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1952-02-13 第13回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十三日(水曜日)     午後一時二十八分開議  出席委員    委員長 八木 一郎君    理事 江花  靜君 理事 大内 一郎君    理事 船田 享二君 理事 鈴木 義男君       田中 萬逸君    平澤 長吉君       本多 市郎君    松本 善壽君      山口喜久一郎君    松岡 駒吉君       赤松  勇君    今野 武雄君  出席政府委員         宮内庁次長   宇佐美 毅君         法務事務官         (法制意見第二         局長)     林  修三君  委員外出席者         專  門  員 小関 紹夫君     ――――――――――――― 二月十三日  理事坂田英一君の補欠として大内一郎君が理事  に当選した。     ――――――――――――― 二月十二日  警察予備隊廃止に関する決議案井之口政雄君  外二十二名提出決議第八号) 同月九日  戰傷病者に対する恩給増額請願外三件(菅家  喜六君紹介)(第五四二号)  公務員の新恩給制度確立等に関する請願(小澤  佐重喜紹介)(第五四三号)  同(山本利壽紹介)(第五四四号)  同(佐藤重遠紹介)(第五四五号)  同(坂田英一君外一名紹介)(第六一八号)  国土省設置に関する請願小林信一紹介)(  第五九二号)  恩給の不均衡調整に関する請願坂田英一君紹  介)(第五九三号)  軍人恩給復活に関する請願永井英修紹介)  (第六一六号)  同(宮原幸三郎紹介)(第六一七号)  米沢市及び南原村に警察予備隊設置に関する請願(牧野  寛索紹介)(第六一九号) の審査を本委員会に付託された。 同月七日  厚生省並びに地方衛生部局廃止反対に関する陳  情書(  第二九三号) 同月十二日  厚生省並びに地方衛生部局廃止反対に関する陳  情書  (第三七四号)  国土省設置に関する陳情書  (第三七五号)  軍人恩給法復活に関する陳情書  (第三七  六号)  同  (第三七七号)  恩給並びに遺家族扶助料復活に関する陳情書外  一件  (第三七八号)  北海道総合開発事業に関する陳情書  (第三七九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事互選  皇室経済法の一部を改正する法律案内閣提出  第二四号)  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二五号)     ―――――――――――――
  2. 八木一郎

    八木委員長 これより会議を開きます。  まず本日は理事互選を行います。本委員会理事でありました坂田英一君が委員を辞任せられました。つきましては理事補欠選任を行わねばなりませんが、先例によりまして、私から御指名いたすに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八木一郎

    八木委員長 御異議がなければ、大内一郎君を理事に御指名いたします。     —————————————
  4. 八木一郎

    八木委員長 次に皇室経済法の一部を改正する法律案内閣提出第二四号)及び皇室経済法施行法の一部を改正する法律案内閣提出第二五号)を一括議題といたし、質疑の後、討論採決を行いたいと存じます。質疑の通告がありますから、これを許します。今野武雄君。
  5. 今野武雄

    今野委員 私はまず根本的な問題から質問したいのですけれども法務関係の方がお見えになりませんから、まずこまかいことから先に伺わせていただきます。  皇室経済法第四條第四項及び第六條第九項の規定による報告書というのがここに提出されております。その中で皇室財産がずつと列記してあるのでございまするが、この中で私ども関心を持つのは、従来の皇室経済法によつても、また今回の改正によつても、「相当の対価による売買等通常私的経済行為に係る場合」には、国会議決を一一要しないということになつておりまするが、私的経済行為というものの範囲は一体どういうものであるか。たとえばここにあげてある財産の、処分、そういうものを含むのかどうか。それからこれにある財産以外に、前に総司令部提出した書類によりますと、動産等があるようになつておりますが、そういう、ここにないものが、「私的経済行為に係る場合」ということになるのか。その点をお伺いしたいと思います。
  6. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 ただいまの御質問でこの表と仰せになりましたのは、ちよつとわかりかねておりますけれども、この法律にございます私的経済行為というのは、天皇その他皇族個人としての普通の売買でございまして、何か品物を買われること、その他のこと一切日常のことが入つておるのであります。これはこの基礎をなしております憲法八條から見まして当然のことでございますが、明瞭ならしめる意味において記載せられたものと考えております。それから皇室財産につきましては、現在不動産はお持ちになりません。不動産は一切国有財産なつておるのでございます。その他の財産といたしましては、調度手まわり品骨董書画等動産だけでございます。
  7. 今野武雄

