運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-05-28 第13回国会 衆議院 通商産業委員会運輸委員会連合審査会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十八日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員   通商産業委員会    委員長代理 阿左美廣治君    理事 多武良哲三君       小川 平二君    小金 義照君       高橋清治郎君    加藤 鐐造君   運輸委員会    委員長 岡村利右衞門君    理事 黒澤富次郎君 理事 滿尾 君亮君       岡田 五郎君    尾崎 末吉君       關谷 勝利君    玉置 信一君       坪内 八郎君    江崎 一治君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 村上 義一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       本間 俊一君         航空庁長官   大庭 哲夫君         運輸事務官         (航空庁次長) 粟澤 一男君  委員外出席者         通商産業委員会         專門員     谷崎  明君         通商産業委員会         專門員     越田 清七君         運輸委員会専門         員       岩村  勝君     ————————————— 本日の会議に付した事件  航空法案内閣提出第一七九号)  航空機製造法案内閣提出第二二六号)     —————————————
  2. 岡村利右衞門

    ○岡村委員長 これより通商産業委員会運輸委員会連合審査会を開会いたします。  航空法案及び航空機製造法案一括議題とし、質疑を続けます。質疑の通告がありますので、これを許します。関谷君。
  3. 關谷勝利

    關谷委員 航空機製造法案につきまして、本間政務次官お尋ねをいたしたいと思います。昨日来の政務次官答弁を聞いておりますると、まことに円転滑脱と申しますか、まことに上手と申しますか、ピントをはずした、しかものらりくらりとした答弁をせられておるようでありまして、日ごろの本間政務次官の明確なる性格に似合わざる御答弁があるようでありますが、本日は少しはつきりした御答弁を願いたいと思います。  この航空機製造法案を見ておりますと、通産省が何とかして航空機生産行政所管いたしたいというふうなことについて苦慮いたした跡が歴然と認められるのであります。そのためにいろいろ責任の明確でないような、二重行政というふうな点も現われて参りますし、責任も明確でない。将来これでは航空機行政混乱が起るのではないか、こういうふうなことがところどころうかがわれるのであります。私はこのような航空機製造法と称するこの法案内容を見てみますると、まことに矛盾が多いというふうな気持もするのでございますが、良心的に考えて、政務次官はこれを撤回するという御意思があるかどうかということを一度伺つておきたいと思います。
  4. 本間俊一

    本間政府委員 お答えを申し上げます。通産省航空機所管いたしたいと主張いたしておりますのは、私が当委員会におきましても、いろいろと御説明を申し上げたのでございますが、航空機工業性格にかんがみまして、通産省所管をいたしますることが、航空機工業の発達のために必要であるという見解で、私ども航空機生産はぜひとも通産省にやらしてほしいという主張をいたして来ておるわけでございまするから、その点はどうか御了承を賜わりたいと思う次第でございます。  それからこの航空機製造法案を撤回する意思があるかというお尋ねでございますが、これは撤回する意思はございません。
  5. 關谷勝利

    關谷委員 法案内容につきまして少しくお尋ねをいたしたいと思うのであります。この航空機製造法案を見ておりますると、第三條によりましてこの事業届出制になつているのであります。まことに民主的なと申しまするか、非常にやわらかな法律のようにできているのでありまするが、さて一歩内容へ入つて見ますると、その製造設備については通産省検査を受け、それに合格した工場でなければ飛行機生産してはならない、こう書いてあるのであります。     〔委員長退席滿尾委員長代理着席〕 さらに第八條におきましては、たとえばその検査に合格した工場でつくられた飛行機であつても、通産省確認がなければ、引渡してはならない、こう書いてあるのでありまするが、届出制と申しながら、このようなことをやつておりますと、許可制以上のものになつて来るのでありまして、私たちこういう点について非常な疑問を持つておるのであります。なお、設備についての検査の問題を取上げて考えてみましても検査に合格しなければ飛行機生産ができないということになつて参りますと、せつかく各種の設備をして工場をつくつてみたものの、さて検査を受けてみると不合格であるという場合には、通産省の役人の指示に従つていろいろと改良設備をしなければ飛行機をつくれないということになつておるのであります。結局、実質においては製造事業は、許可を得るにあらざれば行えないというようなことになつておるのでありまして、これならば、工場関係届出制ということにせずして、むしろこれを許可制として最初からいろいろと指導監督在してこれをつくらす、こういうふうにすることがほんとうであると、私たち考えるのであります。これは要するに、政府が民業に対してはあまり干渉しないというふうなことを表面装つてはおるが、実質的にはその効果をねらつておるというようなことでありまして、悪く言えば羊頭を掲げて狗肉を売るというふうなことではないかと、私たち考えるのであります。この表面届出制でありながら、第六條に駒いて設備というものを許可制にした理由、どういう考えでこういうふうな法律をつくつたのか、この点について政務次官の御答弁を伺いたい。
  6. 本間俊一

    本間政府委員 実はこの法案を準備いたします過程において、許可主義にするか、届出主義によるかということは、非常に議論のあつたところでございます。いろいろ議論またしました結果、許可主義ということよりも、届出主義にいたしまして、そうして御承知のように、飛行機は非常に安全をたつとぶものでございまして、高性能、高品質でなければならぬわけでございます。それから航空機工業は、御承知でもあろうかと思いますが、その性格マスプロの施設がどうしても必要でございまする関係上、飛行機生産をしたいという工場を、どういう設備で、どういう方法でやるかということを検査いたしまして、できるだけマスプロ生産設備で、しかも飛行機生産方法一定基準に合致せしめるような設備をいたさせまして、できるだけ品質性能均一性をはかつて参りたい、こういう考えから、一応届出主義にいたしまして、その設備検査をいたし、ただいま申し上げたような目的に合致さして行きたいという趣旨でございます。
  7. 關谷勝利

    關谷委員 それなら最初から許可制にして、そうしてこういうふうなことで許可してもらいたい、こういうような設備をすればそれで許可することができる。通産省あたり意図通りのものができるというようなことで、むしろ許可制にして最初から十分に監督するのが至当であると私は考えるのであります。届出制でありますと、届けつぱなしでいいというようなことになつて参りまして、自然にこういうことをすればこれでやつて行けるというふうな工場自主性がそこに現われて来るわけでありますが、それがもし通産省意見と異なつた場合にはいつまで検査を受けてもやらしてくれない、せつかく厖大設備をしたものが、許可してくれないために飛行機生産ができない、こういうような矛盾が出て来ると思いますが、この点について政務次官の御見解を承りたいと思います。
  8. 本間俊一

    本間政府委員 ただいま御指摘のありましたように、飛行機の特別な性格にかんがみて、最初から許可主義をとつたらいいじやないかということも一つの尊重すべき御意見であろうと思います。しかし御承知のように、航空機工業は非常に莫大な資金をもつて相当大きい設備をいたすわけでございますから、法文の上では届出主義になつておりますが、それらの工場の経営をしたいという所は、かつて設備をいたしますとか、そして検査を受けるということなしに、事前にいろいろな相談もあろうと思いますし、またその間においているくな指導もできるかと思うのでございまして、届出主義をとつて検査をする方法にいたしましても、御心配のような面は実際の問題としては出ないのじやないか、こう私ども考えております。
  9. 關谷勝利

    關谷委員 そういう厖大設備をし、いろいろ研究してやる仕事でからそのような心配はいらぬというのでありますが、それほど厖大設備であり、そしていろいろりつぱな技術者も寄り、完全な器具をそろえることになるとすれば、この設備検査というふうなことはいらないようにもとれるのであります。むしろこういうものは廃止した方がいい。われわれが心配するような懸念がないとすれば、この検査條文はいらぬものであると考えるのであります。政務次官の御見解を承りたいと思います。
  10. 本間俊一

    本間政府委員 許可主義にいたしましても、いろいろな設備をして、その設備が私ども考えている基準にはずれていればいつまでたつて許可はもらえぬということになるわけでありますから、届出主義によつて設備検査いたしまして、できるだけ品質及び性能均一性をはかつて参りたいという考えと、その点はそう違わないのじやないかと私は思うのであります。  それから届出さえすれば、相当の資金もいるし、相当な設備をするわけだから、あとはどういう生産設備でも、あるいはどういう生産方法でもいいじやないかとおつしやられますけれども、先ほども申し上げましたように、航空機は非常な安全性をたつとぶものでありますし、航空機工業が成り立つて参ります基本的な要件としては、どうしてもマスプロ生産方式を採用しなければならぬという基本的な性格もございますので、私どもとしてはやはり一定基準をつくつておきまして、そしてできるだけ品質及び性能均一性をはかつて行きたい。それがまた航空機工業が漸次発達して参りまする基本的な要件である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  11. 關谷勝利

