運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-06-17 第13回国会 衆議院 内閣委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十七日(火曜日)     午前十一時五十八分開議  出席委員    委員長 八木 一郎君    理事 江花  靜君 理事 青木  正君    理事 大内 一郎君 理事 船田 享二君    理事 鈴木 義男君       松本 善壽君    滿尾 君亮君       本多 市郎君    山口六郎次君       平川 篤雄君    松岡 駒吉君       井之口政雄君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君  委員外出席者         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ————————————— 六月十七日  委員田中萬逸君及び飯塚定輔辞任につき、そ  の補欠として滿尾君亮君及び山口喜久一郎君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員滿尾君亮君辞任につき、その補欠として田  中萬逸君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じ  た恩給特別措置に関する法律案八木一郎君  外二百六十八名提出衆法第五二号)  軍人恩給に関する件     —————————————
  2. 八木一郎

    八木委員長 これより内閣委員会を開きます。  本日は、昭和二十三年六三十日以前に給与事由の生じた恩給特別措置に関する法律案八木一郎君外二百六十八名提出衆法第五二号)を議題とし、なお軍人恩給に関する件について審議を進めます。  まず、軍人恩給に関する件について質疑を行いたいとの通告がありますから、これを許します。平川委員
  3. 平川篤雄

    平川委員 先般閣議で懇談的な形式と私は考えておるのでありますが、軍人恩給を来年度の初めから復活せしめるというような話合いが、その席上において出たということであります。これは輿論でありますし、各党各派が支持しておるのでありますから、実現をする意思を持つておやりになつておるということは、われわれも望むところであり、政府もそう考えておられるのだろうと思います。ただその構想につきまして、特に今回問題になつております不均衡是正問題とも非常に深い関連を持つておるように思われるのです。さような点で多少その全貌を明らかにしておきたいと思うのです。ただいままでいろいろ考え方があるだろうと思うのですが、これは局長の立場を離れて、いわゆる軍人恩給についての識者として、どういうような考え方が存在するかについてとりあえずお話を願い、それについて政府の方で多少の構想があればそれをひとつお聞きしたいと思います。
  4. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 軍人恩給善後措置につきましては、すでにほかの政府委員からも委員会その他の席上におきましても申し述べておりますように、昭和二十八年の三月三十一日までは、現状のままを続けるといたしまして、昭和二十八年四月一日以降におきましては、何らかの措置として軍人方々恩給の行くようなとりはからいをする、こういうふうになつておるのであります。しこうして昭和二十八年の四月一日以後に、どういうような恩給を給することにするか、こういう恩給内容といいますかそういうことにつきましては、まだ政府におきましては、特にかれこれ言明するところまで行つておりません。すでにこの委員会におきましても、先般恩給法特例に関する件の措置に関する法律案審議されました際に説明申し上げましたごとくに、総理府に設置されますところの恩給法特例審議会におきまして、その軍人恩給の今後の処置に関することを調査審議する、その調査審議結論に基  いて善処をするということに相なつておるのであります。  なお私の考えはどうかというお尋ねでございますが、実は私いろいろと研究はいたしておるのでございますけれども、ここにおいてこういうような案が妥当だということをはつきりと申し上げるまでには至つていないのでございます。しかし私が一般巷間にいろいろと言われていることをかいつまんで考えてみますと、従来の軍人恩給につきましては、あるいは一般文官に比較して割のよい取扱いを受けておつた面がかなりあるのではなかろうか、そういうような面につきましてはこういう時局でもありまするからして、今後恩給を復活するという場合におきましては、そういう取扱いは一時的にでも——あるいは永久的になるかもわかりませんが、とにかく差控えるような取扱いをしたらどうかというような意見がかなりある。またそれは耳を傾くべき意見ではないかと思つておるのでございます。そういう意見の具体的なものといたしましては、あるいは戦地に行きました場合におけるところの加算の取扱いはやめたらどうかという意見、あるいはまた軍隊に勤務した軍人なるがゆえに、たとえば一般文官でございますれば、在職年が四十年を越える場合には、四十年で恩給年額計算を打切られておるにかかわらず、軍人につきましては五十年までは認められておるようになつておるのでございます。そういうところなんかも特別な取扱いではなかろうか、そういうような特別な取扱いはやめたらいいじやないかというような意見も、私ども耳にするのでございます。しかしそれならばそういう取扱いをしたらどうかということにつきましては、これはまたいろいろと研究をしなければならないことでございますので、今私からこういう考え方の方がいい、あるいはまたこういう考え方で行きたいというようなことを発表するまでの確信のある案は、実は持ち合せていない、研究途上にある、こういうように御承知を願いたいと思います。
  5. 平川篤雄

    平川委員 大分遠慮してお話なつておるようであります。非公式なお話をこの公式な席上で出しますことは、はなはだ局長に対しても気の毒だと思うのでありますが、軍人遺族、傷痍軍人援護の問題が紛糾をいたしておりました際に、恩給局長はこれは恩給法改正によつてやる、つまり現行の恩給法の中で復活せしめてその中の一部分改正することによつてやろうという構想をお持ちになつておられると想像せられる節がある。また今回の不均衡是正審議の途中におきましても、しばしばそれら軍人恩給との関連ということが言われておるのであります。これは局長だけではなしに、大蔵省の当局もさようなことを言つておられるところを見ると、私ども恩給法改正という形においておやりになろうと出しておられる意図がはつきりしておると思うのでありますが、別立て法律になさるような御意向があるのか、それとも恩給法中において改正をなさるのか、ここを聞きたいのであります。
  6. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 恩給制度一環として軍人恩給措置をするような形か、あるいはそうでなくて、別の考えでもつて、いわば今の援護の方の内容を充実するといいますか、そういうようなことで、軍人遺族あるいは傷病軍人に対する恩給善後措置をして行くつもりか、こういうようなお尋ねに結局はなるのではないかと思つておりますが、今のところでは軍人恩給善後措置につきましては、恩給制度の線におきまして善処して行こう、こういうようには考えておりますが、しかしそれは今の恩給法の中においてそのままやるか、あるいはまた恩給制度一環として考えられるところの特別な制度をつくるかというようなことは、一つの問題であろうと私は考えておるのであります。しかしそういうような事柄が非常に大きな問題でございますので、今は研究途上にあるところでございまして、いずれ審議会においてとくと審議軍ねた上において、結論が出されるものとこう考えておるのでございます。
  7. 平川篤雄

