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井之口委員 ただいま
議題になりましたところの
南方連絡事務局設置法案並びに
引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する
法律案並びにその
修正案、この三
法案に
日本共産党は反対いたします。
その
理由は、元来
琉球諸島、小笠原島、
奄美大島等々は、これは
ポツダム宣言によりましても、なおかつ
ヤルタ協定等々によりましても、国際的に
日本に帰属すべきごとが公約として認められているころである。
アメリカ自体においてさえもこれは認めたところのものである。そうして当然、
サンフランシスコの
講和條約が締結されるあの場合でありましたら、
日本政府は強力にこれの
日本への
復帰を主張いたしまして、そうして
日本の
内地同様に取扱われなければならないところの
島々であります。それが国際的に
言つても当然でありまするし、また
日本の
民族といたしましても
要求するところでありまするし、一切の点から見てこれは当然なのであります。しかるにこれらの
諸島は、一体
日本の
領土なのか
領土でないのか、これも不明であるし、ここに住んでいるところの
住民は約百万に達しておりまするが、この
人たちが
日本人であるのかないのかもわからないというふうな
状態に放置してある。この根本的な問題を
政府は一向に解決しようとしないのであります。そうしておいて、今度
アメリカから去る四月十四日に渡航、貿易、
恩給の支拂い、
戰没者遺骨の
処理等に当るために早急にこうした
機関を
設置しろという命令が出て、そうしてそれに
従つてこうしたものをつくるというのですが、これでは
島民自体の
要求を満足せしむるものでもなく、また
日本民族が統一して、そうして彼らが
祖国へ帰りたいという
要求、並びに帰したいという
日本全
国民の
要求にも一致するものではない。わずかにちよつとした便宜をはかるところの
事務局を置いて、そうしてお茶をにごして、それでも
つて重大な根本問題をごまかしてしまおうということになりましたならば、いつの日にかこれらの
諸島が
日本に帰属するか帰
つて来ることは不可能にな
つてもまうのであります。われわれはここは大胆に、これらの
諸島が
日本に
復帰することをまず前提に置き、そうして
復帰のための根本的な政策というものを立て、そうして今日これが実質上軍事的な
信託統治にな
つていることに対して反対し、ここから
アメリカ軍隊の撤去を
要求いたしますならば、これらの
諸島からの
国民の
往復ということも自由になりますし、
通信その他の
連絡も自由になりまするし、それから今まで多くの、ここの
島民が
日本に置いておきました
郵便貯金であるとか、その他の凍結された財産というものの送付も自由になりますし、かつ今
アメリカがこれらの
島々において
軍事基地としていろいろな設備を施し、
島民の自由を奪い、政治的な
隷属を強制しているような
状態も、みななくな
つてしまうのであります。しかるにそういうことはやらないで、單に
連絡事務所というふうな、こうしたものを設けて、そうしてますます
隷属をしいる、ごくわずかな改良的な
要求のために大きな根本的な問題を
日本から失わせてしまうというのがこの
法案のねらいなのでありましてこういう
法案に対しては、
日本共産党としては、
賛成することができないのであります。全
島民の
要求通り祖国日本へ
復帰せしめよ、そのために
アメリカ軍隊をこの
地方から撤去させ、自由なる
日本の
領土としてわれわれの
同胞としてこれらの
人たちを迎え入れるという方策に進んで行くべきものであります。
さらに後者の
引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する
法律案に対しましては、もう今までこの
引揚同胞対策審議会がや
つて来たところの事業の
内容を見ればわかるのであります。今日海外からの
引揚者というものは、明確にもう
引揚げて参
つております。しかるに
ソ同盟にまだ約三十数万の
残留者がいるなどという、そうしたデマを振りまくところのためにしか活動していないというような
状態であります。むしろ
南方地域からまだ最近帰
つて来ておりまするが、そうした未
引揚者の数でさえも発表しない。そういう
方面は
サボつてお
つて、ひたすら明確に千数百人の
