在農山村において必要としておるところの四千以上の町村、しかもその事業費は八百億という計画でありますならば、実にすずめの涙にも及ばず、とうていこれでは問題になりませんが、これらの予算増額に対して努力をせられる意思があるかどうか。これらの問題はいずれもきわめて重大なことでありますが、今厚生省には主管大臣がいませんから、松野君は大臣代理という非常に大きな責任もあるわけであります。あなたの抱負並びにその熱意というものは、これらの農山漁村に対するところの生活改善の意味において、非常に大きなウエートを占めるわけでありますが、特にあなたの御抱負をこの際承り、その熱意を十分この際ひとつ拝聴いたしておきたいと思うわけであります。
  22. 松野頼三

    松野(頼)政府委員 平野委員の御指摘のように、実は水道行政がただいま建設省厚生省と二元的になつておるわけであります。毎年のことでございますが、本年も御承知のごとく、参議院、衆議院の両委員間においても議論が出まして、何とかこれを一元化したいということを考えております。ただ非常に困りますことは、現在の各省設置法條文を見ましても、建設省の中に水道建設が入つておりますし、厚生省の方には水道行政が入つておりますので、建設行政かということで字句の上においても非常な論議がありまして、先日も行政管理庁に、この問題について両省で内聞に聞きただしたというほどむずかしい問題になつております。ただいま議員提案水道法というものが懸案になつておりますがはなはだ残念ではございますが、所管の問題で水道法提案を見合せるという程度のものになつております。しかし私たちから考えますと、水道という字句よりも現実に使うものによつてそのもの所管をきめるべきだと思う。もし工事だけを監督しますならば、御承知のごとく、本委員会に最も関係の深い河川の工事は、灌漑用水でも、工事ならば建設省に行く。その事業において行政をわけますれば、おそらく建設省関係のない役所はございません。トンネルの工事、橋梁の工事鉄道工事建設省関係するから、鉄道建設省だというへんぱな意見も出ます。従つてたちは、あくまで行政目的に応じて所管省をきめるべきだと思う。すなわち水道は、衛生施設における飲料水ということを主眼とするならば、これは厚生省でありましようし、もし産業用水道というならばこれは建設省であろう。こういう目的に応じて水道行政を一元化することがほんとうの姿ではなかろうかと現在も考えております。ただいま最も新しい予算として、本年から簡易水道というものができました。これは本年新規のもので、要望に応じましたところが二十五億の総工事費が出ました。平野委員の御指摘のように、実はこの予算が本年は一億二千五百万円、府県補助を入れ、また起債を入れて五億しか出ません。御希望の約五分の一しか出ません。農村の中で生活改善に非常に熱心な町村長、たとえて申しますと長野県、岐阜県というような所は、各町村長が非常に生活改善に熱心で、毎年やつております。ことに長野県の三井村などという碓氷峠を越したところの小さい村でしようが、村長が熱心過ぎまして、先日村会議全員が、わざわざ自分のところの生活改善のためにやつてくれということを言つて来ております。私たちは、皆さん方委員会と特に関係の深い簡易水道は、本年の対策としては農村重点を置き、東京とか、京都、大阪とかいう所は、おそらく一箇所くらいしかなく、農村の人口の多い所に本年簡易水道を多くつくろうということで、行政面においても農村対策の趣旨を徹底させておるのであります。本委員会も関心の深いことでありますから、農村生活改善の中で一番手近で、一番効果の多い簡易水道行政については、私の方もせいぜい努力いたしますから、農林委員会皆さん方も、ひとつともに手を組んで今後の発展を期したい、あとの二十億の入らなかつた町村にも来年はぜひやりたい、できるならば本年中でも、もう一ぺんこの予算を請求したい、こういう意向でただいまやつております。この熱心な生活改善府県の代表者である皆さん方に、このことを厚生省からぜひお願いいたしたい。
  23. 原田雪松

    ○原田委員 関連して……。今私が聞きますと、水道行政公衆衛生上の見地からやるべきだということですが、それは私も了承できます。また簡易水道というものは農村に充当すべきだということで力を得たのでありますが、今までの簡易水道の出願の例を見ますと、おそらく水が豊富であるところは出願をいたしておりません。農村にしても町にしても、非常に水がなくて塩水や泥水を浄水して飲まなければならぬという、水の不便地域のものが出願をいたしておることは事実と考えられます。そういう意味から見ますれば、簡易水道というものに対して、衛生上の見地からこれを考えました場合に、非常に重大な問題であろうと考えております。先ほどお話のように、消化器系統並びに寄生虫から出た病気に対する経費は、八十億を突破しておるという例もあるようであります。こういうことから申しましても、公衆衛生上一日もゆるがせにすることができないというような現実でありますが、いまなお出願数百のうちその五分の一くらいしか実現可能でないということは、まことに遺憾な点であると思う。そこで簡易水道の出願数に対する許可数、補助率並びにこれの裏づけとなる起債わくを、この際一応お知らせ願いたいと思います。
  24. 松野頼三

    松野(頼)政府委員 原田委員にお答えいたします。本年の補助金総額が一億二千五百万、各府県とも同額以上の補助をいたしますものが一億二千五百万、これに公共事業起債二億五千万を合せて、総工事費五億となつております。
  25. 松浦東介

    ○松浦委員長 竹村君。
  26. 竹村奈良一

    ○竹村委員 農村における生活改善は最も必要なことでありまして、台所、かまどあるいは採光、便所、今問題になつておつた簡易水道の問題とかいろいろあるのでありますが、私が伺つておきたいのは、こういう改善をしなければならない農家というものは、全国の農家がほとんどそうだと思います。そこでこれらを理想的に改善するのには、農家一戸当り大体どれくらいの費用がいると考えておられるのか。それから全国の農家に対してそういうものをやる場合に、農家の負担はどれだけであるかをお聞きした、
  27. 松野頼三

    松野(頼)政府委員 厚生省所管水道とか簡易水洗便所の点についてお答えいたしますが、簡易水道は御承知のごとく農家の戸数に応じて割りますと、一戸平均大体六千円前後というのが標準であります。これに戸数を合せますから、それに応じて六百万とか八百万とかいう工事費が出ます。一戸平均六千円ならば、簡易水道は現在の物価水準において敷設可能だと思います。それから水洗便所のことでありますが、これは下水のある所とない所がございますので、下水に通ずる土管の長さなどによつて多少の違いはありますが、家屋だけの工事ならば現在でも二万円くらいでできると思います。
  28. 清井正

    清井政府委員 ただいまどのくらいの金がかかるつもりでやつておるかという御質問でございましたが、私どもといたしましては、農家の生活全般についていろいろ改善指導する場合におきまして、台所の改善を例にとりましても、農家によつていろいろ改善の方式も違いますし、いろいろ種々雑多でございますので、われわれといたしましては、理想的な農家の生活改善をいたすのにはどのくらいの費用を要するかということは、ただいま計算いたしておりません。私どもといたしましては、それぞれの農家を対象としまして、農家が経済的に余裕がありました場合、あるいはまた現在の農家の経済的に許し得る範囲内において、できる限り理想的な農家の生活改善を、個々について指導して行く、こういう方法をとつております。
  29. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そうすると、農家に金がなかつたら、いかに希望してもやれないということですね。
  30. 松野頼三

    松野(頼)政府委員 私の方は、下水にしても上水にしても、一軒だけで単独で経営管理ができませんので、部落単位、町村単位となりますので、現在は主として起債事業に仰ぐとか、あるいは町村の山林の売却をして行うとか、最近一番目立ちますのは、婦人会がみずから寄付とか貯金をして、五箇年計画とかいうことで現実に立ち上つていらつしやる。こういう点もやはり協同的な精神から行われるように考えております。     —————————————
  31. 松浦東介