    平川委員 恩給制度の線においてたそうとせられるという、非常に含みのある言葉でありますが、その点について当然これが問題になつて参りますのは、ただいまある恩給臨時特例であります。当然こうした特例を設けざるを得ない情勢というものは今後数箇年間は継続すると見ているのであります。来年の四月一日から軍人恩給も実施せられるということになりますと、仮定俸給額というものをきめなければならないことになる。そのような際に月十五銭なり八銭なりしかもらつていなかつたような昔のいわゆる二等卒あるいは二等兵とか言われた階級を一体どういうところに見直して行くか、あるいは大将だの元帥だのというようなものをどういうふうに見て行くかということについて考えますと、非常に私は問題があるように思われます。ただいまの仮定俸給表というようなものをとりましても、しばしば私が指摘いたしますように、勅任官あるいは親任官、これなんかはぴつたり均衡がとられておるのでありますが、しかしそれが奏任官の下の方になつて参ります、さらにこれが判任官ということになつて来ると、いよいよ職階級というものと一致しなくなつて来るけれども、おそらくただいま軍人恩給を復活してこれに仮定俸給考えようとすると、保安庁なんかの職員以下の給与法が当然標準になるものと思われるのであります。そういうことがたとい標準になり得ても、過去の二等兵であるとか上等兵というような制度のものとぴつたり行くとは考えられない。どうしても別建軍人仮定俸給表というものが必要になつて来るように思う。ちようどそれのように、教育職員仮定俸給表、あるいは警官の仮定俸給表というものが先般小委員会でも問題になつたのでありますが、当然同じような比重をもつて必要になつて来る。あるいは翻つて考えると、別人恩給というものと一般公務員恩給というものは、根本的に別にして考えなければならない。そういう問題も含んでおるのではないか。私はどうもその辺の取扱いが非常に不安なんでありますが、もしそういうふうな仮定俸給表をつくるとすれば、どんな構想があり得るか。これはあり得るかでありまして、どういうふうに考えておられるかというのではない。あり得るかということについてもひとつ聞いておきたいのであります。
  8. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 実は私、今平川委員の仰せられましたことくに、昨年軍人恩給制度善後措置についていろいろ考えました際にに、いろいろな案考えた。その一つの場合におきましては、実は仮定俸給取扱いを非常に苦慮したのであります。ほかの増額といいますか、軍人恩給善後措置を講ずる場合におきましては、これは仮定俸給の場合も考えられなくても——もつとも研究途上においては一応考えたこともありますが、今お話になりましたように、ある場合におきましては、仮定俸給におきまして非常に苦しみましたが、従来からは、軍人につきましては一般文官と違いまして、恩給年額計算の場合には、特別なる仮定俸給というものがございまして、それは軍人としての一つ体系に基きましてつくられたものであつたと私は思つております。従いまして、たとえば終戦のときでございますれば、現役の将校少佐なら少佐俸給三つかにわかれたと思います。にもかかわらず恩給年額計算におきましては一本になつておりました。また海軍におきましては、ちよつと私は記憶が違つておるかもしれませんが、海軍におきましては、陸軍においてそういうような制度をとる前から少佐俸給なんかも三つかにわかれておつたと思います。しかしながら恩給年額計算の場合におきましては、一本の仮定俸給において計算されておつたように記憶しておるのでありまして、そういうようなもので文官と非常に取扱い違つてつたのであります。それはもちろん軍人恩給制度の昔からの沿革に基因しておることだろうと思いますが、文官とはかなり違つた面があつたと私は記憶いたしております。従いまして仮定俸給をつくります場合におきまして、文官と同じように、たとえば軍人と同じ俸給文官が受けたとすれば、文官仮定俸給においては今の場合どうなるか、こういう前提のもとに考えてみますと、軍人俸給秩序といいますか、それがあまり上の方に寄り過ぎたり、下の方に固まり過ぎたりして秩序が乱れるというようなきらいが出て来るのであります。それはどうしてそういうことになるかといいますと、文官俸給秩序体系軍人俸給秩序体系とが全然違うにかかわらず、今の恩給仮定俸給というのは文官を土台としてつくつたものでありますがゆえに、軍人仮定俸給をそのまま文官に持つて行きますと、軍人の上下の関係バランスといいますか、秩序といいますか、そのバランスがこわれるような結果になる。従つてざつくばらんに申し上げますならば、軍人大将、中将、少佐というような部類において仮定俸給をつくつて行くということになりますれば、若干の手直しをどうしてもしなければならぬ、かりに文官仮定俸給をそのまま使うにいたしましても、手直しをしなければならぬことが出て来るのではないかというようなことを絶えず私たちは感じたのであります。いずれにいたしましても軍人仮定俸給をどうするかという問題につきましては、結局は軍人恩給をどういうふうにして元の通りにするかという問題に私はかかつて来るのではないかと思う。そうするとそれは結局は軍人恩給を全部元の通りにするということになると相当巨額の金になる。とても今の国家の財政ではできないような状況でありますから、結局元の姿でない形でもつて恩給を返す。その場合における仮定俸給ということになりますから、あるいは私は文官と同じような取扱いはむずかしいのではないかというような気持もありますし、相当研究を要する問題である、こう考えておるところでございます。
  9. 平川篤雄

