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1952-06-11 第13回国会 衆議院 電気通信委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十一日(水曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長代理理事 高塩 三郎君   理事 關内 正一君 理事 橋本登美三郎君    理事 長谷川四郎君 理事 松井 政吉君       井手 光治君    加藤隆太郎君       小峯 柳多君    庄司 一郎君       辻  寛一君    福永 一臣君       椎熊 三郎君    石川金次郎君  出席政府委員         電波監理委員会         委員長     網島  毅君         電波監理長官  長谷 愼一君         総理府事務官         (電波監理総局         法規経済部長) 野村 義男君  委員外出席者         参  考  人         (船舶通信士協         会常任委員長) 山縣 忠重君         参  考  人         (日本船主協会         専務理事)   神田禎次郎君         専  門  員 吉田 弘苗君         専  門  員 中村 寅市君 六月十一日  委員三木武夫君辞任につき、その補欠として椎  熊三郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 六月十日  有線電気通信法案内閣提出第二四五号)  公衆電気通信法案内閣提出第二四六号) 同月九日  上之保村の電話線路架替えに関する請願(武藤  嘉一君紹介)(第三四七八号)  ラジオ放送施設拡充強化に関する請願(倉石  忠雄君紹介)(第三四七九号)  同(吉川久衛紹介)(第三五一九号)  テレビジヨン民間放送許可に関する請願(高  橋清治郎紹介)(第三六三四号)  テレビジヨン公共企業に関する請願高倉定  助君紹介)(第三六五三号) の審査を本委員会に付託された。 同月十日  三原市の電話施設増強に関する陳情書  (第二三三〇号)  曙村の電話架設に関する陳情書  (第二三三一号)  テレビジヨン民間放送許可に関する陳情書  (第二三三二  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  電波法の一部を改正する法律案内閣提出第二  二三号)     ―――――――――――――
  2. 高塩三郎

    高塩委員長代理 これより開会いたします。  委員長がお見えでありませんので、私が委員長職務を行います。  電波法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。本日参考人として船舶通信士協会常任委員長山縣忠重君、日本船主協会専務理事神田禎次郎君がお見えになつておりますので、最初に参考人の方より意見を聴取いたしたいと存じます。山縣恵重君。
  3. 山縣忠重

