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1952-06-02 第13回国会 衆議院 通商産業委員会運輸委員会連合審査会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月二日(月曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員   通商産業委員会    委員長 中村 純一君    理事 高木吉之助君 理事 中村 幸八君    理事 山手 滿男君       阿左美廣治君    江田斗米吉君       小金 義照君    土倉 宗明君       永井 要造君    村上  勇君       高橋清治郎君   運輸委員会    委員長 岡村利右衞門君    理事 原   彪君 理事 淺沼稻次郎君       岡田 五郎君    尾崎 末吉君       玉置 信一君    坪内 八郎君       江崎 一治君    石野 久男君  出席政府委員         通商産業政務次         官       本間 俊一君         通商産業事務官         (通商機械局         長)      佐枝 新一君         航空庁長官   大庭 哲夫君  委員外出席者         通商産業委員会         專門員     谷崎  明君         通商産業委員会         專門員     越田 清七君         運輸委員会專門         員       岩村  勝君         運輸委員会專門         員       堤  正威君     ————————————— 本日の会議に付した事件  航空法案内閣提出第一七九号)  航空機製造法案内閣提出第二二六号)
  2. 岡村利右衞門

    岡村委員長 これより通商産業委員会運輸委員会連合審査会を開会いたします。  航空法案及び航空機製造法案一括議題とし、質疑を続けます。質疑の通告がありますので順次これを許します。尾崎末吉君。
  3. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 本間政務次官に若干御質問申し上げます。大体総合的の質問並びに各條章にわたつてのおもな点につきましては先般御質問申し上げたのでありますが、その他残つたごく若干の点について御質問申し上げたい。  その中でまず最初に、先日お出しになりました「航空機生産行政所管について」という資料、すなわち通産省航空機生産をやつた方がよりよいのだ、こういう御答弁に基いて同僚の委員から、そのよりよいということについての資料出してもらいたい、こういう要求に基いてお出しになつた資料がこの「航空機生産行政所管について」ということでありますから、その中で二・三お伺いしてみたいのであります。この中の一ページのしまいから四行目、(一)のところであります。「言うまでもなく、航空機工業は、最高度技術を必要とし、且つ、金属、機械器具、化学、繊維等の各産業に亘り船舶、鉄道車両とは比較にならないほど広汎な関連生産部門を基底としその夫々につき材料、部品完成部品、組立、完成品の数段階の企業構成を包含するピラミツドの頂点に立つ典型的な綜合工業であるから、之等の原材料、部品装備品加工機械等多岐に亘る関連工業工業技術一般とを所管している当省において、総合的産業政策の見地から航空機生産(修理、改造、再生を含む。以下同じ。)行政を行うべきである。特に、航空機のごとく性能精度強風等に関し厳格な條件を要求されしかも多くの数量を必要とするものにあつては、その多種多様な基礎資材品質確保と、之等の円滑な調達とが生産の遂行にあたり極めて重要な條件であり、」こう出ておる。まつたくこの点はこの通りであります。この通りであるから、通産省所管をして行くことは、今読み上げました「特に、航空機のごとく性能精度強度等に関し厳格な條件を要求されしかも多くの数量を必要とするものにあつては、その多種多様な基礎資材品質確保と、之等の円滑な調達とが生産途行にあたり極めて重要な條件であり、」ここまでが通産省所管といたしますと、そのあとの「これがためにはその行政所管資材行政及びこれら関連産業に対する行政所管する当省に統合一元化することが、」これが必要でなくなつてしまつて、その次の「過去の行政経験に徴して明白な通り航空機生産を量的、質的に調整確保するための必須の要件である。」ここのところは航空庁所管すべきである。すなわち通産省資材行政に対する——高度の技術を要し、たくさんの総合部品を必要とする優秀な資材を集めておいて、それから先は、安全性に必要な、航空機生産という技術と、それから航空機運航をやる操縦士、また航空機に乗る国民大衆、これらの人々安心して乗れる安全性ということにかわつて来るので、このお出しになつた資料の中の、さつき申し上げました前の方は、まさに通産省所管として行かなければならないことであつてあとの方の今申し述べましたことは、航空庁所管であつて航空機生産ということと安全性ということ、その安全性に伴ういわゆる旅客の安心を求めて行くという考え方で行きますと、その点今通産、運輸両省で言つておることが調整しやすくなるのではないか、こう思われるのでありますが、その点について御見解を伺いたいと思います。
  4. 本間俊一

    本間政府委員 当委員会におきましてもたびたび申し上げましたように、御承知のように航空機工業につきましては、七年間のブランクがあるわけであります。日本航空機工業は一体どこから始まるかというような問題も、できるだけ実際に即して考えなければならぬわけであります。従いまして日本航空機工業が、単に日本民間航空事業者が使います飛行機から始まるか、それとも外国生産をいたします飛行機部品工業から始まるか、あるいはまた日本が濠州でありますとか、ニユージーランドあるいはインドの方面、東南アジアの方面でありますとか、そういうところの需要を満たす意味工業から始まるか、これはいろいろ見方によつて考えなければならぬと思います。要するに飛行機安全性というものはどこから出て来るかということになると、やはり日本飛行機工業に従事いたしまする業界が漸次進歩いたして参りまして、そこにしつかりした技術なり制度が確立せられて、初めて航空機の安全というものが総合的ににじみ上つて来るのだと私は思います。ただ日本民間事業者が使います航空機だけで、日本航空機工業のそろばんがとれるかということも十分に考えなければならないわけであります。ことに七年間の空白があるわけでありますから、施設にいたしましても、あるいは飛行機に使います素材にいたしましても、單に今素材工場でつくつておりまする資材を集めるというだけではとうてい間に合わないわけでありまして、先刻来も申し上げましたように、日本機械工業全般を私どもが検討いたしますると、日本機械工業の隘路はやはり素材工業というところにあるわけでございます。ことに日進月歩の非常な高度の技術を必要といたしまする飛行機素材というものは、日本機械工業一つの課題でもあると思うわけであります。従つて飛行機安全性というものは、私が申しましたように、素材その他を製造いたしまする日本航空機事業の全体のレベルがどうしても上つて来なければならない。そこで初めて飛行機の安全ということが実際ににじみ出て来るものと私は考えるのであります。従つてどういう機械を入れろか、あるいはどういう素材のための輸入をするかというほんとうの第一歩から始まるわけでありますから、この工業を、日本実情に即しまして、できるだけ発達しやすいように育ててやらなければいけないと考えるわけであります。御承知のように、戦時中の日本飛行機工業終戰になつてやめたのでございますが、それらの飛行機工場はほとんど賠償指定工場になりまして、それが皆それぞれ自動車部品をつくるとか、自動車工業というようなものに転換いたしておるわけであります。それらのめんどうも一切通産省で見ておつたわけでありますから、ここにやらせる方が、日本実情から申しまして日本航空機工業発達には一番都合がいい。で問題は、将来日本飛行機工業技術がどれだけ伸びるかということは、やはりこの生産を一元化して、できるだけ製造事業者めんどうをかけないで行くということが基本じやないか、それができ上つて、初めて飛行機安全性ということがにじみ出て来る、こういうふうにも私ども考えておるわけであります。もちろん私ども説明で言い盡せないのでございますが、やはり今日までの日本機械工業の実態から申しますれば、通産省にやらせる方が自然であり、その方が将来の日本航空機工業発達の上からいつても望ましい、こういうふうに確信いたしておるわけであります。
  5. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 御答弁要旨がだんだん私の考えに近づいて来ておるのであります。端的に申しますと、今お述べになりましたあとの方は全然同感であります。七年間もブランクがあつたから、いわゆる製造技術についても——これは先般専門家参考人として来てもらつていろいろ説明を聞いてみますと、ブランクは七年間だが、実際は国際水準に十数年間遅れておる、これは皆経験者の一致した意見であります。そのブランクを取返すためにはどうすればいいか。やはりこれは技術から先に考えて行かなければならない。そこで今お述べになつたような、非常にたくさんの素材が必要だ。従つて素材行政というものが非常に大事なことなんだ。また軍需省にあつたいろいろの工場機械等が一部工場に返されて、これを通産省所管しておる。その通りでありますから、そこで先ほど申し述べましたように、その素材行政航空庁に持つて行け、工場の監督やその他のものをすべて航空庁に持つて行けというのではないのであります。いわゆるそうした工場充実発達をはかるのも、あるいは多くの素材を円滑に入手し、しかもその素材の非常に優れたりつばなものができるようにはかつて行く、これらのことを通産省でおやりになるのは当然であつて、そうなければいかぬことだ。そこでそういうものを集めてそういう基礎の上に立つて航空機生産というものは、これは今言う生産過程においても強い検査を必要とする。こういうことが国際民間航空條約の規定の中にもちやんと出ておるのでありますから、そこでその生産から運航に至るまでを航空庁というものに一本化する必要があるのではないか、こういうのでありますから、御答弁になつた趣旨と、私の考えとは大分近づいておるように思うのであります。特にまた考えなければならないことは、御答弁になつた趣旨の中で、日本で使う民間航空機だけの生産ではなくて、あるいは外国から注文が来る、軍需用航空機などというものもつくらなければならないかもしれない、あるいはまた多くの各国から注文が来る民間航空機その他のものをつくらなければいかぬという、いわゆる大量生産を必要とするような場合も出て来る。そういう場合に処して通産省所管しておつた方がいい、こういうことなのでありますが、そういうようにわが国航空機製造技術が非常に発達をいたしまして、これに対して軍需用航空機なり、諸外国からの注文なりが殺到して参るときになりますれば、当然これは航空省というものができ上つて、その航空省においてやつて行かなければならない時代は必ず来る。私ども必ず来ることを予期している。でありまするから、そういう時代が来ましたら、航空省というものの中にそれこそ何から何まで一本に持つて行かなければいかぬ、こういうことになるのでありますから、それらのことを予想いたしますならば、急いで今出ておるような航空機製造法——過般も申し述べましたように、この法案のどこを見ましても、いわゆる製造助長発達に必要な何らの規定も持たないで、ただ届出であるとか、検査であるとか、証明であるとか、こういうことだけを規定した航空機製造法というのは急いでつくる必要はないので、ゆつくり御検討になつて、いわゆる航空機生産助長という目的のはつきりした航空機製造法をつくつてつて行く。今これをやつてみましても、なかなかわが国における航空機製造というのは一年や二年のうちにはできない。少くとも三年間ぐらいたたなければその時代が来ない。でありますから、何もそう急いで今おつしやつたような構造の非常に優れた航空機製造時代を予想した航空機製造法をつくらなくても、ゆつくり一つ用意してかかつて行く、こういうことでいいのではないか、こういうことなのであります。でありますから、そういうことのためにさき申しましたような、七年間のプランクを取返すための航空機運航なり、あるいは製造技術なりを高めて行く、こういうことのためにはやはりさき申しましたような素材行政なり、あるいは工場指導なりというものは通産省でお持ちになるが、そういうところで集めた多くの素材部品を集めてそうして航空機をつくつて行く、こういうことのためにはその生産過程においても適正なる方法で検査もやつて行ける。検査をやつて行つてそれらの事柄が一つにまとまつて来て耐空証明を出すのに安心して出せる、そのでき上つた航空機国民大衆安心して乗れる、こういう行き方でやつた方がいいのじやないか、こういうことでありましてだんだん御筆の要旨と私の考えておることと近づいておるのでありますが、この点はいかがでありますか。
  6. 本間俊一