    關谷委員 問い方によりますと右になりあるいは左になるような御答弁でありまして、まことに老練な御答弁であることは間違いない。届出制になつてつても非常な設備と尊大な資金を要するのだから、そのような許可をしないでも大体そういう線に持つて行けると一方で言つておるかと思いますと、一方ではこれはどうしても一定の規格にそろえなければならぬというふうなことでありまして、右手と左手とを上手に使いわけておられるようでありますが、私たちとしては届出制にしながら検査をする、許可制にしないでやるというところにはどうしても疑点が晴れないのであります。ここで通産省が非常にこの航空機製造という点に関しましてにらみをきかそうというようなことがありありと現われておることだけは間違いないのでありまして、この上はいかに押問答をいたしましても、これは老練に逃げられると思いますし、見解の相違ということになると思いますので、これ以上は追究いたしません。  第二にお尋ねいたしたいのは、さらにこのでき上つた航空機といえども通産省確認を得なければこれを他人に引渡してはならない、こういうふうに第八條において規定いたしておるのでありますが、この確認というのはどういうことが確認になるか、その確認の定義をはつきりここに示していただきたい。
  12. 本間俊一

    本間政府委員 これは前々会にも申し上げた点でございますが、私どもの方の製造確認書というのは、その航空機工場設備せられているその設備を利用いたしまして、そうして一つ生産方法がきまつておるわけでございますから、その方法従つて飛行機が漸次つくられて行くわけでございます。そのでき上りました飛行機がどういう製造工程、どういう経過を経てできたかという、そも航空機のつくられました経歴と申しますか、そういうものを正直に記載いたしまして、それが私ども製造確認書になるわけであります。そういたしますればでき上つた飛行機を買う方にしても、やはり私どものつけた製造確認書を見ますればどういう製造工程を経て、どういうふうにでき上つているかということがわかるわけでございまして、決してこれは最後に検査をいたしましてその検査に合格をするというような考え方ではないのでございます。
  13. 關谷勝利

    關谷委員 大体この確認書というようなものを通産省が出すということは、これは高度の安全性を必要とするものだからいろいろそういうふうな経過工程等を書いたものを渡さなければ安全の証明にならないというようなことからこうされたのぜろうと思いますが、私はこの航空機製造法案で一番悪いところは、この工場設置等の点についての通産省監督ということはある意味において許されると思いますが、でき上つた飛行機確認書を出すことは行き過ぎであつて、これは当然航空庁の方へ所管せしむるのがほんとうであると思う。ただこの確認書を出すだけならば、いつそでき上つた飛行機に対する耐空証明まで通産省が出して運輸省へ引渡す、そして事故が起つた場合の責任通産省が絶対に引受ける、こういうことにならなければならぬと思うのであります。確認書だけ出して、耐室証明運輸省に出させる、だからできた品物がよい悪いについては責任を持たない、責任耐寒証明を出す運輸省におつかぶせて、自分の方では製造の方だけ握つて、それの確認書は出すが責任は負わない、ただ確認書だけ出していかにもりつぱなものができているのだ、こういうことで自己満足をする筋合いではないと私は思います。これは将来の航空行政の上において一番のがんになる、かように私は考えているのでありますが、この確認書を出すというならば、いつそ思い切つて耐空証明まで出すというようなことに通産省が一歩前進するか、あるいは確認書というようなものを通産省が出すことをとりやめて、これは航空局、現在の航空庁に対してこれを所管せしめる。製品検査は、すべてその工程にまで立ち至つてこれを航空局に譲る。いずれかにすることが、この航空行政の将来の混乱を防ぐことになることは間違いないのであります。いかに名答弁をする本間政務次官としても、これに対して答弁の余地はないと思うのでありますが、いかなる答弁をせられるか、承つておきたいと思います。     〔滿尾委員長代理退席阿左美委員長代理着席
  14. 本間俊一

    本間政府委員 原則といたしまして、生産を担当いたしております通産省工場のいろいろなめんどうを見て行くわけでありまして、その場合に製造確認書がいらないのだという御見解でございますが、私どもはそうは考えないのであります。飛行機安全性を非常にたつとばれる品物でございますから、生産を担当いたします私どもがその飛行機がどういう工程を経てどういうようにつくられたかといういわゆる確認書でございますけれども、それを出すことが何か責任がれだというような御批判でございますが、まつたく私どもには微塵もそういう考えはございません。  それからもしそれがどうしても必要なものであるならば、運輸省製造確認書をつくらせたらどうだということでありますが、そういたしますと、製造工場が両省の二元行政のもとになるということになりまして、それこそ御指摘のような混乱が起るわけでありまして、私どもはあくまでも製造事業はできるだけ一元的な行政のもとで、興造工場がすくすくと伸びるという観点からは、どうしても製造確認書は必要なものであり、そしてこれは通産省所管すべきものだというふうに考えております。
  15. 關谷勝利

    關谷委員 それならば、私はいま一ぺん重ねてお尋ね申し上げたいのであります。二元行政になるというようなことでありますが、工場設置工場監督に対しましては通産省がやり、製品に対しては航空局がやる、こういうようなことになつても決してさしつかえないと私は思うのでありまして、一方において確認書を出しておきながら、さらにまた一方において雨空証明を出さなければならない。これは複雑を帶びて、これこそ二元行政というようなことになるのであります。もしそれでやるとすれば、今後退した方の答弁がありましたが、責任をもつてそういうふうに確認書が出し得るものならば、むしろもう一歩進んで耐空証明通産省が出して、その飛行機機体による事故があつた場合にはその責任は負うのだ。一元行政のよいところは、責任明確化ということであるのであります。この耐審証明通産省が出すだけの御意思があるかどうか、その点を伺つておきたい。
  16. 本間俊一

    本間政府委員 私ども最初から、生産は一元的に通産省でやりたいという考え方を持つて、御承知のようにいろいろな経過を経ましてこの裁定案ができておるわけでありますから、私の方でただいま耐室証明までやるというふうには考えておりません。
  17. 關谷勝利

    關谷委員 この法案は、どう考えましても、結局通産省航空機製造製品検査までしたいという、なわ張り争いから来たのであると私は思います。そしてこの耐空証明というものは運輸省に出さす。中がどんなものやらわからずに運輸大臣耐空証明を出して、それで通産省のやつた確認書の中にもし誤りがあつた場合にでも、その責任までも耐寒証明を出した運輸大臣が負わなければならない。まことに通産省としては便宜のいい法律であります。責任がれ法律であることだけは間違いないのであります。この点はいくら申し上げても一向お感じないようでありますので、これ以上申し上げることはやめますけれども、この航空機安全性ということについては、所管航空庁の範囲になるということであれば、この確認というようなことは、いつそとりやめた方がよろしいと私は患う。もしそれをやるのならば、附言証明まで通産省が出すべきものである。その後の運航による事故に対しましては運輸大臣責任を持つが、しかしできた機体そのものにつきましては、耐空証明までも通産省が出すのでなかつたならば、将來の責任明確化ということは決してできない。必ず責任がれであり、あとで紛争が起ることだけは間違いないのでありまして、いかにりくつを申しましても、これが事実となつて現われることだけを予言申し上げておきます。この点私たちは納得はいたしかねるのであり十して、これをはつきり申し上げてお吏たいと思います。まことに通産省責任がれ法案であり、まことに御都合主義の法案である。しかもその責任運輸省が負うというようなものでありまして、私たちとしては承服相ならぬ條項でありますが、この耐室証明まで通産省が出すように修正せられるか、あるいはそうでなければ、この八條に出ておりますところの確認書というふうな製造過程製品検査航空庁所管として、確認書航空庁耐空証明の中へ一括して含ませる、こういうふうなことに修正せられようとする御意思があるかないか、伺つておきたいと思います。
  18. 本間俊一

    本間政府委員 お説は私どもも十分耳聴いたしたのでございますが、この法案生産を担当いたします通産省責任がれ法案だということは、これは見方でありますが、私どもはさような考え微塵もないのでありまして、いやしくも生産を担当いたしますからには、航空機性格にかんがみまして、当然この程度の検査はしなくちやいかぬという、生産を担当いたしまする責任者の最低の線を出しておるわけであります。従いまして修正がどうというようなことでございますが、私どもは前にも申し上げた通り、今日の実情に参おきましてはこれが一番いい法案だと確信して出しておるわけでありまするから、それ以上のことは国会の権限の方に入ることになつておりますので、答弁を愼みたいと考える次第であります。
  19. 關谷勝利

