○吉川
委員 私は同僚議員からすでに多くの有力なる御
意見や御
質疑がなされましたし、また
大臣は病を冒して御出席になるという御精勤ぶりに敬意を表しまして、私の
質疑はきわめて簡単な数点にとどめたいと思います。
第一番は、同僚議員からも述べられたこととやや重複するかもしれませんけれども、そもそも
農地改革の
目的には二つの
意味のあ
つたことは、私の申すまでもない二とである。
一つには
農村の民主化であり、
一つには
農業生産力の
増強にあると思うのでありますが、遺憾ながら日本の
農地政革は、
農村の民主化に急にして、
農業の
生産力の面において劣
つておることは、私が喋々するまでもないと思います。しかしながら、せつかくここまで
農村の民主化が推進されたものを、ここで
農村の民主化の逆コースをたどるような
政府の態度というものは、私どもはまことに惜しむのであります。先日竹村議員の
質問に対して平川
農地局長は、今日本の政治の方向は民主化の方向にあるのであ
つて、特にここで
農村の民主的傾向を推進するというようなことをあらためてうたう必要はないのだとおつしや
つております。きようはまた
大臣がこれは常識であるとお答えにな
つておるのでございますが、これはこの
法律がそもそも当初できる当時において、日本の政治の方向は民主主義をも
つて行くんだという大基本方針は確定していたわけであります。そういうときに、特に民主的な傾向を推進することをも
つて目的とすることを強調したゆえんをわれわれは振り返
つて見るときに、今大森議員からも言われたように、ある面においては行き過ぎではなか
つたかとまでいわれるほどに、多くの人の奪い犠牲のもとに、せつかく今まで推進されて来たところの
農村の民主化を、ここで逆転させるような行き方というものは、私は今までの尊い犠牲者に対して申訳がないと思います。そういう
意味において、この第
一條に民主的な傾向の促進をはかるという字句を抹殺したことは、私は最近流行語とな
つておりますところの民主的な逆コースであるというように
考えまして、
大臣に一考を煩わしたいと思うのであります。それでは民主化の方向の問題は別といたしましても、もう
一つの
目的であるところの
農業生産力の
増強に今度は重点を置くんだとおつしやるならば、私は昭和二十七
年度の
予算を読んでいただきたいと思います。私は今ここにあるところの資料によ
つて、二十七
年度の農林
予算をこれから
説明いたしておりますと、たいへんな時間がかかりますから、これは省略いたします。けれども具体的な二、三の例をも
つて見ますならば、農林省の
予算の面において、北海道のある部面を除いては、農林
予算は決して
増強されておりません。それからまた、せんが
つて問題になりましたところの農林省の機構の問題等についても、いかに農林省が農林行政に対して後退的な態勢にあるかという
一つの証左でございます。あるいは
肥料対策の問題について見ましても、通産省に押されて農林省案の
肥料需給調整
法案が葬り去られたというような問題を
考えてみても、また本
委員会のホープといわれた野原君が、農林政務次官に就任されて半年もたたないのに、責任を負うと言われて辞表を出されるや、ほんとうに日本
農政に御熱意を傾けられて、病を冒して御出席になられる
廣川農相としては、どうしてその辞表をお受取りに
なつたか、私ははなはだ理解に苦しむのでございます。このようないろいろの問題を取上げて判断をいたしますと、本
法案は
農村の民主化を推進しているという問題に対して、非常に勧懲を欠くものであり、もう
一つの
目的である
農業生産力の
増強の問題についても、私は熱意の足らざるものを憂えているのでございますが、この点について
農林大臣は御確信がありますかどうか、承
つておきたいと思います。