    本間政府委員 当委員会でも申し上げましたように、すでに軽飛行機製造許可の申請が来ておりますし、本日もイギリス某社から人が見えまして、日本機械工業を調べて日本飛行機生産を始めたいというようなことで、けさもすでにイギリス某社首脳部が見えているわけであります。従いまして日本の今後の航空機生産の衝に当るものが、制度をできるだけ早くきめなければならぬわけでございます。そういう意味から申し上げまして、補助金あるいは研究費補助というような、具体的な補助策を盛られていない。制度は遅れているというようなことは、日本機械工業の現状をよく御存じになつておられる尾崎委員は、その点私と同感であろうと思います。  それから検査で行けるのではないかということですが、私は率直にこう思うのです。それは検査から安全性が本質的に生れて来るのではないのでありまして、やはり日本航空機工業技術的水準が上らなければ、実際は安全性というものがほんとうににじみ出て来ないわけであります。従いまして飛行機の特殊な性格にかんがみて厳重な検査制度なり、あるいは工場自体検査の科学的な方式をきめるわけでございますけれども、問題は日本航空機工業技術的な水準ということになろうと思います。御承知のように今いろいろな施設をいたしましても、あるいはそれ以外に必要な外国から機械を輸入するものにいたしましても、外貨関係がありますから、一々通産省で具体的に審査いたしましてそうして外貨をつけて輸入する、あるいは素材にいたしましても、たとえば一例を申しますれば、日本特殊鋼をつくるための原鉱はどこから入れる、それに対してどういう加工方式をとるというようなことを、ただいまやつているわけでありますから、ここでやはり生産の責任を持ちまして、そうして行政を一元化して考えて行くということが、日本の今後の航空機工業発達する上において必須の條件であると考えているわけであります。尾崎委員日本機械工業の実際につきまして非常に御堪能でありますから、その実際を十分御認識をいただけることと存じます。
  7. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 ただいま御答弁になりましたように、戦時中私はずつと三十六の工場を持ちまして、朝日航空という航空機会社で非常に苦労をして参つて、おつしやるように素材のことから、生産のことから、非常に苦い体験をなめて参りましたので、これを深く掘り下げた御質問を申し上げておるのでありますが、そこでちよつと伺つてみますが、これはまだ大きな質問を一、二残しておきまして、その前提として伺つておきますが、戦争中に軍需省におつた航空機製造技術者、多くの職員、いわゆる幹部職員と申しますか、そういう人たちは現在どこに——むろん全部残つているわけではありませんが、それらの人はどこに今帰属しておられましようか。
  8. 本間俊一

    本間政府委員 御承知のように、軍需省当時、軍需生産関係をいたしました、その中でも飛行機生産関係をいたしました人は非常に多いのでありまして、ほとんど通産省の各部門にそれぞれおります。ただいま技術屋関係は、御承知のように主として機械局におります。飛行機生産関係した人は通産省のそれぞれの方面にただいま相当多数に残つております。従いまして技術を持つておられる方々で、たとえば今民間自動車生産工場におられる人でありますとか、その他の大体どういうところにどういう人がおられるということもほぼわかつておる、こういう状況でございます。
  9. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 飛行の技術にいたしましても、生産技術にいたしましても、いわゆる指導的な立場におられた人々の大方目ぼしい人は航空庁の中に入つておられるのじやないかと思つておるのですが、この点はどうですか。
  10. 本間俊一

    本間政府委員 私航空庁の中にどういう方がおられますか、詳細に知りませんので、これは機械局長の方からでも御答弁申し上げたいと思います。
  11. 佐枝新一

    佐枝政府委員 お答え申し上げます。今政務次官のお答え申し上げました通り、もちろん機械局におりますが、あるいは旧航空兵器総局にいた技術関係者は、現在の地方通産局ですが、これの前身におりまして、旧軍需工場整理等に当つておりましたが、その後引続きいろいろな部局に属しております。たとえば賠償工場管理とか、また工業技術庁関係等にも入つております。航空庁のことは実はどういう方がどいうところにおるか詳しく存じませんので、あるいは大庭長官も見えておりますから、お答え申し上げたらどうかと思つております。
  12. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 大庭長官からこの問題についての御答弁伺つておきたい。
  13. 大庭哲夫

    大庭政府委員 お答えいたします。御承知のように航空庁終戦と同時に廃止になつたわけでありますが、そのときの閣議の決定事項にもよりまして、将来の民間航空事業というものを再開する一つの礎として残るべく残されたわけであります。従いまして残つた人数の中には今後の民間航空輸送事業あるいは航空機製造事業に必要なエキスパートをかかえ込んで、それらに五、六年間世界各国の事情あるいは航空法に基く検査規則、その他を全部調べ上げさせまして、現在その教育課程を終りまして、再発足すべく準備を終り、待機中であります。
  14. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 機械局長の御答弁大庭長官の御答弁との間に相当相違があるようでありますが、私が伺つてつたのは、終戦と同時に軍需省がなくなつて軍需省がやつてつた仕事——もともと戦争中戰争目的に沿うようにするために商工省をなくして軍需省に移した、こういういきさつでありましたために、軍需省を廃止してしまつて、その軍需省から商工省の方にかわつて行つて、将来航空機製造事業並びに航空運航事業というものが再開されることのあることを予期せられて、これらの指導的役割をなしておられた人々は、ただいま大庭長官が御答弁になつたように、大体まとまつて航空庁の中に入つて行つておられる、こういうふうに私ども承知しておつたのでありますが、その点は少し御答弁が食い違つておるように思いますので、機械局長の御答弁をもう一度お願いしたい。
  15. 佐枝新一

    佐枝政府委員 終戦直後、将来の航空機運送事業なり何なりの再開を目途として、軍需省から特にまとまつて航空庁に移られたということは私は存じません。ことに御承知通り航空兵器総局のうち技術関係の方は、いろいろあと整理とか、あるいは引続いて航空機工場賠償工場になつた、その賠償工場管理全保というような関係でそれぞれへ行かれた。あるいは工業技術庁前身を、何と申しますか忘れましたが、それに中央地方を通じて入られた方も相当あるわけであります。当時航空兵器総局におられた純然たる職業軍人、これはもちろん通産省にも航空庁にも入れないのですが、それ以外の技術者方々航空庁にまとまつて行かれたということは、私全然存じておりません。
  16. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 そこで第二の御質問を申し上げますが、戦争が始まる前には航空局というものは逓信省の中にあつて、そうして生産から運航に至るまで一元的にやつてつたのでありますが、その逓信省にあつたものがいわゆる戦争目的のために商工省と一緒になつて軍需省というものの中に入つて来た、こういうことなのでありますけれども、その逓信省航空局時代にやつて来た実績の上からいつても、やはり相当まずい点があつた、たとえば生産の方は右の方の省がやり、運航の方は左の方の省がやる、こういうふうに二つの省にわけて行かなければ非常な支障を来した、こういうような実例が逓信省航空局時代にあつたのでしようか、どうでしようか。大体おわかりになつていれば伺つてみたいと思います。
  17. 本間俊一

    本間政府委員 お答えをいたします。御承知のように日本航空機の歴史を顧みますと、御指摘のようなところから始まつたわけでございますが、何と申しましても大正時代は問題にならないのでございまして、昭和に入りましてから、要するに陸海軍がその必要を感じまして力を入れ出してから急速な進歩をいたしたわけでございましてしかも昭和十年代になりまして非常に進歩をしたのでございます。技術の面におきまして、逓信省がやつてつた当時は非常に遅々としたものであつたと私は承知いたしております。御承知のように陸海軍が非常に力を入れたのでありますが、これがまたいろいろな問題を当時生んだのでありまして、素材からその他の生産に必要ないろいろの基本的な仕事をしておりました商工省へ参りまして軍需省ということになつたわけでありますが、やはりそこへ来てやる方が一番実際に適しているというふうな考えをもちまして、軍需省ができたわけでございます。私どもはやはり、先ほども申し上げましたように、これから出発をし、これから育つて参ります工業は、できるだけ生産は一元化させて、そこで相談をし、そこで指導させて、あまりめんどうなことは避けるべきだ、それがまた日本航空業務発達する上において非常に重大な要件である、こういうふうに考えております。
  18. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 他の委員の御質問もありましようから、なるべく急ぎますが、今御答弁になつた中にありますように、非常にたくさんの素材部品等を寄せ集めることは非常にむずかしいことだ。これはむろん私どももそう思います。またこれらの素材なり部品なりをよく研究し、これに高度の技術を加えてりつぱなものをつくり上げて、しかもこれを集めなければならない。これはよくわかるのでありまして、その大事なことは認めるのでありますが、そのことと、航空機そのものが、安全性確保され耐空証明等のある航空機であつて飛行機を利用する国民大衆安心して乗れる飛行機であるかどうか、また航空機運航する技術者安心して運航ができるかどうかということは違うのであります。早く申しますれば、運航する人が安心のできる、その人がやりやすいようなやり方によつてつくられる航空機でなければ、安全性確保はできないのだ。もう少し言葉をかえて申しますれば、事人命に関することであつて、地上を走つておる自動車や軌道の上を走つておるものと違いまして、最も危険のある空中を、しかも超スピードをもつて遠い距離の間を飛ぶものだから、一にも二にも安全性確保が必要なのだ。こういう建前考え方と、一方多くの素材部品等を集めなければならない。これらのものが優秀なる部品であり素材でなければならない。両方とも大事なことであるが、一体国民人命という建前から考え安全性というものと、一方の素材その他のもののやり方に非常に必要なことが多いのだという、このどつちを主として航空機製造というものを考えなければならぬか。こういうことが一つと、これに関連しまして、今言つたよう安全性を第一とする検査なり、安全性を第一とする生産なりというものは、やはり運航の面のことを十分に考えてやらなければならない、こういうことに返つて来るのではないかと思われる。ですから、素材行政なり、あるいは工場の育成なりについてはむろん通産省でおやりにならなければならないが、航空機生産なり、また航空機生産過程における大事な検査なりは、やはり一本に返つて行かなければならない、こういうことになるのではないかと思われるのでありますが、このことについて重ねて御答弁をお願いしたい。
  19. 本間俊一

    本間政府委員 お答え申し上げます。今日の日本機械工業の現状から申しまして、かりに航空庁の方で飛行機生産をやるにいたしましても、これは航空庁だけではできないのでありまして、工場の設備から、その素材から、原料から、機械外貨の割当てから、すべてやはり通産省へ参りまして相談をしなければできぬわけであります。従つて委員会におきましても、私がるる申し上げましたように、やはり生産ができるだけすなおに伸びる素地をどうしてもつくらなければならぬということが、何と申しましても一番大事な点だと考えるわけであります。従つて安全性というのは本質的には安全検査から生れるものではないわけでありまして、やはり日本航空機工業技術発達しやすい環境のもとにどう育つかということが一番重要なポイントになると思います。その日本航空機工業技術が伸びやすい環境でだんだん育つて参りますれば、そこから初めてほんとう意味の安全ということが出て来るのだと私は考えるのであります。飛行機人命に一番重大な関係を持つものでありますから、どうしても安全を保たなければならない。その安全を本質的に導き出すためには、飛行機生産関係をいたします製造事業者をできるだけ伸びやすい環境のもとに置かなければならぬと私ども考えるわけであります。しからば今後の日本航空機工業を伸びやすい環境に置くにはどういうふうにしたらいいかというところに、おのずから論議の中心が参るかと思うわけでありまして、その点から私どもはたびたび申しましたように、今日の日本の現状から申しまして、生産通産省に担当させる方が、今後の飛行機工業が伸び得るよき環境をつくることになる、こういう主張を申し上げておつたわけでございまして、どうかその点を御了承賜わりたいと思います。
  20. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 だんだん近づいて来たようであります。航空機工業がすなおに伸びやすいようにするためにという言葉がありましたが、その通りであります。それならこの航空機工業をすなおに伸びやすく、発達しやすいようにするために今おつしやつた助長、育成ということがこの航空機製造法の中に盛られてあるかというと、どこを読みましても、私の見たところではないのであります。さつき申しましたような説明であるとか、検査であるとか、こういつたものがずつと各條章の中に並べられてあるだけで、今御答弁になつたような、すなおに伸びる、あるいはすなおに発達せしめる、こういう助長、育成の行政関連したことが一つも出ていないのであります。でありますから、これは少し言い過ぎるかもしれませんが、もう少しこれらの問題になりましたようなものを十分に御計画になつて、その目的を十分盛つたところの法律案をお出しになつた方がいいのではないか。しかもまた先ほど御答弁になつたように、ひとり民間航空機だけでなくして、軍事用の航空機注文なり、諸外国からの航空機注文が来るときになりますれば、当然これは運輸省だ通産省だと言つておれなくなつて航空省というものができなければならない。そういう運命をわれわれは政治家として予想する。だから何もそう急いで十分目的の盛られてない法律案をお出しにならないで、十分用意をしてかかつてみたらどうか、こういうことです。ざつくばらんの気持で言つておるのであります。
  21. 本間俊一

