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1952-05-20 第13回国会 衆議院 電気通信委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 田中 重彌君    理事 關内 正一君 理事 高塩 三郎君   理事 橋本登美三郎君 理事 長谷川四郎君    理事 松井 政吉君    石原  登君       井手 光治君    井上信貴男君       岡西 明貞君    加藤隆太郎君       庄司 一郎君    辻  寛一君       中村  清君    福永 一臣君       椎熊 三郎君    石川金次郎君       田島 ひで君    稻村 順三君  出席公述人         財団法人運輸調         査局経済調査部         調査役     占部 都美君                 大橋 八郎君         全国電気通信従         業員組合中央執         行委員長    久保  等君         東京商工会議所         副会頭     清水 康雄君                 進藤 誠一君         時事通信社代表         取締役     長谷川才次君         国鉄労働組合企         画統制部長   横山 利秋君  委員外出席者         專  門  員 吉田 弘苗君         專  門  員 中村 寅市君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた事件  日本電信電話公社法案及び国際電信電話株式会  社法案について     —————————————
  2. 田中重彌

    田中委員長 これより電気通信委員会公聴会を開会いたします。  この際公述人各位にごあいさつを申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず御出席くださいまして、厚く御礼申し上げます。本日御意見を伺うことになつております日本電信電話公社法案及び国際電信電話株式会社法案は、政府説明によりますと、従来国営事業として経営されて来た公衆電気通信事業並びに国際電気通信事業を、公共企業体たる日本電信電話公社並びに民営形態たる国際電信電話株式会社に移すことによつて電気通信事業の過去の諸制度からの制約を排除し、事業能率的かつ合理的な経営体制を確立せしめんとするものであるとのことであります。思うに、わが国公衆電気通信事業は、創業以来一貫して国営形態を採用し、また国際電気通信事業につきましても、終戦前の建設保守を除き、その運用は、これまた一貫して政府事業をもつて運営されて参つたのでありますが、両法案は、従来のわが国電気通信事業に画期的な変革を加えるものとして、国民に与える影響も大きく、特に莫大な戦災をこうむつた電気通信事業復旧並びに急増する電気通信サービス需要にいかに対処するか、国民の関心が高まつている今日、その機構改革については種々なる観点より御意見も多々あることと存じます。本委員会は、両法案重要性にかんがみ慎重審査を進めているのでありますが、なお広く国民の世論を反映せしめ、また多年の御経験と御研鑽に基く各位の御意見を拝聴して、審査の万全を期するため公聴会を開いたのであります。公述人各位におかれましては、両案についてあらゆる角度から忌憚なき御意見を御発表くださるようお願いする次第であります。公述の時間は一人三十分程度とし、公述の後に委員諸君より質疑があることと存じますが、これに対しても忌憚なくお答え願いたいと存じます。  なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、公述人発言しようとするときは委員長の許可を得ることになつております。また公述人発言は、その意見を聞こうとする問題の範囲を越えないようにお願いしたいのであります。また委員公述人に対し質疑をすることはできますが、公述人委員に対し質疑することはできないことになつております。次に公述人各位が御発言の際は、便宜上劈頭に御職業また所属団体並びに御氏名を述べていただきたいと存じます。なお発言の順序は、かつてながら委員長指名従つて発言台で御発言願いたいと存じます。以上お含みの上お願いいたします。  それでは最初大橋八郎さん。
  3. 大橋八郎

    大橋公述人 私はただいま御指名にあずかりました大橋八郎でございます。職業はございません。先ほど委員長よりお示しの日本電信電話公社法案及び国際電信電話株式会社法案、この二つ法案につきまして、私は経験者としてのお話をしろということを先般承つたのであります。しかし私が電信電話事業に関係いたしましたのはずいぶん古いことでありまして、その後事業よりはまつたく離れておりますから、最近の事情は詳しく存じておりません。またただいま御提案になつております両法案につきましても、特別に深き研究をしておるわけでもございませんが、ただただきました法案並びに資料等を一応拝見いたしまして、気づいた点を二、三申し上げてみたいと思います。  電信電話ことに電話仕事が不満足な状態にあるということは、ずいぶん古くから申されておるのであります。なかんずくこの戦時中に爆撃のために破壊せられまして、その仕事復旧は七年を経過した今日でも、まだ十分に参つておらないような状況でございます。同じ通信事業でも電信郵便等につきましては、むろんまだ満足すべき状態とは申し上げかねますけれども、ほぼ旧態に近づきつつあると申し上げていいかと思いますが、電話に至りましてはまだまだ戦前の状況にはほど遠いありさまと考えます。この原因はどこにあるかと申しますと、この提案の理由を拝見いたしましても、政府二つの点を指摘されておるのであります。一つは、官営であつたために従来電信電話建設資金獲得政府財政のわくに縛られて、十分にかつ安全な資金が得られなかつたことが一つ、いま一つは、企業の最も根本になる財政財務会計の面及び人事の面において官庁一般の規律に制約せられて、自由闊達な企業手腕を振うことかできない。この二つの点があげられておるのであります。私もまつたくその通りであろうと思います。従つてこの点の原因が除かれますれば、電話についてのただいまの非難は解消ると思いますが、この二つ原因が除かれざる限りは、電話はよくなるということは望み得ないかと考えるのであります。そこでこの二つ原因を除くために、政府は今回の提案をなさつたことと思うのでありますが、この両法案において、はたして所期のようにこの二つ原因が取除き得るかどうかが問題であろうと思います。  まず第一の資金獲得がゆたかにできるかどうか。この点は要するに経済の問題でありますが、私経済問題にはなはだしろうとでありまして、この点について意見を申し述べることははばかるところでありますが、ごく常識的にいつて、この問題は要するにその国の経済力の問題であろうかと思います。現代のような資本の蓄積のきゆうくつ時代においては、どうもこの点の原因を除いて電話建設資金を豊富に集めることは、事実において困難ではないかと思われるのであります。なるほど公社形態をとりますると、国家資本民間資本両方から資金を集め得る便宜がありまするので、今までの官営時代よりも相当資金獲得には便宜があろうかと思いますが、しかしこれとても資金の蓄積がきゆうくつであれば、なかなか思う通りに集まらないと思います。ただ将来の希望としては、外資導入ということがここに考えられるのであります。この点については本案においても一つ条文が設けられており、外資導入については政府が保証するという規定が六十二条にございます。しかしこの外資導入には、なかなか複雑な関係があるように見えるのでありまして、はたしてかような道を開いたからといつてただちに外資が入るかどうかの断定はなかなか困難であろうと思います。ともかくもこの際は外資導入をなし得る道が開かれたというふうに了承しておくほかはないのでありまして、実際問題としては、これがためただちに外資が入るとはまず考えられない。資金の問題は先ほども申し上げましたように経済力の問題であつて、今日の状態ではただちに豊富に資金を得ることは困難である。終局的には日本経済力の回復をまつほかはない、こういう結論になるかと思います。従いましてかりに今度りつぱな公社がでたといたしましても、アメリカ流電話申込みをすれば、二、三日ですぐにつくという状態になることは、まず当分見込めないかと思います。  そこでこの法案のねらいは、結局先ほど申し上げました第二の原因の除去ということにあると思うのであります。一般官庁流制約人事の面についても、財務会計の面についても、一般官庁と同じような制約を受けておるということ、この手かせ足かせを取除くことができますれば、たとい資金をこの際潤沢に獲得することができなくても、相当程度電話に対する非難が緩和されるのではないかと思うのであります。政府説明を見ましても、この点を特に強調せられておるようであります。この点がうまく参りますれば、むろんサービスがよくなる。また能率的に自由闊達に経営することによつて経費節約でき、その節約建設費にまわすことによつて相当程度電話の架設もできるということも想像されるのであります。要するに問題は、この制約がはたしてこの法案によつて完全に除かれておるかどうかという問題に帰着すると思います。元来公社制度は、占領中にアメリカから輸入されたものでありまして、すでに過去において日本放送協会なりあるいは国鉄公社専売公社等のごときものができておるのであります。なかんずく国鉄公社は、同じく官営事業であつた交通事業そのものから公社に転向したという点において、今回の電信電話公社の案とまず対比さるべきものであります。そこでこの電信電話公社と対比さるべき国鉄公社できばえははたしてどうであろうかと考えてみますと、どうもあまりできばえは上できではないように見受けられるのであります。世間一般の話を聞いてみましても、またおそらく国鉄内部の人々も、必ずしも満足しておられないのじやないかと想像されるのであります。なるほど人事管理の面におきましては、相当束縛が解かれておるのであります。しかしながら財務会計の面においての束縛は、ほとんど解かれていないと申してさしつかえないのではないかと思います。今までの官営の場合と大してかわらないのであります。実情を伺つてみましても、従業員給与がよくなつたほかには従来とかわらない、かようなうわさを承るのであります。給与がよくなるということはむろんけつこうなことでありまして、これによつて生活の安定が得られ、そのまた反射として能率が上り、これによつて公衆利益を得るということは当然であります。しかしこれだけではせつかく公社をつくるという意味がはなはだ乏しいのではないか。すでに公社をつくる以上は、もつと徹底的に公衆利益をもたらすものでなければならぬと思うのであります。もつとも鉄道公社の場合は、当時の占領軍の指令によりまして、急激にこれをつくらなければならなかつたという事情があつたために、あるいは十分研究のいとまがなく、不完全な公社でき上つたということも想像せられるのであります。  そこで今回電信電話公社が新たにできるということを承りましたので、私どもは前にすでに国鉄公社その他の先例もありまするし、これらをしんしやくしてさだめし完全な公社できることと非常な期待を持つてつたのであります。ところで今回の法案を拝見いたしますと、私どもいささか期待はずれの感を抱いたのであります。大体において今回の法案鉄道公社法案とあまりかわつてない、ほとんど事実においては同じだと申してさしつかえないようであります。人事管理の面の制約相当に解かれております。この点は鉄道においても同様であります。しかるに財務会計面制約というものは、鉄道同様ほとんど解かれていないといつてさしつかえないのではないか。これでは従来の官営の場合とほとんど同じであると申してさしつかえない。むしろ官営の場合より悪くなつた場合も見受けられるのであります。最初世間に伝わつたところでは、今度の公社では政府へ提出して承認を求めるというのは、事業計画財務計画だけが政府へ提出する。政府承認を得てこれを国会に出す。国会の議決を経る。但しその予算については政府国会へは出さない。ただ参考資料としてこれに添付するということで進む。こういうふうに世間には伝えられたのであります。こうなりますると、政府はこの事業根本である事業計画と、それに伴う財務根本である財務計画、この二つについて十分に審査をする。しかしこれを執行する予算そのものについては、公社経営当局を信頼し、その技量手腕にまつ。最も経理しやすいように、最も能率のいいように、自由自在にこの予算を使わす。そうして決算の際に、はたして初めに承認した事業計画財務計画というものがうまく行われたかどうかということを審査をする。それでもしうまく行われていなければ、それに対して経営当局の責任をとる。こういう建前になつて初めて公社運営というものが能率的に行われ、企業的に行われるということになるのであります。かような点まで進まなければ、長年の官営というものをせつかく公社にする値打が、大半失われることになるのではないかと私は考えます。ところで今度提案なつたものを見ますると、先ほど申し上げたように当時世間に伝えられたのとはまつたくあべこべになつておるのであります。予算をつくつて毎年政府に提出する。政府ではその予算査定し、そうして一般予算と同じような手続で議会に提出する。議会でもまたこの予算に対して、一般予算を議決すると同じ方法でこれを議決する。そして事業計画財務計画というものは参考資料としてただこれに添付する。こういうことになつておるのでありまして、さきに伝えられたものとはまつたくあべこべのことになつております。これもまつたく現在の鉄道公社の場合と同様であります。依然として財務会計面手かせ足かせは取除かれていないのであります。  この点をさらに二、三細目にわたつて検討してみますと、この法案財務方面一つの特徴と見られるものは第四十条であります。予算弾力性を持たすということの点であります。四十条を拝見いたしますと、「公社予算には、その事業企業的に経営することができるように、需要の急激な増加、経済事情の変動その他予測することができない事態に応ずることができ弾力性を与えるものとする。」かような明文が書かれているのであります。まことにけつこうな条文であります。政府説明を見ましても、この点に力点を置いて特に強調せられておるのであります。しかしなおほかの財務規定等を拝見いたしますると、せつかくのこの弾力性を持たすという条文が、実は看板にすぎないように見受けられるのであります。たとえば流用、繰越しの点を拝見いたしますると、なるほど規定には本予算流用、繰越しは原則として自由にするということがうたわれておるのであります。ところがこれには例外がちやんとついておるのであります。予算で指定する経費政府承認を得なくては流用も繰越しもできない、こういうことが規定されているのであります。しかもその範囲はきわめて漠としておりまして、年々予算の表で指定する、こういうことになつております。従つて政府の手心次第でこの範囲がどこまで拡張せられるか、別段限度がないのでございます。場合によつてはこれがため流用、繰越しということが事実上空文になるおそれなきにしもあらずであります。この点もまた鉄道の現在の制度と大体同じであります。  次に継続費というものが今度の法案の中に認められております。これは鉄道公社に現在はないようであります。しかしこの継続費というものは、終戦前までは特別会計といわず、一般会計といわず、二年以上にわたる工事なり建築なりをやるというような場合には、どこにでも認められておつたものであります。ただ戦後インフレ時代に、これを設けても無意味であるというので、一切これを認めないことになつてつただけのものであります。ただ最近のインフレの終息に伴いまして、これがまた認められることになつたというだけであります。何もこの公社だけの特別の規定でも何でもないのでありまして、おそらく本年度からは、一般会計にもこれが認められるのではないかと想像いたします。むろん鉄道公社にも認められるに相違ありません。従つてこれがあるから弾力性が認められておるのだという証拠にはならないと思います。  それからさらに独立採算制ということが非常に強調されておるのであります。この点は、つまり利益のあつた場合に、利益処分をどうするかという問題でありますが、鉄道公社の場合では、もしその年度利益がありますれば、まずこれを繰越した欠損がある場合には、その欠損に充てる。なおそれでも利益が残つておりますれば、特に予算で積み立ててよろしいということが指定せられない限り、全部一般会計へ奉納しろ、こういうことになつております。そのかわり欠損のあつた場合には、必要に応じて一般会計から補填をしてくれる、こういうことになつております。ところでこの電信電話公社の方では、利益のありました場合には、まず繰越しの欠損に充てる。それでもなお利益のあつた場合には、特に予算一般会計へ奉納しろと言わない限り、積み立ててよろしい。欠損のあつた場合には、まず積立金から補填して、なお足らない場合には欠損として繰越せ、こういうことになつてつて一般会計からは一切補填してやらない、こういう建前であります。つまり鉄道公社の場合には、大体利益があれば一般会計がとり、損があれば一般会計から補填をする。この電信電話公社の場合には、利益があれば一般会計へ奉納させるが、欠損があつても一切補填をしないというような、片手落ちのように見えるのであります。この二つを並べて見ますれば、むしろ鉄道よりこの方が歩が悪いというふうに見えるのであります。しかしいずれにいたしましても、かような利益があれば取上げる、欠損があれば補填をするという建前は、これは独立採算制じやないことはもちろんであります。ただ鉄道の場合に比べまして、電信電話公社の場合には、ある一定の予算できめた利益のあつた場合、それだけは一般会計へ奉納させるが、それ以上働いてもうけたものは、お前の方で積み立ててよろしい、こういうことが認められておる点だけが、多少独立採算制のにおいがつけ加わつておるという程度のものでありましよう。しかしいずれにいたしましても、独立採算制でないことは申し上げるまでもないのでありまして、ことに電信電話公社の場合に、予算で定めたものだけは一般会計へ納付させる、こう書いてあります。その予算で定めた場合ということが、よほどこれはくせものであると私は考えます。つまり予算査定権政府にあるのでありますから、政府の方でもし悪く考えて、できるだけよけい奉納させようという考えがもしあるといたしますれば、予算査定の際にきびしく歳出を査定すれば、それだけ利益がよけい出て来るのでありますから、それを予算の上に計上すれば、相当よけいのものがどんどん公社から吸い上げることができる手がそこに残つておるわけであります。このことにつきましては、以前通信事業がまだ一般会計にあつた時代特別会計になる前であります。この時代に当時の通信事業経営の衝に当つた者は、相当長くこの点で苦しめられて参つておるのであります。年々予算査定を受けて、その結果、通信事業利益というものが一般会計へ吸い上げられる。その結果といたしまして、通信特別会計できた当時は、その時分の金で九千百万円でありましたか、まず一億円足らずの金が一般会計へ年々吸い上げられるという計算になつてつたのであります。それが特別会計によつてその点が一応とめられたのであります。今度またかような予算査定権を認めるということになりますれば、この手が使われるということは——これを使うか使わぬかということは徳義の問題でありますが、必要に応じて使うかもしれない。従つて将来公社当局が、かつて一般会計時代に、逓信当局がなめたような苦い杯をなめないとは限らないのであります。この点については、現在電気通信特別会計のもとにおきましては、欠損があればむろん一般会計から補填はしてくれないが、そのかわり利益があれば、どんどん自分の方で使う。一文も一般会計へは入れない。こういう建前になつておりますから、この方がよほど独立採算制であります。従いまして独立採算制という建前だけから見ますと、むしろ公社の場合よりも、現在の特別会計の方がより独立採算制である、かような結論が出て来るわけであります。  これを要するに今度の公社の案を見まして、どうもせつかくつくられたにもかかわらず、鉄道の場合よりも大して進歩した点が乏しいということが、たいへん惜しい気がいたすのであります。せつかくつくられるのでありますから、いま少しく鉄道の場合よりも進んだ公社できることを、私ども希望いたしたいのでありますが、不幸にもほとんど同様な案がつくられたのであります。しかしこれも想像をたくましくいたしますれば、もともとこの公社の案は、当局としては、数年前にすでに計画をされておつたようであります。当時司令部の了解を得られなかつたために、一時断念をせられた。ところが今回行政機構改革に伴いまして、急にまた再び燃え上つて参り、行政改革と関連するだけに、取急いで一緒に提案しなければならぬというようなことで、十分完全にこれを練り上げるひまがなかつたというようなこともあるかもしれません。それであるいは暫定的に鉄道公社とほぼ同様なもので、一応つくり上げたというようなこともあるかもしれません。これは私のただ臆測であります。もしさようなことであるといたしますれば、将来この案がかりに実施せられたといたしましても、できるだけもつと完全な公社の案にこれを改めていただきたい、かように私は希望をいたすのであります。同じ公社でありますけれども専売公社は税をとる一つ機関としての公社でありますから、少し事情が違うのでありますが、鉄道とか電信電話というような、営利を目的としない、公共的の建前に立つて運営するこの事業については、公社としても完全な公社をつくつてただきたい、かように実は希望をいたすのであります。大体まず根本問題として私がとりあえず考えたことはこの線であります。  なおこれに関連して二、三こまかい点を申し上げたいと思います。一つ経営委員会のことであります。今度の電信電話公社には経営委員会が設けられております。これは鉄道公社監理委員会といいますか、鉄道公社委員会とほぼ似たもののようでありますが、しかし鉄道監理委員会よりもさらに一歩を進めた点が、私はたいへんけつこうだと思うのであります。鉄道の場合は企業運営指導統制をするのを任務とする機関であります。ところが電信電話公社におきましては、業務運営重要事項について決定をする機関ということになつております。ほぼ普通の会社の取締役会相当するもののようであります。しかもその説明を拝見いたしますと、この委員は大企業経営に深き経験社会的視野の広い委員で組織する、こういうふうに説明せられておるのでありまして、まことに御趣旨けつこうと存じます。ただかような委員会というものは、要するにその人選が最も大切なのでありまして、ほんとうに御趣旨のようないい人を得なければ、どうかするとほとんど委員ロボット的存在になるおそれなきにしもあらずであります。従つて今後これが実施せられるあかつきには、その御趣旨のようなほんとうにいい人を委員に選んでいただきたい、かように私は念願いたす次第であります。  それからいま一つ経営委員会に関連いたしまして、その定員の問題でありますが、案を拝見いたしますと、この経営委員会定員は三名ということになつております。そのほかに特別委員が二人、そういうことになつております。鉄道の方は、特別委員が一名と委員が五名ということになつております。専売の方は、委員長一名、委員が八名ということになつております。いずれにしてもこのような委員会は、あまり定員が多いということは、これはむろん考えものだと思うのでありますが、しかしあまり少な過ぎるのもどうであろう。先ほども申し上げたように、非常にりつぱな人を委員にする。しかもこれは常勤ではない、非常勤の委員でありますから、おそらくほかに非常に忙しい仕事を持つておる人が選任せられると思うのでありまして、従つて委員会をつくろうとする場合にも、どうかするとさしつかえのある場合が相当ありはしないかと思う。あまりに人が少いと結局委員会が成り立たぬというようなことがあつて仕事にさしさわりを生ずるおそれなきにしもあらずと思うのであります。従つて三名というのはどうも少いというような感じがいたし、あるいは一、二名増された方が実際の運行上都合がよいのじやないか、かように感ずるのであります。  それから役員の点でありますが、この案を拝見いたしますと、総裁、副総裁は政府の任命であることはむろんであります。鉄道の場合でありますと、鉄道監理委員会から推薦を受けてこれを任命することになつております。この電信電話公社の方は、推薦ということがとられていないのであります。あるいはこれについても相当何か理由のあることかと思うのでありますが、どうもこれは鉄道同様、経営委員会の推薦によるという方が妥当ではないか、かような感じを持つものであります。  それから理事の任期がこの公社案では二年ということになつております。ほかの例を見ますと、鉄道の方では無期限ということになつております。専売の方は四年ということになつております。総裁、副総裁はいずれも四年、これも相当理由があることかもしれませんが、二年というのはどうも少し短か過ぎるのじやないか。この理事の任期が二年ということは、理事の安定を欠くおそれがありはしないか。これは総裁、副総裁同様四年にするか、せめて三年くらいまでに直されることが妥当ではないか、かように感じております。  次に、国際電信電話社法案について簡単に意見を申し上げたいと存じます。この会社は、ちよつと拝見したところ、将来非常に経営の楽な会社だと思います。この公社から分離する場合に会社にわけられる資産は、およそ二十数億であろうかと想像いたします。その収益がどの程度であるか、私はつきり存じませんが、あるいは十五、六億からどうかすると二十億円くらいに上るのじやないか。そして将来の建設はといえば、あまり大した建設費は要しないのじやないか。公社電話建設費などとは比較にならぬ少しの建設費で済むのじやなかろうか。そういたしますと、将来建設費の心配はそうえらくしなくてもいい。しかも利益がどんどん上つて来る会社でありますから、これは経営の楽な会社じやないかと思います。従つて将来設備も経営もおそらくうまく行くだろうと思います。ただむしろあまり景気がよ過ぎて、むだ金を使うことになりはしないかということのおそれを抱くのであります。  ただこの会社に関連いたしまして、二、三の問題があるのであります。一つ公社から国際電信電話部門を分離することによつて、この公社は年々約二十億の利益を将来失うことになるわけであります。もしこれが分離しなければ、この二十億の金は電信電話の建設、ことに電話の建設に向けられることと思うのであります。これが分離したために将来それだけの建設費がきゆうくつになる、かようなことが想像されるのであります。むろんこの二十億の金は会社の利益になるので、その六割がかりに税にとられるとしますれば、十二億は税にとられる。あとの八億は配当なり賞与なりにとられるわけでありますが、その国庫に入つた十二億は、国家の重要な費用に充てられることはむろんでありますけれども、しかし単にわれわれが今問題にしておる電信電話の建設と改良という観点からだけ考えてみますと、とにかくこの資金のきゆうくつな際に、将来二十億の資金というものが使えなくなるという点が、公社としては相当手痛いことになるのじやないか、かような杞憂を持つのであります。  それからいま一つは、これが会社になります結果として、自然労働問題については一般の会社並に扱われることはもちろんであります。そうなりますと将来争議などの起つた場合に、ストライキのために国際電信電話の通信が杜絶する場合もあるいは起り得ないとも限らないのであります。この点をあらかじめこれをつくる場合に考慮する必要があるのじやないか、かように考えます。  それからいま一つ、これはこの会社の問題には直接関係がないかもしれませんが、関連はむろんあるのであります。終戦前までは御承知の通り、特殊会社として国際電気通信株式会社というものがありました。これは半分国が株を持つて、あとの半分は民間が持つてこれを組織されておつたのであります。そして窓口事務はやらないが、国際電信電話の設備をつくつて政府に提供する設備提供会社であつたのであります。ところでこの会社は戦後司令部の指令によりまして解散を命ぜられて、これを政府に取上げられたわけであります。そうして今度またこの国際電信電話株式会社というものをつくるわけであります。ところがこの前の国際電気通信会社は、あまり堅実過ぎる当時の経営ぶりであつたために、株主にあまり配当しない。そしてどんどん社内留保といいますか、償却をしてしまう。いよいよこれを政府に引継ぐときには、帳簿価格で引継ぐということでありまして、およそ当時の金で三千六、七百万円の価格で政府に引継がれたかと思います。ところが今度大体同じ範囲のものがこの会社に出費せられる場合には、おそらく二十数億、さらにこれに利益率を見ますれば、ことによると三十億ぐらいの価格になるのではないかと思うのであります。そういたしますと、あるいは当時の株主の方では相当不平不満を持つという事態が起らないとは限らないのであります。これはちようど日本放送協会が改組になりまして、以前の出資者の出資を返したことがあるのであります。これも古い時代に一株二百円で出資したものを、戦後インフレの二百円の価格で、そのままの額面で返したというので、いろいろもんちやくがあつたのでありまして、これに似たようなもんちやくがあるいは国際電気通信株式会社の株主の中から起らないとは限らないのであります。この点もひとつ考慮すべき問題として一応考えていただきたいと思います。
  4. 田中重彌

