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1952-06-17 第13回国会 衆議院 農林委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十七日(火曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 松浦 東介君    理事 遠藤 三郎君 理事 河野 謙三君    理事 平野 三郎君 理事 小林 運美君    理事 井上 良二君       宇野秀次郎君   小笠原八十美君       越智  茂君    小淵 光平君       川西  清君    坂田 英一君       坂本  實君    千賀 康治君       田中 彰治君    中馬 辰猪君       幡谷仙次郎君    原田 雪松君       吉川 久衛君    高倉 定助君       竹村奈良一君    足鹿  覺君  出席国務大臣         農 林 大 臣 廣川 弘禪君  出席政府委員         農林政務次官  小川原政信君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君  委員外出席者         專  門  員 難波 理平君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 六月十七日  委員小西英雄君辞任につき、その補欠として原  田雪松君が議長の指名で委員選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  農地法案内閣提出第八四号)  農地法施行法案内閣提出第八五号)  駐留軍の用に供する農地収用に関する件     ―――――――――――――
  2. 松浦東介

    松浦委員長 これより農林委員会を開会いたします。  この際小川原農林政務次官よりごあいさつがあります。
  3. 小川原政信

    小川原政府委員 このたび、はからずも農林政務次富を申しつけられたのでありますが、皆さん承知のごとく、どういう風の吹きまわしか、この老骨が次官にさしてもらつたような次第であります。私のごとき、まことに貧弱なる者は、とうていこの大任を勤めることができぬと思いますが、幸いにして有力なる皆さんの御同情をもつて協力を賜り、ぜひ大過なきよう御援助賜りますならば、まことにけつこうだと、かように存ずる次第であります。  まことに簡単でありますが、これをもちましてごあいさつにかえる次第であります。
  4. 松浦東介

    松浦委員長 それではこれより農地法案及び農地法施行法案を一括して議題といたし、審査を進めます。  農地法案に対しまして遠藤三郎君外五名より、共産党を除く各派共同による修正案が提出いたされております。その内容はすでに各位のお手元に配付いたした通りでありますが、これより本修正案趣旨について提出者より説明を求めます。遠藤三郎君。
  5. 遠藤三郎

    遠藤委員 私はただいま御手元に配布いたしました修正案に関しまして、共産党を除く各派を代表いたしまして、趣旨弁明を行います。まず案文を朗読いたします。     農地法案に対する修正案   農地法案の一部を次のように修正する。   第四條第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。  2 都道府県知事が、前項規定により許可をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業委員会意見を聞かなければならない。   第五條第二項中「第四項」の下に「並びに前條第二項」を加える。   第二十條中第三項を第四項とし、  以下一項ずつ繰下げ、第三項の次に次の一項を加える。  3 都道府県知事が、第一項の規定により許可をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業委員会意見を聞かなければならない。  修正案案文は以上の通りであります。  農地法案第四條は、農地転用制限に関する規定でありまして、農地農地以外のものにする者は、省令で定める手続従つて、その農地が五千坪を越えない場合には都道府県知事許可を受けなければならないことに相なつております。  また、第五條は、農地または採草放牧地転用のための権利移動制限に関する規定でありまして、農地農地以外のものにするため、または採草放牧地採草放牧地以外のものにするため、これらの基地について所有権を移転し、または地上権永小作権質権等を設定し、もしくは移転する場合には、省令の定めるところ従つて当事者都道府県知事許可を受けなければならないことに相なつておるのであります。  また、第二十條は、農地または採草放牧地賃貸借解約等制限に関する規定でありまして、同條によれば、農地または採草放牧地賃貸借当事者は、省令で定めるところにより、都道府県知事許可を受けなければ、賃貸借解約を上、解約の申入れをし、合意による解約をし、または賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならないことに相なつておりまして、小作地の取上げになるような行為の頻発しないよう配慮されておるのであります。  以上、第四條、第五條並びに第二十條に規定する行為法律上有効であるためには、いずれも都道府県知事許可を得ることが條件になつております。しかしてそこに都道府県農業委員会を關與せしめますかいなかにつきましては、賛否の両論が行われておるのであります。都道府県知事は、いずれも農業委員会の会長を兼ねておりまするので、法制上農業委員会意見を聞く建前をとらぬでも、農業委員会意見は事実上尊重されるであろうこと、あるいは農業委員会が案件について現地調査をいたします場合は相当の経費を必要とし、地方予算裏づけのない立法措置は不可である等の異論も行われたのであります。しかしながら、農地等の壊廃は逐次増大する傾向にありまするので、国民食糧を確保いたしまする上からいつても、許可手続愼重にすることはきわめて望ましいことであり、また小作人の地位を擁護するためには、賃借権解除解約について、許可手続愼重にしておくことは、これまた好ましい措置であり、その任に当るものとしては、農業委員会をおいて他に適任はないでありませう。これが修正案提出の理由であります。  しかしただいまのところ調査費等の計上を見ておらないことは、先に述べた通りでありまするので、農林省においても、すみやかにその対策を考究すべきであり、また農業委員会自体においても、書面審査を精密に行い、いたずらに地方農民の負担とならぬような方法で、與えられた任務を的確に遂行すべきことを特に付言して、私の趣旨弁明を終ります。  本修正案に対して御賛成賜わらんことを御願いいたします。
  6. 松浦東介