    本間政府委員 先ほども申し上げましたように、日本飛行機工業はまだ始まつていないわけであります。この航空機工業補助の予算を組めと言われましても、尾崎委員も予算委員でその間の事情はよく御承知だと思います。従つてそういう意味のことが盛られていないから遅れてもいいじやないかという議論は、どうも私承服するわけに参りません。現に軽飛行機製造許可の申請が来ておりますし、先ほども申し上げましたように、外国人々も見えております。今朝もその要務のために役所に来ておるわけでありますから、製造法案でともかくも出発をいたしておきまして、そうして航空機工業の今後の実情に沿いまして、そういう助長の方法を講じで行くということにならなければならぬと思います。御承知のようにこの法律案が出まして、ただいま御指摘のような補助金とかなんとかいうようなものはございませんけれども所管が明確になりまして、この法律案が出発するということになりますれば、前にも申し上げましたようにやはり私ども所管をいたしておりますいろいろな研究あるいは工業化試験の補助金どもございますし、外貨の問題、設備の問題、そういう問題をすべてこういう方向に持つて行き、できるだけ航空機工業が出発しやすい環境を漸次整えて行くということが当面の政府といたしましてはぜひともとらなければならない方策でありますので、そこに力を注ぎまして、今後の航空機工業実情に即して御趣旨のような対策は政府の方でもやらなければならなと思いますし、また国会の方でも当然そういうような議論が盛んになるだろう、こういうふうに私は考えるのであります。そのために現に日本飛行機工業を起したいという機運は実際上私の言葉だけでないのでありまして、そういうときにまだこの制度を出発せしめないでもよいというような議論は、私ども承服しかねるわけであります。
  22. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 私の御質問申し上げたいことは、たとえば軽飛行機注文参つておる、こういうものに対しても当面の問題として処理して行かなければならない。こういうことはこの航空法を立案いたします前に、航空法制定審議会というものをつくつて、二十五名の学者なり経験者なり専門家なりが集まつて愼重審議をせられた結果、いわゆる生産から運航に至るまで一元的の行政をやらなければいけないという答申があつた。むろん二十五名の委員の中には、二十四名は同じ意見であつて、一名の方から少数意見が述べられたという報告書が出ておることを私どもは見ておるのであります。ですからこの趣意にのつとつて、現在出ておるこの航空法案でなくて、さきに航空法制定審議会の答申に基いてつくられた航空法の中に今答弁になつたような軽飛行機の修理、こういうもの等があつた場合に処理して行くことができるようになつてつたと思うのであります。でありますからそうした当面の問題はこの航空法の中で規定してやつて行けるのでありますから、そうやつておいて——さきに御答弁になつた助長育成の行政ということはもちろん予算ということも必要でありますが、私は予算だけを申しておるのではないのでありまして、たとえば工場施設なり改善なりのやり方、あるいは技術員の養成なり、その他いろいろのやり方航空機製造の方法を進捗させて行くことができるのだと思つておりますが、そうした各種のものを盛つた助長育成行政というものの目的航空機製造法の中に入れたらどうかということを考えておるわけでありまして、当面の軽い問題は、航空法制定審議会で申答せられたようなそういうやり方でやれるのではないかと思うのでありまして、決して何もかもほつておけというのではないのであります。その点はひとつ誤解のないようにしておきたいのであります。
  23. 本間俊一

    本間政府委員 当委員会尾崎委員にもたびたび申し上げたわけでありますが、私はどこでやらなければできないというようなきゆうくつな考えを持つておるのではないのでありまして、機運が非常に濃厚になつております今日の機械工業界の現状にかんがみまして、軽飛行機とか外国で使います飛行機などを日本生産いたします場合に、やはり貿易の関係であるとか、あるいはいろいろな関係を持つて来るわけでありまして、そこは相談しなければ動かぬわけであります。従いまして今日機械工業全般におきまして、あるいは生産工業全体を見通しまして、通商関係一切を見ております通産省にいろいろ相談をしたり、あるいは意見を聞いたりしなければ動かぬわけでありますから、そこでその所管をいたしまして、そうしてめんどうを見て参りますことが、今日の現状から見、また事業をやろうという方から申しましても、一番助長育成することになる、こういう見解を持つて私は申し上げておるわけであります。
  24. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 これで質問を終りますが、助長育成の間接的のやり方にもなるのだという御答弁のようでありますが、そういつたドルの関係をどうするとか、あるいは外国から輸入する素材やその他のものをどうするとかいうことは、政府の中で話合つて行けばおのずからそういう方法は私は出て来るのではないかと思うのであります。なおまた通産省で、さつき申しましたように素材を集める、部品を集める、高度の特質を持つたものを集める、そういうような行政をおやりになれば、そのあとのことはそちらの方の面からは心配しなくても、生産運航の方にまかせればいい、こういうことになつて来ると思うのでありますから、これらの点につきまして御研究、御構想になつていただきたい。こういう希望を申し上げて他の委員質問を譲ることにいたします。
  25. 岡村利右衞門

    岡村委員長 江崎一治君。
  26. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 簡単にお伺いしたいと思いますが、この航空関係法案につきましては、再三再四にわたつて連合審査が行われたのでありますけれども、結論らしいものはいまだ出て来ないのであります。社会主義社会であればこういう二重行政の法律がありましても、多々益々弁ずで発展的ないい結果を生むでありましようけれども、資本主義社会では、必ず利害が錯綜する関係から、こういう二重行政をやりますと、将来なわ張り争いといいますか、そういうことからてんやわんやの騒ぎが起るにきまつていると思います。私は技術者として過去の経験からこういうことをはつきり確信を持つて言い得るだろうと思うのです。資本主義社会を謳歌せられる吉田内閣がこういつた航空行政に対して二重行政の裁定をされることはまつたくなつておらぬと思うのです。私はこの二法案をさつそく元にもどすべきが至当であると思いますが、どう思われますか。
  27. 本間俊一

    本間政府委員 行政やり方で資本主義社会と社会主義社会とに相違点があるというお話でございますが、これは相違もありましよう。また同じ面もあろうかと考えております。私も当委員会において、たびたび申し上げておりますように、航空機の場合でも運航をいたします事業者の方と、製造をいたします事業者の方とは画然と違うわけでございます。従つて運航をいたしまする事業が二元的な監督を受けますと同様に、製造いたしておりまするところも多元的な行政の監督を受けるということになれば、これはお説のようにその弊害はいろいろ出て来るだろうと思うのであります。従つて生産は一元化したいという考え方で私どもも進んで来たわけであります。いずれにいたしましても、利用いたしまする方はもちろん大事でございますけれども、問題はつくります業界ができるだけ簡單な行政のもとで、できるだけめんどうなことのないようにしてやることが、今日の機械工業一つ要件にもなつておるわけでありますから、そういう意味合いで生産を一元化いたしまして、そしてつくります業者にできるだけめんどうをかけたくないと考えているわけであります。  私どもの基本的な考え方はただいま申し上げた通りでございますが、しからばその面で多少筋の通らぬ点があるのではないかという御指摘でございますれば、私もそれは承認するわけでございますが、しかし同じ政府部内でございますし、この法案がどういうところに主眼が置かれて、どういう精神が大きく流れておるかというようなこともおのずからわかるわけでございまして、協調して参りまして、事業界における多元的な行政の弊害をできるだけ少くして行きたい、こういう考えを持つておりまするので、ただいま政府の方でこれを撤回するというようなことは毛頭考えておりません。
  28. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 ただいまの御答弁によりますと、多少輻湊する点があつても、二重行政的な要素があるとしても、それは政府部内のことだから、お互いによくわかつておるから、事は片づくのだというような御説明でございましたけれども、事この法案に関しましては、自由党内におきましても、改進党内におきましても、社会党内におきましても、共産党を除いてほか全部は、通産関係委員通産省の意見を支持し、運輸省関係委員は運輸省案を支持する、運輸省の肩を持つといつたようなことで、なかなか結論が出ないようであります。これは実際問題としては、先ほど申しましたように、必ず利害が輻湊して参りますので、将来必ず大きな問題が起ると思うのです。今の次官の御説明では納得できないのです。先ほどから同じ説明を何回も聞きましたけれども、納得できないのです。その決定的な御回答を願いたいと思います。
  29. 本間俊一

    本間政府委員 御承知のように、製造法案でも、製造業界に御趣旨のようなめんどうな問題を起したくないというような関係から、航空庁の方でいわゆる安全性検査をするということになつておりますが、その場合もただいま申し上げましたような趣旨を尊重いたしまして、通産省職員にやらせるというような配慮が講ぜられておるわけであります。私も、正直に申し上げまして、その点多少心配の点もあるのでございます。しかし先ほども申し上げましたように、日本航空工業がどの辺から起つて参りますか、あるいは部品製造するというようなところから入りますか、あるいは軽飛行機生産するというようなところから入りますか、それともまたいろいろな日本の近所の国々で使います飛行機の組立てというようなところから入りますか、これは今ただちに断定はできないかと思いまするけれども、やはり問題は、メーカーの方が非常に多元的な行政のもとで困るというようなことになりますれば、それがひいては日本技術上のいろいろな問題も起るわけでございますが、もちろん今私がいろいろなことを申し上げましても、始まつてみなければわからぬわけでございまして、十分な保証を申し上げるというわけには参らぬかと思いますが、裁定の趣旨も、先ほど申しましたような点を考慮いたしまして、安全性検査をいたしまする場合にも、通産省職員を使つてやるということになつております。御承知のように運輸省と通産省との間でいろいろな議論もいたして参りましたし、当委員会でもいろいろな議論が出ておるのでございますが、大事な事業でもございますので、目的はおのずから同じなのでございますけれども、それに到達いたしまする方法論になりますれば、勢い議論がわかれるのは自然のことでございますが、実際の面におきましては、そう御心配になるような事態も起らぬで行くのじやないか、その点は協調して行けるのじやないかというような気持を持つております。
  30. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 これは何ぼ言つても同じだと思いますから、これくらいにしておきましよう。  それでは根本問題にさかのぼつてお尋ねしておきたいことは、日本航空機製造を始めるのだが、航空機製造工場というものは、採算が成り立たなければできない企業です。一体採算が立つのかどうか。どういう目標でどれくらいの生産計画を持つて始められるのか。その点の実情について御説明を願いたいと思います。
  31. 本間俊一