    山縣参考人 ただいま御指名いただきました船舶通信士協会山縣であります。このたび審議されます政府提出電波法の一部を改正する法律案のうち、海上無線業務に関する点について、二点修正していただきたい旨をさきに御請願申し上げておるのでありますが、これらについて参考意見を申し述べる機会を与えられましたことを深く感謝いたします。  請願の第一点といたしましては第二級通信士従事範囲を若干広げていただきたいということでございます。第二級通信士資格は、国際電気通信條約に規定する二級通信士相当する旨を裏書きされた国際的な免許証でありまして、国際電気通信條約は、その附属無線通信規則で、第二級通信士国際通信を行い得ることを規定しています。従つて当然それに必要な技術上、職務上の知識と技能を要し求しておりまして、これに対する国家試験は、その要求に適合する能力を基準として行われております。現行電波法におきましては、この二級通信士はあらゆる場合、一級通信士の指揮のもとでなければ国際通信に従事できないように規定しているのでありますが、これは二級通信士資格能力に対し、いささか厳格過ぎると思うのでございます。同じ国際通信に関します資格とは申しよしても、一級、二級という資格の差別がございますから、その上位にある者の責任下国際通信を行わせるという考え方自体に反対するのではござい工せんけれども、もう少し国際的に認りられた線に沿つてその範囲を広げてもさしつかえないのではないかと思うりでございます。一口に国際通信と申しましても、戦前と戦後は大分内容が違つております。朝鮮台湾、沖縄または千島などは、戦前はもちろん国内通信範囲内でございましたが、今日ではすべて国際通信の中に入つておるのでございます。昭和二十五年現行電波法改正されます以前は、旧法によつて二級通信士はこれら近海方面で、船舶局通信長として十分その職員を果して来たのでございますが、今度はこの法律でその職務を行つてなつないということになつたのでございます。外国になつたのでございますかつ、多少通信内容ども相違があるでしようが、資格の上からも実際能力からも十分であると認められるのに、このように制限するのは少々極端ではないかと思うのでございます。この規定で二級通信士が非常にその職場が狭められ、上級資格を取得するのもなかなか容易ではありませんから、生活上に大きな不安を感じているのでございます。もつとも法施行に対する経過措置として、附則第九で施行後三年間は、さきに申し述べました航路区域からは近海第一区でございますが、その区域内は二級通信士通信長でもよいことになつておりますから、今はよいとしましても、この措置は明年五月末で失効しますので、その際は全般的に一級通信士と入れかわらねばならないことになり、通信士はもちろんのこと、船主さんの方でも配乗上相当の困難が起きて来ることが予想されるのでございます。以上申し述べました通り国際條約の上からでも、また実際業務を行う上からしても、別に不都合はないのでございますから、現行経過措置本條第四十條の当該條項但書に挿入し、近海区域第一区においては、二級通信士通信長として従事し得るよう、この機会に修正していただきたいと思うのでございます。  次に請願の第二は、警急自動堂信機に関する件でございます。一九四八年ロンドンで締結されました海上における人命の安全のための国際條約は、新たに旅客船と千六百トン未満五百トン以上の貨物船無線設備をすることと、旅客船と千六百トン以上の貨物船無休聴守義務づけたのでございます。これは無線の常時聴守が、船の安全を期する上にきわめて重要だという認証の現われだと思うのでございます。私たち通信士は、日本で初めて商船に無線が装備され、定員一人のころからその業務上の経験を通じて、無休聴守でなくてはいけないことを痛感し、三直制による常時執務を強く主張して来たのでございます。そしてそれが海上危険が増大した戦争直前にほぼ実現したような次第でありまして、このことが国際條約で規定されましたのは、何といつて海上安全にとつて大きな進歩であり、私たち海上労働者としては喜びにたえないところでございます。この條約に適合するために船舶安全法改正され、同時にまた電波法改正されることになつたのでございますが、今度の改正法案を見ますと、せつかく進歩的な措置を実質的には効果のないものにしてしまうような箇所が見受けられるのでございます。すなわち第六十五條の第一項、第二項では、五百キロサいクルの指定を受けている第一種局、これは総トン数三千トン以上の旅客船と五千五百トンを越える貨物船船舶無線電信局をさします。及び第二種局、これは甲乙の区別があつて、甲は船舶安全法第四條の船舶で、総トン数五百トン以上三千トン未満旅客船と、千六百トン以上五千五百トンまでの旅客船以外の船舶無線電信船舶局をさし、第二種局乙、これは第一種局に該当しない旅客船以外の船舶無線電信局公衆通信を取扱うものと、第一種局及び第二種局甲に該当しない旅客船船舶局をさしますが、これらは五百キロサイクルで常時聴守するこことし、さらに五百キロサイクル指定を受けている海岸局及び第三種局甲、これは総トン数五百トン以上千六百トン未満旅客船以外の、船舶安全法第四條の船舶船舶局で、公衆通信を取扱わないものをさしますが、これらの義務運用時間は五百キロで聴守することを規定しておりますけれども、第六十五條の第四項におきましては、運用義務時間以外は警急自動受信機による聴守でもよいとしているのでございます。これを裏返せば、警急自動受信機をもつて通信士にかえ得ることであり、通信士を減らしてもさしつかえないのだという規定となるのでございます。なるほど国際條約でも警急自動受信機聴守を認めておりますし、現に外国船などでも使用しておりまして、それらの関係からするならば、しごく当然のこととお考えになるかと思います炉、案はそごにきわめて重大な問題があるのでございます。  まず第一に、警急自動受信機はとうてい通信士かわりにはならないということでございます。この警急自動堂信機という機械は、日本でもかつて大型船に使用されたことがございました。私どももそれを操作した経験がございますけれども毎日所定のテストをして異状のないことを確かめた上、執務時間を終つて就眠前には必ず作動状態に置いたものでございますが、けたたましい警鈴に起されて受信機のスイツチを入れてみると何でもなかつたり、朝起きてみると、寝ている間に遭難船があつたりして、さつぱり役に立ないばかりか、通信士に無用の煩労を加えただけでございました。もちろん日進月歩といわれる電波科学の発達によりまして、今日の機械性能はそのころのものより高くなつていることではありましようが、しかもなお限界のあることは否定できません。米国船通信士労働協約では、オート・アラームによつて執務時間外に起された場合は、時間外労働として手当を支払うことを協定しているのでございますが、その場合、空電によつて七回以上作動したならば、そのオート・アラームはとりかえねばならないという條項が設けられてあります。これはアメリカでは通信会社通信士機械を供給しているからでございますが、この例によつて見ましても、アメリカ機械ですら空電で作動することがあるのでございます。今後装備しようとする機械は、所定の規格に照して厳重な性能検査が行われ、それに合格したものとなりますから、確度も相当高いものとなるではございましようが、無線機器型式検定規則第十七條の第五号では、空電その他警急信号以外では作動しないこと、但し事実上警急信号を構成する場合はこの限りでないと規定しておりまして、相重畳する空電がたまたま警急信号を構成したら、結局空電でも作動することになるが、これはしかたがないのだとしているのでございます。私たち科学進歩とその成果を否定するものではございませんけれども機械性能にはおのずからある限界があつて、しよせん意思を持たない機械は、人間のかわりにはならないことを認めないわけに行かないのでございます。  