    松浦委員長 ただいまの修正案に対して質疑があれば、この際発言を許します。――別に御発言がなければ、農地法案、同修正案及び農地法施行法案を一括して討論に付します。討論の通告がありますのでこれを許します。吉川久衛君。
  7. 吉川久衛

    吉川委員 私はただいまの農地法案政府原案に対しまして、共産党を除く野党與党各派共同提案になるところ修正案を加えて、賛成の意を表するものであります。  政府原案については、私は質疑の際にも申し述べましたように、農地開放の主たる目標は、農村民主化であり、農業生産力増強である。この二つの大目的のために農地開放が行われたのでありますが、農村民主化に急にして、すなわち日本封建制の打破に急にして、農業生産力増強の面においていささか欠くるものがあつたのでございますが、今後はこの方面に相当重点を置いて行かなければならないというように考えているのであります。しかし旧法制定当時の日本の進んで行く方向も、今日の日本の進んで行く方向も、その前提となるものはかわつていないはずでありまして、ここでせつかく地主やその他の多くの人々日本農地開放のために大きな犠牲を余儀なくされたのでありますが、この犠牲を尊い犠牲とし、この犠牲をむだにしないためにも、農村民主化ということを忘れてはならないと私は思うのであります。ところがこの法案の第一條によりますと、農村民主的傾向を推進するという字句が抹殺されておりまして、政府当局の御答弁によりますと、この問題は各條項に具体的にそれぞれ盛られているのであつて、第一條に特にうたう必要がないというような御意見もあつたのでございますけれども、私はこのことはきわめて重要な問題であり、しかも内容條項を読んで行くうちにわれわれの痛感した問題は、何ら第一條に削除されているような問題が各條項において補われているということが見受けられなかつたところ共産党を除く各派共同提案によるこの修正案によりましてこの面が補わ旧れたということは、私は非常にけつこうなことと思うのでございまして、この点私ども心から賛意を表するところでございます。しかしながら、農林省においてこの案文を書かれた当時の政府当局、あるいはその補助機関人々のものの考え方が、今後の運用行政面において、もし農民民主化を推進するといつた面を軽視されるとするならば、せつかくここまで到達しましたところ日本農地改革というものは、その成果を維持することができなくなりはしないかということを心配するのであります。ことに最近日本民主化の逆コースということが問題にされておりますが、いろいろの面においてそういうことが感じられるのであります。フランスの革命後におして、農地改革が断行されましたその後に、小作人ども自作農なつたが、自分たちの手にしたところ土地を失われたくないということで、強力なる政権の台頭を期待したのはだれであつたか。それは自作農なつところ農村人々ではなかつたではありませんか。しかもこれらの人々は遂にナポレオン台頭を期待し、国会を無視して専制政治行つた、これにまでも農民協力をして、いわゆるボナパルチズムというような風潮が台頭して、ナポレオン法典を支持するに至つた。そうして非常に反動的な傾向が強化されたという歴史現実をわれわれは振り返つて見まするときに、日本政府並びに政府補助者であるところ農林省諸君が、このことに十分思いをいたされて、そうして旧法にうたわれましたところ農村民主的傾向を推進するということは、今日もこの大前提はゆるがないものであるという確固たるお考えの上に、本法運用に当つていただきたいと思います。  しかもその裏づけとなるところ農林省機構整備強化の問題、あるいは農林省予算も今後に相当程度増加拡充をはかられて、そうして日本国民の最も重要とするところ食糧増産確保の面に、この法制定と同時に十分この大目的達成のために御配慮をいただくことを要請いたしまして、賛成の意を表する次第であります。
  8. 松浦東介