    今野委員 そうすると、ここに書いてあるものは、皇室財産ではなくて、国有財産だということになるわけですか。皇居とか、赤坂離宮大宮御所、その他ずつとあげてございますが、これは国有財産ですね。
  8. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 これは国有財産でございまして、皇室用財産ということになつております。この処分等につきましては、国会議決を要するということになつております。
  9. 今野武雄

    今野委員 それでその点ははつきりいたしました。そうするとこの皇室用財産というのは、念のためにお伺いいたしますけれども国家から無償で借りておられるわけですか。
  10. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 さようでございます。
  11. 今野武雄

    今野委員 そうすると、今度は宮内庁にお伺いしたのではちよつと見当はずれになるのですが、この皇室用財産値段を見まするのに、非常に不当に安いような計算になつておるのです。たとえば皇居土地が坪大体百円ということになつております。それから建築物については、皇居の場合は坪二千円というふうになつておりますけれども、こういうようなものは、付近の実情と比べてみると、あまりにも食い違いがあるように思われるので、そういう点はどこで見積られているのか、あるいは何のために不当にそういうふうに安く見積られているのか。その点もしおわかりになつたら答えていただきたい。あるいは、どこでだれに聞いたらそれがはつきりするのか。これは管財局その他に聞かなければならないのかもしれませんが、そういう点もひとつお答え願いたいと思います。
  12. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 この計算いたしました基礎は、国有財産台帳価格でございまして、大蔵省の管財局との関係になります。その後実は再評価等をいたしておりません。当時の値段のままになつております。
  13. 今野武雄

    今野委員 そうすると、次にお伺いしたいのは、こういう莫大な皇室用財産というものがあるわけですが、現在の皇室としてこういう国有財産がどうしても必要なのかどうか、その点は宮内庁としてはどういう御見解を持つておられるのですか。天皇一家生活を維持するために——これはちやんと評価すれば非常に大きなものになると思うのですが、かかる莫大な国有財産を使用する必要があるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  14. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 これは單に私的な御生活ばかりでなく、象徴としての御必要の限度から考究いたさなければならないと思いますが、御承知の通り皇居は戦火で焼かれておりまして、今後といたしましては、皇居再建という問題もあるわけでございます。そういう際によく検討いたしまして、不要の分は措置してよいと思いますが、まだ基本的な問題が解決いたしておりませんので、従前通りのものを保留している次第であります。
  15. 今野武雄

    今野委員 私がお伺いしているのは、特に戦後戦災等によつて一般国民が家などをなくしている、そうして非常に粗末な家に、たくさんの人が狭いところに住んでおる。そういうようなときに、やはりかような状態をそのまま続けておつたのでは、これは何か非常に不つり合である。そういう感じを持たざるを得ないのです。しかもそれが家賃も地代もいらないというようなことになりますと、非常に大きな特権になるわけであつて、そういう点でもつと節約することができるのではないか。そういう国民的な立場に立てば、節約するのが当然じやないか。それから最近農村方直でも土地を売るか、あるいは娘を売るか、こういうふうな非常に悲惨な状態が続出している状態であります。それに対してやはり当然もつと節約すべきじやないか。それからまた国でもつて約束して、その約束を当てにして戦争に出かけた人たち遺家族あるいは傷病兵たちが、やはり非常に生活に困つている人が多い。そうして自殺とか、その他の悲惨な事件がたくさん起つている。こういうときに、その戦争に対して大きな責任を感じなければならない立場にある人が、やはり依然としてこういうことであつてはならないんじやないか、そのためにもつと節約すべきじやないか、こういう議が起るのは当然だろうと思うのでありますが、そういう点について宮内庁や何かでは考えているところがあるのか、そういう覚悟のほどを伺いたいのです。
  16. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 宮内庁といたしましても、現在までにおきまして、赤坂離宮国会に移管しておりますし、修学院離宮付属地その他を自作農創設のために出しますとか、あるいは葉山の御用邸等におきましても、あるいは京都陵墓地の一部等もこれを解放しておりまして問題のないところはそういう措置をいたしております。今後におきましても同じような考えをいたしたいと思います。
  17. 今野武雄