    ○松浦委員長 この際積雪寒冷単作地帯の問題について、千賀康治君より発言の要求がありますので、これを許します。千賀康治君。
  32. 千賀康治

    千賀委員 積雪寒冷地帯の問題でありますが、今まで三千数百町村が積雪寒冷単作地帶振興対策の恩典を受けておつたのでございますが、これに相当する気候條件その他一切の條件が備わつておりながら、いまだその地域に指定されなかつた町村が四百町村ばかりあつたのでございます。これが今回皆さんの御盡力によりまして、幸いにも地域に指定を受けまして、既存町村とともに肩を並べて、その振興対策が国費で推進せられることになつたのであります。指定を受けました各県の中の四百九十七町村町村民の喜びはもちろんでございますけれども、ただ残念なことには、この指定を受ければ二十六年度予算において、何ほどなりともその事業振興のために国費が受けられると思つておりましたのに、今までの予算は一切既存町村のために計上されたものであるから、新たに加入されたその地帯は、その恩典に浴することができぬということがはつきりいたしまして、実に今まで非常な熱と希望を持つておりました新加入の諸君は、失望のどん底に陷れられたのであります。まことにこれはごもつともでありまして、私どももその新しい町村のために、大いに乏しきにむちうちながら推進をいたした身といたしましても、実に残念でございます。そこでうわさされます次の機会、来るべき補正予算には、何といたしましてもこの置いて行かれた町村に、今までもらつた町村と同じような単位金額の配分ができまするよう、ぜひともその機会には補正予算に大いに援助を願いたい、こういうことを考えておるのでございます。そこでこの際私どもは、その町村のために決議をいたしたいと思うのであります。農林委員諸君の御賛成を得て、決議案をここに提出したいと思います。ただいま案文を朗読いたしますから、全員の御賛成を願いたいと思います。  積雪寒冷単作地帶に新たに指定編入せられた八県四百九十七箇村の農業振興事業については、これらの地域が既定地域と同一條件のもとにありながら、諸般の理由により、指定が遅れるにいたつた事情に鑑み、既定地域との均衡をはかるため、政府は、昭和二十六、七両年度において積雪寒冷単作地帶振興経費として支出決定した同一規模のものを、来るべき昭和二十七年度補正予算において計上すべきものと認める。  右決議する。 以上のような案文でございます。どうか御賛成を願いたいと思います。
  33. 松浦東介

    ○松浦委員長 ただいまの問題について、何か御意見があれば発言を許します。——他に発言もなければお諮りいたします。ただいまの千賀君の動議に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 松浦東介

    ○松浦委員長 御異議なしと認めまして、さよう決しました。  なお本件の議長に対する報告書の作成、並びに関係国務大臣に対する参考送付につきましては、委員長に第一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 松浦東介

    ○松浦委員長 御異議がなければさようとりはからいます。     —————————————
  36. 松浦東介

    ○松浦委員長 次に蚕糸問題に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。小林運美君。
  37. 小林運美

    ○小林(運)委員 仄聞いたしまするに、政府は最近の生糸の輸出貿易の状態をどういうふうにお考えか知らないけれども、いわゆる三角貿易、すなわち生糸は今まで大部分がアメリカに行つておりましたが、その一部分はヨーロツパの方に輸出されておりました。ところが最近ヨーロッパに行く生糸が、ヨーロツパの諸国を経由してアメリカに売られているという事実をわれわれも認めておりますが、この経済現象である輸出の状態を、どういうおつもりか知らないけれども、これを指定品目に加えて、いわゆる輸出貿易管理令によりまして輸出の承認制をとるということが伝えられておりますが、これは一体どういう考えでそういう考えを持つのか、またそういうようなことを考えて、いつどういうふうにしてやるのか、まず第一に通産当局からこれに対する御意見を承りたいと思うのであります。
  38. 記内角一

    ○記内政府委員 ただいまの御質問でございますが、御指摘通りもともとアメリカに大部分が輸出されておりましたのが、アメリカの商社と日本の商社との契約が成立しておりましたのにかかわらず、その決済面におきましては、オランダ経由あるいはイギリスで決済という建前で取引が行われているのが現実でございます。従いまして荷物の点におきましても、インヴォイス面においては直接オランダなりイギリスに行くのではなくて。パナマを経由してオランダないしイギリスへ揚げるという形をとつておるのであります。ところがこれが実際に船積みされて参る様子を見ますと、パナマを経由はいたしますが、そのままアメリカで陸揚げされてしまつて、欧州方面には積み出されておらないというような実情に相なつております。これはもちろんポンドの実勢がいわゆる支拂い協定によります公定率よりも下まわつてつて、その間の利ざやを利用するのが一つ。並びに従来オランダがイギリスに対して売掛金を多額に持つておる、その決済をイギリスがしない。そこでオランダが日本に対するポンドの資金を振りかえ勘定いたしましてこういう措置を講じ、またオランダ自身がそれによつてドル資金を獲得してドルとポンドのさやかせぎをやつておるということが事実として現われておるわけであります。最近になりまして、オランダ自身もイギリスとの間のポンド資金関係が減少して来ました関係と思われるのでありますが、むしろオランダを経由しないで、イギリスを決済地として取引されるというふうに振りかわりになつております。こういうふうな実情になりますと、もともと本来の消費地はアメリカであり、オランダあるいはイギリス方面はもともとの消費地でありませんし、また現実の品物自体もアメリカに売られておるのであります。ただ決済関係で、オランダなりあるいはイギリスなりのポンドを利用するというところにあるわけであります。こういうことは日本の貿易本来の姿ではありませんし、また現実に物の消費される地帶との問題ではありませんで、もつぱら日本が本来ドルで獲得できる外価を、今ポンド蓄積で非常に問題視されておりますポンドに振りかえて、非常に不利な立場に追い込まれておるという事情にあるわけであります。従いまして御承知通り、ポンドの累積問題を契機といたしまして、綿糸布及び化繊につきましては、ポンド地域の輸出を制限しておるような実態にあるわけであります。それにもかかわらず、本来ドルが獲得できる性格のものをポンド地域に振りかえて支拂われるというふうなことは、われわれのとうてい耐えられないことではないか。従つてこの面で、そういうふうな現実に欧州で消費される糸であればけつこうでありますけれども、単なる為替の操作のために利用されておるような取引は、これを押えた方がいいのじやないかというふうな意見も出て参るわけであります。しかしその間の利害得失につきましては、目下関係各省寄り寄り協議いたしまして、まだ確定もいたしておりませんが、事の起りは、そういうふうなことが出発点となつて問題になつておるという実情でございます。
  39. 小林運美