  9. 井上良二

    井上(良)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました農地法案並びに農地法施行法案に関する原案並びに修正案賛成をいたすものであります。  この法案審議を通じまして私ども考えました点は、政府はもうすでに農地改革はこれで一応終つたという考え方に立つており、政府買収すべき農地はもう存在しない、だから強制買収規定は必要がないから強制譲渡規定だけを設ければいい、こういう考え方が流れているのであります。  さらに農地改革の終了によつて法律で許された小作地以外はすべて自作地となり、農民がほとんど自作農となつているから、今後はただこの成果を維持して行くだけでよい。従つて法律によつては旧地主復活防止農地荒廃移動等をどうして一体統制するかということがこの法律の中心であろうと考えております。  ところがこの法案われわれが見まして一つ考えます点は、農民規定を三反歩以上の耕作者に限定し、従来よりも反歩引上げたことによつて、貧農は法の保護をまつたく受けることができないことになつたのであります。  次に農地開放が一段階をいたしますとともに、米墾地開放が非常に軍要となつて来ますが、この売りもどしを認めることにまず問題があり、さらに未墾地買収を決定するにあたつて権限知事に非常に重要に認められることになつて都道府県農業委員会権限を與えないというような点が明記されているのであります。また農地賃借権解除解約について、都道府県には何らの権限も與えられないで、さらに駐留軍予備隊による農地の接収が増加しているのに、土地収用法行政協定の実施に伴う土地等の使用に関する法律との関係が明確にされてない。さらに今後相当な発言力を持つ開墾審議会委員選任政令にゆだねております関係で、これが天くだり的な選任になる危険が非常に強い。さらにまた小作料に関する算定の基準が、十分な科学的な根拠が示されていない。こういう点が大体納得の行かないところが多いのであります。  さらにまた、單に既耕地に対する農地改革の問題は一応終了したかのごとくありますが、政府も本法案提案で指摘をいたします通り農家経営零細化を防ぎ、望ましい中堅自作農育成して行く、こういう一つ考え方に立つております以上、当然農業経営に必要なる薪炭林あるいは採草地、こういう農業経営に当然結びつきます山林の問題について何ら手を触れてない。その反面、農地が細分化され、政府中堅自作農育成強化という打出しにかかわらず、年々耕地規模零細化して参つておりまして、これに対する総合的な対策というものが積極的に打立てられなければならぬ。そのためには何と申しましても農業投資が積極的な政策として押し進められることが必要であり、またその投資によつて土地改良農業経営に必要なるいろいろな技術あるいは機械等の導入がきわめて重要になつて参るのであります。そういう総合的な農業政策を強力に打出しませんというと、せつかく法律によつて農地が保障され、かつ中堅農家への育成をはかろうとしても、今日農村の置かれております資本主義下農業経営というものは、まつたく行き詰まらざるを得ない條件がそろつておりますから、幸い本法成立いたしましたあかつきにおきましては、政府当局は、都市、大資本に攻奪される條件に置かれておる農村現実をよく理解をされてまして、農業わが国再建の基本的な食糧増産を受持つておるという点から、一方わが国産業基礎動力である電力開発には莫大な資金、資材が投ぜられることを考えます場合、その電力開発と双壁をなす食糧増産ということを政府がお考えを願いまして、この点に対する総合的な農業政策を強力に推進してもらうことを特に私は希望いたしまして、両案に賛成意見を申し述べた次第であります。
  10. 松浦東介

