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1952-03-31 第13回国会 衆議院 通商産業委員会建設委員会経済安定委員会連合審査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月三十一日(月曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員   通商産業委員会    委員長 中村 純一君    理事 山手 滿男君    今泉 貞雄君       神田  博君    小金 義照君       澁谷雄太郎君    土倉 宗明君       永井 要造君    福田  一君       南  好雄君    村上  勇君       佐伯 宗義君    加藤 鐐造君       風早八十二君   建設委員会       淺利 三朗君    上林山榮吉君       池田 峯雄君   経済安定委員会    理事 多田  勇君 理事 有田 喜一君    理事 中崎  敏君    福田 喜東君       土井 直作君    横田甚太郎君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         建 設 大 臣 野田 卯一君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         通商産業政務次         官       本間 俊一君         経済安定事務官         (総裁官房経済         計画室長)   佐々木義武君  委員外出席者         公益事業委員会         委員      伊藤忠兵衞君         通商産業委員会         專門員     谷崎  明君         通商産業委員会         專門員     越田 清七君         建設委員会專門         員       西畑 正倫君         建設委員会專門         員       田中 義一君         経済安定委員会         專門員     圓地與四松君         経済安定委員会         專門員     菅田清治郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  電源開発促進法案水田三喜男君外五十一名提  出、衆法第一六号)     —————————————
  2. 中村純一

    中村委員長 これより会議を開きます。  電源開発促進法案を議題といたし、先日に引続き質疑を続行いたします。有田喜一君。
  3. 有田喜一

    有田(喜)委員 わが国経済自立国民経済の安定をはかる上から見まして、今日ほど電源開発の必要なときはないと私は思う。われわれはつとに電源開発の急務なることを叫んで、政府の怠慢を責めて来たのであります。実際今日までこの大事な電源開発を遅らせて来たところの政府の責任は実に重大であります。しかしおそまきながら、電源開発の急務であることに気がつかれて、与党諸君から電源開発促進法案提案されたことは、これは一つの進歩だと私は思う。しかし問題はただいま審議中の電源開発促進法案が、はたして最も有効に所期の目的を達し得るかどうか。かつわが国電力事業の将来に禍根を残さずしてうまく行くかどうか、ここが論議の中心であると私は思う。この見地に立つて、私は若干の質問を試みたいと思うのでありますが、まず順序としてお尋ねいたしたいことは、この法案水田三喜男君外五十一名の自由党諸君提案になつておるが、政府本案に対してどの程度関係され、しかして政府本案賛成されておるかどうか。これをまずお伺いしたい。
  4. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えをいたします。政党内閣本質から考えまして、党が提出される法案は、常に政府と密接な連関のもとに調整、作成されたものであります。党の提出法案に対しては政府は全幅の支持をいたしております。
  5. 有田喜一

    有田(喜)委員 しからばお伺いしたいのは、公益事業委員会伊藤さんが見えていらつしやるようですが、公益委員会としては本案に対していかなる考えを持つておられるか、賛成であるか不賛成であるか、その点を明らかにしていただきたい。
  6. 伊藤忠兵衞

    伊藤説明員 私公益委員伊藤であります。数週間前からのどを痛めまして、はなはだ発音が不明瞭でありますがお許し願います。  発電計画に対する自由党の御提出の正確な案をまだ拜見いたしておりませんから、その意味においてお答え申し上げたいと思います。電気の必要なこと、電源開発国家至上命令であることはどなたにも説明は不必要であろうと思います。それにつきまして現在は九電力会社のまかない得る範囲において、また見返り資金をもつて政府立案の上、電力会社にそれぞれの機関を経てお願いするのでありますが、その着手したもの並びに技術的にもその他計数的にも、その計画で必ずでき得るという方面のものを私ども委員会においては対象として進行いたしておりますのが現状であります。今ここに大きな電源開発事業を起すためには、いろいろな角度から見まして、両院の決議によりまして日本の国是として国家がこういう機関をつくる時期に達しておるということについては、これはおのずからそれぞれの考えもあろうと思います。しかしながらその組織機関につきましては、私どもはその内容に対して詳細なものはまつたく見ておりません。それとちようど私と時をひとしくいたしまして、委員長ガス中毒をいたしましたので、私は一日も休まずにおりましたのですが、委員長はほとんどお休みでありました。私は三週間近く会つておりませんですが、この間ちよつとおいでになりましたからごあいさつ申し上げましたが、また昨日からいけませんで、委員会全部がこの問題に対するはつきりした計画的な審議をする時期に達しておりませんので委員会を代表いたしましてあの案に対する御答弁を今申し上げますことは差控えさせていただきたいと思います。ことに昨今電力値上げ問題がありまして、これまた非常に大きな事柄でありますので、それぞれ委員は出発いたしまして公聽会開催地へ向つておる者もあります。そういう関係上、あの電源開発法案につきまして私の方で審議をいたしておりませんことは事実でありますために、はなはだ遺憾なことでありますが、委員会を代表いたしましての御説明は、これ以上のことは差控えたいと思います。
  7. 有田喜一

    有田(喜)委員 まことに驚き入つた答弁で、実に何と言つてよいのか、公益事業委員として怠慢だと思います。今日の電気主管庁公益事業委員会として、しかもこの大事な電源開発促進法案国会に上程されておるのに、その案の内容もわからない、まだ何も検討していないという伊藤さんのお言葉であるが、私には解せない。私の知るところによりますと、松永委員はこれに対して反対だということを言明しておる。また松本委員長もこの問題に対しては委員会として賛成しないということである。伊藤さんは毎日出ていらつしやるということであるが、おそらく伊藤さんも、松永氏あるいは松本氏と同様な意見じやなかろうかと私は思う。委員会として正式にきまつていないから云々と言われたが、それは委員会を開けばよいのであつて、何とおつしやろうが、今日まで公益事業委員会の意向としてはこの法案不賛成であつた、こう私は想像し、断定してもよいくらいだと思います。それでも伊藤さんはまだそれは知らぬとおつしやるのか、もつとはつきりした御答弁を願いたい。
  8. 伊藤忠兵衞

    伊藤説明員 反対賛成ということにつきましての全般にわたりました答弁は非常に困難であるということは、今申し上げました通りであります。事実私のところにはまだ立案されました法案、その詳細なものはまわつておりません。それに対する公式な研究のことは怠つておるということもあるいは事実かもしれません。しかしながらまだ事実手に渡つておりませんので、それに対する徹底的な意見を申し上げることのできぬことはやむを得ない次第でございます。不日まわるだろうと思いますから、それに対する詳細な検討をした後に適当な時期において御質問があれば、発表する時期もあるかと思いますが、今日の場合におきましては、はなはだ遺憾でありますが、今申し上げた以上の御返事を申し上げることはできない次第であります。
  9. 有田喜一

    有田(喜)委員 私は小さなことを聞くのではない。かようないわゆる国策的な電源開発促進の案の構想に対してどうお考えになるか、賛成不賛成、その点をはつきり言つてもらいたい。
  10. 伊藤忠兵衞

    伊藤説明員 今申します全般にわたることは——世上にとりざたされておりますところの一社案で行くか数社案で行くか、それも一つのテーマであると思います。しかし一社案なるものに対するいわゆる精神と骨子につきましてはいろいろと方法があると信じます。それにつきましての個々の話合いは、政府当局の方あるいはその他の方ともいろいろ意見の交換をしたことがありますが、あながち公益事業委員におきましてすべてにわたつて政府案反対しておるわけではないと信じます。また松永氏の御答弁がどういうことであつたか私承知いたしかねます。よりよきものに到達するために私どもは苦しんでいるのでありまして、たとえば外債を招致します場合に、いかなる法案ができて、いかなる組織が一番金を出す方面に安心を与えるかということは、非常に審議を要する問題であります。その意味において、全般的にこれが賛成反対という答弁を申し上げるのはまだ非常に大胆ではないかと思います。内容につきましては賛成の点もありましようし、反対の点もありましようし、その反対の点も立案者と協議を要しますので、ここで申し上げますところまで達するには多少の時間を要すると思うのであります。怠慢であることはやむを得ないかもしれません。しかしながら現在におきましてはこれは事実なのであります。
  11. 有田喜一

    有田(喜)委員 怠慢な公益事業委員会の人にいくら聞いてもしようがないのであります。先ほど周東安本長官は、政府としては本案に全面的に賛成だとおつしやつた、私の知る範囲においては公益委員会政府機関一つであることは間違いないと思います。しからば政府公益事業委員会に対して何らの交渉というか相談というか、それらを何もせずにやられたのか。私は今の伊藤委員の話を聞いて実に政府部内は不統一だと思う。こういう重大な電源開発法案に対して、また日本自立経済上最も必要と思われる非常に大事な問題が、しかも電気主管庁である公益事業委員会がそのような態度であることは、実に政府部内は不統一である。安本長官は、政府は全面的に賛成だと言われるが、公益事業委員会に何も相談せずに言われたのか、そのことを明らかにしてもらいたいのであります。
  12. 周東英雄

    周東国務大臣 本法案は御承知の通り自由党議員提出であります。自由党の方からも連絡があつたかと思いますが、それは別といたしまして、これと大体同じ案について当初政府提案考えたときに、公益事業委員会の方とは両三回にわたつて連絡はしております。その間において会社形態、数等について御意見のあつたことはおつしやる通りであります。それ以上一歩も進みません。しかし最終におきまして新しい法案に基いて、電源開発を急速に促進する特殊の法案を必要とする立場に立つて、私は最後的には内閣総理大臣が決定するものと思います。その線に沿つてどもも進めておつたのであります。こういう問題は政府だけの問題ではなくて、党派を越えて、また相当年限もかかるのでありますから、かりにいろいろ変化がありましても、電源開発そのものについて超党派的に進められるべきが至当であるということで、まじめな考えから議員提出ということを考えられたのであります。その間について伺いますと、各党派にも呼びかけて御共同を願つたはずでありますが、たまたまいろいろの関係からして提案を急ぎましたために、自由党だけの案になつたようでありますが、精神的にはそのことを考えまして急いで党から出されたような次第であります。  以上経過だけを申し上げます。
  13. 有田喜一

    有田(喜)委員 まことに驚き入つたことであつて、ことにつくられんとするところの電源開発株式会社というものは、政府特殊機関特殊会社であつて、しかもこれを運用するには、政府が強力なる指導と監督をやつて特別な関係に立つ。しかも電気主管庁であるところの公益事業委員会がほとんどこれと相反する考えを持ち、またこの案に対して真劍な態度研究もしていない。これは私は実に不可解千万なことだと思う。私の聞くところによると、電気事業者の大部分の人も、公益事業委員会がそういう態度であるから、本案に釈然としないような情勢である。そういうような情勢において、この大事な電源開発がはたしてうまく運営できるかどうか、私はそこに非常な疑問を抱くのであります。  そこで次にただしたいことは、一体政府並びに自由党提案者の方々は、この電力事業機構すなわち企業形態に対して、いかなる形態を最も可と考えておられるか。一昨年であつたか、政府は、電力事業本質とその特質を無視して、全国一元的に運営しておつたところのあの日本発送電会社を分断してしまつて九つ民営電力会社をつくつた。そうしてそのときには、純粹民営をもつて最も電力事業形態としてよいと考え、そうして大いに能率を上げるのだ、サービスをよくするのだ、また純粹民営にするならば外資導入も可能であつて電源開発も大いにやれる、こういうことを盛んに強調された。しかも国会の開会中であつたにもかかわらず、国会審議権をも無視してしまつた。実に非民主的。非立憲的な措置に出られて、ポツダム政令によつて電力編成を断行した。ところがその結果はどうであるか。吉田総理の側近の某々氏のごとき者が会社の首脳に就任された、そのことにおいては成功を収めたかもしれないが、国民経済的に見れば実にめちやめちやだ。電力料金の値上げと電力飢饉を生じたばかりではないか。どこに外資が入つて来たか、どこに電源開発民営にしたためによくなつたか、さつぱりうまく行つていないじやないか。電力編成目的は、公共利益のためにということがうたわれているが、公共利益のためどころか、生産の減退を来して国民生活の圧迫を招来し、公共利益を阻害しておるのが現状ではないか。この電力編成失敗をさとつて、今回自由党諸君電力編成のやり直しをやるつもりでこの案を考えられたか、こうちよつと考えてみたが、必ずしもそうじやない。しかし何といつても今回の案は、全国一社の特殊会社をつくつて大規模な電源開発をやろうとする、すなわち純粹民営ではいかぬ、日本発送電会社のようないわゆる国策会社をつくつてやろうということで、そこにこの前の再編成思想と全然違つた思想が現われて来て、われわれから見れば、政府与党も、電力機構に対して何らの確信も信念も持つておらないように思う。実にその政策は支離滅裂である。一体政府並びに提案者諸君は、電力機構のあり方に対して、いかなる形態をもつて最も是と信じておられるか、まずその基本概念を承りたい。
  14. 福田一

    福田(一)委員 お答えをいたします。ただいまの御質問は、この法案電力編成令趣旨が相反しておるのではないかというのがまず第一点だと思いますが、その点は、電力編成令国会で問題になり、あるいは内外においてこれが問題化されておりましたときにも、大きな電源開発するような場合には、電源開発公社というようなものをつくらなければとうていできないので、そういうものをつくつた方がよいのではないかということが、すでに議会方面においても、政府部内においても、答弁されておるのでありまして、今度の法案骨子ともいうべき電源開発特殊法人というものは、その当時からすでにそういう意見が出ておつたのでありますから、私は、この点では今度の法案は必ずしも電力編成令と矛盾はいたしておらないと考えておるのであります。  それから第二点としては、一体機構を今後どういうふうに運営したらよいと考えるかというお話でございますが、これは御存じのように、今ポ勅通産委員会にかかつておるのでありまして、党としてもまた政府としてもさようかと存ずるのでありますが、これをいかように措置したらよいかということは目下審議中でございまして、十分審議した上で適当なる措置を講じた方がよいと考えておるのであります。従つてここではただちにはつきりした御答弁をいたしかねると存ずるのであります。
  15. 有田喜一

    有田(喜)委員 今の御答弁はさつぱりわからない。私は、電力企業形態について、どういう形態をもつて是としておるかということを聞いておる。福田君は、特殊法人として開発することを考えた人もあるから矛盾してないとか言うが、そんなことを聞いておるのではない。純粹民営がよいか、あるいは公社的な今ここに出ているような特殊会社というような形態がよいか、あるいは純粹国営がよいか、あなたたちは、どういう形態を最も是としておるか、その信念を聞いている。それをはつきりと伺いたい。
  16. 福田一

    福田(一)委員 形態の問題につきましても、ポ勅は、御存じのように電力編成令というものと公共事業令というものを含んでおるのであります。この問題をどういうふうに処理して行くかということが形態の問題もきめて行くことになるのでありますが、それを今審議中で、私たちとしては審議をいたしている状態にある。従つてその審議の過程において目下われわれとしていろいろ研究をしておりますので、その研究の上でお答えをいたしたいと思います。
  17. 有田喜一

    有田(喜)委員 基本観念がわかつていてどうするかということで検討されるのが当然だと思うが、先で考えると言う。ここに特殊会社国策会社みたいな法案が現に出ているが、何らの企業形態に対する理想も信念もなくして、あとのものをどうするかということを考えなくて、こんなものを出すなんてそんなべらぼうなことがあるか。もつとはつきりしたことを言つてもらいたい。
  18. 福田一

    福田(一)委員 ただいまの再三の御質問でございますが、この法案は、電源開発を促進するということが問題であります。有田さんは電気の專門家であられるが、電気をよけいにふやすということ、電気を今後どういうふうにして運営して行くかということについては、私たちは一応分離して考えることができるだろうと思う。早く電源開発するためには、機構の問題とか、今後の企業形態の問題とかいうような大きな問題もありますけれども、これは分離して考えて、電気を早くつくるという面に重点を置いて行く以上は、なるべく早く国会審議に載せてこれをやつた方がよろしいと私たち考えております。そこで電気を早くつくるという意味合いでこの法案を出しておるのでありまして、形態の問題とは一応分離して考えることができると考えております。
  19. 有田喜一