    ○小林(運)委員 ただいまの繊維局長の御答弁によりまして、かようになりました経緯はわかりましたが、繊維局長のお考えでは、綿糸布あるいは化繊というようなものを輸出の指定品目に加えてやつておる。これは私はある程度認容ができるのじやないかと思いますが、生糸の場合におきましては、綿糸布や化繊とは非常に性質を異にしております。御存じのように、生糸はほんとうに日本の土からできたものでありまして、全然輸入関係というものはない。こういうような特殊性も十分御存じのことと思います。そこで綿糸布や化繊がこうだから、生糸もそうだということには、私はならぬと思う。それからもう一つは、もう少し根本的に考えて、日本政府だけでこういうことをおやりになつて、一体どういう効果があるかということなんです。もちろんわれわれはドルが少くて、ポンドが余るというようなことはわかつております。しかしドルにしろ、ポンドにしろ、総体にすれば、やはり外貨は外貨なんです。そういうような点から考えまして、もつと大きな観点からわれわれはこういう問題を考えて行きたい。ところが今の答弁によりますと、とにかくもともとはドル地域——アメリカに行くのだから、経由して行つて、そのためにポンドにかわるということはおもしろくないというようなお考えですが、おもしろくないと言つても、これは一体アメリカの方へ行つてどれだけの効果があるかということなんです。その効果については、もつとまだ深い問題がある。これはあとで申し上げますが、ただ漫然とどうもおかしいというようなことで、こういう重大な問題をきめようとしておる。これは、そう簡単なものじやないと思う。今の話では、各省と相談の上しかるべき措置を講じたいと言つておられますが、もうすでに新聞にも出ておりますし、外国にも通報されておる。こういうことは生糸の消費の全体にかなり大きな影響を持つと思う。昨年の第十二国会におきまして、われわれは、本委員会中心となりまして、生糸、繭の安定、すなわち繭糸価の安定法をつくりまして、生糸の値段は安定しまして、消費の増進に相当の効果をもたらしおるとわれわれは考えておる。こういう際に、こんなドルやポンドのささいなことから、せつかく立て直つた蚕糸業の需要の増進に非常に大きな影響のあることを、たつたそれだけの理由で通産当局が考えてやるということは、重大問題です。こういうようなことを、われわれはもつと広く考える必要があると思うのだが、これに対してはどういう考えですか。
  40. 記内角一

    ○記内政府委員 これは根本の問題に触れますので、われわれも貿易の拡大する方向に持つて行かなければならぬということは、御意見と同じような考え方を持つてつておるわけであります。ただ現実の問題といたしまして、御承知通り、ポンド地域に対する輸出を押えなければならぬというような事態にまで立ち至つておるわけでありまして、従いましてこの観点から見ても、やはりこういう措置をとらざるを得ないのじやないかというふうな観点にも相なるわけであります。もちろん綿糸布がそうだから、当然そうしなければならぬということもないようにも考えられるのであります。しかしたとえば化繊あたりになると、これはほとんど国内の資源で、一部は輸入もあるようでありますが、ほとんど国内の資源でやつてつておるわけであります。それにもかかわらず、まだこういうような事態に相なつておる。ことに繊維なり、化繊、綿糸布ということになりますと、日本の今までの経済常識から申しましても、むしろ本来ならば、ポンド地域にしか出ない、ドル地域にはほとんど出し得ないような昔からの歴史的な因縁もあるわけであります。そういうところにかかわらず、なおポンド地域に対して輸出を押えなければならぬというような事情が問題になるわけであります。従いましてわれわれといたしましては、こういう現状が続きます限り、同じような観点に立たざるを得ないのじやないかというような考え方もいたされるわけであります。なお生糸の問題は、御承知通り、人絹あるいは最近の合成繊維その他新しい絹にかわるような糸もできておりますけれども、何と申しましても、絹は日本はほとんど独占的に供給しているわけであります。従いまして綿あるいは化繊のように、日本が輸出を押えれば、ほかから進出して来るというふうな性格のものとも違つて参るわけなんであります。それやこれやを考え合せますと、今言つたような方向もまたやむを得ないのじやないかというふうな考え方も出て来るわけでありますけれども、目下その点については、先ほど申し上げたように、まだ未決定でありまして、目下それぞれ折衝を続けておるような次第でございます。
  41. 小林運美

    ○小林(運)委員 化繊の問題、あるいはそういう考え方もあるかもしれません。しかしもつと根本的な生糸の問題は、私はもう少しあなた方によくわかつてもらわんければいかぬと思うのです。現在の生糸の輸出の状態をいろいろ見ていますが、先ほどあなたは、ほとんどアメリカだと言つたが、戦争後においてヨーロツパの生糸の消費というものは、割合から言えば、相当伸びておりますむこれもよく考えなければいけない。最近のオランダ等の場合は、あるいはそういうことがほとんど大部分かもしれないけれども、その他の国においては、必ずしも三角貿易だけではない。これは指定すれば、ヨーロッパへ行くものははつきり行くからいいと言いますけれども、自然の経済現象を、弱体な日本政府の力でこういうようなことをやつて、その受ける影響は、ただ現在生糸が一月何万俵出て、それがどうして、これだけ入るというようなそんな簡単なもんじやない。われわれは将来の問題を考えている。生糸は戦争前は数十万俵輸出されておつた。最近の輸出はその四分の一にも満たない。こういうような関係で、われわれはどうしても生糸は、輸出をして、ドルなりポンドなりを稼ぐ一番大切なものと考えている。その際にごういつた自然的な経済現象、こういう貿易の形態を、単なる一片のそういつた理由から押えるというようなことは、やるべき政策ではないと私は考えております。なお通産当局も、これは一部の考えで、全部がこういうふうにきまつて、すぐやるのでないというふうなお話でありますので、私はこれ以上追究いたしませんが、われわれはそう考えております。  そこで私が一番心配しているのは、将来の輸出の問題であります。現在われわれは、こういうような形で消費が減つているのを、三角貿易によつて辛うじて生糸の消費が維持されているんじやないかとも考えられる。そういうようなことをずつと考えて行きますと、むしろヨーロツパ諸国の犠牲において日本の生糸の消費宣伝をやつているんだ、こういう考え方も起きるんです。そういうような意味から、将来の生糸の輸出という大きな観点からすれば、こういうものをいたずらに一片の政令で押えるというようなことは、非常に危険な問題と私は考えます。われわれはさような見解を持つておりますが、こういう問題について、農林当局は一体どんなお考えか。蚕糸局のお考えもこの際承つておきたいと思います。
  42. 寺内祥一

    ○寺内政府委員 ただいま生糸の輸出問題についていろいろ御意見を伺いまして、私どももまつたく同感に思う次第であります。  まず第一に、現在生糸の輸出がドル地域にあまり伸びておらないということは、やはりアメリカと日本との価格の逆ざやによつてそういう事態になつておるのでありますから、今後これを伸ばすことにつきましては、極力生糸の生産を合理化し、生産費を低めまして、アメリカでも買い得るような価格にまで持つて行くという努力をいたすべきであると思うのであります。  それからさしあたつての三角貿易の問題でありますが、これはそういうような事情で、ドルへ直接伸びにくい状態にあるところにポンドの自主性その他オランダ政府もやつていると言われておりますドル・ドライヴの優先外貨制を利用して三角貿易に出ているのであります。われわれの考えといたしましては、これはなるほど為替上の問題ではありますけれども、生糸の立場から見ますと、ポンドを経由してアメリカに参つても、その生糸が日本の生糸であるということはアメリカ人はよく承知しているのでありまして、オランダ人が売ろうが、イギリス人が売ろうが、これは日本の生糸であるということはだれも疑わないのであります。従つてそういう経路でアメリカで消費されるにいたしましても、アメリカにおける市場を確保しておくということは、将来の生糸の輸出を確保する上において非常に大事な点であります。ただいまは化学繊維も非常な進歩をいたし、生糸にかわるディクロンとか、その他の化学繊維に侵蝕されるおそれが非常にあるのでありまして、生糸としては賜い立場にありますので、せつかく確保してある市場もこの際失つてしまうということは、生糸の輸出の将来について非常に大きな問題だと思います。従つて三角貿易ということが為替政策上問題があるならば、まず第一にドルに対して輸出ができるような制度を考えてもらいたい。そして次には為替政策においてこれを考慮すべきものであつて、様子を見て、なおかつこういう状態があるという場合に最後に考えるべき問題である。そういう諸般の制度をまずとつてもらう。生糸の輸出を許可制にして、頭からこれを押えるということは最悪の手段であろうとわれわれは考えまして、ただいま関係方里いろいろ折衝中でございます。
  43. 小林運美

