○徳田
参考人 今回の
有線電気通信法案と
公衆電気通信法案の
意見を聞かしてほしいというお話で、今日
出席いたしました。それに先だちまして私ごとを時間がないのに申し上げてまことに申訳ございませんが、元
逓信局に明治四十五年から大正七年までおりました。その後沖電気に約五年間おりまして、震災直後沖電気を辞職いたしまして、ただいまの徳田電気工務所を設立いたしまして今日に至
つております。その間増
私設電話の
設備工事並びにそれに附帶した工事を専任にや
つておりまして、三十余年、約四十年の間弱電
設備に邁進しているものであります。この増
私設電話の経過につきまして、はなはだ冗長にわたるかも存じませんが、一応お聞き取りを願いたいと存じます。
増
私設電話関係の法令が出ましたのは、明治二十三年四月の
逓信省令第七号でありまして、それには漠然としたものしか載
つておりません。明治三十九年六月の省令第二十九号をも
つて、
私設電話が
加入電話回線への接続の
條文が初めて入れられました。なおその間約十四年を経ました大正八年の四月に
逓信省令第九号をもちまして、初めて増
私設電話工事担当者の
條文がここに確立したのであります。それで大正十二年の関東大震災前は、
電話局の
設備は大都市であ
つても磁石式の局が多く、共電式の局は全般的なものではありませんでした。
従つて増
私設電話の
交換施設の大部分は磁石式のものでありまして、共電式のものは非常に少か
つたのであります。ただ自動式としてやりましたのは、元の木挽町の
逓信省が構内
交換設備として、大正十一年に英国のジーメンス・ブラザーのプランジャー式の自動
電話交換機をすえつけました。これには私も少しばかりでありますが、お手伝いをさせていただきました。
民間では築地明石町にございましたところのジーメンス・シユケルト電気
会社に、ジーメンス・ハルスケの自動
交換機とセミオートの
PBXが試験的につけられました。これが
わが国の局線へつなぐ自動
交換機のそもそもの初めであります。大正十二年の関東大震災によりまして、東京、横浜を初め多くの
電話局が焼失、破壊されまして、
電話の復旧が容易にはかどらなか
つたのであります。そのとき
加入者の強い要求と、われわれ
電話関係業者の計画によりまして、臨時特設
電話の
制度が、時の犬養
逓信大臣の決断によりまして
許可となりました。われわれ
電話工
事業者は商売気を離れまして、晝夜兼行工事の促進に
努力いたしまして、一、二箇月ならずしてほとんど落成し、
通話を開始し、都市
復興に役立ちをしたことは偉大なものであります。関東大震災は地方的な災害であ
つたのと、
逓信当局の熱意ある復旧工事によ
つて、大正十三年中にこれはほとんど廃止されました。しかしこの間
加入者の受けた利益は幾ばくでしたか、数え切れないものと存じます。震災後
局設備が自動化されるに至りまして、東京、横浜のみならず、京阪地区にも漸次自動化されて行
つたのであります。
従つて民間の増
私設交換機も自動化が促進されました。しかし対自動局加入回路は、
逓信省によ
つて示されなか
つたのであります。ただ
逓信省はこの省令第二千六号をも
つて基準を示したにす夢ないのでございます。
電話回路はすべて
電話工事担当者によ
つて発明考案され、実用に供されたのでございます。一方増設
電話、つまり旧乙種増設
電話は、本来これは
電話局で設置するのでございますが、
加入者は好んで
電話工
事業者に
設備と保守を依頼しました。
逓信省は何十年も前からの形のものを使
つておりまして、一向進歩的なところがない。そこヘジーメンス・ハルスヶ製
電話機、マイクロホン型の卓上
電話機を輸入いたしまして、これを
加入者に乙増としてつけました。これは芝のあるところにつけたのが、おそらく日本中でマイクロホンをつけた自動乙種増設の嚆矢かと存じます。それで
加入者の
設備がかよう
にして非常に便利なものですから、どうしても局の方の
設備よりも、むしろ業者によ
つてこのマイクロホン型の卓上
電話機をつけるということで、非常に増加したのでございます。それから十数年たちまして、ようやく
逓信省は三号卓上をつくり、最近に至りまして四号の卓上
電話機をこしらえたような次第でございます。
かくしまして昭和十八年には増
私設電話機が約二十六万、これのための
PBXが一万五千台、乙種増設
電話は、これは局維持も含まれておりますが約十六万ありました。昭和十八年四月、
逓信省は戰争の進展に伴いまして、資材と人員の洞渇のため、全国業者の統合をはかりまして、一部これは軍
関係の業者は参加いたしませんでしたが、それがつまり一昨年までありましたところの日本
電話設備会社でございます。これは昭和二十年終戰の結果、戰争
目的のために設立されたものでありますから、当然
独占を許されなくな
つたのでございます。われわれはそれにつきまして、電設設立当時の工務
