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足鹿委員 ただいま
審議されております
農地法並びに同
法施行法案及び
修正案に対しまして、
日本社会党第二十三控室は
條件を付して
賛成をいたさんとするものであります。以下私
どもの基本的な、あるいは具体的な
態度を明らかにいたしたいと思います。
農地法案は、
現行の
農地関係の
法令が、
講和発効に伴う
ポツダム政令が来る十月二十五日限り失効するので、新たなる
立法措置がない限り、
土地台帳法から
賃貸価格が削られたので、
自作農創設特別措置法の
買収価格の
規定が無効となりまして、今後
不在地主や、一
町歩以上の
小作地を持つ
地主が発生いたしましても、これを放任するのほかなく、また一方
自作農維持金融も、
政府への買取り
申込みは
ポ政令にある
規定でありますから、これが失効いたしますれば、当然
金融の道をもふさがれることとなるのであります。そこでこのまま放任しておけば、
終戰後の
農地改革は
ポ政令の失効に伴
つて逆転して行くおそれが多分にあるわけであります。よ
つてこれを国内法化し、
農地関係法令を本として恒久化せんとする
ところにねらいがあるのであります。
従つて、この
審議の過程に現われた
傾向を見ましても、一部には
本法の
成立を好まない
立場にあるものもあ
つたようでありまして、三月十八
日本委員会に本案が付託されまして以来、三箇月有余も十分なる
審議の機会を與えずして、放任されたままであ
つたことを
考えてみましても、
本法の
成立をめぐ
つて、きわめて微妙なものが動いてお
つたということがうかがわれるのであります。
従つて、わが党は
農地制度の
空白を避ける
立場から、またその
空白がもたらす
農民に及ぼす影響を
愼重に勘考いたしまして、不満ではありますが、一応
本法の
成立に
賛意を表すると同時に、本
法案の内蔵しておりまする矛盾と
問題点を指摘し、これがすみやかなる是正のために
政府が率直なる
態度をも
つて検討せられ、
次期国会に全面的な本
法案の
改正案を提出せられんことを強く要望いたすものであります。以下具体的に検討を必要とする諸点を明らかにしたいと思います。
まず第一に、
本法には
地主的土地制度への復元の余地が與えられておる
傾向が見受けられることであります。すなわち、その
一つは
農地の買受け
資格についてでありますが、
現行法は
農地取得後三
反歩に達するものについて買受けの
資格を認めてお
つたにもかかわりませず、
本法は現在三
反歩以上耕作しておらなければいけないことにいたしております。
従つて、
零細農家の
農地収得を不当に押えつける懸念があるのであります。さらにまた
零細農家が
農地を手に入れようといたしましても、
土地価格は原則的に統制をされて、双方の協議によ
つてきめられることにな
つておりまするから、資金に余裕を持たない貧農は、
土地を手放しても再び手に入れることは
現実的にはますます困難となるであろうということであります。
第二には、
現行法では三
町歩以上の
農地所有は
制限されているにもかかわりませず、
本法ではこの
制限を事実上撤廃しており、かつまた
農地の移動は市町村
農業委員会で行われることとなりまするので、事実上の結果として、貧農の借金の苦しみからいたします
農地手放しは、もし
農業委員会がその運営を一歩誤りました場合には、半ば公然と行われる危険性があることを私
どもは指摘しなければなりません。
従つて、
本法の
運用に当る
農業委員会の整備と、その民主的運営の保証、すなわち階層別選挙への復帰を
内容とする
農業委員会法の改正とが並行して進められなければ、
本法の完全なる運営は至難であろうと
考えられる点であります。
第三点は、
本法は
本法施行前の在村
地主所有一
町歩以上の
小作地は
政府の
買収対象としていないのでありますが、これは明らかに
地主的
土地所有の温存を可能とするものであるといわなければなりません。
農地法案の施行の前後にかかわらず、
制限面積を越える一切の
小作地に対しては、強制讓渡の
措置を講ずることが妥当であると存じます。
第四点には、本
法案第二十條には、
地主にもし耕作能力があり、
小作人が
農地を取上げられても
生活に困らない場合には、
地主の
土地取上げを認めるがごとき表現が用いてありますが、
小作地の
地主への返還
規定は削除するとともに、さらにいかなる理由によるにもかかわらず、
地主の
小作地取上げは許さない
措置を講ずべきであると存じます。
第五点、
買収される
土地の
農業用施設は、市町村
農業委員会の認定によ
つて買収、非
買収を決定することといたしておりまするが、
農業委員会の認定が常に適切であるという保証はありません。また
農業用施設の妥当ならざる温存は、
土地支配のよりどころを残すということにもなりまするから、これは創設
農家が、その創設地におきまして
農業用の利用のために必要として買入れ申入れのある場合に
買収を行うこととすべきことが妥当であると存じます。なお買入れ申入れの期限は
制限すべきでないということを主張したいと思います。
第六点には、国が笹興する
買収済みの
土地、立木、工作物、または権利について、八十條第二項は
買収前の所有者に売り払うべき場合あることを
規定しておりまするけれ
ども、この
措置は旧地五の復位を認めるものでありまするから、当該
條項は当然削除されることが妥当であると存じます。どうしても所属がえがやむを得ない場合といたしましても、これは民有共同地とするように
措置すべきであると存じます。
第七点は、
土地収用法は
農地法に優先して適用される
関係にな
つておりますが、
土地の所有、利用を保証するため
農地に対する保護
規定を明らかにして、
土地収用法の発動を
制限するがごとき
措置が講ぜられるべきであろうと存じます。
第八点として、一括してこまかい問題を申し上げますが、開払
審議会には当然
開拓民の代表を
委員として入れること。第二には、八十三條は
現行法通りとすることが妥当であります。第三点は、第十二條の対価については、最高価格をもきめるべきであります。また小作契約文書化を
地主が拒んだ場合には、罰則を設けて、これが励行を
規定すべきであろうと思います。さらに
薪炭林などの利用権を拡充し、明文化することが必要ではないかと存じます。以上、私は最も重要な事項をあげましたが、右に述べました諸点のみならず、詳細にわた
つて問題とする点はまだ若干あるのでありますが、これを省略いたしたいと存じます。
以上これを要するに、本
法案は、中農、富農層の培養に重点が置かれている感が強く、その精神が本
法案の全体を支配しつつありますために、零細過小農が本
法案に期待を持つことは、きわめて薄いのではないかと存ずるのであります。
法案のうた
つております
農地改革の原則維持ということが、
地主的
自作農がねら
つている
地主的
土地所有への逆転のくさびとなるかどうか、はなはだ疑問を抱かざるを得ないのでありまして、この点についての
運用の衝に当られる当局の責任は、きわめて重大であろうと存ずる次第であります。特に最近の
傾向は、零細農がますます貧農化し、さらにこれがプロレタリア化して、転落を必然とするような経済的、社会的諸
條件が
農村を支配しつつある
現実におきまして、
本法を立法化することによ
つてのみ、
土地制度の維持確保をはかるということは、きわめて疑念なきを得ないので、
従つてこれに関連する一連の大きなる
農業施策があ
つてこそ、初めて
目的が達成されると信ぜられるのであります。
わが党は以上の観点から、結論的に申し上げますならば、山林、原野、遊休
土地をも含む一切の
地主所有地及び国有地
開放を中心とする第三次
農地改革の実施こそが、
農地法の本来の主眼であるこ之を強く指摘し、これが働く
農民の真の要望であることを主張いたし、この要望に沿うことが一番重要であるということを力説いたしまして、私の
討論を終りたいと思います。