    ○小林(運)委員 蚕糸当局の考え方は私たちもまつたく同感です。ただいまのお話にもある通り、大体この三角貿易をやるヨーロツパ諸国の立場になつて考えてもいいが、ただこの問題はドルとかポンドの決済関係というようなことだけでわれわれは考えたくない。特に世界の生糸の大部分を占めている日本が、ヨーロツパヘはやらぬでアメリカヘやるのだということにすれば、よそへ行かずに直接アメリカへ行つて、かえつていいのだというような単純なものでないということを、はつきり通産当局も認識してもらいたい。それから今の御答弁によると、通産当局と農林当局との考え方はまつたくかわつているのです。このようなことでは、われわれはこういう重大な産業を、現在の政府にまかしておくことはできないというようなことも考えられる。よろしく通産当局並びに農林当局、あるいは為替管理を担当している部面においても十分連絡をとり、こういう輸出の阻害になるような措置は絶対とつてもらいたくないとわれわれは考えます。今通産当局の言うように、これを許可品目に加えるということは、輸出をとめるということと同じことなのです。もしこういうことがあれば、現在のポンドの問題はあるいはある程度解決するかもしれないけれども、将来この市場を失つた責任は一体だれがとるのかということが問題だ。一体あなた方はそういう腹を持つておやりになるのかどうか。この点は非常に大事なことだから、通産当局は十分考えて御答弁を願いたいと思います。
  44. 記内角一

    ○記内政府委員 お話のような趣旨もございますので、それらの点を十分考え合せまして定めて参りたいと思つております。
  45. 小林運美

    ○小林(運)委員 はつきりしないのですが、私が申し上げたのは、あなたの先ほど来のお考えでは、まだどうも私には納得できない。場合によつては、農林省があるいは為替の方がやりたいというふうにも考えられる。もしそういうことをやつた場合に、生糸の消費量が減つて、われわれの大切な市場が失われたらどうするかという問題、これにはあなた方保証ができるかどうか、できないからやらぬというならけつこう、どつちなんですか。
  46. 記内角一

    ○記内政府委員 私ども考え方といたしましては、そういうことはないものと考えております。なおそういう御意見もありますので、十分あわせて考えている次第であります。
  47. 小林運美

    ○小林(運)委員 これは繊維局長でありますので、通商関係についての責任を私が問い詰めても、あるいは無理かもしれませんけれども、本日はそういうような全般の問題につきまして通産大臣、あるいはいなければ次官でもと思いましたが、だれも来ていない。これは繊維局長をこれ以上追究してもしかたがないけれども、少くとも繊維局長は、私が先ほど申し上げましたように、もしこういうようなことをやりまして、輸出の市場を失う、あるいは商機を失うというような問題が起きたら、これはたいへんなことだ、あなたも通産省の重要なポストにおられるのだから、この問題については十分考慮の上、無謀の措置を講じないように、十分御注意を願いたいということを申しまして、この問題はまだ解決したとは思いませんので、しかるべき機会に責任ある通産当局の出席を願つて、この問題を解決したいと思つております。本日はかような陣容ではこれ以上の質問ができませんので、この程度にとどめておきたいと思います。
  48. 松浦東介

    ○松浦委員長 小淵君。
  49. 小淵光平

    ○小淵委員 ただいまこの生糸輸出に対する承認の問題について小林委員から質問がありまして、これ以上追究するのをやめておきましようという話があつたけれども、私はこの問題は非常に重要な問題だと考えているわけであります。生糸の特殊性ということは、私が申し上げるまでもなく繊維局長よく御存じのことでありますので、説明する必要はありませんけれども、もしこれをチエツクするということになりますと、結局ポンド増加によるところの犠牲は農民が負わなくてはならないという結果が現われて来るという一面も、これは見のがしがたいものであるということを認識しなくてはならぬと思う。また商取引というものがしかく簡単なものでないということは、もうよく御存じでありましようけれども、この三角貿易の行われているということは、たとえばオランダからアメリカにまわつている生糸に対し、オランダがドル獲得について一割の外貨制度の設けられているその利益を、生糸の輸入に少し負担しようというところにこの問題が起きておるのであります。従つてもしここで生糸の輸出を承認制をとつて許可品目に加えるということになりますと、輸出の減限するということは当然なことであります。もしオランダに輸出をするということができないことになれば、商人というものは非常にはすを食つているから、すぐアメリカの輸出に響いて来るということは、これは言をまたない結果になつて来ます。そうすると、今年の繭が一割五分増産されると、輸出の商品もそれだけふえて来るということになりますれば、これに反比例して輸出の減退に油を注ぐという結果になりますので、これは重大な問題だというふうに考えております。そこで一体ポンドのふえるのをどうチェックして輸出を増加するか、繊維局としてこれに対する施策を考えて行かなければならないと思うのであります。これはもちろん根本の問題になりますけれども、たとえばポンド地域に出る商品、生糸については輸出税というようなものをかりにとつて、ドル地域に輸出するものにこれをカバーして行くようなことが一面考えられるならば、こういう問題を漸次チエツクして行くということができますけれども、ここで簡単にポンド地域の輸出をぴたりととめてしまうということになりますれば、それがドル地域にすぐ響いて来る。これは日本の生糸がドル獲得の一番重要な使命を果しているものであるとするならば、これのある程度道を開いて、漸次これを改善して行くということでなければ、かつての副蚕糸が許可品目になつている、これをとめたために製糸業者あるいは紡績原料の生産業者に言わせれば、これははたしていらざる施策であるというような非難も受けたことがありますけれども、それと同様な結果になつて来るおそれを私は十分考えますので、この問題はただこうする以外に手がないのだというようなことでなく、生糸の特殊性というものをよく考えて、この施策を講じなければとんでもないことができる、こういうふうに考えますので、他に選ぶべき道が全然まくて、この方途を選ぶよりしかたがないのだという考えで繊維局長がおられるかどうか。研究の余地が十分あるのだ、今農林省が心配されているような点を協議して、何とか他に施策をもう少し施して、ポンドの増加を阻止するようにでき得る道を講ずるという考え方があるかどうか、これをひとつお伺いいたしたいと考えるのであります。
  50. 記内角一

    ○記内政府委員 私どもも根本の考え方といたしましては、みすみすアメリカに輸出してドルがかせげるものが、いろいろな経済事情の差異によつて、オランダなりあるいはイギリスを経由して、実勢力の弱いポンドの決済に振りかえられている。これを何とか阻止したいというのが根本の考え方であります。生糸の輸出自体を押えるということが目的でないわけであります。従いまして私どもその本来の目的が達成されるような方法は、必ずしも今申し上げたようにポンド地域に対する輸出を押えるということだけが唯一の方法とは考えておりません。もちろんポンドとの円との日英支拂協定におきまする。パリテイの問題も検討いたさなければならぬと思いますし、また輸出税を課することによつてこの間の一種の調整資金的な考慮を加えるということも一つの方法でありましようし、あるいは対ドル価とのバランス、比率というようなこともあわせて考えるということも一つの方法でありましよう、あるいはこれらを総合してやるということも一つの方法でありましよう。ただ現実の問題として、それらいろいろ考えられます手を打つことは、逆にほかに事務上いろいろな副作用を及ぼして来ることが憂慮されるわけなのであります。従いましてこれらの利害、得失を十分検討いたしました上で、最善とまでは行かなくても、これに次ぐような方法をとつて、本来の目的を達して行かなければならぬというふうに考えているわけなのであります。
  51. 小淵光平

    ○小淵委員 何らか他にかわるべき施策を相当考慮するという言明でありますので、私はぜひそうやつていただきたいことを念願するものであります。たとえば繭糸価安定法ができましても、その一つのねらいは、輸出を増進させたいために繭糸価安定に対して国の一般会計からあれだけの金を出してやろうとするものも、何とか輸出を増進させたいという意図があるわけでありますので、もしこれと逆行するようなことが結果的に現われて参りますならば、これはとんでもないことになると思います。今新聞等に伝えられているところを見ますと、輸出許可品目の中にそれを入れてチエツクする以外に方法はないのだという方途のみ選んでいるように見えますので、私は非常に心配をいたしているわけでありますが、この問題については、他に最善の選ぶべき道を選んで施策を講じていただくことを強く要望いたしておきたいと存じます。     —————————————
  52. 松浦東介

