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竹村委員 私は大体
坂本氏の
提案された、その意図するところについては一応わかるのでありますが、しかし私がはつきりしておきたいことは、この
決議は先般の
農林委員会で行いました
決議と
原則的な点において相当矛盾しているのではないかと考えます。というのは、か
つて前の
農林委員会で満場一致
決議しましたのは、基地あるいは
駐留軍の用に供するため、あるいは
警察予備隊等に使う場合には少くとも
原則としては
開拓地あるいは
農地等を
使用しない、万やむを得ない場合という
條件がついているわけです。ところがこの
決議を今拝見いたしますと、大体もうやむを得ないのだ、
従つて一応前の
原則は撤回するような考えが含まれていると思うのであります。しかもその取上げる場合においては、たとえばここにおいて、
使用、
収用に関する
手続については
土地収用法の
規定を準用するような
原則を認めるというようなことになると、この
土地収用法なるものもまた問題にな
つて、そのことが検討されなければ、私は事実上において耕作
農民の利益というものはなかなか守られ得ないのではないかと考えるわけであります。しかも現実に行われているところをわれわれ静かに見ますと、こういう
決議をいたしましても、現在の
政府はそういうものに拘泥されたいような実情が非常に多いのであります。なおまた嚴然と法律にな
つておりますところのこの法律を、
駐留軍だけではない、少くとも日本の
政府において
実施しておる、つまり警察
予備隊筆におきましても、嚴然とあるところの
農地関係法規その他を現在無視して、至るところにおいて
土地取上げを実効的にや
つておる。このことは先般この
委員会においてこれの
調査の際におきましても、
農林省の
農地局長は警察
予備隊の
土地取上げに対しまして、
農林省の許可したものは全国でわずかに一、二件であるということをはつきり言明しておる。しかもこれが、しからば警察
予備隊の
土地取上げというものが一、二件に終
つておるかといいますと、そうではない。ここに出されましたところのいろいろな
資料を見ますと、実に厖大な
土地に上
つておる。つまり一万五千
町歩以上に上るところの
土地がすでに実質上日本の
国内法律というものを無視して取上げられて、演習地等に
使用されている。しかもこれに対するところの
補償の
基準も、われわれの質問に対するところの
資料として出されたものを見ますと、ごくわずかな、しかも今日の経済状態から見て、ほんとにすずめの涙というよりも、むしろこれはほとんど申訳的な、いわゆるそれに対する
補償の
基準を示しておる。こういうことを平気でや
つておる
政府に対して、しかも一応
原則として取上げないという観点をゆるめるような
決議をいたしますならば、ますます
政府としては意のままに
土地取上げをやつたり、あるいは一片のこういう
決議をいたしましても、たとえば行政協定の中に現われておる二條、三條等を見てみますと、至るところにおいてもう
原則的に
土地使用を許しておる。しかもその上において單なる一片のこの
決議においては、この目的を
達成することはできないと思うのであります。まず問題の中心は、やはりわれわれは
原則的に言うならば、安全保障條約そのものであり、しかもそれに付随して生まれましたところの日米行政協定の
内容にさかのぼるものであります。先般この
委員会におきましても、私はこの行政協定に伴ういわゆる
農地や、あるいは
開拓地の取上げの問題について若干の質問をいたしまして、
委員長にもお願いして、最も責任ある大臣であるところの岡崎国務大臣の
出席を
要望しておるのでありますが、そういう点を明らかにしていない。そういう
原則的な問題を明らかにした上において、この
決議がなされるというのであるならば、われわれはまだその
内容において考えられるかもしれませんけれども、しかし單にほんとの
土地取上げ、あるいは
開拓地等を
収用するに至るところの
原則であるところの行政協定、われわれ国民にと
つて重大な問題であるところの行政協定について、当
委員会においては、いまだにその
関係大臣である岡崎国務大臣を呼んで聞いていない。そういうような状態のもとにおいて、單に
土地収用法等によ
つてその
補償等を考えるというようなことになりますならば、実質上の
農民の利益というものはほんとうの意味において守られるものではない。
従つて本
農林委員会では、この
決議をする前に、少くともまず岡崎国務大臣を呼んで、この行政協定の
内容をもつと検討し、しかもその上にあ
つてその問題を扱うという日米合同
委員会の点についても詳細に聞き、その上に立
つてもし必要とすれば、それに対するもつと具体的な問題を検討しなければ、單にこの
決議の中にあるように、あるいは
土地収用法等が問題になりましても、
土地収用法によるといいましても、その
土地収用法の
内容、それによ
つて補償するところの
内容等を現在の経済的な実情に応じた形において変更しなければ、決してわれわれは取上げられる人々のほんとうの意味の
補償にはならないと考えるわけであります。
従つて私は遺憾ながらこの
決議に対しては反対せざるを得ないものであります。