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1952-06-11 第13回国会 衆議院 農林委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十一日(水曜日)     午後一時五十二分開議  出席委員    委員長 松浦 東介君    理事 遠藤 三郎君 理事 河野 謙三君    理事 平野 三郎君 理事 小林 運美君    理事 井上 良二君       宇野秀次郎君   小笠原八十美君       越智  茂君    小淵 光平君       坂田 英一君    坂本  實君       千賀 康治君    中馬 辰猪君       幡谷仙次郎君    原田 雪松君       大森 玉木君    吉川 久衛君       石井 繁丸君    竹村奈良一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 廣川 弘禪君  出席政府委員         農林事務官         (農政局長)  小倉 武一君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 六月十日  畜犬競技法案原田雪松君外四十四名提出衆法第三二号) は、更に審査を本委員会に付託された。 同日  国内酪農振興策に関する陳情書(第二二四一号)  桑園凍霜害対策に関する陳情書(第二二四二号)  同(第二二四三号)  蚕業の維持育成に関する陳情書(第二二四四号)  同(第二二四五号)  園芸振興に対する国庫助成陳情書(第二二四六号)  小規模土地改良事業に対する国庫補助金交付に関する陳情書(第二二四七号)  同(第二二四八号)  奥地林道開設補助額増額並びに起債の大幅承認に関する陳情書(第二二四九号)  国有林開放に関する陳情書(第二二五〇号)  国有牧野利用権確立に関する陳情書(第二二五一号)  国有林野地元町村交付金に関する陳情書(第二二五二号)  民有造林補助金増額に関する陳情書(第二二五三号)  農林漁業資金融資に関する陳情書(第二二五四号)  甘しよ並びにでん粉の取扱に関する陳情書(第二二五五号)  公営競馬民間移管反対に関する陳情書(第二二五六号)  競馬民営法案に関する陳情書(第二二五七号)  ドツグ・レース法案に関する陳情書(第二二五八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  農地法案内閣提出第八四号)  農地法施行法案内閣提出第八五号)  狩猟鳥獣種類追加指定に関する件     ―――――――――――――
  2. 松浦東介

    松浦委員長 これより農林委員会を開会いたします。  この際平野三郎君より狩猟鳥獣種類追加指定に関する件について発言を求められております。これを許します。平野三郎君。
  3. 平野三郎

    平野委員 ただいま松浦委員長からお話がありました狩猟鳥獣の件につきまして、千賀康治君、その他の諸君と共同にてこの際決議動議提出いたしたいと存じます。  まず決議案文を朗読いたします。    狩猟鳥獣種類追加指定に関する件(案)   狩猟鳥獣は現在狩猟法施行規則により指定されているが、荷この外にアトリ、カシラダカは稗、粟、稻穂等を食し、いづれも農作物損害を與えるものであり、又ツグミは農産物に対する益害馴れが大であるかを判定し難い点は、一般狩猟鳥と同一である。然かもこれら三種類は皆シベリヤ方面からの渡り鳥であつて農作物に有益な働きをする雛の育成期を遠く海外に過しているものであり、且つこれらの肉は他の狩猟鳥獣と同様、食用としての利用価値高いものであるから、これが利用につき適正な手段を講ずる必要がある。  仍つてこの際これら三種類狩猟鳥獣追加指定することを妥当と認める。   右決議する。  本件につきまして若干の趣旨弁明をいたしたいと思います。御承知のごとく狩猟鳥獣狩猟法施行規則一條にごいさぎ、きじ等を初め四十二種類指定されております。この狩猟鳥獣指定は、農産物その他人類に被害を與えるものを積極的に捕獲するというよりも、むしろ鳥獣類を保護することを主眼とし、最小限度に捕獲を許容しているものと考えられるのでありまして、この狩猟鳥獣以外にも農産物に相当ひどい損害を與えるものがあります。すなわちあとり、かしらだか等は、稻穗、あわ、ひえ等を食しているものでありまして、害鳥であることが明らかであります。かつて山形県の最上川の堤塘に、桜の木を植えようといたした際、地元農民から、それらの樹木が大きくなつた場合、かしらだかが群集して農作物被害を與えるからとて猛烈な反対のあつた事実からも、その一端を伺うことが出来るのであります。またつぐみにつきましては、害鳥なりや、益鳥なりやについては、現在判明いたしておりません。ある論者によれば、樹木の芽をついばんで、森林の自然繁殖を妨げるものであるとも言われております。あとり、かしらだか及びつぐみは、いずれもシベリア方面からの渡り鳥でありまして、農作物に対し最も有益な働きをするひなの育成期を、はるかなシベリアの広野で過ごし、成鳥になつてから本邦に飛来いたします渡り鳥でありますので、もともと本邦に棲息するものではありません。従いましてわが国固有鳥類ほどに保護すべき必要もないのであります。  またこれら鳥類の肉は、食肉としての価値は、他の一般狩猟鳥と同様に高いのでありますから、この渡り鳥本邦に飛来中に、その一部を捕獲して、これを食用に供することは、農作物に対する被害を防止し、あわせて動物性蛋白給源増強ともなり、一石二鳥の対策考えるのであります。  狩猟法一條の規定によりますと、狩猟鳥獣種類農林大臣が定めるものであり、この種類を定めるときは、公聽会を開いて利害関係人及び学識経験者意見を聽くことになつておりますので、政府においてはこの決議に基き速急に公聴会を開いて参考意見を聴取いたし、指定追加をするようとりはからうべきであると思います。何とぞ委員各位におかれましては、愼重審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 松浦東介

    松浦委員長 ただいまの問題について御意見のある方は発言を許します。——他に御発言もなければ、お諮りいたします。ただいまの平野君からの動議でありますところの狩猟鳥獣種類追加指定に関する件を本委員会決議とするに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松浦東介

    松浦委員長 御異議なしと認めます。  なお本件の議長に対する報告並びに関係国務大臣に対する参考送付の件につきましては、委員長に御一任を願います。     —————————————
  6. 松浦東介

    松浦委員長 それではこれより農地法案及び農地法施行法案一括議題といたし、審査を進めます。本日は総括的に農林大臣に対する質疑を行います。質疑の通告があります。順次これを許します。井上良二君。
  7. 井上良二

    井上(良)委員 ただいま審議中の農地法案審議にあたりまして特に農林大臣に御所見を承つておきたいのは、この法の目的中心が、農地耕作者みずからが所有することが最も適当であり、従つて耕作者農地の取得を促進することにし、またその権利を保護し、耕作者の地位を安定して農業生産増強をはかる、こういうことがこの法律目的でありまして、この目的を達しますためには、單に法律によつてこれに必要な諸條項を規定するということだけで問題は解決しないことは、先般の他の同僚委員からの質問によつて明らかでございますが、この法の目的について先般から論議されておりますのは、要は農業を営んで農家経済を維持して行く農地をどの程度確保すべきか、こういうことから、法案説明においては、中堅農家を維持するということが言われております。そこで中堅自作農創設維持いたしますためには、他の農政全般がこれに伴わなければ、事実上不可能な実情にあります。最近の農地の移動の実情を見ても、年々農地売買件数が非常な増加を示しておる。このことは政府農地確保に必要な法的措置をかりに講じましても、農家経営が成立ち、農業経営というものが、政府のいろいろな農業政策裏づけによつて確保されませんと、役に立たないことになろうと思うのであります。そこで最近の政府の行つておりまするいろいろな農業政策を見ておりますと、部分的にはなるほど当該農民の利益を守り、農業生産力増強するに必要な法的措置予算酌措置が講ぜられておりますけれども、全般を通して私どもが見ます場合に、たとえば肥料対策において、あるいはまた有畜農家創設の場合に総合的な家畜用飼料導入対策等を立てなかつたり、あるいはまた大量のバター輸入したり、そういう政策の流れを見ておりますと、これらのことが結局農家経済を非常に不安定にし脅かしておるということが明確になつて来ておるのであります。そこで農林大臣といたしましては、現在の農業経営維持育成する農政の基本的な目途というものを、一体どこに置いておるか。たとえて申しますと、わが国の全人口の割合から、農業に携わつております農業人口を推定いたしましてその農業人口に按分して耕作反別を割当てますと、一人当り大体三反余、あるいは一戸当り七反から八反、もう少し広げますならば大体一町前後というところではないかと思つております。この一人当り所得を算定しますと、つまり農業全体の分配所得から割当ててみますと、一人当り一年間にわずか四万円の所得しかない。反当り所得は一万三千円から一万五千円見当である。しかるに都市勤労大衆特に労働者階級所得を調べてみますと、朝鮮動乱後の所得は一万円以上になつておりますし、昨年十二月の所得は一万六千円からになつております。かりに都市勤労者の月収を一万円ということにしますと、年収十二万円でありましてそうすると農業従事者の一人当り所得が四万円ということになりますと、都市勤労者所得の三分の一しかございません。さらに昨年末の所得に比べますとおそろしく少くなつて参ります。都市商工業中心にする所得収入に比べて農業所得がかくのごときし悪い原因は一体どこにあるかをお考えになつておるか。このところを基本的に考えてもらわなければ、中堅農家創設するところの農地法をつくりましても、事実上経済が成り立たぬごとから、土地売買がどんどん行われて行くことになりまして、どうしても農家経済の成立ちます基本的な対策が立てられなければならないと思います。今日わが国農家経営の成り立たぬ原因一つは、過小農制に立つているからであります。二の制度を根本的に打破らなければ、農業経営は成り立たない。過小農制打破つて農家経済の成り立つ営農制に立てかえるためには、一つ農産物価格一つ農地に対する生産力を向上される積極的な国家投資、最後には農家負担の軽減という問題もございましようが、そういう線が積極的に打立てられなければ、中堅農家創設といいましても、それはお題目に終つてしまうのではないかと、私は考えておりますが、そういう点について、幸い政府食糧自給五箇年計画なるものを立てて、積極的な日給態勢確立しようと努力せられております。この国策の線に沿つてわが国農家の成り立たない過小擬制を一体どう打破ろうとするか、この基本的な問題について、農林大臣としての御所見を伺つておきたいと思います。
  8. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農政専門家である井上委員からの御質問で、現在の農政中核をおつきになつておられるのでありますが、この法律のみでなく、その他の対策考えなければ自作農をほんとうに創設することはできないし、また農家経済全般を通じてやらなければ確立ができない、こういうことでありますが、まつたく御意見通りであります。特に御指摘になりました肥料対策あるいは有畜農家創設に対しての対策、あるいはバター輸入についてのお話でありますが、肥料は現在非常に値が安定して、だんだん下つて参りますので、農村にとつては非常によい結果にななつております。これは政府の施策がいいからこういうふうにだんだん下つて来たというふうに私は考えております。  それから有畜農家創設に対して、何か片ちんばではないかということでありますが、政府の足りないところは本委員会等がこれを補つてくれるように昨日もおやりになつたようであります。また私たちといたしましては、有畜農家創設等の第一といたしまして、この追加予算をやる機会がありますれば、サイロをぜひつくるようにこれを奨励し、また融資等考え奨励金等考えておるようなわけでありまして、これに付随して堆肥盤堆肥舎等も十分考えて行きたいと思つておるようなわけであります。  バター輸入につきましては、これはボンドが余つておるから、特に日本人の栄養改善というような意味から入れたのでありまして決して酪農家を圧迫するというような意味で入れておるのではないのであります。ただ、いつまでも酪農製品が高い価格市場に出るということは考えなければなりません。しかも最下部末端農家で売る価格というものは非常に安いのでありますが、中間経費が非常に高いということに着目してもらいたいと思うのであります。末端農家では一合大体四円五十銭程度で売つておりますが、都会では十五円になつておるのであります。その間に中間マージンが十円あるということは、少し考えなければならぬ。そういつた意味でこれが乳製品を扱つておる方々に対して刺激なつたことは事実であります。しかし入つた品物は学校の給食等にまわすなり何なりして直接現在の市場を圧迫しないようにして、刺激のみでやりたいと考えておるような次第であります。  それから、農家経済目途を一体どこに置くのだという詳しく数字をあげてのお話でありますが、実際現在の都市における勤労岩収入と、農村における農家收入とは非常に隔たりがあることは、私も承知いたしております。しかしただいま御指摘の一人当り三反平均というのは、農家兼業者も入れてのお話であろうと思いますので、その間に多少の数字は違つておるのじやないかと考えますが、この均衡を保つようにしなければならぬのであります。そのために、私たちはあなた方が政府を持つておられた当時よりも、米は上げておるようなわけであります。また今度通りました麦の統制緩和法律に盛られておるように、麦の価格については、農家意向を十分入れてきめるようにおつくりを願つたので、こういう点からして農産物価格がよくなつて参ると思うのであります。統制が緩和されてからの一般市場を見ますと、非常によい動きをいたしておるようであります。  また国家資本を投資しなければならぬじやないかというお話でありますが、これもまつたくその通りでありまして、私たちは、国家資本まつ先に入れ得るように今努力をいたしておるのであります。昨年末の本年度予算編成当りましても、この意向を入れてやつたようなわけであります。来年度予算編成におきましては、そろそろ予算編成の時期にもなりますので、私たちは、国家資本農業に十分投資するようにやつて参りたいと思うのであります。  なおまた農家負担を軽減しなければならぬのじやないかというお話でありますが、これもまつたくその通りでありまして、税制の改正のたびにわれわれはこれを主張いたしておるのでありまして、三、四年前の税金と現在の税金を比べますと、格段の差があると私は信じておるのであります。また過小農に転落するのを防ぐために、相続税についても今度またこれをかえたような次第であります。そういつたような運の政策をやつて参ると同時に、また新たにこの間から総理を中心として、試案ではありますが、食糧増産の五箇年計画を立てて参つておるのでありまして、これを実際に予算裏づけをするなり、あるいはまたこれを立法化いたしまして、真に農家中核体となる農家を育成し、そうして農家経済安定をはかるように努力いたしたいと思う次第であります。
  9. 井上良二