    松浦委員長 竹村奈良一君。
  11. 竹村奈良一

    竹村委員 私は、ただいま提案されました法案並びに修正案に対しまして、共産党を代表いたしまして反対するものであります。  まず、この提出されました農地法は、政府説明によりますと、敗戰後行われた農地改革の上に立つて、それのいろいろな條件を統合したにすぎないと言つておられる。そこでそれでは農地改革というものが、一体根本的にはどういう任務を持たなければならないか、少くとも世界各国農地改革歴史を見て参りましても、農地改革行つた場合におきましては、それに基く国家の飛躍的発展をはかる、この建前からなされなければならないのでありまして、これ以外の目的、たとえば長い間隷属下に置れましたところ農民諸君解放という名目を掲げましても、実質的にはそれが農民解放生活向上のために役立つていないとすれば、その農地改革は失敗であります。またその民族の発展にもならないと思います。  さて提案されましたこの農地法が、かつて農地改革というものを統合した法案である、しからばその農地改革ははたして成功しておつたかどうか、そのことが私は最も重要な基幹にならなければならないと思う。そこで現在日本農村の実情は一体どうであろうか。御承知のように、まず最も悲惨なのは、自分の娘を売らなければならないところ農民がおり、あるいは軍事基地警察予備隊によつて莫大な土地を取上げられ、しかもその補償すら確定しないところ農民がおる。あるいはまた肥料を買うにも金がなくして、農業手形を利用して肥料を買わなければならないところ厖大農民、あるいは災害に苦しみ、あるいはまた農村における二、三男はまさに失業状態のままに放置されておる。農協は至るところにおいて赤字を出しており、そうして再建整備をやりましたところでなお追いつかない状態にある。これが今日農民の実際の姿である。このことは何人といえどもおそらく否定することはできないはずであります。これが農地改革によつて示された農民の姿であり、また農地改革によつて農民生活というものが向上し、あるいはゆたかになつていないことを証明するものであります。そのために最近政府やあるいは農民の団体においても、土地資本化土地に対するところ借金政策をも考えなければならないということが起つておる。ことことは一体何を意味するか、少くとも土地改革によつてできた小作人諸君が、その土地を抵当に入れて金を借りなければならないという、この悲惨な事実こそ、農地改革というものが実質的にほとんどその効果を上げていないことを証明している以外の何ものでもないのであります。その上に立つてこの法案は、統合すると言われますが、さて提出された、その上に立つて統合されたこの法案目的のために、たとえば第一章におきましては、農村における民主的傾向の推進をはかるというかんじんな字句を削除しているのであります。このことは、この法案を通じて、いかに今日の政府農村民主化とは反対の傾向、いわゆる民主化を抹殺せんとする意図の現われであると言わざるを得ない。なお、法案内容を見ておりますと、随所に警察予備隊やあるいは軍事基地のための土地取上げが、有無を言わさずでき得る條項がある。私の質問に対しても、その通りでございますと委員会において答弁しておる。一方においてその補償等についての答弁すらできないのに、法案においてはすでに土地取上げを容易にする、国または県が必要とするならばいつでも取上げるという條項がある。その上にわれわれが考えなければならないことは、少くとも日本において厖大な層をなしますところのいわゆる三反以下の農家――三反以下の農家は百四十七万一千八百七十二戸もあり、これは全農民の二六%に当つておる。たとえば北海道等におきましても、三町未満農家は十一万四千四百八十五戸であつて北海道農民の四七%に当つておる。この人たち農地拡大を禁止したるがごときことは、この人たちに対するところ生活の保障とそれの対策を考究せずして、いらざる法律においてこの人たち農地拡大の禁止を行うがごときことは、非人道ぎわまるものであると言わざるを得ないのであります。少くともこれに対する根本的な対策がない。なおまた続いて、少くとも日本内地におけるところ畑作地等に転換でき得る八百万町歩に及ぶところ未墾地開墾開拓に至りましては、政府答弁によりますと、一年にわずか百分の一に相当するぐらいしか開拓をやろうと考えていない。こういうような状態において、農村におけるところの二、三男失業、半失業の問題を一体どういうふうに解決しようとしているのか、この問題も明示されていない。そうしていたずらに開墾開拓が遅れる状態にある。しかもそれが開拓審議会なるものを設けて、ほとんどこれによつて――たとい農業委員会開拓可能地といたしましても、この審議会において拒否されるならば、それができないということになつておる。なおまた、その他のいろいろな條文を見て参りますと、一番重要な水利の問題、たとえば水利権の問題あるいは農業用施設に対するところ問題等においても、すみやかにこれを解決する條項を入れなければ、ほんとうの農村民主化というものはでき得ないにもかかわらず、そういうものに対しましては最も積極性を欠いておる。こういうような点を総合いたしまするならば、今日出されました農地法というものは、その第一章において民主化的傾向を推進するという條項を削除した意図というものが、あまりにもはつきりしておるのであります。  なお提案されました修正案でございますが、もちろんこれは一応知事だけの独断における農地の逓減を防いで、そうして農業委員会意見を聞くということになつておるのでございます。そこでこの法案は、もちろんこれだけにおいて必ずしも土地取上げの問題が解決するわけではないのであります。というのは、かつて農地委員会が現在改正されて農業委員会に変更した、この状態をながめてみましたときに、今日の階級制委員会を抹殺して、そうして最も模糊曖昧として、少くとも旧地主勢力農業委員会にどんどん進出する道を開いたこの選出方法とのからみ合せから考えまして、今日の県農業委員会なるものが、はたして真にいわゆる勤労農氏を代表して選出され得る状態にあるかどうかということを考えましたときに、このことだけにおいて、必ずしも民主化されたというようなことは全然言えないのであります。なおまた仄聞するところによれば、少くとも今日のこの法文を通じて、政府のねらいとするところは、かつて借款制度復活をねらい、あるいは小作調停官等を入れたいわゆる県における三人委員会等の実現を期しているところ意図は明らかであります。このことは、少くとも従来の農地法成果の上にと言われますけれども、その元来の農地改革すらが、これは国内における農民諸君の反抗を抹殺して、一応成功したというよい見せかけをしたにすぎないのでありまして、その上に立つたこの法案が、またそれよりもますます輪をかけた反動化への傾向を助長しているという点から考えてみましても、わが党はこれに対して反対するものであります。
  12. 松浦東介