    ○松浦委員長 次には、駐留軍の用に供する農地使用及び収用に関する件について調査を進めます。  なお本委員会におきましては、すでに本件につきましては数回にわたつて委員会を開いて調査を重ね、使用または收用地の選定、補償等の問題についての本委員会の意思を表明いたして参つたのでありますが、この問題のその後の経緯について、まず政府説明を求めたいと思います。
  53. 平川守

    ○平川政府委員 駐留軍の用地、特に演習地、飛行場等の問題につきましては、御承知のごとく日米合同委員会において個別的に検討をいたしておるわけであります。まだ演習場あるいは飛行場等につきましては具体的に決定をいたしたものはございません。私は農林省の代表として出ておるわけでありますが、先方からのいろいろな要望候補地については一覧表を受取りまして、現在その一つ一つについて検討中でございまして、これを決定いたしますのはおそらく来月一ぱいはかかることと考えております。  なお補償の問題につきましては、先般来御説明申し上げましたように、補償の基準につきまして大蔵省折衝をいたしておつたのでございます。意見の違いました点につきましては、ごく最近事務的には話合いを大体つける段階に至りました。問題となつておりました土地收用の場合の、接収の場合の作離れ料の問題につきましては、農業所得の四箇年分ないし六箇年分の間において、その土地の状況に応じまして、近傍地における売買の実例等、いろいろな点を参酌いたしまして、その間においてきめて参る。それから使用料の問題につきましては、年所得の八割程度を補償するということに事務的には話合いをいたして参つた次第でございまして、なお正式の政府の決定ではございませんけれども農林省といたしましても、この程度で満足すべきものというふうに考えました次第でございます。大体その後の経過は以上の通りでございます。
  54. 松浦東介

    ○松浦委員長 これに関連の質疑をこの際許します。遠藤三郎君。
  55. 遠藤三郎

    遠藤委員 駐留軍の演習用地、あるいは飛行場、さらにまた警察予備隊の演習地等の問題につきましては、当委員会におきましても再三これを問題にしまして、先般委員会の決議として一つのはつきりした線をここに出して、政府当局に要望しておつたわけでありますけれども、その後の事情を見ておりますと、ほとんどこの委員会の要望を考慮しておらないのではないか、こういうような感じを受けるような動きになつておるのであります。それから私ども非常に心配しておりますことは、やたらにどんどん演習地をとつて行くのではないか。この間私ども非常にびつくりしたのですけれども、富士山をよこせというようなことを言つて来た。こういうばかなことをだれが言うのか知りませんけれども、大まじめになつてそういうことを言つておられる。ところが富士山をもし演習地にとられましたならば、あれはきれいな山だから困るとか何とかいうそんななまやさしい問題ではない。あれを演習地に使つて森林を伐採して、あるいはブルトーザ等でならしてしまいますと、あの急な山でありますから、土砂がかぶつてしまつて、あの富士山の周辺の農村では数十万人の農民がえらい目にあう、とんでもない問題でありますけれども大まじめに富士山をよこせと言つておる。一体そんなことを駐留軍は言うことができるのかどうか。国民としては、とんでもないことになつたというので、非常に心配をしております。そこで私ども思うのに、従来政府の必要から土地を取上げるときには、土地收用法というものがあつた。土地收用法に基いて、成規の手続を経て收用をする。その收用の必要がはつきりした場合でなければ收用してはいかぬ。しかも收用した場合には、それに相当する損害の補償をするという建前になつておりまして、被害者は正当なる補償の要求ができたのであります。ところが今度の場合には、どうもそこらがはつきりしておらない。何か安全保障條約、日米行政協定に基いて変な力が動いて来るような気がする。富士山の場合でも、今までの日本政府の建前であれば、ちつとも心配はないのでありますけれども、とんでもない力が動いて来るのではないかということで、富士山の周辺の数十万の住民は、戦々きようきようとしておるわけであります。一体今回の接收についての手続あるいは実際の動きというものは、どういうふうになるのであるか、土地收用法との関係を考えて、どう違つて来ておるのであるか、その点をお尋ねしたいと思います。
  56. 平川守

    ○平川政府委員 駐留軍に対する演習地等の提供に関しましては、まず日米合同委員会におきまして、その候補地を決定いたすわけでありますが、その場合において、具体的にその土地を日本政府側において收用または使用いたすことの責任を持つておるわけであります。日本側が、これを実際上話合いで買収する場合には、もちろんそれで事が済むわけでありますが、強制的にとらなければならぬ場合におきましては、特別の駐留軍に対する用地の接收に関する法律が、ございましてその内容はほぼ土地收用法と似ておるわけであります。やはり土地收用の手続をとりまして、その手続の際におきましては、農林大臣意見を述べる機会もありまするし、地方関係者が意見を述べる機会もあるわけであります。そういう方法で、最後的には土地收用の手続がとられる。しかし、実際上補償いたすことは、個々の案件についてきめるわけでありまして、そのおよその基準はどういうものであるかということは大蔵当局と折衝しておる。それについて、先ほど申しましたようなおよその標準でやる。具体的にはもちろん個々の場合について話し合い、または收用の手続できめて行く、こういうことになるわけであります。
  57. 遠藤三郎

    遠藤委員 先ほどの農地局長説明によりますと、接收の大体の面積について、駐留軍当局から一応の要望か出ておる。この要望はどの程度であるかと言いますと、今全国各地で非常にたくさんの土地がとられるのではないか、どんどん切捨てごめんでやつて来るのではないかということで、非常に心配しておる。また與えられた一つの地域につきましても、その面積等が非常に問題でございます。この委員会で再三要望しておりましたように、熟畑をとられては困る、農地をとられては困る。それは農民の生活の上からいつてとられては困るだけでなく、日本の至上命令である食糧増産の上からいつても非常に困るということを再三言つておつたのでありますが、この駐留軍が欲しいと言つて来ておる面積、個所数等は、大体どの程度になつておりますか、もしここではつきり表明することができますならば、この国会で明らかにしていただきたいと思います。
  58. 平川守

    ○平川政府委員 実はまだ正代の申出という段階になつておりませんで、日米合同委員会の各分科会、演習地の分科会あるいは飛行場に関する分科会等がございまして、その分科会において、実際上の折衝をいたしておるわけであります。その分科会に、先方の係官から、この土地はどうか、この土地はどうかということを言つて来るわけでありますが、話合いの間において、これは無理だからやめようということがだんだん出て参ります。従つて現在まだそれについての最終的集計というようなことはやつておりませんけれども、大体において従来米軍が使つておりました土地が中核をなしております。特に北海道あるいは九州等において、大きな面積を若干拡張したいという希望がありました。しかしそのうちいろいろ話合いの結果、たとえば九州において、比較的大きな面積を占めておりました阿蘇久住の地区のごときは、向うでこれはやめようということを言つてつておるような状況で、また北海道におきましても、まだ最終的にはきまつておりませんけれども、交渉の間において、向うからここはやめるというのがだんだん出て来ております。従いまして最後的な集計をいたしておりませんが、新しく拡充したいという非常に大きな面積の部分は、そういうところにございます。そのほか比較的面積は小さいけれども、耕地であるという点において問題になるのは飛行場の関係であります。これについては若干——二、三百町歩と思いますが、そのくらいの面積を拡充したいという希望が、正式ではありませんけれども、向うから実際上提案されておる。こういう状況でございます。  演習場につきましては、特に極力農地を避けるという方針で、この方針については、合同委員会でも、アメリカ側としても極力そういう方針をとるということには賛成しておるわけであります。従つて個々の地区について、今われわれとしましても、できるだけ、かりに拡張するにしても耕地を避けて、その他の山林原野等に拡張を求めるということに交渉しておるわけであります。ただいま具体的な数字を申し上げかねますが、大体の状況はそういう状況で、ございまして、富士山についても、口頭で最初ちよつとどうだろうかという話があつた程度でありましたが、これが非常に喧伝されまして、積極的に、向うから拡充はやめるということを申して参りましたので、結局富士山については、現在向うの接收しておる程度に治まつたわけであります。従いまして、拡充面積というものは非常に大きくはないというふうに考えております。
  59. 遠藤三郎