    井上(良)委員 ただいま総合的な御答弁をいただきましたけれども、問題は中核自作農創設育成して行くということは、現在の農業收入によつては実際できないことになりはせぬか。現に中核自作農としておる者も、次第に農業経営が困難になつて美田を売らなければならぬことになつてしまう。今一人当り所得について申し上げましたが、これをかりに反当收入で押えて見ましても、一反の平均收入が一万三千円、これを都市勤労者の十二万、円の收入をあげる場合どのくらいの経営面積が必要であるかというと、現在の農業による場合は九反歩を必要として来ます。そこでその耕地に対して土地改良なりあるいはまた科学技術を普及しまして、生産費を引下げ、生産力を高めるという手を打ちまして、かりに二万円の收入なつたといたしますと、これが六反歩に下ります。二万四千円になると五反歩になる。政府がねらつております三反歩以上ということになると、四万円の收入を上げなければならぬことになります。そういうことから想像いたしましたときに、反当収量を上げるには、土地合理的経常を積極的に推し進めることがいかに必要であるか。狭い土地を高度に利用することの必要性がここに出て参つております。そういう点から、一つ農作物価格対策と、一つ土地生産力に必要な国家投資の問題、もう一つ金融制度の問題、この三つが一番大きな問題になつて来ると思います。価格政策の問題について、今大臣は非常に米価を上げたような、また農作物価格を非常につり上げたような御答弁をされて得々としておりますが、現在都市工業製品価格農産物価格とを比べました場合に、一体どういう状態にあるかという二とは、私が説明するまでもありません。また、日本の国内産米麦価格と、国際価格とを比較しました場合、これがどれだけ開いておるかということも、大臣御存じであります。現実都市工業製品価格農産物価格とを比較し、かつまた国際価格国内価格を比較した場合、そごに非常に開きが出ておるということは、現実に認めなければならぬ事態になつて来ておるわけです。これをさや寄せいたしまして価値のあるものは価値のあるものとして買う政策をおとりになつておりますならば、私は今の御答弁満足をいたしますけれども、現在国内産米価格は、御存じ通り、昨年度は七千三十円、ことしはこれがたかだか七千五百円から八千円まで行つたらたいへんだろうと思つております。そうすると、国際価格は一万円を越しておるのです。もちろん、これは一方は玄米でございますし、一方は中身の計算でございますが、そういうことから多少そこに問題はございますけれども、この国際価格との大きな開きを、現在に政府国内物価政策によつて都市工業資本蓄積をせんがために低米価政策といわれるものをとつておるわけです。そこでこの価格を、私は、外国米に比べて国内産の米がそれだけ値打がない。国民がそれだけ値打のあるものとして買うてくれぬものを、無理に高く買えとは申しません。現実国内産米が、国際的な各国の米に比べまして、品質において実際上すぐれておるにかかわらず、農民は安く売らなければならぬ、ここに非常に割切れない問題がある。この問題は何としても解決してやらなければならぬ問題でございます。そういう矛盾を大臣はどうお考えになつておるか。少くとも本年産米に対しては、また産麦に対しては、現実にそれだけの値打のあるものを、値打のある価格で買おうとするかどうか。その場合財政的な負担にたえぬ。いわゆる国内物価をつり上げ、財政を膨脹するということからお考えになつて、依然として従来の。パリテイ指数で、多少上まわる計算方法でお茶を濁して行こうというのか。この点を少くともはつきりする必要があろうと思うのです。  それからいま一つ国家投資にいたしましても、現実に五箇年計画なるものを天下に公表して、年間増産計画を立てられて、増産計画に基く土地改良なり、その他の増産対策を推し進める予算が、年度別にちやんときめられておるはずです。われわれの得ました資料によりましても、現に本年度に割当てられております予算が、本年予算に組みました分の二百十五億、その他を多少これに勘案しましても、現実にまだ全体の六〇%前後しか予算には組まれておりません。あと四〇%を、本年割当の増産計画を達する必要な諸経費として、政府予算に組む必要が起つております。すなわち四〇%残つております。これを土地改良その他増産対策として、来るべき次の国会補正予算としてお出しになる用意がありますか。これがあると言えば、あなたの今の御説明に大体合うことになりますから、その点をひとつ明らかにしていただきたい。  第三番目は、農地金融の問題でございます。御存じ通り、現に農民は自己の財産として当然値打のある財産を、政府農地統制によりまして、価格が公定されていないといいますか、あるいは価格がかり暫定価格でありましても、この取引は全然許されていない。つまり封鎖にあつておる形になつておるわけであります。それを農業委員会のいろいろな運動によりましてというか、御決定によりまして、土地売買現実に行われておることは、数字の示すところであります。一定値打のあるものを、値打のないものとして、あるいはまたこの土地売買が許されてないということから、土地担保にして金融を受けることができない現状にあるわけであります。そういう政府土地に対する政策を途行ずるということから受ける耕作農民側経済的な負担は、非常なるものがあることは現実でございます。そこでこの際土地一定政府保障価格を公定いたしまして、それに伴つて政府補償金融制度をこの際新しくしくことによつて、相当農家経済の安定をはかることができやせんか、そういう線から、この際、土地担保による金融制度というものを新しく考える必要が現実に起つておる事態をお考えになつて、そういう対策をお考えにならぬかどうか、この三点について明確なお答えをいただきたいと思います。
  10. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 非常に専門的な御質問で、はたして満足にお答えできるかどうかおかりませんが、農家経済が非常に苦しいので、美田を売却しなければならぬようになる。これに対しては、三点の対策があるんじやないか、こういうお話でありますが、まつたくその通りであります。第一は、価格の問題、技術の問題、こう列挙されておりますが、技術改良もちろん重大でありますので一われわれの方といたしましては、技術改良等について、非常に意を配つておるようなわけであります。また価格の点については、国際価格と、ことさらにわけて下げておるのじやないかということでありますが、これも一時に国際価格に持つて行きますと、消費者の方の問題がありますので、それをにらみ合せてやらなければなりませんので、これは順次国際価格に合せて行きまして、無理に押えておくというようなことをよして行きたい、こう思つております。いつも価格決定の際に問題になるのでありますが、生産費を基礎とした価格でやつたらいいじやないかということが問題になりますが、実際にやつてみると、この生産費は、各地々々千差万様でありましてなかなか適当な価格をつかむのに骨が折れますので、現在はパリティ計算でやつておるようなわけであります。しかし、これは順次国際価格にしわ寄せして行きたいと思つているのであります。また国家投資の問題でありますが、今までいろいろな計画を立てて年度別に割つているが、大体それが実現しないじやないかというお話であります。これもそのときどきの国の全般財政に支配されまして思うように参りませんが、なるべく計画に沿うて行くようにして行きたいと思うのであります。本年度予算計画よりずつと下まわつているが、足りないところを来る議会に追加予算として要求する用意があるかということでありますが、私たちとしては、これは次の国会予算を出す準備をいたしているようなわけであります。  また次は農村金融制度の問題でありますが、農村金融は現在いろいろな制約がありまして、なかなか思うように参りませんが、農地担保金融に匹敵するような方法を非常にややこしい方法ではありますが、国が買つてまたこれを長期に売り渡すというような方法を現在やつております。ごく最近私たちは案を具して、低利長期な金を農地担保として金融できて、しかも地方銀行がそれに追随できるような方法を現在検討いたしているようなわけであります。
  11. 井上良二

