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1952-05-20 第13回国会 衆議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十日(火曜日)     午前十一時二十分開議  出席委員    委員長 八木 一郎君    理事 江花  靜君 理事 青木  正君    理事 船田 享二君 理事 鈴木 義男君       木村 公平君    田中 啓一君       田中 萬逸君    橋本 龍伍君       本多 市郎君    山口六郎次君       西村 榮一君    木村  榮君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         郵 政 大 臣 佐藤 榮作君         国 務 大 臣 野田 卯一君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         人事院総裁   浅井  清君         外国為替管理         委員会委員長  木内 信胤君         電波監理長官  長谷 慎一君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         通商産業政務次         官       本間 俊一君  委員外出席者         参  考  人         (長野県森林審         議会会長)   小野 秀一君         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ――――――――――――― 五月十九日  委員玉置信一君、畠山鶴吉君及び滿尾君亮君辞  任につき、その補欠として井上知治君、木村公  平君及び山口六郎次君が議長指名委員に選  任された。 同月二十日  委員松岡駒吉君辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十九日  軍人恩給復活に関する請願鈴木正文紹介)  (第二八二一号)  同(尾崎末吉紹介)(第二八二二号)  同(關谷勝利紹介)(第二八七八号)  同(岩本信行紹介)(第二八七九号)  恩給の不均衡調整に関する請願外一件(岡延右  エ門紹介)(第二八二七号)  元軍人老齡者の恩給復活に関する請願田中伊  三次君紹介)(第二八八〇号)  同(關谷勝利紹介)(第二八八一号)  警察予備隊設置に関する請願今泉貞雄君外五  名紹介)(第二八八二号) の審査を本委員会に付託された。 同月十七日  軍人恩給復活に関する陳情書  (第一八〇一号)  同  (第一八〇二号)  同(第一  八〇三号)  同外三十件  (第一八〇四号)  軍人恩給復活及び遺族援護に関する陳情書  (  第一八〇五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  法制局設置法案内閣提出第一八九号)  行政管理庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一九一号)  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一九二号)  自治庁設置法案内閣提出第一九三号)  総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一九五号)  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第一九九号)  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣  提出第二〇〇号)  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(  内閣提出第二〇一号)  通商産業省設置法案内閣提出第二〇六号)  工業技術庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二〇七号)  通商産業省設置法施行に伴う関係法令整理  に関する法律案内閣提出第二〇八号)  郵政省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二一〇号)  郵政省設置法の一部改正に伴う関係法令整理  に関する法律案内閣提出第二一一号)  経済審議庁設置法案内閣提出第二一七号)  大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二二九号)  大蔵省設置法の一部を改正する法律等施行に  伴う関係法令整理に関する法律案内閣提出  第二三〇号)  経済安定本部設置法の廃止及びこれに伴う関係  法令整理等に関する法律案内閣提出第二三  四号)  法務府設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第二三五号)  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二三八号)     ―――――――――――――
  2. 八木一郎

    八木委員長 これより内閣委員会を開きます。  本日は、公報をもつてお知らせしておきました国家行政組織法の一部を改正する法律案その他行政機構改革法案について質疑を行います。質疑の通告がありますから、順次これを許します。西村榮一君。
  3. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは野田国務大臣にお尋ねいたします。まずお尋ねしたいのは、従来の経済安定本部を今回経済審議庁に変更されたのですが、その結果どういうふうな内容の変化が来ているのですか。一応これを承りたいのです。
  4. 野田卯一

    野田国務大臣 御承知のように、今回の行政機構改革におきましては、従来の安定本部はこれを廃止いたしまして、別に新しく経済審議庁を設けることにいたしたのであります。従いまして、今回設けられることを予定されている経済審議庁は、新しい機関としてわれわれは考えているわけです。それにつきましては、従来安定本部でやつていたと申しまするか、取扱つた仕事の一部が、ここで取扱われることになるということもあるだろうと考えておりまして、主として長期経済計画の策定の問題であるとか、あるいは総合国力測定分析というような問題、あるいは経済基本政策につきましては、各省でもつてそれぞれやるということを根本といたしますが、各省におきまして話がつかないというような場合には、その調停あつせんの役目を引受けるということを、ここでやることにしたいというふうに考えております。なおどこの省の主管と申しますか、どこの省と非常に関係が深いということもない、各省関係をしているというような総合的な経済施策については、経済審議庁がイニシアチーヴをとりまして、いろいろと関係各省連絡をとつて企画立案をいたしたいというように考えております。なおその他の点につきましては、たとえば国民所得といつたもの、あるいは内外経済動勢調査分析という問題、あるいはまた国土総合開発法に基く事務、なお現在参議院で審議中の電源開発促進法案が成立いたしました場合には、それに基く仕事取扱う、こういうことを考えている次第であります。
  5. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、経済安定本部を廃止しなければならぬという理由は一体どこにあるのですか。
  6. 野田卯一

    野田国務大臣 経済安定本部は、御承知のように終戦後の経済情勢に基きまして、一時的に司令部の指令によりましてつくりました計画的な機関である、こういうふうに考えておるのでありまして、今日におきましては、経済安定本部が設けられました使命は、理論的に果されたと思います。しかしながら、なおその関係をいたしておりました仕事の一部には、今後も引続いてやることが国家の利益になるというようなものもあります。そういうものにつきましては、経済審議庁において取扱う。なお経済安定本部取扱つておりました仕事のうちでも、各省に分属してやることを適当とするものにつきましては各省にそれをやらせる、こういうことになつております。
  7. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、経済安定本部という機関設置された当時の諸条件は解消されて、今日の段階においてはそれを必要としない、こういうふうに解釈されますか。
  8. 野田卯一

    野田国務大臣 経済安定本部ができました当時の情勢と今日とはたいへんかわつて来ておる、こういうふうに考えております。
  9. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は、経済安定本部設立された当時の経緯からかんがみてみまして、その任務終れりとは思つていないのですが、しかしそれは別として、別の角度からあなたにお尋ねしたい点は、民主主義原理から来る行政機構というものは、一つ権力均衡と、行き過ぎをたえず是正するという権力分散の見地の上に立つて確立されて行かなければならない。しかしながら、権力分散行き過ぎ各省における牽制という妙味を発揮して、しかもそれによつて混乱を防ぐためには、その行政機構の中に中枢神経がなければならぬ。従つて経済安定本部設立された当初の原理というものは、かような戦後における日本経済混乱に対処するという緊急事態における方策も一つありましたけれども、実はあれが設置されたのは、以上申しましたように、民主主義政治の原則に基いて行政を行うため、そこに中枢機関としての経済安定本部総合企画官庁としての存在を認めたと思うのですが、あなたは民主主義原理から来る行政機構に対してはどういうお考えをお持ちでありますか。
  10. 野田卯一

    野田国務大臣 私は、民主主義行政機構というものは、行政をできるだけ民主化するという方向に持つて行くべきものだと思つております。安定本部設置にあたつては、行政を一元的にコントロールしよう、こういうような意図相当濃厚にあつたように記憶しています。
  11. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、アメリカ意図は別として、民主主義原理から来る各省権力分散化並びに行き過ぎ牽制行政機構改革に対して何らの考慮を払われていないということになると、一応混乱が来ると思うのです。その混乱一つは、あなた自身がよく御存じではないかということは、過日本会議において問題になつた議員法律案提出に対し、予算との関係を無視し、かつまた各省との権衡を無視した議員法案提出権というものは、ある程度制限しなければならぬというあなたの御意見が端的にその点を証明されておる。しからば一体、従来経済総合企画官庁として中枢機関にあつた経済安定本部を廃止して、どこに一体日本経済中枢神経というものを求められようとするのか。
  12. 野田卯一

    野田国務大臣 私は、御質問の趣旨内容に入ると思うのでありますが、経済安定本部日本経済中枢脳髄といつたふうには、必ずしも考えておらないのです。経済安定本部だけが脳髄であつて、ほかはどうだというようなことでなしに、これは現在の国家行政組織法におきましても、あるいは内閣法におきましても、国策根本決定というものは閣議でもつてすべきことになつております。そういたしまして、各省大臣がその全能力を発揮いたしまして、各省のそれぞれの所管事項について相談する。もし各省の間におきまして意見が相違するというような場合におきましては、最終の決定閣議においてこれをはかつて行くということが、現在の日本行政組織根本であることは御承知だと思います。その線に沿つてつて行きたい。それで経済国策と申しましても、各省が、たとえば金融政策なら金融政策というものは、やはり大蔵大臣が主たる責任者として企画立案すべきものだと思います。また食糧政策であれば、農林大臣が主たる責任者として、食糧政策を立てて行くべきだと思うのでありまして、国策と申しましても、これをわけますと、食糧政策金融政策あるいは中小企業政策あるいは交通政策等、いろいろわかれて来ると思いますが、そういうものにつきましては、それぞれの担当大臣責任を持つてその企画立案をされる。もちろんその方だけでできるわけではありません。あるいは広く民間意見を聞き、あるいは関係各省と緊密なる連絡をとりまして基本政策を立て、閣議にはかつて決定して行くという構想をとるのであります。あるいはその間には、次官会議というような段階もございましよう。関係閣僚会議あるいは政務次官会議等いろいろな段階がありますが、そういう段階におきまして、順次調節しまして、最一終決定閣議においてなされるという態勢で行くべきだと考えております。ただ、事務的にもその間にある程度の調節をするというために、今回経済審議庁ができた場合には、それに事務的のある程度の調整を受持たせようと考えておるわけであります。大方針といたしましては、あくまで閣議中心になつて動いて行くべきものと考えておるのであります。
  13. 西村榮一

    西村(榮)委員 閣議行政上の中心になるということは、議論の余地はないのです。しかし閣議行政上の中心になるということは、行政上の政治的中心になる。私の問わんとするところは、行政上の事務的な中枢神経をどこに置くかということです。そこで、水かけ論をしておつてもしかたがありませんから、経済安定本部総裁をなぜ総理大臣にしたのであるか。その理由をあなたは御存じですか。
  14. 野田卯一

    野田国務大臣 私は当時の事情は詳しく存じておりませんが、必要があれば当時の事情を知つておられる向きから答弁をしていただきます。
  15. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは当時の事情を知つておられる周東安本長官の御意見を伺いたい。
  16. 周東英雄

    周東国務大臣 私も当時直接関係はありませんでしたけれども、当時設置された安定本部総裁総理にしたのは、大体において各省との関係総合調整をいたす権限が与えられておりますので、事前にそこで一つ調整をはかるということに対して、各省大臣の上に、総裁総理になつてつたと思います。
  17. 西村榮一

    西村(榮)委員 先ほど野田君は、自分も官吏として経済安定本部設立当時の事情を知つておるとおつしやつたから聞いた。それなら両大臣よりも私が一番よく知つておるから、申し上げておきましよう。なぜ総理大臣経済安定本部総裁にして、その下に長官国務大臣として置いたかということは、これは先ほど申しましたような民主主義政治原理に基く行政機構、そこに中枢神経を求めて行くというところに、総理大臣が各国務大臣に対する指示権ないし影響力考えて、総理大臣経済安定本部総裁ということになつたのであつて、これは名誉総裁でも何でもありません。真実に各省大臣指示、命令するという政治性格を持つておる。従つて当時の経済安定本部行政機構内容拡充についてお考えになるならば、当然このことが書いてある。私はそのことをお伺いしておる。従つてあなたに問わんとしておるところは、そういうふうな中枢神経的な行政機関というものがなくなつても、やつて行けるのかどうか。それをなくする政治的な情勢並びに日本経済事情が、経済安定本部総理大臣総裁として設置した当時の事情と、今日変化しておるのかどうか。変化しておるならば、変化しておるということを具体的に私は伺いたい。
  18. 野田卯一

    野田国務大臣 私は、役人として関係したときに、司令部指示といいますか、司令部の意向というものが、経済安定本部をつくる非常に大きな動機になつてつたということは、よく承知しておるのであります。そういう事態は、今日なくなつております。あくまで日本行政は、国家行政組織法並びに内閣法の精神に従つて運営して行くべきであると思います。またそれによつて十分日本の今後の国務を伸ばして行くことができる、かように考えております。
  19. 西村榮一

    西村(榮)委員 それは当然です。今言うような一つ政治原理と同時に、日本経済を将来適切巧妙に運営して行くために、この機関が必要であるということが、提案理由の説明にされておる。すなわち、人と金との兼ね合いによつて日本の再建をはかるために、こういう官庁が必要である。しかもこの官庁総合企画官庁であるから、各省国務大臣指示命令をするということがあり得るために、総理大臣総裁になる。これが公式の提案理由です。私はアメリカ占領軍がおつたときには、かなり占領軍に向つては、速記を通じて反省を促しました。アメリカ資本主義による帝国主義的な日本併呑方向に向いましては、断固として闘う。しかし占領軍の去つた後においては、お互いに信頼友誼立場から言うべきではないか。従つてあなたに御答弁を求めているのは、政府の当時提案理由で述べられた公式なこの設置法案に対する趣旨と今日と、どう相違があるかという点を聞いておる。内容を聞いておる。私はそれとは別に、今日本状態においては経済安定本部を廃止するという条件は、当時の公式声明、本役所設立趣旨から申しまして、私はこれを消滅せしめるところの客観的な情勢は、経済的にも政治的にも、どこにも生れて来ていないと考えております。ということは、今日統制経済自由主義経済かという議論は、これはイデオロギー論争をもはや越えまして、日本経済はどうしたら一体再建されて行くのであるか、国民生活がどうしたら安定されて行くか、どうしたら日本経済的基盤が拡大されて行くのであるか、どうしたら国際競争に耐えられるのであるかという三点が、自由主義経済であれ、社会主義経済であれ、そういうふうなイデオローギーを超越して、一個の計画性がなくてはならない。従つて私は総理大臣がきようおいでになつたならば、総理大臣にひとつこの点をとつくり申し上げておこうと思いましたことは、この経済安定本部設置は、決して統制経済を目的としておつたのではない。資本主義経済であれ、社会主義経済であれ、そこに日本の乏しい物資の中から、過大なる労力をどう結合して行くか、その面に立つて国際競争力をどう増して行くかという点に、本役所設置理由があつたのです。従つて私は今客観的にも主観的にも、日本国内にこれを消滅せしめるところの条件は生れて来ていないということは、国際的にも言い得ると思う。一つの例は、たとえて言うと、この役所のモデルは、アメリカ経済安定局というふうに私は見ているのですが、その経済安定局設置から逐次発展いたしまして、今日においては国防総動員本部とそれがなつておるのでありまして、この国防総動員本部仕事というものは、長官が大統領の名によつて各省指示命令する広汎な権限を与えられておる。これはあなたも御存じの通り。しかもこれは生産優先順位並びにその実施計画物価賃金均衡対策並びに労力活用、そういうふうにアメリカ国防生産法に基き、経済安定局生産順位をまずきめる。物価賃金、それから金融統制利潤統制との関連において、民生の安定をいたしておるのでありまして、従つて資本主義国家自由主義国家といわれておるアメリカにおきましても、険悪なる国際情勢に対処するために、実に五十七万種の価格と物の動きに対して統制を加えております。特に最近におきましては、稀少物資五十五品目にわたつて、個人の退蔵を禁止して、これを国家総合計画の上に活用するという対策を、あの物量豊富なアメリカでさえも、今日の国際情勢はそうせざるを得ない段階に直面しておるのです。私は今あなたと自由主義経済か、資本主義経済か、あるいは社会主義経済か、計画経済かのイデオロギー論争をしようとは思わない。また決して私は経済安定本部に一年職を奉じたから、身びいきで言うのではないのであります。これは何党が内閣を担任されても、一つ行政上の中枢神経を確立しなければ、民主主義個々ばらばらになり、てんやわんやになつてしまう。この民主主義の長所と欠点を補う中枢神経が必要である。同時に今日の国内情勢、並びにその国際的客観情勢というものは、あの物量豊富なアメリカでさえも、かくのごとき広汎な権限をもつて稀少物資のみならず民需品に対しましても、これは国家大局的立場において物と人と資金との活用をいたしておるのでありますが、これを廃止するという理由は、これは国際情勢の上のどこにもない。特に日本国内事情の中にはない、こう思うのですが、私はあなたと議論しようとは思わない。これらの問題について、あなたもかつて優秀なる官僚として、将来日本の政局を背負つて立たれるのでありますから、こいねがわくは十分なる御意見を承りたいと思います。
  20. 野田卯一