    有田(喜)委員 私は冒頭から電源開発は必要だと言つておる。問題はいかにして有効にこれを開発するか、そこに重点があるという前提に立つて質問をしておる。しからば、いかにして有効に開発するか、しかもその有効に開発した電力をいかにして合理的に使うか、合理的に運営するか、そこが電力政策根本なのである。しかるに電源開発運営とは別だということは納得できない。提案者たるものは、もう少しこの点をはつきりして確固たる信念をもつて進めてもらいたい。そんなあいまいなわけのわからぬことではわれわれとしては困る。
  20. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいま党からのお答えは、あまりに有田さんがわかり切つたことをお尋ねになるから、むしろその裏にある電源開発を早急にやらなければならぬために法案をつくるのだという第一義の目的お話になつたのだと思つております。というのは、形態はどうかというお話でありますが、企業形態については、法案に書いてある通りであります。政府が二分の一以上の出資を持つ会社をつくる。これは公社でも何でもない。民間からも出資があるのです。これは民間会社です。ただこれに対して特殊的な法律を必要とするところは、免税なりいろいろな問題がありますから、こういう法律をつくるのです。この会社公社と見たりなんかすることはおかしいと思う。その点は、はつきりしておりますから、触れなかつたと思うのですが、この際私は有田さんのお尋ねに対して、はつきりさしておきたいことは、往々世間に誤解がありますが、今度開発促進法案によつて特殊法人ができ、何だか日発の再現で、電源開発を独占するがごとき感じを与えておるのではないか。これは有田さんではございますまいが、一般にそういう感じが与えられがちであります。この点は、はつきり申し上げておきますが、政府方針といたしましては、今後における電源開発は急ぐ、従つてそれらに対して企業形態は、その場所々々によつて違いましようが、第一には、従来の九つにわけられた会社というものは、明らかにそれらが担当すべき開発箇所がずつとある。これもやる。また並行して自家発電もやる。場合によつて自治体等において行うということも考えておることは、すでに二十七年度における電源開発に対する資金計画においてそのことが現われておる。たまたまそれらと並行して、箇所の非常に大きな場所とか、公共事業費によつて国が多目的ダムとしてつくるダムも、これを相互に利用しつつ電源開発をやつたらどうかというような場所については、むしろこういうふうな企業形態のもとにやらせることが必要である。この方が早い。並行して行く。こういう考え方で進んでおるのでありまして、その意味から見ましても、従来の九分割趣旨とは別に反してない。かりにこの機構によつてできましても、今計画しておる箇所は限定するつもりであります。そうするとこれが昭和三十一年の初頭に全部完全にできたあかつきにおいても、全体の電力発電の一三%なり一五%近くのものしか開発を扱わない。そこに独占形態とか何とかいうことは起つて参らない。こういう点は従来の政令関係趣旨とは反していないのであります。急ぐためには多くの形でたくさんやろう、こういうことであります。
  21. 有田喜一

    有田(喜)委員 私は、ここで言つておる電源開発についてこの企業形態を言つておるのではない。広く電気事業全般に対する企業形態はどうかということを言つておる。この前の電力分割のときは、純粹民営を可とするということを主張された。しかしこの電源開発法は何といいますか、特殊法人であり、国策会社であり、特殊会社である。ここに思想的相違がある。私は電気というものは、開発運営とが別個のものではないと思う。これは一元的なものだと思う。それに対して根本方針が明らかになつていないから、それを問いただしたのである。私は今の答弁では満足できないが、しかしこればかりを論じておつては、ほかの問題に触れることができないから、次の問題に移りますが、一体政府は一昨年行つた電力の再編成成功であつた考えておるか、その見解を承つておきます。
  22. 周東英雄

    周東国務大臣 電力開発というものが、一社に集中されて進められておつた戰争中の行き方は失敗であつた。それが今日、戰争中及び戰後長い間において新しい開発が行われなかつた一つの証左である。そこで九分割をして、各箇所々々別々に担当して、早く進めるということは一つ考え方であり、従つて些少でありますけれども、新しい開発も進んでおる。これは一つ段階である。今後における電源開発について、新しい進み方については、先ほども申しましたように、各企業主体が別個にそれぞれ担当の箇所をきめて早く進めるという行き方を推進するのであります。一つ段階で、必ずしも失敗でなかつた思つております。
  23. 有田喜一

    有田(喜)委員 しからば提案者は、先般の電力編成成功であつたと思うかどうか、その点を伺います。
  24. 福田一

    福田(一)委員 根本考え方といたしましては、私は必ずしも失敗であつたとは考えておりません。その後の情勢変化、その他いろいろありまして、いろいろな問題が起きましたために、うまく運営ができなかつた面もあるのでありますから、根本論といたしましては、必ずしもこれが問違つてつたとは考えておりません。
  25. 有田喜一

    有田(喜)委員 どうも政府考えと、提案者の言つておることが、あいまいで矛盾しておるように思うのだが、一昨年、ここにおる神田君でも、福田君でも、あの九分割にはたしか反対であつた。それが昨年あれだけの大きな失敗を出した。今日のような失敗を暴露しておる現状においても、何だかあいまいな、成功であつたようなことも言つておる。私は、提案者諸君は少しは物わかりがいいと思つてつたが、案外頑迷なので驚いておる、どう考えても、あの九分割は、私は失敗であつたと思う。論より証拠、現実がよく証明しておる。今日国民で、今の九つ電力会社がうまくやつており、能率を上げておるなんて考えておる者はない。昨年秋のあの電力飢饉を見てごらんなさい。もちろん、あれは異常渇水であつたけれども、同時に電力会社の怠慢でもあつた。石炭手当のごときはどうなつたか、また地帶間の電力融通が円滑でなかつたから、関西とか、中国では大停電が起きて困つておるのにかかわらず、九州へ行くと火は煌々と輝いておる。関東もそうである。全国的に見れば非常に不均衡な結果を来し、しかも産業の破壞の一歩前まで進み、国民生活も非常に弱つた。そうしてその後どうやつておるかというと、あまりうまく行つてない。私は何といつても先般の電力の再編成失敗つたと思う。失敗つたらそれを直すのがいいと思う。電源開発は急ぐから電源開発をやつてもいいが、同時に電力機構というものを直して、もうこの形態を持つたら、将来これで続くのだという確固たる方針で進まないと、また将来電力の再々編成が出て来るかもしれぬということでは、いつまでたつて電力事業というものは安定しない。私はその点を非常に憂えるのであるが、どうも今の状態では満足できない。また民営会社で今の供給責任を果すということも無理である。ことに電気会社は御承知の通り電力供給の義務を持つておるのです。ところが、この増大して行くところの需用に応ずることができなくて、電源開発もできないということでは、もうそれは公益事業者としての資格がない。でありますから、提案者諸君は、かような法律をつくつて、今の電力会社では資金もできないし、だめだというので、大規模の電源開発をやろうとしておるのだ。私はこれは何だか今の九つ電力会社に未練を残しておるように考えられる。きれいさつぱり悪いことは直して、基本的なもつとしつくりした電力企業形態を整え、電力の再再編成なんか行われなくてもいいように、ここに確固不動の電力国策を樹立されることが必要である。さように申しても、まだあなたたちは未練がましいことをおつしやるのか。はつきりしていただきたい。
  26. 周東英雄

    周東国務大臣 物事は極端から極端へ行つてはいかぬのでありましてあなたはこの際どうしても前にやつたことが失敗であつたということを言わそうとするかもしれないが、私は公平だから九つ分割されて、これを今後講和発効後において資金がうまく行けば、一つ会社が何もかも集中してやるよりは、開発が早いと思つております。しかし今の資産内容等の関係もあるし、大規模のもの等についてはこれと並行して、独占会社にあらざる開発会社をつくつて行こうということで、むしろ私どもは一歩進んでおる。しかし御指摘のように、もし悪いところがあれば、これを直すことにちつともやぶさかではないのです。ちよつと悪いからといつて、全部否定してかかるということは、私は極端だと思う。悪いところがあれば直します。
  27. 有田喜一

    有田(喜)委員 私は再編成失敗であつたということを言わすために、こんな質問をしておるのじやない。そんなばかなことは考えていない。いかにすれば、日本電力がうまく行くか。それを基本にして問いただしておるのです。どうも周東長官ともあろうものが、自分がすでにさようなことを考えておるからというので、私までそういうような気持で言われるということは、心外である。そういう不見識な答弁はされない方がいいと思う。ともかく政府なり与党諸君がそれほど今の電力編成成功であつた思つておるならば、どうして今の九つ電力会社を助けて、それに開発させないのか。資金と資材、ことに資金の援助をやつて行けば、簡単にできる。九つ電力会社は共同出資によつてやろうとしておる。数社の特殊会社をつくつて電源開発はできる。電源会社は一社的にやるというほどの必要はない。水系ごとに開発してもよろしい。それぞれの区域と連繋をとつて開発をしてもよい。何も一社にやらせることはない。そこの根本的の考えはつきりしていないと思う。それほど今の電力会社の再編成成功であつたというならば、どうして現在の電力会社政府の共同出資によつた、全国数個の特殊会社という形態で進まないのか。
  28. 周東英雄

    周東国務大臣 先ほどからその点についてはむしろ先まわりして触れております。私どもは今までの会社九つにわかれて、多数でやれるところはやつて行かせる。しかし今日までまだ行ける準備が整つていないし、資金もできていない。また会社それ自体も、固定資産こそあるけれども、必ずしも資産内容というものはよくない。こういう点に悪い点がある。しかし来年度の資金計画から見まして、五百十億円程度は政府資金を民間会社にやつて助けておる。だからこの点あなたがおつしやらなくても、一面においては特定の大きな会社をきめまして、並行的にここに特殊会社をつくるということはちつとも私は悪いことではないと思う。だから欠点のあるところはこれを補いつつ新しい形で進めて行く、こういうことであります。
  29. 有田喜一

    有田(喜)委員 こういうような法が出ると、将来会社としての楽しみもない。ひとつわれわれ共同して開発に当ろう、こういうことを考えていらつしやる。私はそれも一つの行き方だと思う。しかし私は今の再編成成功でないと思うから、もつと根本的にやれと言うのです。もし政府の言うように、今の九分割形態成功だとお考えになつておるならば、当然その方に向つて進むべきである。今の施設が悪いからという、そんな意味でない。周東安本長官、よく聞いてもらいたい。さつき私が言つたのは、今の九電力会社政府の共同出資によつて特殊会社をつくつたらどうか。この際そういうことも考えられる。何も今の電力会社あるいは公益事業委員会と大きな摩擦を起しながら、そういうことをやる必要はない。どうもそこは政府なり提案者考え方が一貫していない。  そこで次に聞きたいのは、政府なり提案者電力政策に対して確信がないのか。今回の開発法案には、施設は建設完了次第逐次電力会社に讓渡または貸付する、こういうことを規定されておる。どうして新開発会社電力の卸売りということをさせないのか。また讓渡するといつても、はたして既存の電力会社はこれを買う資金があるのかどうか。今の電力会社は資金がないから、開発できない。資金の援助さえあれば、開発できる。開発会社開発さそうと言つておいて、それができたら、これを讓渡する。受ける方ははたしてこれが開発できるかどうか、疑問だと思う。また讓渡したり貸付したりするということで、開発会社はほんとうに眞劍な開発ができるかどうか、はたして開発意欲が起つて来るかどうか、私は非常に疑問だと思う。われわれがたとえば住宅を建ててみましても、自分が将来長く住むという気持になつてやれば、先々のことを考えて、綿密な設計のもとに監督をして、質のいいものを建てる。しかし貸家として建てるとなると、表面の体裁はいいかもしれませんが、やはり雑普請になつておる。これが自然の人情である。ことに土木工事はそうであるが、電源開発というものは、やがては他人に讓り渡す、こういうような前提に立つて行くと、幾らでも工事の上で手が抜ける。さようなことを考えますと、かような形態がはたして真の開発方策であるかどうか、私はこの点を非常に疑問に思う。政府はこの点をどう考えるか。
  30. 周東英雄

    周東国務大臣 電源開発については、できるだけコストの低くなるように開発を進めて行くことが必要である。これはでき上つて来る電力の供給の場合においても最も必要なことであります。そういうような面も考えて行けば、開発に関しては、資金も相当必要であるし、また先ほど申しました、特殊な地点はできるだけ安くさせるために、免税その他の特殊な措置考える。そういうことをやりつつ、新しくでき上つたものについては、さらに売電まで原則的に一面やるという考えは、かなり人もよけいいるわけです。むしろ開発に関して集中的にこういうことを行い、できるだけ安く開発された施設は、既設の電力会社に売るという行き方の方が、経費を節納する上においていい、こういう考え方でおります。しかし第三号には例外的に卸売り的な発電も考えている。しかし原則的にはやはり開発だけを担当して、これを売るという行き方がよろしいと考えております。
  31. 有田喜一

    有田(喜)委員 それでは、なぜ卸売りをやらないかという説明になつていない。ことに卸売りをやると、人がいるということは、できた施設はだれかが運転しなくちやならない。それは讓り受ける方の会社も同じことである。何もその間に経費の差はない。そういうことでは私は納得行かない。私の考え方では政府というか提案者に確固たる信念がない。何か今の既存会社が何だかんだ言うから、少し讓つてやろうかというような実にあいまい模糊たるものです。どうして卸売りをやつてはいけないか。私がさつき言いましたように、これを開発してこの発電所から電気を起し、公共の福祉のために電力をどんどん拡充し売るという目的があつて初めて開発意欲も起る。つくつたがこれはやがては人に売つてしまうのだ、また貸してしまうのだというのでは真劍な開発ができない。提案者はこの点はどういうふうに考えるか、もつとはつきりした信念を吐露していただきたい。
  32. 福田一

    福田(一)委員 お答えをいたします。先ほどからのお話の前提になつているところでありますが、今の九つ電力会社をもう一ぺん再々編成してしまつた方がよいじやないかというのが御質問者の趣旨であります。私たちは一応既存の電力会社をこのままの形にいたしておきまして、もちろん部分的にはいろいろの面で間違つた面もありましようから、そういう面を直して行くということについてはわれわれは考えておりますけれども、一応今の形態を認めた上で、開発を進めようという考えを持つておるのであります。そこの点で食い違いがあるのだと思いますけれども、今質問者はここで卸売りをなぜしないかと言われるのでありますが、卸売りをするということになれば、今再編成令というものがございまして、これによつて九つ電力会社をつくることになつておりますので、卸売りをすることはこの再編成令と相反するわけであります。そこで再編成令根本的にかえるということになればこれはできることでありますが、そうでなければできないという面もあります。だから私たちの立場としては、一応こういう九つ電力会社電力の発電あるいは送電あるいは販売というようなものをやらせるという建前になつておりまして、それを今ここに一つ元の日発の小さいようなものをつくつて卸売りをするということでは、九つ電力会社の企業意欲を喪失させるというようなことにも相なるかと考えますので、できるならばその民間の意欲を十分反映させたいという意味合いで、やはり卸売りをすることを根本の建前としないで、これらの会社に讓り渡す、あるいは貸し付けるということを根本原則にいたしたいと思つておるのであります。  なお質問者は、その場合に資金がないではないかということをお問いのようでありますが、もちろん現在の開発をやるだけでもまだ資金計画が足りないところでありますから、その場合には適当なる方法でこの資金を国に借りさせるということも考えることができる、またその値段その他については適正な値段を立てさせるということも私はできると考えているものであります。もう一つ、何もそう一つでなくてもいいではないか、四つか五つの会社をつくつたらいいではないかという御趣旨でありますが、やはり一つにしておきますと、工事をやる上でいろいろ資材とかあるいは人員をうまく合理的に使うこともできるのでありまして、総掛費が少くなるようなことにもなります。四つも五つもつくりますと、土木機械あたりでも、全部が持たなければやりにくいというような面があつて、この点はかえつてまずいのじやないか、むしろ総合的に使つて行く方が合理的だというふうに考えまして、そこで一つにした方がよいと考えているわけであります。
  33. 有田喜一

    有田(喜)委員 妙な御答弁で恐れ入るのですが、再編成令があるからいけないとか、ことに後段の説明では、全国一社の方が工事をやるのに資材その他の関係でよろしいと言われるが、今九つ会社で同時にそれぞれの地点を開発されているのでしよう、それならあなたの議論で言えば、そんな九つ会社がばらばらでやるよりも一つにやらした方がなおいいということになる。それではどうも前後相矛盾している。私が初めから言つているように、どうも一貫した信念がないということはそれなんです。現状では九電力会社は企業意欲が鈍つている。伊藤さんはここにおられるから默つていらつしやるが、松永君に開いても松本さんに聞いても、どんどん反対しておる。今の電力会社自体もそれを言つておる。どうもあなたの御答弁では納得できない。  次に聞くが、どうもふしぎ千万なことは、電力施設を讓渡するというが、これは一体いかなる価格で讓渡するか、その基準もなければ評価方法も明らかになつてない。開発会社開発した電力施設はほとんど国民の汗と血をしぼつた税金からなつておる。しかるにこれを他に讓渡する場合に、評価方法も明らかになつてない。どうも私は不可解千万だと思う。また貸付する場合の條件も明らかになつていない。一体貸し付けた場合に、その施設の補修はだれがやるのかということも少しも明瞭になつてない。こんなことではたして国民が安心してまかすことができるか。提案者はこの点いかにお考えになつておるか。
  34. 福田一