    井上(良)委員 こまかい点は事務当局から伺うことにいたしますが、今まで申し上げました農地法のねらいであります、中堅自作農創設目的にした営農制確立して行こうということになつて来ますと、単に政府の方から、また中央からいろいろな法律予算政策等を現実農村におろします場合、また現実農家経営がいろいろな諸條件に災いされて、なかなか思うような生産費を引下げて、生産力を高めて行くというような経営ができないという問題、そういう問題を解決して行く一つの組織といたしまして、一先般農業協同組合に法的基礎を持たせ、あるいはまた農業技術改良の面に関係する法案つくり、いろいろやつておりますけれども、今日農業団体の経済的活動や、また政治的な農政面の運動というものが非常に力弱く、現実の組合経営が困難な実情から、農民全体の大きな農政への要求というものが、非常に中央への反映が活発でない現状から、最近聞くところによると、地方の農業団体に関係しておりますメンバーや、これに農林次官、農政局長というものが参加をいたしまして、農民の政治的な要望を代表して、中央の農政確立への道を開くとともに、一方各市町村のすみずみに至る農業指導の中央的機関をつくろうというような、新しい農政団体といいますか、農業団体といいますか、そういうものが、かつて戦争前にありました帝国農会、あるいは産業組合中央会というようなものが、最近ちらほらと相談がされているように承つておりますが、これについて農林大臣は一体どういう御所見をお持ちになつており、現にあなたの部下である農林次官、農政局長が、こういう団体の結成に対して相談にあずかつておるやに聞いておる。またそういう会合にも出席しておりますが、そういうことについてどういう報告を聴取しておりますか。これはわが国の将来の農政をきめて行く上に、特に土地解放後の自作農中心とした農政を進めて行く上に、非常に重大な問題になつて来ますので、この点に対して大臣の御所見を伺つておきたいと思います。
  12. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 国の予算がよく流れるようにするのには、地方の各団体との協力が大事じやないかというお話でありす。それはまつたくお説の通りであります。国民の大事な血税をわれわれが使うのでありますから、末端にまで予算が有効に使われることを望まなければならぬのであります。しかもまた有効に使うためには、農村の各種の団体の御努力を願わなければならぬことは論をまたないのであります。そこで今御質問の要点は、農業団体が非常にあるが、この団体の機構等について何か動きがあるのじやないかというお話であります。これは私たちもまだ新聞で承知いたしておる程度でございますがいろいろ団体の人たちがお集りになつて農民の真に欲する機構をつくつたらどうかというような動きはあるように聞いております。また新聞等によりますと、すでに各社とも論説に取上げて、これを議題といたしておるようであります。ここで私たちは、省の方針として考えておることは、この団体の統合、あるいは団体機構の改廃等は、農林省が事務的に上から押しつけるようなことであつてはならない、農民各位の団体の中から真に要望があつて、それをわれわれが立法するなり、あるいはそれを助長するなりすることが大事だという方針を確立しております。また次官、農政局長等がそういう団体に行つて出席しているというお話でありますが、これは何か農林省の方の解釈なり、あるいはまたその他の技術なり、そういつたようなことをお聞きくださるので、出席いたしておると私は考えております。
  13. 井上良二

    井上(良)委員 そうすると大臣は、現在の各種農業団体のほかに、新しい農政を担当するというか、農政を推進する民主的な、農民を基盤にした統一的な農業団体の結成の必要をお認めでございますか。それからもしそういう団体が必要であるとしますならば、今のような中央の、たとえば有力メンバーによつて、ほとんど全国の農民は何ら直接利害関係のない人々によつてといいますか、団体は代表しておりますが、個人的には何ら利害関係はない。そういう天くだり的な上で相談をして、そこで一つの母体をここにつくつて、それを各市町村におろして行くというような、かつての帝国農会的な農業団体の結成の方向を一体どうお考えでありますか、この二つの点について明確にしておいていただきたいと思います。
  14. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 今御指摘のような団体を必要か必要でないかということは、私は先ほども申し上げた通り、真に農民自体が必要であつた場合には、われわれはそれを認めて行く、こういう方針であります。  それからまた上から押しつけるような団体ではいけないんじやないかというのは、その通りでありまして、決して私たちは今さら上から押しつけるような、そういう団体をつくろうというような考えはございません。あくまで農民の自主的な意欲によつて盛り上る団体を助長して行きたい、こう考えております。
  15. 井上良二

    井上(良)委員 これは非常に大事な問題でございますから、私率直に申し上げますが、御存じ通り麦の統制を廃止いたしまして、統制は米だけになつているのであります。そこで先般来の農林大臣の御所見を承つておりますと、今年の産米は統制をする、つまり供出、配給の統制をやつて行くわけですが、麦がはずれました後において、はたして政府は、本年の産米の牧穫が、災害その他で減牧にならずに平年作以上の収穫があつたとして、例年のいわゆる供出割当といいますか、たとえば六千二、三百万石とれました場合、大体割当は二千八百万石前後でありますが、大体それだけの割当をしなければ国内の需給が困難になると考えますので、二千八百万石前後の割当がなされるであろうということを、われわれは想定をしておりますが、この二千八百万石の供出が確保されないような場合は、これは非常な大事な問題になつて来ると思います。これに対する対策いかん。それからいま一つは、今年の産麦に対して政府は最初八百万石を見当に買い上げるということでありますが、八百万石買い上げる自信があるやいなや、この買上げがもし予定通り行きません場合には、結局それを補填する外麦の輸入ということになつて来ますから、そこで私は、国内の産麦の政府集荷という問題は、非常に重要な問題になつて来ると思いますので、予定通りの集荷ができるかどうか。また麦をはずした後の、本年の米の割当は土千八百万石を大体平年作の場合やる予定であるかどうか。またそれの集荷については自信があるかどうか、これは今後の端境期を控えて、食糧対策として非常に重要でありますので、この点特にこの際承つておきたいと思います。
  16. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 麦の統制を緩和したあとにおける米の問題でございますが、これは今までの慣例からも、また経験から申しまして、大体普通に参りますれば、六千二、三百万石とれた場合におきましては、二千八百万石程度のものが、農民の心からなる国家に協力する気持で集荷できると思います。またこれを安易に考えずに、私たちが今考えているように報奨制度なり、あるいはまたその他の方法をもつて農民の供出意欲をそがないように方策も考えて行かなければならぬと思つております。それから麦の統制をはずして八百万石買える自信があるかどうかというお話でありますが、これは仮定の問題でまだわかりませんが、実際麦価も十六日にきめたいと思つているようなわけでありまして、まだわかりませんが、現在の情勢から行けば、相当数量が買えるのではないかと思うのであります。しかもまた現在市場に流れている麦は、大体今まで古い物を農家が持つてつたものが対象になつているようでありますが、これも非常にスムーズに流れているようなわけでありまして、決して消費者に迷惑はかからないと考えております。
  17. 井上良二

    井上(良)委員 もう一点で終ります。これはごく簡単でございますが、事務当局からでもけつこうでございます。この第八十條の規定では、農林大臣が開墾不適地と認めた場合、買い上げた開墾地をその買収前の所有者に売渡すとしてありますが、これを所有者に売りもどすという考え方は一応妥当な考えといたしましても、これが開墾地として不適当と認めるのは農林大臣が認めるので、そこに問題がある。その場合それが適当であるか、適当でないかということを、民主的な機関においてはつきり検討が加えられました上で、これは不適当であるから、ひとつこれは旧所有者に返してやろうというやり方をとるなら妥当といたしますが、そういう手続をとらずに、それを農林大臣の認定において適当、不適当ということをきめますことは、もしこれが勢力あるものがいろいろな政治的策動をいたしまして、不適当ときめてくれという運動があつた場合、大臣の認定になつていますから、ただちに不適当と決定される危険が起ります。そういうことではなしに、何ゆえに民主的な開拓審議会であるとか、あるいは農地委員会等の機関を経て適地、不適地をきめるような処置をとらなかつたか、この一点だけを伺つておきたいと思います。
  18. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 開墾地として適当であるとして買い入れたものが不幸にして不適地であつた場合に、これを旧所有者に拂いもどすということについてのお話でありますが、適、不適をきめるのに何かそごに問題があるのではないか、こういうお尋ねであります。これは農林省の中にそれ相当の権威者が集つて規格はきめてありますから、これによつてやりますし、なおまたその地方の方々によくそこに相談してやりたいと思います。権威あるわが農林省でありますので、どんな権力にも屈しませんで、公平妥当にやる考えであります。
  19. 松浦東介