    本間政府委員 これは前会にも申し上げたのでございますが、今具体的にこういう計画でこの地点でこういうものをこれだけつくりたいというところまではまだ進んでおらないわけであります。しかし御承知のように、三月八日からそういうような門戸も開かれたわけでございますので、従来関係をいたしておりましたところ、あるいは今後日本航空機工業に着目をいたしております人々の間では、たびたび申し上げましたように、まず部品製造から入ろうというような考え方でいろいろ準備をなさつている方もございますし、とりあえず軽飛行機日本でつくりたいというような書類も参つております。いろいろな生産をされましたこの部品日本に持つて参りまして、日本で組立てをするところから始めたいというような考えもあるようでありますが、まだ具体的にどの工場をどれだけ使いまして、どういう方式でどれだけつくつて行くというな具体的なところまでは行つておらないのが実情であります。
  32. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 大体企業は目安がなければやれないと思います。そこで今具体的にどういうところから手始めをするかということについては、事業の初めですからいろいろ困難があるでしようが、大づかみのこれくらいのところはやれるのだということでもわかりませんと、資本家は金をひつぱり出すということはやらぬと思います。もうすでに航空機会社が国内のあちこちで大分計画されておるようでありますが、それについて大体民間航空のものをやるのか、駐留軍関係のものをやるのか、どれくらいの金額を予想しておるかということについては、やはりわかつていなければならぬと思いますので、その点について御説明を願いたいと思います。
  33. 本間俊一

    本間政府委員 私の感じから申しますと、日本民間航空事業者の使います飛行機を今すぐにつくるということは、工場の採算上からいつていろいろな困難があるのではないかと考えているわけであります。これは正直に申し上げておるのでありまして、私何も他意はないのでございますが、部品と申しますか、それの製造日本でやつたらどうかというような考えでいろいろな準備をしておられる方もあるようでございますし、それからそうでなく濠州でありますとか、あるいはインドでありますとか、そういうようなところで使う飛行機の組立から始めたいというような考えで準備をされている方もあるようでございますが、まだ実際にどこの工場を使いましてどういうものをどれだけやるというふうには私どもは聞いておりません。これは正直に申し上げておるわけであります。
  34. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 航空機生産行政所管についてというリーフレツトをこの間いただきましたが、それの五項目にこういうことが書いてあります。「今後の日本における航空機の需要は、戦前と異なり、量的に見ても内需よりむしろ海外需要に多く期待され、また民間用機よりは、航空法の適用を受けない特殊用機が多いことも予想されるとともに、質的にもこれらの航空機は、安全性と同時に高性能が要求されるものである。」云々ということがありますが、この航空法の適用を受けない特殊用機は、駐留軍関係飛行機をさすのではないですか。
  35. 本間俊一

    本間政府委員 それは私どもの感じから申しますと、輸出用と申しますか、そういうものを考えておるわけでございまして、駐留軍のために使われるものという意味ではないわけであります。
  36. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 講和発効後、日本でも大分砲弾や大砲その他の兵器類を生産され始めたように聞いておりますが、航空機関係もそれと同様の歩調をとるのではないかということは、だれでも想像つくと思うのです。軍用機の製造、修理といつたような方向に日本航空機工業が発展することに対して次官はどういうようにお考えでしようか。
  37. 本間俊一

    本間政府委員 御承知のように、日本も三月八日からそういつたようなものの製造の門が開かれたわけでございまして、日本工業が、修理というような関係から入りましても、あるいはいきなり組立てとか生産の方から入りましても、日本工業が伸びますことについては、私どもは全幅的に賛意を表するものでありまして、それ自身何も問題はない、こういうふうに考えております。
  38. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 兵器の生産それ自身は、自分は何とも意見はない、こういうようなお話だけれども、われわれ日本国民には、七年前に国民よ、銃をとるなと言つたはずです。直接銃をとらなくても、戦争のための兵器を生産するということは、国民よ銃をとるなといつたまだ舌の根もかわかぬうちに前言をひるがえすことになりはせぬでしようか。しかもそれは日本国民のためではなくして、日本国民の犠牲においてアメリカの利益のためにそういうことが行われるとすれば、これはわれわれ日本国民としては黙つておられぬはずだと思うのです。その点どういう御見解ですか。
  39. 本間俊一

    本間政府委員 御承知のように、憲法におきましては再軍備というようなことは禁止されておりますけれども、平和條約におきましても、そういう制限は何もないわけでございますから、これは今後日本国民の自主的、自発的な見解で決定して行くべき問題だと、本質的には私考えております。そういうわけでございますから、日本注文を受けて御指摘のような品物をつくりましてそれが悪いということは一向ないのではないかと私は考えております。憲法で禁止されておる再軍備というようなことになりますれば、これはその方で問題はあろうかと思いますが、日本がそれぞれの技術を持つておりまして、注文に応じてつくるということは一向さしつかえのないことであろうと思うわけであります。
  40. 江崎一治

    ○江崎(一)委員 私たちとは考え方が根本的に違うのであります。この問題は国民の審判によつてはつきり決していただこうと思います。
  41. 岡村利右衞門

    岡村委員長 玉置君。
  42. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 先日の当連合審査会における質疑応答の中で、本間政務次官から、本航空機製造法に基いて製造した航空機はもちろん、部分品等をつくつて外国に輸出するのであるというきわめて将来性に富んだ御答弁があつたわけであります。私はこれに対して非常に明るい見通しですこぶる意を強うするものであるということを申し上げたのであります。そこで通産省としては、この製造法が通過を見、公布されたあかつきにおきましては、法にうたつてありますように、九月一日とか十一月何日でありましたか、この効力発生に伴い、ただちに製造業者の届出によつて航空機並びに部分品の製造をどんどんやらせる御意思であるかどうかお伺いいたしたいと思います。
  43. 本間俊一

    本間政府委員 通産省といたしましては、御指摘の通り考えておるわけでございます。
  44. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 先日私は運輸政務次官並びに大庭航空庁長官に対して、航空法第三十七條の一点だけを取上げて、航空路の指定を一体いつごろするかという質問をいたしたのに対しての御答弁はきわめて不明確でありまして、いつごろ指定されるかという見通しはほど遠いように思つてお聞きしたのでありますが、これは航空法と一連の関係において発足すべきものではないかと思うのであります。通産省といたしましては、この製造法が効力を発すると同時に、航空法の三十七條その他関連のある法律は、極言すれば度外視して、製造法のみによつて進行する、こういうことになるのでありますかお伺いします。
  45. 本間俊一

    本間政府委員 当委員会でもたびたび申しましたように、日本航空機工業部品製造から始まりますか、組立てというようなところから入りますか、あるいは輸出用の飛行機の問題から入りますか、これはその事情によつていろいろあろうかと思いますが、もうすでにそういう機運があるわけでございますから、できるだけこの機運に乘りまして、そういつたような工業が伸びますように指導なり援助なりをして参りたいと考えておるわけでありまして、その点航空法等は考慮しますが、航空路ができればそれに対応して行こうというふうには考えないわけであります。日本航空工業がどういう形から出発しますか、これは会社といたしましてはいろいろな行き方も出るかと思いますが、指導と申しますか、助成と申しますか、そういう方向に力を注いで参りたいと考えております。
  46. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 ただいまの政務次官のお答えによりますと、すでに業者は部分品その他の製造の気構えで待機いたしておる。そこで航空機製造航空事業発展のために、そうした基本方針で進めるべきである。また同時に航空法をにらみ合してやるというお話でありましたが、先ほど来の質疑の中にもありましたし、また先般来たびたび繰返されておりましたが、この製造法あるいは航空法のどこを見ましても、航空事業に対して助成、育成をはかる何ものもうたつていないのであります、枠内委員からも相当つつ込んで指摘されておつたのでありますが、繰返して申しますと、この法案のみによつて見ますれば、単なる修理、維持にのみ力が入つておられて、育成、助長という方面に対しては何ら考慮を拂われていないようでありますが、これに対してはどういうような構想がありますか。
  47. 本間俊一

    本間政府委員 当委員会でも申し上げたのでございますが、もちろん航空機工業の学問的な研究でありますとか、あるいは技術上のいろいろな研究とかいうようなものに対しましても、政府といたしましては力をいたさなければならぬということは当然なわけでございます。従いましてそういう方面にも配慮をして参らなければならぬかと思いますが、御承知のようにただいま飛行機工業はまだ実体がないわけでございますので、その飛行機工業が、はたして民間で輸送用に使います飛行機をつくるのか、それともまたそうでないものをつくるのか、それによりましてもまた助成の手段、方法もおのずから違つて来ようかと思うわけでございます。従つてども制度の上で早くレールをきちんと据えておきまして、先ほども申し上げましたように、機械設備の問題でありますとか、あるいは資本提携の問題とか、あるいは必要な機械の輸入に関しまするドルの割当の問題、外貨の問題というようなものがあるわけでございますが、この日本工業の合理化に役立ちまする機械の輸入は免税をいたしておるというような関係で、もし業者の間でそういう施設をしたいということで、ぜひとも設備を外国から入れたいというような場合には、もうすでにただいま申し上げたような線が活用できるわけであります。そういう関係になつておりますので、この法案にはもちろん御指摘のように助成とか補助というような制度はございませんが、通産省産業行政を運用して参りまする面におきまして、十分配慮をして行かなければならぬと思います。その配慮が早ければ早いほどいい、こういうように考えておるわけでございます。
  48. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 ただいま政務次官のお説を聞いておりますと、私も同感の節はたくさんございますが、そうした航空事業というものが一体どういう内容を持ち、どういうケースでこれをやつて行くかということについては、始めてみなければわからないことであろうと思いまするが、そういう点を考慮いたしますと、この航空事業に対して民間のそれぞれの権威者たちはいろいろな見解をとつておるのではないか。もちろん日本航空事業振興発展の目標については異論がないでありましようが、航空事業を始めようとする際でありますので、私はむしろこうした民間の学識あるいは経験者等を当委員会に呼んで、本事業をして全からしめるためにその意見を聞く、すなわち参考人として招致をいたし、さらに検討を加える必要がありはせぬか、かように思いますが、政務次官はこれに対していかようにお考えになつておりますか。同時に私はそういうようにとりはからつていただきたいと思いますが、これに対する政務次官の御見解をお聞きいたします。
  49. 本間俊一

    本間政府委員 これは法案の審議に当られております委員会並びに委員の皆様の御見解によることでございまして、私どもがかえつて差出がましいことを申し上げない方がよいかと考えます。
  50. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 ただいまの本間政務次官の御答弁によりますと、私の意見として要望申し上げた点については国会の自由意思でやつてよいというような御答弁でありましたので、私は、本法案を通すにいたしましても、法案の実体、内容等をもう少し検討する必要もあると考えますし、進んで航空事業の発達を真に助長、育成する面から考えまして万全を期したいと思いますので、この点を委員長においておとりはからいを願いたいということを要望いたしておきます。  次に質問に入りますが、先だつて私の質問いたしました際に——私は工業標準化法というものができておることを実はうかつにして知らなかつたので、常識的に考えて、こういうものを用意すべきであるが、準備しておるなら御説明願いたいという質問に対しまして、局長より工業標準化法を活用してやりたいという御意見がありましたので、調べましたところ、工業標準化法というものがすでに出ておりました。そこでお伺いするのでありますが、先だつて私の質問いたしました部分品の検査等に対しましては、工業標準化法第二條の一、二、三、四に明らかに示してあるわけであります。こうなりますと、しばしば各委員、特に社会党の加藤委員から質疑をされましたような、素材に対する詳細にわたる検査——質的の面あるいは分析であるとか鑑定、こうしたすべてのものが検査されることになつておるのでありますが、工業標準化法が今日までどういうようにこうした一般工業品に対して実施されて来たか、いかように活用されて来たか、これをまず先にお伺いしたいと思います。
  51. 本間俊一

