○
松本政府委員 ただいまの御
質問にお答え出し上げます。一昨夜の
議場におきまして、もう少し詳細にかつ明瞭にお答えをしたいと思いましたが、いかなる
理由か、
議場が今おつしや
つたように非常に喧騒をきわめまして、私のような老人の声ではとうてい徹底できない。私がこうや
つて見ておると、
速記者も
速記がおそらくできなか
つたように見えました。どういうわけか存じませんが、はなはだ遺憾にこのことを感じました。ただいま今回の
東京電力の
総会が中途で終
つてしま
つたという変なことが起こりましたことについて、われわれ
委員会の知つおることについて述べてくれという
お話がありましたが、実は一昨々日でございましたか、
参議院の方で
質問がありまして、その際は
議場もきわめて静粛でありましたので、相当述べまして、その
速記録が、私けさちよつと見まして、よくは見ておりませんから間違いがあるかないかわかりかねますが、もし必要がありましたら、そういうものをごらんをいただきたいと思います。しかしここできわめて
大要を途べまして、さらにご
質問に応じて、いろいろ詳細を、述べたいと思います。
ご
承知のように
電力会社の再
編成は、昨年の五月一日にでき上が
つた。その際に、旧
配電会社が
九つと
日発という
発送電会社、この十
会社が解散されまして、
九つの新しい
電力会社ができたのであります。これらの旧
会社はいわゆる
過度経済力集中排除法で排除さるべく命令されてお
つたものと思います。伺か私はつきり存じませんで、間違
つておるところがあ
つたら直してもらいますが、そういうふうなわけで、再
編成ができたわけであります。当
時日発が再
編成の結果としまして
九つの各
電力会社の株を、自己の出資した財産に応じて、非常に大きな株を持
つてお
つたのであります。これをいつまでに
日発の
旧来の
株主にもどさすかということについては、
通常集中排除法によ
つて、そういうことが起りました場合には、
たいがい役員の
任期をきめますのに六箇月という例が多か
つたそうであります。当時も
大筒舟でよくはないかという説がありました。たしか私の記憶では、当時アメリカから来てお
つた司令部の
へたちも、ほかの例が六箇月だから、これも六箇月でよくはないかという話がありましたが、これに対しまして、私はどうも今までの
会社とは大分違う。実際
日発の
会社は非常に大きい、
株主の数も本数万にな
つておる。そしてそれらの
株主が九
会社の株をわけてもらうのであるから、大箇月ではあるいはわけ司れぬようなことが起りはしないかと思う、一年あればこれは十分だろうというので、一年ということに
任期をきめまして、
従つてこの五月の下旬に各
会社においてすべての
役員の
任期が満了しまして、これらの
人たちの
改選をすることにな
つたのであります。この
日発の
清算につきましては、われわれの
委員会は何ら
権限を持
つておりません。これは全部
公正取引員会の方で
監督をされる。
従つて多分順当に進んでおると思
つておりました。ところが必ずしもそうでない。なかなかひまがかか
つておるようだということも聞きました。五月の初めごろから、たしか各
電力会社の
株式の
名義書きかえは停止されて、その
時分にまだ
自発では一株も
株主に分配しておらぬ。
従つて全部の株を
日発一社が持
つてお
つたということを聞きまして、はなはだ意外に
考えました。しかしこれはしかたがないことと思いまして、この
株主権をもし
濫用して
行使されることがありましては、
電力界の秩序が乱れてしまうということを心配いたしまして、たしか五月十六日付で
公正取引委員会の方に私の方の
意見を御参考のために
書面にして差上げました。その
一つの点は、以前から衆議院はもちろんまた
参議院等におきましても、どうも新しい
電力会社の
役員が少し多過ぎる、
使用人やなんかも多過ぎるという話でありましたが、
使用人の方は当時再
編成の際に減らさないということにきめられてお
つて、これは減らすわけに行かなか
つた。
役員はわれわれが指定したのでありまするが、その数が多過ぎる、もう少し
合理化した方がいいという
お話が
委員会等でありました。われわれもごもつともと
考えて、よい機会があ