    松浦委員長 竹村君。
  20. 竹村奈良一

    ○竹村委員 まず大臣に伺いたいと思います。  農地改革を途行いたします場合におきましては、各国の歴史を見てみましても、少くともその国の民族がこの改革によつて発展べの方向をとるか、あるいはそうでない方向をとるかという岐路に立つわけでありますが、農地法というこの法案を見て参りますと、日本が敗戦によつて農地改革を連合軍の命令によつてつてつた。その農地改革自身が最も不徹底なものであつたのでありますけれども、それを単に弥縫的に継ぎ合わし、しかもそれだけではなしに、少くとも農村の民主化的な傾向を推進するのではないという印象を與えるがごとき改革案になつておると、私は思うのであります。まず第一に、この間も当局に質問したのですが、第一條において、少くとも旧法には農村における民主化的傾向を促進するという條項があつたのを削つておる。このことは簡単に申しますと、農地法の本質をはつきり出しておると思う。少くともこの農地改革をやることによつて、ほんとうに民族を発展せしめるがごとき徹底的な改革をしないということだけは、はつきりしているようなものでありますが、その結果として、少くとも従来の農地改革の條文をつづり合すというのではなく、また日本の農業をどういう方向に持つて行こうとか、そのためには農地改革はどういう形で行わなければならないかを考えず、政府政策はそういう進歩の方向ではなく、いわゆる逆転の方向に向いているわけでありますが、農林大臣は従来行われた農地改革そのものから逆転さすというふうに考えておられるのか、もう少しこれを一歩前進さすというお考え方でいられるのか、その点をまず承つておきたい。
  21. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農地改革の問題を各国の歴史から見れば、民族が発展する場合もあるし、発展しない場合もあるというお話でありますが、少くとも今度の農地改革においては、わが民族が発展すると私は考えておるのであります。この法案は單に命令や何かをつつり合せた間に合せのものではないかというお話でありますが、これも私はあなたのおつしやることには賛成いたしかねるのであります。ただ農村の民主化をはかるという大目的を、最初に掲げてあるのを削つてあるではないか、こういうことでありますが、しかしこの民主化ということは各條項々々に全部表われております。これは常識でありますので、この際これを掲げなくともよいということで、條文の中に十分これは盛られております。  それから一体進歩の方向をとるのか、逆転するのかというお話でありますが、私は決して農地改革をしない前に逆転しようなどとは考えていないのであります。単にこの法案のみならず、農政百般についてあくまで農地敷革の有終の美をなさしめるように、予算なりその他の政策において、各省とも諮りまして進歩して行くようにやつておるわけであります。
  22. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それではお尋ねいたしますが、この農地改革によつて土地改革なるものが決して逆転しない、あまり進展するとも考えておられぬようでありますが、しかしこの問題で、農地改革だけでなく農政一般についても改革を加えて行くということまで論議しておると、時間がかかりますので省きますが、私の伺いたいのは、井上君もおつしやいましたが、兼業農家の問題であります。それに対して、今度は自作農家を目標にしておるのだからということで、北海道では二町歩、内地では三反歩以下の農家は新たに土地を獲得するということが封じられております。そのことを私はとやかくは申しません。それはまた別に聞きますが、そこでこういう農家に対して、政府は一体どういうような形において農業の発展の方法を策そうとしておるのか。少くとも土地を新たに與えなかつたならば、この人たち農業においての自活ができ得ない方向をとるであろう。これは兼業農家であるとあなたの方ではおつしやるわけですが、そこで兼業農家をしなければならない現在の農村における経済的、社会的な状態において、これを打破する方向を指示しなくても、一ぺんに新しい農地法によつて農家が発展する方向、土地を取得する方法をとめて行くということになりますと、これは大きな問題であります。従つて、これをこういうように考えられるならば、そういう人たちを別な形において、少くとも農家では発展する方法がないのだから、商人として行くのか、あるいは給料取りとして行くのか、あるいは別な農村工業考えてやつて行くのか、これが一つの大きな問題であります。  それからもう一つは、この法案で見て来ますと、これは事務当局にいろいろ聞きましたが、開墾なんかでも遅々として、あまり大きな計画をしておられないわけであります。そうなりますと、大臣が常に国内食糧自給態勢確立ということを叫んでおられますけれども、実際の開墾やその他は、事務的な点で質問いたしましても、一年に十万町歩しか開墾の予定を持つておられない。こういうことになりますと、あなたが常に言つておられる日本の国内食糧自給の態勢はくずれて来る。もちろん五箇年計画ではいろいろ考えておられますけれども、これは実施する段になつてほんのわずかのものしかやられないとなると、私はそこに矛盾があるのではないか。しかもこの農地改革は、少くとも逆転しないとおつしやいますけれども、事実上逆転して行つておる。こういうことを危惧いたしますので、この点を明らかにしていただきたい。  先ほど申しましたように、第一点は、土地を取得でき得ないようにしておる。北海道などは二町以下の農家、これを一体どうして行くのか。内地においては三反歩以下の農家、これをどうして行くか。これは単に兼業だからでございますというだけでは、納得いたしません。こういう農家は少くとも日本の農業における政治的、経済的な諸事情によつて存在しておるのでありまして、これをそのままほうつておくことはできませんので、これを一つ。しかも開墾の問題については微々たる数量しか計画されていないが、これに対してどうせられておるか。
  23. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 いわゆる三反百姓の問題でありますが、この三反百姓にもいろいろ種類がございまして、千差万別でございます。第一、漁村における兼業農家などもこの一つになろうと思うのであります。また鉄道沿線における鉄道従業員の兼業しておるようなものもこれに入ると思います。また山村における、山林をたくさん持つてつて、少い耕地しかないというのも、この一例になると思うのでありまして、その三反百姓ができておるのについてはいろいろ過去の例があり、また遠境に支配されると思うのでありますが、こういうものに対して政府はどうするかということであります。そういう方々に対しましては、いろいろ方法はあると思いますが、土地の高度の利用化をはかるように技術を伝授するなり、あるいは品種の改良等によりまして、この収益を高く上げるようにして行きたいと思います。また農村工業等も興して行つて、吸収できるような方法考えなければならぬと私は思いまするが、これについては、十分意を用いて、今後対策を立てたいと思つております。  それからまたから念仏ばかり言つて、開墾や何かさつぱり進まないじやないか、こういうお話でありますが、私たちといたしましては、予算の許す範囲内において十分努力をいたしておるのであります。開墾、干拓、牧野の開放、いろいろな点を十分考えてやつておるようなわけであります。また開墾可能の地が七十万町歩もありまするので、これを高度に開発して行きたい。そして私たちは、十年計画の中で、第一次計画として五箇年計画の試案を現在具体化しようと努力いたしておるようなわけであります。
  24. 竹村奈良一

    ○竹村委員 七十万町歩を十箇年で開拓する、こうおつしやるところに問題があると思う。開墾可能地というものは、農林当局の見たところで少くとも七百万町歩もある。その一割にすぎないものを十年もかかつて開拓しても、日本の食糧自給には大したことになりませんよ。そういう議論はまあおきますが、私はそういう点は、食糧自給政策の根本とは違うのではないか、こう考えておる。しかもこの農地改革によつて一番決定的な問題は、山林、牧野に対する開放というものをそういう予定のもとに置いて、最も大々的な開墾予定地というものを、少くとも無償で拂い下げて、これを開墾するというような点が抜けておることであります。  もう一つ、私はふに落ちないのは、農地改革の前の條文をつづり合したのと同じではないかと思う。いや、そうではないと言いますけれども、事実はそういうことを、事ほどさように証明している箇所がずいぶんある。というのは、たとえばここでもいわゆる地主の小作地保有というものを認めておる。これはずつと表に出ておりますがこういう問題も実は根本的に解決する事態に来ているのではないか。一人の持分は各府県別に違うが残すようになつておりますけれども、残しておくということ自体は、農地改革のいろいろな條文を運用しておるようでは、土地集約、つまり地主制度へ持つて行く基礎を置くものではないか、少くとも徹底した農地改革をやるならば、一人に対して七反とか、一町歩とかいうようなものを残さなければならないというところに大きな問題がある。そこは私はどうも納得できない。  もう一つ、私は申し上げたいのは、農地法案がことにかかつておるわけでありますが、その前にすでに農地課長名で、四月の三日付で買収漏れの農地及び牧野などに関するいろいろな通牒が出ておるわけであります。買収漏れの農地及び牧野の買収期日は、講和発効の日——今のところ四月中の見込み——以前に定められたることはもちろん、買収令書の交付後、発効以前に完了するというようなことを、農地局長名で四月の三日付で出されておる。これに関しまして、全国の農業委員会では新たに買牧などを中止して、あるいはまた従来の価格の問題、対価の問題で、これは元の通りにもらえるかもしれぬというので、各地で農業委員会の仕事はほとんど停止しておるようなかつこうになつておる。それと同時に、元の地主からの土地取上げが各地に続発しておる。こういうことは、この法案の第一條の初めに申しましたが、もうすでにこれが出されたために逆コースをたどつている。こういう点は、そういうようなことを起して、進歩的な方向だということは言えないと思いますが、この点について一体大臣はどういうふうに考えておられるか。こんな通牒は、大臣がみずから指揮してお出しになつたと思いますが、その出したことによつてつたところの影響は実に甚大であつて、現にそういう紛糾が起つている。これに対してどういうふうに考えられるか、この点をひとつ伺つておきたい。
  25. 平川守

    ○平川政府委員 ただいまの通牒の問題について私からお答え申し上げます。これは講和條約発効の時期でもありますし、新しい法案われわれが提出する準備を整えている際でもありますので、従来いわゆる買い漏れの地帯につきましては、急速に買収を終了するようにする、いずれにしても二十年十一月の状態において買収すべきものであつたという土地が対象であるわけでありますから、そういうものをいつまでもその状態のまま放置しておくのはよろしくない、すみやかに買収を終了するようにという意味の通牒でありまして、その通牒が誤解を生じまして、あたかもこの四月からは買収は一切行わない、また逆転して従来の地主に返してもらえるというような極端な誤解までも生じた向きもあるよりであります。これはまつたくの誤解でありまして、そういう趣旨は一つも通牒に書いてないのであります。ただ三月一ぱいに古い買収すべき候補地については買収することを完了するようにということを強く表明いたしましたのが、誤解を生じたようでありますので、この点については、なおこれに該当する土地については買収してさしつかえないのだということを、先般全国の農地課長を集めました際に、そういう趣旨をよく徹底しておきました。なお通牒をもつてそういう誤解のないようにということをはつきり申したいと考えております。
  26. 竹村奈良一