局長松前先生に意向を伺いましたところが、当然
独占されるものでなく、解放すべきであるという御
意見でありまして、その後いろいろとご
意見を伺うはずでありましたが、同先生が間もなく追放となりましたので、その話は中止いたされたのでございます。
昭和二十一年十一月になりまして、どうしてもこの
PBXの解放ということは必要なことであるというので、ここにわれわれ同士が集まりまして、
電話施設工業会なるものを東京、大阪、名古屋、九州、信越の有志によ
つてつくられました。次いで衆議院に一松
逓信大臣を、大野伴睦先生の御紹介で訪問いたしまして、陳情書を
提出いたしましたが、大臣の言われるには、占領下であるからどうも
逓信省としての自主的の
意見は言われない。すべてはGHQの意向にあるのだというお話でありました。そこで前アルゼンチン公使で当時終戰連絡事務局次長山形清先生と協議いたしまして、鈴木前
逓信次官の御了解のもとに、マツカーサー司令部にバンカー少将をお尋ねいたしまして、日本の
民間電話のあり方について質問書を
提出いたしました。そういたしましてバンカー少将の言われるのには、アメリカの政策であるとか、日本のためであるとかいうことは言うことはできない。
電話に関してはCCSのオーデル中佐に協議してくれというお話でありました。そこでGHQの方は一応中止しましたところが、昭和二十二年二月十二月に時の
電務局長渡辺さんから
電話がありまして、増
私設電話の解放がいよいよ
逓信省の方でも意向がきまつたというお話で、非常にわれわれも喜んだのでございますが、突然昭和二十二年三月二十五日付の連合国最高司令官の覚書によりまして、日本
政府に渡されましたものは、
逓信省は
通信の一元化の企画を立て、増
私設電話を含めまして、一切を
逓信省に吸収する計画を立てたのでございます。この一元化ということは、ただ一方的の考えでありまして、その後の話になりますが、米国の
電話のあり方はどうであるかということに対しまして、オーデル中佐の通訳であるところの西山氏に聞きましたところが、アメリカには三千ないし四千くらいの
電話会社がある。その
電話会社が濫立しておるので、それを統一するために非常に苦しんである。これは縦の一元化で、横の一元化ではないのであります。日本ではもうすでに何十年前から横の連絡の一元化は成り立
つております。この際何も増
私設まで含めた縦の一元化をつくることはなかつたと思います。それから二十二年の七月十二日に司令部のCCSにオーデル中佐及びマツカーデー氏を訪問いたしまして、
PBXの解放につきまして懇談いたしましたところが、
一つのヒントを得たのであります。それは
加入者による
私設電話、今回の有線
通信に
相当するものでありますが、それをつくりまして局線につなぐ。これは
営業法百四條及び有線
通信法の第十條八号に
相当するものと考えます。八月十八日再びCCSを訪れまして、書類によ
つてPBXの解放の陳情書を
提出しました。それについてオーデル中佐におかれまして、
加入者によ
つて設備された
私設電話の局線への接続が確認されたのであります。それになおつけ加えまして、GHQは不公平なことはしないから、
逓信省の鈴木氏とよく相談して話をきめて明日来い。鈴木氏とは前次官並びにエンジニアの鈴木
市内課長をさしたものと思いましたので、翌十九日
逓信省に鈴木次官を訪れ、なお鈴木
市内課長を訪れたのでございます。鈴木次官におかれましては、非常に喜ばしいことである。お祝いをしようじやないか。鈴木
市内課長も同様のことを言われました。そこでその翌日GHQに行くお約束をしましたところが、鈴木氏は先まわりしまして、オーデルによ
つてきめられましたところの
私設電話の局線への接続をくつがえして来たのであります。われわれの憤慨は極点に達したのであります。二十三年四月になりまして、日本
電話設備会社が過度経済力集中排除の指定を受けましたにつきまして、われわれは
電話設備会社の株主としまして、株主同志会をもあわせ結成いたしまして、GHQ及び持株整理
委員会に陳情書を出しまして、
電話の
独占の排除にまた同じく邁進いたしました。しかるに電設は、三月二十五日のメモランダムによりまして、主たる
業務の
電話事業が
逓信省に吸収される指令を受けておりますので、集中排除は間もなく指定を解除されました。二十四年五月多田先生と中村
純一先生の御紹介によりまして、
PBX解放の請願書を出しましたが、あまり効果がないようでありました。二十四年九月再びCCSにオーデル氏を尋ねまして、
PBXの解放について強く要望いたしまして、二時間余にわたる会談の後、日本には国会があるじやないか、国会へなぜ請願しないかという話になりましたので、全国の商工会議所書に檄を飛ばしまして、その同意書を得まして、その
PBXの解放の同意書をつけまして、衆議院幣原議長、参議院松平議長、
電信電話復興審議会石川会長、