    關谷委員 このでき上りました航空機確認書がなければならぬという事うなきゆうくつな、自由取引原則がらしてもまことに当を得ないというふうに私たち考えるのでありますし、それを安全の立場からというふうなことでしきりに答弁せられておりますが、安全の関係航空庁の方でやるというようなことに建前がなつておるのでありますから、私たちは何といたしましてもその点が納得いたしかねるのであります。私はこれ以上議論は申し上げませんが、やがてこれによつて不都合があるということを予言いたしまして、私の質問を終ります。
  20. 阿左美廣治

  21. 多武良哲三

    ○多武良委員 この連合審査会におきまして、やはり問題の焦点になつたの生産行政の一元化であります。二番監督と申しますか、關谷委員もただいまその方面に最も重点を置いて御質問になつてつたようでありまして、むしろ運輸委員である關谷君が、何も通産省のこの所管についてどうのこう言つたのではなく、生産行政が一元化されないことによつて迷惑をこうむるのはやはりメーカーであります。この航空機製造については閣議でもいろいろ問題があつたようでありまして、そこで裁定ができた。先般の運輸委員会におきまして、野田国務大臣が御出席になつて航空機生産所管決定の経緯について御説明されたそうであります。私は速記録によつて拝見したのでありますが、それによりますと、野田国務大臣閣議の委嘱によつて本件を御検討になり、政治的な考慮は全然払つておらない。この問題をいかに解決すべきであるかということを、科学的に、また技術的に、行政的に検討されて結論に到達されたというようなことを申しております。私はこの結論に対しまして理想的なものであるとは感じておらないのでありますが、野田国務大臣本件に対する態度としては、まさにそうあるべきであり、またその通りであるに違いないと信ずるものであります。ところが前回連合審査会におきまして、運輸大臣はその御答弁にちよつとふしぎな御発言があつたよう伺つたのであります。つまり大臣本件決定に際し、何らか政治的な動きがあつてゆがめられて決定がなされたのであるというような意味のことをおつしやつておられます。また大駐航空庁長官も五月十二日の運輸委員会におきまして、今度の問題は理論的な問題から多少逸脱して、そこにむずかしいものがあつたのではないかと存ずるわけですというようなことを申しておられるのであります。私は責任者たる野田国務大臣説明によつて、まつたく誤解であり、臆測であつたとして氷解したものと考えておつたのであります。ところが再び最も重要な責任者であるところの大臣から、不明瞭な取引を連想させるような御発言があつたことは、まことに重大なものといわなければならないと思います。すなわち野田国務大臣説明とまつたく相反して、野田国務大臣が何らかの勢力に押されて裁定案をつくられしかも委員会においては、政治的考慮は全然払わなかつたと、うそを言つておられると主張されるものであります。私は運輸大臣の言葉じりをつかんでどうこう言うつもりではないのですが、前には航空庁長官からも御発言があつたことでありますし、また大臣の御発言ともなると、その影響は非常に大きなものであり、重大なものと考えるのであります。前回大臣の御発言はどういう意味のものでありますか、その点まずお伺いいたしたいと思います。
  22. 村上義一

    村上国務大臣 いつの委員会でのお話であるかよくわかりませんが、私は特に政治的の力が動いてゆがめられたというようなことを申し上げた記憶がないのであります。何らか言葉の不明瞭という点から今御質問になつておるのだと思うのであります。今のお話のように、閣議内容につきましていろいろ申し上げることは差控えたいと思いますが、お話になりました点について申し上げれば、閣議におきましてもいろいろ論議がありました。しかも冷静にそれぞれ主張があつたのであります。その結果三大臣に一任をするということに相なつ次等であります。三大臣の評議によつて、御承知の四月二十六日の案ができ上つた。内容はそういうことでございます。
  23. 多武良哲三

    ○多武良委員 それでよくわかりました。そうしますと閣議決定におきまして、野田国務大臣運輸大臣の御意見が、結局するところ同一御意見なつたと解してよろしゆうございますか。つまり今回の裁定案は、科学的、技術的、行政的に決定せられたものであつて、その間に政治的考慮はまつたく入つていないことをお認めになつておられるのだと存じますが、さように解釈いたしてよろしゆうございますか。
  24. 村上義一

    村上国務大臣 閣議で野田大臣その他二名の方に一任するということに相はりました。そうして決定をしたのであります。しかしこれは意見が対立と円しますが、一致しなかつたがゆえに、そういつたようなことに相なつたりであります。従つて私の意見、またての他の大臣意見ともこの裁定案が違つておるということは明らかなんであります。違つておるがゆえに、裁定を必要としたのであります。私の意見は終始一貫、これは自分の信念でありまして、何らかわかりません。これはお断りしておきます。しかし閣僚の一員としておる以上、閣議決定したことには服従することが必要だと思つております。  第二段におきまして、政治的の云々こいうお話がありましたが、これは政治的という解釈のいかんによると思い手が、閣議でいろいろ意見を述べ、これが決定するというような問題は、すべて政治的だと解釈し得るのではないかと私は思います。今多武良さんのおつしやつた政治的という意味はどういう意味であるか、私によくわかりませんが、何か特別な事項を指摘になつておるのだとすれば、そういう特殊な問題はないと私は思つております。
  25. 多武良哲三

    ○多武良委員 それでよくわかりました。  次に生産行政の一元化ということについて、いろいろ疑問がありますので、お伺い申し上げます。航空機工業は、申すまでもなく長い間の空白期間を経まして、新たに再建されようとするところの工業でございまして、この工業は機械工業の最高水準を行く総合工業と申しますか、まことに重要な産業でありますから、その再建の一日も早からんこと左念願すると同時に、過去の航空機工業にとりまして、その発展の阻害となつた大きな理由の一つであるところの多元的な行政をどうしてもなくしていただきたいというのがわれわれの考えであります。かつて陸海軍から指令が入り乱れまして、朝令暮改と申しますか、航空機工業をいたずらに混乱させていただけであつたという経験は、われわれの記憶に新しいところであります。このような事態を招いた最も大きな原因は、要するに需要者側を所管する官庁が、航空機工業に対しまして、生産行政をあわせて所管して駒つたということでございまして、需要者は数多くあるはずでありますから、需要者側が生産行政所管するという行き方は、必然的に生産行政の多元性を導くことになることは、火を見るよりも明らかなことであります。この工業の再発足に際しまして、需要者のわずかな一部分を所管するにすぎない運輸省が再び戦前の悪弊を再現されようとしておるというふうに考えられるのであります。これは航空機工業の発展を願う者にとりましては、まことに憂慮にたえないものがあるのであります。先日の閣議裁定生産行政の一元化という建前を尊重してああいうふうな断が下りたものだと承つておるのであります。この際航空機工業に対する生産行政の一元化という大原則はつきりと打立てるということが非常に重要だと思いますが、これに対する大臣の御見解はどうか、お伺いいたしたいと思います。
  26. 村上義一

    村上国務大臣 過去の実情にかん歩みて、ただいま多武良さんから御意見伺つたのでありますが、過去において多元的では私なかつたと思うのであります。軍用機の生産については軍部がもとより所管しておられたと思います。しかし民間の航空機生産についてはすべて航空局所管しておつたと記憶するのであります。ただ生産工場があるいは軍用機の注文を受ける、あるいは民間航空機の注文を受けるというために、生産工場においては両方面から——軍用機の注文を受けたときには軍部の指揮監督を受ける、また民間航空機の注文を受けたときには航空局の指揮監督を受けるということに相なつたのじやないかと思うのであります。今日本では御承知通り、将来はいざ知らず、現在のところでは軍用機の生産ということは、現段階におきましてはまだ問題になつておらぬと思うのであります。他日の問題であると思うのであります、また民間航空機にいたしましても、生産及び特に航空行政生産のみならず、その安全性につきましても航空行政の一元化ということが航空機また航空事業の発達をもたらすゆえんではないか、こう考えておるのであります。しかし航空機生産は先刻もお話通り四月二十六日の裁定によりまして生産通産省所管して行く、しかしその安全性については航空庁責任をもつて遂行するということに相なつた次第であります。
  27. 多武良哲三