    福田(一)委員 前段の御質問でありますが、一社にするのならば九つ会社を一緒にしてしまつたらいいではないかと言われるが、あなたは非常に電気のことを御存じでありながら私にそういう御質問をしていただくとちよつと答弁しにくいのでありますけれども、大体九つ電力会社は今は手一ぱいの工事をしてもらわなければならない。また公営事業にいたしましても、あるいは自分で発電して自分で使う自家発にいたしましても手一ぱいの仕事をしている。それに対して政府資金をたくさん出して、そしてやつてもなおかつまだできない。そういう大規模なものがやはり必要で、そういう大規模なものを開発して行かなければ日本の産業の復興ができないからというのでこれをやるのでありますから、先ほど仰せられたお言葉はいささか私は無理があるのではないかと考えておるわけであります。  それから評価の方法は、これは評価とか貸付基準の御質問のようでありますが、これは原価計算というものがはつきり出まして、その場合電気料金がどれくらいでできるかということがはつきりするわけであります。ほかの電力会社でやるよりは非常に割安にできるはずでありますが、これを基準といたしまして、資産価値を含めて讓渡する、あるいは貸し付けるという方法をとることができると思うのでありまして、これは会計監督がちやんとついております。また主務官庁がこれを認可あるいは許可する事項になつておりますから十分監督ができるのでありまして、その場合国民が納得できないような方法をもつてこれを讓渡したり貸し付けたりするということはあり得べからざることと考えておるわけであります。
  35. 有田喜一

    有田(喜)委員 あり得べからざることがあるから困る。こういう大事な、国民の血税からなつたような資産の讓渡というような場合には、普通の立法では必ず評価方法あるいは評価の基準、あるいは評価委員会というようなものがあつて、適切を期することが普通の行き方だ。しかるに単なる讓渡で政府の認可というようなことになつておることが、私は非常に国民が不満がるもとだと思う。少くとも讓渡の場合あるいは貸付の場合の條件というものは、かくかくの方法でやるということを明記することが当然だ。こういうかんじんのところがぼやけておる。ここにやはり国民の不満があり、あるいは提案者に対していろいろな疑惑がかかつて来る。開発会社の讓渡価格や貸付條件のいかんによつては、これは電力資本家を擁護するようなこともできる。またた反対に、その電力会社をいじめることもできる。こういうことの公平適切に行くような基準を法律の上に明らかにしないと、われわれは不安でたまらない。これらの問題に対して、提案者はそれでもこれでけつこうだと考えられておるのですか。これではどうかしておると思う。
  36. 福田一

    福田(一)委員 ただいまの御意見は非常にけつこうな御意見だと思うのでありまして、そういう場合におきまして法律をつくるなり、あるいは評価委員会をつくつた方がいいというお考えでございますならば、この点はわれわれとしても決して頭から反対しておるわけではございません。
  37. 有田喜一

    有田(喜)委員 これらの問題についてあとでもつと徹底的に論じて行きたいと思いますが、少し先を急ぎますから先に問題を進めます。  開発会社をして開発をやらそうということを考えられておるが、その予定されておる地点は、大体でいいのですがどういうようなところを考えられておるか。そしてその出力とか、建設資金はどうなつておるか。またそれらの総合したところの一キロワツト・アワー当りの発電原価はどういう程度になつておりますか、それをひとつ伺いたい。
  38. 福田一

    福田(一)委員 ただいまの御質問に対しましては、御存じのようにわれわれは政府を補助者という立場に置いて使つていろいろ立案もいたしておりますので、立案をさせました安本側から詳細な御説明をさせたいと思います。
  39. 佐々木義武

    ○佐々木(義)政府委員 開発地点より先に御説明申し上げたいと思いますが、その前に、御答弁がございましたように特殊会社開発地点に関しましては、この法案通りましたあとで調整審議会というものを設けまして、そこではつきり本ぎめにするという建前になつておりまして、現在考えておりますのは採算関係、あるいはコストを一応試算する意味で、かりに考えておる地点でありますので、そういう意味合いで御了承願いたいと思います。  現在考えております第一期の地点といたしましては石狩川、北上川、只見川、天龍川、庄川、熊野川、吉野川、それに附帶する送変電設備でございます。第二期といたしまして只見川の二期、熊野川の二期、庄川の二期、北海道の十勝川、琵琶湖、吉野川の二期、四万十川、九州の球磨川等を考えておりまして、この方は調査を今後進めまして、その結果それにさらに着手の段階に達しますれば着手いたしたいと考えております。  第二点は採算の点でございますが、今申しましたような一期の地点を主として、それに若干二期の地点も入つて参りますという仮定で試算をして参りますと、三十一年度の第一送電端における発電原価は二円二十銭くらいになる見込みであります。それを発電端に換算してみますと、約一円九十四銭ということになります。しかし三十二年度になりまして、この会社が今のような地点をかりにやりますれば本格的な経営に入りますので、その三十二年度を例にとつてみますと、このときにはこの会社の大部分は政府出資でありまして、その政府出資に対して三十二年度からかりに六分の配当をするという建前で試算してみますと、第一送電端で二円七十五銭、それを発電端に直しますと二円四十五銭というふうな計算が出て参ります。ちなみにこれを他の経営体に比較して考えて参りますと、電力会社が今考えております第一期分のものを試算して参りますれば、第一期分が完成いたしました際には水力の発電原価が二円六十五銭、火力が六円二十銭、それを総合いたしますと三円七十五銭になる予定でございます。公営事業でありますが県営事業では、三十一年度に相当程度完成して参りますので、その原価を試算してみますと二円七十二銭という結論が出て来るのでございます。従いまして特殊会社のかりに六分配当をしたいという場合でも二円四十五銭でございますから、電力会社の現在考えておる一期分の水力よりも安いことはもちろんであります。火力で比較してももちろん安いのでありまして、それを総合しました発電單価を比べますと、より安いということになるのであります。御質問としてはその程度かと思いますので……。
  40. 有田喜一

    有田(喜)委員 大体わかりましたが、そこで私は問題が起つて来ると思うのです。既存の電力会社の水力発電原価は、現在ではたしか山元発電原価が七十四銭くらいだと私は記憶しておる。ところが特殊会社の分は水力が二円二十銭、それから九電力会社の今後やるものが二円六十五銭、火力は六円二十銭、そういたしますと、既存の電力会社はみずから開発して行けば行くほど、電力料金を引上げて行かなければならない。     〔委員長退席、小金委員長代理着席〕 ことに原価の一番高いところの火力発電を電力会社は背負わされておる。もちろん総合原価主義で毎年料金の改訂をして行くという説明があるかもしれませんが、それでも時間的ずれのために、電力会社はどうしても損失をこうむる。損をさせながら開発をさせる。しかも料金値上げという国民的非難をこうむりながら、開発を担当して行かなければならない。これを考えますと、どうしてもこれは民営形態としては立ち行かない立場に置かれておる。開発に意欲が起るはずはない。民営会社は、もうかれば大いに意欲を出して活発にやつて行く、損が行くとやらない。これが民営形態の特色である。おそらく既存の電力会社はじつとしておつて国策会社電源開発してもらつて、それをもらつた方が得なんです。こういうようなことではどうしても今の民営電力会社は伸びて行くはずはないと思う。そこに企業形態上の非常な矛盾がある。政府がいくら電力会社開発させようといろいろ助成されましても、そこに本質的な矛盾があるから、電力会社は伸び伸びとしたところの発展をしない。そこでややもすると、既存の電力会社は半殺しになつてしまう。今後開発して行くところの大きなものは国策会社にとられてしまう。それで既存の電力会社は半殺しになつてしまう。それでは日本電力界はうまく行かない。しかも今回の開発会社はにえ切らないところの、みずから電力の供給もやらなければならぬ。せつかく開発した施設を讓渡したり、あるいは貸し付けるというような、実にあいまいなる行き方です。従いまして、開発会社の方も非常に積極的に電源開発するという意欲が鈍つて来ると思う。そうなつて来ると、三すくみである。既存の電力会社も伸びなければ、開発会社も伸びて行かない。こうなつて日本電力界は萎靡沈滯して来る。どうも私はかような不徹底な案では、今後の日本電力がすくすくと伸びて行くかどうか、非常に疑問に思う。提案者諸君は、それでもかような中途半端な行き方が正しいと考えるか、正しいと考えれば私はよほどどうかしておると思う。ひとつ御見解があれば承りたい。
  41. 福田一

    福田(一)委員 お答えいたします。今のように既存の電力会社に火力をやらせるということになつて、水力の大きいものは国家がやるようになると、既存の電力会社に企業意欲がなくなりはしないか、こういう御質問でありますけれども、事実今各電力会社は、それぞれいろいろの地位を選んでどんどん開発をしておる。これは一応その地域地域の需用の関係をにらみ合せて、当然これだけの電力が売れるのだということを前提にしてやつておるのでありまして、御説のように、この法案が出たからといつて、私は電力業者の電源開発の意欲が減るものとは思いません。その根本をなすものは、何といつて電力の需用が次々に増加しておる、また現在においても非常に不足しておる、こういうところにあるのだと思うのであります。なるほど電力料金の問題とにらみ合せてみますと、ある意味において、電力料金というものは順次その水準を上げて行かなければ運営ができないという面があるでありましようが、大体電力料金というものは、むしろ国家が税金をとるのと同じような性質を持つておる。だから国が税金をとりまして、電力会社を援助して行く。電力会社を一社にした場合にもこれを援助して行くような考え方、そういう考え方と、今言いましたように、なるべく企業に意欲を持たせて、合理的に運営して行く、そうして経費を安くさして、しかも需用者に十分電力を供給させるという行き方とどちらがよいかという根本問題にこれは触れて来ると思うのであります。御質問されておるところのお考えは、これを国の施設にしてしまう、そうして国でもつて足りない分は補助してどんどんやつたらよいのだ、こういうことを考えておられるやに存ずるのであります。もしそういたしますれば、私たち意見といたしましては、いわゆる官僚統制の弊害に陷る。また統制自体が持つておるところの大きな弊害を逆に暴露することになると思うのでありまして、むしろ民間の企業意欲を十分に取入れ、しかも需用者に対して十分電力を供給するような方法をとつた方が私たちはよいと考えておるのであります。
  42. 有田喜一

    有田(喜)委員 提案者と議論してもしようがないのでありますが、どうもあなたのおつしやることは私らにははつきりわからない。民営は先ほど来言うように、もうかつて行くのならば、非常に企業意欲は働きます。しかし電力事業というものは公益企業であつて、そういう性格のものではない。そこに特別の考慮が必要なんです。それで私がさつき指摘しましたように、だんだん民営のものは料金が高くなつて来る。しかしそう簡單に上げられない。上げるのは国民経済上困る。特別の理由があつて料金を押える。そこに民営として伸びない本質を持つている。ことに電力は独占事業です。官僚統制とか、つまらぬことを言わぬでもよろしい。国家的の見地からこれをどうやるかということを論ずる必要がある。この点はあなたと議論してもしようがないから次に移ります。  今回の案では、電源開発等のために第一期計画で、四千四百九十二億円という厖大なる資金がいる。また第二期計画では二千百二十五億、おそらく第二期計画の分はこのほかにもつと資金がいることになると思いますが、ともかく相当莫大な資金がいる。この法案第五條によりますと、「必要な資金の確保に努めなければならない。」とある。これは非常にあいまいで、大蔵大臣はどこまで責任を持たれるのかわかりませんが、大蔵大臣の見解として、この資金確保につきましてどこまで責任を持つて行こうというお考えであるか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 だんだんの御議論を拜聽いたしまして、どちらにも言い分があるようでございますが、今回提案されました電力開発案につきましては、全面的に賛成するものであります。第五條に「資金の確保に努めなければならない。」とありますが、私は努めなければならないでなしに、もつと強く、ぜひ確保する、こういう確信を持つております。第一期計画は五箇年間で四千五百億円ばかり見ておりますが、私は四、五年のうちにはそのくらいの金は十分確保できるものと考えております。(「外資はどうだ。」と呼ぶ者あり)私は外資を当てにしなくても、四、五年たてば、電力を起すことはできるということを確信いたしております。(「電源だけではないぞ。」と呼ぶ者あり)もちろん電源だけではございませんが、資金の蓄積というものは相当伸びて来ております。私は今年度計画いたしておりまする千二百億円でしたか、これの内容をよく知りませんが、私の勘では、最近の貯蓄の状況などから申しまして、そうむずかしい問題ではないと考えております。予算には載つておりませんけれども、金融債引受けも、四月一日から予算審議以外に出して行く。これには相当電源開発の資金が加わつているのであります。金の方はおまかせ願いたいと思います
  44. 有田喜一

    有田(喜)委員 大蔵大臣は電源開発資金について相当確信を持つてやる、私はその言葉を信じたいと思います。しかし大蔵大臣は楽観的に言われるが、日本の経済は今日困難な面が多々ある。電源開発ばかりができても、他の産業に資金が行かなくては困る。そこらはひとつ、もとより電源開発重点を置いてやつていただきたいが、他の面につきましても十分なる配意を持たれて、万遺憾なきを期していただきたいと思います。  次に電源開発で問題になるのは資材の面であります。このたび莫大な銅、鉄鋼あるいはアルミセメントというようなものがいると思いますが、これらの物資の中の大部分というものは、いわゆるアメリカと協力したものと思う。その方面の引当ては十分つく見通しを持つておられるか。通産大臣はおられないが、どなたか……。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のように金はあつても、物がなければインフレを起したり、また実際の計画ができないのであります。私は来年度におきましては安全保障諸費等によりまする建築あるいは補修等に相当の稀少物資を要すると思います。しかしこれにつきましても私は電源開発ということとにらみ合せながらやりたい。まずいるものはセメントでございますが、大体御承知の通りセメントも月に十万トン内外を輸出しておりまして、生産は今では六十万トンを越えておる。そういうところから考えまして、セメントをあの計画通りつて百万トンばかりではないか。セメントも増産いたします。また国内の不急不要の面を押える、こういうふうにすればセメントはできると思います。鉄も二百万トンばかりいるかと思いますが、これも御承知の通りに目下相当増産ができております。銅につきましては、お話通り非常に稀少物資でございますが、これにつきましても今すぐではございませんが、相当の増産をし、またアルミができるかできないか、こういう研究も続けております。問題は銅でございますが、この点も日本の生産力拡充ということになれば、銅の輸出をある程度押えるとか、あるいは今でもある程度の銅の輸出制限はいたしております。そういう方法でやつて行こう。木材の方もあまり心配はいらない。こういうふうな計画をやりますときには、金の面もさることながら、私は物の面が一番だというので、金を出す前に、物を研究して金を出すことにいたしておりますから、これまたひとつ御安心願いたい。
  46. 有田喜一

    有田(喜)委員 池田大蔵大臣は相当心臟がお強いので、その心臟でしつかりやつていただきたいと思うのだが、ややもすると日本経済が犠牲といつてはおかしいが、国内のこういう産業並びに国民生活の安定上必要な物資がいわゆる協力物資として関係方面というか、相手方に相当食われて、日本の経済が円滑に行かない点が相当あるように私は考えるのです。そういう点は国内における心臟ぶりをしつかり発揮してもらつて、外に向つても強力な心臟と協調性をもつて円滑に行くように願いたいということを私は希望いたします。  次に外資の問題でありますが、吉田総理大臣はこの一月の施政方針演説で、わが国の経済の急速なる発展は、外資の導入をまつのでなければとうていこれを期待し得ないということを断言せられております。周東安本長官は逃げて行きましたが、私が安本の委員会においてこの外資の問題を質問したときに周東安本長官は、外資の導入は非常に明るい、電力案の上程さるるころまでにはその見通しがつくというきわめて楽観的な答弁をされておりました。ところが今日外資はどうか、池田大蔵大臣も先ほど来資金、資材の面について非常に楽観的な答弁をされましたが、答弁ばかりが楽観的であつて、実際がそれに伴わなければしかたがない。この外資の問題のごときは吉田総理も相当楽観的に言われておつたが、過般のマーカツト声明によつて政治的借款はいけないということが明らかになつた。コマーシヤル・ベースによるところの外資の導入は可能性があるけれども、今度のような開発会社、ことに電気も売らない、ただ施設を讓渡したり貸付するというような奇妙きでれつな新会社に対して、はたして外資が入つて来る可能性ありやいなや、私はこの点を非常に疑問に思う。外資がなくてもこれはやれるのだ、それは外資がなくてやれたらけつこうである。けれどもこの提案者提案理由の説明を見ると、いかにも外資が入つて来ないと十分な開発ができない、この一元的な国策会社にするということも外資の導入のために有効だからということが書いてある。     〔小金委員長代理退席、委員長着席〕 この文書は大蔵大臣もお読みになつただろうが、電源開発を急速に実施するためには多額の長期資金を必要とする。これが確保については、現在の財政負担能力から見ると、今後見込み得る政府資金をもつてしても必ずしも十分でないとなると、多額の外資が必要となるが、特定大規模地点の電源開発に必要なる長期的な外資を導入するためには、政治的外資の導入に依存しなければならないというふうに、外資導入に非常に期待するところがあつてこの法案ができているのが事実だ。ところが先ほど言いましたように、外資の導入も見通しがつかない。コマーシヤル・ベースによつてはたしてこのままできるかどうか疑問に思うが、その点大蔵大臣はいかにお考えになるか伺いたい。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 外資の導入があれば急速な復興ができるので、これもベターである、しかし今の計画では外資を一応計画しなくても昭和二十七年度におきましては、国内資金でできることになつております。そこで今お話申し上げましたように、セメントを輸出しておる、鋼材を輸出しておる、それを発電事業に使つた場合にはそれだけ外貨の獲得が少くなつて、ここに外資の問題が起る。昭和二十七年度におきましては、御承知の通り相当の外貨を持つておるのであります。持つておるからといつて、いらぬというわけではございません。だから外貨を使つて国内の経済の底力をつくろうというのが私の考え方なのでございます。外資が来ればベター、しかして外資の来る形式はどうかというと、ほかの委員会でも申し上げましたように、政治借款の分もありまするし、あるいはIMFに参加しての国際開発銀行の向うから来るのもありますし、あるいはまたアメリカの道を通して来るものもありますし、また民間同士のものもあります。政府が借りる場合におきましても、政府政府の場合もありますし、政府対向うの民間の場合もある。いろいろな形式があるのでありまして、われわれは入れる場合にはどの外資でもとにかく早く入れよう、それが今の実績から見ますと、コマーシヤル・ベースによる民間のものが多い。それからコマーシヤル・ベースによります綿花借款四千万ドルも来ております。それから開発銀行の方は、国際通貨基金の方への加入が遅れておりますので、今これがどこにも来ませんが、そういう面もありましよう。そうしてまたこの電源開発会社がスタートいたしまして、工事が進むにつれて、これはコマーシヤル・ベースで政府政府でも来ますし、政府民間でも来ますから、こつちの受入れ態勢を考えずに、いたずらに外資々々ということは考えなければなりませんが、幸いに今のところは外資も相当たまつている。ドル不足々々と言つておりますが、昨年中に一億数千万ドル、オープン・アカウントを入れますと、ドルだけで二億ドル近いものがふえておる。こういうところは幸いでございますが、外資は忘れてはおりません、二、三年あとの今の特需その他の関係が細つた場合を考えますと、外資導入は忘れてはおりません。毎日その方面の検討はいたしております。今のところはそういう程度でできると申し上げておるのでございます。
  48. 有田喜一

