○井上(良)
委員 先般本
委員会において私は、今問題にな
つております伊丹の飛行場の拡張問題について
質問をいたして、
政府の善処を要求したわけでありますが、御存じの
通り二十四日の晩から五日の朝にかけまして、この伊丹飛行場の東に隣接いたしております小高い待兼山という山があります。この山の中に阪大の北分校という校舎がございますが、ここに軍用地接收反対あるいはアメリカ軍の撤退要求等の
目的をも
つて、左翼分子を
中心とする一千人からの人が集まりまして大きな問題を起したことは、新聞やラヂオですでに報道されております。私はかくのごときことが起らないために、この問題のすみやかなる解決を
政府に要求いたしたのであります。その後本問題について、岡崎外務
大臣に会いまして話をしましたが、岡崎外務
大臣は全然そんなことは知らぬと言う。実に驚き入つたことで、あれほど大きな問題にな
つておる軍用地接收の反対が、具体的に合同
委員会でどういう話にな
つているか、その当面の責任者たる外務
大臣が全然知らない。まだ
大臣まで報告するに至
つていない事情にあるかもわかりませんけれ
ども、もしさような
状態であり、また本日
農地局長は、軍用地接收の問題は当該合同
委員会において目下検討中である、まだ具体的には何ら決定したものはないということを言明されたのでありますが、もしさような経過にありますならば、この際ひとつ
農地局長は、
日本政府を代表しまして合同
委員会に出席する
農林省の代表として、特に私が局長に努力を願いたいと思いますのは、この伊丹飛行場の
地域的
関係でございます。この飛行場はもともと民間航空の基地としてつくつたのであ
つて、戦時中においても軍用飛行場としてはここを使
つておりません。というのは、この
地域は大阪の唯一の住宅地帶といいますか、大阪の北方の住宅地帶として非常に重要視された土地であり、当該飛行場を
中心にして西に伊丹市があり、東に豊中市があり、北に池田市がある。
ちようど伊丹、豊中、池田の三市のくぼ地の中に飛行場があるわけであります。
従つて三市居住の市民約二十万が、その飛行場の拡張という問題に直接、間接に大きな関心を拂い、利害を持
つて来るわけでありましてすでに問題にな
つております拡張
計画によりますと、
農地がざつと百五十町歩接收される、それからこの拡張
工事に伴
つて、飛行場の西側を流れておりまする猪名川から伊丹地区並びに豊中地区に対して、用水路の堰があ
つて、ずつと約六、七百町歩に及ぶ水田への灌水をはか
つておるのであります。この用水路が、飛行場の今度の拡張
計画のまん中を横断しております。そういう
関係からこれを全部つぶさなければならぬ。もしこの用水路をつぶすということになりますと、豊中
方面の地区だけでも、少くとも四、五百町歩の
農地は全然灌水ができなくな
つてしまう。また伊丹から豊中に向
つて一つの幹線道路が通
つておりますが、この道路が全然
使用不能にな
つてしまう。それから拡張
計画の南方に高圧線が通
つておりまして、この高圧線をどうするかという問題も、これまた非常に大きな問題であります。同時にまた拡張区域の南端に小学校があります。そういう
関係で
農地、用水路、道路、高圧線、学校
施設、こういうもろもろの
施設を全部あわせて考えますと、これは非常に重大な問題になりますし、われわれが専門当局といろいろ打合せをして、話を進めておりますと、もし
現状のままで百五十町歩の
農地を接收して飛行場を拡張するということになりますと、三十億からの補償をしなければならぬだろうということが言われております。そうなりますと、一体三十億もの補償を出して、しかも約二十万の
関係市民に非常な不安を與え、しかも実際はこれを実行するのに非常に困難が伴
つて来るということからして、これを飛行場として拡張することに、地元三市はまつ向から反対しておるのであります。軍用飛行地として大阪に接続します郊外の三市の
中心部に拡張することが妥当であるかどうかということは、およそ常識でわかるのであります。これは京阪神を守る防空の必要から、この飛行場を拡張することがよいという先方の考えかもしれないけれ
ども、御存じの
通り京阪神をかりに空襲しようという場合は、
日本に基地のないものが空襲に来るのでありまして、そうなりますならば、多少京阪神から場所が離れておりましようとも、完全に激撃することのでき得る態勢はとることができる。その余裕はあるとわれわれには考えられる。そういう点から、われわれとしては
現状の伊丹、豊中、池田を
中心とする飛行場拡張には、何としても強く反対を主張しなければならぬと思うのであります。この点に対して
農地局長は、これはやむを得ないというお考えでありますか、それともあくまでこれは絶対に反対して進んでいただけますか、この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。