    平川委員 将校は別といたしまして、下士官以下というのは現在の国家公務員に対して国家がこれを雇用するというような観念では絶対にない。二銭はがきで一名を呼び寄せることができたのであります。逆に今度は将校の方に行きますと、やはり戦争というような仕事がくつついておりますために特に給与の上でも私はよく扱われておつたのではないかと思われる。さようなものを一本に扱うということに非常に疑義を持つておるのでありますが、先般の軍人援護のような場合にでも、伍長を大体年俸何千円相当のただいまの公務員と見るというような考え方でおやりになつておるところを見ると、私は一本にされるのではないかと思つておる。しかし今のように全然別建のことを考えるということになりますと、私はただいま問題になつております不均衡是正の問題が軍人恩給観念と一緒になるとは思えない。これはいわゆる俸給額というものを大将をただいまの東大の総長の俸給に合せるとかいうのであつたならばそれは起つて参りましよう。しかしそうでなしに、別建に新たに考える、ことに下士宮以下のものについては別個に考えなければならぬということになれば、退職しておりますところの公務員恩給と深い関連があるから、それの不均衡を是正するのに阻止するような理論的な根拠はないと思いますが、あなたのお考えはどうでございましようか。
  10. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 この軍人恩給善後措置考えます場合におきましては、かりに別建て制度をとるにいたしましても、軍人恩給の廃止せられる前におきましては、軍人一般文官と同じように恩給法の規定のもとにおいて恩給を給せられておつたというこの昔の軍人恩給の廃止される前の事実ということも、やはり私たちは一応は念頭に置いて考えて行かなければならぬ。そうしますと別建とは申しましても、やはり一般文官恩給というものも一応考慮に入れて、それとはなはだしく懸隔のあるような恩給を給することが妥当であるかどうかというようなことも、考えて行かなければいけないのではないか、そういうような見地からいたしまして、結局軍人仮定俸給別建としてつくる場合におきましても、文官仮定俸給を全然度外視してしまうというようなことは、事実の問題としても私は困難なことじやないか、かように考えておるわけであります。
  11. 平川篤雄

    平川委員 原則としてはそういうことが考えられると思います。それからただいま保安庁なんかの給与法を見ますと、一般事務職員というものと、現場で兵隊のような行動をいたしております人々給与というものは、はつきりわかれておるのでありますが、現在いわゆる昔の軍属というものはやはり軍人並み扱つて軍属戦没者に対しては恩給扶助料扱いがされずに、援護法によつてやられておるというような状態であるが、こういう人たち文官としての扱いにもどす必要があるのじやないか、ことにあなたのよく御承知の、かつて陸軍教授陸軍技師海軍教授海軍技師というような人々は純然たる文官であります。ことに私は戦争海軍兵学校から招聘されたことがありますので、特に印象が深いのでありますが、当時の海軍教授というものは、一切兵隊の訓育というものにあずからなかつた、完全な学問の切売りであつて、多少とも精神訓話のようなことをやりましたら規則に反する、私はそういうことがおもしろくなくて、実は待遇もよかつたのでありますが、行かなかつたのでありまするしかるにそういう連中は、ただいまでは軍人並に扱われて、そうして恩給も停止せられておる。調べてみると、これは閣令によつて定められておる問題であるから、閣令改正をやれば、簡単に正当な位置にもどるものだと私は思うのでありますが、こうした陸、海軍関係文官扱いについて、どうもあいまいなところがある。私はこの際そのやり方について当局の御見解をはつきり聞いておきたいのであります。
  12. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 今御指摘になりました軍属方々、ことに例をあげて御指摘になりました海軍教授あるいは海軍技師陸軍技師というような方々恩給取扱いにつきましては、私まつたくりくつでは説明できないような気持を持つております。まつたくその通りだと思つております。これは御承知通り昭和二十年十一月二十四日に総司令部から、軍隊勤務による者の恩給は全部廃止せよというきつい命令を受けました際に、私といたしましてはでき得る限りの努力をいたしまして、関係当局の了解を求めて、軍属恩給につきましては、この廃止から除外してもらうように努力したのでありますが、遂に判任官クラスのところまでは許されて、高等官のところではいけない、それからまた警察官の職にもいけないということで、実は今日に至つておるような実情であります。私といたしましては、今平川委員のおつしやいます、ごとくに軍人と同じように海軍技師教授陸軍技師方々取扱いすることにつきましては、非常に異議を持つたのでございます。それでありますから、一日も早くこういう方方の恩給につきましては一般文官と同じような取扱いをし得るようにしてあけたい、こういうふうな心持は持つておるのでございますが、しかし関係当局からの覚書によりまして、恩給を廃止してしまつたほかの軍人と同じような取扱いを来年の三月三十一日までしておいて、来年の三月三十一日をたつた後において、その善後処置をしたらどうだという意見と、それから即刻これを軍人と切り離して、かかる軍属恩給は復活したらどうかという意見、これは確かに私たちの間にもあつたのですが、結局軍人の中においても傷病右あるいは遺族というものを考えましたとき、いろいろあれこれ検討をいたしました結果、こういう陸、海軍技師教授というような軍属方々には、たいへん気の毒であつて、情において忍びないところでありますけれども、来年の三月三十一日までは、傷病軍人戦没軍人の遺家族と同じようにごしんぼうを願うようにいたした次第であります。これはひとつ御了承おき槻いたいと思います。
  13. 平川篤雄

    平川委員 そこは、私は非常に怠慢たと思うのです。事務的にはなるほどそういうふうな問題があると思います。か、これは明らかに、ただいままで局長の答えられたところを総合して想像してみても、そういう陸軍技師とか海軍教授というものは、これを大将相三宮、少将相当官というふうに持つて来ることはできないのであります。当然これは大学教授であるとか、あるいは高等学校の教諭であるとかいうような位置に格付をせられるようになる、そういうことがもう明らかなのです。しかもポ政令というものは、この講和の発効とともに失効いたしまして、その後の一年すえ置くという問題は、これは内閣の責任においてやつておるのたろうと私は思うのです。そうなりますれば、この見通しも明らかな問題を、たといほかの方との関連がありましても、その部分だけからでもよくして行くということは、私は当然のことだと思うのです。この点をついでに待たせるというのは、私はりくつが通らないと思う。検討の結果それは軍人恩間と一本になるべき性質のものであるというならば、これは別でありまするしかしそうはならないという見通しがあるものを、わざわざ待たせる根拠というものはない。援護法において、軍属などの恩給法の適用というものがとめられておるから、それで困るというふうに言われるのでありますが、それは確かにそうであります。これも早く解決しなければならぬのであるが、それはそれとしてでも、この明らかな部分を直して悪いというはずはない。ここに先ほど申しますように、事務といたしましては、閣令にほんの一行の改正を加えさえすればいいのです。別にそれは国会の審議を必要としないのですし、私はできないはずはないと思うのでありますが、ただいまのような御答弁では納得できないのです。もう一層誠意のある御答弁をお願いしたいと思います。  なおつけ加えますが、これは局長は御存じのように、海軍教授をたとえば十五年やりまして、あと終戦直前に二、三年一般公立学校教員をやりました者は、恩給をもらつておるわけです。しかるに逆に、十数年一般公立学校教員をいたしまして、終戦当時海軍教授に就任しておつた者は、たといそれが一年であろうと二年であろうと、恩給を停止せられておる。こういうような実例は非常にたくさんあります。そういうことを考えてみましても、これは早急にやらなければならぬ問題であると私は思うのです。
  14. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 平川委員の仰せられるところは私もごもつともだと思いまして、従来から私のみならず政府におきましてほ、この軍属方々恩給取扱いにつきましては、努力はして来たのでありますが、今日までその努力の効果が上らなかつたことは、実に遺憾だと思つておるところでございます。今後できるだけの努力をいたしまして、来年の四月一日からは何とかしたい、こういうふうに考えておるわけであります。  恐れ入りますが、速記をとめていただきたいと存じますが……。
  15. 八木一郎