    今野委員 今あげられた事実は私どもも了承しております。しかしなおかつかかる莫大なものがあるということを私は言うのです。戰後私どもが心を打たれたのは、オランダのウイルヘルミナ女王が、もうなくなつた方ですが、この方が宮殿を難民に開放されて、みずからはアパートに住まわれた、こういうことが伝えられておりまするが、こういうような点から考えて、もつともつとひどい戦災を受けて、そして難民がたくさんある。こういう時代にあつて国民と一緒にやつて行くという気持がほんとうにあるなら、こういうことではとてもだめだと思うのです。あべこべにまた再びもと天皇のような状態になろう。この間の関西行幸などの場合にも、京都の府知事あるいは市長に対して、もとと同じような形でもつて天皇を歓迎せよ、こういうような通達があつたということを聞いているのでありますが、そういうようなことになりますと、まつたく国民にとつて意味がないどころか、かえつて昔の軍国主義や何かの復活というような疑いを非常に持たせるわけであります。その点で、私ども聞いているわけです。今までの事実がこうであるということじやなくて、はつきりした覚悟のほどを聞かせてもらいたい、こういうふうに思つているわけです。
  18. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 ただいままで申し上げました通りに、皇室用財産につきましては皇居再建の問題とからみまして十分検討いたしたい。その気持は今までやつて来ましたことと同様でございます。  今御引例の中に、関西行幸のことについて、歓迎について通達したというようなお話でございますが、その事実は全然ございません。逆に政府といたしまして、きわめて質素にやるように通達をし、指示をいたしているわけであります。その事実がございませんので、ここではつきりと申し上げます。
  19. 今野武雄

    今野委員 次に、この皇室用財産ということでなくて、皇室財産としてまあいろいろあるわけでありますが、それはここでいわゆる私的経済行為の対象になるものでございますが、それはどの程度ございまするか。内訳はどんなようなものか。もしわかつたらお知らせ願いたいと思います。
  20. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 皇室私有財産といたしましては、お身まわり品調度品、若干の書画骨董、御由緒のある品等でございまして、そのほかに現金といたしましては、この経済法ができますときに議会で申し上げているのでございますが、千五百万円の現金があるだけでございます。そのほかには不動産その他一切ございません。
  21. 今野武雄

    今野委員 ほかに有価証券はないのですか。何か二十二年五月総司令部提出皇室財産表によりますと、財産税や何かをすつかり差引いて、差引残額不動産として二億五千二百万円、それから動産として一億五千八百万円というふうになつておりますが、これはどういうものでありましようか。
  22. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 その当時財産税で押えました以外のものは、憲法によりまして一切国有ということになりまして、今申し上げました程度のものが残されたわけであります。
  23. 今野武雄

    今野委員 次に皇室経済法のやはり第六條ですが、これは形が今度かわつて出て来ているのですが、皇室費ですね。これは「品位保持の資に充てるため」云々ということになつているのでありますが、非常にわれわれとしてはどの程度品位保持であるかよくわからないのですけれども、大体具体的に言うと、どういう物的な條件が必要なのか、伺つておきたいと思います。
  24. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 品位保持を具体的にと言われますと、はなはだむずかしいのでありまして、要するに皇族としてのふさわしい御生活という意味であります。しかもそれは生活費の全部という意味には解しておりませんで、私有財産から入るあれもございますので、大体全体の生計費の八五%くらいというような考え方をいたしているわけであります。
  25. 今野武雄