    野田国務大臣 私は安定本部の最近の動きなり働きなりもよく承知しておるのでありますが、私は安定本部の最近まで営んで参りました機能の中には、各省重複している面も相当ありますし、また各省に分属させた方がいいものももちろんたくさんあるのでありまして、そういうものは行政簡素化国民負担の軽減という点からいいましても、できるだけ仕事重複を省くという意味で、各省でできることは各省に分属させる、そうしてどうしてもできない事柄は、今度の経済審議庁という、国務大臣をもつて長官とするところでやるということによりまして、少くとも日本の現在必要とされておるいろいろな施策の推進ができるものではないか、そういうふうに考えておるわけであります。
  21. 西村榮一

    西村(榮)委員 そこで私は方向をかえまして、当面の責任者たる周東安本長官に、先ほど野田君に私が御質問申し上げました経済安定本部を廃止する客観的並びに主観的な条件が出たのかどうか、同時に、先ほど言うような民主主義政治原理に基いて、中枢神経というものが日本になくて、一体閣議だけでこれをやれるのかどうか、私が言うのは、閣議中枢神経であるということは、これは行政上の政治的な中枢神経であつて行政上の事務的な、先ほど野田君が言われたように、各省との調整並びにあつせんの労をとるということも、一つ中枢神経の確立ではないかと思うのです。従つて先ほど私が野田君にお尋ねいたしました経済安定本部を廃止する客観的情勢並びに日本国内における主観的な情勢、あるいはまたこれを廃止した後における日本行政上の中枢神経をどこに求めるか、主管大臣としてのあなたの御答弁を求めたい。
  22. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えいたしますが、今度の審議庁においての仕事そのものの一番の重点は何かと言えば、現在の日本経済復興産業復興に関して最も必要である長期経済計画というものを総合的に立てるということであります。お示しのように、現在の事態が、占領直後のごとき状態とは大分かわつてはおりますけれども、なお国際情勢の中に立つて国際経済に結びついた日本の今後における経済復興というものは、相当に困難を予想されるものがあると私は思います。その間にあつて、そのときどきばかりの目先施策だけでは足らぬのであつて、結局先を見通しての一つの総合的な計画を樹立し、これを政治の面に現わして行くということが必要であります。そういう面においては、重要さはかわつて来ておるが、現在の国際情勢下にあつて国際経済に結びついた日本としては、重要な点が相当つておる。従つてその面については、従来の形において経済安定本部において行つたと同じような長期経済計画総合計画の樹立は、実際にここで取扱うことになつております。その点は今後も相当重要な任務としてやつて行く機構を残したわけでありますし、ことにそれらを樹立実行するにあたつて国際経済の動向の洞察、また国民経済状態に関するような調査資料というものは、すべてこれをここに集中して、日本経済復興に対しての重要な役割をなさせようとするわけであります。ことに問題は、従来やつてつた中で、一部各省が事実において目先の――といいますか、短期の、一年々々の計画等を立てるというようなものは、むしろその責任各省に負わした方がよろしい。あまりに重複になる結果は、責任を持たないために、自分仕事がややおろそかになるきらいがないでもないのでありますから、むしろ一年ごとの計画等についてはしつかりと責任を持たして行くが、しかしそれに対しても、基本政策について非常に争いが起きたり、割拠主義が起つてはならぬのでありますから、そこでその根締めをするためには、経済に関する基本的な政策総合調整ということは、強い力においてやはりこの役所がやつて行くことになる。そういう面においては、日本の現在置かれた地位というものなり、日本経済状態考えて、こういう点については、あくまでもかつて経済安定本部の形を残して行こう、こういう考えでありますので、この点は御了承願えると思います。あなたの御指摘になつた点は、元は総理総裁でありましたから、そこで安定本部自体においてすでに指示権を持つて行くというところに一つの強さがあつたかもしれません。その点は、今度は国務大臣が当るわけでありますので、ややゆるくなつたといえば、ゆるくなつたでしようが、しかしこれも実際は運用の問題でありましようし、相当にそこに人材を集中し得るように今度の制度は認めております。民間からも相当な人間をここに集中して、官が机上の議論だけで空疎な議論が立たぬような形をとつて、そのよい政策立案をして行くことによつて内閣においてこれを動かすということに持つて行くことによつて、一応今日の段階においてはやり得るのではないかと考えておる次第でありまして、違うといえば、その点において相違はありますが、しかし内容それ自体については、非常に重要な点については、新しく設置される役所において強くやり得るように、またやらなければならぬという立場において、こういう形をとつた次第であります。
  23. 西村榮一

    西村(榮)委員 あなたの説明を承つておると、何も国務大臣長官として一省の官庁を置く必要はないのではないか、その程度でいいのならば、官房長官直属の調査部で足りるのではないかと私は思う。もちろん一つ行政官庁として存在する上からは、いい意味における権力がなくてはならぬ。権力なき官庁というものは、単に作文の官庁機関である。ともすれば安定本部は作文官庁としてまま子いじめされた。それを防ぐために、強力なる指示権を、総理大臣総裁という形において実質的運用で持つて行く。従つて安定本部長官が言われたような状態であれば、私は調査部で事足りるのではないかと思う。  これは安定本部長官でも、野田国務大臣でも、どちらでもけつこうですが、任務の中の第二号に「他の行政機関の所掌に属さない総合的経済政策企画立案」とあるのは、どういう意味ですか。
  24. 野田卯一

    野田国務大臣 御承知のようにいろいろな問題が最近でも起つて来ておるのでありますが、その一つの問題、たとえば東南アジア開発という問題がかりにあるといたしますと、それは各省がみなそれぞれ関係しておる。しかしどの省が主管であるか、仕事の分量等から申しましても、どの省のものということはなかなか言えぬものがあるわけです。各省関係をしておるわけであります。そういうものをどこで取扱うかということも、なかなか実際問題としてむずかしい点がありますので、こういう問題につきましては、経済審議庁が積極的に関係各省連絡をとつて企画立案に当る、こういう趣旨であります。
  25. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは野田国務大臣にお尋ねしますが、何か他の行政機関に所属しない企画立案というものがあり得るでしようか。どの役所でもみな企画立案を持つている。経済安定本部仕事というものは、どの役所でも企画立案しておるが、それを按分調整して、大所高所から、物と人と資金の面において総合的国策決定するということが、その任務であつた従つて今ここに任務の中に書かれておる、他の行政機関の所管に属さない総合的経済政策企画立案、これは実際問題としてあるでしようか。
  26. 野田卯一

    野田国務大臣 言葉の説明になりますが、総合的経済政策で、ある特定の行政機関の所掌に属さない東南ア開発、こういうのは、どこかわからないのです。実際こういう総合的な経済政策があるわけです。こういうものを安定本部でやる、こういう意味であります。
  27. 西村榮一

    西村(榮)委員 大体わかりました。それならば任務の一、二、三、四、五というものを考えてみますと、四までは大体了解するとしても、五の「内外の経済動向及び国民所得に関する調査及び分析」これがやはり経済安定本部の最も力点を置かれるところではないか。従来も国民所得の算定、経済の動向、調査、分析というところにおいては、経済安定本部が特色を持つてつたのでありますから、ごく具体的に言えば、最も特色のあるのはこの第五だと思うのですが、いかがでしよう。
  28. 野田卯一

    野田国務大臣 これだけが特色があるとも申し上げかねますが、これにも相当大きな力点を置いて運営して行きたいと考えております。
  29. 西村榮一

    西村(榮)委員 各方面で国民所得というものを算定されておるが、その基礎になつてつたものは、経済安定本部国民所得計数です。そうすると、これがやはり任務の主たるものになるのではないですか。
  30. 野田卯一

    野田国務大臣 これが主たるものということになると、ほかの方にさしさわりができるのでありまして、他の部面におきましても、今後いろいろな客観的事態の進展に伴つて経済審議庁仕事相当あるだろうと思う。でありますから、国民所得の調査、分析という事柄は、従来もやつておりまして、相当の成果をあげ、また日本におけるこの問題に関する最高の権威でもある。こういう点において、その調査研究等は最も尊重さるべきものであり、また基本的なものでありますが、それが経済審議庁中心になつてしまうかどうかということにつきましては、そうだともはつきり申し上げかねるのでありまして、非常に大きな部分ではありますが、それが中心だ、こういうことは断定はむずかしいのであります。
  31. 西村榮一

    西村(榮)委員 それではあなたの御説に従つてこの問題は別としまして、それならば第二の問題、他の行政機関の所管に属さない総合的経済政策企画立案、あなたは今東南アジア開発総合計画というものを一つの例に出されたのですが、この二点はこの原案修正の意向が議会から出ても、その修正に応ぜられる余裕がありますか。
  32. 野田卯一

    野田国務大臣 どういう修正か、修正の内容がわかりませんので、何とも申し上げられません。
  33. 西村榮一

    西村(榮)委員 修正は野党単独で提出する場合もありますし、それから自由党とも協議して、各党共同提案の修正を出す場合もあるが、二の「他の行政機関の所管に属さない総合的経済政策企画立案」この点が任務の中で最もあいまいだ。従つてこの点を、修正というよりも、もつと明確化して行かなければならぬ。同時に本官庁が存続する上からは、総合企画官庁としての立場において日本総合計画がやつて行ける――私は行き過ぎ権力は必要としませんが、しかし官庁が存在する上からは、官庁の基本的な条件としては、少くとも一つの法律に基く権力が確立されなければいかぬと思うが、こういう点が本審議庁一つの欠点ではないか。同時にこれが総合企画立案されたものがどう実行されて行くのであるかという、自分の生んだ子供の成長の仕方というものを監査する項目は、この法律案の中にどこにもありません。これが欠点なので、従つて私はそれらの点においてきわめて常識的な、いわゆるあなたが企画立案されたものをお助けするという意味における修正なんで、決してあなたを窮地に追い込む修正ではない。従つてそういう修正はあなたの立案の中に考慮する余地があるのか。これは私としてはきわめて愚問なんですが、あなたは私にきわめて懇意だから、私もその懇意に甘えて、突然修正案を出せば、あなたの立場もまたどぎまぎされるといかぬから、あらかじめ予告しておくのでありますが、従つて修正に応ぜられる余地があるかどうか。まあまあなければない答弁されぬでもよろしい。これは私の方が愚問だから……。
  34. 野田卯一

    野田国務大臣 修正案を見なければ何とも申し上げられませんが、先ほどのような考え方なんであります。この役所権限を持つて他の方を押えて行くとか、規制して行くということを立案者は考えておらないのでありまして、少し考え方が、役所役所を規制するというお考え方が非常に強く出ているようでありますが、私たちの考えは、あくまで責任を持つて国務大臣中心になつて政治をやつて行く、こういうふうになつておるのでありまして、役所役所権力的に制し合うということはなるべく避けて行きたい。そうしてあくまで最高責任者の話合いでもつて問題を片づけて行きたい、こういうふうに考えておるわけであります。すべて役所だけでものがきまつてしまうというのではなくて、そこに少しゆとりを存して、重要国策については、あくまで最高責任者のところでものをきめて行く、そういうところに苦心があるということを十分おくみとりを願いたいのであります。
  35. 西村榮一

    西村(榮)委員 私の言うのは、この役所が他の役所指示命令するというような強力な権限という意味ではない。この法律案をごらんになればわかるのですが、役所としての体系をなさぬほど権限はないのです。従つてそれは他の存在する行政官庁としての一定の水準まで権力的な地位を与える。これはどこにもないから、私は言うのです。こういうような骨のない、筋のない、くらげみたいな役所はありません。従つて私はこれに普通の人間としての歩行のできる権力を与え、筋金を入れたらどうか、こういうことなんです。
  36. 野田卯一

    野田国務大臣 その点につきまして、経済審議庁の問題につきましては、あまりこれに筋金を入れてばちばちやるというような考え方はなるべく避けて行きたい。むしろ先ほど申し上げましたように、経済基本政策と申しましても、それぞれ大体所管の大臣があるのでありますから、その所管の大臣責任を持つてつてもらう。しかしながら、他省の関係におきまして、必ずしも議の合わないということもありましようから、そういう場合には、これが仲裁あつせんに乗り出して行つて妥結案をつくるように持つて行く、こういう働きをし、また他の行政機関のどこの省であるということが、たくさんの国務の中には、はつきりしない問題もありますので、そういう問題については、ここがその企画立案の衝に当る。こういう考え方なんでありまして、あくまでも全体の行政機構動きを円滑に、能率的に持つて行きたい。権力権力で争い合うとか、あるいは押え合うというような意味にはなるべくこの役所を持つて行きたくない、こういうような考えを持つておるわけであります。
  37. 西村榮一