    遠藤委員 どうも合同委員会における審議の内容を外部から見ておりますと、日本政府が非常に弱いような気がする。向うの言う通りになつて行くような気がして、非常に共産党の諸君は喜ぶようであります。宣伝のために非常に喜ぶと思いますが、そういうふうに喜ぶのではなくて、われわれは、あくまで農民の自主性を認め、農民の要望を強く反映することができるような合同委員会でなくてはならなぬと思う。実際合同委員会においては、日本政府側の要望が通るのか通らないのか、最後には切捨てごめんでやつておるのか、あるいは日本政府の要望がほとんど通るような状況になつておるのかどうか、それらの事情について説明を願いたいと思います。
  60. 平川守

    ○平川政府委員 合同委員会の建前といたしまして、もちろん駐留軍日本防衛のために駐在するという目的を達成することについて、できるだけ協力するという建前はもちろんとつておりますけれども、しかしアメリカ側としましても、日本の民生あるいは食糧生産に対する影響というものは十分考えております。従いまして先ほどからも二、三の例を申し上げておりまするように、日本側としても、決してアメリカの言う要求を全部そのままのんでおる、あるいは無條件に押されておるとかいうようなことは、私は絶対にないと申し上げてさしつかえないと思います。日本側においては、向うの立場から見ればもつともであると思うようなことまでも、ずいぶん強硬にこちらの民生上、あるいは生産上支障のある点についてはつつぱつておるような状況で、ございましてもちろん最後的の決定は、閣議でおきめになる問題でございまするけれども、合同委員会段階におきましても、先ほど来二、三の例を申し上げておりまするように、当初の向うの提案の地区をだんだんと遠慮してくれでおるような状況でございまして、決して御心配のようなものではないということを申し上げてさしつかえないと思います。
  61. 遠藤三郎

    遠藤委員 ただいま農地局長の御意見を伺いまして、非常に心強く思うわけでありますが、この問題は日本の将来の問題としましても、きわめて重要であります。どうか全国民の要望をになうようなつもりで強硬にやつていただきたい。われわれは農地局長のそのがんばりに対してあくまで支援して行く考えでありますから、ひとつ強硬に日本の要望を入れるように、主張していただきたいと考えるわけであります。  次に私は補償の問題についてお尋ねしたいのであります。進駐軍に従来接收された用地の賠償問題については、私は実は非常に手をやいております。過去四年間にわたつて賠償の請求をしておりましたけれども、すつたもんだすつたもんだしておつてちよつとも拂わない。あるときは第八軍の方に二十数回にわたつて請求を出したことがあるのでありますが、あの書類が悪い、この書類が悪というようなことを言つて、とうとう拂ないでしまつた。過去四年間にわたつての賠償を、ようやく講和條約が発効しましたので、日米合同委員会とか何とかいうようなところで、日本政府が拂つてくれいうようなことを言つておる。その問題は何かというと、やはり作離れ料であつたわけであります。作離れ料は農民の側からいいますと、その土地を取上げられたために、生活がもうできなくなつてしまつている。しかも転業しようと思つても資金が何もない。その賠償をもらわなければ生活ができないような窮地に追い込まれておる。それにもかかわらず賠償の支拂いがどんどん延びてしまつて、今日においても昭和二十二年あるいは二十三年の損害をまだもらうことができないような状況でございます。これはゆゆしい問題であります。おそらくこういう問題は全国各地にあると思うのでありますけれども、この賠償の手続、進行状況は、どうしてこういうふうに遅れておるのか、その点について一応の説明を求めたいと思います。
  62. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 私の方から申し上げる方が適当かと思いますので、私の方から申し上げます。ただいまのお話の点は、従来接收せられました農地におきまする作離れ料その他当初経費と申しまするか、接收の当初におきまして拂うべき経費で、ただいま遠藤委員の御指摘のような連絡関係のいろいろな手続がございまして、支拂いの遅延をいたしております部分、それをどうするかという御質問でありますが、遠藤委員の御指摘のような事態が各地にあつたわけであります。この点は大体従来は特別調達庁が調査をいたしまして、金額はちよつと私正確に記憶をいたしておりませんが、今おつしやる作離れ料だけでございません。これは普通の地代あるいは家賃に類するもの、あるいは立のき料に類するもの、そういうものを合せまして、全体でたしか二、三億程度になつておつたかと思います。そういうものにつきましてこれの支拂いをいたしまする点は、現在特別調達庁の方で案をつくつております。この方は予算関係もございますので、具体的なことは特別調達庁から申し上げるかと思いますが、支拂いのできる段階になつております。  それから今後の作離れ料の点につきましては、先ほど農地局長がお答えになりましたような見当で、今事務当局と話合いをいたしておりますので、この方の話合いのつき次第その基準に従つてつて参るということになつております。
  63. 遠藤三郎

    遠藤委員 作離れ料の基準の問題でありますが、この基準については農民の方も非常に強い関心を持つております。何となれば、土地をとられてあとの生活の転換をしなければならぬ、その転換の資金になるわけでありまして、これを涙金程度のもので追い拂われては、農民の方としても黙つているわけに行かないわけであります。聞くところによりますと、本委員会がさきに要望したあの線でいろいろ相談が進んでいるようでありますけれども、私どもの今まで聞いていたところによりますと、大蔵省は進駐軍の袞龍のそでに隠れて、なるべく削ろう削ろうとする空気が見えていて、大蔵省けしからぬということで、大いに憤慨しておつたのでありますけれども、今のお話では大分手続は進んで来たようであります。ただいま農地局長の御説明がありましたように、どうか最小限度の線として、この線を早くはつきり確定して、一日もすみやかに農民を安心させるようにしていただきたいと思います。この点いつごろになるかということを、大蔵当局からもう一度はつきり伺つておきたいと思います。
  64. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 農地局長が先ほど申されました話合いに基きまして、最近の次官会議あるいは閣議とかいう形式的な手続をふんで決定いたすつもりであります。
  65. 千賀康治