    今野委員 そうすると、国民実情にそぐわない、そぐわなくなつているということが言われているわけです。人事委員会やあるいは労働委員会その他で、国民である官吏あるいは労働者の賃金その他がいろいろ論議される場合でも、実情にそぐわないということは認めても、どうしても予算上これでがまんしなければならない、あるいは日本経済事情としてこれでがまんしなければならない、こういうようなことがあるわけです。これは実は生活のぎりぎりのところが維持できない、借金がどんどん積つて行く、そういう赤字家計を続けながらも、どうにもならない人たちが、勤労階級の中に大部分を占めているといつてもよいわけです。そういうような條件もとで、皇室の場合には、それは赤字家計という問題は起らないわけでありますがもそういう国民品位も何もなくして、そうして品位どころか生活も維持できたい、こういう條件もとにおいては、やはり品位というものにおのずから基準が考えられなければならないと思う。そういう点を考慮されてやつているかどうか。それをお伺いしたい。
  26. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 もちろんこういう時代でありまして、皇族といたしましても十分な見積りをしたというのではございません。実際過去におきまして皇族の御生活を伺いますと、相当御無理をなさつているのでありまして、それを全部カバーする点までに至りませんが、あまり無理なことにならないように考えております。
  27. 今野武雄

    今野委員 あとで法務関係の方にお伺いしたいと思いますが、憲法の第八條に「皇室財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜與することは、国会議決に基かなければならない。」といつて、ある意味皇室経済について国会がそれに対して関與せねばならぬということになつて来ておるわけでありますが、そういう点から行くと、どうしても国民生活水準、そういうようなものとも考えあわせて、皇室というものを考えることがやはり国会としての義務ではないかと私ども考えるので、それでそういう立場から質問しているわけです。そういうたいへん御無理をなすつているという話ですが、そういう問題も、この憲法立場からすれば、当然国会に出されて、そうしてかような無理をしているということが具体的に出されるのが当然ではないかと思います。そういう点をここでもつて明かしてくださつて、はたしてそれが無理と言えるものかどうかということを検討させてもらいたいと思います。こういうふうに思うわけですが、その点どうですか。
  28. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 皇族さんの御生活の内容は、これは私的経済でありまして、宮内庁といたしましても、詳細のことを無理に伺うことができない現状でございます。しかしながら皇族費を検討いたします建前からいろいろ伺いますと、あるいは財産の御処分をなさいますとか、いろいろな面でお苦しい面が見えておるのです。そういうような点から、実は前回の国会の御審議でベース・アップいたしました際にも、皆様から基本的に検討してくれという強い討論の際の御発言がございまして、われわれといたしましても、こういう点を調査いたして提案いたした次第であります。
  29. 今野武雄

    今野委員 つまりそういう財産処分をしなければならぬとか、いろいろ無理している、それを御調査なすつたというのだから、そういうものは当然われわれにも資料を出して、かような無理をしているという点をお示し願つたら幸いだと思います。そうして何のためにそういうことをしなければならぬかということについても、われわれとして大いに考えなければならぬのじやないかと思います。というのはいくらりつぱな生活をなすつても、御一家の方々だけでは、そんなにいらないと思います。やはりあの昔ながらのかなりいらぬ人間というとおかしいですが、たくさんのよけいな者がくつついていやせぬか、それが非常にそういう無理をする原因になつていやせぬか、こういう点も考えられるわけです。だからそういう点について、やはりもしお示しがなければ、どうしても片方でいるのだから、無理があるというのだから出さなければならぬ、こういうことで、国会は盲でもつて判を押さなければならぬ、こういうことになるわけですから、そういう点をやはり調査なすつているのなら出していただきたいと思います。
  30. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 ただいまも申し上げました通りに、宮内庁といたしましても、宮家の実際の御収入を踏み込んで調査をいたしかねます。しかしその使用人にお拂いになつております給與等を見ましても、比較的低いのでありまして、これらに対する給與増額ということも財源の点で非常にむずかしい点がございますし、宮家によつてまたお子さんがある方、ない方、お病気の方、いろいろございまして、一律にはもちろん出ませんが、大体われわれが推察いたすところでは、年に二百五十万くらいおかかりになるのではないか。それのうちから基礎におきまして、今回の定額をお一人百四十万円、妃殿下を入れますとお二方で二百十万円という数字を計算いたした次第でありまして、そのこまかい点は私どもにおいても表をもつて示しすることができかねておる次第であります。
  31. 今野武雄

