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1952-05-15 第13回国会 衆議院 通商産業委員会 第36号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十七年五月十五日(木曜日) 午後二時二十分
開議
出席委員
委員長
中村
純一君
理事
高木吉之助
君
理事
多
武良哲三
君
理事
中村
幸八君
理事
今澄
勇君 今泉 貞雄君 小川 平二君 小金 義照君
淵上房太郎
君 福田 一君 村上 勇君
高橋清治郎
君 加藤 鐐造君
出席政府委員
特許庁長官
岡田
秀男君
委員外
の
出席者
専 門 員 谷崎 明君 専 門 員 越田 清七君
—————————————
五月十五日
委員青野武一
君辞任につき、その補欠として上
林與市郎
君が議長の指名で
委員
に選任された。
—————————————
本日の
会議
に付した事件
ドイツ人工業所有権特別措置令
の一部を改正す る
法律案
(
内閣提出
第二三二号)
—————————————
中村純一
1
○
中村委員長
これより
会議
を開きます。 本日はまず
ドイツ人工業所有権特別措置令
の一部を改正する
法律案
を議題といたし、
質疑
に入ります。
質疑
の通告がありますからこれを許します。
中村幸
八君。
中村幸八
2
○
中村
(幸)
委員
私は簡単に本
法案
につきまして御質問してみたいと思います。まず第一に本
法案
の対象と
なつ
ております
ドイツ人工業所有権
の数はどのくらいあるか、その点を承りたいと思うのであります。 なおまたこの
法案
の
実施
によりまして、従来
ドイツ人
が持
つて
いた
工業所有権
の
最終処分
が行われることになるのでありますが、これによ
つてわが国
の
産業
あるいは
技術
の面にいかなる効果が及ぼされるか、具体的に御
説明
願いたいと思います。
岡田秀男
3
○
岡田
(秀)
政府委員
お答え申し上げます。
ドイツ人財産
であります
工業所有権
の数でございますが、現在
登録
に
なつ
ている
権利
といたしましては、
特許権
で五千七十九件、
実用新案権
として千百八十二件、
意匠権
二十九件、
商標権
四千七百三十一件、合計一万一千二十一件と相
なつ
ておるのであります。
出願
中の
権利
といたしましては、
特許出願
が七百九十九件、
実用新案登録
の
出願
が百七十件、
意匠登録
はございませんで、
商標登録
が百九十四件に
なつ
ております。 この
ドイツ人
の
工業所有権等
が、今度
処分権
を持
つて
おります英、米、仏、三国によ
つて最終処分
が行われることに相なるわけでございますが、
ドイツ人
が戦後持
つて
おりましたこれらの
権利
について、現在までは
管理保全
の
措置
のみが講ぜられておつたのが、いよいよ
最終処分
ができる、いかなる
処分
が行われるであろうかということは、
わが国
の
関係業界
が非常に関心を持
つて
おつたところでございます。ところがいよいよ
最終処分
の方法及び手続がこの
法案
によ
つて
明らかになりまして、今後三国によ
つて
行われる個々の
処分決定
と相まちまして、
権利
の
処分
が明らかになりますから、
わが国
の
産業
上
ドイツ人
の
工業所有権
の活用が一層円滑に行われるようになるであろうと考えられるのであります。しかしさらに特定の
特許権等
につきましては、三国によ
つて
これが取消されることになるのでありまして、
一般
の
自由市場
に解放されるという結果を招くのであります。これは
産業技術
の振興上裨益するところが多いかと思うのでございます。なお
ドイツ人
の
特許権等
を取消されます結果、戦後
わが国
民が得ております
実施権
が同時に取消されるという結果を招くのでありますけれども、三国の
意思
を内々私どもの方で伺つたところによると、かような
権利
は大体
一般
に公開するということに
なつ
ておりますし、しかもその
実施権
を与えますときに
実施料
をとらない、また無条件にいつでも取消すのだということで
実施権
が付与されておる
関係
もございますので、この点からも
わが国
に
損害
を及ぼすことはほとんどないように考えられるのであります。そのように
