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1951-12-13 第13回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十二月十三日(木曜日)     午前十一時開議  出席委員    委員長 八木 一郎君    理事 江花  靜君 理事 坂田 英一君    理事 船田 享二君       天野 公義君    大内 一郎君       木村 公平君    平島 良一君       本多 市郎君    松本 善壽君       亘  四郎君    松岡 駒吉君       深澤 義守君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君  委員外出席者         総理府事務官         (大臣官房財閥         役員審査課長) 堀内 正名君         総理府事務官         (新聞出版用紙         割当局長)   鈴木 政勝君         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ————————————— 十二月十二日  委員橋本龍伍辞任につき、その補欠として八  木一郎君が議長指名委員に選任された。 同日  木村公平委員長辞任につき、八木一郎君が議  長の指名委員長補欠選任された。 同月十三日  委員井上知治君、田中萬逸君及び平澤長吉君辞  任につき、その補欠として亘四郎君、平島良一  君及び天野公義君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  深澤義守君、天野公義君、平島良一君及び亘四  郎君辞任につき、その補欠として今野武雄君、  平澤長吉君、田中萬逸君及び井上知治君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  財閥同族支配力排除法を廃止する法律案内閣  提出第一号)  新聞出版用紙割当に関する法律を廃止する法  律案内閣提出第二号)     —————————————
  2. 八木一郎

    八木委員長 これより会議を開きます。  議事に入ります前に、一言お許しを得てごあいさつ申し上げます。  昨日の衆議院におきまして、不肖私が内閣委員長の重責を汚すことに相なりました。もとより未熟な者でございまして、不なれな点が多いことと思いまするが、これから委員各位の絶大なる御協力によりまして、大過なくその職責を全ういたしたいとお願いするものであります。何とぞ格別の御協力のほどをお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————
  3. 八木一郎

    八木委員長 これより財閥同族支配力排除法を廃止する法律案、及び新聞出版用紙割当に関する法律を廃止する法律案一括議題といたし、質疑を行います。質疑の通告がありますから、これを許します。深澤義守君。
  4. 深澤義守

    深澤委員 財閥同族支配力排除法を廃止する法律案につきまして。若干の質問をいたしたいと、思うのであります。  財閥戦争の原動力であり、推進力であり、また背後における立案者であつたという意味において、大東亜戦争終戦と同時に、この解体が強力に推し進められたのでありますが、その見地からこの法案立案、制定、実施されたことは、これは申すまでもないことであります。そこで私は、この法律趣旨官房長官にこの際お聞きしたいのでありますが、これはポツダム宣言の第六項にもありますように、戰争を遂行した者並びにその勢力は永久にこれを排除さるべきである、こういう見地から、こういうような勢力に対する解体並びに排除の処置がとられたと思うのであります。従つてその戰争の当時において存在しておつた財閥はもちろんのこと、その後においても日本における経済力集中の形は、厳格に永久に排除さるべきであるという見地から、この法案立案され、実施されたとわれわれは解しておるのでありますが、この法律趣旨というものについて私はもう一度官房長官から明確な御答弁をお伺いいたしたいと思うのであります。
  5. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 この法律は、一つはむろん戦争に直接間接関係があつたと思われた点からでありますが、もう一つは、経済民主化という点をねらつてつくられたものと思います。そこでこの法律によりまして、すでにすべての過去の財閥解体され、財産の処分も終り、人的の連鎖も断たれておりますので、すでにこの目的は十分達したと認められるのであります。そこで今ちよつと今後におけるというようなことを言われましたが、今後の問題は、戦争を計画するとかなんとかいうようなことは、もうあり得ないとわれわれ確信しております。ただ経済民主化というような点からいつて、考慮を要する点もあると考えておりますが、これにつきましては、私的独占禁止法その他一連の経済法規がありまして、これによつて十分今後における目的を達し得ると考えておるわけであります。
  6. 深澤義守