第二には警急信号で作動するこの機械は、その信号を伴わない遭難通信に対してはまつたくのおしであるということでございます。警急信号といいますのは、四秒時長の長点を一秒時間隔で三回以上をもつて構成し、これを遭難通信直前に発射することを建前としているのでございますが、遭難通信の発信はその性質上一般に慎重に扱われます。現在の電波法百六條の第二項によりましても、遭難通信を発した場合には三箇月以上の懲役というような規定があつて、そうしたことから、非常に慎重に取扱われる。警急信号を発射するいとまがないとか、または余裕があれば緊急通信で漕難の危険をあらかじめ通知し、それに引続いて遭難通信に移るという場合が多いのでございます。従つてそこには警急信号の伴わない漕難通信が間々あるのでございますが、それらに対して警急自動受信機はまつたく用をなさないのでございます。これは漕難通信の実体から来るもので、いかに機械性能をよくしても解決のできない点でございます。  このように機械性能の限度からしても、また漕難通信の実情からしても、きわめて不十分なことは明らかでございますが、もしこれが本改正法案通りなつたとしたら、どんな結果になるでございましようか。昭和二十七年三月一日現在海上保安庁調査によりますと、五百トン以上の船は八百十九隻で、そのうち第二種局、つまり五千五百トン以下の貨物船と三千トン未満旅客船以下の船は七百四隻を占め、さらにごのうち近海に就航するものは、五百トン以上四千トン未満として五百四十二隻となりますが、これらの船は船舶局区別によりまして、それぞれ十六時間、八時間あるいは四時間の限定執務で、その時間はAC條約付録第十三号C地帯表に基き、東部インド洋、支那海、西部太平洋にあるものは全部同様に定められているのでございますから、それらがいずれも運用講務時間以外を警急自動交信機聴守するとしますると、この区域内に就航する全船舶に、警急信号以外にはまつたくつんぼとなる空白時間が、日本時間で午前塵。時から時、午前七時から九時、午後三時から五時、午後七時から九時、午後十一時から十こ時と現われて来るのでございます。この時間中は警急信号が正確に発射され、それによつて警急自動党情機が確実に作動しない限り、いかなる信難が起つても救助したり、されたりすることはまつたく望めず、実に慄然たる思いがするのでございます。  これは若干古い話になりますが、一九三八年英国大型貨物船アングロ・オーストレリアン号という船が、大西洋でか地中海でか判明しないのですが、ともかく行方不明になつ事件がございました。これに関し英国通信士のジヨン・エドワード君は英国無線技士協会に寄せた手記の中で、次のように言つております。英国船オート・アラームを装備し、限定された運用時間以外はそれに聴守をゆだねていた。その船も、無線装置も、また通信士も優秀であつたはずなのに、遭難通信がまつたく他船にキヤツチされなかつたのは、船主資本家の利益のために採用された不完全なオート・アラームのせいである。オート・アラームはときどき役に立つだけのものであるのに、政府通信士と同じように役立つものとして愚劣な立法をしたため、この悲惨事が引起されたのだ。英国通信士は団結して、通信士による二十四時間ウオッチを実施せしめねばならない。このように強調しているのでございます。さらに古くは一九一二年のタイタニツク号の惨事もあり、無休ウオッチがなされなかつたために、あたら多数の人命が失われた事例は決して少くないのでございます。  特に日本近海は、その地形と気象状況などから、世界的に航海難所とされておりました。従つて遭難率も高く、昭和二十六年の海難で、汽船の全損だけでも二十隻に上つておるのでございます。このような危険の多い海域を航海する私ども船員としましては、自己の生命安全のためにも、また日本海運発展のためにも、海難を起さないための努力をするのは当然でありまして、漕難時の救助措置もさることながら、海難の防止を第一義として、困難た自然現象と闘つているのでございます。ここにおきまして無線は、船舶の安全なる航海にこそ役立たせねばならないのでございます。現在では無線通報による航海安全のための措置は、かなり充実しております。通信士はその当直中、気象航行警報、報時その他の陸上からの情報はもちろんのこと、視界の悪いときは絶えず付近航行船と連絡をとり、その動静と状況を把握し、あるいは無線方位を測定するとともに、多数の海岸局呼出し等、無数の電波を瞬間の変化の中で監視しているのでございますが、これを航海中常時継続してこそ、初めて無線が安全に役立つのでございます。この改正法案が実施されますと、船主さんの方では早速警急自動受信機をとりつけて、通信士を減らそうとするでありましようが、五百キロサイクルというただ一つの周波数の、しかも特定の信号だけにしか作動しない機械をもつて通信士かわりにするという考え方は、海上安全に対して実に大きな冒険だと言わざるを得ません。しかも船主さんはこの機械を装備して減らすだけではなく、まつたく装備しないで減らすこともできるのでございます。第二種局乙は無休聴守義務づけられておりますが、それに該当する船舶局は、公衆通信を取扱わないとすれば第三種局甲になり、常時聴守義務を免れますから、そこに抜け穴ができて、ますます法の精神に合致しない結果となるのでございます。私ども船舶葉組員として、警急自動受信機を船に装備すること自体に反対するものではございません。ただこれが通信士を減らす手段に用いられることに反対しているのでございます。レーダーができまして、船の安全度は確かに高まりました。しかしそれだからといつて当直航海士かわりにほかならないと同様でありましてこの機械通信士当直の補助として、他の通信のために漕難波としての五百キロサイクル聴守できない間作動させておくことにしていただけば、それこそ完全な常時聴守になり、ほんとうに安全に役立つのでございます。  およそ海上におきましての安全というものは相関的なものでございまして、互いに他船の安全に役立てることが、とりもなおさず自船の安全を期するゆえんなのでございます。先ほど申し述べました通り日本近海は世界的な航海難所といわれるだけに、海難率は驚くべき数を示しております。海上保安庁調査による昭和二十六年の海難は、漕難船隻数三千五十八隻、乗組員二万六千八百三十四名、船価旦積り千百七十八億二千二百万円、うち行方不明、沈没の損失は四百十九隻、五万六百七トンで、それにより船価にして三十四億百六十八万円と千六百二名のとうとい人命を失つているのでございます。警急自動堂信機を装備して通信士を減らすことの経済的利点と比べると、あまりにもけた違いのようでございます。何ものにもかえがたい人命は論外としまして、こうした莫大な損害は、保険でカバーできるからといつて済むものではございますまい。国全体の経済の上に大きく響くこのような海難を防止するために、必要な措置を講ずるのは国自体の務めだと思うのでございます。  以上申し述べました通り、きわめて特殊な事情のもとにある日本近海におきましては、外国船と同じようにすることはきわめて危険であり、かつ不適当でございますから、日本近海を就航する船の大宗をなす船舶無線局が、実質的な無休聴守をなし得るように、関係條項第六十五條の第四項をぜひとも削除していただき、同時に運用義務時間は本條規定を最低のものとし、特別な措置によつてこれ以上短縮することのないように、第六十三條の但書をも削除していただきたいのでございます。  なおはなはだ申訳ない次第でございますが、当方から差出しました請願書オート・アラーム関係條項中「改正案第六十三條但書及第六十五條第一、第二、第三項、第四項を削除」とありますのは、「第六十三條但書及第六十五條の第四項を削除」の誤りでございますから、御訂正くださいますようお願い申し上げます。御溝聴を感謝いたします。
  4. 高塩三郎