    田中委員長 ありがとうございました。次に清水康雄さんにお願いいたします。
  5. 清水康雄

    ○清水公述人 私東京商工会議所副会頭清水康雄でございます。  電信電話の問題につきまして、民間人は終戦後非常に不自由を感じておりましたので、何とか早く改善をしていただきたいという希望に燃えておつたのであります。できれば民間事業としてやつた方が活発に、いい電信電話事業になるのではないかと考えておつたのでありますが、金融面あるいはいろいろな面から見ましても、今回の公社法案につきましては、私ども非常に適切な法案と思つて御賛成を申し上げる次第でございます。しかしながら私見ではございまするが、たといこれが民間の会社になりましても、全国を一社として独占形態でやつております限りにおきましては、なかなか能率も上らぬし、あるいはサービスもいかぬ、あるいは合理的な経営できないという点が多々あるのでありまして、まして一つ公社でありますると、こういう点に欠くるところがあるのではないかということも考えられるのであります。たとえばタバコ専売公社におきましても、あるいは二社以上の専売公社によりまして公社同士の競争をさせることによりまして、今同じ値段のタバコを売りましても、一層政府へ出す金が多くなり得るのではないかとも考えられるのであります。ただタバコと違いまして、この事業は同じ区域に二社以上がありますことはいろいろな不便がありますので、区域的にわけて競争させるということも考えられるのではないかと思うのであります。しかしながら今回これを一社でお始めになりまして、なお能率が上らないときは、二社におわけになつても間に合うことと思うのであります。今回はこの御提案の一社の公社案に御賛成申し上げる次第であります。ただいま申し上げましたようにいろいろな実施面におきまして能率が上るよう御実施を願いたい。こう希望する次第でございます。この公社運営を活発に、しかも円滑にやりますためには、先ほどもお話がございましたように予算制度による制約できるだけ緩和していただきたい。第四十条につきましても具体的にどういうふうになさるのか、私どもちよつとここの点がはつきりいたしませんが、どうぞより効果的に運営するように、実施面においてお願いいたしたいと思います。またこの継続費制度も、せつかくお設けになりましたのですから、ぜひこれを活発にお使いになるようにお願いしたいのであります。  電信電話事業は申すまでもなく、われわれの産業活動の基盤をなすものであります。設備の改善、拡張につきまして資金を潤沢に得ることが活発に行くか行かないか、設備がよくなるかならないかということになるのでありまして、電信電話債券の発行が認められたことは非常にいいことである。今日の金融情勢におきましては、こういう点にたよらざるを得ないと思う。ただこの債券は実質的にはわれわれ会社の社債と同じような意味のものと考えられます。いわゆる生産公債、生産費に充てる公債でありますから、どうぞ財政の収支均衡政策のわくの外で、必要なときはどんどん債券を発行されて、潤沢に資金を得るようにしていただきたいと思う次第であります。また先ほど申しました公社能率運営は人の問題でありますから、首脳部の人選につきましては慎重に御考慮の上に、民間におきまする練達の士を御登用なさいまして、活発な運営をお願いいたしたいと思う次第であります。  国際電信電話につきましては、これを民間の経営でなさることは、諸外国もこういう形をとつておりまして、運営を活発にする面におきまして公社よりも適切と思うのであります。ただ公社は数社の方がいいと申しましたが、こういう国際的な会社につきましては、世界の通信会社との競争でありますし、また諸外国の巨大な資本と競争するのでありますから、資本の力が二つに割られるより、やはり一つのまとまつた総合的な大きな力で競争した方が十分に能率も発揮できますし、世界の競争場裡に打ちかつことができる、こういう意味におきまして、民間会社の一社案に賛成をいたす次第であります。  それからこれは両方の会社に共通のことかもしれませんが、われわれ商工会議所の空気をお伝え申したいと思います。実は商工会議所といたしましては、私設電話に非常に困つておりましたものですから、昨年来私設電話に関して調査いたしまして、やつとこの四月にまとまつたのでありますが、それによりますと官庁事務の非能率性につきましては、同一の件につきましても、各部局で異なる取扱い方針でありましたり、また取扱いの窓口が多過ぎまして、申請書をどこへ出していいかといつて困惑しておる。あるいは一部局におきまして、書類が十日間も停滞したり、また官庁事務の手続が煩雑で手間取りまして、工事が遅れがちで、民間の利用者に非常な不便をもたらしている。また窓口事務のサービスも、最近はだんだんよくなつてつたのでありますが、いまだしの感がありまして、これはまた各局によりまして非常な差異があるように感ぜられるのであります。かかる官庁事務手続の煩雑さや、窓口事務のサービスの問題は、公社案の実現される、あるいは国際電話の普通会社の実現されるのを機会に、至急に御改正願うことを希望するものであります。単に官営から民営、あるいは公共企業体になりましても、看板の塗りかえだけでは意味はございません。どうぞあくまでも合理的に能率的に経営をしていただきたい、こう思う次第でございます。  ただいま申し上げました商工会議所の調査につきまして、一、二御参考に申し上げてみたいと思います。この調査は、あるいは国会の方々にも参考資料としてすでに提出してあると思うのであります。そういう御参考にするためにこれは調査いたしたのでありまして、これについて見ましても、たとえば私設電話を設置する場合に、直営の場合に、申し込みましてから開通までにどのくらいの期間がかかるかということを、これは設備した方々にお問い合せ申し上げて御返事をいただいたのです。これを申しますと、二、三週間でついたというのが一つ、一箇月が一つ、二箇月が一つ、三箇月が三つ、五箇月が一つ、五箇月ないし六箇月が一つ、六箇月が六つ、七箇月が三つ、八箇月が三つ、二百五十四日が一つ、九箇月が三つ、十箇月が三つ、一箇年が二つ、無回答三十七、こういうふうな状況であつたのです。それから取付費用について、たとえば取付費用について高いか安いかという問題を問合せいたしたのであります。パーセンテージで申しますと、取付費用が高いというのが御回答の四三%、これは最も多い。次が非常に高いというのが二二%、これを合せますと六五%になります。普通というのが一七%、安いという御回答が四%という状況に、取付費用についてはなつております。それから先ほど申しました開通いたしますまでの官庁に対する事務手続についてのお問合せにつきまして、パーセントで申しますと、官庁の事務手続は、煩雑で非常に手間取るという御返事が最も多く四四%、普通というのが二三%、また煩雑であるというのが二二%、煩雑と非常に手間取るを合せますと六六%、こういう回答の結果であります。悪い方ばかり申したのですが、いい方もございます。これは窓口事務のサービスについて問合せをいたしましたところ、窓口事務のサービスは、普通というのが最も多く六〇%、明朗で親切がこれに次ぎまして一七%、続いて不親切が一六%ということになつておりまして、だんだん窓口事務のサービスは改善されつつある、こう思われるのであります。それから私設電話の今後の取扱いに関する希望、これはこういう法案が出る前の答えであります。私設電話の今後の取扱いについては、利用者の自分の手によりまして、自由に取付保守を希望する。こういう回答が五六%になつております。所有権を利用者に持たせ、保守を官庁にやらせるのがよいというのが三一%、現在の制度をよいとするものは五%にすぎなかつたのであります。  二重にもなりますけれども結論として申し上げますと、この調査の結論は、従来電話工事上の大きな障害となつていた資材及び予算上の制限は、その後の事情の好転、及び昨年七月施行された電話設備費負担臨時措置法等によつて、次第に解消されて来たことが認められる。現在問題となつているのは、むしろ官庁事務手続の問題であつて、昔から電話事業は、官営事業の非能率化の見本のようにいわれて来たが、いまだにこの弊風はあまり改まつていないように思われる。これについて調査した結果によれば、たとえば電話局、管理所、電気通信局等で、同一の件につき異なる取扱い方針であつたり、取扱いの窓口が多過ぎて、申請者を困惑させ、あるいは一部局に書類が十日も停滞したりするごときこれであつて官庁事務の手続は煩雑で手間取り、工事が遅れがちだとの不満の声が高い。これに関連して窓口事務のサービスも最近は次第によくなつて来たことを認めるが、なおいまだしの感があり、また局により非常に差異があるようである。官庁事務手続や窓口事務のサービスの問題は、別段予算や資材の制限もなく、また法令改正等の手続を要せずして、当局の努力により早急に解決される問題であると信ずる。当局の適宜の措置により、すみやかに簡便かつ合理化せられんことを要望する次第である。設備負担法については前述のごとく、その効果を認めるにやぶさかでないが、なお次のような欠点があり、これにつき反対意見が圧倒的に多い。すなわち利用者としては、取付費用が高価のため申込みを中止した者もあり、あるいは設備負担金の減額を希望し、あるいは設備負担金を支払つた者に対しては、爾後支払う附加使用料について軽減されることを望んでいる。また同法による現在の制度は、ちよつとした電話機の修繕や移転も自由に行えず、非常に非能率制度になつているが、これも利用者により、自由に取付保守させるのがよいという意見が大多数である。以上の諸点につき、同法改正の措置をとられることが望まれる。こういう調査資料をつくつた次第であります。二重になりました点が多々ありますが、御参考までにちよつと申し上げた次第であります。  それからもう一、二申し上げますと、この事業が非常に私として活発にやつてただきたいにかかわらず、進捗しなかつたのは、電通省の予算の不足が最も大きな原因であつたのではないかというふうに考えられるのであります。しかも当局計画が、国の審議にかけられると、必ず削減されてしまう。民間の事業会社としては、予算が決定してから仕事を着手したのでは間に合いませんので、こういう仕事を出そうと思いますと、あらかじめ準備を始めるのでありますが、今までのところは、うつかり準備を始めましても、予算がとれませんで、結局その仕事が出なくなる。民間の方は手を上げてしまう、こういうことになります。今後会社といたしましては、大体早くから準備をさせていただきたい点が多いのでありますから、今度の公社案、あるいは民営案につきましては、国鉄や専売公社よりも、さらに強度の独立採算制をとつておられるようでありまして、民間の需要とメーカーの能力に応じ、計画を立てられ、予算資金の点においても、もし不足しますれば、借入金あるいはいろいろ手を盡されまして、従来の資金不足による隘路を十分に打開していただけるものと思うし、またいただきたいと希望する次第でございます。ただ公社にかわりましたからといつて、すぐに効果が現われるとは私ども期待しておらないのでありますが、どうぞあらゆる努力を払われまして、合理的、能率的な経営を行いまして、すみやかに効果を上げていただきまして、われわれ民間人の事業が活発な活動ができるようにお願いする次第でございます。簡単でありますが、これで終ります。
  6. 田中重彌

    田中委員長 ありがとうございました。それではこれより、ただいままで御発言を願いましたお二方の公述人の方々に対し、質疑を行いたいと思います。
  7. 石原登

    ○石原(登)委員 まず清水さんにお伺いいたしますが、確かに電信は若干直つて参りましたけれども電話が非常に疏通上悪い。それで清水さんのように電話を主要な仕事の上の道具に使われる方々は、身をもつて体験されているだけに、いろいろと電話の復興についてはお考えになつていることだろうと思いますが、この法案に拘泥せずに、電話をもつと能率的に復興させることについて、何か率直な、端的な御意見はございませんか。たとえば今もおつしやいました通り、これは公社になつてもにわかに期待できないということははつきりおつしやいました。ところが国民は、これをにわかに復興させたいのです。清水さんもその通りだと思います。そこで事業家としては、当然こういうふうにして行つたらりつぱになるのだというお考えがあるだろうと思いますが、率直にひとつ……。
  8. 清水康雄

    ○清水公述人 今お話がございましたように、すぐここで活発にという案はなかなかないのでありまして、前に申し上げましたように、一社で競争するということによつて、早くなるのじやないかということを私どもは考えております。あとは努力していただくよりほかないのでありますが、一社でも一社であるがごとく競争させて、たとえば関西の方で一万円出して十日で電話を引いた、東京の方は二万円出して一月かかつたということになれば、これは東京の方を大いに努力させればいいのですが、とにかく私は一社より二社の方がいいじやないかということを申し上げたわけであります。
  9. 石原登

    ○石原(登)委員 もう一つお伺いしたいと思いますが、これはちよつととつぴな質問のようですが、清水さんのところは同族会社のようなもので、すべての取締役はみな御親戚の方のようですが、戦後各会社の取締役の数が相当つて来た。これは例の兼職禁止、たしか三つの会社以上は兼職できないというように制約されて、こういう結果になつたと思うのですが、こういうような傾向は事業運営の上いいと思われますか。それとも非常に不便だと思われますか。また将来こういうような制限がなくなると、元のような状態に帰つて行くと思われますが、今のような状態でいいと思われますか。
  10. 清水康雄

    ○清水公述人 今ちよつと初めのところを聞き漏らしたのですが、数がふえて来たというのですか。
  11. 石原登

    ○石原(登)委員 いや少くなつたのです。前は、いわゆる有名な実業家がいろいろな会社に関係いたしました。ところが戦後は、三つ以上の会社の兼職はできないというようなことで、かなり主要な会社の取締役の数が、自然に少くなつてつたのです。
  12. 清水康雄

    ○清水公述人 やはり日本事業の復活を早くいたしますには、相当な方々が各会社を兼務なさることがいいのでありまして、今は手足を縛られて非常に困つている。これは手足を縛らないことによつて、もつと事業の復興が早くなると思います。
  13. 石原登

    ○石原(登)委員 そういたしますとやはり戦前の通り、この制約がなくなつて、いろいろな人がいろいろな形で会社に関係してもらつた方がいい、こういうふうに了解していいわけですね。
  14. 清水康雄

    ○清水公述人 そう存じます。
  15. 石原登

    ○石原(登)委員 私実はお尋ねしたいことはたくさんあるのですけれども、お忙しいようですから簡単にいたしますが、先ほど大橋さんの公述の中で、今度の経営委員会は、株式会社の取締役会に準ずるようなものだ、こういうふうなお話があつたのです。これはきのうも政府の方でそういう説明ががあつたのですが、私はちよつと違うと思う。株式会社の取締役というものは、みなその株式会社と非常に利害関係を密接に持つております。たとえば株主になるとか、あるいはまた平重役で来ている人でも、必ず株主となつてつて、会社と利害の関係が多いわけです。ところがこの経営委員会というものは、そういうような関係で結ばれていない。しかも経営委員会委員はみな無報酬で働いて、しかもたいへんな責任を負わされるわけですが、こういうことで普通の株式会社と同じように、はたしてそういう責任を持てるものかどうか。実業家の常識的な判断で、ひとつ清水さんの御意見を聞かせていただきたいと思います。
  16. 清水康雄

    ○清水公述人 非常にむずかしい御質問でありますが、それは人によると思います。非常に努力されて能率を上げる方もあるし、そうでない方もあります。また全然無報酬というのもどうかというふうに考えられます。
  17. 石原登

    ○石原(登)委員 もう一点だけお尋ねいたしますが、株式会社の場合は、非常に有名な実業家が、たとえばあなたの会社なら会社の取締役とか、あるいは取締役会長になつてくれるというような場合は、これは当然あなたの会社を信頼して、この事業ならうまく行く、この人間なら完全になし遂げてくれるという信頼があるから、いわゆる取締役としての法制上の責任につかされても、信頼の基礎に立つて取締役、あるいは取締役会長になつてくれると私は思います。ところが今度の経営委員会は、大橋さんあるいは政府説明によると、株式会社の取締役会のようなものだとおつしやるけれども、実際の仕事の運用をする人は政府が任命する。それから経営委員政府が任命する。そういうような関係で、その間の相互信頼、相互責任を持つというようなことが、株式会社と同じようなぐあいには絶対に行かないと私は思うのですが、こういう面に関して清水さんはどういうふうにお考えでありましようか。これは今度の問題の一番重要なポイントですから、この点を率直にお答え願いたいと思います。
  18. 清水康雄

    ○清水公述人 非常にむずかしい問題でありますが、おやりになる方は、繰返しますが、結局人物の問題でありまして、信頼にこたえ得るだけの人物の方ならば、私は十分お働きになると思います。
  19. 石原登

    ○石原(登)委員 大橋さんにお伺いいたしますが、かつて大橋さんが御関係になりました国際電気通信株式会社ですが、これは先ほども説明がありました通り、設備の提供会社であつたということですが、そういうような会社のできました理由を、お話願えれば幸いだと思います。
  20. 大橋八郎

    大橋公述人 これはずいぶん古くさかのぼるわけでありますが、たしか大正十三年ごろであつたかと思う。やはり法律によつてでき日本無線電信会社というものがあります。当時日本としては、先ほどもお話があつたように、電信電話はすべて官営独占ということでありました。ところが当時の財政状態から見て、無線の局をどしどしつくるということは非常に困難であつた。公債を出すというようなことも、非募債主義とかいろいろなことでできなかつた。一方当時電波の割当といいますか、各国で使う電波の獲得戦が各国間で激甚でありました。これは国際会議でいろいろ話し合つてきまるのでありますが、その根底になるものは、各国でどの程度に無線局を持つておるか、台数はどれくらい持つておるかということを基礎にしてきめようという話合いになつておりました。ところが一方国の費用ではどうしてもかかれない。これを打開するにはどうすればいいかというと、結局民間資本によつて早くたくさんの無線局をつくるにしくはないという結論になりました。さりとて根本的に通信専掌の原則をかえるまでは当時の決心はつかなかつた。そこで設備だけを民間の資本でつくつてこれの使用は全部国がやる、こういう建前で当時日本無線電信会社というものがつくられたわけであります。それで政府で当時持つてつた原町等の無線局を政府が現物出資をいたしまして、政府も一部株を持ち、そのほかの株は将来の建設資金として民間の資本でやるということで、特殊会社ができたのであります。それでだんだんやつておりますうちに、一方また無線電話というものがだんだん発達して参りまして、この方の出願があつたのを、設備提供会社の案を政府が認可いたしまして、国際電話株式会社というものが民間でできたのであります。これは法律によらないで、一般の商法の規定によつてできた会社であります。大体無線電信の方は日本無線電信会社の設備に、無線電話の方は国際電話株式会社の設備によつて、それを政府が動かして通信をやるという建前で数年経て来たわけであります。ところが両方いろいろやつておりますうちに、どうも電信でも電話でも共通の設備というものがいろいろある。これを両方別々に持つているということは不経済ではなかろうか。むしろこれを合併して一つの会社にした方が、能率もよく経費も安く上るという議論が出て参りまして、それで両方の会社の合併ということが問題になつて、結局両方が解散して国際電気通信株式会社というものができたのであります。これも当時、元の日本無線電信株式会社法というものを改正して、国際電気通信株式会社というものができたのであります。それでずつと戦時中から戦後までやつたのでありますが、戦争終了後進駐軍が参りまして、この国際電気通信株式会社をつぶして、これはすべて国営に移してしまえという指令が出て、結局そうなつたわけであります。
  21. 石原登

    ○石原(登)委員 当時民間から集めました株式の応募の状況、それからさつきの御説明によりますと、相当資産を償却されて、実際政府に引継ぐときにはただのようにして引継いだというお話がありましたから、さだめし会社の経理の内容は相当よかつたと思いますが、その点はいかがでございますか。
  22. 大橋八郎