    八木委員長 速記をとめて……。     〔速記中止
  16. 八木一郎

    八木委員長 速記を始めて。
  17. 平川篤雄

    平川委員 今井之口委員から速記をとるようにと言われましたが、実際ただいま言われたようなことは、独立後の今日、速記をとめて言われなければならぬ性質のものじやありません。これは堂々速記をとつておやりになつても、何らさしつかえないと私は思います。今後はひとつそういう場合には速記をとつて、淡々とやつてもらいたいと思います。  ただいまおつしやつたようなことでありますならば、恩給局長として、総理府会議等において、閣令改正を言い出される御意思があるかどうか。一年待たないで、早急に研究をせられて、出される御意思があるかないか、そこが問題であります。そこのところをはつきりおつしやつていただきたい。
  18. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 その点につきましては、いろいろと検討いたしたのでございますが、現在のところにおきましては、現状通りにしておく方がいいのではなかろうかというようなことでございますが、今平川委員の仰せられることもごもつともだと思いますので、またよく検討いたしまして、平川委員の仰せられるようにすべきだという結論に達した場合におきましては、ただちに善処することにいたします。
  19. 八木一郎

  20. 江花靜

    江花委員 私は恩給局長に対して、お尋ねというよりも要求的ではありますが、意見を申し上げて、質問にかわるものにいたしたいと思います。一般には今度のいわゆるでこぼこ是正というものについて、こういう非難があるようであります。軍人恩給というものはさつぱり問題外において、でこぼこ是正などという、そんないわば大きな全体から見れば部分的な末梢的なとも言えるようなことを取上げておるのはけしからぬ、こういう意見があるように思いますが、しかし軍人恩給に関しましては、今恩給局長からもそういう趣旨のことをお話になつたのでありますが、これは講和の発効を見なければ公然とは取上げられないような状態にあつたのであります。しかしながら今度のでこぼこ是正の問題はほとんど六年以来の問題でありまして、同じ資格を持つておる受給者の間には、はなはだしい受給額についての懸隔があつた、これを直さなければならぬということで、たまたま講和発効後にこの問題がまつ先に取上げられて一応の解決を見た、こういうことでありますから、これは全然筋が違うとわれわれ考えておりますので、その点はひとつよく恩給局長においても、そういうことの趣旨の徹底するように、もしわからぬような方には御説明願いたい、こう思つております。  そこで軍人恩給のことでありますが、これは予箕その他の点からいうと、非常に大きな問題でありまして、その予算問題とからんで、つまり軍人というものを一般文官と特別な待遇をするかどうか、もしまた待遇するにしても、文官と若干の程度の差別を設けるかどうか、こういうことについては、将来検討して見る余地があると思いますが、またこれも予算と関係してのことに相なるのでありますが、受給者の範囲というものはとりあえずどの程度にとどめるか、あるいは受給額をどういうふうに裁定するか、こういうようないろいろな問題があります。これらについても、実はこの前のでこぼこ是正のときもそうでありますが、この問題は相当関係者を中心とした世の中の人たちの希望があつたにもかかわらず、恩給局長怠慢だとは申し上げませんが、やや慎重過ぎたきらいがあり、今度の軍人恩給についても、今言つたようないろいろな制約を受けると思いますが、とにかくあまり慎重過ぎないように、良心の判断の命ずるところに従つて、ひとつ迅速にかつ適切に措置するように準備万端その他を今のうちから整えておくべきではないか。たとえば恩給に関する委員会を早急に設けて——もちろんこの委員会は政治的な委員会でなくて、きわめて技術的な、事務的な委員会であるべきだとも思いますが、そういうものをすぐ設けてもらつて、いろいろな構想について各方面の意見もしんしやくして、早急に一つの案というものを持つておるようにしていただきたい。こういう恩給のごとき問題について、議員立法をするということは、実はいろいろな手落ちが多く生ずるきらいがありまして、実際は、何というか、今の段階では望ましくないことでもあるのであります。しかしもし恩給局長その他の関係者の方があまり慎重過ぎますと、やはり代議士の一つの使命といたして、一般の輿論といいますか、そういうものに聞いて、そうして議員が手ずからこういうことをやらなければならぬということになると、またいろいろの点で弊害が起きますから、要は事務当局と政治面のぴつたり調和した案ができるためには、事務当局がよくこの点をひとつ積極的に、早く適切な案をつくつてもらう。そのためには委員会もつくられるのが適当でありましよう。そうしてわれわれとともに、ひとつこの問題を早く解決していただきたい、こう思つております。その点を、要求にわたりましたが、質問の形で恩給局長に申入れをいたします。答弁はいりません。
  21. 八木一郎

  22. 滿尾君亮

    滿尾委員 恩給局長に一言だけお伺いしたいのですが、先ほどの御説明の中で、来年の三月三十一日までしんぼうしてもらつて、四月から考えるのだというお話、その時標のとり方というものは、政治上の理由によるものか、事務的な準備上の都合によるものか。どういう理由で、どういうお考え方で、そういう時間が選ばれておるのであるか、またそういうふうに大体きまつておるものなら、軍人恩給というものは、事務的にいろいろ今お話のあつた仮定俸給をつくるとか、いろいろな問題はございますが、主義として大体やるのだということを早く明確にして、その実施の時期はこういう理由によつて、来年二十八年四月からというふうに考えておるのだということを表明せられることが、非常に必要だと思うのでありますが、そういう表明は現段階においてはなされないものであるかどうか、その二点だけ御質問いたします。
  23. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 来年の三月三十一日までは現状取扱いをいたしまして、来年の四月一日以後におきまして、支給するようにということにつきましては、実はこの恩給特別措置に関する法律案を説明します際にも御説明いたしたと思いますが、恩給を元に返すと申しましても、その返す場合におきまして、いろいろと慎重にに検討しなければならない問題が非常に多いのでございます。これは御了察をいただけると思いますが、そういうような非常に複雑ないろいろな関連する問題がございますので、そういうような問題を慎重に検討いたしまして、国民全体の納得の行くような措置をするのには、どうしても来年の四月一日以後でなければ措置ができない、こういうようなことから、そういう取扱いをいたしたのであります。
  24. 滿尾君亮