  5. 神田禎次郎

    神田参考人 このたびの電波法の一部改正につきまして、本日お招きによりまして、私ども意見を聞いていただく機会を与えられましたことを感謝いたします。  電波法の一部が改正されまして、特に一九四八年の海上における人命安全條約を履行するための船舶無線に関しまして改正を行われるということで、その要綱が発表されたということでございましたので、それを拝見いたしまして、協会といたしましての意見電波監理委員会委員長のもとに申達いたしますとともに、衆参両院電通委員長に差出したのでございます。お読み取り願つておることと存じますが、当時はまだまだ要綱を拝見いたしたばかりでございますが、その後法案といたしましていろいろ御審議に相なつておりまするうちに、われわれの考え方につきましてお取入れを願つた点もあるようでございます。最も新しい案といたしまして国会でただいま御審議中のものを詳しく拝見いたしてはおりませんけれども、だんだんとその点が取入れられているように存じまして、また感謝いたしているゆえんでございますが、私どもといたしましてごの電波法改正に関しまして希望いたしております点は、要約いたしますと三点ございます。  第一点は、国際安全條約の履行を目的といたします点を取入れられるということでございますので、あくまでもこの改正の趣旨は、條約のきめております條件範囲内においてこれを上まわることのないようにおとりきめを願いたいということでございます。第二点は、先ほど無線士協会の方からも御意見がございましたように、戦後新たに外国になりました朝鮮、琉球、千島、樺太、台湾方面が新たに国際航路になりましたので、その点に関して、国際航海に従事する船の無線通信士資格を二級通信士でもさとつかえないようにしていただくということでございます。第三点は、今度の改正案オート・アラームをつけることができるようになつたのでございますが、ただいまでは現実にそれがございませんので、これが各般につきますまでには相当の時間を要するのでございますけれども、それに関する経過規定がなくて、今のままではこの法律が発効いたしますと同時にそういうものをつけなければ、聴守を命ぜられております船は、全部無線通信士聴覚で聞かなければならないということになりまして、ただいまの定員では事足りない、ただちに増員をしなければならぬということに相なる次第でございますので、その点は條約にもございますように、二年間の経過規定をぜひつけていただきたいという三点でございます。  ただいま御意見があつたのでございますけれども、私ども無線関係におきまして、もちろん国際電気通信條約付属の無線通信規則、あるいは海上人命安全のための国際條約の線の充実した規則を持たなければなりませんし、その実施をしなければならぬということは、船主といたしましても異議のないところでございますけれども現実日本電波法規定されてあります点を忠実に守つておりまして外国の船を見ますと、戦後に参りますアメリカの船は、日本では規則によりました三人の無線通信士が乗つておりますと同じ型の船に、無線通信士が一名しか乗つていない。これは事案でございまして、日本で三人以上乗つておりますところのカーゴ・ボートと申します。と、総トン数五千五百トン以上の貨物船でございますが、同様の型のアメリカの船が一人しか乗つていない。それではアメリカは條約に違反したものをやつておるのではないかということが疑問になるわけでございますが、日本の船と装備において違つておる点は、アメリカの船はオート・アラームをつけておるだけである。そのほかに建つたところはないわけであります。これがアメリカの船以外の国の日本に参ります船におきましても、同様のことが見られるのでございます。これは事実でございまして、日本海運国際海運から孤立しておるのではないのでございまして、これらの国の海運競争相手になつておる次第でございますが、他の国の船がオート・アラームをつけることによつて日本の船よりも少い人手でもつて十分條約を満足さすだけの働きをしておるということに、われわれは非常に疑問を持つておるわけでございまして、従いまして日本法規と、先方の法規とどういう点で食い違いがあるのだろうかということを考えておつたのでございますが、一九四八年の安全條約と、今度取入れられることになりました改正案を拝見いたしましても、條約に規定されております以上の聴守義務が課せられておる。聴守と申しますとそれは同じでございますけれども無線通信士聴覚で耳で直接聞かなければならぬ義務というものが、條約ではカーゴー・ボートについて言いますれば、一日八時間以上のものはなようでございますが、日本ではこの新しい法律によつて実施いたすといたしましても、二十四時間あるいは十六時間、八時間となつております。二十四時間のものはいわゆる第一種の無線局、二種の無線局の甲にあつては十六時間となつております。そういうふうになつて参りますことは、どういうところから参つたかということを比較検討してみますと、いろいろ食い違つたところがございますので、われわれといたしましてはこれらの條約に規定されておりますそのままを、ひとつ海上人命安全條約の点から申しますれば、義務聴守をきめられますと同時に、またオート・アラームを採用されますと同時に、無線通信士の耳によつて聞く時間も、安全條約の規定しておりますその限度においてきめていただき、また国際通信條約の要求しております点から考えまして、いろいろこれに対しましても義務時間があるわけでありますけれども、船の種別につきましては、これは各国の国内法規にその規定をゆだねられておるのでございます。その点が、日本アメリカあるいは他の国家と、その間にいろいろの差別があるようでございまして、まだアメリカ法規をはつきりと見ておるわけで、ございませんけれども日本では第一種の無線局と認められておる三千トン以上の旅客船、五千五百総トン以上のカーゴー・ボートが一種となつておりますが、これらに対するアメリカ規定がもつとゆるやかになつているのじやないかということを考えるわけでございます。今度の改正法律案でみますと、一種局でございますれば、その運用時間二十四時間の間はすべて無線通信士聴覚による聴守をしなければならぬということに相なつておるのでございますが、それは運用時間山はオート・アームで聞いてはいけないということが御規定になつているからでござまいすが、その一種あるいは第二種の甲、乙の船舶無線局の種別のきめ方に、日本法律外国以上に上まわつている。その点から日本船舶無線局におきましては、多くの無線通信を棄せておるということでなつていることをわれわれは知るのでございますが、先ほどもお話がありました通り船主といたしまして、決して海上における自分の船並びに乗組員並びにその積荷に対しましてはもちろんのこと、同様海上航海しております船並びにその積荷、乗組員に対しまして、できるだけ相互の扶助によりまして安全を期すべきことはもちろん否とするわけではございませんけれども日本の船が特別にそういう点につきまして、外国の船以上のウオッチをしなければならぬという点は、どうしてもわれわれの納得できないところであります。国際競争という、これは商業上の問題でございますけれども、なおやはり自分の経済の上に立つて行かなければならない船会社といたしまして、ことに敗戦後の日本の壊滅しました海運を建て直して、今後日本の自立経済の大きな基本企業といたしまして立つて行かなければならぬわれわれは、国際競争の能力というものを十分に考えて行かなければならぬということで苦心をいたしておるのでございますが、そういう点にかんがみまして、その点は十分御考慮を願つて、今後本法案改正につきましては、聴守の点も、執務の点につきましても、国際條約の要求いたしております限度を越えることのないように、その点から御改正を願いたい。その意味合いにおきまして法案の第五十條の各船舶無線局の種別の再検討、これを日本の実情と外国状況とに比較いたしまして、ぜひ御検討願つて、われわれの意図いたしますように御改正を願いたいということを、特に希望いたしておる次第でございます。二点、三点のことにつきましては一応簡略ながら先ほど申しましたので、第一点のわれわれの意見といたしまして主といたします点を、はなはだ簡略でございますが、ぜひ御勘考を願うようにお願いいたしたいと思います。
  6. 高塩三郎

    高塩委員長代理 ただいま参考人から御意見のありました点について、御質疑があればこれを許します。松井君。
  7. 松井政吉

    ○松井(政)委員 今日の委員会の最初からの運営上の問題が問題になつていると思います。参考人の人たちにはまことに気の毒で、司会の委員会の出席並びに扱い方についての醜態を暴露したことは、われわれ遺憾に思います。こういうことについては委員長——不幸にして委員長不在だから、よく連絡をとつてつてもらいたいと思いますが、参考意見を述べようという人たちにも、それから提案した政府についても、それからわれわれについても三者迷惑です。だからそういう点は委員長は十分心して委員会の運営をやつていただきたいと思う。今参考意見を述べられた方々に対して、各委員ともいろいろ聞きたい意見を持つていると思う。しかも修正点があれば立法府の責任でありますから、われわれはやはり修正意見を出さなければならない。ところが参考意見を聴取している間に、次の電通省関係法律を今日上程して説明を聞こうというような粗雑な扱いから、一切の問題を発している。この点十分考えてもらわなければならぬ。そこで今日はもう正午になりますので、午前中の日程の中でこまかい質疑応答はとうてい不可能でありますし、さらに多くの質問をかかえている委員の出席がないのと、出席された委員もやはりただいまのような状態でありますから、とうていこのまま円満に続けることは不可能だと思いますが、せつかく参考意見をお述べになつたのでありますから、私はいろいろこまかい点は次に延ばしますけれども、二、三点だけお伺いしておきたいと思う。  そこで先に神田さんにお伺いします。政府が提出をする場合におきましては、やはり一九二九年の海上安全條約及び今回の平和條約のもろもろの関係を考慮し、さらに法的にも違反のない措置として今度の改正案を出したと思いますが、参考人の言われる第一点は、條約の範囲改正をきめろときめつけております。そうすれば政府が提出をいたしました今回の改正案というものは、條約の範囲を逸脱したという解釈が裏として出て参ります。そうすると政府の提出した今度の改正案の中で、どこが條約の範囲を逸脱しておるか、ひとつ具体的に條文を引例して明瞭にお聞かせ願いたい。
  8. 神田禎次郎

    神田参考人 あまり専門的ではございませんので十分なお答えができるかどうか存じませんけれども、私どもがただいま上程されております法案と條約とを比較してみますと、先ほどもちよつと申しました通りオート・アラームをつけました場合のことでございますが、今度の改正法案の六十五條の四項に「第一項及び第二項の無線局は、運用義務時間中は、警急自動受信機により聴守してはならない」とございます。これによりますと先ほども申しました通り、第一種の船舶無線局によりますれば、こ十四時間中は全部運用義務時間でございますから、警急自動受信機によつて聴守することはできないのでありまして、また警急自動受信機をつけても何ら役に立たないということになります。また二種の甲でございますが、これは十六時間の運用義務時間を持つておるのでございますが、安全條約では明らかにカーゴー・ボートでありますれば、資格のある電波通信士の耳による聴守は八時間でよろしいということが條約ではきめられておるのでございます。その線は明らかに私どもは條約に規定されておる、こういうふうに考えて曲る次第であります。
  9. 松井政吉