    ○竹村委員 大臣に対する質疑はこれで終ります。そのかわりに委員長に申し上げておきますが、局長にもう二、三質問したい点がありますから、これだけは保留いたします。
  27. 松浦東介

    松浦委員長 了承いたしました。
  28. 大森玉木

    ○大森委員 関連して。大きな問題と思うので、大臣に御答弁願いたい。今竹村君から、地主が何反歩か持つているものも取上げよ、それが当然のことではないかというような御意見があつたが、これに対する私の意見はまつた反対であります。何ゆえ地主は今農業ができないのであるか。今農村にあつて地主が農業を行うことができないという現状は、行き過ぎではないかと私どもは考えております。それはどういうことであるかというと、七反歩なら七反歩を保有しておつても、耕作権がないためにこれをやれないことになつている。同じ農村に住んでおるのであるから、その部落におつてお前はいかぬ、同じ農民でありながらお前は着地主であつたから明日から百姓をしてはいかぬということは、毛頭あり得ないと私は思う。昔の時代はどうかというと、年貢米を取上げて生活をしておつたが、年貢米というものがなくなつてしまつた今日においては、何らかをつくらせて生活をさせなければならぬ、ということは平等の責任であつて地主なるがゆえにそうした差別待遇を受けなければならぬということは毛頭ないと思う。それなのに今の共産党の人は、地主にはもう食わすなというようなことを言われるから、この問題については質問するのであります。今度のこの農地法の改革によつてこれを何とかいたす方法がないかということを、私は関連質問として申し上げておきます。今申し上げたように、何としても地主はない。しかしながら地主はなけれども、農村においてはこうした人がたくさんあることを、農林大臣もよく御承知だと思う。また他の人もよく知つておられると思う。しかしながら他の人々はどうであるかというと、第一に地主は人である。小作人は多いというようなことで、小作人のごきげんをとることが利益であると考えておられるから、かくのごときことを仰せられるのである。私は利益である、ないということを拔きにして、一人でも飢える者をなからしめるということが法の根本精神でなければならないと考えますがゆえに、何とか今度の農地法の改革によつて、これを生かす方法農林大臣はお考えになりますかどうか、これをお尋ねいたします。
  29. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 土地所有者が百姓をやつて悪いという法律はないのであります。ただ経営能力があるかないかということであり、またその地主の土地を小作しておる者の生活権を脅かすか、脅かさないかということでありまして、両方ともさしつかえない場合にはやつてよろしいという法律になつておるので、決して御心配はないと思います。
  30. 大森玉木

    ○大森委員 私は農林大臣答弁に対してまつたくどうも案外に思う。私の申し上げておることは、地主というものを解放してしまつた、とられてしまつた。しかしながらまだ七反歩なり一町歩なりは持つておる。しかしながらこれを耕作権がないためにつくれない。だからこれを何とかしてつくらせるようにせなければ、田は持つておるけれども農村で営業ができない。これは行き過ぎではないか、私はこういうことを尋ねたので、あなたの仰せられるように、それはつくる権利があれば、つくることは当然でありまして、そういうことはあなたに聞かなくてもよくわかつておる。しかしながらそういうことでなく、今持つてつてつくれないという状態にある。これを何とか方法はないか、こうせなければいけないのではないかということを私はお尋ねをいたしたので、農業をやるなとは言つてないということは、あなたから聞くまでもない。この点をどう考えるか。これは大きな政治問題である。だからくどいようでありますが、七反歩つておるけれども、これを自分が耕作させておつたから、その耕作権は小作に移つておる。だからお前は持つことはできるが、しかしお前はつくつてはならないぞという法律になつておる。こういうことでありますので、今はいくらか小作料が上りましたけれども、今までだと、どういう結果になつてつたかというと、一反七十五円でありますから一町歩持つてつても七百五十円でありますから地主は農村におつてやみの米を五升買うとそれで一年中の年貢米がなくなる。こういう状態を続けておることは、私は決していい法律ではなかつたと思う。これはやはりその人につくらせることを考えなければならぬ。農村の地主だから何何の罰則によつてお前は営業をしてはならない——これは営業を取上げたことになる。持つておるけれどもつくれないということは、自分のやつてつた仕事を取上げたことになるのだから、そうじやなくて、やはり平等につくらせるような方法を勘考しなければ、私は適当な法律とはいえない、これは行き過ぎではないかということをお尋ねいたしたのであります。
  31. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 私も土地をとられた一人で、その味はよくわかるのですが、これはあの当時の現状をそのまま率直に立法化いたしたのでありまして、経営能力があつて、しかもそのときの小作権所有者がほんとうに納得すればそれでよろしい、こういうことになつておるようでありますから、どうぞさよう御了承を願います。
  32. 松浦東介

    松浦委員長 吉川久衛君。
  33. 吉川久衛

    ○吉川委員 私は同僚議員からすでに多くの有力なる御意見や御質疑がなされましたし、また大臣は病を冒して御出席になるという御精勤ぶりに敬意を表しまして、私の質疑はきわめて簡単な数点にとどめたいと思います。  第一番は、同僚議員からも述べられたこととやや重複するかもしれませんけれども、そもそも農地改革の目的には二つの意味のあつたことは、私の申すまでもない二とである。一つには農村の民主化であり、一つには農業生産力増強にあると思うのでありますが、遺憾ながら日本の農地政革は、農村の民主化に急にして、農業生産力の面において劣つておることは、私が喋々するまでもないと思います。しかしながら、せつかくここまで農村の民主化が推進されたものを、ここで農村の民主化の逆コースをたどるような政府の態度というものは、私どもはまことに惜しむのであります。先日竹村議員の質問に対して平川農地局長は、今日本の政治の方向は民主化の方向にあるのであつて、特にここで農村の民主的傾向を推進するというようなことをあらためてうたう必要はないのだとおつしやつております。きようはまた大臣がこれは常識であるとお答えになつておるのでございますが、これはこの法律がそもそも当初できる当時において、日本の政治の方向は民主主義をもつて行くんだという大基本方針は確定していたわけであります。そういうときに、特に民主的な傾向を推進することをもつて目的とすることを強調したゆえんをわれわれは振り返つて見るときに、今大森議員からも言われたように、ある面においては行き過ぎではなかつたかとまでいわれるほどに、多くの人の奪い犠牲のもとに、せつかく今まで推進されて来たところの農村の民主化を、ここで逆転させるような行き方というものは、私は今までの尊い犠牲者に対して申訳がないと思います。そういう意味において、この第一條に民主的な傾向の促進をはかるという字句を抹殺したことは、私は最近流行語となつておりますところの民主的な逆コースであるというように考えまして、大臣に一考を煩わしたいと思うのであります。それでは民主化の方向の問題は別といたしましても、もう一つ目的であるところの農業生産力増強に今度は重点を置くんだとおつしやるならば、私は昭和二十七年度予算を読んでいただきたいと思います。私は今ここにあるところの資料によつて、二十七年度の農林予算をこれから説明いたしておりますと、たいへんな時間がかかりますから、これは省略いたします。けれども具体的な二、三の例をもつて見ますならば、農林省の予算の面において、北海道のある部面を除いては、農林予算は決して増強されておりません。それからまた、せんがつて問題になりましたところの農林省の機構の問題等についても、いかに農林省が農林行政に対して後退的な態勢にあるかという一つの証左でございます。あるいは肥料対策の問題について見ましても、通産省に押されて農林省案の肥料需給調整法案が葬り去られたというような問題を考えてみても、また本委員会のホープといわれた野原君が、農林政務次官に就任されて半年もたたないのに、責任を負うと言われて辞表を出されるや、ほんとうに日本農政に御熱意を傾けられて、病を冒して御出席になられる廣川農相としては、どうしてその辞表をお受取りになつたか、私ははなはだ理解に苦しむのでございます。このようないろいろの問題を取上げて判断をいたしますと、本法案農村の民主化を推進しているという問題に対して、非常に勧懲を欠くものであり、もう一つ目的である農業生産力増強の問題についても、私は熱意の足らざるものを憂えているのでございますが、この点について農林大臣は御確信がありますかどうか、承つておきたいと思います。
  34. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 條文から民主化促進の言葉を除いたことは逆行じやないかと、共産党の方が言われたことに御同情のようでありますが、これは先ほども申し上げた通り、法文の内容を端的にごらんになれば、決して逆行いたしておりません。ますます民主化をやつて参るのでありまして、御心配はないと思います。それから生産力増強のことでありますが、農地の改革によつて生産力増強がさつぱり行かないのじやないかということであります。しかしこれはあなたと私はまつた反対であるのでありまして、生産力増強をさせるためにあらゆる施策を講じているのであります。二十七年度予算においては、それ相応にこれを裏づけているはずであります。また機構の問題でありますが、なるべく機構は簡素にいたしまして、農民を含めた一般の国民に負担をかけないようにして行きたいというのが、われわれのねらいであります。また肥料対策等を御指摘でありますが、農林省の肥料対策がよろしいためにだんだん値が下つて参るようであります。これは決して農林省が策がないということではないのであります。それから野原君の問題でありますが、野原君は病気で退職なされましたので、(「うそ言うな、ぴんぴんしている。」と呼ぶ者あり)人の生理状態まで立ち入る権利を持ちませんから、そのまま受理いたしたわけであります。
  35. 吉川久衛