戰犯者しかいないと
向うも責任のある声明をなしている
ソ同盟の
残留者に対して逆
宣伝を放つというふうな
仕事だけしかや
つていないのであります。もし三十数万人が
向うにいるとするならば、それらの未
帰還者の
府県別、それから生
死別等日本において明確に発表するがよろしい。今自由に
手紙の
往復はできるのでありまするから、
向うに残留している
戰犯者であ
つても、許される範囲において
通信はできておる。でありまするからして、それを発表して、そうして確かに明確にこれだけのものがいる、あるいはその他の地区に対しても、まだどんどん帰
つて来るところを見ますると、
現実にいるのでありまするからして、そういうものを正確に算定して発表し、
国民の疑惑を取除くというふうな
仕事はやらないでおいて、ひとえに政治的な
意図のもとにこの
審議会が使われているということに対しては、われわれは反対せざるを得ぬのであります。最近、なるほど
中国人民共和国に
大分残留邦人がいるようでありまして、そういう
人たちから
手紙がどんどん参
つております。のみならず
日本の
民主正義の
運動に対して、これらの
人たちが、
向うにおいて民主主義的な発達を遂げていろいろな
送金なんかもどんどん送られて来ております。たとえば
松川事件のあの被告が、これが全然無罪であるにかかわらず死刑が宣告されているということを聞いて、
向うにいる
日本人のわが
同胞の
残留者が、これはけしからぬ
裁判である、こういう
裁判を
日本において今でも行わしめるということは、われわれは見るに
忍びない、どんどん
社会運動を起して、これの
救済をしなければならぬというので
救済金なんかが送
つて参りました。なお
残留遺家族に対しても
中国から
送金をこの
人たちはばか
つている。しかるにそれがイギリスの
香港政庁によ
つて差押えになりまして、そうして
日本へそれが渡
つて来ないというような
状態にな
つておる。ところがそれならば
日本の
政府は
審議会においてこれらの問題を問題とでもしたことがあるかと申しますと、それらの問題も何ら問題にしてない、こないだの
委員会において私が
質問いたしましても、そういうことは初耳だというふうなことである。これではやるべき
仕事をやらないでからに、單に反共反ソの
宣伝にこの
審議会は利用されているということをわれわれは認める。こうしたものに対してわれわれは
賛成しかねるのであります。なお
日本の
遺家族の方々、または
引揚げて来られた後のいろいろな援護をこれが協議するというふうなことも目的にな
つておりまするが、今日
政府のやり方を見てみますると、あの戰傷病で白い着物を着ている兵隊さん、あれの救援でさえもできておらない。やはり汽車の中なんかで今でもこじきしているという
状態、
遺家族に対しては
線香代しか出さないということを
大蔵大臣自身も
言つているような
状態、そうした
方面から見てみましても、
引揚者でぴんぴんしている
人たち、またはからだはぴんぴんしていても
家財を失い、今までの職を離れ、失業のうき目に泣いているような
人たちに対して、何らの施策を施していないのが、これまでの実績なのであります。こうした
審議会をまた一年も延期して、国費二十七万円も
使つて 單にそこに集食うているところの官僚が職を得ているということになる結果を
現実にもたらしているような
状態であるのでありまして、それに対してわれわれは
賛成して将来もそれを継続させるということにはどうしても
忍びないのであります。これはもう役割を勤め終
つているのだから、むしろ新しい
別個の
法律をも
つて引揚者に対して、職がない者、あるいは
家財を
失つて生業を
めちやめちやにされた
人たち、そうした
人たちに対してそれを徹底的に保護すべき
別個の
法律をつくるまた未
引揚者に対しましては何もこうしたものを持たぬでも
政府がやろうと思えばいろいろな
機関において十分なされ得るのでありまするからして、問題は要するに誠意の問題にな
つて来ている。今の
政府の
階級的立場ということに問題はな
つて来ているのでありますから、こうしたものをこしらえて逆
宣伝に使われることに対してわれわれは反対せざるを得ぬのであります。
修正の案はただ字句を
修正しただけで、根本的な点において何ら改正をされておりませんから、同様にこれに対して反対せざるを得ぬのであります。以上をもちまして、われわれの反対の
理由を明らかにしておきます。