    ○多武良委員 ただいまの大臣のお言葉でありますが、戦前多元的ではなかつたというようなお話でありますが、事実装備品というようなものでも、海軍で使う装備品も陸軍で使う装備品も同じようなものの場合に、メーカーとしては、陸軍の監督官が来て早く陸軍の方へ持つて来い。それからあくる日海軍の監督官のところへ行くとその装備品はこつちの方へくれというようなことで、事実末端の方では非常に迷惑をこうむつてつたのであります。それはともかくとして、耐空証明の発行が航空庁長官の権限に属しておりますが、生産行政の分野に属する検査までもすべて運輸省が行えるような形になつておりますが、それまでしなくてもよろしいのではないかというふうに考えるわけであります。その例は輸入航空機のごとく、航空法案の中にすら明文をもつて示されておるのでありまして、大臣は海のかなたの実情を察知できない外国のメーカーまたは外国の政府は信頼せられても、国内のメーカーまたは政府部内の他の行政官庁のすることは信頼できないというふうな意味にも解釈されるのでありますが、この点いかにお考えになつておりますか、お伺いいたしたいと思います。
  28. 村上義一

    村上国務大臣 お話の前段の陸軍あるいは海軍ということで、非常にメーカーは困られたということは、私ども承知いたしております。特に太平洋戦争後半に至つてはてんやわんやであつたと記憶いたしておるのであります。これはもう陸海軍の間においてそういう問題があつたことは、私も当時すこぶる苦々しく感じておつたことであります。ただ先刻申しましたのは、軍用機はこの法案の範疇外である。これはただ民間航空事業についてのみの問題であることを初めから申し上げたつもりであつたのであります。  なお今外国の政府は信頼できても、外国の航空機生産工場について云々というお話がありました。この国際民間航空條約の参加国以外でありますれば、これはお話通りだと思います。国際民間航空條約の内容、また特にその付属書の示している構造、強度その他あらゆる試験、検査等はそれぞれ加盟国である以上は、それぞれの航空法に盛り込んであるのであります。たとえて申しますれば、米国の民間航空局、これは生産から一元的に運営まで責任をもつて監督をしている役所だと考えておりますが、米国の民間航空局が国際民間航空條約の内容を包容した米国の航空法に基いて検査をし、証明を発行しておられる。従いましてその工場のいかんにかかわらず米国の民間航空局が正しき証明をし、またそれに基いて耐空証明をしておられるというものであれば、これは当然信頼して可なりだと思つておるのであります。ただ相当期間長期にわたつて使用されている中古品である、あるいは証明発行後相当期間が経過しているものを輸入した場合には、あらためて証明書を発行する、いわゆる検査をし直すということが必要になつて来ると思うのであります。
  29. 多武良哲三

    ○多武良委員 今欧米先進國の航空機がそういうような段階を経て、優秀なものであるということで、耐空証明の必要がないというふうに承るのでありますが、航空法案中に別にどこの飛行機ということも書いておりません。従つて場合によりますと、インドとか、あるいは台湾なんかからも飛行機が輸入されるのではないか、かりにそういう場合にも、全然外国の航空機ならそのまま、そうして国内の飛行機は、これは大臣とか、あるいは長官がみずから国内の飛行機検査を一々おやりになるわけではなくて、要するにだれかがやるわけであつて、それなら通産省の職員を信用されると申しますか、通産省生産ということに信を置かれてもよいのではないかというふうに解釈されるのでありますが、この点いかがお考えになりますか。
  30. 村上義一

    村上国務大臣 今外国の飛行機について信用するならばというお話でございましたが、外国につきましても前刻申しましたことく国際民間航空條約の加盟国が、その條約に従つた法律に基いて責任を持つて検査をし、証明書を発行したものは信用して可なりだと思つております。ただ例外として非常にその期間が経過しておる。一年以上経過しておる、あるいは相当使い古しておるといつた場合には、輸入して検査を要するということは、これはもう申し上げるまでもありません。従つて法文にも必ず一年たてば再検査をするとは書いてないのでありまして、この法案にも何條でありましたか、検査をすることができるというふうに書き表わして曲る次第であります。今お話のように通産省の方の技術官が検査したものをなぜ信用できないかというお話でありますが、信用しておるがゆえにこの裁定の中にもその点を書き現わしておる次第であります。
  31. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 私もこの数日来いろいろと各委員から論議されました生産安全性のいわゆる所管の問題について、主として村上運輸大臣にお伺いしたいと思いますが、ただいま多武良委員がお聞きになりました点が大体私のお伺いしたいと考えておつた点でありますので、なるべく重複を避けたいと思います。先ほど運輸大臣は多武良委員に対して、運輸省安全性の保持という点についてのみ検査監督だけではなく、生産の面まで立ち入つて所管することが正しいと考える、それが自分の信念であるとおつしやいましたが、それでは運輸大臣の信念というものについてもう少し具体的に、内容についてお伺いしたいと思います。運輸大臣生産の面まで所管しなければ飛行機安全性が保たれないというお考えのようでありますが、生産の面については一体どこまで所管しなければならないとお考えになるのか、この点についてお伺いいたしたい。
  32. 村上義一

    村上国務大臣 根本的な御質問でありますが、すでに閣僚としてきまつたことのもう一段さかのぼつての御質問でありますので、まことに私としてお答えしにくいのでありますが、特にその信念の根拠いかんという御質問でありますので、お答え申し上げたいと思うのであります。交通業務は御承知通り人命、財産に直接至大の関係があるものでありまして、一旦事故が発生した場合には重大なる結果を惹起することは御承知通りであります。従いまして交通の業務につきましては安全の確保ということから、その用具の整備ということが重大な問題であることはこれまた申し上げるまでもないのであります。従いまして現在船舶にしましても、また鉄道車両、電車等にいたしましても、ただいま申しますような理由のために例外として運輸省監督行政を掌理しておることは御承知通りであります。しかも現在船舶生産技術にいたしましても、また鉄道車両特に機関車の製作技術にしましても、世界の最高水準を行つておると申してもあえて過言ではないと思うのであります。特に航空事業につきましては、その事業の性質上、またハイ・スピードの関係等を考慮しましても、また事故が一旦発生したときには全面的に徹底した悲惨な結果をもたらすという点におきましても、航空行政の最大の眼目は航空の安全確保という点にあると確信しておるものでありまして航空の安全に対する責任が明瞭にあるということが、航空事業の安全なる発達をもたらすについて絶対必要な要件であると確信をいたしておるのであります。言いかえますれば生産につきましても、修理につきましても、また運航につきましても、これは不可分な一連の航空行政を一元的に処理して行くことが必要であると思うのでありまして、先般のもく星号の事故につきましては、大体において乗務員が錯誤のために判断を誤つたということが直接の原因であるということに調査会の結果結論が出たのでありまして、本会議において御報告した通りでありますが、多くの場合に、乗務員の技術あるいは判断等の誤りから事故が発生したものか、あるいは航空機自体にその事故の原因があつたのか、あるいは両者が競合しておつたのか、こういう問題が必ず起きるのであります。ひとり航空事業のみならず、船舶事業につきましても、また鉄道、電車の事故につきましても多くの場合二、三のあるいは数種の原因が競合しておる場合がほとんど全部というてもよい状態なのであります。その都度事故の処理——直接の処理につきましても、あるいは今後その事故をなからしめるという後の方法、つまり製作等に関しましても、結論を出すことが非常に困難な場合が多いのであります。従いまして航空行政の最大眼目が安全確保という点にある。またそれによつて初めて健全な発達がもたらし得るのだということを考えますと、生産から運航までを一元的に一つの官庁が掌理するということが、健全なる発達をもたらすゆえんであるということを、私はかたく信じておる次第であります。但しその点はまたいろいろ反対の見解もありまして四月二十六日の裁定ということに相なつた次第であります。
  33. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 今述べられましたいわゆる運輸大臣の信念については、今までも伺つて曲るわけでありますが、私のお聞きしたいことは一体生産の面にまで立ち入つて所管しなければ責任が負えないとおつしやいますが、その生産の面とはどこまでですか、こういうことです。申し上げるまでもなく、航空機は多くの資材の上に立つて、それから加工されます部分品を組み立ててできる。いわゆる高度なる総合機械工業であります。そこで生産にまで責任を負わなければならぬとおつしやいますならば、その原料でありますアルミニウムであるとか、ジユラルミンであるとか、あるいはその他の特殊金属、あるいはゴムというようなものの生産にまで責任を負わなければ、航空機全体の安全に対する責任が負えないというお考えでありますか、その限界について承りたいと思います。
  34. 村上義一