電気通信省小澤大臣あて、それぞれ
提出いたしました。それは幸い十一月二十二日
電信電話審議会の採択するところとなり、二十六日には参議院の
電気通信委員会の採択、二十八日には衆議院
電気通信委員会で採択になり、三十日には本会議を通過することにな
つたのでございます。それに次ぎまして、十二月八日
電気通信省主宰のもとにGHQのCCSの係官、衆議院、参議院の議員の
方々、
電気通信省鈴木次官以下の
方々、
電話工事
会社側は徳田ほか五、場六名が列席いたしまして、
PBXに関する討議を始めたのでありますが、その半ば
にして日が暮れましたので散会しまして、これによ
つて得ましたものは、ただいままで
実施をいたしております直営工事の労務供給にすぎなか
つたのでございます。
次いで昨二十六年の五月、
一般国民が
電話の復旧をいかに要求しているかということに関しまして、参議院の黒川武雄先生を会長とします全国
電話民主化期成連合会を結成いたしまして、
PBX解放の運動を展開いたしました。昨年十月には衆参両院に請願書を
提出いたしまして、なお佐藤
電気通信大臣、水田自由党政務調査会長へそれぞれ陳情書を
提出いたしました。幸い
電気通信委員諸先生の強力な御支持と、
電気通信省御当局の熱意あるとりはからいと、また法制
意見局の御理解によ
つてわれわれの多年にわたる希望の光明を見る段階に至りまして、一日もすみやかに御審議が済み、多数
国民の渇望している
電話行政を期待し、念願する次第でございます。ここにおきまして
電気通信委員長田中先生を初め諸先生方並びに
電気通信省の諸官に対しまして、全国の
加入者にかわりまして厚くお礼を申し上げます。
それではあまり長くなりますから、本論に入りまして、
有線電気通信法について私の
意見を申し上げたいと思います。
第
一條に、旧
電信法には「
政府之ヲ管掌ス」とありましたが、非常にやわらかくなりまして、そういう字句がないのはあまりにさびしいのではないか。このどこかの箇所に、
政府が管理するというような、
公社案の暫定施行案にあるような字句を入れていただきたいと思います。
第二條の二行目に「電磁的方式により、符号、音響又は影像」とな
つておりますが、
一般的の通念としましては、音響は音声とは違うと思いますから、これは音声という字にお直し願うか、音声をお入れ願う方が
一般的ではないかと存じます。
第三條の三項の二に行きまして、「
設備の一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内又は同一の建物内であるもの」というようにな
つておりますが、これは準構内、つまり一定の構内、建物から現在ですと三十メートル以内という
制限がございますから、それに準じたものも含むように御
配慮願いたいと思います。
第十條に飛びまして、第十條の八号に「その
設備が
公衆電気通信法第百四條の
規定により接続したものであるとき。」これは後に
公衆電気通信法の方で申し上げたいと思いますが、これは局線の接続しない
電話、つまり在来言いますところの一部接続と拝承してよろしいかと思います。それからこの中に電気、すべての軌道その他の
設備がございますが、その
設備の
一つ、早く言いますと、東京電力あたりでは保安用の
電話を
方々へ持
つて行
つておりますが、それは在来言います
私設交換機に、局線とつなぐ
電話機と同じ
交換機にその
電話を入れておりましたが、その
項目が見当りません。ぜひそれは在来通り入れられますように御
配慮願いたいと思います。
それから第十
一條の
技術標準ですが、ここには標準はございますが、担当者、つまり工事上の
責任者の
事項が入
つておりませんが、これも第百三條の七項、八項に
相当する工事担任者を準用するということをお入れ願いたいと思います。
それからずつと飛びまして、罰則のところの第二十
一條「
有線電気通信設備を損壊し、これに物品を接触し」とございますが、この「接触」ということはどういうことをさしているのか存じませんが、この字句通り行きますと、いなかなどで電柱へちよつと馬の綱を縛りつけたとか、張り板を立てかけたというような場合、これが接触かどうかという問題になりますから、この接触という字句は、妨害の
目的をも
つて物品を接触しとか、損壊の
目的をも
つて物品を接触しと直していただくのがよろしいんじやないかと存じます。
一応
有線電気通信法案の方はこのくらい
にしまして、次に
公衆電気通信法案について申し上げたいと思います。
第二條の第一項の「電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、」というところに音声という字句を入れていただきたいのは、これは前同様でございます。
それから第六條の二行目の「重要な
通信を確保するために必要があるときは、」とありますが、この「重要」とは何をさすかということになりますから、これは「重要」というのは、国すなわち