    滿尾委員 もう一つ、それを発表しないのですか。
  25. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 それにつきましては、すでに委員会におきましても、あるいは官房長官からもあるいはまた副長官からも、また私からも、はつきり説明はいたしておると思うのであります。
  26. 八木一郎

  27. 井之口政雄

    井之口委員 ちよつと恩給局長お尋ねいたします。基礎的なことを一つ、二つ聞いてみたいのです。  軍人恩給は今廃止になつておりまするが、いかなる事情でどういう趣旨のもとにいかなる法的な措置によつてこれが廃止になつたのか、この点ひとつ簡単に組織的に御説明願いたい。
  28. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 いわゆる軍人恩給が廃止になつておりますのは、昭和二十年十一月二十四日、連合国軍最高司令官から日本政府に発せられたペンシヨンズ・アンド・ベネフイツツというデイレクテイヴがございますが、このデイレクテイヴの第一項に掲げておりますその趣旨を実現いたしまするがために、日本の国内法といたしまして、恩給法特例に関する件という政令でもつて——その当時は勅令でございますが、出されております。ポツダム政令で出ております。このポツダム政令に基く恩給法特例に関する件というのによつて、廃止することになつておるのでございます。
  29. 井之口政雄

    井之口委員 これを廃止するに至つた理由はどういうところにあるのですか。喜ばしきもので、来年の四月からもまた置かなければならぬというふうなものであるならば、その当時においても何らこれを廃止する必要がなかつたものではなかろうかと思うのですが、どういう理由でこれを廃止しなければならぬか、この点について……。
  30. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 廃止いたしました理由は、ただいま申しまするように、総司令部からのデイレクテイヴに基いておるのでございまして、そのディレクテイヴには何も理由は書いてないのでございます。そこで私も実は、今の委員お尋ねのように、総司令部にいろいろと尋ねたのでございますが、結局満足の行くような回答を得られない、説明を与えられないというのが実情でございます。
  31. 井之口政雄

    井之口委員 してみると恩給局長のお考えでは、これはもう絶対命令で、願わしいことでもなかつたのだけれども、やむなく向うからの強制力によつて、そういうような処置をとつたのだというふうに受取れるのでありますが、もし、当時そうした占領軍の命令がなかつたとすれば、依然としてこれは継続されるのが日本の政治のあり方として正しかつたとお考えになるのでありますか。
  32. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 その当時におきまして、そういうデイレクテイヴがなかつた場合においてどうなつたであろうかということのお尋ねだと思いますが、その当時のことは、実は私、総司令部からの命令が出まして、とにかく向うから言われた通り実行しなければいかぬということだけに熱中しておりまして、もしそういうデイレクテイヴがなかつたとするならば、どういうような措置をしなければならぬかというようなことは、実は考えなかつたのでありまして、今からどうということを考えてお答えすることもちよつとできかねますので御了承願いたいと思います。
  33. 井之口政雄

    井之口委員 まつたく日本の官吏が、全然あの当時の政治情勢を理解していなかつたということは、それでわかるのであります。元来ポツダム政令によつてこれが出されたものといたしますならば、ポツダム宣言の趣旨に従つたものだと解釈するよりほかに道はないのであります。してみますると、ポツダム宣言の趣旨は、日本の政治を民主化する、そうして軍国主義、その他の官僚主義の一掃、かつ戦争に責任のあるところの財閥の解体というような点が規定されているのでありまして、その趣旨に従つて日本の政治を民主化するためには、軍人に特別なるところの敬意を社会が与えるということは、これは日本として軍国主義に加担するものであるから、これを廃止するという趣旨のもとにこれが出されたのではなかろうかと察するのでありますが、そういうことでさえも日本の当時の官吏は理解しなかつたのでありますか。
  34. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 今委員の仰せられましたことは、実はその当時私意識的にそういうふうなことを判断する余裕がなかつたものですから、私は考えなかつたということを申し上げておるのでございます。しかし委員の申されておりますようなことは、私の記憶では、社会保障の、軍人恩給善後措置に関する協議会のようなものが厚生省に設けられたのでございまして、その協議会の席上におきましては、発言があつたことは、はつきり承知しております。
  35. 井之口政雄

    井之口委員 それならその協議会のそうした発言の大体の、ごく簡単なところをまとめて、ちよつと、どういう意見があつたお話願いたい。
  36. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 その協議会の席上におきまして、どなたか今井之口さんが仰せられるようなことを仰せられたことを、私うすら覚えに覚えておるということでございまして、協議会の内容をかいつまんで今ここで申し上げるほどまで、記憶はいたしておらないのであります。
  37. 八木一郎

    八木委員長 井之口君に申し上げますが、一、二問というお約束でありましたが、共産党の一、二問は相当数の食い違いが多いようですが、あらためてこの問題はやる時期がございますから、文字通り一問にお願いいたします。
  38. 井之口政雄

    井之口委員 そういう建前でその当時廃止になつたものが、今日これを復活しなければならぬというのは、何らかの大きな理由がなければならぬと思うのです。その根本的な理由について、今局長が抱いておられるところの理由というものを明らかにしていただきたい。
  39. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 私は、これを復活するかしないかということは、結局国民感情の動向のきめるところだろうと思つております。国民感情全体、国民全部がいけないという場合には、いかに一人、二人がやろうといつたつてもできやしませんし、私たちはやることはできないと思う。国民の全体の動向が現われたときに初めて実現されることである、こう思つておるわけでございまして、私が今どうこうという考えは、ここでは申し上げることではないと考えるのでございます。
  40. 八木一郎