    ○松井(政)委員 第一の理由として指摘をいたしました條約の範囲法律をきめるというのは、ただいま御説明を願いました六十五條の四項の一点だけでございますか。
  10. 神田禎次郎

    神田参考人 條約と違つておりますのは、法規の上に現われておりますのはその点だけでございます。運用義務時間というの炉また條約とは違つておりますが、国内法規の点から申しますと、各国と日本とはそれぞれ違つおりまして、日本運用時間をきめておりますのは無線局執務時間の点でございますが、船の大きさその他につきまして條約以上に上まわつていると考えております。
  11. 松井政吉

    ○松井(政)委員 くどいようでございますが、われわれも不勉強なのと、それから電波関係というのは普通のわれわれにはわからない点がありますのでお伺いしておきますが、六十五條の四項は、今回の平和條約の第何條に照して條約の範囲を逸脱しておるか。それからもう一つ、海上人命安全のための国際條約の第何條に照して條約の範囲を逸脱しているか。要するに一つは平和條約、一つは国際條約、それの第何條とこれが抵触をしておるか、こういうことについての御説明をお願いしたい。
  12. 神田禎次郎

    神田参考人 平和條約の点は私ちよつとわからないのでございますが、国際安全條約の翻訳になつておる條項で申しますと、こういう條項があるのでございます。これは貨物船につきまして国際安全條約が規定しておるのでございますが、第三の規則により無線電信設備を備えつけることを要する船舶は、警急自動受信機を備えつけるときは、本規則のdに従い、かつ航海中は中波帯域における無線電信遭難周波数において資格を有する通信員は聴覚により次の通り聴守をしなければならない。この意味は、警急自動受信機を備えましたときは、カーゴー・ボートにつきましては通信員の自身の耳によつて聞くということは下の通りでよろしいということが書いてあるのでありまして、aといたしまして総トン数五千五百トン以上のものは一日合計少くとも八時間を聞くこと、それから総トン数千六百トン以上、五千五百トン未満のものは一日合計少くとも八時間を聴守するごと、それから但書が云々とありますが、そういうふうにきめられておるのであります。その点で條約を上まわつておると申し上げろ次第であります。  もう一つのお尋ねは、無線局の種別のきめ方がどうであるかという点だと存じますが、先ほど申しました通りアメリカ規則は私は持つておりませんし、あるいはこの参考書の中に入つておるかもしれませんが、拝見しておりませんのでわかりませんが、日本では先ほど申しましたように総トン数三千トン以上、貨物船としては総トン数五千五百トン以上の船が第一種局ということになりまして、その運用時間が二十四時間ということになつております。アメリカの事実を見ますと、七千トン、八千トンの船が一人のオペレーターでやつておる、こういう事実がありますので、その点がもし條約に違反していないとすれば、国内法規がそのように許しておるのだ、かように考えます。
  13. 松井政吉

    ○松井(政)委員 ただいま御説明いただきました第二の点は、現実に條約並びに各国の習慣がありましようが、国内法で立法する場合の建前は、アメリカ近海日本近海、それから世界の海は一つであるというりくつも成り立ちましようが、船の構造、いろいろな問題が起きて来まして、法律論でなく、現案にどうするかということが、各国で討議されて立法化されなければならないのありまして、いろいろ議論があろうと思いますが、これはお考えだけお伺いしておけばよろしゆうございます。さらにこの條約の範囲を逸脱しておるかどうかということは、提案者である政府の方、すなわち電波監理委員会の方にお伺いをするのでありますが、これは政府側でありますからあとにまわします。  さらに続けてお伺いいたします。これは大体お伺いしたところ、参考人の方々お二人とも同じような考えだと私承つたのでありますが、新たに外国なつた部分、すなわち台湾、沖縄等でありますが、こういう関係については御意見が同じように考えられますが、戦前と戦後で国内及び外国というようにかわつた部分についてはどういうことでございましようか。戦前日本国内という、戦後新しく外国なつたところについては、戦前のような形で取扱いをしてもらいたいという意味でしようか。この点をもう一ぺんお聞かせを願いたいと思います。神田さんから願います。
  14. 神田禎次郎

    神田参考人 私はこの決の関係だけでただいま申したわけでございますが、安全法自体の問題としての取扱いとしまして、構造の規定、航行の範囲規定、そういうものにつきましては、新しく外国になりました地域に対しましては、戦前と同様の取扱いができますようにとわれわれ希望いたし、またそういう方向でお考えをいただいておるわけでございますので、単に電波法だけの関係ではなくて、あわせてお考え願えればけつこうだと思います。
  15. 松井政吉

    ○松井(政)委員 そうすると実際的にはやはり外国の取扱いは困る、こういうことでございますね。戦前日本の国内で、戦後外国なつた部分については、やはり戦前のような取扱いをしてほしい、それはやはり現実的だ、こういうお考えと了承してよろしゆうございましようか。
  16. 神田禎次郎

    神田参考人 対外関係もございますので何でございますが、暫定的、経過的の規定といたしましては、ぜひそうありたいと思います。
  17. 松井政吉

    ○松井(政)委員 これは政府にお伺いするのが妥当であつて参考人の方からお伺いすることはちよつとどうかと思いますけれども、一応お伺いしておきたいのであります。大体戦前の状態と御解釈していらつしやる区域は、どこからどのラインをおつしやるのであろか。
  18. 神田禎次郎

    神田参考人 緯度、経度ははつきりいたしておるわけではございませんが、船の参りますデステイネイシヨンによつてお考えをいただけばいい。われわれはいつも向うに参ります港を基準にして、そういうことを考えておる次第であります。
  19. 松井政吉

    ○松井(政)委員 それじやもう一点お伺いしたいと思います。第三点として御指摘を願つたのは、たとえばオート・アラームの設備をしても、やはり経過的な期間、余裕が必要だという御意見だと解釈いたしましたが、そうするとやはりその間、それが行われるまで、どのような経過措置を御希望なさつておるか、これをお伺いしたい。
  20. 神田禎次郎

    神田参考人 経過中の処置といたしましては、現行法の聴守義務の程度において、聴守義務を負うということにしていただきたい。
  21. 松井政吉

    ○松井(政)委員 それから山縣参考人の方にちよつとお伺いいたします。ただいま神田参考人の方から御意見をお伺いしました点で、やはり希望の中では一致する点もありますが、かなり食い違つた点もあるように承ります。そこで第一に、大体同じような見解を持つと思われる点からお伺いいたしたいのでありますが、いわゆる戦後外国なつた部分に対しては神田参考人と同じような考え方と希望を持つておるという解釈をしてよろしいのであるかどうか、この点からお伺いいたしたいと思います。
  22. 山縣忠重