    本間政府委員 この実施にあたりましては、もちろん技術上のいろいろな検討が必要でございますので、工業技術庁の方で準備をいたしましてから、委員会がございまして、必ずその委員会にかけて十分に審議いたしました上で規格をきめ、できるだけそれで統一して行くという考え方でやつておりますが、実は今日技術庁の方が来ておりませんので、あるいは十分御納得の行くほど御説明ができないかもしれませんが、機会をあらためてまた聞いていただいてもよいと思います。ただ標準化法によりましているくなものの規格をきめまして、できるだけそういうふうに統一して参るように漸次努力は傾注いたしておりますが、これは法的な強制力の点で実は賜いところがございます。私ども製造法案の実施にあたりましては、その点も十分考慮いたしまして、運用面も考えなければならぬ。私どもがただいま考えておりますのは、規格は技術上のいろいろな基準でございますので、課長がかわるとかあるいは係長がかわるとかいうことによつてかわるようなことではならないわけでございますから、その点も十分実情に沿つた運用をいたしたいと考えております。
  52. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 そういたしますと、この工業標準化法には何もとらわれないで、航空機製造法に基いて通産省が省令によつてこうした素材その他の検査をやる、こういうことになりますか。
  53. 本間俊一

    本間政府委員 先ほどちよつと一言申しそこねたのでございますが、工業技術庁でやつております標準化は、その目的の主要な一つを利用者保護にいたしておるのでありまして、従つてきめました基準に従つておるのは、ジス・マークを使います。そうすれば利用者が、これならばその規格に合一しておつていいというので、利用者保護の立場を強く実はとつてつておるわけでございます。     〔岡村委員長退席、中村委員長着席〕 従いまして、御承知でもあるように、航空機関係は、非常な部品にわたるわけでございますから、工業標準化法によりまして指定できまする規格は、それでできるだけきめて行くようにしたい。ただ先ほども申し上げましたように、強制力を持つておりませんので、規格はそれで決定をいたしますけれども、やはり検査はどうしても必要であろうというふうに考えておるわけでございます。
  54. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 ただいまの本間政務次官の御答弁によりますと、検査はするのである。強制力がないから。言葉をかえて申しますと、強制的な検査をしなければならぬ、こういうふうな御答弁のように解されたわけでございますが、この工業標準化法の第二條の第四項に「鉱工業品に関する試験、分析、鑑定、検査、検定又は測定の方法」こういうのがうたつてあるわけでございます。そうなりますと、私はせんだつての加藤委員質問応答等から考えてみましても、何もこの製造法に基いての検査を新たにやらなくとも、これによつてやれるのではないか。こういうものがある。局長のお話のように、活用するという程度のものならば別でありますが、しかし一面において、航空部分品をつくる素材等に関しては、航空機製造法に基いての通産省令等によつて検査も分類し、方式を定めるであろうと思うのでありますが、そうなると、幾つも幾つもこうした現地の行政担当者に対して複雑なる仕事をやらすことになるのであります。ただ強制力の問題だけを考えるならば、ここに強制すべき何らかの一項を加えれば、それで事足りると思うのでありますが、これに対していかようにお考えになるか、お伺いいたします。
  55. 本間俊一

    本間政府委員 御承知のように製造法案でもうたつておりますが、航空機の重要なところ並びに機器につきましては、一々その規格を決定するわけでございます。従いまして何と申しましても、飛行機製造関係をいたします重要部分につきましては、製造法におきまして、それぞれ規格をきめるわけでございます。ただこまかな問題は、できるだけ標準化法を活用したいという考え方を持つております。しかし実際面におきましては、技術上の基準がきまりまして、規格がきまるわけでございますから、一旦規格がきまりますれば、その規格がしばらくはずつと行くわけでございますから、標準化法を活用し、製造法で行つたらむだじやないか、あるいはメーカーの方で非常に迷惑をするのではないか、こういうような心配は一つもないと思うのであります。  それから標準化法だけで行けるのじやないか、これは生産を担当いたします責任を持ちます建前から申しましても、それだけで行くのは、とうていできないと私ども考えております。
  56. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 お話の通り安全性確保の面からしますと、一定の規格を嚴重にきめるということは、必要であることは当然であり、同感であります。るが、そうなると、私は方向をかえまして、大庭航空長官にお尋ねいたしまするが、航空法からする安全検査の一環として、通産省製造法に基く規格検査をしたものに対しては、それで事足れりとして、それを、細部にわたる検査はしなくてもやり得るのであるかどうか。簡単でありまするが、この点をお伺いしておきます。
  57. 大庭哲夫

    大庭政府委員 過日も当委員会で御説明申し上げましたが、四月二十六日の閣議裁定の線によりますと、素材部品に至るまで、製造過程については、その安全性検査は運輸省の所管ということになつているわけであります。従つて運輸省としましては、その線に沿いましてやつて行きたいと思います。
  58. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 どうも、いつお開きになる委員会においても、航空法製造法との実施面における二元的な面において、複雑を一層助長するように私は見られてならないのであります。ほかの委員からの御質問もありましようから簡単にいたしますが、そこで私率直に申し上げて、おだてでも何でもないのですが、本間政務次官は、政治面においても卓越せる識見を持たれ、政務次官として堂々たる答弁をなされておるわけでありますし、また行政面においても、従来しばしば質疑応答の内容等を検討いたしまして、私は非常に行政手腕のある点について敬服をいたしておる一人であります。従いまして、ここで重ねて本間政務次官の信念をお尋ねするのですが、一応通産政務次官という立場を離れまして、わが党の重要なるメンバーとして、大所高所からこの両法案をながめるときにおいて、こうした二元的行政のために、将来この行政運用の面において摩擦を来すようなことは断じてないという確信を持つておられますかどうか、この点をまずお伺いします。
  59. 本間俊一

    本間政府委員 次官の立場を離れてということでございまして、非常にむずかしいのですが、私は実はすなおに見ておりまして、この二つの法案を検討いたしまして、やはり心配でありますのは、製造事業者の方が、多元的な行政に災いされることが、迷惑をするようなことがあるかどうかということが、私は実は航空機工業の一番大事な点だと正直に考えております。従いまして私が一番心配をいたしておりますのは、そういう面で生産は責任を持つて一元化したいという考えを持つてつたわけでございますが、御指摘の中にもありましたように入り組んでいるところもあるわけであります。しかしこれは今後この法案を運用する両者の良識にまつよりほかはございません。私はその点で正直に申し上げて多少心配の点はございますが、しかしたびたび申し上げましたように、日本航空機製造がどこから始まりますか、これは明確には予想できませんけれども、私はむしろどちらかといえば、日本の今の民間航空事業者が行う飛行機でない方から始まるのじやないかと考えます。それから将来の日本民間航空以外の飛行機の需要がどういうぐあいになりますか、この問題も将来の問題に属するわけでございます。従つて今日までのいろいろな経過から見ますと御心配の点もあろうかと思いますが、今後担当いたして参る両省の人々がその点は良識をもつて相談して参りますならば、そうひどい弊害にはならぬのじやないか。またそれは両省間の協調と申しますか、良識と申しますか、それによつて排除して行けるものだ、また排除して行かなければならぬというふうに私は率直に考えております。
  60. 玉置信一

    ○玉置(信)委員 これで私の質問を終りますが、なお最後に、私は本間政務次官の率直な御答弁を聞いて実は満足いたしておりますが、さらに私はこうした法案がきわめて重大な内容を持つ法案であるだけに、ばかまじめと言われれば言われるかもしれませんが、責任を痛感し、しかも将来に対する責任を感ずるがゆえに、実際この法案をつくつたあげく近き将来にそうした行政改革の目的に反した複雑な行政が起り、それによつてかえつて行政機構の本旨を逆転せしめることがあつてはならないという憂いから、たびたび同じようなことを申し上げますが、政務次官にお願いをいたしておきたいと思います。政務次官は、先ほど申し上げたように、きわめて有能な政治家でありまするので、近き将来大臣におなりになるのでありましよう。そうしたときに、この国会において、この委員会においてこうした二元的な法律をつくつたために、かくのごとく行政が複雑怪奇なものになつてしまつて、迷惑したのは業者であり国民であるというようなそしりを招きたくないという念願から、できることならさらに進んでこの内容ももう少し是正してもらいたいという見解を持つております。もしどうしても相ならぬとしてこのままでこの国会を通過せしめるという御所存でありますれば、私は将来を言うことはどうかと思いますが、通産省に参りましようとも運輸省に参りましようとも、そのいずれとは私は申しません。一元的な行政のもとにわが国航空事業を振興せしめてもらいたいということを特にお願いし、希望を申し上げまして、私の質問をこれで打切りたいと存じます。
  61. 中村純一

    中村委員長 原君。
  62. 原彪

    ○原(彪)委員 多数の委員より質問がなさカ、私の質疑は二、三点に縮まつたのでありますけれども、私はこの法律すなわち航空機製造法というものが突如として出されたことについて非常にふしぎに思つております七独立後の航空行政の上において、航空安全性のために航空法ができることは前々から予想されていたのでありますが、この法案が出されたことについては私は非常な疑義を持つております。どうして疑義を持つているかと申しますと、運輸委員会において航空委員会を開きまして、民間の業者、学識経験者等を呼びましていろいろ意見を聞いた。その席上で業者及び学識経験者の意見を聞きますと、現在の段階では航空機工業というものはメンテナンスと修理だけしかできない、一つの機体をつくる航空機工業はマス・プロでなければならぬのであるから、急速にはこれに進むわけには行かない、しかもメンテナンスとリペアーをやる場合にしても、現在の段階ではとうてい国家の補助なしにはこれをやることはできないということを明確に言つておりました。そうすると航空業者が修理維持等をやる場合に、採算のとれぬものはだれだつてやらないのでありまして、国家の補助すなわちその事業会社の法人税の減免とか、あるいは航空機部品の物品税の減免とか、そういういろいろな財政的措置がなされなければただちにこれをやることができない段階においてこの法案が急遽として上程されたということを私は非常にふしぎに思つておるのであります。またこの法案が出されたときに、承りますれば閣議においても非常な論争があつた、それをあえて押して通産省がこの法案出したということについて私は非常に疑問が残つておるのでありますが、この点についてひとつ政務次官のお考えを聞きたいと思います。
  63. 本間俊一

    本間政府委員 お答え申し上げます。御承知でもあろうと思いますが、日本で兵器の生産が全面的に禁止をせられておりまして、講和の発効と同時にこの問題をどうするかというようなこともずつと私どもの方では対策を練つてつたわけでございます。そこで三月八日からこれが解除になりまして、條約進行に伴つて日本でどうしても航空機工業というようなものがそれに応じて出発しなければならぬという見通しが漸次固まつて参るようになりましてから、私どもの方ではそれに相応いたします装備その他の準備をずつといたしておつたわけでございます。そうして閣議でいろいろな議論があつたことは御承知通りでありますが、これは両省の大臣から、閣議の席上においてはお互いに平静の間に双方の主張を主張したというような経過も当委員会において御報告になつておるのでございます。従つて運輸委員をされております原さんの方から見ますとあるいは突然というようなお感じがあつたかもしれませんが、私どもの方としてはできるだけの準備をいたしまして、そしてこういう時代になつたのでありますから、制度をできるだけ早く発足したい、こういう考えから提案いたした次第であります。
  64. 原彪