ドイツ人
の
工業所有権関係
の
処分
が明らかになりますことは、
わが国
民の上にむしろ裨益するところが多かろう、かように考えております。
中村幸八
4
○
中村
(幸)
委員
ただいまの御
説明
で
実施権
を持
つて
いた者については
契約
によ
つて損害
がないからかまわないということでありましたが、
実施権
を取消されますと、従来
実施権
を持
つて
いた
日本人
が
相当損害
をこうむるおそれがあると思いますが、この
実施権者
の保護という点については、何かお考えに
なつ
ておりますか。
岡田秀男
5
○
岡田
(秀)
政府委員
実施権
に二種あると思います。従来
ドイツ人財産
である
特許権
につきましても、戦前の
契約
に基きまして
わが国
民が
実施権
を持
つて
おります場合においては、今度の
改正法
の適用はないのであります。従来の
特許法
の
規定
によりまして引続き
わが国
民は
実施権
を持つことができるわけであります。本令の十一条の
規定
によりまして、
管理保全中の間
に三国の許諾によ
つて
設定せられました
実施権
につきましては、
特許権等
が取消されますれば、それに基く
わが国
民の
実施権
も取消されることになるのであります。しかしこの
実施権
は、三国の
代理者
としての総
司令部
が
実施権
を与える際に、
実施料
はなく、しかも
独占権
もなく、いつでも取消すことができるのだという条件で付与されておるのでありますので、
実施権
をもら
つて
いる者もかねて覚悟はしているところであります。なお三
国側
といたしましては、この種の
実施権
を付与しました
特許権等
につきましては、
権利
を取消して
一般
に公開する予定であると申しておりますから、
実施権者
は
実施権
を失いましても、引続き
実施権
の
内容
であります発明、考案は
実施
できるわけでありますので、
わが国
民といたしましては被害を受けることはまずなかろうと思います。
中村幸八
6
○
中村
(幸)
委員
ただいまの御
説明
でよくわかりました。 次に本
法案
と
平和条約
二十条との
関係
について
説明
願いたいと思います。なおこの
法案
の
内容
に関しまして、後日これを修正するために英、米、仏三国との間に折衝する必要がありはしないかと思うが、この点もあわせて御
説明
願いたい。
岡田秀男
7
○
岡田
(秀)
政府委員
この
法律案
は
平和条約
第二十条を
実施
するために提案を申し上げておる次第でございます。すなわち一九四五年の
ベルリン会議
の
議事
の
議定書
に基きまして、英、米、仏三国は
日本
にある
ドイツ財産
を
処分
する権能を持
つて
おるのでありますが、第二十条によりますれば、この三国の
処分
を確実ならしめるために必要な
措置
をとり、これらの
財産
の
最終的処分
が行われるまで、これを保存管理しなければならない
義務
を
わが国
が負担しております。右の必要な
措置
は、
占領期間
中におきましても、
前記英
、米、仏三国の
受託者
としての
連合軍最高司令官
の指示に基きまして、
ドイツ財産管理令
及び
ドイツ人工業所有権特別措置令
によりまして一部を行
つて
来たのでありますが、今回
平和条約
が発効いたしましたあとは、この二つの政令は効力を失つたことになるのであります。もつともこの
管理令
は
法律
にかえられて来ておるのでございますが、今度これを改正することになりましたのは、いよいよこの三国が
最終処分
を本式にやることになりますので、その具体的な
措置
を詳細に
規定
して行こうという目的に基くものでございます。 なお本
法案
の
内容
は三国の
受託者
であるところの
連合国最高司令官
から参りました
覚書
の
趣旨
に基いて成文化いたしたものでございますが、三国からも重ねて、右の
連合国最高司令官
の
覚書
は、自分らの希望するところであ
つて
、その通りにや
つて
いただくことが望ましいのであるということを確認して参
つて
おりますので、この
法案
は三国の
意思
に合致しておるのでございます。さような
関係
で、
平和条約
二十条を
実施
するに必要な事柄を今回の
法案
で
措置
して参りたい、かような
関係
に
なつ
ておるわけであります。 なお、この
法律案
の
内容