    西村(榮)委員 それではあとで私はもう一ぺん詳細やりますが、今言つたような誤解があるといかぬから申し上げますが、各省指示命令するような強力なものではない、しかし一定の普通の水準まで上げて行きなさい、こういうのですから、誤解はないように願いたい。  それから委員長の顔色も、大分他に質問を譲れというような顔色を示しているようだから、私も気をきかしておきますが、最後についでにお尋ねしておきたいのは、先ほど答弁された中に、第三条の任務の中の五「国民所得等に関する調査及び分析」という点がきわめて特色があつて、成績を収めておつた、こういうのでありますが、それならば、各官庁に比して、従来この役所国民所得調査分析が最も効果を上げておつたということを、行政機構を改革されるあなたが認識されておるならば、この国民所得と最も関連を持つて来るものは何かと申しますると、国家予算の編成であります。従つてこの国民所得国家予算というものの編成とは、切つても切れない関係にある。従つて私の言わんとするところは、国民所得の調査をする役所が当然予算の編成をなすべきではないか。予算編成権というものをここに置くべきではないか。総理府直轄に置くべきではないか。これは大蔵大臣もおられるのでありますけれども、行政機構改革をされたあなたに私は御所見を承つておきたいと思うのは、当然予算の編成権というものは一省が独占すべきではなくて、総理府直轄に置いておかなければならないじやないか。特に国民所得の算定について最も権威ある機関がこれを査定するということは、当然ではないかと思うのですが、この点あなたは行政機構改革にあたられて考慮されたかどうか。
  38. 野田卯一

    野田国務大臣 国民所得の調査研究ということをいろいろなところでやつておりますが、日本においては、今まで安定本部でやつておられたのが一番権威があると私は思います。また各国につきましては、アメリカならアメリカ、イギリスならイギリス、いろいろ国民所得の研究では権威があるところがありまして、国によつて役所よりも民間の研究団体の方がより権威があるというところも私はあると思います。そういうわけですから、国民所得の研究ということにすぐに予算編成ということを結びつける必要もないじやないか、これはそれ自体としての専門的な計算のむずかしいいろいろなテクニックを要する仕事でありますから、それで十分いい資料を出していただきまして、予算編成にはそれを参考にして予算を編成するという方向に行つておればそれで十分ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  39. 八木一郎

    八木委員長 西村君にちよつと申しますが、通告のございます大蔵大臣は出席しておるのでございます。同時に御出席要求の外為委員長も今呼び出しているわけですが、大蔵大臣の都合は十二時半までとなつておりますので、できるだけ早くお進め願いたいと思います。
  40. 西村榮一

    西村(榮)委員 野田君に対する質問は打切ります。ただ最後にお聞きいたしたいと思うことは、私はいろいろな議論もあるでしようけれども、予算の編成は別のそれだけの機関において、総理庁直属でやるべきだ、こう思うのですが、行政機構改革にあたつてその点あなたは考慮されておつたかどうか。
  41. 野田卯一

    野田国務大臣 この問題につきましては、行政機構改革審議いたします場合に、当然問題になつて参りまして、十二分にいろいろと考慮いたしたのでありますが、御承知のように、予算編成をいかなる部局においてやるかということにつきましては、世界的に申しましても二つの大きな潮流があつて、いわゆるアメリカ式のやり方とイギリス式のやり方があるわけです。総理府に持つて来いと申します考え方は、どちらかといいますとアメリカ流の考え方に近いものだと考えられます。ところが現在日本のとつております制度はむしろイギリスに近い制度であります。この二つの制度というものは世界的に対立いたしまして、両者の比較検討というものは財政拮抗論としても非常に問題である。どういう制度をとるかということは、ただそのことだけでも判断ができないのでありまして、それを取り巻く一連の各種の制度というものと合せて検討しないと、ある一部分だけとつて来て考えましても、他の部分が違つて来るということになりますと、かえつて改悪になる場合もあると思いますので、総理府に予算庁をつくるとかなんとかいうことは、慎重に考慮いたしたいと考えておるわけでありまして、従つて今回の行政機構改革には織り込まなかつたということであります。
  42. 西村榮一

    西村(榮)委員 最後に簡単に……。あなたはこの行政機構全般をいじられて、治安省の治安機構は別といたしまして、経済所管においては各省が細つて大蔵省の権限だけが非常に拡大されておるのだということについて、どういう御感想を持つておられますか。同時に私は一省一局が非常に強力な権力を持つということが、この民主主義政治原理と関連いたしまして、この行政機構をいじられたあなたとしては、その点お気づきにならなかつたか、しかもこれは行政機構改革と名を打つて、実体は何もない……。
  43. 野田卯一

    野田国務大臣 今回の行政機構の改革は、御承知のように省におきましては二つ減少し、また外局の数、委員会の数におきましては五割減、局部においても五割減ということになつておりまして、この種の改革といたしましては、従来に比べましても相当大規模なものであろう、こう考えております。人員の整理は、この前すでに橋本君が行政管理庁長官をやつておられたときに、十万人の整理が行われておりますので、今回はごく少数にとどまつておるのでありますが、この点につきましては、それと一体的に考えていただきたい、こういうふうに考えておるわけであります。大蔵省に権限を集中するということは、私は別に意識的にやつておるわけではありませんので、いろいろなところにあるものをそれぞれ適正にやつたということであります。
  44. 八木一郎

    八木委員長 大蔵大臣に対する通告はあなただけなんですが、外為を待つておられると間に合いませんけれども、どうですか、委員長としてはできるだけ努めておりますけれども……。  それでは他の通告者に移ります。木村榮君。
  45. 木村榮

    木村(榮)委員 私は大蔵大臣にもあるのですが、それから西村さんと同じように外為委員長の方にもあるのですがあとにいたします。  佐藤郵政大臣に最初にお尋ねいたしたいと思いますのは、電波監理委員会の問題です。今度の改正で、電波監理委員会が廃止になつて、電波局となつて、これが郵政省の内局になることになつております。そうなつて来ますと、御承知のように電波の割当は日本は戦前までに帰つておるそうですが、今それをおもに使つておるのは今までのアメリカ占領軍つたと思うのですが、将来今度は行政協定によつて駐屯いたしますアメリカの軍隊が、以前と同じようなやり方で割当てられた電波を使うかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  46. 長谷慎一

    ○長谷政府委員 ただいまの御質問に対しまして、郵政大臣にかわりまして、現在行つておる電波監理委員会としてお答え申し上げたいと思います。  占領後御案内のように占領軍日本における電波を一切監理いたしまして、その部分々々を日本政府の要請に基いて解除されておりますが、平和条約の発効後は、全面的に日本側に電波監理の主権が移つた。それで今度駐留軍が使う電波につきましては、その個個にわたつて、目下行政協定に基く合同委員会において審議しておりまして、まだ審議の途中でありますので、具体的にはまだ結果が出ておらない状態であります。
  47. 木村榮

    木村(榮)委員 そうしますと、今までは電波監理委員会という総理府の外局ですか、ある程度自主性を持つたものがあつてつてつたのを、将来は行政協定の線に沿つて両方の関係者が集まつてその割当を行う、その割当を実際監督し、またこれを実行するということの任務は、電波監理委員会にかわつて、今度内局になつた電波局がやる、こういうふうに了解してよろしいですか。
  48. 長谷慎一

    ○長谷政府委員 ただいまの件は郵政大臣がおやりになるとわれわれは考えております。なお今御質問のうちに、両方の協定による割当というお話でありますが、行政協定の定めるところによつて駐留軍の使用せんとする周波数の使用権を、日本国全般あるいは国際的な観点から見て、その使用を承認するという形でございます。両方の協定によつて使うということとはやや意味が違う、その点は御参考に申し上げます。
  49. 木村榮

    木村(榮)委員 その割当てられました費用ですが、それはいわゆる防衛分担金なんかによつてそれを支払われるのであるか、それとも別な方法でやるのですか。
  50. 長谷慎一

    ○長谷政府委員 電波に関する周波数の使用ということと、費用ということとは全然問題が別だと思います。
  51. 木村榮

    木村(榮)委員 そうしますと、そういつたような費用の点は、あなたの方には関係がないということになるわけですね。
  52. 長谷慎一

    ○長谷政府委員 お話しの通りであります。
  53. 木村榮

    木村(榮)委員 今度は公社の問題ですが、これはたくさん問題があるのですが、簡単な点は独立採算制になつた場合の資金、これは大体どのような方法でお考えになつておるか。
  54. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 事業運営の資金のお尋ねかと思いますが、在来からいただいております国家資金、同時に事業の収益金、さらに公社になりました場合にはあわせて民間資金の吸収、この三つでまかなつて行くことだと思います。
  55. 木村榮

    木村(榮)委員 外資のこれに入つて来る見通しはどんなでしようか。
  56. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 外資の問題については、ただいまのところ問題が具体的に進んでおりません。
  57. 木村榮

    木村(榮)委員 固定資産の再評価したものを見ますと、大体五百七十六億円ぐらいだと思いますが、そういつた再評価の方法、それから今借入金が五百億ぐらいあつたように私は知つておりますが、その返済する計画、または十七億の特別償却費といたようなものがございますが、これは一体何に使うものか、こういつた点がわかればひとつ伺いたい。
  58. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 再評価の方法につきましては評価委員会等を設けまして、厳正な調査に基いて決定いたして参るわけでございます。その結果公社の基本資産というものが決定されて参りますので、また経営自体は公社法案が成立いたしますれば、その法案によつて処理して参るわけでございます。従いましてそういう際に過去の借入金をいかに処理して行くか、一応負債の部にそれを立てて参りまして、将来の問題として経理を処理して行くと考えられておるのでございます。
  59. 木村榮

    木村(榮)委員 それから駐屯軍が日本にいます関係上、電通事業のことについて相当たくさんな要請があると思います。こういつた場合、米軍の要請に応ずるような建設といつたものは、逆な言葉で言いますと、日本の産業経経にとつてはあまり必要ではない施設といつたものをやらなければならぬ結果になる。そうしたことに対しての将来の見通しあるいはほんとうの日本の産業経済のためにならないような施設をする場合にはこれは防衛分担金その他の費用の方からまわして使うのか、それとも公社自体の運営で使うのか、こういう点の見通しを承つておきたい。
  60. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 駐屯軍は御承知のように安全保障条約に基きまして、国内の治安を確保して参るのでございます。従いまして駐屯軍の活動に便するように協力することは当然の政府責任であります。しかしながらこれが費用の支出等につきましては、公社が直接これを支出するものではなくて、政府予算また駐屯軍自身の負担において、これが処理されて参るのでございます。
  61. 木村榮

    木村(榮)委員 もう一つの問題は、日本の再軍備に伴つて今度保安庁法などが出ますが、今の警察予備隊の問題――警察電話は別に警察電話があつてつているらしいのですか、警察予備隊の場合の電話架設といつたものは、やはり公社でこれを扱うのですか、警察予備隊の方に別なそういう組織ができるのですか。
  62. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 公社自身が特に設備するということは、ただいまのところ必要を感じておりません。従いまして警察予備隊自身の予算等におきまして種々計画されるものもあるだろうと思います。もし計画されるものがあるといたしましても、国内の通信網に支障を来すようなことは絶対に考えておらないのでございます。十分調整をとつて参るわけでございます。御承知のように携帯電話等も非常な簡易なもの等は当然考えて行かなければならないかと思います。
  63. 木村榮

    木村(榮)委員 いろいろ聞きたいことがございますが、時間もないから簡単にいたしますが、大体公社の公債といいますか、そういうものの募集をなさる見通しはどのくらいなものでしようか。
  64. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまのところまだその点ははつきりいたしておりません。御承知のようにただいま公社法案提出しておりまするが、本年度の予算に関する限り、すでに御審議をいただきまして成立いたしました電気通信省の予算を踏襲することにいたしておりますので、ただいまお尋ねがありましたような点は、二十八年度以降の問題になるのでございます。
  65. 八木一郎

    八木委員長 午前中の質疑につきましては以上をもつて打切ります。     ―――――――――――――
  66. 八木一郎

    八木委員長 この際お諮りいたしますが、農林省設置法の一部を改正する法律案について、長野県森林審議会会長、小野秀一君を参考人として招致し簡単に御意見を述べていただきたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 八木一郎