    八木委員長 これにて暫時休憩いたします。   午後零時五十七分休一憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議
  41. 八木一郎

    八木委員長 これより再開いたします。  昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた恩給特別措置に関する法律案を議題といたします。恩給に関する小委員長より発言を求められておりますので、この際これを許します。青木正君。
  42. 青木正

    ○青木(正)委員 小委員会の経過並びに結果を御報告申し上げます。  御付託を受けました昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた恩給特別措置に関する法律案につきまして、小委員会における審査の概要を御報告申し上げます。  本法案は、御承知のごとく昭和二十三年六月以前の恩給と、その後の恩給との間に著しい不均衡を生じているのを是正しようとするものでありまして、その方法としては二十一年七月の給与改訂及び昭和二十二年十月の給与でこぼこ調整等によつて生じた主要な不均衡在職年及び俸給額に応じて是正しようとするものであります。これに関しまして、小委員会におきましては連日会議を開き、恩給局長、主計局長等の政府側の出席を求めまして慎重審議して参つたのであります。  原案の在職年によつて是正することは、実施上いろいろの困難があるばかりでなく、従来の給与制度あるいは恩給制度に影響を及ぼす結果となるおそれもありますので、原則として在職年による是正を行わないで、旧俸給制度俸給額に大体対応すると認められる現行制度俸給額仮定俸給年額として恩給額を改訂する方法を一とることが、適当であるという結論に達したのであります。ただ旧俸給制度下の教育職員及び警察職員、地方の官吏等は、永年勤続にもかかわらず俸給額が低くなつておりますので、これらを対象として原案の趣旨を一部織り込みまして、永年在職者には幾分よく改訂するというふうな方法がよいのではないかというような検討が加えられて参つたのであります。  次に予算上の問題でありますが、原案では所要経費が年額二十数億円を越えるのでありますが、財政負担の上からいたしまして二十数億ということはなかなか困難の事情もあるやに察せられますので、十二億程度ということに修正するのが適当ではないかという意向が多かつたのであります。  以上小委員会におきましては、いろいろ検討いたしました結果一つの修正案を共同でとりまとめたのであります。よつて以下修正案につきまして、あわせて小委員会結論として御報告申し上げたいと存じます。  修正案文につきましては、お手元に配付いたしておりますので、これを速記録にとどめることをお許しいただきたいと思います。修正案の内容は、原則といたしまして原案のような在職年による改訂を行わず、旧俸給制度俸給額に大体対応すると認められる現行制度俸給額仮定俸給年額として恩給額を改訂しようとするものであります。すなわち現在恩給計算の基礎となつている仮定俸給年額は、最低が四級一号、最高が十四級職最高俸相当額となつているのを、それぞれ五級一号、十五級職最高俸に引上げ、中間におきましては四号ないし六号を引上げんとするものであります。ただ旧俸給制度下の教育職員、警察職員その他の地方の官吏等は永年勤続にもかかわらず俸給が比較的低くなつておりますので、これらのものを対象とし、すなわち奏任官以下の者で在職年二十五年(警察、監獄職員の場合は二十年)以上のものにつきましては一段階すなわちおよそ二号俸上位の仮定俸給年額にさらに引上げて改訂することといたしたのであります。これによりまして、従来の恩給は大体一割五分ないし三割五分の増額となるのであります。なお改訂の時期は原案にありまする通り昭和二十七年十月ということを私どもは期待し、またさようにいたすべきものと存じております。ただしかし補正予算を組む政府側を拘束するというような條文の表現は他の立法例に見ましても考えなければなりませんので、お手元に差上げました改訂案にありまするように、おそくとも昭和二十八年一月分以降、かような表現を用いておるのであります。しかしながらこれは先ほど申し上げましたように、これは当初の原案の趣旨をこれによつて改訂しようという考えでは毛頭ないことを申し上げておきたいと思います。  以上簡単でありますが、修正案提出の理由を申し上げた次第であります。以上をもつて御報告といたします。何とぞ委員長におかれましてお諮りの上、修正案を御採用あらんことをお願いいたします。
  43. 八木一郎

    八木委員長 ただいま青木小委員長よりの御報告はお聞きの通り青木正君、船田享二君、鈴木義男君の三君の名において各派共同修正案が提出された次第であります。  これより小委員長提出の修正案及び原案を一振して討論を行います。討論の通告がありますから、これを許します。井之口政雄君。
  44. 井之口政雄