につきまして、三国と交渉してこれを修正する
余地
があるかないかという点でございますが、先ほども申し上げましたように、この
法律案
は、直接には
占領
中においての三国の
受託者
としての
連合国最高司令官
の
覚書
の
趣旨
に基いたものでございますけれども、同時に三国の
意思
と合致しておるという旨の確認があつたわけでございますから、
日本政府
といたしましては、
平和条約
二十条が存在する以上、この三国の要求に
従つてドイツ人
の
財産
である
工業所有権
の
最終処分
に必要な
措置
を
法律
できめる必要があるわけであります。ところが、
ドイツ財産
でありまするところの
工業所有権
の
最終処分
それ自体は、
日本政府
に何ら
関係
ないことでございまして、まつたく三国の権限に属する問題でございます。
日本
といたしまして、三国に対し、
ドイツ人
の
工業所有権
をいかように
処分
してくれということについて、かれこれ申す
余地
のないことは当然でございます。また、それに伴いまして、それを確実にさすために必要な
措置
も、
平和条約
で
義務
を負
つて
おるのでございますから、この
法案
の
内容
の
趣旨
につきまして、三国と交渉して修正することはまずむずかしかろうと存ずるのであります。
中村幸八
8
○
中村
(幸)
委員
そういたしますと、この
法案
は
平和条約
第二十条に基いて提案した。しかも三国の
覚書
の
趣旨
に基いて
最終決定
をする。こういうことでありますので、
わが国
といたしましては何らこれに容喙する
余地
はないと思うのでありますが、そういたしますると、この
法案
を
実施
することによりまして、
わが国
が
ドイツ
から
損害賠償
の請求を受けることはないのでありますか、そう考えてよろしゆうございますか。
岡田秀男
9
○
岡田
(秀)
政府委員
英、米、仏の三国は、一九四五年の
ベルリン会議
の
議事
の
議定書
に基きまして、
日本
にある
ドイツ財産
を
処分
する
権利
を持
つて
おることに
なつ
ておるのであります。この三国の
決定
に従いまして、
日本
は
平和条約
第二十条に基いて三国の
処分
を確実にするため必要な
措置
をとるという立場にあるわけでございますから、
日本
が
ドイツ人
に対して責を負うということはないと考えておる次第でございます。
中村幸八
10
○
中村
(幸)
委員
この
法案
は、
日本
における
ドイツ人
の
工業所有権
に関する
措置
でありますが、逆に、
ドイツ
において
日本人
が持
つて
おるところの
工業所有権
はどういう取扱いを受けておるのか、また今後継続して行くか、その点をお答え願います。
岡田秀男
11
○
岡田
(秀)
政府委員
平和条約
の第十六条の
規定
によりますると、
ドイツ
にある
日本国
及び
日本国民
の
資産
またはこれらの
資産
と価値のひとしいものを
赤十字国際委員会
に引渡すことに
なつ
ておるのでありまして、この
資産
という中に
工業所有権
が含まれるかどうかということは、
目下検討
中でございます。もし
工業所有権
が、この十六条にいう
資産
の中に含まれるものと、かりにいたしましても、この条文の中には、ある一定のものを除外するという
規定
がございますので、それによりますと、
日本人
が一九四五年の九月二日以後に貿易、
金融関係再開
の結果といたしまして、
ドイツ
において取得した
工業所有権
は除外されるのであります。根本的に
資産
の中に入るか入らぬかということにつきましては、今後なお
折衝検討
を加えたいと存じております。
中村幸八
12
○
中村
(幸)
委員
私の質問はこれで終ります。
中村純一
13
○
中村委員長
他に御
質疑
はありませんか。——なければ、
本案
に対する
質疑
はこれにて終了いたすことにいたしたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
中村純一
14
○
中村委員長
御
異議
なければ、
本案
に対する
質疑
はこれにて終了いたしました。 本日はこの程度にいたし、明日午後一時より
委員会
、
委員会終了
後、
地下資源開発
及び
合理化
に関する小
委員会
を開会いたします。本日はこれにて散会いたします。 午後二時三十七分散会