    八木委員長 異議なしと認めて、さよう決定いたし、これより小野秀一君より御意見を承ります。小野秀一君。
  68. 小野秀一

    ○小野参考人 私は元衆議院議員、現長野県森林審議会会長小野秀一であります。今回当内閣委員会に御提案になりました農林省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その一部分に対して反対意見を述べようとするものであります。何とぞ貴重なる時間を御割愛、御清聴をわずらわしたいと存じます。  本案を御提案になりました理由を拝見いたしますと、「行政機構改革の一環として、食糧庁及び林野庁を内局とし、並びに農業協同組合部、統計調査部、競馬部等を廃止する等のため」という、ごく簡単なものでありまして、外部からうかがいますると、何も改革とことさら名づけるほどのものでないように拝察いたされます。  申すまでもなく、今回のいわゆる行政改革というのは、消極的施策であつて、強い意味の整理廃合であらねばならぬ、すなわち単なる機構いじりではない、もちろん積極的な整備拡充であつてもならないことを確信いたします。かりに本法案がかくのごとく真に字義通りの改革を意味し、これを実行に移そうとするならば、国家の大局からながめまして、部分的にいかに重大な犠牲がございましても、当該地方の国民として、たといどんな苦痛を忍んでも、不平不満を申し述べるべきでないと存ずるものであります。  しかるに本法案をしさいに検討いたしますと、遺憾ながらいたずらに枝葉末節に堕していて、その根幹はかえつて行政整理とは縁の遠い、むしろ逆施倒行のそしりを免れない実体を持つものであるのを、はなはだ遺憾に存ずる次第でございます。端的に私どもが関心を持つ部分について批判いたしますとたとえば林野庁を内局に変更して庁とあるを局と改称し、その管下の営林局を実質上は廃止統合することなく、具体的には単に前橋営林局をばらばらに解体して、新たに福島営林局を創設して、宮城、福島両県をこれに所属せしめ、群馬、栃木の両県をば、脱けがらになつた東京営林局に復活所属せしめ、地域としては厖大になるが国有林価値から言えばきわめて貧弱な新潟県をさいて長野営林局へ張りつけて、長野市へ移転せんとする申訳の弁とするといつた単なる移動変更にとどまる姑息な案で、整理改革の実体はにおいだにしないで、逆に整備拡充であるように了承いたされます。  さようなものだといたしますると、政府行政整理を強く言うて、行政改革の名において、単に地理的配置の形式を整え、緊縮簡素化の表現を装いながら、その実は新規の店開きによつて整備拡張複雑化を企図し、事業官庁としての本質を無視し、関係役職員等の都会あこがれ的な懇意を満足せしむべく、営林局という役所をば一般行政事務官庁扱いをして、離村的な方角へ移動しようとするはつきりした傾向が認められるのであります。  かくのごとき施策を実行に移した結果はどうなりましようか。役所の移動変更による、一時的な損失浪費は申すに及ばず、なわ張りの拡大、派閥の強化によつて、移動後は必然的に人件費の増加、従つて行政費の飛躍的な増高を来すことは、火を見るより明らかであります。一例をとつて申し上げれば、すでに再三お手元へお届けしてある数字が示すごとく、帝室御料林時代に、木曽支局で事務をとり就労していた職員が九十六人で足りたのに、同じ屋根の下で、営林局と名がついて三年もたたない間に、実に二百四十三人にふえたという事実があります。一事が万事である。役人が何と弁解しようと、機構いじりをやるたびごとに人間の数が増し、経費がかさむのはまことに雄弁なる事実であります。今次の行政改革もおおむねかくのごときものでありとすれば、これによつて得るところのものはきわめて家々たるもので、逆にその失うところが大きいといわなければならないのは、はなはだ遺憾でございます。しかしてこの移動変更の結果として、不当とは言えないまでも、偶然なる受入側の利得によつて、被転出地域の莫大な経済的打撃を生むという不平衡を招来するばかりでなく、地域的移動の困難なる低給就労者の失業と不安において、高給者が地域給増加の恵沢に浴するという反社会的な不合理きわまる現象を呈するのであります。これをなお一歩進めて具体的に言いますと、長野営林局の場合においては、経営者側の幹部が無知なる職員組合に対する計画的な術策によつて、うまうまと彼ら自身に不利なる反対の希望的決議をやらせたが、解体の前橋側に至つては、最近にようやく自分らの置き去られんとする重大な立場についての事実認識を深めるとともに、事態の重大性に気づき、相当やかましくなつて来たように伝承しております。昨秋群馬県においては数日間日劇を買い切つて、大々的な観光宣伝をやり、伊能知事はその先頭に立つて大活動をやつておりますし、信州においても、山嶽渓谷等の天恵を利用して、厘毫の微といえども見のがすことなく、その経済収入を目ざして、戦後の復興発展に向つて血みどろの奮闘をしていることは、各位の現認せられている通りであろうと思います。しかるにもかかわらず、林野庁の高給幹部等は薄情にも、自己らの一片の御都合主義のみによつて、地方民の経済生活に大混乱を来さしめるような移動変更の機構を発案し、政府をしてこれを実践に移さしめるように指向せしめることは、私においては何としても納得の行きかねることであります。幸いにも内閣委員諸公の中には池田蔵相を初め国会幹部級中、練達堪能なる各位をもつて満たされておりまするがゆえに、この点に深き御認識と御理解とを持つていただきたいのであります。私はさきに長野営林局の移動の掛声だけでも、いかに関川地方民が大なる混乱を招いているか、これに正比例していかに国家が財政的な損害を生ずべきかを、当局自体の発表した数字的根拠によつて指摘いたしておきましたから、今さらここにくどくどしく贅言いたしませんが、かかる傾向を持続することによつて、何ほど豊富な資源を持つ特別会計でも、今日までの蓄積や林木のノミナルな値上りを食いつぶしてしまつて、結局は赤字財政に追い込まれ、ひとり受入地域側の不当なる繁栄において国家並びに既設地域に大なる不利益を生ぜしめんとすることは、特に為政者の反省を望んでやまぬ点であります。  思うに国土に対して人間の皮膚のごとき重要な役割を持つ森林は、きわめて貴重なる国家成立の要素であることは、今さら喋々を要しませんがゆえに、関係官吏はあくまでもこれを大切に扱つていただかなければならぬと同時に、官吏自身は林野に奉仕する第二義的な公僕的な存在と考えていただかなければなりません。しかるに昨今の関係官吏の行動をながめ、今回の行革の一環としての発意を見ると、彼らは彼ら自身の御都合主義によつてのみこの貴重な林政を左右しておるかに考えられるのであります。私は国民の一員として、当委員会におかれては国会の名において、何とぞこれらの間違つたやり方、考え方を根底からたたき直していただきたいと思うものであります。  私をして極言させていただくなら、真の意味の行政改革を断行しようとすれば、彼らが口ぐせに、あまり騒ぐと廃局になるぞ、と言うことを実現させて、この際三局や四局の整理統合を断行して、国民に範をたれていただきたいのである。さすれば、われわれにおいても胸に落ちまするし、また黙々としてその施策に追随し得るのでありますが、さにあらずして、すでに今日においては蛇足にひとしき部局の廃止を拳示して、あたかも大改革でもやつたかのようなふりを装い、その反面彼らの懇意を全うせんとするのは、私どもの絶対に納得しかねるところであります。  この際福島市が郡山市によつて、長野市が松本市外南信諸郡によつて巻き起された七十年来の移庁論の紛争歴史を想起するとき、これがために派生した幾多流血の惨事や騒擾事件によつていろどられたなまなましき記録は、直接事件に参加した私たちよりもたれよりも、今回の営林局を奪取しようと策謀した長野市及び福島市の当局が、父祖代々身をもつてその苦難を味わい、かつ骨の髄までこたえているはずなのに、くしくも今回当該両都市の当局が連繋して被害をこうむる両者の熾烈な反対をしり目に、白昼公然その利権を奪取しようとするその心事はたしていかん。何という思いやりのないことではないか。  しかして去る昭和二十四年、政府はこれら地方庁の事務所の移転、いわゆる移庁論のよつて来る弊害と紛争とを除去するため、憲法の改正と同様な多数決をもつてせざればその実行ができないように修正立法したことは、賢明なる各位の先刻御承知の通りであります。事の大小軽重はしばらく別として、国利民福の裏づけなき本案のごとき非民主的立法によつて関係地方を撹乱する改悪案は、よろしく国会の権威をもつて第四款第四十六条に関する限り、これを現状維持とせられるか、または廃案とせられるか、もしくは大修正を加えられんことを切望してやまぬ次第であります。
  69. 八木一郎

    八木委員長 これにて小野秀一君の参考意見聴取は終りました。  午前の会議はこの程度にいたし、午後一時半まで休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十三分開議
  70. 八木一郎

    八木委員長 休憩前に引続き内閣委員会を再開いたします。  午前中の質疑の続行として鈴木義男君に発言を許します。
  71. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私は人事院総裁にお尋ねをいたしたい。御承知のように人事院は今度廃止されて総理府の外局としての国家人事委員会というものになるようであります。本来終戦後できた制度のうち、最も注目すべきまた意味のある制度は最高裁判所の創設、それから人事院、法務府というようなものの構成であつたと思いますが、こういうものをみななくして行政府の一つの下部組織に編入してしまうということは、われわれの立場からはなはだ遺憾に存じておるわけであります。  そこで人事院総裁としてこの改革案に対してどういう御所見であるかということを承りたいのであります。巷間ではおそらく人事院総裁大いに重大なる決意をしておるであろうというようにも伝えられておるのでありまするが、おそらく人事行政に対して政党的な影響を及ぼさない準裁判所的な機構として創設された非常に重大な使命を持つた存在でないかと思うのであります。これはわれわれから申し上げるまでもないことでありますが、政府提出した法案は別として、この際人事院総裁意見を聞いておくことは、後日のために大いに参考になると思いまするので、あえて御足労を煩わした次第であります。どうか御意見を承りたいと思います。
  72. 浅井清

    ○浅井政府委員 鈴木さんからありがたい御質問をいただいたわけでありまするが、ただ人事院が廃止されて国家人事委員会になつたと仰せられましたが、なるほど法律的にはさようでございます。しかしながらこれは実質的に改組でございまして、決して人事行政専掌機関の廃止とはわれわれ意識はいたしておりません。名称はかわり所管が内閣から総理府へはかわりましたのでございましたが、人事院の持つておりまする権限、所掌事項というものは、私の見るところではほとんどそのままかわつていないように思つておるのでございます。従いまして、これによつて戦後にわが国の官僚制度を改革すべき使命を持つて生れた人事行政というものが支障を来すとは、私ども当局者としては考えていないのであります。
  73. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 それ以上やると議論になりますから、それだけ承つておきます。
  74. 八木一郎

    八木委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  75. 八木一郎

    八木委員長 速記を始めてください。鈴木義男君。
  76. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 総理大臣にお尋ねしたいと思う点が一つつたのですが、きようは総理大臣がお見えにならぬということでありますから、法務総裁に便宜伺つて、それからもう一つ法務総裁の所管のことを承りたいと思います。  今度法務総裁を廃して、法制局長官内閣に移して、法務省というものを設けて法務大臣にするという案でありますが、元来われわれの時代に立案した法務総裁というものは、内閣の最高顧問として法制局長官を兼ねた地位であるわけであります。従つて各省大臣と違つた地位を持つておる、内閣直属のものであるということで法務総裁という言葉を使つたわけでありますが、今度それをやめることになるようであります。かつて司法行政を司法大臣がつかさどつておりました当時、弊害があるというので、司法大臣からその司法行政の監督権を奪つて、そうすると、あと残るものは検察、検察は検事総長が責任を持つてやるのであるから、その上に屋上屋を架する監督はいらぬ。監獄のことは監獄の長がやればよろしい。従つて司法省というものはいらぬ。司法省廃止論というものがずつと前に、戦時中から私ども承つてつたわけであります。そこでこの裁判所が独立いたしました際に、司法省というものは廃止すべきだという議論もあつたのでありまするが、ここに新しい文化的な任務を持つた、そうして行政府の法律に関する最高官庁として法務総裁というものをつくる意味があるのではないか。一方には世界の立法の趨勢を常に調査しつつ、内閣及び各省大臣に向つて意見提出し勧告をするという役割を持ち、また技術的には行政府で提出する法案等の審査をし、修正を加えるというようなことをやる。それから最初は調査長官というものがありまして、常に立法の趨勢、行政の各国の実情等を調査して、そうしてわが国もその進運に遅れない役割を法務総裁に勤めさせる、そういうものを持つてつたのであります。これはただちに廃止されてしまつた。そうすると、いま一つ文化的な使命として、人権擁護の局のことを法務総裁につかさどらせようということになりまして、人権擁護局というものを設けたことも御承知の通りであります。そういうものをなくして、また明治時代の検察は検事総長にゆだねてみだりに干渉することができないことは御承知の通り。そうすると更生保護及び戸籍等の事務だけの行政庁、昨日も公述人がこういう役所はいらないと思うという御説があつたくらいであります。そういうふうにして単なる行政大臣となつて、そうして法制長官を元の法制局長官として、しかも国務大臣にもあらざる者がこれに任ずる。純然たる官僚がその長官となつて、技術的な仕事だけやつて行く。こういうやり方は、はたして改善であるでありましようか、改悪でありましようか。私はまことに惜しむべき――人事院といい、法務府といい、占領中にできた制度としては後に存置すべきものの一つであると考えておるのでありまするが、逆コース時代で、すべて元にもどるというようでありますが、まことに残念に存じておるのであります。法務総裁は、この点に対してどういうふうにお考えになつておるのであるか。念のために承りたいのであります。
  77. 木村篤太郎