    有田(喜)委員 政府外資導入ということを本年の一番大事な事業であるかのごときことを、一月の施政方針演説でも言われている。その後も外資導入外資導入と盛んに言つており、外資導入の見通しが困難になつて来ると、必ずしも外資を入れなくてもと言う。なるほど今日特需その他の軍需的な関係から、ドルが日本に相当あることは事実である。しかしこの提案理由を見ましても、この電源開発外資に期待しているのは非常に大である。外資が入つて来る方がベター、なくてもよいということなら、この提案理由が一つの根拠を失うことになる。私は今日の政府考えておるところの資金計画、この開発計画でも、十分な電力の需給がなかなか円滑に行かないと思う。またこの資金も、池田大蔵大臣は非常に確信を持つて言われたが、はたしてこれだけの資金が出て来るかどうか、私は相当疑問だと思う。まして外資の導入が困難だとなつた場合、他の何か積極的な資金調達方法を講じないと、なかなか予定通り電源開発は進まないと私は思う。そこでいわゆる電気を愛するところの国民運動、愛電運動といいますか、さようなことを大大的にやつて、愛電債券あるいは開発債券というようなものを発行することも一つの手ではないか。同時に今日大事なことは、節電運動です。今日電力の使用面におきまして、これは工場へ行つてみましても、家庭へ行つてみましても、最近電力の使い方は非常にむだが多い。もつともつと合理的に使える道がある。また深夜間の電力でも、使い方によつてはもつとこれを完全に利用することができる。また豊水期の特殊電力にしましても、もつともつと使い方の方面研究して行く必要があると思う。そこで消極面から電力を生み出す、電源を生み出す、こういうことも考えられる。そこで私はかような節電運動とあわせて、いわゆる電力を愛護するところの愛電運動というものを大々的に展開して行つて、そうしてさつき申しました愛電債券、いわゆる国民のたんす預金から引出して、そういう方面から電源開発の資金の一部に充てることが必要じやないかと思いますが、政府はこの点をいかに考えるか。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 私は電源開発について、外資を期待しないのではございません。期待しておるのであります。しかしながら相手のあることでありまして、なかなかおいそれとすぐ行かないから、これを行けるように早く受入れ態勢を整えようとしておるのであります。従いまして今の金融財政政策としては、やはり資本の蓄積と外資の導入ということは、政府の最も力を入れておるところであります。そこで私がいかにも外資が入らぬというようなことを言つたようにお聞きになられますとたいへんでおりますが、私は今一番外資の導入に力を入れておるのであります。いつ来るかということになると、これはなかなかむずかしい問題だ。それにはまず自分が早く小さいながらも基礎をつくつて、そこへ入るようにする、こういうことであります。  それから今の消費面からの節電運動、これは最もけつこうなことで、民間の方々が節電をしてくださることも必要でありますが、電力業者にいたしましても、今ロスが三〇%にも達しておる。これをそのままにせずに、できるだけそのロスを少くするように機械設備をよくする、あるいは発電関係につきましても水路を直すとか、少しの手入れで相当能力がふえるのであります。これも私はこの一月ごろから計画して、特別の融資をする、こういうことでやつております。生産者側におきましても、消費者側におきましても、電気をできるだけ節約し、また能率を上げる、ロスを少くする、こういうことに特段の融資、投資をすべきだという気持を私は持つております。また発電につきましても、愛電公債、こういう思想はけつこうでありまして、資金運用部で出しまする六十億の貯蓄債券も、これはもつぱら電気のために使う、少くとも六十億、私はこういう気持を持つております。また電力資金の千二百億についても、電力会社が消費者の方に協力を求めて、たとえば出資であるとかあるいは借入金であるとか、こういうように消費者と発電会社がつながりを持つて資金調達に力を入れる、こういうことも必要であろうと思うのであります。いずれにいたしましても、電力日本の経済の基盤をつくるもとでありますので、十分の力を入れたいと思います。
  50. 有田喜一

    有田(喜)委員 そうすると今考えておる開発会社、それへ外資の導入の見通しはありますか。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 見通しは大体ありますが、それは努力を要することであります。私はその努力を言つておるのであります。それはわれわれが金を借りるにも、努力して向うの信用を得るようにしなければならぬ。自分がなまけておいてよそから金を借りよう、そういう見通しがあるかないかということでは、これはいかない。われわれの努力次第で来るのであります。しかして来ないことによつて計画がつぶれるようなことはない。来ればベターで、五年計画が三年計画、四年計画になる。そうして第二期の分に入れる。こういうことでありますから、金を借りるのと同じで、借りられるか借りられないかということはわれわれの努力によるのであります。
  52. 有田喜一

    有田(喜)委員 もちろん努力しなくちやならぬことは明らかなことでありますが、しかし開発会社は今からできるのです。それで私は聞くのだが、開発会社の企業計画がそういうもので外資の見通しがあるのかどうか。聞くところによると今まで政府はいろいろな案を出されておるが、これは案外アメリカではばかにしてかかつておる。池田大蔵大臣は特によく御承知だろうが、なるほど途中で仲介する人は、全然だめだと言つたら商売にならぬからちよつと望みのあるようなことを言つているが、しかしアメリカの中の空気を見てごらんなさい。今まで出した計画というものはすつかりばかにしている。努力々々と言いますが、どういうような努力をするのか。既存のいろいろな仕事なら、これをこういうふうなぐあいに合理化してこうだということがある程度立つて行くけれども、今からつくろうというものは、それが結局開発地点の選定とそれに対する将来の収支の見通し、それによつて相手が応ずるかどうか。大体今の計画でほんとうに見通しがあるか。途中にブローカー的なものがいろいろ入る、こんなものはだめです。池田大蔵大臣もこの前アメリカに行かれてから大分日がたつているから最近のことはよく御存じないと思いますが、今まで政府がいろいろ持ち出している外資導入に対しては、向うの方ではずいぶんばかにしてかかつている。そこらを見きわめてはつきりした御答弁を伺いたい。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 工場一つ建てますにも、向うから金が来るのを待つわけには行きません。発電というのはそういうゆつくりしたものではない。そこでわれわれの力でできるだけいい工場を建ててやる。工場が動き出すということになれば、そこに信用が加わつて来るのであります。ダムもこしらえず、調査もせず、またセメントも運ばずにおいて、すぐ貸せと言つたつて行かない。われわれの力でできるだけのものをやる。そうしてそれから向うから来るのであります。だから、とりあえず工場を建てるのに金を貸すか貸さぬかということをとやこう言うよりも、自分のあり金で小さいながらもやる。しかしてその見通しとしましては、私は来る見通しを持つております。しかしこれは見通しがあつても、自分がなまけておつて、金を貸してくれなければしようがない。だから私は来る見通しを持つて努力いたしておるのであります。いろいろな案がありまするが、私はこういう問題につきまして、あなたのお話のようにブローカー的なものは中へ入れていないと思います。直接衝に当つております。しかし、お話通りになかなかむずかしいことはむずかしい。だからはつきりいついつとは言いませんが、私の見通しといたしましては、外資はそのうちに入つて来る、こう考えております。
  54. 中村純一

    中村委員長 有田君に申し上げます。申合せの時間が過ぎておりますから、簡潔にお願いいたします。
  55. 有田喜一

    有田(喜)委員 時間がありませんから聞きませんが、私のさつき質問しておるのは、開発してその電力をどんどん売つて行くというのならいいが、開発してすぐそれを讓渡してしまうという、そういうような性格のこの開発会社に対してははたして外資が入つて来るか、それを心配しているのです。大蔵大臣は、開発してそれに非常に努力して、向うがうまく行きそうだとおつしやるが、施設を讓渡する、そういうものに貸して来るかどうか、これを私は問いただしておる。  それから、時間がないから次へ進みますが、電力料金の問題について一つ聞きたいが、最近電力料金を再び値上げするという計画がある。これは公益事業委員会の方でこれをするが、さつきもちよつと質問したのですが、まだ安本長官はいないのだが、安本長官はこれに対してどういう見解を持つておるか、それを聞きたい。  時間がないので引続き言いますから、あとで総括的に御答弁を願いたいと思います。  電気事業は言うまでもなく公益事業であつて、基礎産業であると思うのです。料金はできるだけ低廉にしなければならぬ、これはもちろんのことである。しかし電気事業も一つの企業である以上は、やはり独立採算制がとれることを建前としなければならぬ。これも大事な要素である。今日までのやり方を見ますと、企業経営の合理化とか、整備、節約というようなことはあとまわしである。また公衆に対するサービスというようなこともろくにやらずに、一番たやすいところの料金値上げということばかり先にする。ここに国民の不満がある。また事業者としてのせつなさがあると思う。重役陣一つ見ても、今の電力会社には社長のほかに会長がある、また副社長が二人も三人もある。五人や六人の重役ぐらいは大した金ではないじやないかという。それはそうだが、しかしそう簡單なものではない。重役にむだが多いと必ず社員の方にもむだが多い。従業員にもむだが多い。数え上げれば際限がありませんが、とにかく今日の電力会社がうまく経営しておるなどと考えておる国民は一人もいない。これは伊藤さんも御承知だと思う。そこで料金の値上げ問題は相当影響が大きいからよく考えなければならぬが、まず会社自体の合理化をもつと促進し、その結果を明らかにした上で料金値上げの問題の是非をきめる、こういう態度で行かないと、今のようなやり方では国民は納得しない。  次に問題になるのは、最近の電力の割当制であります。これは料金制に割当制が組入れられて、割当までの使用料金は、水力を主とした安いものであるが、それを超過したものは高い火力料金を払う、こういう料金制は、電力需給の均衡がとれておるとき、あるいは火力発電の余裕があるときはよいかもしれませんが、今日のような需給のアンバランスのときにはまつた意味をなさない。根本的に料金制を改正する必要があると思う。割当制と追加使用料金の採用の結果として現われる現象は、どうも家庭用電力とか、小口電力が非常に高い追加使用料金を払う。大口電力は業者が上手に立ちまわつて割当の増大をはかつて、水力の料金を払い、追加使用料の分をほとんど払つていない。供給と支弁の間に非常な負担の不均衡がある。これは自由党内閣のお家芸でしようが、一般国民とか、あるいは中小企業者、農民の使う電燈とか、小口の料金は原価的に見て非常に高い。そうして大口のものは格安になり、しかも大口需用家は相当の配当や何かをやつておる。私はこの点料金制度の上に矛盾があると思う。これらに対して政府はいかに考えておるか、時間がありませんから、御答弁は簡單に願います。
  56. 伊藤忠兵衞

    伊藤説明員 電力料金に関するただいまの御質問でありますが、御質問の各項目にわたりまして、私ども同じような検討をいたしたのであります。今年度の計画におきまして、八百万トンを越える石炭を予定いたしております。石炭料金が非常に高くなつたというようなこと、すべてにわたつて御承知のことでありますから、それらの説明は省きまして、対内的な人員の整理並びに経費の節約等に関する御質問並びに御勧告の点につきましても、一々私ども同感でございます。この五月の期限におきまして、昨年公益委員会の任命形式によりました重役の異動が、おそらく今度の株主総会における株主の総意によつて決定されると思います。それにつきまして、ただいま御質問のような要旨を、われわれも同じ考えのもとに勧告しておるということも御承知願いたいと思います。それから経費の節減のうちにおいて一番大きな問題は、送電ロス、消費ロスであります。これは学問上一つの基準がありまして、そのベースからロスの軽減というものはあるべきはずなのだそうであります。しかし今日におきましてなお思うようなところまで追従しておりませんが、昨年私どもが取上げましたときよりは数パーセントのロス節約はできております。これは一々どの社に対してどういう方法によつて節約せしめたかということは、非常な時間を要しますから省きますが、こういうことを考えております。これはやはり純学問上ですが、その線路の持つておる性能と距離等を考慮いたしまして、一定の率をこちらで確立いたしまして、たとえそれができてもできぬでも、それはこの会社の経営者の能力によるものだと考えまして、こちらからある一つの学問上の想定を与えまして、その率より計上させない。必ずそれに達するようにさせる。自然それに対する必要な修繕資金等も心配をしようという形式のもとに、少し無理もあるかもしれませんが、私どもはただいま御質問の要旨を、なお強い精神のもとに運営しておりますことを御承知願いたいと思います。  第三に御質問になりました大口電力の割当制度、いわゆる世間でやかましいアロケーシヨンでありますが、これは全然政策料金と考えてよいと思います。それにつきまして私ども五人の委員が今日御答弁申し上げるのは、あなたと打合せたようでありますが、昨年来同じ考えでやつております。できますれば山間における農村等の電燈料金を安くせしめることが、社会政策上からいつてもいいのではなかろうかという計画のもとに立案をいたしましたが、いろいろな事情のもとにできぬこともあり、またできることもあつたのでありますが、今度の電気料金の値上げの、九社から提出いたしますものをしさいに検討いたしますと、その方面ではよほどわれわれの精神をくんでおるようであります。しかるに大口電力に対して安い電力を供給しておるということも事実であります。はなはだしきはまだ数十銭のものもあります。しかしながらまた今一番大切な産業である食糧増産等に要します肥料などを考えますと、ある一定料金以上は繰込むことができぬ。現在の市場価格より見てできぬものもあり、できるものもあります。しかしながら産業の平均化を考えまして、ある一事業に特定料金を与えることは非常に困難なことがありますので、今度はその御精神に沿いまして、大口需用者を多く上げるというような形式の申請をいたしております。その意味におきまして、ただいま御質問の精神とふしぎに一致しておることを申し上げておきます。なお電力料金の値上げは、明後日を発端といたしまして、私は北海道を受持つておりますが、それぞれ手わけをいたしまして出発して、そして需用家及び消費者からほんとうに心底の発言を求め、その聽聞によつてどもは善処し、できるだけおぼしめしの線に沿いたいと思います。重ねて御質問の点についてわれわれの意見がふしぎに一致しておることを申し上げます。
  57. 中村純一

    中村委員長 簡潔に願います。
  58. 有田喜一

    有田(喜)委員 電力料金の問題はきわめて重要でありますので、万遺憾なきを期していただきたい。ことに弱肉強食的な行き方でなく、小さいものいじめをやらないような政策で料金をやられるということですが、私は農事用の電力が非常に高いと思う。もちろん季節的な関係もありますので、高いということの理由もわからないこともないが、なるべく灌漑排水その他の電力に対しては相当政策を加味した料金制にしていただきたいと思います。  次に建設大臣が見えておりますので、簡單に行政機構改革に伴う電気主務大臣のことについてお聞きしたいと思います。今日のところは公益事業委員会が主務官庁になつておるようでありますが、今度の機構改革ではおそらく主務大臣は通産大臣となるように私は考えますが、その通りであるかどうか。
  59. 野田卯一

    ○野田国務大臣 ただいま公益事業委員会で持つております権限は、大体通産大臣に移す予定でございます。
  60. 有田喜一

    有田(喜)委員 電気の主務大臣は通産大臣にされるというお話でありますが、今度の電源開発に関する主務大臣、すなわち今回の電源開発会社や何かを監督する主務大臣は一体どこに当るのでありますか。
  61. 野田卯一