  13. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま審議されております農地法並びに同法施行法案及び修正案に対しまして、日本社会党第二十三控室は條件を付して賛成をいたさんとするものであります。以下私どもの基本的な、あるいは具体的な態度を明らかにいたしたいと思います。  農地法案は、現行農地関係法令が、講和発効に伴うポツダム政令が来る十月二十五日限り失効するので、新たなる立法措置がない限り、土地台帳法から賃貸価格が削られたので、自作農創設特別措置法買収価格規定が無効となりまして、今後不在地主や、一町歩以上の小作地を持つ地主が発生いたしましても、これを放任するのほかなく、また一方自作農維持金融も、政府への買取り申込みポ政令にある規定でありますから、これが失効いたしますれば、当然金融の道をもふさがれることとなるのであります。そこでこのまま放任しておけば、終戰後農地改革ポ政令の失効に伴つて逆転して行くおそれが多分にあるわけであります。よつてこれを国内法化し、農地関係法令を本として恒久化せんとするところにねらいがあるのであります。従つて、この審議の過程に現われた傾向を見ましても、一部には本法成立を好まない立場にあるものもあつたようでありまして、三月十八日本委員会に本案が付託されまして以来、三箇月有余も十分なる審議の機会を與えずして、放任されたままであつたことを考えてみましても、本法成立をめぐつて、きわめて微妙なものが動いておつたということがうかがわれるのであります。従つて、わが党は農地制度空白を避ける立場から、またその空白がもたらす農民に及ぼす影響を愼重に勘考いたしまして、不満ではありますが、一応本法成立賛意を表すると同時に、本法案の内蔵しておりまする矛盾と問題点を指摘し、これがすみやかなる是正のために政府が率直なる態度をもつて検討せられ、次期国会に全面的な本法案改正案を提出せられんことを強く要望いたすものであります。以下具体的に検討を必要とする諸点を明らかにしたいと思います。  まず第一に、本法には地主的土地制度への復元の余地が與えられておる傾向が見受けられることであります。すなわち、その一つ農地の買受け資格についてでありますが、現行法農地取得後三反歩に達するものについて買受けの資格を認めておつたにもかかわりませず、本法は現在三反歩以上耕作しておらなければいけないことにいたしております。従つて零細農家農地収得を不当に押えつける懸念があるのであります。さらにまた零細農家農地を手に入れようといたしましても、土地価格は原則的に統制をされて、双方の協議によつてきめられることになつておりまするから、資金に余裕を持たない貧農は、土地を手放しても再び手に入れることは現実的にはますます困難となるであろうということであります。  第二には、現行法では三町歩以上の農地所有は制限されているにもかかわりませず、本法ではこの制限を事実上撤廃しており、かつまた農地の移動は市町村農業委員会で行われることとなりまするので、事実上の結果として、貧農の借金の苦しみからいたします農地手放しは、もし農業委員会がその運営を一歩誤りました場合には、半ば公然と行われる危険性があることを私どもは指摘しなければなりません。従つて本法運用に当る農業委員会の整備と、その民主的運営の保証、すなわち階層別選挙への復帰を内容とする農業委員会法の改正とが並行して進められなければ、本法の完全なる運営は至難であろうと考えられる点であります。  第三点は、本法本法施行前の在村地主所有一町歩以上の小作地政府買収対象としていないのでありますが、これは明らかに地主土地所有の温存を可能とするものであるといわなければなりません。