    千賀委員 関連して伺いますが、演習地の問題につきまして、たとえば東京の近郊である千葉の習志野、名古屋の近郊である小牧とかいう所がまた問題になつているのでございますが、ここは昔から練兵場だつたので、今日でも練兵場にすれば便利だと思うのは常識でありますが、昔は馬に乗つた兵隊が砲車をがらがらひつぱつて行くとか、あるいは歩兵がオイチニで歩いて行くというのが演習であつたのですが、今は飛行機あるいはオート・ジャイロ、一番速力のおそいものにしても自動車、言いうものがどんどん利用されますので、日本ぐらいの広さの国土であれば、必ずしも昔と同じ考えに立つてこういう近郊に大演習地をつくらなくても、おそらく軍事目的は達するだろうと私は考えます。ことにその点は私自身がかつて軍人であつただけに、よけいその感じは深いのでありますが、まだ日本の未開の山は七十万町歩といわれているくらいでありますから、政府の方で演習場になり得るような広い未開の土地をみずから進んで指定、提供いたしまして、この所を演習地にしてはどうだとか、あるいはこれに番号でも打つて、将来演習場をふやすならば、この番号のうちの適当な所を選びなさいとやれば、今せつかく畑にした百姓たちを震駭させないでも、適当に乗りかえて行けると思いますが、どうもそういうはからいが政府にないように思う。私は愛知県のうちで問題が起れば、愛知県の適当な所を新たに選んで、進んで提供してはどうかということを必ず知事に進言しておりますが、それを日本全体でかようなはからいをすれば、これは私は非常に摩擦が少くて、目的が達せられて行くと思います。ことに兵隊をもつて土地を開くということは、妙な言い方でありますが、地方状況から言いますと、昔の演習場が畑にかわつた、そこでフルに麦や米ができてみても、その収穫がどれだけだ、そこに入つておる農民がどれだけだ、その人々の購買力によつてその文化が刺激せられるところ、あるいは購買力が刺激せられる部分はどれだけだ、むしろそれは昔の演習場に返してたくさんな人間が入つた方が村の発展になるのではないかというような観点から、むしろ演習場を持つて来いというような運動も私らの手元にも来ておる。こういうようなことからいつても、不毛の土地、今までまつたく顧みられなかつた山の中の広い所に、そういうようなわけで人がたくさん入つて広げるということになれば、これはなおさら一石二鳥になるので、ただ既存の耕地を押すな押すなといつてやりとりをするよりも、進んで新しい所を選ばれてはどうか。こういう研究が農地局の中ではつきりできておるかどうか、その点をお伺いするのが一つ。  それから習志野あるいは小牧等は、もうすぐにも土地をとられてしまうというようなことを想定して、一作をやつてしかるべきか、一作を待つべきかというようなことで問題が起きて、手につかぬ。これはなおさら国家的な損害でありますが、かような問題をはつきりしてやれると、あれもこれも解決がつくのだろうと思いますが、農地局長はそういうような線でお考えになつたことがあるかどうか、伺いたいと思います。
  66. 平川守

    ○平川政府委員 第一点の、できるだけ新しい、たとえば開拓予定地のような、まだ耕作をしておらない所を提供することによつて耕地を避けるということにつきましては、私どももまず第一にその方法を考えておるのでありまして、駐留軍の演習を全然やらないというわけに行かない以上は、ある程度の土地を提供しなければならぬ。それについては耕地を避けて、できるだけ山林、原野等においてやつてもらいたいということについては、農林省でもいろいろと、たとえば開拓の適地というようなものも調べておるわけであります。そういうまだ開拓者が入つておらないような所をできるだけ使うようにやつてもらいたいということは、極力その方針でおるわけでありまして、連合軍側に対しましても、そういう候補地でしかるべきものについては、これはどうか、あれはどうかということで提供をいたし、場所によつては両方で共同調査するというようなことまでもいたしておるような次第であります。今後とも米軍だけでなしに、予備隊の問題もございますし、極力そういう方針で行きたいと考えております。  それから第二の問題につきましては、もちろん私どものところへいろいろ見える方々に対しましても、本年の作付はとにかくやるべきだ、そうしてこれは補償の問題にも関係をいたします、作付をして、それが損になつたということはないわけであります。従つて万一その場所が、作付後接收されるようなことがありましても、決して迷惑はかけない。従つて作付は絶対にすべきものだというふうに申しておるのであります。なおできるだけすみやかに決定をするということも、非常に必要であると思うのであります。しかし先ほどからお話がございますように、われわれとしても極力耕地の接收を避けたい、圧縮をしたいということのために、時間をとつておるわけであります。いずれにいたしましても、来月中くらいには大体のところはきまるというふうに考えておりまするが、そういう関係で遅れておるわけで、できるだけすみやかに、はつきりしたものをきめたい、かように考えます。
  67. 松浦東介

    ○松浦委員長 井上良二君。
  68. 井上良二

    ○井上(良)委員 先般本委員会において私は、今問題になつております伊丹の飛行場の拡張問題について質問をいたして、政府の善処を要求したわけでありますが、御存じの通り二十四日の晩から五日の朝にかけまして、この伊丹飛行場の東に隣接いたしております小高い待兼山という山があります。この山の中に阪大の北分校という校舎がございますが、ここに軍用地接收反対あるいはアメリカ軍の撤退要求等の目的をもつて、左翼分子を中心とする一千人からの人が集まりまして大きな問題を起したことは、新聞やラヂオですでに報道されております。私はかくのごときことが起らないために、この問題のすみやかなる解決を政府に要求いたしたのであります。その後本問題について、岡崎外務大臣に会いまして話をしましたが、岡崎外務大臣は全然そんなことは知らぬと言う。実に驚き入つたことで、あれほど大きな問題になつておる軍用地接收の反対が、具体的に合同委員会でどういう話になつているか、その当面の責任者たる外務大臣が全然知らない。まだ大臣まで報告するに至つていない事情にあるかもわかりませんけれども、もしさような状態であり、また本日農地局長は、軍用地接收の問題は当該合同委員会において目下検討中である、まだ具体的には何ら決定したものはないということを言明されたのでありますが、もしさような経過にありますならば、この際ひとつ農地局長は、日本政府を代表しまして合同委員会に出席する農林省の代表として、特に私が局長に努力を願いたいと思いますのは、この伊丹飛行場の地域関係でございます。この飛行場はもともと民間航空の基地としてつくつたのであつて、戦時中においても軍用飛行場としてはここを使つておりません。というのは、この地域は大阪の唯一の住宅地帶といいますか、大阪の北方の住宅地帶として非常に重要視された土地であり、当該飛行場を中心にして西に伊丹市があり、東に豊中市があり、北に池田市がある。ちようど伊丹、豊中、池田の三市のくぼ地の中に飛行場があるわけであります。従つて三市居住の市民約二十万が、その飛行場の拡張という問題に直接、間接に大きな関心を拂い、利害を持つて来るわけでありましてすでに問題になつております拡張計画によりますと、農地がざつと百五十町歩接收される、それからこの拡張工事に伴つて、飛行場の西側を流れておりまする猪名川から伊丹地区並びに豊中地区に対して、用水路の堰があつて、ずつと約六、七百町歩に及ぶ水田への灌水をはかつておるのであります。この用水路が、飛行場の今度の拡張計画のまん中を横断しております。そういう関係からこれを全部つぶさなければならぬ。もしこの用水路をつぶすということになりますと、豊中方面の地区だけでも、少くとも四、五百町歩の農地は全然灌水ができなくなつてしまう。また伊丹から豊中に向つて一つの幹線道路が通つておりますが、この道路が全然使用不能になつてしまう。それから拡張計画の南方に高圧線が通つておりまして、この高圧線をどうするかという問題も、これまた非常に大きな問題であります。同時にまた拡張区域の南端に小学校があります。そういう関係農地、用水路、道路、高圧線、学校施設、こういうもろもろの施設を全部あわせて考えますと、これは非常に重大な問題になりますし、われわれが専門当局といろいろ打合せをして、話を進めておりますと、もし現状のままで百五十町歩の農地を接收して飛行場を拡張するということになりますと、三十億からの補償をしなければならぬだろうということが言われております。そうなりますと、一体三十億もの補償を出して、しかも約二十万の関係市民に非常な不安を與え、しかも実際はこれを実行するのに非常に困難が伴つて来るということからして、これを飛行場として拡張することに、地元三市はまつ向から反対しておるのであります。軍用飛行地として大阪に接続します郊外の三市の中心部に拡張することが妥当であるかどうかということは、およそ常識でわかるのであります。これは京阪神を守る防空の必要から、この飛行場を拡張することがよいという先方の考えかもしれないけれども、御存じの通り京阪神をかりに空襲しようという場合は、日本に基地のないものが空襲に来るのでありまして、そうなりますならば、多少京阪神から場所が離れておりましようとも、完全に激撃することのでき得る態勢はとることができる。その余裕はあるとわれわれには考えられる。そういう点から、われわれとしては現状の伊丹、豊中、池田を中心とする飛行場拡張には、何としても強く反対を主張しなければならぬと思うのであります。この点に対して農地局長は、これはやむを得ないというお考えでありますか、それともあくまでこれは絶対に反対して進んでいただけますか、この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  69. 平川守