    ○吉川委員 肥料の生産が盛んに行われて値が下つたということは、政府の施策のよろしきを得たものであるということでございますが、これはさにあらずでございます。本年は非常に雪が多くて、雪解けの水の豊富なために電力事情が好転をし、肥料が増産をされて、そのために値下りになつたということでありまして、これは廣川大農相のお力というわけではございませんから、この点はあまりおしよいにならない方がいいのじやないかと思います。それよりは今後に来る肥料政策の問題でございます。この問題については、適当な機会にあらためてやることにして、ここでは触れないことにいたします。しかし農村の民主化の問題については、私は大臣のおつしやるように、共産党に一片の同情も持つてはおりません。共産党とは私は截然と区別をしているというよりは、共産党は私どもとまつたく立場を異にいたしますので、問題にはいたしておりませんが、しかし私の立場からいたしますと、せつかく朝野をあげ、党派を超越してここまで推進された農村の民主化、今まで地主を初め多くの人々の犠牲によつてあがなわれたこの民主化を逆転するということは、今までの犠牲者に対しても申訳がない。そして私は、民主化の方向がほんとうに日本の食糧の増産の基本になると確信をしておる一人でございますので、そういう立場から私は、民主化の後退をはなはだ遺憾に思うということで、お尋ねをしたわけでございます。私がそういう心配をする一つ原因としてこの法案の内容を検討いたしますと、各所に散見することでありますが、たとえば法案の第四條、二十條、八十條等に散見する大臣とか都道府県知事とかいうような行政長官等の許可によつて物事が進められるような形になつております。農村の村づくりの中心をなしております農業委員会制度をせつかく設けながらも、これを活用するということについてのお考えがほとんどないということは、大臣の言われる農村の民主化について、内容を見ていただければよくわかつてもらえるということとは、全然矛盾しているように考えるのでございますが、この点についてどういうようにお考えでございますか。
  36. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 大臣を含めて、官吏も、公吏もまつた農民の忠僕でありまして、これが農村のために働くのは当然であると考えております。
  37. 吉川久衛

    ○吉川委員 廣川大臣のお言葉とも思われません。はたして日本の農民は、あなたのお言葉のように忠僕と考えているでしようか。私はさすがの大臣と思つておりましたが、御認識が十分でないように思いますから、私の認識とどちらが正しいか、ひとつ議会が済んだらつぶさに農村をあんぎやして、実情を御検討願いたいと思います。  もう一つ伺いたいのは、農村の民主化をはばむ方向にありはしないか、農業生産力増強の妨げになりはしないかという問題の一つとして、三反歩以下のものについては農地を買うことができないという規定でございます。私は、ごらんの通り、手に血豆をつくりまして、土曜日の夜行で家に帰り、日曜の夜行で上京して百姓をやつているのでありますが、反当収量十一俵以上をあげております。廣川農林大臣は難を何千羽ねかお飼いだそうであります。しかし私は三反百姓であつても、その生産力においては日本の最高水準を確保しているつもりでございます。こういう少い反別を片手間に耕すから生産が減退するのであるというお考え方は、私は適当ではないと思うのです。むしろこれは地方の実情を熟知しております農業委員意見を聞いて、この人はほんとうに生産の増強ができる農民であるということが認められるならば、土地を確保することができると、うことは一向にさしつかえないと思うのでありますが、こういう点についてのお考え方を伺いたいと思います。
  38. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 そういう篤農家のみを私らは求めておるのでありまして、その点においてはあなたと私はまつたく同資格であろうと思います。私も五反百姓でありますが、現に朝早くから畑をやつておるのでありまして、こういう私のような者や、あなたのような篤農家には、特に例外を認めて買えるようにちやんと法はできておるのでございます。御安心を願います。
  39. 吉川久衛

    ○吉川委員 私個人は大臣にお認めをいただいておりますから、特例でやつていただけようかと思いますが、大臣にお認めいただけないような、全国の私と同じような立場にある人々にも、十分ひとつお目をきかせていただきたいと思います。何だか私は富農中心主義の政策にあるように考えられてならないのでございますから、十分この点に行政的な御配慮があつてしかるべきと考えます。  次に、私がいつも農地問題について心配になります問題は、日本の新しい憲法でございます。日本の憲法は、均分相続の精神をうたいまして、そのために民法は均分相続を規定いたしております。そこで今のような日本の、厖大な人口をかかえておるところの状況にありまして、これらの農家の資産の問題は、いよいよますます零細化されることは必至でございます。この農村人口対策問題を、農村人口問題を担当しておいでになるところの農林大臣としては、どういうようにお考えでございますか。昨年一年間の統計を見ましても、政府は産めよふやせよという御施策はとつておいでにならないと思いますにもかかわらず、生れた数は二百三十五万六千八百五十六人といわれておる。なくなつた数は九十万八千八百一人といわれる。差引いて百四十四万八千五十五人も人口が増加しておる状況でございます。こういう恐るべき人口の増加に対処して、どういうような御施策をお考えでございますか。農地はいやが上にも零細化されて、適正規模農業なんていう問題は、今日言葉にする人は一人もなくなりました。これで一体農家経営農家経済というものは成り立つのかということをお考えいただきますならば、おのずから農村人口の問題、この対策の具体的な問題が生れて来なければならないと思いますが、これについてどういうようにお考えになりますか。それから零細化を防ぐために、農業資産相続特例法とかいうような問題が、幾たびか議題に上りながらも、遂に本国会にもその姿を見るに至らなかつたのは、どういうわけでございますか。これもあわせてお答えを願います。
  40. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 憲法の均分相続の問題でありますが、それによつて農地がだんだん零細化して行くというお話であります。その点をわれわれは心配いたしまして、このために土地政府が買い上げて、長期でこれを売り渡して行くという方法考えておるのであります。また相続税につきましては、この間改正をいたしまして、ほとんど農家の七〇%くらいは、税金がかからないようにいたしておるのでありまして、そういうような具体的な運用で、零細化しないようにやつて行きたい、先ほども井上委員にお答えしたように、近い将来には、農地担保金融をいたしまして、これが零細化しないように努力をいたしたい、こう思うのであります。  まただんだんふえて行く農村人口対策についてでありますが、これは干拓、開拓、土地改良あるいは高度利用等、あらゆる施設を講ずるのはもちろんでございますが、それともう一つ、近ごろ新たに盛り上つて来ました産業開発除、二、三男が中心になつて一つのグループをつくり、また一つのキヤンプを持つて、土木技術等を習得しながら産業開発に当つて行くという青年運動も展開されて来ておるのであります。そのほか、農村工業等も、できる限り振興いたし、あるいは酪農等もできる限り奨励いたしまして、この余剰人口をそういう方面に吸収いたして参りまして、農村にこれが圧迫にならぬようにしたい、こう考えておるようなわけであります。
  41. 吉川久衛

    ○吉川委員 大臣は、この前私が伺つたときに、今度はよく勉強しておくとおつしやつたが、一つまだ勉強の足らないのがある。それは、農業資産相続特例法というのは、均分相続の税金の問題でなくて、均分相続をして行きますと、農地はますますます零細化されて、農業経営が成り立たなくなる。そこでその相続の特例を設けたらどうかということが問題になつておるのであるが、一体この問題を、どういうふうにお考えですかということを伺つておるのであります。それをもう一ぺんお答えを願いたい。  それから日本の農政の盲点といわれておるのが、三百万町歩の牧野の問題だと思います。われわれは直接牧草を食べるわけには参りませんが、これを動物のおなかを通して乳にし、肉にして、多角的な食糧を確保して行くということは、きわめて重要な問題であろうと思いますが、この点について大臣はたいへん御熱意を持つておられまして、本年度は、畜産振興の問題にその御熱意の片鱗をお見せいただきましたが、今後この問題を一層推進をしていただきたいと思います。それにつけて私の思うことは、農林省の機構の問題に入るのですが、農林省には農政局、農地局、食糧庁というのがございます。ただいまのところ、農政局は食糧の生産計画全般を担当すべきものであると思う。農地局は、これが技術的な面を担当すべきものであると考えておる。食糧庁は、かくして生産された食糧を確保して、これの配給面、流通面を担当するものであろうと思うのでありますが、どうもこの三局の分野が明確ならず、そのおのおのの機構の特徴を十分発揮できないような形にあるように見受けられるのであります。こういう点について、大臣はお気づきであるかどうか、お気づきでなかつたならば、ひとつ十分御検討願つて、すみやかに生産増強の態勢のために、横の連絡をもつと緊密にうまくやつて、機構を円滑に動かせるような態勢にしていただくことが、農林行政の円滑な推進の上に必要じやないかと思いますので、そういう点に御配慮を願いたいと思う。このときに私が思いますことは、今のような状態で参りますときに——あの麦の統制を撤廃した。ここで国民の、少くとも農業生産にかかわるところの農民の気持は、大分ゆるやかになりました。それからまた商業資本家はトラックに旗を巻いて盛んに宣伝これ努めております。流通面は相当の混乱を招来するものと私は考えます。従つて、食糧の価格の値上りは必至でございます。こういうときに、政府は一体来るべき時期において、米の供出の割当をどういうようにお考えでございますか。おそらく政府の腹の中では、三千万石近いところの供出を御決意になつておいでになるのではなかろうかと思うのであります。そうでなければ、この不足するところの食糧の需給状況を予想いたしますと、たいへんな混乱を招来すると憂慮するのでございますが、それに対するところの対策は、どういうようにお立てになつておいでになりますか、少くとも御決意はどうであるかを伺つておきたいと思います。
  42. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 相続法の特例の問題でありますが、これは先ほども申し上げました通り、憲法上の問題もあり、いろいろ問題がありまするので、せつかく検討いたしておるわけであります。  次は二百万町歩に余る牧野の問題ですが、これも農業政策としては大きな問題でありますので、でき得る限り牧野の開放をいたし、しかも牧野の改良をこいねがつておるのでありまして、これは継続的に牧野の改良については力を入れたい、こう考えておる次第であります。  それから農業機構の点についてのお話でありますが、御指摘のような点もあるかと思いますので、十分これは検討いたしまして、末端に迷惑をかけないように、しかも増産ができ得るように十分検討いたしたいと思います。  それから今度麦の統制が緩和されて、農村に非常に笑いの声が起つておるということでありますが、これは御同慶の至りでございます。そうして農民が今までの非常に押えられた価格よりも高く買つてもらえる二とを、私は心から念願いたしておるのであります。しかもまたさようにいたしまして食糧の流通がよくなる二とは、国民全般が希望いたすところでありまして、現在米のやみ価格が二十円方暴落いたしておるのであります。これによつていかに麦の流通が米価によい結果を及ぼしておるかということが、端的に現われて参つております。またそれに関連いたしまして米のお話でありますが、政府は三千万石くらいの割当を腹の中に持つておるのではないか、こういうお話でありますが、これは多からんことは期待いたしておりますが、これも出来高を見まして事後割当をいたすのであります。しかし価格、報奨、その他の点を十分考えまして、喜んで農民に出していただいて、しかもわれわれが考えておるように多く出て来ることを期待いたし、決して強制的にわれわれは圧迫してやるというような考えはないのでありまして、今麦がはずれて喜んで商家なりあるいは協同組合に売つておるように、政府に喜んで売つてくれるように、私たちは施策を誤らないで行きたいということを考えておる次第であります。
  43. 吉川久衛

