○
田代委員 私は
日本共産党を代表して、
野党修正案に
賛成、與党
修正案に
反対、
野党修正案を除く
政府原案に
賛成の意を表明するものであります。
この
法案ができました
ゆえんというものは、私が申し上げるまでもなく、これは資本家擁護の立法でもなければ、單なる、ささたる社会性のない問題でもないのでありまして、根本問題としましては、これは社会問題である。百数十万、百三十万を越える
被害者多数がおられるというところに、この
法案をぜひともつくらなければならない根本問題があり、またこの問題を
解決することによりまして、当然そこに日本の
石炭産業の発展ということも考えられるという
立場から、これが考慮されなければならなか
つたし、またこの
趣旨のもとに、政府並びに與党は立法するという
立場に立
つたものと考えざるを得ないのであります。
御承知のように、私が申し上げるまでもなく、日本の
鉱業法特に
賠償規定の
法案は、不完全きわまるものであり、
鉱業法が
改正され、過ぐる
国会におきまして通過する場合におきましても、この問題はきわめて重大なる問題としまして、多数の
意見が出たのであります。
結論としましては、われわれは與党の多数によりまして寄り切られましたけれども、現在の
鉱業法、特にこの
賠償規定なるものが、いかに不十分であり、なお申しますと
被害者を全然無視するささたる
金銭賠償主義に立
つておるということが言えるのでありまして、このことは、国際的に見ましても、非常に不十分であるということは、政府自身が知
つており、また先ほど
中村委員も
今澄委員も
主張しました通りであります。ドイツあるいは英国等におきましては、あくまでもこれは
原状回復主義の
立場を堅持しておるのであり、無過失、
損害賠償の
立場をと
つておる。しかもその
負担は、あくまでも全面的に
鉱業権者が
負担するという
立場をと
つておるのでありまして、’その、点日本のこの
鉱業法なりあるいは
賠償に対する態度または
賠償規定というものが、非常に
鉱業権者本位とな
つており、
被害者が常にさんたんたる苦難をなめながらも、その一切の
被害をおつかぶせられて今まで泣きの涙でがまんしてお
つたというような
実情にな
つておるので謝ります。そこで、われわれもはつきり知
つておりますように、あの無謀な戰争によりまして、
鉱業法で掘
つてはならないと
規定しておりますところのあの地域を、国家の要請と称しまして強引に濫掘させた結果起りました
鉱害に対しましては、つまり
特別鉱害に対しましては、一応何らかの形はできましたけれども、あの
特別鉱害復旧臨時
措置法が通過する場合におきましても、
政府原案は、予算
措置から見まして、大体五十億見当でありました。それに対しまして、政府與党
自由党は、これを三十六億円に切
つて来た。これでは問題にならないのでありまして、そこでわれわれは、
委員会におきましても、あるいはまた
小委員会におきましても、徹底的にこれに
反対し、社会問題としての
立場から、
被害者の切々たる陳情、また運動の結果どうにか
政府原案に近いものができ、現在の実績といたしましては、八十億見当に近い効果を上げるということにな
つておりますけれども、少くとも、
自由党與党の腹としましては、そういう三十六億案でこれを押し切るという態度をと
つてお
つたということは明々白々である。今度の
一般鉱害の問題におきましても、この基本的な態度は少しも後退しておらないということが、この
法案の
審議の過程にはつきり現われておるのであります。しかもこの
法案の非常に不備なる点は、政府の
説明によりましても、二百三十億に余る大
鉱害が残
つておる。それに対する
措置は、わずか百七億見当である。しかも年々四億並びに五億見当の
鉱害というものが進行中であり、
年々歳々これが加算されつつある状態であります。従いまして、いかにこの
一般鉱害の
復旧法案というものが不完全であり、またおためごかしであり、なお申しますと、根本的な社会問題としてこれを
解決するという
立場に立
つておらずに、
被害者の運動から押されて、とにも
かくにも当面を糊塗するという態度に出ておるということは明らかであります。そこで私たちは、現在
被害者が陳情されておる五項目といわれるもの、すなわち
公共施設だけではいかすに、
学校その他の施設も入れてくれという問題、あるいは打切り補償という制度に対して
反対される問題、また不
適地を一方的に切
つてしまうというような、そういう打切り補償に対する不
適地の設定の問題、あるいは
被害者でありますところの
地方公共団体、県あるいは地方自治体に対しまして、この
負担の一部をかけるというようなことが、いかに無謀であるかというような問題、それからまた社会問題といたしましては、きわめて重大であり、しかもこれは單に日本だけではなくしてドイツにおきましても、あるいはイギリスにおきましても、世界各国におきまして、この
家屋あるいは墓地、汗戸水というような飲料水に関するよつな問題は実はこういう
学校その他の施設より以上に、
被害者にとりましては切実な問題であります。ところがこれが常に非常にまま子扱いされ、しかもこれら
鉱業権者と
被害者とは、毎日々々のごとく深刻なる社会問題として交渉されておるのであります。ところがこういう
被害者の五つの柱、五項目なるものは、実は
被害者の
立場から申しますと、これは非常に遠慮された謙虚な気持で、とにも
かくにもこれだけけはや
つてほしいという掛値のない、ぎりぎりの最小
限度の希望であ
つたと思います。従いまして、これは当然
福岡県の県知事あるいはまた長崎、佐賀あるいは山口、常磐地方のそういう公共の
立場に立