    大橋公述人 最初設立したときの状況は、私あまり関係いたしませんので、当時の状況はよく存じませんが、何でも民間からたいへん歓迎を受けて、ずいぶん申込みが多かつたように承つております。また経理内容は、初めからの伝統として、利益配当というものは法律で一割二分までの制限がありまして、一割二分以上の利益が出た場合には、それを政府に納付するということになつておりました。また大体の経営方針としても、なるべく利益配当は制限をするという建前で、おそらく一割二分などの配当はやつたことはなかつたかと思います。たいてい八分か、せいぜい一割まで行きましたかどうか記憶がありませんが、そういう状態で、そのほかのものはできるだけ内部の設備の改良、建設あるいは償却というものに全部振り向けておつたのであります。従つてどんどん償却を励行された。まあ極端と思われるまで励行したと思います。
  23. 石原登

    ○石原(登)委員 ただいまの御説明また先ほどのお話によりましても、設備会社はたいへんな能率を上げて、国際電信電話に寄与されたと私は確信するのですが、今清水さんの公述の中にもありましたように、私は今あなた方が関係されたこの設備会社に非常に関心を持つておる。それはなぜかと申しますと、今公社をつくろうというその理由の最も大きなものは、いわゆる財政上のゆとりを持ちたい、予算の上の機動性を持ちたい、これが第一の理由であります。これはわれわれも率直に認めます。ですからそのために今度の公社をつくろうとしておるのでありますが、しかしながらさつきお話がありました通り、それでもなおかつ予算その他の制約を受けておる。こういうようなやり方ではとうてい所期の目的を達することはできないのでありますが、今のお話のように、もし電通当局が国内の電信電話の設備を民間資本にゆだねて、むしろ民間資本に依存して、こういうような設備をつくる会社を全国に数社つくるならば、民間資本導入できるし、またさつきの清水さんのお話の通り、速度も相当加わつて、私は相当大きな期待できると思うのです。そこで当時の国際電信電話事情と、今日の国際、国内の電信電話を復活しようという事情と、まつたく同一であるから、この公社を考えるよりも、当時これだけ効果を上げた方式をどうして今日とらないのか、こういうことについて私は非常に疑問を持つのですが、大橋さんのお考えとしまして、設備会社を民間につくらせてやつて行くという考え方に対しては、どういうようにお考えになりましようか。
  24. 大橋八郎

    大橋公述人 ただいまお述べになりました御意見もまた一つの御意見だと思います。しかし実際問題としては、今日の日本資本蓄積といいますか、産業界の力から考えて、民間の設備会社をつくらせても、はたして大きな資本を集めてどんどん建設をやるというだけの力があるかどうか。これは私は経済界のことに暗いので、十分断言はいたしかねるのでありますが、政府説明等を見ましても、これを民業に移せないという理由の一つは、今後当分の間はやはり国家資金相当使わなくては建設はできないのだ。むろん根本的な公社のイデオロギーの問題はあると思いますが、イデオロギーの問題を離れて実際問題としても、やはり民間資本だけでやるということはできない、こういうような見地ではないかと私は考えております。
  25. 石原登

    ○石原(登)委員 清水さんにお伺いしますが、ただいま大橋さんに私がお尋ねした根本の問題はここにあるのですが、今日の世の中においては、利益とその人がつながらないとどうしても最大の努力が払えないのではないかと私は思う。ですからこういうような事業の建設においても、人の努力の効果と利益が一致して行くようにしてやらなければいけない。そのためには私は株式会社の方式が一番いいと思う。先ほどのお橋さんの説明によりましても、当時は電信電話設備会社に対して国民が非常に歓迎して、資本についても協力してくれた。しかし今日の事態でも、今もしやみ電話を買いますと、政府では三万六千円でできるものが、二十万もどうかすると二十何万もとられることがあることをわれわれは知つているのですが、その会社に投資すれば電話をつけるという条件があるならば、またこの法律によつても、政府相当以上のいわゆる協力を公社に与える、たとえば公社債の発行につきまして、あるいは外国のいわゆる金の問題にしましても、これを助長するためにはいろいろなくふうを加える。これだけのくふうを民間会社に与えて、これだけの助成を与えるならば、いうところの予算上、財政上の制約を受けませんから、私はこの会社は十分に、より公社以上の効果を上げ得る、かように考えるのでありますが、清水さんどうですか。
  26. 清水康雄

    ○清水公述人 初めに申しましたようにわれわれ民間人の間では、民間でやつたらどうかということも意見はあつたのでありますが、現在の金融の状況におきまして、資金を民間で集めるということはなかなか困難であろうというのが、一番大きな疑問であります。
  27. 石原登

    ○石原(登)委員 どうもこの法律によりますと、非常に政府が助成する、社債発行についても許可しますし、金も貸してくれることになつております。ですからこういう営利の事業であれば、公社でやるから金が出る、会社だから金が出ないということは全然ないと思います。おそらく公社であつても民間会社であつてもこの性質の仕事ためであるならば、私の見解によれば十分出ると思います。また法律によつても金は出せると思います。ただ問題は、いわゆる機動性のあるところの運営できない。現在の状態で言えば、たとえば予算が決定するまでは何一つ発注することができません。従いまして電気通信メーカーは、その期間遊んでいなければならないという現象です。こういう制約があります。だからたとい公社になりましても、いろいろな面におけるかような制約はどうしても解けないと思う。  それからもう一つ、これははなはだ残念でありますが、昔から親方日の丸といいまして、事業経営の最もルーズなものを親方日の丸という言葉で表現しておりますが、こういう面も、株式会社にやらせて、そうして自由奔放な経営をやらせるということによつて、私はより能率的な仕事できる。しかもこういう会社に対しては、政府は年幾らなら幾らという、いわゆる利益配当と保証する、いわゆる借上料の保証する、こういうような形で行くならば、資金相当私は集まつて来る、こういうふうに考えるのですが、そういう点、やはり資金は集まりませんか。
  28. 清水康雄

    ○清水公述人 私はあまり金融界の深い事情は存じませんが、しかし相当の困難があるのではないかということは考えるのです。
  29. 加藤隆太郎

    ○加藤(隆)委員 すでに石原君から御質問申し上げたんですから、私はごく簡単に一点だけ大橋先生にお伺いいたしたいと思います。目下問題になつておりまする電信電話公社に移行する、このこと自体につきまして、いろいろ法案の内容について御高見を拝聴しまして、われわれも非常に得るところがございました。ただ大橋先生のお言葉から拝承しまするときに、この法案の内容が、せつかく公社に移行するにしても、国鉄公社財務会計の部門に対して何ら大した差違はない、せつかくこの際公社に移行するなら、より一層進歩的な、もつと経営その他の面について、自由な経営できますようなことを希望されてあるように伺つたのだありまして、まつたくごもつともなことと存じますが、しかし大体においては、公社に移行することが妥当だという御結論のように承つたのであります。しかして国際電信電話株式会社に対してでございますが、この会社はお話の通り年間約二十億円も黒字が出る。しかもこの会社を経営するのは非常に楽だ、なるほどまつたくごもつともであり、現在までの電通事業がその建設資金等について非常な悩みを持つてつたことは、これはわれわれも承知しておりましてしかもこの際、この国際電信電話株式会社を別途に設立するということは、公社をしてその財政面に非常な支障を来すおそれがあり、さらに他の部門につきましても不安の念もないでもない、こういうようなお言葉がありましたが、私もまつたくそうした感想を抱くものではありますが、現在この両法案が提出されておる以上、われわれはこの法案についての審議も今進めておる際でありますから、先生のお考えから行きましたなら、この際両法案はまず大体においてけつこうだという御結論であるか、あるいはこの際電気通信省を公社に移行するこのこと自体には賛成だが、これとともに国際電信電話株式会社の業務も、やはり公社は包括して行くことの方がよいというお考えであるか、その点ちよつと承つておきたいと思うのであります。
  30. 大橋八郎

    大橋公述人 ただいまのお尋ねの点でありますが、これは要するに見方の問題ではないかと思うのです。先ほど申し上げましたのは、電信電話の建設という面だけから考えると、この際二十億円という利金を、国際部門を分離するために失うということは、私は相当痛手だろうと思うのです。しかし一方、国際電信電話というものの提案理由を見ましても、別の見地からこれを独立の会計にすることが必要なんだ、こううたわれておるのです。その必要が非常に強いなら、多少一方の方を犠牲にしても、やらなければならぬという結論も出て来るわけであります。その辺の兼ね合いをどうごらんになるかということが問題だと思います。もし一番都合のいいことを考えるなら、税に十二億円とられてほかの方へまわすことを何とか防ぎ得て、しかも新しい会社ができるという、何かそういううまい手があるなら、それが一番都合がいいのではないかと思いますけれども、なかなかそういうことも困難だろうと思います。しかし二十億もうかつても、その二十億がまるまる国際部門の建設、改良に使えるわけではない。まあ六割以上というものは税にとられる、十二億というものは国庫に取上げられる。そうしてこれは道路にまわるのか、警察にまわるのか知りませんが、何かほかの仕事に使われる。これもけつこうだと思うのです。ただ電信電話という見地からだけ考えてみると、これは相当の痛手ではないか、こういうことを申し上げたわけです。
  31. 加藤隆太郎

    ○加藤(隆)委員 痛手というお話は、もちろん私もそうだと思うのでありますが、この際この株式会社を設立して、国際通信に関する限り運営さして行く方がよいというお考えでおられるかどうかということを、ちよつとお伺いいたしたいと思います。
  32. 大橋八郎

    大橋公述人 実は私自身として、まだそこまで深く研究はしておりませんが、二十億円の金を公社として失うということは、おそらく当局としては百も承知の上でこれを立案しておられるのだろうと思います。そうしてみますと、この際国際部門を分離するということは、二十億円の痛手を公社に負わせるよりももつと重大なんだ。そういう何か理由があることと私は想像するほかはない。私自身としてはそれ以上の実は根拠を持つておりません。
  33. 田島ひで

    ○田島(ひ)委員 大橋さんに一点だけお伺いいたしたいと思うのですが、ただいまのお二人の公述人のお話を聞いておりますと、大体公社案に御賛成かもしれませんけれども、今までの国家経営のもとでは非常に困難だという点のお話はわかりまするが、どうしても公社にしなければならぬという具体的な、また科学的な根拠といいますか、賛成の御意見を私は納得するわけに行かないのです。まあ公社にした方がいいだろう、今後そういうふうに努力してほしいというような御意見のように伺うのでございます。同時に、公社にいたします一番大きな問題であるところの資金の面でございまするが、この点では私も大橋さんの御意見のように、たとい企業体にいたしましても、現在の日本経済状態から言いまして、はたして民間資本がうまくつかめるかどうか、これは大きな疑問であります。また外資の点につきましても、これもいろいろ困難な問題があると思います。それでどうしてもこういうような大きな国家的な公共的な事業に対しましては、特に戦争で破壊され、戦後のこのような状態のもとでは、大きく国家資本を投入しなければならないという点につきましても、私も大橋さんの御意見と大体同じでございます。そういう点につきまして、一点だけ私がお伺いしたいのは、公共企業体というのではありませんが、民営論が過去においてもたびたび出ておりますが、たとえばそれがいつも戦争の間、戦争のあと、日清戦争、日露戦争、第一次欧洲大戦のとき、そのあと、また今度の第二次大戦のあとにおきまして、やはり大きく民営論なり、公共企業体の問題が出て参りました。それはいつもやはり資金の面に関連して出て参つでおります。私がこの点でお伺いしたいのは、大橋さんが長く逓信関係のお仕事に従事なさつておられました当時、国家予算をもつとぐつと基本的なこういう企業に対して入れるだけの余地があつたかなかつたか。通信事業といいますと、どうしても軍の方に大きく使われる、予算関係でもたとえば必要があるときにはこれを一般会計に入れる、ことに戦争中には戦争の方に使われたということも聞いております。私はやはり国家的な観点からいたしますれば、国家予算の中からぐつと資本を投入することが、はたして不可能であるか、不可能でないか、過去の御経験から、可能な点があつたというような気持をお持ちになるかどうか、逓信関係のお仕事をしておられましたその当時、予算をおとりになるときに、もつとどんどん国家予算をつぎ込めたのではないか、つぎ込めない欠陷がどこにあつたかという点について、御意見を伺えれば伺いたいと思います。
  34. 大橋八郎

    大橋公述人 ただいまの御趣旨ちよつとつかみにくかつたのでありますが、戦前の時代にいま少しく国家資本通信事業に投じ得なかつたかどうか、こういう御質問のように拝聴いたすのであります。あるいは当時の私どもの努力が足らなかつたのかもしれませんが、当時の実情から申しますと、先ほどもちよつと申し上げましたが、通信事業の方へ国費を補助といいますか、繰入れるというよりも、通信事業からむしろ一般会計の方へ利益金を取上げられておつたという実情であります。それで長年そういう事態のもとに非常に苦しんだ結果、これではいかぬから、せめて独立採算制をとりたい、もらわないまでももうけただけは自分の方で使いたい、こういうことが特別会計制度を発案するという一つの動機になつております。そこで当時特別会計の立案にあたつて調べてみますと、長年の間の累積として、当時の状況で先ほども申し上げましたように、約九千百万円ばかりの金が通信事業から——これはもつとも電信電話だけではありません。郵便その他の全部の通信事業からでありますが、年々約九千万円余りの金が一般会計の方へ吸い上げられておつた、こういう状態であつたのであります。そこでこの際特別会計をつくる以上は、これを全部繰りもとしてしまつて一般会計に一文も入れないようにしなければならぬという議論が盛んであつたのでありますが、さりとて長年一般会計に使つてつたものを、この際九千万円もの金を急に取上げるということは、一般会計の方の大きな穴をつくることになるので、これは事実において不可能であろう。そこで妥協的に、既成の事実はやむを得ないから認める、九千百万円の一般会計の納付金は十年間は認める、そのかわり今後生ずる利益というものは全部特別会計で使うことにしたい、こういうことで当時の通信特別会計というものができたわけであります。実情は今申し上げたような状態であります。
  35. 田島ひで

    ○田島(ひ)委員 もう一つこれに関連しまして、私は戦後の通信事業の荒廃した状態は、やはり大きく国家予算を入れて回復しなければいけないということをしばしば言つて参りました。その点はいろいろ政府の方でも見解の相違というようなことを言つておりますが、大橋さんといたしましても、戦後のこの状態に対して、国家資本を入れる余地があるかどうか、どういうふうにしてお入れになつたらいいかというようなお考えがありますかどうか、その点、おありになりましたら、ちよつと伺いたいと思います。
  36. 大橋八郎

    大橋公述人 私最近の事情にはなはだうといのでありまして、実際どういう財政状態になつておるか、実はよく存じませんので、ただいまのお尋ねに対してちよつと申し上げかねるのであります。ただ常識的に考えまして、今日各方面に非常に金のかかる事業が山積しておりまして、各方面に金のいる場合に、なるほど通信事業そのものも非常に大切であり、われわれとしてはむろんただいまのお話のように、国費からうんと金をつぎ込め得れば、つぎ込むことを希望するのでありますが、事実において相当困難ではないか、かような感じを持つております。そこでせめて将来の利益金は全部公社で使うという程度までは、今のところはしていただきたいものだというのが、先ほど申し上げたような独立採算制趣旨であります。
  37. 田中重彌

    田中委員長 他に御発言ございませんか。  それではこれにて暫時休憩をいたします。午後は一時三十分より開会いたします。     午後零時二十八分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  38. 田中重彌

    田中委員長 休憩前に引続き公聴会を再開いたします。  まず長谷川才次君にお願いいたします。
  39. 長谷川才次

    ○長谷川公述人 時事通信社の代表取締役を勤めております長谷川才次であります。通信社の仕事は新聞社と違いまして、新聞社は白い紙を黒くするのが商売、われわれ通信社の方は、一つの地点から他の地点ににニユースを届けることが商売でございますので、どこの国の通信社もそうでありますが、逓信省のお世話になることが非常に多いのであります。そういう意味で本日は、私は法律も一向わかりませんし、逓信省のお仕事自体につきましてもまつたくのしろうとでございますが、お世話になつております者の立場から意見を述べきしていただきます。  日本電信電話公社法案国際電信電話株式会社法案、この二つ法案でありますが、両方ともどうもお役所の仕事はレツド・テープでてきぱき行かぬから、自由自在な企業精神を発揮する方に持つて行こうじやないかということがねらいのようであります。合理的かつ能率的な経営の体制を確立するとか、設備の整備及び拡充を促進し、国民の利便を確保して、公共の福祉を増進ずる、こういう公社法の第一条のうたい文句が出ております、まことにけつこうでありますが、官営仕事公社に切りかえ、日本電信電話公社という看板を掲げますと、一夜にして今まで能率が上らなかつたの能率が上るようになるというふうなお考えでありますと、これはちよつと私は見当違いではないかと思います。私は大体この両法案に賛成ではありまするけれども、大体企業の精神を発揮するというような場合、一体どういうことが根本になつておるかということを自分たちで振りかえつてみますと、やはり企業に伴う危険ということがたいへんこわいのであります。下手をすると会社がつぶれてしまうのだ、そして一緒に働いている千人、二千人の人間が、そうしてそれにぶら下つておる家族が飯が食えなくなるのだということで、私ども貧乏会社を背負つておる者は一生懸命に仕事をするのであります。企業のリスクということが、やはり企業精神を旺盛ならしめる根本原因のような気がいたしますので、法律に明るい皆さんが官庁のお仕事公社に切りかえたからといつて、卒然として企業精神が旺盛になるというふうにお考えになりますと、これはちよつと甘く見ておられるのではないかというような気がいたします。大体この提案理由その他を見ておりますと、予算で縛られる点、それから会計法でうるさい点、それから人事管理の点が楽になるから、公社まことにけつこうだというような御意見のようでありますが、法案をちよつと拝見いたしました印象では、どうもその趣旨が必ずしも徹底しておらないのではないか。第四十一条によりますと、予算につきましては一方大蔵大臣に届けなければならない、閣議の決定に待たなければならない。やはり予算相当縛られるようにお見受けするのであります。それからもう一つ、民間の企業におきまして企業精神を発揮する原因となりますことは、もうけは自分たちのものなのだ、商売をうまくやればおれたちがうまい飯を食えるのだということが、かなり強いインセンテイーヴになつておるのでありまするけれども、この公社法案の第六十一条を見ますと、やはりもうけは国庫に持つて行かれる。国庫に持つて行かれるのはけつこうでありますけれども、こういう点がうたい文句と条文との間にちよつと食い違いがあるようだ、十分徹底しておらないような印象を受けるのであります。いろいろと事情がありますでしようから、局外者の私どものように、そう一本の線でそのことがきまるとは思いませんが、ほんとう能率を発揮する、企業精神を発揮するということになれば、ここら辺が大事なポイントでありますから、よくお考えになる要があるのではないか、それにもかかわらず公社案にされたと申しますのは、どうも最近見ておりますと、これは事実かどうかわかりませんが、お役所の給料というものは非常に安いものだということになつておるようであります。それから昔私どもお世話になりましたころ、戦前の逓信省というのは、なかなかよく仕事をやつてくれました。外国の逓信事業関係のことと比べましても、日本の逓信省の事務というものは決してひけ目をとらなかつたと私ども実際に仕事をして、さような印象を持つておるのでありますが、さあ戦争に負けましてから、国家のためにみんなが挺身するという気持が、官吏の皆さんの間でもかなり薄らいで来ておりますので、ここら辺で公社に切りかえる、そうしてある程度自分たちがもうければ、それに均添できるのだ、能率を発揮すればどんどん昇給もできるのだ、こういう仕掛になさること、まことにけつこうだろうと思います。と申しますのは、私去年、もう一年前になりますが、イギリスの通信社の百年祭に招ばれまして、ロンドンへ参りました。帰りがけにアメリカへまわつてつて来たのでありますが、アメリカ電話をかけてみましても、いろいろな機械、施設を見ましても、どうもかなり日本とは残念ながら隔たりができた、二十年、三十年の距離ができたのではないかという印象を受けたのであります。ワシントンからニユーヨークヘ電話をかける。もうほとんどインスタントリーに電話がかかる。あるいはワシントンからロスアンゼルスの私どもの特派員に電話をかけましても、宿からすぐにかかるのであります。ところがわが東京におきましては、私のところから日本銀行の友達のところへ借金をお願いしようと思つて電話をかけさせましても、なかなかかかりません。秘書に電話を命じまして、ほかの仕事をして忘れて外へ出て来まして帰つて来たときに、ようやく電話がかかりましたということがしばしばございますので、何とかして電話の面の仕事を急速によくしていただかなければ、経済活動が十分にできないと思うのであります。それから私どものところで漢字まじりの文字を方方へ送信いたしますために、フアクシミルの新しいパテントをアメリカから買つて参りましたが、そのついでにウエスタン・ユニオンの会社に行つてみましたところが、電報の配達その他は全部フアクシミルの非常に便利な機械でやつているようであります。自転車で電報を届けて歩くようなことは、アメリカでは見受けないのでありまして、よほどこれは日本が遅れているという印象を受けました。それからテレビジヨンの話合いのときに、正力さんがアメリカから呼びましたホルステツドという男がありました。それといろいろ話をしてみますと、この男は、多分あれはマイクロ・ウエーヴといつたと思いますが、マイクロ・ウエーヴのネツトワークを全日本へ張りめぐらしまして、何十回路でもとつて通信をやるのだ。アメリカの言うことを必ずしも信用するわけではありませんが、こういうことがすぐできるのだ、こういうことを言つております。これからそういう新しい施設をどしどしやつて行きませんと、先進国に追いつくことはとうていできないと思いますので、この際久しい間のお役所の仕事を切りかえて、公社ということで新しい出発をする、大分社債その他も募集できるようでありますし、それから今まではどうも逓信省の皆さんは、おれのところで十分研究しているから、アメリカのパテントなんかごめんこうむるというような、割合に技術者かたぎの方が相当におつたように思うのであります。それも公社に切りかえまして、アメリカでもどこでもけつこうであります。先進諸国の技術はどんどん取入れて、一日も早くアメリカに追いつくようにお骨を折つてただきたい。私ども利用者から申しますると、その趣旨公社案に賛成いたすわけであります。  それから国際電信電話会社法のことでありますが、これはどうも筋を通して考えてみますと、片方は公社で行く、片方は民営ということになりますると、ものの考え方として、一体社会主義的な行き方で行くのか、資本主義的な民営の観念で行くのか、この点も多少筋が通らないという御議論もあるかと思うのでありますが、現実に即してここら辺は考えて行つたらどうか。私長いこと英国におりまして、英国の逓信事業のことを振り返つてみますと、国内のことはゼネラル・ポスト・オフイスがやつておる、つまり国営であつたように記憶しております。それから外国関係は昔から民間で、海底電線でもどんどんひつぱる、それがだんだん統合されまして、ケーブル・アンド・ワイヤレスという、無線も有線も両方扱う大きな会社がありました。もちろんその後労働党内閣ができましたので、ケーブル・アンド・ワイヤレスのホールデイング・カンパニーがもう一つできまして、この株を国家が持つておる、国有であります。しかし実際に仕事をするのはその下のケーブル・アンド・ワイヤレス・リミテツドでありまして、国有民営という機構で、英国は国内の逓信事業政府がやる、官営でやつておる、しかし対外関係は民営でやつておるのが英国の仕掛であります。多分フランスもラジオ・フランスというのがありまして、これも民営だと思いますが、さあ世界相手に非常にはげしい通信戦を展開いたします場合には、やはり身軽な、それだけにかかつておる一つの独立の会社、しかも民間会社で思う存分やつてただいた方がいいのではないか。外国関係のもうける分だけをごそつと持つて行かれて、まことにおもしろくないという向きもあるようでありまするが、それは少し狭い考え方でありまして、日本全体から見まして、これから国際通信戦の中に出て行きますためには、これだけを一つの独立の単位として、しかも民営ということがけつこうだろうと私は思うのであります。たとえば私ども仕事を実際にしておりましても、カラチとかニユーデリーとかジヤカルタ、あの辺に特派員を出しておりますが、この電報なかなか届かないのであります。三時間、ちよつとすると四時間ぐらいかかるような次第であります。私ども最近の考え方としましては、カラチからまつすぐ東京へ電報を打たせるよりも、カラチからロンドンへ持つてつて、私どもの仲間でありまするロイテル通信社の無線のブロードキヤストに入れて、こちらで受信した方が早いのではないかというふうに考えているくらいであります。そこで現実に商売をしておる、カラチに店を持つている人のことを私ども考えてみますと、同じ商取引をしておるのに、ロンドンにはじきにカラチから電報が届くのだが、東京へは三時間も遅れてでないと電報が届かないということになりますと、はげしい経済戦、商売上の競争の場合には、必ず出足が遅れる、出足が遅れることは結局千里の違いになりますので、これは日本の国全体の建前からしましても、民間の会社に対外電信電話のことをおまかせして活発な活動をやつてただく、方々に回路を開いていただくということが、経済立国と申しますか、交易立国の建前からも必要であろうと私は考えるのであります。この提案理由ですか、説明書の中にもありますが、昔は日本の対外電信電話仕事というものは、大体アメリカ、イギリスのレベルまで近づいて、遜色ないところまで行つてつたのだということがうたわれております。まつたく私これは同感でございまして、昔話になりますが、今から十六、七年前ベルリンにオリンピツク大会がありましたときに、私どもが扱いましたニユースの電報は、多分一分くらいでみな私どもの本社に届いた。前畑嬢の活躍なんかも、当時としてはまことに成績のよい電送写真でちやんと送り届けることができたのであります。終戦のときも、こういう施設ができておりましたので、ポツダム宣言を受諾するというような電報も、当時外務次官をしておりました松本氏、今度の大使から私ども委嘱を受けまして、全世界にこれをばらまいたところが、たちどころに五分以内にワシントン、ロンドンから反響があつた。あの爆撃のはげしい当時におきましても、りつぱに対外宣伝の仕事を、当時の国際電気ですか、逓信省の皆さんがやつておられたということを、今この法案に関連して私は思に出すのであります。  いろいろ実際の直接の面で何とかしてりつぱな国際電信電話機構をつくつてただきたいと思いますが、もう一つどもが考えておりますことは、一体東亜各国の電信電話の問題をたれが見てやるのだ、日本はなるほど戦争に負けましたけれども、東亜の連中の相談相手になつて行くのだ、ことに技術の面で東亜の諸国を導いて行くのはお互いに日本人の天職じやないか、私は正直にそういうふうに考えるのであります。ジヤカルタでもビルマでも、どこでもこの点は非常に遅れておりますので、支那はちよつと今すぐ手が出ませんと思いますが、民間の国際電信電話会社に大いにがんばつてただきまして、われわれの同胞であります東亜の諸国に技術と機材とをどんどん出して行つて、少くとも東亜だけは通信事業に関する限り、われわれが手を握つてつて行きたい、われわれがまごまごしておりますと、アメリカとかイギリスの技術資本がどんどん入りまして、彼らがいつまでも白人に搾取されるおそれがありますので、この点でもひとつ民間会社の不羈奔放な運営で、思い切つて東亜の諸国を結ぶところまで持つてつてただきたい。私ども実務を担当しております者の立場から、この両法案に対しましては、公社案には多少の異議はありますけれども、そういう意味で私は賛成いたします。
  40. 田中重彌