    木村国務大臣 鈴木委員のただいまの御質問の要旨は、要するに法制意見局を内閣直属にしたこと、それと人権擁護局を民事局に移したという二点であろうと考えます。もつとも鈴木委員の申されたように、司法省廃止論はずつと前からもあつたのであります。われわれも在野法曹時代から、裁判所が独立した以上は、司法省というものはなくてもいいじやないかというような議論もあつたのであります。もつとも鈴木君が初めての法務総裁であつて、いわゆる内閣の法律顧問的性格を与えたということに相なつたのであります。そこで私も法務総裁としていろいろ内部の事情も調査いたしたのであります。今次機構の改革を機会に、これを法務省にする。法制意見局を内閣直属にする。その理由は、法制の問題というものは、国家的に見て非常に大きいのであります。立法違憲問題その他について、これは統一的のいわゆる各省にまたがつての問題であるのであります。広く各省に対して連絡調整をとり、そうしてここに統一的に法律の整備調整をはかるということが一番望ましいのであります。そういう見地から、これを内閣のもとに置いて、いわゆる総理府のもとにおいて、一段とこれを強化して行く。それで意見長官を私の考えとしてはあるいは国務大臣を充てるくらいの考えを持つてつたのでありますが、いろいろの事情から、とりあえず相当の地位を高めて、全般的の法制の立案その他調整に当るというぐあいにしたのであります。これは一法務府に置くよりか、今申し上げた通り内閣の直属として、全般的に各省連絡をとり、立案調整の任に当らしめるのがいいという考えのもとに、さようなことにしたわけであります。  人権擁護局の問題については、基本的人権を保護するということの見地からして、われわれとしてはどこまでもこれは縮小すべきでないという意見は持つておるのであります。ただ機構の改革と同時に、これを民事局のもとに併置する。しかしながらその人員の点において、少しも現実には縮小はさせない。ことに地方の法務局において、やはり地方の人権擁護委員の協力を得ましてこれを十分推進して行こうということを考えておるのであります。と同時に、これは鈴木君も御承知の通り、われわれは在野法曹時代において、この問題は在野として大きく活躍せしめなければならぬ。御承知の通り第一東京弁護士会においては、人権擁護委員を置きまして、これは相当の成果をあげておる。また各弁護士会においても、それにならつて人権擁護委員というものはあるのであります。これもはなはだ見るべきものがあるのでありますが、私の構想といたしましては、これはせつかく日本弁護士連合会というものができたのであるから、この日本弁護士連合会において、将来大きくこの人権擁護の道を取上げて、民間から盛り上つた力でもつてこれをやつてもらうと、同時に、政府の方における人権擁護の当局者とともに手をつないでやれば、成績も相当見るべきものがあるのではなかろうかと考えておるのであります。しこうして来るべき法務省において扱うべき仕事というものは、今鈴木委員はほとんど仕事がないじやないかというお説のようでありますが、必ずしもそうではない。ただいま訴訟事件が全国的に見て行政事件として約四千件、普通の事件としてその半数約二千件くらいある。各省から来る訴訟事件、これもなかなか大きな問題であります。このうちには事件としてはなはだしく金額の多大に上つておる事件がありまして、この影響するところは、国家の財政上その他から見て、容易ならぬものがあるのであります。それらの仕事相当厖大になつて来ている。あるいは民事局の仕事としても相当ある。検務局の方においても相当仕事があるのであります。将来また、破壊活動防止法案が通過いたしますると、公安調査庁というものが外局としてできる。これらの点から見まして、やはり法務省としての仕事というものは、相当過大とは言えなくとも、事務としては少からぬものがあるのでありまして、この意味において、私は従来の法務省廃止論というものは必ずしも適切なものではない、やはり法務省としてこれらの事務を見ることが適当であると考えておる次第であります。  なお公安調査庁の問題でありますが、これは将来相当仕事がふえるのじやなかろうかと私は存じております。
  78. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 人権擁護のことはあとで承ろうと思つて留保しておいたのでありますが、法務総裁はわかつておられるかと思つたのでありますけれども、この機構改革にあたつて行政管理庁長官、あるいはほかの人に聞いてみても、法務総裁の意味が少しもわからずに、ただ法務省にした方がいいというように簡単に考えておられるのですが、法律にも書いてあります通り、「政府における法務を統轄させるため、内閣に、法務総裁を置く。法務総裁は、法律問題に関する政府の最高顧問として、内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し、意見を述べ、又は勧告する。」これが現行法における法務総裁の地位でありまして、法制局長官仕事が主たるものなのです。みずからその権限を放棄して、内閣から去つて各省の中に入つて行政大臣になるということは、法務総裁の権威のためにまことに惜しむべきであると考えられますので、お尋ねをしたわけであります。少しもさしつかえないということであれば、やむを得ないことであります。  それから人権擁護局を移して民事局の一課とするということは、なるほど仕事内容は当分はそのままの形で行くということも、すべて今度の機構改革は人を減らさないようにしておるようでありまするから、そのままの形で課に直すというのでありましようから、それは仕事をやらなくなるとは決して申しません。しかし一つの独立した局を存置することと課にしてしまうとでは雲泥の差があることは、私が申し上げるまでもなかろうと思います。現に弁護士会連合会あるいは人権擁護委員の連合会等から、陳情及び請願を取次ぐことの御委託を受けて、私が質問に立つたのもそのためであります。人権擁護のことは民間でやるべきことである――これはもちろんである。お役所でやるべきことではない。が遺憾ながらわが国の民主主義はまだ幼稚園状態でありまして、これはどうしても政府が力を貸して、人権の躁聴せられた場合に、これを回復するために助力を与えなければ、みずから権利のために奮闘するというだけの勇気を持たない国民であります。これが十年、二十年過ぎた後ならば、おそらくさしつかえなくなるだろうとわれわれも期待しておるのでありまして、一日も早くこういう役所がなくなることを期待する。けれども現段階では無理である。現にメーデー事件にからんで、あの中にはほんとに騒ぐつもりで行つた人もありましようが、私の昔から知つている人がやはり検挙留置されて帰つて来ない。どうもあの男がメーデーに行つていたことがふしぎなのに、つかまつたことはなおふしぎだということで、細君が泣いて来ましたから、調べてみたところが、この男は学校の先生で、騒ぎが起つた、何があるかというので、あそこへ近づいたために巻き込まれて、生徒が行つてつたということから、他の四人の先生方とともに検挙された。証拠も何もないということから帰されたのであるが、しかし本件がきまるまでは教壇に立つてはいけないという通知が東京都の教育長の方から参りまして、いまだに謹慎しているわけであります。検事局の方でも調べておるから、いずれ結論が出るまでは謹慎しておれということであります。思想的には決して共産党でも何でもない、きわめて穏健な男であります。それで学校の先生でありまするが、ただ学校に入つてつた警察のスパイの報告によると、このメーデーの前に二、三回ひそひそと五、六人の教員が集まつて相談したことがある。これが知れているために、さてはということでやられた。何で集まつてひそひそやつたかというと、実は五十万円ばかり使い込んで、この責任を明らかにすると校長が引責しなければならぬ、どうしたものだろうということで相談をしておつた。そのことを言うと結局問題が大ぴらになつて、せつかくひそひそと話したことが意味をなさなくなるから、今度も警視庁でも検事局でもそのことは申し上げなかつたが、それは申した方がいいでしようかと、帰つて来て私に相談するから、それは君、事ここに至つては、君は教権を停止せられ、都合によると免職になるかもしれぬ、免職になつたら、われわれもひとつ乗り出して大いにやつてやるつもりではあるが、とにかく検挙されたことがすでに間違いであるのに、そこへ持つて来て、教壇に立つてはいかぬ、教員たることもあるいはやめなければならぬ立場に立つたならば、そのことを明らかにするためには言わなければならぬ、言つたらよかろうという忠告をしてわかれたのでありますが、こういうことは私はりつぱな人権蹂躙であると思う。われわれのような個人に訴えて解決できる人はけつこうでありますが、こういう者を――やはり一種の無事の民である、これを救うための救済機関として、人権擁護局というものが従来非常に有益な仕事をしておつたのであります。私どもはそういう意味においてぜひ人権擁護局というものは、看板だけでも大きく国民の前に出しておいてもらいたいと思う。使う人は決して多くなくてよろしい。法務総裁にひとつ予算は従来通り――従来通りでも実は足りないので、非常に少い予算でありますから、むしろ課にしても、予算の点はふやすということを言明していただきたいと思うわけでありまして、そうして人権というものはいかに尊重すべきものであるか――私、英国に留学しておつたときに、良家の子女を売春婦と誤解して警察に留置した。わずかの時間、たしか十時間かそこいらであつたと思いまするが、良家の子女を誤つて留置したということで、ウエストミンスター議会の問題になつて、内務大臣が引責辞職をしたことを拝見しております。人権というものを重んずる、かくのごときである。日本などではそんなことはざらにある。毎日やつておるが、だれ一人責任をとる者もないし、間違えられた者は不幸だと思つてあきらめろ式でやつている。それでは人権というものはいつまでたつても尊重されないと思うのでありまして、人権尊重の思想を普及するだけのためにでも、人権擁護局というものはなかるべからず、かように考えるのでありますから、ぜひひとつ人権擁護局はこれを存置することに御賛成を願いたい。どうしてもできないというならば、せめてこれに対してはもつと熱を入れる、費用をかけてこの仕事を、日本が真に民主化するまでの間――決して永久にとは申しません、十年か二十年の間、この仕事を法務府または法務省の重要な仕事として、ひとつ継続することをお答え願いたいと思うのであります。
  79. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま鈴木委員の人権擁護についての御意見、まことにごもつともであります。私は結局人権問題というのは二つあると思います。一つは官憲が不当に人民の人権を侵す場合、一つは普通人が普通人に対して人権を侵す場合、これであります。私は前者の問題、官憲が不当に人民の人権を侵した場合、これはぜひとも民間人で組織された強力なる団体が取上げてやるべきものだと考えております。そこで先刻申し上げましたように、これらの問題は少くとも在野法曹、ことに日本弁護士連合会というような強力なる組織があるのでありますから、これらが中心となつて、かような人権問題を取上げてその擁護に当ることが望ましいことであろうと考えております。現在におきましても、弁護士会の人権擁護委員会の人たちが相当活躍して成績を上げておることは、鈴木君も御承知の通りである。どうか鈴木君のような有力な在野法曹の方が大いに鞭撻をしてもらいたいと思います。私も在野法曹時代には、人権擁護委員会について相当熱を入れてやつてつた。大きな問題については大体においてこの弁護士会において取上げてやつてつた実績がある。少くとも今申し上げました官憲が不当に人民の権利を侵害するというような場合においては、これは官製の委員ではいけない。民間人がこれについて大いに率先してやることが私は最も望ましい、こう考えております。  現在、法務府の人権擁護局でやつておるのは、これは鈴木君も御承知の通り大体普及宣伝でありまして、実際にやつておるのは、地方の人権擁護委員、これが実によく活躍してくれております。中央においてやつておるのは大体において普及宣伝――これもけつこうなことであります。普及宣伝もやらなければならぬ、これもけつこうなことでありますが、実際においてやるのは地方の人権擁護委員、これが活躍しております。しかし両々相まつて、人権の擁護に邁進する、これをやらなければならぬことは申すまでもないことであります。そこで、機構改革の結果、これが課となりましても、先刻申し上げましたように、実際面において不都合のないように私はやつて行きたい、従来よりも一層この点について熱を入れて、実績の上るようにして行きたいということは、鈴木君とまつたく同感であります。たとい課となりましても、でき得る限りの方法をもちまして、ますます実績の上るように努力をして行きたいつもりでおります。
  80. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 いろいろありますけれども、忙しいようですから、これで終ります。
  81. 八木一郎

  82. 西村榮一

    西村(榮)委員 委員長にお尋ねしますが、大蔵大臣は見えますか。
  83. 八木一郎

    八木委員長 今交渉を続けております。この席へは理財局長と外為委員長が見えています。
  84. 西村榮一

    西村(榮)委員 いつ時分見えますか。
  85. 八木一郎

    八木委員長 確かめます。
  86. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は大蔵大臣が見えたら、大蔵大臣と外為委員長との御所見を承りたいと思いますが、せつかく委員長のごあつせんでありますから、理財局長にお伺いいたします。  今回の大蔵省の一部改正案で外為委員会が廃止されるのでありますが、これは何か従来、外為委員会それ自身を存続する上において、運用上支障があつたのでありましようか、この廃止の理由を承つておきたいと思います。
  87. 石田正

    ○石田政府委員 今回の改正は全般の行政機構の改革と関連いたしまして、大体いわゆる行政委員会的なものと申しますか、そういうふうなものを廃止するというところの一環として考えられておるように承知いたしております。なお外為委員会を廃止いたしまする特別の理由といたしましては、外貨に関する機関を簡素化して大蔵省に統合する、こういうことに承知いたしております。
  88. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると大蔵省の為替局の中で為替事務取扱う、こういうことでありますか。
  89. 石田正

    ○石田政府委員 そういうふうに了承いたしております。
  90. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、従来外為委員会はどういう仕事をやつてつたのでしようか、私はあまりよく知らないので教えてもらいたい。大蔵省からごらんになつて――外為委員長にはあとで聞きます。
  91. 石田正

    ○石田政府委員 これは現在外国為替管理委員会設置法の上に書いてございます。大体のことを申しますと、外貨の管理、運用、これが一つの大きな仕事であるかと思います。それから外国為替の関係につきましては、外国為替の取引と、これに関連する外国貿易取引との手続について、調整を行うということがあります。それから御承知の通りに、外国為替特別会計というものが現在あるわけであります。この運営の任に当る、これがうたつてございます。それからまた、外国為替予算というものを政府といたしましてつくりまして、それに従つて、いろいろの為替の割当なり、あるいは使用の許可というようなことをいたしておるわけであります。そういう点に関連いたしまして、諸官庁がそれぞれその条件通りやつておるかどうかということを監視いたします。そういうような仕事をいたしております。それから関係各省行政機関の便宜に供しますために、外国為替及び外国貿易に関するところの取引につきまして、完全な記録を保持する、こういうふうな仕事もされておるわけであります。それからまた、外国為替取引の数量とか内容とか、あるいは国民経済に及ぼすところの効果というふうなものにつきまして、定期的に報告をする、こういう仕事をされております。なお外国為替に関するところのいろいろな政策につきまして、内閣総理大臣及び関係行政機関に対しまして勧告をする。大体かような仕事をつかさどつておると了承いたしております。
  92. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、外為委員会なるものの従来の事務は、外貨の取扱いとともに、貿易事務をやつてつた、こういうことになりますね。
  93. 石田正

    ○石田政府委員 貿易事務を行うというのではないと思うのでありまして、外国為替の取引、それからそれに関連するところの外国貿易取引について手続を定める、そういうふうなことをしておられたと思います。なお足りない点がございましたら、外為委員長の方から補足していただきます。
  94. 西村榮一

    西村(榮)委員 私の言うのは、言葉が足りなかつたのですが、外貨の取扱いを中心として、貿易をうまくやるために、行政上の事務として指導していた、こういうことになりましよう。
  95. 木内信胤

    ○木内政府委員 貿易上の指導というふうなことをおつしやいましたが、指導といいますと、言葉が当らないかと思います。私どもの関心は、現行の為替管理法は、貿易管理と為替管理を一体的に見るという考え方でありますから、むしろ為替管理という手段を使つて日本の貿易がうまく行くようにする、為替管理の任務をそういうふうに考えておりますから、金の問題を取扱つていても、常に貿易がうまく行くようにということを、念頭において扱つたことは事実であります。しかしながら、貿易に関しては、通産省が責任者でありまして、ですからむしろ通産省に対して、金の面から見て相談を受ける、こういう心構えでやつて来たと思います。なお具体的には、それが外貨予算の面とか、あるいは協定貿易の面とかに、どういうふうに表われたか、御希望でしたら実例でも申し上げたいと思います。
  96. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、大蔵省当局にお伺いしますが、外為委員会の廃止の理由としてあげられたものは、各方面における行政委員会を廃止するから、これも廃止するのだという理由なんですね。何かそれ以外に、外為委員会なるものを廃止しなければならぬ従来の欠点とか、あるいは各省間における摩擦とか、これを存置せしむるための弊害というふうなものがあれば、この際これを承りたい。
  97. 石田正

    ○石田政府委員 為替の政策につきまして、一元的になるたけ簡素な形でやつて参りたい、こういうことが本旨であろうかと思います。機構が複雑でありますれば複雑であるだけ、手数がかかることは当然だろうと思うのでありまして、簡素化の趣旨と、それから責任体制を確立する、こういうことが趣旨だろうと思います。
  98. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、簡素化、あるいは行政委員会というものを廃止するというのであるから、ついでに廃止するということ以外には、大蔵省からごらんになつて、従来の外為委員会の運営上、内容として支障があつた、あるいは欠点があつた、あるいは弊害があつたという点は、別に御指摘になる点はございませんか。
  99. 石田正

    ○石田政府委員 外為委員会のやり方が、どこが悪かつたとか、あるいはどういう点が弊害があつたとかいうふうな具体的な問題につきまして、個別的に申し上げることは避けたいと思いますので申し上げません。機構が複雑でありますれば、複雑に伴うところのいろいろな問題があることは、当然であろうと考えます。
  100. 西村榮一

    西村(榮)委員 複雑に伴う弊害があることは、私もよく存じております。しかし、近代文明が進むに従つて、やはり世の中が複雑になつて来る。しかし複雑の中に、また一つの大きな利益を求めて、文明というものが進んで行く。単に簡素化という一点において、あるいは複雑化という一点においてのみ、廃止するということについては、行政機構をいじくるということにおいては――、その弊害の反面には利益というものがあるのじやないか、この二つの面をよく取捨選択して方針をきめなければならぬ。そこで私はあなたにお尋ねしておるのは、複雑であることは事実でしよう。これは一元化すればよい。しかしその複雑の反面には、また利益もあるのです。その複雑から来る弊害を承つておくことがあれば、承つておきたいというのが、私のお尋ねしておる点であります。簡単でいいのですから、従来の弊害があつたら、その弊害を実例を示して、ひとつわれわれが納得するように御説明を願いたい。
  101. 石田正

    ○石田政府委員 ちよつとアプローチの仕方が違つて来るように思いますが、われわれといたしましては、外為委員会を廃止して、大蔵省がこれを所管するという結果において、非常な弊害でもあれば別でございますが、弊害がないのならば、簡素化の方にまさることはない、かように考えておる次第でございます。
  102. 西村榮一

    西村(榮)委員 そういう答弁をしてはいかぬ。外為委員会を置くことが複雑だからいかぬ、その複雑だからいかぬという理由を聞きたい。複雑な理由を言いなさい。それから外為委員会の従来の弊害を言いなさい。そういうとぼけた答弁をしてはいかぬ。
  103. 石田正