つておられる代表者の陳情によりましても、あるいは
被害者の陳情によりましても、これはどうしても通してもらいたい、この線はぎりぎりのところですという血の出るような
意見が出たと思うのであります。公聴会はほとんど全面的にこれを
主張されておる。そうして
野党の全員は、これはもつともでありますという断定を下しておるのである。そうしてまた参議院の
委員諸君も、議会中にもかかわらず、急遽現地の
被害を見て来て、実際に見た
被害というものは、自分たちが想像してお
つた以上にひどい状態である。
従つてこの政府案というものがいかに不備であるか、自分たちは全面的とは行かないけれども、少くとも
最大限にこれを生かすという
立場で参議院で
修正したいという強い決意を示してお
つたのであります。われわれ衆議院といたしましては、より以上の強い決意で、これを通す、この
被害者の御希望をいれる。
地方公共団体の希望をいれる。少くとも五項目のこの要求に対しましては、誠心誠意これに対して予算的な
措置を講じ、あるいはまた法的な
措置をはつきり講ずる必要があるということを認めたにもかかわらず、しかも先月の十六日から開かれました
小委員会におきましては、
小委員会を開くことすでに十二回にわたりまして、先月の三十日には、大体與
野党を通じて、五本の柱による
修正案を出しましようという、大まかな
一致が来たのであります。ところが突如として與党
諸君は、現在の
修正案のような、ごまかしな、インチキな、非常にこれに相反するような
結論を出しておるのでありまして、これはさきに
中村委員が
説明せられましたように、この間に選挙を控えて、
鉱業権者の圧力が加わ
つておるということを、想像するなとい
つても、せざるを得ないような
立場に立
つておるのであります。それをはつきりされるならば、なぜこれをやらないかということを私は強く
主張せざるを得ないのであります。日本の工業の発展から申しましても、地下資源は、私が申し上げるまでもなく、全八千五百万の国民の共有物である。それが
鉱業権なる名のもとに資本家に独占され、しかも日本の
石炭産業といわず、あるいは製鉄産業といわず、あるいは交通運輸、こういう方面は、日本の産業というものは、外国に例のないほど常に国家の補助に依存しておるのであります。そうして一切の
損害を受けると、これは国家がや
つてくれ、社会が持
つてくれ、しかもいわゆる
石炭景気というものはどうであるか。昨年来実に黒字続きでありまして、他の産業に類を見ないような
利益を上げておる。全国の長者番付によりましても、それがはつきりわか
つておるのでありまして、資本家に対しては無
責任にいつまでも野放しでもうけさせ、しかも
被害が起
つた場合には、国家やあるいは
公共団体に持たせる。
被害者に対しては、これを押えつけて泣寝入りさせるというような
立場をと
つておりますことは、これ自体が重大なる社会問題であり、またひいては、日本の根本的な基本産業でありますところの
石炭産業の正常なる発展に対する非常な障害になるということが言えるのでありまして、われわれ
共産党といたしましては、こういう観点から申しまして、この
鉱害問題の根本的な
解決から申しましても、こういう重要なる産業は国営にし、これを人民管理にするという線が出ました場合に、初めてこういう問題もすつきわした形で
解決されるということを考えておりますけれども、当面
被害者に対しましては相済まないから、応急
措置として、少くとも最小限のこの五項目の
修正案を通す必要が絶対にあるということを私どもは
主張しておるのでありまして、これはわれわれの誇大な
主張でもなければ、また
被害者百数十万
諸君のは
つたりの
主張、要求でもないのである。実際に
被害者の
立場に立たれますならば、いかに
被害者諸君というものが苦しい
立場からこの
鉱害の
解決を要求されておるかということがわかるのでありまして、現在全国から集ま
つておられます陳情団の
諸君は、もうすでに二箇月、早い人は三箇月以上この運動を継続され、日々五十各あるいは百名というほど、そのなけなしの金を使いまして、千万円以上に上るといわれておりますが、そういう尨大なる、運動費を使
つて、この麦を刈り、田を植えなければならない、農実といたもましては最も忙しい最中に、なぜ東京にこういうカン詰しなければならないか。ここに現在の社会の根本的な
欠陷があり、国民のほんとうの代表者でありますところの国
会議員が東京において
法案をつくるということになりますと、こういう浪費をしなくても、
被害者の方々の要求というものがすつすつと通るという態勢に立たねばならないにもかかわらず、こういろ
実情にな
つておるということは、政府與党はこの面から申しましても、重大なる
責任を感ずる必要が絶対にあると私は思うのであります。そこでこの
修正案をぜひとも通過させなければならないといたしましても、今申しますように、日本の
鉱業法の非常な不十分さ、また
一般鉱害が百数十億残
つておるということ、
年々歳々四億、五億という
鉱害がなお増加しつつあるという
現状から申しまして、根本的に
鉱業法の
金銭賠償主義を
改正し、また残
つておりますところの百数十億の
鉱害を徹底的にきれいさつぱりにするために、次の徹底的な立法をする必要がある。またそれなくしてはこの社会問題は
解決しない。それがこういうインチキな形で処理されますならば、おそらく九州から東京までむしろ旗が立つ。それに対する
責任は一切政府が負わなければならないということを私は断言するのでありまして、そういう
立場から、私は
野党の
修正案に
賛成、また
自由党の
修正案に
反対、
野党修正案を除く
政府原案に
賛成の
立場を表明する次第であります。