    田中委員長 長谷川さんはお急ぎのようでありますので、長谷川さんに対する質疑がありますれば、この際これを許します。
  41. 長谷川四郎

    ○長谷川委員 ちよつとお伺いいたします。ただいまのお話の中に、終戦当時各国の通信が非常に早かつたが、日を追うに従つて非常にのろくなつてしまつて、たとえばカラチから送るのを、ロンドンへ行つて再送した方が早いというようなお話でございますが、その当時の事情と現在ではどのような点がつまり隘路となつているか、ひとつその理由をお教え願いたいと思います。
  42. 長谷川才次

    ○長谷川公述人 私もその点はよく考えませんでしたが、ジヤカルタとかカラチとかいうのは、昔からおそかつたのでございましよう。その両者を比較願うつもりではございませんでしたが、とにかく終戦当時あれほどの事態でも、十分能率が発揮できたということを申し上げたわけであります。あとの点とはどうも関連がございません。
  43. 長谷川四郎

    ○長谷川委員 もう一つお願いしたいのですが、この会社法案期待に沿うような活動ができるとお思いでございましようか。
  44. 長谷川才次

    ○長谷川公述人 それともう一つの会社法案できない場合、一体現実にどうなるかというと、多分外国関係も一括して公社の中に入れるということになるでしよう。それとも外国関係だけ別にした場合の比較ということでございますか。
  45. 長谷川四郎

    ○長谷川委員 私がお尋ねしたいのは、あなたがおつしやる通りこの会社が国際的に立つて、この運営をより多く期待できるようにしてもらいたいというのが私たちの念願でございます。しかしこの会社法それ自体で運営することになつてつて、それだけの期待が持てるか持てないかということでございます。
  46. 長谷川才次

    ○長谷川公述人 会社法の内容をよく検討しておりませんので御答弁ができませんが、実は私どもに言わせますと、大体前の国際電気以上に施設だけでなくて、その運営もある程度民間事業を入れて思い切つて経営させていただく、しかもこれは割合にもうけの多い仕事でございますので、活発にやつてただけるのではないかという気がするのでございます。
  47. 長谷川四郎

    ○長谷川委員 私はこういう法案は、あなたが御指摘なさつた通りで、つまり四十条以下の二、三条の問題、あるいは六十一条の問題にいたしましても、いずれにいたしましても政府機関の干渉が多過ぎはしないか、政府があまり干渉し過ぎているので、真に会社の実体を十分発揮できないのじやないか、こういうようなことを憂えているわけなのでございますが、そういうようなお考えであなたがおつしやつてくださつたのだと、そう感じておるわけでございます。
  48. 松井政吉

    ○松井(政)委員 一つだけ長谷川さんにお伺いいたします。今度の国際通信の民間会社移行については、民間になればいろいろの面で非常によくなるという観点にお立ちのようでございますが、そうすると現在の経営状態で、国際通信のどこが悪くて民間にしなければならないかという御理由がおありになるのじやないかと思いますが、その理由があつたらひとつ参考までにお聞かせ願いたいと思います。
  49. 長谷川才次

    ○長谷川公述人 私ども特に非常に不便を感じている点と申しましても、実は今までは全部アメリカ軍の占領下にございましたので、何を電気通信省にお願いいたしましても、全部また向うの方にも話をつけなくてはならぬというようなことで、そのためにいろいろな御不便があつたのだろうと思います。でありますから、私ども終戦後感じましたことを特にここで申し上げますことは、全部これはアメリカさんの方に向うことになるのかもしれませんので、御質問に答えることにはならないだろうと思います。ただ大きな公社ということでやるよりも、民間経営で損をするかもわからぬ、もうかるということでやつてただいた方が、外国の例もあることですから、よくはないか、具体的に今までどうも困つたというようなケースは、これは多分にアメリカとの関係だろうと思うことが多いのでありますが、さよう御了承を願います。
  50. 松井政吉

    ○松井(政)委員 もう一点、関連しておりますが、利益の上る仕事であるから民間にした方がよろしいというお考えでありますが、たとえば公共企業体か、民間か、さもなくば現在の国営か、この三つだと思います。そうすると現在の国営のまま不便を感じないように国際通信を扱う方法がないから、利益の上る事業だから、民間の方がよろしい。こういうお考えだと解釈してよろしゆうございますか。
  51. 長谷川才次

    ○長谷川公述人 非常にむずかしい御質問で、私あまりうまく答弁できないのでありますが、私は政府仕事でもいいのだろうと実は思つておるのです。やたらと行政機構改革だといじりまわすよりも、政府仕事けつこうやつて行けるのではないかという気がするのですが、どうも近ごろは政府仕事では能率が上らない。お役人自身がほんとうに国家の大事な仕事を背負つているのだという気魂をお持ちにならない。それから実際はどうですか知りませんが、月給が民間の会社に比べて安いのだというような事実がありといたしまするならば、この際やはりこれは世の中が少しかわつて来ているのですから、民間会社でひとつもうけようじやないかということで、仕事に精出すという仕組みが出て来るのではないか。それでこういう法案が出たのだろうと私は御推察申し上げているわけであります。
  52. 松井政吉

    ○松井(政)委員 そういたしますと、かりにこれは国際通信であろうと、国内通信であろうと、全部私は公共企業である通信企業というものは、公共性を失つてはいけないと思つております。そこでやはり国際通信が利益が上るから、利益を上げるようにやろうじやないかということで、利益追求の営業方針を立てた場合に、公共性との衝突が起きて来るのではないかということを懸念されるのですが、その点はやはり営業上さしつかえないものでありますか。
  53. 長谷川才次

    ○長谷川公述人 その点の懸念は多分にあるだろうと思います。ただそこは非常に根本的な問題になりまして、英国のように国営にすると、どうもまた能率が下るという弊が出て来る例もありますので、その辺は兼ね合いじやありませんでしようか。その辺はひとつ皆様の御相談で御決定を願いたいと思います。
  54. 田島ひで

    ○田島(ひ)委員 ただいまのお答えを伺つておりますと、やはり企業にしたり民営にしなければならないという根拠も別になさそうですが、やはりこういうふうにかえたらよいだろうというだけで、ただ営利的にすればもつと能率が上るだろうという漠然としたお考えですが、やはり先ほどおつしやつたように、現在の国営のままでも、終戦後でも相当利益があつた占領下だつたからうまく行かなかつた占領が解ければうまく行くのですから、結局話を聞いておりますと、現在のままでも悪くはないというような結論にもなるわけでございまして、このような厖大な国家財産を持つたこの企業を、特にこのままでは企業体にかえなければならないという理由をお伺いできないのですが、そういうような御説明でございましたか。どうもはつきりいたしませんが、この法案が出たからこれに賛成するが、出なければそれでいいというふうにお伺いできますが、それでよろしゆうございますか。
  55. 長谷川才次

    ○長谷川公述人 そう白と黒に物事がきまるかどうかということなのですが、大体二つ比べてみて、こつちの方がよさそうだというところで、物事が実際世の中ではきまつて行くのではないか、勇壮活発な演説としては白と黒にして絶対にこつちがいいのだというふうに言つた方が勇ましいのでありますが、私は世の中はそんなものではなかろうと思います。どちらがよかろうかということになりますと、いろいろ現在の事情を考えまして、ほんとうに官僚諸君が昔の気持と同じように、国の仕事を大事にやつて行くのだという気魂をお持ちになつて、待遇も社会的地位もちやんとしておれば、昔のままでもよかつたのだろうと思いますが、現状では切りかえをして、非常にそれに遅れておりますので、追いつくための応急の措置と申しますか、非常の措置として公社案なり、民営にした方がよりよかろうという結論でございます。あまりはつきりいたしませんので御賛同願えないかもしれませんが、そんなところかと思います。
  56. 田中重彌

    田中委員長 それでは長谷川公述人に対します質疑を終了いたしまして、次に占部都美さんにお願いいたします。
  57. 占部都美

    ○占部公述人 私は運輸調査局調査役の占部であります。従来まで国有鉄道というわが国の既成の公共企業体の近くにおりまして、公共企業体の問題については専門的に研究いたしておりましたものですから、国民の一人として、またその専門家の一人といたしまして、ここに私の公述を行いたいと存じます。  きようの公聴会では、問題が二つあると思つております。その第一は電信電話公社法、それから第二の問題は国際電信電話事業を分割しまして、これを独立の国際電信電話株式会社というものをこしらえるという二つの問題がございますが、まず第一の問題から申しますと、この電信電話公社法案と申しますのは、わが国の厖大な規模を持つております電信電話事業公社化するということが問題なのでございますが、その場合に、私といたしましては、この問題を考える場合に、この電信電話事業というものは国民の所有に帰しておるものである。つまりわれわれ国民はこの電通事業に対して出資者の立場にある、こういうことであります。それから第二といたしまして、われわれ国民は電通事業に対して消費者の立場にある。でありますから、この事業国民のものであり、また国民ために存在しているものであり、また国民ため経営されて行かなければならないものであります。問題はこの経営の方法でございます。あるいは経営形態でありますが、従来の電気通信省の経営におきましては、要するに国民を代表いたします国会あるいは内閣というものが、直接にこの電通事業経営しておつたわけでございます。そのために他の行政官庁と同じように、組織あるいは財政制度とか、あるいは人事制度の方面におきまして、それぞれ官庁組織法、予算制度あるいは公務員法などの適用を受けた。これは確かに国会あるいは政府というものが、国民の出資者及び消費者の立場から、直接に電通事業を管理しておつたわけでありますが、しかしこういうふうな、いわば普通の政治におきましては非常に民主主義的な方法も、実際面においては、結局国民利益を増進することにはならなかつた。これはさつきのお話にありましたように、アメリカなどの諸外国に比べてかなり遅れている面があるのもやはりそういうふうな、政治的には確かに民主主義的な方法であるが、実際には国民利益を増進することにならなかつたという点に問題があつたと思うのであります。でありますから国民ために、また国民のものを経営する場合、国民自身が経営するよりは、やはり実際の経営者あるいは従業員を一体といたしました企業体に経営をまかせる、それによつて能率が上れば、そしてまた利潤が上れば、出資者としての国民利益も増進するであろうし、それによつてサービスが向上すれば、消費者としての国民利益は増進するでありましよう。こういう点に対して、現在の官庁経営による電気通信事業公社化するという必然的な理由があると思うのでありまして、その意味におきましてわが国に新しい公共企業体として、電信電話公社がこの法案によつて国会の意思によつてできるということは、非常に賛成に存じておるわけであります。でありますが、もちろん国会の支配からこの電気通信事業をまつたく独立させるものでないということは申すまでもないのでありまして、法律の今後の変更改廃によつて公共企業体根本の権限をかえることもできましようし、また電話料金などについても、なお現在でも国会が支配権を握つておる。あるいは現在では予算制度などで、はつきりなお公共企業体を支配しておるわけであります。しかし経営のこまかい管理の面については、企業体自体にまかせて、そして究極において消費者及び出資者としての国民利益を増進しようというところに、非常に客観的に正当な意図があるのではないかと思うのであります。ただこの公社の内容の細部にわたりましては、幾らか私として希望すべき点がございます。  まず第一の問題は経営委員会、この経営委員会と申しますのは、要するに国会並びに政府の直接的な支配、つまり公務員法とか、あるいは官庁予算制度とか、あるいは官庁組織法というような国会の支配のやり方から企業体自体を独立させるわけでありますが、その場合公社経営政策を決定する機関といたしまして経営委員会が設けられる。これは第十条に規定されておるのでありますが、ここでは経営委員会は、公社の政策決定機関として設けられておりますが、ただこの場合にも、なお電気通信事業経営政策を決定するにあたりましては、やはり国会とか、あるいは政府一つの政策決定機関として残つておる。つまり電気通信事業の現在やつている業務の変更であるとか、あるいは重要な財産の処分とかいうようなものは、やはり国会が支配しており、その政策を決定するということになりますし、また電話料金の問題にしましても、国会が政策決定を行うということになりますが、ただ経営管理の細部の政策については経営委員会がこれを行う。この経営委員会というものはなくてもよいのではないかというふうな意見も聞くのでありますが、さつき申しましたように、厖大な企業体については、その組織、財務あるいは人事、労働関係というふうに、複雑な問題がございまして、しかも従来の官庁の場合と異なりまして、これらの重要な経営権というものを企業体が国会あるいは政府から委譲されるのでありますから、そういう経営権を実際に把握し、それを運営して行くに十分な能力のある人が、しかも会議制の形で経営委員会に代表されなくてはならないと思うのであります。つまり今まで国会とか、あるいは大蔵省とか、人事委員会というふうなものが掌握しておつた権限というものを、細部の権限についてはこれを企業体に委譲してもらう。その権限を委譲してもらつて経営委員会が実際に細部について政策決定を行うという場合には、やはり総裁単独責任制というよりは、こういうふうな会議制を持つた管理機関というものを設けるのが妥当であると考えるのであります。また同時にこの問題は、経営委員会の構成メンバーでありますが、いかなる構成メンバーによつて構成されるかということは、この法文には出ておりませんが、理想的には民間の優秀な、経営者のみでなくて、そのほか消費者を代表する者であるとか、あるいは従業員を代表するようなメンバーが加えられるということによつて、初めて公共企業体の公共性というものが維持されるのではないかと思います。そういう意味で、現在の構成メンバーの数がわずか定員三名になつておりますが、これでは数が少し不十分ではないか。五人くらいにすることによつて、一人は電気事業経験者、一人は民間、あと三人。五人のうちの二人は従業員あるいは消費者の利益代表というふうな者を入れることによつて電気通信事業の公共性というものがより促進されるのではないかと考えております。この公社の管理機関といたしまして、この経営委員会というものと、それから役員が設けられまして、その役員は総裁、副総裁一人ずつ、それから理事が五人ということになつておるわけでありますが、しかも十二条の三項五号によりまして、公社の役員は経営委員になることはできないという形でもつて、一応政策決定機関というものと、それから総裁、副総裁という経営執行機関が分割されておるということは、非常に厖大な企業体の経営には、非常に適切であると考えるのであります。しかも実際には、総裁及び副総裁が経営委員会特別委員として入つて、しかも他の経営委員と同一の議決権を持つて政策を決定するというのでありますから、全然電通事業経験のない者が経営委員会でもつて政策を決定する。それによつて経営の実体に即しない政策決定が行われるということは、避けられるのじやないかというふうに感じております。  それから重要な点は、この予算制度あるいは第四章の財務及び会計の点でございます。何しろ現在の電気通信事業の設備拡充、あるいはこれを近代化する、つまり国際水準にまで電話の設備ないしサービスを近代化するという場合におきまして、必要なものはともかく資金あるいは資本であると考えるのでありますが、この資本の調達がどのような形で行われるべきかということが、この財務制度の場合に非常に重要だと思うのであります。資金調達の場合に、公社企業体でありますから、その企業収入、電話料金あるいは電信料金の収入でもつて電気事業経営を行つて行けるわけでありますが、しかしなお現在の電気通信事業経営状態におきましては、これだけでは十分な資本調達が行われない。そこで電信電話債券の発行というものがうたわれておりまして、それによつてできれば民間市場から民間資本を調達するということもできますし、また民間市場が非常に逼迫しているという場合には、政府電信電話債券を引受けることができるというふうな形になつておりますが、これも非常に適当であると思うのであります。またそれのみではなく、政府はある場合には政府資金を貸し付けることもできる。あるいは第五条に規定されておりますように、政府資本金の追加出資を行うことができるというふうな規定もございますが、種々な源泉に設備の拡張及び近代化の資金を設けておるわけであります。その所要資金のうちのいずれを民間資本、この民間資本というのは、電信電話債券の民間市場への売却、それからまた電信電話料金から得るか、あるいはそのどれだけを政府財政資金によるかということは、これは今後わが国資本蓄積状態とか、あるいは金融市場の関係で決定されることだと思うのでありますが、この設備の近代化ないしは拡充に要する資金の調達源泉という点においては、すべてが網羅されておつて非常に十分だと思うのであります。  ただその使い方でございます。実際に資金の源泉がたくさんありましても、やはり日本資本蓄積の状態から、ほしい資本が幾らでも得られるわけではございません。それにはおのずから限度がありまして、重要なことは、この資本をいかに合理的に運用し得るかということでございますが、この法案によりますと、公社予算制度の拘束を受けておる。この予算制度と申しますのは、要するに普通の行政官庁財政権を与えるというのが目的でありますが、公社の場合には、企業資本はほとんどその企業の収入から得られる。実体的には国の資金を支出するのではないのでありますから、そういう意味におきまして、国会予算制度によつて資金の支出権を付与するとか、それからまたそれに伴つて資金の運用を予算の目的及び金額の範囲内に拘束するというふうな必要はさらにないのではないか。そういう点では、この予算制度公共企業体に適用すること自体が、憲法上の意味におきまして非常におかしいのであります。むしろ国会の立場といたしましては、公共企業体に対しましては、財政権を付与するのではなくて、その事業計画承認するという意味でもつて予算の審議が行われる、そういう意味におきまして、予算、決算、そういうふうな官庁における原則は必要ないのではないかと考えるのであります。もちろんこの公社法案には、予算の項目流用の自由であるとか、予算弾力性規定であるとか、あるいは予算の繰越し自由、あるいは継続費制度、こういうものを講じましてかなり弾力的な条項が盛られておりますが、しかしこれはむしろ公社財政運営を非常にめんどうくさいものにいたしますばかりで、予算制度から考えますれば、このような規定の必要もなくなることがいいのでありますが、要するに公共企業体予算制度というのは、企業に対する財政権の付与ではなくて、事業計画承認する一つ制度として運用されるならば、まあ現在の過渡的な規定でもさしつかえないのではないかと考えております。  それからあと人事関係、労働関係というような問題がございますが、特に労働関係は、公共企業体労働関係法によつて規律されるわけでありますが、その場合に、何と申しましても一番問題になるのは第十六条でございまして、団体交渉の結果が、予算上不可能な資金の支出を伴う場合には、その協定は無効となるのでありますが、こういう条文がこの公社予算制度に関係して来るわけであります。特にその予算制度の中で、給与総額が予算制限を受けて、これについては項目流用の自由が存在しないというような点に問題がございまして、せつかく公社従業員に組合の団結権、団体交渉権を与えましても、実際に団体交渉権を発揮した結果である団体交渉が、予算上不可能な支出を伴う場合には、それが停止条件になつて無効であるというのでは、実態的に団体交渉の意味がないのであります。そういう意味におきまして、第七十二条に規定されております給与総額の制限は非常に問題があるところでありまして、むしろ従業員給与というものは、事業の業務量に従つて変動する変動費でございますから、この変動費的なものを予算でもつてやる、その予算というものは一年前くらいからつくられるのでありますから、そういうものでもつて拘束するということは、企業体あるいは従業員にとつて非常に迷惑な話ではないかと考えます。むしろ給与の中で変動費的なもの、つまり業務量の変化によつて増減する性質と固定費的な給与というものにわけまして、固定費的な給与についてはこれを現在の給与総額の制限でもつて縛るといたしましても、いわゆる変動費的なものについては、予算制限から解放すべきではないか、それによりまして、従業員利益と同時に、従業員に対する能率刺激というものが初めて与えられるのではないかと考えます。要するに電信電話公社につきましては、その公社化の究極の目的は、消費者、それから出資者としての国民利益を増進することにあると考えます。そのためには現在の官庁経営、つまり国民を代表する国会ないしは政府が直接に種々なこまかい点において規律するよりは、経営の支配についてはこれを業体自体にまかせる、それによつて能率が増進し、利潤が上り、あるいはサービスが向上するということによつて、かえつて国民利益が増進される、そういう意味においては大いに賛成いたしたいと思います。きのうの東京新聞にありましたが、公衆電話におきまして百人のうち十八人しか現在料金を入れておらない。それで電通当局としてはこれを硬貨にかえるということを言つておるが、そういうしみつたれたことをしないで、公衆電話公衆便所と同じように、これをただにすべきであるというふうな評論が第一面に載つておりました。その記名者は蕪生門となつておりますが、こういう考え方は非常に不精な考え方であると思います。公衆電話ただにするのがはたして消費者の利益になるかと申しますと、実際にはそうではない。消費者の利益といたしましては、やはり各所になるべく多くの公衆電話がつくられることによつてほんとうに便利になり、また利益が増進されるわけであります。そういう意味で、反対に公衆電話ただにした場合は、現在の公衆電話の数よりはこれをふやすという資本の調達が実際にはできない。反対に消費者の利益は害される。そういう意味におきまして、従来の官庁経営のやり方では、ややもすれば国の政策であるとか社会政策とかいうものが企業経営に押えつけられる。特に料金政策とかその他種々の面で統制をされておつたわけでありますが、これをむしろ企業体として経営させることによつて、かえつて消費者あるいは出資者としての国民利益が増進されるという点に根本的な考え方があり、その考え方に対しては私も非常に賛成するわけであります。  次に、わずかな時間が残りましたが、国際電信電話株式会社の問題について私見を述べさしていただきますと、理想的には、この電信電話事業だけの分離ということは、非常に不合理であると考えます。公社の一番よい特色と申しますのは、一つのは事業を統一的に経営するということでありまして、統一的に経営することによつて資本投資の重複であるとか組織の重複を避けるという点において、いわゆる合理化が達成されるわけであります。つまり公社一本で行う場合には、そういう合理化が自然に行われているわけでありますが、これをあえて電信電話株式会社にしなければならないということは、それだけの欠陥があるわけであります。ただ実際問題といたしまして、この電信電話公社の内容と申しますものは、企業体の性格を発揮するまでの権限付与というものが、まだ十分に行われているわけではない。特にさつき申しましたような予算制度というようなものだとか、給与総額の制限だとか、そういう点におきましてまだ非常にきゆうくつである。それに対して国際電信電話事業というものは、国際的な競争場裡に立たされるものでありまして、かなりに競争的なものであり、またそのため企業的な性格、あるいは経営弾力性、あるいは自立性というものが非常に必要であるわけであります。でありますから、やはり理想案としては公社にもつと経営の自主性を与える、国会及び政府の了解によりまして、自主的な経営権を与えてもらうということになれば、いくら国際場裡に立つとか申しましても、これはあえて危惧する必要はないと考えております。でありますから、その点は理想論的には反対でありますが、ともかく現在の公社制度としては一つの妥協案として出て来ているのではないかと考えます。特にその場合、国際電信電話株式会社を民営にするというふうに言われておりますが、これは決して純然たる民営ではないのでありまして、電信電話公社が現物出資する、その現物出資に対する対価としての株というものは政府が受取る、政府が将来その株を市場に売却する。そういうことによつて電信電話会社の所有というものは民有化されるわけでありますが、しかし実際の経営の支配というものは、必ずしも民有の資本家あるいは株主というものが、これを完全に支配するということはできないのでありまして、これは第十条から第十四条まで現定されておりますが、やはり経営者であります取締役及び監査役の選任、解任あるいは定款の変更、利益金の処分、合併及び解散の決議は郵政大臣の認可を得なければならない。あるいは毎年の事業計画、これも認可を得なければならない。特に非常に株主権を制限するものといたしまして、利益金の処分、それから毎年の事業計画というものは、政府の認可を得なければいけないという点において、その経営形態はむしろ昔の特殊会社の形態になつておるわけであります。特殊会社と申しますのは、広い意味のこれは公営形態でありまして、いわば民有公営という形になつておるわけであります。でありますから実際に所有だけは民有にして、そうして公営して行く。昔の特殊会社の場合にも、必ず政府の出資があつたわけでありますが、この場合には所有は全部民有化するという計画のようでございますが、政府の出資がなくして、はたして政府はその会社の経営を支配する権限があるかどうかということは根本的に問題でありまして、これを反対から申しますれば、このように政府経営を支配する場合に、十分な資本の調達が株の売却あるいは社債の募集ということを通して得られるかどうか、はたしてそれが可能かどうかということが実際に問題になるのではないかと思います。それからこの問題につきまして重要なことは、今まで国民の所有に属する財産を処分するわけでありますが、その場合に国民の納税者としての利益が、一部の株主の利益に帰属せしめられないということが、われわれの国民の一人としての重大な関心事であると思うのでありますが、その点につきまして、この国際電信電話株式会社法の附則十項に、公社の会社に対する出資、また譲渡する財産については、これはその財産の時価を基準とする。しかもそれにこの国際電信電話事業の収益率を参酌するということが規定されておりまして、これは非常にけつこうだと思います。何年も前の財産の取得金額によらないで、財産の時価による、物価の値上りによつて生じた利益というものは、これは所有者である国民利益に帰せしめらるべきものであると考える。この規定は納税者としての国民利益を保護する規定としてはなはだけつこうだと思います。ただ問題は、公社が現物出資して、その現物出資に対する対価としての株を政府が受取る。その政府が市場に将来売却して、その売上代金を公社に支払うことができるということは、問題は政府が株式を売つた場合に、それをどういう形で公社に支払うのか。つまりこの規定は要するに国際電信電話事業というものは、国ではなくして、公社に属するものであるとすれば、これでけつこうだと思います。ただそれがもし国に属するものであるというものであれば、これは何らか他の形によつて公社に出資、あるいは予算の形でこれを建設資金に充てさせるというふうなことが必要なのではないかと考えます。細部の点はともかくといたしまして、電信電話公社法案、つまり現在の電信電話事業公社化して、出資者及び消費者としての国民利益を増大して行こうという意図に対しては、全面的に賛成で、国際電信電話会社については、理想的には公社の一本化が望ましいのですが、現状の公社制度では、やはりこれは一つの妥協案として受入れられることになるのではないか。ただその細部の点については種々問題がありますことについて、私の私見を述べたわけであります。これで私の公述を終りたいと思います。
  58. 田中重彌