    今野委員 次に法務府の法制意見第二局長さんにお伺いしたいのですが、憲法の第八條で「皇室財産を讓り渡し、」云々というような規定を一体なぜ設けたのか、その趣旨をまず説明していただきたいと思います。
  32. 林修三

    林政府委員 これは新憲法施行の際に、従来の皇室財産が原則として国家財産なつたからであります。ただ皇室私有財産を持たれることを憲法はもちろん否定していないのでありまして、私有財産を持たれることを当然認めておる。そこで皇室一般国民との間に、財産授受が行われることも当然予想できるのでありますが、それが非常に多額のものが流入したり、あるいは多額のものが出るということは、皇室の新しい憲法もとにおける御性格から見まして、やはり国会議決を経てその財産授受を行われる、あるいは国会議決に基いて行われるということが必要であろう、こういうことでこの條文が制定せられたものと考えております。
  33. 今野武雄

    今野委員 もう一ぺん林さんにお伺いしたいのですが、そうすると皇室私有財産処分について、国会関與するということに今聞いたのですが、大体私有財産に対して、国会が何か関與するということは、ほかには例があるかどうか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  34. 林修三

    林政府委員 この憲法規定が置かれましたのは、ただいま申し上げました通りに、皇室の新しい憲法もとにおける御性格に基いたものであると思います。私有財産ではございますけれども、やはり天皇日本国象徴であられます。そういう関係から、そこに立法的の面がある、そういうふうに考えて、この財産授受についての国会関與というものを規定されたものと考えます。一般の私事につきまして、一々そういうことをやつた例はというお話かどううかちよつとわかりませんが、あるいは外国の例ということをおつしやつしたのかどうかわかりませんが、国内におきましては、こういう個々の個人につきましての財産処分の例はないのであります。
  35. 今野武雄

    今野委員 そうするとそういう私有財産国会関與するというのは、非常に大きな問題だと思います。そういうことを憲法にうたわなければならなかつた理由、これは今象徴として法的な性格を持たれる、こういうふうな御説明でありますが、しかしそうすれば、旧憲法もとにおいてもそれならばあつたはずだと思います。新憲法なつてこうういうものができたということは、私ども考えではやはり戦争ということ、それと戰争に敗れたということと大いに関係があると思うのです。そこのところをもう少し立ち入つて説明願いたいと思います。
  36. 林修三

    林政府委員 これは旧憲法と新憲法性格上の差異がこういう面に出ていると思います。旧憲法時代におきましては、皇室財産はすべて国の財産とは別になつ参ております。今度の憲法におきまして、天皇の御性格も旧憲法時代とは違つて憲法規定されたようになつております。そういう関係で、こういう規定が置かれたものと考えております。
  37. 今野武雄

    今野委員 そういうふうになると、今の御解釈でありまするが、皇室私的経済行為というものに対しては、今度は国会議決や何かは要しないというように、「相当の対価による売買等通常私的経仙済行為に係る場合」はいらないということが、この皇室経済法にあるわけでございまするが、そうすると憲法制定趣旨に反することになるわけなんで、それで憲法にうたつているように、憲法に反するいかなる法律もつくることはできぬということになれば、今の説明では、こういう皇室経済法私的経済行為の自由を規定することはおかしいと思うのですが、その点はどうですか。
  38. 林修三