政府が使うというような場合と存じますので、むしろ「重要」というような抽象的な文字でなく、
政府とか国とかいう文字をはつきりお入れにな
つておいた方がよろしいんじやないかと存じます。
それからずつと飛びまして、われわれの一番
関係ございますところの百三條でございますが、この百三條の第二項の「
公社は、
加入者又は専用者が前項の
規定により設置する
公衆電気通信設備の保存を
公社において行うべきことの申込を受けたときは、
業務の遂行上支障がある場合を除き、これを拒んではならない。」とこうございますが、これはもちろん
設備したものはこれは保存を含むものと私たちは解釈したいと存じます。それから第三項に行きまして、第二行目の「必要な
限度」とございますのは、これもあまり抽象的な文字だと存じます。これは施行細則で非常にむずかしいものをつくるのか、非常にやさしいものをつくるのか、これの
限度がわかりませんから、これは前回のようにもう少し明確にお示しを願いたいと私たちは希望いたします。また第四項におきまして使用するときには、これは
検査がありますが、その事前
検査がございませんことは、先ほどの高さんがお話をいたしましたが、これは第五次案にありましたように、事前
検査ということは、ぜひともこれは必要かと存じます。それから第八項に行きまして、工事担任者の
項目の「第四十九條及び第五十條の
規定は、」とございますが、五十
一條の
規定がなければこれは試験とか、そういうものは何によ
つてやるか、そのきめ方がわからないと思います。これは五十
一條を入れるべきであると存じます。なお工事担任者につきまして一言お話申し上げたいと存じますが、これはこの
電話担当従事者という
言葉は古くから言いならされておりますが、現在におきましては、従事者というような名前は非常に軽々しく思われますので、重要な
電話設備の主任者とか、
電話担任者とか、従事者とかいう名前でなく、もう少し自分のプライドを持つために、これは
電話主任
技術者、その従事者に
相当するものは
電話技術補というような名前に改め、またただいまでは在来一級、二級、三級とございましたが、これは大都市におきましてはすべての局が自動化されております今日、自動の
局設備を知らないものが三級の免状を持
つて交換機をつくるということは、
サービスを非常に惡くしまして、
電話装置も非常に悪くしますから、どうしてもこれは大都市におきましては現在までの一級程度のものをも
つて電話主任
技術者とし、地方の青森県の山奥とか、山梨の山奥のようなところは、自動のところは少いのでございますから、特殊の場合を除きましては乙種というような名前の担当者でよろしくはないかと思います。そういうふうにおきめを願いたいと思います。また
電話の
技術者の認定につきましては、ただいままでは経歴と
電通省の一方的な、——と言
つてははなはだ失礼でございますが、私なども試験をされましたが、試験によ
つてや
つておりました。これはいろいろ現在までにみておりますと、弊害がございますようですから、
PBX関係の権威者をも
つて組織しましたところの機関に諮りまして、
郵政大臣が指示いたしまして、
公社がきめるというふうにおきめ願いたいと思います。そうしませんと、この
法案が通りまして
PBXが解放になりましたあかつき、不良な担当者がおりまして不心得者が出ました場合に、私たち多年の希望を失うばかりでなく、諸先生にも顔向けができないようなことになりますし、また
電通省のあたたかい親心に対しまして相反することになりますから、とくとその点は御考慮願いたいと思います。それから業者に今まで
電話工事請負業者という名前がございまして、自営
加入者のやる場合に
技術者を雇
つてやる場合と、
設備が小さいために、それを一定の業として、つまり
電話主任
技術者を雇い入れました業者にやらせる場合と二色ございましたが、その業者に対しまして用請負業者としての一定の認定を
逓信省は與えておりましたが、これは業者としての級別をつけるとかいうことは、現段階においては許されないのではないかと存じますので、これは
電通省の下請をする場合に、初めて一級なり、三級なりをしてその
状態に応じて請負をさせることは当然と思います。
電通省みずからが工事担当の業者に段階をつけることは望ましくないと思います。これは弁護士、会計士、医者などもその例でありまして、何もそういうものに段階はございません。
なお第百四條の点でありますが、これは先ほど
私設有線
設備のところで申し上げましたが、「内線
電話機のみと
通話することができるように、構内
交換設備にその
構内交換電話の
加入者が設置する
私設有線
設備の
電話回線を接続するとき。」とございますが、これはいわゆる在来の一部接続と解釈したいと存じます。
はなだどうも突然で恐れ入りましたが、私の
意見はこの辺で終ります。