    深澤委員 もちろん財閥解体が、経済民主化という見地から行われて、それから戦争責任というものの追究から行われておるのでありますが、経済集中というものが、常に戦争を組み立てる背景になつておるということは、これはもう資本主義社会における通説でありまして、これは一九四八年二月一日付、マツカーサー元帥アメリカ上院議員マクマホーン氏にあててある書簡の中にも、その第二項に、経済力集中が、戦争の暴力を組み立てる中核をなしたばかりでなく、その指導者たちが、軍閥と協力して戦争と征服の方向に国民の意思を形成した、こういうように明快に言われておる。従つてどういう形におきましても、経済集中あるいは独占という形が、戦争組織する背景になるということは、もう洋の東西を問わずこれは明らかであります。従つて日本民主化と、日本が再び戦争への傾向をなくするためには、徹底的に経済集中排除されなければならぬということが、この法律趣旨であるとわれわれは考えるのであります。従つて戦争中の財閥が形式的にこれは解体されたと言われておりますが、われわれはそうは解釈することができないのであります。なぜかならば、旧財閥は一応細分され、あるいは人的な重要メンバー人々は追放されておるというような形になりましても、それとのつながり、あるいはその組織の中にあつて相当ポストを持つてつた人々が、分散された会社や、あるいは企業体指導者となつておることは、これは明らかであります、従つて政府がすでにその目的が達成されたと認められるということは、まことにわれわれは事実と相反することはなはだ遠いという感じを持つのでありますが、この目的が、人的な上からも、あるいは資本の面からも、完成されたというぐあいに、真剣に政府はお考えになつておるのかどうか。その点をもう一ぺん明確にお聞きしたいと思います。
  7. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 私とあなたとは意見がどうも違うようでありますが、われわれはもう確実に、しかも明確に、財閥解体され、この法律目的は達成されたと考えております。
  8. 深澤義守

    深澤委員 政府私的独占禁止法の廃止をも総司令部に要請されたかのごとくにわれわれは聞いておりますが、しかし総司令部はこれを拒否した。そういうこと自体の中に、まだ日本経済独占形態が十分に整理されていないという一つの証左があると考えます。政府はこの私的独占禁止法等があるからよろしいと言われておるが、しかしこの法律さえも廃止しようとして、総司令部に要請されたということをわれわれは聞いております。その点はどうですか。
  9. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 あなたの間違いであります。
  10. 深澤義守

    深澤委員 それでは私は財閥解体実情について、さらにもう少しお聞きしたいのでありますが、この集中排除法によりまして指定された会社相当たくさんあるのでありますが、そのうち、もちろん十五の大コンツエルン相当する会社はこれはすでに解体されております。その後において八十一社に対してまた指定をしておりますが、その八十一社のうち、わずかに二十四社が取引行為の停止があつただけで、五十数社というものはそのまま取残されて、以前と同じような業態を続けておるという事情があるやにわれわれは聞いておるのでありますが、この点はどういうぐあいに整理されておりますか。私はその意味で、昨日も詳しい資料の要求をしたのでありますが、それに相当する資料をいただいておりませんので、その点の御説明をひとつ願いたいと思います。
  11. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 これは説明員から詳細に説明いたさせます。
  12. 堀内正名

    堀内説明員 集中排除関係は、この法律ちよつと関係がないのでございます。
  13. 深澤義守

    深澤委員 それでは十大財閥というものの解体事情でありますが、この十大財閥というものがどのように解体されておるか、その具体的な実情を、この資料ではどうも漠然としてわかりにくいのでありますが、できる限り詳細に説明していただきたいと思います。
  14. 堀内正名

    堀内説明員 資本の面からする財閥解体というのは、持株会社整理委員会の任務でございます。この財閥同族支配力排除法目的とするところは、十大財閥人的結合を切り離す、そういうことが目的でございまして、どのようにその法律を施行したかということは、大体ただいま差上げました報告書でおわかりのことと思いますが、いかがでございましようか。
  15. 深澤義守

    深澤委員 私は今ここへ来て資料をいただいただけであります。従つてまだ熟読すらしていないのでありますから、十分に納得し得るように御説明願いたいと思います。
  16. 堀内正名