    山縣参考人 戦前と戦後と事実違つておるものを、戦前と同じ状態にしてほしいという希望自体は成り立たないと思います。そこで私たちが希望するのは、現実外国通信範囲に入つたものは入つたものといたしまして、それに対応できる措置が今の国際條約からしましても、また国内でその資格を認める上からしましても可能であるから、その範囲ででるものとして、二級通信士が、戦前国内通信の中に含まれていたと思われる区域、これは近海区域になりますが、その近海区域を航行する船舶通信士として従事できるようにしていただきたい、これは必ずしも表現の上で戦後の状態を戦前の状態に持つてつていただきたいという意味ではございません。
  23. 松井政吉

    ○松井(政)委員 これは大体わかりましたが、結局提案者の方で、やはり国際的な関係、あるいは今度の條約等に照して、そういうことができるかできないかということは、政府にお伺いしなければならぬ問題でありますから、これもあとまわしにさせていただきます。  それでさらにお伺いいたしたいのでありますが、運用義務の点を明確にするために、六十三條の修正の御意見が出ております。これは山縣参考人にお伺いするのですが、六十三條で運用義務に関する修正の御意見神田参考人から述べられておるのであります。これは同じ條文についての修正でありますけれども、修正内容は逆に異なるような気がいたすのでありますが、これをもう一ぺんお伺いしたいのであります。六十三條の第一項から第五項までの但書等に対する修正の御意見は、先、はど神田参考人から述べられました。すなわち国際安全條約との関係において、総トン数千五百トン以上の貨物船は一日合計少くとも八時間の聴守とする、以下ずつと出ておりますが、今度はひとつこの見解に対する山縣参考人の御意見を、できるだけわかりやすく御発表願えればけつこうだと思います。
  24. 山縣忠重

    山縣参考人 御希望のようにわかりやすく要点だけ申し上げられるかどうかわかりませんが、今の規定によります運用義務時間並びに今度新たに改正法案の中できめようとする運用義務時間というものは、実際海上においての無線業務を遂行して行く上に最低限のものである、かようにわれわれ無線通信業務に従事した者の経験から確信しておるわけでございます。従つてこの時間は規定の上では最低のものであるから、これを監理委員会規則で委任の形でさらに引下げられるようなことがあつては困る、こういうことに立つているわけでございまして、それ自体国際條約、またこの電波法の精神に合致している、こういう点において、私たちは法を全面的に支持し認めるという上に立つて、希望を申し述べておるわけであります。特別の法がこうなつておるからこうしなくてはならないという根拠は持ちません。
  25. 松井政吉

    ○松井(政)委員 それではもう一点重要な点をお伺いしますが、神田参考人の御意見によれば、真正面から食い違つている問題は、アメリカの船の例を引きまして、日本で三名いるところはアメリカでは一名で事足りる、それほどオート・アラームを設置した場合の関係が違つて来る、こういう御意見でありますし、前の山縣参考人の御意見は、災害の前の処置が必要であつて機械は意思がないので、機械だけにたよつていることは非常に危険が伴うという、災害の実例をあげての御意見を述べておりますが、この点について引例いたしましたアメリカ日本の場合を考えてどのように具体的に違うのだ、日本にもし特殊事情があろとするならば、その特殊事情の考え方等もあわせて再説明をお願いしたいと思います。
  26. 山縣忠重

    山縣参考人 アメリカ船を含めての外国船との比較から、日本の国内法規できめました運用時間並びにそれから出て来る通信士乗組員数、こういうものの比較をされておりますけれどもアメリカ日本より危険が少いという断定は必ずしも下せないのですが、少くとも日本近海海難率の実情から見まして、アメリカのそれとは違つている。従つて人命の安全のために改正するものであるならば、改正する方向はよりそれを改善して行く方向でなければならないと思います。そこでアメリカ日本の事情がかわつておるということの具体的な例というものは、実ははなはだ困難でありますけれども、船の構造あるいは海難防止に役立つべき航路標識から、航海関係の陸上の諸設備にしましても、具体的に資料は持たないけれども相当な開きは当然であり得る。なおわれわれは、現在国内法規できめられておる規定によつて実施される海上無線業務というものを見まするならば、現在きまつておる運用義務時間だけでも不十分である。それ以外にはみ出てやらなければならないようなものは多々あるわけでございます。そしてそれらが少くとも航行安全のために必要だということできめられており、それを施行して行く上に必要であるということであれば、アメリカがたとえば日本より執務時間が少かつたとしても、そういう時間的な面だけを比較するということでなく、それぞれの国の形に現われた設備あるいは業務の比較だけでなくて、この問題に対する国民自体の認識の相違というものも考えて比較すべきではないかと思うのでありまして、具体的にどういうように違つておるということは、国内法規がすでに規定で示しておる。そういう規定が必要でないということであれば、それをとりはずしてアメリカの基準に持つてつてよいはずであるけれども、すでにその規定施行されておつて、その上に立つてもろもろの船舶無線業務が遂行されておるという実情に立つておることを御了解くだされば、必ずしも個々の、このようなところがこのようにかわつておるということを比較する必要はないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  27. 松井政吉

    ○松井(政)委員 そういたしますると、やはり従来の海難率の比較、近海関係の遭難の多いこと並びに従来の経験、それから現在の運航の実績から推してそういう御意見だ、こう了承してよろしゆうございますか。
  28. 山縣忠重

    山縣参考人 その通りでございます。
  29. 松井政吉

    ○松井(政)委員 それでは参考人の方々に関連する分だけきよう政府の方からお伺いしたいと思いまするけれども、よろしゆうございますか。
  30. 高塩三郎

    高塩委員長代理 けつこうです。
  31. 松井政吉

    ○松井(政)委員 それではただいまの参考人の方々の御意見に大体関係する部分だけ二、三点きようお伺いして、全体及び内容の逐條的なものは次会に譲りたいと思います。  第一点は、先ほど問題になりました條約の範囲を逸脱したものであるかどうかという点について、提安者から明確なお答えを願いたい。  第二点は、やはり参考人御両人からの御意見に基く近海第一区、すなわち現在外国なつた分に対する措置を提案者としてはどのようにお考えになつたか。  第三点は、御承知のように警急自動受信機の問題について、経過措置を希望されている御意見も出ております。さらにこれをつけることによつて二級通信士の減員が行われ、機械にのみたよつて、さらに船の災害が多くなるのではないかという御意見も出ているのでありますが、これに対する提案者としての考え方をお伺いしたいと思います。この三点について、ひとつ具体的に御答弁を願います。
  32. 野村義男