    ○原(彪)委員 この法案航空機工業の育成について、何らうたつてないことは前の委員からも質疑があつたのでありますが、通産省としては、大蔵省との間に保護育成に対する財政的な措置について、御相談なされたことがあるのかどうか。またないとするならば、あつても結論に対しないとするならば、現段階においてはただちにこういう修理あるいは製造にかかれない状態において、そういう財政的な裏づけのない法案が出ても一つの紙ぺらにすぎないのでありますが、ごく近い将来において、そういうような育成に対する財政的な裏づけのある法案をお出しになる御意思があるかどうか伺いたいのであります。
  65. 本間俊一

    本間政府委員 大蔵省の方とも話合いをいたしているわけであります。私が当委員会において申し上げましたように、日本民間事業者の方で使います飛行機生産をいたしますか、それとも部品製造から始まることになりますか、あるいはまた外国で使います飛行機日本で組み立てまして、それを輸出するというような関係から日本航空機工業が始まりますか、いろいろな場合が想像せられると思うのでありますが、御承知のように航空機工業がまだ実際に出発いたしておらないわけでありますから、この実態を基礎にいたしまして大蔵省の方と話をいたしましても、財政上の話がつく筋合いのものではないわけであります。それは委員長をなさつたことでありますから、原委員もよく御存じのことであると思うのであります。従いまして私どもは、三月八日に兵器関係生産が全面的に再開をせられましてからでもそうでございますが、御承知のように税法上あるいは輸入その他の面におきまして、こういう時代になつたのでありますから、その方面へやはり力を注いで参らなければなりません。法案はもちろん書きましたものは紙きれでございますけれども、これを運用して参りますものはおのずから政府でございます。税法上の処置あるいは輸入上の処置、あるいは日本工業研究費の使い方というようなものを御指摘のような方向に進めて参りたい、こういうふうに考えておるわけでございますから、いまただちに、どの飛行機をつくるものに対しては幾らの補助金を出す、あるいはその基本的な技術の研究をするためにどれだけの補助金を出すということは、この法案には明記いたしておりませんけれども、私どもは一般の工業技術合理化というような政策をとる一環といたしまして、御趣旨のような税法上あるいは輸入上のいろいろな便宜をはかつて行きたいという所存であります。
  66. 原彪

    ○原(彪)委員 もう一点航空庁長官にお尋ねしたいのですが、過日もく星号が墜落したことはまだ耳新しいことであります。このもく星号の墜落事件の根本原因については、まだ私は納得の行かない点が多々ございます。あれだけの多数の人命を失つたこの墜落事件の、その真相が過日大臣によつて本会議で述べられて陳謝の意を表されておりますが、あの大臣の述べられた中に、飛行機にも事故がないような、また航空機器、高度計等についてもほとんど狂いがなかつたような御趣旨で述べられております。大臣はあれは機長の判断の見誤りということをはつきり申し述べていなかつたようでありますが、われわれが想像すると、どうしてもあれは航空機の機長の判断の誤りのように解されるのであります。この監督あるいは責任上の問題でありますが、私は理論的に言うと、運輸大臣に責任がないような気がする。運輸大臣は日本航空会社に対しては責任を持つけれども、あの運航の機体及び操縦士に対しては責任、監督権が及んでいないような状態で、あの事故というものは、責任体制においては二元的になつてつたと私は思うのであります。ああいう事故が起きた場合、今後またそういう事故をなからしむるためにも、責任体制というものが二元的であつてはいけないと思うのであります。あくまでも一元的で行かなければ、将来の航空安全性確保できないと私は思つております。もし仮定するならば、現在の法案通り進んで行つて、国産の飛行機ができて墜落した場合、その原因を究明する場合に生存者が一人もない。結局科学的ないろいろな検査とか何とかによつてその機械の故障がなかつたとか何とかいうことを調べなければなりませんが、生存者がいなければそのときの実態がわからない。そうすると、運航上の責任を負つている運輸大臣が、また議会を通じて国民に陳謝しなければならぬような問題が起るのではないかと私は思います。落ちる原因が、機械を監督、検査する通産省にあるかもしれない。それが墜落してしまつて、ばらばらになつた機体をあとで調べてみて、その調べというものが必ずしも正確なものであるかどうか、私は非常に危惧にたえないのでありますが、かのもく星号事件を顧みて、航空庁長官は今度の二つの法案に対してどういうふうに責任体制がとれるものか、お考えを承りたいと思うのであります。
  67. 大庭哲夫

    大庭政府委員 お答えいたします。航空の安全と申す問題は、一にかかつてその責任制が一元的でなければならない。これは單に運輸省が主張しているばかりでなしに、世界各国ともその方針に従つて、一元的にすべての行政をとつているわけであります。運輸省といたしましては、今御説明になりました通りの過日のもく星号の事故というものをにらみ合せましても、今御説明のようにその原因は操縦者の事故ということでありましたけれども、過去幾多の航空事故を想定いたしまする際において、その大部分が生存者のないというような場面にたくさん行き当つているわけであります。それがもしも二元的な行政になつている場合に、それの責任の帰趨というものは判明しないという場面が起きて来ることは想定されるわけであります。従いまして運輸省といたしましては、そういうような事故を起さないということが積極的な安全であると考えているわけであります。航空の安全を確保するためには、どうしても運航検査行政というものを一本に筋を通すにあらずんば、航空の安全は確保でき得ない、かつまたその安全の責任はとり得ないと確信をいたしているわけであります。先ほども申し上げました通り、單にこれはわが国のまた運輸省の考えばかりでなしに、現在世界各国とも同じ考えであり、かつまたそれらの連盟を結成しています国際民間航空機構というものの精神は、一にかかつて安全であり、一元的な行政を希望しているわけでありまして、もしもそれが一元的な行政でない場合には、特別にその国の事情を連盟に届出ることに連盟の條約ではなつているわけであります。でき得べくんば、日本民間航空の再開という立場をとる今日におきまして、航空の安全かつまた航空事業の発展をこいねがう、またそれに対して邁進いたすからには、どうか過去の事情あるいは世界各国の状況を十分御調査、御検討願いまして、私たちの主張するところがいいか悪いか、ひとつ御判断をお願いしたいと存ずる次第であります。
  68. 原彪

    ○原(彪)委員 航空技術者である航空長官から、ただいま御答弁になつたことは、まことにわが意を得た御答弁だと思います。しかしこれを政府の部内から考えると、政府部内の意見が二つにわかれているということであります。ただいまの航空長官のお考えに対して、政務次官はどうしても航空機製造検査通産省でやらなければならぬというふうに二元性になつてつてただいまの航空長官のお話と政務次官のお話ははなはだ矛盾しておるのでありますが、政務次官はこれをいかにお考えになるか。
  69. 本間俊一

    本間政府委員 本日も当委員会において申し上げたわけでありますが、もく星号の事故の原因につきましては、運輸大臣からも御説明があつたようでありますし、これは私ども所管外であります。考えてみますと、なるほど監督官庁は運輸省でありましよう。しかし実際に運航いたしておりまする直接の責任は航空事業会社にあるわけでございます。従つて実質上の非難もまたそこが一番受けるわけであります。その実際の運航を担当いたしておりまする会社にいろいろ事故があつたようでありますが、これは私ども所管外でありますから触れません。問題は、先ほど来申し上げておりますように、運航事業会社と生産を担当いたしまする事業会社との間には、明確に区別がついておるのでございます。従つて多元的な行政で迷惑をするか、非常な不利益をこうむるかどうかということは、やはりその最重要点は、製造の面におきましては補造をいたしまする工場関係にあるわけであります。運航を担当いたしておりまする方から言えば、その検査関係はぜひやりたいというのも、私ども理解できるのであります。しかし私がたびたび申し上げておりまするように、飛行機で一審大事な安全性という問題は、どこから本質的ににじみ上つて来るかといえば、飛行機そのものにつきましては、製造をいたしまする業界の技術が向上しなければにじみ出て来ないわけであります。従つてどもはその技術ができるだけ伸びやすい環境にしておきたい。そこで多元的な行政の弊害を出したくないというのが私の考え方であります。私どもがその一元化にウエートを置いて考えておりまするのは、生産部門におきまする飛行機生産をいたしておりまする事業者を多元的な行政の弊害から解放する、飛行機の一番大事な安全性もそこからおのずからにじみ出て来るものである。もちろん安全を確保するための検査は必要でございましようけれども、本質的なものはそこからにじみ出て来るものである、こういうふうに私は考えておりまするので、私どもが一元化というのに重点を置いておりまするのは、製造事業者が多元的な行政に煩わされないようにしたい、それがまた必要である、こういうふうに考えておるわけであります。
  70. 原彪

    ○原(彪)委員 その問題についてこれ以上質問しても水かけ論のような気がいたしますが、要するに航空機安全性の中に、機械製造も重要な部分を占めておると私は考えます。現在の二つの法案では、航空安全性について、運航製造の部面と二つにわかれておるように思われるのでありますが、ただいまの航空長官のお話のように、政府部内において一元化されなければいかぬ。しかも航空長官のお話では、安全性の中には製造部面も入つておるように、私は解釈いたしますが、政務次官のお話では運航製造と別にわけて、安全性を強調されておつて政務次官のお話こそ、私は二元的であると思いますが、これ以上質問してもしようがありませんので、これで質問をやめることにいたします。
  71. 中村純一

    中村委員長 石野委員
  72. 石野久男

    ○石野委員 本間政務次官にお尋ねいたします。先日私はいろいろと資料の要求をいたしましたが、実はその後やむを得ない事情のために、いた美いた資料についての質問をする機会を今日まで失つていました。資料につきましてはいろいろと同僚委員から尋ねられておるようでございまするから、重複する点は避けたいと思いますが、今度の法案についての問題点は、航空法が必要であるか、あるいは航空機製造に関する法律が必要であるかということよりも、その法律の中に盛られてあるいわゆる所管関係の問題が、将来法律を施行するにあたつて、業者なりあるいは一般国民の上にいろいろな問題を起すだろうというところに問題がある、こういうように思います。しかもその問題点は、去る四月二十六日の閣議決定だといわれる航空機生産所管に関する件というところにあつたと思います。で問題点は、注産過程におけ為生産技術検査は通産大臣の所管として安全検査は運輸大臣にするのだ、こういうところにあつたと存ずるのであります。それで通産省の方から出ておりまする生産行政所管に関する所見をずつと見せていただきますると、これはどうもいろいろと書き並べてありますけれども、理解のしにくい点が非常に多い。そこでまず最初にお尋ねいたしまするが、先ほどの大庭航空庁長官のお話によりますると、運航と、それから検査行政との一元化というものは世界しの常識であり、また日本航空事業の発達のためにもぜひ必要なことだ、こういうふうに言つておられました。これに対してただいま原委員からの質問に対して次官の答弁があつたのでございまするけれども、ちよつと私納得しにくいので、今大庭航空庁長官が言われました運航行政検査行政との一元化の問題についての考え方について、もう一度次官の所見を承つておきたいと思います。
  73. 本間俊一