    ○野田国務大臣 電源開発に対するところのものは全般的には通産大臣がやることになつております。しかし水力発電につきましては、御承知のように水利権の問題並びに水力の発電所をつくること自体が大きな河川工事でありますので、そういう点におきまして建設大臣の監督という面が非常に多くなるかと思います。
  62. 有田喜一

    有田(喜)委員 河川の主管庁が建設省であるから水の使用関係に許可を得たり何かすることは建設省でやるということはわかりますけれども、しかし発電水力ということは、建設大臣が主管大臣であることでは、どうもその辺がうまく行かないと思う。やはり発電水力というものは通産大臣が主務大臣で、そして河川の使用の関係上建設大臣が協力する、こういう行き方でないと私は電源開発ということは円滑に行かないと思います。そういうお考えをお持ちにならないのでしようか。
  63. 野田卯一

    ○野田国務大臣 ただいま審議中の法案でも審議会がありまして、どういうようなところをだれにやらせるかということは、大体審議会で審議して行くようなことになつております。先ほど申しましたように、総括的には通産大臣が水力火力両方とも監督権を持つております。しかしながら同時に河川工事があり、水利権の問題があるから、その点においては建設大臣の監督を受けなければならないことになります。
  64. 有田喜一

    有田(喜)委員 この点もう少し明確にしておかないといけないと思いますが、電源開発調整審議会というものが設けられたということは、これは表面上ちよつと見ると調整の点をうまくやろうというように考えられておるようだが、実際問題からいいますと、関係大臣が六人もずつと出ておつてはたしてうまく行くか、おそらくこれは各省の権限争いの例をふむことになるだろうと思います。あれほど吉田総理ががんばつた行政機構の改革の問題についても泰山鳴動ねずみ一匹で、おそらく開発会社は、関係各省のごたごたによつてかきまわされて身動きができなくなることになると思います。そこで主務大臣はよほどしつかりして電源開発を促進して行き、それに対して建設大臣は河川の関係から、あるいは農林大臣は治山及び農業利水の点から協力する、関係大臣が協力して行つて初めて私は円滑に進むと思いますが、電源開発は主務大臣は建設大臣である、あるいは電気工作物だから通産大臣だと言つていがみ合つていては何もできない。この法案を見ますと、初めから主務省が権限争いで解決がつかないから、安本がこういうような調整審議会を置くというようにも見える。この点は相当大事なことですが、野田建設大臣は、やはり主務大臣は通産大臣で、建設大臣は河川の立場からこれに協力する、もちろん開発計画自体は通産大臣でやる、こういうふうに考えてもらわなければならないと思いますが、この点どうお考えになりますか。
  65. 野田卯一

    ○野田国務大臣 答弁は先ほど申し上げた通りであります。
  66. 有田喜一

    有田(喜)委員 ちよつとわからないのだが、河川使用の関係から建設大臣だと言われる。開発計画それ自体はもちろん審議会でやられるのだが、しかし基本的の問題は、やはり主務大臣である通産大臣が計画を立てられる、こういうことになるでしようね。
  67. 野田卯一

    ○野田国務大臣 御承知のように、問題によりましては国土総合開発の一環をなすものもあるし、計画にもいろいろな計画があります。全部の計画がみな通産大臣だというわけのものでもない。基本的なことと申しても大きなことはやはり審議会できめますが、もちろん通産大臣として水力発電に対してどういうふうにするかという責任もあると思います。
  68. 有田喜一

    有田(喜)委員 時間がないからあまり申しませんが、とにかく主務大臣が明確であつて関係大臣が協力するという態勢でないと、権限争いになつて電源開発はできぬと思います。この点は野田建設大臣は幸い行政管理庁長官をやつておられるから、考慮されまして、この大事な電源開発がその官庁の権限争いの場となつたり、あるいは世間で心配しているようなある政党の食いものになることのないように、政府は一体となつて十分配慮せられたい。ことに開発会社の人事の問題は、今までの九電力会社の人事を見ても一般国民から見ればなつていないのでありまして、開発会社の人事の問題はよほど御注意を願わなければならぬと思います。  電源の積極的開発と並んで重要なことは、今の電力設備を最も有効に利用することが大事である。今送電ロスが三〇%ありますが、これをすみやかに少なからしめる、一割でも何十万キロというものが出て来る。しかしてこのでき上つた電力設備を有効に利用するには各地域相互の融通を円滑ならしむることが根本だと思います。現在の九分割はあまりにも不自然な分割方法であります。しかも先ほど来言いますように、現在の電力会社も先が伸びて行かない。また今回の開発会社も実に妙な考え方である。それでは日本の大事な電力というのはうまく伸びないと私は心配するのであります。この際提案者はよく検討されて、いたずらにこの提案に拘泥することなく、日発の復活がよければそれでやつたらよい。それが全国一社でやれなければ、たとえば全国を北海道と本州の二つ、あるいは四国、九州というような割り方をやつて、そして既存の電力と新開発と合せたところの、もつと一貫した電源拡充と電力の円滑なる運営を期さなければならないと思いますが、提案者に今申しましたような反省を促して要望しながら今日の質問を終りたいと思います。
  69. 中村純一

    中村委員長 午前の会議はこの程度にいたし、午後二時より再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  70. 中村純一

    中村委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  電源開発促進法案を議題とし、質疑を続行いたします。土井直作君。
  71. 土井直作

    ○土井委員 公益事業委員伊藤さんが時間的な制限があるそうでありますから、質疑の順序を変更いたしまして、それに関する質疑を先にいたしたいと思います。  電源開発に対しましては、わが国経済再建のためにきわめて重大な法案でありまして、またこれが実質的に非常によく運営され、その成果が十分にあげられなければならないと思うのであります。しかるに今回提出されております自由党のこの法案は、実際的に見ますると、公益事業委員会政府すなわち安本案との間に相当の食い違いがある。なるほど名称は自由党提出にはなつておりますが、楽屋裏では安本が全部おぜん立てをいたしまして、それをただ議員提出にすりかえたということでありまして、その実体はまつた政府の案だと見ていいのであります。少くともこういうようなわが国経済に重大な影響を与える法案に対しましては、これと関連のある各方面との十分な折衝がなければならない、また了解がなければならないと思うのでありますが、先ほど同僚議員の有田君の質問の中にもありましたように、公益事業委員会といたしましては、この政府案に対してまつこうから反対しているようであります。ことに公益事業委員会委員長代理である松永氏は、委員会を代表してとは言つておりませんが、独自の構想で電源開発を促進して行くということを声明しておりますし、また先ほど答弁の中にありましたように、今度の電源開発法案の中に具体的に、電源開発を行おうとする河川の指定に対しましても、天龍川電源開発株式会社というものをつくつてしかも五月一日からその仕事を実施するということを言つております。これに対しまして伊藤氏はどの程度まで関知しているのか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
  72. 伊藤忠兵衞

    伊藤説明員 午前中の有田さんの御質問に関連いたしまして、趣旨並びにその運用等につきましてのいろいろの御質問であるように拜聽いたしたのであります。ただいま新聞紙上等で多く述べられている一社案並びに数社案ということでありますが、これは私どもは言葉の上の一つの——いろいろ複雑な意味がございまして、決して公益事業委員会が一社案を絶対に反対しているということではないのでございます。また松永委員長代理が現在自由党の御計画になつているものに対して全面的に反対であるとかいう問題に対することは、私は全部その討論を承知しておりませんから差控えたいと存じますが、たとえば資金を運用し、また国家の資金あるいは民間の資金並びに外資等を総合しまして運用する機関としての一社案などというものがいろいろ研究せられております。その内容におきましては一社案にあながち公益事業委員会反対をしているのではないということは非公式には声明している次第なのであります。その意味におきまして、数社案、一社案というようなことは、その内容をいま少し検討いたしました上で、公益事業委員会としましては決定した御返事を申し上げる時期が必ずあるものと信じます。  次いで公益事業委員がそれぞれの発電予定地に対して開発計画を立てているという問題であります。これは現在の段階におきまして、その開発に対する計画審議し、また許可して進行いたしますことは、ほかならぬ公益事業委員会の権限であることはだれしもはつきりしておることと考えます。その意味におきまして新法案が可決されてどういうふうになるかというと、まだ本日審議あそばしておることでありますから、私ども審議は別といたしまして客観的にこれを考えておりますが、しかしながら現在の公益事業委員会の委任されております範囲におきまして、電力開発を一日も早くやり、いい電気を早く出すということは、これは国家至上命令であります以上はそれに向つて專念いたしております。自然その線に沿いまして、ただに天龍のみならず、只見川の河口にあります二、三の拠点など、やはり指令を出して着手いたしておる所もあるのであります。それはたまたま自由党の御計画になりました発電地帯と同一の箇所でありますけれども、われわれに御委任を受けておる範囲におきましての仕事といたしましては、その立場上目下各方面について研究し、また一部は着手の指令を出しておる所もあることを申し上げておきたいと思います。
  73. 土井直作

    ○土井委員 公益事業委員会として全面的にこれに対して反対しておるわけではないというお説でありますが、公益事業委員会案としてはしばしば新聞などで五分割案を出しておるのであります、そしてこれに対してはそれぞれ責任のある人々から、時に触れ折に触れ、新聞紙上を通じまして独自の方法で電源開発を促進すると言つておるのであります。こうなつて参りますれば、これは伊藤氏が今言われるように、公益事業委員会として一定の方針が決定したのではないからして、やがて適当な機会を通じて公益事業委員会の総合的な決定的な意見を開陳することがあろうということであります。しかしながら午前中の質疑にもうかがわれておりますが、伊藤氏の面上に現われております気分は、政府あるいは自由党の今度の案が非常な無理押しをされているということと、またそういう無理押しをしてこの法案提出するということが、公益事業委員会の立場から見て結果的には非常にまずいものができ上つて来るのではないかという、相当確信のある考えの上に立つておるのではないかと思いますが、この点についての所見を伺いたいと思います。
  74. 伊藤忠兵衞

    伊藤説明員 非常に高いところからの御考慮といたしまして、私ども十分これは考慮すべき問題と思います。五社案ということを今ちよつと伺いましたが、これはいわゆる改進党のお出しになつておる五社案ではないのでありまして、現在のものを五社なり四社に分割して開発するものだと思いますから、そうお答えしておきます。さきにもお答え申す通り、現在の段階におきましては各九社がそれぞれの所管の範囲を発電すべきが当然と考えられますが、たとえば只見川のごときも発電地の基礎が東京電力に所属し、末端の方が東北になつております。またかくのごとき厖大なものを一社で発電いたしましても、その消費が困難である以上はやはり二社、あるいは四国のごときものは、その送電に関するものは九州も大阪も中国も入れた四社くらいでもつて配分をしなければ、消費ができないのではなかろうか。その意味におきまして広くものを考えてやつた方がいいという考えのもとに、あながち九社と限らずに、九社の間の申し合せによりまして、数社に分割をした方がいいという考えがずつと私どもの伝統的な考えであつたのであります。これははつきり申し上げて間違いないと思います。それに対しまして自由党と申しますか、あるいは安本の立案と申しますか、無理押しというお話でありましたが、無理押しという言葉よりも、私どもがこれに対しまして、それを一社に運営して行くということに対します現在の私どもの方の間における伝統的な考えと違つておるという御質問であつたと思いますが、これもあながちそうでないと申し上げることもできません。また全部が全部そうであるとも申し上げかねますが、何と申しましても、現在の一番難点は資金関係であります。その資金関係国家資金であろうと、あるいは民間資金であろうと、外資でありましようとも、すべてに対して無理のない、最も合法的でしかも安心して投資をしてくれますような方法が一番適当ではないか。ことに公益委員の多数の者が実業界出身でありますので、すべてがビジネス・ベーシスでものを考えることは、これはやむを得ない次第であります。その見当からいたしまして、どこに無理があるか、どこを御調整願いたいかということに対しましては、私ども個人といたしましてはいろいろのことも聞いたのでありますが、まだ正式のこれに対する主張のわかれ目と申しますか、その分岐点を割り出します書類など、まだ拜見いたしておりません。はなはだ怠慢であるというおしかりなどあるかもしれませんが、事実私の手に入つておりません。これに対しましてはもつと深い検討をいたしまして、そしてお話合いのできますだけはお話合いいたすべきでなかろうか。こういうことは申すべきことでないかもしれませんが、人間の仕事というものは、われわれの主張が全部正しいものとも思いません。またわれわれの考えていることが全部間違つたものとも思いません。かくのごとき大事業は、お話通り天下国家日本至上命令であります。これをよりよき方法によりまして、開発の手づるをやりたいということのために日夜專念しております。決して自分たちの仕事が完全なものとは夢にも考えておりませんが、これを一年半ばかりいろいろマスターいたしまして、その結果電源開発というものはどの線で行くべきだろうかというおぼろげな考えも私は絶無とは申しませんが、これはあながち五名が五名同じ考えでもなかろう。そこらにつきましても、今一応も二応も五名の者が反復審議して、そして政府案、われわれの意見も持ち寄りまして、どこかに公益委員としての帰着点をつくりたいと專念いたしております。以上お答えいたします。
  75. 土井直作

    ○土井委員 午前中の質問に対しまする伊藤さんからの御答弁では、政府から何ら自分の方に対して正式な相談もなければ、また提案になりまする法案内容等についても、いまだに入手されておらないということであります。しかしこの問題はすでに何回となく自由党案にする、あるいは安本案にするということで、それぞれ周知の事実であります。従つて公益事業委員会は、自分の所管の事項として十分これに関心を持たなければならなかつたはずだと思いますが、政府から特別な話あるいは協議等がなかつたけれども公益事業委員会としては政府にこれに対して何らかの申入れなり、あるいは意見なりを開陳したことがあるかどうか、この点をお伺いいたします。
  76. 伊藤忠兵衞

    伊藤説明員 さきに総合開発に関しまするいわゆる建設省からの原案のうちに、公益事業委員会関係の深いものがあつたのであります。これを通じましていろいろ検討いたしたことがあります。私は三月に入りまして二度出張を命ぜられましたので、出張中に委員会があつたこともあると思いますが、さきに申しますように、最近は委員長の病気のために、大きな問題を検討するのに非常に時間がなく、それで私の手に個人的にまわつておらぬのかもしれませんが、私はいまだかつて自分で正式な公文書的なものは検討したことがないのであります。今まで御質問のうちの、接触がなかつたかと言えば、そうでないと信じます。約一箇月あるいは一箇月以上前であろうかと思いますが、電源開発審議会ができましたときに、われわれの委員長代理が出席されまして意見の交換をされたことが一、二度あつたものと信じます。また過日この問題に対しまして、水田自由党政務調査会長と神田氏でございましたか、福田氏でございましたかがおいでになりまして、そうして松永委員長代理とお話になつたことも承知いたしております。その間の話合いも私はまだ聞いておりませんですが、最初の審議会に出席されましたときはごくまだ初期のことでありまして、コンクリートするまでの意見は交換されてなかつたのではないかと存じます。それはむしろ安本長官の方が御承知ではないかと思います。私の知つております範囲は以上の通りであります。
  77. 土井直作

    ○土井委員 過般水田政調会長とそれからこれを提案委員の方と、松永公益事業委員会委員長代理と要談をしたことは新聞で拜承しております。そこでただいまの伊藤さんの御答弁によりますると、その間の消息は全然わかつておらない、ところが松永氏が、その後においてと思います。時間的関係に多少前後があるかもしれませんが、いわゆる公益委員会案で進む、言いかえれば自由党案に対しては反対だというような意思表示をされておると承知しているのであります。その間の消息について、当該の責任者である神田君の御答弁をお願いしたいと思います。
  78. 神田博

    神田委員 土井君のお尋ねお答え申し上げます。先般司令部の承認を得まして、その直後でございましたか、水田政調会長と公益事業委員会に参りまして松永委員長代理にお目にかかりまして、正式に国会自由党案として提案をすることになつた、ついては政府部内において意見のまだ釈然とされないような点もあるようであるが、一応われわれ司令部の承認を得て、政府もまた承知をされているのだ、公益事業委員会の方においても本案の通過について、ひとつ積極的な態度を示してもらえるならば非常にけつこうである、こういうようなごあいさつに伺つたのであります。そこでその際松永委員長代理から、司令部からオーケーが来たということは自分も聞いたが、自分もやがて国会委員会のお呼出しにあずかつて、何かとお尋ねを受けることと思う。自分としては、今まで自分が考えた案がよいように考えておるが、しかしもうこの段階に来て、多数をもつてこの法案が通るということであれば、電源開発が何よりも大事なことであるから、快くひとつ自分たちもこの法案の通過した後の御協力をしたい。なお審議の資料等については、安本その他よりも公益事業委員会の方に資料が一番豊富にある。何々と御指示をいただくならば、十分御協力を申し上げたいから何なりと申してほしい、こういうふうなごあいつさでありました。  以上の通りでございます。
  79. 土井直作

    ○土井委員 ただいまの神田君の答弁によりますと、総司令部の了解を得たということであります。公益事業委員会委員長代理とのお話合いの内容についてはこの程度にしておきますが、総司令部が了解をしたということは、案を事務的に国会提出することについて了承をしたのか、また案自体に対して賛成というような意味合いにおいて了解したのか、このいわゆる了解に対する点を明確にしていただきたいと思います。
  80. 神田博