農地法案の施行の前後にかかわらず、制限面積を越える一切の小作地に対しては、強制讓渡の措置を講ずることが妥当であると存じます。  第四点には、本法案第二十條には、地主にもし耕作能力があり、小作人農地を取上げられても生活に困らない場合には、地主土地取上げを認めるがごとき表現が用いてありますが、小作地地主への返還規定は削除するとともに、さらにいかなる理由によるにもかかわらず、地主小作地取上げは許さない措置を講ずべきであると存じます。  第五点、買収される土地農業用施設は、市町村農業委員会の認定によつて買収、非買収を決定することといたしておりまするが、農業委員会の認定が常に適切であるという保証はありません。また農業用施設の妥当ならざる温存は、土地支配のよりどころを残すということにもなりまするから、これは創設農家が、その創設地におきまして農業用の利用のために必要として買入れ申入れのある場合に買収を行うこととすべきことが妥当であると存じます。なお買入れ申入れの期限は制限すべきでないということを主張したいと思います。  第六点には、国が笹興する買収済みの土地、立木、工作物、または権利について、八十條第二項は買収前の所有者に売り払うべき場合あることを規定しておりまするけれども、この措置は旧地五の復位を認めるものでありまするから、当該條項は当然削除されることが妥当であると存じます。どうしても所属がえがやむを得ない場合といたしましても、これは民有共同地とするように措置すべきであると存じます。  第七点は、土地収用法農地法に優先して適用される関係になつておりますが、土地の所有、利用を保証するため農地に対する保護規定を明らかにして、土地収用法の発動を制限するがごとき措置が講ぜられるべきであろうと存じます。  第八点として、一括してこまかい問題を申し上げますが、開払審議会には当然開拓民の代表を委員として入れること。第二には、八十三條は現行法通りとすることが妥当であります。第三点は、第十二條の対価については、最高価格をもきめるべきであります。また小作契約文書化を地主が拒んだ場合には、罰則を設けて、これが励行を規定すべきであろうと思います。さらに薪炭林などの利用権を拡充し、明文化することが必要ではないかと存じます。以上、私は最も重要な事項をあげましたが、右に述べました諸点のみならず、詳細にわたつて問題とする点はまだ若干あるのでありますが、これを省略いたしたいと存じます。  以上これを要するに、本法案は、中農、富農層の培養に重点が置かれている感が強く、その精神が本法案の全体を支配しつつありますために、零細過小農が本法案に期待を持つことは、きわめて薄いのではないかと存ずるのであります。法案のうたつております農地改革の原則維持ということが、地主自作農がねらつている地主土地所有への逆転のくさびとなるかどうか、はなはだ疑問を抱かざるを得ないのでありまして、この点についての運用の衝に当られる当局の責任は、きわめて重大であろうと存ずる次第であります。特に最近の傾向は、零細農がますます貧農化し、さらにこれがプロレタリア化して、転落を必然とするような経済的、社会的諸條件農村を支配しつつある現実におきまして、本法を立法化することによつてのみ、土地制度の維持確保をはかるということは、きわめて疑念なきを得ないので、従つてこれに関連する一連の大きなる農業施策があつてこそ、初めて目的が達成されると信ぜられるのであります。  わが党は以上の観点から、結論的に申し上げますならば、山林、原野、遊休土地をも含む一切の地主所有地及び国有地開放を中心とする第三次農地改革の実施こそが、農地法の本来の主眼であるこ之を強く指摘し、これが働く農民の真の要望であることを主張いたし、この要望に沿うことが一番重要であるということを力説いたしまして、私の討論を終りたいと思います。
  14. 松浦東介