    林政府委員 憲法八條は、ごらんになります通り、「皇室財産を讓り渡し、又は皇室が、財産を讓り受け、若しくは賜興することは、国会議決に基かなければならない」と書いてありまして、国会議決に基づくということを要求しておるだけでありまして、財産授受あるいは賜與につきましてまで一々の具体的な例につきまして、国会議決を経ることを要するということは憲法規定しておりません。そこで皇室経済法は、憲法制定議会当時におきまして制定せられたものでございますが、その当時におきましても、その解釈もとにここで国会私的経済行為によりまして、相当の対価売買せられますものにつきましては、もちろん私的な売買等対価をとりますものでありますから、そこに別の理由が働くということは大体考えられません。結局無償で授與せられましたり、あるいは無償で受けられましたりすることは、やはり国会できめられることが必要であろう、こういうような趣旨で、その皇室経済法の最初に、私的経済行為による場合と一定金額以下による場合はこの法律で当然認めまして、国会議決に基きました法律でそういうことを認めました。その金額以上のものにつきましてだけ一々国会議決を要する、こういうことになつておるわけであります。これは憲法解釈上、そこまでは当然認められておるものと私は考えております。
  39. 今野武雄

    今野委員 そうすると今の憲法解釈憲法論によると、国会でもつて議決すれば憲法に反することでも——反することでもというとおかしいですが、国会議決して法律をつくつてしまえば、憲法はいらなくなるような、極端に言えばそういうような感じさえ持つわけですが、その点どうですか。
  40. 林修三

    林政府委員 この皇室経済法憲法趣旨に基きまして制定せられたものと考えております。憲法違反法律ではないと私は考えております。
  41. 今野武雄

    今野委員 ただいまのお答えで必ずしも満足しませんけれども、ともかく私有財産についての処分その他について、国会でやはり議決を要するということになつておるわけです。従つてその法律がたといきまつてつても、こういう根本法がある以上、国会がそれを要求すればその私有財産についてやはり調査し、あるいはいろいろな報告を求めることは当然できるわけでありますが、先ほどの宮内庁の方の意見では、私的な生活だからその中に入ることはできぬ、こういうお話だつたのですが、ちよつと食い違いがあるように思われるので、その点をただしておきたいと思います。
  42. 林修三

    林政府委員 皇室経済法はこの範囲におきましては、一々国会議決を経なくてもこの憲法趣旨から考えて、この範囲の財産授受は適当である、こういう趣旨もとにできておるものと思うわけでありまして、なお憲法の国政調査の権限に基きまして、皇室自体に対しては多少問題があると思いますが、宮内庁に対して答弁を御要求になることは、これは国政調査の権限であろうと思います。
  43. 今野武雄

    今野委員 ただいまのお答えによりますと、当然この委員会でもつて宮内庁に対して皇室私有財産に対してその処分の模様が無理であるかどうか、こういうことに対して当然資料を出していただいてここで討議するのが当然である、こういうように考えられるわけでありまするが、それを出していただけるかどうか、ちよつとお伺いしたいと思います。
  44. 宇佐美毅

    宇佐美政府委員 皇室用のいわゆる国の財産につきましては、これも国有でありますから、一般原則によるわけでありますが、皇室の私的財産につきましては、内廷費も法律にございます通りに公金ではなく、われわれの俸給と同じように、いただくと私の経済になるわけです。ここにあります財産の讓り渡し譲り受けということは、従前の取扱いといたしましては、無償財産をもらう、あるいは財産賜與するということに関するわけであります。それをどうしているかということにつきましては、ここで申し上げてけつこうなんでありますが、今までは結局毎年議決をいただいておりました二百五十万円の限度のときにも申し上げておるのでありますが、いわゆる社会事業でありますとか、学術振興でありますとか、あるいは社会公共に盡してなくなつた方に対する祭祀料でありますとか、そういうものにつきまして、法律及び議会議決をいただいた範囲内において、賜與いたしておるわけであります。いわゆる譲り受けの方につきましては、これは現在いただくことを非常に制限しておりまして、ときに地方の物産等をわずかだけお受けしておるということでございまして、その額もきわめて少額でございます。  以上申し上げましたような次第であります。御了承いただきたいと思います。
  45. 今野武雄