    ○石田政府委員 たとえば、外貨の管理、運用ということは、これは非常に重要な問題でございます。これは私たちは大蔵大臣が外貨の管理、運用の責任を持つべきものである、かように考えておる次第でございます。かりに大蔵大臣がそういうふうにいたしたいという場合におきまして、外国為替管理委員会意見を異にするという場合には、大蔵省の思う通りに行かないという面もございます。それからまた外貨の管理運用につきまして、政策の面でなくして、手続的な面もあるわけであります。この手続的な面につきましては、これは現在外為委員会がやつておられるわけでありますが、しかしその実務の大部分は日本銀行がやつておる部面が多いのであります。そういう部面は、日本銀行で扱うというふうにいたしますれば、一々時間を労せずして、けつこうであろう、かように考えておる次第でございます。
  104. 西村榮一

    西村(榮)委員 しからばあなたにお尋ねするが、従来大蔵省が思うように行かなかつた実例が何かありますか。大蔵省の通貨政策の上において、あるいは金融政策の上において、外為委員会が大蔵省の方針に反して、国策上大いなる不利益をもたらしたというふうな実例がございますか。
  105. 石田正

    ○石田政府委員 これは私実際その衝に当つておるものでございまして、その衝に当つておるものといたしましては、いたずらに意見の疎隔を来したり、あるいはそのために仕事ができなくなつてしまうということは、困ることでございますので、実際問題といたしましては、その与えられた機構のわくの中におきましては、できるだけ協力いたしまして、円滑に行くように努めて参つたつもりでございます。
  106. 西村榮一

    西村(榮)委員 私の言うのは、大蔵省の思うように行かなかつた実例、それが大蔵省と外為委員会との意見の食い違いによつて国策上不利益を来したいうような実例があるかどうかということを聞いておるのです。
  107. 石田正

    ○石田政府委員 これは何と申しますか、外為委員会と私の方とは、できるだけいろいろの話合いをつけまして、そうしてつけた範囲でいろいろなことを実行いたしておるわけでございます。しかし話合いがつかない部分は実行しない部分もあるわけでありまして、この話合いがつかないものについて、それがどちらの考え方が正しくて、どちらの考えが間違つておるかということになりますと、非常にたくさんなケースをあげまして、一々これは議論しなければならないことに相なりますので、その点は避けさせていただきたい。私は事務当局といたしまして、機構の範囲内においては、支障がないようなぐあいにできるだけ努力して来たつもりでおります。要するに、お互いにののしり合うというようなことなしに済まして来たと思つておるのであります。問題は、そういう運営の問題ではなくして、機構の問題であります。従つてその問題におきましては簡素な方が望ましい、かように考えております。
  108. 西村榮一

    西村(榮)委員 簡素化というよりも、むしろ重点は、大蔵省の思うように行かないというところに重点があるのじやないか。私はあなたと論争しようと思わないが、これは考え方の違いなんで、その大蔵省の思う通りにしたいという考え方は、現行憲法の民主主義の基礎に基く三権分立というものの精神を、あなたははき違えているのではないか。今の大蔵官僚は、これはやはり各行政部門は、権力の偏重というものを避けて、お互いに均衡のとれた権力の上に立つて、それを調整して行くのを、大蔵省の思う通りに何でもして行こうというのなら、これは大蔵省の独裁政治だ。いわゆる日本の通貨の面から来る独裁政治ということになる。思う通りに行かないのがあたりまえだ。それを調整して行く。調整しつつ誤りのない、より高い段階国策をひつぱつて行くということになる。あなたの言われるのは、簡素化ということについての具体的な御説明はない。ただ問題は、大蔵省の思うように行かない。大蔵省の思うように行かないというのは、一体何を意味するのか、私ども理解できない。それは大蔵省の独裁政治です。それ以外に御説明するところがありますか。
  109. 石田正

    ○石田政府委員 大蔵省の独裁政治ではないかというお話でありますが、その場合に、大蔵省のやることが何であるかということの問題になるかと思います。通貨、金融、この問題は、大蔵省の独裁政治と言うと非常に語弊があるかもしれませんが、しかし内閣の中におきましては、大蔵省が主管しておるわけでございます。為替の問題は、これは通貨、金融の問題と一体をなすべきものであるとわれわれは考えおるのであります。従いまして、この行政機構の範囲内におきまして、大蔵省が通貨、為替、金融の問題を主管するということ、しかしその通貨、為替、金融の問題は、貿易との関係もございましようし、貿易以外のいろいろな行政面とも関連するわけであります。そういうような面におきましていろいろの考え方の違いがある、こういうことは私は想像できると思うのでありますが、大蔵省が通貨、為替を主管するから、これは独裁経済であるというふうな御意見には、私ちよつと御賛成申し上げかねる次第でございます。
  110. 西村榮一

    西村(榮)委員 私の言うのは、通貨、為替を大蔵省が所管されるから独裁政治だというのではない。あなたのおつしやるように、大蔵省の思う通りに行かない、だから廃止するのだという考え方が、少し大蔵省の官僚は思い上つているのではないか。これは専門家であるあなた方に言う必要はないのであるが、近世の金融組織というものは、これは通貨と為替業務というものを時の政治から独立せしめておる。しからば当然通貨の問題についての所管はあなたの方であるかしらぬが、しかし今日の日本銀行の形態というものは、形式的には大蔵省から独立している。そうして時の内閣に左右されずして、独自の金融政策をやつて行く。政治に拘束を受けないというところに、近代金融組織の性格があるのではないか。そういうようなことを考えて来ると、通貨と為替などということも、おのずと政治の圏外に置くべきであると思う。だから私のあなたに言わんとするところは、通貨と為替を握るから独裁政治だと言うのではない。大蔵省が何でも思う通りに行かないから、これはその簡素化の名によつて所管を握るのだという考え方が、私は少し――独裁ということは、まさか大蔵官僚が独裁しようとは思いませんが、少し思い上つた考え方ではないか。そのほかに私どもを首肯せしむる理由があれば承りたい。こういうことなんです。
  111. 石田正

    ○石田政府委員 大分思い上つているのではないかというお話でございますが、私たちは別に思い上つてどうこうというふうには考えておらないつもりでございます。それから、要するに通貨、為替の問題でございますが、通貨、為替というものは政治から独立したものである、中立性を保たなければならぬ、だから別にやらなければならぬというふうな御意見のように拝承し、それがまた文明の進むべき道であるというぐあいに拝承いたしたのであります。しかし通貨とか為替とかいうふうな問題は、これは重要なる経済政策であると私は考えるのであります。そういうものは内閣から離れておるというふうなことはおかしい。やはり内閣というものは、それに対して責任を持つてやるべきものではないかと考えるのであります。そこで今具体的な問題になります機構の問題は、要するに責任のあるところの主管大臣がそれを所管するか、それとも別に中立的なるところの機関を置いて、そしてそれをチエツク・アンド・バランスで行くか、こういう問題であろうと思うのでありまして、私はそういう特別の中立的なる機関を置かねばならぬ必要は必ずしもない、かように考えておるのであります。それからまたその中立的なる機関というものが、国のいわゆるそのときの政策と違つたことをやつて行くということでは、これは国の経済というものがうまく行かないであろうと考えておる次第でございます。
  112. 西村榮一

    西村(榮)委員 石田さんの言われることであれば、これはひとつ中央銀行としての日本銀行の存在を変革して行かなければならぬということになるが、それでいいですか。全部大蔵省が握らなければならないということになると、中央銀行が形式的でも独立している機構を持つ必要はなくなつて来る。それでいいのですか。
  113. 石田正

    ○石田政府委員 これはそういうふうな意味では私は申し上げておらぬつもりであります。要するに、何と申しますか、日本銀行というものは、中央銀行として発券業務をやつておるわけであります。為替委員会というものが銀行であるというのでありますならば、それもなくしてしまつて、大蔵省が何でもかつてなことをやつていい、こういうことになるのでありましようが、私たちは、むしろ中央銀行として、国内金融のみならず、国際金融についても、日本銀行がそこにあつて、そうして両方あわせ見て、金融政策を行つて行くというのが、正しい姿ではないだろうか、かように考えるのでありまして、それと大蔵省との関係をどうするかという問題であるのでありまして、私は日本銀行をなくしてしまえとは言つておりません。私はむしろ外国為替管理委員会の現在やつております仕事の非常に大きな部分、これは日本銀行が中央銀行として対外金融と対内金融とあわせて一元的に考えて行く。それからまたその専門的なる知識というものを利用して行く、これがほんとうの姿ではないか、かように考えておる次第であります。
  114. 西村榮一

    西村(榮)委員 これはイデオロギーになりますから私は省略しますが、しかし大蔵省が何でもかんでも一貫作業を通貨においてやつて行かなければならぬということであつたら、結局日本銀行は大蔵省発券局に解消して、独立の機能というものを解消してしまう、これが一番簡素化だと私は思う。それをあなたと議論しようとは思わないが、しからば具体的に言えば、外為委員会を廃止して、大蔵省に為替局を置くということであれば、それは技術的にうまく行きますか。
  115. 石田正

    ○石田政府委員 私は技術的に何らむずかしいところはないというふうに考えております。日本銀行におきましても、そのことは先ほども申しましたようなぐあいに、外国為替管理委員会の現状のもとにおきまして、役所において実務の大部分をやつておるということでございます。従いましてその引移りにつきまして支障があるとは思つておりません。  なおこれは私見になりまして恐縮でございますが、為替局というものが大蔵省にできました場合に、これが何と申しますか非常な強権を振うような考え方では全然ないのでありまして、大体の方向といたしましては、この為替管理というのは、為替の状況が苦しいときにおいて行うものでありまして、そうして大切なことではございまするが、大体の方向としては為替の管理というのはだんだんゆるめて行くというか、緩和して行くことが望ましいのでありまして、これは日本銀行との関係におきましてもそうでございますが、日本銀行は今何ら外貨も持たずにやつておるというような状況になつておりますが、これらの点も将来は考えて行かなければならぬ。日本銀行の為替業務に対しますところの力というものは、だんだんつけて参るのがほんとうであり、その反面において、政府機関はどういうかつこうでありましても、だんだん後退して行くのがむしろ筋じやないか、かように考えておる次第であります。
  116. 西村榮一

    西村(榮)委員 私が技術的にうまく行くのかということをお尋ねした理由は、この為替業務を取扱うについては、一般市中の銀行と同様に、長年これは年期を入れなければいかぬのです。これはみんな銀行へ入る場合には、大学を出てから札の勘定から貸付、為替から全部まわされて、一人前になるのは昔から十二、三年かかる。それを何ぼ大蔵省の役人が秀才であつても、二年、三年でポストをかわつて行くのに対して、一体こういう専門的な技術的なものがやれるのかどうか。かつては正金銀行という専門家がバツクにあつたから、大蔵省の為替管理ということがお茶を濁して行けたけれども、これから為替の専門店がなくなつて、それとの連繋がとれたときに、専門的な技術のない為替局の役人がやれるかどうか。私の心配するのはこの点であります。同時に、あなたは為替管理の状況を将来緩和して行くということですが、これはあなたの御希望としては承つておくけれども、世界各国が為替管理を強化して行くときにおいて、第三次世界戦争でも終つた何十年の後ならばいいけれども、毎年ぐんぐん強化して行くのに、これは緩和の方向をとるべきだということは、自由主義経済の理想からいつたら、それはそうかもしれませんが、今日の貿易は結局通常の貿易ではない。国際経済は著しく政治的な制約を受けておる。当然為替管理というものも強化されて行く。こういうようなときに、あなたが今答弁になつたように、為替管理は将来緩和して行く、これは第三次世界戦争が終つて世の中ひつくり返つてからやるべきことである。ただ私は昔は正金銀行があつたけれども、これからそういうふうに技術的にやれるのか。やれるという自信があるならば、為替局の役人を特別の役人にして、イギリスの官僚組織のように一つのポストに長年おつて月給も上つて行く、そのポストでかかりきりであつても局長、大臣以上の俸給をとつておる。しかも何十年の年期を入れた専門家であるという官吏組織であればとにかく、あなたのおつしやるような官吏組織でそういうことができるでしようか。
  117. 石田正

    ○石田政府委員 最近の為替専門知識と申しますか、こういうものが終戦後非常に低下したことは争われない、これは事実であろう思います。そもそも戦争直後の混乱期等を加えますと、その間に相当に長い空白の期間があつたわけでありまして、その場合におきまして為替らしいものがなくなつたというようなことが、ある程度言えるかと思うのであります。従いまして一般的に申しまして、為替の知識が全般的に低下しておる、こういうことは私は争われない事実であろうと思うのであります。しかし今度は、相対的なところの中におきまして、だれが一番専門家であり、だれが専門家でないかということに相なりますと、それは相当問題があるのではないかと思います。日本銀行は、為替業務は正金銀行にまかせて、やつておりませんでしたけれども、しかし為替管理の方の仕事につきましては、正金銀行に委任しておつたのではなく、むしろ戦前から日本銀行と大蔵省との間におきましてやつてつた次第でございます。その時分為替管理をやつておられました人がいないわけではないのであります。むしろ正金銀行の方が残念ながらああいう状況になりましたので、ほんとうの昔の長い経験を持たれた人は、その職を離れたというのが実情であります。もちろん専門知識につきましては、一般的に低下しておりますけれども、甲は今専門知識を持ち、乙はまるつきりないのだというような極端なことはどうかと思うのであります。なお為替銀行でやつて行けるかということは、事人事の問題にも関係いたしますし、制度の問題にも関係いたしますし、私どもといたしましては、何とも申し上げかねます。ただしかし、大体行政官というものは、専門的知識を持つて事に当るべきものでありまして、専門的知識の習得については大いに努力すると同時に、なるべく長い期間そのポストに安定せしめるということが先決条件だろうと思います。ただ為替の問題だけに限りまして、お前は、あるいは大蔵省は為替の知識がないからだめじやないかということになりますと、これはひとり大蔵省だけの問題ではなくして、官界全般を通ずる問題でありまして、そういうことになりますと、貿易にいたしましても、何にいたしましても、長期的な、知識的なものがなければならぬということに相なるのではないかと思うのであります。
  118. 西村榮一

    西村(榮)委員 法案について一つお尋ねしたいのですが、外為委員会を廃止するかわりとして、ここに外国為替審議会というものを置かれたのでありますが、この審議会の理由の中に、「大蔵大臣の諮問に応じて、外国為替の管理に関する重要事項に関し、調査審議すること。」こういうことになつております。この重要事項というものは一体どういう意味ですか。
  119. 石田正