    本間政府委員 お答えを申し上げます。大庭長官がおられるのでありますから、その方にお尋ねくださればいかがかと思いまするが、要するに飛行機安全性を尊ばなければならないという性格の上から、それに必要な安全性検査と申しますか、そういうものを、運航を監督いたしておりまする航空庁の方でやりたい、こういうことだろうと思います。その点は大体の趣旨が例の四月二十六日あたりの閣議裁定でも生きておると私は考えております。私ども日本生産を大体担当いたしておりまして、一番問題にいたしておりまするのは、先ほど来申し上げましたように、素材にいたしましても、その他の部品にいたしましても、あるいは無線機器にいたしましても、すべてその生産通産省がただいま担当いたしておるわけであります。それから御承知のように、今日本で新しい事業を始められるという場合には、税法上の問題もございまするし、あるいは輸出入の関係も非常にいろいろな問題があるわけであります。従つて航空機製造をいたしまする事業家というものは、多元的な監督を受けまして、迷惑をするという二とになりますれば、それだけ日本航空機工業発達を阻害することになるわけでありますから、航空機生産をいたしまする事業家は一元的な監督で行きたい。またそうして行くことが日本航空機工業発達の上に必要である。こういう見解を私どもはとつておるわけであります。従つて航空機工業をやる事業者は必ずごれは通産省に相談をしているくな話合いをいたさなければならぬわけでありますから、そこのところは将来製造事業者が非常な煩瑠なめんどうを起したりなどしないように、ぜひとも一元化しておきたいというのが私どもの見解であつたわけであります。従いまして閣議の裁定は安全性検査は運輸大臣ということになつておりますが、ただいま私が申し上げましたような趣旨を尊重せられた結果であろうと思いますが、その安全性検査をいたします場合にも、通産省職員を指揮監督してやらせて、先ほど来私が申し上げましたように、事業者の方に二元的な行政の弊害をできるだけ最小にとどめたい。少くしたい、あるいは排除して行きたいという趣旨で閣議の裁定がなつておるものと私は承知をいたしておるような次第であります。
  74. 石野久男

    ○石野委員 これはいろいろりくつを言い合うとほどがないと思いますが、しかし先ほども大庭長官運航行政と、それから検査行政というものを一元化したいということ、そういう意味で実を言うと、この法案には盛られていないというわけであります。輻湊しているということになるわけであります。その輻湊しているところが、問題なんだろうというふうに、われわれもまた懸念しておるわけであります。今次官が言われましたように、そういう趣旨を盛り込んだものとして、この閣議決定がなされている、こう言われるのでありまするが、しかし結局趣意は盛られておりましても——盛られておるかどうか、私はわかりませんが、結局するところこの法律によつて監督され、あるいはこの法律によつて処理される今後のいろいろな事情というものは、やはり二元的な事情の中に置かれていることだけはいなめないことだと思うのであります。そこで問題は、結論を先に言いますれば、こういう閣議決定の線で出て来ておる、将来に非常に問題を残すであろうと思われるような法律案は、やはりもつと閣内においてといいますか、政府の内部において論議された後に提案されてもいいのじやなかろうかというふうに思うのでありまするが、そういう点については、次官はどういうふうに考えますか、お尋ねします。
  75. 本間俊一

    本間政府委員 お答え申し上げますが、要するに一元化するということで、一番理想的な形から申し上げますれば、アメリカのような形になりまして、資材その他の行政もやつておりますところで飛行機関係が一元化されるということになりますれば、資材でありますとか、あるいは事業機関の運営の点でありますとか、あるいは外貨関係でありますとかいうようなものも非常にすなおに行くわけであります。従つて一元化という方針を横縦に貫いて参りますれば、航空庁通産省べ参りましてやるということになれば、一番徹底するかと思いますが、これはいろいろな事情もございまして、なかなかそうも参らないわけでございまするので、閣議の裁定にあたりましても、事業者の意見も参酌せられたわけでありましようが、従来事業を営んでおりました人たちの意見なども勘案いたしまして、できるだけ実態に即応して決定をせられると思つておりますので、今日の段階におきましては、私は閣議の裁定の線はやむを得ないものだ、こう考えております。やはり国際航空條約の関係もありまして、航空法の制定を急がなければならぬ事情もありまするし、先ほど申しましたように、三月の八日に兵器関係の門戸が開かれておるわけでありますので、ぜひとも制度の上でも、確立をして置かなければならぬ必要があるわけでございますので、今日の段階におきましては、開議の裁定というものは私はやむを得なかつたものだと解釈をいたしております。
  76. 石野久男

    ○石野委員 大庭長官にお尋ねいたしますけれども、今本間次官は将来これを一元化する意味においては航空庁通産省の方に統合するようなやり方をやればいいのだということを言われました。しかし事実上は行政機構改革とか、いろいろな問題、あるいは民間航空というものの持つ使命等からいたしまして、運輸省との関係が今日のような事態に置かれている現状でありますが、本間次官のただいまの答弁に対して大庭長官の御意見はどのようなものであるか伺いたいと思います。
  77. 大庭哲夫

    大庭政府委員 お答えいたします。航空庁を運輸省に置くか、通産省に置くか、あるいはどこに置くかという問題であろうと存じますが、御承知のように航空庁の前の航空保安部、航空保安庁と申すものは、電気通信省の中に所属していたわけでありますが、交通機関、交通行政の一元化という面からして、国内航空運送事業会が発効されると同時に一昨年の十二月十二日に運輸省の中に移管されたのであります。現段階といたしましては、航空庁としても航空事業の一元化をこいねがつているわけでありますが、これの所属というものにつきましては政治的に、また行政の中央部において解決を、またその方針をきめていただくべき筋合いのものでありまして、私といたしましては、これがどこに所属した方がよいかということにつきましては言をはばかるもので、ただ航空の安全のために一元的にこれをやるべきだと申しますことは、また私たちが電気通信省から運輸省に移つたその大きなる希望というものも——運輸省において鉄道の行政は一元的にやつておるし、海運の行政はこれを一元的にやつているわけであります。しかも先日来から御説明申しました通りに、航空についてはこれから新しく発足いたすものであり、かつまたその安全性は鉄道並びに船よりもより以上に必要性が望まれるものでありまして、私たちが電気通信省から運輸省に移つた大いなる希望は、運輸省がそれらを一元的にやつている、私たちも当然一元的にそれらがやれる、またやつていただけるということから運輸省に移管を希望したわけであります。現段階に至りましてこれの二元的な行政あるいは先日来のお話のような状況になるということについては、一応これは御承知のように閣議で裁定された以上、私たちといたしましてはその線に沿いまして、できるだけ両省との間の協調をとつて行く所存でございますが、先ほど通産政務次官もおつしやられた通りに、お互いにこれについて、はたしてうまく行くかどうかということについては幾多の困難があり、幾多の危惧はあるわけでありますが、担当者といたしましては、きめられた裁定の線に従いまして、極力努力をして行き、安全を確保すべく万全の方途を盡して行きたいというのが現在の私の気持であります。
  78. 石野久男

    ○石野委員 ただいまの大庭長官の御答弁によりますと、この法案については、担当する当局者として非常に困難と危惧を持つておるということをはつきりと申されておるのであります。このことは本間政務次官からもそれに似通つた答弁があつたわけであります。そういうようなことについて、もしこの法律案が成立するということになりますと、われわれ立法者の立場からすると、これは非常な責任問題になつて来る、こう思うのでございます。通産省から出ております航空機生産行政所管についてという項目において五つほどの事情が述べられているのでございますが、この件について私は自分の意見をといいますか、疑義がありますので、二、三お尋ねしておきたい。  まず第一番に、いわゆる航空機工業というものに対しては、通産省資材行政に対して所管を持つているのであるから、これらに関連をする諾産業に対する行政当省に統合一元化することが必要だということを言つておられます。しかし資材関係所管というものは、おそらくそれ以後における第二次、第三次のものについては、そこで一応規格検査というものが通つて行けば、あとはそうたいして責任はないように思います。そういう意味から必ずしも通産省がこれを統一して行かなければいかぬというふうには思われない。ことに鉄道だとか船舶の場合は、やはり同じようなことが言えるだろうと思うのであります。  それから第二の安全性の問題については、大庭長官がしばしば言われておりますように、やはり部品検査とか、あるいは生産過程におけるところの技術的な検査をも含める安全性というものが常に論議されるのでございましようから、そういう意味でやはり運輸省であろうが通産省であろうが、行政の一元化という意味ではどうしても必要であるということは言うまでもない。  それから安全性の欠陥を直接こうむるものは運航者だからというので、運航者の所管省である運輸省がこれを所管するというような建前は間違いであるという第三のりくつについては、なるほどそういうことは一応うなずけるのでございます。何も無理にそこまで持つて行く必要はないかとも思いますが、しかしそれだからといつて絶対に運輸省でやつてはいけないのだという理由には私はならないと思う。これは決してそうではなくて、たとえば船舶及び鉄道、車両等のごときは、やはり全部運輸省が所管して来て、その結果として業界に非常に不便を與えておるとは申すものの、しかし船舶にしても運輸関係にしても、世界各国のそれらの同業者に対してそうひけ目をとるような落度を持つておるとは思われないのでございます。従来軍関係があるときの艦船の技術あるいはまた鉄道の技術は、かつて軍部がおりましたときにおいてもおそらく運輸省が全部所管しておつたのだと思います。その運輸省の技術というものは世界的にそう劣つてはいなかつたと思うのでございます。従つて私は業者の利不便ということの観点については、必ずしも通産省が言つているようには思われない。これは運輸省から言わせれば、やはりまた運輸省でも意見があるだろうと思うのであります。こういうことはりくつにならないと思います。むしろそれよりも、その結果が日本の同種企業に対して非常に障害になるとか、あるいは世界的な競争に落ちて行くとかいうようなりくつになるならば、これはまた何か思考しなければならぬものがあるかと思いますが、第三の理由からはそういうことも出て来ないようでございます。  それから第四に、各部品の互関性の問題が論ぜられておるようでございます。しかし互関性の問題ということは、やはり航空機相互間における三関性の問題かと私は思いますので、航空機がどちらかに一元化されて所管されれば、その中での互関性のことでございますので、まさか鉄道の部品航空機部品との互関性という意味ではなかろうと思うのでございます。そういう意味で互関性の問題を、ここで通産省がどうしてもそれを持たなければならないのだという意味一つの理由にすることも非常につけたりのりくつのように思うのです。  それから第五に掲げておりますところは、将来の日本航空機はほとんど輸出用に振り向けられるであろうということから、運輸省よりも一般の通産事業を持つておる通産省がこれを所管する方がよいのだというりくつにもなつておるようでございますが、しかし船舶のごときは運輸省が所管しておりましても、けつこう外国からのオーダーに応ずることもできるし、ごとに外国からの日本に対する期待も大きいようでございますので、それも必ずしもりくつにはならないように思うのでございます。これも通産省から出ておりますいわゆる生産行政所管についてこの意見に対する私の意見でございまして、これでは、どうしても通産省航空機生産についておれの方がやらなければならぬというだれでも納得するような理論は一つも成り立たないというふうに思います。早く言えば、こういうふうにお互いのなわ張り争いのようなことのために、結局は非常に大きな困難と危惧とを予想される法律案をわれわれがここで通して行くということになりますと、これは政治家の良心の上からいつて非常に大きな問題を将来に残すと思います。従つて私はやはりもつとくおおらかな気持になりまして、通産省の方に、そのようにどうしてもおれの方でなければならぬというりくつがあるならば、なぜもつと基本的に、この法律の閣議決定の線をくつがえすぐらいにやつて行かないのであるか。その点の意見をひとつ聞かしていただきたい。
  79. 本間俊一