    堀内説明員 十大財閥財閥指定者の同籍者及びその十代財閥財閥会社の主要な旧役員排除しまして、十大財閥人的結合を切り離すということが、この法律目的でございます。しかしながらこの法律には免除規定がございまして、自分財閥関係役員ではないと信ずる者は、内閣総理大臣に対して財閥関係役員に該当しないことの承認申請をすることが規定されております。それに基きまして、財閥関係役員に該当しないことの承認申請した者が、この法律施行以来七百四十一件、そのうち承認されたものが六百九十一件、不承認または却下になつたものが五十件でございます。これはもちろん承認申請をした者は、きわめて地位が軽かつた者でありまして、この法律にいつてありまするところの財閥形成に重大な寄与をしていなかつたと認定された結果、承認されたものでございます。その他の清算人財閥関係役員であつても、総理大臣承認があれば、清算会社清算人に留任または就任できるという規定がございますが、それに関して承認申請した者が通算して九十七件でございます。このうち承認が九十三件、不承認が四件となつております。それからこの財閥会社企業再建整備によつて第二会社を設立した場合は、その会社が前会社承継会社であるかどうかということを認定し指定する必要があるので、それに関して各承継会社承継会社であるかどうかという指定申請をしなければならないのでありますが、この指定申請をしたものが通算しまして百三十一件、うち指定が百十六件、また不指定が十七件となつております。また自分会社財閥会社指定されておるが、異議がある。こういつたわけから異議申立をしたものが四十件でありまして、そのうち十九件は承認されております。これらの申請のうち、本法律目的としています人的結合の切難しに最も重大な関係のある財閥関係役員個人申請というものは、この法律ができたとき現に財閥会社またはその関係会社の職にあつた者は、ただちに三十日以内に承認申請をしなければならないという規定がありまして、また現職を難れている者は、随時必要に応じて財閥関係役員でないという承認申請をすることができることとになつておりますが、これらの申請は、本法律ができましたのは、昭和二十三年一月七日でありまして、たまたま現職にあつた者の数はきめて多く、それらの人々申請昭和二十三年中に全部終了いたしました。二十四年以来といものは、そのような申請は急激に減少して来たのでございます。そして本年の上半期になりましては、それらの申請はもうほとんどなくなつて来たような状況であります。自分財閥関係役員に該当していないということの承認申請がこのように漸次非常に減少して来た理由は、財閥関係役員というものが旧会社へ復帰する可能性及び機会というものが、非常に少くなつて来たということを物語つておるものでありまして、またそれが事実原因であります。このことは従つて将来そういう人たちによつて財閥が人的な面から復活するというような懸念はないということを証拠立てるものと私たちは解釈しております。しからば財閥関係役員がなぜ旧会社に復帰することが困難かと言いますと、この法律によつて財閥関係役員に該当しておる人たちは、おおむね終戰前役員でありまして、すでに年齢的におよそ五十歳以上の人たちが非常に多かつたのでありまして、もしこの法律によつて排除されなくても、また会社によつて停年制というようなものを定めておりますが、そういつた制度がなくても、この法律ができてからすでに今日三年以上を経過しておりますし、漸次自然退職するような運命になつた人たちだと思いまして、こういつた年齢の点からいつても、再び財閥会社に返り咲くというようなことは、われわれの承知する限りでは、それら御本人ももはやあまり希望しませんし、また会社方面でもこれを迎え入れるというような意向がないようでございます。また経済界では、御承知通り昭和二十二年の一月四日に公職追放のわくが非常に擴大されまして、いわゆる公職追放令で、公職会社指定されている会社常務以上の人たちは全部退任させられました。またこの法律ができまして、さらに非常に広範囲の役員が、各財閥会社またはその関係会社から排除されました。そのために財閥会社またはそれら関係会社役員陣に一時非常な動揺がありまして、非常な変化を来したことは、御承知通りでございますが、その結果、各社を通じて部課長クラスにあつた人たちが、一躍社長になるとか、専務になるとか、常務になるとかいつたような現象が起つたのでありますが、これらの新しい役員も、すでに公職追放または本法律による排除以来三年以上経過しておりまして、会社経営に対しても非常な自信を持つて参りましたし、また経験を積んで参つたのでありまして、会社も全般的に見て、そういつた古い財閥関係役員自分会社に再び迎え入れようというような会社自体必要性というものが非常に減少しております。また現いの役員というものは、自分たちの頭の上にまた新たに古の人を迎え入れようというような気持がないことは、人情のしからしむるところでありまして、また現在の役員というものはほとんど全部が従業員上り重役でありまして、かつて重役に比して、従業員組合における基盤というものを持つているように認められまして、それらの点から、組合の圧力というようなものもありまして、古い役員が再びその会社に帰つて来ようというようなことは、さらに困難と感ぜられます。また財閥関係役員の中には、旧財閥資本背景として就任したものが多かつたことは、御承知通りでありますが、前に官房長官から御説明のありました通り財閥解体資本の面でも非常に徴力となつておりまして、従つてそれを背景として再び会社に復帰するというようなことは考えられない。今日こそ復帰の可能性というようなものも多分に少くなつているのではないかと考えられます。これはもちろん一般論でありまして、旧役員が再び財閥会社に復帰して、その首脳部に返り咲くとか、あるいは最近の例で申しましても、会長になるとか、相談役になるとかいうようなことがございますが、これは一部情誼に基いたものもあるかもしれません炉、大体はその人個人の実力、すなわちその人がその会社に必要な非常に優秀な技術を持つているとか、またはたまたまその会社経営困難になつていたような場合に、経営の才能が優秀であるという点を買われて入つて来るというような場合でありまして、旧財閥とのつながりとか、因縁といつたものから復帰するものではないと考えられます。
  17. 八木一郎