    ○平川政府委員 具体的な伊丹の飛行場の問題につきましては、私もいろいろ実情を伺つておりまして、非常な困難性を伴うことをよく承知いたしております。ただ米軍側の方で、日本の防衛のために若干の飛行場が必要である。これについては協力せざるを得ないと思うのであります。ただその具体的な場所を、民生あるいは生産その他あらゆる面から見て、できる限り被害の少い所に求めるべきであることは当然でありまして、私どもも極力その主張をいたしておるわけであります。具体的なそういうしかるべき土地があるかどうかに問題がかかることと思うのであります。そういう意味においてなお検討いたしておるのでありまして、その検討の結果しかるべき所がありますれば、できるだけそういうところに場所を求めることを主張いたしたいと考えております。
  70. 井上良二

    ○井上(良)委員 問題は他に適当な場所があるならば、こういうことでございますが、これは局長にしても、別にここが適当な場所だということはおそらく頭にもないではないかと思います。こちらの方で適当な替地の場所がはつきりあつて、ここにかわつてもらつたらいいというのなら別ですけれども、そうでない場合は、結局向うの主張をいれることになる危険性が非常に出て参りはしないかと、われわれには考えられます。特に本日午後合同委員会が開かれまして、多分今問題にしております伊丹飛行場の拡張問題も議題に供せられはせぬかと、われわれは憂えておりますが、もし議題に供せられました場合、すでに局長の手元にも、地方からのこれが拡張反対の理由を詳細に書いたものがいろいろ提出されおると思いますから、これは單に農地の取上げに反対するというだけでなしに、三市二十万の市民がもしあそこが軍用飛行場になりました場合には安閑としておられぬという不安が高まつておりますし、その不安をキヤツチしてあばれまわつたのがあの左翼の暴動でありますので、問題は政府がこの問題に対して強い腹を持つて、もしそういうことをやれば、いたずらに国内の治安を撹乱せられ、かえつて反米思想を高める結果になりはせぬかということで、あなたにうんとがんばつてもらえば、向うさんもまた作戦をかえて、他の候補地を探すことになりますから、ぜひひとつその点はあなたにがんばつていただきまして、断固一歩も讓らぬ、單にこれは農地だけの問題ではない、今申します通り農地の取上げだけならば、補償とかその他の方法で何とか話がつきましようけれども、その拡張に伴つて次々に農地が干上つてしまい、その他高圧線あり、学校施設あり、いろいろな問題がそれに伴つて非常な影響を持つて参りますから、この点はあなたは十分腹をきめられて、断固日本の代表者として交渉していただきたい。長い間役人をやつておると強いものに巻かれるくせがついておつて困るのでありますが、その点は平川氏は腹のすわつた局長でありますし、相手がどう言おうか、正しいことはあくまで主張されて来た過去の経歴を私はよく知つておりますので、ぜひこの問題はあなたが最後までがんばられて、かくのごとき所に軍用飛行場を拡張することはかえつてあなたの国のためになりません。こういうことでがんばり抜いてもらいたいことを、私は特に希望を申し上げるとともに、従つて私はこの問題について、具体的に農地の補償をどうするとか、あるいは用水路の変更をどうするとか、そういう問題についてきようは触れません。  この際委員長にお願いしておきたいのは、この問題は單に伊丹飛行場だけではありません。小牧の飛行場も問題になつておりますし、その他進駐軍の用地の接收の問題、予備隊の演習地の問題等非常に大きな問題がございますので、これらの問題を合せて本日はもう時間もございませんし、ここで私が要求します大臣の出席を求めましても間に合いませんから、ぜひひとつ明日でも明後日でも、もう一度本委員会の続会を願いまして、外務大臣並びに外務省のこの問題の直接の責任者であります国際協力局長の伊関さんと農地局長と農林大臣の四人に出席を願い、かつ大蔵省主計局長にも御出席を願つて、農民が安心し、利害関係国民が安心する一つの方針を、政府から十分承ることのできる機会をつくつていただくことにいたしまして、私はこの程度にいたしておきます。
  71. 松浦東介

    ○松浦委員長 本件につきましては他に質疑の通告もありますが、問題がきわめて重大でありますので、次会には外務大臣その他の出席を要求いたしまして、十分調査を難したいと思います。本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  72. 松浦東介

    ○松浦委員長 なお平野君よりダイナ台風による災害に関する質疑の要求があります。これを許します。
  73. 平野三郎

    平野委員 今回ダイナ台風によりまして各地に被害を與えましたが、特に岐阜県の長良川が氾濫をいたしまして、目下被害が拡大中ということでございます。このことにつきましては、すでに昨日の農林委員会で廣川農林大臣に対して緊急質疑を行い、政府の蹶起を要望いたしましたが、これは実は非常に重大な問題を含んでいると思います。今回の出水は、出水としてはそう大なるものとは言えないのであります。すなわち長良川の岐阜市における水位は、警戒水位をわずかに越した程度であつてそう大きなものではありませんにかかわらず、かような被害が発生したことは、長良川の農業水利事業として、農林省が直轄工事として昨年度完成いたしました水門の取入口から決壊をして、さような被害を巻き起したという重大な点があるのでございます。長良川は木曽川、揖斐川とともに河川改修工事を実行いたしました結果、近年はほとんど水害というものはございませんでした。今回の水害も五十六年ぶりでありまして、この間これ以上の水位の上昇をしたことはしばしばありましたにもかかわらず、今回かような悲惨な事態が発生したことは、実に農林省工事を施行した部分から発生を見ていることは、これは單に長良川の問題だけでなしに、農林省の技術当局全体の重大な問題であり、農林省の責任たるやきわめて大といわなければならないのであります。しかも昨年度来から、取入口においてはしばしば漏水して危険な状態があるということで、地元からも再三農林省に対して陳情をいたしたのでありますが、農林省はてんとしてこれを顧みず、何ら補強的な措置もとらないということで、今や県下全体に対して非常な大きな波紋を描いているような現状でございます。目下のところまだどんどん浸水が継続をし、被害が拡大しつつありますので、当面としては応急的な対策に全力を傾注している関係上、まだこれの原因ならびに将来に対する対策等にまで及んでおりませんが、いずれこれがおちつきますと、必ずこの問題が起り、そして地方からの要望も熾烈になつて来るだろうと想像されるわけでございます。これは單にこの問題だけではなしに、農林省全般の土地改良事業のやり方についての本質的な問題も起るかと思われますので、この点について責任者である農地局長としてはどう考えられるか、また今後どういうふうにやられるか、詳しいことは詳細判明した上でお尋ねいたしますが、とりあえずこの際、緊急にこの点だけお尋ねをしておく次第であります。
  74. 平川守

    ○平川政府委員 長良川の氾濫が農林省の直轄工事の地点から起りましたことにつきまして、まことに責任の重大なるを感じておる次第であります。さつそく係官を派しまして、現在その原因、状況等を調査中でございますが、原因が明らかになり次第責任の所在を明らかにいたしたいと存じております。  なお今後の処置につきましては、実情の調査報告が参り次第至急に対策を立てまして現地の御迷惑を少しでも緩和したいと考えております。
  75. 松浦東介

    ○松浦委員長 本日はこれをもつて散会いたします。     午後零時四十六分散会