    今野委員 ただいまあげられたいろいろな項目——社会事業とかその他の項目でありまするが、これについては前々からもいろいろ問題が提出されております。ともかく私どもとしては、それもこれもみんな国民の税金である。国民の税金を皇室に上げて、そして皇室からさらにまた出すということでは、何か国家でもつて一体社会事業やその他社会保障とかそういうことを問題にしているのをそういう形でごまかすのじやないか、こういうことさえ感ぜられるわけです、これは非常に有害であると感ぜられるわけです。そういうような点から、私どもとしては当然審議して削るべきものは削る、こういうように考えておるわけなんです。そういう点から、やはり詳細な資料を出していただきたい、そういうふうに思うわけです。もし委員会としてそういうことがいれられないなら、議員として要求したいのですが、ぜひともそれを出していただきたい。そのことをお願いいたしまして、質問を終ることにいたします。
  46. 八木一郎

    八木委員長 他に御質疑ございませんか。——御質疑がなければこれにて質疑は終了いたしました。  これより皇室経済法の一部を改正する法律案及び自主室経済法施行法の一部を改正する法律案を一括して討論採決に入ります。これより討論を行います。今野武雄君。
  47. 今野武雄

    今野委員 私は日本共産党を代表いたしまして、この法律の改正に反対するものであります。われわれといたしましては、もともとこの法律そのものにも反対して来たのです。それは形式的な点というよりはむしろ中身に関する問題であります。  形式的な点については簡単に触れまするが、第一には、憲法において第八條規定が設けられ、皇室経済行為に対して国会関與するということは、軍に皇室天皇象徴である、その象徴及びその家族の問題は、公的な性格を持つというだけではなくして、やはり従来、日本皇室が、非常に大きな権限を持つておつた、その権限の背後に大きな財力を持つておつた、それを制限しなければ、やはり日本の民主化というものはむずかしい、こういう見地からなされたものと解するわけであります。従つてこの皇室経済法等によつて議会の監視を免れるような、そういうような権限委譲を政府にいたすというようなことは、われわれとしてはできるだけこれをしないようにしなければならない。そういう意味からわれわれはこれを違憲の疑いがある。そういう意味で形式的には反対でありまして、同時に内容から申し上げますと、この皇室経済法第一條第五項の規定による皇室用財産の調査に関する報告書にもあります通り、現在皇室用財産として使用されておる国有財産は莫大なものに上つておる。しかもそれが土地の評価は平均坪十円以下、建物の方は平均いたしまして千六百円くらい、立木等に至つては石当り六円というようなばかげた安い値段がついておる。これによつて皇室国有財産を使用している分量が非常に軽く見られている。これは一種のやはり煙幕になると思うのです。たとえば立木の場合などに申しましても、一石当りパルプ材でも千六百円もする。それが六円というなら、私どもでもすぐでも買いたいところであります。貧乏人でも買えます。光一つでもつて五石も買えるのですから、こんなもうかる仕事はないわけであります。そういうような安い見積りをして、そうしてどんなに莫大な国有財産を使用しているかということをごまかしておる。そうしてそういう煙幕のもとにやはり天皇の権威を維持して、そして再び戰争に持つて行く。再び軍隊をつくる場合の精神的なよりどころを保存して行こう、こういうような陰謀の現われであると私どもは見ますので、そういう点から内容的にも反対せざるを得ない。  翻つて国民生活を見まするに、遺家族あるいは戰傷病者はああいう戦争に自分の意思でなくかり出され、そうして大きな犠牲を拂い、生活も立たなくなり、いろいろな悲惨な事件が起つておる。労働者も戰争後であるというので、ひどい生活に甘んじなければならないという状態なつておる。農民も土地や娘も手放すというような状態なつておる。かような悲惨事が年々増して来るわけです。それが解決されて来るどころか、増して来る。この戦争のけはいというものがどんどん強くなり、そうして金へん景気というものが最近もまた出て参りましたが、そういう軍需景気が出て来る。そういう中にあつて一般国民生活というものがどん底に陷れられて来る。そういう際にこの皇室経済に対する制限をさらにゆるめて、ますます皇室が再軍備の象徴として利用されよう、こういうようなことに対しては、私どもとしては日本国民の安全という見地から断固として反対せざるを得ない。なおこういうような皇室の問題に対して質疑が私一人しかない、討論も一人しかない、このこと自身日本の民主化の程度を現わしておる。
  48. 八木一郎