    神田委員 お答えいたします。今度のオーケーも、今まで司令部から参つております一般の例にならつた御返事であつたと記憶しております。
  81. 土井直作

    ○土井委員 電源開発法案国会通りますと、その後にいろいろな面において関係方面との折衝という問題が相当出て来ると思うのでありますが、特に国会を通つた場合において、公益事業委員会との関係は一体どうなるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  82. 福田一

    福田(一)委員 お答えをいたします。この法律公益事業委員会及び電力編成の特別法のようなものになりますから、この法律が優先して行われるということになると思います。
  83. 土井直作

    ○土井委員 そうしますと、電源開発法案が優先する、従つて公益事業委員会は何らこれに干渉し、タッチすることが不可能だというような趣旨でよろしいのですか。
  84. 福田一

    福田(一)委員 この法律に基きましても、やはり公益事業委員会関係すべき面がありますから、その点は依然として公益事業委員会関係すべきことであります。
  85. 土井直作

    ○土井委員 大体電力の問題その他公益事業に対しましては、公益事業委員会が全部干渉しておるのであります。従つてわれわれから考えれば、この法案が通過した後においても、電源開発という、いわゆる公益事業に関係するものは全面的に公益事業委員会がタツチし、あるいは事務を処理するような考え方を持つておるのでありますが、ただ公益事業委員会関係する面だけを公益事業委員会関係し、その他の事柄については容喙できないという御説であるが、それは具体的に言つてどういう点は容喙できるが、どういう点はできない、あるいはどういう点は事務的に干渉できるが、どういう点はできないという、この点の区分をはつきりしていただきたい。
  86. 周東英雄

    周東国務大臣 便宜私から申し上げますが、先ほど提案者から御説明になりましたように、開発に関しては特別法の規定に基いて特殊会社ができるので、公益事業委員会関係しなくてもさしつかえないと思います。しかしあなたの御指摘の点は、多分電力の割当とか、供給、電力料金とかいうものであろうと思いますが、こういうものについては、もし公益事業委員会が存続するならば、その権限は残つている、かように考えます。
  87. 土井直作

    ○土井委員 十分ではございませんけれども、一応この問題についてはそのままにして、次に移りたいと思います。  御承知の通り公益事業委員会ポ勅によつてなされているものでありますが、ポ勅は大体四月から九月までの間に、これを存置するというような特別な法律案が出なければ自然に消滅するのであります。従つて自由党が今回提出されましたこの法案に対しましては、先ほど公益事業委員伊藤氏からいろいろお話がありましたが、これに何らの事前的了解なりあるいは打合せをしなかつたということは、公益事業委員会を握りつぶして、九月には自然廃止になる、そういう見通しをもつて押し切つて来たのではないかという考えを持つておりますが、九月までは存続しているのでありまするからして、当然政府としましては十分な了解をして行くべきであつたと思うのであります。ところがそれがないために不必要な摩擦を起して、しかも松永委員長代理などが公益事業委員会の案で行くというようなことを天下に言明して、ある意味において自由党としては醜態をさらしているような状態であります。  さらにお伺いしたいのは、電力会社と事前にこれに対して調整をして出すべきではなかつたかと思われるのでありますが、この点については、事業の内容から見て行きますると、それぞれの電力会社に仕事を担当せしめるというふうになつておりまするが、事前にこれらの電力会社と打合せをしたことがあるかどうか伺いたいと思います。
  88. 福田一

    福田(一)委員 お答えいたします。非公式に二、三の電力会社の首脳部との間でお話をしたことはございますが、全面的にそういうような会合を持つてまでやつたということはございません。
  89. 周東英雄

    周東国務大臣 念のために申し上げておきます。伊藤委員の先ほどお話になつた事柄についてでありますが、午前中に申し上げましたように、さきに政府が本法案について研究対案をつくつている際においては、決して公益事業委員会はなくなるだろうから無視するというような考えではなくて、電力開発促進審議会と言いましたか、内閣に関係省並びに公益事業委員長等を加えまして、両三同案を出して御審議つているのであります。それに別に幹事会を開きまして、両方の事務当局間においても提案し、意見の交換をしております。この点はよく御承知おきいただきたい。ただそれに関係して、私ども弁解がましいことを言うのはいやだからしいて申し上げませんけれども、ただ反対だと言われるだけだとちつとも進まないし、この点は政府といいますか、どつちも政府ですが、公益委員会を除いた政府であるということをはつきりさせておきたいのでありますが、私どもはどこまでも協調して行きたいと思つておりまするし、再三委員会を開いて提案をし、幹事会で自由党へも話をし、さらに互いに個別的にもやつております。それに対して対案はどうかという話も出なければ——私どもはその点はまことに相済まぬことだと思つておりますが、もしもこういう要求があるから開けということであれば開いてもいいと思つておりますが、特に申出はありません。最近に至りまして特に急ぐ事態になりまして、ことに最終意見の相違点というものは、新聞でも伝えられておりますので御存じかと思いますが、向うは数社別々に会社をつくつて、そこで政府が社債か何かで金を出してくれたらいいという御意見だが、私の方は各社たくさんつくつてそうやすやす金を出すだけ金がないから、まず十一社をつくつてそれに政府出資をし、それに民間も加えるということで行こう。初め公社一本だけであつたのであります。そこまで民間も合せて行こうということで話を進めて行つたが、ただそれに対しては反対だというだけでちつとも意見は述べられません。事柄は緊急を要するのでありまして、土井さんも御承知の通り、なぜ遅れたか——午前中も申し上げましたように、むしろこういうことは相当長い年限をかけてやらなければなりません。そのときの政府だけは賛成して、あとですぐかわるということも、そういう意味合いからむしろ自然的に起つたことは別として、超党派的に、電源開発は全然かわらない形で行くのがよろしいということで、議員提案によつて出すのが妥当であるということで、私どもは讓つたわけであります。この点は公益委員会を除く政府であるという事実をはつきりさせておきたいと思います。
  90. 土井直作

    ○土井委員 どうも奇怪なことを聞くのでありまするが、しかしこれは実を言えば午前中の有田君の質問に対しましては、伊藤公益委員政府から何らの相談もなかつた。ただいま私が伊藤委員に聞きますると、これに対しても同様な答弁をしておるのであります。周東長官のただいまのお話によりますると、両三回にわたつてそれぞれ協議もしあるいは連絡もしておる。従つて單に口頭だけでなくて、勢い書類などによつてそれぞれ説明もし、あるいは協議も進められただろうと思うのでありまするが、伊藤委員答弁とただいまの周東長官の答弁の中には、非常な食い違いがあるのであります。どちらが正しいのかということにつきましては、当人がおりませんから、これをただすわけに行きませんが、他日適当な機会においてこの点はさらに念のために聞いておかなければならないと考えておるのであります。  そこで今回の電源開発法案に対しまして、自由党が出しましたところの一社案でありますが、これはわれわれから言わしめますると、いわゆる自由党政策というものは首尾一貫しておらない。言いかえれば昨年自由党電力会社を九分割いたしまして、それでそれぞれ吉田総理側近の人々などをこの電力会社の重要なる地位にすえておるのであります。われわれは電力会社分割ということは、国民生活ときわめて密接な関係があるし、またわれわれ社会党の政策の面から見まするならば、われわれは重要産業はことごとく国家が行うべきであるという社会主義イデオロギーの上に立つて常に進んでおるのであります。自由党は自由主義のイデオロギーの上に立つてあらゆるところの事業あるいは産業というもの、あるいはその他の面におきましても、これを自由放任主義、各人の能力に従つて自由にやるべきであるということを主張しておるのであります。ところがわずか一年有余足らず、しかも今度の電力開発に対しましては一社案で持つて行く。しかも公益委員会が明らかに五分割案、各社にそれぞれやらすべきであるということを主張して反対しておるのであります。言いかえれば自由党のいわゆる自由主義というものが明らかに蹉跌を来して、そうして今日一社案にしなければならない、ことに電力のごとき国民生活に直接非常な影響を及ぼすところのものは、どうしてもこれは半国営的に特殊会社ではありますが、政府が投資するとは言いながら、その主権はことごとく政府の手に握られていると見てもよろしいのであります。従つてこれらは半国営的なものだと思つてもよろしいと思うのであります。これらは明らかに政策上の矛盾であると思いますが、考えているのであるかどうか、この点について念のためにひとつ御答弁を願いたいと思います。
  91. 福田一

    福田(一)委員 お答えいたします。わが党の自由経済主義というものは、実は十八世紀時代の自由放任主義とは違うのでありまして、計画性を持つた自由経済であります。その点はひとつ御了承が願いたい。自由党だから何一つ統制をしない、そういうような考えではないのでありまして、この点は政策論でありますから、これ以上言つてもしかたがないと思いますけれども、その意味で御了承が願いたいと思います。
  92. 土井直作

    ○土井委員 自由党のいわゆる自由主義というものは十八世紀時代の自由放任主義ではない、言いかえれば計画性を持つたところの自由主義であるということでありますが、理論の争いをしておることはこの際避けたいと思いますが、はなはだどうもわれわれから言えば、イデオロギー的に相反するところの答弁だと思うのであります。むしろ自由主義の形態はすべての人々の能力によつてそれぞれ自由に事をして行くということであつて国家やあるいはその他のものによつてそれに統制を加えたり、制肘を加えたりすべきでないというのが自由主義の建前でなければならぬ、社会主義統制経済は国民生活と切り離すことのできない重要な産業、あるいはまた重要な物資というものはこれを統制しなければならぬ。たとえば昨年米の統制問題等について政府は大みそをつけたのでありますが、米のごとき国民生活に重要な影響のあるものは、国家計画的に統制をして配給するということが生活安定の上に大いによろしいのであるから、この点をわが党などは強く主張しておつた。ところが自由党が選挙の公約に従いまして米麦の統制をやめなければならぬ、そうでなければこの次の選挙には勝てない、このような考えであせりぎみで米の統制を撤廃しようとしてその筋のおしかりを受けた。しかも国民の嘲笑の中にこの案をひつこめなければならなかつたということは、天下周知の事実であります。今回のこの問題についてのただいまの福田君の御答弁は、どうも自由党政策とは非常にかけ違つた答弁のように思つておりますが、しかしそのことについて論難することはこの際避けようと思います。大体自由党考え方は時代的に五十年くらいのずれがある。百年のずれがあるとは言わないけれども、五十年くらいの感覚のずれは確かにあると思つております。この点については特に御答弁を必要としませんが、念のために申し上げておきます。  次にこの問題について質問をしたいと思いますことは、資金の関係であります。先ほど周東安本長官は、一社案であるならば資金は思うように出せるが、数社案では資金が出せない。一体電源開発に対するところの大体のテーマは、それぞれその既定の方法によつて行われて行かなければならないことになつておるのだと思います。先ほどの御説明によりますならば、大体七河川十地点が第一次計画である。天龍川、只見川、北上川、庄川、石狩川、熊野川、吉野川、第二次では只見川の上流とか十勝川、琵琶湖あるいは球磨川とかいうものを指定しております。従つてこれが数社によつて経営されたならば資金が出せない、一社であれば資金が出せるということは少しおかしいと思います。要するに事業の内容というものは、数社であろうが一社であろうが、同じでなければならない。それは会社が違い、あるいはそれだけ多ければ、人件費等に多少の違いもあるかもしれないけれども、しかし法案内容を見ますならば、すべてこれは政府が單に金を出して、そしてこの電源開発に対するところの審議会というものがいろいろな問題を構成するのであつて、その仕事を実際に行うのは、それぞれの電力会社が担当するように承知しておるのであります。そういう面から見ますならば、数社であつても一社であつても、資金の面においては決してかわりはないと私は考えるのだが、この点についてはいかがでしようか。
  93. 周東英雄

    周東国務大臣 先ほどの言葉に少し誤解があるようですが。私の申し上げておるのは、公益事業委員会考え方と私ども考え方との差異の点でありまして、向うは四社をつくつてそれぞれ政府が金を出してくれという、こちらは出資という形においてやるのは一社だけで、他のものは現在あります九電力会社、それぞれの民間会社に出してやらせるということであつて出資によつて四つそれぞれ開発会社を別々にこしらえて行くというのは今の段階においては十分ではない。まず一社、それに出資してやらせる、他のものは従来の会社に金を出して行く、こういう段階で行くのであつて、そこに根本的な非常な食い違いはない、こういうふうに考えましたがゆえに、現段階において自由党案を私どもは支持し、それで妥当なりとして進んでおるということを申し上げておるわけであります。
  94. 土井直作

    ○土井委員 この法案の裏づけといたしまして、一番考えなければならないことは資金関係であります。大蔵大臣がおりませんから安本長官の御答弁でけつこうでありますが、資金と資材の裏づけというものが絶対的に必要であることは言うまでもないのであります。ところがこの資金関係において外資の導入という問題がこれまたきわめて重要でなければならないと思うのであります。吉田総理大臣は、一月の施政方針演説の中におきましても、この外資の導入ということについて非常な熱意を持ち、確信を持つてこれを演説されておるのであります。ところが先ほどの大蔵大臣の話によりますと、この事業を遂行して行く上においては、別に外資を仰がなくともできるというようなことを答弁されておりますが、この点については周東安本長官も同様にお考えになつておるかどうか、念のため伺いたいと思います。
  95. 周東英雄

    周東国務大臣 大蔵大臣がどういう御答弁をなされましたか、私聞いておりませんからわかりませんが、私の考えといたしましても、おそらく二十七年度着手するについてただちに外資がいるか、こういうふうな御質問じやなかつたかと思います。それに対してはわれわれも努力はいたしておりますが、あらかじめ確定せざるものを織り入れてそれがなければできぬという形でなく、従つて二十七年度の資金計画は、たびたび別の機会で申し上げておりますように、大体千二百億程度の資金を電源開発に使う、その中で政府資金に当るものが、見返り資金あるいは資金運用部資金等を合せて六百十億、あとは民間資金、こういう計画で進めておるわけであります。従つていろいろの努力の関係が報いられれば、あるいはそれをさらに節約できるのであります。もとよりこれは土井さん御心配の点でありますが、重要な電源開発のことでありますから、資金なり資材なりの重点的な使用ということが民間資金の計画等にも残るかと思いますが、そういう場合におきましては外資等が入つて参れば、その重点関係から来るほかの産業への影響を少からしめるという効果はあります。しかし二十七年度の資金計画については、初めから外資がなければできない計画は立てておらないということをおそらく池田君も言つたのだと思いますが、私もそういうように考えます。
  96. 土井直作

    ○土井委員 安本長官も御承知の通り、これは自由党の水田君ほか何名かの提案になつておりますが、実際は安本で計画して安本が出すものを形をかえただけのことでありまして、これは二十七年度から三十一年度までの五箇年計画であります。従つて二十七年度における千二百億ばかりの調達については、特に外資を必要としない。これはやりくり算段をすればできないことはないでありましよう、しかし初年度においては実行できてもさらにあと残されている四年の間において外資を必要とするのかしないのか、外資がなくてもやれるかどうか、この点の見通しをお聞かせ願いたいと思います。
  97. 周東英雄

    周東国務大臣 この点は先ほども繰返しましたが、外資が得られれば他の産業に影響を及ぼさぬようにする可能性が多いということで、次年度計画においてもそういう考え方であります。しかし大体は三十年度までが四千五百億の計画でありますので、それは資金についての年度割から考えると、今後における日本の産業の復興状況など種種の点から見まして、外資がなければ一つも動かぬような計画にはしておらぬつもりであります。これはあなたの御心配の点と思いますが、今後における国際情勢関係もありましようし、もつともつと未稼働のものを動かし、生産を上げるについては相当電力がいります。そういうために全部重点的にやつてできぬことはありませんが、影響もありますから、われわれはできるだけいろいろな形において外資の導入に今後努力いたすつもりであります。
  98. 土井直作

    ○土井委員 私は端的にお聞きしておきたいのですが、要するに五年計画による四千五百億の金の調達については、外資を仰がなくてもできるのであるか、外資を仰がなければできないのであるか、外資を得ることができればスムーズに行くというようなことでなくて、外資が一ドルも入つて来なくてもできるのであるか、その点についてはつきり答弁していただきたい。
  99. 周東英雄

    周東国務大臣 これは先ほどから繰返すように、電力だけの資金計画ではないのでありまして、他の産業部面についての今後の計画に対する資金面を考えてみたときに、外資関係のある方がよりスムーズに行くわけであります。電力だけを考えて行く場合においては、四千五百億の金については今後の日本の復興状況もありますし、何も今日の日本における国民所得の現状だけでとどまるものではないのでありますから、今からその点について、なければ絶対にできるとかできぬという問題ではないと思います。しかし政府としては全体の産業計画に対する資金の面から考えまして、外資のあることを希望する、こういうことであります。
  100. 福田一