    八木委員長 説明員の方に申し上げますが、まだ説明相当ございますか。簡潔に要領よくお願いいたします。
  18. 堀内正名

    堀内説明員 もしそのような場合があつたといたしましても、これはその会社が発展するために、ひいては日本経済再建というものがうまく行くためには、むしろ望ましいことではないかとわれわれは考えております。以上であります。
  19. 深澤義守

    深澤委員 ただいまの説明では、單に旧財閥主要役員という、個人を問題として考えられているようであります。相当年輩の、旧財閥関係した個人個人が、日本経済界から引退しているという事実は、これは概括的に認めることができると思います。しかしそこに問題があるのではないと私は思うのです。財閥事業形成維持に強力な寄与をした人的結合を切り離す目的は、財閥というものの日本経済における支配力をなくするということが根本の問題であると思います。従つてそういう老朽の個人々々は、その経済機構から排除されたといたしましても、依然としてその支配力というものはあるのであります。單に縁故関係とか情実関係とかいうものの観点から現在の役員や現在の経済機構が、そういうものの支配を受けていないという観点は、これはまことに形式にすぎないと私は考えるものであります。そこで官房長官に私はお伺いしたいのでありますが、現在の日本三井系とか、三菱系とか、あるいは安田住友というような、旧財閥勢力が依然として支配的な力を持つているということは、これは経済雑誌すべてを見ても、世間周知の事実であります。こういう点に関しまして官房長官はどういうふうに考えられておるか。単に人的な整理行つたから、すでに財閥日本では解体されたというぐあいに考えることは、まことに形式的であつて日本経済実情というものと全然食い違つておるというぐあいに考えるのでありますが、そういう点は官房長官はどういうぐあいに考えられておりますか。
  20. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 私は先ほど言いましたように、財閥資本の面からも人的の面からも、すでにその実体を失つておると考えております。そこでたとえば財閥会社に働いておつた人たちが新しい会社を興して仕事をすることは、これは財閥支配力を継続するのではなくて、今までの経験を生かして同じかまの飯を食つた者が一緒に働くということであつて、何らさしつかえないと思つております。また財閥の、たとえば三井のトレード・マークというものを使うということは、世界各国に売り込んでおる商標でありますから、これを使うことも一向さしつかえないと考えております。要するに新しい組織で新しい企業を興すことは一向さしつかえない、こう思つております。
  21. 深澤義守