    田中委員長 次に久保等さんにお願いいたします。
  59. 久保等

    ○久保公述人 私は全国電気通信従業員組合中央執行委員長の久保等でございます。今回政府国会に上程せられました日本電信電話公社法案並びに国際電信電話株式会社法案に対しまして、以下申し上げたいと存じまするが、かねがね私ども特に電気通信事業に直接参画いたしております者といたしまして、私ども組合といたしましても、実はかねがね電気通信事業をいかに再建すると同時に、さらに国民の要望にこたえてこれを拡充発展させて行くかということについて、真摯な研究と努力を今日まで続けて参つておるわけであります。従いまして以下申し上げますことも、実は私ども直接事業に携つておる従業員がいろいろ研究を重ね、検討を加えたものであることをつけ加えて申し上げておきたいと存ずるわけであります。  今回の国会に上程されておりまする両法案に対しまして、私ども結論から申し上げまするならば、従来の電気通信事業二つに分割されまして、片一方は公社、片一方は株式会社という形に分断せられることにつきまして、非常に私どもといたしましては遺憾に存じておりますし、実は反対の立場であるわけでありますが、さらにまた分断せられたもののうちで、特に国際関係のものにつきましては、これを民営にするということについて、非常に強くこれにつきましては私ども反対の立場を遺憾ながらとらざるを得ないわけであります。実は今回の法案が上程されるまでの経過から考えましても、私どもといたしましては、十分にこの問題を検討いたしました結果が、以上のような結論になつておるわけでありますが、現在電気通信事業というのが概略どういう状況にあるかということをまず簡単に申し上げてみたいと思います。  戦後のいわゆる荒廃した電気通信事業というものを、私どもでき得る限りの資材と資金範囲内において、組合自体といたしましても今日まで努力を続けて参つたわけでありますが、もちろん量の面におきましては、いろいろ国民各位からの御批判もあるようでありまするけれども、むしろ戦前以上に量的な面においては増設をされておるという点があるわけでありまして、たとえば電話の場合におきまして、戦前最も加入者の多かつた時代におきましても、百八万個程度のものであつたのでありまするが、本年の三月末現在におきましては、百二十四万六千という増設がなされておるわけでありまして、また電信におきましても、戦前約八千六百万前後あつたわけでありまするが、現在におきましても、約八千六百十一万通という電報通数が今日さばかれておるわけでありまして、電信におきましてはほぼ戦前並、電話におきましては、ただいま申し上げましたような相当数の増加という点があるわけであります。しかしながら、もちろんこれが質的な面において、長い間設備を酷使したというような面もありまして、必ずしも国民の要望に沿い得ないことは、私ども重々存じておりますし、またこれの改善策についていろいろ努力をいたしておるわけであります。しかも現在の電信電話に対する一般国民需要状況がどうであるかということを申し上げますると、現在のところ電話需要におきましては、約二百万個に及ぶところの需要があるわけであります。しかもこの二百万個というものが、はたして現在の電気通信省といたしまして、どの程度の年数がかかつたならばこの二百万個を消化し切れるかという問題になりますと、全然具体的な計画が立ち得ないわけでありまして、その点は私ども特に国家予算の面におきましてかねがねでき得る限り、こうした国民の熾烈な要望に沿い得るような建設計画を樹立いたしまして、これに必要なところの資金獲得ということで、いろいろ一般のこれに対する関心と御協力をも要請いたして参つておりまするが、現在におきましては、昭和二十七年度におきましても、わずかに建設資金は百三十五億という形のものが国会においてきめられておるわけでありまするが、ただいま申し上げましたように二百万個に及ぶところの需要を満たす、そのためには約二千億近くの建設資金が必要でありまするが、この点におきましてももちろん意のごとくならないというのが現在の実情でありますし、さらにまた建設資金そのもの、あるいはその他の保守関係に必要なところの資金そのものにつきましても、いわゆる財務会計制変という面におきまして非常に大きな制約を受けておるわけでありまして、この点がいわゆる能率的に、また機動的に運営をするという面では、遺憾ながら大きな隘路になつておるのが現在の実情であります。従いましてこういつた点について何とか私ども打開をしなければ、真に電気通信事業というものが国民の要望に沿い得ないということを考え、いろいろ苦心をいたして、今日に及んでおるわけであります。  しからば今日まで政府がいかなる態度で、この電気通信事業というものを扱つてつたか、あるいはまたどういう形でこうした問題について今日まで研究を重ねて来たかということを、若干申し上げてみたいと思うわけでありますが、特に戦前の問題は別といたしましても、戦後におきましていわゆるかつての逓信省を電気通信省という形で、郵政事業を分離いたしたのが昭和二十四年になるわけでありますが、この昭和二十四年にいわゆるライン・オルガニゼーシヨンという形で、アメリカ式の機構改革がなされたわけでありますが、この機構改革はもちろん日本の特殊事情というもの、こういつた点が非常に閑却せられたような形で、縦割りにこまかくいろいろ機構が割れたわけであります。そのことのために私ども現在において非常に不便、あるいはまた非能率という点を痛感いたしておるわけでありますが、いずれにせよ、こういつた電気通信省というものが、昭和二十四年の六月一日から実施せられたわけでありますが、これと相前後いたしまして、昭和二十四年の七月に電信電話復興審議会というものが、内閣総理大臣の諮問機関として設置せられまして、電気通信事業の復興という問題を特に主眼に、いろいろ研究が重ねられたわけであります。  この復興審議会でいろいろ研究が重ねられましたその過程におきましても、必ずしも私どもこの状況を見ておりまして、私どもの意に沿い得るような、すなわち日本の実情というものを十分に考え合せて、しかも真に研究の結果、自主的に結論が出されたというふうにも考えられない節もあるわけでありますが、しかしながらいずれにせよ、こうした復興審議会自体でいろいろ検討せられた結論を見ましても、この結論は簡単に申し上げますると、要するに公共企業体にすることがもちろん妥当であるというふうな結論を出されておるわけでありまして、内閣総理大臣に答申案といたしまして、昭和二十五年に出されたものの一部を読み上げてみますると、電気通信事業は「公共的事業であるとともに一つ経済企業であるにかかわらず、国営であるがゆえに企業経営の基礎であるその財務経理および人事管理制度方法が、他の一般行政および一般管理のそれと同一の基調において律せられておる点において、致命的な欠陥を有するものである。われわれはこれまで本事業経済性が無理解に制約せられていたために、その公共性までがかえつてはなはだ達成せられていない事実に留意して、その経営主体を充分に自主制と機動性を持つた独立の企業体に改め、もつて最も能率的な運営を行わしめる必要があると考える。最も自主性と機動性を持つ企業組織は民営であるが、」ここで項目をあげて書いてあることは、本来ならばこの結論といたしましては、企業組織は民営であるが、本事業の基本的性格である公共性、それから技術的統一性及び自然的独占性ということ、さらに本事業の現状においては、租税諸公課の免除その他国家的保護育成を必要とすること、こういうような、事情から最も円滑迅速にできるだけ効果的に目的を達成するためには、最大限に民営的長所を、取入れた公共企業体にすることが適当であると考えるということが、この復興審議会結論であるようであります。  さらにまたこの電気通信事業の再建といいまするか、電気通信事業の建直しという意味におきましては、同じ昭和二十五年の第七国会におきまして、衆議院がやはりこの公共企業体移行促進に関する決議をされておるわけでありまして、これを簡単に一応読み上げますると、「由来電気通信事業は、高度の公共性を有する一面、その本質はあくまで企業的性格を帯びるものである。この点にかんがみ、政府はさきに電気通信省を設置して事業管理機構の合理化を図つたのであるが、本事業経営形態が依然国営に属しておる結果として、企業経営根本たる会計、経理及び人事管理等の面は、今なお原則として一般行政機関を規律する準則によつて拘束されておるため運営上活発な企業活動が阻害せられ、本事業の健全な発達に多くの障害を与えているものと認められる。よつて政府は、これらの障害を除去し、本事業根本的刷新向上を図る目的をもつて、これが経営形態公共企業体に移行するとともに、運営諸般の方途についても検討を遂げ、経営上十分な自主性と機動性とを附与すべきである。」というようなことが衆議院において決議せられておるわけでありまして、いずれにせよ終戦後においていろいろ検討が加えられた結論は、公共企業体以外に一歩も出ていないわけでありますし、さらにさかのぼつて考えてみますれば、電気通信事業は、明治初年から今日まで八十年間、この事業がいかなる形態において運営せられるのが最も妥当であるかということについては、いろいろ論議が重ねられておるわけでありまして、時によつては民営論というものが一部において唱えられておつたこともあるようでありますが、しかしその当時の事情はむしろ国家の財政というものは非常に緊縮政策をとらざるを得ないというような、国家財政の面から実は民営にしたらどうかというような意見も一部にはあつたようでありますけれども、しかしながら今日まで八十年間、電気通信事業というものが完全なる形態において民営という形を国会において審議せられ、しかもまたこのこと自体か非常に大きな一つ意見となつて現われたことはないようでありましていずれにいたしましても、今回出されました両法案自体の持ちまする意味というものは、非常に重大なものがあるというふうに考えておるわけでありまして、終戦後における、ただいま申し上げましたような国会、あるいは政府の動きに相呼応いたしまして、電気通信事務当局においても、いろいろ試案を作成いたしておつたわけでありまして、本年まで第八次にわたるところの電気通信事務当局の案がつくられておつたわけでありますが、その中に流れておつたと申しまするか、考え方というものは、常にやはり公共企業体という形における電気通信、国際においてもあるいは国内通信においても、これを一本として考えた公共企業体という前提に立つてつたわけであります。  また私ども実は一昨年の末ごろから、電気通信の再建運動というようなことを始めまして、爾来特にこういつた問題について十分に研究も重ね、関心も持つてつておるわけでありますので、昨年大臣の新任に伴いまして、佐藤大臣にもこの問題については終始いろいろ政府の意向というものも打診するし、私どもの意向も十分に申し上げておつたわけでありますが、しかしその過程におきましても、やはり何ら民営という問題には触れておらなかつたわけであります。かねがね私どもといたしましても公共事業でありまする電気通信事業を民営にするということにつきましては根本的に反対でありますし、また民営ということによつて問題の解決ははかり得ないという結論に立つて、強く私どもの意向も申し上げておつたわけでありますが、この点に対します態度といたしましても、何ら民営という問題は申しておらなかつたのであります。また民営を前提とする公共企業体というものも考えておらないというのが、少くとも私どもに対するはつきりとした正式の態度であつたわけでありますが、どういう風の吹きまわしか存じませんけれども、本年の実は二月下旬から三月の上旬にかけまして、国際問題についてはこれを民営にすべきであるという形で、急遽これに対するいろいろ準備が進められたようでありますが、こういつたいきさつにつきましては、少くとも電気通信事業の内部に直接参画しておるところの、国民の公器である事業を預かつておるものといたしましては、きわめてふに落ちないところであります。特に過去におきましてもいろいろ民営論というものが論ぜられた経過からいたしまして、あの当時の状況と今日の状況を比較して、民営論というものの根拠が那辺にあるかということを私ども考えました場合に、結局私どもといたしましまして理解できることは、政府の考えておる点は、特に国際に目をつけたところのものは、その収支の問題であろうというふうに推定をせざるを得ないのでありまして、特に国際電気通信事業の問題につきましては、数字をあげて簡単に申し上げますると、昨年の四月から本年の一月までの間、すなわち十箇月の間における収支状況でありますが、概略の数字になりまするけれども、収入の面におきましては約三十二億六千六百万円、支出の面におきましては十一億一千六百万円、従いまして支出の面におきましては、収入の面の比率として申し上げますると、三四%程度にしかならないわけでありまして、二十一億五千万円という金額が一応黒字として出て参るわけであります。もちろんこの二十一億五千万円という数字は、雑費というような少額のものは含まれておりませんので、大体の数字になるわけでありますが、いずれにせよとにかく三十二億前後の金額から十一億余の金額を差引きました二十一億に及ぶところの黒字財政であるということだけは申し上げられるわけでありますし、政府自体が民営を考えた場合における根拠といたしましては、ここに目をつけたのではないかというふうに感ぜざるを得ないわけであります。  同時にまたさらに国内通信についても、これを民営にすべきだというふうに意見が出ておるようでありますが、この民営論ももちろん電信電話を含めての一元的な民営を考えておられる方はどなたもおらないわけでありまして、電話を民営にできればしたいという考えでありますが、しかしながら国内における電信電話につきましても、これがしからば現実的に電信電話に分離できるかということを考えた場合には、現実的にでき得ないことであります。こういつたよう事情を考え合せましても、やはり国内の将来に対する考え方といたしましても、電話を民営にできればしたい。今回の実は政府の出されました法案提案趣旨説明にも、当初はあの日本電信電話公社法案提案趣旨説明といたしまして、でき得る限り早急に民営に切りかえたいのだが、きわめて厖大な固定資産を持つております国内の電信電話を、一挙に民営にすることは現実的な問題として不可能であるという観点から、この問題は一応見送ろうという形で、今回の日本電信電話公社法案が上程せられておるという経緯を、私ども承知いたしております立場といたしまして、いわゆる民営を前提とするところの日本電信電話公社法案に対しましても、多大の危惧と同時に私どもといたしましては反対をせざるを得ないわけでありますし、さらにただいま申し上げました通り電気通信事業が一元的に運営せられておることは御承知の通りでありますが、そのうちもうかる部面をまず国際の面において切り落し、さらに将来においてはそのうちのまた電話部門を切り落すという形に考えて行くとするならば、私どもの真に公共的な使命を持つ電気通信事業自体の行方が、いかなる方向に行くかということもおよそ見当がつくわけであります。少くとも八十年間にわたる電気通信事業が、今日においてこの法案によつて決定せられるような形で将来運営されて行くとするならば、きわめて重大なる問題ではないかということを率直に考えておるわけであります。従いましてこうした公共性の無規される形における民営分断という形は、私どもはこの点について反対せざるを得ないわけでありますが、現在それならば世界的な状況が一体どうなつておるかということも、簡単に一言触れておきたいと思います。  特に国際の民営の点につきましては、国際場裡において電波を獲得する面において、あるいはまた公社の利用者に対するサービスを向上させるためにということが、提案趣旨の大きな理由になつておるようでありますが、それならばそういう民営の形でなければ、国際場裡において全世界が民営になつてしまうのかということになりますと、決してそうではないわけでありまして、まず五つ、六つの例を申し上げますると、アジアにおける中国あるいはタイ、インド、さらに欧洲におきましてはソ連はもちろんのことでありまするが、スエーデン、あるいはノールウエー、フインランド、ポーランド、ベルギーというようなところは、すでにこの電気通信事業は国営で運営されておるわけであります。さらにまたフランスにおきましても、国際通信につきましては官民半々の状態になつておりますし、さらに電話事業につきましても、実は一八八九年まで民営でこれが経営せられておりましたが、一八八九年以後国営になつておるわけであります。電信はもちろん国営でなされておるわけであります。同時にまたイギリスにおきましてもイギリスにおいては当初電信電話とも民営で運営せられておりましたが、その後これが国営に切りかえられておるわけであります。国際電信電話の点につきましては、これも当初民営であつたものが、一九四七年から実は公共企業体に切りかえられて今日に及んでいるわけであります。そういう点から考えますると、いずれにせよ民営から公共企業体という形、あるいは民営から国営という形に移行しつつあるという形はございますけれども、従来国営ないしは公共企業体であつたものが、民営に切りかえたという話は実は聞かないのでありまして、こういつた点から申しましても、特に国際場裡において電波獲得の上から、特に民営でなければならぬという理由については、遺憾ながら終戦後におきまして日本の立場というものは、経営形態の問題とは別に、日本の世界における立場、あるいは日本の国力という問題から、確かに電波獲得の上においていろいろ大きな問題が起きていると思いますが、いずれにせよ経営形態だけの問題ではなくて、やはりそういつた問題は国際場裡における国力の問題が最も大きな問題であろうと存ずるわけであります。こういう点から私どもといたしましては、この世界的な動向、そういつた面から考え合せました場合、国際を特に民営にしなければ、この経営が非常に困難であるというふうには考えられないわけであります。  さらにサービスの問題に触れておるようでありますが、サービスの問題につきましても利用者各位からは、電気通信事業というものに対するサービスが悪い、非常に長い時間かかるというお話がございましたが、この点につきましても確かに今日電報あるいは電話の扱い時間というものが長いという問題があるわけでありますけれども、この点を特に、ごく最近のデータであり、四月の八日から十日間においてとりました一、二の例にすぎませんけれども、たとえばアメリカ向けの通信について申し上げまするならば、外国、すなわちアメリカの受付から日本の東京電報局、あるいはまた東京の国際電話局、ここまでに到達する時間は二十四分であるのに対して、日本の国内で受付けたものを日本の国内から外に送り出す、すなわち送信するまでの時間が二十一分、これは至急報と申しまするか、官報の場合でありまするが、普通の場合につきましても、外国から日本の東京に着信するまでの時間というものは二時間、それから国内から外に出る時間が一時間十二分というような形になつておるわけでありまして、さらにそのほかフイリピン、あるいはスイス、こういつたところにつきましてももちろん若干の時間の変動がございまするが、ほぼ外から内に、内から外へという経過時分というものは、そう大きな変化がないわけであります。この点から申し上げまするならば、ただ単に日本におけるサービスのみが悪いという結論にはならないわけでありますし、今後改善を要する点はもちろんあるといたしましても、経過時分等の点から見まするならば、国内における経過時分のみで、一方的にサービスが悪いという結論には必ずしもならないというように考えておるわけであります。特に電通事務当局の方で出されました資料の中にもあつたようでありますけれども、あれはもちろん全部をひつくるめた中の大体の平均をとつたようであります。至急報と普通報、あるいはまた遅れてもよろしいという利用者の了解の上で受付けるものとは、時間の上ではそれぞれ大きな差異があるわけでありまして、一律に電報は何でもおそいのだ、国際電話は何でもおそいのだという結論にはならないかと存ずるわけであります。  さらにサービスの改善の問題といたしまして、私どもかねがね主張いたしておることでありますが、機構改革の点について先ほどちよつと申し上げましたように、昭和二十四年のあの機構改革以来、これはただ単に国際面だけではなくて、国内の面におきましても非常に大きな改正を私ども痛感いたしておるわけでありまして、たとえば国際の場合につきましても、電信電話を扱うために、そのすぐ上位における管理所といいますか、上部団体の機構を考え合せました場合には、非常に複雑になつておるわけであります。国際電信電話を取扱うところの現業局のすぐ上位における部局の構成につきましても、現在のところ電信管理所あるいは電話管理所、あるいは搬送管理所、国際管理所、国内管理所というようなきわめて複雑な機構状態になつておるわけでありまして、こういう問題を拔きにして、ただ単にサービスが悪い、これを民営にするならば問題が解決するのではないかというものの見方は、非常に浅薄ではないかというように考えておるわけでありますし、こういつた点は国内問題についてももちろんあるわけでありますが、国際の場合におきましても、ただいま申し上げました機構自体に非常に大きな問題があることを十分御承知願いたいわけであります。同時にそのこと自体が決してそうむずかしい、やつてもやり得ないというふうな困難な機構状態であるとは私ども考えないわけでありまして、十分に機構改正をやることによつて、こういつた面を打開することができるというように考えておるわけであります。  それからさらに施設の強化といいますか、施設の整備というような点を考え合せましても、たとえば昭和二十七年度には、電信回線を四回線増設し、電話につきましては二回線、電信放送につきましては二方面にわたるところの増設計画をいたしておるわけでありまして、これに要する経費は二億五千万円であります。わずかに二億五千万円という問題につきましても、ただいま申し上げましたように、国際の収支状況というものはきわめて現在のところ潤沢と申しますか、非常に余裕があるわけでありまして、こういう点から考えた二億五千万円という数字、あるいはかりにサービスを向上させるために、日本の国内におけるところの加入者、大口利用者に施設を整備拡充いたしまして、たとえばテレタイプというようなものを大口加入者につけて、サービスの改善をはかるというようなことを考え合せましても、決してそう厖大な予算が必要ではないわけでありまして、こういつた点を考えても、やはり二、三億程度予算があるならば、設備の強化あるいは設備の改善というようなことも、十分になし得るというように考えるわけであります。しかもこのこと自体も決してこれを民営にしなければやり得ないというふうには、われわれ理解いたさないわけであります。そういう点を考えますると、加入者に対するサービスあるいはまた機構改革等を考え合せましても、やり得る点が十分に残つておる。まだたくさんある。この問題に手を触れずして、先ほど私が申し上げましたように、政府当局が突如としてことしの二月ないし三月に至つて、国際を民営に切りかえるという形で現わしたことにつきましては、いずれの面を考えましても、率直に言つて納得しがたいのであります。  こういう点と、さらにまた電気通信当局で出しましたところの現在の回線状況を申し上げますると、戦前における国際通信が七十三回線あつたものが、現在は三十七回線しか実は復旧しておらないという点でありますけれども、この点につきましては、御承知のように現在の日本の国際的な立場というものが、大陸方面においてはほとんど閉塞状態になつておるというような問題、あるいはまた海底線の問題にしましてもしかりでありまして、こういう点がやはり大きな一つの隘路になつておるわけでありまして、ただ単にこれを電気通信事業というものの問題として片づけるのには、あまりにも大きな問題ではないかというふうに考えておるわけでありまして、これとてもやはり民営に切りかえれば、大幅に昔のような回線状態になり得るというように考えることは、非常に甘いということを率直に申し上げざるを得ないわけであります。  さらに国際の分離問題につきましては、御承知のようにただいま申し上げましたように、電気通信というものが非常に全国的に統一的な、しかもまた有機的なつながりを持つておりまするだけに、簡単に分離するということはでき得ないわけでありまして、机上において分離することはもちろん簡単でありまするが、生きておる電信電話を分断といいますか、経営を別にするということについては、非常に困難があるわけでありまして、施設の保守面におきましても、たとえば国内の電信電話線と併用せられておるという点があるわけでありますし、さらにまた運用面におきましても有機的な連繋がはたしてより強化されるか、それとも経営自体が違うことによつて有機的な連繋が阻害される可能性の方か多いかということになりますると、私決して後者になつても前者になるとは考えられないわけであります。  さらにまた民営になれば、何でもサービスがよくなるし、また従業員の態度もよくなるのだということをよく申しますけれども、簡単に考えまするならば、ただ単に先ほど申し上げました数字からいたしますれば、これはきようあすの問題としては給与も十倍くらいに上げてもいいのじやないかというように考えられるかもしれませんけれども、しかし経営形態がかわることによつて、当然従来の電気通信事業を一元的に運営しておりました際以上に、間接費が増加するということは当然であります。共通部門を従来以上に強化しなければならぬということは、これは当然考えられるわけでありますし、さらに税金、株主に対する配当、その他の分担金ということを考えました場合に、将来においては国際の電話料金あるいは電報料金というものは、現在非常に高いという声があるが、必ず安くなるかということになりますると、むしろ長い目で見た将来の電話料金あるいは電報料金というものは、高くなることも十分考えられるわけでありますし、ただいま申し上げましたような内容を検討して参りまするならば、そういつた料金が将来高くなるということも十分考えられるわけであります。しかもかつて日本の国際関係におけるあの日本無線電信株式会社が大正十四年、それから昭和七年に国際電話株式会社というものが、設備だけが実は民間で設備をし、運用は政府がやつてつた当時の状態を見ましても、必ずしもあの当時それならば非常にもうかつてつたかどうかということになりますと、むしろ財政的には非常に苦しかつたということもあるわけでありまして、そのことが昭和十三年の例の国際電気株式会社という形に合併され、さらにもう少し営業部門を広げたということもあるわけでありまして、そういう点から考えまして、何か一応内部的にこの民営論を考えまするならば、とんでもない、非常に幻滅の悲哀を痛感する結果になるのではないかというように考えるわけであります。こういう点をいろいろ考え合せまして、私ども国際電信電話株式会社法案に対しましては、特に強く反対をいたしておるわけであります。     〔委員長退席、高塩委員長代理着席〕  さらに最後に、公社法案に対する問題について申し上げたいと思いまするが、この点につきましては、いろいろ基本的な考え方につきましては、先ほど来申し上げましたので、特に条文に沿つて具体的に意見を申し上げて参りたいと思います。従来から電気通信事業の隘路というものは、冒頭に私が申し上げましたように、いわゆる機動的な能率的な運営財政面において非常に大きく制限をされておるということであります。そういつた点が、今度の公社案から見ました場合に、解決しておるかどうかという問題につきましては、非常に多くの疑問があるわけでありますし、むしろ疑問というよりは、はつきりと大きなひもがついておるわけでありまして、十分な機動的な運営が不可能ではないかというふうに考えておるわけであります。  条文を追つて申し上げて参りたいと思いますが、最初に第十一条の経営委員会の問題であります。この経営委員会の構成は、委員が三名と総裁、副総裁の特別委員二名を加えて、五名をもつて構成することになつておりますが、大体公共企業体というものを考えて参りまする場合に、経営委員会において決定されたことは、ただちにこれが有機的に執行面において執行されなければならないと存じますし、同時にまた日常における諸般の問題が、執行面から経営委員会の決議機関の中に流れ込んで来るという有機的な形態でなければならない、かように考えるわけであります。その際なるほど部外からは三名の非常に優秀な経営委員を送るといたしましても、総裁副総裁の形によつてはたして執行面における全従業員の意向が、あるいはまた全従業員の熱意というものが、遺憾なく経営委員会に反映され、吸収されるかどうかという問題については、多分に疑問があるわけであります。結論的に申し上げまするならば、この経営委員会にぜひとも職員代表という形における経営委員を参加さすべきだというふうに考えるわけであります。いかに決議機関、執行機関というものがきれいな形ででき上りましても、血の通わない経営委員会と執行機関の関係であつては、決して企業体はうまく行かないということを、私ども過友の二、三の例からも痛感いたしておるわけでありますので、この点につきましてもぜひ十分にお考えをいただきたいというように考えております。  次は二十一条にあります総裁、副総裁の任命の問題でありますが、この点はやはり一般経営委員の任命と同じような形で、国会承認を経るという形にすべきではないかというように私は考えます。総裁、副総裁は特別委員という形で、特別という名前はついておりますけれども、実質的には経営委員仕事もやるわけでありますから、経営委員以上に非常に大きな責任があるわけであります。他の経営委員国会承認を得て内閣が任命するという形になつておるにもかかわらず、この総裁、副総裁は内閣がただ単に任命するという形になつておるということにつきましては、非常に私ども不安を覚えますので、ぜひとも第二十一条の総裁、副総裁は、内閣が任命する場合には、やはり他の経営委員と同じように国会承認を経ることを条件としたいと考えるわけであります。  さらに第三十二条へ参ります。これはあるいは大した問題ではないというふうにお考えになるかもしれませんが、第六項の、職員がいわゆる結核性疾患にかかつた場合に対する給与率でございます。これは現在の国家公務員給与法に基いた給与規程を、そのままここに挿入したものだと考えるわけであります。結核疾患というものが電気通信事業といかなる関係にあるかということは、私ども機会あるごとに強調いたしておるわけでありますが、日本電気通信事業に携わる従業員には、非常に結核患者が多いわけであります。これは職場環境あるいは作業の特殊性というものが、非常に結核を多くしておるわけであります。結核性疾患の者を初めから電気通信省が採用しておるわけではありませんし、厳重なる身体検査のもとに採用するからには、やはり職場において感染し結核にかかつた場合においては、特別の措置を考慮すべきではないかというふうに考えるわけであります。しかもまた一般の社会施設に至つては、現在のところほとんど考慮がなされておらないという状況から考えましても、職員が結核性疾患にかかつた場合においては、百分の八十という給与ではなく、百分の百の給与に是正していただきたい、かように考えるのであります。  さらに第三十六条に参りまして、公共企業体労働関係法の適用の問題でありますが、私ども公共企業体に携わる従業員の労働関係を、いかに規律して行くべきかという問題については、やはり原則的に労組法の適用をお考え願いたいというふうに考えるわけであります。日本の労働運動というものが、終戦後の状況からいたしまして、いわゆる不安定と申しますか、非常に変則的な形で進められておつたことも十分に承知いたしておりますが、しかしこれに付する扱い方も、きわめてへんぱな扱いがなされておつたことも事実であると考えるわけであります。すでに国鉄公社なりあるいはまた専売公社に対しましては、あのマ書簡の出た直後から公共企業体労働関係法が適用せられて今日に及んでおるわけでありますけれども、今日から発足するものに、やはりあの占領下にあつたところのマ書簡の練り直しという程度のものを適用させるという形については、十分に反省する必要があるのではないか、原則として労組法の適用をぜひ考えるべきであるというように考えておるわけであります。  次に第四十三条に参りまして、予算の問題であります。従来から電気通信事業というものの経費について、種々論議がなされておつた点が、特にこの財務会計、言葉をかえて言えば、予算の問題に関連してであつたということを考え合せますならば、十分に企業体の自主性を尊重して行くべきであるというように考えますので、少くとも弟四十三条第二号、四号、六号というものは、削除するのが正しいというよりに考えます。すなわち第二号は予算流用の問題でありますが、これが一一監督官庁承認を必要とするという形では、臨機応変の措置が十分になし得ないと考えるわけであります。しかもまた終局的には、国会のこれに対する監査監督が確保されている限りにおきましては、こまかい費目の流用等についてまで、一々監督官庁承認を必要とするということでは、公共企業体としての性格なり、あるいはその使命を十分に達することができないのではないかと考えるわけであります。第四号は国庫納付に関する事項でありますが、真に公共企業体の公共性を考えて参るとすれば、これを一種のドル箱的な考え方で見るということは、そもそも間違いであると思います。上つて来た利益については、もちろんその間において繰越欠損金に充当して、さらにそれ以上のものがあつた場合という条件はついておりますけれども、いずれにせよ、国庫納付ということをここにはつきりと明示することについては、公共企業体そのものに対する熱意を疑わざるを得ないわけでありまして、ぜひとも国庫納付に関する事項は削除願いたい。もちろんこれに関連して前後の条文の若干の整理はあると思いますが、私の主張いたしております点は、国庫に一部納入するというこの制度を廃止すべきであると考えます。第六号の給与の問題につきましても、少くとも事業に適した勤労ということを考え、またこれに対する妥当な給与を考えて行こうということでありますならば、給与総額の面において金縛りにするということは、非常に大きな問題があると考えます。  次は第六十一条であります。これはただいま四号のところで申し上げたのと繰返しませんが、これも削除願いたいのであります。  大体以上で、日本電信電話公社法案に対する私の意見を申し上げたわけでありますが、いずれにせよ、公共性と企業の自主性という問題を考えます場合に、ただいま申し上げましたところの予算という問題、すなわち財務会計制度という問題は、かねがねいろいろ国鉄あるいは専売等におきましても論議が重ねられて参つておりますだけに、この問題については、公共企業体として発足した場合において、従来の国鉄あるいは専売において批判がなされておつた点が克服されたという形においての新しい問題を考えて行くべきではないかということを考えるわけであります。  以上日本電信電話公社法案に対する意見を申し上げたわけでありますが、総括的なことは冒頭に申しておりますので、時間の関係もあろうかと存じますから、以上でもつて私の今回の両法案に対する公述をこれで終りたいと存じます。
  60. 高塩三郎