    福田(一)委員 ちよつと関連してお答えいたしておきたいと思いますが、実はこの案は安本案とかいろいろ言われておりますけれども、われわれは昨年の初め以来この問題について研究をいたしておりまして、大綱をきめてこれに肉づけをする意味において安本にも協力を求めております。同時に並行して安本もそういうことを考えておつたでありましよう。自由党といたしましては、われわれが大綱をきめてこれに対して下請の仕事を安本にさせておる、かような意味合いにおいてこの法案提出いたしておるのでありまして、土井さんはわれわれの先輩でもあられまして、政党政治家として議会が政治をするという意味合いにおきましてはわれわれと同じ立場に立つておられる。それが党が提案いたしましたものをあまり安本の方ヘウエートをかけないでいただきたい、そんなことをしていますと、議会政治ができない。お互いにこまかいところまではとても研究できないのでありますから、やはり大綱をきめたものが提案をしたものだ、かように御了承願えればけつこうだと思います。
  101. 土井直作

    ○土井委員 福田君の心中を十分察しまして一応了解をすることにいたします。そこでただいま周東長官の言われておる言葉は、どこか逃げ道をつくつておるような気がしてしようがない。というのは、五箇年計画というものはぜひ遂行しなければならない、ことに電源開発ということは至上命令だということを、先ほど公益委員伊藤氏も言われておるし、政府当局もしばしばこれを言明されておる。また提案者である諸君も、このことについては異口同音に言われておるのです。従つて外資導入しなくても、あるいは他の産業の関係、たとえば国内における資金の調整の面その他を考慮しても、いかなる困難があつてもまかない得るということによつて、初めて五箇年計画の案が成り立つのではないかと思う。ところが顧みて他を言うようで、国内の将来起つて来るいろいろな現象というものなどを考え、また他にこれ以外のいろいろな仕事もしなければならない、そういう面から外資が入つて来るということは好ましいことである、それはだれでも好ましいということはわかり切つておることなのであります。私の聞こうとするのは、要するに電源開発に対して四千五百億の五箇年計画というものは、外資が入らなくてもできるという確信のもとにおいて出しておるのかどうか。これは提案者周東長官の両方で答えてもらいたい。そうでないと逃げ道があるような気がしてならないから、念のためにはつきりとしてもらいたい。
  102. 周東英雄

    周東国務大臣 私は土井さんの質問される意味がわからないのです。これは総体的なものです。電源開発だけから見れば、この計画においては今年は千二百億、来年は千三百億、その次には八百十三、五百三というふうに減つて来るのです。日本の経済状態の復興は、おそらく今日の状態でとどまるものではないのですから、これだけの金を年次計画に出せないと思わない。しかし産業の幅というものは今日の幅だけじやいけない、ふやさなければならぬ。電力もほかの産業もそれに合せて行きたい。資金の総合計画から言えば、いろいろ影響が起るかもしれぬということは将来考えなければならぬ。それは全体の国民所得が上らなければできない。そういうことは総体的なものだと思う。今日外資々々と言いますけれども、資金面でなくてやはり物の面があると思う。重点的にいろいろな資金なり資材を使つて行く。この産業は基礎産業であり、どうしてもやらなければならぬということはわかつておる。やらなければならぬということは、極端に言えば、他の産業に影響してもやらなければならぬということを私は考えておる。そういう意見があれば、外資との関係があることは、他の産業との均衡を得せしめてスムーズに進めるために必要であるとして努力をしておる。しかしそれがなかつた電力の五箇年計画はだめになるかというと、私はそうは思わない。
  103. 福田一

    福田(一)委員 ただいま安本長官から申された点に全然同意見でありますが、私たち考えておりますのは、電力は基礎産業である、これは日本の経済を復興する意味でどうしてもやらなければならない問題である。この点についての資金計画は十分できるものと私は考えております。その点は池田大蔵大臣の説に同意しておる、また安本長官考えにも同意しておる。しかしそれをやつて行きます場合に、ほかにもいろいろ日本として経済復興をやらなければならない仕事がある。それをやります場合において、状況の変化その他があつた場合には、外資が導入されておりますと、そういう基礎産業、ほかのものに影響を与えることが少くて済むという意味においても、日本経済を再建する意味においても非常に望ましい、かように考えておるわけであります。
  104. 土井直作

    ○土井委員 もとより電源開発のためにのみ資金を投入して、他の産業また他の必要な仕事を顧みないということではないのであります。政府あるいは提案者の方で、これを出すに至るまでには、資金の関係については十分目途がついておるのではないか。従つて外資を入れなくてもこれは遂行できる、しかし他の仕事も総合的、計画的に行わなければならない場合があるから、外資が入つて来ればスムーズに行くことは十分わかつておる。ただ問題は外資が入らぬ場合でも他の産業に悪影響を及ぼさないで、しかもこの電源開発ができるという確信があるかどうかということを聞いておるのであります。しつこいようでありますけれども、できるかどうかということだけでいいですからもう一ぺん聞かしてもらいたい。
  105. 周東英雄

    周東国務大臣 私はそれは程度の問題だと思います。問題としてはできるかできないかではなくて、八方美人的に何もかもよくやつて行こう、つじつまを合せて行こうとするからそこにほんとうの産業の伸びがない。基礎産業であるならば、極端な場合を考えて、一時的に他の産業に影響があつてもまずこれをやつて行く。動力源にしつかりした基礎ができればほかのものはどんどん伸びて行く、これだけの覚悟がなければならぬ。甘い考えで何もかも影響を及ぼさないように、外資もなくてこれだけをやるといつたらそれはなかなか骨が折れる。しかし私どもはそういうことのないように、日本経済の今後における進展の見通しを考えておる。しかし何と申しましても電源開発というものは固定する金であります。そこに重点的に各種の資材が使われる。たとえばセメントにおきましても、生産がうんと伸びるということがなければやはり影響が起つて来るということは考えられる。しかもまたセメントそれ自体をつくるについては、電力を食うものです。どつちが鷄か卵か知らぬが相関関係に立つものですから、これはある一つのものをとらえて、これが他の産業に影響しないようにということよりも、とにかくこれはでかさなければならない。だからあなたの設例をとつて言えば、かりに何もやらない、また電力計画をうんと縮小させて行くということよりも、やはり今の計画を十分進めて行くために、多少影響があつてもやらなければならぬと私は考えております。
  106. 土井直作

    ○土井委員 私がなぜこういうことをしつこく聞くかというと、実は資金関係について、外資導入については必ずしも楽観を許さない。言いかえればマーカツト局長が三月十一日に発表しておりまする日本政府に対する一種の警告的なものでありますが、日本政府が米国政府提出した電源開発への外資導入計画書によれば、円資金の不足を補うために外資導入をしようとしておるが、このような観点からの電源開発への外資導入は実現不可能であるということを言つておるのであります。従つてわれわれはここでこの法案審議する過程におきまして、政府至上命令としてやろうという考え方をもつて行きますならば、外資が入つて来ない場合でもこれが遂行し得るか。もとより電源開発をするためにそれぞれ資材が相当必要である。今引例されましたように、セメントが必要である、セメントを増産するためには電力が必要である、あるいは鉄鋼材が必要である、従つて鉄鋼材の増産のためにはそれに資金をまわさなければならぬ。あるいは木材にいたしましてもアルミにいたしましても銅にいたしましても、それぞれ必要な資材を増産するために資金をまわさなければいかぬ、一種の総合計画の面でこの問題は十分に考えなければいかぬ。これはお説の通りでありまして、十分わかつておるところであります。しかしながら、言いかえればそういう総合計画の上に立つ電源開発ではあるけれども、マーカツト少将が言明しておるように、もし外資が入らない場合でも、総合計画の上に支障があるかないか。要するにこれでやつて行けるかどうかという見通しを私は聞いておるのであつて、この点が重大だと思う。これはどうですか。
  107. 周東英雄

    周東国務大臣 その点はただいま御説明した通りであります。あなたの極端な設例のもとにおいても、まず重点的に電源開発はなさなければならぬと考えております。
  108. 土井直作

    ○土井委員 そこで外資が入らなくても、極端な場合においても、それは大体できるというお見通しを言つておられるのであります。そこで外資導入に対して総司令部に提出した政府意見書というものがあるのでありますが、それによりますると、大体年々千二百億のものが必要で、四百五十億の国内資金を支出するが、なお不十分である。将来ガリオアの元利払いを行うような必要がある場合は、これを当分日本にとどめておいて、電源開発の金に再貸付を受けたい。しかもその要求しておりまする額が総額で大体十五億ドルでありますが、そのうち電源開発のためには約三億ドルというものを見込んでおるのであります。従つて三億ドルの外資が入つて来ないということは、同時に電源開発の上において相当支障を来すというおそれがあるのであります。ただいま周東長官のお説によりますならば、あるに越したことはないが、外資が入らなくても、総合計画その他の面からいつて支障がないのであるか。政府はすでにこういうような電源開発のためにどうしても三億ぐらいの金が必要だということを、しかも総司令部に対して、多分これは二月十五日付だろうと思いますが、提出をした。この間におけるところの矛盾があるのではないかという考え方を持つのですが。この点はいかがでしよう。
  109. 周東英雄

    周東国務大臣 今、書類を政府から出しておるということで、お読み上げになりましたが、そういう内容のものは出しておりません。これははつきり申し上げます。先ほどからたびたび申し上げますように、あなたの極端の設例の場合においてもやらなければならぬし、影響があつてもやらなければならぬと申し上げておるのであります。今入らぬでもやれるのだ、何の影響もなくやれるのだという答弁があつたような再質問でありますが、これは私の速記録をごらんになつていただけばわかります。
  110. 土井直作

    ○土井委員 この問題はその程度にしておきまして、その次に資材の関係でありまするが、大体これに対するところの資材は非常に大きく見積つておるのであります。五箇年計画の間において、鋼材が百十八万六千トン、アルミが二方六千トン、銅が十七万四千トン、セメントが八百二十九万七千トン、それから木材の場合でも一千八百十一万石というものが見積つてあるのであります。三十七年度分におきましても鋼材で二十六万六千トン、銅で三万三千トン、アルミで五千トン、セメントで百四万九千トン、こういうふうな見積りをいたしておるのであります。そこでわれわれが知りたいと思うことは、これらのいわゆる生産計画の面において十分な手配ができて、スムーズに遂行することができる状態に置かれているかどうか。現に二十七年度における分におきましても、先ほど大蔵大臣は、セメントの百万トン程度のものは大体できる、鋼材に対しても大体できるということを言われておりますが、二十八年、三十九年とそれぞれほんとうに仕事にかかつて行く場合において、前段申し上げましたような資材は急速に入つて行かなければならぬはずだと思う。これらについての資材の生産関係において齟齬を来すようなおそれがないかどうか、この点についてお伺いをしたいと思う。
  111. 福田一

    福田(一)委員 この点はこの法案立案する当初からの一番大きな問題でありまして、いくら金ができても、資材がなくてはできないというので、政府方面とも連絡いたしまして、いろいろ調査をいたしたのでありますが、セメントは大体来年度で百万トン、二十八年度が一番多くて百五十五万トン、鋼材が来年度が二十三万トン、再来年度が二十八万トン、電線が二万三千トン、アルミ線が四千トンというような、いろいろな資材が必要とされるのでありますが、これは現在の日本の経済生産力をもつていたしましてはこれより以上のものが多いのであります。ただ銅線だけは若干不足するのではないかという面がありますが、これもアルミをもつてかえることができる面もありますので、若干の補強を加えますならば、十分本計画を遂行できるという見通しのもとに本案提出いたしておる次第であります。
  112. 土井直作

    ○土井委員 この仕事をやりますための資材関係については、十分見通しがあるということでありますから、まことにけつこうだと思うのであります。ただこれらのものを生産し、また事業を遂行する上において非常に厖大な金が出るのであります。従つてわが日本国家経済の上においては少からぬ影響力を持つと思うのであります。そういう関係から参りますと、自然経済界に及ぼす影響がインフレ的様相を来すおそれがないかどうか。この点についての見通しをお聞かせ願いたいのであります。
  113. 福田一

    福田(一)委員 ただいまの御質問はたいへんけつこうな御意見なのでございまして、その点はわれわれもこの案を立案するときに大いに留意いたしたのでありますが、また大蔵大臣その他政府関係とも打合せをいたしたのでありますけれども、私たち政府資金を重点的に使つて行くこのやり方によりまして、これは電力だけではございません、その他の産業その他についても重点的に使うという面あるいはまた金融関係その他の面等をうまく運営いたして行くことによつてインフレが防止できるだろうと考えております。特に現在はインフレというよりは、むしろ少しデフレ的な傾向があるのでありまして、この時代におきましてはこの種の計画ができるということは、このデフレ的な傾向を阻止するという意味においても日本の経済を運行する上において非常にいい影響があるのではないか、かように考えておる次第であります。
  114. 土井直作

    ○土井委員 さらにお伺いしたい点は、莫大な資金を投ずるということによつて国家経済に相当影響を及ぼして来る。従つて徴税関係、いわゆる税の関係において国民に与える影響が従来よりもあるかどうか。言いかえれば、増税をするとか、もとよりこれだけで増税するということではないが、要するに、かような資金を国家が多く投資しなければならないというような関係からいつて、当然増税しなければ資金がまかなえないというような場合が起り得るかどうか。そういうことについての懸念があるかどうか。
  115. 福田一

    福田(一)委員 この電源開発をやります必要上から、増税するというような必要が起きるとは……。
  116. 土井直作

    ○土井委員 それだけではありませんよ。
  117. 福田一

    福田(一)委員 もちろんであります。経済の運営の上から見ましても、私たちとしてはこの法案を出しました以上、これによつて増税をしなければならないような状態が起きて来るとは考えておりません。
  118. 土井直作

    ○土井委員 これは仮定の上に立つて質問をするのでありますから、答弁については相当困難があるかとも思われますが、国際情勢が非常に険悪な状態になつておりますので、万一の場合等がありますならば当然この事業は中止のやむなきに至るようなおそれなしとはしないのであります。たとえば小河内のダムのごときは、かつて七年計画でこれを実施する予定であつたと思いますが、途中で全部中止になつて、最近ようやく再開するというようなことになつたのであります。これらについてわれわれの懸念することは、そういう不測の問題が起るような場合において、全面的に中止しなければならぬはめに陥ることがあり得ると思うが、その点についてはどうですか。
  119. 福田一

    福田(一)委員 御質問ではございますけれども、戰争などというものは台風とか火事みたいなものだろうと私は考えております。なるべく来ない方がよろしいのであります。しかし台風がことし来るから稻をつくらない——これは仮定のことで来るか来ないかわからぬのでありますが、それだからといつてお百姓さんは稻をつくらないというわけには行かないだろうと思う。私は電源開発というものは日本国民生活を安定し、経済を復興する基礎産業でありますから、将来どのような問題が起きるかもしれないけれども、現段階においてはこれはまずどうしてもやつて行かなければならぬと考えているわけであります。
  120. 土井直作

    ○土井委員 この問題はその程度にしておきまして、次に電力料金の問題について少しくお尋ねしたいと思います。御承知の通り目下電力料金値上げの問題が議論になつておりまして、しかも終戰後今度上げようとするのは七回目であります。昨年大体三割一厘という値上げをしておるのであります。電力会社を九分割するときには、電力の豊富な供給ができる、ことに値段の点においてもできるだけ安いものを供給するというようなことをしばしば政府は言明しておるのであります。もとより諸物価の騰貴とかあるいは財界の変動とか、その他の客観情勢変化によつて当然電力料金の値上げをしなければならないという事態に階つているということは必ずしも認めないわけではないのでありますが、しかしその前に打つべき手が相当あるのではないかと思うのであります。最近新聞等に伝わつているところによりますならば、電力の値上げが当初は大体一割五分くらいでいいのではないかということだつた。それが三割くらいということになり、さらに三割四厘くらいということを言つている。周東安本長官と高橋通産大臣との二月二十五日の会談などでは、三割四厘くらいの値上げはやむを得ないではないかということだ。ところが三月十九日の九社の意見によりますと、炭価の値上げ、ボーナスあるいは従業員の給料のベース・アツプというような問題等をからみ合せて、どうしても三割八厘くらいは値上げしなければならないというような意見が出ております。これらの関係については当局はどういうふうにお考えになつているか、この点をお伺いしたい。
  121. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えいたします。その前に何か私と高橋さんが会つて電力料金の値上げは三割四厘ぐらいがいいのだという話をしたというお話でありましたが、私はまだ電力料金について少しも話を聞いたことはない。
  122. 土井直作

    ○土井委員 新聞がうそですか。
  123. 周東英雄

    周東国務大臣 私は電力料金について話したことはありません。高橋さんも御同様であろうと思う。  それはさておきまして、電力料金については、お話通り国民生活の上にも産業経済の上にも大きな影響がありますので、私どもは愼重に考えておりますが、まだ具体的に何ぼにするかということも言つて来ておりません。おそらくこれは九電力会社がそれぞれ案を公益事業委員会の方に出して、公益事業委員会公聽会を開いて、その上でどうするかということを相談に来ると思いす。新聞はまつたく誤りであります。
  124. 土井直作