    ○野村(義)政府委員 お答えいたします。第一点の條約の範囲を逸脱しているのではないかという御質問でございますが、これは政府としては、逸脱しているのではないというふうに考えております。元来電波法無線局に対して運用時間あるいは聴守義務等を課しておりますのは、海上人命安全條約ばかりではない、海上人命安全條約と申しますものは、名の示しますごとく、海上における人命の安全をなすための條約である、こう見ておるわけでありますが、そのほかに船舶無線電信をつけます以上は、無線電信の全面的な利用のことを考えて国際電気通信條約というものがございまして、その中でいかなる執務をするか、第一種の執務時間、第二種の執務時間、第三種の執務時間というふうに区別をしておるわけでございます。従つて現行の電波法では、海上人命安全條約の人命、財貨の保全に関する要求と、無線電信をつけた以上の全面的な利用を考えて、電波法執務時間をきめておる次第でございます。これは新たに電波法ができて起つたわけでなくて、その前身たる無線電信法時代からあるということになつておる次第でありまして、かれこれあわせて現在の政府提案のような形になつているわけで、人命安全條約を逸脱しておるというような表現自体もおかしいものではないか、こういうふうに考えております。  第二点の近海第一区につきましては、これは現在の電波法ができまするときにも、旧領土については日本同様の通信ができるのではないか、こういうことで、たしか国会の御修正でこういうような過渡的な措置をしてございます。これは通信士協会等の言われるのは、その区域については現在の電波法の四十條を改正して、二級のオペレーターでも国際通信を独立してやらせてもらいたい、こういうことにあると思うのでありますが、現在の電波法の建前は、二級通信士というものは日本特殊な事情で、外国であるとかあるいは外国無線局と交信をするとかいうことで、船舶の特質にかんがみて、現在の第二級の程度では独立をさせてやるということは非常に危険である。第一級のもとでやつてこそ初めて国際通信ができるのだが、やや心配の気がする、こういうことで伝統的に電波法以前から、無線通信士の制度ができましてから、二級通信というものは一人では国際通信をやらせないという建前をとつておるわけでありまして、これは伝統的にそういうことをやつておるわけであります。ことに近海一区の中には香港であるとか、上海であるとか、あるいは韓国につきましてもごの電波法施行当時とは異なりまして、韓国も国際通信條約に加入いたしまして独立の当事者になつて来る。漸次そういうような通信の方法等についても国際性が加わつて来こそすれ、少くなつて来ることはない。こういうことで現在では、来年五月に切れますが、その部分については改正を加えておりません。しかし今度出しました電波法改正というものは、海上人命安全條約と航空機関係、それにどうしてもやむにやまれぬ改正だけを盛つて参つた次第でありまして、今参考人から申されました全面的な御意見は、他日電波法改正して、全面的に執務時間とか聴守時間を改めなければならぬ時期があると思いますから、その時期において改正してもよい、考究したいというふうに考えております。  第三点の警急自動堂信機の使用でございますが、オート・アラームというものを全面的に新しい條約では押し出して来ております。一九二九年からの科学進歩従つて機械條件もこまかく定め、なるべくそれを利用する方向に持つて来ておるわけであります。義務づけてはおりませんが、なるべくそつちの方に持つて行くということで、今船主協会から申されましたように八時間というようなことを書いてございます。しかし日本ではオート・アラームというものをまだ全面的に使うところまで至らない。今度新しく聴守時間が少しふえましたから、ふえました分だけはそこにオート・アラームを使うこともできるといつておるだけであつて、人聞による聴守を廃せといつておるわけではない。人間によるか、オート・アラームによるかは、事情に従つて船主その他の負担を考えておやりになればよいのであつて義務を課しておるわけではない。従つて現在の人員が減員になるというようなことはないわけであります。それから災害につきましては、今までは聴守時間が一定の、すなわち十六時間また八時間とすることを安全條約でいつておるわけでありまして、その時間についてオート・アラームをかりに使つても、今より災害がふえることはないと思います。むしろ場合によつては、オート・アラームを使うごとによつて、法上災害の軽減になるのではないかと考えております。  もう一つ経過措置のことでありますが、これは現在新しく義務を課せられた船舶につきましては、オート・アラームをつけさせるために二年間猶予の規定があります。そういう関係船主協会の申されるように、二年間、猶予の経過規定を設ける方が、実情からいうとよいのではないかと考えております。
  33. 松井政吉

    ○松井(政)委員 大体はつきりして参りました。そこでもう一ぺん御答弁願いたいことは、この警急自動受信機の設置をめぐつてであります。提案者の方からは、そのために人員が減らされたり、問題が起きたり、災害がふえるというようなことを考えているのじやないし、そういうことに触れておるのではないというような御答弁があつたわけでありますが、参考人の方からは、法律にそういうことはないのであるが、必然的にそういう結果になるのではないか、必的然にそういう結果になるならば、そういうことのない條文が必要だという御意見も出ておるわけです。この点を改正案をおつくりになる場合に御考慮されたかどうか。  それからもう一つ、これはまことに困つたことだと私は思うのでありまするが、船舶安全法との関係がどのようになつておるか。船舶安全法審議したのは運輸委員会で、さらに船舶安全法を中心に船舶安全の監督行政を行うのは運輸省であります。そこでわれわれは今電波法改正をめぐつて船舶の安全の、事実上の内容について審議をしておるわけであります。従つて当該運輸省との間に電波法改正、航空もそうでありますが、主として船舶に関する部分について、提案者はどのような連絡協議があつたか。あつたとすれば簡単でよろしゆうございますが、その内容を御説明願いたい。さらに改正法がこのまま通つた場合、実際の行政の面でどのようになるか。船主及び海上において従業している諸君に、直接どのような影響をもたらすか。こういうことについてお考え願つたことがあるかどうか承りたい。
  34. 野村義男

    ○野村(義)政府委員 第一点のオート・アラームの利用と無線通信士の配置関係でありますが、元来無線通信士の配置関係につきましては、電波法の上でも配置の定員をきめることができると書いてございますが、船舶安全法の上でも、船舶職員法その他で船舶職員の定員をきめることができる、こういうことになつております。そして電波法運用の上では、船舶職員法の上できめた定員が、電波の利用について妨げがないということであれば、それに従つて行くということで、現在では船舶通信士定員電波法関係においてはきめておりません。しかし聴守関係がふえることについては、今度海上人命安全條約で、聴守時間がふえた聴守の方は、人でもよければ本オート・アラームでもよるしい、こういうことに電波法ではなつておりますので、関係官庁としてあるいは経済負担としてどういうふうにとりますか、これはそのときのきめ方でございます。船舶安全法との関係については、この法をつくります前に十分なる連絡をとつておりまして、この法律がこのまま通りましても、船舶安全法との関係に何ら矛盾を生ずることはございません。これは船舶関係当事者と密接な関係があるものでございますから、安全條約の関係の方とも十分打合せをしてここに出して来ておる次第であります。
  35. 松井政吉