    ○高塩委員長代理 次に横山利秋さんにお願いいたします。
  61. 横山利秋

    ○横山公述人 私国鉄労働組合の企画統制部長の横山であります。  まず日本電信電話公社法案を私が開いて拝見いたしてみますと、数えてみますと、できない、してはならない、せねばならない、こういう文句が四十六あります。子供のようなことを申しますが、実はこれが私の一番言いたいところであります。今日まで国鉄公社専売公社並びに両労働組合が弱り切つてつた、そうして国鉄並びに専売運営がなかなかうまく行かないということも、このしてはならない、せねばならない、できないという文句にあるのであります。私はそういう意味合いからして、これは電信電話公社に対する破壊活動防止法案ではなかろうか、こうもまた極言できる。政府がこの公社を、提案理由にありますように、円滑に、自主性を持つてやらそうとするならば、そういう四十六もあるできない、せねばならない、してはならないという文句を、もう少し自主的にやらせ得るように考え直すことが、私は一番大事なことであろうかと思うのであります。この点は私がそう申し上げるまでもなく、言葉をかえて先ほどまでいろいろの公述の方がおつしやつてつたところであります。  さてお話に入るに先立ちまして、この経過について二つのことを申し上げたいと思うのであります。第一は今久保さんが一生懸命に力説をせられた民営移行論が、今日まで常にこの問題につきまとつて来ておつて、本法案においても、また将来その雰囲気が続くことがなしとしないところであります。政府提案理由において第一に、全国にわたる厖大な組織及び設備を有し、かつ巨額の事業費を要する公共事業であること、第二番目には強度の公益性、技術的統一性及び自然的独占性を有する事業である。第三は民営にしても公租公課の賦課が加わり、経営合理化をしても料金値上げを招来すること、年々巨額の拡張資金を民間資本にのみ求めることは、日本資本蓄積状況から見て望み得ない、こういう三つの理由をあげて、民営形態が適当でないというふうに判断をして提案をしておられるのでありますが、一方においてこれらの理由と何らかわることがないのにかかわらず、国際電信電話事業を国営から切り離して会社を分離し、民営形態として、別に法律案を提示しておられることに、すでに自家撞着がある。これがため今後の電気通信事業に幾多の不安定性を与えていることは、疑いをいれない事実であろうと思うのであります。本来公共企業体というものそのものは、民営形態に適しないという原則に立つて制定され、運営されなければならないのでありまして、この意味からこの法案の基礎条件が、社会大衆、また直接これに従事をする労働者諸君に対して、また将来何か起りはせぬかという疑義を与え、経営者自体にもまた何か起りはせぬかという疑義を与える、こういう点に、私はこの基礎条件に多くの問題があると考えるのであります。  第二番目に言いたいことは、公共企業体そのものが、日本においてまだ発達の日が浅いのであります。主として社会的な基礎条件の異なるアメリカのそれをモデルにいたしまして考えられていることであります。しかもこれは昭和二十二年にマ書簡が発せられた際に、わずか二、三行の文句がその中にあり、突如として国鉄、専売の両企業公共企業体として発足したのであります。公共企業体のあり方については根本的検討と批判の結果、生るべくして生れたのではありません。今回の法案は多分にかかる早忙の間に生れた国鉄、専売公共企業体形態並びに運営とほとんどかわることなく、まつたくこれに類似して立案されておるのであります。こういうことが今日国鉄、専売企業の現在の不完全かつ不合理な運営を熟知いたしておりますわれわれ並びにこれに関する内外の関係者にとつて、まことにばかげたことをおやりなさる、こう考えざるを得ないのであります。聞くところによりますと、当初においてはある程度現在の国鉄、専売公社のあり方の矛盾を解決するために、郵政当局の一部においても、政府に対していろいろ提案されたと聞いておるのでありますが、今日私どもの目の前にありますこの法案というものは、その趣旨今やまつたくないということが言えるのであります。もし本法がこのまま立法化され、実行される場合は、国鉄、専売の自主性のない公共企業体三年間の苦しみの歴史を、今から公社並びにこれに従事する労働者がたどることになるのでありまして、今まで苦しんで来たわれわれにとつては、まことに同情と憤激にたえない、こう私は考えるのであります。以上二点がこの法案制定上の二問題とするところであります。特に私は国鉄労働組合にあり、その経緯をたどつて来たものでありますから、あとの点についてもう少し詳しくわれわれの体験を述べまして、本法案に対する各位の深甚なる考慮を煩わしたいと思うのであります。  この法案が国鉄、専売公共企業体を何といつても範例としておることについて、範例としてはいけないという理由を申し上げたいのであります。第一に二十二年にマツカーサー書簡が出された、いわゆるマ書簡が出された最大理由は、明らかに当時日本における共産主義勢力に対して、これを彈圧するためにのみなされたのであります。すなわちマ書簡は当時の政治的考慮をもつてなされた現実的な法律である、現実的な効力を中心としたものであると私どもは考えております。しかるに先ほど申し上げましたようにその書簡中の、国鉄、専売経営については公共企業体がよろしいというわずか二、三行の文章によつて、にわかに公共企業体研究が開始をされました。しかもその研究が完成されるいとまもなく、占領軍の数々の示唆のもとに、企業体としての出発をせざるを得なかつたのであります。当時においても、今日においても、政府事業の中で公共企業体の対象として考うべきものは、まだほかにもあるはずであります。ともあれこのような早忙の間に研究と準備の不足のままに、国鉄、専売はまつたく多くの矛盾と副作用を生ずるに至りました。たとえば日本国有鉄道法にならつて電信電話公社法案を設けたけれども、国鉄の財政上の自主性は認められません。しかもその中で独算制を鋭く追究されました結果、建設改良等の工事は打撃を受けましたし、技術研究部門は縮小されましたし、労働者の労働条件は一大打撃を受けました。増収政策は地方路線の修復や設備改良の停滯と犠牲によつて、行われざるを得ない地位にまでなつたのであります。特に従事員の伝統的な訓練制度の大きな縮小を受けましたがゆえに、直接的な原因がほかにあるとは申しながら、悲惨な桜木町事件の惹起を招く結果になつたということは、すでに参議院の行政監察委員会並びに予算委員会において指摘、助言をされたところであるのであります。今回の法案がほとんど日鉄法と同様、財政的行為に関し詳細な規定によつて制限を加えていることにつきましては、このような体験の判定を加えられるよう、議員の皆さん方に切に私どもは要望をいたしたいと思うのであります。  次には、本法によつて郵政省の機構の大改正となるのは当然でありましようが、この点についても、国鉄の二回にわたる機構の改正が各方面において多くの批判を呼び、皆さん方からも御意見があつたということは周知の事実であります。これは一つには企業運営が従来と異なつて、実質的に国鉄においては運輸省が行政監督の立場に立つことになつたこと、並びに内部組織においても基盤の異なるアメリカ企業運営をまねまして、資材とか経理とかあるいは企業の各部面の上下の縦割り制度を採用したこと、それから地方の鉄道局をやめまして管理局というふうにいたしまして、四段階から三段階にしたこと、そうして二十七の管理局を設置したことによるものであります。今日すでに皆さんからいろいろ御指摘を受けて、国鉄もある程度機構の再改正をせざるを得なくなつたということも、当時あまり研究も十分でなく、相当アメリカさんの言うままになつたということについても、考えなければならぬところであろうと思うのであります。このことは公共企業体として責任制を確立することが主たる理由としてなされたところであつたのでありますが、かえつてセクト主義の台頭を招きまして、各部間がそれぞれ自主性を強調する結果となり、円滑な総合一貫性を欠くことになりました。やはり日本における公共企業体の総合的研究と各企業における歴史的事情を尊重しなかつたゆえんでもあろうかと考えます。  財政上の自主性がないことは、労使の関係に大きな影響をもたらしました。電信電話公社法案の三十六条において、公労法の適用を受くべく規定をされているのでありまするが、このことはこの公社当局が、今日の国鉄当局と同様、団体交渉やそのほか労使の紛争について、国会の議決による給与の総額内という制限、七十二条でありますが、それによつて本質的に当事者たる能力を欠くことになつているわけであります。今日まで国鉄における賃金紛争が、必然的に常に両当事者間では結局当事者の能力がないために、真剣な団体交渉が行われ得ません。どうしても当局は、これはまあ国会があるいは政府がということになつて、逃げまわる結果になるのであります。ですから勢い皆さん方からときどきおしかりを受けるのでありますが、国会へ押しかける、そうして政治問題になるということは、法案自体がそういうふうにならせているわけであります。われわれは最終的に賃金の問題が国会の議決となることについては、必ずしも否定するものではありません。しかしながら少くとも今日までの紛争の欠陥を補うためには、七十二条を削除するとともに、公労法の十六条、三十五条を改正いたしまして、仲裁裁定が公社及び政府を拘束することだけは、労使の賃金紛争をより迅速かつ真摯なものによつて妥結ができるようにしなければならぬと確信をいたしているのであります。  そのほか国鉄における体験を申し上げますと、時間が長くなりますのでやめますが、ここに言いたいところのことは、この法律案が正しい意味の公共企業体としての立案でなく、こういう歴史をたどつて来た不備な国鉄、専売に類似して立案されたことが、大きな欠陥であるということを指摘をいたしたいと思うのであります。われわれは公共企業体というものが、民営論議が成り立たないという前提の上に立案され、かつ運営されて来なければならぬということを先ほど申し上げました。そうして国民大衆のために、社会大衆のために考えなければならないと思うのであります、そのためには、年々の収支の狭義のバランスを追求する、狭義な独立採算制は排撃しなければなりませんし、そのためには一部の政党とか一部の資本家の利益に奉仕するようなことは、公共企業体としては絶対排撃されなければならぬと思うのであります。それにもかかわらず、この二つの点が今日なお、鉄道及び自動車路線の払下げ法案がちよいちよい出たり、あるいはバスの民営論がちよいちよい出たり、あるいは国際電信電話株式会社法案なつたり、公社人事が政党の御都合のいいように立案されたり、あるいは運営されたり、形式的な独算制をもつて補給金はやらぬ、借入金も少ししか出さぬ、建設公債はなかなか発行を許可しない、運賃や郵便料金は上げない、自前ですべてを解決せよと強要されているわけであります。こういうようなことでは、公共企業体は何ら積極的な運営経営できません。先ほど久保さんがおつしやつたように、全電通労働者の諸君が言うことはもとより、あらゆる関係の諸団体が、つとに電信電話事業の再建方策を提示しまして、建設的な方向を推進している熱意は、大いに尊重されなければならないのにかかわらず、以上のような現実がこれらの熱意を冷却させ、勤労の意欲を蹂躙していることを、十分に皆さんにお考えを願いたいと思うのであります。公共企業体国民大衆のため能率的な運営をはかる意味においては、むだと無理とむらという三つの点を私は排しなければならぬと思うのであります。本来完全な国営においても、私は国鉄にしてもあるいは専売にいたしましても、この公社電通においても、所期の目的が貫徹されるというふうに信じているものでありますけれども、今日の、まあ悪口を言いますが、官僚の学派閥あるいは権力への追随主義、こういう中においてはしかく私の言う理想は困難なところがあります。その意味においてはこの公共企業体について、むだと無理とむらを排して、能率的な運営を行わなければならぬと思うのであります。  第一にむだをなくすることを、法案の中で運営の面に具現されるように、皆さんに要望をいたしたいと思うのであります。それはどういうことかと言いますと、政府国会あるいはこの郵政省による二重三重の監督や束縛を、最小限にとどめることが第一であります。また内部におきましては、管理機構を縮小いたしまして、現場における運用を十分にやれることを私は皆さんにお願いをいたしたい。そうして公共企業体が自主的な一元的経営をはかるようにしていただきたいと思うのであります。第二番目にむらをなくするためにはどうするかといいますと、長期の建設計画一つ立てて、これに向つて全力を企業が集中できるように、財政上の自主性を認め、かつ政府による人事容喙のやり方を制限するようにしていただきたい。そうすればこそ人がたまにかわつても、全企業が所期の目的に対して全員が集中できるようになると思うのであります。第三番目に労働条件の犠牲による企業運営や狭義の独算制を追求するという無理を、もうこの段階においてはやめていただきたいと思うのであります。そうして従事員の建設的な意見を取上げ、これを伸張せしめるようにしていただきたいと思うのであります。抽象的ではありますが、以上の前提に立つて、私はこの法案について今度は具体的に申し上げたいと思います。  第一に、日本における電信電話事業の安定と発展を、また社会大衆のために建設的に推進するためには、先ほどから言いましたように民営論議を払拭をし、疑念を解消いたしまして、そうして基盤を確立いたしまして、労働者の協力を得て、健全なる発展をすることにいたしていただきたい。そういう意味合いから、国際電信電話株式会社法案に対して私は反対をいたします。まさにこの法案は最近政府の中でおやりになるように、もうかる企業は国から分離して資本家にやらせよう、損する企業は税金をとつて国でやるという、資本家本位の利潤追求主義の現われと私は言いたいのであります。この法案によつて国内通信との有機的な連繋は著しく阻害されるでありましようし、利潤追求の結果、かえつて実質的なサービスは劣ると私は思うのであります。いずれ労働者は身分上に大きな規制を受けることも、また必然であるといわなければなりません。また電通当局が最近次々と建設、倉庫、輸送等の傍系会社を設立して、電通事業の古手官吏で埋め、あるいは一部資本家に資本の利準をまわすようなことに協力いたされているような傾向については、私どもは注意を喚起し、電通事業の総合的な立場を失うことのないように希望いたしたいと思います。  第二には、日本電信電話公社法案について若干触れたいと思うのであります。まず経営委員会であります。これは国鉄、専売に比べて、一つの考え方ではあろうと思いますが、こういうものをつくつたならば、それなりに、国会なりあるいは政府がこれに対して権限を委譲するなり、あるいは権威を持たしてやるというふうなことがされなければ、かえつて官設が一つよけいにふえた、よけいなものができたという印象を私は持つのであります。ですからこの財務会計の項において公企体の自主性を持たせなければ、この経営委員会はおよそ無意味であろうと私は思います。それから二十一条につきましては、先ほど久保さんがおつしやつたように、この総裁、副総裁はやはり国会の同意というふうにすべきが至当と思います。ただもう一つ意見としては、副総裁は国鉄と同様に経営委員会の同意を得て総裁の任命というふうにした方が、総裁、副総裁との一貫した協力態勢という意味では至当であろう、この点もやはりお考えを願いたいと思います。それから二十四条は、そういう意味合いにおいて御修正をさるべきではないか。二十五条の但書というのは一体どういう意味だか、私にはよくわかりません。逆にいえば、郵政大臣がよしと言つた場合には、役員が営利を目的とする団体の役員となり、みずから営利事業に従事してもいいのだというふうな逆理論が成り立つのでありまして、やはり但書というものはないのが適当ではなかろうかと思うのであります。二十八条においては、労働者に対する一つ規定をいたしておりますが、この公共企業体労働関係法という文句については、やはり労働組合法の適用というふうにするのが、もう歴史的な段階であろう、それから第二項の「町村の議会の議員である者を除く。」という制限につきましても、もう県会までは選挙ができるように認むべき段階ではなかろうかと思うのであります。二十九条、三十条、三十一条、三十二条、それから三十三条、これらに労働者の任用の基準とか、給与とか、降職及び免職、休職、懲戒という項目がうたつてあります。これらの点については、私は修正を申し上げるよりも、基本的にお考え願いたいことが一つあります。それは、これらは明らかに労働条件であります。労働条件につきましては、公共企業体労働関係法の八条二項で、団体交渉の対象であるとはつきり規定をされておるのであります。そういうふうに労使の関係ではつきり規定されておるものを、なぜ法律でうたわなければならないか、国家公務員のときはいざ知らず、これが団体交渉の対象としてやるようになつたときに、これをうたう必要が一体どこにあるであろうか。私はそういう基本的な問題を投げかけて、団体交渉を認めたならば、労働条件については公社と労働組合の団体交渉にゆだねていいのではないかということを、強く皆さんにお考えを願いたい、そういうことが前提でありまして、その内容についてはいろいろ意見はありますけれども、基本的な問題についてお考えを願うことにして、こまかい意見は省略をいたしたいと思うのであります。三十四条で「職員は、全力を挙げてその職務遂行に専念しなければならない。」とあります。これは抽象規定としては一つの意味もありますが、これはかえつて個人の基本的人権を阻害し、間々勤務時間外であろうが、やはり職員である限りにおいてはこういうふうにやらなければいかぬというふうに束縛をするおそれがあります。基本的な個人の人権を不当に制限するおそれがありますので、これは削除をすべきではないかと考えるのであります。三十六条の「公共企業体労働関係法の定めるところによる。」これは今日政府から提案されているところでありますが、これは労働組合法の適用というようにいたしていただきたいと考えます。  次は第四章の財務及び会計の項でありますが、いろいろ申し上げたいことがこまかい点についてはあります。ありますが、冒頭にいろいろ申し上げたように、これは基本的にお考え願わなければならぬ。この項で、なければならないとか、しなければならないというようなことが充満しているところでありますが、こういうところは、これから公社に発足させようといたしましても、十分な自主的な建設的な運営をさせるわけには参りません。萎縮してしまいます。しかもこれらについて罰則が設けられているに至つては、建設的な意欲を冷却せしめる以外の何ものでもないと考えるわけであります。ですからこれは各項にわたつて公社の自主性を伸張させるように、労働者と公社との団体交渉が円滑にできるように、格段の御配慮をぜひお願いいたしたいと思うのであります。特に労働者としてお願いいたしておきたいのは、第七十二条における給与の総額の制限をいたしておるところであります。こういうことが、公社の自主的能力をまつたく喪失せしめ、労働者をして、公社を信用させずに、国会に押しかけて皆さんにいろいろ要請をするやら、政治闘争だ何だということが起る問題であります。もし皆さんにこういう御批判があるならば、公社に当事者たる解決能力を与えて、給与総額の制限を年の初めから設けておくということがないように、規定していただきたいと考える次第であります。  あまり時間がありませんので、あとは端折つて結論を申し上げます。基本的に私は二法案に対して反対をいたします。国際電信電話株式会社法案に対しましては基本的に反対、それからもう一つ日本電信電話公社法案に対しましては、私どもの申し上げた点についてぜひ御修正を願いたいと思います。その以外の項目につきましては、第一に公共企業体の理想形態を認めて、国鉄、専売等既存のものにはとらわれない立場において御審議が願いたいこと、第二番目には政府国会の監督を大綱的なものにとどめて、企業の自主性を発揮できるようにしていただきたいこと、第三番目には労働者の創意、くふうが経営に反映し得ること、労使の関係が誠実に行われるようにすること、そのために多少の制限的条項を付することはやむを得ないのでありまするが、原則として労働組合法の適用にしていただきたいこと、第四番目は電話電信事業に対する社会的需要を満すためには、政府建設資金を保証するという推進をしてもらわなければならない。次は企業経営の合理化をはかつてもらう。但しこの経営の合理化ということは、労働条件の規制による方式を廃して、科学的な積極的な仕組みをもつて推進し、そのために可及的労資の協力態勢を確立し得るようにしてもらうこと、最後に労働者の生産性の増加に見合う手当の制度を考えること、今日この日本電信電話公社法案に対して真摯なる御審議をしていらつしやる皆さんが、この基本的条件を満たしてくださることによつて、大きな今後の発展を公社期待することができる、私はこういう確信を申し上げて私の公述を終る次第であります。