    ○土井委員 新聞の名前はこの際特に秘しておきますけれども、新聞には明らかに、二月二十五日周東安本長官と高橋通産大臣が会談をして、電力の値上げは大体三割四厘くらいがやむを得ないところではないかということが出ております。新聞が全然会談のないものを書いたとすればその新聞自身の権威を疑わざるを得ないわけであります。  そのことは別として、電力料金の値上げということは前後七回にわたつて行われた。しかもこれは国民生活に非常な影響力を持つわけであります。特に今度の電力値上げに対しましては、大口消費者に対して軽く、直接国民消費者に対して重く、むしろ大口消費者に対する電力料金の安いことが、直接国民消費者に対してしわ寄せされておるようなきらいがないではないのであります。ただいま周東安本長官が言われておるように、目下公益事業委員会諸君がそれぞれの地方に参りまして、電力料金値上げに対する公聽会を開いているということは先ほど伊藤委員からも聞きましたが、その結果当然公益事業委員会が何らかの結論を出して政府に答申すると思いますが、その場合、今度の新聞に発表されておるがごとく、大口消費者に対する低廉な料金は、われわれ消費者にしわ寄せされているという実態が把握できますならば、長官としてはこれに対してどのような処置をとられるか。言いかえれば国民生活の安定線を確保することのために料金に対して十分なる制肘を加える意思があるかどうか、この点を伺います。
  125. 周東英雄

    周東国務大臣 今日のところ、電力料金の決定は公益事業委員会がいたしますが、しかしこの前のときもいろいろ政府に相談をしておりますように、今後も具体的な案が出て参りまして、それが不当であるということがあれば、十分われわれの方の意見を反映させるよう努力いたしたいと思います。
  126. 土井直作

    ○土井委員 安本長官は国の経済、国民生活の安定について総合的に計画されておりますが、この際あなたの私見でもよろしいのでございますが、一体今の電力料金の値上率はどの程度でいいのかということについて御意見があれば聞かしてもらいたい。
  127. 周東英雄

    周東国務大臣 はなはだ恐縮ですが、何がゆえにかく値上げをしなければならぬのかという具体的な問題について私聞いておりません。係りの方に命じて、要求されておると伝えられる事柄についての値上げ理由はどこにあるかということをあらかじめ聞かしておるので、その上で御返事申し上げたいと思います。
  128. 土井直作

    ○土井委員 新聞等におきましては、炭の値段が非常に上つた、ことに来年度における炭の使用は、火力発電において約八百万トンくらいの石炭を使わなければならないというようなことで、コストが相当高くなつているということと、ボーナスを二箇月間織り込んでいるということと、ベース・アツプの関係等が伝えられているのであります。おそらく周東長官はそういうことを十分知つておられると思いましたが、まだ知らぬということだから知らぬ人にさらに追究してみたところで意味をなしませんので、この点は一応他日に讓ることにしておきます。  次にお聞きしたいと思いますことは、電源開発調整審議会は第七條で規定されているのでありますが、この内容を見て行きますと、御承知の通り第七條、第八條、第九條、しかもその第九條の中の審議会の構成メンバーというものが十人になつております。この十人のうち大蔵大臣、農林大臣、通商産業大臣、建設大臣、経済安定本部総務長官、公益事業委員会委員長、地方自治庁の長官、こういうふうになつておりまして、そのほかに電源開発に関し学識経験を有する者のうちから経済安定本部総裁が任命する者三名となつております。これはどうもいかにも一方的であつて、ほとんど政府与党——与党の中に入るかどうかわかりませんが、政府の大臣が全部これに入つて、今度できる会社に対する主権はほとんど政府の手中に収められている。こういう構成であります。この構成はきわめて非民主的であると私は考えているが、この点についての見解はいかがでしようか。
  129. 福田一

    福田(一)委員 お答えをいたします。今お読み上げのように政府関係の者も入つておりますけれども政府側が大体五人民間側が大体五人の率になつていると思うのであります。従つて土井さんのおつしやるほど非民主的なものとは考えておりません、しかしこの構成メンバーについてもつとしかるべきいい方法があるというお考えでありますならばお聞かせを願いまして、適当にまた御相談をいたしてもけつこうだと思つております。
  130. 土井直作

    ○土井委員 ただいま福田君の御答弁によりますと、五人と五人と言いましたね。ところが第九條の「審議会は、会長及び委員十人をもつて組織する」と書いてあつて、その「委員は左に掲げる者をもつて充てる」と書いてあつて、大蔵大臣、農林大臣、通商産業大臣、建設大臣、経済安定本部総務長官、公益事業委員会委員長、地方自治庁の長官、しかしこれは民間ではあるけれども政府の下部機関なんだ、政府機関と同一と見ていいのだ、大体七人いわゆる官庁関係である。地方自治庁の長官もやはりこれは政府の役人だ。そうしますと十名だからあと三名しか残らない。五名というのはこの公益事業委員会委員長と地方自治庁の長官を入れているのですか。
  131. 福田一

    福田(一)委員 そうです。
  132. 土井直作

    ○土井委員 これは少しおかしいじやないですか。事実上の問題としてこれらはいわゆる第三者的な、民間人と認めるということはちよつと無理があるのではないかと思うが、この点はいかがですか。
  133. 福田一

    福田(一)委員 公益事業委員会委員長とかあるいは地方自治庁の長官というようなものは、御存じのように民間から出ておりますので、そういう意味合いで五対五という勘定の仕方をしたのです。——これは間違いました。公益事業委員会委員長民間から出る。地方自治庁の長官は政府ということになりますが、その点は違つておりますけれども、これは取消してけつこうであります。少しもさしつかえありません。私の言わんとするところはあなたのおつしやるようにそれほど政府が実権を握つてこれを全部運営して行くというようなものではなくて、電源開発というものは国民的な要望にこたえて政府民間もやらなければならぬ問題だから、その大綱をきめて行くようなものをそう間違つて政府立案するというようなことはあり得ない。かように考えて御答弁をいたしたわけであります。しかし先ほども申し上げましたように、この委員の構成について今言つたような御意見がありますならば、これについて修正を加えていただくことについて私は決して反対するものではない。あなたのおつしやるような民主的な運営の方法について考慮をすることに賛成するということを申し上げておきます。
  134. 土井直作

    ○土井委員 ただいま提案者である福田君から非民主的であるということであるならば、メンバーの点については十分考慮し修正に応ずるということでありまして、まことにけつこうな御答弁だと思うのであります。またそうあるべきだと私は思うのであります。世上言いふらされておりますところの問題は、今度の電源開発に対しまする特殊会社に対しては、これは政党の伏魔殿的な要素を持つと言われております。週刊朝日だと記憶しておりますが、この中に書かれておりますところの、今度の電源開発に対する考え方にしても、政府の意図について非常な疑惑を持つておる。政府ばかりではありません。自由党考え方について非常な疑惑を持つておるということは事実であります。かつての満鉄のように、満鉄はそれぞれそのときの政府の政党の資金を出すところのものである。あるいはドル箱であるというようなことを言われておつて、満鉄は伏魔殿のように言われた。政府が選挙の場合には満鉄が幾ら、朝鮮総督府から幾ら、台湾総督府から幾らというような、当時でさえもそれぞれの関係で、あれは独立した会計で、しかも国民の視野外にあるものだから、えてしてそういうようなことが行われて、時の政権の具に供せられておつたということは、相当事実をうがつておる言葉だと思うのであります。ところが今度の電源開発に対しましては、世上そういうように言いふらされておる。これは自由党のためにも政府のためにも、また国民といたしましてもはなはだ遺憾である。こういう点については政府並びに自由党もそういうことのないことを、あり得べきことではないけれども、そういうことについては嚴に解明して国民の納得の行くようにしなければならないはずだと思うのであります。しかもこの問題について、日本電気産業労働組合では政府に申入書を出しておる。その申入れ書の中には、大体政府電源開発案は全然紙上の計画で、資金、資材、技術などの裏づけがない。第二番目には、政府の全国一社の電源開発案は、旧日発の再現であつて、土建業者、官僚政治家の暗躍となり、伏魔殿となるおそれがある。なるとは言つていない。なるおそれがある、こう言つておるのであります。これは見ようによつてはそういうことを考えられる。しかも国家的な、また国民生活に非常に影響のある至上命令とも言われておる電源開発のごとき問題については、一抹の疑惑を生ずるということも避けなければならないと思うのであります。これは諸君も同様のお考えであると思うのであります。しかし世上すでに相当の権威ある新聞なり、あるいはまたさらに雑誌なり、さらにこの直接電気事業に関係しておる電産の労組のごときも、これらのことを恐れて、これらの申入れをしておるのであります。これに対する政府の所見は一体どうであるか。また提案者である自由党としては、そういうことについてどういう処置をとられるか。言いかえれば自分たちの疑惑を、これは李下の冠、瓜田のくつということがありますから、とにかく自分がそうでなくても世上そう見ておるということについて、そういう疑惑を一掃するために、何か具体的なお考えを持つておるかどうか。この点をお伺いします。
  135. 福田一

    福田(一)委員 土井さんの御意見はたいへんけつこうな御忠告と考えるのであります。実を言えば自由党といたしましては、そういうような世上にうわさが出ることはたいへん迷惑に考えておるのでありまして、提案者はもとより、自由党といたしましても、全然そのような考えは持つておらないということをここで明らかにさせていただきたいのであります。またその疑惑が出る根本でありますが、あるいは土井さんはよくおわかりかと思いますけれども、大体この会社は発電所をつくりましてこれを讓り渡す、及び貸し付けることが任務でありまして、そういうことになりますと讓り渡しをするとき、貸し付けをするときに、そういうような問題が起きはしないかということがまず考えられ、またそれをつくつているときに土建会社との間にいろいろな問題が起きはしないかということをみな心配されるのでありますけれども、これは九つ電力会社が土建会社等に請負をさせる場合にも、やり方いかんによつてはそういう問題が起き得るのでありまして、どうしても私たちは発電所をつくらなければならぬ、こういう建前からこの法案を出しているのでありますから、その意味合において、御忠告は非常にけつこうであり、またわれわれといたしましても、いやが上にも戒心はいたし、またこの会社をつくりました場合には、十分土井さんのおつしやつた意見会社首脳部その他に伝えて、万遺憾なきを期したいと考えておりますけれども、私たちはそのような醜い考え方は絶対に持たないということをここではつきり申し上げておきたいのであります。おそらくどの党の方が天下をとられましても、今の場合においては、電源開発をやりたいとお考えになるに違いない。その場合に、われわれが席をかえて同じようなことを言つたら、さぞかし不愉快なお気持をされると思うのであります。しかし、そんな私情を私たちは絶対に持つておらないということを、はつきりとここで申し上げておきたいのであります。また自由党として、これを解明する意味合いにおいて、何か手を打つか、またはこういうような非難があるのに、なおかつあえてこれをやるか、こうおつしやいますならば、私は政治家の信念といたしまして、世上にいかなることが言われておりましようとも、みずから省みて正しければ、百万人といえどもわれ行かんといろ気魄をもつて政治を行うのが、政治家の任務だと考えているのでありまして、御忠告ではございますが、どうしてもこれをやらしていただきたいと考えております。
  136. 土井直作

    ○土井委員 ただいまの御答弁は、さもありなんと思いまして当然のことでありますが、疑惑を持たれているということについては、まことに不幸なことであります。しかし、至上命令の上に立つて国民生活の将来のために、百万人といえどもわれ行かんというところの勇気凛々たる提案者態度に対しては一応敬意を表しておきます。ただ工事施行途上において、あるいはまた讓り渡しその他の点において、いささかも疑惑を生ずるがごとき行為のなからんように、さらに十分なる御戒心をこの際希望申し上げておきたいと思うのであります。  さらに少しくこまかくなるかもしれませんが、会社の事業というものは、電源開発をいたしまして、その電力電力会社に売り渡し、貸し付ける、言いかえればこういうことでありますが、この規則の二十二條の第一項の四号に、「前各号に掲げるものの外、その目的を達成するために必要な事業」と書いてあります。一体電源会社としてこれをつくつてあげて、それから後必要な事業としてどういう事業をやるのか、どういう事業が含まれておるのか、あるいはそういう事業の目安があるのか、この点について聞かしてもらいたいと思います。
  137. 福田一

    福田(一)委員 お答えをいたします。建設途中におきまして、一部の卸売をする、また讓受人がきまらない場合において卸売をするという仕事のほかに、たとえば補償関係の問題とか、補償をした場合に、どうしてもその仕事をまだしばらくの間は継続して行かなければならないようなやむを得ざる事情が起きる、こういうようなことも考慮をいたしまして、その條文をつけたわけでありまして、それほど大きな問題にさるべきような仕事をやろうという考えは全然含まれておりません。
  138. 土井直作

    ○土井委員 さらにお聞きしておきたいと思いますことは、この法案の第二十六條の中に土地の立入り等について書いてあります。前文は省略いたしますが、この二十六條によりますと、「他人の土地に立ち入り、又は支障となる竹木を伐採させることができる。」かように書いてあります。これは他人の財産権を無視した行為でありまして、憲法の二十九條には、「財産権は、これを侵してはならない。」と書いてある。従つてこの法律案が国会を通過いたしますと、この法律案が憲法二十九條より優位になるとは、われわれは考えておらないのであります。従つて他人の財産権を無視した一方的な考え方、二十六條の中の一項目、二項目、三項目、四項目、五項目というものは、ことごとく他人の財産権を侵害するような内容であります。もとより公共事業をやりますときには、当然他人のそれぞれの財産を侵害する場合、あるいはこれを合法的に取上げるという場合がしばしばあるのであります。特に憲法の二十九條で、財産権を侵してはならないという嚴正な規定を設けたのでありますが、法案通過と同時に、こういうようなことがしばしば行われると思いますが、これに対する見解はどうであるか。要するに持主との談合によつてというのではなしに、この法案から言えば、一方的に処置できることになつておる。一方的ということについて非常な疑惑を感ずるのですが、この点について見解を伺いたい。
  139. 福田一

    福田(一)委員 お答えいたします。工事を行います場合に、他人の土地に立ち入り、あるいは竹木を伐採するというようなことができませんと、どうしても電源開発を行うことができないのであります。しかし、個人の権利を不当に侵害することがあつてはなりませんので、知事の許可も受ける。知事はその旨を権利者にあらかじめ通知しておきまして、意見を述べる機会を与える。また発電会社は、これによつて生じて損失の補償義務を負うことにしておるのでありまして、この種の立法は公益事業にはしばしば例のあることは、土井さんも御承知の通りでありまして、特にそのような注意を払つておりますので、憲法にいうところの、私有財産権を侵害するというようなことはないと考えておるわけであります。
  140. 土井直作

    ○土井委員 公益事業を行います場合において、しばしばこの種の事項が起ることは私も万々承知をしております。ただこの法案内容によりますと、一方的に処理されるおそれが多分にあるのであります。また第五項目の中において「会社は、第一項の規定によりその職員に他人の土地に立ち入り、又は竹木を伐採させたときは、これによつて生じた損失を補償しなければならない。」と書いておりますが、この補償は会社の一方的な認定によつてやるのか、あるいは第三者的な中立的な立場における者の認定等がいるのかどうかということについても、詳細をきわめておらないのであります。言いかえれば、公益事業をやる場合において、憲法に規定されておる財産権は、万やむを得ざる形として侵さなければならぬような場合があるが、それについては万全の補償が必要である。要するに、相手方の十分なる納得が必要であるということが前提でなければならぬ。ところが、第五項目において書いてある補償の内容については、その補償は一体どういう形で行われるのかということ、もとよりこれについては施行令が出るだろうと思いますけれども、しかし、実際上の問題として一方的に片づけられるということは非常に困るわけであります。ことに知事が問題を処理するといいますけれども、今日知事は民選ではあるけれども、まだいわゆる官僚的な、あるいは昔の官尊民卑の弊風があつて、いわゆる一般国民としては、自分の正当なる権利を十分に発言するというようなことも、時には非常な困難を伴う場合がしばしばあるのであります。これらに対する具体的な対策、これをどういうふうにお考えになつておるか、お伺いしたいと思います。
  141. 福田一

    福田(一)委員 お答えをいたします。従来のこの種の場合の例は大体当事者の同意ということがなければできないことになつております。補償の問題は当事者の同意を得なければ、民事訴訟によつて解決いたすことになつておるのであります。従つてこの権利は侵害されないものと思います。
  142. 土井直作

    ○土井委員 大体時間も参りましたし、私が一応お聞きしたいと思うことも盡きたのでありまして、この程度で私の質問は打切りたいと思うのでありますが、電源開発に対する至上命令であり、また国民の利害と不可分の関係にありまするこの種の事業に対して、これができるだけ完全に目的を達成するということのためにさらに十分なる関心を持つて提案者は言うまでもなく、これを担当するところの政府並びにその仕事を行いますところの各会社等に対しましても、万遺漏なきを期するように、特にその点について御配慮をお願い申し上げまして、私の質問を打切る次第であります。
  143. 中村純一

    中村委員長 時間も大分経過いたしましたので、本日はこの程度にいたし、次会は明日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時十二分散会