    ○吉川委員 ただいま大分麦の値が上つて同慶にたえないということでございましたが、私は廣川農林大臣のなるべく多く買つてやろうという親心に反しまして、おそらく政府の手元へは麦はやつて来ないような事態が起きて来ると思います。麦の値が上ることによつて米の供出を農民は好まなくなります。そこで政府は手持ちの麦を持ちませんから、価格の調節ができなくなつて、米の値はいやが上にも上つて参ります。そこでその米の値段を調節するために、政府はどういう挙に出るかというと、どうしても供出の増強ということになつて来るわけであります。そうすると単作地帯の農民を初めとし、米を供出する農民は、このために非常な打撃を」うむつて政府の御期待にまつたく矛盾するところの結果が生れて、需給の面において混乱を生ずるという見通しを私は持つておりますので、大臣とは所見を異にいたします。あるいは見解の相違とおつしやるかもしれませんが、こういう見方をする人間もあるということを、ひとつ折々思い出されて、対策に誤りなきを御期待申し上げます。  最後に、この法案によりますと、土地収用法との関係がどうもはつきりいたしておりません。そこでただいま日本に駐留しておるところのアメリカの兵隊さんや、あるいは日本の予備隊の農地接収の問題等が起りました場合に、農地法では一体どういうふうに取扱われるようになつておりますのか。もし農地法でどうすることもできないとするならば、せつかくの農地改革の成果というものが維持できないという結果になりはしないかということを、私は憂慮いたします。ことに長い間あの兵営の跡あるいは演習場の跡、あの非常な寂寛な所においてどうやら一人前の農家になろうということで見通しを持つに至つた開拓農民の人々の土地を接収することによつて、もう一ぺんあの人々を奈落のどん底へ陷れるような態度を政府がとられるとするならば、このような戦争の犠牲の不公平な措置に対しては、われわれはどうしてもがまんができないのでございますが、こういう問題に対して大臣はどういうようにお考えでございますか、お答えを願つて私の質問を終りといたします。
  44. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 麦を政府に売らなくなりまして非常に困るのではないか、商人の方や何かが買いあさりまして政府に売らないのではないか、こういうことでありますが、もしかりにそういう場合がありましても、それは農民のふところが肥えることであり、また流通がよくなることでありますから、私たちはほんとうに喜んでおるのであります。但しこれによつて需給操作が困難になるのではないかというお話でありますが、これは足りない食糧を予測いたしまして外麦を入れて保有いたしておりますので、その御懸念はないと私は揺じております。また麦の価格が非常に高くなつて、供出意欲が少くなるのではないかというお話でありますが、われわれの信じておる農民は、決して米を隠匿いたさないと思います。またわれわれ民族を守つてくれる農民でありますから、喜んで出していただく、こう信じておるようなわけであります。  次には駐留軍並びに予備隊の土地の問題でありますが、駐留軍の土地收用については、これは合同委員会がありますので、農民の声を農林省は十分腹に入れて、しつかりじた交渉をいたしておるのでありまして、無用な心配はさせないようにいたしたい、こう思うのであります。なおまた予備隊等につきましても、これは農林省と相談しなければできないように、われわれとしては十分注意いたしておるのであります。ただここで問題がありますのは、予備隊の誘致運動等で、代議士諸君がよく小あきんどなんかを先頭に立てて陳情に参られますが、わそわそは断固としてこれをしりぞけておるようなわけであります。それのみならず私たちは、農地保存法とでも申しましようか、そういつた法律まで実はつくりたいと考えているくらいなのでありまして、それにつけても、とめどのない都市計画の現在のさま、これも目に余りまするので、都市における不良住宅の排除あるいはまた都市計画の変更といつたようなところまで、私たちはそれぞれ申し入れておるのであります。土地につきましては、單にわれわれの時代のみの土地ではないのでありまして、今後幾万年続くか知らぬ日本民族の大事な土地でありますので、一畝一歩でもゆるがせにすることはできないのであります。これをだんだん拡張して、今後子孫に伝えて行かなければならない大きな責任がありますので、最も大事に取扱いたいと思つておるわけであります。
  45. 吉川久衛

    ○吉川委員 大臣のお答えを総じて、私は非常に御熱心なお答えをいただいたのでございますが、所見を異にする関係か、納得の行かない点もありますし、もつとつつ込んでお尋ねしたい点が多々ございますけれども、御病気の大臣をこれ以上煩わすことはこの際遠慮いたしまして、また適当の機会にお尋ねをいたすことにいたしますが、ただ最後に、せんだつての食糧管理法の一部を改正する法律審議の際に大臣がお約束くださいましたところの、配給米食率の全国的均一化の問題でございます。これをどういうふうにただいま具体的にお運びでございますか、それをひとつ伺つておきたいと思います。
  46. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これを具体的にごうごうという数字をあげて私回答しかねますが、これは事務の方でそれ相当にやつておりますので、今まで米産地等の港などに入らなかつた外麦等も大量に入れたりいたしまして、いろいろ施策を講じておるようなわけであります。ごく最近新潟、伏木等日本海方面にもどんどん入れて参りまして、均一化するように努力をいたしております。
  47. 大森玉木

    ○大森委員 ちよつと議事進行について……。昨日本委員会からまわしましたところの畜犬法案が、再び農林委員会にもどされて審議のし直しをせよという決議ができたのであります。これを考えますときた、今も熱心に声をからして論議しておるが、しかしこの法案決定されましても、これがまた本会議に行つて、これはやり直せということになるならば、これは先にあなた方の党の了解を得てからでないと審議ができないということになつて来る。この点は私は非常に大きな問題だと思う。しかも自由党の方々がここに多数おられまして決定をいたしましたその案が、本会議において再びやり直せということが自由党の手によつてまた決定された場合において、委員長はいかなる考えを持つておられるか、こういうことは、議会というものが開かれてから今日までにそうした例が多々あるのでありますかどうか。私はこの問題に対しては、自由党の諸君は相当に責任があるものだと考えます。同時に委員長の責任ある答弁を聞きたいと思います。さもなければ、この審議にあたつてはいつもそれを憂慮しなければならない。今これをきめてもまた本会議においてもどされるというようなことでは、何のきめる必要もなくなつて来るので、この点をやはり明確にしておかなければいけないと思います。この点を明確にして、委員長の責任ある答弁を承らなければ、今後会議というものは何を根拠にして進あらるべきであるかということを申し上げたいのであります。
  48. 松浦東介

    松浦委員長 私の見解を率直に申し上げますならば、委員会審議されましたものでも、本会議にかけて、そこで多数の方からもう一ぺんこれを審議せよという意思表示を受けましたならば、これはやむを得ないことであると私は考えます。但し具体的な畜犬競技法案につきましては、御承知のような措置になりましたので、これはいずれ理事会を開きまして、同法案に対する取扱い方を愼重にきめたい、かように私は考えております。
  49. 大森玉木

    ○大森委員 この畜犬法案に対しては、おそらく何百名かの多数の人が連署しておつたはずであります。そうすると、その多数というのはどこにそうした二重の多数があるのであるか、自由党の方々は大方賛成しておつた、私どもも賛成した。そうするとそれは多数の者が賛成しておつたということになるのでありますが、これがどういうわけでありますか、あなたの言われるように、何か無理をして通した法案であるならば問題でありますけれども、満場一致をもつてここに決定をいたしました案というものは、自由党が多数を持つているその多数の委員会においてきめたものを——そうするとこの委員の方々は農林委員会委員という資格がないのであるか。ともかく資格がありまする以上は、党の代表機関としてきめたものである以上、私は多数の人の意見だと申し上げたい。今の委員長答弁では私は納得できない。とにかくきめても、それは多数でやればさしつかえないのであるということならば、この委員会というものはまつたく薄弱なものであつて、何の権限もないということになると私は思います。
  50. 松浦東介

    松浦委員長 お答えいたします。私は本会議の意思がそこにあるならばと申したのであります。また畜犬競技法案は本会議で否決になつたわけではないのでありまして、あるいは内容その他の一部についてかどうか知りませんが、再審議しろということでありますので、私は従順にそれをやりたいと思つております。
  51. 井上良二

    井上(良)委員 これは非常に大事な問題です。なるほど国会法によりますと、一応委員会を通過したものでも、本会議に上程します場合に、再審議をすべき必要の規定はございます。ところが問題は、法案自体に対する多数の署名者というものが過半数以上を占めているわけです。その過半数以上を占めております人が、再び本会議で自分が提案者になり賛成者になつて提出しておきながら、またそれによつて農林委員会は実に長い間審議を重ねて、この法案が今日問題になつております関係で、諸般の輿論を考慮した上で多数でもつて決定をされて本会議にまわされているわけです。ところでその賛成をしておきながら、その本人が今度また委員会付託に賛成をするというのは一体どういうことですか。そんなべらぼうな話が天下にありますか。それをまた委員長がひよこひよこ受入れてこれを再び審議するというが——この委員会に付託をせずに、他にこの法案に関連した、たとえばあの法案の中にあります地方財政に関連があるが、その面に関して審議が不十分であつたというのならば、その方からこの法案審議中に、当然合同審査なり委員を交代するなりして審査に参加すべきである。そういう合法的な、当然とらなければならぬ処置を何らとらずにおいて、本会議に上程したときにおいて、これを再び同一委員会に逆もどりさせて来るようなことをしたら、これは人をばかにしたというか、委員会を侮辱したこともはなはだしい行き方であります。従つて委員会はかくのごとき本会議の決定に応ずるわけに行かぬ。ただちに委員長報告をとりまとめて、再び本会議に上程するの手続をとられるように、委員長は善処されたいと考えます。
  52. 松浦東介