    松浦委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより農地法案について採決いたします。まず農地法案に対する修正案について採決いたします。本修正案賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  15. 松浦東介

    松浦委員長 起立多数。よつて修正案は可決せられました。  次に、ただいま可決せられました修正案以外の原案について採決いたします。これに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  16. 松浦東介

    松浦委員長 起立多数。よつて農地法案修正案のごとく修正すべきものと決しました。  次に農地法施行法案について採決いたします。本案に賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  17. 松浦東介

    松浦委員長 起立多数。よつて本案は可決すべきものと決しました。  なおお諮りいたします。両案に対する衆議院規則第八十六條の規定による報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 松浦東介

    松浦委員長 御異議なしと認め、十よう決しました。     ―――――――――――――
  19. 松浦東介

    松浦委員長 この際井上良二君より、駐留軍による農地の接収の問題について質疑をいたしたいとの申出があります。これを許します。井上良二君。
  20. 井上良二

    井上(良)委員 この際特に政府に対して、駐留軍用地として農地の接収が行われんとしておりますることに関して、政府対策を伺つておきたいと思います。この問題は全国各地に発生をいたしましたために、政府も、生産農民の唯一の生活手段たる農地が取上けられるということが、いかに深刻な重大問題であるかということから、これに関連する補償を必要といたしまして、土地等の使用等に関する特別措置法律を外務委員会ですか、どつかに提案をされたそうでありますが、本委員会としましても、問題が重要であるために、連合審査を申し込みましたけれども、連合審査をすることができませんためにやむなく私はここで特に質問をいたしたいと思います。  政府も御存じでございましようが、大阪府及び兵庫県の伊丹飛行場というのがございます。この伊丹飛行場に昨年の春でしたか、飛行場を拡張するというところから、農地に一定の拡張標識がどんどん打込まれましたために、地元農民は、当然自分農地が飛行場拡張のために取上げられるであろうということを考えまして、ただちに当該の市町村長を通じ、政府に対し、あるいは当時の進駐軍司令部に対して、一体いつごろ軍用地として拡張されるかどうか、その予定が大体わからないことにま、次のまきつけの関係や、あるいはまたは他に移転する関係等もございまして、たびたび書類をもつて、必要な手続によつて問い合せはしたのですけれども、一向要領を得ないままになつておるのであります。ところが今度駐留軍と名前がかわりまして、いよいよ具体的に農地が軍用地として接収されるような情勢が非常に高まつて参りましたために、地元農民といたしましては、かけがえのない土地を手放さなければならぬ関係から、非常に問題が紛糾いたしまして、この対策に地元としても非常に困難をいたしておるわけでございます。そこで政府として、この軍用地として収容されます農地に対し、あるいは農家の宅地に対して、具体的にいかなる損失補償をしようとしておるか。また現にそういうように長い日時にわたりまして、いつ収用されるかわからないというような不安のままに置くようなことなくして、必ず実施するという日時を明記されることが必要でないかと思いますが、そういう点についてどういうぐあいになつておりますか。この際その点を明確に、ひとつ農林大臣または農地局長から御説明をいただきたいと思います。
  21. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 駐留軍用地に関しましては、前々申し上げている通り、生産農家に実際に実害を與えないように私たちは努力をいたしておるのでありまして、せつかく開拓いたしましたる所、あるいはまた既存農家等に迷惑をかけて、しかもそれが大事な食糧増産の障害となることを避けるために、あらゆる努力をいたしておるのであります。ただいまお尋ねの具体的の点に関しましては、局長より答弁いたさせます。
  22. 平川守

    ○平川政府委員 飛行場及び演習場の具体的な計画につきましては、ただいま合同委員会におきまして、一地区ずつ検討中でございまして、まだ具体的な結論を得るに至つておりませんが、おそくも七月中くらいまでには、全体の計画規模が明らかになると予定いたしております。その場合の、かりに拡張のためにやむを得ず農地を接収する場合におきましては、これに対する補償等につきましては、大蔵省とただいま折衝中でありますが、少くとも農林省といたしましては、その農民が経済的に現状より不利をこうむることのないように、家屋あるいは農地につきましても十分なる補償を與えるようにいたしたいと、大蔵省と折衝をいたしておる次第であります。
  23. 井上良二

    井上(良)委員 農民立場に立つて外務当局と折衝されておるということでございますが、また合同委員会について検討中であるという話ですが、合同委員会には、農地局としてはだれが委員として出席しておりますか。それから大蔵省と折衝しております農地及び農家に対する損失補償の具体的な基準というものは、一体どういう案を持つて臨んでおりますか。それがもしおわかりでございましたならば、お示しを願いたい。具体的に申しますならば、一毛作田あるいは二毛作田等によつて通うと思いますし、また農家の宅地等につきましても違うと思いますしいたしますから、一概には申されませんが、大体二毛作田で反収をかりにこれこれあげておるものについては、現在の地価を標準にいたして算定をして、およそどの位の補償をしようというのか。農地がとられますと、まつたくその農民は、やはり転業するよりしかたがないのです。そうなりますと重大な問題でございますから、單に反当八万円や十万円で土地を買うてもらつたというだけで事は済まぬのであります。そういうことが織り込まれて交渉されておりますか。單に反当の買収価格をできるだけ高く買うてもらうとか、あるいは作物の補償をできるだけ有利に見積つてもらうとか、そういうことを一歩も出ておりませんのか。それとも、今後数年間は、他の職について生活を保障することができませんから、その間の生活が不安のないよ、うに、相当の補償政府としてはしようという腹でかかつておりますか。そういう点について具体的に御説明を願いたいと思います。
  24. 平川守