    ○石田政府委員 為替管理につきましては、きわめて手続的な問題と政策的な問題とあるのでございまして、たとえて見まするならば、決済方式をどうするか、それから各国との金融協定をどうするか、こういうような問題は重要事項であろうと思います。帳簿をどうするとか、こうするとかいうものは、細部な事項、こういうことになるわけであります。この外国為替管理委員会は、先ほども申し上げたのでございますが、実体問題として重要事項に参画されておりますが、官制の建前からいたしますと、手続を定めるということと、勧告するというふうなことに相なつておるわけであります。しかしながら、手続を定めることももちろん重要なことであつたと思います。今度の改正によつて、これらの部分は日本銀行の方に引継いで行く、委任して行くというような形に持つて行くわけでありますが、しかもなおかつ重要問題があります。それらにつきまして知識経験のあります方の御意見を随時拝聴することはきわめて大切なことであるというふうに考えるのでありまして、そういう重要な問題につきましては、やはりそれらの御意見を承つてきめて行くのがいいのではないか、かように考えております。
  120. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はこの際外為委員長にお伺いしたいのでありますが、先ほど大蔵当局が御説明になつたように、こまかい問題は大蔵省の思う通りに行かなかつたという御説明がありました。ここに本外為委員会廃止の重点か置かれておるのじやないか。外為委員会を廃止するために、行政委員会の他の部門と同様に、簡素化のためにこれを廃止するのだといいますが、この二つの問題については私は納得する説明を承ることができませんでした。ただ背後に含まれておる実例を示せと私はお尋ねしたのですが、実例は遠慮されてお示しにならなかつたのであります。従来の外為委員会は、大蔵省とうまく行かなかつたような実例があるかどうか。同時に外為委員会設立されたる当初の経緯、並びにその後において日本の貿易振興のために外為委員会はいかなる方向をとつて来られたか。いかなる功績をとつて、あるいは欠点を持つて来たかというふうな諸点について、先ほどの大蔵当局の御答弁とあなたの御答弁とが一致していればよいが、違つておるならば、その点をひとつ御説明を願いたい。
  121. 木内信胤

    ○木内政府委員 第一点の大蔵省の思うようにならなかつた、これは心の中の問題でありますから、いかなる点において思うようにおなりにならなかつたかは存じませんが、私はすでに他の席において御説明いたしました通り、現機構というものは、仕事をわけ合つてチエツク・アンド・バランスということを一つの原則と考えてできている機構でありますから、思うようにならなかつたとお思いになるケースがあつたはずなんであつて、たしかにそうだろうと思います。しかしそれが、チエツク・アンド・バランスということの方がいいならば、その方が国家のためであつたということが言えるケースもあつたのではないかと思います。これは一々それがどつちがよかつたかということは、まだ判定のできない問題もありましようし、あるいは見るところによつて違うので、ここで実例をあげて、この場合は大蔵省の意向にかかわらず外為の意向の通りにしたのだが、確かにそれはよかつたんだということを説明しろとおつしやつてもちよつと思いつきません。とにかくそれは確かにチエツク・アンド・バランスを基礎に置いているのですから、必ずしも思うようにおなりにならなかつたのではないかと思います。そこでそのよしあしは別論といたしまして、それが国策遂行に非常に害があつた。それでは大蔵大臣として責任がとれないといつたような大きな問題に対して、そういう対立があつたために、大蔵大臣責任をとれないような思いをなすつたということは、私はないと思います。少くとも現在はなくなつたと思います。私どもにまかせられている部分というものは、大蔵大臣の御意向に反してでも私どもの主張しなければならぬという部分は二つあるのであります。一つは技術の面です。純然たる技術に関することは私どもにまかされてあるので、御相談いたしますが、われわれの専管事項であるために、こと金に関しますけれども、私どもの意見に従つたということはあります。これはしかし技術の面でありまするから、それがために大蔵大臣として責任がおとりになれぬということは生じなかつたと思います。もう一つわれわれの主張を必ずしも譲つてはならない部面があるかと思うのでありますが、それは国際信用に関するような場合であります。国際信用の大本に関するような場合に、たとえば外貨予算というものの使い方が非常に乱暴である。これではいけないといつたような場合には、私どもは外人の言葉でお前たちは外貨予算のウオツチドツグである、番犬であるということをしきりに、法律をつくりましたころに言つたのでありますが、外貨予算の使い方がたとえば非常に乱暴であつて、外貨がどんどん減る。しかし国内経済政策上やむを得ぬといつたようなときに、あまりひどかつたならば、ノーといわなければならぬことになつておるのでありますが、こういうような点において、今まで意見の相違を来したことはございません。従つてそういう問題について私どもは意見の衝突を来したことはないのです。その他私どもは一般的に全体の総合調整というような役割を持つておりますから、いわば何事でも多少の口は出すということがあり、このために御意見に一致しなかつたことはあるかと思いますが、その多くのものは、私どもは法制的にいえば勧告権、勧告をなすことを得という立場においてしているのであつて、従いましてその勧告をお取上げにならなくても、私どもは別に争わないのです。ですから申し上げたことをおとりにならない、これは政治問題である。大蔵大臣政治責任、通産大臣政治責任であると思う場合には、私どもは一応意見を申すだけで、それなりにしております。別にお困りになつたことはないと思います。これが大体最初に言われました点に対するお答えであります。  次にこの成立の経緯を振り返つてみてどうかというお話でありますが、私どもは最近は非常に事がスムーズに行くようになつたので喜んでおります。実は最初この委員会がつくられましたときから、大蔵大臣のお考えはすでに予算委員会においても申され、あるいは今の局長の御答弁にもはつきり出ておりますが、通貨、為替の仕事というものは大蔵省の専管事項であるから、これに対して技術面であれ何であれ、自分の思う通りにならない機構があるのはいけないというのが、大蔵省の一貫した御精神であるかと思います。これも一つの見方であつて、大いに敬意を表すべきかと思いますが、すでに、われわれの委員会ができました以上は、その精神とは物の見方が衝突しておる。従いましてこの経過を振り返つて見ますと、私どもは今の機構に対する真の精神的御理解がなかつたために、そのためにこそ何となく常にどこかに衝突があるような気分をさせられて参りました。これは法律立法の上にも多少出ておりますし、その後の運営の上にも出ております。大体一言にして言えば、そういう経過を示して来たのであります。従いまして現制度が所期した真の効果というものは、遺憾ながら十分には発揮できなかつたという感想を持つております。もし現機構に化体されております精神というものが、真に日本政府の全面賛成を得て、そのように運営されたならば、さだめしよかつたであろうといまだに残念に思いますが、これは過去のことであります。振り返つてみてどうかということには、はなはだ抽象的な言いまわしをいたしましたが、一応これをもつてお答えといたします。  どういうことをして来たかという御質問に対しては、ずいぶん働いて来たつもりでありますが、あまり大したことはできなくてはなはだ恐縮でありますが、まず第一年目は、大体立法に費されております。最初は私どももまた盲貿易という言葉がありますが、まるで盲で為替管理の仕事を託されたような感じでありました。つまり日本が隔絶している間に世界は非常に進歩したのでありまして、実は新しい為替管理のイデオロはどうであり、手段はどうであるというようなことを知らないで携わつて来ましたのが最初でありまして、戸惑つたような期間もございましたが、これは法律をつくろうということになつて、法律の作成にかかりましたのが三年前の夏であります。それから具体案に入りまして、十月の初めですか、国際通貨基金から司令部の招待いたしました二人の人たちの指導を受けながらつくつたのが、今の外国為替及び貿易管理法であります。ところがそれは十二月一日から輸出が民間の手に移つて、続いて翌年の一月一日から民間貿易へ移りましたが、そこの辺までようやく期限に間に合せて手続、法律に基く政令、規則というものを出して進んだのでありますが、それから残りました通常貿易外と称せられている部分でありますが、その部分の政令をつくりますのに半年を要してようやく最後の部分が、第三の部分が実施になりましたのが七月一日だつたと思います。でありましたから出発のときから見れば満一年以上を費してようやく立法体制ができたということであります。  次いで外貨の管理を司令部から引継ぎ、それに対しては外貨の管理というものは単に金の出納をしているのではないのであつて、それを利用して外国の銀行に日本の貿易の金融と申しますか、貿易の取扱いの片棒をかつぐ、例の新聞によく出ましたコルレス契約というふうに表現されておりますあれでありますが、そういうとりきめ、先方の銀行との間にとりきめをつくつて、なるべく有利な条件で貿易を仕向けて行く、これが外貨管理の一部の仕事であります。そういうのをだんだんつくつて行くというような仕事に入つてつたわけであります。爾来完全に外貨の管理が移りましたのは昨年の十月でありました。それからまた私ちようど世界一周の旅に出かけまして帰つたのが十月末でありますが、爾来今年になつてから何をしたか。ようやく運営らしい運営に入つたのでありますが、例のポンド問題その他ごたごたが起りまして多くの時間を費されまして、目立つたものはほとんど何もありませんが、しかし昨年外貨管理が完全に移つてからあとは次第にスムーズになつて来て、どうやら今の為替管理も板について来たのではないか。先ほど申しました通り根本に対して大蔵省の御賛成をどうも得ておらぬというために十分だという印象は与えませんが、かなりうまく動き出したというのが最後のステージであります。  最後に大蔵為替局に移つてうまく行くかどうかという御質問でありますが、これはどうも私ども専門家ということになつておりますが、われわれならうまく行くがそうでなければうまく行かないということを言えとおつしやるように聞えまして、はなはだ言いにくいのですが、私どもの体験を申しますと、私は正金銀行に二十年おりまして、ドイツ為替管理法のもとで働いたことがありますし、もちろん日本の為替管理法のもとで働いておりました。支那等にも参りましたからずいぶん例外的な事象にも面したのでありますが、要するに一生を正金銀行で過して来たのであります。他の委員の方、大久保委員は何年日本銀行におられましたかはつきり存じませんが、やはり二十年近いものを日本銀行にお暮しになり、海外への御経験もあります。もう一人の委員の方はやはり正金銀行で私と同様でありますが、ほぼ私と同じ二十年の正金生活。第四番目の委員の方は、これは三菱商事でありますが、これにもおそらく二十年くらいおられたと思います。大体において為替銀行出身二名、商事会社一名、中央銀行一名というのが現在の構成でありますが、いずれも二十年近くのいわゆる年期を入れた人間であります。この仕事も草創時代であつたせいもありましようが、私どもはずいぶん働かされた。徹夜作業をしたこともありますし、ほとんど全身全力を費して来たつもりであります。しかも顧みまして必ずしも仕事は満足に行つているとは思わない。言いかえてみますとこの為替管理という仕事は実にむずかしい仕事であるというのが私の印象であります。日本銀行に大部分のものをまかすからというお話でありますが、日本銀行の方は私どもずいぶん仕事をお頼みしております。その結果としまして最近のことはよく御存じであります。のみならず非常に大きな人数を動員してくださいまして熱心に執務してくださいましたから、ずいぶん戦後の新しいやり方について認識も深まつたり、いわば実力を深めてくだすつたであろうと思います。しかしながら日本銀行におまかせしておりますことは、許可事務の窓口と金を預かるブツキングの簡単な、銀行同士の手続をさせるという程度でありまして、為替管理のほんとうのむずかしい、私どもが真に頭を悩ます点については御相談はしておりますが、ほんとうに責任を持つておまかせした部分はありません。その点については遺憾ながら十分なる御経験を得られた方が日本銀行の中に相当できて来たという段階にはまだ少し及ばないのだと思います。これが大体事務能力というものに関する説明であります。  なお為替事務というものは非常に末節的なものでありまして、この末節的なところに非常に重要性がある。先ほど審議会というもので――重要事項はそうでございますが、もちろん非常に必要にしてけつこうなことでありますが、為替管理がうまく行くか行かぬかは実に言うに言われない微妙なところにある。たとえば一例を申し上げますが、外貨予算制度というもの、民間貿易というものが発足しまして自動承認制というものが非常に大きく言われている。自動承認製でどんどん物を買いつけて大失敗をしたような経験をしました。あの中に自動承認制でもつて外貨の許可を得た、現在外貨を使う権利を獲得した、だれがどの商品についてどれだけの外貨をすでに許可を握つたかということを今時々出している。従いまして人様がどれだけ、AならAの商品をすでに買いつけることになつたかということを業界の方が知ることができる。その結果としてあまり行き過ぎは起らないはずである。その数字をもつと早く出せばよかつたが、初めのうちは出さなかつた。出さなかつたがために人様がどれだけ買つているか、業界の方は無知であつて、まだだれも買つていないかと思つて買付を急いでおつたということもありますが、これはその数字を出す出さぬというごく小さなことでありますが、私ども専門家をもつて任じながらそれに気がつくことがおそくて、あのような大事件がそのような小さなことにひつかかつているのでありますが、いわゆる重要事項で、審議会でも相談になるような点が、為替管理の真に重要なものではないかと私は考えております。
  122. 西村榮一

    西村(榮)委員 もう一点お尋ねしたいのですが、今あなたの説明の中に国際通貨基金の委員会の指導によつてこの外為委員会がある程度までサゼスチヨンによつてできたというお話でありましたが、そこで私はそれと関連してお尋ねしたいのでありますが、日本が国際金融機関に参加するについてこの外国為替の問題はかくのごとき機構において、かくのごとき運営をしているというような条件を提示して了解を求めたというような事実はありませんか。あるいはそれに類似の事実はありませんか。たとえていうと外国から見て、日本の通貨操作に対する信憑性、信頼性を獲得するためには外為委員会というものを設けて、こういうものをやつている。それに基いて、それならばというので安心して一つのものがとりまとめられたというような事実はございませんか。
  123. 木内信胤

    ○木内政府委員 国際通貨基金加入の問題は、為替管理委員会は扱いません。これは大蔵省でお扱いになつたのであります。むしろ大蔵省の方から聞いていただきたいと思います。
  124. 石田正

    ○石田政府委員 国際通貨基金につきましては現在の段階におきましては各国別割当と申しますか、日本に対しまするところの割当、それから出資金の問題、これにつきまして大体こういうことであるならば加入を認めるというものが向うから参りまして、それに対しましてこちらの方からそれではそれで加入いたしたいという申入れをいたします、と同時に今衆議院におきましてその協定加入の承認を国会からいただきます問題と、それから出資に伴いまする関係を規制いたしまする法案を出して、目下審議にかかつておる次第であります。なお先ほど委員長がお話になりました外国為替及び外国貿易管理法については、これは国際通貨基金から人が来て、その相談をしてつくるということに関連いたしまして、外国為替管理委員会との関係において何かありはせぬかという御質問だと思いますが、この点につきましては、私たちはかように考えておるわけであります。第一点といたしましては、国際通貨基金に加入いたしまする場合に、国際通貨基金が重点といたしておりまするところは、日本がどういう外国為替の管理をやつてつたかということである。その実体は外国為替法及び外国貿易管理法に規定されておるのであります。これは国際通貨基金の人が来てやつたことであり、それからそれがどうなつておるかという認識等につきましては、これは向うに報告をいたしておりまするので、その関係からいたしまして、国際通貨基金加入に支障を来すとは考えておりません。ただその外国貿易管理法を運営するものがだれであるか、その部分々々について、所管大臣がだれであるか、所管するものは何であるかということに関連いたして、それが外国為替管理委員会であつたならば加入を承認するとか、これが大蔵省にかわるならば承認しないというような問題はないものと考えております。
  125. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは議論は別として、通貨基金の委員会の使節が外国から来たときに、日本の外国為替基金の管理は、こういうふうにしているということの報告はあつたわけですね。
  126. 石田正