つたらなるべく減らすようにしたいものだということを答えておきました。その趣意を述べまして、どうか今度の
役員改選の際に数がふえるというようなことにならぬように御
注意を願いたいということ。第二点としては、現在の
電力会社の
役員は私
どもの見るところでは大体においてまずうまくや
つておる。もちろんその
役員は主として
配電会社及び
自発の
役員がな
つておるのでありまして、これらの仲はなかなかしつくりとは行きかねる。しかしながらすでに一年を
経過して、どこも大体においてしつくり
行つておる。
内紛なんというものも一向ないようです。これをまたさらにいじり直すということがあるとたいへん困りはせぬか。せつ
かく会社が非常に勉励して、あるいはロスの軽減なんということには目ざましい功績を上げております。また電源の
開発につきましても、火力と水力と合せて二十六年度にはたしか四十一万キロくらいの
開発をしております。これはあたりまえのことではとうていできぬほどの勉強をしてや
つておる。これらの
成績から
考えて、今
役員をいろいろ変更するような議が起
つては困るから、そういうことには多分
株主総会でならないと思うが、
日発の
議決権行使について
監督権を持
つておられる
公正取引委員会においては十分御
注意願いたいという意味のことを
書面で申し上げました。それに対しては
書面はたしかいただいておらぬかと思いますが、
公正取引委員会の方もまあ同意されておるようにわれわれは聞いております。そういうぐあいでありましたが、他の各
配電会社におきましては多少の人員の変更はありました。しかしこれらはみな現在の
役員と
日発側の
人たちとも
話合いをして、別にどつちにも異議なく、大体において
旧来のままできた。しかるに
東京電力についてはそうは行かなか
つた、というのは
新木榮吉君が
東京電力の会長をしてお
つた。それが最近御
承知のように
米国駐剤の
全権大使になられまして一人
欠員ができた。私
どもの聞くところによると
新木大使がたしか相談を受ける前くらいに、
東電において
電役会を開いて、
あとをどうするかということをいろいろ協議をされたそうであります。その際にすべての人の
意見は、今重役の間にも別に
内紛はなく、大いに
成績も上
つておる。どうかひとつこのままで
行つて1新しい人が一人でも入るということになると、やはりいろいろの心配もありえるから、このままで人を減らしてもふやさないという
公益事業委員会の方針からい
つても、むしろ一人減
つたことがいいかもしれない、だからそのままにしておきたいということが何か
東京電力の
役員会で
新木君も出席された際に決定されたように聞いております。それで
東京電力はそういう
考えでお
つたようであります。それに対して
日発の
清算人の側からは何とかかえたいような
意見があ
つて、いろいろ交渉があ
つたそうであります。しかしこれらに対しては、
自分の方はかえないで行きたいということにほぼ決定しておるからという返事をしてお
つたそうであります。そういう
状態でありましたところが、突如として二十九日の
総会の前日の二十八日に
日発の
清算人の側から、
公正取引委員会に、新たに三人の
役員を入れたい、全然新しい人を入れたいというので、その
名前等を示して請求があ
つたそうであります。これはこま
かくあとで
公正取引委員長から
お話があると思いますが、それに対して
公正取引委員会におきましては、現員の数をふやしたくないということについて御
注意にな
つたと見えまして、すなわち
新木君の
欠員を補充するということにすれば十五人ということになる。十五人以内において今の三人の人を入れるということの
議決権の
行使はよろしいということを、たしか二十八日の午後か何かにお
申渡しがあ
つたように聞いております。そのことをわれわれが聞きましたのは、二十九日の午後もよほどおそくであ
つたと思います。そのときに私は、おそらくこの三人の新しい
候補者というのは、
白鷹側全部を入れる
考えではない、現在の
人たちの上に
新木君のかわりに
欠員があるから、三人のうちだれかを入れるという
魚味だろうと実は思
つておりました。そのくらいのことならあるいは大したことでもなかろうかと
考えておりました。しかるに二十九日十時から