    松浦委員長 私は先ほど申し上げましたように、非常に多数の方々が御署名になつ法案でございますので、この法案は通過するものであると思つておるのでありますけれども、本会議が否決いたしておりません。どこか一部におそらく気に食わない点があつて、もう一ぺん審議してくれ、こういう意味であろうと思いますので、これを取扱いたいと思いますが、その取扱い方については、ただちにという井上さんのお言葉がございますが、きわめて重大な問題でございますから、いずれ理事会を開いてその取扱い方を審議いたしたいと思います。  農地法案に対する農林大臣に対する質疑は一応終了することにいたしまして、先ほど農地局長に対する竹村君の質問を保留いたしておりますので、この際これを許します。竹村奈良一君。
  53. 竹村奈良一

    ○竹村委員 まず要点だけを申し上げたい。第九條の規定でございますが、農業委員会において、所有してはならない土地が告示されました場合に、その告示されたものが、その期間内であるならば一応自由に売買できるようになると考えるのですが、この点はどうですか。
  54. 平川守

    ○平川政府委員 その期間内に自由に売買をいたすのでありますけれども、その自由と申しますのは、相手方が限定されておるという、第三條の許可を受けるという條件のもとに自由であるわけであります。
  55. 竹村奈良一

    ○竹村委員 次の十一條でございますが、そういう場合に対価は一体どうなるか、相手方は大体きまつておる。そのきまつたものに対して売り渡す場合におきましては、結局対価が混乱するのではないか。この土地を売り渡す価格というものが農業委員会が関知せざるままに、あるいは届出ということになつたとしても、それは自由売買の形になると思います。そういたしますと、農地売買価格が相当引上げられた価格で売り渡されると思いますが、その点はどうです。
  56. 平川守

    ○平川政府委員 対価につきましては、価格は自由になつておりますので統制はございませんが、先般も申し上げましたように、相手方が自作農として精進し得る者という限定をされておりますから、おのずから買手の方も、自作農としての農業採算の範囲内でなければ買わないであろう、こういう想定であります。
  57. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そういう想定はまつたく踏みにじられることになると思います。というのは、売買する相手はきまつておる。そして対価は自由である。しかしその対価がととのわないときは農業委員会が中に入るということになります場合、対価は一体どういう形できめられますか。
  58. 平川守

    ○平川政府委員 一定の期間内に適当な対価の買手がないという場合には、当然国の買収になるわけであります。その場合の価格は十二條に基く政令できめるわけであります。
  59. 竹村奈良一

    ○竹村委員 その政令によつてきめられるところの対価の基礎は、政府は一体どういうところにおいて政令を出そうと考えておられるか。
  60. 平川守

    ○平川政府委員 これにつきましては、現行の制度を大体踏襲するつもりでおります。
  61. 竹村奈良一

    ○竹村委員 続いて第十九條でございますが、この規定を読んでみますと、大体土地取上げの場合、期間満了の一箇年前から六箇月前までの間に、相手方に対して更新しない旨の通知をしないときは、従前の賃貸借と同一の條件でさらに賃貸借したものとみなすという二とになつておりますが、もしこれが更新しない旨を通知しないと、更新もしないが、たとえば返してもらいたいというような通知をした場合においては、いいのでありますか。
  62. 平川守

    ○平川政府委員 それはやはり更新しない旨の意思表示になると思いますので、そういう更新を上ない旨の通知をする二とについて許可がいるわけであります。
  63. 竹村奈良一

    ○竹村委員 その許可がいるのは一体どういうわけですか。
  64. 平川守

    ○平川政府委員 一十條によつて、その更新をしない旨の通知をするということについては、但書の例外以外は全部必要なわけであります。
  65. 竹村奈良一

    ○竹村委員 もう一つ問題になるのは二十條の二項の一でございます。「賃借人が信義に反した行為をした場合」となつておりますが、旧法におきしましては信義に反した行為として、あらかじめその行為が明らかになつておるわけでございますが、しかしこれによりますと、「賃借人が信義に反した行為をした場合」という信義に反したとは、一体どういう場合かという二とは、農業委員会等における判断にまかすということでございます。そうしますと、農業委員会の構成等も非常に問題になつて来るわけでございますが、この規定は一体どういう場合を想定されておるのでございますか。
  66. 平川守

    ○平川政府委員 これは現行の法律と別に意味をかえたつもりはございません。なおごの判断は知事が行うわけでありまして、農地委員会ではございません。
  67. 竹村奈良一

    ○竹村委員 次に伺つておきたいのは、たとえば開拓をいたそうとする場合の適地が見つかつた場合に、これは六十四條でございますが、「都道府県開拓審議会の意見を聞いて」という、とになつておりますが、しかし都道府県開拓審議会の意見というものにつきましては、私の考えでは、従来の例から考えまして、この審議会の委員の構成そのものによつて、開拓地の開拓ができ得るかいなかということについて、全国非常にまちまちなものができるわけでありますが、この都道府県開拓審議会というものの構成は、一体だれが任命するか。これではおおむね知事が任命することになるわけですが、この階層を一体どういうふうに規定しておるのか。少くともこのことは、日本の開拓をやろうとする場合における大きな問題になろうと思いますが、その委員はどういう人々によつて構成されようとしておるのか、この階層は一体どういうものか、この点を伺つておきたい。
  68. 平川守

    ○平川政府委員 この委員につきましては知事が入選するわけでございますが、従来は大体において農業、林業承るいは畜産等各種のそれぞれ専門の知識を持つ者をメンバ十にいたしております。階層というわけではございまけんで、それぞれ開拓に関する適地を選定するについての、各方面の専門知識を有する者というものを任命いたしております。
  69. 竹村奈良一

    ○竹村委員 今までの農地委員会のときにおきましても、この開拓審議制度が設けられましてから、とたんに、開拓地に対する開墾というものがほとんど進まない状態になつて来たわけです。というのは、知事が任命する、あるいは郡では地方事務所長が任命する。従つて任命する範囲の人は大体山林に関係のある所有者が多くなるということになります。そこで農地委員会において開墾適地と考えましても、審議会が不適地であるという答申がなされて来た例は、全国で枚挙にいとまないわけであります。こういう場合において、少くとも開墾を希望する暦から委員を入れるということをはつきりさせる必要があるのではないか。そうしないと開拓というものはほとんど進まないと思うのですが、そういう考えがあるのかないのか、伺つておきたい。
  70. 平川守

    ○平川政府委員 私どもはそういう御心配はないと考えておりまして、開拓関係の部裸におきまして適地の調査をいたすわけでありますが、原案はむしろ開拓の方の主管のところから出るわけであります。ただその場合に、たとえば林業関係で、開拓不適地であるというような場合があり得ますので、そういう人々もこの審議会のメンバ治に入れまして、そういう面の意見も聞くということでありまして、従来の実績から見ましても、この審議会はそういう開拓地の買収の障害になつてつたということはないと考えております。
  71. 松浦東介

    松浦委員長 竹村君大分長いですが、もうちよつとですか。
  72. 竹村奈良一

    ○竹村委員 私はいろいろ考えておりますが、そういう点は抜きにいたしますので、議論はいたしません。しかし審議会の委員の構成については、たとえば民主的な農業団体から入れるとか何かの形でやられなければ、私はあなたの見解とは違うわけであります。  それからもう一点聞いておきたいのですが、たとえばその村内で住居を有しない場合も、農業委員会が認めたならば、その土地を二親等内の者は使用できる。旧法ではこういう人たちに対して資格があるかないかということを二年ごとに調査するという規定があつた。今度の法律ではそれが拔かれているわけでありますが、一度農業委員会において、同村内の同親族であつて一家の中に居住しておる者と認めて、土地所有を許したならば、永久にこれを調査する必要はない。従つて土地は持とうと思えば持てるわけでございますが、この点はどういうところで調査されるのか。それを聞いておきたい。
  73. 平川守

    ○平川政府委員 その点は八十四條のところに、市町村農業委員会は毎年八月一日現在の小作地の状況を調査作成するという條文を新しく挿入しております。これによつて明らかにいたしたいと思います。
  74. 平野三郎

    平野委員 六十七條の2の「前項第四号の対価は、政令で定めるところにより算出した額とする。」とありますが、政令の構想はどういう構想でありますか。
  75. 平川守

    ○平川政府委員 未墾地の買収価格につきましては、最近固定資産税の倍率等が上つておりますので、大体固定資産税の評価と同じ程度の評価になるような倍率にきめたいと考えます。従いまして今後の未墾地の売渡し価格については、大体これを基準にして売り渡さざるを得ないかと存ずるのでありますが、ただ従来政府の買収しておりました農地で、しかもすでに開拓者の入つておるというようなものについては、従来の価格によつて拂い下げるというような措置を講じたいと考えております。
  76. 平野三郎

    平野委員 すでに入つておるものについては上げない。新しく入植するものについては相当高くなるのではないかと思いますが、どのくらいの割合になりますか。
  77. 平川守

    ○平川政府委員 従来の価格が非常に安いので、大体十倍くらいになろうかと思います。
  78. 平野三郎

    平野委員 十倍ですと、結局土地売買価格によつて相当もうかる、そういう結果になるのではないか。
  79. 平川守

    ○平川政府委員 現在買牧済みのところにつきましては、九割方開拓地として提供しているわけであります。従いまして政府がこれによつて非常な收入を得るということはないと考えております。のみならず、政府の方では開拓地の買収に際しまして、開拓者としては不必要な幼齢林その他の補償もいたしている、この特別会計でそういうものを負担しているわけであります。従いまして会計の方で政府が非常な利益を得るとこうことはないと考えております。
  80. 平野三郎

    平野委員 もうあと残り少くなつているわけですから、政府が必ずしも利益を得ることはないのでありましようが、しかしながら理論的に言えば、その分だけ非常に高くなるわけであつて、今後さらに開拓行政を進めて行く上において、この政令の取扱いいかんによつてはそれを阻害するという結果になることも考えられるわけでありますので、この政令の定め方については、できるだけ今後の開拓を推進するということを考えて、いささかもそれを阻害をすることのないように、できるだけ低率の価格を算定するように要望いたしまして私の質問を終ります。
  81. 松浦東介

    松浦委員長 本日の会議はこの程度にとどめましてこれをもつて散会いたします。     午後四時二十分散会