    八木委員長 他に討論の通告があります。
  49. 今野武雄

    今野委員 そういうような点についても、私は強く国民諸君の関心を呼びたいと思う。どうして皇室というものが、いまだにそうやつて神聖視されるか、それは実に危險なものを含んでおる。よく日本では政府もイギリスの王室の例を引きますが、イギリスの王室が今日に至つた道を考えてみれば、三百年前、一六四九年にチャールズ一世は首をはねられておる。そうしてそういう革命を経て初めて国民皇室とがくつつくような、そういう妥協的な形が成り立つて来ているわけです。そういうようなことを考えてみましても、当然われわれ国民としては、こういうような天皇を神聖視する考えには、そういうような事態にまでそのことを持つて行くような非常な危険なものがあることを感ずるわけです。そういう意味からいつても、私どもはこの改正に対して断固として反対せざるを得ないわけです。  以上反対の理由を申し述べます。
  50. 八木一郎

    八木委員長 江花靜君。
  51. 江花靜

    ○江花委員 私は自由党を代表いたしまして、皇室経済法の一部を改正する法律案及び皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を一括討論いたします。  ただいま共産党の今野君からいろいろ質問及び討論において御意見を拝聴したのでありますが、これはまつたく世界観を異にしておるといいますか、全然立場を異にしておるものの議論でありまして、私どもとはいくら議論をいたしましても、これは平行線であります。私ども日本象徴としておいでになる、それに基いてやはり一国の單に天皇の御生活という問題でなく、われわれはやはり国の権威といいますか、そこまで強く言わぬでも、体面というものを高めることは、今日の世界の人類の現状におきましてはきわめて必要なことであります。かつ日本皇室が戰争にかり立てたといいますけれども、この考え方自体今野君自身が民主的でないので、天皇がかりにいくら好戦的であられたとしても、国民が全部戦争というものの見通しその他についてはつきりした観念を持つておつたとしたならば、これは戦争になるはずがないことは、率直に認めなければならぬ。かつ歴史をたどつてみても、今野君は何を根拠にしておられるか知らぬが、日本皇室が戰争の陣頭に立たれたということは、神功皇后様ぐらいはあるいはあられるかもしれぬ。今日権力者に悪用されたというような批評は成り立つかもしれぬけれども皇室自体が好戦的であり、戰争の先頭に立たれたというナポレオン式のことは、わが国の歴史にはまずないのであります。今野君はどこの人種であるか、よくわかりませんが、そういう点もよく実体を見きわめなければならぬ。またロシヤにおいても、私よく存じませんけれども、スターリンの生活と一労働者にもいろいろありましようが、労働者生活とは同じであり得るはずがないし、同じである必要がない。一国の主宰者としてのスターリンと一労働者とはおのずから違うスターリンが鉄のカーテンを固くとざして外国のものと何も折衝していないならばいざ知らず、そういうでたらめ議論を振りまわしているということは、まつたく根拠がない。小さな例をとつてみれば、たとえば共産党の党首である徳田球一君、この辺と共産党員であるいろいろな者、それが全部同じ生活であり得るはずがない。またあり得ない。大体今野君が背広など着ているということがおかしい。なぜ菜つぱ服でも着て、その辺のガードの下ででも最低生活をせぬか。そういうのを暴論という。ただ困つている人たち生活をよく考えてやるということは、これはもちろんよくなる上にもよくしてやらなければならぬが、最低のガード下の生活者と同じかつこうをすることが、あたかもわれわれの義務であり、美徳であるかのごとく言う議論に対しては、私は断固反対いたします。以上討論を終ります。
  52. 八木一郎

    八木委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決を行います。皇室経済法の一部を改正する法律案及び皇室経済法施行法の一部を改正する法律案の両案に賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  53. 八木一郎

    八木委員長 起立多数。よつて両法案は原案の通り可決いたしました。  以上によりまして両法案を可決いたしましたが、この両法案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時二十二分散会