総会が始まるという当日の朝九時半ころに
電話で、そういうわけではなく、三人の人を全部入れる、そのためにはどうしても二人
現任着々どかせなければならぬ、その二人の
現任者をどかす人は安
藏社長と
常務取締役の堀越君、この二人をやめさせて、そうして今前日に言われてお
つた三人の人を入れたいというような話であ
つた。はなはだ意外であるがということを聞きました。たいへん意外なことで、そういうえらいことを当日の朝にな
つて突如として申し出すということは、これは
通常の場合ではあり得ない。昔その
会社を乗つ取るというようなときにはときどきそういうこともあ
つたようであるが、たいへん驚くべき話であります。私はその際いろいろ
考えました。そういう
議決権の
行使は、たとい
公正取引委員会の承認がありましても、これは明らかに
権利の
濫用であ
つて、そういうことをすれば違法でふると私は
考えます。
権利の
濫用につきまして一言よけいなことを
お話申し上げますが、
権利の濫川の
瀧法である、
濫用したところには
権利はないということの
観念は、これは十九
世紀の末項、
資本主義の欄熟した
時代から出て来た
観念であります。初めはだだ一、二の学者がそういうことを言い出したにすぎない。しかしながらその学説がだんだんと実を結びまして、最近に
至つては方々の国でそういうことにな
つております。御
承知のように、
日本の
民法が
昭和二十二年に改正されたときと思いますが、第
一條にこれを明記しております。
民法の第
一條では、第一項において「
私権ハ公共ノ福祉二
遵フ」第二項において「
権利ノ
行使及ビ義務ノ
履行ハ信義二従ヒ誠実二之ヲ為スコトヲ要ス」第三項において「
権利ノ
濫用ハ之
ヲ許サス」こういうことを
規定いたしております。こういうような
思想は、最近五十年の間にだんだん各国の
判例等ででできて来ておるのであります。またそれにやや近いような
立法も最近の
立法にはあるのであります。しかしこれは十九
世紀時代の
権利思想とは全然違う。十九
世紀時代の
権利思想というものは、
権利があればどんなことでもできる。いかに不当に見えるようなひどいことでも、
権利は
権利でできるのだ。たとえば隣のうちの
地面を買おうと思うが、どうしても売
つてくれぬ。売
つてくれないのはしかたがない。そうすると、その境に恐ろしい高い塀を建てて、隣のうちには風も入らぬようにしてしまうというようなこともさしつかえないというように乱れてお
つた。われわれもそういう実例を東京市中においても見ました。また私
ども五十数年前に
法律を
習つた時分には、そういうことでいいということにな
つておりました。しかしながらそれは全然かわりてしま
つた。そのかわりましたいろいろの
判例等のことを一々
お話すると一時間も二時間もかかると思いますからそれは申し上げませんが、
日本でも
判例によ
つて、
権利の
濫用は違法であ
つて、
不法行為を構成し得るというような
観念が
判例等でだんだんできております。たしか
大審院の
判例で最後に出て来たのは、
昭和十年ごろだ
つたですか、よく覚えておりませんが、それは温泉の水を運ぶための管がある人の持
つておる土地の中を断りなしに
通つた、これは昔の十九
世紀時代の
権利の絶対性を認めておる原則から申せば、これはもちろんのけさすことができる、当然の話と当時の多くの人は
考えたと思います。しかしながらこれについて非常に争いかあ
つた結果、たしか
大審院かと思いますが、これは
権利の
濫用でのけさすことはできない、無断で
自分の
地面にそういうものか入
つて来たというか、これは
公共のために必要なことである、それをのけさすようなことは
権利の
行使としてはいかぬという
判例がたしかあ
つたように思
つております。そういうようなことから、その点を明らかにするために
昭和二十二年に
民法の改正ができたと私は
考えております。今の
法律の解釈からいえば非常に明らかなんです。今申したよう
うに民法の第
一條の
規定があります。だれが見てもひどいじやないかというような
権利の
行使ということは
濫用である、そういう
行使はできないのだ、それを無理にやれば違法であ
つて、すなわち
不法行為になり得るというように見ることは、これはもう明文によ
つて法律が明らかに