    深澤委員 それでは私は具体的な例をもつてお伺いしたいのでありますが、たとえば、今日本経済支配は、大体銀行支配中心になつていると思います。大体日本金融支配は十一大銀行がこれを行つている。全日本銀行の貸出しの大体五五%をこの十一犬銀行が占めておる。その十一大銀行の中に、現在の冨士銀行臓旧安田銀行である。現在の千代田銀行は三菱銀行である。大阪銀行住友銀行である。帝国銀行三井銀行であるというぐあいに、これは何人も否定することのできない事実であります。こういうものが現在の日本経済中心支配力を握つているわけでございます。もちろんそのメンバーは昔のメンバーとは違つておりましようが、依然としてそういう三井系三菱系安田系住友系というものが支配しておるのであります。こういう観点は、これは経済事情を知つている者には常識であります。これでもつてなおかつ日本財閥解体され、日本経済支配力の中に財閥勢力がないという考え方は、およそこれは実情と反する考え方であるというふうに私は思うのであります。銀行一つの例をもつても、財閥支配しているのは明らかな事実であります。こういう点はどういうぐあいに考えておりますか。
  22. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 私は今申した通り財閥というのは、たとえば住友一家支配しておる住友コンツエルンというものがあるとすれば、その住友一家支配力をなくすることが根本であつて、元住友において働いた人たちが新しい形態において新しい事業をやることを何ら妨げるものではありません。なおかつてこの一般論をお聞きになりましても、今議題になつておる財閥同族支配力排除法というこの法律は十大財閥の同籍者とそれから主要な役員排除して、その人的結合を切り難すということが目的でありまして、その一般論と今議題になつています法律の内容とはいささか趣を異にしておるのであつて、ただいまのところは財閥同族支配力排除法議題となつておりますから、これについてのみ御審議を願いたいと思うのであります。
  23. 深澤義守

    深澤委員 もちろんそういう形式的なことはわかるのであります。しかしながらその人的結合を切り難すということろに重点が置かれておるのでありますが、その前段にある財閥事業形成維持に有力な寄与をした人的結合を切り離すことと、それから財閥事業形成維持解体するところに目的があると思う。そのために人的結合を切り離すのだということでありますから、単に個人々々の人的結合を切り離されたからといつて財閥事業形成維持いうこの事実をわれわれは解体しなければならないというところに、この法案趣旨があるというぐあいに考えますがゆえに、あえて私は日本経済民主化のためには、この財閥同族支配力排除法私的独占禁止法、この二つが武器として活用されなくてはならぬ。その活用が十分行われていない。あまり実情に即さない考え方と認識を政府は持つておられるということを私は追究しておるのであります。先ほど人的結合の問題について審査課の方から御説明がありましたが、人的結合を切り離すということでありますけれども、これは單に戰争中の財閥主要役員、こういう者を経済機構の中から排除するというところに重点が置かれて行われたようでありますが、財閥の中にあつて相当ポストを持つてつた者が、分散された会社社長とかあるいは常務とかという立場にあり、そうして排除された人々の陰の支配というか、あるいは連絡というか、そういうものを持つておることは、これはいなむことのできない事実であります。たとえば三井物産等解体を見ましても、現在は幾つかの会社に分散されております。ところがその分散された会社主要役員は、先の業務部長であるとか、あるいは総務部長であるとかというような人々が、そういう分散された会社に依然として支配力を持つておるわけであります。そういうものをわれわれは十分に検討し、あるいは結合をなくして行かなければ、この法律のいわゆる人的結合を切り離すという趣旨を十分実現したということにはならないと思うのであります。その人的結合の問題は、軍に旧財閥の主要の役員経済機構から切り離したというだけで、人的結合は十分に切り離すことができたというふうに解釈することは、まことに安易な考えに過ぎると思うのであります。そういう点はどういうぐあいに考えられておりますか。
  24. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 これは法律でありまして、法律の命ずるところに従つて総理府の中の関係の職員が仕事をいたすのであります。他方においては基本的の人権を尊重するということもありまして、そうむやみにだれでもかれでも仕事をさせずに追つばらつてしまうというわけに参りません。法律従つて法律の認める範囲内でしか仕事はできないのであります。現実にその仕事をずつとやつて来たところが、本年になつてから審査課に対する承認申請等はほとんどなくなつてしまつて審査課は事実上何も仕事をしない状況になつておるのでありますから、この法律を廃止して審査課をやめる、これは当然のことだと思います。
  25. 深澤義守

    深澤委員 私は審査課をやめるという問題を言つておるのではなくして、こういう法律全般が廃止されるということはまだ日本財閥に基礎を置く勢力が完全に駆逐されてないから、現在の事情に応じてさらにこの法律の改正をやるとかいう問題ならともかくも、全然なくするということはまことに安易な考えにすぎないのであつて、現在財閥の流れをくみ、あるいは財閥支配力がまだ残つておる勢力が、日本経済界に大きな力を持つておるのではないか、こういう点からこの法案自体をもつと改正して、そうして法案のほんとうの趣旨である日本財閥あるいは独占集中支配の力を解体する。そうでなければ真の経済民主化ということは行われないという見地から、われわれはこういう主張をしておるのであります。  そこで私はなお質問したいのでありますが……。
  26. 八木一郎