    本間政府委員 お答えいたします。私どもの主張につきましては、たびたび申し上げた通りでありまして、いまさら議論をする気持は毛頭ございませんが、閣議できまりました方針に従つて仕事をいたしますのは、これは常識でございますから、その常識の線に従つてこれをやつておるのであります。
  80. 石野久男

    ○石野委員 いわゆる事務関係仕事をそういうふうに言われるのであればこれはごもつともだと思うのでありますが、本間次官は政務次官でありまして、いわゆる事務次官ではないと私は思うのであります。閣議決定として出る線を事務として扱うのではなくて政治の立場から扱われる場合には、もちろんあなたは自由党内閣の一員でありますから、その趣旨に沿うのは当然だと思いますけれども、しかしあなた自身が困難と危惧とを感じておるところのこういう法案を、われわれに審議させるということは、これはおかしいと私は思うのです。そういう点について、ここで議論のための議論ではなくて、やはり将来の日本航空機生産のためにも、また航空業の発達のためにも、よくするためにこの法律がどうあるべきかということを私は聞いておるのでありまして、決してここでお互いに捨てぜりふを聞くために言つておるのではありません。もう一度お答え願います。
  81. 本間俊一

    本間政府委員 お答えいたします。大臣でありましようと政務次官でありましようと、閣議できまりました線に従つて仕事をするのはわれわれの当然の任務であろうと思つております。閣議でどうきまろうと、自分の意見があるならば、その意見に従つてやるということは、ちよつと当らないかと思います。  それからとの法案で非常な困難と非常な危惧があるということは私は申し上げておらないのでありまして、従来申し上げておりますように、航空機の安全というものも、本質的ににじみ出て参りますものは飛行機そのものについて申し上げれば、その飛行機をつくります日本製造事業者技術にあるということになるわけでありますから、そごのところをできるだけ多元的な行政によるめんどうのないようにして行きたいというのが私の根本的な考え方でありまして、その上に立つと、製造工場の方に運輸省がタツチして参りますから、その点の多少の心配はあるという意味のことを申し上げただけであります。従つてこの法案の施行にあたりまして非常な困難と非常な危惧を持つておるという考えは私どもにはないのであります。私が多少心配しておるのはその点だけであります。従つてごの法案が閣議裁定の線に従つて出発いたしまして、将来の日本航空機工業の非常な隘路になる、あるいは致命的な欠陥を蔵しておるというふうには、私は考えないわけでございますから、その点はどうか御理解を賜わりたいと存じます。
  82. 石野久男

    ○石野委員 この法案日本航空事業の将来に対して非常に大きな危惧や困難性を感じておるものとは思つておらないと次官はおつしやつたのでありますが、先ほど大庭長官行政上の面からしてそういう困難性が出て来るであろうということを担当の長官としておつしやられております。私どももまじめに業務に携わつておられる大庭長官としてはそう言うのが当然だろうと思うのであります。そこでそういうことをいろいろ言つておりましても盡きませんので、一つお尋ねしておきたいと思いますのは、この法案がそういう行政の面から将来あまりすつきりしない形で施行されたときに、はたして日本航空機業がよりよく発達するかということでございます。日本航空機業あるいは航空業が発達するために、当然われわれが考えなければならぬのは、航空技術発達の問題と同時に、生産技術の問題と両方あると思います。この問題は従来世界各国とも、航空技術民間航空技術と同時に、やはり軍関係技術として、それが同時的、並行的に発達の道をたどつて来たものだと私どもは理解いたします。日本の今日の事情からいいますると、航空機に関しては軍用的なものの構想は持つべきでもないし、また今でもないのだと思います。そういたしますと、日本航空機業の発達とはどういう方向から持たれて行くだろうか。日本のただ単なる民間航空だけで世界の航空機に追いつき、あるいはそれを追い抜いて行くような技術を獲得し得る可能性があり得るかどうかということを非常に心配するのでありますが、この法案を作成するにあたつて、そういう点に対し、特にまた航空機生産所管を非常に熱望しておられる通産省として、どういう見通しを持つていらつしやいますか。
  83. 本間俊一

    本間政府委員 お答えいたします。ただいま御指摘の中にもありましたように、将来日本飛行機の需要が新たに起るであろうということは一応は想像せられるわけでありますが、それはしばらくおくといたしまして、現状のところでは、御承知でもあろうかと思いますが、日本民間事業の使用いたします飛行機をつくるということだけでは、とうてい採算はとれないものと私どもは一応考えておるのであります。従つて日本航空機事業部品をつくるところから始まりますか、あるいは軽飛行機をつくるところから始まりますか、あるいは日本の近辺の需要を満たす、日本の方から申しますならば輸出向けの飛行機ということになろうかと思いますが、そういうものを組み立てるというところから始まりますか、これを今ただちに明確に断定することは困難かと思いますが、私はどちらかと申せば、今日本民間航空用に使つております飛行機を直接つくるというところからは出発しない、むしろ私が指摘をいたしました後段の方から日本航空機工業は始まるのではないか、こういうふうに考えております。
  84. 大庭哲夫

    大庭政府委員 ちよつと先ほど私が御説明申しましたことにつきまして、一応再説明をさせていただきたいと思います。先ほど私今度の両法案につきまして、またそれを実行して行く上におきましていろいろ困難と危惧とがあると申しましたが、そのよつて来る原因は、私たち実は何度もここで御説明申し上げましたように、一つの思想といたしまして、航空の安全のためには運航からあるいは生産検査行政というものを一貫してこれをやらなければ、その安全の責任はとれないという思想を持つていたものでありまして、このたびの閣議の裁定によりましてその思想の一部がボーダー・ラインを引かれたわけであります。従いましてその思想を改めて、閣議の裁定の線に沿いまして努力するためには、私たち、また部下といたしまして相当の思想の変換をしなければならないということに一つの困難性と危惧とがあるということを御説明申し上げたわけでありまして、さよう御了承願いたいと思います。
  85. 石野久男

    ○石野委員 今大庭長官から先ほどのお言葉についてのなお具体的ないろいろな御説明をいただいたのですが、さほどにこの法案についてはいろいろとやはり無理があるように思われます。いわゆる航空機業、あるいは航空機生産等について一般に持つ世界的な常識の線、その思想をやはりここで変換する努力をしなければならないという点に追い込まれるこの法律というものは、私は非常に無理だと思います。そういう法律を今私たちは審議しておりますだけに、この二元性についてはやはり相当程度閣議の中でいろいろときめられたことでありましようが、国全体の行政面からいたしましても、将来の産業発達のためからいいましても、もつともつと愼重に考えなければらないものがあることを痛感するのであります。今本間政務次官から御答弁のありました日本航空機生産の見通しの問題も、大体そういう線で行くのであろうとわれわれも想像するのであります。そこで特に輸出機というものをここでやるということになりますと、このことの意味は結局外国飛行機事業会社の組立てをやる、いわゆるこちらでその下請事業をやるというような意味での仕事がこれからしばらくの間なされるだろう、こういうふうに理解してもよろしゆうございますか。
  86. 本間俊一

    本間政府委員 これはそういうような形になりますか、あるいはまたそうでなく資本の提携などによりまして組立てを日本の方でやろうということになりますか、その辺は会社の事情なり今後の発展にまたなければならないと思いますので、必ずしも下請だけというふうに限定して私ども考えておらないわけでありまして、あるいは資本提携なり技術提携なりによりまして、そうして日本で組立てをする、だんだん生産をして行くというようなことになりますか、その辺はきめてかかるわけには行わぬかと思いますが、今私どもが見ております情勢から判断いたしますと、ただいま申し上げたような事情になつております。
  87. 石野久男

    ○石野委員 最後に一つお尋ねいたします。これはもう一度前にもどるわけでありますが、通産省よりざつくばらんのところを聞かしていただきたいと思います。  先ほどから大庭長官も言つておりますように、安全の責任をとるためにはなるべく一元化をしたい、けれども今の法律ではどうもなかなかそれができないで困つておるのだというのが実際のところ大庭長官の言い分だと思うのであります。このことは委員会においてもみなよくわかつておるわけであります。そこでわれわれからいたしますと、何とかこれをうまくまとめて将来この衝に当る人々があまりそんなことで頭を悩まさなくともよいような法律をつくることがよいように理解します。そこで結局この閣議決定の問題になつて来るのでありますが、今鉄道であるとか船舶なども総合企業といたしましては——それは航空機のようには非常に広汎にわたつていないといたしましても、総合企業としてはりつぱな企業であります。それが今のような運輸省の管轄下で十分やつて来られているということを考えますときに、そういうような例にならつて通産省と運輸省との意見、また国会の内部における意見を閣内にまで持ち込んで、何とかこの法律を調整するような手段方法を講ずるのがよろしいのではなかろうかと思いますが、通産当局といたしましては、若干の無理があつてもこのままここではやつて行かなければならぬとお考えになつているのでしようか、そこをはつきり聞かせていただきたいと思います。
  88. 本間俊一

    本間政府委員 お答えいたします。私が当委員会におきましてもるる申し上げましたように、なるほど飛行機生産指導する官庁も問題ではございますが、自然取締る側の方も問題になつて来るわけであります。私どもが一番重点を置いて考えておりますのは、日本航空機工業が全部一ぺんストツプいたしまして、しかも七年間の空白があるわけでございますから、この空白を埋めて参りますためには生産関係して参ります製造事業者の方を非常に重点を置いて考えておるわけであります。従来もいろいろな多元的名監督機関のために製造関係をいたします人々が迷惑をし、そのためにいろいろな問題もあつたのでございますから、私ども考えておりますのは、航空機製造関係をいたします側の方にできるだけ多元的な行政の弊害を及ぼしたくない、及ぼさないことが日本航空機事業発達のための大事なポイントであると考えております。従いまして航空機生産関係をいたして参ります人々に相異のウエートを置きまして考えておりまして、できるだけ生産は一元的な行政組織のもとにおいてやつて参りたいというのが私の方の従来の考え方であつたのでございます。御指摘もありましたように、閣議の裁定になつたわけでございますけれども航空庁の方の主張されまず安全性の問題は、製造過程におきまして安全検査はできることになつておりますから、その方の担当をせられている方々の主張もそこに生きているわけでございます。それから生産事業に関係をいたしておりまする方々にウエートを置きまして、そして生産は一元的な行政のもとに進めて参りたいという主張も相当生きているのでございますから、この法案ができまして、それぞれの所管が明確になつて、その担当いたしまする役所の間のことは、当然いろいろな問題について相談はいたさなければならないわけでございますから、そうして参りますならば、私ども考えておりました弊害も最小にとどめ得るのではないか、またとどめるように努力をしなければならぬと考えておるのでございます。
  89. 石野久男

    ○石野委員 この法律案とは別個に、たとえば保安庁法案だとか、あるいはその他の法案、これから後警察予備隊やその他再軍備などという問題が出て来るきざしが非常に強いのでございますが、そういう方向で使う飛行機というものが航空法、あるいはまた航空機製造法との関連性において将来どういうふうになるかということの見通しでございますが、それをひとつ通産当局はどういうふうに見ておられるか、伺いたい。
  90. 本間俊一

    本間政府委員 将来御指摘のような新しい需要も起るであろうということは当然予想せられるわけでございますが、その新しい需要がどういうふうに具体的になりますか、これは今のところはまだ明確になつておりません。従つてどもこの法案で問題といたしておりまするのは、民間工場製造いたしまする航空機というものを対象にいたしまして、法案をつくり上げておるわけでございます。
  91. 中村純一

    中村委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑がなければ、航空法案及び航空機製造法案に対する通商産業委員会運輸委員会連合審査会はこれにて終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十一分散会