    村上国務大臣 航空機生産は船舶生産と同じく、非常に多数の部品が総合的に組み立てられて生産せられるものであることは御指摘通りであります。今私の信念として申しました範囲は、もちろん部品につきましても、資材につきましても、航空機生産工場にこれらのモーターにしても、あるいは素材等についても、その納入について納入検査責任をもつてやらなくちやならぬ。生産に関与し、責任をもつて進めて行く場合には、船舶生産もあるいは機関車生産も同じく、部品として工場で受取る、あるいは素材として発注して、素材を受取る場合に納入検査責任をもつてしなければならぬと牽えております。
  35. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 資材あるいは部品については納入検査をしなければならぬとおつしやいますが、それならば組立てられた、完成された航空機そのものについても、納入検査だけでよいわけではございませんか。
  36. 村上義一

    村上国務大臣 これはもう申し上げるまでもございませんが、組立てられた完成した航空機を外側だけ見て、ただちにそのすべてが完全であるということは何人もできないことであります。そうでありますがゆえに、型式証明というものは、まずもつて設計のときから見まして、その是なることを確認して、しかもかりに模型を製作いたしまして、試験飛行をする。しかる上に初めて型式証明を発行し得るのであります。こういうぐあいになつております。そこまでやらなければ安合を確保できないというような工業は非常に他に例がないのじやないか、あるいはあつてもきわめてまれではないかと思うのであります。これらの点まで国際民間航空條約はそれそ、詳細に規定いたしておるのであります。組立てられた飛行機はもとより、その飛行機耐空証明を出すにあたりましては、もちろん飛行を実行しまして、その型式証明で計画しておる力が出るかどうかといつたようなこと、その他詳細にわたつて試験をして雨空証明を出し得るのであります。雨空証明を出すについては製作中の工程試験、工程検査が必要であります。また前刻申しました納品の際における納品検査ももちろん必要になつて来ると思うのであります。その点意義が建つて来ると思います。
  37. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 飛行機の組立てについては、設計から一切、生産についてタッチしなければならないというお考えでありますが、そういう考えからいたしますならば、資材の点についても同じことが言えると思います。今日の飛行機の資材というものは、先ほど船であるとか車両の話をされましたが、船舶、車両の資材も今日は相当良質な一つの規格にはまらなければならぬわけですが、飛行機の資材はさらに数倍する良質なものでなければならないと思うわけであります。そういたしますと、たとえばジユラルミンについても、その純度であるとか、その構成の要素等について一々試験あるいは生産工程について、運輸大臣の理論からいたしますと、監督しなければならないように思います。そこで運輸大臣の良心に従いますならば、やはりそういうジユラルミンであるとか、あるいは特に特殊合金、そういうものにまで、單なる納入検査ではなくして、飛行機の組立て、設計と同じ意味を持つております構成の要素としてその生産過程というものについて、一々十分に検査監督しなければならない。こういうりくつになると思いますが、そうしたものについては今問題にしていないで、ただ納入検査をすればいいというようなお考えになりますると、村上運輸大臣は参資材の点についてははなはだ無責任だ、こういうりくつが出て来ると思いますが、その点はどうですか。
  38. 村上義一

    村上国務大臣 今、資材についても、飛行機の材料に使うもののごときはきわめて良質のものが必要だとおつしやいました。まことにお説の通りだと思つております。ただ、それならこの資材を生産するところまで目をつけなければ安心ができないじやないかという御質問でありますが、資材のごときはきわめて単純でありまして、それぞれ良質のものを必要とする、あるいは特別良質のものを必要とする。それはそれぞれ規格に合されておるのでありまして、その規格に合された資材の納入があつた際に、もし疑義があるならば試験をすれば明瞭になるはずであります。複雑性を持つておるか、単純であるかということによつてそこがかわつて来ると思うのであります。御指摘のような資材のごときは、納入検査によつて安心の行く程度に試験ができる、こう考えております。今日船舶につきましても、また機関車、電車等につきましても、すべてただいま申したような式で製作在やつておる次第であります。
  39. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 私が申し上げるまでもなく、近代産業としての精密工業というものは、生産者それ自体が責任を負うという立場でなければできるものではないと思うのです。一々お役所の指導監督を受けなければできないというものではないと思うのです。納入されたものについての試験をする方法はあるわけです。それは今村上運輸大臣がおつしやつた通りです。従つてそういう意味から申しますならば、組み立てられた航空機そのものについても、一定の試験の標準というものがあつて、私はそれでできると思う。たとえば発動機についての試験あるいはまた機体そのものについての試験というものは、その資材の厳密なる試験によつてできたものについての試験が行われる基準があり、またそのでき上つたものについて試験ができるという点については、今そのくらいの検査に要するところの能力は科学的にできておると私は思うのです。資材は單純だからその生産工程について検査の必要はない、機械は複雑だから生産工程において一々検査しなければならない、監督しなければならないということは、近代産業に携わられる村上運輸大臣の理論としては、私ども少し納得がしがたいわけであります。先ほどおつしやつたことは、私はほとんど常識論にすぎないと思うわけです。資材は単純である、しかしながら今日の資材というものは単純ではございません。アルミニウムができ、それから純度の高いジユテルミンができるまでの過程は実に複雑なものだと思います。いわんや発動機その他に使いまする特殊合金は非常に複雑な過程左経てでき上るものであると私は考えております。むしろ外に現われた飛行機の組立ての方が、科学的に見れば単純ではないかとさえ私は思うわけです。従つて組み立てられたものは複雑であるということは、いろいろなものが合さつてできるから複雑であるというにすぎないと思うのです。さらにその生産工程については、通産省がその検査監督の任に当るわけですが、通産省監督検査をするから、運輸省はその責任が負えない、不安でならないということは、同じ一つ政府の中においておかしな話ではないかと私は思うわけであります。おそらく通産省といえども、最も安全性の高い飛行機をつくろうという趣旨に基いて検査をし、監督をせられるものであると思ふわけですが、それらの点について、運輸大臣はどういうふうにお考えになりますか。通産省なるがゆえに、自分の所管に属しておらないがゆえに、責任が負えない、信用ができないということは、同じ政府の中における管理の立場として実におかしな話ではないかと思う。先ほど多武良君もおつしやいましたが、外国のものは耐空証明までしてあるから信用するとおつしやいますならば、通産省において耐空証明をしたものでも、外国よりも日本の同一政府のやることでありますから、より一層信用ができるということになるわけではないかと思いますが、その点について大臣の所見を伺います。
  40. 村上義一