  62. 高塩三郎

    ○高塩委員長代理 最後に進藤誠一さんにお願いいたします。
  63. 進藤誠一

    ○進藤公述人 私は長年官営電気通信事業にも関係したことがあります。また民営の特殊会社である電気事業に関係したこともございます。しかし終戦後はまつたく無職で、ここに出ましたのも私は国民の一員としての意見を申し上げるためであります。私は公職をやめまして民間におりまして、民間から電気通信事業をながめ、またこれについていろいろ注意をしておるのであります。また一般公衆からもいろいろと意見を聞きまして、今日は私個人の意見でなく、大体国民の声を代表したものとしてお話したいと思つてまかり出たのであります。そういうわけでありますが、時間の関係上なるべく簡単に申し上げます。  先に便宜上私の結論を申し上げた方がいいと思います。私の結論は、公社法につきましては、この形態は賛成でありまして、同時に電気通信事業としては国営はよろしくない。また民営もよろしくない。公企業体、公社として進むべきものである。但しその公社の内容はもう少し完全なものでなくちやならぬ、かような意見であります。それから会社法につきましては、私は一時的賛成であります。一時的というのはおかしいのでありますが、五年であるか十年であるかわかりませんが、私は今日この必要は認めますが、他日国際情勢の変化、あるいは国内、あるいは公社等のいろいろな事情によつて、将来公社に買いもどすといいますか、統一するという条項をこれにつけ加えて賛成したい、そういうのであります。  それで修正すべき事項は、公社法と会社法にまたがります。今日私どもが審議いたしますについて一番やりにくいのは、公社一つでありますれば、国民の声もわかつておる、また私ども意見もきわめて申し上げよいのでありますが、今度の案は、二つが一緒になつて出ておりまして、両方からんでおりまして、どうも今日審議するとすれば、一方だけを審議するわけにはいかぬ。不可分として私は申し上げるほかないと思います。従いまして、さきに申し上げたような結論をもつてやります上において、最小限度にぜひ修正をして国会を通していただきたい、こういうのでありまして、その具体案を私は用意して来ておりますので、申し上げたいと思います。  その最小限度修正の第一は、先ほどからたびたび申されておりますが、公社法の六十一条の国庫への納付金を全然削除しまして、完全な独立採算制とすることであります。それから四十一条の二項、三項に、公社予算に対しましても大蔵大臣が調整することと書いてあります。これは予算査定権でありますが、大蔵大臣の予算査定権は、理論上からも実際上からもいらないのでありまして、これは弊害をなすものでありますから、これを削除して、公社予算は、監督官庁たる郵政大臣から内閣を経て国会へ出して、国会承認を受ける、これで十八分でありますから、かように修正を希望するのであります。それから会社法の方の修正は、附則の二十項、二十一項、二十二項であります。この三つとも削除しまして、公社が会社の株式を所有して、その株式の配当を受け得ることと改めることであります。但し公社は会社に対して株主権を行使することは禁ずるということにいたすのであります。それから法案にはありませんが、別に条文をつくつて、会社の事業及び財産を公社に——何という言葉をつけますか、買いもどす条項を追加するのであります。つまり会社の事業公社に統合する場合には、会社はこれを拒むことを得ずという一項を入れるのであります。以上でございます。  ごく簡単に説明に触れたいと思います。この国民の要望と申しまするのはきわめて簡単でありまして、通信事業がよくなり、公衆の要望に沿うようにする、言いかえれば電話サービスがよくなり、すぐかかるようになる、これを希望しておるのであります。それに対していろいろ研究された結果、政府委員会でも、また衆議院でも、公企業体によつてやるということに発表されまして、これはすでにもう長く国民に周知されておりまして、大体公社形態でやるということについては、国民一般が了解いたしております。ところが国際電信電話会社につきましては、新聞に一、二回出たことがあるようでありますが、まだ国民は十八分に了解いたしておりません。それからまた今日この法案を拝見いたしましても、十分に国際電信電話会社をつくらなければならぬという理由が薄弱な感がいたします。そこで国民には十分徹底いたしておりませんので、いろいろと国民に誤解があり、中には疑惑を抱いておる者もあるのが事実であります。私は幸いにして、数十年の間国際電気通信の実態を存じておりますから、これは最高の国策上必要があると考えるのでありますが、このことは一部の人にはわかるが、大多数の了解を得ることは困難であります。従いましてこれを通す上におきましては、政府におかれましても国会におかれましても、十分にその必要を国民に了解さすべく努力されることが必要ではないか、かように考えます。  それから今度この法案が出ましたが、法案の条項というものは形式でありまして、どこまでも実態が問題であります。実態を先につかんで、しかる後この法律の条文が適切かどうかということを吟味するのがかんじんじやないかと思うのでありまして、ただこんな条文があるからいけないとかどうとかいうことは意味をなさぬと思います。それで私はその点に重点を置いて、少しこの実態を解剖してみたい。  一体電気通信事業は、経済的に言えばどういう状態になつておるかと言いますと、これは私の計算でありまして、きわめて大ざつぱでありますけれどもただいまの電気通信施設の固定資産を再評価して考えますと、約二千五百億前後じやないかと考えます。それに対して利益はどのくらいあるかというと、二十五億ぐらいじやないかと思います。そうすると一%の収益率を今の制度は上げておる。従つてこれを公社とすれば、それだけの収益率が上る。ところが国際電信電話を分割することによつて、国際電信電話はどういう計算になるかと言いますと、けさほどもお話が出ましたが、二十五億見当の資産に対して、一年の収益は二十億ぐらいあるということであります。そういたしますると、約十割あるいはそれよりも多いのではないかと思われる、そういうふうなバランスになつております。従いまして公社一本の場合と分割された場合には、公社の財産収益率はさつき申しました数字よりも減るのであります。その減る実態はどういうことかと申しますと、電信電話事業でありますが、電信事業におきましては収入の七割は国際電信でありまして、国内電信は三割ほどの収益であります。そうして両方合しても赤字であつて、これは電話の収入で埋めておるのであります。しかるに今度国際電信が分割されることによつて公社には電信の大穴が明いて、その赤字が、七割をとられたあとの三割という、一目瞭然たる大赤字になつて来るのであります。この赤字を一体どうするかということであります。私は正しい議論を申しますれば、この赤字は一般会計公社へ補給すべきものだと思います。なぜかと申しますると、国際電信電話をつくることは、国民一般に対する単純なサービスの改善ではなくて、それは一部の貿易あるいはニユースあるいはその他の利用者にはサービス改善でありますが、ほんとうの目的は国家国策であります。そうすれば国家国策を公社や会社がすべきではなく、その費用は一般会計が出すべきであつて、私は電信のこの大穴を埋めるために、一般会計がこれを補填すべしという議論が起つたか起らないか聞かぬのでありますが、私はそういうことがあつてしかるべきものであり、またそうでなければ公社が非常なる欠陥を生ずると信じます。そうしてこの二つ法案につきましてはなはだ奇怪な点は、国際電信電話のごときは、さきに申しましたように十割以上の利益がある。これはむろん税がかかりましようが、その収益を国庫に納付すべしという条項はないのであります。これはむろん国際無線及び国際電気通信設備の会社については、配当が一割二分を越える場合は半分は国庫へ納付すべし、こういうのがあつたのであります。今度はそれがないのであります。しかるに収益のない、経営の困難な公社についてのみ納付金をしろ、こういう条項があるというのは一体どういうことでありましようか、私は納得できないのであります。私は公社の方に納付金の制度があるから、国際電気通信の方にも納付金をかけろ、そういうことは申しません。これは納付金をとるべきものではありません。なぜかと申しますと、電信電話事業は強度の公共性あるものでありまして、なるべく安い料金でいいサービスをするのが目的でありまして、専売公社のごとく国庫の収益を上げる目的では全然ないのであります。従つてかりに民営で国際電気通信ができても、納付金をとるというようなことには反対でありまして、もし納付金をとるような莫大な利益が上るならば、料金の減額またはより以上の施設サービスの改善に努めるべきだ、かように考えます。従いまして私の主張は内国の電信電話の方の六十一条にある納付金を納める条項は、ぜひとも削除すべきだと考えます。これは現在でもこんな条項はないのであります。数十年前の一般会計のときにあつたのでありまして、それが悪いから、今日までによくなつているのをまた悪くしたのでありまして、これは何といつても改悪でありますこういう改悪をしてまで公社にする理由は私はないと思います。これは絶対削除すべきものであります。そうでないと経営者といたしましても、公社にしましても、利益をとられるのでは経営意欲は起らぬだろうと思います。従業員にいたしましても、経費節約して能率を上げるならば、事業ためになるということならば働くのでありますが、利益が大きければ納付金をするのだということでは、公社経営の目的を没却すると私は考えます。なおこの納付金の制度につきましていろいろ——これは電気通信大臣が好んで出された条項じやないのであります。率直に言えば原案にはなかつたのを、大蔵大臣がつけたのだろうと思いますが……。大蔵当局はいろいろ数字を出しておりますが、これは全然りくつはございません。国家資本を出しているからということでございますが、この電気通信の今日の二千五百億の資産というものは、決して大蔵省が国の金を出したものではありません。古い話でございますが、私どもがやつてつた実情とお話いたしますと、電話を一本つけるのに約七百円くらいかかつた。それに対してわれわれは、これは収入が十割も上るということであるから、公債でやつたらよいというのが主張でありますが、公債を許しません結果、どうしたかと申しますと、電話加入希望者から三百円をとる、この三百円は今日の金に直せば三万円以上であります。それからあとの二百円ほどは、営業の利益を建設にまわすのであります。これは従業員能率を上げ、節約した結果を建設費にまわすのであります。そして残りの二百円ほどのものが公債でやられた、こういうことであります。この公債につきましては、利息をつけて今日まで返しておるのであります。返してない分があればこれから返すのであります。従つてその例から申しましても、大蔵省が国庫からこの電話に対して金を出しておるということはありません。従いまして私はこの納付金のごときものをとるとすれば、これはむしろ電話加入者に納付してもらいたいと言われても道理があることじやないか、なぜならば三百円という寄付金をしておるし、あるいは料金の中からそれだけの蓄積ができたのであります。言葉をかえれば高い料金を払つたのでありますから、これはむしろ電話加入者が貢献した財産でありまして、国庫の出資ではないのであります、もう一つ例をあげますと、こういうことを申し上げたらおわかりになると思います。今日再評価した設備の資産が二千五百億くらいでありますが、これに対して通信事業が始まつて以来六十年間に、あるいは一般会計当時から大蔵省によつて吸い取られ、その後特別会計に入つても、けさほどお話がありましたように、八千二百万円から最後は二億五、六千万円も一年間にとられた。それらを合計いたしまして、これもいわゆる再評価して今日の金に直すならば、ちようど二千五百億円ほどのものを国庫に納めているという計算になるのであります。貨幣価値の違うものをあれだのこれだのと言うても問題にならぬ、大蔵省が昨年が何か三十億の赤字を一般会計から通信会計に補助したとか、あるいはガリオア資金を出したと言いますが、これは三十億といつても、昔の金にすれば三千万円ほどのものでありまして、通信事業の一箇年間に納付金の何分の一にも当らないのであります。従いまして資産を再評価するならば、その貨幣も再評価するのが正当でありまして、そうしてみますならば、今日残つておる二千八百億の現有財産というものは、すべて電気通信事業が国庫へ返してしまつた残骸で、無価値のものと考えてよいのであります。残つておるものがあるとすれば、それは電話加入者の出した金の蓄積である、かように私は考えていいと思います。従いましてこれに対して国家がちようど株式会社の株券を出したような頭で利潤をとるというのが納付金でありますが、そういうことは少し失礼な言葉ではありまするが、悪家主が高い家賃をとつて、元はとつてただになつている家から、なお高い家賃をとろうというのと同じことだと私は考えます。なお詳しいことは略しますが、この納付金は絶対意義のないものであり、これによつて今後でき公社は致命的打撃を受けるのでありまして、かりに国庫が幾らか出しているというりくつが立つても、一体この公社案は国が収入を上げるためか、事業をよくするためか。言うまでもなく事業をよくするためでありますれば、そんな金があつてもとらないというのがあたりまえであつて、そういうものをとるということははなはだこれまた料見がわからぬのであります。  それからいま一つは納付金がなくなつたといたしましても、電信の収入についてどうするかということであります。私の考えは次善策といたしまして、公社は収入がない、会社は収入がありますから、公社の持つ財産を分割して会社にやるのであります。それに対する株をもらつて、その株に対する配当を公社が受けるならば、これは相当の高い配当を受けるのでありまして、それによつて公社は歳入の欠陥を若干埋めることができると思うのです。しかるにそれは政府へとられ、政府は売つてしまうというのでありまして、売つた金は公社にくれるというのでありますが、一体幾らでくれるのかわかりませんが、これではもちろん長年の間公社の歳入の欠陥、それから国際電気の利益の措置について、これは穏当を得ていないと考えるのであります。それゆえに私はその株券を持たせない方がいい。これを持たせない理由は、持つというとせつかくつくつた会社に対して公社が支配権を持つて、株主権を利用して支配するからいかん。それならば公社は支配する必要はないのでありまして、株主権は行使する必要はない。財産権を持つて収益を得るというだけでいいのでありますから、何とでも条文のつくり方はあるのであります。  それから公社法の大蔵省の予算査定権をとるということでありますが、これは他の方からみな申されたことでありまして、これは私の多年の経験及び電気会社にいた経験等におきましても、これは理由がないのみならず、これでは公社はよくなりません。どうかひとつこの点は国会においてよくお考えくださつて、修正されんことを切望にたえぬのであります。  それから最後に国際電気会社を公社へ統合する。これは一番最後に私の申しました通信事業企業形態は公企業体がいい。国有民営はいかぬというのと合致するのでありまして、この二つの会社ができて、一方が特殊会社、一方が公社になりまして、それの成績はどうかということは、やつてみなくたつて今わかつておるのであります。一方は黙つてつても十割もうかる、一方は一%しかもうからぬ。しかもそれがすでに出発のスタート・ラインにおいて、はなはだしいハンデイキヤツプがあるのです。一方が勝ち、一方が負けることは明瞭でありまして、これをもつて公社企業形態が悪いから経営がいかぬ。会社の方は運営がよいから成績が上るのだというようなことをもし民営論者が言うならば、大間違いでありまして、ハンデイキヤツプがあつて、今からわかつていることであります。従いまして、これを将来国際情勢の変化でも起りましたら、その変化によつて統一するということは私は理想である。そのかわりに成績の悪い方の公社を成績のよい方の国際電気に統合するというような議論が起るかもしれませんが、それは今申しましたように成績のよい悪いとか、それによつてきめられないのでありまして、公社の方に統合するということを、条項で今うたつておく必要がある。そういう議論は起らぬかもしれない。また早く起るかもしれませんが、そうすべきが正当じやないかと、かように考えるのであります。あといろいろ修正条項について皆さんから言われた点は、私も同感の点が多々ありますが、それらはこの根本的の賛否には影響しませんから私は申し上げません。  ただこの機会に、この法案直接のことじやございませんが、皆さんにお願いしておきたいと思う私の意見は、今度これは別に行政機構の方の委員会で御討議になつていると思いますが、郵政省設置法案であります。今度公社、会社を監督し、それから電波をも監督するという省が郵政省であり、郵政大臣になつておりますが、これは私は逓信省と直して——古い草案は通信省であつたのであります。通信省でもよろしいのでありますが、いろいろ新しい名前をつけては世間も不便であり、またいろいろ経費もかかるというのであります。郵政省とか、電気通信省とかいうことは、今日だれもそういうことを言いません。みな逓信省々々々と言つております。逓信省という言葉は駅逓電信をあわせて逓信となつたのでありまして、郵便と電信電話ということであります。通信省というのと同じでありまして、むしろ逓信省と言う方が国民にも長い間親しまれておつて、悪いいやな連想を少しも持たない名前ではないかと思つて、さようにしたいと思つております。  それからもう一つ直接これに関係あるものとして、この監督官として監理官二名を置いて官房にくつけるとなつておりますが、これにつきましては、この会社に自由な活動を許すために、監督機構はきわめて簡素がよい。いろいろな大きな機構を置いて、小さなことに干渉することはよくないのでありまして、監理官を局とか課に置かれるということはいけない。監理官はよいのでありますが、その監理官の地位があまりに低いのでありまして、官房の課とか部くらいのもので、あれだけ大きな二つの会社を監理する直接の当事者として物足らぬと思います。同時にこれは一方において大蔵大臣が非常な権限を持つことになりますから、従つてこの郵政省における監理官の地位が低いと、監督官庁は郵政省であり郵政大臣でありながら、大蔵大臣になる危険を多分に持つておると考えますから、私は監理官を少くとも次官級に引上げて、有力な人を持つて行かなければならないと考えますので、お願いかたがた御参考までにつけ加えて申し上げます。  はなはだ私の言葉は率直で端的でありまして、失礼したかもしれませんが、その点はごかんべん願います。以上で終ります。
  64. 高塩三郎