    八木委員長 深澤君に申し上げますが、御意見は御意見として、御質疑の点がまだ相当ございますか。御質疑の点を簡潔に御進行願います。
  27. 深澤義守

    深澤委員 そこで先ほどの説明にもあつたのでありますが、財閥関係役員に該当しないという承認申請が七百四十一件あつた、こういう御説明でありますが、大体財閥関係役員に該当すると指定した総数はどのくらいあつたのでありますか。
  28. 堀内正名

    堀内説明員 ただいまの御質問の財閥関係役員は生存者の該当総数が三千二百三十七名でございます。このうち承認されました六百九十一名を除きましたものが、いわゆる不承認なつた五十名とともに潜在該当者となつておるのでございます。
  29. 深澤義守

    深澤委員 「十大財閥の同籍者及び主要な旧役員」ということになつておりますが、これは同籍者をも含むのですか。
  30. 堀内正名

    堀内説明員 同籍者を含んでございます。同籍者の数は十大財閥で二百五十二名になつております。
  31. 深澤義守

    深澤委員 それから解体されて企業再建整備によつて承継会社が出たのですね、その承継会社はどのくらいの数が承継会社として出て来たのですか。
  32. 堀内正名

    堀内説明員 承継会社は百十六社でございます。
  33. 深澤義守

    深澤委員 どうも具体的にわからないのであります。たとえば三井物産はやはり財閥経済機構として指定されたのですが、その三井物産はどういうぐあいに人的結合が切り離され、それが解体され、どういうぐあいに再建整備によつて承継会社が出たか、そういう一つの具体的な例を説明していただけば了解するにいいのです。
  34. 堀内正名

    堀内説明員 三井物産、三菱商事、この二つは全然別個の政令によつて拘束されておりまして、この法律とは関係がございません。従つて三井物産系の第二会社というものはこの法律では承継会社になつておりません。
  35. 深澤義守

    深澤委員 それでは何でもよろしゆうございますから、この十大財閥会社のうち一つの例をとつて、こういうぐあいに人的結合が切り離され、こういうぐあいに再建され、こういうぐあいに承継会社が出たのだという一つの例を御説明願いたいと思います。
  36. 八木一郎

    八木委員長 深澤委員に申し上げますが、御質問の点は相当広範囲な調べを要するように思われますが、後刻ではいけませんか。
  37. 深澤義守

    深澤委員 この点は私は昨日の資料要求の場合に、そういうものが具体的に明らかにされて、そうしてこの法律がこういうぐあいに具体的に処理されたんだということがわかることによつて、この法律の廃止に対してわれわれは審議ができるという考えで要求した。ただこういう程度の資料では、この重大な法案がいかに実施され、そうしてこれを廃止してもよろしいという了解ができないのであります。そういう点で私は本日の資料は、そういうものも具体的に示されている資料がおありになるというふうに考えておつたのでありますが、まことに漠然たるものでありまして、了解に苦しみますがゆえに、そういう質問をするのであります。だから私は最大譲歩をいたしまして、一つの例でもいいから具体的に説明してもらいたい、こういうわけであります。それが了解できなければもうこの法案はよろしいんだということが理解できないので、できますならば一つの例でも御説明願いたいのであります。
  38. 堀内正名

    堀内説明員 たとえば住友の井華鉱業株式会社、これが四つの第二会社にわかれまして、別子鉱業、別子百貨店、別子建設、井華鉱業——井華鉱業の名前は前の通りであります。この四つにわかれまして、それらの四つはいずれも承継会社指定されました。これには住友系財閥関係役員は就職できないことになつております。
  39. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 ちよつと補足して御説明申しますが、深澤君はいろいろのものを一緒に考えておられるようですが、財閥解体の各種の法令は大部分がポツダム政令で出ておるのでありまして、これがただ一つ法律で出ておる。そこで主として人的のつながりを切り離すものはこの法律で出ておりますが、そのほかの財的の分割その他いろいろの支配力排除をするのは政令で出ておるのであります。ところがその他のものは全部もう仕事が終了したと認められまして、ポツダム政令は司令部で了承してこれを廃止することになりまして、すでに廃止しておる。従つてその主たる仕事をいたしました持株整理委員会もすでに廃止されておる。そこで法律だけは、これは国会を通さなければなりませんから、今まで廃止されずに来たのであつて、その関係上これだけ一つ取残されておるのであります。そこでこの法律の審議を願つておるのであつて、今、説明員にお聞きになつたようないろいろな点は、持株整理委員会の仕事であつて、政令でもつて行われ、すでにその政令が廃止されて、もう仕事が済んだということになつております。そこで今御審議願つているのは人的の問題にとどまつて、これだけ残つているから不公平だ、こういうのであります。そこで政府委員にいろいろお聞きになりましても、それは持株整理委員会の方の人でも呼んで来ないと、詳細なことは出ない。
  40. 深澤義守