    村上国務大臣 多角的な質問でありますので、せいぜい御質問従つてお答えしたいと思いますが、あるいは聞き落しがあるかもしれませんから、そういう場合にはあとから御指摘願いたいと思います。まず私申し上げたいことは、私の信念のよつて来るところをお尋ねになりましたから申し上げたのであります。今日国会で御審議を願つておりますこの航空法案につきましては、生産通産省でやつていただく、またその検査の一部分も通産省でやつていただくことになつて、それを前提として、言いかえますれば、四月二十六日の裁定を前提としてこの法案ができ上つておるのであります。ただ先刻来いろいろ御質問があつてお答えいたしましたのは、私の信念をお尋ねになりましたので、そのよつて来るところを申し上げたのであります。なお今御質問になつたのも、その信念のよつて来るところの事柄に関連しての御質問であつたように思うのであります。この航空機生産するような工場には、もちろんりつぱな技術家でおられることはもとより当然であります。工場におられる責任ある技術家の技術を信頼するということは、もとよりなくてはならぬと思うのであります。またそういう精神においてこの法案にも盛り込んであるのであります。なお飛行機は、でき上つたものを試験してよければ買う、もし悪ければ買わなければよいじやないか、でき上つたものについてのみ検査さえすれば使用者はよいではないか、こういうような御趣旨の御意見があつたと思うのでありますが、これは私は考えなければならぬことだと思うのであります。自動車のごとくマスプロの性質のものでありますれば、チヨイスが購入者の方にあつてよろしいのであります。また工場側の生産者側の方で多数の製品を羅列して、使用者というか注文者というか、購入者に選択の自由を持つてもらつてさしつかえないものだと思います。しかし船舶にしましても機関車にしましてもその他の車両にしましても、特に飛行機のごときは全部注文生産品物であります。注文者が気にいらないからといつて引取らないということになりましたならば、ことに一機で数億円を要するような航空機を受取らないということがありますと、そこにトラブルが起りまして、生産業者としては非常な迷惑しごくなことであり、そういうことが結局航空の健全なる発達を阻害することに相なると思うのであります。航空機といえども将来の発達いかんによつてマスプロということに相なるでしよう。しかしながらここ当分は注文生産によることは認めなければならぬと思ふのであります。かるがゆえにでき上つてから気に入つたら購入すればよいという考えでは、航空行政の完璧、言いかえれば航空事業の健全なる発達は期し得られないと思うのであります。またでき上つたものを検査して、それで一応さしつかえなければ、耐空証明を発行してもよいじやないかというような御趣旨のように拝聽いたしましたが、今日高度な技術をもつて複雑な組立てを要する航空機については、でき上つただけではいかぬということは、私の一家言ではないのでありまして、国際民間航空条約が明瞭に示しております。すでにわが国も平和条約におきまして、その締結当時において国際民間航空條約に加入するということは、政府としても宣明いたしておる次第であります。この国際民間航空條約の示すところによりましても、耐空証明を発行するのには、これこれの段階において検査、試験をせなければならぬということが、條約上の義務として課せられておる次第であります。これをただ航空法案に盛り込んでおるにすぎないのであります。なお、私の信念についてお尋ねになれば、今申し上げる通りにお答えするよりしかたがないのであります。しかし私の信念を主張することは、今日許されない段階になつておるのであります。要するに民主政治はいろいろな意見がそこにあり、多数で進んで行くものであることは申し上げるまでもありません。閣議といえどもまたしかりであります多数の意見に従うということは当然なことであります。四月二十六日の裁定決定しました上は、この裁定に立つて今御審議を願つて参おる航空法案を立案いたした次第であります。この点ひとつ御了承おきを願いたいと思います。
  41. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 大臣の信念の問題から話が少し先に進んだので、多少私の質問をお聞き違いになつたのではないかと思いますが、私は生産されたものを運輸省の職員が検査しさえすれば、生産までは生産者の責任にまかしておけばいいということを断言したわけではない。この生産の面については通産省が十分検査をして責任を負うという建前でありますので、運輸省といえども飛行機に一番大切なものは安全性であるということぐらいはわかつておるわけです。従つて通産省がそうした飛行機性能について全生産工程において責任を負う以上、性能についての責任を負わなければならぬ。安全性ということは航空機性能の一部分であるわけですから、通産省が資材から完成に至るまで、責任を負うたものを運輸省が信用できないということははなはだおかしいということを申し上げたわけで、外国でできたものは性能検査が十分できておれば信用する、日本の通産省でやつたことはどうも責任が負えないということはおかしいと思う。ただ大臣は自己の責任上自分の所管でやりたいとおつしやるのだろうと思うわけです。しかし私は同じ内閣の大臣が、他の大臣のやつたことだからどうも不安で責任を負えないとか、また他人のやつたことはおれが責任を負うべき筋ではない、自分がやらなければ責任が負えないということは、共同責任の上に立つ内閣としてはおかしいと思う。ことに検査大臣がみずからおやりになるわけではないのですから、高度な技術を持つております者が通産省におつて検査をいたしますれば、またそれを信頼して大臣責任を負う。従つて同じ内閣の他の大臣がそれを信頼するのは当然だと思う。人のやつたことは責任を負わぬというのは、役所のセクト主義のあまりにもはなはだしいものではないかと思うので、その点お聞きしたわけです。
  42. 村上義一

    村上国務大臣 通産省の技術家を信用しないという意味は何らないのでありまして、今お尋ねの趣旨は、通産省において型式証明耐空証明もした後、航空事業者が、あるいは自家用航空機の場合もあるでしようが、購入すればいいじやないかというお考えじやないかと想像するのであります。もしそうでありますれば、先刻事故の発生した場合を仮定して申し上げましたように、運航と生産飛行機安全性というものが二元的になることははなはだおもしろくないということを申し上げた次第でありまして通産省の技術家を信用するとかしないとかいうような問題には、何ら触れておらぬつもりであります。また率直に申しますれば、私は生産をすべて運輸省でやらなければならぬということを申しておるのでは決してないのでありまして、私の信念はこういう交通用具は生産から運行までを同一の責任者が一元的に責任を持つということが、その事業の健全なる発達をもたらすゆえんだということを前刻申し上げた次第であります。必ずしも航空庁ですべてやらねばならぬ、運輸省でやることが間違いだという理由がありますれば、これはもう航空省というものを別個につくつて生産から運航まで一元的行政をやられるのもいいでしよう。あるいは総理庁に航空庁を移してやることも、一元的に行くと思うのであります。ただその場合には交通の総合行政がやりにくくなるという点はありまするが、これはまず別問題といたしまして、私の信念は運輸省でなくちやならぬということを申し上げておるのでは決してないのであります。これはひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。  それから重ねて申しまするが、通産省の技術家を信頼すべきではないかというお話であります。外国の製造飛行機は、外国の技術家、試験者を信用するにかかわらず、同一政府のものを信用しないということはおかしいという御調のように拝承いたしましたが、これは外国の工場を信頼するのではないのでありまして、われわれは国際民間航空條約を信頼せんければならぬと思うのであります。この参加国が国際民間航空條約の内容を取入れたそれぞれの国の航空法によつてでき上つたものであるならば、これは信用せんければならぬと思うのであります。これが信用できない場合は、すべからく脱退せんければならぬということに相なる次第であります。その参加国の航空機であつて、その政府責任をもつて條約に基いた型式証明耐室証明を出しておるというものでありますれば、もちろんこれは信用せんければならぬと思うのであります。日本で製作するものについては、日本で耐室証明その他を発行して、はじめて航空機が完璧に相なる次第であります。通産省の役人を云々というお話でありますが、この航空法案でもいわゆる四月二十六日の裁定にも明記されておりまする趣旨によつて通産省の技術家のみならず、その工場の技術家をも信頼して試験その他をしていただく。そうして本法案におきましては、耐室証明はそれらに基いて信超して、航空庁長官が発行するということに相なつておるのであります。御指示のようにひとり通産省の技術家のみ、ならず、生産工場の技術家をも信頼して耐室証明を発行するということに相なつておる次第であります。
  43. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 他の同僚諸君の質問もあろうと思いますからできるだけ要約して質問いたします。今おつしやいましたいわゆる通産省の役人を信頼する、それは製造工場の従業員に検査させておるという点から見ても、決して他を信頼しないわけではないとおつしやいますが、それではこの第十條第六項、第七項の規定でありますけれども通産省の職員をきめる場合に、運輸大臣に協議しなければならないということがあります。一体この協議とはどの程度のことであるか、これは運輸大臣の承認を求めなければならないという意味だろうと思います。また第七項の通商産業省の職員を航空庁長官が指揮監督することができる、こういうことでありますので、明らかに雨空証明検査をする場合に。運輸省がタッチしてやることになります。この場合に協議がととのわないという場合も考えられるでありましよう。協議がととのわなかつたならばどういうことになるのか。通産省見解でやられるのか、あくまで協議がととのつて運輸大臣の承認を求めなければならない強いものであるのか、そういう点がはつきりしておらない。そのやり方いかんによつては相当強い運輸大臣の通商産業省の所管事項についての干渉ということがそこに現われて来るのじやないかと考えられます。私は先ほど来同じ政府でありますから、一省のやつたことを他省が信頼できないことはないということを申し上げたわけですが、それに対して運輸大臣は信頼できないことはないとおつしやいました。信頼できないことがないならば、こういうやり方をしなくでも済むのじやないかと私は思うわけですが、その点についてどういう見解を持つておられますか。
  44. 村上義一

    村上国務大臣 十条六項の協議ということを御指摘に相なりましたが、これは承認とかいうような強い意味はこの文字には何ら含まれていないと私は思つております。とにかくお示しのように同一の政府内でありますので、こういうふうに通産省の技術官を信頼して、協力して、きわめて大切な雨空証明を発行するということなのであります。従つて両省のこれら当事者はきわめて緊密な協力を要すると思つておるのであります。今承認ということはとにかくとして、協議というようなことでもただいま申しますような緊密なる協力という精神において進まねばならぬと思いまするし、ここに書いてある文字もそういう趣旨に解釈いたしたいと思うのであります。
  45. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 協議ということはお互いの信頼の上に立てばうまく行くことですが、先日来の運輸大臣考え方、あるいは通産省当局の考え方を見ておりますと、これは非常な対立状態にあると私は見ております。そうしてまた両省関係委員会の委員の諸君の発言を見ましても、この問題についてやはりそれぞれ見解を異にして、非常な対立状態において議論をされておる。こういう点から見ましても私はこの問題は将来相当大きな問題として残つて来ると思います。場合によつては、通産省運輸省の職員を押しつけられて引受けなければならないというような事態も起つて来ると思います。従つてただ單に協議という言葉だけでありますると、結局、最後に引受ける方の側が非常に強くなつて、おれの方では引受けない、おれの方の職員を使わなければ引受けないぞという強い意見も出て来ると思いまするそういう場合に、協議ということだけでは済まない。この言葉は非常にやわらかいけれども、結局、最後に引受ける方の意見に従わなければならない、最後の検査を通す方の意見に従わなければならない、こういうようなことになると思います。そういうことは決してないと抽象的におつしやいましても、私どもはなかなかそうは簡單に信用できないわけです。その点についてもう一応、あくまでそういうことはないということを、できるだけ具体的に御説明願いたいということ。  それから、通産大臣がおいでになりませんが、通産省側のこの点に対する御意見を承りたい。
  46. 村上義一

