○小金委員
鉄鋼政策の基本問題についてお伺いいたしたく、きようは外務省及び通産省当局の御出席を願いまして、両方からお答えを願いたいと存じます。
まず私がここで伺いたいと存じますのは、先般
日本が
独立をいたしまして、逐次アジアの諸国、すなわち日華平和條約、目印平和條約というものもそれぞれ調印を
終つております。また
国会の承認を求める手続もいたしておるようでありますが、私は
日本の製鉄業の本質から言いまして、今後どうしたらよろしいか、従来のような、原料をか
つて予想しなか
つたような
方面から入れてお
つて、世界の製鉄
事業が復興し、さらに拡張しておる際に、はたしてこれで
日本の基礎産業中の基本的なものだという鉄鋼業がや
つて行けるかどうかという非常に大きな試練の時代にぶつかるのではないか、またすでにそのときが来ておるのではないかと
考えますので、ここで根本問題についてお伺いをする次第であります。
御
承知の
通り十九世紀の終りに
日本で初めて近代製鉄
事業を官営で起しまして、爾来いろいろな
経過をたどりましたが、進歩発達の一路をたど
つて参りました。ところが昭和二十年及び二十一年にはほとんど壊滅に近いような
状態にまで落ち込んで、今後どうなるか、非常にわれわれは心配いたしておりましたが、幸いにいろいろないい
條件ができまして、そうして鉄鉱石及び原料炭をか
つてあまり予想されなか
つた遠方アメリカ地域から入れて、その復興をはか
つた。そうしてその
生産額も逐次増加いたしております。昭和十七会計年度を基準にいたしますると、当時
日本では原料炭は約八百九十三万トン余り、そのうち内地炭が四九%強、あとは中国炭が約三百五十万トンで三九%強、そのほか満州及び樺太炭——これは北樺太でありますが、樺太炭ということにな
つております。原鉱石の方を見ますると、十七会計年度によりますと六百三十数万トン、そのうち内地で約百九十六万トンで三一%、中国からは三百五十四万トンで五六%の鉱石を入れております。朝鮮が約六十万トンで九・六%、そのほか二十一、二万トン、これが三・四か五パーセントということにな
つております。壊滅後復興した
日本の製鉄業の原料の姿を調べてみますると、二十六年度はまだ推定の域を脱しませんが、大体原料炭が五百六十数万トン使われておるはずであります。そのうち内地炭が約三百六十万トン強、すなわち六十三あるいは六十四。パーセントくらいにな
つております。米国炭が百三十五万トンで約二十三、四パーセントというようなところにな
つておりまして、インド炭が四十五万トンで八%、残りがその他から入
つて来る、こういうことに相な
つております。これが原料炭の姿であります。
原鉱石の方の二十六年度の推定の
数量を申し上げますと、鉄鉱石の使用量は約四百九十二万トンということにな
つております。内地鉱石が約百万トン、二〇%強、米国が百六十万トン、三二%半くらい、フイリピンが九十五万トン、一九・三%くらいにな
つております。それからマライからの鉄鉱石が七十五万トンで一五・二%、インドの鉱石が三十八万トンで七・七%、香港が十七万トンで三・五%、その他が約七万トンで一・四%というような
状態に相な
つております。か
つて日本の製鉄業は、昭和十七印度におきましては銑鉄で五百四十七万五千トン出しております。昨二十六年度では、三百十九万七千トンという推定の数字が出ております。粗鉱で申し上げますと——これは鋼塊ばかりではありません、そのほかのものを一切含めまして、昭和十七年度においては八百七十万トン余り、昨二十六年度では約六百九十万トンくらいの粗鉱をつく
つております。戦後の再建された
日本の鉄及びはがねの原料は、このような姿で今後押して行けるかどうか。輸入原料をどうしても海外に仰がなければ、
日本の鉄鋼業は成り立
つて行かないという宿命であります。しかもその宿命を今までみごとに克服いたしまして、かような数字に上る
生産を上げております。海外から非常に多量な、しかも重い原料を、鉄鉱石にいたしましても原料炭にいたしましても、運んで来て、
日本で製造することになると、産業の
合理化が非常に大事であることのほかに、人件費の節約、ことに原料費はもう動かすべからざるものになる。山元では非常に安い鉄鉱石、原料炭でありながら、運賃が非常に高い。この運賃が世界の経済界の動きによ
つて左右される。
従つてこの運賃をいかにして節約するか、また支払わないで済ませるかということが製鉄業の大きなフアクターにな
つている、私はかように
考えております。原料の占める価格を一瞥いたしましても、鉄鉱石で申しますと、昨年十月の実績を見ますと、ズングンの鉱石を買うのに、FOBでは七ドル九十八セント、船賃が十一ドル二十セント、合計して十九ドル十八セントという鉱石の値段が出ております。
従つてどういう所から鉱石を買い、幾らの船賃を払うかによ
つて、
日本の鉄鋼価格がきまるわけであります、ズングンは今の
通りでありますが、カルカッタの場合を見ますと、FOBが八ドル十セントに対して運賃が十三ドル六十セント、合計すると二十一ドル七十セントというような数字になります。
もつとも鉄鉱石はパーセントが大事でありまして、ズングンの方は約五五%くらい、カルカツタの方は六三%くらいのものにな
つておるようでありますが、アメリカから来ている——主としてユタの鉱石だと思いますが、ユタの鉱石のF
○Bは十ドル五セント、船賃が十四ドル、合計して二十四ドル五セント、これが五八%くらいの鉱石である。こういうぐあいにな
つておりますから、運賃は相対的のものでありまして、品位がよければ
相当高く払
つてもかまいませんけれ
ども、われわれの国がか
つて製鉄業を盛んにせしめたその時代のことにさかのぼるまでもなく、アジアの近所には、中国を初めとして東南アジアには非常に多量の鉄鉱石が埋蔵されておるのであります。しかもこの鉄鉱石は、インドを除きましてはみずから鉄にする工場を持
つておらない。どうしても
日本に売らなければ、ま
つたく石ころ同然になるのであります。こういうような観点からいたしまして、どうしてもわれわれの方で粗野な原鉱石を買いまして、そうして鉄の
製品その他わが国の工業
製品を売り出してやる。これがアジアの
ほんとうの経済的な
独立の本筋だと私は
考えておるのであります。こういう見地から、
日本の鉄鋼業について、
政府は
独立とともに一体どういう御注意をお払いにな
つておるか。また通商航海條約というような基本的なものができておらないといたしましても、
日本の今度の講和は友好と信頼であるとか、あるいは和解と信頼、友情であると言われておる。これは私は国際間にかけひきはないと思う、その友好
関係だとか、信頼
関係にかけひきがあ
つてはたいへんなことである。だからそれを百パーセント信じて
政府には
相当の御
努力を払
つていただかなければ、今まで十年あるいは十数年の間杜絶してお
つたアジア諸国との国交の回復はできないと思う。だから平和の
実現とともに、
政府がこの
方面に対してどういう注意を払
つておられるか、私はここで外務当局と通産当局に大筋を伺いたいのであります。