    ○高塩委員長代理 以上四名の公述人の方々に対し、質疑があればこれを許します。
  65. 長谷川四郎

    ○長谷川委員 占部さんにちよつと一言お聞きしたいのですが、公共企業体と銘打つて出るものの予算は、必要ないじやないか。すなわち事業予算でなければならない、事業計画でなければならないのだというように私はお聞き取りしたのでありますけれども、その通りでございましようか。
  66. 占部都美

    ○占部公述人 そうです。
  67. 長谷川四郎

    ○長谷川委員 それからもう一つ経営委員会のお話でございますが、経営委員会は三名では足らないじやないか。しかし最後の結びに、それに委員長が入るのだから、それでもやつて悪いことはないというような御意見のようにも承りましたが、経営委員会の三名が少くとも五名は必要であろう、こういう意見でございますか。
  68. 占部都美

    ○占部公述人 今の御質問にお答えいたします。経営委員会というものは、電気通信事業経営の主体といたしまして、今まで国会、それから特に大蔵省が持つていた経営権を付与されまして、そして電気通信事業経営政策決定機関として動きます場合に、その政策決定の公共性を維持する。一面では国会の今までの統制も代行してやるというふうな意味におきましては、できれば消費者とか従業員利益を反映するような人を選ぶべきだと思うのでありまして、その場合には、やはり現在の三人を五名ぐらいにふやした方がいいじやないかというふうに考えるわけであります。
  69. 石原登

    ○石原(登)委員 私も占部さんにちよつとお尋ねしますが、実は公共企業体というものの定義がわからないのです。きよう時間があれば十分お尋ねしたいのですけれども、時間がないから要点だけお尋ねしますが、公共企業体であるから、あるいは政府機関であるからというので、国家財政が一方は非常に制約を受け、公共企業体の場合は制約を受けない。今のお話では、公共企業体には予算をやる必要がないというようなお話も出たのですが、こういうような理論的な根拠はどういうところにあるのでしようか。
  70. 占部都美

    ○占部公述人 公共企業体と申しますのは、いわゆる企業体でございますから、消費経済を伴う行政官庁、実際国の資金を使つて、それで行政をやるというような一般の行政官庁というのは、いわば経済的には消費経済的な機関だと思いますが、それに対して公共企業体が適用される電気通信事業というものは、一つ企業体でございますから、いわゆる生産経済体であるわけです。そういたしますと、一般の行政官庁の場合には、国の資金を使うという意味から、憲法上の制度として国会予算を決議するわけでございます。すなわち予算制度によつて財政権を付与するとともに、財政面から行政行為を統制することであると思うのでありますが、公共企業体の場合には、生産経済体であり、従つて所要の資金というものは、自己の企業の収入によつて得るというのが原則であり、実際の企業の支出の大部分は、企業自体の収入によつてつている。国の資金、つまり国民の納税によるいわゆる財政資金というものは、ごく一部でありまして、本来から言えば、独立採算制をとれば全然いらないということになるわけであります。ですから予算制度の意味の、つまり企業体に財政権を付与するというふうな必要はないわけであります。ですが国会といたしましては、やはり厖大な国有企業でありますから、その事業計画あるいは建設計画資金計画というものは、特に長期借入金とか、あるいは電信電話債券を発行するという場合には、やはり国の資金政策に影響もございますから、こういうものについて、むしろ国会としては審議する。またその事業政策、あるいは建設政策、あるいは資金政策について、国会は政策決定を行うべきじやないか。そういう意味においては、できれば予算にかわつて事業計画資金計画、建設計画というものは、国会に提出さるべきじやないか。それからまたほんとう国民を代表して国会企業体を統制する場合に、一番有効に統制できますし、同時に企業体といたしましては、予算の拘束から離れますから、いわゆる合理的な自主性が立つのではないかというふうに考えるわけであります。また法律的、形式的には、公共企業体というものは国とは独立の法人格を与えます。ですから国の財政を規律する財政法、会計法というものは、原則として公共企業体には適用せられないということになるわけです。それで御質問にお答えできたでしようか。
  71. 石原登

    ○石原(登)委員 御議論として聞いておきますが、実はそれでは私は納得できないのです。たとえば予算は行政執行面の制約だけをやつておるのではなくて、ある面では国民利益を保障している、こういうことがあるわけです。ですから今の公共企業体の場合でも、手放しでやるということは、そういう面から同じ国家財政、同じ国民の財産——先ほどの公述人が、これは国民電信電話だということをはつきり言明されたのですが、私もそういう立場に立ちたいと思う。また進藤公述人から、電話加入者の財産である、こういうようなことを言われたのですが、なるほどこの事業を通じて利益を上げる、その利益の蓄積がある程度あると思いますが、それだけの利益を上げた根本のものは、国民のものであつたことは相違ないのであつて、そういうような議論は私どもはどうかと考えます。  それからもう一点は国鉄の横山さんにお尋ねいたしたいのですが、さつき国鉄公社がうまく行つていない、こういうような御議論のようでしたが、あれはあなたの私見でありますか。それとも国鉄全体としての御意見でありますか。その点をちよつと承つておきたいと思います。
  72. 横山利秋

    ○横山公述人 私は個人としての公述人でありますから、個人としての私見を述べました。しかしもし御要望がありますれば、ぜひ国鉄当局者を呼んで、今日の国鉄法が十分であるかどうかを聞いていただきたい。私の知る範囲内においては、専売公社並びに国鉄当局は、この電信電話公社法案に対して非常な関心を寄せ、この法案を当初立案せられた第一案と申しますか、これよりはるかに進歩的な案を支持しておつたことは事実であります。従いましてそういう経過から言いましても、国鉄当局並びに専売公社当局が、今日の国鉄法、専売公社法は完全じやない、これは困るというふうに考えていることは事実であります。
  73. 石原登

    ○石原(登)委員 私が聞いているのは、そういう意味じやなくて、もちろん新しい試みでありますから、それぞれ欠陥はあろうかと思います。但しそういうような欠陥はあつてもこれが鉄道省であつた当時と今日の公社と比較してどちらがよろしいか、こういうような意味で聞いておるのであります。先ほどの御意見は、これは失敗だつた、言いかえれば前の鉄道省の当時よりも悪いのだ、こういうように受取れたからお尋ねしたわけですが、鉄道省当時と今日の公社になつてからと、事業能率は上つておるのか上つていないのか。どちらがうまく行つておるのかうまく行つていないのか。その点だけお聞かせ願いたいと思います。
  74. 横山利秋

    ○横山公述人 事業能率は上つておるのであります。上つておりますが、その原因は、必ずしも公共企業体なつたからというりくつにはならないと思います。公共企業体なつた功績並びに罪科と申しますか、功罪は相半ばするものがあると思います。確かに公共企業体なつたことによつて、進歩的な面があります。それなるがゆえにまた、私が先ほどから申し上げておつたようなむずかしい問題が発生をいたしておるわけであります。
  75. 石原登

    ○石原(登)委員 ただいまのお答えでよほどかわつたのですが、先ほどの何によると、公共企業体は失敗だという印象を受けておりますが、ただいまの答弁によりまして、非常に改善された面もあるということがはつきりいたしましたので、了承いたしました。  それからもう一つは、久保さんにちよつとお尋ねしたいと思います。これは非常に重大な問題ですが、もうかるから政府は民営にしようとしているのだ。いわゆる国際電信電話株式会社は、もうかるから政府は民営にしているのだ。われわれとして非常に聞きのがせないような印象を受けたのですが、何かその間に政府の格別な意図がある、こういうような意味でありましようか。あるいはそういうような具体的な事実に立つての御発言でしようか。その一点だけ……。
  76. 久保等

    ○久保公述人 ただいまの御質問でございますが、電信電話社法案の今回の提出に至るまでの経過は、きわめて概括で、あるいは若干言葉の舌足らずという面もあつたと思いますが、概略は申し上げたつもりであります。そういう中にあつて、少くとも具体的な会社法案というものの、実は結論が出されたということは、先ほども申し上げたように、つい最近まで私ども承知しておらないわけでありまして、そういう点から考えて。従来もこれはいろいろ一般でも聞くわけでありますが、国際の場合は、特に国内通信以上に明白に利潤といいますか、利益といいますか、これが大幅に出ていることは事実であります。それから同時に国内の通信についても、電信電話とよく比較して問題になるわけでありますけれども、この場合についても、明らかに電話電信よりは収益を上げておるという問題があるわけであります。そういう問題を考え合せて行つた場合に、私どもとしてはいろいろ具体的な問題として検討を加えて行つた場合に、国際が今回こういう会社法案という形で提案された理由は、遺憾ながら察知できなかつたという点であります。そういう点からただ理解できるとすれば、今申し上げましたような経営事情といいますか、そういう内容によつて、むしろこの際一般の利用者から確かに不平不満のあることもよく存じております。非常に料金が高い。高いにもかかわらず、どうも思うように通信がうまく行つておらぬ。そういう面からぜひ何とかしろという声があることは承知いたしておりますが、そういう理由か何かよく知りませんが、とにかく国際を民営として考え、さらにまた次の電話の問題がいろいろ論議されておるような事情は、私の判断するところでは、ざつくばらんに申し上げますれば、経営が成り立つ面を民営に切りかえて行くのだというふうに理解されるより、実は方法がないのではないかということを申し上げたわけであります。もちろんこれについては私見でありますので、いろいろご意見もあると思いますが、私としては少くとも具体的に、個個の理由を検討して参つた際に、そのことが一番ぴんと来るというか、最も理解された原因というふうに思つているわけであります。
  77. 石原登

    ○石原(登)委員 非常にこの問題は大事であります。といいますのは、いかにももうかる会社を当てにし政府が何か利権あさりをしているのだ、こういうような印象にもなる。これはわれわれ与党としては非常に迷惑であります。もちろん私もこういう面については、断じてそういうことは許すべき筋合いのものでないことをわれわれとして確信もし、またその道に従つて行くのでありますから、これは大いに考えて行きたい。ですから、そういうふうに誤解のないように、これはぜひとも御了解を願いたい。以上のことを申し上げておきます。
  78. 長谷川四郎

    ○長谷川委員 横山さんにちよつとお尋ねいたしますが、横山さんのただいまのお話を承ると、つまりいいところも半ばだし、悪いところも半ばなんだ。公共企業体を全部否定しているのではないのだ。私が先ほど聞いたのは、公共企業体そのものを否定しているのだつたけれども、そういうものでないのだというお話でありました。であるから、こういうような法案条文の修正をすれば、公共企業体の方が国営よりもよろしいのだ、こういう御意見でございますか。
  79. 横山利秋

    ○横山公述人 先ほど私が申し上げましたことは、国営の方がよろしい。しかし今日の段階におきましては、公共企業体でもよろしいのです。しかしこの政府法案の内容においては、これはいけない。従つて次のように修正なさるべきである。つまり国際電信電話会社については、これはいけない、こういうふうに結論をつけました。
  80. 長谷川四郎

    ○長谷川委員 そうすると、たとえば条文を直す直さないは別問題として、公共企業体より国営で行くべきだというのがあなたの本来の御意見ですね。
  81. 横山利秋

    ○横山公述人 本来理論的には、私はそういうふうに確信をいたしております。
  82. 石川金次郎

    ○石川委員 簡単に久保さんにお伺いいたします。きのう次官に聞きましたら、公社の設立に至るまでは、あなた方によく御相談した、公社案には御賛成になつた、こう次官はおつしやつておる。あなたは御反対なさつておられますが、今までいろいろ折衝や交渉があり、あなた方の意見政府に御開陳になりましたか。
  83. 久保等

    ○久保公述人 そのお話は初めてお聞きするわけなんですが、私ども先ほどもちよつと申し上げたように、公社の問題については、かねがね非常に重大な関心と研究を重ねて参つてつたわけでありまして、従いまして私ども現在の国有国営の形がきわめて好ましいものだというふうには理解いたしておりません。従つてぜひ公共企業体という中においてでも、私どもは先ほど指摘いたしましたような点において改正されるならば、公共企業体に移行することは、むしろ私どもとしても、現在の段階においては、好ましいというふうに実は考えておるわけであります。従つて今回出て参りました具体的な法案そのものについては、これは先ほども冒頭に申し上げたように、明確に私どもといたしましては反対をいたしておるわけであります。しかしこれはあくまでもただ単に反対のための反対という考え以上に、実は私どもとしても非常に研究を重ねた結果でありまして、ただ言葉の表現として、結論的に申し上げますならば、反対だという態度をとつております。いろいろこまかい経過については、従来私どもの考え方も十分に反映はいたしております。しかし若干でも今回の法案については、私どもの賛成を得ておつたというふうにお聞き取りでしたら、私どもといたしましては決してそのようには考えておらないのであります。明確にお答えいたしておきます。
  84. 石川金次郎

    ○石川委員 それでは国際通信と国内通信の共通施設ということを言われましたが、これを分離するとなりましたら、分離し得ますか。これはあなたが見たところで、簡単に分離し得るか、なかなか分離し得ない、技術的なものの面から見ても、人の面から見ても、分離し得ないのか、それをお教え願いたい。
  85. 久保等

    ○久保公述人 その点につきましては、たとえば送信所とそれから受付けました電波局あるいは電話局との間における操縦線というような有線があるわけですが、そういう問題一つにしましても、必ずしも国際のための専用線があるというわけでもありませんし、特に共用といいますか、一本のケーブルの中にはそういう操縦線も含まれておるでありましようし、また放送関係に使つている操縦線もありますし、また一般の通信に使つているものもあるわけであります。そういう意味で、地域的に簡単に分断できるというものでないことは、国内通信の場合に、北海道と九州を考え合せましても、これはまさに同じ瞬間的に北海道で発信したものが、九州で受信されるという形であるだけに、どこからどこまで物理的に分断するということは不可能だということを申し上げたわけでありまして、有機的な関連性があるということを申し上げたのであります。さらに人的な問題についても、たとえばやはり技術の面におきましては、国内通信にいたしましても国際通信にいたしましても、ただいま申し上げました施設面におきましては、特に共通した同じような高度の技術が必要でありますし、同じような職務内容もあるわけでありまして、そういう点においては、どこから多少でも技術的にはつきり区境がつくというほど明確な区境があるわけではありませんし、そういう面からいつても、非常に分離の困難な面があるのではないかということを申し上げたわけであります。
  86. 高塩三郎

    ○高塩委員長代理 本日はこの程度にとどめます。  この際一言公述人の方々に対しお礼を申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず、長時間にわたり、それぞれの御専門の立場からきわめて貴重なる御意見を発表いただきまして、われわれ法案審議の上に多大の参考となりましたことは、厚くお礼を申し上げます。  それではこれにて日本電信電話公社法案及び国際電信電話株式会社法案に対する公聴会を散会いたします。     午後五時二十一分散会