    ○平川政府委員 合同委員会の方々には農林省としては私が代表で出ております。  それから補償の問題でございますが、農地につきましては、地価としては富裕税の評価額を基準といたしております。そのほかに、離作料といたしまして、年所得の五年分ぐらいを補償してもらいたいというのが農林省の案であります。そういたしますと、およそ普通の二毛作田等でありますれば、十万円内外にはなろうかと思いますが、これに対して大蔵省等に多少異論があるのであります。それから宅地等については時価によつて算定をいたす。そのほか立毛の損失の補償でありますとか、立木の損失の補償でありますとか、あるいは家屋につきましては移転料を出すというようなことで、要するに具体的農家に対しましては、現在持つておる財産を評価し、またそのほかに数箇年分の所得を算定いたしまして、これを離作料として與えるという考え方をとつておるわけでありますが、しかしなおこれだけでもつて十分というわけでもないと存じまして、これらの農家に対しましては、かりにこれらの農家が他の土地においてさらに農業を営み得る場合におきましては、農林省として各種の干拓あるいは開拓等の事業もいたしておるわけでございますが、そういうところに対して優先的にあつせんをするというようなこともあわせて考えておるわけでございます。
  25. 井上良二

    井上(良)委員 今御説明によりますと、これは目的目的だからといえば、それでしまいでございますが、実際用地として強制買収をされます農家にとりましては、考えても考え切れない、あきらめてもあきらめ切れない深刻なものがある。そういうことから考えますならば、たとえて申しますと、かりに三毛作田で富裕税の地価標準から時価を算定いたしますと、六万円から八万円ぐらいのところじやないかと思うております。それに離作料を五箇年分、大体補償してやりたい、こういうことで、全体でもつて二毛作田の反当十万円ぐらいの金で明け渡さなければならぬことになるわけです。ところが私先般もこの委員会で申し上げたのですが、全国平均一人当り一反を耕作いたしまして、たしか年収一万円、五千円の収入をあげております。その計算をかりにいたしまして、平均収入で考えてみましても、五年間で一人一反当りざつと六万円ぐらいの收入があるわけです。そうなつて来ますと、あなたの今の説明で行くと、この平均から非常に低い補償ということになるし、これに地価を加えましても、おそらく問題にならぬ金じやないかと思う。これは私、共産党がおりますから、はつきり申し上げておきますが、御存じの通り軍川地の接収、特に駐留軍農地の接収という問題は、反米思想に非常に利用される危険があるのです。お前たちの土地を取上げたのはアメリカが取上げたのた。(「その通り」)アメリカを追つ払えば土地は取上げられずに済むのだ。そういう素朴な感情論で農民の不平と不満を誘発しようという、深刻な運動が各土地取上げの地帶には巻き起る危険があるのです。そういう点をわれわれが考慮いたしまする場合、農民がそういう不安を與えるよこしまな運動に迷わされないように、ほんとうに政府の徹底した対策がとられるときに、初めて問題はすなおに解決しやせんかと思う。今お話のようなことはまつた農民は納得しかねますから、この点については相当腹をくくつて、もし局長みずからで話がつかぬ場合は、農林大臣がひとつ責任を持つて農民農地補償してやるということで話を進めてもらいたいと思いますが、この点に対して農林大臣の御所見はどうですか。
  26. 廣川弘禪

    ○廣川国務大臣 駐個軍の用地に関して、共産党農民をアジつたりなんかすることを防ぐことが大事だ、こういうことでありますが、その通りであります。私たちは共産党人たちが乗ずるすきのないように、事務的にもこれを進めて参りたいと思います。また事務の方で困難な場合は直接私が交渉いたしまして、農民に不満と怨嗟の声のないように努力いたします。
  27. 松浦東介

    松浦委員長 午前の会議はこの程度にとどめます。午後は午後二時再開いたします。  暫時休融いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――    午後二時五十七分開議
  28. 松浦東介

    松浦委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  都合によりまして本日はこれをもつて散会いたします。明日は午後一時より開会いたします。     午後二時五十八分散会