    深澤委員 私はこの際、もちろん今の法律技術的に官房長官の言うことはわかるのです。そういう意味において、この法律整理しなければならないということも、よくわかるのです。しかし問題は、先ほどから私が申上げているようにそういう政令がもう廃止され、持株整理委員会なくなつた。そのしてこれもなくなるのだという、その法律技術上の問題はわかるのであります。そこでこの提案理由の説明にもありますように、資本の面から言つても、人的の面から言つても、経済民主化ができたんだ、それによつて財閥解体はできたんだというぐあいに言われているけれども、たとえば日本経済界を見ても、紡績関係を見ましても、これはもう十ぐらいの紡績会社日本の紡績の部門の九%を握つている。その中に三井系三菱系という有力な商社が重要な地位を占めておる。また人絹を見ても製紙を見ても漸次そういう形において財閥系の資本独占的な立場をとつておるということは、これは無視でできないのです。そういう事情があるにかかわらず一方においては政令のこういうものがどんどん廃止されて、そうして政府の方では人的にも資本の面からいつて経済民主化されているのだ——少しも民主化されていない。むしろ集中と独立はますます高度に逆にもどりつつあるということが実情であつて、どうもこういうものをどんどん廃止してしまうということと実情と違うから、その点で私は問題にしておるのであります。そこで私は法律技術上の問題はよくわかりますが、なかなか官房長官にお伺いする機会がないので総括的にまずお伺いいたしますが、官房長官日本経済の上に、財閥資本や、あるいはその他の独占資本が大きな力を持つて日本経済支配しておるという事実をお認めになるのかならないのか、日本経済はきわめて民主化されて自由競争の中に発展しつつあるというあなたの属する自由党の自由主義経済の方向が明らかに発展の方向をたどつておるのか、それとも独占のこういう方向が進んでいるのじやないか、どういう見解を持つておるのか、この際ひとつお伺いしたい。
  41. 岡崎勝男

    岡崎政府委員 独占集中も全然ないのであります。財閥の財産はすでに解体されて、もう何ら力がないのであります。これは私は確言いたします。
  42. 深澤義守

    深澤委員 これは議論になりますからあまり申しません。日本経済独占資本支配下に置かれていることは明らかであります。これは討論の場合に1私は明確にしたいと思います。
  43. 八木一郎

    八木委員長 他に御質疑がなければ、これにて質疑は終了いたしました。  これより財閥同族支配力排除法を廃止する法律案及び新聞出版用紙割当に関する法律を廃止する法律案を一括して討論、採決に入ります。
  44. 深澤義守

    深澤委員 議事進行について……。討論をする場合にまだ十分整理されていないのであります。一旦休憩をされて、午後に私は討論したいと思います。なおあえて強行するならば、私はまず委員会は定員に達しないと思うから……。
  45. 八木一郎