    村上国務大臣 今お示しのようなことにならぬようにぜひして行きたいと考えておる次第であります。
  47. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 今御了解を得ましたが、このことはきわめて重大でありますので、関連して質問を申し上げておきたいのでございます。  加藤委員の御質問に対しまして協議ということは、そう強い意味のものではない、協力をする意味だ、こういうような御答弁があつたのでありますが、これは私はお考え違いじやないかと思うのであります。と申しますことは、この四月二十六日の閣議決定事項を、当時主管いたしました野田行政管理庁長官から御報告がありましたときも、文字は入つていないが、この四の一番あとの方に、運輸大臣安全性検査についてはすべて指揮命令をすることができる、こういう意味が含まつておるのだ、文字には入つていないが、指揮命令ができるのだ、こういうようなはつきりした御答弁になつております。総務会で熱心にこの問題について説明を求めた。従いましてこの第三の中にありますところの「生産過程における検査については、(イ)生産技術検査は通産大臣所管とし、(ロ)安全性検査は、運輸大臣所管とする。」この二つのところからわかれて来ておりますのが四の條項であるのでありまして、その安全性検査については運輸大臣所管とするのだ。そうして所管とするについては、通産省の役人といえども、あるいは工場検査員といえども、すべて運輸大臣の指揮監督に従わなければならないのだ、こういうことをはつきり行政管理庁長官から総務会においても、御説明があり、さらに過日私ども委員会に野田管理庁長官においでを願つて、公式に質問をいたしました際の速記録にもはつきり出ておるのであります。でありまするからこれらの点ははつきり区別をいたしておきませんと、今のようなどつちつかずの御答弁になつては、あとで私ども法案決定するにあたつて非常に困ることになつて来ると思います。だからその点について重ねてて承りたい。
  48. 村上義一

    村上国務大臣 今の尾崎さんのお説は、まことにその通りに私も解釈いたしております。ただ今御質問によつでお答えしましたのは、協議という字句の解釈についてのお話で、これは承認という意味かというようなお話でありましたから、これは協議であつて、承認という意味でないということを申し上げ、さらにつけ加えて、とにかく運輸省責任下においていろいろ信頼して、検査その他をやつていただく、こういう緊密な連繋を保ち、緊密な協力を必要とするものだということを申し述べたわけでありまして、あるいは誤解を来したかと思いますが、あらためて申し上げておきます。
  49. 本間俊一

    本間政府委員 加藤委員の御質問で、通産省関係いたしておりまする分についてお答えいたしたいと思います。尾崎委員も関連質問で御指摘になりましたような関係になつておりまして、なるほど議論の上では大分いろいろなことがあつたかと思いますが、問題は、工場の従業員でも両省の間でどういう資格のもの、どういう要件を備えなければならないかということを前もつて相談をいたしまして、試験をしてきめるようなことになるであろうと思いまするから、法案が成立いたしますまでの間にいろいろ議論がございましても、お互いに目的といたしておりまするところは、できるだけ航空機の発達に資するように、そうしてできるだけいいものができるようにということでやつているわけでございまして、しかも工場に立入り検査をするような場合には、通産省運輸省が協議をいたしまして行うということに両省の間で大体話がついているようでございまするので、この点で協議がととのわずに非常なめんどうなことになるというふうには私ども考えておらないわけでございます。その点はひとつ緊密に協力いたしまして、できるだけいいもの、しかもできるだけ飛行機工業の技術が進歩するという点で一致するものと考えております。
  50. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 この六項の協議ということは、今御説明通り、言葉自体も非常にやわらかな言葉でありまするし、また御答弁もそれ以外の答弁はできないと思います。しかし七項へ参りまして、当該通産省の職員を航空庁長官が指揮監督することができるということで、はつきりとどめを刺してある。今尾崎委員のおつしやつたこの問題がここに現われて来ているわけであります。従つて、協議して通産省の職員に行わせるというこの法の文句でありまするけれども、実際には、先ほど申しましたように、この指揮監督権が相当強く現われて来て、運輸省の職員を使えとか、あるいはまた航空庁長官通産省所管事項にまで入つて来て、いわゆるその権限外のことまでいろいろと干渉するというような事態が現われて来やしないかということを申し上げたわけです。その点についてそういうことは絶対にないというお考えですか、承りたい。
  51. 村上義一

    村上国務大臣 きわめて重大なる耐空証明というものを航空庁長官は全責任左もつてするのであります。従いまして耐室証明をなす基礎の試験あるいは検査等、生産工程中におけるこれらの試験等につきましては十分航空庁長官責任をもつて指揮監督をして行くべきであるということはもとより当然であると思うのであります。通産省の仕事に干渉とかいうお言葉が今ありましたけれども耐空証明につきましてもこれは航空庁長官の全責任において行うものでありまして、決して通産省所管事項ではないと思つております。
  52. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 通産省所管事項ではないということでありますならば、私はこの法文のような考え方は間違つていやしないかというふうに思うわけです。私は第一條のこの法律の目的という点からこういう一つのごまかしが行われていると思うのですが、第一條の目的の中に、「航空機の航行の安全を図るための方法を定め、及び航空機を運航して営む事業の秩序を確立し、」ということがあります。すなわち航行の安全と航空機事業の秩序を確立するということが目的であるわけです。そのためにいろいろと生産の面にまでタツチしなけれげならないということになりますと、私はここに一つ矛盾があるように思うわけです。今大臣のおつしやつたようにこれらはすでに通産省所管ではないということでありますならば、運輸大臣の信念のように、この生産における工程は当然航空庁長官所管すればいいことになるわけですが、しかしながら閣議における裁定は、生産通産省、安全の問題は運輸省ということから、所管はつきり区別されているのです。それを安全を保つためにという目的のもとに生産の面までタツチするということで、ここへ大きく通産省所管事項にくさびを打込んでいる。しかもこれは通産省所管ではない、運輸省所管であるというふうにおつしやいますと、結局閣議における裁定というものからも逸脱して参り、第一條の目的の説明がはなはだ足りないというようにも思うわけです。その点についてどうお考えになりますか。
  53. 村上義一

    村上国務大臣 前刻私の信念を申しましたので、とかく混同される傾きがありますし、また話も二様になつて来るのはやむを得ないと思うのでありますが、生産の領域に検査あるいは証明のための手続が入つて來るというお話もあつたように思いますが、それはまつたく同感であります。航空機のごとき、また航空事業のごとき高度の安全性を保持せねばならぬものにつきましては、生産とその安全性との間に観念的には区分ができますけれども、実際面においては区分ができないという考えを私は信念として持つているのでありまして、この点は繰返して申し上げておきます。  なおただいまお話航空機のいわゆる型式証明についても雨空証明についても、これは運輸大臣所管であるということ、言いかえれば運輸大臣責任において証明をするのだということは、閣議裁定で明瞭になつておるのであります。この閣議裁定に忠実に本法案を書いたつもりであります。
  54. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 そこまでは一応認めるといたしまして、次の百三十四條の立入り検査の問題ですが、ここまで入つて参りますと明らかに通産省所管事項の領域を侵入して来ることになると思います。百三十四條の「航空機若しくは装備品の整備、改造若しくは製造」ということに対して報告を求めるということ、またその次の一号におきまして「航空機又は装備品の整備、改造又は製造をする者」の報告を求めるということになりますと、これは明らかに通産省所管事項の領域を侵して來ることになると思いますが、大臣どう思いますか。
  55. 村上義一