    ○松井(政)委員 私の質問は本日は終りますが、さらに次会に続行することを申し上げておきます。
  36. 石川金次郎

    ○石川委員 山縣さんにお伺いしたいのでありますが、請願書があなたの方から出ておるようでありますが、その中に国際電気通信條約によれば、二級通信士国際通信を行い得ることを規定しておるといつておりますが、これは何條でありましたか、国際電気通信條約の附属無線通信規則、これから来るのでありますか。
  37. 山縣忠重

    山縣参考人 そうでございます。
  38. 石川金次郎

    ○石川委員 五一一というのがありますね。
  39. 山縣忠重

    山縣参考人 そうでございます。附属無線通信規則第十二章移動局の職員の項で、第二十五條の五五九に「第二種船舶局第一級又は第二級無線電信通信士証明書を有する通信士一人。」こういうようなところから、一級または二級でもいいという解釈が立つて来るわけであります。
  40. 石川金次郎

    ○石川委員 この規則によりますと、「第一級又は第二級無線電信通信士証明書を有する者は、船舶又は航空機の無線電話局の業務を行うことができる。」この規定から来るのですか。
  41. 山縣忠重

    山縣参考人 両方から来るわけであります。
  42. 石川金次郎

    ○石川委員 それで二級無線通信士は、規則にいうところの二級通信士としての国家試験がなされて、これに合格しておるというわけなんでございますね。
  43. 山縣忠重

    山縣参考人 さようでございます。
  44. 石川金次郎

    ○石川委員 その見解に立つて、今政府で提案しておる四十條における第二級無線通信士の操作の範囲は拡張せられてしかるべきだ、日本近海においては拡張して国際通信をやつていいのじやないか、こういうことになるのですか。
  45. 山縣忠重

    山縣参考人 さようでございます。その範囲内です。
  46. 石川金次郎

    ○石川委員 電波監理委員会の方にお伺いしておきますが、明瞭にありますものを、どうしてごの四十條の二級無線通信士範囲に入れなかつたのですか。
  47. 野村義男

    ○野村(義)政府委員 第四十條に定めております二級無線通信士資格については、国際通信を単独にできないということが現在の電波法でございまして、改正案を持つて来ておらないわけでございます。現在すでに国会でおきめになつたものでは、独立してやつてはいかぬということになつておりまして、これについては改正案を持つて来ておりません。今船舶通信士協会で言われることは、現在の附則の中で、近海一区については三年間を限つてつているが、これを本條へ繰入れろこういう御主張をなさつてつたのであります。その点から先ほど申し上げましたように、これは国際條約の上では、なるほど二級は独立してできろかできないかわかりませんが、とにかく「又は」と書いてあるので、できそうに見えるが、日本のように特殊なかな電報をやつてみたり、外国文については非常にふなれである者が、たどえばヨーロッパ航路とか、アメリカ航路のような国際通信をやるところへ一人で乗つてつては非常に心もとない。それだから独立ではやれないのだ、こういうようなことを日本独自の必要から、無線電信ができたときから、そういうような制度を日本ではとつているわけであります。そのぺースに立ちまして、現行の電波法の第四十條ができまして、独立ではやれない、こういうことに国会でおきめになつた次第であります。従いまして近海第一区についてはどうするかということは、先ほど申し上げましたように、電波法改正はまだ機会がありますので、そのことについては他の機会において考慮したい。ことに現在二級の試験をしておりますが、現在の二級の試験は、試験の科目その他から見て独立してやる程度までにしておりません。従つてその試験の程度をかえて行くということまで考えなければならないわけでございまして、現在の資格の者にすぐそのまま独立の資格を与えて国際通信を行わせるかどうかということは、試験科目その他も考えて、他の機会において十分考えたい。
  48. 石川金次郎

    ○石川委員 もう一度お伺いします。今まで朝鮮であつても、近海第一区としてやつておつたんですから、それを取上げなくともいいのではないか。この試験ではその資格はないとおつしやるけれども現実に熟練しておるのだから、やつてやれないことではないのでありますから、それを特にやれないことにしたのは、どうも持つておつた人の権利をなくするように思いますので、その点どうですか。
  49. 野村義男

    ○野村(義)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在やれるごとになつたのは、附則で三年間に限ると国会で御修正になつて、年限を切られたわけでありまして、その三年の年限が来年五月で切れるということでございます。従つてそれができる改正案を持つて来ようとは政府は考えなかつたわけであります。
  50. 石川金次郎

    ○石川委員 しかし電波法改正をやつて、やらしてやれた経験もあるのでございますから、一緒に出して安心させるのが当然ではないでしようか。
  51. 野村義男

    ○野村(義)政府委員 そういう御趣旨でございますれば、この次の国会のときに、まだ時間もございますから、そういうようなとりはからい方に持つて行きたいと思います。
  52. 石川金次郎

    ○石川委員 御留意願いたいことは、海員組合から出ました請願書の中に、改正してくれと言つて、「但し近海第一区の区域内においてはその限りでない。」という但書を入れてある。国際通信の方は「国際通信のための無線設備、第一級無線通信士の指揮のもとで行う者に限る。」という原則を立てまして、「但し近海第一区の区域内においてはその限りでない。」と言つて、従来経験のある、すでに自分たちのやれるところだけはやれるようにしてくれ、こういうことの希望でありますから、これは一応お考えになつてしかるべきではないかと思います。あなたの方はこの次の機会電波法改正をやつてごの要望に応ずるというお考えがありますか。
  53. 野村義男

    ○野村(義)政府委員 十分考慮してみたいと思います。
  54. 石川金次郎

    ○石川委員 山県さんにお伺いしますが、電波監理委員会では十分考慮すると言つておりますが、それで御満足行けるんですか。実は今改正すると言つても、電波法改正が入つて来ませんと、国内の方の電波法につかえてしまうというかつこうになりまして、あまり矛盾したことをきめて行けないということになるかもしれぬ。もつとも現在の規定を新しい法律で消すということはできましよう。しかしあまり矛盾したことはどうかと思いますが、御意見がありますか。
  55. 山縣忠重

    山縣参考人 これはあなた方の方でおきめ願うことで、私の方としてはお願いしたいと思います。
  56. 石川金次郎

    ○石川委員 御希望は……。
  57. 山縣忠重

    山縣参考人 希望は請願通りでございます。
  58. 高塩三郎

    高塩委員長代理 他に御質疑はないようでありますから、これをもつて参考人の方々に対する質疑を終ります。  参考人のお二人の方に対して申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず貴重なる御意見をるるお述べくださいましたことを、厚くこの席からお礼を申し上げます。ありがとうございました。  本日はごの程度にとどめまして、次会は公報をもつてお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後零時五十分散会