    ○石田政府委員 通貨基金につきましては、出資及び払込み、これがきまつて、その払込みが終りましてから協定に加入いたします。それからあと国際通貨基金の資力を利用すると申しますか、要するに日本で外貨が買えないから、円を出しましてドルとか何かを買う、こういう操作を国際通貨基金との間にいたします。その前の段階といたしまして、平価をきめるとかあるいは為替管理について異存がある、そういうことが問題になつて来るわけであります。今の段階におきましては、まだ出資及び割当の問題について国内法的措置がきまつておらぬのでありまして、また実際に協定に参与いたしておらぬわけであります。従いまして今御指摘のような点は、今後起つて来る問題だと考えております。
  127. 西村榮一

    西村(榮)委員 おそらく国際金融機関においても、その外国為替の管理者が、外為委員会であるか、大蔵大臣であるかということについてのさしずがましいことは、当時も避けたであろうし、また今後は絶対に法律上できないはず、また政治的にもできないはずです。しかしながら、少くとも日本が金融の面においてアメリカの信頼を獲得する上において、この外為委員会の制度と運営の仕方が、設立当初の経緯にかんがみて重要なる比重を占めておつたんではないかと思うのですが、こういう点の懸念はありませんか。
  128. 石田正

    ○石田政府委員 私、実はあの法律ができました時分には、その所管の衝に当つておりませんでした。ただ何と申しますか、たまたま前にそれをやつてつたということのゆえをもちまして呼出しを受けて、向うから意見を聞かれたことがございます。そのときに私個人といたしましていろいろ申し上げたことがございます。そのときの問題は、要するに日本の為替や貿易の管理をどうして行くかということについては、非常に耳を傾けてくださいました。しかしどこが所掌するかという問題につきましては、向うは、ある意味から申しますと迷惑であるというような顔をいたしておつた、そういう印象を私は受けたのであります。
  129. 西村榮一

    西村(榮)委員 迷惑というのは……。
  130. 石田正

    ○石田政府委員 そういうことは日本政府がきめるべき問題であつて、われわれのところへそういうことを相談して、こつちがいいとか、あつちがいいとかいうふうなことを言うのは迷惑であるというような感じじやなかつたかと思うのであります。  それから国際通貨基金に入つておる国につきましては、これはイギリスを見ましても、今度改正の結果なりますような形において運営されておるのでありまして、国際通貨基金が外国為替委員会でなければいかぬなんというようなことは毛頭考えない。むしろ向うから見ますると、ある部面におきましては、よその国のことはわかりにくいので、外国為替管理委員会の性格は何であるかというふうなことを私たちといたしまして説明いたしまして、納得するようにある労力を費したというようなこともあるくらいであります。
  131. 西村榮一

    西村(榮)委員 最後に外為委員長にお聞きしたいのですが、外為委員会が当初設立されたる経緯にかんがみ、かつまた将来日米の経済提携の問題あるいは今自由党が非常に努力をされておる外資導入の問題、それから来るアメリカの金融機関日本に対する考え方、ないしはアメリカの財務当局の日本の通貨操作に対する信憑性の問題という点を考えてみて、私は将来のその影響力の問題、もつと具体的にいえば、なるほど今大蔵当局が御説明なすつたように、国際金融機関に参加するには、この外為委員会の存在は直接の条件にはならなかつたでしよう。けれども外為委員会設立して以来、しかもその生みの親のアメリカのある程度までの強力なる意思によつて生れ、しかもそれがとにかく無難に行つてつて、これで安心だという観点から、それが法制上の基礎的条件にはならなかつたが、政治的観点から見てある程度まで国際金融機関への参加に対するアメリカのあつせんに対して積極性をとらしめたと私は思つております。これらの点について、今大蔵当局は何も関係しなかつたというふうなお話であつたが、それらの関連の問題、それから将来の国際金融に対する日本の信頼性の問題の二点、同時に、先ほど大蔵当局が御説明になつたように、これは、複雑なるかような機構を廃止して簡素化をやるんだというお話でありますが、しからば外為委員会の存在はしかくさように事務的にも政治的にも複雑をきわめて日本の国政上大なる不利益を招来しているのかどうか。私の言うのは、将来日米両国間においては、政治的にはいろいろ折衝しなければならぬ問題が、日本国家並びに民族の立場からありまするけれども、通貨並びに金融の問題につきましては、緊密なる連繋をとつて行かなければならないんじやないか、さようなときに、単なる行政上の簡素化という利益をねらつて、失う面は一体どこにあるか、その点について率直にひとつ御意見を承つておきたい。
  132. 木内信胤

    ○木内政府委員 たいへんむずかしい御質問で、多くのことを申しませんと私の結論を明らかにすることができないかもしれませんが、結論だけを先に申しますと、私は今度の廃止案は日本のためにならぬと信じておるのであります。それは予算委員会でも申し上げましたが、現在の機構に化体されておる諸原則は、国際通貨基金のみならず、近ごろの国際社会において一般に認められつつある原則である。その原則を捨ててしまうということは非常に惜しい。のみならず、その原則を捨てるのに、今まであたかも占領下にはやむを得ず従つて来たのだが、占領終りもやらざるになくしてしまうということは、はなはだ印象が悪い。これは日本として惜しむべき行為ではないかと私は考えます。なお私非常に遺憾に思いますことは、なぜこれをやめるのかということは、簡素化、責任の所在の明確化という、いわば二つの抽象的なることであります。それだけの理由しか提示がなくて、国際社会においてもなるほどそうか、日本という国ではこういう機構ではうまく行かないのだということが納得の行くような、また新しい機構ならばうまく行くであろうと思われるような説明がまずなされて、しかる後にこれが廃止となるというのでしたら、非常によかつたと思うのです。そういう順序もふまれていないというような点についても、はなはだ遺憾だと思います。いずれにしても、たくさん申し上げなければならないのですが、きりがありませんから、結論だけを申しておきます。  それから次に第二点は、国際通貨基金の加入の点で御質問でありますが、私は先ほど申しました通り、加入問題の直接の当事者ではございませんので、向うの反響をよく知りません。ただ私の知つておりますことは、機構というものは国によつて違うのだ、機構をだれがやるとか、どういう政府機関があるとかないとか、その権限の分界はどうだというようなことは別に問わないので、ただ中にある精神が尊いのだ。なかんずく彼は、貿易及び為替の一体的管理ということが非常に大事なのだということを強く言つておりました。こちらへ来られた二人の方が、新しい機構に対して特にこういうのがいいのだといわれた記憶は私はございません。しかしながら、こういうふうにものをつくるのだということは、あらかじめ司令部の係官二名が向うへ行きまして、九月の初めだつたと思いますが、国際基金にも持つてつて相談したとき、そういうプリンシプルは非常にいいと言われたことがあるのでございます。彼は帰つて来て私と一緒につくつた十二、三箇条の箇条書でありますが、インシユージアズムをクリエートしたといつて喜んでくれたことがある。従つて私はこういう行き方というものは、彼らの賛成を得るものと思つているのです。今度の加入問題は、別に直接には関係はないと思いますが、しかしながら、加入するについては、日本はどういう為替管理を、どういう機構でやつているということは、たしか大蔵省から御説明になつたはずであると思う。それを説明して、いよいよ加入の段取りになる直前において機構根本的にかえてしまうというならば、今度はかわるのだということを御説明になつたのかどうか、あるいは御説明になる方があたりまえではないかということを、私はただ漠然と感じているだけで、これは私の特に扱つている問題ではございませんから、よく存じませんが、そういうふうに思います。  第三点の国際信用は、最初お答えいたしました通り朝令暮改、はなはだ悪いのでありまして、信用というものは、一つ機構相当続いて、ことに人間同士のつながりもできて来て、初めて信用がつくのであります。それを今までせつかく築いて来て、かなり信用もできたと思う際にかえてしまうということは、私は非常に惜しいと思います。     〔委員長退席、江花委員長代理着席〕
  133. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは一応これで質問を打切りますが、私はここに委員長に対して動議を提出いたします。というのは、大蔵当局並びに外為当局、すなわち政府内部において本問題についての意見根本的に違つておるのであります。従つて政府内部における意見根本的食違いをそのまま伏せておいて本案を審議して行くわけに参りません。これを廃止するならば廃止するというように、まず第一に政府部内の意見の統一と同時に、これは国家内外が納得する理由を打出しておかなければならぬのであつて、単に複雑を簡素化し、同時に通貨政策の一貫作業を大蔵省がやりたいということだけでは世人は納得いたしません。現下日本としては、今回の日米行政協定その他によつて政治的に多くの改正をせねばならぬ問題がたくさんあるにかかわらず、それに触れずして、今朝問題になつた安定本部の廃止あるいは外為委員会の廃止――私は、六年の間どこと闘つて来たかというと、共産党の独裁化、暴動化に向つてつては来たが、同時にアメリカ日本併呑化、植民地化、隷属化と闘つて来たつもりであります。けれども今権力の地位から去つたアメリカの進駐軍が日本から去つたときに、私は、権力の地位から去つたつて権力者に対して、つばきを吐きかけることは日本国民の道徳性に反すると思う。従つて、さような見地から見ますならば、大きな問題を伏せておいて、枝葉末節の機構いじりによつて面従腹背しておつた者が態度をがらりとかえるというような機構取扱い方は、日本政府並びに日本国民の道徳性からいつてもはなはだ遺憾であると思う。従つて、本問題は粗漏ではないのだということを国家内外に得心せしめ、同時にそれを予算技術その他の点からも得心せしめる説明がなければならぬのでありまするが、本日は不幸にして大蔵大臣がお見えになつておりません。そこで私は、以上の政府部内における意見根本的な食違いをそのまま伏せて本案の審議を継続することはできないのでありますから、本案の最終決定までに私は、もう一ぺん大蔵大臣と外為委員長と両者の意見政府部内において調整されるか、あるいはここにおいて両者の意見を詳細に承る機会をつくつていただくよう委員長においておとりはからいを願い、その上で審議を進めたい。私の質問はこれは前座でありまして、これから始まる。この点お含み置きの上、その問題についてきようは序論だけで終ることにいたしたいと思います。
  134. 江花靜

    ○江花委員長代理 ただいまの西村委員の御意見は、委員長において御趣旨に沿うよう本委員会においてとりはからうことにいたします。
  135. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは今度は通産省にお尋ねします。中小企業庁を廃止してこれを通産省の内局にせられる、こういうのでありますが、ごく簡単でよろしいから中小企業庁の廃止の理由について、何がゆえに廃止しなければならないかということを承りたい。
  136. 本間俊一

    ○本間政府委員 御承知のように、今度の政府行政機構の改革にあたりまして、いろいろ通産省と政府の間において折衝をいたしておつたわけでありますが、中小企業庁は内局にするというふうに最後的に決定になりましたので、通産省といたしましては、中小企業の問題はご承知のように大事でございますから、新しい機構になりましても、機構の上からいろいろなマイナスのできませんように十分注意をして、新機構のもとでやりたい、こういうふうに考えている次第であります。
  137. 西村榮一

    西村(榮)委員 政務次官は通産委員会がほとんど各党一致して、中小企業庁の廃止に反対の意向であるということは御存じですか。
  138. 本間俊一

    ○本間政府委員 通商産業委員会から正式にそういう御意見を伺つたことはなかつたのでございますが、中小企業庁はそのまま外局として置く方がいいのではないかという御意見が出ておるということは承知いたしております。
  139. 西村榮一

    西村(榮)委員 本間君と私とは懇意だからちよつとやりにくいのだけれども、ざつくばらんに聞きますと、自由党が一週間ほど前に発表された政策の中に、中小企業対策というものを大げさに、金融能率化並びに日本再建のためにこれを大いに活用せねばならぬという、中小企業の大活用論をふろしき広げられて、これが政務調査会の公式意見として発表されておる。しかるに今回の行政機構改革においてこれを廃止される。あなたは一体自分の本家と打合せされたか。
  140. 本間俊一

    ○本間政府委員 御承知のように党から出ておりますので、随時党の方とは連絡をいたしておるわけであります。
  141. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、党の一週間前に発表された中小企業活用論というのは、あれはうそなんですか。選挙対策一つなんですか。打合せというのはどういう打合せですか。
  142. 本間俊一

    ○本間政府委員 これは見方によりましていろいろな御意見も立つかと思うのであります。いろいろ御議論はあろうかと思いますが、内に入りましても、形の上ではもちろん縮小になるわけでございますが、運用いかんによりましては、党の考えておりまする政策を実現できないというふうには考えないわけでございまするから、その点は御了承を賜わりたいと思う次第でございます。     〔江花委員長代理退席、委員長着席〕
  143. 西村榮一

    西村(榮)委員 どうも私にはわからないのですが、自由党が中小企業に対して大きな馬力をかけて、日本再建のためにこれを活用しなければならぬ、それがためには、その技術の指導並びに金融対策はこうすべきであるというので、大なる抱負経論をわずか一週間前に発表された。しかるに政府は中小企業庁を廃止しておる。これは何というても、権限の縮小であり、規模の縮小をなすものであつて、同時にそのことは――中小企業の取扱い方というものは複雑多岐で、従つてこの問題を取扱うには、官吏においても特殊な訓練、技術を要するのでありますが、これが権限が縮小される――拡張するなら、大いに自由党の政策と相一致するのです。それが縮小ということになると、自由党の政策と現自由党内閣政策とが衝突を来して来るということになる。私はあなたとは懇意な仲で、あなたが官僚出身であれば、私も大いに神経立つて言わなければならぬのであるが、お互いに政党出身で、腹の中はわかつているんだから――ちよつとこれはおかしいじやないか、本間君。
  144. 本間俊一

    ○本間政府委員 それは西村さんの御想像されておられる通り、私も考えているのでございますが、しかし内局に入りまして、中小企業対策が非常に後退するというふうには考えないわけでございまするので、その辺はどうかしかるべく御考慮を願いたいと思います。
  145. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは私もしかるべく了承して、これで質問を終ります。ただそれはちよつと矛盾しておりますね。どつちがほらかわからぬが……。これで質問を終ります。
  146. 八木一郎

    八木委員長 これをもつて本日の議題の諸法案につきまして、質疑は一応終局いたしました。  本日はこれをもつて散会します。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後四時二十四分散