    井之口委員 昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた恩給特別措置に関する法律案並びにその修正案に対して、われわれは一括反対をいたします。  反対の理由といたしましては、まず官公吏というものに対して、特別のこうした特権を与えてこれに特殊の官僚的な地位を確保するということは、これは民主主義の原則に反するものでれります。事実公務員法によつてもその点は明らかになつている次第であります。でありますからして、むしろ原則上こうしたものは国民全体の養老年金制度というものをもつてなさるべきものであります。この案の内容が二十三年六月を境として、前後のでこぼこを是正するというところにあると存じますが、ちよつと考えてみますと、いかにも公平な処置をとるかのごとくに思われる次第であります。しかるにこの小さな改良のためにかえつて大きな不公平というものが生じて参ります。物事は一つの小さな改良的な進歩的な役割を持つものであつても、それを現実に実施する場合において、全然羊頭を掲げて狗肉を売るという結果に立ち至つて、真の目的をそらし、そうして国民を瞞着するというふうな法律があるものでありますが、そういうふうな法律にこの一つも該当するものであります。今民間の一般勤労者は老後何らの生活の安定も保障されておりません。多くの失業者を出し、そうして低賃金で、いつ馘首されるかわからぬというふうな脅威のもとに生活している。そういう中において、官公吏だけが特別に老後までも保障されるというふうなこうした恩給制度は、それ自体社会的に大きな不公平を発生せしめるものであります。のみならず、同じ官公庁へ勤めている人たちであつても、約八十万に及ぶところの雇用員は、この恩給制度によつて何ら受益するものではないのであります。これは共済組合の自分自身の掛金によつてようやつと自分の退職後の退職金を得ておるというような状態で、それをもつてしてはかれらの生活は安定されていないのであります。そういう点からも、これはきわめて不公平を生じているところの案であります。  さらに、この内容を見ますると、文官や警察職員は、今まで日本においてはきわめて類のない野蛮きわまるところの専制支配の実施者であつたわけであります。終戦後それが訂正されたかのごとく見えておつたにかかわらず、最近の警察官の横暴というものは、この間のメーデー事件においても見られる通りであります。かつての日本の警察官が抜剣して一齊に人民に切りつけたなどという例はない。しかるに、今日の警察官は鉄かぶとをかぶつて、すでに人民の前に人民の敵として現われて、かつピストルをもつて武装されておる。このピストルはアメリカのピストルであつて、アメリカの指令によつて、こうして武装され、日本の人民に敵対している次第であります。ピストルで一齊射撃をする。のみならず毒ガスを使つておる。国際間の協定において、戦争においてさえも毒ガスを使わぬということが、国際連盟においてかつて決定したことであります。アメリカはそれに加盟していない。それがために、日本にも国内の人民に対しても毒ガスを使用させるというふうなことをやらしております。そういう警察職員に特別の恩恵を与え、彼らにまたその上に奨励金を重いろいろな特権を与えて、そうした官僚機構を強化させるということ縛しては、われわれは反対せざるを得ぬのであります。ぜひともこれは民主主義的な方法に改めて行かなければならぬと思いますが、この内容の点から見ると、高級官吏局課長の増加率は五三%にもなつております。しかるに多数の、もつと下級の貧困な公務員にとつては増加率はわずかに二〇%にしかなつておりません。こういうふうなものは、まつたく上に厚く下に薄いという結果になつておりまして、事実受益者の多数がこの法案に反対している次第であります。こういうものをでこぼこの修正で、いかにも公平なる法案であるかのごとく見せかけて、しかも与党並びに野党が議員提出としてこれを出すに至つては、まつたくわれわれはその意図のいずれにあるかを解し得ないのであります。当然、社会党においても老後の養老年金制度社会保障制度の徹底ということが政策として採用されておるはずでありまして、そういう点においては、一ぺん党が公約をいたしましたならば、必ず徹底的にこれを遂行する。そうして欺瞞的なものはこれをあばいて、この欺瞞的なものを葬つて、真の自分の政策が政治の上に実現することに努めるべきか、政党としての任務だと思う次第であります。その意味におきまして、これには反対せざるを得ぬのであります。  なお修正案はますます悪くなつてしまつて、二十八年度一月分から実施するというふうに、三箇月の間約三億円をさつぴこうとするような結果になつております。それを十月から実施するという一応の内部的な了解というふうに解せられるような発言がございましたけれども、しかし何らそれに対する保障がなのであります。少くとも議員提出として法案が決定いたしましたならば、二十七年度十月であろうと、十一月であろうと、二十八年度の四月であろうと、とにかく将来の予算を拘束することは当然である。しかるに、そういう場合に、大蔵大臣の責任あるところの答弁もなければ、総理大臣の責任あるところの何らの保障もない、かくして、まずこれを削つてしまつて、二十八年一月分からというように予算の面を削つて、それだけのもので警察予備隊とかいろいろな軍事的施設にまわそうとしておる、そういう悪いやり方はまつた恩給の受給者自身が反対しておるところでありまして、われわれはこの修正案に対しても賛成するわけに参らぬのであります。これをもつてわれわれの反対の理由といたします。
  45. 八木一郎

    八木委員長 松岡駒吉君。
  46. 松岡駒吉

    ○松岡委員 時間もおそくなりまして本会議が開かれるでありましようから、簡単にこの修正案に対しましての態度を表明いたします。  私ども共同提案者といたしましては、かくのごとき修正案の成立せざるを得なくなつたことに対して大いなる遺憾を表する次第であります。しかしながら小委員諸君が熱心に御努力をされまして今日に至りました経過を十分に了解することによりまして、将来に期してこれに賛成をいたすものであります。  もとより、わが党は共産党諸君のお言いになることをただちに気にかけるわけではありませんが、養老年金の必要なこともよく存じておりますし、社会保障制度というものも完璧を期したいとは考えておりますが、今日の日本の状態において、何人がその衝に当りましても、ただちにこれを実行することのできないことは言うまでもないのでありまして、それまでの間は単に理想を掲げることによつて、具体的に何らものを処置することができな、いということであつては相ならぬということは言うまでもないことであります。そういう趣旨におきまして、遺憾ながら——と言うてははなはだ小委員に対してはお気の毒でありますが、遺憾ながら賛意を表するわけであります。
  47. 平川篤雄