    八木委員長 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  46. 八木一郎

    八木委員長 速記を始めて。  それではこれより討論を行います。討論の通告がありますからこれを許します。深澤義守君。
  47. 深澤義守

    深澤委員 ただいま議題になりました財閥同族支配力排除法を廃止する法律案に対しまして、私は日本共産党を代表いたしましてここに反対するものであります。  大体侵略戰争の原動力は、またその組織者は、洋の東西を問わず財閥であります。あるいは独占資本であることは、これは明らかであります。日本の大東亜戦争の原動力もまたこの背後に三井、三菱、住友安田等の財閥独占資本があつたことは、何人もこれは否定することのできない事実であります。戦後における日本経済民主化日本再建のためには、これらの財閥独占資本の徹底的な排除なしに経済民主化も、日本の再建も不可能であります。ポツダム宣言の第六項の規定に、日本国国民を世界征服の挙に出づるの過誤を犯さしめたる者の権力及び勢力は、永久に排除されなければならないと言われております、この永久に排除されなければならない勢力の中に、この財閥独占資本があることは明らかであります。この法律が立法、公布されたのも、このポツダム宣言趣旨を実施するために立法公布されたものと解釈できるのであります。ところが政府の提案理由によりますと、わが国経済民主化の大眼目であつた財閥解体は、本年上半期に至つて資本の面からもあるいは人の面からも、完全にその目的を達成したと認められるに至つたという見解から、本法律の廃止が行われんとしているのであります。しかしはたして日本財閥が完全に解体され、そうして日本経済の上から財閥支配独占資本支配というものが一掃されておるかどうかということを考えてみますと、日本経済の上に旧財閥の流れをくむ勢力支配的な力を持つて、そうして日本経済独占資本支配下にあるということは、これは明らかな事実であります。この法律あるいは財閥解体事業が完全に行われずして、むしろ独占資本を温存し、財閥勢力を温存することに相当の努力が行われたという事実すら、われわれは見のがすことができないのであります。特に銀行等の問題を考えてみますと、旧安田銀行が富士銀行となり、あるいはまた千代田銀行は旧三菱銀行であり、大阪銀行は旧住友銀行であり、帝国銀行は旧三井銀行であるというような形で、日本経済の上に君臨しているこの事実を何人も否定することはできないと思うのであります。  なお日本一般の経済界を見ましても、紡績界は十の大きな三井系あるいは住友系会社によつて支配されている。人絹界を見ましても、そのような大きな独占資本勢力が君臨しております。製紙、石炭、石油、鉄鋼関係を見ましても、そういう独占資本支配が行われていない事実は一つもないのであります。こういうものに徹底的なメスを加えて、そして経済民主化をすることこそが、侵民戦争の禍根を断ち、日本の平和的再建の基礎をつくるものであるというようにわれわれは考えるのであります。こういうことをそのままにしておいて、もはや財閥解体が行われたというようなことは、まことにこれはそらぞらしい認識であると考えるのであります。こういう見地から、むしろ私は本法律は今日の実情に即して改正され、そして財閥勢力並びに独占資本勢力排除する方向に、一般の努力を進める機会であると考えるにもかかわらず、その逆にこの法律を廃止するということに対しましては、わが党といたしましては断じて賛成することができないのであります。以上をもちまして本法案に対する私の反対論を終ります。  なお一括上程されました新聞出版用紙割当に関する法律を廃止する法律案につきましては、もはや事実上この法律の効力もないほど処理されておりますから、この法案に対しましては私どもも賛成いたします。
  48. 八木一郎

    八木委員長 江花委員
  49. 江花靜

    ○江花委員 今上程になりました両法案のうち、まず財閥同族支配力排除法を廃止する法律案でありますが、これは政府からも詳しく御説明なつ通り、この法律の所期する目的はすでに達せられたのでありまして、今共産党の深澤君の言うごとくかりに百歩護つて財閥解体されないか、あるいはまだ新しいそういう事態が生じておるというような事実がかりにありといたしましても、これはまた別個の法律でこれを処置すればいいのであつて、この法律の廃止とまつたく別個の問題でありますから、今反対された理由は、この法律の廃止に対する理由としてはなつていないと考えます。  次に新聞出版用紙割当に関する法律を廃止する法律案につきましては、これはもちろんそういうことを必要としなくなつた事態が生じたのでありますから、廃止するのが当然であります。  以上、自由党を代表して両法案に賛成の意を表します。
  50. 八木一郎

    八木委員長 これにて討論は終局いたしましたただちに採決に入りたい評と存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 八木一郎

    八木委員長 御異議なければさように決し、これから採決に入ります。まず財閥同族支配力排除法を廃止する法律案を採決いたします。本案について賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  52. 八木一郎

    八木委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  次に新聞出版用紙割当に関する法律を廃止する法律案議題とし、採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  53. 八木一郎

    八木委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  以上によりまして、両法案に対する可決をいただきましたが、この両法案に関する委員会の報告書の作成につきましては、委員長に御一任願います。  本日はこの程度にいたし、次会は公報をもつてお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後零時八分散会