規定してしま
つたことであります。私の
考えでは、あの際にもしただいま述べたような
日発清算人の
権利の
行使があ
つたとすれば、これは明らかに
権利の
濫用で、確かに違法であ
つて無効であると思います。それはなぜかと申せば、言うまでもなく商法の
規定によりますと、解散した
会社は
清算の
目的の
範囲内においてなお存続するものとみなすという
規定があるのであります。すなわち解散された
清算会社というものは、その
権利能力は
清算の
目的の
範囲内だけにしか存しておらぬ、それ以上には存しておらない。解散される前の
会社であれば持
つておるところの
株式について
株主権を十分に
行使できる、そして
自分の気に入るような軍役を選んで、これによ
つてその
会社が適当な業務をや
つて行くようにしたいということはできましよう。しかしながら解散後の
会社は、
清算の
目的の
範囲内においてのみ存続しているにすぎない。そういう
会社が
自分の持
つている
株式の
株主権を
行使して、他の
会社の人事に関与するというがごときは、これは明らかに
権利の
濫用であると私は
考えます。しかしそんなことを
言つてもしようがない、よく話をしたら何とか
清算人も反省するだろうと
考えまして、私は
昭和二年以来
日本工業クラブに
事務所を持
つておりますので、その
事務所へ
行つてひとつよく
状況を見たい、
電話等ではとうていわからぬというので
事務所まで出かけました。ところが
清算人自体は出席しておらぬ、
清算人の
代理人としてある
弁護士が一人出席しておる、その
弁護士がそういうことを言うのであ
つて、どうにもしかたがない、もう
話合いをする余地も何もないという話でありました。それは困
つたことだが、もしそういうことで
決議ができたら、
あとで必ずや
決議取消しの
訴えその他これに基いての新しい
役員の
職務執行停止及び
代行者の
選任というような仮処分の申請というようなものが
東電の方の
株主等から起されはしないか、そういうことにな
つてもみ合つてお
つたらはなはだ困
つたことであると
考えましたが、いかせん私
どもは何ら
権限を持
つておりませんので、事を傍視しておるのはかなか
つたという
状態でありました。私
どもがこの
クラブに参
つたときには、
役員選任の
議案だけを残して他の
議案はすでに
決議され、そこで休憩をしてお
つたそうであります。
大勢株主がそとへ出てお
つたように見えました。それはいたし方がない、どうも困
つたことだと思
つておりました。ところが
あとの
状況を聞きますと、
株主中から、この
総会は今は
流会にして、もう一ぺん
総会を開いてそれまでによく協定をしてや
つてもらいたいというような議があ
つたそうであります。多数の
株主がこれに
賛成をしてお
つて、そのときにほんとうを言えば決をとるべきだ
つたと思いますが、しかしながら多数の
株主の
賛成によ
つて流会の
宣言をしたそうであります。
法律的にこれを見ますれば、この
流会の
宣言は
正当防衛であ
つて、よろしいと私は今もそう
考えておりますが、何しろそういうことで
流会にな
つて総会は
終つたそうであります。しかるに
目発側の今の
代理人ら数人の人が同日の夜八時何十分かに
集つて、前の
総会後の継続だと号して
役員選任か何かを
決議したそうであります。
かくのごとき
決議は
会社の何ら関知しないところでありますから、もちろん全然無効なものであると私は
考えております。そんなようなことではなはだ遺憾なことが起りました。しかし結果から申せばそれによ
つてこういう不当な
行為が遂行されないでしま
つた、もしそういう
行為が遂行されたならば、
あとで非常な騒擾を来し、
電力会社の
事業に大いなる阻害を来したと思うのであります。そういうことなしに済んで、この
当否いかんということについては、もし
裁判所に
訴えでも起れば
裁判所がこれを決定されることと思います。われわれは関与するところではない、そういうことではなはだ遺憾なことでありますが、非常なやつかいなことにならずに途中で済んでしま
つたということはむしろよか
つたように
考えております。いずれおそらく近いうちにさらに
総会を開いて
役員選任の
決議をするごとと思
つております。