    村上国務大臣 こういう高度な技術を要する総合工業でありますがゆえに、完全な飛行機生産するについても、またその安全性確認する上においても、こういう施設については非常に重大な関係が必要であります。しかしながら生産通産省所管していただくことになりましたので、この條文はただ報告のみを受けるというようになつておる次第であります。
  56. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 報告を受けるだけでは済まない、まだどうも不安心だというので、第二項で職員が立入り検査をすることが規定されております。これはあくまで安全性検査のために必要がある場合というふうに御答弁せられるだろうと思いますが、一体それはどぢいう場合であるか、具体的にお伺いしたい。
  57. 村上義一

    村上国務大臣 具体的な問題につきましては航空庁長官から適切な事情をお聞取り願いたい。
  58. 大庭哲夫

    ○大庭政府委員 具体的にというお話でありますが、立入り検査につきましては、先ほどお示しのように第十條の七項によりまして製造過程検査を実施する者は通産省の職員である。その職員について航空庁長官は指揮監督することができる、かつまた航空機生産所管等に関する件の閣議裁定によりまして、検査規則、検査標準等は運輸、通産共同の省令で詳細に規定するということになつているわけでありまして、それらの検査規則、検査標準に従つて通産省の職員が航空機製造過程における検査を実施されるわけでありますが、それを必要に応じては、航空庁長官が指揮監督の立場上、工場に入りまして、その検査官の検査方法、要領などを見るという権能をここに書いたわけであります。この件につきましては通産省とも事前に打合せができているわけでありまして、入る場合にはお互いに了解をとつてつて行くというふうに、通産省との間に円滑な協定のもとに実施をしたいと考えております。
  59. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 必要があつた場合の具体的な事例等についてお伺いしたわけです。先ほど質問いたしました運輸大臣の指揮監督下にある職員が検査しているのに、さらに運輸省の職員が入つて立入り検査をしなければならぬということが私はわからないのであります。そこで何か特殊な場合にそれが行われるであろうというように思われます。今通産省と円満に話がついていると言われましたが、その円満がはたしてどういう円満であるかわからない、やむを得ず承認したことであるかどうかわからない。私はそういう場合がしばしば出て来ることは戦争中の二重検査の例に見ても明らかであると思うわけです。それは多武良委員からもしばしば指摘されました。従つてこういうことを運輸大臣の指揮監督下にある職員が、先ほど運輸大臣が申されました航察庁長官の所管としてやられる以外に、さらに運輸省の職員が入つて立入り検査をしなければならないという必要はおそらくないと思う。しかもそれがあるとするならば、それはどういう場合であるかということをお伺いしたわけです。
  60. 大庭哲夫

    ○大庭政府委員 具体的の問題につきましてはこの検査規則、検査標準を実施する上に瞬きまして、あるいはそれらが順当になされているかどうかという面につきまして先ほど御説明申し上げたように、その検査官の実施状況を見るために工場に立ち入り、工場生産検査するとか、それを指導するとか、監督するとかいう問題でなしに、通産省検査官の実施状況を見たいときには、見る権能だけを要求しているわけです。具体的に申しましても、それが起きる場合と起きない場合、起きることもあるということは過去の実例かと想定いたしまして、一応それだけの権能だけは法文としてとつておきたいという考えから立案いたした次第であります。
  61. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 時間がないから簡單に質問して終りますが、この検査官の検査の実情を見るために職員を派遣するということですが、もし検査官の検査のやり方が悪かつたら、そこへ航空庁長官意見をさしはさまれるであろうと思いますし、ただ單に検査の状況を見るというだけならばこれは必要がないと思う。その結果に基いてもし不備な点があれば、運輸省側の意見がそこにはさまれると思うのです。そうなりますとここに明らかに二重監督の弊害というものが現われて来ると思うのであります。いわゆるお役所のセクト主義というものが強い今日、必ず現われて来ると思うのでありますが、その点はどうですか。
  62. 大庭哲夫

    ○大庭政府委員 そういう面につきましては、この検査というものは單に安全性検査のみに限られ、かつまた通産省の職員もその面においてのみ運輸大臣の指揮監督を受けているわけであります。また立入り検査をするものにつきましても、それの面のみについて実施さすわけであります。それ以外のことにつきましては何ら所管となつていないわけであります。その点につきましては十分職員にそれらの点を納得せしめ、また教育して、そういうことのないように努めて行きたいと考えているわけであります。御承知のように戦前には航空機製造事業法というものがありまして、製造事業法は生産技術、生産事業者の助長政策でありましたが、半面航空法がありまして、航空機検査というものは事業法が軍需省に移つた後も、航空局といたしまして別途航空法に基きまして、終戦に至るまで民間機の検査はしていたわけであります。かつまた航空局が実施していた検査というものにつきましては、生産事業関係者から異論が出たということはあまり聞いていないわけであります。ただ先ほどからいろいろ御質問がありましたが、軍とまた軍の人間が検査をしたというその悪弊が、いろいろ民間の検査官に対して、過去の業績というものを批判されているように感じるわけですこの点につきましてはもう少し御認識を新たにして、過去の航空局検査官というものは、またそれが取扱つていました製造事業の民間航空機というものにつきましての検査の過去の実績につきましては、そういう批判はなかつたということをひとつ御承知願いたいと思います。
  63. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 過去のことばかりを私は言つておるわけではない。過去に対する認識があやまつておるからというような御意見ですが、私はそんなことばかり言つておるわけではない。現在のお役所のセクト主義というものは必ず二重検査の弊害がここに現われて来る。そこで運輸省の職員を入れて検査状況を調査させられるときには、そこに意見がさしはさまれるであろう。その意見が対立した場合には、およそ航空機生産過程において非能率的なものが出て来る。そういう二重監督の弊害をなくするために、むしろこれはやめた方がいいということを申し上げたわけです。  先ほど来大臣お話を聞いておつて安全性ということを非常に考えておられる。そういたしますれば、その安全性確立のためにはおのずから部品とか資材とかいろいろなところまで及んで行くということになるわけですが、安全性のみについて言われるけれども、それは生産の全工程についてということになるわけで、のみにと、何か言葉では限定されておりますけれども、少しもそこでは限定されたものがないというふうに思います。他の委員も非常にお待ちのようですからここらでやめますが、通産省としては一体そういう必要性があるものとお考えになつておるか。またそれをどういうふうに解釈せられるか。
  64. 本間俊一

    本間政府委員 この規定でございますが、ただいま運輸大臣並びに航空庁長官からもお話がございましたように、特別の場合にそういう権能を確保しておくという御趣旨であろうと思いますので、巽際の場合には、運輸省の人が工場へ入りまして、そして両省の職員が入つて生産事業者が非常なめんどうをするというようなことは、できるだけ避けて参らなければならぬと考えておりますので、実際の運用と申しますか、適用の面におきましては、航空庁と十分に連絡いたしまして、御質問のような弊害のできないように最善の努力をいたしたいというふうに考えております。
  65. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 どうも本間政務次官は、何か奥歯に物のはさまつたような御答弁で、要領を得ないのでありますが、同じ政府部内で違つた意見は述べたくないという御趣旨ならば、あえて追究いたしません。しかし、私はこんなことは必要ないと思います。もしこれを必要とするならば、私は先ほど運輸大臣がおつしやつたように、どこまでも生産の面にまで運輸省がタツチしなければならない、こういう考えになるわけで、閣議裁定そのものに大きな矛盾がある。またこれはまつたく妥協したものにすぎないと考えるが、しかし私どもはそういうふうに考えない。私どもはあくまで近代的な多角工業でありますところの飛行機生産は、工業生産をつかさどるところの通産省が一貫してやるべきで、安全性の面についてのみ運輸省がやればいいというふうに考えておる。第一條の目的の「航空機の航行の安全を図るため」というのを非常に広義に解釈するのが間違いであると考える。航空機の安全をはかるという範囲からいいますと、通産省所管して、あくまでも責任を持つて、できたものの性能についてのみ検査すればいいわけであります。そこで最後の組立ての過程において、多少航空庁検査が必要であるといたしましても、こうした航空庁の職員が生産過程の中に入つて、一々調査するというようなことは、これは将来大きな弊害の起つて来る最大なものであると思うわけであります。そういうような点について、なおいろいろお聞きしたいことがあります。今までの御答弁について納得のできない点が多々ありまするが、時間が非常に制約されにおりまするので、不満足のままこれで質問を終るわけですが、なお機会がありますれば、一層これらの点について納得の行くまで質問いたしたいと思うわけであります。
  66. 阿左美廣治

    阿左美委員長代理 大分時間も経過いたしましたので、本日はこの程度にいたしまして、次回の連合審査会開会につきましては、両委員会委員長と協議をすることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十四分散会