    平川委員 私は修正案の共同提案者の一人といたしまして、この案に賛成の意を表するわけでありますが、この際将来のことがありますので、少し速記にとどめたい問題があるのであります。それをつけ加えまして討論をいたそうと思います。  最初にわれわれが議員提出として出しました案は、確かにいろいろな長所かございますが、ただ一つ根本的な欠点を認めざるを得ないのであります。それは何かと申しますと、年数の原則たけを取上げたことであつて、職階の考え方というもののいわゆる最上部、いわゆる頭打ちと申しますか、その原則を採用していないという点は、確かにこの遺憾の点であつたろうと思うのであります。しかしながら次いで出て参りました現在の修正案というものが、はたしてそれに比べていいかどうかということになりますと、これはやはり本来のわれわれの趣旨とは異なる点が多々あるように思うのであります。そこでまず第一番に私この際明らかにしておかなければならぬことは、不均衡是正という、いわゆる三年前から叫ばれて参りました問題につきましては、根本的にこの案は解決をしていないということであります。一つの実例をとりますと、たとえば不均衡是正のさように叫ばれる点から考えると、元の巡査と、今回の警察官の最高給というものをかりにここにとつてみますと、かつては差額が五千四百円であつた。しかるに、給与の上において今回は七千円に幅がふえておるのであります。あるいは教員の判任の最高給と現在の最高給を比較いたしましてみると、かつては八千円の差でありましたものが、今度かえつて一万円に増加せられておるのであります。この事実はどういうところから来ておるかと申しますと、すなわち何だかんだといわれますけれども恩給局が出しておられる仮定俸給の決定のプリンシプルというものが、やはり現在の給与のカーブによつておるということから起つて来ておるのであります。すなわちかつては四十五円から最高六百五十円に至るまではカーブに表わしましても、非常になだらかな、ほとんど直線に近い曲線を現わしておるのでありますが、現在はこれが非常な傾斜を持つたカーブになつておりまして、その間に、最初の出発点においては生活給的な原理が施されておるが、最高給は民間の給与の実態というものにスタンダードが置かれておつて、これにも結びついておるのであります。従つて現在の給与ベースの線に沿うてやるということは、明らかにこれは職階の考えなしにはやれないのであります。原則的にこれに合せておりますものですから、いわゆる五十四万六千円をとつておりますところの最高給の官吏においては、これは職階の上からいいましても、現在の公務員給与の上からいつても、まつたくこれは一致をするのでありますが、その中間以下のものになればなるほど、次第にその開きがはなはだしくなつて、おそらく今回の増額によりましても、ほんとうに喜んではくれないと思うのであります。たとえば警官の最高給をとつておりますものが、今回の増額によつて一体どれだけの仮定俸給額の増加を見るかというと、まず二万円程度であります。これは恩給実額といたしましては、おそらく年に六千円程度のものでありましよう。そうなりますと、月に割りまして、これは五百円にしかならないのであります。あるいは小学校の教員の一番多いところをとりましても、ほとんどそれにそう違いのない程度の、千円ないしはその前後のベースアツプにしかこれはなつていないのであります。最も不均衡是正を叫んで来ておる階層に対しまして非常な不利を見ておるということは、これはその実際にふところへ入つて来る金額の上からいつても、不均衡是正の声が決してこれによつて終熄するものではない。私はむしろそういう意味で今回の私どもが一緒になつてやりました修正案は、決して恩給の不均衡是正の案ではなくして、単なる増額案にとどまつておるという事実をお互いがはつきり知つておらなければならぬと思うのであります。ただここに二十五年以上を一段階上げるという考え方、これがせめてものプリンシプルとしてわれわれの最初に出しました案の一つの重大な点を加味した点でありますが、これとても、今回の増額におきましては、ほんのわずかなものでありまして、ことに恩給号俸で申しますと十四号、十六号あたり以上の点におきましては、むしろその増額せられたものが現行給与ベースにぴつたり合うというようなカーブになつておる。すなわち修正案の基礎の額というものの表は、現行公務員給与べースより下まわつておる、こういうことも私どもは今回はつきり知つておかなければならぬ点だと思うのであります。従いましてこの職階の考えと年数の考えを入れるということは、将来の不均衡是正の場合には絶対これは不可欠の要件であります。この点については非常な困難な問題がありますが、最初自由党委員の方から考えられました警察官、教員その他の不均衡を生じておると思われる職種のものについて、別個の俸給表をつくるという案は、将来真剣に考えてみなければならぬ問題であろうと思います。なおそれに付随して判任文官についても、これは考えてみなければならないと思います。奏任文官と判任文官をただ金額の序列においてずつと並べるということは間違いであります。やはり過去の官吏制度によりますと、高等官になりますものは、資格あるいは職の上からはつきりきまつておりまして、現在よりか一層はなはだしい封建的な階級制度というものがしかれておつたのであります。それを是正をするということが新しい公務員秩序なんです。その秩序を元通り考えないで新たに考え直すということが原則として打立てられなければ政府が現在考えておりますような軍人恩給の問題すら解決はつかない。いわゆる給与課長の窮余の言葉であろうと思いますが、貨幣価値の変動に伴うものがこれが恩給の不均衡是正の原則であるというようなことを言われておる。さような考え方で行きますならば、当然ただいまの考え方というものは、恩給局自体が数年来やつておられる考え方が根本的に成り立たないと同時に、将来の問題もとうてい成り立たない問題である。そこでこの点では恩給法を根本的に性格がえをするよろなことが、かりにありましても、ぜひ一ぺん考えてみなければならない点である。この点については、一つ恩給局の真剣な御解決をお願いしたいと思うと同時に、ただいまいろいろな公務員給与並びに災害補償等の関係のものはすべて人事院が扱つておるのであります。この方からもいろいろな研究を出させて、ここは恩給局と人事院がどこまでも協力をして、一つのりつぱな案を出しておいでになることが、政府としての義務であろうと思うのであります。さいぜん局長の御言明にもありましたように、私の申しますような不均衡というものは、現に存在する、こういうことを認められます以上は、やはりその点で人事院とも協力して取組まれるべきである。どうしても御協力ができないのならば、われわれは国会の名において、人事院にその研究並びに発表を至急にやるように要請をせざるを得ないと思うのであります。しかし従来しばしば人事院と恩給局の間にいろいろな意見の対立があつたやに聞いておる。そういうところが三年もこの問題を荏苒と遅らせて来たことを思いますときに、どうかこの際ひとつ心を広くして、恩給法というものを根本的に考えてみていただきたいと思うのであります。  いろいろ申したいことがあるのでありますが、そのほかにきよう小委員懇談会の席でも出ましたところのある関係文官というものにつきましては、これは至急に閣令改正して、この恩給法の中に取組まれることが私は必要であると思います。この点もその措置をとつていただきたいと思います。以上この修正案並びにわれわれの提案をいたしました案についてそれぞれ欠点があるのでありますが、同僚委員、ことに委員長、小委員長が予算の獲得について非常に御努力をなさつておる。またこの問題は、この程度の増額でも受給者は喜ぶのでありますから、私どもはそういう実際的な効果の上に立つて、この際この修正案に賛成をいたすわけでありますが、原則といたしましては決してこの修正案に賛成をいたしておるものではないのであります。従つて、私がただいま申しましたように、この案は不均衡是正ではない、単なる増額案にとどまつておるという点を、特に恩給局長は銘記していただきたいと思うのであります。なお与党の委員の諸君にお願いをするのでありますが、先ほど小委員会の席で言明をせられました十月分以降必ず出すというその線を、今後実現せられるように強力に御努力をお願いしたいと思います。  以上私の考え方の一斑を申し述べまして、賛成の討論にかえる次第であります。
  48. 八木一郎

    八木委員長 これにて討論は終局いたしました。これより採決を行います。  小委員長提出の修正案よ全部修正であります。本案を小委員長提出の修正案の通り修正議決するに賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  49. 八木一郎

    八木委員長 起立多数。よつて本案は小委員長提出の修正案の通り修正議決いたしました。本案についての委員会報告書の作成については委員長に御一任願います。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後二時十二分散会